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特表2022-540006チーズ粉末、前記チーズ粉末の製造方法及びそれから作られるチーズ類食品
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  • 特表-チーズ粉末、前記チーズ粉末の製造方法及びそれから作られるチーズ類食品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】チーズ粉末、前記チーズ粉末の製造方法及びそれから作られるチーズ類食品
(51)【国際特許分類】
   A23C 19/086 20060101AFI20220907BHJP
   A23C 20/00 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
A23C19/086
A23C20/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576859
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(85)【翻訳文提出日】2022-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2020067526
(87)【国際公開番号】W WO2020260296
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】1906790
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505129079
【氏名又は名称】アンスティテュ・ナシオナル・ドゥ・ルシェルシュ・プール・ラグリキュルテュール,ラリマンタシオン・エ・ランヴィロンヌマン
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE RECHERCHE POUR L’AGRICULTURE,L’ALIMENTATION ET L’ENVIRONNEMENT
(71)【出願人】
【識別番号】521561891
【氏名又は名称】アンスティテュ ナシオナル スュペリユール デ シアンス アグロノミク, アグロアリマンテール, オルティコル エ デュ ペイサージュ
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100086265
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100076451
【弁理士】
【氏名又は名称】三嶋 景治
(72)【発明者】
【氏名】ガリック ジル
(72)【発明者】
【氏名】アレル‐オジェ マリエル
(72)【発明者】
【氏名】クロゲネック トマ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンテ ロマン
(72)【発明者】
【氏名】ティエリー アン
【テーマコード(参考)】
4B001
【Fターム(参考)】
4B001AC05
4B001AC15
4B001AC21
4B001AC30
4B001AC46
4B001BC02
4B001BC04
4B001BC06
4B001BC13
4B001BC14
4B001EC09
(57)【要約】
本発明は、チーズ粉末、並びに前記チーズ粉末の製造方法及びそれから作られるチーズ類食品に関する。
特に、前記チーズ粉末の製造方法は、
a)少なくとも1つの風味生成用微生物を培養培地で培養するステップから生じる少なくとも1つの芳香基質と、そのタンパク質の少なくとも一部が、事前の凝固に供されていない凝固タンパク質からなる、少なくとも1つのテクスチャ基質とを提供するステップ(A)、
b)基質混合物が得られるように、少なくとも1つの芳香基質と少なくとも1つのテクスチャ基質とを混合する任意選択のステップ(B)、及び
c)基質の少なくとも一方又は基質混合物が、液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有するとき、粉末のコンシステンシーが得られるように、基質の少なくとも一方又は基質混合物を乾燥させるステップ(C)
を含む。
得られるチーズ粉末は、以下の特徴:95%m/m以上の全乾燥抽出物、0.1~0.25の値である水分活性(a)、及び少なくとも1つのテクスチャ基質に由来する凝固タンパク質が事前の凝固に供されていないこと、を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チーズ粉末の製造方法であって、
前記チーズ粉末が、有利にはチーズ、チーズ特製品又はチーズ代用品といった種類のチーズ類食品の製造のため再水和及びテクスチャ調整されることが意図され、
a)-少なくとも1つの風味生成用微生物を培養培地で培養するステップから生じる少なくとも1つの芳香基質であって、前記チーズ類食品の風味生成の実現を意図した少なくとも1つの芳香基質、及び
-前記チーズ類食品のテクスチャの実現を意図する少なくとも1つのテクスチャ基質
を提供するステップ(A)であって、
前記少なくとも1つのテクスチャ基質がタンパク質を含み、前記タンパク質の少なくとも一部が、凝固してゲルを形成することが可能な凝固タンパク質からなり、この凝固タンパク質が事前の凝固に供されていないものであり、
前記少なくとも1つのテクスチャ基質が、好ましくは、有利には0.1~6、好ましくは0.4~1.8である脂肪/タンパク質比のタンパク質と脂肪とを含む、ステップ
b)基質混合物が得られるように、前記少なくとも1つの芳香基質と前記少なくとも1つのテクスチャ基質とを混合する任意選択のステップ(B)、及び
c)前記基質のうちの少なくとも一方又は前記基質混合物が液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有するとき、粉末のコンシステンシーが得られるように前記基質のうちの少なくとも一方又は前記基質混合物を乾燥させるステップ(C)
を含み、
前記ステップが、以下の特徴:
-95%m/m以上の全乾燥抽出物、
-0.1~0.25、更には0.1~0.2、好ましくは0.15~0.2の値である水分活性a、及び
-前記少なくとも1つのテクスチャ基質に由来する前記凝固タンパク質が事前の凝固に供されていないこと
を有するチーズ粉末を得るために実施されることを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
-互いに分離している、且つそれぞれが粉末の形態の、前記少なくとも1つの芳香基質と前記少なくとも1つのテクスチャ基質とを含む基質の組み合わせからなるチーズ粉末が得られるように、前記混合するステップ(B)を伴わず実施されるか、又は
-粉末の形態の基質混合物の形態の前記チーズ粉末が得られるように、前記混合するステップ(B)を伴い実施されることを特徴とする、請求項1に記載のチーズ粉末の製造方法。
【請求項3】
前記提供するステップ(A)が、互いに独立に、
-粉末のコンシステンシー、又は
-液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシー
から選択されるコンシステンシーを有する基質を提供することからなり、
好ましくは、前記少なくとも1つのテクスチャ基質が、適用可能な場合に有利には0.1~6、好ましくは0.4~1.8の脂肪/タンパク質比の、6%~25%m/mのタンパク質と、0%~30%m/m、更には3%~30%m/mの脂肪とを含む、液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のチーズ粉末の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ(A、B、C)が、以下のステップの組み合わせのうちの1つから選択される:
第1の組み合わせ(i)によれば、
-前記提供するステップ(A)が、各々が粉末のコンシステンシーを有する前記基質を提供することを含み、及び
-前記混合するステップ(B)が、前記粉末基質を混合して粉末の形態の前記基質混合物を得ることからなり、
又は
第2の組み合わせ(ii)によれば、
-前記提供するステップ(A)が、液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有する少なくとも1つの基質を提供することを含み、次に
-前記乾燥させるステップ(C)が、前記少なくとも1つの基質を乾燥させて、各々が粉末のコンシステンシーを有する基質を得ることからなり、次に
-前記混合するステップ(B)が、前記粉末基質を混合して粉末の形態の前記基質混合物を得ることからなり、
又は
第3の組み合わせ(iii)によれば、
-前記提供するステップ(A)が、液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有する少なくとも1つの基質を提供することからなり、次に
-前記混合するステップ(B)が、前記基質を混合して、液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有する基質混合物を得ることからなり、次に
-前記乾燥させるステップ(C)が、前記基質混合物を乾燥させて、粉末の形態の前記基質混合物を得ることからなり、
又は
第4の組み合わせ(iv)によれば、
-前記提供するステップ(A)が、液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有する少なくとも1つの基質を提供することからなり、次に
-粉末の形態の前記基質混合物が得られるように、前記基質を前記混合するステップ及び前記乾燥させるステップ(B、C)が同時に実施される(共乾燥される)ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のチーズ粉末の製造方法。
【請求項5】
-液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有する基質の場合、前記混合するステップ(B)がホモジナイゼーションステップを含み、及び/又は
-液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有する基質混合物の場合、前記基質混合物を前記乾燥させるステップ(C)が噴霧化ステップからなることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のチーズ粉末の製造方法。
【請求項6】
前記テクスチャ基質が、乳製品及び/又は植物の液汁のろ過技法から生じる保持液からなることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のチーズ粉末の製造方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの風味生成用微生物が、前記チーズ粉末中で生菌であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のチーズ粉末の製造方法。
【請求項8】
有利には請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法から生じる、チーズ粉末であって、
前記チーズ粉末が、
-互いに分離している、それぞれが粉末の形態の、前記少なくとも1つの芳香基質と前記少なくとも1つのテクスチャ基質とを含む基質の組み合わせ、又は
-粉末の形態の、前記基質混合物
から選択され、
以下の特徴:
-95%m/m以上の全乾燥抽出物、
-0.1~0.25の値である水分活性a
-少なくとも1つのテクスチャ基質に由来する前記凝固タンパク質が事前の凝固に供されていないこと
を有する、チーズ粉末。
【請求項9】
有利には、チーズ、チーズ特製品又はチーズ代用品といった種類のチーズ類食品の製造方法であって、以下のステップ:
-請求項8に記載のチーズ粉末又は請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法から生じるチーズ粉末を提供するステップ(E)、
-粉末の形態の前記基質の組み合わせの基質を混合する任意選択のステップ(F)、
-前記凝固タンパク質が確実に再水和/可溶化され、液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有するチーズ基質が得られるように、前記粉末テクスチャ基質又は前記粉末基質混合物を少なくとも1つのCaイオン封鎖塩及び好ましくは少なくとも1つの酸性度調節塩の存在下で再水和するステップ(G)
-適用可能な場合、テクスチャ基質と芳香生成基質とを混合するステップ(H)、
-前記凝固タンパク質の凝固及びゲルの形成のため、常に少なくとも1つのCaイオン封鎖塩及び好ましくは酸性度調節塩の存在下で、前記チーズ基質が物理化学的なテクスチャ調整条件に供される、テクスチャ調整するステップ(I)であって、前記物理化学的テクスチャ調整条件が、前記チーズ類食品に求められる最終的なテクスチャに応じて適合されるステップ
を連続して含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記再水和するステップが、以下の条件:
-40%HO~80%HOの範囲の再水和率、
-30℃~80℃の範囲、好ましくは60℃未満、更には50℃未満の温度、
-1~10時間の再水和時間、
-2~50g.kg-1粉末(m/m)の範囲のCaイオン封鎖塩の用量、及び
-0~50g.kg-1粉末(m/m)の範囲の酸性度調節塩の用量
で行われることを特徴とする、請求項9に記載のチーズ類食品の製造方法。
【請求項11】
前記テクスチャ調整するステップの間、前記物理化学的テクスチャ調整条件が、温度、pH、NaClの用量、Caイオン封鎖塩の用量及び酸性度調節塩の用量から選択されることを特徴とする、請求項9又は10に記載のチーズ類食品の製造方法。
【請求項12】
前記テクスチャ調整するステップが、以下の物理化学的テクスチャ調整条件:
-4.5~6.5に含まれるpH、
-1~10時間にわたる10℃~60℃に含まれる温度、
-0.1~2%m/mに含まれるNaCl濃度、
-2~50g.kg-1粉末(m/m)のCaイオン封鎖塩の用量(任意選択)、及び
-0~50g.kg-1粉末(m/m)の酸性度調節塩の用量(任意選択)
で調整されることを特徴とする、請求項11に記載のチーズ類食品の製造方法。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか一項に記載の製造方法から生じる、有利には、チーズ、チーズ特製品又はチーズ代用品といった種類の、チーズ類食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、チーズ、チーズ特製品又はチーズ代用品といった種類のチーズ類食品の技術分野に関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、チーズ粉末及びこのチーズ粉末の製造方法に関する。本発明は更に、このチーズ粉末からチーズ類食品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
食品工業分野では、特有の官能特性を作り出し、及び消費者需要に対応する最終生成物を手に入れるため、原材料を生物変換するための微生物を使用することが多い。
【0004】
この生物変換は、特に、チーズ類食品、即ち有利には、チーズ、チーズ特製品又はチーズ代用品の製造に利用される。
【0005】
チーズ(軟質チーズから加熱圧縮チーズまで)は、従来、凝固用酵素(レンネット又は同等物)を添加するおかげで、及び乳酸酸性化を経て(乳酸菌の作用下で)、乳がゲル又は凝固物に変換されることによって得られる。
【0006】
ゲルの間隙に含まれる液体、即ち乳清が、シネレシス(「ドレイニング」としても知られる)によって徐々に排出される。
【0007】
このシネレシスの間に、ゲルはその主要な要素(脂肪及びタンパク質、幾らかの量のミネラル物質を伴う)に少しずつ濃縮されてカードとなり、カードは所望のチーズの特徴的な形状、コンシステンシー及び組成を獲得する。
【0008】
熟成チーズの場合、次にカードにおいて、様々な微生物を含むミクロフローラが繁殖し、求められる芳香を生成するのに特に寄与する:これが熟成である。
【0009】
概して、この熟成工程は、最終生成物にその官能品質(芳香及びテクスチャ)を付与するために不可欠である。
【0010】
実際には、この熟成工程は長期にわたって行われ(多くの場合に数週間、更には数ヵ月も)、熟成が適切に進む助けとなる温度及び湿度条件を保つように設計された大規模な貯蔵場所が必要となる。
【0011】
更に、工業環境では、この従来手法は、製品の品質を一定に均し、画一化すると同時に、そのコスト抑制のためその所要期間も短縮するように熟成(refining)ステップを管理するのが好適であるとなったときから、一定数の不都合な点を示す。
【0012】
これらの不都合な点を解消しようと、チーズ類食品の代替的な製造方法が開発されている。
【0013】
それらの代替的な製造方法の一部には、所望のチーズ類食品が得られるように再水和してテクスチャ調整することが意図されるチーズ粉末の使用に基づくものがある。
【0014】
この手法は、特に、一方で、第1の現場でのチーズ粉末の製造と、他方で、第2の現場でのチーズ類食品の製造とを、任意選択で時間的及び空間的に分けて切り離すことが可能になるという利点がある。
【0015】
しかし、これらの代替的方法は、そのままでは満足のいくものではない。
【0016】
実際、ほとんどの公知のチーズ粉末は、許容できる芳香を有する最終生成物を得るために熟成する(refining)ステップを必要とする。
【0017】
他のチーズ粉末は、事前にチーズを製造する必要があり、次にはそれを熟成させる(refined)ことになり、ひいては体系的にかなりの製造時間がかかることにつながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
これに関連して、味及びテクスチャが製造終了時に直ちに得られ、且つ全範囲にわたって所望のとおりに作り上げることのできるチーズ類食品が得られるように適合された、それが事前の又は最終的な熟成を必要としない、チーズ粉末(その製造方法を含む)が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
従って本発明は、例えば、チーズ、チーズ特製品又はチーズ代用品といった種類のチーズ類食品の製造のため再水和及びテクスチャ調整されることが意図されるチーズ粉末に関する。
【0020】
より詳細には、本発明は、チーズ作製技術の主要な工程を再編成して、それにより最終生成物の機能性の定義に基づきそれらの段階を最適化することを目的とする。
【0021】
本発明は、特に、以下の三点を最適化することにより、芳香の生成を外部調達することからなる:
-風味生成用微生物(より良好な芳香及び芳香バランスを生み出すもの)、
-適合した培養培地(乳、クリーム、植物の液汁等)、及び
-最適な繁殖条件(温度、pH、時間、酸素供給、撹拌等)。
【0022】
本発明に係る方法は、更に、芳香基質の実現とテクスチャ基質の実現とを切り離すことであって、次にそれらを適合した比率でまとめ合わせた後、その基質混合物を適合した物理化学的条件でテクスチャ調整することからなる。
【0023】
最後に、かかるチーズ粉末には種々の適用があり得る。
【0024】
大量の輸出向けには、再水和、テクスチャ調整、及び包装を確実にする手段を設計しさえすればよいであろう最終使用者(これは必ずしもチーズ作製技能を有するとは限らない)に向けて本発明に係るチーズ粉末を製造することが可能である。最終生成物は、そのまま消費することもでき、又は特別な機能(曳糸性、焦げ目がつく、溶ける、スライスできる等)を有することもできる。
【0025】
第2の使用は、家庭用であり得る:本チーズ類食品は、特別な機器がなくても、生み出される芳香の種類及び添加される水の分量に応じて所望のとおりに製造することができる。
【0026】
より詳細には、本発明によれば、チーズ粉末の製造方法が提案され、前記チーズ粉末は、有利には、チーズ、チーズ特製品又はチーズ代用品といった種類のチーズ類食品の製造のため再水和及びテクスチャ調整されることが意図される。
【0027】
本製造方法は、
a)-少なくとも1つの風味生成用微生物を培養培地で培養するステップから生じる少なくとも1つの芳香基質であって、前記チーズ類食品の風味生成の実現を意図した少なくとも1つの芳香基質、及び
-前記チーズ類食品のテクスチャの実現を意図する少なくとも1つのテクスチャ基質であって、前記少なくとも1つのテクスチャ基質がタンパク質を含み(任意選択で脂肪を含まず)、前記タンパク質の少なくとも一部が、凝固してゲルを形成することが可能な凝固タンパク質からなり、前記凝固タンパク質が事前の凝固に供されておらず、
好ましくは、有利には0.1~6、好ましくは0.4~1.8である脂肪/タンパク質比のタンパク質と脂肪とを含む、少なくとも1つのテクスチャ基質
を提供するステップ、及び
b)前記少なくとも1つの芳香基質と前記少なくとも1つのテクスチャ基質とを混合する任意選択のステップであって、それにより(有利には均一)基質混合物を得るステップ、及び
c)前記基質のうちの少なくとも一方又は前記基質混合物が液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有するとき、前記基質のうちの少なくとも一方(前記少なくとも1つの芳香基質及び/又は前記少なくとも1つのテクスチャ基質)又は前記(有利には均一)基質混合物を乾燥させるステップであって、それにより粉末のコンシステンシーを得るステップ
を含み、
及び前記チーズ粉末(分離されている基質又は基質混合物)は、以下の特徴:
-95%m/m以上の全乾燥抽出物、
-有利には25℃±1℃の温度で(測定される)、0.1~0.25、更には0.1~0.2、好ましくは0.15~0.2の値である水分活性a
-少なくとも1つのテクスチャ基質に由来する前記凝固タンパク質が事前の凝固に供されていないこと
を有する。
【0028】
これらのステップは、有利には、以下から選択される前記チーズ粉末:
-前記製造方法に前記混合するステップがないとき、互いに分離している、且つそれぞれが粉末の形態の、前記少なくとも1つの芳香基質と前記少なくとも1つのテクスチャ基質とを含む基質の組み合わせ、又は
-前記製造方法が前記混合するステップを含むとき、粉末の形態の、前記基質混合物
が得られるように実施される。
【0029】
好ましい実施形態によれば、前記提供するステップは、互いに独立に、以下から選択されるコンシステンシー:
-粉末のコンシステンシー、又は
-適用可能な場合に有利には0.1~6、好ましくは0.4~1.8の脂肪/タンパク質比の、6%~25%m/mのタンパク質と0~30%m/m、更には3%~30%m/mの脂肪とを含む、液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシー(好ましくは、前記少なくとも1つのテクスチャ基質が液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有する)
を有する基質を提供することを含む。
【0030】
更に、製造方法のステップは、有利には、以下の組み合わせのステップのうちの1つから選択される:
第1の組み合わせ(i)によれば、
-前記提供するステップは、各々が粉末のコンシステンシーを有する前記基質を提供することを含み、及び
-前記混合するステップは、前記粉末基質を混合して粉末の形態の前記基質混合物を得ることからなり、
又は
第2の組み合わせ(ii)によれば、
-前記提供するステップは、液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有する少なくとも1つの基質を提供することを含み、次に
-前記乾燥させるステップは、前記少なくとも1つの基質を乾燥させて、各々が粉末のコンシステンシーを有する基質を得ることからなり、次に
-前記混合するステップは、前記粉末基質を混合して粉末の形態の前記基質混合物を得ることからなり、
又は
第3の組み合わせ(iii)によれば、
-前記提供するステップは、液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有する少なくとも1つの基質を提供することからなり、次に
-前記混合するステップは、前記基質を混合して、液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有する基質混合物を得ることにあり、次に
-前記乾燥させるステップは、前記基質混合物を乾燥させて、粉末の形態の前記基質混合物を得ることからなり、
又は
第4の組み合わせ(iv)によれば、
-前記提供するステップは、液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有する少なくとも1つの基質を提供することからなり、次に
-前記基質を前記混合するステップと乾燥させるステップとを同時に実施することにより(共乾燥させることにより)、粉末の形態の前記基質混合物を得て、ここで好ましくは前記少なくとも1つの芳香基質及び前記少なくとも1つのテクスチャ基質は、噴霧乾燥させる間に同時に配合される。
【0031】
個別に考えた、又は技術的に許容可能な任意の組み合わせに係る本発明における方法の他の非限定的且つ有利な特徴は、以下のとおりである:
-液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有する基質の場合、前記混合するステップは、ホモジナイゼーションステップを含む;
-液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有する基質混合物の場合、前記基質混合物を前記乾燥させるステップは、噴霧化ステップからなる;
-テクスチャ基質は、乳製品及び/又は植物の液汁のろ過技法から生じる保持液からなる;この場合、テクスチャ基質は有利には、乳のろ過の保持液からなるプレチーズ液からなり、ここでは、特に乳のタンパク質が、任意選択で乳の脂肪及びミネラルの一部分と共に保持されている;
-混合するステップの間、全混合物の0.5~50重量%、好ましくは0.5~10重量%(端点を含む)の芳香基質が含まれる;
-提供するステップは、前記芳香基質の作製方法であって、前記少なくとも1つの風味生成用微生物を前記培養培地で培養する前記ステップを含む方法、及び/又はゲルの形成を妨げるように意図した物理化学的条件における前記テクスチャ基質の作製方法からなり;
-熟成タイプのチーズの製造について、芳香基質の作製方法の間に風味生成用微生物は熟成用微生物であり;
-培養培地は、乳又は乳から得られる生成物であって、濃縮乳又は保持液、クリーム、チーズ生産乳清、ろ過透過液、又は植物の液汁から選択される生成物からなり;
-培養するステップは、1~6、好ましくは1~4日の期間にわたって実施され;
-前記少なくとも1つの風味生成用微生物は、前記チーズ粉末中で生菌である。
【0032】
本発明は更に、有利には本発明に係る製造方法から生じるチーズ粉末に関し、前記チーズ粉末は、
-互いに分離している、それぞれが粉末の形態の、前記少なくとも1つの芳香基質と前記少なくとも1つのテクスチャ基質とを含む基質の組み合わせ、又は
-粉末の形態の、前記基質混合物
から選択され、
前記チーズ粉末は、以下の特徴:
-95%m/m以上の全乾燥抽出物、
-有利には25℃±1℃の温度で、0.1~0.25、更には0.1~0.2、好ましくは0.15~0.2の値である水分活性a
-少なくとも1つのテクスチャ基質に由来する前記凝固タンパク質が事前の凝固に供されていないこと
を有する。
【0033】
本発明はまた、有利には、チーズ、チーズ特製品又はチーズ代用品といった種類のチーズ類食品の製造方法にも関する。
【0034】
問題の方法は、以下のステップ:
-本発明に係る、又は本発明に係る製造方法から生じるチーズ粉末を提供するステップ、
-粉末の形態の基質の組み合わせの基質を混合する任意選択のステップ、
-前記凝固タンパク質が確実に再水和/可溶化され、液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有するチーズ基質が得られるように、粉末テクスチャ基質(及び任意選択で、芳香生成基質の)又は粉末基質混合物を少なくとも1つのCaイオン封鎖塩及び好ましくは少なくとも1つの酸性度調節塩の存在下で再水和するステップ、
-適用可能な場合、テクスチャ基質と芳香生成基質とを混合するステップであって、別々に再水和した後に混合することが可能である、ステップ、
-前記凝固タンパク質の凝固及びゲル形成のため、常に少なくとも1つのカルシウム(Ca)イオン封鎖塩及び好ましくは酸性度調節塩の存在下でテクスチャ調整するステップであって、その間に前記チーズ基質が物理化学的なテクスチャ調整条件に供され、前記物理化学的テクスチャ調整条件が、前記チーズ類食品に求められる最終テクスチャに応じて適合されるステップ
を連続して含む。
【0035】
個別に考えた、又は技術的に許容可能な任意の組み合わせに係る本発明における方法の他の非限定的且つ有利な特徴は、以下のとおりである:
-前記再水和するステップは、以下の条件で行われる:40%HO~80%HOの範囲の再水和率、30℃~80℃の範囲、好ましくは60℃未満、更には50℃未満の温度、1~10時間のテクスチャ調整時間、2~50g.kg-1粉末(m/m)の範囲のCaイオン封鎖塩の用量、及び0~50g.kg-1粉末(m/m)の範囲の酸性度調節塩の用量;
-テクスチャ調整するステップの間、物理化学的テクスチャ調整条件は、温度、pH、NaClの用量、Caイオン封鎖塩の用量及び酸性度調節塩の用量から選択される;この場合、好ましくは、テクスチャ調整するステップは、以下の物理化学的テクスチャ調整条件で調整される:4.5~6.5に含まれるpH、1~10時間にわたる10℃~60℃に含まれる温度、0.1~2%m/mに含まれるNaCl濃度、2~50g.kg-1粉末(m/m)のCaイオン封鎖塩の用量(任意選択)、及び0~50g.kg-1粉末(m/m)の酸性度調節塩の用量(任意選択);
-本方法は、テクスチャ調整するステップに続いて、少なくとも1つの表面熟成用微生物を適用するステップ又はコーティング層、例えばコーティングワックスを適用するステップを含み得る;
-テクスチャ調整するステップの間、前記少なくとも1つの風味生成用微生物は生菌である。
【0036】
本発明は更に、本発明に係る製造方法から生じた、有利には、チーズ、チーズ特製品又はチーズ代用品といった種類のチーズ類食品に関する。
【0037】
当然ながら、不適合でない、又は互いに排他的でないという点で様々な組み合わせに従い本発明の異なる特徴、代替例及び実施形態を互いに組み合わせることができる。
【0038】
加えて、本発明を実施するための、限定するものでない形態を示す図面に関連して提供される添付の説明に、本発明の様々な他の特徴が現れるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明に係るチーズ粉末の製造についての本発明に係る方法の主要なステップを示すブロック図である。
図2】芳香基質の製造についての主要なステップを示すブロック図である。
図3】本発明に係るチーズ粉末からチーズ類食品を製造することについての主要なステップを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
これらの図中、種々の代替例に共通する構造的及び/又は機能的要素は、同じ参照符号を有し得ることに留意されたい。
【0041】
概して、本発明は、新規チーズ粉末及びそのチーズ粉末の製造方法に関する。本発明はまた、チーズ粉末からチーズ類食品を製造する方法にも関する。
【0042】
開発された本方法は、チーズ製造における主要なステップを切り離し、最適化することに基づいた、脱水生成物というチーズ造りの新規概念を提案する。
【0043】
この方法では、有利には、作成した様々なテクスチャ基質及び芳香基質を乾式法下又は液体法下でまとめ合わせることによる、脱水後の最終的なチーズ製品のテクスチャ基質と芳香基質とを独立に生成することが可能となる。
【0044】
実際には、乾燥は各基質に対して別個に行うこともでき、又は前記少なくとも2つの基質をまとめ合わせた(又は混合した)ときに行うこともできる。
【0045】
粉末の特性及びその再水和率に応じて、スプレッドチーズのテクスチャから硬質チーズのテクスチャに及ぶ範囲の多様なテクスチャを作り出すことが可能である。また、利用される微生物の種類及び生成される芳香分子に応じて、あらゆるチーズを模倣する多様な芳香プロファイルを生み出すことも可能である。
【0046】
芳香プロファイルは、例えば、甘い/塩辛い、果実のような、うま味、チーズ等の味又は芳香を生成するために使用される微生物の取り合わせに応じて一層独創的になり得る。
【0047】
同様に、多種多様なマーカー又は包含物を加えて、様々な形態、体裁、被覆等を提案することも可能である。
【0048】
またも本発明によれば、食品を製造する本方法には、この方法の終了時に直ちに最終生成物の芳香及びテクスチャを得ることが可能であるという利点がある。
【0049】
従って、有利には熟成チーズの芳香を含む本発明に係るチーズ類食品は、その製造直後に(12時間未満で)消費することができ、風味生成用微生物に特有の生化学的及び物理的変化が起こるのに必要な温度及び条件に所定の時間経過にわたってそれを保っておく必要がない。
【0050】
これについて、図1に概略的に示されるように、本発明に係るチーズ粉末は、有利には、以下のステップ:
A)少なくとも2つの基質の組み合わせ:
A1)少なくとも1つの風味生成用微生物を培養培地で培養するステップから生じる少なくとも1つの芳香基質であって、前記チーズ類食品の風味生成の実現を意図した少なくとも1つの芳香基質、及び
A2)前記チーズ類食品のテクスチャの実現を意図する、少なくとも1つのテクスチャ基質
を提供するステップ、
次に
B)前記少なくとも1つの芳香基質と前記少なくとも1つのテクスチャ基質とを混合することによって基質混合物を得る任意選択のステップ、
及び
C)前記基質のうちの少なくとも一方又は前記基質混合物が液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有するとき、前記少なくとも1つの芳香基質を乾燥させるステップC1及び/又は前記少なくとも1つのテクスチャ基質を乾燥させるステップC2及び/又は前記基質混合物を乾燥させるステップC3から選択される任意選択の乾燥させるステップ
を含む製造方法の結果である。
【0051】
前述のステップA、B及びCを実施すると、
-互いに分離している、且つそれぞれが粉末の形態の、前記少なくとも1つの芳香基質と前記少なくとも1つのテクスチャ基質とを含む基質の組み合わせ、又は
-粉末の形態の、基質混合物
から選択されるチーズ粉末が得られる。
【0052】
このチーズ粉末は更に、以下の特徴:
-95%m/m以上の全乾燥抽出物、
-有利には25℃±1℃の温度で、0.1~0.25、更には0.1~0.2、好ましくは0.15~0.2の値である水分活性a、及び
-少なくとも1つのテクスチャ基質に由来する前記凝固タンパク質が事前の凝固に供されていないこと
を有する。
【0053】
一般的定義
本発明の枠組みの中では、「チーズ類食品」は、有利には、ヒトが食べることを意図した、厳密に言うところのチーズからなるか、又はかかるチーズに取って代わることを意図した物質又は変換された生成物である。
【0054】
かかるチーズ類食品は、有利には、チーズ、チーズ特製品又はチーズ代用品といった種類の食品を包含する。
【0055】
「チーズ」は、ドレイニング前又は水分を部分的に除去した後に全体的又は部分的に凝固した、専ら乳由来の材料から得られる発酵又は非発酵、熟成又は非熟成生成物である。
【0056】
「特定乳製品」は、単独又は混合物で使用される、そこに専ら乳から生じる他の材料が添加されてもよい、専ら乳由来の材料から調製された、チーズ、チーズカード及びブルーチーズ以外の発酵又は非発酵、熟成又は非熟成乳製品である。
【0057】
「チーズ代用品」は、主として植物原材料(穀物の液汁、マメ科植物等、例えば、ダイズの液汁、オートムギの液汁、アーモンドの液汁等といった種類のもの)から製造される、チーズに代えることを意図した食品である。
【0058】
かかるチーズ代用品は、「ビーガンチーズ」、「植物由来チーズ」又は「チーズ類似品」とも称される。
【0059】
人では、かかるチーズ類食品を食べると、風味の知覚につながり得る。
【0060】
「風味」とは、食物を味わうときに知覚される嗅覚、味覚及び三叉神経の全ての感覚に相当する。
【0061】
これらの感覚により、種々の味感覚刺激の知覚が可能となる:
-味、「味刺激」とも称される(特に、味覚と組み合わされる)、
-芳香、「嗅覚刺激」又は「匂い物質刺激」とも称される(特に、嗅覚と組み合わされる)、及び/又は
-三叉神経化合物(特に、体性感覚及びより正確には三叉神経知覚と組み合わされる)。
【0062】
本発明において、及び単純化を考慮しつつ、「芳香」という概念は、風味という概念と同等に使用されることになり、従って厳密に言うところの芳香の概念を包含するが、味及び三叉神経化合物の概念もまた包含する。
【0063】
「味」は、特に、舌に位置する味覚受容体によって知覚される刺激を意味する。
【0064】
味の知覚動態は、特に、唾液に溶解する不揮発性化合物の一時的な放出によって左右される。
【0065】
「味」は、特に、基本の味:甘味、塩味、酸味、苦味及びうま味を意味する。これにはまた、脂の感覚も含まれる。
【0066】
「芳香」は、味覚球における匂い物質の揮発性分子の放出動態に関係する知覚を意味する。
【0067】
かかる嗅覚刺激は、概して、鼻腔に位置する嗅覚受容体に到達するために生成物から放出されなければならない揮発性分子からなる。
【0068】
目的の化合物が口腔内にあるとき、この知覚は特に後鼻腔嗅覚を通じて実現する。
【0069】
更に、「テクスチャ」又は「コンシステンシー」は、消費者の機械受容器、触受容器、並びに任意選択で、視覚及び聴覚受容器を通じて知覚できる、チーズ類食品の一組のレオロジー特性及び構造(幾何学的及び表面の)を意味する。
【0070】
本発明では、チーズ類食品のコンシステンシーは有利には、チーズの中身があるタイプ(cheese inside type)のものである。
【0071】
チーズの中身(cheese inside)というこの概念は、有利には、以下の一団のコンシステンシー:硬質チーズ、半硬質チーズ、半軟質チーズ、軟質チーズ、スプレッドチーズを包含する。
【0072】
コンシステンシーを含めたチーズ作製技術における種々の概念については、以下の文献に記載されている:
-FAO/WHO規格A-6-チーズ(Cheese)(1978年、改訂1990年);
-乳及び乳製品に適用可能な技術仕様書B3-07-09(刊行日2009年11月)(法務局(Department of legal affairs)-フランス);
-チーズ及びチーズ特製品に関する2007年4月27日付法令2007-628及び2013年11月12日付法令2013-1010(経済・財務省(Ministry of the economy and finance)-フランス)。
【0073】
概して、本発明によれば、指示される範囲は全て、端点を含む。
【0074】
更に、「%m/m」で表される濃度は、質量濃度(生成物の全質量に対する化合物の質量)に対応する。
【0075】
生成物の「全乾燥物質」は、蒸発による乾燥処理後のその全ての不揮発性構成要素を指す。
【0076】
「水分活性」は、湿潤生成物の水蒸気圧を同じ温度での飽和蒸気圧で除したものを意味する。
【0077】
ヒトの食用の食品及び動物用食品の水分活性(a)を決定する方法の主要な原理及び要件は、それ自体常法であり、当業者に公知である。
【0078】
従って水分活性の値は、0~1の範囲の測定値範囲内に含まれる。
【0079】
ヒトの食用の食品に適用される本発明には、有利には、25℃±1℃の温度での水分活性の測定値が関わる。
【0080】
かかる温度は、いずれの場合にも、ヒトの食用の食品、及び動物用食品の分野において黙示的である。
【0081】
「25℃±1℃の温度での測定」、これは特に、かかる25℃±1℃の温度に維持された(有利には、前記水分活性の測定装置、例えば、抵抗性、容量性又はミラー式a計測器のマイクロ筐体内にある)サンプルで測定される水分活性を意味する。
【0082】
測定原理は、有利には、露点を測定すること、又は電解質の導電率若しくはポリマーの誘電率の変化を決定することに基づく。
【0083】
当業者は、例えば、国際規格ISO 187872017又は仏国規格ISO 18787を参照することができる。
【0084】
水分活性の測定は、有利には、水分活性の測定用の機器を用いて実施される。
【0085】
かかる測定機器は、有利には、以下の特徴を有する:
-較正範囲に関する線形性応答;
-上記に記載した測定原理(露点の測定又は電解質の導電率若しくはポリマーの誘電率の変化の決定)に適合した測定セル;
-測定セルの温度調節システム又は25℃±1℃の温度を保証するように恒温筐体に設置し得るもの;
-有利には少なくとも0.0001単位aの内部分解能;
-有利には少なくとも0.001単位aの表示;
-有利には、3連続測定によるか、又は1分間の安定によるかのいずれかの、0.0003の最大振幅と定義されるプラトーに達することによる最終的な測定点の決定;
-適用可能な場合、サンプルの揮発性化合物に起因する干渉を抑えることが可能となるシステム(例えば、特別なフィルタ)。
【0086】
装置は、有利には、製造者の指示によって定義される条件で作動させなければならない。
【0087】
芳香基質に関して
芳香基質(「芳香生成基質」とも称される)は、最終生成物に目的の芳香を付与することを意図した生成物/化合物からなる。
【0088】
以下に敷衍するとおり、提供するステップの間、この芳香基質は、有利には粉末のコンシステンシー又は液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーから選択される種々の形態を呈することができる。
【0089】
この芳香基質は、有利には、培養培地、有利には乳培養培地(好ましくはチーズ及びチーズ特製品用)又は植物培養培地(好ましくはチーズ代用品用)で少なくとも1つの風味生成用微生物を培養する方法を通じて得られる。
【0090】
問題の風味生成用微生物は、「芳香酵母」とも称され、最終的なチーズ類食品に求められる芳香を生成する能力のある微生物から選択される。
【0091】
こうした目的の芳香は、有利には、好ましくは以下の化合物から更に選択される、チーズに見られる芳香からなる:
- 1-オクテン-3-オール(キノコの香調)、
- 2-フェニルエタノール及びフェニルアセトアルデヒド(花の香調)、
- 様々な香調(ニンニク、キャベツ、ジャガイモ等)を有する多くの硫黄化合物、例えば、2,4-ジチアペンタン(dithiapenthane)、2,4,5-トリチアヘキサン及び3-メチルチオ-2,4-ジチアペンタン、硫化メチル、ジメチルジスルフィド、3-メチルチオプロパナール及びメタンチオール(特に、エポワス、ヴァシュラン、ポンレヴェック、リンバーガーなどのチーズに生じる)、
- 直鎖又は分枝鎖のプロピオン酸及び他の揮発性酸、
- 遊離脂肪酸、
- エステル類(フルーツの香調)、
- ジアセチル及び関連化合物(バターの香調)、
- 及び他の多くの化合物(アルデヒド類、ケトン類、ラクトン類、フラノン類、窒素化合物、例えば、インドール、ピラジン類など)。
【0092】
例えば、一覧表が、Curioni and Bosset,2002の総説論文(Curioni,P.M.G.,& Bosset,J.O.(2002).Key odorants in various cheese types as determined by gas chromatography-olfactometry.International Dairy Journal,12,959-984)で利用可能である。
【0093】
従って、かかる芳香は、細菌、酵母又はカビを包含する風味生成用微生物(又は「芳香上有益な微生物」)の培養によって得られる(例えば、Francoise Irlinger,Sandra Helinck,Jean Luc Jany著,書籍『Cheese,Chemistry,Physics & Microbiology』,Fourth edition,発行人:Paul L.H.McSweeney,Patrick F.Fox,Paul D.Cotter and David W.Everett,Academic Press,2017の第11章、Secondary and Adjunct Culturesを参照のこと)。
【0094】
培養培地(乳製品又は植物の液汁)の場合、芳香は有利には、タンパク質分解(アミノ酸)及び/又は脂肪分解及び/又は糖転換の最終産物の放出によって生み出される。
【0095】
従ってかかる芳香は、細菌、酵母又はカビを包含する風味生成用微生物(又は「芳香上有益な微生物」)の培養によって得られる。
【0096】
こうした風味生成用微生物は、有利には、熟成用微生物(又は「熟成用菌叢」又は「熟成用発酵菌」)を含む。
【0097】
熟成用微生物は、通常チーズの中身で繁殖し、また白カビ系、ウォッシュ系又はモルジュ液系外皮を持つチーズの表面上にも繁殖するカビ及び/又は酵母及び/又は細菌を含む。
【0098】
これらの熟成用微生物は、以下を含む:
-カビ、例えば、ペニシリウム・カメンベルティ(Penicillium camemberti)又はペニシリウム・ロックフォルティ(Penicillium roqueforti)など;
-酵母、特に、サッカロミセス属(Saccharomyces)、カンジダ属(Candida)(カンジダ・ウチリス(Candida utilis))、ゲオトリクム属(Geotrichum)(例えば、ゲオトリクム・カンジドゥム(Geotrichum candidum))に属するもの及びデバリオミセス・ハンセニイ(Debaryomyces hansenii);及び
-細菌、例えば、プロピオン酸細菌(プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium))、及び他の多様な細菌(ラクトバチルス属(Lactobacillus)、より好ましくは、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum));これらの細菌の中でも、スタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus)、ブレビバクテリウム・リネンス(Brevibacterium linens)又はブレビバクテリウム・カセイ(Brevibacterium casei)を挙げることができる。
【0099】
風味生成用微生物は、更に、例えばハフニア・アルベイ(Hafnia alvei)、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)から選択されてもよい。
【0100】
かかる風味生成用微生物はまた、CHR HANSEN(例えばDVS(商標)シリーズ)、LABORATOIRES STANDA(例えばPAL(商標)シリーズ)又はDANISCO(例えばCHOOZIT(商標)チーズ培養シリーズ)といった企業が提案する微生物から選択されてもよい。
【0101】
利用される風味生成用微生物は、ある種に由来するか、又は同じ界若しくは異なる界に属する少なくとも2つの種の組み合わせに由来する。
【0102】
微生物の各種は、更に、単一の株に由来するか、又は少なくとも2つの株の組み合わせに由来する。
【0103】
より一般的には、風味生成用微生物はまた、生物変換によって芳香を生成する能力のある、且つ食品工業の分野で見られる任意の他の微生物から選択されてもよい(Techniques de l’Ingenieur-f3501-“Fermented food:l’ingenierie”-10/09/2014-Alain BRANGER)。
【0104】
例えば、風味生成用微生物は、更に、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(ssp lactis)及び亜種クレモリス(ssp cremoris)又は変種ディアセチラクチス(var diacetylactis)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)などの乳酸産生菌及び芳香生成菌からなることができる。
【0105】
より一般的には、従って「風味生成用微生物」は、最終的なチーズ類食品に求められる芳香を生成する能力のある微生物を包含する。
【0106】
かかる風味生成用微生物については、文献Cheese,4th edition,Chemistry,Physics & Microbiology,Vol.1に更に記載されている。
【0107】
更に言い換えれば、従って「風味生成用微生物」は、チーズの製造に使用される2種類の培養物:一次培養物及び二次培養物を包含する。
【0108】
一次培養物は、これらのチーズの製造及び熟成中における酸の産生に関与する乳酸菌(LAB)、「スターター」を含む。
【0109】
二次培養物は、専らチーズの熟成(例えば、ガスの生成、呈色又は典型的な味の形成)に関与する微生物を含む。
【0110】
乳培養培地に関しては、それが、乳及びその誘導体:濃縮乳又は保持液、クリーム、チーズ生産乳清又はろ過透過液(限外ろ過、精密ろ過)から選択される基質材料を成す。
【0111】
「乳」は、有利には、反芻動物、例えば、雌ウシ、ヤギ、雌ヒツジ又はスイギュウなどに由来する乳を意味する。
【0112】
乳は、種々の形態を呈し得る:全乳、半脱脂乳、脱脂乳;乳はまた、生乳又は殺菌乳、精密ろ過新鮮乳、滅菌乳、UHT滅菌乳の形態も呈し得る。
【0113】
クリームは、100gの総重量につき少なくとも30gの脂肪(専ら乳に由来する)(m/m)を含有する乳である。
【0114】
チーズ生産乳清は、フレッシュ、軟質、圧縮及び加熱チーズの製造からの、チーズ生産時の副産物からなる。
【0115】
ろ過透過液は、ろ過膜(限外ろ過、精密ろ過又はナノろ過)で乳を濃縮したときの副産物からなる。
【0116】
植物培養培地は、植物の液汁、例えばダイズ液汁、コメ液汁、アーモンド液汁等から選択される基質材料を成す。
【0117】
実際には、図2に示されるなど、混合するステップA13の間に風味生成用微生物A11を培養培地A12に配合し、次に非固体コンシステンシーの目的の芳香基質が得られるまで、最適な物理化学的条件で培養するステップA14を実施させておく。
【0118】
培養するステップA14の物理化学的条件、特に温度、pH、酸素供給及び撹拌は、特に風味生成用微生物によって最適な芳香生成が達成されるように適合される。
【0119】
問題の物理化学的条件については、例えば、文献Techniques de l’Ingenieur-f3501-“Fermented food:l’ingenierie”-10/09/2014-Alain BRANGERに提供されている。
【0120】
例えば、培養するステップ14では、芳香基質は、求められる芳香の典型的特質に応じてタンク又は発酵槽内で作ることができる。
【0121】
この培養するステップA14の所要期間は、有利には約1~10日、更には1~6、好ましくは1~4日である。
【0122】
乳培養培地には、利用される微生物に応じて追加の基質材料もまた加えることができる。
【0123】
このようにして得られた芳香基質(培養するステップA14から生じる)は非固体のコンシステンシーを有し、例えば、液体、半液体、半ペースト又はペーストである。
【0124】
以下に敷衍するとおり、この芳香基質は更に、粉末のコンシステンシーを有する芳香基質を得るため、後に乾燥させるステップに供することができる。
【0125】
概して、この芳香基質は、風味生成用微生物によって培養培地の生物変換を通じて生成される、求められる芳香(又はより一般的には風味)が濃縮したものを含む。
【0126】
更に、この「独立している」芳香基質は、更に、混合するステップに関連して以下に記載するとおりのホモジナイゼーション工程に供することができる。
【0127】
この前処理により、基質混合物中の芳香基質によって提供される芳香分子の保持性が向上する。
【0128】
テクスチャ基質に関して
テクスチャ基質は、チーズ類食品の最終テクスチャの実現に適合した原材料から選択される。
【0129】
以下に敷衍するとおり、提供するステップの間、このテクスチャ基質は、有利には粉末のコンシステンシー又は液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーから選択される、種々の形態を呈し得る。
【0130】
このテクスチャ基質の成分は、ある原材料又は少なくとも2つの原材料の集合体/混合物に由来し得る。
【0131】
前記少なくとも1つのテクスチャ基質はタンパク質を含んでもよく、及び脂肪を欠いていてもよい(有利には低脂肪粉末)。
【0132】
或いは、前記少なくとも1つのテクスチャ基質はタンパク質と脂肪とを含む。
【0133】
脂肪/タンパク質質量比(ブチラール(butyral)レベル/タンパク質レベルとも称される)は、有利には、0.1~6、好ましくは0.4~1.8である。
【0134】
液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有する基質の枠組みの中で、このテクスチャ基質は、有利には、
- 5%~25%m/mのタンパク質、好ましくは9%~25%m/mのタンパク質、及び
- 0%~30%m/m、好ましくは3%~30%m/mの脂肪
でタンパク質及び脂肪を含む。
【0135】
このテクスチャ基質のタンパク質の中でも、少なくとも一部は、いわゆる「凝固性」又は「凝固する」タンパク質、即ち、凝固過程でゲル(タンパク質ゲル)又は「凝固物」を形成する能力があるものからなる。
【0136】
タンパク質のゲル化は、有利には、乳清タンパク質又は植物タンパク質タイプの可溶性タンパク質から得られる。
【0137】
特定の場合には、より良好なテクスチャを得るため、酸性化が必要である。
【0138】
塩又はイオンを添加すると、ゲル化速度が増加し、又は得られるゲルの硬度が増加し得る。
【0139】
凝固タンパク質は、有利には、加熱なしに、又は少なくとも実質的な加熱なしに(50℃未満):
-イオン(カルシウム又はリン酸カルシウム)を添加することによるか、
-又はアルカリ化した後、続いて中性、又はタンパク質(大豆タンパク質)のpHiに戻すことによるかのいずれかで
ゲル化することのできるタンパク質から選択される。
【0140】
或いは、凝固タンパク質は、適度な加熱、好ましくは50℃未満でゲル化する能力を有するタンパク質から更に選択することができる。
【0141】
本テクスチャ基質では、タンパク質は「未変性」形態であり、即ちタンパク質は事前の凝固に供されていない(事前にテクスチャ調整するステップがない)。
【0142】
次にこのテクスチャ基質は、芳香生成基質とのその均質混合を可能にするため、事前に凝固物の構造を破壊するステップに供されることがない。
【0143】
かかるテクスチャ基質は、有利には、乳ベース(「乳」テクスチャ基質)、又は植物の液汁ベース(「植物」テクスチャ基質)による生成物から選択される。
【0144】
乾燥させるステップの前、テクスチャ基質は、有利には、非固体のコンシステンシーを有し、例えば、液体、半液体、半ペースト又はペーストである。
【0145】
「乳ベースの生成物」は、特に、乳そのものを意味し、しかしまた、クリーム、バターミルク、乳清又はろ過透過液も意味する。
【0146】
例えば、凝固タンパク質はカゼイン類であり、その未変性形態は、カゼインミセルの形態からなる。
【0147】
この乳ベースの生成物は、有利には、
-カゼイン単独(即ち「純カゼイン」)、
-カゼイン及び血清タンパク質
から選択されるタンパク質を含む。
【0148】
従って、「事前の凝固に供されない凝固タンパク質」は、特にカゼインミセルの形態のカゼインを意味する。
【0149】
この乳ベースの生成物は、有利には物理化学的観点から、特に、
-脂肪:レベル(ブチラール(butyral)レベル)、状態(ホモジナイズされているか否か)、
-タンパク質:血清タンパク質/カゼイン比、
-ラクトース含有量、
-ミネラルの観点から:カルシウム及びリン含有量
の点で標準化される。
【0150】
出発原材料もまた、
-熱処理(時間/温度の組み合わせ)、及び
-物理的精製処理、例えば精密ろ過タイプのもの
を通じた微生物学的標準化の対象であり得る。
【0151】
出発原材料は、有利には、所望の濃縮係数(容積減少係数-「VRF」)になるまで、最適なテクスチャが得られる(例えばVRF倍数が2~7に含まれる)ようにろ過技法によって濃縮される。
【0152】
利用されるろ過技法は、有利には、ダイアフィルトレーションと組み合わせた又はそれを伴わない、限外ろ過、精密ろ過、ナノろ過の技法から選択される。
【0153】
このように得られたテクスチャ基質は、例えば、一般に「プレチーズ液」と称される生成物からなる。
【0154】
このプレチーズ液を得るための方法、並びにその特徴については、例えば、以下の文献に記載されている:
-Maubois et al.“Application of Membrane Ultrafiltration to Preparation of Various Types of Cheese”,Journal of Dairy Science,Vol.58,no.7、又は
-Goudedranche et al.“Utilization of the new mineral UF membranes for making semi-hard cheeses”,Desalination,35(1980)243-258。
【0155】
従ってかかるプレチーズ液は、タンパク質強化乳(カゼイン及び任意選択で可溶性タンパク質)からなり、所望のチーズに適合したタンパク質含有量を含む、且つドレイニング終了時に、なおも液体が(その凝固タンパク質が凝固することなく)残っていながらカードの組成を有するろ過保持液を形成する。
【0156】
かかるプレチーズ液の容積減少係数は、有利には4~7に含まれる。
【0157】
このため、ろ過操作は、乳の可溶性要素(即ち、本質的にラクトース、並びに可溶性無機塩類及び非タンパク質窒素物質)のみが前記膜を通過するような透過性の半透膜で(例えば限外ろ過で)行われる。
【0158】
このろ過ステップについては、例えば、文献Pouliot-International Dairy Journal-18(2008)735-740に敷衍されている。
【0159】
情報として、ろ過操作は以下の条件で実施される:
-カットオフ閾値が2,000~150,000Daまで様々な、且つ2~10×10Paの圧力が加えられる限外ろ過、
-カットオフ閾値が150,000Daより高い、且つ0.2~1×10Paの圧力が加えられる精密ろ過、
-カットオフ閾値が200~1,000Daまで様々な、且つ10~40×10Paの圧力が加えられるナノろ過。
【0160】
従って、例えば限外ろ過のこの操作により、2つの液体を得ることが可能になる:
-「ろ液」又は「透過液」と呼ばれる、膜を通過する第1の液体、タンパク質窒素物質を欠いている一種の「理想的な」乳清を形成する;及び
-膜に保持される第2の液体、前述の保持液を形成し、タンパク質強化乳(カゼイン及び可溶性タンパク質)を形成する。
【0161】
このプレチーズ液は、任意選択で、特に、例えばクリーム又は無水乳脂肪(AMF)を添加することにより、脂肪を調整することができる。
【0162】
更に、「植物の液汁ベースの生成物」とは、特に、ダイズ、オートムギ、アーモンド、エンドウマメ、ルピナス、オートムギ、コメ等の液汁を意味する。
【0163】
植物の液汁ベースの生成物は、これらの液汁のうちの少なくとも2つ、好ましくはダイズ液汁と少なくとも1つの他の液汁の混合物からなり得る。
【0164】
例えば、テクスチャ基質は、以下の混合物を含む:
-ダイズ液汁とオートムギ液汁、このうち有利には、オートムギ液汁の重量百分率が5~10%を占める、及び
-ダイズ液汁とルピナス液汁、このうち有利には、ルピナス液汁の重量百分率が35%~45%を占める。
【0165】
以上に敷衍したとおり、出発原材料は有利には、最適なテクスチャ(例えば2~7の範囲のVRF)が得られるように、求められる濃縮係数になるまでろ過技法によって濃縮される。
【0166】
利用されるろ過技法は、有利には、ダイアフィルトレーションと組み合わせた又はそれを伴わない、限外ろ過、精密ろ過、ナノろ過の技法から選択される。
【0167】
従ってかかる植物の液汁は、タンパク質及びカルシウムが強化された植物の液汁からなり、所望のチーズ代用品に適合したタンパク質含有量を含むろ過保持液を形成する。
【0168】
かかる植物の液汁の容積減少係数は、有利には、4~7に含まれる。
【0169】
このため、ろ過操作は、液汁の可溶性要素のみが膜を通過するような透過性の半透膜で行われる。
【0170】
植物の液汁はまた、植物(plane)の液汁ベースの生成物を形成する濃縮された植物の液汁を得るため、適合した時間(例えば10~30分間)にわたって小麦粉を液体に(例えば約1/5の比で)懸濁し、次にそれをろ過することにより得ることもできる。
【0171】
出発生成物はまた、乳ベースの生成物を植物の液汁と組み合わせたものからなることもできる。
【0172】
この場合、その比は、例えば第1の構成成分が第2の構成成分の10%~90%など、様々である。
【0173】
概して、このように得られたテクスチャ基質は非固体のコンシステンシーを有し、例えば、液体、半液体、半ペースト又はペーストである。
【0174】
以下に敷衍するとおり、このテクスチャ基質は、粉末のコンシステンシーを有するテクスチャ基質を得るため、更に乾燥させるステップに供することができる。
【0175】
提供するステップに関して
提供するステップAは、チーズ粉末の製造方法を実施するため前述の基質を提供することからなる。
【0176】
提供される基質は、互いに独立に、以下から選択されるコンシステンシー:
-粉末のコンシステンシー、又は
-液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシー
を有する。
【0177】
「粉末」は、特に、微小粒子に分割された固体物質を意味する。
【0178】
この場合、作業者は、粉末のコンシステンシーを有する芳香基質及び/又はテクスチャ基質を使用する。
【0179】
次にこの基質が、有利には、かかる粉末のコンシステンシーを有する基質を得るため、事前に乾燥させるステップに供された。
【0180】
「液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシー」は、非固体のコンシステンシー、例えば、液体、半液体、半ペースト又はペーストを包含する。
【0181】
この場合、作業者は、液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有する芳香基質及び/又はテクスチャ基質を使用する。
【0182】
好ましい実施形態によれば、少なくともテクスチャ基質は、液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有する。
【0183】
この場合、前記少なくとも1つのテクスチャ基質は、有利には、6%~25%m/mのタンパク質と、0%~30%m/m、更には3%~30%m/mの脂肪とを含む。
【0184】
前記少なくとも1つのテクスチャ基質がタンパク質と脂肪とを含むとき、脂肪/タンパク質比は、有利には、0.1~6、好ましくは0.4~1.8である。
【0185】
再び詳細な実施形態によれば、この提供するステップは、
-芳香基質を作製する前述の方法であって、前記少なくとも1つの風味生成用微生物を前記培養培地で培養するステップを含む方法、及び/又は
-ゲルの形成を妨げるように意図した物理化学的条件でテクスチャ基質を作製する前述の方法
からなる。
【0186】
任意選択の混合ステップに関して
次に、前記少なくとも1つのテクスチャ基質と前記少なくとも1つの芳香基質とが所望の比率で共に混合されてもよく、これは基質混合物を得るためである(ステップB-図1)。
【0187】
かかる粉末形態の基質混合物は、特に、直接再水和及びテクスチャ調整してチーズ類食品を得ることが可能であるという利点がある。
【0188】
例えば、前記少なくとも1つの芳香基質は、基質混合物の0.5~50%m/m、好ましくは0.5~10%m/mを占める。
【0189】
混合の時間及び種類は、テクスチャ基質中への芳香基質の完全な分散(均質)が得られるように適合させなければならない。
【0190】
これらの基質の少なくとも一方が非固体の(液体乃至ペーストの)コンシステンシーを有するとき、混合するステップBは、掻き取り式タンク、掻き取り式表面交換器又は静的ミキサーで行うことができる。
【0191】
好ましくは、この混合の間、基質は50℃以下の温度に維持される。
【0192】
好ましくは、混合物は均一基質混合物からなる。
【0193】
この趣旨で、この非固体基質混合物を更に完全なものにするため、混合するステップはホモジナイゼーションステップを含む。
【0194】
ホモジナイゼーションは、媒体中に浮遊状態にある粒子の粒度を減少させる機械的な方法である。
【0195】
本発明の方法では、いかなる種類のホモジナイザーも使用することができる。特に、高圧ホモジナイザーが使用されることになる(例えば、Rannieホモジナイザー、2ヘッド、圧力0~400バール、第1のヘッドに150バール及び第2のヘッドに30バール)。
【0196】
当業者には、ホモジナイゼーション設備の一般的特徴は公知であり、必要に応じて当業者は、特に、文献“Homogeneisation a haute pression des dispersions alimentaires liquides”,Sebastien Roustel著,Technique de l’Ingenieur(2010)又は“The high pressure dairy homogenizer”,L.W Phipps,Technical Bulletin,Ed NIRD(1985)を参照することができる。
【0197】
概して、ホモジナイザーは2種類に分けることができる:
-「一段」ホモジナイザー、単一のホモジナイゼーションヘッド又はバルブを備える、及び
-「二段」ホモジナイザー、カスケード状に取り付けられた2つのホモジナイゼーションヘッド又はバルブを装備している。
【0198】
この2番目の種類のホモジナイザーについて、従って脂肪滴を含有する媒体が2つのヘッド又はバルブを相次いで通過し、前記ヘッド又はバルブは、各々が、別の圧力となって現れる極めて特殊な機能を有する。
【0199】
実際には、上流の第一段階は、ヘッド又はバルブにおいて、脂肪滴のサイズを減少させる効果を有する圧力が適用されるものである。
【0200】
下流の第二段階は、ヘッド又はバルブにおいて加わる圧力が、有利には前記第一段階のヘッド又はバルブに加わる圧力の10%~20%に対応するものである。従ってこの第二段階の機能は、前述の第一段階を通過した後に媒体中で形成される凝集塊又はフロックを破壊することである。
【0201】
加熱の熱的現象に関係する変化を防ぎ、又は少なくとも抑えるため、ホモジナイゼーション工程は、より好ましくは、前記ホモジナイゼーション工程の全体を通して基質混合物の温度を確実に50~70℃、より好ましくは約60℃に含まれる値の範囲内に保つパラメータ(特に、媒体の温度及びホモジナイゼーション圧力)に基づき実施される。
【0202】
ホモジナイゼーション工程では、有利には、以下のパラメータが確認される:
-100バール~500バール、好ましくは100~300バールの圧力、及び
-50~70℃、好ましくは約60℃の基質混合物の入口温度。
【0203】
或いは、基質が粉末のコンシステンシーを有するとき、混合するステップBは、回転撹拌式タンクにおいて、又は混合アームで行うことができる。
【0204】
概して、この基質混合物には様々な添加剤、例えば着色剤又は酸性度調整剤などの許可されている生成物を配合することができる。
【0205】
任意選択の乾燥させるステップに関して
この実施形態において、前記少なくとも1つの芳香基質、前記少なくとも1つのテクスチャ基質及び/又は前記基質混合物は、液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有し得る。
【0206】
次に、任意選択の混合するステップBの前及び/又は後に、粉末のコンシステンシーを有する最終生成物を得るため、乾燥させるステップCが実施される。
【0207】
この乾燥させるステップCは、有利には、得られる粉末(単一の基質又は基質混合物)が以下の特徴を有するように調整される:
- 95%m/m以上の全乾燥抽出物、
- 有利には25℃±1℃の温度で(測定される)、0.1~0.25、更には0.1~0.2、好ましくは0.15~0.2の値である水分活性a
【0208】
このため、乾燥させることになる単一の基質又は基質混合物は、噴霧化ステップからなる乾燥させるステップCに供することができる。
【0209】
「噴霧化」は、特に、液体を熱風流中に通すことにより粉末の形態に脱水させる方法を意味する。
【0210】
噴霧化による脱水では、液体が縦型円筒筐体(塔)で微細液滴状に噴霧され、熱風気流と接触することにより、水が蒸発する。得られる粉末は、熱流によってサイクロン又はバッグ型フィルタに運ばれ、そこで空気が粉末と分離されることになる。
【0211】
この噴霧化するステップは、有利には、以下のパラメータを満たす:
-塔入口温度180~250℃、
-塔出口温度50~100℃。
【0212】
或いは、芳香基質は、凍結乾燥法で脱水されてもよい。
【0213】
より正確には、図1に示されるなど、乾燥させるステップCは、以下を包含する:
-少なくとも1つの粉末基質を得るため、それぞれ前記少なくとも1つの芳香基質及び/又は前記少なくとも1つのテクスチャ基質に対し、これらの基質を混合するステップBの前に実施される乾燥させるステップC1、C2又は
-基質を混合するステップBと同時(共乾燥)(図1のステップC3)又は基質を混合するステップBの下流(図1のステップC4)のいずれかでの、基質混合物に適用される乾燥させるステップC3、C4。
【0214】
基質が、混合するステップBの前にこの乾燥させるステップC1、C2に供される場合、ひいては互いに分離されている粉末基質の組み合わせが得られる。
【0215】
次にこの基質の組み合わせは、少なくとも1つの芳香基質と少なくとも1つのテクスチャ基質とを含み、各々が粉末のコンシステンシーを有する。
【0216】
粉末の形態のこれらの基質は、再水和するステップの前又は後に実施される後の混合ステップのために、互いに分離(独立)している。
【0217】
従ってこの製造方法によれば、混合するステップ及び再水和するステップの前に、互いに分離している基質の組み合わせで構成されたチーズ粉末を得ることが可能になる。
【0218】
再水和するステップの前の粉末基質を混合するステップBにより、基質混合物で構成されたチーズ粉末を得ることが可能になる。
【0219】
限定はされないが、この乾燥させるステップC3、C4を基質混合物(有利には、ホモジナイゼーション工程から生じるもの)に適用することには、芳香分子の損失が減少する、又は換言すれば、基質混合物中の芳香基質によって提供される芳香分子の保持性が向上するという利点がある。
【0220】
チーズ粉末の製造方法の実施形態
実際には、この製造方法の前述のステップは、有利には、以下のステップの組み合わせのうちの1つから選択される。
【0221】
第1の組み合わせ(i)では、
-提供するステップAが、各々粉末のコンシステンシーを有する基質を提供することを含み、次に
-混合するステップBが、それらの粉末基質を混合して、粉末の形態の基質混合物を得ることからなる。
【0222】
第2の組み合わせ(ii)によれば、
-提供するステップAが、液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有する少なくとも1つの基質を提供することを含み、次に
-乾燥させるステップC1、C2が、前記少なくとも1つの基質を乾燥させて、各々が粉末のコンシステンシーを有する基質を得ることからなり、次に
-混合するステップBが、それらの粉末基質を混合して、粉末の形態の前記基質混合物を得ることからなる。
【0223】
第3の組み合わせ(iii)によれば、
-提供するステップAが、液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有する少なくとも1つの基質を提供することからなり、次に
-混合するステップBが、前記基質を混合して、それにより液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有する基質混合物を得ることからなり、次に
-乾燥させるステップC4が、基質混合物を乾燥させて、粉末の形態の前記基質混合物を得ることからなる。
【0224】
第4の組み合わせ(iv)によれば、
-提供するステップAが、液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーを有する少なくとも1つの基質を提供することからなり、次に
-基質を混合するステップ及び乾燥させるステップB、C3が同時に実施されて(共乾燥されて)、粉末の形態の前記基質混合物が得られる。
【0225】
この最後の組み合わせでは、好ましくは、前記少なくとも1つの芳香基質と前記少なくとも1つのテクスチャ基質とは、噴霧化によって乾燥させるときに同時に配合される。
【0226】
第1の組み合わせ(i)又は第2の組み合わせ(ii)の代替例によれば、製造方法は混合するステップBを欠いており、そのため、互いに分離した、それぞれが粉末の形態の、前記少なくとも1つの芳香基質と前記少なくとも1つのテクスチャ基質とを含む基質の組み合わせが得られることになる。
【0227】
チーズ粉末
本発明は更に、有利にはチーズ、チーズ特製品又はチーズ代用品といった種類のチーズ類食品の製造のため再水和及びテクスチャ調整されることが意図される特定のチーズ粉末に関する。
【0228】
このチーズ粉末は、有利には、上記に記載される製造方法から得られる。
【0229】
本発明によれば、このチーズ粉末は、ここではその製造方法のステップに応じて2つの形態を呈し得る。
【0230】
第1の形態によれば、チーズ粉末は、互いに分離した、且つそれぞれが粉末の形態の、前記少なくとも1つの芳香基質(更には少なくとも2つの芳香基質)と前記少なくとも1つのテクスチャ基質とを含む基質の組み合わせ(「キット」又は「すぐに使えるアセンブリ」とも称される)を含む(更にはそれからなる)。
【0231】
この第1の形態は、有利には、基質を混合するステップBを欠いている製造方法の場合に得られる。
【0232】
かかる実施形態は、作業者が「標準的な」テクスチャ基質の使用を希望する場合に利点がある。次に作業者は、所望に応じて、このテクスチャ基質を、ある範囲の芳香基質から選択されるその選択の少なくとも1つの芳香基質と混合することができる。
【0233】
第2の形態によれば、チーズ粉末は、粉末の形態の基質混合物を含む。
【0234】
この第2の形態は、基質を混合するステップBを含む製造方法の場合に得られる。
【0235】
概して、本チーズ粉末(場合によって、各粉末基質又は基質混合物)は、以下の特徴:
-95%m/m以上の全乾燥抽出物、
-有利には25℃±1℃の温度で、0.1~0.25、更には0.1~0.2、好ましくは0.15~0.2の値である水分活性a
-少なくとも1つのテクスチャ基質に由来する前記凝固タンパク質が事前の凝固に供されていないこと(例えば、カゼインミセルの形態のカゼイン)
を有する。
【0236】
この場合もやはり、概して、このチーズ粉末には、第1の現場で生産した後、好適な包装材料に所望の時間経過にわたって(例えば、真空雰囲気下又は制御された雰囲気下で、ひいては粉末の固化を抑えて)保存することが可能であるという利点がある。
【0237】
このチーズ粉末は、次に、チーズ類食品を生産するため、離れた所にある第2の現場へと輸送することができる。
【0238】
再水和するステップに関して
次に本発明に係るチーズ粉末から食品を生産することができる。問題の方法を図3に概略的に示す。
【0239】
このため、まず初めに本発明に係るチーズ粉末が、提供するステップEの対象となる。
【0240】
再水和する前に、及び基質の組み合わせの形態のチーズ粉末の場合には、混合するステップFを実施して粉末基質の混合を行い、粉末基質混合物を得てもよい(図1に関する混合するステップBを参照のこと)。
【0241】
次に、場合によっては、粉末テクスチャ基質(芳香基質と混合する前)又は粉末基質混合物が、再水和するステップGの対象となる。
【0242】
この再水和するステップは、特に、テクスチャ基質から生じる凝固タンパク質を確実に再水和/可溶化して、液体からペーストに及ぶ範囲のコンシステンシーのチーズ基質を得ることを目指している。
【0243】
本発明によれば、再水和するステップは、有利には、撹拌下で、
-少なくとも1つのカルシウム(Ca)イオン封鎖塩、及び好ましくは
-少なくとも1つの酸性度調節塩
の存在下にて行われる。
【0244】
好ましくは、再水和するステップは、前記少なくとも1つのカルシウム(Ca)イオン封鎖塩と前記少なくとも1つの酸性度調節塩との組み合わせの存在下にて行われる。
【0245】
「Caイオン封鎖塩」とは、特に、クエン酸ナトリウム、リン酸カリウム又はポリリン酸塩を意味する。
【0246】
「酸性度調節塩」とは、特に、クエン酸又は食品への使用が許容される任意の他の酸、グルコノデルタラクトン(GDL)を意味する。
【0247】
言い換えれば、粉末テクスチャ基質又は粉末基質混合物に対し、少なくとも1つのカルシウム(Ca)イオン封鎖塩及び少なくとも1つの酸性度調節塩が添加される(混合される)。
【0248】
いかなる理論によっても限定されるものではないが、前記少なくとも1つのカルシウム(Ca)イオン封鎖塩及び前記少なくとも1つの酸性度調節塩は、再水和するステップの間における水性媒体中への粉末の可溶化に介入し、及び間接的には、求められるテクスチャ/硬さに影響を与えるパラメータとして介入する。
【0249】
好ましい実施形態によれば、この再水和するステップは、以下の条件で行われる:
-20~60%(m/m)の範囲のTDM範囲にある生成物を得ることが可能になる、40%HO(m/m)~80%HO(m/m)の範囲の再水和率、
-30℃~80℃の範囲、好ましくは60℃未満、更には50℃未満の温度、
-1~10時間の範囲の再水和時間(更にはテクスチャ調整時間も)、
-2~50g.kg-1粉末(m/m)、好ましくは5~25g.kg-1粉末の範囲のCaイオン封鎖塩の用量、及び好ましくは
-0~50g.kg-1粉末(m/m)、更に好ましくは1~50g.kg-1粉末(m/m)、更に好ましくは2~50g.kg-1粉末(m/m)、更に好ましくは5~10g.kg-1粉末の範囲の酸性度調節塩の用量。
【0250】
Caイオン封鎖塩及び酸性度調節塩の用量は、有利には、求められるテクスチャ/硬さに応じて調整される:
-軟質チーズには、15~20g.kg-1粉末(m/m)、好ましくは17~18g.kg-1(m/m)の用量のカルシウムイオン封鎖剤(クエン酸Na)及び5~10g.kg-1粉末(m/m)、好ましくは7~8g.kg-1(m/m)の用量の酸性度調整剤(クエン酸)、
-硬質チーズには、20~25g.kg-1粉末、好ましくは21~22g.kg-1粉末(m/m)の用量のCaイオン封鎖剤(クエン酸Na)、及び5~10g.kg-1粉末(m/m)、好ましくは7~8g.kg-1粉末の用量の酸性度調整剤(クエン酸)、
-スプレッドチーズには、15~20g.kg-1粉末(m/m)、好ましくは17~18g.kg-1(m/m)の用量のカルシウムイオン封鎖剤(クエン酸Na)、及び0~10g.kg-1粉末(m/m)、好ましくは1~7g.kg-1(m/m)、更により好ましくは2~7g.kg-1(m/m)の用量の酸性度調整剤(クエン酸)。
【0251】
この再水和するステップGの終了時、及び出発生成物に応じて、2つの場合が考えられ得る:
-基質混合物が再水和され、チーズ基質が形成される、又は
-テクスチャ基質が再水和され、それが前述の芳香基質(恐らくはこれもまた再水和される)と混合されることになる。
【0252】
この第2の場合に、テクスチャ基質及び芳香基質は、ここで混合するステップHに供され、チーズ基質が得られる。実際には、この混合するステップHは、以上に図1に関連して非固体テクスチャ基質について記載した混合するステップBと同一である。
【0253】
テクスチャ調整するステップに関して
得られたチーズ基質は、次に、チーズ類食品に求められる最終的なテクスチャに応じて適合したテクスチャ調整するステップIの対象となり得る。
【0254】
従って本発明に係るこの方法は、基質を混合/再水和した後に限り、テクスチャ調整するステップIを含む。
【0255】
このテクスチャ調整は、前述の凝固タンパク質を介してゲル又は「凝固物」が形成されるように適合した物理化学的テクスチャ調整条件にチーズ基質を供することからなる。
【0256】
「テクスチャ調整」は、液体状態からゲル状態への移行を可能にする任意の機構を包含する。
【0257】
好ましくは、かかるゲルは、有利には、脂肪球と、基質から生じるある程度実質的な分量の水相とを保持している凝固タンパク質(好ましくはカゼイン)のゲルで本質的に構成されている。
【0258】
従って凝固タンパク質は、初めて、凝固していない形態から凝固した形態に移行する。
【0259】
このテクスチャ調整は、ここでは常に前記少なくとも1つのCaイオン封鎖塩及び好ましくは前記酸性度調節塩の存在下で実施される。
【0260】
チーズ基質が供される物理化学的テクスチャ調整条件は、特に、
-温度、
-pH、
-塩濃度、特にNaCl濃度、及び
-場合によってはテクスチャ調整剤(ゲル化及び/又は増粘)の用量、
-Caイオン封鎖塩の用量、及び
-酸性度調節塩の用量
から選択される。
【0261】
テクスチャ調整剤は、レンネット以外の化合物から選択される。
【0262】
「ゲル化」又は「増粘」は、概して「テクスチャ調整剤」とも呼ばれ、特に、ゲルのコンシステンシーを変えることが可能な任意の物質を意味する。これらのテクスチャ調整剤は、動物起源(ゼラチン)、植物起源(植物、藻類等)であってもよい。これは、数ある中でも主要なものを挙げれば、デンプン、ペクチン、カラギーナン類、アルギン酸、ゴムであり得る。
【0263】
更なる詳細について、テクスチャ調整剤の各ファミリーは、Techniques de l’ingenieur叢書にある叢書“Additifs and adjuvants alimentaires”で区別することができる。
【0264】
これらのテクスチャ調整パラメータの調節は、以下の文献を考慮して行うことができる:
-Maubois et al.“Application of Membrane Ultrafiltration to Preparation of Various Types of Cheese”,Journal of Dairy Science,Vol.58,no.7;
-Goudedranche et al.“Utilization of the new mineral UF membranes for making semi-hard cheeses”,Desalination,35(1980)243-258。
【0265】
特に、「植物」テクスチャ基質の場合であれば、好ましいテクスチャ調整方法は、例えばグルコノデルタラクトン(GDL)及び/又は発酵菌を用いた酸性化によるものであり得る。
【0266】
例えば、及び非限定的な方法において、凝固剤の用量は、2~5%硫酸カルシウム又は3~10%乳酸カルシウム又は1~5%GDLである。
【0267】
実際には、種々のテクスチャ基質について、求められるテクスチャに応じて有利には以下の物理化学的テクスチャ調整条件が利用される:
-4~6.5、好ましくは4.5~5.7に含まれるpH、
-1~10時間にわたる、15℃~60℃(好ましくは20℃~40℃)に含まれる温度、
-0.1%~2%に含まれる、好ましくは0.7%~0.9%に含まれるNaCl濃度、
-2~50g.kg-1粉末(m/m)のCaイオン封鎖塩の用量(任意選択)、
-0~50g.kg-1粉末(m/m)の酸性度調節塩の用量(任意選択)、及び任意選択で
-テクスチャ調整剤(ゲル化及び/又は増粘)の用量、これは、一方で、0~0.6kg.100kg-1(m/m)、好ましくは0.2~0.4kg.100kg-1(m/m)に含まれるゲル化剤、他方で、0~4kg.100kg-1(m/m)、好ましくは1.5~2kg.100kg-1(m/m)に含まれる増粘剤を含む。
【0268】
以上のパラメータは、そのテクスチャ基質がプレチーズ液であった混合物の場合に特に最適である。
【0269】
pHの調整は、様々な方法:
-グルコノデルタラクトン(GDL)の添加、
-乳又は予め酸性化した保持液の添加、
-酸性化発酵菌の添加、
-乳酸の添加
で達成することができる。
【0270】
このpHの調整は、有利には、ゆっくりと一定の間隔で、有利には20分~30分に含まれる時間にわたって行われる。
【0271】
必要であれば、テクスチャ調整剤は、テクスチャ基質を芳香基質と混合する前にテクスチャ基質に配合することができる。
【0272】
加えて、これらのテクスチャ調整パラメータは、有利には、風味生成用微生物が生菌のまま残るように調整される。
【0273】
特に、物理化学的テクスチャ調整条件は、テクスチャをスプレッドチーズから硬質チーズまで所望のとおりに調整することができるチーズを形成するチーズ類食品を得ることが可能となるように調整し得る。
【0274】
より正確には、これらの物理化学的テクスチャ調整条件は、その中身が以下のテクスチャ/硬さのうちの1つを含むチーズが得られるように調整し得る:
-スプレッドチーズ、
-軟質チーズ、
-半軟質チーズ、
-半硬質チーズ、及び
-硬質チーズ。
【0275】
言い換えれば、硬さの結果は、3kg.f-1~40kg.f-1に含まれる範囲内にある。
【0276】
例えば、硬さは、
-スプレッドチーズについて、種類に応じて10kg.f-1未満、
-軟質チーズについて、約20kg.f-1、及び
-硬質チーズについて、約30kg.f-1
である。
【0277】
以下に、幾つかの物理化学的テクスチャ調整条件を例として提供する。
【0278】
中身が軟質のタイプのテクスチャを有するチーズを得るためには、
-4~6.5、好ましくは5.0~5.5に含まれるpH、
-15℃~40℃、好ましくは20~35℃に含まれる温度、
-0.1%~2%に含まれる、好ましくは0.7%~0.9%に含まれるNaCl濃度、
-15~20g.kg-1粉末(m/m)のカルシウムイオン封鎖剤(例えばクエン酸カルシウム)の濃度、
-5~10g.kg-1粉末の酸性度補正剤(例えばクエン酸)の濃度、
-任意選択で、0~0.6kg.100kg-1(m/m)、好ましくは0.2~0.4kg.100kg-1(m/m)に含まれるゲル化剤の用量、及び0~4kg.100kg-1(m/m)、好ましくは1.5~2kg.100kg-1(m/m)に含まれる増粘剤の用量。
【0279】
硬質チーズを得るためには、
-4~6.5、好ましくは5.2~5.7に含まれるpH、
-15℃~40℃、好ましくは25~40℃に含まれる温度、
-20~25g.kg-1粉末(m/m)のカルシウムイオン封鎖剤(例えばクエン酸カルシウム)の濃度、
-5~10g.kg-1粉末(m/m)の酸性度補正剤(例えばクエン酸)の濃度、
-0.1%~2%(m/m)に含まれる、好ましくは0.7%~0.9%(m/m)に含まれるNaCl濃度、
-任意選択で、0~0.6kg.100kg-1(m/m)に含まれる、好ましくは0.3~0.4kg.100kg-1(m/m)に含まれるゲル化剤の用量、及び0~4kg.100kg-1(m/m)に含まれる、好ましくは1.5~2kg.100kg-1(m/m)に含まれる増粘剤の用量。
【0280】
スプレッドチーズを得るためには、
-4~6.5、好ましくは4.8~5.2に含まれるpH、
-15℃~40℃、好ましくは15~25℃に含まれる温度、
-0.1%~2%(m/m)、好ましくは0.1%~0.9%(m/m)に含まれるNaCl濃度、
-15~20g.kg-1粉末(m/m)のカルシウムイオン封鎖剤(例えばクエン酸Na)の用量、
-0~10g.kg-1粉末(m/m)の酸性度補正剤(例えばクエン酸)の用量、
-任意選択で、0~0.6kg.100kg-1(m/m)、好ましくは0.15~0.20kg.100kg-1(m/m)に含まれるゲル化剤の用量及び0~4kg.100kg-1(m/m)、好ましくは1~1.5kg.100kg-1(m/m)の増粘剤の用量。
【0281】
任意選択の最終ステップに関して
製造するステップは、少なくとも1つの表面熟成用微生物が適用される最終ステップJを含むことができる。
【0282】
かかる微生物は、例えば、ペニシリウム・カメンベルティ(Penicillium camemberti)及び/又はゲオトリクム・カンジドゥム(Geotrichum candidum)、更にはブレビバクテリウム・リネンス(Brevibacterium linens)から選択される。
【0283】
次にチーズ類食品は、十分な時間にわたり、適合した条件(特に温度及び湿度)で、表面菌叢の繁殖が得られるように貯蔵される。
【0284】
好ましくは、このチーズ類食品は、表面微生物を成長させるため熟成室に置いておかれてもよく、これは4~5日間及び8℃~15℃に含まれる温度である。
【0285】
或いは、コーティング層、例えばコーティングワックスを適用するステップを行うことも可能である。
【0286】
チーズ類食品-最終生成物
テクスチャ調整するステップI(最終ステップJを参照のこと)の終了時にこのように得られたチーズ類食品は、直ちに食べることができる。
【0287】
この食品は、
-テクスチャ基質の物理化学的変換によって生じるテクスチャ、及び
-芳香生成基質に由来する、芳香(又はより一般的には風味)
を含む。
【0288】
このテクスチャ調整されたチーズ類食品は、包装し、次に冷蔵することができる。
【0289】
このチーズ類食品では、風味生成用微生物は、
-生菌である、又は
-特に特定の適用について(流通大量輸出、非冷蔵消費)、必要に応じて破壊されている。
【0290】
生菌微生物を維持するため、当業者は、微生物を破壊し得る条件を避けるように、本製造方法の種々のステップを調整することができる。
【0291】
逆に、微生物の破壊は、適合した滅菌技術を通じて、例えば、1~10分間にわたる70℃~120℃に含まれる範囲の時間/温度規模を適用することにより、達成することができる。
【実施例
【0292】
実施例1:50%全乾燥物質の硬質チーズを得るための、テクスチャ基質及び芳香生成基質の実現、これら2つの基質の混合後の乾燥、次にその再水和及びテクスチャ調整
大規模混合乳(Entremont SODIAAL-Plant of Montauban-de-Bretagne,35 360)を収集し、90℃/2分で加熱処理し(ACTINI管式熱変換器型1959-3 Zone d’Activites de Montigny,74500 Maxilly-sur-Leman)、脱脂して(WESTFALIA MSE 25遠心分離機、18 Avenue de l’Europe 02400 CHATEAU THIERRY)、1.2の脂肪/タンパク質比を得る。
【0293】
濃縮係数(CF)が5となるように、アルミニウム/ジルコニア製ミネラル膜SCT Membralox P1960型(カットオフ閾値20nm)を備えたTIA/PAll限外ろ過パイロット(TIA-BP 12-Rond Point des Portes de Provence-84501 Bollene Cedex)で、この原材料を限外ろ過によって濃縮する。
【0294】
次にこの保持液を同じACTINI管式熱変換器において60℃/20秒で加熱処理する。
【0295】
このテクスチャ基質を任意選択で冷却した後、少なくとも1つの芳香基質と混合する。
【0296】
同時に、種々の芳香を生成するため、4つの高度芳香生成微生物を好適な培地で培養した:
-ハフニア・アルベイ(Hafnia alvei)、5g.kg-1(m/m)のメチオニン及び10g.kg-1(m/m)のBHIYEグルコースを含有する脱脂乳中、30℃及び好気生活で48時間;
-ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、UHTクリーム(30%脂肪)にて、10g.kg-1(m/m)のグルコース/BHI-YE含有、22℃で撹拌下200rpmに48時間;
-プロピオニバクテリウム・フロイデンライシイ(Propionibacterium freudenreichii)、レンネット添加チーズ生産乳清にて、加熱処理あり、48時間;
-ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(ssp lactis)、亜種クレモリス(ssp cremoris)及び変種ディアセチラクチス(var diacetylactis)、脱脂粉乳で16%乾燥物質が強化された脱脂乳にて、24時間。
【0297】
これらの4つの芳香基質を各々3%(m/m)でテクスチャ基質(88%m/m)と混合し、次にまとめ合わせたものを第一段階では150バールで、及び第二段階では30バールでホモジナイズする(Rannie 2ヘッドSPXホモジナイザー-290 Rue Jacquard,27000 Evreux)。
【0298】
次に混合物をGEA-MINOR塔(3l/時間の蒸発容量)にて以下のパラメータで乾燥させる:
-塔入口温度:220℃、及び
-塔出口温度:90℃、
-3l.h-1の流速。
【0299】
基質混合物の形態のこのチーズ粉末を最適な貯蔵条件(真空中、粉末の固化を生じさせない制御された雰囲気下)に室温で数週間貯蔵する。
【0300】
このチーズ粉末の特性を以下の表1に挙げる。
【0301】
【表1】
【0302】
全水分、又は全乾燥物質の決定は、文献“Les poudres laitieres and alimentaires,Techniques d’analyse”,Pierre Schuck et al.,Editions Lavoisier,ISBN 978-2-7430-1419-3のとおりに達成される。この方法はまた、Schuck and Dolivet,Le lait,8:413-421(2002)によっても発表された。
【0303】
実質的には、このパラメータは、砂の存在下、真空中で、102±2℃の温度のオーブンにて7時間後の測定試料の全水分の蒸発によって測定される。
【0304】
水分活性の決定もまた、文献“Les poudres laitieres and alimentaires,Techniques d’analyse”,Pierre Schuck et al.,Editions Lavoisier,ISBN 978-2-7430-1419-3のとおりに達成される。
【0305】
食品のaを決定する方法は、生成物をマイクロ筐体の雰囲気と平衡化した状態に置き、次に生成物と平衡化した空気の圧力計測又は湿度計測上の特性を測定することからなる。
【0306】
この測定方法は、ここではミラー式湿度計(露点の測定方法)に基づく。
【0307】
温度を(ペルチェ効果熱電モジュールを使用して)変更できる鏡が入った湿度測定チャンバにサンプルを導入する。鏡の表面に結露が現れるまで鏡を冷却する。このa測定技法は、含水量の変化なしに空気を飽和点まで冷却できるという事実に基づく。
【0308】
均衡した状態では、チャンバに存在する空気の相対湿度(HRE)がサンプルの水分活性に等しい。水蒸気の凝結が起こる正確な温度(露点温度又は露点)が決定される。サンプルの表面温度もまた記録される。これらの2つの温度から、aが決定される。
【0309】
ここでのこの測定は、抵抗性、容量性又はミラー式a計測器:商品名GBX-モデルFA-st lab-製造番号:FL 3910111を使用して行った。
【0310】
使用した測定温度は25℃である。
【0311】
次にこの粉末を、カルシウムイオン封鎖剤(クエン酸Na:22g.kg-1粉末(m/m))、酸性度補正剤(クエン酸:8g.kg-1粉末(m/m))及びNaCl(10g.kg-1粉末(m/m))と混合する。
【0312】
初めに50℃に加熱した水中にこの混合物を撹拌下で再水和し:50%水及び50%粉末(m/m)、次に、例えば適合した500g容器に包装し、次に、この50℃の温度に2時間維持する。
【0313】
次に生成物を4℃に冷却し、直ちに消費するか、又は貯蔵する。
【0314】
実施例2:40%全乾燥物質の軟質チーズを得るためのテクスチャ基質の実現、その乾燥、再水和及びテクスチャ調整
大規模混合乳(Entremont SODIAAL-Plant of Montauban-de-Bretagne,35 360)を収集し、90℃/2分で加熱処理し(ACTINI管式熱変換器型1959-3 Zone d’Activites de Montigny,74500 Maxilly-sur-Leman)、脱脂し(WESTFALIA MSE 25遠心分離機、18 Avenue de l’Europe 02400 CHATEAU THIERRY)、次に脂肪/タンパク質比が1.2で確立される。
【0315】
容積減少係数が5となるように、アルミニウム/ジルコニア製ミネラル膜SCT Membralox P1960型(カットオフ閾値20nm)を備えたTIA/PAll限外ろ過パイロット(TIA-BP 12-Rond Point des Portes de Provence-84501 Bollene Cedex)で、この原材料を限外ろ過によって濃縮する。
【0316】
次にこの保持液を同じACTINI管式熱変換器において60℃/20秒で加熱処理する。
【0317】
このテクスチャ基質を任意選択で冷却した後、少なくとも1つの芳香基質と混合する。
【0318】
同時に、種々の芳香を生成するため、4つの高度芳香生成微生物を好適な培地で培養した:
-ハフニア・アルベイ(Hafnia alvei)、5g.kg-1(m/m)のメチオニン及び10g.kg-1(m/m)のグルコースBHIYEを含有する脱脂乳中、30℃及び好気生活で48時間;
-ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、UHTクリーム(30%)にて、10g.kg-1(m/m)のグルコース/BHI-YE含有、22℃で撹拌下200rpmに48時間;
-プロピオニバクテリウム・フロイデンライシイ;(Propionibacterium freudenreichii)、チーズ生産乳清にて、加熱処理あり、48時間;
-ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(ssp lactis)、亜種クレモリス(ssp cremoris)及び変種ディアセチラクチス(var diacetylactis)、脱脂粉乳で16%乾燥物質が強化された脱脂乳にて、24時間。
【0319】
4つの芳香基質を各々5%(m/m)でテクスチャ基質(80%m/m)と混合し、次に全体を第一段階では150バールで、及び第二段階では30バールでホモジナイズする(Rannie 2ヘッドSPXホモジナイザー-290Rue Jacquard、27000 Evreux)。
【0320】
次に混合物をGEA-MINOR塔(3l.h-1の蒸発容量)にて以下のパラメータで乾燥させる:
-塔入口温度:220℃、
-塔出口温度:80℃、及び
-3kg.h-1の混合物流速。
【0321】
得られた粉末を室温で数週間貯蔵する。
【0322】
このチーズ粉末の特性を以下の表2に挙げる。
【0323】
【表2】
【0324】
これらの値は、以上の実施例1に開示した技法に従い得られる。
【0325】
次にこの粉末(400g.kg-1チーズ(m/m))をカルシウムイオン封鎖剤(クエン酸Na:17.6g.kg-1粉末(m/m))、酸性度補正剤(クエン酸:8g.kg-1粉末(m/m))及びNaCl(10g.kg-1粉末(m/m))と混合する。
【0326】
初めにThermomixにおいて60℃に加熱した水中にこの混合物を撹拌下で再水和し(バリエーション1.5で1分間、バリエーション2.5で2分間により粉末を十分に混合し、及びバリエーション2で2分間)、次に、例えば適合した500g容器に包装し、50℃の温度で2時間維持する。
【0327】
次に生成物を4℃に冷却し、貯蔵し、消費する。

図1
図2
図3
【国際調査報告】