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特表2022-540317Hsp90結合コンジュゲートおよびその併用療法
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  • 特表-Hsp90結合コンジュゲートおよびその併用療法 図1
  • 特表-Hsp90結合コンジュゲートおよびその併用療法 図2
  • 特表-Hsp90結合コンジュゲートおよびその併用療法 図3A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(54)【発明の名称】Hsp90結合コンジュゲートおよびその併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/55 20170101AFI20220908BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220908BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220908BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220908BHJP
   A61K 31/5025 20060101ALI20220908BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20220908BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220908BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
A61K47/55
A61P35/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/5025
A61K31/513
A61K31/519
A61K31/4745
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573778
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(85)【翻訳文提出日】2022-02-08
(86)【国際出願番号】 US2020039261
(87)【国際公開番号】W WO2020263907
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】62/866,140
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/899,777
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/035,048
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515176450
【氏名又は名称】ターベダ セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TARVEDA THERAPEUTICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(71)【出願人】
【識別番号】522330762
【氏名又は名称】ティーブイエイ (エイビーシー) エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】TVA(ABC),LLC
(72)【発明者】
【氏名】ブロス、ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ペリーノ、サマンサ
(72)【発明者】
【氏名】クイン、ジェームズ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ウェイレン、ケリー
(72)【発明者】
【氏名】ウースター、リチャード
(72)【発明者】
【氏名】クリクシウカイテ、クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】メイ、ローラ イー.
(72)【発明者】
【氏名】ビロドー、マーク ティ.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF67
4C084AA19
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC43
4C086CB09
4C086CB22
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、一般に、癌を治療する方法であって、HSP-90結合コンジュゲートを投与する工程、または2種の別個の治療剤を併用療法として投与する工程を含む方法に関する。併用療法の構成成分、および併用療法を使用する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする対象において癌を治療する方法であって、有効量のコンジュゲート1またはその薬学的に許容される塩を、体表面積当たり150mg/m、175mg/m、または200mg/mの用量で前記対象に対して投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
治療を必要とする対象において癌を治療する方法であって、有効量のコンジュゲート1またはその薬学的に許容される塩を前記対象に対して投与する工程を含み、前記対象が以前に少なくとも1種の抗癌療法を受けていた、方法。
【請求項3】
治療を必要とする対象において癌を治療する方法であって、有効量のコンジュゲート1またはその薬学的に許容される塩を前記対象に対して投与する工程を含み、前記対象が前記治療の後に部分応答または安定した疾患を示す、方法。
【請求項4】
前記コンジュゲート1またはその薬学的に許容される塩の用量が175mg/mである、請求項1、2、または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
コンジュゲート1またはその薬学的に許容される塩が、3週間にわたって1週間に1回、1日目、8日目、および15日目に投与され、その後に治療なしが1週間続く、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記癌が、肛門癌、乳癌、胆管細胞癌、結腸癌、ユーイング肉腫、肝癌、肺癌、神経内分泌癌、卵巣癌、膵癌、唾液腺癌、および肉腫からなる群から選択される、請求項1、2、または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記癌が、膵臓腺癌、子宮内膜腺癌、脂肪肉腫、または肛門、子宮頸部、もしくは頭頸部の扁平上皮癌である、請求項1、2、または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
血漿コンジュゲート1レベルに対する腫瘍コンジュゲート1レベルの比が5を超える、請求項1、2、または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記腫瘍コンジュゲート1レベルが300nMを超える、請求項1、2、または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
血漿SN-38レベルに対する腫瘍SN-38レベルの比が3を超える、請求項1、2、または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記腫瘍SN-38レベルが80nMを超える、請求項1、2、または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象が少なくとも1つのPARP阻害剤治療を更に受ける、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記PARP阻害剤が7日サイクルの2、3、4、5、および6日目に投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記PARP阻害剤がタラゾパリブである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記癌が小細胞肺癌である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記対象がHPV陽性である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が、5-FU、ロイコボリン、または5-FUとロイコボリンとの組み合わせを更に受ける、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、癌を治療する療法に関する。
【背景技術】
【0002】
途方もなく大きな前進が化学療法においてなされてきたが、現在利用可能な治療薬(therapeutics)および療法は依然として満足できないままである。また、化学療法的に治療された疾患(例えば、癌)を有する診断された大多数の患者の予後は、依然として不十分なままである。多くの場合、化学療法の適用性および/または有効性、ならびに潜在的に毒性部分を用いる他の療法および診断薬は、望ましくない副作用によって制限される。
【0003】
多くの疾患および障害は、特定的なタイプの細胞における高レベルのある特定のタンパク質の存在によって特徴付けられる。一部の場合において、これらの高レベルのタンパク質の存在は、過剰発現によって引き起こされる。歴史的に、これらのタンパク質の一部は治療分子(therapeutic molecules)のために有用な標的であったか、または疾患の検出用のバイオマーカーとして使用されてきた。有用な治療標的(therapeutic target)として認識されている1つのクラスの過剰発現細胞内タンパク質は、熱ショックタンパク質として知られている。
【0004】
熱ショックタンパク質(HSP)は、上昇温度および他の環境ストレス、例えば、紫外線、栄養欠乏、および酸素欠乏に応答して上方制御されるクラスのタンパク質である。HSPは多くの既知の機能を有し、これには、他の細胞タンパク質(クライアントタンパク質(client proteins)と呼ばれる)に対してシャペロンとして作用して、正確なフォールディングおよび修復を促進すること、およびミスフォールドクライアントタンパク質のリフォールディングを助けることが含まれる。いくつかの既知のHSPファミリーが存在し、それぞれ独自のクライアントタンパク質のセットを有する。Hsp90は、最も豊富に存在するHSPファミリーのうちの1つであり、ストレス下にない細胞においてタンパク質の約1~2%を占め、ストレス下にある細胞では約4~6%に増加する。
【0005】
Hsp90の阻害は、ユビキチンプロテアソーム経路を介してクライアントタンパク質の分解を生じさせる。他のシャペロンタンパク質とは異なり、Hsp90のクライアントタンパク質は、大部分がシグナル伝達に関与するタンパク質キナーゼまたは転写因子であり、そのクライアントタンパク質の多数が、癌の進行に関与することが示されている。Hsp90は、変異分析により、正常な真核細胞の生存にとって必要であることが示されている。しかし、Hsp90は多くの腫瘍タイプにおいて過剰発現しており、癌細胞の生存に有意な役割を果たし得ること、および癌細胞がHsp90の阻害に対して正常細胞より感受性があり得ることを示している。例えば、癌細胞は、典型的には、フォールディングをHsp90に依存している多数の変異および過剰発現腫瘍性タンパク質を有する。加えて、腫瘍の環境は低酸素、栄養欠乏、アシドーシスなどに起因して典型的には厳しいものであるので、腫瘍細胞は生存のためにHsp90にとりわけ依存している。更に、Hsp90の阻害は、多数の腫瘍性タンパク質、ならびにホルモン受容体および転写因子の同時阻害を引き起こし、抗癌剤の魅力的な標的となっている。上記の観点から、Hsp90は薬物開発の魅力的な標的であり、これには、ガネテスピブ(ganetespib)、AUY-922、およびIPI-504などのHsp90阻害剤(Hsp90i)化合物が含まれる。同時に、ゲルダナマイシンなど、初期に有望であることを示した特定の化合物の進歩は、これらの化合物の毒性プロファイルによって遅くなっている。現在までに開発されてきたHsp90i化合物は、抗癌薬としてかなり有望であることを示していると考えられるが、癌細胞におけるHsp90の遍在性を活用し得る他の方法は、現在まで未検討のままである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、特定の疾患または障害に関連する細胞において過剰発現するタンパク質、例えばHsp90を選択的に標的とする治療用分子の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は、治療を必要とする対象において癌を治療する方法であって、有効量のコンジュゲート1(SDC-TRAP-0063)またはその薬学的に許容される塩を、体表面積当たり150mg/m、175mg/m、または200mg/mの用量で対象に対して投与することを含む方法を提供する。コンジュゲート1またはその薬学的に許容される塩は、3週間にわたって1週間に1回で、1日目、8日目、および15日目に投与することができ、その後に治療なしが1週間続く。癌は、肛門癌、乳癌、胆管細胞癌、結腸癌、ユーイング肉腫、肝癌、肺癌、神経内分泌癌(原発不明)、卵巣癌、膵癌、唾液腺癌、または肉腫であり得る。一部の実施形態において、癌は、膵臓腺癌、子宮内膜腺癌、または肛門、子宮頸部、もしくは頭頸部の扁平上皮癌である。
【0008】
本出願は、また、治療を必要とする対象において癌を治療する方法であって、有効量のコンジュゲート1またはその薬学的に許容される塩を対象に対して投与することを含み、対象が以前に少なくとも1種の抗癌療法を受けていた方法も提供する。
【0009】
本出願は、治療を必要とする対象において癌を治療する方法であって、有効量のコンジュゲート1またはその薬学的に許容される塩を対象に対して投与することを含み、対象が治療の後に部分応答または安定した疾患を示す方法を提供する。
【0010】
一部の実施形態において、対象をコンジュゲート1またはその薬学的に許容される塩で治療した後に、血漿コンジュゲート1レベルに対する腫瘍コンジュゲート1レベルの比は5を超える、腫瘍コンジュゲート1レベルは300nMを超える、血漿SN-38レベルに対する腫瘍SN-38レベルの比は3を超える、および/または腫瘍SN-38レベルは80nMを超える。
【0011】
本開示は、また、過剰増殖性障害、例えば、癌を有する患者を治療する方法であって、(A)活性剤としてコンジュゲート1またはその薬学的に許容される塩を含む第1の構成成分、および任意選択で(B)活性剤として構成成分IIまたはその薬学的に許容される塩を含む第2の構成成分を患者に対して投与することを含み、前記活性剤の量が、その組み合わせが前記過剰増殖性障害の治療に治療上有効(therapeutically-effective)な量である方法にも関する。構成成分Iは、熱ショックタンパク質90(HSP90)を標的とするコンジュゲートを含み得る。
【0012】
本開示は、更に、(A)活性剤としてコンジュゲート1またはその薬学的に許容される塩を含む第1の構成成分、および(B)活性剤として構成成分Iまたはその薬学的に許容される塩を含む第2の構成成分を含む組成物に関する。
【0013】
本開示は、また、(A)活性剤としてコンジュゲート1またはその薬学的に許容される塩を含む第1の構成成分、および(B)活性剤として構成成分IIまたはその薬学的に許容される塩と含む第2の構成成分を含むキットにも関する。
【0014】
加えて、本開示は、過剰増殖性障害の治療のための、コンジュゲート1またはその薬学的に許容される塩、および構成成分IIまたはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0015】
本開示のなお更なる態様は、過剰増殖性障害の治療のための医薬の調製のための、コンジュゲート1またその薬学的に許容される塩、および構成成分IIまたはその薬学的に許容される塩の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1Aは、72mg/kgおよび100mg/kgの毎週投薬のコンジュゲート1によるH1975モデルにおける有効性を示す図であり、図1Bは、150mg/kgの毎週投薬のコンジュゲート1によるH1975モデルにおける有効性を示す図。
図2】コンジュゲート1およびニラパリブの血漿曝露、ならびにコンジュゲート1の腫瘍異種移植片曝露の推定値を示す図。
図3A】ビヒクル、タラゾパリブ、コンジュゲート1、およびコンジュゲート1/タラゾパリブ併用療法による治療後の、SKOV3腫瘍を有するマウスにおける平均腫瘍体積を示す図。
図3B】ビヒクル、タラゾパリブ、コンジュゲート1、およびコンジュゲート1/タラゾパリブ併用療法による治療後の、NCI-H460腫瘍を有するマウスにおける平均腫瘍体積を示す図。
図3C】タラゾパリブ、コンジュゲート1、およびコンジュゲート1/タラゾパリブ併用療法による治療後の、NCI-H460 NSCLC異種移植腫瘍におけるpH2AXの量を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、過剰増殖性障害、例えば、癌を治療するための少なくとも2種の別個の治療剤(therapeutic agents)の併用療法に関する。別個の治療剤のそれぞれは、併用療法の「構成成分」と称される。本開示の併用療法は、様々なタイプの癌の治療に有効性が高く、単独で投与される構成成分のそれぞれの活性と比較して高められた効果を示す。用語「併用療法」または「組み合わせ治療」または「組み合わせ」は、本明細書で使用されるとき、少なくとも2種の別個の治療剤による同時または並行した治療の任意の形態を指す。過剰増殖性障害は、制御不能な細胞増殖により特徴付けられる任意の疾患または疾病を包含する。
【0018】
併用療法の構成成分は、同時に、順次に、または任意の順番で投与され得る。構成成分は、適切であれば、いかなる異なる投与量、異なる投薬(dosing)頻度、または異なる経路によっても投与され得る。
【0019】
用語「同時に投与される」は、本明細書で使用されるとき、特定的に限定されず、併用療法の構成成分が、例えば混合物としてまたは直後の順序で、実質的に同じ時に投与されることを意味する。
【0020】
用語「順次に投与される」は、本明細書で使用されるとき、特定的に限定されず、併用療法の構成成分が実質的に同じ時ではなく、投与間の特定的な時間間隔によって次々に1つずつまたは群で投与されることを意味する。時間間隔は、併用療法の構成成分の対応する投与の間で同じであっても、異なっていてもよく、例えば、2分間から96時間、1日から7日間、または1、2、もしくは3週間の範囲から選択され得る。一般に、投与間の時間間隔は、数分間から数時間の範囲、例えば、2分間から72時間、30分間から24時間、または1から12時間の範囲であり得る。更なる例には、24から96時間、12から36時間、8から24時間、および6から12時間の範囲が含まれる。一部の実施形態において、構成成分Iは、構成成分IIの前に投与される。一部の実施形態において、構成成分IIは、構成成分Iの前に投与される。
【0021】
構成成分のモル比は、特に限定されない。例えば、2つの構成成分が組成物中で混合されている場合、2つの構成成分のモル比は、1:500~500:1、または1:100~100:1、または1:50~50:1、または1:20~20:1、または1:5~5:1、または1:1の範囲であり得る。2つを超える構成成分が組成物中で混合されている場合では、同様のモル比が当てはまる。それぞれの構成成分は、独立して、組成物の約1%~10%、または約10%~約20%、または約20%~約30%、または約30%~40%、または約40%~50%、または約50%~60%、または約60%~70%、または約70%~80%、または約80%~90%、または約90%~99%の所定モル重量パーセンテージを構成し得る。
【0022】
I.併用療法の構成成分
本開示の一態様は、過剰増殖性障害、例えば、癌を有する対象を治療する併用療法であって、(A)活性剤として、構成成分I(もしくは、化合物I)、またはそのプロドラッグ、誘導体、もしくは薬学的に許容される塩を含む第1の構成成分、および(B)活性剤として、構成成分II(もしくは、化合物II)、またはそのプロドラッグ、誘導体、もしくは薬学的に許容される塩を含む第2の構成成分を患者に対して投与することを含み、前記活性剤の量が、その組み合わせが前記過剰増殖性障害の治療に治療上有効な量である併用療法を提供する。
【0023】
一部の実施形態において、構成成分Iは、標的化部分に接合している活性剤またはそのプロドラッグを含む小分子コンジュゲートであり、標的化部分は熱ショックタンパク質90(HSP90)に対して結合する。
【0024】
構成成分IIは構成成分Iとは異なる。一部の実施形態において、構成成分IIは、癌を治療する治療剤、例えば、チェックポイント阻害剤を含む。チェックポイント阻害剤は、本明細書で使用されるとき、腫瘍微小環境において免疫抑制シグナルを遮断する活性剤を指す。一部の実施形態において、活性剤は、エフェクター免疫細胞に対する抑制性シグナルを拮抗または低減し得る、共抑制性(coinhibitory)チェックポイント分子(例えば、CTLA-4、PD1、PD-L1)に特異的な拮抗剤であり得る。一部の実施形態において、活性剤は、免疫抑制酵素(例えば、ARGおよびIDO)、サイトカイン(例えば、IL-10)、ケモカイン、ならびに他の可溶性因子(例えば、TGF-βおよびVEGF)の活性を腫瘍微小環境において阻害および低減することができる阻害剤であり得る。
【0025】
用語「小分子」は、本明細書で使用されるとき、分子量が2000g/mol未満、1500g/mol未満、1000g/mol未満、800g/mol未満、または500g/mol未満である有機分子を指す。小分子は、非ポリマーおよび/または非オリゴマーである。
【0026】
用語「標的化部分」は、本明細書で使用されるとき、特異的局所(specific locale)に対して結合する、または特異的局所において局在化する部分を指す。この部分は、例えば、タンパク質、核酸、核酸類似体、炭水化物、または小分子であり得る。この局所は、組織、特定の細胞タイプ、または細胞内区画であり得る。一部の実施形態において、標的化部分は、選択された分子、例えば、タンパク質に対して特異的に結合することができる。
【0027】
一部の場合において、コンジュゲートは、約50,000Da未満、約40,000Da未満、約30,000Da未満、約20,000Da未満、約15,000Da未満、約10,000Da未満、約8,000Da未満、約5,000Da未満、または約3,000Da未満の分子量を有し得る。一部の実例において、コンジュゲートは、約1,000Da~約50,000Da、約1,000Da~約40,000Da、一部の実施形態では、約1,000Da~約30,000Da、一部の実施形態では、約1,000Da~約50,000Da、約1,000Da~約20,000Da、一部の実施形態では、約1,000Da~約15,000Da、一部の実施形態では、約1,000Da~約10,000Da、一部の実施形態では、約1,000Da~約8,000Da、一部の実施形態では、約1,000Da~約5,000Da、一部の実施形態では、約1,000Da~約3,000Daの分子量を有し得る。コンジュゲートの分子量は、コンジュゲートの式における各原子の原子量に各原子の数を掛けた合計として算出され得る。質量分析法、NMR、クロマトグラフィー、光散乱法、粘度、および/または当該技術に既知の任意の他の方法によっても測定され得る。分子量の単位は、g/mol、ダルトン(Da)、または原子質量単位(amu)であってもよく、1g/mol=1Da=1amuであることが当該技術において知られている。
【0028】
構成成分Iおよび構成成分IIは、同時に、順次に、または任意の順番で投与され得る。これらは、適切であれば、いかなる異なる投与量、異なる投薬頻度、または異なる経路によっても投与され得る。
【0029】
構成成分I
一部の実施形態において、構成成分Iは、標的化部分に接合している活性剤またはそのプロドラッグを含むコンジュゲートであり、標的化部分は熱ショックタンパク質90、例えば、HSP90に対して結合する。標的化部分は、ガネテスピブ、ゲルダナマイシン(タネスピマイシン)、IPI-493、マクベシン(macbecin)、トリプテリン(tripterin)、タネスピマイシン、17-AAG(アルベスピマイシン(alvespimycin))、KF-55823、ラディシコール、KF-58333、KF-58332、17-DMAG、IPI-504、BIIB-021、BIIB-028、PU-H64、PU-H71、PU-DZ8、PU-HZ151、SNX-2112、SNX-2321、SNX-5422、SNX-7081、SNX-8891、SNX-0723、SAR-567530、ABI-287、ABI-328、AT-13387、NSC-113497、PF-3823863、PF-4470296、EC-102、EC-154、ARQ-250-RP、BC-274、VER-50589、KW-2478、BHI-001、AUY-922、EMD-614684、EMD-683671、XL-888、VER-51047、KOS-2484、KOS-2539、CUDC-305、MPC-3100、CH-5164840、PU-DZ13、PU-HZ151、PU-DZ13、VER-82576、VER-82160、VER-82576、VER-82160、NXD-30001、NVP-HSP990、SST-0201CL1、SST-0115AA1、SST-0221AA1、SST-0223AA1、ノボビオシン、ハービンマイシン(herbinmycin)A、ラディシコール(radicicol)、CCT018059、PU-H71、セラストロール、またはこれらの互変異性体、類似体、もしくは誘導体から選択され得る。
【0030】
一部の例において、構成成分Iは、SN-38もしくはイリノテカン、レナリドミド、ボリノスタット、5-フルオロウラシル(5-FU)、アビラテロン、ベンダムスチン、クリゾチニブ、ドキソルビシン、ペメトレキセド、フルベストラント、トポテカン、血管破壊剤(Vascular Disrupting Agent)(VDA)、またはその断片、誘導体、もしくは類似体を活性剤として含む。
【0031】
一部の例において、構成成分Iは、2013年4月16日に出願されたPCT出願番号PCT/US13/36783(国際公開第2013/158644号)における任意のコンジュゲートであってもよく、この内容は本願明細書に援用される。
【0032】
一例において、構成成分Iは、標的化部分としてガネテスピブまたはその互変異性体、および活性剤としてSN-38を含むコンジュゲートである。構成成分Iは、
【0033】
【化1】
【0034】
の構造を有するコンジュゲート1(SDC-TRAP-0063とも称される)であってもよい。
((S)-4,11-ジエチル-4-ヒドロキシ-3,14-ジオキソ-3,4,12,14-テトラヒドロ-1H-ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-9-イル4-(2-(5-(3-(2,4-ジヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)-5-ヒドロキシ-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-1H-インドール-1-イル)エチル)ピペリジン-1-カルボキシレート)またはその互変異性体。
【0035】
コンジュゲート1は、切断可能なリンカーを介して市販のトポイソメラーゼ阻害剤イリノテカンの活性代謝産物であるSN-38に接合しているガネテスピブから構成される、注射することが可能な合成小分子薬物コンジュゲートである。このコンジュゲートは、SN-38を送達するHSP90の高められた腫瘍標的化特性および優先的な腫瘍貯留特性に影響を与えて、広範囲の前臨床抗腫瘍活性を生じさせる。
【0036】
一部の実施形態において、コンジュゲート1は、癌、例えば、肉腫、膵癌、胆管細胞癌、卵巣癌、小細胞肺癌(SCLC)、結腸癌、口腔癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、頭頸部癌、扁平上皮癌、または肛門癌の治療に使用され得る。一部の実施形態において、コンジュゲート1は、ウイルスにより引き起こされる癌、例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、またはヒトパピローマウイルス(HPV)により引き起こされる癌の治療に使用され得る。一部の実施形態において、コンジュゲート1は、HPV陽性である患者に対して投与される。一部の実施形態において、コンジュゲート1は、癌を有し、かつHPV陽性である患者に対して投与され、癌は、口腔癌、子宮頸癌、頭頸部癌、または扁平上皮癌から選択され得る。
【0037】
構成成分II
一部の実施形態において、構成成分IIは、癌を治療する、構成成分Iとは異なる治療剤を含む。
【0038】
一部の実施形態において、構成成分IIは化学療法剤であり得る。一部の実施形態において、構成成分IIは、前立腺癌、乳癌、非小細胞肺癌(肺大細胞癌)、小細胞肺癌、または卵巣癌の治療に使用される化学療法剤であり得る。
【0039】
一部の実施形態において、構成成分Iおよび構成成分IIは、一緒に合成致死を引き起こし、癌の治療に使用することができる。癌は、複数の遺伝子における変異および複数のシグナル経路における異常によって引き起こされる。2つの標的(例えば、遺伝子)は、いずれか一方における変異は細胞または生物体の生存度を変化させないが両方の標的における同時変異が致死的表現型を生じる場合に、合成致死性である。合成致死性抗癌治療薬には、BRCA1およびBRCA2変異癌のためのポリADPリボースポリメラーゼ阻害剤、p53変異癌のためのチェックポイント阻害剤、RAS遺伝子変異癌を標的とする小分子薬剤が含まれ得る。
【0040】
一部の例において、構成成分IIは、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤であり得る。PARPは、ADPリボース基をドナー基質ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)からアクセプタータンパク質におけるグルタミン酸残基、アスパラギン酸残基、およびリジン残基へ移動させることによってタンパク質のポリADPリボシル化を触媒し、それによりそれらのタンパク質の機能を制御する、一群のADPリボーストランスフェラーゼ酵素である。PARP阻害剤は、DNA損傷の修復を阻害することができるものであり、BRCA1/2における変異に起因してDNA修復における欠損を有する腫瘍に対して主に承認されている。重複する毒性に起因して、PARP阻害剤を他の薬剤と組み合わせることは困難である。一部の癌は、高いBRCA1レベルを有し、PARP阻害に対して非感受性である。HSP90結合構成成分Iは、DNA損傷効果を有することがあり、細胞をPARP阻害に対して感作させ得る。PARP阻害剤の非限定例には、タラゾパリブ(BMN-673)、オラパリブ(AZD-2281)、ニラパリブ(MK-4827)、イニパリブ(BSI201)、ベリパリブ(ABT-888)、ルカパリブ(AG014699、PF-01367338)、CEP9722、Fluzoparib(SHR3162)、Senaparib(IMP4297)、KU0058684、KU0058948、NU1025、またはAG14361が含まれ得る。
【0041】
【化2】
【0042】
【化3】
【0043】
一部の実施形態において、構成成分IIは、癌患者に対して支持ケアを提供する、および/または構成成分Iの副作用を低減することができる。一部の実施形態において、構成成分IIは、癌症状軽減薬である。症状軽減薬は、化学療法または放射線療法による下痢または副作用を低減し得る。症状軽減薬の非限定例には、オクトレオチドもしくはランレオチド;インターフェロン、シプロへプタジン(cypoheptadine)、もしくは任意の他の抗ヒスタミン薬;および/またはカルチノイド症候群のための症状軽減薬、例えば、テロトリスタットもしくはテロトリスタットエチプレート(telotristat etiprate)(LX1032、Lexicon(登録商標))が含まれる。
【0044】
一部の実施形態において、構成成分IIは、5-フルオロウラシル(5-FU)、ロイコボリン(フォリン酸)、イリノテカン、もしくはオキサリプラチン、またはその誘導体もしくは任意の組み合わせであり得る。一部の実施形態において、構成成分IIは、5-FUとロイコボリンの組み合わせである。
【0045】
一部の実施形態において、構成成分IIは、米国特許第10590135号明細書に開示されている置換架橋尿素類似体などのサーチュイン調節因子、米国特許第10442786号明細書に開示されているベンゾイミダゾール誘導体などのブロモドメイン阻害剤、米国特許第10428026号明細書に開示されているピリジノンジカルボキサミドなどのブロモドメイン阻害剤、米国特許第10407407号明細書に開示されているベンゾイミダゾール誘導体などのPAD4阻害剤、米国特許第10364256号明細書に開示されているビアリールピラゾールなどのNRF2制御因子、米国特許第10336719号明細書に開示されている1-(シクロペンタ-2-エン-1-イル)-3-(2-ヒドロキシ-3-(アリールスルホニル)フェニル)尿素誘導体などのCXCR2阻害剤、米国特許第10336711号明細書に開示されているプロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、米国特許第8435988号明細書に開示されているベンゾイミダゾール誘導体などのP13キナーゼ阻害剤、米国特許第8853408号明細書に開示されているシクロプロピルアミンなどのLSD1阻害剤、米国特許第10059699号明細書に開示されているテトラヒドロキノリン誘導体などのブロモドメイン阻害剤、米国特許第9988376号明細書に開示されているベンゾチオフェン誘導体などのエストロゲン受容体阻害剤、米国特許第8802864号明細書に開示されているトリアゾロンなどの脂肪酸シンターゼ阻害剤、米国特許第8138347号明細書に開示されているキノロン誘導体などのPI3キナーゼ阻害剤、米国特許第8138338号明細書に開示されているオーロラキナーゼ阻害剤、米国特許第7981903号明細書に開示されている2-[2-{フェニルアミノ}-1H-ピロロ[2,3-D]ピリミジン-4-イル)アミノ]ベンズアミド誘導体などのIGF-1R阻害剤、米国特許第7807673号明細書に開示されている2-ピリミジニルピラゾロピリジンなどのErbBキナーゼ阻害剤、米国特許第7709506号明細書に開示されているニコチンアミド誘導体などのp38阻害剤、米国特許出願公開第20200062735号明細書に開示されている複素環式アミドなどのキナーゼ阻害剤、米国特許出願公開第20200009140明細書に開示されているピリジル誘導体などのブロモドメイン阻害剤、米国特許出願公開第20190241573号明細書に開示されているイソキノリン誘導体などのPERK阻害剤、米国特許出願公開第20190194166号明細書に開示されている置換ピリジンなどのDNMT1阻害剤、米国特許出願公開第20150065527号明細書に開示されている二環式ヘテロ芳香族化合物などのタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤、米国特許出願公開第20100216779号明細書に開示されているものなどのイミダゾピリジンキナーゼ阻害剤、欧州特許第1725522号明細書に開示されているアニリン誘導体などのアンドロゲン受容体調節因子、欧州特許第1922316号明細書に開示されているベンゾイミダゾールチオフェン化合物などのPLK調節因子、欧州特許第1862457号明細書に開示されているフルオロピロリジンなどのジペプチジルペプチダーセ阻害剤、または、欧州特許第1284977号明細書に開示されているチエノジベンゾアズレン化合物などの腫瘍壊死因子阻害剤であり得る。
【0046】
一部の実施形態において、構成成分IIはチェックポイント阻害剤であり得る。腫瘍細胞は、免疫抑制性の微小環境を誘導して、免疫監視からの逃避を助長することができる。腫瘍微小環境における免疫抑制は、本来備わっている免疫抑制機構によって、または腫瘍によって直接的に誘導される。併用療法の構成成分IIは、腫瘍微小環境におけるそのような免疫抑制シグナルを遮断するチェックポイント阻害剤を含む。
【0047】
一部の実施形態において、構成成分IIは、エフェクター免疫細胞(例えば、細胞傷害性T細胞およびナチュラルキラー細胞)に対する抑制性シグナルを拮抗または低減することができる共抑制性チェックポイント分子に特異的な拮抗剤であり得る。
【0048】
一部の実施形態において、構成成分IIは、免疫抑制酵素(例えば、ARGおよびIDO)、サイトカイン(例えば、IL-10)、ケモカイン、ならびに他の可溶性因子(例えば、TGF-βおよびVEGF)の活性を腫瘍微小環境において阻害および低減することができる阻害剤であり得る。
【0049】
腫瘍微小環境
腫瘍細胞を排除する適応免疫応答において、細胞傷害性T細胞の活性化は、特異的抗原からの一次シグナル(すなわち、第1のシグナル)および1つまたは複数の共刺激シグナル(すなわち、第2のシグナル)の両方を必要とする。抗原提示細胞(APC、例えば、樹状細胞(DC))は、腫瘍関連抗原(TAA)をプロセスするとともに、TAAから誘導される抗原性ペプチド(すなわち、エピトープ)を、ペプチド/MHC分子(クラスI/II)(p/MHC)複合体として細胞表面に提示する。そして、T細胞は、p/MHC複合体を認識するT細胞受容体(TCR)を介して、TAAが装填されたAPCに会合する。この連結は、癌に特異的な細胞傷害性T細胞を活性化する一次シグナルである。加えて、二次共刺激シグナルは、T細胞上の共刺激受容体とAPC上のこれらのリガンド(または、共受容体)とによって提供される。共刺激受容体とこれらのリガンドとの相互作用は、T細胞の活性化を制御し、その活性を高める。CD28、4-1BB(CD137)、およびOX40は、T細胞上の十分に研究された共刺激受容体であり、APC上のB7-1/2(CD80/CD86)、4-1BB(CD137L)、およびOX-40Lに対してそれぞれ結合する。正常な状況において、過剰なT細胞増殖を防止し、免疫の平衡を保つため、活性化T細胞によって誘導および発現され得る共抑制性シグナル、例えば、CTLA-4は、APC上のB7リガンドへの結合をCD28と競合する。このことは、正常な状況下ではT細胞応答を緩和することができる。しかし、一部の癌において、腫瘍微小環境に浸潤している腫瘍細胞および制御性T細胞は、CTLA-4を構成的に発現し得る。この共抑制性シグナルは共刺激シグナルを抑制し、したがって抗癌免疫応答を枯渇させる。腫瘍細胞によるこの免疫抑制機構は、免疫チェックポイントまたはチェックポイント経路と称される。
【0050】
CTLA-4シグナルに加えて、活性化T細胞はまた、別の抑制性受容体PD-1(プログラム死1)を発現するように誘導され得る。正常な局面では、免疫応答が進行すると、CD4+およびCD8+Tリンパ球は、これらの抑制性チェックポイント受容体(例えば、PD-1)の発現を上方制御する。炎症状態はIFNの放出を促進し、このことはPD-1リガンド:PD-L1(B7-H1としても知られている)およびPD-L2(B7-DCとしても知られている)の発現を末梢組織において上方制御し、免疫寛容を維持して、自己免疫を防止する。多くのヒト癌のタイプは、腫瘍微小環境においてPD-L1を発現することが実証されている(例えば、ゾウおよびチェン(Zou and Chen),腫瘍微小環境における抑制性B7ファミリー(inhibitory B7-family in the tumor microenvironment).2008,Nat Rev Immunol,8:467-477)。PD1/PDL1相互作用は腫瘍微小環境を伴って高活性であり、T細胞活性化を阻害する。
【0051】
腫瘍微小環境において確認されている他の共抑制性シグナルには、TIM-3、LAG-3、BTLA、CD160、CD200R、TIGIT、KLRG-1、KIR、CD244/2B4、VISTA、およびAra2Rが含まれる。
【0052】
加えて、腫瘍微小環境は、制御性T細胞(Treg)、骨髄由来抑制細胞(MDSC)および腫瘍関連マクロファージ(TAM)を含む抑制要素;可溶性因子、例えば、インターロイキン6(IL-6)、IL-10、血管内皮増殖因子(VEGF)およびトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)を含有する。IL-10、TGF-βおよびVEGFが抗癌免疫応答の発生に対抗する重要な機構は、樹状細胞(DC)の分化、成熟化、輸送、および抗原提示の阻害を介するものである(ガブリロヴィッチ ディー(Gabrilovich D):腫瘍誘導性樹状細胞欠損の機構および機能的意義(Mechanisms and functional significance of tumour-induced dendritic-cell defects),Nat Rev Immunol,2004,4:941-952)。
【0053】
制御性T細胞(Treg):CD4+CD25+ Treg細胞は、胸腺由来である特有のリンパ球個体群を表す。フォークヘッドボックス転写因子(Foxp3)によりマークされたCD4+CD25+ Treg細胞は、自己寛容維持において重大な役割を果たし、自己免疫を抑制し、臓器移植における免疫応答および腫瘍免疫を抑制する。腫瘍発生は、多くの場合、CD4+CD25+FoxP3+ Treg細胞を腫瘍域に誘引する。腫瘍浸潤性制御性T細胞は、抑制性サイトカイン、例えば、IL-10およびTGFβを分泌して、自己免疫性および慢性炎症応答を阻害し、腫瘍中の免疫寛容を維持する(ユニットら(Unitt et al.),易感染性リンパ球は肝細胞癌に浸潤する:制御性T細胞の役割(Compromised lymphocytes infiltrate hepatocellular carcinoma:the role of T-regulatory cells).Hepatology.2005;41(4):722-730)。
【0054】
骨髄由来抑制細胞(MDSC):MDSCは、異種細胞の一群であり、悪性腫瘍関連炎症の顕著な特徴、および癌におけるT細胞抑制を誘導する主な媒介物として見ることができる。MDSCは、多くの悪性腫瘍域において見出され、表現型によって顆粒球(G-MDSC)および単球(Mo-MDSC)の部分群に分けられる。MDSCは、制御性T細胞を誘導し、T細胞寛容を産生することができる。加えて、MDSCはTFG-βおよびIL-10を分泌し、一酸化窒素(NO)をIFN-γまたは活性化T細胞の存在下で産生する。
【0055】
腫瘍関連マクロファージ(TAM):末梢血単球から誘導されるTAMは、腫瘍微小環境からの異なるシグナルに対して異なる機能を呈する多機能性細胞である。腫瘍微小環境に関連する細胞タイプのうちでは、TAMが腫瘍進行において最も影響力がある。微小環境刺激、例えば、腫瘍細胞外マトリックス、無酸素環境、および腫瘍細胞により分泌されたサイトカインに対する応答では、マクロファージはM1(古典的)またはM2(代替的)活性化を受ける。最も悪性の腫瘍において、TAMはM2マクロファージの表現型を有する。
【0056】
別の免疫抑制機構は、酵素インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)によるトリプトファン異化作用に関する。局所免疫抑制は、腫瘍微小環境内およびセンチネルリンパ節(SLN)内の悪性細胞により誘導される活性プロセスである。(ガジェフスキーら(Gajewski et al.),腫瘍微小環境における免疫抑制(Immune suppression in the tumor microenvironment).J Immunother,2006;29(3):233-240、およびゾウ ダブリュー(Zou W.),腫瘍環境における免疫抑制ネットワークおよびこれらの治療関連性(Immunosuppressive networks in the tumor environment and their therapeutic relevance),Nat Rev Cancer,2005;5(4):263-274)。研究は、局所的免疫抑制に関与する要素の一部として腫瘍流出リンパ節内においてT細胞受容体ゼータサブユニット(TCR)が下方制御されるとともにインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)が上方制御されることを示している。
【0057】
浸潤性制御性免疫細胞により媒介される抑制効果に加えて、腫瘍細胞は、それ自体、多くの分子を分泌して、細胞傷害性T細胞の活性化および機能を能動的に阻害することができる。
【0058】
一部の腫瘍において、T細胞に固有のアネルギーおよび消耗は一般的であり、T細胞上の共刺激受容体、例えば、CD28への会合の非存在下でのTCR連結によって生じる。
本開示において、併用療法の構成成分IIは、1つまたは複数の免疫抑制機構を阻害するとともに、腫瘍細胞を排除するための癌特異的免疫応答を高める。
【0059】
チェックポイント阻害剤
一部の実施形態において、構成成分IIは、チェックポイント阻害剤、例えば、チェックポイント経路を遮断する活性剤を含む。
【0060】
適応免疫応答の際に、細胞傷害性T細胞の活性化は、抗原提示細胞上の抗原性ペプチド/MHC分子複合体と、T細胞上のT細胞受容体(TCR)との間の一次シグナルによって媒介される。二次共刺激シグナルもT細胞を活性化するために重要である。二次シグナルの非存在下での抗原提示は、T細胞、例えば、CD4+Tヘルパー細胞の活性化にとって十分ではない。周知の共刺激シグナルは、T細胞上の共刺激受容体CD28、ならびに抗原提示細胞(APC)上のリガンドB7-1/CD80およびB7-2/CD86が関与する。B7-1/2とCD28との相互作用は、抗原特異的T細胞増殖およびサイトカイン産生を増強することができる。免疫応答を厳密に制御するため、T細胞は、T細胞上の受容体CD28を介した共刺激により媒介されるCD80およびCD86の共抑制性競合体であるCTLA-4(抗細胞傷害性Tリンパ球抗原4)も発現し、これはT細胞の活性化および機能を有効に阻害することができる。CTLA-4の発現は、多くの場合、CD28がAPCの表面上のB7-1/2と相互作用する場合に誘導される。CTLA-4は、共刺激リガンドB7-1/2(CD80/CD86)に対して共刺激受容体CD28よりも高い結合親和性を有し、したがって、CD28とB7-1/2とのT細胞活性化相互作用から、CTLA-4とB7-1/2との間の阻害シグナリングへと平衡を傾けて、T細胞活性の抑制をもたらす。CTLA-4上方制御は、リンパ節におけるT細胞の初期活性化の際に優勢である。
【0061】
CTLA-4に対して特異的に結合する抗体が、この抑制性チェックポイントを阻害するために使用されている。抗CTLA-4 IgG1ヒト化抗体イピリムマブは、CTLA-4に対して結合し、CD28/B7刺激シグナリングの阻害を防止する。このことはリンパ系器官中のT細胞の活性化閾値を下げることができるとともに、腫瘍微小環境内の制御性T細胞を枯渇することができる(シンプソンら(Simpson et al.),腫瘍浸潤性制御性T細胞のFc依存性枯渇は黒色腫に対する抗CTLA-4療法の有効性を共定義する(Fc-dependent depletion of tumor-infiltrating regulatory T cells co-defines the efficacy of anti-CTLA-4 therapy against melanoma.)J Exp.Med.,2013,210:1695-1710)。イピリムマブは、近年、米国食品医薬品局により、転移性黒色腫を有する患者の治療のために承認された。
【0062】
一部の実施形態において、本開示の併用療法の構成成分IIは、CTLA-4に対する拮抗剤、例えば、抗体、抗体の機能性断片、ポリペプチドもしくはポリペプチドの機能性断片、またはペプチドを含んでもよく、これらはCTLA-4に対して高い親和性で結合し、B7-1/2(CD80/86)とCTLA-4との相互作用を防止することができる。一例において、CTLA-4拮抗薬は、拮抗性抗体またはその機能性断片である。適切な抗CTLA-4拮抗性抗体には、限定されることなく、抗CTLA-4抗体、ヒト抗CTLA-4抗体、哺乳類抗CTLA-4抗体、ヒト化抗CTLA-4抗体、モノクローナル抗CTLA-4抗体、ポリクローナル抗CTLA-4抗体、キメラ抗CTLA-4抗体、MDX-010(イピリムマブ)、トレメリムマブ(完全ヒト化)、抗CD28抗体、抗CTLA-4アドネクチン(adnectin)、抗CTLA-4ドメイン抗体、一本鎖抗CTLA-4抗体断片、重鎖抗CTLA-4断片、軽鎖抗CTLA-4断片、ならびに米国特許第8,748,815号、同第8,529,902号、同第8,318,916号、同第8,017,114号、同第7,744,875号、同第7,605,238号、同第7,465,446号、同第7,109,003号、同第7,132,281号、同第6,984,720号、同第6,682,736号、同第6,207,156号、同第5,977,318号;欧州特許第1212422号;米国特許出願公開第2002/0039581号および同第2002/086014号明細書;およびフルビッツら(Hurwitz et al.),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1998,95(17):10067-10071に開示されている抗体が含まれ、これらのそれぞれの内容は、その全体が本願明細書に援用される。
【0063】
更なる抗CTLA-4拮抗剤には、リガンドCD80/86に対して結合するCTLA-4の能力を壊すことができる任意の阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。
抑制性チェックポイント受容体PD-1(プログラム死1)は、活性化T細胞上に発現し、通常は上皮細胞および内皮細胞、ならびに免疫細胞(例えば、DC、マクロファージ、およびB細胞)上に発現するプログラム死リガンド1および2(PD-L1(B7-H1、CD274としても知られている)およびPD-L2(B7-DC、CD273としても知られている))との連結後に、T細胞の阻害およびアポトーシスを誘導することができる。PD-1は、腫瘍組織を含む抹消組織において、もっぱらエフェクター段階でT細胞機能を調節する。PD-1は、活性化T細胞に加えて、B細胞および骨髄細胞上で発現する。多くのヒト腫瘍細胞は、PD-L1を発現し、この制御機能を乗っ取り、細胞傷害性Tリンパ球の免疫認識および破壊を回避することができる。腫瘍関連PD-L1は、エフェクターT細胞のアポトーシスを誘導することが示されており、癌による免疫回避に寄与すると考えられる。
【0064】
PD-1/PD-L1免疫チェックポイントは、多数の腫瘍タイプ、例えば、黒色腫に関与していると思われる。PD-L1は、腫瘍細胞に免疫回避を提供するのみならず、活性化T細胞のアポトーシスのスイッチも入れる。この相互作用を遮断する療法は、いくつかの腫瘍タイプにおいて有望な臨床活動を実証している。
【0065】
構成成分IIは、PD-1経路を遮断する活性剤を含み、拮抗性ペプチド/抗体および可溶性PD-L1/2リガンドが含まれる。PD-1およびPD-L1/2チェックポイント経路を遮断するそのような活性剤の非限定例が下記に列挙される。
【0066】
【表1】
【0067】
本開示によると、構成成分IIは、PD-1およびPD-L1/2抑制性チェックポイント経路に対する拮抗剤を含む。一実施形態において、拮抗剤は、PD-1またはPD-L1/L2に対して高い親和性で特異的に結合する拮抗性抗体またはその機能性断片であり得る。PD-1抗体は、米国特許第8,779,105号、同第8,168,757号、同第8,008,449号、同第7,488,802号、同第6,808,710号明細書、およびPCT国際公開第2012/145493号に教示されている抗体であってもよく、これらの内容は、全体が本願明細書に援用される。PD-L1に対して高い親和性で特異的に結合することができる抗体は、米国特許第8,552,154号、同第8,217,149号、同第7,943,743号、同第7,635,757号、米国特許出願公開第2009/0317368号明細書、およびPCT国際公開第2011/066389および同第2012/145493号に開示されているものであってもよく、これらの内容は、全体が本願明細書に援用される。一部の例において、構成成分IIは、米国特許第8,008,449号明細書に開示されている17D8、2D3、4H1、5C4(ニボルマブもしくはBMS-936558としても知られている)、4A11、7D3、および5F4、AMP-224、ピディリズマブ(CT-011)、およびペムブロリズマブから選択される抗体を含む。他の例において、抗PD-1抗体は、ヒトモノクローナル抗PD-1抗体のバリアント、例えば、特定のV/VペアリングのV配列が構造的に類似したV配列に置き換わっている、または特定のV/VペアリングのV配列が構造的に類似したV配列に置き換わっている、「ミックスおよびマッチ」抗体バリアント(“mixed and matched” antibody variant)であってもよく、米国特許出願第2015/125463号明細書に開示されており、この内容は、その全体が本願明細書に援用される。
【0068】
一部の実施形態において、構成成分IIは、PD-L1に対して高い親和性で結合して、PD-1/PD-L1/2相互作用を壊す拮抗性抗体を含む。そのような抗体には、限定されることなく、米国特許第7,943,743号明細書(この内容は、その全体が本願明細書に援用される。)に開示されている3G10、12A4(BMS-936559とも称される)、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7、および13G4、MPDL3280A、MEDI4736、およびMSB0010718が含まれ得る。別の例において、抗PD-L1抗体は、ヒトモノクローナル抗PD-L1抗体のバリアント、例えば、特定のV/VペアリングのV配列が構造的に類似したV配列に置き換わっている、または特定のV/VペアリングのV配列が構造的に類似したV配列に置き換わっている、「ミックスおよびマッチ」抗体バリアントであってもよく、米国特許出願第2015/125463号明細書に開示されており、この内容は、その全体が本願明細書に援用される。
【0069】
一部の実施形態において、構成成分IIは、PD-L2に対して高い親和性で結合して、PD-1/PD-L1/2相互作用を壊す拮抗性抗体を含む。例示的な抗PD-L2抗体には、限定されることなく、ロザリーら(Rozali et al)(ロザリーら,癌誘導免疫抑制におけるプログラム死リガンド2(Programmed Death Ligand 2 in Cancer-Induced Immune Suppression),Clinical and Developmental Immunology,2012,Volume 2012(2012),Article ID 656340)により教示される抗体、および米国特許第8,552,154号明細書(この内容は、その全体が本願明細書に援用される。)に開示されているヒト抗PD-L2抗体が含まれ得る。
【0070】
一部の実施形態において、構成成分IIは、PD-1、PD-L1および/またはPD-L2に起因して誘導された免疫抑制シグナルを阻害する化合物、例えば、サスクマーら(Sasikumar et al.)の米国特許第9233940号明細書(オーリジーン・ディスカバリー・テクノロジーズ社(Aurigene Discovery Tech.))、サスクマーらの国際公開第2015033303号に開示されている環式ペプチド模倣化合物;サスクマーらの国際公開第2015036927号に開示されている免疫調節性ペプチド模倣化合物;ゴビンダンら(Govindan et al.)の米国特許出願第2015007302号明細書に開示されている1,2,4-オキサジアゾール誘導体;サスクマーらの国際公開第2015033301号に開示されている1,3,4-オキサジアゾールおよび1,3,4-チアジアゾール化合物;あるいはサスクマーらの国際公開第2015044900号に開示されている式(I)のペプチド誘導体の免疫調節性治療化合物および誘導体もしくは薬学的塩、または式(I)のペプチド誘導体の立体異性体を含み、これらのそれぞれの内容は、その全体が本願明細書に援用される。
【0071】
他の実施形態において、構成成分IIは、PD-L1およびPD-L2の両方のリガンドに対して結合親和性を有する抗体、例えば、PCT国際公開第2014/022758号に開示されている抗PD-L1およびPD-L2抗体の単一薬剤を含み、この内容は、その全体が本願明細書に援用される。
【0072】
一部の実施形態において、構成成分IIは、抗PD-1抗体、PD-L1抗体、およびPD-L2抗体から選択される2つ以上の抗体を含む。一例において、抗PD-L1抗体および抗PD-L2抗体は、リンカーを介して単一コンジュゲート中に含まれ得る。
【0073】
一部の実施形態において、構成成分IIは、負のシグナル伝達を媒介するPD-1およびPD-L1/2を同時に遮断することができる調節剤を含む。この調節剤は非抗体剤であり得る。一部の態様において、非抗体剤は、PD-L1タンパク質、可溶性PD-L1断片、これらのバリアントおよび融合タンパク質であり得る。非抗体剤は、PD-L2タンパク質、可溶性PD-L2断片、これらのバリアントおよび融合タンパク質であり得る。PD-L1およびPD-L2ポリペプチド、融合タンパク質、および可溶性断片は、PD-1の内因性リガンド(すなわち、内因性PD-L1およびPD-L2)がPD-1と相互作用するのを防止することにより、T細胞内のPD-1を介して起こる抑制性シグナル伝達を阻害または低減することができる。加えて、非抗体剤は、PD-1のリガンドに対して結合して、T細胞上の内因性PD-1受容体への結合を防止するPD-1融合タンパク質である、可溶性PD-1断片であり得る。一例において、PD-L2融合タンパク質はB7-DC-Igであり、PD-1融合タンパク質はPD-1-Igである。別の例において、PD-L1、PD-L2可溶性断片は、PD-L1およびPD-L2それぞれの細胞外ドメインである。一実施形態において、構成成分IIは、米国特許出願第2013/017199号明細書に開示されている非抗体剤を含み、この内容は、その全体が本願明細書に援用される。
【0074】
CTLA-4およびPD-1に加えて、他の既知の免疫抑制性チェックポイントには、TIM-3(T細胞イムノグロブリンおよびムチンドメイン含有分子3)、LAG-3(リンパ球活性化遺伝子3、CD223としても知られている)、BTLA(BおよびTリンパ球アテニュエータ)、CD200R、KRLG-1、2B4(CD244)、CD160、KIR(キラーイムノグロブリン受容体)、TIGIT(イムノグロブリンドメインおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体)、VISTA(T細胞活性化に対するVドメインイムノグロブリン抑制因子)、ならびにA2aR(A2aアデノシン受容体)(ンギオウら(Ngiow et al.),TIM3標的化抗腫瘍免疫療法における展望(Prospects for TIM3 targeted antitumor immunotherapy),Cancer Res.,2011,71(21):6567-6571;リューら(Liu et al.),免疫チェックポイントタンパク質のVISTAおよびPD-1はネズミT細胞応答を非重複的に制御する(Immune-checkpoint proteins VISTA and PD-1 nonredundantly regulate murine T-cell responses),PNAS,2015,112(21):6682-6687;およびバイチュら(Baitsch et al.),分化、抗原特異性および解剖学的局在化に応じたヒトCD8 T細胞による抑制性受容体の延長共発現(Extended Co-Expression of Inhibitory Receptors by Human CD8 T-Cells Depending on Differentiation, Antigen-Specificity and Anatomical Localization).2012,Plos One,7(2):e30852)が含まれる。T細胞活性化を同様に制御するこれらの分子は、癌免疫療法の標的として評価されている。
【0075】
TIM-3は、IFN-γ分泌性Tヘルパー1(Th1/Tc1)細胞(モネーら、(Monney et al.),Th1特異的細胞表面タンパク質Tim-3はマクロファージ活性化および自己免疫性疾患の重症度を制御する(Th1-specific cell surface protein Tim-3 regulates macrophage activation and severity of an autoimmune disease).Nature.2002,415:536-541)、DC、単球、CD8 T細胞、および他のリンパ球サブセットにも構造的に発現する膜貫通タンパク質である。TIM-3は抑制性分子であり、エフェクターTh1/Tc1細胞応答を下方制御し、リガンドのガレクチン9に対して結合してTh1細胞に細胞死を誘導し、また抹消性寛容も誘導する(フォルケードら(Fourcade et al.)Tim-3およびPD-1発現の上方制御が黒色腫患者における腫瘍抗原特異的CD8+ T細胞機能不全に関連する(Upregulation of Tim-3 and PD-1 expression is associated with tumor antigen-specific CD8+ T cell dysfunction in melanoma patients).J experimental medicine.2010;207:2175-2186)。TIM-3の遮断は、癌ワクチンの有効性を高める(リーら(Lee et al.),(T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン3(Tim-3)経路の阻害は腫瘍ワクチンの有効性を高める(The inhibition of the T cell immunoglobulin and mucin domain 3(Tim-3) pathway enhances the efficacy of tumor vaccine).Biochem.Biophys.Res Commun,2010,402:88-93)。
【0076】
腫瘍微小環境における低酸素によって生成される細胞外アデノシンは、様々な免疫細胞および内皮細胞上に発現するA2a受容体に対して結合することが示されている。免疫細胞上のA2aRの活性化は、免疫抑制サイトカイン(例えば、TGF-β、IL-10)産生の増加、代替的免疫チェックポイント経路受容体(例えば、PD-1、LAG-3)の上方制御、制御性T細胞表現型を導くCD4+ T細胞におけるFOXP3発現の増加、およびエフェクターT細胞アネルギーの誘導を誘導する。ビーバスら(Beavis et al)は、A2aRの遮断がエフェクターT細胞機能を改善し、転移を抑制できることを実証した(ビーバスら,A2A受容体の遮断はCD73+腫瘍の転移を強力に抑制する(Blockade of A2A receptors potently suppresses the metastasis of CD73+ tumors).Proc Natl Acad Sci USA,2013,110:14711-14716)。一部のA2aR阻害剤は、AsaR抑制性シグナルの遮断に使用され、限定されることなく、SCH58261、SYN115、ZM241365、およびFSPTPが含まれる(レオンら(Leone et al.),A2aR拮抗薬:癌免疫療法における次世代チェックポイント遮断(A2aR antagonists:Next generation checkpoint blockade for cancer immunotherapy),Comput Struct Biotechnol.J 2015,13:265-272)。
【0077】
LAG-3は、活性化CD4およびCD8 T細胞、γδT細胞のサブセット、NK細胞、および制御性T細胞(Treg)上に発現されるI型膜貫通タンパク質であり、免疫応答を負に制御し得る(ジャら(Jha et al.),リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)は環境誘導性自己免疫を負に制御する(Lymphocyte Activation Gene-3(LAG-3)Negatively Regulates Environmentally-Induced Autoimmunity),PLos One,2014,9(8):e104484)。LAG-3は、T細胞受容体誘導性カルシウム流を阻害することによって、T細胞増殖を負に制御し、故にメモリーT細胞プールのサイズをコントロールする。LAG-3シグナリングは、自己免疫性応答のCD4制御性T細胞抑制にとって重要であり、LAG-3は、CD8 T細胞への直接的な効果を介して自己および腫瘍抗原に対して寛容を維持する。最近の研究は、PD-1およびLAG-3の両方の遮断がマウスの自己免疫性モデルにおいて免疫細胞活性化を誘発することを示し、LAG-3がチェックポイント遮断にとって別の潜在的に重要な標的であり得ることを支持した。
【0078】
IgスーパーファミリーのメンバーであるBTLAは、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFRSF)のメンバーであるHVEMZ(ヘルペスウイルス侵入媒介物質であり、TNFRSF14またはCD270としても知られている)に対して結合する(ワタナベら(Watanabe et al.),BTLAはCTLA-4およびPD-1に類似性のあるリンパ球抑制性受容体である(BTLA is a lymphocyte inhibitory receptor with similarities to CTLA-4 and PD-1)Nat Immunol,2003,4670-679)。HVEMはT細胞上(例えば、CD8+ T細胞)上に発現する。HVEM-BTLA経路はT細胞増殖を制御する阻害的役割を果たす(ワングら(Wang et al.),T細胞媒介応答の負の調節因子としてのヘルペスウイルス侵入媒介物質の役割(The role of herpesvirus entry mediator as a negative regulator of T cell-mediated responses), J Clin Invest.,2005,115:74-77)。CD160はHVEMの別のリガンドである。CD160/HVEMの共抑制性シグナルは、CD4+ヘルパーT細胞の活性化を阻害することができる(カイら(Cai et al.),CD160はヘルペスウイルス侵入媒介物質との相互作用を介してヒトCD4+ T細胞の活性化を阻害する(CD160 inhibits activation of human CD4+ T cells through interaction with herpesvirus entry mediator).Nat Immunol.2008;9:176-185)。
【0079】
CD200Rは、骨髄細胞上に発現するCD200の受容体である。CD200(OX2)は、多くの細胞上に高度に発現される膜糖タンパク質である。研究は、CD200およびCD200Rの相互作用が骨髄由来抑制細胞(MDSC)個体群を拡大し得ることを示した(ホルマノバら(Holmannova et al.),免疫および炎症応答を制御する強力なCD200/CD200Rペアタンパク質抑制性分子;パートI:CD200/CD200Rの構造、活性化および機能(CD200/CD200R paired potent inhibitory molecules regulating immune and inflammatory responses;Part I:CD200/CD200R structure,activation,and function).Acta Medica(Hradec Kralove)2012,55(1):12-17、ならびにゴルツェンスキー(Gorczynski),免疫制御の標的としてのCD200およびその受容体(CD200 and its receptors as targets of immunoregulation),Curr Opin Investig Drug,2005,6(5):483-488)。
【0080】
TIGITは、腫瘍浸潤性T細胞に高度に発現する共抑制性受容体である。腫瘍微小環境において、TIGITは、cisのT細胞上の共刺激性分子であるCD226と相互作用し、それによってCD226二量体化を壊すことができる。この阻害効果は、抗腫瘍および他のCD8+ T細胞依存性応答を決定的に制限し得る(ジョンソンら(Johnston et al.),免疫受容体TIGITは抗腫瘍および抗ウイルスCD8(+)T細胞エフェクター機能を制御する(The immunoreceptor TIGIT regulates antitumor and antiviral CD8(+) T cell effector function),Cancer cell,2014,26(6):923-937)。
【0081】
KIRは、ナチュラルキラー細胞(NK)上に発現する細胞表面タンパク質のファミリーである。これらは、任意のタイプの細胞上に発現するMHCクラスI分子と相互作用することによって死滅機能を制御し、ウイルス感染細胞または腫瘍細胞の検出を可能にする。大部分のKIRは抑制性であり、MHC分子によるこれらの認識は、NK細胞の細胞傷害活性を抑制することを意味する(イバルソンら(Ivarsson et al.),健康および疾患におけるキラー細胞Ig様受容体の活性化(Activating killer cell Ig-like receptor in health and disease),Frontier in Immu.,2014,5:1-9)。
【0082】
T細胞活性化に影響を与える更なる共抑制性シグナルには、KLRG-1、2B4(CD244とも呼ばれる)、およびVISTAが含まれるが、これらに限定されない(ラインら(Lines et al.),VISTAは癌免疫療法における新規の負の広域スペクトルチェックポイント制御因子である(VISTA is a novel broad-spectrum negative checkpoint regulator for cancer immunotherapy),Cancer Immunol Res.,2014,2(6):510-517)。
【0083】
本開示によると、構成成分IIは、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM-3、LAG-3(CD223)、BTLA、CD160、CD200R、TIGIT、KRLG-1、KIR、2B4(CD244)、VISTA、A2aR、および他の免疫チェックポイントから選択される共抑制性分子の拮抗薬または阻害剤を含む。一部の態様において、拮抗剤は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM-3、LAG-3(CD223)、BTLA、CD160、CD200R、TIGIT、KRLG-1、KIR、2B4 (CD244)、VISTA、およびA2aRから選択される共抑制性チェックポイント分子に対する拮抗性抗体またはその断片であり得る。
【0084】
一部の実施形態において、構成成分IIは、LAG-3(CD223)に特異的な拮抗性抗体および/またはその機能性断片を含む。そのような拮抗性抗体は、LAG-3(CD223)に対して特異的に結合し、腫瘍中の制御性T細胞を阻害することができる。一例において、これは米国特許第9,005,629号および同第8,551,481号に開示されている拮抗性抗LAG-3(CD223)抗体であり得る。構成成分IIは、また、CD233機能のために必須であることが米国特許第9,005,629号および同第8,551,481号(それぞれの内容は、その全体が本願明細書に援用される。)に開示されている方法を使用して確認されているLAG-3(CD223)細胞質中のアミノ酸モチーフKIEELEに対して結合する、任意の阻害剤を含むこともできる。LAG-3(CD223)に対して特異的な他の拮抗性抗体には、米国特許出願公開第20130052642号明細書に開示されている抗体が含まれてもよく、この内容は、その全体が本願明細書に援用される。
【0085】
一部の実施形態において、構成成分IIは、TIM-3に特異的な拮抗性抗体および/またはその機能性断片を含む。そのような拮抗性抗体は、TIM-3に対して特異的に結合し、TIM-3発現細胞、例えば、腫瘍細胞に内部移行して、腫瘍細胞を死滅させることができる。他の態様において、TIM-3の細胞外ドメインに対して特異的に結合するTIM-3特異的抗体は、例えば、抗体の非存在下での増殖と比較して、結合時にTIM-3発現細胞の増殖を阻害し、T細胞活性化、エフェクター機能、または腫瘍部位への輸送を促進することができる。一例において、拮抗性抗TIM-3抗体は、米国特許第8,841,418号、同第8,709,412号、同第8,697,069号、同第8,647,623号、同第8,586,038号、および同第8,552,156号明細書に開示されている任意の抗体から選択されてもよく、それぞれの内容は、その全体が本願明細書に援用される。
【0086】
加えて、拮抗性抗TIM-3抗体は、米国特許第8,697,069号、同第8,101,176号、および同第7,470,428号明細書に開示されているモノクローナル抗体8B.2C12、25F,1D6から選択されてもよく、それぞれの内容は、その全体が本願明細書に援用される。
【0087】
他の実施形態において、構成成分IIは、ガレクチン9に対して特異的に結合して、TIM-3への結合を中和することができる薬剤を含み、PCT国際公開第2015/013389号に開示されている中和抗体が含まれ、この内容は、その全体が本願明細書に援用される。
【0088】
I一部の実施形態において、構成成分IIはBTLAに対して特異的な拮抗性抗体および/またはその機能性断片を含み、米国特許第8,247,537号、同第8,580,259号明細書に開示されている抗体および抗体の抗原結合部分、米国特許第8,563,694号明細書の完全ヒトモノクローナル抗体、ならびに米国特許第8,188,232号明細書のBTLA遮断抗体が含まれるが、これらに限定されず、それぞれの内容は、その全体が本願明細書に援用される。
【0089】
BTLAおよびその受容体HVEMを阻害し得る他の更なる拮抗剤には、PCT国際公開第2014/184360号、同第2014/183885号、同第2010/006071号、および同第2007/010692号に開示されている薬剤が含まれてもよく、それぞれの内容は、その全体が本願明細書に援用される。
【0090】
ある特定の実施形態において、構成成分IIは、KIRに対して特異的な拮抗性抗体および/またはその機能性断片を含み、例えば、ベンソンら(Benbson et al.)により教示されたIPH2101(再発性/難治性多発性骨髄腫の患者における抗KIR抗体IPH2101およびレナリドミドの第I相試験(A phase I trial of the anti-KIR antibody IPH2101 and lenalidomide in patients with relapsed/refractory multiple myeloma),Clin Cancer Res.,2015,May 21.pii:clincanres.0304.2015)を含み、この内容は、その全体が本願明細書に援用される。
【0091】
他の実施形態において、拮抗剤は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM-3、LAG-3(CD223)、BTLA、CD160、CD200R、TIGIT、KRLG-1、KIR、2B4(CD244)、VISTA、およびA2aRから選択される共抑制性チェックポイント分子の抑制性機能を阻害することができる任意の化合物であり得る。
【0092】
一部の例において、拮抗剤は、非抗体阻害剤、例えば、LAG-3-Ig融合タンパク質(IMP321)(ロマーノら((Romano et al.),J transl.Medicine,2014,12:97)、およびBTLA/CD160HVEM経路の拮抗薬である単純ヘルペスウイルス(HSV)-1糖タンパク質D(gD)(ラサーロら(Lasaro et al.),Mol Ther.2011;19(9):1727-1736)であり得る。
【0093】
一部の実施形態において、構成成分IIは、二重特異性または多重特異性である薬剤を含む。本明細書で使用されるとき、用語「二重特異性剤」および「多重特異性剤」は、2個の標的または多数の標的に対して同時に結合することができる任意の薬剤を指す。一部の態様において、二重特異性剤は、第1の標的に対して結合する第1のペプチド配列、および第2の異なる標的に対して結合する第2のペプチド配列を有する二重特異性ペプチド剤であり得る。2個の異なる標的は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM-3、LAG-3(CD223)、BTLA、CD160、CD200R、TIGIT、KRLG-1、KIR、2B4(CD244)、VISTA、およびA2aRから選択される2個の異なる抑制性チェックポイント分子であり得る。二重特異性ペプチド剤の非限定例は、二重特異性抗体またはその抗原結合断片である。同様に、多重特異性剤は、1個を超える標的に対して結合する1個を超える特異的結合配列ドメインを有する多重ペプチド特異性剤であり得る。例えば、多重特異性ポリペプチドは、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、またはそれ以上の標的に対して結合することができる。多重特異性ペプチド剤の非限定例は、多重特異性抗体またはその抗原結合断片である。
【0094】
一例において、そのような二重特異性抗体は、米国特許出願公開第2013/0156774号明細書に開示されている、TIM-3およびPD-1を標的とする二重特異性ポリペプチド抗体バリアントであり、この内容は、その全体が本願明細書に援用される。
【0095】
一部の実施形態において、構成成分IIは、1個のコンジュゲート中にリンカーを介して接続されている1個、2個、または多数のチェックポイント拮抗薬/阻害剤を有するコンジュゲートを含む。
【0096】
一部の実施形態において、構成成分IIは、チェックポイント受容体に対して結合し、チェックポイント受容体を阻害する任意の薬剤を含む。チェックポイント受容体は、CTLA-4、PD-1、CD28、誘導性T細胞共刺激物質(ICOS)、BおよびTリンパ球アテニュエータ(BTLA)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、CD137、OX40、CD27、CD40L、T細胞膜タンパク質3(TIM3)、ならびにアデノシンA2a受容体(A2aR)からなる群から選択される。
【0097】
一例において、構成成分IIはCTLA-4拮抗薬を含む。
別の例において、構成成分IIはPD-1拮抗薬を含む。
なお別の例において、構成成分IIはPD-L1拮抗薬を含む。
【0098】
zesteホモログエンハンサー(Enhancer of Zeste Homolog)(EZH)阻害剤
Schlafenファミリーメンバー11(SLFN11)は、DNA修復の欠損に関与するタンパク質であり、DNA修復タンパク質と相互作用することが示されている。前臨床データに基づくと、これは、イリノテカンを含むDNA損傷剤に対する感受性のある潜在的なマーカーである。SLFN11の欠失は、後成的サイレンシングを介して起こり、このサイレンシングは、DNA損傷を引き起こす化学療法薬に対して抵抗性を引き起こす潜在性を有する。カルボプラチン/シスプラチンに対して抵抗性のある卵巣癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、および乳癌の細胞系において、SLFN11遺伝子座は、メチル化を介してサイレンスされる。SLFN11が、タンパク質を発現する細胞においてノックダウンされる場合、以前は白金薬に対する感受性のあった細胞に抵抗性を増加させることも見出されている。臨床設定において、白金薬による生存率が不十分である一部のNSCLCおよび卵巣癌患者は、SLFN11遺伝子座のサイレンシングを示した。化学療法抵抗性を有する癌患者に、SLFN11発現を増加および/または回復することが望ましい。
【0099】
zesteホモログエンハンサー(EZH)タンパク質は、SLFN11のサイレンシングに関与することが示されている。EZHは、ヒストンメチラーゼであり、遺伝子の転写を抑圧し、癌細胞において過剰発現および/または過剰活性化され得る。シスプラチン/またはエトポシドに対して抵抗性を発生するSCLC前臨床モデルは、感受性モデルと比較して、SLFN11の下方制御を実証し、EZH阻害剤による化学耐性細胞系の治療は、in vitroおよびin vivoにおいて感受性を回復することができる。EZH阻害剤と組み合わせた化学療法剤は、癌細胞の化学療法抵抗性を防止することができる。
【0100】
一部の実施形態において、併用療法の構成成分Iはコンジュゲート1であり、併用療法の構成成分IIはEZH阻害剤である。任意のEZH阻害剤、例えば、EZH1および2阻害剤、ならびに二重阻害剤は、構成成分IIとして使用することができる。EZH阻害剤の非限定例には、EPZ011989(遊離塩基 CAS No.1598383-40-4)、EPZ005687(CAS No.1396772-26-1)、GSK126 (CAS No.1346574-57-9)、GSK343(CAS No.1346704-33-3)、GSK503 (CAS No.1346572-63-1)、タゼメトスタット(tazemetostat)(EPZ-6438、CAS No.1403254-99-8)、3-デアザネプラノシンA(3-deazaneplanocin A)(DZNeP、HCl塩 CAS No.120964-45-6)、EI1(CAS No.1418308-27-6)、CPI-360(CAS No.1802175-06-9)、CPI-169(CAS No.1450655-76-1)、JQ-EZ-05(JQEZ5、CAS No.1913252-04-6)、PF-06726304(CAS No.1616287-82-1)、UNC1999(CAS No.1431612-23-5)、およびUNC2400(CAS No.1433200-49-7)が含まれる。
【0101】
製剤および投与
本開示の併用療法におけるそれぞれの構成成分は、(1)安定性を増加する、(2)持続または遅延放出(例えば、モノマレイミドのデポー製剤から)をできるようにする、(3)体内分布を変更する(例えば、特異的組織または細胞タイプに向けてモノマレイミド化合物を標的化する)、(4)モノマレイミド化合物のin vivoにおける放出プロファイルを変更するために、1種または複数の薬学的に許容される賦形剤を使用して製剤化され得る。構成成分Iおよび構成成分IIは、それぞれ異なる組成物によって投与され得る。
【0102】
賦形剤の非限定例には、ありとあらゆる溶媒、分散媒体、希釈剤または他の液体ビヒクル、分散剤または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、および防腐剤が含まれる。賦形剤には、また、限定されることなく、リピドイド(lipidoid)、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、リポプレックス、コアシェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣体、およびこれらの組み合わせも含まれ得る。したがって、製剤におけるそれぞれの構成成分には、1種または複数の賦形剤が、一緒なって活性剤の安定性を増加する量でそれぞれ含まれ得る。
【0103】
Remington’s The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,A.R.ゲナロー(A.R.Gennaro)(リッピンコット、ウイリアムズ、およびウイルキンス(Lippincott,Williams & Wilkins),Baltimore,MD,2006;その全体が本願明細書に援用される。)は、医薬組成物の製剤化に使用される様々な賦形剤およびその既知の調製技術を開示する。従来の任意の賦形剤媒体が物質または誘導体と不適合である場合、例えば、任意の望ましくない生物学的効果を産生する、そうでなければ医薬組成物の他の任意の構成成分と有害なやり方で相互作用する場合を除いて、その使用は本開示の範囲内であると考慮される。
【0104】
本開示による医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容される賦形剤、および/または任意の更なる成分の相対量は、治療される対象の素性、サイズ、および/または状態に応じて、更に組成物が投与される経路に応じて変わる。例として、組成物は、0.1%~100%、例えば、0.5~50%、1~30%、5~80%、少なくとも80%(w/w)の活性成分を含むことができる。
【0105】
一部の実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の純度である。一部の実施形態において、賦形剤は、ヒトにおける使用および獣医の使用のために承認されている。一部の実施形態において、賦形剤は、米国食品医薬品局により承認されている。一部の実施形態において、賦形剤は医薬品グレードである。一部の実施形態において、賦形剤は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、および/または国際薬局方の基準を満たしている。
【0106】
一部の実施形態において、コンジュゲート1は、医薬組成物によって患者に対して投与され、医薬組成物は約4.0~約5.0のpHを有する。一部の実施形態において、医薬組成物は、約4.0~約4.8のpHを有する酢酸塩緩衝液(酢酸ナトリウムおよび酢酸)を含む。一部の実施形態において、医薬組成物は、マンニトールおよびポリオキシル15ヒドロキシルステアレートを更に含む。
【0107】
一実施形態では、注射用液剤の組成物がコンジュゲートの投与のために提供される。液剤は、コンジュゲート1、マンニトール、ポリオキシル15ヒドロキシルステアレート、および水性酢酸塩緩衝液を含む。組成物は、静脈内(IV)注入され得る。
【0108】
投与
併用療法の構成成分は、治療上有効な転帰を生じる任意の経路で投与され得る。これらには、経腸、胃腸内、硬膜外、経口、経皮、硬膜外(硬膜上)、脳内(大脳の中)、脳室内(脳室の中)、皮膚上(皮膚上への適用)、皮内(皮膚自体の中)、皮下(皮膚の下)、鼻腔投与(鼻を介する)、静脈内(静脈の中)、動脈内(動脈の中)、筋肉内(筋肉の中)、心臓内(心臓の中)、骨内注入(骨髄の中)、髄腔内(脊柱管の中)、腹腔内(腹膜の中への注入もしくは注射)、膀胱内注入、硝子体内(目を介する)、空洞内注入(陰茎の基部の中)、膣内投与、子宮内、羊膜外投与、経皮(全身分布のために無処置皮膚を介した拡散)、経粘膜(粘膜を介した拡散)、通気法(鼻から吸入(snorting))、舌下、唇の下、浣腸、点眼(結膜の上)、または点耳が含まれるが、これらに限定されない。特定的な実施形態において、組成物は、血液脳関門、血管関門、または他の上皮関門の横断を可能にする方法で投与され得る。
【0109】
本明細書に記載されている製剤は、それを必要とする患者への投与に適切な医薬担体の中に有効量の構成成分を含有する。製剤は、非経口(例えば、注射または注入により)投与され得る。製剤またはその変種は、経腸、局所(例えば、目)、または肺投与を含む任意の方法で投与され得る。一部の実施形態において、製剤は局所投与される。
【0110】
投薬
患者にとって必要なそれぞれの構成成分の正確な量は、対象の種、年齢および一般的な状態、疾患の重症度、特定の組成物、その投与様式、その活性様式などに応じて、対象毎に変わる。
【0111】
併用療法の構成成分は、投与の容易さ、および投与量の均一性のために典型的には単位剤形で製剤化される。しかし、本開示の組成物の1日に使用される総量は、担当医の健全な医療判断の範囲内で決定されることが理解される。任意の特定の患者への特定的な治療有効性、予防有効性、または適切な用量レベルは、治療される障害および障害の重症度;用いられる特定的な化合物の活性;用いられる特定的な組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康、性別および食事;用いられる特定的な化合物の投与の時点、投与経路および排出速度;処置の持続期間;用いられる特定的な化合物と組み合わせて、または同時に使用される薬物;ならびに医療技術に周知の同様の要因を含む様々な要因によって左右される。
【0112】
一部の実施形態において、本開示による併用療法の構成成分は、1日当たり対象の体重の約0.0001mg/kg~約100mg/kg、約0.001mg/kg~約0.05mg/kg、約0.005mg/kg~約0.05mg/kg、約0.001mg/kg~約0.005mg/kg、約0.05mg/kg~約0.5mg/kg、約0.01mg/kg~約50mg/kg、約0.1mg/kg~約40mg/kg、約0.5mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、または約1mg/kg~約25mg/kgを1日に1回または複数回送達して、所望の治療、診断、予防、または画像化効果を得るのに十分な投与量レベルで投与され得る。
【0113】
所望の投与量は、1日に3回、1日に2回、1日に1回、1日置き、3日置き、毎週、2週間置き、3週間置き、または4週間置きに送達され得る。一部の実施形態において、所望の投与量は、複数回投与(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、またはそれ以上の回数の投与)を使用して送達され得る。複数回投与が用いられる場合には、分割投薬レジメン、例えば本明細書に開示されているものが使用され得る。
【0114】
構成成分の濃度は、医薬組成中で約0.01mg/mL~約50mg/mL、約0.1mg/mL~約25mg/mL、約0.5mg/mL~約10mg/mL、または約1mg/mL~約5mg/mLであり得る。
【0115】
本明細書で使用されるとき、「分割用量」は、単一単位用量または総1日用量を2つ以上の用量、例えば、単一単位用量の2回以上の投与に分けることである。本明細書で使用されるとき、「単一単位用量」は、1つの用量/1回/単一経路/単一接触点、すなわち、単一投与事象で投与される任意の治療薬の用量である。本明細書で使用されるとき、「総1日用量」は、24時間で与えられる、または処方される量である。これは単一単位用量として投与され得る。一実施形態において、本開示のモノマレイミド化合物は、分割用量で対象に対して投与される。モノマレイミド化合物は、緩衝液のみにより製剤化され得る、または本明細書に記載される製剤に製剤化され得る。
【0116】
対象は、任意の適した長さにわたって、例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、1か月間、2か月間、3か月間、4か月間、5か月間、6か月間、7か月間、8か月間、9か月間、10か月間、11か月間、1年間にわたって、または所定の重要な段階(例えば、90%、95%、または99%を超えるTGI%)に達するまで併用療法を受けることができる。
【0117】
一部の実施形態において、構成成分Iはコンジュゲート1であり、それを必要とする対象に約30mg、60mg、120mg、240mg、または360mgの用量で投与される。任意選択で、それを必要とする対象に対して投与されるコンジュゲート1の投薬は、対象の体表面積(BSA)に基づいている。BSA(平方メートル)は、本明細書で使用されるとき、身長(センチメートル)に体重(キログラム)を掛けて3600で割った平方根である。例えば、コンジュゲート1の投薬は、少なくとも約150mg/m、例えば、約175mg/m、200mg/m、225mg/m、250mg/m、275mg/m、または300mg/mであり得る。コンジュゲート1は、28日サイクルの1、8、および15日目に投与され得る。
【0118】
一部の実施形態において、構成成分IIはPARP阻害剤である。PARP阻害剤は、7日サイクルの2、3、4、5、および6日目に投与され得る。
実施例において考察されるように、前臨床マウスモデルにおいてコンジュゲート1およびPARP阻害剤を投薬するスケジュールは、有効性を達成すると同時に潜在的な重複毒性を和らげた。ヒトに対して最適なスケジュールに転換することは、コンジュゲート1および特定的なPARP阻害剤の薬物動態および毒性に依存する。PK(薬物動態)および投薬日数の推定値は、考慮されるPARPi(PARP阻害剤)に依存する。図2は、7日スケジュールに基づいた有効性を最大限にする、および/または毒性を最小限にする、コンジュゲート1およびニラパリブの血漿曝露、ならびにコンジュゲート1の腫瘍異種移植片曝露の推定値を示す。コンジュゲート1のデータは、マウス血漿およびマウス腫瘍異種移植片からのものであった。PARP阻害剤血漿濃度は、公開されたニラパリブのヒトデータから推定/推測した。
【0119】
一部の実施形態において、構成成分Iはコンジュゲート1であり、それを必要とする対象に対して、少なくとも150mg/の用量で28日サイクルの1、8、および15日目に投与され、構成成分IIは、PARP阻害剤であり、対象に対して、7日サイクルの2、3、4、5、および6日目に投与される。対象は、SCLCを有し得る、1つ以下の前治療歴(prior line of therapy)を有し得る、活動指標(performance status(PS)の0/1を有し得る、イリノテカン無感作であり得る、および/またはPARP野生型を有し得る。
【0120】
II.コンジュゲート1および/または併用療法の使用方法
本開示の一態様は、様々な異なる疾患状態をコンジュゲート1で治療する方法を提供する。疾患状態には、細胞増殖性疾患、例えば、新生物疾患、自己免疫性疾患、中枢神経系または神経変性疾患、心血管疾患、ホルモン異常疾患、感染性疾患などが含まれる。
【0121】
「治療」とは、宿主が罹患している疾患状態に関連する症状の少なくとも寛解を意味し、寛解は、パラメーターの大きさ、例えば、治療される病態、例えば炎症およびそれに関連する疼痛に関連する症状の大きさを少なくとも低減することを指す広い意味で使用される。このように、治療は、また、病態または少なくともそれに関連する症状が完全に阻害される、例えば、発生が防止される、または停止される、例えば終止される局面も含み、それによって宿主は、病態により、または病態を特徴付ける少なくとも症状により苦しまないで済む。
【0122】
様々な宿主が本開示により治療可能である。一般にそのような宿主は、「哺乳動物」または「哺乳類」であり、これらの用語は、食肉目(例えば、イヌおよびネコ)、齧歯目(例えば、マウス、モルモット、およびラット)、ならびに霊長目(例えば、ヒト、チンパンジー、およびサル)を含む哺乳綱の範囲内にある生物体を記載するために広義に使用される。多くの実施形態において、宿主はヒトである。
【0123】
本発明は、また、疾患または障害の治療方法も提供し、治療される対象は、特定のタンパク質の存在または過剰発現に基づいて治療のために選択される。例えば、対象は、正常なレベルを超えたHsp90の存在に基づいて、癌の治療のために選択され得る。HSP90は、腫瘍細胞上の細胞外HSP90(eHSP90)、または体液(例えば、血漿もしくは血清)中の循環HSP90であり得る。本方法は、患者から試料を得ること、および試料中のヒト細胞外Hsp90または循環HSP90の発現を測定することを含む。
【0124】
eHSP90の発現は、当該技術に既知の方法、例えば、ELISA、RIA、EIA、サンドイッチアッセイ、ウエスタンブロット分析、免疫染色、フローサイトメトリー、および免疫組織染色を使用して測定することができる。
【0125】
循環HSP90は、患者の血清試料において測定することができる。一部の実施形態では、患者の血清試料を収集し、分析するまで-20℃で凍結することができる。HSP90のELISAは、二重抗体サンドイッチ酵素結合免疫吸着アッセイ(double-antibody sandwich enzyme-linked immunosorbent assay)を使用して、試料中のヒトHSP90のレベルを決定する。
【0126】
一部の実施形態において、循環HSP90はHSP90αである。米国特許第8580519号明細書(メリーランド州立大学(Univ.of Maryland))(この内容は、その全体が本願明細書に援用される)によると、患者の血漿または血清中のHSP90αの量または濃度を使用して、癌の進行を決定することができる。Hsp90αポリペプチドは、Hsp90αポリペプチドと相互作用する薬剤を使用して検出され得る。例えば、薬剤は、Hsp90αまたはHsp90αの断片に対して結合する抗体であり得る。薬剤は、検出に使用される標識、例えば、化学発光タグ、比色タグ、蛍光タグ、または放射性タグを含んでもよい。
【0127】
一部の実施形態において、国際公開第2007096194号(ノバルティス社(Novartis))(この内容は、その全体が本願明細書に援用される。)に開示されている放射標識されたイソオキサゾール誘導体は、分子画像化様式を使用してHSP90をプローブするために使用される。一部の実施形態において、米国特許第7834181号明細書(スローンケタリング研究所(Sloan-Kettering Institute))(この内容は、その全体が本願明細書に援用される。)に開示されている、124I、131I、または123Iなどの放射標識を有するアリール置換アデニンベースHSP90阻害剤を使用して、腫瘍組織の放射線画像化を実施し、HSP90のレベルを決定する。
【0128】
一部の実施形態において、HSP90に対する小分子阻害剤を造影剤として用いる核磁気共鳴画像化を実施して、HSP90の発現を測定する。この工程は、(a)標的組織中でHSP90に対して結合する小分子を含む造影強調剤(contrast enhancement agent)を準備すること、(b)造影強調剤を標的組織の中に導入すること、および(c)磁気共鳴画像化を使用して標的組織をスキャンし、それによって標的組織の可視画像を非侵襲的に生成することを含む。米国特許出願公開第2009/0088578号明細書(ヘイステッドら(Haystead et al.))(この内容は、その全体が本願明細書に援用される。)に開示されているHSP90結合造影強調小分子を使用することができる。
【0129】
一部の実施形態では、患者において癌を治療する方法が提供され、この方法は、
1)患者においてHSP90のレベルを測定する工程、および
2)治療有効量のコンジュゲート1を患者に対して投与する工程
を含む。
【0130】
非限定例として、治療され得る癌腫は、急性顆粒球性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、腺癌、腺肉腫、副腎癌、副腎皮質癌、肛門癌、未分化星状細胞腫、血管肉腫、虫垂癌、星状細胞腫、基底細胞癌、B細胞リンパ腫、胆管癌、膀胱癌、骨癌、腸癌、脳癌、脳幹部神経膠腫、脳腫瘍、乳癌、カルチノイド腫瘍、子宮頸癌、胆管細胞癌、軟骨肉腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚リンパ腫、皮膚黒色腫、びまん性星状細胞腫、腺管上皮内癌(Ductal carcinoma in situ)、子宮癌、脳室上衣細胞腫、類上皮肉腫、食道癌、ユーイング肉腫、肝外胆管癌、眼癌、卵管癌、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌、胃腸癌、胃腸管カルチノイド癌、胃腸管間質腫瘍、全身(General)、胚細胞性腫瘍、多形神経膠芽腫、神経膠腫、有毛細胞白血病、頭頸部癌、血管内皮腫、ホジキンリンパ腫(Hodgkin lymphoma)、ホジキン病、ホジキンリンパ腫(Hodgkin’s lymphoma)、下咽頭癌、浸潤性腺管癌、浸潤性小葉癌、炎症性乳癌、腸癌、肝内胆管癌、侵襲性/浸潤性乳癌、島細胞癌、顎癌、カポジ肉腫、腎癌、喉頭癌、平滑筋肉腫、軟膜髄膜転移、白血病、口唇癌、脂肪肉腫、肝癌、上皮内小葉癌、低分化型星細胞腫、肺癌、リンパ節癌、リンパ腫、男性乳癌、髄様癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜腫、メルケル細胞癌、間葉性軟骨肉腫、間葉腫(Mesenchymous)、中皮腫、転移性乳癌、転移性黒色腫、転移性扁平上皮頸部癌、混合性神経膠腫、口癌、粘膜性癌、粘膜黒色腫、多発性骨髄腫、鼻腔癌、鼻咽頭癌、頸部癌、神経芽細胞腫、神経内分泌腫瘍、非ホジキンリンパ腫(Non-Hodgkin lymphoma)、非ホジキンリンパ腫(Non-Hodgkin’s lymphoma)、非小細胞肺癌、燕麦細胞癌、眼球癌、眼球黒色腫、乏突起神経膠腫、口腔癌、口腔内癌、中咽頭癌、骨原性骨肉腫、骨肉腫、卵巣癌、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞癌、卵巣原発性腹膜癌、卵巣性索間質性腫瘍、パジェット病、膵癌、乳頭状癌、副鼻洞癌、上皮小体癌、骨盤癌、陰茎癌、末梢神経癌、腹膜癌、咽頭癌、褐色細胞腫、毛様性星細胞腫、松果体部腫瘍、松果体芽細胞腫、下垂体癌、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎盂腎癌、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、肉腫、骨、肉腫、軟組織、肉腫、子宮、鼻洞癌、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟組織肉腫、脊椎癌、脊柱癌、脊髄癌、脊椎腫瘍、扁平上皮癌、胃部の癌、滑膜肉腫、T細胞リンパ腫、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫/胸腺癌、甲状腺癌、舌癌、扁桃腺癌、移行上皮癌、移行上皮癌、移行上皮癌、三種陰性乳癌、管癌、管状癌、尿管癌、尿管癌、尿道癌、子宮腺癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、および外陰癌であり得る。
【0131】
一部の実施形態において、コンジュゲート1は、癌を有する対象に対して投与され、癌は、小細胞肺癌(SCLC)、胃または食道胃接合部(GEJ)癌、膵管腺癌(PDAC)、卵巣癌、子宮内膜癌、小細胞癌(SCC)、または肛門、子宮頚部、外陰部もしくは陰茎の扁平上皮癌、ユーイング肉腫、および横紋筋肉腫(Rhabdomyocarcoma)から選択される。
【0132】
一部の実施形態において、コンジュゲート1は、腫瘍を有する対象に対して投与され、腫瘍は、肛門の腫瘍、乳房の腫瘍、胆管細胞癌(cholangiocarcioma)、結腸の腫瘍、十二指腸の腫瘍、食道の腫瘍、肝細胞の腫瘍、肺(小細胞)の腫瘍、神経内分泌の腫瘍、卵巣の腫瘍、膵臓の腫瘍、前立腺の腫瘍、または肉腫から選択される。
【0133】
一部の実施形態において、コンジュゲート1は、癌を有する対象に対して投与され、癌は、扁平上皮癌、膵臓腺癌、膵臓の腺房細胞癌、および脂肪肉腫から選択される。
一部の実施形態において、コンジュゲート1は、癌を有する対象に対して投与され、対象は、以前に少なくとも1種の抗癌療法を受けている。抗癌療法の非限定例には、以下が含まれる。
【0134】
【表2-1】
【0135】
【表2-2】
【0136】
【表2-3】
【0137】
一実施形態では、有効量のコンジュゲート1ナトリウム、その互変異体、またはその薬学的に許容される塩、および5%マンニトールを含む医薬組成物が提供される。医薬組成物は、約9.4~約10.3の範囲のpHを有する。コンジュゲート1ナトリウム、その互変異体、またはその薬学的に許容される塩の濃度は、およそ1mg/mL~およそ20mg/mLの範囲、例えば、約3mg/mL、6mg/mL、または12mg/mLである。
【0138】
本開示の別の態様は、過剰増殖性障害、例えば、癌を有する対象を治療する方法を提供し、方法は、少なくとも2種の別個の治療剤の併用療法を含む。一部の実施形態において、方法は、(A)活性剤として、化合物Iまたはそのプロドラッグ、誘導体、もしくは薬学的に許容される塩を含む第1の構成成分、および(B)活性剤として、化合物IIまたはそのプロドラッグ、誘導体、もしくは薬学的に許容される塩を含む第2の構成成分を、患者に対して投与することを含む。
【0139】
本開示によると、癌は腫瘍によって、例えば、固形腫瘍または任意の新生物によって特徴付けることができる。一部の実施形態において、癌は固形腫瘍である。大きな薬物分子は、固形腫瘍の中への限定された浸透を有する。大きな薬物分子の浸透はゆっくりである。一方、小分子、例えば、小分子コンジュゲートは、固形腫瘍へ急速に、より深く浸透し得る。薬物の浸透深さを考慮すると、大分子は、より永続的な薬物動態を有するにも関わらず、浸透性が低い。
【0140】
一部の実施形態において、併用療法は、癌、および/または腫瘍の成長を阻害する。併用療法は、また、細胞増殖、侵襲性、および/または転移を含むも低減し、癌の治療にとって有用となり得る。
【0141】
一部の実施形態において、併用療法は、腫瘍もしくは癌の成長を防止するため、および/または腫瘍もしくは癌の転移を防止するために使用され得る。一部の実施形態において、併用療法は、癌を収縮または破壊するために使用され得る。
【0142】
一部の実施形態において、併用療法は、癌細胞の増殖を阻害することに有用である。一部の実施形態において、併用療法は、細胞増殖を阻害すること、例えば、細胞増殖の速度を阻害する、細胞増殖を防止する、および/または細胞死を誘導することに有用である。一般に、併用療法は、癌細胞の細胞増殖を阻害することができる、または癌細胞の増殖を阻害すること、および/もしくは細胞死を誘導することの両方ができる。一部の実施形態において、細胞増殖は、治療なしの細胞と比較して、本開示の併用療法により治療した後に少なくとも約25%、約50%、約75%、または約90%低減される。一部の実施形態において、細胞サイクル阻止マーカーのホスホヒストンH3(PH3またはPHH3)は、治療なしの細胞と比較して、併用療法により治療した後に少なくとも約50%、約75%、または約100%、約200%、約400%、または約600%増加される。一部の実施形態において、細胞アポトーシスマーカーのカスパーゼ3(CC3)は、治療なしの細胞と比較して、併用療法により治療した後に少なくとも約50%、約75%、約100%、約200%、約400%、または約600%増加される。
【0143】
更に、一部の実施形態において、併用療法は、複数の腫瘍タイプにおいてサイズの正味値(重量、表面積、もしくは体積)として、または経時的な速度として測定しても、腫瘍成長の阻害に有効である。
【0144】
一部の実施形態において、腫瘍のサイズは、併用療法により治療した後に約60%以上低減される。一部の実施形態において、腫瘍のサイズは、重量、および/または面積、および/または体積を測定すると、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約100%低減される。
【0145】
一部の実施形態において、併用療法を受けている対象の腫瘍成長阻害(TGI)は、少なくとも約80%、85%、90%、95%、または99%であり得る。
本開示の併用療法により治療可能な癌は、一般に哺乳動物に生じる。哺乳動物には、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ウサギ、フェレット、モルモット、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、およびウシが含まれる。様々な実施形態において、癌は、肺癌、乳癌、例えば、変異BRCA1および/または変異BRCA2乳癌、非BRCA関連乳癌、結腸直腸癌、卵巣癌、膵癌、結腸直腸癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮頸癌、腎癌、白血病、中枢神経系癌、骨髄腫、および黒色腫である。
【0146】
一部の実施形態において、癌は神経内分泌癌であり、例えば、小細胞肺癌(SCLC)、副腎髄質腫瘍(例えば、褐色細胞腫、神経芽細胞腫、神経節神経腫、または傍神経節腫)、膵消化管神経内分泌腫瘍(例えば、カルチノイド、ガストリン産生腫瘍、グルカゴン産生腫瘍、血管作動性腸管ポリペプチド分泌腫瘍、膵臓ポリペプチド分泌腫瘍、または非機能性胃腸膵腫瘍)、甲状腺髄様癌(meduallary thyroid cancer)、皮膚のメルケル細胞腫瘍、下垂体腺腫、および膵癌であるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、神経内分泌癌は原発性神経内分泌癌である。一部の実施形態において、神経内分泌癌は神経内分泌転移である。神経内分泌転移は、対象の肝臓、肺、骨、または脳であり得る。ある特定の実施形態において、癌は、脳癌、ヒト肺癌、卵巣癌、膵癌、または結腸直腸癌である。
【0147】
一実施形態において、本開示の併用療法は、小細胞肺癌の治療に使用される。肺癌を有する患者の約12%~15%が、小細胞肺癌を有する。転移性小細胞肺癌における生存は貧弱なものである。生存率は、診断の5年後に5%未満である。米国における小細胞肺癌の発生頻度は、約26K~30Kである。これらの患者のうち、約40%~80%がSSTR2陽性である。
【0148】
一実施形態において、本開示の併用療法は、組織学的に証明された局所進行性または転移性高悪性度神経内分泌癌(NEC)を有する患者の治療に使用される。一部の実施形態において、患者は、原発不明である、または任意の肺外部位にある小細胞および大細胞神経内分泌癌を有し得る。一部の実施形態において、患者は、Ki-67>30%である場合、十分に分化されたG3神経内分泌新生物を有し得る。一部の実施形態において、患者は、小細胞または大細胞組織学の場合、前立腺の神経内分泌前立腺癌(新生または治療下出現)を有し得る。一部の実施形態において、患者は、高悪性度(小または大細胞)NEC構成成分が元の試料またはその後の生検の>50%を構成する場合、混合腫瘍、例えば、混合型腺神経内分泌癌(mixed adenoneuroendocrine carcinoma)(MANEC)または混合型扁平上皮もしくは腺房細胞NECを有し得る。一部の実施形態において、患者は、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)を有し得る。
【0149】
併用療法の構成成分の特色は、生物体に対する比較的低い毒性であり、同時に腫瘍成長の阻害、例えば、緩徐または停止において有効性を維持することである。本明細書で使用されるとき、「毒性」は、物質または組成物が細胞、組織、生物体、または細胞環境に対して有害または有毒である能力を指す。低い毒性とは、物質または組成物が細胞、組織、生物体、または細胞環境に対して有害または有毒である能力が低減されていることを指す。そのような低減された、または低い毒性は、標準測度と比べたもの、治療と比べたもの、または治療の非存在下と比べたものであり得る。例えば、活性剤としてSN-38を含むコンジュゲート1は、SN-38が単独で投与されたものより低い毒性を有する。
【0150】
毒性は、対象の体重減少と比べて更に測定することができ、体重の15%を超える、20%を超える、または30%を超える体重減少は毒性を示す。毒性の他の測定基準には、また、嗜眠および全身倦怠感(general malaiase)を含む患者提示測定基準なども測定され得る。好中球減少、血小板減少、白血球(WBC)カウント、全血球(CBC)カウントも、毒性の測定基準であり得る。毒性の薬理学的指標には、活性化アミノトランスフェラーゼ(AST/ALT)レベルの上昇、神経毒性、腎臓損傷、GI損傷などが含まれる。一実施形態において、本開示の併用療法は、対象の体重に有意な変化を引き起こさない。対象の体重減少は、本開示の併用療法により治療した後、約30%、約20%、約15%、約10%、または約5%少ない。別の実施形態において、本開示の併用療法は、対象のAST/ALTレベルに有意な増加を引き起こさない。対象のAST/ALTレベルは、本開示の併用療法により治療した後、約30%、約20%、約15%、約10%、または約5%未満で増加される。なお別の実施形態において、本開示の併用療法は、本開示の併用療法により治療した後、対象のCBCまたはWBCカウントに有意な変化を引き起こさない。対象のCBCまたはWBCレベルは、本開示の併用療法により治療した後、約30%、約20%、約15%、約10%、または約5%未満で減少される。
【0151】
III.キットおよびデバイス
本開示の一態様は、本開示の方法を実行するのに都合の良い、および/または有効である様々なキットおよびデバイスを提供する。典型的には、キットは、使用者が対象の複数数の治療を実施すること、および/または複数の実験を実施することを可能にするのに十分な量および/または多数の構成成分を含む。
【0152】
一実施形態において、本開示は、少なくとも2種の別個の治療剤を含む、腫瘍細胞の成長をin vitroまたはin vivoにおいて阻害するためのキットを提供する。一部の実施形態において、腫瘍細胞の成長を阻害するためのキットは、(A)活性剤として、化合物Iまたはそのプロドラッグ、誘導体、もしくは薬学的に許容される塩を含む第1の構成成分、および(B)活性剤として、化合物IIまたはそのプロドラッグ、誘導体、もしくは薬学的に許容される塩を含む第2の構成成分を含む。
【0153】
キットは、パッケージングおよび使用説明書、ならびに/または製剤組成物を形成するための送達剤を更に含むことができる。送達剤は、食塩水、緩衝溶液、または本明細書に開示されている任意の送達剤を含み得る。それぞれの薬剤の量は、一貫した再現性ある高濃度の食塩水または単純な緩衝製剤を可能にするように変わり得る。薬剤は、また、併用療法の構成成分の安定性を経時的に、および/または様々な条件下で増加させるためにも変わり得る。
【0154】
本開示は、併用療法の構成成分を組み込むことができるデバイスを提供する。これらのデバイスは、それを必要とする対象、例えば、ヒト患者に即時に送達されるように利用可能な安定した製剤を含有する。一部の実施態様において、対象は癌を有する。
【0155】
デバイスの非限定例には、ポンプ、カテーテル、針、経皮バッチ、加圧嗅覚送達デバイス(pressurized olfactory delivery device)、イオン導入デバイス、多重マイクロ流体デバイスが含まれる。デバイスを用いて、単回、複数回、または分割投薬レジメンに従って、併用療法の構成成分を送達することができる。デバイスを用いて、生物学的組織、経皮的、皮下的、または筋肉内に併用療法の構成成分を送達することができる。
【0156】
IV.定義
用語「化合物」は、本明細書で使用されるとき、描写される構造の全ての立体異性体、幾何異性体、互変異性体、および同位体を含むことが意図される。本出願において、化合物はコンジュゲートと交換可能に使用される。したがって、コンジュゲートは、本明細書で使用されるとき、また、描写される構造の全ての立体異性体、幾何異性体、互変異性体、および同位体を含むことも意図される。
【0157】
本明細書に記載される化合物は不斉であり得る(例えば、1個または複数の立体中心を有し得る)。特に指示されない限り、全ての立体異性体、例えば、鏡像異性体およびジアステレオマーが意図される。不斉置換炭素原子を含有する本開示の化合物は、光学的に活性な形態またはラセミ形態に単離され得る。光学的に活性な出発物質から光学的に活性な形態を調整するための方法は、当該技術において知られており、例えば、ラセミ混合物の分割または立体選択的合成である。オレフィン、C=N二重結合などの多くの幾何異性体は、また、本明細書に記載される化合物に存在することもでき、全てのそのような安定した異性体が本開示において考慮される。本開示の化合物のシスおよびトランス幾何異性体が記載され、異性体の混合物として、または別々の異性体形態として単離され得る。
【0158】
本開示の化合物は、また、互変異性形態も含む。互変異性形態は、単結合と隣接する二重結合との交換、およびプロトンの随伴的移行によって生じる。互変異性形態には、同じ実験式および合計電荷を有する異性プロトン化状態であるプロトトロピー互変異性体が含まれる。プロトトロピー互変異性体の例には、ケトン-エノール対、アミド-イミド酸対、ラクタム-ラクチム対、アミド-イミド酸対、エナミン-イミン対、ならびにプロトンが複素環式系の2つ以上の位置を占めることができる環状形態、例えば、1H-および3H-イミダゾール、1H-、2H-および4H-1,2,4-トリアゾール、1H-および2H-イソインドール、1H-および2H-ピラゾールが含まれる。互変異性形態は、適切な置換により平衡であり得る、または1つの形態に立体的にロックされ得る。
【0159】
本開示の化合物は、または、中間体または最終化合物に発生する原子の全ての同位体も含む。「同位体」は、同じ原子番号を有するが、核の中性子の異なる数によって生じる異なる質量数を有する原子を指す。例えば、水素の同位体には、トリチウムおよびジュウテリウムが含まれる。
【0160】
本開示の化合物および塩は、日常的な方法で溶媒または水分子と組み合わせて溶媒和物および水和物を形成することによって、調製され得る。
用語「対象」または「患者」は、本明細書で使用されるとき、併用療法が例えば実験、治療、診断および/または予防の目的で投与され得る任意の生物体を指す。典型的な対象には、動物(例えば、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、ハムスター、ラマ、非ヒト霊長類、およびヒト)が含まれる。
【0161】
用語「治療すること」または「防止すること」には、本明細書で使用されるとき、疾患、障害もしくは状態を有すると未だ診断されていないが、疾患、障害もしくは状態にかかりやすくなり得る動物に疾患、障害もしくは状態が発生するのを防止すること、疾患、障害もしくは状態を阻害すること、例えば、その進行を妨害すること、ならびに疾患、障害もしくは状態を軽減すること、例えば、疾患、障害および/もしくは状態の退行を引き起こすことが含まれ得る。疾患、障害、または状態の治療は、基礎的病態生理が罹患していない場合であっても、特定の疾患、障害、または状態の少なくとも1つの症状を寛解させること、例えば、鎮痛剤が疼痛の原因を治療しなくても、そのような薬剤を投与することによって、対象の疼痛を治療することが含まれ得る。
【0162】
「標的」は、本明細書で使用されるとき、標的になった構築物が結合する部位を意味する。標的は、in vivoまたはin vitroのいずれかにあり得る。ある特定の実施形態において、標的は、白血病または腫瘍(例えば、脳腫瘍、肺(小細胞および非小細胞)腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、乳房の腫瘍、および結腸の腫瘍、ならびに他の癌腫および肉腫)に見出される癌細胞であり得る。なお他の実施形態において、標的は、標的化部分またはリガンドが結合する分子構造、例えば、ハプテン、エピトープ、受容体、dsDNA断片、炭水化物、または酵素を指すことができる。標的は、あるタイプの組織、例えば、神経組織、腸組織、膵臓組織、肝臓、腎臓、前立腺、卵巣、肺、骨髄、または乳房の組織であり得る。
【0163】
併用療法の標的として機能を果たし得る「標的細胞」は、一般的な動物細胞、例えば哺乳類細胞である。本方法を使用して、生細胞の細胞機能をin vitro、すなわち細胞培養物において、または、細胞が動物の組織の一部を形成するあるいは動物の組織中に存在するin vivoにおいて改変することができる。故に、標的細胞には、例えば、血液、リンパ組織、消化管を裏打する細胞、例えば口腔粘膜および咽頭粘膜、小腸の絨毛を形成する細胞、大腸を裏打する細胞、動物(本開示の吸入により接触され得る)の呼吸器系(鼻孔(nasal passage)/肺)を裏打する細胞、真皮/表皮細胞、膣および直腸の細胞、胎盤および、いわゆる血液脳関門の細胞を含む内蔵の細胞などが含まれ得る。一般に、標的細胞は、少なくとも1つのタイプのSSTRを発現する。一部の実施形態において、標的細胞は、SSTRを発現し、かつ、本明細書に記載されるコンジュゲートにより標的にされ、コンジュゲートの活性剤の放出により影響を受ける細胞の近くにある細胞であり得る。例えば、腫瘍に近接している、SSTRを発現する血管は、標的となることがあり、その間、部位に放出された活性剤は腫瘍に影響を与える。
【0164】
用語「治療効果」は、当該技術に認識されており、動物、特に哺乳動物において、更に特にヒトにおいて薬理学的活性物質により引き起こされる局所または全身的効果を指す。このように、この用語は、望ましい動物、例えばヒトの身体的または精神的発達(mental development)および状態の亢進のための、疾患、障害または状態の診断、治癒、緩和、治療、または防止における使用が意図される任意の物質を意味する。
【0165】
用語「調節」は、当該技術に認識されており、応答の上方制御(すなわち、活性化または刺激)、下方制御(阻害または抑制)、またはこれら2つの組み合わせ、もしくは個々のものを指す。調節は、一般に、治療実態に対して内部または外部であり得るベースラインまたは基準と比較されるものである。
【0166】
用語「十分」および「有効」は、本明細書において交換可能に使用されるとき、1つまたは複数の所望の結果を達成するのに必要な量(例えば、質量、体積、投与量、濃度、および/または時点)を指す。「治療有効量」は、少なくとも1つの症状、または特定の状態もしくは障害の測定可能な改善または防止をもたらすため、平均余命の測定可能な亢進をもたらすため、あるいは患者の生活の質を概ね改善するために必要な少なくとも最小濃度である。このように治療有効量は、特定的な生物学的に活性な分子、および治療される特定的な状態または障害によって左右される。多くの活性剤、例えば抗体の治療有効量は、当該技術において知られている。例えば特定的な障害を治療するための、本明細書に開示されている化合物および組成物の治療有効量は、十分に当業者、例えば医師の技能の範囲内である技術によって決定され得る。
【0167】
用語「生物活性剤」および「活性剤」には、本明細書で交換可能に使用されるとき、限定されることなく、体内で局所的または全身的に作用する生理学的または薬理学的に活性な物質が含まれる。生物活性剤は、疾患または病気の治療(例えば、治療剤)、防止(例えば、予防剤)、診断(例えば、診断剤)、治癒、または緩和に使用される物質、身体の構造または機能に影響を与える物質、あるいは所定の生理学的環境に置かれた後に生物学的に活性またはより活性になるプロドラッグである。
【0168】
用語「プロドラッグ」は、小有機分子、ペプチド、核酸、またはタンパク質が含まれ、in vitroおよび/またはin vivoにおいて生物学的に活性な形態に変換される薬剤を指す。プロドラッグは、一部の局面において、親化合物(活性化合物)より投与が容易であり得るので有用であり得る。例えば、プロドラッグは、経口投与によって生体利用が可能であり、一方で親化合物は可能ではない。プロドラッグは、また、親薬物と比較して医薬組成物中で改善された溶解度を有することもできる。プロドラッグは、また、親より毒性も低くなり得る。プロドラッグは、酵素プロセスおよび代謝加水分解を含む様々な機構により親薬物に変換され得る。Harper,N.J.(1962)Drug Latentiation ユッカー(Jucker ed.)編 Progress in Drug Research,4:221-294;モロゾビッチら(Morozowich et al.)(1977)Application of Physical Organic Principles to Prodrug Design E.B.ロッシュ編(E.B.Roche ed.)Design of Biopharmaceutical Properties through Prodrugs and Analogs,APhA;Acad.Pharm.Sci.;E.B.ロッシュ編(E.B.Roche,ed.)(1977) Bioreversible Carriers in Drug in Drug Design,Theory and Application,APhA;H.ブンドガード編(H.Bundgaard, ed.)(1985) Design of Prodrugs,Elsevier;ワングら(Wang et al.)(1999)ペプチド薬の改善された送達のためのプロドラッグ手法(Prodrug approaches to the improved delivery of peptide drug),Curr.Pharm.Design.5(4):265-287;ポーレッティら(Pauletti et al.)(1997)ペプチドの生体利用能の改善:ペプチド模倣体およびプロドラッグ戦略(Improvement in peptide bioavailability:Peptidomimetics and Prodrug Strategies,Adv.Drug.Delivery Rev.27:235-256;マイゼンら(Mizen et al.)(1998).βラクタム抗生物質の経口送達のためのプロドラッグとしてのエステルの使用(The Use of Esters as Prodrugs for Oral Delivery of β-Lactam antibiotics),Pharm.Biotech.11:345-365;ガイニョーら(Gaignault et al.)(1996)プロドラッグおよび生体前駆体Iの設計(Designing Prodrugs and Bioprecursors I).Carrier Prodrugs,Pract.Med.Chem.671-696;M.アスガルネハド(M.Asgharnejad)(2000).プロドラッグを介した経口薬物移動の改善(Improving Oral Drug Transport Via Prodrugs),G.Lアミドン、P.I.リーおよびE.M.トップ編(G.L.Amidon,P.I.Lee and E.M.Topp,Eds.),Transport Processes in Pharmaceutical Systems,マルセルデッカー(Marcell Dekker),p.185-218;ブランドら(Balant et al.)(1990)異なる投与経路を介した薬物吸収の改善のためのプロドラッグ(Prodrugs for the improvement of drug absorption via different routes of administration),Eur.J.Drug Metab.Pharmacokinet.,15(2):143-53;バリマンおよびシンコ(Balimane and Sinko)(1999).ヌクレオシド類似体の経口吸収における多重輸送体の関与(Involvement of multiple transporters in the oral absorption of nucleoside analogues),Adv.Drug Delivery Rev.,39(1-3):183-209;ブラウン(Browne)(1997).ホスフェニトイン(Fosphenytoin)Cerebyx),Clin.Neuropharmacol.20(1):1-12;ブンドガード(Bundgaard)(1979).薬物の生物可逆的誘導体化--薬物の治療効果を改善するための原則および適用性(Bioreversible derivatization of drugs--principle and applicability to improve the therapeutic effects of drugs),Arch.Pharm.Chemi.86(1):1-39;H.ブンドガード編(H.Bundgaard,ed.)(1985)Design of Prodrugs,New York:Elsevier;フライシャーら(Fleisher et al.)(1996)改善された経口薬物送達:プロドラッグの使用による溶解限度の克服(Improved oral drug delivery: solubility limitations overcome by the use of prodrugs),Adv.Drug Delivery Rev.19(2):115-130;フライシャーら(Fleisher et al.)(1985)腸管内酵素標的化による改善された胃腸吸収のためのプロドラッグの設計(Design of prodrugs for improved gastrointestinal absorption by intestinal enzyme targeting),Methods Enzymol.112:360-81;ファークワー D.ら(Farquhar D,et al.(1983)生物学的に可逆的なリン酸塩保護基(Biologically Reversible Phosphate-Protective Groups),J.Pharm.Sci.,72(3):324-325;ハンH.K.ら(Han,H.K. et al.)(2000)薬物送達を最適化するための標的化プロドラッグ設計(Targeted prodrug design to optimize drug delivery),AAPS PharmSci.,2(1):E6;サズカY.(Sadzuka Y.)(2000)有効なプロドラッグリポソームおよび活性代謝産物への変換(Effective prodrug liposome and conversion to active metabolite),Curr.Drug Metab.,1(1):31-48;D.M.ランバード(D.M.Lambert)(2000)プロドラッグ担体としての脂質の妥当性および適用性(Rationale and applications of lipids as prodrug carriers),Eur.J.Pharm.Sci.,11 Suppl.2:S15-27;ワングW.ら(Wang,W. et al).(1999)ペプチド薬の改善された送達のためのプロドラッグ手法(Prodrug approaches to the improved delivery of peptide drugs).Curr.Pharm.Des.,5(4):265-87。
【0169】
用語「生体適合性」は、本明細書で使用されるとき、任意の代謝産物およびその分解生成物と共に、レシピエントに対して一般に非毒性であり、レシピエントに任意の有意に有害な作用を引き起こさない物質を指す。一般的に言えば生体適合性物質は、患者に対して投与された場合に有意な炎症または免疫応答を誘発しない物質である。
【0170】
用語「生分解性」は、本明細書で使用されるとき、生理学的条件下で分解または侵食されて、対象により代謝、排除、または排出され得るより小さな単位または化学種になる物質を一般に指す。分解時間は、組成物および形態に応じる。分解時間は、数時間から数週間であり得る。
【0171】
用語「薬学的に許容される」は、本明細書で使用されるとき、当局、例えば米国食品医薬品局の指針による妥当なベネフィット/リスク比に相当して、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を有することなく、健全な医学的判断の範囲内でヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適している化合物、物質、組成物、および/または剤形を指す。「薬学的に許容される担体」は、本明細書で使用されるとき、組成物のin vivoにおける送達を促進する医薬製剤の全ての構成成分を指す。薬学的に許容される担体には、希釈剤、防腐剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、膨張剤、充填剤、安定剤、およびこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0172】
用語「分子量」は、本明細書で使用されるとき、物質の質量または平均質量を一般に指す。ポリマーまたはオリゴマーの場合、分子量は、バルクポリマーの相対的平均鎖長さ、または相対的鎖質量を指すことができる。実践的には、ポリマーおよびオリゴマーの分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)または毛管粘度測定を含む様々な方法によって推定すること、または特徴付けることができる。GPCによる分子量は、数平均分子量(M)に対して重量平均分子量(M)と報告される。毛管粘度測定は、濃度、温度、および溶媒条件の特定のセットを使用して希釈ポリマー溶液から決定される固有粘度として、分子量の推定値を提供する。
【0173】
用語「小分子」は、本明細書で使用されるとき、分子量が2000g/mol未満、1500g/mol未満、1000g/mol未満、800g/mol未満、または500g/mol未満である有機分子を一般に指す。小分子は、非ポリマーおよび/または非オリゴマーである。
【0174】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを一般に指す。本明細書で使用されるとき、この用語は、また、1個または複数のアミノ酸が対応する天然に生じるアミノ酸の化学類似体もしくは修飾誘導体である、または非天然のアミノ酸である、アミノ酸ポリマーにも当てはまる。用語「タンパク質」は、本明細書で一般に使用されるとき、ペプチド結合により互いに連結されて、鎖長さが第3級および/または第4級構造を産生するのに十分であるポリペプチドを形成するアミノ酸のポリマーを指す。用語「タンパク質」は、定義上、小ペプチドを除外し、小ペプチドは、タンパク質と考慮されるために必要な必須の高次構造を欠いているものである。
【0175】
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」は、交換可能に使用されて、直線状または環状の立体配座であり、一本鎖または二本鎖のいずれかの形態であるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。これらの用語は、ポリマーの長さに関して制限的であると解釈されるべきではない。これらの用語は、天然のヌクレオチドの既知類似体、ならびに塩基、糖および/またはリン酸塩部分(例えば、ホスホロチオエート主鎖)が修飾されているヌクレオチドを包含することができる。一般に、特定されない限り、特定のヌクレオチドの類似体は、同じ塩基対特異性を有する、すなわち、Aの類似体はTと塩基対形成する。用語「核酸」は、少なくとも2個の塩基糖リン酸塩モノマー単位のひもを指す、当該技術の用語である。ヌクレオチドは、核酸ポリマーのモノマー単位である。この用語には、メッセンジャーRNA、アンチセンス、プラスミドDNA、プラスミドDNAの一部、またはウイルスから誘導された遺伝物質の形態で、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)が含まれる。アンチセンス核酸は、DNAおよび/またはRNA配列の発現を妨げるポリヌクレオチドである。核酸という用語は、少なくとも2個の塩基糖リン酸塩の組み合わせのひもを指す。天然の核酸は、リン酸塩主鎖を有する。人工の核酸は、他のタイプの主鎖を含有し得るが、天然の核酸と同じ塩基を含有し得る。この用語は、また、PNA(ペプチド核酸)、ホスホロチオエート、自然の核酸のリン酸塩主鎖の他のバリアントも含む。
【0176】
本明細書で使用されるとき、用語「リンカー」は、ヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、硫黄など)を含有することができ、かつ1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50個のアミノ長さであり得る、炭素鎖を指す。リンカーは、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アリール、複素環式、芳香族複素環式、シアノ、アミド、カルバモイル、カルボン酸、エステル、チオエーテル、アルキルチオエーテル、チオール、およびウレイド基が含まれるが、これらに限定されない様々な置換基で置換され得る。当業者は、これらの基のそれぞれが次に置換され得ることを認識する。リンカーの例には、pH感受性リンカー、プロテアーゼ切断性ペプチドリンカー、ヌクレアーゼ感受性核酸リンカー、リパーゼ感受性脂質リンカー、グリコシダーゼ感受性炭水化物リンカー、低酸素感受性リンカー、光切断性リンカー、熱不安定性リンカー、酵素切断性リンカー(例えば、エステラーゼ切断性リンカー)、超音波感受性リンカー、およびX線切断性リンカーが含まれるが、これらに限定されない。
【0177】
用語「薬学的に許容される塩」は、本組成物に使用される化合物に存在し得る酸性または塩基性基の塩を指す。本組成物に含まれる、塩基性である化合物は、様々な無機および有機酸と様々な塩を形成することができる。そのような塩基性化合物の薬学的に許容される酸付加塩の調製に使用され得る酸は、非毒性酸付加塩を形成するものであり、すなわち、硫酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩(glucaronate)、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(pamoate)(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))が含まれるが、これらに限定されない薬学的に許容される陰イオンを含有する塩である。本組成物に含まれる、アミノ部分を含む化合物は、上記に記述された酸に加えて、様々なアミノ酸と薬学的に許容される塩を形成することができる。本組成物に含まれる、酸性である化合物は、様々な薬理学的に許容される陽イオンにより塩基性塩を形成することができる。そのような塩の例には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、特に、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、亜鉛、カリウム、および鉄の塩が含まれる。
【0178】
本明細書に記載される化合物が酸付加塩として得られる場合、遊離塩基は酸性塩の溶液を塩基性化することによって得ることができる。逆に、生成物が遊離塩基である場合、付加塩、特に薬学的に許容される付加塩は、塩基化合物から酸付加塩を調製する従来の手順に従って、遊離塩基を適切な有機溶媒に溶解し、溶液を酸で処理することにより生成され得る。当業者は、非毒性の薬学的に許容される付加塩の調製に使用され得る様々な合成方法を認識する。
【0179】
薬学的に許容される塩は、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2,2-ジクロロ酢酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-オキソグルタル酸、4-アセトアミド安息香酸、4-アミノサリチル酸、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウ酸、ショウノウ-10-スルホン酸、カプリン酸(デカン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、プロプリオン酸、ピログルタミン酸、サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、チオシアン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、およびウンデシレン酸から選択される酸から誘導され得る。
【0180】
用語「生体利用が可能」は、当該技術に認識されており、本開示の形態が投与される対象または患者に吸収される、組み込まれる、そうでなければ生理学的に利用可能であるように投与される量、または一部分を可能にする本開示の形態を指す。
【0181】
以下の実施例は説明のために意図され、本発明を制限することが意図されないことが理解される。本開示を読んだ後に、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、前述の記載および例について様々な他の例および変更が当業者に理解され、そのような例または変更が添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。本明細書に参照された全ての出版物および特許は、それらの全体が本願明細書に援用される。
【実施例
【0182】
実施例1:コンジュゲート1の合成
コンジュゲート1(SDC-TRAP-0063)
【0183】
【化4】
【0184】
((S)-4,11-ジエチル-4-ヒドロキシ-3,14-ジオキソ-3,4,12,14-テトラヒドロ-1H-ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-9-イル4-(2-(5-(3-(2,4-ジヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)-5-ヒドロキシ-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-1H-インドール-1-イル)エチル)ピペリジン-1-カルボキシレート)またはその互変異性体。
【0185】
SDC-TRAP-0063の合成の合成スキームは、PCT出願PCT/US2013/036783の実施例6に提供されている。当業者は、過度な実験を行うことなく、この合成スキームを、本発明の範囲内にある他の標的化分子コンジュゲートを作製することに適合させることができる。
【0186】
実施例2:HSP90結合薬物コンジュゲートの塩形態および製剤
溶液中に、コンジュゲート1は、対応する開鎖カルボン酸形態とpH依存的に平衡なラクトン環を含有する。高いpH(9.3を超えるpH、pKa値)では、平衡は開環カルボン酸形態に向かってシフトし、低いpHでは、下記に示されている閉環ラクトン形態に向かってシフトする。
【0187】
【化5】
【0188】
開環カルボン酸形態は、リチウム、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛、バリウム、ビスマス、ベネタミン(benethamine)、ジエチルアミン、トロメタミン、ベンザチン(benzathid)、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン、またはプロカインが含まれるが、これらに限定されない陽イオン性イオンにより塩を形成し得る。
【0189】
コンジュゲート1(SDC-TRAP-0063)のナトリウム塩誘導体
カルボン酸誘導体のナトリウム塩(SDC-TRAP-0063ナトリウムまたはSDC-TRAP-0063 Na)は、
【0190】
【化6】
【0191】
(ナトリウム(S)-2-(2-((4-(2-(5-(3-(2,4-ジヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)-5-ヒドロキシ-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)-1H-インドール-1-イル)エチル)ピペリジン-1-カルボニル)オキシ)-12-エチル-8-(ヒドロキシメチル)-9-オキソ-9,11-ジヒドロインドリジノ[1,2-b]キノリン-7-イル)-2-ヒドロキシブタノエート)またはその互変異性体:
【0192】
【化7】
【0193】
の構造を有する。
ラクトンとナトリウム塩の両方の形態のSDC-TRAP-0063の構造:
【0194】
【化8】
【0195】
SDC-TRAP-0063原薬は、ラクトン形態で単離および貯蔵され、SDC-TRAP-0063ナトリウム薬物生成物は、カルボン酸ナトリウム塩形態に変換され、それで貯蔵される。
【0196】
SDC-TRAP-0063は以下の手順で調製され得る。tert-ブタノールの一部分を28~32℃で融解させ、28~32℃でジャケットした8リットルのガラス混合容器に分配した。SDC-TRAP-0063粉末を、撹拌しているtert-ブタノールの中にゆっくりと添加し、少なくとも20分間混合した。添加されたSDC-TRAP-0063の量を重力測定的に決定し、標的薬物生成物バッチサイズを算出した。次いでtert-ブタノールの第2の部分を十分な重量(Q.S.またはQS)で添加し、約6”の磁気撹拌バーで少なくとも15分間混合して、適切に湿潤および懸濁させた。次いで、0.3規定水酸化ナトリウム水溶液をゆっくりと添加し、少なくとも更に1時間混合した。SDC-TRAP-0063粉末の完全な溶解を、混合している間および混合を停止している間の両方で目視観察により確認した、次いで、注射用水(WFI)を標的総バッチ体積の約95%まで分配し、20分間混合した。試料を取り出し、測定して、必要であれば少なくとも15分間の混合による0.3規定水酸化ナトリウム水溶液の5グラムのアリコートの増量添加で調整する選択肢を伴って、pHが9.8以上であることを確実にした。注射用水を再び添加し、QSに加重し、15分間混合して、バルク薬物溶液の調合を完了した。次いで8リットルのグラス混合容器のジャケット温度を20~25℃の範囲に低下させた。生成物の滅菌は、直列している少なくとも2つのMillipore Opticap XL3 0.2μmフィルターの1つを通して濾過することによって達成し、試料を微生物計数検査のためにプレフィルターの直後に取り出した。次いで脱パイロジェン(depyrogenated)10ミリリットル公称寸法ホウケイ酸ガラスバイアルに、1個のバイアル当たり1.1ミリリットルのバルク薬物溶液を無菌充填した。バイアルを凍結乾燥位置で栓をして、凍結乾燥器に入れた。バイアルを表1の方法に従って凍結乾燥し、完全に栓をした。バイアルを凍結乾燥器から無菌的に取り出し、キャップを折り曲げて、バイアルをシールした。バイアルの外側の洗浄および目視検査を行って、一次封入中の薬物生成物の産生を完了した。
【0197】
【表3】
【0198】
製造プロセスの過程において、SDC-TRAP-0063がSDC-TRAP-0063ナトリウムに変換され、これは9.3を超えるpHでは優勢の形態である。SDC-TRAP-0063ナトリウム薬物生成物を滅菌濾過溶液として無菌製造し、これを凍結乾燥した。凍結乾燥薬物生成物の組成を下記に示す。
【0199】
【表4】
【0200】
この溶液を充填して、105mg/バイアルを、USPタイプ1クリアガラスバイアル、栓、およびオーバーシールからなる容器密閉システムに送達する。薬物生成物を、光から離して2℃~8℃で貯蔵した。投与する前に、凍結乾燥粉末を注射用水で再構成し、次いで5%マンニトールUSPで更に希釈して、使用前の標的濃度にする。SDC-TRAP-0063ナトリウムは、約20~約25mg/mL、約25~約50mg/mL、約50~約100mg/mL、約100~約150mg/mL、または約150~200mg/mLの濃度を有し得る。薬物生成物は、注入による静脈内投与が意図される。
【0201】
SDC-TRAP-0063ナトリウムの再構成溶液は、約10.0のpHを有する。この溶液を5%マンニトールUSPで標的用量に希釈する。注入溶液のpHは、希釈注入溶液中のSDC-TRAP-0063ナトリウムの濃度に依存する。臨床試験プロトコールにおいて用いられる用量範囲では、投与される希釈注入溶液の体積は50~500mLであり、pHは8.1~9.6の範囲である。IV投与の際に注射部位の疼痛および/または静脈内皮の損傷の潜在的リスクを低減するため、中心静脈アクセスラインを、希釈SDC-TRAP-0063ナトリウムの投与に使用する。
【0202】
実施例3:進行性固形腫瘍を有する患者におけるコンジュゲート1のファースト・イン・ヒューマン第1/2a相試験:第1相の結果
コンジュゲート1の第1/2a相試験において、患者は、28日サイクルの4週間のうち3週間でコンジュゲート1の毎週治療を受けた。患者は、組織学的または細胞学的に確認された進行性固形腫瘍を有する。これらの腫瘍タイプには、肛門癌、乳癌、胆管細胞癌、結腸癌、ユーイング肉腫、肝癌、肺癌、神経内分泌癌(原発不明)、卵巣癌、膵癌、唾液腺癌、および肉腫が含まれる。患者は抗癌療法の1つまたは複数の前治療(prior line of)を受けていた。患者は一定投薬(flat dosing)、または体表面積に基づいた(BSA)投薬を受けた。用量には、30mg、60mg、120mg、240mg、360mg、175mg/m、および200mg/mが含まれた。コンジュゲート1単独療法の最大耐容用量(MTD)を、175mg/mと決定した。BASベース投薬を更なる試験に使用した。
【0203】
薬物動態(PK)プロファイルを試験するため、複数の血漿試料を収集して、コンジュゲート1およびSN-38の濃度を測定した。表2に示されるようにコンジュゲート1は、非線形PKを低用量で呈したが、より大きな比例関係が高い用量では観察された。排出半減期は、全ての用量範囲で約10時間であった。遊離SN-38レベルは一般に低かった。AUCはコンジュゲート(コンジュゲート1)AUCでは<2%である。患者間のPK変動性が一定用量で観察され、これは一般にBSAと相関した。PK分析は、リンカーが循環中で安定していること、および遊離SN-28への全身曝露が低いことを示す。
【0204】
【表5】
【0205】
コンジュゲート1治療を受けた17名の患者のうち、1名の患者は部分応答(PR、30%以上の腫瘍サイズの低減)を達成し、5名は安定した疾患(SD、腫瘍が応答し、サイズを成長させなかった)を有した。120~360mgの一定用量および175mg/m2のBSA用量は、≧12週間にわたって維持された安定した疾患と関連した。
【0206】
全体的に、コンジュゲート1は、安全であり、予測された有害(AE)事象プロファイルを有した。AEは用量変更によって十分に管理された。最も一般的なAEは、嘔気、疲労、下痢、嘔吐、および脱毛症であった。
【0207】
コンジュゲート1は、第3相2aの拡大疾患コホート:以前に治療された膵臓腺癌、子宮内膜腺癌、および肛門、子宮頸部、または頭頸部の扁平上皮癌、において評価される。
実施例4:腫瘍および血漿におけるコンジュゲート1およびSN-38のレベル
膵癌患者は、コンジュゲート1を150mg/mの用量で受け、腫瘍生検を経て、腫瘍および血漿におけるコンジュゲート1およびSN-38のレベルを決定した。試料を、コンジュゲート1の150mg/mの第2の用量(dose)の24時間後に、肝臓転移から採取した。
【0208】
表3に示されるように、24時間後に有意なレベルのコンジュゲート1およびSN-38が腫瘍中に観察された一方、血漿中には僅かな濃度(175mg/mが投薬された5名の他の患者と比較して)が観察された。腫瘍中のコンジュゲート1およびSN-38のレベルは、血漿中のレベルより遥かに高い。これらのデータは、集中した腫瘍取り込み、コンジュゲート(コンジュゲート1)の保持、および進行中のゆっくりとしたリンカー切断による経時的なペイロード(SN-38)の腫瘍内放出を実証している。これらのデータは、また、保持されたコンジュゲート1が数日間にわたって癌細胞中にSN-38ペイロードをゆっくりと放出することを示す、前臨床データとも一致している。
【0209】
【表6】
【0210】
膵臓の患者の24時間のSN-38曝露は、また、Onivyde(イリノテカン)治療を受けた患者(13名の患者)の72時間のSN-38曝露とも比較し、データを表4に示す。コンジュゲート1治療を受けた患者は、腫瘍中に86.6nMのSN-38を有し、Onivyde治療を受けた患者のSN-38腫瘍レベル(24.5nM)の約3.5倍であった。
【0211】
【表7】
【0212】
Onivyde治療を受けた患者では、腫瘍中の低いSN-38レベルおよび循環中の経時的に高いイリノテカンレベルは、イリノテカンの非標的化リポソーム製剤が循環中に長時間過ごしたという事実と一致している。
【0213】
Onivyde治療を受けた患者では、イリノテカンの腫瘍レベルは血漿レベルの僅か約1/2であり、腫瘍標的化の欠如を説明しており、このことは、標的化コンジュゲートのコンジュゲート1の治療を受け、血漿と比較して腫瘍中に高いレベルのコンジュゲートおよびペイロードを有した患者と対照的であった。
【0214】
Onivyde腫瘍イリノテカンレベルは、非常に高い血漿レベルと、実際の腫瘍細胞内レベルを混乱させる封入されたイリノテカンの血管内レベルとに起因して誇張された。Onivydeの非標的化手法は、腫瘍中の低いレベルのSN-38を生じた。
【0215】
実施例5:マウス異種移植片モデルにおける有効な腫瘍曝露
H1975(NSCLC)マウス異種移植片モデルに投薬されたコンジュゲート1は、実施例4の患者生検において測定されたレベルに類似した、コンジュゲート1およびSN-38の24時間の腫瘍曝露を示した。72、100、および150mg/kgの毎週投薬(dose)のコンジュゲート1によるH1975モデルにおける有効性を、図1Aおよび図1Bに示す。
【0216】
50mg/kgおよび100mg/kgの用量からの腫瘍のPKにおける曝露(時間変数)は、患者生検曝露に類似しているとともに、72mg/kg、および100mg/kgの毎週投薬は、異種移植片モデルにおいて有意な有効性を生じる。腫瘍退行を生じさせる150mg/kgの用量は、コンジュゲート1では有意に高い24時間の腫瘍曝露を提供するが、患者生検データと比べてSN-38では僅かに高いだけである。
【0217】
【表8】
【0218】
実施例6:タラゾパリブと組み合わせたコンジュゲート1の抗腫瘍有効性
SKOV3(卵巣癌)腫瘍を有するマウスを以下のように治療した。
1)ビヒクル対照、
2)75mg/kgのコンジュゲート1を静脈内投与(IV)により1週間に1回(1日目)を6週間、
3)0.33mg/kgのタラゾパリブを経口投与(PO)により毎日4日間/3日間休薬(週の2~5日目)を6週間、
4)75mg/kgのコンジュゲート1をIVにより1週間に1回、および0.33mpkのタラゾパリブをコンジュゲート1投薬(dose)の24時間後に開始して毎日4日間/3日間休薬を6週間。
【0219】
腫瘍体積を治療後に測定した。図3Aに示されているように、有効性における統計的に有意な改善が、コンジュゲート1治療単独およびタラゾパリブ治療単独と比較した場合、組み合わせ治療によって観察された。
【0220】
同様の研究では、コンジュゲート1とタラゾパリブの組み合わせ治療をNCI-H460(非小細胞肺癌(NSCLC))を有するマウスモデルで研究する。SKOV3(卵巣癌)腫瘍を有するマウスを以下のように治療した。
【0221】
1)ビヒクル対照、
2)100mg/kgのコンジュゲート1を静脈内投与(IV)により1週間に1回(1日目)を2週間、
3)0.33mg/kgのタラゾパリブを経口投与(PO)により毎日4日間/3日間休薬(週の2~5日目)を2週間、
4)100mg/kgのコンジュゲート1をIVにより1週間に1回、および0.33mpkのタラゾパリブをコンジュゲート1投薬の24時間後に開始して毎日4日間/3日間休薬を2週間。
【0222】
腫瘍体積を治療後に測定した。図3Bに示されているように、有効性における統計的に有意な改善が、コンジュゲート1治療単独およびタラゾパリブ治療単独と比較した場合、組み合わせ治療によって観察された。図3CのpH2AXの量のデータは、タラゾパリブと組み合わせたコンジュゲート1による治療が、持続的および相乗的DNA損傷を投薬の7日後に生じたことを実証した。
【0223】
別の同様の研究では、コンジュゲート1とベリパリブの組み合わせ試料をマウスモデルで評価する。
本開示の範囲は、上記の記載に制限することは意図されず、むしろ添付の特許請求の範囲に記載されている通りである。
【0224】
特許請求の範囲において、「a」、「an」および「the」などの冠詞は、特に指示されない限り、または文脈から明白でない限り、1つ、または1つを超えるものを意味することができる。ある群の1つ以上のメンバーの間に「または(or)」を含む特許請求の範囲または記述は、その群の1つ、1つを超える、または全てのメンバーが、特に指示がない限り、または文脈から明白でない限り、所定の生成物または方法に存在する、用いられる、またはそうでなければ関連する場合に満たされると考えられる。本開示は、その群の正確に1つのメンバーが所定の生成物または方法に存在する、用いられる、またはそうでなければ関連する実施形態を含む。本開示は、その群の1つを超える、または全てのメンバーが、所定の生成物または方法に存在する、用いられる、またはそうでなければ関連する実施形態を含む。
【0225】
用語「含む(comprising)」は、開放的であることが意図され、更なる要素または工程を含めることを許容するが、必要とするものではないことも留意される。用語「含む(comprising)」が本明細書で使用される場合、故に用語「からなる(consisting of)」も包含および開示される。
【0226】
範囲が提示される場合、終点も含まれる。更に、特に指示がない限り、または文脈から、および当業者の理解から明白でない限り、範囲として表される値は、文脈から明白に指示されない限り、本開示の異なる実施形態に記述された範囲内の任意の特定の値または部分範囲を、その範囲の下限の単位の十分の一まで推定され得ることが理解されるべきである。
【0227】
加えて、従来技術の範囲内に入る本開示の任意の特定の実施形態は、任意の1項または複数の請求項から明示的に除外され得ることが理解されるべきである。そのような実施形態は当業者に既知であると認められるので、そのような除外が本明細書に明示的に記載されていなくても、除外され得る。本開示の組成物の任意の特定の実施形態は、従来技術の存在に関連しても、していなくても、いずれにしても任意の1項または複数の請求項から除外され得る。
【0228】
全ての引用された資料、例えば、参考文献、公開出願、データベース、データベース項目、および本明細書に引用された技術は、引用において明確に記述されていない場合であっても、本願明細書に援用される。引用資料と本出願の記述が矛盾する場合、本出願の記述が優先される。
【0229】
セクションおよび表の見出しは、制限的であることが意図されない。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
【国際調査報告】