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特表2022-540049トリプタンマイクロポレーション送達システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】トリプタンマイクロポレーション送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4045 20060101AFI20220907BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 31/4196 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 31/422 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 47/16 20060101ALI20220907BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20220907BHJP
   C07D 209/16 20060101ALN20220907BHJP
   C07D 403/08 20060101ALN20220907BHJP
   C07D 405/08 20060101ALN20220907BHJP
【FI】
A61K31/4045
A61K9/70 401
A61K31/4196
A61K31/422
A61K47/22
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/40
A61K47/18
A61K47/16
A61P25/06
C07D209/16
C07D403/08
C07D405/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577608
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(85)【翻訳文提出日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 US2020039427
(87)【国際公開番号】W WO2020264026
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】62/868,697
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519337536
【氏名又は名称】パスポート テクノロジーズ、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PassPort Technologies, Inc.
【住所又は居所原語表記】5580 Morehouse Drive,Suite 120,San Diego,California 92121,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】安達 博敏
(72)【発明者】
【氏名】ショウヘイ ホリエ
(72)【発明者】
【氏名】アキノリ ハナタニ
(72)【発明者】
【氏名】西村 真人
(72)【発明者】
【氏名】ユウキ ヤマダ
(72)【発明者】
【氏名】ジョー フゥア
【テーマコード(参考)】
4C063
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB03
4C063CC41
4C063CC52
4C063DD06
4C063EE01
4C076AA72
4C076AA74
4C076AA77
4C076AA81
4C076BB31
4C076CC01
4C076DD37R
4C076DD41R
4C076DD41W
4C076DD42W
4C076DD43W
4C076DD48R
4C076DD49R
4C076DD59W
4C076DD67Q
4C076EE39Q
4C076FF34
4C076FF36
4C076FF56
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC13
4C086BC60
4C086BC69
4C086GA07
4C086GA09
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA32
4C086MA63
4C086NA03
4C086NA08
4C086NA11
4C086NA13
4C086NA20
4C086ZA08
(57)【要約】
対象の組織膜にトリプタンを送達するための経皮送達システム。このシステムは、皮膚表面を加熱するための経皮マイクロポレーション装置とトリプタン薬物送達パッチとを備える。薬物送達パッチは、接着剤を含む最上層と、トリプタンを含む中間層と、最下層とを含む。対象を治療するための方法は、片頭痛を有する対象を特定することと、経皮マイクロポレーション装置を使用して対象の皮膚に複数の微細孔を開けることと、対象の片頭痛を治療するのに有効な量でトリプタンを微細孔を通じて送達するのに有効な一定期間にわたって微細孔上で対象の皮膚にトリプタン薬物送達パッチを適用することとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリプタン薬を、それを必要としている対象に送達するためのパッチであって、
接着剤を含む最上層と、
トリプタンを含む中間層と、
剥離ライナーを含む最下層と
を含む、パッチ。
【請求項2】
前記中間層が皮膚刺激低減剤をさらに含む、請求項1記載のパッチ。
【請求項3】
前記中間層が、約0.01g/cm~約0.5g/cmの範囲の量の安定剤をさらに含む、請求項1または2記載のパッチ。
【請求項4】
前記トリプタンおよび皮膚刺激低減剤の量のモル比が、約1:0.5~約1:2の範囲にある、請求項2または3記載のパッチ。
【請求項5】
前記トリプタンが、スマトリプタン、リザトリプタン、またはゾルミトリプタンから選択される、請求項1から4までのいずれか1項記載のパッチ。
【請求項6】
前記皮膚刺激低減剤が、有機酸またはその塩である、請求項1から5までのいずれか1項記載のパッチ。
【請求項7】
前記有機酸が、アスコルビン酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、マレイン酸、乳酸、安息香酸、およびソルビン酸、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項6記載のパッチ。
【請求項8】
前記安定剤が糖類である、請求項3から7までのいずれか1項記載のパッチ。
【請求項9】
前記糖類が、マンニトール、マルトース、トレハロース、キシリトール、キシロース、デキストロース、ラクトース、ソルビトール、スクロース、フルクトース、マルチトール、エリトリトール、ラクチトール、イソマルト、およびシクロデキストリン、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項8記載のパッチ。
【請求項10】
前記中間層が、トリプタンを含むように構成されたリザーバをさらに含む、請求項1から9までのいずれか1項記載のパッチ。
【請求項11】
前記リザーバがマトリックスを含む、請求項10記載のパッチ。
【請求項12】
前記マトリックスが、約0.1mg/cm~約10mg/cmの範囲の保水能力を有する、請求項11記載のパッチ。
【請求項13】
前記マトリックスが不織布を含む、請求項11または12記載のパッチ。
【請求項14】
前記マトリックスが、約10μm~約100μmの範囲の厚さを有する、請求項11から13までのいずれか1項記載のパッチ。
【請求項15】
前記マトリックスの面積重量が、約10g/m~約100g/mの範囲にある、請求項11から14までのいずれか1項記載のパッチ。
【請求項16】
前記マトリックスのサイズが、約0.25cm~約5cmの範囲にある、請求項11から15までのいずれか1項記載のパッチ。
【請求項17】
抗菌剤をさらに含む、請求項1から16までのいずれか1項記載のパッチ。
【請求項18】
前記抗菌剤が、安息香酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン、クレゾール、サリチル酸、ソルビン酸、および塩化ベンゼトニウム、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つから選択される、請求項17記載のパッチ。
【請求項19】
前記皮膚刺激低減剤が、非有機酸またはその塩である、請求項2から18までのいずれか1項記載のパッチ。
【請求項20】
前記非有機酸が、塩酸、リン酸、ホウ酸、および酢酸から選択される、請求項19記載のパッチ。
【請求項21】
前記マトリックスが、約0.1~約5.0mg/cmのゾルミトリプタンを含む、請求項11から20までのいずれか1項記載のパッチ。
【請求項22】
前記マトリックスが、約0.5~3.0mg/cmのゾルミトリプタンを含む、請求項11から21までのいずれか1項記載のパッチ。
【請求項23】
前記ゾルミトリプタンおよび前記皮膚刺激低減剤の量が、約1:0.75~約1:1.5の範囲にある、請求項4から22までのいずれか1項記載のパッチ。
【請求項24】
前記マトリックスのサイズが、約0.25cm~約4cmの範囲にある、請求項16から23までのいずれか1項記載のパッチ。
【請求項25】
前記安定剤がスクロースである、請求項8から24までのいずれか1項記載のパッチ。
【請求項26】
ゾルミトリプタンおよび前記安定剤を含む前記マトリックスの単位面積あたりの総量が、0.05~0.5mg/cmである、請求項11から25までのいずれか1項記載のパッチ。
【請求項27】
片頭痛を有する対象を特定することと、
前記対象の皮膚に複数の微細孔を開けることと、
一定期間にわたって前記微細孔上で前記対象の皮膚にパッチを適用することと
を含み、前記パッチが、
接着剤を含む最上層と、
トリプタンを含む中間層と、
剥離ライナーを含む最下層と
を含み、前記一定期間が、治療有効量の前記トリプタンを前記複数の微細孔を通じて送達するように選択される、それを必要とする対象を治療する方法。
【請求項28】
前記中間層が、皮膚刺激低減剤および安定剤をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記対象の皮膚に複数の微細孔を開けることが、前記対象の皮膚に経皮マイクロポレーション装置を適用することを含む、請求項27または28記載の方法。
【請求項30】
前記経皮マイクロポレーションが、前記対象の皮膚に配置された複数のフィラメントを有するフィラメントアレイを使用することによる熱組織切除であり、各フィラメントが、組織膜への直接の接触を介して熱エネルギーを伝導的に送達して、前記組織膜の微細孔領域に前記複数の微細孔を形成することができる、請求項27から29までのいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
前記経皮マイクロポレーションが、角質層を通って表皮に前記微細孔を形成する、請求項27から30までのいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
前記経皮マイクロポレーション装置が、約2~約5mJ/フィラメントの穿孔エネルギーを有する、請求項27から31までのいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
前記経皮マイクロポレーション装置が、フィラメント約200~約500本/cmの穿孔エネルギー密度を有する、請求項27から32までのいずれか1項記載の方法。
【請求項34】
前記経皮マイクロポレーション装置が、フィラメント約400本/cmの穿孔エネルギー密度を有する、請求項27から33までのいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
経皮マイクロポレーション穿孔エネルギーが、約4mJ/フィラメントであり、穿孔エネルギー密度が、フィラメント約400本/cmである、請求項27から34までのいずれか1項記載の方法。
【請求項36】
前記組織膜の前記微細孔領域のサイズが、約0.5~約5cmである、請求項27から35までのいずれか1項記載の方法。
【請求項37】
前記トリプタンおよび前記皮膚刺激低減剤が、約1:0.5~約1:2の範囲にある、請求項27から36までのいずれか1項記載の方法。
【請求項38】
薬物を送達するための経皮薬物送達パッチシステムであって、
皮膚表面を加熱するための経皮マイクロポレーション装置と、
トリプタン薬物送達パッチと
を含む、経皮薬物送達パッチシステム。
【請求項39】
前記トリプタン薬物送達パッチが、接着剤を含む最上層と、トリプタンを含むように構成された少なくとも1つのリザーバを有する中間層と、剥離ライナーを含む最下層とを含む、請求項38記載の経皮薬物送達パッチシステム。
【請求項40】
前記中間層が、皮膚刺激低減剤および安定剤をさらに含む、請求項38または39記載の経皮薬物送達パッチシステム。
【請求項41】
前記マイクロポレーション装置が、導電性部材を流れる電流に基づいて熱エネルギーを生成し、動作中に前記導電性部材と接触している皮膚表面に前記熱エネルギーを供給するように構成された導電性部材を含む、請求項38から40までのいずれか1項記載の経皮薬物送達パッチシステム。
【請求項42】
供給電流値の複数のパルスで導電性部材に電流を供給するように構成された電源をさらに含む、請求項38から41までのいずれか1項記載の経皮薬物送達パッチシステム。
【請求項43】
前記中間層が、皮膚刺激低減剤および安定剤をさらに含む、請求項39から42までのいずれか1項記載の経皮薬物送達システム。
【請求項44】
経皮マイクロポレーション装置が、前記対象の皮膚に複数の微細孔を開けるように構成されている、請求項38から43までのいずれか1項記載の経皮薬物送達システム。
【請求項45】
前記経皮マイクロポレーション装置が、前記対象の皮膚に配置された複数のフィラメントを有するフィラメントアレイを使用することによって熱組織切除をもたらすように構成されており、各フィラメントが、組織膜への直接の接触を介して熱エネルギーを伝導的に送達して、前記組織膜の微細孔領域に前記複数の微細孔を形成することができる、請求項38から44までのいずれか1項記載の経皮薬物送達システム。
【請求項46】
前記経皮マイクロポレーションが、角質層を通って表皮に前記微細孔を形成する、請求項44または45記載の経皮薬物送達システム。
【請求項47】
前記経皮マイクロポレーション装置が、約2~約5mJ/フィラメントの穿孔エネルギーをもたらすように構成されている、請求項38から46までのいずれか1項記載の経皮薬物送達システム。
【請求項48】
前記経皮マイクロポレーション装置が、フィラメント約200~約500本/cmの穿孔エネルギー密度をもたらすように構成されている、請求項38から47までのいずれか1項記載の経皮薬物送達システム。
【請求項49】
前記経皮マイクロポレーション装置が、フィラメント約400本/cmの穿孔エネルギー密度をもたらすように構成されている、請求項38から48までのいずれか1項記載の経皮薬物送達システム。
【請求項50】
前記経皮マイクロポレーションが、約4mJ/フィラメントの穿孔エネルギーおよびフィラメント約400本/cmの穿孔エネルギー密度をもたらすように構成されている、請求項38から49までのいずれか1項記載の経皮薬物送達システム。
【請求項51】
前記組織膜の前記微細孔領域のサイズが、約0.5~約5cmである、請求項38から50までのいずれか1項記載の経皮薬物送達システム。
【請求項52】
前記トリプタンおよび皮膚刺激低減剤が、約1:0.5~約1:2の比率にある、請求項38から51までのいずれか1項記載の経皮薬物送達システム。
【請求項53】
請求項1から26までのいずれか1項記載のパッチを対象の皮膚に適用することによって片頭痛を治療するための治療有効量のトリプタンの使用であって、前記パッチが、前記対象の皮膚に一定期間にわたって適用され、前記一定期間が、前記対象の皮膚に開けられた複数の微細孔を通じて前記治療有効量のトリプタンを送達するように選択される、使用。
【請求項54】
前記対象の皮膚に前記複数の微細孔を開けることが、前記対象の皮膚に経皮マイクロポレーション装置を適用することを含む、請求項53記載の使用。
【請求項55】
前記経皮マイクロポレーションが、前記対象の皮膚に配置された複数のフィラメントを有するフィラメントアレイを使用することによって熱組織切除をもたらすように構成されており、各フィラメントが、組織膜への直接の接触を介して熱エネルギーを伝導的に送達して、前記組織膜の微細孔領域に前記複数の微細孔を形成することができる、請求項54記載の使用。
【請求項56】
前記経皮マイクロポレーションが、角質層を通って表皮に前記微細孔を形成する、請求項54または55記載の使用。
【請求項57】
前記経皮マイクロポレーション装置が、約2~約5mJ/フィラメントの穿孔エネルギーをもたらす、請求項54から56までのいずれか1項記載の使用。
【請求項58】
前記経皮マイクロポレーション装置が、フィラメント約200~約500本/cmの穿孔エネルギー密度をもたらす、請求項55から57までのいずれか1項記載の使用。
【請求項59】
前記経皮マイクロポレーション装置が、フィラメント約400本/cmの穿孔エネルギー密度をもたらす、請求項55から58までのいずれか1項記載の使用。
【請求項60】
前記経皮マイクロポレーション穿孔エネルギーが、約4mJ/フィラメントであり、穿孔エネルギー密度が、フィラメント約400本/cmである、請求項55から59までのいずれか1項記載の使用。
【請求項61】
前記組織膜の前記微細孔領域のサイズが、約0.5~約5cmである、請求項55から60までのいずれか1項記載の使用。
【請求項62】
前記トリプタンおよび前記皮膚刺激低減剤が、約1:0.5~約1:2の比率にある、請求項55から61までのいずれか1項記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本出願は、経皮薬物送達のための組成物、デバイス、および方法、特に、経皮マイクロポレーションデバイスによってトリプタンを対象に投与するためのトリプタン組成物および方法に関する。
【0002】
説明
片頭痛は、世界中の成人人口の約10%に影響を与える症状であり、これは約6億人にもなり、米国だけで約2800万人にのぼる。女性は、男性より3倍多く片頭痛を患っている。片頭痛は、血管の炎症および拡張に関連しており、身体活動とともに悪化する重度の片側の疼痛を引き起こす。片頭痛の患者の約5分の1は、光の斑点、ジグザグ線、または視界のグレイアウトなどの感覚または視覚症状を体験する。片頭痛は、典型的には、最大24時間続くが、4~72時間の範囲である場合もあり、患者は、片頭痛発作を月に2回経験することが多い。
【0003】
片頭痛は、生命ストレス要因、特定の食物または食習慣、概日リズム、スケジュールまたは睡眠パターンの変化、気圧または高度などの天候の変化、ならびに月経周期中のホルモンレベルの周期的変動を含む多くの異なる要因によって引き起こされ得る。薬理学的介入は、片頭痛の治療の中心をなし、急性治療(頓挫)および防止(予防)の両方に利用可能である。
【0004】
トリプタンは、中等度から重度の強度の急性片頭痛を治療するために使用され得るセロトニン受容体アゴニストである。これらの薬剤が発作の初期段階で使用されると、トリプタンは2時間以内に片頭痛の80%超を頓挫する。しかしながら、いくつかの異なるトリプタン製品が利用可能であり、このクラスの様々な薬の有効性および忍容性にばらつきがある。トリプタンはまた、様々な剤形で利用可能である。非経口製剤は、典型的には、悪心または嘔吐の胃腸症状のある患者のために、および作用のより迅速な開始が望まれる場合に使用される。トリプタンは、三叉神経血管神経終末のセロトニン(5-HT)受容体を活性化し、疼痛を伴う頭蓋血管拡張を引き起こす神経伝達物質の放出を阻害することによって機能すると考えられている。さらに、トリプタンは、活発な血管収縮を引き起こし、それから、頭蓋血管の5-HT受容体を刺激することによって片頭痛の症状を緩和し得る。トリプタンを含有する経口錠剤は、一般的に、効果が不十分であり、十分な即効性が欠けている。皮下注射は、より高い有効性および即効性を示すが、重度の副作用を引き起こす場合がある。経口および経鼻経路は、不所望な味覚の問題を引き起こすことが多く、悪心および嘔吐性の片頭痛患者にとって困難な投与である。
【0005】
受動的経皮薬物送達は、様々な治療薬を投与するのに便利かつ効果的な方法である。この投与経路は、非侵襲的であり、同時に長期間にわたって安定した薬物送達をもたらす。従来の経皮システム(薬物パッチなど)は、皮膚を介して薬物を送達することの利点を示しているが、これらは、非常に限られた数の薬物の場合にのみ機能する。これは、何百万もの死んだ皮膚細胞が皮膚の表面に保護バリア(角質層)を形成し、この保護バリアによって、大部分の治療用分子が皮膚に入ることが防止されるからである。
【0006】
角質層は、主に皮膚のバリア特性に関与している。したがって、体内に入る薬物または他の分子の経皮流束、および体から出る分析物の経皮流束に対する最大のバリアを示すのが、この層である。皮膚の外側の角層である角質層は、脂質ドメインによって分離された緻密な角質化細胞残存物の複雑な構造である。口腔粘膜または胃粘膜と比較して、角質層は、身体の外部または内部のいずれかの分子に対して透過性がはるかに低い。角質層は、ケラチノサイトから形成され、このケラチノサイトは、それらの核を失って角質細胞になる表皮細胞の大部分を占める。これらの死んだ細胞は、角質層をなし、この角質層は、わずか約10~30ミクロンの厚さであり、身体を外部の物質による侵入ならびに内部の流体および溶解した分子の外向きの移動から保護する。角質層は、落屑(desquamination)中に角質細胞を落とし、角質化プロセスで新しい角質細胞を形成することによって連続的に再生される。
【0007】
歴史的には、大部分の薬物は、経口的にまたは注射によって送達されてきた。しかしながら、経口経路も注射経路も、長期間にわたる薬物の継続的な送達に十分には適していない。さらに、注射投与方法は、不便かつ不快であり、さらに、針は、それらの使用後も危険をもたらし続ける。したがって、身体への経皮薬物送達は、限られた数の透過物を生物に送達するのに一般的かつ効果的な方法である。
【0008】
受動的経皮パッチは、典型的には、500ダルトン未満の分子量を有する脂溶性薬物に限定されている。経皮薬物送達を増強するために、薬物に対する皮膚の透過性を増加させるための既知の方法がある。例えば、米国特許第8,116,860号明細書には、疼痛を伴わずに数ミリ秒以内に角質層に水性微細孔を形成する経皮透過物送達システムおよび方法が記載されている。これらの水性チャネルは、水溶性薬物が経皮パッチから流れ、生存能力のある表皮に入り、次いで体循環することを可能にする。パッチは、ボーラスまたは持続的な経皮送達を実現するように配合され得る。
【0009】
経皮透過物送達システムは、PASSPORTの商標名で開発されている。PASSPORTシステムは、再利用可能なハンドヘルドアプリケータと薬物パッチ付きの使い捨てポレータとを備える。アプリケータの起動ボタンを押すと、エネルギーパルスがポレータに放出される。このエネルギーが皮膚の表面に急速に伝導されると、各フィラメントの下の角質層が疼痛を伴わずに切除され、マイクロチャネルが形成される。次いで、単純な経皮パッチが、切除された皮膚に適用され、薬物送達が開始する。
【0010】
トリプタンの経皮送達のためのイオントフォレーシスシステムは、2013年に米国食品医薬品局(FDA)によって承認された。ZECUITYの商標名で販売されているこのシステムは、バッテリー駆動のイオントフォレーシスパッチを使用してスマトリプタンを送達した。しかしながら、このシステムは、2016年に、ZECUITYで治療された患者において「火傷」および/または「瘢痕」があったと記載された適用部位反応の市販後報告をメーカーが受け取った後に、市場から撤退した。これらの反応の説明には、パッチが着用された場所における、重度の発赤、皮膚のひび割れ、水疱または膨疹、および火傷または瘢痕が含まれていた。患者は、重度の疼痛、かゆみ、または灼熱感を述べていた。多くの症例が数時間から数週間以内に解決したが、数ヶ月後に、未解決の皮膚反応、典型的には皮膚の変色を伴う症例の報告があった。
【0011】
したがって、トリプタンの経皮送達のための改善された組成物、デバイス、および方法についての長年にわたる必要性がなおもある。
【0012】
発明の概要
いくつかの態様では、トリプタン薬を、それを必要とする対象に送達するためのパッチが本明細書に記載されている。このパッチは、接着剤を含む最上層と、トリプタンを含む中間層と、剥離ライナーを含む最下層とを含み得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、中間層は皮膚刺激低減剤をさらに含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、中間層は、約0.01g/cm~約0.5g/cmの範囲の量の安定剤をさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、トリプタンおよび皮膚刺激低減剤の量のモル比は、約1:0.5~約1:2の範囲にある。
【0016】
いくつかの実施形態では、トリプタンは、スマトリプタン、リザトリプタン、またはゾルミトリプタンから選択される。
【0017】
いくつかの実施形態では、皮膚刺激低減剤は、有機酸またはその塩である。
【0018】
いくつかの実施形態では、有機酸は、アスコルビン酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、マレイン酸、乳酸、安息香酸、およびソルビン酸、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0019】
いくつかの実施形態では、安定剤は糖類である。
【0020】
いくつかの実施形態では、糖類は、マンニトール、マルトース、トレハロース、キシリトール、キシロース、デキストロース、ラクトース、ソルビトール、スクロース、フルクトース、マルチトール、エリトリトール、ラクチトール、イソマルト、およびシクロデキストリン、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0021】
いくつかの実施形態では、中間層は、トリプタンを含むように構成されたリザーバをさらに含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、リザーバはマトリックスを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、マトリックスは、約0.1mg/cm~約10mg/cmの範囲の保水能力を有する。
【0024】
いくつかの実施形態では、マトリックスは不織布を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、マトリックスは、約10μm~約100μmの範囲の厚さを有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、マトリックスの面積重量は、約10g/m~約100g/mの範囲にある。
【0027】
いくつかの実施形態では、マトリックスのサイズは、約0.25cm~約5cmの範囲にある。
【0028】
いくつかの実施形態では、パッチは抗菌剤をさらに含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、抗菌剤は、安息香酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン、クレゾール、サリチル酸、ソルビン酸、および塩化ベンゼトニウム、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つから選択される。
【0030】
いくつかの実施形態では、皮膚刺激低減剤は、非有機酸またはその塩である。
【0031】
いくつかの実施形態では、非有機酸は、塩酸、リン酸、ホウ酸、および酢酸から選択される。
【0032】
いくつかの実施形態では、マトリックスは、約0.1~約5.0mg/cmのゾルミトリプタンを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、ゾルミトリプタンおよび皮膚刺激低減剤の量は、約1:0.75~約1:1.15の範囲にある。
【0034】
いくつかの実施形態では、マトリックスのサイズは、約0.25cm~約4cmの範囲にある。
【0035】
いくつかの実施形態では、安定剤はスクロースである。
【0036】
いくつかの実施形態では、ゾルミトリプタンおよび安定剤を含むマトリックスの単位面積あたりの総量は、0.05~0.5mg/cmである。
【0037】
いくつかの態様では、それを必要とする対象を治療する方法が本明細書に記載されている。この方法は、片頭痛を有する対象を特定することと、対象の皮膚に複数の微細孔を開けることと、一定期間にわたって微細孔上で対象の皮膚にパッチを適用することとを含み得て、パッチは、接着剤を含む最上層と、トリプタンを含む中間層と、剥離ライナーを含む最下層とを含み、一定期間は、複数の微細孔を通じて治療有効量のトリプタンを送達するように選択される。
【0038】
いくつかの実施形態では、中間層は、皮膚刺激低減剤および安定剤をさらに含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、対象の皮膚に複数の微細孔を開けることは、対象の皮膚に経皮マイクロポレーション装置を適用することを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、経皮マイクロポレーションは熱組織切除である。
【0041】
いくつかの実施形態では、経皮マイクロポレーションは、角質層を通って表皮に微細孔を形成する。
【0042】
いくつかの実施形態では、経皮マイクロポレーション装置は、約2~約5mJ/フィラメントの穿孔エネルギーを有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、経皮マイクロポレーション装置は、フィラメント約200~約500本/cmの穿孔エネルギー密度を有する。
【0044】
いくつかの実施形態では、経皮マイクロポレーション装置は、フィラメント約400本/cmの穿孔エネルギー密度を有する。
【0045】
いくつかの実施形態では、経皮マイクロポレーション穿孔エネルギーは、約4mJ/フィラメントであり、穿孔エネルギー密度は、フィラメント約400本/cmである。
【0046】
いくつかの実施形態では、経皮マイクロポレーションフィラメントアレイのサイズは、約0.5~約5cmである。
【0047】
いくつかの実施形態では、トリプタンおよび皮膚刺激低減剤は、約1:0.5~約1:2の範囲にある。
【0048】
いくつかの態様では、薬物を送達するための経皮薬物送達パッチシステムが本明細書に記載されている。経皮薬物送達パッチシステムは、皮膚表面を加熱するための経皮マイクロポレーション装置とトリプタン薬物送達パッチとを備える。
【0049】
いくつかの実施形態では、トリプタン薬物送達パッチシステムは、接着剤を含む最上層と、トリプタンを含むように構成された少なくとも1つのリザーバを有する中間層と、剥離ライナーを含む最下層とを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、中間層は、皮膚刺激低減剤および安定剤をさらに含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、マイクロポレーション装置は、伝導性部材を流れる電流に基づいて熱エネルギーを生成し、動作中に伝導性部材と接触している皮膚表面に熱エネルギーを供給するように構成された、伝導性部材を備える。
【0052】
いくつかの実施形態では、経皮薬物送達パッチシステムは、供給電流値の複数のパルスで伝導性部材に電流を供給するように構成された電源をさらに備える。
【0053】
これらおよび他の実施形態は、以下により詳細に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本明細書に組み込まれてその一部を構成する添付の図面は、以下に記載されているいくつかの態様を示しており、明細書とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。類似した数字は、図全体で同じ要素を表す。
図1】無毛ラットにおける投与経路の比較研究の結果を示す。
図2】モルモットにおける投与経路の比較研究の結果を示す。
図3】ヒトおよび無毛モルモットのデータの比較を示す。
図4】異なるフィラメント密度についての薬物動態(PK)プロファイルを示す。
図5】異なるフィラメント密度についてのPKプロファイルを示す。
図6】フィラメント密度とPK結果との間の関係を示す。
図7】異なるフィラメント密度についての皮膚刺激の結果を示す。
図8】異なるフィラメント密度についての皮膚刺激の結果を示す。
図9】フィラメント密度と副作用との間の関係を示す。
図10】異なる穿孔エネルギーについてのPKプロファイルを示す。
図11】穿孔エネルギーとPK結果との間の関係を示す。
図12】異なる穿孔エネルギーについての皮膚刺激の結果を示す。
図13】穿孔エネルギーと副作用との間の関係を示す。
図14】異なるフィラメントアレイサイズについてのPKプロファイルを示す。
図15】異なるフィラメントアレイサイズについての用量応答を示す。
図16】異なるフィラメントアレイサイズについての皮膚刺激の結果を示す。
図17】用量と副作用との間の関係を示す。
図18】皮下注射経路を経皮マイクロポレーションシステムと比較した結果を示す。
【0055】
詳細な説明
本発明は、以下の詳細な説明、実施例、図面、および特許請求の範囲、ならびにそれらの前および後の説明を参照することによって、より容易に理解することができる。しかしながら、本デバイス、システム、および/または方法が開示および記載される前に、本発明は、特に記載のない限り、開示されている特定のデバイス、システム、および/または方法に限定されることはないと理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明することのみを目的としており、必ずしも限定することを意図していないことも理解されたい。
【0056】
この明細書は、本発明の教示を可能にするものとして設けられている。この目的のために、関連技術の当業者であれば、有益な結果を得ながら、本明細書に記載されている本発明の様々な態様に多くの変更を加えることができると認識および理解するであろう。また、所望の利益のうちのいくつかを、他の特徴を利用することなく本明細書に記載のいくつかの特徴を選択することによって得ることができることも明らかとなるであろう。よって、当技術分野に従事する者であれば、本明細書に対する多くの修正および適合が可能であり、かつ特定の状況では望ましい場合さえあり、また本発明の一部であると認識するであろう。したがって、この明細書は、本発明の特定の原理を例示するものとして設けられるのであって、これを限定するものではない。
【0057】
定義
全体を通して使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈から明らかにそうでないと示されない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば、「フィラメント」への言及は、文脈からそうでないと示されない限り、2つ以上のそのようなフィラメントを含み得る。
【0058】
本明細書では、範囲は、「約」のある特定の値から、および/または「約」の別の特定の値までとして表され得る。そのような範囲が表される場合、別の態様は、ある特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、直前に「約」を使用することによって値が近似値として表される場合、特定の値が別の態様をなすと理解されるであろう。さらに、各範囲の終点は、他の終点との関連で、また他の終点とは独立的に、有意であると理解される。
【0059】
本明細書で使用される場合、「任意選択的な」または「任意選択的に」という用語は、その後に記載される事象または状況が起こっても起こらなくてもよいこと、およびこの記載が、該事象または状況が起こる場合と、それが起こらない場合とを含むことを意味する。
【0060】
本明細書で使用される場合、「角質層」とは、乾燥の様々な段階にある約15~約20層の細胞からなる、皮膚の最外層を指す。角質層は、身体内部から外部環境への水分の損失、および外部環境から身体内部への攻撃に対するバリアを形成する。
【0061】
本明細書で使用される場合、「組織」とは、それらの細胞間物質と一緒になった、構造材料を形成する特定の種類の細胞の集合体を指す。組織の少なくとも1つの表面がデバイスに到達可能である必要がある。好ましい組織は皮膚である。本発明での使用に適した他の組織としては、粘膜組織および軟器官が挙げられる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「間質液」という用語は、体内の細胞間の空間を占める透明な流体である。本明細書で使用される場合、「生物学的流体」という用語は、血清または全血ならびに間質液を含む、生物に由来する流体として定義される。
【0063】
本明細書で使用される場合、「組織膜」とは、対象の任意の1つ以上の表皮層であり得る。例えば、一態様では、組織膜は、皮膚の最外層、すなわち角質層を含む皮膚層である。代替的な態様では、皮膚層は、一般的に顆粒層、マルピギー層、および基底層として識別される、表皮の1つ以上のバッキング層を含み得る。当業者であれば、表皮のバッキング層を通じた透過物の輸送または吸収に対する抵抗が本質的にほとんどまたは全くないと理解するであろう。したがって、一態様では、対象の皮膚層における少なくとも1つの形成された経路が、対象の角質層における経路である。さらに、本明細書で使用される場合、「角質層」とは、典型的には、乾燥の様々な段階にある約15~約20層の細胞を含む、皮膚の最外層を指す。角質層は、身体内部から外部環境への水分の損失、および外部環境から身体内部への攻撃に対するバリアを形成する。さらに、本明細書で使用される場合、「組織膜」とは、それらの細胞間物質と一緒になった、構造材料を形成する特定の種類の細胞の集合体を指し得る。様々な実施形態で、組織膜の少なくとも1つの表面は、本明細書に記載されている1つ以上の穿孔デバイスおよび/または透過性組成物に到達可能である。上記のように、好ましい組織膜は皮膚である。そのようなデバイスおよび組成物との使用に適した他の組織としては、粘膜組織および軟器官が挙げられる。
【0064】
本明細書で使用される場合、「皮下流体」という用語は、水分、血漿、血液、1つ以上のタンパク質、間質液、およびそれらの任意の組み合わせを含み得るが、これらに限定されることはない。一態様では、この明細書による皮下流体は、水を含む水分源である。
【0065】
本明細書で使用される場合、「穿孔」、「マイクロポレーション」、または任意のそのような類似した用語は、少なくとも1つの透過物が選択された目的のために生体膜の一方の側からもう一方の側に通過するためにこの生体膜のバリア特性を低下させるべく、皮膚もしくは粘膜などの組織もしくは生体膜または生物の外層中のまたはこれを通じた小さな穴または隙間(以下、「微細孔」とも呼ばれる)を形成することを意味する。好ましくは、そのように形成された穴または「微細孔」は、直径が約1~1000ミクロンであり、下にある組織に悪影響を与えることなく角質層のバリア特性を崩すのに十分に生体膜内に広がっている。「微細孔」という用語は、簡素化のために単数形で使用されているが、本明細書に記載されているマイクロポレーションデバイスは、複数の人工的な開口部を形成し得ると理解されたい。穿孔によって、選択された目的のために、または特定の医学的もしくは外科的手順のために、身体への生体膜のバリア特性を低下させることができるであろう。本出願では、「穿孔」および「マイクロポレーション」は、互換的に使用され、同じことを意味する。
【0066】
「マイクロポレータ」または「ポレータ」とは、マイクロポレーションが可能なマイクロポレーションデバイスのための構成要素である。マイクロポレータまたはポレータの例としては、生体膜への直接の接触を介して熱エネルギーを伝導的に送達して、微細孔を形成するのに十分な深さの膜の一部の切除を引き起こすことができるフィラメント、光学的に加熱された局所的色素/吸収体層、電気機械的アクチュエータ、マイクロランセット、マイクロニードルまたはランセットのアレイ、音響エネルギーアブレータ、レーザーアブレーションシステム、高圧流体ジェット穿刺器などが挙げられるが、これらに限定されることはない。本明細書で使用される場合、「マイクロポレータ」および「ポレータ」は、互換的に使用される。
【0067】
本明細書で使用される場合、「浸透」とは、火工品要素が爆発するときに放出される熱および運動エネルギーによって引き起こされる細胞の制御された除去を意味し、それによって、生体膜の細胞およびおそらくいくつかの隣接する細胞が部位から「吹き飛ばされる」。本明細書で使用される場合、「可融性」および「ヒューズ」とは、十分な量のエネルギーまたは熱が加えられたときに電気回路からそれ自体を取り除くことができる要素を指し、すなわち、抵抗性の電気的に活性化された穿孔要素が可融性要素であるように設計されている場合、これは、活性化時、生体膜における微細孔の形成中、またはその形成後に、要素が破壊して、これを通る電流の流れを停止することを意味する。
【0068】
本明細書で使用される場合、「浸透増強」または「透過増強」とは、薬物、生物活性組成物、または他の化学分子、化合物もしくは粒子が生体膜に透過する速度を増加させるために、薬物、生物活性組成物、または他の化学分子、化合物、粒子もしくは物質(「透過物」とも呼ばれる)に対する生体膜の透過性を増加させることを意味する。
【0069】
本明細書で使用される場合、「増強剤」、「化学的増強剤」、「浸透増強剤」、「透過増強剤」などは、生体膜を横切る透過物、分析物、または他の分子の流束を増加させるすべての増強剤を含み、機能によってのみ限定されている。言い換えるなら、すべての細胞エンベロープの無秩序化合物および溶媒、ならびに他の化学的増強剤を含むことが意図されている。さらに、音響エネルギー、機械的吸引、圧力、または組織の局所変形、イオントフォレーシス、またはエレクトロポレーションの適用などのすべての活性力増強剤技術が含まれる。1つ以上の増強剤技術を、順次または同時に組み合わせてもよい。例えば、化学増強剤を最初に適用して、毛細管壁を透過性にすることができ、次いで、イオントフォレーシスまたは音響エネルギー場を適用して、毛細管床を取り囲んでこれを含む組織に透過物を活発に推進させることができる。
【0070】
本明細書で使用される場合、「経皮的(transdermal)」または「経皮的(percutaneous)」とは、透過物の有効治療血中レベルまたは局所組織レベルを達成するために透過物が生体膜に入ってこれを通過することを意味するか、または分析物分子が身体の外側で収集され得るように生体膜を通して身体に存在する分子または流体(「分析物」)が通過することを意味する。
【0071】
本明細書で使用される場合、「透過物」、「薬物」、「透過性組成物」もしくは「薬理学的活性剤」という用語、または任意の他の類似した用語は、当技術分野で以前から公知の方法による、および/または本明細書で教示される方法による経皮投与に適した任意の化学的または生物学的な材料または化合物を指すために互換的に使用され、この材料または化合物は、所望の生物学的または薬理学的な効果を誘発し、この効果としては、(1)生物に対する予防効果を有し、かつ感染などの望ましくない生物学的作用を予防すること、(2)疾患によって引き起こされる症状を軽減すること、例えば、疼痛または炎症を軽減すること、および/または(3)生物から疾患を軽減、低減、もしくは完全に排除することを挙げることができるが、これらに限定されることはない。この効果は、局所麻酔効果を提供するなど、局所的である場合もあれば、全身的である場合もある。そのような物質は、皮膚を含む身体の表面および膜の通過を含んで、通常は身体に送達される幅広いクラスの化合物を含む。一般的に、例えば、ただし限定することを意味するものではないが、そのような物質は、所望の生物学的または薬理学的効果を誘発する、薬物、化学物質、または生物学的材料などの任意の生物活性剤を含み得る。この目的のために、一態様では、透過物は、小分子の薬剤であり得る。別の態様では、透過物は、高分子の薬剤であり得る。様々な実施形態で、透過物はトリプタンである。トリプタンの例としては、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、リザトリプタン、ナラトリプタン、エレトリプタン、ドニトリプタン、アルモトリプタン、フロバトリプタン、アビトリプタン、LY-334370、L0703,664、およびGR46611が挙げられる。
【0072】
様々な実施形態で、本明細書に記載されている組成物および方法を用いた使用のために使用され得る、および/または適合させられ得る経皮透過物送達システムおよび方法は、米国特許第6022316号明細書、同第6142939号明細書、同第6173202号明細書、同第6183434号明細書、同第6508785号明細書、同第6527716号明細書、同第6692456号明細書、同第6730028号明細書、同第7141034号明細書、同第7392080号明細書、同第7758561号明細書、同第8016811号明細書、同第8116860号明細書、および/または同第9498609号明細書のうちの1つ以上に記載されており、これらはすべて、参照によってそれらの全体が、特にそのようなシステムおよび方法を説明する目的で本明細書に組み込まれる。様々な実施形態で、PASSPORTの商標名でNitto Denko Corporationから市販されている経皮透過物送達システムが、本明細書に記載されている透過性組成物の送達における使用のために使用され得るまたは適合させられ得る。
【0073】
本明細書で使用される場合、「有効」量の薬理学的に活性な薬剤とは、任意の医学的治療に伴う合理的な利益/リスク比で所望の局所的または全身的効果および性能を提供するのに十分な量の化合物を意味する。本明細書で使用される透過または化学的増強剤の「有効」量は、生体膜透過性の所望の増加、所望の透過深さ、投与速度、および送達される薬物量を提供するように選択される量を意味する。
【0074】
本明細書で使用される場合、「動物」または「生物」とは、本発明が適用され得るヒトおよび植物を含む他の生きた生物を指す。
【0075】
本明細書で使用される場合、「分析物」とは、本発明で教示されている技術による、または当技術分野で以前から公知の技術による生体膜の通過に適した任意の化学的または生物学的材料または化合物を意味し、その技術分野の者であれば、身体内のその濃度または活性を知りたいと思うであろう。グルコースは、皮膚を通過するのに適した糖であるため、分析物の具体例であり、例えば糖尿病を患っている人は、自身の血糖値を知りたいと思うであろう。分析物の他の例としては、ナトリウム、カリウム、ビリルビン、尿素、アンモニア、カルシウム、鉛、鉄、リチウム、サリチル酸塩などのような化合物が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0076】
本明細書で使用される場合、「経皮流束速度」とは、個体、ヒト、もしくは動物の皮膚を通る任意の分析物の通過速度、または生物の皮膚の中の、およびこれを通る任意の透過物、薬物、薬理学的活性剤、染料、もしくは色素の通過速度である。
【0077】
本明細書で使用される場合、「非侵襲的」とは、針、カテーテル、または他の侵襲的医療機器を身体の一部に挿入する必要がないことを意味する。
【0078】
本明細書で使用される場合、「低侵襲的」とは、下にある組織に実質的な損傷を引き起こすことなく角質層に侵襲して小さな穴または微細孔を形成する機械的、水力学的、または電気的な手段の使用を指す。
【0079】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」とは、薬学的に許容可能な薬物などの物質が送達のために提供され得る担体を指す。薬学的に許容可能な担体は、当技術分野で、例えば、“Remington: The Science and Practice of Pharmacy,” Mack Publishing Company, Pennsylvania, 1995に記載されており、その開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。担体としては、例えば、水および他の水溶液、糖類、多糖類、緩衝液、賦形剤、および生分解性ポリマー、例えば、ポリエステル、ポリ無水物、ポリアミノ酸、リポソーム、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0080】
本明細書で使用される場合、「リザーバ」とは、生体膜の人工的な開口部を通じて生物に送達するための透過物を含むように設計された、または生体膜の人工的な開口部を通じて生物から抽出された生物学的流体サンプルを収容するように設計され得るデバイス内の指定された領域またはチャンバを指す。リザーバはまた、別個に含まれる生物活性透過物の効果を増強する賦形剤化合物も含み得る。さらに、リザーバは、抽出された生物学的流体中の選択された分析物の測定または検出を可能にするように設計された反応性酵素または試薬を含み得るか、またはこれらで処理され得る。リザーバは、開放容積空間、ゲル、後の放出もしくは反応のための選択された化合物でコーティングもしくは処理された平らな平面空間、またはペレット、錠剤もしくは多孔質ポリマーなどの透過性固体構造から構成され得る。
【0081】
本開示のデバイスおよび方法は、皮膚全体にトリプタンを経皮的に送達するために使用され得る。いくつかの態様では、パッチは、接着剤を含む最上層と、トリプタンを含む中間層と、最下層とを含み得る。いくつかの実施形態では、最下層は剥離ライナーを含む。いくつかの実施形態では、中間層は皮膚刺激低減剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、中間層は安定剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、パッチは組織界面層を含む。
【0082】
適切な組織界面層の例は、米国特許第7,392,080号明細書に記載されており、これは、参照によってその全体が、特に経皮薬物送達パッチシステムを説明する目的で本明細書に組み込まれる。いくつかの態様では、組織界面層は、以下のうちのいくつかまたはすべてを含み得る:組織の穿孔をもたらすための要素、デバイスを組織に付着させるための接着剤、送達のための透過物を含むリザーバ、抽出された生物学的流体を保持するためのリザーバ、および分析物を評価するための試薬。組織界面層はまた、収集された液体透過物または生物学的流体の動きを制御するための流体流動調整剤として作用する親水性および疎水性表面処理も含み得る。組織界面層はまた、敗血症を防止するための抗菌剤、または抽出された透過物もしくは生物学的流体の凝集を制御するための凝固防止剤もしくは抗凝固剤を組み込んでもよい。組織界面層はまた、透過増強剤またはpH安定化に使用される緩衝液で処理され得る。組織界面層は、有益な透過物で飽和された刺激応答性ポリマーゲルセクションを含み得て、これは、熱的、化学的、または電気的な刺激を通じて有益な透過物を放出するように誘発され得る。組織界面層は、例えば、組織界面層上の穿孔要素または他の同様の要素によって加熱されると、必要に応じて有益な透過物を放出することができる。組織界面層は、組織への音響エネルギー、または送達される透過物、または抽出される生物学的流体の送達のための圧電素子を含み得る。
【0083】
いくつかの態様では、組織界面層は、1つ以上のリザーバを含み得る。複数のリザーバの場合、これらのリザーバを使用して、異なる、おそらくは非適合性の透過物を分離しておくことができるであろう。リザーバからの透過物の送達は、同時または連続的であり得る。いくつかの実施形態では、リザーバ壁は、リザーバ膜を破り、組織への透過物の送達を可能にするように穿孔され得る。リザーバのこの穿孔は、組織を穿孔するのに使用されるのと同じタイプの穿孔要素を用いて達成される。このリザーバが破られる前に、リザーバは、透過物に対して安定した密閉された無菌環境を維持し、それによって、統合されるデバイスの使い捨て部分全体を効率的かつ経済的に製造およびパッケージ化することができるであろう。リザーバの破れは、必要に応じて、組織の穿孔の前、それと同時、またはその後に行われ得る。さらに、微細孔密度またはイオントフォレーシス電流などの他のすべての要因が同じである場合、特定のリザーバから組織への透過物の流束速度は、リザーバを生体膜に結合する微細孔の面積に比例する。リザーバは、抽出された生物学的流体の貯蔵場所として機能するために、最初は空であるか、または吸収性材料を含み得る。生物学的流体中の分析物を評価するための試薬は、典型的には、抽出された生物学的流体の貯蔵リザーバの入口に配置されるであろう。
【0084】
さらに、本明細書で使用される場合、「トリプタン」とは、片頭痛および群発性頭痛の治療において頓挫薬として使用されるトリプタミンベースの薬物のクラスまたは科を意味する。トリプタンの例としては、スマトリプタン、リザトリプタン、ナラトリプタン、エレトリプタン、ドニトリプタン、アルモトリプタン、フロバトリプタン、アビトリプタン、およびゾルミトリプタンが挙げられるが、これらに限定されることはない。いくつかの実施形態では、トリプタンは、ゾルミトリプタン、スマトリプタン、またはリザトリプタンを含む。いくつかの実施形態では、トリプタンはゾルミトリプタンを含む。
【0085】
いくつかの態様では、皮膚刺激低減剤は有機酸である。いくつかの実施形態では、皮膚刺激低減剤は、有機酸の塩形態である。いくつかの実施形態では、有機酸は、アスコルビン酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、マレイン酸、乳酸、安息香酸、およびソルビン酸、またはそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、皮膚刺激低減剤は非有機酸である。いくつかの実施形態では、皮膚刺激低減剤は、非有機酸の塩形態である。いくつかの実施形態では、非有機酸は、塩酸、リン酸、ホウ酸、酢酸、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、非有機酸は、製造プロセス中に蒸発する。
【0086】
いくつかの態様では、安定剤は糖類である。いくつかの実施形態では、糖類は、マンニトール、マルトース、トレハロース、キシリトール、キシロース、デキストロース、ラクトース、ソルビトール、スクロース、フルクトース、マルチトール、エリトリトール、ラクチトール、イソマルト、およびシクロデキストリン、またはそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、安定剤はスクロースである。
【0087】
いくつかの実施形態では、パッチ中のトリプタンおよび皮膚刺激低減剤の量のモル比は、約1:0.5~約1:2の範囲にある。いくつかの実施形態では、トリプタンおよび皮膚刺激低減剤は、約1:0.75~約1:1.5の範囲のモル比にある。
【0088】
いくつかの態様では、パッチの中間層はリザーバを含む。いくつかの実施形態では、リザーバは、約0.1重量%~約90重量%のトリプタンを含む。いくつかの実施形態では、トリプタンは、中間層の約20重量%~約80重量%を占め、これには、中間層の25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、および75重量%などの量、およびこれらの値から導出される任意の範囲の重量パーセントが含まれる。
【0089】
いくつかの実施形態では、中間層は、約0.1重量%~約90重量%の安定剤を含む。いくつかの実施形態では、安定剤は、中間層の約20重量%~約80重量%を占め、これには、中間層の25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、および75重量%などの量、およびこれらの値から導出される任意の範囲の重量パーセントが含まれる。
【0090】
いくつかの実施形態では、中間層は、約0.1~約90重量%の皮膚刺激低減剤を含む。いくつかの実施形態では、皮膚刺激低減剤は、中間層の約20重量%~約80重量%を占め、これには、中間層の25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、および75重量%などのさらなる量、およびこれらの値から導出される任意の範囲の重量パーセントが含まれる。
【0091】
いくつかの態様では、中間層はマトリックスを含む。いくつかの実施形態では、マトリックスは不織布である。
【0092】
いくつかの実施形態では、マトリックスは、約0.1mg/cm~約10mg/cmのマトリックス保水能力(WHC)を有する。マトリックスの保水能力とは、1cmあたりにマトリックスが保持することができる水分量を意味する。具体的には、1cmのマトリックスを調製し、これを溶液(0.1%の界面活性剤(Tween 80)を含有するリン酸緩衝生理食塩水)に十分長い時間浸漬する。その後、マトリックスを約5秒間ゆっくりと溶液から引き出し、事前に測定した浸漬前のサンプルの重量を、液体を保持しているサンプルの重量から差し引いて、次いで、単位面積(1cm)あたりのマトリックスの保水能力を決定することができる。いくつかの実施形態では、マトリックス保水能力は、約0.5mg/cm~約8mg/cmである。いくつかの実施形態では、マトリックス保水能力は、約1mg/cm~約6mg/cmである。いくつかの実施形態では、マトリックス保水能力は、約2mg/cm~約5mg/cmである。
【0093】
マトリックスの保水能力は、マトリックスの厚さおよび重量を調整することによって制御することができる。マトリックスは、100μm以下の厚さを有することが好ましい。いくつかの実施形態では、マトリックスは、約10μm~約100μmの範囲の厚さを有する。いくつかの実施形態では、マトリックスの厚さは、約20μm~約90μmである。いくつかの実施形態では、マトリックスの厚さは、約30μm~約80μmである。いくつかの実施形態では、マトリックスの厚さは、約40μm~約60μmである。
【0094】
いくつかの実施形態では、マトリックスの面積重量は、約10g/m~約100g/mである。いくつかの実施形態では、マトリックスの面積重量は、約20g/m~約80g/mである。いくつかの実施形態では、マトリックスの面積重量は、約30g/m~約70g/mである。いくつかの実施形態では、マトリックスの面積重量は、約40g/m~約60g/mである。
【0095】
いくつかの実施形態では、マトリックスの面積重量は、約0.1mg/cm~約30mg/cmである。いくつかの実施形態では、マトリックスの面積重量は、約5mg/cm~約30mg/cmである。いくつかの実施形態では、マトリックスの面積重量は、約10mg/cm~約30mg/cmである。いくつかの実施形態では、マトリックスの面積重量は、約20mg/cm~約30mg/cmである。いくつかの実施形態では、マトリックスの面積重量は、約0.5mg/cm~約5mg/cmである。いくつかの実施形態では、マトリックスの面積重量は、約0.5mg/cm~約10mg/cmである。
【0096】
いくつかの実施形態では、マトリックスのサイズは、約0.25cm~約4cmである。いくつかの実施形態では、マトリックスのサイズは、約0.5cm~約3cmである。いくつかの実施形態では、マトリックスのサイズは、約1cm~約2cmである。いくつかの実施形態では、マトリックスのサイズは、約1cmである。いくつかの実施形態では、マトリックスのサイズは、約2cmである。いくつかの実施形態では、マトリックスのサイズは、約3cmである。
【0097】
いくつかの実施形態では、マトリックスの単位面積あたりのトリプタンおよび安定剤の総量は、0.05mg/cm~0.5mg/cmである。いくつかの実施形態では、マトリックスの単位面積あたりのトリプタンおよび安定剤の総量は、0.1mg/cm~0.5mg/cmである。いくつかの実施形態では、マトリックスの単位面積あたりのトリプタンおよび安定剤の総量は、0.2mg/cm~0.5mg/cmである。いくつかの実施形態では、マトリックスの単位面積あたりのトリプタンおよび安定剤の総量は、0.3mg/cm~0.5mg/cmである。いくつかの実施形態では、マトリックスの単位面積あたりのトリプタンおよび安定剤の総量は、0.05mg/cm~0.5mg/cmである。
【0098】
いくつかの実施形態では、マトリックス成分のpHは、約3~約6である。いくつかの実施形態では、マトリックスのpHは、約4~約6である。いくつかの実施形態では、マトリックスのpHは、約5~約6である。いくつかの実施形態では、マトリックスのpHは、約3である。いくつかの実施形態では、マトリックスのpHは、約4である。いくつかの実施形態では、マトリックスのpHは、約5である。いくつかの実施形態では、マトリックスのpHは、約6である。
【0099】
いくつかの態様では、マトリックスは、約0.1mg/cm~約5.0mg/cmのトリプタンを含む。いくつかの実施形態では、マトリックスは、約0.1mg/cm~約3.0mg/cmのトリプタンを含む。いくつかの実施形態では、マトリックスは、約0.5mg/cm~約5.0mg/cmのトリプタンを含む。いくつかの実施形態では、マトリックスは、約0.5mg/cm~約3.0mg/cmのトリプタンを含む。いくつかの実施形態では、マトリックスは、約0.5mg/cm~約2.0mg/cmのトリプタンを含む。いくつかの実施形態では、マトリックスは、約0.5mg/cmのトリプタンを含む。いくつかの実施形態では、マトリックスは、約1mg/cmのトリプタンを含む。いくつかの実施形態では、マトリックスは、約2mg/cmのトリプタンを含む。好ましい実施形態では、トリプタンはゾルミトリプタンである。
【0100】
いくつかの態様では、マトリックスは、約0.1mg/cm~約5.0mg/cmの安定剤を含む。いくつかの実施形態では、マトリックスは、約0.1mg/cm~約3.0mg/cmの安定剤を含む。いくつかの実施形態では、マトリックスは、約0.5mg/cm~約5.0mg/cmの安定剤を含む。いくつかの実施形態では、マトリックスは、約0.5mg/cm~約3.0mg/cmの安定剤を含む。いくつかの実施形態では、マトリックスは、約0.5mg/cm~約2.0mg/cmの安定剤を含む。いくつかの実施形態では、マトリックスは、約0.5mg/cmの安定剤を含む。いくつかの実施形態では、マトリックスは、約1mg/cmの安定剤を含む。いくつかの実施形態では、マトリックスは、約2mg/cmの安定剤を含む。好ましい実施形態では、安定剤はスクロースである。
【0101】
いくつかの態様では、パッチは抗菌剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗菌剤は、安息香酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン、クレゾール、サリチル酸、ソルビン酸、塩化ベンゼトニウム、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0102】
いくつかの態様では、本出願はまた、トリプタンを、それを必要とする対象に投与するために本明細書に記載されているようなパッチを使用するための方法を含む。いくつかの実施形態では、対象を治療する方法は、片頭痛を有する対象を特定することと、対象の皮膚に複数の微細孔を開けることと、一定期間にわたって微細孔上で対象の皮膚にパッチを適用することとを含む。いくつかの実施形態では、パッチは、接着剤を含む最上層と、トリプタンを含む中間層と、最下層とを含む。いくつかの実施形態では、最下層は剥離ライナーを含む。いくつかの実施形態では、一定期間は、治療量のトリプタンを複数の微細孔を通じて送達するように選択される。
【0103】
いくつかの実施形態では、対象の皮膚に複数の微細孔を開けることは、対象の皮膚に経皮マイクロポレーション装置を適用することを含む。いくつかの実施形態では、経皮マイクロポレーション装置は、伝導性フィラメントのアレイを含む伝導性部材を含む。いくつかの実施形態では、経皮マイクロポレーションは、熱組織切除によって微細孔を開ける。いくつかの実施形態では、経皮マイクロポレーションは、角質層を通って表皮に微細孔を形成する。
【0104】
いくつかの実施形態では、経皮マイクロポレーション装置は、約2mJ/フィラメント~約8mJ/フィラメントの範囲の穿孔エネルギーを有する。いくつかの実施形態では、経皮マイクロポレーション装置は、フィラメント約200本/cm~フィラメント約500本/cmの範囲のフィラメント密度を有する。いくつかの実施形態では、経皮マイクロポレーション装置は、フィラメント約400本/cmのフィラメント密度を有する。いくつかの実施形態では、経皮マイクロポレーション穿孔エネルギーは、約4mJ/フィラメント~約5mJフィラメントであり、フィラメント密度は、フィラメント約400本/cmである。いくつかの実施形態では、経皮マイクロポレーションフィラメントアレイのサイズは、約0.5cm~約3cmの範囲にある。
【0105】
いくつかの実施形態では、パッチは、対象の皮膚を実質的に刺激しない。本明細書で使用される場合、「対象の皮膚を実質的に刺激しない」という用語は、パッチ除去後に、約3.0以下、好ましくは約2.0以下、より好ましくは約1.0以下の皮膚紅斑スコアが得られることを含む。別の実施形態では、「対象の皮膚を実質的に刺激しない」という状態は、約4.0日以下、好ましくは約3.0日以下、より好ましくは約2.5日以下の皮膚刺激緩和日数(skin irritation relief days)を指し得る。別の実施形態において、「対象の皮膚を実質的に刺激しない」という状態は、得られる皮膚紅斑スコアが、パッチ除去後に、約3.0以下、好ましくは約2.0以下、より好ましくは約1.0以下であり、かつ皮膚刺激緩和日数が、約4.0日以下、好ましくは約3.0日以下、より好ましくは約2.5日以下であることである。
【0106】
いくつかの態様では、本出願はまた、パッチを使用して、トリプタンを、それを必要とする対象に投与するためのシステムを含む。いくつかの実施形態では、経皮薬物送達パッチシステムは、皮膚表面を加熱するための経皮マイクロポレーション装置と、本明細書に記載されているようなトリプタン薬物送達パッチを含むがこれに限定されることはないトリプタン薬物送達パッチとを含む。いくつかの実施形態では、薬物送達パッチは、接着剤を含む最上層と、トリプタンを含むための少なくとも1つのリザーバを有する中間層と、剥離ライナーを含む最下層とを含む。いくつかの実施形態では、マイクロポレーション装置は、導電性部材を流れる電流に基づいて熱エネルギーを生成し、動作中に導電性部材と接触している皮膚表面に熱エネルギーを供給するように構成された導電性部材を備える。いくつかの実施形態では、経皮薬物送達パッチシステムは、皮膚表面に微細孔を開けるのに有効な供給電流値の複数のパルスで導電性部材に電流を供給するように構成された電源をさらに備える。
【0107】
実施例
様々な実施形態および代替形態が以下の実施例にさらに詳細に開示されているが、これらは決して特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。以下では、Zol=ゾルミトリプタン;CA=クエン酸一水和物;Suc=スクロース;AA=アスコルビン酸;SB=安息香酸ナトリウム;TA=酒石酸とする。PASSPORTマイクロポレーションシステムを利用した。投与部位は、Nitto Denko CorporationのPassPort(商標)熱穿孔システムなどの、100~400本の熱穿孔フィラメントのアレイを有する装置を使用した熱穿孔によって、動物の対象の皮膚に形成した。
【0108】
ゾルミトリプタンおよびリザトリプタン安息香酸塩は、INKE S.A.(スペイン)から購入した。スマトリプタンコハク酸塩は、LGM Pharma(米国)から購入した。実施例1~10で使用した薬物パッチのマトリックスは、不織布材料としてのEH-1212(Japan Vilene Company, LTD、日本、WHC=4mg/cm)であった。この材料は、白いポリエステル繊維集合体および透明なポリエステルフィルム(12マイクロメートル)の2つの材料を熱接合して、連結されたシートを作製することによって製造する。
【0109】
実施例1
薬物パッチの調製
以下の実施例1~3の薬物パッチを以下の方法によって調製した。
【0110】
このパッチを以下の方法によって調製した。まず、パンチングダイを使用して、所定のサイズのバッキング層材料を形成した。例えば、25×25mmの正方形である。次に、パンチングダイを使用して、マトリックス材料、例えば、不織布を所定のサイズ、例えば、10×10mmの正方形に形成した。形成されたマトリックス材料を、バッキング層材料の中央部分に貼り付けた(以下、ブランクパッチと呼ぶ)。次に、CA、AA、Sucなどの添加剤、および薬物を秤量した。その後、この添加剤および薬物に溶液を添加した。使用した溶液は、脱イオン水またはアルコールであった。次に、添加剤および薬物が完全に溶解するまで溶液を撹拌し、それによって、薬物溶液を調製した。機械的ピペットを使用して、ブランクパッチのマトリックス材料領域に所望の薬液を滴下した。マトリックス材料を、オーブン内で、例えば60℃で、20~50分間乾燥させて、パッチ構造を形成した。剥離ライナーなどの剥離コーティングをパッチ構造にコーティングした。ヒートシーラーでのシーリングによって、完成したパッチを乾燥剤ありまたはなしでパウチにした。
【0111】
動物実験:マイクロポレーションによる経皮送達
77~84日齢の無毛モルモットを実験動物として使用した。所望の穿孔条件下で穿孔処理を受けた実験動物の皮膚の脇腹側に薬物パッチを貼り付けた。フィラメント密度は、主に、皮膚とパッチとの間の体液および成分の移動に利用すべき領域に影響する。フィラメント密度は、フィラメント200または400本/cmであり、穿孔エネルギーは、約4および約5mJ/フィラメントであった。各薬物パッチは、パッチを1cmのマイクロポレーションされた投与部位に適用することによって、各試験対象についてそれぞれ試験した。パッチを貼り付けている時間の間、およびパッチを付着させた後に、所望の時間に採血し、従来の方法によって各薬効成分を抽出した。次に、高速液体クロマトグラフィー(LC-MS/MS)によって血中濃度を定量した。表1~3の所与のバイオアベイラビリティは、皮下注射に対する相対バイオアベイラビリティである。
【0112】
皮膚刺激スコア基準
パッチの除去に続いて、皮膚刺激検査を実施した。皮膚刺激検査の尺度は、マトリックス直下にある皮膚の評価であった。皮膚刺激検査の尺度は、表1に示されている。
【0113】
【表1】
【0114】
この実施例には、トリプタン誘発皮膚刺激に対する皮膚刺激低減剤およびマイクロポレーション条件の効果が記載されている。これらの結果は、表2に要約されている。
【0115】
【表2】
【0116】
実施例2
この実施例には、トリプタン誘発皮膚刺激に対する皮膚刺激低減剤およびマイクロポレーション条件の効果が記載されている。これらの結果は、表3に要約されている。
【0117】
【表3】
【0118】
実施例3
この実施例には、トリプタン誘発皮膚刺激に対する皮膚刺激低減剤およびマイクロポレーション条件の効果が記載されている。これらの結果は、表4に要約されている。
【0119】
【表4】
【0120】
実施例4
この実施例には、無毛ラットにおける投与経路の研究が記載されている。この研究では、無毛ラットの4つのグループを以下の条件下で試験した:(1)グループ1(2mgのゾルミトリプタン、経口投与);(2)グループ2(2mgのゾルミトリプタン、鼻腔内投与;(3)グループ3(2mgのゾルミトリプタン、静脈内注射);および(4)グループ4(2mgのゾルミトリプタン、経皮マイクロポレーション)。これらの結果は、図1および表5に要約されている。
【0121】
動物実験:経口投与、グループ1
無毛ラットを実験動物として使用した。ゾルミトリプタン2.0mgを含有する薬液(2.0ml)を経口投与した後に、所望の時間に採血し、従来の方法によって各薬効成分を抽出し、次いで、高速液体クロマトグラフィー(LC-MS/MS)によって血中濃度を定量した。
【0122】
動物実験:鼻腔内投与、グループ2
無毛ラットを実験動物として使用した。ゾルミトリプタン2mgを含有する薬液(10μl)を鼻腔内投与した後に、所望の時間に採血し、従来の方法によって各薬効成分を抽出し、次いで、高速液体クロマトグラフィー(LC-MS/MS)によって血中濃度を定量した。
【0123】
動物実験:静脈内投与、グループ3
無毛ラットを実験動物として使用した。ゾルミトリプタン2mgを含有する薬液(200μl)を静脈内投与した後に、所望の時間に採血し、従来の方法によって各薬効成分を抽出し、次いで、高速液体クロマトグラフィー(LC-MS/MS)によって血中濃度を定量した。
【0124】
動物実験:マイクロポレーションによる経皮送達、グループ4
無毛ラットを実験動物として使用した。所望の条件下でマイクロポレーション処理を受けた実験動物の皮膚の脇腹側に薬物パッチを貼り付けた。この研究では、経皮マイクロポレーションのマイクロポレーション条件は、細孔400個/cm、5.2mJ/フィラメントであった。投与側は1cmであった。パッチを貼り付けている時間の間、およびパッチを付着させた後に、所望の時間に採血し、従来の方法によって各薬効成分を抽出し、次いで、高速液体クロマトグラフィー(LC-MS/MS)によって血中濃度を定量した。この研究のパッチ製剤は、ゾルミトリプタン2mg、スクロース0.5mg、AA4mg、1cmの不織布マトリックス(EH-1212、WHC=4mg/cm)であった。
【0125】
表5の所与のバイオアベイラビリティは、IV注射に対する絶対バイオアベイラビリティである。
【0126】
【表5】
【0127】
実施例5
この実施例には、実施例4に述べられているのと同じ方法を使用したモルモットにおける投与経路の研究が記載されている。この研究では、塩基は、ゾミトリプタンを指す。経皮マイクロポレーションの穿孔条件および薬物パッチのマトリックスは、実施例4のグループ4と同じであった。
【0128】
この研究では、モルモットの5つのグループを以下の条件下で試験した:(1)グループ1(塩基10mg/4ml、経口経路);(2)グループ2(塩基5mg/2ml、経口経路);(3)グループ3(塩基2mg/4mL、経口経路);(4)グループ4(塩基2.0mg/cm、経皮マイクロポレーション);および(5)グループ5(2mg/200μL、SubQ)。これらの結果は、図2および表6に要約されている。表6の所与のバイオアベイラビリティは、皮下注射に対する相対バイオアベイラビリティである。
【0129】
さらなる研究で、PKの研究を、ヒトと無毛モルモット(HGP)とを比較して実施した。これらの結果は、図3に要約されている(Headache 2006, 46, 138-149)。
【0130】
【表6】
【0131】
実施例6
この実施例には、マイクロポレーションでの様々な安定剤および皮膚刺激低減剤が記載されている。マトリックスは、上記と同じである。簡潔に言うなら、経皮マイクロポレーションのマイクロポレーション条件は以下の通りである:細孔密度は細孔400個/cmであり、穿孔エネルギーは4mJ/フィラメントであり、フィラメント密度はフィラメント400本/cmであった。投与部位は1cmであった。これらの結果は、表7~11に要約されている。表7には、モルモットを使用したマイクロポレーションでのクエン酸の量の研究が記載されている。表7~10の所与のバイオアベイラビリティは、皮下注射に対する相対バイオアベイラビリティである。
【0132】
【表7】
【0133】
表8には、モルモットに対するマイクロポレーションで皮膚刺激低減剤として有機酸を使用した研究の結果が要約されている。
【0134】
【表8】
【0135】
表9には、モルモットに、安定剤、スクロース、およびマイクロポレーションを使用した研究の結果が要約されている。
【0136】
【表9】
【0137】
表10には、モルモットにマイクロポレーションでゾルミトリプタンを使用した研究の結果が要約されている。
【0138】
【表10】
【0139】
表11には、無毛ラットを使用した用量比較研究の結果が要約されている。
【0140】
【表11】
【0141】
表11の所与のバイオアベイラビリティは、IV注射に対する絶対バイオアベイラビリティである。
【0142】
実施例7
この実施例には、フィラメント密度の様々な効果が記載されている。フィラメント密度がPKプロファイルおよび副作用(穿孔による疼痛、および皮膚刺激)に及ぼす効果を調査するために、これらの研究を実施した。フィラメント密度は、主に、皮膚とパッチとの間の体液および成分の移動に利用すべき領域に影響する。フィラメント密度の範囲は、フィラメント100本/cm~フィラメント400本/cmであり、穿孔エネルギーは、3~4mJ/フィラメントであった。詳細な条件は、表12に要約されている。
【0143】
【表12】
【0144】
PKプロファイルの結果に関しては、フィラメント100本/cmの密度は、より低いCmaxおよびより遅いTmaxを示し、これは、プロファイルがある種の徐放性形状であることを意味する(図4および5を参照)。これは、フィラメント100本/cmの密度の密度が薬物を体循環に送達することがより遅かったことを示す。その一方で、密度がより高いほど、Cmaxがより高くなり、Tmaxがより速くなる。特に、4mJのエネルギーでフィラメント400本/cmの密度は、試験したグループのなかでも、最も高いCmaxおよび最も速いTmaxを示した。さらに、この条件の相対BAは、約100%であった。試験した条件下において、フィラメント400本/cmの密度は、成分を溶解させるための体液を得てトリプタン薬を送達するのに十分な領域を形成するのに優れた候補であると思われる。PKデータは、図6および表13に要約されている。
【0145】
【表13】
【0146】
副作用の観点から、フィラメント100本/cmの密度は、穿孔による疼痛、および皮膚刺激の両方において最も穏やかな条件であり、合理的である(図7、8、9)。フィラメント200本/cmの密度およびフィラメント400本/cmの密度を比較すると、有意差は観察されず、どちらの条件でも、重度の副作用は起こらなかった。
【0147】
表13の所与のバイオアベイラビリティは、SC注射に対する相対バイオアベイラビリティである。
【0148】
実施例8
この実施例には、加熱エネルギーについての様々な効果が記載されている。穿孔エネルギーは、深さおよび幅などの細孔形状に関連する。これらの動物実験では、表14に示されるように、フィラメント400本/cmの密度の場合、2~5mJ/フィラメントの穿孔エネルギーを用いた。
【0149】
【表14】
【0150】
PK研究の結果として、すべての評価したデータ(AUC、BA、Cmax、およびTmax)が、2~4mJ/フィラメントの範囲でほぼ比例する傾向を示し、4mJ/フィラメントが、任意の評価項目において最も望ましい条件であった(図10および11を参照)。しかしながら、4および5mJ/フィラメントを比較すると、5mJ/フィラメントのPK結果は、4mJ/フィラメントの結果とほぼ同じであるか、またはそれよりも少し劣ってさえいた。これは、5mJ/フィラメントが必要以上に大きな細孔を形成し、2mgの用量の製剤に必要であるよりも多くの体液を誘発することを意味する。言い換えるなら、5mJ/フィラメントのエネルギーによって誘発される体液中の薬物濃度は、2mgの用量の製剤の場合の4mJ/フィラメントによる薬物濃度よりも低くなり得る。したがって、5mJ/フィラメントでの薬物の浸透圧および拡散も、4mJ/フィラメントでの浸透圧および拡散よりも低くなる。そのため、4mJ/フィラメントの穿孔エネルギーでのフィラメント400本/cmのフィラメント密度が、2mgの剤形にとって優れた条件である。
【0151】
副作用に関して、図12および13に示されるように、試験した穿孔エネルギーの間に顕著な違いはない。より高いエネルギーは多少より重度の悪影響を引き起こす可能性があるものの、それらのスコアは、許容範囲内にあるように思われる。
【0152】
手短に言えば、適切な穿孔条件は、用量に応じて特定されてきた。しかしながら、今のところ、フィラメント密度は、フィラメント400本/cmまでであるべきであり、必要がなければ、より低いフィラメント加熱エネルギーを設定するのが良い。2mgの用量の製剤の場合、4mJ/フィラメントでのフィラメント400本/cmのフィラメント密度が、試験した条件のなかで最も効果的である。このデータは、表15に要約されている。
【0153】
【表15】
【0154】
表15の所与のバイオアベイラビリティは、SC注射に対する相対バイオアベイラビリティである。
【0155】
実施例9
この実施例には、望ましいフィラメントアレイサイズの選択が記載されている。フィラメント400本/cmのフィラメント密度および4または5mJ/フィラメントのエネルギーの条件で2mgの用量よりも高い用量を想定すると、フィラメントアレイのサイズをより大きくする必要があり得る。用量の範囲は、0.5~4mgであり、フィラメントアレイのサイズの範囲は、1.0~2.0cmであった。これらの結果は、表16に要約されている。
【0156】
【表16】
【0157】
図14および15に記載されているように、PKデータから、2cmのフィラメントアレイのサイズが、4mJ/フィラメントのエネルギーを用いる場合に、4mgの用量まで良好な用量応答を示したことが分かった。1.5cmは、4mgの用量では効果がより低かった。これは、4mJ/フィラメントのエネルギーでフィラメント400本/cmの密度の場合、1cmの穿孔面積あたり2mgの用量が、この研究における最良の条件であることを意味する。5mJ/フィラメントのエネルギーの場合、1.5cmのフィラメントアレイのサイズで4mgの用量に十分であり得る。しかしながら、4mgの用量の場合、前者の条件(フィラメント400本/cmの密度、4mJ/フィラメント、2cm)が、後者の条件(フィラメント400本/cmの密度、5mJ/フィラメント、1.5cm)よりも良好である。
【0158】
副作用に関しては、より広い穿孔面積およびより高いエネルギーが、図16および17に見られるように、わずかにより重度の悪影響を引き起こしたように思われる。特に、1.5cmおよび2.0cmの穿孔による疼痛がより大きかった。
【0159】
要約すると、フィラメント400本/cmの密度および4mJ/フィラメントのエネルギーが使用される場合、1cmの穿孔面積あたり2mgの用量が、この研究における最良の条件である。2mgより高い用量で1cmより広い穿孔面積が必要な場合は、穿孔による疼痛を考慮に入れるべきである。このデータは、表17に要約されている。
【0160】
【表17】
【0161】
表17の所与のバイオアベイラビリティは、SC注射に対する相対バイオアベイラビリティである。
【0162】
実施例10
この実施例には、スマトリプタンコハク酸塩を用いた無毛ラットにおける投与経路の研究が記載されている。この研究では、無毛ラットの4つのグループを以下の条件下で試験した:(1)グループ1(3mgの遊離塩基API、Suc:0.5mg、AA:1mg);(2)グループ2(6mgの遊離塩基API、Suc:0.5mg、AA:1mg);(3)グループ3(9mgの遊離塩基API、Suc:0.5mg、AA:1mg);(4)グループ4(生理食塩水100μLのヘッドあたり6mgの遊離塩基API)。これらの調査の文脈において、「遊離塩基」という用語は、存在するスマトリプタン遊離塩基の重量を指す(例えば、実施例1を参照するなら、3.0mgのスマトリプタン遊離塩基を含有する4.2mgのスマトリプタンコハク酸塩を使用した)。さらに、例えば図18を参照するなら、「4.2SS」とは、4.2mgのスマトリプタンコハク酸塩が存在することを指す。経皮マイクロポレーションの穿孔条件および薬物パッチのマトリックスは、実施例4のグループ4と同じであった。これらの結果は、図18および表18に要約されている。
【0163】
【表18】
【0164】
表18の所与のバイオアベイラビリティは、SC注射に対する相対バイオアベイラビリティである。
図1
図2
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図4
図5
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図18
【国際調査報告】