(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】温室用途及びシート構造体の為のEu2+でドープされた無機発光ナノ粒子を含む分散物、並びにそのようなナノ粒子を含む、温室の為のコーティング
(51)【国際特許分類】
C09K 11/64 20060101AFI20220907BHJP
C09K 11/02 20060101ALI20220907BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
C09K11/64 ZNM
C09K11/02 Z
C09K11/08 G
C09K11/08 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502015
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(85)【翻訳文提出日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 EP2020069807
(87)【国際公開番号】W WO2021009145
(87)【国際公開日】2021-01-21
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520149445
【氏名又は名称】フィジー グループ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】ファン オフェルベーク,サディク
(72)【発明者】
【氏名】カオ,チャン-チェ
(72)【発明者】
【氏名】スー,チャオ-チュン
(72)【発明者】
【氏名】ペータース,シッコ ヘンリヒス ゴドフリーダス
(72)【発明者】
【氏名】ユング,アナ
【テーマコード(参考)】
4H001
【Fターム(参考)】
4H001CA02
4H001CC13
4H001CC15
4H001XA07
4H001XA08
4H001XA13
4H001XA14
4H001YA63
(57)【要約】
元素Al及び/又はSi並びに元素O及び/又はNを含むか又はそれらから本質的になる、Eu
2+でドープされた無機発光物質を含む発光層が記載され、ドープされた無機発光材料は、太陽光スペクトルの200nm~400nmのUV領域の放射を、太陽光スペクトルの光合成有効放射(PAR:photosynthetically active radiation)領域(400nm~700nm)に変換し、ここで、該無機発光材料のSi濃度は0~45原子%、Al濃度は0~50原子%、O濃度は0~70原子%、N濃度は0~60原子%、及びEu
2+は0.01~30原子%から選択される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室用グレージング構造体をコーティングする為の発光ナノ粒子の分散物であって、
有機又は水性媒体及び発光ナノ粒子を含み、
前記ナノ粒子が、Eu
2+でドープされたSiAlONを含むか又はそれから本質的に構成され、Si濃度が0~33原子%から選択され、Al濃度が0~40原子%から選択され、O濃度が50~66原子%から選択され、N濃度が0~10原子%から選択され、及びEu
2+が0.0001~5原子%から選択される、前記分散物。
【請求項2】
Si濃度が15~33原子%から選択され、Al濃度が0.001~12原子%から選択され、O濃度が50~66原子%から選択され、N濃度が0.1~5原子%から選択され、及びEu
2+濃度が0.0001~3原子%から選択され、又は好ましくは、
Si濃度が30~33原子%から選択され、Al濃度が0.01~2原子%から選択され、O濃度が50~66原子%から選択され、N濃度が0.1~1原子%から選択され、及びEu
2+濃度が0.0005~1原子%から選択される、
請求項1に記載の分散物。
【請求項3】
前記ナノ粒子が、1~1000nm、好ましくは10~800nm、より好ましくは20~600nm、の平均サイズを有する、請求項1又は2に記載の分散物。
【請求項4】
前記分散物が、1重量%~80重量%のナノ粒子、好ましくは5重量%~50重量%のナノ粒子、より好ましくは15重量%~35重量%のナノ粒子、を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の分散物。
【請求項5】
前記有機媒体が、0.5重量%~10重量%のポリマー添加物を含む有機溶媒(例えば、ヘキサン、エタノール、ヘプタン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の分散物。
【請求項6】
前記水性媒体が、アルカリ水性溶液、例えばアンモニウム溶液又はナトリウム水酸化物溶液を含み、前記アルカリ水性溶液が、1重量%~10重量%の水系ポリマー添加物を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の分散物。
【請求項7】
前記ナノ粒子の表面が、1以上のタイプのリガンド、例えばステアリン酸、オレイン酸、オクタン酸、オレイルアミン、オクチルアミン、オクタンチオール、トリオクチルホスフィン、に基づいて修飾され、好ましくは前記修飾が、前記ナノ粒子の超音波処理を包含する、請求項1~6のいずれか1項に記載の分散物。
【請求項8】
前記ナノ粒子の表面が、化学結合形成、例えばシラン化又はエステル化、によって修飾されて、ナノ粒子を、8~18個の炭素の鎖長を有する1以上の長い有機側鎖に結合する、請求項1~6のいずれか1項に記載の分散物。
【請求項9】
前記分散物が、無機多孔質ナノ粒子、好ましくは多孔質酸化ケイ素ナノ粒子、を更に含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の分散物。
【請求項10】
温室の為の透明プラスチックシートであって、
透明ポリマー物質、及び前記ポリマー物質中に分散された、Eu
2+でドープされた無機発光ナノ粒子を含み、
前記ナノ粒子が、Eu
2+でドープされたSiAlONを含むか又はそれから本質的に構成され、Si濃度が0~33原子%から選択され、Al濃度が0~40原子%から選択され、O濃度が50~66原子%から選択され、N濃度が0~10原子%から選択され、及びEu
2+が0.0001~5原子%から選択され、又は好ましくは、
Si濃度が15~33原子%から選択され、Al濃度が0.001~12原子%から選択され、O濃度が50~66原子%から選択され、N濃度が0.1~5原子%から選択され、及びEu
2+濃度が0.0001~3原子%から選択され、又はより好ましくは、
Si濃度が30~33原子%から選択され、Al濃度が0.01~2原子%から選択され、O濃度が50~66原子%から選択され、N濃度が0.1~1原子%から選択され、及びEu
2+濃度が0.0005~1原子%から選択される、
前記透明プラスチックシート。
【請求項11】
該シートの厚さは、1~1000マイクロメートル、好ましくは10~500mm、より好ましくは40~120マイクロメートル、から選択される、請求項10に記載の透明プラスチックシート。
【請求項12】
温室の為の発光グレージング構造体であって、
グレージング構造体、
前記グレージング構造体の表面の少なくとも一部に備えられたコーティング
を含み、
前記コーティングが、透明ポリマー物質、及び前記ポリマー物質中に分散された、Eu
2+でドープされた無機発光ナノ粒子を含み、
前記ナノ粒子が、Eu
2+でドープされたSiAlONを含むか又はそれから本質的に構成され、Si濃度が0~33原子%から選択され、Al濃度が0~40原子%から選択され、O濃度が50~66原子%から選択され、N濃度が0~10原子%から選択され、及びEu
2+が0.0001~5原子%から選択され、又は好ましくは、
Si濃度が15~33原子%から選択され、Al濃度が0.001~12原子%から選択され、O濃度が50~66原子%から選択され、N濃度が0.1~5原子%から選択され、及びEu
2+濃度が0.0001~3原子%から選択され、又はより好ましくは、
Si濃度が30~33原子%から選択され、Al濃度が0.01~2原子%から選択され、O濃度が50~66原子%から選択され、N濃度が0.1~1原子%から選択され、及びEu
2+濃度が0.0005~1原子%から選択される、
前記発光グレージング構造体。
【請求項13】
前記コーティングの厚さが、10~200マイクロメートル、好ましくは20~180マイクロメートル、より好ましくは50~150マイクロメートル、から選択される、請求項11に記載の発光グレージング構造体。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか1項に記載の発光グレージング構造体又は発光シートを含む温室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室用途の為のEu2+発光性無機ナノ粒子、特に、排他的ではないが、温室コーティングの為のEu2+発光性無機ナノ粒子、Eu2+発光性無機ナノ粒子を含む分散物、そのような粒子を含む透明シート構造体及びそのようなナノ粒子コーティングを含むグレージング構造体、並びに該Eu2+発光性無機ナノ粒子を合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温室は、植物及び作物を効率的に生育させる為の制御された気候環境を提供する。温室に入る太陽光を制御し、最適化する為に、温室の一部であるグレージング構造体又はプラスチック透明シートをコーティングする為に使用されることができる、様々なタイプのコーティングが開発されてきた。様々な光学特性を有する様々な顔料コーティング、例えば光選択的(photo-selecting)反射コーティング又は拡散コーティングが、温室に入る光を制御する為に入手可能である。典型的に、これらのコーティングは、スプレーコーティングされ、季節及び/又は生育させられる植物のタイプに応じて様々なコーティングが使用されうるように、除去されることができる。そのようなコーティングの例は、国際公開第2018/169404号パンフレットに記載されており、該パンフレットは、顔料、例えばチョーク又は酸化チタンを含む、温室の為の除去可能なコーティングを記載する。そのような顔料分散物に基づいて、夏の間、温室のグレージングは、植物が高レベルのIR放射(IR radiation)に対して敏感である場合には、赤外線反射コーティングでスプレーコーティングされうる。同様に、遮光効果を除去し、温室内の植物を太陽光に均一に曝露する為に、拡散コーティングが使用されうる。
【0003】
従来技術においては、発光物質(luminescent materials)に基づいて、温室への光の接続を更に改善することが示唆されてきた。典型的に、これらの材料は、発光粒子を含む透明プラスチックシートを包含する。そのような材料は、電磁スペクトルの放射の一部(又は複数部分)を、該放射のより有効な使用の為に異なる波長に変換する為に、最適化されうる。例えば、温室のグレージング構造体上に発光性コーティングとして適用された発光スペクトル下方変換層は、作物にとって有害になることが多いUV光(100nm~400nm)を、植物の生育を刺激するPAR領域内の光に変換することによって、太陽スペクトルと作物の光合成有効放射(PAR:photosynthetically active radiation)領域(400nm~700nm)との間のスペクトルミスマッチを低減することにより、作物の生育を増強することができる。温室内で実る様々な野菜について、PAR領域の光の1%の増大は、植物生産を約1%増大しうる。従って、そのような発光物質は、多大な経済的潜在可能性を有しうる。
【0004】
温室の為の発光物質の例は、米国特許出願公開第20170288080号明細書に記載されている。この従来技術の文書は、太陽スペクトルの複数部分を吸収し、吸収された光子のエネルギーを使用して波長600~690nmの光子を放出する為に、蛍光有機顔料、例えばLumogen 305を有するポリマー層を含む、温室の為の発光性コーティングの例を記載する。該発光性コーティングはまた、植物の生育及び開花にとって必要な太陽スペクトルの大部分(400~約640nm)に吸収する。温室の為の発光物質の他の例は、NL1017077及びNL2002577に記載されており、該文書は、UV又はIRの一部を可視光に変換することができる、無機リン光体、特にY2O3ベースのリン光体を含む、温室の為のプラスチック箔を記載する。
【0005】
しかしながら、現在、大規模温室用途の為のそのような発光物質は、市場で入手することができない。このことは主に、該発光物質が、PAR領域において重複する吸収スペクトル及び発光スペクトルを有することが理由である。より一般的には、温室用途の為の既知の発光リン光体、特に色素が更に、励起(excitation)スペクトルと発光(emission)スペクトルとの重複に起因して光子を実質的に喪失し、それによってこれらの物質は、大規模な商業的用途に好適なものにならない。そのような用途について、該コーティングは、UVスペクトルの複数部分を可視光に効率的に変換することができるだけでなく、低毒性、化学的に安定、環境に優しい、安価である、大規模生成に好適である等の、他の特性も満たすべきである。Lumogen 305又は該Y2O3ベースのリン光体等の前述の発光粒子は、これらの要件を満たしていない。最後に、該物質はまた、PAR領域において有利な光学特性、例えば低後方散乱/反射防止特性、を有するべきである。
【0006】
従って前述のことから、従来技術では、温室の為の改善された発光性無機粒子ベースのコーティングが必要である。特に、全PAR領域に広帯域UV吸収及びルミネセンス発光を示し(ここで、該吸収スペクトル及び該発光スペクトルは重複しない)、PAR領域において透明(非吸収性)であり、高い発光量子効率(すなわち、放出された光子(emitted photon)と吸収された光子(absorbed photon)との比)を示す、改善された発光性無機粒子ベースのコーティングが必要である。加えて、温室用途にとって好適な、耐久性、硬度、色の安定性及び光学的散乱特性を包含する光学的特性及び構造的特性を有する、温室の為の改善された無機粒子ベースのコーティングが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、従来技術で知られている欠点の少なくとも1つを低減又は排除することである。第1の観点において、本発明は、温室用グレージング構造体をコーティングする為の発光ナノ粒子の分散物であって、有機又は水性媒体及び発光ナノ粒子を含み、該ナノ粒子が、Eu2+でドープされたSiAlONを含むか又はそれから本質的に構成され、Si濃度が0~33原子%から選択され、Al濃度が0~40原子%から選択され、O濃度が50~66原子%から選択され、N濃度が0~10原子%から選択され、及びEu2+が0.0001~5原子%から選択される、上記分散物に関する。
【0008】
一つの実施態様において、Si濃度は15~33原子%から選択され、Al濃度は0.001~12原子%から選択され、O濃度は50~66原子%から選択され、N濃度は0.1~5原子%から選択され、及びEu2+濃度は0.0001~3原子%から選択されうる。
【0009】
別の実施態様において、Si濃度は30~33原子%から選択され、Al濃度は0.01~2原子%から選択され、O濃度は50~66原子%から選択され、N濃度は0.1~1原子%から選択され、及びEu2+濃度は0.0005~1原子%から選択されうる。
【0010】
一つの実施態様において、該ナノ粒子は、1~1000nm、好ましくは10~800nm、より好ましくは20~600nm、の平均サイズを有しうる。
【0011】
一つの実施態様において、該分散物は、1重量%~80重量%のナノ粒子、好ましくは5重量%~50重量%のナノ粒子、より好ましくは15重量%~35重量%のナノ粒子、を含みうる。
【0012】
一つの実施態様において、該有機媒体は、0.5重量%~10重量%のポリマー添加物を含む有機溶媒(例えば、ヘキサン、エタノール、ヘプタン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン)を含みうる。
【0013】
一つの実施態様において、該水性媒体は、アルカリ水性溶液、例えばアンモニウム溶液又はナトリウム水酸化物溶液を含み得、該アルカリ水性溶液は、1重量%~10重量%の水系ポリマー添加物を含む。
【0014】
一つの実施態様において、該ナノ粒子の表面は、1以上のタイプのリガンド、例えばステアリン酸、オレイン酸、オクタン酸、オレイルアミン、オクチルアミン、オクタンチオール、トリオクチルホスフィン、に基づいて修飾され得、好ましくは該修飾が、該ナノ粒子の超音波処理を包含する。
【0015】
一つの実施態様において、該ナノ粒子の表面は、化学結合形成、例えばシラン化又はエステル化、によって修飾されて、ナノ粒子を、8~18個の炭素の鎖長を有する1以上の長い有機側鎖に結合しうる。
【0016】
一つの実施態様において、該分散物は、無機多孔質ナノ粒子、好ましくは多孔質酸化ケイ素ナノ粒子、を更に含みうる。
【0017】
更なる観点において、本発明は、温室の為の透明プラスチックシートであって、透明ポリマー物質、及び該ポリマー物質中に分散された、Eu2+でドープされた無機発光ナノ粒子を含み、該ナノ粒子が、Eu2+でドープされたSiAlONを含むか又はそれから本質的に構成され、Si濃度が0~33原子%から選択され、Al濃度が0~40原子%から選択され、O濃度が50~66原子%から選択され、N濃度が0~10原子%から選択され、及びEu2+が0.0001~5原子%から選択される、上記透明プラスチックシートに関しうる。
【0018】
一つの実施態様において、Si濃度は15~33原子%から選択され、Al濃度は0.001~12原子%から選択され、O濃度は50~66原子%から選択され、N濃度は0.1~5原子%から選択され、Eu2+濃度は0.0001~3原子%から選択されうる。
【0019】
一つの実施態様において、Si濃度は30~33原子%から選択され、Al濃度は0.01~2原子%から選択され、O濃度は50~66原子%から選択され、N濃度は0.1~1原子%から選択され、Eu2+濃度は0.0005~1原子%から選択される。
【0020】
更なる観点において、該シートの厚さは、1~1000マイクロメートル、好ましくは10~500mm、より好ましくは40~120マイクロメートル、から選択されうる。
【0021】
更なる観点において、本発明は、温室の為の発光グレージング構造体であって、グレージング構造体、及び該グレージング構造体の表面の少なくとも一部に備えられたコーティングを含み、該コーティングが、透明ポリマー物質、及び該ポリマー物質中に分散された、Eu2+でドープされた無機発光ナノ粒子を含み、該ナノ粒子が、Eu2+でドープされたSiAlONを含むか又はそれから本質的に構成され、Si濃度が0~33原子%から選択され、Al濃度が0~40原子%から選択され、O濃度が50~66原子%から選択され、N濃度が0~10原子%から選択され、及びEu2+が0.0001~5原子%から選択され、又は好ましくは、Si濃度が15~33原子%から選択され、Al濃度が0.001~12原子%から選択され、O濃度が50~66原子%から選択され、N濃度が0.1~5原子%から選択され、及びEu2+濃度が0.0001~3原子%から選択され、又はより好ましくは、Si濃度が30~33原子%から選択され、Al濃度が0.01~2原子%から選択され、O濃度が50~66原子%から選択され、N濃度が0.1~1原子%から選択され、及びEu2+濃度が0.0005~1原子%から選択される、上記発光グレージング構造体に関する。
【0022】
一つの実施態様において、該コーティングの厚さは、10~200マイクロメートル、好ましくは20~180マイクロメートル、より好ましくは50~150マイクロメートル、から選択されうる。
【0023】
第1の観点において、本発明は、温室の為のEu2+でドープされた無機発光物質、特にEu2+発光ナノ粒子及びマイクロ粒子コーティング、並びにそのようなナノ粒子コーティングを含む、温室の為のグレージング構造体及び透明シート構造体に関しうる。該発光粒子は、元素Al及び/又はSi並びに元素O及び/又はNを含みうるか又はそれらから本質的に構成されうる。これらの発光粒子は、200nm~400nmのスペクトルのUV領域の太陽放射(solar radiation)を、400nm~700nmの光合成有効放射(PAR:photosynthetically active radiation)領域の放射に変換する為に最適化される。一つの実施態様において、該ナノ粒子は、Eu2+でドープされたSiAlONを含むか又はそれから本質的に構成され、Si濃度は0~33原子%から選択され、Al濃度は0~40原子%から選択され、O濃度は50~66原子%から選択され、N濃度は0~10原子%から選択され、及びEu2+は0.0001~5原子%から選択される。
【0024】
簡潔にする為に、本開示において、Eu2+でドープされたSiAlON(SiAlON:Eu2+)ナノ粒子及びマイクロ粒子物質への言及は、Eu2+でドープされたSiAlON、並びにEu2+でドープされたSiAlO、Eu2+でドープされたSiAlN、Eu2+でドープされたSiON、Eu2+でドープされたAlON、Eu2+でドープされたSiO2等を包含する。従って、該SiAlON物質は、中性単位SiO2、Al2O3、AlN及びSi3N4の線形結合、すなわち*SiO2+b*Al2O3+c*AlN+d*Si3N4(ここで、a、b、c及びdは、互いに独立な全ての値(0及び非整数を含む)をとることができる)として説明されることができる、任意のSiAlON化学量論量を含みうる。
【0025】
該Eu2+でドープされたSiAlON粒子は、温室用グレージング構造体及びプラスチックシートの為の発光下方変換コーティングにおいて使用されうる。加えて、該Eu2+でドープされたSiAlON粒子は、プラスチック透明シート構造体に分散させられて、粒子が分散しているシート材料を形成しうる。更に、該Eu2+でドープされたSiAlON粒子は、広帯域UV吸収、PAR領域内のルミネセンス発光、PAR領域の光子について透明であること(非吸収性)、重複していない吸収スペクトルと発光スペクトル、及び高い発光量子効率(LQE:luminescent quantum efficiency)、すなわち、放出された光子と吸収された光子との比を包含する、有利な発光特性を有する。加えて、該粒子は、温室用グレージング構造体と適合性がある、光学的、構造的、及び機械的特性を有する。例えば、一つの実施態様において、発光ナノ粒子コーティングは、散乱しないか、又は少なくとも低散乱特性を有しうる。別の実施態様において、ミクロンサイズの発光粒子コーティングは、光拡散特性を有する。
【0026】
該発光変換物質は、特に、光学的構造体、例えば温室の為のグレージング構造体及びシート構造体、の為の、Eu2+でドープされたSiAlONナノ粒子に好適である。
【0027】
Eu2+でドープされたSiAlONナノ粒子の光学特性は、温室の為の、グレージング構造体及びプラスチックシート構造体の為の発光性コーティングに理想的な一組の特徴を有する。該発光性SiAlON:Eu2+ナノ粒子は、UV領域における強力な吸収及びPAR領域における射出を有し、吸収領域の重複が全くないか又は少なくとも殆どなく、発光量子効率(LQE)はほぼ1である。加えて、該ナノ粒子は、耐久性に関して、例えば、化学的安定性、熱安定性、硬度及び色の安定性を包含する優れた特性を有する。
【0028】
一つの実施態様において、該Eu2+発光ナノ粒子は、元素Al及び/又はSi並びに元素O及び/又はNから実質的に構成され、ここで、語 から実質的に構成される、とは、該物質が、0.1%以下の量のごく微量の他の元素を含みうることを意味する。更なる実施態様において、該Eu2+発光物質は、元素Al及び/又はSi及び元素O及び/又はNから構成され、又は元素Al、Si、O、Nから構成される。
【0029】
該発光性SiAlON:Eu2+ナノ粒子は、SiとAlとの比、及び/又はOとNとの比を変えることによって、可視スペクトルに広範な同調範囲の発光を提供する。更なる実施態様において、発光はまた、Eu2+の濃度に基づいて調整されうる。その結果として、発光性SiAlON:Eu2+物質の広範囲な組成が存在し、該組成は、青色から赤色までの範囲(400nm~700nm)の放射に対応し、これらの発光物質を、温室農場主の必要に該射出波長を適合させるのに理想的なものにする。
【0030】
この範囲のSiに富んだ組成は、200~400nmのUV範囲の光子を吸収し、PAR領域の光子を放射する、高IQEを有する発光性SiAlON:Eu2+ナノ粒子をもたらす。
【0031】
前述の発光性SiAlON:Eu2+物質は、光学的構造体、例えば温室の為のグレージング構造体、例えばこれらの物質でコーティングされたガラス板状物を包含する上記の温室の為のグレージング構造体、において使用されうる。
【0032】
一つの実施態様において、該ガラス板状物は、高ヘイズ度(haze factor)を有する、透明度が高い拡散型ガラスシートでありうる。一つの実施態様において、拡散型ガラス板状物は、90%よりも高い光透過率且つ70%よりも高いヘイズ度を有しうる。例えば、ガラス材料は、該ガラス板状物を通過する光を散乱させる為に、光学的散乱中心及び/又はテクスチャを有する1以上の表面を含みうる。このように、該Eu2+ドーパントによって生成された発光放射及び該光学的構造体を通過する入射太陽放射(incoming solar radiation)は、複数の方向に散乱させられ、それによって光による作物の生育の為に拡散された光を生じる。
【0033】
光の散乱は、該ガラス板状物の片面又は両面にパターンを形成するか又はテクスチャをもたせることによって、達成されうる。従って、一つの実施態様において、該ガラス板状物の少なくとも1つの表面は、複数の方向に光を散乱させる為のパターン及び/又はテクスチャを含みうる。
【0034】
一つの実施態様において、該SiAlON:Eu2+発光層は、発光放射及び入射太陽放射を複数の方向に散乱させる為の拡散型コーティングとして構成されうる。その場合、該発光粒子ベースのコーティングにおいて、該粒子は、ミクロンサイズのSiAlON:Eu2+粒子である。
【0035】
一つの実施態様において、該SiAlON:Eu2+発光物質は、拡散型コーティング内及び/又はその一部に統合されうる。
【0036】
一つの実施態様において、反射防止(AR)構造体は、発光物質へのUV及び太陽光の最適な接続の為に、SiAlON:Eu2+発光物質に備えられうる。
【0037】
一つの実施態様において、該AR構造体は、2つ以上の誘電性の層を含み得、該誘電性の層の厚さ及び屈折率は、該発光層にUV及びPARを接続させる為のAR構造体を形成するように選択されうる。一つの実施態様において、該AR構造体は、透明基体上の発光性コーティングに備えられており、且つ該発光層にUV及びPARを接続させる為に最適化されうる。
【0038】
一つの実施態様において、該発光層は、約1.5の屈折率を有するガラス板状物に備えられうる。別の実施態様において、ガラス板状物の代わりに、透明ポリマーベースの板状物が使用されうる。
【0039】
一つの実施態様において、該SiAlON:Eu2+発光物質は、粒子、例えばナノ粒子として合成されうる。これらの粒子は、バインダー材料(有機バインダー又は無機バインダー、例えば、SiO2等)に(単)分散させられ、透明基体上のコーティングとして適用されうる。一つの実施態様において、該ナノサイズの粒子は、1nm~700nmの平均粒径を有しうる。ナノサイズの粒子の使用は、LCL効率を低減する場合がある光散乱を排除しうるか又は少なくとも最小限に抑えうる。
【0040】
更なる観点において、本発明は、第1の表面、第2の表面及び両面を有する透明基体、並びに該透明基体の該第1の表面及び/又は該第2の表面の少なくとも一方に備えられた少なくとも1つの発光層を含む光学的構造体であって、該発光層が、元素Al及び/又はSi並びに該元素O及び/又はNを含むか又はそれから本質的に構成され、Eu2+でドープされた無機発光物質を含み、該ドープされた無機発光物質が、太陽スペクトルの200nm~400nmのUV領域の放射を、太陽スペクトルの光合成有効放射(PAR)領域(400nm~700nm)に変換し、該ナノ粒子が、Eu2+でドープされたSiAlONを含むか又はそれから本質的に構成され、Si濃度が0~33原子%から選択され、Al濃度が0~40原子%から選択され、O濃度が50~66原子%から選択され、N濃度が0~10原子%から選択され、及びEu2+が0.0001~5原子%から選択される、上記光学的構造体に関しうる。
【0041】
一つの実施態様において、該少なくとも1つの透明基体は、無機の透明基体、例えばガラス基体、であり得、又は該透明基体は、ポリマーベースの透明基体である。
【0042】
一つの実施態様において、該少なくとも1つの透明基体は、高ヘイズ度を有し、好ましくは、該透明基体は、高ヘイズ度を有する拡散型の透明基体であり、該高ヘイズ度は、70%よりも高く、好ましくは80%よりも高く、より好ましくは90%よりも高く、及び/又は該発光層は、低ヘイズ度を有し、該低ヘイズ度は、20%よりも低く、好ましくは10%よりも低く、より好ましくは2%よりも低い。
【0043】
一つの実施態様において、該少なくとも1つの発光層は、該Eu2+でドープされた無機発光物質のナノ粒子を含み得、好ましくは、該ナノ粒子は、1nm~700nm、好ましくは2nm~500nm、より好ましくは5nm~400nm、更により好ましくは10nm~300nm、の平均サイズを有する。
【0044】
一つの実施態様において、該少なくとも1つの発光層は、非晶質層又はナノ結晶層である。
【0045】
一つの実施態様において、該透明基体は、低ヘイズ度を有し得、該低ヘイズ度は、20%よりも低く、好ましくは10%よりも低く、より好ましくは2%よりも低く、及び/又は該少なくとも1つの発光層は、高ヘイズ度を有し得、該高ヘイズ度は、70%よりも高く、好ましくは80%よりも高く、又はより好ましくは90%よりも高い。
【0046】
一つの実施態様において、該発光層は、SiAlON:Eu2+マイクロ粒子を含み得、好ましくは、該マイクロ粒子は、0.7~200ミクロン、好ましくは0.8~100ミクロン、より好ましくは1~30ミクロン、の平均サイズを有する。
【0047】
一つの実施態様において、該光学的構造体は、光を該光学的構造体に接続させる為に、反射防止ARコーティング、好ましくは多層ARコーティング、を更に含み得、好ましくは、該ARコーティングは、該発光層に備えられており、又は該発光層は、該ARコーティングの一部であるか、若しくは該ARコーティングに包埋されている。
【0048】
一つの実施態様において、該光学的構造体は、少なくとも1つの光電池に光学的に接続させられ、好ましくは該光学的構造体の両面の一方に光学的に接続させられうる。
【0049】
更なる観点において、本発明は、本願の実施態様のいずれかによる光学的構造体を備えている、温室の為の窓アセンブリに関しうる。
【0050】
一つの実施態様において、高屈折率のSiAlON:Eu2+発光物質、例えばSiAlN:Eu2+発光物質は、粒子、例えば100~300nmの平均寸法を有するナノ粒子として合成されうる。これらの粒子は、低屈折率材料の透明基体、例えばガラス等、の表面に、低密度に分布させられうる。ここで低密度に分布させられる、とは、粒子間の平均距離が200~700nmであることを意味する。そのような低密度に分布させられた発光ナノ粒子は、PAR領域の光の為の広帯域反射防止コーティングを形成しうる。
【0051】
従って、該発光性SiAlON:Eu2+物質は、様々なやり方で、反射防止構造体又はコーティングを形成しうるか又はその一部でありうる。例えば、相対的に多量のSi(32原子%>)及びO2(64原子%>)を含む(高いLQEを有する発光物質に対応する)、発光性SiAlON:Eu2+物質組成物は、1.51(ガラス)よりも低い屈折率を有することができ、それは、該組成物を、反射防止コーティングとして好適なものにする。
【0052】
代替的には、該発光性SiAlON:Eu2+物質は、交互に存在する高屈折率及び低屈折率SiAlON:Eu2+組成物を有する多層誘電性ARの積み重ね(stack)に組み込まれうる。更に、該物質は、相対的に高屈折率の200~700nmのナノ粒子を、ナノ粒子コーティングとして低屈折率基体(例えば、ガラス基体)上に配置することによって使用されることができ、それによって、該ナノ粒子コーティングは、広帯域反射防止特性を有するプラズモン共鳴構造体を形成する。
【0053】
一つの実施態様において、屈折率整合有機バインダー(例えば、PET、PE、PVB、PVA、PC、PP、PVP、エポキシ樹脂、シリコーン、PS、PMA誘導体等)は、該ナノサイズの粒子の為の透明バインダー材料として使用されうる。該コーティングの(単)分散前駆体は、湿式コーティング技術、例えばスプレーコーティング、ロール・ツー・ロールコーティング、ディップコーティング、ドクターブレードコーティング、ブラシコーティング、スピンコーティング等、を使用して、透明な(クリアな拡散型)基体上に適用されうる。
【0054】
一つの実施態様において、該SiAlON:Eu2+発光物質は、ミクロンサイズの粒子として合成されうる。これらの粒子は、バインダー材料中に(単)分散させられ、透明基体上のコーティングとして適用されうる。該ミクロンサイズの粒子は、直径0.7~16μmの平均粒径を有しうる。該粒子は、植物の生長にとって有益な、太陽照射(solar irradiation)及びルミネセンス発光(luminescent emission)の拡散を促進しうる。該光の拡散は、入射光を均一に分布させることができ、このことは、複数の利点、例えば改善された作物収量、より多い葉数、より低い収穫温度及びより短い収穫時間、を有する。このように、該ミクロンサイズの発光性SiAlON:Eu2+粒子は、光変換層及び光拡散層(光散乱層)の両方として作用しうる。
【0055】
一つの実施態様において、該ナノサイズ及びミクロンサイズのSiAlON:Eu2+粒子は、溶媒(ナノ粒子分散物)、例えば水、ヘキサン、トルエン、エタノール、イソプロパノール等、中のコロイド溶液として分散させられ、既に反射防止、光拡散、及び/又は光選択的な目的を有している既存の農産業コーティング前駆体と比例的に混合されることができる。光変換及び/又は光拡散の複合効果は、そのようにして達成されることができる。
【0056】
一つの実施態様において、該ナノサイズ及びミクロンサイズのSiAlON:Eu2+粒子は、透明プラスチック膜又はシート(例えば、PE、ETFE、PVC、PMMA、ポリカーボネート等)に分散させられることができる。
【0057】
一つの実施態様において、該SiAlON:Eu2+発光ナノ粒子は、ゾルゲル合成プロセスに基づいて合成されうる。該ナノ粒子は、元素Si、Al、O及び/又はNの前駆体、並びにEu2+及びポリマー添加物を含む溶媒に、分散させられうる。そのようなゾルゲルプロセスに基づいて合成されたナノ粒子分散物は、従来の湿式コーティング技術によって基体上に直接的に適用されうる。所望の光学的、化学的、及び機械的性能の為に、様々な堆積後処理(温度、傾斜速度、反応ガス圧力、反応ガス組成、反応ガス流等を変える)が、該コーティングに適用されることができる。また、様々な目的、例えば、溶液粘度の制御、コーティング接着の増大、コーティング多孔性の最小化、コーティング表面形態の変更等、の為に、微量のバインダー材料前駆体が、液体前駆体に含まれることができる。
【0058】
本発明は、本発明に従う実施態様を模式的に示す添付の図を参照することにより更に例示される。本発明は、これらの具体的な実施態様に決して限定されないことを理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1A】
図1Aは、本発明の一つの実施態様に従う発光ナノ粒子コーティングの写真を示す。
【
図1B】
図1Bは、本発明の一つの実施態様に従う発光ナノ粒子コーティングのIQEグラフを示す。
【
図2】
図2は、本発明の一つの実施態様に従う発光ナノ粒子コーティングの、励起スペクトル及び発光スペクトルを示す。
【
図3】
図3は、太陽放射によって照射された、本発明の一つの実施態様に従う発光性コーティング試料の透過を示す。
【
図4】
図4は、本発明の一つの実施態様に従う発光ナノ粒子コーティングを示す。
【
図5】
図5は、本発明の様々な実施態様に従う発光ナノ粒子コーティングを含む、透明シート構造体を示す。
【
図6】
図6は、本発明の様々な実施態様に従う発光ナノ粒子コーティングを含む、透明シート構造体を示す。
【
図7A】
図7Aは、本発明の一つの実施態様に従う発光粒子ベースの反射防止コーティングを含む、透明シート構造体を示す。
【
図7B】
図7Bは、本発明の一つの実施態様に従う発光粒子ベースの反射防止コーティングを含む、透明シート構造体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
発明の詳細な説明
本開示において、温室及び作物生育用途の為の優れた且つ改善された特性を有する、二価ユウロピウム(Eu2+)でドープされたSiAlON発光ナノ粒子物質が記載されている。該改善された特性は、従来技術から知られている温室用途の為の発光物質と比較して、改善された発光的、光学的及び/又は物質的特性を包含する。
【0061】
驚くべきことに、或る特定のSiAlON:Eu2+組成物は、UVを吸収しPARを放射するEu2+でドープされたSiAlON物質を示し、該吸収スペクトル及び該発光スペクトルは、重複を全く示さないか、又は殆ど示さないことが見出された。特に、発光Eu2+でドープされたSiAlON物質は、太陽スペクトルのUVバンドの実質的な部分を吸収し、このバンドの放射を、より長い波長の放射、特に光合成有効放射(PAR)領域の放射に変換することが見出された。SiAlONホスト材料は、機械的強度、化学的不活性及び耐熱性に関して優れた特性を示し、それが理由で、ガラス産業において保護コーティング及び反射防止コーティングに使用される。該Eu2+でドープされたSiAlON物質は、温室の為のグレージング構造体と適合性がある光学特性を有する、非常に安定な変換物質を形成する。
【0062】
該ナノ粒子物質、それらの利点、並びに温室の為の発光性コーティング及び温室の為の発光シート構造体におけるそれらの使用は、添付の図面を参照することにより以下により詳細に記載されている。
【0063】
図1Aは、UV光によって照射されるナノ粒子SiAlON:Eu
2+コーティングでコーティングされた、構造化ガラス板状物の写真を示す。該写真は、該ナノ粒子SiAlON:Eu
2+コーティングに、PAR領域、すなわち400~700nm、の放射を射出させる広帯域UV光による照射下で撮影された。Eu
2+でドープされたSiAlONナノ粒子の分散物は、3.5重量%のナノ粒子を、pH11の未硬化アクリルポリマーマトリックスに分散させることによって作成された。コーティング工程の前に、該ガラス板状物は、36重量%の塩酸、エタノール、脱イオン水を用いて、超音波処理で洗われた。該コーティングは、150℃で30分間、熱的に処理された。
図1Bは、非常に高い量子効率を示すナノ粒子コーティングの内部量子効率(IQE:internal quantum efficiently)グラフを示す。BaSO4は、UV-VIS光を均一に反射すると想定されることにより、参照として使用された。次に、この参照は、どれほどの光が吸収されたかを示す為に使用される(試料ホルダーを含む)。次に、吸収率及びIQEが決定されることができ、ここで、該IQEは、いわゆる「DeMello法」に基づいて測定される。
【0064】
図2は、
図1Aに示されている粒子ベースのコーティングの励起スペクトル及び発光スペクトルを示す。該図に示されている通り、該スペクトルは、重複を全く示さないか、又は殆ど示さず、320nmを中心とする優れたUV吸収及び450nmを中心とするPAR発光を示す。該ナノ粒子は、下記の通り、ゾルゲル技術の例示的合成工程を使用して合成された。該粒子の組成は、1モル%のドーピング濃度のEu
2+を含む、Si
1.92Al
0.08O
1.08N
1.92であった。この実施態様において、該ナノ粒子は、100~300nmの平均粒径(平均直径)を有しうる。該ナノ粒子のサイズ分布は、当技術分野で周知である走査電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscopy)画像又は動的光散乱(DLS:dynamic light scatting)測定に基づいて決定されうる。
【0065】
本願の実施態様を参照して記載されているSiAlON:Eu
2+ナノ粒子コーティングは、優れた変換特徴を示す。
図3は、この例では(約)440~520nmの範囲のPAR領域において、>100%の透過を示し、400nmよりも小さい波長については透過の強力な低減を示す、コーティングされたSiAlO:Eu
2+試料の透過グラフを表す。
【0066】
該SiAlON:Eu2+発光粒子は、湿式化学プロセス、例えば元素Si、Al、O、N、及びEuについて異なる前駆体を使用するゾルゲル合成法に基づいて合成されうる。所望の光学的、化学的、及び機械的性能の為に、様々な堆積後処理、例えば熱アニーリングが、物質に適用されることができる。
【0067】
該SiAlON:Eu2+粒子は、式Si(OC2H5)4、Al(NO3)3を有するオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)及びユウロピウム塩等の化合物を含むゾルゲル法を使用して合成されうる。任意的に、エタノール及び/又はクエン酸が、ナノ粒子の形成を助ける為に添加されうる。窒化物形成は、窒素充填焼結環境によって促進されることができる。ポリマーコーティング及び/又は積層は、該ナノ粒子をマトリックス材料に分散させることによって作成されることができる。そのようなマトリックスポリマーの選択及び最適化は、それらの用途及び条件に基づいて行われることができる。エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、及びポリシロキサンは、これらのナノ粒子を組み込むことができる、一部の一般的な物質である。
【0068】
一つの実施態様において、SiAlON:Eu2+ナノ粉末物質を生成する為に使用されうるゾルゲル合成法は、以下の工程を含みうる:
TEOS並びにAl、N、O及びEu前駆体:7.7447gのSi(OC2H5)4、0.3299gのAl(NO3)3、0.0681gのEu2O3を、化学量論的に秤量すること、
酸化ユウロピウムEu2O3を、最小量の希硝酸に溶解させること、
硝酸アルミニウム(Al(NO3)3)を、エタノールに溶解させ、それを加熱プレート上に置くこと、
TEOS(Si(OC2H5)4)を、エタノールに溶解させ、それを加熱プレート上に置くこと、
該TEOS溶液を、Al(NO3)3溶液及びEu2O3溶液と混合して、コロイド溶液(ゾル)の混合物を形成すること、
該混合物を、該加熱プレート上で蒸発させて、約20mlのゾルを形成すること、
該ゾルを、乾燥機内で、60℃で72時間熟成させて、ゲル構造体を形成すること、
該ゲルを、空気中、500℃でか焼して、何らかの残留有機含有物を除去すること、
還元雰囲気下で、1100℃で焼結すること、
該生成物を、メノウ乳鉢内で粉砕して、粒子、例えばナノサイズの粒子又はミクロンサイズの粒子、を形成すること。
【0069】
別の実施態様において、SiAlO(N):Eu2+粒子を生成する為のゾルゲル合成法は、以下の工程を含みうる:
TEOS並びにAl、N、O及びEu前駆体:7.7447gのSi(OC2H5)4;(TEOS)、0.3299gのAl(NO3)3・9H2O、及び0.1274gのEu(C2H3O2)3(Eu(Ace))を、化学量論的に秤量すること、
Eu(Ace)を脱イオン水に溶解させて、第1のコロイド溶液(ゾル1)を形成すること、
Al(NO3)3・9H2Oをエタノール6gに溶解させて、第2のコロイド溶液(ゾル2)を形成し、該溶液を60℃で15分間予熱すること、
TEOSを、エタノール3.4253gに溶解させて、第3のコロイド溶液(ゾル3)(EtOH:TEOS≒2:1モル比)を形成し、該混合物を60℃で15分間予熱すること、
ゾル1及びゾル2を混合して、第4のコロイド溶液(ゾル4)を形成すること、
ゾル3をゾル4に滴下で添加すること、
該混合物を、加熱プレート上で蒸発させて、約20mlのゾルを形成すること、
該ゾルを、オーブン内で、60℃で24時間熟成させて、ゲル構造体を形成すること、
該生成物を、乳鉢及び乳棒を使用して粉砕して、白色SiAlO(N):Eu2+粉末を形成すること、
空気中、3℃/分の加熱速度により500℃で5時間か焼して、何らかの残留有機含有物を除去し、該生成物を自然冷却すること、
か焼後に該生成物を粉砕すること、
還元雰囲気(7%H2/93%N2)下で、3℃/分の加熱速度により1100℃で3時間焼結し、該生成物を自然冷却すること、
該生成物を粉砕して、ナノリン光体を形成すること。
【0070】
前述のプロセスにより、2グラムのナノ粒子が得られ、該ナノ粒子の組成はSi1.92Al0.08O3.96:1モル%Euであり、Si/Al比は24であり、Euドーピング濃度は1%であり、その結果、組成はSi:32.0原子%、Al:1原子%、O2 66原子%及びEu:1原子%になる。先の合成法に基づいて、様々なSiAlON:Eu2ナノ粒子物質が生成されうる。該SiAlON:Eu2+ナノ粒子物質は、Si濃度が0~33原子%から選択され、Al濃度が0~40原子%から選択され、O濃度が50~66原子%から選択され、N濃度が0~10原子%から選択され、Eu2+が0.0001~5原子%から選択されることにより実現されうる。
【0071】
一つの実施態様において、平均粒径が直径1~500nmから選択されうる、該SiAlON:Eu2+物質のナノ粒子が合成されうる。別の実施態様において、該平均粒径は、直径2~400nmから選択されうる。更なる実施態様において、該平均粒径は、直径5~100nmから選択されうる。該ナノサイズの粒子は、ナノ粒子コーティングに有利な光学特性を提供し、例えば、そのような発光性コーティングの効率を低減する恐れがある光散乱を排除しうるか又は少なくとも最小限に抑えうる。
【0072】
該SiAlON:Eu2+ナノ粒子は、ナノ粒子分散物を形成する為に、透明ポリマーバインダー媒体に(単)分散させられうる。ナノ粒子分散物は、ナノ粒子を担持媒体(短くバインダー又は媒体と云われうる)に分散させ、該ナノ粒子分散物をコーティングとして、透明基体、例えばグレージング構造体又はポリマーシート上に適用し、該ナノ粒子コーティングを乾燥させて、該基体上にポリマーナノ粒子コーティングを形成することによって実現されうる。該コーティングは、既知のコーティング技術、例えばスプレーコーティング、を使用して形成されうる。ナノ粒子分散物を形成する為に、該ナノ粒子の表面は、表面修飾プロセスを使用して修飾されうる。
【0073】
一つの実施態様において、ナノ粒子の表面は、様々なタイプのリガンドにおいて超音波処理(すなわち、>20KHzの周波数を有する超音波エネルギーを、該粒子に適用する)によって修飾されうる。そのようなリガンドの例は、ステアリン酸、オレイン酸、オクタン酸、オレイルアミン、オクチルアミン、オクタンチオール及びトリオクチルホスフィンを包含しうる。代替的には、一つの実施態様において、ナノ粒子の表面は、化学結合形成、例えばシラン化、エステル化、又は類似のプロセス、によって修飾されうる。そのような化学結合形成プロセスは、8~18個の炭素の鎖長を有する1以上の長い有機側鎖を、該ナノ粒子の表面に接続する為に使用されうる。リガンド及び/又は化学結合形成に基づく該ナノ粒子の表面修飾は、ナノ粒子を、該担持媒体に容易に分散させることを可能にし、それによって、該粒子の核形成が防止されることができる。
【0074】
前述の粒子処理に基づいて、ナノ粒子分散物が形成されうる。該ナノ粒子分散物における該ナノ粒子の重量百分率(重量%)は、1%~80重量%、好ましくは5~50重量%、より好ましくは15重量%~35重量%、から選択されうる。
【0075】
一つの実施態様において、該(修飾)ナノ粒子は、有機溶媒に、1%~80%、より好ましくは5%~50%、より好ましくは15%~35%、で分散させられうる。一部の実施態様において、該(修飾)ナノ粒子は、有機溶媒に、25±10%で分散させられうる。有機溶媒は、ヘキサン、エタノール、ヘプタン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタンを包含しうる。該溶媒は、0.5%~10%のポリマー分散剤を更に含みうる。そのようなポリマー分散剤の例は、PP、PE、PVP、PMA誘導体、PS、PU等を包含しうる。
【0076】
別の実施態様において、該(修飾)ナノ粒子は、水性溶媒、例えばアンモニウム溶液及び水酸化物ナトリウム溶液を包含するアルカリ水性溶液に分散させられうる。該水性溶媒は、ポリアクリレート、ポリウレタン、コポリマー等(PP、PE、PVP、PMA誘導体、PS、PU等)を包含する、1%~10%の水系ポリマー分散剤を更に含みうる。
【0077】
一つの実施態様において、該ポリマー分散剤及びバインダーは、それぞれ、アクリル酸、ウレタン、アシレート、エポキシに基づく、ポリマー分散剤又はバインダーである。
【0078】
更なる実施態様において、分散物は、参照により本願に組み込まれる国際公開第2018/169404号パンフレットに記載されている通り、ポリマーバインダーに基づいて形成されうる。
【0079】
該ポリマー分散剤は、該ナノ粒子を分散させる為の分散剤として作用し得、乾燥中に架橋して、ポリマーナノ粒子コーティングを形成する。ポリマー分散剤は、可溶化する側鎖の立体障害及び固定基上の電荷の静電斥力を合わせることによって、媒体中の該ナノ粒子の長期間安定化を増強した。加えて、該ポリマー分散剤は、制御された重合プロセスを可能にして、高品質のナノ粒子コーティング層を提供する。
【0080】
一つの実施態様において、屈折率整合有機バインダー(例えば、PET、PE、PVB、PVA、PC、PP、PVP、エポキシ樹脂、シリコーン、PS、PMA誘導体等)は、ナノ粒子分散物を形成する為に使用されうる。
【0081】
(単)分散させられたナノ粒子コーティングは、ナノ粒子分散物を、透明な(クリアな拡散型)基体、例えばガラス板状物又は透明ポリマーシート上に、湿式コーティング技術、例えばスプレーコーティング、ロール・ツー・ロールコーティング、ディップコーティング、ドクターブレードコーティング、ブラシコーティング等、を使用して適用することによって形成されうる。このように、高品質の実質的に散乱しないか又は散乱が少ないSiAlON:Eu2+発光ナノ粒子コーティングは、効率的且つ安価なやり方で実現されうる。前述の湿式コーティング技術に基づいて、10~200マイクロメートル、好ましくは20~180マイクロメートル、より好ましくは50~150ミクロン、の厚さを有するナノ粒子コーティングが、実現されることができる。
【0082】
一つの実施態様において、該SiAlON:Eu2+発光物質は、ミクロンサイズの粒子として合成されうる。該ミクロンサイズの粒子は、バインダー材料に(単)分散させられ、該ナノサイズの粒子に言及して先に記載されているものと同様に、透明基体上のコーティングとして適用されうる。一つの実施態様において、該ミクロンサイズの粒子は、直径0.5μm~15μmから選択される平均粒径を有しうる。該粒子は、植物の生育にとって有益な、太陽照射(solar irradiation)及びルミネセンス発光(luminescent emission)の拡散を促進しうる。該光の拡散は、入射光を均一に分布させることができ、このことは、複数の利点、例えば改善された作物収量、より多い葉数、より低い収穫温度及びより短い収穫時間、を有する。このように、該ミクロンサイズの発光性SiAlON:Eu2+粒子は、光変換層及び光拡散層の両方として作用しうる。
【0083】
本願の実施態様を参照して記載されている発光粒子ベースの物質は、温室の為のグレージング構造体及び透明シート構造体、並びに屋内農業の為の建物において使用されうる。例示的な有利な光学的構造体は、
図4~
図7を参照することにより以下に記載されている。
【0084】
図4は、本発明の一つの実施態様に従う、発光粒子ベースのコーティングを含むグレージング構造体を示す。該図に示されている通り、該光学的構造体は、第1の表面404及び第2の表面406を有する、透明ガラス板状物又は透明ポリマーシート402を含み得、該第1の表面は、外部太陽光410を受けるように構成され、該第2の表面は、該グレージング構造体から出た光414を、温室に接続するように構成されうる。該グレージング構造体又は該ポリマーシートは、温室の一部でありうるか又は温室において使用されうる。グレージング構造体の場合、該グレージングの長さは、300~100cm、好ましくは250~140cm、より好ましくは220~160cm、から選択され、該グレージングの幅は、200~40cm、好ましくは180~50cm、より好ましくは160~60cm、から選択されうる。典型的な寸法(長さ×幅)は、2.140×1.122mm、1.650×1.22mm、1.650×997mm及び1.650×730mmを包含しうる。更に、グレージングは、6~3mm、好ましくは5.5~3.5mm、より好ましくは5.0~3.5mm、の厚さを有しうる。
【0085】
該SiAlON:Eu2ナノ粒子コーティングは、基体、例えばグレージングの第1の表面上に、前述のナノ粒子分散物をスプレーコーティングすることによって適用されうる。ナノ粒子を含まない更なるコーティング412は、保護の為に、湿式コーティングプロセスを使用して該発光ナノ粒子コーティングに適用されうる。典型的に、該保護コーティングの組成は、該ナノ粒子コーティングのポリマーバインダー材料と同じでありうるか又は類似しうる。
【0086】
一つの実施態様において、該グレージングの表面は、光を散乱する上部表面を導入する為に、表面処理を受けうる。該表面散乱界面は、該グレージングの第2の(底部)表面から出る光の接続を最大限にする為に導入されうる。該表面処理は、テクスチャを有する表面をもたらすエッチング工程を含みうる。
【0087】
エッチングプロセスは、湿式エッチングプロセス又は乾燥エッチングプロセスでありうる。湿式エッチングプロセスは、表面を化学溶液に浸漬させることによって表面部分を溶解させることにより作用する。一つの実施態様において、物質を選択的にエッチングする為に、マスクが使用されうる。乾燥エッチングプロセスは、物質のスパッタリング又は溶解に基づいて行われうる。これは、反応性イオンエッチング工程又はイオンビームによって達成されうる。得られた表面特徴(それ故に散乱特性)は、様々なエッチングパラメータ(例えば、プラズマ供給ガス、反応ガスのタイプ及び流れ、ガス圧力、エッチング時間等)を調節し、該テクスチャを有する表面の散乱特性を測定することによって調整されることができる。該テクスチャを有する表面は、規則的な(周期)パターンを有しうるか又はランダムパターンを有しうる。
【0088】
該テクスチャパターンは、ナノメートル~マイクロメートル範囲の特色(直径及び高さ)を有しうる。マスクベースのエッチングプロセスに基づいて製造されたテクスチャの特色は、ナノメートル範囲(約10nm~1000nm)の円錐、錐体、マイクロレンズ、又はマイクロメートル範囲、例えば1マイクロメートル~500マイクロメートルの特色を包含しうる。代替的には、マスクを用いない(mask-les)エッチングプロセスに基づいて製造されたテクスチャの特色は、ナノメートル範囲又はマイクロメートル範囲の寸法を有する、実質的にランダムなテクスチャの特色をもたらしうる。
【0089】
該表面界面の表面粗さについての尺度は、該表面界面で散乱した光のガウス散乱分布の標準偏差である。そのような測定は、当技術分野で、例えば、Kurita等、Optical surface roughness measurement from scattered light approximated by two-dimensional Gaussian function, Transactions on Engineering Sciences vol. 2, 1993で周知である。この論文は、参照により本開示に組み込まれうる。
【0090】
別の実施態様において、該ナノ粒子によって生じる可能性がある後方散乱効果は、SiO2多孔質ナノ粒子を使用して低減されうる。一つの実施態様において、該多孔質ナノ粒子は、該発光ナノ粒子に添加されうる。一つの実施態様において、0.1~5重量%の多孔質ナノ粒子が、該発光ナノ粒子に添加されうる。更なる実施態様において、0.5~2.0重量%が、該発光ナノ粒子に添加されうる。別の実施態様において、典型的に、該多孔質ナノ粒子は、該発光ナノ粒子と同じ又は類似のサイズ又はサイズ分布を有しうる。該多孔質ナノ粒子は、該コーティングに反射防止特性を提供する。該SiO2多孔質ナノ粒子は、基体に対するコーティング層の屈折率を低減し、それによって、第2の表面を介して該基体から出る光の後方散乱を実質的に低減し、光の接続を増大する。
【0091】
発光層は、基体の表面上に直接的に堆積させられうる(例えば、コーティングされうるか又はスパッタリングされうる)。代替的には、発光層は、該基体上に堆積させる前に、1以上の層、例えば接着層、緩衝層及び/又は不動態化(passivation)層が、該基体に堆積させられうる。
【0092】
更なる実施態様において、基体にわたるコーティングの代わりに、該ナノサイズ及びミクロンサイズのSiAlON:Eu2+粒子は、透明ポリマー(例えば、PE、ETFE、PVC、PMMA、ポリカーボネート等)に分散させられることができ、該透明ポリマーは、温室で使用されることができる透明プラスチック膜又はシートとして成形される。典型的に、そのようなシートの厚さは、1~1000マイクロメートル、好ましくは10~500mm、より好ましくは40~120マイクロメートル、でありうる。更に、1~80重量%、好ましくは5~50重量%、より好ましくは15~35重量%、の発光ナノ粒子が、該膜に分散させられうる。
【0093】
図5の実施態様において、該光学的構造体は、実質的に散乱しないか又は低散乱性のSiAlON:Eu
2+ナノ粒子コーティング508及び高散乱性の透明基体502(拡散型の透明基体とも云われる)を含みうる。そのような層は、無機又は有機マトリックス材料中にSiAlON:Eu
2+ナノ粒子を含みうる。一つの実施態様において、該マトリックス材料は、非晶質誘電物質、例えばSiAlON、Si
3N
4、Al
2O
3、Ti
2O
3等、でありうる。別の実施態様において、該マトリックス材料は、透明な有機誘電物質、例えばPMMA、ポリアクリル酸、ポリカーボネート、ポリエチレン、繊維ガラスでありうる。そのようなナノ粒子コーティングは、本願に記載されている通り、好適な粒子合成法及びコーティング技術に基づいて実現されうる。
【0094】
基体502は、拡散型の透明基体を包含しうる。例えば、一つの実施態様において、該基体は、拡散型ガラス基体でありうる。拡散ガラス材料は、光透過(特にPAR領域の光透過)の為に最適化されうると同時に、光が該基体を離れるときに、該光をランダムな方向に散乱しうる。一つの実施態様において、該拡散型ガラス基体は、光を拡散するように散乱させる為の、散乱構造体を含みうる。ガラス基体の代わりに、(拡散型)透明ポリマーベースの基体が使用され得、該基体には、光散乱構造体が備えられており、それによって、拡散光が光学的構造体から第2の表面上で離れる。
【0095】
図5に示されている光学的構造体は、UV放射からIR放射の範囲の太陽スペクトルの放射を受ける。UV光は、該SiAlONナノ粒子中の二価Euドーパント512によって、PARの放射に転換される。Eu
2+ドーピング部位によって生成されたPAR光514及び太陽光からのPAR光518は、拡散された光として該光学的構造体から出ることになり、これは植物の生育にとって有利である。
【0096】
図6の実施態様において、該光学的構造体は、高散乱性の発光薄膜層608及び低散乱性の透明基体602を含みうる。一つの実施態様において、該発光薄膜層は、低散乱性の透明基体、例えばガラス基体又は透明ポリマーベースの基体に備えられた、薄膜多結晶SiAlON:Eu
2+でありうる。別の実施態様において、薄膜多結晶SiAlON:Eu
2+の代わりに、高散乱性のマイクロ粒子ベースのコーティング層が使用されうる。そのような層は、無機又は有機マトリックス材料中に、ミクロンサイズのSiAlON:Eu
2+粒子を含みうる。一つの実施態様において、該マトリックス材料は、非晶質誘電物質、例えばSiAlON、Si
3N
4、Al
2O
3、Ti
2O
3等、でありうる。別の実施態様において、該マトリックス材料は、透明有機誘電物質、例えばPMMA、ポリアクリル酸、ポリカーボネート、ポリエチレン、繊維ガラスでありうる。そのようなミクロン粒子コーティングは、本願に記載されている通り、好適な粒子合成法及びコーティング技術に基づいて実現されうる。
【0097】
図6に示されている光学的構造体は、UV放射からIR放射の範囲の太陽スペクトルの放射を受け、そこでUV光は、該SiAlON層中の二価Euドーパント612によって、PARの放射に転換される。該SiAlON層が高散乱性の層である場合、該Eu
2+でドープされた物質によって射出されたPAR光は、低散乱性の透明基体に散乱させられる。更に、該ドープされたSiAlON層は、PAR領域を含む可視部分の為の散乱層として作用する。従って、この太陽光部分は、拡散型基体内に散乱させられる。Eu
2+ドーピング部位によって生成されたPAR光614及び太陽光からのPAR光618は、拡散された光として該光学的構造体から出ることになり、これは植物の生育にとって有利である。
【0098】
本発明は、
図4~
図6を参照することにより記載されている光学的構造体に限定されないと予測される。例えば、更なる実施態様において、該光学的構造体は、高散乱性の発光薄膜層及び高散乱性の透明基体を含みうる。従って、該発光層及び該基体は、共に、該光学的構造体を離れる拡散光を生じるように構成される。そのような実施態様において、該光学的構造体は、太陽放射に曝露されるときに、PAR領域の高度に拡散された光を透過し生じる為に、最適化されうる。
【0099】
更に、一つの実施態様において、第1の表面に1以上の発光層を備える代わりに(又は第1の表面に1以上の発光層を備えることに加えて)、低散乱性又は低散乱性発光層が、該透明基体の第2の表面に備えられ得、該基体は、用途に応じて高散乱性(拡散型)基体又は低散乱性基体のいずれかでありうる。
【0100】
図7A及び
図7Bは、更に別の実施態様に従う光学的構造体を示す。この実施態様において、平均寸法100~300nmを有する発光ナノ粒子708は、透明基体702の第1の(上部)表面704に、低密度に(parsley)分布させられる。ここで、低密度に分布させられる、とは、粒子間の平均距離が200~700nmであることを意味する。該発光粒子は、相対的に高屈折率を有する、発光性SiAlON:Eu
2+ベースのナノ粒子でありうる。例えば、一つの実施態様において、該粒子物質は、少量原子%の、特に5%以下のSi
4+、O
2+及びEu
2+イオンでドープされたAlNを含み得、それによって、該発光物質の屈折率がおよそ2.14になって、本発明の一つの実施態様に従う発光反射防止コーティングを形成する。
【0101】
米国特許出願公開第2013/0194669号明細書から、低屈折率材料、例えばガラス基体の表面に、低密度に分布させられる高屈折率ナノ粒子の層は、広帯域反射防止コーティングとして機能しうることが知られている。ここで、該ナノ粒子は、秩序配列で配置され得、又は代替的には、該ナノ粒子は、該透明基体の表面にランダムに分布させられうる。そのようなナノ粒子層の反射防止特性は、太陽光710が、200~700nmの範囲の寸法を有するナノ粒子と相互作用する場合、プラズモンモードの形成に寄与させられうる。これらのプラズモンモードは、光を、図に示されている基体に有効に散乱させる。該発光ナノ粒子のAR層は、太陽スペクトルのUV光をPAR光に変換し、太陽スペクトルの残り、特に太陽スペクトルの可視部分の為の、効率的な広帯域反射防止層として作用する。
【0102】
本明細書において使用される語法は、単に特定の実施態様を記載することを目的とし、本発明を制限することを企図されない。本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「該(the)」は、文脈が別段明らかに示さない限り、複数の形態も同様に包含することを企図される。更に、「含む(comprise)」及び/又は「含む(comprising)」という語は、本明細書で使用される場合、記述されている特徴、整数、工程、操作、要素及び/又は成分の存在を特定するが、他の1以上の特徴、整数、工程、操作、要素、成分及び/又はその群の存在又は追加を排除しないことが理解されるであろう。
【0103】
全ての手段又は工程の対応する構造体、材料、動作、及び等価物に加えて、以下の特許請求の範囲における機能的要素は、具体的に特許請求されている他の特許請求の範囲の要素と組み合わせて該機能を果たす為の、任意の構造体、材料、又は動作を包含することを企図される。本発明の説明は、例示目的で提示されており、ただしその説明は、網羅的であることも、本発明を開示されている形態に制限することも企図されない。本発明の添付の特許請求の範囲及び精神から逸脱することなく、多くの改変及び変更が当業者に明らかであろう。本発明の原理及び実用的な適用を最も良く説明する為、及び考慮される特定の使用に適しているものとして様々な改変を伴う様々な実施態様について、当業者が本発明を理解できるようにする為に、実施態様が選択され、記載されている。
【国際調査報告】