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特表2022-539995冷媒の層流を有するベルヌーイヒートポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】冷媒の層流を有するベルヌーイヒートポンプ
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/00 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
F25B9/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576278
(86)(22)【出願日】2020-07-09
(85)【翻訳文提出日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 IB2020056476
(87)【国際公開番号】W WO2021005557
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】62/872,282
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521555856
【氏名又は名称】ヴェントヴィア エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】マークサマー,イツァーク
(57)【要約】
【解決手段】改良型ベルヌーイヒートポンプであって、ベンチュリ管の吸気部は、冷媒が吸気部から中間(狭小)部の大部分を流れるとき、その流れが本質的に層流になるように、構造化されている。さらに、第2の二相成分が、流れている気体の冷媒に加えられる。二相成分の一部は蒸発して超飽和状態に達し、この状態は、層流によって中間部で維持され、熱吸収を増加させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートソースからヒートシンクに熱を伝達するためのベルヌーイヒートポンプであって、前記ベルヌーイヒートポンプは、
ベンチュリ管であって、ベンチュリ管の長手方向軸の周りで同軸に、かつ、直列にすべて相互接続された、収束する吸気部、狭い中間部、および分岐している排気部を含み、中間部がヒートソースと熱連通している、ベンチュリ管と、
冷媒と、
前記排気部の排気端に配置され、冷媒を、前記ベンチュリ管を通って流すように動作する、送風機と、を含み、
ここで、前記吸気部は、冷媒を層流で中間部に流入させるように構成されている、ベルヌーイヒートポンプ。
【請求項2】
吸気部の内表面は冷媒を前記層流で流すよう成形されている、請求項1に記載のベルヌーイヒートポンプ。
【請求項3】
前記内表面の形状は、ポテンシャル流理論を用いて平面流モデルから導き出すことができる、請求項2に記載のベルヌーイヒートポンプ。
【請求項4】
吸気部の内表面は、ベンチュリ管の長手方向軸の周りで平面曲線を回転させることによって形成される形状を有し、前記平面曲線は、前記長手方向軸に平行な横座標とそこからの距離cπとのデカルト座標において、関数y=c(π-θ)によって定義されており、cはパラメータであり、yは前記平面曲線上の任意の点の縦座標に沿った値であり、θは横座標と、デカルト座標の原点から前記平面曲線上の前記任意の点までの半径ベクトルとの間の角度である、請求項2に記載のベルヌーイヒートポンプ。
【請求項5】
前記冷媒は、気体成分と二相成分を混合した状態で含み、ヒートポンプは、二相成分が、吸気部に入る間に大部分が液相であり、かつ、中間部に入る間にその大部分が気相であるように構成されている、請求項1~4のいずれかに記載のベルヌーイヒートポンプ。
【請求項6】
中間部に入るときに気相である二相成分の一部は、中間部内にあるときは気体成分を過飽和にする、請求項5に記載のベルヌーイヒートポンプ。
【請求項7】
前記過飽和の程度は少なくとも20%である、請求項6に記載のベルヌーイヒートポンプ。
【請求項8】
二相成分は、少なくとも2つの異なる二相流体を含む、請求項5に記載のベルヌーイヒートポンプ。
【請求項9】
吸気部の上流端と前記送風機の下流側とは、周囲の大気と流体連通しており、前記気体成分は大気空気であり、前記ベンチュリ管は、吸気部に配置され、そこを流れる空気に二相流体を噴霧するように動作する1つ以上のノズルをさらに含む、請求項5に記載のベルヌーイヒートポンプ。
【請求項10】
前記二相成分は水を含む、請求項9に記載のベルヌーイヒートポンプ。
【請求項11】
二相流体を調整可能な速度でノズルの1つ以上に供給するように構成される、請求項9に記載のベルヌーイヒートポンプ。
【請求項12】
前記二相成分は、非水性流体を含む、請求項9に記載のベルヌーイヒートポンプ。
【請求項13】
前記非水性流体を前記ノズルのいずれかに再循環することができるように構成される、請求項12に記載のベルヌーイヒートポンプ。
【請求項14】
排気部を出る冷媒から前記非水性流体を抽出する手段と、抽出した非水性流体を水で勢いよく流す手段とをさらに含む、請求項13に記載のベルヌーイヒートポンプ。
【請求項15】
送風機から吸気部に至る冷媒流路をさらに含む、請求項5に記載のベルヌーイヒートポンプ。
【請求項16】
前記流路は、ヒートシンクと熱連通している凝縮器を含む、請求項15に記載のベルヌーイヒートポンプ。
【請求項17】
気体成分の量と二相成分の量は一定である、請求項15に記載のベルヌーイヒートポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にヒートポンプを対象とし、特にベルヌーイ効果に基づくヒートポンプを対象とする。
【背景技術】
【0002】
ベルヌーイ効果に基づくヒートポンプ-すなわち冷却または加熱システムが知られており、以下ベルヌーイヒートポンプと呼ぶ。二相の冷媒を使用する従来のヒートポンプとは異なり、現行技術のベルヌーイヒートポンプの冷媒は、終始気相のままである。典型的には、このようなシステムは、いわゆるベンチュリ管を含み、このベンチュリ管は主に、直列になっている3つの部分、すなわち、狭まる導管として形成される吸気部、細管として形成される中間部、および、拡張する導管として形成される排気部からなる。送風機によって冷媒はベンチュリ管を通って流れ、細管を流れる間の冷媒の速度は大きく増加する。中間部を通る冷媒がこのようにして速度を上昇させるため、ベルヌーイ効果の吸熱的な側面によって温度が下がり、(ヒートソースまたは被冷却媒体と呼ばれる)管を囲むいかなる媒体からも熱を奪うことができる。冷媒が排気部から出た後、その温度は、ヒートソースから放散された熱により吸気部に入る前の温度よりも高くなることがある。この後者の熱は一般に、ヒートシンクとして機能する何らかの媒体に放散される。
【0003】
従来のヒートポンプに勝るベルヌーイヒートポンプの主な利点は、構造が比較的単純であること、したがって比較的安価であること、および比較的エネルギー効率が良いことである。しかしながら、現行技術のベルヌーイヒートポンプには、ヒートソース(被冷却媒体)とヒートシンク(一般により温かい媒体である)との間の達成可能な温度差が比較的小さく、一般に約10℃以下であるという重大な欠点がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、システムのエネルギー効率を維持しながら、または改善さえしながら、温かい媒体と冷たい媒体との間でより大きな温度差を達成することを可能にし、したがって、上記の先行技術のシステムの欠点を克服する、改良されたベルヌーイヒートポンプを提供することである。
【0005】
したがって、本発明の実施形態における新規な特徴は、冷媒が吸気部から中間(狭小)部の大部分に流れるときに、その流れが本質的に層流であり、すなわち、全体の平均速度における局所的な摂動が比較的小さく、したがって乱流を、好ましくは高いレイノルズ数においても最小化するように、吸気部が構造化されているか、内表面が形成されていることである。この結果、流れに対するインピーダンスが減少し、冷媒を吸引する送風機のエネルギー負荷が減少し、このことは、有利には、固有のエネルギー効率と高い流速をもたらし、その結果、より大きな温度低下をもたらす可能性がある。
【0006】
本発明の実施形態における別の新規な特徴は、流れている気体の冷媒に、第2の二相の成分を加えることである。この成分は、吸気部に入る間、液相(例えば、液滴として)であり、その後、ベルヌーイ効果の空気力学的側面により、気体の圧力が減少するにつれて、それが収束する吸気部を通って加速する間に、液体成分の一部が、流れている気体成分内で蒸発する。さらに、この蒸発により、一般に、比較的多量の蒸気が気体成分によって保持されている、いわゆる過飽和の状態になることがあり、そのため、蒸発する液体部分の大きさはかなりのものになる。このような蒸発は吸熱プロセスであるため、前述のベルヌーイ効果の吸熱的な側面により、直接抽出される熱に加えて、結果として生じる混合物からより多くの熱が抽出され、したがって、冷媒の全体的な温度低下を有利に促進する。
【0007】
さらに、いくつかの実施形態では、気化した二相成分は、以下のように、層流の先に述べた新規な特徴と有利に協働することができる。層流のおかげで、冷媒がベンチュリ管の中間部を流れる間、超飽和状態が持続することがあり、したがって、ヒートソースからの全体的な熱吸収が増加し、後者の温度をさらに低下させる。
【0008】
具体的には、ヒートソースからヒートシンクに熱を伝達するためのベルヌーイヒートポンプが開示されており、上記ベルヌーイヒートポンプは、
ベンチュリ管であって、ベンチュリ管の長手方向軸の周りで同軸に、かつ、直列にすべて相互接続された、収束する吸気部、狭い中間部、および分岐している排気部を含み、中間部がヒートソースと熱連通している、ベンチュリ管と、
冷媒と、
前記排気部の排気端に配置され、冷媒を、前記ベンチュリ管を通って流すように動作する、送風機と、を含み、
ここで、吸気部、好ましくはその内表面は、冷媒を層流で中間部に流入させるように構成されている。
【0009】
好ましくは、内表面の形状は、ポテンシャル流(potential flow)理論を用いて平面流モデルから導き出すことができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、吸気部の内表面は、ベンチュリ管の長手方向軸の周りで平面曲線を回転させることによって形成される形状を有し、上記平面曲線は、長手方向軸に平行な横座標とそこからの距離cπとのデカルト座標において、関数y=c(π-θ)によって定義されており、cはパラメータであり、yは上記平面曲線上の任意の点の縦座標に沿った値であり、θは横座標と、デカルト座標の原点から上記平面曲線上の任意の点までの半径ベクトルとの間の角度である。
【0011】
いくつかの実施形態では、冷媒は、気体成分と、混合された二相成分とを含み、ヒートポンプは、二相成分が、吸気部に入る間に大部分が液相であり、かつ、中間部に入る間にその大部分が気相であるように構成されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、中間部に入るときに気相である二相成分の一部は、中間部内にあるときは気体成分を過飽和にする。一般に、過飽和の程度は少なくとも20%である。
【0013】
いくつかの実施形態では、二相成分は、少なくとも2つの異なる二相流体を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、吸気部の上流端と送風機の下流側とは、周囲の大気と流体連通しており、気体成分は大気空気であり、ベンチュリ管は、吸気部に配置され、そこを流れる空気に二相流体を噴霧するように動作する1つ以上のノズルをさらに含む。
【0015】
これらの実施形態のいくつかでは、ヒートポンプは、二相流体を調整可能な速度でノズルの1つ以上に供給するように構成される。
【0016】
これらの実施形態のいくつかでは、二相成分は、水を含み、これらの実施形態のいくつかでは、二相成分は、非水性流体を含む。
【0017】
後者の実施形態のいくつかでは、ヒートポンプは、非水性流体をノズルのいずれかに再循環することができるように構成され、好ましくは、排気部を出る冷媒から非水性流体を抽出する手段と、抽出した非水性流体を水で勢いよく流す手段とを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、ヒートポンプは、送風機から吸気部に至る冷媒流路をさらに含む。これらの実施形態のいくつかでは、流路は、ヒートシンクと熱連通している凝縮器を含む。これらの実施形態のいくつかでは、気体成分の量と二相成分の量は一定である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明は、添付の図面を参照してほんの一例として本明細書に記載される。
図1】開放型(open-air)構成を有する、本発明に係るヒートポンプの例となる実施形態の断面図の概略図である。
図2A図1のヒートポンプの一部の形状を導き出することができる、流れモデルの例を例示する幾何学図である。
図2B図1のヒートポンプの一部の形状を導き出することができる、流れモデルの例を例示する幾何学図である。
図2C】いくつかの実施形態における図1のヒートポンプの一部の形状を定義するための曲線を例示する幾何学図である。
図2D図2Aの流れモデルからの図2Cの曲線の数学的導出を示す。
図3】開放型構成を有する、本発明に係るヒートポンプの別の例となる実施形態の、断面図における概略図である。
図4】閉ループ構成を有する、本発明に係るヒートポンプの例示的な実施形態の、断面図における概略図である。
図5】冷媒中の二相流体の再循環を可能にする、開放型構成を有する本発明に係るヒートポンプの他の例となる実施形態の、断面図における概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
先行技術のヒートポンプと同様に、本発明の実施形態は、主として直列の3つの部分、すなわち、大部分が気体の冷媒を通して流れるようにすべて構成されている、収束する導管として形成された吸気部、細管として形成された中間部、および分岐している導管として形成された排気部からなるベンチュリ管を含んでいる。好ましくは排気部の下流にある送風機によって、冷媒はベンチュリ管を通って流れ、それによって、中間部を流れる間のその速度が、大きく増加する。中間部を通る冷媒がこのようにして速度を上昇させるため、吸熱性のベルヌーイ効果によってその温度が下がり、それにより、中間部と熱的接触しているいかなる媒体(被冷却媒体またはヒートソースと呼ばれる)からも熱を奪うことができる。冷媒が排気部から出た後、その温度は、ヒートソースから放散された熱により吸気部に入る前の温度よりも高くなることがある。この後者の熱は一般に、ヒートシンクとして機能する何らかの媒体に放散される。
【0021】
しかしながら、先行技術のベルヌーイヒートポンプとは異なり、本発明の実施形態における冷媒は、ベンチュリ管の中間部に流入し、その少なくとも一部を層流で流れるようにされる。層流とは、冷媒の速度の局所的な摂動が全体の平均速度よりも実質的に小さく(v’<<V)、したがって乱流を最小にすることであると本明細書では定義される。一般に、このような流れでは、空気などのレイノルズ数の大きい冷媒でも、レイノルズ応力は20~30kg/ms未満となる。
【0022】
この結果、流れに対するインピーダンスが減少し、したがって、冷媒を吸引する送風機のエネルギー負荷も減少する-これは、有利には、固有のエネルギー効率と高い流速をもたらし、その結果、温度低下がより大きくなる。いくつかの実施形態では、冷媒の層流は、吸気部の内表面を適切に成形することによって達成され得る。そのような形状は、以下にさらに例示的なモデルで示すように、ポテンシャル流理論を使用して、2つの相互作用する流体流の平面的な層流のモデルから導き出することができる。次に、このようにして導き出された形状の具体例を説明する。
【0023】
また、従来技術のベルヌーイヒートポンプとは相反して、本発明の実施形態における冷媒は、少なくとも2つの混在した成分で構成されており、一方の成分は気体であり、一方の成分は1つ以上の二相流体である。気体は、ヒートポンプ内で遭遇する温度および圧力の全範囲にわたって気体状態を維持する、任意の流体または異なる流体の組み合わせであってよい。本明細書では、二相流体とは、冷媒の温度および/または圧力の変化に応じて、ヒートポンプを流れる間に-液体と気体の間で-相変化を受けることができるようなものである。
【0024】
動作中、すなわち、冷媒が送風機の作用によりベンチュリ管を流れるとき、二相成分は、吸気部にある間、まず大部分が液相(例えば、液滴として)であり得る。その後、収束する吸気部を通って加速する間に、気体の圧力が(ベルヌーイ効果の空気力学的側面によって)低下するにつれて、液体成分のかなりの部分が、流れている気体成分内で蒸発する(すなわち、気体相に移行する)ことができる。このような蒸発は、それ自体、吸熱プロセスであるため、ベルヌーイ効果の吸熱的な側面によって直接抽出される熱に加えて、結果として生じる混合物からより多くの熱が抽出され、したがって、結果として生じる全体の温度低下を有利に促進する。さらに、気体成分内の二相成分の蒸発は、より多くの量の二相成分が蒸発することができるように、過飽和状態を生成することができ、したがって、冷媒の温度をさらに低下させ、その熱吸収能力を増加させる。例えば、気体が空気であり、二相成分が水である場合(多くの実施形態ではそうである)、過飽和は通常20%~40%の値(すなわち、120%~140%の相対湿度値)に達し得る。さらに、冷媒の層流のおかげで、いくつかの実施形態では、その過飽和状態は、ベンチュリ管の中間部分のすべてではないにしても、大部分を通して保持され得、このことは、有利には、(以下に説明するように)ヒートソースからのより多くの熱が冷媒に吸収されることを引き起こし得る。冷媒中の二相成分の新規な存在とベンチュリ管の中間部内の層流の新規な配置の組み合わせは、従来のベルヌーイヒートポンプで達成可能な温度よりも著しく低い温度まで、ヒートソースをエネルギー効率良く冷却させることができることが理解されよう。本発明のいくつかの実施形態におけるヒートポンプは、典型的には、ヒートソースとヒートシンクとの間の15℃の温度差を達成することができる。
【0025】
さらなる改善として、本発明のいくつかの実施形態では、冷媒の二相成分は、相互に異なる沸点および/または蒸気圧を有する、2つ以上の二相流体を含んでもよい。例えば、そのような流体の1つは水であってもよく、別のものはエタノールまたは別の有機液体であってもよい。これらの流体は、上記のように、ベンチュリ管内ですべて蒸発することができる。これらの流体の部分蒸気圧は相加的であるため、特に冷媒の層流において両者が過飽和状態を保つと、ヒートソースからより多くの熱を吸収する際に協働することができる。
【0026】
本発明の実施形態にかかるヒートポンプは、2つの一般的な構成のうちの1つであってよく、第1の構成は開放型システムであり、第2の構成は閉回路システムである。開放型システムの実施形態は本質的に、上記のベンチュリ管からなり、排気部の下流端に送風機が配置され、吸気部の前面開口と送風機の排気側が周囲の大気に対して実質的に開放されている。したがって、冷媒の気体成分は大気空気であり、周囲の大気は気体成分のリザーバーであるとともに、ヒートシンクの役割を果たす。好ましくは、冷媒の二相成分(例えば、水)を液相で、そこを流れる空気中に噴霧するように適合された1つ以上の噴霧ノズルが吸気部内に配置される。二相成分の流体が水である場合、それは連続的に補充され得るが、それは冷媒が排出される際に大気中に放散される。一部の実施形態のように、二相成分の流体が水以外の場合、それは好ましくは、ベンチュリ管から排出される際に冷媒から抽出され、再循環して吸気部内の冷媒に噴霧される。
【0027】
一部の先行技術のベルヌーイヒートポンプ(例えば、米国特許第US8607579B2号に開示されているものなど)は、流れている気体への液体の注入を含むものがあることに留意されたい。しかしながら、それは、設計上、大部分は液体状態のままであり、そこでのその役割は、単にベンチュリ管の中間部分の壁とのより効果的な熱交換を得ることに過ぎず、本開示のシステムの場合のように蒸発によって冷媒の熱吸収容量を増加させることではない。このような先行技術のヒートポンプでは、注入された液体の一部が気化したとしても、固有の乱流が原因で、そのような蒸気は中間部の表面で凝縮し、こうした凝縮が発熱性であるため、表面に(したがって、ヒートソースに)熱を加えることになり、蒸発の冷却効果の一部を低減させることになる。
【0028】
閉回路システムの実施形態は、(開放型システムと同様に)送風機を伴うベンチュリ管に加えて、送風機の排気側を吸気部の前面開口と接続する比較的広い直径の導管と、上記導管内に挿し込まれ、かつ、ヒートシンクと(場合によっては熱交換器を介して)熱接触する凝縮器とを含む。こうして、閉流路が形成される。二成分冷媒(気体成分と、1つ以上の二相流体を有する二相成分とを含む)が流路内に存在し、送風機は、流路を通ってそれを連続的に循環させるように適合され、および、動作可能である。気体成分は、任意の気体(または気体の混合物)であってよく、二相流体は、その沸点が動作中に流路内で遭遇することになる温度および圧力の範囲内にあるものであってよい。通常、動作中、二相成分は上記のように吸気部で蒸発し、排気部を通過するとき、圧力の上昇により凝縮し始め、凝縮器を通過すると、ヒートシンクへ熱を放散することに起因する温度低下によって完全に凝縮して液体になる。
【0029】
図1および3は、本発明にかかるヒートポンプ、すなわち開放型システムの第1の一般的な配置の例示的な実施形態を概略断面図で示す。図1は、本発明のいくつかの基本的特徴を説明する役目を果たし、図3は、特定の例示的な実施形態の構造をより詳細に示している。
【0030】
中央の長手軸(33)に関して円対称であるベンチュリ管は、細管(10)として形成される中間部からなり、細管(10)は、下記に記載されるように一端で吸気部(20)に接続され、他端で排気部(12)に接続される。後者は円錐形であるが、他の実施形態では、それは、他の広がった形状である場合もあり、その狭い端部は中間部(10)に接続され、中間部(10)の内径と本質的に等しい内径を有する。排気部(12)の広い端部は周囲大気と流体連通し、その中に(または、代替的にその隣に)同軸で配置されるのは送風機(14)であり、これは、排気部の内部から空気を引き込み、それを大気に放出するように動作する。送風機は一般に吸気部の前に配置される場合もあるが、この配置は、吸気部中に望まれない圧力および乱流を引き起こし、したがって、それほど望ましくない。
【0031】
吸気部(20)は、以下に説明されるように、その内面は特殊形状を有する収束する導管(24)を主に含み、導管の狭い端部は中間部につながれ、それらの内径は本質的に等しい。任意選択的に、吸気部(20)は、収束する導管(24)の広い端部につながれ、短い開いた円筒状の前方セグメント(22)を含む。導管(24)の広い端部または前方セグメント(22)は、周囲大気と流体連通している。新規な特徴として、収束する導管(24)の内面の形状は、一般に、入って来る空気が層状に中間部へと流入するように設計される。そのような形状は、流体の2つの収束する流れの平面の層流のモデルを考案し、ポテンシャル流理論に基づいて流れを特徴づける方程式を書き、それらを解いて流れの間の境界線(通常平面の曲線である)を得て、結果として生じた曲線(「プロファイル曲線(profile curve)」あるいは「プロファイル」とも呼ばれる)を、収束する導管(24)の中心軸(33)またはベンチュリ管の中心軸(33)と一致するように、軸まわりで回転させ、所望の形状を形成することによって分析的に得ることができる。
【0032】
そのような曲線の特定の例が曲線(31)として図2Cで例証され、ここで、点Oを原点として、デカルト座標x(横座標に沿った)およびy(縦座標に沿った)に関して示される。曲線(31)は、関数y=c(π-θ)によって好ましくは定義され、ここで、cは設計パラメータを表し、θは、原点Oから曲線上の任意の点までの横座標と動径ベクトルrとの間の角度である。この関数は、流れる流体のポテンシャルの方程式を書き、2つの流れ(flowing streams)の間の境界(図2Dに関して以下に説明される)を表す、いわゆるよどみ線についてそれらを解くことによって、例えば、流体の流入する並行な流れと、点源からの同様の流体の流出との間の合流点の平面のモデル(図2Aに関して以下に説明される)から導き出されてもよい。図2Cで見られるように、曲線は、点Aで値y=0(ここで、x=-c)、点Bで値y=πc/2(ここで、x=0)、および点Eで約2.46cの値(ここで、x=3c)(横座標上の点H)を有する。曲線は、点Eを越えてさらに伸びることができるが、実際的な機能面およびデザイン面を考慮してそこで終了するよう選択された。いずれの場合でも、水平の点線y=πcは、横座標と平行である曲線(31)の漸近線を表す。吸気部(20)の第2のセグメント(収束する導管)(24)の内面の形状(図1)は、漸近線の周りで曲線(31)を回転させ、その漸近線を吸気部(20)の長手軸と整列させることによって形成される。結果的に、例示的な実施形態では、第2のセグメント(24)の内半径は、点Aで、つまり、その広い端部でπcになり(したがって、これは前方セグメント(22)の内半径にもなり)、それは、点Bでπc-πc/2=πc/2になり、点Eで、つまり、その狭い端部で約0.68cになる(したがって、これは中間部(10)の内半径にもなる)。
【0033】
図2Aおよび2Bは、一般に、収束する導管(24)の形状を回転式に画定するためのプロファイル曲線を得るために役目を果たし得る、流れモデルの例を例証する。図2Aは、上述される曲線の導出に関する。それは、左からの並行な均一の流れとして到着する第一の流れ(70)と、ソースの開口部(source orifice)(71)から出現する第2の流れとの合流点(confluence)を例証する。両方の流れの流体は、非常に低いレイノルズ数を有すると想定され、したがって、すべての流れは層流である。第1の流れは、線(72)で表されるように、分離した経路に沿って右に続くのが見られ、第2の流れは、線(73)で表されるように、分離して曲がり、さらに右に流れ続けるのが見られる。2つの流れの間の境界は、曲線(74)によって表される。線(74)の適切なセグメントは、プロファイル曲線として機能して、上に記載されるようにそれを回転させることによって収束する導管(24)の形状を画定することができる。
【0034】
収束する導管(24)のためのプロファイル曲線を導出するために使用され得る層流モデルの別の例として、図2Bはさらに、左からの並行の流れとして到着する第1の流れ(70)と、ソースの開口部(75)から出現し、シンクの開口部(sink orifice)(76)へと流れ込む第2の流れとの合流点を例証し、すべてが層流を有する。第1の流れの代表的な流線(77)および第2の流れの代表的な流線(78)を示す。2つの流れの間の境界は、曲線(79)によって表される(この場合、それ自体で閉じる)。再び、線(79)の適切なセグメントは、プロファイル曲線として機能して、上に記載されるようにそれを回転させることによって収束する導管(24)の形状を画定することができる。
【0035】
図2Aの流れモデルとポテンシャル流理論を使用した、プロファイル曲線(31)のための上に示される関数の数学的導出の例が、図2Dで示される。この特定の数学的導出が拘束力を持たず、同じモデルおよび理論を使用したそのような関数を導く他の導出が可能であることに留意されたい。同様の導出が、他の流れモデル、例えば、図2Bのモデルから他のプロファイル曲線を得るために使用されてもよい。
【0036】
他の実施形態では、導管(24)の内面は、中間部を通る冷媒の流れを層流にする他の形状を有していてもよく、すべては本発明の範囲内である。さらに、いくつかの実施形態では、そのような層流はまた、適切な形状の空気力学的フィン、あるいは第1の部分および/または第2の部分内に適切に位置する他の要素などの他の手段によってもたらされてもよく、すべては本発明の範囲内である。
【0037】
中間部(10)および好ましくはさらに吸気部(例えば、図1中の点DとFの間)の一部を囲み、それと熱的接触しているのは、熱交換器(16)である。次に後者はヒートソースと熱的接触しており、そのヒートソースは適切な容器または導管内の固体あるいは流体であり得る。図3の実施形態では、ヒートソースは、熱交換器(16)を囲む導管(54)を通って流れ得る流体である。流体は、冷却または熱抽出のために必要とされ得る任意の空間(図示せず)からまたはその空間へと、導管(54)を通って、例えば、開口部(55)および(56)を通って循環することができる。他の実施形態では、熱交換器(16)は、冷却されるか、またはそこから熱が抽出される必要がある空間に直接浸されることがある。
【0038】
動作中に、冷媒の気体成分として主に機能する大気空気(30)は、吸気部(20)に流れ込み(送風機(14)の作用によって)、ここで、その流れは、層状的に流れる間に加速し、流れ続け、したがって中間部(10)を通り、その後、減速して排気部(12)および送風機(14)を通って流れ、大気へと戻る。上記空気は、吸気部(20)を通って加速するが、その圧力と温度の両方は低減するようになり、中間部(10)に到達するときにそれぞれの最小値に達する。熱交換器(16)と熱的接触して流れる間(中間部内、および任意選択で吸気部の一部内で)、それは、ヒートソースから熱交換器(16)を通って熱を吸収する(矢印(34)によって概略的に示される)。これはヒートソースの温度を低下させ、空気の温度を上昇させる。次に、空気が排気部を通って減速する間、その圧力と温度は正常に戻り、かつ(吸収された熱に起因して)大気よりも高くなり得、その後、最終的に大気と混ざり合い、それによって、吸収された熱を放散することができる。層流に起因して、中間部(10)を通る流速は、(従来技術のベルヌーイヒートポンプにおけるように)流れが乱流する場合と比べて、送風機(14)の所定の力に対してかなり高くなり、したがって、流れている空気の温度はかなり低く、ヒートソースを相応により低くし、そこからの熱吸収率を相応により高くすることが可能になる。
【0039】
吸気部(20)内に(例えば、図1の実施形態でのように前方セグメント(22)の壁、あるいは図3の実施形態でのように導管(24)の端部の近くで)配置されるのは、液相の二相冷媒成分(32)、好ましくは水を、流れている空気(30)へと噴霧するように動作する1つ以上のスプレーノズル(26)である。図3に示されるように、二相成分は、供給管(27)を通ってノズル(26)に供給されることができ、ここで、その供給速度は調節弁(28)によって調節され得る。
【0040】
動作中に、液体成分(32)は空気(30)中に(場合によっては液滴またはミストとして)分散され、この混合物は(上述されるように)圧力の減少を受けると、流体の本質的な部分は、過飽和するのに十分なほど空気内で蒸発する。過飽和の状態は、層流により、中間部(10)全体にわたって保持され得る。本発明の有利な特徴として、流体の蒸発の吸熱の効果が、冷媒全体の加速により吸熱のベルヌーイ効果と組み合わされて、冷媒全体の温度をベルヌーイ効果だけで達成可能な温度よりもかなり低下させることに留意されたい。二相成分のより大きな割合をこのように蒸発することができるため、その効果が過飽和によって増強されることが注目される。
【0041】
熱交換器(16)を通って流れる間に、このように冷却された冷媒は、上で説明されるように、ヒートソースから熱交換器を通して熱を吸収する。しかし、熱吸収率は、上に述べられるように、冷媒の温度の低下に起因して、二相成分の存在によって増大する。加えて、冷媒の温度の低下により、ヒートソース(冷却される媒体)におけるより大きな程度の温度低下を達成することも可能になる。(熱吸収に起因して)冷媒の温度が上昇するが、二相成分は気体状態のままであるため、上に記載されているような層流に起因して中間部(10)全体にわたって保持されている過飽和の効果が、冷媒による熱吸収率のさらなる増大に寄与し得ることに留意されたい。
【0042】
任意選択的に、(液体)二相成分の噴霧速度は、中間部の初めで蒸発して、過飽和になり得る速度を越えて増大することができ、その結果、その一部は液体のミストとして冷媒中で分散したままである。冷媒が中間部(10)を通って流れて、熱交換器(16)から熱を吸収する間、その温度はわずかに徐々に上昇する。その結果、ミストの一部は蒸発し、それにより、熱吸収および冷媒の温度を比較的低く保つことにさらに寄与し得る。
【0043】
冷媒が排気部(12)を通って流れ、したがって膨張すると、その温度と圧力は上昇し、その後者は上昇して冷媒の二相成分を凝縮させるか、または液化させる(再び液滴またはミストとして)。最後に、排気される空気が大気と混ざると、それによってヒートソースから吸収された熱はすべて大気によって消散し、したがって大気はヒートシンクとして機能し、同時に、排出された空気中に分散する液体(水)は、システムから有効に取り除かれる。
【0044】
図3を再び参照すると、例として、改善、すなわち、沈澱槽(50)の排気経路(つまり、排気部(12)と送風機(14)の間)における介在(interjection)が示される。その介在は、冷媒中で分散された液体成分の一部を、送風機(14)に到達する前に沈殿させ、したがって、腐食を引き起こすか、あるいは他の方法で損害を与える可能性がある液体の蓄積から送風機を保護するのに役立つ。沈殿した液体(51)は、沈澱槽(50)の底部に蓄積され得、その沈澱槽(50)から、例えば、栓(52)によって定期的に除去され得る。
【0045】
次に図4を参照すると、本発明の第2の一般的な配置、すなわち、閉回路ベルヌーイヒートポンプシステムの例示的な実施形態が、概略断面図で示される。その配置は、直列になった吸気部(20)、中間部(10)、および排気部(12)を含むベンチュリ管、ならびに送風機(14)および熱交換器(16)を、第1の配置と共有している。さらに、この例示的実施形態では、熱交換器を囲む任意の導管(54)が示され、その導管(54)は、液体がそれを通って流れるように構成される。これらはすべて、上に記載される図1および3の配置で対応するものと、構造と機能の点で類似している。スプレーノズル(図1の(26))は含まれない。しかし、本配置は、加えて、吸気部(20)の広い末端に排気部(12)の広い末端を接続する流路を含む。この流路は、直列になったダクト(40)、凝縮器(44)、およびダクト(42)からなり、したがって、閉鎖した流れ回路を形成する。この回路は、気体成分と二相成分(これは1つ以上の異なる二相流体からなり得る)とを含む二成分の冷媒で永久に満たされ、すべてが混ざり合っている。動作中に、この冷媒(30)は、絶えず閉回路を通って循環する。凝縮器(44)は、第2の熱交換器(46)と熱接触しており、第2の熱交換器(46)は、冷媒から凝縮器を通って媒体(図示せず)へと熱(48)を伝達するように機能し、その媒体は、熱交換器(46)と熱接触し、ヒートシンクとして機能する。例証された例示的な実施形態では、ヒートシンクは、大気空気を取り囲んでおり、熱伝達はファン(47)によって支援される。例えば、他の実施形態では、ヒートシンク媒体は流れる液体であり得る。
【0046】
閉回路ヒートポンプ中の冷媒成分は、例えば、気体成分としての空気、二相成分としての水を含む、任意の適切な物質からなり得る。適切な物質の選択は、特定の用途、外部条件、および機能要件、例えば、熱損失率、または温められた媒体と冷却された媒体の温度の範囲に依存し得る。二相成分は、蒸気圧が比較的高い(つまり、比較的大きな割合が過飽和下の気体成分内で蒸発する)1つ以上の流体を含むことが好ましい。水以外のそのような流体の例は、フレオン(Freon)、およびエタノールなどの様々な有機液体である。
【0047】
図4のシステムの動作は以下の通りである。冷媒は送風機(14)によって回路全体を通って循環する(35)。凝縮器から出現し、ダクト(42)を通って流れる場合、二相成分は大部分が液相であり、ガス内に分散した液滴またはミストを形成し得る。吸気部(20)を通って加速すると、冷媒全体はベルヌーイ効果により冷却されるが、液体は圧力の減少により蒸発し、これにより、さらなる冷却が引き起こされ、結果として温度がヒートソースよりもかなり低くなる。吸気部を通り、その後、中間部(10)を通る流れは、吸気部の内面の特殊形状ゆえに層流であり(その形状は、上に説明されるように、図1のシステムにおける形状と類似し得る)、したがって、冷媒は過飽和状態のままである、つまり、有意な凝縮がない。吸気部および中間部(例えば、図1における点Dと点Fの間)の遠い部分を通って流れている間、このように冷却された冷媒は、熱交換器(16)を介してヒートソース(図示せず)から熱を吸収し、さらにそれを冷却する。
【0048】
排気部(12)を通って膨張すると、冷媒の圧力と温度が上昇する。送風機(14)を通過した後、およびダクト(40)を通って流れる間に、圧力は、送風機の動作によってさらに上昇する。結果的に、二相成分は凝縮し始め、これは発熱プロセスであり、したがって、温度は、ヒートシンクよりもかなり高い温度までさらに上昇する。凝縮器(44)を通って流れる間、冷媒は、熱交換器(46)を介して熱(48)をヒートシンク(図示せず)に伝達し、したがって、冷却される。結果的に、二相成分のより多くが凝縮または液化し、サイクルは、上に記載されるように再び始まる。
【0049】
図1および3などに例証される実施形態における開放型のベルヌーイヒートポンプは、二相成分が水である場合、比較的経済的である。なぜなら、排出される冷媒中の凝縮水は大気中に分散されるが、連続的に水を補充することができる、つまり、新しい水がスプレーノズルに供給され得るからである。しかし、閉回路配置に関して上述されるように、二相成分中の水以外の体液を使用することが時々有利である。そして、連続的な補充は通常、非経済的である。図5は、そのような二相流体の再循環を特徴とする、開放型のベルヌーイヒートポンプの例示的な実施形態の概略断面図であり、したがって、上述されるように、二相成分が任意の適切な流体を経済的に含むことを有利に可能にする。
【0050】
図5に例示される例示的な実施形態は、開放型のベンチュリ管を含むという点で図3の実施形態に類似し、吸気部(20)(層流のために成形された収束する導管(24)を有する)、狭い中間部(10)、および排気コーン(12)、続いて、沈澱槽(50)および送風機(14)を含む。この実施形態も同様に、ヒートソース媒体を流れるための導管(54)によって任意選択的に囲まれた中間部(10)との熱接触している、熱交換器(16)を含む。しかし、図5の実施形態は、送風機(14)の下流に配置された流体抽出ボックス(60)を含み、他の実施形態では、流体抽出ボックス(60)は送風機の上流、例えば、沈澱槽(50)の頂部に配置されてもよい。流体抽出ボックス(60)は多孔質材料で満たされていてもよく、多孔質材料は、排出冷媒がそれを通って流れ、そのような流れの間に、冷媒中に分散された液相の流体の少なくとも一部を吸収または吸着するように作用する。この材料は、例えば、活性炭であり得る。流体抽出ボックス(60)は、入口窓および出口窓にそれぞれ、シャッター(67)および(68)が設けられているのが好ましい。流体抽出ボックス(60)に流体接続されているのは、フラッシュ(flush)供給管(61)(その他端は、弁(63)を介して主水供給源(mains water supply)に接続される)と、フラッシュ排水管(62)(その他端は沈澱槽(50)の底部に流体接続され、ここで液相の二相流体(51)が蓄積され得る)である。液体供給管(64)は、流量調節弁(65)を介して、沈澱槽(50)の底部と、吸気部(20)の1つ以上のスプレーノズル(16)との間を接続する。プール(51)中の流体は典型的に、水と1つ以上の他の二相流体の混合物(以下にさらに記載される)である。
【0051】
図5のヒートポンプは基本的に、上述の図3の実施形態と同様に動作し、それによって、二相流体と混合された空気が、ベンチュリ管全体を通って流れるが、(新規な特徴として)それは流体抽出ボックス(60)を介して排出される。さらに、新規な特徴として、流れている気体に噴霧された二相体液は、沈澱槽(50)の底部にある液体のプール(51)から、液体供給管(64)を通って、ノズル(16)へと連続的に供給される。気圧が大気中の気圧よりも既に低い場合、ノズル(16)は収束する導管(24)の狭い末端の近くに配置されるのが好ましく、したがって、流体は、圧力差によってプール(51)からノズル(16)の外へと流される。この流れの速度は、調節弁(65)によって調節され得る。排出冷媒が沈澱槽(50)の上部を通って流れると、その中で分散した液化二相流体の一部はタンクの底部に沈殿し、プール(51)に合流する場合がある。排出冷媒が流体抽出ボックス(60)を通って流れ続けると、その中で分散した液化流体の残っている非水性部分のほとんどは、多孔質材料(例えば、活性炭)によって吸収または吸着され、したがって、排出冷媒から抽出され得る。
【0052】
経時的に、抽出された流体は、流体抽出ボックス(60)に蓄積され得る。したがって、流体抽出ボックスから蓄積された流体を勢いよく流し、それをプール(51)に戻すことが時々必要となり得る。このプロセスは以下のように行なわれ得る。(送風機(14)を止めることによって)ヒートポンプの動作を一時的に止め、通常は開位置(例えば、跳ね上げ)にあるシャッター(67)および(68)を一時的に閉じ(図面で概略的に示されるように)、水が本管(mains)から、供給管(61)、流体抽出ボックス(60)、およびフラッシュ排水管(62)を通ってプール(51)へと流れるように、弁(63)を開ける。このプロセス中に、流水が、流体抽出ボックス中の材料によって吸収または吸着された流体を溶解し、それをプールへと勢いよく流す。プロセスの終わりに、ヒートポンプの正常な動作が再開され得る。このように、冷媒の二相成分の非水性部分の大部分が再循環し、大気中に失われたわずかな量だけを補充する必要があることが理解される。対照的に、二相成分のほとんどの水性部分が再循環しないが、上述されるプロセスの間に水を勢いよく流すことよって補充されることが注目される。
【0053】
図5の例示的な実施形態では、上に記載されるように、冷媒の二相成分は2つの部分、すなわち、水と非水性流体とからなる。抽出された非水性流体を勢いよく流すために、この実施形態では水が必要とされる。他の実施形態では、追加の流体を必要としないような、非水性流体を抽出し再循環させるための他の手段が使用されてもよい。本発明の範囲内であるそのような実施形態では、単一の非水性体液は、冷媒の二相成分として機能し得る(図4に関して記載されるものなど、閉回路ヒートポンプにおける場合のように)。しかし、上述されるように、ヒートポンプの任意の配置において、二相成分として2つ以上の様々な流体を使用することが一般に有利な場合がある。このことは、それらが気体成分内で蒸発する場合、それらの部分的な蒸気圧が、(過飽和状態でさえも)付加的(additive)であるという事実による。したがって、それらの各々は、ベンチュリ管の中間部を通って流れる間に冷媒の熱吸収度に独立して寄与することができ、したがって、それらはより大きな全体的な冷却効果を可能にすることができる。
【0054】
上記説明における数値例は、ほんの一例としてあり、設計最適化プロセスにおいて変動することがある。本発明の様々な実施形態において、その態様の2つ以上が組み合わされて、最適化された設計にされ得ることも理解される。さらに、上記の説明は例としてのみ機能することが意図され、添付の請求項で定義される本発明の範囲内で他の多くの実施形態が可能であることが理解される。
【0055】
添付の請求項が複数の従属なしに作成されている限り、これは、そのような複数の従属を許可しない管轄における方式要件に適応させるためだけに行われている。請求項を複数に従属させるようにすることによって暗示される特徴のあらゆる可能な組み合わせが明示的に想定されており、本発明の一部と見なされるべきであることに留意されたい。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
【国際調査報告】