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特表2022-540162複数の浮力体を有する浮体式基礎を備える風力タービン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】複数の浮力体を有する浮体式基礎を備える風力タービン
(51)【国際特許分類】
   F03D 13/25 20160101AFI20220907BHJP
   F03D 80/00 20160101ALI20220907BHJP
【FI】
F03D13/25
F03D80/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500930
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(85)【翻訳文提出日】2022-01-24
(86)【国際出願番号】 IB2020000448
(87)【国際公開番号】W WO2021005413
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】102019118564.5
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519104363
【氏名又は名称】エアロディーン コンサルティング シンガポール ピーティーイー エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】ジークフリートゼン,ゾンク
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA26
3H178AA43
3H178BB75
3H178CC22
3H178DD61X
3H178DD67Z
(57)【要約】
本発明は、複数の浮力体30、30'を有する浮体式基礎20を備える風力タービン10に関する。浮力体30、30'は、中空体として設計される複数の浮力体要素32、32'から構成され、これらの浮力体要素は、浮体式基礎20から延在する各中心要素28、28'の周りに同心円状に第1の階層において互いに隣り合って配置されるとともに上記中心要素に接続され、各浮力体要素32、32'、34、34'は、中心要素28、28'上で支持される面と、中心要素28、28'とは反対側に配置される凸面と、隣接する浮力体要素32、32'、34、34'の側面上でそれぞれ支持される2つの側面とを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の浮力体(30、30')を有する浮体式基礎(20)を備える風力タービン(10)であって、
前記浮力体(30、30')は、中空体の形態の複数の浮力体要素(32、32')から構成され、該浮力体要素は、前記浮体式基礎(20)から延在する関連する中心要素(28、28')の周りに同心円状に第1の階層において互いに隣り合って配置されるとともに前記中心要素に接続され、
各浮力体要素(32、32'、34、34')は、前記中心要素(28、28')上で支持される面と、前記中心要素(28、28')とは反対側に配置される凸面と、隣接する浮力体要素(32、32'、34、34')の側面上でそれぞれ支持される2つの側面とを有する、風力タービン。
【請求項2】
請求項1に記載の風力タービン(10)であって、前記凸面を構成する外壁は、前記側面を構成する壁よりも大きい壁厚を有することを特徴とする、風力タービン。
【請求項3】
請求項2に記載の風力タービン(10)であって、前記凸面を構成する前記外壁は、前記側壁を構成する前記壁よりも1.2倍~2.5倍厚い壁厚を有することを特徴とする、風力タービン。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の風力タービン(10)であって、前記凸面を構成する前記外壁は、サンドイッチシェルの形態であることを特徴とする、風力タービン。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の風力タービン(10)であって、前記第1の階層の下方に配置される少なくとも1つの更なる階層の浮力体要素(34、34')であって、関連する中心要素(28、28')の周りに配置されるとともに該中心要素に接続される、浮力体要素(34、34')を特徴とする、風力タービン。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の風力タービン(10)であって、前記浮力体要素(34、34')は、前記中心要素(28、28')に分離可能に接続されることを特徴とする、風力タービン。
【請求項7】
請求項5に記載の風力タービン(10)であって、前記更なる階層に配置される前記浮力体要素(34、34')は、前記第1の階層に配置される前記浮力体要素(32、32')よりも厚い壁を有するように設計されることを特徴とする、風力タービン。
【請求項8】
請求項5又は7に記載の風力タービン(10)であって、前記更なる階層に配置される前記浮力体要素(34、34')は、前記第1の階層に配置される前記浮力体要素(32、32')よりも高い内部空気圧を有することを特徴とする、風力タービン。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の風力タービン(10)であって、前記浮力体要素(32、34)の前記凸面が合わさると、該浮力体要素(32、34)を通る断面で見たときに円が形成されることを特徴とする、風力タービン。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の風力タービン(10)であって、前記浮力体要素(32'、34')の前記凸面が合わさると、該浮力体要素(32'、34')を通る断面で見たときに流線形の断面形状、特に、楕円、レンズ又は涙滴形状が生まれることを特徴とする、風力タービン。
【請求項11】
請求項10に記載の風力タービン(10)であって、前記流線形の断面形状の長さと幅との比は2:1であることを特徴とする、風力タービン。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の風力タービン(10)であって、前記浮力体要素(32、32'、34、34')の軸方向長さ及び最大直径は、ISOコンテナーの外形寸法に対応することを特徴とする、風力タービン。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の風力タービン(10)であって、前記浮力体要素(32、34)は、2.5 mの直径及び12 mの長さを有することを特徴とする、風力タービン。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の風力タービン(10)であって、前記中心要素(28)は多角形の断面を有することを特徴とする、風力タービン。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の風力タービン(10)であって、前記浮力体要素(32、34)は、プラスチック材料、特に、ガラス繊維強化プラスチック製の中空体であることを特徴とする、風力タービン。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の風力タービン(10)であって、それぞれが前記浮力体要素(32、34)を前記中心要素(28)に締結する複数のクランプ(40)を特徴とする、風力タービン。
【請求項17】
請求項16に記載の風力タービン(10)であって、前記浮力体要素(32、34)は、該浮力体要素の長手方向軸に対して横断方向に延在するとともに、少なくとも1つのクランプ(40)を収納するように意図される少なくとも1つの凹部を前記浮力体要素の凸面上に有することを特徴とする、風力タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の浮力体を有する浮体式基礎を備える風力タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
特に有利に設計された浮体式風力タービンが特許文献1から既知であり、この風力タービンは、1つの平面において延在するとともに、基礎に接続される浮力体を設けることによって浮力を有するように設計されるY字形状の基礎を有する。特許文献1においては、浮力体の設計に関して特に明言していないが、本出願人の更なる特許出願、例えば、特許文献2又は特許文献3においては、浮力体を基礎に剛接続することが有利になるはずであると指摘されている。例えば、浮力体は、コンクリート製の浮体式基礎のクロージャーを構成することができ、それ自体は鋼から作製することができる。
【0003】
特許文献4は、三角形の基礎という形態で別のタイプの浮体式基礎を開示しており、この基礎は、1つの平面において延在するとともに、その角点には鋼製で三角形の平面から出るように延在する支柱が配置される。三角形は正三角形であり、支柱はそれぞれの中線に従って三角形の外側に向かって傾斜している。各支柱は、三角形の基礎に対して、浮体式構造がその外側に締結されるように設置され、各浮体式構造は、多数の小型浮力チャンバーを収容するケージから構成される。
【0004】
特許文献5から代替設計が既知であり、この文献において、浮力体は支柱の周りに配置されるリングの形態である。この設計は、浮体の構成について特許文献6から既知の構造に概ね対応しており、特許文献6においては、複数の環状の浮力体が中心パイプの周りに配置される。
【0005】
既知の浮力体の不都合点は、鋼から作製されること又は小部片から作製されることにより、製造及び組み付けが複雑である点である。浮体を一体的に生産すると、そのサイズにより、輸送中に大きな問題が生じる可能性があり、一方、小部片から浮体を生産すると、材料支出の増加及び設置時の問題が伴う。特に、小部片から作製される設計は、潜水深度に応じて、浮体に使用される構造及び材料に対して要求が増す全方位からの圧力荷重、具体的には静水圧荷重につながる。したがって、既知の設計は、浮体の軽量で材料適合性のある設計を阻むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第3019740号
【特許文献2】独国特許第102016118079号
【特許文献3】国際公開第2017/206976号
【特許文献4】国際公開第2014/044453号
【特許文献5】欧州特許第2479101号
【特許文献6】中国実用新案第2811161号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、複数の浮力体を有し、特に浮力体に関して材料適合性があるとともに、必要な労力が少ない方法で製造することができる浮体式基礎を備える浮体式風力タービンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を有する風力タービンによって本発明に従って達成される。従属請求項は、本発明の有利な実施形態を反映したものである。
【0009】
本発明によれば、複数の浮力体を有する浮体式基礎を備える風力タービンが提供される。浮力体は、複数の浮力体要素から構成され、これらの要素は、浮体式基礎から延在する関連する中心要素の周りに同心円状に第1の階層において互いに隣り合って配置されるとともに、上記中心要素に分離可能に接続可能であり、各浮力体要素は、中心要素上で支持される面と、中心要素とは反対側に配置される凸面と、隣接する浮力体要素の側面上でそれぞれ支持される2つの側面とを有する。
【0010】
凸面を構成する外壁は、側面を構成する壁よりも壁厚が大きいことから、又はサンドイッチ部分として構成されることから座屈強度がより大きいことが好ましい。寸法安定性が高められた凸面としてのこの設計は、浮力体が水中に潜っていることによって静水圧が各外壁を圧することから有用である。
【0011】
この特定の設計により、材料の使用を最小限にして、静水圧荷重に耐える浮力体を生産することが可能になる。特に、凸面を構成する外壁は、側壁よりも大きい壁厚を有し及び/又はサンドイッチ構造の形態であるため、外圧荷重が加わる外壁の補強構造を局所的に使用することにより、浮力体要素の相互に支持する構造に対して材料を節約することができる。全体として、これにより、構造が大幅により軽量になることで、要素の輸送に対してだけでなく、風力タービンの全重量及びコストに対しても好影響が生まれる。
【0012】
特に、凸面を構成する外壁は、側壁を構成する壁よりも1.2倍~2.5倍厚い壁厚を有するものとする。
【0013】
第1の階層の下方に配置される少なくとも1つの更なる階層の浮力体要素が設けられることが好ましく、これらの浮力体要素は、関連する中心要素の周りに配置されるとともに上記中心要素に分離可能に接続される。浮体式風力タービンのサイズには、浮体の寸法決定が必要であり、これには、浮体の複数部品設計が必要であることが好ましい。従来技術において追求された「小部片」手法とは対照的に、本件においては、可能な限り少ない数の浮力体要素を使用するものとし、これらの要素は、(2つの)階層に配置されることが有利である。
【0014】
より下方の更なる階層に配置される浮力体要素は、より深い水深に存在するより高い圧力に耐えることができるように、第1の階層に配置される浮力体要素よりも厚い壁を有するように設計されることが好ましい。代替的に又は付加的に、浮力体要素は、外部の水圧を相殺することによって構造における材料厚を節約するために高められた空気圧に晒される。その場合、更なる階層に配置される浮力体要素は、第1の階層に配置される浮力体要素よりも高い内部空気圧を有することで、より高い外圧に耐えることが有利である。
【0015】
浮力体要素の凸面が合わさると、例えば、組み付けられた浮力体要素を通る断面で見たときに円が形成されることが好ましい。これに対応して、浮力体要素は扇形状である。
【0016】
浮体式風力タービンの固定浮体式基礎を使用する場合には、浮力体の円形断面が好都合である。これにより、単一の係留点によって海底に接続され、海中で風の方向と完全に位置合わせされる浮体式風力タービンとは対照的に、浮力体に波が全方面から当たることが可能になる。最後に言及したタイプのタービンの場合、暴風雨条件における暴風波浪(extreme wave)が、常に浮体式構造の主軸方向に立つ。暴風波浪により、浮力体構造及び基礎に接続される構成要素と、そのようなタービンの係留要素及びアンカーの寸法が決定され、これらのタイプのタービンについては、浮力体要素の凸面が合わさると、結束された浮力体要素を通る断面で見たときに単一の流線形の断面形状、例えば、涙滴形状、楕円、レンズの形態になるという点で大幅により好ましい設計が達成される。
【0017】
本出願人による調査によれば、楕円形の浮力体の波抵抗は、同じ浮力を有する対応する円形の浮力体よりも1/3だけ小さいことが分かっている。しかしながら、浮力体の楕円形状が極限条件において最大波抵抗をより低くすることができる場合、浮体式風力タービンを海底に固定するのに必要なアンカー、チェーン、ワイヤーケーブル及び締結要素の寸法を縮小することが可能であり、結果として材料及び作業投入量とコストとが少なくなる。
【0018】
特に、楕円の長さと幅との比はおよそ2:1であることが好都合である。浮力体の長手軸は波の方向に位置合わせされる。
【0019】
個々の浮力体要素の長さ及び/又は幅は、ISOコンテナーの外形寸法に対応することがより好ましい。特に、浮力体要素の寸法は、40フィートの寸法に対応するため、トレーラーを使用して道路上を容易に輸送することができる。特に、浮力体要素は、およそ2.5 mの直径又は縁長さ及びおよそ12 mの長さを有する。
【0020】
輸送性が可能になる又は少なくとも改善される結果として、浮体式風力タービンの最終組み付け場所以外の場所で浮力体を製造することが可能になる。加えて、浮力体の複数部品構築による作業量は可能な限り少ないままである。
【0021】
別の好ましい実施の形態によれば、中心要素は、個々の浮力体要素の位置が所定及び固定となるように、多角形の断面を有する。これにより、個々の浮力体要素に欠陥がある場合にトラブルシューティング及び必要に応じて交換が容易にもなる。
【0022】
浮力体要素は、プラスチック材料、特にガラス繊維強化プラスチック材料から作製される中空体であることが好ましく、座屈を安定させるために任意選択でサンドイッチ面が設けられ、これにより、浮力体の構造が特に軽量になる。
【0023】
浮力体要素は、発泡プラスチック材料も有する又はこれからなることができる。特に
浮力体要素は、充填発泡体の形態とすることができ、このとき、発泡体はオープンセル、混合セル又はクローズドセルとすることが可能である。いずれにせよ、浮力体への水の浸入を相殺しなければならないため、発泡体は撥水塗料を施されることが好ましい。これは、収縮フィルムの形態、具体的には収縮チューブであることが特に好ましく、常温収縮チューブが使用されるのが最も好ましい。
【0024】
浮力体要素は、複数のクランプによって中心要素に締結されることが好ましく、各クランプは、浮力体要素を中心要素に締結し、浮力体要素は、浮力体要素の長手方向軸に対して横断方向に延在するとともに、少なくとも1つのクランプを収納するように意図される少なくとも1つの凹部を浮力体要素の凸面上に有することが特に好ましい。
【0025】
以下、添付の図面に示す特に好ましく設計された実施形態を用いて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】断面で見たときに楕円形である浮力体を備える、本発明に係る浮体式風力タービンの第1の実施形態の斜視図である。
図2】断面で見たときに円形である浮力体を備える、本発明に係る浮体式風力タービンの第2の実施形態の斜視図である。
図3図1の風力タービンの詳細分解図である。
図4】楕円形の浮力体の詳細を斜視図(A)、側面図(B)、及び平面図(C)で示す図である。
図5】円形の浮力体によって構成される風力タービンの詳細を斜視図(A)、側面図(B)、及び平面図(C)で示す図である。
図6】浮力体の円形設計に関して特に好ましく設計された中心要素の詳細斜視図(A、B)である。
図7図5に示す浮力体の詳細分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、断面で見たときに楕円形である浮力体を備える、本発明に係る浮体式風力タービンの第1の実施形態の斜視図を示している。浮体式風力タービン10は、Y字形状の浮体式基礎20を有する。Y字形状の浮体式基礎20は、このタイプのタービンにおいて既知であり、基礎20を構成するアーム22、24、26の自由端に取り付けられる3つの浮力体30を有する。浮力体30は断面が楕円形であり、また、適切に設けられたケーブル50によって風力タービン10のタワー40を支える役割を果たす。タワーは2つのエネルギー変換ユニットを有する。
【0028】
図1に示す風力タービン10の代替設計が図2に示されており、図2は、断面で見たときに円形である浮力体30を備える、本発明に係る浮体式風力タービン10'の第2の実施形態の斜視図である。この浮体式風力タービン10'も、基礎20を構成するアーム22、24、26の自由端に締結される3つの浮力体30'を有するY字形状の浮体式基礎20を有する。図1に示すタービン10'とは対照的に浮力体30は断面が円形であるが、同様に、対応して設けられたケーブル50によって風力タービン10'のタワー40を支えるのに使用される。
【0029】
本発明を実施する2つの実施形態の間に生じた浮力体の構造の相違点は、それぞれがタービンの詳細を示す以下の図面において見出すことができる。
【0030】
そして、図3は、図1の風力タービンの詳細分解図を示しており、全体がよく見えるように図1に示す風力タービン10の構成要素のうちのいくつかを省いてある。そのため、図3は、基礎20の平面から出るように延在する中心要素28に接続された基礎20の部分のみを示している。中心要素28の周りに複数の浮力体要素32、34が配置されることで、浮力体30が形成される。
【0031】
図示の例において、浮力体30は、中空体の形態の複数の浮力体要素32、34から構成され、これらの浮力体要素は、浮体式基礎20から延在する中心要素28の周りに同心円状に2つの階層において互いに隣り合って配置される。浮力体要素32、34は、中心要素28に分離可能に接続されるため、例えば、浮力体要素32、34が損傷した場合に簡単に取り替えを行うことができる。
【0032】
各浮力体要素32、34は、中心要素28上で支持される面と、中心要素28とは反対側に配置される凸面と、隣接する浮力体要素32、34の側面上でそれぞれ支持される2つの側面とを有する。浮力体要素32、34の凸面が合わさると、浮力体要素32、34を通る断面で見たときに楕円が形成され、これにより、浮力体30は全体として楕円形の断面形状を有する。凸面を構成する外壁は、側面を構成する壁よりも大きい壁厚を有する。特に、凸面を構成する外壁は、側面を構成する壁よりも大きい壁厚又はサンドイッチシェルを有するため、比較的軽量な構造でありながらも、専ら外部から浮体30に対して作用する静水圧を相殺することができる。
【0033】
加えて、第1の階層の下方に配置される更なる階層の浮力体要素34は、第1の階層に配置される浮力体要素32よりも厚い壁を有し、また、第1の階層に配置される浮力体要素32よりも高い内部空気圧を有することができる。これらの対策によって、より深い水深に存在し浮力体要素34に対して作用する、より高い圧力条件が考慮に入れられる。
【0034】
この有利な設計は図4においても明確であり、図4は、楕円形の浮力体を有する設計の風力タービンの詳細を斜視図(A)、側面図(B)及び平面図(C)で示している。浮力体30は複数の個々の構成要素、すなわち、2つの階層に配置される浮力体要素32、34からなるが、浮力体30は、外部に対して閉じた面を有する。外部から浮力体30に対して作用する静水圧は、浮力体要素32、34の側壁を介して中心要素28へと逸らされる。中心要素28は、タワー40のガイケーブル50用の接続部も有し、これにより、中心要素28は、荷重伝達構成要素として、浮力体30に対して作用する静水圧荷重及び動荷重と、ドライブトレインに対して作用する空気力学的なスラスト荷重とを基礎20に伝達する。
【0035】
浮力体要素32、34は、ISOコンテナーの寸法にほぼ対応するとともに、およそ12 mの長さ及びおよそ2.50 mの直径又は縁長さを有するように設計される。この設計により、浮力体要素32、34を陸上及び必要に応じて海上で輸送することが、そのために特殊な予防策を講じる必要なく容易に可能になる。
【0036】
円形の浮力体を有する風力タービン10'の代替設計が、図5の斜視図(A)、側面図(B)及び平面図(C)に示されている。ここでも、浮体式風力タービン10'の基礎20に接続された中心要素28'が設けられ、この中心要素の周りに複数の浮力体要素32'、34'が配置されることで浮力体30'が形成され、この浮力体要素も同様に中心要素28'の周りに2つの階層に編成される。
【0037】
浮力体要素32'、34'が扇形状の設計であることにより、この実施形態の浮力体30'は円形の断面を有する。浮力体要素32'、34'は、浮力体要素32'、34'を取り囲む複数のクランプ60によって一緒に保持され、中心要素28'に締結される。
【0038】
この事例においても、各浮力体要素32'、34'は、中心要素28'上で支持される面と、中心要素28'とは反対側に配置される凸面と、隣接する浮力体要素32'、34'の側面上でそれぞれ支持される2つの側面とを有する。浮力体要素32'、34'の凸面が合わさると、浮力体要素32、34を通る断面で見たときに円が形成され、これにより、浮力体30'は全体として円形の断面を有し、ボートランディングBLも設けることが可能になる。凸面を構成する外壁は、側面を構成する壁よりも大きい壁厚を有する。特に、凸面を構成する外壁は、側面を構成する壁よりも大きい壁厚を有するため、比較的軽量な設計でありながらも、専ら外部から浮体30'に対して作用する静水圧を相殺することができる。
【0039】
加えて、第1の階層の下方に配置される更なる階層の浮力体要素34'の壁は、第1の階層に配置される浮力体要素32'の壁よりも厚く、また、上記更なる階層の浮力体要素は、第1の階層に配置される浮力体要素32'よりも高い内部空気圧を有することができる。これらの対策によって、より深い水深に存在し浮力体要素34'に対して作用する、より高い圧力比が考慮に入れられる。
【0040】
浮力体要素32'、34'も、ISOコンテナーの寸法にほぼ対応するとともに、およそ12 mの長さ及び2.50 mの直径を有するように設計される。この設計により、浮力体要素32'、34'を陸上及び必要に応じて海上で輸送することが、そのために特殊な予防策を講じる必要なく容易に可能になる。
【0041】
図5に示す浮力体要素32'、34'の配置は、中心要素28'が図6の斜視図(A、B)に示すような設計である場合に特に簡単に行うことができる。特に、中心要素28'上には10個の同心円状に配置された浮力要素が設けられ、これらの浮力要素は、中心要素28'上の対応する位置決め及び締結支援部70によって所定位置に保持及び締結される。上記支援部は、中心要素28'上に設けられた凹部72、径方向に延在する壁74、及び/又は、その穴が浮力体要素32'、34'の外側輪郭に対して相補的であるとともに浮力体要素32'、34'を収納することができる有孔プレート76とすることができる。
【0042】
この特定の設計により、特に、水面に近い上側階層の浮力体要素32'に自由空間を残すことが可能になり、この自由空間にボートランディングBLが挿入される。
【0043】
最後に、図7は、図5に示す浮力体30'の詳細分解図を示しており、浮力体要素32'、34'を中心要素28'に締結するのに必要なクランプ60を含む。
【符号の説明】
【0044】
10 浮体式風力タービン
10' 浮体式風力タービン
20 浮体式基礎
22 アーム
24 アーム
26 アーム
28 中心要素
28' 中心要素
30 浮力体
30' 浮力体
32 浮力体要素
32' 浮力体要素
34 浮力体要素
34' 浮力体要素
40 タワー
50 ケーブル
60 クランプ
70 締結支援部
72 凹部
74 壁
76 有孔プレート
BL ボートランディング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】