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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/30 20180101AFI20220907BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20220907BHJP
   C09J 123/06 20060101ALI20220907BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20220907BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J153/02
C09J123/06
C09J7/29
B32B27/30 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500720
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2022-03-02
(86)【国際出願番号】 US2020038366
(87)【国際公開番号】W WO2021007008
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】62/871,776
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】320007631
【氏名又は名称】トレデガー サーフェイス プロテクション エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】サブラマニアム スーリア
(72)【発明者】
【氏名】サントソ リッキー
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK04A
4F100AK05C
4F100AK06B
4F100AK06C
4F100AK12A
4F100AK73A
4F100AL02A
4F100AL05A
4F100AT00C
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CB00A
4F100EJ91
4F100JA06
4F100JK06
4F100JL11A
4F100JL14B
4F100YY00A
4F100YY00C
4J004AA06
4J004AA07
4J004BA02
4J004CA04
4J004CB03
4J004CC02
4J004CC03
4J004FA04
4J040DA021
4J040DM011
4J040JA09
4J040MA10
4J040MB05
4J040NA17
(57)【要約】
表面保護フィルムは、第1の水素化スチレンブロック共重合体と、第1の水素化スチレンブロック共重合体とは異なる第2の水素化スチレンブロック共重合体と、ポリエチレンとの混合物を含む接着層を含む。表面保護フィルムの接着構築値は、接着層がテクスチャ加工されたポリカーボネート基板に付着され90℃に10分間加熱された後、2.5未満である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の水素化スチレンブロック共重合体と、前記第1の水素化スチレンブロック共重合体とは異なる第2の水素化スチレンブロック共重合体と、ポリエチレンとの混合物を含む接着層を備える表面保護フィルムであって、
前記表面保護フィルムの接着構築値は、前記接着層がテクスチャ加工されたポリカーボネート基板に付着され90℃に10分間加熱された後、2.5未満である、表面保護フィルム。
【請求項2】
前記表面保護フィルムの前記接着構築値は、前記接着層がテクスチャ加工されたポリカーボネート基板に付着され90℃に10分間加熱された後、2.0未満である、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記表面保護フィルムの前記接着構築値は、前記接着層がテクスチャ加工されたポリカーボネート基板に付着され90℃に10分間加熱された後、1.5未満である、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
前記第1の水素化スチレンブロック共重合体は、約34重量%のスチレンを含み、約48グラム/10分の、230℃および2.16kgでのメルト流量を有する、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項5】
前記第2の水素化スチレンブロック共重合体は、約65重量%のスチレンを含み、約0.4グラム/10分の、230℃および2.16kgでのメルト流量を有する、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項6】
前記接着層混合物は、合計で25重量%~50重量%の水素化スチレンブロック共重合体、25重量%~40重量%の低密度ポリエチレン、および25重量%~35重量%の高密度ポリエチレンを含む、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項7】
前記接着層混合物は、15重量%~35重量%の前記第1の水素化スチレンブロック共重合体および5重量%~25重量%の前記第2の水素化スチレンブロック共重合体を含む、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項8】
剥離層をさらに備える、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項9】
前記剥離層は実質的に低密度ポリエチレンからなる、請求項8に記載の表面保護フィルム。
【請求項10】
前記接着層と前記剥離層との間にコア層をさらに備える、請求項8に記載の表面保護フィルム。
【請求項11】
前記コア層は、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとの混合物を含む、請求項10に記載の表面保護フィルム。
【請求項12】
前記コア層混合物は、30重量%~50重量%の低密度ポリエチレンおよび50重量%~70重量%の高密度ポリエチレンを含む、請求項11に記載の表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月9日に出願された米国仮特許出願第62/871,776号の優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、基板を保護するための表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
マスキングフィルムとしても知られる表面保護フィルムは、通常、フィルムが接着される基板の損傷、汚染、かき傷、すり傷、および/または他の破損を防ぐように物理的障壁を提供するために使用される。表面保護フィルムは、電子ディスプレイの構成要素として使用される繊細且つ敏感な基板に適用され、基板の製造時、出荷時、および/または使用前の保管時に、1つまたは複数のその後の加工ステップによって基板を保護することができる。
【0004】
一般に使用される表面保護フィルムは、例えば、ファンデルワールス力によって基板への接着を達成するが、表面保護フィルムおよび基板は、表面保護フィルムが基板に密に接触できるように、それぞれ少なくとも1つの非常に平坦および均一な表面を有することが必要である。
【0005】
本明細書で称するように、「接着」は、極結合、イオン結合、および、場合によっては水素結合、および/またはファンデルワールス二次結合を介して非常に滑らかな表面と別の滑らかな表面との間に存在する自然な遮断接着を介して密に接触することによって保護される基板の表面に接着することを意味する。「接着剤なしの」接着は、接着がフィルムもフィルムが適用された基板も変更または損傷しないように可逆的である剥離可能な接着を含むことを本明細書において意図する。本明細書において使用される「接着」は、基板表面と感圧接着剤が設けられているフィルムとの間の接着力としての接着剤の熱結合または架橋機能を含まず、あるいはフィルムを除去するために必要な剥離強度がフィルム自体の引張強度を超えてフィルムが基板から剥離する前に引き裂かれ、もしくは破損する点まで高められた接着剤の熱結合または架橋機能を含まない。
【0006】
接着力の量は、表面保護フィルム表面の組成を軟化または硬化させることによって増加または減少させることができる。接着力が大きすぎると、プロセスの最後に表面保護フィルムを基板から除去することが困難である。接着力が小さすぎると、結果として、表面保護フィルムは基板から早期に分離するので、基板は保護されなくなる。保護される基板の表面がテクスチャ加工された面を有する場合、表面保護フィルムが基板から早期に分離することを防ぐために増加された接着力を必要とする場合がある。
【0007】
テクスチャ加工された表面を含む表面を保護するための好適な表面保護フィルムは、共同所有の米国特許第10,150,896号に開示されている。開示された表面保護フィルムの接着層は、水素化スチレンブロック共重合体と、高密度ポリエチレン(HDPE)と、低密度ポリエチレン(LDPE)との混合物を含む。米国特許第10,150,896号の表3は、フィルムがポリカーボネート基板に積層され異なる温度にさらされた後の一連のフィルムの接着試験結果を列挙する。米国特許第10,150,896号の表3に列挙されたデータは、ポリカーボネート基板への表面保護フィルムの接着力が、積層が高温にさらされた後に増加し、それによって表面保護フィルムを除去することがより困難になり、いくつかの用途にとって望ましくない場合があることを示す。接着力の増加は、室温での剥離試験結果に対する高温での剥離試験結果の比率である「接着構築値(Adhesion Build Value)」によって表され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
表面保護フィルムおよび基板が高温にさらされても、使用時または表面保護フィルムが必要でなくなったときの表面保護フィルムの除去時に基板の表面を損傷することなく、基板の所望の表面保護を実現する表面保護フィルムを有することが望ましい。また、表面保護フィルムが低い接着構築値を有し、それによって、表面保護フィルムの接着特性は高温で実質的に増加しないことを示すことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様によれば、第1の水素化スチレンブロック共重合体と、第1の水素化スチレンブロック共重合体とは異なる第2の水素化スチレンブロック共重合体と、ポリエチレンとの混合物を含む接着層を含む表面保護フィルムが提供される。表面保護フィルムの接着構築値は、前記接着層がテクスチャ加工されたポリカーボネート基板に付着され90℃に10分間加熱された後、2.5未満である。
【0010】
一実施形態では、表面保護フィルムの接着構築値は、接着層がテクスチャ加工されたポリカーボネート基板に付着され90℃に10分間加熱された後、2.0未満である。
【0011】
一実施形態では、表面保護フィルムの前記接着構築値は、接着層がテクスチャ加工されたポリカーボネート基板に付着され90℃に10分間加熱された後、1.5未満である。
【0012】
一実施形態では、第1の水素化スチレンブロック共重合体は、約34重量%のスチレンを含み、約48グラム/10分の、230℃および2.16kgでのメルト流量を有する。
【0013】
一実施形態では、第2の水素化スチレンブロック共重合体は、約65重量%のスチレンを含み、約0.4グラム/10分の、230℃および2.16kgでのメルト流量を有する。
【0014】
一実施形態では、接着層混合物は、合計で25重量%~50重量%の水素化スチレンブロック共重合体、25重量%~40重量%の低密度ポリエチレン、および25重量%~35重量%の高密度ポリエチレンを含む。
【0015】
一実施形態では、接着層混合物は、15重量%~35重量%の第1の水素化スチレンブロック共重合体および5重量%~25重量%の第2の水素化スチレンブロック共重合体を含む。
【0016】
一実施形態では、表面保護フィルムは剥離層を含む。一実施形態では、剥離層は低密度ポリエチレンから実質的になる。
【0017】
一実施形態では、表面保護フィルムは、接着層と剥離層との間にコア層を含む。
【0018】
一実施形態では、コア層は、高密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンの混合物を含む。一実施形態では、コア層混合物は、30重量%~50重量%の低密度ポリエチレンおよび50重量%~70重量%の高密度ポリエチレンを含む。
【0019】
本発明のこれらおよび他の態様、特性および特徴、ならびに構造の関連要素の操作方法および機能、ならびに製造の部品と経済との組み合わせは、すべてが本明細書の一部を形成する添付図面を参照した以下の説明および請求の範囲を考慮すると、より明らかになる。しかしながら、図面は、例示および説明のみを目的としており、発明の限界の定義として意図されていないということは明確に理解することができる。明細書および請求項で使用されているように、単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈で明確に指示されていない限り、複数の指示対象を含む。
【0020】
以下の図の構成要素は、本開示の一般的な原則を強調するために図示される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】基板に接着した本発明の実施形態による表面保護フィルムを概略的に示す図である。
図2】ポリカーボネート基板の滑らかな表面に積層され、異なる温度にさらされた一連の表面保護フィルムの剥離力値を示す図である。
図3図2の剥離力値から計算された接着構築値を示す図である。
図4】表面保護フィルムがポリカーボネート基板のテクスチャ加工された表面に積層され異なる温度にさらされた後の、一連の表面保護フィルムの剥離力値を示す図である。
図5図4の剥離力値から計算された接着構築値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本発明の実施形態による表面保護フィルム100を概略的に示す。図示したように、表面保護フィルム100は、外側剥離面112を有する剥離層110、コア層120、およびコア層120の、剥離層110と反対側の接着層130を含む多層フィルムである。接着層130は外側接着面132を含む。接着層130の外側接着面132は、電子装置のディスプレイ用の光フィルムなどの表面保護フィルム100によって保護される基板150の表面152に接触するように構成されている。
【0023】
一実施形態では、表面保護フィルム100は、約30μmから約70μmの間の厚さを有してもよい。一実施形態では、表面保護フィルム100は、約40μmから約60μmの間の厚さを有してもよい。一実施形態では、表面保護フィルム100は約50μmの厚さを有してもよい。一実施形態では、3つの層110、120、130の厚さ比は約15:65:20、すなわち15%剥離層110、65%コア層120、および20%接着層130であってもよい。
【0024】
剥離層
剥離層110は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ポリプロピレン(PP)、ランダム共重合体ポリプロピレン、ポリプロピレンインパクト共重合体、またはメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン、プラストマ、ポリ(エチレン-コ-ビニルアセテート)、ポリ(エチレン-コ-アクリル酸)、ポリ(エチレン-コメチルアクリレート)、環状オレフィンポリマー、ポリアミド、ポリ(エチレン-コ-n-ブチルアクリレート)、およびこれらの混合物などの、ポリオレフィンを1つまたは複数含んでもよい。一実施形態では、剥離層110は、低密度ポリエチレン(LDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)の好適なポリオレフィン混合物を60:40~40:60重量率で含んでもよい。一実施形態では、剥離層110はLDPEを含むが、HDPEは含まない。一実施形態では、酸化防止剤などの1つまたは複数の添加物が剥離層110に含まれてもよい。
【0025】
剥離層110の厚さは、約1μmから約20μmの間、例えば、約5μmから約12μmの間、例えば、約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、約11μm、または約12μmであってもよい。
【0026】
本明細書で論じたように、滑らかさおよび粗さは、表面形状測定器によって測定されるような、表面のマイクロピークおよびマイクロバレーの表面の中心線に対する算術平均高さ(Ra)と定義される。このように定義された滑らかさおよび粗さは通常、マイクロインチの単位(10-6インチ)で表される。表面テクスチャ(相対的滑らかさおよび粗さ)のすべての試験はANSI/ASME試験方法B46.1-1985に従って行われた。剥離層110の外面112は約3マイクロインチから約600マイクロインチの間の平均表面粗さRaを有してもよい。一実施形態では、剥離層110の外面112は約30マイクロインチから約300マイクロインチの間の平均表面粗さRaを有してもよい。
【0027】
コア層
コア層120は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ランダム共重合体ポリプロピレン、ポリプロピレンインパクト共重合体、メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン、プラストマ、ポリ(エチレン-コ-ビニルアセテート)、ポリ(エチレン-コ-アクリル酸)、ポリ(エチレン-コ-メチルアクリレート)、環状オレフィンポリマー、ポリアミド、ポリ(エチレンコ-n-ブチルアクリレート)、およびこれらの混合物などの、ポリオレフィンを1つまたは複数含んでもよい。1つの好適なポリオレフィン混合物は、低密度ポリエチレン(LDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)を60:40~40:60の範囲の重量率で含む。コア層120は、酸化防止剤などの1つまたは複数の添加物を含んでもよい。
【0028】
本発明の実施形態による表面保護フィルム100のコア層120の厚さは、約10μmから約50μmの間、例えば、約20μmから約40μmの間、例えば、約20μm、約21μm、約22μm、約23μm、約24μm、約25μm、約26μm、約27μm、約28μm、約29μm、約30μm、約31μm、約32μm、約33μm、約34μm、約35μm、約36μm、約37μm、約38μm、約39μmまたは約40μmであってもよい。
【0029】
接着層
表面保護フィルム100の実施形態による接着層130は、低密度ポリエチレン(LDPE)および/または高密度ポリエチレン(HDPE)などの1つまたは複数のポリオレフィン、および1つまたは複数の水素化スチレンブロック共重合体の混合物を含む。好適な水素化スチレンブロック共重合体は、水素化の前にポリスチレンブロック-ポリジエンブロックポリマー構造を有する。水素化ブロック共重合体は、水素化の前は、線状または放射状であり得る。水素化スチレンブロック共重合体の好適なポリジエンはポリブタジエン(1,3-ブタジエン)、ポリイソプレンおよびこれらの混合物を含む。ポリスチレンブロック-ポリジエンブロック構造の水素化の結果、例えば、「SEBS」とも称される、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンポリマー構造、または「SEPS」とも称される、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンポリマー構造をもたらし得る。本発明の実施形態では、水素化スチレンブロック共重合体のスチレンの含有量は10重量%から70重量%の間であってもよい。
【0030】
スチレンブロック共重合体などの熱可塑性樹脂のメルト流量(「MFR」)は、熱可塑性樹脂の粘度に逆相関する。高いMFRは、熱可塑性樹脂が低い粘度を有し、逆もまた同様であることを意味する。本明細書で使用されるように、特に記載のない限り、「MFR」は、ASTMD-1238に従って決定され、2.16kg質量下230℃で、10分当たりグラムで測定されるメルト流量を意味する。接着層130の好適な水素化スチレンブロック共重合体は、約0.1g/10分から約100g/10分の間であってもよい。
【0031】
本発明の様々な実施形態では、接着層130は10~90重量%の水素化スチレンブロック共重合体を含んでもよい。特定の実施形態では、接着層130は20~50重量%の水素化スチレンブロック共重合体を含んでもよい。このような実施形態では、接着層130はまた、50~80重量%のLDPEおよびHDPEの混合物を含んでもよい。
【0032】
本発明の実施形態による表面保護フィルム100の接着層130の厚さは、約1μmから約20μmの間、例えば、約3μmから約15μmの間、例えば、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、約11μm、約12μm、約13μm、約14μm、または約15μmであってもよい。
【0033】
基板
本発明の表面保護フィルム100は任意の基板150に適用され得るが、通常の基板は、例示としてのみ、ポリカーボネート、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリイミド、ガラス、セラミックおよび金属を含む。この基板は通常、約0ミクロンインチから約150ミクロンインチの間の範囲の平均表面粗さRaを有する。基板150は滑らかな表面152(すなわち約0ミクロンインチから約5ミクロンインチまでの範囲の平均表面粗さRaを有する表面、または約5ミクロンインチから約150ミクロンインチまでの範囲の平均表面粗さRaを有するテクスチャ加工された表面152)を有してもよい。
【0034】
表面保護フィルムの基板への適用
様々な従来の方法のいずれも多層表面保護フィルム100を基板150に適用して、適用された表面保護フィルム100を基板150の表面152に対して押圧するために利用することができる。一般的に言えば、表面保護フィルム100はロールから取り外して、表面保護フィルム100および基板150が通過するニップロールまたは類似のシステムによって基板150に直接適用されてもよい。表面保護フィルム100がロールから引き抜かれるにつれて、ロール上に表面保護フィルム100を螺旋状に配向することによって接着層130の外面132は剥離層110の外面112から外され、層または表面保護フィルム全体のいずれも損傷することがない。
【0035】
実施例
一連の3層表面保護フィルム100は、同じ条件を使用して共押し出しキャストフィルムライン上で押し出された。各フィルム100の目標総厚は約50μm(ミクロン)であり、総厚の15%は剥離層110に帰属可能、総厚の約65%はコア層120に帰属可能、および総厚の約20%は接着層130に帰属可能であった。各フィルム100の剥離層110は実質的にLDPEで構成された。各フィルム100のコア層120は約60重量%のHDPEおよび約40重量%のLDPEの混合物であった。接着層130について、異なる水素化スチレンブロック共重合体がLDPEおよびHDPEと混合された。接着層130に使用された異なる水素化スチレンブロック共重合体の概要は以下の表1に列挙する。
【0036】
【表1】
【0037】
Kraton(商標)MD6951およびKraton(商標)MD1653はKraton Performance Polymers, Inc.によって製造され、Septon(商標)2063およびSepton(商標)2104は株式会社クラレによって製造されている。表2は、表面保護フィルム100の接着層130として使用して異なる水素化スチレンブロック共重合体が、滑らかな表面152を有するポリカーボネート基板150に積層されたとき表面保護フィルム100の接着特性に対して有する効果を決定する様々な混合物を列挙する。ただし、比較例Aの接着層は、上述した米国特許第10,150,896の表3の実施例3の接着層に類似している。
【0038】
【表2】
【0039】
フィルム100のそれぞれは、周囲条件下(例えば、約23℃)で2週間熟成させた後、約0.7ミクロンインチの平均表面粗さRaを有する滑らかな表面152を含み、接着層130の外面132がポリカーボネート基板150の滑らかな表面152に接触しているポリカーボネート基板150上に積層された。積層試験片は3インチの幅に切断されて室温(例えば、約23℃)で1時間、またはオーブン内に90℃で10分間置かれた。Texture Technologies Corp.に製造されたTA.XTプラス・テクスチャ分析器を使用して、毎秒5mmの速度で3インチ当たりのグラムで180°剥離力を測定した(「剥離力値」)。表3は剥離力試験の結果を列挙し、積層後高温にさらされなかった(すなわち約23℃で保たれた)サンプルの剥離力値に対する、積層後90℃の高温にさらされたサンプルの剥離力値の率である「接着構築値」を含む。1.0の接着構築値は、フィルムサンプルの接着力が、高温に影響を受けなかったことを示し、望ましい。
【0040】
【表3】
【0041】
実施例1の接着構築値は約1.0であったが、実施例1の剥離力値は比較例Aの剥離力値の約3分の1であり、いくつかの適用に対しては十分に高くない場合がある。
【0042】
追加のサンプルを作成して比較例A、実施例1および実施例2の混合物の少量(約5重量%)の水素化スチレンブロック共重合体を実施例3の水素化スチレンブロック共重合体(Septon(商標)2104)に換えることの効果を決定した。これらのサンプルの概要は表4に列挙する。
【0043】
【表4】
【0044】
フィルム100のそれぞれは、周囲条件下(例えば、約23℃)で2週間熟成させた後、約0.7ミクロンインチの平均表面粗さRaを有する滑らかな表面152を含み、接着層130の外面132がポリカーボネート基板150の滑らかな表面152に接触しているポリカーボネート基板150上に積層された。積層試験片は3インチの幅に切断されて室温(例えば、約23℃)で1時間、またはオーブン内に90℃で10分間置かれた。Texture Technologies Corp.に製造されたTA.XTプラス・テクスチャ分析器を使用して、毎秒5mmの速度で3インチ当たりのグラムで180°剥離力を測定した(「剥離力値」)。表5は剥離力の試験結果を列挙し、上述した接着構築値を含む。
【0045】
【表5】
【0046】
室温で保たれた実施例4のフィルムを有する積層の剥離力値は室温で保たれた比較例Aのフィルムを有する積層の剥離力値よりも約25%だけ低かったが、比較例Aの約1.6の接着構築値に比べると、約1.1の接着構築値を有し有利であった。比較例Aおよび実施例1~6の剥離力値も図2に示され、これらのサンプルの接着構築値は図3に示される。
【0047】
Kraton(商標)MD6951を含む混合物(比較例Aおよび実施例4)の試験をしたところKraton(商標)MD6951を含まない混合物(実施例1~3、5および6)よりも高い剥離力値を有し、Kraton(商標)MD6951およびSepton(商標)2104の両方を含む混合物は水素化スチレンブロック共重合体のKraton(商標)MD6951のみを含む混合物よりも1.0により近い接着構築値を有していたので、追加のサンプルを作成して接着層130においてKraton(商標)MD6951およびSepton(商標)2104の両方の異なるレベルを調査した。作成した追加のサンプルの接着層130の混合物の概要は表6に列挙する。
【0048】
【表6】
【0049】
フィルム100のそれぞれは、周囲条件下(例えば、約23℃)で2週間熟成させた後、約7ミクロンインチの平均表面粗さRaを有するテクスチャ加工された表面152を含み、接着層130の外面132がポリカーボネート基板150のテクスチャ加工された表面152に接触している、ポリカーボネート基板150上に積層された。積層試験片は3インチの幅に切断されて室温(例えば、約23℃)で1時間、またはオーブン内において50℃で10分間、もしくはオーブン内に90℃で10分間置かれた。Texture Technologies Corp.により製造されたTA.XTプラス・テクスチャ分析器を使用して、毎秒5mmの速度で3インチ当たりのグラムで180°剥離力を測定した(「剥離力値」)。表7は剥離力の試験結果を列挙し、図4は各サンプルの剥離力値を示す。
【0050】
【表7】
【0051】
表7に列挙され且つ図4に示された剥離力値は各サンプルについて、温度が上昇すると剥離力が概して増加したことを示す。表8は、50℃および90℃でのサンプルの接着構築値の概要であり、図5はサンプルのそれぞれについて接着構築値を示す。
【0052】
【表8】
【0053】
比較例Aは4よりも大きい90℃での接着構築値を有する一方で、実施例4~8はそれぞれ2.5未満の90℃での接着構築値を有し、望ましい。2.0未満の接着構築値は、より望ましく、1.5未満の接着構築値は最も望ましい。
【0054】
相対的に高いMFRを有する水素化スチレンブロック共重合体(すなわちKraton(商標)MD6951)は比較的高い接着性を実現する一方で、非常に低いMFRを有する水素化スチレンブロック共重合体(すなわちSepton(商標)2104)は接着のための温度の安定性を実現することを前提とする。
【0055】
上記から明らかなように、本発明は、従来技術の保護フィルムと比較した場合に意外に優れた接着性を示すいくつかの態様を組み合わせたものである。特に、保護フィルムに、第1の水素化スチレンブロック共重合体、第1の水素化スチレンブロック共重合体とは異なる第2の水素化スチレンブロック共重合体、およびポリエチレンの混合物を含む接着層が設けられている場合、接着層がテクスチャ加工されたポリカーボネート基板に付着され90℃に10分間加熱された後、2.5未満である表面保護フィルムの接着構築値を確立することが可能になる。1つの考えられる実施形態では、ポリエチレン成分は、この予期しない結果を達成するためにLDPEとHDPEの組み合わせを包含し得る。
【0056】
本明細書に記載される実施形態は、多くの可能な実施および実施例を表し、本開示を特定の実施形態に限定するように必ずしも意図されたものではない。代わりに、これらの実施形態に対して様々な変形を行うことができることは、当業者であれば理解できるであろう。そのような任意の変形例は、本開示の精神および範囲内に含まれ、以下の請求の範囲によって保護されることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】