(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】ディーゼル酸化触媒および低温NOX吸着剤を含む統合排出制御システム
(51)【国際特許分類】
B01J 29/74 20060101AFI20220907BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20220907BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220907BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20220907BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20220907BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
B01J29/74 A ZAB
B01J35/04 301Z
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01D53/94 400
F01N3/28 301P
F01N3/24 E
F01N3/08 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566512
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(85)【翻訳文提出日】2021-11-09
(86)【国際出願番号】 US2020033712
(87)【国際公開番号】W WO2020236879
(87)【国際公開日】2020-11-26
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ホーク,ジェフリー ビー.
(72)【発明者】
【氏名】グルーベルト,ゲルト
(72)【発明者】
【氏名】プンケ,アルフレート
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本開示は、炭化水素および一酸化炭素の酸化、ならびにリーンバーンエンジンの排気流におけるNO
x軽減のための排出物処理システムであって、排出物処理システムが、排気流と流体連通するように位置決めされた、少なくとも1つのPGM成分を含浸させたモレキュラーシーブを含む低温NO
x吸着剤(LT-NA)と、排気流と流体連通するように位置決めされた、白金を含浸させたマンガン含有耐火金属酸化物担体を含む酸化触媒と、を含み、LT-NAおよび酸化触媒が、それぞれ基材上に配置されている、排出物処理システムを対象とする。本発明は、酸化触媒をLT-NAと組み合わせた触媒物品、および排気ガスを処理する関連方法を提供する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素および一酸化炭素の酸化、ならびにリーンバーンエンジンの排気流におけるNO
x軽減のための排出物処理システムであって、前記排出物処理システムが、
前記排気流と流体連通するように位置決めされた、少なくとも1つのPGM成分を含浸させたモレキュラーシーブを含む低温NO
x吸着剤(LT-NA)と、
前記排気流と流体連通するように位置決めされた、白金を含浸させたマンガン含有耐火金属酸化物担体を含む酸化触媒と、を備え、前記LT-NAおよび前記酸化触媒が、それぞれ基材上に配置されている、排出物処理システム。
【請求項2】
前記LT-NAおよび前記酸化触媒が、(1)同じ基材上で層状になっており、前記LT-NAが第1の層中に存在し、前記酸化触媒が第2の層中に存在し、前記第1の層が、前記第2の層よりも前記基材の近くに位置決めされて、かつ少なくとも部分的に前記第2の層と重なっているか、または(2)同じ基材上でゾーン化された構成となっており、前記LT-NAが上流ゾーンにあり、前記酸化触媒が下流ゾーンにあるか、または(3)前記LT-NAが第1の基材上に存在し、前記酸化触媒が第2の基材上に存在し、前記第1の基材が前記第2の基材の上流に位置決めされている、請求項1に記載の排出物処理システム。
【請求項3】
前記LT-NAおよび前記酸化触媒が、ゾーン化された構成で同じ基材上に配置されており、前記基材が、全長を画定する入口端部および出口端部を有し、
前記LT-NAが、前記全長の約20%~約100%の長さまで前記入口端部から延在して前記基材上に配置されており、
前記酸化触媒が、前記全長の約20%~約100%の長さまで前記出口端部から延在して前記基材上に配置されており、前記酸化触媒が、任意選択的に前記LT-NAの少なくとも一部と重なる、請求項2に記載の排出物処理システム。
【請求項4】
前記LT-NAが、前記全長の約40%~約100%の長さまで前記入口端部から延在して前記基材上に配置されており、前記酸化触媒が、前記全長の約40%~約100%の長さまで前記出口端部から延在して前記基材上に配置されている、請求項3に記載の排出物処理システム。
【請求項5】
前記酸化触媒が、1つ以上の白金族金属(PGM)成分を含浸させた耐火金属酸化物担体を含む第2の酸化触媒でゾーンコーティングされており、前記第2の酸化触媒が、実質的にマンガンを含まず、かつ前記酸化触媒の上流に位置している、請求項3に記載の排出物処理システム。
【請求項6】
前記LT-NAおよび前記酸化触媒の両方の下流に位置決めされた少なくとも1つの選択的触媒還元(SCR)触媒をさらに含む、請求項1に記載の排出物処理システム。
【請求項7】
以下のうちの1つ以上:アンモニアまたはアンモニア前駆体注入構成要素、触媒化スートフィルタ(CSF)、およびアンモニア酸化(AMOX)触媒をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の排出物処理システム。
【請求項8】
前記LT-NAおよび前記酸化触媒がどちらも、入口から出口まで延在する複数の長手方向に延在するガス流路を有するハニカムの形態のフロースルー基材上に配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の排出物処理システム。
【請求項9】
前記モレキュラーシーブが、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOF、BOG、BOZ、BPH、BRE、BSV、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、EZT、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IFY、IHW、IMF、IRN、ISV、ITE、ITG、ITH、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JBW、JRY、JSR、JST、KFI、LAU、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTF、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MRE、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MVY、MTW、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OKO、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PCR、PHI、PON、PUN、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAF、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SCO、SEW、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFS、SFW、SGF、SGT、SIV、SOD、SOF、SOS、SSF、SSY、STF、STI、STO、STT、STW、SVR、SZR、TER、THO、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOS、UOZ、USI、UTL、UWY、VET、VFI、VNI、VSV、WIE、WEN、YUG、ZON、およびそれらの混合物または連晶からなる群から選択される骨格タイプを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の排出物処理システム。
【請求項10】
前記モレキュラーシーブが、LEV、CHA、およびFERからなる群から選択される骨格タイプを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の排出物処理システム。
【請求項11】
前記モレキュラーシーブがアルミノシリケートゼオライトである、請求項1~6のいずれか一項に記載の排出物処理システム。
【請求項12】
前記モレキュラーシーブが、少なくとも10員の環によって画定されたチャネルを含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の排出物処理システム。
【請求項13】
前記酸化触媒が、パラジウム、ロジウム、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の排出物処理システム。
【請求項14】
前記LT-NAが、唯一のPGM成分としてパラジウムを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の排出物処理システム。
【請求項15】
前記酸化触媒が、前記マンガン含有耐火金属酸化物担体上に含浸させた約10g/ft
3~100g/ft
3の範囲の量の白金を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の排出物処理システム。
【請求項16】
前記酸化触媒が、前記マンガン含有耐火金属酸化物担体上に含浸させた少なくとも約40g/ft
3の白金を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の排出物処理システム。
【請求項17】
前記耐火金属酸化物担体が、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の排出物処理システム。
【請求項18】
前記耐火金属酸化物担体のマンガン含有量が、前記担体の総重量に基づいて、約0.1重量%~約30重量%の範囲にある、請求項1~6のいずれか一項に記載の排出物処理システム。
【請求項19】
前記耐火金属酸化物担体のマンガン含有量が、約3~約10重量%の範囲にある、請求項18に記載の排出物処理システム。
【請求項20】
前記マンガンが、前記耐火金属酸化物を有するMn含有固溶体、含浸によって前記耐火金属酸化物上に表面分散されたMn、および前記耐火金属酸化物の粒子上の離散した酸化マンガン粒子からなる群から選択される形態で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の排出物処理システム。
【請求項21】
前記マンガン含有耐火金属酸化物担体上に含浸された前記白金が、約1~約10nmの平均粒径を有するナノ粒子の形態にある、請求項1~6のいずれか一項に記載の排出物処理システム。
【請求項22】
炭化水素を酸化し、リーンバーンエンジンからの排気流中のNO
xを軽減する方法であって、前記方法が、前記排気ガス流を請求項1~21のいずれか一項に記載の排出物処理システムと接触させることを含む、方法。
【請求項23】
リーンバーンエンジンからの排気を処理するための触媒物品であって、
全長を画定する入口端部および出口端部を有する基材と、
前記基材上に配置された、少なくとも1つのPGM成分を含浸させたモレキュラーシーブを含む低温NO
x吸着剤(LT-NA)と、
前記基材上に配置された、白金を含浸させたマンガン含有耐火金属酸化物担体を含む酸化触媒と、を含み、
前記LT-NAおよび前記酸化触媒が、(1)前記基材上で層状になっており、前記LT-NAが第1の層中に存在し、前記酸化触媒が第2の層中に存在し、前記第1の層が、前記第2の層よりも前記基材の近くに位置決めされて、かつ少なくとも部分的に前記第2の層と重なっているか、または(2)同じ基材上でゾーン化された構成となっており、前記LT-NAが上流ゾーンにあり、前記酸化触媒が下流ゾーンにある、触媒物品。
【請求項24】
前記LT-NAおよび前記酸化触媒が、ゾーン化された構成で前記基材上に配置されており、前記基材が、全長を画定する入口端部および出口端部を有し、
前記LT-NAが、前記全長の約20%~約100%の長さまで前記入口端部から延在して前記基材上に配置されており、
前記酸化触媒が、前記全長の約20%~約100%の長さまで前記出口端部から延在して前記基材上に配置されており、前記酸化触媒が、任意選択的に前記LT-NAの少なくとも一部と重なる、請求項23に記載の触媒物品。
【請求項25】
前記LT-NAが、前記全長の約40%~約100%の長さまで前記入口端部から延在して前記基材上に配置されており、前記酸化触媒が、前記全長の約40%~約100%の長さまで前記出口端部から延在して前記基材上に配置されている、請求項24に記載の触媒物品。
【請求項26】
前記酸化触媒が、1つ以上の白金族金属(PGM)成分を含浸させた耐火金属酸化物担体を含む第2の酸化触媒でゾーンコーティングされており、前記第2の酸化触媒が、実質的にマンガンを含まず、かつ前記酸化触媒の上流に位置している、請求項23に記載の触媒物品。
【請求項27】
前記モレキュラーシーブが、LEV、CHA、およびFERからなる群から選択される骨格タイプを有する、請求項23~26のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項28】
前記モレキュラーシーブがアルミノシリケートゼオライトである、請求項23~26のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項29】
前記酸化触媒が、パラジウム、ロジウム、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項23~26のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項30】
前記LT-NAが、唯一のPGM成分としてパラジウムを含む、請求項23~26のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項31】
前記酸化触媒が、前記マンガン含有耐火金属酸化物担体上に含浸させた約10g/ft
3~100g/ft
3の範囲の量の白金を含む、請求項23~26のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項32】
前記酸化触媒が、前記マンガン含有耐火金属酸化物担体上に含浸させた少なくとも約40g/ft
3の白金を含む、請求項23~26のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項33】
前記耐火金属酸化物担体が、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、またはそれらの組み合わせを含む、請求項23~26のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項34】
前記耐火金属酸化物担体のマンガン含有量が、前記担体の総重量に基づいて、約0.1重量%~約30重量%の範囲にある、請求項23~26のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項35】
前記耐火金属酸化物担体のマンガン含有量が、約3~約10重量%の範囲にある、請求項34に記載の触媒物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年5月22日に出願された米国仮特許出願第62/851,392号からの優先権を主張するものであり、これは、参照によってその全体が本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、内燃機関の排気ガス流を処理して窒素酸化物(NOx)の排出を低減させるのに好適な、触媒物品、排出制御システム、および方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
内燃機関の排出に関する環境規制は、世界中でますます厳しくなっている。例えば、ディーゼルエンジンなどのリーンバーンエンジンの動作は、燃料リーン条件下での高い空燃比での動作によって、ユーザーに優れた燃料経済性を提供する。しかしながら、ディーゼルエンジンはまた、微粒子状物質(PM)、未燃炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、および窒素酸化物(NOx)を含有する排気ガス排出物も放出し、NOxとは、一酸化窒素および二酸化窒素を含む窒素酸化物の種々の化学種を表す。NOxは、大気汚染の有害成分である。NOx含有ガス混合物を処理して、大気汚染を減少させるために、様々な処理方法が使用されてきた。
【0004】
リーンバーンエンジンの排気からのNOxを還元するための効果的な方法は、選択的触媒還元(SCR)触媒構成要素の存在下で、好適な還元剤を用いて、リーンバーンエンジン動作条件下でのNOxの反応を必要とする。SCRプロセスは、典型的には、大気の酸素の存在下で還元剤としてアンモニアまたは炭化水素を使用し、それによって、主に窒素および蒸気を形成する。
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O(標準SCR反応)
2NO2+4NH3+O2→3N2+6H2O(低速SCR反応)
NO+NO2+2NH3→2N2+3H2O(高速SCR反応)
【0005】
SCRプロセスで用いられている現在の触媒は、鉄または銅のような触媒金属とイオン交換された、ゼオライトのようなモレキュラーシーブを含む。有用なSCR触媒構成要素は、600℃未満の温度においてNOx排気成分の還元に効果的に触媒作用を及ぼすことができ、それによって、一般的により低い排気温度に関連する低負荷の条件下でさえも、低減したNOxレベルを達成することができる。
【0006】
自動車の排気ガス流の処理で遭遇する1つの問題は、いわゆる「コールドスタート」期間であり、これは、排気ガス流および排気ガス処理システムが低温(すなわち、150℃未満)であるときの処理プロセスの開始時における期間である。これらの低温では、排気ガス処理システムは、一般に、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、および/または一酸化炭素(CO)の排出を効果的に処理するのに十分な触媒活性を示さない。一般に、SCR触媒構成要素のような触媒構成要素は、200℃超の温度でNOxをN2に変換する際に非常に効果的であるが、コールドスタートまたは長期にわたる低速市街地運転中に見られるようなより低い温度領域(<200℃)では十分な動作を呈しない。
【0007】
SCR触媒で遭遇する別の問題は、SCR触媒への供給ガスにおけるNO2対全てのNOxの比に対して、SCR反応が敏感なことである。ディーゼルシステムでは、この比は、典型的にはSCR触媒の上流に配置されているディーゼル酸化触媒(DOC)の組成に大きく依存する。
【0008】
広範囲の動作温度にわたって非常に効率的なSCR触媒性能を提供する改善された排出物処理システムを提供することが非常に望ましいであろう。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、低温NOx吸着剤(LT-NA)からの脱着されたNOxを下流のSCR構成要素によって効率的に除去するために、増強されたNO2生成を呈するディーゼル酸化触媒(DOC)の使用と組み合わせて、低温で排気ガスからのNOxを吸着するためのLT-NA組成物(例えば、Pd/ゼオライト)を使用することを対象とする。より具体的には、DOCは、有利には、処理された排気ガスのNO2/NOx比を上昇させてSCR触媒の下流動作を改善するマンガン含有担体材料(例えば、Mn/Al2O3)を含む。
【0010】
一態様では、本開示は、炭化水素および一酸化炭素の酸化、ならびにリーンバーンエンジンの排気流におけるNOx軽減のための排出物処理システムであって、排出物処理システムが、排気流と流体連通するように位置決めされた、少なくとも1つのPGM成分を含浸させたモレキュラーシーブを含む低温NOx吸着剤(LT-NA)と、排気流と流体連通するように位置決めされた、白金を含浸させたマンガン含有耐火金属酸化物担体を含む酸化触媒と、を備え、LT-NAおよび酸化触媒が、それぞれ基材上に配置されている、排出物処理システムを提供する。特定の実施形態では、LT-NAおよび酸化触媒は、(1)同じ基材上で層状になっており、LT-NAが第1の層中に存在し、酸化触媒が第2の層中に存在し、第1の層が、第2の層よりも基材の近くに位置決めされて、かつ少なくとも部分的に第2の層と重なっているか、または(2)同じ基材上でゾーン化された構成となっており、LT-NAが上流ゾーンにあり、酸化触媒が下流ゾーンにあるか、または(3)LT-NAが第1の基材上に存在し、酸化触媒が第2の基材上に存在し、第1の基材が第2の基材の上流に位置決めされている。排出物処理システムは、LT-NAおよび酸化触媒の両方の下流に位置決めされた少なくとも1つの選択的触媒還元(SCR)触媒と、任意選択的に以下のうちの1つ以上:アンモニアまたはアンモニア前駆体注入構成要素、触媒化スートフィルタ(CSF)、およびアンモニア酸化(AMOX)触媒と、をさらに含み得る。
【0011】
例えば、LT-NAおよび酸化触媒は、ゾーン化された構成で同じ基材上に配置され得、基材は、全長を画定する入口端部および出口端部を有し、LT-NAは、全長の約20%~約100%の長さまで入口端部から延在して基材上に配置され得、酸化触媒は、全長の約20%~約100%の長さまで出口端部から延在して基材上に配置され得、酸化触媒は、任意選択的にLT-NAの少なくとも一部と重なる。特定の実施形態では、LT-NAは、全長の約40%~約100%の長さまで入口端部から延在して基材上に配置されており、酸化触媒は、全長の約40%~約100%の長さまで出口端部から延在して基材上に配置されている。LT-NAおよび酸化触媒はどちらも、例えば、入口から出口まで延在する複数の長手方向に延在するガス流路を有するハニカムの形態のフロースルー基材上に配置され得る。
【0012】
必要に応じて、酸化触媒は、1つ以上の白金族金属(PGM)成分を含浸させた耐火金属酸化物担体を含む第2の酸化触媒でゾーンコーティングされており、第2の酸化触媒は、実質的にマンガンを含まず、かつ酸化触媒の上流に位置している。
【0013】
モレキュラーシーブは、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOF、BOG、BOZ、BPH、BRE、BSV、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、EZT、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IFY、IHW、IMF、IRN、ISV、ITE、ITG、ITH、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JBW、JRY、JSR、JST、KFI、LAU、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTF、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MRE、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MVY、MTW、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OKO、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PCR、PHI、PON、PUN、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAF、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SCO、SEW、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFS、SFW、SGF、SGT、SIV、SOD、SOF、SOS、SSF、SSY、STF、STI、STO、STT、STW、SVR、SZR、TER、THO、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOS、UOZ、USI、UTL、UWY、VET、VFI、VNI、VSV、WIE、WEN、YUG、ZON、およびそれらの混合物または連晶からなる群から選択される骨格タイプを有し得る。特定の実施形態では、モレキュラーシーブは、LEV、CHA、およびFERからなる群から選択される骨格タイプを有する。有利には、モレキュラーシーブはアルミノシリケートゼオライトである。特定の実施形態では、モレキュラーシーブは、少なくとも10員の環によって画定されたチャネルを含む。
【0014】
酸化触媒はまた、パラジウム、ロジウム、またはそれらの組み合わせも含み得る。例示的な酸化触媒は、マンガン含有耐火金属酸化物担体上に含浸させた約10g/ft3~100g/ft3の範囲の量の白金、例えば、マンガン含有耐火金属酸化物担体上に含浸させた少なくとも約40g/ft3(または少なくとも約45、または少なくとも約50、または少なくとも約55、または少なくとも約60、または少なくとも約65、または少なくとも約70、または少なくとも約75、または少なくとも約80)の白金を含む。いくつかの実施形態では、マンガン含有耐火金属酸化物担体上に含浸された白金は、約1~約10nmの平均粒径を有するナノ粒子の形態にある。LT-NAは、特定の実施形態では、唯一のPGM成分としてパラジウムを含み得る。
【0015】
耐火金属酸化物担体は、典型的には、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、耐火金属酸化物担体のマンガン含有量は、担体の総重量に基づいて、約0.1重量%~約30重量%の範囲、例えば、約3~約10重量%の範囲にある。マンガンは、典型的には、耐火金属酸化物を有するMn含有固溶体、含浸によって耐火金属酸化物上に表面分散されたMn、および耐火金属酸化物の粒子上の離散した酸化マンガン粒子からなる群から選択される形態で存在する。
【0016】
別の態様では、本開示は、炭化水素を酸化し、リーンバーンエンジンからの排気流中のNOxを軽減する方法であって、この方法が、排気ガス流を本明細書に記載されている任意の実施形態による排出物処理システムと接触させることを含む、方法を含む。
【0017】
さらなる別の態様では、本開示は、リーンバーンエンジンからの排気を処理するための触媒物品であって、全長を画定する入口端部および出口端部を有する基材と、基材上に配置された、少なくとも1つのPGM成分を含浸させたモレキュラーシーブを含む低温NOx吸着剤(LT-NA)(本明細書に開示されているLT-NAの任意の実施形態など)と、基材上に配置された、白金を含浸させたマンガン含有耐火金属酸化物担体を含む酸化触媒(本明細書に開示されている酸化触媒の任意の実施形態など)と、を含み、LT-NAおよび酸化触媒が、(1)基材上で層状になっており、LT-NAが第1の層中に存在し、酸化触媒が第2の層中に存在し、第1の層が、第2の層よりも基材の近くに位置決めされて、かつ少なくとも部分的に第2の層と重なっているか、または(2)同じ基材上でゾーン化された構成となっており、LT-NAが上流ゾーンにあり、酸化触媒が下流ゾーンにある、触媒物品を含む。例えば、LT-NAおよび酸化触媒は、ゾーン化された構成で基材上に配置されており、基材は、全長を画定する入口端部および出口端部を有し、LT-NAは、全長の約20%~約100%の長さまで入口端部から延在して基材上に配置されており、酸化触媒は、全長の約20%~約100%の長さまで出口端部から延在して基材上に配置されており、酸化触媒は、任意選択的にLT-NAの少なくとも一部と重なる。いくつかの実施形態では、LT-NAは、全長の約40%~約100%の長さまで入口端部から延在して基材上に配置されており、酸化触媒は、全長の約40%~約100%の長さまで出口端部から延在して基材上に配置されている。いくつかの実施形態では、酸化触媒は、1つ以上の白金族金属(PGM)成分を含浸させた耐火金属酸化物担体を含む第2の酸化触媒でゾーンコーティングされており、第2の酸化触媒は、実質的にマンガンを含まず、かつ酸化触媒の上流に位置している。
【0018】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下に簡単に記載される添付の図面とともに以下の詳細な説明で明らかになるだろう。本発明は、上記の実施形態の2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の任意の組み合わせ、および本開示に記載されている任意の2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の特徴または要素の組み合わせを、そのような特徴または要素が、本明細書の特定の実施形態の説明で明示的に組み合わされているか否かに関わらず含む。本開示では、文脈が明らかに他のことを示さない限り、開示されている発明の分けることが可能な特徴または要素が、その様々な態様および実施形態のいずれかにおいて、組み合わせ可能であると考えられるべきであると、全体として読み取られることが意図される。本発明の他の態様および利点は、以下で明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の実施形態の理解を提供するために、添付図面が参照され、添付図面では、参照符号は、本発明の例示的な実施形態の構成要素を示す。図面は、単なる例であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載の開示は、添付の図において、限定としてではなく、例として示されている。図を簡潔かつ明確にするために、図に示されている特徴は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。例えば、一部の特徴の寸法は、分かりやすくするために他の特徴に対して誇張されている場合がある。さらに、適切であると考えられる場合、対応するまたは類似の要素を示すために、複数の図面で参照符号が繰り返し用いられる。
【0020】
【
図1A】本開示による触媒組成物ウォッシュコートを含み得るハニカムタイプ基材の斜視図である。
【
図1B】
図1Aに対して拡大された、
図1Aの基材の端面に対して平行な平面に沿って見た部分断面図であり、基材がフロースルー基材である実施形態における、
図1Aに示された複数のガス流路の拡大図を示す。
【
図2】
図1Aにおけるハニカムタイプ基材がウォールフローフィルタに相当する、
図1Aに対して拡大された断面の切断図である。
【
図3A】本開示の触媒物品の様々な実施形態の断面図である。
【
図3B】本開示の触媒物品の様々な実施形態の断面図である。
【
図3C】本開示の触媒物品の様々な実施形態の断面図である。
【
図3D】本開示の触媒物品の様々な実施形態の断面図である。
【
図3E】本開示の触媒物品の様々な実施形態の断面図である。
【
図4】排出物処理システムの一実施形態の概略図である。
【
図5】実施例1に記載されている排出物処理システムの様々な箇所で生成されたNO
xをグラフ表示したものである。
【
図6】実施例1に記載されている様々な排出物処理システムによって生成されたNO
2/NO
x比をグラフ表示したものである。
【
図7】実施例2に記載されている排出物処理システムの様々な箇所で生成されたNO
xをグラフ表示したものである。
【
図8】実施例2に記載されている様々な排出物処理システムによって生成されたNO
2/NO
x比をグラフ表示したものである。
【
図9】実施例3によって作製された触媒のNO酸化率をグラフ表示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
これより、以下で本発明をより十分に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が十分かつ完全であり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。
【0022】
定義
本明細書における冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、文法的目的語の1つまたは1つより多く(例えば、少なくとも1つ)を指す。本明細書に引用される範囲は全て、包括的である。全体を通して使用される「約」という用語は、小さな変動を表現し、説明するために使用される。例えば、「約」は、数値が、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、±0.1%、または±0.05%変わり得ることを意味し得る。全ての数値は、明示的に示されているかどうかに関係なく、「約」という用語で修飾される。「約」という用語によって修飾された数値には、特定の識別された値が含まれる。例えば、「約5.0」は、5.0を含む。
【0023】
「軽減」という用語は、任意の手段によって引き起こされる量の減少を意味する。
【0024】
「吸着剤」という用語は、所望の物質、本開示ではNOxを吸着および/または吸収する材料を指す。吸着剤は、有利には、特定の温度で物質を吸着および/または吸収(貯蔵)し、より高い温度で物質を脱着(放出)することができる。
【0025】
「会合する(associated)」という用語は、例えば、「を備えている」、「に接続されている」、または「と連通している」、例えば、「電気的に接続されている」または「と流体連通している」、あるいは機能を実行するように接続されている、ことを意味する。「関連する(associated)」という用語は、例えば、1つ以上の他の物品または要素を介して、直接に関連するか、または間接的に関連することを意味し得る。
【0026】
「触媒」という用語は、化学反応を促進する材料を指す。触媒は、「触媒活性種」、および活性種を運搬するまたは担持する「担体」を含む。例えば、ゼオライトは、パラジウム活性触媒種用の担体である。同様に、耐火金属酸化物粒子は、白金族金属触媒種の担体であり得る。触媒活性種は、化学反応を促進するため、「促進剤」とも呼ばれる。
【0027】
本発明における「触媒物品」という用語は、触媒コーティング組成物を有する基材を含む物品を指す。
【0028】
明細書および特許請求の範囲において使用される「構成された」という用語は、「含む」または「含有する」という用語と同様に、オープンエンドな用語であることが意図されている。「構成された」という用語は、他の可能な物品または要素を除外することを意味するものではない。「構成された」という用語は、「適合された」と同等であり得る。
【0029】
「CSF」は、ウォールフローモノリスである触媒化スートフィルタを指す。ウォールフローフィルタは、交互に位置した入口チャネルと出口チャネルとからなり、入口チャネルは出口端部に差し込まれており、出口チャネルは入口端部に差し込まれている。入口チャネルに入る、煤を運搬する排気ガス流は、出口チャネルから出る前に、フィルタ壁を通過させられる。煤の濾過および再生に加えて、CSFは、下流のSCR触媒を加速させるために、またはより低い温度における煤粒子の酸化を促進するために、COおよびHCをCO2およびH2Oに酸化させるための、またはNOをNO2に酸化させるための酸化触媒を運搬してもよい。SCR触媒組成物は、SCRoFと呼ばれるウォールフローフィルタに直接コーティングすることもできる。
【0030】
「DOC」は、ディーゼルエンジンの排気ガス中の炭化水素および一酸化炭素を変換するディーゼル酸化触媒を指す。典型的には、DOCは、パラジウムおよび/または白金のような1つ以上の白金族金属、アルミナのような担体材料、HC貯蔵のためのゼオライト、ならびに任意選択的に促進剤および/または安定剤を含む。
【0031】
一般に、「効果的」という用語は、重量またはモルにおける画定された触媒活性または貯蔵/放出活性に関して、例えば約35%~100%効果があること、例えば、約40%、約45%、約50%または約55%から、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%効果があることを意味する。
【0032】
「排気流」または「排気ガス流」という用語は、固体または液体の微粒子状物質を含有し得る流動ガスのあらゆる組み合わせを指す。流れは、ガス状成分を含み、例えば、液滴、固体微粒子などの特定の非ガス状成分を含有し得るリーンバーンエンジンの排気である。燃焼機関の排気ガス流は、典型的には、燃焼生成物(CO2およびH2O)、不完全燃焼生成物(一酸化炭素(CO)および炭化水素(HC))、窒素酸化物(NOx)、可燃性および/または炭素質微粒子状物質(煤)、ならびに未反応の酸素および窒素をさらに含む。本明細書で使用される場合、「上流」および「下流」という用語は、エンジンからテールパイプに向かうエンジン排気ガス流の流れに応じた相対的な方向を指し、エンジンが上流位置にあり、テールパイプならびにフィルタおよび触媒のような任意の汚染物軽減物品がエンジンの下流にある。基材の入口端部は、「上流」端部または「前」端部と同義である。出口端部は、「下流」端部または「後」端部と同義である。上流ゾーンは、下流ゾーンの上流にある。上流ゾーンはエンジンまたはマニホールドの近くにあってもよく、下流ゾーンはエンジンまたはマニホールドからさらに離れていてもよい。
【0033】
「流体連通」という用語は、同じ排気ラインに位置決めされた物品を指すために使用され、すなわち、共通の排気流が、互いに流体連通した物品を通過する。流体連通した物品は、排気ラインにおいて互いに隣接していてもよい。あるいは、流体連通した物品は、「ウォッシュコートモノリス」とも呼ばれる1つ以上の物品によって分離されていてもよい。
【0034】
本明細書で使用される場合、「含浸された」または「含浸」とは、担体材料の多孔質構造に触媒材料を浸透させることを指す。
【0035】
コーティング層に関連する「上」および「上方」および「重なる」という用語は、同義的に使用することができる。「上に直接」という用語は、直接接触していることを意味する。開示されている物品は、特定の実施形態では、第2のコーティング層の「上」に1つのコーティング層を含むと呼ばれるが、そのような言葉遣いは、コーティング層間の直接接触が必要とされない、介在層を有する実施形態を包含することが意図されている(すなわち、「上」は「上に直接」とは同等ではない)。
【0036】
本明細書で使用される場合、「窒素酸化物」または「NOx」という用語は、NO、NO2、またはN2Oのような窒素酸化物を指す。
【0037】
「実質的に含まない」とは、「ほとんどもしくは全くない」または「意図的に添加されていない」ことを意味し、微量および/または偶発的な量しか有しないことも意味する。例えば、特定の実施形態では、「実質的に含まない」とは、示される組成全体の重量に基づいて、2重量%(重量%)未満、1.5重量%未満、1.0重量%未満、0.5重量%未満、0.25重量%、または0.01重量%未満を意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「ウォッシュコート」という用語は、処理されるガス流の通過を可能にするのに十分に多孔性のある基材材料、例えばハニカムタイプ基材に塗布される触媒または他の材料の薄い付着性コーティングの技術分野におけるその通常の意味を有する。本明細書において使用され、Heck,Ronald,and Farrauto,Robert,Catalytic Air Pollution Control,New York:Wiley-Interscience,2002,pp.18-19に記載されているように、ウォッシュコート層は、モノリス基材または下側のウォッシュコート層の表面に配置された材料の、組成的に区別される層を含む。基材は、1つ以上のウォッシュコート層を含有することができ、各ウォッシュコート層は、何らかの態様が異なることができ(例えば、粒径または結晶子相のような、ウォッシュコートの物理的特性が異なり得る)、かつ/または化学触媒機能が異なり得る。ウォッシュコートは、典型的には、液体中に特定の固形物含有量(例えば30重量%~90重量%)の触媒を含有するスラリーを調製し、それから、これを基材にコーティングし、乾燥させてウォッシュコート層を提供することによって形成される。
【0039】
別途指示がない限り、「重量パーセント(重量%)」は、揮発性物質を含まない組成物全体、すなわち、乾燥固形物含有量に基づく。特に明記しない限り、全ての部およびパーセントは、重量による。
【0040】
本明細書に記載されている全ての方法は、本明細書で別途指示がない限り、またはそうでなければ文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供される任意および全ての例または例示的言語(例えば「のような」)の使用は、材料および方法をより良好に説明することのみを意図したものであり、別途請求されない限り、範囲を限定するものではない。本明細書におけるいかなる言葉も、請求されていない要素を、開示された材料および方法の実施に必須であることを示すものと解釈されるべきではない。本明細書において言及される全ての米国特許出願、付与前の刊行物および特許は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0041】
第1の態様では、本発明は、排気流中の炭化水素および一酸化炭素の酸化、ならびに排気流中のNOxの軽減に適合した排出物処理システムを提供する。本発明の排出物処理システムは、炭化水素および一酸化炭素を酸化し、NO2形成も促進する、下流のSCR触媒の活性を増強することが可能な酸化触媒(すなわち、ディーゼル酸化触媒またはDOC)と、下流のSCR触媒の効率的な動作温度未満の温度でNOxの吸着をもたらすことができる低温NOx吸着剤(LT-NA)と、の統合機能を提供する。一緒に作用すると、酸化触媒およびLT-NAは、SCR触媒の下流のNOx排出量を低減させることができる。本発明はまた、本明細書に記載されているようなDOCおよびLT-NA組成物の両方を含む触媒物品も提供する。
【0042】
ディーゼル酸化触媒(DOC)
本発明で使用されるDOC組成物は、多孔質耐火金属酸化物担体に含浸されたPGM成分を含む。本明細書で使用される場合、「白金族金属」または「PGM」とは、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、およびそれらの混合物を含む、白金族金属またはそれらの酸化物を指す。特定の実施形態では、白金族金属は、約1:10~約10:1の重量比で、より典型的には、約1.5:1以上、約2:1以上、または約5:1以上の白金対パラジウムで、白金とパラジウムとの組み合わせを含む。PGM成分(例えば、Pt、Pd、またはそれらの組み合わせ)の濃度は、様々であり得るが、典型的には、多孔質耐火酸化物担体材料の重量に対して、約0.1重量%~約10重量%(例えば、耐火酸化物担体に対して、約1重量%~約6重量%)となるであろう。DOCは、ゼオライト(例えば、Fe-ベータゼオライト)のような炭化水素吸着剤、および/または安定剤もしくは促進剤(例えば、酸化バリウム)をさらに含み得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、「多孔質耐火金属酸化物」とは、高温で、例えばディーゼルエンジンの排気に関連する温度で、化学的および物理的安定性を呈する多孔質金属含有酸化物材料を指す。例示的な耐火酸化物としては、原子ドープされた組み合わせを含み、かつ高表面積のまたは活性化された化合物、例えば活性アルミナを含む、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、およびそれらの物理的混合物または化学的組み合わせが挙げられる。金属酸化物の例示的な組み合わせとしては、アルミナ-ジルコニア、セリア-ジルコニア、アルミナ-セリア-ジルコニア、ランタナ-アルミナ、ランタナ-ジルコニア-アルミナ、バリア-アルミナ、バリアランタナ-アルミナ、バリアランタナ-ネオジミアアルミナ、およびアルミナ-セリアが挙げられる。例示的なアルミナとしては、大細孔ベーマイト、ガンマ-アルミナ、およびデルタ/シータアルミナが挙げられる。有用な市販のアルミナとしては、高嵩密度のガンマ-アルミナ、低または中嵩密度の大細孔ガンマ-アルミナ、ならびに低嵩密度の大細孔ベーマイトおよびガンマ-アルミナのような活性アルミナが挙げられる。
【0044】
「ガンマアルミナ」または「活性アルミナ」とも称される、アルミナ担体材料のような、高表面積の耐火酸化物担体は、典型的には60m2/g超の、しばしば最大約200m2/g以上のBET表面積を呈する。そのような活性アルミナは、通常、アルミナのガンマ相とデルタ相との混合物であるが、相当量のエータ、カッパ、およびシータアルミナ相も含有し得る。「BET表面積」は、N2吸着によって表面積を求めるBrunauer、Emmett、Tellerの方法に関連するその通常の意味を有する。望ましくは、活性アルミナは、60~350m2/g、典型的には90~250m2/gの比表面積を有する。
【0045】
本発明のDOCで使用される耐火金属酸化物担体の少なくとも一部はマンガンを含有しており、マンガン含有耐火金属酸化物担体には白金が含浸されている。そのような耐火金属酸化物担体のマンガン含有量は、典型的には、耐火金属酸化物担体の総重量に基づいて、約0.1重量%~約30重量%の範囲にある(0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、15.0、および20.0重量%を含む)。特定の実施形態では、Mn含有量は、約3~約10重量%の範囲にある。理論に縛られることを意図するものではないが、マンガンは、白金と有益に相互作用してNO2形成を促進し、それによって、下流のSCR触媒の性能を改善することができると考えられている。1つ以上の実施形態では、白金がマンガン含有担体上に担持されているマンガンと白金との組み合わせは、相乗効果をもたらして、NO酸化を改善し、かつNO2形成を増加させる。マンガン含有耐火金属酸化物担体を形成するための方法は、Sung等のUS2015/0165422に記載されており、これは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0046】
Mnは、バルク形態または表面形態のいずれかで、あるいは離散した酸化マンガン形態として、耐火金属酸化物担体に組み込まれ得る。1つ以上の実施形態では、Mnは、酢酸マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン、またはそれらの組み合わせから選択される可溶性Mn種に由来する。他の実施形態では、Mnは、MnO、Mn2O3、MnO2、およびそれらの組み合わせから選択されるバルク酸化Mnに由来する。
【0047】
1つ以上の実施形態によると、耐火金属酸化物担体にはMn塩が含浸されている。本明細書で使用される場合、「含浸された」という用語は、耐火金属酸化物担体のような材料の細孔にMn含有溶液が入れられることを意味する。特定の実施形態では、含浸は、インシピエントウェットネスによって達成され、その際、希釈されたMn含有溶液の体積は、担体本体の細孔体積にほぼ等しい。インシピエントウェットネス含浸は、一般に、材料の細孔系全体に前駆体溶液を実質的に均一に分布させる。
【0048】
他の実施形態では、マンガンおよび耐火酸化物担体前駆体を共沈させ、次いで、この共沈した材料を、耐火酸化物担体材料およびマンガンが一緒に固溶体になるように焼成することによって、マンガンを耐火酸化物担体と一緒に含むことができる。したがって、1つ以上の実施形態によると、マンガン、アルミニウム、セリウム、ケイ素、ジルコニウム、およびチタンの酸化物を含有する混合酸化物を形成することができる。マンガンはまた、離散した酸化マンガン粒子として耐火酸化物担体の表面に分散させることもできる。
【0049】
マンガン含有担体に組み込まれる白金の量は様々であり得るが、白金の量は、酸化触媒を組み込んだ排出物処理システムのNOx還元の全体的な効率を決定する要因であると分かっている。特定の実施形態では、白金の量は、(触媒が配置されている下地基材の体積に基づいて)少なくとも約40g/ft3、少なくとも約45g/ft3、少なくとも約50g/ft3、少なくとも約55g/ft3、少なくとも約60g/ft3、少なくとも約65g/ft3、少なくとも約70g/ft3、少なくとも約75g/ft3、または少なくとも約80g/ft3などの範囲を含む、約10g/ft3~100g/ft3である。基材上の白金または任意の他の組成物の濃度とは、いずれか1つの三次元部分またはゾーン、例えば、基材または基材全体のいずれかの断面当たりの濃度を指し、典型的にはg/ft3またはg/in3で表される。
【0050】
本発明の酸化触媒は、マンガン含有担体に加えて追加の耐火金属酸化物を含み得、そのような追加の耐火金属酸化物はまた、その上に含浸されたPGM成分も有し得る。例えば、特定の実施形態では、酸化触媒は、2つのゾーンコーティングされた組成物、すなわち、通常は実質的にマンガン不含である耐火金属酸化物担体上に含浸された1つ以上のPGM成分を含む(および炭化水素吸着剤、安定剤、促進剤などの任意選択的な追加成分を含む)前部または上流ゾーンと、白金を含浸させたマンガン含有耐火金属酸化物担体を含む(および炭化水素吸着剤、安定剤、促進剤などの任意選択的な追加成分を含む)後部または下流ゾーンと、を含む。あるいは、PGM成分を含有する複数の耐火酸化物担体(マンガン含有担体を含む)を単一の均質な組成物に含めることができる。
【0051】
酸化触媒は、一般に、基材の体積に基づいて、例えば、約0.3~2.5g/in3、または約0.4g/in3、約0.5g/in3、約0.6g/in3、約0.7g/in3、約0.8g/in3、約0.9g/in3もしくは約1.0g/in3から、約1.5g/in3、約1.7g/in3、約1.8g/in3、約1.9g/in3、約2.0g/in3、約2.1g/in3、約2.2g/in3、約2.3g/in3もしくは約2.5g/in3の濃度で基材上に存在する。
【0052】
DOC組成物を作製する方法
PGM含浸耐火酸化物材料の調製は、典型的には、微粒子形態の耐火酸化物担体材料に、白金溶液およびパラジウム溶液のうちの1つ以上のようなPGM溶液を含浸させることを含む。複数のPGM成分(例えば、白金およびパラジウム)を、同時または別個に含浸させてもよく、インシピエントウェットネス技術を使用して同じ担体粒子または別個の担体粒子上に含浸させてもよい。担体粒子は、典型的には、溶液の実質的に全てを吸収して、湿潤固体を形成するのに十分に乾燥している。典型的には、硝酸パラジウムもしくは硝酸白金、硝酸テトラアンミンパラジウムもしくは硝酸白金、または酢酸テトラアンミンパラジウムもしくは酢酸白金のような、PGM成分の水溶性化合物または錯体の水溶液が利用される。
【0053】
担体粒子をPGM溶液で処理した後に、粒子を高温(例えば、100~150℃)で一定期間(例えば、1~3時間)熱処理することなどによって、粒子を乾燥させ、次いで焼成して、PGM成分をより触媒的に活性な形態に変換する。例示的な焼成プロセスは、約400~550℃の温度で1~3時間にわたって空気中で熱処理することを含む。上記のプロセスは、所望のレベルのPGM含浸に到達するために必要に応じて繰り返されてもよい。得られた材料は、乾燥粉末として、またはスラリー形態で貯蔵することができる。
【0054】
あるいは、PGM出発材料は、溶液形態ではなく、PGMナノ粒子のコロイド分散液の形態にあり得る。そのようなコロイド懸濁液は、上記のようなインシピエントウェットネス技術において担体に適用することができる。コロイド状PGM材料を担体に含浸させる方法は、Xu等のUS2017/0304805およびWei等のUS2019/0015781に記載されており、これらは両方とも、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0055】
コロイド分散液中のPGMナノ粒子の平均サイズは様々であり得る。いくつかの実施形態では、所与のコロイド分散液中のPGMナノ粒子は、約1nm~約10nm、例えば、約1nm~約6nmの平均粒径、例えば、約1nm、約2nm、約3nm、約4nm、または約5nmの平均粒径を有し得る。特定の実施形態は、約1~2nm、約1~3nm、約1~4nm、約1~5nm、約1~6nm、約2~3nm、約2~4nm、約2~5nm、約2~6nm、約3~4、約3~5nm、約3~6nm、約4~5nm、約4~6nm、または約5~6nmの平均粒径を有し得る。
【0056】
有利には、本明細書に開示されているコロイド分散液中のPGMナノ粒子は、実質的に単分散である。特定の実施形態では、粒子は単分散であるとみなすことができ、これは、PGMナノ粒子の集団が粒径について非常に均一であることを意味する。本発明において有用な特定の単分散粒子集団は、粒子の少なくとも95%が、粒子集団の平均粒径から50パーセント以内、または20パーセント以内、または15パーセント以内、または10パーセント以内の粒径を有する粒子からなることを特徴とし得る(すなわち、集団における全ての粒子の少なくとも95%が、およそ平均粒径の所与のパーセンテージ範囲内の粒径を有する)。他の実施形態では、全ての粒子の少なくとも96%、97%、98%、または99%がこれらの範囲にある。1つの例示的な実施形態では、平均粒径は約2nmであり、集団における全ての粒子の少なくとも95%(または少なくとも96%、97%、98%、99%、もしくは100%)が、約1nm~約3nmの範囲の粒径を有する(すなわち、平均粒径の約50パーセント以内)。特定のPGMナノ粒子分散液は、約2nm、約3nm、約4nm、および約5nmの平均PGMナノ粒子粒径を有する実質的に単分散の分散液を含み得る。
【0057】
PGMナノ粒子の粒径およびサイズ分布は、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して決定することができる。そのような値は、TEM画像を視覚的に調べ、画像内の粒子の直径を測定し、測定された粒子の平均粒径をTEM画像の倍率に基づいて計算することによって見つけることができる。粒子の粒径は、粒子を完全に囲む最小直径の球を指し、この測定は、2つ以上の粒子の凝集とは対照的に、個々の粒子に関連する。上記のサイズ範囲は、サイズ分布を有する粒子の平均値である。
【0058】
有利には、本開示によると有用であるコロイド分散液中のPGMは、実質的に完全に還元された形態にあり、これは、白金族金属含有量の少なくとも約90%(すなわち、ナノ粒子の大部分)が金属形態(PGM(0))に還元されていることを意味する。いくつかの実施形態では、完全に還元された形態のPGMの量は、さらにより高く、例えば、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のPGMが、完全に還元された形態にある。PGM(0)の量は、限外濾過、続いて誘導結合プラズマ/発光分光分析(ICP-OES)を使用して決定することができる。この方法では、コロイド分散液中の還元されていないPGM種をPGM(0)ナノ粒子から分離し、次いで、ICP-OESによってPGMNPを定量化することができる。
【0059】
低温NOx吸着剤(LT-NA)
本明細書に開示されているLT-NAは、白金族金属(PGM)成分を含むモレキュラーシーブを含む。そのようなLT-NA構成要素は、200℃未満の温度でNOxを貯蔵し、貯蔵されたNOxをより高い温度で放出するのに効果的である。
【0060】
本明細書で使用される場合、「モレキュラーシーブ」という用語、例えば、ゼオライトおよび他のゼオライト骨格材料(例えば、同形置換材料)は、一般的に四面体型の部位にあり、かつ実質的に均一な細孔分布を有し、平均細孔径が20オングストローム(Å)以下の、金属原子(例えば、Si、Alなど)に接続された酸素アニオンの広範な三次元網目構造に基づく材料を指す。
【0061】
モレキュラーシーブは、主に、(SiO4)/AlO4四面体の頑強な網目構造によって形成される空隙の形状に従って区別することができる。空隙への入口は、入口開口部を形成する6個、8個、10個、12個、または14個の(SiO4)/AlO4四面体を含む、6個、8個、10個、12個、または14個の酸素原子を含む環によって囲まれている。モレキュラーシーブとは、モレキュラーシーブのタイプ、ならびにモレキュラーシーブ格子に含まれるカチオンのタイプおよび量に応じて、直径が約3~10Åの範囲にある、かなり均一な細孔径を有する結晶材料である。「八環」モレキュラーシーブという表現は、八環細孔開口部および二重六環二次構築単位を有し、かつ4個の環による二重六環構築単位の接続から生じるケージ様構造を有するモレキュラーシーブを指す。モレキュラーシーブは、小細孔、中細孔、および大細孔のモレキュラーシーブまたはそれらの組み合わせを含む。細孔径は環径によって画定される。
【0062】
小細孔モレキュラーシーブは、最大8個の四面体原子によって画定されたチャネルを含有する。本明細書で使用されているように、「小細孔」という用語は、約5オングストロームよりも小さい細孔開口部、例えば約3.8オングストロームオーダーの細孔開口部を指す。例示的な小細孔モレキュラーシーブとしては、骨格タイプACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、ZON、およびそれらの混合物または連晶が挙げられる。
【0063】
中細孔モレキュラーシーブは、10員環によって画定されたチャネルを含有する。例示的な中細孔モレキュラーシーブとしては、骨格タイプAEL、AFO、AHT、BOF、BOZ、CGF、CGS、CHI、DAC、EUO、FER、HEU、IMF、ITH、ITR、JRY、JSR、JST、LAU、LOV、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MVY、MWW、NAB、NAT、NES、OBW、PAR、PCR、PON、PUN、RRO、RSN、SFF、SFG、STF、STI、STT、STW、SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、VSV、WEI、WEN、およびそれらの混合物または連晶が挙げられる。
【0064】
大細孔モレキュラーシーブには、12員環によって画定されたチャネルを含有する。例示的な大細孔モレキュラーシーブとしては、骨格タイプAFI、AFR、AFS、AFY、ASV、ATO、ATS、BEA、BEC、BOG、BPH、BSV、CAN、CON、CZP、DFO、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、ITG、IWR、IWS、IWV、IWW、JSR、LTF、LTL4、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、NPO、OFF、OKO、OSI、RON、RWY、SAF、SAO、SBE、SBS、SBT、SEW、SFE、SFO、SFS、SFV、SOF、SOS、STO、SSF、SSY、USI、UWY、VET、およびそれらの混合物または連晶が挙げられる。
【0065】
典型的には、モレキュラーシーブの任意の骨格タイプ、例えば、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、SCO、CFI、SGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IFY、IHW、IRN、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFW、SGT、SOD、SOS、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WIE、WEN、YUG、ZON、またはそれらの組み合わせの骨格タイプが使用され得る。例えば、特定の実施形態では、モレキュラーシーブは、CHA(チャバサイト)、FER(フェリエライト)、およびLEV(レビナイト(levyne))からなる群から選択される骨格タイプを含み得る。
【0066】
本明細書で使用される場合、「ゼオライト」という用語は、ケイ素およびアルミニウム原子を含むモレキュラーシーブの特定の例を指す。一般に、ゼオライトは、角を共有するTO4四面体で構成される開口三次元骨格構造を有するアルミノシリケートとして定義され、式中、Tは、AlもしくはSiであるか、または任意選択的にPである。アニオン性骨格の電荷のバランスをとるカチオンは、骨格酸素と緩く会合しており、残りの細孔容積は、水分子で満たされている。非骨格カチオンは一般に交換可能であり、水分子は除去可能である。アルミノシリケートゼオライト構造は、骨格において同形置換されたリンまたは他の金属を含まない。すなわち、「アルミノシリケートゼオライト」は、SAPO、AlPO、およびMeA1PO材料のようなアルミノホスフェート材料を除外し、一方、より広い用語「ゼオライト」は、アルミノシリケートおよびアルミノホスフェートを含む。この開示のために、SAPO、A1PO、およびMeA1PO材料は、非ゼオライトモレキュラーシーブとみなす。
【0067】
ゼオライトは、共通の酸素原子により結合されて三次元網目構造を形成するSiO4/AlO4四面体を含み得る。このゼオライトのシリカ対アルミナ(「SAR」)のモル比は、広範囲にわたって変化することができ、一般に2以上である。例えば、本ゼオライトは、約5~約1000、例えば、約10~約100、または約10~約50、または約15~約30のSARを有し得る。
【0068】
LT-NAのモレキュラーシーブにはPGM成分が含浸されている。本明細書で使用される場合、PGM成分による含浸への言及は、PGM成分がモレキュラーシーブのイオン交換部位もしくはモレキュラーシーブ内の他の内部位置のいずれかに存在する場合、またはPGMがモレキュラーシーブの表面に存在する場所、または上記の箇所の任意の組み合わせなど、PGM成分とモレキュラーシーブとのあらゆる形態の会合を含む。
【0069】
「PGM成分」という用語は、PGM(例えば、Ru、Rh、Os、Ir、Pd、Pt)を含む任意の成分を指す。「PGM成分」についての言及は、任意の原子価状態のPGMの存在を考慮に入れている。例えば、PGMは、原子価がゼロの金属形態であってもよく、またはPGMは、酸化物形態であってもよい。「白金(Pt)成分」、「ロジウム(Rh)成分」、「パラジウム(Pd)成分」、「イリジウム(Ir)成分」、「ルテニウム(Ru)成分」などの用語は、触媒を焼成または使用すると、分解するか、そうでなければ、触媒活性形態、通常は金属または金属酸化物に変換される、それぞれの白金族金属化合物、錯体などを指す。いくつかの実施形態では、PGM成分は唯一のPGM成分としてのパラジウムであるが、PGM成分の混合物も使用することができる。
【0070】
PGM成分の濃度は、様々であり得るが、典型的には、モレキュラーシーブの総乾燥重量に対して、約0.01重量%~約6重量%となるであろう。PGM成分は、モレキュラーシーブの総乾燥重量に基づいて、例えば、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.5重量%、約0.7重量%、約0.9重量%、または約1.0重量%から、約1.5重量%、約2.0重量%、約2.5重量%、約3.0重量%、約3.5重量%、約4.0重量%、約4.5重量%、約5.0重量%、または約6重量%で、モレキュラーシーブ中に存在し得る。PGM成分の重量を測定し、金属として報告する(例えば、パラジウムの重量)。モレキュラーシーブの総乾燥重量は、あらゆる添加/交換された金属(すなわち、パラジウム)を含む。
【0071】
あるいは、LT-NA組成物中のPGM成分の量は、基材の単位体積当たりの重量として表され得る。例えば、特定の実施形態では、LT-NA中のPGM成分の量は、(触媒が配置されている下地基材の体積に基づいて)約10g/ft3~140g/ft3または約40g/ft3~約100g/ft3である。
【0072】
LT-NA組成物は、一般に、基材の体積に基づいて、例えば、約0.3~5.5g/in3、または約0.4g/in3、約0.5g/in3、約0.6g/in3、約0.7g/in3、約0.8g/in3、約0.9g/in3もしくは約1.0g/in3から、約1.5g/in3、約2.0g/in3、約2.5g/in3、約3.0g/in3、約3.5g/in3、約4.0g/in3、約4.5g/in3、約5.0g/in3もしくは約5.5g/in3の濃度で基材上に存在する。
【0073】
LT-NA組成物の調製
本明細書に開示されているLT-NAは、当技術分野で周知のプロセスによって容易に調製することができる。開示されているLT-NAは、いくつかの実施形態では、インシピエントウェットネス含浸法によって調製され得る。典型的には、金属前駆体(例えば、PGM成分)は、水溶液または有機溶液に溶解させられ、次いで、金属含有溶液は、含浸させるべき、添加された溶液の体積と本質的に同じ細孔体積を含有する材料(例えば、モレキュラーシーブ)に添加される。毛細管現象によって、溶液が材料の細孔に引き込まれる。材料の細孔容積を超えて添加された溶液によって、溶液輸送が、毛細管現象プロセスから、はるかに遅い拡散プロセスに変わる。次いで、含浸させた材料を乾燥および任意選択的に焼成して、溶液内の揮発性成分を除去し、材料の表面に金属を堆積させることができる。最大充填量は、溶液における前駆体の溶解度によって制限される。含浸された材料の濃度プロファイルは、含浸および乾燥の間の細孔内の物質移動条件に依存する。
【0074】
例えば、PGM成分前駆体(例えば、硝酸パラジウムなど)を、含浸、吸着、イオン交換、インシピエントウェットネス、沈殿などによってモレキュラーシーブ上に担持することができる。好適なPGM前駆体の非限定的な例としては、硝酸パラジウム、硝酸テトラアンミンパラジウム、酢酸テトラアンミン白金、および硝酸白金が挙げられる。あるいは、先に論じたようなPGMコロイド分散液を使用することができる。焼成ステップ中に、または少なくとも触媒の使用の初期段階中に、そのような化合物は、金属またはその化合物の触媒活性形態に変換される。
【0075】
基材
本発明のDOCおよびLT-NA組成物は、典型的には、基材上に配置される。有用な基材は、三次元であり、円柱に似た長さ、直径および体積を有する。形状は、必ずしも円柱に一致する必要はない。長さは、入口端部および出口端部によって画定される軸方向長さである。
【0076】
1つ以上の実施形態によると、開示されている構成要素のための基材は、自動車触媒を調製するために典型的に使用されるあらゆる材料から構成されてもよく、典型的には、金属またはセラミックのハニカム構造を含む。基材は、典型的には、ウォッシュコート組成物が塗布されかつ付着している複数の壁面を提供し、それによって触媒組成物の基材として機能する。いくつかの実施形態では、基材は、ウォールフローフィルタまたはフロースルー基材の形態のハニカム基材を含む。
【0077】
セラミック基材は、任意の好適な耐火材料、例えば、コーディエライト、コーディエライト-α-アルミナ、チタン酸アルミニウム、チタン酸ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコンムライト、リシア輝石、アルミナ-シリカ-マグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、α-アルミナ、アルミノシリケートなどから作製され得る。
【0078】
基材はまた、金属であり得、1つ以上の金属または金属合金を含む。金属基材は、チャネル壁に開口部または「パンチアウト」を有するような任意の金属基材を含み得る。金属基材は、ペレット、波形シート、またはモノリスフォームのような様々な形状で用いられ得る。金属基材の具体例としては、耐熱性の卑金属合金、特に、鉄が実質的なまたは主要な成分である合金が挙げられる。そのような合金は、ニッケル、クロム、およびアルミニウムのうちの1つ以上を含有し得、これらの金属の合計は、有利には、いずれの場合も、基材の重量に基づいて、少なくとも約15重量%(重量パーセント)の合金、例えば、約10~約25重量%のクロム、約1~約8重量%のアルミニウム、および0~約20重量%のニッケルを含み得る。金属基材の例としては、直線的なチャネルを有するもの、ガス流を妨害し、チャネル間のガス流の連通を開くために軸方向チャネルに沿って突出したブレードを有するもの、ならびにブレードおよびモノリス全体にわたる半径方向のガス搬送を可能にする、チャネル間のガス搬送を向上させるための穴も有するもの、が挙げられる。特に、金属基材は、有利には、特定の実施形態で、密に結合された位置において用いられ、それによって、基材の迅速な加熱、および対応して、その中にコーティングされている触媒組成物の迅速な加熱が可能になる。
【0079】
通流する流体流に対して通路が開放するように、基材の入口または出口の端面から貫通して延在する微細な平行ガス流路を有するタイプのモノリス基材(「フロースルー基材」)のような、本明細書に開示されている触媒物品のための任意の好適な基材が用いられ得る。別の好適な基材は、基材の長手方向軸線に沿って延在する複数の微細な実質的に平行なガス流路を有するタイプのものであり、典型的には、各通路は、基材本体の一方の端部において遮断されており、1つおきに通路が、反対側の端面において遮断されている(「ウォールフローフィルタ」)。フロースルー基材およびウォールフロー基材はまた、例えば、Mohanan等のUS2017/0333883において教示されており、これは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0080】
フロースルー基材
いくつかの実施形態では、基材は、フロースルー基材(例えば、モノリスフロースルーハニカム基材を含むモノリスフロースルー基材)である。フロースルー基材は、通路が流体の流れに対して開いているように、基材の入口端部から出口端部まで延在する微細で平行なガス流路を有する。流体入口から流体出口まで本質的に直線的な経路である通路は、通路を通って流れるガスが触媒材料と接触するように触媒コーティングが配置されている壁によって画定されている。フロースルー基材の流路は、薄い壁のチャネルであり、台形、長方形、正方形、正弦波、六角形、楕円形、円形などのあらゆる好適な断面形状およびサイズであり得る。フロースルー基材は、上記のようにセラミックまたは金属であり得る。
【0081】
フロースルー基材は、例えば、約50in3~約1200in3の体積と、約60セル毎平方インチ(cpsi)~約500cpsiまたは最大で900cpsi、例えば、約200~約400cpsiのセル密度(入口開口部)と、約50~約200ミクロンまたは約400ミクロンの壁厚とを有する。
【0082】
図1Aおよび1Bは、本明細書に記載されているようなコーティング組成物でコーティングされたフロースルー基材の形態の例示的な基材2を例示する。
図1Aを参照すると、例示的な基材2は、円筒形状および円筒外表面4、上流端面6、および端面6と同一である対応する下流端面8を有する。基材2は、内部に形成された複数の微細で平行なガス流路10を有する。
図1Bに見られるように、流路10は、壁12によって形成され、上流端面6から下流端面8までキャリア2を通って延在し、通路10は、流体、例えば、ガス流がキャリア2を、そのガス流路10を介して長手方向に流れることを許容するように閉塞されていない。
図1Bでより容易に見られるように、壁12は、そのように、ガス流路10が実質的に規則的な多角形形状を有するように寸法決めされ、構成されている。示されるように、コーティング組成物は、必要に応じて、複数の区別された層に塗布することができる。例示されている実施形態では、コーティング組成物は、キャリア部材の壁12に付着した別個のボトム層14(例えば、LT-NA組成物)、およびボトム層14の上方にコーティングされた第2の別個のトップ層16(例えば、DOC組成物)の両方からなる。本発明は、1つ以上(例えば、2つ、3つ、または4つ以上)の組成物層を備えるように実施することができ、
図1Bに例示されている2層の実施形態に限定されることはない。さらなるコーティング構成は、本明細書で以下に開示される。
【0083】
ウォールフローフィルタ基材
いくつかの実施形態では、基材はウォールフローフィルタであり、これは一般に、基材の長手方向軸線に沿って延在する複数の微細で実質的に平行なガス流路を有する。典型的には、各通路は、基材本体の一端で遮断され、1つおきに通路は、反対の端面で遮断される。そのようなモノリスウォールフローフィルタ基材は、断面の平方インチ当たり最大約900以上の流路(または「セル」)を含有してもよいが、はるかに少ない数が用いられてもよい。例えば、基材は、平方インチ当たり約7~600、より一般には約100~400のセル(「cpsi」)を有し得る。セルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、または他の多角形の断面を有し得る。
【0084】
モノリスウォールフローフィルタ基材部分の断面図が
図2に例示されており、これは、交互に閉塞および開放した通路(セル)を示す。遮断されたまたは閉塞された端部100と、開放した通路101とは交互に位置し、それぞれの反対側の端部が、それぞれ開放および遮断されている。フィルタは、入口端部102および出口端部103を有する。多孔質セル壁104を横切る矢印は、排気ガス流が、開放したセル端部に入り、多孔質セル壁104を通って拡散し、開放した出口セル端部から出ることを表す。閉塞された端部100は、ガス流を妨げ、セル壁を通じた拡散を促進する。各セル壁は、入口側104aおよび出口側104bを有する。通路は、セル壁によって包囲されている。
【0085】
ウォールフローフィルタ物品基材は、例えば、約50cm3、約100cm3、約200cm3、約300cm3、約400cm3、約500cm3、約600cm3、約700cm3、約800cm3、約900cm3、または約1000cm3から、約1500cm3、約2000cm3、約2500cm3、約3000cm3、約3500cm3、約4000cm3、約4500cm3、または約5000cm3の体積を有し得る。ウォールフローフィルタ基材は、典型的には、約50ミクロン~約2000ミクロン、例えば、約50ミクロン~約450ミクロン、または約150ミクロン~約400ミクロンの壁厚を有する。
【0086】
ウォールフローフィルタの壁は多孔質であり、一般に、機能性コーティングを配置する前に、少なくとも約50%または少なくとも約60%の壁多孔度を有し、平均細孔径は少なくとも約5ミクロンである。例えば、いくつかの実施形態におけるウォールフローフィルタ物品基材は、≧50%、≧60%、≧65%、または≧70%の多孔度を有するであろう。例えば、ウォールフローフィルタ物品基材は、触媒コーティングを配置する前に、約50%、約60%、約65%または約70%から、約75%、約80%または約85%の壁多孔度、および約5ミクロン、約10、約20、約30、約40または約50ミクロンから、約60ミクロン、約70、約80、約90または約100ミクロンの平均細孔径を有する。「壁多孔度」および「基材多孔度」という用語は、同じ意味であり、置き換え可能である。多孔度は、空隙体積を基材の総体積で割った比率である。細孔径は、窒素細孔径分析のためのISO15901-2(静的体積)手順に従って決定されてもよい。窒素細孔径は、Micromeritics TRISTAR 3000シリーズの機器において決定されてもよい。窒素細孔径は、BJH(Barrett-Joyner-Halenda)計算および33の脱着点を使用して決定されてもよい。有用なウォールフローフィルタは、高い多孔度を有し、動作中に過度の背圧をかけることなく触媒組成物の高充填量を可能にする。
【0087】
コーティング
本明細書に開示されているようなLT-NAおよびDOC組成物は、本明細書で言及されている基材のような基材上にコーティングされている。コーティングは、基材の少なくとも一部の上に配置され、かつこれに付着している1つ以上の薄い付着性コーティング層を含み得る。コーティングは、基材壁表面上および/または基材壁の細孔内、すなわち、基材壁の「中」および/または「上」にあってもよい。したがって、「基材上に配置されたコーティング」という表現は、任意の表面上、例えば、壁表面上および/または細孔表面上を意味する。
【0088】
LT-NAおよびDOC組成物は、典型的には、ウォッシュコートの形態で塗布される。ウォッシュコートは、液体ビヒクル中に特定の固形物含有量(例えば、約10~約60重量%)を含有するスラリーを調製し、次いで、これを基材に塗布し、乾燥および焼成してコーティング層を提供することによって形成される。複数のコーティング層が塗布される場合、典型的には、各層が塗布された後に、および/または所望の複数の層が塗布された後に、基材を乾燥させて焼成する。
【0089】
ウォッシュコートスラリーは、任意選択的に、バインダー(例えば、アルミナ、シリカ)、水溶性もしくは水分散性安定剤、促進剤、会合性増粘剤、および/または界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性、または両性界面活性剤を含む)を含有し得る。例えば、ウォッシュコートは、酢酸ジルコニルのような好適な前駆体または硝酸ジルコニルのような任意の他の好適なジルコニウム前駆体から誘導されたZrO2バインダーを含み得る。酢酸ジルコニルバインダーは、熱エージング後に均質かつ無傷なままのコーティングを提供する。他の潜在的に好適なバインダーとしては、アルミナおよびシリカが挙げられるが、これらに限定されることはない。アルミナバインダーとしては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、およびオキシ水酸化アルミニウムが挙げられる。アルミニウム塩、およびアルミナのコロイド形態が使用されてもよい。シリカバインダーは、シリケートおよびコロイドシリカを含む、SiO2の様々な形態を含む。バインダー組成物は、ジルコニア、アルミナ、およびシリカのあらゆる組み合わせを含み得る。存在する場合、バインダーは、典型的には、約1~5重量%の量のウォッシュコート総充填量で使用される。
【0090】
任意選択的に、上記のように、DOC組成物を含有するスラリーは、炭化水素(HC)を吸着するための1つ以上の炭化水素(HC)貯蔵成分を含有し得る。任意の既知の炭化水素貯蔵材料、例えば、ゼオライトまたはゼオライト様材料のようなマイクロポーラス材料を使用することができる。好ましくは、炭化水素貯蔵材料はゼオライトである。ゼオライトは、フォージャサイト、チャバサイト、クリノプチロライト、モルデナイト、シリカライト、ゼオライトX、ゼオライトY、超安定ゼオライトY、ZSM-5ゼオライト、オフレタイト、またはベータゼオライトのような、天然または合成ゼオライトであり得る。好ましいゼオライト吸着剤材料は、高いシリカ対アルミナ比を有する。ゼオライトは、少なくとも約25:1、好ましくは少なくとも約50:1のシリカ/アルミナモル比を有し得、有用な範囲は、約25:1~1000:1、50:1~500:1、および約25:1~300:1である。好ましいゼオライトとしては、ZSM-5、Y、およびベータゼオライトが挙げられる。特に好ましい吸着剤は、米国特許第6,171,556号に開示されているタイプのベータゼオライトを含み得、これは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。存在する場合、ゼオライトまたは他のHC貯蔵成分は、典型的には、約0.05g/in3~約1g/in3の量で使用される。
【0091】
スラリーの典型的なpH範囲は、約3~約6である。酸性または塩基性の種をスラリーに添加して、それによってpHを調整してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、スラリーのpHは、水酸化アンモニウムまたは硝酸水溶液の添加によって調整される。
【0092】
スラリーを粉砕して、粒子の混合および均質な材料の形成を向上することができる。粉砕は、ボールミル、連続ミル、または他の同様の装置で達成することができ、スラリーの固形物含有量は、例えば、約20~60重量%、より具体的には、約20~40重量%であり得る。一実施形態では、粉砕後のスラリーは、約10~約40ミクロン、好ましくは10~約30ミクロン、より好ましくは約10~約15ミクロンのD90粒径によって特徴付けられる。
【0093】
次いで、当該技術分野において公知のあらゆるウォッシュコート技術を使用して、スラリーを基材上にコーティングする。一実施形態では、基材は、スラリーに1回以上浸漬されるか、そうでなければスラリーでコーティングされる。その後、コーティングされた基材を、高温(例えば、100~150℃)で一定期間(例えば、10分~3時間)乾燥させ、次いで、例えば、400~600℃で典型的には約10分~約3時間加熱することによって焼成する。乾燥および焼成の後に、最終的なウォッシュコートコーティング層は、溶媒を実質的に含まないと考えることができる。
【0094】
焼成後に、上記のウォッシュコート技術によって得られるウォッシュコート充填量は、基材のコーティングされた重量とコーティングされていない重量との差を計算することによって求めることができる。当業者に明らかであるように、充填量は、スラリーのレオロジーを変えることによって修正することが可能である。さらに、ウォッシュコートを生成するためのコーティング/乾燥/焼成プロセスを必要に応じて繰り返して、コーティングを所望の充填レベルまたは厚さに構築することができ、すなわち2回以上のウォッシュコートを塗布してもよい。
【0095】
ウォッシュコートは、異なるコーティング層が基材と直接接触するように塗布することができる。あるいは、触媒または吸着剤コーティング層またはコーティング層の少なくとも一部が基材と直接接触しない(むしろ、アンダーコートと接触する)ように、1つ以上の「アンダーコート」が存在してもよい。コーティング層の少なくとも一部がガス流または雰囲気に直接曝されないように(むしろ、オーバーコートと接触するように)、1つ以上の「オーバーコート」が存在してもよい。
【0096】
異なるコーティング層は、互いに直接接触していてもよい。あるいは、異なるコーティング層は、直接接触していなくてもよい。様々なコーティング層を、アンダーコート、オーバーコート、または中間層とみなすことができる。アンダーコートはコーティング層の「下」の層であり、オーバーコートはコーティング層の「上方」の層であり、中間層は2つのコーティング層の「間」の層である。中間層、アンダーコート、およびオーバーコートは、1つ以上の機能性組成物を含有してもよいか、または機能性組成物を含まなくてもよい。
【0097】
様々なコーティング(例えば、DOCコーティングおよびLT-NAコーティング)は、有利には「ゾーン化」されていてもよく、ゾーン化された層を含む。これは、「横方向にゾーン化された」と表現されてもよい。例えば、層は、入口端部から出口端部に向かって延在していてもよく、基材長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%にわたって延在していてもよい。別の層は、出口端部から入口端部に向かって延在していてもよく、基材長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%にわたって延在していてもよい。異なるコーティング層は、互いに隣接し、互いに重なっていなくてもよい。あるいは、異なる層が、互いの一部に重なって、第3の「中間」ゾーンを提供してもよい。中間ゾーンは、例えば、基材長さの約5%~約80%、例えば、基材長さの約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、または約70%にわたって延在していてもよい。
【0098】
図3A~3Eは、2つのコーティング材料を有するいくつかの可能なコーティング層構成を示す(ただし、本開示はこれに限定されることはない)。コーティング層201および202が配置されている、入口102から出口103まで延在するモノリス基材壁200が示されている。これは簡略化された図であり、多孔質ウォールフロー基材の場合、細孔および細孔壁に付着したコーティングは示されておらず、閉塞された端部は示されていない。
【0099】
図3Aは、コーティング層201(例えば、LT-NA組成物を含むコーティング層)およびコーティング層202(例えば、DOCコーティング層)の両方が基材200の全長に沿って延在する層状構成を例示している。
【0100】
図3Bは、トップ層が上流ゾーン202aおよび下流ゾーン202bでゾーンコーティングされていることを除いて、
図3Aと同様である。この構成は、例えば、層201が、LT-NA組成物を含み、下流ゾーン202bが、白金およびマンガン含有担体を含むDOC組成物である場合に、使用することができる。上流ゾーン202bは、耐火金属酸化物担体および1つ以上のPGM成分を含有するがマンガン含有担体は含まない第2のDOC組成物であり得る。
【0101】
図3Cは、コーティング層201(例えば、LT-NA組成物を含むコーティング層)が基材長さの一部にわたって入口102から延在し、かつコーティング層202(例えば、DOCコーティング層)が基材長さの一部にわたって出口103から延在し、コーティング層が互いに隣接しており、それによって、入口上流ゾーン203および出口下流ゾーン204を提供する、ゾーン化されたコーティング構成を例示している。
図3Dは、コーティング層202がコーティング層201と重なっており、それによって、中間の重なったゾーンが生じることを除いて、
図3Cと同様である。
【0102】
図3Eでは、コーティング層202(例えば、DOCコーティング層)は、基材長さの一部にわたって出口から延在し、層201(例えば、LT-NA組成物を含むコーティング層)は、基材200の長さ全体に延在する。
【0103】
いくつかの実施形態では、LT-NAおよび酸化触媒は、ゾーン化された構成で基材上(すなわち、同じ基材上)に配置されており、基材は、全長を画定する入口端部および出口端部を有し、LT-NAは、全長の約20%~約100%の長さまで入口端部から延在して基材上に配置されており、酸化触媒は、全長の約20%~約100%の長さまで出口端部から延在して基材上に配置されている。
【0104】
いくつかの実施形態では、LT-NAコーティング層は、基材上に直接配置されており、酸化触媒コーティング層は、基材上に直接配置されている(すなわち、2つの層であるコーティング層の間に重複がない)。いくつかの実施形態では、酸化触媒コーティング層は、LT-NAコーティング層と部分的に重なっている。特定の実施形態では、LT-NA層は、全長の約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、または約80%の長さまで入口端部から延在して基材上に配置されており、酸化触媒コーティング層は、全長の約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、または約80%の長さまで出口端部から延在して基材上に配置されている。いくつかの実施形態では、LT-NAは、全長の100%を覆う基材上に直接配置されており、酸化触媒は、全長の約20%~約80%を覆うLT-NA上に配置されている。
【0105】
排出物処理システム
本開示の別の態様では、ディーゼルエンジンまたはリーンバーンガソリンエンジンからの排気ガス排出物を処理するための排出物処理システムであって、排出物処理システムが、本明細書に開示されているLT-NAおよびDOC構成要素を含む、排出物処理システムが提供される。排出物処理システムは、選択的触媒還元(SCR)触媒構成要素のような1つ以上の追加の触媒構成要素をさらに含み得る。追加の構成要素の例としては、スートフィルタ(触媒化されていても、または触媒化されていなくてもよい)、アンモニアまたはアンモニア前駆体注入構成要素、アンモニア酸化触媒(AMOX)、およびそれらの組み合わせも挙げられる。排出物処理システムの様々な構成要素の相対的な配置は変更可能であるが、本開示のLT-NAおよびDOC構成要素は、任意のSCR触媒構成要素の上流に位置すべきである。
【0106】
排出物処理システムでの使用に好適なSCR構成要素は、650℃という高い温度においてNOx排気成分の還元に効果的に触媒作用を及ぼすことができる。有利には、SCR構成要素は、システムに添加される還元剤の量に応じて、NOx(例えば、NO)成分の少なくとも50%をN2に変換することができる。SCR構成要素の別の望ましい特性は、O2とあらゆる過剰なNH3との反応に触媒作用を及ぼしてN2を形成する能力を有し、その結果、NH3が大気に放出されないことである。排出物処理システムにおいて使用される有用なSCR構成要素は、650℃超の温度に対する耐熱性も有するべきである。そのような高温は、触媒化されたスートフィルタの再生中に遭遇する可能性がある。好適なSCR触媒構成要素は、例えば、米国特許第4,961,917号および第5,516,497号に記載されており、これらはどちらも、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。例示的なSCR触媒は、Fe-CHAまたはCu-CHAのような鉄または銅含有ゼオライトである。
【0107】
排出物処理システムは、微粒子状物質を除去するためのスートフィルタを用いることができる。スートフィルタは、DOCの上流または下流に位置し得るが、典型的には、スートフィルタは、DOCの下流に位置するであろう。いくつかの実施形態では、スートフィルタは触媒化スートフィルタ(CSF)である。CSFは、捕捉された煤を燃焼させ、かつ/または排気ガス流の排出物を酸化させるための1つ以上の触媒を含有するウォッシュコート粒子でコーティングされた基材を含み得る。一般に、煤燃焼触媒は、煤の燃焼のための任意の既知の触媒であり得る。例えば、CSFは、COおよび未燃炭化水素ならびにある程度まで微粒子状物質を燃焼させるために、1つ以上の高表面積の耐火酸化物(例えば、酸化アルミニウムまたはセリア-ジルコニア)でコーティングされ得る。煤燃焼触媒は、1つ以上の貴金属触媒(例えば、白金および/またはパラジウム)を含む酸化触媒であり得る。
【0108】
1つの例示的な排出物処理システムが、本開示の実施形態による非限定的な排気ガス処理システムの概略図を図示する
図4に例示されている。示されるように、排出物処理システム20は、リーンバーンガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンのようなエンジン22の下流にある直列の複数の触媒構成要素を含み得る。触媒構成要素のうちの少なくとも1つ(または別個の基材上に位置している場合は2つ)は、本明細書に記載されているようなDOC触媒およびLT-NA組成物を含むであろう。
図4は、直列の5つの触媒構成要素24、26、28、30、32を例示するが、触媒構成要素の総数は変動する可能性があり、5つの構成要素は単なる一例である。
【0109】
限定するものではないが、表1は、1つ以上の実施形態の様々な排気ガス処理システム構成を提示する。各触媒は、エンジンが触媒Aの上流にあり、それが触媒Bの上流にあり、それが触媒Cの上流にあり、それが触媒Dの上流にあり、それが触媒Eの上流にある(存在する場合)ように排気導管を介して次の触媒に接続されることに留意されたい。表中の構成要素A~Eに対する参照は、
図4の同じ記号で相互参照され得る。
【0110】
DOCまたはLT-NAへの言及は、本明細書に記載されているDOCまたはLT-NAを指し、DOC/LT-NAは、同じ基材上のDOC組成物およびLT-NA組成物を指す。表中のSCRへの言及は、SCR触媒を指す。SCRoF(またはフィルタ上のSCR)への言及は、SCR触媒が上部に塗布された微粒子フィルタまたはスートフィルタ(例えば、ウォールフローフィルタ)を指す。表中のAMOxへの言及は、漏れたあらゆるアンモニアを排気ガス処理システムから除去するためにSCRの下流に提供され得るアンモニア酸化触媒を指す。当業者によって認識されるように、表1に列挙された構成では、構成要素A、B、C、D、またはEのうちの任意の1つ以上は、ウォールフローフィルタのような微粒子フィルタ上に、またはフロースルーハニカム基材上に配置することができる。1つ以上の実施形態では、エンジン排気システムは、エンジンの近くの位置(直結位置、CC)に取り付けられた1つ以上の触媒組成物を含み、追加の触媒組成物は車体の下の位置(床下位置、UF)にある。1つ以上の実施形態では、排気ガス処理システムは、システム内に存在する任意のSCR触媒の上流に配置されていることが一般的な、アンモニアまたはアンモニア前駆体注入構成要素をさらに含み得る。
【表1】
【0111】
排気流を処理するための方法
別の態様では、ディーゼルエンジンまたはリーンバーンガソリンエンジンの排気マニホールドから流れる、窒素酸化物(NOx)の混合物、ならびに炭化水素および一酸化炭素を含むガス状排気流を処理するための方法が提供される。具体的には、この方法は、ガス状排気流を、排気マニホールドの下流に配置されて、これと流体連通している、本明細書に開示されているような低温NOx吸着剤(LT-NA)構成要素および酸化触媒構成要素と接触させることを含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、LT-NA構成要素は、約300℃超の温度でNOおよびNO2のうちの一方または両方を放出するのに効果的である。いくつかの実施形態では、LT-NA構成要素は、約325℃超の温度でNOおよびNO2のうちの一方または両方を放出するのに効果的である。いくつかの実施形態では、本発明の酸化触媒組成物は、排気流中の炭化水素および一酸化炭素を酸化させ、同時に、LT-NAから放出されたNOを含むNOをNO2に変換するのに効果的である。2つの組成物は、統合した形で一緒に作用し、低温でNOxを吸着してより高いNO2対NOx比を生成することによって、下流のSCR触媒性能を改善する。
【0113】
本組成物、構成要素、システム、および方法は、トラックおよび自動車のような移動排出物源からの排気ガス流の処理に好適である。本組成物、構成要素、システム、および方法は、発電所のような固定源からの排気ガス流の処理にも好適である。
【0114】
本明細書に記載されている組成物、方法、および用途に対する好適な修正および適合が、任意の実施形態またはそれらの態様の範囲から逸脱することなく行われ得ることは、関連技術の当業者には容易に明らかであろう。提供される組成物および方法は例示的なものであり、特許請求される実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に開示されている様々な実施形態、態様、および選択肢の全ては、全ての変更で組み合わされ得る。本明細書に記載されている組成物、配合物、方法、およびプロセスの範囲には、本明細書の実施形態、態様、選択肢、例、および選好の全ての実際のまたは潜在的な組み合わせが含まれる。本明細書で引用された全ての特許および刊行物は、組み込まれた他の特定の記述が具体的に提供されない限り、記載されるように、それらの特定の教示について参照によって本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0115】
本発明は、本発明を例示するために示されかつ本発明を限定するものと解釈されるべきではない以下の実施例によってより詳しく例示される。別段の定めがない限り、全ての部分およびパーセンテージは重量によるものであり、全ての重量パーセントは乾燥ベースで表され、すなわち、別途指示がない限り、含水量は除外される。
【0116】
実施例1
コーディエライトハニカム基材(総体積1.85L)に、パラジウムを含浸させたH-FER(フェリエライト)ゼオライトのボトムコートをコーティングし、空気中にて590℃で焼成した。パラジウムの濃度は60g/ft3であり、総ウォッシュコート充填量は2.85g/in3であった。その上にアルミナバインダー層をコーティングした(0.7g/in3)。
【0117】
5重量%のMnを含むアルミナ担体材料に、インシピエントウェットネス技術を使用して、白金およびパラジウム(9:1の重量比)を含浸させた。この材料を含有するトップコートを基材に塗布し、ウォッシュコートは、Fe-ベータおよびバリウム促進剤を含んでいた。トップコートは、72g/ft3の白金および8g/ft3のパラジウムを含有していた。総ウォッシュコート充填量は1.95g/in3であった。この基材は、以下では基材Aと呼ぶ。
【0118】
パラジウム充填量が80g/ft3であり、総ウォッシュコート充填量が3g/in3であることを除いて、第2のコーディエライトハニカム基材(総体積1.85L)に、上記の基材Aと同様にボトムコートをコーティングした。さらに、ボトムコートはジルコニアバインダーを含んでいた。
【0119】
従来の酸化触媒組成物(1.0g/in3の総ウォッシュコート充填量でシリカ安定化アルミナ上に37g/ft3の白金および3.7g/ft3のパラジウム)を含む入口ゾーン(50%の長さ)と、5重量%のMnを含むアルミナ担体材料上に含浸された白金(1.1g/in3の総ウォッシュコート充填量で80g/ft3の白金充填量)を含む出口ゾーン(50%の長さ)と、を有する第2の基材においてトップコートを塗布した。両方のゾーンが、炭化水素吸着剤としてFe-ベータを含んでいた。この基材は、以下では基材Bと呼ぶ。
【0120】
基材Aおよび基材B、ならびに基材Aのボトムコートのみでコーティングされた比較用基材(比較Aと表記)を、10%の蒸気/空気において800℃でエージングした後に、ディーゼルエンジンについて、世界統一試験サイクル(Worldwide harmonized Light vehicle Test Cycle:WLTC)で試験した。試験を、上記の基材の下流で銅含浸チャバサイトを含むSCR触媒物品を用いて実施した。
図5は、試験結果を示しており、実線は、上記の基材後のNO
x測定に対応し(図の説明文では「post NA-DOC」と標記)、点線は、下流のSCR後のNOx測定に対応する(図の説明文では「post SCRoF」と標記)。全ての配合物が、約800秒まで、エンジンから出る排気中のNO
xの大部分を吸着する。しかしながら、約800秒後には、NO
xが、DOCトップ層を含む配合物(基材AおよびB)から放出され始め、その一方で、DOCトップ層を含まない配合物(比較A)は、NOxを約100秒にわたって吸着し続け、それから脱着も開始する。
【0121】
DOCが存在すると、Pd/FERからのNOxの脱着が加速されるように思われる。脱着が開始するとき、各配合物について実線と点線との間にはほとんど差がないことに留意されたい。これは、下流のSCRが機能するのに十分に高い温度に達していないことを示す。しかしながら、その後まもなく、点線は、実線から分岐し始めて平らになり、その一方で、実線は増加し続ける。これは、SCR触媒がNOx除去のために活性になってきていることを示す。
【0122】
さらに、DOCトップ層を含む配合物は、それ自体でPd/FERより早くNO
xを脱着し始めるが、下流のSCRは、Pt-Pd/Mn-Al
2O
3 DOCが存在するときにNO
x除去に対してより活性になる。試験終了までに、NO
x排出量は、Pd/FERのみを含む配合物に比べて、著しく低くなっている。NO
x還元性能におけるこの改善の理由は、Pt-Pd/Mn-Al
2O
3 DOCを含む配合物でNO
2形成が向上していることである。
図6に例示するように、800秒後のPd/FER(比較A)でのNO
2形成は実質的にゼロであり、その一方で、Pt-Pd/Mn-Al
2O
3 DOCを含む配合物(基材AおよびB)でのNO
2形成は高く、NO
2対NO
xの比は0.7に達する。
【0123】
この実験からさらに洞察されることは、DOCトップ層の構造または設計に関連している。Mnを含むDOC層が、コーティングされたモノリスの全長にわたってコーティングされている場合、NO
2形成は、Mnを含むDOC層がモノリスの後半部分のみにコーティングされている場合(すなわち、後部ゾーンコーティング)よりも低い。基材Aについて再び
図5および6を参照すると、DOCトップ層は、触媒モノリスの全長に延在する。基材Bの場合、2つの異なるDOC配合物は、Pd/FER層の上部にコーティングされるが、それぞれモノリス長さの半分にのみコーティングされる(すなわち、ゾーン化されたDOCトップ層)。前部ゾーンは、Pt-Pd/Si-Al
2O
3およびFe-ベータゼオライトを含み、後部ゾーンは、Pt-Pd/Mn-Al
2O
3およびFe-ベータゼオライトを含む。基材Aに比べて、WLTC中のNO
2形成は、ゾーン化された配合物の場合により高くなる。NO
2形成の改善は、基材B対基材A(60対80g/ft
3)のトップ層におけるPt-Pd充填量が全体的により低いにもかかわらず、後部ゾーンにPt-Pd/Mn-Al
2O
3 DOC構成要素が集中していることに起因する。NO
2形成がより高いことは、下流のSCR後の性能がより良好であることと直接的に解釈される。
【0124】
実施例2
トップDOC層中のMn-Al2O3担体に関連するPt量も重要な役割を果たす。この点を説明するために、2つの追加のコーティングされた基材を調製した。上記の基材Bと実質的に同一の手法で基材を調製し、この実施例では基材Cと表記した。基材Cと同様に、ただし、ボトムコートにおけるパラジウム量を増やし(120g/ft3対80g/ft3)、かつトップコートの後部ゾーンの白金量を減らして(40g/ft3対80g/ft3)、さらなる基材を調製し、この基材を基材Dと標記した。これらの基材を、実施例1で説明したようにエージングおよび試験した。
【0125】
結果を
図7および8に示す。
図7は、基材Cおよび基材DについてディーゼルエンジンにおいてWLTC試験サイクルにわたってNO
x破壊性能の合計をプロットしたものであり、実線は、試験基材後のNO
x測定に対応し、点線は、下流のSCR後のNO
x測定に対応する。どちらの試験基材も、約800秒まで、エンジンから出る排気中のNO
xの大部分を吸着し、次いで、800秒後にNO
xを放出し始める。しかしながら、ゼオライトボトムコート中に120g/ft
3のPdを有する基材Dの場合、NO
xの放出は、ゼオライトボトムコート中に80g/ft
3のPdを有する基材Cの場合よりも遅い。基材D中のPdの充填量がより高いことによって、NO
xをより効率的に貯蔵することができ、それによって、1500秒までNO
x排出量がより低くなる。約800秒のNO
x脱着開始時には、各配合物について実線と点線との間にはほとんど差がないことに留意されたい。これは、下流のSCRが機能するのに十分に高い温度に達していないことを示す。しかしながら、その後まもなく、点線は、実線から分岐し始めて平らになり、その一方で、実線は増加し続ける。これは、SCR触媒がNO
x除去のために活性になってきていることを示す。
【0126】
さらに、ゼオライトボトムコート中のPdがより少ない配合物は、ゼオライトボトムコート中のPdがより多い配合物よりも早くNO
xを脱着するが、前者の場合、下流のSCRは、NO
x除去に対してより活性になる。試験終了までに、NO
x排出量は、ゼオライトボトムコート中により多くのPdを含む配合物に比べて、著しくより低くなっている。NO
x還元性能におけるこの改善の理由は、DOCトップ層の後部ゾーンにおいて2倍のPt量を有する基材CでNO
2形成が向上していることである。
図8に例示するように、800秒後の基材CでのNO
2形成は、基材Dの場合よりも高くなっている。
【0127】
実施例3
本発明のさらなる態様は、DOC層においてMn-Al2O3と組み合わせて使用されるPtの供給源または形態に関する。この点を説明するために、2つの追加のコーティングされた基材を調製した。インシピエントウェットネス技術を使用して硝酸Pd、続いて水溶性Pt錯体(MEA安定化Pt(OH)6)を順次含浸させた、アルミナ上に5重量%のSiを含むアルミナ担体材料のボトムコートをコーディエライトハニカム基材(総体積1.85L)にコーティングした。ボトムコートは、29.5g/ft3の白金および20.5g/ft3のパラジウムを含有しており、Ba促進剤も含んでいた。総ウォッシュコート充填量は1.65g/in3であった。アルミナ上の5重量%のMnと、アルミナ上の5重量%のSiと、の物理的混合物を含む第2のアルミナ担体に、同様に、インシピエントウェットネス技術を使用して、白金およびパラジウムを含浸させた。この材料を含有するトップコートを基材に塗布し、ウォッシュコートは、Fe-ベータおよびBa促進剤も含んでいた。トップコートは、38g/ft3の白金および2g/ft3のパラジウムを含有していた。総ウォッシュコート充填量は1.42g/in3であった。この基材は、以下では基材Eと呼ぶ。
【0128】
水溶性Pt前駆体の代わりにサイズ5nm未満のPt金属の粒子を含むコロイド状Pt前駆体を使用したことを除いて、上記の基材Eと同様に、第2のコーディエライトハニカム基材(総体積1.85L)にボトムコートおよびトップコートをコーティングした。この基材は、以下では基材Fと呼ぶ。
【0129】
図9に示すように、NEDC試験サイクルのEUDC部分にわたってディーゼルエンジンのテールパイプで測定されたNO酸化性能は、水溶性Pt錯体が使用された基材Eの方が、サイズ5nm未満のPt金属の粒子を含むコロイド状Pt前駆体が使用された基材Fよりも低くなっている。
【国際調査報告】