(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(54)【発明の名称】テトラメチルピラジンニトロンの結晶形、製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
C07D 241/12 20060101AFI20220908BHJP
A61K 31/4965 20060101ALI20220908BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220908BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220908BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
C07D241/12 CSP
A61K31/4965
A61P25/00
A61P9/00
A61P43/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558685
(86)(22)【出願日】2019-07-31
(85)【翻訳文提出日】2021-11-09
(86)【国際出願番号】 CN2019098724
(87)【国際公開番号】W WO2020199440
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】201910255805.3
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521378521
【氏名又は名称】グゥアンヂョウ マグパイ ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GUANGZHOU MAGPIE PHARMACEUTICALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room F610, Guangzhou International Business Incubator, No. 3 Lanyue Road, Science City, Huangpu District, Guangzhou, Guangdong, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】スン イェウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ユーチァン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC48
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086ZA01
4C086ZA36
4C086ZC52
(57)【要約】
本開示は、テトラメチルピラジンニトロンの結晶形、製造方法及びその応用に関し、XRPDスペクトルが10.60±0.2、11.03±0.2、15.31±0.2、15.55±0.2、17.14±0.2、17.93±0.2、23.81±0.2の2θ角度位置において特徴的な回折ピークを示す、テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aを提供する。前記結晶形Aは、結晶転位が発生するリスクが低く、安定性が高く、製剤の製造及び保管中の安定性に有利であり、製剤における結晶形の含有量の一貫性を効果的に確保し、安全で効果的であり、品質管理が可能であり、また、高い生物活性及び良好な創薬可能性を有し、生物学的利用能が高く、効果発現が速く、生物活性が高い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
XRPDスペクトルが10.60±0.2、11.03±0.2、15.31±0.2、15.55±0.2、17.14±0.2、17.93±0.2、23.81±0.2の2θ角度位置において特徴的な回折ピークを示し、好ましくは、XRPDスペクトルが10.60±0.2、11.03±0.2、13.51±0.2、15.31±0.2、15.55±0.2、17.14±0.2、17.93±0.2、21.22±0.2、23.81±0.2、25.23±0.2、27.08±0.2の2θ角度位置に特徴的な回折ピークを示すことを特徴とする、テトラメチルピラジンニトロンの結晶形A。
【請求項2】
図1と基本的に同じXRPDスペクトルを有することを特徴とする、請求項1に記載の結晶形A。
【請求項3】
融点が76℃~78℃であることを特徴とする、請求項1に記載の結晶形A。
【請求項4】
DSCスペクトルが
図3に示されるものと基本的に同じであり、TGAスペクトルが
図7に示されるものと基本的に同じであり、赤外線スペクトルが
図9に示されるものと基本的に同じであることを特徴とする、請求項1に記載の結晶形A。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の結晶形Aの製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする製造方法。
工程(1):テトラメチルピラジンニトロン粗体を有機溶媒と混合し、水浴にて60~80℃まで加熱し、撹拌して濾過し、濾液を冷却して結晶化させ、結晶性固形分を得、
工程(2):工程(1)で得られた結晶性固形分をn-ヘプタンと混合し、加熱して溶解させ、冷却して結晶化させ、テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aを得る。
【請求項6】
工程(1)における前記有機溶媒は酢酸エチル、n-ヘキサン、n-ヘプタン及びシクロヘキサンから選択される一種又は複数種であり、更に好ましくは、有機溶媒はn-ヘキサン又はn-ヘプタンである、又は、前記有機溶媒は、n-ヘキサンと酢酸エチルとの混合溶媒であり、工程(1)においてテトラメチルピラジンニトロン粗体と有機溶媒との重量体積比は1:5~20であり、好ましくは1:8~12であり、工程(1)において冷却して結晶化させる温度は2~12℃から選択され、より好ましくは3~10℃であり、最も好ましくは3~5℃であり、工程(2)においてテトラメチルピラジンニトロン粗体とn-ヘプタンとの重量体積比は好ましくは1:1~5であり、最も好ましくは1:1~3であり、工程(2)において結晶性固形分をn-ヘプタンと混合して加熱する温度は60~80℃であり、好ましくは65~75℃であり、冷却して結晶化させる温度は2~12℃から選択され、より好ましくは4~10℃である、ことを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
XRPDスペクトルが8.91±0.2、11.46±0.2、14.29±0.2、17.60±0.2、21.19±0.2、22.02±0.2、23.19±0.2、24.30±0.2、24.92±0.2、29.20±0.2、31.41±0.2の2θ角度位置に特徴的な回折ピークを示し、好ましくは、XRPDスペクトルが8.91±0.2、11.46±0.2、12.00±0.2、14.29±0.2、17.60±0.2、19.50±0.2、21.19±0.2、22.02±0.2、23.19±0.2、24.30±0.2、24.92±0.2、26.70±0.2、29.20±0.2、31.41±0.2、36.20±0.2の2θ角度位置に特徴的な回折ピークを示すことを特徴とする、テトラメチルピラジンニトロンの二水和物。
【請求項8】
融点が37~40℃であることを特徴とする、請求項7に記載の二水和物。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載の結晶形A又は請求項7~8のいずれか一項に記載の二水和物を含む、薬物組成物。
【請求項10】
神経系疾患、心血管・脳血管疾患及び変性老化疾患の治療用の薬物の製造における、請求項1~4のいずれか一項に記載の結晶形A又は請求項7~8のいずれか一項に記載の二水和物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬化学の分野に関し、具体的には、テトラメチルピラジンニトロンの結晶形、その製造方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラメチルピラジンニトロン(TBNと略称される)は、テトラメチルピラジン(TMP)のニトロン誘導体であり、テトラメチルピラジンの構造にニトロンファーマコフォアを付加して化学合成された新しい化合物である。その化学名は(シス)-2-メチル-N-[(3,5,6-トリメチルピラジン-2-)メチン]2-プロピルアミンオキシド、分子式はC12H19N3O、分子量は221.30であり、次の式に示される化学構造を有する。
【0003】
【0004】
テトラメチルピラジンニトロンは、虚血による神経細胞の酸化的損傷を抑制することにより、神経細胞を保護するという役割を果たし、脳塞栓に伴う神経症状及び機能障害を軽減することができる。臨床的には、神経系疾患、心血管・脳血管疾患、及び変性老化疾患などの治療に用いることができる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、テトラメチルピラジンニトロンの結晶形、その製造方法及びその使用を提供することである。
【0006】
本発明の1つの目的は、XRPDスペクトルが10.60±0.2、11.03±0.2、15.31±0.2、15.55±0.2、17.14±0.2、17.93±0.2、23.81±0.2の2θ角度位置において特徴的な回折ピークを示す、テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aを提供することである。
【0007】
一つの具体的な実施形態において、テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aは、そのXRPDスペクトルが10.60±0.2、11.03±0.2、13.51±0.2、15.31±0.2、15.55±0.2、17.14±0.2、17.93±0.2、21.22±0.2、23.81±0.2、25.23±0.2、27.08±0.2の2θ角度位置において特徴的な回折ピークを示す。
【0008】
一つの具体的な実施形態において、テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aは、明細書の
図1と基本的に同じXRPDスペクトルを有する。
【0009】
更に、本発明に記載されたテトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aには、針状、塊状、棒状という3つの結晶状態があり、その顕微鏡写真を
図5及び
図6に示す。
【0010】
更に、本発明に記載されたテトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aは、その融点がそれぞれ76℃~78℃である。
【0011】
更に、本発明に記載されたテトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aは、基本的に
図3と同じのDSCスペクトルを有する。
【0012】
更に、本発明に記載されたテトラメチルピラジンニトロンの結晶形AのTGAスペクトルを
図7に示す。
【0013】
更に、本発明は、
図9に示すような、テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aの赤外線スペクトルを提供する。
【0014】
本発明は系統的な結晶形スクリーニング実験により得られるものである。当該スクリーニング方法は、蒸発結晶化法(単一溶媒法と混合溶媒法)、加熱溶解・冷却沈殿法及び懸濁・スラリー化法などを含む。スクリーニング用溶媒には、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、トルエン、アセトン、ジオキサン、イソプロパノール、石油エーテル、n-ヘキサン、酢酸イソプロピル、イソオクタン及び酢酸イソブチルなどの溶媒を含む。スクリーニング結果はすべて結晶形Aである。
【0015】
更に、本発明は、以下の工程を含むテトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aの製造方法も提供する。
工程(1):テトラメチルピラジンニトロン粗体を有機溶媒と混合し、水浴にて60~80℃まで加熱し、撹拌して濾過し、濾液を冷却して結晶化させ、結晶性固形分を得、
工程(2):工程(1)で得られた結晶性固形分をn-ヘプタンと混合し、加熱して溶解させ、冷却して結晶化させ、テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aを得る。
【0016】
更に、本発明に記載された製造方法では、工程(1)における前記有機溶媒は酢酸エチル、n-ヘキサン、n-ヘプタン及びシクロヘキサンから選択される一種又は複数種であり、更に好ましくは、有機溶媒はn-ヘキサン又はn-ヘプタンである、又は、前記有機溶媒として、n-ヘキサンと酢酸エチルとの混合溶媒を選択する。出願人は、好ましい有機溶媒を選択することにより、不純物の含有量を顕著に低減できることを見出した。
【0017】
更に、本発明に記載された製造方法では、工程(1)においてテトラメチルピラジンニトロン粗体と有機溶媒との重量体積比は1:5~20であり、好ましくは1:8~12である。
【0018】
更に、本発明に記載された製造方法では、工程(1)において冷却して結晶化させる温度は2~12℃から選択され、より好ましくは3~10℃であり、最も好ましくは3~5℃である。出願人は、冷却して結晶化させる温度が最も好ましい範囲にあると、不純物の含有量を顕著に低減できることを見出した。
【0019】
更に、本発明に記載された製造方法では、工程(2)においてテトラメチルピラジンニトロン粗体とn-ヘプタンとの重量体積比は好ましくは1:1~5であり、最も好ましくは1:1~3である。
【0020】
更に、本発明に記載された製造方法では、工程(2)において結晶性固形分をn-ヘプタンと混合して加熱する温度は60~80℃であり、好ましくは65~75℃である。
【0021】
更に、本発明に記載された製造方法では、工程(2)において冷却して結晶化させる温度は2~12℃から選択され、より好ましくは4~10℃である。
【0022】
本発明の別の目的は、XRPDスペクトルが8.91±0.2、11.46±0.2、14.29±0.2、17.60±0.2、21.19±0.2、22.02±0.2、23.19±0.2、24.30±0.2、24.92±0.2、29.20±0.2、31.41±0.2の2θ角度位置において特徴的な回折ピークを示す、テトラメチルピラジンニトロンの二水和物を提供することである。
【0023】
一つの具体的な実施形態において、テトラメチルピラジンニトロンの二水和物は、そのXRPDスペクトルが8.91±0.2、11.46±0.2、12.00±0.2、14.29±0.2、17.60±0.2、19.50±0.2、21.19±0.2、22.02±0.2、23.19±0.2、24.30±0.2、24.92±0.2、26.70±0.2、29.20±0.2、31.41±0.2、36.20±0.2の2θ角度位置において特徴的な回折ピークを示す。
【0024】
一つの具体的な実施例において、テトラメチルピラジンニトロンの二水和物は、明細書の
図2と基本的に同じXRPDスペクトルを有する。
【0025】
更に、本発明に記載されたテトラメチルピラジンニトロンの二水和物は、その融点が37~40℃である。
【0026】
更に、本発明に記載されたテトラメチルピラジンニトロンの二水和物のDSCスペクトルは
図4と基本的に同じである。
【0027】
更に、本発明に記載されたテトラメチルピラジンニトロンの二水和物は、そのTGAスペクトルが
図8に示される。
【0028】
本発明に記載されたテトラメチルピラジンニトロンの二水和物は、その温度が融点(約37~40℃)に達すると、重量が減少し始め、重量減少率は13.67%である。
【0029】
本発明に記載されたテトラメチルピラジンニトロンの二水和物は、テトラメチルピラジンニトロンを飽和エタノール水溶液の二成分系において冷却沈殿させたものであり、エタノール水溶液におけるエタノールの体積百分率は好ましくは5~50%であり、より好ましくは5~20%である。
【0030】
別の態様では、本発明は、本発明の結晶形A又は二水和物を一種又は複数種含む薬物組成物を提供する。前記薬物組成物は、任意に、薬学的に許容される担体、賦形剤、充填剤、結合剤、崩壊剤、流動促進剤及び/又は媒体などをさらに含んでもよい。
【0031】
別の態様では、本発明に記載された結晶形A及び/又は二水和物、あるいは本発明に記載された薬物組成物は、経口又は注射などの投与経路により投与することができる。
【0032】
別の態様では、本発明は、本発明の結晶形A及び/又は二水和物を含む剤形をさらに提供する。剤形は、錠剤、カプセル剤、粉末注射剤、分散剤などを含むが、それらに限定されず、好ましくは錠剤及び粉末注射剤である。
【0033】
別の態様では、本発明は、神経系疾患、心血管・脳血管疾患及び変性老化疾患の治療用薬物の製造における、本発明に記載された結晶形A及び/又は二水和物、あるいは薬物組成物の使用をさらに提供する。
【0034】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
(1)本発明に記載されたテトラメチルピラジンニトロンの結晶形A及びテトラメチルピラジンニトロンの二水和物は、製造方法が簡単であり、大規模な工業生産が容易である。
【0035】
(2)本発明に記載されたテトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aは、熱間処理、機械的処理及び加速試験(50℃、75%RH)において結晶形Aとして安定しており、結晶転位が発生するリスクが低く、安定性が高く、製剤の製造及び保管中の安定性に有利であり、製剤における結晶形の含有量の一貫性を効果的に確保し、安全で効果的であり、品質管理が可能である。
【0036】
(3)本発明に記載されたテトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aは、ほとんどの溶媒(例えばアセトニトリル、メタノール、エタノール、アセトン及び酢酸エチルなど)に溶解しやすく、水に非常に溶解しやすく、高い生物活性及び良好な創薬可能性を有し、生物学的利用能が高く、効果発現が速く、生物活性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】テトラメチルピラジンニトロンの結晶形AのXRDスペクトルである。
【
図2】テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aと二水和物の比較XRDスペクトルである。
【
図3】テトラメチルピラジンニトロンの結晶形AのDSCスペクトルである。
【
図4】テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aと二水和物のDSCスペクトルである。
【
図5】テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aの生物顕微鏡画像である。
【
図6】テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aの結晶状態観察図である。
【
図7】テトラメチルピラジンニトロンの結晶形AのTGAスペクトルである。
【
図8】テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aと二水和物の比較TGAスペクトルである。
【
図9】テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aの赤外線スペクトルである。
【
図10】テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aを一週間懸濁してスラリー化した後のXRDスペクトルである。
【
図11】テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aを10分間研磨した後のXRDスペクトルである。
【
図12】テトラメチルピラジンニトロンの二水和物を10分間研磨した後のXRDスペクトルである。
【
図13】結晶形Aの打錠処理試験後のXRPD分析スペクトルである。
【
図14】水和物の打錠処理試験後のXRPD分析スペクトルである。
【
図15】結晶形Aの冷間処理後のDSCスペクトルである。
【
図16】結晶形Aの冷間処理後のXRPDスペクトルである。
【
図17】結晶形Aの熱間処理後のDSCスペクトルである。
【
図18】結晶形Aの熱間処理後のXRPDスペクトルである。
【
図19】テトラメチルピラジンニトロン水和物の熱間処理後のDSCスペクトルである。
【
図20】テトラメチルピラジンニトロン水和物の熱間処理後のXRPDスペクトルである。
【
図21】結晶形Aの7日間の加速試験後のXRPDスペクトルである。
【
図22】SDラットにテトラメチルピラジンニトロンを静脈内投与した(30mg/kg、n=6、雌雄半々)後の組織分布結果である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に実施例を参照して本発明を更に説明する。本明細書に記載される具体的な実施例は本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明を限定するためのものではないと理解すべきである。本発明の構想の範囲内で本発明の製造方法について行う簡単な改良は、すべて本発明の保護範囲に含まれる。以下の実施例において具体的な条件が示されていない実験方法は、通常本分野の公知の手段に準じる。以下の実施例で用いられる試験材料は、特に説明しない限り、いずれも通常の生化学試薬店から入手されたものである。
【0039】
以下の実施例及び図面では、特に説明しない限り、TBNという略称は本発明に記載されたテトラメチルピラジンニトロンを意味する。
【0040】
以下の実施例では、テトラメチルピラジンニトロンの結晶形A及びテトラメチルピラジンニトロンの二水和物のXRDスペクトルにおける特徴的な回折ピークは、以下の実験条件で測定された。
【0041】
粉末X線回折分析装置(Bruker D2PHASER)を用いた。電圧及び管電流はそれぞれ30KV及び10mAであり、サンプルの2θスキャン角度は3°~40°であり、スキャンステップは0.02°である。
【実施例1】
【0042】
250mlの丸底フラスコに、テトラメチルピラジンニトロン粗体(10g)、及びシクロヘキサン(100ml)と酢酸エチル(2ml)を添加し、回転数を140±5rpmに調節し、水浴にて70℃まで加熱し、持続的に撹拌し、続いて熱いうちに濾過し、橙黄色の溶液を得た。濾液を静置し、周囲温度(10℃)まで冷却し、続いて4℃の冷蔵室に入れて静置し、濾過し、濾過ケーキをn-ヘキサンで洗浄し、溶媒を減圧除去し、淡黄色の結晶性固形分を得た。
【0043】
250mlの丸底フラスコに、上記テトラメチルピラジンニトロン粗体の固形分及びその2倍体積のn-ヘプタンを添加し、回転数を140±5rpmに調節し、水浴にて70℃まで加熱し、持続的に撹拌し、橙黄色の清澄溶液を得た。水浴を外し、引き続き撹拌し、10℃まで冷却して結晶化させ、吸引濾過し、固体をn-ヘプタンで洗浄し、乾燥重量減少率が1.0%未満になるように38℃で24時間真空乾燥し、テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aを得た。
【実施例2】
【0044】
250mlの丸底フラスコに、テトラメチルピラジンニトロン粗体(10g)、及びn-ヘキサン(100ml)と酢酸エチル(2ml)を添加し、回転数を140±5rpmに調節し、水浴にて70℃まで加熱し、持続的に撹拌し、続いて熱いうちに濾過し、橙黄色の溶液を得た。濾液を静置し、周囲温度(10℃)まで冷却し、続いて4℃の冷蔵室に入れて静置し、濾過し、濾過ケーキをn-ヘキサンで洗浄し、溶媒を減圧除去し、淡黄色の結晶性固形分を得た。
【0045】
250mlの丸底フラスコに、上記テトラメチルピラジンニトロン粗体の固形分及びその2倍体積のn-ヘプタンを添加し、回転数を140±5rpmに調節し、水浴にて70℃まで加熱し、持続的に撹拌し、橙黄色の清澄溶液を得た。水浴を外し、引き続き撹拌し、10℃まで冷却して結晶化させ、吸引濾過し、固体をn-ヘプタンで洗浄し、乾燥重量減少率が1.0%未満になるように38℃で24時間真空乾燥し、テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aを得た。
【実施例3】
【0046】
250mlの丸底フラスコに、テトラメチルピラジンニトロン粗体(10g)及びシクロヘキサン(100ml)を添加し、回転数を140±5rpmに調節し、水浴にて70℃まで加熱し、持続的に撹拌し、続いて熱いうちに濾過し、橙黄色の溶液を得た。濾液を静置し、周囲温度(10℃)まで冷却し、続いて4℃の冷蔵室に入れて静置し、濾過し、濾過ケーキをn-ヘキサンで洗浄し、溶媒を減圧除去し、淡黄色の結晶性固形分を得た。
【0047】
250mlの丸底フラスコに、上記テトラメチルピラジンニトロン粗体の固形分及びその2倍体積のn-ヘプタンを添加し、回転数を140±5rpmに調節し、水浴にて70℃まで加熱し、持続的に撹拌し、橙黄色の清澄溶液を得た。水浴を外し、引き続き撹拌し、10℃まで冷却して結晶化させ、吸引濾過し、固体をn-ヘプタンで洗浄し、乾燥重量減少率が1.0%未満になるように38℃で24時間真空乾燥し、テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aを得た。
【実施例4】
【0048】
250mlの丸底フラスコに、テトラメチルピラジンニトロン粗体(10g)及びn-ヘキサン(100ml)を添加し、回転数を140±5rpmに調節し、水浴にて70℃まで加熱し、持続的に撹拌し、続いて熱いうちに濾過し、橙黄色の溶液を得た。濾液を静置し、周囲温度(10℃)まで冷却し、続いて4℃の冷蔵室に入れて静置し、濾過し、濾過ケーキをn-ヘキサンで洗浄し、溶媒を減圧除去し、淡黄色の結晶性固形分を得た。
【0049】
250mlの丸底フラスコに、上記テトラメチルピラジンニトロン粗体の固形分及びその2倍体積のn-ヘプタンを添加し、回転数を140±5rpmに調節し、水浴にて70℃まで加熱し、持続的に撹拌し、橙黄色の清澄溶液を得た。水浴を外し、引き続き撹拌し、10℃まで冷却して結晶化させ、吸引濾過し、固体をn-ヘプタンで洗浄し、乾燥重量減少率が1.0%未満になるように38℃で24時間真空乾燥し、テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aを得た。
【実施例5】
【0050】
250mlの丸底フラスコに、テトラメチルピラジンニトロン粗体(10g)及びn-ヘプタン(100ml)を添加し、回転数を140±5rpmに調節し、水浴にて70℃まで加熱し、持続的に撹拌し、続いて熱いうちに濾過し、橙黄色の溶液を得た。濾液を静置し、周囲温度(10℃)まで冷却し、続いて4℃の冷蔵室に入れて静置し、濾過し、濾過ケーキをn-ヘキサンで洗浄し、溶媒を減圧除去し、淡黄色の結晶性固形分を得た。
【0051】
250mlの丸底フラスコに、上記テトラメチルピラジンニトロン粗体の固形分及びその2倍体積のn-ヘプタンを添加し、回転数を140±5rpmに調節し、水浴にて70℃まで加熱し、持続的に撹拌し、橙黄色の清澄溶液を得た。水浴を外し、引き続き撹拌し、10℃まで冷却して結晶化させ、吸引濾過し、固体をn-ヘプタンで洗浄し、乾燥重量減少率が1.0%未満になるように38℃で24時間真空乾燥し、テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aを得た。
【実施例6】
【0052】
250mlの丸底フラスコに、テトラメチルピラジンニトロン粗体(10g)及びn-ヘキサン(100ml)を添加し、回転数を140±5rpmに調節し、水浴にて70℃まで加熱し、持続的に撹拌し、続いて熱いうちに濾過し、橙黄色の溶液を得た。濾液を静置し、周囲温度(10℃)まで冷却し、続いて10℃の冷蔵室に入れて静置し、濾過し、濾過ケーキをn-ヘキサンで洗浄し、溶媒を減圧除去し、淡黄色の結晶性固形分を得た。
【0053】
250mlの丸底フラスコに、上記テトラメチルピラジンニトロン粗体の固形分及びその2倍体積のn-ヘプタンを添加し、回転数を140±5rpmに調節し、水浴にて70℃まで加熱し、持続的に撹拌し、橙黄色の清澄溶液を得た。水浴を外し、引き続き撹拌し、10℃まで冷却して結晶化させ、吸引濾過し、固体をn-ヘプタンで洗浄し、乾燥重量減少率が1.0%未満になるように38℃で24時間真空乾燥し、テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aを得た。
【実施例7】
【0054】
250mlの丸底フラスコに、テトラメチルピラジンニトロン粗体(10g)及びn-ヘキサン(100ml)を添加し、回転数を140±5rpmに調節し、水浴にて70℃まで加熱し、持続的に撹拌し、続いて熱いうちに濾過し、橙黄色の溶液を得た。濾液を静置し、周囲温度(10℃)まで冷却し、続いて4℃の冷蔵室に入れて静置し、濾過し、濾過ケーキをn-ヘキサンで洗浄し、溶媒を減圧除去し、淡黄色の結晶性固形分を得た。
【0055】
250mlの丸底フラスコに、上記テトラメチルピラジンニトロン粗体の固形分及びその2倍体積のn-ヘプタンを添加し、回転数を140±5rpmに調節し、水浴にて70℃まで加熱し、持続的に撹拌し、橙黄色の清澄溶液を得た。水浴を外し、引き続き撹拌し、10℃まで冷却して結晶化させ、吸引濾過し、固体をn-ヘプタンで洗浄し、乾燥重量減少率が1.0%未満になるように38℃で24時間真空乾燥し、テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aを得た。
【0056】
本発明の実施例1~7で製造されたテトラメチルピラジンニトロンの結晶形AのXRDスペクトルを
図1及び表1に示す。前記結晶形AのXRDスペクトルは、10.60±0.2、11.03±0.2、15.31±0.2、15.55±0.2、17.14±0.2、17.93±0.2、23.81±0.2の2θ角度位置において特徴的な回折ピークを示す。DSCスペクトルには、
図3に示されるように、融解ピークである1つの吸熱ピークがあり、その融点は76℃~78℃である。
図5及び
図6の顕微鏡写真から分かるように、テトラメチルピラジンニトロンには、針状、塊状、棒状という3つの結晶状態がある。TGAスペクトルを
図7に示す。赤外線スペクトルを
図9に示す。
【実施例8】
【0057】
テトラメチルピラジンニトロンを飽和エタノール水溶液(エタノールの体積百分率が9%である)の二成分系において冷却沈殿させ、テトラメチルピラジンニトロンの二水和物を得た。製造された二水和物のXRDスペクトルは、
図2及び表1に示されるように、8.91±0.2、11.46±0.2、14.29±0.2、17.60±0.2、21.19±0.2、22.02±0.2、23.19±0.2、24.30±0.2、24.92±0.2、29.20±0.2、31.41±0.2の2θ角度位置において特徴的な回折ピークを示す。DSCスペクトルを
図4に示し、
図4では、テトラメチルピラジンニトロンの二水和物の融点は37~40℃である。TGAスペクトルは
図8に示す。
【0058】
【0059】
製造方法の調査:
1、溶媒のテトラメチルピラジンニトロン最終生成物の収率及び品質への影響について調査した結果を表2に示す。
【0060】
【0061】
2、結晶化温度のテトラメチルピラジンニトロン最終生成物の収率及び品質への影響について調査した結果を表3に示す。
【0062】
【0063】
効果の調査:
1、安定性の調査
1.1 懸濁による結晶転位試験
(1)テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aを石油エーテル(1.0mL)中に室温条件で7日間懸濁してスラリー化した後、懸濁液を遠心分離し、固体サンプルを収集し、XRPD特性評価を行った。
【0064】
その結果、テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aは、石油エーテル中に一週間懸濁してスラリー化した後、依然として結晶形Aのままであった。そのXRDスペクトルを
図10に示した。
【0065】
1.2 機械的処理による安定性試験
(2)テトラメチルピラジンニトロンの結晶形A及びテトラメチルピラジンニトロンの二水和物をそれぞれ10分間研磨し、処理後のサンプルをXRPDにより分析した。
【0066】
その結果、本発明に記載された結晶形Aは、10分間研磨した後、そのXRPDスペクトルにおける特徴的なピークが変化しなかった。テトラメチルピラジンニトロンの二水和物は、10分間研磨した後、その結晶形が変化しなかった。これらのスペクトルを
図11及び
図12に示した。
【0067】
1.3 打錠処理試験
(3)結晶形A及びテトラメチルピラジンニトロンの二水和物を、圧力2トンで2分間打錠処理し、錠状に加圧した後にXRPDにより分析した。
【0068】
その結果、
図13及び14に示すように、結晶形A及びテトラメチルピラジンニトロンの二水和物は、圧力2トンで2分間加圧した後、その結晶形がいずれも変化しなかった(結晶化度がいずれも小さくなった)。
【0069】
1.4 冷間・熱間処理による安定性実験
(4)結晶形Aを-55℃まで冷却してから、25℃まで昇温させた。その結果、
図15及び16に示すように、結晶形Aは変化しなかった。
【0070】
(5)結晶形Aを110℃(分解点未満)まで加熱した後、25℃まで冷却し、黄色の油状液体を得、撹拌した後、白色の固体が析出した。XRPD特性評価の結果、
図17及び18に示すように、結晶形Aであった。
【0071】
(6)テトラメチルピラジンニトロン水和物を110℃(分解点未満)まで加熱した後、25℃まで冷却し、黄色の油状液体を得、撹拌した後、白色の固体が析出した。XRPD特性評価の結果、
図19及び20に示すように、結晶形Aであった。
【0072】
1.5 加速の影響に関する実験
結晶形Aを40℃、RH=75%の環境で7日間加速させた。XRPD特性評価の結果、
図21に示すように、結晶形Aであった。
【0073】
2、生物活性の調査
カニクイザルの脳卒中動物モデルの薬力学研究を行うと同時に、カニクイザルの脳脊髄液におけるテトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aの薬物動態研究も行った。2回目投与(30mg/kgで1回目静脈内投与してから6時間後に、30mg/kgで投与する)してから10分、30分、60分、120分後にそれぞれ0.5mlの脳脊髄液を採取し、薬物動態試験を行った。
【0074】
【0075】
表4の実験結果によれば、2回目の投与をしてから10分後の脳脊髄液におけるテトラメチルピラジンニトロンの濃度は176μMであり、血漿中の薬物濃度(195μM)とほぼ等しく、インビトロ細胞実験におけるテトラメチルピラジンニトロンの有効保護濃度である30μMを超えていることが示された。この結果から明らかなように、テトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aは血液脳関門を通過し、有効保護濃度に達することができる。
【0076】
3、代謝データのクリアランス
SDラットに静脈内注射によりテトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aを30mg/kgの用量で投与し、各組織におけるテトラメチルピラジンニトロンの結晶形Aの分布状況を調査した。
【0077】
実験結果を
図22に示す。結果によれば、テトラメチルピラジンニトロンが30mg/kgでオスとメスのラットに静脈内投与された後、血漿とほぼ同時に全ての組織に迅速で広く分布し、24時間後に血漿とほぼ同時にインビトロで排出され、テトラメチルピラジンニトロンが試験対象組織に蓄積する傾向がないことが示された。投与してから0.25時間後の脳組織におけるテトラメチルピラジンニトロン濃度は血漿中濃度の0.6~0.7倍であり、4時間後には血漿中濃度の0.8~1.1倍であり、24時間後には血漿中と同様にテトラメチルピラジンニトロンが完全に除去された。
【国際調査報告】