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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】新規エステラーゼ及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/55 20060101AFI20220907BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220907BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220907BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220907BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220907BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220907BHJP
   C12N 9/16 20060101ALI20220907BHJP
   C12Q 1/44 20060101ALI20220907BHJP
   C11D 3/386 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
C12N15/55 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N9/16 Z
C12Q1/44
C11D3/386
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500705
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(85)【翻訳文提出日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2020069506
(87)【国際公開番号】W WO2021005199
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】19185796.0
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514245373
【氏名又は名称】キャルビオス
【氏名又は名称原語表記】CARBIOS
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】トゥルニエ,ヴァンサン
【テーマコード(参考)】
4B050
4B063
4B065
4H003
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B050DD02
4B050KK20
4B050LL04
4B050LL10
4B063QA20
4B063QQ05
4B063QQ13
4B063QQ20
4B063QQ32
4B063QS02
4B063QS40
4B063QX10
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA27
4B065CA55
4H003DA01
4H003DA05
4H003DA17
4H003DA19
4H003EC02
(57)【要約】
本発明は、新規エステラーゼ、より特定すると、配列番号1のエステラーゼと比較して改善された活性及び/又は改善された熱安定性を有するエステラーゼ変異体、並びに、プラスチック製品などのポリエステル含有物質を分解するためのその使用に関する。本発明のエステラーゼは、ポリエチレンテレフタラート及びポリエチレンテレフタラート含有物質を分解するのに特に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)配列番号1に示される完全長アミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一率を有し、(ii)S256C、S212I/W、N207C、S181N、S66T、T62M、N215D/M、Q93G/P、N220P/D、S187E、A14H、T172Q又はK226Eからなる群より選択された少なくとも1つの置換を含有し、そして(iii)配列番号1のエステラーゼと比較して、増加した分解活性及び/又は増加した熱安定性を有する、エステラーゼ。
【請求項2】
前記エステラーゼが、S256C、S212I/W、N207C、S181N、S66T、T62M、N215D/M、又はQ93G/Pからなる群より選択された少なくとも1つの置換を含む、請求項1記載のエステラーゼ。
【請求項3】
前記エステラーゼが、N207C+S256C、S212I/W、S181N、S66T、T62M、N215D/M、N220P、S187E、Q93G/P、A14H、T172Q、又はK226Eからなる群より選択された、好ましくはN207C+S256C、S212I/W、S181N、S66T、T62M、N215D/M、又はQ93G/Pからなる群より選択された、少なくとも1つの置換若しくは置換の組合せ、より好ましくは少なくともN207C+S256Cを含む、請求項1記載のエステラーゼ。
【請求項4】
前記エステラーゼが、少なくとも1つのN207C+S256Cの置換の組合せと、S212I/W、F175I、S181N、S66T、T62M、N215D/M、Q93G/P、N220P/D、S187E、A14H、T172Q、及びK226Eから選択された、好ましくはS212I/W、F175I、S181N、S66T、T62M、N215D/M、又はQ93G/Pから選択された少なくとも1つの置換、より好ましくはS212I/Wとを含む、請求項1~3のいずれか一項記載のエステラーゼ。
【請求項5】
前記エステラーゼがさらに、T13、A14、A15、S16、L17、E18、A19、S20、A21、G60、Y61、A63、R64、S67、I68、K69、W70、P73、R74、D86、T87、T90、L91、D92、P94、S95、W133、M135、G136、I142、W159、S161、S162、C177、I182、A183、P184、S187、I192、I206、G208、G209、S210、C213、A214、S216、G217、N218、S219、N220、Q221、A222、L223、I224、G225、K226、K227、T244、F245、A246、C247、E248、N249、P250、N251、S252、T253、R254、V255、又はC263から選択された残基に対応する位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、請求項1~4のいずれか一項記載のエステラーゼ。
【請求項6】
前記エステラーゼが、S212I/W+N207C+S256Cの位置における少なくとも1つの置換の組合せと、F175I、S181N、S66T、T62M、N215D/M、Q93G/P、S187E、N220P/D、A14H、T172Q、及びK226Eから選択された、好ましくはF175I、S181N、S66T、T62M、N215D/M、及びQ93G/Pから選択された位置における少なくとも1つの置換とを含む、請求項1~5のいずれか一項記載のエステラーゼ。
【請求項7】
前記エステラーゼが、S212I/W、N207C、S256C、S181N、S66T、T62M、N215D/M、N220P、S187E、Q93G/P、N207C+S256C、S212I/W+N207C+S256C、S212I/W+N207C+S256C+Q93G/P、又はS212I+N207C+S256C+Q93G+N220P+S187Eからなる群より選択された少なくとも1つの置換若しくは置換の組合せを含む、請求項1~6のいずれか一項記載のエステラーゼ。
【請求項8】
前記エステラーゼがさらに、親エステラーゼのような、S134、D180、及びH211から選択された少なくとも1つのアミノ酸残基、好ましくはS134+D180+H211の組合せ、並びに/あるいは、C177、C213、C247、又はC263から選択された少なくとも1つのアミノ酸残基、好ましくはC247+C263+C177+C213の組合せを含む、請求項1~7のいずれか一項記載のエステラーゼ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に定義されているようなエステラーゼをコードしている核酸。
【請求項10】
請求項9の核酸を含んでいる発現カセット又はベクター。
【請求項11】
請求項9の核酸又は請求項10の発現カセット若しくはベクターを含んでいる、宿主細胞。
【請求項12】
請求項1~8のいずれかに定義されているようなエステラーゼ、又は請求項11に記載の宿主細胞、又はその抽出物を含んでいる組成物。
【請求項13】
(a)ポリエステル含有物質を、請求項1~8のいずれか一項記載のエステラーゼ、又は請求項11記載の宿主細胞、又は請求項12記載の組成物と接触させる工程;及び
(b)場合により、モノマー及び/又はオリゴマーを回収する工程
を含む、ポリエステル含有物質の少なくとも1つのポリエステルを分解する方法。
【請求項14】
前記ポリエステルが、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタラート(PEIT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタラート(PBAT)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(エチレンアジペート)(PEA)、ポリエチレンナフタラート(PEN)、及びこれらの物質のブレンド/混合物から選択され、好ましくはポリエチレンテレフタラートである、請求項13の方法。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか一項記載のエステラーゼ、又は請求項11記載の宿主細胞、又は請求項12記載の組成物を含む洗剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規エステラーゼ、より特定すると、親エステラーゼと比較して改善された活性及び/又は改善された熱安定性を有するエステラーゼに関する。本発明はまた、プラスチック製品などのポリエステル含有物質を分解するための、該新規エステラーゼの使用にも関する。本発明のエステラーゼは、ポリエチレンテレフタラート、及びポリエチレンテレフタラート含有物質を分解するのに特に適している。
【0002】
背景
エステラーゼは、ポリエステルを含む、様々なポリマーの加水分解を触媒することができる。この脈絡では、エステラーゼは、食器洗浄及び洗濯に適用するための洗剤として、バイオマス及び食品を処理するための分解酵素として、環境汚染物質の解毒における又は繊維産業におけるポリエステル生地の処理のためのバイオ触媒としてなどの、多くの産業への適用において有望な効果を示している。ポリエチレンテレフタラート(PET)を加水分解するための分解酵素としてのエステラーゼの使用は、特に関心が高い。実際に、PETは、多くの技術分野において、例えば衣類、カーペットの製造に、又は包装用若しくは自動車用プラスチックの製造などのための熱硬化性樹脂の形態で使用され、よって埋立地におけるPETの蓄積は、ますます増えつつあるエコロジー問題となっている。
【0003】
ポリエステル、特にPETの酵素的分解は、プラスチック廃棄物の蓄積を減少させるための興味深い解決策と考えられている。実際に、酵素は、ポリエステル含有物質から、より特定するとプラスチック製品からモノマーレベルさえまでの加水分解を加速し得る。さらに、加水分解物(すなわちモノマー及びオリゴマー)は、新規ポリマーを合成するための材料として再利用することができる。
【0004】
この脈絡において、いくつかのエステラーゼが、ポリエステル分解酵素の候補として同定され、このようなエステラーゼのいくつかの変異体が開発されている。エステラーゼの中でも、クチン加水分解酵素(EC3.1.1.74)としても知られるクチナーゼは、特に興味深い。クチナーゼは、様々な真菌(P.E. Kolattukudy in "Lipases", Ed. B. Borg- strom and H.L. Brockman, Elsevier 1984, 471-504)、細菌、及び植物の花粉から同定されている。近年、メタゲノム解析アプローチにより、さらなるエステラーゼが同定された。
【0005】
しかしながら、より効率的であり、よってより競合的であるポリエステル分解プロセスを提供するために、すでに知られているエステラーゼと比較して、改善された活性及び/又は改善された熱安定性を有するエステラーゼが依然として必要とされる。
【0006】
発明の要約
本発明は、配列番号1に示されるようなアミノ酸配列を有する、親エステラーゼすなわち野生型エステラーゼと比較して、増加した活性及び/又は増加した熱安定性を示す新規エステラーゼを提供する。この野生型エステラーゼは、Yoshida S. et al., 2016 (A bacterium that degrades and assimilates poly(ethylene terephthalate) Science 351(6278), 1196-1199 (2016))に記載のエステラーゼのアミノ酸配列のアミノ酸28~290に相当し、ここではメチオニンが、1位に付加されている。本発明のエステラーゼは、プラスチック製品、より特定するとPET含有プラスチック製品を分解するプロセスに特に有用である。
【0007】
これに関して、本発明の目的は、(i)配列番号1に示される完全長アミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一率を有し、そして(ii)S256、T13、A15、S16、L17、E18、A19、S20、A21、S66、I68、W70、P73、R74、D86、D92、G136、A222、L223、G225、K226、K227、F245、A246、C247、N249、P250、N251、S252、V255、及びC263から選択された残基に相当する位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を有し、ここでの位置は、配列番号1に示されるアミノ酸配列への参照により番号が付与され、そして(iii)配列番号1のエステラーゼと比較して、増加したポリエステル分解活性及び/又は増加した熱安定性を示す、エステラーゼを提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、(i)配列番号1に示される完全長アミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一率を有し、そして(ii)S256、T13、A15、S16、L17、E18、A19、S20、A21、S66、I68、W70、P73、R74、D86、D92、G136、F175、S187、I192、A222、L223、I224、G225、K226、K227、T244、F245、A246、C247、E248、N249、P250、N251、S252、T253、V255、C263、G60、S161、S162、P184、G208、又はG209から選択された残基に相当する位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を有し、ここでの位置は、配列番号1に示されるアミノ酸配列への参照により番号が付与され、そして(iii)配列番号1のエステラーゼと比較して、増加したポリエステル分解活性及び/又は増加した熱安定性を示す、エステラーゼを提供することである。
【0009】
本発明の目的はまた、(i)配列番号1に示される完全長アミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一率を有し、(ii)S256C、S212I/W、N207C、S181N、S66T、T62M、N215D/M、Q93G/P、N220P/D、S187E、A14H、T172Q、又はK226Eからなる群より選択された少なくとも1つの置換を含有し、ここでの位置は、配列番号1に示されるアミノ酸配列への参照により番号が付与され、そして(iii)好ましくはS256C、S212I/W、N207C、S181N、S66T、T62M、N215D/M、又はQ93G/Pから選択された、配列番号1のエステラーゼと比較して、増加したポリエステル分解活性及び/又は増加した熱安定性を示す、エステラーゼを提供することでもある。
【0010】
好ましくは、本発明のエステラーゼは、S256における少なくとも1つの置換、好ましくはS256C、及び場合によりN207位における1つの置換、好ましくはN207Cを含む。より好ましくは、該エステラーゼはさらに、S212における少なくとも1つの置換、好ましくはS212I/Wを含む。
【0011】
好ましくは、前記エステラーゼはさらに、S134、D180、H211から選択された少なくとも1つのアミノ酸残基、好ましくはS134+D180+H211の組合せを含む。
【0012】
本発明の別の目的は、本発明のエステラーゼをコードしている核酸を提供することである。本発明はまた、該核酸を含んでいる発現カセット又は発現ベクター、及び、該核酸、該発現カセット又はベクターを含んでいる宿主細胞にも関する。
【0013】
本発明はまた、本発明のエステラーゼ、本発明の宿主細胞、又はその抽出物を含んでいる組成物も提供する。
【0014】
本発明のさらなる目的は、
(a)本発明に記載の宿主細胞を、エステラーゼをコードしている核酸を発現するに適した条件下で培養する工程、及び場合により、
(b)該エステラーゼを細胞培養液から回収する工程
を含む、本発明のエステラーゼを産生する方法を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、
(a)ポリエステルを、本発明に記載のエステラーゼ、又は本発明に記載の宿主細胞、又は本発明に記載の組成物と接触させる工程;及び場合により、
(b)モノマー及び/又はオリゴマーを回収する工程
を含む、該ポリエステルを分解する方法を提供することである。
【0016】
特に、本発明は、PETを、本発明の少なくとも1つのエステラーゼと接触させる工程、及び場合によりPETのモノマー及び/又はオリゴマーを回収する工程を含む、PETを分解する方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、以下の工程を含む、ポリエステル含有物質の少なくとも1つのポリエステルを分解する方法にも関する:
(a)ポリエステル含有物質を、本発明に記載のエステラーゼ又は宿主細胞と接触させ、それにより、ポリエステル含有物質の少なくとも1つのポリエステルを分解する工程;及び場合により
(b)前記の少なくとも1つのポリエステルのモノマー及び/又はオリゴマーを回収する工程。
【0018】
本発明はまた、PET又はPEG含有プラスチック製品を分解するための、本発明のエステラーゼの使用にも関する。
【0019】
本発明はまた、本発明のエステラーゼ又は宿主細胞又は組成物が含まれている、ポリエステル含有物質にも関する。
【0020】
本発明はまた、本発明に記載のエステラーゼ又は宿主細胞を含んでいる洗剤組成物、又は本発明のエステラーゼを含んでいる組成物にも関する。
【0021】
本発明の詳細な説明
定義
本開示は、以下の定義への参照により最善に理解されるだろう。
【0022】
本明細書における「ペプチド」、「ポリペプチド」、「タンパク質」、「酵素」という用語は、鎖を形成しているアミノ酸の数に関係なく、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸鎖を指す。アミノ酸は本明細書において、以下の命名法に従って、それらの一文字又は三文字の暗号によって示される:A:アラニン(Ala);C:システイン(Cys);D:アスパラギン酸(Asp);E:グルタミン酸(Glu);F:フェニルアラニン(Phe);G:グリシン(Gly);H:ヒスチジン(His);I:イソロイシン(Ile);K:リジン(Lys);L:ロイシン(Leu);M:メチオニン(Met);N:アスパラギン(Asn);P:プロリン(Pro);Q:グルタミン(Gln);R:アルギニン(Arg);S:セリン(Ser);T:トレオニン(Thr);V:バリン(Val);W:トリプトファン(Trp)及びY:チロシン(Tyr)。
【0023】
「エステラーゼ」という用語は、エステルから酸とアルコールへの加水分解を触媒する酵素命名法に従ってEC3.1.1.として分類されるクラスの加水分解酵素に属する酵素を指す。「クチナーゼ」又は「クチン加水分解酵素」という用語は、クチンと水からクチンモノマーへの化学生成反応を触媒することのできる、酵素命名法に従ってEC3.1.1.74として分類されるエステラーゼを指す。
【0024】
「野生型タンパク質」又は「親タンパク質」という用語は、天然に見られるような突然変異していない形のポリペプチドを指す。本発明の場合、親エステラーゼは、配列番号1に示されるようなアミノ酸配列を有するエステラーゼを指す。
【0025】
「突然変異体」及び「変異体」という用語は、配列番号1に由来し、そして1つ以上の(例えばいくつかの)位置に少なくとも1つの修飾又は改変、すなわち、置換、挿入、及び/又は欠失を含み、かつポリエステル分解活性を有している、ポリペプチドを指す。該変異体は、当技術分野において周知である様々な技術によって得られてもよい。特に、野生型タンパク質をコードしているDNA配列を改変させるための技術の例としては、部位特異的突然変異誘発、ランダムな突然変異誘発、及び合成オリゴヌクレオチド構築が挙げられるがこれらに限定されない。したがって、特定の位置に関連して本明細書において使用する「修飾」及び「改変」という用語は、この特定の位置におけるアミノ酸が、野生型タンパク質のこの特定の位置のアミノ酸と比較して修飾されていることを意味する。
【0026】
「置換」は、アミノ酸残基が、別のアミノ酸残基によって置換されていることを意味する。好ましくは、「置換」という用語は、アミノ酸残基を、天然に存在する標準20アミノ酸残基、稀に天然に存在するアミノ酸残基(例えばヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、アロヒドロキシリジン、6-N-メチルリジン、N-エチルグリシン、N-メチルグリシン、N-エチルアスパラギン、アロ-イソロイシン、N-メチルイソロイシン、N-メチルバリン、ピログルタミン、アミノ酪酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン)、及び、しばしば合成で作製される非天然アミノ酸残基(例えばシクロへキシル-アラニン)から選択された別のアミノ酸残基により置換することを指す。好ましくは、「置換」という用語は、アミノ酸残基を、天然に存在する標準20アミノ酸残基(G、P、A、V、L、I、M、C、F、Y、W、H、K、R、Q、N、E、D、S、及びT)から選択された別のアミノ酸残基により置換することを指す。「+」の記号は、置換の組合せを示す。本文書において、以下の用語は、置換を示すために使用される:L82Aは、親配列の82位のアミノ酸残基(ロイシン、L)が、アラニンN(A)によって置換されていることを示す。A121V/I/Mは、親配列の121位のアミノ酸残基(アラニン、A)が、以下のアミノ酸の1つによって置換されていることを示す:バリン(V)、イソロイシン(I)、又はメチオニン(M)。置換は、保存的置換であっても、非保存的な置換であってもよい。保存的置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン及びヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸及びアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミン、アスパラギン及びトレオニン)、疎水性アミノ酸(メチオニン、ロイシン、イソロイシン、システイン、及びバリン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン)、及び小さなアミノ酸(グリシン、アラニン及びセリン)の基内である。
【0027】
特記されない限り、本出願で開示された位置は、配列番号1に示されるアミノ酸配列への参照により番号が付与される。
【0028】
本明細書において使用する「配列同一率」又は「同一率」という用語は、2つのポリペプチド配列間で一致(同一アミノ酸残基)した数(又は比率%として表現される割合)を指す。配列同一率は、配列ギャップを最小限とつつ、重複及び同一率が最大限となるようにアラインさせて配列を比較することによって決定される。特に、配列同一率は、2つの配列の長さに応じて、多くの数学的なグローバル又はローカルアラインメントアルゴリズムの中のいずれかを使用して決定され得る。類似の長さの配列は好ましくは、配列を全長にわたり最適にアラインさせる、グローバルアラインメントアルゴリズム(例えば、Needleman及びWunschのアルゴリズム;Needleman and Wunsch, 1970)を使用してアラインさせ、一方、実質的に異なる長さの配列は好ましくは、ローカルアラインメントアルゴリズム(例えばSmith及びWatermanのアルゴリズム(Smith and Waterman, 1981)又はAltschulのアルゴリズム(Altschul et al., 1997; Altschul et al., 2005))を使用してアラインさせる。アミノ酸配列の同一率を決定する目的のアラインメントは、当技術分野の技能範囲内である様々な方法で、例えば、http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/又はhttp://www.ebi.ac.uk/Tools/emboss/などのインターネットウェブサイト上で利用可能な公共的に入手可能なコンピューターソフトウェアを使用して成し遂げられ得る。当業者は、比較される配列の全長にわたり最大のアラインメントを成し遂げるのに必要とされる任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。本明細書における目的のために、アミノ酸配列同一率の値%は、Needleman-Wunschアルゴリズムを使用して、2つの配列の最適なグローバルアラインメントを作り出す、ペアワイズ配列アラインメントプログラムEMBOSS Needleを使用して作成された数値を指し、ここでの全ての検索パラメーターは、デフォールト値に、すなわち、スコアリングマトリックス=BLOSUM62、ギャップオープン=10、ギャップ伸長=0.5、エンドギャップペナルティ=フォールス、エンドギャップオープン=10、及びエンドギャップ伸長=0.5に設定される。
【0029】
「ポリマー」は、その構造が、共有化学結合によって連結された複数のモノマー(反復ユニット)から構成される、化合物又は化合物の混合物を指す。本発明の脈絡において、ポリマーという用語は、一種類の反復ユニット(すなわちホモポリマー)又は異なる反復ユニットの混合物(すなわち、コポリマー又はヘテロポリマー)から構成される、天然又は合成のポリマーを含む。本発明によると、「オリゴマー」は、2から約20個のモノマーを含有している分子を指す。
【0030】
本発明の脈絡において、「ポリエステル含有物質」又は「ポリエステル含有製品」は、結晶形、半結晶形、又は完全に無定形の少なくとも1つのポリエステルを含んでいる、プラスチック製品などの製品を指す。特定の実施態様では、ポリエステル含有物質は、少なくとも1つのポリエステルと、おそらく他の物質又は添加剤、例えば可塑剤、鉱物又は有機充填剤とを含有している、少なくとも1つのプラスチック物質、例えばプラスチックシート、プラスチックチューブ、プラスチック棒、プラスチックプロファイル、プラスチック型、プラスチックフィルム、プラスチックの巨大な塊などから作製された任意の品目を指す。別の特定の実施態様では、ポリエステル含有物質は、プラスチック製品の作製に適した、溶解した又は固体の状態の、プラスチック化合物又はプラスチック配合物を指す。別の特定の実施態様では、ポリエステル含有物質は、少なくとも1つのポリエステルを含んでいる、織物、生地、又は繊維を指す。別の特定の実施態様では、ポリエステル含有物質は、少なくとも1つのポリエステルを含んでいる、プラスチック廃棄物又は繊維屑を指す。
【0031】
本発明の記載では、「ポリエステル(群)」という用語は、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタラート(PEIT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタラート(PBAT)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(エチレンアジペート)(PEA)、ポリエチレンナフタラート(PEN)、及びこれらのポリマーのブレンド/混合物を包含するが挙げられるがこれらに限定されない。
【0032】
新規エステラーゼ
本発明は、親エステラーゼと比較して、改善された活性及び/又は改善された熱安定性を有する新規エステラーゼを提供する。より特定すると、本発明者らは、工業的プロセスに使用するに特に適した新規酵素を設計した。本発明のエステラーゼは特に、ポリエステル、より特定するとPET(PET含有物質、特にPET含有プラスチック製品を含む)を分解するのに特に適している。特定の実施態様では、該エステラーゼは、増加した活性及び増加した熱安定性の両方を示す。
【0033】
それ故、本発明の目的は、配列番号1に示されるようなアミノ酸配列を有するエステラーゼと比較して、増加した活性を示す該エステラーゼを提供することである。
【0034】
特に、本発明者らは、基質とエステラーゼとの接触を促進して、ポリマーの吸着増加及び/又はこのポリマー上のエステラーゼの活性増加をもたらすために、有利には修飾されていてもよい、ポリマー基質と接触しようとする、配列番号1における特定のアミノ酸残基を、エステラーゼのX線結晶構造(すなわち折り畳まれた3次元構造)において同定した。
【0035】
本発明の脈絡では、「増加した活性」又は「増加した分解活性」という用語は、所与の温度における、配列番号1のエステラーゼの、ポリエステル分解能及び/又はポリエステル上への吸着能と比較して、同じ温度において、該エステラーゼの増加したポリエステルの分解能及び/又は同ポリエステル上への吸着能を示す。特に、本発明のエステラーゼは、増加したPET分解活性を有する。このような増加は、配列番号1のエステラーゼのPET分解活性よりも少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、又はそれ以上高くあり得る。特に、分解活性は、ポリエステルのモノマー及び/又はオリゴマーをもたらす脱重合活性であり、これをさらに回収し、場合により再使用することができる。
【0036】
エステラーゼの「分解活性」は、当技術分野においてそれ自体公知である方法に従って、当業者によって評価され得る。例えば、分解活性は、特定のポリマーの脱重合活動速度の測定、寒天プレート中に分散された固形ポリマー化合物を分解する速度の測定、又はリアクター中のポリマーの脱重合活動速度の測定によって評価され得る。特に、分解活性は、エステラーゼの「比分解活性」を測定することによって評価され得る。PETに対するエステラーゼの「比分解活性」は、初期の反応期間(すなわち最初の24時間)中、エステラーゼ1mgあたり1分間あたりに加水分解されたPETのμmol、又は1時間あたりに生成された等価なテレフタル酸(TA)のmgに相当し、これは加水分解反応曲線の直線部分から決定され、このような曲線は、最初の24時間中の様々な時点において行なわれた数回の試料採取によって設定される。別の例として、「分解活性」は、適切な温度、pH、及び緩衝液の条件下で、ポリマー又はポリマー含有プラスチック製品を分解酵素と接触させた場合に遊離された、オリゴマー及び/又はモノマーの速度及び/又は収量を一定期間の後に測定することによって評価され得る。
【0037】
基質上での酵素の吸着能は、当技術分野においてそれ自体公知の方法に従って、当業者によって評価され得る。例えば、基質上への酵素の吸着能は、酵素含有溶液から測定され得、ここでの酵素は、適切な条件下で基質と共に事前にインキュベートされている。
【0038】
本発明者らはまた、高温における、有利には40℃を超える、好ましくは50℃を超える温度における、対応するエステラーゼの安定性を改善するために(すなわち改善された熱安定性)、有利には修飾され得る、配列番号1における標的アミノ酸残基を同定した。
【0039】
それ故、本発明の目的は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するエステラーゼの熱安定性と比較して、増加した熱安定性を示す新規エステラーゼを提供することである。
【0040】
本発明の脈絡では、「増加した熱安定性」という用語は、配列番号1のエステラーゼと比較して、高温において、特に40℃~80℃の温度において、エステラーゼがその化学構造及び/又は物理構造の変化に耐える能力が増加していることを示す。特に、熱安定性は、エステラーゼの融点(Tm)の査定を通して評価され得る。本発明の脈絡において、「融点」は、考慮される酵素集団の半分が、折り畳まれていないか又は間違って折り畳まれている温度を指す。典型的には、本発明のエステラーゼは、配列番号1のエステラーゼのTmと比較して、約1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、10℃、又はそれ以上に上昇したTmを示す。特に、本発明のエステラーゼは、配列番号1のエステラーゼと比較して、40℃~80℃の温度で延長された半減期を有し得る。
【0041】
エステラーゼの融点(Tm)は、当技術分野においてそれ自体公知である方法に従って、当業者によって測定され得る。例えば、エステラーゼの熱変性温度の変化を定量し、これにより、そのTmを決定するために、DSF(示差走査型蛍光測定)が使用され得る。あるいは、Tmは、円二色性を使用したタンパク質の折り畳みの分析によって評価され得る。好ましくは、Tmは、実験部において公開されているような示差走査型蛍光測定又は円二色性を使用して測定される。本発明の脈絡では、Tmの比較は、同じ条件下(例えば、ポリエステルのpH、性質及び量など)で測定されるTmを用いて行なわれる。
【0042】
あるいは、熱安定性は、異なる温度でインキュベートした後にエステラーゼ活性及び/又はエステラーゼのポリエステル脱重合活性を測定し、親エステラーゼのエステラーゼ活性及び/又はポリエステル脱重合活性と比較することによって評価され得る。様々な温度で複数回のポリエステルの脱重合のアッセイを行なう能力も評価され得る。迅速かつ価値ある試験は、様々な温度でインキュベートした後に寒天プレート中に分散させた固形ポリエステル化合物をエステラーゼが分解する能力の、ハロー直径の測定による、評価からなり得る。
【0043】
本発明の目的は、(i)配列番号1に示される完全長アミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一率を有し、(ii)配列番号1のアミノ酸配列と比較して、S256、T13、A15、S16、L17、E18、A19、S20、A21、S66、I68、W70、P73、R74、D86、D92、G136、A222、L223、G225、K226、K227、F245、A246、C247、N249、P250、N251、S252、V255、C263、G60、S162、P184、又はG209からなる群より選択された残基に相当する位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を含有し、そして(iii)配列番号1のエステラーゼと比較して、増加したポリエステル分解活性及び/又は増加した熱安定性を示す、エステラーゼを提供することである。
【0044】
特定の実施態様では、前記エステラーゼは、S256、T13、A15、S16、L17、E18、A19、S20、A21、S66、I68、W70、P73、R74、D86、D92、G136、A222、L223、G225、K226、K227、F245、A246、C247、N249、P250、N251、S252、V255 C263、G60、S162、P184、又はG209から選択された残基に対応する位置において、1つのアミノ酸置換を有する、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する。
【0045】
特記されない限り、本出願に開示された位置は、配列番号1に示されるアミノ酸配列への参照によって番号が付与される。
【0046】
特に、本発明の目的はまた、(i)配列番号1に示される完全長アミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一率を有し、(ii)配列番号1のアミノ酸配列と比較して、S256、T13、A15、S16、L17、E18、A19、S20、A21、S66、I68、W70、P73、R74、D86、D92、G136、A222、L223、G225、K226、K227、F245、A246、C247、N249、P250、N251、S252、V255、及びC263からなる群より選択された残基に相当する位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を含有し、そして(iii)配列番号1のエステラーゼと比較して、増加したポリエステル分解活性及び/又は増加した熱安定性を示す、エステラーゼを提供することである。
【0047】
特記されない限り、本出願に開示された位置は、配列番号1に示されるアミノ酸配列への参照によって番号が付与される。
【0048】
本発明によると、標的アミノ酸(群)は、19個の他のアミノ酸のいずれか1つによって置換されてもよい。
【0049】
特定の実施態様では、前記エステラーゼは、S256、T13、A15、S16、L17、E18、A19、S20、A21、S66、I68、W70、P73、R74、D86、D92、G136、A222、L223、G225、K226、K227、F245、A246、C247、N249、P250、N251、S252、V255及びC263から選択された残基に対応する位置に1つのアミノ酸置換を有する、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する。
【0050】
1つの実施態様では、前記エステラーゼは、配列番号1に示される完全長アミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一率を有し、そしてS256、C247、及びC263から選択された残基に対応する位置に少なくとも1つの置換を含む。好ましい実施態様では、該エステラーゼは、S256位に少なくとも1つの置換を含む。好ましくは、該置換はS256Cである。
【0051】
1つの実施態様では、前記エステラーゼは、S66位に少なくとも1つの置換を含む。好ましくは、該置換はS66Tである。別の実施態様では、該エステラーゼは、K226位に、好ましくはK226Eから選択された、少なくとも1つの置換を含む。
【0052】
1つの実施態様では、前記エステラーゼはさらに、A14、Y61、T62、A63、R64、S67、K69、L91、Q93、S95、W133、M135、W159、S161、F175、C177、S181、I182、A183、S187、I192、G208、S212、C213、A214、N215、I224、T244、E248、T253、R254、T87、T90、P94、I142、I206、N207、S210、S216、G217、N218、S219、N220、Q221、G60、S162、P184、又はG209から選択された残基に対応する位置に少なくとも1つの置換又は置換の組合せを含み得る。例えば、該エステラーゼはさらに、A14、Y61、T62、A63、R64、S67、K69、L91、Q93、S95、W133、M135、W159、S161、F175、C177、S181、I182、A183、S187、I192、G208、S212、C213、A214、N215、I224、T244、E248、T253、又はR254から選択された残基に対応する位置に少なくとも1つの置換を含む。特に、該エステラーゼはさらに、A14T/S/R/H、Y61A/F、T62A/M、A63R、R64A/E、S67M、K69A/E/N、L91F、Q93A/G/Y/P、S95D/E、W133A/H/F、M135A、W159H/A、S161A/W/Q、F175I、C177A/S、S181T/N、I182A/V/F、A183I、S187Q/E、I192F、G208N、S212F/A/I/V/W、C213A/S、A214P、N215A/F/D/M、I224L、T244S、E248P/S、T253P/Y、又はR254A/Nから選択された少なくとも1つの置換を含む。
【0053】
1つの実施態様では、前記エステラーゼはさらに、T87、T90、P94、I142、I206、N207、S210、S216、G217、N218、S219、N220、又はQ221から選択された残基に対応する位置に少なくとも1つの置換を含み得る。特に、該エステラーゼはさらに、N220P/Dから選択された少なくとも1つの置換、好ましくはN220Pを含む。
【0054】
1つの実施態様では、前記エステラーゼはさらに、T62、Q93、F175、S181、S187、N207、S212、N215、又はN220から選択された、好ましくはT62、Q93、F175、S181、N207、S212、又はN215から選択された残基に対応する位置に少なくとも1つの置換を含む。好ましくは、該置換は、T62M、Q93G/P、F175I、S181N、S187E、N207C、S212I/W、N215D/M、又はN220P/Dから、より好ましくはT62M、Q93G/P、F175I、S181N、N207C、S212I/W、又はN215D/Mから選択される。好ましくは、該エステラーゼはさらに、少なくともN207Cの置換を含む。
【0055】
特定の実施態様では、前記エステラーゼは、配列番号1に示される完全長アミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一率、及び、N207+S256位に少なくとも1つの置換の組合せを有する。好ましくは、該組合せはN207C+S256Cである。特定の実施態様では、該エステラーゼは、N207C+S256Cの置換の組合せを有する、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する。1つの実施態様では、該エステラーゼは、N207C+S256Cの置換の組合せを有する、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を含む。有利には、該エステラーゼは、N207C+S256Cの組合せを含み、そして、配列番号1のエステラーゼと比較して増加した熱安定性及び増加した分解活性の両方を示す。
【0056】
特に、前記エステラーゼは、N207+S256位において少なくとも1つの置換の組合せ、及び、T62、S66、Q93、F175、S181、S187、S212、N215、又はN220から選択された、好ましくはQ93、S187、S212、又はN220から選択された、位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。特に該エステラーゼは、好ましくはN207C+S256Cの位置に少なくとも1つの置換の組合せ、及び、T62M、S66T、Q93G/P、F175I、S181N、S187E、S212I/W、N215D/M、又はN220P/Dから選択された、好ましくはQ93G/P、S187E、S212I/W、又はN220P/Dから選択された少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0057】
より好ましくは、前記エステラーゼは少なくとも、S212+N207+S256の位置に、好ましくはS212I/W+N207C+S256Cから選択された、置換の組合せを含む。
【0058】
1つの実施態様では、前記エステラーゼは、S212、N207、S256、F175、S181、S66、T62、N215、Q93、S187、又はN220から選択された位置に少なくとも4個の置換を含む。好ましくは、少なくとも4個の置換は、S212I/W、N207C、S256C、F175I、S181N、S66T、T62M、N215D/M、Q93G/P、S187E、及びN220P/Dから選択される。特に、該エステラーゼは、S212、N207、S256、F175、S181、S66、T62、N215、又はQ93から選択された位置に少なくとも4個の置換を含む。好ましくは、少なくとも4個の置換は、S212I/W、N207C、S256C、F175I、S181N、S66T、T62M、N215D/M、又はQ93G/Pから選択される。
【0059】
特定の実施態様では、前記エステラーゼは、S212+N207+S256の位置に少なくとも1つの置換の組合せ、及び、F175、S181、S66、T62、N215、Q93、S187又はN220から選択された、好ましくはF175、S181、S66、T62、N215又はQ93から選択された位置に1つ又は2つの置換を含む。特に、該エステラーゼは、S212I/W+N207C+S256Cの位置に少なくとも1つの置換の組合せ、及び、F175I、S181N、S66T、T62M、N215D/M、Q93G/P、S187E又はN220P/Dから選択された、好ましくはF175I、S181N、S66T、T62M、N215D/M又はQ93G/Pから選択された1つ又は2つの置換を含む。
【0060】
1つの実施態様では、前記エステラーゼは、S212+N207+S256の位置における少なくとも1つの置換の組合せ、及び、F175、S181、S66、T62、N215、Q93、S187又はN220から選択された位置に、好ましくはF175、S181、S66、T62、N215又はQ93から選択された位置に少なくとも1つの置換を含む。好ましくは、該エステラーゼは、S212I/W+N207C+S256Cの位置に少なくとも1つの置換の組合せ、及び、F175I、S181N、S66T、T62M、N215D/M、Q93G/P、S187E又はN220P/Dから選択された、好ましくはF175I、S181N、S66T、T62M、N215D/M又はQ93G/Pから選択された少なくとも1つの置換を含む。特に、該エステラーゼは、S212+N207+S256+Q93の位置に少なくとも1つの置換の組合せを含む。好ましくは、該エステラーゼは、S212I/W+N207C+S256C+Q93G/Pから選択された少なくとも1つの置換の組合せを含む。有利には、該エステラーゼは、S212I/W+N207C+S256C+Q93Gの組合せを含み、そして、配列番号1のエステラーゼと比較して増加した熱安定性及び増加した分解活性の両方を示す。
【0061】
特定の実施態様では、前記エステラーゼは、S212+N207+S256+Q93+N220+S187から選択された、好ましくはS212I+N207C+S256C+Q93G+N220P+S187Eから選択された置換の組合せを含む。
【0062】
特に、前記エステラーゼは、N207C+S256C、S212I/W+N207C+S256C+Q93G、又はS212I+N207C+S256C+Q93G+N220P+S187Eから選択された少なくとも1つの置換の組合せを含む。1つの実施態様では、該エステラーゼは、N207C+S256C又はS212I/W+N207C+S256C+Q93Gから選択された置換の組合せを有する、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を含み、かつ、配列番号1のエステラーゼと比較して増加した分解活性及び増加した熱安定性の両方を示す。
【0063】
特定の実施態様では、前記エステラーゼは、A7、R8、N11、T25、V26、R27、G38、P45、T51、W71、R97、S98、S99、R106、S110、N112、G113、T114、S115、G121、A126、M128、M131、G132、A145、N146、L150、A154、P155、Q156、A157、D160、T163、F165、V168、L173、S188、L190、P191、A200、K201、Q202、T240、S243、T260、N262、V108、G113、T114、S115、G121、K122、T125、A126、G129、G139、S140、A154、P155、D160、T172、N186、S188、A200、E205、S264から選択された残基に対応する位置に少なくとも1つの置換を含み得る。好ましくは、該置換は、A7Q/E、R8E、N11A、T25P/S、V26Y、R27E/Q、G38R、T51E/P、W71L、R97A、S98C、S99R、R106G/S、S110T、N112S、G113N/R、G121N/T、A126S、M128L、A145R、L150I、P155A/G/S、Q156L、D160H/F/I/L/V/S、T163K、V168L、S188H、L190D、P191T、A200P、K201R、Q202E、T240R、S243T、T260V、N262A、V108L、G113N、T114D、S115P、G121T、K122W、T125P、A126S、G129A、G139A、S140T、A154I、P155A、D160H、T172Q/V、N186R、S188H、A200P、E205M、又はS264Pから選択される。
【0064】
1つの実施態様では、本発明のエステラーゼは、親エステラーゼのように、S134、D180、H211から選択された少なくとも1つのアミノ酸残基を含み、すなわち、本発明のエステラーゼは、これらの位置の中の1つ、2つ、又は全てにおいて修飾されていない。好ましくは、該エステラーゼは、親エステラーゼのように、S134+D180+H211の組合せを含む。
【0065】
あるいは、又はそれに加えて、前記エステラーゼは、親エステラーゼのように、C177、C213、C247、又はC263から選択された少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。好ましくは、該エステラーゼは、親エステラーゼのように、C247+C263の組合せを含む。好ましくは、該エステラーゼは、親エステラーゼのように、C247+C263又はC177+C213の少なくとも1つの組合せを含み、さらにより好ましくは、該エステラーゼは、C247+C263+C177+C213を含む。特に、該エステラーゼは、親エステラーゼのように、S134+D180+H211+C247+C263+C177+C213を含む。
【0066】
本発明の別の目的は、(i)配列番号1に示される完全長アミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一率を有し、そして(ii)配列番号1のアミノ酸配列と比較して、S256、T13、A15、S16、L17、E18、A19、S20、A21、S66、I68、W70、P73、R74、D86、D92、G136、F175、S187、I192、A222、L223、I224、G225、K226、K227、T244、F245、A246、C247、E248、N249、P250、N251、S252、T253、V255、C263、G60、S161、S162、P184、G208及びG209からなる群より選択された残基に対応する位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を含有し、そして(iii)配列番号1のエステラーゼと比較して、増加したポリエステル分解活性及び/又は増加した熱安定性を示す、エステラーゼを提供することである。特に、該エステラーゼは、S256、T13、A15、S16、L17、E18、A19、S20、A21、S66、I68、W70、P73、R74、D86、D92、G136、F175、S187、I192、A222、L223、I224、G225、K226、K227、T244、F245、A246、C247、E248、N249、P250、N251、S252、T253、V255及びC263からなる群より選択された残基に対応する位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を含有している。
【0067】
特定の実施態様では、前記エステラーゼは、S256、T13、A15、S16、L17、E18、A19、S20、A21、S66、I68、W70、P73、R74、D86、D92、G136、F175、S187、I192、A222、L223、I224、G225、K226、K227、T244、F245、A246、C247、E248、N249、P250、N251、S252、T253、V255、C263、G60、S161、S162、P184、G208又はG209から選択された残基に対応する位置に1つのアミノ酸置換を有する、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する。特に、該エステラーゼは、S256、T13、A15、S16、L17、E18、A19、S20、A21、S66、I68、W70、P73、R74、D86、D92、G136、F175、S187、I192、A222、L223、I224、G225、K226、K227、T244、F245、A246、C247、E248、N249、P250、N251、S252、T253、V255及びC263からなる群より選択された残基に対応する位置に1つのアミノ酸置換を有する。1つの実施態様では、該エステラーゼは、S256、T13、A15、S16、L17、E18、A19、S20、A21、S66、I68、W70、P73、R74、D86、D92、G136、F175、S187、I192、A222、L223、I224、G225、K226、K227、T244、F245、A246、C247、E248、N249、P250、N251、S252、T253、V255及びC263から選択された残基に対応する位置に1つのアミノ酸置換を有する、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を含む。
【0068】
特定の実施態様では、前記エステラーゼは、配列番号1のアミノ酸配列と比較して、S256、T13、A15、S16、L17、E18、A19、S20、A21、S66、I68、W70、P73、R74、D86、D92、G136、A222、L223、G225、K226、K227、F245、A246、C247、N249、P250、N251、S252、V255、C263、G60、S162、P184又はG209からなる群より選択された残基に対応する位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、そして(iii)配列番号1のエステラーゼと比較して、増加したポリエステル分解活性及び/又は増加した熱安定性を示す。特に、該エステラーゼは、S256、T13、A15、S16、L17、E18、A19、S20、A21、S66、I68、W70、P73、R74、D86、D92、G136、A222、L223、G225、K226、K227、F245、A246、C247、N249、P250、N251、S252、V255又はC263からなる群より選択された残基に対応する位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を含有している。
【0069】
特定の実施態様では、前記エステラーゼは、S256、T13、A15、S16、L17、E18、A19、S20、A21、S66、I68、W70、P73、R74、D86、D92、G136、A222、L223、G225、K226、K227、F245、A246、C247、N249、P250、N251、S252、V255、C263、G60、S162、P184又はG209から選択された残基に対応する位置に1つのアミノ酸置換を有する、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する。特に、該エステラーゼは、S256、T13、A15、S16、L17、E18、A19、S20、A21、S66、I68、W70、P73、R74、D86、D92、G136、A222、L223、G225、K226、K227、F245、A246、C247、N249、P250、N251、S252、V255又はC263からなる群より選択された残基に対応する位置に1つのアミノ酸置換を有する。
【0070】
本発明の1つの実施態様では、前記エステラーゼは、配列番号1に示される完全長アミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一率を有し、かつ、S256、T13、A15、S16、L17、E18、A19、S20、A21、S66、I68、W70、P73、R74、D86、D92、G136、F175、S187、I192、A222、L223、I224、G225、K226、K227、T244、F245、A246、C247、E248、N249、P250、N251、S252、T253、V255及びC263から選択された残基に対応する位置に少なくとも1つの置換を含む。特定の実施態様では、該エステラーゼは、C247及びC263から選択された残基に対応する位置に少なくとも1つの置換を含む。
【0071】
1つの実施態様では、前記エステラーゼは、配列番号1に示される完全長アミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一率を有し、かつ、G60、S161、S162、P184、G208又はG209から選択された残基に対応する位置に少なくとも1つの置換を含む。
【0072】
1つの実施態様では、前記エステラーゼは、配列番号1に示される完全長アミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一率を有し、かつ、S256位に少なくとも1つの置換を含む。好ましくは、該置換はS256Cである。
【0073】
別の好ましい実施態様では、前記エステラーゼは、配列番号1に示される完全長アミノ酸配列に対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一率を有し、かつ、S66及びF175から選択された位置に少なくとも1つの置換を含む。好ましくは、該置換は、S66T及びF175Iから選択される。別の特定の実施態様では、該エステラーゼは、S187位に、好ましくはS187Eから選択された、少なくとも1つの置換を含む。別の実施態様では、該エステラーゼは、K226位に、好ましくはK226Eから選択された少なくとも1つの置換を含む。
【0074】
特定の実施態様では、前記エステラーゼはさらに、A14、Y61、T62、A63、R64、S67、K69、L91、Q93、S95、W133、M135、W159、C177、S181、I182、A183、S212、C213、A214、N215、R254、T87、T90、P94、I142、I206、N207、S210、S216、G217、N218、S219、N220、又はQ221から選択された残基に対応する位置に少なくとも1つの置換を含み得る。
【0075】
1つの実施態様では、前記エステラーゼは、A14、Y61、T62、A63、R64、S67、K69、L91、Q93、S95、W133、M135、W159、C177、S181、I182、A183、S212、C213、A214、N215又はR254から選択された残基に対応する位置に少なくとも1つの置換を含む。特に、該エステラーゼは、A14H/T/S/R、Y61A/F、T62A/M、A63R、R64A/E、S67M、K69A/E/N、L91F、Q93A/G/Y/P、S95D/E、W133A/H/F、M135A、W159H/A、C177A/S、S181T/N、I182A/V/F、A183I、S212F/A/V/I/W、C213A/S、A214P、N215A/F/D/M、又はR254Aから選択された少なくとも1つの置換を含む。
【0076】
1つの実施態様では、前記エステラーゼは、T87、T90、P94、I142、I206、N207、S210、S216、G217、N218、S219、N220、又はQ221から選択された残基に対応する位置に少なくとも1つの置換を含む。特に、該エステラーゼはさらに、N220P/D、好ましくはN220Pから選択された少なくとも1つの置換を含む。
【0077】
1つの実施態様では、前記エステラーゼは、T62、Q93、S181、N207、S212、N215又はN220から選択された、好ましくはT62、Q93、S181、N207、S212又はN215から選択された残基に対応する位置に少なくとも1つの置換を含む。好ましくは、該置換は、T62M、Q93G/P、S181N、N207C、S212I/W、N215D/M、又はN220P/Dから、より好ましくはT62M、Q93G/P、S181N、N207C、S212I/W、又はN215D/Mから選択される。好ましくは、該エステラーゼは、N207Cの置換を含む。
【0078】
特定の実施態様では、前記エステラーゼは、N207+S256の位置に少なくとも1つの置換の組合せを含む。好ましくは、該組合せは、N207C+S256Cである。好ましい実施態様では、該エステラーゼは、N207C+S256Cの組合せを含み、かつ、配列番号1のエステラーゼと比較して増加した熱安定性及び増加した分解活性を示す。特定の実施態様では、該エステラーゼは、N207+S256の位置における少なくとも1つの置換の組合せ、及び、S212、F175、S181、S66、T62、N215、Q93、S187又はN220から選択された、好ましくはQ93、S187、S212又はN220から選択された位置における少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。特に、該エステラーゼは、好ましくはN207C+S256Cの位置における少なくとも1つの置換の組合せ、及び、S212I/W、F175I、S181N、S66T、T62M、N215D/M、Q93G/P、S187E、又はN220P/Dから選択された、好ましくはQ93G/P、S187E、S212I/W、又はN220P/Dから選択された少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0079】
より好ましくは、前記エステラーゼは少なくとも、S212+N207+S256の位置に、好ましくはS212I/W+N207C+S256Cから選択された置換の組合せを含む。
【0080】
1つの実施態様では、前記エステラーゼは、S212、N207、S256、F175、S181、S66、T62、N215、Q93、S187又はN220から選択された、好ましくはS212、N207、S256、F175、S181、S66、T62、N215又はQ93から選択された位置に少なくとも4個の置換を含む。好ましくは、該エステラーゼは、S212I/W、N207C、S256C、F175I、S181N、S66T、T62M、N215D/M、Q93G/P、S187E、又はN220Pから選択された、好ましくはS212I/W、N207C、S256C、F175I、S181N、S66T、T62M、N215D/M、又はQ93G/Pから選択された少なくとも4個の置換を含む。
【0081】
1つの実施態様では、前記エステラーゼは、S212+N207+S256の位置に少なくとも1つの置換の組合せ、及び、F175、S181、S66、T62、N215、Q93、S187又はN220から選択された位置に、好ましくはF175、S181、S66、T62、N215又はQ93から選択された位置に少なくとも1つの置換を含む。好ましくは、該エステラーゼは、S212I/W+N207C+S256Cの位置における少なくとも1つの置換の組合せ、及び、F175I、S181N、S66T、T62M、N215D/M、Q93G/P、S187E、又はN220P/Dから選択された、好ましくはF175I、S181N、S66T、T62M、N215D/M、又はQ93G/Pから選択された少なくとも1つの置換を含む。特定の実施態様では、該エステラーゼは、S212+N207+S256の位置における少なくとも1つの置換の組合せ、及び、F175、S181、S66、T62、N215、Q93、S187、又はN220から選択された位置に、好ましくはF175、S181、S66、T62、N215、又はQ93から選択された位置における1つ又は2つの置換を含む。好ましくは、該エステラーゼは、S212I/W+N207C+S256Cの位置における少なくとも1つの置換の組合せ、及び、F175I、S181N、S66T、T62M、N215D/M、Q93G/P、S187E、又はN220P/Dから選択された、好ましくはF175I、S181N、S66T、T62M、N215D/M、又はQ93G/Pから選択された1つ又は2つの置換を含む。特に該エステラーゼは、S212+N207+S256+Q93の位置に少なくとも1つの置換の組合せを含む。好ましくは、該エステラーゼは、S212I/W+N207C+S256C+Q93G/Pから選択された少なくとも1つの置換の組合せを含む。有利には、該エステラーゼは、S212I/W+N207C+S256C+Q93Gの組合せを含み、かつ、配列番号1のエステラーゼと比較して増加した熱安定性及び増加した分解活性の両方を示す。
【0082】
特定の実施態様では、前記エステラーゼは、S212+N207+S256+Q93+N220+S187の位置における、好ましくはS212I+N207C+S256C+Q93G+N220P+S187Eから選択された、置換の組合せを含む。特定の実施態様では、該エステラーゼはさらに、R8、P45、W71、R97、S98、T114、S115、M131、G132、N146、A154、P155、Q156、A157、F165、又はL173から選択された残基に対応する位置に少なくとも1つの置換を含み得る。好ましくは、該置換は、R8E、W71L、R97A、S98C、P155A/G/S、Q156L、又はT260Vから選択される。別の特定の実施態様では、該エステラーゼはさらに、A7Q、R27E、R106G、又はD160H/F/I/L/Vから選択された少なくとも1つの置換を含む。
【0083】
代替的に又はそれに加えて、前記エステラーゼはさらに、V108、G113、T114、S115、G121、K122、T125、A126、G129、G139、S140、A154、P155、D160、T172、N186、S188、A200、E205、S264から選択された、好ましくはV108L、G113N、T114D、S115P、G121T、K122W、T125P、A126S、G129A、G139A、S140T、A154I、P155A、D160H、T172Q、T172V、N186R、S188H、A200P、E205M、又はS264Pから選択された残基に対応する位置に少なくとも1つの置換を含む。
【0084】
1つの実施態様では、本発明のエステラーゼは、親エステラーゼのように、S134、D180、H211から選択された少なくとも1つのアミノ酸残基を含み、すなわち、本発明のエステラーゼは、これらの位置の1つ、2つ、又は全てにおいて修飾されていない。好ましくは、該エステラーゼは、親エステラーゼのように、S134+D180+H211の組合せを含む。
【0085】
1つの実施態様では、前記エステラーゼは、親エステラーゼのように、C177、C213、C247又はC263から選択された少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。好ましくは、該エステラーゼは、親エステラーゼのように、C247+C263の組合せを含む。好ましくは、該エステラーゼは、親エステラーゼのように、C247+C263又はC177+C213の少なくとも1つの組合せを含み、さらにより好ましくは該エステラーゼは、C247+C263+C177+C213を含む。特に、該エステラーゼは、親エステラーゼのように、S134+D180+H211+C247+C263+C177+C213を含む。
【0086】
本発明の目的はまた、(i)配列番号1に示される完全長アミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一率を有し、(ii)S256C、S212I/W、N207C、S181N、S66T、T62M、N215D/M、Q93G/P、N220P/D、S187E、A14H、T172Q、又はK226Eからなる群より選択された少なくとも1つの置換を含有し、かつ(iii)配列番号1のエステラーゼと比較して増加した分解活性及び/又は増加した熱安定性を有する、エステラーゼを提供することである。
【0087】
好ましくは、前記エステラーゼは、S256C、S212I/W、N207C、S181N、S66T、T62M、N215D/M、又はQ93G/Pからなる群より選択された少なくとも1つの置換を含有している。
【0088】
特に、前記エステラーゼは、N207C+S256C、S212I/W、S181N、S66T、T62M、N215D/M、N220P、S187E、Q93G/P、A14H、T172Q、又はK226Eからなる群より選択された少なくとも1つの置換又は置換の組合せを含有している。特に、該エステラーゼは、N207C+S256C、S212I/W、S181N、S66T、T62M、N215D/M、又はQ93G/Pからなる群より選択された少なくとも1つの置換又は置換の組合せを含有している。
【0089】
特定の実施態様では、前記エステラーゼはさらに、F175Iの置換を含む。
【0090】
特定の実施態様では、前記エステラーゼは、配列番号1に示される完全長アミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一率、及び、少なくともN207C+S256Cの置換の組合せを有する。特に、該エステラーゼは少なくとも、N207C+S256Cの置換の組合せ、及び、T62M、S66T、Q93G/P、F175I、S181N、S187E、S212I/W、N215D/M、N220P/D、A14H、T172Q、又はK226Eから選択された、好ましくはT62M、S66T、Q93G/P、F175I、S181N、S212I/W、又はN215D/Mから選択された、より好ましくはQ93G/P、S187E、S212I/W、又はN220P/Dから選択された、さらにより好ましくはS212I/Wである、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。より好ましくは、該エステラーゼは少なくとも、S212I/W+N207C+S256Cから選択された置換の組合せを含む。
【0091】
1つの実施態様では、前記エステラーゼは、S212I/W、N207C、S256C、F175I、S181N、S66T、T62M、N215D/M、Q93G/P、S187E、及びN220P/Dから選択された、好ましくはS212I/W、N207C、S256C、F175I、S181N、S66T、T62M、N215D/M、又はQ93G/Pから選択された位置において少なくとも4個の置換を含む。
【0092】
特定の実施態様では、前記エステラーゼは、S212I/W+N207C+S256Cの少なくとも1つの置換の組合せ、及び、F175I、S181N、S66T、T62M、N215D/M、Q93G/P、S187E、N220P/D、A14H、T172Q、又はK226Eから選択された、好ましくはF175I、S181N、S66T、T62M、N215D/M、又はQ93G/Pから選択された位置における少なくとも1つの置換を含む。特定の実施態様では、該エステラーゼは、S212I/W+N207C+S256Cの少なくとも1つの置換の組合せ、及び、F175I、S181N、S66T、T62M、N215D/M、Q93G/P、S187E、又はN220P/Dから選択された、好ましくはF175I、S181N、S66T、T62M、N215D/M、又はQ93G/Pから選択された1つ若しくは2つの置換を含む。有利には、該エステラーゼは、S212I/W+N207C+S256C+Q93Gの組合せを含み、かつ、配列番号1のエステラーゼと比較して増加した熱安定性及び増加した分解活性の両方を示す。特定の実施態様では、該エステラーゼは、S212+N207+S256+Q93+N220+S187から選択された、好ましくはS212I+N207C+S256C+Q93G+N220P+S187Eから選択された置換の組合せを含む。
【0093】
好ましくは、前記エステラーゼは、S212I/W、N207C、S256C、S181N、S66T、T62M、N215D/M、N220P、S187E、Q93G/P、N207C+S256C、S212I/W+N207C+S256C、S212I/W+N207C+S256C+Q93G/P、又はS212I+N207C+S256C+Q93G+N220P+S187Eからなる群より選択された少なくとも1つの置換若しくは置換の組合せを含む。
【0094】
特に、前記エステラーゼは、N207C+S256C、S212I/W+N207C+S256C+Q93G、又はS212I+N207C+S256C+Q93G+N220P+S187Eから選択された少なくとも1つの置換の組合せを含む。1つの実施態様では、該エステラーゼは、N207C+S256C、又はS212I/W+N207C+S256C+Q93Gから選択された置換の組合せを含む、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を含み、かつ、配列番号1のエステラーゼと比較して増加した分解活性及び増加した熱安定性の両方を示す。
【0095】
1つの実施態様では、前記エステラーゼはさらに、親エステラーゼのように、S134、D180、H211から選択された少なくとも1つのアミノ酸残基を含み、すなわち、本発明のエステラーゼは、これらの位置の1つ、2つ、又は全てにおいて修飾されていない。好ましくは、該エステラーゼは、親エステラーゼのように、S134+D180+H211の組合せを含む。
【0096】
別の実施態様では、前記エステラーゼは、親エステラーゼのように、C177、C213、C247、又はC263から選択された少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。好ましくは、該エステラーゼは、親エステラーゼのように、C247+C263の組合せを含む。好ましくは、該エステラーゼは、親エステラーゼのように、C247+C263又はC177+C213の少なくとも1つの組合せを含み、さらにより好ましくは該エステラーゼは、C247+C263+C177+C213を含む。特に、該エステラーゼは、親プロテアーゼのように、S134+D180+H211+C247+C263+C177+C213を含む。
【0097】
1つの実施態様では、前記エステラーゼはさらに、T13、A14、A15、S16、L17、E18、A19、S20、A21、G60、Y61、A63、R64、S67、I68、K69、W70、P73、R74、D86、T87、T90、L91、D92、P94、S95、W133、M135、G136、I142、W159、S161、S162、C177、I182、A183、P184、S187、I192、I206、G208、G209、S210、C213、A214、S216、G217、N218、S219、N220、Q221、A222、L223、I224、G225、K226、K227、T244、F245、A246、C247、E248、N249、P250、N251、S252、T253、R254、V255、又はC263から選択された、好ましくはT13、A15、S16、L17、E18、A19、S20、A21、G60、Y61、A63、R64、S67、I68、K69、W70、P73、R74、D86、T87、T90、L91、D92、P94、S95、W133、M135、G136、I142、W159、S161、S162、C177、I182、A183、P184、S187、I192、I206、G208、G209、S210、C213、A214、S216、G217、N218、S219、N220、Q221、A222、L223、I224、G225、K227、T244、F245、A246、C247、E248、N249、P250、N251、S252、T253、R254、V255、又はC263から選択された残基に対応する位置に少なくとも1つの置換若しくは置換の組合せを含む。
【0098】
特定の実施態様では、前記エステラーゼはさらに、A7、R8、N11、T25、V26、R27、G38、P45、T51、W71、R97、S98、S99、R106、S110、N112、G113、T114、S115、G121、A126、M128、M131、G132、A145、N146、L150、A154、P155、Q156、A157、D160、T163、F165、V168、L173、S188 L190、P191、A200、K201、Q202、T240、S243、T260、N262、 V108、G113、T114、S115、G121、K122、T125、A126、G129、G139、S140、A154、P155、D160、T172、N186、S188、A200、E205、S264から選択された残基に対応する位置に少なくとも1つの置換を含み得る。好ましくは、該置換は、A7Q/E、R8E、N11A、T25P/S、V26Y、R27E/Q、G38R、T51E/P、W71L、R97A、S98C、S99R、R106G/S、S110T、N112S、G113R、G121N、A126S、M128L、A145R、L150I、P155A/G/S、Q156L、D160H/F/I/L/V/S、T163K、V168L、S188H、L190D、P191T、A200P、K201R、Q202E、T240R、S243T、T260V、N262A、V108L、G113N、T114D、S115P、G121T、K122W、T125P、A126S、G129A、G139A、S140T、A154I、P155A、D160H、T172Q/V、N186R、S188H、A200P、E205M、又はS264Pから選択される。
【0099】
本発明の別の目的は、(i)配列番号1に示される完全長アミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一率を有し、(ii)A14、Y61、T62、A63、R64、S67、K69、L91、Q93、S95、W133、M135、W159、S161、F175、C177、S181、I182、A183、S187、I192、G208、S212、C213、A214、N215、I224、T244、E248、T253、及びR254からなる群より選択された残基に対応する位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を含有し、ここでの置換は、A14T/S/R、Y61A/F、T62A、A63R、R64A/E、S67M、K69E/N、L91F、Q93A、S95D/E、W133A/H/F、M135A、W159H/A、S161A、F175I、C177A/S、S181T、I182A/V/F、A183I、S187Q、I192F、G208N、S212F/A/V、C213A/S、A214P、N215A/F、I224L、T244S、E248S、T253Y、又はR254A/Nとは異なる。
【0100】
特定の実施態様では、前記エステラーゼはさらに、S256、T13、A15、S16、L17、E18、A19、S20、A21、S66、I68、W70、P73、R74、D86、D92、G136、A222、L223、G225、K226、K227、F245、A246、C247、N249、P250、N251、S252、V255、C263、G60、S162、P184、又はG209から選択された位置に1つの置換を含む。
【0101】
特定の実施態様では、前記エステラーゼはさらに、T87、T90、P94、I142、I206、N207、S210、S216、G217、N218、S219、N220、又はQ221から選択された位置に少なくとも1つの置換を含み得る。
【0102】
特定の実施態様では、前記エステラーゼは、親エステラーゼのように、S134、D180、H211から選択された少なくとも1つのアミノ酸残基を含み、すなわち、本発明のエステラーゼは、これらの位置の1つ、2つ、又は全てにおいて修飾されていない。好ましくは、該エステラーゼは、親エステラーゼのように、S134+D180+H211の組合せを含む。
【0103】
別の実施態様では、前記エステラーゼは、親エステラーゼのように、C177、C213、C247、又はC263から選択された少なくとも1つのアミノ酸残基を含み、すなわち、本発明のエステラーゼは、これらの位置の1つ、2つ、又は全てにおいて修飾されていない。好ましくは、該エステラーゼは、親エステラーゼのように、C247+C263の組合せを含む。
【0104】
変異体のポリエステル分解活性
本発明の目的は、エステラーゼ活性を有する新規酵素を提供することである。特定の実施態様では、本発明の酵素は、クチナーゼ活性を示す。
【0105】
特定の実施態様では、本発明のエステラーゼは、ポリエステル分解活性、好ましくはポリエチレンテレフタラート(PET)分解活性、及び/又はポリブチレンアジペートテレフタラート(PBAT)分解活性、及び/又はポリカプロラクトン(PCL)分解活性、及び/又はポリブチレンスクシネート(PBS)活性、より好ましくはポリエチレンテレフタラート(PET)分解活性、及び/又はポリブチレンアジペートテレフタラート(PBAT)分解活性を有する。さらにより好ましくは、本発明のエステラーゼは、ポリエチレンテレフタラート(PET)分解活性を有する。
【0106】
有利には、本発明のエステラーゼは、20℃~90℃、好ましくは40℃~80℃、より好ましくは35℃~55℃の少なくとも温度範囲で、ポリエステル分解活性を示す。特定の実施態様では、該エステラーゼは、40℃でポリエステル分解活性を示す。特定の実施態様では、該エステラーゼは、50℃でポリエステル分解活性を示す。特定の実施態様では、ポリエステル分解活性は、55℃~65℃の温度で依然として測定可能である。別の実施態様では、ポリエステル分解活性は、40℃~50℃の温度で依然として測定可能である。別の実施態様では、ポリエステル分解活性は、60℃~80℃の温度で依然として測定可能である。別の実施態様では、ポリエステル分解活性は、65℃~75℃の温度で依然として測定可能である。
【0107】
特定の実施態様では、本発明のエステラーゼは、配列番号1のエステラーゼと比較して、所与の温度で、より特定すると40℃~80℃、より好ましくは40℃~60℃、40℃~50℃、60℃~80℃、65℃~75℃の温度で、増加したポリエステル分解活性を有する。
【0108】
特定の実施態様では、前記エステラーゼは、50℃において、配列番号1のエステラーゼのポリエステル分解活性よりも少なくとも5%高い、好ましくは少なくとも10%、20%、50%、100%又はそれ以上高いポリエステル分解活性を有する。
【0109】
別の特定の実施態様では、前記エステラーゼは、40℃において、配列番号1のエステラーゼのポリエステル分解活性よりも少なくとも5%高い、好ましくは少なくとも10%、20%、50%、100%又はそれ以上高いポリエステル分解活性を有する。
【0110】
特定の実施態様では、本発明のエステラーゼは、少なくとも5~11のpH範囲、好ましくは6~9のpH範囲、より好ましくは6.5~9のpH範囲、さらにより好ましくは6.5~8のpH範囲で測定可能なエステラーゼ活性を示す。
【0111】
核酸、発現カセット、ベクター、宿主細胞
本発明のさらなる目的は、上記に定義されているようなエステラーゼをコードしている核酸を提供することである。
【0112】
本明細書において使用する「核酸」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」及び「ヌクレオチド配列」という用語は、デオキシリボヌクレオチド配列及び/又はリボヌクレオチド配列を指す。核酸は、DNA(cDNA又はガイドDNA)、RNA、又はその混合物であり得る。それは、一本鎖形、又は二本鎖形、又はその混合物であり得る。それは、組換え、人工、及び/又は合成起源であり得、そしてそれは、例えば修飾された結合、修飾されたプリン塩基若しくはピリミジン塩基、又は修飾された糖を含んでいる、修飾されたヌクレオチドを含んでいてもよい。本発明の核酸は、単離形であっても精製形であってもよく、当技術分野においてそれ自体公知である技術、例えばcDNAライブラリーのクローニング及び発現、増幅、酵素による合成、又は組換え技術などによって作製され、単離され、及び/又は操作され得る。核酸はまた、インビトロで、例えば、Belousov (1997) Nucleic Acids Res. 25:3440-3444に記載のような、周知の化学合成技術によって合成されてもよい。
【0113】
本発明はまた、上記に定義されているようなエステラーゼをコードしている核酸に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸も包含する。好ましくは、このようなストリンジェントな条件は、2×SSC/0.1%SDS中、約42℃でハイブリダイゼーションフィルターを約2.5時間インキュベーション、続いて、1×SSC/0.1%SDS中、65℃で15分間フィルターを4回洗浄することを含む。使用されるプロトコールは、Sambrook et al.(分子クローニング:実験マニュアル、コールドスプリングハーバー出版、コールドスプリングハーバーN.Y.(1988))及びAusubel(Current Protocols in Molecular Biology (1989))のような参考書に記載されている。
【0114】
本発明はまた、本発明のエステラーゼをコードしている核酸も包含し、ここでの該核酸の配列又は該配列の一部は少なくとも、最適化されたコドン使用頻度を使用して工学操作されている。
【0115】
あるいは、本発明に記載の核酸は、本発明に記載のエステラーゼの配列から推測され得、コドン使用頻度は、核酸が転写されるであろう宿主細胞に応じて適応させ得る。これらの工程は、当業者に周知である方法に従って行なわれ得、これらの中のいくつかは、参考マニュアルのSambrook et al.(Sambrook et al., 2001)に記載されている。
【0116】
本発明の核酸はさらに、選択された宿主細胞又は宿主細胞系におけるポリペプチドの発現を引き起こすか又は調節するために使用され得る、追加のヌクレオチド配列、例えば調節領域、すなわち、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、終結因子、シグナルペプチドなどを含んでいてもよい。
【0117】
本発明はさらに、適切な宿主細胞における本発明に記載の核酸の発現を指令する、1つ以上の制御配列に作動可能に連結された、本発明に記載の核酸を含んでいる、発現カセットに関する。
【0118】
本明細書において使用する「発現」という表現は、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾、及び分泌を含むがこれらに限定されない、ポリペプチドの産生に関与する任意の工程を指す。
【0119】
「発現カセット」という用語は、コード領域(すなわち、本発明の核酸)と、作動可能に連結された調節配列(すなわち、1つ以上の制御配列を含んでいる)とを含んでいる核酸構築物を示す。
【0120】
典型的には、発現カセットは、制御配列、例えば転写プロモーター及び/又は転写終結因子に作動可能に連結された、本発明に記載の核酸を含むか又はからなる。制御配列は、本発明のエステラーゼをコードしている核酸の発現のための、宿主細胞又はインビトロでの発現系によって認識される、プロモーターを含み得る。該プロモーターは、酵素の発現を媒介する転写制御配列を含有している。該プロモーターは、突然変異型プロモーター、切断短縮型プロモーター、及びハイブリッド型プロモーターを含む、宿主細胞において転写活性を示す任意のポリヌクレオチドであり得、これは、宿主細胞と同種又は異種のいずれかである細胞外又は細胞内のポリペプチドをコードしている遺伝子から得ることができる。制御配列はまた、転写を終結するために宿主細胞によって認識される、転写終結因子であってもよい。終結因子は、エステラーゼをコードしている核酸の3’末端に作動可能に連結されている。宿主細胞で機能する任意の終結因子が、本発明において使用され得る。典型的には、発現カセットは、転写プロモーターと転写終結因子に作動可能に連結された本発明に記載の核酸を含むか又はからなる。
【0121】
本発明はまた、上記に定義されているような核酸又は発現カセットを含んでいるベクターにも関する。
【0122】
本明細書において使用する「ベクター」又は「発現ベクター」という用語は、組換え遺伝子物質を宿主細胞内に導入するためのビヒクルとして使用される、本発明の発現カセットを含む、DNA分子又はRNA分子を指す。主要なタイプのベクターは、プラスミド、バクテリオファージ、ウイルス、コスミド、及び人工染色体である。ベクターそれ自体は一般的には、挿入断片(異種核酸配列、すなわち導入遺伝子)と、ベクターの「骨格」としての役目を果たすより大きな配列からなる、DNA配列である。遺伝子情報を宿主に導入するベクターの目的は、典型的には、挿入断片を単離し、複製し、標的細胞において発現させることである。発現ベクター(発現構築物)と呼ばれるベクターは、標的細胞内での異種配列の発現に特に適応され、一般的には、ポリペプチドをコードしている異種配列の発現を駆動するプロモーター配列を有する。一般的には、発現ベクターに存在する調節配列は、転写プロモーター、リボソーム結合部位、終結因子、及び場合により本発明のオペレーターを含む。
【0123】
好ましくは、発現ベクターはまた、宿主細胞内における自律複製のための複製起点、選択マーカー、少数の有用な制限酵素部位、及び高いコピー数の能力を含有している。発現ベクターの例は、クローニングベクター、修飾されたクローニングベクター、特別に設計されたプラスミド及びウイルスである。様々な宿主において適切なレベルのポリペプチドの発現を与える発現ベクターは、当技術分野において周知である。ベクターの選択は典型的には、ベクターを導入しようとする宿主細胞とベクターの適合性に依存するだろう。好ましくは、発現ベクターは、鎖状又は環状の二本鎖DNA分子である。
【0124】
本発明の別の目的は、上記されているような核酸、発現カセット、又はベクターを含んでいる宿主細胞を提供することである。したがって、本発明は、宿主細胞を形質転換するための、トランスフェクトするための、又は形質導入するための、本発明に記載の核酸、発現カセット、又はベクターの使用に関する。ベクターの選択は典型的には、それが導入されなければならない、宿主細胞とベクターの適合性に依存するだろう。
【0125】
本発明によると、宿主細胞は、一過性に又は安定的に、形質転換、トランスフェクト、又は形質導入され得る。本発明の発現カセット若しくはベクターを宿主細胞に導入することにより、カセット若しくはベクターは、染色体への組込み体として、又は自己複製する染色体外のベクターとして維持される。「宿主細胞」という用語はまた、複製中に起こる突然変異に因り、親宿主細胞とは同一ではない、親宿主細胞の任意の子孫も包含する。該宿主細胞は、本発明の変異体の産生に有用な任意の細胞、例えば原核細胞又は真核細胞であり得る。原核宿主細胞は、任意のグラム陽性菌又はグラム陰性菌であり得る。該宿主細胞はまた、真核細胞、例えば酵母、真菌、哺乳動物、昆虫、又は植物細胞であってもよい。特定の実施態様では、該宿主細胞は、大腸菌(エシェリヒア・コリ)(Escherichia coli)、桿菌、ストレプトマイセス(Streptomyces)、トリコデルマ(Trichoderma)、アスペルギルス(Aspergillus)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、ピキア(Pichia)、ビブリオ(Vibrio)、又はヤロウィア(Yarrowia)の群から選択される。
【0126】
本発明に記載の核酸、発現カセット、又は発現ベクターは、当業者には公知である任意の方法、例えば、電気穿孔法、コンジュゲーション、形質導入、コンピテント細胞の形質転換、プロトプラスト形質転換、プロトプラスト融合、微粒子銃「遺伝子銃」による形質転換、PEGにより媒介される形質転換、脂質により補助される形質転換又はトランスフェクション、化学物質に媒介されるトランスフェクション、酢酸リチウムにより媒介される形質転換、リポソームにより媒介される形質転換によって宿主細胞に導入され得る。
【0127】
場合により、1コピー数を超える本発明の核酸、カセット、又はベクターを、宿主細胞に挿入して、変異体の産生を増加させ得る。
【0128】
特定の実施態様では、宿主細胞は組換え微生物である。本発明は実際に、ポリエステル含有物質を分解する能力の向上した、微生物の工学操作を可能とする。例えば、本発明の配列を使用して、ポリエステルを分解できることがすでに知られている野生型の真菌株又は細菌株を補完して、株の能力を改善及び/又は高めてもよい。
【0129】
エステラーゼの産生
本発明の別の目的は、エステラーゼをコードしている核酸を発現させる工程、及び場合により該エステラーゼを回収する工程を含む、本発明のエステラーゼを産生する方法を提供することである。
【0130】
特に、本発明は、(a)本発明の核酸、カセット、又はベクターを、インビトロ発現系と接触させる工程;及び(b)産生されたエステラーゼを回収する工程を含む、本発明のエステラーゼをインビトロで産生する方法に関する。インビトロでの発現系は、当業者には周知であり、市販されている。
【0131】
好ましくは、産生法は、
(a)核酸の発現に適した条件下で、本発明のエステラーゼをコードしている核酸を含む宿主細胞を培養する工程;及び場合により
(b)該エステラーゼを細胞培養液から回収する工程
を含む。
【0132】
有利には、前記宿主細胞は、組換え桿菌、組換えE.coli、組換えアスペルギルス、組換えトリコデルマ、組換えストレプトマイセス、組換えサッカロマイセス、組換えピキア、組換えビブリオ、又は組換えヤロウィアである。
【0133】
前記宿主細胞は、当技術分野において公知である方法を使用して、ポリペプチドの産生に適した栄養培地中で培養される。例えば、該細胞は、振盪フラスコでの培養、あるいは、適切な培地中、酵素の発現及び/又は単離を可能とする条件下で行なわれる実験室用又は工業用の発酵槽中の小規模又は大規模な発酵(連続、バッチ、フェッドバッチ、又は固相状態での発酵を含む)によって培養され得る。培養は、市販の業者からの適切な栄養培地中で行なわれるか、又は、(例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログにおいて)公表されている組成によって調製される。
【0134】
前記エステラーゼが栄養培地に分泌される場合、該エステラーゼは、培養上清から直接回収することができる。逆に、該エステラーゼは、細胞溶解液から又は細胞透過化後に回収されてもよい。該エステラーゼは、当技術分野において公知の任意の方法を使用して回収されてもよい。例えば、該エステラーゼは、栄養培地から、収集、遠心分離、ろ過、抽出、噴霧乾燥、蒸発、又は沈降を含むがこれらに限定されない、慣用的な手順によって回収してもよい。場合により、該エステラーゼを、クロマトグラフィー(例えばイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、クロマトフォーカシングクロマトグラフィー、及びサイズ排除クロマトグラフィー)、電気泳動の手技(例えば分取等電点電気泳動)、溶解度差(例えば硫酸アンモニウムによる沈降)、SDS-PAGE、又は抽出を含むがこれらに限定されない、当技術分野において公知である様々な手順によって部分的に又は完全に精製することにより、実質的に純粋なポリペプチドを得ることができる。
【0135】
前記エステラーゼを、そのままで、精製形で、単独で又は追加の酵素と組み合わせてのいずれかで使用することにより、ポリエステル(群)及び/又はポリエステル含有物質、例えばポリエステル含有プラスチック製品の分解及び/又は再利用に関与する酵素反応を触媒することができる。該エステラーゼは、可溶形であっても、又は固相上にあってもよい。特に、それは細胞膜若しくは脂質小胞に結合していても、又は、例えばビーズ、カラム、プレートなどの形状の、ガラス、プラスチック、ポリマー、フィルター、膜などの、合成支持体に結合していてもよい。
【0136】
組成
本発明のさらなる目的は、本発明のエステラーゼ又は宿主細胞又はその抽出物を含んでいる組成物を提供することである。本発明の脈絡における「組成物」という用語は、本発明のエステラーゼ又は宿主細胞を含んでいる、任意の種類の組成物を包含する。
【0137】
本発明の組成物は、該組成物の全重量に基づいて、0.1重量%~99.9重量%、好ましくは0.1重量%~50重量%、より好ましくは0.1重量%~30重量%、さらにより好ましくは0.1重量%~5重量%のエステラーゼを含み得る。あるいは、該組成物は、5~10重量%の本発明のエステラーゼを含み得る。
【0138】
前記組成物は、液体であっても、又は乾燥していてもよく、例えば、粉末の形態であり得る。いくつかの実施態様では、該組成物は凍結乾燥物である。
【0139】
前記組成物はさらに、賦形剤及び/又は試薬などを含んでいてもよい。適切な賦形剤は、生化学に一般的に使用される緩衝剤、pH調整剤、保存剤、例えば安息香酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、又はアスコルビン酸ナトリウム、保存剤、保護剤、又は安定化剤、例えばデンプン、デキストリン、アラビアゴム、塩、糖、例えばソルビトール、トレハロース、又はラクトース、グリセロール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、捕捉剤、例えばEDTA、還元剤、アミノ酸、担体、例えば溶媒又は水性溶液などを包含する。本発明の組成物は、エステラーゼを1つ又はいくつかの賦形剤と混合することによって得ることができる。
【0140】
特定の実施態様では、前記組成物は、該組成物の全重量に基づいて、0.1重量%~99.9重量%、好ましくは50重量%~99.9重量%、より好ましくは70重量%~99.9重量%、さらにより好ましくは95重量%~99.9重量%の賦形剤(群)を含む。あるいは、該組成物は、90重量%~95重量%の賦形剤(群)を含み得る。
【0141】
特定の実施態様では、前記組成物はさらに、酵素活性を示す追加のポリペプチド(群)を含んでいてもよい。本発明のエステラーゼの量は、例えば、分解するポリエステルの性質及び/又は該組成物に含有されている追加の酵素/ポリペプチドに応じて、当業者によって容易に適応させられるだろう。
【0142】
特定の実施態様では、本発明のエステラーゼは、1つ又はいくつかの賦形剤、特に、ポリペプチドを安定化させることができるか又は分解から保護することのできる賦形剤と一緒に水性媒体中に可溶化される。例えば、本発明のエステラーゼは、水中に、最終的には追加の成分、例えばグリセロール、ソルビトール、デキストリン、デンプン、グリコール、例えばプロパンジオール、塩などと一緒に可溶化されてもよい。その後、結果として得られた混合物を乾燥させて、粉末を得ることができる。このような混合物を乾燥させるための方法は当業者には周知であり、これには、凍結乾燥、真空凍結乾燥、噴霧乾燥、超臨界乾燥、ダウンドラフト蒸発、薄層蒸発、遠心分離による蒸発、コンベア乾燥、流動層乾燥、円筒乾燥、又はその任意の組合せが挙げられるがこれらに限定されない。
【0143】
特定の実施態様では、前記組成物は、粉末形下であり、エステラーゼと安定化量/可溶化量のグリセロール、ソルビトール、又はデキストリン、例えばマルトデキストリン及び/又はシクロデキストリン、デンプン、グリコール、例えばプロパンジオール、及び/又は塩を含む。
【0144】
特定の実施態様では、本発明の組成物は、本発明のエステラーゼを発現している少なくとも1つの組換え細胞、又はその抽出物を含む。「細胞の抽出物」は、細胞上清、細胞片、細胞壁、DNA抽出物、酵素、若しくは酵素調製物などの、細胞から得られた任意の画分、又は、生細胞を実質的に含まない化学的処理、物理的処理及び/又は酵素的処理によって細胞から誘導された任意の調製物を示す。好ましい抽出物は、酵素的に活性な抽出物である。本発明の組成物は、本発明の1つ又はいくつかの組換え細胞又はその抽出物、及び場合により1つ又はいくつかの追加の細胞を含み得る。
【0145】
1つの実施態様では、前記組成物は、本発明のエステラーゼを発現及び分泌している、組換え微生物の培養培地からなるか又は含む。特定の実施態様では、該組成物は、このような凍結乾燥させた培養培地を含む。
【0146】
エステラーゼの使用
本発明のさらなる目的は、有酸素条件又は無酸素条件で、ポリエステル又はポリエステル含有物質を分解及び/又は再利用するために、本発明のエステラーゼを使用する方法を提供することである。本発明のエステラーゼは、PET及びPET含有物質を分解するのに特に有用である。
【0147】
それ故、本発明の目的は、ポリエステルの酵素的分解のために、本発明のエステラーゼ、又は対応する組換え細胞又はその抽出物、又は組成物を使用することである。
【0148】
特定の実施態様では、前記エステラーゼによって標的化されるポリエステルは、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタラート(PEIT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタラート(PBAT)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(エチレンアジペート)(PEA)、ポリエチレンナフタラート(PEN)、及びこれらの物質のブレンド/混合物から選択され、好ましくはポリエチレンテレフタラートである。
【0149】
好ましい実施態様では、前記ポリエステルはPETであり、少なくともモノマー(例えばモノエチレングリコール又はテレフタル酸)及び/又はオリゴマー(例えばメチル-2-ヒドロキシエチルテレフタラート(MHET)、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)、1-(2-ヒドロキシエチル)4-メチルテレフタラート(HEMT)、及びジメチルテレフタラート(DMT))が回収される。
【0150】
本発明の目的はまた、ポリエステル含有物質の少なくとも1つのポリエステルの酵素的分解のために、本発明のエステラーゼ、又は対応する組換え細胞若しくはその抽出物、又は組成物を使用することである。
【0151】
本発明の別の目的は、ポリエステル含有物質の少なくとも1つのポリエステルを分解するための方法を提供することであり、ここでポリエステル含有物質を、本発明のエステラーゼ又は宿主細胞又はその抽出物又は組成物と接触させ、これにより、ポリエステル含有物質の少なくとも1つのポリエステルを分解する。
【0152】
有利には、ポリエステル(群)は、モノマー及び/又はオリゴマーまで脱重合される。
【0153】
特に、本発明は、PET又はPET含有物質を分解するための方法を提供し、ここで、PET含有物質を、本発明のエステラーゼ又は宿主細胞又は組成物と接触させ、これによりPETを分解する。
【0154】
1つの実施態様では、少なくとも1つのポリエステルは、再重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーに分解され、これは有利には、再利用されるために回収されてもよい。回収されたモノマー/オリゴマーは、再利用(例えば再重合ポリエステル)又はメタン化のために使用され得る。特定の実施態様では、少なくとも1つのポリエステルはPETであり、モノエチレングリコール、テレフタル酸、メチル-2-ヒドロキシエチルテレフタラート(MHET)、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)、1-(2-ヒドロキシエチル)4-メチルテレフタラート(HEMT)、及び/又はジメチルテレフタラート(DMT)が回収される。
【0155】
1つの実施態様では、ポリエステル含有物質のポリエステル(群)は、完全に分解される。
【0156】
ポリエステル含有物質を分解するのに必要とされる時間は、ポリエステル含有物質それ自体(すなわち、ポリエステル含有物質の性質及び起源、その組成、形状など)、使用されるエステラーゼの種類及び量、並びに、様々なプロセスパラメーター(すなわち温度、
pH、追加の薬剤など)に応じて変更されてもよい。当業者は、ポリエステル含有物質及び想定される分解時間にプロセスパラメーターを容易に適応させ得る。
【0157】
有利には、分解プロセスは、20℃~90℃、好ましくは40℃~80℃、より好ましくは40℃~50℃の温度で実施される。特定の実施態様では、分解プロセスは、40℃で行なわれる。別の特定の実施態様では、分解プロセスは、50℃で行なわれる。より一般的には、温度は、エステラーゼが不活化される(すなわち、その至適温度におけるその活性と比較して80%超の活性を消失)及び/又は組換え微生物がエステラーゼをもはや合成しない温度に相当する不活性化温度より低く維持される。特に、温度は、標的化ポリエステルのガラス転移温度(Tg)より低く維持される。
【0158】
有利には、前記プロセスは、連続流動プロセスで、エステラーゼを数回使用することのできる及び/又は再利用することのできる温度で行なわれる。
【0159】
有利には、前記分解プロセスは、pH5~11、好ましくはpH6~9、より好ましくはpH6.5~9、さらにより好ましくはpH6.5~8で行なわれる。
【0160】
特定の実施態様では、ポリエステル含有物質をエステラーゼと接触させる前に、その構造を物理的に変化させて、ポリエステルとエステラーゼの接触面を増やすために、前処理してもよい。
【0161】
本発明の別の目的は、ポリエステル含有物質を、本発明のエステラーゼ、又は対応する組換え細胞若しくはその抽出物、又は組成物に曝す工程、並びに場合により、モノマー及び/又はオリゴマーを回収する工程を含む、ポリエステル含有物質からモノマー及び/又はオリゴマーを生成する方法を提供することである。
【0162】
脱重合から得られたモノマー及び/又はオリゴマーは、逐次又は連続的に回収され得る。一種類のモノマー及び/又はオリゴマーあるいは数種類の異なるモノマー及び/又はオリゴマーが、開始ポリエステル含有物質に応じて回収され得る。
【0163】
本発明の方法は、モノエチレングリコール及びテレフタル酸から選択されたモノマー、及び/又は、メチル-2-ヒドロキシエチルテレフタラート(MHET)、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)、1-(2-ヒドロキシエチル)4-メチルテレフタラート(HEMT)、及びジメチルテレフタラート(DMT)から選択された
オリゴマーを、PET及び/又はPETを含んでいるプラスチック製品から生成するのに特に有用である。
【0164】
回収されたモノマー及び/又はオリゴマーは、全ての適した精製法を使用してさらに精製され得、再重合可能な形態で適切な状態に整えられ得る。精製法の例としては、剥離工程、水溶液による分離、蒸気による選択的凝縮、ろ過、及びバイオプロセス後の培地の濃縮、分離、蒸留、真空蒸発、抽出、電気透析、吸着、イオン交換、沈降、結晶化、濃縮、及び酸添加による脱水及び沈降、ナノろ過、酸触媒による処理、半連続モード蒸留、又は連続モード蒸留、溶媒による抽出、蒸発濃縮、蒸発結晶化、液液抽出、水素添加、共沸蒸留プロセス、吸着、カラムクロマトグラフィー、単純な真空蒸留及びマイクロろ過(これらを組み合わせて又は組み合わせずに)が挙げられる。
【0165】
回収された再重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーは、例えば、ポリエステルを合成するために再使用されてもよい。有利には、同じ性質のポリエステルが再重合される。しかしながら、回収されたモノマー及び/又はオリゴマーを、他のモノマー及び/又はオリゴマーと混合して、例えば新規コポリマーを合成することが可能である。あるいは、関心対象の新規化合物を生成するために、回収されたモノマーを化学物質中間体として使用してもよい。
【0166】
本発明はまた、ポリエステル含有物質を、本発明のエステラーゼ、又は対応する組換え細胞若しくはその抽出物、又は組成物に曝す工程を含む、ポリエステル含有物質の表面の加水分解法又は表面の官能基化法にも関する。本発明の方法は、ポリエステル物質の親水性又は吸水性を増加させるのに特に有用である。このような増加した親水性は、織物の生産、エレクトロニクス、及び生体医学への適用において特に興味深くあり得る。
【0167】
本発明のさらなる目的は、ポリエステル含有物質を提供することであり、ここでは本発明のエステラーゼ及び/又は該エステラーゼを発現及び分泌する組換え微生物が含まれている。一例として、本発明のエステラーゼを含む、このようなポリエステル含有物質を調製するためのプロセスは、特許出願の国際公開公報第2013/093355号、国際公開公報第2016/198650号、国際公開公報第2016/198652号、国際公開公報第2019/043145号及び国際公開公報第2019/043134号に開示されている。
【0168】
したがって、本発明の目的は、本発明のエステラーゼ及び/又は組換え細胞及び/又はその組成物若しくは抽出物及び少なくともPETを含有している、ポリエステル含有物質を提供することである。1つの実施態様によると、本発明は、PETとPET分解活性を有する本発明のエステラーゼとを含んでいるプラスチック製品を提供する。
【0169】
したがって、本発明の別の目的は、本発明のエステラーゼ及び/又は組換え細胞及び/又はその組成物若しくは抽出物及び少なくともPBATを含有している、ポリエステル含有物質を提供することである。1つの実施態様によると、本発明は、PBATとPBAT分解活性を有する本発明のエステラーゼとを含んでいるプラスチック製品を提供する。
【0170】
したがって、本発明の別の目的は、本発明のエステラーゼ及び/又は組換え細胞及び/又はその組成物若しくは抽出物及び少なくともPBSを含有している、ポリエステル含有物質を提供することである。1つの実施態様によると、本発明は、PBSとPBS分解活性を有する本発明のエステラーゼとを含んでいるプラスチック製品を提供する。
【0171】
したがって、本発明の別の目的は、本発明のエステラーゼ及び/又は組換え細胞及び/又はその組成物若しくは抽出物及び少なくともPCLを含有している、ポリエステル含有物質を提供することである。1つの実施態様によると、本発明は、PCLとPCL分解活性を有する本発明のエステラーゼとを含んでいるプラスチック製品を提供する。
【0172】
古典的には、本発明のエステラーゼは、洗剤、食品、動物の食餌、製紙、織物、及び製薬への適用に使用され得る。より特定すると、本発明のエステラーゼは、洗剤組成物の一成分として使用されてもよい。洗剤組成物としては、手洗い用又は洗濯機用の洗剤組成物、例えばシミの付いた生地の前処理に適した洗濯添加物組成物、及びリンス液の添加された柔軟剤組成物、一般家庭用硬質表面クリーニング作業に使用するための洗剤組成物、手洗い又は食器洗浄機での作業用の洗剤組成物が挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施態様では、本発明のエステラーゼは、洗剤の添加物として使用されてもよい。したがって、本発明は、本発明のエステラーゼを含んでいる洗剤組成物を提供する。特に、本発明のエステラーゼは、織物のクリーニング中の毛玉及び灰色化作用を低減させるために、洗剤の添加剤として使用され得る。
【0173】
本発明はまた、動物の食餌に本発明のエステラーゼを使用するための方法、並びに、本発明のエステラーゼを含んでいる食餌組成物及び食餌添加物にも関する。「食餌」及び「食餌組成物」という用語は、動物によって摂取されるのに適した又はそれを目的とした、任意の化合物、調製物、混合物、又は組成物を指す。別の特定の実施態様では、本発明のエステラーゼは、タンパク質を加水分解するために、及びペプチドを含んでいる加水分解物を生成するために使用される。このような加水分解物は、食餌組成物又は食餌添加物として使用され得る。
【0174】
本発明のさらなる目的は、製紙産業において本発明のエステラーゼを使用するための方法を提供することである。より特定すると、本発明のエステラーゼは、抄紙機の紙パルプ及び水パイプラインから粘着性異物を除去するために使用され得る。
【0175】
実施例
実施例1-エステラーゼの構築、発現、及び精製
構築
本発明に記載のエステラーゼは、プラスミド構築物pET21b-IsPETase-His又はpET26b-IsPETase-Hisを使用して作製された。これらのプラスミドは、NdeIとXhoIの制限酵素部位の間にある、E.coliでの発現のために最適化された、配列番号1のエステラーゼをコードしている遺伝子のクローニングからなる。発現されたタンパク質を細菌周辺質へと指向させる、PelBリーダー配列が、いくつかの変異体(V2、V3及びV4)について配列番号1の上流(1位のメチオニンの後)に付加された。エステラーゼ変異体を作製するために、2つの部位特異的突然変異誘発キットが業者の推奨に従って使用された:アジレント社のQuikChange II部位特異的突然変異誘発キット及びQuikChange Lightning Multi Site-Directed(サンタクララ、カリフォルニア州、米国)。
【0176】
エステラーゼの発現及び精製
Stellar(商標)株(クロンテック社、カリフォルニア州、米国)及びE.coliTuner(商標)株(DE3)(メルクミリポア社、ギュイアンクール、フランス)又はE.coli BL21株(DE3)(ニューイングランドバイオラボラトリーズ社、エヴリー、フランス)が、50mLのLBミラー培地又はZYM自己誘導性培地中でのクローニング及び組み換え発現を実施するために成功裡に使用された(Studier et al., 2005- Prot. Exp. Pur. 41, 207-234)。LBミラー培地中での誘導は、0.5mMのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG、ユーロメデックス社、ゾウフェルヴァイヤースハイム、フランス)を用いて16℃で実施された。培養は、アバンティJ-26XP遠心管(ベックマンコールター社、ブレア、米国)での遠心分離(8000rpm、10℃で20分間)によって停止した。細胞を、Talon緩衝液(20mMのトリスHCl、300mMのNaCl、pH8)20mLに懸濁した。その後、細胞懸濁液を、FB705超音波細胞破砕機(フィッシャーブランド社、イルキルシュ、フランス)によって、30%の振幅(2秒間オンにして1秒間オフにするサイクル)を用いて2分間超音波処理にかけた。その後、遠心分離工程を実現した:エッペンドルフ遠心管中で10℃で11000rpmで30分間。可溶性画分を収集し、アフィニティクロマトグラフィーにかけた。この精製工程は、Talon(登録商標)金属アフィニティ樹脂(クロンテック社、CA州、米国)を用いて完了させた。タンパク質の溶出は、イミダゾールの補充されたTalon緩衝液の工程を用いて行なわれた。精製されたタンパク質を、Talon緩衝液に対して透析し、その後、製造業者の説明書(ライフサイエンスバイオラッド社、フランス)に従ってバイオラッドタンパク質アッセイを使用して定量し、+4℃で保存した。
【0177】
実施例2-本発明のエステラーゼの分解活性の評価
エステラーゼの分解活性を決定し、配列番号1のエステラーゼの分解活性と比較した。
【0178】
比活性を評価するために複数の方法が使用された:
(1)PETの加水分解に基づいた、比活性及び最終収量、
(2)固体形の下のポリエステルの分解に基づいた活性、
(3)100mLを超えるリアクター中のPETの加水分解に基づいた活性。
【0179】
2.1.PETの加水分解に基づいた比活性及び最終収量
粉末形下の無定形PET(20%未満の結晶化度に到達するように国際公開公報第2017/198786号に従って調製)100mgを秤量し、100mLのガラス瓶に入れた。Talon緩衝液(20mMのトリスHCl、0.3MのNaCl、pH8)中0.02mg/mLで調製された、配列番号1のエステラーゼ(基準対照としての)又は本発明のエステラーゼを含んでいる、エステラーゼ調製物1mLを、ガラス瓶に入れた。最後に、0.1Mのリン酸カリウム緩衝液(pH8)49mLを加えた。
【0180】
各ガラス瓶を30℃、40℃、50℃、55℃、又は60℃で150rpmでMax Q4450インキュベーター(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、ウォルサム、MA州、米国)中でインキュベートすることによって脱重合を開始した。
【0181】
脱重合反応の初期速度(1時間あたりに生成された等価なテレフタル酸のmg)が、最初の72時間中の様々な時点で行なわれた試料採取によって決定され、超高性能液体クロマトグラフィー(UHPLC)によって分析された。必要であれば、試料を、0.1Mのリン酸カリウム緩衝液(pH8)で希釈した。その後、メタノール150μL及び6NのHCl 6.5μLを、試料又は希釈液150μLに加えた。混合し、0.45μmのシリンジフィルターでろ過した後、試料をUHPLCに載せて、テレフタル酸(TA)、MHET及びBHETの遊離をモニタリングした。使用されたクロマトグラフィーシステムは、ポンプモジュール、オートサンプラー、25℃の温度で自動調節されたカラムオーブン、及び240nmにおけるUV検出器を含む、Ultimate3000UHPLCシステム(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、ウォルサム、MA州、米国)であった。使用されたカラムは、Discovery(登録商標)HS C18 HPLCカラム(150×4.6mm、5μm、プレカラムを具備、Supelco社、ベルフォンテ、米国)であった。TA、MHET、及びBHETは、1mMのHSO中のMeOH(30%から90%)勾配を1mL/分で使用して分離された。注入量は、試料20μLであった。TA、MHET、及びBHETは、市販のTA及びBHETと社内で合成されたMHETから準備された標準曲線に従って、試料と同じ条件で測定された。PET加水分解の比活性(等価なテレフタル酸(mg)/時間/酵素1mg)は、加水分解反応曲線の直線部分で決定され、このような曲線は、最初の72時間中の様々な時点で行なわれた試料採取によって設定された。等価なTAは、測定されたTAと、測定されたMHETとBHETに含有されるTAの合計に相当する。
【0182】
2.2.固体形の下のポリエステルの分解に基づいた活性
酵素調製物 20μLを、PETを含有している寒天プレート中に作製されたウェルに沈着させた。寒天プレートの調製は、PET 500mgを、ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)中で可溶化し、この培地を水溶液 250mLに注ぐことによって実現した。140ミリバールで52℃でHFIPを蒸発させた後、溶液を、3%の寒天を含有している0.2Mのリン酸カリウム緩衝液(pH8)と体積比で混合した。混合物約30mLを使用して、各プレートを調製し、4℃で保存した。
【0183】
野生型エステラーゼ及び変異体によるポリエステル分解に因り形成されたハローの直径又は表面積が、30℃、40℃、50℃、55℃、又は60℃で2~24時間後に測定され比較された。
【0184】
2.3.リアクター中のPETの加水分解に基づいた活性
100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH8)80mL中に調製された0.69μmol~2.07μmolの精製エステラーゼを、ミニバイオバイオリアクター(アプリコンバイオテクノロジー社、デルフト、オランダ)500mL中で、無定形PET(20%未満の結晶化度に到達するように、国際公開公報第2017/198786号に従って調製)20gと混合した。30℃、40℃、50℃、55℃又は60℃での温度調節は、水浴への浸漬によって行なわれ、1つのマリンインペラーを使用して、250rpmの一定の撹拌を維持した。PETの脱重合アッセイのpHは、6NのNaOHによってpH8に調節され、my-Controlバイオコントローラーシステム(アプリコンバイオテクノロジー社、デルフト、オランダ)によって確認された。アッセイ中の塩基の消費量が記録され、これはPET脱重合アッセイの特徴付けのために使用され得る。
【0185】
PET脱重合アッセイの最終収量は、残留PET重量の決定によって、又は生成された等価なTAの決定によって、又は塩基の消費量を通してのいずれかで決定された。残留PETの重量決定は、反応終了時の12~15μmのグレード11の無灰ろ紙(Dutscher SAS社、ブリュマト、フランス)を通した反応容量のろ過、及びこのような残渣物の乾燥、その後の秤量によって評価された。生成された等価なTAの決定は、2.1に記載のUHPLC法を使用して具現し、加水分解率は、初期の試料に含有されるTAの総量に対する、所与の時点におけるモル濃度(TA+MHET+BHET)の比に基づいて計算された。PETの脱重合により酸モノマーが生じ、これはリアクター中のpHを維持することができるように塩基で中和されるだろう。生成された等価なTAの決定は、対応する塩基消費モル数を使用して計算され、加水分解率は、初期の試料に含有されるTAの総量に対する、所与の時点における等価なTAのモル濃度の比に基づいて計算された。
【0186】
70時間後の本発明のエステラーゼによるPETの脱重合収量は、以下の表1(40℃において)及び表2(50℃において)に示されている。89時間後の本発明のエステラーゼによるPETの脱重合収量は、以下の表3(40℃において)及び表4(50℃において)に示されている。全ての表は、基準(1に同化)として使用された配列番号1のエステラーゼによるPETの脱重合収量と比較して、変異体によるPETの脱重合収量の改善を示す。
【0187】
PETの脱重合収量は、実施例2.1に公開されているように測定される。
【0188】
【表1】
【0189】
【表2】
【0190】
【表3】
【0191】
【表4】
【0192】
実施例3-本発明のエステラーゼの熱安定性の評価
本発明のエステラーゼの熱安定性が決定され、配列番号1のエステラーゼの熱安定性と比較された。
【0193】
様々な方法を使用して、熱安定性を推定した:
(1)溶液中タンパク質の円二色性;
(2)所与の温度、時間、及び緩衝液の条件におけるタンパク質のインキュベーション後の残留エステラーゼ活性;
(3)所与の温度、時間、及び緩衝液の条件におけるタンパク質のインキュベーション後の残留ポリエステルの脱重合活性;
(4)所与の温度、時間、及び緩衝液の条件におけるタンパク質のインキュベーション後の、寒天プレートに分散させた固体ポリエステル化合物(例えばPET又はPBAT又は類似体)を分解する能力;
(5)所与の温度、緩衝液、タンパク質濃度、及びポリエステル濃度の条件における、複数回のポリエステルの脱重合アッセイを実施できる能力;
(6)示差走査熱量測定(DSF)。
【0194】
このような方法のプロトコールに関する詳細は以下に示されている。
【0195】
3.1 円二色性
配列番号1のエステラーゼの融点(Tm)(Tm=46.4℃)を本発明のエステラーゼのTmと比較するために、円二色性(CD)がJasco815機器(イーストン、米国)を用いて実施された。技術的にはタンパク質試料 400μLが、Talon緩衝液中0.5mg/mLで調製され、CDに使用された。280~190nmの1回目の走査を実現して、タンパク質の正しい折り畳みに相当するCDの2つの最大強度を決定した。その後、2回目の走査が、25℃~110℃で、このような最大強度に対応しかつ特定の曲線(シグモイドの3つのパラメーターy=a/(1+e^((x-x0)/b)))を与える波長で行なわれ、これはシグマプロットバージョン11.0ソフトウェアによって分析され、Tmは、x=x0の時に決定される。得られたTmは、所与のタンパク質の熱安定性を反映する。Tmが高ければ高いほど、変異体は高温でより安定となる。
【0196】
3.2 残留エステラーゼ活性
配列番号1のエステラーゼ又は本発明のエステラーゼの(Talon緩衝液中)40mg/Lの溶液1mLを、様々な温度(35、40、45、50、55、60、65、70、75、80及び90℃)で最大10日間インキュベートした。定期的に試料を採取し、0.1Mのリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)で1~500倍に希釈し、酪酸パラニトロフェノール(pNP-B)アッセイを実現した。試料20μLを、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)175μL、及び2-メチル-2-ブタノール中pNP-B溶液(40mM)5μLと混合した。酵素反応は、撹拌下で30℃で15分間行ない、405nmにおける吸光度を、マイクロプレート分光光度計(Versamax、モレキュラーディバイス社、サニーベール、CA州、米国)によって取得した。pNP-B加水分解活性(初期速度は、1分あたりのpNPBのμmolで表現される)は、加水分解曲線の直線部分における遊離されたパラニトロフェノールについての標準曲線を使用して決定された。
【0197】
3.3 残留ポリエステル脱重合活性
配列番号1のエステラーゼ及び本発明のエステラーゼの(Talon緩衝液中)40mg/Lの溶液 10mLを、様々な温度(35、40、45、50、55、60、65、70、75、80及び90℃)で1~30日間インキュベートした。定期的に試料 1mLを採取し、250~500μmで微粒子化された無定形PET(20%未満の結晶化度に到達するように国際公開公報第2017/198786号に従って調製)100mgと0.1Mのリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)49mLとを含有している瓶に移し、様々な温度(35、40、45、50、55、60、65、又は70℃)でインキュベートした。緩衝液150μLを定期的に試料採取した。必要であれば、試料を0.1Mのリン酸カリウム緩衝液(pH8)で希釈した。その後、メタノール 150μL及び6NのHCl 6.5μlを、試料又は希釈液150μLに加えた。混合し、0.45μmのシリンジフィルターでろ過した後、試料をUHPLCに載せ、テレフタル酸(TA)、MHET及びBHETの遊離をモニタリングした。使用されたクロマトグラフィーシステムは、ポンプモジュール、オートサンプラー、25℃の温度で自動調節されたカラムオーブン、及び240nmにおけるUV検出器を含む、Ultimate3000UHPLCシステム(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、ウォルサム、MA州、米国)であった。使用されたカラムは、Discovery(登録商標)HS C18 HPLCカラム(150×4.6mm、5μm、プレカラムを具備、Supelco社、ベルフォンテ、米国)であった。TA、MHET、及びBHETは、1mMのHSO中のMeOH(30%から90%)勾配を1mL/分で使用して分離された。注入量は、試料 20μLであった。TA、MHET、及びBHETは、市販のTA及びBHETと社内で合成されたMEHTから調製された標準曲線に従って、試料と同じ条件で測定された。PETの加水分解活性(1分間あたりに加水分解されたPETのμmol、又は、1時間あたりに生成された等価なTAのmg)は、加水分解反応曲線の直線部分で決定され、このような曲線は、最初の24時間中の様々な時点で行なわれた試料採取によって設定された。等価なTAは、測定されたTAと、測定されたMHETとBHETに含有されるTAの合計に相当する。
【0198】
3.4 固体形の下でのポリエステルの分解
配列番号1のエステラーゼ及び本発明のエステラーゼの(Talon緩衝液中)40mg/Lの溶液 1mLをそれぞれ、様々な温度(35、40、45、50、55、60、65、70、75、80及び90℃)で1~30日間インキュベートした。定期的に酵素調製物 20μLを、PETを含有している寒天プレートに作出されたウェルに沈着させた。PETを含有している寒天プレートの調製は、PET 500mgを、ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)中に可溶化し、この培地を水溶液 250mLに注ぐことによって実現された。140ミリバール下で52℃でHFIPを蒸発させた後、溶液を、3%の寒天を含有している0.2Mのリン酸カリウム緩衝液(pH8)と容積比で混合した。混合物約30mLを使用して、各オムニトレイを調製し、4℃で保存した。
【0199】
野生型エステラーゼ及び本発明の変異体によるポリエステル分解に因り形成されたハローの直径又は表面積が、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、又は70℃で2~24時間後に測定され比較された。所与の温度における酵素の半減期は、ハローの直径を2倍減少させるのに必要とされる時間に相当する。
【0200】
3.5 複数回のポリエステルの脱重合
連続回のポリエステルの脱重合アッセイを実施するエステラーゼの能力は、酵素リアクター中で評価された。ミニバイオ500バイオリアクター(アプリコンバイオテクノロジー社、デルフト、オランダ)は、無定形PET(20%未満の結晶化度に到達するように国際公開公報第2017/198786号に従って調製)3gと、白血球-エステラーゼ3mgを含有している10mMのリン酸カリウム緩衝液(pH8)100mLとを用いて開始された。撹拌は、マリンインペラーを使用して250rpmに設定された。バイオリアクターは、外水浴中への浸漬によって30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、又は70℃に温度調節された。pHは、3MのKOHの添加によって、8に調節された。様々なパラメーター(pH、温度、撹拌、塩基の添加)を、BioXpertソフトウェアバージョン2.95によりモニタリングした。無定形PET(20%未満の結晶化度に到達するように国際公開公報第2017/198786号に従って調製)1.8gを、20時間毎に加えた。反応培地500μLを定期的に試料採取した。
【0201】
TA、MHET及びBHETの量を、実施例2.3に記載のように、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定した。エチレングリコール(EG)の量は、65℃に温度調節されたアミネックスHPX-87Kカラム(バイオラッドラボラトリーズ社、ハーキュリーズ、カリフォルニア州、米国)を使用して決定された。溶出液は、0.6mL/分で5mMのKHPOであった。注入量は20μLであった。エチレングリコールは、屈折計を使用してモニタリングされた。
【0202】
加水分解率は、初期の試料に含有されるTAの総量に対する、所与の時点におけるモル濃度(TA+MHET+BHET)の比に基づいて、又は、初期の試料に含有されるEGの総量に対する、所与の時点におけるモル濃度(EG+MHET+2×BHET)の比に基づいて計算された。分解率は、1時間あたりに遊離された全TAのmgで、又は1時間あたりの全EGのmgで計算される。
【0203】
酵素の半減期は、50%の分解率低下を得るために必要とされるインキュベーション時間として評価された。
【0204】
3.6 示差走査型蛍光測定(DSF)
DSFを使用して、タンパク質集団の半分が折り畳まれていない温度である、それらの融点(Tm)を決定することによって、野生型タンパク質(配列番号1)及びその変異体の熱安定性を評価した。タンパク質試料を、14μMの濃度で調製し、20mMのトリスHCl(pH8.0)、300mMのNaClからなる緩衝液A中に保存した。SYPPOオレンジ色素の5000倍のDMSO中ストック溶液をまず、水で250倍に希釈した。タンパク質試料を、白色透明96ウェルPCRプレート(バイオラッド社、カタログ番号HSP9601)に載せ、各ウェルは、25μlの最終容量を含有している。各ウェル中のタンパク質及びSYPROオレンジ色素の最終濃度はそれぞれ、5μM(0.14mg/ml)及び10倍であった。1ウェルあたりに載せられた容量は以下の通りであった:緩衝液A 15μl、14μMのタンパク質溶液 9μL、及び250倍のSyproオレンジ希釈溶液 1μL。その後、PCRプレートを、光学品質のシールテープで密封し、室温で2000rpmで1分間遠心した。その後、DSF実験が、450/490で励起し560/580で発光するフィルターを使用するために設定された、CFX96リアルタイムPCRシステムを使用して行なわれた。試料は、0.3℃/秒の速度で、25から100℃まで加熱された。1回の蛍光測定が、0.03秒毎に行なわれた。融点が、バイオラッドCFXマネージャーソフトウェアを使用して、融解曲線の一次導関数の極値(群)から決定された。
【0205】
その後、配列番号1のエステラーゼと本発明のエステラーゼを、それらのTm値に基づいて比較した。異なる生産株に由来する同タンパク質に関する実験間の高い再現性に因り、変異体を比較する際に0.8℃のΔTmが有意であると判断された。Tm値は、少なくとも3回の測定の平均値に相当する。配列番号1のエステラーゼのTmは、実施例3.6に公開されているように、46.4℃+/-0.2℃で評価される。
【0206】
本発明のエステラーゼ変異体の熱安定性は、以下の表5に示され、Tm値で表現され、実施例3.6に従って評価される。配列番号1のエステラーゼと比較したTmの増加が、括弧内に示されている。
【0207】
【表5】
【配列表】
2022540116000001.app
【国際調査報告】