(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】オレフィン収率を上昇させるための流動分解法およびそのための触媒組成物
(51)【国際特許分類】
C10G 11/05 20060101AFI20220907BHJP
B01J 29/46 20060101ALI20220907BHJP
C10G 11/18 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
C10G11/05
B01J29/46 M
C10G11/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500825
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(85)【翻訳文提出日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 US2020040885
(87)【国際公開番号】W WO2021007156
(87)【国際公開日】2021-01-14
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】シン,ウダイシャンカー
(72)【発明者】
【氏名】クマール,ランジット
(72)【発明者】
【氏名】ジーバース,マイケル・スコット
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ウー-チェン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BA01C
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA10C
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4H129AA02
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4H129KD09X
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4H129KD37Y
(57)【要約】
流動分解プロセスにおいて炭化水素を分解するための改善されたプロセスおよび触媒組成物を開示する。本プロセスでは、最小限の炭素含量を有する再生分解の循環インベントリーを利用する。再生触媒は、ペンタシルゼオライト、酸化鉄およびリン化合物を含有する触媒/添加物組成物を含む。本開示に従って、触媒/添加物は、再生触媒インベントリー上の炭素を低量に維持することにより酸化状態で維持されている制御された量の酸化鉄を含有する。このように、本触媒組成物は、プロピレンのような軽質炭化水素の生産量および選択率を大幅に増大させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、流動分解法:
炭化水素供給原料を、再生触媒組成物の全インベントリーに基づき約0.005重量%~約0.30重量%の範囲の炭素含量を有する再生流動接触分解触媒の循環インベントリーと接触させること;ならびに
以下を含むペンタシル含有触媒/添加物組成物を含むこと:
(a)ペンタシルゼオライト;
(b)約0.7~約4.0重量%の酸化鉄;および
(c)約5.0~約20重量%のリン(P
2O
5として測定);
該酸化鉄およびリンの量は、ペンタシル含有触媒/添加物組成物の重量%に基づく。
【請求項2】
再生触媒組成物が約20~約200ミクロンの範囲の平均粒子サイズを有する、請求項1で定義される方法。
【請求項3】
酸化鉄が、再生触媒中のペンタシル含有触媒/添加物組成物の約0.9~約2.5重量%の量でペンタシル含有触媒/添加物中に存在する、請求項1または2で定義される方法。
【請求項4】
リン((P
2O
5)として測定)が、再生触媒中のペンタシル含有触媒/添加物の約7重量%~約18重量%の量でペンタシル含有触媒/添加物組成物中に存在する、請求項1~3のいずれかで定義される方法。
【請求項5】
リン((P
2O
5)として)が、ペンタシル含有触媒/添加物組成物の約9重量%~約18重量%の量でペンタシル含有触媒/添加物組成物中に存在する、請求項4で定義される方法。
【請求項6】
再生触媒が、再生触媒インベントリーの約0.01~約0.25重量の量で炭素を含む、請求項1~5のいずれかで定義される方法。
【請求項7】
前記供給原料が、前記反応器において約400℃~約700℃の温度で接触分解される、請求項1~6のいずれかで定義される方法。
【請求項8】
ペンタシル含有触媒/添加物組成物が、触媒/添加物組成物の約45重量%を超える量でペンタシルゼオライトを含有する、請求項1~7のいずれか一項で定義される方法。
【請求項9】
生成物流が、生成物流の約4.5重量%を上回る量でプロピレンを含有する、請求項1~8のいずれかで定義される方法。
【請求項10】
生成物流が、生成物流の約0.5重量%を上回る量でエチレンを含有する、請求項1~9のいずれかで定義される方法。
【請求項11】
ペンタシルゼオライトがZSM-5またはZSM11を含む、請求項1~10のいずれかで定義される方法。
【請求項12】
再生触媒組成物が、20未満、例えば約10未満、例えば約5未満のDIを有する、請求項1~11のいずれかで定義される方法。
【請求項13】
ペンタシルゼオライトがZSM-5である、請求項1~12のいずれかで定義される方法。
【請求項14】
触媒インベントリーがさらに、ペンタシル含有触媒/添加物組成物と併せて、炭化水素の分解に適した追加的な分解触媒組成物の別個の粒子を含む、請求項1~13のいずれかで定義される方法。
【請求項15】
追加的な分解触媒組成物がフォージャサイトゼオライトを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
フォージャサイトゼオライトが、Yゼオライト、REY、REUSY、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
流動接触分解法が、深度接触分解(DCC)、接触熱分解法(CPP)、高過酷度流動接触分解(HS-FCC)、KBR接触オレフィン技術(K-COT
TM)およびSuperflex
TM,、極限接触分解(UCC)からなる群より選択されるものである、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
流動分解法における循環触媒インベントリー中の再生触媒組成物であって、該再生触媒が、
全触媒インベントリーに基づき約0.005重量%~約0.30重量%の範囲の炭素含量、ならびに
以下を含むペンタシル含有触媒/添加物組成物:
(a)ペンタシルゼオライト;
(b)約0.7~約4.0重量%の酸化鉄;および
(c)約5.0~約20重量%のリン(P
2O
5として測定);
該リンおよび酸化鉄の量は、それぞれ、ペンタシル含有触媒/添加物組成物中のリンおよび酸化鉄の量に基づく;
を含む、前記再生触媒組成物。
【請求項19】
再生触媒組成物が約20~約200ミクロンの範囲の平均粒子サイズを有する、請求項18で定義される再生触媒組成物。
【請求項20】
酸化鉄が、再生触媒中のペンタシル含有触媒/添加物組成物の約0.9~約3.0重量%の範囲の量でペンタシル含有触媒/添加物組成物中に存在する、請求項18または19で定義される再生触媒組成物。
【請求項21】
ペンタシル含有触媒/添加物組成物が、再生触媒中のペンタシル含有触媒/添加物組成物の約0.9~約2.5重量%の範囲の量で酸化鉄を含有する、請求項20で定義される再生触媒組成物。
【請求項22】
リン((P
2O
5)として測定)が、ペンタシル含有触媒/添加物組成物の約7重量%~約18重量%の量でペンタシル触媒/添加物中に存在する、請求項18~20のいずれかで定義される再生触媒組成物。
【請求項23】
リン((P
2O
5)として)が、ペンタシル含有触媒/添加物組成物の約9重量%~約18重量%の量でペンタシル含有触媒/添加物組成物中に存在する、請求項22で定義される再生触媒組成物。
【請求項24】
再生触媒組成物が、再生触媒組成物の約0.25重量%未満の量で炭素を含む、請求項1~23のいずれかで定義される再生触媒組成物。
【請求項25】
再生触媒組成物が、触媒インベントリーの約0.01~約0.25重量の範囲の量で炭素を含む、請求項18で定義される再生触媒組成物。
【請求項26】
ペンタシル含有触媒/添加物組成物が、ペンタシル含有触媒/添加物組成物の約10重量%~約80重量%の範囲の量でペンタシルゼオライトを含む、請求項18で定義される再生触媒組成物。
【請求項27】
ペンタシルゼオライトがZSM-5またはZSM-11である、請求項18~26で定義される再生触媒組成物。
【請求項28】
ペンタシル含有触媒/添加物組成物が、20未満、例えば約10未満、例えば約5未満のDIを有する、請求項1~27のいずれかで定義される再生触媒組成物。
【請求項29】
再生触媒がさらに、追加的な分解触媒組成物を含む、請求項1~28のいずれかによって定義される再生触媒組成物。
【請求項30】
追加的な分解触媒がフォージャサイトゼオライトを含む、請求項29で定義される再生触媒組成物。
【請求項31】
フォージャサイトゼオライトが、Yゼオライト、REY、REUSY、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項30で定義される再生触媒組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本出願は、2019年7月10日提出の米国仮特許出願第62/872468号に基づき、これに対する優先権を主張するものである。該米国仮特許出願を本明細書中で参考として援用する。
【背景技術】
【0002】
[0002]流動接触分解(FCC)は一般に、炭化水素供給原料に含有される高沸点で高分子量の炭化水素化合物、例えば石油原油を、より有益な製品、例えば、ガソリン、ディーゼル油、および軽質オレフィンに転化させるプロセスをさす。プロセス中に、炭化水素供給原料を流動反応器中に供給し、高温で触媒と組み合わせ、これにより、高分子量炭化水素をより低分子量の生成物に転化させる。
【0003】
[0003]流動接触分解プロセスから生じる生成物流は一般に、炭化水素をもっとも多い量で含有する。プロセス中に生じるプロピレンおよびエチレンなどの軽質オレフィンの量は、さまざまな要因に依存しうる。近年、多種多様な化学物質およびポリマーを製造するための重要な供給原料としてのプロピレンに対する需要は、劇的に増大している。プロピレンの生産能力への著しい投資にかかわらず、世界供給量は依然として軽質オレフィンに対する需要に後れを取っている。例えば、ポリプロピレンポリマーの使用は、依然として、新規および既存の用途で使用するためのもっとも急成長している合成材料の一つである。
【0004】
[0004]上記を考慮して、当業者らは、軽質オレフィンの収率、例えばプロピレンの収率を改善するために、流動接触分解プロセスを改変しようと試みてきた。例えば、本明細書中で参考として援用する米国特許出願公開第2009/0134065号には、他の市販の触媒と比較してオレフィン収率を上昇させる流動触媒組成物が記載されている。‘065出願に記載されている触媒組成物は、プロピレンなどの軽質オレフィンの生産の分野において大幅に進歩している。
【0005】
[0005]プロピレンおよびエチレンなどの軽質オレフィンは、さまざまなポリマーを含む多種多様な化学物質および製品の製造に用いられる重要な供給原料である。軽質オレフィンの生産能力への著しい投資にかかわらず、軽質オレフィンの供給量は需要に追いついていない。したがって、向上した軽質オレフィンの収率および選択率を有する炭化水素生成物を提供するFCCプロセスならびに触媒および/または添加物組成物の設計におけるさらなる改善が、依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0134065号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0006]本開示は、流動接触分解プロセスで軽質オレフィン生成物を生成するための改善されたプロセスであって、従来の商業的に利用可能なFCCプロセスと比較して軽質オレフィン、すなわちC2-~C4-オレフィンの収率を向上させるプロセスを対象とする。有利には、該プロセスはC2-およびC3-オレフィンの選択率も向上させる。本発明はまた、改善されたFCC触媒および/または添加物組成物、ならびに、C2-およびC3-オレフィンの軽質オレフィン収率および選択率をC4-オレフィンよりも増大させるFCCプロセスにおけるその使用も対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0002]したがって、本発明は、発明的FCCプロセスであって、
(a)炭化水素供給原料を、反応器(“ライザー (riser)”としても知られる)、ストリッパーおよび再生器で構成される流動接触分解ユニット(“FCCU”)の反応帯域に導入すること、該供給原料は、約30℃からの初留点を有し、終点が約850℃以下であることを特徴とする;
(b)前記供給原料を、前記ライザーにおいて約400℃~約700℃の温度で、供給原料を、
(i)シリカ/アルミナ骨格構造を有するペンタシルゼオライト、
(ii)少なくとも5.0重量%のリン(P2O5)、および
(iii)約0.7~約4重量パーセントの酸化鉄(Fe2O3)
を含むペンタシル含有触媒/添加物組成物を含む再生触媒の循環インベントリー(inventory)と接触させることにより、接触分解すること;
該リンおよび酸化鉄の百分率は、ペンタシル含有触媒/添加物組成物中のリンまたは酸化鉄の全量に基づき;該再生触媒は、触媒インベントリーの全重量に基づき約0.005~約0.30重量%の炭素含量を含む;
(c)ストリッパーにおいて、触媒インベントリー中の回収された使用済み触媒粒子をストリッピングスチームを用いてストリッピングして、幾ばくかの炭化水素性材料またはコークスを除去すること;
(d)ストリップした炭化水素をストリッパーから回収し、ストリップした触媒粒子を再生器に循環させること;
(e)前記分解触媒粒子を、再生帯域において、前記触媒粒子上の実質的量のコークスを、全再生触媒インベントリー上に約0.30重量%以下の炭素含量をもたらすのに十分な温度で燃焼させることにより再生すること;
(f)分解プロセスを継続させるために前記再生触媒インベントリーを反応器に再循環させること;
を含むプロセスを対象とする。
【0009】
[0007]ペンタシル含有触媒/添加物組成物は、唯一の触媒として、または添加物として、本発明のFCCプロセスの触媒インベントリーに用いることができる。これに加えて、ペンタシル含有触媒/添加物組成物は、ペンタシルゼオライトを含有しない従来のFCC触媒、例えば、フォージャサイトゼオライトを含むFCC触媒の別個の粒子と組み合わせて用いてもよい。
【0010】
[0008]上記のように、本開示のプロセスは、軽質オレフィンの収率を劇的に改善することが見出されている。例えば、生成物流は、約4.5重量%~約40重量%の量のプロピレンを含有することができる。生成物流はまた、約0.5重量%~約25重量%の量のエチレンを含有することができる。
【0011】
[0009]本開示はまた、ペンタシル含有触媒/添加物組成物を含む再生流動接触触媒組成物も対象とし、これは、流動分解プロセス中に再循環させたときに、上昇した軽質オレフィン収率および選択率を有する炭化水素生成物をもたらす。
【0012】
[0010]一態様において、再生触媒インベントリーに用いられるペンタシル含有触媒/添加物組成物は、少なくとも10重量%のペンタシルゼオライト、例えばZSM-5、約4.0重量%以下、好ましくは約2.5重量%以下の酸化鉄、および、約20重量%、好ましくは約19重量%以下、より好ましくは約18重量%以下であるが、少なくとも約5重量%以上であるリン(P2O5として測定)を含む。
【0013】
[0011]本発明のプロセスに用いられる再生触媒インベントリーは、約0.30重量%未満、好ましくは約0.25重量%未満、より好ましくは約0.20重量%未満、さらにより好ましくは約0.15重量%未満、もっとも好ましくは約0.1%未満の量の炭素を含むが、いずれの場合も、全触媒インベントリー上の炭素の量は約0.005重量%以上である。
【0014】
[0012]本開示の他の特徴および観点を、以下でより詳細に論じる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
[0013]本開示の完全で実施可能な程度の開示を、添付図面の参照を含め、明細書のこれ以降の部分でより詳細に説明する。
【
図1】
図1は、環状プロピレンスチーム処理条件(CPS)下での表面積安定性に対する触媒中の酸化鉄レベルの影響を示す。触媒中の酸化鉄の漸増に伴い、表面積安定性の低下が観察される。
【
図2】
図2は、24時間の水熱不活性化後の酸化鉄修飾触媒の表面積を示す。触媒中の酸化鉄の漸増に伴う表面積の低下は観察されなかった。
【
図3】
図3は、再生触媒上の炭素が0.30重量%未満では、酸化鉄で修飾した試料が、酸化鉄で修飾していない試料に比べ高いプロピレン活性を有することを示す。触媒上の炭素が0.30重量%を超えると、プロピレン活性は著しく低下する。
【
図4】
図4は、すべてのレベルの触媒上のコークスにおいて、酸化鉄で修飾した触媒は、触媒組成物中に酸化鉄を含まないベース触媒と比較して、一定の全湿潤ガス(水素+C1~C4炭化水素)において高いエチレン+プロピレン選択率を有することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
[0014]本明細書中で用いる場合、鉄およびリンの重量%は、ペンタシル含有触媒/添加物粒子中に含有される上記成分それぞれの量に基づく。ペンタシル含有触媒/添加物粒子中の鉄の量は酸化鉄として測定され、ペンタシル含有触媒/添加物粒子中に含有されるリンの量はP2O5として測定される。
【0017】
[0015]本明細書において、“平均粒子サイズ”という用語は、レーザー回折技術を用いて測定される試料のサイズに従って、存在する粒子の体積での相対量の平均を示すために使用される。用いた装置はMalvern P analyticalから入手可能なMastersizer 3000であり、この装置では、レーザー回折の技術を用いて粒子サイズ分布が測定される。
【0018】
[0016]本明細書中で用いる場合、“接触分解活性”という用語は、より高分子量の炭化水素(高沸点)供給物を、より低分子量の炭化水素(低沸点)生成物に低減する触媒の能力を意味するために用いられる。
【0019】
[0017]本明細書中で用いられる“流動接触分解条件”という用語は、流動接触分解プロセス中に、より高分子量の炭化水素(高沸点)供給物を、より低分子量の炭化水素(低沸点)生成物に低減するために、炭化水素供給物と触媒粒子を接触させるために用いられる操作条件、例えば、接触時間、温度、および触媒対油比を意味する。
【0020】
[0018] 本明細書において、“コークス化触媒”という用語は、FCCプロセス中にライザーおよびストリッパーから出てきたFCC分解触媒を意味するために用いられる。分解プロセス中に、コークス化触媒は、“再生器”で再生されてからFCCU中のライザーに再循環される。
【0021】
詳細な説明
[0019]本解説は代表的態様の記載に過ぎず、本開示の広範な観点を制限することを意図していないことを、当業者なら理解すべきである。
【0022】
[0020]本開示は、プロピレン、エチレンおよびブチレンのような軽質オレフィンの収率を向上させるほか、C2-およびC3-オレフィンの選択率も向上させる、流動接触分解プロセスを対象とする。一般に、該プロセスは、低減した炭素含量を有し、酸化鉄含量が低いリン安定化ペンタシルゼオライト含有触媒/添加物粒子を含む、再生触媒インベントリーを使用することを対象とし、前記再生触媒インベントリーは低減した量の炭素を含む。軽質オレフィンの収率は、ペンタシル含有触媒/添加物組成物中の鉄を比較的少量に維持するだけでなく、全再生触媒インベントリー上の炭素などの還元体を最小限にすることによって鉄を酸化状態に維持することにより、大幅に上昇させることができることが発見された。
【0023】
ペンタシル触媒/添加物
[0021]本開示に有用なペンタシル含有触媒/添加物組成物での使用に適したゼオライトは、構造の骨格内に5員環を有するゼオライト構造を含む。骨格は、シリカおよびアルミナを四面体配位で含む。一態様において、触媒組成物は、ZSM-5またはZSM-11のX線回折パターンを有する1以上のペンタシルを含む。市販の合成形状選択性ゼオライトも適している。
【0024】
[0022]ペンタシルゼオライトは、一般に、1~12の拘束指数(Constraint Index)を有することができる。拘束指数試験の詳細は、J. Catalysis, 67, 218-222 (1981)および米国特許公報第4711710号に提供されている。そのようなペンタシルは、中間細孔ゼオライト、例えば、約4~約7オングストロームの細孔サイズを有するゼオライトによって例示される。ペンタシルは、例えば300:1未満、例えば100:1未満、例えば50:1未満のシリカ対アルミナのモル比(SiO2/Al2O3)を有することができる。一態様において、ペンタシルは、30:1未満のシリカ対アルミナ比を有する。ペンタシルはまた、金属カチオンで交換することもできる。適した金属としては、アルカリ土類金属、遷移金属、希土類金属、リン、ホウ素、貴金属、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0025】
[0023]触媒/添加物粒子は、一般に、軽質オレフィン収率を上昇させるのに概して十分な量でペンタシルゼオライトを含む。一般に、ペンタシルゼオライト触媒/添加物は、触媒添加物組成物中に約10~約80重量%、好ましくは約20~約70重量%、もっとも好ましくは約40~約60重量%のペンタシルゼオライトの範囲でペンタシルを含む。
【0026】
リン
[0024]ペンタシル含有触媒/添加物組成物は、典型的には、五酸化リンとして測定した場合、約20重量%未満で、概して約5重量%を超えるリンの量で、リン((P2O5)として測定)を含有する。例えば、リンは、約7重量%を超える量、例えば約9重量%を超える量、例えば約11重量%を超える量で、そして概して約18重量%未満の量で、存在することができる。
【0027】
[0025]使用するリンは、触媒/添加物組成物中および他の成分との組み合わせにおいて、ペンタシルゼオライトを安定化してバインダーとして作用するように選択される。五酸化リン(P2O5)として測定する。特定の理論に結び付けるものではないが、リンはペンタシルのアルミナ酸性点と反応し、これにより、典型的な流動接触分解条件下またはさらにより厳しい条件下での使用中に起こり得るあらゆる脱アルミニウムに関し該酸性点を安定化すると考えられる。したがって、リンは、ナフサ範囲の炭化水素分子の転化に関しペンタシルの活性を安定化し、これにより、FCCプロセスにおける軽質オレフィン収率を向上させる。リンは、ペンタシルを含有する触媒/添加物粒子の形成前、形成中、または形成後に、ペンタシルに加えることができる。本発明のリン源として適したリン含有化合物としては、リン酸(H3PO4)、亜リン酸(H3PO3)、リン酸の塩、亜リン酸の塩、およびそれらの混合物が挙げられる。リン酸一アンモニウム(NH4)H2PO4、リン酸二アンモニウム(NH4)2HPO4、亜リン酸一アンモニウム(NH4)H2PO3、亜リン酸二アンモニウム(NH4)2HPO3、およびそれらの混合物のようなアンモニウム塩も用いることができる。他の化合物としては、ホスフィン、ホスホン酸、ホスホン酸塩などが挙げられる。
【0028】
[0026]リンは、触媒/添加物組成物の製造中に、ペンタシルを含有する粒子ベースでリンの量が約5~20重量%、好ましくは約7~約19重量%、さらに約9~18重量%、または約11~18%の範囲であることができるような量で加えられる。
【0029】
酸化鉄
[0027]ペンタシル含有触媒/添加物組成物中に存在する鉄は、酸化鉄として測定される。一般に、触媒/添加物組成物は、約4重量%以下の量、例えば約3.0重量%以下の量、例えば約2.5重量%以下の量、例えば約2.3重量%以下の量、例えば約2重量%以下の量、例えば約1.8重量%以下の量で、酸化鉄を含有する。酸化鉄は、一般に、ペンタシル含有触媒/添加物組成物中に含有される酸化鉄の全量に基づき、約0.7重量%を超える量、例えば約0.9重量%を超える量で存在する。典型的には、酸化鉄の量は、ペンタシル含有触媒/添加物組成物の量に基づき、約0.7~約4.0重量%、好ましくは約0.9~約3重量%、さらに約0.9~約2.5重量%の範囲である。
【0030】
[0028]鉄または酸化鉄の量は、ペンタシル含有触媒/添加物組成物中に存在することができるマトリックス、ゼオライト、バインダー、または粘土に由来することができる。したがって、鉄は、典型的には、触媒マトリックスまたはバインダーに見出されるほか、ペンタシルの細孔構造内で見出される。鉄はペンタシル骨格の外側または内側に存在することができる。“ペンタシル骨格の外側”とは、シリカ/アルミナ四面体構造の配位の外側にある鉄を意味する。鉄は、骨格の酸点と結び付いた鉄を、例えば、酸点上に交換されたカチオンとして包含することができる。鉄は、ペンタシルゼオライトの外側に、すなわち、ペンタシル含有触媒/添加物組成物中に含有されるマトリックス中に、存在することができる。
【0031】
[0029]実際、ペンタシル含有触媒/添加物の成分として挙げられる鉄は、一般に、触媒/添加物組成物を作製するために用いられる他の原料に別個に、および該原料との組み合わせで、加えられる鉄である。本明細書中では鉄を酸化鉄(すなわちFe2O3)として記載するが、さらに、組成物中の鉄はリン酸鉄など他の形態で存在することができると考えられる。しかしながら、実際の形態は、鉄がどのように触媒/添加物組成物に導入されたかに依存する。例えば、鉄は、鉄を不溶性酸化鉄として加える態様では、酸化鉄の形態にあることができる。他方、鉄を水溶性塩として加える場合、鉄はアニオンと反応して、例えば、リン酸を含有する噴霧乾燥機供給混合物にハロゲン化第二鉄を加える場合、リン酸鉄を形成することができる。それにもかかわらず、酸化鉄は組成物の鉄部分を反映するために選択されてきた。これは、おもに、鉄および他の金属の含量を測定するために産業界で典型的に用いられる分析方法では、典型的にはそれらの酸化物に関しての結果が報告されるためである。
【0032】
所望による成分
[0030]酸化鉄およびリンに加えて、ペンタシル含有触媒/添加物組成物は、粘土および適したマトリックスのような追加的成分と、所望によりバインダー材料を含有する。
【0033】
[0031]触媒/添加物組成物中に存在するマトリックスの量は、多種多様であることができる。マトリックス成分は、0~約60重量パーセントの範囲の量で触媒組成物中に存在することができる。マトリックスは、典型的には、FCCプロセスの生成物の変性に関する活性、とりわけ、ナフサ範囲のオレフィン分子を生成する活性を有する無機酸化物であり、その上部で上記ペンタシルが作用することができるものである。マトリックスとして適した無機酸化物としては、限定されるものではないが、非ゼオライト無機酸化物、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、マグネシア、ボリア、チタニア、ジルコニア、金属リン酸塩、およびそれらの混合物が挙げられる。特定の態様において、マトリックスは、全触媒/添加物組成物の約10~約50重量パーセントの量でアルミナを含む。他の態様において、マトリックスは、約3重量%を超える量であり、そして約10重量%未満の量で、アルミナを含む。
【0034】
[0032]ペンタシル含有触媒/添加物組成物は、1以上のさまざまな公知の粘土、例えば、モンモリロナイト、カオリン、ハロイサイト、ベントナイト、アタパルジャイトなどを包含することができる。他の適した粘土としては、酸または塩基により浸出して、粘土の表面積を増大させてあるもの、例えば、BETにより測定して約50~約350m2/gの粘土の表面積に増大させてあるものが挙げられる。
【0035】
[0033]適した粘土としては、硬質カオリン粘土または“灰色”粘土とよばれることもある鉄含有粘土も挙げられる。これらの硬質カオリン粘土は灰色の色合いまたは着色を有するので、後者の用語が用いられることがある。硬質カオリン粘土は、著しい鉄含量、通常約0.6~約5重量パーセントのFe2O3を有すると報告されている。灰色粘土を含有する態様において、その中の鉄含量は、使用される酸化鉄の一部として包含されることができる。しかしながら、典型的に用いられる鉄の量、およびこれらの粘土中の鉄が必ずしも容易に反応するわけではない形態にあるという事実を考えると、追加的な鉄源を利用することが好ましい。
【0036】
[0034]マトリックスおよび粘土は、粒子として配合される場合、通常は触媒/添加物組成物中に提供され、組み込まれる。ペンタシル含有粒子のブレンドから組成物を調製する場合。マトリックスは、少なくとも約5m2/g、好ましくは約15~約130m2/gの表面積を有することができる。マトリックス表面積は、ASTM4365-95に基づきt-プロット分析を採用することによって測定することができる。触媒/添加物組成物の全表面積は、未使用のものであれ、816℃で4時間にわたり100%スチームで処理したものであれ、概して少なくとも約50m2/gである。全表面積はBETを用いて測定することができる。
【0037】
[0035]所望によるバインダーに適した材料としては、無機酸化物、例えば、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、リン酸アルミニウム、および当技術分野で公知の他の金属ベースのリン酸塩が挙げられる。アルミニウムクロロハイドロール(chlorohydrol)も、バインダーとして用いることができる。リン酸アルミニウム以外の金属リン酸塩バインダーを用いる場合、金属は、IIA族金属、ランタニド系列金属、例えば、スカンジウム、イットリウム、ランタン、および遷移金属からなる群より選択することができる。特定の態様では、VIII族金属リン酸塩が適している。一態様において、再生触媒を形成するために用いられる未使用のペンタシル含有触媒/添加物組成物は、さまざまな構成成分、例えば、ペンタシルゼオライト、リン、および酸化鉄、粘土、所望によるマトリックス材料を本明細書中で上記した量で含有する水性スラリーとして調製される。例えば、一態様において、水性スラリーは、ペンタシルゼオライト、酸化鉄、リン酸塩、アルミナ、および/または粘土を含有することができる。得られる水性スラリーを十分に混合した後、噴霧乾燥する。
【0038】
[0036]ペンタシル含有触媒/添加物組成物を調製するための他の方法としては、限定されるものではないが、以下の一般的プロセスが挙げられる:
[0037](1)選択したペンタシルゼオライトを鉄でイオン交換または含浸し、イオン交換または含浸したゼオライトを上記所望による成分中に組み込み、触媒/添加物組成物を形成する。
【0039】
[0038](2)鉄源をペンタシルゼオライトおよび所望による成分と同時に組み合わせ、望ましい触媒/添加物組成物を形成する。
[0039](3)ペンタシル含有触媒を従来法で製造する、例えば、ペンタシルゼオライトおよび上記所望による成分を含むペンタシル組成物を形成し、形成した触媒粒子をイオン交換に付して鉄を包含させる。
【0040】
[0040](4)ペンタシル含有触媒/添加物粒子に例えばインシピエントウェットネスにより鉄前駆体を含浸させて鉄を包含させる点を除き、(3)で述べたように従来の触媒/添加物組成物を調製する。
【0041】
[0041]一態様において、(1)の交換ペンタシルゼオライトを所望による成分と水中で組み合わせた後、得られたスラリーを、約20~約200ミクロン、例えば、20~約100ミクロンの範囲の平均粒子サイズを有する粒子に噴霧乾燥することができ、その後、得られた触媒/添加物組成物を従来の条件下で処理する。
【0042】
[0042]任意の上記方法における鉄源は、鉄塩の形態にあることができ、限定されるものではないが、塩化物、フッ化物、臭化物およびヨウ化物のようなハロゲン化鉄を包含する。鉄の炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩および酢酸塩も、適した鉄源である。鉄源は水性ベースであることができ、鉄は約1~約30%の濃度で交換溶液中に存在することができる。交換法により鉄を組み込む場合、交換は、ゼオライト上に存在する交換部位の少なくとも10%が鉄カチオンで交換されるように行うことができる。鉄はまた、固相交換法によって組み込むこともできる。
【0043】
[0043]方法(1)または方法(4)を用いてペンタシルゼオライトまたはペンタシルゼオライト含有触媒/添加物に含浸させる場合、通常水溶液中にある鉄源を、インシピエントウェットネスまでペンタシルゼオライト粉末または触媒粒子に加える。典型的な含浸浴の鉄の濃度は0.5~20%の範囲にある。
【0044】
[0044]方法(1)および(2)のための鉄源はまた、酸化鉄のような鉄の形態であることもでき、このような鉄源は必ずしも可溶性ではなく、および/または、その溶解度は、鉄源が加えられる媒体のpHに依存する。
【0045】
[0045]マトリックスおよびバインダーは、分散液、固体、および/または溶液としてペンタシルゼオライト混合物に加えることができる。適した粘土マトリックスはカオリンを含む。適した分散性ゾルとしては、当技術分野で公知のアルミナゾルおよびシリカゾルが挙げられる。適したアルミナゾルは、強酸を用いてアルミナを解膠させることにより調製されるものである。とりわけ適したシリカゾルとしては、W.R. Grace & Co.-Conn.から入手可能なLudox(登録商標)コロイドシリカが挙げられ、例えば、バインダー前駆体、例えばアルミニウムクロロハイドロールから形成されるものは、バインダーの前駆体の溶液をミキサーに導入した後、バインダーを、噴霧乾燥および/またはさらなる処理、例えば焼成により形成することにより作り出される。
【0046】
[0046]最終的なペンタシル含有触媒/添加物組成物は、FCCプロセスで典型的に見出される条件に抵抗するのに適した耐摩耗性を有することが好ましい。そのような性質を有する触媒の調製は、しばしばDavison摩耗指数(DI)を用いて作製される。DI数が小さいほど、触媒の耐摩耗性は高い。商業的に許容可能な耐摩耗性は、約20未満、好ましくは10未満、もっとも好ましくは5未満のDIによって示される。
【0047】
再生触媒
[0047]ペンタシル含有触媒/添加物組成物を調製したら、該組成物を、触媒インベントリーを補填して100%にするために用いることができ、または触媒インベントリーに添加物として、例えば“軽質オレフィン添加物”として加えることができ、または、ペンタシルゼオライトを含有しない従来のFCC分解触媒および/もしくは添加物の別個の粒子と組み合わせて、分解触媒インベントリーを形成することができる。一般に、ペンタシル含有触媒/添加物組成物は、全触媒インベントリーの約0.5~約99重量%、例えば約1~約60重量%、例えば約1~約30重量%を構成することができる。
【0048】
[0048]従来のFCC触媒は、流動炭化水素転化プロセスで接触分解活性を有する、ペンタシルゼオライト以外の追加的なゼオライトと、従来の成分、例えば、粘土、マトリックス、バインダーなどとを含有する、任意のFCC触媒組成物を含むことができる。典型的には、追加的なFCC触媒粒子は、開口部が少なくとも0.7nmである細孔構造を有する細孔サイズが大きなゼオライトを含む。
【0049】
[0049] 適した細孔が大きなゼオライトは、結晶質アルミノケイ酸塩ゼオライト、例えば、合成フォージャサイト、すなわち、Y型ゼオライト、X型ゼオライト、およびゼオライトベータのほか、それらの熱処理された(焼成された)および/または希土類交換された誘導体を含む。とりわけ適したゼオライトとしては、焼成され、希土類交換されたY型ゼオライト(CREY)、超安定Y型ゼオライト(USY)、ならびにさまざまな部分的に交換されたY型ゼオライトが挙げられる。他の適した細孔が大きなゼオライトとしては、MgUSY、ZnUSY、MnUSY、P-USY、HY、REY、CREUSY、REUSYゼオライト、およびそれらの混合物が挙げられる。ゼオライトはまた、SAPOおよびALPOのようなモレキュラーシーブとブレンドすることもできる。
【0050】
[0050]標準的なY型ゼオライトは、ケイ酸ナトリウムおよびアルミン酸ナトリウムの結晶化によって商業的に生産される。このゼオライトは、脱アルミニウムによってUSY型に転化させることができ、これにより標準的な親Yゼオライト構造のケイ素/アルミニウム原子比が増大する。脱アルミニウムは、スチーム焼成または化学処理によって達成することができる。追加的なゼオライトに基づく分解触媒はまた、その場で“ゼオライト化”してYゼオライトを形成させた粘土微小球から形成することもできる。手短に言えば、Yゼオライトは、焼成した粘土微小球から、微小球を180°F(82℃)で苛性溶液に接触させることにより形成される“Commercial Preparation and Characterization of FCC Catalysts”, Fluid Catalytic Cracking: Science and Technology, Studies in Surface Science and Catalysis, Vol. 76, p. 120 (1993)。
【0051】
[0051]用いることができる希土類交換ゼオライトはイオン交換によって調製され、イオン交換中に、ゼオライト構造中に存在するナトリウム原子は、通常はセリウム、ランタン、ネオジム、天然に存在する希土類およびそれらの混合物の塩のような希土類金属塩の混合物としての他のカチオンで置き換えられて、それぞれREYおよびREUSYグレードをもたらす。これらのゼオライトをさらに焼成によって処理して、上記CREYおよびCREUSYタイプの材料を提供することができる。MgUSY、ZnUSYおよびMnUSYゼオライトは、REUSYを形成するために用いられる希土類金属塩の代わりにマグネシウム、亜鉛またはマンガンの塩を用いる点を除き、REUSYの形成に関して上記したものと同じ方法で、Mg、ZnもしくはMnまたはそれらの混合物の金属塩を用いることにより形成することができる。
【0052】
[0052] 好ましい未使用のYゼオライトの単位格子サイズ(UCS)は、約24.35~24.7Åである。ゼオライトの単位格子サイズ(UCS)は、ASTM D3942の手順でX線分析により測定することができる。通常、ゼオライト中のケイ素およびアルミニウム原子の相対量と、その単位格子のサイズの間には直接的な関係が存在する。通常、ゼオライト自体および流動分解触媒のマトリックスはともにシリカおよびアルミナの両方を含有するが、触媒マトリックスのSiO2/Al2O3比をゼオライトのそれと混同すべきでない。平衡触媒をX線分析に付す場合、その中に含有される結晶質ゼオライトのUCSを測定しているに過ぎない。
【0053】
[0053]Yゼオライトの単位格子サイズの値はまた、FCC再生器の環境に付されると低減し、結晶構造からのアルミニウム原子の除去により平衡に達する。したがって、FCCインベントリー中のYゼオライトが使用されるにつれ、その骨格Si/Al原子比は約3:1から約30:1に増大する。それに対応して、単位格子サイズは、格子構造からのアルミニウム原子の除去に起因する収縮により低減する。好ましい平衡Yゼオライトの単位格子サイズは、少なくとも24.22Å、好ましくは24.24~24.50Å、より好ましくは24.24~24.40Åである。
【0054】
[0054]一般に、従来のFCC触媒粒子中に存在する非ペンタシルゼオライトの量は、ガソリン範囲のオレフィンの分子を生成するのに十分な量である。例えば、追加的なFCC触媒組成物は、約1~約99.5重量%のペンタシル以外のゼオライト、例えば、Y型ゼオライトを含むことができ、具体的な量は、望ましい活性の量に依存する。より典型的な態様は、約10~約80%の追加的ゼオライトを含み、さらにより典型的な態様は約13~約70%の追加的ゼオライトを含む。
【0055】
[0055]従来のFCC触媒は、望ましい分解活性をもたらすのに十分な量で再生触媒中に存在することができる。一般に、従来のFCC触媒の量は、全再生触媒の約0.5~約99重量%、好ましくは約40~約99重量%、もっとも好ましくは約70~約99重量%の範囲の量で再生触媒中に存在する。
【0056】
再生触媒の調製
[0056]本発明に用いられる再生触媒は、最初の流動化可能な触媒インベントリーを、従来の手段を用いて、該インベントリーが望ましい量のペンタシル含有触媒/添加物組成物と従来のFCC触媒および/または添加物の所望による別個の粒子とを含むように形成し、該触媒インベントリーをFCCUの全体にわたり再循環させてコークス化触媒を提供することにより調製される。その後、コークス化触媒を、約0.30重量%未満の量、例えば約0.25重量%未満の量、例えば約0.22重量%未満の量、例えば約0.20重量%未満の量、例えば約0.18重量%未満の量、例えば約0.15重量%未満の量、例えば約0.10重量%未満の量、例えば約0.08重量%未満の量、例えば約0.05重量%未満の量、例えば約0.03重量%未満の量、例えば約0.01重量%未満の量で炭素を含む再生触媒インベントリーを提供するのに十分か条件下で、FCCUの再生器に再循環させる。典型的には、再生触媒上の炭素含量の量は、0.005%を上回る。一般に、全触媒インベントリー上の炭素の量は、再生触媒インベントリーの約0.005~約0.30重量%、さらに約0.25~約0.1重量%の範囲である。
【0057】
[0057]再生触媒組成物は、FCCプロセスで典型的に見出される条件に抵抗するのに適した耐摩耗性を有する。好ましくは、触媒組成物は、約20未満、好ましくは10未満、もっとも好ましくは5未満のDIを有する。
【0058】
FCCプロセス
[0058]本発明のプロセスは、水素を加えることなく炭化水素供給原料をより低分子量の化合物に分解する従来のFCCプロセスでの使用にとりわけ適している。典型的なFCCプロセスは、流動分解触媒粒子の存在下で分解反応器ユニット(FCCU)または反応器段階において炭化水素供給原料を分解して、液体およびガス状生成物流を生じさせることを伴う。生成物流を除去し、続いて触媒粒子を再生器段階に通し、ここで、酸化雰囲気への暴露によって粒子を再生して、混在コークスを除去する。より詳細には、本開示に従って、触媒粒子は、触媒組成物中の炭素レベルを少なくとも0.3重量%未満に低減するための再生器条件への暴露中に再生される。その後、再生粒子を循環させて分解帯域に戻して、さらに炭化水素分解を触媒させる。このようにして、再生触媒を含む触媒粒子のインベントリーを、全体的分解プロセス中にFCCUの全体にわたり循環させる。
【0059】
[0059]FCCユニットは従来の条件を用いて作動させることができ、反応温度は約400°~700℃の範囲であり、再生は約500°~900℃の温度で生じる。詳細な条件は、処理する石油供給原料、望ましい生成物流、および製油業者に周知の他の条件に依存する。例えば、より軽質の供給原料は、より低温で分解することができる。触媒組成物(すなわちインベントリー)を、反応器内での平衡触媒を維持しつつ、接触分解反応と再生の間で連続的にユニットに通して循環させる。
【0060】
[0060]本明細書中で開示する再生FCC触媒組成物およびプロセスは、ペンタシルゼオライト含有触媒/添加物を利用するさまざまな流動分解プロセスで用いることができる。そのようなプロセスとしては、深度接触分解(Deep Catalytic Cracking)(DCC)、接触熱分解プロセス(CPP)、高過酷度流動接触分解(HS-FCC)、KBR接触オレフィン技術(KBR Catalytic Olefins Technology)(K-COTTM)、SuperflexTM,、極限接触分解(Ultimate Catalytic Cracking)(UCC)を挙げることができる。これらのプロセスの条件および典型的な操作条件を、以下の表に挙げる。
【0061】
【0062】
[0061]本触媒組成物は、さまざまな炭化水素供給原料を分解するために用いることができる。典型的な供給原料は、全体的または部分的に、約30℃を上回る初留点および約850℃以下の終点を有する軽油(例えば、軽質、中質または重質軽油)を包含する。供給原料はまた、ディープカット(deep cut)軽油、減圧軽油、サーマルオイル(thermal oil)、残油、循環油 (cycle stock)、ホールトップ原油(whole top crude)、タールサンド油、シェールオイル、合成燃料、石炭の分解水素化から誘導される重質炭化水素留分、タール、ピッチ、アスファルト、上記いずれかから誘導される水素処理供給原料なども包含することができる。一態様において、供給原料は、沸点が120℃未満であるナフサ供給物であることができる。認識されるように、約400℃を超える高沸点の石油留分の蒸留は、熱分解を避けるために減圧下で行わなければならない。本明細書中で使用する沸騰温度は、便宜上、大気圧に対して補正した沸点を表す。
【0063】
[0062]プロピレン収率の改善は供給原料およびFCC条件に伴い変動するが、典型的な供給原料および約75%の転化率で作動している従来どおりに稼働されたFCCユニット
において本触媒組成物を利用すると、本開示の触媒組成物を含有しない触媒を用いるプロセスと比較して、供給原料に基づき少なくとも0.1%、好ましくは少なくとも3%、もっとも好ましくは少なくとも7%改善されたプロピレン収率をもたらすことができる。本触媒組成物を用いるプロセスからのLPG(C3~C4範囲の炭化水素)収率は、本開示の触媒組成物を含有しない触媒を用いるプロセスと比較して、供給原料の少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも5重量%、もっとも好ましくは少なくとも約12重量%高い可能性がある。
【0064】
[0063]例えば、一態様において、流動接触分解ユニットから含有された生成物流は、約4.5重量%を上回る量、例えば約10重量%を上回る量、例えば約20重量%を上回る量でプロピレンを含有することができる。エチレンは、生成物流中に、約0.5重量%を上回る量、例えば約1.5重量%を上回る量、例えば約2重量%を上回る量で含有されることができる。エチレンは一般に、約25重量%未満の量で生成物流中に含有され、プロピレンは一般に、約40重量%未満の量で生成物流中に含有される。
【0065】
[0064]本開示およびその利点をさらに例示するために、以下の具体的な実施例を示す。本実施例は、例示的な目的のために示しているに過ぎず、添付する特許請求の範囲に対する限定を意味するものではない。本開示は、実施例で説明する具体的な詳細に限定されるものではないことを、理解すべきである。
【0066】
[0065]固体の組成または濃度について言及する本実施例および本明細書の残りの部分において、部および百分率はすべて、特記しない限り重量に基づく。しかしながら、ガスの組成について言及する本実施例および本明細書の残りの部分において、部および百分率はすべて、特記しない限りモルまたは体積に基づく。
【0067】
[0066]本開示は、以下の実施例を参照して、より良く理解することができる。
【実施例】
【0068】
[0067]以下の実施例は、本開示に従って配合された触媒組成物の利点および利益のいくつかを実証するものである。
[0068]ペンタシルゼオライト触媒/添加物組成物中の酸化鉄および五酸化リンの量は、誘導結合プラズマ(ICP)および蛍光X線分光法(XRF)に従って決定した。再生触媒インベントリー上に含有される炭素は、LECO炭素分析器によって測定される。
【0069】
[0069]用語“Davidson摩耗指数(DI)は、7.0ccの試料触媒を取りだして決定した。試料触媒を篩い分けして、0~20ミクロン範囲の粒子を除去する。その後、残った粒子を、高精度で穿孔されたオリフィスを有する焼入れ鋼ジェットカップ中で接触させ、該オリフィスに、湿った(60%)空気のエアジェットを1時間にわたり21リットル/分で通過させる。DIは、最初に存在する>20ミクロンの材料の量に対する、試験中に発生する0~20ミクロンの微粉のパーセントとして、すなわち以下の式で定義される。
DI=100×(試験中に形成する0~20ミクロンの材料の重量%/試験前の20ミクロン以上の原材料の重量%)
DIについては、Cocco et al., Particle Attrition Measurement Using Jet Cup, the 13th International Conference on Fluidization-New Paradigm in Fluidization Engineering, Art. 17 [2010]に記載されている。
【0070】
比較例1:
比較触媒1および3は、鉄化合物を加えずに調製した。乾燥ZSM-5粉末を水中でスラリー化した。このスラリーに、アルミナ、カオリン粘土、および濃(85%)H3PO4を加えた。スラリーを高剪断ミキサーで混合し、Drais媒体ミルでミル粉砕した後、噴霧乾燥した。Bowen噴霧乾燥機を、入口温度400℃、出口温度150℃で操作した。噴霧乾燥した触媒を593℃で40分間焼成した。比較触媒1および3の配合ならびにそれらの得られた性質を、表1および2に示す。触媒中のFe2O3はすべて粘土に由来する。
【0071】
比較例2
比較例2は、4.6%のFe2O3を含み、以下の手順により調製した。乾燥ZSM-5粉末を水中でスラリー化した。このスラリーに、アルミナ、カオリン粘土、FeCl2・4H2O粉末および濃(85%)H3PO4を加えた。スラリーを高剪断ミキサーで混合し、Drais媒体ミルでミル粉砕した後、噴霧乾燥した。Bowen噴霧乾燥機を、入口温度400℃、出口温度150℃で操作した。噴霧乾燥した触媒を593℃で40分間焼成した。比較触媒2の配合および得られた性質を表1に示す。
実施例1:0.6~3.4%のFe2O3を添加した40%ZSM-5
0.6~3.4%のFe2O3を含む一連のZSM-5触媒を、以下の手順により調製した。乾燥ZSM5粉末を水中でスラリー化した。このスラリーに、アルミナ、カオリン粘土、FeCl2・4H2O粉末および濃(85%)H3PO4を加えた。スラリーを高剪断ミキサーで混合し、Drais媒体ミルでミル粉砕した後、噴霧乾燥した。Bowen噴霧乾燥機を、入口温度400℃、出口温度150℃で操作した。噴霧乾燥した触媒を593℃で40分間焼成した。触媒A~Cの配合およびそれらの得られた性質を表1に示す。
【0072】
【0073】
実施例2:0.4~3.1%のFe2O3を添加した55%ZSM-5
0.4~3.1%のFe2O3を含む一連のZSM-5触媒を、以下の手順により調製した。乾燥ZSM-5粉末を水中でスラリー化した。このスラリーに、濃(85%)H3PO4、可溶性鉄塩、アルミナおよびカオリン粘土を加えた。スラリーを高剪断ミキサーで混合し、Drais媒体ミルでミル粉砕した後、噴霧乾燥した。Bowen噴霧乾燥機を、入口温度400℃、出口温度150℃で操作した。噴霧乾燥した触媒を593℃で40分間焼成した。触媒(触媒D~H)の配合およびそれらの得られた性質を表2に示す。
【0074】
【0075】
実施例3:酸化-還元スチーム不活性化サイクル中の触媒のスチーム安定性
酸化鉄含有ZSM-5触媒A~Hならびに比較触媒1、2および3を、混在金属のない状態で、酸化/還元サイクルを包含する環状プロピレンスチーム処理法(Cyclic Propylene Steaming method)(CPS)により不活性化させた。CPS法の解説は、D. Wallenstein, R. H. Harding, J. R. D Nee, and L. T. Boock, “Recent Advances in the Deactivation of FCC Catalysts by Cyclic Propylene Steaming in the Presence and Absence of Contaminant Metals” Applied Catalysis A, General 204 (2000) 89-106に公開されている。不活性化後の触媒の表面積を表1および2に示す。
図1にプロットしたデータは、触媒がより高レベルの鉄を含有する場合、酸化-還元サイクルが表面積安定性に対し悪影響を有することを示している。これは、4%を超えるFe2O3でとりわけ当てはまり、>50%の表面積の低減が、Fe2O3を加えていないベースの比較触媒1および3に対して観察される。
【0076】
実施例4:水熱不活性化中の触媒のスチーム安定性
ZSM-5触媒D~Hおよび比較触媒3を、816℃における100%スチームでの24時間水熱不活性化により不活性化させた。
図2は、816℃における100%スチームでの24時間水熱不活性化後の触媒の表面積を示す。データは、レドックスCPSスチーム処理を利用しない場合、Fe2O3の存在下で表面積の損失は最小限であることを示している。
【0077】
実施例5:酸化-還元スチーム不活性化サイクル後の性能試験
実施例3でCPSにより不活性化した比較触媒1および2ならびに触媒A~Cを、W. R. Grace & Co.-Connから市販されているFCC触媒であるAuroraTM分解触媒とのブレンドとして試験した。ZSM-5添加物を5重量%のレベルでスチーム不活性化Aurora分解触媒とブレンドし、527℃においてACEモデルAP Fluid Bed Microactivityユニットで試験した。3~10の触媒対油比を用いて、各触媒について数回の試験を実施した。触媒対油比は、触媒重量を変化させ、供給物重量を一定に保つことにより変動させた。各試験に利用した供給物重量は1.5gで、供給物注入速度は3.0g/分であった。ACE炭化水素収率を一定の転化率に内挿して触媒を比較した。供給物の性質を表4に示す。ACE内挿データ(表5)は、本発明の触媒A~Cが低鉄分(0.6% Fe2O3)および高鉄分(4.6% Fe2O3)の比較触媒1および2に対し向上したプロピレン収率を示すことを示している。
【0078】
実施例6:軽質オレフィン収率に対する酸化Fen+の効果対還元Fen+の効果
水熱スチームにより不活性化(816℃、100%スチームで24時間)した比較触媒1および比較触媒2を、不活性化したもの(比較触媒1および比較触媒2)および500℃において2時間にわたり水素中で還元した後のもの(比較触媒1(還元)および比較触媒2(還元))として試験した。Fe2O3は不活性化後は主に酸化状態にあり、水素での還元後はより還元状態にある。比較触媒1、比較触媒1(還元)、比較触媒2、および比較触媒2(還元)を、W. R. Grace & Co.-Connから市販されているFCC触媒であるAuroraTM分解触媒とのブレンドとして試験した。試験条件は実施例5で概説したものと同じであった。ZSM5添加物を5重量%のレベルでスチーム不活性化Aurora分解触媒とブレンドした。ACE炭化水素収率を一定の転化率に内挿して触媒を比較した。供給物の性質を表4に示す。ACEデータ(表6)は、酸化および還元条件下で不活性化した低鉄分比較触媒1はほぼ同様のプロピレン収率を有するが、高鉄分比較触媒2の比較は、酸化条件下で不活性化した試料が、水素中で還元した比較触媒2に比べ著しく良好なプロピレン収率を有することを示している。比較触媒2(還元)は比較触媒1と同様の性能を有する。これは、軽質オレフィン性能を向上させるためには、酸化状態において鉄が存在する必要があることを示している。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
実施例7:再生触媒上の炭素の性能効果
比較触媒3および触媒Fを、100%スチーム中で24時間にわたり水熱的にスチーム処理した。その後、スチーム処理した触媒を、実験室で不活性化した5重量%レベルのFCCベース触媒とブレンドした。続いて、触媒ブレンドをパイロットプラントでコークス化した。触媒上で測定されたコークスは>0.6重量%であった。つぎに、コークス化触媒をさまざまな温度で焼成して、触媒上に標的レベルのコークスを得た。その後、再生触媒を、プロピレン活性についてACEで評価した。データは、再生触媒上の炭素が0.30重量%未満において、Fe2O3で修飾した試料は、Fe2O3で修飾していない試料に比べ著しく高いプロピレン活性を有することを示している。触媒上の炭素が0.30重量%を超えると、
図3に示すように、プロピレン活性は急速に低下する。
【0083】
実施例8:本発明の触媒のC2=およびC3=選択性の利点
比較触媒2および触媒Fを、100%スチーム中で24時間にわたり水熱的にスチーム処理した。その後、スチーム処理した触媒を、実験室で不活性化した5重量%のFCCベース触媒とブレンドした。続いて、触媒ブレンドをパイロットプラントでコークス化した。触媒上で測定されたコークスは>0.6重量%であった。つぎに、コークス化触媒をさまざまな温度で焼成して、触媒上に標的コークスレベル(0.05%~<0.5%)を得た。その後、再生触媒を、エチレン+プロピレン活性および選択率についてACEで評価した。
図4のデータは、すべてのレベルの触媒上のコークスにおいて、Fe2O3で修飾した試料は、Fe2O3で修飾していない試料と比較して、一定の全乾燥ガス(水素+C1~C2炭化水素)において高いエチレン+プロピレン選択率を有することを示している。C2-およびC3-オレフィンの選択率がより高いことは、湿潤ガス圧縮機能力に制約されるユニットにとって重要である。これにより、製油業者が、一定の乾燥ガスにおいてより多くのC2-およびC3-オレフィンを生産することによって収益性を最大化することが可能になる。
【国際調査報告】