(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(54)【発明の名称】CIML NK細胞及びそれについての方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20220908BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220908BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220908BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
C12N5/0783
C12N5/10
A61K35/17 Z
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021534175
(86)(22)【出願日】2019-07-08
(85)【翻訳文提出日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 US2019040889
(87)【国際公開番号】W WO2021006876
(87)【国際公開日】2021-01-14
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520393015
【氏名又は名称】イミュニティーバイオ、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ImmunityBio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ロヒット、ダッガール
(72)【発明者】
【氏名】ランジート、シンハ
(72)【発明者】
【氏名】ウェンチャオ、リー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン、アイザックソン
(72)【発明者】
【氏名】パトリック、スン-シオン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AC20
4B065BB19
4B065BC12
4B065BD39
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB34
4C087BB37
4C087BB59
4C087BB64
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】
増強された細胞傷害性を有するサイトカイン誘導メモリー様(CIML)NK細胞が提示される。最も典型的には、CIML NK細胞は、末梢血又は臍帯血の単核球画分に由来する。さらに検討された態様では、CIML NK細胞は、操作上の複雑性及び産生コストを実質的に低減する、収容される自動化された産生環境下で拡大され、誘導される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
増強された細胞傷害性を有するサイトカイン誘導メモリー様(CIML)NK細胞を産生する方法であって、
生体液から単核球の混合物を単離し、且つNK細胞を拡大するため、前記単核球の前記混合物を抗CD16抗体及びN-803と接触させるステップと;
前記拡大されたNK細胞を、IL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体、IL-12、N-803、及びIL-18の混合物、又はIL-12、IL-15、及びIL-18の混合物を含む刺激性サイトカイン組成物と接触させ、それにより増強された細胞傷害性を有する前記CIML NK細胞を作製するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記CIML NK細胞を再刺激後、前記CIML NK細胞をN-803と接触させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生体液が、全血又は臍帯血である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
NK細胞を濃縮するため、単核球の前記混合物がさらに処理されない、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記単核球の前記混合物が、約100~500×10
6個の細胞を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記混合物を接触させるステップが、約100~300mlの間の体積で、又は約1×10
6個の細胞/mlの細胞密度で実施される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物を接触させるステップにおける前記抗CD16抗体が、0.05~0.5mcg/mlの間の濃度で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記混合物を接触させるステップにおける前記N-803が、0.1~1.0nMの間の濃度で存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記混合物を接触させるステップが、前記単核球の前記混合物を抗CD3抗体と接触させるステップをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗CD3抗体が、0.1~1.0ng/mlの間の濃度で存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記刺激性サイトカイン組成物が、前記IL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記刺激性サイトカイン組成物が、IL-12、N-803、及びIL-18の前記混合物を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記刺激性サイトカイン組成物が、IL-12、IL-15、及びIL-18の前記混合物を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記NK細胞が、約0.5~5.0×10
9個の細胞の全細胞数まで拡大される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記拡大されたNK細胞を刺激性サイトカイン組成物と接触させる前記ステップが、前記NK細胞を拡大する前記ステップと同じ容器内で実施される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
増強された細胞傷害性を有するサイトカイン誘導メモリー様(CIML)NK細胞を形成するため、NK細胞を活性化する方法であって、
全血又は臍帯血の単核球から拡大された、拡大されたNK細胞を準備するステップと;
前記拡大されたNK細胞を、IL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体、IL-12、N-803、及びIL-18の混合物、又はIL-12、IL-15、及びIL-18の混合物を含む刺激性サイトカイン組成物と接触させ、それにより増強された細胞傷害性を有する前記CIML NK細胞を作製するステップと、
を含む、方法。
【請求項17】
前記NK細胞が、全血から拡大される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記NK細胞が、臍帯血から拡大される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記NK細胞が、前記CIML NK細胞を含む輸血を受けている個体に対して自己である、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記刺激性サイトカイン組成物が、前記IL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体を含む、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記刺激性サイトカイン組成物が、IL-12、N-803、及びIL-18の前記混合物を含む、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記刺激性サイトカイン組成物が、IL-12、IL-15、及びIL-18の前記混合物を含む、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記拡大されたNK細胞が、約0.5~5.0×10
9個の細胞の全細胞数を有する、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
増強された細胞傷害性を有する前記CIML NK細胞が、MS-1細胞に対する細胞傷害性を有する、請求項16~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
増強された細胞傷害性を有する前記CIML NK細胞が、N-803単独と接触される拡大されたNK細胞と比べて、CD16の低下した発現を有する、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
増強された細胞傷害性を有する前記CIML NK細胞が、N-803単独と接触される拡大されたNK細胞と比べて、TIGITの低下した発現を有する、請求項16~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
増強された細胞傷害性を有する前記CIML NK細胞が、N-803単独と接触される拡大されたNK細胞と比べて、CD25及び/又はDNAM1の増加した発現を有する、請求項16~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
5以下のエフェクター対標的細胞比で少なくとも50%殺傷する、MS-1細胞に対する細胞傷害性を示す、増強された細胞傷害性を有するサイトカイン誘導メモリー様(CIML)NK細胞。
【請求項29】
N-803単独と接触される拡大されたNK細胞と比べて、CD16の低下した発現を有する、請求項28に記載のCIML NK細胞。
【請求項30】
N-803単独と接触される拡大されたNK細胞と比べて、TIGITの低下した発現を有する、請求項28に記載のCIML NK細胞。
【請求項31】
N-803単独と接触される拡大されたNK細胞と比べて、CD25及び/又はDNAM1の増加した発現を有する、請求項28に記載のCIML NK細胞。
【請求項32】
前記CIML NK細胞を含む輸血を受けている個体に対して自己細胞である、請求項28に記載のCIML NK細胞。
【請求項33】
組換えNK細胞である、請求項28に記載のCIML NK細胞。
【請求項34】
CD16若しくはその変異体、IL-2若しくはその変異体、及び/又はIL-15若しくはその変異体を組換え核酸から発現する、請求項33に記載のCIML NK細胞。
【請求項35】
薬学的に許容できる担体を、請求項28~34のいずれか一項に記載のサイトカイン誘導メモリー様(CIML)NK細胞と組み合わせて含む、医薬組成物。
【請求項36】
薬剤中での、請求項28~34のいずれか一項に記載のサイトカイン誘導メモリー様(CIML)NK細胞の使用。
【請求項37】
がんの治療における、請求項28~34のいずれか一項に記載のサイトカイン誘導メモリー様(CIML)NK細胞の使用。
【請求項38】
それを必要とする個体をサイトカイン誘導メモリー様(CIML)NK細胞で治療する方法であって、請求項28~34のいずれか一項に記載のCIML NK細胞を治療有効量で投与するステップを含む、方法。
【請求項39】
前記CIML NK細胞が、前記個体の自己細胞である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記CIML NK細胞が、末梢血又は臍帯血由来NK細胞である、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、活性化された免疫能細胞を作製及び/又は培養するための組成物、方法、及びデバイスに関し、特にそれは、臍帯血(CB)又は末梢血(PB)から産生されるメモリー様NK細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
背景説明は、本開示を理解するのに有用であってもよい情報を含む。本明細書に提供される情報のいずれもが先行技術であるか若しくは以前に請求された発明に関連すること、又は具体的若しくは暗黙的に参照されるいずれの刊行物も先行技術であることは、承認ではない。
【0003】
本明細書中のすべての刊行物及び特許出願は、あたかも各個別の刊行物又は特許出願が参照により援用されることが具体的且つ個別に示された場合と同程度まで参照により援用される。援用された参考文献における用語の定義又は使用が矛盾があるか又は本明細書に提供されるその用語の定義に反する場合、本明細書に提供されるその用語の定義が適用され、参考文献におけるその用語の定義は適用されない。
【0004】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、自然免疫細胞のグループを成し、それらは、グラニュライシン及びパーフォリンの標的特異的放出を介して抗体依存性細胞毒性を示す細胞傷害性リンパ球として特徴づけられることが多い。大部分のNK細胞が、様々な活性化及び阻害性受容体のコレクションに加えて、特異的な細胞表面マーカー特性(例えば、CD3-、CD56+、CD16+、CD57+、CD8+)を有する。より最近、NK細胞が特定のがん治療の有意な成分になっている一方で、NK細胞(及び特に自己NK細胞)の有意な量での産生は、全血中のNK細胞の画分が比較的低いことから、有意な障害になっている。
【0005】
NK及びNK様細胞を治療的有効量で得るため、NK細胞は、様々な前駆細胞から作製され得る。例えば、様々な幹細胞因子(SCF)、FLT3リガンド、インターロイキン(IL)-2、IL-7及びIL-15は、臍帯血由来サイトカイン誘導キラー(CIK)細胞を誘導及び拡大するための様々なインビトロ手法において報告されている(Anticancer Research 30:3493-3500(2010))。同様に、CD34+造血細胞は、米国特許出願公開第2018/0044636号明細書に報告されている通り、IL-12及び他の作用剤に曝露され得る。さらに他の手法では、ヒト血球血管芽細胞は、国際公開第2011/068896号パンフレットに記載の通り、2つの異なるサイトカインカクテルに経時的に曝露され、国際公開第2012/128622号パンフレットに教示の通り、異なるサイトカインカクテルが後胚期の造血幹細胞とともに使用された。これら方法の少なくとも一部がNK細胞の有意なn倍拡大をもたらす一方で、かかる拡大のための方法及び試薬は、いずれも時間及び資源への要求が厳しい。さらに、公知の方法の多くが、技術面及び規制面の視点から問題になることが多い、支持細胞層上でのNK細胞培養も必要とすることは注目されるべきである。
【0006】
より単純な方法では、急性骨髄性白血病(AML)細胞は、TpoRアゴニストに曝露されることで、AML細胞がNK細胞を形成することを誘導し得る。しかし、かかる手法は、治療用細胞製剤における供給源として実行不能である可能性が高い。さらに、代替的方法は、国際公開第2011/103882号パンフレットに開示のように、末梢血液細胞を様々なインターロイキン、幹細胞因子、及びFLT3リガンドの存在下で培養することに依存している。さらに別の方法では、米国特許出願公開第2013/0295671号明細書は、既存のNK細胞をサイトカインとともに抗CD16抗体及び抗CD3抗体で刺激する方法を教示する。かかる方法は、手順的により簡単である一方で、該細胞の慎重な操作をさらに必要とし、特定の試薬が要求されることから多大なコストがかかる。
【0007】
さらに公知の方法では、米国特許出願公開第10,125,351号明細書は、有核細胞を単離するための密度勾配分離が施され、次いでインターフェロン、インターロイキン、CD3抗体及びヒトアルブミンを含有する培地で培養される、細胞の供給源としての臍帯血又は末梢血の使用について記載している。最も有利には、かかる方法は、バイオリアクター内での灌流培養に適合可能であり、それ故、操作上の困難を有意に低減する。しかし残念ながら、NK細胞の収率は比較的低い。
【0008】
特定の産生方法と無関係に、培養されたNK細胞は、典型的にはがん免疫療法にとって特に望ましいメモリー様特性を示さないことになる。メモリー様NK細胞を産生するための少なくともいくつかの試みでは、培養されたNK細胞は、IL-12、IL-15、及びIL-18に曝露され、そのように曝露されたNK細胞は、メモリー様表現型を示し、CD94、NKG2A、NKG2C、及びCD69の発現並びにCD57及びKIRの欠如と相関した(Blood(2012)Vol.120,No.24;4751-4760を参照)。同様に、国際公開第2018/089476号パンフレットに記載の通り、メモリー様NK細胞は、様々な刺激性サイトカインを用いてNK細胞を予備活性化し、続いて予備活性化された細胞をPM21粒子、EX21エキソソーム、又はFC21支持細胞と接触させることにより調製された。メモリー様NK細胞を作製するためのさらに別の手法では、国際公開第2018/165208号パンフレットに記載の通り、新規に単離されたNK細胞が、IL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体に曝露された。かかる方法により、典型的には少なくともいくつかのメモリー様特性を有するNK細胞が産生された一方で、選択された標的細胞に対するかかる活性化NK細胞の細胞傷害性は、おそらくは特定の活性化受容体の欠如若しくは低発現及び/又は特定の阻害性受容体の発現に起因し、依然として最適未満であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、たとえメモリー様NK細胞を作製する様々な方法が当該技術分野で公知であっても、それらのすべて又はほぼすべてが様々な不利益を被る。結果的に、メモリー様NK細胞、特に自己メモリー様NK細胞を有意な量で産生する改善されたシステム及び方法を提供することが求められる。さらに、改善されたシステム及び方法もまた、細胞培養及びNK細胞活性化の自動化を可能にし、かかる方法を臨床的且つ商業的に実行可能にするための実質的に減少した試薬要件を有することになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は、メモリー様NK細胞の作製及び拡大を概念的に単純且つ効率的な様式で可能にする組成物、方法、及びデバイスを発見している。有利には、メモリー様NK細胞は、NK細胞が所望される量まで拡大され、次いで拡大されたNK細胞がサイトカインの混合物により誘導されることで、サイトカイン誘導メモリー様(CIML)NK細胞が形成されるという2ステッププロセスで作製可能である。NK細胞の拡大は、好ましくは、N-803及び抗CD16アゴニスト抗体及び任意選択的には抗CD3抗体を使用する濃縮プロセス中に実施される。次に、メモリー様特性を得るための活性化は、刺激性サイトカインの組み合わせ、最も好ましくはIL-12/IL-15/IL-18又はIL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体により実施される。
【0011】
意外にも、活性化マーカー及びIFN-γ分泌の上方制御に加えて、そのように活性化・拡大されたメモリー様NK細胞は、CD25及びNK活性化受容体DNAM-1の増強された発現、並びに阻害性受容体TIGITの下方制御された発現を有し、それらはおそらくは、CIML NK細胞の認められた増強された毒性に寄与したか又はその原因になった。最も注目すべきは、本明細書で提示されるCIML NK細胞は、他のNK抵抗性腫瘍細胞株MS-1に対して、比較的低いエフェクター対標的比で有意な細胞傷害性をさらに示した。
【0012】
本発明の主題の一態様では、発明者は、増強された細胞傷害性を有するCIML NK細胞を産生する方法であって、生体液から単核球の混合物を単離するステップと、NK細胞を拡大するため、単核球の混合物を抗CD16抗体及びN-803と接触させる別のステップと、を含む方法を検討している。さらなるステップでは、拡大されたNK細胞は、刺激性サイトカイン組成物(典型的には、IL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体、IL-12、N-803、及びIL-18の混合物、又はIL-12、IL-15、及びIL-18の混合物を含む)と接触され、それにより増強された細胞傷害性を有するCIML NK細胞が作製される。所望される場合、検討された方法は、CIML NK細胞を再刺激後、CIML NK細胞をN-803と接触させるステップをさらに含んでもよい。
【0013】
好ましくは、必然ではないが、生体液は全血又は臍帯血であり、単核球の混合物は、NK細胞を濃縮するため、さらに処理されることはない。最も典型的には、単核球の混合物は、約100~500×106個の細胞を含有し、及び/又は混合物を接触させるステップは、約100~300mlの間の体積で、若しくは約1×106個の細胞/mlの細胞密度で実施される。さらなる実施形態では、混合物を接触させるステップにおける抗CD16抗体は、0.05~0.5mcg/ml間の濃度で存在してもよく、及び/又は混合物を接触させるステップにおけるN-803は、0.1~1.0nM間の濃度で存在してもよい。任意選択的には、混合物を接触させるステップは、単核球の混合物を抗CD3抗体と(例えば、0.1~1.0ng/ml間の抗CD3抗体濃度で)接触させるステップをさらに含んでもよい。
【0014】
いくつかの態様では、刺激性サイトカイン組成物がIL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体を含む一方で、その他の態様では、刺激性サイトカイン組成物は、IL-12、N-803、及びIL-18の混合物を含み、さらなる態様では、刺激性サイトカイン組成物は、IL-12、IL-15、及びIL-18の混合物を含む。最も典型的には、NK細胞は、約0.5~5.0×109個の細胞の全細胞数に拡大され、及び/又は拡大されたNK細胞を刺激性サイトカイン組成物と接触させるステップは、NK細胞を拡大するステップと同じ容器内で実施される。
【0015】
したがって、異なる視点から眺めると、発明者はまた、増強された細胞傷害性を有するCIML NK細胞を形成するため、NK細胞を活性化させる方法を検討している。かかる方法は、拡大された(典型的には全血又は臍帯血の単核球から拡大された)NK細胞を準備するステップと、拡大されたNK細胞を、IL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体、IL-12、N-803、及びIL-18の混合物、又はIL-12、IL-15、及びIL-18の混合物を含んでもよい刺激性サイトカイン組成物と接触させ、それにより増強された細胞傷害性を有するCIML NK細胞を作製するさらなるステップと、を含むことになる。
【0016】
前記の通り、NK細胞が全血又は臍帯血から拡大されることが検討される。したがって、NK細胞は、CIML NK細胞を含む輸血を受けている個体と対照的に、自己であってもよい。好ましくは、刺激性サイトカイン組成物は、IL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体を含む。しかし、さらなる実施形態では、刺激性サイトカイン組成物はまた、IL-12、N-803、及びIL-18の混合物又はIL-12、IL-15、及びIL-18の混合物を含んでもよい。典型的には、拡大されたNK細胞は、約0.5~5.0×109個の細胞の全細胞数を有する。
【0017】
さらに、増強された細胞傷害性を有するCIML NK細胞がMS-1細胞に対する細胞傷害性を有することになり、増強された細胞傷害性を有するCIML NK細胞がN-803単独と接触される拡大されたNK細胞と比べてCD16の低下した発現を有し、増強された細胞傷害性を有するCIML NK細胞がN-803単独と接触される拡大されたNK細胞と比べてTIGITの低下した発現を有し、且つ/又は増強された細胞傷害性を有するCIML NK細胞がN-803単独と接触される拡大されたNK細胞と比べてCD25及び/若しくはDNAM1の増強された発現を有することが検討される。
【0018】
したがって、発明者はまた、5以下のエフェクター対標的細胞比で少なくとも50%殺傷する、MS-1細胞に対する細胞傷害性を示す、増強された細胞傷害性を有するCIML NK細胞について検討している。さらなる態様では、CIML NK細胞は、N-803単独と接触される拡大されたNK細胞と比べてCD16の低下した発現を有し、N-803単独と接触される拡大されたNK細胞と比べてTIGITの低下した発現を有し、且つ/又はN-803単独と接触される拡大されたNK細胞と比べてCD25及び/若しくはDNAM1の増強された発現を有する。
【0019】
本発明の主題に限定しない一方で、CIML NK細胞は、好ましくは、CIML NK細胞を含む輸血を受けている個体と対照的に自己細胞である。他の実施形態では、CIML NK細胞はまた、組換えNK細胞であってもよい。例えば、かかる組換え細胞は、CD16若しくはその変異体、IL-2若しくはその変異体、及び/又はIL-15若しくはその変異体を組換え核酸から発現してもよい。
【0020】
さらに検討された態様では、発明者はまた、薬学的に許容できる担体を本明細書で提示されるようなCIML NK細胞と組み合わせて含む医薬組成物について検討している。結果的に、薬剤における、また特にがんの治療における本明細書で提示されるようなCIML NK細胞の使用が検討される。
【0021】
したがって、発明者はまた、CIML NK細胞でそれを必要とする個体を治療する方法であって、本明細書で提示されるようなCIML NK細胞の治療有効量を個体に投与するステップを含む方法について検討している。好ましくは、CIML NK細胞は、個体の自己細胞であり、及び/又はCIML NK細胞は、末梢血又は臍帯血由来NK細胞である。
【0022】
様々な目的、特徴、態様、及び利点は、数値に類するものが成分に類するものを表すような貼付の図面とともに、好ましい実施形態の以下の詳細な説明からより明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】IL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体の例示的な模式図を示す。
【
図2】自己PBMC及び特定抗体の選択された組み合わせを使用する末梢血NK細胞の拡大からの例示的結果を示す。
【
図3】MS-1標的細胞に対する臍帯血由来CIML NK細胞の細胞傷害性アッセイからの例示的結果を示す。
【
図4】臍帯血由来CIML NK細胞上での選択された表現型マーカーの発現についての例示的結果を示す。
【
図5】MS-1標的細胞に対する末梢血由来CIML NK細胞の細胞傷害性アッセイからの例示的結果を示す。
【
図6】末梢血由来CIML NK細胞上での選択された表現型マーカーの発現についての例示的結果を示す。
【
図7】IL-18/12 TxM曝露後の臍帯血由来CIML NK細胞の例示的な活性化クラスター表現型を示す。
【
図8】IL-18/12 TxM曝露後の臍帯血由来CIML NK細胞上での例示的なCD25発現を示す。
【
図9】臍帯血由来CIML NK細胞の再刺激時の例示的な活性化クラスター表現型を示す。
【
図10A】臍帯血由来CIML NK細胞の、IL-18/12 TxM曝露から24時間後の細胞殺傷活性についての例示的結果を示す。
【
図10B】臍帯血由来CIML NK細胞の、IL-18/12 TxM曝露から48時間後の細胞殺傷活性についての例示的結果を示す。
【
図10C】臍帯血由来CIML NK細胞の、IL-18/12 TxM曝露から72時間後の細胞殺傷活性についての例示的結果を示す。
【
図11】単一ボックス培養環境下で培養された臍帯血由来CIML NK細胞の細胞殺傷活性、及びかかる細胞からの活性化クラスター形成についての例示的結果を示す。
【
図12】IL-18/12 TxM曝露後の末梢血由来CIML NK細胞上でのNKマーカー発現についての例示的結果を示す。
【
図13】K562標的細胞に対するIL-18/12 TxM曝露後の末梢血由来CIML NK細胞の細胞傷害性アッセイからの例示的結果を示す。
【
図14】再刺激後の末梢血由来CIML NK細胞のIFN-γ染色についての例示的結果を示す。
【
図15】N-803への曝露後の末梢血由来CIML NK細胞の細胞傷害性アッセイからの例示的結果を示す。
【
図16】再刺激後の臍帯血由来CIML NK細胞のIFN-γ染色についての例示的結果及びN-803への曝露後の細胞傷害性アッセイからの例示的結果を示す。
【発明の具体的説明】
【0024】
がんの治療における免疫療法では、様々な細胞に基づく成分の利用が増えており、より最近ではNK細胞が有望なモダリティになっている。一部のNK細胞が比較的高い量で現在利用可能である一方で、自己NK細胞及び/又はメモリー様NK細胞の治療的有効量での産生についての問題は、良くても未解決のままである。残念ながら、現在の方法の多くが、支持細胞層の使用又は単離されたCD34+造血幹細胞(HSC)の分化を必要とし、双方ともに時間・資源集約的である。さらに、要求される様々な操作ステップに起因し、かかる方法は、典型的にはヒト相互作用を必要とし、易汚染性である。さらに、NK細胞のメモリー様表現型への変換により、少なくとも一部のプロトコルにおいて細胞傷害性が低下することがある、又はかかる細胞が十分な量で送達されないことがある。
【0025】
発明者は現在、メモリー様NK細胞に容易に変換可能なNK細胞を治療的有効量(例えば、少なくとも0.5×109個のNK細胞)で、一旦単核球が生体液(例えば、全血、臍帯血)から得られると、完全に自動化することさえ可能である単純且つ有効な方法で作製するための様々なシステム、組成物、及び方法を発見している。有利には、かかるNK細胞は、自己NK細胞であり得、メモリー様表現型に誘導され、増強された細胞傷害性を有するサイトカイン誘導メモリー様(CIML)NK細胞がもたらされ得る。特に、以下により詳細に説明される通り、そのように作製されたCIML NK細胞は、他の(CIML)NK細胞と比べて優位な細胞傷害性を有するだけでなく、MS-1細胞(メルケル細胞がん細胞)など、通常はNK細胞の細胞傷害性に対して抵抗性又はさらに不活性である標的細胞に対して有意な殺傷能力を有することになる。
【0026】
いかなる理論又は仮説によっても拘束されることを望んでいないが、発明者は、増強された細胞傷害性が、拡大条件に先立つ(ナイーブ)NK細胞の供給源、おそらくは拡大及びサイトカイン誘導の中断されない(例えば、培地、培養条件などの変更)性質に起因することがあり、それにより活性化因子の過剰発現及び阻害性受容体の過小発現が生じることがあると考えている。本明細書で提示されるCIML NK細胞の他の注目すべき特徴の中で、CIML NK細胞は、典型的には5以下のエフェクター対標的細胞比で少なくとも50%殺傷する、MS-1細胞に対する細胞傷害性を示すことになり、N-803単独と接触される拡大されたNK細胞と比べてTIGIT(阻害性受容体)の低下した発現、及びN-803単独と接触される拡大されたNK細胞と比べてCD25及び/又はDNAM1(活性化共受容体)の増加した発現を有することになる。したがって、用語「増強された細胞傷害性を有するNK細胞」は、5以下のエフェクター対標的細胞比で少なくとも50%殺傷する、MS-1細胞に対する細胞傷害性、N-803単独と接触される拡大されたNK細胞と比べてTIGIT(阻害性受容体)の低下した発現、及び/又はN-803単独と接触される拡大されたNK細胞と比べてCD25及び/又はDNAM1(活性化共受容体)の増加した発現を示すNK細胞を指す。さらに、検討対象のCIML NK細胞は、典型的にはCD16の低下した発現も示すことになる。最も典型的には、CIML NK細胞は、上記パラメータ(即ち、通常のNK抵抗性細胞に対する細胞傷害性、活性化受容体の増加した発現、阻害性受容体の低下した発現)の3つすべてを示すことになる。
【0027】
本明細書で検討される1つの例示的プロセスでは、NK細胞は、第1ステップで、単核球を含有する生体液の画分から、好ましくは約0.5~5.0×10
9個の細胞の全細胞数まで拡大される。特に、かかる拡大は、支持細胞又は培養容器の変更を必要とする他の操作を必要とせず、比較的小さい体積の単一の反応器内で中等度の細胞密度まで(例えば、100~300ml又は約0.5~5.0×10
6個の細胞/mlの細胞密度で)実施され得る。一旦所望されるNK細胞量が達成されると、次にそのように拡大されたNK細胞は、第2ステップで、NK細胞をメモリー様表現型に活性化するため、刺激性サイトカイン組成物と接触される。好ましくは、刺激性サイトカイン組成物は、
図1に例示される通り、必ずしもIL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体を含むことにならない。しかし、刺激性サイトカイン組成物はまた、IL-12、N-803、及びIL-18の混合物、又はIL-12、IL-15、及びIL-18の混合物を含んでもよい。サイトカイン刺激は、典型的には、4~24時間の期間にわたり実施されることになり、そのように作製されたCIML NK細胞は、輸血前に(好ましくはN-803の存在下で)静止又は再刺激されてもよい。
【0028】
例えば、全血又は臍帯血は、単核球を得るために処理される出発物質として利用可能である。最も典型的には、通常の密度勾配遠心分離を使用して(例えば、GE Lifesciencesから市販されたFicoll-Paque Plus(商標)(親水性可溶性多糖、密度1.077g/mL)を使用)、処理が実施され得る。一旦単核球が遠心管から分離されると、該細胞は洗浄され、活性化培地(例えば、10%ヒトAB血清を添加したNK MACS)中に再懸濁される。活性化培地は、約0.4nMの濃度でのN-803、及び約1.0mcg/mlの濃度での抗CD16抗体をさらに含み得る。
【0029】
最も典型的には、単核球は、約200mlの総体積中で1~2×10
6個の細胞/mlの密度を有し、且つ該細胞及び培地は、単一の容器内に存在する。約3~4日後、該細胞にN-803を含有する新しい培地が供給され、さらなる供給サイクルが、回収、迅速な拡大、及び培養達成を通じて約3日ごとに実施される。特に、かかるスキームにおけるNK細胞拡大の成功は、
図2に例示される通り、刺激性因子の適切な選択に有意に依存した。ここで、抗CD3及び抗CD16モノクローナル抗体を使用するとき、0日目から20,000倍を超える著しい拡大が認められた一方で、抗CD16抗体単独は、同様の著しい効果をもたらすことができなかった。特に、抗4-1BB抗体の存在は、NK細胞を早めに増殖し尽くすように思われた。
【0030】
次に、所望される量、典型的には約0.5~5.0×109個の全細胞に達するとき、且つ/又は所望される拡大(例えば少なくとも100倍の拡大)に達するとき、細胞培養が終結する。特に、明白な単純性にもかかわらず、そのようにして得られた細胞培養物は、約3週後、約85%を超えるNK細胞とともに、約8%未満のNKT細胞、及び約2.5%未満のT細胞、及び約1.2%未満の二重陰性(DN)T細胞を含有する。さらに、全培養プロセスは、培養ステップ中、汚染リスクを実質的に低減し、試薬及び細胞操作を取り除く、自己完結型バイオリアクター内部の単一容器内で実施されてもよいことは理解されるべきである。
【0031】
該細胞は、所望される細胞量に達するとき、その後のサイトカイン刺激を意図して、新しい培地に移すことができる。或いは、メモリー様表現型を作製するためのサイトカイン刺激は、典型的には、さらなる培地に、IL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体(又はIL-12、N-803、及びIL-18の混合物、又はIL-12、IL-15、及びIL-18の混合物)を含む刺激性サイトカイン組成物を添加することにより、同じ培地中で実施され得る。ほとんどの場合、サイトカイン刺激は、約4~24時間の間、より典型的には12~16時間の間の期間にわたり、実施されることになる。容易に理解されるであろうが、次に該細胞は、輸血前に輸血培地に移すことができる。さらに、CIML NK細胞の表現型及び/又は細胞傷害性が判定されてもよく、例示的結果が以下により詳細に示される。
【0032】
好適な生体液に関しては、体液が、本明細書で提示される方法において単離されたNK細胞を受けることになる個体に対して自己であり得ると一般に考えられている。したがって、特に好ましい生体液は、新しい全血、臍帯血(凍結又は新鮮)、及び白血球除去手順において分離された細胞を含む。しかし、生体液がまた、(典型的には他の細胞型の中の)NK細胞を含有する任意の体液であってもよいことは理解されるべきである。例えば、好適な代替的な生体液は、適合性MHCタイプに一致しても又は一致しなくてもよい、同種ドナーからの全血を含む。したがって、有効期限に近づいた血液バンク内のサンプルは、NK細胞レシピエント以外の個体により新規に供与された全血又は貯蔵された臍帯血と同様、使用に適すると思われる。さらに、生体液が臍帯血である場合、NK細胞レシピエントと十分なMHC一致後、臍帯血が一致され、供与されてもよいことは注目されるべきである。同様に、単核球を単離又は濃縮する方法が大幅に変化してもよく、当業者が単離及び濃縮の最適な方法を容易に理解するであろうことは注目されるべきである。例えば、生体液が全血又は臍帯血である場合、体液が任意の好適な培地(例えば、フィコール・ハイパック)を用いての勾配密度遠心分離を介して処理されることは好ましい。或いは、単核球は、患者から白血球除去により直接的に入手されてもよく、又は生体液は、抗体を用いる赤血球の除去が施されてもよい。さらなる方法では、単核球は、ビーズが単核球に結合する抗体にコーティングされるか又はそれ以外では共役される場合、磁気ビーズ分離を用いて単離されてもよい。
【0033】
同様に、活性化及び供給における培地の特定の性質がNK MACS培地に限られる必要がないが、NK細胞の成長を支持することが知られるすべての培地が本明細書での使用に適すると思われることは理解されるべきである。しかし、最も好ましくは、限定培地が使用され、それにヒトAB血清が添加されてもよい。
【0034】
単核球の混合物中でのNK細胞の増殖は、好ましくは抗CD16抗体とN-803との組み合わせ、任意選択的には抗CD3抗体を用いて刺激及び支持される。当該技術分野で公知の/市販の抗CD16抗体に対して様々な供給源が存在し、また特に好ましい抗CD16抗体は、アゴニスト(活性化する)活性を有し、ヒトCD16に特異的である。しかし、抗CD16抗体以外のアクチベーターもまた、本明細書での使用に適するとみなされ、抗CD16抗体断片及び抗CD16抗体断片との融合タンパク質を含む。追加的に又は代替的に、検討対象のアクチベーターはまた、特に、CD314又はNKG2D、天然細胞傷害性受容体CD335(NKp46)、CD336(NKp44)及びCD337(NKp30)、CD226(DNAM-1)、CD244(2B4)、短い細胞質側末端を保有するCD158又はキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)ファミリーのメンバー(KIR2DS及びKIR3DS)、及びCD94/NKG2Cを含む。
【0035】
抗CD16抗体の濃度は、典型的には、NK細胞の活性化に対する当該技術分野で既知の場合に従うことになる。したがって、抗CD16抗体に適した濃度は、約0.01~5.0mcg/mlの間、より典型的には約0.01~0.3mcg/mlの間、又は約0.05~0.5mcg/mlの間、又は約0.1~1.0mcg/mlの間、又は約1.0~5.0mcg/mlの間となる。抗CD16抗体への曝露の持続時間に関しては、最も典型的には単核球が単離され、第1(及び/第2、及び/又は第3)の期間、活性化培地と接触されるとき、単核球の混合物が専ら単回、2回、又は3回用量の抗CD16抗体に曝露されると一般に考えられる。当業者は、NK細胞活性化を達成するための適切なスケジュール及び用量を容易に理解できるであろう。最も典型的には、単核球の抗CD16抗体への曝露は、単核球のN-803との曝露と同時的である。しかし、大して好ましくない実施形態では、単核球の抗CD16抗体への曝露は、単核球のN-803との曝露に対して経時的である(ここでは最初に単核球の抗CD16抗体への曝露が好ましい順序である)。
【0036】
所望される場合、増殖刺激/支持はまた、典型的には該細胞を抗CD16抗体と接触させるのと同時に、細胞を抗CD3抗体と接触させることを含んでもよい。上記の通り、抗CD3抗体の濃度は、典型的にはNK細胞の活性化に対する当該技術分野で既知の場合に従うことになる。したがって、抗CD3抗体に適した濃度は、約0.01~10.0ng/mlの間、より典型的には約0.01~0.1ng/mlの間、又は約0.1~0.5ng/mlの間、又は約0.3~1.0ng/mlの間、又は約1.0~5.0ng/mlの間となる。同様に、抗CD3抗体への曝露の持続時間に関しては、最も典型的には単核球が単離され、第1(及び/第2、及び/又は第3)の期間、活性化培地と接触されるとき、単核球の混合物が専ら単回、2回、又は3回用量の抗CD3抗体に曝露されると一般に考えられる。当業者は、NK細胞活性化を達成するための適切なスケジュール及び用量を容易に理解できるであろう。
【0037】
N-803に関しては、N-803(ヒト配列を有するIL-15N72D:IL-15RαSu/IgG1 Fc複合体;米国特許出願公開第2019/0023766号明細書を参照、ImmunityBioから市販)が活性化及び供給培地中の薬剤として好ましいと考えられる。しかし、IL-15活性を有する様々な代替的薬剤もまた、本明細書での使用に適すると思われる。これに関連し、またいかなる理論又は仮説によっても拘束されることを望んでいないが、発明者は、N-803が連続的シグナル伝達のおかげでNK細胞の成長及び拡大を可能にすると考えている。それに対し、単離されたサイトカインとしてのIL-15は、非常に短い寿命を有し、シグナル伝達活性は、典型的には非常に短期である。ここで単離されたサイトカインとしてのIL-15が成長培地に添加される場合、シグナル伝達は間欠的にパルス化されることになる。それに対し、N-803が提供される場合、IL-15の安定性が劇的に延長され、シグナル伝達は連続的とみなされる。さらに、N-803が生理学的状況(即ちIL-15 R-α鎖)及びスーパーアゴニストとして作用するN72D形態ももたらすことは理解されるべきである。したがって、任意の安定化したIL-15化合物についても、明示的に本明細書での使用に適すると思われる。
【0038】
例えば、IL-15シグナル伝達をもたらすすべての化合物及び複合体は、単離された/組換え及び精製されたIL-15単独よりも長い血清半減期を有する限り、本明細書での使用に適すると思われるに。さらに、安定化したIL-15化合物がIL-15及び/又はIL-15Rαにおけるヒト配列の少なくとも一部を含むことは一般に好ましい。例えば、好適な化合物は、P22339(IL-15とIL-15Rα鎖のSushiドメインとの複合体であって、その半減期を増強するため、IL-15/Sushiドメイン複合体をIgG1 Fcと連結するジスルフィド結合を有するもの;Nature,Scientific Reports(2018)8:7675を参照)、及びIL-15/IL-15Rα-Fcヘテロ二量体であるXmAb24306を含む(例えば、国際公開第2018/071919号パンフレットを参照)。
【0039】
さらに詳細に検討される実施形態では、単核球の混合物は、生体液からの単離後、NK細胞を活性化するため、抗CD16(及び任意選択的には抗CD3)抗体及びN-803を含有する培地と一緒に、細胞培養容器に入れられる。最も好ましくは、容器は、細胞の形状、染色、及び/又は成長が顕微鏡又は他の光学機器により観察可能であるように光に対して透明な少なくとも1つの壁(又はその一部)を有する細胞培養フラスコである。したがって、該細胞がバイオリアクター内で継続的又は周期的に監視可能であり、且つそのようにして得られた測定値(例えば、細胞サイズ、細胞数、細胞分布など)が、バイオリアクターに論理的に共役された制御ユニットにおいて自動化された供給スケジュールを誘発又は変更するために使用可能であることは注目されるべきである。最も典型的には、また
図2に示される通り、新しい培地へのN-803の供給は、好ましくは各供給がN-803を含むことで連続的なシグナル伝達を維持することになる場合、所定のスケジュールを用いて、典型的には3日ごとに実施され得る。下記例における比体積がNK細胞を細胞成長に一致する細胞密度まで拡大するのに適する一方で、該体積が特定の成長パターンに順応するように調節されてもよいことは理解されるべきである。それを達成するため、供給が連続的であってもよいこと、又は所定の体積が容器内で観察される成長動力学に応答して変更されてもよいことも理解されるべきである。
【0040】
ほとんどの場合、培養終了時のNK細胞の収率は、典型的には、すべての生細胞の少なくとも80%、又は少なくとも82%、又は少なくとも85%、又は少なくとも88%、又は少なくとも90%、又は少なくとも92%、又は少なくとも94%となり、その残りはNKT細胞、DN T細胞、及びT細胞である。例えば、残存するNKT細胞は、典型的には、すべての生細胞の10%以下、又は8%以下、又は7%以下、又は6%以下となり、残りのT細胞は、典型的には、すべての生細胞の5%以下、又は4%以下、又は3%以下、又は2%以下となり、且つ残りのDN T細胞は、典型的には、すべての生細胞の3%以下、又は2%以下、又は1.5%以下、又は1%以下となる。
【0041】
したがって、異なる視点から眺めると、本明細書で検討されるシステム及び方法が、NK細胞を著しく高く拡大する能力があり、且つ典型的な拡大が、単核球の混合物中に最初に存在するNK細胞の数に対して、少なくとも80倍、又は少なくとも100倍、又は少なくとも120倍、又は少なくとも130倍、又は少なくとも140倍であることは理解されるべきである。かかる拡大は、活性化及び培養の非常に単純な様式(ワンポットプロセス)の観点から特に注目すべきである。確かに、一旦単核球の混合物が細胞培養容器に入れられると、全体プロセスは、同じ容器内で連続し得、専ら培地の添加により持続的であり得る。したがって、複合体の処理及び高価な試薬は全体的に回避され、汚染におけるリスクは有意に低下する。
【0042】
既に上で認められた通り、NK細胞は、約0.1~1.0×109個の細胞、又は約0.3~3.0×109個の細胞、又は約0.5~5.0×109個の細胞、又は約0.7~7.0×109個の細胞、又は約1~10×109個の細胞、又はさらにそれ以上の全細胞数まで拡大され得る。拡大されたNK細胞の正確な数は、典型的には、特に、NK細胞における特定の目的、培養条件、及び細胞の開始数に依存することになる。細胞が所望される量に達すると、サイトカイン刺激が拡大培地中で、典型的には刺激性サイトカイン組成物を含有する新しい培地を添加することにより実施されてもよい。
【0043】
ほとんどの場合、刺激性サイトカイン組成物は、IL-2、IL-12、IL-15、IL-21などの1以上の活性化サイトカインと、より少ない程度であるが、IL-4及びIL-7も含むことになる。当然ながら、また以下により詳細に検討される通り、好適なサイトカインはまた、上記サイトカインの誘導体であってもよく、特に好ましい誘導体は、融合複合体を含む。さらに、サイトカインの1以上がまた、適切な組換え核酸のトランスフェクション後、拡大されたNK細胞において発現されてもよいこと(例えば、プラスミド又はウイルス発現ベクターからの一過性発現)は理解されるべきである。
【0044】
例えばいくつかの実施形態では、刺激性サイトカイン組成物は、IL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体を含むことになり、特に好ましい融合タンパク質複合体は、国際公開第2018/165208号パンフレット(参照により本明細書中に援用される)に記載されている。かかる場合、融合タンパク質複合体は、3つのサイトカイン機能(IL-12、IL-15、及びIL-18)をヒトIgGのFc部分へのそれらの共役を介した安定化形態で提供することは理解されるべきである。さらに、いかなる理論又は仮説によっても拘束されることを望んでいないが、融合タンパク質複合体のFc部分は、さらなる刺激性シグナルを、おそらくは拡大されたNK細胞上でのCD16との相互作用を通じて提供することがある。しかし、N-808に基づく他の融合タンパク質複合体についても本明細書で明示的に検討される。例えば、好適な融合タンパク質複合体は、標的化scFv部分、又はIL-12及びIL-18以外の(又はそれらに加えての)サイトカイン部分を含んでもよい。当然ながら、IL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体が多くの場合に好ましい一方で、代替的なTxM融合タンパク質複合体も好適とみなされ、特に検討された融合複合体が、国際公開第2018/165208号パンフレットに記載のようなIL15/IL-15Rα部分、並びにIL-7、IL-18、及びIL-21からなる群から選択される少なくとも1つの追加的なサイトカインを含むことになることは注目されるべきである。それ故、他の好適な選択肢の中で、検討されたTxM融合複合体は、IL-18/IL-7 TxM及び/又はIL-18/IL-21 TxMを含む。
【0045】
したがって、それ以外の例では、刺激性サイトカイン組成物はまた、IL-15の誘導体を含んでもよく、特に好ましい誘導体は、N-803に基づくものである。かかる誘導体は、有利には、IL-15Rα鎖の存在に起因し、本質的にIL-15と比べて増強されたシグナル伝達効果を有することになり、代表的な好適な誘導体は、国際公開第2016/004060号パンフレット及び国際公開第2018/075989号パンフレットに記載されている。最も典型的には、N-803又は類似の融合タンパク質が使用される場合、追加的なサイトカイン機能が個別のサイトカイン、特にIL-7、IL-12、IL-21、及びIL-18によって与えられることになる。したがって、本発明の主題のさらに別の態様では、刺激性サイトカイン組成物はまた、個別のサイトカインとして、IL-7、IL12、IL-15、IL-21、及びIL-18を含んでもよい。したがって、他の選択肢の中で、かかる個別のサイトカインは、単独で又は他の個別のサイトカイン若しくはTxM構築物と組み合わせて添加されてもよく、それらの各々は、組換えであってもよい(又はさらに該細胞において組換え的に発現されてもよい)。
【0046】
したがって、刺激性サイトカインの1以上がまた、拡大されたNK細胞にトランスフェクトされた組換え核酸から(一過性に)発現され得ることは理解されるべきである。例えば、好適なトランスフェクション方法は、組換え核酸がウイルス発現ベクターである場合のウイルストランスフェクションを含む。他方で、組換え核酸はまた、当該技術分野で周知の方法を用い、エレクトロポレーション又はリポフェクションを用いて、該細胞にトランスフェクトされてもよい。さらに、エレクトロポレーション又はリポフェクションが利用される場合、典型的には核酸がRNAであることが好ましい(しかし、DNAもまた、本明細書での使用に適すると思われる)。
【0047】
特定タイプの刺激性サイトカイン組成物と無関係に、1以上のサイトカインが培地中にNK細胞のメモリー様表現型を作製するのに有効な濃度で存在することが一般に検討される。したがって、好適な総サイトカイン濃度は、0.1nM~1.0nMの間、又は0.5nM~5.0nMの間、又は1.0nM~10nMの間、又は10nM~50nMの間、また場合によってはさらに高い値となる。複数のサイトカインが使用される場合、サイトカインが実質的に等モル濃度で存在することが一般に好ましい(+/-50%偏差)。他方で、刺激性サイトカイン組成物がIL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体を含む場合、該複合体は、0.5nM~5.0nMの間、又は1.0nM~10nMの間、又は10nM~50nMの間、又はさらに高い値で存在してもよい。
【0048】
刺激性サイトカイン組成物のタイミングに関しては、NK細胞が、刺激性サイトカイン組成物への曝露前に所望される(典型的には最終)量まで最初に拡大されることが一般に好ましい。しかし、代替的態様では、刺激性サイトカイン組成物は、最終の所望される細胞量の約70%から、又は最終の所望される細胞量の約80%から、又は最終の所望される細胞量の約90%から、拡大しているNK細胞集団に添加され得る。本発明の主題のほとんどの態様では、刺激性組成物への曝露は、約2時間~48時間の間、又は4時間~8時間の間、又は8時間~12時間の間、又は12時間~24時間の間、また場合によってはさらに長い間、続くことになる。
【0049】
刺激性サイトカイン組成物への曝露は、培地と、典型的には新しい培地又は輸血に適した培地との交換により終結され得る。他方で、そのように作製されたCIML NK細胞が、継続可能な次の使用に先立つ静止期間、0~4時間の間、4~12時間の間、12~24時間の間、又は1~4日の間、及びさらに長い期間を経ることが可能であることも検討される。さらに容易に理解されるであろうが、CIML NKはまた、細胞傷害性をさらに増強するため、再刺激を受けてもよく、再刺激は、典型的には、IL2又はIL-15などの少なくとも1つの刺激性サイトカインを使用して実施されることになる。最も好ましくは、以下により詳細に示される通り、再刺激は、N-803が使用された場合、(本質的にIL-15と比べて)意外にも高い細胞傷害性をもたらした。さらに、再刺激が典型的には当該技術分野で周知の標準プロトコルに従うことになることは注目されるべきである
【0050】
CIML NK細胞の最終処理と無関係に、CIML NK細胞がそれを必要とする個体への輸血に使用されることになり、最も典型的には個体ががんと診断されることになると考えられる。さらに容易に理解されるであろうが、CIML NK細胞は、個体が、癌ワクチン(例えば、組換え(アデノ)ウイルスワクチン、組換え酵母ワクチン、組換え細菌ワクチン)、化学療法剤、チェックポイント阻害剤、N-803又はTxMに基づく治療薬、及び/又は標的化インターロイキン(例えば、NHS-IL12)を受けるような治療計画を形成してもよい。
【0051】
本発明の主題に限定するものでないが、CIML NK細胞が、継続的監視、CO2及びO2レベルの継続的管理、及び細胞密度(例えばコンフルエンス)を検出するための継続的監視を可能にする培養環境下で拡大及び/又は活性化されることがさらに検討される。かかる環境における他のオプションの中で特に好ましい環境は、例えば国際公開第2015/165700号パンフレットに記載の通り、自動化された細胞培養及び収集装置である。かかる「GMB-in-a-box」システムは、有利には、供給スケジュール、ガス調節に及ぶ制御を可能にし、細胞密度、成長(動力学)及び細胞ヘルスのリアルタイム検出を可能にするとともに、操作要求事項の有意な減少により、汚染の可能性を劇的に低減する。
【0052】
さらに検討された態様では、本明細書で提示されるシステム及び方法により、有利には、特にNK細胞が末梢血から作製されるとき、CD56dim及びCD56brightNK細胞の産生も可能になることは注目されるべきである。次に、CD56brightNK細胞は、さらなる培養条件に応じて、CD56dim細胞に分化することがある。次に、かかる異なるNK細胞集団は、異なる治療選択肢において、それらの異なる成熟及び細胞傷害性特性が理由で利用され得る。加えて、組成物、システム及び方法がまた、NKT細胞を適切な刺激及び培養に応じて作製するのに適することは理解されるべきである。
【実施例】
【0053】
上記を考慮し、以下により詳細に提示される通り、1つの例示的方法は、単一のフィコール遠心分離ステップによりCBMC又はPBMCを単離することと、その後の該細胞と、約0.4nMのN-803及び約0.1mcg/mlの抗CD16抗体(例えば、クローンB73.1、BD Biosciencesから市販)、及び任意選択的には10%ヒトAB血清を有するNK MACS培地中の約0.5ng/mlの抗CD3抗体とのインキュベーションを伴った。典型的には、100万個の細胞/mlで100~150mL(典型的には135mL)のCBMCを、上記試薬を有する出発物質として使用した。培地は、最終濃度0.4nMに対応するN-803の濃度での既存の体積に対し、1:2及び1:10のレジメンで週2回(3~5日間隔)のN-803による希釈用に使用した。拡大培養は、典型的には、拡大されたNK細胞が全細胞の約90%~99%の間(例えば98%)を形成するときに終結される。終結時、サイトカイン誘導は、以下により詳細に説明するように実施することができる。
【0054】
MNCを臍帯血又は末梢血から新規に単離した。それを完全NKMACS培地(NKMACS+添加物+10%hu-AB-血清)で2回洗浄した。MNCを、GMPボックス(体積500mL)内、1×106個の細胞/mLの密度を有する150mLの培地に懸濁した。150mLの細胞懸濁液に、抗CD16抗体(1mcg/mL)及びN-803(0.4nM)を添加した。GMPボックスでイメージングを開始し、予備プログラム化ステップに従い、細胞を増殖させた。GMPボックス内の細胞に、10×サイトカイン培地又は2×サイトカイン培地を交互様式で添加した。NKの濃縮(CD3、CD56、及びCD16発現における表現型)及び細胞ヘルス(細胞数、生存度、及び細胞密度)を定期的に監視し、プロットした。
【0055】
拡大されたNK細胞からCIML NK細胞を作製するためのサイトカイン誘導は、全細胞の98%がNK細胞であるポイントに達する際に開始した。そのため、500mL及び2.3×106個の細胞/mLの密度を有するボックスを2つの別々のボックスに等しく分割した。したがって、500mLの細胞懸濁液が2つの各ボックスにおいて250mLになり、細胞を新しい培地で1:1に希釈した。その後、IL18/12 TxMを最終濃度10nMに添加し(対照及び比較の場合、N-803は0.07nMの最終濃度で使用し)、該細胞をIL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体とともに16時間インキュベートし、そのようにしてCIML NK細胞を得た。さらに試験するため、該細胞を洗浄し、次に発現分析及び細胞傷害性アッセイを実施した。
【0056】
材料:臍帯血及び末梢血からのMNC、抗CD16抗体、BD bioscience San Diego CA;NK添加物を有するNK MACS培地、表現型を決定するための染色抗体(aCD3、aCD16、aCD56、aNKp30、aNKp44、aNKp46、aNKG2A、aNKG2D、aTIGIT、aCD34、aTRAIL、aCD57、aCXCR3、及びaCCR5)、Miltenyi Biotec San Diego、CA;ヒトAB血清、Access Biologicals,San Diego CA;N-803、ボックスキット内のGMP、Nantbio Inc.Culver City CA.。IL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体はImmunityBioから入手した。
【0057】
そのようにして作製したCIML NK細胞を細胞傷害性について試験し、表面マーカー発現について選択した。より詳細には、1つの実験セットにおいて、臍帯血由来CIML NK細胞を、典型的にはNK細胞傷害性に対して抵抗性を示すメルケル細胞がん細胞(ここではMS-1細胞)に対して試験した。特に、
図3中で明らかであるように、CIML NK細胞は、拡大及びIL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体への制御曝露後、有意な細胞傷害性を有した一方で、臍帯血細胞をN-803単独に曝露したときであっても、いくらかの細胞傷害性が認められた。
図4は、IL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体及びN-803に曝露された臍帯血由来細胞内での表面マーカー発現についての例示的結果を示す。明らかであるように、CIML NK細胞は、CD16の低下した発現を有したが、CD25、DNAM1の実質的に増加した発現、及びIFN-γの強力な分泌を有した。
【0058】
図5で明らかであるように、CIML NK細胞を末梢血から誘導したとき、類似する結果が得られた。ここで、CIML NK細胞は、MS-1細胞株に対する実質的な細胞傷害性を有し、末梢血からのN-803対照細胞もいくらかの細胞傷害性を示した。同様に、
図6から解釈できるように、末梢血由来CIML NK細胞における表面マーカーがCD16及びTIGITの低下した発現を示した一方で、CD25、DNAM1、及びIFN-γ分泌における有意な増加を有した。特に、標準の培養プロトコルを用いてNK細胞を培養したとき、又は新しいNK細胞を使用した場合、MS-1細胞に対する有意な細胞傷害性は、メモリー様表現型を誘発するため、該細胞をIL-12、IL-15、及びIL-18で誘導した場合であっても認められなかった。
【0059】
臍帯血由来CIML NK細胞を活性化クラスター表現型についても試験し、
図7は、N-803との制御曝露をIL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体への曝露と比較した例示的結果を示す。画像から明らかであるように、N-803への曝露後の培養形態に対するIL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体への一晩曝露後の培養形態において著しい差異が生じる。これらのCIML NK細胞の選択された表面マーカーに注目すると、
図8に示す通り、IL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体への曝露により、CD25(公知の活性化関連受容体)の有意な増加がもたらされることがやはり明白であった。明らかに、IL-12、IL-15、IL-18機能によるサイトカイン刺激により、典型的には通常の新しいNK細胞で認められない(少なくともその程度)、CD25の提示が実質的に増強された。
【0060】
活性化受容体におけるかかる増加及び阻害性受容体における減少は、
図9に示す通り、K562細胞に対する殺傷アッセイにおいて培養形態を観察するときも容易に明白であった。ここで、臍帯血由来CIML細胞は、再刺激時、N-803とのインキュベーションと比べて実質的に増強された活性化クラスター形成を示した。
【0061】
さらなる実験では、発明者はまた、24時間後、48時間後、及び72時間後の各々の結果を示す
図10A、
図10B、及び
図10Cに例示する通り、K562細胞に対する細胞傷害性の時間経過を検討した。最初の24時間時点から(
図10A)、試験したいずれのTxM濃度もN-803対照よりも低いEC
50を有することから、K562細胞に対する増強された殺傷能力の開始を見ることができる。48時間時点で(
図10B)、TxM処置サンプルによる増強された殺傷が見られるが、N-803対照の場合、それは低めであった。この時点で、K562の殺傷における増強は約3倍である。72時間時点で(
図10C)、すべての条件でK562の殺傷に対する活性を失い始めているが、TxM処置細胞は、対照と比べて約3倍の、それらの増強された殺傷を保持する。
【0062】
図11は、拡大された臍帯血由来NK細胞、N-803刺激を伴う拡大された臍帯血由来NK細胞、及びIL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体で刺激される拡大された臍帯血由来NK細胞における24時間にわたる直接的比較を提供する。明らかであるように、全細胞における細胞傷害性は容易に明白であり、拡大されたNK細胞は、%最大殺滅にわたりわずかな利点を有するが、CIML細胞と比べて実質的により高いE;T比を必要とする。
図12は、IL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体で刺激される拡大された末梢血由来NK細胞に対するN-803刺激を伴う拡大された末梢血由来NK細胞の、選択されたマーカーの発現を示す。
図12から解釈できるように、活性化を意味している、TIGIT(及びCD16)の有意な下方制御及びCD25の有意な上方制御が認められる。CD16の下方制御がADCCにおける減少を伴うことがあることは注目されるべきである。しかし、ADCCにおける潜在的減少よりも、通常であればNK細胞細胞傷害性に対して抵抗性を示す細胞株に対してのより高度な活性化及び細胞傷害性が重要である。
図13に示す通り、末梢血由来CIML NK細胞で、IL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体による24時間刺激後、類似する細胞傷害性結果が見出される。明確には、K562アッセイにおいて、10nMのIL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体への曝露により、より十分な細胞死滅がもたらされた。
【0063】
末梢血由来CIML NK細胞におけるIFN-γの分泌を試験したが、
図14は、異なる条件を用いての例示的結果を示す。同じ細胞を細胞傷害性アッセイにおいても使用したが、
図15は例示的結果を示す。
図16から解釈できるように、類似する結果が臍帯血由来CIML NK細胞においてもたらされる。特に、N-803によるサイトカイン誘導は、本質的にIL-15による誘導より優れる。したがって、多重サイトカイン誘導が上に示すように好ましい一方で、N-803による誘導も明示的に検討対象であることは注目されるべきである。
【0064】
本明細書で用いられるとき、医薬組成物又は薬剤を「投与する」という用語は、医薬組成物又は薬剤の直接及び間接投与の双方を指し、ここで医薬組成物又は薬剤の直接投与は、典型的には医療専門家(例えば、医師、看護師など)によって実施され、且つ間接投与は、医薬組成物又は薬剤を(例えば、注射、注入、経口送達、局所送達などを介する)直接投与における医療専門家に対して準備するか又は利用可能にするステップを含む。最も好ましくは、該細胞又はエキソソームは、皮下又は真皮下注射を介して投与される。しかし、他の検討された態様では、投与はまた、静脈内注射であってもよい。代替的に又は追加的に、抗原提示細胞が、患者の細胞から単離又は成長され、患者にインビトロで感染され、次いで輸血されてもよい。したがって、検討されたシステム及び方法は、高度に個別化されたがん治療における完全な創薬システム(例えば、創薬、治療プロトコル、検証など)と考えることができることは理解されるべきである。
【0065】
本明細書中の値の範囲の列挙は、あくまで個別に該範囲内に該当する別々の各値を指すような簡素化方法として役立つことが意図される。本明細書中で別段の指示がない限り、各個別の値は、あたかも本明細書中に個別に列挙されたように、本明細書中に組み込まれる。本明細書に記載のすべての方法は、本明細書中で別段の指示がない限り、又はそうでなければ文脈上明らかに矛盾がない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書中の特定の実施形態に関して提供されるありとあらゆる例、又は代表的な用語(例えば「など」)の使用は、あくまで本開示の全範囲をより十分に明示することが意図され、別途主張された本発明の範囲に対して限定することがない。本明細書中の用語は、請求項に係る発明の実施にとって必須である、任意の主張されない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0066】
既に説明された修飾以外の多数のさらなる修飾が、本明細書で開示される概念の全範囲から逸脱することなく可能であることは、当業者にとって明白であることが理解されよう。したがって、開示された主題は、貼付の特許請求の範囲の範囲内を除き、限定されるべきでない。さらに、本明細書及び特許請求の範囲の双方を解釈する場合、全ての用語は、文脈に一致する最も広い可能な様式で解釈されるべきである。特に、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」という用語は、非排他的様式での要素、成分、又はステップを指し、参照される要素、成分、又はステップが、明示的に参照されない他の要素、成分、又はステップとともに存在してもよい、又は利用されてもよい、又は組み合わされてもよいことを示すように解釈されるべきである。本明細書の特許請求の範囲が、A、B、C…及びNからなる群から選択されるものの少なくとも1つを指す場合、本文は、A+N又はB+Nなどでない、グループから1つの要素のみを必要とするものとして解釈されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2021-10-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
増強された細胞傷害性を有するサイトカイン誘導メモリー様(CIML)NK細胞を産生する方法であって、
生体液から単核球の混合物を単離し、且つNK細胞を拡大するため、前記単核球の前記混合物を抗CD16抗体及びN-803と接触させるステップと;
前記拡大されたNK細胞を、IL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体、IL-12、N-803、及びIL-18の混合物、又はIL-12、IL-15、及びIL-18の混合物を含む刺激性サイトカイン組成物と接触させ、それにより増強された細胞傷害性を有する前記CIML NK細胞を作製するステップと、
を含
み、ここで前記NK細胞が、前記拡大の終了時、すべての生細胞の少なくとも80%を構成する、方法。
【請求項2】
前記CIML NK細胞を再刺激後、前記CIML NK細胞をN-803と接触させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生体液が、全血又は臍帯血である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
NK細胞を濃縮するため、単核球の前記混合物がさらに処理され
ず、且つ前記単核球の前記混合物が、約100~500×10
6
個の細胞を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記混合物を接触させるステップにおける前記抗CD16抗体が、0.05~0.5mcg/mlの間の濃度で存在
し、及び/又は前記混合物を接触させるステップにおける前記N-803が、0.1~1.0nMの間の濃度で存在する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記混合物を接触させるステップが、前記単核球の前記混合物を抗CD3抗体と接触させるステップをさらに含
み、且つ前記抗CD3抗体が、0.1~1.0ng/mlの間の濃度で存在する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記刺激性サイトカイン組成物が、前記IL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体を含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記NK細胞が、約0.5~5.0×10
9個の細胞の全細胞数まで拡大される、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記拡大されたNK細胞を刺激性サイトカイン組成物と接触させる前記ステップが、前記NK細胞を拡大する前記ステップと同じ容器内で実施される、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
増強された細胞傷害性を有するサイトカイン誘導メモリー様(CIML)NK細胞を形成するため、NK細胞を活性化する方法であって、
全血又は臍帯血の単核球から拡大された、拡大されたNK細胞を準備するステップと;
前記拡大されたNK細胞を、IL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体、IL-12、N-803、及びIL-18の混合物、又はIL-12、IL-15、及びIL-18の混合物を含む刺激性サイトカイン組成物と接触させ、それにより増強された細胞傷害性を有する前記CIML NK細胞を作製するステップと、
を含
み、ここで前記拡大されたNK細胞が、すべての生細胞の少なくとも80%を構成する、方法。
【請求項11】
前記NK細胞が、全血から拡大される、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記NK細胞が、臍帯血から拡大される、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
前記NK細胞が、前記CIML NK細胞を含む輸血を受けている個体に対して自己である、請求項
10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記刺激性サイトカイン組成物が、前記IL-18/IL-12-TxM融合タンパク質複合体を含む、請求項
10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
増強された細胞傷害性を有する前記CIML NK細胞が、MS-1細胞に対する細胞傷害性を有する、請求項
10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
増強された細胞傷害性を有する前記CIML NK細胞が、N-803単独と接触される拡大されたNK細胞と比べて、CD16の低下した発現を有
し、増強された細胞傷害性を有する前記CIML NK細胞が、N-803単独と接触される拡大されたNK細胞と比べて、TIGITの低下した発現を有し、並びに/又は増強された細胞傷害性を有する前記CIML NK細胞が、N-803単独と接触される拡大されたNK細胞と比べて、CD25及び/若しくはDNAM1の増加した発現を有する、請求項
10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
5以下のエフェクター対標的細胞比で少なくとも50%殺傷する、MS-1細胞に対する細胞傷害性を示す、増強された細胞傷害性を有するサイトカイン誘導メモリー様(CIML)NK細胞。
【請求項18】
N-803単独と接触される拡大されたNK細胞と比べて、CD16の低下した発現を有
し、N-803単独と接触される拡大されたNK細胞と比べて、TIGITの低下した発現を有し、並びに/又はN-803単独と接触される拡大されたNK細胞と比べて、CD25及び/若しくはDNAM1の増加した発現を有する、請求項
17に記載のCIML NK細胞。
【請求項19】
CD16若しくはその変異体、IL-2若しくはその変異体、及び/又はIL-15若しくはその変異体を組換え核酸から発現する組換えNK細胞である、請求項
17に記載のCIML NK細胞。
【請求項20】
薬学的に許容できる担体を、請求項
17~19のいずれか一項に記載のサイトカイン誘導メモリー様(CIML)NK細胞と組み合わせて含む、医薬組成物。
【請求項21】
薬剤中での
使用のための、
薬学的に許容できる担体を、請求項17~19のいずれか一項に記載のサイトカイン誘導メモリー様(CIML)NK細胞と組み合わせて含む、医薬組成物。
【請求項22】
がんの治療における
使用のための、
請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記CIML NK細胞が、前記個体の自己細胞である、
請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記CIML NK細胞が、末梢血又は臍帯血由来NK細胞である、
請求項21に記載の医薬組成物。
【国際調査報告】