(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】身体の皮膚を通して薬剤を送達するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20220907BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20220907BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
A61M37/00
A61K47/46
A61K9/70 401
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577610
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(85)【翻訳文提出日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 US2020039433
(87)【国際公開番号】W WO2020264030
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519337536
【氏名又は名称】パスポート テクノロジーズ、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PassPort Technologies, Inc.
【住所又は居所原語表記】5580 Morehouse Drive,Suite 120,San Diego,California 92121,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】安達 博敏
(72)【発明者】
【氏名】ウロス カスカク
(72)【発明者】
【氏名】ショウヘイ ホリエ
(72)【発明者】
【氏名】ジョー フゥア
(72)【発明者】
【氏名】アルジュン シン ブンガル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C267
【Fターム(参考)】
4C076AA77
4C076AA94
4C076AA99
4C076BB31
4C076CC06
4C076CC21
4C076CC50
4C076DD67
4C076EE56A
4C076FF31
4C076FF32
4C076FF68
4C267AA72
4C267BB05
4C267BB23
4C267BB42
4C267BB70
4C267CC01
4C267EE08
4C267GG16
4C267GG21
4C267HH19
(57)【要約】
少なくとも1種の浸透性物質を、対象の組織膜内に送達するための経皮浸透性物質送達システムは、穿孔領域に配設され、熱エネルギを組織膜内に送達して、複数の微細孔を形成するように構成された複数のフィラメントを有するフィラメントアレイと、このフィラメントアレイに電気的に接続されており、微細孔領域に複数の微細孔を形成するために、電気エネルギをフィラメントに供給するように構成されたアプリケータと、微細孔領域に適用され、少なくとも1種の浸透性物質を放出可能に含有するように構成されたパッチとを備える。治療方法は、経皮浸透性物質送達システムを使用して、浸透性物質の投与を必要とする対象に、薬剤の形態で浸透性物質を投与することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の浸透性物質を、対象の組織膜内に送達するための経皮浸透性物質送達システムであって、
a)上側基板表面を有し、穿孔領域を画定し、前記穿孔領域に配設された複数のフィラメントを有するフィラメントアレイを備え、各フィラメントが前記組織膜に直接に接触することにより熱エネルギを伝導によって送達して、前記穿孔領域の1%~20%の範囲にある前記組織膜の微細孔領域に複数の微細孔を形成可能である基板と、
b)前記フィラメントアレイに電気的に接続されており、前記フィラメントを加熱することにより、前記組織膜の前記微細孔領域に前記複数の微細孔を形成するために、前記フィラメントに制御された量の電気エネルギを供給するように構成されたアプリケータと、
c)前記微細孔領域上に適用され、少なくとも1種の浸透性物質を放出可能に含有するように構成されており、10mg/cm
2未満の保水能力を有するマトリクスおよび前記マトリクス中に分散された少なくとも1種の浸透性物質を含むパッチと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記フィラメントを熱することにより前記複数の微細孔を形成するための所定の電気エネルギが、0.0067μJ/μm
3~0.0400μJ/μm
3の範囲にある、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記微細孔領域が、前記穿孔領域の1.25%~10%の範囲にある、請求項1または2記載のシステム。
【請求項4】
前記複数の微細孔の累積体積が、0.05mm
3/cm
2~0.35mm
3/cm
2の範囲にある、請求項1から3までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項5】
前記浸透性物質が、長時間作用型薬剤である、請求項1から3までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項6】
前記長時間作用型薬剤が、GLP-1アンタゴニスト、Fcタンパク質、抗体、または半減期が延長されているその誘導体である、請求項5記載のシステム。
【請求項7】
前記長時間作用が、24時間を超えて作用する、請求項5記載のシステム。
【請求項8】
前記長時間作用型薬剤が、1~7日間作用する、請求項5記載のシステム。
【請求項9】
前記長時間作用型薬剤が、7日間を超えて作用する、請求項5記載のシステム。
【請求項10】
前記パッチが、24時間を超えて前記浸透性物質を放出するように構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項11】
前記システムが、少なくとも部分的な接着剤を有するバッキング層をさらに備える、請求項1から10までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項12】
前記フィラメントが、銅製の導電層と、その下方にあるステンレス鋼製の抵抗層とを備える、請求項1から11までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項13】
前記アプリケータが、2mJ/フィラメント~12mJ/フィラメントの範囲、好ましくは2mJ/フィラメント~8mJ/フィラメントの範囲、より好ましくは3mJ/フィラメント~6mJ/フィラメントの範囲にある前記所定の電気エネルギを、前記フィラメントに供給するように構成されている、請求項1から12までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項14】
前記アプリケータが、2ms~16msの範囲、好ましくは2ms~12msの範囲にある時間にわたって、前記所定の電気エネルギを前記フィラメントに供給するように構成されている、請求項1から13までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項15】
前記微細孔領域内に前記複数の微細孔が、約20個/cm
2~約500個/cm
2、好ましくは約50個/cm
2~約400個/cm
2で存在する、請求項1から14までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項16】
前記複数の微細孔の累積深さが、約2500μm/cm
2~約30000μm/cm
2の範囲にある、請求項1から15までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項17】
前記マトリクスが、少なくとも1種の繊維を含む、請求項1から16までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項18】
前記マトリクスが積層材料を含み、前記積層材料が前記繊維およびフィルムを含む、請求項17記載のシステム。
【請求項19】
前記繊維が、300μm未満、好ましくは200μm未満の厚さを有する、請求項17または18記載のシステム。
【請求項20】
前記マトリクス中の前記繊維の面積当たり重量が、約100g/m
2未満、好ましくは、20g/m
2未満である、請求項17から19までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項21】
前記繊維が、不織繊維である、請求項17から20までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項22】
前記浸透性物質が、前記マトリクス中に、約0.01mg/cm
2~約20mg/cm
2の範囲の量で分散されている、請求項1から21までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項23】
前記浸透性物質が、低分子、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドまたはこれらの組み合わせである、請求項1から22までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項24】
少なくとも1種の浸透性物質を、対象の組織膜内に送達するための経皮浸透性物質送達システムであって、
a)上側基板表面を有し、穿孔領域を画定し、前記穿孔領域に配設された複数のフィラメントを有するフィラメントアレイを備え、各フィラメントが前記組織膜に直接に接触することにより熱エネルギを伝導によって送達して、前記組織膜の微細孔領域に複数の微細孔を形成可能である基板と、
b)前記フィラメントアレイに電気的に接続されており、前記フィラメントを加熱することにより、前記組織膜の前記微細孔領域に前記複数の微細孔を形成するために、前記フィラメントに制御された電気エネルギを供給するように構成されたアプリケータと、
を備え、
前記フィラメントを加熱することにより前記複数の微細孔を形成するための前記制御された電気エネルギが、0.0067μJ/μm
3~0.0400μJ/μm
3の範囲にある、
システム。
【請求項25】
治療を必要とする対象を治療する方法であって、
選択された薬剤による治療を必要とする状態を有する対象を識別するステップと、
請求項1から24までのいずれか1項記載の経皮浸透性物質送達システムのアプリケータを前記対象に適用することにより、前記対象の皮膚に複数の微細孔を開けるステップと、
請求項1から24までのいずれか1項記載の経皮浸透性物質送達システムのパッチを前記対象の皮膚に前記微細孔を覆うように一定期間適用するステップと、
を含み、
前記パッチの前記マトリクス中に分散された前記浸透性物質は、前記選択された薬剤を含み、
前記期間は、前記複数の微細孔を通して前記選択された薬剤の治療有効量を送達するように選択される、
方法。
【請求項26】
選択された薬剤を送達するための、請求項1から24までのいずれか1項記載の経皮浸透性物質送達システムの使用であって、
対象は、前記選択された薬剤の治療を必要とすると識別されており、前記経皮浸透性物質送達システムは、前記対象の前記皮膚に複数の微細孔を開き、前記パッチは、前記対象の皮膚に、前記微細孔を覆うように一定期間適用され、前記浸透性物質は、前記選択された薬剤を含む前記パッチの前記マトリクス中に分散されている、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
経皮パッチを、薬剤放出の維持および身体への薬剤または化合物の送達の制御に使用することができる。経皮パッチは、典型的には、活性浸透性物質、例えば薬剤を含有するリザーバを備える。パッチは、一般的には身体の皮膚に取り付けられ、したがって、薬剤または化合物は皮膚を通過しなければならない。したがって、皮膚の角質層は、身体への薬剤または化合物の輸送に対する障壁を提供しまたは障壁として作用する。
【0002】
本開示は、皮膚を介した薬剤または他の化合物の送達に関する。より具体的には、本開示は、経皮パッチからの輸送を改善するために、皮膚を通した薬剤または化合物の送達を増強することに関する。
【0003】
発明の背景
経皮パッチは、薬剤または化合物の分子を、リザーバ、例えばポリマーマトリクス系から身体の皮膚を通して身体内に送達する。しかしながら、皮膚の種々の層は分子の送達に対する障壁として作用することがあり、これにより、分子の分子量(例えば、500Da超の分子量)に対し、薬剤送達についての制限が生じる場合がある。また、皮膚は、このような受動的経皮薬剤送達システムのための最適な疎水性にも制限を生じさせる。
【0004】
より大きな分子量を輸送するための経皮パッチの能力を改善する最小侵襲性技術およびプロセスが存在する。例えば、経皮パッチおよび/または皮膚に埋め込まれたマイクロニードルおよび/または皮膚における微細孔は、薬剤輸送を改善し、かつ/または経皮パッチと身体との間で皮膚を通して輸送される分子の分子量を大きくすることに役立つ。このため、このような技術により、大きな分子の送達が改善され、経皮パッチの薬剤送達プロファイルが修正される。
【0005】
しかしながら、これらの技術では、経皮パッチから皮膚を通して身体に薬剤を送達するために、依然として制限が生じる場合がある。例えば、マイクロニードル技術と併せて使用される経皮パッチは、経皮パッチの一般的に望ましい特徴である制御された送達および/または薬剤負荷量に制限を有しうる。このため、経皮パッチと微細穿孔技術との使用が一般的に好ましく、このような組み合わせにより、マイクロニードル技術よりも柔軟な薬剤送達が提供される。
【0006】
熱、無線周波数(RF)およびレーザーによる微細穿孔技術が存在する。しかしながら、既存のシステムおよび方法は、皮膚を介して経皮パッチと身体との間で輸送される薬剤のための最適な特徴および/またはパラメータを有する微細孔を利用せずかつ/または形成しない。代わりに、当該システムでは、このような微細孔により薬剤送達が改善されることは知られているものの、高分子を含む薬剤の送達に最適な微細孔をどのように形成するかが知られておらずかつ/または理解されておらず、単に皮膚に微細孔を形成しているのみの場合がある。このため、高分子を含む薬剤の送達を改善する微細孔の形成にとって良好なシステムおよび方法が望まれている。幾つかの実施形態では、微細孔は、微細穿孔、熱切除またはフラッシュ蒸発を使用して形成され、生体膜または組織(例えば、皮膚)内の微細経路により、身体への薬剤または化合物の輸送を増強することができる。
【0007】
発明の概要
本明細書に開示する方法および装置またはデバイスは、それぞれ幾つかの態様を有し、そのうちの1つだけがその望ましい属性を単独で担うわけではない。本開示の範囲を限定することなく、例えば以下の特許請求の範囲により表されるように、そのより顕著な特徴をここで簡潔に論じるものとする。この論を検討した後、特に「詳細な説明」と題されたセクションを読んだ後、記載した特徴がデータ認証サービスを含む利点をどのように提供するかが理解されるであろう。
【0008】
1つの革新は、少なくとも1種の浸透性物質を、対象の組織膜内に送達するための経皮浸透性物質送達システムである。この経皮浸透性物質送達システムは、(a)上側基板表面を有し、穿孔領域を画定し、穿孔領域に配設された複数のフィラメントを有するフィラメントアレイを備え、各フィラメントが組織膜に直接に接触することにより熱エネルギを伝導によって送達して、穿孔領域の1%~20%の範囲にある組織膜の微細孔領域に複数の微細孔を形成可能である基板と、(b)フィラメントアレイに電気的に接続されており、フィラメントを加熱することにより、組織膜の微細孔領域に複数の微細孔を形成するために、フィラメントに制御された量の電気エネルギを供給するように構成されたアプリケータと、(c)微細孔領域上に適用され、少なくとも1種の浸透性物質を放出可能に含有するように構成されており、10mg/cm2未満の保水能力を有するマトリクスおよびマトリクス中に分散された少なくとも1種の浸透性物質を含むパッチとを備える。
【0009】
本明細書に開示された経皮浸透性物質送達システムの種々の実施形態は、この段落の特徴または本明細書に開示された他の特徴の1つ、全てまたは任意の組み合わせを含むことができる。フィラメントを熱することにより複数の微細孔を形成するための所定の電気エネルギは、0.0067μJ/μm3~0.0400μJ/μm3の範囲にあることができる。微細孔領域は、穿孔領域の1.25%~10%の範囲にあることができる。複数の微細孔の累積体積は、0.05mm3/cm2~0.35mm3/cm2の範囲にあることができる。浸透性物質は、長時間作用型薬剤であることができる。長時間作用型薬剤は、GLP-1アンタゴニスト、Fcタンパク質、抗体または半減期が延長されているその誘導体であることができる。幾つかの実施形態では、長時間作用型薬剤は、24時間を超えて作用する。幾つかの実施形態では、長時間作用型薬剤は、1~7日間作用することができる。幾つかの実施形態では、長時間作用型薬剤は、7日間を超えて作用する。パッチは、24時間を超えて浸透性物質を放出するように構成されていることができる。このシステムは、少なくとも部分的な接着剤を有するバッキング層を含むことができる。フィラメントは、銅の導電層と、下にあるステンレス鋼の抵抗層とを含むことができる。アプリケータは、2mJ/フィラメント~12mJ/フィラメントの範囲、好ましくは、2mJ/フィラメント~8mJ/フィラメントの範囲、より好ましくは、3mJ/フィラメント~6mJ/フィラメントの範囲にある所定の電気エネルギを、フィラメントに供給するように構成されていることができる。アプリケータは、2ms~16msの範囲、好ましくは、2ms~12msの範囲にある時間、所定の電気エネルギをフィラメントに供給するように構成されていることができる。微細孔領域内に複数の微細孔は、約20個/cm2~約500個/cm2、好ましくは、約50個/cm2~約400個/cm2で存在する。複数の微細孔の累積深さは、約2500μm/cm2~約30000μm/cm2の範囲にあることができる。マトリクスは、少なくとも1種の繊維を含む。マトリクスは、積層材料を含むことができ、積層材料は、繊維およびフィルムを含む。繊維は、300μm未満、好ましくは、200μm未満の厚さを有することができる。マトリクス中の繊維の面積当たり重量は、約100g/m2未満、好ましくは20g/m2未満であることができる。繊維は、不織繊維であることができる。浸透性物質は、マトリクス中に、約0.01mg/cm2~約20mg/cm2の範囲の量で分散されていることができる。種々の実施形態では、浸透性物質は、低分子、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドまたはこれらの組み合わせである。
【0010】
別の革新は、少なくとも1種の浸透性物質を、対象の組織膜内に送達するための経皮浸透性物質送達システムであって、上側基板表面を有し、穿孔領域を画定し、穿孔領域に配設された複数のフィラメントを有するフィラメントアレイを備え、各フィラメントが組織膜に直接に接触することにより熱エネルギを伝導によって送達して、組織膜の微細孔領域に複数の微細孔を形成可能である基板と、フィラメントアレイに電気的に接続されており、フィラメントを加熱することにより、組織膜の微細孔領域に複数の微細孔を形成するために、フィラメントに制御された電気エネルギを供給するように構成されたアプリケータとを含む。フィラメントを加熱することにより複数の微細孔を形成するための制御された電気エネルギは、0.0067μJ/μm3~0.0400μJ/μm3の範囲にある。幾つかの実現形態では、制御された電気エネルギは、所定量である。幾つかの実施形態では、制御された電気エネルギは、少なくとも部分的に測定された情報に基づいている。
【0011】
別の革新は、治療を必要とする対象を治療する方法を含む。この方法は、選択された薬剤による治療を必要とする状態を有する対象を識別することと、本明細書に開示された経皮浸透性物質送達システムのいずれかのアプリケータを対象に適用することにより、対象の皮膚に複数の微細孔を開けることと、本明細書に開示された経皮浸透性物質送達システムのパッチを対象の皮膚に微細孔を覆うように一定期間適用することとを含み、パッチのマトリクス中に分散された浸透性物質は、選択された薬剤を含む。この期間を、複数の微細孔を通して選択された薬剤の治療有効量を送達するように選択することができる。
【0012】
これらの図面および本明細書における関連する説明は、本発明の特定の実施形態を例示するために提供されるものであり、限定を意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】微細穿孔薬剤送達システム(例えば、米国特許第8116860号明細書の微細穿孔薬剤送達システム10)の制御ユニット110の機能ブロック図である。
【
図2A】微細穿孔薬剤送達システムのフィラメントアレイ104のフィラメント200の斜視図である。
【
図2B】断面208および電流方向210を示す
図2Aのフィラメント200の斜視図である。
【
図3A】
図2Aおよび
図2Bの複数のフィラメント200を備える微細穿孔薬剤送達システムの代表的なフィラメントアレイ104の上面図である。
【
図3B】1つ以上のフィラメント破損302および304を受けている
図3Aのフィラメントアレイ104の上面図である。
【
図4】微細穿孔薬剤送達システムのフィラメントアレイに、パルスを介して送達されるエネルギに対するTEWLの関係を示すパルスプロファイルを示すグラフ400および約400の経路を形成した高出力アプリケータ(HPA)について、送達されるエネルギ対TEWLの関係を示すグラフ450である。
【
図5】フィラメント当たり所定のエネルギについてのパルス長の関数としてのパルスTEWLを示すグラフ500である。
【
図6】総経路深さの関数としてのTEWLを示すグラフ600、総経路面積の関数としてのTEWLを示すグラフ640および総経路体積の関数としてのTEWLを示すグラフ680である。
【
図8】ショ糖含量対パッチ102から抽出された滲出物量を示すグラフ800および異なるアプリケータ条件下で比較されたショ糖の2つのパッチ製剤の滲出物抽出量を示すグラフ840である。
【
図9】保水材料の面密度が保水材料のWHCにどのように影響を及ぼすかを示すグラフ900および保水材料の厚さが保水材料のWHCにどのように影響を及ぼすかを示すグラフ940である。
【
図10】表1および表2の微細穿孔パラメータおよびパッチ102パラメータの群1~3それぞれについての長時間作用型ペプチドの血中濃度の比較を示すグラフならびに群4~6それぞれについての長時間作用型ペプチドの経時的な身体内での濃度の比較を示すグラフを示す。
【
図11】表4~表6の群1~5それぞれについての長時間作用型タンパク質の血中濃度の比較を示すグラフを示す。
【
図12】表8~表10の群1および群2それぞれについての長時間作用型タンパク質の血中濃度の比較を示すグラフを示す。
【
図13】多糖類がパッチ102に適用される製剤のタイプである場合の無毛モルモットにおける血中濃度レベルの比較を示すグラフおよび上記のように、4msのパルスで生成された400経路についての上記の多糖類についての平均プロファイルを示すグラフを示す。
【
図14】異なるパッチパラメータを有する4つの群のパッチ102についての、ペプチドがパッチ102に適用される製剤のタイプである場合の無毛モルモットにおける血中濃度レベルの比較を示すグラフを示す。
【
図15】ペプチドがパッチ102に適用される製剤のタイプである場合の無毛モルモットにおける血中濃度レベルの比較を示すグラフを示す。
【
図16】ペプチド(例えば、リキシセナチド)がパッチ102に適用される製剤のタイプである場合の無毛モルモットにおける血中濃度レベルを示すグラフを示す。
【
図17】ペプチド(例えば、テリパラチド)がパッチ102に適用される製剤のタイプである場合の無毛モルモットにおける血中濃度レベルを示すグラフを示す。
【
図18】ペプチド(例えば、ソマトロピン)がパッチ102に適用される製剤のタイプである場合の無毛モルモットにおける血中濃度レベルの比較を示すグラフを示す。
【
図19】表20におけるパラメータに従ってラットに投与された7つの群のワクチンについての血清力価量を示す棒グラフ1900を示す。
【
図20】表22におけるパラメータに従って投与された群1~10のワクチンについてのマウスにおける抗体力価の総量を示す棒グラフ2000および群1~10についての身体内のTh1細胞性抗体力価を示す棒グラフ2020を示す。
【
図21】表22におけるパラメータに従って投与された群1~6のワクチンについてのマウスにおける抗体力価の総量を示す棒グラフ2100および群1~6についての身体内のTh1体液性抗体力価を示す棒グラフ2120を示す。
【0014】
詳細な説明
特定の実施形態および例示を以下に開示するが、本発明の主題は、具体的に開示する実施形態を超えて、他の代替的な実施形態および/または使用ならびにその修正および等価物に及ぶ。このため、本願の範囲は、以下に記載する特定の実施形態のいずれによっても限定されない。例えば、本明細書に開示する任意の方法またはプロセスにおいて、方法またはプロセスの作動または動作を、任意の適切な順序で実行することができ、必ずしも任意の特定の開示の順序に限定されない。種々の動作を、特定の実施形態の理解の助けとなしうるように複数の別個の動作として順に説明したところがあるが、説明の順序は、これらの動作が順序に依存することを示唆していると解釈されるべきではない。さらに、本明細書に記載する構造、システムおよび/または装置を、統合されたコンポーネントとしてまたは別個のコンポーネントとして具現化することができる。種々の実施形態を比較する目的で、これらの実施形態の特定の態様および利点を説明する。必ずしもこのような態様または利点の全てが、任意の特定の実施形態により達成されるわけではない。このため、例えば、種々の実施形態は、本明細書で教示されまたは示唆されうるような他の態様または利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示する1つの利点または利点群を達成しまたは最適化するように実施可能である。
【0015】
以下の詳細な説明において、本開示の一部を成す添付の図面を参照する。詳細な説明、図面および特許請求の範囲に記載する例示的な実現形態は、限定を意味するものではない。本明細書で提示する主題の精神または範囲から逸脱することなく、他の実現形態を利用することができ、他の変更を行うことができる。本明細書で一般的に説明し、図面に示す本開示の態様は、広範な種々の構成で配置し、置換し、組み合わせ、設計することができ、その全てが明示的に企図されたものであって本開示の一部を成すことが容易に理解されるであろう。
【0016】
本明細書で使用する用語は、特定の実現形態を説明する目的のためのみのものであり、本開示の限定を意図するものではない。特定の数の特許請求の範囲の構成要素が意図される場合、このような意図は特許請求の範囲において明示的に列記され、当該列記がない場合、このような意図は存在しないことが理解されるであろう。例えば、本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、特に断らない限り、複数形も含むことが意図される。本明細書で使用する場合、「および/または」なる用語は、関連する列記された項目のうちの1つ以上の任意の組み合わせおよび全ての組み合わせを含む。本明細書で使用する場合、「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」、および「含んでいる(including)」なる用語は、記述された特徴、整数、ステップ、動作、構成要素および/またはコンポーネントの存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、構成要素、コンポーネントおよび/またはこれらの群の存在または追加を排除しないこともさらに理解されるであろう。構成要素のリストに続く場合、「~のうちの少なくとも1つ」などの表現は、構成要素のリスト全体を修飾し、リストの個々の構成要素を修飾するものではない。
【0017】
高効力薬剤(例えば、長時間作用型ペプチド、タンパク質およびオリゴヌクレオチド)は、一般的には、注射送達手段により投与される。他の送達方法では、注射より薬剤のより低い生物学的利用能および/またはより高い薬剤送達(例えば、速度、量など)の変動がもたらされる場合がある。このような変動により、薬剤のコストがより高くなりまたは安全性および/または有効性が低下する場合がある。
【0018】
注射の頻度および/または関連する患者のコストを最小限に抑えるために開発される長時間作用型製剤は、高い抗力および/または変動する効力を有することができる。このため、長時間作用型製剤は、一般的には、注射、例えばデポー製剤により投与される。このような注射は、典型的な注射より痛みを伴う場合がある。このような注射は、一般的な注射より大きな針を含む場合があるためである。一旦注入が行われると、(取り除くことができるパッチとは異なり)有害反応がある場合でも注入された材料を除去する手段がない。注射部位反応も起こる場合もある。このような注射は、より小さいサイズの針による注射よりコンプライアンスが低下する場合がある。このため、患者のコンプライアンスを改善するために、長時間作用型製剤のための無針および無痛の送達および/または投与手段が望ましい。また、無針および無痛の送達手段であっても、副作用のリスクを低下させるために、十分に制御されるべきである。
【0019】
微細穿孔(例えば、レーザー、RFおよび/または加熱要素を使用する)は、細孔の数、パルス持続時間(細孔の質)および処理領域の変化に基づいて制御することができる。しかしながら、皮膚における変動(例えば、異なる患者間、患者の身体における異なる箇所間、患者の環境、患者の皮膚の特徴など)により、異なる状態または患者において、(実装される微細穿孔方法にかかわらず)微細孔形成に差異を生じる場合がある。このような差異により、微細穿孔の公知の方法と併せて経皮パッチを使用しても、無効で、一貫性がなく、安全でなく、かつ/または変動する薬剤送達がもたらされる場合がある。
【0020】
微細穿孔の一実施形態は、微細孔を形成するために、熱切除を利用する。本開示で提供する例示ではこのような熱切除による微細穿孔に焦点を当てている場合があるが、本明細書に記載するシステムおよび方法は、他の微細穿孔方法およびシステム(例えば、RF、レーザーなど)にも等しく適用される。
【0021】
皮膚の穿孔の間、皮膚は、金属フィラメントを通して皮膚内に電気エネルギを導入することにより高温にされた金属フィラメントを使用して切除される。皮膚へのエネルギの迅速な導入により、皮膚の外層の温度が急速に上昇し、皮膚の少なくとも一部が切除される。即時切除により、角質層(皮膚により保護された身体内への異物の侵入および体液の喪失を防止する皮膚の最も外側の保護層)が皮膚から除去されることが保証される。角質層の除去により、金属フィラメントを通して皮膚内に導入されるエネルギに比例する深さを有する開口(すなわち、細孔)が提供される。
【0022】
金属フィラメントを通して導入されるエネルギが十分に大きく、十分に迅速に送達される場合、角質層を切除することにより、表皮(水性であり、処方された活性医薬成分のためのコンジットとして作用することができる皮膚の層)が露出される。より多くのエネルギを皮膚内に導入することにより、より多くの表皮(すなわち、水分)が蒸発し、より深い細孔がもたらされる。より深い細孔により、処方された活性医薬品のより高い流動速度が促進されまたは提供され、これにより、皮膚を介して処方された活性医薬品の十分に望ましい供給または濃度が提供されるであろう。
【0023】
微細穿孔薬剤送達システムの基本的な構成は当業者に公知であり、このため、本明細書においてさらに詳述する必要はない。例えば、経皮透過性物質送達システムは、米国特許第8116860号明細書に記載されており、この特許は、特に、このような微細穿孔薬剤送達システムの種々の特徴を説明する目的で、参照により本明細書に組み込まれる。そこに記載されているように、米国特許第8116860号明細書の微細穿孔薬剤送達システム(当該文献では、参照符号「10」を使用して言及されている)は、患者の皮膚内に1つ以上の経路または微細孔を形成するように構成されたフィラメントアレイ(当該文献では参照符号「70」を使用して言及されている)と、少なくとも1種の製剤を含有する1つ以上の経皮パッチ(当該文献では参照符号「100」を使用して言及されている)とを含む基本的機構を備える。このような基本的機構を備える他の類似の微細穿孔薬剤送達システムは、当業者に公知である。このような基本的機構を有する種々の微細穿孔薬剤送達システムは、当業者に公知であり、本明細書で提供された教示により導かれた当業者により使用されまたはこの使用に適合されうる。
【0024】
幾つかの実施形態では、微細穿孔装置を、1つ以上のフィラメントにより皮膚内に形成される経路(例えば、微細孔)の総面積と、経路を形成するために1つ以上のフィラメントに送達される総エネルギとにより規定することができる。幾つかの実施形態では、微細穿孔装置は、皮膚内の経路の総面積が皮膚1平方センチメートル(cm)当たり約1~20%となるように、経路を形成する。幾つかの実施形態では、皮膚内の経路は、好ましくは、微細穿孔装置に露出された皮膚1平方センチメートル当たり、皮膚の約1.25~10%を含むことができる。幾つかの実施形態では、皮膚の1.25~10%/cm2の割合により、一定の分子量または特定の範囲の分子量を有する製剤に効果的な薬剤送達が提供される。幾つかの実施形態では、1つ以上のフィラメントに送達される総エネルギは、皮膚の経表皮水分損失(TEWL)値に基づいて、形成される経路の特性に相関する。
【0025】
幾つかの実施形態では、経路を形成するために1つ以上のフィラメントに送達されるエネルギは、0.0067μJ/μm3~0.0400μJ/μm3の範囲にあることができる。1つ以上のフィラメントに送達されるエネルギを、送達される一貫した経路を形成するのに十分なエネルギのために、2~12ミリ秒(ms)のパルスで送達することができる。
【0026】
皮膚を通して、例えば、経皮パッチから薬剤を効率的かつ安全に送達する経路の特徴は、in vitroでの実施形態とin vivoでの実施形態との間で変化しうる。が例えば、幾つかの実施形態では、1つ以上のフィラメントにより、2mJ/フィラメント~12mJ/フィラメントのエネルギが、2ms~16msのパルスの間、1つ以上のフィラメントに印加される場合、経路が形成される。幾つかの実施形態では、経路を形成するために1つ以上のフィラメントに印加されるエネルギは、2mJ/フィラメント~8mJ/フィラメントまたは3mJ/フィラメント~6mJ/フィラメントであり、パルスの持続時間は、2ms~12msである。このような実施形態では、1つ以上のフィラメントは、ステンレス鋼を含むことができまたは実質的にステンレス鋼製であることができ、2mJ/フィラメント~12mJ/フィラメントに対して300000μm3の体積(V)(0.0067μJ/μm3~0.0400mJ/μm3)を有する。幾つかの実施形態では、フィラメントアレイに配置された1つ以上のフィラメントにより、生体膜(例えば、皮膚)1cm2当たり20~500経路を形成することができる。この生体膜は、1つ以上のフィラメントに曝される。幾つかの実施形態では、フィラメントアレイに配置された1つ以上のフィラメントにより、皮膚1cm2当たり50~400経路を形成することができる。この皮膚は、1つ以上のフィラメントに曝される。
【0027】
幾つかの実施形態では、1つ以上のフィラメントにより形成される全ての経路の累積(または合計)深さは、1つ以上のフィラメントに曝される皮膚1平方センチメートル当たり約2500~30000μmである。幾つかの実施形態では、1つ以上のフィラメントにより形成される全ての経路の累積または合計体積は、皮膚1平方センチメートル当たり約0.05~0.35mm3である。
【0028】
幾つかの実施形態では、経皮パッチは、微細穿孔装置により形成される経路と併せて、身体への製剤の最適な薬剤放出および拡散を増強する1つ以上の特性を有することができる。例えば、経皮パッチは、次の特徴、すなわち
・少なくとも繊維を含むポリマーマトリクス;
・不織繊維を含むポリマーマトリクス;
・フィルムと繊維との積層材料を含むポリマーマトリクス;
・200μm未満または300μm未満の厚さを有する繊維を含むポリマーマトリクス;
・20g/m2未満または100g/m2未満の繊維重量を含むポリマーマトリクス;
・約0.01~20mg/cm2の重量を含む浸透性物質;および/または
・20mg/cm2未満の保水能力を含む浸透性物質、
のうちの1つ以上を含むことができる。
【0029】
本明細書に記載する微細穿孔装置および経皮パッチに対する改善により、微細穿孔薬剤送達システムが制御された様式で長時間作用型薬剤の送達を効果的かつ安全に提供することが可能となる。本明細書に記載する微細穿孔薬剤送達システムの実施形態は、改善された患者コンプライアンスおよび強化された薬剤送達能力を提供することができる。また、微細穿孔薬剤送達システムの実施形態は、制御されていない送達により引き起こされる有害作用のリスクの低減を提供することもでき、患者のための薬剤の開発条件およびコストを低減することもできる。また、微細穿孔薬剤送達システムの実施形態は、患者が選択した場所で、患者による対応する薬剤の無痛かつ無針の自己投与も可能にし、これは、コンプライアンスの改善およびコストの低減(医療専門家への訪問回数の低減)をもたらす。本明細書に記載する微細穿孔薬剤送達システムの実施形態は、個々の薬剤送達結果の変動がより少なく、広範な皮膚の種類、状態などを有する患者に使用することができる。微細穿孔薬剤送達システムの実施形態は、とりわけ、広範な各種の製剤、例えば、高効力薬剤、高分子量薬剤および生物学的製剤と共に機能させることができる。また、微細穿孔薬剤送達システムの実施形態は、効率的かつ制御された様式で(現在の経皮パッチと比較して)より高い利用率で薬剤の送達も可能にし、患者の身体における薬剤の生物学的利用能を改善する。
【0030】
図1は、微細穿孔薬剤送達システム(例えば、米国特許第8116860号明細書の微細穿孔薬剤送達システム10)の制御ユニット110の機能ブロック図である。制御ユニット110は、本明細書に記載する種々の方法を実装し、微細穿孔薬剤送達システムの1つ以上のフィラメント(例えば、米国特許第8116860号明細書のフィラメントアレイ70)に制御および電力を提供することができるハードウェアデバイスまたは回路の例である。幾つかの実現形態では、制御ユニット110は、
図1に示された各コンポーネントを含まない。幾つかの実現形態では、制御ユニット110は、
図1に示されていない追加のコンポーネントを含む。
【0031】
制御ユニット110は、制御ユニット110の動作を制御するプロセッサ112を含む。プロセッサ112を、中央処理装置(CPU)またはハードウェアプロセッサとも称する場合がある。制御ユニットは、メモリユニット114をさらに含む。メモリユニット114は、読み出し専用メモリ(ROM)およびランダムアクセスメモリ(RAM)の両方を含むことができ、プロセッサ112に命令および/またはデータを提供することができ、プロセッサ112からの命令および/またはデータを記憶するためのリポジトリとして機能することができる。また、メモリユニット114の一部は、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)も含むことができる。プロセッサ112は、典型的には、メモリユニット114内に記憶されたプログラム命令または受信された命令および/またはデータに基づいて、論理演算および算術演算を実行する。メモリユニット114内の命令は、本明細書に記載する方法を実施するために実行可能であってよい。さらに、以下に記載する特定の方法の使用が可能となるように、制御ユニット110は、メモリユニット114を利用して、微細穿孔薬剤送達システム内の他のコンポーネントに関する情報、例えば特定の設定値および/または微細穿孔薬剤送達システム内のコンポーネントについての動作特性を記憶することができる。ついで、制御ユニット110は、メモリユニット114に関連してプロセッサ112を利用して、記憶されたデータを分析し、微細穿孔薬剤送達システム内の1つ以上の他のコンポーネントについての種々のセット、カテゴリ、特性またはその他のものを決定し、かつ/または識別することができる。
【0032】
プロセッサ112は、1つ以上のプロセッサで実装される処理システムのコンポーネントを含んでよく、または当該コンポーネントであってもよい。1つ以上のプロセッサを、汎用マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、コントローラ、状態機械、ゲートロジック、別個のハードウェアコンポーネント、専用ハードウェア有限状態機械、または情報の計算もしくは他の操作を実行することができる任意の他の適切なエンティティの任意の組み合わせにより実装することができる。
【0033】
また、処理システムは、ソフトウェアを記憶するための非一時的機械可読媒体を含むことができる。ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語などと称されるかどうかにかかわらず、任意のタイプの命令を意味するように広く解釈されるべきである。命令は、コード(例えば、ソースコードフォーマット、バイナリコードフォーマット、実行可能コードフォーマット、または任意の他の適切なフォーマットのコード)を含むことができる。命令は、1つ以上のプロセッサにより実行される際に、本明細書に記載する種々の機能を処理システムに実行させるためのものである。プロセッサ112は、動作およびデータ通信を制御するためのパケットを生成するためのパケット生成器をさらに備えることができる。
【0034】
制御ユニット110は、ネットワークコンポーネント、例えば、制御ユニット110と遠隔地または遠隔デバイスとの間でデータの送受信を可能にする送信器116および受信器118を含むことができる。送信器116および受信器118を、トランシーバまたはネットワークインタフェース120に組み込むことができる。ネットワークインタフェース120(および/または送信器116および受信器118)は、無線または有線の通信リンクを備えることができる通信リンク122を介して通信することができる。幾つかの実現形態では、通信リンク122は、制御ユニット110および/または微細穿孔薬剤送達システムの使用の監視および/または追跡に使用されるモバイルデバイスまたは他のユーザデバイスへのリンクを備えることができる。ネットワークインタフェース120は、プロセッサ112と共に動作して、通信リンク122を介して通信する。
【0035】
制御ユニット110は、ハウジングユニットまたは格納装置124により覆われている。ハウジングユニット124は、制御ユニット110および/または微細穿孔装置101のコンポーネントを環境から保護し、取り扱いが安全でありかつユーザの使用が容易で便利なパッケージを提供する。
【0036】
また、制御ユニット110は、1つ以上のエネルギ蓄積装置126も含む。エネルギ蓄積装置126は、1つ以上のバッテリ、キャパシタまたは類似のエネルギ蓄積コンポーネントを備えることができる。エネルギ蓄積装置126は、制御ユニット110の動作中(例えば、微細穿孔薬剤送達システムにおいて動作中)に、制御ユニット110のコンポーネントにエネルギを提供する。
【0037】
幾つかの実現形態では、制御ユニット110は、制御ユニット110の1つ以上のコンポーネントの動作または状態を監視するように構成された1つ以上の回路またはセンサ128を含む。例えば、センサ128は、エネルギ蓄積装置126の充電状態および/または正常状態を検出することができる。付加的にかつ/または代替的に、センサ128は、制御ユニット110の誤動作を示す制御ユニット110の1つ以上のコンポーネントの状態を検出することができる。例えば、センサ128は、1つ以上のフィラメントが「溶断された」かまたは開回路状態にあるかもしくは劣化して開回路状態に近づいている時点を検出することができる。代替的にまたは付加的に、センサ128は、過度に高いもしくは過度に低い電圧もしくは電流がフィラメントに伝達されている時点および/またはフィラメントの温度が所望の閾値を上回る、下回るもしくは所望の閾値にある時点を検出することができる。幾つかの実現形態では、センサ128は、プロセッサ112の動作を監視するように構成されていることができる。センサ128が、過電圧もしくは過温度状態を検出した場合またはプロセッサ112が非応答であると判定した場合には、センサ128は出力を生成することができる。幾つかの実現形態では、センサ128からの出力を、送信器116またはネットワークインタフェース120を介して、通信リンク122上で通信することができる。幾つかの実現形態では、センサ128からの出力を、制御ユニット110の別のコンポーネント、例えば、プロセッサ112または以下でさらに記載するユーザインタフェース132に内部通信することができる。
【0038】
幾つかの実現形態では、制御ユニット110が初期化された時および/または微細穿孔薬剤送達システムが起動した時、センサ128は、全ての接続が適切であり、微細穿孔薬剤送達システムの全てのコンポーネントが適切な動作状態にあることを保証するために、初期チェックを実行する。したがって、制御ユニット110は、微細穿孔薬剤送達システムの初期チェックを実行して、何らかの誤動作が存在するか否かを判定することができる。制御ユニット110内でまたは制御ユニット110により誤動作が検出されない場合には、制御ユニット110は、フィラメントに電流を提供し始める。誤動作が検出された場合には、制御ユニット110は、フィラメントへの電流の提供を防止することができる。したがって、センサ128は、安全回路内で機能するかまたは安全回路として作動し、誤動作状態での微細穿孔薬剤送達システムの動作を防止することができる。
【0039】
幾つかの実施形態では、センサ128および/またはプロセッサ112は、導電性部材の温度を監視することができる。プロセッサ112は、フィラメント破損を防止するために、導電性部材の温度をさらに制御することができる。ここで、フィラメント破損は、1つ以上のフィラメントを溶融させるまたは開回路状態にする。幾つかの実施形態では、温度は、導電性部材の抵抗を識別するセンサ128に基づいて測定される。ここで、フィラメント破損を防止するために温度を制御することは、導電性部材が皮膚表面および空気の少なくとも一方と接触している間、フィラメント破損を防止するために、温度を制御することを含む。
【0040】
また、制御ユニット110は、電流発生器130も含む。電流発生器130は、本明細書に記載しているように、フィラメントを介して通信される電流信号を発生させる。幾つかの実現形態では、電流信号は、1つ以上のパルスを含む。幾つかの実現形態では、このパルスは、フィラメントの温度を制御し、皮膚に細孔を形成するために、1つ以上の持続時間、振幅などを有するように変更される。幾つかの実現形態では、電流信号は、周期的パルスまたは一定の振幅および周波数信号であることができる。例えば、電流発生器130は、制御ユニット110を介して、異なる期間の間に異なる特性でフィラメントアレイ104に伝達される電流信号を発生させることができる。第1の期間の間または第1の持続時間の間、第1のセットの属性、例えば単一のパルスまたは一定の振幅を有する電流信号を発生させることができる。第2の後続の期間の間、第2のセットの属性、例えば特定の周期および特定の振幅を有する電流信号を発生させることができる。
【0041】
幾つかの実現形態では、センサ128またはプロセッサ112からのコマンドを使用して検出された状態に基づいて、プロセッサ112は、電流信号の発生および電流信号のフィラメントへの伝達を可能にしまたは中断する。幾つかの実現形態では、電流信号の発生および伝達を中断することは、電流信号を終了させることまたは電流信号を低減することを含む。
【0042】
幾つかの態様では、制御ユニット110は、ユーザインタフェース132をさらに備える。ユーザインタフェース132は、キーパッドおよび/またはディスプレイを備えることができる。ユーザインタフェース132により、ユーザが制御ユニット110および/または微細穿孔薬剤送達システムの動作を制御することが可能となる。ユーザインタフェース132は、制御ユニット110のユーザに情報を伝達しかつ/またはユーザから入力を受け取る、任意の構成要素またはコンポーネントを含むことができる。
【0043】
制御ユニット110は、入出力(I/O)回路コンポーネント134をさらに備える。幾つかの実現形態では、I/O回路134は、微細穿孔薬剤送達システム内の1つ以上の他のコンポーネント、例えばフィラメントへの制御ユニット110の接続を可能にするコンポーネントを備えることができる。幾つかの実施形態では、I/O回路134は、制御ユニット110を他のコンポーネントに物理的に接続するコネクタ(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)コネクタ、専用コネクタまたは任意の他のコネクタ)を含む。幾つかの実現形態では、I/O回路134は、制御ユニット110および/または他のコンポーネント間の不適切な接続を検出するコンポーネントを備える。
【0044】
制御ユニット110の種々のコンポーネント同士を、バスシステム136により接続することができる。バスシステム136は、データバス、ならびにデータバスに加えて、例えば電力バス、制御信号バスおよびステータス信号バスを含むことができる。当業者であれば、制御ユニット110の種々のコンポーネント同士を接続しまたは何らかの他の機構を使用して、互いに入力を受容しもしくは提供することができることを理解するであろう。
【0045】
多数の別個のコンポーネントが
図1Bに示されているが、当業者であれば、これらのコンポーネントの1つ以上を、上記の機能に関してだけでなく、他のコンポーネントに関して上記の機能の実装のためにも使用可能であることを認識するであろう。例えば、プロセッサ112を、プロセッサ112に関して上記の機能の実装のためだけでなく、電流発生器130および/またはセンサ128に関して上記の機能の実装のためにも使用することができる。
図1Bに示されている各コンポーネントを、複数の別個の構成要素を使用して実装することができる。
【0046】
幾つかの実施形態では、制御ユニット110の1つ以上のコンポーネントは、微細穿孔薬剤送達システムを乱用しまたは不適切に使用することができないように、制御ユニット110のロックを提供することができる。付加的にまたは代替的に、制御ユニット110の1つ以上のコンポーネントは、微細穿孔薬剤送達システムの使用回数または微細穿孔薬剤送達システムにより提供される用量をカウントしかつ/または次回の用量に関する注意を提供することができる。幾つかの実施形態では、ネットワークインタフェース120を、必要に応じて、処方された医薬品の補充に関して医師もしくは薬局と通信する、または用量を変更する、などに使用することができる。幾つかの実施形態では、ユーザインタフェース132は、微細穿孔薬剤送達システムのパーソナライズ化を提供し、音声プロンプト、誘導灯などを提供して、微細穿孔薬剤送達システムの操作を単純化することができる。
【0047】
微細穿孔薬剤送達システムでは、制御ユニット110の電流発生器130により発生され、フィラメントアレイ104に印加される電流信号により、フィラメントアレイ104が加熱され、電流信号は、エネルギ/熱送達媒体として作用する。フィラメントアレイ104は、皮膚の少なくとも表面(すなわち、角質層)を切除するのに十分な量のエネルギ/熱を皮膚に提供する。幾つかの実施形態では、フィラメントアレイ104により皮膚に伝達されるエネルギ/熱の量は、フィラメントアレイ104に送達される電流を変化させることによりまたはフィラメントアレイ104がエネルギを皮膚に伝達する時間量を変化させることにより変化する。例えば、電流発生器130は、フィラメントアレイ104がエネルギを皮膚に伝達する時間量を変化させることができる。幾つかの実施形態では、この時間量を、フィラメントアレイ104が皮膚と接触している時間量を変化させることによりかつ/またはフィラメントアレイ104に送達される電流のパルス長を変化させることにより変化させることができる。例えば、電流発生器130は、電流信号のパルス長を変化させることができる。皮膚切除を実行するために、フィラメントアレイ104に印加される電流は、フィラメントアレイ104の温度を、角質層および表皮の融点を超えるがフィラメントアレイ104の融点未満である温度とすることができる。種々の実施形態では、フィラメントアレイ104のための目標温度が存在しうる。幾つかの実施形態では、フィラメントアレイ104による切除のための目標温度は、約123℃であってよい。他の実施形態では、フィラメントアレイ104による切除のための目標温度は、例えば、123℃の1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃または10℃以内であることができる。幾つかの実施形態では、フィラメントアレイ104による切除のための目標温度は、123℃超であってよい。
【0048】
図2Aは、微細穿孔薬剤送達システムのフィラメントアレイ104のフィラメント200の斜視図である。示しているように、フィラメント200は、3次元形状を有し、高さ202、長さ204、および幅206を有する。フィラメント200は、導電性材料(例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、フェライトまたは別の金属もしくは類似の、抵抗性であるが絶縁性ではない材料)から形成されるかまたはこれを含む。幾つかの実施形態では、フィラメント200は、マイクロフィラメントまたは類似のフィラメントであることができる。例えば、フィラメント200は、幅50μm、厚さ15μm、および長さ400μmであることができる。示されているフィラメント200は、概ね矩形のブロックまたはプリズムの形状を有するが、フィラメント200は、任意の他の形状、例えば台形形状を有することができる。
【0049】
種々の要因が、フィラメント200に送達され、皮膚に伝達されて、経路を形成するエネルギのバランスに影響を及ぼす。例えば、フィラメントアレイ104のフィラメント200は、フィラメント200から皮膚に十分なエネルギ伝達して、角質層を切除し、表皮を露出させることにより、皮膚に経路を形成することができる。フィラメント200から皮膚に伝達されるエネルギの量は、皮膚とフィラメント200との間の温度差、フィラメント200の材料、皮膚の特性(例えば、皮膚の種類、形態、弾性、水和性、皮膚層の熱力学的パラメータ)に基づくことができ、また、フィラメント200と皮膚との間の接触/圧力にも基づくことができる。幾つかの実施形態では、フィラメント200と皮膚との間の接触力を大きくするために、真空を使用することができる。例えば、フィラメントアレイ104は、真空に接続されると、皮膚を孔または構造に向かって「吸引」し、フィラメント200と皮膚との間の接触を大きくする孔または他の構造を含むことができる。伝達されるエネルギの量は、フィラメント200を通して伝達される電気信号(例えば、電流、電圧、波形などのうちの1つまたは両方)に基づく場合もある。また、フィラメントアレイ104のフィラメント間の距離も、伝達されるエネルギの量に影響を及ぼす場合がある。識別された電気的パラメータまたは要因が、エネルギ/熱の供給に寄与する場合がある。一方、機械的パラメータは、エネルギ/熱の低減を規定する場合がある。フィラメント200の電気抵抗は、少なくとも部分的に、フィラメント200に使用される材料およびフィラメントの形状により定まる場合があり、フィラメント200により供給されるエネルギに影響を及ぼす。
【0050】
幾つかの実施形態では、制御ユニット110は、例えば、センサ128および/またはプロセッサ112を介して、導電性部材(例えば、フィラメントアレイ104)により皮膚表面に加えられた圧力が第1の圧力閾値以上であるかどうかを判定することができる。
【0051】
図2Bは、断面208および電流方向210を示す、
図2Aのフィラメント200の斜視図である。示しているように、断面208は台形であり、電流は、電流方向210にフィラメント200を流れる。ただし、断面208は、任意の形状(例えば、正方形、長方形、円形、楕円形、三角形、別の多角形など)であることができ、電流は、フィラメント200の断面208に対して実質的に垂直な方向であることができる。フィラメント200および断面208を流れる電流に基づいて、電流密度/流動を、次の等式1、すなわち
電流密度=I/A
(等式1)
式中、
・I-フィラメント200を流れる電流、および
・A-フィラメント200の断面積、
に従って決定することができる。
【0052】
等式1に基づいて、フィラメント200の断面積が大きくなるにつれて、電流密度を維持するために、対応する電流を増大させなければならない。フィラメント200の長さが長くなるにつれて、フィラメント200の抵抗は大きくなり、フィラメント200の増大した質量に対して電圧および電力を増大させる場合がある。
【0053】
フィラメント200の電流密度を使用して、以下でさらに詳細に記載するように、痛みを与えずまたはフィラメントアレイ104に損傷を与えずに、実行可能な細孔を形成するフィラメントアレイ104の動作範囲を識別することができる。皮膚に形成される細孔の深さは、フィラメント200を介して皮膚に送達されるエネルギに比例する。
【0054】
幾つかの実施形態では、制御ユニット110は(例えば、プロセッサ112を介して)、フィラメント200の断面積に対する電流信号の供給比を決定する。さらに、制御ユニット110は、供給比を第1の閾値と、第1の閾値より大きい第2の閾値との間で制御する。
【0055】
図3Aは、
図2Aおよび
図2Bの複数のフィラメント200を備えた微細穿孔薬剤送達システムの代表的なフィラメントアレイ104の上面図である。フィラメントアレイ104は、導電性支持部材または構造300の間に配設された複数のフィラメント200を含む。
図3Aには示されていないが、導電性支持部材300は、電源に接続されていてよい。
【0056】
幾つかの実施形態では、導電性支持部材300は、銅または類似の導電性材料製である。幾つかの実施形態では、導電性支持部材300は、フィラメント200とは異なる材料から成る。
図3Bに示しているように、導電性支持部材300aは、フィラメント200a~200k(ここで、1<kである)を中間に配設したフィンガまたは類似の突出部301を含む。図示していないが、対応する導電性支持部材は、導電性支持部材300aのフィンガ301およびインタリーブされたフィンガ301と共に存在することができる。
【0057】
導電性支持部材300は、フィラメント200を導電性支持部材300のフィンガの間の適所に保持することにより、フィラメント200に構造的支持を提供する。付加的にかつ/または代替的に、導電性支持部材300は、フィラメント200を電源に導電的に接続する。
【0058】
幾つかの実施形態では、フィラメント200がエネルギを皮膚に伝達する時間量を制御しまたは変化させるために微細穿孔薬剤送達システムの1つ以上のコンポーネントを使用することは、フィラメント200を通して伝達される電流を制御することよりも単純かつ効率的でありうる。例えば、このような時間量の制御により、フィラメント200に送達される電流を制御しまたは変化させるシステムより利用するコンポーネントを少なくすることができる。一方、フィラメント200がエネルギを皮膚に伝達する時間量を制御しまたは変化させた場合、制御ユニット110は、皮膚の最上層(例えば、角質層および/または表皮)を加熱しかつ/または損傷させもしくは乾燥させうる皮膚の温度の緩慢な上昇を防止することができる。皮膚の最上層のこのような加熱および/または乾燥により、皮膚の壊死した組織の炭化/乾燥層が形成されてしまう。この壊死した組織の層は、フィラメント200から皮膚のより深い層(例えば、表皮)への熱分布を妨げる場合があり、処方された活性医薬品の送達のための実行可能な細孔の形成を妨げる場合がある。さらに、皮膚の最上層の加熱および/または乾燥(すなわち、皮膚の熱への暴露)は、痛みを引き起こすまたは痛みと捉えられる、皮膚における神経反応を誘発する場合がある。したがって、熱パルスの持続時間またはフィラメント200が皮膚と接触する持続時間は、皮膚の最上層を加熱しまたは乾燥させるであろう時間未満である。
【0059】
さらに、フィラメントを通して電流を増大させることにより、フィラメントを通る比較的低い電流と比較して、より短い期間でフィラメントが目標温度に達する(すなわち、より素早く加熱される)ことが可能となる。また、電流の増大により、所望の細孔径の形成に必要な時間が短縮され、このため、熱に対する神経反応のリスクを低減しまたは排除し、切除に関連する痛みを低減しまたは排除する。
【0060】
電流発生器130および制御ユニット110が、フィラメントアレイ104に大電流を供給すると、フィラメント構造104内の個々のフィラメント200は急速な温度上昇を受ける。フィラメント200(および対応するフィラメントアレイ104)のこの温度上昇により、目標細孔径の形成に必要な時間を短縮することができる。このため、加熱および/または乾燥による熱に対する神経反応のリスクを低減しまたは排除し、切除に関連する痛みを低減しまたは排除することができる。
【0061】
上記のように、フィラメントアレイ104内のフィラメント200は、エネルギ/熱を導電性支持部材300に接続されている電源(例えば、
図1の制御ユニット110)から皮膚に伝達する。各フィラメント200は、皮膚へのエネルギ/熱伝達に影響を及ぼしうる1つ以上の特性を有する。例えば、フィラメント200は、フィラメントに使用される材料およびフィラメントの機械的形状に応じた電気抵抗を有する。フィラメントに供給されるエネルギおよびフィラメントにより供給されるエネルギの量は、フィラメント200に印加される電流(すなわち、電流発生器130により発生される電流に基づく)、フィラメント200の電気抵抗、およびフィラメントのサイズに基づいている。フィラメントに供給されるエネルギは、次の等式2および等式3を使用して計算することができる。すなわち、
E=P
*t=I
*U
*t=I
2*R
f
*t=U
2/R
f
*t
(等式2)
R
f=ρ
*l/(w
*h)
(等式3)
式中、
・E-エネルギ、
・P-電力、
・t-時間、
・I-フィラメント200を流れる電流、
・U-フィラメント200端部での電圧、
・R
f-フィラメント200の抵抗、
・ρ-フィラメント200の固有材料抵抗、
・l-フィラメント200の長さ、
・w-フィラメント200の幅、および
・h-フィラメント200の高さ(厚さ)
である。
【0062】
フィラメントアレイ104に供給されるエネルギおよびフィラメントアレイ104により供給されるエネルギの量は、フィラメントアレイ104に印加される電流(すなわち、電流発生器130により発生された電流に基づく)およびフィラメントアレイ104の全体的な抵抗に基づいている。フィラメントアレイ104の全体的な抵抗は、フィラメントアレイ104のフィラメント200を平均することにより決定される。フィラメントアレイ104に供給されるエネルギおよびフィラメントアレイ104により供給されるエネルギは、次の等式4および等式5を使用して算出することができる。すなわち、
E=P*t=I*U*t=I2*Ra
*t=U2/Ra
*t
(等式4)
Ra=Rf/Nfb
*Nb
(等式5)
式中、
・E-エネルギ、
・P-電力、
・t-時間、
・I-フィラメントアレイ104を流れる電流、
・U-フィラメントアレイ104コンタクトでの電圧、および
・Ra-(バンク構成およびアレイ構成に応じた)フィラメントアレイ104の平均抵抗、
である。
【0063】
図3Bは、1つ以上のフィラメント破損302および304を受けている
図3Aのフィラメントアレイ104の上面図である。フィラメントアレイ104のフィラメント200の1つ以上が損傷しかつ/または破壊された場合、フィラメント破損が生じ、その結果、損傷しまたは破壊されたフィラメント200は、発生させた電流を電流発生器130から皮膚へ伝導させることができなくなる。例えば、フィラメント200のうちの1つが切断されまたは破壊されまたは溶融し、その結果、フィラメント200が導電性支持部材300の2つのフィンガ301を接続しない場合、当該フィラメント200は、破壊されているかまたは溶断されているかまたは他の状態で破損していることになる。したがって、破損状態にあるとき、フィラメント200は、導電性支持部材300のフィンガ301間の開回路として有効に作用する。フィラメント破損302および304は、破損したフィラメント200が接続されている導電性支持部材300の各フィンガ301間に導電性経路をもはや提供しない個々の破損したフィラメント200に対応する。
【0064】
幾つかの実施形態では、2つのフィンガ301間のフィラメントバンク内のフィラメント200のうちの1つの破損により、フィラメント破損のカスケードが引き起こされる場合がある。例えば、フィラメントバンク1内の第1のフィラメント200aが破損した場合、フィラメントバンク1内の残りのフィラメント200は、破損したフィラメント200aを通る経路の損失のために、電力流の増大を受ける。フィラメントバンク1内の残りのフィラメント200を通るこの電力流の増大により、残りのフィラメント200のうちの1つ以上が同様に破損するリスクが高まる。フィラメント200aのみの破損では、フィラメントバンク1の残りのフィラメント200におけるカスケード(アバランシェ)効果は開始されないかもしれないが、バンク1における相当数のフィラメント200(例えば、バンク1におけるフィラメント200の約5%)が破損した場合、フィラメント破損のカスケードが生じうる。したがって、最終的には、バンク1内の全てのフィラメント200が破損し、完全なカスケード破損または開放破損が生じるであろう。最初のフィラメント破損と結果として生じる完全なカスケード破損との間で経過する時間量は、以下に記載する3つの手法のうちの1つでは放散されないフィラメント200に供給される電流/エネルギの量により定められる。
【0065】
幾つかの実施形態では、フィラメント200は冷却され、これにより、フィラメント200に供給されたエネルギが放散される。このような放散を発生させる3つの方法は、(1)空気中への熱の放射、(2)フィラメントアレイ104(例えば、銅構造)への熱の伝導、および(3)皮膚への熱の伝導を含む。フィラメント200から空気中への熱の放射は、フィラメントアレイ104または皮膚への熱伝導と比較して、比較的僅かな熱放出である。したがって、放射熱損失は、一般的には無視することができる。
【0066】
導電性支持構造300(例えば、銅製)への熱の伝導(戻り)は、比較的大きい。導電性支持構造300が実質的に金属であり、一般的には熱を伝導するためである。導電性支持構造300への伝導による熱損失の量は、物理学の熱法則および公知の材料特性を使用して定量化することができ、本明細書では詳細には説明しないものとする。
【0067】
上記のように、皮膚への熱伝導は、皮膚層の皮膚の種類、形態、弾性、水和性および熱力学的パラメータのうちの少なくとも1つ以上を含む皮膚の種々の特性によって定まり、またフィラメントアレイ104と皮膚との間の接触/圧力によっても定まる。皮膚の関連する特性は、穿孔中に変化する場合がある。皮膚の異なる層が、熱伝導に影響を及ぼす異なる特性を有するためである。例えば、乾燥した角質層(皮膚についての異なる実体の間で変化するコンシステンシおよび厚さを有する層状構造を有する)は、フィラメントアレイ104により切除されるにつれて、一般的にはより水和され、乾燥した角質層とは異なる特性を有する表皮が露出される。
【0068】
前述したように、フィラメント200の電気抵抗(ひいては温度)は、フィラメント200のサイズおよび/または形状ならびにフィラメント200に送達されるエネルギ(すなわち、電流発生器130から発生された電流)に比例する。種々のサイズ、形状およびエネルギに対応するために、上記の等式1により定義された電流密度を使用して、これらの関係を正規化することができる。等式1により定義された電流密度、フィラメント200の破損をもたらす動作制約、および角質層の切除をもたらす動作制約に基づいて、望ましい電流密度の範囲が定義される。電流密度の定義された範囲からフィラメント200に送達された場合に痛みを与えずまたはフィラメントアレイに損傷を与えずに、存続可能な細孔を形成する電流密度が識別される。
【0069】
ある期間中にフィラメント200に提供される全エネルギは、等式6、すなわち、
E=EWU+EM
(等式6)
式中、
・EWUは、ウォームアップパルス(例えば、フィラメント200の温度を、所望のダイナミクスまたは動作ダイナミクスを有する所望の温度または動作温度まで上げるパルス)で伝達されるエネルギである;
・EMは、維持パルス(例えば、フィラメント200を実質的に一定の温度レベル(例えば、所望の温度または動作温度)に維持し、したがってフィラメント200が受けるあらゆる熱損失を相殺するパルス)で伝達されるエネルギである;
によって定義される。
【0070】
EWUは、
・ρ-フィラメント200の材料の固有抵抗(温度依存性);
・T-フィラメント200が動作中に到達すべき動作温度または所望の温度;
・iQ-電流流動/密度(mA/μm2)-2乗(E=i2*R*t);
・l-フィラメント200の長さ;
・mまたはV-加熱される必要があるフィラメント200の質量または体積;および
・t-時間値または期間(例えば、WUパルス持続時間)
に比例する場合がある。
【0071】
EMは、等式7により定義される熱損失の合計を含む場合がある。すなわち、
EM=ES+ECT+ER+ECV
(等式7)
式中、
・ESは、皮膚(基質)内で失われる(伝導された)エネルギ(例えば、熱)であり;
・ECTは、フィラメントアレイ104のトレース(導電構造)内で失われるエネルギであり;
・ERは、失われるまたは放出されるエネルギであり;
・ECVは、対流により失われるエネルギである。
【0072】
ERおよびECVの値は、無視できるかまたは一般的には0であるため、EMは、一般的には、ECTおよびESの損失のみを補償する必要がある。これらの損失は、フィラメント200の抵抗による損失および/または皮膚に伝達されて経路を形成するエネルギの損失である場合がある(例えば、フィラメント200のトレースにおける損失と皮膚の水分(生きている組織)の蒸発との間で分配される)。ESは、
・ΔT-フィラメント200と皮膚(基材)との間の温度差;
・h-フィラメント200と皮膚との間の熱伝達係数;
・AS-フィラメント200と皮膚との間の接触の表面積;および
・t-維持パルスが「オン」またはアクティブである期間に対応する時間
に比例する場合がある。
【0073】
このため、EMは、フィラメント200の温度を実質的に一定レベルに維持するため、維持期間中にフィラメント200に伝達されるエネルギは、皮膚から蒸発した水の量に正比例する。したがって、EMは、皮膚からの水分の蒸発を決定する等式8に基づいて決定することができる。すなわち、
EM=i2*Rt
*T=(h*AS
*ΔT*t)+ECT
(等式8)
式中、
iは、フィラメント200当たりの電流であり;
RTは、平衡温度におけるフィラメント200の抵抗である。
【0074】
EMおよびECTの両方が時間依存性であるので、等式8を、等式9~等式11に示されるように、フィラメント200に伝達される電力として簡略化して表すことができる。すなわち
EM=i2*RT=(h*AS
*ΔT)+PCT
(等式9)
EM=(iQ
*A)2*(ρT
*l/A)=(h*AS
*ΔT)+PCT
(等式10)
EM=iQ
2*A*ρT
*l=(h*AS
*ΔT)+PCT
(等式11)
式中、
・ρTは、動作温度におけるフィラメント200の固有抵抗であり;
・Aは、フィラメント200の平均断面積であり;
・hは、2つの材料(例えば、フィラメント200および皮膚)間の熱伝達定数である。
【0075】
変数(h
*A
S
*ΔT)の組み合わせは、皮膚から水分を蒸発させるために、フィラメント200に伝達されるエネルギに対応する。hおよびΔTは、フィラメント200と皮膚との特定の組み合わせについて比較的一定でありうるため、フィラメント200の断面積(A
S)は、皮膚から蒸発した水分量および/または形成された経路の体積を高度に決定することができる。さらに、フィラメント200の体積が大きくなるにつれて、フィラメント200を介して送達され、皮膚に伝達されるエネルギが増大する。一方、幾つかの実施形態では、フィラメント200の体積を、微細穿孔薬剤送達システムを介して達成可能な機能的電流密度の範囲内に留まるように、その断面ではなく、フィラメント200の長さを長くすることにより大きくすることができる。さらに、フィラメント200の断面を大きくすることにより、経路の細孔径に寄与しないP
CTの損失を増大させる場合がある。幾つかの実施形態では、フィラメント200のより複雑かつより大きい断面により、エネルギ損失を低減しまたは小さく維持しながら、皮膚へのエネルギ伝達を増大させることができる。例えば、
図3Aおよび
図3Bのフィラメント200を使用すれば、A=w
*d(幅×厚さ)、A
S=w
*l(フィラメント200の底面でのみ皮膚と接触する)およびP
CTは、Aに比例する。このため、等式11は、次の等式12に簡略化することができる。すなわち、
E
M=i
Q
2*w
*d
*ρ
T
*l=(h
*w
*l
*ΔT)+(const
*w
*d
*ΔT)
(等式12)
である。
【0076】
幾つかの実施形態では、フィラメント200から皮膚への熱伝達は、フィラメント200の厚さには依存せず、皮膚に送達されるエネルギ(および結果として生じる経路の体積)は、フィラメント200の長さとしてより大きくなる。例えば、400ミクロンの長さおよび50ミクロンの幅および15ミクロンの厚さを有する400本のフィラメント200では、iQ=2.67mA/μm2の電流密度に基づいて、フィラメント200当たり約3mJが、最小限の実行可能な経路を形成するために使用される。幾つかの実施形態では、実行可能な経路は、2mJ/フィラメント~12mJ/フィラメント、2mJ/フィラメント~8mJ/フィラメントまたは3mJ/フィラメント~6mJ/フィラメントの印加エネルギにより、フィラメント200を使用して形成される(TEWL研究により実証されている)。このようなフィラメント200は、ステンレス鋼製であってよく、30000μm3の値を有し、その結果、2mJ/フィラメント~12mJ/フィラメントについて、0.0067μJ/μm3~0.0400mJ/μm3となる。幾つかの実施形態では、フィラメント200に印加されるエネルギとTEWLとの間の関係は線形である。さらに、異なるサイズのフィラメント200と同じサイズ体積のフィラメント200との比較から、フィラメント200の体積が同じであれば、フィラメント200の薬剤送達は同じにとどまることが示唆される。本明細書における分析に基づいて、微細穿孔装置101内のフィラメント200を加熱して、経路の形成にとって理想的なエネルギは0.0067μJ/μm3~0.0400μJ/μm3であることができ、ここで、Vはフィラメント200の体積である。
【0077】
例えば、フィラメントアレイ300aは、500ミクロン(μm)のフィラメント長、50μmのフィラメント幅、15μmのフィラメント厚さ、および2.67mA/μm2のiQ値を有する200本のフィラメントを備え、このフィラメントアレイ300aが所望の温度または動作温度に達するまでにかかる時間は約700~800msであり、所望の温度または動作温度に達するまでにフィラメント200当たり約2mJのエネルギを使用する。
【0078】
代替的にまたは付加的に、フィラメントアレイ300aが、400ミクロン(μm)のフィラメント長、50μmのフィラメント幅、15μmのフィラメント厚さおよび2.67mA/μm2のiQ値を有する400本のフィラメントを含む場合、このフィラメントアレイ300aが所望の温度または動作温度に達するまでにかかる時間は約700~800msであり、所望の温度または動作温度に達するまでにフィラメント200当たり約1.5mJのエネルギが使用されるであろう。
【0079】
図4は、微細穿孔薬剤送達システムのフィラメントアレイに、パルスを介して送達されるエネルギに対するTEWLの関係を示すパルスプロファイルを示すグラフ400および約400の経路を形成した高出力アプリケータ(HPA)について、送達されるエネルギ対TEWLの関係を示すグラフ450である。種々の実施形態では、HPAは、より多くの経路を形成することができ、これはフィラメントのサイズによって少なくとも部分的に定めることができる。例えば、特定のパラメータでは、約1600までの経路を形成することができる。最先端の製造技術を利用すれば、約2000の経路とすることができる。フィラメントの設計および/または幾何学的形状(および/または材料)を変更すると、経路の数をより多くすることができる。
【0080】
グラフ400は、50μmの幅および400μmの長さおよび15μmの深さを有するステンレス鋼製のフィラメント200を使用して、300000μm3の平均フィラメント200体積で、フィラメント200に対して露出される皮膚の領域の10%において、約400の経路が皮膚に形成されることを示す。グラフ400は、異なるレベルのパルス間隔(通常のパルス間隔、より短いパルス間隔、パルス間隔なし)について、異なるエネルギにより、異なるTEWLがもたらされることを示す。例えば、約6mJ/フィラメントの通常のパルス間隔では、TEWLは、約75g/m2hrである。約7mJ/フィラメントのより短いパルス間隔では、TEWLは、約75g/m2hrであり、約6mJ/フィラメントのパルス間隔なしでは、TEWLは、約73g/m2hrである。
【0081】
グラフ450は、フィラメント200に印加されるエネルギの関数としてのTEWL間の一般的な関係を示す。上記のように、フィラメントに印加されるエネルギの範囲は、2mJ/フィラメント~12mJ/フィラメントである。曲線452は、エネルギ/フィラメントが増大するにつれて(2mJ/フィラメントを超えるエネルギレベルについて)生じるTEWLは増大するが、その増大率は徐々に小さくなりまたは低下することを示す。例えば、2mJ/フィラメント~3mJ/フィラメントのΔTEWLは、5mJ/フィラメント~6mJ/フィラメントでのΔTEWLより大きい。このため、グラフ450は、エネルギ/フィラメントが増大するにつれて、TEWLが概して飽和するように見え、その結果、12mJ/フィラメントを超えるエネルギによって最小のTEWL増大を提供することができることを示す。さらに、患者の痛みおよび/または不快感を回避するために、これ以上高いエネルギ/フィラメントは望ましくない。したがって、グラフ400およびグラフ450は、フィラメントに印加されるエネルギが3mJ/フィラメント~10mJ/フィラメントに維持されて、患者の快適さを維持しながら、エネルギを浪費せずに、TEWLを最大化できることを示す。
【0082】
図5は、フィラメント当たり所定のエネルギについてのパルス長の関数としてのパルスTEWLを示すグラフ500である。グラフ500は、x軸に沿ったパルス長(時間)とy軸に沿ったTEWLとを含む。種々のドットまたはマーカは、どのパルス長がどのTEWLをもたらすかを示す。
【0083】
グラフ500は、50μmの幅および400μmの長さおよび15μmの深さを有するステンレス鋼製のフィラメント200を使用して、300000μm3の平均フィラメント200体積で約5mJ/フィラメントのエネルギが印加されたとき、フィラメント200に対して露出される皮膚の領域の10%において、約400の経路が皮膚に形成されることを示す。グラフ500は、約3ms~18msの異なる長さのパルスについて、異なるレベルのTEWLが得られることを示す。また、500は、パルス長が12msを超えるまでTEWLが著しく減衰し始めず、このため、長いパルスでのエネルギ送達が非効率的であることも示す。このため、上記のように、微細穿孔装置101のためのパルス長を、12ms未満に維持することができる。
【0084】
図6は、総経路深さの関数としてのTEWLを示すグラフ600、総経路面積の関数としてのTEWLを示すグラフ640および総経路体積の関数としてのTEWLを示すグラフ680である。グラフ600のデータを、人工膜(ポリウレタン)を使用して測定した。このグラフは、TEWL(in vivoでの無毛モルモットモデル)と、PUでの測定総面積(上段)、PUでの測定総深さ(中段)およびPUでの測定総深さ(下段)との間の関係を示している。グラフ600は、y軸に沿ったTEWLと、x軸に沿ったポリウレタン内の総経路深さ(例えば、微細穿孔装置101により形成された全経路の深さの合計)(μm)とを示している。グラフ640は、y軸に沿ったTEWLと、x軸に沿ったポリウレタン内の総経路面積(例えば、微細穿孔装置101により形成された全経路の面積の合計)(mm
2)とを示している。グラフ680は、y軸に沿ったTEWLと、x軸に沿ったポリウレタン内の総経路体積(例えば、微細穿孔装置101により形成された全経路の体積の合計)とを示している。
【0085】
グラフ600、640および680は、50μmの幅および400μmの長さおよび15μmの深さを有するステンレス鋼製のフィラメント200を使用して、300000μm3の平均フィラメント200体積で、約5mJ/フィラメントのエネルギが印加されたとき、フィラメント200に対して露出される皮膚の領域の約2.5~10%において、約100~400の経路が皮膚に形成されることを示している。グラフ600は、異なる深さの経路について異なるレベルのTEWLが得られることを示している。グラフ600は、深さが深くなるにつれてTEWLが増大することを示している。グラフ640は、異なる面積の経路について異なるレベルのTEWLが得られることを示している。グラフ640は、総面積が大きくなるにつれてTEWLが増大することを示している。グラフ680は、異なる体積の経路について異なるレベルのTEWLが得られることを示している。グラフ680は、総体積が大きくなるにつれてTEWLが増大することを示している。
【0086】
このように、TEWLは、総経路深さ、総経路面積および総経路体積と相関する。総経路体積は、TEWLに最も関連しうる。最適な総経路体積は、フィラメント200に対向する皮膚1平方センチメートル当たり約0.05~0.35mm3であることができる。幾つかの実施形態では、総経路深さは約2500~30000μmであることができる。
【0087】
図7は、経皮パッチ102の上面斜視図を示す。パッチ102は、複数の層、例えばバッキング材料層702、保持材料層704および滲出物層706を備えることができる。バッキング材料層702は、バッキング材料層702がパッチ102を皮膚に付着させまたは結合させている間、保持材料層704および滲出物層706が位置する「ポケット」を形成することができる。
【0088】
パッチ102は、患者の身体への高分子送達のための制御された薬剤放出および拡散を提供することができる。ポリマーマトリクスを、薬剤の効率的かつ制御的な放出および送達を可能にするように最適化することができる。このような最適化は、繊維を含むかまたは備えるようにポリマーマトリクスを形成することを含むことができる。幾つかの実施形態では、繊維は不織布であることができる。さらに、最適化されたポリマーマトリクスは、フィルムおよび繊維の積層材料から形成されるマトリクスを備えることができる。幾つかの実施形態では、ポリマーマトリクス中の繊維は、300μm未満の厚さまたは200μm未満の厚さを有する。幾つかの実施形態では、ポリマーマトリクス中の繊維は、繊維1平方メートル当たり100g未満または繊維1平方メートル当たり20g未満の重量を有する。幾つかの実施形態では、ポリマーマトリクス中の浸透性物質は、パッチに曝される皮膚1平方センチメートル当たり約0.01~20ミリグラム(mg)(mg/cm2)である。さらに、ポリマーマトリクスは、皮膚1平方センチメートル当たり10mg未満の保水能力を有することができる。
【0089】
パッチ102は、微細穿孔装置101により形成された少なくとも1つの経路を通して、低分子~高分子の薬剤の即時放出を提供する。パッチ102は、滲出物層706から所定量の薬剤を放出する。幾つかの実施形態では、滲出物層706中の関連する所定量の滲出物は、約0mg/cm2~85mg/cm2を含む。幾つかの実施形態では、放出される所定量の滲出物は、約9.5mg/cm2~85mg/cm2を含む。滲出物は、微細穿孔装置101により形成された経路を介して身体内に輸送されると、浸透性物質を溶解し、直ちに薬剤を身体内、例えば血流中に放出する。
【0090】
滲出物層706は、所定量の滲出物可溶性成分(例えば、約0.1~20mg/cm2)および保持材料を含むことができる。所定量の滲出物可溶性成分を使用して、パッチ102により送達される滲出物の量を調節することができる。
【0091】
保持材料層704は、最適な保水能力(「WHC」)を有する保持材料を含むことができる。幾つかの実施形態では、最適なWHCは、パッチ102による浸透性物質送達を最大化するように選択される。幾つかの実施形態では、最適なWHCは、10mg/cm2未満である。保持材料層704中の保持材料の重量は、100g/m2未満、30g/m2未満または20g/m2未満であることができる。保持材料層704の厚さは、100μm未満または60μm未満であることができる。
【0092】
幾つかの実施形態では、パッチ102の種々の要因または態様を、微細穿孔装置101と組み合わせて使用される場合、皮膚を介した身体への、制御された、有効かつ効率的な薬剤送達を維持するように最適化しかつ/または制御することができる。例えば、上記のように、滲出物層706は、約10~85mg/cm2の所定量の滲出物を含むことができる。幾つかの実施形態では、パッチ102上に負荷される滲出物可溶性成分の総量は、約0.1~20mg/cm2の範囲にある。幾つかの実施形態では、保持材料層704中の保持材料は、約0~10mg/cm2の範囲にあるWHCおよび100g/m2未満または20g/m2未満の面密度を有する。幾つかの実施形態では、保持材料は、300μm未満または200μm未満の不織布厚さを有する。幾つかの実施形態では、バッキング材料層702のバッキング材料は、片側に接着剤を有し、パッチ102からの滲出物の漏出を保護する。
【0093】
図8は、ショ糖含量対パッチ102から抽出された滲出物量を示すグラフ800および異なるアプリケータ条件下で比較されたショ糖の2つのパッチ製剤の滲出物抽出量を示すグラフ840である。
【0094】
グラフ800は、x軸に沿って示された異なるレベルのショ糖を有する複数のパッチ102について、抽出された滲出物の量(mg)をy軸に示す。グラフ800に示された各パッチ102は、異なる量のショ糖を有し、2msのパルス条件で微細穿孔により形成された200の経路を有する皮膚に適用される。適用後、パッチ102を6時間定位置に放置する。グラフ800は、各パッチ102から抽出された滲出物の量を示す。グラフ800は、概ね、パッチ上のショ糖の量が増大する(約0.1mg~25mg)につれて、抽出される滲出物の量も増大する(約15mg~約70mg)ことを示している。このため、微細穿孔パラメータが維持される(200の経路が全てのパッチ102のために同じ方法で形成される)場合、パッチ102上の薬剤の濃度により、身体から抽出される滲出物の量が制御される。
【0095】
グラフ840は、微細穿孔の変化が身体から抽出される滲出物の量をどのように変化させることができるかを示す。グラフ840は、抽出された滲出物量(mg)をy軸上に示す。グラフ840は、異なるアプリケータ条件下で比較された0.1mgおよび20mgのショ糖を有するパッチ102製剤のペアを含み、この場合、アプリケータ条件は、x軸に沿った微細穿孔の変化に対応する。例えば、種々の微細穿孔変化は、
1)4msのエネルギパルスで形成された100の経路;
2)1.5msのエネルギパルスで形成された200の経路;
3)2msのエネルギパルスで形成された200の経路;
4)4msのエネルギパルスで形成された200の経路;
5)2msのエネルギパルスで形成された400の経路;
6)4msのエネルギパルスで形成された400の経路;および
7)8msのパルスで形成された400の経路
を含む。グラフ840に示しているように、0.1ショ糖のパッチ102製剤について、身体から抽出される滲出物の量は、概ね、経路の数が増えまたはエネルギパルスの持続時間が長くなるにつれて増大する。一方、グラフ840では、20mgのパッチ102から抽出される滲出物の量が、経路の数が増えまたはエネルギパルスの持続時間が長くなるにつれて、より大きく変化することを示す。
【0096】
異なる材料は、異なる保水能力および/または性能を有する。マトリクスの保水能力(WHC)は、マトリクスが1cm
2当たり保持することができる水分量を指す。例えば、1cm
2のマトリクスを調製し、これを十分に長い時間、溶液(0.1%の界面活性剤(Tween 80)を含有するリン酸緩衝生理食塩水)中に浸す。続いて、マトリクスを5秒程度で溶液から緩慢に引き出し、予め測定した浸漬前のサンプルの重量を、液体を保持したサンプルの重量から差し引き、ついで、単位面積(1cm
2)当たりのマトリクスの保水能力を求めることができる。幾つかの実施形態では、マトリクスは10mg/cm
2以下の保水能力を有する。幾つかの実施形態では、マトリクスは1mg/cm
2~10mg/cm
2の保水能力を有する。例において、秤量したTween 80(Spectrum Chemical Mfg. Corp.またはCroda)をリン酸緩衝生理食塩水(Sigma-Aldrich)に溶解させ、これにより、0.1w/v% Tween 80含有PBS(以下、試験溶液と称される)を調製した。マトリクス材料の厚さを、デジタルインジケータ(U30A、Sony Corporation製)に従って測定した。表1Aに示されるマトリクス材料1~3(全てJapan Vilene Company, Inc.製)を10mm×10mm角に成形し、これにより、サンプルを準備した。準備されたサンプルを秤量し、これにより、その乾燥重量(以下、重量Aと称される)を得た。次に、前述のサンプルを試験溶液に浸漬させ、試験溶液を完全に含浸させた。溶液を含浸させたサンプルを試験溶液から緩慢に引き出し(約5秒/cm)、秤量し、これにより試験溶液含浸後の重量(以下、重量Bと称される)を得た。ただし、マトリクス材料がフィルム表面を有する場合には、引き出した後にフィルム表面に付着した試験溶液を拭き取った後に秤量し、これにより重量Bを得たことに留意されたい。マトリクス材料の厚さ、重量Aおよび重量Bをそれぞれ3回測定し、その平均値を最終値としたことに留意されたい。結果を表1A(以下)に示す。すなわち、
【表1】
である。
【0097】
したがって、種々の材料を、パッチ102の保水材料層704に使用することができる。10mg/cm2未満のWHCを有する保水材料は、10mg/cm2超のWHCを有する保水材料より、制御された最適量の滲出物抽出下でより迅速に浸透性物質を放出することができる。幾つかの実施形態では、低分子化合物~高分子化合物を送達するための微細穿孔薬剤送達システムの薬剤動態(PK)結果から、保水材料のWHCについて、保水材料の重量および厚さならびに滲出物-可溶性成分の重量が、特定の薬剤および/またはパッチ102についてのPKプロファイルを最適化することができるパラメータであることが示される。これらのパラメータを上記の範囲内に維持することにより、パッチ102を、制御された様式で身体内に薬剤を効果的かつ効率的に放出するために、微細穿孔薬剤送達システムに使用することができる。
【0098】
図9は、保水材料の面密度が保水材料のWHCにどのように影響を及ぼすかを示すグラフ900、および保水材料の厚さが保水材料のWHCにどのように影響を及ぼすかを示すグラフ940である。
【0099】
グラフ900は、x軸に沿って示された面密度(g/m2)の関数であるy軸に沿ったWHCを示す。グラフ900は、概ね、保水材料のWHCが、保水材料の面密度が大きくなるにつれて、直線的に大きくなることを示す。グラフ900は、WHCが低く、面密度が小さい保水材料を表す網掛け部分を含む。
【0100】
グラフ940は、x軸に沿って示された厚さ(μm)の関数であるy軸に沿ったWHCを示す。グラフ940は、概ね、保水材料の厚さが厚くなるにつれて、保水材料のWHCが直線的に大きくなることを示す。グラフ940は、WHCが低く、厚さが薄い保水材料を表す網掛け部分を含む。
【0101】
上記のように、パッチ102に使用される保水材料は、皮膚内の経路を介した身体への薬剤の効率的かつ効果的であって制御された投与を可能にするために、約0~10mg/cm2の範囲にあるWCH、100g/m2未満または20g/m2未満の面密度および300μm未満または200μm未満の不織布厚さを有するべきである。
【0102】
上記のように、微細穿孔薬剤送達システムによる薬剤の送達の微細穿孔パラメータの有効性および/または選択は、パッチ102により投与される薬剤により定まる場合がある。薬剤および/または微細穿孔薬剤送達システムの種々の態様は、薬剤の有効性に影響を及ぼしうるものであり、この場合、有効性は、身体内での薬剤の生物学的利用能に対応する。上記のように、微細穿孔要因またはパラメータ(例えば、フィラメント200に印可されるエネルギ、フィラメント材料、微細穿孔装置101を使用して形成される経路の数、経路が形成される皮膚の領域、および処理領域(処理される皮膚1平方センチメートル当たりの経路のパーセンテージ))の組み合わせは、投与後の薬剤の生物学的利用能に影響を及ぼしうる。さらに、パッチ102のパラメータ(厚さ、マトリクスパラメータ、重量、WHC、パッチ102中の活性医薬成分(「API」)重量、パッチの面積)の組み合わせは、投与後の薬剤の生物学的利用能に影響を及ぼしうる。
【0103】
次の表1に、長時間作用型ペプチド、例えばセマグルチドを含有するパッチ102を週1回適用する前に、無毛モルモットの皮膚に経路を形成するために使用される3つの群の微細穿孔値のデータを提供する。次の表2に、6つの群の薬剤投与のデータ、すなわちパッチ102について3つの群、長時間作用型ペプチドの経口投与について1つの群、および長時間作用型ペプチドの注射投与について2つの群、を提供する。すなわち、
【表2】
および
【表3】
である。
【0104】
表1および表2における群1~3は、特定の投与のためのパッチ102パラメータと微細穿孔パラメータとの組み合わせに対応する。例えば、表1における群1の微細穿孔パラメータは、表2の群1におけるパラメータに従って、パッチ102の投与に関連して適用される。したがって、群1のパッチ102は、不織布マトリクス、38μmの保水材料厚さ、12g/m2の保水材料重量、および4mg/cm3のWHCを有する。群1のパッチ102は、1mgの薬剤、3.25mgの総固形分重量。および0.5cm2の面積を含む。このパッチ102は、群1の微細穿孔パラメータに従って形成された200の経路を有する皮膚の領域に適用される。この場合、微細穿孔装置に印加されるエネルギは、5.2mJ/フィラメントであり、フィラメント200はステンレス鋼製であり、皮膚1平方センチメートル当たり10%の処理領域を有し、フィラメント200により0.5cm2の面積が処理される。同様に、群2のパッチ102パラメータが群2の微細穿孔パラメータに適用され、群3のパッチ102パラメータが群3の微細穿孔パラメータに適用される。群4および群5は0.5mgおよび1.0mgの薬剤が身体内に注射されることを示し、群6は2.0mgの薬剤が経口摂取されることを示す。
【0105】
図10におけるグラフ1000は、表1および表2の群1~3それぞれの微細穿孔パラメータおよびパッチ102パラメータについての長時間作用型ペプチドの濃度の比較を示す。グラフ1000は、y軸に沿った長時間作用型ペプチドの濃度(ナノグラム/ミリリットル(ng/mL))と、x軸に沿った時間(時間(hr))と含む。グラフ1000は、3本の曲線1002、1004および1006を示す。曲線1002は、群1の微細穿孔パラメータおよび群1のパッチ102パラメータを表す。曲線1004は、群2の微細穿孔パラメータおよび群2のパッチ102パラメータを表す。曲線1006は、群3の微細穿孔パラメータおよび群3のパッチ102パラメータを表す。3本の曲線1002、1004および1006はそれぞれ、概ね同じ傾向に従う。群1~3のパラメータそれぞれについて、長時間作用型ペプチドの濃度は、概ね、比較的迅速に最高濃度まで上昇し、その後、徐々に低下し、最終的に濃度0に達する。群3のパラメータは、曲線1006により示され、曲線1002および1004により示される群1および群2のパラメータと比較して、身体内での長時間作用型ペプチドの生物学的利用能の持続時間について、最高濃度レベルのスパイクおよびより高い濃度値を有する。群2のパラメータは曲線1004により示されており、曲線1002により示される群1のパラメータより高い濃度レベルのスパイクを有しているが、長時間作用型ペプチドの生物学的利用能の濃度レベルは、実際には約70時間後の群1のパラメータのほうが高い(約70時間超の時点においてより高い濃度値を示す曲線1002により示されている)。
【0106】
図10におけるグラフ1020は、身体内での群4~6それぞれについての長時間作用型ペプチドの濃度の経時的な比較を示す。グラフ1020は、y軸に沿った長時間作用型ペプチドの濃度(ナノグラム/ミリリットル(ng/mL))と、x軸に沿った時間(時間(hr))とを含む。グラフ1020は、3本の曲線1022、1024および1026を示す。曲線1022は、群4の注射された薬剤を表す。曲線1024は、群5の注射された薬剤を表す。曲線1026は、群6の注射された薬剤を表す。曲線1022および曲線1024はそれぞれ、概ね同じ傾向に従い、最高レベルの濃度に上昇し、その後、徐々に低下し、濃度レベル0に近づく。曲線1026は、長時間作用型ペプチドの経口摂取では身体内での測定可能な濃度がまったく提供されないことを示す。群5のパラメータは、曲線1024により示され、曲線1022により示される群4のパラメータと比較して、身体内での長時間作用型ポリペプチドの生物学的利用能の持続時間の間、より高い濃度レベルのスパイクを有する。
【0107】
グラフ1040は、グラフ1000の縮小図であり、曲線1002、1004および1006の関係のより高いレベルの観点を与える。同様に、グラフ1060は、グラフ1020の縮小図であり、グラフ1020から明らかなように、曲線1026(長時間作用型ペプチドの経口摂取)が10ng/mLの濃度付近で横ばいとなり、0でないことを示す。
【0108】
グラフ1000、1020、1040および1060に基づいて、群1~6それぞれについての曲線下面積を次の表3に示す。すなわち、
【表4】
である。
【0109】
表3に、長時間作用型ペプチドの生物学的利用能が、異なる投与それぞれについて変化することを示す。群4および群5の注射投与では、生物学的利用能の最も高い%を示すが、群1~3のパッチ102による投与では、微細穿孔薬剤送達システムによる群4および群5の注射投与と類似のレベルの濃度を提供することができる。
【0110】
次の表4に、微細穿孔なしで適用された長時間作用型タンパク質、例えばエタネルセプトを含有するパッチ102の1つの群(群1)、パッチ102と共に使用するための3つの群(群2~4)の微細穿孔値および1つの群(群5)の長時間作用型タンパク質の注射投与のデータを提供する。次の表5に、表4の5つの群についてのパッチ102の詳細を提供する。次の表6に、群1~5に従って投与されるパッチまたは製剤の成分の詳細を提供する。すなわち、
【表5】
および
【表6】
および
【表7】
である。
6つの群の薬剤投与のデータ:パッチ102について3つの群、長時間作用型ペプチドの経口投与について1つの群および長時間作用型ペプチドの注射投与について2つの群。
【0111】
図11におけるグラフ1100は、表4~6の群1~5それぞれについての長時間作用型タンパク質の濃度の比較を示す。グラフ1100は、y軸に沿った長時間作用型タンパク質の濃度(ナノグラム/ミリリットル(ng/mL))と、x軸に沿った時間(時間(hr))とを含む。グラフ1100は、5本の曲線1102、1104、1106、1108および1110を示す。曲線1102は、微細穿孔なしでの群1のパッチ102を表す。曲線1104は、群2の微細穿孔パラメータおよび群2のパッチ102パラメータを表す。曲線1106は、群3の微細穿孔パラメータおよび群3のパッチ102パラメータを表す。曲線1108は、群4の微細穿孔パラメータおよび群4のパッチ102パラメータを表す。曲線1110は、注射された長時間作用型タンパク質を表す。3本の曲線1104、1106および1108はそれぞれ、概ね同じ傾向に従う。群2~4のパラメータそれぞれについて、長時間作用型タンパク質の濃度は、概ね、比較的迅速に最高濃度まで上昇し、その後、徐々に低下し、最終的に0の濃度に達する。群3および群4のパラメータは、曲線1106および1108により示され、最高濃度レベルのスパイクを有するが、群4のパラメータは、より高い長期濃度をもたらす。群2のパラメータは、曲線1104により示され、群3および群4のパラメータと比較して、全体を通して概ねより低い濃度レベルを有する。群1および群5の投与は、群2~4の投与の全てより低い。このため、長時間作用型タンパク質については、微細穿孔で処理された皮膚位置でのパッチ投与により、次の表7に詳述するように、薬剤の注射投与よりも良好な生物学的利用能がもたらされる。また、グラフ1100および1120は、製剤中の追加の成分(例えば、ショ糖、尿素など)がラットにおける長時間作用型タンパク質の生物学的利用能および血中濃度にどのような影響を有しうるかを示す。
【0112】
グラフ1120は、グラフ1100の縮小図であり、曲線1102、1104、1106、1108および1110の関係のより高いレベルの観点を与える。すなわち、
【表8】
である。
【0113】
グラフ1100および1120に基づいて、群1~5それぞれについての曲線下面積を、上記の表7に示す。表7に、長時間作用型タンパク質の生物学的利用能が、種々の投与それぞれについて変化することを示す。異なる微細穿孔パラメータと共にパッチ102を使用した投与は、最長の持続時間に利用可能な薬剤の最高濃度レベルをもたらすことが示される。
【0114】
次の表8に、長時間作用型タンパク質、例えばエタネルセプトを含有するパッチ102と共に使用するための2つの群(群1および群2)微細穿孔値のデータを提供する。次の表9に、表8の2つの群についてのパッチ102の詳細を提供する。次の表10に、群1および群2に従って投与されたパッチまたは製剤の成分の詳細を提供する。示されるように、両群は、同じ量の長時間作用型タンパク質およびショ糖の同じ製剤を有する。すなわち、
【表9】
および
【表10】
および
【表11】
である。
【0115】
図12におけるグラフ1200は、表8~10の群1および群2それぞれについての長時間作用型タンパク質の濃度の比較を示す。グラフ1200は、ラットにおける長時間作用型タンパク質の濃度間の平均プロファイルを示す。グラフ1200は、y軸に沿った長時間作用型タンパク質の濃度(ナノグラム/ミリリットル(ng/mL))と、x軸に沿った時間(時間(hr))とを含む。グラフ1200は、2本の曲線1202および1204を示す。曲線1202は、表8に係る微細穿孔パラメータおよび表9に係るパッチ102パラメータを有する群1のパッチ102を表す。曲線1204は、表8に係る微細穿孔パラメータおよび表9に係るパッチ102パラメータを有する群2のパッチ102を表す。2本の曲線1202および1204は、異なる傾向に従う。曲線1202は、800ng/mL超のピークまで急速にスパイクし、ついで、少なくとも約70時間まで、概ね500~700ng/mLに留まる。曲線1204は、約32時間で約275ng/mLのピークまで徐々に上昇し、その後、約70時間で100ng/mL未満まで低下する。これは、パッチ102パラメータが製剤の投与に対して有することができる効果を強調する。
【0116】
次の表11に、微細穿孔薬剤送達システムのパッチ102に使用することができる例示的な浸透性物質についての分子量を提供する。すなわち、
【表12】
である。
【0117】
これらの浸透性物質の使用に関する詳細(例えば、微細穿孔薬剤送達システムと共に使用される場合にパッチ102に適用される量)は、以下に提供される。
【0118】
図13におけるグラフ1300は、多糖類がパッチ102に適用される製剤のタイプである場合の無毛モルモットにおける濃度レベルの比較を示す。
図13におけるグラフ1300および1320に使用されたパッチ102は、不織布マトリクス、180μmの厚さ、18g/m
2の重量、17mg/cm
2のWHC、0.01mg/cm
2の薬剤、および6.1mg/cm
2の総固形分レベルを有する。微細穿孔により、皮膚1平方センチメートル当たり約5~10%の処理領域1cm
2を有する約200~400の経路をそれぞれ形成するための、フィラメント当たり6.3mJおよび5.2mJのエネルギパルス。
【0119】
グラフ1300は、上記のように、4msのパルスで形成された200の経路について、上記の多糖類についての平均プロファイルを示す。グラフ1300は、y軸に沿った多糖類(例えば、フォンダパリヌクス)の濃度(マイクログラム/ミリリットル(μg/mL))と、x軸に沿った時間(時間(hr))とを含む。グラフ1300は、3本の曲線1302、1304および1306を示す。曲線1302は、パッチ102に適用された2.5mgの多糖類の製剤および上記の微細穿孔パラメータを有するパッチ102を表す。曲線1304は、パッチ102に適用された5.0mgの多糖類の製剤および上記の微細穿孔パラメータを有するパッチ102を表す。曲線1306は、パッチ102に適用された7.5mgの多糖類の製剤および上記の微細穿孔パラメータを有するパッチ102を表す。3本の曲線1302、1304および1306はそれぞれ、ピーク濃度値まで上昇し、ついで、濃度が徐々に低下するという概ね同じ傾向に従う。曲線1306が最高濃度値を有し、続いて曲線1304、ついで曲線1302が続く。曲線1302は、72.8μg/mL*hの曲線下面積(AUC)、170.9%の生物学的利用能、および5.1μg/mLの最高濃度を有する。曲線1304は、100.9μg/mL*hのAUC、118.4%の生物学的利用能、および6.7μg/mLの最高濃度を有する。曲線1306は、152.3μg/mL*hのAUC、119.2%の生物学的利用能、および9.1μg/mLの最高濃度を有する。
【0120】
グラフ1320は、上記のように、4msのパルスで形成された400の経路について、上記された多糖類についての平均プロファイルを示す。グラフ1320は、y軸に沿った多糖類(例えば、フォンダパリヌクス)の濃度(マイクログラム/ミリリットル(μg/mL))と、x軸に沿った時間(時間(hr))とを含む。グラフ1320は、3本の曲線1322、1324および1326を示す。曲線1322は、パッチ102に適用された2.5mgの多糖類の製剤および上記の微細穿孔パラメータを有するパッチ102を表す。曲線1324は、パッチ102に適用された5.0mgの多糖類の製剤および上記の微細穿孔パラメータを有するパッチ102を表す。曲線1326は、パッチ102に適用された7.5mgの多糖類の製剤および上記の微細穿孔パラメータを有するパッチ102を表す。3本の曲線1322、1324および1326はそれぞれ、ピーク濃度値まで上昇し、ついで、濃度が徐々に低下するという概ね同じ傾向に従う。曲線1326が最高濃度値を有し、続いて曲線1324、ついで曲線1322が続く。曲線1322は、97.3μg/mL*hのAUC、228.5%の生物学的利用能および8.0μg/mLの最高濃度を有する。曲線1324は、125.2μg/mL*hのAUC、146.9%の生物学的利用能および10.5μg/mLの最高濃度を有する。曲線1326は、145.8μg/mL*hのAUC、114.1%の生物学的利用能および11.5μg/mLの最高濃度を有する。
【0121】
グラフ1300と1320との比較から、経路数の増大により、無毛モルモットにおける多糖類の濃度をどのように改善することができるかが示される。
【0122】
図14におけるグラフ1400は、異なるパッチパラメータを有する4つの群のパッチ102についての、ペプチドがパッチ102に適用される製剤のタイプである場合の無毛モルモットにおける血中濃度レベルの比較を示す。パッチ102パラメータを、次の表12に提供する。すなわち、
【表13】
である。
【0123】
微細穿孔により、皮膚1平方センチメートル当たり約5%の処理領域を有する約200の経路をそれぞれ形成するための、フィラメント当たり6.3mJのエネルギパルス。
【0124】
グラフ1400は、上記のように、4msのパルスで形成された200の経路についての上記のペプチド(例えば、エキセナチド)についてのバッキング材料研究を示す。グラフ1400は、y軸に沿ったペプチドの濃度(ng/mL)と、x軸に沿った時間(時間(hr))とを含む。グラフ1400は、4本の曲線1402、1404、1406および1408を示す。曲線1402は、表12の群G1のパッチ102パラメータおよび上記の微細穿孔パラメータを有するパッチ102を表す。曲線1404は、表12の群G2のパッチ102パラメータおよび上記の微細穿孔パラメータを有するパッチ102を表す。曲線1406は、表12の群G3のパッチ102パラメータおよび上記の微細穿孔パラメータを有するパッチ102を表す。曲線1408は、表12の群G4のパッチ102パラメータおよび上記の微細穿孔パラメータを有するパッチ102を表す。4本の曲線1402、1404、1406および1408はそれぞれ、ピーク濃度値まで上昇し、ついで濃度が徐々に低下するという概ね同じ傾向に従う。曲線1402が最高濃度値を有し、続いて曲線1404、ついで曲線1406、最後に曲線1408が続く。
【0125】
グラフ1400は、より大きなWHC(例えば、30g/m2超の面密度)を有することにより、より低いWHC(例えば、20g/m2未満)と比較して、実際にパッチ102の薬剤送達有効性が低下することを示す。曲線1402は、86.275ng/mL*hのAUC、75.284%の生物学的利用能、および14.317ng/mLの最高濃度を有する。曲線1404は、51.583μg/mL*hのAUC、45.011%の生物学的利用能、および8.996ng/mLの最高濃度を有する。曲線1406は、1.714ng/mL*hのAUC、1.496%の生物学的利用能、および0.438ng/mLの最高濃度を有する。曲線1408は、15.643ng/mL*hのAUC、13.650%の生物学的利用能、および2.849ng/mLの最高濃度を有する。
【0126】
図15におけるグラフ1500は、ペプチドがパッチ102に適用される製剤のタイプである場合の無毛モルモットにおける血中濃度レベルの比較を示す。
【0127】
皮膚1平方センチメートル当たり約5~10%の処理領域を有する約200~400の経路を形成するために、微細穿孔を、フィラメント当たり6.3mJおよび5.2mJのエネルギパルスが印加されたステンレス鋼フィラメント200により発生させる。グラフ1500に示されたペプチドの投与に使用されたパッチ102は、38μmの厚さ、12g/m2の重量、4mg/cm2のWHC、0.4mg/cm2のAPI、10.4mg/cm2の総固形分重量を有する。群2および群4は10%/cm2の処理領域に適用され、群1および群3は5%/cm2の処理領域に適用される。
【0128】
グラフ1500は、上記のように、4msのパルスで形成された200または400のいずれかの経路および5%/cm2または10%/cm2のいずれかの処理領域についての上記のペプチド(例えば、エキセナチド)についての平均プロファイルを示す。グラフ1500は、y軸に沿ったペプチドの濃度(ng/mL)と、x軸に沿った時間(時間(hr))とを含む。グラフ1500は、4本の曲線1502、1504、1506および1508を示す。曲線1502は、5%/cm2の処理領域での200の経路の微細穿孔パラメータを有するパッチ102を表す。曲線1504は、10%/cm2の処理領域での400の経路の微細穿孔パラメータを有するパッチ102を表す。曲線1506は、5%/cm2の処理領域での200の経路の微細穿孔パラメータを有するパッチ102を表す(注記:密度は100であるが、密度200と同等の広幅のフィラメント)。曲線1508は、10%/cm2の処理領域での500の経路の微細穿孔パラメータを有するパッチ102を表す(注記:密度は200であるが、密度400と同等の広幅のフィラメント)。4本の曲線1502、1504、1506および1508はそれぞれピーク濃度値まで上昇し、ついで濃度が徐々に低下するという概ね同じ傾向に従う。曲線1508が概ね最高濃度値を有し、続いて曲線1502、ついで曲線1504、最後に曲線1506が続く。
【0129】
グラフ1500に基づいて、群1~4それぞれについての曲線下面積を、次の表13に示す。表13から、ペプチドの生物学的利用能が異なる投与それぞれについて変化することが示される。群1の投与により、509.247ng/mL
*hrのAUCおよび20.282%の生物学的利用能がもたらされる。群2の投与により、1416.218ng/mL
*hrのAUCおよび56.404%の生物学的利用能がもたらされる。群3の投与により、407.298ng/mL
*hrのAUCおよび16.221%の生物学的利用能がもたらされる。群4の投与により、1757.651ng/mL
*hrのAUCおよび70.002%の生物学的利用能がもたらされる。このため、グラフ1500は、ペプチドの送達が経路密度に関連しうること、および薬剤動態(PK)がフィラメント200の形状に関連しうる総経路面積にも相関することを示す。すなわち、
【表14】
である。
【0130】
図16におけるグラフ1600は、ペプチド(例えば、リキシセナチド)がパッチ102に適用される製剤のタイプである場合の無毛モルモットにおける濃度レベルを示す。
【0131】
皮膚1平方センチメートル当たり約5%の処理領域を有する約200の経路を形成するために、微細穿孔を、フィラメント当たり6.3mJのエネルギパルスが印加されたステンレス鋼フィラメント200により発生させる。グラフ1600に示されたペプチドの投与に使用されたパッチ102は、38μmの厚さ、12g/m2の重量、4mg/cm2のWHC、0.2mg/cm2のAPI、約10.2mg/cm2の総固形分重量を有する。
【0132】
グラフ1600は、2.0mgのショ糖と8.0mgの尿素とを組み合わせて、約10.2mg/cm2の総固形分重量を形成した場合の上記のペプチド(例えば、リキシセナチド)の平均プロファイルを示す。グラフ1600は、y軸に沿ったペプチドの濃度(ng/mL)と、x軸に沿った時間(時間(hr))とを含む。グラフ1600は、1本の曲線1602を示す。曲線1602は、上記のパッチ102および微細穿孔パラメータを表す。曲線1602は、ピーク濃度値まで上昇し、ついで濃度値が低下する傾向を示す。
【0133】
グラフ1600に基づいて、曲線1602のAUC、生物学的利用能および最高濃度値を、次の表14に示す。AUCは264.1ng/mL
*hrであり、生物学的利用能は46.8%であり、最高濃度は27.1ng/mLである。すなわち、
【表15】
である。
【0134】
図17におけるグラフ1700は、ペプチド(例えば、テリパラチド)がパッチ102に適用される製剤のタイプである場合の無毛モルモットにおける濃度レベルを示す。
【0135】
微細穿孔を、次の表15に提供されるパラメータに基づいて発生させる。すなわち、
【表16】
である。
【0136】
表15から、ステンレス鋼フィラメント200を使用し、それぞれ0.5cm2および1.0cm2について皮膚1平方センチメートル当たり約10%の処理領域でフィラメント当たり9.3mJのエネルギパルスを印加し、200および400の経路をそれぞれ形成する、2つの群(群4および群6)が識別される。グラフ1700に示されたペプチドの投与に使用されたパッチ102は、38μmの厚さ、12g/m2の重量、4mg/cm2のWHC、0.2mg/cm2のAPI、および約0.7mg/cm2の総固形分重量を有する。
【0137】
グラフ1700は、0.5mgのショ糖と組み合わせて、約0.7mg/cm2の総固形分重量を形成した場合の上記のペプチド(例えば、hPTH)についての平均プロファイルを示す。グラフ1700は、y軸に沿ったペプチドの濃度(ng/mL)と、x軸に沿った時間(時間(hr))とを含む。グラフ1700は、2本の曲線1702および1704を示す。曲線1702は、パッチ102および上記の群4の微細穿孔パラメータを表す。曲線1704は、パッチ102および上記の群6の微細穿孔パラメータを表す。曲線1702および1704は両方とも、ピーク濃度値まで上昇し、ついで濃度値が低下する傾向を概ね示している。この場合、群4についての曲線1702は、示されている全ての時点について、曲線1704より高い濃度を示す。
【0138】
グラフ1700に基づいて、曲線1702および曲線1704のAUC、生物学的利用能および最高濃度値を、次の表16に示す。群4について、AUCは、3261.325ng/mL
*hrであり、生物学的利用能は、37.427%であり、最高濃度は、9.156ng/mLである。群6について、AUCは、2208.956ng/mL
*hrであり、生物学的利用能は、25.350%であり、最高濃度は、11.236ng/mLである。すなわち、
【表17】
である。
【0139】
図18におけるグラフ1800は、ペプチド(例えば、ソマトロピン)がパッチ102に適用される製剤のタイプである場合の無毛モルモットにおける血中濃度レベルの比較を示す。微細穿孔は、表17のパラメータに依存して行われる。表17に4つの群を示し、各群は、皮膚1平方センチメートル当たり約10%の処理領域で約200~400の経路を形成するために、フィラメント当たり5.2mJおよび9.3mJのエネルギパルスがステンレス鋼フィラメント200に印加されることを示す。200個の広幅のフィラメントは、標準的なフィラメントの幅の2倍(2×50マイクロメートル)であり、このためフィラメント当たり5.2mJおよび9.3mJのエネルギパルスが、使用される同じ電流密度/流動および類似の電力で提供される。すなわち、
【表18】
である。
【0140】
4つの群に使用されるパッチ102についてのパラメータは、次の表18に提供される。表18に、表17の群1~4それぞれについて、グラフ1800に示されたパッチ102が、38μmの厚さ、12g/m
2の重量、4mg/cm
2のWHC、1.0mg/cm
2の薬剤、および1.0cm
2の面積についての1.0mg/cm
2の総固形分重量を有することを示す。すなわち、
【表19】
である。
【0141】
グラフ1800は、200または400の経路のいずれかおよび4msまたは8msのパルスのいずれかについて上記のペプチド(例えば、ソマトロピン)についての平均プロファイルを示す。グラフ1800は、y軸に沿ったペプチドの濃度(ng/mL)と、x軸に沿った時間(時間(hr))とを含む。グラフ1800は、4本の曲線1802、1804、1806および1808を示す。曲線1802は、表17および表18からの群1のパラメータを表す。曲線1804は、表17および表18からの群2のパラメータを表す。曲線1806は、表17および表18からの群3のパラメータを表す。曲線1808は、表17および表18からの群4のパラメータを表す。4本の曲線1802、1804、1806および1808はそれぞれ、ピーク濃度値まで上昇し、ついで濃度が徐々に低下するという概ね同じ傾向に従う。曲線1808が概ね最高濃度値を有し、続いて曲線1802、ついで曲線1804、最後に曲線1806が続く。曲線1804は、約2時間~約3時間で曲線1806を超えることに留意されたい。
【0142】
グラフ1800に基づいて、AUC、生物学的利用能、最高濃度、および最高濃度が生じる時点を、次の表19に示す。表19に、これらの各値が各群について変化することを示す。群1の投与により、87.1ng/mL
*hrのAUC、35.8%の生物学的利用能、20.4ng/mLの最高濃度がもたらされ、最高濃度は(パッチ102が皮膚に適用された後の)薬剤の投与の1.3時間後に生じる。群2の投与により、90.1ng/mL
*hrのAUC、37.0%の生物学的利用能、および16.1ng/mLの最高濃度がもたらされ、最高濃度は薬剤投与の1.8時間後に生じる。群3の投与により、78.1ng/mL
*hrのAUC、32.1%の生物学的利用能、および16.4ng/mLの最高濃度がもたらされ、最高濃度は薬剤の投与の1.5時間後に生じる。群4の投与により、94.9ng/mL
*hrのAUC、32.1%の生物学的利用能および16.4ng/mLの最高濃度がもたらされ、最高濃度は薬剤の投与の1.5時間後に生じる。このように、グラフ1800は、電力量およびパルス長がペプチドの送達に及ぼす影響を示す。すなわち、
【表20】
である。
【0143】
図19は、表20におけるパラメータに従ってラットに投与された7つの群のワクチンについての血清力価量を示す棒グラフ1900を示す。
【0144】
次の表20によれば、群1~5は、異なる微細穿孔パラメータを有する微細穿孔薬剤送達システムを使用して投与されるワクチン(例えば、抗原オボアルブミン)である。群6は、皮内投与に対応し、群7は、ワクチンの筋肉内投与に対応する。表21に、群1~5それぞれについてのパッチ102についてのパラメータを提供する。すなわち、
【表21】
および
【表22】
である。
【0145】
図20は、表22におけるパラメータに従って投与された群1~10のワクチンについてのマウスにおける抗体力価の総量を示す棒グラフ2000および群1~10についての身体内のTh1細胞性抗体力価を示す棒グラフ2020を示す。次の表22によれば、群1~8は、異なる微細穿孔パラメータを有する微細穿孔薬剤送達システムを使用して投与されたワクチン(例えば、CpGを有するかまたはアジュバントを有さない抗原オボアルブミン)である。群9および群10は、ワクチンの皮内投与に対応する。表23に、群1~8それぞれについてのパッチ102についてのパラメータならびに群9および群10についての溶液値を提供する。表24は、表22および表23の群1~10により提供された投与についての変数である。すなわち、
【表23】
および
【表24】
および
【表25】
である。
【0146】
図21は、表22におけるパラメータに従って投与された群1~6のワクチンについてのマウスにおける抗体力価の総量を示す棒グラフ2100および群1~6についての身体内のTh1体液性抗体力価を示す棒グラフ2120を示す。次の表25によれば、群1~5は、異なる微細穿孔パラメータを有する微細穿孔薬剤送達システムを使用して投与されたワクチン(例えば、アジュバントを含まない抗原オボアルブミン)である。群6は、ワクチンの皮内投与に対応する。表26に、群1~5それぞれについてのパッチ102についてのパラメータおよび群6についての溶液値を提供する。表27は、表26および表27の群1~6により提供される投与のための変数である。免疫応答を、幾つかの条件:CpG(アジュバント)、ショ糖含量、アプリケータ条件、および種々の保持材料下で例示する。
【0147】
当業者であれば、以下に記載する、本明細書に開示した実施形態に関連する種々の例示的なロジックブロック、モジュール、回路およびアルゴリズムステップを、電子ハードウェア、コンピュータ可読媒体上に記憶されてハードウェアプロセッサにより実行可能なソフトウェア、または両方の組み合わせとして実装可能であることを認識するであろう。ハードウェアとソフトウェアとのこの互換性を明確に示すために、種々の例示的なコンポーネント、ブロック、モジュール、回路およびステップを、その機能の点から全般的に上述した。このような機能をハードウェアまたはソフトウェアとして実装するか否かは、特定の用途およびシステム全体に課される設計上の制約により定められる。当業者であれば、記載された機能を、特定の用途ごとに種々の方法で実装することができるが、このような実装の決定は、本発明の範囲から逸脱するものと解釈されるべきではない。
【0148】
本明細書に開示した実施形態に関連して説明した種々の例示的なロジックブロック、モジュールおよび回路を、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または他のプログラマブルロジックデバイス、個別ゲートもしくはトランジスタロジック、個別ハードウェアコンポーネント、または本明細書に記載した機能を実行するように設計されたこれらの任意の組み合わせにより、実装しまたは実行することができる。汎用プロセッサはマイクロプロセッサであってよいが、代替として、プロセッサは、任意の従来のプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、または状態機械であってもよい。また、プロセッサを、計算デバイスの組み合わせ、例えば、DSPとマイクロプロセッサとの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと組み合わせた1つ以上のマイクロプロセッサ、または任意の他のこのような構成としても実装することができる。
【0149】
本明細書に開示した実施形態に関連して説明した方法またはアルゴリズムのステップを、ハードウェアとして直接に、プロセッサにより実行されるソフトウェアモジュールとして、またはその2つの組み合わせとして具現化することができる。ソフトウェアモジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、CD-ROM、または当技術分野において公知の任意の他の形式の記憶媒体に存在させることができる。例示的な記憶媒体は、プロセッサにより記憶媒体から情報が読み出されかつ記憶媒体に情報が書き込まれるように、プロセッサに接続される。代替例では、記憶媒体はプロセッサと一体であってよい。プロセッサおよび記憶媒体をASIC内に存在させることもできる。
【0150】
上記の詳細な説明は、種々の実施形態に適用される本開発の新規な特徴を図示し、記載し、指摘したものであるが、示されている装置または方法の形態および詳細における種々の省略、置換および変更が本開発の精神から逸脱することなく当業者によりなされうることが理解されるであろう。理解されるように、本開発は、幾つかの特徴が他の特徴とは別個に使用されまたは実施されうるため、本明細書で説明した特徴および利益の全てを提供しない形態として具現化されることがある。特許請求の範囲と等価の意味内および範囲内にある全ての変更は、その範囲内に包含されるものとする。
【0151】
当業者であれば、これらのサブシステムそれぞれを、各種の技術およびハードウェアを使用して相互接続し、制御可能に接続できること、ならびに本開示が任意の特定の接続方式または接続ハードウェアに限定されないことを認識するであろう。
【0152】
この技術は、多数の他の汎用または専用計算システム環境または構成で動作可能である。本発明との共用に適しうる周知の計算システム、環境および/または構成の例は、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、携帯デバイスまたはラップトップデバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースのシステム、マイクロコントローラまたはマイクロコントローラベースのシステム、プログラマブル消費者向け電子製品、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、上記のシステムまたはデバイスのいずれかを含む分散型計算環境などを含むが、これらに限定されない。
【0153】
本明細書で使用する場合、命令とは、システム内の情報を処理するためのコンピュータ実装ステップを指す。命令は、ソフトウェア、ファームウェアまたはハードウェアに実装することができ、システムのコンポーネントにより実行される任意のタイプのプログラムされたステップを含む。
【0154】
マイクロプロセッサは、任意の従来の汎用シングルチップまたはマルチチップマイクロプロセッサ、例えば、Pentium(登録商標)プロセッサ、Pentium(登録商標)Proプロセッサ、8051プロセッサ、MIPS(登録商標)プロセッサ、Power PC(登録商標)プロセッサまたはAlpha(登録商標)プロセッサであってよい。加えて、マイクロプロセッサは、任意の従来の専用マイクロプロセッサ、例えばデジタル信号プロセッサまたはグラフィックプロセッサであることができる。マイクロプロセッサは、典型的には、従来のアドレス線、従来のデータ線、および1つ以上の従来の制御線を有する。
【0155】
本システムは、種々のオペレーティングシステム、例えば、Linux(登録商標)、UNIX(登録商標)、MacOS(登録商標)もしくはMicrosoft Windows(登録商標)、または特注の指定OSと組み合わせて使用することができる。
【0156】
システムの制御は、任意の従来のプログラミング言語、例えば、C、C++、BASIC、Pascal、NET(例えば、C#)、またはJavaで記述することができ、従来のオペレーティングシステム下で実行することができる。C、C++、BASIC、Pascal、Java、およびFORTRANは、多くの商用コンパイラを使用して実行可能なコードを作成することができる業界標準プログラミング言語である。システムの制御を、インタプリタ言語、例えばPerl、PythonまたはRubyを使用して記述することもできる。他の言語、例えばPHP、JavaScriptなども使用することができる。
【0157】
前述した記載は、本明細書に開示したシステム、装置および方法の特定の実施形態を詳述したものである。ただし、前述のものがテキストにどのように詳細に現れても、システム、装置および方法を、多くの手法で実施できることが理解されるであろう。また、前述したように、本発明の特定の特徴または態様を説明する際の特定の用語の使用は、その用語が関連付けられる技術の特徴または態様の任意の特定の特徴を含むことに限定されるようにその用語が本明細書で再定義されることを暗示するものと解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0158】
記載した技術の範囲から逸脱することなく種々の修正および変更を行えることが当業者に理解されるであろう。このような修正および変更は、実施形態の範囲に該当することが意図される。また、1つの実施形態に含まれる部分が他の実施形態と交換可能であり、示されている実施形態からの1つ以上の部分が任意の組み合わせで他の示されている実施形態に含まれうることも当業者に理解されるであろう。例えば、本明細書に記載したかつ/または図面に示した種々のコンポーネントは、いずれも、他の実施形態と組み合わせ、交換しまたは他の実施形態から除外することができる。
【0159】
本明細書における実質的に任意の複数のかつ/または単数の用語の使用に関して、当業者であれば、文脈および/または用途に適切であるように、複数から単数へかつ/または単数から複数へと変換することができる。種々の単数/複数の置換は、明確性の目的で、本明細書において明示的に記載したところがある。
【0160】
本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件などを表す全ての数は、全ての場合において「約」なる用語により修飾されるものと理解されるべきである。したがって、逆のことが示されない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載した数値パラメータは、本発明により達成が求められる所望の特性に応じて変化しうる近似である。少なくとも、特許請求の範囲の範囲に対する均等論の適用を限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、有効数字の数および通常の四捨五入手法を考慮して解釈されるべきである。
【0161】
上記の記載は、本開発の幾つかの方法および材料を開示したものである。ここでの開発は、方法および材料の修正ならびに製造方法および製造装置の改変を受ける傾向にある。このような修正は、本明細書に開示されている本開示の考察または本開発の実施から当業者に明らかとなるであろう。したがって、この開発は、本明細書に開示した特定の実施形態に限定されることを意図するものではなく、添付の特許請求の範囲に具現化されている本開発の真の範囲および精神に該当する全ての修正および代替を包含することを意図するものである。
【0162】
当業者により理解されるように、幾つかの実施形態では、以下の資料で説明する方法を、コンピュータネットワーク上で実行することができる。コンピュータネットワークは、中央サーバを有する。中央サーバは、プロセッサ、データ記憶装置、例えばデータベースおよびメモリ、ならびに端末および任意の他の所望のネットワークアクセスポイントまたは手段を含むネットワークの種々の部分との有線または無線での通信を可能にする通信機構を有する。
【国際調査報告】