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特表2022-540057新規のADP-リボシルシクラーゼ及びその阻害剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】新規のADP-リボシルシクラーゼ及びその阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/55 20060101AFI20220907BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220907BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220907BHJP
   C12N 9/24 20060101ALI20220907BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20220907BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20220907BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20220907BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220907BHJP
   A01K 67/027 20060101ALI20220907BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 31/655 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 31/216 20060101ALI20220907BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220907BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220907BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220907BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
C12N15/55
C12N5/10 ZNA
C12N15/63 Z
C12N9/24
A23L33/10
C12N15/113 Z
C12N15/115 Z
C12N15/13
A01K67/027
C12Q1/06
A61K45/00
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/711
A61K38/02
A61K39/395 D
A61K31/655
A61K31/517
A61K31/216
A61P13/12
A61P43/00 105
A61P3/10
A61P9/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577918
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 KR2020008283
(87)【国際公開番号】W WO2020262983
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】10-2019-0076979
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0076635
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】516331627
【氏名又は名称】インダストリアル コーオペレーション ファウンデーション チョンブク ナショナル ユニバーシティー
(71)【出願人】
【識別番号】521567424
【氏名又は名称】ディーエヌティー カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウ-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ナム,テ-シク
【テーマコード(参考)】
4B018
4B050
4B063
4B065
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018MD90
4B018ME02
4B018MF14
4B050CC03
4B050DD11
4B050KK15
4B050LL01
4B050LL03
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ30
4B063QR41
4B063QS32
4B063QX02
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BD38
4B065BD39
4B065CA27
4B065CA41
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA17
4C084BA03
4C084BA44
4C084NA14
4C084ZA42
4C084ZA81
4C084ZB21
4C084ZC35
4C085AA13
4C085BB11
4C085BB31
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC46
4C086DA30
4C086EA16
4C086GA07
4C086GA09
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA42
4C086ZA81
4C086ZB21
4C086ZC35
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB20
4C206DB56
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA42
4C206ZA81
4C206ZB21
4C206ZC35
(57)【要約】
本発明は、新規のADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の発現抑制剤又は活性抑制剤を有効成分として含む、ADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の予防又は治療用薬剤学的組成物に関する。また、本発明は、前記ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の遺伝子発現レベルを測定する製剤又はタンパク質レベルを測定する製剤を含む、ADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の診断用組成物に関する。本発明の組成物は、アンジオテンシンIIによる新しいADP-リボシルシクラーゼの発現又は活性増加による腎臓細胞内カルシウム増加を抑制する効果があり、ADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患、特に腎臓疾患の治療剤として有用に利用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列目録第1配列のアミノ酸配列を含むADP-リボシルシクラーゼ(ADP-ribosyl cyclase;ADPRC)又はその天然的に発生した(naturally occurred)変異体。
【請求項2】
前記ADP-リボシルシクラーゼの天然的に発生した変異体は、種間変異体(species variants)、種の相同体(species homologs)、アイソフォーム(isoforms)、対立遺伝子変異体(allelic variants)、立体配列による変異体(conformation variants)、スプライス変異体(splice variants)及び点突然変異変異体(point mutant variants)からなる群から選ばれる天然的に発生した変異体であることを特徴とする、請求項1に記載のADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体。
【請求項3】
前記ADP-リボシルシクラーゼの天然的に発生した変異体は、哺乳類、鳥類、爬虫類、両棲類及び魚類からなる群から選ばれる生物から発生したことを特徴とする、請求項1に記載のADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体。
【請求項4】
前記ADP-リボシルシクラーゼの天然的に発生した変異体は、配列目録第2配列~第21配列からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載のADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体。
【請求項5】
前記ADP-リボシルシクラーゼ又はその変異体は、NADをサイクリックADP-リボース(cyclic ADP-ribose;cADPR)に変換させることを特徴とする、請求項1に記載のADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体。
【請求項6】
請求項1のADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体をコードする核酸分子。
【請求項7】
請求項6の核酸分子を含むベクター。
【請求項8】
請求項7のベクターを含む宿主細胞。
【請求項9】
請求項1のADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体、請求項6の核酸分子又は請求項7のベクターを含む、NADをサイクリックADP-リボース(cyclic ADP-ribose;cADPR)に変換させる触媒組成物。
【請求項10】
配列目録第1配列のアミノ酸配列を含むADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の発現抑制剤又は活性抑制剤を有効成分として含む、ADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の予防又は治療用薬剤学的組成物。
【請求項11】
前記ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の発現抑制剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(antisense oligonucleotide)、siRNA、shRNA、miRNA、ribozyme、DNAzyme及びPNA(protein nucleic acid)からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項10に記載の薬剤学的組成物。
【請求項12】
前記siRNAは、配列目録第22配列のヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、請求項11に記載の薬剤学的組成物。
【請求項13】
前記ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の活性抑制剤は、化合物、ペプチド、ペプチド類似体(mimetics)、アプタマー及び抗体からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項10に記載の薬剤学的組成物。
【請求項14】
前記化合物は、4,4’-ジヒドロキシアゾベンゼン(4,4’-dihydroxyazobenzene)、2-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イルアミノ)-1-メチルキナゾリン-4(1H)-オン(2-(1,3-benzoxazol-2-ylamino)-1-methylquinazoline-4(1H)-one)及びジカフェオイルキナ酸(Dicaffeoylquinic acid)からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項13に記載の薬剤学的組成物。
【請求項15】
前記ADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患は、腎臓疾患であることを特徴とする、請求項10に記載の薬剤学的組成物。
【請求項16】
前記腎臓疾患は、腎不全(renal failure)、腎症(nephropathy)、腎炎(nephritis)、腎臓線維症(renal fibrosis)又は腎臓硬化症(nephrosclerosis)であることを特徴とする、請求項15に記載の薬剤学的組成物。
【請求項17】
前記腎不全は、慢性腎不全(Chronic Renal Failure)、急性腎不全(Acute Renal Failure)、又は透析前の軽度腎不全であることを特徴とする、請求項16に記載の薬剤学的組成物。
【請求項18】
前記腎症は、腎症症候群(Nephropathy Syndrome)、リポイド腎症(Lipoid Nephropathy)、糖尿病性腎症(Diabetic Nephropathy)、免疫グロビンA腎症(IgA Nephropathy)、鎮痛剤腎症(Analgesic Nephropathy)又は高血圧性腎症(Hypertensive Nephropathy)であることを特徴とする、請求項16に記載の薬剤学的組成物。
【請求項19】
配列目録第1配列のアミノ酸配列を含むADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の発現抑制剤又は活性抑制剤を有効成分として含む、ADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の予防又は改善用食品組成物。
【請求項20】
請求項1のADP-リボシルシクラーゼ(ADP-ribosyl cyclase;ADPRC)又はその天然的に発生した(naturally occurred)変異体のヘテロタイプ(hetero type)遺伝子欠損したヒト以外の動物モデル。
【請求項21】
下記の段階を含むADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患有無の確認方法:
(a)請求項20の動物モデル及び野生型(wild-type)動物モデルに特定疾患を誘導する段階;及び
(b)前記動物モデル間の差異を確認する段階。
【請求項22】
下記の段階を含むADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の診断に関する情報提供方法:
1)被検体から分離された試料内配列目録第1配列のアミノ酸配列を含むADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の発現又は活性レベルを測定する段階;及び、
2)前記段階1)のADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の発現又は活性レベルを正常対照群と比較し、シクラーゼ媒介疾患にかかる危険を持つ個体と判断する段階。
【請求項23】
配列目録第1配列のアミノ酸配列を含むADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の遺伝子発現レベルを測定する製剤又はタンパク質レベルを測定する製剤を含む、ADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の診断用組成物。
【請求項24】
配列目録第1配列のアミノ酸配列を含むADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の遺伝子発現レベルを測定する製剤又はタンパク質レベルを測定する製剤を含むADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の診断キット。
【請求項25】
下記の段階を含むADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の予防又は治療物質のスクリーニング方法:
1)配列目録第1配列のアミノ酸配列を含むADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体を発現させる細胞に候補物質を処理する段階;
2)前記候補物質の処理により、前記ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の遺伝子発現レベル又はタンパク質レベルを測定する段階;及び
3)前記遺伝子発現レベル又はタンパク質レベルが、候補物質を処理しない対照群と比較して減少した場合に、前記候補物質をADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の予防又は治療物質として選別する段階。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、NADをサイクリックADP-リボースに変換させる新規のADP-リボシルシクラーゼ及びその阻害剤に関する。
【0002】
〔背景技術〕
ADPRCは、NADからサイクリックADPリボース(cyclic ADP-ribose;cADPR)を合成し、NADPからニコチン酸アデニンジヌクレオチドリン酸(nicotinic acid adenine dinucletide phosphate;NAADP)を合成する酵素で、植物から哺乳動物までに至って広範に存在する。このADPRCは、細胞内カルシウム貯蔵庫から細胞質にカルシウムを遊離させることによって、細胞の様々な機能を調節するものと知られている[Berridge MJ,Bootman MD,Roderick HL.Nat Rev Mol Cell Biol.4,517-529,2003;Lee HC,Mol.Med.12 317-323,2006]。
【0003】
安定した状態では細胞内カルシウム濃度は10-7M以下と、基底値に維持される。しかしながら、細胞が活性化した状態では、細胞内カルシウム濃度が基底値の10倍程度まで増加し、病的な状態においてカルシウム濃度が続けて高く維持される場合には細胞の多くの機能が影響を受け、結果的に細胞の正常機能を消失してしまう。
【0004】
高血圧又は高血圧を伴った糖尿病、肥満、痴呆、虚熱、細胞増殖を伴った疾患においても、細胞内のカルシウム代謝調節に異常が生じ、細胞内のカルシウム濃度が正常よりも高く維持される[Resnick LM.Am.J.Hypertens.6:123S-134S,1993]。
【0005】
一例として、高血圧のような慢性疾患者について説明すると、様々な遺伝的、環境的或いはある疾病の二次的な原因により、血管平滑筋細胞内のカルシウム濃度が持続して正常値よりも高い数値を示し、その結果、血管平滑筋の収縮を誘発させて末梢血管の抵抗が増加し、このため、血圧が正常血圧よりも上昇した状態が続き、高血圧をもたらす。
【0006】
このように上昇した血圧は、二次的に血管平滑筋細胞及び線維組織の増殖と肥大を招き、結果として、末梢血管抵抗及び血圧をさらに増加させ、心血管系、脳及び腎臓などの臓器機能を阻害することにより、心筋梗塞、狭心症、中風及び慢性心不全症などで死亡に至らせるものと知られている[Cowley AW Jr.Physiol Rev.72:231-300,1992]。
【0007】
膵臓からのインスリン分泌には、ADPRCの一種であるCD38活性による、すなわちcADPRによる、カルシウム増加が重要な役割を果たすと知られている。また、糖尿病誘発はアンジオテンシンの生成を増加させるが、このペプチドホルモンは、腎臓疾患、高血圧及び心臓病を誘発させる他、ADPRCを活性化させることもよく知られている。
【0008】
したがって、ADPRCは、免疫細胞、心臓筋細胞、膵臓ベータ細胞、腎臓筋細胞及び神経細胞などに存在しながら様々なホルモンの受容体と関連付いて細胞内カルシウム濃度の増加及び様々な生理活性を調節するところ、このADPRCの発現又は活性調節に異常があると、生理現象(免疫、腎臓機能、インスリン分泌、心血管機能)調節に異常が起きることがある。
【0009】
このようなADPRCは、様々なホルモンによって活性化し、この酵素は、基質NADから産物であるcADPRを生成するが、このcADPRは、大部分の臓器で細胞内カルシウムを増加させる。また、ADPRCの活性によるカルシウムの異常増加は、インスリン分泌(insulin secretion)[Kim BJ,Park KH,Yim CY,Takasawa S,Okamoto H,Im MJ,Kim UH.Diabetes.57:868-878,2008]、細胞肥大(hypertrophy)[Gul R,Park JH,Kim SY,Jang KY,Chea JK,Ko JK,Kim UH.Cardiovasc Res.81:582-591,2009]、細胞増殖(proliferation)[Kim SY,Gul R,Rah SY,Kim SH,Park SK,Im MJ,Kwon HJ,Kim UH.Am J Physiol Renal Physiol.294:F989-F989,2008]などの様々な生体病理に要因として知られてきた。
【0010】
現在まで最もよく研究されたADPRCは、T-細胞表面抗原であるCD38であり、該分子は免疫細胞の他にも様々な臓器に広く発現している。
【0011】
しかしながら、心臓、腎臓、脳にはCD38とは異なるADPRCが発現することが明らかにされた[Partida-Sanchez S,Cockayne DA,Monard S,Jacobson EL,Oppenheimer N,Garvy B,Kusser K,Goodrich S,Howard M,Harmsen A,Randall TD,Lund FE.Nat Med 7:1209-16,2001]。
【0012】
したがって、組織特異的ADPRCの発現調節は、細胞内カルシウム増加によって誘発された病気を治療するのに役立つであろう。しかし、ADPRCの活性機序はまだ知られていない。
【0013】
上記の背景技術として説明された事項は、本発明の背景に関する理解増進のためのものに過ぎず、この技術分野における通常の知識を有する者に既に知られた従来技術に該当することを認めるものとして理解してはならない。
【0014】
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明者は、哺乳動物から知られている既存のADPRC(CD38、CD157)ではなく新しい種類のADPRCの酵素を発見してその活性を確認し、本発明を完成するに至った。
【0015】
したがって、本発明の目的は、新規のADP-リボシルシクラーゼ(ADP-ribosyl cyclase;ADPRC)又はその天然的に発生した(naturally occurred)変異体を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、前記ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体をコードする核酸分子を提供することにある。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、前記核酸分子を含むベクターを提供することにある。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、前記ベクターを含む宿主細胞を提供することにある。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、前記ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体、これをコードする核酸分子又は前記核酸分子を含むベクターを含む、NADをサイクリックADP-リボース(cyclic ADP-ribose;cADPR)に変換させる触媒組成物を提供することにある。
【0020】
本発明のさらに他の目的は、前記ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の発現抑制剤又は活性抑制剤を有効成分として含むADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の予防又は治療用薬剤学的組成物を提供することにある。
【0021】
本発明のさらに他の目的は、前記ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の発現抑制剤又は活性抑制剤を有効成分として含むADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の予防又は改善用食品組成物を提供することにある。
【0022】
本発明のさらに他の目的は、前記ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体のヘテロタイプ(hetero type)遺伝子欠損した動物モデルを提供することにある。
【0023】
本発明のさらに他の目的は、ADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の診断に関する情報提供方法を提供することにある。
【0024】
本発明のさらに他の目的は、前記ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の遺伝子発現レベルを測定する製剤又はタンパク質レベルを測定する製剤を含むADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の診断用組成物を提供することにある。
【0025】
本発明のさらに他の目的は、前記ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の遺伝子発現レベルを測定する製剤又はタンパク質レベルを測定する製剤を含むADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の診断キットを提供することにある。
【0026】
本発明のさらに他の目的は、前記ADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の予防又は治療物質のスクリーニング方法を提供することにある。
【0027】
本発明の他の目的及び利点は、下記の発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面から、より明確になる。
【0028】
〔課題を解決するための手段〕
本発明の一態様によれば、本発明は、配列目録第1配列のアミノ酸配列を含むADP-リボシルシクラーゼ(ADP-ribosyl cyclase;ADPRC)又はその天然的に発生した(naturally occurred)変異体を提供する。
【0029】
本発明者は、NADをサイクリックADP-リボース(cyclic ADP-ribose;cADPR)に転換させる酵素であって、従来に知られたADP-リボシルシクラーゼの他に新規のADP-リボシルシクラーゼを発掘しようと鋭意努力した結果、本発明を完成するに至った。
【0030】
本明細書において用語“ADP-リボシルシクラーゼ”又は“ADPRC(ADP-ribosyl cyclase)”とは、NADをサイクリックADP-リボース(cyclic ADP-ribose;cADPR)に変換させる酵素を意味する。
【0031】
本明細書において用語“ADP-リボシルシクラーゼの変異体”とは、前記ADP-リボシルシクラーゼの一部のアミノ酸配列が天然的又は人工的に置換、欠失、添加された変異体を意味し、NADをサイクリックADP-リボース(cyclic ADP-ribose;cADPR)に変換させる触媒の活性を有しているADP-リボシルシクラーゼの変異体を意味する。
【0032】
明細書において用語“ADP-リボシルシクラーゼの天然的に発生した(naturally occurred)変異体”とは、前記配列目録第1配列のアミノ酸配列を含むADP-リボシルシクラーゼの天然的に発生した変異体で、NADをサイクリックADP-リボース(cyclic ADP-ribose;cADPR)に変換させる触媒の活性を有しているADP-リボシルシクラーゼの変異体のことを意味する。
【0033】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明のADP-リボシルシクラーゼの天然的に発生した変異体は、種間変異体(species variants)、種の相同体(species homologs)、アイソフォーム(isoforms)、対立遺伝子変異体(allelic variants)、立体配列による変異体(conformation variants)、スプライス変異体(splice variants)及び点突然変異変異体(point mutant variants)からなる群から選ばれる天然的に発生した変異体である。
【0034】
本発明のADP-リボシルシクラーゼの天然的に発生した変異体は、配列目録第1配列のアミノ酸配列を含むADP-リボシルシクラーゼと好ましくは50%以上の相同性、より好ましくは60%以上の相同性、さらに好ましくは70%以上の相同性、特に好ましくは80%以上の相同性、最も好ましくは90%以上の相同性を有する。
【0035】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明のADP-リボシルシクラーゼの天然的に発生した変異体は、哺乳類、鳥類、爬虫類、両棲類及び魚類からなる群から選ばれる生物から発生したものである。
【0036】
本発明の一実施例によれば、本発明のADP-リボシルシクラーゼの天然的に発生した変異体は、配列目録第1配列のアミノ酸配列を含むADP-リボシルシクラーゼと比較して、哺乳類は70%以上、鳥類、爬虫類及び両棲類は60%以上、魚類は50%以上の相同性を有することが確認された。
【0037】
本発明の一実施例によれば、本発明のADP-リボシルシクラーゼの天然的に発生した変異体は、配列目録第1配列のアミノ酸配列を含むADP-リボシルシクラーゼと比較して、ヒト及びラットは96%、チンパンジーは93%、ギニアピッグ及びウマは91%、イヌ、ヤギ及びヒツジは90%、ウサギは89%、ブタは88%、ウシは78%、ニワトリは70%、カエルは63%、シチメンチョウは62%の高い相同性を示し、種間保存的配列の比重が非常に高い酵素であることを確認した(図4)。
【0038】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明のADP-リボシルシクラーゼの天然的に発生した変異体は、配列目録第2配列~第21配列で構成された群から選ばれるアミノ酸配列を含む。
【0039】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、前記ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体をコードする核酸分子、前記核酸分子を含むベクター又は前記ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0040】
本発明の核酸分子は、単離したもの又は組み換えられたものでよく、単一鎖及び二重鎖形態のDNA及びRNAの他、対応する相補性配列も含まれる。“単離した核酸”は、天然生成源泉から単離した核酸の場合、核酸の単離した個体のゲノムに存在する周辺遺伝配列から分離された核酸である。鋳型から酵素的に又は化学的に合成された核酸、例えば、PCR産物、cDNA分子、又はオリゴヌクレオチドは、このような手順から生成された核酸の単離した核酸分子として理解されてよい。単離した核酸分子は、別個断片の形態又はより大きい核酸構築物の成分としての核酸分子を示す。核酸は、他の核酸配列と機能的関係で配置される時に“作動可能に連結”される。例えば、前配列又は分泌リーダ(leader)のDNAは、ポリペプチドが分泌される前の形態である前タンパク質(preprotein)として発現する場合にポリペプチドのDNAに作動可能に連結され、プロモーター又はエンハンサーは、ポリペプチド配列の転写に影響を与える場合にコーディング配列に作動可能に連結され、又は、リボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置される時にコーディング配列に作動可能に連結される。一般に、“作動可能に連結された”とは、連結されるDNA配列が隣接して位置することを意味し、分泌リーダの場合、隣接して同一のリーディングフレーム内に存在することを意味する。しかし、エンハンサーは隣接して位置する必要はない。連結は、便利な制限酵素部位においてライゲイションにより達成される。このような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーを、通常の方法によって使用する。
【0041】
本発明の好ましい具現例によれば、前記核酸分子は、cDNAである。
【0042】
本明細書において用語“ベクター”は、核酸配列を複製可能な細胞への導入のために核酸配列を挿入し得る伝達体を意味する。核酸配列は、外生(exogenous)又は異種(heterologous)であってよい。ベクターとしては、プラスミド、コスミド及びウイルス(例えば、バクテリオファージ)を挙げることができるが、これに制限されない。当業者は、標準的な組換え技術によってベクターを構築することができる(Maniatis,et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988;及び、Ausubel et al.,In:Current Protocols in Molecular Biology,John,Wiley & Sons,Inc,NY,1994など)。
【0043】
本明細書において、用語“発現ベクター”は、転写される遺伝子産物の少なくとも一部分をコードする核酸配列を含むベクターを意味する。一部の場合では、その後、RNA分子がタンパク質、ポリペプチド、又はペプチドとして翻訳される。発現ベクターには様々な調節配列が含まれてよい。転写及び翻訳を調節する調節配列と共にベクター及び発現ベクターには、さらに他の機能も提供する核酸配列が含まれてもよい。
【0044】
本明細書において用語“宿主細胞”は、真核生物及び原核生物を含み、前記ベクターを複製できるか、或いはベクターによってコードされる遺伝子を発現できる任意の形質転換可能な生物を意味する。宿主細胞は、前記ベクターによって形質感染(transfected)又は形質転換(transformed)されてよく、これは、外生の核酸分子が宿主細胞内に伝達又は導入される過程を意味する。
【0045】
本発明の宿主細胞は、好ましくは、細菌(bacteria)細胞、イースト(yeast)、動物又はヒト細胞(CHO細胞、HeLa細胞、HEK293細胞、MES13細胞、BHK-21細胞、COS7細胞、COP5細胞、A549細胞、NIH3T3細胞等)を挙げることができるが、これに制限されるものではない。
【0046】
本発明の他の態様によれば、本発明は、前記ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体、これをコードする核酸分子又は前記核酸分子を含むベクターを含む、NADをサイクリックADP-リボース(cyclic ADP-ribose;cADPR)に変換させる触媒組成物を提供する。
【0047】
本発明の触媒組成物は、NADがcADPRに変換される過程を効率的に触媒する。
【0048】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、前記ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の発現抑制剤又は活性抑制剤を含む組成物を提供する。
【0049】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の組成物は、ADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の予防又は治療用薬剤学的組成物である。
【0050】
本発明の薬剤学的組成物は、(a)前記発現抑制剤又は活性抑制剤;及び、(b)薬剤学的に許容される担体を含むことができる。
【0051】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の組成物は、ADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の予防又は改善用食品組成物である。
【0052】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、前記薬剤学的組成物の薬剤学的有効量を対象(subject)に投与する段階を含むADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の予防又は治療方法を提供する。
【0053】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、治療用途に使用するための(for use in therapy)、前記ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の発現抑制剤又は活性抑制剤を提供する。
【0054】
本発明が予防又は治療しようとするADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の種類は制限されず、好ましくは、糖尿病又は腎臓疾患であり、より好ましくは、腎不全(renal failure)、腎症(nephropathy)、腎炎(nephritis)、腎臓線維症(renal fibrosis)又は腎臓硬化症(nephrosclerosis)である。
【0055】
本発明の好ましい具現例によれば、前記腎不全は、慢性腎不全(Chronic Renal Failure)、急性腎不全(Acute Renal Failure)、又は透析前の軽度腎不全である。
【0056】
本発明の好ましい具現例によれば、前記腎症は、腎症症候群(Nephropathy Syndrome)、リポイド腎症(Lipoid Nephropathy)、糖尿病性腎症(Diabetic Nephropathy)、免疫グロビンA腎症(IgA Nephropathy)、鎮痛剤腎症(Analgesic Nephropathy)又は高血圧性腎症(Hypertensive Nephropathy)である。
【0057】
本発明の一実施例によれば、本発明の組成物は、体重対比腎臓重さの有意味な減少、クレアチン掃除率の有意味な増加、小便アルブミン量の有意味な減少から、慢性腎不全や糖尿病性腎症を含む腎臓疾患治療剤の候補としての可能性を確認し(図6);さらにADP-リボシルシクラーゼ活性及びcADPRの濃度を正常レベルに下げ(図7);TGF-β1、フィブロネクチン、コラーゲンIVの発現量を正常レベルに下げ(図8);糸球体肥厚、炎症細胞の浸潤、異型上皮細胞の形成を正常レベルに回復させ、腎臓の病理組織学的変化を回復させる能力も保有し(図9);高血圧モデルにおいてもクレアチン掃除率が有意に増加し、高血圧性腎症への適用可能性も確認したところ(図11B)、腎臓機能異常又は損傷によって発生する種々の腎臓疾患治療剤としての可能性を有する。
【0058】
本明細書において用語“発現抑制剤”とは、前記ADP-リボシルシクラーゼの発現を抑制する物質を意味し、前記ADP-リボシルシクラーゼの構造及び機能から通常の技術者は、これを容易に作製することができる。
【0059】
本発明の発現抑制剤は、制限されないが、好ましくは、前記ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体遺伝子のmRNAに相補的に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド(antisense oligonucleotide)、siRNA、shRNA、miRNA、ribozyme、DNAzyme及びPNA(protein nucleic acid)からなる群から選ばれるいずれか一つである。
【0060】
本発明の好ましい具現例によれば、前記siRNAは、配列目録第22配列のヌクレオチド配列を含むものである。
【0061】
本明細書において用語“活性抑制剤”とは、前記発現したADP-リボシルシクラーゼタンパク質の活性を抑制する物質を意味し、好ましくは、前記ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体タンパク質に特異的に結合する化合物、ペプチド、ペプチド類似体(mimetics)、アプタマー及び抗体からなる群から選ばれるいずれか一つである。
【0062】
本発明の好ましい具現例によれば、前記化合物は、4,4’-ジヒドロキシアゾベンゼン(4,4’-dihydroxyazobenzene)、2-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イルアミノ)-1-メチルキナゾリン-4(1H)-オン(2-(1,3-benzoxazol-2-ylamino)-1-methylquinazoline-4(1H)-one)及びジカフェオイルキナ酸(Dicaffeoylquinic acid,DCQA)からなる群から選ばれるものである。
【0063】
本発明の4,4’-ジヒドロキシアゾベンゼンは、好ましくは、下記化学式1で表示されてよい:
【0064】
【化1】
【0065】
本発明の2-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イルアミノ)-1-メチルキナゾリン-4(1H)-オンは、好ましくは、下記化学式2で表示されてよい:
【0066】
【化2】
【0067】
本発明のジカフェオイルキナ酸(Dicaffeoylquinic acid,DCQA)は、下記化学式3~8(1,4-DCQA、3,4-DCQA、3,5-DCQA、4,5-DCQA、1,3-DCQA及び1,5-DCQA)からなる群から選ばれるいずれか一つの化合物で表示されてよい:
【0068】
【化3】
【0069】
【化4】
【0070】
【化5】
【0071】
【化6】
【0072】
【化7】
【0073】
【化8】
【0074】
本発明の一実施例によれば、本発明に係る新しいADP-リボシルシクラーゼに対する発現抑制剤又は活性抑制剤は、ADPRCの発現又は活性を調節する機序を経て腎臓疾患を抑制するのに寄与することが確認された。
【0075】
したがって、本発明の新しいADP-リボシルシクラーゼに対する発現抑制剤又は活性抑制剤は、臨床的に有用な各細胞別選択的抑制剤、さらに腎臓内疾病予防、改善及び/又は治療剤として使用することができる。
【0076】
本発明の組成物は、有効成分である新しいADPRCの発現抑制剤又は活性抑制剤の他、既存に公知されたADPRC関連疾患の治療剤も共に使用可能である。
【0077】
本発明の薬剤学的組成物は、薬剤学的に許容される担体と共に適宜の形態で剤形化されてよい。‘薬剤学的に許容される’とは、生理学的に許容され、ヒトに投与されるときに、通常、胃腸障害、目眩などのようなアレルギー反応又はこれと類似の反応を起こさない担体のことを指す。
【0078】
本発明の薬剤学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に一般に用いられるものであり、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルジネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるものではない。本発明の薬剤学的組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。適切な薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.,1995)に詳細に記載されている。
【0079】
本発明の薬剤学的組成物は、経口又は非経口で投与でき、好ましくは、非経口投与であり、例えば、静脈内注入、局所注入及び腹腔注入などで投与できる。
【0080】
本発明の薬剤学的組成物の適度の投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって様々であり、熟練した通常の医師は、希望する治療又は予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方することができる。本発明の好ましい具現例によれば、本発明の薬剤学的組成物の1日投与量は、0.0001~100mg/kgである。
【0081】
本発明の薬剤学的組成物は、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法により、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することによって単位容量の形態で製造したり又は多回容量容器内に内入させて製造することができる。このとき、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液形態であるか、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態であってもよく、分散剤又は安定化剤をさらに含むことができる。
【0082】
本発明の組成物が食品組成物として製造される場合に、有効成分として、前記ADP-リボシルシクラーゼに対する発現抑制剤又は活性抑制剤の他、食品製造時に通常添加される成分も含み、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味剤及び香味剤を含む。上述した炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えば、マルトース、スクロース、オリゴ糖など;及び、ポリサッカライド、例えばデキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖及びキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。香味剤として天然香味剤(タウマチン、ステビア抽出物[例えば、レバウジオシドA、グリチルリチンなど])及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を使用することができる。
【0083】
例えば、本発明の食品組成物がドリンク剤として製造される場合には、本発明のADP-リボシルシクラーゼに対する発現抑制剤又は活性抑制剤の他にも、クエン酸、液状果糖、砂糖、ブドウ糖、酢酸、リンゴ酸、果汁、杜沖抽出液、ナツメ抽出液、甘草抽出液などをさらに含めることができる。
【0084】
本発明の食品組成物は、腎臓関連の様々な病理的形態関連因子の調節(体重対比腎臓重さの有意味な減少、クレアチン掃除率の有意味な増加、小便アルブミン量の有意味な減少;TGF-β1、フィブロネクチン、コラーゲンIVの発現量を正常レベルに減少;糸球体肥厚、炎症細胞の浸潤、異型上皮細胞の形成を正常レベルに回復)によって腎臓疾患を改善することに非常に優れた作用を有する。
【0085】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、ADP-リボシルシクラーゼ(ADP-ribosyl cyclase;ADPRC)又はその天然的に発生した(naturally occurred)変異体のヘテロタイプ(hetero type)遺伝子欠損した動物モデルを提供する。
【0086】
本発明の好ましい具現例によれば、前記動物は、ヒト以外の哺乳類、鳥類、爬虫類、両棲類又は魚類である。
【0087】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、下記の段階を含むADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患有無の確認方法を提供する:(a)前記ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体のヘテロタイプ遺伝子欠損動物モデルと野生型(wild-type)動物モデルに特定疾患を誘導する段階;及び、(b)前記動物モデル間の差異を確認する段階。
【0088】
前記動物モデルを用いると、特定疾患(例えば、糖尿病、腎臓疾患、高血圧、肥満など)がADP-リボシルシクラーゼと媒介して発生したものか、それともADP-リボシルシクラーゼに関係なく発生したものかを、前記動物モデル間の差異(例えば、体重、腎臓重さ、血圧、クレアチン掃除率、血糖、炎症、糸球体の肥厚程度などの差異)を用いて確認することができる。
【0089】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、下記の段階を含むADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の診断に関する情報提供方法を提供する:
1)被検体から分離された試料内配列目録第1配列のアミノ酸配列を含むADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の発現又は活性レベルを測定する段階;及び
2)前記段階1)のADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の発現又は活性レベルを正常対照群と比較し、シクラーゼ媒介疾患にかかる危険を持つ個体として判断する段階。
【0090】
本明細書において用語“診断”は、病理状態の存在又は特徴を確認することを意味する。本発明の目的上、診断は、ADP-リボシルシクラーゼ関連又は媒介疾患が現在発病したか又は発病する可能性を確認するものである。
【0091】
ADP-リボシルシクラーゼは様々なホルモンによって活性化され、この酵素は基質NADから産物であるcADPRを生成するが、このcADPRは大部分の臓器で細胞内カルシウムを増加させる。また、ADP-リボシルシクラーゼの活性によるカルシウムの異常増加は、インスリン分泌(insulin secretion)、細胞肥大(hypertrophy)、細胞増殖などの様々な生体病理の要因として知られている。したがって、前記ADP-リボシルシクラーゼの発現又は活性レベルの測定により、細胞内カルシウム増加から誘発されたADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の診断に対する有用な情報の提供が可能である。
【0092】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、配列目録第1配列のアミノ酸配列を含むADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の遺伝子発現レベルを測定する製剤又はタンパク質レベルを測定する製剤を含むADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の診断用組成物を提供する。
【0093】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の遺伝子発現レベルを測定する製剤は、ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体をコードする遺伝子に特異的に結合するプライマー又はプローブである。
【0094】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明のタンパク質レベルを測定する製剤は、ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片である。
【0095】
前記抗体又はその抗原結合断片は、ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体に特異的に結合するので、これを用いると、サンプル中に含まれたADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の量を正確に測定可能である。
【0096】
本発明の診断用組成物を用いると、抗原抗体結合反応を用いて前記抗体に対する抗原を分析することにより、ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の量を定量でき、前記抗原抗体結合反応は、通常のELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay)、RIA(Radioimmnoassay)、サンドウィッチ測定法(Sandwich assay)、ポリアクリルアミドゲル上のウェスタンブロット(Western Blot)、免疫ブロット分析(Immunoblot assay)及び免疫組織化学染色方法(Immnohistochemical staining)からなる群から選ばれることが好ましいが、これに制限されない。
【0097】
抗原-抗体結合反応のための固定体には、ニトロセルロース膜、PVDF膜、ポリビニル(Polyvinyl)樹脂又はポリスチレン(Polystyrene)樹脂で合成されたウェルプレート(Well plate)及びガラスからなるスライドガラス(Slide glass)からなる群から選ばれるものを用いることができるが、これに制限されるものではない。
【0098】
2次抗体は、発色反応をする通常の発色剤で標識されることが好ましく、HRP(Horseradish peroxidase)、アルカリ性リン酸分解酵素(Alkaline phosphatase)、コロイドゴールド(Coloid gold)、FITC(Poly L-lysine-fluorescein isothiocyanate)、RITC(Rhodamine-B-isothiocyanate)などの蛍光物質(Fluorescein)及び色素(Dye)からなる群から選ばれるいずれか一つの標識体が用いられてよい。発色を誘導する基質は、発色反応をする標識体に応じて使用することが好ましく、TMB(3,3’,5,5’-tetramethyl bezidine)、ABTS[2,2’-azino-bis(3-ethylbenzothiazoline-6-sulfonic acid)]及びOPD(ophenylenediamine)からなる群から選ばれるいずれか一つを使用することが好ましいが、これに制限されない。
【0099】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、配列目録第1配列のアミノ酸配列を含むADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の遺伝子発現レベルを測定する製剤又はタンパク質レベルを測定する製剤を含むADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の診断キットを提供する。
【0100】
本発明の診断キットは、分析方法に適する1種又はそれ以上の他の構成成分組成物、溶液又は装置、さらにはそれに対する使用説明書を含んで構成されてよい。
【0101】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、下記の段階を含むADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の予防又は治療物質のスクリーニング方法を提供する:
1)配列目録第1配列のアミノ酸配列を含むADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体を発現させる細胞に候補物質を処理する段階;及び
2)前記候補物質の処理により、前記ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の遺伝子発現レベル又はタンパク質レベルを測定する段階;及び
3)前記遺伝子発現レベル又はタンパク質レベルが、候補物質を処理しない対照群と比較して減少した場合に、前記候補物質をADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の予防又は治療物質として選別する段階。
【0102】
前記ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の遺伝子発現レベルの測定は、これに制限されないが、好ましくは、免疫沈降法(immunoprecipitation)、放射能免疫分析法(RIA)、酵素免疫分析法(ELISA)、免疫組織化学、RT-PCR、ウェスタンブロット(Western Blotting)及び流細胞分析法(FACS)からなる群から選ばれる1種以上の方法で測定される。
【0103】
前記ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体のタンパク質レベルの測定は、これに制限されないが、好ましくは、SDS-PAGE、免疫蛍光法、酵素免疫分析法(ELISA)、質量分析及びタンパク質チップからなる群から選ばれる1種以上の方法で測定される。
【0104】
〔発明の効果〕
本発明の特徴及び利点を要約すると、次の通りである:
(i)本発明は、新規のADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の発現抑制剤又は活性抑制剤を有効成分として含むADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の予防又は治療用薬剤学的組成物を提供する。
【0105】
(ii)また、本発明は、前記ADP-リボシルシクラーゼ又はその天然的に発生した変異体の遺伝子発現レベルを測定する製剤又はタンパク質レベルを測定する製剤を含むADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患の診断用組成物を提供する。
【0106】
(iii)本発明の組成物は、アンジオテンシンIIによる新しいADP-リボシルシクラーゼの発現又は活性増加による腎臓細胞内カルシウム増加を抑制する効果があり、ADP-リボシルシクラーゼ媒介疾患、特に、腎臓疾患の治療剤として有用に用いることができる。
【0107】
〔図面の簡単な説明〕
図1〕HEK293細胞とMES13細胞において新しいADPRCのNAD-グリコヒドロラーゼ(NADase)活性を測定した図である。
【0108】
図2〕精製されたFLAG-ADPRCのcADPR合成能を評価した図である。
【0109】
図3〕MES13細胞においてアンジオテンシンIIで刺激をしたとき、新しいADPRCによる細胞内cADPR生成を測定した図である。
【0110】
図4〕本発明のADP-リボシルシクラーゼの種間配列の相同性をアラインメントを用いて比較した結果である(マウスを基準に、ヒト(96%)、ラット(96%)、イヌ(90%)、ブタ(88%)、ウサギ(89%)、ヒツジ(90%)、ニワトリ(70%)、ウシ(78%)、チンパンジー(93%)、ウマ(91%)、カエル(63%)、ヤギ(90%)、シチメンチョウ(62%)、ギニアピッグ(91%)、エキノコックスグラヌロスス(27%)、ヘマトビウム住血吸虫(22%)、トリキネラスピラリス(22%)、ショウジョウバエ(19%)、ゼブラフィッシュ(56%))。
【0111】
図5〕新しいADPRCのNADグリコヒドロラーゼ(NADase)活性を抑制する新しい抑制剤の効果を測定した図である。
【0112】
図6〕糖尿病性腎臓疾患マウスモデルの血糖(図6A)、腎臓重さ(kidney weight)と体重(body weight)の比率(図6B)、クレアチニン掃除率(図6C)及び小便アルブミン量(図6D)でジカフェオイルキナ酸(Dicaffeolylquinic acid,DCQA)の効果を測定した図である。
【0113】
図7〕糖尿病性腎臓疾患マウスモデル腎臓組織においてADPRCの活性(図7A)及びcADPR濃度(図7B)に対するDCQAの効果を測定した図である。
【0114】
図8〕糖尿病性腎臓疾患マウスモデル腎臓組織においてTGF-β1、フィブロネクチン及びコラーゲンIVの発現変化に対するDCQAの効果を測定した図である。
【0115】
図9〕糖尿病性腎臓疾患マウスモデル腎臓組織においてH&E(Hematoxylin and Eosin)染色を用いて病理組織学的変化を観察した図である。
【0116】
図10〕正常マウスとADPRCヘテロ(ADPRC(+/-))マウスの糖尿病性腎臓疾患モデルの血糖(図10A)、腎臓重さと体重の比率(図10B)及びクレアチニン掃除率(図10C)を測定した図である。
【0117】
図11〕正常マウスと高血圧マウスモデルの血圧(図11A)及びクレアチニン掃除率(図11B)においてDCQAの効果を測定した図である。
【0118】
〔発明を実施するための形態〕
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためのもので、本発明の範囲がこれら実施例によって制限されないことは、当業界における通常の知識を有する者には明らかであろう。
【0119】
〔実施例〕
実施例1:新しいADPRCのNAD-グリコヒドロラーゼ(NADase)酵素活性
配列目録第1配列のADP-リボシルシクラーゼ(ADPRC)の活性を確認するために、前記ADPRCをコードするcDNA配列をFLAG-CMV-2ベクターにライゲイションしてFLAG-ADPRCプラスミドを作り、これを、HEK293細胞又はMES13細胞に形質感染試薬(transfection reagent)を用いて新しいADPRCの過発現を誘導した。該過発現した新しいADPRCを、溶解緩衝液(lysis buffer)で溶解させた。溶解した試料45μlに2mM ε-NAD(Nicotinamide 1,N6-ethenoadenine dinucleotide)5μlを処理し、37℃で1時間反応させた。反応後、10%三塩化酢酸(Trichloroacetic acid)を50μl処理し、酵素-基質反応を止まらせた。10分間遠心分離によって上澄液80μlを720μlの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(sodium phosphate buffer)に入れた後、励起(excitation)297nm、放出(emission)410nmにおいて蛍光分析機で吸光度を測定した。その結果を図1に示した。
【0120】
実施例2:新しいADPRCのcADPR合成能評価
前記ADPRCのcADPR合成能評価は、Graeff R等[Graeff R,Lee HC.Biochem.J.361:379-384,2002]によって報告された方法によって製造した。
【0121】
具体的には、HEK293細胞にFLAG-ADPRCプラスミドを形質感染試薬を用いて過発現させた後、溶解緩衝液で溶解させた。溶解した試料を、FLAG-アガロースカラムを用いて過発現のFLAG-ADPRCを精製した。精製された試料に100μM β-NADを処理し、37℃で1時間反応させた。反応後、三塩化酢酸(Trichloroacetic acid)を最終濃度0.6Mになるように処理してcADPRを抽出した後、0.1mlの抽出物と0.1mlのcADPR標準溶液に、ADPRシクラーゼ(0.3μg/ml)、ニコチンアミド(nicotinaminde,30mM)、リン酸ナトリウム(sodium phosphate,100mM)の混合溶液50ulを入れ、常温で30分間反応させた。
【0122】
この混合液にエタノール(ethanol,2%)、アルコールジヒドロゲナーゼ(alcohol dehydrogenase,100μg/ml)、レサズリン(resazurin,20μM)、ジアホラーゼ(diaphorase,10μg/ml)、FMN(10μM)、ニコチンアミド(10mM)、ウシ血清アルブミン(BSA,0.1mg/ml)、リン酸ナトリウム(100mM)を入れ、2~4時間反応させた。反応物は、544nm~590nmの範囲の蛍光分光光度計を用いて吸光度を測定した。その結果を図2に示した。
【0123】
実施例3:MES13細胞においてADPRCによる細胞内cADPR濃度の変化
前記ADPRCによる細胞内cADPR濃度変化は、Graeff R等[Graeff R,Lee HC.Biochem.J.361:379-384,2002]によって報告された方法によって製造した。
【0124】
具体的には、MES13細胞に、新しいADPRCの小さい干渉RNA(small interfering RNA、配列目録第22配列)を形質感染試薬として、ADPRCの発現を抑制した。ADPRCの発現を抑制した細胞に、150nMのアンジオテンシンIIを60秒間処理した後、0.6M三塩化酢酸(Trichloroacetic acid)を用いてcADPRを抽出した後、0.1mlの抽出物と0.1mlのcADPR標準溶液にADPRシクラーゼ(0.3μg/ml)、ニコチンアミド(nicotinaminde,30mM)、リン酸ナトリウム(sodium phosphate,100mM)の混合溶液50μlを入れ、常温で30分間反応させた。
【0125】
この混合液に、エタノール(ethanol,2%)、アルコールジヒドロゲナーゼ(alcohol dehydrogenase,100μg/ml)、レサズリン(resazurin,20μM)、ジアホラーゼ(diaphorase,10μg/ml)、FMN(10μM)、ニコチンアミド(10mM)、ウシ血清アルブミン(BSA,0.1mg/ml)、リン酸ナトリウム(100mM)を入れ、2~4時間反応させた。反応物は、544nm~590nmの範囲の蛍光分光光度計を用いて吸光度を測定した。その結果を図3に示した。
【0126】
実施例4:新しいADPRCのNADグリコヒドロラーゼ(NADase)活性を抑制する新しい抑制剤の効果
配列目録第1配列の新しいADP-リボシルシクラーゼ(ADPRC)の活性を抑制する抑制剤を見出すために、4,4’-ジヒドロキシアゾベンゼン(4-DHAB,TCI(日本))、2,2’-ジヒドロキシアゾベンゼン(2-DAB,Sigma-Aldrich(米国))、2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-3,5,7-ジヒドロキシクロメン-4-オン(Quercetin,Sigma-Aldrich(米国))、San4825(kannt A等[Kannt A,Sicka K,Kroll K,Kadereit D,Gogelein H.Naunyn.Schmiedebergs.Arch.Pharmacol.385:717-727,2012]、合成(中国))と化合物スクリーニングを用いて新しく発見した2-(1,3-ベンゾオキサゾール-2-イルアミノ)-1-ミチルキナゾリン-4(1H)-オン(2-BMQ、合成(中国))、1,4-ジカフェオイルキナ酸(1,4-DCQA,Biopurify(中国)、以下、DCQA)を、新しいADPRC 40μlに、抑制剤5μlを冷やした水で15分間反応させた。反応後、2mM ε-NAD(Nicotinamide 1,N6-ethenoadenine dinucleotide)5μlを処理し、37℃で1時間反応させた。反応後、10%三塩化酢酸(Trichloroacetic acid)を50μl処理して酵素-基質反応を止まらせた。10分間遠心分離によって上澄液80μlを、720μlの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(sodium phosphate buffer)に入れた後、励起297nm、放出410nmにおいて蛍光分析機で吸光度を測定した。その結果を図5に示した。図5に示すように、対照群(Control)と対比して、4-DHABは42.40%、2-BMQは36.49%、そしてDCQAは何と79.64%の割合でNADグリコヒドロラーゼ(NADase)活性を抑制することが確認できた。
【0127】
実施例5:腎臓疾患マウスモデルの血糖、腎臓重さと体重との比率、クレアチン掃除率及び小便アルブミン量においてDCQAの効果
腎臓疾患マウスモデルにおける血糖、腎臓と体重との比率、クレアチニン掃除率及び小便アルブミン量の測定は、Kim SY等[Kim SY,Park KH,Gul R,Jang KY,Kim UH.Am.J.Physiol.Renal Physiol.296:F291-F297,2009]によって報告された方法によって行われた。
【0128】
具体的には、C57BL/6Jマウスに50mMクエン酸緩衝液(citrate buffer,pH4.8)を0.2mlずつ腹腔注射した群(対照群及びDCQA群)と、50mMクエン酸緩衝液にストレプトゾトシン(Streptozotocin(STZ,Sigma-Aldrich(米国)))を5mg/mlで溶かした後、200μlずつ腹腔注射した群(STZ群及びSTZ+DCQA群)とに分けた。STZ注射後2日目から血糖を測定し、血糖数値が300mg/dLであるマウスを、STZ群及びSTZ+DCQA群に分類して使用した。血糖が上がったマウスに、前記実施例5で新規したADPRCに対する抑制効果に最も優れているDCQAをジメチルスルホキシド(Dimethyl Sulfoxide)に9mg/mlで溶かした後、食塩水に9μg/mlに希釈させた後、100μlずつ6週間毎日腹腔注射した。6週最終日にマウスをメタボリックケージに入れ、24時間に小便を得た。
【0129】
24時間に小便を得た後、マウスの体重を測定し、血糖を測定した(図6A)。また、腎臓疾患治療剤としての可能性を確認するために、痲酔剤を用いて犠牲させた後に、血清を得、腎臓を摘出した。摘出した腎臓を用いて腎臓重さ(kidney weight)と体重(body weight)との比率を測定後(図6B)に、一部の腎臓は、蛍光染色及びH&E染色のために10%ホルマリンに入れて固定し、残りの腎臓は、多数の切片ADPRシクラーゼ活性及びcADPR濃度を測定した。小便と血清のクレアチニンをクレアチニン測定キット(BioAssay System、米国)を用いて測定してクレアチニン掃除率を計算し(図6C)、小便アルブミン量をアルブミン測定キット(BioAssay System、米国)を用いて測定した(図6D)。その結果を図6に示した。
【0130】
図6に見られるように、STZによって誘発された糖尿病マウスモデルにおいて、STZ+DCQA群は、対照群(STZ)に比べて血糖は減少しなかったにもかかわらず(図6A)、体重対比腎臓重さの有意味な減少(図6B)、クレアチン掃除率の有意味な増加(図6C)、小便アルブミン量の有意味な減少(図6D)を示し、慢性腎不全や糖尿病性腎症のような腎臓疾患治療剤の候補としての可能性を確認した。
【0131】
実施例6:腎臓疾患マウスモデル腎臓組織においてADPRCの活性及びcADPR濃度に対するDCQAの効果
腎臓疾患マウスモデルの腎臓組織におけるのADPRC活性及びcADPR濃度の測定は、Kim SY等[Kim SY,Park KH,Gul R,Jang KY,Kim UH.Am.J.Physiol.Renal Physiol.296:F291-F297,2009]によって報告された方法によって行われた。
【0132】
具体的には、C57BL/6Jマウスに、50mMクエン酸緩衝液(citrate buffer,pH4.8)を0.2mlずつ腹腔注射した群(対照群及びDCQA群)と、50mMクエン酸緩衝液にストレプトゾトシン(Streptozotocin(STZ,Sigma-Aldrich(米国)))を5mg/mlで溶かした後に200μlずつ腹腔注射した群(STZ群及びSTZ+DCQA群)とに分けた。STZ注射後2日目から血糖を測定し、血糖数値が300mg/dLであるマウスを、STZ群及びSTZ+DCQA群に分類して使用した。血糖が上がったマウスに、前記実施例5において新規のADPRCに対する抑制効果に最も優れていたDCQAをジメチルスルホキシド(Dimethyl Sulfoxide)に9mg/mlで溶かした後、食塩水に9μg/mlに希釈して100μlずつ6週間毎日腹腔注射した。腎臓疾患治療剤としての可能性を確認するために、痲酔剤を用いて犠牲させた後に、血清を得、腎臓を摘出した。
【0133】
各群の摘出した腎臓組織の一部を溶解緩衝液(lysis buffer)に溶解させた後、溶解した試料45μlに2mM NGD(Nicotinamide guanine dinucleotide)5μlを処理し、37℃で1時間反応させた。反応後、10%三塩化酢酸(Trichloroacetic acid)を50μl処理し、酵素-基質反応を止まらせた。10分間遠心分離によって上澄液80μlを720μlの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(sodium phosphate buffer)に入れた後、励起297nm、放出410nmにおいて蛍光分析機(Hitachi、日本)で吸光度を測定した。
【0134】
また、各群の摘出した腎臓組織の一部に、0.6M三塩化酢酸(Trichloroacetic acid)0.2mlを処理してcADPRを抽出した後、0.1mlの抽出物と0.1mlのcADPR標準溶液に、ADPRシクラーゼ(0.3μg/ml)、ニコチンアミド(nicotinaminde,30mM)、リン酸ナトリウム(sodium phosphate,100mM)混合溶液50ulを入れ、常温で30分間反応させた。この混合液に、エタノール(ethanol,2%)、アルコールジヒドロゲナーゼ(alcohol dehydrogenase,100μg/ml)、レサズリン(resazurin,20μM)、ジアホラーゼ(diaphorase,10μg/ml)、FMN(10μM)、ニコチンアミド(10mM)、ウシ血清アルブミン(BSA,0.1mg/ml)、リン酸ナトリウム(100mM)を入れ、2~4時間反応させた。反応物は、544nm~590nmの範囲の蛍光分光光度計を用いて吸光度を測定した。その結果を図7に示した。
【0135】
図7Aに示すように、本願発明のDCQAは、STZによって増加したADP-リボシルシクラーゼ活性を対照群(control)レベル以下に下げ、また、図7Bに示すように、本願発明のDCQAは、STZによって増加したcADPRの濃度を対照群(control)レベルに下げたところ、DCQAが腎臓疾患と関連して腎臓の機能異常又は損傷によって発生するADPRCの活性及びcADPRの濃度を下げる能力を確認した。
【0136】
実施例7:腎臓疾患マウスモデル腎臓組織においてTGF-β1、フィブロネクチン及びコラーゲンIVの発現変化に対する1,4-DCQAの効果
腎臓疾患マウスモデルにおいて腎臓組織におけるTGF-β1、フィブロネクチン及びコラーゲンIVの発現変化は、Kim SY等[Kim SY,Park KH,Gul R,Jang KY,Kim UH.Am.J.Physiol.Renal Physiol.296:F291-F297,2009]によって報告された方法によって行われた。
【0137】
具体的には、C57BL/6Jマウスに50mMクエン酸緩衝液(citrate buffer,pH4.8)を0.2mlずつ腹腔注射した群(対照群及びDCQA群)と、50mMクエン酸緩衝液にストレプトゾトシン(Streptozotocin(STZ,Sigma-Aldrich(米国)))を5mg/mlで溶かした後に200μlずつ腹腔注射した群(STZ群及びSTZ+DCQA群)とに分けた。STZ注射後2日目から血糖を測定し、血糖数値が300mg/dLであるマウスをSTZ群及びSTZ+DCQA群として使用した。血糖が上がったマウスに、前記実施例5で新規のADPRCに対する抑制効果に最も優れていたDCQAをジメチルスルホキシド(Dimethyl Sulfoxide)に9mg/mlで溶かした後、食塩水に9μg/mlに希釈させた後に100μlずつ6週間毎日腹腔注射した。腎臓疾患治療剤としての可能性を確認するために、痲酔剤を用いて犠牲させた後に、血清を得、腎臓を摘出した。摘出した腎臓の一部を10%ホルマリンに入れて固定した。10%ホルマリンに固定された腎臓組織を凍結組織切片器を用いてスライドガラスに腎臓組織切片を載せ、TTBS(Tris-buffered saline(TBS)with 0.1% Tween20)緩衝液で洗浄した後、1%ウシ血清アルブミン(BSA)含有のTTBS緩衝液で1時間反応させる。1%ウシ血清アルブミン(BSA)含有のTTBS緩衝液に、1次抗体(TGF-β1(Santa Cruz、米国)、フィブロネクチン(Santa Cruz、米国)、コラーゲンIV(Abcam、英国))を1:200に希釈させ、4℃で12時間以上反応させた。TTBS緩衝液で1次抗体を反応させた組織を3回洗浄した後、FITCの付いている2次抗体を1:200にTTBS緩衝液に希釈させ、暗い場所の室温で1時間反応させた。2次抗体反応後にTTBS緩衝液で3回洗浄した後、マウンティング溶液を用いてカバーガラスを付ける。染色した腎臓組織を、緑色蛍光を観察する蛍光顕微鏡(Carl Zeiss、ドイツ)を用いて観察した。その結果を図8に示した。
【0138】
図8に示すように、本願発明のDCQAは、STZによって増加したTGF-β1、フィブロネクチン、コラーゲンIVの発現量を対照群(control)レベルに下げたところ、DCQAが腎臓疾患と関連して腎臓の機能異常又は損傷によって発生するTGF-β1、フィブロネクチン、コラーゲンIVの発現量を下げる能力を確認した。
【0139】
実施例8:腎臓疾患マウスモデル腎臓組織においてH&E(Hematoxylin and Eosin)染色を用いた病理組織学的変化
腎臓疾患マウスモデルにおいて腎臓組織における病理組織学的変化は、Shu B等[Shu B,Feng Y,Gui Y,Lu Q,Wei W,Xue X,Sun X,He W,Yang J,Dai C.Cell.Signal.42:249-258,2018]によって報告された方法によって行われた。
【0140】
具体的には、C57BL/6Jマウスに、50mMクエン酸緩衝液(citrate buffer,pH4.8)を0.2mlずつ腹腔注射した群(対照群及びDCQA群)と、50mMクエン酸緩衝液にストレプトゾトシン(Streptozotocin(STZ,Sigma-Aldrich(米国)))を5mg/mlで溶かした後に200μlずつ腹腔注射した群(STZ群及びSTZ+DCQA群)とに分けた。STZ注射後2日目から血糖を測定し、血糖数値が300mg/dLであるマウスをSTZ群及びSTZ+DCQA群として使用した。血糖が上がったマウスに、前記実施例5で新規のADPRCに対する抑制効果に最も優れていたDCQAをジメチルスルホキシド(Dimethyl Sulfoxide)に9mg/mlで溶かした後、食塩水に9μg/mlに希釈させ、100μlずつ6週間毎日腹腔注射した。腎臓疾患治療剤としての可能性を確認するために、痲酔剤を用いて犠牲させた後に、血清を得、腎臓を摘出した。摘出した腎臓の一部を10%ホルマリンに入れて固定した。10%ホルマリンに固定された腎臓組織を、凍結組織切片器を用いてスライドガラスに腎臓組織切片を載せ、流水に5分間洗浄し、ヘマトキシリンに5分間染色させる。染色後、流水に5分間洗浄し、157mM塩酸に速く2回漬けてから取り出した後、流水に5分間洗浄する。0.25%アンモニア水に1回速く漬けてから取り出した後、再び流水に5分間洗浄し、エオシンに約30秒間染色させた後、70%エタノール30秒、80%エタノール30秒、90%エタノール30秒、1次100%エタノール30秒、2次100%エタノール30秒、3次100%エタノール30秒間反応させる。最後に、1次キシレンに5分間反応させ、2次キシレンに5分以上反応させた後、マウンティング溶液を用いてカバーガラスを付けた。染色した腎臓組織を光学顕微鏡(Lieca、ドイツ)で観察した。その結果を図9に示した。
【0141】
図9に示すように、本願発明のDCQAは、STZによって増加した糸球体肥厚、炎症細胞の浸潤、異型上皮細胞の形成が、対照群(control)に類似するレベルに回復したところ、DCQAが腎臓疾患と関連して腎臓の機能異常又は損傷によって発生する腎臓の病理組織学的変化を回復させる能力を確認した。
【0142】
実施例9:正常マウスとADPRCヘテロ(ADPRC(+/-))マウスの腎臓疾患モデルの血糖、腎臓と体重との比率、及びクレアチニン掃除率の比較
腎臓疾患マウスモデルにおける血糖、腎臓と体重との比率、及びクレアチン掃除率の測定は、Kim SY等[Kim SY,Park KH,Gul R,Jang KY,Kim UH.Am.J.Physiol.Renal Physiol.296:F291-F297,2009]によって報告された方法によって行われた。
【0143】
具体的には、129S1/SvImJマウス(wild type,WT)とThe Jackson Laboratory(米国)から作製したADPRCヘテロノックアウト(ADPRC(+/-))マウスに、50mMクエン酸緩衝液(citrate buffer,pH4.8)にストレプトゾトシン(Streptozotocin(STZ))を5mg/mlで溶かした後、200μlずつ腹腔注射した。注射後2日目から血糖を測定し、血糖数値が300mg/dLであるマウスを使用した。血糖が上がってから6週後にマウスをメタボリックケージに入れ、24時間小便を得た。
【0144】
24時間小便を得た後、マウスの体重を測定し、血糖を測定した(図10A)。痲酔剤を用いて犠牲にさせた後に、血清を得、腎臓を摘出した。摘出した腎臓を用いて腎臓重さ(kidney weight)及び体重(body weight)の比率を測定した(図10B)。小便と血清のクレアチニンをクレアチニン測定キット(BioAssay System、米国)を用いて測定し、クレアチニン掃除率を計算した(図10C)。その結果を図10に示した。
【0145】
図10に示すように、STZによって誘発された糖尿病マウスモデルにおいて、対照群に比べて(ADPRC(+/-)血糖は減少していないが(図10A)、本願発明のADPRC(+/-)+STZ群の体重対比腎臓重さが、WT+STZ群に比べて有意味な減少を示した(図10B)。また、STZによるクレアチニン掃除率の減少がADPRC(+/-)+STZ群で減少していないところ(図10C)、慢性腎不全や糖尿病性腎症のような腎臓疾患への新しいADPRCの重要性も確認した。
【0146】
実施例10:正常マウスと高血圧マウスモデルの血圧及びクレアチニン掃除率においてDCQAの効果
高血圧マウスモデルにおける血圧及びクレアチニン掃除率測定は、Allagnat等[Allagnat F,Haefliger JA,Lambelet M,Longchamp A,Berard X,Mazzolai L,Corpataux JM,Deglise S.Eur.J.Vasc.Endovasc.Surg.51:733-742,2016]とKim SY等[Kim SY,Park KH,Gul R,Jang KY,Kim UH.Am.J.Physiol.Renal Physiol.296:F291-F297,2009]によって報告された方法によって行われた。
【0147】
具体的には、C57BL/6Jマウスに、8mg L-NAME(Nω-nitro-l-arginine-methyl-ester,Sigma-Aldrich、米国)を1ml食塩水に溶かした後、0.2mlずつ毎日経口投与した。経口投与7日目と14日目に、マウスの血圧を尾から測定し、血圧の上がったことを確認後に、前記実施例5で新規のADPRCに対する抑制効果に最も優れていたDCQAを、ジメチルスルホキシド(Dimethyl Sulfoxide)に9mg/mlで溶かした後、食塩水に9μg/mlに希釈させ、該DCQAを100μlずつ7日間に毎日腹腔注射し、L-NAMEを経口投与した。DCQA処理6日後にマウスをメタボリックケージに入れ、24時間において小便を得た。
【0148】
小便を24時間得た後、マウスの血圧を測定した(図11A)。痲酔剤を用いて犠牲させて血清を得た。
【0149】
小便と血清のクレアチニンをクレアチニン測定キット(BioAssay System、米国)を用いて測定し、クレアチニン掃除率を計算した(図11B)。その結果を図11に示した。
【0150】
図11Aに示すように、DCQAは、高血圧モデルでは血圧を下げる効果はないことが確認された。しかし、クレアチニン掃除率がDCQAによって増加したところ、高血圧性腎症のような腎臓疾患の治療剤の候補としての可能性も確認した(図11B)。
【0151】
<参考文献>
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11. Shu B, Feng Y, Gui Y, Lu Q, Wei W, Xue X, Sun X, He W, Yang J, Dai C. Blockade of CD38 diminishes lipopolysaccharide-induced macrophage classical activation and acute kidney injury involving NF-κB signaling suppression. Cell. Signal. 42:249-258, 2018.
12. Allagnat F, Haefliger JA, Lambelet M, Longchamp A, Berard X, Mazzolai L, Corpataux JM, Deglise S. Nitric oxide deficit drives intimal hyperplasia in mouse models of hypertension. Eur. J. Vasc. Endovasc. Surg. 51:733-742, 2016.
13. Kannt A, Sicka K, Kroll K, Kadereit D, Gogelein H. Naunyn. Schmiedebergs. Arch. Pharmacol. 385:717-727, 2012.
以上、本発明の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な技術は単に好ましい具現例に過ぎず、これに本発明の範囲が制限されるものでない点は明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付する請求項及びその等価物によって定義されるといえよう。
【図面の簡単な説明】
【0152】
図1】HEK293細胞とMES13細胞において新しいADPRCのNAD-グリコヒドロラーゼ(NADase)活性を測定した図である。
図2】精製されたFLAG-ADPRCのcADPR合成能を評価した図である。
図3】MES13細胞においてアンジオテンシンIIで刺激をしたとき、新しいADPRCによる細胞内cADPR生成を測定した図である。
図4】本発明のADP-リボシルシクラーゼの種間配列の相同性をアラインメントを用いて比較した結果である(マウスを基準に、ヒト(96%)、ラット(96%)、イヌ(90%)、ブタ(88%)、ウサギ(89%)、ヒツジ(90%)、ニワトリ(70%)、ウシ(78%)、チンパンジー(93%)、ウマ(91%)、カエル(63%)、ヤギ(90%)、シチメンチョウ(62%)、ギニアピッグ(91%)、エキノコックスグラヌロスス(27%)、ヘマトビウム住血吸虫(22%)、トリキネラスピラリス(22%)、ショウジョウバエ(19%)、ゼブラフィッシュ(56%))。
図5】新しいADPRCのNADグリコヒドロラーゼ(NADase)活性を抑制する新しい抑制剤の効果を測定した図である。
図6】糖尿病性腎臓疾患マウスモデルの血糖(図6A)、腎臓重さ(kidney weight)と体重(body weight)の比率(図6B)、クレアチニン掃除率(図6C)及び小便アルブミン量(図6D)でジカフェオイルキナ酸(Dicaffeolylquinic acid,DCQA)の効果を測定した図である。
図7】糖尿病性腎臓疾患マウスモデル腎臓組織においてADPRCの活性(図7A)及びcADPR濃度(図7B)に対するDCQAの効果を測定した図である。
図8】糖尿病性腎臓疾患マウスモデル腎臓組織においてTGF-β1、フィブロネクチン及びコラーゲンIVの発現変化に対するDCQAの効果を測定した図である。
図9】糖尿病性腎臓疾患マウスモデル腎臓組織においてH&E(Hematoxylin and Eosin)染色を用いて病理組織学的変化を観察した図である。
図10】正常マウスとADPRCヘテロ(ADPRC(+/-))マウスの糖尿病性腎臓疾患モデルの血糖(図10A)、腎臓重さと体重の比率(図10B)及びクレアチニン掃除率(図10C)を測定した図である。
図11】正常マウスと高血圧マウスモデルの血圧(図11A)及びクレアチニン掃除率(図11B)においてDCQAの効果を測定した図である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
【配列表】
2022540057000001.app
【国際調査報告】