(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】ペラミビル三水和物の新規な製造方法及びその水系乾燥
(51)【国際特許分類】
C07C 277/08 20060101AFI20220907BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20220907BHJP
C07C 279/16 20060101ALI20220907BHJP
A61K 31/155 20060101ALN20220907BHJP
【FI】
C07C277/08
A61P31/16
C07C279/16
A61K31/155
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021578270
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(85)【翻訳文提出日】2021-12-29
(86)【国際出願番号】 KR2020008624
(87)【国際公開番号】W WO2021002689
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】10-2019-0080188
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520490646
【氏名又は名称】シーケイディ バイオ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CKD Bio Corporation
【住所又は居所原語表記】8, Chungjeong-ro, Seodaemungu, Seoul, Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒ ウン
(72)【発明者】
【氏名】キム,イン キュ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ミョン ソク
(72)【発明者】
【氏名】カン,フン モ
(72)【発明者】
【氏名】キム,セ ジン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,イン ソク
【テーマコード(参考)】
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C206AA04
4C206HA31
4C206NA20
4H006AA02
4H006AC90
4H006AD15
4H006BB14
4H006BB31
4H006BC10
4H006BC19
4H006BC31
4H006BC33
4H006BC35
(57)【要約】
本発明は、抗インフルエンザー製剤としてノイラミニダーゼ感染阻害剤であるペラミビル三水和物の製造方法に関し、本発明の製造方法によれば、毒性の強いメタノール及び活性炭を使用しなくとも、高い収率と安定性、そして優秀医薬品製造及び品質管理基準(GMP)に適する工程でペラミビル三水和物を製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の段階を含む、化学式2で表示される(1S,2S,3R,4R)-3-[(S)-1-アセチルアミド-2-エチルブチル]-4-グアニジノ-2-ヒドロキシシクロペンタン-1-カルボキシル酸トリハイドレート(ペラミビル三水和物)の製造方法:
[化学式2]
【化1】
(1S,2S,3R,4R)-3-[(S)-1-アセチルアミド-2-エチルブチル]-4-グアニジノ-2-ヒドロキシシクロペンタン-1-カルボキシル酸(ペラミビル)を水に溶解させて水溶液を製造する段階;及び
1-プロパノール、2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール又はそれらの混合物から選択されるアルコール系溶媒を添加する段階。
【請求項2】
前記ペラミビル及び水は、ペラミビル重量対水重量を1:1~1:30で添加する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記溶解は加熱と共に行い、前記加熱は90~95℃の温度で行う、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記アルコール系溶媒は、75~90℃で添加する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記アルコール系溶媒は水と1:1~10(アルコール系溶媒:水)の体積比で添加することである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記アルコール系溶媒が添加された水溶液を、15~30℃の温度に冷却させる段階をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記冷却後に6~24時間撹拌する段階をさらに含む、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記撹拌後に1~10℃の温度に冷却させつつ撹拌する段階をさらに含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記冷却によって生成されたペラミビル三水和物結晶を濾過してペラミビル三水和物結晶ケーキを製造する段階をさらに含む、請求項6~8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記ペラミビル三水和物結晶ケーキをアルコール系水溶液で洗浄する段階をさらに含む、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記アルコール系水溶液は、1-プロパノール水溶液、2-プロパノール水溶液、1-ペンタノール水溶液、2-ブタノール水溶液、3-メチル-1-ブタノール水溶液、2-メチル-1-プロパノール水溶液、又はそれらの混合物である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記アルコール系水溶液の濃度は、1~30%である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
前記アルコール系水溶液の体積は、初期ペラミビル重量の0.1~20倍である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項14】
前記アルコール系溶媒を添加する段階によって生成された結果物を、真空乾燥又は減圧乾燥させる段階をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項15】
前記乾燥は、25~80℃の温度条件で行う、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記乾燥は、20~80%の湿度条件で蒸湿乾燥させる、請求項14に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2019年7月3日付で大韓民国特許庁に提出された大韓民国特許出願第10-2019-0080188号に対して優先権を主張し、該特許出願の開示事項は本明細書に援用により組み込まれる。
【0002】
本発明は、抗インフルエンザー製剤としてノイラミニダーゼ感染阻害剤であるペラミビル三水和物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
インフルエンザーウイルス(Influenza virus)は、感染性ウイルス疾患であって、急性呼吸器疾患を発病させ、一般にインフルエンザと知られているウイルスである。インフルエンザーウイルスは、1931年にShopeによって豚から初めて分離され、人からの分離は1933年にSmith、Andrews及びLaidlowによってなされて知られることになった。現在、インフルエンザーウイルスは、数回の変異を経て全世界的に人類の様々な急性呼吸器疾患を誘発しており、それによる有病率及び死亡率が増加するウイルスとして管理されている。最近では、インフルエンザーウイルスの様々な変異によって新しいウイルスが出現する場合には有病率及び死亡率が大きく増加すると予測され、インフルエンザーウイルスの重要性の認識及び深刻性から、全世界ではインフルエンザー監視体系を運営している。
【0004】
インフルエンザーウイルスは、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)に属するRNAウイルスで、8個の切片で構成された多形性球形の形状を有し、直径は約80~120nm程度である。これは、外皮に2つの糖タンパク質である血球凝集素(Hemagglutinin;HA)タンパク質とノイラミン分解酵素(Neuraminidase;NA)、基質タンパク質(Matrix,M2)が存在し、外皮内側境界面に他の基質(M1)タンパク質が存在する。インフルエンザーウイルスは、抗原型によってA型、B型、C型に分類される。A型インフルエンザーは、表面抗原であるHAとNAによって亜型(Subtype)として決定され、HAは、ウイルスが体細胞に付着する役割を担い、H1からH18までの亜型が存在する。そして、NAは、感染した細胞からウイルスが放出されて新しい呼吸器細胞に伝播されるのに重要な役割を担い、N1からN11までの亜型が存在する。これに対し、B型インフルエンザーウイルスは、A型に比べて抗原の変化が少なく、免疫学的に安定した形態を有する。また、前述したように、人だけが唯一の宿主として作用し、ビクトリア(Victoria)系列とヤマガタ(Yamagata)系列とに分けられる。最後に、C型インフルエンザーは、殆どが無症状であり、インフルエンザーの流行と関連がないと知られている。
【0005】
このようなインフルエンザーウイルスの予防及びウイルスの増殖を抑制する治療剤として、抗インフルエンザー感染阻害剤は、オセルタミビル(Oseltamivir;タミフルTM)、ザナミビル(Zanamivir;リレンザTM)、そしてペラミビル(Peramivir;ペラミフルTM)が開発されており、それらはいずれもA型及びB型インフルエンザーに対する抗ウイルス効果がある。これに対し、M2抑制剤であるアマンタジン(Amantadine)とリマンタジン(Rimantadine)は、単にA型インフルエンザーウイルスにのみ効果があり、耐性のため現在は使用が勧告されていない実情である。A型及びB型インフルエンザーウイルス感染阻害剤であるオセルタミビルは、ウイルスを増殖させる酵素の機能を防ぎ、インフルエンザーウイルスに対する効果を示し、症状発生後48時間以内に服用してこそ最大効果が得られる。しかしながら、症状好転以降にも必ず5日間服用しなければならないという短所があり、最近では、オセルタミビルの服用後に、吐き気、嘔吐及び神経精神系異常症状による副作用が深刻であり、社会的にも問題になっている状況である。別のA型及びB型インフルエンザーウイルス感染阻害剤であるザナミビルは、経口用ではなく口中に噴霧して吸い込む治療剤であり、これもまた、ウイルス表面にある増殖酵素であるノイラミニダーゼを抑制し、ウイルスが他の細胞に広がることを阻害し、各種の変種流行性感冒類のウイルスのいずれにも効果を示す治療剤として知られている。しかし、ザナミビルもまた、下痢、吐き気、嘔吐、頭痛、目眩、鼻出血のような深刻な副作用があり、7歳以上にのみ投与が可能であるという短所を有する。それらの世界的な市場性は、ザナミビルは市場が蚕食中であり、オセルタミビルも、深刻な神経精神系異常現象のような深刻な副作用及び経口服用し難い患者への処方が難しく、必ず5日間10回程度経口服用しなければならないという点で、その市場も蚕食される可能性が大きいと予測されている。これに対し、ペラミビルは、最も直近に開発されたノイラミニダーゼ阻害剤の系列で、A型とB型に対するインフルエンザーウイルス感染治療剤として知られている。ペラミビルの場合、広範な流行性感冒ウイルス菌株の作用を抑制する作用機序を有しており、1回の静脈注射で処方が可能であるという長所がある。ペラミビルは、静脈注射処方により、経口服用するオセルタミビルと吸入服用するザナミビルに比べて、非常に効果的な治療剤として評価されており、経口服用が困難な患者、代謝疾患者、慢性呼吸器疾患者の処方も可能である。また、経口用処方に比べて解熱が速く、嘔吐、吐き気などの副作用が相対的に少ないという長所がある。インフルエンザー感染阻害剤としてペラミビルは、2014年度にFDA承認して以来、低い認知度を改善し、持続した成長の勢いを見せており、2018年09月には大韓民国における適応症の拡大により需要層の拡大が次第に増加している趨勢である。
【0006】
ペラミビルの製品名は、ペラミフル(PeramifluTM)であり、これは、化学式1のようなペラミビル水和物の形態を有する注射剤として完製される。より詳細には、ペラミフルは、化学式2のようなペラミビル三水和物の形態を有する。
【0007】
[化学式1]
【0008】
【0009】
(式中、X=1,2,3)
[化学式2]
【0010】
【0011】
ペラミビルの三水和物の製法特許は、元開発社の先行特許であるKR1020017016653/US2000016013/WO200100571と、中国で出願した登録特許KR1020107005427/CN2008001459/WO2009021404、及びKR1020127025551/CN2008001459/WO2009021404として公開されている。
【0012】
前記特許KR1020017016653/US2000016013/WO200100571に開示されたペラミビル三水和物製法は、下記製造工程
図1に示され、KR1020107005427/CN2008001459/WO2009021404とKR1020127025551/CN2008001459/WO2009021404の三水和物製法は、下記製造工程
図2に、より詳細に示されている。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
元開発社で開示したKR1020017016653/US2000016013/WO200100571の特許は、製造工程
図1に示すように、活性炭の使用及び残留量を規制すべき溶媒のうち、医薬品溶媒分類2に該当する固有毒性を持つメタノールを使用してペラミビル三水和物を製造し、ペラミビル水和物の製造後に三水和物への乾燥において自然乾燥方法を用いるところ、産業的生産適用及び優秀医薬品製造及び品質管理基準(以下、GMP)に適合しない乾燥工程で製造される。
【0018】
本発明者らは、自然乾燥ではなく、乾燥器内に水系がない状態で真空乾燥を実施した結果、三水和物ではなく無水物に近似する水分値が確認でき、このような理由から既存特許の製造方法に自然乾燥が選択されていると推定した。しかしながら、ペラミビル三水和物は、注射剤として完製される医薬品であって、自然乾燥では内部湿度によって乾燥条件が異なるため均質な水分値が維持し難く、自然乾燥の方法は産業的大量生産及びGMP基準に適合しない方法である。
【0019】
また、製造工程
図2に示しているKR1020107005427/CN2008001459/WO2009021404とKR1020127025551/CN2008001459/WO2009021404の特許においても同様、メタノール溶媒を使用して三水和物を製造し、乾燥工程も、GMP規定及び産業的生産に容易でない工程を用いてペラミビル三水和物を製造する。しかも、製造工程
図1及び2はいずれも活性炭の存在下で三水和物を製造する。これらのペラミビルからペラミビル三水和物への工業収率はそれぞれ73.1%及び90%で、純度はそれぞれ99.91%及び99.86%と製造でき、これらの特許を用いた製造物は14%レベルの水分値を有する。
【0020】
そこで、本発明者らは、ペラミビル三水和物の製造において、活性炭及びメタノールのように毒性の溶媒を使用せず、優秀医薬品製造及び品質管理基準(GMP)にも適合する製造方法を開発しようと鋭意研究努力した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、注射剤として完製されるペラミビル三水和物製造において、残留量を規制すべき医薬品溶媒分類2に該当すると共に固有の毒性を持つメタノールの使用を止揚し、且つ活性炭の使用を排除した三水和物製造技術を提供しようとする。
【0022】
本発明の目的は、ペラミビル三水和物を製造する際に、医薬品溶媒分類3に該当する1-プロパノール、2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-1-プロパノールのアルコール系溶媒を用いて、低毒性、及び従来技術に比べて向上した合成収率で製造された三水和物である前記化学式2を提供することである。
【0023】
本発明の他の目的は、産業的生産が容易であり且つ優秀医薬品製造及び品質管理基準(以下GMP)に適した乾燥工程で原料及び水系を共に真空乾燥させることによりペラミビル三水和物である前記化学式2を製造する方法を提供することである。
【0024】
本発明の最終の目的は、前述の製造及び水系乾燥工程による、従来技術(メタノール)に比べてより高い高収率及び低いレベルの残留溶媒を有するペラミビル三水和物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明に係るペラミビル三水和物製造工程は、下記反応式1で表される。
【0026】
[反応式1]
【0027】
【0028】
発明のペラミビル三水和物製造工程は、医薬品製造において規制すべき分類2に該当する固有毒性のメタノール溶媒の代わりに、分類3に該当する低毒性アルコール系溶媒を用いる。
【0029】
医薬品製造において規制すべき分類2に該当する溶媒は、残留量を規制すべき溶媒であって、遺伝毒性を示さないが、動物試験において発癌性を示した溶媒、神経毒性と催奇形性などの発癌性以外の非可逆的な毒性を示した溶媒及びその他深刻であるものの可逆的な毒性が疑われる溶媒を意味する。
【0030】
医薬品製造において規制すべき分類3に該当する溶媒は、低毒性の溶媒で、人に対して低毒性であるとされる溶媒であり、健康上の理由からは露出制限濃度を設定する必要がない溶媒を意味する。
【0031】
本発明の一態様によれば、本発明は、次の段階を含む、化学式2で表示される(1S,2S,3R,4R)-3-[(S)-1-アセチルアミド-2-エチルブチル]-4-グアニジノ-2-ヒドロキシシクロペンタン-1-カルボキシル酸トリハイドレート(ペラミビル三水和物)の製造方法を提供する:
[化学式2]
【0032】
【0033】
(1S,2S,3R,4R)-3-[(S)-1-アセチルアミド-2-エチルブチル]-4-グアニジノ-2-ヒドロキシシクロペンタン-1-カルボキシル酸(ペラミビル)を水に溶解させて水溶液を製造する段階;及び
1-プロパノール、2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール又はそれらの混合物から選択されるアルコール系溶媒を添加する段階。
【0034】
本発明の一具現例において、前記ペラミビル及び水は、ペラミビル重量対水重量が1:1~1:30で添加され、具体的には、1:1~1:20、1:1~1:15、1:1~1:10、1:1~1:8、1:3~1:10、1:5~1:10、1:8~1:10、1:3~1:8、又は1:5~1:8の比率で添加され、最も具体的には、1:8で添加される。前記ペラミビル対水の重量を1:8の比率で添加する場合に、最終合成収率が最も高く現れる。
【0035】
本発明の他の具現例において、前記溶解は加熱と共になされる。ペラミビルと水を混合する場合に、初めには懸濁液の状態であるから、加熱によって溶解度を上げることが好ましい。
【0036】
本発明の具体的な具現例において、前記加熱は、50~100℃の温度でなされてよく、より具体的には、60~100℃、70~100℃、80~100℃、90~100℃、60~95℃、70~95℃、80~95℃の温度でなされてよく、最も具体的には、90~95℃の温度でなされる。前記加熱が90~95℃の温度でなされると、前記ペラミビルと水が懸濁液の状態からペラミビルを完全に溶解させ、蒸発する精製水の損失を最小化できる。前記加熱が95℃以上の温度でなされると、投入された水(精製水)の一部が蒸発し、蒸発した分の水(精製水)を補充しなければならず、産業的大量生産に不適である。
【0037】
上述したように、本発明の製造方法は、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール又はそれらの混合物から選択されるアルコール系溶媒を添加する段階を含む。
【0038】
本発明の製造方法において、前記反応式1段階のアルコール系溶媒は、医薬品製造において規制すべき分類3に該当する低毒性の溶媒に該当する。
【0039】
本発明の具体的な具現例において、前記アルコール系溶媒は、2-プロパノールを使用する場合に、最も高いペラミビル三水和物の合成収率を示し、好ましい。
【0040】
本発明の他の具現例において、前記アルコール系溶媒は水と1:1~10(アルコール系溶媒:水)の体積比で添加する。より具体的に、前記アルコール系溶媒は水と1:2~9、1:3~8、1:4~7の体積比で添加するが、これに限定されない。最も具体的に、前記アルコール系溶媒は水と1:5~6の体積比で添加する。本発明の実施例によれば、前記アルコール系溶媒は、水と1:5~6の体積比で添加する場合に、向上したペラミビル三水和物の合成収率を示す。
【0041】
本発明の一具現例において、前記アルコール系溶媒は、75~90℃で添加される。本発明の実施例において、前記アルコール系溶媒は85℃で添加されたが、これに限定されない。
【0042】
本発明の他の具現例において、本発明の前記製造方法は、前記アルコール系溶媒が添加された水溶液を15~30℃の温度に冷却させる段階をさらに含む。前記15~30℃の冷却温度は、より具体的に、20~30℃、25~30℃、15~25℃、20~25℃でよく、最も具体的には、25℃の温度でよい。前記冷却段階は、ペラミビル三水和物の結晶粒子が生成される段階である。本発明の実施例によれば、約40℃からペラミビル三水和物の結晶粒子が生成し始まる。
【0043】
本発明の一具現例において、前記製造方法は、上述したアルコール系溶媒の添加及び冷却後に、6~24時間撹拌する段階をさらに含む。前記撹拌時間は、より具体的には、6~24時間、8~24時間、10~24時間、12~24時間、6~18時間、8~18時間、10~18時間、6~12時間、8~12時間、10~12時間でよく、最も具体的には、12時間でよい。前記撹拌段階は、生成されたペラミビル三水和物の結晶をA型結晶型に相変化させるための段階である。上述した時間の持続撹拌による結晶化工程は、既存に公開された撹拌-静置-再撹拌を行う製造方法と比較して、静置及び再撹拌工程が省略されるので、工程がより簡単であり、最終生成された三水和物の結晶が均質となり、よって、結晶化物の濾過性が非常に改善する効果がある。
【0044】
本発明において、前記製造方法は、前記A型結晶型への相変化のための撹拌後に、1~10℃の温度に冷却させつつ撹拌する段階をさらに含むことができる。
【0045】
本発明において、前記製造方法は、生成されたペラミビル三水和物結晶を濾過する段階をさらに含む。前記濾過段階によってペラミビル三水和物結晶ケーキが生成される。
【0046】
本発明の一具現例において、本発明の製造方法は、前記濾過によるペラミビル三水和物結晶ケーキをアルコール系水溶液で洗浄する段階をさらに含む。
【0047】
本発明の具体的な具現例において、前記アルコール系水溶液は、1-プロパノール水溶液、2-プロパノール水溶液、1-ペンタノール水溶液、2-ブタノール水溶液、3-メチル-1-ブタノール水溶液及び2-メチル-1-プロパノール水溶液であってよい。
【0048】
本発明の他の具体的な具現例において、前記アルコール系水溶液は、1~30%、1~20%、1~10%、5~30%、5~20%、5~10%、又は10%の濃度である。
【0049】
本発明のさらに他の具体的な具現例において、前記洗浄に使用されるアルコール系水溶液の体積は、初期ペラミビル重量の0.1~20倍、0.1~15倍、0.1~10倍、0.1~5倍、0.1~3倍、0.1~1倍、又は0.1~0.5倍の体積でよく、最も具体的には0.5倍の体積でよい。例えば、ペラミビルの重量が30kgである場合に、前記洗浄用アルコール系水溶液は、15Lの体積が使用されてよい。
【0050】
従来技術によれば、ペラミビル三水和物結晶ケーキは、自然乾燥時に48時間以上放置してこそ、14%レベルの均質な水分を有するペラミビル三水和物の生産が可能である。このような自然乾燥方法は、医薬品の産業的大量生産に適合せず、優秀医薬品製造及び品質管理基準(GMP)にも適合しない乾燥工程である。
【0051】
このため、本発明の一具現例において、本発明のペラミビル三水和物の製造方法は、上述した工程によって生成されたペラミビル三水和物結晶ケーキを真空乾燥又は減圧乾燥させる段階をさらに含む。
【0052】
本発明の具体的な具現例において、前記乾燥は、25~80℃の温度条件でなされ、より具体的には、25~70℃、25~60℃、25~55℃、25~50℃、25~45℃、25~40℃、30~70℃、30~60℃、30~55℃、30~50℃、30~45℃、30~40℃、35~70℃、35~60℃、35~55℃、35~50℃、35~45℃、35~40℃でなされ、最も具体的には40℃でなされる。
【0053】
本発明の他の具体的な具現例において、前記20~80%の湿度条件で蒸湿乾燥し、より具体的には、20~70%、20~65%、20~60%、30~80%、30~70%、30~65%、30~60%、30~55%、30~50%、30~45%、30~40%、40~80%、40~70%、40~60%、40~55%、40~50%、40~45%の湿度で蒸湿乾燥してよい。好ましくは、40~60%の湿度で蒸湿乾燥することが、ペラミビル三水和物の水分値を一定に維持するのに適し、最も好ましくは40%が適する。
【0054】
本発明のさらに他の具体的な具現例において、本発明の洗浄工程で使用されたアルコール系溶媒が2-プロパノールである場合には、40℃の温度で乾燥させることが、ペラミビル三水和物の水分値を14%レベルに維持し、2-プロパノールの残留溶媒許容基準(50mg/日、5,000ppm)を満たすのに適する。
【0055】
本発明の実施例から立証されたように、本発明の水系と共に原料を真空乾燥させる工法で製造されたペラミビル三水和物は、水分14.6%、及び許容基準に適する262ppmの非常に低いレベルの2-プロパノール残留量を有する。
【0056】
先行技術特許KR第10~2001-7016653号、KR第10-2010-7005427号、及びKR第10-2012-7025551号においてメタノールを使用した三水和物製造方法の工業収率はそれぞれ、73.1%及び90%と報告された。しかし、本発明の実施例から立証されたように、本発明のアルコール系溶媒として2-プロパノールを使用する場合の工業収率は約95%であり、飛び抜けて向上したペラミビル三水和物の合成収率を示す。
【0057】
また、本発明におけるペラミビル三水和物の製造方法は、活性炭を使用する製造工程
図1又は2とは違い、活性炭を使用しなくともペラミビル三水和物の製造が可能である。
【0058】
本発明の具体的な具現例によるペラミビル三水和物の製造方法は、製造工程
図3で示す。
【0059】
【0060】
【0061】
上述したように、本発明に係る製造方法は、医薬品の産業的生産に適合及び容易ながらも、優秀医薬品製造及び品質管理基準(GMP)に適合するように製造が可能な製造方法であることが分かる。
【発明の効果】
【0062】
本発明は、抗インフルエンザー製剤としてノイラミニダーゼ感染阻害剤であるペラミビル三水和物の製造方法に関し、本発明の製造方法によれば、毒性の強いメタノールと活性炭を使用しないながらも高い収率と安定性、そしてGMP基準に適した工程でペラミビル三水和物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】本発明のペラミビル三水和物の製造工程の模式図である。
【
図2A】本発明の実施例2で製造したペラミビル三水和物の液体クロマトグラフィー(HPLC)スペクトルである。
【
図2B】本発明の実施例2で製造したペラミビル三水和物の液体クロマトグラフィー(HPLC)スペクトルである。
【
図3】本発明の実施例2で製造した化合物であるペラミビル三水和物の
1H-NMRスペクトルである。
【
図4】本発明の実施例2で製造した化合物であるペラミビル三水和物の
13C-NMRスペクトルである。
【
図5】本発明の実施例2で製造した化合物であるペラミビル三水和物の液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)スペクトルである。
【
図6】本発明の実施例2で製造した化合物であるペラミビル三水和物の結晶型A型のX線回折分析(XRD)値を示す図である。
【
図7A】検出可能な溶媒のそれぞれの許容基準に対する気体クロマトグラフィー(GC)スペクトルである。
【
図7B】本発明の実施例2で製造した化合物であるペラミビル三水和物の気体クロマトグラフィー(GC)スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのもので、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないということは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0065】
実施例
本明細書全体を通じて、特定物質の濃度を示すために用いられる“%”は、特に言及しない限り、固体/固体は(重量/重量)%、固体/液体は(重量/体積)%、そして液体/液体は(体積/体積)%である。
【0066】
試薬及び分析方法
ペラミビル(1S,2S,3R,4R)-3-[(S)-1-アセチルアミド-2-エチルブチル]-4-グアニジノ-2-ヒドロキシシクロペンタン-1-カルボキシル酸)、精製水、1-プロパノール(1-Propanol)、2-プロパノール(2-Propanol)、1-ペンタノール(1-Pentanol)などを精製過程無しで使用した。また、本発明における反応工程の進行及び純度確認は、液体クロマトグラフィー(HPLC)などの機器を用いて分析及び測定を行い、構造究明、結晶型、水分及び残留溶媒に対する分析は、核磁気共鳴(1H NMR、13C NMR)、液体クロマトグラフィー質量分析機(HPLC)、X線回折分析機(XRD)、水分測定機(Karl Fischer)及び気体クロマトグラフィー(GC)を用いて行った。
【0067】
実施例1:ペラミビル三水和物((1S,2S,3R,4R)-3-[(S)-1-アセチルアミド-2-エチルブチル]-4-グアニジノ-2-ヒドロキシシクロペンタン-1-カルボキシル酸トリハイドレート)の製造(1)
【0068】
【0069】
500.0L容量の反応器に(1S,2S,3R,4R)-3-[(S)-1-アセチルアミド-2-エチルブチル]-4-グアニジノ-2-ヒドロキシシクロペンタン-1-カルボキシル酸(ペラミビル;Peramivir)30.0kgを投入し、240.0Lの精製水で懸濁した。反応物を約95℃に加熱して懸濁液を完全溶解した後に撹拌しつつ、自然冷却を行った。反応物の温度が85℃の時に45.0Lの1-プロパノール(1-Propanol)を徐々に投入しつつ撹拌と共に25℃まで自然冷却させた。このとき、約40℃でペラミビル三水和物の結晶粒子が生成された。自然冷却によって反応器の温度が25℃に到達すると、結晶型A型の相変化のために約12時間撹拌した。また、反応器の温度を5℃に冷却させ、約3時間さらに撹拌を行い、反応完了後に濾過し、10%の1-プロパノール溶媒15.0Lで1回洗浄した。濾過された固体ケーキは、真空乾燥器の下部に精製水容器が置かれた、内部湿度約40%レベルの真空乾燥器に入れ、固体ケーキを40℃で約12時間乾燥させた。乾燥完了後にペラミビル三水和物を得た(収率:95.0%、純度:99.9%、水分:14.5%)。
【0070】
1H NMR (500 MHz, D2O, δ): 4.30-4.27 (m, 2H), 3.79-3.74 (m, 1H, -CH), 2.65-2.63 (m, 1H, -CH), 2.48-1.45 (m, 1H, -CH), 2.16-2.12 (m, 1H, -CH), 1.88 (s, 3H, -CH3), 1.75-1.71 (m, 1H, -CH), 1.41-1.36 (m, 3H), 0.95-0.91 (m, 2H), 0.87-0.84 (t, 3H, -CH3), 0.82-0.79 (t, 3H, -CH3); 13C NMR (500 MHz, D2O, δ): 181.671, 173.686, 155.584, 75.368, 55.201, 54.091, 50.314, 49.933, 43.409, 34.015, 22.780, 21.887, 20.942, 12.128, 11.276; LC-MS (m/z, C15H28N4O4): calcd for 329.21, found; 329.5.
実施例2:ペラミビル三水和物((1S,2S,3R,4R)-3-[(S)-1-アセチルアミド-2-エチルブチル]-4-グアニジノ-2-ヒドロキシシクロペンタン-1-カルボキシル酸トリハイドレート)の製造(2)
【0071】
【0072】
500.0L容量の反応器に(1S,2S,3R,4R)-3-[(S)-1-アセチルアミド-2-エチルブチル]-4-グアニジノ-2-ヒドロキシシクロペンタン-1-カルボキシル酸(ペラミビル;Peramivir)30.0kgを投入し、240.0Lの精製水で懸濁した。反応物を約95℃に加熱して懸濁液を完全溶解した後に撹拌しつつ、自然冷却を行った。反応物の温度が85℃の時に45.0Lの2-プロパノール(2-Propanol)を徐々に投入しつつ撹拌と共に25℃まで自然冷却させた。この時、約40℃でペラミビル三水和物の結晶粒子が生成される。自然冷却によって反応器の温度が25℃に到達すると、結晶型A型の相変化のために約12時間撹拌した。また、反応器の温度を5℃に冷却させて約3時間さらに撹拌を行い、反応完了後に濾過し、10%の2-プロパノール溶媒15.0Lで1回洗浄した。濾過された固体ケーキは、真空乾燥器の下部に精製水容器が置かれた、内部湿度約40%レベルの真空乾燥器に入れ、固体ケーキを40℃で約12時間乾燥させた。乾燥完了後にペラミビル三水和物を得た(収率:95.5%、純度:99.9%、水分:14.6%)。
【0073】
1H NMR (500 MHz, D2O, δ): 4.30-4.27 (m, 2H), 3.79-3.74 (m, 1H, -CH), 2.65-2.63 (m, 1H, -CH), 2.48-1.45 (m, 1H, -CH), 2.16-2.12 (m, 1H, -CH), 1.88 (s, 3H, -CH3), 1.75-1.71 (m, 1H, -CH), 1.41-1.36 (m, 3H), 0.95-0.91 (m, 2H), 0.87-0.84 (t, 3H, -CH3), 0.82-0.79 (t, 3H, -CH3); 13C NMR (500 MHz, D2O, δ): 181.671, 173.686, 155.584, 75.368, 55.201, 54.091, 50.314, 49.933, 43.409, 34.015, 22.780, 21.887, 20.942, 12.128, 11.276; LC-MS (m/z, C15H28N4O4): calcd for 329.21, found; 329.5.
下記表1には、本発明の実施例2で製造した化合物であるペラミビル三水和物の結晶型A型の2-theta(deg)値を示す。
【0074】
[表1]
【0075】
【0076】
また、反応のために投入する2-プロパノールの量を40L又は48Lに調節してペラミビル三水和物を製造した結果は、次の通りである(表2)。
【0077】
[表2]
【0078】
【0079】
実施例3:ペラミビル三水和物((1S,2S,3R,4R)-3-[(S)-1-アセチルアミド-2-エチルブチル]-4-グアニジノ-2-ヒドロキシシクロペンタン-1-カルボキシル酸トリハイドレート)の製造(3)
【0080】
【0081】
500.0L容量の反応器に(1S,2S,3R,4R)-3-[(S)-1-アセチルアミド-2-エチルブチル]-4-グアニジノ-2-ヒドロキシシクロペンタン-1-カルボキシル酸(ペラミビル;Peramivir)30.0kgを投入し、240.0Lの精製水で懸濁した。反応物は約95℃に加熱して懸濁液を完全溶解した後に撹拌しつつ、自然冷却を行った。反応物の温度が85℃の時に45.0Lの1-ペンタノール(1-Pentanol)を徐々に投入しつつ撹拌と共に25℃まで自然冷却させた。この時、約40℃でペラミビル三水和物の結晶粒子が生成された。自然冷却によって反応器の温度が25℃に到達すると、結晶型A型の相変化のために約12時間撹拌した。また、反応器の温度を5℃に冷却させて約3時間さらに撹拌を行い、反応完了後に濾過し、10%の1-ペンタノール(1-Pentanol)溶媒15.0Lで1回洗浄した。濾過された固体ケーキは、真空乾燥器の下部に精製水容器が置かれた、内部湿度約40%レベルの真空乾燥器に入れ、固体ケーキを40℃で約12時間乾燥させた。乾燥完了後にペラミビル三水和物を得た(収率:95.1%、純度:99.9%、水分:14.1%)。
【0082】
1H NMR (500 MHz, D2O, δ): 4.30-4.27 (m, 2H), 3.79-3.74 (m, 1H, -CH), 2.65-2.63 (m, 1H, -CH), 2.48-1.45 (m, 1H, -CH), 2.16-2.12 (m, 1H, -CH), 1.88 (s, 3H, -CH3), 1.75-1.71 (m, 1H, -CH), 1.41-1.36 (m, 3H), 0.95-0.91 (m, 2H), 0.87-0.84 (t, 3H, -CH3), 0.82-0.79 (t, 3H, -CH3); 13C NMR (500 MHz, D2O, δ): 181.671, 173.686, 155.584, 75.368, 55.201, 54.091, 50.314, 49.933, 43.409, 34.015, 22.780, 21.887, 20.942, 12.128, 11.276; LC-MS (m/z, C15H28N4O4): calcd for 329.21, found; 329.5.
【国際調査報告】