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▶ ゲバウアー・ウント・グリラー・カーベルベルケ・ゲゼルシャフト・エム.ベー.ハー.の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】電気伝導体と接触要素の電気接続
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/02 20060101AFI20220907BHJP
   H01R 4/62 20060101ALI20220907BHJP
   H01R 43/048 20060101ALI20220907BHJP
   H01R 4/18 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
H01R43/02 B
H01R4/62 A
H01R43/048 Z
H01R4/18 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577928
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(85)【翻訳文提出日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2020068540
(87)【国際公開番号】W WO2021001434
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】19184264.0
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521567778
【氏名又は名称】ゲバウアー・ウント・グリラー・カーベルベルケ・ゲゼルシャフト・エム.ベー.ハー.
【氏名又は名称原語表記】GEBAUER & GRILLER KABELWERKE GESELLSCHAFT M.B.H.
【住所又は居所原語表記】Muthgasse 36,1190 Wien,Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】フレーシュル、カール
【テーマコード(参考)】
5E051
5E063
5E085
【Fターム(参考)】
5E051LA03
5E051LB03
5E063CB01
5E063CC05
5E063XA01
5E085BB03
5E085BB12
5E085DD04
5E085DD14
5E085HH06
5E085HH12
5E085HH34
5E085JJ06
(57)【要約】
複数の素線(9)を備える電気伝導体(5)と接触要素(2)との間に電気接続を作成する方法であって、電気伝導体(5)が接触要素(2)の接触区分(4)に配置され、次に、接触区分(4)と電気伝導体(5)とが互いに圧縮され、それにより接触区分(4)が電気伝導体(5)を包囲し、接触区分(4)のレーザ照射により、又は接触区分(4)における開口(17)を通した電気伝導体(5)のレーザ照射により、接触区分(4)と電気伝導体(5)との間に互いに離間した複数の細長い溶接接合(14)が作成され、細長い溶接接合(14)は、照射方向で、それぞれ接触区分(4)の照射領域(13)、又は電気伝導体(5)の照射領域(13)から圧縮された電気伝導体(5)の横断面全体を通って、接触区分(4)の、照射領域(13)の向かい側の領域まで延在し、それにより電気伝導体(5)が接触区分(4)のこの領域と接続され、照射領域(13)は格子状に配置されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素線(9)を備える電気伝導体(5)と接触要素(2)との間に電気接続を作成する方法であって、前記電気伝導体(5)が前記接触要素(2)の接触区分(4)に配置され、次に、前記接触区分(4)と前記電気伝導体(5)とが互いに圧縮され、それにより前記接触区分(4)が前記電気伝導体(5)を包囲する、方法において、
前記接触区分(4)のレーザ照射により、又は前記接触区分(4)における開口(17)を通した前記電気伝導体(5)のレーザ照射により、前記接触区分(4)と前記電気伝導体(5)との間に互いに離間した複数の細長い溶接接合(14)が作成され、前記細長い溶接接合(14)は、照射方向で、それぞれ前記接触区分(4)の照射領域(13)、又は前記電気伝導体(5)の照射領域(13)から前記圧縮された電気伝導体(5)の横断面全体を通って、前記接触区分(4)の、前記照射領域(13)の向かい側の領域まで延在し、それにより前記電気伝導体(5)が前記接触区分(4)の前記領域と接続され、前記照射領域(13)が格子状に配置されていることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記細長い溶接接合(14)が、その長さの大部分にわたって、前記照射方向に対して法線方向に互いに離間することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の細長い溶接接合(14)が、特に同じレーザ照射源(11)によって同時に作成されることを特徴とする、請求項1~請求項2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの照射領域(13)が、別の照射領域(13)に対して前記素線(9)の長手方向に対して法線方向にずらされ、それにより前記細長い溶接接合(14)の領域に位置する前記電気伝導体(5)の横断面へのすべての細長い溶接接合(14)の射影が、前記電気伝導体(5)の横方向に一貫した溶接面をもたらすことを特徴とする、請求項1-3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記素線(9)の圧縮度は、照射領域がない前記接触要素(2)の長手方向領域のほうが、照射領域(13)がある前記接触要素(2)の長手方向領域よりも小さいことを特徴とする、請求項1-4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
段を付けた支持面(10、15、16)を有する圧縮工具(1)によって、異なった圧縮度が生成されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
横方向に長さが異なるケーブルシュー爪(6、7)を有する接触区分(4)によって異なった圧縮度が生成されることを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記素線(9)の圧縮度は、照射領域(13)がある前記接触要素(2)の長手方向領域において70%より大きいことを特徴とする、請求項1-7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記圧縮が行われる各工具(1、3)において前記レーザ照射が行われることを特徴とする、請求項1-8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記圧縮される電気伝導体(5)の位置が圧縮とレーザ照射との間で変わらないことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記細長い溶接接合(14)の作成が、100ms未満、特に80ms未満、例えば約60ms続くことを特徴とする、請求項1-10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
照射領域(13)の直径(D)が0.4~0.8mm、特に0.5~0.7mmであり、好ましくは0.6mmであることを特徴とする、請求項1-11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記照射領域(13)の格子定数(R)が0.8~1.2mm、特に0.9~1.1mmであり、好ましくは1mmであることを特徴とする、請求項1-12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記細長い溶接接合(14)の最大直径が0.7~0.9mm、特に約0.8mmであることを特徴とする、請求項1-13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
複数の素線(9)を備える電気伝導体(5)と接触要素(2)との間に電気接続を作成するための装置であって、前記装置が圧縮工具(1、3)を備え、前記圧縮工具を用いて、前記接触要素(2)の接触区分(4)に配置された前記電気伝導体(5)を前記接触要素(2)と圧縮することができ、それにより前記接触区分(4)が前記電気伝導体(5)を包囲する、装置において、
前記接触区分(4)と前記電気伝導体(5)との間に複数の互いに離間した細長い溶接接合(14)を作成するように形成されているレーザ照射のための機器(11)が設けられ、前記細長い溶接接合(14)は、照射方向で、それぞれ前記接触区分(4)の照射領域(13)、又は前記接触区分(4)の開口(17)における前記電気伝導体(5)の照射領域(13)から、前記接触区分(4)の、前記照射領域(13)の向かい側の領域まで延在し、それにより前記電気伝導体(5)が前記接触区分(4)のこの領域と接続され、前記照射領域(13)が格子状に配置されていることを特徴とする、装置。
【請求項16】
複数の素線(9)を備える電気伝導体(5)と接触要素(2)とからなるユニットであって、前記電気伝導体(5)が前記接触要素(2)の接触区分(4)に配置され、前記接触区分(4)と前記電気伝導体(5)とが互いに圧縮され、それにより前記接触区分(4)が前記電気伝導体(5)を包囲し、電気伝導体(5)と接触要素(2)との間に電気接続が存在する、ユニットにおいて、前記接触区分(4)と前記電気伝導体(5)との間に複数の互いに離間した細長い溶接接合(14)が存在し、前記細長い溶接接合(14)が、照射方向で、それぞれ、前記接触区分(4)の照射領域(13)、又は前記接触区分(4)の開口(17)における前記電気伝導体(5)の照射領域(13)から、前記接触区分(4)の、前記照射領域(13)の向かい側の領域まで延在し、それにより前記電気伝導体(5)が前記接触区分(4)のこの領域と接続され、前記照射領域(13)が格子状に配置されていることを特徴とする、ユニット。
【請求項17】
前記細長い溶接接合(14)が、その長さの大部分にわたって、前記照射方向に対して法線方向に互いに離間することを特徴とする、請求項16に記載のユニット。
【請求項18】
少なくとも1つの照射領域(13)が、別の照射領域(13)に対して前記素線(9)の長手方向に対して法線方向にずらされ、それにより前記細長い溶接接合(14)の領域に位置する前記電気伝導体(5)の横断面へのすべての細長い溶接接合(14)の射影が、前記電気伝導体(5)の横方向に一貫した溶接面をもたらすことを特徴とする、請求項16又は17に記載のユニット。
【請求項19】
照射領域(13)の直径(D)が0.4~0.8mm、特に0.5~0.7mmであり、好ましくは0.6mmであることを特徴とする、請求項16~請求項18のいずれか1項に記載のユニット。
【請求項20】
前記照射領域(13)の格子定数(R)が0.8~1.2mm、特に0.9~1.1mmであり、好ましくは1mmであることを特徴とする、請求項16~請求項19のいずれか1項に記載のユニット。
【請求項21】
細長い溶接接合(14)の最大直径は、0.7~0.9mm、特に約0.8mmであることを特徴とする、請求項16~請求項20のいずれか1項に記載のユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の素線を備える電気伝導体と接触要素との間に電気接続を作成する方法であって、電気伝導体が接触要素の接触区分に配置され、次に、接触区分と電気伝導体とが互いに圧縮され、それにより接触区分が電気伝導体を包囲する、方法に関する。
【0002】
本発明は、さらに、電気接続を作成するための対応する装置、及び複数の素線を備える電気伝導体と接触要素とからなるユニットに関する。
【0003】
接触要素は、例えば、圧着ケーブルシューなどのケーブルシュー、又は圧着スリーブなどのケーブルスリーブによってなる。
【背景技術】
【0004】
接触要素に設けられたケーブル圧着区分を電気ケーブルの電気伝導体と圧接させる電気ケーブルを接触要素と電気接続する接続方法が知られている。この種の圧締接触接続では、電気ケーブルの伝導体が複数の素線から構成されている場合、最外周にある導線が接触要素と直接接触させられ、導線のための通電が簡単に達成される。伝導体の中心に配置されている素線は、外周に位置する素線を介してしか導電接触させることができない。
【0005】
伝導体の内部に位置する素線と他の素線、及びさらに接触要素との間に相応の相互接触を作成するために、例えば独国特許出願公開第10358153号明細書には、圧着接続に加えて、レーザによって素線同士、及び接触要素と溶接することが提案された。そこではその際、導体の複数の領域が順次、かつ重なるように溶接されることが企図されている。第1の溶接工程中に、レーザビームの照射による急速な加熱が行われ、その際、伝導体内の材料の爆飛が起こる。それぞれ次に溶接される領域が最初に溶接された領域を覆い、それによって上昇した温度状態を利用し、その際、第2の、及び次の溶接工程中にレーザビームによる急速な加熱は提供されない。材料は徐々に溶け、それにより爆飛を阻止することができる。しかしこの方法の欠点は、それでも第1の溶接工程で爆飛が起こる可能性があるということである。
【0006】
独国特許発明第102013010981号明細書は、電気伝導体を接触部と接続する方法及び装置を示し、圧縮のための装置に1つ又は複数の開口が設けられ、レーザ溶接装置のレーザビームがこの開口を通り抜けることができる。独国特許発明第102013010981号明細書にはレーザビームの特定の配置又は動作原理は開示されていない。
【0007】
米国特許出願公開第2016/126642号明細書から、アルミニウム導線の束を取り囲む圧着された接触要素が知られている。アルミニウム導線がない移行部で、接触要素の舌片が点状のレーザ溶接によって互いに接続されるが、このことは接触要素への液体の流入を阻止すべきものであり、電気伝導体の素線と接触要素との間に電気接続を作成するために用いられるのではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第10358153号明細書
【特許文献2】独国特許発明第102013010981号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2016/126642号明細書
【発明の概要】
【0009】
したがって、本発明の課題は、従来技術の欠点を克服すること、及び爆飛の危険を低減するが、それでも素線間に相互導電性を作成できる方法を提示することである。
【0010】
上記課題は、請求項1に記載の方法により解決される。そのための出発点は、複数の素線を備える電気伝導体と接触要素との間に電気接続を作成する方法であって、電気伝導体が接触要素の接触区分に配置され、次に、接触区分と電気伝導体とが互いに圧縮され、それにより接触区分が電気伝導体を包囲する、方法である。
【0011】
本発明によれば、接触区分のレーザ照射により、又は接触区分における開口を通した電気伝導体のレーザ照射により、接触区分と電気伝導体との間に互いに離間した複数の細長い溶接接合が作成され、細長い溶接接合は、照射方向で、それぞれ接触区分の照射領域、又は電気伝導体の照射領域から圧縮された電気伝導体の横断面全体を通って、接触区分の、照射領域の向かい側の領域まで延在し、それにより電気伝導体が接触区分のこの領域と接続され、照射領域が格子状に配置されていることが企図されている。
【0012】
それぞれ接触区分の表面からこの接触区分を通り、さらに伝導体の内部に延在する複数の細長い溶接接合を作成することによって、又はそれぞれ電気伝導体の表面から導体の内部に延在する複数の細長い溶接接合であって、-接触区分における開口が電気伝導体の表面をレーザ照射のために露出させる場合に、但し細長い溶接接合が互いに離間されている、溶接接合によって、本発明によれば細長い溶接接合間の材料が溶かされないため、従来の溶接方法よりもエネルギー入力が低減される。
【0013】
細長い溶接接合が伝導体に深く達するほど、それだけいっそう素線が細長い溶接接合と接続され、かつそれだけいっそう相互導電性が向上する。したがって、本発明は、細長い溶接接合が照射方向でそれぞれ圧縮される電気伝導体の横断面全体を通って延在するようにレーザ照射が実行されることを企図する。すなわち、レーザビームが接触要素にぶつかる本発明の第1の変形形態では、細長い溶接接合が長手方向に延在し、接触区分の照射領域から伝導体を通って、伝導体の周りに案内された接触区分の、照射領域の向かい側の領域まで延在する。その場合、この溶接接合によって捕らえられる素線は接触区分と2箇所で接続されさえする。
【0014】
接触要素が開口を有し、レーザビームがこの開口を通り抜けて、電気伝導体の表面にぶつかる本発明の第2の変形形態では、細長い溶接接合は、電気伝導体の照射領域から、導体を通り抜けて導体の周りに案内された接触区分の、照射領域の向かい側の領域まで延在する。その場合、この溶接接合によって捕らえられる素線が接触区分と少なくとも一箇所で接続される。
【0015】
レーザにより材料に導入されるエネルギーの変更によって、及び/又はレーザ照射の継続時間によって、レーザが材料に進入する深さを調整することができる。
【0016】
本発明による細長い溶接接合は、その長手方向、すなわち照射方向に、幅方向よりも大きい広がりを有する。殊に、長さは、平均幅若しくは直径の数倍の大きさであり、特に、その場合、細長い溶接接合は棒状であり得、すなわち長さにわたって略一定の直径を有し得る。
【0017】
この種の細長い、特に棒状の溶接接合は、レーザ深浸透溶接により作成でき、その場合、融体中の高いビーム強度によって、放射方向で加工物の深くに蒸気毛細管が形成される。それによって材料が深部でも溶け、融解ゾーンは、通常、幅より深さのほうが大きい。
【0018】
レーザビームのエネルギーは、照射領域の向かい側の接触区分の領域へのレーザビームの所望の侵入深さに応じて投与される。レーザビームは、接触区分の向かい側に位置するこの領域を、それが品質欠陥を表すことになることから、完全には貫通せずに外へ出るべきである。
【0019】
本発明による方法のためのレーザの典型的な出力は1~15kWである。必要な出力は、電気伝導体及び接触区分の材料に依存する。さらに、必要な出力は、細長い溶接接合の直径、細長い溶接接合の長さ、すなわち穿通深さ、及び穿通速度に依存する。
【0020】
照射領域は、本発明の第1の変形形態では、レーザ照射の後に接触区分の表面に、若しくは本発明の第2の変形形態では電気伝導体の表面に、レーザビームの直径、及び接触領域若しくは電気伝導体の周囲で溶けた材料に応じて、通常、ほぼ丸い領域として見ることができる。すなわち、照射領域は、本発明の第1の変形形態では接触区分の表面に位置し、第2の変形形態では電気伝導体の表面に位置する。すなわち、電気伝導体が複数の素線を備えているので、照射領域は素線の表面に位置する。
【0021】
いわゆるレーザ穿通ごと、すなわち後に細長い溶接接合になる領域ごとの融解材料を非常に狭い領域に集中させることによって、従来の溶接手法と比較して液体になる材料が少なく、そのことが材料の爆飛の危険を低減する。
【0022】
一変形形態は、細長い溶接接合が、照射方向に測定される長さの大部分にわたって照射方向に対して法線方向に互いに離間されることを企図する。理想的な場合には、細長い溶接接合は、その長さ全体にわたって互いに離間される。
【0023】
本発明の一変形形態は、複数の、殊にすべての細長い溶接接合が同じレーザ照射源によって時間的に順次作成されることを企図する。1つの源を用いて、すなわちレーザを用いて、例えば相応の光学的偏向(例えばミラーなど)によって、接触要素を源に相対して移動させなくても、1つの源から所望のすべての照射領域に達することができる。
【0024】
しかし、より迅速に行うことができることから、複数の細長い溶接接合が、同じレーザ照射源によって同時に作成される場合が好ましい。1つの源を用いて、例えば再び相応の光学的偏向によって、レーザビームをすべての所望の照射領域に分配することができる。
【0025】
本発明は、複数の細長い溶接接合が格子状に、すなわち規則的に互いに離間させた照射領域の形で作成されることを企図する。照射領域は、通常、接触領域若しくは電気伝導体の表面に小さい、ほぼ円径の箇所として見ることができ、すなわち接触領域若しくは電気伝導体の表面に互いに距離をおいて配置されている。規則的な配置によって、伝導体への規則的な侵入、したがって導体の素線の接続を細長い溶接接合により確保することができる。すなわち、照射領域は、接触領域若しくは電気伝導体の表面に格子に従って配置されている。電気伝導体の素線が通常、付加的に撚られ、かつ伝導体横断面におけるその位置を変えることもすべての素線の接触に寄与する。
【0026】
照射領域の格子状の配置の例は、例えば、一直線上に位置し、したがって一列である複数の照射領域であり、2つ以上のそのような列が、電気伝導体の素線の長手方向に対して横向き、特に法線方向に配置され、素線の長手方向に互いに一定距離で配置されている。隣り合う列は、例えば同じ数の照射領域を有するか、又は照射領域1つ分相違する。
【0027】
照射領域の格子状の配置の場合、1つの照射領域がもう1つの照射領域に対して、素線の長手方向に対して法線方向にずらされ、それにより、電気伝導体の、細長い溶接接合の領域に位置する横断面へのすべての細長い溶接接合の射影が、電気伝導体の横方向に一貫した溶接面をもたらすことが企図され得る。したがって、素線の長手方向に連続する様々な細長い溶接接合によって常に同じ素線が接触されるだけでなく、隣接する他の素線は接触されないことが確保されている。これに加えて、すべての素線が、少なくとも一回は細長い溶接接合に含まれることが確保されている。
【0028】
本発明の第1の変形形態では、レーザビームは、通常、接触区分において、接触区分の表面に対して法線方向にぶつかるか、若しくは、本発明の第2の変形形態では、電気伝導体において、電気伝導体の表面に対して法線方向に、具体的には素線の表面に対して法線方向にぶつかる。その限りで、この変形形態では、照射領域が、同時に、照射方向に対して法線方向にずらされている。
【0029】
照射領域が互いにずらされる可能な格子状配置は、例えば、複数列の照射領域のからなり、これらの列は、素線の長手方向に対して横向き、特に法線方向に延び、かつ隣り合う列が、素線の長手方向に対して横向き、特に法線方向にずらされている。その場合、照射領域の第1列、第3列等は、素線の長手方向視で、互いに一直線に並ぶことができ、照射領域の第2列、第4列等全く同様である。隣り合う、互いにずらされた列は、素線の長手方向視で重なることもできる。
【0030】
素線の圧縮度は、照射領域がない接触要素の長手方向領域のほうが、照射領域がある接触要素の長手方向領域よりも小さいことが企図され得る。
【0031】
圧縮度は、圧縮(若しくは圧着)前の伝導体横断面に対する圧縮(若しくは圧着)後の伝導体横断面の比率を示す。100%の圧縮度は、伝導体横断面が、圧縮(若しくは圧着)によって全く減少せず、同じままであることを意味する。80%の圧縮度は、導体横断面が、圧縮(若しくは圧着)によって当初の導体横断面の80%に減少したことを意味する。
【0032】
次に、接触区分が素線の長手方向に対して横向きに2つの長手方向領域に分割されることが企図され得る。1つの長手方向領域では伝導体が圧縮されるだけであり、もう1つの長手方向領域では伝導体は圧縮され、付加的に、本発明によりレーザ照射される。付加的にレーザ照射される長手方向領域において、素線間に可能な限り多くの中間空間が存在する場合が有利であり、すなわち、レーザ溶接過程の範囲で融体圧が増圧した場合に排気通路として機能する開放型ロープ構造(offene Seilstruktur)が確保される。この措置はレーザ溶接プロセスを安定させ、すなわち例えば、圧縮された導線間に乳濁液の残留物が存在する場合、エネルギーを導入したときにこの乳濁液が蒸発する可能性があり、この蒸発がレーザ溶接結果に悪影響を及ぼす。その場合、緩いロープ構造によって一種の煙突効果が提供されることを確保すると、この乳濁液の残留物の蒸発が結果に悪影響を及ぼすことはない。
【0033】
異なった圧縮度を生成するための可能性の1つは、段を付けた支持面を有する圧縮工具によって異なった圧縮度が生成されることである。2つの段の長さは、それぞれ接触区分の長手方向区分に相当する。接触要素の接触区分に相対する支持面の異なった高さが、伝導体が接触要素の2つの長手方向区分において異なる強さで締め付けられることをもたらす。
【0034】
異なった圧縮度を生成するための別の可能性は、横方向に長さが異なるケーブルシュー爪を有する接触区分によって異なった圧縮度が生成されることである。その場合、より締め付けられるべき長手方向区分は、ケーブルシュー爪がより長い、すなわち、圧縮時に伝導体の方向に加圧される材料がより多い。したがって、圧縮工具の支持面が平坦な場合も導体の異なった高さ若しくは加圧を達成することができる。
【0035】
段を付けた支持面と異なった長さのケーブルシュー爪とを同時に使用することも排除されない。
【0036】
素線の開放型ロープ構造に関して、接触要素の、照射領域がある長手方向領域において素線の圧縮度が70%より大きい場合が有利である。
【0037】
圧縮された伝導体を溶接ステーションに運ぶといった不必要な加工工程を回避するために、レーザ照射は、圧縮が行われる工具で行われることが企図され得る。
【0038】
特に、圧縮された電気伝導体の位置が圧縮とレーザ照射との間で変わらないことが企図され得る。すなわち、圧縮された伝導体は、圧縮後に工具にとどまり、レーザ溶接もそこでされる。
【0039】
細長い溶接接合の作成が、100ms未満、特に80ms未満、例えば約60ms続くことが企図され得る。レーザの出力に応じて、細長い溶接接合を作成するための範囲が20~100msになる。
【0040】
少なくとも接触区分が電気伝導体に接触する領域に、接触区分がニッケルコーティングを備えていることが企図され得る。ニッケル層は、導体と接触区分との間に防食をもたらす一方で、レーザ溶接時のエネルギー吸収を高める。
【0041】
本発明の一実施形態では、照射領域の直径が0.4~0.8mm、特に0.5~0.7mmであり、好ましくは0.6mmであることが企図される。
【0042】
本発明の一実施形態では、照射領域の格子定数が0.8~1.2mm、特に0.9~1.1mmであり、好ましくは1mmであることが企図される。格子定数は、格子の特定の方向で、2つの照射領域間に一定の距離を予め設定する。したがって、細長い溶接接合を互いに離間させるために、格子定数は照射領域の直径より大きくなる。格子定数が照射領域の直径より大きいほど、細長い溶接相互の距離がそれだけ大きくなる。
【0043】
細長い溶接接合の直径は、通常、照射領域の直径よりもいくらか大きい。特に、細長い溶接接合の最大直径が0.7~0.9mm、特に約0.8mmであることが企図され得る。
【0044】
本発明による方法を実行するための、すなわち電気伝導体と接触要素とを備える複数の素線間に電気接続を作製するための装置は、圧縮工具を備え、圧縮工具を用いて、接触要素の接触区分に配置された電気伝導体を接触要素と圧縮することができ、それにより接触区分が電気伝導体を包囲し、装置は、接触区分と電気伝導体との間に複数の互いに離間した細長い溶接接合を作成するように形成されているレーザ照射のための機器(Einrichtung)が設けられ、細長い溶接接合は、照射方向で、それぞれ、接触区分の照射領域、又は接触区分の開口における電気伝導体の照射領域から、照射領域の向かい側の接触区分の領域まで延在し、それにより電気伝導体が接触区分のこの領域と接続され、照射領域が格子状に配置されていることを特徴とする。
【0045】
装置は、したがって本発明による方法の1つ又は複数の変形形態を実行できるように形成され得る。特に装置は、圧縮された電気伝導体の位置が圧縮とレーザ照射との間で変わらないように形成され得る。
【0046】
本発明は、本発明による方法で、又は本発明による装置を用いて作成された、複数の素線を備える電気伝導体と接触要素とからなるユニットであって、電気伝導体が接触要素の接触区分に配置され、接触区分と電気伝導体とが互いに圧縮され、それにより接触区分が電気伝導体を包囲し、電気伝導体と接触要素との間に電気接続が存在する、ユニットをも包含する。このユニットは、接触区分と電気伝導体との間に複数の互いに離間した細長い溶接接合が存在し、細長い溶接接合が、照射方向で、それぞれ、接触区分の照射領域、又は接触区分の開口における電気伝導体の照射領域から、照射領域の向かい側の接触区分の領域まで延在し、それにより電気伝導体が接触区分のこの領域と接続され、照射領域が格子状に配置されていることを特徴とする。
【0047】
ユニットは、本発明による方法の一変形形態に対応して、細長い溶接接合が、その長さの大部分にわたって、照射方向に対して法線方向に互いに離間するように形成され得る。
【0048】
ユニットは、本発明による方法の一変形形態に対応して、少なくとも1つの照射領域が、別の照射領域に対して素線の長手方向に対して法線方向にずらされ、それにより細長い溶接接合の領域に位置する電気伝導体の横断面へのすべての細長い溶接接合の射影が、電気伝導体の横方向に一貫した溶接面をもたらすように形成され得る。
【0049】
ユニットは、本発明による方法の一変形形態に対応して、照射領域の直径が0.4~0.8mm、特に0.5~0.7mmであり、好ましくは0.6mmであるように形成され得る。
【0050】
ユニットは、本発明による方法の一変形形態に対応して、照射領域の格子定数が0.8~1.2mm、特に0.9~1.1mmであり、好ましくは1mmであるように形成され得る。
【0051】
ユニットは、本発明による方法の一変形形態に対応して、細長い溶接接合の最大直径が、0.7~0.9mm、特に約0.8mmであるように形成され得る。
【0052】
本発明は、従来技術から知られている、いわゆるB圧着形又はハート圧着形(Herz-Crimpform)を作成するために使用することができる。当然のことながら、本発明は他の種類の圧着形、又は加圧形のためにも使用することができる。
【0053】
本発明は、特に、アルミニウム又はアルミニウム合金の素線を使用することを可能にする。素線にアルミニウムを使用することは、周知のように、素線の表面に酸化物層が形成され、したがって導体の耐用期間にわたって安定した抵抗状況が存在しないことにつながる。しかし本発明による細長い溶接接合によって、材料結合的な接続、したがって、素線と接触要素の接触区分との間に電気接点が作成され、この接点は酸化されず、したがって抵抗比が変わらないことを保証する。
【0054】
アルミニウム又はアルミニウム合金からなる素線が、銅又は、例えば青銅や黄銅などの銅合金からなる接触区分若しくは接触要素(例えば圧着ケーブルシュー、圧着スリーブ)と圧縮されることが有利である。
【0055】
本発明によるユニットは、高電圧システムに使用することができる。
【0056】
図の簡単な説明
次に、本発明を実施例をもとにして詳しく説明する。図面は例示であり、本発明の思想を表すが、本発明の思想を限定するもの、又は完結的に表すものでは決してない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1a】圧縮及びレーザ溶接のための装置の第1の変形形態の図である。
図1b】圧縮及びレーザ溶接のための装置の第1の変形形態の図である。
図1c】圧縮及びレーザ溶接のための装置の第1の変形形態の図である。
図1d】ケーブルシュー爪が横方向に長さが異なる接触区分を備える接触要素の第1の変形形態の図である。
図2図1a~図1cからの装置の斜視図である。
図3a図1a~図1cからの装置のレーザ溶接時の断面図である。
図3b図1a~図1cからの装置のレーザ溶接時の断面図である。
図4図3bからの拡大図である。
図5】レーザ溶接後の接触要素の上面図である。
図6図1a~図1cによる装置でのレーザ溶接後の接触要素の図である。
図7a】圧縮工具が段を付けた支持面を有する、圧縮及びレーザ溶接のための装置の第2の変形形態の図である。
図7b】圧縮工具が段を付けた支持面を有する、圧縮及びレーザ溶接のための装置の第2の変形形態の図である。
図7c】圧縮工具が段を付けた支持面を有する、圧縮及びレーザ溶接のための装置の第2の変形形態の図である。
図7d】圧縮工具が段を付けた支持面を有する、圧縮及びレーザ溶接のための装置の第2の変形形態の図である。
図7e】圧縮工具が段を付けた支持面を有する、圧縮及びレーザ溶接のための装置の第2の変形形態の図である。
図8】圧縮及びレーザ溶接のための装置のための、接触要素が出発位置にある第3変形形態の図である。
図9】電気伝導体を収容するために曲げられた、図8からの接触要素の図である。
図10】電気伝導体を有する図9からの接触要素の図である。
図11】圧縮及びレーザ溶接のための装置に設置された図10からの接触要素の第3の変形形態の斜め後ろから見た図である。
図12図11からの接触要素及び装置の斜め上から見た図である。
図13】閉状態の図11からの装置の図である。
図14図10からの電気伝導体の周りに圧着された接触要素の図である。
図15】レーザ照射時の図14からの圧着された接触要素の図である。
図16】照射された領域の可能な配置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1a~図1dは、圧縮及びレーザ溶接するための装置の第1の変形形態を示し、この装置は、横方向に長さが異なるケーブルシュー爪を有する接触要素用に形成されている。
【0059】
図1aにおいて、開いた装置の縦断面が示されている。圧縮工具の下部1に接触要素2(ケーブルシュー)が挿入されている。圧縮工具の上部3を降下させることによって、接触要素2の接触区分4が下へ押され、ケーブルシュー爪6、7の端が導体5へ内方に押され、この接触区分4は電気伝導体5を取り囲む。このようにしてB圧着の形式の加圧接続又は圧着接続が作成される。
【0060】
図1dにおいて、圧縮前の状態の接触要素2が示されている。この場合、接触要素2は、その長手方向視で、さらなる電気接続のための丸い舌片を有する接続区分8と、電気伝導体5とともに圧縮するための接触区分4とを有する。接触区分4は横方向に長さが異なるケーブルシュー爪6、7を有する2つの長手方向領域に分けられる。その場合、短いほうのケーブルシュー爪6は、導体5の、接続区分8により近く、かつ付加的にレーザで溶接される領域を包囲する。
【0061】
したがって、ケーブルシュー爪6内の圧縮度が比較的高く、例えば70%より高く、特に80%より高く、又は90%より高くなる。すなわち、この場合、伝導体5の素線9の開放型ロープ構造が確保されるということである。このことは、図1aにおけるB-B線に沿う横断面を示す図1bに見て取れる。この箇所での伝導体5の素線9が下に示される。
【0062】
長いほうのケーブルシュー爪7は、伝導体5の、接続区分8から遠く離れ、かつレーザで溶接されない領域を包囲する。したがって、ケーブルシュー爪7内の圧縮度が比較的低く、例えば80%未満になる。この場合、素線9間の中間空間が少ない。このことは、図1aにおけるC-C線に沿う横断面を示す図1cから見て取れる。素線9が互いに強度に圧縮され、どちらかといえば六角形の横断面をすでに有することが下に見て取れる。
【0063】
この場合、下部1の支持面10(図1aを参照)が真っすぐであり、したがって2つのケーブルシュー爪6、7に対して等しく形成されている。レーザ部11は、降下可能に上部3に嵌め込まれている。
【0064】
図2は、伝導体5が圧縮されたが、まだ溶接されていない図1a~図1cからの装置の斜視図を示す。
【0065】
図3a~図3bは、図1a及び図1bの図示に対応する図1a~図1cからの装置のレーザ溶接時の断面図を示す。レーザ部11は、放射源としてのレーザを含むか、又はレーザと接続されている。レーザ部は、レンズ、ミラーその他を含む光学系によって、レーザビームを照射方向に、ここでは垂直方向に発射し、このレーザビームを格子に沿って水平方向に移動させ、その際、レーザビームの垂直の向きが引き続き保たれる。したがって、レーザビームを、時間的に連続して様々な、例えば点状の照射領域に向けることができる。レーザビーム12は、ここでは細い線として示されている。
【0066】
これに代えて、光学系によってレーザビームを、照射領域に同時にぶつかる複数のレーザビーム12に分割することができる。
【0067】
図3aにおいて、2つのレーザビーム12が示され、2つのレーザビームはそれぞれ照射領域でぶつかり、そこでそれぞれ伝導体5内に下方へ、及び向かい側のケーブルシュー爪6まで細長い溶接接合14を形成する。図3bにおいて、それに対応して6つのレーザビーム12が示され、6つのレーザビームはそれぞれ照射領域でぶつかり、そこでそれぞれ伝導体5内に下方へ、及び向かい側のケーブルシュー爪6まで細長い溶接接合14を形成する。細長い溶接接合14は、実質的に照射方向、すなわちここでは垂直方向に延びる。細長い溶接接合は、互いに重なりも接触もしない。
【0068】
図4は、細長い溶接接合14が模式的に示されるとともに、より良く見て取れる図3bからの拡大を示す。
【0069】
図5は、レーザビーム12の入射点がそれぞれ照射領域13として見て取れるレーザ溶接後の接触要素2の上面図を示す。照射領域13は、通常、互いに離間され、ここでは接触要素2の横方向、すなわち電気伝導体5の素線9の長手方向に対して法線方向に延びる、6つと5つの照射領域13の列を交互にした格子を形成する。素線9の長手方向、若しくは接触要素2の長手方向に連続する列は、互いに横方向に、厳密には格子定数の半分だけずらされている。
【0070】
図6は、圧縮工具の下部1におけるレーザ溶接後の接触要素2を示し、ここでは接触要素2の表面に照射領域13が見える。
【0071】
図7a~図7eは、圧縮及びレーザ溶接のための装置の第2の変形形態を示し、圧縮工具は、段を付けた支持面を有する。図7aは、接触区分4のための下部1の支持面10が、ここでは接触区分4の2つの長手方向領域に対応して異なった高さを有し、したがって2つの段15、16を形成するという事実を除いてほぼ図1aに相当する。しかしケーブルシュー爪6、7を同じ長さにすることができるが、しなければならないわけではない。
【0072】
図7d及び図7eは、圧縮された状態の接触要素2を示す。
【0073】
図7bは、図1bに対応し、かつ同じ圧縮度を有し、図7cは、図1cに対応し、かつ同じ圧縮度を有する。
【0074】
ケーブルシュー爪6は、接続区分8により近く、付加的にレーザで溶接される導体5の領域を方位する。段15がさらに下に位置することにもとづいて、ケーブルシュー爪6内の圧縮度が比較的高く、例えば70%より高く、特に80%より高く、又は90%より高くなる。この場合もまた、伝導体5の素線9の開放型ロープ構造が確保され、素線9は、図1bでのように、円形の横断面をさらに有する。
【0075】
ケーブルシュー爪7は、この場合も、接続区分8から遠く離れ、かつレーザで溶接されない導体5の領域を包囲する。したがって、ケーブルシュー爪7内の圧縮度が比較的低く、例えば80%未満になる。この場合、素線9が互いに強度に圧縮され、どちらかといえば六角形の横断面をすでに有する図1cの下と同様に素線9間の中間空間が少ない。
【0076】
圧縮に続いて、図7a~図7cによる装置では、図3a~図3b及び図4でのようにレーザ溶接が行われ、このレーザ溶接により図5及び図6と同じ結果になる。
【0077】
図8図15は本発明の第3の変形形態を示し、ここでは圧縮工具は段を付けた支持面を有していない。ここでは接触要素2の2つのケーブルシュー爪6、7が同じ長さである。
【0078】
図8の接触要素2は、この場合も接触区分4と接続区分8とを有する。接触区分4は、両側に2つの、ここでは同じ長さのケーブルシュー爪6、7を備え、これらの2つのケーブルシュー爪は、接触要素の圧縮状態において開口17を形成するスリットによって分離され、この開口を通して、加圧された電気伝導体5の表面に引き続きアクセスできる。電気伝導体5の端からケーブルシュー爪6よりも遠く離れている2つのケーブルシュー爪7間の波状溝(Riffelung)は、電気伝導体5が接触要素2から電気伝導体5の長手方向に引き抜かれることを防ぐために用いられる。図1図7の変形形態でもケーブルシュー爪6、7を様々な長さで形成することができる。
【0079】
図9において、ケーブルシュー爪6、7は、すでに互いに曲げられ、それにより図10に示されるように、これらのケーブルシュー爪間に電気伝導体5を挿入することができる。ケーブルシュー爪6、7の領域では電気伝導体5の絶縁材が除去されている。図1図7の変形形態とは異なり、ここではケーブルシュー爪6、7が接続区分8に相対して上方に曲げられる。その場合、ケーブルシュー爪6、7の端が、圧縮時に上から電気伝導体5に押し込まれる、図11図13を参照。変形形態1~7では、ケーブルシュー爪6、7が下から電気伝導体5に押し込まれる。
【0080】
図11及び図12において、電気伝導体5及び接触要素2が圧縮工具の下部1に嵌め込まれている。圧縮工具の上部3を降下させることによって、図13を参照、接触要素2の接触区分4、厳密にはそのケーブルシュー爪6、7が内方に、次いで下方に加圧され、ケーブルシュー爪6、7の端が伝導体5内へ内方に加圧される。このようにしてB圧着の形式の加圧接続又は圧着接続が作成される。
【0081】
上部3は、電気伝導体5の長手方向に対して横向きに延びる切欠き18を有し、この切欠きは、後に接触区分4の開口17を形成するスリットと一直線に並び、それによりこの切欠き18及び開口17を通してレーザビーム12を上から電気伝導体5の表面に送出することができる。すなわち、本発明のこの変形形態では、レーザビーム12は、ケーブルシュー爪6、7の端を有する側から接触要素2に当たるのに対して、図1図7による変形形態ではレーザビーム12は接触要素2の向かい側に当たる。
【0082】
図13において、上部3と下部1とを備える閉じた圧縮工具で圧縮された電気伝導体5が示される。
【0083】
図14は、接触要素2が加圧され、圧縮された電気伝導体5を圧縮工具なしで示す。開口17は、接触区分4に関して、素線9の長手方向視で、接続区分8から離反した接触区分4の端よりも接続区分8の近くにある。開口17は、接触要素4の横方向、すなわち素線9の長手方向に対して法線方向に、圧縮された電気伝導体5の全幅にわたって延在する。それによって、各素線9が細長い溶接接合14によって捕らえられることが確保される。
【0084】
図15において、図14からの圧縮された電気伝導体5のレーザ照射の過程が示される。この過程は、電気伝導体5の圧縮に続いて圧縮工具1、3で起こり、その際、電気伝導体の位置は変わらない。レーザビーム12が格子状に配置され、開口17において露出する素線9の表面に法線方向にぶつかる。レーザビーム12の格子状の配置は、ここでは素線9の長手方向に対して法線方向に延びる3つの平行の列を含み、真ん中の列が2つの外側の列に対して格子定数の半分ずらされる。この場合、外側の列は、例えば8つのレーザビームを含み、真ん中の列は7つのレーザビームを含む。
【0085】
したがって、開口17において、素線9の表面には、それぞれ8つ若しくは7つの照射領域13の3つの列が形成される。
【0086】
図16は、照射領域13の可能な配置のより大きい模式図を示す。この場合、照射領域13は、それぞれ9つの照射領域13が2列で配置され、これらの列は、共同で、圧縮された電気伝導体5の幅に相当する長さLに及ぶ。これらの列は、素線9の長手方向に対して法線方向に延びる。一列内に、照射領域13が格子定数Rに相当する間隔を有する。隣り合う列間の間隔は、格子定数Rの半分である。格子定数Rの半分にわたる照射領域13の直径Dにもとづいて、隣り合う列の照射領域13が重なり、すなわち素線9の長手方向に重なる。
【0087】
しかし、図16において照射領域13から図面平面内に下方に延びるすべての細長い溶接接合14の、図面平面に対して法線方向、及び照射領域13の列に対して平行に延在する平面への投射が、圧縮される電気伝導体5の横断面全体に及ぶことが重要である。それにより、すべての素線9が細長い溶接接合14によって捕らえられることが確保される。
【0088】
この場合、照射領域13は、0.6mmの直径Dを有し、格子定数Rは1mmである。
【符号の説明】
【0089】
1 圧縮工具の下部
2 接触要素(ケーブルシュー)
3 圧縮工具の上部
4 接触区分
5 電気伝導体
6 ケーブルシュー爪
7 ケーブルシュー爪
8 接続区分
9 素線
10 支持面
11 レーザ部(レーザ照射源、レーザ照射機器)
12 レーザビーム
13 照射領域
14 細長い溶接接合
15 段
16 段
17 接触要素2の開口
18 上部3の切欠き
D 直径
L 長さ
R 格子定数
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図7d
図7e
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】