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特表2022-540287肝障害マウスモデルを構築するためのターゲティングベクター、核酸組成物および構築方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(54)【発明の名称】肝障害マウスモデルを構築するためのターゲティングベクター、核酸組成物および構築方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/85 20060101AFI20220908BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220908BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220908BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220908BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220908BHJP
   A01K 67/027 20060101ALI20220908BHJP
   C12N 9/16 20060101ALN20220908BHJP
【FI】
C12N15/85 Z ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A01K67/027
C12N9/16 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566994
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(85)【翻訳文提出日】2021-11-09
(86)【国際出願番号】 CN2020122228
(87)【国際公開番号】W WO2022027826
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】202010764997.3
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521491705
【氏名又は名称】ジェムファーマテック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GemPharmatech Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】12 Xuefu Rd, Jiangbei New Area, Nanjing, Jiangsu 210000, China
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100160314
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 公芳
(74)【代理人】
【識別番号】100134038
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 薫央
(74)【代理人】
【識別番号】100150968
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 悠有子
(72)【発明者】
【氏名】ジュ ツンシィァン
(72)【発明者】
【氏名】ジャ ドンジン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャオ ジン
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
【Fターム(参考)】
4B050CC07
4B050DD02
4B050KK20
4B050LL10
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA60
(57)【要約】
本開示は、肝障害のマウスモデルを構築するためのターゲティングベクター、核酸組成物および構築方法を開示し、遺伝子工学および遺伝子改変の技術分野に関する。本開示のターゲティングベクターは、第1の発現カセットおよび第1の発現カセットの下流に位置する第2の発現カセットを含む。第1の発現カセットは、肝臓特異的プロモーター、テトラサイクリン転写活性化レギュレーター、および第1のpolyAを順に直列に含む。第2の発現カセットは、第2のpolyA、マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子、およびテトラサイクリン誘導性プロモーターを順に直列に含む。ターゲティングベクターで構築された肝障害マウスモデルは、自発的肝障害と誘導による肝障害の悪化という表現型を持ち、ハイブリッド子孫のマウス死亡率が低く、大規模繁殖に寄与できる。本開示は、肝疾患研究のための信頼できる肝損傷マウスモデルを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット配列と、マウスゲノムのターゲットサイトへの前記ターゲット配列の挿入を媒介するための5’末端相同性アーム配列および3’末端相同性アーム配列と、を含み、
前記ターゲット配列は、第1の発現カセットおよび前記第1の発現カセットの下流に位置する第2の発現カセットを含み、
前記第1の発現カセットは、肝臓特異的プロモーター、テトラサイクリン転写活性化レギュレーター、および第1のpolyAを順に直列に含み、
前記第2の発現カセットは、第2のpolyA、マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子、およびテトラサイクリン誘導性プロモーターを順に直列に含み、
前記肝臓特異的プロモーターは、前記テトラサイクリン転写活性化レギュレーターの発現を上流から下流に駆動し、前記テトラサイクリン誘導性プロモーターは、前記マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子の発現を下流から上流に駆動する
ことを特徴とする肝障害マウスモデルを構築するためのターゲティングベクター。
【請求項2】
前記第1の発現カセットは、さらにエンハンサー配列を有し、前記エンハンサー配列は、前記肝臓特異的プロモーターの上流に位置することを特徴とする請求項1に記載のターゲティングベクター。
【請求項3】
前記肝臓特異的プロモーターは、アルブミンプロモーター、アポリポプロテインEプロモーター、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼプロモーター、α-I-アンチトリプシンプロモーター、甲状腺ホルモン結合グロブリンプロモーター、α-フェトプロテインプロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、IGF-IIプロモーター、第VIII因子プロモーター、HBV基本コアタンパク質プロモーター、HBVプレ-s2タンパク質プロモーター、チロキシン結合グロブリンプロモーター、HCR-Ap0CIIハイブリッドプロモーター、HCR-hAATハイブリッドプロモーター、マウスアルブミン遺伝子のエンハンサーエレメントと組み合わせたAATプロモーター、低密度リポタンパク質プロモーター、ピルビン酸キナーゼプロモーター、レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼプロモーター、アポリポプロテインHプロモーター、トランスフェリンプロモーター、トランスチレチンプロモーター、α-フィブリノーゲンおよびβ-フィブリノーゲンプロモーター、α-I-アンチキモトリプシンプロモーター、α-2-HS糖タンパク質プロモーター、ハプトグロビンプロモーター、セルロプラスミンプロモーター、プラスミノーゲンプロモーター、補体タンパク質プロモーター、補体C3アクチベータープロモーター、ヘモコングロビンプロモーターおよびα-I-酸糖タンパク質プロモーターのいずれか1つから選択されるものであることを特徴とする請求項2に記載のターゲティングベクター。
【請求項4】
前記肝臓特異的プロモーターは、アルブミンプロモーターであることを特徴とする請求項2に記載のターゲティングベクター。
【請求項5】
前記エンハンサー配列は、アルブミンエンハンサーであることを特徴とする請求項2に記載のターゲティングベクター。
【請求項6】
前記テトラサイクリン転写活性化レギュレーターは、tTA、rtTAおよびTet-On3Gのいずれか1つから選択されるものであることを特徴とする請求項2に記載のターゲティングベクター。
【請求項7】
前記テトラサイクリン転写活性化レギュレーターは、Tet-On3Gであることを特徴とする請求項6記載のターゲティングベクター。
【請求項8】
前記第1のpolyAは、HGHpolyA、SV40polyA、BGHpolyA、rbGlobpolyA、SV40後期polyAおよびrbGlobpolyAから選択されるものであることを特徴とする請求項2に記載のターゲティングベクター。
【請求項9】
前記第2の発現カセットにおいて、前記マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子と前記テトラサイクリン誘導性プロモーターの間にコザック配列が挿入されていることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のターゲティングベクター。
【請求項10】
前記テトラサイクリン誘導性プロモーターは、TRE3GおよびTetO6のいずれか1つから選択されるものであることを特徴とする請求項9に記載のターゲティングベクター。
【請求項11】
前記テトラサイクリン誘導性プロモーターはTRE3Gであることを特徴とする請求項10に記載のターゲティングベクター。
【請求項12】
前記マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子によってコードされるマウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子のアミノ酸配列は、配列番号7に示されるものであることを特徴とする請求項9に記載のターゲティングベクター。
【請求項13】
前記マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子のヌクレオチド配列は、配列番号6の位置1~1302に示されるものであり、またはその相補的配列であることを特徴とする請求項12に記載のターゲティングベクター。
【請求項14】
前記第2のpolyAは、ウサギpolyA、SV40polyA、hGHpolyA、BGHpolyA、rbGlobpolyA、SV40後期polyAおよびrbGlobpolyAから選択されるものであることを特徴とする請求項9に記載のターゲティングベクター。
【請求項15】
前記ターゲットサイトは、Rosa26サイトであることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のターゲットベクター。
【請求項16】
前記5’末端相同性アーム配列は、配列番号4に示されるものであり、またはその相補的配列であり、
前記3’末端相同性アーム配列は、配列番号5に示されるものであり、またはその相補的配列である
ことを特徴とする請求項15に記載のターゲティングベクター。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のターゲティングベクターと、前記ターゲットサイトでマウスゲノム配列に二本鎖切断を引き起こさせるためのCRISPR/Cas9組成物とを含むことを特徴とする肝障害のマウスモデルを構築するための核酸組成物。
【請求項18】
前記CRISPR/Cas9組成物は、Cas9タンパク質およびsgRNAを含むことを特徴とする請求項17に記載の核酸組成物。
【請求項19】
前記sgRNAのターゲット配列は、配列番号9に示されるものであることを特徴とする請求項18記載の核酸組成物。
【請求項20】
請求項1~16のいずれか一項に記載のターゲティングベクターを含むことを特徴とする組換え細胞。
【請求項21】
請求項1~16のいずれか一項に記載のターゲティングベクター、または請求項17~19のいずれか一項に記載の核酸組成物を含むことを特徴とする肝障害のマウスモデルを構築するためのキット。
【請求項22】
請求項1~16のいずれか一項に記載のターゲティングベクター、または請求項17~19のいずれか一項に記載の核酸組成物を使用して、ターゲットマウスのゲノム上の前記ターゲットサイトに前記ターゲット配列を挿入することを特徴とする肝障害のマウスモデルの構築方法。
【請求項23】
前記ターゲットマウスは、免疫不全マウスであることを特徴とする請求項22に記載の構築方法。
【請求項24】
免疫不全マウスからの受精卵に前記核酸組成物を注射し、そして、前記受精卵を偽妊娠雌マウスに移植し、さらに前記偽妊娠雌マウスの子孫から、肝損傷マウスモデルである、ゲノムに前記ターゲット配列が挿入された陽性マウスをスクリーニングすることを含むことを特徴とする請求項23に記載の構築方法。
【請求項25】
請求項22~24のいずれか一項に記載の構築方法によって得られた肝損傷マウスモデルを、免疫不全の野生型マウスと交配させることを含むことを特徴とする肝障害のマウスモデルを繁殖させる方法。
【請求項26】
請求項22~24のいずれか一項に記載の構築方法により得られた肝障害マウスモデル、または請求項25に記載の育種法により得られた肝障害マウスモデルの肝疾患治療薬のスクリーニングへの非疾患の診断または治療目的の使用。
【請求項27】
ヒト肝細胞を前記肝障害マウスモデルに移植して肝臓をヒト化し、さらに肝臓がヒト化された前記肝障害マウスモデルを使用して薬物をスクリーニングすることを含むことを特徴とする請求項26に記載の使用。
【請求項28】
請求項22~24のいずれか一項に記載の構築方法により得られた肝障害マウスモデルまたは請求項25に記載の育種法により得られた肝障害マウスモデルを提供し、
前記肝障害マウスモデルにヒト肝細胞を移植して肝臓をヒト化し、
候補薬物を肝臓がヒト化された前記肝障害マウスモデルに投与する
ことを特徴とする肝疾患の治療のための薬をスクリーニングする方法。
【請求項29】
前記肝疾患は、ウイルス性肝炎、肝線維症、肝硬変、脂肪肝、薬物誘発性肝障害、および肝癌から選択されるものであることを特徴とする請求項26または27に記載の使用または請求項28に記載の方法。
【請求項30】
肝障害のマウスモデルの構築への使用のための請求項1~16のいずれか一項に記載のターゲティングベクター。
【発明の詳細な説明】
【関係出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2020年8月3日に中国専利局に提出された、出願番号が2020107649973であり、名称が「肝障害マウスモデルを構築するためのターゲティングベクター、核酸組成および構築方法」である中国特許出願に基づいて優先権を主張し、その全ての内容が、参照により本明細書に取り込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、遺伝子工学および遺伝子改変の技術分野に関し、具体的には、肝障害のマウスモデルを構築するためのターゲティングベクター、核酸組成物および構築方法に関する。
【背景技術】
【0003】
肝疾患は、人間の健康を脅かす最も深刻な疾患の1つであり、特にB型肝炎(HBV)、C型肝炎(HCV)、肝硬変、肝がん、非アルコール性脂肪性肝(NAFLD)、アルコール性肝疾患(ALD)、および薬物誘発性肝障害(DILI)であり、それらの中で、ウイルス性肝炎が最も多い疾患である。ウイルス性肝炎は、肝指向性を有し、強い種特異性と組織特異性を持っている。例えば、B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスの自然宿主は、ヒトと少数の非ヒト霊長類(チンパンジー)に限定されており、宿主の肝臓組織のみが感染する。しかし、ウイルス性肝炎の研究のためのチンパンジーの使用は、倫理的および経済的に制限されている。ヒト肝疾患が複雑であり、適切な動物モデルが乏しいので、医学研究とヒト肝疾患の変容は限られている。キメラのヒト肝細胞により、ヒト化肝マウスモデルは、肝炎ウイルスによるヒト感染のプロセスをシミュレートすることができ、肝疾患をより深く研究することができるようになる。
【0004】
医薬品開発では、前臨床動物実験およびヒト実験の薬物動態/薬力学(PK/PD)を利用して、医薬品が安全かどうかを判断し、医薬品の臨床試験の成功に重要な役割を果たしている。しかし、多くの薬物代謝酵素が種特異性を持ち、ラットやマウスの肝臓代謝機能がヒトの肝臓とは異なるので、ラットまたはマウスを用いる薬物PK/PDテストは、ヒトにおける薬物の効果を真に反映することはできない場合がある。このため、人体に対する薬物の安全性に大きなリスクがある。人体の薬物代謝経路を明らかにするためには、ヒトの肝細胞に対して試験を行う必要がある。インビトロのヒト肝細胞代謝実験と比較すると、ヒト化肝マウスは、人体における薬物の代謝経路をより正確に反映することができる。
【0005】
ヒト化肝マウスの構築は、肝障害を有するマウスをレシピエントとして使用し、ヒト肝細胞を移植し、ヒト肝細胞がマウス内で増殖し、機能的なヒト-マウスキメラ肝臓に発達する必要がある。現在、通常使用されている肝障害モデルは、uPA-SCID、Fah-/-Rag2-/-Il2rg-/-(FRG)、TK-NOGおよびAlb-uPAなどを含む。これらのモデルのヒト肝臓キメラ現象率は、90%に達する可能性があると報告されているが、これらのモデルにはまだいくつかの欠点があり、その使用が制限されている。例えば、uPA-SCID、Alb-uPA、およびFRGモデルは、肝毒性のために周産期に子孫マウスが頻繁に死亡し、その結果、新生児マウスの死亡率が非常に高くなり、大規模な繁殖が困難になる。また、TK-NOGモデルマウスの雄性不稔性により、モデルを繁殖しにくく、モデルの使用が制限されている。また、uPA-SCIDマウスが再構築された後、相同組換えによるuPA遺伝子の欠失により、ヒト肝細胞(h-heps)の置換指数が低下し、腎疾患が発生しやすくなる。Deng Hongkuiは、異なるベクターフラグメントを保有するマウスを使用してuPA遺伝子を保有するアデノウイルスをトランスフェクトするか、異なるベクターを保有する2つのモデルを介して、マウスでTet on-uPA組換えシステムを実現した(ただし、育種プロセスが非常に面倒である)。理論的には、uPA発現のタイミングを制御可能にすることによって、マウスの死亡を改善した。ただし、uPA発現の維持にはアデノウイルス感染の繰り返しが必要であるため、宿主マウスが耐性を示しやすく、これはその後のアデノウイルス感染率に影響を及ぼし、uPAの発現を低下させ、肝細胞再構成の効率が低下した。さらに、このモデルは、アデノウイルスの注射後に自然免疫を活性化する可能性があり、肝炎ウイルスによって刺激される免疫応答の観察に影響を及ぼし、肝炎ウイルス感染の研究に適していない。
【0006】
以上により、当分野では、ヒト化肝臓の構築に適した肝損傷マウスモデル、およびその後の肝疾患研究および薬物スクリーニングのためのヒト化肝臓マウスモデルの使用が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、肝障害のマウスモデルを構築するためのターゲティングベクターを提供する。上記ターゲティングベクターは、ターゲット配列と、マウスゲノムのターゲットサイトへのターゲット配列の挿入を媒介するための5’末端相同性アーム配列および3’末端相同性アーム配列を含み、上記ターゲット配列は、第1の発現カセットおよび上記第1の発現カセットの下流に位置する第2の発現カセットを含み、
上記第1の発現カセットは、肝臓特異的プロモーター、テトラサイクリン転写活性化レギュレーター、および第1のpolyAを順に直列に含み、上記第2の発現カセットは、第2のpolyA、マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子、およびテトラサイクリン誘導性プロモーターを順に直列に含み、
上記肝臓特異的プロモーターは、上記テトラサイクリン転写活性化レギュレーターの発現を上流から下流に駆動し、上記テトラサイクリン誘導性プロモーターは、上記マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子の発現を下流から上流に駆動する。
【0008】
1つまたは複数の実施形態において、上記第1のpolyAは、1~3個の同一または異なるpolyA結合から構成される。1つまたは複数の実施形態において、各polyAにおけるA(アデニル酸)の数は、50~200である。
【0009】
1つまたは複数の実施形態において、上記第2のpolyAは、1~3個の同一または異なるpolyA結合から構成される。1つまたは複数の実施形態において、各polyAにおけるA(アデニル酸)の数は、50~200である。
【0010】
1つまたは複数の実施形態において、上記第1の発現カセットは、さらにエンハンサー配列を有し、上記エンハンサー配列は、肝臓特異的プロモーターの上流に位置する。
【0011】
1つまたは複数の実施形態において、上記肝臓特異的プロモーターは、アルブミンプロモーター、アポリポプロテインEプロモーター、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼプロモーター、α-I-アンチトリプシンプロモーター、甲状腺ホルモン結合グロブリンプロモーター、α-フェトプロテインプロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、IGF-IIプロモーター、第VIII因子プロモーター、HBV基本コアタンパク質プロモーター、HBVプレ-s2タンパク質プロモーター、チロキシン結合グロブリンプロモーター、HCR-Ap0CIIハイブリッドプロモーター、HCR-hAATハイブリッドプロモーター、マウスアルブミン遺伝子のエンハンサーエレメントと組み合わせたAATプロモーター、低密度リポタンパク質プロモーター、ピルビン酸キナーゼプロモーター、レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼプロモーター、アポリポプロテインHプロモーター、トランスフェリンプロモーター、トランスチレチンプロモーター、α-フィブリノーゲンおよびβ-フィブリノーゲンプロモーター、α-I-アンチキモトリプシンプロモーター、α-2-HS糖タンパク質プロモーター、ハプトグロビンプロモーター、セルロプラスミンプロモーター、プラスミノーゲンプロモーター、補体タンパク質プロモーター、補体C3アクチベータープロモーター、ヘモコングロビンプロモーターおよびα-I-酸糖タンパク質プロモーターのいずれか1つから選択されるものである。
【0012】
1つまたは複数の実施形態において、上記肝臓特異的プロモーターは、アルブミンプロモーターである。
【0013】
1つまたは複数の実施形態において、上記エンハンサー配列は、アルブミンエンハンサーである。
【0014】
1つまたは複数の実施形態において、上記テトラサイクリン転写活性化レギュレーターは、tTA、rtTA、およびTet-On3Gのいずれか1つから選択されるものである。
【0015】
1つまたは複数の実施形態において、上記テトラサイクリン転写活性化レギュレーターは、Tet-On3Gである。
【0016】
1つまたは複数の実施形態において、上記第1のpolyAは、HGHpolyA、SV40polyA、BGHpolyA、rbGlobpolyA、SV40後期polyAおよびrbGlobpolyAから選択されるものである。
【0017】
1つまたは複数の実施形態において、上記第2の発現カセットにおいて、上記マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子と上記テトラサイクリン誘導性プロモーターの間にKozak配列が挿入されている。
【0018】
1つまたは複数の実施形態において、上記テトラサイクリン誘導性プロモーターは、TRE3GおよびTetO6のいずれか1つから選択されるものである。
【0019】
1つまたは複数の実施形態において、上記テトラサイクリン誘導性プロモーターは、TRE3Gである。
【0020】
1つまたは複数の実施形態において、上記マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子によってコードされるマウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子のアミノ酸配列は、配列番号7に示されるものである。
【0021】
1つまたは複数の実施形態において、上記マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子のヌクレオチド配列は、配列番号6の1~1302位に示されるものであり、またはその相補的配列である。
【0022】
1つまたは複数の実施形態において、上記第2のpolyAは、ウサギpolyA、SV40polyA、hGHpolyA、BGHpolyA、rbGlobpolyA、SV40後期polyAおよびrbGlobpolyAから選択されるものである。
【0023】
1つまたは複数の実施形態において、上記ターゲットサイトは、Rosa26サイトである。
【0024】
1つまたは複数の実施形態において、上記5’末端相同性アーム配列は、配列番号4に示されるものであり、またはその相補的配列である。上記3’末端相同性アーム配列は、配列番号5に示されるものであり、またはその相補的配列である。
【0025】
本開示は、肝障害のマウスモデルを構築するための核酸組成物を提供し、上記のターゲティングベクターと、前記ターゲットサイトでマウスゲノム配列に二本鎖切断を引き起こさせるためのCRISPR/Cas9の組み合わせを含む。
【0026】
1つまたは複数の実施形態において、上記CRISPR/Cas9組成物は、Cas9タンパク質とsgRNAとを含む。
【0027】
1つまたは複数の実施形態において、上記sgRNAのターゲット配列は、配列番号9に示されるものである。
【0028】
本開示は、上記のターゲティングベクターを含む組換え細胞を提供する。
【0029】
本開示は、上記のターゲティングベクター、または上記の核酸組成物を含む肝障害のマウスモデルを構築するためのキットを提供する。
【0030】
本開示は、上記のターゲットベクターまたは上記の核酸組成物を使用して、ターゲットマウスのゲノム上の上記ターゲットサイトに上記ターゲット配列を挿入する肝障害のマウスモデルの構築方法を提供する。
【0031】
1つまたは複数の実施形態において、上記ターゲットマウスは、免疫不全マウスである。
【0032】
1つまたは複数の実施形態において、上記方法は、免疫不全マウスからの受精卵に上記核酸組成物を注射し、そして、前記受精卵を偽妊娠雌マウスに移植し、さらに上記偽妊娠雌マウスの子孫から、肝損傷マウスモデルである、ゲノムに上記ターゲット配列が挿入された陽性マウスをスクリーニングすることを含む。
【0033】
本開示は、肝障害マウスモデルを繁殖させるための方法を提供し、上記の構築方法によって得られた肝障害マウスモデルを免疫不全の野生型マウスと交配させることを含む。
【0034】
本開示は、上記の構築方法によって得られた肝障害マウスモデル、または上記の育種方法によって得られた肝障害マウスモデルの肝疾患治療薬のスクリーニングへの非疾患の診断または治療目的の使用を提供する。
【0035】
1つまたは複数の実施形態において、ヒト肝細胞を上記肝障害マウスモデルに移植して肝臓をヒト化し、さらに肝臓がヒト化された前記肝障害マウスモデルを使用して薬物をスクリーニングすることを含む。
【0036】
本開示は、肝疾患の治療のための薬物をスクリーニングする方法を提供し、上記の構築方法により得られた肝障害マウスモデルまたは上記の育種法により得られた肝障害マウスモデルを提供し、上記肝障害のマウスモデルにヒト肝細胞を移植して肝臓をヒト化し、候補薬剤を肝臓がヒト化された上記肝損傷マウスモデルに投与することを含む。
【0037】
本開示は、上記の用途または上記の方法を提供し、上記肝疾患は、ウイルス性肝炎、肝線維症、肝硬変、脂肪肝、薬物誘発性肝障害、および肝癌から選択されるものである。
【0038】
本開示は、肝損傷のマウスモデルの構築への使用のための上記のターゲティングベクターを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本開示における実施例の技術案をより明瞭に説明するため、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明する。説明する図面は、本開示の一部の実施例を示すものにすぎず、範囲を限定するものではない。当業者は、発明能力を用いなくても、これらの図面に基づいて他の関連図面を得ることが可能である。
図1】実施例1のターゲティングベクターのターゲット配列の構造の概略図である。
図2】実施例2の中間ベクターを含む細菌液の一部のPCR同定のゲル電気泳動結果の図である。
図3】実施例2におけるいくつかの中間ベクターの酵素消化同定のゲル電気泳動結果の図である(DLがDL2000標準(マーカー)に基づくものであり、バンドサイズがそれぞれ2000、1000、750、500、200、100bpであり、T14がEcoT14I標準(マーカー)に基づくものであり、バンドサイズがそれぞれ19329、7743、6223、4254、3472、2690、1882、1489bpである)。
図4】実施例2におけるターゲティングベクターを含む細菌液体のPCR同定のゲル電気泳動結果の図である。
図5】実施例2におけるターゲティングベクターの酵素消化同定のゲル電気泳動結果の図である。
図6】実施例3における対照ターゲティングベクターの構造の概略図である。
図7】実施例3における対照ターゲティングベクターを含む細菌液体のPCR同定のゲル電気泳動結果の図である。
図8】実施例3における対照ターゲティングベクターの酵素消化同定のゲル電気泳動結果の図である。
図9】F1世代のH11-alb-TetOn3G-uPAマウスのPCR同定のゲル電気泳動結果の図である(AはRosa26-alb-Tet-On3G-uPAマウスの陽性およびwtの同定結果であり、BはRosa26-alb-Tet-On3G-uPAマウスのポジティブターゲティング配列の3’末端と5’末端の同定結果である)。
図10】F1世代のRosa26-alb-TetOn3G-uPAマウスのPCR同定のゲル電気泳動結果の図である(Aはマウス#2でPCRによって同定されたゲル電気泳動結果の図であり、Bはマウス#15でPCRによって同定されたゲル電気泳動の結果図である)。
図11】ドキシサイクリン(Dox)によって誘発されたH11-alb-TetOn3G-uPAマウスの肝障害の結果である(AはH11-alb-TetOn3G-uPAヘテロ接合マウスにDox水を与えて肝障害を誘発する場合の結果であり、BはH11-alb-Tet On3G-uPAホモ接合マウスにDox水または強制飼養(PO)を与えて肝障害を誘発する場合の結果である)。
図12】自発性肝障害のあるRosa26-alb-Tet On3G-uPAヘテロ接合マウスにおけるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)活性の測定結果である。
図13】4週齢のRosa26-alb-Tet On3G-uPAマウスのHE染色結果であり、重度の肝障害を示している。
図14】3~4週齢のRosa26-alb-TetOn3G-uPAマウスのDoxによる肝障害の悪化のテスト結果である(Aは3~4週齢のマウスにDox誘導を与えた後の血清ALTの変化を示し、Bは3~4週齢のマウスにDox誘導を与えてから7日後、マウスの肝臓のHE染色を示す)。
図15】肝障害の悪化を誘発するためにDoxを投与された6~8週齢のRosa26-alb-TetOn3G-uPAマウスの試験結果である(Aは6~8週齢のマウスにDox誘導を与えた後の血清ALTの変化を示し、Bは6~8週齢のマウスにDox誘導を与えてから7日後、マウスの肝臓のHE染色を示す)。
図16】異なる週齢のRosa26-alb-TetOn3G-uPAマウスに対して緑色蛍光肝細胞を移植して10週間後の肝臓形態である(緑色蛍光肝細胞が肝臓の5つの表面に均一に分布している)。
図17】異なる週齢のRosa26-alb-TetOn3G-uPAマウスに対して肝細胞を移植して10週間後の緑色蛍光細胞の観察結果である。
図18】pRosa26-Casプラスミドベクターマップである。
図19】PMD18T-H11-CAG-FLPoプラスミドベクターマップである。
図20】Rosa26-alb-TetOn3G-uPAホモ接合マウスの自発性肝障害のALT活性の測定結果である。
図21】各要素の位置関係を示す(Aは、2つの発現カセットがテールツーテールで接続される場合であり、Bは、2つの発現カセットがテールツーヘッドで接続される場合であり、Cは、2つの発現カセットがヘッドツーヘッドで接続され場合であり、Dは、緑色蛍光GFPプラスミドを発現する)。
図22】GFPプラスミドがHepG2細胞にエレクトロポレーションされた後、細胞で緑色蛍光を発現できることを示す。
図23】2つのカセット間の接続関係が異なるプラスミドをHepG2細胞にエレクトロポレーションした後の細胞への影響を示す。
図24】GFPプラスミドを尾静脈に注射した後、マウスが肝細胞で緑色蛍光を発現できることを示す。
図25】2つの発現カセット間の接続関係が異なるプラスミドによって引き起こされた肝障害のあるマウスのALTレベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本開示の実施例の目的、技術案および利点をより明瞭にするため、以下、本開示の実施例の技術案を明瞭、完全に説明する。実施例において、具体的な条件が明記されていないものについて、従来の条件またはメーカーの勧めの条件下で行うことが可能である。使用する試剤または器械の、製造メーカーが明記されていないものが、市販の従来品を使用することが可能である。
【0041】
本開示の1つまたは複数の実施形態は、例えば、肝障害マウスモデルを構築するためのターゲティングベクター、核酸組成物および構築方法を提供することを目的とする。本開示のターゲティングベクターを使用して構築された肝障害マウスモデルは、誘導物質を使用せずに肝障害を形成でき、つまり、自発的に肝障害を形成することができる。また、誘導物質を使用すると、肝障害の程度を高めることができる。さらに、この肝障害マウスモデルによる自発的肝障害の程度は、外因性肝細胞移植の要件を満たすことができるとともに、肝細胞移植後の再構築率も高い。また、この肝障害マウスモデルは、交雑により子孫肝障害マウスを繁殖させることができ、子孫マウスの死亡率が低く、大規模な繁殖に寄与できる。本開示は、肝疾患研究のための信頼できる肝損傷マウスモデルを提供する。
【0042】
本開示は、肝障害のマウスモデルを構築するためのターゲティングベクターを提供する。上記ターゲティングベクターは、ターゲット配列と、マウスゲノムのターゲットサイトへのターゲット配列の挿入を媒介するための5’末端相同性アーム配列および3’末端相同性アーム配列と、を含む。上記ターゲット配列は、第1の発現カセットおよび第1の発現カセットの下流に位置する第2の発現カセットを含む。
【0043】
上記第1の発現カセットは、肝臓特異的プロモーター、テトラサイクリン転写活性化レギュレーター、および第1のpolyAを順に直列に含む。上記第2の発現カセットは、第2のpolyA、マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子、およびテトラサイクリン誘導性プロモーターを順に直列に含む。
【0044】
ここで、上記肝臓特異的プロモーターは、テトラサイクリン転写活性化レギュレーターの発現を上流から下流に駆動し、テトラサイクリン誘導性プロモーターは、マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子の発現を下流から上流に駆動する。
【0045】
1つまたは複数の実施形態において、上記ターゲット配列の第1の発現カセットおよび第2の発現カセットは、それぞれのpolyA接続によって接続され、すなわち、テールツーテール接続が形成される。
【0046】
1つまたは複数の実施形態において、上記ターゲット配列の第1の発現カセットおよび第2の発現カセットは、それぞれのpolyA接続によって接続され、第1の発現カセットの転写方向は、第2の発現カセットの転写方向と反対である。
【0047】
1つまたは複数の実施形態において、上記ターゲット配列の第1の発現カセットおよび第2の発現カセットは、それぞれのプロモーターによって接続され、すなわち、ヘッドツーヘッド接続が形成される。
【0048】
1つまたは複数の実施形態において、上記ターゲット配列の第1の発現カセットおよび第2の発現カセットは、それぞれのプロモーターによって接続され、第1の発現カセットの転写方向は、第2の発現カセットの転写方向と反対である。
【0049】
1つまたは複数の実施形態において、上記ターゲット配列の第1の発現カセットおよび第2の発現カセットは、それぞれのプロモーターによって接続され、第1の発現カセットの転写方向は、第2の発現カセットの転写方向と同じであり、即ちテールツーヘッド接続が形成される。
【0050】
1つまたは複数の実施形態において、上記ターゲット配列は、順に配列された肝臓特異的プロモーター、テトラサイクリン転写活性化レギュレーター、第1のpolyA、第2のpolyA、マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子、およびテトラサイクリン誘導性プロモーターを含む。
【0051】
本明細書では、「polyA」は、ポリアデニンヌクレオチドとも呼ばれ、通常、複数のアデニンヌクレオチドから構成される鎖を指す。通常、polyAのアデニンヌクレオチドの数は50-200である。
【0052】
本開示のターゲティングベクターを使用して、上記のターゲット配列をマウスゲノムのターゲットサイトに挿入することができる。上記のターゲット配列における第1の発現カセットと第2の発現カセットとの間の接続関係は、テールツーテール方式で接続されていると理解することができる。本発明の発明者らは、驚くべきことに、上記の接続方式および要素を有する第1の発現カセットおよび第2の発現カセットのターゲット配列をゲノムに挿入されたマウスが、以下の予想以上の表現型または特徴を有することを発見した。それは、肝障害の理想的なマウスモデルとして使用できる。
【0053】
(1)誘導物質による誘発がなくても肝障害を形成でき、つまり、自発的に肝損傷を形成することができる。また、誘導物質を使用すると、肝損傷の程度を高めることができる。したがって、利用者は、移植に応じて選択的に誘発するかどうかを選択できるので、移植プロセスがより簡単になる。このような自発的な肝障害の表現型は、従来のTet onシステムによるタンパク質の発現特性に対する調節の認識を破り、その表現型は、発明者の予想以上のものとなる。
【0054】
(2)この肝障害マウスモデルで自発的に形成された肝障害の程度は、外因性肝細胞の移植の要件を十分満足することができる。さらに誘発されると、肝障害の程度は、より深刻になり、外因性肝細胞の移植後の再構築率がより高くなる。
【0055】
(3)この肝障害マウスモデルは、交配によってより多くの子孫肝障害マウスを繁殖させることができ、その子孫マウスの死亡率は、従来の自発的な肝障害マウスモデルよりもはるかに低く、肝障害マウスモデルの大規模な繁殖に寄与でき、その表現型は、発明者の予想以上のものである。
【0056】
なお、いくつかの他の実施形態では、第1の発現カセットおよび第2の発現カセットの位置を交換することができ、即ち第2の発現カセットを上流に位置させ、第1の発現カセットを下流に位置させ、要素の位置順序を対応して調整し、第2の発現カセットを下流即ち第1の発現カセットの方向に駆動し、第1の発現カセットを上流即ち第2の発現カセットの方向に駆動するように構成されることができる。この設置でも同様の効果が得られる。つまり、設置方向にかかわらず、2つの発現カセットのpolyAを隣接させ、2つの発現カセットが両端から中間方向へ発現を駆動すればよい。
【0057】
選択可能な実施形態において、上記第1の発現カセットは、エンハンサー配列を含み、エンハンサー配列が肝臓特異的プロモーターの上流に位置している。
【0058】
選択可能な実施形態において、上記肝臓特異的プロモーターは、アルブミンプロモーター、アポリポプロテインEプロモーター、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼプロモーター、α-I-アンチトリプシンプロモーター、甲状腺ホルモン結合グロブリンプロモータープロモーター、α-フェトプロテインプロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、IGF-IIプロモーター、第VIII因子プロモーター、HBV基本コアタンパク質プロモーター、HBV pre-s2タンパク質プロモーター、チロキシン結合グロブリンプロモーター、HCR-Ap0CIIハイブリッドプロモーター、HCR-hAATハイブリッドプロモーター、マウスアルブミン遺伝子のエンハンサーエレメントと組み合わせたAATプロモーター、低密度リポタンパク質プロモーター、ピルビン酸キナーゼプロモーター、レシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼプロモーター、アポリポプロテインHプロモーター、トランスフェリンプロモーター、トランスチレチンプロモーター、α-フィブリノーゲンおよびβ-フィブリノーゲンプロモーター、α-I-アンチキモトリプシンプロモータープロモーター、α-2-HS糖タンパク質プロモーター、ハプトグロビンプロモーター、セルロプラスミンプロモーター、プラスミノーゲンプロモーター、補体タンパク質プロモーター、補体C3活性化因子プロモーター、造血プロモーターおよびα-I-酸糖タンパク質プロモーターのいずれか1つを含むが、これらに限定されない。
【0059】
選択可能な実施形態において、上記肝臓特異的プロモーターは、アルブミンプロモーターである。
【0060】
選択可能な実施形態において、上記エンハンサー配列は、アルブミンエンハンサーを含むが、これに限定されない。
【0061】
選択可能な実施形態において、テトラサイクリン転写活性化レギュレーターは、tTA、rtTA、およびTet-On3Gのいずれかから選択される。
【0062】
選択可能な実施形態において、上記テトラサイクリン転写活性化レギュレーターは、Tet-On 3Gである。
【0063】
選択可能な実施形態において、上記第1のpolyAは、HGH polyA、SV40 polyA、BGH polyA、rbGlob polyA、SV40 late polyA、およびrbGlob polyAを含むが、これらに限定されない。
【0064】
選択可能な実施形態において、上記テトラサイクリン誘導性プロモーターは、TRE3GおよびTetO6のいずれかから選択される。
【0065】
選択可能な実施形態において、上記テトラサイクリン誘導性プロモーターは、TRE3Gpである。
【0066】
選択可能な実施形態において、上記マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子によってコードされるマウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子のアミノ酸配列は、配列番号7に示されている。
【0067】
選択可能な実施形態において、上記マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子のヌクレオチド配列は、配列番号6の1~1302位またはその相補的配列に示されている。
【0068】
選択可能な実施形態において、上記第2のpolyAは、ウサギpolyA、SV40 polyA、hGH polyA、BGH polyA、rbGlob polyA、SV40 late polyAおよびrbGlob polyAを含むが、これらに限定されない。
【0069】
選択可能な実施形態において、上記第2の発現カセットにおいて、上記マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子とテトラサイクリン誘導性プロモーターの間にKozak配列が挿入されている。
【0070】
選択可能な実施形態において、上記ターゲットサイトはRosa26サイトである。
【0071】
上記のターゲット配列をRosa26サイトに挿入すると、ゲノム上の隣接する配列の干渉効果を回避でき、内因性遺伝子に損傷を与えることなく、マウスの正常な成長と正常な機能を保証する。さらに、他の一般的な挿入サイト(H11など)と比較して、Rosa26サイトに上記のターゲット配列を挿入すると、この肝障害マウスモデルは、独特の表現型を示す。つまり、自発的な肝障害の程度は、外来肝細胞の移植を満足することができる。さらに、肝障害マウスモデルは、誘導物質(Doxなど)に対してより敏感であり、誘導後、肝損傷の程度が悪化するように見える。他のサイトにターゲット配列を挿入する場合、上記のような本開示の発明者の予想以上の技術的効果をもたらさなかった。
【0072】
選択可能な実施形態において、上記5’末端相同性アーム配列は、配列番号4またはその相補的配列に示されている。上記3’末端相同性アーム配列は、配列番号5またはその相補的配列に示されている。
【0073】
選択可能な実施形態において、上記ターゲティングベクターのバックボーンは、実際のニーズに応じて選択することができる。バックボーンベクターでターゲット配列をサポートすることができればよく、いずれも、本開示の保護範囲に属する。
【0074】
本開示は、上記のターゲティングベクターを含む組換え細胞を提供する。
【0075】
選択可能な実施形態において、組換え細胞は、大腸菌を含むが、これに限定されない。当業者は、上記のターゲティングベクターを保存または増幅するために、上記のターゲティングベクターを形質転換するための適切な宿主細胞を選択することができる。いずれにしても本開示の保護範囲に属する。
【0076】
本開示は、肝障害のマウスモデルを構築するための核酸組成物を提供する。核酸組成物は、上記のいずれか1つに記載のターゲティングベクターと、ターゲットサイトでマウスゲノム配列に二本鎖切断を引き起こすためのCRISPR/Cas9組成物とを含む。
【0077】
選択可能な実施形態において、上記CRISPR/Cas9組成物は、Cas9タンパク質とsgRNAとを含む。
【0078】
選択可能な実施形態において、上記sgRNAのターゲット配列は、配列番号9に示されている。
【0079】
本明細書において、「CRISPR/Cas9組成物」とは、規則的なクラスター間隔の短いパリンドロームリピート(CRISPR)とヌクレアーゼに基づく遺伝子編集システムを指す。通常、CRISPR/Cas9組成物は、特定の遺伝子改変を実現できるsgRNA(小さなガイドRNA)とCas9タンパク質を含む。
【0080】
本開示は、上記のいずれか1つに記載のターゲットベクター、または上記のいずれか1つに記載の核酸組成物を含む、肝障害のマウスモデルを構築するためのキットを提供する。
【0081】
本開示は、上記のいずれか1つに記載のターゲティングベクター、または上記のいずれか1つに記載の核酸組成物を使用して、ターゲットマウスのゲノム上のターゲットサイトにターゲット配列を挿入する、肝障害のマウスモデルを構築するための方法を提供する。
【0082】
本開示は、肝損傷のマウスモデルを構築するための本明細書に記載のターゲティングベクターの使用を提供する。1つまたは複数の実施形態において、該使用は、ターゲットマウスのゲノム上のターゲットサイトにターゲット配列を挿入することを含む。
【0083】
本開示は、肝障害のマウスモデルを構築するための本明細書に記載の核酸組成物の使用を提供する。1つまたは複数の実施形態において、該使用は、ターゲットマウスのゲノム上のターゲットサイトにターゲット配列を挿入することを含む。
【0084】
本開示は、肝損傷のマウスモデルを構築するための本明細書に記載のターゲティングベクターの使用を提供する。1つまたは複数の実施形態において、該使用は、ターゲットマウスのゲノム上のターゲットサイトにターゲット配列を挿入することを含む。
【0085】
本開示は、肝障害のマウスモデルを構築するための本明細書に記載の核酸組成物の使用を提供する。1つまたは複数の実施形態において、該使用は、ターゲットマウスのゲノム上のターゲットサイトにターゲット配列を挿入することを含む。
【0086】
1つまたは複数の実施形態において、上記の使用は、本明細書に記載の構築方法によって得られた肝損傷マウスモデルを、免疫不全の野生型マウスと交配させることを含む。
【0087】
本開示の構築方法で構築された肝損傷マウスモデルは、誘導剤を使用せずに肝損傷を形成でき、つまり、自発的に肝損傷を形成することができる。また、誘導剤を使用すると、肝損傷の程度を高めることができる。さらに、この肝障害マウスモデルによる自発的肝障害の程度は、外因性肝細胞の移植の要件を満たすことができるとともに、移植後の再構築率も高い。また、肝障害マウスモデルは、交雑により子孫肝障害マウスを繁殖させることができ、子孫マウスの死亡率が低く、大規模な繁殖に寄与できる。
【0088】
本開示の肝損傷のマウスモデルを構築するための方法において、さらに、誘導剤でターゲットマウスを処理する。1つまたは複数の実施形態において、上記誘導剤は、Doxである。
【0089】
選択可能な実施形態において、上記ターゲットマウスは、免疫不全マウス(NCGマウス)である。
【0090】
選択可能な実施形態において、上記方法は、免疫不全マウスからの受精卵に核酸組成物を注射し、そして、受精卵を偽妊娠雌マウスに移植し、偽妊娠雌マウスの子孫から、ゲノムにターゲット配列が挿入された陽性マウス、すなわち肝損傷マウスモデルをスクリーニングすることを含む。
【0091】
選択可能な実施形態において、上記受精卵の発育日数は、0.5日である。
【0092】
選択可能な実施形態において、上記偽妊娠雌マウスは、交尾成功から0.5日後の偽妊娠雌マウスである。
【0093】
本開示は、上記の構築方法によって得られた肝障害マウスモデルを免疫不全の野生型マウスと交配させることを含む、肝障害マウスモデルを繁殖させるための方法を提供する。
【0094】
上記の構築方法で得られた肝障害マウスモデルは、免疫不全の野生型マウスと交配でき、子孫マウスの死亡率は低く、親肝損傷マウスと同じ表現型の子孫肝損傷マウスを大規模に得ることが可能である。そのため、当業者は、上記の構築方法を繰り返して行う必要がなく、より単純なハイブリッド育種法によって理想的な肝損傷マウスモデルを大量に得ることができ、繁殖効率が大幅に向上し、肝障害マウスモデルの需要を効果的に満たすことができる。
【0095】
本開示は、肝疾患の治療のための薬物のスクリーニングにおける上記の構築方法または育種法によって得られた肝障害マウスモデルの使用を提供する。選択可能な実施形態において、上記使用は、非疾患の診断または治療を目的としている。他の選択可能な実施形態において、上記使用は、疾患の診断または治療を目的とする。
【0096】
本開示は、肝疾患の治療のための薬物のスクリーニングに使用するための上記の構築方法または育種方法によって得られた肝障害マウスモデルを提供する。
【0097】
選択可能な実施形態において、上記使用には、ヒト肝細胞を肝障害マウスモデルに移植して肝臓をヒト化し、さらに肝臓を介してヒト化された肝障害マウスモデルを使用して薬物をスクリーニングすることを含む。
【0098】
選択可能な実施形態において、上記肝疾患は、ウイルス性肝炎(例えば、B型肝炎、C型肝炎など)、肝線維症、肝硬変、脂肪肝(例えば、アルコール性、非アルコール性脂肪性肝など)、薬物誘発性肝障害、肝がんから選択されるものを含むが、これらに限定されない。
【0099】
本開示のターゲティングベクターおよび構築方法を使用して得られた肝損傷マウスモデルは、例えばヒト幹細胞のような外因性肝細胞の移植、すなわち肝ヒト化が行われると、肝疾患を治療するための薬物をスクリーニングすることに使用されることが可能である。例えば、候補薬がヒト肝細胞などに有効か安全かを評価することができ、人体における候補薬の代謝をより正確に反映することができるので、より信頼性の高い薬を選別することができる。
【0100】
以下、実施例を参照しながら、本開示の特徴および性能をさらに詳細に説明する。
【実施例
【0101】
[実施例1]
本実施例は、肝障害のマウスモデルを構築するためのターゲティングベクターを提供した。ターゲティングベクターは、ターゲット配列と、マウスゲノムのターゲットサイト(Rosa26)へのターゲット配列の挿入を仲介するための5’末端相同性アーム配列(Rosa26 arm1)および3’末端相同性アーム配列(Rosa26 arm2)とを含む。各要素の位置関係は、図1に示されている。
【0102】
ここで、ターゲット配列は、第1の発現カセットおよび第1の発現カセットの下流の第2の発現カセットを、上流から下流への順に含む。
【0103】
第1の発現カセットは、アルブミンエンハンサー(Alb enhancer)、アルブミンプロモーター(Alb Promoter)、テトラサイクリン転写活性化レギュレーター(Tet-On 3G)および第1のpolyA(HGH polyA)を、順に直列に含む。図1において、発現は、左(上流)から右(下流)に駆動される。
【0104】
第2の発現カセットは、第2のpolyA(ウサギpolyA、図1においてpAで示す)、マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子(uPA)、Kozak配列およびテトラサイクリン誘導性プロモーター(TRE3G)を、順に直列に含む。図1において、発現は、右(下流)から左(上流)に駆動される。
【0105】
Rosa26 arm1は、ターゲット配列の上流に位置し、Rosa26arm2は、ターゲット配列の下流に位置する。
【0106】
アルブミンプロモーター(Alb Promoter)は、テトラサイクリン転写活性化レギュレーター(Tet-On 3G)の発現を上流から下流に駆動し(図1の左側の曲がり矢印を参照)、テトラサイクリン誘導性プロモーター(TRE3G)は、マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子(uPA)の発現を下流から上流に駆動する(図1の右側の曲がり矢印を参照)。
【0107】
本実施例のターゲティングベクターは、CRISPR/Cas9組成物と組み合わせて使用され、マウスゲノムにおける5’末端相同性アーム配列および3’末端相同性アーム10配列に対応する位置にターゲット配列を挿入した(図1を参照)。
【0108】
[実施例2]
本実施例は、実施例1のターゲティングベクターを構築するための方法を提供した。該方法は、以下のステップを含む。
【0109】
1.1 Albエンハンサー-Albプロモーターフラグメントの調製
表1におけるプライマーを使用して、Albエンハンサー-Albプロモーターターゲットフラグメントを増幅し、回収しておく。PCR増幅の条件は、この分野の常識に従って設定されている。
【0110】
表1.Albエンハンサー-Albプロモーター増幅プライマーリスト
【表1】
【0111】
Albエンハンサー-Albプロモーターターゲットフラグメントの鎖のうちの1つのヌクレオチド配列(配列番号1)は、以下の通りである(5’-3’)。
【0112】
ggtggttctcctgtcagtttcgagggggtacagcttgggctgcaggtcgactctagatcgaattcctgcagcccgggggatcccggggttgataggaaaggtgatctgtgtgcagaaagactcgctctaatatacttctttaaccaataactgtagatcattaaccatacttacctcgcatttcattggttcctaccccattacaaaatcataccatctttgccaaaaagttgtttgactaaatcccttgcgtatgtttgccatctggagctgttcccctctaaccccacccccacccccatgcacaagactttgtccattcattaaagttatgtaaaacagcaaattttacataagagcttaatctctttgtctcccatttgagcatttcagtgtgggccttggcatggaagcatgcctgcaggtcgatcccaagctggagaacgagttcaagccaagctgcaccactgcttttcacacactcttcactctgcatcagcttagtatttcttaagaaattaaaagatggcaaaacacatctaaactgtattaataaagtgcttctttcatatttaatgtttttccagataaagaaaactatgatgaatgcctgcatgcttatctatgtttcatagatcagcaagtagaatgtataaaatggaagtgtcagtaattctgctcataattattgctgcagattgaattcacccctaagcaaatatacctctgaacatctgctcacagtctgtatgttctccagacacaatccaaaagacttattatctgaaagattaatgtcacaaagccagagctttataatctcttataaaacatagattgtagccaggcagtggtggcacatgcttttaatcctagcacttgcaaggcagaggcaagcagatctctgagttcaagaccaacctggtctacagagcaaggtccaggacagccaaagctagacagaaaaaactgtatctcaaaagaaaatagacaacaaattacattgttacagctaaaattatcttatgttgaaatttctgtagctcaactttggaatattttcattagagggtaatatttgattatgatcacttctaaaactttagaatttattgttttataatctcttggtttcagtacttacctaaaattttccaaccagtcacccagctaaaacttaaaatatttaagtcctagaattccagttagttttgcaagtaactataaatggtattacagtgagaaatggagcatctgatgtctactcacatgtaaactttacacatatcaaatagatgattgtctatggtctttcttcttttttagagtatatagagtatatagagatagattcatccataataagctcaataaacaaatgtttaaaaatgattgttagatattattgggtatataagtacctaattattaaaattgacttttttataacattgagataaattaaaattcatttattaaaataatatatatgaatttgaaggggttttttttgcaaaacaatttcagcaagcaataccatgacaaaagtgtgtattcaaatggaatgggaaacgaatgtcagtaacttatggtccccgtgtactcattcccagacatgcctgattggtagctgtgacagctccagcgtacttaacaccaagactttaaataagctgccaaaaatgtgtaagactgccatttcattagttttaatttttatatctataccctttctacagccacatactaaacgtagacaagttggccttttcctattgctttaaaggcagaggactgtattgatcagtccaaacttctttctgcatgtacatggaaaactggccaaggcaaacacgtccggaatgatggtatttaagaacaaacattccctggtatcagcaagtacagtgccctgctgacagagcaggagacacaaagtaccatctcgtccctatgttaagtagtgtcacctcatgctcaagggatactgagtggatgctgtaacgcaggttattttctaggctgtgaggatacaagaaaatgaaagtaattaaagtagaacattgctctgtgctatgcttgcagaatgtgtagtgtagtctaggaacagagaggggaaggttctaaatcaaaaaaaatcaagctcatgcctaaggatgtgtgggttgccacctctttagctacctatgcgatccaaacaactataaaacttagaatttattttctctggatgaatttgtgcttgtggagcaatgttggtagggggcagggtcagctggaaaagtggaatgagcaagcagaaaactgagagaagcagaagcttaggaagatgggtaatttccaaaagtttcacaaaagatcaaatcaaagaagtaagctccaccttagaaaaaagtggaacgtcatgctaaggaagcta。
【0113】
下線部分は、Albプロモーターであり、非下線部分は、Albエンハンサーである。
【0114】
1.2 Tet-On 3G-HGH polyA 融合フラグメントの調製
1.2.1 Tet-On 3G フラグメントの調製
pCMV-Tet3Gをテンプレートとして、表2のプライマーを使用して、Tet-On 3Gターゲットフラグメントを増幅し、回収しておく。
【0115】
表2.Tet On 3G フラグメント増幅プライマーリスト
【表2】
【0116】
Tet-On 3Gターゲットフラグメントの1つの鎖のヌクレオチド配列(配列番号2)は、以下の通り(5’-3’)であり、相補鎖は、コード配列である。
【0117】
Ttacccggggagcatgtcaaggtcaaaatcgtcaagagcgtcagcaggcagcatatcaaggtcaaagtcgtcaagggcatcggctgggagcatgtctaagtcaaaatcgtcaagggcgtcggtcggcccgccgctttcgcactttagctgtttctccaggccacatatgattagttccaggccgaaaaggaaggcaggttcggctccctgccggtcgaacagctcaattgcttgtttcagaagtgggggcatagaatcggtggtaggtgtctctctttcctcttttgctacttgatgctcctgttcctccaatacgcagcccagtgtaaagtggcccacggcggacagagcgtacagtgcgttctccagggagaagccttgctgacacaggaacgcgagctgattttccagggtttcgtactgtttctctgttgggcgggtgccgagatgcactttagccccgtcgcgatgtgagaggagagcacagcggtatgacttggcgttgttccgcagaaagtcttgccatgactcgccttccagggggcaggagtgggtatgatgcctgtccagcatctcgattggcagggcatcgagcagggcccgcttgttcttcacgtgccagtacagggtaggctgctcaactcccagcttttgagcgagtttccttgtcgtcaggccttcgataccgactccattgagtaattccagagcagagtttatgactttgctcttgtccagtctagacat。
【0118】
1.2.2 HGH polyA フラグメントの調製
pRosa26-Cas-CAG HGHをテンプレートとして使用し、表3のプライマーを使用して、HGH polyAターゲットフラグメントを増幅し、回収しておく。
【0119】
表3.HGH polyAフラグメント増幅プライマーリスト
【表3】
【0120】
HGH polyAターゲットフラグメントの1つの鎖のヌクレオチド配列(配列番号3)は、以下の通りである(5’-3’)。
【0121】
Ggctgcaggaattcaacaggcatctactgagtggacccaacgcatgagaggacagtgccaagcaagcaactcaaatgtcccaccggttgggccatggcaggtagcctatgctgtgtctggacgtcctcctgctggtatagttattttaaaatcagaaggacagggaagggagcagtggttcacgcctgtaatcccagcaatttgggaggccaaggtgggtagatcacctgagattaggagttggagaccagcctggccaatatggtgaaaccccgtctctaccaaaaaaacaaaaattagctgagcctggtcatgcatgcctggaatcccaacaactcgggaggctgaggcaggagaatcgcttgaacccaggaggcggagattgcagtgagccaagattgtgccactgcactccagcttggttcccaatagaccccgcaggccctacaggttgtcttcccaacttgccccttgctccataccacccccctccaccccataatattatagaaggacacctagtcagacaaaatgatgcaacttaattttattaggacaaggctggtgggcactggagtggcaacttccagggccaggagaggc12actggggaggggtcacagggatgccacccatc。
【0122】
1.2.3 Tet-On 3G-HGH polyA フラグメントの調製
表4のプライマーを使用し、テンプレートとしてTet-On3GおよびHGH polyAを使用して、融合PCRによって、ターゲットフラグメントTet-On 3G-HGH polyAを増幅し、回収した。
【0123】
表4.Tet-On 3G-HGH polyA フラグメント融合PCR プライマーリスト
【表4】
【0124】
Tet-On 3G-HGH polyA融合ターゲットフラグメントのストランドの1つのヌクレオチド配列は、以下の通りである(5’-3’)。
【0125】
GgctgcaggaattcaacaggcatctactgagtggacccaacgcatgagaggacagtgccaagcaagcaactcaaatgtcccaccggttgggccatggcaggtagcctatgctgtgtctggacgtcctcctgctggtatagttattttaaaatcagaaggacagggaagggagcagtggttcacgcctgtaatcccagcaatttgggaggccaaggtgggtagatcacctgagattaggagttggagaccagcctggccaatatggtgaaaccccgtctctaccaaaaaaacaaaaattagctgagcctggtcatgcatgcctggaatcccaacaactcgggaggctgaggcaggagaatcgcttgaacccaggaggcggagattgcagtgagccaagattgtgccactgcactccagcttggttcccaatagaccccgcaggccctacaggttgtcttcccaacttgccccttgctccataccacccccctccaccccataatattatagaaggacacctagtcagacaaaatgatgcaacttaattttattaggacaaggctggtgggcactggagtggcaacttccagggccaggagaggcactggggaggggtcacagggatgccacccatcTtacccggggagcatgtcaaggtcaaaatcgtcaagagcgtcagcaggcagcatatcaaggtcaaagtcgtcaagggcatcggctgggagcatgtctaagtcaaaatcgtcaagggcgtcggtcggcccgccgctttcgcactttagctgtttctccaggccacatatgattagttccaggccgaaaaggaaggcaggttcggctccctgccggtcgaacagctcaattgcttgtttcagaagtgggggcatagaatcggtggtaggtgtctctctttcctcttttgctacttgatgctcctgttcctccaatacgcagcccagtgtaaagtggcccacggcggacagagcgtacagtgcgttctccagggagaagccttgctgacacaggaacgcgagctgattttccagggtttcgtactgtttctctgttgggcgggtgccgagatgcactttagccccgtcgcgatgtgagaggagagcacagcggtatgacttggcgttgttccgcagaaagtcttgccatgactcgccttccagggggcaggagtgggtatgatgcctgtccagcatctcgattggcagggcatcgagcagggcccgcttgttcttcacgtgccagtacagggtaggctgctcaactcccagcttttgagcgagtttccttgtcgtcaggccttcgataccgactccattgagtaattccagagcagagtttatgactttgctcttgtccagtctagacat。
【0126】
下線部分は、HGHpolyAであり、非下線部分は、Tet-On3Gである。
【0127】
1.3 中間ベクターの調製(Rosa26arm1-Albエンハンサー-Albプロモーター-Tet-On3G-HGH polyA-Rosa26 arm2フラグメントを含む)
1.3.1 pRosa26-Casプラスミド(Jiangsu Jicui Yaokang Biotechnology Co.,Ltd.より提供、ベクター自体は、Rosa26 arm1とRosa26arm2を含む。図18は、マップを示す。)をAscIで酵素消化し、ライゲーションベクターとして回収した。プラスミドは、Rosa26arm1およびRosa26arm2配列を含む。
【0128】
Rosa26 arm1の一本鎖のヌクレオチド配列(配列番号4)は、以下の通りである。
【0129】
TTggccggtgcgccgccaatcagcggaggctgccggggccgcctaaagaagaggctgtgctttggggctccggctcctcagagagcctcggctaggtaggggatcgggactctggcgggagggcggcttggtgcgtttgcggggatgggcggccgcggcaggccctccgagcgtggtggagccgttctgtgagacagccgggtacgagtcgtgacgctggaaggggcaagcgggtggtgggcaggaatgcggtccgccctgcagcaaccggagggggagggagaagggagcggaaaagtctccaccggacgcggccatggctcgggggggggggggcagcggaggagcgcttccggccgacgtctcgtcgctgattggcttcttttcctcccgccgtgtgtgaaaacacaaatggcgtgttttggttggcgtaaggcgcctgtcagttaacggcagccggagtgcgcagccgccggcagcctcgctctgcccactgggtggggcgggaggtaggtggggtgaggcgagctggacgtgcgggcgcggtcggcctctggcggggcgggggaggggagggagggtcagcgaaagtagctcgcgcgcgagcggccgcccaccctccccttcctctgggggagtcgttttacccgccgccggccgggcctcgtcgtctgattggctctcggggcccagaaaactggcccttgccattggctcgtgttcgtgcaagttgagtccatccgccggccagcgggggcggcgaggaggcgctcccaggttccggccctcccctcggccccgcgccgcagagtctggccgcgcgcccctgcgcaacgtggcaggaagcgcgcgctgggggcggggacgggcagtagggctgagcggctgcggggcgggtgcaagcacgtttccgacttgagttgcctcaagaggggcgtgctgagccagacctccatcgcgcactccggggagtggagggaaggagcgagggctcagttgggctgttttggaggcaggaagcacttgctctcccaaagtcgctctgagttgttatcagtaagggagctgcagtggagtaggcggggagaaggccgcacccttctccggaggggggaggggagtgttgcaatacctttctgggagttctctgctgcctcctggcttctgaggaccgccctgggcctgggagaatcccttccccctcttccctcgtgatctgcaactccagtctttgcagtctggtacttccaagctcattagatgccatcatgctctcactgcctcctcagcttcaagaggaatctggaaaaagcagtcccactggtcaggaaaggaacactagtgcacttatc。
【0130】
Rosa26 arm2の一本鎖のヌクレオチド配列(配列番号5)は、以下の通りである。
【0131】
tgtgtgggcgttgtcctgcaggggaattgaacaggtgtaaaattggagggacaagacttcccacagattttcggttttgtcgggaagttttttaataggggcaaataaggaaaatgggaggataggtagtcatctggggttttatgcagcaaaactacaggttattattgcttgtgatccgcctcggagtattttccatcgaggtagattaaagacatgctcacccgagttttatactctcctgcttgagatccttactacagtatgaaattacagtgtcgcgagttagactatgtaagcagaattttaatcatttttaaagagcccagtacttcatatccatttctcccgctccttctgcagccttatcaaaaggtattttagaacactcattttagccccattttcatttattatactggcttatccaacccctagacagagcattggcattttccctttcctgatcttagaagtctgatgactcatgaaaccagacagattagttacatacaccacaaatcgaggctgtagctggggcctcaacactgcagttcttttataactccttagtacactttttgttgatcctttgccttgatccttaattttcagtgtctatcacctctcccgtcaggtggtgttccacatttgggcctattctcagtccagggagttttacaacaatagatgtattgagaatccaacctaaagcttaactttccactcccatgaatgcctctctcctttttctccatttataaactgagctattaaccattaatggtttccaggtggatgtctcctcccccaatattacctgatgtatcttacatattgccaggctgatattttaagacattaaaaggtatatttcattattgagccacatggtattgattactgcttactaaaattttgtcattgtacacatctgtaaaaggtggttccttttggaatgcaaagttcaggtgtttgttgtctttcctgacctaaggtcttgtgagcttgtattttttctatttaagcagtgctttctcttggactggcttgactcatggcattctacacgttattgctggtctaaatgtgat。
【0132】
1.3.2 SLICライゲーション形質転換法を使用して、ライゲーション2×HIFI Mix、線形化ベクターpRosa26-Cas、上記のステップで調製したAlbエンハンサー-AlbプロモーターフラグメントおよびTet-On 3G-HGHpolyAフラグメントを滅菌チューブに加え、さらに滅菌水を加え20μLにし、50°Cで30分間反応させて、Rosa26arm1-Albエンハンサー-Albプロモーター-Tet-On 3G-HGH polyA-Rosa26 arm2フラグメントを含む中間ベクターを得た。そして、トップ10の化学的コンピテントトランスフォーメーションを行い、さらにSpec耐性LB固形寒天培地のコーティングを行ったあと、37℃で一晩倒置培養した。
【0133】
1.3.3 中間ベクターの同定
プレートからクローンを1つ選び、Spec耐性を含む4mLLBチューブで培養した。表5のプライマーを使用して、細菌溶液のPCR同定を実行し(その結果、図2を参照)、そして、PCR同定によって得られた陽性クローンに対して酵素消化同定を行った(表6は、予想される酵素消化バンドを示す。図3は、その結果を示す。)。そのうち、同定により正しいと判定されたものは、中間ベクターである(Alb-proによって表される)。PCRと酵素消化の結果は、次のとおりである。5#と9#は、Rosa26 arm1-Alb エンハンサー-Alb プロモーター-Tet-On 3G-HGH polyA-Rosa26 arm2フラグメントを含む正しい中間ベクターであった。
【0134】
表5.Alb-proバクテリア液体PCR検証プライマー
【表5】
【0135】
表6.中間ベクターの酵素消化同定が行われた予想バンドサイズ
【表6】
【0136】
1.4 uPA-TRE3G 融合フラグメントの調製
1.4.1 uPA-ウサギpolyA フラグメントの調製
Alb-uPA-teton-finalをテンプレートとして使用し、表7のプライマーを使用して、uPA-ウサギpolyAフラグメントを増幅し、回収しておく。
【0137】
表7.uPA-ウサギpolyAフラグメント増幅プライマーリスト
【表7】
【0138】
そのうち、uPA-ウサギpolyA-Fプライマーの太字の下線が引かれた部分は、Kozak配列である。
【0139】
uPA-ウサギpolyAターゲット断片の一本の鎖のヌクレオチド配列(配列番号6)は、以下の通りである。
【0140】
atgaaagtctggctggcgagcctgttcctctgcgccttggtggtgaaaaactctgaaggtggcagtgtacttggagctcctgatgaatcaaactgtggctgtcagaacggaggtgtatgcgtgtcctacaagtacttctccagaattcgccgatgcagctgcccaaggaaattccagggggagcactgtgagatagatgcatcaaaaacctgctatcatggaaatggtgactcttaccgaggaaaggccaacactgataccaaaggtcggccctgcctggcctggaatgcgcctgctgtccttcagaaaccctacaatgcccacagacctgatgctattagcctaggcctggggaaacacaattactgcaggaaccctgacaaccagaagcgaccctggtgctatgtgcagattggcctaaggcagtttgtccaagaatgcatggtgcatgactgctctcttagcaaaaagccttcttcgtctgtagaccaacaaggcttccagtgtggccagaaggctctaaggccccgctttaagattgttgggggagaattcactgaggtggagaaccagccctggttcgcagccatctaccagaagaacaagggaggaagtcctccctcctttaaatgtggtgggagtctcatcagtccttgctgggtggccagtgccgcacactgcttcattcaactcccaaagaaggaaaactacgttgtctacctgggtcagtcgaaggagagctcctataatcctggagagatgaagtttgaggtggagcagctcatcttgcacgaatactacagggaagacagcctggcctaccataatgatattgccttgctgaagatacgtaccagcacgggccaatgtgcacagccatccaggtccatacagaccatctgcctgcccccaaggtttactgatgctccgtttggttcagactgtgagatcactggctttggaaaagagtctgaaagtgactatctctatccaaagaacctgaaaatgtccgtcgtaaagcttgtttctcatgaacagtgtatgcagccccactactatggctctgaaattaattataaaatgctgtgtgctgcggacccagagtggaaaacagattcctgcaagggcgattctggaggaccgcttatctgtaacatcgaaggccgcccaactctgagtgggattgtgagctggggccgaggatgtgcagagaaaaacaagcccggtgtctacacgagggtctcacacttcctggactggattcaatcccacattggagaagagaaaggtctggccttctgagatctttttccctctgccaaaaattatggggacatcatgaagccccttgagcatctgacttctggctaataaaggaaatttattttcattgcaatagtgtgttggaattttttgtgtctctcactcggaaggacatatgggagggcaaatcatttaaaacatcagaatgagtatttggtttagagtttggcaacatatgcccatatgctggctgccatgaacaaaggttggctataaagaggtcatcagtatatgaaacagccccctgctgtccattccttattccatagaaaagccttgacttgaggttagattttttttatattttgttttgtgttatttttttctttaacatccctaaaattttccttacatgttttactagccagatttttcctcctctcctgactact。
【0141】
下線部分は、uPAのコード配列であり、非下線部分は、ウサギのpolyA配列である。uPAのアミノ酸配列は、以下の配列番号7のものである。
【0142】
mkvwlaslflcalvvknseggsvlgapdesncgcqnggvcvsykyfsrirrcscprkfqgehceidasktcyhgngdsyrgkantdtkgrpclawnapavlqkpynahrpdaislglgkhnycrnpdnqkrpwcyvqiglrqfvqecmvhdcslskkpsssvdqqgfqcgqkalrprfkivggeftevenqpwfaaiyqknkggsppsfkcggslispcwvasaahcfiqlpkkenyvvylgqskessynpgemkfeveqlilheyyredslayhndiallkirtstgqcaqpsrsiqticlpprftdapfgsdceitgfgkesesdylypknlkmsvvklvsheqcmqphyygseinykmLcaadpewktdsckgdsggplicniegrptlsgivswgrgcaeknkpgvytrvshfldwiqshigeekglaf。
【0143】
1.4.2 TRE3G フラグメントの調製
pTRE3Gをテンプレートとして使用し、表8のプライマーを使用して、TRE3Gフラグメントを増幅し、回収しておく。
【0144】
表8.TRE3Gフラグメント増幅プライマーリスト
【表8】
【0145】
TRE3Gフラグメントのヌクレオチド配列(配列番号8)は、以下の通りである。
【0146】
gagtttactccctatcagtgatagagaacgtatgaagagtttactccctatcagtgatagagaacgtatgcagactttactccctatcagtgatagagaacgtataaggagtttactccctatcagtgatagagaacgtatgaccagtttactccctatcagtgatagagaacgtatctacagtttactccctatcagtgatagagaacgtatatccagtttactccctatcagtgatagagaacgtataagctttaggcgtgtacggtgggcgcctataaaagcagagctcgtttagtgaaccgtcagatcgcctggagcaattccacaacacttttgtcttataccaactttccgtaccacttcctaccctcgtaaa。
【0147】
1.4.3 TRE3G-uPA-ウサギpolyA 融合フラグメントの調製
表9のプライマーを使用して、融合PCRによってuPA-ウサギpolyAをTRE3Gと融合し、ターゲットバンドを回収しておく。
【0148】
表9.1uPA-TRE3GP融合フラグメントを増幅するためのプライマーのリスト
【表9】
【0149】
16TRE3G-uPA-ウサギpolyA融合フラグメントの一本の鎖のヌクレオチド配列は、以下の通りである。
【0150】
【0151】
ここで、下線部分の配列は、TRE3G 配列であり、波線は、uPAヌクレオチド配列を表し、斜体は、ウサギのpolyA配列を表す。
【0152】
1.5 ターゲティングベクターの調製
1.5.1 上記のステップで調製した中間ベクター(Alb-pro)を、AscIで酵素消化し、線形化して、ライゲーションベクターとする。
【0153】
1.5.2 SLIC法を使用して、2×HIFI Mix、RE3G-uPA-ウサギpolyA融合フラグメントおよび線形化中間ベクター(Alb-pro)フラグメントを滅菌チューブに加え、さらに滅菌水を加え20μLにする。50°Cで30分間反応させて、Rosa26 arm1-Alb エンハンサー-Alb プロモーター-Tet-On 3G-HGH polyA-ウサギ17polyA-uPA-RE3G-Rosa26 arm2フラグメント(Alb最終ベクターと称する)を含むターゲティングベクターを得た。さらに、トップ10の化学的コンピテントトランスフォーメーションを行い、そしてSpec耐性LB固形寒天培地のコーティングを行ったあと、37℃で一晩倒置培養した。
【0154】
1.5.3 ターゲティングベクターの同定
プレートからクローンを1つ選び、Spec耐性を含む4mLLBチューブで培養した。表10のプライマーを使用して、細菌溶液のPCR同定を実行し、PCRによって陽性と同定されたクローン(図4を参照)に対して酵素消化同定を行った(表11は、酵素消化同定の予想バンドサイズを示す)。図5は、その結果を示す。同定により正しいと判定されたものは、ターゲティングベクターであり、表12のプライマーを使用して、正しいクローンを配列決定する(表12は、配列決定に使用されるプライマーを示す)。
【0155】
PCR、酵素消化同定および配列決定を行い、その結果、3#、7#、および10#が、実施例1に記載の正しいターゲティングベクターであることを示した。
【0156】
表10.ターゲティングベクターを含む細菌液同定プライマー
【表10】
【0157】
表11.ターゲティングベクターの酵素消化同定スキーム
【表11】
【0158】
表12.Rosa26Alb-tet3G-upA-エンハンサー-pro-tetOn3Gシーケンシングプライマー
【表12】
【0159】
図1は、構築後のターゲティングベクター上の各要素の位置関係の概略図を示す。
【0160】
[実施例3]
マウスゲノムH11サイトをターゲット挿入サイトとする対照ターゲットベクターを構築する。図6は、その要素構造の概略図を示す。実施例1のターゲティングベクターと比較して、両者の相違点は、両端の相同アームの配列にある。
【0161】
対照ターゲティングベクターの構築方法は、以下の通りである。
【0162】
1 ベクター骨格の調製
PMD18T-H11-CAG-FLPo(Jiangsu Jicui Yaokang Biotechnology Co.,Ltd.より提供、図19を参照)をテンプレートとして使用し、表13のプライマーを使用して4965 bpフラグメントを増幅し、回収し、さらに、バックボーンベクターとしてBglII酵素消化によって回収しておく。
【0163】
表13.バックボーンベクター増幅プライマー
【表13】
【0164】
2 実施例1の配列決定補正されたターゲティングベクターをBamHIで酵素消化した。酵素消化後のフラグメントサイズは、それぞれ5851bpおよび5159bpであり、5851bpフラグメントが回収された。
【0165】
3 T4リガーゼを使用して上記のバックボーンベクターと5851bpフラグメントをライゲーションし、さらに、トップ10の化学的コンピテントトランスフォーメーションを行い、そして、Amp耐性LB固形寒天培地のコーティングを行ったあと、37℃で一晩倒置培養した。
【0166】
プレートからクローンを1つ選び、Amp耐性を含む4mLLB試験管で培養した。表14のプライマーを使用して、細菌溶液のPCR同定を実行した。図7は、その結果を示す。さらに、PCR陽性クローンに対して、酵素消化同定を行った(表15は、酵素消化の予想されるバンドを示す)。図8は、その結果を示す。同定により正しいと判定されたクローンは、対照ターゲティングベクター(Alb-H11と称する)であった。PCRと酵素消化同定の結果は、1#と7#が正しいAlb-H11プラスミドであることを示した。
【0167】
表14.Alb-H11バクテリアリキッドPCR検証プライマー
【表14】
【0168】
表15.Alb-H11プラスミド酵素消化検証スキーム
【表15】
【0169】
対照ターゲティングベクターにおいて、H11arm1の鎖の1つのヌクレオチド配列は、以下の通りである。
【0170】
ctcagcagacacccaggataagtgcactagtgttcctttcctgaccagtgggactgctttttccagattcctcttgaagctgaggaggcagtgagagcatgatggcatctaatgagcttggaagtaccagactgccctgatccacagccaggttttgctgaaaagtgaccagtttgtcctcctccagtagagtgggcagctgaaggattataatctactgtcaagacttggaggcccctgcagtcaaagtccaatagaatattatgaaatggagaatggcttattttaatctctatagtggaattaaaatagcatttatggccccagatccataattaatccaatgactggtcaaattagcttgaacctgactgaaaaacctgcaatcagtatagtatctttcagaatgctttacattcaatttataataccagacttcaagttgtaagttaacaattttgagagaaactaatgcagcagaggcaagggaaagacttaaattaatgtgaccattaattagttggagtcaggctggattaacattgtgccagtaaatttcagaaaaattactatatgacttctctgtaaactttgattttgtagagtataatattgattccttgatacttgccacaagctactttcagggttagtccagcttaaactaatgctatcagaactttatgtgcagaagaaattccagaagtcctaaggtaaaattaaaacgtgaaaggaactcatt19tagactgtcttagttcatggaagaaataaacacagtaccagccatatcgttcacacacgtggcatatgtaacttttaataaaccaaaagaaaaagtcccaaatattcaagtgaaaaaaatccaaacagttgacacaagcctaactgatagttactttatgtacagctgtatgtataagttcaaaaaaagctaccctatttgtatgtacaaaagtttatacacaggtctgtacataagggtctatacattttattttttcagaacccttaggtgtcacctctagaagacaccaacacttcattcacatattttataaaagaaagacttccaggactgacaatcttgtatcccttgtatttgaaccatgtaggttcattcgatttaacagccttctgtca。
【0171】
H11arm2の鎖の1つのヌクレオチド配列は、以下の通りである。
【0172】
tagctcaccttgaaaatggaaacatgtctgacaagagccttgagctgaatatcatccagagtatttgctagagacagggtcttaagtctcattaaattgcttagaagtgtgtttagtcctataaactatgtctcatttgtgtgtccttcacaaagagcgctagtgtcgatcatccattagcctagcctataaaggtgacacaacctggtcagtccctctgtatgtctactatttccccttctgatttctactatcttctcaagaactggttcttcagcttcctttgggaaatgtcactttttaatgatgtgtgttttgcttatgtatatgtctacatactacccatgtgcttggtcactgcagaggccagaagacggtgtcaggtgcactggaactagagttaatgacagatgtgagccatagggtgctttgttcacatctttccagtcccaaatgcgtctaaacttatgtgatacatactagattaccacaaaattgctccaaagacacctttctccctctgagatgaatctctggctggccttgctctaggcaatcctgtgttcaattcaaggactgaatttgattacatcggtaatccagtgccccaggcatttctgctttttctgtaaggttcttatcccctggaagactgtttacgtattcatttttttttgagactaagtttcaggtagaaaaagcttgccttgaacttcactatatagggcttatcttgaactcttgtgggtcttccacctttcttcagttagcttctgtacactgccagacatgaaaatcagatccatttatagatagatggtcatgagccaccatgtgggtgtctaaaattgatctcaggacctctgaaagaccagctagttctcttaactgctgagccatctctctagcgtgtctatacacatttaatatccccttgttccctttctgcttcatcttgctgatcatgattagtgtttgcctttgttacctgttccatcagcttcagcctgaagagtaagtagttctctattggcagtttgacacatcctgcccttac。
【0173】
[実施例4]
以下の表に示すように、構築されたベクター(ターゲティングベクターまたはコントロールターゲティングベクター)とCas9システムで、注入システムを構成した。
【0174】
ターゲティングベクターで使用されるsgRNAのターゲット配列は、AGTCTTCTGGGCAGGCTTAA(配列番号9)である。
【0175】
コントロールターゲティングベクターで使用されるsgRNAのターゲット配列は、CTGAGCCAACAGTGGTAGTAである。
【0176】
マイクロインジェクションによりNCG野生型マウスの0.5日(精子を卵培養皿に加えてから12時間)受精卵(1-2PL/胚)に注射し、0.5日(雌ラットと結紮雄ラットの交配成功から12時間(血栓摘出成功))偽妊娠雌マウスに胚を移植(卵管移植による胚着床)した。マウスが生まれた後、ターゲットマウスを遺伝的同定によってスクリーニングした。陽性マウスは、H11-alb-Tet On3G-uPA(実施例3の対照ターゲットベクターを使用して構築された)およびRosa26-alb-Tet-On3G-uPAと名付けられた(実施例1のターゲティングベクターを使用して構築された)。陽性のF0マウスとバックグラウンドマウス(NCGマウス)を戻し交配してF1を得、F1世代のマウスの尾を遺伝的に同定した。陽性のF1マウスを育成して、検証実験のためのシステムを構築した。
【0177】
表16.H11-alb-Tet On3G-uPAマウス識別プライマーリスト
【表16】
【0178】
図9の同定結果は、番号146#、149#、150#、152#、153#、155#、156#、157#、158#、161#、163#、166#、167#、168#、170#、172#がF1世代の陽性H11-alb-Tet On3G-uPAヘテロ接合マウス(ki/wt)であり、その他が野生型であることを示した。
【0179】
表17.Rosa26-alb-Tet-On3G-uPAF1世代のマウス識別プライマーリスト
【表17】
【0180】
図10の同定結果は、No.15のマウスが、F1世代陽性のRosa26-alb-Tet-On3G-uPAヘテロ接合マウスであることを示した。
【0181】
[実施例5]
マウスの肝障害の規則性の測定
1 H11-alb-TetOn3G-uPAマウス肝障害の規則性の測定
6~8週齢のバックグラウンドマウス(WT)、H11-alb-Tet On3G-uPAヘテロ接合マウスおよびホモ接合マウスに、強制経口投与または飲用により2.0mg/mL Doxを投与し、さまざまな時点で眼窩から血液を採取し、血清中のALT活性のレベルを測定した。
【0182】
図11の実験結果は、H11-alb-Tet On3G-uPAヘテロ接合マウスおよびホモ接合マウスのいずれに対して、Doxを投与した後、ALTマウスが増加したが、重度の肝障害のレベルに達しなかったことを示した。
【0183】
2 Rosa26-alb-Tet-On3G-uPAマウス肝障害の規則性の測定
2週齢のNCGバックグラウンドマウスとRosa26-alb-Tet-On3G-uPAヘテロ接合マウスに対して、それぞれ2、4、6、8、10、12、14、16週齢で眼窩から血液を採取し、血清中のALT活性のレベルを測定した。驚いたことは、Rosa26-alb-Tet-On3G-uPAヘテロ接合マウスのALT活性が、3~4週齢で増加し、週齡の増加とともに増加し、8~10週齢で急激に減少した(図12を参照)。
【0184】
4週齢のRosa26-alb-Tet-On3G-uPAマウスの肝臓を採取し、パラホルムアルデヒドで固定した後、パラフィン包埋し、切片化し、HE染色分析を行った。NCGバックグラウンドマウスと比較して、4週齢のRosa26-alb-Tet-On3G-uPAマウスは、重度の肝障害になり、肝細胞バルーニング、局所壊死、および細胞質溶解が発生した(図13を参照)。
【0185】
以上により、Rosa26-alb-Tet-On3G-uPAヘテロ接合マウスは、自発的に肝障害を起こす可能性があり、肝障害の程度は、外因性肝細胞の移植の要件を満たすことができる。Rosa26-alb-Tet-On3G-uPAホモ接合マウスも、自発的に肝障害を起こす可能性がある(図20を参照)。
【0186】
3 様々な週齢のRosa26-alb-Tet-On3G-uPAマウスは、いずれもDoxに対して反応する。
【0187】
3~4週齢および6~8週齢のRosa26-alb-Tet-On3G-uPAマウスに対して、1~2mg/mLのDox水を与え、飲用後の0/3/5/7日目に採血し(3~4週齢)、および0/2/4/6/8日目(6~8週齢)に採血し、血清中のALT活性を測定した。マウスは7日目または8日目に安楽死させた。マウスの肝臓を採取し、固定し、パラフィンに包埋し、切片化し、HE染色を行って、肝細胞の損傷を分析した。
【0188】
図14および図15は、その結果を示す。Rosa26-alb-Tet-On3G-uPAマウスは、3~4週齢または6~8週齢にかかわらず、いずれもDoxに対して応答できた。通常の飲料水を使用したRosa26-alb-Tet-On3G-uPAマウスと比較して、Dox水を投与したマウスは、そのALT活性が大幅に上昇し、肝障害が悪化した。
【0189】
以上により、H11-alb-Tet On3G-uPAマウスと比較して、Rosa26-alb-Tet-On3G-uPAマウスは、Dox応答に対してより敏感であり、自発的に損傷する可能性があることをわかった。したがって、Rosa26-alb-Tet-On3G-uPAマウスは、肝障害後の肝臓の再構築に用いられることができる。
【0190】
[実施例6]
肝細胞移植試験
1 緑色蛍光肝細胞の分離
5~6週齢のB6-G/R(Jiangsu Jicui Yaokang Biotechnology Co., Ltd.より提供、系統番号がT006163である)のオスのマウスを選択した。マウスを麻酔した後、アルコールで腹部を洗浄した。腹腔を露出するように切開し、下大静脈と門脈を露出させ、下大静脈から保持針を挿入した。前灌流が成功した後、門脈を切開した。予熱した灌流バッファー-P1(HBSSで最終濃度5mMのEDTA溶液を調製)および酵素バッファー-P2(HBSSで最終濃度5mMのCaCl溶液(pH7.2)を調製、使用前にコラゲナーゼを添加)を順次に灌流した。灌流が完了したあと、肝臓全体を取り出し、PBSで洗浄し、P2溶液に入れた。肝臓のエンベロープをこすって、肝臓細胞をP2に入れ、細胞懸濁液をろ過した。ろ液に10%FBSのDMEMを加え、400rpm、4℃で3分間遠心分離し、上清を除去した。
【0191】
上記のペレットにパーコール混合液(10mLのDMEM+1mLの10xPBS+9mLのパーコール)を加えて細胞を再懸濁し、4℃、1100rpmで3分間遠心分離し、上清を除去した。
【0192】
予冷したDMEMで細胞を洗浄し、細胞の生存率を確認した。カウント結果に基づいて、使用に適した濃度に細胞を希釈した。
【0193】
2 マウス脾臓からの同所性肝細胞移植
Rosa26-alb-Tet-On3G-uPAマウスとNCGマウスをランダムに以下のグループに分けた(表18を参照)。脾臓内移植により、各マウスに新鮮な緑色蛍光肝細胞を注射した。移植手術終了後、37℃の高温ステージで保温し、自然に目覚めた後、抗生物質を注射し、ケージに戻す。以下の表のように、通常の飲料水またはDox水を与えた。マウスの肝細胞移植が完了してから10週間後、すべてのマウスをエンドポイントとして選択した。マウスの緑色蛍光細胞の分布を観察するために、肝臓を固定し、包埋し、凍結切片にした。図16および図17は、その結果を示す。
【0194】
表18.マウス肝細胞移植および条件付き治療群
【表18】
【0195】
図16および図17の結果
(1)3~4週齢および6~8週齢のRosa26-alb-Tet-On3G-uPAマウスに肝細胞移植を行い、通常の飲料水を1週間与えた。外因性肝細胞がマウス肝臓の表面に均一に分布しており、再構築率が50%に達することができる。
【0196】
(2)3~4週齢および6~8週齢のRosa26-alb-Tet-On3G-uPAマウスに肝細胞移植を行い、Dox水を1週間与えた。緑色蛍光肝細胞は、肝臓の表面に均一に分布した。再構築率は、90%であった。通常の飲料水グループと比較して、マウスにDox水を与えるマウスは、外因性肝細胞のコロニー形成を大幅に改善できた。
【0197】
[実施例7]
Rosa26-alb-Tet-On3G-uPAマウスの生存率の測定
Rosa26-alb-Tet-On3G-uPAヘテロ接合マウスをNCGバックグラウンドマウスと交配させて、実験用の子孫Rosa26-alb-Tet-On3G-uPAヘテロ接合マウスを得た。これによって、1335匹のRosa26-alb-Tet-On3G-uPAヘテロ接合マウスが得られ、周産期まで1299匹が生き延びた。生存率が97%と高かった。Rosa26-alb-Tet-On3G-uPAホモ接合およびヘテロ接合の生存率は、ほぼ同じであり、uPA-SCIDマウスの周産期生存率(70%-75%)と比較して、本開示の実施形態の方法によって、マウスの生存率を大幅に改善した。
【0198】
以上により、本開示の実施形態は、肝臓におけるuPAの特異的発現を調節するためのRosa26サイトの相同性アームを運ぶTet onシステムのベクター(実施例1)を提供し、このベクターをRosa26サイトに組み込むことができる。これらの要素の組み合わせによって構成されるベクターを使用して構築されたマウスモデルRosa26-alb-Tet-On3G-uPAは、ゲノム上の隣接配列の干渉効果を回避し、内因性遺伝子に損傷を与えず、マウスの正常な成長と発達を保証するとともに、マウスの機能も正常である。
【0199】
予想外のことは、このベクターを使用して構築されたマウスモデルRosa26-alb-Tet-On3G-uPAが、自発的な肝障害を引き起こし(肝障害が2~3週齢で発生し、ALT値が8週齢で300 IU/Lに達する)、また、自発的肝損傷のレベルが、外因性肝細胞の移植の要件を十分に満たす。つまり、外因性肝細胞のコロニー形成は、Dox誘導なしで達成できるため、移植ステップがより簡単になる。この自発的な肝障害の表現型は、Tet onシステムによるタンパク質発現の調節の特性の認識を破った。
【0200】
さらに、Rosa26-alb-Tet-On3G-uPAは、自発的な肝障害を引き起こすとともに、さまざまな成長段階でDoxに応答できる。つまり、Dox誘導を使用すると、マウスの肝障害のレベルを悪化させ、外因性肝細胞のコロニー形成率を高めることができる。
【0201】
自発的な肝障害を引き起こすとともに、Dox誘導によって肝障害を悪化させることができるRosa26-alb-Tet-On3G-uPAマウスの特性によって、さまざまな週齡のマウスを自由に選択して、その自発的な肝障害の特性を利用して肝臓の再構築を実現することができる。または、Dox誘導により、外因性肝細胞のコロニー形成率を改善した。肝臓の再構築にRosa26-alb-Tet-On3G-uPAマウスを使用すると、移植ウィンドウが週齡に制限されず、移植の再構築条件がより柔軟になった。
【0202】
なお、本開示の実施例によるRosa26-alb-Tet-On3G-uPAマウスのハイブリッド子孫の死亡率は、既存の自発的肝損傷マウスモデルの死亡率よりもはるかに低く、これは、肝障害マウスモデルの大規模な使用に寄与できる。
【0203】
[実施例8]
本実施例は、肝臓癌細胞株HepG2に対する第1の発現カセットと第2の発現カセットの間の異なる接続関係の影響に関し、次のステップを含む。
【0204】
実施例1のRosa26 arm1-Alb エンハンサー-Alb プロモーター-Tet-On 3G-HGH polyA-ウサギ polyA-uPA-RE3G-Rosa26 arm2をテンプレートとして使用して、第1の発現カセットと第2の発現カセットの間の接続関係(テールツーテール(A)、テールツーヘッド(B)、ヘッドツーヘッド(C))が異なる発現ベクターを調製し、発現ベクターは、ターゲット配列と、マウスゲノムのターゲットサイト(Rosa26)へのターゲット配列の挿入を仲介するための5’末端相同性アーム配列(Rosa26 arm1)および3’末端相同性アーム配列(Rosa26 arm2)を含む(図21が各要素位置関係を示す)。
【0205】
(1)HepG2細胞を回復させ増殖させる。
(2)HepG2細胞に対するエレクトロポレーション
【0206】
DPBSを培養皿に入れ細胞を洗浄し、上清を除去し、HepsG2細胞を消化して取得し、そして、細胞をカウントして20等分(1.5x106/パーツ)に分割し、エレクトロポレーション溶液と異なる接続関係のプラスミドを細胞に入れて、均一に混合し、さらに、エレクトロポレーションを実施するための電極カップに移動した。エレクトロポレーションが完了したあと、細胞懸濁液をすばやく吸引し、培養用のペトリ皿に入れた。
【0207】
(3)エレクトロポレーションが完了してから12時間後、培地と浮遊死細胞を除去し、通常の培地を加えて12時間培養を続けた。
【0208】
(4)エレクトロポレーションが完了してから24時間後、表19の処理方法に従って、通常の培地を入れ替えるか、Dox培地を加えて培養を続けた。
【0209】
表19.HepG2肝細胞癌細胞および条件付き治療のグループ化に対する異なる接続関係を持つ2つの発現カセットの効果
【表19】
【0210】
細胞のエレクトロポレーションが完了してから24時間後と48時間後に、それぞれ顕微鏡で写真を取って観察する。図22図23は、その結果を示す。
【0211】
(1)図22に示すように、GFPプラスミドがHepsG2細胞に電気変換されてから24時間後および48時間後に、HepsG2細胞が緑色蛍光を発現できる。これによってわかるように、エレクトロポレーションでプラスミドを細胞ゲノムに組み込んで発現させることができ、エレクトロポレーションで異なる接続関係を持つ発現ベクターをHepsG2細胞に組み込んで発現させることができる。
【0212】
(2)図23は、細胞エレクトロポレーションが完了してから24時間後の状態を示す。他の接続関係を持つプラスミドと比較して、第1の発現カセットと第2の発現カセットのテールツーテール接続関係を持つプラスミドは、HepsG2細胞に対する損傷が最も大きく、接着細胞の数が他の接続関係を持つプラスミドエレクトロポレーション細胞よりも大幅に少なく、細胞はアポトーシス状態にある(赤い丸で囲まれた細胞形態が異常であり、アンテナは増加している)。これによって分かるように、第1の発現カセットと第2の発現カセットのテールツーテール接続関係を持つプラスミドは、Dox誘導なしでuPAを発現でき、細胞損傷とアポトーシスを引き起こすことができる。この接続関係は、uPAの発現のリークを引き起こす可能性がある。
【0213】
(3)図23は、Doxを含む培地でHepsG2細胞を24時間培養した後の状態を示す。異なる接続関係を持つプラスミドに対してエレクトロポレーションを実施したHepsG2細胞は、いずれも異常な形態を示し、アンテナが増加し、アポトーシス状態を示した。これによって分かるように、異なる接続関係を持つプラスミドは、いずれもDox誘導に応答できる。
【0214】
[実施例9]
マウスの肝障害に対する第1の発現カセットと第2の発現カセットの間の異なる接続関係の影響
流体力学に基づく方法は、肝臓に外来遺伝子を効率的に導入することができ、遺伝子機能の研究に広く利用されており、肝臓などの臓器疾患の治療選択肢となっている。高圧尾静脈から大量のDNAを急速に注射すると、体内、特に肝細胞で非常に高レベルの外因性遺伝子発現が起こる可能性がある。しかし、高い油圧は肝臓に深刻な損傷を引き起こす可能性もある(ALTの増加)。
【0215】
本実施例は、マウスの肝障害に対する第1の発現カセットと第2の発現カセットの間の異なる接続関係の効果に関し、以下のステップを含む。
【0216】
上記で作製した異なる接続関係を持つ発現ベクターを高圧尾静脈急速注射によりマウスに注射するとともに、対照として緑色蛍光を発現できるGFP(Pmax-GFP)プラスミドと生理食塩水を注射した。マウスにプラスミドを注射した後、Dox水(2mg/L)を与え、それぞれ1、3、5、7日目に眼窩から血液を採取し、血清中のALT活性を測定した。表20は、具体的なステップを示す。注射後1日目に、GFPプラスミドおよび生理食塩水群を注射したマウスの肝臓を固定して包埋し、凍結切片を行ってマウスの緑色蛍光細胞の分布を観察した。図24は、その結果を示す。
【0217】
表20.マウスの肝障害に対する異なる接続関係キャリアの効果に関する実験の条件付き治療グループ
【表20】
【0218】
図24および図25は、その結果を示す。
【0219】
(1)GFPプラスミドを注射した後、マウスの肝臓は、緑色蛍光を発現することができる。これによって分かるように、尾静脈から注射されたプラスミドDNAは、肝細胞において発現することができる。
【0220】
(2)異なる結合関係を持つプラスミドとGFPプラスミドを注射し、マウスにDox水を与えた場合、テールツーテールの結合関係を持つプラスミドのみを注射したマウスのALTが大幅に増加した。したがって、第1の発現カセットと第2の発現カセットのテールツーテールの接続関係を持つベクターは、Dox誘導でマウスに肝障害を引き起こすことができるので、他の接続方法よりも優れている。
【0221】
以上により、テールツーテールの接続関係を持つ2つの発現カセットは、顕著にDoxに応答でき、他の接続関係よりも優れている。
【0222】
上記の記載は、本開示の好ましい実施例にすぎず、本開示を限定するものではない。当業者にとって、本開示に各種の変更や変化を有してもよい。本開示の精神および原理から逸脱しない限り、行った如何なる変更、均等置換、改良なども、本出願の保護範囲内に属する。
【産業上の利用可能性】
【0223】
本開示は、肝障害のマウスモデルを構築するためのターゲティングベクター、核酸組成物および構築方法を提供する。本開示のターゲティングベクターを使用して構築された肝障害マウスモデルは、誘導物質を使用せずに肝障害を形成することができ、つまり、自発的に肝障害を形成することができる。また、誘導物質を使用すると、肝障害の程度を高めることができる。さらに、この肝損傷マウスモデルによる自発的肝損傷の程度は、外因性肝細胞の移植の要件を満たすことができるとともに、肝細胞移植後の再構築率も高い。また、この肝障害マウスモデルは、交雑により子孫肝障害マウスを繁殖させることができ、子孫マウスの死亡率が低く、大規模な繁殖に寄与できる。本開示は、肝疾患研究のための信頼できる肝損傷マウスモデルを提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
【配列表】
2022540287000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット配列と、マウスゲノムのターゲットサイトへの前記ターゲット配列の挿入を媒介するための5’末端相同性アーム配列および3’末端相同性アーム配列と、を含み、
前記ターゲット配列は、第1の発現カセットおよび前記第1の発現カセットの下流に位置する第2の発現カセットを含み、
前記第1の発現カセットは、肝臓特異的プロモーター、テトラサイクリン転写活性化レギュレーター、および第1のpolyAを順に直列に含み、
前記第2の発現カセットは、第2のpolyA、マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子、およびテトラサイクリン誘導性プロモーターを順に直列に含み、
前記肝臓特異的プロモーターは、前記テトラサイクリン転写活性化レギュレーターの発現を上流から下流に駆動し、前記テトラサイクリン誘導性プロモーターは、前記マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子の発現を下流から上流に駆動し、
前記ターゲットサイトは、Rosa26サイトである
ことを特徴とする肝障害マウスモデルを構築するためのターゲティングベクター。
【請求項2】
前記第1の発現カセットは、さらにエンハンサー配列を有し、前記エンハンサー配列は、前記肝臓特異的プロモーターの上流に位置することを特徴とする請求項1に記載のターゲティングベクター。
【請求項3】
前記肝臓特異的プロモーターは、アルブミンプロモーター、アポリポプロテインEプロモーター、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼプロモーター、α-I-アンチトリプシンプロモーター、甲状腺ホルモン結合グロブリンプロモーター、α-フェトプロテインプロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、IGF-IIプロモーター、第VIII因子プロモーター、HBV基本コアタンパク質プロモーター、HBVプレ-s2タンパク質プロモーター、チロキシン結合グロブリンプロモーター、HCR-Ap0CIIハイブリッドプロモーター、HCR-hAATハイブリッドプロモーター、マウスアルブミン遺伝子のエンハンサーエレメントと組み合わせたAATプロモーター、低密度リポタンパク質プロモーター、ピルビン酸キナーゼプロモーター、レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼプロモーター、アポリポプロテインHプロモーター、トランスフェリンプロモーター、トランスチレチンプロモーター、α-フィブリノーゲンおよびβ-フィブリノーゲンプロモーター、α-I-アンチキモトリプシンプロモーター、α-2-HS糖タンパク質プロモーター、ハプトグロビンプロモーター、セルロプラスミンプロモーター、プラスミノーゲンプロモーター、補体タンパク質プロモーター、補体C3アクチベータープロモーター、ヘモコングロビンプロモーターおよびα-I-酸糖タンパク質プロモーターのいずれか1つから選択されるものであることを特徴とする請求項2に記載のターゲティングベクター。
【請求項4】
前記肝臓特異的プロモーターは、アルブミンプロモーターであることを特徴とする請求項2に記載のターゲティングベクター。
【請求項5】
前記エンハンサー配列は、アルブミンエンハンサーであることを特徴とする請求項2に記載のターゲティングベクター。
【請求項6】
前記テトラサイクリン転写活性化レギュレーターは、tTA、rtTAおよびTet-On3Gのいずれか1つから選択されるものであることを特徴とする請求項2に記載のターゲティングベクター。
【請求項7】
前記テトラサイクリン転写活性化レギュレーターは、Tet-On3Gであることを特徴とする請求項6記載のターゲティングベクター。
【請求項8】
前記第1のpolyAは、HGHpolyA、SV40polyA、BGHpolyA、rbGlobpolyA、SV40後期polyAおよびrbGlobpolyAから選択されるものであることを特徴とする請求項2に記載のターゲティングベクター。
【請求項9】
前記第2の発現カセットにおいて、前記マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子と前記テトラサイクリン誘導性プロモーターの間にコザック配列が挿入されていることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のターゲティングベクター。
【請求項10】
前記テトラサイクリン誘導性プロモーターは、TRE3GおよびTetO6のいずれか1つから選択されるものであることを特徴とする請求項9に記載のターゲティングベクター。
【請求項11】
前記テトラサイクリン誘導性プロモーターはTRE3Gであることを特徴とする請求項10に記載のターゲティングベクター。
【請求項12】
前記マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子によってコードされるマウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子のアミノ酸配列は、配列番号7に示されるものであることを特徴とする請求項9に記載のターゲティングベクター。
【請求項13】
前記マウスウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をコードする遺伝子のヌクレオチド配列は、配列番号6の位置1~1302に示されるものであり、またはその相補的配列であることを特徴とする請求項12に記載のターゲティングベクター。
【請求項14】
前記第2のpolyAは、ウサギpolyA、SV40polyA、hGHpolyA、BGHpolyA、rbGlobpolyA、SV40後期polyAおよびrbGlobpolyAから選択されるものであることを特徴とする請求項9に記載のターゲティングベクター。
【請求項15】
前記5’末端相同性アーム配列は、配列番号4に示されるものであり、またはその相補的配列であり、
前記3’末端相同性アーム配列は、配列番号5に示されるものであり、またはその相補的配列である
ことを特徴とする請求項に記載のターゲティングベクター。
【請求項16】
請求項1~1のいずれか一項に記載のターゲティングベクターと、前記ターゲットサイトでマウスゲノム配列に二本鎖切断を引き起こさせるためのCRISPR/Cas9組成物とを含むことを特徴とする肝障害のマウスモデルを構築するための核酸組成物。
【請求項17】
前記CRISPR/Cas9組成物は、Cas9タンパク質およびsgRNAを含むことを特徴とする請求項1に記載の核酸組成物。
【請求項18】
前記sgRNAのターゲット配列は、配列番号9に示されるものであることを特徴とする請求項1記載の核酸組成物。
【請求項19】
請求項1~1のいずれか一項に記載のターゲティングベクターを含むことを特徴とする組換え細胞。
【請求項20】
請求項1~1のいずれか一項に記載のターゲティングベクター、または請求項1~1のいずれか一項に記載の核酸組成物を含むことを特徴とする肝障害のマウスモデルを構築するためのキット。
【請求項21】
請求項1~1のいずれか一項に記載のターゲティングベクター、または請求項1~1のいずれか一項に記載の核酸組成物を使用して、ターゲットマウスのゲノム上の前記ターゲットサイトに前記ターゲット配列を挿入することを特徴とする肝障害のマウスモデルの構築方法。
【請求項22】
前記ターゲットマウスは、免疫不全マウスであることを特徴とする請求項2に記載の構築方法。
【請求項23】
免疫不全マウスからの受精卵に前記核酸組成物を注射し、そして、前記受精卵を偽妊娠雌マウスに移植し、さらに前記偽妊娠雌マウスの子孫から、肝損傷マウスモデルである、ゲノムに前記ターゲット配列が挿入された陽性マウスをスクリーニングすることを含むことを特徴とする請求項2に記載の構築方法。
【請求項24】
請求項2~2のいずれか一項に記載の構築方法によって得られた肝損傷マウスモデルを、免疫不全の野生型マウスと交配させることを含むことを特徴とする肝障害のマウスモデルを繁殖させる方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2022540287000001.app
【国際調査報告】