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特表2022-540139ブタ胎仔肺胞マクロファージ細胞においてアフリカブタ熱ウイルスを増殖させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】ブタ胎仔肺胞マクロファージ細胞においてアフリカブタ熱ウイルスを増殖させる方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/00 20060101AFI20220907BHJP
   A61K 39/187 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20220907BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220907BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20220907BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALN20220907BHJP
【FI】
C12N7/00
A61K39/187
A61K39/39
A61P37/04
A61P31/20
C12N5/0786
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500830
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(85)【翻訳文提出日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 US2020041762
(87)【国際公開番号】W WO2021007572
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】62/952,889
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/873,075
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522008377
【氏名又は名称】アプティミューン バイオロジクス、インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】500436215
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシテイ オブ イリノイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザッカーマン、フェデリコ、エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ディクソン、リンダ、キャスリーン
(72)【発明者】
【氏名】ポーチュガル、マリア ラケル、セイカ
(72)【発明者】
【氏名】ゴートリー、リネット、クレア
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065BB19
4B065CA43
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA51
4C085CC04
4C085CC08
4C085CC11
4C085CC12
4C085CC13
4C085CC14
4C085CC15
4C085CC16
4C085DD06
4C085EE01
4C085FF24
4C085GG01
4C085GG08
(57)【要約】
アフリカブタ熱(ASF)ウイルスの子孫を生成するための方法であって、ASFウイルスを複製することができる単離または精製されたブタ胎仔肺胞マクロファージ細胞を提供すること、ここで、細胞は少なくとも5継代培養される;細胞をASFウイルスに曝露すること;およびASFウイルスを細胞内で複製させること;それによってASFウイルスの子孫を生成することを含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アフリカブタ熱(ASF)ウイルスの子孫を生成するための方法であって、
前記ASFウイルスを複製することができる単離または精製されたブタ胎仔肺胞マクロファージ細胞を提供すること、ここで、前記細胞は少なくとも5継代培養される;
前記細胞を前記ASFウイルスに曝露すること;および
前記ASFウイルスを前記細胞内で複製させること;
それによってA前記SFウイルスの子孫を生成すること
を含む方法。
【請求項2】
前記細胞がZMAC細胞またはその誘導体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞が、ZMAC-1、ZMAC-4、ATCC特許寄託番号PTA-8764として指定される米国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)に寄託された細胞、および前述のいずれかの誘導体からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞を成長因子組成物と接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記成長因子組成物が、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)または顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞が、妊娠期間の約30日目~約90日目のブタ胎仔対象から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ASFワクチンを製造するための方法であって、
ASFウイルスの改変生ウイルス(MLV)株を提供すること、および
ASF MLV株を複製することができる単離または精製されたブタ胎仔肺胞マクロファージ細胞において前記MLV株を増殖させること
を含む方法。
【請求項8】
前記細胞が、初代細胞、細胞集団、細胞株、またはそれらのバリアントもしくは誘導体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞がZMAC細胞またはその誘導体である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞が、ZMAC-1、ZMAC-4、ATCC特許寄託番号PTA-8764として指定される米国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)に寄託された細胞、および前述のいずれかの誘導体からなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞を成長因子組成物と接触させることをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記成長因子組成物が、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)または顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞が、妊娠期間の約30日目~約90日目のブタ胎仔対象から得られる、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
ASFウイルスを増殖させるための方法であって、
ブタ胎仔対象を提供すること、前記対象から細胞を含有する気管支肺胞洗浄液試料を得ること、および前記試料からマクロファージ細胞を分離することを含む、ブタ胎仔肺からブタ胎仔肺胞マクロファージ細胞を単離すること;
前記細胞を培養すること;ならびに
ウイルス複製を可能にするために前記細胞を前記ASFウイルスと接触させること;
それによって前記ASFウイルスを増殖させること
を含む方法。
【請求項15】
前記培養することが、少なくとも5継代にわたって前記細胞を継代すること、または連続培養で少なくとも10日間前記細胞を増殖させること、またはそれらの組合せを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記培養することが、前記細胞を成長因子組成物と接触させることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記成長因子組成物が、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)または顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞が、妊娠期間の約30日目~約90日目のブタ胎仔対象から得られる、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞が少なくとも10継代培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞が少なくとも20継代培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞が細胞株である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞が細胞株である、請求項7に記載の方法。
【請求項23】
前記培養することが、前記細胞を少なくとも20継代にわたって継代することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
ブタ対象におけるASFウイルスの存在を検出するための方法であって、
前記ASFウイルスを複製することができる単離または精製されたブタ胎仔肺胞マクロファージ細胞を提供すること、ここで、前記細胞は少なくとも5継代培養される;
前記細胞を試料と接触させること;
適切な条件下で前記細胞をインキュベートすること;および
前記細胞における前記ASFウイルスの存在を検出すること
を含む方法。
【請求項25】
前記細胞がZMAC細胞またはその誘導体である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞が、ZMAC-1、ZMAC-4、ATCC特許寄託番号PTA-8764として指定される米国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)に寄託された細胞、および前述のいずれかの誘導体からなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞を成長因子組成物と接触させることをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記成長因子組成物が、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)または顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞が、妊娠期間の約30日目~約90日目のブタ胎仔対象から得られる、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記試料が、血液、血清、血漿、リンパ液、唾液、鼻分泌物、糞便、尿、精液、痰、脳脊髄液、涙、粘液、汗、乳汁、および組織細胞からなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記組織細胞が、胸腺、リンパ節、脾臓、骨髄、および扁桃からなる群より選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記検出することが、血球吸着アッセイまたは免疫蛍光法を利用することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
請求項1に記載のASFウイルスの子孫を担体中に含むワクチン。
【請求項34】
アジュバントをさらに含む、請求項33に記載のワクチン。
【請求項35】
ブタにおいてASFVに対する免疫応答を誘発する方法であって、有効量の請求項33に記載のワクチンを前記ブタに投与することを含む方法。
【請求項36】
投与経路が、非経口、経口、鼻腔内、および粘膜からなる群より選択される、請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月11日に出願された米国仮特許出願第62/873,075号および2019年12月23日に出願された米国仮特許出願第62/952,889号の優先権を主張するものであり、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
該当せず。
【背景技術】
【0003】
アフリカブタ熱(ASF)は、家畜および野生ブタの非常に伝染性の高い出血性ウイルス性疾患であり、深刻な経済的および生産上の損失の原因となっている。ASFは、越境性動物疾患でもある。越境性動物疾患は、国境に関わりなく急速に広がり得る非常に伝染性の高い流行性疾患である。そのような疾患は、動物において高い死亡率および罹患率を引き起こし、それにより、牧畜農家の生計にとって絶えず脅威となる一方で、深刻な社会経済的および時には公衆衛生上の影響を及ぼす。ASFのアウトブレイクの場合、ブタの死亡率および罹患率が高くなる可能性があり、その結果、ブタからの食肉の量および品質が有意に低下し得る。ASF疾患を制御することに対する主な制限は、ASFウイルスならびにASF疾患に対処することができるワクチンおよび診断技術を実験するための利用可能で有効な細胞および方法の欠如である。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態によれば、アフリカブタ熱(ASF)ウイルスの子孫を生成する方法は、ASFウイルスを複製することができる単離または精製されたブタ胎仔肺胞マクロファージ細胞を提供すること、ここで、細胞は少なくとも5継代培養され得る;細胞をASFウイルスに曝露すること;およびASFウイルスを細胞内で複製させること;それによってASFウイルスの子孫を生成することを含み得る。
【0005】
いくつかの実施形態では、細胞は、ZMAC細胞またはその誘導体であり得る。
【0006】
いくつかの実施形態では、細胞は、ZMAC-1、ZMAC-4、ATCC特許寄託番号PTA-8764として指定される米国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)に寄託された細胞、および前述のいずれかの誘導体からなる群より選択され得る。
【0007】
いくつかの実施形態では、方法は、細胞を成長因子組成物と接触させることをさらに含み得る。
【0008】
いくつかの実施形態では、成長因子組成物は、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)または顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)を含み得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、細胞は、妊娠期間の約30日目~約90日目のブタ胎仔対象から入手し得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、細胞は、少なくとも10継代培養され得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、細胞は、少なくとも20継代培養され得る。
【0012】
別の実施形態によれば、ASFワクチンを製造する方法は、ASFウイルスの改変生ウイルス(MLV)株を提供すること、およびASF MLV株を複製することができる単離または精製されたブタ胎仔肺胞マクロファージ細胞においてMLV株を増殖させることを含み得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、細胞は、初代細胞、細胞集団、細胞株、またはそれらのバリアントもしくは誘導体であり得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、細胞は、ZMAC細胞またはその誘導体であり得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、細胞は、ZMAC-1、ZMAC-4、ATCC特許寄託番号PTA-8764として指定される米国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)に寄託された細胞、および前述のいずれかの誘導体からなる群より選択され得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、方法は、細胞を成長因子組成物と接触させることをさらに含み得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、成長因子組成物は、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)または顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)を含み得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、細胞は、妊娠期間の約30日目~約90日目のブタ胎仔対象から入手し得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、細胞は細胞株であり得る。
【0020】
別の実施形態によれば、ASFウイルスを増殖させる方法は、ブタ胎仔対象を提供すること、対象から細胞を含有する気管支肺胞洗浄液試料を得ること、および試料からマクロファージ細胞を分離することを含む、ブタ胎仔肺からブタ胎仔肺胞マクロファージ細胞を単離すること;細胞を培養すること;ならびにウイルス複製を可能にするために細胞をASFウイルスと接触させること;それによってASFウイルスを増殖させることを含み得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、培養は、少なくとも5継代にわたって細胞を継代すること、または連続培養で少なくとも10日間細胞を増殖させること、またはそれらの組合せを含み得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、培養は、細胞を成長因子組成物と接触させることを含み得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、成長因子組成物は、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)または顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)を含み得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、細胞は、妊娠期間の約30日目~約90日目のブタ胎仔対象から入手し得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、培養は、少なくとも20継代にわたって細胞を継代することを含み得る。
【0026】
別の実施形態によれば、ブタ対象におけるASFウイルスの存在を検出する方法は、ASFウイルスを複製することができる単離または精製されたブタ胎仔肺胞マクロファージ細胞を提供すること、ここで、細胞は少なくとも5継代培養され得る;細胞を試料と接触させること;適切な条件下で細胞をインキュベートすること;および細胞におけるASFウイルスの存在を検出することを含み得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、細胞は、ZMAC細胞またはその誘導体であり得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、細胞は、ZMAC-1、ZMAC-4、ATCC特許寄託番号PTA-8764として指定される米国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)に寄託された細胞、および前述のいずれかの誘導体からなる群より選択され得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、方法は、細胞を成長因子組成物と接触させることをさらに含み得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、成長因子組成物は、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)または顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)を含み得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、細胞は、妊娠期間の約30日目~約90日目のブタ胎仔対象から入手し得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、試料は、血液、血清、血漿、リンパ液、唾液、鼻分泌物、糞便、尿、精液、痰、脳脊髄液、涙、粘液、汗、乳汁、および組織細胞からなる群より選択され得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、組織細胞は、胸腺、リンパ節、脾臓、骨髄、および扁桃からなる群より選択され得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、検出は、血球吸着アッセイまたは免疫蛍光を利用することを含み得る。
【0035】
別の実施形態によれば、ワクチンは、担体中に本開示のASFウイルスの子孫を含み得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、ワクチンは、アジュバントをさらに含み得る。
【0037】
別の実施形態によれば、ブタにおいてASFVに対する免疫応答を誘発する方法は、有効量の本開示のワクチンをブタに投与することを含み得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、投与経路は、非経口、経口、鼻腔内、および粘膜からなる群より選択され得る。
【0039】
この概要は、特許請求される主題の重要なまたは本質的な特徴を特定することを意図しておらず、特許請求される主題の範囲を限定する助けとして使用されることも意図していない。本開示のさらなる実施形態、形態、特徴、および態様は、本明細書と共に提供される説明および図面から明らかになるであろう。
【0040】
本開示のいくつかの実施形態の教示は、添付の図面と併せて記載される説明を参照することによってよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、一実施形態による成長因子の存在下でのZMAC-1細胞の増殖を示す。
【0042】
図2図2は、一実施形態によるZMAC細胞の収量を示す。
【0043】
図3図3は、一実施形態によるZMAC-4細胞の様々な特徴を示す。
【0044】
図4図4は、一実施形態によるZMAC-4細胞のASFVによる感染を示す。
【0045】
図5図5は、一実施形態による、72時間の感染期間に沿ってZMACおよびブタ骨髄(PBM)培養物で得られたASFV-Georgia 2007/1の力価を示す。
【0046】
図6図6は、一実施形態による、ZMAC細胞における5日間の感染に沿った子孫ウイルス力価を示す。
【0047】
図7図7は、一実施形態による、OURT88/1毒性分離株によるチャレンジ後の異なる日に、弱毒株OURT88/3を用いてPirbright Instituteで免疫したブタの臨床スコアを示す。
【0048】
図8図8は、一実施形態による、ZMAC-4細胞で継代したOURT88/3を用いてブタを免疫した後の体温を示す。
【0049】
図9図9は、一実施形態による、OURT88/3株による免疫後またはOURT88/3による免疫なしのいずれかで、Pirbright Instituteで毒性株OURT88/1を用いてチャレンジしたブタの死後器官を示す。
【0050】
図10図10は、一実施形態による、ZMAC-4細胞で継代したOURT88/3を用いてブタを免疫した後の血液1ml当たりのウイルスゲノムのレベルを示す。
【0051】
図11図11は、一実施形態による、定量的PCRによって推定した感染血液中のASFVゲノムコピーの力価を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本開示の概念は、様々な修正および代替形態を受け入れる余地があるが、その特定の実施形態を例として図面に示しており、本明細書で詳細に説明する。しかしながら、本開示の概念を開示される特定の形態に限定する意図はなく、逆に、その意図は、本開示および添付の特許請求の範囲と矛盾しない全ての修正、等価物、および代替物をカバーすることであることを理解されたい。
【0053】
本明細書における「いくつかの実施形態」、「1つの実施形態」、「一実施形態」、「例示的な実施形態」などへの言及は、記載される実施形態が特定の特徴、構造、または特性を含み得ることを示すが、全ての実施形態がその特定の特徴、構造、または特性を含んでもよく、または必ずしも含まなくてもよい。さらに、そのような語句は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性が一実施形態に関連して説明される場合、明示的に記載されているか否かにかかわらず、他の実施形態に関連してそのような特徴、構造、または特性を達成することは当業者の知識の範囲内であると考えられる。
【0054】
本開示は、アフリカブタ熱(ASF)ウイルスの子孫を生成する方法を提供する。いくつかの実施形態では、この方法は、ASFウイルスを複製することができる単離または精製されたブタ胎仔肺胞マクロファージ細胞を提供すること、ここで、細胞は少なくとも5継代培養され得る;細胞をASFウイルスに曝露すること;およびASFウイルスを細胞内で複製させること;それによってASFウイルスの子孫を生成することを含み得る。アフリカブタ熱は、本明細書ではASFとも呼ばれ得る。アフリカブタ熱ウイルスは、本明細書ではASFVとも呼ばれ得る。いくつかの実施形態では、細胞をASFVに曝露することは、細胞をASFVに感染させることを指し得る。
【0055】
本明細書で使用される場合、「ブタ」という用語は、いずれかの性別または任意の年齢のバビルサバビルサ(Babyrousa babyrussa)またはゴールデンバビルサ(Golden Babirusa)、セレベスバビルサ(Babyrousa celebensis)またはスラウェシバビルサ(Sulawesi Babirusa)、トギアンバビルサ(Babyrousa togeanensisまたはTogian Babirusa)、モリイノシシ(Hylochoerus meinertzhageniまたはGiant Forest Hog)、砂漠イボイノシシ(Phacochoerus aethiopicus)またはケープイボイノシシ(Cape Warthog)、ソマリアイボイノシシ(Somali Warthog)または砂漠イボイノシシ(Desert Warthog)、アフリカイボイノシシ(Phacochoerus africanus)またはイボイノシシ(Common Warthog)、コビトイノシシ(Porcula salvaniaまたはPygmy Hog)、カワイノシシ(Potamochoerus larvatusまたはBushpig)、アカカワイノシシ(Potamochoerus porcusまたはRed River Hog)、パラワンイノシシ(Sus ahoenobarbusまたはPalawan Bearded Pig)、ヒゲイノシシ(Sus barbatusまたはBearded Pig)、ベトナムイボイノシシ(Sus bucculentusまたはVietnamese Warty Pig)、ヴィサヤンヒゲイノシシ(Sus cebifronsまたはVisayan Warty Pig)、セレベスヒゲイノシシ(Sus celebensisまたはCelebes Warty Pig)、フローレスイボイノシシ(Sus heureniまたはFlores Warty Pig)、ミンドロイボイノシシ(Sus oliveriまたはMindoro Warty Pig)、フィリピンイボイノシシ(Sus philippensisまたはPhilippine Warty Pig)、イノシシ(Sus scrofaまたはWild BoarまたはDomestic Pig)、スンダイボイノシシ(Sus verrucosusまたはJavan Warty Pig)、および他の任意の雄ブタ(boar)、雌ブタ(sow)、仔ブタ、ブタ同腹仔(farrow)、乳離れ直後の仔ブタ(shoat)、未経産ブタ(gilt)、去勢ブタ(barrow)、成豚(hog)、ブタ(swine)、またはイノシシ属(sus)を含むがこれらに限定されない、生物学的な科であるイノシシ科(Suidae)に属するメンバーである、野生または家畜の任意の動物を指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、「細胞」という用語は、当技術分野で理解されるような生物学的実体を指し得、初代細胞または細胞株として記載され得る特定の実体を包含することが意図されている。これらの用語のいくつかが本明細書で使用される場合、そのような使用は、単によく理解されている区別を強調するためにすぎないことが理解されるであろう。例えば、「細胞または細胞株」という語句は、元の一次分離株と、元の一次分離株の直接誘導体であり得る不死化バージョンとの間の対比を強調し得る。いくつかの実施形態では、本開示の細胞または細胞株は、本明細書に記載の初代細胞または細胞株の自発的不死化バリアント、意図的に形質転換された誘導体、他のバリアントまたは誘導体、および他の不死化バージョンの1つ以上であり得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、本開示の細胞株は、ASFの増殖を支持することが可能であり得るブタ肺胞マクロファージ細胞株であり得る。いくつかの実施形態では、本開示の細胞は、ブタ胎仔肺試料から入手し得る。いくつかの実施形態では、本開示の細胞は、ブタ胎仔肺胞マクロファージ細胞であり得る。いくつかの実施形態では、本開示の細胞はZMAC細胞であり得る。ZMAC細胞は、ASFVの感染性および増殖を支持する能力を有すると特徴付けられ得る、および/または観察され得る。いくつかの実施形態では、本開示の細胞は、ZMAC-1として指定され得る。いくつかの実施形態では、本開示の細胞は、ATCC特許寄託番号PTA-8764として指定されるまたはそれに由来する米国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)の寄託物として指定され得る。本明細書で使用される場合、「ATCC」という用語は、米国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)を指し得る。いくつかの実施形態では、本開示の細胞は、ZMAC1107-4として指定され得る。ZMAC1107-4は、本明細書ではZMAC-4とも呼ばれ得、そのような用語は、本明細書では互換的に使用される。いくつかの実施形態では、本開示の細胞は、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,202,717号、同第8,663,984号、および同第9,169,465号に記載されている任意の細胞を含み得るか、または任意の細胞の特徴を有し得る。これらの先行特許と本開示との間に矛盾がある場合には、本開示が優先される。
【0058】
ブタ胎仔肺試料から得られる本開示の細胞を含む実施形態では、ブタ胎仔肺は、約20~約80日の妊娠期間を有するブタ胎仔に由来し得る。いくつかの実施形態では、ブタ胎仔肺は、約50~約70日の妊娠期間を有するブタ胎仔に由来し得る。いくつかの実施形態では、ブタ胎仔肺は、約30~約90日の妊娠期間を有するブタ胎仔に由来し得る。他の妊娠期間を有するブタ胎仔も本開示の範囲内にあることが企図されることを理解されたい。
【0059】
本明細書で使用される場合、「単離すること」、「単離する」、「単離された」などの用語は、天然の状態とは異なる、および/または出発物質に対して修飾されている、操作された状態を指し得、その場合、この用語は、精製されるという概念と一致することが意図されている。例えば、単離された初代細胞は、宿主生物における天然組織または他の供給源から切除され、元の供給源から離れて維持される。別の例として、細胞成分は、培養に入れるか、または肺洗浄液ベースの試料からさらに分離してもよく、したがって、比較的単離された細胞が得られる。
【0060】
本明細書で使用される場合、「精製された」という用語は、出発物質に対して物質が相対的に濃縮、分離、および/または除去されている状態を指し得る。この用語は、少なくとも部分的な精製の状態を包含し得、必ずしも絶対的な純度の状態を意味しない。例えば、この用語は、ASFウイルスを複製することができ、混合培養物中に存在する細胞に適用され得、独立して、通常純粋培養物と見なされ得るものに適用され得る。この用語は、任意で混合培養物である初代細胞培養物に適用され得る。この用語は、細胞株に適用され得る。
【0061】
本明細書で使用される場合、「培養する」、「培養された」、「培養すること」という用語および同様の用語は、細胞が制御された条件下で、一般にそれらの自然環境の外側で増殖する過程を指す。いくつかの実施形態では、細胞を最初にブタから取り出し、その後好ましい人工環境で増殖させ得る。いくつかの実施形態では、細胞を組織から直接取り出し、培養前に酵素的または機械的手段によって解離させ得る。いくつかの態様では、細胞は、既に樹立されている細胞系または細胞株に由来し得る。
【0062】
本明細書で使用される場合、「継代」、「複数継代」、「継代された」、「継代すること」という用語および同様の用語は、培地の除去および前の培養物から新鮮な増殖培地への細胞の移入を含み、それによって細胞のさらなる増殖を可能にし得る、細胞の植え継ぎ培養を指す。いくつかの実施形態では、本開示の細胞は、少なくとも5継代培養され得る。いくつかの実施形態では、本開示の細胞は、少なくとも10継代培養され得る。いくつかの実施形態では、本開示の細胞は、少なくとも15継代培養され得る。いくつかの実施形態では、本開示の細胞は、少なくとも20継代培養され得る。いくつかの実施形態では、本開示の細胞は、少なくとも50継代培養され得る。いくつかの実施形態では、培養は、本開示の細胞を少なくとも5継代にわたって継代すること、および/または本開示の細胞を連続培養で少なくとも10日間増殖させることを含み得る。本開示は、他の継代間隔にわたって本開示の細胞を培養することを企図することを理解されたい。
【0063】
本開示の方法は、本開示の細胞を成長因子組成物と接触させることをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、成長因子組成物は、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)を含み得る。いくつかの実施形態では、成長因子組成物は、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)を含み得る。
【0064】
本開示はまた、ASFワクチンを製造する方法を提供する。いくつかの実施形態では、この方法は、ASFウイルスの改変生ウイルス(MLV)株を提供すること、およびASF MLV株を複製することができる単離または精製されたブタ胎仔肺胞マクロファージ細胞においてMLV株を増殖させることを含み得る。
【0065】
本開示の方法および組成物に使用されるASFVウイルスは、生きていてもよく、弱毒化されていてもよく、または不活性化されていてもよい。本明細書で使用される場合、「弱毒化された」、「改変生ウイルス」、「MLV」などの用語は、もはやASFを引き起こすことができないが、依然として本開示の細胞において感染および複製することができるように改変されたASFVの量を指し得る。本明細書で使用される場合、「不活性化された」、「死滅した」、「死んだ」という用語および同様の用語は、死滅したASFVを指し得る。本明細書で使用される場合、「ワクチン」という用語は、投与するとASFVに対する抗体産生を刺激するが、重篤な感染を引き起こすことができないASFVのMLV株または死滅ASFV、またはASFVの構造の一部を指し得る。
【0066】
本開示はまた、ASFウイルスを増殖させる方法を提供する。この方法は、ブタ胎仔対象を提供すること、対象から細胞を含有する気管支肺胞洗浄液試料を得ること、および試料からマクロファージ細胞を分離することを含む、ブタ胎仔肺からブタ胎仔肺胞マクロファージ細胞を単離すること;細胞を培養すること;ならびにウイルス複製を可能にするために細胞をASFウイルスと接触させること;それによってウイルスを増殖させることを含み得る。
【0067】
本開示はまた、ブタ対象におけるASFウイルスの存在を検出する方法を提供する。いくつかの実施形態では、この方法は、ASFウイルスを複製することができる単離または精製されたブタ胎仔肺胞マクロファージ細胞を提供すること、ここで、細胞は少なくとも5継代培養される;細胞を試料と接触させること;適切な条件下で細胞をインキュベートすること;および細胞におけるASFウイルスの存在を検出することを含み得る。そのような検出方法は、ASFを診断するために使用され得る。
【0068】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、血液、血清、血漿、リンパ液、唾液、鼻分泌物、組織細胞、血清、唾液、精液、痰、脳脊髄液(CSF)、涙、粘液、汗、乳汁、または脳抽出物を指し得る。身体組織は、胸腺、リンパ節、脾臓、骨髄、または扁桃組織を含み得る。
【0069】
本明細書で使用される場合、本開示の細胞をインキュベートすることに関連して「適切な条件」という用語は、温度、湿度、環境中のガス混合物などの適切な条件を指し得る。いくつかの実施形態では、温度は37℃(すなわち、摂氏)であり得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、ASFウイルスの存在を検出することは、血球吸着アッセイまたは免疫蛍光を利用することを含み得る。本開示は、ASFウイルスの存在を検出するために使用し得る他の技術を企図することを理解されたい。
【0071】
本開示はまた、担体中にASFウイルスの子孫を含むワクチンを提供する。ワクチンは、ASFVに対する応答を開始するようにブタ対象の免疫系を調製することによって機能し得る。一実施形態では、ワクチンは、非毒性、非感染性、および/または非病原性形態でワクチン接種されるブタ対象の体内に導入され得る、本開示のASFVの子孫またはその一部であり得る抗原を含み得る。本開示のワクチン中のASFV抗原は、抗原が由来するASFVに対してブタ対象の免疫系を「プライミング」または「感作」させ得る。ASFVへのブタ対象の免疫系のその後の曝露は、宿主ブタ対象内でASFVが増殖し、十分な細胞に感染してまたは損傷を与えて疾患症状を引き起こすことができる前に、ASFVを制御または破壊し得る迅速で強固な特異的免疫応答をもたらし得る。
【0072】
一実施形態では、ワクチンを有効にするのに十分な程度まで免疫系を刺激するために、すなわち免疫を付与するために、ワクチン中に存在する抗原に対する免疫応答を増強することが必要であり得る。この目的のために、ワクチン組成物中の抗原に対するインビボ免疫応答を増強し得るアジュバント(または免疫増強剤)として公知の添加剤が考案されている。いくつかの実施形態では、本開示のワクチンは、アジュバントをさらに含み得る。
【0073】
アジュバントは、本明細書に記載の抗原などの他の薬剤の効果を修飾する任意の組成物、薬理学的または免疫学的薬剤であり得る。アジュバントの例としては、マイコバクテリウム属菌(Mycobacterium)溶解物(ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)全血溶解物を含む)、スメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)(スメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)全血溶解物を含む)、コレラ毒素Bサブユニットおよび大腸菌(E.coli)熱不安定性変異型毒素が挙げられ得るが、これらに限定されない。アジュバントの他の例としては、進化的に保存された分子、いわゆるPAMPが挙げられ得、これには、リポソーム、リポ多糖(LPS)、抗原の分子ケージ、細菌細胞壁の成分、ならびに二本鎖RNA(dsRNA)、一本鎖DNA(ssDNA)、および非メチル化CpGジヌクレオチド含有DNAなどのエンドサイトーシスされた核酸が挙げられ得る。アジュバントのさらなる例としては、抗原が吸着され得る無機物(または水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、ヒドロキシリン酸アルミニウムなどの無機塩)の懸濁液を含み得るアルミニウム含有アジュバントが挙げられ得るが、これらに限定されない。アジュバントのさらなる例としては、任意のそのようなアルミニウム塩の非存在下で製剤化され得る、アルミニウム(ミョウバン)を含まないアジュバントが挙げられ得るが、これらに限定されない。ミョウバン不含アジュバントとしては、油エマルジョンおよび水エマルジョン、例えば油中水型、水油水型および水中油型(ならびに二重エマルジョンおよび可逆的エマルジョンを含むそれらの変形)、リポサッカリド、リポ多糖、免疫刺激性核酸(CpGオリゴヌクレオチドなど)、リポソーム、Toll様受容体アゴニスト(特にTLR2、TLR4、TLR7/8およびTLR9アゴニスト)、ならびにそのような成分の様々な組合せが挙げられ得る。
【0074】
本開示のワクチンにおいて利用し得る担体の非限定的なリストには、水または生理食塩水、ゲル、軟膏、溶媒、油、希釈剤、液体軟膏基剤、リポソーム、ミセル、巨大ミセル、合成ポリマー、エマルジョン、脂質で作られた固体粒子などが含まれ得るが、これらに限定されない。当技術分野で公知の任意の希釈剤を本開示に従って利用し得ることを理解されたい。本開示のいくつかの実施形態では、希釈剤は水溶性であり得る。本開示のいくつかの実施形態では、希釈剤は水不溶性であり得る。本明細書で使用される場合、「希釈剤」という用語は、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、デキストロース、グリセロール、エタノール、緩衝酢酸ナトリウムまたは緩衝酢酸アンモニウム溶液など、およびそれらの組合せを含み得るが、これらに限定されない。
【0075】
本開示はまた、ブタにおいてASFVに対する免疫応答を誘発する方法を提供する。いくつかの実施形態では、この方法は、有効量の本開示のワクチンをブタに投与することを含み得る。免疫応答は、ブタに対して防御的であり得る。
【0076】
本開示の方法を実施する際には、有効量のワクチンをブタに投与する。本明細書で使用される場合、投与の文脈における「有効量」という用語は、ブタに投与された場合にASFVに対する免疫応答を生成するのに十分なワクチンの量を指す。そのような量は、ブタにおいて有害事象を全くまたはほとんどもたらさないべきである。同様に、そのような量は、毒性作用を全くまたはほとんどもたらさないべきである。ワクチンの量は、処置されるブタの種類、ブタの年齢、大きさ、体重および全身的な身体状態、ならびに投薬レジメンを含むがこれらに限定されない多くの要因に依存して変動し得ることを理解されたい。
【0077】
本明細書で使用される場合、「免疫応答」は、刺激に対するB細胞、T細胞、または単球などの免疫系の細胞の応答であり得る。免疫応答は、抗原特異的中和抗体などの特異的抗体の産生をもたらすB細胞応答であり得る。免疫応答はまた、CD4+応答またはCD8+応答などのT細胞応答であり得る。いくつかの実施形態では、応答は、特定の抗原に特異的であり得る(すなわち、「抗原特異的応答」)。免疫応答はまた、自然応答を含み得る。抗原が病原体に由来する場合、抗原特異的応答は「病原体特異的応答」である。「防御免疫応答」は、病原体の有害な機能もしくは活性を阻害する、病原体による感染を減少させる、または病原体による感染から生じる症状(死亡を含む)を減少させる免疫応答である。防御免疫応答は、例えば、プラーク減少アッセイもしくはELISA中和アッセイにおけるウイルス複製もしくはプラーク形成の阻害によって、またはインビボでの病原体チャレンジに対する耐性を測定することによって測定することができる。
【0078】
本開示の方法で利用されるワクチンは、経口、静脈内(「IV」)、皮下(「SC」)、筋肉内(「IM」)、腹腔内、皮内、眼内、肺内、鼻腔内、経皮、皮下、局所、粘膜、鼻、皮膚へのインプレッション、膣内、子宮内、頸管内、および直腸を含むがこれらに限定されない様々な適用可能経路を使用して投与し得ることを理解されたい。本開示のいくつかの実施形態では、鼻腔内投与経路は、鼻腔内点滴を含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、鼻腔内投与経路は、鼻腔内エアロゾル送達を含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、鼻腔内エアロゾル送達は、鼻スプレー送達を含み得る。
【0079】
本開示は、本開示の細胞および方法を提供することによってASF疾患の問題に対処する。インビボでのASFV複製のための主な標的細胞は、単球およびマクロファージである。ASFV複製のためのインビボ標的細胞に類似するブタマクロファージ細胞株の欠如は、ウイルス宿主相互作用に関する研究を制限し、弱毒生ワクチンの開発を制限し、ウイルス診断をより面倒にしている。VeroおよびCOS-1などのアフリカミドリザルの腎臓に由来する樹立された細胞株の使用は、研究目的のためのASFVの増幅を可能にした。しかしながら、それらの使用は、ウイルスが最初にそのタイプの細胞株において増殖するように適合されることを必要とし、その使用を、細胞培養において効率的に増殖するために長期間の適合プロセスを通過していなければならない限られた数の実験室株に限定する。自然のアウトブレイクからの野生型ASFV分離株は、これらの従来のサル由来の樹立細胞培養物では複製しないことが認められているので、ブタ単球およびマクロファージは、ウイルスストックを増殖させ、自然のASFV感染を模倣するために選択されるインビトロ系である。これは研究目的には十分であり得るが、初代細胞の使用は、完全に認可された市販のワクチンを製造するための細胞基質としての、USDA家畜用生物製剤センター(USDA Center for Veterinary Biologics)(CVB)による規制上の承認には適していないため、市販のワクチンの開発には十分ではない。ASFVの弱毒株を開発するために、樹立された細胞株を使用する試みがなされてきた。残念なことに、弱毒化ワクチン株を開発する目的でVero細胞においてASFVのGeorgia 2007野生型株を110回連続継代すると、ウイルスの弱毒化がもたらされたが、ワクチンの有効性の喪失ももたらされた。その結果、末梢血または骨髄のいずれかに由来するブタマクロファージの初代培養物において、野外分離株、さらには最近開発されたGeorgia 2007遺伝子欠失ASFVワクチン候補の培養が行われている。対照的に、本開示に示されるように、野生型ASFV株Georgia 2007/1ならびにASFVのいくつかの他の野生型および弱毒株は、ZMAC細胞において容易かつ効率的に複製することができる。さらに、本開示に示されるように、ZMAC細胞におけるASFV OURT88/3の弱毒株の12継代は、毒性ウイルスによるチャレンジに対してブタの防御免疫を誘導する能力を低下させなかった。
【0080】
ウイルス感染に必要な特異的受容体の存在は、宿主細胞膜上に発現され、したがって、ウイルス向性および内在化の決定因子を構成する。より高い成熟および分化状態を有する単球/マクロファージは、ASFVが選択的に感染する細胞サブセットであることが報告されている。これに関して、野生型ASFVに感染している成熟単球/マクロファージのより高い割合は、CD163およびSWC9/CD203aのより高い発現と相関することが記載されている。CD163の細胞表面発現は、最初は細胞がASFVに感染するために必要であると考えられたが、その後の研究は、CD163陰性単球がASFVに感染し得ることを示すことによってこの観察を否定した。さらに、CD163を欠く遺伝子編集ブタ、ならびにそれらに由来する単球およびマクロファージは、ASFVの野生型Georgia 2007/1株による感染に完全に感受性であった。したがって、CD163はASFV感染に必要ではないようである。SWC9/CD203aの場合、単球およびマクロファージによるこの分子の発現の上方制御は、それらの分化およびマクロファージへの成熟に関連する。単球はSWC9/CD203aを発現せず、主にASFV感染に耐性である。これらの細胞は、成熟マクロファージに分化するにつれて、SWC9/CD23aの発現を上方制御し、ASFV感染に感受性になる。本開示に示されるように、ZMAC細胞はSWC9/CD203aを発現せず、したがって未熟なタイプのマクロファージと見なすことができる。したがって、ZMAC細胞がASFVの野生型株を効率的に複製する能力は、この細胞が未熟なマクロファージであると考えられ、ASFVによる感染に対する感受性に関連している細胞表面分子(SWC9/CD203a)を発現しないので、予想外であった。さらに、ZMAC細胞が野生型ASFVを効率的に複製する能力は、Weingartl et al.(Weingartl HM,Sabara M,Pasick J,van Moorlehem E,Babiuk L.)Continuous porcine cell lines developed from alveolar macrophages:partial characterization and virus susceptibility.J Virol Methods.2002;104(2):203-216.Doi:10.1016/s0166-0934(02)00085-x)によって記載されたブタ肺胞マクロファージ細胞株3D4/2、3D4/21および3D4/3が野生型ASFVに非効率的に感染し、ASFVの連続継代を支持しなかったので、異例である。本開示に記載されるように、ZMAC細胞は、野生型ASFV株Georgia 2007/1の増殖を効率的に可能にし、高い力価をもたらした。
【0081】
本開示の他の部分で説明および提供される態様および実施形態に加えて、以下の実施形態の非限定的なリストも企図される。
【0082】
1.アフリカブタ熱(ASF)ウイルスの子孫を生成する方法であって、
ASFウイルスを複製することができる単離または精製されたブタ胎仔肺胞マクロファージ細胞を提供すること、ここで、細胞は少なくとも5継代培養される;
細胞をASFウイルスに曝露すること;および
ASFウイルスを細胞内で複製させること;
それによってASFウイルスの子孫を生成すること
を含む方法。
【0083】
2.細胞が、ZMAC、ATCC特許寄託番号PTA-8764として指定される米国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)への寄託物、および前述のいずれかの誘導体からなる群より選択される、条項1に記載の方法。
【0084】
3.細胞が、ZMAC-1、ZMAC-4、ATCC特許寄託番号PTA-8764として指定される米国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)に寄託された細胞、および前述のいずれかの誘導体からなる群より選択される、条項1に記載の方法。
【0085】
4.細胞を成長因子組成物と接触させることをさらに含む、条項1に記載の方法。
【0086】
5.成長因子組成物が、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)または顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)を含む、条項4に記載の方法。
【0087】
6.細胞が、妊娠期間の約30日目~約90日目のブタ胎仔対象から得られる、条項1に記載の方法。
【0088】
7.ASFワクチンを製造する方法であって、
ASFウイルスの改変生ウイルス(MLV)株を提供すること、およびASF MLV株を複製することができる単離または精製されたブタ胎仔肺胞マクロファージ細胞においてMLV株を増殖させること
を含む方法。
【0089】
8.細胞が、初代細胞、細胞集団、細胞株、またはそれらのバリアントもしくは誘導体である、条項7に記載の方法。
【0090】
9.細胞が、ZMAC、ATCC特許寄託番号PTA-8764として指定される米国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)への寄託物、および前述のいずれかの誘導体からなる群より選択される、条項7に記載の方法。
【0091】
10.細胞が、ZMAC-1、ZMAC-4、ATCC特許寄託番号PTA-8764として指定される米国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)に寄託された細胞、および前述のいずれかの誘導体からなる群より選択される、条項7に記載の方法。
【0092】
11.細胞を成長因子組成物と接触させることをさらに含む、条項7に記載の方法。
【0093】
12.成長因子組成物が、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)または顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)を含む、条項11に記載の方法。
【0094】
13.細胞が、妊娠期間の約30日目~約90日目のブタ胎仔対象から得られる、条項7に記載の方法。
【0095】
14.ASFウイルスを増殖させる方法であって、
ブタ胎仔対象を提供すること、対象から細胞を含有する気管支肺胞洗浄液試料を得ること、および試料からマクロファージ細胞を分離することを含む工程によってブタ胎仔肺からブタ胎仔肺胞マクロファージ細胞を単離すること;
細胞を培養すること;ならびに
ウイルス複製を可能にするために細胞をASFウイルスと接触させること;
それによってウイルスを増殖させること
を含む方法。
【0096】
15.培養することが、少なくとも5継代にわたって細胞を継代すること、および/または連続培養で少なくとも10日間細胞を増殖させることを含む、条項14に記載の方法。
【0097】
16.培養することが、細胞を成長因子組成物と接触させることを含む、条項14に記載の方法。
【0098】
17.成長因子組成物が、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)または顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)を含む、条項16に記載の方法。
【0099】
18.細胞が、妊娠期間の約30日目~約90日目のブタ胎仔対象から得られる、条項14に記載の方法。
【0100】
19.細胞が少なくとも10継代培養される、条項1に記載の方法。
【0101】
20.細胞が少なくとも20継代培養される、条項1に記載の方法。
【0102】
21.細胞が細胞株である、条項1に記載の方法。
【0103】
22.細胞が細胞株である、条項7に記載の方法。
【0104】
23.培養することが、細胞を少なくとも20継代にわたって継代することを含む、条項14に記載の方法。
【0105】
24.ASFウイルスに感染することができるおよび/またはASFウイルスを複製することができ、少なくとも5継代培養される、単離されたブタ胎仔肺胞マクロファージ細胞。
【0106】
25.細胞が少なくとも10継代にわたって培養で増殖される、条項24に記載の細胞。
【0107】
26.細胞が少なくとも20継代にわたって培養で増殖される、条項24に記載の細胞。
【0108】
27.細胞が少なくとも50継代にわたって培養で増殖される、条項24に記載の細胞。
【0109】
28.少なくとも10 TCID50/mlの力価でASFウイルスを増殖させることができる、条項24に記載の細胞。
【0110】
29.少なくとも約3.16×10 TCID50/mlの力価でASFウイルスを増殖させることができる、条項24に記載の細胞。
【0111】
30.少なくとも約3.16×10 TCID50/mlの力価でASFウイルスを増殖させることができる、条項24に記載の細胞。
【0112】
31.少なくとも約3.16×10 TCID50/mlの力価でASFウイルスを増殖させることができる、条項24に記載の細胞。
【0113】
32.少なくとも約6.81×10 TCID50/mlの力価でASFウイルスを増殖させることができる、条項24に記載の細胞。
【0114】
33.妊娠期間の約30日目~約90日目のブタ胎仔に由来する、条項24に記載の細胞。
【0115】
34.ASFウイルスに感染することができるおよび/またはASFウイルスを複製することができる、ブタ胎仔肺胞マクロファージ細胞株。
【0116】
35.少なくとも10 TCID50/mlの力価でASFウイルスを増殖させることができる、条項34に記載の細胞。
【0117】
36.少なくとも約3.16×10 TCID50/mlの力価でASFウイルスを増殖させることができる、条項34に記載の細胞。
【0118】
37.少なくとも約3.16×10 TCID50/mlの力価でASFウイルスを増殖させることができる、条項34に記載の細胞。
【0119】
38.少なくとも約3.16×10 TCID50/mlの力価でASFウイルスを増殖させることができる、条項34に記載の細胞。
【0120】
39.少なくとも約6.81×10 TCID50/mlの力価でASFウイルスを増殖させることができる、条項34に記載の細胞。
【0121】
40.妊娠期間の約30日目~約90日目のブタ胎仔の細胞に由来する、条項34に記載の細胞株。
【0122】
41.ATCC特許寄託番号PTA-8764として指定される米国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)への寄託物によって代表されるかまたはそれに由来する、単離されたZMAC-1細胞。
【0123】
42.少なくとも10 TCID50/mlの力価でASFウイルスを増殖させることができる、条項41に記載の細胞。
【0124】
43.少なくとも約3.16×10 TCID50/mlの力価でASFウイルスを増殖させることができる、条項41に記載の細胞。
【0125】
44.少なくとも約3.16×10 TCID50/mlの力価でASFウイルスを増殖させることができる、条項41に記載の細胞。
【0126】
45.少なくとも約3.16×10 TCID50/mlの力価でASFウイルスを増殖させることができる、条項41に記載の細胞。
【0127】
46.少なくとも約6.81×10 TCID50/mlの力価でASFウイルスを増殖させることができる、条項41に記載の細胞。
【0128】
47.ブタ胎仔肺から細胞を単離する方法であって、
ブタ胎仔対象を提供する工程;
対象から細胞含有試料を得る工程;
試料から細胞を分離する工程、および細胞を少なくとも5継代培養する工程、ここで、細胞はASFウイルスを複製することができる;
それによって細胞を単離する工程
を含む方法。
【0129】
48.ブタ胎仔肺から細胞を単離する方法であって、
ブタ胎仔対象を提供する工程;
対象から細胞含有試料を得る工程、ここで、細胞含有試料は気管支肺胞洗浄液試料である;および
試料から細胞を分離する工程、ここで、細胞はASFウイルスを複製することができる;
それによって細胞を単離する工程
を含む方法。
【0130】
49.分離工程が密度勾配遠心分離によるものである、条項47に記載の方法。
【0131】
50.細胞がマクロファージである、条項47に記載の方法。
【0132】
51.連続培養で少なくとも10日間細胞を増殖させる工程をさらに含む、条項47に記載の方法。
【0133】
52.培養することが少なくとも10、20、または50継代にわたる、条項47に記載の方法。
【0134】
53.ブタ胎仔対象が妊娠期間の約30日目~約90日目である、条項47に記載の方法。
【0135】
54.ブタ胎仔肺から細胞を単離する方法であって、ブタ胎仔対象に対象からの細胞含有試料を提供する工程、試料から細胞を分離する工程、および細胞をサブクローニングする工程、ここで、細胞はASFウイルスを複製することができる、それによって細胞を単離する工程を含む方法。
【0136】
55.成長因子組成物を含む増殖培地で細胞を培養することをさらに含む、条項47に記載の方法。
【0137】
56.成長因子組成物が、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)または顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)を含む、条項55に記載の方法。
【0138】
57.成長因子組成物が5~10ng/mLの濃度でMCSFを含む、条項55に記載の方法。
【0139】
58.細胞がマクロファージである、条項48に記載の方法。
【0140】
59.細胞を少なくとも5継代培養する工程をさらに含む、条項48に記載の方法。
【0141】
60.ブタ胎仔対象が妊娠期間の約30日目~約90日目である、条項48に記載の方法。
【0142】
61.MCSFまたはGMCSFの成長因子組成物を含む増殖培地で細胞を培養することをさらに含む、条項48に記載の方法。
【0143】
62.細胞がマクロファージである、条項54に記載の方法。
【0144】
63.細胞を少なくとも5継代培養する工程をさらに含む、条項54に記載の方法。
【0145】
64.ブタ胎仔対象が妊娠期間の約30日目~約90日である、条項54に記載の方法。
【0146】
65.MCSFまたはGMCSFの成長因子組成物を含む増殖培地で細胞を培養することをさらに含む、条項54に記載の方法。
【0147】
66.マクロファージが肺胞マクロファージである、条項50に記載の方法。
【0148】
67.マクロファージが肺胞マクロファージである、条項58に記載の方法。
【0149】
68.マクロファージが肺胞マクロファージである、条項62に記載の方法。
【0150】
69.個々の動物から得られ、少なくとも5継代培養される、ASFウイルスを複製することができる単離された非サル細胞。
【0151】
70.ASFウイルスに感染することができるおよび/またはASFウイルスを複製することができる、単離されたブタ胎仔肺細胞。
【0152】
71.肺胞マクロファージ細胞である、条項70に記載の細胞。
【0153】
72.少なくとも5継代にわたって培養で増殖される、条項70に記載の細胞。
【0154】
73.少なくとも10、20、および/または50継代にわたって培養で増殖される、条項70に記載の細胞。
【0155】
74.ブタ胎仔の肺から得られた、単離された初代細胞または細胞集団。
【0156】
75.胎仔が妊娠期間の約30日目~約90日目である、条項74に記載の細胞または細胞集団。
【0157】
76.細胞が肺胞マクロファージであるか、または細胞集団が少なくとも1つの肺胞マクロファージ細胞を含む、条項74に記載の細胞または細胞集団。
【0158】
77.条項69~71および74~76のいずれか一条項に記載の細胞の不死化細胞バリアントまたは誘導体。
【0159】
78.ZMACとして指定される細胞または細胞株。
【0160】
79.条項1に記載のASFウイルスの子孫を担体中に含むワクチン。
【0161】
80.アジュバントをさらに含む、条項79に記載のワクチン。
【0162】
81.条項79に記載のワクチンをブタに投与することを含む、ブタにおいてASFVに対する免疫応答を誘発する方法。
【0163】
82.ワクチンが非経口投与される、条項81に記載の方法。
【0164】
83.ワクチンが経口投与される、条項81に記載の方法。
【0165】
84.ワクチンが鼻腔内投与される、条項81に記載の方法。
【0166】
85.ワクチンが粘膜投与される、条項81に記載の方法。
【0167】

本開示に関連する例を以下で説明する。いくつかの実施形態では、代替技術を使用することができる。例は、説明に役立つことを意図しており、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定または制限するものではない。
【0168】
例1
細胞材料および細胞の増殖
細胞材料。ZMAC-1として指定されるブタ肺胞マクロファージ細胞株からの細胞を調製し、ブダペスト条約の下で、広く認められている国際寄託当局(International Depositary Authority)、米国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(ATCC;10801 University Boulevard,Manassas,Virginia,United States of America)に寄託した。アクセッション番号は、イノシシ科の動物(Sus scrofa)(ブタ/イノシシ)肺組織起源であると特徴付けられる細胞についてのATCC特許寄託番号PTA-8764である。2007年12月7日付ATCC寄託証明書(特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約(Budapest Treaty On The International Recognition Of The Deposit Of Microorganisms For The Purposes Of Patent Procedure);国際様式;第7.3規則に従って発行された原寄託および第10.2規則に従って発行された生存の陳述の場合の受領書)によると、ATCC(登録商標)特許寄託指定PTA-8764について、培養受領日は2007年11月14日である。
【0169】
細胞の増殖。いくつかの実施形態では、ZMAC-1細胞などの細胞をインビトロで培養する。一般に、哺乳動物細胞培養の原理が適用される。例えば、細胞を抗生物質の存在下で培養することができる;ゲンタマイシンが使用されるが、必ずしも必要ではない。
【0170】
細胞を以下のように調製する。培養培地は、10%ウシ胎仔血清、ピルビン酸ナトリウム(1mM;Mediatech Cellgro、カタログ番号25-000-C1)、非必須アミノ酸(1倍;Mediatech Cellgroカタログ番号25-025-C1)およびゲンタマイシン(50mcg/ml;Gibco、カタログ番号15750-060)を添加したRPMI-1640である。細胞を約1~5×10e5/mlの細胞濃度に維持する。これらの細胞は、一般に、懸濁状態で増殖する。緩く接着した細胞の個別のコロニーが発生し得るが、細胞の大部分は懸濁状態で増殖する。正常な培養物は、浮遊細胞塊を産生する。接着を減少させるために、好ましいタイプの培養フラスコは、PEベントキャップ(カタログ番号83.1813.502)を有する懸濁細胞用のSarstedt Tissue Culture Flaskである。確立されたフラスコは、2/3の流体を除去し、新鮮な培養培地を添加して、4~5日ごとに収穫することができる。新しいフラスコは、T25フラスコ中の20ml容量に少なくとも300万~600万個の細胞(最低1.5×10e5細胞/ml)を添加することによって確立される。2~10ng/mlのマクロファージコロニー刺激因子(マウス;Sigma-Aldrich製品番号M9170)を添加することによって増殖を増強することができる。細胞凍結は、400万~800万細胞/mlの等しい体積の細胞の氷冷懸濁液と氷冷凍結培地(90%血清、10%DMSO)とを混合することによって達成することができる。冷却したクライオバイアルに、凍結培地に懸濁した細胞を満たし、プロセス中、氷冷温度に維持する。
【0171】
ここで図1を参照すると、成長因子の存在下でのZMAC-1細胞の増殖が示されている。1.2×10細胞/mlのZMAC-1細胞を、外因性成長因子なしで、または示されている濃度のマクロファージコロニー刺激因子(MCSF)もしくは顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)のいずれかの存在下で8日間培養した。細胞濃度は、培養の4日目および8日目に血球計を用いて決定した。y軸は、細胞/ml(x10)を示す。
【0172】
例2
細胞材料の作製およびウシ胎仔試料からの単離方法
さらなる組成物および方法を開発した。独立した試みにおいて、材料は、University of Illinois Veterinary Medicine Research Farmのブタ群からの妊娠60日目の雌ブタに由来した(雌ブタ番号5850として識別)。安楽死させた後、子宮を腹腔から無菌的に取り出し、細胞培養実験室に輸送した。操作は、一般に、無菌条件下で生物学的安全キャビネットを使用して行った。6匹の胎仔を子宮から無菌的に採取し、プラスチック製ペトリ皿に入れた。気管が無傷で肺に付着した肺器官を、心臓、食道および他の膜から切除した。肺の外側を滅菌ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)で十分にすすいで、目に見える血液および他の混入残存組織を除去した。清潔な滅菌ペトリ皿に肺を置き、気道を10mlの滅菌HBSSで満たすことによって、6匹の胎仔のそれぞれからの肺の気道内の細胞を気管支肺胞洗浄によって別々に単離した。気管の管腔を通して挿入した10ccシリンジおよび1インチの18g針を用いて、10mlのHBSSを肺内に押し進めた。流体を、HBSSの逆流を防ぐために鉗子での圧迫によって拘束しながら、気管を通して穏やかに押し進め、その結果、肺が流体で目に見えて膨張した。その後、単に気管圧迫を解除することによって、肺洗浄液細胞を含む流体を肺から自己排出させた。ペトリ皿に収集した細胞懸濁液を滅菌15mlコニカルプラスチックチューブに移し、3~4mlの温かいFicoll-Hypaque 1077を下に置いた。直後に、細胞懸濁液を等密度遠心分離(400g、室温で30分間)によって精製した。
【0173】
一実施形態では、細胞は、単離の日またはその後の時点、例えば1、2、または3週間後に、Ficoll-Hypaque 1077を使用する等密度遠心分離によって精製することができる。この精製手順は、元の調製物中に存在する赤血球などの特定の成分および潜在的に他の物質の除去を容易にし得ることが認識されている。Ficoll-Hypaque 1077と培地との間の界面での遠心分離後に得られた細胞のバンドを採取し、HBSSで2回洗浄し、細胞を毎回遠心分離によって回収した。2回目の遠心分離後、各胎仔肺洗浄液から回収した細胞ペレットを、培養培地:10%ウシ胎仔血清、ピルビン酸ナトリウム(1mM;Mediatech Cellgro、カタログ番号25-000-C1)、非必須アミノ酸(1倍;Mediatech Cellgroカタログ番号25-025-C1)を添加したRPMI-1640に懸濁し、懸濁培養のために6ウェルプレート(Sarstedt)の1つのウェルに独立して入れた。6匹の胎仔のそれぞれから独立して精製した細胞を識別するために、各ウェルを1~6とラベル付けした。この試みでは、等密度遠心分離手順後にごくわずかで非常に小さい細胞(<100)が回収されたが、初期培養物の確立後14日以内に、全てのウェルで有意な増殖が観察された。胎仔肺から採取したマクロファージ前駆細胞は見かけ上非常に小さく、1.077を超える密度を有する(したがって、等密度遠心分離中に密度培地を通過してチューブの底部に達する)ことができたので、胎仔No.1の場合、等密度遠心分離後に得られた赤血球ペレットも採取し、培養物に入れ、P1とラベル付けした。この場合、培養開始時の優勢な細胞型は赤血球からなったが、少数の非常に小さな単核細胞が観察された。培養開始後16日目および24日目に、胎仔No.4の肺洗浄液に由来する細胞の増殖は、6ウェルプレートの新しいウェルに分割するのに十分な増殖を示した。この培養物に由来する細胞をZMAC1107-4と命名した。同様に、赤血球ペレットに由来するP1とラベル付けしたウェルにおける増殖は、培養開始後36日目で明らかであり、やはり2つのウェルに分割した。この培養物に由来する細胞をZMAC1107-P1と命名した。細胞の増殖は、クラスタ当たり2、4、8、16個以上の細胞で構成される細胞クラスタの存在によって明らかであった。
【0174】
ZMAC1107-4の培養開始後37日目に、この細胞株の培養培地に10ng/mlのマクロファージコロニー刺激因子(マウス;Sigma-Aldrich製品番号M9170)を二つ組のウェルの一方に添加した。7日後、ZMAC1107-4細胞の増殖は、成長因子の外因性添加によって培養のこの初期段階で有意に支援されたことが明らかであり、その後、全ての培養物の培地に5~10ng/mlのMCSFを添加した。細胞培養物の体積の半分を吸引によって除去し、成長因子を添加した新鮮な培地と交換することによって、4~6日ごとに培養物に栄養供給する。ZMAC1107-4およびZMAC1107-P1株の両方の堅固な増殖は、懸濁状態で増殖し、培養物表面に緩く付着した細胞コロニーの形成によって明らかであった。
【0175】
別の独立した試みでは、さらなる組成物および方法を開発した。妊娠54日目に、No.9093として識別される雌ブタを、University of Illinois Veterinary Medicine Research Farmのブタ群から得た。安楽死させた後、子宮を腹腔から無菌的に取り出し、細胞培養実験室に輸送した。この時点以降の全ての操作は、無菌条件下で生物学的安全キャビネットの内部で行った。8匹の胎仔を子宮から無菌的に採取し、プラスチック製ペトリ皿に入れ、気管が無傷で肺に付着したそれらの肺を、心臓、食道および他の膜から切除した。肺の外側をHBSSで十分にすすいで、目に見える血液および他の混入残存組織を除去した。清潔な滅菌ペトリ皿に肺を置き、気道を10mlの滅菌ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)で満たすことによって、8匹の胎仔のそれぞれからの肺の気道内の細胞を気管支肺胞洗浄によって別々に単離した。気管の管腔を通して挿入した10ccシリンジおよび1インチの18g針を用いて、10mlのHBSSを肺内に押し進めた。流体を、HBSSの逆流を防ぐために鉗子で圧迫しながら、気管を通して穏やかに押し進め、その結果、肺が流体で目に見えて膨張した。その後、単に気管の圧迫を減らすことによって、肺洗浄液細胞を含む流体を肺から自己排出させた。場合によっては、残存する洗浄液を排出するのを助けるために、ハサミの鈍い端で肺を穏やかに押し下げた。ペトリ皿に収集した細胞懸濁液を滅菌15mlコニカルプラスチックチューブに移し、卓上臨床遠心機において1,500RPMで10分間遠心分離した。各胎仔肺洗浄液から回収した細胞ペレットを、培養培地:10%ウシ胎仔血清、ピルビン酸ナトリウム(1mM;Mediatech Cellgro、カタログ番号25-000-C1)、非必須アミノ酸(1倍;Mediatech Cellgroカタログ番号25-025-C1)を添加したRPMI-1640に懸濁し、懸濁培養のために6ウェルプレート(Sarstedt)の1つのウェルに独立して入れた。8匹の胎仔のそれぞれから独立して精製した細胞を識別するために、各ウェルを1~8とラベル付けした。各胎仔肺洗浄液から約10,000個の細胞を最初に培養に入れた。これらの培養物における増殖は、5日までに明らかであった。胎仔No.1、3、6、7および8に由来する培養物では、細胞の大きな塊が明らかであった。
【0176】
培養開始後12日目に、8つ全ての胎仔肺洗浄液細胞培養物由来の非接着細胞および緩く接着した細胞を穏やかにピペッティングすることによって回収し、Ficoll-Hypaque 1077を使用する等密度遠心分離によって精製した。細胞懸濁液を滅菌15mlコニカルプラスチックチューブに移すことによってこれを達成し、3~4mlの温かいFicoll-Hypaque 1077を下に置き、次いで室温で30分間、400gで遠心分離した。Ficoll-Hypaque 1077の間の界面での遠心分離後に、明確に目に見える細胞のバンドを得た。培地を採取し、HBSSで2回洗浄し、細胞を毎回遠心分離によって回収した。2回目の遠心分離後、各個々の胎仔肺洗浄液培養物から回収した細胞ペレットを、3mlの培養培地:10%ウシ胎仔血清、ピルビン酸ナトリウム(1mM;Mediatech Cellgro、カタログ番号25-000-C1)、非必須アミノ酸(1倍;Mediatech Cellgroカタログ番号25-025-C1)を添加したRPMI-1640に懸濁し、懸濁培養のために6ウェルプレート(Sarstedt)の1つのウェルに独立して入れ、培養物の元のラベルに直接対応する1~8とラベル付けした。5日後、全ての細胞培養物に2ccの新鮮な培養培地を供給した。9日後、3および6とラベル付けされた胎仔肺洗浄液細胞培養物由来の培養物では、懸濁液中の細胞および接着細胞の有意な増殖が明らかであり、有意な数の懸濁液中で増殖するマクロファージコロニーおよび緩く接着した円形マクロファージを示した。細胞冠のように見える構造を形成する小さなマクロファージに囲まれた多数の大きな球状合胞体細胞が観察された。培養開始後26日目に、細胞培養物に5ng/mlのMCSF(マウス;Sigma-Aldrich製品番号M9170)を添加した新鮮培地を供給した。5日後、胎仔No.3、No.6およびNo.8に由来する培養物において、懸濁液中で増殖するおよび培養プレートの表面に緩く接着した細胞マクロファージコロニーの活発な増殖が観察された。これらの株をそれぞれZMAC1207-3、ZMAC1207-6、およびZMAC1207-8と命名し、数日後に、5~10ng/mlのMCSFを添加した培養培地中でT75フラスコに移すことによって拡大させた。
【0177】
例3
Pirbright InstituteでのZMAC細胞培養物の確立およびASFV感受性試験
Aptimmune Biologics,Inc.(1005 N.Warson Road,Suite 305,St.Louis,MO 63132)によって提供されたZMAC細胞のバイアルを液体窒素貯蔵から復活させた。手短に言えば、細胞を37℃(すなわち摂氏)で急速に解凍し、10mlの温かい培養培地に添加し、330xgおよび4℃で7分間遠心分離して凍結培地を除去し、次いで、T75超低接着(ULA)フラスコにおいて合計50mlの培地および5ng/mlのMCSF中で培養した。3日後、培養物に新しい培地を1:2希釈で再供給し、M-CSFを総体積(100ml)中5ng/mlの最終濃度で添加した。3~4日ごとに、培養物体積の1:2希釈で新鮮な培地(7日前未満に調製)のさらなる再供給を行い、最終5ng/mlでM-CSFを添加した。T75 ULAフラスコ中で培養物が約150mlに達したときに、培養物を新しいフラスコに分割し、3~4日ごとに前回と同様に再供給した。この手順に従って、1ヶ月で、増殖中のZMAC培養物を含む3つのT75 ULAフラスコを確立した。3つのフラスコ中の細胞数は、フラスコあたり約3×10個の細胞を明らかにした。この時点から、細胞の一部を同じT75 ULAフラスコに保持するか、または数個の新しいT75 ULAに拡大させ、同じスキームに従って再供給した。フラスコ内で約150mlの培養物体積に達したときに、細胞を遠心分離によって収集し、計数し、部分的に同じフラスコに再播種した(約4×10細胞/mlで播種、フラスコあたり1.2~2×10細胞)。細胞の一部を、細胞の新しい凍結ストック(90%ウシ胎仔血清および10%DMSO中に3.5~5×10細胞/mlを含む)を調製するため、または代替培養容器を試験するために使用した。ZMAC培養開始から2ヶ月の間に、凍結細胞の8つのクライオバイアルを得ることができた。これらのうちの2つが首尾よく復活し、細胞が新しいフラスコに拡大し、細胞を凍結するために使用した条件が適切であったことを示した。
【0178】
50ml培地および5ng/ml MCSF中約1.2×10個の細胞(2.4×10細胞/ml)で開始した250mlポリカーボナートエルレンマイヤー(Corning参照番号43114)での培養は、これもT75 ULAと同様の供給スキームを使用したZMAC培養物のための良好な容器であることを明らかにし、細胞数は13日間で4倍に増加し、最後の培養物体積は125mlであった。
【0179】
ZMAC細胞の培養および培養物のより大きな容器へのアップスケーリング後、ZMAC培養物にこの時点から最低3日の間隔で栄養供給し、M-CSF濃度を10ng/mlに増加させた。さらに、推奨されるT75 ULAにおける初期播種細胞濃度は6×10/mlである。これらの新しい説明書に従って、T75 ULA培養物および250mlエルレンマイヤー中の細胞は、通常、7~9日間で3倍または4倍と観察された。さらなる約2ヶ月で、これらの増殖条件を使用して、細胞のさらなる8つのクライオバイアルおよび増殖困難後に新たな培養を再開するために使用する他の2つのバイアルを得ることができた。本発明者らは、本発明者らが増殖させたZMAC細胞を含む合計12のクライオバイアルを利用可能である。本発明者らはまた、56℃で30分間を超えるウシ胎仔血清(完全培養培地の成分)の不活性化がZMAC培養物に有害であり、細胞増殖不良をもたらすことを観察した。したがって、本発明者らは現在、熱不活性化なしで推奨血清を使用している。
【0180】
ZMAC細胞を、ASFVに対する感受性を試験するために予備アッセイで使用し、ウイルス増殖を支持した。プレートあたり2.2×10個のZMAC細胞(ウェルあたり2.3×10細胞)を含む通常の接着組織培養プレートまたはULAプレート(Corning 4515-96ウェルスフェロイドマイクロプレート)のいずれかと、M-CSFを添加した完全培地とを使用して、異なるASFV分離株の力価測定を96ウェルフォーマットで並行して実施した。比較のために、ASFVの古典的力価測定法である、96ウェル組織培養プレート上のブタ骨髄(PBM)細胞を用いる同じ力価測定を行った。表1に示すように、通常の接着組織培養プレート中のZMAC細胞と比較して、ULAプレート中のZMAC細胞からは少なくとも1 logの力価の有意な増加があり、接着性ZMAC細胞がASFVに対するいくらかの感受性を喪失することを示唆した。ULA容器内の力価も、ZMAC細胞において2 log高い力価を示したNHV分離株を除いて、PBMで得られたものにより近かった。
【表1】
【0181】
例4
ZMAC細胞培養のスケールアップのための細胞培養条件の最適化
ZMAC細胞株の最適な培養条件を特定するために、いくつかの種類の培養培地およびこれらの培地の成分の濃度の改変を検討した。グルコースおよびグルタミン濃度の増加からなるRPMI-1640に対する改変は、ZMAC細胞の増殖速度を最適化することが認められた。5~20ng/mLの範囲の最終濃度のマウス組換えマクロファージコロニー刺激因子(MCSF)および1:3の培養培地体積の希釈を達成するのに十分な体積の新鮮な培地の添加によって、4~5日ごとに細胞培養物を分割することが最適であることが分かった。これらの条件下で、希釈後の0.5~0.8×10/mlの細胞濃度を分割時点で維持し、4~5日後に1.4~1.6×10/mlの細胞濃度に達した。10継代後の1ng/mlのブタ組換え顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)の単回添加は、10継代後の細胞の活発な増殖を維持するのを助けることが認められ、その後、少なくとも10回のさらなる細胞継代の間、それらの増殖力を維持した。
【0182】
ZMAC細胞は接着性であり、組織培養処理した表面で培養した場合、細胞はしっかりと付着する。しかしながら、なんらかの不確定な理由のために、ZMAC細胞の培養表面への堅固な付着は、細胞増殖の速度を有意に遅くする。対照的に、細胞が、それらの接着を促進する培養容器で培養された場合、ZMAC細胞は緩く接着したコロニーとして効率的に増殖する。この特徴は、単に、非組織培養処理容器または懸濁培養用に設計された疎水性表面を有する容器(懸濁培養用のSarstedtフラスコ、カタログ番号83.1810.502)を使用することによって達成することができる。本発明者らは、ZMAC細胞の増殖を最適に促進する組織培養容器の種類がCorning(登録商標)Ultra-Low attachment(ULA)細胞培養フラスコであることを見出した。残念ながら、この容器は高価であり、製造されるフラスコの最大サイズが75cmの増殖面積を有するため、経済的で実用的なスケールアップには適していない。それにもかかわらず、本発明者らは、ZMAC細胞の凍結アリコートから出発してZMAC細胞培養を開始するための標準プロトコルを開発した。この場合、初期拡大およびこれらのフラスコのいくつかの製造のためにCorningのULAフラスコを使用することが最適である。次いで、175cmの増殖面積を有するSarstedtの懸濁培養フラスコなどのより大きな容器に移行することによって、中程度のスケールアップを達成することができる。
【0183】
4×10個を含有するZMAC細胞の凍結アリコートから出発する典型的な生産操作は、最初に、10%ウシ胎仔血清および5ng/mlのマウスMCSFを添加した35ml容量の改変RPMI-1640培養培地中で培養に入れたそのようなバイアルからの解凍細胞を含む75cm ULA組織培養フラスコ(Corning)を確立することからなった。細胞を拡大させた後、16~20日以内に、フラスコあたり150mlの細胞懸濁液の総体積を含む2つのULA 75cmフラスコを確立した。細胞培養物の体積のさらなる拡大を、通常の300cm組織培養フラスコを使用することによって達成し、これにより、フラスコあたり>300mlの体積の培養が可能になった。しかしながら、この場合、細胞接着を最小限に抑えるために、フラスコの非組織培養処理側が下向きになるようにフラスコをインキュベータ内に配置し、細胞が重力によってフラスコの非組織培養処理された内面に沈降するようにした。ここで図2を参照すると、これらの条件下で、7回の細胞継代後、細胞数の100倍の拡大が38日以内に達成された。y軸は総細胞数x10e6を示し、x軸は培養の日数を示す。4~5日ごとに1:3希釈で細胞を継代することによるその後の拡大は、細胞数の2~3倍の拡大をもたらすはずである。このようにして、細胞株のワーカー細胞シードストックから出発して細胞株の>20回の連続継代を可能にする培養方法の改善がなされてきた。より最近では、培養培地の処方に関するさらなる改良が、培養物の体積当たりの細胞収量の2倍の増加をもたらし、これは細胞増殖速度の対応する増加を伴う。この最新の改善は、生産コストを削減するだけでなく、工業規模のスケールアップのプロセスのための細胞培養方法の開発の間に培養工程のさらなる最適化が実現されるという指標も提供する。
【0184】
これに関して、いくつかの種類の細胞培養容器を、効率的なZMAC細胞増殖を可能にするためのそれらの適合性について試験した。これらには、使い捨てバイオリアクタ、JRHポリエチレンバッグなどの細胞培養バッグ、および0.5~10Lの範囲の体積容量を有するより大きな培養容器の使用が含まれた。撹拌培養対静置培養の必要性も調査した。これらの試験は、細胞が撹拌を必要としないことを明らかにした。むしろ、細胞を沈降させ、互いに密接に接触させたときに細胞が最も良好に増殖することは明らかである。これらの試験は、いくつかの安価な種類の容器が、少なくとも初期の中規模でのワクチンの商業生産を可能にするはずである、ZMAC細胞の効率的な中規模培養に適していることを明らかにした。本発明者らは、ZMAC細胞培養の連続的な方法を可能にするプロトタイプ培養系を有しており、この方法では、これらの確立された培養容器から細胞を採取し、次いで、ウイルス生産により適し、ワクチン製造と適合性の他の容器に移すことができる。確立された培養容器の再供給は、別の回の細胞採取のために、3~4日以内にZMAC細胞集団の迅速な拡大を可能にする。現在、細胞が最適な培養条件下で維持されるならば、このプロセスを無期限に繰り返すことができるようである。
【0185】
例5
高レベルのアフリカブタ熱ウイルス複製を支持するブタマクロファージ細胞株
ブタにおけるASFV複製のための主な標的細胞は、単球マクロファージ系統のものであり、分化の中間段階から後期段階に典型的なマーカを発現する。これらの標的細胞を正確に表すブタ細胞株の欠如は、ウイルス宿主相互作用および弱毒生ワクチン株の開発に関する研究を制限する。本発明者らは、ここで、連続的に増殖する成長因子依存性ZMAC-4ブタマクロファージ細胞株が、ASFVの8つの異なる野外分離株による感染に感受性であることを示す。ZMAC-4細胞における複製は、初代ブタ骨髄細胞と同様の動態および同様の高力価で起こった。さらに、本発明者らは、ZMAC-4細胞におけるASFVの弱毒株OURT88/3の12継代は、このウイルスが毒性ウイルスによるチャレンジに対して防御を誘導する能力を低下させなかったことを示した。したがって、ZMAC-4細胞は、ASFV複製のための初代細胞の代替物を提供する。
緒言
ASFVは、家畜ブタおよび野生イノシシにおいて、ほとんど全ての感染動物の死亡をもたらし得る出血熱を引き起こす。この疾患は、アスファウイルス(Asfarviridae)科の唯一のメンバーであり、分離株間で異なる170~193kbpのゲノム長を有する大きなDNAウイルスによって引き起こされる。ASFVは、臨床徴候があったとしてもわずかで、持続的に感染する、イボイノシシおよびオルニトドロス種(Ornithodoros spp)のヒメダニ媒介生物が関与する東アフリカの野生生物サイクルに存在する。2007年にトランスコーカサス地域のGeorgiaにASFVが導入された後、この疾患はロシアに広がり、さらに西ヨーロッパへと広がって、さらに11か国で感染が起こった(OIE WAHIS https://www.oie.int/wahis_2/public/wahid.php/Diseaseinformation/diseasehome)。2018年に、最初のASFVのアウトブレイクが中国で検出され、長距離にわたって急速に広がり、2019年の初頭までに全ての省に到達した。アジアのさらなる8か国にさらに拡大すると、世界的なリスクが高まり、アウトブレイクの経済的影響が拡大した。ワクチンが存在しないと、ASFVの制御の選択肢が制限される。ワクチンを開発する努力は増加しているが、ウイルスおよび宿主とのその相互作用についての知識の欠如がこのプロセスを妨げている。
【0186】
ASFVは、分化の中間段階から後期段階に典型的なマーカを発現する単球マクロファージ系統の細胞において主に複製する。これらの細胞の機能を操作することにより、ウイルスは感染に対する宿主の応答を妨げ、調節することができる。この相互作用をよりよく理解することは、ウイルスの免疫回避および病因の機序に関する情報を提供し、したがって、ワクチン開発の基礎となる。これらの研究を追求するための生物学的に関連する細胞株の利用可能性は、遺伝的に均一な細胞株を提供することによって研究を促進するであろう。さらに、この細胞株は、ASFVの弱毒生ワクチンの生産のための選択肢、ならびに診断およびウイルス単離のための初代マクロファージ培養物の代替物を提供するであろう。Vero、Cos、およびWSLを含む以前に確立された細胞株は、ASFVを増殖させるために使用されてきたが、これらの細胞で複製するためのウイルスの適応が必要である。これは、ブタマクロファージまたはブタにおける複製を減少させ得るゲノムの改変をもたらし得る。さらに、これらの樹立された細胞は、感染に対する応答の仕方においてマクロファージとは多くの重要な点で異なる。
【0187】
ZMAC-4ブタマクロファージ細胞株は、ブタ胎仔肺マクロファージに由来した。本発明者らはここで、ASFV分離株がZMAC-4細胞株において、細胞株へのいかなる適応工程もなしに、初代ブタマクロファージと同様のレベルまで複製することを実証する実験を説明する。さらに、本発明者らは、ZMAC-4細胞における生弱毒化ASFV株OURT88/3の継代が、毒性ウイルスOURT88/1によるチャレンジに対してブタにおいて100%の防御を誘導するこのウイルスの有効性を低下させなかったことを示す。これらの所見は、ZMAC-4細胞株が、弱毒生ASFVワクチンの研究、診断、および生産に適した細胞株を提供することを示している。
【0188】
材料および方法
ウイルスおよび細胞
OURT88/3およびNH/P68遺伝子型I非血球吸着性弱毒化ASFV株、毒性株遺伝子型I OURT88/1、Benin97/1、Georgia遺伝子型II、Malawi LIL 20/1遺伝子型VIII、および中等度毒性株であるDominican Republic株は以前に記載されている。使用した他のASFV分離株は、The Pirbright Instituteの参照コレクションで入手可能であった。これらのウイルスは、家畜ブタにおけるアウトブレイクから得られたか、または野外のダニから単離し、最大3継代にわたって初代ブタ骨髄細胞培養で増殖させた。
【0189】
細胞株ZMAC-4は、ブタ胎仔の肺に由来し、増殖にMCSFの存在を必要とする非形質転換食細胞からなる。増殖能の低下を示すことなく8ヶ月の期間にわたって75回を超えて首尾よく継代するその能力によって実証されるように、細胞はオリゴクローナルで、安定である。ZMAC-4細胞は、Aptimmune Biologics,Inc.またはUniversity of Illinoisから入手した。
【0190】
フローサイトメトリ
フローサイトメトリのためのZMAC-4細胞の懸濁液の染色は、示されたmAbを含有するFlow PBS(PBS、1.0%BSA、0.01%アジ化ナトリウム)中での30分間の氷冷温度でのインキュベーションからなり、各工程は、Flow PBSでの1回の洗浄によって終了した。最初に、ZMAC-4細胞を未処理のままにしたか、または示されたブタ分子を認識する以下のモノクローナル抗体の1つに別々に曝露した:CD14(biG 10/14)、CD163(2A10/11)、CD172(74-12-55)、CD203a(PM18-7)、PU.1(E.388.3)。その後、細胞を、PEに結合したヤギ抗マウスIg(Southern Biotech)、2%正常マウス血清(Sigma)および100mg/mlマウスIgG(Zymed Laboratories,Invitrogen)を含有するFlow PBS中で連続的にインキュベートした。PU.1を検出するために、細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、前述のように界面活性剤で透過処理した。食作用活性を検出するために、ZMAC-4細胞を、Fluoresbrite YGミクロスフェア2.00マイクロメートル(Polysciences,Inc)の存在下に培養培地中37℃で30分間インキュベートした。対照として、ZMAC-4細胞を、1%アジ化ナトリウムの存在下に氷冷温度で同じ粒子と共にインキュベートした。このアッセイにおけるバックグラウンド蛍光を、ミクロスフェアに曝露されていない細胞を使用して検出した。LSR IIフローサイトメータ(BD Biosciences,San Jose,CA,USA)を用いてフローサイトメトリ分析を実施した。データ分析およびグラフ表示の作成は、FlowJoソフトウェア(Ashland,OR,USA)を用いて行った。
【0191】
ウイルス感染および力価測定
ASFVをブタ骨髄細胞の培養物中の限界希釈によって力価測定し、感染を血球吸着アッセイ(HAD)によって、または以前に記載されたようにp30/pCP204Lタンパク質に対するモノクローナル抗体を使用する免疫蛍光法によって検出した。ZMAC-4細胞におけるASFV増殖の評価を先に記載されたように実施した。Georgia 2007/1の感染多重度(MOI)0.05で感染させ、異なる感染時間後に細胞を-80℃で凍結した。細胞を2回の凍結融解サイクルに供した後、同一ブタ由来のブタ骨髄細胞で並行して力価測定した。力価は、TCID50/ml(50%組織培養感染量)として、本明細書に記載の免疫蛍光法によって得、HAD力価は、ヘパリン処理したブタ血液から接種材料と共に収集した赤血球の添加によって得た。同じ培養継代からの細胞を使用して、力価測定(3つ組のウェルで)を並行して行った。
【0192】
ウイルスゲノムの検出
DNAを、先に記載されたようにEDTAに収集した全血または死後に収集した組織から抽出し、先に記載されたようにqPCRによって検出した。
【0193】
動物実験
実験は、The Pirbright InstituteのSAPO4高度封じ込め施設で実施され、イギリスの動物(科学的処置)法1986(Animal(Scientific Procedures)Act UK 1986)によって規制された。高い健康状態の飼育場からの8~9週齢(18~22kg)の大型ホワイトおよびランドレース交雑種ブタを実験に使用した。
【0194】
結果
ZMAC-4細胞の特徴
ここで図3のパネルAを参照すると、ZMAC-4細胞の形態を評価した。ZMAC-4細胞の生培養物を倒立位相差顕微鏡で画像化した。元の倍率は40倍である。形態学的に、ZMAC-4細胞は糸状仮足(filipodia)および葉状仮足(lamellipodia)の存在を示す。ここで図3のパネルBを参照すると、ZMAC-4細胞の平均細胞直径および体積を、タイプSカセットを使用してMoxi Z装置で決定した。ZMAC-4細胞は、15μMの平均細胞直径および1.7pLの平均細胞体積を有する。グラフは、75,000個の細胞の分析を表す。ここで図3のパネルCを参照すると、ZMAC-4細胞の食作用活性を評価した。パネルCは、未処理(ビーズなし)のままにしたか、または1%アジ化ナトリウムの存在下に37℃もしくは氷冷温度で30分間、YGミクロスフェアに曝露した細胞のフローサイトメトリ分析の結果を示す。ZMAC-4細胞の分析は、そのような細胞が食作用性であることを実証する。ここで図3のパネルDを参照すると、示された分子に特異的な抗体と反応した初代ブタ肺胞マクロファージ(上段)またはZMAC-4細胞(下段)のフローサイトメトリ分析が示されている。ZMAC-4細胞は、CD14、CD163およびCD172、AsGM1、ならびにE-26(E26)ファミリー転写因子PU.1を含むブタ肺胞マクロファージ(PAM)に特徴的ないくつかの表面マーカを均一に発現する。PU.1は、正常な骨髄分化において極めて重要な役割を果たすE-26(E26)形質転換特異的ファミリーの転写因子である。これは骨髄細胞において最も顕著であり、B細胞、マクロファージおよび好中球の発生および成熟に関与する。したがって、PU.1の発現はマクロファージの特徴である。特に、ZMAC-4細胞はSWC9/CD203aを発現しないようである。CD203aの欠如は、ZMAC-4細胞が初代肺胞マクロファージほど成熟しないことを示している可能性が高い。ZMAC-4細胞は増殖することができるが、一次肺胞マクロファージは増殖しないため、これは予想される。以前の結果は、ZMAC-4細胞が、PAMと同様の動態を有するポリICに応答してIFN-αを産生することを示した。したがって、ZMAC-4細胞は、PAMに典型的ないくつかの特性を示す。
【0195】
ASFVは、ZMAC-4細胞において初代ブタ骨髄細胞と同様の力価まで複製する。
ASFVの野外株による感染に対するZMAC-4細胞の感受性を試験するために、これらの細胞における感染を、ブタ骨髄(PBM)由来の初代マクロファージ培養物と比較した。ASFVの野外分離株による感染感受性を評価するために、遺伝子型I、II、VIIIからのASFVの8つの野外分離株(OURT88/3、NH/P68、Benin 1997/1、Georgia 2007/1、Malawi LIL 20/1、Tengani、MOZ 94/1、ZOM 2/84、Dominican Republic)の同じウイルスストックを、ZMAC-4およびPBM細胞において並行して三つ組で力価測定した。表2の結果は、ZMAC-4細胞の力価測定が、試験した全ての分離株について、PBM細胞の力価測定と比較して同様のレベルに達したことを示した。これらの結果は、ZMAC-4細胞が初代ブタマクロファージと同様に感染に感受性であることを示した。
【表2】
【0196】
ZMAC-4細胞における血球吸着による力価測定(HAD/ml)の有効性を間接免疫蛍光法(ウイルス初期タンパク質P30-TCID50/mlに対する)と比較して決定するために、ASFV NH/P68、Georgia 2007/1およびBenin 97/1の異なる野外分離株を、赤血球を培養培地に添加したZMAC-4細胞で並行して力価測定した。TCID50力価については、細胞をP30初期ウイルスタンパク質の免疫蛍光検出のために染色し、蛍光顕微鏡下で観察した;力価をHAD50として決定するために、接種材料をブタ赤血球と共に細胞に添加し、異なる希釈度での血球吸着ロゼットの存在について光学顕微鏡下でスクリーニングした。細胞を、以前の力価測定と同様に接種の3日後に顕微鏡下で観察した。ここで図4を参照すると、異なる接種希釈度での血球吸着ロゼットの存在をスクリーニングしたところ、表3に示すように、得られた力価は、予想されたように血球吸着を誘発しなかった非血球吸着分離株NH/P68を除いて、両方の力価測定技術を使用して同様の結果を示した。この分離株は、CD2v/EP402RおよびC型レクチン/EP153R遺伝子をコードする遺伝子内に中断を有し、その非血球吸着表現型を説明する。図4に示すように、免疫蛍光法によって推定されたように細胞の最大80%までの感染率が達成された。
【表3】
【0197】
PBM細胞と比較したZMAC-4細胞におけるASFV複製の動態。
ここで図5を参照すると、PBM培養物およびZMAC-4培養物への感染後のASFV子孫産生を比較した。図5のy軸は力価を示し、x軸は感染後の時間を示す。0.5mlの培養培地中の2×10個のZMAC細胞を5mlポリプロピレンチューブ(Corning 352063)に移し、0.001のMOIでASFV-Georgiaを接種した。並行して、ウェルあたり0.5mlの培地を含む24ウェル組織培養プレート中のPBM培養物も同様のMOIで接種した。両方の細胞型において低いMOI(0.05)でGeorgia 2007/1の同じウイルスストックに感染させ、ZMAC-4細胞では0、24、48、および72時間目、PBMでは0および72時間目にウイルス増殖を監視した。ZMAC-4細胞の力価は徐々に増加し、72時間後にPBM培養物に近い力価(ZMAC-4では1.47×10/mlおよびPBMでは6.81×10/ml)に達し、ASFV感染およびウイルスの効果的な産生に対するZMAC-4細胞の高い感受性を証明した。
【0198】
ここで図6を参照すると、本発明者らはまた、ZMAC-4培養物がASFV増殖をどれだけ長く維持できるかを評価した。図6のy軸は力価を示し、x軸は感染後の日数を示す。0.05の低いMOIで感染させ、ウイルス子孫産生を5日間にわたって測定した。図6は、5日間にわたるZMAC-4細胞でのASFV増殖を示す。子孫力価は、接種後、そのような力価が最大力価に達した培養4日目まで、3 Log単位を超えて増加し(1.48×10から6.76×10 HAD50/mlに)、5日目にわずかに減少した(2.32×10 HAD50/ml)。したがって、ZMAC-4細胞で最大ウイルス収量を得るためには4日間の感染が最適であると考えられる。
【0199】
ZMAC-4細胞におけるASFV生弱毒株OURT88/3の継代は、ブタにおける毒性ASFVによるチャレンジに対する防御応答の誘導を減少させない。
ZMAC-4細胞におけるASFVの継代がブタにおけるウイルスの免疫原性を変化させるどうかを決定するために、低い感染多重度(0.1のMOI)を使用してZMAC-4細胞で12継代にわたって弱毒化遺伝子型I株OURT88/3を培養した。各継代で回収されたウイルスの力価は同様であった。第12継代後に採取したウイルスを使用して、以下のようにブタを免疫した。
【0200】
高い健康状態の飼育場から得られた6匹の非近交系ブタの群に、10 TCID50(50%組織培養感染量)のOURT88/3株をSAPO4封じ込めでIAH-Pirbrightにおいて筋肉内(IM)接種した。一方の群(第1群)には、継代前に10 TCID50の親OURT88/3分離株を筋肉内接種した。他方の群(第2群)には、ZMAC-4細胞で12回継代した10 TCID50のOURT88/3分離株を、SAPO4封じ込めでIAH-Pirbrightにおいて筋肉内接種した。ブタを臨床徴候について毎日監視し、本発明者らが利用した基準(例えば、King K,Chapman D,Argilaguet JM,Fishbourne E,Hutet E,et al.2011.Protection of European domestic pigs from virulent African isolates of African swine fever virus by experimental immunization.Vaccine 29:4593-600)に従ってスコア付けした。接種後21日目に、第1群と第2群の両方のブタに、10 TCID50の毒性分離株OURT88/1を筋肉内投与した。OURT88/3で免疫化されていない3匹の対照ブタ(ナイーブ非免疫ブタ)の別の群(第4群)も毒性株OURT88/1でチャレンジした。qPCRによるウイルス血症の測定のために、OURT88/1によるチャレンジ前に毎週、およびチャレンジ後3日間隔で血液試料を採取した。終了時に剖検を実施し、組織試料を収集した。
【0201】
ここで図7を参照すると、ZMAC-4細胞で継代したOURT88/3で免疫した全てのブタ(第2群)および第1群のブタはチャレンジを生き延び、チャレンジ後16日目から18日目の間に安楽死させた。臨床スコアは、第1群および第2群のブタについて免疫後非常に低かった。図7のx軸はチャレンジ後の日数を示し、y軸は臨床スコアを示す。ここで図8を参照すると、ブタ11は、免疫後3日目に40度、免疫後15日目に40.2度の体温を有していた。他の40.0℃を超える体温は観察されなかった。チャレンジ後、ブタ7は、チャレンジ後3日目に41℃、チャレンジ後10日目に40.7℃の体温を示した。ブタ9は、チャレンジ後5日目に40度の体温を有していた。ブタ10は、チャレンジの日に40.1度の体温を有し、ブタ11は、チャレンジ後4日目に40.1度、5日目に40.5度の体温を有していた。全てのブタは、チャレンジ後16日目から18日目の終了時まで生存した。2匹のブタ(9および11)は皮膚の腫脹または跛行を発症し、これらの問題を解決する抗生物質で処置された。ここで図9を参照すると、第1群および第2群のブタの剖検は、肉眼的病変を示さず(すなわち、出血性徴候なし)、ASFに典型的な脾臓の腫大も示さなかった(図9のCおよびD参照)。
【0202】
図8に戻って参照すると、第1群および第2群のブタとは対照的に、対照非免疫ブタ(第4群)は全て、チャレンジ後4日目までに40.5度を超える体温を示し、嗜眠および摂餌の減少または無摂餌を伴った。さらに、第4群の全てのブタは、耳周辺の皮膚発赤を示した。ここで図11を参照すると、第4群(19、20および21)の全てのブタをチャレンジ後5日目に安楽死させた。図7に戻って参照すると、第4群のブタは、感染後3~4日目にASFVの典型的な臨床徴候を発症した。図9に戻って参照すると、第4群のブタの剖検は、いくつかのリンパ節における出血(図9のA参照)および腫大した出血性脾臓(図9のB参照)を含む急性ASFVに典型的な徴候を明らかにした。
【0203】
ここで図10を参照すると、y軸は、毒性OURT88/1株によるチャレンジの前後の、ZMAC細胞で継代したOURT88/3で免疫したブタにおける全血1ml当たりのlog 10スケールのゲノムコピーを示す(それぞれ7~12とラベル付けされた三角形、菱形、円、「x」、およびプラス記号(「+」)を使用)。対照非免疫ブタにおけるレベルを示す(それぞれC19、C20、およびC21とラベル付けされた円、正方形、および三角形を使用)。x軸は、免疫後(PI)またはチャレンジ後(PC)の日数を示す。図8に戻って参照すると、y軸は、チャレンジ後の異なる免疫ブタ(それぞれ7~12とラベル付けされた三角形、菱形、円、「x」、およびプラス記号(「+」)を使用)ならびに対照非免疫ブタ(それぞれ19~21とラベル付けされた円、正方形、および三角形を使用)の直腸温度を示す。
【0204】
ウイルスの複製を監視するために、本明細書で述べるように、血液試料をチャレンジ前に毎週、およびチャレンジ後に3日間隔で採取して、qPCRによってウイルスゲノムのレベルを測定した。ここで図11を参照すると、結果は、ZMAC-4細胞で継代したOURT88/3で免疫した群(第2群)からの4匹のブタ(7、8、9、10)が、チャレンジ前の血液中で低レベルのウイルスゲノム(10~10ゲノムコピー/ml)を有していたことを示した。x軸は免疫後またはチャレンジ後の日数を示し、y軸は血液1ml当たりのウイルスゲノムコピー数を示す。エラーバーは、4つの技術的複製物からの標準偏差を示す。同じブタ由来の試料を実線で結んでいる。正方形は第2群のブタを示し、星は第1群のブタを示し、三角形はOURT88/3で免疫化されていない対照ブタ(第4群)を示す。チャレンジ後、4匹のブタが検出可能なウイルスゲノムを有していた。これらのブタのうちで、12はチャレンジ後3日目に10を有しており、他の全ての陽性試料は10以下であった。脾臓および扁桃からの試料の分析は、免疫およびチャレンジしたブタ(第1群および第2群)のいずれからの組織においてもウイルスゲノムを検出しなかった。対照的に、対照群(第4群)のブタは、チャレンジ後3日目に血液中で高レベルのウイルスを発症し(3~8×10 TCID50/ml)、チャレンジ後5日目または6日目までに8×10~2×10 TCID50/mlに上昇した。対照ブタ(第4群)も、終了時に脾臓に高レベルのウイルスゲノムを有していた(5×10~2.7×10/mg)。結論として、ZMAC-4細胞で継代したOURT88/3で免疫したブタ(第2群)は全て、毒性分離株OURT88/1によるチャレンジから防御された。
【0205】
考察
ここで、本発明者らは、ZMAC-4ブタマクロファージ細胞株がASFV野外分離株による感染に感受性であり、ウイルスが初代ブタマクロファージと同様の動態および同様の力価で複製することを示す。ASFV複製のためのインビボ標的細胞に類似するブタマクロファージ細胞株の欠如は、ウイルス宿主相互作用に関する研究を制限し、弱毒生ワクチンの開発を制限し、ウイルス診断をより複雑にしている。インビボでのASFV複製のための主な標的細胞は、単球およびマクロファージである。細胞培養では、分化の中間段階および後期段階に特徴的なマーカを発現する細胞は感染を受けやすい。CD163は感染に必要であると最初に示唆されたが、その後の試験は、CD163を発現しない単球も感染し得ることを示した。CD163を欠く遺伝子編集ブタは、感染に対して完全に感受性であった。これらのブタの単球およびマクロファージも感染に感受性であり、CD163が必要ではないことが証明された。適切なマクロファージ細胞株の利用可能性は、異なる非近交系ブタ由来の初代細胞に関連する大きな変動を回避する細胞の遺伝的に均一な供給源を提供することによって研究を促進するであろう。ウイルス複製および宿主防御の回避を含む宿主細胞機能のウイルス調節を制限する宿主因子の理解に向けた研究も促進されるであろう。
【0206】
重要なことに、ブタマクロファージ細胞株の入手可能性はまた、ウイルスの診断および単離のための初代ブタ細胞の必要性を置き換えることができる。本発明者らは、ZMAC-4細胞におけるウイルスの力価測定が初代ブタ骨髄細胞と同様の結果を提供すること、ならびにウイルス力価を決定するためのゴールドスタンダードである血球吸着アッセイおよび免疫蛍光法の両方がこれらの細胞と共に使用できることを示した。したがって、ZMAC-4細胞は、ASFV感染のための初代マクロファージ培養物の使用の有効な代替法となり得る。本発明者らはまた、12継代にわたるZMAC-4細胞での生弱毒化ASFV株OURT88/3の継代は、並行して実施した試験における継代されなかったOURT88/3ウイルスと比較して、またはOURT88/3が同じ経路および用量によって送達された他の実験と比較して、免疫後またはチャレンジ後に生じる臨床徴候またはウイルス血症を増加させなかったことを実証した。OURT88/3およびいくつかの他のASFV野外株は、初代マクロファージで得られるものと同様に、適応プロセスなしで、ZMAC-4細胞において高力価に増殖する。合わせると、結果は、ZMAC-4細胞が、ASFV診断およびワクチン生産のための初代マクロファージまたは他の細胞株の代替物を提供することを証明する。
【0207】
本開示は、前述の図面および説明において詳細に図示および説明されているが、これは例示的なものであり、限定的なものではないと見なされるべきであり、その例示的な実施形態のみが示され、説明されており、本開示の精神の範囲内にある全ての変更および修正が保護されることが望ましいことが理解される。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】