(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】自転車用電動ギアモータアセンブリ
(51)【国際特許分類】
B62M 6/55 20100101AFI20220907BHJP
【FI】
B62M6/55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573166
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(85)【翻訳文提出日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 IB2020053533
(87)【国際公開番号】W WO2020250049
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】102019000008541
(32)【優先日】2019-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521464569
【氏名又は名称】エッレエンメウー プロジェクト ソチエタ ア リスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【氏名又は名称】横井 大一郎
(72)【発明者】
【氏名】マンツィーニ アンドレア
(57)【要約】
記載してあるのは、ペダルクランクシャフトと、電子制御ユニットを備えた電気モータと、ペダルクランクシャフトの周囲でこれと軸線を同じくする減速歯車機構及び歯車とを有する自転車用ギアモータアセンブリである。ギアモータアセンブリは、さらに、2個の内側オーバーランニングクラッチであって、ペダルクランクシャフトの周囲で軸線を同じくして取り付けられ、ペダルクランクシャフトの第1回転方向にトルクを伝達するように構成される内側オーバーランニングクラッチと、外側オーバーランニングクラッチであって、歯車の内側に軸線を同じくして取り付けられ、第1回転方向とは反対方向である、ペダルクランクシャフトの第2回転方向にトルクを伝達するように構成される外側オーバーランニングクラッチとを有する。トルクを伝達する駆動輪と運動学的に結合される中空管状体が、内側及び外側オーバーランニングクラッチの間に設けられる。内側オーバーランニングクラッチが、中空管状体の内側に締まり嵌めで収容され、外側オーバーランニングクラッチが、中空管状体の外面に締まり嵌めで設けられる。ペダルクランクシャフトには、2個の調整着座部が両側に設けられ、調整着座部の各々の周囲には、内側オーバーランニングクラッチの各々が、締まり嵌めで取り付けられる。内側オーバーランニングクラッチは、ペダルクランクシャフトと直接接触して設けられる。中空管状体は、内側オーバーランニングクラッチの外側ハウジングを構成するとともに加工された管体を有し、加工された管体の周囲には、外側オーバーランニングクラッチが軸線を同じくして取り付けられる歯車を中央に収容される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個のフレームと、少なくとも1個の駆動輪と、少なくとも1個のペダルクランク・ペダルアセンブリ(12)とを備えた自転車用ギアモータアセンブリ(10)であって、
所定の軸線(A)を中心として回転自在な、少なくとも1個のペダルクランクシャフト(14)であって、前記ペダルクランクシャフト(14)は、前記ペダルクランク・ペダルアセンブリ(12)と一体的に結合されることにより、運転者により前記ペダルクランク・ペダルアセンブリ(12)を介して加えられるトルクを受け取り、前記トルクを前記少なくとも1個の駆動輪に伝達するペダルクランクシャフトと、
電子制御ユニットを備えた少なくとも1個の電気モータ(16)と、
少なくとも1個の減速歯車機構(18、20)であって、前記少なくとも1個の電気モータ(16)の出力軸(42)と一体的に結合されるウォーム歯車(18)と、前記少なくとも1個のペダルクランクシャフト(14)を中心として軸線を同じくして設けられる歯車(20)とを備え、前記少なくとも1個の電気モータ(16)により伝達されるトルクを受け取り、前記電気モータにより伝達されるトルクを前記少なくとも1個の駆動輪に、前記ペダルクランクシャフト(14)により伝達するように構成された減速歯車機構と、
少なくとも1個の内側オーバーランニングクラッチ(22)であって、前記ペダルクランクシャフト(14)を中心として軸線を同じくして取り付けられ、前記少なくとも1個のペダルクランクシャフト(14)の第1回転方向にトルクを伝達するように構成される内側オーバーランニングクラッチと、
少なくとも1個の外側オーバーランニングクラッチ(24)であって、前記歯車(20)を中心として軸線を同じくして取り付けられ、前記第1回転方向とは反対方向である、前記少なくとも1個のペダルクランクシャフト(14)の第2回転方向にトルクを伝達するように構成される外側オーバーランニングクラッチとを有し、
前記トルクを伝達する少なくとも1個の駆動輪と運動学的に結合される、少なくとも1個の中空管状体(26)が、前記少なくとも1個の外側オーバーランニングクラッチ(24)と前記少なくとも1個の内側オーバーランニングクラッチ(22)の間に設けられる、前記ギアモータアセンブリ(10)において、
前記少なくとも1個の内側オーバーランニングクラッチ(22)が、前記少なくとも1個の中空管状体(26)の内側に締まり嵌めで収容され、前記少なくとも1個の外側オーバーランニングクラッチ(24)が、前記少なくとも1個の中空管状体(26)の外面に締まり嵌めで設けられ、前記少なくとも1個のペダルクランクシャフト(14)には、2個の調整着座部(28)が両側に設けられ、前記調整着座部の各々の外面には、前記内側オーバーランニングクラッチ(22)の各々が、締まり嵌めで取り付けられることにより、前記ギアモータアセンブリ(10)に、前記少なくとも1個のペダルクランクシャフト(14)と直接接触して設けられる2個の別々の内側オーバーランニングクラッチ(22)を有し、さらに、前記少なくとも1個の中空管状体(26)は、前記2個の別々の内側オーバーランニングクラッチ(22)の外側ハウジングを構成し、前記2個の内側オーバーランニングクラッチ(22)の間の中間位置で前記歯車(20)を中央に有する加工管体であり、前記歯車(20)の内側には、1個の外側オーバーランニングクラッチ(24)は、軸線を同じくして取り付けられることにより、前記外側オーバーランニングクラッチ(24)の一つが、これを囲む前記歯車(20)と前記少なくとも1個の中空管状体(26)との間に設けられることを特徴とする、ギアモータアセンブリ。
【請求項2】
前記所定の軸線(A)に関して前記歯車(20)の両側に、アキシャル軸受(34)の各々が、設けられ、前記アキシャル軸受の各々は、前記少なくとも1個の中空管状体(26)の周囲と接触し、前記アキシャル軸受(34)の各々は、対応するスペーサ部材(36)により適所に保持されることを特徴とする、請求項1に記載のギアモータアセンブリ(10)。
【請求項3】
前記2個のスペーサ部材(36)の外面に、2個の追加の軸受が設けられ、これらの追加の軸受は、前記少なくとも1個のペダルクランクシャフト(14)と軸線を同じくする、前記ギアモータアセンブリ(10)の構成要素の全てを保持するとともに、前記少なくとも1個のペダルクランクシャフト(14)を両方向に回転自在にすることを特徴とする、請求項2に記載のギアモータアセンブリ(10)。
【請求項4】
前記少なくとも1個のペダルクランクシャフト(14)が、前記外側オーバーランニングクラッチ(24)と前記歯車(20)の箇所で、少なくとも1個のピン(32)用のハウジングを形成する少なくとも1個の放射方向溝(30)を中央に備え、前記ピン(32)は、前記少なくとも1個のペダルクランクシャフト(14)をセンタリングする、すなわち、前記少なくとも1個のペダルクランクシャフト(14)が、軸線方向に変位することを防止する機能を奏し、前記ペダルクランク・ペダルアセンブリ(12)が、前記第2回転方向に逆回転可能にすることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のギアモータアセンブリ(10)。
【請求項5】
前記少なくとも1個のペダルクランクシャフト(14)と、前記減速歯車機構(18、20)の全体と、前記内側及び外側オーバーランニングクラッチ(22、24)とが収容されるクランクケース(40)を有し、前記少なくとも1個の電気モータ(16)が、前記クランクケース(40)の外に位置し、前記出力軸の各々が、前記クランクケース(40)に少なくとも部分的に差し込まれて前記減速歯車機構(18、20)に接続されることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のギアモータアセンブリ(10)。
【請求項6】
前記少なくとも1個の電気モータ(16)が、前記少なくとも1個の電気モータ(16)を少なくとも部分的に囲む流体回路(44)と、前記流体回路(44)内で冷却流体を所定の圧力で循環させるように設けられる少なくとも1個のポンプ(46)とを備える冷却システムを有することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のギアモータアセンブリ(10)。
【請求項7】
前記少なくとも1個の電気モータ(16)が、ブラシレスタイプであり、円筒形のケーシングに収容され、前記流体回路(44)が、螺旋状の形状をして前記電気モータ(16)のケーシングのほぼ大半の表面を外側で巻くことを特徴とする、請求項6に記載のギアモータアセンブリ(10)。
【請求項8】
前記少なくとも1個のペダルクランクシャフト(14)は、前記電子制御ユニットと作動的に接続される少なくとも1個のトルクセンサ(48)を備え、前記少なくとも1個のトルクセンサ(48)は、前記運転者により加えられるトルクを比例的に検出し、前記電子制御ユニットをインターフェースとして、前記少なくとも1個の電気モータ(16)の選択的な作動を可能にすることにより、停止状態から労せずしてスタートできることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のギアモータアセンブリ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に、自転車用ギアモータアセンブリ、特に、いわゆるペダルアシスト式自転車、すなわち「e-バイク」用電動ギアモータアセンブリに関する。本明細書では、「ペダルアシスト式自転車」という用語は、人の筋力により駆動されるとともに、少なくとも1個の補助電気モータを備える、一輪(一輪車)、二輪、三輪(三輪車)又はそれ以上の車輪(四輪車、人力車等)を有する車両を指すのに用いる。
【背景技術】
【0002】
公知のように、ペダルアシスト式自転車、すなわち「e-バイク」は、便利な自転車で、少なくとも1個の電気モータと、1個以上のバッテリーと、ペダルクランク・ペダルアセンブリの回転速度を、その都度検出する複数個のセンサとを利用する。ペダルクランク・ペダルアセンブリの回転速度は、電子制御ユニットによりコード化され、所定のパラメータに基づいて、運転者による運動に対して、電気モータによりもたらす追加アシストを補正する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
今まで、ペダルアシスト式自転車は、種々の減速歯車に接続されるブラシレス電気モータを使用し、ペダルクランク・ペダルアセンブリが回転運動を行う軸を駆動する。このタイプのギアモータに関連する課題は、大抵、寸法、重量及び動作温度に由来する。トランスミッションは、大抵、複数個の減速段階を持ち、電磁クラッチに接続されることがあり、電磁クラッチは、減速歯車が収容されるクランクケースと同じクランクケース内で動作して、ギアモータアセンブリ全体の過熱、したがって効率損失を引き起こす。さらに、トランスミッションの寸法が大きいので、自転車のフレームへの電気モータの取り付け、すなわち設置に苦慮する。さらに、電気モータの全体的な効率は、0.7を超えないので、所要のパワーを達成するには、電気モータを大型化する必要がある。実際、過度に使用されると、電気モータは、過熱しがちであり、冷却できないので、電子制御ユニットを介入させて、供給電流を減少させるため、電気モータの全体的な性能を落とすことになる。
【0004】
ペダルアシスト式自転車用の公知のギアモータアセンブリのもう一つの課題は、電気モータは、使用していない場合でも、ペダルクランク・ペダルアセンブリが回転運動する軸と接続したままになっている点にある。このため、通常の、すなわちアシストなしでペダルを漕ぐ間、運転者は、関連するトランスミッションにより電気モータも駆動せざるを得ない。
【0005】
従来技術に係る自転車用ギアモータアセンブリは、例えば、中国実用新案公報第2234906Y号に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明の目的は、自転車用ギアモータアセンブリ、特に、いわゆるペダルアシスト式自転車、すなわち「e-バイク」用電動ギアモータアセンブリであって、従来技術の上述の課題を、極めて簡単で、費用対効果が高く、特に、機能的に解消できる自転車用ギアモータアセンブリを提供することにある。
【0007】
詳述すると、本発明の目的の一つは、ペダルアシスト式自転車用ギアモータアセンブリであって、電気モータからのアシストを受けない、通常の、すなわちアシストなしでのペダル漕ぎでも、運転者は、関連するトラスミッションを通じて電気モータを駆動しなくて済む、ペダルアシスト式自転車用ギアモータアセンブリを提供することにある。
【0008】
本発明の目的のもう一つは、ペダルアシスト式自転車用ギアモータアセンブリであって、電気モータの効率とバッテリーパックの寿命の双方を向上できるペダルアシスト式自転車用ギアモータアセンブリを提供することにある。
【0009】
本発明によるこれらの目的、及び他の目的は、請求項1に定義するペダルアシスト式自転車用ギアモータアセンブリを提供することによって達成される。
【0010】
この他の本発明の構成上の特徴は、本明細書と一体をなす、従属請求項に強調してある。
【0011】
本発明に係るペダルアシスト式自転車用ギアモータアセンブリの構成上の特徴及び特有の効果は、添付の概略的な図面を参照しながらの、非限定的な実施形態を用いる、以下の説明からさらに明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るペダルアシスト式自転車用ギアモータアセンブリの好ましい実施形態の斜視図である。
【
図2】
図1に示すギアモータアセンブリの平面図である。
【
図3】
図1に示すギアモータアセンブリの側面図である。
【
図4】
図1に示すギアモータアセンブリの、
図3の線IV-IVにおける断面図である。
【
図5】
図1に示すギアモータアセンブリの構成要素の一部の部分分解図である。
【
図6】
図1に示すギアモータアセンブリの構成要素の他部の部分分解透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照すると、本発明に係るペダルアシスト式自転車用ギアモータアセンブリの好ましい実施形態を示してある。ギアモータアセンブリは、全体を符号10で示す。ギアモータアセンブリ10は、少なくとも1個のフレームと、少なくとも1個の駆動輪とを備えるタイプの自転車(図示せず)のペダルクランク・ペダルアセンブリ12に適用される構造になっている。駆動輪は、従来型でよいトランスミッションアセンブリを介して、ペダルクランク・ペダルアセンブリ12に接続され、トランスミッションアセンブリとしては、1個以上の歯付きチェーンリングであって、ペダルクランク・ペダルアセンブリ12と一体的に接続される歯付きチェーンリングと、1個以上のスプロケットであって、駆動輪と一体的に結合されるスプロケットとを備えるチェーン式トランスミッションアセンブリが、挙げられる。
【0014】
自転車は、それ自体公知のタイプのもので、ハンドルと、少なくとも1個の操舵前輪と、ブレーキシステムと、サドルと、その他の付属品とを備えていてよい。本実施形態のギアモータアセンブリ10が適用可能な自転車は、従来型の2輪タイプのものに限られず、ペダルクランク・ペダルアセンブリ12と、トランスミッションアセンブリと、少なくとも1個の駆動輪とを備えていれば、一輪車、三輪車又は人力車でもよい。
【0015】
ギアモータアセンブリ10は、少なくとも1個のペダルクランクシャフト14を有し、ペダルクランクシャフトは、所定の軸線Aを中心として、大まかに言って、自転車の進行方向に対して水平及び垂直に回転運動を行うことができる。公知のことではあるが、ペダルクランクシャフト14は、ペダルクランク・ペダルアセンブリ12と一体的に結合されて、運転者によりペダルクランク・ペダルアセンブリ12を介して加えられるトルクを受取り、このトルクを、トランスミッションシステムを介して自転車の駆動輪に伝達する。
【0016】
ギアモータアセンブリ10は、さらに、電子制御ユニットを備え、専用の減速歯車機構18、20を備えた、少なくとも1個の電気モータ16を有する。電子制御ユニットには、それ自体公知のように、種々の拡張モジュール、例えば、Wi-Fiモジュール、ブルートゥース、GSM、加速度計、ジャイロスコープ、ロードセル等の種々の拡張モジュールが組み込まれてよい。
【0017】
詳述すると、減速歯車機構18、20は、電気モータ16の出力軸42と一体的に結合されるウォーム歯車18と、ペダルクランクシャフト14と軸線を同じくして設けられる歯車20とを備えるタイプのものである。さらに、公知のように、減速歯車機構18、20は、電気モータ16により伝達されるトルクを受け取り、このトルクを、ペダルクランクシャフト14と、例えば、1個以上の歯付きチェーンリングと1個以上のスプロケットとを備えた公知のチェーン式トランスミッションシステムとを介して自転車の駆動輪に伝達するように構成されている。
【0018】
本発明によれば、ギアモータアセンブリ10は、少なくとも1個の内側オーバーランニングクラッチ22であって、ペダルクランクシャフト14と軸線を同じくして取り付けられるものと、少なくとも1個の外側オーバーランニングクラッチ24であって、減速歯車機構18、20の歯車20の内側に軸線を同じくして取り付けられるものとを有する。内側オーバーランニングクラッチ22と外側オーバーランニングクラッチ24の各々は、フリーホイール機構を備える。公知のように、フリーホイール機構は、2個の軸線を同じくする回転体間に設けられて、両者の相対角速度に応じてこれら両回転体の接続・切離しを可能にする機械装置である。
【0019】
外側オーバーランニングクラッチ24と内側オーバーランニングクラッチ22との間には、少なくとも1個の中空管状体26が介在し、この中空管状体は、自転車の駆動輪に運動学的に接続されて、運転者又は電気モータ16により加えられるトルクが減速歯車機構18、20を介して自転車の駆動輪に伝達される。言い換えると、中空管状体26は、自転車のトランスミッションシステムに直接結合され、自転車のトランスミッションシステムは、例えば、
図4に符号50で示す、1個以上の歯付きチェーンリングを備えた従来型のチェーン式のものでよく、1個以上の歯付きチェーンリングは、中空管状体26と1個以上のスプロケットとに直接取り付けられる。
【0020】
特に、内側オーバーランニングクラッチ22は、中空管状体26内に締まり嵌めで収容され、一方、外側オーバーランニングクラッチ24は、この中空管状体26の外側に締まり嵌めで取り付けられる。内側オーバーランニングクラッチ22は、ペダルクランクシャフト14の第1回転方向にトルクを伝達するように構成され、外側オーバーランニングクラッチ24は、ペダルクランクシャフト14の、第1回転方向とは反対方向である第2回転方向にトルクを伝達するように構成される。
【0021】
詳述すると、
図4の断面図に示すように、ペダルクランクシャフト14には、2個の調整着座部28が両側に設けられ、調整着座部の各々の周囲に、内側オーバーランニングクラッチ22の各々が、締まり嵌めで取り付けられる。このように、ギアモータアセンブリ10は、ペダルクランクシャフト14に直接接触して設けられた、2個の別々の内側オーバーランニングクラッチ22を備えることが好ましい。
【0022】
中空管状体26は、これら2個の内側オーバーランニングクラッチ22の外側ハウジングを構成し、好ましくは、加工管体であって、管体の周囲で、2個の内側オーバーランニングクラッチ22の間の中間位置に歯車20を中央に有する。歯車20は、その内側に、外側オーバーランニングクラッチ24が、軸線を同じくして1個取り付けられる。言い換えると、
図4に示すように、外側オーバーランニングクラッチ24は、これを囲む歯車20と、中空管状体26との間に設けられる。
【0023】
2個の内側オーバーランニングクラッチ22は、ペダルクランクシャフト14の第1回転方向である方向に、双方ともロック状態になって結合するように構成されている。一方、外側オーバーランニングクラッチ24は、ペダルクランクシャフト14の第2回転方向である反対方向にロック状態になって結合するように構成されている。
【0024】
好ましくは、
図6に示すように、ペダルクランクシャフト14は、外側オーバーランニングクラッチ24と歯車20の箇所に、少なくとも1個のピン32用のハウジングを構成する少なくとも1個の放射方向溝30を中央に備える。ピン32は、ペダルクランクシャフト14をセンタリングする、すなわち、軸線方向での変位を避ける機能を奏し、ペダルクランク・ペダルアセンブリ12が第2回転方向へ逆回転できるようにする。
【0025】
中空管状体26の周囲に設けたアキシャル軸受34の各々は、ペダルクランクシャフト14の所定の軸線に関して、歯車20の両側のそれぞれに設けられる。アキシャル軸受34の各々は、対応するスペーサ部材36により適所に保持される。さらに、これら2個のスペーサ部材36の外側には、別の2個の軸受38が設けられ、ペダルクランクシャフト14と軸線を同じくする、ギアモータアセンブリ10の全ての構成要素を保持するとともに、ペダルクランクシャフト14を両方向に回転自在にする。
【0026】
したがって、本発明に係るギアモータアセンブリ10は、つぎのように作動する。中空管状体26とペダルクランクシャフト14との間に取り付けられた、2個の内側オーバーランニングクラッチ22は、通常のペダル漕ぎ中、ロック状態になって結合する。このため、中空管状体26は、ペダルクランク・ペダルアセンブリ12により回転されて、トルクを歯付きチェーンリング50に伝達する。
【0027】
さらに、一方、減速歯車機構18、20の歯車20と、中空管状体26との間に取り付けられ、2個の内側オーバーランニングクラッチ22に対して反対方向にロック状態になって結合する、外側オーバーランニングクラッチ24は、通常のペダル漕ぎ中、非ロック状態にある。このため、電気モータ16と減速歯車機構18、20との双方は、自転車のトランスミッションシステムから離脱して、ペダル漕ぎが滑らかになる。
【0028】
電気モータ16が、減速歯車機構18、20と共に介入すると、外側オーバーランニングクラッチ24は、ロック状態になって結合し、中空管状体26、さらには、歯付きチェーンリング50をも、ペダル漕ぎと同じ方向に駆動する。たとえ、電気モータ16と減速歯車機構18、20とが、所定の最大限界よりも早く回転しても(電子制御ユニットが、介在して、回転状態を所定の最大限界に戻すので、仮想状況に過ぎない)、2個の内側オーバーランニングクラッチ22が、ペダルクランクシャフト14とロック(噛み合い)状態にならない限り、ペダルクランク・ペダルアセンブリ12は、駆動されない。反対に、運転者が、極めて速い回転数でペダルを漕ぐと、運転者は、ペダルクランクシャフト14の周囲に設けた内側オーバーランニングクラッチ22をブロックすることになり、減速歯車機構18、20の歯車20内に設けられた外側オーバーランニングクラッチ24を解放する。いずれにせよ、ペダル漕ぎは、電気モータ16から解放され、極めて自然なペダル漕ぎに常時なる。
【0029】
ギアモータアセンブリ10は、ペダルクランクシャフト14と、減速歯車機構18、20の全体と、内側及び外側オーバーランニングクラッチ22及び24とを、付属部品(軸受、スペーサ部材等)とともに収容するクランクケース40を備える。言い換えると、ギアモータアセンブリ10の電気モータ16のみが、クランクケース40の外に位置して、減速歯車40と接続し、電気モータの出力軸42の各々は、少なくとも部分的にクランクケース40に差し込まれて、減速歯車機構18、20と接続する。
【0030】
電気モータ16との接続が解かれると、減速歯車機構18、20は、電気モータ16により構成される熱源から離れることになる。さらに、ウォーム歯車18が、ペダルクランクシャフト14の回転軸線Aに対して直交方向であるとともに、歯車20に対して接線方向に位置付けられるため、電気モータ16は、自転車のフレームに対して、360度いかなる角度にも自由に位置付けられることになる。
【0031】
電気モータ16には、電気モータ16を少なくとも部分的に囲む流体回路44と、流体回路44内を所定の圧力で冷却流体を循環させるように設けられた少なくとも1個のポンプ46とを備える冷却システムを設けてもよい。ポンプ46は、電気モータ16の出力軸42により駆動してもよいし、又は、ペダルアシスト式自転車に通常設けられるバッテリーパックにより独立して駆動されてもよい。
【0032】
電気モータ16は、ブラシレスタイプのものであることが好ましく、円筒型のケーシングに収容され、流体回路44は、電気モータ16のケーシングのほぼ大半の表面を外側で巻くように、螺旋状の形状になることが好ましい。電気モータ16の円筒型ケーシングに取り付ける1個以上の放熱部材(図示せず)を設けてもよい。電気モータ16を強制冷却することにより、大きさ及びパワーの点で、より小型のブラシレスモータを利用でき、荷重下での効率と性能とを下げることなく、ペダルアシスト式自転車用の従来の電気モータに比べて重量を減らすことができる。さらに、利用できるパワーは同じでも、バッテリーパックが、長持ちする。
【0033】
ペダルクランクシャフト14には、少なくとも1個のトルクセンサ48、例えば、トルクメータであって、電子制御ユニットに作動可能に接続され、好ましくは、歯付きチェーンリング50の箇所に設けられるトルクセンサを備えてもよい。トルクセンサ48は、トルクを測定することに加えて、静止状態からのスタート時、取り分け、登坂又は泥濘でペダルを漕ぐときに、特に好都合である。実際、トルクセンサ48は、運転者によりペダルクランク・ペダルアセンブリ12に加えられるトルクを、比例的に検出し、電子制御ユニットを通じて、電気モータ16を選択的に作動させて、楽にスタンディング・スタートできるようになる。
【0034】
一般に、ペダルアシスト式自転車用の現行の電気モータには、トルクセンサが設けられていないが、ペダルクランクシャフトの角速度用の簡単なセンサは設けられている。したがって、現行のペダルアシスト式自転車で静止状態からのスタートでは、ペダルクランク・ペダルアセンブリに大きな力を加えてペダルクランクシャフトを回転駆動し、角速度センサが、低速でも識別できるようにして、電気モータを介在させる。
【0035】
このように、本発明に係るペダルアシスト式自転車用のギアモータアセンブリは、上述した目的を達成することが分かる。
【0036】
このように構成された、本発明に係るペダルアシスト式自転車用のギアモータアセンブリには、いかなる場合でも、種々の修正及び変更を加えることができ、こうした修正及び変更は、本発明の概念に入る。さらに、すべての構成部材は、技術的に等価な部材と交換可能である。基本的に、形状及び寸法とともに、使用材料は、技術的必要に応じて変更可能である。
【0037】
本発明の保護範囲は、添付の請求の範囲により定義される。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
少なくとも1個のフレームと、少なくとも1個の駆動輪と、少なくとも1個のペダルクランク・ペダルアセンブリ(12)とを備えた自転車用ギアモータアセンブリ(10)であって、
所定の軸線(A)を中心として回転自在な、少なくとも1個のペダルクランクシャフト(14)であって、前記ペダルクランクシャフト(14)は、前記ペダルクランク・ペダルアセンブリ(12)と一体的に結合されることにより、運転者により前記ペダルクランク・ペダルアセンブリ(12)を介して加えられるトルクを受け取り、前記トルクを前記少なくとも1個の駆動輪に伝達するペダルクランクシャフトと、
電子制御ユニットを備えた少なくとも1個の電気モータ(16)と、
少なくとも1個の減速歯車機構(18、20)であって、前記少なくとも1個の電気モータ(16)の出力軸(42)と一体的に結合されるウォーム歯車(18)と、前記少なくとも1個のペダルクランクシャフト(14)を中心として軸線を同じくして設けられる歯車(20)とを備え、前記少なくとも1個の電気モータ(16)により伝達されるトルクを受け取り、前記電気モータにより伝達されるトルクを前記少なくとも1個の駆動輪に、前記ペダルクランクシャフト(14)により伝達するように構成された減速歯車機構と、
少なくとも1個の内側オーバーランニングクラッチ(22)であって、前記ペダルクランクシャフト(14)を中心として軸線を同じくして取り付けられ、前記少なくとも1個のペダルクランクシャフト(14)の第1回転方向にトルクを伝達するように構成される内側オーバーランニングクラッチと、
少なくとも1個の外側オーバーランニングクラッチ(24)であって、前記歯車(20)を中心として軸線を同じくして取り付けられ、前記第1回転方向とは反対方向である、前記少なくとも1個のペダルクランクシャフト(14)の第2回転方向にトルクを伝達するように構成される外側オーバーランニングクラッチとを有し、
前記トルクを伝達する少なくとも1個の駆動輪と運動学的に結合される、少なくとも1個の中空管状体(26)が、前記少なくとも1個の外側オーバーランニングクラッチ(24)と前記少なくとも1個の内側オーバーランニングクラッチ(22)の間に設けられる、前記ギアモータアセンブリ(10)において、
前記少なくとも1個の内側オーバーランニングクラッチ(22)が、前記少なくとも1個の中空管状体(26)の内側に締まり嵌めで収容され、前記少なくとも1個の外側オーバーランニングクラッチ(24)が、前記少なくとも1個の中空管状体(26)の外面に締まり嵌めで設けられ、前記少なくとも1個のペダルクランクシャフト(14)には、2個の調整着座部(28)が両側に設けられ、前記調整着座部の各々の外面には、前記内側オーバーランニングクラッチ(22)の各々が、締まり嵌めで取り付けられることにより、前記ギアモータアセンブリ(10)に、前記少なくとも1個のペダルクランクシャフト(14)と直接接触して設けられる2個の別々の内側オーバーランニングクラッチ(22)を有し、さらに、前記少なくとも1個の中空管状体(26)は、前記2個の別々の内側オーバーランニングクラッチ(22)の外側ハウジングを構成し、前記2個の内側オーバーランニングクラッチ(22)の間の中間位置で前記歯車(20)を中央に
保持する
、着座部を備えた機械加工管体であり、前記歯車(20)の内側には、1個の外側オーバーランニングクラッチ(24)は、軸線を同じくして取り付けられることにより、前記外側オーバーランニングクラッチ(24)の一つが、これを囲む前記歯車(20)と前記少なくとも1個の中空管状体(26)との間に設けられることを特徴とする、ギアモータアセンブリ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
中空管状体26は、これら2個の内側オーバーランニングクラッチ22の外側ハウジングを構成し
、着座部を備えた機械加工管体であって、管体
は、2個の内側オーバーランニングクラッチ22の間の中間位置に歯車20を中央に
保持する。歯車20は、その内側に、外側オーバーランニングクラッチ24が、軸線を同じくして1個取り付けられる。言い換えると、
図4に示すように、外側オーバーランニングクラッチ24は、これを囲む歯車20と、中空管状体26との間に設けられる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
ギアモータアセンブリ10は、ペダルクランクシャフト14と、減速歯車機構18、20の全体と、内側及び外側オーバーランニングクラッチ22及び24とを、付属部品(軸受、スペーサ部材等)とともに収容するクランクケース40を備える。言い換えると、ギアモータアセンブリ10の電気モータ16のみが、クランクケース40の外に位置して、減速歯車機構18、20と接続し、電気モータの出力軸42の各々は、少なくとも部分的にクランクケース40に差し込まれて、減速歯車機構18、20と接続する。
【国際調査報告】