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特表2022-539971タンタル酸リチウムのチップ及び黒化方法
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  • 特表-タンタル酸リチウムのチップ及び黒化方法 図1
  • 特表-タンタル酸リチウムのチップ及び黒化方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】タンタル酸リチウムのチップ及び黒化方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/30 20060101AFI20220907BHJP
   C30B 33/02 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
C30B29/30 B
C30B33/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572880
(86)(22)【出願日】2019-08-26
(85)【翻訳文提出日】2022-01-07
(86)【国際出願番号】 CN2019102602
(87)【国際公開番号】W WO2021035486
(87)【国際公開日】2021-03-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520273108
【氏名又は名称】福建晶安光電有限公司
【氏名又は名称原語表記】FUJIAN JING’ AN OPTOELECTRONICS CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Photoelectric Industrial Park, Hengshan Village, Hutou Town, Anxi County, Quanzhou, Fujian 362411, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楊 勝裕
(72)【発明者】
【氏名】枋 明輝
(72)【発明者】
【氏名】路 林
(72)【発明者】
【氏名】黄 世維
(72)【発明者】
【氏名】陳 少斌
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AB01
4G077AB04
4G077AB06
4G077BC37
4G077FE05
4G077FE08
4G077FE20
4G077GA01
4G077GA06
4G077GA07
4G077HA11
4G077HA12
(57)【要約】
【解決手段】タンタル酸リチウムのチップ及び黒化方法であって、温度がキュリー温度よりも低い還元環境で黒化反応を行なうことにより、圧電基板の表面の酸素濃度が13wt%未満になり、該酸素濃度での圧電チップは、比較的に低い電気抵抗を有し、光の波長が350~450nmの光で照射されたチップの透過率が0%であり、電気抵抗を効果的に低くし、後段のパターンの解像度を高めて、製作する濾波器デバイスの歩留まりを大幅に向上させ、ひいては製造コストを低減することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンタル酸リチウムのチップであって、 少なくとも一部のチップの表面の酸素濃度が13wt%未満であることを特徴とするタンタル酸リチウムのチップ。
【請求項2】
チップの表面には、チップの内部に至る深度が0~50μmの範囲が含まれる、ことを特徴とする請求項1に記載のタンタル酸リチウムのチップ。
【請求項3】
少なくとも一部のチップの表面の酸素濃度が12.5wt%未満である、ことを特徴とする請求項1に記載のタンタル酸リチウムのチップ。
【請求項4】
チップにおける80%~95%の範囲内の表面、又はチップにおける95%を超える表面の酸素濃度が12.5%未満である、ことを特徴とする請求項1に記載のタンタル酸リチウムのチップ。
【請求項5】
チップにおける80%~95%の範囲内の表面、又はチップにおける95%を超える表面の酸素濃度が11.5wt%~12.5wt%の範囲内にある、ことを特徴とする請求項1に記載のタンタル酸リチウムのチップ。
【請求項6】
光の波長が350nm~450nmの光で照射されたチップの透過率は、1%未満である、ことを特徴とする請求項1に記載のタンタル酸リチウムのチップ。
【請求項7】
光の波長が350nm~450nmの光で照射されたチップの透過率は、0%である、ことを特徴とする請求項1に記載のタンタル酸リチウムのチップ。
【請求項8】
チップの色度L値は、60以下である、ことを特徴とする請求項1に記載のタンタル酸リチウムのチップ。
【請求項9】
チップの電気抵抗は、9*1010Ωcm以下である、ことを特徴とする請求項1に記載のタンタル酸リチウムのチップ。
【請求項10】
タンタル酸リチウムのチップ同士の間に、一層の還元媒体を少なくとも設置し、非酸化性雰囲気で加熱し且つキュリー温度でタンタル酸リチウムのチップに対して還元処理を行ない、還元媒体が混合粉体であり、還元媒体が、還元粉体と、加熱により分離して還元ガスとなる触媒と、を含む、ことを特徴とするタンタル酸リチウムのチップの黒化方法。
【請求項11】
混合粉体には、一種又は多種の炭酸塩が含まれる、ことを特徴とする請求項10に記載のタンタル酸リチウムのチップの黒化方法。
【請求項12】
触媒には、カルボン酸を有する有機物質が含まれる、ことを特徴とする請求項10に記載のタンタル酸リチウムのチップの黒化方法。
【請求項13】
触媒には、不飽和ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂が含まれる、ことを特徴とする請求項10に記載のタンタル酸リチウムのチップの黒化方法。
【請求項14】
還元媒体には、剥離剤が更に含まれる、ことを特徴とする請求項10に記載のタンタル酸リチウムのチップの黒化方法。
【請求項15】
剥離剤は、還元媒体とタンタル酸リチウムのチップとの分離を促進することができる、ことを特徴とする請求項14に記載のタンタル酸リチウムのチップの黒化方法。
【請求項16】
剥離剤には、非金属の酸化物粉体が含まれる、ことを特徴とする請求項14に記載のタンタル酸リチウムのチップの黒化方法。
【請求項17】
還元粉体の重量比が50%~95%の範囲内にあり、触媒の重量比が3%~45%の範囲内にあり、剥離剤の重量比が2%~5%の範囲内にある、ことを特徴とする請求項14に記載のタンタル酸リチウムのチップの黒化方法。
【請求項18】
還元粉体の重量比が85%~95%の範囲内にあり、触媒の還元媒体における重量比が3%~5%又は5%~10%の範囲内にあり、剥離フィルム剤の重量比が2%~5%の範囲内にある、ことを特徴とする請求項14に記載のタンタル酸リチウムのチップの黒化方法。
【請求項19】
還元粉体の粒径と剥離フィルム剤の粒径との差値が、還元粉体の粒径の10%を超えない、ことを特徴とする請求項14に記載のタンタル酸リチウムのチップの黒化方法。
【請求項20】
加熱温度は、350℃~450℃の範囲内にあり、又は450℃~560℃の範囲内にある、ことを特徴とする請求項10に記載のタンタル酸リチウムのチップの黒化方法。
【請求項21】
還元反応は、高温変形に耐えられる側壁に多孔構造がある円筒状の治具において行なわれる、ことを特徴とする請求項10に記載のタンタル酸リチウムのチップの黒化方法。
【請求項22】
非酸化雰囲気には、水素、窒素、又はその両者の混合ガスが含まれる、ことを特徴とする請求項10に記載のタンタル酸リチウムのチップの黒化方法。
【請求項23】
光の波長が350nm~450nmの光で照射されたチップの透過率が0%である、ことを特徴とする請求項10に記載のタンタル酸リチウムのチップの黒化方法。
【請求項24】
タンタル酸リチウムのチップ同士の間に、一層の還元媒体を少なくとも設置し、非酸化性雰囲気で加熱し且つキュリー温度でタンタル酸リチウムのチップに対して還元処理を行ない、還元媒体が混合粉体であり、還元媒体が還元粉体と剥離剤とを含む、ことを特徴とするタンタル酸リチウムのチップの黒化方法。
【請求項25】
混合粉体には、一種又は多種の炭酸塩が含まれる、ことを特徴とする請求項24に記載のタンタル酸リチウムのチップの黒化方法。
【請求項26】
剥離剤には、非金属の酸化物粉体が含まれる、ことを特徴とする請求項24に記載のタンタル酸リチウムのチップの黒化方法。
【請求項27】
剥離剤は、二酸化ケイ素粉、炭化ケイ素粉、又はケイ素粉である、ことを特徴とする請求項24に記載のタンタル酸リチウムのチップの黒化方法。
【請求項28】
還元粉体の粒径と剥離剤の粒径との差値が還元粉体の粒径の10%を超えない、ことを特徴とする請求項24に記載のタンタル酸リチウムのチップの黒化方法。
【請求項29】
還元媒体は、加熱により分離して還元ガスとなる触媒を更に含む、ことを特徴とする請求項24に記載のタンタル酸リチウムのチップの黒化方法。
【請求項30】
触媒には、カルボン酸を有する有機物質が含まれる、ことを特徴とする請求項29に記載のタンタル酸リチウムのチップの黒化方法。
【請求項31】
タンタル酸リチウムの基板であって、
該タンタル酸リチウムの基板は、請求項1~30のいずれか一項に記載のタンタル酸リチウムのチップの黒化方法により製作された圧電基板である、ことを特徴とするタンタル酸リチウムの基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、タンタル酸リチウムのチップ及び黒化方法に関し、特に不透光のタンタル酸リチウムのチップに関する。
【背景技術】
【0002】
タンタル酸リチウム(LiTaO、LT)の結晶体とは、多機能材料であり、優れた圧電、強誘電、音響光学及び電気光学効果を有するため、表面弾性波(SAW)デバイス、光通信、レーザー及び光電子の分野における基本的な機能材料となっており、共振器、濾波器、トランスデューサーなどの電子通信デバイスの製造に広く用いられ、特に優れた電気機械結合や温度係数等の総合性能により高周波弾性表面波装置の製造に用いられるとともに、携帯電話、トランシーバー、衛星通信、航空宇宙などの多くの高度な通信分野に応用されている。現在、5G規格の中、高周波SAWデバイスにとっては、これに替えることができる他のより有利な材料が未だない。
【0003】
SAWデバイスの作製には、まず、タンタル酸リチウム(LiTaO、LT) の結晶体を切断、研削、研磨などの多段工程にかけてタンタル酸リチウムのチップとし、そして、タンタル酸リチウムのチップの上にスパッタリング法、フォトリソグラフィーなどの他の工程により金属櫛形電極を作製する。しかしながら、周波数の増加に伴い、タンタル酸リチウムのチップ上の金属櫛形電極をより薄く且つより細くなるように作製する必要があり、このため、タンタル酸リチウムのチップ及びSAW濾波器デバイスの製造において2つの主な問題が発生して、デバイスの歩留まりの低下、製造コストの増加を招いてしまう。
【0004】
第一に、LTの結晶体は高い焦電係数(23×10-5C/(m2.K))と極めて高い電気抵抗率( 1013Ωcm~1015Ωcm)を有するため、SAW濾波器デバイスの作製において温度変化の差でタンタル酸リチウムのチップの表面に大量の静電荷が蓄積されやすく、これらの静電荷が金属櫛形電極間やチップの表面で自発的に放出され、チップ割れや金属櫛形電極の焼損などの問題が発生する。
【0005】
第二に、タンタル酸リチウムのチップは高い光透過率を有するため、SAW濾波器デバイスの製造工程の一つであるフォトリソグラフィー工程において基板内を通った光が基板の裏面で反射して表面に戻り、形成されたパターンの解像度が低下する問題が発生する。
【0006】
学者の研究により、LTの結晶体は還元処理によって電気抵抗率及び色を変えることができることが発見された。この還元処理の過程においてタンタル酸リチウムのチップにおける酸素が非酸化雰囲気における水素又は窒素などの反応媒体と反応して、ひいては電気抵抗率が低下すると共に、チップが白色又は淡黄色から有色不透明に変化し、一般的に灰色又は茶黒色に変化するため、この還元処理を「黒化」と呼んでいる。これによって、タンタル酸リチウムのチップは、黒化によって電気抵抗率を低下させること及び後段パターンの解像度を向上させることに有効であり、SAW濾波器デバイスの歩留まりを大幅に向上させ、ひいては製造コストを削減することができる。
【0007】
現在、タンタル酸リチウムのチップの黒化の仕方については、中国特許第100424235C号明細書において、日本の信越化学工業株式会社は、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム及び水素吸蔵金属を、先に深い還元処理を行ない、該深い還元処理は、流れる還元ガス又は不活性ガスにおいて処理対象とするタンタル酸リチウムの結晶体の基板に対して高温の還元処理を行なうことで黒化された基板を取得し、次いで、深い還元処理を行った基板と、処理対象とするタンタル酸リチウムのチップとを交互に積層して還元処理を行なう方法を提案している。しかし、この工程では、高単価のタンタル酸リチウムの結晶体の基板を先に高温で黒化後のシートにする必要があり、且つ基板の平坦度に対する要求が高く、研磨加工を行う必要があり、そうしなければ、2種のチップが密着することを確保しにくく、且つ、2次の還元処理を行う必要があり、工程が複雑で工程時間が長くて処理コストが高く、黒化の色の均一性に対して繰り返し検証を行うと、周辺は黒だが中心が白いという状況が発生しやすく、これは主に深い還元処理を受けた黒化基板が工程の安定性に影響を与えて制御しにくくなり、均一性が低下して後続のフォトリソグラフィー工程の精度に影響を招いてしまう。
【0008】
中国特許第1324167C号明細書において、日本の住友金属鉱山株式会社は、C、Si粉を用い、或いはC、Si容器に配置して素地形態のタンタル酸リチウムの結晶体に対して埋粉熱処理を行なうことを提案する同時に、Ca、Al、Ti、Zn、及びSiの金属粉末を用いて、チップ形態のタンタル酸リチウムの結晶体に対して埋粉熱処理を行なうことをさらに提案しているが、金属単体が強い還元性を有するため、結晶体が過酸化しやすく、もしくは、結晶体の圧電特性を損なう。また、同出願人は中国特許第100348785C号明細書において、AlとAlの混合粉末を用いて、流動するN、H、COなどのガス雰囲気中で還元熱処理を行ってから、黒化されたタンタル酸リチウムの結晶基板を得ることを提案している。このような金属粉末の還元工程は、混合粉末の調整比率及び均一性の制御に一定の困難性を有し、黒化後のチップの色の濃淡が不一致となってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するための方法を提供し、即ち、タンタル酸リチウムのチップの導電率を高めることによって、発生した表面電荷が蓄積されなく、そしてタンタル酸リチウムのチップに温度を加えることにより発生した表面電荷を消失させながら、単一分極化された構造を維持して圧電性を効果的に発揮させることができるタンタル酸リチウムのチップを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のタンタル酸リチウムのチップによれば、少なくとも一部のチップの表面の酸素濃度が13wt%以下である。該一部のチップの表面は、タンタル酸リチウムのチップの主な工作表面である。酸素濃度を減少することによりもっと大きな酸素空位の濃度を実現し、電気抵抗を低くし、増やされた酸素空位により電子が材料内部で移動できる空間が増加し、ひいてはチップの導電率を高めることができる。5価タンタルの性質は比較的に強靭であるが、本発明ではチップの酸素濃度を低くして、チップ内において低酸素状態を作って5価タンタルの活性を高くすることによって、5価タンタルが低酸素状態において還元反応を経て4価タンタルを生成することができる。
【0011】
本発明によれば、チップの表面には、チップの内部に至る深度が0~50μmの範囲が含まれることが好ましい。黒化とは、実際には「全体性」の反応であるが、表層と内部との間にある程度の差異が存在し、実際に黒化後に研磨された厚さの総量が多ければ多いほど、チップの色が薄くなる。酸素含有量のデータから見ると、表層と内部との差異は大きくない。
【0012】
本発明によれば、少なくとも一部のチップの表面の酸素濃度が12.5wt%以下であることが好ましい。透過率を低くすること及び導電率を増大することから見ると、相対的に言えば、該数値以下の酸素濃度はより優れた技術効果を有し、可視光に対する吸収性がより優れたチップのカラーセンター及びより高い導電率となるように調整し得る。
【0013】
本発明によれば、チップにおける80%~95%の範囲内の表面、又はチップにおける95%以上の表面の酸素濃度が、11.5wt%~12.5wt%の範囲内にあることが好ましい。
【0014】
本発明によれば、光の波長が350nm~450nmの露光光源で照射されたチップの透過率は、1%以下であることが好ましい。光の波長350nm~450nmは、よく使用されているG line/I Lineの波帯(半導体のフォトリソグラフィー設備においてよく使用されている露光光源)である。
【0015】
本発明によれば、光の波長が350nm~450nmの露光光源で照射されたチップの透過率が0%であることが好ましい。ここで、0%とは、基本的に不透光であることを指す。
【0016】
本発明によれば、チップの色度は、60以下であることが好ましい。色度は、表面分光光度計により測定され得る。その原理は、物体の表面の明るさの程度を測定することであり、一般的に、白黒校正を経た後、この計測器によって物体の表面に対して明るさの測定を行なうことである。これは一般的な色測定基準である。
【0017】
本発明によれば、チップの電気抵抗は、9*1010Ωcm以下であることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、シート製法による均一性の不足及び伝統的な埋粉技術における各工程の問題を含む上記の従来技術における十分ではない事項を解決するために、タンタル酸リチウムのチップの黒化方法を提供する。該黒化の原理は、酸素引き抜き反応(還元反応)である。本方法は、添加した試剤により、材料組成内の酸素を取り替えて、材料を酸素空位の低酸素状態となるようにさせ、即ち、5価タンタルが4価タンタルとなるようにさせて、外観の色を変更させる方法である。
【0019】
該方法においては、タンタル酸リチウムのチップ同士の間に、一層の還元媒体を少なくとも設置し、例えば一層の還元媒体を敷設して、還元又は不活性などの非酸化性雰囲気で、加熱し且つキュリー温度でタンタル酸リチウムのチップに対して還元処理を行ない、還元媒体が混合粉体であり、還元媒体が、還元特性を有する還元粉体と、還元処理の加速反応を促進することができる触媒と、を含み、ここで例えば、触媒が加熱された後分離されて還元ガスとなりチップと接触する。
【0020】
本発明によれば、混合粉体には、一種又は多種の炭酸塩が含まれることが好ましい。炭酸塩から分離された二酸化炭素は、還元ガスと共に一酸化炭素を生成する。その一酸化炭素とタンタル酸リチウムのチップにおける5価タンタルとは、還元反応を起こして二酸化炭素と4価タンタルを生成する。実験を通して、炭酸リチウムは、比較的良好な還元効果を有することがわかった。なお、例えば、活性が比較的に高い金属粉末(鉄、亜鉛、アルミニウム、又はセシウム粉末)などの他の還元物質の効果は、炭酸塩粉体と比べて効果的ではなく、且つ硬い焼結物がチップの表面に付着して除去しにくい恐れがある。
【0021】
本発明によれば、触媒には、カルボン酸を有する有機物質が含まれることが好ましい。活性の高い不飽和モノマー化学材料を採用すれば、例えば3%~5%の僅かな割合の触媒をベース粉体に添加すれば、均一に混合した後でも、全体の還元媒体が粉末状態を保ち、且つカルボン酸は加熱後に一酸化炭素を生成することができる。
【0022】
本発明によれば、触媒には、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシアクリレート、ポリウレタンアクリレートが含まれることが好ましい。
【0023】
本発明によれば、還元媒体には、剥離剤が更に含まれることが好ましい。剥離剤は、還元媒体とタンタル酸リチウムのチップとの分離を促進することができる。なお、単純な還元粉体及び触媒は高温焼結後に塊りとなりやすく、チップの表面において粉末の焼結物が残留することが深刻であり、これで作業が困難となり、チップの破片率が高くなってしまう。還元媒体に剥離剤を加えることで、このような問題を改善することができる。
【0024】
本発明によれば、剥離剤には、非金属の酸化物粉体が含まれることが好ましい。剥離剤としては、高融点の材料が使用され得る。これは、本発明の反応温度が400℃付近であるので、融点が400℃を遥かに超える材料、例えば融点が1000℃を超える材料を採用すれば、工程において還元反応に関与しないことを確保することができ、且つ自らも塊りとなるように焼結されることなく、触媒が高温で反応すると、ガス透過性を維持するための構造的支持を提供することができる。工程が安定し且つ反応に関与しないことが必要であることを考量して、非金属の酸化物を採用した。なお、一般的に酸化物の安定性は比較的高い。本発明では、二酸化ケイ素を剥離剤として採用するが、或いは炭化ケイ素粉又はケイ素粉を剥離剤として採用してもよい。
【0025】
本発明によれば、還元粉体の重量比が50%~95%の範囲内にあり、触媒の重量比が3%~45%の範囲内にあり、剥離剤の重量比が2%~5%の範囲内にあることが好ましい。
【0026】
本発明によれば、還元粉体の重量比が85%~95%の範囲内にあり、触媒の還元媒体における重量比が3%~5%又は5%~10%の範囲内にあり、剥離剤の重量比が2%~5%の範囲内にあることが好ましい。
【0027】
本発明によれば、還元粉体の粒径と剥離剤の粒径との差値が還元粉体の粒径の10%を超えないことが好ましい。
【0028】
本発明によれば、加熱温度は、350℃~450℃の範囲内にあり、又は450℃~560℃の範囲内にあることが好ましい。伝統的な技術は、例えば450℃未満の低温において反応効果が悪く、チップの黒化の色の深さを効果的に向上させることができない一方、一定の温度、例えば450℃を超える温度に達すると、粉末がチップの表面に残留して焼結粒子となりやすいため、後続のチップの表面の処理が複雑となる。例えば、550℃を超える高温において、還元処理を行なうと、LT(タンタル酸リチウム)材料のキュリー温度(603℃)に接近するため、炉が過大な局部温度差を受ける可能性があって、チップが局部脱分極となって圧電材料の特性を失う恐れがある。
【0029】
本発明によれば、還元反応は、高温変形に耐えられる側壁に多孔構造がある円筒状の治具において行なわれることが好ましい。
【0030】
本発明によれば、非酸化雰囲気は、水素又は窒素が含まれることが好ましい。或いは、水素が窒素に混合されて形成される還元ガスであってもよい。これらは、いずれも還元反応に対して異なる程度の促進作用をもたらすものである。実験結果としては、非酸化雰囲気が一酸化炭素であれば、還元反応に対して促進作用がほとんどない。
【0031】
本発明によれば、光の波長が350nm~450nmの光で照射されたチップの透過率が0%であることが好ましい。
【0032】
上記の黒化技術だけではなく、還元粉体及び剥離剤を還元媒体となるように混合してチップに対して黒化を行なうだけで、本発明の技術形態を簡単化することができることを理解されたい。
【0033】
上記のタンタル酸リチウムのチップに対して研磨、スパッタリングなどの技術を行なって金属櫛形電極を製作することによって、最終的に圧電チップの圧電基板を作成し得る。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る有利な効果については、これらに限らないが以下の効果を含む。
【0035】
還元媒体は、低温において良好な酸素引き抜き能力を有し、且つチップの表面において焼結粉体が残留しない利点、及び、経験によれば350℃~450℃の範囲内にある状態で、温度上昇を含む還元処理の時間が3時間~5時間の範囲内にある場合、チップを取り出すことができるまで温度が下がるのにかかる時間が約24時間であることにより、色を白色から深黒色となるように変化することができ、更に円筒状の通気治具により還元雰囲気の流動分布を増大することで、伝統的な黒化工程の複雑さを大幅に低減し且つ工程時間を短縮することができ、金属櫛形電極を製作するフォトリソグラフィー工程において光の反射が発生するパターンの解像度に係る問題を有効に改善することができ、フォトリソグラフィーの歩留まりを大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図面は本発明に対する一層の理解のために供するものであり、また明細書の一部を構成し、本発明の実施例と共に本発明の解釈に用いられ得るが、本発明に対して限定するものではない。この他、図面のデータは概要を説明するものであり、比率に応じて描かれたものではない。
図1】本発明に係る筒状の治具が示される模式断面図である。
図2】本発明に係る筒状の治具が示される外観模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明における若干の具体的な実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。しかし、以下の実施例に関する記載及び説明は、本発明の保護範囲に対していかなる制限をも構成しない。
【0038】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためだけであり、本発明を限定することを意図していないことを理解されたい。さらに、本明細書で「含有する」、「包括する」という用語を使用するとき、特徴、全体、ステップ、コンポーネント、及び/又はパッケージの存在を示すために用いられて、1つ又は複数の他の特徴、全体、ステップ、コンポーネント、パッケージ、及び/又はそれらの組み合わせの存在又は追加を排除することはない。
【0039】
特に定義されない限り、本発明で使用される全ての用語(技術的及び科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で使用される用語は、本明細書の文脈および関連技術分野におけるそれらの用語の意味と一致する意味を有すると理解されるべきであり、本発明において明示的に定義されているものを除き、理想的又は過度に形式的な意味で理解されるべきではないことがさらに理解されるべきである。
【0040】
本発明は、シート製法による均一性の不足及び伝統的な埋粉技術における様々なプロセスの問題を含む上記の各特許の欠点を主に解決するためのものである。本発明は、触媒及び剥離フィルム剤をベース粉体に加えて媒体とすることを採用して、タンタル酸リチウムのチップを媒体内に埋め込んで還元雰囲気炉内に載置して還元処理を行なうことによって、該タンタル酸リチウムのチップを白色/黄色から茶色又は黒色となるようにさせて、電気抵抗を減らして透過率を低くすることができる。該技術は、相対的に低温で良好な黒化程度を得て、工程時間を大幅に短縮することができ、工程が完了した後に該粉体が固まっていない状態となるので、ブラシを用いて表面に残留物がないように容易にきれいにすることができる。これは、伝統的な埋粉技術において困っていたことを克服することができるということである。従来の工程において一般的に切断後に黒化工程を行なうことと違って、本発明は切断状態のチップにも研磨状態のチップにも応用することができる。
【0041】
本発明の第1の実施例においては、処理対象とするタンタル酸リチウムのチップを、チップ及び還元媒体を収容するための補助器具内に重なるように載置し、例えば石英製の円管内に載置する。基板同士の間に一層の還元媒体を敷設する。流量が1L/min~3L/minの範囲内にある非酸化雰囲気で、350℃~450℃に加熱する温度条件で、2時間~4時間の還元処理時間を経て、常温まで冷却してから取り出す。これによって、電気抵抗率が1*1010Ωcm~9*1011Ωcmの範囲内にあり、且つ色が褐色を帯びた黒色であるタンタル酸リチウムのチップを得ることができる。取得したタンタル酸リチウムのチップの表面の酸素濃度は、12wt%~13wt%の範囲内にあり、エネルギー分散型分光器(EDS)により酸素濃度に対して成分の確認及び濃度の分析を行なうことができる。色度の測定によると、酸素濃度が13wt%にあるとき、タンタル酸リチウムのチップの色度が約60であり、酸素濃度が12wt%にあるとき、タンタル酸リチウムのチップの色度が約50であり、酸素濃度の低下につれてタンタル酸リチウムのチップの色度が低下するようになる。日立社の分光光度計UH4150を用いて測定した結果、タンタル酸リチウムのチップは、光の波長が350nm~450nmの露光光源で照射された場合の透過率が1%以下であることがわかった。光の波長350nm~450nmは、G line/I Lineでよく使用されている波帯である。
【0042】
本実施例において還元媒体は還元粉体と触媒とを含む。その中で、ベース粉体の重量比が55%~97%の範囲内にあり、触媒の重量比が3%~45%の範囲内にある。使用前に、各成分を混合機に入れて均一となるように充分に攪拌する。
【0043】
本実施例に用いられる還元粉体は、一種の炭酸塩又は多種の炭酸塩の粉体であり、その粒径が#100~#1000の範囲内(即ち、粒径が10μm~100μmの範囲内)にある。粒径のサイズは、還元反応に対して影響を与える。実験を通して、粒径のサイズが小さければ小さいほど黒化効果がより均一となることが明らかになった。本実施例では、還元粉体は繰り替えし使用することができる。例えば本実施例において還元粉体として炭酸リチウム粒子を採用した。
【0044】
本実施例において用いられる触媒はカルボン酸を有する有機物質であり、例えば不飽和ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂からなるものが含まれる。有機化学における基本的な化学基とするカルボン酸(carboxyl)は、1つの炭素原子、2つの酸素原子、及び1つの窒素原子からなるものであり、その化学式は-COOHである。触媒の割合が増大すると、還元媒体を凝縮することができる。還元媒体にこれらの活性の高い化学材料を添加すれば、反応を加速することができ、これは主にそれらのポリエステル鎖の末端の官能基が金属の酸化物と反応することができるためである。このため、他の技術と比べて本実施例によれば比較的に黒いものが得られる。
【0045】
本発明の第2の実施例においては、処理対象とするタンタル酸リチウムのチップを、チップ及び還元媒体を収容するための補助器具内に重なるように載置し、例えば石英製の円管内に載置する。基板同士の間に一層の還元媒体を敷設する。流量が1L/min~3L/minの範囲内にある非酸化雰囲気で、350℃~450℃に加熱する温度条件で、2時間~4時間の還元処理時間を経て、常温まで冷却してから取り出す。これによって、電気抵抗率が1*1010Ωcm~9*1011Ωcmの範囲内にあり、且つ色が褐色を帯びた黒色であるタンタル酸リチウムのチップを得ることができる。取得したタンタル酸リチウムのチップの表面の酸素濃度は、12wt%~13wt%の範囲内にあり、エネルギー分散型分光器(EDS)により酸素濃度に対して成分の確認及び濃度の分析を行なうことができる。色度の測定によると、酸素濃度が13wt%にあるとき、タンタル酸リチウムのチップの色度が約60であり、酸素濃度が12wt%にあるとき、タンタル酸リチウムのチップの色度が約50であり、酸素濃度の低下につれてタンタル酸リチウムのチップの色度が低下するようになる。日立社の分光光度計UH4150を用いて測定した結果、タンタル酸リチウムのチップは、光の波長が350nm~450nmの露光光源で照射された場合の透過率が1%未満であることがわかった。光の波長350nm~450nmは、G line/I Lineでよく使用されている波帯である。
【0046】
本実施例において還元媒体は還元粉体と剥離剤を含む。本実施例では、触媒を加えることによって黒化程度を深くさせることもできる。その中で、ベース粉体の重量比が50%~95%の範囲内にあり、触媒の重量比が3%~45%の範囲内にあり、剥離剤の重量比が2%~5%の範囲内にある。使用前に、各成分を混合機に入れて均一となるように充分に攪拌する。
【0047】
本実施例に用いられる還元粉体は、一種の炭酸塩又は多種の炭酸塩の粉体であり、その粒径が#100~#1000の範囲内(即ち、粒径が10μm~100μm)にある。粒径のサイズは、還元反応に対して影響を与える。実験を通して、粒径のサイズが小さければ小さいほど黒化効果がより均一となることが明らかになった。本実施例では、還元粉体は繰り替えし使用することができる。例えば本実施例において還元粉体として炭酸リチウムを採用した。
【0048】
本実施例において用いられる触媒はカルボン酸を有する有機物質であり、例えば不飽和ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂からなるものが含まれる。有機化学における基本的な化学基とするカルボン酸(carboxyl)は、1つの炭素原子、2つの酸素原子、及び1つの窒素原子からなるものであり、その化学式は-COOHである。
【0049】
本実施例に用いられる剥離剤は、非金属の酸化物粉体であり、その粒径が#100~#1000の範囲内(即ち、粒径が10μm~100μmの範囲内)にある。その粒径は剥離効果に影響を与えることなく、主に透気性に影響を与える。更に、剥離剤の粒径が還元粉体の粒径に一致又は近いことが最適であり、即ち、剥離剤の粒径のサイズと還元粉体の粒径のサイズとの差を10%以下に抑えれば、剥離剤が還元粉体とチップとの接触に対して干渉又は邪魔することを避けることができる。剥離剤を加えることによって、低温(450℃以下)で還元媒体が焼結されて塊りとなることが起きにくく剥離が容易になり、高温(450℃を超える)でのプロセスにおいてはベース粉体が硬く且つ固まるようになりやすいが、剥離剤を加えることは、チップの取り出しに対して有利である。還元媒体は全体的に反応された後も固まっていない状態であるので、そっと掻き分けてから、完全なチップを容易に取り出すことができる。本実施例に用いられる還元雰囲気は、水素、或いは水素と窒素の混合ガスである。
【0050】
本発明の第3の実施例においては、処理対象とするタンタル酸リチウムのチップを、一般の石英治具に重なるように載置する。基板同士の間に一層の還元媒体を敷設する。流量が1L/min~3L/minの範囲内にある非酸化雰囲気で、450℃~560℃に加熱する温度条件で、例えば560℃を採用し、2時間~4時間の還元処理時間を経て、常温まで冷却してから取り出す。
【0051】
本実施例において還元媒体は還元粉体と触媒と剥離剤とを含む。その中で、ベース粉体の重量比が85%~95%の範囲内にあり、触媒の重量比が3%~10%の範囲内にあり、剥離剤の重量比が2%~5%の範囲内にある。使用前に、各成分を混合機に入れて均一となるように充分に攪拌する。加熱温度を上げることによって、タンタル酸リチウムのチップの還元効果を向上させることができる。
【0052】
本実施例に用いられる還元粉体は、一種の炭酸塩又は多種の炭酸塩の粉体であり、その粒径が#100~#1000の範囲内(即ち、粒径が10μm~100μmの範囲内)にある。粒径のサイズは、還元反応に対して影響を与える。実験を通して、粒径のサイズが小さければ小さいほど黒化効果がより均一となることが明らかになった。本実施例では、還元粉体は繰り替えし使用することができ、例えば本実施例において還元粉体として炭酸リチウムを採用した。
【0053】
触媒の割合が過大となると、糊状態となるので、両面に均一に塗布しにくくなり、且つ裏返しにする際に、他面に元々均一に塗布されていた一層の反応媒体が重力の影響で再び流動してしまう。このため、還元媒体を焼き付けるような硬化するための工程が必要となる。高い割合の触媒は、還元媒体を凝縮することができるが、表面に塗布された層が高温工程において収縮による亀裂を起こしやすく、その亀裂した箇所において反応媒体とチップとが接触していない状況となり、局部黒化不均一の現象となり、且つ高温工程において揮発しやすく、粉体とチップとの局部接触をもたらして蟻の巣状の不均一の現象となり、また、チップにおいても塗布層の収縮による亀裂の痕跡が残留する。従って、本実施例では、触媒の重量比を3%~10%の範囲内となるように下げると、本実施例において粉末をチップに均一に敷いて押圧して、チップを粉体と充分に接触させ、高温工程において焼き付ける動作をしなくても還元媒体の凝縮を実現させることができる。
【0054】
本実施例において用いられる触媒はカルボン酸を有する有機物質であり、例えば不飽和ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂からなるものが含まれる。有機化学における基本的な化学基とするカルボン酸(carboxyl)は、1つの炭素原子、2つの酸素原子、及び1つの窒素原子からなるものであり、その化学式は-COOHである。
【0055】
本実施例に用いられる剥離剤は、非金属の酸化物粉体であり、その粒径が#100~#1000の範囲内にある。本実施例に用いられる還元雰囲気は、水素又は水素と窒素の混合ガスである。
【0056】
図1及び図2に示されるように、本発明の第4の実施例においては、処理対象とするタンタル酸リチウムのチップを、高温変形に耐えられる円筒状の通気治具200に重なるように載置する。反応媒体を節約し且つすべての円形のチップに全体的に塗布するために、円筒状の治具200が比較的適合であり且つ還元媒体の材料を節約することができる。筒状の治具200は、反応ガスを進入させて反応に関与させ、且つ反応された二酸化炭素を排出させることによって、内部に蓄積することによる不均一を避けるための通気孔201を含む。即ち、通気孔201は、反応ガスが進入して反応に関与することを促進すると共に、反応されたガスの排出を促進することができる。
【0057】
処理対象とするタンタル酸リチウムのチップ100と処理対象とするタンタル酸リチウムのチップ100との間に一層の還元媒体を敷設する。流量が1L/min~2L/minの範囲内にある非酸化雰囲気で、350℃~450℃に加熱する温度条件で、0.5時間~1時間の還元処理時間を経て、常温まで冷却してから取り出す。これによって、電気抵抗率が1*10Ωcm~1*1011Ωcmの範囲内にあり、且つ色が黒色で不透光であるチップを得ることができる。取得したタンタル酸リチウムのチップの表面の酸素濃度は、11.5wt%~12.5wt%の範囲内にある。光の波長が350nm~450nmの露光光源で照射された場合のタンタル酸リチウムのチップの透過率は0%に近く、酸素濃度が11.5wt%であるとき、タンタル酸リチウムのチップの色度が約43であった。
【0058】
本実施例に用いられる還元媒体は、還元粉体と、触媒と、剥離剤とを含む。その中で、ベース粉体の重量比が85%~95%の範囲内にあり、触媒の重量比が3%~10%の範囲内にあり、剥離剤の重量比が2%~5%の範囲内にある。使用前に、各成分を混合機に入れて均一となるように充分に攪拌する。
【0059】
本実施例に用いられる還元粉体は、一種の炭酸塩又は多種の炭酸塩の粉体であり、その粒径が#100~#1000の範囲内(即ち、粒径が10μm~100μmの範囲内)にある。粒径のサイズは、還元反応に対して影響を与える。実験を通して、粒径のサイズが小さければ小さいほど黒化効果がより均一となることが明らかになった。本実施例では、還元粉体は繰り替えし使用することができる。例えば本実施例において還元粉体として炭酸リチウムを採用した。
【0060】
本実施例において用いられる触媒はカルボン酸を有する有機物質であり、例えば不飽和ポリエステル樹脂又はアクリル樹脂からなるものが含まれる。有機化学における基本的な化学基とするカルボン酸(carboxyl)は、1つの炭素原子、2つの酸素原子、及び1つの窒素原子からなるものであり、その化学式は-COOHである。
【0061】
本実施例に用いられる剥離剤は、還元反応後に還元媒体とタンタル酸リチウムのチップとを分離し易くさせることができる非金属の酸化物粉体であり、その粒径が#100~#1000の範囲内(即ち、粒径が10μm~100μmの範囲内)にある。粒径のサイズは、剥離の効果にそれほど影響を与えないが、透気性に影響を与える。更に、剥離剤の粒径が還元粉体の粒径に一致又は近いことが最適であり、還元粉体とチップとの均一な接触に対して剥離剤が影響することを避けることができる。本実施例に用いられる還元雰囲気は、水素又は水素と窒素の混合ガスであり、このうち水素を用いれば相対的に低温でより黒い表現を得ることができる。
【0062】
本実施例は、電気抵抗率が1*10Ωcm~9*1010Ωcmの範囲内にあり、且つ色が深黒色のタンタル酸リチウムのチップを得ることができるので、焦電性が存在しなく、取得したタンタル酸リチウムのチップの表面の酸素濃度は、11.5wt%~12.5wt%の範囲内にある。光の波長が350nm~450nmの露光光源で照射された場合のタンタル酸リチウムのチップの透過率は0%に近く、且つ無色透明から着色不透明に変化したと共に、圧電材料の特性を充分に有する。それによって、表面弾性波デバイスなどのデバイスの製造工程による温度の変化で、電荷が基板の表面に蓄積されることによる火花で、基板の表面に形成されたパターンが損壊され、ひいては基板にひび割れが発生するといった問題が存在しない。更に、フォトリソグラフィー工程において、基板内を通った光が基板の裏面で反射して表面に戻り、形成されたパターンの解像度が低下する問題が存在しないので、表面弾性波デバイス用の基板に応用できる。
【0063】
以上の実施形態は、タンタル酸リチウムのチップのみを例として説明したが、実際には、本発明の設計は、ニオブ酸リチウムのチップにも応用できる。ニオブ酸リチウムのチップは、タンタル酸リチウムのチップと比べて黒化技術の条件に係る要求が比較的に低いので、本発明において贅説を省く。
【0064】
上記実施方式は、本発明の説明のために挙げたにすぎず、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の原理から逸脱しない限り、若干の改良及び修飾を行うことができ、これらの改良及び修飾も本発明の保護範囲とみなされるべきであることに留意されたい。
【符号の説明】
【0065】
100 処理対象とするタンタル酸リチウムのチップ
200 筒状の治具
201 通気孔
図1
図2
【国際調査報告】