(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】水処理残留物を加工するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20220907BHJP
C04B 28/14 20060101ALI20220907BHJP
C04B 7/38 20060101ALI20220907BHJP
C04B 7/24 20060101ALI20220907BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20220907BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B28/14
C04B7/38
C04B7/24
B09B3/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571876
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(85)【翻訳文提出日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2020066313
(87)【国際公開番号】W WO2020249736
(87)【国際公開日】2020-12-17
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521527978
【氏名又は名称】アルデ グループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル マーク
【テーマコード(参考)】
4D004
4G112
【Fターム(参考)】
4D004AA16
4D004AA50
4D004AC04
4D004BA02
4D004CA13
4D004CA22
4D004CA42
4D004CB04
4D004CB34
4D004CC12
4D004CC13
4D004DA02
4D004DA03
4D004DA06
4D004DA09
4D004DA20
4G112PD01
(57)【要約】
水硬結合剤の製造に使用するための水処理残留物又は他の非晶質酸化アルミニウム若しくは水酸化アルミニウムに富む廃棄物残留物を加工する方法を提供する。当該方法は、水を除去し、含有される有機材料を酸化させるために残留物を加熱するステップを含み、残留物を800℃以下、より好ましくは650℃以下の温度に加熱されるように残留物の温度を制御するステップを含み、WTR内のアルミニウム化合物、特に酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウムが非晶質状態のままであることを保証する。前記方法は、水処理残留物が350℃~650℃、より好ましくは400℃~500℃の温度に加熱されるように水処理残留物の温度を制御するステップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硬結合剤の製造に使用するための水処理残留物又は他の非晶質酸化アルミニウム若しくは水酸化アルミニウムに富む廃棄物残留物を加工する方法であって、
水を除去し、含有される有機材料を酸化させるために前記残留物を加熱するステップを含み、
前記残留物が800℃以下の温度に加熱されるように前記残留物の温度を制御する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記残留物が700℃以下、より好ましくは650℃以下の温度に加熱されるように前記残留物の温度を制御するステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記残留物が350℃~650℃の温度に加熱されるように前記残留物の温度を制御するステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記残留物が400℃~500℃の温度に加熱されるように前記残留物の温度を制御するステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記残留物中に存在する非晶質酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムが非晶質状態を維持するように、前記残留物の温度を加熱中に制御する、ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記残留物を加熱チャンバ内で加熱し、
前記チャンバへの空気及び/若しくは水の付加によって、かつ/あるいは前記加熱チャンバへの熱の供給を制御することによって、前記残留物の温度を制御する、ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記残留物中のすべての有機材料又は実質的にすべての有機材料の確実な酸化に適した速度で、空気を前記加熱チャンバに添加する、ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記加熱チャンバの外部を加熱することにより、前記加熱チャンバ内の前記残留物を間接的に加熱する、ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記加熱チャンバの外部に直接作用するバーナーにより、前記加熱チャンバの外部を加熱する、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記加熱チャンバは、バーナーからの高温ガスを受ける加熱ジャケット内に配置される、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
加熱前に少なくとも部分的に前記残留物を脱水する、ことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
機械的プロセスにより前記残留物を脱水する、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ベルト乾燥機又は回転乾燥機により前記残留物を脱水する、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
20%~40%の含水量を有するように前記残留物を脱水する、ことを特徴とする請求項11~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
粒径が40ミクロン又は約40ミクロンとなるように、加熱後に前記残留物をミル粉砕及び/又は粉砕する、ことを特徴とする請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
非晶質酸化アルミニウムを非晶質水酸化アルミニウムに変換するように、加熱後に前記残留物を水和させる、ことを特徴とする請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
エトリンガイトを形成するように、水の存在下で、前記残留物をカルシウムイオン源及び硫酸イオン源と混合する、ことを特徴とする請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
水の存在下で、前記残留物を、ポルトランドセメント、消石灰及び硫酸カルシウムと混合する、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
水の存在下で、前記残留物をカルシウムイオン源と混合する、ことを特徴とする請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
水硬結合剤の製造に使用するための水処理残留物又は他の非晶質酸化アルミニウム若しくは水酸化アルミニウムに富む廃棄物残留物を加工するための装置であって、
前記残留物を内部で加熱する加熱チャンバと、
前記加熱チャンバを加熱するための手段と、
前記加熱チャンバの温度を制御するための手段と、
を備える、ことを特徴とする装置。
【請求項21】
前記加熱チャンバは、前記加熱チャンバの外壁に作用するバーナーによって加熱される、ことを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記加熱チャンバは、燃焼チャンバから前記加熱チャンバを囲う加熱ジャケットに高温ガスを導入することによって加熱される、ことを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項23】
前記加熱チャンバに空気を付加するための手段を備える、ことを特徴とする請求項20~22のいずれかに記載の装置。
【請求項24】
前記加熱チャンバに付加された前記空気を予熱するために、前記加熱手段からの燃焼ガスを使用する、ことを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記加熱チャンバは、加熱中に回転するように適合される、ことを特徴とする請求項19~23のいずれかに記載の装置。
【請求項26】
前記加熱チャンバは、長手方向軸を中心に回転するように取り付けられた管状ドラムを備え、前記管状ドラムは、一端に入口を有し、他端に出口を有する、ことを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項27】
前記水処理残留物の含水量を低減するために、前記加熱チャンバの上流に脱水手段をさらに備える、ことを特徴とする請求項20~26のいずれかに記載の装置。
【請求項28】
加熱後の前記水処理残留物の粒径を低減するために、前記加熱チャンバの下流にミル粉砕及び/又は粉砕手段をさらに備える、ことを特徴とする請求項20~27のいずれかに記載の装置。
【請求項29】
前記温度制御手段は、前記水処理残留物の温度を700℃以下に制限するように適合される、ことを特徴とする請求項20~28のいずれかに記載の装置。
【請求項30】
前記温度制御手段は、前記水処理残留物の温度を650℃以下に制限するように適合される、ことを特徴とする請求項20~28のいずれかに記載の装置。
【請求項31】
前記温度制御手段は、前記加熱チャンバ内の前記水処理残留物の温度を350℃~650℃に制御するように適合される、ことを特徴とする請求項20~30のいずれかに記載の装置。
【請求項32】
前記温度制御手段は、前記加熱チャンバ内の前記水処理残留物の温度を400℃~500℃に制御するように適合される、ことを特徴とする請求項20~31のいずれかに記載の装置。
【請求項33】
前記装置が、請求項1~19のいずれかに記載の方法を実施するように構成されている、ことを特徴とする請求項20~32のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設及び関連用途のための水硬結合剤、特にアルミン酸カルシウム含有水硬結合剤の製造に使用する原料を提供するために、水処理残留物又は他の非晶質酸化アルミニウム若しくは水酸化アルミニウムに富む廃棄物残留物を加工するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理残留物(以下、WTR又は残留物と呼ぶ)は、凝集剤を使用した凝集による飲用水の工業的浄化からの廃棄物であり、典型的には、一般にミョウバンと呼ばれる硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3・14H2O)又は硫酸第二鉄アルミニウム(フェルム(ferrum))などのアルミニウム化合物を含む。凝固により、天然の未処理水に懸濁した粒子を除去する。関係する化学反応以下の通りである。
Al2(SO4)3・14H2O→2Al(OH)3(s)+6H++3SO4
2-+8H2O
【0003】
凝固した固体を処理水から分離して、WTRと呼ばれるアルミニウムに富む廃棄物スラリーを形成する。WTRは、水、有機材料、残留凝集剤及び他の微量成分からなる。現在、この材料の実現性のある再生利用可能な選択肢はほとんどなく、その多くは最終的に埋め立て処理となる。この種の廃棄物は世界中で発生し、これを再生利用する能力は世界規模の訴求力を有する。しかし、WTRは、非晶質酸化アルミニウム及び/又は非晶質水酸化アルミニウムの良好な供給源である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、上記欠点を有さないかあるいは上記欠点の少なくとも一部を有さない、水処理残留物を加工する方法及び水処理残留物を加工する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本目的は、特許請求の範囲によって解決される。したがって、本目的は、独立請求項1の特徴を有する水処理残留物を加工する方法、及び独立請求項20の特徴を有する水処理残留物を加工する装置によって解決される。本発明のさらなる詳細事項は、従属請求項並びに明細書及び図面から明らかになる。本発明により、水処理残留物を加工する方法に関連して説明される特徴及び詳細事項は、本発明の個々の態様の開示により、常に相互に関連付けられるように、本発明による水処理残留物を加工するための各装置に関連して適用され、その逆も同様である。
【0006】
前述のように、「水処理残留物」という用語は、あまり汚染されていないため、廃棄物水処理残留物などの他の残留物よりもはるかに容易に精製することができる、飲用水処理残留物として特に理解することができる。飲用水及び廃水の成分が異なるため、これら(飲用水/廃水)は直接比較することはできない。
【0007】
「非晶質」という用語は、特に結晶化度に関して理解及び説明することができる。結晶化度は、これにより材料の非晶質特性の尺度として機能することができ、特性は相互に反比例する。特に、本発明による非晶質酸化アルミニウム又は水酸化アルミニウムに富む廃棄物残留物は、25重量未満%、好ましくは20重量%未満、特に15重量%未満の結晶化度を有する。結晶化度は、例えば分光法、DSC測定又はX線回折実験によって測定することができる。
【0008】
本発明の第一の態様により、水硬結合剤の製造に使用するための水処理残留物又は他の非晶質酸化アルミニウム若しくは水酸化アルミニウムに富む廃棄物残留物を加工する方法であって、残留物を加熱して、それに含まれる水を除去して、有機材料を酸化することを含み、残留物が800℃以下の温度に加熱されるように残留物の温度を制御することを含む、方法が提供される。
【0009】
好ましくは、方法は、残留物が700℃以下、より好ましくは650℃以下の温度に加熱されるように残留物の温度を制御することを含む。
【0010】
好ましくは、方法は、残留物が350℃~650℃の温度、より好ましくは400℃~500℃の温度に加熱されるように残留物の温度を制御することを含む。
【0011】
残留物の温度を制御することにより、残留物中のいずれの酸化アルミニウム又は水酸化アルミニウムもその非晶質状態、したがって反応性状態のままであり、したがって水硬結合剤の製造に有用なままである。
【0012】
任意に、残留物は加熱チャンバ内で加熱されてもよく、残留物の温度は、チャンバへの空気及び/若しくは水の添加によって、並びに/又は温度制御手段による加熱手段によって加熱チャンバに供給される熱を制御することによって制御される。
【0013】
好ましくは、残留物中の実質的にすべての有機材料が確実に酸化されるのに適した速度で空気が加熱チャンバに添加される。
【0014】
加熱チャンバ内の残留物は、加熱チャンバの外部を加熱することによって間接的に加熱されてもよく、及び/又は加熱チャンバの外部は、加熱チャンバの外部に直接作用するバーナーによって加熱される。
【0015】
好ましくは、加熱チャンバは、バーナーからの高温ガスを受ける加熱ジャケット内に位置する。
【0016】
好ましくは、残留物は、加熱前に少なくとも部分的に脱水される。残留物は、ベルト乾燥機及び/又は回転乾燥機などの機械的プロセスによって脱水されてもよい。好ましくは、残留物は、20%~40%の含水量を有するように脱水される。
【0017】
好ましくは、残留物は、加熱後にミル粉砕及び/又は粉砕されて、粒径が40ミクロン又は約40ミクロンとなり得る。
【0018】
残留物を加熱後に水和させて非晶質酸化アルミニウムが非晶質水酸化アルミニウムに変換され得る場合、さらなる利点を達成することができる。
【0019】
さらに、残留物が特に加熱後に、水の存在下でカルシウムイオン源及び硫酸イオン源と混合されてエトリンガイトを形成し得る場合、有利である。例えば、残留物は、特に加熱後に、水の存在下でポルトランドセメント、消石灰及び硫酸カルシウムと混合される。
【0020】
さらに残留物を、特に加熱後に、水の存在下でカルシウムイオン源と混合してアルミン酸カルシウムを形成し得る場合、有利である。
【0021】
さらに残留物を、水の存在下でカルシウムイオン源及び硫酸イオン源と混合して、アルミン酸カルシウム及び硫酸カルシウムを形成し得る場合、有利である。
【0022】
本発明のさらなる態様により、水硬結合剤の製造に使用するための水処理残留物又は他の非晶質酸化アルミニウム若しくは水酸化アルミニウムに富む廃棄物残留物を加工するための装置であって、残留物を内部で加熱することができる加熱チャンバと、加熱チャンバを加熱するための手段と、加熱チャンバ内の温度を制御するための手段とを備える装置が提供される。
【0023】
さらに、装置が第1の態様による方法を実施するように構成されることが有利である。そのため、本発明による装置は、本発明の方法に関して上記で詳細に説明したのと同じ利点を有する。このように設計された装置によって、建設及び関連用途のための水硬結合剤、特にアルミン酸カルシウム含有水硬結合剤の製造で水処理残留物が使用できるようになるため、特に有利である。
【0024】
さらに、有利には、加熱チャンバが、加熱チャンバの外壁に対して作用するバーナーによって加熱されてもよいし、かつ/又は加熱チャンバが、高温ガスを燃焼チャンバから加熱チャンバを包囲する加熱ジャケットに導入することによって加熱されてもよい。
【0025】
好ましくは、加熱チャンバに空気を添加するための手段が設けられる。好ましくは、加熱手段からの燃焼ガスを使用して、加熱チャンバに添加された空気が予熱される。
【0026】
さらに、加熱チャンバが加熱中の回転に適している場合に有利である。
【0027】
代替的又は付加的に、加熱チャンバが、長手方向軸を中心に回転するように取り付けられ、一端に入口を、他端に出口を有する管状ドラムを備えると有利である。
【0028】
装置は、残留物の含水量を低減するために加熱チャンバの上流に脱水手段をさらに備えていてもよい。
【0029】
装置が、加熱後の残留物の粒径を低減させるために、加熱チャンバの下流にミル粉砕及び/又は粉砕手段をさらに備えていてもよい。
【0030】
好ましくは、温度制御手段は、残留物の温度を700℃以下、より好ましくは650℃以下に制限するのに適している。
【0031】
加えて、温度制御手段が加熱チャンバ内の残留物の温度を350℃~650℃、より好ましくは400℃~500℃に制御するのに適している場合に有利である。
【0032】
本発明のさらなる利点、特徴及び詳細は、図面を参照することによって本発明の実施例が詳細に説明されており、以下の説明から明らかになる。本発明の実施形態による水処理残留物又は他の非晶質酸化アルミニウム若しくは水酸化アルミニウムに富む廃棄物若しくは水処理残留物(以下、「残留物」と呼ぶ)を加工するための本発明の方法及び装置を、添付の図面を参照して、単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明による残留物を加工するための装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の一実施形態による残留物を加工する方法を、単なる例としてここで説明する。本方法は、以下のステップを含む。
【0035】
1.水分除去:水処理プロセスからの残留物又は他の非晶質酸化アルミニウム若しくは水酸化アルミニウムに富む廃棄物残留物は、典型的には水処理プラントの濾過床で最初にフィルタプレスされて、これにより残留物の含水量は60~80%に低減される。さらなる水分は、好ましくは、例えばベルト乾燥機若しくは回転乾燥機を使用した機械的乾燥、又はポリトンネル下での太陽エネルギーを使用した乾燥によって除去され、20%~30%の含水量を有する残留物が生成される。
【0036】
2.熱処理:次いで、部分的に乾燥させた残留物を350℃~800℃に加熱して、残留物中に存在する非晶質酸化アルミニウム又は水酸化アルミニウムをその結晶性非反応性状態に変換するのに十分高い温度に到達させずに、有機炭素分を除去する(燃焼させる)。熱処理ステップに使用される機器は、図示するように、間接回転焼成機を備える(ただし、他の熱処理技術も想定される)。
【0037】
最適な加工温度は、残留物中のアルミニウム化合物、特に酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウムを確実に非晶質状態で残存させるために、好ましくは800℃以下、より好ましくは650℃以下である。800℃を超える温度では、そのような非晶質アルミニウム化合物は、結晶性非反応性形態への変換を開始する。コストと釣り合った炭素除去効率に基づく、好ましい熱処理温度は400℃~500℃である。
【0038】
図示するように、加熱は、間接回転焼成機の乾燥チャンバ2内で行われてもよく、乾燥チャンバ2内では燃焼生成物は、処理される残留物と直接接触しない。熱は、乾燥チャンバ2の壁を通じた伝導及び放射によって、残留物に伝達される。乾燥チャンバ2は、
図1に示すように、乾燥チャンバ2の外壁の周囲の加熱ジャケット6内に配置されたバーナー4によって、又は乾燥チャンバ2の周囲に取り付けられた加熱ジャケット6に高温ガスが送達される独立した燃焼チャンバの使用によって加熱され得る。残留物内の有機材料を完全に燃焼させるための追加の酸素を供給するために、追加のプロセス空気Aが乾燥チャンバに吹き込まれることが好ましい。供給された空気も、チャンバ内の温度制御に使用され得る。プロセス空気は、空気スパージ管8によって乾燥チャンバに導入され得る。炭素1kgを完全燃焼させるために、2.67KgのO
2が必要である。したがって、供給スラリー中の炭素1kgにつき、1時間当たり空気9m
3のプロセス空気流量が好ましい。
【0039】
熱交換器を使用して燃焼排気から熱を回収し、乾燥チャンバに入る前にプロセス空気が予熱され得ることが想定される。
【0040】
図2に示すように、乾燥チャンバ6は、回転されて、加熱中に残留物を分解及び混合するためのパドル10を含み得る。
【0041】
3.ミル粉砕:熱処理後、灰の形態の残留物を、粉砕又はミル粉砕して、好ましくは粒径約40ミクロンとする。
【0042】
4.水和:上記のプロセスは、セメント系結合剤中の成分としてうまく使用され得る非晶質酸化アルミニウムを含有する生成物を形成する。しかし、いくつかの用途では、非晶質水酸化アルミニウムが必要である。そのような場合、生成物は、粉末状の消石灰が石灰から生成されるのと同様に、多く水和され得る。水和は、ミル粉砕段階の前又は後に起こり得る。
【0043】
好ましくは、加熱後又は代替的に加熱前に、カルシウムイオン源を残留物に添加して、水の存在下でアルミン酸カルシウムを形成してもよい。
【0044】
残留物は、典型的には約7MJ/Kgの発熱量を有し、結果として燃焼中に燃料源を供給し得る。
【0045】
残留物からの有機材料の除去は、特に水硬結合剤製造用の原料としての、得られた生成物のほぼすべての良好な用途にとって重要である。
【0046】
前述のように、加工済み残留物から製造した生成物は、主に非晶質酸化アルミニウム及び/又は非晶質水酸化アルミニウム(典型的には75~80%の非晶質酸化アルミニウム)からなる。残りの成分(主に可変量の石英、酸化鉄及び多少の残留炭素)は、本質的に不活性充填剤である。
【0047】
処理済み残留物中に残存する非晶質酸化/水酸化アルミニウムは、反応してセメント系無機材料を形成することができる。
【0048】
エトリンガイト(Ca6[Al(OH)6]2(SO4)3.26H2O)は、処理済み残留物が水の存在下でカルシウムイオン源(例えば、ポルトランドセメント、消石灰)及び硫酸イオン源(例えば硫酸カルシウム)と混合される際に形成され得る。
【0049】
アルミン酸カルシウム水和物は、処理済み残留物が水の存在下でカルシウムイオン源(例えばポルトランドセメント、消石灰)と混合される際に形成され得る。
【0050】
セメント系材料の製造に使用される正確な配合は、残留物の化学組成及び特定の工業用途によって変わる。
【0051】
加工済み残留物の1つの用途は、フロアスクリード(floor screed)の製造に使用され得ることが想定される。特にエトリンガイトの形態の加工済み残留物は、収縮補償特性を示すことが判明している。このように、処理済み残留物から製造された生成物は、ポルトランドセメント又は硬石膏系スクリード(screed)の直接の競合品となり得る。
【0052】
実験室試験により、残留物を消石灰又は炭酸カルシウムの存在下で熱処理して、マイエナイトなどのアルミン酸カルシウムも形成できることが示されている。結果として生じるアルミン酸カルシウムも、上述の用途に利用することができる。
【0053】
本発明は、本明細書に記載された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲で定義する本発明の範囲から逸脱することなく、修正又は変更することができる。
【国際調査報告】