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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】経口薄膜
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/70 20060101AFI20220907BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20220907BHJP
   A61P 23/00 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220907BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20220907BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20220907BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
A61K9/70
A61K31/135
A61P23/00
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/10
A61K47/42
A61K47/04
A61P25/24
A61P25/04
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021577937
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(85)【翻訳文提出日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 EP2020068598
(87)【国際公開番号】W WO2021001461
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】102019117870.3
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・リン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA89
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD29
4C076EE06
4C076EE09
4C076EE13
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE26
4C076EE30
4C076EE32
4C076EE36
4C076EE38
4C076EE42
4C076FF02
4C076FF31
4C076GG05
4C076GG11
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA29
4C206KA14
4C206KA17
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA52
4C206MA72
4C206NA11
4C206ZA04
4C206ZA08
4C206ZA12
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのポリマーと、少なくとも1つの薬学的活性薬とを含む経口薄膜であって、経口薄膜中の少なくとも1つの薬学的活性薬の濃度が経口薄膜中の少なくとも1つの薬学的活性薬の飽和濃度より大きく、経口薄膜が少なくとも1つの薬学的活性薬の結晶核として機能する少なくとも1つの物質を含む経口薄膜、該経口薄膜の製造方法、および該経口薄膜の薬剤としての使用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリマーと、少なくとも1つの薬学的活性薬とを含む経口薄膜であって、経口薄膜中の少なくとも1つの薬学的活性薬の濃度が経口薄膜中の少なくとも1つの薬学的活性薬の飽和濃度より大きく、経口薄膜が少なくとも1つの薬学的活性薬の結晶核として機能する、少なくとも1つの物質を含むことを特徴とする、経口薄膜。
【請求項2】
少なくとも1つの薬学的活性薬の結晶核として機能する物質は、経口薄膜の総重量に対して0.01~20重量%の量で経口薄膜中に含まれることを特徴とする、請求項1に記載の経口薄膜。
【請求項3】
少なくとも1つの薬学的活性薬の結晶核として機能する物質は、非晶質の発熱性二酸化ケイ素を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の経口薄膜。
【請求項4】
少なくとも1つのポリマーは、水溶性および/または水膨潤性ポリマーを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項5】
少なくとも1つのポリマーは、デンプンおよびデンプン誘導体、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルまたはプロピルセルロースといったようなセルロース誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドポリマー、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ゼラチン、コラーゲン、アルギナート、ペクチン、プルラン、トラガカント、キトサン、アルギン酸、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、寒天、アガロース、カラギーナン、天然ゴム、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項6】
少なくとも1つのポリマーは、経口薄膜の総重量に対して30~80重量%の量で経口薄膜中に含まれることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項7】
薬学的活性薬は、催眠薬、鎮静薬、抗てんかん薬、興奮薬、向精神神経薬、神経筋遮断薬、鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、強心薬、抗不整脈薬、利尿薬、降圧薬、昇圧薬、抗うつ薬、鎮咳薬、去痰薬、甲状腺ホルモン、性ホルモン、抗糖尿病薬、抗腫瘍活性薬、抗生物質、化学療法薬、麻酔薬からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項8】
少なくとも1つの薬学的活性薬は、ケタミン、好ましくは(S)ケタミンまたはその薬学的に許容される塩を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項9】
経口薄膜は、着色剤、香料、甘味料、味覚マスキング剤、乳化剤、増強剤、pH調節剤、湿潤剤、保存剤および/または抗酸化剤からなる群から選択される少なくとも1つの補助剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の経口薄膜を製造する方法であって、以下の工程:
a)少なくとも1つのポリマー、少なくとも1つの薬学的活性薬、および少なくとも1つの薬学的活性薬の結晶核として機能する物質を含む、懸濁液または溶液を製造する工程と、
b)薄膜、好ましくは約50~300g/mの単位面積質量を有する薄膜を得るために、工程a)で得られた懸濁液または溶液を広げて乾燥させる工程と
を含む、方法。
【請求項11】
工程a)における少なくとも1つの薬学的活性薬は、実質的に完全に溶解して存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程b)の乾燥中に、少なくとも1つの薬学的活性薬は、飽和限界より下まで結晶化する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか1項に記載の方法によって得られる経口薄膜。
【請求項14】
請求項1~9および13のいずれか1項に記載の経口薄膜の、薬剤としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口薄膜(oral thin film)、その製造方法および薬剤としての使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
経口薄膜(OTF)は、口腔内または口腔粘膜に対して直接置かれ、そこで溶解する、少なくとも1つの薬学的活性薬(pharmaceutically active agent)を含有する薄膜である。この膜は、特に、粘膜、特に口腔粘膜に適用したときに、活性薬を直接粘膜に送達する、活性薬を含有するポリマーベースの薄膜である。口腔粘膜への非常に良好な血液供給により、活性薬の血流への迅速な移動が保証される。この投与システムは、活性薬の大部分が粘膜によって再吸収され、そのため、錠剤形態における活性薬の従来の投与形態の場合に生じる初回通過効果を避けることができるという利点がある。活性薬は、膜中に溶解、乳化または分散されてもよい。
【0003】
先行技術から知られている経口薄膜は、そこに含まれる少なくとも1つの薬学的活性薬の量が、経口薄膜中の少なくとも1つの薬学的活性薬の飽和濃度によって実質的に制限されるという欠点がある。しかしながら、少なくとも1つの薬学的活性薬を、経口薄膜中の少なくとも1つの薬学的活性薬の飽和濃度よりも高い濃度で含有する経口薄膜を提供する試みもなされている。しかし、この種の経口薄膜では、活性薬は実質的に未溶解の形態で存在し、そのため、この経口薄膜は懸濁液OTF(suspension OTF)としても知られている。しかしながら、この懸濁液OTFは、化合物の製造、経口薄膜のコーティングおよび/または乾燥の間に、活性薬が制御されない不均質な様式で結晶化することがあり、そのため活性薬が(部分的に)溶解した形態でコーティング化合物中に存在する限り、不均質な活性薬のラミネートにつながりうるという欠点がある。これらの不均質な活性薬のラミネートは、多くの点で不利である。したがって、それらの機械的完全性は、活性薬の不均質な結晶化によって低下することがあり、活性薬のバイオアベイラビリティは、活性薬の不均質な結晶化によって悪影響を受ける可能性がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、固体懸濁液に基づくOTFが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2014/020155A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、先行技術の上述の欠点を克服することにある。特に、本発明の目的は、比較的高い活性薬含有量、すなわち、経口薄膜中の少なくとも1つの薬学的活性薬の飽和濃度よりも大きい活性薬濃度を有し、ここで少なくとも1つの薬学的活性薬は不均質に結晶化せず、経口薄膜中で実質的に均質な結晶相として存在する、経口薄膜を提供することにある。さらに、本発明のさらなる目的は、このような経口薄膜を製造するための経済的に許容される方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、少なくとも1つのポリマーと少なくとも1つの薬学的活性薬とを含み、経口薄膜中の少なくとも1つの薬学的活性薬の濃度が経口薄膜中の少なくとも1つの薬学的活性薬の飽和濃度より大きく、経口薄膜が少なくとも1つの薬学的活性薬の結晶核として機能する少なくとも1つの物質を含む、請求項1に係る経口薄膜によって解決される。
【0008】
この種の経口薄膜は、経口薄膜の乾燥中に、経口薄膜において少なくとも1つの薬学的活性薬の飽和濃度を超える時点で、少なくとも1つの薬学的活性薬の結晶核として機能する少なくとも1つの物質が経口薄膜において少なくとも1つの薬学的活性薬の均質な制御された結晶化を引き起こすので、この少なくとも1つの薬学的活性薬は制御されない不均質な様式で結晶化しないという利点を有する。
【0009】
結晶核またはコアは、結晶化、すなわち結晶の形成を促進する、液相中に微細に分散した、または肉眼で見える固体粒子である。
【0010】
経口薄膜中の少なくとも1つの薬学的活性薬の濃度は、経口薄膜中の少なくとも1つの薬学的活性薬の飽和濃度より大きい。飽和は、本明細書において、固体中の固体の物理的状態において理解される。言い換えれば、乾燥した固体の経口薄膜中の固体活性薬の濃度である。
【0011】
飽和濃度は、混合物が拡散すると活性薬が独立して再結晶する、経口薄膜中の少なくとも1つの薬学的活性薬の濃度を意味すると考えられる。再結晶は、拡散の後に自発的に起こることができる。しかしながら、当業者には、そのような再結晶は、拡散の後に時間的に遅れて起こりうることが知られている。
【0012】
本発明による経口薄膜は、好ましくは、少なくとも1つの薬学的活性薬のための結晶核として機能する物質が、経口薄膜の総重量に対して、0.01~20重量%、好ましくは0.01~10重量%、特に好ましくは0.01~5重量%の量で経口薄膜中に含まれることを特徴とする。
【0013】
少なくとも1つの薬学的活性薬の結晶核として機能する物質がより少ない量で存在する場合、均質な結晶化を保証するにはこのように不十分な結晶核が存在することになる。
【0014】
少なくとも1つの薬学的活性薬の結晶核として機能する物質がより多量に存在する場合、膜の特性に不利な影響を与える可能性がある。
【0015】
本発明による経口薄膜は、好ましくは、少なくとも1つの薬学的活性薬の結晶核として機能する物質が、製造化合物の媒体中に不溶性である小さな粒子を含むことを特徴とする。
【0016】
この文脈において、「小さな」とは、5~100μm、好ましくは20~50μmの平均粒子径を意味し、平均粒子径は、出願日に有効なそれぞれの製造者の製品データシートから推測される。
【0017】
また、本発明による経口薄膜は、特に好ましくは、少なくとも1つの薬学的活性薬のための結晶核として機能する物質が、非晶質の発熱性二酸化ケイ素を含むことを特徴とする。
【0018】
非晶質の発熱性二酸化ケイ素(SiO)は、非晶質の発熱性シリカ(またはヒュームドシリカ)とも呼ばれ、合成的に製造されるコロイド状二酸化ケイ素である。それは、より大きなユニットを形成するために凝集している非晶質の二酸化ケイ素粒子で実質的に完全に構成されている。
【0019】
適切な非晶質の発熱性二酸化ケイ素は、例えば、Evonikによる商品名「Aerosil(登録商標)」を有する範囲から知られている。
【0020】
さらに、TiO、酸化鉄、三酸化アルミニウムおよび/またはステアリン酸マグネシウムは、少なくとも1つの薬学的活性薬のための結晶核として機能する物質として適している。
【0021】
好ましい実施形態において、本発明による経口薄膜は、少なくとも1つのポリマーが、水溶性および/または水膨潤性ポリマーを含むことを特徴とする。
【0022】
水溶性/水膨潤性ポリマーは、化学的に非常に異なる天然または合成ポリマーを含み、その共通の特徴は、水または水性媒体中の溶解性/膨潤性である。前提条件は、これらのポリマーが水溶性/水膨潤性に十分な数の親水性基を有し、架橋されていないことである。親性水基は、非イオン性、アニオン性、カチオン性および/または双性イオン性であってもよい。
【0023】
本発明による経口薄膜中の少なくとも1つのポリマーは、デンプンおよびデンプン誘導体、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルまたはプロピルセルロースといったようなセルロース誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドポリマー、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ゼラチン、コラーゲン、アルギナート、ペクチン、プルラン、トラガカント、キトサン、アルギン酸、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、寒天、アガロース、カラギーナン、天然ゴムおよびそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0024】
好ましい実施形態において、本発明による経口薄膜は、少なくとも1つのポリマーが、経口薄膜の総重量に対して30~80重量%の量で経口薄膜中に含まれることを特徴とする。
【0025】
本発明による経口薄膜に含まれる少なくとも1つの薬学的活性薬は、限定されない。適切な活性薬の種類の例としては、催眠薬、鎮静薬、抗てんかん薬、興奮薬、向精神神経薬(psychoneurotropic drug)、神経筋遮断薬(neuro-muscle blockers)、鎮痙剤、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、強心薬、抗不整脈薬、利尿薬、降圧薬、昇圧薬、抗うつ薬、鎮咳薬、去痰薬、甲状腺ホルモン、性ホルモン、抗糖尿病薬、抗腫瘍活性薬、抗生物質、化学療法薬、麻酔薬が含まれる。
【0026】
本発明による経口薄膜中の少なくとも1つの薬学的活性薬は、特に好ましくは、ケタミンおよび/またはその薬学的に許容される塩、好ましくはケタミン・HClを含む。
【0027】
ケタミンは、(S)-(±)-2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサン-1-オン((S)ケタミン)、(R)-(±)-2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサン-1-オン((R)ケタミン)、およびそのラセミ体(RS)-(±)-2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサン-1-オンを意味するものと理解される。
【0028】
本発明による経口薄膜中の少なくとも1つの薬学的活性薬は、きわめて好ましくは、(S)ケタミンおよび/またはその薬学的に許容される塩、好ましくは(S)ケタミン・HClを含む。
【0029】
本発明による経口薄膜中の少なくとも1つの薬学的活性薬は、好ましくは酒石酸水素塩の形態のアドレナリン((R)-4-[1-ヒドロキシ-2-(メチルアミノ)エチル]ベンゼン-1,2-ジオール)を含む。
【0030】
本発明による経口薄膜は、好ましくは、着色剤、香料、甘味料、味覚マスキング剤、乳化剤、増強剤、pH調節剤、湿潤剤、保存剤および/または抗酸化剤からなる群から選択される少なくとも1つの補助物質を含むことを特徴とする。
【0031】
これらの補助物質の各々は、好ましくは、それぞれの場合において、経口薄膜の総重量に対して約0.1~10重量%の量で経口薄膜に含有される。
【0032】
本発明による経口薄膜は、好ましくは、経口薄膜の単位面積質量が約50~300g/m、好ましくは約100~200g/mであることを特徴とする。
【0033】
本発明による経口薄膜は、特に好ましくは、経口薄膜の総重量に対して好ましくは40~50重量%の量の(S)ケタミン、経口薄膜の総重量に対して好ましくは10~50重量%の量の少なくとも1つのヒドロキシプロピルメチルセルロース、および経口薄膜の総重量に対して好ましくは0.1~2重量%の量の発熱性の非晶質二酸化ケイ素を含む。
【0034】
また、本発明は、上記経口薄膜の製造方法に関する。
【0035】
本方法は、以下の工程、
a)少なくとも1つのポリマー、少なくとも1つの薬学的活性薬、および少なくとも1つの薬学的活性薬の結晶核として機能する物質を含む、懸濁液または溶液を製造する工程と、
b)薄膜、好ましくは約50~300g/mの単位面積質量を有する薄膜を得るために、工程a)で得られた懸濁液または溶液を広げて乾燥させる工程と
を含む。
【0036】
工程a)の懸濁液または溶液中に存在する少なくとも1つの薬学的活性薬の量は、工程b)の乾燥後に得られる経口薄膜中の活性薬が、工程b)の乾燥後に得られる経口薄膜中の少なくとも1つの薬学的活性薬の飽和濃度よりも大きい濃度で存在するような量であることが好ましい。
【0037】
方法の工程a)で使用される溶媒は、好ましくは水性溶媒である。
【0038】
方法の工程a)の懸濁液または溶液は、好ましくは加熱することができる。
【0039】
その結果、工程a)の少なくとも1つの薬学的活性薬が実質的に完全に溶解して存在することは、特に好ましい。
【0040】
用語「実質的に完全に」は、本明細書において、少なくとも1つの薬学的活性薬の少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、きわめて好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%が溶解した形態で存在することを意味するものであると理解される。
【0041】
また、少なくとも1つの薬学的活性薬は、工程b)の乾燥の間に、飽和限界(固体中の固体の飽和濃度)より下になるまで実質的に結晶化することが好ましい。少なくとも1つの薬学的活性薬は、経口薄膜において結晶の形態で実質的に完全に均質に分配されていることが特に好ましい。
【0042】
用語「実質的に」は、本明細書において、少なくとも1つの薬学的活性薬の少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、きわめて好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%が、経口薄膜中の、好ましくは均質に分配された、結晶形態で存在することを意味するものと理解される。
【0043】
さらに、本発明は、上記の方法によって得ることができる経口薄膜に関する。
【0044】
さらに、本発明は、上記のような、または上記の方法によって得ることができる、薬剤としての経口薄膜に関する。
【0045】
本発明はさらに、うつ病の処置、特に自殺のリスクを低減するために使用するための薬剤として、および/または全身麻酔剤として、好ましくは全身麻酔を開始および実施するために、または局所麻酔の場合の補助剤として、および/または鎮痛剤として使用するための、上記のような、または上記の方法によって得ることができる経口薄膜に関する。
【0046】
本発明による薄膜について上述した好ましい実施形態は、本発明による方法、それによって得られた経口薄膜、および薬剤としての前記経口薄膜の使用についても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】乾燥直後の、表1に特定された処方による本発明による薄膜を示す。
図2】乾燥後の、表1に特定された比較例による薄膜を示す。
【0048】
以下、非限定的な実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【実施例
【0049】
【表1】
【0050】
本発明による経口薄膜は、均質な外観を有する。活性薬は、経口薄膜中に均質に分配された結晶形態で存在する(図1参照)。
【0051】
比較例の製剤による経口薄膜は、きわめて不均質な外観を有する。活性薬は不均質に結晶化されているので、経口薄膜は多くの破断線を有する(図2参照)。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-04-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリマーと、少なくとも1つの薬学的活性薬とを含む経口薄膜であって、経口薄膜中の少なくとも1つの薬学的活性薬の濃度が経口薄膜中の少なくとも1つの薬学的活性薬の飽和濃度より大きく、経口薄膜が少なくとも1つの薬学的活性薬の結晶核として機能する、少なくとも1つの物質を含むことを特徴とする、経口薄膜。
【請求項2】
少なくとも1つの薬学的活性薬の結晶核として機能する物質は、経口薄膜の総重量に対して0.01~20重量%の量で経口薄膜中に含まれることを特徴とする、請求項1に記載の経口薄膜。
【請求項3】
少なくとも1つの薬学的活性薬の結晶核として機能する物質は、非晶質の発熱性二酸化ケイ素を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の経口薄膜。
【請求項4】
少なくとも1つのポリマーは、水溶性および/または水膨潤性ポリマーを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項5】
少なくとも1つのポリマーは、デンプンおよびデンプン誘導体、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルまたはプロピルセルロースといったようなセルロース誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドポリマー、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ゼラチン、コラーゲン、アルギナート、ペクチン、プルラン、トラガカント、キトサン、アルギン酸、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、寒天、アガロース、カラギーナン、天然ゴム、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項6】
少なくとも1つのポリマーは、経口薄膜の総重量に対して30~80重量%の量で経口薄膜中に含まれることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項7】
薬学的活性薬は、催眠薬、鎮静薬、抗てんかん薬、興奮薬、向精神神経薬、神経筋遮断薬、鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、強心薬、抗不整脈薬、利尿薬、降圧薬、昇圧薬、抗うつ薬、鎮咳薬、去痰薬、甲状腺ホルモン、性ホルモン、抗糖尿病薬、抗腫瘍活性薬、抗生物質、化学療法薬、麻酔薬からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項8】
少なくとも1つの薬学的活性薬は、ケタミン、好ましくは(S)ケタミンまたはその薬学的に許容される塩を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項9】
経口薄膜は、着色剤、香料、甘味料、味覚マスキング剤、乳化剤、増強剤、pH調節剤、湿潤剤、保存剤および/または抗酸化剤からなる群から選択される少なくとも1つの補助剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の経口薄膜を製造する方法であって、以下の工程:a)少なくとも1つのポリマー、少なくとも1つの薬学的活性薬、および少なくとも1つの薬学的活性薬の結晶核として機能する物質を含む、懸濁液または溶液を製造する工程と、
b)薄膜、好ましくは約50~300g/mの単位面積質量を有する薄膜を得るために、工程a)で得られた懸濁液または溶液を広げて乾燥させる工程と
を含む、方法。
【請求項11】
工程a)における少なくとも1つの薬学的活性薬は、実質的に完全に溶解して存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程b)の乾燥中に、少なくとも1つの薬学的活性薬は、飽和限界より下まで結晶化する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか1項に記載の方法によって得られる経口薄膜。
【請求項14】
薬剤としての使用するための、請求項1~9および13のいずれか1項に記載の経口薄膜。
【国際調査報告】