IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニーの特許一覧

<>
  • 特表-アノード保護層 図1
  • 特表-アノード保護層 図2
  • 特表-アノード保護層 図3
  • 特表-アノード保護層 図4
  • 特表-アノード保護層 図5
  • 特表-アノード保護層 図6
  • 特表-アノード保護層 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】アノード保護層
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20220907BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20220907BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20220907BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20220907BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20220907BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20220907BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20220907BHJP
   H01M 12/08 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/058
H01M10/054
H01M4/40
H01M4/134
H01M4/66 A
H01M4/1395
H01M12/08 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500540
(86)(22)【出願日】2020-07-09
(85)【翻訳文提出日】2022-01-05
(86)【国際出願番号】 GB2020051659
(87)【国際公開番号】W WO2021005376
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】1909927.4
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ロック、ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】リカルテ、ジョキン
(72)【発明者】
【氏名】カルボーニ、マルコ
(72)【発明者】
【氏名】リア、レイチェル
(72)【発明者】
【氏名】ウリッシ、ウルデリコ
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H032
5H050
【Fターム(参考)】
5H017EE01
5H017EE04
5H029AJ06
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029CJ03
5H029CJ24
5H029DJ06
5H029DJ07
5H029EJ01
5H029EJ03
5H029EJ05
5H029EJ07
5H029EJ08
5H029EJ12
5H029HJ00
5H029HJ04
5H029HJ20
5H032AA02
5H032AS02
5H032BB02
5H032BB05
5H032HH00
5H032HH04
5H032HH08
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA20
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA12
5H050CB12
5H050DA03
5H050DA04
5H050DA09
5H050EA01
5H050EA02
5H050EA11
5H050EA12
5H050EA14
5H050EA15
5H050EA23
5H050FA04
5H050GA03
5H050GA24
5H050HA00
5H050HA04
5H050HA17
(57)【要約】
【解決手段】 電気化学セルアセンブリであって、
少なくとも1つ又は複数の電気化学セルであって、
-電気化学的に活性な材料を含むカソードと、
-アルカリ金属層又はアルカリ金属合金層、並びに第1の層及び第2の層を含有する保護層を備えるアノードであって、第1の層が、アルカリ金属と合金化する金属及び/又は非金属を含み、アルカリ金属層又はアルカリ金属合金層上に形成され、第2の層が、第1の層上に堆積され、第2の層が、10-5Scm-1未満の電子伝導率を有するイオン伝導層である、アノードと、
-電解液と、を備える、少なくとも1つ又は複数の電気化学セル、を備え、
セルアセンブリが、少なくとも1つ又は複数の電気化学セルに圧力を印加する手段を更に備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルアセンブリであって、
少なくとも1つ又は複数の電気化学セルであって、
-電気化学的に活性な材料を含むカソードと、
-アルカリ金属層又はアルカリ金属合金層、並びに第1の層及び第2の層を含む保護層を備えるアノードであって、前記第1の層が、アルカリ金属と合金化する金属及び/又は非金属を含み、アルカリ金属層又はアルカリ金属合金層上に形成され、第2の層が、前記第1の層上に堆積され、前記第2の層が、10-5Scm-1未満の電子伝導率を有するイオン伝導層である、アノードと、
-電解液と、を備える、少なくとも1つ又は複数の電気化学セル、を備え、
前記セルアセンブリが、前記少なくとも1つ又は複数の電気化学セルに圧力を印加する手段を更に備える。
【請求項2】
前記アルカリ金属又はアルカリ金属合金が、リチウム金属若しくはリチウム金属合金又はナトリウム金属若しくはナトリウム金属合金を含む、請求項1に記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項3】
前記アノードが、集電体を更に備え、前記集電体が、好ましくは銅集電体又はニッケル集電体である、請求項1に記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項4】
前記第1の層が、アルミニウム、ホウ素、亜鉛、ガリウム、インジウム、炭素、シリコン、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、銀、金、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの金属又は非金属、好ましくはインジウム又は亜鉛を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項5】
前記第1の層が、10-5Scm-1を超える、好ましくは1Scm-1を超える電子伝導率を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項6】
前記第1の層が、サイクル中に、10-15cm-1を超える、好ましくは10-7cm-1を超えるリチウム拡散率を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項7】
前記第1の層が、10-9Scm-1より大きい、好ましくは10-6Scm-1より大きいイオン伝導率を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項8】
前記第1の層が、1nm~5000nm、好ましくは10nm~3000nm、例えば100nm~2000nmの厚さを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項9】
前記第2の層が、セラミック材料、ポリマー材料、ポリマー及びセラミックの複合材料、並びにこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項10】
前記第2の層が、酸窒化物、硫化物、ホスフェート、酸化物、オキシ硫化物、チオホスフェート、ボレート、オキシボレート、ホウ化水素、シリケート、アルミネート、若しくはチオアルミネート化合物、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項11】
前記セラミック材料が、LiPONである、請求項10に記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項12】
前記ポリマー材料が、ポリエチレンオキシドである、請求項9に記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項13】
前記第2の層が、10-9Scm-1より大きい、好ましくは10-6Scm-1より大きいイオン伝導率を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項14】
前記第2の層が、1nm~1000nm、好ましくは10nm~500nm、例えば100nm~250nmの厚さを有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項15】
前記第1の層内に貯蔵することができるアルカリ金属の総量が、前記カソード内の電気活性材料の電気化学的アルカリ金属貯蔵容量の10%未満である、請求項1~14のいずれか一項に記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項16】
前記力を印加する手段が、前記セルの外側に位置決めされたバンド、ラップ、又はチューブを備える、請求項1~15のいずれか一項に記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項17】
前記1つ又は複数のセルが、リチウム硫黄セル若しくはナトリウム硫黄セル、リチウム空気セル若しくはナトリウム空気セル、又はリチウムイオンセル若しくはナトリウムイオンセルから選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の電気化学セルアセンブリ。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の電気化学セルアセンブリを形成する方法であって、前記方法が、
a)アルカリ金属層又はアルカリ金属合金層を提供するステップと、
b)アルカリ金属と合金を形成する少なくとも1つの金属及び/又は非金属を前記アルカリ金属層又は前記アルカリ金属合金層と接触させて、連続的な第1の層を形成するステップと、
c)前記第1の層の前記表面上に10-5Scm-1未満の電子伝導率を有するイオン伝導層を堆積させて、連続的な第2の層を形成するステップと、を含み、ステップa)~c)が、アノードを形成し、
d)電解液を提供するステップと、
e)カソードを提供するステップと、を含み、ステップa)~e)が、電気化学セルを形成し、
f)ステップa)~e)に従って形成される少なくとも1つのセルに力を供給する手段を適用するステップと、を含む、方法。
【請求項19】
前記第1の層及び前記第2の層のうちの少なくとも一方が、物理蒸着によって形成される、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルに関する。本発明はまた、電気化学セルを形成する方法、特に電気化学セルのアノード上にコーティングを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ金属及びアルカリ土類金属を含む電極は、一次電気化学セル及び二次電気化学セルの両方で使用されている。特に、リチウムは、高いエネルギー密度を提供することができる軽量材料であるため、電極の形成に望ましい材料であることがわかっている。これにより、セルの重量を最小化することが非常に重要である用途を含む、広範囲の用途に適したセルの構築を可能にすることができる。リチウム硫黄セルでは、例えば、リチウム金属箔がセルのアノードとして使用されてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような電極の使用によって提供される利点にもかかわらず、アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、電気化学セルで用いられる場合に特定の欠点を有する。一実施例としてリチウム金属箔を使用すると、リチウムは、セル内で電解液と反応し得る。このことは、電極上に抵抗層を形成し、経時的にバッテリ性能を低下させ得る。リチウムデンドライト及び/又はモジイ堆積物は、サイクル中にリチウム金属箔の表面上に形成され得、これは、短絡及びサイクル性能の低下をもたらし得、最終的にセルの寿命の短縮をもたらし得る。
【0004】
上記の困難性を考慮すると、アノードの表面上に保護層を含むことが望ましいことがある。様々な保護層が提案されている。このような保護層は、アノードの表面とバルク電解液との間の接触を低減又は防止しながら、アルカリ金属イオンを伝導することが必要である。例えば、アノードの上部の合金層は、セルのサイクル又は容量特性を改善する手段として提案されている。しかしながら、アルカリ金属合金層は、経時的に電解液と反応し得、その結果、電極の上部に抵抗層が形成される。合金層上のアルカリ金属めっきも、不均一な剥離とともに観察され得る。
【0005】
セラミック材料はまた、アノード上に保護層を形成するための候補として提案されている。米国特許第6,025,094号は、アルカリ金属層、及びアルカリ金属層をコーティングするガラス状又はアモルファスの保護層を有する負極を開示しており、この保護層は、アルカリ金属イオンを伝導するものである。しかしながら、セラミック層の使用は、アノードの電荷移動抵抗を増加させ得、このことは、アルカリ金属の不均一な剥離及びめっき、並びに保護層の上部へのアルカリ金属堆積物をもたらし得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、リチウム金属電極の表面のSEM画像を示す。
【0007】
図2図2は、表面上に形成された合金層を有するリチウムアノードのSEM画像及びインピーダンスグラフを示す。
【0008】
図3図3は、表面上に形成されたセラミック層を有するリチウムアノードのSEM画像及びインピーダンスグラフを示す。
【0009】
図4図4は、本発明の実施形態による、0MPa、0.5MPa及び1MPaの力の印加下でのリチウムめっきステップの完了後の保護リチウムアノードのデジタル写真及びSEM画像を示す。
【0010】
図5図5は、本発明の実施形態による、リチウム剥離ステップ後の保護リチウムアノードのデジタル写真、SEM画像、及び断面図を示す。
【0011】
図6図6は、本発明の実施形態による、保護リチウムアノードのデジタル写真及びSEM画像を示す。
【0012】
図7図7は、本発明の実施形態による、保護リチウムアノードの電気化学データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の特定の実施例を記載する前に、本開示は、本明細書に開示される特定のセル、方法、又は材料に限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施例を説明するためにのみ使用され、限定することを意図するものではないことも理解されるべきであり、同様に、保護の範囲は、特許請求の範囲及びその同等物によって定義される。
【0014】
本発明のセル及び方法を記載及び請求する際に、以下の用語が使用される。単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に他の方法で指示しない限り、複数形を含む。したがって、例えば、「an anode」への言及は、このような要素の1つ以上への言及を含む。
【0015】
本発明の第1の態様によれば、電気化学セルアセンブリが提供され、電気化学セルアセンブリは、
少なくとも1つ又は複数の電気化学セルであって、
-電気化学的に活性な材料を含むカソードと、
-アルカリ金属層又はアルカリ金属合金層、並びに第1の層及び第2の層を含む保護層を備えるアノードであって、第1の層が、アルカリ金属と合金化する金属及び/又は非金属を含み、アルカリ金属層又はアルカリ金属合金層上に形成され、第2の層が、第1の層上に堆積され、10-5S cm-1未満の電子伝導率を有するイオン伝導層を含む、アノードと、
-電解液と、を備える、少なくとも1つ又は複数の電気化学セル、を備え、
セルアセンブリが、少なくとも1つ又は複数の電気化学セルに圧力を印加する手段を更に備える。
【0016】
本発明の別の態様によれば、電気化学セルアセンブリが提供され、電気化学セルアセンブリは、
少なくとも1つ又は複数の電気化学セルであって、
-電気化学的に活性な材料を含むカソードと、
-アルカリ金属層又はアルカリ金属合金層、並びに第1の層及び第2の層を含む保護層を備えるアノードであって、第1の層が、アルカリ金属と合金化する金属及び/又は非金属を含み、アルカリ金属層又はアルカリ金属合金層上に形成され、第2の層が、第1の層上に堆積され、導電性ポリマー、セラミック又はガラス材料、ポリマー及びセラミック複合材料のうちの少なくとも1つを含むイオン伝導性層を含む、アノードと、
-電解液と、を備える、少なくとも1つ又は複数の電気化学セル、を備え、
セルアセンブリが、少なくとも1つ又は複数の電気化学セルに圧力を印加する手段を更に備える。
【0017】
本発明の別の態様によれば、上記の電気化学セルアセンブリを形成する方法が提供され、当該方法は、
【0018】
a)アルカリ金属層又はアルカリ金属合金層を提供することと、
【0019】
b)アルカリ金属と合金を形成する少なくとも1つの金属及び/又は非金属をアルカリ金属層又はアルカリ金属合金層と接触させて、連続的な第1の層を形成することと、
【0020】
c)第1の層の表面上に10-5S cm-1未満の電子伝導率を有するイオン伝導層を堆積させて、連続した第2の層を形成することと、を含み、ステップa)~c)がアノードを形成し、
【0021】
d)電解液を提供することと、
【0022】
e)カソードを提供することと、を含み、ステップa)~e)が、電気化学セルを形成し、
【0023】
f)ステップa)~e)に従って少なくとも1つのセルに力を供給する手段を適用することと、を含む。
【0024】
本明細書全体を通して使用される場合、「アノード」という用語は、電気化学セル内の負極、すなわち、セルの充電中に酸化が生じる電極を指す。本明細書全体を通じて使用される場合、「カソード」という用語は、電気化学セル内の正極、すなわち、セルの充電中に還元が生じる電極を指す。
【0025】
本発明による保護層は、2つの副層を含むことができる。好ましくは、保護層は、第1の層及び第2の層を含み、第2の層は、セルの電解液と直接接触している。保護層が3つ以上の層を備えるセルも想定され得る。例えば、保護層は、アルカリ金属と合金化することができる2つ以上の層を備え得る。追加的又は代替的に、保護層は、2つ以上のイオン伝導性層を備え得る。他の好適な層もまた保護層内に含まれ得る。好ましくは、保護層は、アルカリ金属と合金化する金属及び/又は非金属を備え、アルカリ金属層若しくはアルカリ金属合金層上に形成され、第2の層が、第1の層上に堆積され、10-5S cm-1未満の電子伝導率を有するイオン伝導層を備える。
【0026】
本明細書に記載される第1の層及び第2の層を備える保護層を形成する際に、本発明者らは、セル性能に有益な効果を有し得るアノードコーティングを提供した。このような保護層は、アノード上のいくつかの異なるコーティングを含むセルと比較して、改善された特性、例えば、低減された界面抵抗を有し得る。組み合わせにおいて、第1の層及び第2の層は、2nm~10000nm、好ましくは10nm~4000nm、より好ましくは100nm~5000nm、例えば500nm~3000nmの厚さを有し得る。個々の層の比較的薄い厚さ、及び層の組み合わせの比較的薄い厚さを維持することにより、保護層が亀裂を生じる傾向を低減又は排除し得る。亀裂の回避又は最小化は、セルの寿命に関して有益であり得る。
【0027】
本発明による保護層又はコーティングは、改善されたバッテリ性能を提供し得る。例えば、本発明による電気化学セルは、サイクル及び容量寿命の改善を提供し得る。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、保護層は、放電中に、アルカリ金属(例えば、リチウム又はナトリウム)を、そのような金属を含むアノードから、均一に剥離することを可能にすると考えられる。不均一な剥離は、電極の孔食及び/又は亀裂の結果を有し得、このことは、セルの寿命及び/又は性能を低減させることがある。不均一な剥離及びめっきはまた、アルカリ金属デンドライトの形成をもたらし得、これにより、安全上の問題及び短絡の危険性を引き起こし得、セルのエネルギー密度を低下させ得る。図1は、リチウム金属電極の表面上の不均一なめっき及び剥離を示している。高表面積リチウム形成の領域が、剥離中の電極の孔食とともに、堆積中に発生し得る。図1では、表面の孔食が見られ得る。
【0028】
リチウム又はナトリウムなどのアルカリ金属との合金の形成を可能にする保護層は、保護層が適用されるときに電荷移動抵抗の低減などの利益を提供し得るが、このような合金層は、経時的に電解液と反応し、抵抗の増加及び電解液の枯渇をもたらし得る。表面上に亀裂及び/又は孔食が形成されるとともに、合金層の上部にもかなりのアルカリ金属めっきが発生し得る。セラミック保護層単独の使用はまた、電荷移動抵抗を増加させ得る一方で、不均一なアルカリ金属剥離及び/又はめっきももたらし得る。したがって、合金保護層単独、又はセラミック保護層単独のいずれかは、改善されたアノード構造を提供する適切な手段ではない場合がある。本発明者らは、驚くべきことに、本明細書で定義される第1の層及び第2の層を有する保護層が、アルカリ金属層からの均一な剥離をもたらし得ることを見出した。本発明者らはまた、充電中に、合金層の直下にアルカリ金属堆積が起こり得ることを見出した。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、これは、他の保護系と比較して低減された界面抵抗の結果であり得る。このことは、第1の層と第2の層との間の界面が非常に密であることに起因し得、アルカリ金属核生成が集電層と合金層との間で優先的に発生することを意味する。合金層の直下にリチウムなどのアルカリ金属が堆積することにより、より均一な堆積を有益に提供し、平滑なアノード表面を提供し得る。アノード表面における亀裂及び空隙の形成が、最小化又は防止され得る。本発明者らはまた、同等の非保護アノードと比較した場合に、本発明によるアノードのインピーダンスの低下を見出した。本発明者らはまた、合金保護層単独又はセラミック保護層単独のいずれかを有するアノードと比較して低減されたインピーダンスを見出した。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、この低減されたインピーダンスは、保護層の下で堆積/剥離が発生することを可能にし得ると考えられる。
【0029】
本発明による電気化学セルは、任意の好適なアルカリ金属又はアルカリ土類金属系セルであり得る。本明細書に記載されるアノードは、様々な正極材料と結合され得、特に、任意の高エネルギーカソードに結合され得る。電気化学セルの非限定的な実施例には、リチウム又はナトリウム硫黄セル、リチウム又はナトリウムイオンセル(例えば、リチウム又はナトリウムのNMCセル)、又はリチウム若しくはナトリウムの空気セル(例えば、リチウム又はナトリウムOセル)が含まれる。好ましくは、電気化学セルは、リチウム硫黄セル又はリチウムイオンセルである。代替的に、セルは、リチウム又はナトリウムの代わりにマグネシウムなどのアルカリ土類金属を含み得る。各電気化学セルは、アノード及びカソード、並びにアノードとカソードとの間に存在する電解液を含み得る。
【0030】
本発明による電気化学セルは、アルカリ金属層又はアルカリ金属合金層を備える。アルカリ金属層又はアルカリ金属合金層は、アノードの一部分を形成する。任意の好適なアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属又はアルカリ金属合金は、本明細書に記載される保護コーティングでコーティングされてもよい。例えば、アルカリ金属は、リチウム金属又はリチウム金属合金であり得る。好ましくは、アノードは、リチウム金属又はリチウム金属合金で形成された箔を備える。リチウム合金の実施例には、リチウムアルミニウム合金、リチウムマグネシウム合金、及びリチウムホウ素合金が含まれる。好ましくは、リチウム金属箔が使用される。代替的に、アノードは、ナトリウム金属若しくはナトリウム金属合金、又はマグネシウム金属若しくはマグネシウム金属合金を含み得る。アルカリ金属層又はアルカリ土類金属層又はアルカリ金属合金層は、500nm~200μm、好ましくは1μm~100μm、例えば25μm~75μmの厚さを有し得る。
【0031】
アノードは、任意選択の集電体を更に備え得る。別個の集電体をアルカリ金属層又はアルカリ土類金属層と組み合わせて集電層を形成し得、この集電層では、アルカリ金属層又は金属合金層が集電体と電気的に接触している。存在する場合、別個の集電体は、導電性金属材料、例えば、金属箔、金属シート、又は金属メッシュを備え得る。リチウムセル又はナトリウムセルの集電体は、典型的には、第1の金属以外の、例えば、リチウム又はナトリウム以外の金属導体から構成され得る。好ましくは、選択される金属は、集電体がセル化学に影響を及ぼさないように、実質的に不活性である。好適な金属の実施例には、アルミニウム、銅、又はニッケルが含まれる。好ましい実施例では、集電体は銅箔を備える。アルカリ金属は、集電体上に形成又は配置されて、集電層を形成し得る。代替的に、別個の集電体がアノード構造には存在しなくてもよい。
【0032】
保護層は、アルカリ金属層又はアルカリ金属合金層上に第1の層を備える。好ましくは、第1の層は連続層である、すなわち、アルカリ金属層又はアルカリ金属合金層の表面全体を覆う。第1の層は、アルカリ金属層又はアルカリ金属合金層と密接に接触している。第1の層は、リチウム又はナトリウムなどのアルカリ金属と合金を形成することができる少なくとも1つの金属及び/又は非金属を含む。「合金」という用語は、2つ以上の金属の組み合わせ、又は1つ以上の金属と他の非金属元素との組み合わせを指す。好適な合金金属及び非金属の実施例には、アルミニウム、ガリウム、ホウ素、インジウム、亜鉛、炭素、シリコン、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、銀、金、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、及びそれらの混合物が含まれる。リチウム系セルの合金層に含まれ得るベースリチウム合金の実施例としては、LiAl、LiZn、LiGa、LiIn、Li、Li、LiSi、LiGe、LiSn、LiPb、LiSb、LiAg、LiAu、LiNa、Li、LiMg、LiCa、が挙げられ、nは、0.1~20、例えば1~5であってもよく、xは、0.5~10、例えば1~5であってもよい。例えば、第1の層で形成され得るリチウム-インジウム合金は、Li0.3In1.7、LiIn、LiIn、LiIn、LiIn及びLi13Inを含み得るが、更なる合金が追加的/代替的に形成され得る。1つ以上のベース金属合金が、合金層に含まれてもよい。好ましい実施形態では、合金層は、リチウム-インジウム合金を含む。代替的に、合金層は、リチウム-亜鉛合金を含む。合金層は、ナトリウム-インジウム合金又はナトリウム-亜鉛合金を含み得る。合金金属及び/又は非金属とアルカリ金属との合金化は、セルのサイクル中に発生し得る。代替的に、いくらかの合金化がセルの製造中に発生し得る。
【0033】
第1の層は、電子導電性である。第1の層は、10-5Scm-1より大きい、好ましくは10-3Scm-1より大きい、より好ましくは10-1Scm-1より大きい、例えば、1Scm-1より大きい電子伝導率を有し得る。第1の層の電子伝導性は、アルカリ金属層又はアルカリ金属合金層と第1の層との間で合金化反応が発生することを可能にし得る。電子伝導性はまた、セル中、例えば電解液中で、第1の層と存在するアルカリ金属イオンとの間で合金化反応が発生することを可能にし得る。電子伝導性は、任意の好適な方法によって測定され得る。
【0034】
第1の層は、高いアルカリ金属拡散性を有し得る、すなわち、アルカリ金属イオンが層を通過することを可能にする。第1の層は、10-15cm-1より大きい、好ましくは10-10cm-1より大きい、より好ましくは10-8cm-1より大きい、例えば、10-7cm-1より大きい初期アルカリ金属拡散率を有し得る。第1の層は、その元の形態で、すなわちサイクル前に、高いアルカリ金属拡散率を有し得る。代替的に、第1の層は、サイクル前により低いアルカリ金属拡散率、例えば、10-15cm-1未満のアルカリ金属拡散率を有し得る。サイクル中、第1の層内のアルカリ金属含有量は、例えば、充電点又は放電点に起因して変化する。したがって、第1層に含まれるアルカリ金属がサイクル中に剥離すると、アルカリ金属の拡散性が増加し得る。第1の層を形成する「中間」種の高い拡散率は、集電層中のアルカリ金属からの自然発生的かつ均一な剥離を可能にし得る。
【0035】
第1の層はイオン伝導性である、すなわち、アルカリ金属イオンが層を通過することを可能にする。したがって、セル放電中に、アルカリ金属イオンは、コーティングを通って電解液に流れ込むことができる。同様に、セルが充電されると、電解液からのアルカリ金属イオンは、コーティングを通って拡散及び移動し、アルカリ金属、例えばリチウム又はナトリウムとしてコーティングの真下に堆積することができる。第1の層は、10-9Scm-1より大きい、好ましくは10-8Scm-1より大きい、好ましくは10-7Scm-1より大きい、より好ましくは10-6Scm-1より大きい、例えば、10-5Scm-1より大きいイオン伝導率を有し得る。イオン伝導率は、任意の好適な方法によって測定され得る。
【0036】
第1の層は、高いイオン伝導率及び/又は高いアルカリ金属拡散率を有し得る。一実施形態では、第1の層は、10-9Scm-1より大きいイオン伝導率を有し、10-15cm-1より大きいアルカリ金属拡散率を有し得る。
【0037】
第1の層は、一定量のアルカリ金属を貯蔵することが可能である。第1層内に貯蔵されるアルカリ金属の量は、セルのサイクル中の異なる段階で変化する。第1の層内に貯蔵されることができるアルカリ金属の総量は、カソード内の電気活性材料の電気化学的アルカリ金属貯蔵容量の60%未満、好ましくは30%未満、好ましくは10%未満、例えば5%未満であり得る。電気化学セルの充電中に、第1の層はアルカリ金属で飽和状態になり得る。充電が完了に向かって進行するにつれて、合金層の真下に元素状アルカリ金属の形成(核生成及び成長)が発生し得る。
【0038】
第1の層の厚さは、1nm~5000nm、好ましくは10nm~1000nm、例えば100nm~500nmであり得る。
【0039】
保護層は、第1の層上に堆積される第2の層を更に備える。第2の層は、第1の層と密接に接触している。好ましくは、第2の層は連続層である、すなわち、第1の層の表面全体を覆う。第2の層は、均一な厚さを有し得る。第2の層の厚さは、1nm~1000nm、好ましくは10nm~500nm、例えば100nm~250nmであり得る。
【0040】
第2の層はイオン伝導性である、すなわち、アルカリ金属イオンが層を通過することを可能にする。したがって、セル放電中に、アルカリ金属イオンは、コーティングを通って電解液に流れ込むことができる。同様に、セルが充電されると、電解液からのアルカリ金属イオンは、コーティングを通して移動し、アルカリ金属、例えばリチウム又はナトリウムとしてコーティングの真下に堆積することができる。したがって、第2の層は、充電及び放電中にアルカリ金属イオンの通過を可能にしながら、保護機能を提供することができる。第2の層は、10-9Scm-1より大きい、好ましくは10-8Scm-1より大きい、好ましくは10-7Scm-1より大きい、より好ましくは10-6Scm-1より大きい、例えば、10-5Scm-1より大きいイオン伝導率を有し得る。
【0041】
第2の層は、低い電子伝導率を有し、すなわち、実質的に電子絶縁性である。電子伝導率の低い層を含めることにより、保護層の上にLi及びNaなどのアルカリ金属イオンの堆積を回避し得る。第2の層は、10-5Scm-1未満、好ましくは10-8Scm-1未満、より好ましくは10-10Scm-1未満の電子伝導率を有し得る。一実施例では、電子伝導率は10-12Scm-1未満である。
【0042】
第2の層は、セラミック材料若しくはガラス材料、ポリマー材料、ポリマー及びセラミックの複合材料、並びにそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含み得る。適切なセラミック材料又はガラス材料には、例えば、リチウム、酸素、リン、窒素、硫黄、ホウ素、セレン、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素から選択される1つ以上の元素が含まれる。好適なセラミック材料は、化学量論的又は非化学量論的であり得る。セラミック材料は、酸窒化物、硫化物、ホスフェート、酸化物、酸硫化物、チオホスフェート、ボレート、オキシボレート、水素化ホウ素、シリケート、アルミネート又はチオアルミネート化合物、又はそれらの組み合わせであり得る。好適な材料の実施例には、酸窒化リチウム、硫化リチウム、リン酸リチウム、酸化リチウム、オキシ硫化リチウム、チオリン酸リチウム、ホウ酸リチウム、オキシホウ酸リチウム、水素化ホウ素リチウム、ケイ酸リチウム、アルミン酸リチウム及びチオアルミン酸リチウム、又はそれらの組み合わせが含まれる。代替的に、材料は、酸窒化ナトリウム、硫化ナトリウム、リン酸ナトリウム、酸化ナトリウム、酸硫化ナトリウム、チオリン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、オキシホウ酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、及びチオアルミン酸ナトリウムのうちの1つ以上から選択され得る。セラミック材料は、非晶質材料であってもよい。
【0043】
好適なセラミック材料の実施例には、LiPON、LLZO、LATP、LGPS、LPS、及びLAGPが含まれる。LiPON、LLZO、LATP、LGPS、LPS、及びLAGPは、固体導電性電解質としても有用な材料の例である。導電性のセラミック材料又はガラス材料の更なる実施例には、LiS-P-LiI、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiPO、LiO-P-LiSO、LiO-B-LiI、LiO-Al-B、LiO-Al-SiO、及びLiO-SiO-Bが含まれる。
【0044】
特に好ましいセラミック材料は、酸窒化リチウムなどの酸化リチウムである。LiPONは、低い電子伝導率及び高いイオン導電率を有する非晶質非化学量論的酸窒化リン酸リチウムの例である。LiPONの電子伝導率及びイオン伝導率の例示的な値は、それぞれ、10-12Scm-1及び10-6Scm-1の領域である。
【0045】
第2の層は、導電性ポリマー材料、例えばイオン伝導性ポリマーを含み得る。追加的又は代替的に、第2の層は、ポリマー材料内に分布されたアルカリ金属塩を有するポリマー材料を含み得る。これは、ポリマー内のイオン伝導性を提供又は増加させ得る。第2の層は、代わりに又は追加的にポリマー-セラミック複合材料を含んでもよい。ポリマー-セラミック複合材料は、少なくとも1つのポリマー材料によって互いに結合されたセラミック粒子を含み得る。ポリマー-セラミック複合材料を形成するために使用される1つ又は複数のポリマーは、固有のアルカリ金属イオン伝導性を有してもよく、又はアルカリ金属塩と混合されてもよい。
【0046】
例えば、ポリマー材料は、ポリエチレン酸化物相内に溶解したリチウム塩(例えば、LiTFSI)を含み得る。リチウム塩の更なる実施例には、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、硝酸リチウム、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホンイミドリチウム、リチウムビス(シュウ酸塩)ボレート、及びトリフルオロメタンスルホン酸リチウムが含まれる。好適なナトリウム塩には、ヘキサン酸ナトリウム、ヘキサフルオロヒ素酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホンイミドナトリウム、ビス(シュウ酸ナトリウム)ボレート、及びトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウムが含まれる。塩の組み合わせを用いてもよい。
【0047】
ポリマーは、アミン、アミド、カルボニル、カルボキシル、エーテル、チオエーテル及びヒドロキシル基、並びにそれらの混合物のリストから選択される少なくとも1つの官能基を含み得る。ポリマーの非限定的な実施例には、ポリ無水物、ポリケトン、ポリエステル、ポリストリン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリビニルが含まれる。イオン伝導性ポリマーの非限定的な実施例には、窒素又は硫黄含有ポリマー、例えば、ポリピロール(PPY)、ポリカルバゾール、ポリインドール、ポリアゼピン、ポリアニリン、ポリチオフェン、PEDOT、PPSが含まれ得る。イオン伝導性ポリマーの更なる実施例には、ポリ(フルオレン)、ポリフェニレン、ポリピレン、ポリアズレン、ポリナフタレン、ポリ(アセチレン)s(PAC)、及びポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)が含まれ得る。一実施形態では、ポリマー材料は、ポリエチレンオキシドである。
【0048】
本発明によるアノードを使用して、任意の好適なセルをアセンブルし得る。アノードは、正極材料を含む任意の好適なカソードに結合され得る。例えば、電気活性材料及び固体導電性材料の混合物を含むアノード及びカソードは、電解液と接触して配置され得る。
【0049】
電気化学セルのカソードは、好適な電気活性材料を含む。任意選択的に、カソードはまた、集電体、例えば、アルミニウム箔、銅箔又はニッケル箔などの金属を含み得る。
【0050】
リチウム系セルに好適な正電気活性材料の実施例には、硫化リチウム、硫黄、酸化リチウム、酸素、コバルト酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルアルミニウム酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸コバルトリチウム、フッ化鉄リチウム、及びこれらの組み合わせを含む複合材料が含まれる。ナトリウム系セルに好適な正電気活性材料の実施例には、コバルト酸ナトリウム、パナジウム酸ナトリウム、マンガン酸ナトリウム、ニッケルコバルトマンガン酸ナトリウム、クロム酸ナトリウム、リン酸鉄ナトリウム、フルオロリン酸ナトリウム、フッ化鉄ナトリウム、及びこれらの組み合わせを含む複合材料が含まれる。
【0051】
リチウム硫黄セルの場合、カソードは、電気活性硫黄材料及び導電性材料の混合物を含み得る。この混合物は電気活性層を形成し、これは集電体と接触して配置されてもよい。電気活性材料及び伝導性材料は、集電体上にマトリックスを形成し得る。電気活性硫黄材料は、元素状硫黄、硫黄系有機化合物、硫黄系無機化合物、及び硫黄含有ポリマーを含み得る。好ましくは、元素状硫黄が使用される。一実施形態では、カソードは硫黄-炭素複合物を含む。カソードは、イオン伝導性でもあり得る電気活性硫黄材料を含み得る。この材料は、硫黄並びにLi、Na、Mg、P、N、Si、Ge、Ti、Zr、Sn、B、Al、F、Cl、Br、I、O、又はこれらの任意の組み合わせなどの追加の元素を含有し得る。イオン伝導性でもある硫黄含有材料の実施例には、LGPS、LiPS又はLi11が含まれる。一実施形態では、カソードは、イオン伝導性でもある硫黄-炭素複合物を含み得る。
【0052】
固体導電性材料は、任意の好適な導電性材料であり得る。好ましくは、この固体導電性材料は、炭素から形成され得る。実施例には、カーボンブラック、炭素繊維、グラフェン、及びカーボンナノチューブが含まれる。他の好適な材料には、金属(例えば、フレーク、やすり粉、及び粉末)並びに導電性ポリマーが含まれる。導電性ポリマーの実施例には、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、及びポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が含まれる。好ましくは、カーボンブラックが用いられる。一実施形態では、カソードが硫黄-炭素複合物を含む場合、更なる固体導電性材料がカソードに存在しなくてもよい。
【0053】
カソードは、イオン伝導性材料、具体的には固体Li又はNaイオン伝導体を更に含み得る。イオン伝導性材料は、25℃で10-7S/cmより大きい、例えば10-6S/cmより大きいバルクイオン伝導率を有し得る。カソードが、LiPS又はLiなどの電気活性のイオン伝導性材料を含有する場合、更なるイオン伝導性材料が存在しなくてもよい。いくつかの実施例では、リチウムイオン伝導性材料はセラミック材料を含む。セラミック材料は、結晶構造、多結晶構造、部分結晶構造、又は非晶質構造を有し得る。好適なセラミック材料には、これらに限定されないが、金属及び/又はメタロイドの酸化物、炭酸塩、窒化物、炭化物、硫化物、酸硫化物、及び/又は酸窒化物が含まれる。場合によっては、セラミック材料は、リチウム又はナトリウムを含む。十分なイオン伝導性を有する好適な固体電解質の非限定的な実施例は、様々なリチウム化合物の組み合わせ、例えば、酸化リチウム(例えば、LiO、LiO、LiO、LiRO、ここで、Rは、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジミウム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及び/又はルテチウムである)、炭酸リチウム(LiCO)、窒化リチウム(例えば、LiN)、酸硫化リチウム、酸窒化リチウム、リチウムガーネット型酸化物(例えば、LiLaZr12)、Li10GeP12、リン酸リチウムオキシライトライド、ケイ酸リチウム、ゲルマニウム酸リチウム、酸化リチウムランタン、酸化リチウムチタン、ホウ硫化リチウム、アルミノ硫化リチウム、リン硫化リチウム、ケイ酸リチウム、ホウ酸リチウム、アルミン酸リチウム、リン酸リチウム、ハロゲン化リチウム、及び上記の組み合わせ、を含むリチウムを含むセラミック材料など、によって生成され得る。場合によっては、セラミック材料は、酸化リチウム、窒化リチウム、又は酸硫化リチウムを含む。いくつかの実施形態では、セラミックは、炭酸塩及び/又は炭化物を含む。ナトリウム系セルでは、これらの材料のうちのいずれかのナトリウムイオン等価物が使用され得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、リチウムイオン導電性材料又はナトリウムイオン導電性材料は、電子対を供与することができる種(例えば、ルイス塩基)から選択され得る。好適な電子供与性材料の実施例には、これらに限定されないが、酸化リチウム(例えば、LiO、LiO、LiO、LiRO、ここで、Rは、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジミウム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及び/又はルテチウムである)、炭酸リチウム(LiCO)、窒化リチウム(例えば、LiN)、酸硫化リチウム、酸窒化リチウム、リチウムガーネット型酸化物(例えば、LiLaZr12)、Li10GeP12、リン酸窒化リチウム、ケイ酸リチウム、ゲルマニウム酸リチウム、酸化リチウムランタン、酸化リチウムチタン、ホウ酸リチウム、アルミノ酸リチウム、リン硫化リチウム、ケイ酸リチウム、ホウ酸リチウム、アルミン酸リチウム、リン酸リチウム、ハロゲン酸リチウム、及び上記の組み合わせが含まれる。上記のナトリウム等価物も想定され得る。
【0055】
リチウムイオン導電性材料として使用できるセラミック材料の実施例には、Li含有酸化物、例えば、Li3.3La0.56TiO、Nasicon構造(例えば、LiTi(PO)、LiSICON(Li14Zn(GeO)、Li10GeP12、ガーネット、LiLaZr12、LiO、他の酸化物、例えば、Al2O3、TiO2、ZrO2 SiO2、ZnO、硫化物、例えば、LiS-P、アンチペロフスカイト、例えば、LiOCl、水素化物、例えば、LiBH、LiBH-LiX(X=Cl、Br、I)、LiNH、LiNH、LiAlH、Li NH、ホウ酸塩又はリン酸塩、例えば、Li、LiPO、LiPON、炭酸塩又は水酸化物、例えば、LiCO、LiOH、フッ化物、例えば、LiF、窒化物、例えば、Li3N、硫化物、例えば、ホウ酸リチウム、リン硫化リチウム、アルミノ硫化リチウム、酸硫化物、酸化プラセオジム、が含まれる。当該セラミック材料のうちの少なくとも1つが、使用され得るか、又はそれらの組み合わせが使用され得る。ナトリウム硫黄セルでは、これらの導電性材料のうちのいずれかのナトリウムイオン等価物が利用され得る。
【0056】
いくつかの実施例では、リチウムイオン導電性材料又はナトリウムイオン導電性材料は、本質的にイオン伝導性であるポリマー材料、例えば、Nafionで形成され得る。代替的に、リチウム(又はナトリウム)塩とブレンドされたポリマーは、10-7S/cmより大きいバルク導電率を達成することができるが、これも使用され得る。好適なポリマーの実施例には、EO系ポリマー(例えば、PEO)、アクリレート系ポリマー(例えば、PMMA)、ポリアミン(ポリエチレンイミン)、シロキサン(ポリ(ジメチルシロキサン))、ポリヘテロ芳香族化合物(例えば、ポリベンゾイミダゾール)、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリイミド(例えば、カプトン)、ポリビニル(例えば、ポリアクリルアミド、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニル);無機ポリマー(例えば、ポリシラン、ポリシラザン、ポリホスファゼン、ポリホスホネート)、ポリウレタン;ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン);ポリエステル(例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート)、が含まれる。一実施形態では、Nafionなどのコブロックポリマーが使用され得る。当該ポリマー材料のうちの少なくとも1つ、又はそれらの組み合わせが使用され得る。一実施形態では、カソードは、1つ以上のイオン伝導性ポリマーと組み合わせたセラミック粒子を含有する。
【0057】
カソード中の電気活性材料は、60~90重量%、好ましくは65~85重量%、より好ましくは70~80重量%の量で集電体上に存在し得る。導電性材料は、集電体上に堆積されたマトリックス中に、10~45重量%、好ましくは15~35重量%、より好ましくは20~25重量%の量で存在し得る。電気活性材料対導電性材料の重量比は、0.01~10:10~50、好ましくは0.1~5:15~45、より好ましくは1~5:20~35であり得る。
【0058】
セパレータがセル内に存在する場合、セパレータは、イオンがセルの電極間で移動することを可能にする任意の好適な多孔質基材を含み得る。セパレータは、電極間の直接接触を防止するために電極間に位置決めされるべきである。基材の多孔性は、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、例えば、60%超である必要がある。好適なセパレータには、ポリマー材料から形成されたメッシュが含まれる。好適なポリマーには、ポリプロピレン、ナイロン、及びポリエチレンが含まれる。不織ポリプロピレンが特に好ましい。多層セパレータを用いることが可能である。
【0059】
任意の好適な電解液が、電気化学セル内に含まれ得る。一実施形態では、電解液は液体電解液である。電解液は、有機溶媒及び電解液塩を含み得る。好適な有機溶媒には、エーテル、エステル、アミド、アミン、スルホキシド、スルファミド、有機リン酸、イオン性液体、炭酸塩、及びスルホンが含まれる。1つ以上の溶媒の混合物が使用され得る。溶媒の実施例には、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネ-ト、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、メチルプロピルプロピオネート、エチルプロピルプロピオネート、酢酸メチル、1,2-ジメトキシエタン、1,3-ジオキソラン、ジグリム(2-メトキシエチルエーテル)、トリグリム、テトラグリム、ブチロラクトン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサン、ヘキサメチルホスホアミド、ピリジン、ジメチルスルホキシド、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、N、N、N、N-テトラエチルスルファミド、及びスルホン、及びそれらの混合物が含まれる。
【0060】
電解液の有機溶媒は、25℃で20cP未満、好ましくは10cP未満、より好ましくは7cP未満の粘度を有し得る。有機溶媒の混合物が電解液中で用いられる場合、混合物は、25℃で20cP未満、好ましくは10cP未満、より好ましくは7cP未満の粘度を有し得る。一実施形態では、電解液は、25℃で20cP未満、好ましくは10cP未満、より好ましくは7cP未満の粘度を有し得る。
【0061】
好適な電解液塩には、リチウム塩又はナトリウム塩が含まれる。好適なリチウム塩には、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、硝酸リチウム、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホンイミドリチウム、(シュウ酸)ホウ酸リチウムビス、及びトリフルオロメタンスルホン酸リチウムが含まれる。好適なナトリウム塩には、ヘキサン酸ナトリウム、ヘキサフルオロヒ素酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホンイミドナトリウム、ビス(シュウ酸ナトリウム)ボレート、及びトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウムが含まれる。好ましくは、リチウム塩は、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(リチウムトリフラートとしても知られている)である。塩の組み合わせを用いてもよい。例えば、リチウムトリフラートは、硝酸リチウムと組み合わせて使用され得る。リチウム塩は、0.1~6M、好ましくは0.5~3M、例えば1Mの濃度で電解液中に存在し得る。
【0062】
電解液はまた、リチウムポリスルフィド又はナトリウムポリスルフィドを含み得る。例えば、セルが放電される前に、リチウムポリスルフィドを電解液に添加してもよい。電解液に溶解したリチウムポリスルフィドの濃度は、0.1%~20%重量%(好ましい濃度は1.5%)であり得る。好適なリチウムポリスルフィドの実施例には、Li、ここで、n=少なくとも5、例えば、6~15、例えば8~12(例えば8)が含まれる。リチウムポリスルフィド又はナトリウムポリスルフィドは、電解液を緩衝し、セルの容量を増加させるか、又は非導電種の形成による硫黄の任意の損失を補償する硫黄源として機能するのに役立ち得る。
【0063】
本発明によるセルは、好適なハウジング内に提供され得る。このハウジングは、電気化学ゾーンを画定することができる。好ましくは、ハウジングは可撓性であり、例えば、可撓性ポーチである。ポーチは、複合材料、例えば、金属及びポリマーの複合物で形成されてもよい。一実施形態では、1つ以上のセルがハウジング内に封入される。1つ又は複数のセルが、ポーチ内に封止されてもよい。1つ又は複数のセルの各々の領域は、ハウジングから突出していてもよい。この領域は、例えば、ニッケルで形成された接触タブに結合され得る。接触タブは、任意の好適な方法、例えば(超音波)溶接によってアルカリ金属又はアルカリ金属合金に接続され得る。代替的に、接触タブ自体がハウジングから突出していてもよい。複数の電気化学セルがセルアセンブリ内に存在する場合、アノードのそれぞれの領域は、ともに押圧又は結合されて、接触タブに接続され得るアノードのパイルを形成し得る。
【0064】
本発明によるセルは、力を受け得る。好ましくは、力は異方性の力である、すなわち異なる方向で測定されると異なる値を有する。力の成分は、例えば、電気化学セルのアノードの活性表面に対して垂直に印加される。一実施形態では、力は、セルに連続的に印加される。一実施形態では、力は、特定の値に維持される。代替的に、力は、経時的に変化し得る。力は、アノードの表面全体にわたって印加され得る。代替的に、力は、アノードの表面の一部分にわたって、例えば、表面の少なくとも80%にわたって、好ましくは表面の少なくとも60%にわたって、好ましくは表面の少なくとも40%にわたって、例えば、表面の少なくとも20%にわたって、印加され得る。力は、セルに直接印加され得る。代替的に、力は、セル又はセルのスタックの外側に位置する、1つ以上のプレート、例えば金属プレートに印加され得る。力は、1つ以上のセルが含有されるハウジングに外部から印加され得る。例えば、1つ以上のセルが可撓性ポーチ内に含有され得、力が可撓性ポーチに外部から印加され得る。
【0065】
力は、電気化学セルの性能を向上させ得る。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、アノードに印加される圧力は、保護層とアルカリ金属層又は金属合金層との間の密接な接触を維持することを可能にすると考えられる。アノードに圧力を印加するにより、保護層の下、保護層とアルカリ金属/金属合金との間に、アルカリ金属めっきを形成することを可能にし得る。これは、不均一であり得、表面に亀裂又は孔食をもたらし得る、保護層の上へのめっきの形成を回避又は低減し得る。めっきが保護層の下で発生する場合、アノードの平滑な表面が維持され得、表面上の亀裂又は空隙の形成が低減され得る。次いで、デンドライト形成が防止され得る。更に、保護層の下に位置するアルカリ金属堆積物は、電解液と直接接触していない。これにより、サイクル中に電解液が還元されることを防止し得、セルのサイクル寿命の低下を回避し得る。
【0066】
一実施形態では、力は、クランプ力であってもよい。代替的に、力は、圧縮力であってもよい。クランプ力は、クランプを使用してセルに印加され得る。代替的に、1つ以上の締め付け素子が、1つ又は複数のセルの外側の周りに位置決めされ得る。締め付け素子は、セル又はセルの外部の少なくとも一部を取り囲むバンド又はチューブの形態をとり得る。バンドは任意の好適な材料から作製され得る。一実施形態では、バンドは、1つ又は複数のセルの周りに延伸され得る弾性材料から形成され、定位置にあるとき、締め付け力を印加する。一実施形態では、バンドは弾性バンドである。代替的に、バンドは、1つ又は複数のセルの周囲で締結され得る。締め付け素子はまた、収縮ラップ材料の形態をとり得る。更なる配列では、1つ以上の圧縮ばねが使用され得、例えば、1つ又は複数のセルは、格納構造とセルとの間に1つ以上の圧縮ばねが位置する格納構造内に収容され得る。力を印加する他の手段には、ネジ又はおもりが含まれることがある。
【0067】
力を印加する上記の方法のうちの1つ以上が用いられ得る。0MPaを超える任意の好適な力が使用され得る。1つ又は複数のセルに印加される力は、最大0.5MPa、好ましくは最大2MPa、例えば最大5MPaの範囲内であり得る。力は、少なくとも0.1MPa、好ましくは少なくとも0.5MPa、例えば、少なくとも1MPaであり得る。力は、0.1MP~5MPa、好ましくは0.5MPa~3MPa、例えば1MPa~1.5MPaであり得る。
【0068】
また、上記のような保護層を含む電気化学セルを形成するための方法も本明細書に開示される。特に、保護層は、アルカリ金属と合金化し、集電層上に形成される金属及び/又は非金属、及び第1の層上に堆積され、10-5S cm-1未満の電子伝導率を有するイオン伝導性層を備える第2の層を備え得る。本発明の一態様によれば、上記のように1つ以上のセルを含む電気化学セルアセンブリを形成する方法が開示される。本発明によれば、この方法は、集電層を提供することと、合金を形成する少なくとも1つの金属及び/又は非金属を集電体と接触させて第1の層を形成することと、及び第1の層の表面上に10-5Scm-1未満の電子伝導率を有するイオン伝導層を堆積させて第2の層を形成することと、を含む。好ましくは、第1の層及び第2の層のうちの少なくとも一方は連続層であり、より好ましくは、第1の層及び第2の層の両方が連続層である。
【0069】
任意の好適な方法を使用して、第1の層を形成し得る。好適な方法の実施例には、物理蒸着又は化学蒸着などの物理堆積法又は化学堆積法が含まれる。好適な方法には、プラズマ増速化学蒸着、スパッタリング、蒸発、電子ビーム蒸発、及び化学蒸着(CVD)が含まれ得る。これらの方法を使用して、例えば、集電層上に第1の層を堆積させ得る。追加的又は代替的に、これらの方法を使用して、保護層の第2の層を第1の層上に堆積させ得る。第1の層及び/又は第2の層を形成する代替的な方法には、インクジェット印刷、スロットダイ、及びスプレーコーティングが含まれ得る。これらの方法を使用して、例えば、ポリマーを含む第2の層に適用し得る。
【0070】
以下の実施例は、本発明を例示することのみを意図している。これらは、特許請求の範囲を決して限定するものではない。
【実施例
【0071】
実施例1
合金保護層
【0072】
合金保護層をリチウム箔アノード上に形成した。合金保護層は、スパッタリングによってインジウム薄膜を堆積させることによって形成される。図2aは、リチウムを含む基準アノード、及びリチウムとインジウムコーティングを含むアノードのインピーダンスを示している。図2aに見られるように、インジウムコーティングを有するアセンブルされたアノードのインピーダンス特性は、基準アノードと比較して改善される。しかしながら、経時的に、インジウム層は電解液と反応し、図2bに見られるように、抵抗が増加する。図2cは、インジウム層の上部への顕著なめっき、及び不均一なリチウム剥離を示している。アノードの表面上に空隙の形成が観察される。
実施例2
【0073】
セラミック保護層
【0074】
LiPONを含むセラミック保護層をリチウム電極の表面に形成した。図3aは、セラミック層が適用された場合の大きな電荷移動抵抗を示している。電荷移動抵抗は、経時的に安定したままであった。しかしながら、非常に不均一なリチウム剥離及びめっきが観察された(図3b)。
【0075】
実施例3
【0076】
合金層及びLiPON層の組み合わせ
【0077】
最初にリチウムアノード上にインジウム層を備え、続いてインジウム層上にLiPON層を備える保護層を有するリチウムアノードに力を印加した。クランプによって力を印加した。単一サイクル(セルの充電、次いで放電を伴い、剥離、続いてめっきが発生する)に続いて、デジタル写真及びSEM画像(図4)は、保護層の上部及び下部のリチウムめっきの程度を示している。リチウムアノードに力が印加されない場合、リチウムは、保護層の上部及び下部の両方にめっきすることが示されている。特に、保護層の上にリチウムめっきが見られる。0.5MPaでは、保護層の上部及び下部にリチウムめっきが見られる。0MPaと比較して、保護層の上部へのリチウムめっきがより少ないことが明らかである。1MPaのより大きな力を印加すると、リチウムは、ほとんど保護層の下部にめっきされ、保護層の上部には非常に小さい領域のリチウムめっきのみが見られる。リチウムめっきステップでは、4mA hcm-1をめっきした。これは、1MPaで保護層の下部に20μm厚さのリチウム層を形成することとほぼ同等である。
【0078】
図5は、リチウムめっきに続いて0.5MPa及び1MPaの力を印加して剥離するサイクルの後に、最初にリチウムアノード上にインジウム層を備え、続いてインジウム層上のLiPON層を有する保護層を有する保護リチウムアノードを示している。保護されたリチウムの表面は、自然のままで平滑に見える。顕著な欠陥又は空隙は明らかではなく、いかなる亀裂又は厚さのばらつきも、不均一なリチウムめっきではなく、試料処理に起因し得る。剥離された電極は、実質的な孔食及び/又は亀裂を伴わない電極の均一な剥離を示している。図6は、ベアリチウムアノード及びLiPON層のみを有するリチウムアノードと比較した、当該保護されたリチウムアノードのインピーダンス特性を示している。インピーダンスの低下が、保護されたリチウムアノードでは明らかである。
【0079】
実施例4
保護リチウムアノードを備えるポーチセル
【0080】
最初にリチウムアノード上にインジウムの層を備え、続いてインジウム層上のLiPON層を備える保護層を有する保護されたリチウムアノードを備える、リチウムポーチセルを構築した。ポーチセルは、2つの保護されたリチウム電極(一方は作用電極として機能し、他方は対向/基準電極として機能する)を含む対称ポーチセルであった。各保護リチウム電極は、33.6cmの面積の活性面を有していた。図7は、いくつかのサイクルにわたる当該ポーチセルの電気化学的データを提供し、ここでは、セルが0.4mAcm-2で充電/放電され、ステップ当たり4mA hcm-2の電荷が通過した。サイクル中に、ポーチセルに1MPaの圧力を掛けた。図7はまた、ベアリチウム箔アノードが使用された比較セル、及びベアリチウム箔アノードが使用されるがセルに圧力が印加されていない更なる比較セル、についての電気化学データを提供する。保護されたアノードを構成するリチウムポーチセルについて、サイクルの改善が見られる。ベアリチウム箔アノードを含むセルのサイクルは、短絡が観察されたときに、それぞれ25サイクル(基準セル)及び60サイクル(印加圧力)で停止した。
【0081】
本明細書の記載及び特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」及び「含有する(contain)」という用語及びそれらの変形は、「含むがこれらに限定されない」を意味し、それらは、他の部分、添加剤、成分、整数又はステップを除外することを意図しない(及び除外しない)。本明細書の記載及び特許請求の範囲を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単数は複数を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、本明細書は、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単数だけでなく複数も企図するものとして理解されるべきである。
【0082】
本発明の特定の態様、実施形態又は実施例に関連して記載される特徴、整数、特性、化合物、化学的部分又は基は、それと不適合でない限り、本明細書に記載される任意の他の態様、実施形態又は実施例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書(付随する特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示される特徴のすべて、及び/又はそのように開示される任意の方法又はプロセスのステップのすべては、そのような特徴及び/又はステップの少なくともいくつかは相互排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせられてもよい。本発明は、任意の前述の実施形態の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示される特徴の任意の新規の1つ若しくは任意の新規の組み合わせ、又はそのように開示される任意の方法又はプロセスのステップの任意の新規の1つ又は任意の新規の組み合わせに及ぶ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】