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特表2022-539999併用療法の方法、組成物およびキット
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  • 特表-併用療法の方法、組成物およびキット 図1A
  • 特表-併用療法の方法、組成物およびキット 図1B
  • 特表-併用療法の方法、組成物およびキット 図1C
  • 特表-併用療法の方法、組成物およびキット 図2
  • 特表-併用療法の方法、組成物およびキット 図3
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  • 特表-併用療法の方法、組成物およびキット 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】併用療法の方法、組成物およびキット
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/06 20060101AFI20220907BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 31/225 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20220907BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220907BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220907BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 31/606 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
A61K38/06
A61P25/00 ZNA
A61K31/225
A61K31/137
A61P43/00 121
A61P37/02
A61P25/28
A61K45/00
A61K31/606
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576705
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(85)【翻訳文提出日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2020068604
(87)【国際公開番号】W WO2021001464
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】19382566.8
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】521559599
【氏名又は名称】アキュア セラピューティクス,エセ.エレ.
【氏名又は名称原語表記】ACCURE THERAPEUTICS,S.L.
【住所又は居所原語表記】C.Baldiri Reixac 4-8,Torres I,planta 5,B7,08028 BARCELONA(ES)
(71)【出願人】
【識別番号】521559603
【氏名又は名称】インスティテュ ディンベスティガシオンス ビオメディクス アウグスト ピ イ スニェール(イデイベーアーペーエセ)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT D‘INVESTIGACIONS BIOMEDIQUES AUGUST PI I SUNYER(IDIBAPS)
【住所又は居所原語表記】C.Rossello,149-153,08036 BARCELONA(ES)
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィジョスラダ ディアス,パブロ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA23
4C084BA01
4C084BA15
4C084BA23
4C084BA32
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA01
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC02
4C086BC71
4C086BC82
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZA01
4C086ZB07
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB29
4C206DB43
4C206FA08
4C206JA09
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA72
4C206MA86
4C206NA05
4C206ZA01
4C206ZB07
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、a)式(I)の化合物(式中、R、R、およびRは特定の意味を有する)またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩と、(b)i)式(IV)の化合物(式中、RおよびRは特定の意味を有する)、またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、ii)スフィンゴシン-1-リン酸受容体阻害剤(S1PRモジュレーター)、およびiii)シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)阻害剤からなる群から選択される1つ以上の薬物と、を含む組合せに関する。特定の組み合わせおよび単一の医薬組成物およびキットオブパーツが開示される。これらの組み合わせ、単一の医薬組成物および部品のキットオブパーツは、軸索またはミエリンの破壊または変性をもたらし得る炎症性神経疾患または状態の治療および/または予防を必要とする対象において、該治療および/または予防のために使用される。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩;並びに
b)
i)式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩;
ii)スフィンゴシン-1-リン酸受容体阻害剤(S1PRモジュレーター);及び
iii)シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)阻害剤;
からなる群から選択される1以上の薬物、
を含む、組み合わせ。
【化1】


式中、
は、ハロゲンまたはトリフルオロメチルで置換され、さらにハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、およびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1個又は2個の置換基で任意に置換されたフェニルであるか、あるいは、Rはピロリジン-1-イルであり、
は、2-オキソ-ピロリジン-1-イルメチルまたはスルファモイルフェニルであり、および
は、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、2-メチルプロピル、ペンチル、1-メチル-ブチル、2-メチルブチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-メチルペンチル、および1-メチルペンチルから選択される。
【化2】


式中、
は水素(H)および(C-C)アルキルから選択され、RはH、(C-C)アルキルおよび2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチルから選択され、RがHである場合、RはH以外である。
【請求項2】
式(I)の化合物と、式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、S1PRモジュレーターおよびSTAT3阻害剤からなる群から選択される薬物とを含む、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
式(I)の前記化合物において、Rが2-メチルプロピルであり、RおよびRが請求項1に定義される通りである、請求項1から2のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項4】
前記式(I)の化合物が、
【化3】


からなる群から選択される、請求項3に記載の組合せ。
【請求項5】
式(IV)の前記化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩において、RおよびRが独立して、水素(H)および(C-C)アルキルから選択され、RおよびRの少なくとも1つが(C-C)アルキルである、請求項1から4のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項6】
式(IV)の前記化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩が、フマル酸ジメチルおよびフマル酸モノエチルからなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項7】
式(IV)の前記化合物において、Rが2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチルであり、Rがメチルである、請求項1から4のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項8】
S1PRモジュレーターが、フィンゴリモド、シポニモド、オザジモド、ポネシモドおよびセラリフィモドからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項9】
STAT3阻害剤が、2-ヒドロキシ4-[[[[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ]アセチル]アミノ]-安息香酸、(S,E)-3-(6-ブロモピリジン-2-イル)-2-シアノ-N-(1-フェニルエチル)アクリルアミド、4-((3-(カルボキシメチルスルファニル)-4-ヒドロキシ-1-ナフチル)スルファモイル)安息香酸、配列番号1のSTAT3阻害剤ペプチド、6-ニトロベンゾ[b]チオフェン-1,1-ジオキシド、エチル-1-(4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)-6,7,8-トリフルオロ-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキシレート、5,15-ジフェニルポルフィリン、PIAS3タンパク質、N-(5-(フラン-2-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)-2-フェニルキノリン-4-カルボキサミド、配列番号2のSTAT3阻害剤XII SPI、およびN-(1’2-ジヒドロキシ-1,2’ビナフタレン-4’-イル)-4-メトキシベンゼンスルホンアミドからなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項10】
以下から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の組み合わせ:
式(I)の前記化合物[N-(2-(2’-フルオロフェニル)エチル)グリシル]-[N-(2-メチルプロピル)グリシル]-N-[3-(2’-オキソピロリジニル)-プロピル]グリシンアミドと、フマル酸ジメチル、または、
式(I)の前記化合物[N-(2-(2’-フルオロフェニル)エチル)グリシル]-[N-(2-メチルプロピル)グリシル]-N-[3-(2’-オキソピロリジニル)-プロピル]グリシンアミドと、フィンゴリモド、または、
式(I)の前記化合物[N-(2-(2’-フルオロフェニル)エチル)グリシル]-[N-(2-メチルプロピル)グリシル]-N-[3-(2’-オキソピロリジニル)-プロピル]グリシンアミドと、2-ヒドロキシ-4-[[[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ]アセチル]アミノ]-安息香酸。
【請求項11】
a)式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩と、
b)上記で定義される
i)式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、
ii)S1PRモジュレーターおよび
iii)STAT3阻害剤
からなる群から選択される1つ以上の薬物と、
を含み、
a)の量およびb)の量が、組み合わせて治療上有効である、請求項1から10のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項12】
a)の量がそれ自体では治療量以下の量であり、a)およびb)の量が、組み合わせて治療上有効であり、治療有効量未満の特定の化合物の量および特定の疾患に対して定義される、治療量以下の量である、請求項1から11のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項13】
b)の量がそれ自体では治療量以下の量であり、a)およびb)の量が、組み合わせて治療上有効であり、特定の疾患に対する治療有効量を下回る特定の化合物の量として定義される、治療量以下の量である、請求項1から11のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項14】
a)の量およびb)の量が、それ自体では治療量以下の量であり、a)およびb)の量が、組み合わせて治療上有効であり、特定の疾患に対する治療有効量を下回る特定の化合物の量として定義される、治療量以下の量である、請求項1から11のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項15】
治療有効量の:
a)式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩と、
【化4】


b)式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、S1PRモジュレーターおよびSTAT3阻害剤からなる群から選択される1つ以上の薬物と、
【化5】


1つ以上の薬学的または獣医学的に許容される賦形剤または担体と一緒に含み、
式(I)の前記化合物および1つ以上の薬物が、請求項1から11のいずれかに定義される通りであり、a)の量およびb)の量が、組み合わせて治療上有効である、単一の医薬組成物または獣医学的組成物。
【請求項16】
i)所定量の、請求項1から11のいずれかに定義される式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的もしくは獣医学的に許容される賦形剤または担体と共に含む、第1の医薬組成物または獣医学的組成物と、
ii)所定量の、式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、S1PRモジュレーターおよびSTAT3阻害剤からなる群から選択される1つ以上を、1つ以上の薬学的または獣医学的に許容される賦形剤または担体と共に含む、第2の医薬組成物または獣医学的組成物と、
iii)i)およびii)を組み合わせて使用するための説明書と、
を含み、
第1および第2の組成物が、別々の組成物であり、i)の式(I)の化合物の量およびii)の1つ以上の薬物の量が、組み合わせて治療上有効である、パッケージまたはキットオブパーツ。
【請求項17】
軸索またはミエリンの破壊または変性をもたらし得る炎症性神経疾患または症状の治療および/または予防を必要とする対象において、該治療および/または予防に使用するための、請求項1から14のいずれかに定義される組み合わせ、請求項15に定義される単一の医薬組成物もしくは獣医学的組成物、または請求項16に定義されるパッケージもしくはキットオブパーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月3日に出願された欧州特許出願第19382566.8号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、神経疾患の分野の分野、および併用療法を使用してそれらを治療するための特定のアプローチに関する。
【背景技術】
【0003】
軸索またはミエリンの破壊または変性をもたらし得る炎症性神経疾患または症状として、限定されないが、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、バロ病、シルダー病、横断性脊髄炎、急性出血性白質脳炎(すなわち、ハースト病)、およびマールブルク病(すなわち、急性MS)などの様々な中枢神経系(CNS)疾患が挙げられる。
【0004】
MSは、免疫系が軸索および神経線維を取り囲むミエリン保護鞘を攻撃して損傷させ、著しい障害をもたらす、中枢神経系(CNS)の変性自己免疫疾患である。MSは、脱髄、多巣性炎症、反応性神経膠症、ならびに乏突起膠細胞および軸索喪失を特徴とする。MSに罹患した個人が典型的に経験する3つの臨床疾患経過としては、再発寛解型MS(RRMS)、二次進行型MS(SPMS)、一次進行型MS(PPMS)が存在する。RRMSは最も一般的な疾患経過であり、MS患者の約85%が罹患し、神経機能の悪化として明確に示される発作(すなわち、再発)を特徴とする。これらの再発の後、部分的または完全な回復期間が続き、その間に、症状は部分的または完全に改善し、疾患の進行はない。RRMSを有するほとんどの個人は、最終的にはSPMSに移行することとなるが、これは、再発および寛解を経験する期間の後、再発の有無にかかわらず、疾患がより着実に進行し始めることを意味する。PPMSは、MS患者の約10%が罹患し、明確な再発または寛解がなく最初から神経機能が着実に悪化することを特徴とする。MSの症状、重症度、および経過は、損傷を受けるミエリンの部位および脱髄の程度に応じて変化する。
【0005】
NMO(デビック病またはデビック症候群としても知られる)またはNMOスペクトル障害(NMOSD)は、免疫系細胞および抗体が、視神経、脳および脊髄の星状膠細胞を誤って攻撃および破壊し、二次的な脱髄および軸索喪失を誘導する、CNSの自己免疫障害である。視神経の損傷は視神経炎を引き起こし、これは腫脹および炎症を生じさせ、疼痛および視力喪失を引き起こす。脊髄の損傷は、脚または腕の脱力または麻痺、感覚の喪失、ならびに膀胱および腸の機能の不具合を引き起こす。いずれの疾患も類似の症状を有し、視神経炎および脊髄炎の発作を引き起こしうるため、NMOはMSと混同される可能性があり、また最近までMSが重篤なものに変化したものと考えられていた。しかしながら、最近の研究では、NMOおよびMSが別個の疾患であることが示唆されている。
【0006】
視神経炎は、多くの異なる症状によって引き起こされ得る視神経の脱髄性炎症であるが、MSおよびNMOに関連して引き起こされることが多い。炎症は視力喪失または失明さえ引き起こし得るが、それは多くの場合、視神経を覆うミエリン鞘の膨潤および破壊によるものである。視神経炎の症状としては、かすみ目、色のぼやけ、眼を動かしたときの痛み、盲点およびコントラスト感度の喪失が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、MSの治療法は存在しない。適用可能な治療は、RRMSを含む再発型のMSを有する患者のサブセット、および再発を経験するSPMSを有する患者を対象とするものである。米国食品医薬品局(FDA)で承認された治療のほとんどは、再発の頻度を減少させ、MSの進行を遅延させる免疫調節薬である。しかしながら、これらの治療は、その有効性が限定的であり、神経保護効果または再生効果を発揮することなく、免疫系の活性化のみを標的とする。さらに、現在の治療法は、有害な免疫反応または重度の日和見感染などの重大な副作用と関連する。
【0008】
現時点では、NMOを治癒させる方法も存在しない。NMOのための標準的なケアとしては、静脈内への高用量コルチコステロイド投与、再発を治療するための血漿フェレーシス、ならびに再発予防のためのリツキシマブ、アザチオルピンおよびミコフェノラートが挙げられ、これらは感染症などの重篤な副作用を生じさせ得る。NMOの再発可能性は90%を超え、攻撃は一般に重度であるため、免疫系を抑制するための継続的な処置が必要であると考えられる。したがって、当技術分野では、MS、NMO、視神経炎、バロ病、シルダー病、横断性脊髄炎、急性出血性白質脳炎(すなわち、ハースト病)、およびマールブルク病(急性MS)などの、軸索またはミエリンの破壊または変性をもたらし得る、炎症性神経疾患または症状を治療するより効果的な方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、式(I)の化合物(下記参照)と、免疫調節活性および/または抗酸化作用および/または抗炎症活性を有する1つ以上の薬物と、を含む組み合わせが、対象において、軸索またはミエリンの破壊または変性をもたらし得る炎症性神経疾患または症状において有意な治療活性を提供することを見出した。驚くべきことに、式(I)の化合物の少なくとも1つまたは1つ以上のさらなる薬物が、治療量以下と考えられ分類される用量で投与された場合であっても、化合物の上記組み合わせによる使用は所望の効果を増強または強化した。この組み合わせは、治療効果の改善および関連する副作用の顕著な低下を想定させるものであった。より驚くべきことは、対象において、軸索またはミエリンの破壊または変性をもたらし得る炎症性神経疾患または症状に対する、これらの顕著な治療活性の効果が、単一の活性剤として投与された場合の、各化合物の最適量以下または治療量以下の用量であっても達成されたという事実であった。すなわち、式(I)の化合物と他の特定の化合物との特定の組み合わせは、各化合物を単独で投与する場合よりも、これらの疾患において治療量以下の用量で顕著に大きな改善を示した。さらに、式(I)の化合物と、活性であると予想される用量よりも低い用量で投与される1つ以上の追加の薬物との組み合わせは、炎症性神経疾患または症状の慢性期または進行時期もしくは段階において有効であった。
【0010】
化合物を組み合わせて使用した場合のこの予想外の改善効果は、炎症性神経疾患に広く用いられる動物モデル、すなわち自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の実験マウスにおいて示された。その結果により、本発明者らは、式(I)の化合物、ならびに免疫調節活性および/または抗酸化活性および/または抗炎症活性を有する1つ以上の薬物を、組み合わせて使用した場合、神経疾患のこれらの無力化効果が低下するように、EAEマウスの臨床スコアを改善することができることを見出した。この増強または改善された効果は、酸化ストレス、アポトーシス、オートファジー、シナプスのプルーニング、エネルギー代謝バランスなどの、各薬物による異なる生物学的経路の活性化による、細胞損傷につながるカスケードの防止への収束に起因すると考えられる。
【0011】
したがって、本発明の第1の態様は、
a)以下の式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩と、
b)以下からなる群から選択される1つ以上の薬物と、
i)式(IV)の化合物、またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩;
ii)スフィンゴシン-1-リン酸受容体モジュレーター(S1PRモジュレーター);および
iii)シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)阻害剤
を含む組み合わせに関する。
【0012】
【化1】


式中、
は、ハロゲンまたはトリフルオロメチルで置換され、さらにハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、およびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基で任意に置換されたフェニルであるか、あるいは、Rはピロリジン-1-イルであり、
は、2-オキソ-ピロリジン-1-イルメチルまたはスルファモイルフェニルであり、および
は、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、2-メチルプロピル、ペンチル、1-メチル-ブチル、2-メチルブチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-メチルペンチル、および1-メチルペンチルから選択される。
【0013】
【化2】


式中、
は、水素(H)および(C-C)アルキルから選択され、Rは、H、(C-C)アルキルおよび2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチルから選択され、RがHである場合、RはH以外である、
【0014】
本発明の化合物は、様々な種類の組成物/キットに製剤化され得る。したがって、本発明の第2の態様は、
a)式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩と、
b)i)式(IV)の化合物、またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、ii)S1PRモジュレーター、およびiii)STAT3阻害剤からなる群から選択される1つ以上の薬物と、を、
1つ以上の薬学的または獣医学的に許容される賦形剤または担体と共に含む、単一の薬学的または獣医学的組成物に関し、
式(I)の化合物および該薬物は、第1の態様で定義される通りであり、a)の量およびb)の量は、組み合わせて治療上有効である。
【0015】
本発明の第3の態様は、
i)所定量の、上記で定義した式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的もしくは獣医学的に許容される賦形剤または担体と共に含む、第1の医薬組成物または獣医学的組成物と、
ii)所定量の、式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、S1PRモジュレーターおよびSTAT3阻害剤からなる群から選択される1つ以上を、1つ以上の薬学的または獣医学的に許容される賦形剤または担体と共に含む、第2の医薬組成物または獣医学的組成物と、
iii)i)およびii)を組み合わせて使用するための説明書と、
を含むパッケージまたはキットオブパーツ(kit of parts)に関し、
第1および第2の組成物は、別々の組成物であり、i)の式(I)の化合物の量およびii)の1つ以上の薬物の量は、組み合わせて治療上有効である。
【0016】
さらに、上述のように、本発明の組み合わせは、軸索またはミエリンの破壊または変性をもたらし得る炎症性神経疾患または症状において使用され得る。
【0017】
したがって、本発明の第4の態様は、軸索またはミエリンの破壊または変性をもたらし得る炎症性神経疾患または症状の治療および/または予防に使用するための、上記で定義された、組み合わせ、単一の医薬組成物もしくは獣医学的組成物、またはパッケージもしくはキットオブパーツに関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】実施例1に関連して、試験EAE-C03の1日当たりの臨床スコア(CS)を示し、そこでは、異なる用量のBN201による毎日の処置の効果をプラセボと比較した。17日間の処置後、臨床スコアは、BN201(100mg/kg)およびBN201(50mg/kg)で処置した群において、病理学的対照群よりも有意に低くなり始めた(**p≦0.01、*p≦0.05)。
図1B】実施例1に関連して、1日あたりの臨床スコア(CS)試験EAE-C05を示し、異なる用量のBN201および2つの活性比較薬(フマル酸ジメチルDMFおよびフィンゴリモドFTY720)による毎日の処置の効果を、プラセボと比較した。5日間の処置後、臨床スコアは、BN201(100mg/kg)およびFTY720で処置した群において、病理学的対照群よりも有意に低くなり始めた(**p≦0.01、*p≦0.05)。
図1C】5つの異なる濃度のBN201(12.5mg/kg、25mg/kg、50mg/kg、100mg/kg、150mg/kg)を試験した、1日あたりの臨床スコア(CS)試験EAE-C06を示す。また、偽薬、病理学的対照およびFTY720(2mg/kg)比較群も実験に含めた。すべての群において毎日投与した。ほぼ全ての日(2日目~30日目)の観察/処置にわたって、BN201 50mg/kg、BN201 100mg/kgおよびFTY720 2mg/kgの動物において、臨床(CS)スコアの有意な改善が観察された(**p≦0.01、*p≦0.05)。
図2】実施例2に関連する、フィンゴリモド(黒の菱形/ダイアモンド形)、BN201(白の四角)、フィンゴリモドとBN201との組み合わせ(黒の丸)およびプラセボ(白の三角)で処置したEAEマウスの1日当たりの臨床スコア(CS)のプロットである。矢印は処置開始日を示す。X軸は、EAE表現型を発症するまでのC57BL/6マウスの免疫後の日数である。併用療法(フィンゴリモド0.1mg/kg+BN201 25mg/kg)対BN201(25mg/kg)の間の差はp<0.05。
図3】実施例3に関連し、ジメチル-フマレート(DMF)(黒の四角)、BN201(黒の菱形)、DMFとBN201との組み合わせ(黒の十字)およびプラセボ(三角)で処置したEAEマウスの1日当たりの臨床スコア(CS)のプロットである。X軸は、EAE表現型を発症するまでのC57BL/6マウスの免疫後の日数である。
図4】実施例4に関連する、STAT3阻害剤S31-201(十字)、BN201(三角)、S31-201とBN201との組み合わせ(四角)およびプラセボ(丸)で処置したEAEマウスの1日当たりの臨床スコア(CS)のプロットである。矢印は処置開始日を示す。X軸は、EAE表現型を発症するまでのC57BL/6マウスの免疫後の日数である。
図5】実施例6に関連する、酸化ストレス条件後のヒト神経芽腫細胞株SH-SY5Yの生存率を示す棒グラフである。細胞培養物中の、異なるアッセイ濃度(0.03μM、0.1μM、0.3μM、0.5μM、1μM、3μM、5μM、10μM、20μM、40μM)の、BN201(第1のカラム)、BN201-モノメチルフマレート(第2のカラム)またはモノメチルフマレート(第3のカラム)で処理した細胞の生存率を、対照(非処置ヒト神経芽腫細胞)との比較により示す。図5は、対照に対するパーセンテージとしての細胞生存率が、同じ試験濃度でBN201またはモノメチルフマレートと比較し、BN201-モノメチルフマレートで前処理した後に増加することを示す(BN201のみに関して*<0.00001、フマレートのみに関して#p<0.05または##p<0.0001)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願の本明細書で使用されるすべての用語は、特に明記しない限り、当技術分野で知られている通常の意味で理解されるものとする。本願で使用される特定の用語の他のより具体的な定義は、以下に示されるとおりであり、それは、特に明示的に記載された定義がより広い定義を提供しない限り、明細書および特許請求の範囲の全体を通じて適用されることを意図している。
【0020】
式(I)の化合物
【0021】
上述のように、本発明は、
a)上記で定義される、以下の式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩と、
b)
i)式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的塩、
ii)S1PRモジュレーター、および
iii)STAT3阻害剤
からなる群から選択される1つ以上の薬物と、
を含む組み合わせに関する。
【0022】
【化3】

【0023】
一実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または下記に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、Rはフルオロフェニル、より具体的には2-フルオロフェニル、3-フルオロフェニルまたは4-フルオロフェニル、さらにより具体的には2-フルオロフェニルである。
【0024】
別の実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、Rは、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、およびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基で、好ましくは、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシおよびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基で、より好ましくは、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、フルオロメチルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基で、さらに置換されたフルオロフェニルである。
【0025】
一実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、Rは、クロロフェニル、より具体的には2-クロロフェニル、3-クロロフェニルまたは4-クロロフェニルであり、さらにより具体的にはRは2-クロロフェニルである。
【0026】
別の実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、Rは、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、およびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基で、好ましくは、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシおよびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基で、より好ましくは、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、フルオロメチルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基で、さらに置換されたクロロフェニルである。
【0027】
一実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、Rはブロモフェニル、より具体的には2-ブロモフェニル、3-ブロモフェニルまたは4-ブロモフェニル、さらにより具体的には2-ブロモフェニルである。
【0028】
別の実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、Rは、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、およびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基で、好ましくは、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシおよびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基で、より好ましくは、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、フルオロメチルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基で、さらに置換されたブロモフェニルである。
【0029】
一実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせで、式(I)の化合物において、Rは、ヨードフェニル、より詳細には2-ヨードフェニル、3-ヨードフェニルまたは4-ヨードフェニル、さらにより詳細には2-ヨードフェニルである。
【0030】
別の実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、Rは、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、およびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基で、好ましくは、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシおよびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基で、より好ましくは、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、フルオロメチルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基で、さらに置換されたヨードフェニルである。
【0031】
一実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせで、式(I)の化合物において、Rはトリフルオロメチルフェニル、より具体的には2-トリフルオロメチルフェニル、3-トリフルオロメチルフェニルまたは4-トリフルオロメチルフェニル、さらにより具体的には2-トリフルオロメチルフェニルである。
【0032】
別の実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、Rは、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、およびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基で、好ましくは、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシおよびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基で、より好ましくは、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、フルオロメチルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基で、さらに置換されたトリフルオロフェニルである。
【0033】
一実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせで、式(I)の化合物において、Rはピロリジン-1-イルである。
【0034】
一実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせで、式(I)の化合物において、Rは2-オキソ-ピロリジン-1-イル-メチルである。
【0035】
一実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、Rはスルファモイルフェニル、より具体的にはRは2-スルファモイルフェニル、3-スルファモイルフェニル、または4-スルファモイルフェニル、さらにより具体的には4-スルファモイルフェニルである。
【0036】
一実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせで、式(I)の化合物において、Rは2-メチルプロピルである。
【0037】
一実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせで、式(I)の化合物において、Rは2-フルオロフェニルまたはピロリジン-1-イルであり、Rは2-オキソ-ピロリジン-1-イルメチルまたは4-スルファモイルフェニルである。
【0038】
別の実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせで、前述の本発明の組み合わせの式(I)の化合物は、以下からなる群から選択される:
【化4】

【0039】
[N-(2-(2’-フルオロフェニル)エチル)グリシル]-[N-(2-メチルプロピル)グリシル]-N-[3-(2’-オキソピロリジニル)-プロピル]グリシンアミド(公知であり、以下の実施例においてもBN201として表示されているG79)。化学式:C2538FN;MW491.5987。
【0040】
[N-(2-(2’-フルオロフェニル)エチル)グリシル]-[N-(2-メチルプロピル)グリシル]-N-[2-(4’-スルファモイル-フェニル)エチル]グリシンアミド(BN119としても知られるG80)。化学式:C2636FNS;MW549.658。
【0041】
[N-(2-(1-ピロリジニル)エチル)グリシル]-[N-(2-メチルプロピル)グリシル]-N-[2-(4’-スルファモイル-フェニル)エチル]グリシンアミド(BN120としても知られるG81)。化学式:C2440OS;MW524.6766。
【0042】
式(I)の化合物、特にG79(BN201)、G80(BN119)およびG81(BN120)は、栄養因子のアゴニストとして機能する新規なクラスのペプトイド非キラル化合物のメンバーである。それらの合成および特性は、欧州特許第2611775号明細書「Agonists of neurotrophin receptors and their use as medicaments」に開示されている。ペプトイド化合物の注目すべき特徴は、ペプチドおよびタンパク質の二次構造要素の多くを担うアミド水素の欠如である。これらの化合物の1つであるG79(BN201)は、インビトロおよびインビボで、ニューロン損傷の様々な複数のモデルにおいて神経保護効果を示すことがこれまで示されている。BN201の他の化学名としては、N-(2-アミノ-2-オキソエチル)-2-(2-((4-フルオロフェネチル)アミノ)-N-イソブチルアセトアミド-N-(3-(2-オキソピロリジン-1-イル)プロピル)アセトアミド、およびN-({カルバモイルメチル-[3-(2-オキソ-ピロリジン-1-イル)-プロピル]-カルバモイル}-メチル)-2-[2-(2-フルオロ-フェニル)-エチルアミノ]-N-イソブチル-アセトアミドが挙げられる。
【0043】
使用できる式(I)の化合物の塩の種類に制限はないが、ただし、これらが治療目的で使用される場合、薬学的または獣医学的に許容されることを条件とする。「薬学的または獣医学的に許容される塩」という用語は、アルカリ金属塩を形成し、遊離酸または遊離塩基の付加塩を形成するために一般的に使用される塩を包含する。式(I)の化合物の薬学的または獣医学的に許容される塩の調製は、当技術分野で公知の方法によって行うことができる。例えば、それらは、従来の化学的方法によって、塩基性または酸性部分を含有する親化合物から調製することができる。一般に、そのような塩は、例えば、式(I)の化合物の遊離酸または遊離塩基形態を、化学量論量の適切な薬学的または獣医学的に許容される塩基または酸と、水中または有機溶媒中またはそれらの混合物中で反応させることによって調製される。式(I)の化合物およびそれらのそれぞれの塩は、いくつかの物理的特性が異なっていてもよいが、本発明の目的のためには同等である。
【0044】
本発明の化合物は、遊離溶媒和化合物または溶媒和物(例えば、水和物)のいずれかとしての結晶形態であり得、両方の形態が本発明の範囲内であることが意図される。溶媒和の方法は、当技術分野において一般に公知である。一般に、水、エタノールなどの薬学的、化粧品的または獣医学的に許容される溶媒との溶媒和形態は、本発明の目的のための非溶媒和形態と同等である。
【0045】
式(I)の化合物に言及する本発明のすべての実施形態において、その薬学的または獣医学的に許容される塩は、具体的に言及されていなくても常に意図される。
【0046】
式(I)の化合物(例えば、BN201)は、マウスにおいて0.5mg/kg~200mg/kgの投与量で投与され得、これは0.04mg/kg~16.26mg/kgのヒト等価用量(HED)に相当する[成人健常ボランティアにおける治療薬の初期臨床試験における最大安全開始用量を推定する業界のガイダンス(FDA、CDER、2005年7月)に基づき、本明細書全体にわたりHEDを算出]。治療的または最適な用量は、特に、約200mg/kg以下、約200mg/kg、約175mg/kg以下、約175mg/kg、約150mg/kg以下、約150mg/kg、約125mg/kg以下、約125mg/kg、約100mg/kg以下、約100mg/kg、約75mg/kg以下、約75mg/kg、約60mg/kg以下、約60mg/kg、約55mg/kg以下、約55mg/kg、約50mg/kg以下、約50mg/kg、約45mg/kg以下、約45mg/kg、約40mg/kg以下、約40mg/kg、約35mg/kg以下、約35mg/kg、約30mg/kg以下、または約30mg/kgである。治療量以下の、または最適以下の用量は、特に0.5mg/kg~25mg/kgである。特定の実施形態では、式(I)の化合物(例えば、BN201)の最適以下用量は、上記で定義されるように1つ以上の薬物と組み合わせた場合、約25mg/kg以下、約20mg/kg以下、約20mg/kg、約15mg/kg以下、約15mg/kg、約10mg/kg以下、約10mg/kg、約5mg/kg以下、約5mg/kg、約2.5mg/kg以下、約2.5mg/kg、約2.0mg/kg以下、約2.0mg/kg、約1.5mg/kg以下、約1.5mg/kg、約1.0mg/kg以下、約1.0mg/kg、約0.5mg/kg以下、または約0.5mg/kgの式(I)の化合物(例えば、BN201)であり得る。特定の実施形態では、式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、SP1R阻害剤(例えば、フィンゴリモド)およびSTAT3阻害剤(例えば、S3I-201)の1つ以上と組み合わせた、最適以下の用量での式(I)の化合物(例えば、BN201)の投与は、(例えば、疼痛、発作、運動失調などの)の治療のための最適な用量での式(I)の化合物(例えば、BN201)の単独投与に関連する副作用と比較して、副作用の減少をもたらす。
【0047】
式(IV)の化合物およびその塩
【0048】
式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩は、フマル酸から誘導される化合物である。これらの化合物は、以下の式に対応する。
【0049】
【化5】


式中、Rは水素(H)および(C-C)アルキルから選択され、RはH、(C-C)アルキルおよび2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチルから選択され、RがHである場合、RはH以外である。
【0050】
一実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(IV)の化合物において、RおよびRは、水素(H)および(C-C)アルキルから独立して選択され、RおよびRの少なくとも1つは(C-C)アルキルである。
【0051】
(C-C)アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルおよびtert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシルおよびネオヘキシルから選択される直鎖および分岐アルキル基に関する。
【0052】
一実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(IV)の化合物において、RおよびRは独立して(C-C)アルキルであるか、または、Rは、(C-C)アルキルであり、Rは、水素(H)であり、より具体的な実施形態では、RおよびRの一方または両方が(C-C)アルキルである場合、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルおよびtert-ブチルからなる群から選択される(C-C)アルキルである。
【0053】
一実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(IV)の化合物において、RおよびRは独立して(C-C)アルキルであり、より具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルおよびtert-ブチルからなる群から選択される。
【0054】
別の実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(IV)の化合物において、RおよびRは同じ(C-C)アルキルであり、より具体的には、両方メチルである(フマル酸ジメチル)。フマル酸ジメチルに関するさらなる情報を以下に示す。
【0055】
一実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(IV)の化合物において、Rは(C-C)アルキルであり、Rは水素(H)であり、より具体的には、Rはエチルであり、Rは水素(H)である(フマル酸モノエチル)。別のより具体的な実施形態では、Rはメチルであり、Rは水素(H)である(フマル酸モノメチル)。
【0056】
一実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(IV)の化合物において、Rは2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチルであり、Rは(C-C)アルキルであり、より具体的には、Rは(C-C)アルキルであり、より更に具体的には、Rはメチルである。Rが2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチルであり、Rがメチルである場合、この化合物はフマル酸ジロキシメルとしても知られている。
【0057】
また別の実施形態では、式(IV)の化合物の薬学的または獣医学的な塩は、I族の金属およびVIII族の金属の群から選択される金属の塩である。より具体的には、式(IV)の化合物のナトリウム塩または鉄(II)塩である。
【0058】
本発明者らは、式(IV)の化合物の他に、I族金属およびVIII族金属の群から選択される金属のフマル酸塩(HOCCH=CHCOH)もまた、式(I)の化合物ならびに任意にスフィンゴシン-1-リン酸受容体モジュレーター(S1PRモジュレーター)およびシグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)阻害剤のいずれかと組み合わせて使用できることを認識した。特定の実施形態では、塩は、フマル酸ナトリウムおよびフマル酸鉄から選択される。
【0059】
本明細書における式(IV)の化合物の全ての具体的な実施形態、およびそれが含まれる態様は、これらのI族の金属およびVIII族の金属のフマル酸の塩にも適用される。
【0060】
したがって、以下を含む組み合わせも開示される:
a)式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩
b)
i)以下の式(IV)の化合物、またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩
ii)スフィンゴシン-1-リン酸受容体モジュレーター(S1PRモジュレーター)、
iii)シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)阻害剤、および
iv)I族金属およびVIII族金属の群から選択される金属のフマル酸の塩、
からなる群から選択される1つ以上の薬物。
【0061】
【化6】


式中、
は、ハロゲンまたはトリフルオロメチルで置換され、さらにハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、およびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基で任意に置換されたフェニルであるか、あるいは、Rはピロリジン-1-イルであり、
は、2-オキソ-ピロリジン-1-イルメチルまたはスルファモイルフェニルであり、
は、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、2-メチルプロピル、ペンチル、1-メチル-ブチル、2-メチルブチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-メチルペンチル、および1-メチルペンチルから選択される)
【0062】
【化7】


式中、Rは水素(H)および(C-C)アルキルから選択され、R6はH、(C-C)アルキルおよび2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチルから選択され、RがHである場合、RはH以外である。
【0063】
特に、組み合わせは、a)式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩と、b)I族の金属およびVIII族の金属の群から選択される金属のフマル酸塩と、を含む。
【0064】
本発明者らはまた、フマル酸または上記に開示される式(IV)の化合物、または式(IV)の酸もしくは化合物のいずれかの任意の薬学的もしくは獣医学的に許容される塩を、他の活性成分との組み合わせで、特にアスピリン(すなわち、アセチルサリチル酸)との組み合わせで含む医薬製剤(すなわち、カプセル、丸剤、錠剤)を、式(I)の化合物のいずれかと一緒に、また任意にスフィンゴシン-1-リン酸受容体モジュレーター(S1PRモジュレーター)およびシグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)阻害剤の1つ以上と一緒に使用できることも認識した。
【0065】
本明細書における式(IV)の化合物の全ての具体的な実施形態はまた、フマル酸または式(IV)の化合物またはその任意の薬学的もしくは獣医学的に許容される塩と、他の活性成分との組み合わせで、特にアスピリンとの組み合わせで、これらの医薬製剤にも適用される。
【0066】
フマル酸ジメチル
【0067】
フマル酸のジメチルエステルであるフマル酸ジメチル(すなわち、Tecfidera(登録商標))は、再発型MSを有する成人の治療について、米国および欧州連合において承認されている。フマル酸ジメチルは、他の経路の中でも、核内因子(赤血球由来2)様(Nrf2)経路またはGAPDHを活性化することによって、免疫調節活性および抗酸化効果を有することが示されている(Tecfidera.com参照)。しかしながら、フマル酸ジメチルが再発性MSと対峙するたに行う正確な機構については不明である。フマル酸ジメチルは、以下の構造を有する:
【0068】
【化8】

【0069】
フマル酸ジメチルは、単独で投与した場合に免疫調節活性を生じさせることができる用量で一般的に使用される。フマル酸ジメチルの承認された投与量は、1週間で1日2回120mg(患者の体重70kgに対して1日2回1.7mg/kgに相当)、その後1日2回約240mg(患者の体重70kgに対して1日2回3.4mg/kgに相当)である。特定の実施形態では、フマレート(例えば、フマル酸ジメチル)は、上記のように使用するためのものであり得、治療用量または最適用量として知られるこれらの用量で、式(I)の化合物(例えば、BN201)と組み合わせて投与され得る。フマル酸ジメチルの治療量以下の用量は、1週間で1日2回120mg未満およびその後1日2回約240mg未満、1日2回約120mg未満または1日1回約120mg未満の用量である。これらの実施形態の特定のものでは、フマル酸ジメチルの投与は、最適な投与量でのフマル酸ジメチルの単独投与に関連する副作用と比較して、副作用の減少をもたらし得る。特定の実施形態では、通常単独で投与されるよりも低い投与量でフマル酸ジメチルを投与した結果、減少させ得る、フマル酸ジメチル治療による副作用としては、アナフィラキシーおよび血管浮腫、進行性多巣性白質脳症(PML)、リンパ球減少症(すなわち、リンパ球数の減少)、潮紅(すなわち、熱またはかゆみの感覚および皮膚の赤み)、胃腸反応(すなわち、腹痛、下痢および悪心)、尿中タンパク質、肝臓酵素の上昇、発疹、またはそれらのあらゆる組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
フマル酸ジメチルは、フマル酸ジメチルとアスピリンとを組み合わせで含む遅延放出調製物(カプセル)の形態で使用することもできる(すなわち、Vitalis Pharma専売の組合せVTS-72)。この組み合わせは、フマレートによる紅潮を覚える再発性MS患者の治療のために提案されている。
【0071】
フマル酸モノメチル
【0072】
フマル酸モノメチルエステルとしても知られているフマル酸モノメチル(すなわち、Bafiertam(登録商標))は、成人における臨床的に孤立した症候群、再発寛解型疾患、および活動性の二次進行性疾患などの、再発性形態の多発性硬化症(MS)の治療に適用される。FDAによって承認されたフマル酸モノメチルの投与は、95mgを1日2回(遅延放出カプセル)、経口、7日間、である。7日後の維持用量は、190mgを1日2回(95mgカプセル2つとして投与)経口投与する。
【0073】
フマル酸ジロキシメル
【0074】
2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチルメチルフマレートとしても知られるフマル酸ジロキシメル(すなわち、Vumerity(登録商標))は、成人の再発性形態の多発性硬化症(MS)、具体的には、活動性の二次進行性疾患および臨床的に孤立した症候群、ならびに再発寛解型MSの治療に適用される。フマル酸ジメチルは、以下の構造を有する:
【0075】
【化9】

【0076】
フマル酸ジロキシメルの承認された投与量は、231mgを1日2回、経口、7日間、である。7日後の維持用量は、462mg(231mgカプセル2つとして投与)を1日2回経口投与する。
【0077】
当業者は、自身の具体的知識を用い、上記で開示された効能に関する指針を考慮して、式(IV)の特定の化合物の用量を計算することができる。
【0078】
S1P受容体(SP1R)モジュレーター
【0079】
本発明の目的において、「S1P受容体モジュレーター」には、リンパ球輸送を減少させ、それにより自己免疫攻撃の程度を調節することができる化合物または薬剤が包含される。リンパ球輸送は、フローサイトメトリーを使用して、血液中のリンパ球として間接的に測定される。S1PRモジュレーターの下で、リンパ球輸送は、ベースライン(SP1Rモジュレーター、すなわちフィンゴリモドによる処理の前)に対するリンパ球の減少または増加のパーセンテージによって観察される。特定の実施形態では、上記で定義した式(I)から選択される化合物と組み合わされるS1PRモジュレーターは、フィンゴリモド、シポニモド、オザニモド、ポネシモドおよびセラリフィモドからなる群から選択される。(Patrick Vermersch;‘‘Sphingosine-1-phosphate Receptor Modulators in Multiple Sclerosis’’;European Neurological Review-2018;13(1):25-30)
【0080】
フィンゴリモドは、ミリオシンに由来するスフィンゴシンの構造類似体である。フィンゴリモド(Gilenya(登録商標)、Novartis;FTY720とも称する)は、免疫調節活性を有することが示されており、再発性形態のMSを有する対象における再発の低減および障害進行の遅延について、米国および欧州連合において承認されている。フィンゴリモドが再発を減少させる際の正確な機構は不明であるが、フィンゴリモドは、リンパ節に循環リンパ球を捕捉することによってそれらを減少させ、それによりそれらが自己免疫反応に寄与し、ミエリンを攻撃するのを妨げると考えられる(Gilenya.comを参照)。フィンゴリモドは、以下の構造を有する:
【0081】
【化10】

【0082】
SP1Rモジュレーター(例えば、フィンゴリモド)の場合、治療用量または最適用量は、免疫調節活性を生じさせることができる用量である。フィンゴリモドの承認された投与量は、ヒトでは0.5mg/日である。臨床試験では、1.25mg/日および5mg/日のフィンゴリモドの投与量が最も有効な投与量であることが示されているが、フィンゴリモドの副作用により、これらの用量での使用は忌避されている。フィンゴリモドの特定の治療用量または最適用量は、0.75mg/日~50mg/日である。より具体的には、治療用量は、約50mg/日以下、約50mg/日、約45mg/日以下、約45mg/日、約40mg/日以下、約40mg/日、約35mg/日以下、約35mg/日、約30mg/日以下、約30mg/日、約25mg/日以下、約25mg/日、約20mg/日以下、約20mg/日、約15mg/日以下、約15mg/日、約10mg/日以下、約10mg/日、約5mg/日以下、約5mg/日、約2.5mg/日以下、約2.5mg/日、約2.0mg/日以下、約2.0mg/日、約1.5mg/日以下、約1.5mg/日、約1.25mg/日以下、約1.25mg/日、約1.0mg/日以下、約1.0mg/日、約0.75mg/日以下、または約0.75mg/日である。前述のように、フィンゴリモドの承認された投与量は0.5mg/日である。
【0083】
当業者は、自身の具体的知識を用い、上記で開示された効能に関する指針を考慮して、特定のS1PRモジュレーターの用量を計算することができる。
【0084】
フィンゴリモド(S1PRモジュレーターの例)の治療量以下または最適以下の用量は、0.05mg/日~0.4mg/日であり得る。特定の実施形態では、フィンゴリモドは、0.4mg/日以下、約0.3mg/日以下、約0.3mg/日、約0.2mg/日以下、約0.2mg/日、約0.1mg/日以下、約0.1mg/日、約0.05mg/日以下、または約0.05mg/日の、最適以下の投与量で投与され得る。これらの実施形態の特定のものでは、フィンゴリモドの投与は、最適な投与量でのフィンゴリモドの単独投与に関連する副作用と比較して、副作用の減少をもたらし得る。特定の実施形態では、通常単独で投与されるであろう用量よりも低い投与量でフィンゴリモドを投与した結果として、減少させ得るフィンゴリモド治療による副作用としては、限定されないが、頭痛、インフルエンザ、下痢、背部痛、異常な肝臓検査、咳、心拍数低下、重篤な感染症のリスク増加、後部可逆性脳症症候群(PRES)、黄斑浮腫、脳卒中もしくは出血をもたらし得る脳の血管の腫脹および狭窄、呼吸障害、黄斑浮腫、徐脈、帯状疱疹再活性化、血球貪食症候群、またはそれらのあらゆる組み合わせが挙げられる。
【0085】
商標Mayzentとして市販されているシポニモド(FDA承認2019年3月)は、多発性硬化症(MS)に使用される経口投与用の選択的スフィンゴシン-1-リン酸受容体モジュレーター(S1PおよびS1P)である。それは、1日1回の経口投与を意図している。シポニモドは、(例えばMSにおいて)炎症部位へのリンパ球の移動を阻害する。それは、フィンゴリモドと非常に類似すると考えられるが、その主な副作用の1つであるリンパ球減少症は防止される。
【0086】
【化11】

【0087】
オズアニモド(RPC-1063)は、再発性多発性硬化症(RMS)および潰瘍性大腸炎(UC)の治療について、現在フェーズIII臨床試験中の、治験中免疫調節薬である。
【0088】
【化12】

【0089】
ポネシモド(INN、コード名ACT-128800)は、多発性硬化症(MS)および乾癬を治療するための実験薬物である。それはActelionによって開発されている。
【0090】
【化13】

【0091】
セラリフィモド(CAS番号891859-12-4、または1-[[6-[(2-メトキシ-4-プロピルフェニル)メトキシ]-1-メチル-3,4-ジヒドロナフタレン-2-イル]メチル]アゼチジン-3-カルボン酸)は、スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体S1PおよびS1Pと相互作用する。セラリフィモドは、自己免疫性脳脊髄炎(EAE)のラット実験モデルにおいて疾患の発症を遅延させ、脊髄のリンパ球浸潤を阻害し、また再発寛解型EAEの非肥満糖尿病マウスモデルにおいて疾患再発を予防する。
【0092】
【化14】

【0093】
STAT3阻害剤
【0094】
本発明の目的において、「STAT3阻害剤」としては、炎症促進性サイトカインによるシグナル伝達の誘導においてSTAT3の活性を低下させることができる化合物または薬剤が挙げられる。STAT3阻害は、インビトロおよびインビボでの炎症性サイトカインの産生の抑制によって測定され得る。ミエリン特異的CD4T細胞におけるpSTAT3発現およびIL-17産生の用量依存的な抑制は、ミエリン特異的CD4T細胞におけるIL-6誘導性IL-17産生を阻害する。
【0095】
シグナル伝達兼転写活性化因子3遺伝子(STAT3)は、いくつかの経路および細胞型に関与する転写因子であり、また軸索の切断からの保護、または軸索再生に関与する、軸索の損傷センサーでもある。免疫学的レベルにおいて、STAT3は、制御性T細胞によって媒介される抗炎症応答ならびにTH17細胞によって媒介される炎症促進性応答の両方に関与する、IL-10およびIL-6シグナル伝達経路の重要なメディエーターである。STAT3阻害剤の非限定的な例としては、(S,E)-3-(6-ブロモピリジン-2-イル)-2-シアノ-N-(1-フェニルエチル)アクリルアミド(STAT3阻害剤III、WP1066、CAS 857064-38-1)、4-((3-(カルボキシメチルスルファニル)-4-ヒドロキシ-1-ナフチル)スルファモイル)安息香酸(STAT3阻害剤IX Cpd188-CAS 823828-18-8)、STAT3阻害剤ペプチド(組成式:C386313PまたはC921572024PまたはC921562021、配列番号1)、6-ニトロベンゾ[b]チオフェン-1、1-ジオキシド(STAT3阻害剤V Stattic-CAS 19983-44-9)、2-ヒドロキシ-4-[[[[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ]アセチル]アミノ]-安息香酸(STAT3阻害剤VI S3I-201-CAS 501919-59-1)、エチル-1-(4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)-6、7,8トリフルオロ-4-オキソ-1、4-ジヒドロキノリン-3-カルボキシレート(STAT3阻害剤VII-CAS 1041438-68-9)、5,15-ジフェニルポルフィリン(STAT3阻害剤VIII 5,15-DPP-CAS 22112-89-6)、PIAS3(UniprotKBデータベースアクセッション番号Q9Y6X2、2004年12月7日の配列のバージョン2-V2)、N-(5-(フラン-2-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)-2-フェニルキノリン-4-カルボキサミド(STAT3阻害剤XI STX-0119)、STAT3阻害剤XII SPI(配列番号2)、N-(1’、2-ジヒドロキシ-1,2’-ビナフタレン-4’-イル)-4-メトキシベンゼンスルホンアミド、(CAS番号:432001-19-9、F1113-0789、STAT3阻害剤XIII C188-9)が挙げられる。
【0096】
上記で開示される配列番号1は、H-Pro-Tyr-(PO)-Leu-Lys-Thr-Lys-Ala-Ala-Val-Leu-Leu-Pro-Val-Leu-Leu-Ala-Ala-Pro-OH(STAT3阻害ペプチドとも呼ばれる)である。
【0097】
上記で開示される配列番号2は、HN-FISKERERAILSTKPPGTFLLRFSESSK-COH(STAT3阻害剤XII SPIとも呼ばれる)である。
一実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、STAT3阻害剤は、STAT3の活性化およびSTAT3依存的な転写を選択的に阻害するアミドサリチル酸化合物であるS3I-201である。S3I-201の化学名は上記のとおり、2-ヒドロキシ-4-[[[[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ]アセチル]アミノ]-安息香酸である。S3I-201は、以下の構造を有する:
【0098】
【化15】

【0099】
治療用量のSTAT3阻害剤(例えば、S3I-201)は、単独で投与した場合に免疫調節活性を生じさせることができるものである。特定の治療用量または最適用量は約5mg/kgである。したがって、治療量以下は、マウスにおいてはこの5mg/kg未満である。特に、治療量以下の量は、マウスにおいて0.1~5mg/kg未満である(0.01mg/kg~0.4mg/kg未満のHEDに相当する)。
【0100】
本発明の組み合わせ
【0101】
上述のように、本発明は、
a)上記で定義される、式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩と、
b)上記で定義される、
i)式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、
ii)S1PRモジュレーター、および
iii)STAT3阻害剤
からなる群から選択される1つ以上の薬物と、
を含む組み合わせに関する。
【0102】
一実施形態では、任意選択的に、すべての説明を通じて上記または下記に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせで、本発明の組み合わせは、
a)上記で定義される、式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩と、
b)上記で定義される、
i)式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、
ii)S1PRモジュレーター、および
iii)STAT3阻害剤
からなる群から選択される1つ以上の薬物と、
を含む組み合わせに関する。
【0103】
別の実施形態では、任意選択的に、すべての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせで、本発明の組み合わせは、
a)上記で定義される、式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩と、
b)上記で定義される、
i)式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、
ii)S1PRモジュレーター、および
iii)STAT3阻害剤
からなる群から選択される1つ以上の薬物と、
を含む組み合わせに関し、
a)の量およびb)の量は、組み合わせて治療上有効である。
【0104】
別の実施形態では、任意選択的に、すべての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせで、本発明の組み合わせにおいて、a)の量は、それ自体では治療量以下の量であり、a)およびb)の量は、組み合わせて治療上有効である。
【0105】
別の実施形態では、任意選択的に、すべての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせで、本発明の組み合わせにおいて、b)の量は、それ自体では治療量以下の量であり、a)およびb)の量は、組み合わせて治療上有効である。
【0106】
別の実施形態では、任意選択的に、すべての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせで、本発明の組み合わせにおいて、a)の量およびb)の量は、それ自体では治療量以下の量であり、a)およびb)の量は、組み合わせて治療上有効である。
【0107】
一実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせで、本発明の組み合わせは、a)上記で定義される式(I)の化合物、具体的には、G79(BN201)、G80(BN119)およびG81(BN120)からなる群から選択され、更に具体的には、G79(BN201)である化合物と、b)式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、具体的には、フマル酸ジメチル、フマル酸モノメチルおよびフマル酸モノエチルから選択される式(IV)の化合物、更に具体的には、フマル酸ジメチルと、を含むか、またはそれらからなる。
【0108】
具体的に化合物G79(BN201)、G80(BN119)およびG81(BN120)からなる群から選択され、さらに具体的にG79(BN201)である、上記で定義される式(I)の化合物と組み合わされる他の塩は、フマル酸の塩、フマル酸二ナトリウム(フマル酸ナトリウム)およびフマル酸鉄(フマル酸鉄(II))である。
【0109】
別の実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせで、本発明の組み合わせは、a)上記で定義される式(I)の化合物、具体的には、G79(BN201)、G80(BN119)およびG81(BN120)からなる群から選択され、更に具体的には、G79(BN201)である化合物と、b)具体的には、フィンゴリモド、シポニモドおよびオザニモドからなる群から選択され、更に具体的には、フィンゴリモドである、S1PRモジュレーターと、を含むか、またはそれらからなる。
【0110】
別の実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせで、本発明の組み合わせは、a)上記で定義される式(I)の化合物、具体的には、G79(BN201)、G80(BN119)およびG81(BN120)からなる群から選択され、更に具体的には、G79(BN201)である化合物と、b)S3I-201である、本明細書で定義されるSTAT3阻害剤と、を含むか、またはそれかからなる。
【0111】
薬物(a)および(b)と組み合わせるその他の薬剤
【0112】
第1の態様の他の具体的実施形態では、(a)上記で定義される式(I)の化合物(すなわち、上記で示した全ての可能な薬学的または獣医学的に許容されるその塩を含む)と、b)式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、スフィンゴシン-1-リン酸受容体モジュレーター(S1PRモジュレーター)およびシグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)阻害剤からなる群から選択される1つ以上の薬物と、を含む組み合わせにおいて、多発性硬化症を治療するための他の薬物が含まれる。これらの薬物としては、より具体的な実施形態では、インターフェロン-β、酢酸グラチラマー、ナタリズマブ、アレンツズマブ、テリフルノミド、クラドリビン、オクリズマブおよびそれらの組み合わせから選択される薬物が挙げられる。組み合わせることができる他の薬物は、とりわけ、フマル酸ジロキシメル(ALKS8700)、エボブルチニブ、オファツムマブ、ウブリツキシマブ、アミロリド、フルオキセチン、イブジラスト、マシチニブ、MD1003(ビオチン)、オピシヌマブ(抗LINGO-1、BIIB033)、リルゾール、シンバスタチン、イデベノン、テメリムブ(GNbAC1)、ネビリズマブ(MEDI-551)、ナルトレキソンから選択される。
【0113】
医薬組成物および獣医学的組成物、パッケージまたはキットオブパーツ
【0114】
本発明はまた、
a)式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩と、
b)i)式(IV)の化合物、またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、ii)S1PRモジュレーター、およびiii)STAT3阻害剤からなる群から選択される1つ以上の薬物と、を、
1つ以上の薬学的または獣医学的に許容される賦形剤または担体と共に含む、医薬組成物または獣医学的組成物または、パッケージまたはキットオブパーツに関し、
式(I)の化合物および該薬物は、上記の態様および関連する実施形態で定義される通りである。
【0115】
「薬学的または獣医学的に許容される賦形剤または担体」という表現は、薬学的または獣医学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを指す。各成分は、医薬組成物または獣医学的組成物の他の成分と適合性を有するという意味で、医薬的または獣医学的に許容されるものでなければならない。それはまた、合理的な利益/リスク比に見合った過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性または他の問題もしくは合併症なしに、ヒトおよび動物の組織または器官との接触を伴う使用に適していなければならない。
【0116】
a)式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩と、
b)式(IV)の化合物、またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、S1PRモジュレーター、およびSTAT3阻害剤からなる群から選択される1つ以上の薬物と、を、
1つ以上の薬学的または獣医学的に許容される賦形剤または担体と共に含み、
式(I)の化合物および該薬物が、上記で定義され、a)の量およびb)の量が、組み合わせて治療上有効である、
単一の医薬組成物または獣医学的組成物は、本発明の一部を形成する。
【0117】
本明細書を通じて本発明で使用される「治療上有効」という表現は、投与された場合に、対処しようとする疾患の徴候の1つ以上の発症を予防するか、またはある程度緩和するのに十分な化合物または化合物の組み合わせの量を指す。これを具体的に説明すると、それはMS、NMOおよび/または視神経炎を治療している対象において、所望の治療効果をもたらす化合物、化合物の組合せまたは組成物の量である。正確な治療上有効量は、所与の対象における治療有効性に関して最も有効な結果をもたらす組成物の量である。治療上の利益を得るための本発明の化合物の具体的な用量は、個々の患者の特定の状況に、とりわけ、患者のサイズ、体重、年齢および性別、疾患の性質および病期、疾患の侵攻性、ならびに投与経路などに応じて変化し得る。上記の組み合わせ、組成物またはキットオブパーツで投与した場合の、治療上の利益を得るための本発明の化合物の具体的な用量は、単一の活性剤として使用される化合物の具体的な用量との関係で変動し得る。
【0118】
上記の組み合わせの具体的な実施形態は、本発明の単一の医薬組成物または獣医学的組成物、パッケージまたはキットオブパーツの具体的な実施形態としても適用可能である。
【0119】
したがって、1つの実施形態では、任意に、すべての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせで、上記で定義される単一の医薬組成物または獣医学的組成物において、a)の量は、それ自体では治療量以下の量であり、a)およびb)の量は、組み合わせて治療上有効である。
【0120】
別の実施形態では、任意に、すべての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせで、上記で定義される単一の医薬組成物または獣医学的組成物において、b)の量は、それ自体では治療量以下の量であり、a)およびb)の量は、組み合わせて治療上有効である。
【0121】
別の実施形態では、任意に、すべての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせで、上記で定義される単一の医薬組成物または獣医学的組成物において、a)の量およびb)の量は、それ自体では治療量以下の量であり、a)およびb)の量は、組み合わせて治療上有効である。
【0122】
一実施形態では、任意に、すべての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせで、上記で定義される単一の医薬組成物または獣医学的組成物において、a)の量およびb)の量は、それ自体では治療量であり、a)およびb)の量は、組み合わせて治療上有効である。
【0123】
本明細書を通じて使用される「治療量以下」または「最適以下量」という用語、ならびに全て同義語として互換的に使用される「治療量以下の用量」または「最適以下の用量」という用語は、それ自体では治療上有効でない量/用量である。したがって、「最適以下の用量」または「治療量以下の用量」は、単一化合物での療法で使用される場合に、MS、NMO、および/または視神経炎などの特定の対象疾患に有効であるとして、保健当局にその化合物について承認されている最適な(または治療的な)用量(または用量範囲)を下回る用量である。したがって、「治療量以下」という用語が本明細書の態様または実施形態に現れる場合、それは、保健当局(すなわち、欧州医薬品庁、米国食品医薬品局など)により、特定の疾患のための単一化合物療法で使用される場合に有効であるとして承認されているある特定の化合物の量以下の量と理解される。一例として、単一化合物療法におけるBN201(式Iの化合物)の有効用量が25mg/kg超~200mg/kgである場合、最適以下の用量は0.5mg/kg~25mg/kgである。フィンゴリモド(SP1R阻害剤の一つ)の承認された用量は、ヒトでは0.5mg/日であり、臨床試験による最も有効な用量は、1.25mg/日および5mg/日である。SP1R阻害剤(すなわち、フィンゴリモド)の最適以下の用量は、0.5mg/日未満、0.05mg/日~0.4mg/日である。同様に、フマル酸ジメチルの承認された用量は、1週間にわたって、1日2回、120mg、その後、1日2回、約240mgである。フマル酸ジメチルの準最適な用量は、1週間にわたって、1日2回、約120mg未満、およびその後、1日2回、約240mg未満の用量である。したがって、特定の実施形態では、式(I)の化合物の量、ならびに、式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、S1PRモジュレーターおよびSTAT3阻害剤からなる群から選択される1つ以上の化合物の量は、上記組み合わせ、組成物またはキットオブパーツで投与された場合、単一の活性剤として使用された場合の有効量よりも低い。
【0124】
「投与量」および「用量」という語句は、本明細書では互換的に使用される。
【0125】
別の特定の実施形態では、本発明はまた、任意に、すべての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせで、
i)上記で定義される式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩の一定量を、1つ以上の薬学的もしくは獣医学的に許容される賦形剤または担体と一緒に含む、第1の医薬組成物または獣医学的組成物と、
ii)式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、S1PRモジュレーターおよびSTAT3阻害剤からなる群から選択される1つ以上薬物の一定量を、1つ以上の薬学的または獣医学的に許容される賦形剤または担体と一緒に含む、第2の医薬組成物または獣医学的組成物と、
iii)i)およびii)を組み合わせて使用するための説明書と、を含み、
第1および第2の組成物が、別々の組成物であり、i)の式(I)の化合物の量およびii)の1つ以上の薬物の量は、組み合わせて治療上有効である、パッケージまたはキットオブパーツに関する。
【0126】
一実施形態では、任意に、すべての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせで、上記で定義されるキットオブパーツでは、式(I)の化合物とii)の1つ以上の薬物の両方の量は、それ自体では治療量であり、i)の式(I)の化合物およびii)の1つ以上の薬物の組み合わせの量は、治療上有効である。
【0127】
一実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、上記で定義されるようなキットオブパーツでは、i)の式(I)の化合物の量は、それ自体では治療量以下の量であり、i)の式(I)の化合物の量およびii)の1つ以上の薬物の量の組み合わせは、治療上有効である。
【0128】
別の実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、上記で定義されるキットオブパーツでは、ii)の1つ以上の薬物の量は、それ自体では治療量以下の量であり、i)の式(I)の化合物およびii)の1つ以上の薬物の組み合わせの量は、治療上有効である。
【0129】
別の実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、上記で定義されるキットオブパーツでは、i)の式(I)の化合物の量およびii)の1つ以上の薬物の量は、それ自体では治療量以下の量であり、i)の式(I)の化合物およびii)の1つ以上の薬物の組み合わせの量は、治療上有効である。
【0130】
本明細書全体を通して上記または下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と任意に組み合わせた、このキットオブパーツの具体的実施形態は、医薬組成物または獣医学的組成物の1つを含む別個のコンパートメントを有するカートリッジと、i)およびii)を組み合わせで使用するための説明書、特にリーフレット、データキャリア(すなわち、CD、QRコード)から選択される形態の説明書と、を含む。
【0131】
医薬製剤または獣医用製剤の選択は、活性化合物の性質およびその投与経路に依存する。任意の投与経路、例えば、経口、非経口および局所投与を使用し得る。
【0132】
例えば、医薬組成物または獣医学的組成物は、経口投与用に製剤化されてもよく、固体または液体形態の1つ以上の生理学的に適合する担体または賦形剤を含有してもよい。これらの調製物は、結合剤、充填剤、潤滑剤、および許容される湿潤剤などの従来公知の成分を含有し得る。
【0133】
医薬組成物または獣医学的組成物は、水または適切なアルコールなどの従来の注射可能な液体担体と組み合わせて、非経口投与のために製剤化され得る。安定化剤、可溶化剤、および緩衝剤などの注射用の従来の医薬または獣医用賦形剤は、かかる組成物に含まれ得る。これらの医薬組成物または獣医学的組成物は、筋肉内、腹腔内、または静脈内に注射され得る。
【0134】
医薬組成物は、局所投与用に製剤化され得る。製剤としては、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液およびパッチが挙げられ、化合物は、適切な賦形剤に分散または溶解される。
【0135】
医薬組成物は、任意の形態であり得、とりわけ、即時または遅延放出のための、錠剤、ペレット、カプセル、水性もしくは油性溶液、懸濁液、エマルジョン、または使用前に水もしくは他の適切な液体媒体で再構成するのに適した乾燥粉末形態が挙げられる。
【0136】
適切な賦形剤および/または担体、ならびにそれらの量は、調製される製剤の種類に従って、当業者によって容易に決定することができる。
【0137】
軸索またはミエリンの破壊または変性をもたらす炎症性神経疾患または症状の治療
【0138】
a)式(I)の化合物、またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩と、
b)i)式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、ii)S1PRモジュレーターおよびiii)STAT3阻害剤からなる群から選択される1つ以上の薬物と、を含み、
式(I)の化合物および1つ以上の薬物が、上記で定義され、それを必要とする対象において、軸索またはミエリンの破壊または変性をもたらし得る炎症性神経疾患または状態の治療および/または予防に使用するための、組み合わせ、単一の医薬組成物もしくは獣医学的組成物、パッケージまたはキットオブパーツは、本発明の一部を形成する。
【0139】
この態様はまた、軸索またはミエリンの破壊または変性をもたらし得る炎症性神経疾患または症状を治療および/または予防する方法として変換され得、該方法は、それを必要とするヒト対象を含む哺乳動物対象に、
a)式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩と、
b)i)式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、ii)S1PRモジュレーター、およびiii)STAT3阻害剤からなる群から選択される1つ以上の薬物とを、
1つ以上の薬学的または獣医学的に許容される賦形剤または担体と一緒に含み、式(I)の化合物および薬物が、上記で定義される通りである、治療上有効量の組み合わせ、あるいは、
b)上記の実施形態で定義されるパッケージまたはキットオブパーツを、投与することを含む。
(a)式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩と、
(b)i)式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、ii)S1PRモジュレーターおよびiii)STAT3阻害剤からなる群から選択される1つ以上の薬物と、を含む組み合わせであって、式(I)の化合物および薬物が、上記で定義される通りであり、軸索またはミエリンの破壊または変性をもたらし得る炎症性神経疾患または症状を治療および/または予防するための医薬品を調製するための、該組み合わせの使用も、本発明の一部を形成する。
【0140】
特定の実施形態では、任意に、全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、医薬品は、上記の実施形態で定義される単一の医薬組成物もしくは獣医学的組成物、または同じく上記で定義されるパッケージもしくはキットオブパーツを含む。
【0141】
単一の医薬組成物もしくは獣医学的組成物、またはパッケージもしくはキットオブパーツのいずれかの別の特定の実施形態では、任意に、全ての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、治療は、
(a)式(I)の化合物、またはその医薬的もしくは獣医学的に許容される塩と、
(b)i)式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、ii)S1PRモジュレーターおよびiii)STAT3阻害剤からなる群から選択される1つまたはそれを超える薬物と、
の同時の、並列的、別々の、または逐次の投与を含み、式(I)の化合物および薬物は、上記で定義される通りである。
【0142】
一実施形態では、任意に、全ての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、上記のように使用するための組み合わせ、単一の医薬組成物または獣医学的組成物、パッケージまたはキットオブパーツは、
a)上記で定義される式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩と、
b)上記で定義される、i)式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、ii)S1PRモジュレーターおよびiii)STAT3阻害剤からなる群から選択される薬物と、を含む。
【0143】
別の実施形態では、任意に、全ての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、上記のように使用するための組み合わせ、単一の医薬組成物または獣医学的組成物、パッケージまたはキットオブパーツは、
a)上記で定義される式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩と、
b)上記で定義される、i)式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、ii)S1PRモジュレーターおよびiii)STAT3阻害剤からなる群から選択される薬物と、を含み、
a)の量およびb)の量は、組み合わせて治療上有効である。
【0144】
別の実施形態では、任意に、全ての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、上記のように使用するための単一の医薬組成物または獣医学的組成物、パッケージまたはキットオブパーツにおいて、a)の量およびb)の量は、それ自体では両方とも治療量であり、a)およびb)の量は、組み合わせて治療上有効である。
【0145】
別の実施形態では、任意に、すべての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、上記に示されるように使用するための組み合わせ、単一の医薬組成物または獣医学的組成物、パッケージまたはキットオブパーツにおいて、a)の量は、それ自体では治療量以下の量であり、a)およびb)の量は、組み合わせて治療上有効である。
【0146】
別の実施形態では、任意に、全ての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、上記のように使用するための組み合わせ、単一の医薬組成物または獣医学的組成物、パッケージまたはキットオブパーツにおいて、b)の量は、それ自体では治療量以下であり、a)およびb)の量は、組み合わせて治療上有効である。
【0147】
別の実施形態では、任意に、すべての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせで、上記で定義される単一の医薬組成物または獣医学的組成物、パッケージまたはキットオブパーツにおいて、a)の量およびb)の量は、それ自体では治療量以下の量であり、a)およびb)の量は、組み合わせて治療上有効である。
【0148】
別の実施形態では、任意に、全ての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、上記のように使用するための組み合わせ、単一の医薬組成物または獣医学的組成物、パッケージまたはキットオブパーツにおいて、a)の治療量以下の量は、0.5mg/kg~25mg/kg(0.04mg/kg~2mg/kgのヒト等価用量(HED)に対応する)である。
【0149】
別の実施形態では、任意に、全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、上記のように使用するための組み合わせ、単一の医薬組成物または獣医学的組成物、パッケージまたはキットオブパーツにおいて、b)は、式(IV)の化合物またはその医薬的または獣医学的に許容される塩であり、より具体的には、フマル酸ジメチルであり、式(IV)の化合物の治療量以下の量は、1週間にわたって1日2回120mg(ヒト患者の体重70kgに対して1日2回1.7mg/kgに相当)未満であって、その後は1日2回約240mg(ヒト患者の体重70kgに対して1日2回3.4mg/kgに相当)未満である。
【0150】
別の実施形態では、任意に、全ての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、上記のように使用するための組み合わせ、単一の医薬組成物または獣医学的組成物、パッケージまたはキットオブパーツにおいて、b)はSP1Rモジュレーターであり、治療量以下の量は、ヒトにおいて0.05mg/日~0.4mg/日である。より具体的には、0.05mg/日~0.1mg/日の量である。
【0151】
別の実施形態では、任意に、全ての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、上記のように使用するための組み合わせ、単一の医薬組成物または獣医学的組成物、パッケージまたはキットオブパーツにおいて、b)はSTAT3阻害剤であり、治療量以下の量は、マウスにおいて0.1~5 mg/kg(0.01mg/kg~0.4mg/kgのHEDに対応する)である。
【0152】
一実施形態では、任意に、全ての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、上記のように使用するための単一の医薬組成物または獣医学的組成物、パッケージまたはキットオブパーツは、a)具体的にはG79(BN201)、G80(BN119)およびG81(BN120)からなる群から選択され、より具体的にはG79(BN201)の化合物である、上記で定義される式(I)の化合物と、b)具体的にはフマル酸ジメチル、フマル酸モノメチルおよびフマル酸モノエチルから選択され、より具体的にはフマル酸ジメチルである、式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩と、を含むか、またはそれらからなる。
【0153】
具体的にG79(BN201)、G80(BN119)およびG81(BN120)からなる群から選択され、さらに具体的にG79(BN201)の化合物である、上記で定義される式(I)の化合物と組み合わされる他の塩は、フマル酸塩、フマル酸二ナトリウム(フマル酸ナトリウム)およびフマル酸鉄(フマル酸鉄(Ii))であり、本発明者らは、組み合わせても活性であることを認識した。
【0154】
別の実施形態では、任意に、全ての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、上記のように使用するための単一の医薬組成物または獣医学的組成物、パッケージまたはキットオブパーツは、a)具体的にG79(BN201)、G80(BN119)およびG81(BN120)からなる群から選択される、特にG79(BN201)の化合物である、上記で定義される式(I)の化合物と、b)具体的にフィンゴリモド、シポニモドおよびオザニモドからなる群から選択され、より具体的にはフィンゴリモドであるS1PRモジュレーターと、を含むか、またはそれらからなる。
【0155】
別の実施形態では、任意に、全ての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、上記のように使用するための単一の医薬組成物または獣医学的組成物、パッケージまたはキットオブパーツは、a)具体的にG79(BN201)、G80(BN119)およびG81(BN120)からなる群から選択され、より具体的にはG79(BN201)化合物である、上記で定義される式(I)の化合物と、b)S3I-201である本明細書で定義されるSTAT3阻害剤と、を含むか、またはそれらからなる。
【0156】
別の実施形態では、任意に、全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、上記のように使用するための単一の医薬組成物または獣医学的組成物、パッケージまたはキットオブパーツは、a)具体的には化合物G79(BN201)、G80(BN119)およびG81(BN120)からなる群から選択され、より具体的にはG79(BN201)である、上記で定義される式(I)の化合物と、b)具体的にはS3I-201である、本明細書で定義されるSTAT3阻害剤と、を含むか、またはそれらからなり、
a)の量およびb)の量は、組み合わせて治療上有効であり、
軸索またはミエリンの破壊または変性をもたらし得る炎症性神経疾患または症状の慢性または進行期に、具体的には、多発性硬化症(MS)、視神経炎(NMO)、視神経炎、バロ病、シルダー病、横断性脊髄炎、急性出血性白質脳炎、マールブルク病、またはそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される疾患または症状の慢性または進行期において、使用される。
【0157】
また、軸索またはミエリンの破壊または変性をもたらし得る炎症性神経疾患または症状の治療および/または予防を必要とする対象において、
1つ以上の薬学的または獣医学的に許容される賦形剤または担体と共に含まれる、i)式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、ii)S1PRモジュレーター、およびiii)STAT3阻害剤からなる群から選択される1つ以上の薬物との組み合わせで、同時に、併用的に、別個に、または逐次的に投与するための、1つ以上の薬学的もしくは獣医学的に許容される賦形剤または担体と共に含まれる、式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩も、本発明の一部を形成し、式(I)の化合物および1つ以上の薬物は、上記で定義される通りである。
【0158】
また、軸索またはミエリンの破壊または変性をもたらし得る炎症性神経疾患または症状の治療および/または予防を必要とする対象において、
1つ以上の薬学的もしくは獣医学的に許容される賦形剤または担体と共に含まれる、式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩との組み合わせで、同時に、併用的に、別個に、または逐次的に投与するための、1つ以上の薬学的または獣医学的に許容される賦形剤または担体と共に含まれる、i)式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、ii)S1PRモジュレーター、およびiii)STAT3阻害剤からなる群から選択される1つ以上の薬物も、本発明の一部を形成し、式(I)の化合物および薬物は、上記で定義される通りである。
【0159】
上記の組み合わせの別の特定の実施形態では、上記のように使用するための、組み合わせ、単一の医薬組成物もしくは獣医学的組成物、またはパッケージもしくはキットオブパーツであり、軸索またはミエリンの破壊または変性をもたらし得る炎症性神経疾患または症状は、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、バロ病、シルダー病、横断性脊髄炎、急性出血性白質脳炎、マールブルク病、またはそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される。
【0160】
本明細書で使用される場合(以下の実施例を参照)、「神経保護」、「神経保護的」、または「神経保護効果」という用語は、ニューロンおよびグリアを含む神経細胞の死もしくは損傷を予防もしくは低減する能力、または、損傷後、例えば脳、中枢神経系もしくは末梢神経系の病理学的もしくは有害な状態から生じる、もしくはそれに関連する損傷後の神経細胞および軸索、樹状突起およびシナプスなどのその伸長を救済、蘇生もしくは復活させる能力を指す。したがって、この神経保護効果は、ニューロン細胞に、それらのニューロン機能を維持または回復させる能力を包含する。神経保護効果は、神経細胞の細胞膜を安定化させるか、または神経細胞機能の正常化に役立つ。それは、ニューロン細胞の生存性または機能の喪失を防止する。それは、細胞死をもたらすニューロンの進行性劣化の阻害を包含する。それは、ニューロンのあらゆる検出可能なストレスからの保護を指す。神経保護には、神経細胞およびミエリンの再生、すなわち疾患または外傷後の神経細胞集団の再増殖が包含される。
【0161】
本明細書に記載の医薬組成物は、それを必要とする対象に、1日1回以上~1ヶ月に1回または数ヶ月に1回、投与され得る。
【0162】
上記で開示された式(I)の化合物および1つ以上の薬物の各々の治療量または治療量以下の量は、さらに、組合せ、上に開示された単一の医薬組成物または獣医学的組成物を投与しようとする対象の体重を考慮して調整することができる。当業者は、本明細書における指針を考慮してかかる量を決定することができるであろう。
【0163】
本発明の目的において、「治療」という用語またはその用語の活用形は、既に疾患に罹患している患者の軸索またはミエリンの破壊または変性をもたらし得る炎症性神経疾患または症状の進行を軽減、安定化、または阻害することを意味する。「予防」という用語は、本明細書では、上記のような臨床的に明らかな炎症性神経疾患または症状の発症の予防およびその発症の遅延のいずれをも含むことを指すために使用される。したがって、本明細書で使用される「治療する」、「処理すること」および「治療」という用語は、疾患の完全または部分的な退縮を生じさせること、上記疾患に関連する症状の発生を排除、低減、防止もしくは遅延させること、上記疾患の発症または発症リスクを防止、遅延もしくは減少させること、再発の割合および/または発生を防止、遅延もしくは減少させること、障害の進行時間の増加を防止、遅延もしくは減少させること、神経保護効果を提供すること、またはそれらの何らかの組み合わせを指し得る。例えば、治療は、それを必要とする対象における障害の蓄積の低減を指し得る。特定の実施形態では、治療はまた、神経保護効果、免疫調節的応答、またはそれらのいくつかの組み合わせを提供することを指し得る。
【0164】
「患者」および「対象」という語句は、本明細書では互換的に使用される。
【0165】
本明細書で使用される「約」という用語は、記載された値または値の範囲の5%または10%以内を意味する。
【0166】
式(II)の塩:式(I)の化合物のフマル酸塩誘導体
【0167】
本発明はまた、式(I)の特定の化合物のフマル酸塩誘導体である式(II)の塩に関し:
【化16】


式中、R、RおよびRは、式(I)の化合物について上記で定義される通りであり、Rは(C-C)アルキルである。
【0168】
式(II)の塩の調製は、当技術分野で公知の方法によって行うことができる。例えば、それらは、従来の化学的方法によって、塩基性部分を含有する式(I)の親化合物から調製することができる。一般に、そのような塩は、例えば、水または有機溶媒(例えばメタノール、エタノール中またはそれらの混合物)、水および有機溶媒、中で、式(I)のこれらの化合物の遊離酸形態を、化学量論量の適切な式(III)の薬学的または獣医学的に許容される酸と反応させることによって調製される:
【化17】


式中、Rは上記で定義した通りである。
【0169】
一実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(II)の化合物において、Rはフルオロフェニル、より具体的には2-フルオロフェニル、3-フルオロフェニルまたは4-フルオロフェニル、さらにより具体的には2-フルオロフェニルである。
【0170】
別の実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(II)の化合物において、Rは、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、およびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基、好ましくは、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシおよびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基、より好ましくは、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、フルオロメチルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基で、さらに置換されたフルオロフェニルである。
【0171】
一実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(II)の化合物において、Rはクロロフェニル、より具体的には2-クロロフェニル、3-クロロフェニルまたは4-クロロフェニルであり、さらにより具体的には、Rは2-クロロフェニルである。
【0172】
別の実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(II)の化合物において、Rは、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、およびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基、好ましくは、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシおよびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基、より好ましくは、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、フルオロメチルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基で、さらに置換されたクロロフェニルである。
【0173】
一実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、Rはブロモフェニル、より具体的には2-ブロモフェニル、3-ブロモフェニルまたは4-ブロモフェニル、さらにより具体的には2-ブロモフェニルである。
【0174】
別の実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(II)の化合物において、Rは、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、およびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基、好ましくは、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシおよびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基、より好ましくは、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、フルオロメチルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基で、さらに置換されたブロモフェニルである。
【0175】
一実施形態では、任意に、全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組み合わせで、式(II)の化合物において、Rは、ヨードフェニル、より具体的には2-ヨードフェニル、3-ヨードフェニルまたは4-ヨードフェニル、さらにより具体的には2-ヨードフェニルである。
【0176】
別の実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(II)の化合物において、Rは、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、およびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基、好ましくは、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシおよびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基、より好ましくは、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、フルオロメチルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基で、さらに置換されたヨードフェニルである。
【0177】
一実施形態では、任意に全ての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(II)の化合物において、Rはトリフルオロメチルフェニル、より具体的には2-トリフルオロメチルフェニル、3-トリフルオロメチルフェニルまたは4-トリフルオロメチルフェニル、さらにより具体的には2-トリフルオロメチルフェニルである。
【0178】
別の実施形態では、任意に全ての説明を通じて上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(II)の化合物において、Rは、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、およびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基、好ましくは、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシおよびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基、より好ましくは、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、フルオロメチルおよびトリフルオロメチルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基で、さらに置換されたトリフルオロメチルフェニルである。
【0179】
一実施形態では、任意に全ての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(II)の化合物において、Rはピロリジン-1-イルである。
【0180】
一実施形態では、任意に全ての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(II)の化合物において、Rは2-オキソ-ピロリジン-1-イル-メチルである。
【0181】
一実施形態では、任意に全ての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(II)の化合物において、Rはスルファモイルフェニル、より具体的には2-スルファモイルフェニル、3-スルファモイルフェニル、または4-スルファモイルフェニル、さらにより具体的には4-スルファモイルフェニルである。
【0182】
一実施形態では、任意に全ての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(II)の化合物において、Rは2-メチルプロピルである。
【0183】
一実施形態では、任意に全ての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(II)の化合物において、Rは2-フルオロフェニルまたはピロリジン-1-イルであり、Rは2-オキソ-ピロリジン-1-イルメチルまたは4-スルファモイルフェニルである。
【0184】
一実施形態では、任意に全ての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(II)の化合物、したがって式(III)の化合物において、Rは(C-C)アルキルであり、より好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルおよびtert-ブチルからなる群から選択される。
【0185】
一実施形態では、任意に全ての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(II)の化合物、したがって式(III)の化合物において、Rはメチルである。
【0186】
別の実施形態では、任意に全ての説明を通して上記または下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(II)の化合物は、以下のとおりである。
【0187】
【化18】

【0188】
具体的な式(II)の塩、より具体的にはBN201のフマル酸塩(本明細書ではBN201-フマル酸塩または式(IIa)の化合物と称する)を生成し(実施例5参照)、BN201またはフマル酸塩単独に対するその神経保護効果について評価した(実施例6参照)。結果は、BN201およびフマル酸塩がいずれも、酸化ストレスによって誘導される死からニューロンを部分的に救済したことを示す。しかしながら、BN201-フマル酸塩は、いずれかの化合物単独よりも有意に高いレベルの保護を示し、相乗的な神経保護効果の存在を示唆した。
【0189】
したがって、これらの式(II)の塩はすべて、ニューロンの健康状態を維持するため、および/または損傷したニューロンを救済するための活性剤として、医薬組成物または獣医学的組成物に添加し得る。
【0190】
したがって、本発明はまた、治療上有効量の式(II)の化合物を、1つ以上の薬学的または獣医学的に許容される賦形剤または担体と共に含む、医薬組成物または獣医学的組成物に関する。
【0191】
本発明はまた、軸索またはミエリンの破壊または変性をもたらし得る炎症性神経疾患または症状の治療および/または予防を必要とする対象において、該治療および/または予防に使用するための、式(II)の塩、またはそれを含む医薬組成物もしくは獣医学的組成物に関する。
【0192】
この態様はまた、軸索またはミエリンの破壊または変性をもたらし得る炎症性神経疾患または症状を治療および/または予防する方法として応用され得、該方法は、それを必要とするヒト対象を含む哺乳動物対象に、治療上有効量の式(II)の塩、またはそれを含む医薬組成物または獣医学的組成物を、1つ以上の医薬的または獣医学的に許容される賦形剤または担体と共に投与することを含む。
【0193】
軸索またはミエリンの破壊または変性をもたらし得る炎症性神経疾患または症状を治療および/または予防するための医薬品を調製するための、式(II)の塩の使用も、本発明の一部を形成する。
【0194】
一実施形態では、任意に全ての説明を通して上記または下記に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴との組合せにおいて、上記で開示される使用のための式(II)の塩、または医薬組成物もしくは獣医学的組成物、またはそれを含むキットオブパーツは、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、光学性神経炎、バロ病、シルダー病、横断性脊髄炎、急性出血性白質脳炎、マールブルク病、またはそれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、軸索またはミエリンの破壊または変性をもたらし得る炎症性神経疾患または症状のために使用される。
【0195】
一実施形態では、任意に、全ての説明を通して上記または以下に記載される様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて、式(II)の塩、または医薬組成物もしくは獣医学的組成物のそれは、式(IIa)の塩である。
【0196】
明細書および特許請求の範囲を通して、「含む」という語およびこの語の活用形は、他の技術的特徴、添加物、成分またはステップを排除することを意図するものではない。さらに、「含む」という語は、「からなる」の場合を包含する。本発明のさらなる目的、利点および特徴は、本明細書を検討することで当業者に明らかになるか、または本発明の実施によって習得され得る。以下の実施例および図面は例示として提供され、それらは本発明を限定することを意図するものではない。さらに、本発明は、本明細書に記載の特定の好ましい実施形態のあらゆる可能な組み合わせを網羅する。
【実施例
【0197】
実施例1;BN201の薬学的有効性(式(I)の化合物の例)
【0198】
MSおよび視神経炎の治療におけるBN201の医学的有用性を裏付ける3つのインビボ試験を行った。これらの試験は、BN201の神経保護効果を試験することを目的とし、神経変性および脱髄を示す実験用自己免疫性脳脊髄炎(EAE)マウスモデルで行った。ミエリン塩基性タンパク質(MBP)またはミエリンプロテオリピドタンパク質(PLP)に対する免疫応答は、主に脊髄に位置する病変を誘導するが、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)による免疫は、主に視神経および脊髄に位置する病変を生成する。文献では、EAEモデルは、不可逆的な視力喪失を引き起こす可能性があるため、MSおよび視神経炎のモデルとして一般的に使用されている(Kezuka et al,Analysis of the pathogenesis of experimental autoimmune optic neuritis.J Biomed Biotechnol.2011;2011:294046;Guo et al,Decreased neural stem/progenitor cell proliferation in mice with chronic/nonremitting experimental autoimmune encephalomyelitis.Neurosignals.2010;18(1):1-8)。
【0199】
試験EAE-C03:以下の実験デザインに従って、プラセボと比較して、2つの異なる濃度のBN201の毎日のi.p.投与により試験した:
-EAEに罹患したプラセボ処置動物(病理学的対照群);
-50mg/kg用量のBN201で処置したEAE罹患動物、および
-100mg/kg用量のBN201で処置したEAE罹患動物。
【0200】
分子の治療特性を試験するために、疾患の慢性期に処置を開始した。データを図1(A)に示すが、これは、試験した各群の免疫後日数において臨床スコア(各群の動物の臨床スコアの平均)をプロットしたグラフである。結果は、50または100mg/kgのいずれかの用量のBN201が、処置の17日後にプラセボと比較して臨床スコアを有意に減少させたことを示す。
【0201】
EAE動物モデルは、最初の尾部の麻痺と、それに続く後肢の麻痺および前肢への麻痺のさらなる進行を特徴とする。以下のスケールを使用して臨床スコアを割り当て、疾患の重症度を評価した:0=正常、0.5=軽度の跛行尾、1=跛行尾、2=後肢の軽度の不全対麻痺、ふらつき歩行、3=中程度の不全対麻痺、随意運動は依然として可能、4=重度の不全対麻痺、ほぼ完全な後肢麻痺、5=不全対麻痺または四肢不全麻痺、6=転帰。
【0202】
マウスの70%が2以上の臨床スコアを示した時点で、治療的処置を11日目に開始した。
【0203】
EAEは、個体間の徴候および症状の発生率および重症度の変動性のために、複雑なモデルであることが広く知られている。したがって、試験した薬物の何らかの効果は、疾患が臨床的レベルで開始した後、したがって免疫の数日後、臨床スコアに関する行動がすべての動物において特定のレベル(プロトコルで決定される)を超える場合に決定される。特定の試験化合物またはプロトコルについて、観察されたパラメータ(例えば、臨床スコア)が、試験された群(アッセイ、対照など)間で数日間、および各群内で連続して数日の間、有意性が維持された場合に、さらなる有意なデータが得られたものとした。
【0204】
結果に関するこの解釈コードによれば、また本明細書の他のすべての図に適用可能であるが、図1(A)では、異なる用量のBN201で処置されたEAE罹患動物の有意かつ決定的なデータを、アスタリスク(*)でマークする。統計学的有意性のP値は、各図の脚注または図の凡例で定義する。このマークされたデータのセットは、各群の動物が連続する数日の間に安定な態様でパラメータを維持し、アッセイされた群のデータ全体が対照と効果的に異なっていた(アッセイ群間で、例えば、プラセボ、ビヒクルまたは偽動物と比較し、化合物の試験用量において統計学的差異が存在した)ときの、試験されたパラメータの値(この場合、臨床スコア)に対応する。
【0205】
次いで、同じマウスモデルを用いて第2の実験(試験EAE-C05)を行った。
【0206】
試験EAE-C05:BN201およびプラセボ処置群(病理学的対照群)の2つの用量レベルに加えて、試験デザインでは、2つの活性比較物質、フマル酸ジメチル(DMF)およびフィンゴリモド(FTY720)、ならびに、偽薬群(動物を病理学的群として操作したがMOG注射を行わなかった群)を導入した。すべての群において毎日投与した。
-偽薬対照非疾患プラセボ処置動物(健常対照群);
-EAE罹患プラセボ処置動物(病理学的対照群);
-15mg/kgのDMFで経口処置したEAE罹患動物;
-2mg/kgのFTY720で処置したEAE罹患動物;
-50または100mg/kgのBN201で処置したEAE罹患動物。
【0207】
以下のスケールを使用して臨床スコアを割り当て、疾患重症度を評価した:0=正常、0.5=部分的な尾部の麻痺、1=完全な尾部の麻痺、1.5=尾の麻痺および立ち直り反射の喪失、2=後肢の部分的な麻痺/片肢の麻痺、2.5=一方の肢の麻痺および他方の肢の活動の部分的喪失、3=両側後肢の麻痺、4=瀕死、5=転帰。
【0208】
各マウスが完全な尾部の麻痺を示し始めたとき(スコア1)、12または13日目に治療的処置を開始した。
【0209】
データを図1(B)に示すが、図1(B)は、処置開始からの1日当たりの臨床スコア(CS)をプロットしたグラフであり、試験した各群の臨床スコア(同じ群内の動物についての各日の平均臨床スコア)を示す。
【0210】
次いで、BN201の用量応答を試験するための第3の実験(試験EAE-C06)を、同じマウスモデルを使用して行った。
【0211】
試験EAE-C06:BN201の5つの異なる濃度:12.5mg/kg、25mg/kg、50mg/kg、100mg/kg、および150mg/kg。また、偽薬、病理学的対照およびFTY720(2mg/kg)比較群も実験に含めた。すべての群において毎日投与した。
【0212】
以下のスケールを使用して臨床スコアを割り当て、疾患重症度を評価した:
0=正常、0.5=部分的な尾部の麻痺、1=完全な尾部の麻痺、1.5=尾の麻痺および立ち直り反射の喪失、2=後肢の部分的な麻痺/片肢の麻痺、2.5=一方の肢の麻痺および他方の肢の活動の部分的喪失、3=両側後肢の麻痺、4=瀕死、5=転帰。
【0213】
各マウスが完全な尾部の麻痺を示し始めたとき(スコア1)、12日目に治療的処置を開始した。
【0214】
データを図1(C)に示すが、試験した各群の臨床スコアを、疾患発症後1日ごとにプロットする。結果は、ほぼすべての観察/処置の日(2日目~30日目)における、BN201 50mg/kg、BN201 100mg/kgおよびFTY 720 2mg/kgの動物の臨床スコアの有意な改善を示す(表1)。
【0215】
【表1】

【0216】
実施例2;BN201およびフィンゴリモドの組み合わせ 対 BN201またはフィンゴリモド単独の比較
【0217】
8~12週齢の雌C57BL/6マウスにおけるEAEの臨床的進行に対する効果を評価した。マウスに1日1回、週に6日間、最適以下の投与量で投与した:
-偽薬対照非疾患プラセボ処理動物(健常対照群);
-EAE罹患プラセボ処置動物(病理学的対照群);
-0.1mg/kgのFTY720で処置したEAE罹患動物、
-25mg/kgのBN201で処置したEAE罹患動物、または
-それらの組み合わせで処置したEAE罹患動物
【0218】
BN201とフィンゴリモドとの組み合わせの、8~12週齢の雌C57BL/6マウスにおけるEAEの臨床的進行に対するその効果について評価した。EAE動物モデルは、最初の尾部の麻痺と、それに続く後肢の麻痺および前肢への麻痺のさらなる進行を特徴とする。
【0219】
以下のスケールを使用して臨床スコアを割り当て、疾患の重症度を評価した:0=正常、0.5=軽度の跛行尾、1=跛行尾、2=後肢の軽度の不全対麻痺、ふらつき歩行、3=中程度の不全対麻痺、随意運動は依然として可能、4=重度の不全対麻痺、ほぼ完全な後肢麻痺、5=不全対麻痺または四肢不全麻痺、6=転帰。
【0220】
馴化、体重基づくマウスの分配、および免疫は、実施例1と同様に行った。
【0221】
動物の70%が1以上の臨床スコアを有した15日目から開始し、マウスに、1日1回、週に6日間、最適以下の投与量でフィンゴリモド、BN201、またはそれらの組み合わせ(フィンゴリモドについては0.1mg/kg、BN201については25mg/kg)を投与した。
【0222】
結果を図2に要約する。BN201とフィンゴリモドとの組み合わせを投与したマウスは、いずれかの化合物を単独で投与したマウスよりも、30日目~35日目までの平均1日臨床スコアにおいて有意に大きな改善(p≦0.05)を示した。これらの差は、各化合物による効果の合計よりも大きく、単独で投与された各化合物の治療用量をはるかに下回る用量であっても、一緒に投与された場合に有効であることを示唆している。
【0223】
実施例3;BN201およびフマル酸ジメチル(DMF)の組み合わせ 対 BN201またはDMF単独の比較
【0224】
実施例2と同様のMSの動物モデル(すなわち、MOG35-55で免疫したC57BL6マウスにおけるEAE)における効果。
【0225】
15日目から開始して、マウスに以下を投与した:
-フマル酸ジメチル(DMF)(群A、10匹のマウス)、
-BN201(群B、10匹のマウス)
-それらの組み合わせ(群C、10匹のマウス)
【0226】
1日1回、週に6日間、最適以下投与量(DMFについては10mg/kg、BN201については25mg/kg)。
【0227】
DMFは、10mL/kgの体積で生理食塩水ビヒクル中、剛性カニューレにより経口投与し、一方BN201は、5mL/kgの体積で生理食塩水ビヒクル中、腹腔内注入により投与した。対照マウスは、経口およびi.p.注入の両方で、ビヒクルのみを受けたか、(群D、10匹のマウス)または全く受けなかった(群E、2匹のマウス)。
【0228】
本研究の目的は、マウスにおける慢性EAEの進行におけるBN201(25mg/kg)およびフマル酸ジメチル(DMF)(10mg/kg)の最適以下の用量の併用療法の有効性および安全性を評価することとした。
【0229】
-7日目から始まる一週間の順化期間中、マウスを体重層別化に基づいて、異なる実験群に分配した。0日目に、マウスを、不完全フロイントアジュバント(IFA)中で、50μgのMycobacterium tuberculosis(H37Ra株;Difco、ミシガン州デトロイト)と共に乳化させた150μgのMOGペプチド35-55(スピケム、フィレンゼ)を用い、両後肢パッドの皮下に免疫した。マウスに百日咳毒素(Sigma)(500ng)を、免疫時および2日後に再度、腹腔内(i.p.)注入した。以下のスケールを使用して臨床スコアを割り当て、疾患重症度を評価した:0=正常、0.5=軽度の跛行尾、1=跛行尾、2=後肢の軽度の麻痺、不安定な歩行、3=中程度の不全対麻痺、随意運動は依然として可能、4=対麻痺または四肢不全麻痺、5=瀕死の状態、6=転帰。14日目までに、マウスの70%が1以上の臨床スコアを示した。
【0230】
15日目から開始して、マウスに、フマル酸ジメチル(DMF)(群A、10匹のマウス)、BN201(B群、10匹のマウス)、またはそれらの組み合わせ(群C、10匹のマウス)を1日1回、週に6日間、最適以下の投与量(DMFについては10mg/kg、BN201については25mg/kg)で投与した。DMFは、10mL/kgの体積で生理食塩水ビヒクル中、剛性カニューレにより経口投与し、一方BN201は、5mL/kgの体積で生理食塩水ビヒクル中、腹腔内注入により投与した。対照マウスは、経口およびi.p.注入の両方で、ビヒクルのみを受けたか、(群D、10匹のマウス)または全く受けなかった(群E、2匹のマウス)。動物の体重を測定し、盲検観察者によって疾患の臨床徴候について週に6日間検査した。30日目に、マウスを麻酔し、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.6)中4%パラホルムアルデヒドで心臓内灌流した。眼、視神経、脊髄および脳を切開し、使用するまで固定した。
【0231】
図3に示すように、最適以下の用量のBN201またはDMFのいずれかで処置した動物は、プラセボで処置したマウスと同様のEAEを罹患した。対照的に、最適以下の用量のDMFとBN201の組み合わせは、34日目から38日目まで、疾患の経過を有意に改善した(図3を参照のこと。アスタリスク(*)を付した値はp<0.05を示す。)。要約すると、BN201とDMFの併用療法は、EAEの経過を改善するための相乗効果を示す。
【0232】
実施例4;BN201とSTAT3阻害剤との組み合わせ対BN201またはSTAT3阻害剤単独の比較
【0233】
多発性硬化症の動物モデル(すなわち、MOG35-55で免疫したC57BL6マウスにおけるEAE)における疾患の慢性期の間の効果
【0234】
マウスにおける慢性EAEの進行における最適用量のBN201(50mg/kg)およびS31-201(5mg/kg)の併用療法の有効性および安全性。
【0235】
疾患の慢性期を(34日目までに)開始させ、マウスに以下を投与した:
-STAT3阻害剤S31-201(群A、7匹のマウス)、
-BN201(群B、6匹のマウス)、または
-それらの組み合わせ(群C、6匹のマウス)
【0236】
1日1回、週に6日間、最適投与量(S31-201については5mg/kg、BN201については50mg/kg)。
【0237】
S31-201およびBN201を生理食塩水ビヒクル中、5mL/kgの体積で腹腔内注入により投与した。対照マウスは、経口およびi.p.注入の両方で、ビヒクルのみを受けたか、(群D、6匹のマウス)または全く受けなかった(群E、2匹のマウス)。マウスを34日目(慢性EAE段階)から54日目の実験終了まで処置した。
【0238】
BN201とSTAT3阻害剤S31-201との組み合わせを、多発性硬化症の動物モデル(すなわち、MOG35-55で免疫したC 57BL6マウスにおけるEAE)における疾患の慢性期の間のその効果について評価した。研究の目的は、マウスにおける慢性EAEの進行におけるBN201(50mg/kg)およびS 31-201(5mg/kg)の最適用量を用いた併用療法の有効性および安全性を評価することとした。
【0239】
-7日目から始まる一週間の順化期間中、マウスを体重層別化に基づいて、異なる実験群に分配した。0日目に、マウスを、不完全フロイントアジュバント(IFA)中で、50μgのMycobacterium tuberculosis(H37Ra株;Difco、ミシガン州デトロイト)と共に乳化させた150μgのMOGペプチド35-55(スピケム、フィレンゼ)を用い、両後肢パッドの皮下に免疫した。マウスに百日咳毒素(Sigma)(500ng)を、免疫時および2日後に再度、腹腔内(i.p.)注入した。以下のスケールを使用して臨床スコアを割り当て、疾患重症度を評価した:0=正常、0.5=軽度の跛行尾、1=跛行尾、2=後肢の軽度の麻痺、不安定な歩行、3=中程度の不全対麻痺、随意運動は依然として可能、4=対麻痺または四肢不全麻痺、5=瀕死の状態、6=転帰。17日目までに、マウスの70%が1以上の臨床スコアを示した。
【0240】
34日目から開始して、マウスにSTAT3阻害剤S 31-201(群A、7匹のマウス、Sigma)、BN201(B群、6匹のマウス)またはそれらの組み合わせ(群C、6匹のマウス)を1日1回、週に6日間、最適投与量(S31-201については5mg/kg、BN201については50mg/kg)で投与した。S31-201およびBN201を生理食塩水ビヒクル中、5mL/kgの体積で腹腔内注入により投与した。対照マウスは、経口およびi.p.注入の両方で、ビヒクルのみを受けたか、(群D、6匹のマウス)または全く受けなかった(群E、2匹のマウス)。マウスを34日目(慢性EAE段階)から54日目の実験終了まで処置した。本発明者らは、試験の開始時に処置ごとに無作為化したマウスを使用した。治療開始時に、群は異なるレベルのEAE重症度を有し得る(例えば、BN201単独群はプラセボよりも処置開始からより重篤な疾患を有する)。このため、群間の比較は、処置開始後のEAEスコアの変化に基づいた。動物の体重を測定し、盲検観察者によって疾患の臨床徴候について週に6日間検査した。55日目に、マウスを麻酔し、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.6)中4%パラホルムアルデヒドで心臓内灌流した。眼、視神経、脊髄および脳を切開し、使用するまで固定した。
【0241】
図4に示すように、最適用量のBN201または最適用量のS31-201単独による、疾患の慢性期(すなわち、34日目、矢印参照)での処置は、疾患のこの段階では有効ではなかった。しかしながら、BN201およびS31-201の組み合わせの最適な用量での処置は、疾患の慢性期の間のEAEの経過を有意な態様で改善した。処置中、臨床スコアは、他の処置と比較して併用療法では有意に低かった。BN201およびSTAT3阻害剤S31-201の併用療法は、後期慢性期のEAEに罹患するマウスを有意に保護した。効果の大きさは、各薬物の単独での効果の合計よりも大きかったため、これは、両薬物間の相乗的活性の存在を示唆している。
【0242】
実施例5;BN201-フマル酸モノメチル塩の調製
【0243】
BN201-フマル酸モノメチル塩の調製のために、100mgのAM-G79_03(BN201)(1当量)および26mgのフマル酸モノメチル塩(1当量)をメタノール中で混合し、混合物を1時間撹拌することによって維持した。その後、真空での濃縮を行い、得られた残渣をH-NMRによって分析した。
【0244】
H-NMRのデータは、以下の式(IIa)の化合物が得られたことを的確に裏付けた:
【化19】

【0245】
実施例6;BN201-フマル酸モノメチル塩とBN201またはフマル酸モノメチル塩単独との比較
【0246】
この試験の目的は、神経保護アッセイにおけるBN201-フマル酸モノメチル塩の相乗効果の可能性を試験することとした。したがって、実施例5に示すように得られたBN201-フマル酸モノメチル塩を、MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)細胞増殖アッセイを使用して、酸化ストレス(すなわち、過酸化水素(H))によって誘導される死からヒト神経芽腫細胞株SH-SY5Yを保護するその能力について試験した。
【0247】
SH-SY5Y細胞を、50%イーグル最小必須培地(EMEM)、50%ハムF12栄養混合物、10%ウシ胎児血清(FBS)、2mML-Gluおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシン中で培養した。全ての細胞培養物を5%COおよび37℃の加湿インキュベータ内で維持した。SH-SY5Y細胞を、BN201単独、フマル酸モノメチル単独、または様々な濃度のBN201-フマル酸モノメチル塩(n=5、濃度:0.03μM、0.1μM、0.3μM、0.5μM、1μM、3μM、5μM、10μM、20μM、40μM)により1時間プレインキュベートし、次いで、H(15μM)を添加してストレスを誘導した。ピルビン酸ナトリウム(10mM)によるプレインキュベーションを陽性対照として使用した。30分間のHによるインキュベーションの後、培地を交換し、チアゾリルブルーテトラゾリウムブロミド(MTT;シグマ・アルドリッチ;ストック濃度10mg/ml)を0.5mg/mlの最終濃度で各ウェルに添加した。2時間のMTTによるインキュベーションの後、細胞培地を除去し、細胞を純粋なジメチルスルホキシド(DMSO)に再懸濁した。570nmでの吸光度を測定することによって、細胞生存率を決定した。各実験は5連で行った。
【0248】
結果は、対照と比較したパーセンテージとして提供される細胞生存率が、同じ濃度で単独で試験したBN201またはフマル酸塩と比較して、BN201-フマル酸モノメチル塩での前処理の後に増加することを示している。データを図5に示す。
【0249】
BN201およびフマル酸塩はいずれも、酸化ストレスによって誘導される死からニューロンを部分的に救済し、ピルビン酸ナトリウムなどの同様の周知の抗酸化剤の有効性を示した。一方、BN201-フマル酸モノメチルは、いずれかの化合物単独よりも有意に高いレベルの神経保護を示し、このことは、BN201-フマル酸モノメチル塩が相乗的な神経保護効果を発揮することを示している。
【0250】
本発明のさらなる態様/実施形態を、以下の形態に示す:
【0251】
形態1
以下の組み合わせ:
a)式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩と、
b):
(i)式(IV)の化合物、またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩
(ii)スフィンゴシン-1-リン酸受容体阻害剤(S1PRモジュレーター)、および
(iii)シグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)阻害剤
からなる群から選択される1以上の薬物と、
を含む、組み合わせ
【化20】


式中、
は、ハロゲンまたはトリフルオロメチルで置換され、さらにハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、およびハロ(C-C)アルキルからなる群から選択される1つまたは2つの置換基で任意に置換されたフェニルであるか、あるいは、Rはピロリジン-1-イルであり、Rは2-オキソ-ピロリジン-1-イルメチルまたはスルファモイルフェニルであり、Rはプロピル、1-メチルエチル、ブチル、2-メチルプロピル、ペンチル、1-メチル-ブチル、2-メチルブチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-メチルペンチル、および1-メチルペンチルから選択される;
【化21】


式中、RおよびRは、水素(H)および(C-C)アルキルから独立して選択される)。
【0252】
形態2
式(I)の化合物と、式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、S1PRモジュレーターおよびSTAT3阻害剤からなる群から選択される薬物とを含む、形態1に記載の組合せ。
【0253】
形態3
式(I)の化合物において、Rが2-メチルプロピルであり、RおよびRが請求項1に定義される通りである、形態1から2のいずれか一項に記載の組合せ。
【0254】
形態4
式(I)の化合物が、
【化22】


からなる群から選択される、形態3に記載の組合せ。
【0255】
形態5
式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩が、フマル酸ジメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ナトリウムおよびフマル酸鉄(II)からなる群から選択される、形態1から4のいずれかに記載の組合せ。
【0256】
形態6
S1PRモジュレーターが、フィンゴリモド、シポニモド、オザジモド、ポネシモドおよびセラリフィモドからなる群から選択される、形態1から5のいずれかに記載の組合せ。
【0257】
形態7
STAT3阻害剤が、2-ヒドロキシ4-[[[[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ]アセチル]アミノ]-安息香酸、(S,E)-3-(6-ブロモピリジン-2-イル)-2-シアノ-N-(1-フェニルエチル)アクリルアミド、4-((3-(カルボキシメチルスルファニル)-4-ヒドロキシ-1-ナフチル)スルファモイル)安息香酸、配列番号1のSTAT3阻害剤ペプチド、6-ニトロベンゾ[b]チオフェン-1,1-ジオキシド、エチル-1-(4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)-6,7,8-トリフルオロ-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキシレート、5,15-ジフェニルポルフィリン、PIAS3タンパク質、N-(5-(フラン-2-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)-2-フェニルキノリン-4-カルボキサミド、配列番号2のSTAT3阻害剤XII SPI、およびN-(1’2-ジヒドロキシ-1,2’ビナフタレン-4’-イル)-4-メトキシベンゼンスルホンアミドからなる群から選択される、形態1から6のいずれかに記載の組合せ。
【0258】
形態8
以下から選択される、形態1から7のいずれかに記載の組み合わせ:
式(I)の化合物[N-(2-(2’-フルオロフェニル)エチル)グリシル]-[N-(2-メチルプロピル)グリシル]-N-[3-(2´-オキソピロリジニル)-プロピル]グリシンアミドと、フマル酸ジメチル、または、
式(I)の化合物[N-(2-(2’-フルオロフェニル)エチル)グリシル]-[N-(2-メチルプロピル)グリシル]-N-[3-(2´-オキソピロリジニル)-プロピル]グリシンアミドと、フィンゴリモド、または、
式(I)の化合物[N-(2-(2’-フルオロフェニル)エチル)グリシル]-[N-(2-メチルプロピル)グリシル]-N-[3-(2’-オキソピロリジニル)-プロピル]グリシンアミドと、2-ヒドロキシ-4-[[[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ]アセチル]アミノ]-安息香酸。
【0259】
形態9
a)式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩と、
b)上記で定義される、
i)式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、
ii)S1PRモジュレーター、および
iii)STAT3阻害剤
からなる群から選択される1つ以上の薬物と、
を含み、a)の量およびb)の量が、組み合わせて治療上有効である、形態1から8のいずれかに記載の組合せ。
【0260】
形態10
a)の量がそれ自体では治療量以下の量であり、a)およびb)の量が、組み合わせて治療上有効である、形態1から9のいずれかに記載の組合せ。
【0261】
形態11
b)の量がそれ自体では治療量以下の量であり、a)およびb)の量が、組み合わせて治療上有効である、形態1から9のいずれかに記載の組合せ。
【0262】
形態12
a)の量およびb)の量がそれ自体では治療量以下の量であり、a)およびb)の量が、組み合わせて治療上有効である、形態1から9のいずれかに記載の組合せ。
【0263】
形態13
治療有効量の:
a)式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩と、
【化23】


b)式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、S1PRモジュレーターおよびSTAT3阻害剤からなる群から選択される1つ以上の薬物と、
【化24】


を、1つ以上の薬学的または獣医学的に許容される賦形剤または担体と一緒に含み、
式(I)の化合物および1つ以上の薬物が、形態1から9のいずれかに定義される通りであり、a)の量およびb)の量が、組み合わせて治療上有効である、単一の医薬組成物または獣医学的組成物。
【0264】
形態14
i)所定量の、形態1から9で定義される式(I)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的もしくは獣医学的に許容される賦形剤または担体と共に含む、第1の医薬組成物または獣医学的組成物と、
ii)所定量の、式(IV)の化合物またはその薬学的もしくは獣医学的に許容される塩、S1PRモジュレーターおよびSTAT3阻害剤からなる群から選択される1つ以上を、1つ以上の薬学的または獣医学的に許容される賦形剤または担体と共に含む、第2の医薬組成物または獣医学的組成物と、
を含み、
第1および第2の組成物が、別々の組成物であり、i)の式(I)の化合物の量およびii)の1つ以上の薬物の量が、組み合わせて治療上有効である、パッケージまたはキットオブパーツ。
【0265】
形態15
軸索またはミエリンの破壊または変性をもたらし得る炎症性神経疾患または症状の治療および/または予防を必要とする対象において、該治療および/または予防に使用するための、形態1から12のいずれかに定義される組み合わせ、形態13に定義される単一の医薬組成物もしくは獣医学的組成物、または形態14に定義されるパッケージもしくはキットオブパーツ。
【0266】
引用文献
特許文献
-欧州特許第2611775号明細書
非特許文献
-Patrick Vermersch et al.,‘‘Sphingosine-1-phosphate Receptor Modulators in Multiple Sclerosis’’;European Neurological Review-2018;13(1):25-30
-Guidance for Industry estimating the maximum safe starting dose in initial clinical trials for therapeutics in adult healthy volunteers;FDA,CDER,July 2005
-Kezuka et al,Analysis of the pathogenesis of experimental autoimmune optic neuritis.J Biomed Biotechnol.2011;2011:294046.
-Guo et al,2009;Guo J,Li H,Yu C,Liu F,Meng Y,Gong W,Yang H,Shen X,Ju G,Li Z,Wang J.Decreased neural stem/progenitor cell proliferation in mice with chronic/nonremitting experimental autoimmune encephalomyelitis.Neurosignals.2010;18(1):1-8
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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【国際調査報告】