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特表2022-540029アルコール耐性を有する除去可能な床ケア組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】アルコール耐性を有する除去可能な床ケア組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 5/00 20060101AFI20220907BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20220907BHJP
   C09D 123/00 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
C09D5/00
C09D133/04
C09D123/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577265
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(85)【翻訳文提出日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 US2020039205
(87)【国際公開番号】W WO2020263872
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】62/866,418
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521564010
【氏名又は名称】オムノバ ソリューションズ インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ エイチ.ガストン,ザ セカンド
(72)【発明者】
【氏名】グレン ビー.トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ジェイ.ブラウン
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CB001
4J038CG141
4J038GA06
4J038GA07
4J038KA03
4J038MA13
4J038NA04
4J038PB05
4J038PC03
4J038PC04
(57)【要約】
【課題】保護性能と、許容できる容易除去性及び耐アルコール性の両方を有する、保護的コーティングを提供できる床ケア組成物の提供。
【解決手段】床アケア組成物は、液体ビヒクル(典型的には水)中の予備作製されたインターポリマー粒子、並びに非イオン性架橋剤を含む。ポリマー粒子は、比較的狭い比率の親水性対疎水性領域又は成分、一般的に不均一な形態、及び比較的少数のカルボキシル基を含む。正しい量とタイプの架橋化合物を有する床アケア組成物中で使用されるとき、生じる床ケア仕上げは、エタノールなどのアルコールに対して耐性であり、かつ容易に除去可能である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)水;
b)有効量の1種以上の分散剤;
c)1~5重量パーセントの非イオン性架橋剤;及び
d)34~42重量パーセントの内部可塑化ポリマー粒子、ここで、前記粒子は、2つのタイプのポリマー又はポリマーセグメントを含み、その第1のタイプは主にその第2のタイプの層内に(within a layer)あるが、少なくとも部分的に前記第2のタイプによって貫入(penetrate)されており、以下のそれぞれ:
(i)前記粒子中のポリマーの総重量に対して、
(A)前記第1のタイプは56~66重量パーセントを構成し、
(B)前記第2のタイプは34~44重量パーセントを構成し、
(ii)前記第1のタイプ及び前記第2のタイプのガラス転移温度は、それぞれ、40℃未満及び少なくとも75℃であり、
(iii)前記ポリマー粒子中のカルボキシル基を含む量体単位(mer unit)の総量は、乾燥ポリマー重量に基づいて9pph未満であり、及び
(iv)カルボキシル基を含むすべての量体単位は前記第1のタイプ中にある、
が当てはまる;
を含む、床ケア組成物。
【請求項2】
前記非イオン性架橋剤が、一般式Z-R-Si(R〔式中、Zは反応性官能基であり、Rは二価連結基であり、及び各Rは、独立してアルキル又はアルコキシ基であり、ただし、少なくとも1つのRはアルコキシ基である。〕によって定義される反応性シランを含む、請求項1に記載の床ケア組成物。
【請求項3】
少なくとも2つのR部分がアルコキシ基である、請求項2に記載の床ケア組成物。
【請求項4】
Zがエポキシド基である、請求項2~3のいずれか一項に記載の床ケア組成物。
【請求項5】
前記粒子中のポリマーの総重量に対して、前記第1のタイプは58~64重量パーセントを構成し、前記第2のタイプは36~42重量パーセントを構成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の床ケア組成物。
【請求項6】
前記粒子中のポリマーの総重量に対して、前記第1のタイプは59~63重量パーセントを構成し、前記第2のタイプは37~41重量パーセントを構成する、請求項5に記載の床ケア組成物。
【請求項7】
前記粒子中のポリマーの総重量に対して、前記第1のタイプは60.5~62.5重量パーセントを構成し、前記第2のタイプは37.5~39.5重量パーセントを構成する、請求項6に記載の床ケア組成物。
【請求項8】
前記ポリマー粒子中のカルボキシル基を含む量体単位の総量が、乾燥ポリマー重量に基づいて、少なくとも6pphである、請求項1~7のいずれか一項に記載の床ケア組成物。
【請求項9】
前記ポリマー粒子中のカルボキシル基を含む量体単位の総量が、乾燥ポリマー重量に基づいて、7.6~8.4pphである、請求項8に記載の床ケア組成物。
【請求項10】
前記第1のタイプが、一般式
【化1】
(式中、R'はH又はメチル基であり、R"はC~C18アルキル基である。)
で示される少なくとも1つの(メタ)アクリレートを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の床ケア組成物。
【請求項11】
R"がC~C18アルキル基である、請求項10に記載の床ケア組成物。
【請求項12】
前記第1のタイプがビニルエステル又はα-オレフィンをさらに含む、請求項10~11のいずれか一項に記載の床ケア組成物。
【請求項13】
前記第1のタイプが、前記第1のタイプ中の量体の合計に基づいて、1~4重量パーセントの少なくとも1種のビニル芳香族化合物をさらに含む、請求項10~11のいずれか一項に記載の床ケア組成物。
【請求項14】
1.25~2pphのイオン性架橋剤をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の床ケア組成物。
【請求項15】
前記組成物の総重量に基づいて、0超~10重量パーセントの量の合着剤(coalecent)をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の床ケア組成物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の床ケア組成物を塗布し、インターポリマー粒子を合着させて床保護コーティングを提供することを含む、床を保護する方法。
【請求項17】
a)水及び少なくとも1種の分散剤を含む容器に、いずれかの順序で第1のモノマー投入物と触媒系とを加え、ここで、前記第1のモノマー投入物のモノマーは、
1)前記第1のモノマー投入物中のモノマーの総重量に基づいて、7.5~17.5重量パーセントの、ヒドロキシル基を含むエチレン性不飽和化合物と、
2)少なくとも1種の(メタ)アクリレートと
を含み;
b)触媒系による前記第1のモノマー投入物中のモノマーの重合を開始させて、第1のタイプのポリマー又はポリマーセグメントを提供し;
c)前記容器に第2のモノマー投入物と任意に追加量の触媒系とを添加し、ここで、前記第2のモノマー投入物中のモノマーは、ヒドロキシル基を含むエチレン性不飽和化合物を含まず、単独重合して少なくとも75℃のガラス転移温度を有するポリマーとなるモノマーのみを含み;そして
d)前記触媒系による前記第2のモノマー投入物中のモノマーの重合を開始させて、第2のタイプのポリマー又はポリマーセグメントを提供し;
それによって、前記第1のモノマー投入物と前記第2のモノマー投入物との比が56:44~66:34の範囲であるインターポリマー粒子を提供する、
インターポリマー粒子の水性分散液を調製する方法。
【請求項18】
前記第2のタイプのポリマー又はポリマーセグメントが、前記第1のタイプのポリマー又はポリマーセグメントを遮断するか又はそれに貫入している、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のモノマー投入物と前記第2のモノマー投入物との比が59:41~63:37の範囲である、請求項17~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のモノマー投入物と前記第2のモノマー投入物との比が60.5:39.5~62.5:37.5の範囲である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2019年6月25日に出願された米国仮特許出願第62/866,418号の優先権を主張し、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ポリマーコーティングは、塗料、木材仕上げ、印刷面、写真、床ケア製品、ワックス、光沢剤などに使用され、向き(例えば、垂直、水平、又はその他)に関係なく、表面をコーティング及び保護する。
【0003】
床ケア製品は、ポリマーフィルム又はポリマー層を含むか又は生成する液体床ケア組成物の定期的な塗布を必要とする。この保護層又はコーティングは望ましくは、引っかき傷及び擦り傷に対する耐性、靴からのマーキングに対する耐性、液体(水を含む)に対する耐性、基材への強い接着、並びに光沢及び透明性(例えば、曇りの欠如)などの特性を示す。
【0004】
床ケア保護製品は、しばしば1成分(1K)システム又は2成分(2K)システムのいずれかに分類される。前者では、1種以上の予め作製された固体ポリマー材料が有機又は水性液体に溶解、分散、又は懸濁され、そして床に塗布された後、運搬液体が蒸発するときにフィルムを形成する(合着;coalesce)。後者の場合、2種以上のモノマー成分は塗布されるまで液体のままであり、塗布されると反応してその場でポリマーフィルムを形成する。
【0005】
多くの2Kシステムは、優れた性能特性を提供するコーティングをもたらすが、コストがかかり、損傷又は傷ついた場合、除去が困難である。逆に、1Kシステムは典型的には、許容できる性能特性を低コストで提供し、必要に応じて簡単に除去又は修理することができる。
【0006】
2Kシステムが明らかに1Kシステムより優れている1つの性能指標は、アルコールに対する耐性である。学校や病院などでエタノールを含む手指消毒ゲルやフォームの使用が増えるにつれ、そのような施設は、アルコール含有消毒剤の滴が落ちて保護床コーティングを傷つけた領域に、白い又は不透明なスポットの形成が予測されることを学習している。これはディスペンサーの周りの領域をすぐに掃除することで軽減できるが、そのようなディスペンサーの遍在性と保守要員の相対的な不足は、1Kタイプの床保護コーティングをより頻繁に除去して再塗布する必要があることを意味する。
【0007】
1Kタイプの床ケア組成物の製造業者は、そのような施設が許容できると考えるレベルのアルコール耐性を提供するために、多くの変更及び再調製を試みている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
望ましいのは、許容できる視覚的及び性能(すなわち、耐摩耗性、擦り耐性など)特性を有し、安価な化学薬品及び技術を使用して容易に除去することができ、そしてアルコール、特にエタノール(多くの手指消毒剤ゲルに見られるようなもの)、及び程度は少ないがイソプロパノールに対する許容レベルの耐性を提供する、保護的コーティングを提供できる床ケア組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(要約)
本明細書において、液体ビヒクル、典型的には水中の予め作製されたインターポリマー粒子、並びに非イオン性架橋剤を含む床ケア組成物が提供される。前記粒子は、比較的狭い比率の親水性領域対疎水性領域又は成分、及び一般的に不均一な形態を含む。これらの粒子中のインターポリマーはカルボキシル基を含むが、その量は、床ケア組成物に典型的に使用されるほとんどのカルボキシル化ポリマーに存在する量よりも少ない。
【0010】
床ケア組成物の実施態様は、引っかき傷及び擦り傷に対する耐性、かかとのマークに対する耐性、及び床基材への強い接着などの許容可能な機械的耐久特性を有するが、有利には、アルコールに対する良好な耐性、例えばアルコール含有組成物によるしみ又は損傷にさらされたときの許容可能な視覚的特性の維持も示す、除去可能な保護コーティングを提供する。
【0011】
また、このタイプの床ケア組成物を製造及び使用するための方法、並びに組成物から作製された保護床仕上げも提供される。
【0012】
以下の詳細な説明は、本発明のさらに別の態様を記載する。その記載を理解しやすくするために、いくつかの定義がすぐ下に提供されており、これらは、周囲の文章が反対の意図を明示的に示していない限り、全体に適用されることを意図する。
「ポリマー」は、1つ以上のモノマーの重合生成物を意味し、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、テトラポリマーなどを含む;
「量体(mer)」又は「量体単位(mer unit)」は、単一の反応物分子(reactant molecule)に由来するポリマーの部分を意味する(例えば、エチレンマーは一般式-CHCH-を有する);
「コポリマー」は、2つの反応物(典型的にはモノマー)に由来する量体単位を含むポリマーを意味し、ランダム、ブロック、セグメント化、グラフトなどのコポリマーを含む;
「インターポリマー」は、少なくとも2つの反応物(典型的にはモノマー)に由来する量体単位を含むポリマーを意味し、コポリマー、ターポリマー、テトラポリマーなどを含む;
「pph」は、重量ベースで100の総モノマー当たりの部数を意味する;及び
「水性」とは、成分として、典型的には溶媒又は媒体として、水を含む任意の液体ブレンド又は混合物を指す。
【0013】
本文書全体を通して、周囲の文章が反対の意図を明示的に示していない限り、パーセントの形式で示されるすべての値は重量パーセントであり、特定の特性の最小値と最大値のすべての記載には、いくつかの個々の最小値と個々の最大値の各組み合わせから形成される範囲がさらに含まれる。
【0014】
本明細書で使用される数値制限には、その特定の数値制限で使用される有効桁数に基づいて、適切な程度の不確実性が含まれる。例えば「最大5.0」は、「最大5」よりも低い絶対上限を設定していると解釈できる。
【0015】
さまざまな時点で、本文書では、ポリマー全体又はそのセグメントの両方に関して、ガラス転移温度(T)に言及している。いずれの場合も、Tは、よく知られているフォックス(Fox)方程式を使用して計算される;T.G. Fox, Bull. Am. Phys. Soc., vol.1, p. 123 (1956)を参照されたい。
【0016】
全体を通して言及されているすべての特許文書の関連する教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(例示的実施態様の詳細な説明)
上記のように、保護的床コーティングは、合着(coalesce)してフィルムを形成する予め作製されたポリマー粒子(1Kシステム)、又は反応してその場でポリマーフィルムを提供する2つ以上のモノマー成分(2Kシステム)を含む、床ケア組成物から提供され得る。本発明は、1Kタイプのシステム並びにそれから提供されるコーティングに関する。
【0018】
以下の段落は、最初に、床ケア組成物の所望のインターポリマー粒子成分を提供することができる重合プロセス、床ケア組成物へのこれらの粒子の組み込み、及び床ケア組成物から提供される保護的床コーティングを説明する。
【0019】
米国特許第4,150,005号は、約20℃を超える計算されたガラス転移温度(T)を有するポリマー粒子を提供するための、異なるクラスのモノマーの連続重合を教示している。これらのポリマーのラテックスは低い粘度を有するが、ポリマーは、ポリマー全体の計算されたTに比べて低い温度でフィルムを形成することができる。この特許は、ポリマー粒子が「内部で可塑化されている」と言及している。
【0020】
内部で可塑化された粒子を作製するために使用される多段階技術は、2種類のポリマー鎖をもたらす。第1段階(ここではAと呼ぶ)から得られるポリマーは親水性であり、比較的低いTを有するが、第2段階(ここではBと呼ぶ)から得られるポリマーは親水性が低く、より高いTを有する。
【0021】
乳化重合環境では本質的に連続した段階が発生し、第1段階(A)の生成物の存在下で第2段階(B)の生成物が生成されるが、B段階の生成物は必ずしもA段階の生成物を覆ったり囲んだりするわけではない。
【0022】
スチレン量体を含むポリマー粒子にルテニウム染色を行うと、多量のスチレン量体を含む領域が優先的に暗くなる。本明細書に記載のプロセスに従って提供されるインターポリマー粒子にそのような染色をし、次に透過型電子顕微鏡観察すると、得られる画像は、全体により明るい中央又はコア領域をより暗いシェルが囲んでいる。それにもかかわらず、コアにはいくつかの暗い領域が含まれているように見え、これは、シェルを構成するポリマーの一部がコアに貫入(penetrate;貫入、侵入、浸透)していることを示している。さらに、シェルの影は、それが単独で又は主にスチレン量体で構成されている場合に予測されるほど暗くはない。これらすべては、第1段階(A)の結果としてのみ存在すると予測される量体の一部が、第2段階(B)の生成物に移行又は相互貫入したことを示唆している。
【0023】
従って、得られたポリマー粒子の大部分ではないにしても一部の構造は、真にコアシェルではないように見える。代わりに、第2段階の生成物(Bs)の少なくとも一部は、第1段階の生成物(As)を中断(interrupt)又はそこに貫入(penetrate)し、不均質で不均一な形態(non-uniform, non-homogeneous morphologies)の粒子を生成すると考えられる。
【0024】
AsへのBsの貫入の程度(もしあれば)に関係なく、得られるポリマー粒子の重要な特徴は、その中のA対Bの比率である。
【0025】
米国特許第4,150,005号の欄7~8をつなぐ段落は、A:Bの約50:50の比率が優先されることを示しており、Aは全ポリマーの20~80%(w/w)、30~70%(w/w)、又は40~60%(w/w)を構成する。(このようなエチレン性不飽和モノマーは、いろいろな条件下で重合しやすいため、最終的なポリマー粒子中の割合は、モノマー原料の重量パーセントで非常によく近似することができ、これは、'005特許がその実施例中で問題に対処する方法である。第一段階のポリマーの実際の分析が行われた場合、一部の粒子は記載された上限よりも高い比率を持ち、他の粒子は記載された下限よりも低い比率を示す可能性があるが、すべての粒子の平均はその特定の範囲内に入る。)
【0026】
本発明の床ケア組成物において、インターポリマー粒子は、Bよりも多くのAを有していなければならない。A対Bの重量比の漸進的により好適な範囲は、52:48~72:28、54:46~69:31、56~44~66:34、58:42~64:36、59:41~63:37、60.5:39.5~62.5:37.5、及び61:39~62:38である。
【0027】
インターポリマー粒子は乳化重合技術を使用して提供され、これは、構成モノマーが水性環境で界面活性剤の存在下で重合されることをする。乳化重合は何十年にもわたって行われてきたため、一般的な条件及び技術は、当業者によく知られている。追加情報について関心のある読者は、例えば、前述の'005特許、並びにそこに引用されている特許、並びにこれらの文書を引用している後の特許を含む、種々の特許の任意のものを参照することができる。
【0028】
水性重合媒体に溶解しないモノマーを乳化するために、少なくとも1種の分散剤、典型的には界面活性剤が使用される。各カテゴリーの界面活性剤(非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、及び双性イオン性)を使用することができる。以下の説明で重合されるモノマーは、いわゆる酸性モノマー(すなわち、カルボキシル官能基を含むエチレン性不飽和化合物)を含むため、陰イオン性及び/又は非イオン性界面活性剤が好ましい傾向がある。使用される界面活性剤の量は、一般的に、添加されるモノマーの総重量に基づいて10%未満であり、一般的に約0.1~約5%、典型的には約0.5~約2.5%である(ここで、すべてのパーセントはw/w)。
【0029】
メルカプタン及びポリハロゲン化合物などに限定されるものではないが、1種以上の連鎖移動剤(CTA)もまた、重合プロセス中に存在することができる。典型的には、CTAはポリマーの分子量を制限するために使用されるが、現在の状況では、CTAは最終的なポリマー生成物の望ましい特性を得るために必要ではない。
【0030】
別の任意の成分は、例えば、重炭酸ナトリウムなどのpH調整/緩衝化合物である。
【0031】
所望であれば、合着剤(溶媒)の一部又はすべてを、重合前又は重合時に反応容器に含めることができる。種々のグリコールエーテルの任意のものが例示的な合着剤(coalescent)を表す。
【0032】
典型的には、水が適切な反応容器に充填された後、分散剤及び任意の所望の成分が添加される。この最初の添加は、典型的には、周囲温度又はその近くで行われるが、これは必須ではない。容器の内容物は、攪拌又はかき混ぜることができる。
【0033】
モノマーと触媒系(開始剤に加えて、任意選択的に促進剤)の一方又は両方は、典型的には、上記の最初の添加後に添加される。
【0034】
しばしばこの後続の添加は、反応容器の温度が上昇した後に行われる。反応容器はしばしば、容器の内容物に熱を導入したり、容器の内容物から熱を除去したりするための一体の手段を備えている。最初の添加後、容器に熱を導入して、容器の内部温度を約50℃~約95℃、典型的には約80℃~約90℃に上昇させた後、モノマー及び/又は触媒システムを導入することができる。(反応容器の内容物が維持される温度は、例えば、モノマーの組成及び使用される特定の触媒系を含む種々の要因に依存する。)
【0035】
触媒システムの後にモノマーを加えてよく、それにより、入ってくるモノマー化合物が容器に導入された直後に、フリーラジカルに遭遇させることができる。あるいは、特に粒子サイズの一貫性の目的でシードポリマー(後述)が望まれる場合、任意の開始剤を導入するより前に、モノマーの一部をまず容器に添加することができ、これは、主にモノマーの添加が開始剤の添加よりも内部反応器温度への影響が大きいためである。モノマーと開始剤の(半)連続的供給が行われる状況では、典型的には両方とも本質的に同時に反応容器に到達する。
【0036】
種々の過硫酸塩の任意のものが、任意にメタ重亜硫酸塩又はチオ硫酸塩などの促進剤の存在下で、一般的に使用される開始剤の好適なタイプを構成する。触媒系は一般的に、添加されるモノマー(すべての段階)の総重量に基づいて2%(w/w)未満で存在する。一般的に使用される開始剤の量は、約0.05~約1.5%(w/w)、典型的には約0.25~1.25%(w/w)の範囲である。
【0037】
モノマー化合物が反応容器に導入される方法は、ポリマーの粒子サイズに影響を与える可能性がある。
【0038】
少量のモノマーを使用していわゆるシードポリマーを成長させることができるが、これは、無視して、いわゆるランニングスタート重合を優先することができる。一般的に、シード工程を含めると粒子サイズの一貫性(これは、相対的な重要性の点で製造業者ごとに大きく異なり得る要因である)を高めることができる。
【0039】
追加的又は代替的に、モノマーは予備乳化することができる(すなわち、前述の分散剤の一部を、反応容器に入れずに、モノマー化合物に加えた後に、それらを反応容器に導入することができる)。
【0040】
この場合、シード形成技術を介してニートモノマーを導入することによって最小の粒子サイズが得られたが、導入技術(例えば、予備乳化対ニート)に起因する粒子サイズの変動が、組成物又は結果として生じる保護コーティングのいずれかの所望の性能特性のいずれかに大きな影響を与えることは観察されていない。
【0041】
粒子サイズが重要であると考えられる場合は、前述の要因及び界面活性剤の種類や量などの他の考慮事項を使用して、A生成物から生じる粒子の平均直径を調整又は微調整することができる(次に、これは全体的な粒子サイズに最大の影響を与える)。そのようなプロセスの考慮事項は、当業者にはよく知られている。
【0042】
シードポリマーの使用以外の、別の選択肢は、初期段階でモノマーの添加を調整することである。言い換えれば、バルク添加技術ではなく、モノマー供給は、連続的、不連続的、及び/又は先細り、すなわち時間とともに配合を変化させることができる。
【0043】
この最初の添加に関与するモノマーについては、後述される。
【0044】
容器の内容物の攪拌又は他の攪拌を継続するか、又はすでに行われていなかった場合は開始することができる。攪拌は典型的には、A段階のモノマーの重合が進行している間ずっと維持される。パドルの形状とサイズ、スターラー速度、全体的なエネルギー投入などはすべて、反応器のサイズと形状、及び特定の重合のニーズに基づいて適合させるか調整することができる。
【0045】
モノマーの最初の添加が実質的に完了した後、これらのモノマーは、実質的な完了まで、すなわち、反応容器内に残るのが、これらのモノマーの10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2.5%未満、そして最も好ましくは1%未満になるまで重合させることができる。これは、分析技術(例えば、重量分析又はガスクロマトグラフィー)によって、又はより一般的には、単に十分な時間、例えば900~3600秒、経過させることによって測定することができる。連続的又は漸減的添加が採用される場合、すべてのモノマーが重合する機会を確実に有するために、これは、添加が終了した後、設定された時間、例えば900~1200秒の経過を伴う可能性がある。
【0046】
モノマーの2回目の添加は、最初の添加からのモノマーの所望の程度の変換が達成された後の任意の時点で開始することができる。2回目の添加は、最初の添加に関連して上記と同じ技術を使用して実施することができるが、この添加に関連するシードポリマーの使用は、すでに反応容器に入っているA生成物上にB生成物を形成又は構築することを可能にすることが望まれるため、不必要である。
【0047】
反応容器の内容物の温度を変更することは、確かに企図されてはいるが、典型的には必要とされない。
【0048】
最初の添加、バッチ、連続、不連続、先細りなどの場合と同様に、この2回目の添加ですべての手法が可能である。
【0049】
この2回目の添加に関与するモノマーは、1回目の添加に関与するモノマーの考察後に、以下で考察される。
【0050】
最初の(A)モノマー添加のポリマー生成物は、インターポリマー粒子全体、さらには床ケア組成物全体に2つの重要な機能を提供し、これは、性能特性の望ましいバランスを満たすのに役立つ。
【0051】
これらの最初のものは、Aポリマーの相対硬度に関連し、具体的には、A添加から生じる鎖/セグメントの計算されたTは40℃未満、好ましくは約20℃から~37.5℃、より好ましくは25℃~36℃、最も好ましくは30℃~35℃でなければならない。(この計算されたTは上記のように決定でき、Aポリマーで行われたTの実際の測定によって決定された値である必要はない。)この特性は主に、いわゆる「ソフト」ホモポリマーを形成するモノマーを使用することから生じる。
【0052】
2つ目の特徴は、Aポリマーで提供されるカルボキシル基の数に関する。以下で明らかになるように、ポリマー粒子全体中のすべてのカルボキシル基は、A添加に由来する。多くの床ケア組成物において、カルボキシル基は、典型的にはCa-2又はZn+2などの金属イオンとのイオン性架橋反応に関与するために、あるいは少なくとも実用的に、耐摩耗性やかかとのマークへの耐性などの物理的特性を最大化するように、ポリマー粒子中のカルボキシル基の量は、典型的には可能な限り高く維持され;床ケア組成物中のイオン性架橋剤と共に使用することを目的としたほとんどの市販のポリマーは、9pph超、多くの場合少なくとも10pph、典型的には少なくとも11pph、場合によっては12pph以上を有する。
【0053】
しかしながら、ここでは、カルボキシル基含有量体の総量(全体の乾燥ポリマー重量に基づく)は、9pph未満に維持されることが好ましい。そのような量体の最小量は少なくとも6pphであり、多くの場合少なくとも7pphである。(これらの最小量のいずれかを前述の最大量と組み合わせて範囲を作成することができる。)このような量体の好適な量は8pph±5%である。
【0054】
カルボキシル基は、式
【化1】
(式中、R'はH又はメチル基)
で表されるモノマー、すなわちアクリル酸又はメタクリル酸を含むことから生じる。上で説明したように、一般式(I)タイプのモノマーの量は大きく変動し得るが、典型的には、最初の添加で使用されたモノマーの総量の約7.5~約17.5%(w/w)、より一般的には約10~15%(w/w)を構成する。
【0055】
前述の2つの機能が維持されている場合、最初の(A)添加で使用される他のモノマーの本体と相対量は大きく変動する可能性がある。ただし、2つ目の機能の当然の結果として、A添加の結果はホモポリマーにはなり得ず、すなわち、これはインターポリマーになる。
【0056】
最初の添加で使用することができるモノマーの好適なクラスは、一般式
【化2】

((式中、R'は上記のように定義され、R"はC~C18アルキル基、好ましくはC~Cアルキル基、より好ましくはC~Cアルキル基を表す。)
で表される(メタ)アクリレートである。一般式(II)で定義される化合物の非限定的な例には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレートなど、並びに置換変種、例えば2-エチル-ヘキシル(メタ)アクリレートが含まれる。この群の2つ以上のメンバーを組み合わせて使用することができる。
【0057】
初期(A)モノマー投入物に含めることができる不飽和化合物の他のタイプには、種々のビニルエステル及びα-オレフィンの任意のものが含まれる。
【0058】
最初の添加には、少量のビニル芳香族化合物、主にスチレン、α-メチルスチレン、及びハロゲン化変種を含めることもできる。そのようなモノマーのホモポリマーは一般的に「硬い」と考えられているが、そのようなモノマーに由来する量体の存在は、耐摩耗性、及びおそらく2回目の(B)添加から生じるポリマーとの相互作用などの性能特性を高めるために好ましい。これらのモノマーの量は大きく変動するが、これ(これら)は一般的には、最初の添加で使用されたモノマーの総量の5%以下、典型的には1~4%、より一般的には1.5~3.5%、及び典型的には2.5±0.75%(すべてw/w)を構成する。
【0059】
最初のモノマー添加のAポリマー生成物に、第2のモノマー添加が導入される。これらの第2(B)段階のモノマーは一般的に、はるかに高いT値、例えば少なくとも75℃、好ましくは少なくとも80℃、より好ましくは少なくとも85℃、そして最も好ましくは少なくとも90℃を有するホモポリマーを提供する。
【0060】
Bモノマーから生じるポリマー鎖又はセグメントは、好ましくは、いかなるカルボキシル基も含まず、すなわち、上記のように、ポリマー粒子中のすべてのカルボキシル基は、好ましくは1つ以上のAモノマーから生じる。
【0061】
B添加に使用することができる好適なクラスのモノマーは、スチレンとその誘導体、例えばα-メチルスチレン、種々のハロゲン化スチレン、ジビニルベンゼンなどの任意のものである。(ジビニルベンゼン及び他の二官能性モノマーは、後述されるプロセスから生じる架橋を超える架橋をもたらす可能性がある。従って、そのような二官能性モノマーの量は好ましくは、重合プロセスがそれらの存在を説明するように調整されない限り、制限される。)スチレンは唯一のBモノマーとして使用することができるか、又は他の適切な不飽和化合物と混合又は整列(sequenced)させることができる。
【0062】
他の潜在的に有用なBモノマーには、限定されるものではないが、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチルなどが含まれる。これらは、個別に使用することも、組み合わせて使用することもできる。
【0063】
いくつかの実施態様において、2つ以上の他のBモノマー、例えばアクリロニトリル及びメタクリル酸メチルが優先されて、スチレンは省略され得る。
【0064】
上記のように、前述のプロセスから生じるポリマー粒子は、B添加から生じるよりも、A添加から生じるより多くの部分を含まなければならない。Aモノマーと同様に第2段階(B)のモノマーは、100%又はほぼ100%変換率で重合する傾向があるため、前述の比率は、第1段階対第2段階の供給を調整することで正確に推定することができる。
【0065】
ポリマー粒子のB添加はほぼ完全にスチレンで構成されていたが、前述のように、シェルのルテニウムの影はスチレンポリマーで予測されるほど暗くはない。従って、典型的にはコアにのみ存在すると予測されるA添加からの鎖/セグメントの一部は、シェルに移動又は相互貫入し、真にコアシェルではない構造を有する得られるポリマー粒子の大部分ではないにしても、一部をもたらす可能性がある。代わりに、粒子は不均質で不均一な形態を有するように見る。
【0066】
所望のレベルのアルコール耐性を達成するために、均一なフィルムへのポリマー粒子の良好な合着が重要である。A添加から生じる量体を含むポリマーは、B添加から生じる量体を含むポリマーよりも良好に合着する傾向がある。典型的には、これは、前者がポリマー粒子の最も外側部分を構成することを確実にすると議論しているように見えるかもしれない。しかし、実際には、これは必要であるとは認められておらず、少なくともいくつかの点で不利である。
【0067】
「シェル」がその後作成されたという事実にもかかわらず、少なくともいくつかのA鎖/セグメントは、「コア」からB鎖/セグメント内に入り、又はB鎖/セグメントを貫通して、ポリマー粒子の外部に到達するようである。少なくとも一部のA鎖/セグメントが表面又は表面に非常に近いという事実は、観察された最小フィルム形成温度(MFFT)がAインターポリマーの計算された(理論的)Tと同様であり、Bポリマーの理論的Tよりも低いという事実によって裏付けられているようである。
【0068】
B添加でポリマーを生成する前にA添加することでインターポリマーを生成し提供する能力は、カルボキシル基を含むA添加から生じる鎖/セグメントが、ミセル中だけで重合するのではなく、少なくとも部分的には水相中で重合する傾向があるため、有利である。この傾向は、特に反応器内の固形分含量が増加するにつれて、エマルジョン全体の粘度を上昇させる可能性がある。最初にAモノマーを重合することにより、処理が簡素化される(低粘度が維持されるため)が、結果として得られるポリマー粒子は真のコアシェル粒子ではないため、Aセグメントの少なくとも一部は粒子表面又はその近くにあり、それによって望ましい合着と低MFFTが可能になる。
【0069】
モノマーの2回目の(B)添加が実質的に完了した後、これらのモノマーは、実質的な完了まで、すなわち、反応容器内に残るのが、これらのモノマーの10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2.5%未満、そして最も好ましくは1%未満になるまで重合させることができる。(残りのモノマーの程度は、前述のように測定することができる。)
【0070】
固形分の総量(例えば、総固形分重量)は、34~42%、好ましくは36~40%、37~39%、さらには38±0.5%(すべてw/w、組成物の総重量に基づく)の範囲であり得る。
【0071】
規制又はその他の考慮事項のために必要な場合は、酸化剤及び還元剤のアリコートを追加することにより、重合後のモノマーの還元を達成することができる。この任意の重合後モノマー還元は、当業者によく知られている。
【0072】
使用前の添加の必要性を排除するために、反応容器に重合後の添加を行うことができる。一般的な後添加物には、限定されるものではないが、イオン性架橋金属原子含有化合物(例えば、炭酸亜鉛アンモニウム、酢酸カルシウムなど)、金属原子又はイオンを含まない1種以上の架橋剤、及び可塑剤が含まれる。有利なことに、ポリマー粒子が一種の内部可塑化(より硬いシェル(B)部分がより柔らかいコア(A)部分によって中断されている)を示す傾向は、外部可塑剤の量が予測される量よりも少ないことを意味する。
【0073】
究極の床ケア組成物において所望レベルのアルコール耐性を達成するために、非金属架橋剤を含めることが重要であることが見出された。これには典型的には、分子の両端で共有結合を形成できる化合物を使用することを必要とする。そのような化合物のクラスは反応性シランであり、これは一般的に、シラン基と、ポリマーの酸基、ビニル基、又は他の反応性基(例えば、ビニル、エポキシ、アミンなどの基)と反応することができる別の官能基を含む。有用な反応性シラン化合物は、一般式ZR-Si(R〔式中、Zは反応性官能基であり、Rは二価連結基、好ましくはヒドロカルビレン(例えばアルキレン)基であり、任意選択的にO、S、P、Nなどの1種以上のヘテロ原子を含み、各Rは独立してアルキル又はアルコキシ基であるが、ただし、少なくとも1種のRはアルコキシ基である;いくつかの実施態様において、好ましくは少なくとも2つのR基がアルコキシ基を構成する。〕で表すことができる。反応性シラン化合物の非限定例には、ビニルトリアルコキシシラン類、例えばビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、種々のエポキシシランの任意のもの、及び3-メタクリルオキシ-プロピルトリメトキシシランが含まれる。
【0074】
そのような反応性シランの好適なクラスは、一般式
【化3】
(式中、RとRは上記のように定義される。)
で表すことができる。代表的な一般式(III)の化合物は、3-グリシドオキシプロピルメチルジエトキシシラン並びに、アルキレンスペーサー、アルキル置換基及びアルコキシ置換基の鎖長が変化する同様の化合物である。他の代表的な一般式(III)の化合物には、モノ-及びトリ-アルコキシ類似体が含まれる。
【0075】
このタイプの共有結合架橋剤の量は、一般的に1~5%、好ましくは1.25~3%、さらにより好ましくは1.5~2.5%(すべてw/w、ポリマー固形分に基づく)である。
【0076】
共有結合架橋剤の存在は、典型的には、少なくともいくつかのイオン性(金属)架橋剤の好適性を排除せず、この架橋剤は、液体組成物に、後でしかし床に塗布する前に、後添加物として含めるか又はブレンドすることができる。例示的なイオン性架橋剤として炭酸亜鉛アンモニウム(ZAC、18%当量のZnO含有量)を使用すると、一般的な量は1.25~2pphであり、典型的な量は1.33~1.75pphである。
【0077】
共有結合架橋剤は一般的に、しばしば除去可能性の低下を犠牲にして、床ケアコーティングのアルコール耐性を高めるが、イオン性架橋剤についてはその逆が当てはまる。異なる量の2種類の架橋剤(共有架橋剤してMomentive Performance Materials Inc. (Waterford, NY) からのCoatOSil(商標)2287シラン、及びイオン性架橋剤としてZAC)を有する本発明のインターポリマーを使用して調製された床コーティングのこれら及び他の最終用途特性は以下の表にまとめられ、ここで、架橋剤の量は重量パーセントで示されている。「塗布」は、レベリング、光沢、モップ引きずり、ゴースト、及び全体的な仕上げの外観の組み合わせである;「耐性」は、70%イソプロパノール、70%エタノール、Purell(商標)ハンドサニタイザー(GoJo Industries Inc.; Akron, Ohio)及びSterillium Comfort Gel(商標)ハンドサニタイザー(Medline Industries, Inc.; Mundelein, Illinois)のそれぞれに関連した性能の組合せである;「除去可能性」は、市販の高pH溶液とASTMD1792ストリッピング溶液を使用する除去の容易さの複合である;「耐久性」は、一般的な歩行、微小な引っかき傷、摩耗、汚れの付着からの損傷と擦り傷に対する耐性の組み合わせである;「修復可能性」は、1500rpm以上でのバニシングに対する応答を示す。
【表1】
【0078】
上記をガイドとして使用して、当業者は、それぞれの量を調整して、床ケア組成物中の2つの特性のそれぞれの所望のレベルを達成することができる。
【0079】
合着剤がまだ添加されていない場合、又はさらに必要な場合は、1種以上の合着剤(coalescent)をこの添加後の段階で含めることができる。例示的な合着剤は、合着剤を含むポリマー組成物のMFFTを低下させる効果を有し、好ましくは、フィルムが形成及び硬化されるとポリマー組成物から揮発することができる。合着剤の具体例には、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール、並びにポリオール及びグリコールエーテルが含まれる。ポリマー仕上げ組成物の総重量に基づく合着剤の有用な量は、総ポリマー仕上げ組成物に基づいて最大約10重量パーセントの量の合着剤であり得、一般的に約1~約7重量パーセント、そして典型的には約3~約5重量パーセントである。
【0080】
しばしば重合容器の内容物は、そのまま、すなわち水性エマルジョンとして収集及び輸送される。このような組成物は、重大な予防措置を講じることなく、約5℃~50℃の温度で保存可能である;好ましくは、組成物の凍結は回避される。組成物は、使用前に攪拌することができる。
【0081】
この組成物は、床ケア組成物の基材として使用することができ、これはまた、そのようなコーティング用途に有用な他の固体又は液体成分を含むことができる。例示的な添加剤は、ポリマー仕上げ組成物又はその乾燥誘導体において、組成物のフィルム形成特性、レベリング特性、化学的又は物理的(例えば機械的)安定性、硬化又は乾燥時の化学的反応性、成分間の適合性、粘度、色、耐久性、硬度、仕上げ(例えば、高光沢又はマット仕上げ)、又は別の機械的又は美的特性などの、所望の物理的特性又は効果を生み出すものである。所望の効果を達成するのに有用な添加成分の例には、追加のポリマー、界面活性剤、顔料、レベリング剤(特にフルオロ界面活性剤)、安定剤、消泡剤又は脱泡剤、ワックス、可塑剤、合着剤、希釈剤、抗菌剤、又は他の防腐剤などが含まれる。
【0082】
そのような組成物及びこれらの製造の例示的な記載は、米国特許第3,328,325号、3,467,610号、3,554,790号、3,573,329号、3,711,436号、3,808,036号、4,150,005号、4,517,330号、5,149,745号、5,319,018号、5,574,090号、5,676,741号、及び6,228,913号、並びにこれらを引用するその後の特許文書中に見出すことができる。床ケア組成物の例は、次の「実施例」セクションに記載されている。
【0083】
このような床ケア組成物の不揮発性固形分は、約20%、約18%、約15%、又はわずか約5%であり得、そして最大約25%、約30%、約35%、又は約40%ですらあり得る。(下限と上限の組み合わせから生じるさまざまな範囲が想定される。)
【0084】
床ケア組成物を使用して、木材、木製材料、合成樹脂、コンクリート、大理石、石などで作られた床にコーティングを提供することができる。
【0085】
床ケア組成物を使用する場合、床ケア組成物を床基材に塗布し、コーティングを空気中で又は加熱して乾燥することにより、床をコーティングし、こうして保護することができる。床ケア組成物の塗布は、布地コーティング、ブラシ噴霧、ブラッシングなどによって、有利には室温又はほぼ室温で行うことができる。そのようなコーティングされた床は、有利な耐水性、耐引っかき性、所望の程度の光沢(例えば、半光沢からつや消し仕上げまで)、及び光沢の保持を示すことができる。追加的に又は任意選択的に、コーティングされた床は黄変を示さない
【0086】
床ケア組成物を使用して、コーティング(すなわち、フィルム)厚さが最大約70μm、通常約5~約50μm、典型的には約10~約30μmであるコーティングされた床を調製することができる。フィルム厚は、複数回の塗布でより厚くできる。
【0087】
床ケア組成物などのポリマー仕上げ組成物の特定の実施態様は、配合時に測定された場合、及び配合直後、又は配合の数時間後若しくは数日後、例えば配合の10日後に測定された場合、有用な又は有利に低い粘度を示し得る。床ケア組成物の粘度は、その構成成分からポリマー仕上げ組成物を形成(例えば「配合」)した後に増加する傾向がある。有利には、本明細書に記載の床ケア組成物の実施態様は、この粘度上昇量の低下を示すことができ、好適な測定値は、約60cP未満、しばしば約50cP未満である。
【0088】
本発明の前述の組成物から提供されるコーティングは、低い曇り値によって特徴付けることができる。代替的に又は追加的に、床ケアコーティングは、テラゾ、花崗岩、大理石、及びセラミックタイルを含む特定の基材への良好な接着によって特徴付けることができる。
【0089】
重要なことに、今説明したタイプのコーティングは、イソプロパノールなどのアルコール、特にエタノール(エタノールを含む手指消毒液及びゲルを含む)による損傷に対する耐性を示し得る。このような耐性は、蒸発するまで液体をコーティング上に残した後、又はアルコール含有ゲルの場合は、15分、30分、又は60分の滞留時間後に、目視検査を実行することによって測定することができる。
【0090】
有利なことに、このアルコールに対する耐性は、容易な除去可能性を犠牲にして得られるものではない。いわゆる1Kタイプのシステムとして、コーティングは、pH値がいくらか低い場合でも、典型的な苛性ストリッピング溶液で除去することができる。
【0091】
さらに、前述の両方共は、かかとのマーク及び摩耗に対する耐性に悪影響を与えることなく達成される。
【0092】
本発明の様々な実施態様が提供されてきたが、これらは例示として提示されており、限定的ではない。以下の特許請求の範囲及びこれらの同等物は、本発明の方法及び組成物の幅及び範囲を定義し、これは、前述の例示的な実施態様のいずれによっても、又はそれらに対して限定されるべきではない。
【0093】
以下の非限定的な例示的な例は、本発明の実施に有用であり得る詳細な条件及び材料を提供する。
【実施例
【0094】
温度プローブ、冷却器、モノマー注入口、開始剤注入口、N供給源、及びピッチドタービンブレード(250~350rpmに設定)を備えた2L丸底フラスコに、以下の表3に示す材料を加えた。フラスコを目標内部温度85℃に加熱し、周囲空気をNでフラッシュした。
【0095】
内部温度が設定温度に達したときに、一次開始剤成分(表4)を添加した。約5分後、目標温度を維持しながら、約5.8g/分のポンプ速度で約120分かけて、第1相のモノマー(表5)を加えた。
【0096】
約15分の遅延後、第2相のモノマー(表6)を、内部温度を80℃~85℃に維持しながら、約2.3g/分のポンプ速度で約120分かけて加えた。同時に、二次開始剤成分(表4)を75分間かけて加えた。
【0097】
第2相のモノマー全体を加えた後、反応器の内容物を約1時間撹拌し、その後、反応器の内容物を約60℃に冷却してから、表7でREDOX#1として示した混合物の半分を加えた。約5分後、表5でREDOX#2として示した混合物の半分を加えた。反応器の内容物を約30分間撹拌した。
【0098】
REDOX#1混合物の残りの半分を加え、約5分後、REDOX#2混合物の残りの半分を加えた。反応器の内容物を約30分間撹拌した。
【0099】
反応器の内容物を約40℃まで冷却した後、62.75gのZACを直接加えた。反応器の内容物を少なくとも15分間混合した後、等量のBenzoflex(商標)2088可塑剤(Eastman Chemical Co.; Kingsport, Tennessee)とCoatOSil(商標)2287エポキシシランの予備混合した組み合わせ28.4gを加え、次に、反応器の内容物を約30分間撹拌した。
【0100】
反応器の内容物を325メッシュスクリーン(0.044mmの開口部)を通して濾過して、約762.5g(38.1%の固形分)の固形分を回収した。
【0101】
ポリマー粒子生成物の特性を表8に要約する。ブルックフィールド(Brookfield)粘度値は、室温で20rpmでRV-2スピンドルを使用して得られた。
【0102】
以下の表において、Calsoft(商標)L-40線状アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム界面活性剤はPilot Chemical Co (Cincinnatics, Ohio) から入手できる。Disponil A 1080エトキシル化線状脂肪アルコールはBASF (Ludwigshafen, Germany) から入手できる。Bruggolite(商標)FF6M有機スルフィン酸誘導体のナトリウム塩は、L. Briiggemann GmbH & Co. KG (Heilbronn, Germany) から入手できる。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0103】
モノマー供給量に基づいて、使用される各モノマーから得られるポリマー粒子の重量パーセントは以下の通りである:
アクリル酸ブチル - 30
メタクリル酸メチル - 22
メタクリル酸 - 8
アクリロニトリル - 10
スチレン - 30

100%の変換を仮定すると、これは、8pphのカルボキシル基含有量体を有する得られるポリマー粒子を提供する。
【0104】
乳化重合組成物は、床ケア組成物に含めることによって検証された。
【0105】
床ケア組成物に使用された材料、及びそれらが添加された方法を以下の表9に示す。その表において、Silfoam(商標)SE21消泡剤は Wacker Chemical Corp. (Adrian, Michigan) から入手でき、Acticide(商標)MBS殺生物剤は Thor Specialties Inc. (Shelton, Connecticut) から入手でき、Capstone(商標)FS-61フルオロ界面活性剤(1%活性)は The Chemours Company FC, LLC (Wilmington, Delaware) から入手でき、Mor-Flo(商標)WE30 HDPEエマルジョン及びMor-Flo(商標)WE40コポリマーワックスエマルジョンは、OMNOVA Solutions Inc. (Beachwood, Ohio) から入手できる。上記の乳化重合の生成物は、「XLエマルジョン」として特定される。
【0106】
この床ケア組成物の特性を表10に要約する。ブルックフィールド粘度は、室温(約21℃)で50rpmでRV-1スピンドルを使用して得られた。
【表8】
【表9】
【0107】
性能試験のために、この床ケア組成物は、平らなマイクロファイバー床材塗布器を使用して、既知の面積の試験床に2mL/ft(21.5mL/m)で塗布した。この量は、1500~2000ft(約140~約186m)あたり1ガロン(約3.8L)を使用して、0.20~0.25ミル(5~6.5μm)のコーティング厚さを提供する必要がある量に近い。
【0108】
合計5回の塗布が連続して行われ、こうして合計コーティング厚は1~1.25ミル(約25~約32μm)となった。
【0109】
得られた床ケアコーティングは、許容できる靴の傷/擦り傷に対する耐性、引っかき傷及び摩耗に対する耐性、洗剤(第四級アンモニウムタイプ)に対する耐性、及び修復可能性、良好な初期光沢、及び非常に良好な耐土壌性を備えていた。いくつかの市販の床ケア組成物から生じるコーティングと比較して、対象の床ケア組成物は、競争力のあるコーティングを提供した。
【0110】
しかし、対象の床ケア組成物が優れていたのは、アルコール耐性(目視検査と比色計で測定)と除去のしやすさのバランスであった。他の1Kシステムと比較した場合、対象の床ケア組成物は、競争力のあるレベルの除去可能性を備えるが、はるかに高いアルコール耐性を備えたコーティングを提供した。
逆に、2Kシステムと比較した場合、対象の床ケア組成物は、競争力のあるレベルのアルコール耐性を備えるが、はるかに高いレベルの除去可能性を備えたコーティングを提供した。
【国際調査報告】