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特表2022-540175高い充填材含有率を有するポリウレタン分散液のためのポリオールエーテル系発泡添加剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】高い充填材含有率を有するポリウレタン分散液のためのポリオールエーテル系発泡添加剤
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/564 20060101AFI20220907BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220907BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20220907BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20220907BHJP
   D06M 13/17 20060101ALI20220907BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20220907BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
D06M15/564
C08L101/00
C08K5/06
C08L71/00 Y
D06M13/17
B05D5/00 J
B05D7/24 302T
B05D7/24 303E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022501022
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(85)【翻訳文提出日】2022-01-07
(86)【国際出願番号】 CN2019095208
(87)【国際公開番号】W WO2021003658
(87)【国際公開日】2021-01-14
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル クロスターマン
(72)【発明者】
【氏名】カイ-オリヴァー フェルトマン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン マリアン フォン ホーフ
(72)【発明者】
【氏名】フェレナ ダール
(72)【発明者】
【氏名】マーフィン ヤンゼン
(72)【発明者】
【氏名】ズィーナ アーノルト
(72)【発明者】
【氏名】イーチェン リー
【テーマコード(参考)】
4D075
4J002
4L033
【Fターム(参考)】
4D075BB24Z
4D075CB34
4D075DB16
4D075DB20
4D075DC01
4D075DC11
4D075DC21
4D075DC38
4D075EA06
4D075EA10
4D075EB37
4D075EB38
4D075EC07
4D075EC33
4D075EC35
4J002AA001
4J002AC031
4J002BC031
4J002BF011
4J002BG041
4J002CH052
4J002CK021
4J002DE078
4J002DE108
4J002DE148
4J002DE238
4J002DJ008
4J002DJ018
4J002DJ038
4J002DJ048
4J002DJ058
4J002ED026
4J002ED037
4J002FD018
4J002FD312
4J002FD316
4J002FD317
4J002GK02
4J002HA07
4L033AB04
4L033AC15
4L033BA14
4L033CA50
(57)【要約】
多孔質ポリマー被覆を製造するための、好ましくは多孔質ポリウレタン被覆を製造するための充填材含有水性ポリマー分散液における添加剤としての、ポリオールエーテルおよびエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートの併用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
添加剤として、好ましくは水性ポリマー分散液、好ましくは水性ポリウレタン分散液、特に充填材含有ポリマー分散液、とりわけ充填材含有水性ポリウレタン分散液中での発泡添加剤としてのポリオールエーテルおよびエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートの組み合わせ使用。
【請求項2】
前記ポリオールエーテルが、ポリオールと、少なくとも1種のハロゲン化アルキルもしくはアルキレン、好ましくは塩化アルキル、少なくとも1種の第一級もしくは第二級アルコール、または少なくとも1種のアルキルもしくはアルケニルオキシラン、-チイランもしくは-アジリジン、好ましくはアルキルエポキシドとの反応によって得られるか、あるいは第一級もしくは第二級アルコールと、グリシドール、エピクロロヒドリンおよび/またはグリセロールカーボネートとの反応によって得られるものであることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ポリオールが、C~Cポリオールおよびそのオリゴマーの群から選択され、
好ましいポリオールは、プロパン-1,3-ジオール、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ソルビトール、イソソルビド、エリスリトール、トレイトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、フシトール、マンニトール、ガラクチトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、および/またはグルコース、特にグリセロールであり、かつ
好ましいポリオールオリゴマーは、1~20個、好ましくは2~10個、およびより好ましくは2.5~8個の繰り返し単位を有するC~Cポリオールのオリゴマーであり、ここで特に好ましいのは、ジグリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロール、ペンタグリセロール、ジエリスリトール、トリエリスリトール、テトラエリスリトール、ジ(トリメチロールプロパン)、トリ(トリメチロールプロパン)、二糖類およびオリゴ糖類、特にソルビタン、オリゴグリセロールおよび/またはポリグリセロールであることを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記ハロゲン化アルキルが、一般式R-Xに該当し、前記式中で、Xはハロゲン原子、好ましくは塩素原子であり、Rは4~40個の炭素原子、好ましくは8~22個の炭素原子、より好ましくは10~18個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状の、飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、かつ
好ましいハロゲン化アルキルは、1-クロロヘキサデカン、1-クロロオクタデカン、2-クロロヘキサデカン、2-クロロオクタデカン、1-ブロモヘキサデカン、1-ブロモオクタデカン、2-ブロモヘキサデカン、2-ブロモオクタデカン、1-ヨードヘキサデカン、1-ヨードオクタデカン、2-ヨードヘキサデカン、および/または2-ヨードオクタデカンであり、特に、少なくとも2種類の塩化アルキルの混合物が好ましいことを特徴とする、請求項2または3に記載の使用。
【請求項5】
前記アルキルエポキシドが、一般式1:
【化1】
[式中、Rは、独立して、2~38個の炭素原子、好ましくは6~20個の炭素原子、より好ましくは8~18個の炭素原子を有する、同一の、もしくは異なった一価の脂肪族飽和もしくは不飽和炭化水素基であるか、またはHであり、ただし、前記基の少なくとも1つは炭化水素基である]に該当し、ここで特に好ましいのは、ちょうど1つの基が炭化水素基であるアルキルエポキシドであり、特に好ましいのは、C~C24のα-オレフィンから誘導されたエポキシドであることを特徴とする、請求項2または3に記載の使用。
【請求項6】
使用される前記ポリオールエーテルが、ソルビタンエーテルおよび/またはポリグリセロールエーテルの群から選択されるものであり、好ましくはポリグリセロールエーテル、より好ましくは一般式2:
式2
[式中、
M=[C(OR1/2]、
D=[C(OR2/2]、
T=[C3/2]、
a=1~10、好ましくは2~3、特に好ましくは2、
b=0~10、好ましくは0より大~5、特に好ましくは1~4、
c=0~3、好ましくは0、
基Rは、独立して、2~38個の炭素原子、好ましくは6~20個の炭素原子、より好ましくは8~18個の炭素原子を有する、同一の、もしくは異なった一価の脂肪族飽和もしくは不飽和炭化水素基であるか、またはHであり、ただし、少なくとも1つの基Rは炭化水素基である]に該当するか、および/または一般式3:
式3
[式中、
【化2】
x=1~10、好ましくは2~3、特に好ましくは2、
y=0~10、好ましくは0より大~5、特に好ましくは1~4、
z=0~3、好ましくは0より大~2、特に好ましくは0、
ただし、少なくとも1つの基Rは水素以外の上記で定義されたRである]に該当するか、および/または一般式4:
【化3】
[式中、
k=1~10、好ましくは2~3、特に好ましくは2、
m=0~10、好ましくは0より大~5、特に好ましくは1~3、
ただし、少なくとも1つの基Rは水素以外の上記で定義されたRであり、かつk+mの合計が0より大であり、指標kおよびmを有するフラグメントは統計的に分布している]に該当するポリグリセロールエーテルを含むことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記式2、3および/または4のポリオールエーテルがリン酸化されており、特に基Rとして少なくとも1つの(RO)P(O)-基を有しており、基Rは、独立して、カチオン、好ましくはNa、KもしくはNH であるか、または例えばアミドアミンの場合と同様に官能化されたアルキル基であってもよいモノアルキルアミン、ジアルキルアミン、およびトリアルキルアミンのアンモニウムイオン、またはモノアルカノールアミン、ジアルカノールアミン、およびトリアルカノールアミン、モノアミノアルキルアミン、ジアミノアルキルアミン、およびトリアミノアルキルアミンのアンモニウムイオンであるか、あるいはHまたはR-O-であり、
は、3~39個の炭素原子、好ましくは7~22個の炭素原子、より好ましくは9~18個の炭素原子を有する、一価の脂肪族飽和もしくは不飽和の炭化水素基であるか、またはポリオール基であることを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記エチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートが、一般式5:
【化4】
[式中、
g=5~100、好ましくは10~75、より好ましくは25~50、
h=0~25、好ましくは0~10、より好ましくは0~5、
i=0~25、好ましくは0~10、より好ましくは0~5、
基Rは、5~40個の炭素原子、好ましくは8~25個の炭素原子、より好ましくは10~20個の炭素原子を有する、一価の脂肪族飽和もしくは不飽和の、直鎖状もしくは分岐状の炭化水素基であるか、または一般式R-C(O)の脂肪酸基であり、前記式中で、Rは、3~39個の炭素原子、好ましくは7~21個の炭素原子、より好ましくは9~17個の炭素原子を有する、一価の脂肪族飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、かつ
基Rは、独立して、1~20個の炭素原子を有する、同一の、もしくは異なった一価の脂肪族もしくは芳香族炭化水素基、好ましくはメチル基であり、
は、1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族もしくは芳香族炭化水素基であるか、またはHであり、好ましくはメチル基またはHであり、より好ましくはHである]に該当することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記水性ポリマー分散液が、水性のポリスチレン分散液、ポリブタジエン分散液、ポリ(メタ)アクリレート分散液、ポリビニルエステル分散液、およびポリウレタン分散液、特にポリウレタン分散液の群から選択され、これらの分散液のポリマー含有量が、好ましくは20~70質量%の範囲、より好ましくは25~65質量%の範囲であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記水性ポリマー分散液が充填材を含み、前記充填材が好ましくはケイ酸塩、例えば特にタルク、雲母、もしくはカオリン、炭酸塩、例えば特に炭酸カルシウム、もしくはチョーク、または酸化物/水酸化物、例えば特に石英粉、シリカ、水酸化アルミニウム/水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、もしくは酸化亜鉛、および有機充填材、例えば特にパルプ、セルロース、およびセルロース誘導体、リグニン、木繊維/木粉、粉砕プラスチック、もしくはテキスタイル繊維の群から選択され、
前記充填材の濃度は、水性ポリマー分散液の総質量を基準にして、好ましくは10~50質量%、さらに好ましくは15~45質量%、さらに好ましくは20~40質量%の範囲であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記ポリオールエーテルおよびエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートの合計濃度が、水性ポリマー分散液の総質量を基準にして、0.2~20質量%の範囲、より好ましくは0.4~15質量%の範囲、特に好ましくは0.5~10質量%の範囲であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記エチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートが、ポリオールエーテルとエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートの混合物全体に基づいて、5~80質量%、好ましくは10~75質量%、より好ましくは25~65質量%の濃度で使用されることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記ポリオールエーテルおよび前記エチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートの添加剤組み合わせに加えて、少なくとも1つのさらなるイオン性、好ましくはアニオン性の補助界面活性剤が、水性ポリマー分散液の添加剤として追加的に使用され、
好ましい前記イオン性の補助界面活性剤は、脂肪酸のアンモニウム塩およびアルカリ金属塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルスルホスクシネート、アルキルスルホスクシナメート、アルキルサルコシン酸塩であり、
特に、12~20個の炭素原子、さらに好ましくは14~18個の炭素原子、さらに好ましくは16より大~18個以上の炭素原子を有するアルキル硫酸塩が有利であり、
ただし、ポリオールエーテル、エチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートおよび追加の補助界面活性剤の合計量に基づく追加の補助界面活性剤の割合は、0.1~50質量%の範囲、好ましくは0.2~40質量%の範囲、より好ましくは0.5~30質量%の範囲、さらに好ましくは1~25質量%の範囲であることを条件とすることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
ポリオールエーテルおよびエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートを含む水性ポリマー分散液、好ましくは水性ポリウレタン分散液、特に有利には充填材含有水性ポリマー分散液。
【請求項15】
水性ポリマー分散液中での添加剤としてポリオールエーテルおよびエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートを併用して、多孔質ポリマー被覆、好ましくは多孔質ポリウレタン被覆を製造するための方法であって、以下のステップ:
a)少なくとも1つの水性ポリマー分散液、好ましくは少なくとも1種の充填材、少なくとも1種のポリオールエーテル、少なくとも1種のエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレート、および任意でさらなる添加剤を含む混合物を準備するステップ、
b)前記混合物を発泡させて、均質で微細なセルを有する発泡体を得るステップ、
c)任意で、少なくとも1種の増粘剤を添加して、湿潤発泡体の粘度を調整するステップ、
d)発泡させたポリマー分散液の被覆を適切な担体に塗布するステップ、
e)被覆を乾燥させるステップ
を含む方法。
【請求項16】
多孔質ポリマー被覆、好ましくは多孔質ポリウレタン被覆であって、ポリマー被覆の製造において、水性ポリマー分散液、好ましくは充填材含有ポリマー分散液中の添加剤として、ポリオールエーテルおよびエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートを併用することによって得られるものであり、好ましくは請求項15に記載の方法によって得られ、ただし、多孔質ポリマー被覆は、好ましくは150μm未満、好ましくは120μm未満、特に好ましくは100μm未満、最も好ましくは75μm未満の平均孔径を有する多孔質ポリマー被覆。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック被覆および合成皮革の分野のものである。
【0002】
さらに詳しくは、ポリオールエーテル系の発泡添加剤を用いた多孔質ポリマー被覆、好ましくは充填材を含む多孔質ポリウレタン被覆の製造に関する。
【背景技術】
【0003】
プラスチックで被覆されたテキスタイル、例えば合成皮革は、一般に多孔質ポリマー層が積層されているテキスタイル担体と、その上に被覆されているトップ層またはトップコートとから構成されている。
【0004】
本願の文脈における多孔質ポリマー層は、好ましくはマイクロメートル範囲のセルを有しており、空気透過性、ひいては通気性があり、すなわち水蒸気は透過するが、耐水性があるものである。多孔質ポリマー層は、多くの場合、多孔質ポリウレタンを含む。現在、多孔質ポリウレタン層は、通常、DMFを溶媒として使用する凝固法によって製造される。しかし、環境問題の観点から、この製造方法への批判が高まっており、より環境に優しい技術によって徐々に引き継がれている。そのような技術の一つが、PUDと呼ばれる水性ポリウレタン分散液をベースとするものである。これは一般に水中に分散したポリウレタンの微粒子からなり、その固体含有率は通常、30~60質量%の範囲にある。多孔質ポリウレタン層を製造するためには、これらのPUDを機械的に発泡させ、担体上に被覆し(層の厚さは通常300~2000μm)、次いで、高温で乾燥させる。この乾燥ステップの間に、PUD系中に存在する水が蒸発し、これによりポリウレタン粒子の膜が形成される。膜の機械的強度をさらに高めるために、製造工程でさらに親水性の(ポリ)イソシアネートをPUD系に添加することが可能であり、これらは乾燥ステップでポリウレタン粒子の表面に存在する遊離のOH基と反応し、これによりポリウレタン膜の付加的な架橋が生じる。
【0005】
このようにして製造されたPUD被覆の機械的特性および触覚的特性のいずれにとっても、多孔質ポリウレタン膜のセル構造が決め手となる。さらに、多孔質ポリウレタン膜のセル構造は、材料の空気透過性や通気性にも影響を与える。特に優れた特性は、非常に微細で均一に分散したセルによって達成することができる。上記の製造プロセスでセル構造に影響を与える慣用の方法は、機械的な発泡の前に、または発泡中にPUD系に界面活性剤を添加することである。適切な界面活性剤の第一の効果は、発泡操作中に十分な量の空気をPUD系に叩き込むことができることである。第二に、界面活性剤は生成される気泡の形態に直接影響を与える。気泡の安定性は、界面活性剤の種類によっても大きく影響される。このことは、特に発泡したPUD被覆の乾燥時に重要である。というのも、このようにしてセルの粗大化や乾燥クラックなどの乾燥不良を防ぐことができるからである。
【0006】
機械的な発泡の前に、または発泡中に、充填材が追加的にPUD系に、多くの場合、かなりの高濃度で添加されることは頻繁にある。このような充填材は、例えば、カオリン、炭酸カルシウムもしくはポリリン酸アンモニウムなどの無機充填材、およびリグニンもしくはセルロースなどの有機充填材であってもよい。充填材は、例えば、製造された発泡体被覆の機械的特性および触覚的特性を改善するために使用することができるが、しかしまた、難燃性や熱伝導性を改善する役割も果たす。しかし、このような充填材を特に高濃度で使用することは、多数の欠点と関連しうる。例えば、充填材の濃度が高い場合、PUD系の粘度が事実上管理できないほど上昇する可能性がある。高い粘度により、まずPUD系の実質的な発泡が妨げられる。というのも、空気は、存在するとしても、少ししか入ることができないため、生じる泡の構造はしばしば粗く、かつ不規則である。さらに、高い粘度は、発泡したPUDを担体に適切に適用することの妨げとなり、その結果、発泡体被覆に欠陥や不良が発生する。さらに、充填材は、特に高濃度の場合、製造された発泡体の安定性に悪影響を及ぼす可能性があり、これにより、発泡PUD系の処理中に発泡体の老化が生じ、その結果、製造された発泡体被覆に欠陥や不良が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、水性ポリマー分散液から発泡系および発泡体被覆を製造するための添加剤、特にPUDベースの発泡系および発泡体被覆を製造するための添加剤を提供することであり、この添加剤は、水性ポリマー分散液の総質量に基づいて、5~70質量%、好ましくは10~50質量%、さらに好ましくは15~45質量%、および最も好ましくは20~40質量%の高い充填材含有率を有する系においても、効率的な発泡および効率的な処理を可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、ポリオールエーテルをエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートと組み合わせて使用することで、上記の課題を解決できることが判明した。本発明の文脈におけるエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートとは、少なくとも5個、好ましくは少なくとも10個、さらに好ましくは少なくとも15個、および最も好ましくは少なくとも20個のエチレンオキシド単位を有する。好ましく使用できるエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートについては、以下でより具体的に説明する。
【0009】
従って、本発明は、水性ポリマー分散液、好ましくは水性ポリウレタン分散液中の添加剤、好ましくは発泡添加剤としてのポリオールエーテルおよびエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートの組み合わせ使用もしくは併用を提供するものであり、特に充填材含有水性ポリウレタン分散液が好ましい。
【0010】
ここで驚くべきことに、発泡添加剤としてのポリオールエーテルおよびエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートの本発明による併用は、特に充填材含有水性ポリウレタン分散液(以下、簡略化して充填材含有PUD系とも呼ばれる)において、多数の利点を有する。
【0011】
ここで1つの利点は、充填材含有PUD系における発泡添加剤としてのポリオールエーテルおよびエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートの本発明による併用は、水性ポリマー分散液の総質量に基づいて、5~70質量%、好ましくは10~50質量%、さらに好ましくは15~45質量%、および最も好ましくは20~40質量%の高い充填材含有率であっても、十分に低い粘度をもたらし、ひいては系の良好な加工性が依然として可能であることである。
【0012】
さらなる利点は、本発明によるポリオールエーテルおよびエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートの併用により、充填材含有率が高い場合でも特に充填されたPUD系の効率的な発泡が可能になることである。このようにして、まず、十分な量の空気をシステムに叩き込むことが可能になる。このようにして製造された発泡体は、さらに、特に均質なセル分布を有する非常に微細なセル構造を特徴としており、このことは、これらの発泡体に基づいて製造される多孔質ポリマー被覆の機械的特性および触覚的特性に非常に有利な影響を与える。さらに、この方法で被覆の空気透過性や通気性を改善することができる。
【0013】
さらなる利点は、本発明によるポリオールエーテルおよびエチレンオキシドリッチなアルキルエトキシレートの併用により、特に充填PUD系に基づいて、充填材含有率が高い場合でも、特に安定した発泡体の製造が可能になることである。これは第一に、こうして製造された発泡体の加工性に有利な効果をもたらす。第二に、発泡体の安定性が高まることで、対応する発泡体の乾燥時に、セルの粗大化や乾燥クラックなどの乾燥不良を回避できるという利点がある。さらに、改善された発泡体安定性は、発泡体の迅速な乾燥を可能にし、これは、環境および経済の観点から、加工上の利点をもたらす。
【0014】
さらに別の利点として、ポリオールエーテルおよびエチレンオキシドリッチなアルキルエトキシレートの本発明による組み合わせは、広いpH範囲での優れた加水分解安定性を特徴とする。
【0015】
水性ポリマー分散液中でポリオールエーテルを発泡添加剤として使用することは、国際公開第2019/042696号(WO2019042696A1)にすでに詳細に記載されている。本発明の文脈におけるポリオールエーテルのさらなる説明については、この文献を全面的に参照する。
【0016】
本発明全体の文脈における「ポリオールエーテル」という用語は、ポリオールエーテルとアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドとの反応によって得られるそのアルコキシル化付加物も含む。
【0017】
本発明全体の文脈における「ポリオールエーテル」という用語は、ポリオールエステルのO-アルキル化(用語「ポリオールエステル」に関しては、特に国際公開第2018/015260号(WO2018/015260A1)を参照)によって、またはポリオールエーテルのエステル化によって製造されるポリオールエステル-ポリオールエーテルハイブリッド構造も含む。
【0018】
本発明全体の文脈における「ポリオールエーテル」という用語には、そのイオン性誘導体、好ましくはリン酸化誘導体および硫酸化誘導体、特にリン酸化ポリオールエーテルも含まれる。これらのポリオールエーテルの誘導体、特にリン酸化ポリオールエーテルは、本発明によれば有利に使用することができるポリオールエーテルである。ポリオールエーテルのこれらのおよび他の誘導体は、さらに以下で詳細に説明され、本発明の文脈で有利に使用することができる。
【0019】
本発明の文脈における「充填材」という用語は、不溶性であるか、またはほとんど溶解しない添加剤であって、水性ポリマー分散液に添加されるものを記載するものである。この文脈における「ほとんど溶解しない」とは、25℃で水に溶解する充填材が、0.5質量%未満、好ましくは0.25質量%未満、さらに好ましくは0.1質量%未満であることを意味する。有利に使用することができる充填材は、さらに以下でより詳細に説明される。
【0020】
以下では本発明をさらに例示的に説明するが、ただし本発明はこれらの例示的な実施形態に限定されることを意図するものではない。以下で化合物の範囲、一般式もしくはクラスが特定されている場合、これらは、明示的に言及されている対応する化合物の範囲またはグループのみでなく、個々の値(範囲)または化合物を除去することによって得られる化合物のすべてのサブレンジおよびサブグループを包含することが意図されている。本明細書の文脈で文献が引用される場合、その内容、特に文献が引用された文脈を形成する主題に関する内容は、全体として本発明の開示内容の一部を構成するものとみなす。別段の記載がない限り、パーセンテージは質量パーセントである。測定によって決定されたパラメータが以下に報告されている場合、別段の記載がない限り、測定は温度25℃および圧力101 325 Paで実施されている。本発明で化学式(実験式)を使用する場合、指定された指標は絶対値のみでなく、平均値であってもよいものとする。高分子化合物に関する指標は、好ましくは平均値である。本発明で示される構造式および実験式は、繰り返し単位の配置の違いによって実現可能なすべての異性体を代表するものである。
【0021】
本発明により使用するポリオールエーテルは、特にポリオールのO-アルキル化、またはヒドロキシアルカンもしくはヒドロキシアルケンのO-アルキル化によって製造することができる。これは原理的に公知であり、技術文献に詳細に記載されている(例えば、RoemppまたはUllmannのEncyclopedia of Industrial Chemistry、Acylation and Alkylationおよびそこに引用されている文献を参照)。例えば、ポリオールをアルキル化剤と反応させることにより、炭素-酸素結合を形成して対応するポリオールエーテルが得られることが知られている。使用されるアルキル化剤は、オレフィン、ハロゲン化アルキル(ウィリアムソンエーテル合成)、アルコール、エーテル、エポキシド、アルデヒド、ケトン、チオール、ジアゾ化合物、スルホン酸エステル、および関連化合物であってよい。オレフィンをアルキル化剤として使用する場合の代表的な触媒は、例えばHSO、酸性イオン交換体、リン酸およびゼオライトである。ウィリアムソンエーテル合成では、まずアルコールまたはポリオールを、例えばナトリウムまたはカリウムまたは水素化ナトリウムまたは水素化カリウムと反応させてそのアルコキシドに変換し、次いでアルキル化剤としてのハロゲン化アルキルと反応させる。アルキル化剤としてエポキシドを使用する場合、触媒として酸、ルイス酸、塩基、およびルイス塩基を使用することができる。
【0022】
本発明の文脈において、有利に使用することができるポリオールエーテルは、特に、ポリオールと、少なくとも1つの直鎖状もしくは分岐状の、飽和もしくは不飽和の、第一級もしくは第二級アルコール、または対応する混合物との反応によって得られるものである。これらは、本発明の好ましい実施形態に相当する。対応するポリオールエーテルはそれ自体公知であり、例えば、国際公開第2012/082157号(WO2012082157A2)に記載されている。
【0023】
さらに、本発明の文脈で有利に使用できるのは、特に、ポリオールと、少なくとも1種の直鎖状もしくは分岐状のハロゲン化アルキルもしくはアルケニル、または直鎖状もしくは分岐状のアルキルもしくはアルケニルスルホネート、例えばトシレート、メシレート、トリフレートもしくはノナフレート、またはこれらの物質の混合物との反応によって得られるポリオールエーテルである。これらも同様に、本発明の好ましい実施形態に対応する。対応するポリオールエーテルは、同様にそれ自体公知である。
【0024】
さらに、本発明の文脈で有利に使用できるのは、ポリオールと、少なくとも1種の直鎖状もしくは分岐状のアルキル-もしくはアルケニルオキシラン、-チイランまたは-アジリジンまたはそのような物質の混合物との反応によって得られるポリオールエーテルである。これらも同様に、本発明の好ましい実施形態に対応する。対応するポリオールエーテルは、同様にそれ自体公知である。
【0025】
さらに、本発明の文脈で有利に使用できるのは、ポリオールと少なくとも1種の直鎖状もしくは分岐状のアルキルもしくはアルケニルグリシジルエーテルまたはそのような物質の混合物との反応によって得られるポリオールエーテルである。これらも同様に、本発明の好ましい実施形態に対応する。対応するポリオールエーテルは、同様にそれ自体公知である。
【0026】
さらに、本発明の文脈で有利に使用できるのは、直鎖状もしくは分岐状の、飽和もしくは不飽和の、第一級もしくは第二級アルコールと、グリシドールまたはエピクロロヒドリンまたはグリセロールカーボネートまたはこれらの物質の混合物との反応によって得られるポリエーテルである。これらも同様に、本発明の有利な実施形態に対応する。対応するポリオールエーテルは同様にそれ自体公知である。
【0027】
本発明によるポリオールエーテルの製造に使用される好ましいポリオールは、C~Cポリオールおよびそのオリゴマーおよび/またはコオリゴマーの群から選択される。コオリゴマーは、例えばグリセロールとアラビトールの反応など、複数の異なったポリオールの反応から生じる。ここで特に好ましいポリオールは、プロパン-1,3-ジオール、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ソルビトール、イソソルビド、エリスリトール、トレイトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、フシトール、マンニトール、ガラクチトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、およびグルコースである。特に、グリセロールが好ましい。好ましいポリオールオリゴマーは、1~20個、好ましくは2~10個、より好ましくは2.5~8個の繰り返し単位を有するC~Cポリオールのオリゴマーである。ここで特に好ましいのは、ジグリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロール、ペンタグリセロール、ジエリスリトール、トリエリスリトール、テトラエリスリトール、ジ(トリメチロールプロパン)、トリ(トリメチロールプロパン)、ならびに二糖類およびオリゴ糖類である。特に、ソルビタン、オリゴグリセロールおよび/またはポリグリセロールが好ましい。特に、複数の異なったポリオールの混合物を使用することができる。さらに、本発明により使用することができるポリエーテルを製造するために、C~Cポリオール、そのオリゴマー、および/またはそのコオリゴマーのアルコキシル化付加物を使用することも可能であり、これらは、C~Cポリオール、そのオリゴマー、および/またはそのコオリゴマーと、アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドとの反応によって得られる。
【0028】
直鎖状もしくは分岐状の、ハロゲン化アルキルもしくはアルケニルを用いてポリオールエーテルを製造する場合、ここでは特に一般式R-Xに該当するハロゲン化物が有利であり、前記式中で、Xはハロゲン原子、好ましくは塩素原子、さらに好ましくは臭素原子、さらに好ましくはヨウ素原子であり、Rは4~40個の炭素原子、好ましくは8~22個の炭素原子、さらに好ましくは10~18個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状の、飽和もしくは不飽和炭化水素基である。ここでは、1-クロロオクタン、1-クロロデカン、1-クロロドデカン、1-クロロテトラデカン、1-クロロヘキサデカン、1-クロロオクタデカン、1-クロロエイコサン、1-クロロドコサンおよびこれらの混合物から選択されるハロゲン化アルキルが特に有利であり、1-クロロヘキサデカンおよび1-クロロオクタデカンならびにこれら2つの物質の混合物がとりわけ有利である。
【0029】
ここでは、1-ブロモオクタン、1-ブロモデカン、1-ブロモドデカン、1-ブロモテトラデカン、1-ブロモヘキサデカン、1-ブロモオクタデカン、1-ブロモエイコサン、1-ブロモドコサンおよびこれらの混合物から選択されるハロゲン化アルキルが極めて有利であり、1-ブロモヘキサデカンおよび1-ブロモオクタデカンおよびこれらの2つの物質の混合物がとりわけ有利である。
【0030】
同様にここでは、1-ヨードオクタン、1-ヨードデカン、1-ヨードドデカン、1-ヨードテトラデカン、1-ヨードヘキサデカン、1-ヨードオクタデカン、1-ヨードエイコサン、1-ヨードドコサンおよびこれらの混合物から選択されるハロゲン化アルキルが極めて有利であり、1-ヨードヘキサデカンおよび1-ヨードオクタデカンおよびこれらの2つの物質の混合物がとりわけ有利である。
【0031】
同様にここでは、2-クロロオクタン、2-クロロデカン、2-クロロドデカン、2-クロロテトラデカン、2-クロロヘキサデカン、2-クロロオクタデカン、2-クロロエイコサン、2-クロロドコサンおよびこれらの混合物から選択されるハロゲン化アルキルが極めて有利であり、2-クロロヘキサデカンおよび2-クロロオクタデカンおよびこれらの2つの物質の混合物がとりわけ有利である。
【0032】
同様にここでは、2-ブロモオクタン、2-ブロモデカン、2-ブロモドデカン、2-ブロモテトラデカン、2-ブロモヘキサデカン、2-ブロモオクタデカン、2-ブロモエイコサン、2-ブロモドコサンおよびこれらの混合物から選択されるハロゲン化アルキルが極めて有利であり、2-ブロモヘキサデカンおよび2-ブロモオクタデカンおよびこれら2つの物質の混合物がとりわけ有利である。
【0033】
同様にここでは、2-ヨードオクタン、2-ヨードデカン、2-ヨードドデカン、2-ヨードテトラデカン、2-ヨードヘキサデカン、2-ヨードオクタデカン、2-ヨードエイコサン、2-ヨードドコサンおよびこれらの混合物から選択されるハロゲン化アルキルが極めて有利であり、2-ヨードヘキサデカンおよび2-ヨードオクタデカンおよびこれらの2つの物質の混合物がとりわけ有利である。
【0034】
アルキルエポキシドを用いてポリオールエーテルを製造する場合、ここでは特に、一般式1に該当するアルキルエポキシドが有利である:
【化1】
[式中、Rは、独立して、2~38個の炭素原子、好ましくは6~20個の炭素原子、より好ましくは8~18個の炭素原子を有する、同一の、もしくは異なった一価の脂肪族飽和もしくは不飽和炭化水素基であるか、またはHであり、ただし、少なくとも1つの基Rは炭化水素基である]。ここで、基Rのうち正確に1つが炭化水素基であり、もう1つがHであるアルキルエポキシドが特に有利である。C~C24-α-オレフィンから誘導されるエポキシドがとりわけ有利である。
【0035】
アルキルグリシジルエーテルを使用してポリオールエーテルを製造する場合、4~40個、好ましくは8~22個、より好ましくは10~18個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状の、飽和もしくは不飽和のアルキルアルコールのグリシジルエーテルの群から選択されるものが好ましい。ここでは特に、オクチルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、オクタデシルグリシジルエーテル、エイコシルグリシジルエーテル、ドコシルグリシジルエーテル、およびこれらの混合物から選択されるアルキルグリシジルエーテルが特に有利でありであり、ヘキサデシルグリシジルエーテルおよびオクタデシルグリシジルエーテル、およびこれら2つの物質の混合物がとりわけ有利である。
【0036】
本発明の特に好ましい実施形態では、ポリオールエーテルは、ソルビタンエーテルおよび/またはポリグリセロールエーテルの群から選択される。特に好ましいのは、ポリグリセロールヘキサデシルエーテル、ポリグリセロールオクタデシルエーテル、およびこれら2つの物質の混合物である。非常に特に好ましいのは、同様に、ポリグリセロールヒドロキシヘキサデシルエーテル、ポリグリセロールヒドロキシオクタデシルエーテル、およびこれらの物質の混合物である。さらに好ましいのは、ポリグリセロール1-ヒドロキシヘキサデシルエーテル、ポリグリセロール2-ヒドロキシヘキサデシルエーテル、ポリグリセロール1-ヒドロキシオクタデシルエーテルおよびポリグリセロール2-ヒドロキシオクタデシルエーテル、およびこれらの物質の混合物である。
【0037】
ここで特に好ましいのは、一般式2に該当するポリグリセロールエーテルである:
式2
[式中、
M=[C(OR1/2]、
D=[C(OR2/2]、
T=[C3/2]、
a=1~10、好ましくは2~3、特に好ましくは2、
b=0~10、好ましくは0より大~5、特に好ましくは1~4、
c=0~3、好ましくは0、
基Rは、独立して、2~38個、好ましくは6~20個、より好ましくは8~18個の炭素原子を有する、同一の、もしくは異なった一価の脂肪族飽和もしくは不飽和炭化水素基であるか、またはHであり、ただし、少なくとも1つの基Rは炭化水素基であり、この炭化水素基はまた、置換基、特にヒドロキシル基を有していてもよい]。
【0038】
構造要素M、D、Tは、それぞれの場合、酸素架橋を介して結合している。ここでは、2つのO1/2基が常に結合して酸素架橋(-O-)を形成しており、いずれのO1/2基も結合することができるのは、さらなる1つのO1/2基のみである。
【0039】
さらに好ましいのは、一般式3に該当するポリグリセロールエーテルである:
式3
[式中、
【化2】
x=1~10、好ましくは2~3、特に好ましくは2、
y=0~10、好ましくは0より大~5、特に好ましくは1~4、
z=0~3、好ましくは0より大~2、特に好ましくは0、
ただし、少なくとも1つの基Rは水素以外の上記で定義されたRである]。
【0040】
さらに好ましいのは、一般式4のポリグリセロールエーテルである:
【化3】
[式中、
k=1~10、好ましくは2~3、特に好ましくは2、
m=0~10、好ましくは0より大~5、特に好ましくは1~3、
ただし、少なくとも1つの基Rは水素以外の上記で定義されたRであり、かつk+mの合計は0より大であり、かつ指標kおよびmを有する断片は統計的に分布している]。
【0041】
本発明の文脈で、「ポリグリセロール」という用語は特に、グリセロールも含んでいてよいポリグリセロールを意味するものと理解される。その結果、量、質量などを計算するためには、任意のグリセロール画分も考慮すべきである。従って、本発明の文脈では、ポリグリセロールは、少なくとも1つのグリセロールオリゴマーとグリセロールとを含む混合物でもある。グリセロールオリゴマーは、それぞれの場合において、すべての関連する構造、すなわち、例えば直鎖状、分岐状および環状の化合物を意味すると理解すべきである。本発明に関連して、「ポリグリセロールエーテル」という用語についても同じことが該当する。
【0042】
統計的分布は、任意の所望の数のブロックと任意の所望の配列を有するブロックから構成されているか、またはランダムな分布であり、それらはまた、交互の構造を有していることもでき、さもなければ鎖に沿って勾配を形成することができ、特に、それらはまた、異なった分布の複数のグループが任意で互いに連続することができる任意の混合形態から構成されていてもよい。特定の実施形態は、そのような実施形態の結果として、統計的分布の制限に繋がることがある。制限の影響を受けていないすべての領域に関して統計的分布に変化はない。
【0043】
好ましくは、本発明により使用することができるポリグリセロールエーテルは、上記のとおり、8個以下、より好ましくは6個以下、さらに好ましくは5個以下のRの形の炭化水素基を有する。
【0044】
ポリオールエーテルは、構造的には、湿式化学指標(wet-chemical indices)、例えばその水酸基価により特徴付けられる。水酸基価を決定するために適切な決定方法は、特にDGF C-V17a(53)、Ph.Eur.2.5.3 Method AおよびDIN 53240による方法である。酸価を決定するために適した方法は、特にDGF C-V2、DIN EN ISO 2114、Ph.Eur.2.5.1、ISO 3682およびASTM D 974による方法である。加水分解価(けん化価)を決定するために適した方法は、特にDGF C-V3、DIN EN ISO 3681およびPh.Eur.2.5.1による方法である。
【0045】
エポキシ酸素含有量を決定するために適した方法は、特にR.Kaiser、Quantitative Bestimmung organischer funktioneller Gruppen Methoden der Analyse in der Chemie(有機官能基の定量的決定、化学における分析方法)、Akad.Verlagsgesellschaft、1966年およびR.R.Jay、Anal.Chem.、1964年、36(3)、第667~668頁である。
【0046】
融点を決定するために適した方法は、特にDIN 53181、DIN EN ISO 3416、DGF C-IV 3aおよびPh.Eur.2.2.14による方法である。
【0047】
本発明によれば、ポリグリセロールエーテルを製造するために、1~20、好ましくは2~10、およびより好ましくは2.5~8の平均縮合度を有するポリグリセロールを使用する場合が好ましく、かつ本発明の特に好ましい実施形態に相当する。平均縮合度Nは、ここではポリグリセロールのOH価(OHN、単位:mg KOH/g)に基づいて決定することができ、以下のとおりに関連付けされる:
【数1】
【0048】
ポリグリセロールのOH価は、ここで上記のとおりに決定することができる。その結果、本発明によるポリグリセロールエーテルの製造にとって好ましいポリグリセロールは、特にOH価が1829~824、より好ましくは1352~888、特に好ましくは1244~920mgKOH/gのものである。
【0049】
使用することができるポリグリセロールは、ここでは様々な従来の方法、例えばグリシドールの重合(例えば塩基触媒による)、エピクロロヒドリンの重合(例えばNaOHなどの塩基の存在下で)、またはグリセロールの重縮合によって提供することができる。本発明によれば、特に触媒量の塩基、とりわけNaOHまたはKOHの存在下での、グリセロールの縮合によるポリグリセロールの提供が有利である。適切な反応条件は、200~260℃の間の温度と、20~800mbarの間、特に50~500mbarの間の範囲の減圧であり、これにより水の除去が容易になる。さらに、様々な市販のポリグリセロールが、例えばSolvay、Innovyn、Daicel、およびSpiga Nord S.p.A.から入手可能である。
【0050】
本発明全体の文脈における「ポリオールエーテル」という用語は、そのイオン性誘導体、好ましくはリン酸化誘導体および硫酸化誘導体、特にリン酸化ポリオールエーテルも包含するものであることはすでに明らかにした。ここでリン酸化ポリオールエーテルは、ポリオールエーテルをリン酸化試薬と反応させ、任意で、好ましくは義務的に後続の中和を行うことにより得られる(特に、Industrial Applications of Surfactants、II.Preparation and Industrial Applications of Phosphate Esters、D.R.Karsa編、Royal Society of Chemistry、Cambridge、1990年を参照のこと)。本発明の文脈において好ましいリン酸化試薬は、オキシ塩化リン、五酸化リン(P10)、より好ましくはポリリン酸である。本発明の全範囲にわたって「リン酸化ポリオールエーテル」という用語は、部分的にリン酸化されたポリオールエーテルも対象としており、本発明の全範囲にわたって「硫酸化ポリオールエーテル」という用語は同様に部分的に硫酸化されたポリオールエーテルも対象としている。
【0051】
さらに、本発明の全範囲にわたってポリオールエーテルのイオン性誘導体とは、ポリエーテルをジカルボン酸またはトリカルボン酸または対応する環状無水物と反応させ、任意で、好ましくは義務的に中和することによっても得ることができる。
【0052】
さらに、本発明の全範囲にわたってポリオールエーテルのイオン性誘導体とは、ポリエーテルを不飽和ジカルボン酸またはトリカルボン酸または対応する環状無水物と反応させ、その後スルホン化し、任意で、好ましくは義務的に中和することによっても得ることができる。
【0053】
本発明の全範囲にわたって「中和」という用語は、部分的な中和も含む。部分的な中和を含む中和に関して、慣用の塩基を使用することが可能である。これらには、水溶性の金属水酸化物、例えば水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、水酸化タリウム(I)、好ましくは、水溶液中で遊離の金属イオンと水酸化物イオンに解離するアルカリ金属の水酸化物、特にNaOHおよびKOHが含まれる。また、水と反応して水酸化物イオンを形成するアンヒドロ塩基、例えば、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化リチウム、酸化銀、およびアンモニアなどもここに含まれる。前記のアルカリの他に、塩基として使用できる固体物質は、(固体化合物中に)HO-を持たず、水に溶解すると同様にアルカリ反応を生じるものもある。これらの例には、アミン、例えばアミドアミンの場合と同様に官能化されたアルキル基であってもよいモノアルキルアミン、ジアルキルアミン、およびトリアルキルアミン、モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミン、およびトリアルカノールアミン、モノアミノアルキルアミン、ジアミノアルキルアミン、およびトリアミノアルキルアミン、および例えばシアン化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸三ナトリウムなどの弱酸の塩が含まれる。
【0054】
ここで本発明の文脈において特に好ましいポリオールエーテルは、リン酸化ソルビタンエーテルおよび/またはリン酸化ポリグリセロールエーテル、特にリン酸化ポリグリセロールエーテルである。特に好ましいのは、リン酸化され、かつ中和されたポリグリセロールヘキサデシルエーテル、リン酸化され、かつ中和されたポリグリセロールオクタデシルエーテル、またはこれらの物質の混合物である。
【0055】
本発明の特に好ましい実施形態は、本発明により上記で特定した式2、3および/または4のポリオールエーテルを、(少なくとも部分的に)リン酸化されているという追加的な但し書きと共に使用することを想定しており、式2、3および/または4のこれらのポリオールエーテルは、特に基Rとして少なくとも1つの(RO)P(O)-基を有しており、前記式中で、基Rは、独立して、カチオン、好ましくはNa、KまたはNH 、または例えばアミドアミンの場合と同様に官能化されたアルキル基であってもよいモノアルキルアミン、ジアルキルアミンおよびトリアルキルアミンのアンモニウムイオン、またはモノアルカノールアミン、ジアルカノールアミンおよびトリアルカノールアミン、モノアミノアルキルアミン、ジアミノアルキルアミンおよびトリアミノアルキルアミンのアンモニウムイオン、またはHもしくはR-O-であってもよく、前記式中で、Rは、3~39個の炭素原子、好ましくは7~22個、およびより好ましくは9~18個の炭素原子を有する一価の脂肪族飽和もしくは不飽和の炭化水素基、またはポリオール基である。
【0056】
硫酸化ポリオールエーテルの場合、特にポリオールエーテルと三酸化硫黄またはアミドスルホン酸との反応によって得られるものが有利である。ここでは、硫酸化ソルビタンエーテルおよび/または硫酸化ポリグリセロールエーテルが有利である。
【0057】
本発明の文脈では、ポリオールエーテルと組み合わせて使用されるエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートが一般式5に該当する場合も非常に特に好ましい:
【化4】
[式中、
g=5~100、好ましくは10~75、より好ましくは25~50、
h=0~25、好ましくは0~10、より好ましくは0~5、
i=0~25、好ましくは0~10、より好ましくは0~5、
基Rは、5~40個の炭素原子、好ましくは8~25個、より好ましくは10~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族飽和もしくは不飽和の直鎖状もしくは分岐状の炭化水素基であるか、または一般式R-C(O)の脂肪酸基であり、前記式中で、Rは、3~39個の炭素原子、好ましくは7~21個、より好ましくは9~17個の炭素原子を有する一価の脂肪族飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、
基Rは、独立して、1~20個の炭素原子を有する、同一の、または異なった一価の脂肪族もしくは芳香族炭化水素基、好ましくはメチル基であり、かつ
基Rは、1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族もしくは芳香族炭化水素基であるか、またはHであり、好ましくはメチル基またはHであり、より好ましくはHである]。
【0058】
既に記載したように、本発明は、水性ポリマー分散液中、好ましくは水性ポリウレタン分散液中の発泡添加剤として、上記のポリオールエーテルおよびエチレンオキシドリッチなアルキルエトキシレートを組み合わせて使用することを特徴としており、特に充填材含有水性ポリウレタン分散液が有利である。ここでポリマー分散液は、好ましくは、水性ポリスチレン分散液、ポリブタジエン分散液、ポリ(メタ)アクリレート分散液、ポリビニルエステル分散液およびポリウレタン分散液の群から選択される。これらの分散液のポリマー含有量は、好ましくは20~70質量%の範囲であり、より好ましくは25~65質量%の範囲である。本発明によれば、水性ポリウレタン分散液、特に充填材含有水性ポリウレタン分散液における発泡添加剤としてのポリオールエーテルおよびエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートの使用が特に有利である。ここで特に好ましいのは、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオールおよびポリエーテルポリオールをベースとするポリウレタン分散液である。
【0059】
本発明の文脈では、水性ポリマー分散液の総質量を基準としたポリオールエーテルおよびエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートの合計濃度が、0.2~20質量%の範囲、より好ましくは0.4~15質量%の範囲、特に好ましくは0.5~10質量%の範囲である場合が好ましい。
【0060】
エチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートが、ポリオールエーテルおよびアルキルアルコキシレートの混合物全体を基準にして、5~80質量%、好ましくは10~75質量%、より好ましくは25~65質量%の濃度で使用されると、さらに好ましい。
【0061】
本発明の文脈ではさらに、ポリオールエーテルおよびエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートの組み合わせに加えて、水性ポリマー分散液の添加剤として少なくとも1つのさらなる補助界面活性剤を使用することが好ましい。本発明により好ましい補助界面活性剤は、例えば脂肪酸アミド、エチレンオキシド-プロピレンオキシドブロックコポリマー、ベタイン、例えばアミドプロピルベタイン、アミンオキシド、第四級アンモニウム界面活性剤またはアンフォアセテートである。さらに、補助界面活性剤は、シリコン系界面活性剤、例えばトリシロキサン系界面活性剤またはポリエーテルシロキサンを含んでいてもよい。
【0062】
特に好ましい補助界面活性剤は、イオン性、好ましくはアニオン性の補助界面活性剤である。好ましいアニオン性界面活性剤は、脂肪酸のアンモニウム塩および/またはアルカリ金属塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルスルホスクシネート、アルキルスルホスクシナメートおよびアルキルサルコシン酸塩である。ここで特に好ましいのは、12~20個の炭素原子を有するアルキル硫酸塩であり、より好ましくは14~18個の炭素原子を有し、さらに好ましくは16より大~18個の炭素原子を有するものである。脂肪酸のアンモニウム塩および/またはアルカリ金属塩の場合、ステアリン酸塩の含有量が25質量%以下であると好ましく、特にステアリン酸塩を含まないことが好ましい。
【0063】
補助界面活性剤を使用する場合、ポリオールエーテル、エチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートおよび追加の補助界面活性剤の合計量に基づく追加の補助界面活性剤の割合が、0.1~50質量%の範囲、好ましくは0.2~40質量%の範囲、より好ましくは0.5~30質量%の範囲、さらに好ましくは1~25質量%の範囲である場合が特に好ましい。
【0064】
上述のように、本発明はより好ましくは、充填材含有ポリマー分散液中の発泡添加剤として、ポリオールエーテルおよびエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートを組み合わせて使用することを提供する。
【0065】
本発明により特に好ましい充填材は、ケイ酸塩、例えばタルク、雲母またはカオリン、炭酸塩、例えば炭酸カルシウムまたはチョーク、酸化物/水酸化物、例えば石英粉、シリカ、水酸化アルミニウム/水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムまたは酸化亜鉛、および有機充填材、例えばパルプ、セルロースおよびセルロース誘導体、リグニン、木繊維/木粉、粉砕プラスチックまたはテキスタイル繊維の群から選択される。ここで、本発明によれば、カオリン、雲母、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、リグニン、セルロース誘導体が特に有利である。
【0066】
さらに、本発明によれば、水性ポリマー分散液の総質量を基準にして、5~70質量%、より好ましくは10~50質量%、さらに好ましくは15~45質量%、さらに好ましくは20~40質量%の濃度で充填材が使用されると好ましい。
【0067】
ポリオールエーテルおよびエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートの本発明による組み合わせと同様に、水性ポリマー分散液は、着色顔料、艶消し剤、加水分解もしくはUV安定剤などの安定剤、酸化防止剤、吸収剤、架橋剤、レベリング添加剤、増粘剤、または任意で上記の他の補助界面活性剤などのさらなる添加剤を含んでもよい。
【0068】
ポリオールエーテルおよびエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートは、純粋な形で、または適切な溶媒中にブレンドされた形で水性分散液に加えることができる。この場合、2つの成分をあらかじめ溶媒中でブレンドすることも、別々に2つの異なる溶媒中でブレンドすることも可能である。また、2つの成分のうち1つだけをあらかじめ適切な溶媒にブレンドしておき、もう1つの成分を純粋な形で水性分散液に加えることも可能である。ポリオールエーテルおよびエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートを溶媒(混合物)中でブレンドして1成分の添加剤混合物を得ることは、ここでは本発明の非常に特に好ましい実施形態に相当する。この関連で好ましい溶媒は、水、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチルジグリコール、ブチルトリグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、EO、PO、BOおよび/またはSOをベースとするポリアルキレングリコール、およびこれらの物質の混合物から選択され、非常に特に好ましいのは、水性の希釈液またはブレンドである。ポリオールエーテルおよび/またはエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートのブレンドまたは希釈液は、好ましくは10~80質量%、より好ましくは15~70質量%、さらに好ましくは20~60質量%の添加剤濃度を含む。
【0069】
ポリオールエーテルおよび/またはエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートの水性希釈液もしくはブレンドの場合、配合物の特性(粘度、均質性など)を改善するために、ハイドロトロピック化合物をブレンドに加えると有利な場合がある。ここでいうハイドロトロピック化合物とは、親水性部分と疎水性部分とからなる水溶性の有機化合物であるが、分子量が低すぎるため界面活性作用を有していない。これらの化合物は、水性配合物中の有機物、特に疎水性有機物の溶解性または溶解特性の改善につながる。「ハイドロトロピック化合物」という用語は、当業者に公知である。本発明の文脈において好ましいハイドロトロピック化合物は、アルカリ金属およびアンモニウムのトルエンスルホン酸塩、アルカリ金属およびアンモニウムのキシレンスルホン酸塩、アルカリ金属およびアンモニウムのナフタレンスルホン酸塩、アルカリ金属およびアンモニウムのクメンスルホン酸塩、および最大6個のアルコキシレート単位を有するフェノールアルコキシレート、特にフェニルエトキシレートである。ポリオールエーテルおよび/またはエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートのブレンドは、さらに任意で、上記のさらなる補助界面活性剤を含んでいてもよい。
【0070】
上述したように、ポリオールエーテルおよびエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートの併用は、水性ポリマー分散液から製造される多孔質ポリマー被覆の、特に充填材を含有するポリマー分散液の場合に、明らかな改善をもたらすので、本発明は同様に、上記で詳細に説明したように、本発明によるポリオールエーテル少なくとも1種と、本発明によるエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレート少なくとも1種とを含む水性ポリマー分散液を提供するものである。
【0071】
本発明はまた、上記で詳細に説明したように、発泡添加剤としての本発明によるポリオールエーテルおよびエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートの併用で得られた水性ポリマー分散液、好ましくは充填材含有水性ポリマー分散液から製造された多孔質ポリマー層を提供する。
【0072】
好ましくは、本発明による多孔質ポリマー被覆は、以下のステップを含む方法によって製造することができる:
a)少なくとも1種の水性ポリマー分散液、好ましくは少なくとも1種の充填材、本発明によるポリオールエーテル少なくとも1種、本発明によるエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレート少なくとも1種、および任意でさらなる添加剤を含む混合物を提供するステップ、
b)前記混合物を発泡させて、均質で微細なセルを有する発泡体を得るステップ、
c)任意で、少なくとも1種の増粘剤を添加して、湿潤発泡体の粘度を調整するステップ、
d)発泡したポリマー分散液の被覆を適切な担体に塗布するステップ、および
e)前記被覆を乾燥させるステップ。
【0073】
好ましい構成の観点から、特に前記方法において有利に使用することができるポリオールエーテル、エチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレート、ポリマー分散液、および充填材の観点から、上記の説明、および特に特許請求の範囲に詳述されているような前記の好ましい実施形態も参照されたい。
【0074】
上記のような本発明による方法のプロセスステップは、時間的に固定された順序に従うものではないことが明らかにされている。例えば、プロセスステップc)は、早い段階で、プロセスステップa)と同時に実施することができる。
【0075】
プロセスステップb)において、水性ポリマー分散液が高い剪断力の適用によって発泡されるのは、本発明の好ましい実施形態である。ここで発泡は、当業者に周知のせん断ユニット、例えばDispermats、溶解機、HansaミキサーまたはOakesミキサーを用いて実施することができる。
【0076】
さらに、プロセスステップc)の終わりに製造された湿潤発泡体が、少なくとも5Pa・s、好ましくは少なくとも10Pa・s、より好ましくは少なくとも15Pa・s、およびさらに好ましくは少なくとも20Pa・sの粘度を有するが、しかし500Pa・s以下、好ましくは300Pa・s以下、より好ましくは200Pa・s以下、およびさらに好ましくは100Pa・s以下である粘度を有することが好ましい。発泡体の粘度は、ここでは、例えば、LV-4スピンドルを備えたブルックフィールド粘度計LVTDモデルを用いて測定することができる。湿潤発泡体の粘度を決定するための対応する試験方法は、当業者に公知である。
【0077】
すでに上記で説明したように、湿潤発泡体の粘度を調整するために、追加の増粘剤を系に加えることができる。
【0078】
好ましくは、本発明の文脈で有利に使用することができる増粘剤は、ここでは会合性増粘剤のクラスから選択される。ここでいう会合性増粘剤とは、ポリマー分散液中に存在する粒子の表面における会合によって増粘効果をもたらす物質である。この用語は当業者に公知である。好ましい会合性増粘剤は、ここではポリウレタン増粘剤、疎水性に変性されたポリアクリレート増粘剤、疎水性に変性されたポリエーテル増粘剤および疎水性に変性されたセルロースエーテルから選択される。特にポリウレタン系の増粘剤が好ましい。さらに、本発明の文脈では、分散液の全組成に基づく増粘剤の濃度が、0.01~10質量%の範囲内、より好ましくは0.05~5質量%の範囲内、最も好ましくは0.1~3質量%の範囲内であることが好ましい。
【0079】
本発明の文脈では、プロセスステップd)において、10~10000μm、好ましくは50~5000μm、より好ましくは75~3000μm、さらに好ましくは100~2500μmの層厚を有する発泡ポリマー分散液の被覆が製造されることがさらに好ましい。発泡ポリマー分散液の被覆は、例えばナイフ被覆などの当業者に周知の方法で製造することができる。ここで、直接的もしくは間接的な被覆プロセス(トランスファー被覆と呼ばれる)のいずれかを使用することが可能である。
【0080】
また、本発明の文脈では、プロセスステップe)において、発泡させ、かつ被覆したポリマー分散液の乾燥を高温で行うことが好ましい。ここで、本発明により、最低50℃、好ましくは60℃、さらに有利には少なくとも70℃の乾燥温度が有利である。さらに、乾燥不良の発生を回避するために、発泡させ、かつ被覆したポリマー分散液を異なる温度で複数の段階において乾燥させることが可能である。対応する乾燥技術は、産業界で広く普及しており、当業者に公知である。
【0081】
すでに記載したように、プロセスステップc)~e)は、当業者に公知の慣用の方法を用いて実施することができる。これらの概要は、例えば、Coated and laminated Textiles(Walter Fung、CR-Press、2002年)に記載されている。
【0082】
本発明の文脈では、ポリオールエーテル、エチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレート、および好ましくは充填材、および任意でさらなる添加剤を含有する多孔質ポリマー被覆であって、350μm未満、好ましくは200μm未満、特に好ましくは150μm未満、最も好ましくは100μm未満の平均セル径を有するものが特に有利である。平均セル径は、好ましくは顕微鏡、好ましくは電子顕微鏡によって決定することができる。この目的のために、十分な倍率の顕微鏡を用いて多孔質ポリマー被覆の断面を観察し、少なくとも25個のセルの大きさを確認する。この評価方法で十分な統計量を得るためには、顕微鏡の倍率は、観察野に少なくとも10×10個のセルが存在するように選択することが好ましい。次いで、観察したセルもしくはセル径の算術平均値として平均セル径を算出する。顕微鏡を用いたこのセル径の決定は、当業者には周知のものである。
【0083】
ポリオールエーテル、エチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレート、および好ましくは充填材、および任意でさらなる添加剤を含む、本発明による多孔質ポリマー層(またはポリマー被覆)は、例えば、繊維産業、例えば合成皮革材料、建築および建設産業、エレクトロニクス産業、例えば発泡シール、スポーツ産業、例えばスポーツマットの製造、または自動車産業において使用することができる。
【実施例
【0084】
物質
Impranil(登録商標)DLU:Covestro社製の脂肪族ポリカーボネートエステル-ポリエーテル-ポリウレタン分散液
添加剤1:以下の反応により製造したポリグリセリルヒドロキシステアリルエーテル:市販のポリグリセロール-3(Spiga Nord、水酸基価1124mgKOH/g、52.5g、0.219mol、1.0当量)とナトリウムメトキシド(メタノール中の25%溶液1.96g、0.009mol、0.04当量)の混合物を、撹拌しながら180℃に加熱し、2時間以内に15mbarでNを導入し、メタノールを留去した。180℃に到達した後、真空を中断し、次いで80℃に加熱した1,2-エポキシオクタデカン(CAS RN 7390-81-0.85%、97.0g、0.361mol、1.65当量)を1時間かけてゆっくり滴加した。その後、混合物を90℃まで冷却し、相を分離させた。これにより、未変換のポリグリセロール5.6g(下相)とポリグリセリルヒドロキシアルキルエーテル113g(上相、融点=71.5℃、水酸基価=387mgKOH/g、酸価=0.4mgKOH/g、エポキシ酸素含有量=0.06%)が得られた。
【0085】
添加剤2:R=ラウリル、R=H、g=40およびh=i=0の式5に対応するアルキルエトキシレート。
【0086】
粘度測定:
すべての粘度測定は、LV-4スピンドルを装えたブルックフィールド粘度計LVTDモデルを用いて、12rpmの一定の回転速度で行った。粘度測定では、試料を100mlの瓶に移し、その中で測定用スピンドルを浸漬マーキングのところまで浸した。常に一定の粘度測定値が表示されるのを待った。
【0087】
例1:本発明による界面活性剤ブレンドの配合
第1表に詳述されている組成に従って、界面活性剤ブレンドを製造した。すべてのブレンドを80℃で均質化した。
【0088】
【表1】
【0089】
例2:発泡実験
本発明による添加剤の組み合わせの有効性を試験するために、一連の発泡実験を行った。この目的のために、ポリウレタン分散液Impranil DLUおよび充填材としてカオリン(数平均メジアン粒径D50:5μm)を使用した。これらの発泡実験には、例1に記載された界面活性剤のブレンドを使用した。界面活性剤2は、ここではポリオールエーテルとエチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートとの本発明による添加剤の組み合わせに対応し、界面活性剤1および3は、それぞれの個別成分と比較して本発明による添加剤の組み合わせの改善効果を示すための比較例となる。第2表は、それぞれの実験の組成の概要を示している。
【0090】
すべての発泡実験は手作業で行った。この目的のために、ポリウレタン分散液、充填材および界面活性剤をまず500mlのプラスチックカップに入れ、分散ディスク(直径=6cm)を備えたディゾルバーを用いて800rpmで3分間均質化した。次に、この充填材を含む分散液を発泡させるために、せん断速度を2200rpmに上げ、その際、溶解機のディスクが常に適切な渦を形成するのに十分な程度に分散液に浸されるようにした。この速度で、混合物は約350mlの体積まで発泡した(分散液の粘度によって許容される場合)。その後、せん断速度を1000rpmに低下させ、さらに15分間せん断を行った。このステップでは、溶解機ディスクが混合物中に十分深く浸されていたため、それ以上系内に空気が導入されることはなかったが、その全量は依然として撹拌されていた。
【0091】
本発明の界面活性剤混合物2を用いて製造された発泡体の場合(実験#2)、発泡操作の最後に所望の密度範囲内の微細で均質な発泡体が得られ、これはまだ流動性があり、良好な加工性を有していた。ポリグリセロールエーテルのみを含む界面活性剤ブレンド(実験#1)の場合、充填材を含む分散液の粘度が非常に高く、サンプルの発泡は不可能であった。さらに、混合物の粘度が非常に高いため、それ以上加工することは困難であった。エチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートのみを含む界面活性剤ブレンド(実験#3)の場合、充填材含有分散液の粘度は許容範囲内であったが、発泡操作の最後に比較的不規則で粗いセルを有する発泡体が得られた。発泡体の粘度は、同様に第2表に記されている。
【0092】
次に、Mathis AG社製のLabcoater LTE-S実験用散布台/乾燥機を用いて、発泡体をテキスタイル担体上にナイフ被覆し(層厚~800μm)、次いで60℃で5分間、および120℃でさらに5分間乾燥させた。ここで注目すべきは、本発明の界面活性剤混合物2(実験#2)を用いて製造された発泡体は、欠陥を生じることなくナイフ被覆できることであった。乾燥操作の後、視覚的に均質な外観および良好な触覚特性を有する欠陥のない発泡体被覆が得られた。ポリグリセロールエーテルのみを含む界面活性剤ブレンド(実験#1)の場合、ナイフによる発泡体の被覆は困難であり、その結果、発泡体被覆に欠陥部位が生じた。こうして、乾燥後、多数の欠陥を持つ被覆が得られた。このことと、軽く発泡したコンパクトな材料のみがナイフ被覆されたという事実とは、対応するサンプルが非常に硬く、硬質であると感じられ、魅力的な触覚特性を有していないという追加の効果をもたらした。エチレンオキシドリッチなアルキルアルコキシレートのみを含む界面活性剤ブレンドの場合(実験#3)、発泡体は欠陥を生じることなくテキスタイル担体上にナイフで被覆することができた。しかし、乾燥後には、発泡体の不均一な粗いセル構造が明らかになった。このため、被覆されたテキスタイルの触感が悪くなってしまった。これらの実験は、本発明による発泡添加剤の組み合わせによる改善効果を明確に示すものである。
【0093】
【表2】
【国際調査報告】