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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】経鼻送達用の医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20220907BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20220907BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20220907BHJP
   A61M 15/08 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K47/26
A61K47/36
A61K9/14
A61K31/485
A61P25/36
A61M15/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022501305
(86)(22)【出願日】2020-05-18
(85)【翻訳文提出日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 GB2020051207
(87)【国際公開番号】W WO2021005325
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】16/506,023
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505141945
【氏名又は名称】オレクソ・アクチエボラゲット
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨーナス・セヴマルケル
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト・レン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・フィッシャー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076BB25
4C076CC01
4C076DD67
4C076DD68
4C076EE30
4C076EE39
4C076FF32
4C076FF63
4C084AA17
4C084MA59
4C084NA11
4C084ZC422
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB23
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA43
4C086MA59
4C086NA11
4C086ZC39
(57)【要約】
本発明によって、薬理学的に有効な量のオピオイドアンタゴニストおよび薬学的に許容される担体を含む、オピオイドアンタゴニストの経鼻送達のための固形医薬組成物製剤が提供される。上記組成物は、好ましくは、噴霧乾燥によって生成された粉末の形態であり、これが、その後、単回使用の鼻用アプリケーターに装填される。この点に関して、好ましい薬学的に許容される担体には、二糖類(例えば、ラクトースまたはトレハロース)およびデキストリン(例えば、シクロデキストリンまたはマルトデキストリン)が含まれ、好ましくはこれらが組み合わせられて一緒に噴霧乾燥される。組成物は、アルキル糖類、好ましくはショ糖モノラウレートなどのショ糖エステルをさらに含み得る。上記組成物およびアプリケーターは、対象におけるオピオイドの過剰摂取の治療に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬理学的に有効な量のオピオイドアンタゴニスト、アルキル糖類、および薬学的に許容される担体材料を含む、オピオイドアンタゴニストの経鼻送達に適した固形医薬組成物。
【請求項2】
乾燥粉末の形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
粒子サイズ分布が、約3μmを超えるd10を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記粉末が、約10μm~約100μmの範囲内の体積基準平均直径を含む粒子サイズ分布を有する、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記オピオイドアンタゴニストが、ナロキソン、ナルメフェンまたはナルトレキソンである、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記オピオイドアンタゴニストが、ナロキソンである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記オピオイドアンタゴニストが、ナルメフェンである、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記担体材料が、低分子量の糖類を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記糖類が、二糖類である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記担体材料が、デキストリンを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記担体材料が、二糖類およびデキストリンの組み合わせを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
オピオイドアンタゴニストの経鼻送達に適した、噴霧乾燥粉末の形態である固形医薬組成物であって、薬理学的に有効な量のオピオイドアンタゴニストおよび請求項11に記載の薬学的に許容される担体材料を含む、組成物。
【請求項13】
前記粉末が、請求項3または4に記載の粒子サイズ分布を有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記オピオイドアンタゴニストが、請求項5~7のいずれか一項に記載の通りである、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1~11に記載の組成物、または請求項12~14のいずれか一項に記載の組成物であるが、さらにアルキル糖類を含み、前記アルキル糖類がショ糖エステルを含む、組成物。
【請求項16】
前記ショ糖エステルが、ショ糖モノラウレートを含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記二糖類が、マルチトール、トレハロース、スクラロース、ショ糖、イソマルト、マルトースおよびラクトースからなる群から選択される、請求項9~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記二糖類が、ラクトースおよび/またはトレハロースを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記デキストリンが、シクロデキストリンまたはマルトデキストリンを含む、請求項10~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
α-D-ラクトース一水和物、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンおよび/またはマルトデキストリン12DEのうち1つ以上を含む、請求項9~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記二糖類が、前記組成物の総重量に基づいて約15重量%~約25重量%の量で存在する、請求項11~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記デキストリンが、前記組成物の総重量に基づいて40重量%~約70重量%の量で存在する、請求項11~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物の測定可能な最低ガラス転移温度が、最大約35%の相対湿度で測定されたときに少なくとも約40℃である、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
請求項2~23のいずれか一項に記載の組成物を製造するためのプロセスであって、前記プロセスが、
i)前記オピオイドアンタゴニストおよび前記薬学的に許容される担体材料、ならびに存在する場合は前記アルキル糖類を一緒に、適切な揮発性溶媒中に混合するステップと、
ii)ステップi)の混合物を噴霧乾燥して、噴霧乾燥された複数の粒子を形成するステップと、を含む、プロセス。
【請求項25】
請求項24に記載のプロセスによって得られる組成物。
【請求項26】
請求項2~23または25のいずれか一項に記載の組成物を鼻に送達するのに適したおよび/または適合された鼻用アプリケーターデバイスであって、リザーバーを含むか、またはそれに付属かつ/もしくは取り付けられており、前記リザーバー内に前記組成物が収容されている、鼻用アプリケーターデバイス。
【請求項27】
請求項26に記載のアプリケーターデバイスを製造するためのプロセスであって、請求項24に記載のプロセスと、それに続く、そのように形成された前記組成物を、前記アプリケーターデバイス内にあるか、またはそれに付属もしくは取り付けられているリザーバーに装填することとを含む、プロセス。
【請求項28】
オピオイドの過剰摂取を治療する方法で使用するための、請求項1~23または25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物が、請求項26に記載のアプリケーターを介して鼻に投与される、請求項28に記載の使用のための組成物。
【請求項30】
オピオイドの過剰摂取を治療する方法のための薬剤を製造するための、請求項1~23または25のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項31】
前記組成物が、請求項26に記載のアプリケーターを介して鼻に投与される、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
オピオイドの過剰摂取を治療する方法であって、請求項1~23または25のいずれか一項に記載の組成物を、そのような治療を必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項33】
前記組成物が、請求項26に記載のアプリケーターを介して前記対象に投与される、請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけオピオイド/オピエートの過剰摂取の治療に有用なオピオイドアンタゴニストを含有する新しい医薬組成物に関する。本発明はまた、そのような組成物を製造し、それらを剤形に製剤化する方法、ならびにオピオイド/オピエートの過剰摂取の治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書における明らかに以前に公開された文書の列挙または考察は、文書が最新技術または共通の一般知識の一部であるという承認として必ずしも受け取られるべきではない。
【0003】
薬物嗜癖は世界的な問題であり、オピオイド依存はこの問題の主要な要素である。オピオイドおよびオピエートは嗜癖性が高い。人はしばしば娯楽目的でヘロイン(ジアモルヒネ)などの違法なオピオイドを使い始めるが、これは大抵依存につながる。
【0004】
とは言うものの、オピオイド依存者の新しいコホートが過去10年ほどで、特に米国で出現し始めており、これはつまり、典型的には疼痛の治療のために開始される処方オピオイドに依存するようになった、いわゆる「ホワイトカラー」嗜癖者である。
【0005】
これは、中等度から重度の慢性癌性疼痛、および急性疼痛(例えば、手術からの回復中および突出痛)の治療において、鎮痛剤としての薬用オピオイドの使用がますます広まっていることに起因する。さらに、それらの使用は、慢性の非悪性の疼痛の管理において増加している。
【0006】
処方オピオイドに耽溺するようになった人々は、ヘロインなどの違法な(「ストリート」)ドラッグに移行することがある。これは、ヘロインが処方オピオイドよりも安価で(比較的)入手しやすいことに起因し得る。
【0007】
2010年には、世界中で1,550万人のオピオイド依存者がいると推定された。オーストラレーシア、西ヨーロッパ、および北アメリカの有病率は、世界的にプールされた有病率よりも高かった。2017年のEuropean Monitoring Centre for Drugs and Drug Addictionのレポートによると、ヨーロッパには2016年に推定130万人の高リスクのオピオイドユーザーがいた。オピオイド危機は特に米国に影響を及ぼしており、これは近年エスカレートしている。
【0008】
したがって、オピオイド依存症は重大な健康問題であり、長期のオピオイド使用は、薬物の過剰摂取、暴力および自殺、ならびに他のよく知られた様々な健康問題による早期死亡のリスクの実質的な増加に関連しており、医療費、生産性の喪失、嗜癖治療、および犯罪活動の観点から、その社会経済的影響はますます拡大している(Florence et al,Med.Care.,54,901(2016)を参照)。
【0009】
オピオイド嗜癖者は典型的に、オピオイド系粉末(ヘロインなど)の形態で「路上で」オピオイドを直接購入することによって嗜癖を養う。ヘロインは通常、販売される前に麻薬の売人によって添加物と混合(または「カット」)されるが、その量および正体はほとんどの場合、乱用者にはわからない。さらに、フェンタニルおよびその類似体など、疼痛などの治療を目的とした、より強力なオピオイドを販売され、乱用する嗜癖者が増えている(例えば、Prekupec et al,J.Addict.Med.,11,256-265(2017)を参照)。
【0010】
これらの追加の問題がなくても、オピオイドは医学的監督下で送達されない場合、非常に危険な薬物である。特に上記の純度および強度の問題に関して、販売されている違法薬物は品質管理が行われていないため、プロセス全体が「宝くじ」のようなものであり、このことは、過剰摂取の危険性および可能性を高めることに寄与する。
【0011】
オピオイドの過剰摂取は心拍数および呼吸の低下につながり、低酸素症につながる。低酸素症は、昏睡および永続的な脳損傷を含む中枢神経系への短期的および長期的な影響をもたらすだけでなく、しばしば死亡につながる。オピオイド、特にヘロインの過剰摂取は非常に一般的である。2015年には、薬物の過剰摂取が52,404名の米国死亡者数を占め、そのうち33,091名(63.1%)がオピオイドに関係していた(Rudd et al,MMWR,65,1445(2016)を参照)。ヘロインを初めて使用した人が過剰摂取することも、前例のないことではない。
【0012】
オピオイドを過剰摂取した対象は、緊急の医療処置が必要である。オピオイドの過剰摂取を効果的に治療するために使用できる唯一の薬は、オピオイド受容体に結合することによって作用し、意図されたもの(例えば、多幸感)であるか、または意図していなかったおよび/もしくは潜在的に危険なもの(呼吸抑制を含む)であるかにかかわらず、独自のオピオイド効果を誘発せずにオピオイドアゴニスト(例えば、ヘロイン)に置換するオピオイド受容体アンタゴニストである。オピオイドアンタゴニストの緊急投与は、オピオイド中毒の程度を(時には完全に)減らすことができ、本質的に、オピオイドの過剰摂取を「逆転」させることができる。
【0013】
オピオイドアンタゴニストは、医学的に資格のあるスタッフによって事故および救急科の病院で静脈内溶液として投与される。ただし、病院環境以外では、オピオイドの過剰摂取(または過剰摂取の疑い)の治療に利用できる治療法は比較的少ない。
【0014】
市販されているこのような2つの治療法には、液体点鼻薬(1つの鼻腔に直接噴霧されるNarcan(登録商標))、または自動注射器(筋肉内または皮下への注射によって薬物を送達するEvzio(登録商標))のいずれかとして単回投与の形態で送達されるオピオイドアンタゴニスト、つまりナロキソンが含まれる。これらの治療法は、多くの場合、ファーストレスポンダー(つまり、救急車の乗組員、救急医療隊員、警察官、家族、友人、または他の介護者などの医療資格のない人員)が使用して、より資格のある医療支援が利用可能になるまでの時間を稼ぐ。
【0015】
これらの製品は間違いなく命を救う補助として効果的である。ナロキソンおよび他のオピオイドアンタゴニストは水溶性の高い薬剤であり、そのため、Narcanのような製品中の少量の液体(100μL)に有効量のナロキソンなどを溶解してオピオイドの過剰摂取を治療することができる。これにより、緊急時に迅速に作用する。
【0016】
しかし、症例の約3分の1において、Narcanは、過剰摂取の逆転をもたらすために2回以上の投与を必要とすることが知られている。さらに、Narcanには、凍結させてはならないという欠点がある(そうしないと、分注できない)。これは、例えば、製品がファーストレスポンダーの車内に一晩放置された場合など、寒冷地では問題である。
【0017】
一方、Evzioは針を必要とする非経口製品であり、緊急の状況で一部のファーストレスポンダーに重大な困難および/または問題をもたらす。
【0018】
オピオイドの誤用による過剰摂取死が大幅に増加しているため、オピオイドの過剰摂取防止薬に対するかなりの需要があり、また、強度、作用の開始および期間、ならびに緊急事態(オピオイドの過剰摂取を治療することは間違いなくそうである)における再現性および信頼性の観点から、代替的なおよび/または改善された薬剤に対する明らかな臨床上の要求もある。
【0019】
市販の製品、つまりNarcanに加えて、液体鼻腔内スプレーは、国際特許出願第2018/064672号、ならびに米国特許出願第2018/0092839A号および第2019/0070105A号にも開示されている。
【0020】
吸入または鼻腔内投与によって投与され得るオピオイドアンタゴニストを含む乾燥粉末製剤は、とりわけ、国際特許出願第2010/142696号および第2019/038756号、ならびに米国特許出願第2018/0092839A号から知られている。
【0021】
Russoら(J.Pharm.Sci.,95,2253(2006))は、オピオイド鎮痛剤化合物、つまりモルヒネを多数の賦形剤とともに噴霧乾燥することを開示している。噴霧乾燥製剤は、Vengerovich et al.,Bulletin of Experimental Biology and Medicine,163,737(2017)にも開示されており、そこでは、救急医療用のポリマー担体に基づく徐放性製剤の開発を視野に、ナロキソンを2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む様々な物質にマイクロカプセル化することが試みられた。
【0022】
糖エステルは、脂肪酸でエステル化された親水性糖の「ヘッドグループ」からなる天然および生分解性の非イオン性界面活性剤のクラスである。糖エステルの特性は、使用される糖および脂肪酸の性質、ならびに糖のエステル化の程度によって異なる。それらは天然物、糖、および食用脂肪から作られ、無味、無臭、および生分解性であり、ならびに比較的毒性がなく、一日摂取許容量は最大30mg/kgである(joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives(JECFA))。糖エステル、特にショ糖エステルは、食品および化粧品業界で広く使用されているが、これまでのところ、医薬製剤では比較的利用が不十分である(例えば、Int.J.Pharm.,433,1(2012)に掲載のSzutsおよびSzabo-Reveszによる総説論文を参照)。
【0023】
ショ糖エステルは、優れた水中油型乳化剤として知られている。例えば、ショ糖エステルを含むエマルジョン系組成物は、国際特許出願第2005/065652号に記載されている。国際特許出願第2003/061632号も参照のこと。
【0024】
ショ糖エステルは、経口投与される剤形のシクロスポリンなどの難水溶性薬剤の生物学的利用能を改善するためにも使用されている(Hahn and Sucker,Pharm.Res.,6,958(1989)を参照)。(ナロキソンおよび他のオピオイドアンタゴニストは水溶性が高いことに留意されたい。)
【0025】
ショ糖エステルを含む他の経口剤形は、とりわけ国際特許出願第2016/016431号に記載されている。
【0026】
国際特許出願第2015/095389号および第2018/089709号、ならびに米国特許第9,895,444号もまた、関連化合物、糖エーテル、および特にアルキルグリコシドが、液体点鼻薬におけるオピオイド化合物の生物学的利用能を高めることができることを開示している。ショ糖エステルは、これらの文書においても言及されている。同様の薬物送達ビヒクルは、米国特許出願第2016/0045474号に開示されている。さらに、Kurtiらは、培養モデルの上皮透過性に対するショ糖エステルの影響を調査し(Toxicology in Vitro,26,445(2012)を参照)、Liらは、モデル原薬としてスマトリプタンを使用したラットのインビボ吸収試験においてショ糖ラウレートを含む様々な界面活性剤の影響を調査した(Drug Delivery,23,2272(2016)を参照)。
【0027】
しかしながら、出願人の知る限り、鼻腔内送達を目的とした固形(例えば、粉末)製剤におけるショ糖エステルの使用は報告されていない。
【0028】
我々は今、予期せぬことに、市販の製品と比較して、オピオイドアンタゴニストの生物学的利用能の驚くべき実質的な改善と、さらに驚くべきことに、オピオイドアンタゴニストの吸収速度の増加とを提供する乾燥粉末組成物の形態のオピオイドアンタゴニストを製剤化することが可能であることを見出した。特に、以下に開示される特定の担体材料の組み合わせを用いた噴霧乾燥のプロセスによって生成される組成物、および/またはショ糖エステルなどのアルキル糖類を含む同様の乾燥粉末組成物が、これらの予期しない効果を引き起こすことができることを見出した。
【発明の概要】
【0029】
本発明の第1の態様によれば、薬理学的に有効な量のオピオイドアンタゴニストおよび薬学的に許容される担体材料を含む、オピオイドアンタゴニストの経鼻送達に適した固形医薬製剤/組成物が提供される。
【0030】
本発明の第2の態様によれば、薬理学的に有効な量のオピオイドアンタゴニスト、任意選択でアルキル糖類、および薬学的に許容される担体材料を含む、オピオイドアンタゴニストの経鼻送達に適した粉末の形態の固形医薬製剤/組成物が提供される。
【0031】
好ましくは、粉末は、噴霧乾燥のプロセスによって生成される。本発明の第3の態様によれば、薬理学的に有効な量のオピオイドアンタゴニストおよび薬学的に許容される担体材料、より好ましくは、担体材料のうち少なくとも1つは二糖類であり、担体材料のうち少なくとも1つはデキストリンである、少なくとも2つの薬学的に許容される担体材料を含む、オピオイドアンタゴニストの経鼻送達に適した噴霧乾燥された粉末の形態の固形医薬製剤/組成物が提供される。
【0032】
本発明の第1、第2、および第3の態様の組成物は、以下、まとめて「本発明の組成物」と呼ばれる。
【0033】
「固形」という用語は、閉じ込められていないときにその形状および密度を保持し、および/または分子が一般にそれらの間の反発力が許す限り強く圧縮されている物質のあらゆる形態を含むことが当業者によく理解されるであろう。
【0034】
本発明の組成物に使用することができるオピオイドアンタゴニストには、オピオイド活性をほとんどまたは全く有さないが、オピオイド受容体からオピオイドアゴニストを置換することができ、それによって、オピオイドアゴニストの薬理学的効果を、かかる効果が意図されているもの(多幸感、鎮静作用および/または渇望の軽減)であるか、または意図されていないもの(意識喪失、心拍数の低下、肺機能の低下、低酸素症など)であるかにかかわらず、逆転または防止する任意の化合物が含まれる。この点で、「オピオイドアゴニスト」という用語には、外因性オピオイド受容体リガンド(すなわち、前述のもの)および内因性オピオイド受容体リガンド(例えば、エンドルフィン)が含まれる。
【0035】
したがって、オピオイドアンタゴニストには、ナロキソン、ナルメフェンおよびナルトレキソン、またはそれらの薬理学的に許容される塩が含まれる。これらの化合物の好ましい塩には、塩酸塩が含まれる。ナロキソンおよびナルメフェン(およびいずれかの塩)が特に好ましい。
【0036】
本発明の文脈において、「オピオイドアンタゴニスト」という用語はまた、ブプレノルフィンなどのオピオイド受容体の部分的アンタゴニストであることが知られている医薬品有効成分を含み得る。ブプレノルフィンは、μ-オピオイド受容体において部分的アゴニストであるため、「オピオイド受容体の部分的アンタゴニスト」と呼ぶことができる。ブプレノルフィンは結合親和性が高く、μ-オピオイド受容体でメタドン、ヘロインおよびモルヒネなどの他のアゴニストと競合する。ブプレノルフィンのオピオイドアゴニスト効果は、モルヒネなどの他の「完全な」オピオイドアゴニストの最大効果よりも小さく、「天井」効果によって制限される。したがって、この薬は、ヘロイン、モルヒネまたはメタドンなどの他のオピオイドアゴニストよりも低い身体的依存度をもたらし、そのため代替療法に使用される。オピオイド耐性のある対象においては、過剰摂取のリスクが減少し、娯楽的価値が低下する。ブプレノルフィンは、WHOのオピオイド依存症の治療のための必須医薬品リストに記載されている。完全アゴニストの置換により、ブプレノルフィンは、完全アンタゴニストと比較して、誘発される離脱症状の程度が低くありながらオピオイドの過剰摂取を逆転させることができるため、本発明の文脈において有用である可能性がある。
【0037】
本発明の組成物に使用されるオピオイドアンタゴニストの量は、オピオイド受容体アゴニストの効果(外因性および/または内因性)に拮抗し、離脱症状を誘発し、および/または上記の薬理学的効果の逆転をもたらすのに十分でなければならない。薬理学的に適切な量のオピオイドアンタゴニスト(またはその塩)は、当業者によって決定され得、治療される状態の種類および重症度、ならびに個々の患者に最も適しているのは何かによって異なり得る。それはまた、製剤の性質および投与経路、治療される状態の種類および重症度、ならびに治療される特定の患者の年齢、体重、性別、腎機能、肝機能および反応によって異なる可能性が高い。
【0038】
本発明の組成物に使用することができるオピオイドアンタゴニストの総量は、含まれる活性化合物の性質に依存するが、約1%などの約0.1%~、例えば約2%~最大約95%の範囲であり得る。例えば、オピオイドアンタゴニストの量は、組成物の総重量に基づいて約10重量%などの約5重量%(例えば、約20重量%)~約75重量%などの約95重量%、例えば約50重量%、例えば約40重量%であり得る。
【0039】
単位投与量当たりのオピオイドアンタゴニストの適切な投与量(遊離酸/塩基として計算される)は、使用されるオピオイドアンタゴニストによって、約2mg~約30mg(例えば、約10mgなどの約20mg)など、約1mg~約60mg(例えば、約40mg)の範囲である。
【0040】
ナロキソンの適切な投与量(遊離塩基として計算される)は、約1.5mg~約10mgなど、約1mg~約20mg(例えば、約15mg)の範囲であり、したがって、約1.8mg、約5.4mg、約9.0mg(例えば、約10.8mg)、より好ましくは約3.6mg、特に約7.2mgであり得る。
【0041】
単位投与量当たりのナルメフェンの適切な投与量(遊離塩基として計算される)は、約0.5~約10mg、より好ましくは約1.5mgを含む、特に約3.0mgである約1mg~約6mgであり得る。
【0042】
単位投与量当たりのナルトレキソンの適切な投与量(遊離塩基として計算される)は、約1mg~約20mg(例えば、約15mg)、より好ましくは約1.5mg~約10mgであり得る。
【0043】
本発明の前述の態様のいずれかに関連して、組成物に使用することができる適切な薬学的に許容される担体材料には、通常の保管条件下で、固形状態で、医薬使用および/もしくは鼻腔内送達に適しており(および/もしくはそれらについて承認されており)、その物理的および/もしくは化学的完全性を維持することができ、ならびに/またはオピオイドアンタゴニストおよび/もしくは組成物に存在し得る他の成分(アルキル糖類など)の物理的および/もしくは化学的完全性に影響を与えない、任意の関連材料が含まれる。
【0044】
「物理的および化学的完全性を維持する」という表現は、本質的に化学的安定性および固体安定性を意味する。
【0045】
「化学的安定性」とは、本発明の任意の組成物が、単離された固形形態で、またはそのための鼻用アプリケーターまたはリザーバーに装填された場合(適切な医薬品パッケージの有無にかかわらず)、通常の保管条件下で、有意ではない程度の化学劣化または分解を伴って保管できることを含む。
【0046】
「固体安定性」とは、本発明の任意の組成物が、単離された固形形態で、またはそのための鼻用アプリケーターまたはリザーバーに装填された場合(適切な医薬品パッケージの有無にかかわらず)、通常の保管条件下で、有意ではない程度の化学劣化または固体形質転換(例えば、結晶化、再結晶化、結晶化度の喪失、固体相転移(例えば、ガラス状とゴム状との間、または凝集体の形態へ)、水和、脱水、溶媒和または脱溶媒和)を伴って保管できることを含む。
【0047】
本発明の組成物の「通常の保管条件」の例には、アプリケーター、デバイス、薬物リザーバー(キャニスターまたは容器など)に装填されるかどうかにかかわらず、長期間(すなわち、約6か月などの約12か月以上)にわたる約-50℃~約+80℃(好ましくは約50℃などの約-25℃~約+75℃)の温度、および/または約0.1~約2バールの圧力(好ましくは大気圧)、および/または約460ルクスの紫外線/可視光への曝露、および/または約5~約95%(好ましくは約10~約40%)の相対湿度が含まれる。
【0048】
そのような条件下で、本発明の組成物は、必要に応じて約15%未満、より好ましくは約10%未満、とりわけ約5%未満が、化学的に劣化/分離された状態、および/または固体形質転換された状態であることが見出され得る。当業者は、温度および圧力の上記の上限および下限が通常の保管条件の極値を表し、これらの極値の特定の組み合わせが通常の保管中に経験されないことを理解する(例えば、50℃の温度および圧力0.1バール)。
【0049】
このような化学的および特に物理的安定性は、オピオイドの過剰摂取などの治療に使用される粉末などの固形製剤において非常に重要である。
【0050】
化学的にも物理的にも安定性のある粉末などの固形組成物を取得しようとすると、重大な困難が生じる可能性があることはよく知られている。本発明の場合、本発明の組成物の物理的形態が通常の保管条件下で変化する場合(例えば、自由流動性の粉末から排出が困難な凝集塊へ)、鼻用アプリケーターから、または鼻用アプリケーターを介して組成物を分注するときに、オピオイドアンタゴニストの投与量の再現性がなくなる(はたまた、全く分注できなくなる)可能性が高く、それは対象の生命を重大な危険にさらすであろう。
【0051】
本発明の特定の組成物(例えば、粉末)の場合、大気水への曝露は、固体安定性が低い組成物をもたらす可能性がある。例えば、特定の(例えば、比較的高い)相対湿度への曝露は、例えば潮解によって、ならびに/または組成物、および/もしくは担体材料などの組成物の個々の成分のガラス転移温度を低下させることによって、または別の方法で組成物の物理的形態に影響を及ぼし得る。
【0052】
したがって、本発明の組成物、およびそれらを含む鼻用アプリケーターは、好ましくは、先に定義された通常の保管条件下で大気水の侵入を実質的に防止する容器内にパッケージされる。そのような容器は、ヒートシールされたアルミニウムパウチおよび/または熱成形プラスチックなどのパッケージ材料を含み得る。
【0053】
組成物がアルキル糖類を含む場合、適切な薬学的に許容される固形担体材料は、したがって、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース、HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、変性セルロースガム、微結晶性セルロースならびにカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロースおよびその誘導体;米デンプン、タピオカデンプン、小麦デンプン、ならびにより具体的にはコーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;アルファ化デンプン、カルボキシメチルデンプン、ならびに中程度に架橋されたデンプン、加工デンプンおよびデンプングリコール酸ナトリウムなどのデンプン誘導体;デキストリン、シクロデキストリン、およびマルトデキストリンなどの線状または分枝状デキストリンなどのデキストリンを含む多糖類;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバターおよび坐剤ワックスなどのワックス状の賦形剤;固形ポリエチレングリコールなどのポリオール;マンニトール、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、ラクトース、グルコース、ガラクトース、ショ糖、スクラロース、トレハロース、マルトース、イソマルトならびにデキストロースなどの糖、糖アルコールおよび糖類;カルボマーおよびその誘導体などのアクリルポリマー;ポリビニルピロリドン(ポビドン、PVP);架橋ポリビニルピロリドン;ポリエチレンオキシド(PEO);キトサン(ポリ-(D-グルコサミン));ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ペクチンなどの天然ポリマー;スクレログルカン;キサンタンガム;グアーガム;ポリコ-(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸);ならびにクロスカルメロース(例えば、クロスカルメロースナトリウム)を含む。コハク酸ヒプロメロース(HPMCAS)、コポビドンおよびポリビニルアルコール(PVA、またはPVOH)も言及され得る。前述のいずれかの混合物を使用してもよい。
【0054】
したがって、本発明の第1の態様による組成物は、単一の単位剤形に圧縮され、ペレットまたはピルに造粒され得るが、好ましくは、乾燥した自由流動性の粉末の形態で提供される。本発明の第2および第3の態様の組成物は、乾燥した自由流動性の粉末の形態で提供される。本発明の任意の態様の文脈において、「乾燥」とは、本質的に水および他の液体溶媒を含まないことを含み、これには、約5%未満などの約10%未満、より好ましくは約2%未満などの約3%、例えば、製剤の約1%未満が水などの液体であることが含まれる。
【0055】
したがって、本発明の組成物は、複数の粒子の形態で投与することができ、その粒子は、個別および/もしくは集合的に本発明の組成物で構成され、ならびに/またはそれを含むことができる。本発明の組成物は、単純な粉末混合物、粉末ミクロスフェア、コーティングされた粉末ミクロスフェア、凍結乾燥リポソーム分散液、またはそれらの組み合わせの形態で調製することができる。
【0056】
粉末の形態であろうとなかろうと、本発明の組成物に使用され得る担体材料(複数可)の量は、典型的には、組成物の総重量に基づいて、約50重量%~約75重量%を含む約10重量%(例えば、約35重量%を含む約25重量%)~約85重量%など、最大約99重量%(例えば、最大95重量%または約90重量%)を含む約5重量%~約99.9重量%の範囲である。
【0057】
さらに、粉末の形態であろうとなかろうと、本発明の組成物は、当業者に知られている標準的な技術によって、標準的な装置を使用して調製することができる。この点に関して、本発明の組成物は、関連する調製物のために当技術分野で使用される従来の医薬添加剤および/または賦形剤と組み合わせ、標準的な技術を使用して様々な種類の医薬調製物に組み込むことができる(例えば、Lachman et al,“The Theory and Practice of Industrial Pharmacy”,Lea & Febiger,3rd edition(1986)、“Remington:The Science and Practice of Pharmacy”,Troy(ed.),University of the Sciences in Philadelphia,21st edition(2006)、および/または“Aulton’s Pharmaceutics:The Design and Manufacture of Medicines”,Aulton and Taylor(eds.),Elsevier,4th edition,2013を参照)。
【0058】
乾燥粉末は、オピオイドアンタゴニストを、薬学的に許容される担体材料、および存在する場合はアルキル糖類、ならびに含まれ得る他の任意の成分と混合することによって調製することができる。使用できる適切な技法には、単純な乾式混合、造粒(乾式造粒、湿式造粒、溶融造粒、熱可塑性ペレット化、スプレー造粒を含む)、押出/球形化または凍結乾燥が含まれる。
【0059】
乾式造粒法も当業者に周知であり、例えば以下に記載されるように、スラッギングおよびローラー圧縮を含む、一次粉末粒子が高圧下で凝集される任意の技法を含む。
【0060】
湿式造粒法は、当業者に周知であり、水、エタノールまたはイソプロパノールなどの揮発性の不活性溶媒を、単独または組み合わせで、および任意選択でバインダーまたは結合剤の存在下で含む造粒流体を使用した乾燥一次粉末粒子の混合物の塊化を伴う任意の技法を伴う。この技法は、湿った塊をふるいに通して湿った顆粒を生成することを含み得、それが次いで、好ましくは乾燥による損失が約3重量%未満になるように乾燥される。
【0061】
溶融造粒は、溶融バインダー、またはプロセス中に溶融する固形バインダー(これらのバインダー材料は薬学的に許容される担体材料を含み得る)の添加によって顆粒が得られる任意の技法を含むことが当業者に知られている。造粒後、バインダーは室温で固化される。熱可塑性ペレット化は溶融造粒に類似していることが知られているが、バインダーの塑性特性が使用される。両方のプロセスにおいて、得られる凝集体(顆粒)はマトリックス構造を含む。
【0062】
押出/球形化は、成分の乾式混合、バインダーを用いた湿式塊化、押出、押出物の均一なサイズの回転楕円体への球形化、および乾燥を伴う任意のプロセスを含むことが当業者によく知られている。
【0063】
スプレー造粒は、液体(溶液、懸濁液、溶融物)の乾燥と同時に流動床に造粒物を蓄積することを伴う任意の技法を含むことが当業者に知られている。したがって、この用語は、任意の噴霧コーティング造粒技法を一般に含むことに加え、外来種子(細菌)が提供され、その上に顆粒が蓄積されるプロセス、ならびに摩耗および/または破砕によって流動床に固有の種子(細菌)が形成されるプロセスを含む。噴霧された液体は細菌を覆い、粒子のさらなる凝集を補助する。次に、それを乾燥させてマトリックスの形態で顆粒が形成される。
【0064】
「凍結乾燥」という用語には、リオフィリセーションまたはクリオデシケーション、および産物が凍結され、圧力が下げられ、昇華によって凍結溶媒(例えば、水)が除去される任意の低温脱溶媒和(例えば、脱水)プロセスが含まれる。
【0065】
しかしながら、本発明の組成物は、噴霧乾燥のプロセスによって調製されることが好ましい。
【0066】
噴霧乾燥は、高温ガスを使用して急速に乾燥して、液体の流れを、気化した溶媒、ならびに以前は溶液に溶解されていた溶質、および/または以前は蒸発した液体に懸濁されていた粒子を含む固体の粒子に変換することを伴う、溶液または懸濁液(スラリーを含む)を含む液体から乾燥粉末を生成する任意の方法を含むことが当業者に理解されるであろう。
【0067】
適切な噴霧乾燥装置は、比較的均一な液滴サイズを有する噴霧へと液体を分散させる噴霧ノズルなどの何らかの形態の噴霧化手段を含む。そのような手段は、乾燥した自由流動性の粉末を生成することができる任意の手段を含み得、高圧スワールノズル、回転ディスクおよび/または噴霧器ホイール、高圧単一流体ノズル、二流体ノズルおよび/または超音波ノズルを含み得る。
【0068】
噴霧乾燥機は、単一効果または多重効果噴霧乾燥機であり得、統合および/もしくは外部振動流動床、粒子分離器、ならびに/またはドラムまたはサイクロンであり得る収集手段を含み得る。
【0069】
噴霧乾燥を使用して、粉末の形態で本発明の組成物を生成し、そうすることで、物質を担体材料にカプセル化するか、または有効成分、担体材料および他の成分のアモルファス複合体を生成することができる。
【0070】
この点に関して、粉末の形態の本発明の組成物は、特に噴霧乾燥によって生成される場合、複数の粒子を含むとみなすことができ、それらの粒子それ自体は、性質上、「単粒子状」である。「単粒子状」とは、粒子が均一または不均一な混合物を含み、その中に有効成分が他の成分の存在下で担体材料内にアモルファス状態でカプセル化されていること(例えば、それらのもののアモルファス複合体)を含む。この点で、本発明のそのような組成物は、吸入される薬物送達組成物の場合は頻繁にそうであるように、2つ以上の分離された、別々の、異なる成分の粒子が混合物の形態にされた混合物、例えば、比較的小さな有効成分の粒子を、比較的大きいが、別々で、化学的に異なる担体物質の粒子と会合させたオーダードまたはインタラクティブミクスチャーは含まない(例えば、Mehta,J.Drug Delivery,Art.ID 5635010,1-19(2018)を参照)。
【0071】
したがって、本発明の噴霧乾燥組成物は、好ましくは、その性質が、完全にアモルファスおよび/または主にアモルファス(例えば、約99重量%超を含む約90重量%超または95重量%など、約80重量%超を含む約75重量%超などの約50重量%超がアモルファス)を含むアモルファスであり、先に定義された通常の保管条件下で保管したときに、物理的および化学的安定性の両方の観点から、優れた貯蔵寿命を示す医薬品を生み出す可能性がある。
【0072】
本発明のさらなる態様によれば、本発明の組成物を(乾燥粉末の形態で)製造するためのプロセスが提供され、このプロセスは、
i)オピオイドアンタゴニスト、アルキル糖類(存在する場合)、および薬学的に許容される担体材料を一緒に、適切な揮発性溶媒中に混合するステップ、
ii)ステップi)の混合物を噴霧乾燥して、噴霧乾燥された複数の粒子を形成するステップを含む。
【0073】
好ましい揮発性溶媒には、水、または低級アルキルアルコール(例えば、エタノール)、ハロアルカンなどの有機溶媒が含まれる。言及され得る他の溶媒には、炭化水素(例えば、C5-10アルカン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、アセトンなどが含まれる。前述の溶媒のいずれかの混合物を使用してもよい。
【0074】
オピオイドアンタゴニスト、アルキル糖類(存在する場合)、および薬学的に許容される担体材料を一緒に溶媒と混合すると、噴霧乾燥できる溶液が得られることが好ましい。
【0075】
本発明の噴霧乾燥組成物を生成するために使用することができ(本発明の第1、第2、または第3の態様のうちいずれによるかにかかわらず)、本明細書に記載の望ましい特性を有する、特に好ましい薬学的に許容される担体材料には、糖類、より好ましくは、マルチトール、トレハロース、スクラロース、ショ糖、イソマルト、マルトース、および特にラクトース(β-D-ラクトースおよびα-D-ラクトース、特にα-D-ラクトース一水和物を含む)などの二糖類;ならびに/または適切な担体材料として前述した任意のポリマー材料(カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、および特にヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)と、特に、シクロデキストリン(例えば、2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンナトリウム塩、ランダムにメチル化されたβ-シクロデキストリン、分枝β-シクロデキストリンなど、ならびに特に2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどのα-、β-およびγ-シクロデキストリンならびにそれらの誘導体)を含むデキストリンなどの多糖類とを含むポリマー;ならびに3~20であり得るDE(デキストロース当量)(DE値が高いほど、グルコース鎖は短くなる)によって分類されるマルトデキストリン、特にDEが8~12などの6~15であるマルトデキストリンなどの線状または分枝状デキストリンが含まれる。
【0076】
また、本発明の範囲内には、上記の好ましい材料のうちの2つ以上の組み合わせが含まれる。
【0077】
単一の担体材料であろうと2つ以上の担体材料の組み合わせであろうと、担体材料は、粉末の形態で本発明の噴霧乾燥組成物を生じさせることができ、組成物は以下のようなガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。
(a)鼻用アプリケーター、またはそのようなアプリケーター内にあるか、もしくはそれに付属する本明細書に記載の薬物リザーバーおよび/もしくは容器に容易に装填することができる、硬くかつ/または脆く、「ガラス状」で、アモルファスな、粉末状の物理的形態としてのその組成物の生成を可能にし、ならびに
(b)そのようなアプリケーターまたはリザーバーが本明細書に記載されるようにパッケージされ、その後、高い外部温度(例えば、最大約50℃~約80℃)にさらされた後に、その組成物が、より粘性またはゴム状の状態、および/または結晶状態に形質転換する代わりに例のガラス状の状態に留まる程度に高い。
【0078】
このような極端な外部温度は、暖かくかつ/または陽気な気候において、車両(例えば、ファーストレスポンダーの)の内部でしばしば経験され、そのような車両は、頻繁に、炎天下で長期間にわたり駐車され、結果として生じる熱は莫大になり得る。本発明の組成物のTgが低い場合、組成物は、そのような高温にさらされた後にそのような粘性/ゴム状の状態に形質転換する可能性があり、これは、アプリケーターを発動したときに、アプリケーターまたはリザーバーからの組成物(そしてまた、オピオイドアンタゴニストの投与量)の非効率的な放出を引き起こす。
【0079】
この点に関して、本発明の組成物の測定可能な最低Tgは、最大約25%を含む最大約30%などの最大約35%の相対湿度(例えば、約15%未満などの最大約20%、例えば、約10%未満)で測定される場合、少なくとも約60℃を含む少なくとも約55℃など、少なくとも約50℃などの少なくとも約40℃であることが好ましい。「測定可能な最低Tg」とは、本発明の組成物が、その性質において不均一である粒子を含み得ることを含む。特に、複数の担体材料が使用される場合、粒子は、個別かつ別々のTg値を有し得る担体材料、またはそれらの複合混合物の分離された領域を含み得る。測定可能な最低Tgの値が組成物の物理的安定性に強い影響を与えることは当業者には明らかであろう。
【0080】
担体材料が1つ以上の二糖類(先に定義したようなもの)および1つ以上のポリマー成分(先に定義したようなもの、ただし、ポリマーがデキストリンである場合は特に)の組み合わせを含む場合、組み合わせにおけるこれらの成分の相対量は、有効成分の必要なレベルの物理的および/または化学的安定性が確保されると同時に、物理的安定性に影響を与えるような方法で本発明の組成物のTgを低下させないように仕立てることができる。使用される有効成分によるが、組成物の総重量に基づいて、重量で約50:1~約1:50の二糖類:ポリマー(例えば、デキストリン)比が機能し得ることが見出された。好ましい比率は、組成物の総重量に基づいて、約10:1~約1:40(最大約1:30または最大約1:20を含む)、例えば、約2:1~約1:10、より好ましくは、約1:1~約1:8の範囲内の二糖類:ポリマー(例えば、デキストリン)である。
【0081】
特に、そして以下に記載されるように、我々は、本発明の組成物が、噴霧乾燥、および
(i)担体材料として二糖類を使用することによって作製されると、マンニトールなどの単糖類と比較したときに、オピオイドアンタゴニストの化学的安定性が大幅に向上すること。マンニトールは、以前からナロキソンなどのオピオイドアンタゴニストと一緒に物理的混合物で使用され、安定性の問題は全くなかったため、これは驚くべきことである。
(ii)担体材料としてシクロデキストリンまたはマルトデキストリンなどのデキストリンを使用することによって作製されると、他の担体材料と比較したときに、著しく改善された物理的安定性が提供されること。
【0082】
(iii)しかしながら、そのようなデキストリンを使用することは、オピオイドアンタゴニストの予想外の化学的不安定性を引き起こすこと。
(iv)その化学的不安定性は、デキストリンを二糖類と一緒に噴霧乾燥することによって解決できること、を見出した。
【0083】
したがって、担体材料の特に好ましい組み合わせには、二糖類、特にトレハロース、より好ましくは、α-D-ラクトース一水和物などのラクトース、およびデキストリン、特に2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン、またはマルトデキストリン12DEなどのマルトデキストリンが含まれる。我々は、担体材料のそのような組み合わせを、オピオイドアンタゴニストおよびアルキル糖類と一緒に適切な比率で噴霧乾燥して、先に定義された通常の保管条件下で、所望の物理的および化学的安定性の両方を有する本発明の組成物を生成できることを見出した。
【0084】
我々は、組成物の総重量に基づいて、約5重量%(特に約10重量%)~約30重量%、例えば約15重量%~約25重量%、例えば約17重量%~約24重量%の量の二糖類が、ナロキソンなどのオピオイドアンタゴニストの必要なレベルの化学的安定性を提供すると同時に、物理的安定性に影響を与えるような方法で本発明の組成物のTgを低下させないことを見出した。したがって、デキストリンの適切な量は、組成物の総重量に基づいて、約30重量%~約90重量%、例えば、最大約80重量%を含む最大約85重量%、特に最大約75重量%、例えば、約40重量%~約70重量%、例えば、約43重量%~67重量%の範囲である。
【0085】
以下に記載されるように、本発明の組成物は、驚くほど良好な生物学的利用能、および非常に驚くほどより迅速な吸収を示し、これは、関連する参照製品(例えば、ナロキソンの場合、Narcan点鼻薬)と比較して、より迅速な作用の開始をもたらす可能性が高い。
【0086】
これは、次のようないくつかの理由で非常に予想外である。
(a)固体である本発明の組成物とは異なり、Narcanなどの既存製品では、オピオイドアンタゴニスト(その場合はナロキソン)が、吸収の準備ができている、事前に溶解した状態で提示され、
(b)いずれにせよ、ナロキソンおよび本明細書に記載の他のオピオイドアンタゴニストは、鼻粘膜を介して投与された場合、生物学的利用能が高く、作用の開始が迅速な薬物であることが知られている。したがって、これらの組成物は、すでに高度に生物学的に利用可能であり、迅速に作用するものに対する治療上の改善を表す。
【0087】
以下でさらに説明するように、アルキル糖類を含む本発明の組成物はまた、対応するアルキル糖類を含まない組成物と比較して、驚くほど良好な生物学的利用能および吸収速度を示し、ならびに/または界面活性剤として作用することが知られている異なる賦形剤を含むことが見出された。エクスビボで試験した場合、そのようなアルキル糖類がナロキソンなどのオピオイドアンタゴニストの粘膜を介した浸透を減少させる傾向を示したのに対し、以下にリストされるもののうちいくつかを含む異なる界面活性剤は、浸透を増加させる傾向を示したことを考えると、これは非常に驚くべきことである。
【0088】
本発明の組成物に使用することができるアルキル糖類には、アルキルグリコシドが含まれ、これは、C7-18アルキルグリコシドのように、連鎖によってアルキル基に結合する任意の糖として定義することができる。したがって、アルキルグリコシドは、アルキルマルトシド(ドデシルマルトシドなど)、アルキルグルコシド、アルキルスクロシド、アルキルチオマルトシド、アルキルチオグルコシド、アルキルチオスクロースおよびアルキルマルトトリオシドを含み得る。しかしながら、アルキル糖類は糖エステルであることが好ましい。
【0089】
本発明の組成物に使用できる糖エステルには、ラフィノースエステルなどの三糖類エステル、グルコースエステル、ガラクトースエステルおよびフルクトースエステルなどの単糖類エステル、ならびに/または好ましくは、マルトースエステル、ラクトースエステル、トレハロースエステル、および特に1つ以上のショ糖エステルなどの二糖類エステルが含まれる。
【0090】
本発明の組成物に使用されるショ糖エステルは、6~20の親水性-親油性バランス値を有する。「親水性-親油性バランス」(HLB)という用語は、当業者によってよく理解されるであろう技術用語である(例えば、ICI Americas Incによって1976年に出版された(1980年改訂)“The HLB System:A Time-Saving Guide to Emulsifier Selection”を参照されたく、この文書の第7章(20~21ページ)には、HLB値を決定する方法が記載されている)。ショ糖エステルの脂肪酸鎖が長く、エステル化度が高いほど、HLB値は低くなる。好ましいHLB値は、10~20、より好ましくは12~20である。
【0091】
したがって、ショ糖エステルには、C8-22飽和または不飽和脂肪酸エステル、好ましくは飽和脂肪酸エステル、好ましくはC10-18脂肪酸エステル、最も好ましくはC12脂肪酸エステルが含まれる。そのようなショ糖エステルが形成され得る特に適切な脂肪酸には、エルカ酸、ベヘン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸およびラウリン酸が含まれる。特に好ましいそのような脂肪酸はラウリン酸である。市販のショ糖エステルには、Surfhope(登録商標)およびRyoto(登録商標)の登録商標のもとで販売されているものが含まれる(Mitsubishi-Kagaku Foods Corporation、Japan)。
【0092】
ショ糖エステルは、脂肪酸のジエステルまたはモノエステル、好ましくはショ糖モノラウレートなどのモノエステルであり得る。当業者は、「モノラウレート」という用語がラウリン酸のモノエステルを指し、「ラウリン酸エステル」および「ラウレート」という用語が同じ意味を有し、したがって交換可能に使用できることを理解するであろう。市販のショ糖モノラウレート製品は、「ショ糖ラウレート」と呼ばれることもある。Surfhope(登録商標)D-1216(Mitsubishi-Kagaku Foods Corporation、Japan)などの市販のショ糖モノラウレート(またはショ糖ラウレート)製品は、少量のジエステルおよび/またはより多量のショ糖エステル、ならびに少量の他のショ糖エステルおよび遊離ショ糖を含有し得、本発明での使用に適している。当業者は、本明細書における特定のショ糖エステルへの任意の言及は、主成分としてそのショ糖エステルを含む市販の製品を含むことを理解するであろう。
【0093】
好ましいショ糖エステルは、1つだけのショ糖エステルを含有し、これは、単一のショ糖エステル(例えば、市販のショ糖エステル製品)が、その/1つの主成分として単一のショ糖エステルを含有することを意味する(市販の製品は、不純物を含有し得、例えば、モノエステル製品は、少量のジエステルおよび/またはより高級のエステルを含有し得、そのような製品は、本発明の文脈において「1つのスクロースエステルのみを含有する」とみなされ得る)。本明細書で使用される場合、「主成分」という用語は、典型的に、特定の範囲のエステル組成で販売されている、一般的な市販の界面活性剤製品などのショ糖エステルの混合物中の主要な成分(例えば、約70重量/重量%または体積/体積%などの約50重量%超または体積%超)を指すと理解される。
【0094】
特に好ましいショ糖エステルは、ショ糖モノラウレートである。
【0095】
本発明の組成物中のアルキル糖類の量は、組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~最大約50重量%、より具体的には約0.5重量%~約5重量%などの最大約10重量%、好ましくは約0.75重量%~約3重量%(例えば、約1重量%などの~約2重量%)の範囲である。
【0096】
本発明の組成物内に含まれる任意のアルキル糖類成分に加えて、さらなる、任意選択の、追加の賦形剤を使用することができる。
【0097】
そのような追加の賦形剤は、1つ以上の(さらなる)界面活性剤を含み得る。言及され得る界面活性剤には、ポリオキシル8ステアレート(Myrj(登録)S8)、ポリオキシル32ステアレート(Gelucire(登録商標)48/16)、ポリオキシル40ステアレート(Myrj(商標)S40)、ポリオキシル100ステアレート(Myrj(商標)S100)、およびポリオキシル15ヒドロキシステアレート(Kolliphor(登録商標)HS 15)を含むポリオキシエチレンエステル(例えば、Myrj(商標))、ポリオキシルセトステアリルエーテル(例えば、Brij(商標)CS12、CS20およびCS25)、ポリオキシルラウリルエーテル(例えば、Brij(商標)L9およびL23)、およびポリオキシルステアリルエーテル(例えば、Brij(登録)S10およびS20)を含むポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、Brij(登録))、ならびにラウロイルポリオキシグリセリド(Gelucire(登録商標)44/14)およびステアロイルポリオキシグリセリド(Gelucire(登録商標)50/13)を含むポリオキシグリセリド(例えば、Gelucire(登録商標))、ソルビタンモノパルミテート(Span(商標)40)およびソルビタンモノステアレート(Span(商標)60)を含むソルビタンエステル(例えば、Span(商標))、ポリソルベート40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)およびポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)を含むポリソルベート(Tweens(商標))、ならびにラウリルスルファトナトリウム;ならびに2-オレオイルグリセロール、2-アラキドノイルグリセロール、モノラウリン、グリセロールモノミリステート、グリセロールモノパルミテート、グリセリルヒドロキシステアレート、そして好ましくは、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート(例えば、Cithrol(登録商標))およびグリセロールモノカプリレート(例えば、Capmul(登録商標))などのモノアシルグリセロール(モノグリセリド)が含まれる。
【0098】
本発明の組成物に含まれ得る他の追加の成分(賦形剤)には、等張性および/または浸透圧剤(例えば、塩化ナトリウム)、コレステロールおよびフィトステロール(例えば、カンペステロール、シトステロール、およびスチグマステロール)などのステロール(またはステロイドアルコール);抗酸化剤(例えば、α-トコフェロール、アスコルビン酸、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、没食子酸ドデシル、没食子酸オクチル、没食子酸プロピル、オレイン酸エチル、モノチオグリセロール、コハク酸ビタミンEポリエチレングリコール、またはチモール);キレート(錯化)剤(例えば、エデト酸(EDTA)、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、マルトールおよびガラクトース);防腐剤(例えば、ベンジルアルコール、ホウ酸、パラベン、プロピオン酸、フェノール、クレゾール、またはキシリトール);粘度調整剤またはゲル化剤(ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどを含むセルロース誘導体、デンプンおよび加工デンプン、コロイド状二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミニウム、ポリカルボフィル(例えば、Noveon(登録商標))、カルボマー(例えば、Carbopol(登録商標))ならびにポリビニルピロリドンなど);カルボキシメチルセルロース、修飾セルロースガムおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)などの粘膜付着性ポリマー;中程度に架橋されたデンプン、加工デンプンおよびデンプングリコール酸ナトリウムなどのデンプン誘導体;架橋ポリビニルピロリドン、カルボマーおよびその誘導体(ポリカルボフィル、Carbopol(登録商標)など)などのアクリルポリマー;ポリエチレンオキシド(PEO);キトサン(ポリ-(D-グルコサミン));ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ペクチンなどの天然ポリマー;スクレログルカン;キサンタンガム;グアーガム;ポリコ-(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸);およびクロスカルメロース(例えば、クロスカルメロースナトリウム);pH緩衝剤(例えば、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、またはグリシン);着色剤;浸透促進剤(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ピロリドン、またはトリカプリリン);他の脂質(中性および極性);およびメチル、ヒドロキシル、アミノ、および/またはニトロから選択される1つ以上の基で任意選択で置換された安息香酸、例えば、トルイル酸またはサリチル酸などの芳香族カルボン酸が含まれる。
【0099】
そのような「追加の」賦形剤(本発明の組成物中に存在する(または存在する可能性がある)1つ以上のアルキル糖類(複数可)ではない界面活性剤を含む)の総量は、組成物の総重量に基づいて、最大約5重量%などの最大約15重量%(例えば、約10重量%)であり得る。
【0100】
当業者は、本発明の組成物にいずれかの追加の任意選択の成分が含まれる場合、それらの成分の性質、および/または含まれるそれらの成分の量が、前述の理由から、組成物のTgに有害な影響を及ぼしてはならないことを理解するであろう。この点に関して、本発明の組成物が噴霧乾燥によって作製される場合、そのような任意選択の成分は、噴霧乾燥プロセスに組み込まれる(すなわち、オピオイドアンタゴニスト、任意選択のアルキル糖類および薬学的に許容される担体材料と一緒に適切な揮発性溶媒中に混合され、次いで噴霧乾燥される)か、または噴霧乾燥された複数の粒子に別々に含まれ得る。
【0101】
本発明のさらなる態様によれば、医学および獣医学、特に物質(オピエートを含むオピオイドなど)の過剰摂取の治療に使用するための本発明の組成物が提供される。
【0102】
過剰摂取は、個人が物理的に許容できるよりも多量のオピオイドなどの乱用物質を摂取したときに起こることを含むと当技術分野で理解されるであろうが、(オピオイドの場合)中枢神経系および呼吸抑制、低酸素症、縮瞳、ならびに無呼吸症をもたらし、これらの1つ以上は、迅速に治療しないと死亡をもたらす(上記を参照)。
【0103】
本発明のさらなる態様によれば、物質(例えば、オピオイド)の過剰摂取の治療方法が提供され、この治療方法は、そのような状態を患っている患者への本発明の組成物の投与を含む。
【0104】
物質(例えば、オピオイド)の過剰摂取の「治療」には、治療的、対症的、および緩和的治療に加えて、そのような過剰摂取の予防または診断が含まれる(すなわち、過剰摂取が疑われる場合)。これは、薬物の過剰摂取の治療に本発明の組成物を使用することにより、それらが前述のオピオイドの過剰摂取の症状の発症を無効化または防止する可能性があるためである。
【0105】
ブプレノルフィンなどの部分的オピオイドアンタゴニストを含む本発明の組成物を投与する場合は、患者が(例えば、ベンゾジアゼピンではなく)確実にオピオイドを過剰摂取したこと、および/または患者がオピオイドに身体的に耽溺していることを保証するために、注意しなければならない。
【0106】
オピオイドアンタゴニストは、内因性オピオイドアゴニスト(例えば、エンドルフィン)によって媒介される状態の治療に使用するために投与することもでき、これらの状態は、嗜癖行動(例えば、過度の摂食(過食症)、飲酒(アルコール依存症)、運動、性交、ギャンブルなど)によって顕在化されるように、「エンドルフィン媒介性へドニア」として集合的にまとめて分類され得る。
【0107】
したがって、本発明のさらなる態様によれば、エンドルフィンなどの内因性オピオイドアゴニストの活性化によって媒介される嗜癖および/または嗜癖行動(過食症、アルコール依存、および運動、性交、ギャンブルなどへの嗜癖を含む)の治療方法が提供され、この治療方法は、関連する状態を患っている、またはそれになりやすい患者に本発明の組成物を投与することを含む。
【0108】
そのような嗜癖および嗜癖行動の場合、「治療」には、そのような状態の緩和的および特に対症的治療に加えて、特にそのような状態の発症予防(予防)および診断が含まれる。
【0109】
本発明の組成物は、鼻用アプリケーターまたはディスペンサーなど、当業者に知られている任意の適切な鼻腔内投薬手段によって、適切な用量のオピオイドアンタゴニストを、本発明の組成物の形態で鼻腔に投与することができる手段によって、鼻腔内投与することができる。
【0110】
したがって、そのようなアプリケーター手段は、本発明の組成物自体を収容および貯蔵することができ、あるいは、本発明の組成物を粉末の形態などで収容および貯蔵するリザーバー/容器に取り付けることができ、かつ、例えば水の侵入による、組成物の物理的および化学的完全性の重大な損失をもたらさずにそうすることができなければならない。このようにして、組成物は、アプリケーターデバイスがエンドユーザーによって発動されるとすぐに使用可能になり、その上で、アプリケーターは、本明細書で定義される適切な投与量のオピオイドアンタゴニストを含む組成物(例えば、粉末)を対象の鼻粘膜に送達する。
【0111】
適切なアプリケーター手段は、先行技術に記載されている。本発明の組成物(特に粉末の形態のもの)とともに使用される場合、そのような組成物は、そのようなアプリケーター手段に取り付けられているか、またはその一部を形成するリザーバーに装填され得、アプリケーター手段、またはディスペンサーが発動されるまでそこに収容される。以下、「アプリケーター」、「ディスペンサー」、「デバイス」、「アプリケーター手段」、「ディスペンシング手段」、「アプリケーターデバイス」、および「ディスペンシングデバイス」という用語は、交換可能に使用され得、同じことを意味する。
【0112】
したがって、そのようなアプリケーター手段は、出口手段を介してリザーバーから粉末製剤を排出するための機構も含み得、この出口手段は、適切な形状のノズルなど、ヒトの鼻孔内に配置するためのサイズであるあらゆるものを含む。
【0113】
したがって、アプリケーターは、治療投与量のオピオイドアンタゴニストを提供する単一の投与ステップで(かつデバイスが「プライミング」を必要としない方法で)再現可能かつ十分な量の粉末製剤を提供できなければならない。
【0114】
粉末の形態で本発明の組成物を投与するために使用され得る鼻用アプリケーター/吸入デバイスは、肺への有効成分の送達の分野で知られている技術に基づいて適合させることができる定量吸入デバイス(MDI)、乾燥粉末吸入デバイス(DPI;低、中、および高抵抗のDPIを含む)およびソフトミスト吸入デバイス(SMI)などの複数回投与用途を含み得る。
【0115】
MDIでは、本発明の組成物が、それにおいて典型的に使用される噴霧剤などの溶剤中に懸濁されたときに、安定した懸濁剤を形成することができ、この噴霧剤が、送達デバイスの作動時にエアロゾルを形成するのに十分な蒸気圧を有さなければならない(例えば、炭化水素、フルオロカーボン、水素含有フルオロカーボン、またはそれらの混合物)。
【0116】
しかしながら、鼻用アプリケーターは、発動後にそこから組成物が分注され、次いで使用後に廃棄される単回投与アプリケーターであることが好ましい。
【0117】
この点に関して、適切なアプリケーター手段またはデバイスには、US6,398,074、US6,938,798、またはUS9,724,713に記載されているものが含まれ、これらすべての文書に記載される関連する開示が参照により本明細書に組み込まれる。本出願の図1および2は、それぞれ、US6,398,074の図1および図2に基づいており、図3~7は、それぞれ、US9,724,713の図19図23に基づいている。両方とも、本発明の組成物を鼻腔内に投与するために使用することができるアプリケーターの例証である。
【0118】
図1では、デバイスは、出口チャネル40(すなわち、前述の「出口手段」の一部)と、ユーザーがデバイスを発動させることを可能にする把持手段60とを組み込んだ本体上部/ディスペンサーヘッド1を備える。本体上部/ディスペンサーヘッド1の内側に、参照番号2によってその組み立てが指定された要素が取り付けられ、これは、リザーバー10および空気ブラスト20のための空気チャンバー22を組み込む。この要素2は、本体1と一体に生成することが可能である。また、本体上部1に対して、および要素2に対してスライドできるようにするために本体下部3も提供され、ユーザーは、この本体下部に押し力を加えてデバイスを発動させる。
【0119】
リザーバー10は、本発明の組成物の単回投与量を収容する。リザーバー10は、空気入口11および生成物出口15を有する。空気を透過するグリッドを含む生成物保持デバイス12は、組成物が分注されるまで生成物をリザーバー10内に保持するために、空気入口11内に配置される。生成物出口15は、閉鎖ボール16によって、好ましくはシール様式で遮断され、これは、アプリケーターが発動されて生成物が分注されているときに空気の流れによってその遮断位置から除去される。
【0120】
ユーザーがデバイスを発動させると、ピストン21がチャンバー22に含まれる空気20を圧縮するように、プランジャー25に圧力が加えられる。グリッド12は空気を透過するため、チャンバー22内の空気の圧縮は空気ブラストを生み出し、これがリザーバー10に伝達され、その結果、生成物出口15を遮断している閉鎖ボール16に加えられる。
【0121】
閉鎖ボール16の寸法およびリザーバー生成物出口15でのその固定は、空気20のブラストによってリザーバー10を通して最低限の所定の圧力が生み出されたときに、ボール16がその遮断位置から除去されるようなものである。
【0122】
閉鎖ボール16によって生み出された予圧縮は、ボールがその遮断位置から除去されたときに、ユーザーの手に蓄積されるエネルギーが、プランジャー25と一体のピストン21がチャンバー22内で推進され、それによって、空気20の強力なブラスト、すなわち、本発明の組成物の投与量を細かく噴霧するのに適した気流を生み出すようなものであることを保証する。
【0123】
この最小圧力に達すると、ボールがデバイスの出口チャネル40に向かって迅速に移動し、ブラストによって生み出された空気20の流れが、リザーバー10内に収容される本発明の組成物の投与量を実質的にすべて排出する。
【0124】
好ましくは、出口チャネル40は、生成物の投与量がボール16の周りを流れることによって出口チャネル40を通って排出されることを可能にするために、閉鎖ボール16の直径よりも大きい直径を有する。発動後の同じデバイスを表す図2に示されるように、チャネル40は、生成物が排出されているときにデバイスからのボールの排出を防ぐために、ボール16を停止または固定する手段41を備える。
【0125】
本発明の組成物を鼻腔内に投与するために使用できるさらなる実施形態は、本出願の図3~7として再現される、US9,724,713の列7、行50~列8、行61および図19~23に提供される。
【0126】
この実施形態では、リザーバー10が、ユーザーがデバイスを発動できるようにする把持手段またはフィンガーレスト60を有するディスペンサー出口チャネル40(すなわち、前述の「出口手段」の一部)を含む本体上部/ディスペンサーヘッド1内に固定される。本体上部/ディスペンサーヘッド1の放射状ショルダー37(図5を参照)は、本体上部/ディスペンサーヘッド1内のリザーバー10の組み立て位置を有利に規定する。
【0127】
機械的開口システムは、ロッド61、62のセットを含み、デバイスが発動されると、第2のロッド部分62がこの第1のロッド部分61に押される。それらの発動ストロークの終わりに、すなわち分注位置において、ロッド61、62のセットは、球形である閉鎖要素16、特に上記の第1の実施形態のようなボールと協同作用し、それを閉鎖位置から機械的に排出する。
【0128】
この実施形態では、ピストン21は、第1のロッド部分61から分離されており、空気チャンバー22および第1のロッド部分61に固定されている円筒面614の両方に対してスライドする。図7は、静止位置にある、図3~6のデバイスの空気エキスペラーの斜視図である。
【0129】
したがって、空気チャンバー22は円筒形であり得、静止位置では、フルーティングまたは溝615で周囲の空気と連絡し、このフルーティングは、上記円筒面614に形成され、特に静止位置でピストン21と協同作用する。したがって、ピストン21は、発動中に円筒壁614上を気密様式にスライドし、静止位置で上記フルーティング615と協同作用する内側リップ215を含む。ピストン21はまた、発動中に上記ピストン21を空気チャンバー22内で動かすプッシャー要素25(第1の実施形態では「プランジャー」と呼ばれる)の上縁251と協同作用する軸方向延長部216を含む。
【0130】
保持部材42は、発動中に第1のロッド部分61の上部軸方向端部610と接触する軸方向延長部43によって下向きに延長される。
【0131】
さらに、この実施形態では、本体外部はなく、空気チャンバー22の下部軸方向縁部上に組み立てられたカバー27のみが存在する。
【0132】
発動後に空気エキスペラーが自動的に静止位置に戻るように、空気チャンバー22の放射状フランジ225と、第1のロッド部分61および円筒面614を形成する部分との間にばね80が提供される。
【0133】
動作原理は次の通りである。図3の静止位置では、リザーバー10は、保持部材42および閉鎖要素/ボール16によってシール様式で閉じられている。空気エキスペラーは、ピストン21の内側リップ215と円筒面614のフルーティング615との間の協同作用によって大気に開放されている。
【0134】
デバイスを発動させたい場合、ユーザーはプッシャー要素25を押す。この最初のストロークの間、ピストンの内側リップ215は、フルーティング615を離れて、円筒面614と気密様式に協同作用するようになり、それによって、空気チャンバー22が閉じる。同時に、プッシャー要素25の上縁251が、ピストン21の軸方向延長部216と接触し、第1のロッド部分61の上部軸方向端部610が、保持部材42の軸方向延長部43と接触する。
【0135】
しかしながら、図4に見られるように、第2のロッド部分62の上部軸方向端部621は、依然として、閉鎖要素/ボール16の丸みを帯びた表面55と接触していない。
【0136】
したがって、継続的な発動は、同時に、空気チャンバー内でピストン21を動かし、それによって、そこに含まれる空気を圧縮し、保持部材42を、リザーバー10を閉じる位置から遠ざける。第2のロッド部分62が閉鎖要素/ボール16の丸みを帯びた表面55に接触すると、この閉鎖要素/ボールは、空気エキスペラーによって圧縮された空気の影響下で組成物が排出され得るように、その閉鎖位置から機械的に排出される。
【0137】
分注位置を図5に示す。図5に見られるように、保持部材42は、空気エキスペラーによって提供される圧縮空気の影響下で組成物が排出されている間に、第1のロッド部分61から離れる可能性がある。この位置では、上記閉鎖要素/ボールは、圧縮空気の影響下で流体または粉末が分注され得るように、リザーバー10から排出される。したがって、閉鎖要素/ボール16は、本体上部/ディスペンサーヘッド1のスプライン3に詰まり、このスプラインは、特に、上記閉鎖要素/ボール16が上記本体上部ディスペンサーヘッド1から排出される任意のリスクを防止する。
【0138】
図6に示されるように、ユーザーがデバイスを緩めると、発動中に圧縮されていたばね80が、第1のロッド部分61をその静止位置に向けて戻す。これは、閉鎖要素16および保持部材42をそれらの閉鎖位置に向かって、またはその近くに吸引する吸引力を生み出す。したがって、これにより、空気エキスペラーが自動的に静止位置に戻る間に汚れないように、空のリザーバーが空気エキスペラー上に組み立てられたままの状態で、新しい吸引経路が遮断される。しかしながら、上記内側リップがフルーティング615ともう一度協同作用するようになるまで円筒面614が内側リップ215上をスライドするように、ピストン21は、空気チャンバー22との摩擦およびリザーバー30内に生み出された吸引力の結果としてその分注位置に留まる。この時点で、空気チャンバー22は再び周囲の空気と連絡しており、静止位置に戻ることによる吸引力はもはや生み出されない。したがって、ピストン21はまた、その静止位置に向かって引き込まれる。これにより、使用後にリザーバーを閉じることができる。
【0139】
任意選択で、本体上部/ディスペンサーヘッド1および空のリザーバー10によって形成されたユニットを、空気エキスペラーから取り外して、満杯のリザーバーを含む新しいユニットと交換することができる。
【0140】
使用できる適切なアプリケーターデバイスには、Aptar Pharma,Franceから入手可能なもの(UDS Monopowder)が含まれる。本発明の組成物(特に粉末の形態のもの)と組み合わせて使用することができるアプリケーターデバイスの他の例には、米国特許出願第2011/0045088A号、米国特許第7,722,566号(例えば、図1および7を参照)およびUS5,702,362ならびに国際特許出願第2014/004400号に記載されているものが含まれ、これらの文書の関連する開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0141】
本発明のさらなる態様によって、本発明の組成物を含むアプリケーターデバイスを製造するためのプロセスが提供され、このプロセスは、上記組成物を上記アプリケーターデバイス内またはそれに付属するリザーバーに装填するステップを含む。
【0142】
本発明の別の態様によって、粉末の形態で本発明の組成物を含み、その粉末を分注するのに適したアプリケーターおよび/またはディスペンサーデバイスが提供され、このアプリケーター/ディスペンサーデバイスは、以下を含む。
本発明の組成物が分注される出口、
ユーザーによるデバイスの発動時に外部から力(例えば、気流)を発生させる手段、
ディスペンサー出口と直接もしくは間接的に連絡しているか、または連絡するように配置することができる、本発明の組成物を収容する少なくとも1つの(任意選択で交換可能な)リザーバー、
組成物が分注されるまでリザーバー内に組成物を保持するための、デバイスおよび/またはリザーバー内の置換可能なシール手段、および
本発明の組成物が、デバイスが発動されたときに加力手段によって機械的に排出されるように上記シール手段と協同作用する機械的開口システム。
【0143】
本発明のさらに別の態様によって、粉末の形態で本発明の組成物を含み、その粉末を分注するのに適したアプリケーターおよび/またはディスペンサーデバイスが提供され、このアプリケーター/ディスペンサーデバイスは、以下を含む。
ディスペンサー出口、
静止位置と分注位置との間で空気チャンバー内をスライドするピストンを含む、デバイスが発動している間に空気の流れを発生させるための空気エキスペラー、
上記ピストンは、上記空気チャンバー内で気密様式にスライドする、
上記空気エキスペラーに接続されている空気入口を含む、本発明の組成物の投与量を収容する少なくとも1つのリザーバー、
上記ディスペンサー出口に接続されている組成物出口、
上記空気入口は、組成物が分注されるまでリザーバー内に組成物を保持するための置換可能なシール手段(例えば、保持部材)を含む、
上記組成物出口は、リザーバーの組成物出口にはめられた閉鎖要素によって閉じられている、
上記デバイスは、デバイスが発動している間に閉鎖位置から機械的に閉鎖要素を排出するように上記閉鎖要素と協同作用する機械的開口システムをさらに含む、さらに
上記空気エキスペラーの上記ピストンは、静止位置にあるとき、上記空気チャンバーと非気密様式に協同作用する。
【0144】
本発明の後者の態様では、以下のことが好ましい。
(i)上記ピストンが気密様式にスライドする空気チャンバーは実質的に円筒形であり、
(ii)閉鎖要素はリザーバーの組成物出口に圧力ばめされており、
(iii)上記空気チャンバーは静止位置で大気と連絡しており、かつ/または
(iv)上記ピストンは、円筒面と協同作用するのに適した内側リップを含み、この円筒面は、静止位置にあるピストンの上記内側リップと非気密様式に協同作用するフルーティングを含む。
【0145】
そのようなアプリケーターまたは分注デバイスは、鼻腔(例えば、鼻孔)への上記粉末の効率的な送達を可能にする、適切で再現可能な粉末噴霧パターンおよび/または幾何学的プルーム形状を提供することができる。
【0146】
本発明の組成物において、平均粒子サイズは、重量、数、または体積基準の平均直径として提示され得る。本明細書で使用される場合、「重量基準平均直径」という用語は、平均粒子サイズが、重量による粒子サイズ分布、すなわち、各サイズクラスにおける既存の分率(相対量)が、例えば、ふるい分け(例えば、湿式ふるい分け)によって得られる重量分率として定義される分布から特徴付けられ、かつ定義されることを含むように当業者に理解される。「体積基準平均直径」という用語は、重量基準平均直径と意味が類似しているが、平均粒子サイズが、体積による粒子サイズ分布、すなわち、各サイズクラスにおける既存の分率(相対量)が、例えば、レーザー回折によって測定された体積分率として定義される分布から特徴付けられ、かつ定義されることを含むように当業者に理解される。本明細書で使用される場合、「数基準平均直径」という用語は、平均粒子サイズが、数による粒子サイズ分布、すなわち、各サイズクラスにおける既存の分率(相対量)が、例えば、顕微鏡検査によって測定された数分率として定義される分布から特徴付けられ、かつ定義されることを含むように当業者に理解される。例えば、Malvern Instruments,Ltd(Worcestershire,UK)、Sympatec GmbH(Clausthal-Zellerfeld,Germany)およびShimadzu(Kyoto,Japan)が販売する機器など、この分野でよく知られている他の機器を用いて、粒子サイズを測定し得る。
【0147】
本発明の文脈において、当業者は、鼻腔内投与を可能にするために、粉末が典型的には約5μm(例えば、約10μm)~最大約1,000μm(例えば、最大約500μm)の範囲内の体積基準平均直径(VMD)を有することを理解するであろう。使用されるアプリケーターデバイスに応じて、VMDは、約20μm~約60μmなど、約10μm~約100μmの範囲であり得る。
【0148】
好ましい粒子サイズ分布はまた、d10が約10μm超などの約3μm超~約75μm未満(例えば、最大約50μm)で、d90が約100μm未満などの約80μm~約1,000μm(例えば、約500μm)であるものを含み得る。当業者は、パラメーター「d10」(または「Dv(10)」)が、それを下回るサイズにサンプル中の材料の総体積の10%が含まれる粒子サイズ分布のサイズ(または直径)を意味することを理解するであろう。同様に、「d90」(または「Dv(90)」)は、それを下回るサイズに材料の90%が含まれるサイズを意味する。
【0149】
上記の範囲内の粒子サイズ直径および/またはVMDを有する粉末とは、バルクVMDおよび/または放出VMD、すなわち、それぞれ、最初にデバイスにロードされたときおよび/またはそこから排出されたときの粒子サイズ分布、を含む。
【0150】
粒子サイズは、SympatecおよびMalvernなどの製造業者から入手可能な乾式分散技術を含む乾式(または湿式)粒子サイズ測定技術などの標準装置で測定できる。
【0151】
好ましい粒子形状は、球形または本質的に球形を含み、これは、粒子が約20未満、より好ましくは約4未満などの約10未満、および特に約2未満のアスペクト比を有し、かつ/または粒子の少なくとも約90%において、平均値の約30%以下などの平均値の約50%以下、例えば、その値の約20%以下の半径(重心から粒子表面までで測定)の変動を有し得ることを意味する。
【0152】
それでも、粒子は、不規則な形状(例えば、「レーズン」型)、針型、円盤型、または直方体型の粒子を含む、任意の形状であり得る。非球形粒子の場合、サイズは、例えば同じ重量、体積、または表面積の対応する球形粒子のサイズとして示され得る。
【0153】
アプリケーターおよび/またはディスペンサーデバイスから放出された(分注された)本発明の粉末組成物の噴霧角度は、好ましくは約90°未満であるべきである。
【0154】
本発明の組成物は、ロフェキシジンなどのオピオイド離脱症状を治療することが知られているもの、および/またはオピオイド依存症の治療に使用される部分的オピオイドアンタゴニスト、例えばブプレノルフィン(上記参照)などの追加の有効成分で製剤化することができる。
【0155】
したがって、そのようなオピオイド離脱症状治療(ロフェキシジンまたはブプレノルフィンなど)と一緒に少なくとも1つの前述の(好ましくは完全な)オピオイドアンタゴニストを同時投与することは、そのような化合物がない場合に本発明の組成物を投与するときに観察され得る強い離脱症状を無効にするのに役立ち得る。
【0156】
したがって、本発明の組成物は、オピオイド離脱症状の治療に使用するのに適した化合物と一緒に提供され得る(後者の化合物/治療が組成物に含まれる(すなわち、両方の有効成分を含む単一の医薬組成物として提示される)、ロフェキシジンもしくはブプレノルフィン、またはいずれかの化合物の薬学的に許容される(例えば、HCl)塩など)。あるいは、本発明の組成物は、オピオイド離脱症状の治療に使用するのに適した化合物(ロフェキシジンまたはブプレノルフィンなど)またはその塩を含む別個の組成物と一緒に同時投与することができる。
【0157】
したがって、先に定義された本発明の組成物を含む医薬調製物がさらに提供され、この組成物は、オピオイド離脱症状の治療に使用するのに適した化合物(ロフェキシジンまたはブプレノルフィンなど)またはその薬学的に許容される塩をさらに含み、そのような調製物は、以下、「組み合わせ調製物」と呼ばれる。
【0158】
さらに、先に定義された組み合わせ調製物を調製するためのプロセスが提供され、このプロセスは、先に定義されたオピオイドアンタゴニストと、オピオイド離脱症状の治療に使用するのに適した化合物(例えば、ロフェキシジン、ブプレノルフィンまたはその塩)を、本発明の組成物の他の成分とともに会合させること、および任意選択で、前述のようにアプリケーターデバイス内で、またはそれとともに(例えば、取り付けられて)使用するための容器に装填することを含む。
【0159】
そのような場合、組み合わせ調製物は、オピオイド離脱症状の治療に適した化合物を含まない本発明の組成物について前述したものと同じまたは類似の物理的属性を有し得、これに関して、関連する開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0160】
本発明のさらなる態様では、以下の構成要素(A)および(B)を含むパーツキットも提供される。
(A)本発明の組成物、および
(B)オピオイド離脱症状の治療に使用するのに適した化合物(例えば、ロフェキシジンまたはブプレノルフィン)またはその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される希釈剤または担体と混合して含む医薬組成物、
組成物(A)および(B)は、任意選択で別々の容器に装填されるか、または装填のために提示され、この容器は、鼻腔へ組成物を投与するのに適している、例えば前述のものと同じもしくは別個のアプリケーターデバイス内で、またはそれと一緒に(例えば、取り付けられて)使用するためのものである。
【0161】
そのような場合、上記(B)で説明したオピオイド離脱症状治療を構成する医薬組成物は、上記(A)で説明したものを含む、本発明の組成物について前述したものと同じまたは類似の物理的属性を有し得る。例えば、オピオイド離脱症状治療を構成する医薬組成物は、本発明の組成物について前述したものと同様の粒子サイズを有する粒子を含有する粉末の形態で提示することができる。
【0162】
本発明のさらなる態様によれば、上記で定義されたパーツキットを作製する方法であって、上記で定義された構成要素(A)を、上記で定義された構成要素(B)と会合させ、したがって2つの構成要素を互いに組み合わせた投与に好適なものにすることを含む、方法が提供される。
【0163】
上記で示唆したように、2つの構成要素を互いに「会合させる」とは、パーツキットの構成要素(A)および(B)が、
(i)併用療法において互いに組み合わせて使用するために後から一緒にされる別個の製剤として(すなわち、互いと無関係に)提供され得ること、または
(ii)併用療法において互いに組み合わせて使用するための「コンビネーションパック」の別個の構成要素として一緒にパッケージされ提示され得ること、を含む。
【0164】
したがって、
(I)本明細書に定義される構成要素(A)および(B)のうちの1つを、
(II)2つの構成要素のうちの他方と組み合わせてその構成要素を使用するための指示書と一緒に含む、パーツキットがさらに提供される。
【0165】
本明細書に記載のパーツキットは、繰り返し投与を提供するために、適切な量/投与量のオピオイドアンタゴニスト/塩を含む1つを超える製剤、および/または適切な量/投与量のオピオイド離脱症状の治療に適した化合物を含む1つを超える製剤を含み得る。2つ以上の製剤(活性化合物のいずれかを含む)が存在する場合、そのような製剤は、いずれかの化合物の投与量、化学的組成(複数可)、および/または物理的形態(複数可)に関して、同じであっても、異なっていてもよい。
【0166】
本明細書に記載のパーツキットに関して、「~と組み合わせた投与」とは、関連する状態を治療するために、オピオイドアンタゴニスト(またはその塩)およびオピオイド離脱症状の治療に適した化合物(またはその塩)を含むそれぞれの製剤が連続して、別々におよび/または同時に、投与されることを含む。
【0167】
したがって、本発明による組み合わせ生成物に関連して、「~と組み合わせた投与」という用語は、組み合わせ生成物の2つの構成要素が、単独で、他方の成分を含まずに(任意選択的に、繰り返しで)投与される場合よりも、患者に対する、より大きい有益な効果を可能にするために、一緒に、または時間的に十分に近接して(任意選択的に、繰り返しで)投与されることを含む。組み合わせが、関連する状態の治療過程にわたって、より大きな有益な効果を提供するかの決定は、治療または予防される状態によって決まることになるが、当業者によって慣習的に達成され得る。
【0168】
急性オピオイド過剰摂取を治療するという緊急事態に対処した後、オピオイド離脱症状の治療に適した化合物(例えば、ロフェキシジン、またはより好ましくはブプレノルフィンもしくはその塩)を含むさらなる組成物を、必要または所望に応じて投与することができる。そのような組成物は、本発明の組成物と形態が類似する(これに関して、関連する開示が参照により本明細書に組み込まれる)か、またはそうでなくてもよい(例えば、舌下製剤)。
【0169】
オピオイド離脱症状の治療に適した化合物がブプレノルフィンである場合、適切な投与量は、遊離塩基として計算して、約1mg~約32mg、より好ましくは約5mg~約20mgの範囲であり得る。
【0170】
オピオイド離脱症状の治療に適した化合物がロフェキシジンである場合、適切な投与量(例えば、一日量)は、遊離塩基として計算して、約0.5mg~約2mgなどの約0.1mg~約3mgの範囲であり得る。
【0171】
本明細書において「約」という言葉が、例えば、投与量、重量、体積、サイズ、直径などの絶対量、または組成物もしくは組成物の一構成要素中の個々の成分の相対量(濃度および比率を含む)、時間枠、および温度、圧力、相対湿度などのパラメーターなど、量の文脈で使用される場合、そのような変数は概算であり、したがって、本明細書で指定された実際の数値から±10%、例えば、±5%、および好ましくは±2%(例:±1%)変動する可能性があることが理解されよう。これは、そもそもそのような数値がパーセンテージで表されている場合でも当てはまる(例えば、「約10%」は、9%~11%のいずれかである、数値10の前後±10%を意味し得る)。
【0172】
本発明の組成物は、市販されているもの(例えば、ナロキソンの場合はNarcan)を含む従来技術の組成物よりも広い温度範囲にわたって保管することができるという利点を有する。したがって、本発明の組成物は、対象に投与されるオピオイドアンタゴニストの量に影響を与えることなく、低温(例えば、氷点下)にさらされ得る。さらに、本発明の組成物は、そのような従来技術の組成物よりも高温でより物理的および化学的に安定であるという利点を有し得る。
【0173】
本発明の組成物は、市販されているもの(例えば、ナロキソンの場合はNarcan)を含む従来技術の組成物と比較して、オピオイドアンタゴニストのより高い生物学的利用能を提供するという重要な利点をさらに有する。本発明の組成物は、より迅速な吸収とともにこのより高い生物学的利用能を提供し、これは、そのような従来技術および/または市販の組成物よりも迅速な作用の開始をもたらす可能性が高く、したがって、重要かつ深刻な医学上の要求を満たす。
【0174】
本明細書に記載された組成物、医薬製剤、使用および方法は、上述の状態の治療において、オピオイド過剰摂取(または過食症もしくはアルコール依存症)の治療に使用するためのものであるかどうかにかかわらず、先行技術で公知である類似の製剤または方法(治療)と比較して、ファーストレスポンダー、医師および/もしくは患者にとって便利であり、効果的であり、毒性が低く、広範囲の活性を有し、強力であり、副作用が少なく、患者間変動が小さいか、または類似の製剤または方法(治療)を上回る他の有用な薬理学的特性を有し得るという利点も有し得る。
【0175】
本発明は、以下の実施例によって、添付の図を参照しながら、決して限定されないが、例示され、添付の図において、図1~7は、本発明の組成物を分注するために使用され得るアクチュエータデバイスを表し、図8および9は、エクスビボモデルでのブタの鼻組織を介したナロキソンおよびナルメフェンの浸透をそれぞれ示し、図10および11は、異なる期間にわたる臨床試験で得られた、治療ごとの時間に対する平均ナロキソン血漿濃度(線形スケール)を示す。
【0176】
実施例1
様々な糖質によるオピオイドアンタゴニストの噴霧乾燥
ナロキソンHCl二水和物(1.199g;Johnson Matthey、UK)またはナルメフェンHCl(0.600g;Santa Cruz Biotechnology Inc.、USA)およびナルトレキソンHCl(0.600g;Mallinckrodt Inc.、USA)を、組成物の担体材料として使用され、洗浄のために水を精製する(ナロキソンの場合は56.58gで、ナルメフェンおよびナルトレキソンの場合は28.29g)異なる糖類(ナロキソンの場合は5.088gで、ナルメフェンおよびナルトレキソンの場合は2.554g)とともに別々に混合し、この混合物を以下の一般的な手順に従って噴霧乾燥機に供給した。
【0177】
固形成分をマグネチックスターラーバーを備えたビーカーに量り入れ、水に溶解し、25kHzで作動する超音波ノズルを備えた噴霧乾燥機(ProCepT、Belgium)に供給した。噴霧乾燥機の供給速度を3.0g/分に設定し、入口温度を180℃に設定し、ガス流量を300L/分に設定し、サイクロンガスを1.5バールに設定した。
【0178】
得られた噴霧乾燥粉末を収集し、鼻用粉末投与に適したデバイス(使い捨て用の単発鼻用ユニドースデバイス;UDS Monopowder、Aptar Pharma、France)に充填重量23mgで詰めた。(ナロキソンの場合、これは4mgというナロキソンの単回投与量(HCl塩として計算)を構成した。)
デバイスをヒートシールされたアルミニウムパウチに入れてから、40℃および相対湿度(RH)75%で6か月間保管した。
【0179】
保管後の噴霧乾燥混合物の化学組成、および発動後に装置から放出される粉末の量を決定した。
【0180】
6か月後(6M)のナロキソンの安定性は、不純物の量は関連物質のパーセンテージ(%RS)で表され、異なる糖類について以下の表1にまとめられている。%RSの初期値は、すべてのサンプルで0.1%未満であった。
【表1】
【0181】
予期せぬことに、以前はナロキソンと一緒に物理的混合物で使用されていたマンニトールのような特定の単糖類は、この噴霧乾燥プロセスで使用された場合(ナロキソンの化学的安定性の観点から)適合しないことが判明した。これは、一般的に適合性のあるラクトースのような二糖類とは対照的であった。
【0182】
さらに、より高いTgを有することが知られている多糖類は、より高い放出粉末投与量を生じさせる傾向があった。低Tgの結果としての物理的変化により、デバイス内の粉末が固まり、凝集した。
【0183】
ナルメフェンおよびナルトレキソンについても、同様の傾向が観察された(初期の%RS値が括弧内に示されている以下の表2を参照)。
【表2】
【0184】
実施例2
噴霧乾燥粉末の物理的安定性
物理的安定性を評価し、保管中の結晶化のリスクを軽減するために、示差走査熱量測定(DSC)を使用してガラス転移温度(Tg)を決定し、以下の表3に示した。
【0185】
組成物は、一般に、上記の実施例1に記載の手順に従って、担体材料としてマンニトール、トレハロースおよびラクトースを使用して調製された。
【0186】
ラクトースについては、真のTgと、25℃で、4つの異なるRH条件(RH10%、20%、30%、および40%)で平衡化した製剤のTgとを測定した(ただし、30%は記録されなかった)。マンニトールとトレハロースの場合、Tgは受け取ったままの状態(「周囲」)および乾燥後(「乾燥」)に測定された。
【0187】
乾燥したサンプルの場合、DSCアンプルの蓋はDSCの実行開始直前に自動的にパンチされ、直径約0.3mmの穴が導入された。その目的は、乾燥製剤のガラス転移温度に達する前に、残っているあらゆる水分を蒸発させることであった。したがって、このTg値は、水のような利用可能な可塑剤からの干渉がない真のTgに対応する。
【0188】
様々なRH値で平衡化されたサンプルの場合、DSCの蓋はDSCの実行中ずっと気密であった。サンプルは上記のように調製された。
【表3】
【0189】
担体材料としてトレハロースまたはラクトースを使用すると、Tgが見つからず、水分含有量が1%未満であったため、噴霧乾燥機で結晶化したように見えるマンニトールとは対照的に、完全にアモルファスの組成が得られた。
【0190】
実施例3
ナロキソンおよびナルメフェンの鼻粘膜吸収のエクスビボ評価
標準的な静的拡散(Franz)セルのセットアップを使用して、切除したブタの鼻組織を使用して、鼻粘膜吸収のエクスビボモデルを樹立した。
【0191】
ナロキソンHCl二水和物、ナルメフェンHCl、塩化ベンザルコニウム(Sigma-Aldrich Sweden AB)、ショ糖モノラウレート(IMCD Nordic AB)および/またはポリソルベート80(Croda Nordica AB)を含有する溶液を標準的な手法で調製し、以下の表4による製剤を用意した。リン酸カリウム緩衝液(Sigma-Aldrich Sweden AB)を添加して、以下の表4に記載されているpHを得た。
【表4】
【0192】
7時間後、組織を通じた拡散を測定し、浸透は、ナロキソンおよびナルメフェンについて図8および図9に、それぞれ、平均(3回の反復)累積輸送量(μg/cm、標準偏差も記載)として示されている。
【0193】
ナロキソンとナルメフェンの両方について、わずかに高い見かけの浸透係数(Papp)が、それぞれポリソルベート80およびより多くのpH緩衝液を含有する製剤7および8で観察された。塩化ベンザルコニウムまたはショ糖モノラウレートの場合、対応する吸収の増強は観察されなかった。
【0194】
実施例4
ナロキソン含有組成物B
実施例1に記載の一般的な手順を使用して、ナロキソンHCl二水和物(1.199g)、およびα-D-ラクトース一水和物(5.026g;DFE Pharma Germany)、ショ糖モノラウレートD-1216(0.062g;Mitsubishi-Kagaku Foods Corporation、Japan)から噴霧乾燥組成物を作製した。
【0195】
組成物Bは、4mgというナロキソンの単回投与量を含んでいた(HCl塩として計算)。
【0196】
デバイスは、使用前にヒートシールされたアルミニウムパウチ(Protective Packaging、UK)に入れられた。
【0197】
幾何学的粒子サイズ分布(PSD)は、Malvern Mastersizer 2000(Malvern Panalytical Ltd、UK)を使用し、空力粒子サイズ分布(aPSD)は、高速スクリーニングインパクター(FSI、Copley Scientific、UK)を使用して測定した。PSD:d10=15μmおよびd90=55μm;aPSD<5μm=0%。
【0198】
PSD測定の一般的な方法:80~100mgのサンプルを5mLのシリコーンオイルに分散させ、十分に混合してから20~30秒間超音波処理した。Malvern Mastersizer 2000(Malvern Panalytical Ltd.、UK)を使用して、溶液に対して3つの測定を行った。
【0199】
aPSD測定の一般的な方法:充填されたデバイスが、適切なアダプター、拡張バルブ、および10ミクロンのインサートを備えた高速スクリーニングインパクター(FSI、Copley Scientific、UK)で発動された。流量は30±0.5L/分に調整した。結果は、フィルターステージ(<5μm)で回収された%として、微粒子質量(FPM)として報告された。
【0200】
実施例5
ナロキソン含有組成物A、CおよびD
上記の実施例4に記載されたものと同じ一般的な手順に従って、以下の表5による組成を有するさらなる3つの噴霧乾燥粉末を調製した。
【表5】
【0201】
組成物AおよびCは、4mgというナロキソンの単回投与量を含み、組成物Dは、8mgというナロキソンの単回投与量を含んでいた(それぞれ、HCl塩として計算)。PSDおよびaPSDは、上記の実施例4に記載された一般的な方法を使用して分析された(結果については、以下の表6を参照)。
【表6】
【0202】
実施例6
鼻腔内投与されるナロキソン-薬物動態研究(健康なボランティア)
参照市販製品NARCAN(登録商標)点鼻薬(「参照」;塩酸ナロキソン液体点鼻薬、4mg;Adapt Pharma,Inc.、Radnor,PA,USA)に対する4つの治験ナロキソン経鼻粉末製剤の生物学的利用能を決定するために第1相臨床試験を行った。
【0203】
この試験は、健康な対象における、単一施設、非盲検、無作為化、単回投与の5治療クロスオーバー、相対的生物学的利用能試験であった。各対象は、事前に設定されたランダム化スケジュールに従った順番で、最低24時間のウォッシュアウトを間に挟んで、4つのナロキソン含有粉末(組成物A~D)のそれぞれ、ならびに参照を投与された。
【0204】
対象は、治験医薬製品(IMP)または参照(使用された場合)の初回投与の直前に無作為化された。コンピューターで生成されたランダム化スケジュールを使用して、各治療シーケンスを受ける対象は2人で、対象番号を10の治療シーケンスのうちの1つに割り当てた(バランスの取れたWilliams設計に従って)。
【0205】
投与の28日前までに48人の対象に対して試験に含めるためのスクリーニングを行った。21人の適格な対象(18~55歳の健康な男性または妊娠していない、授乳していない、女性で、肥満度指数が18.0~32.0kg/mの対象)が、IMP投与の前夜(-1日目)に臨床ユニットに入院し、最終投与後(5つの治療すべてを受けた後)24時間で退院するまで現場に留まった。
【0206】
対象は、1、2、3、4、および5日目の朝に、ロジスティック要件に基づいて適切な対象間の間隔(約10分)でIMPまたは参照を投与された。IMPは、1日目に左鼻孔から始めて、各投薬日に交互の鼻孔に投与された。対象の継続的な健康を確保するために、最終投与の3~5日後にフォローアップの電話が行われた。
【0207】
登録された21人の対象のうち、すべてがIMPを投与された。分析目的のために、21人の対象すべてが安全性集団、安全性分析データセット、およびPK集団に含まれた。1つのプロファイルが投薬失敗のためPK分析データセットから除外されたため、20人の対象が試験を完了し、PK分析データセットに含まれることとなった。
ナロキソンの血漿濃度は、非コンパートメント分析法を使用して分析され、以下に示す標準的なPKパラメーターの推定値が得られた。
【表7】
【0208】
安全性パラメーターの評価は、有害事象(AE)、鼻腔内耐容性、検査室評価、バイタルサイン、心電図(ECG)、および身体検査所見の分析で構成されていた。
【0209】
対数変換された曝露パラメーター(AUCおよびCmax)を標準的な方法と比較して、SASソフトウェア手順PROC MIXEDを使用して相対的生物学的利用能を評価した。単一の混合効果モデルを各パラメーターに適合させて、対象となるすべての治療比較の幾何平均比(GMR)および対応する信頼区間(CI)の推定値を取得した。モデルには、実際に受けた治療、試験日(すなわち期間)ならびに固定効果として適合された計画シーケンスおよびランダム効果として適合されたシーケンス内の対象のための用語が含まれた。結果は線形スケールに逆変換されて表示された。次の比較が関心のあるものであった。
・参照と比較した相対的生物学的利用能:AUC(0~t)、AUC(0~無限大)、およびCmaxのIMP:参照GMRが決定された
・参照と比較した早期曝露:AUC(0 0~4分)、AUC(0~10分)およびAUC(0~30分)のIMP:参照GMRが決定された
・IMD製剤の投与量比例性:AUC(0~t)、AUC(0~無限大)、およびCMAXの8mg:4mgのGMRが決定され、投与量が正規化された。
【0210】
結果
治療ごとの時間に対する算術平均ナロキソン血漿濃度(線形スケール)は、図10および11(それぞれ投与後最初の5時間および最初の1時間)に示され、以下の表7に記載されている。治療ごとの時間に対する幾何平均ナロキソン血漿濃度(片対数スケール)は、以下の表7に記載されている。
【表8】
【0211】
相対的生物学的利用能(GMR、CI 90%)の分析を以下の表8に示す。
【表9】
【0212】
すべてのIMPが、参照よりも有意に高いナロキソンの全体およびピーク血漿曝露を示した。組成物Bは、4mg製剤の中で最も高い相対的生物学的利用能を示し、平均で参照よりもAUCが約84%高く、CMAXが175%高かった(製剤Dには、他の製剤の2倍の量である8mgの塩酸ナロキソンが含まれていたことに留意されたい)。A、B、C、およびDのIMPは、全体およびピーク曝露パラメーターで参照よりも低い患者間変動(CV)も示した(表7を参照)。
【0213】
以下の表9および10は、絶対(表9)および相対(表10)基準での治療ごとのナロキソンの部分AUCの記述統計(幾何平均として、幾何CV%)を示している。
【表10】
【表11】
【0214】
すべてのIMPが、投与後の最初の4、10、および30分間で、参照よりも有意に高いナロキソンの血漿曝露を示した。組成物Bの場合、早期部分AUCのGMRは、このIMPの対応するAUC(0~t)GMRよりもはるかに高く、これは、参照よりもこの製剤からの初期吸収率が高いことを示している。
【0215】
投与量正規化GMRとしてのIMPの投与量比例性の分析(CI 90%、8mg:4mg、D:A)を以下の表11に示す。
【表12】
【0216】
AUC(0~t)、AUC(0~無限大)、およびCMAXのD:A GMRのスケーリングされた点推定では、CI 90%が完全に100%を下回っている。
【0217】
すべてのIMPが、参照よりも有意に高いナロキソン曝露を示した。組成物A、B、C、およびDは、参照に対して、それぞれ約36%、84%、37%、および112%高い全体的な曝露を示し、ピーク曝露(CMAX)はそれぞれ平均で50%、175%、58%、および113%高かった(ここでも、組成物Dが他の組成物の2倍の量である8mgの塩酸ナロキソンが含有していることに留意されたい)。
【0218】
全体的な曝露のパラメーターAUC(0~t)、AUC(0~無限大)、およびCMAXの対象間変動は、参照と比較して、組成物A、B、C、およびDの投与後に低かった。
【0219】
図10から明確に、および図11からさらに明確にわかるように、すべての製剤の急速な吸収が観察され、Tmax値の中央値は0.250時間~0.333時間であった。早期曝露(AUC(0~4分)、AUC(0~10分)およびAUC(0~30分)に関して)は、すべてのIMPが参照よりも高かった。吸収は組成物Bが最も速く、点推定は投与後の最初の10分間で参照よりも270%以上高い曝露を示した。これは、前述のすべての理由から、注目に値する完全に予想外の結果である。
【0220】
ナロキソンの消失はすべての製剤間で類似しており、算術平均終末T1/2値は1.243~1.471時間であった。
【0221】
ナロキソン経鼻粉末の経鼻投与は、すべての投与量で、安全であり、試験の条件下で十分に耐容されたと考えられた。
【0222】
この研究では、SAE、重度のAE、または対象の離脱につながるAEは報告されておらず、AEプロファイルは、健康な対象における参照点鼻薬の以前の研究と類似していた。最も一般的に報告されたAEは、鼻の炎症、頭痛、およびめまいであった。すべてのAEは重症度が軽度であり、全体として、IMPの安全性プロファイルは健康な対象におけるナロキソンHClの以前の経験とよく一致し、安全性の懸念を引き起こす所見はなかった。
【0223】
実施例7
デキストリンを含有する噴霧乾燥粉末の物理的安定性
上記の実施例1に記載された一般的な手順を使用して、以下の組成を有する2つの製剤を作製した(パーセンテージは、組成物全体に対する重量パーセントである)。
組成物X
ナロキソンHCl(35%)、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(Cavasol W7、HP Pharma、Wacker,Germany;53%)、ラクトース(Merck、Germany;10%)およびTween 20(Croda Nordica AB、Sweden;1%)
組成物Y
ナロキソンHCl(17%)、マルトデキストリン(Glucidex IT 12 DE、Roquette,France;72%)、ラクトース(10%)、ショ糖モノラウレート(1%)。
【0224】
異なるRH値での組成物XおよびYの物理的安定性をTg値として測定して、上記の実施例2に記載されたものと同様の実験を準備した。結果を以下の表12に示す。
【表13】
【0225】
両方のデキストリンで、担体材料としてラクトースのみを含む組成物と比較してTgが増加し、80℃で24~72時間保管した後においても許容可能な放出投与量を促進した。表10に示される複数のTg値は、関連する組成物が完全に均質ではなく、むしろ、低分子量化合物の領域から分離された高分子量多糖の濃度が増加した領域であることを示している。
【0226】
その後実施された溶解試験はまた、高濃度のマルトデキストリンがナロキソンの溶解に影響を及ぼさないことを示した。
【0227】
実施例8
デキストリンを含有する噴霧乾燥粉末の化学的安定性
デキストリンおよびラクトース/デキストリン混合物の効果としてのナロキソンの化学的安定性を調査するために、上記の実施例1に記載されている一般的な手順を使用してサンプルを調製した。組成(パーセンテージは、組成物全体に対する重量パーセントである)は表13に示す。
【0228】
40℃/RH75%での3か月および6か月後のナロキソンの化学的安定性は、不純物の量は関連物質のパーセンテージ(%RS)で表され、異なる組成について以下の表13にまとめられている。すべての初期%RS値は0.1%未満であった。
【表14】
【0229】
表13の括弧内の数字は、ナロキソン(二量体)に関連する実証された不純物である不純物E(Imp E)について測定された値を取り除いた%RSである。この研究では、Imp Eは分析前のサンプル準備中に形成されるようであり、これは制御されていない方法で合計%RS値に影響を与え、小さな劣化傾向の検出を妨げる。
【0230】
表13から明らかなように、デキストリンはナロキソンの分解を予期せず誘発するが、ラクトースの添加はこの影響を軽減する。
【0231】
実施例9
ナルメフェン含有組成物E、FおよびG
本質的に上記の実施例1および/または4に記載されたのと同じ一般的手順に従って、3つのナルメフェン含有噴霧乾燥粉末を、以下の表14による組成で調製した。これと次の実施例では、ナルメフェンはMallinckrodt Inc.、USAから供給された。
【表15】
【0232】
組成物EおよびFは、3mgというナルメフェンの単回投与量を含み、組成物Gは、3mgというナルメフェンの単回投与量を含んだが、濃度は半分で充填重量は2倍であった(それぞれ遊離塩基として計算)。PSDおよびaPSDが、上記の実施例4に記載された一般的な方法を使用して分析された(結果については、以下の表15を参照)。
【表16】
【0233】
上記の実施例2に記載された方法を使用して、すべての組成物が、周囲条件において、約60℃でガラス転移を示した。しかし、組成物Eは、マルトデキストリン含有組成物FおよびGでは見られなかった、100℃をわずかに超える温度での大きな結晶化現象を生じた。さらに、組成物Eは、組成物FおよびGでは見られなかった、RH60%での室温での結晶化を起こした。
【0234】
実施例10
ナルメフェンを含有する噴霧乾燥粉末の化学的安定性
サンプルは、本質的に上記の実施例1および/または4に記載されているような一般的な手順を使用して調製された。組成(パーセンテージは、組成物全体に対する重量パーセントである)は以下の表16に示す。
【0235】
40℃/RH75%で3か月および6か月のナルメフェンの化学的安定性は、不純物の量は関連物質のパーセンテージ(%RS)で表され、異なる組成について以下の表16にまとめられている。すべての初期%RS値は0.1%未満であった。
【表17】
【図面の簡単な説明】
【0236】
図1】本願発明の説明に係る図である。
図2】本願発明の説明に係る図である。
図3】本願発明の説明に係る図である。
図4】本願発明の説明に係る図である。
図5】本願発明の説明に係る図である。
図6】本願発明の説明に係る図である。
図7】本願発明の説明に係る図である。
図8】本願発明の説明に係る図である。
図9】本願発明の説明に係る図である。
図10】本願発明の説明に係る図である。
図11】本願発明の説明に係る図である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】