(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(54)【発明の名称】中空コアファイバの製造方法および中空コアファイバ用プリフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 37/012 20060101AFI20220908BHJP
G02B 6/032 20060101ALI20220908BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
C03B37/012 A
G02B6/032 Z
G02B6/02 356A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021574869
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(85)【翻訳文提出日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2020069992
(87)【国際公開番号】W WO2021009220
(87)【国際公開日】2021-01-21
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507332918
【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Heraeusstr.12-14, 63450 Hanau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル ローゼンベアガー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン トロマー
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン ヴァイマン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ヒューナーマン
(72)【発明者】
【氏名】カイ シュースター
【テーマコード(参考)】
2H250
4G021
【Fターム(参考)】
2H250AB03
2H250AC53
4G021BA04
4G021BA13
(57)【要約】
ファイバの長手方向軸に沿って延びる中空コアと、複数の反共振要素を含み、かつ中空コアを取り囲む内部のクラッド領域とを有する反共振中空コアファイバの製造方法が公知である。公知の方法には、被覆管内部孔と被覆管長手方向軸とを有し、内側と外側により画定されている被覆管壁が被覆管長手方向軸に沿って延びている被覆管を提供する工程と、複数の反共振要素プリフォーム体を提供する工程と、反共振要素プリフォーム体を被覆管壁の内側の目標位置に配置して、中空のコア領域とクラッド領域とを有する中空コアファイバの一次プリフォームを形成する工程と、一次プリフォームを直接中空コアファイバにまたは二次プリフォーム延伸することを含む一次プリフォームを二次プリフォームにさらに加工する工程とが含まれている。ここから出発して、反共振要素の高い精密性と正確な位置決めを十分に安定的で再現可能な仕方で達成するために、延伸時に20~70mmの範囲の外径を有する一次プリフォームが使用されることが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバの長手方向軸に沿って延びる中空コアと、複数の反共振要素を含み、かつ前記中空コアを取り囲む内部クラッド領域とを有する反共振中空コアファイバの製造方法であって、
(a) 被覆管内部孔と被覆管長手方向軸とを有し、内側と外側により画定されている被覆管壁(2)が前記被覆管長手方向軸に沿って延びている被覆管(1)を提供する工程と、
(b) 複数の管状の反共振要素プリフォーム体(4)を提供する工程と、
(c) 前記反共振要素プリフォーム体(4)を前記被覆管壁(2)の内側の目標位置に配置して、中空のコア領域と内部クラッド領域とを有する一次プリフォーム(3)を形成する工程と、
(d) 前記一次プリフォーム(3)を、前記中空コアファイバが線引きされる二次プリフォームにさらに加工する工程であって、前記さらに加工する工程は、延伸、並びに任意で
(i) コラップス、
(ii) コラップスおよび同時延伸、
(iii) 追加のクラッド材料のコラップス、
(iv) 追加のクラッド材料のコラップスとそれに続く延伸、
(v) 追加のクラッド材料のコラップスおよび同時延伸、
のうち1つ以上の熱成形プロセスが一回または反復して実行されることを含む、工程と、
(e) 二次プリフォームを中空コアファイバに線引きする工程と、
を備える、製造方法において、
前記延伸時に20~70mmの範囲の外径を有する一次プリフォーム(3)が使用されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記延伸時に目標温度が±0.1℃の精度に維持される温度制御された加熱素子が使用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記延伸時に前記一次プリフォーム(3)が加熱ゾーンに供給され、供給速度は、少なくとも0.8g/minのスループット、好ましくは0.8g/min~85g/minの範囲のスループット、特に好ましくは3.3g/min~85g/minの範囲のスループットが得られ、加熱ゾーンにおける25分未満の平均滞留時間、好ましくは5~25分の範囲の平均滞留時間が得られるように調節されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記延伸時に延伸比が1.05~10の範囲の値、好ましくは1.05~5の範囲の値に調節されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記反共振要素プリフォーム体(4)の配置、および/または前記一次プリフォーム(3)の延伸、および/または前記中空コアファイバの線引きが、非晶質SiO
2粒子含有の封止材または接合材(5)を使用した固定措置および/または封止措置を含んでいることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記一次プリフォーム(3)の延伸時および/または前記中空コアファイバの線引き時に、前記反共振要素プリフォーム体(4)の開放端および/または前記反共振要素プリフォーム体(4)の個々の構造要素(4a;4b)および/または管要素の間に生じうる環状の隙間が前記封止材または接合材(5)を用いて封鎖されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
被覆管内側および/または被覆管外側は、切削加工、特に穴あけ加工、フライス加工、研削加工、ホーニング加工および/または研磨加工によって作製されることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記被覆管内側には、切削加工によって、前記目標位置の領域に被覆管長手方向軸の方向に延びる長手方向構造が設けられることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記反共振要素プリフォーム体(4)を前記被覆管壁(2)の前記内側の前記目標位置に配置する際に、前記反共振要素プリフォーム体(4)の端面側の上端が位置決めテンプレートを用いて前記目標位置に位置決めされることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記位置決めテンプレートは、被覆管端面側の領域、好ましくは二つの被覆管端面側の領域に使用されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(d)の前記一次プリフォーム(3)の延伸および/または工程(e)の前記中空コアファイバの線引き時に、シリカガラスからなる前記プリフォーム(3)の複数の成分が共に加熱され軟化され、プリフォーム成分の少なくとも一部の前記シリカガラスは、シリカガラスの粘度を低下させる少なくとも一つのドーパントを含むことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
工程(d)にしたがって追加のクラッド材料がコラップスされ、前記被覆管(1)の前記シリカガラスは、1250℃の測定温度において、追加で投入されたクラッド材料のシリカガラスより最小0.5dPa・sだけ高くなる粘度、好ましくは最小0.6dPa・sだけ高くなる粘度(粘度を対数値として単位dPa・sで表示)を有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記一次プリフォーム(3)を提供する工程は、前記反共振要素プリフォーム体(4)を前記被覆管壁(2)の内側の目標位置に配置することを含み、前記反共振要素プリフォーム体(4)の配置および/または工程(d)の前記中空コアファイバの線引きは、非晶質SiO
2粒子含有の封止材または接合材(5)を使用した固定措置および/または封止措置を含んでいることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
ファイバの長手方向軸に沿って延びる中空コアと、複数の反共振要素を含み、かつ中空コアを取り囲む内部クラッド領域とを有する反共振中空コアファイバのプリフォームの製造方法であって、
(a) 被覆管内部孔と被覆管長手方向軸とを有し、内側と外側により画定されている被覆管壁(2)が前記被覆管長手方向軸に沿って延びている被覆管(1)を提供する工程と、
(b) 複数の管状の反共振要素プリフォーム体(4)を提供する工程と、
(c) 反共振要素プリフォーム体(4)を被覆管壁(2)の内側の目標位置に配置して、中空のコア領域と内部クラッド領域とを有する一次プリフォーム(3)を形成する工程と、
(d) 一次プリフォーム(3)を中空コアファイバのための二次プリフォームにさらに加工する工程であって、前記さらに加工する工程は、延伸、並びに任意で
(i) コラップス、
(ii) コラップスおよび同時延伸、
(iii) 追加のクラッド材料のコラップス、
(iv) 追加のクラッド材料のコラップスとそれに続く延伸、
(vi) 追加のクラッド材料のコラップスおよび同時延伸、
のうち1つ以上の熱成形プロセスが一回または反復して実行されることを含む、工程と、
を備える
製造方法において、
前記延伸時に20~70mmの範囲の外径を有する一次プリフォーム(3)が使用されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、ファイバの長手方向軸に沿って延びる中空コアと、複数の反共振要素を含み、かつ中空コアを取り囲むクラッド領域とを有する反共振中空コアファイバの製造方法に関し、この製造方法は、
(a) 被覆管内部孔と被覆管長手方向軸とを有し、内側と外側により画定されている被覆管壁が被覆管長手方向軸に沿って延びている被覆管を提供する工程と、
(b) 複数の管状の反共振要素プリフォーム体を提供する工程と、
(c) 反共振要素プリフォーム体を被覆管壁の内側の目標位置に配置して、中空のコア領域と内部クラッド領域とを有する一次プリフォームを形成する工程と、
(d) 一次プリフォームを、中空コアファイバが線引きされる二次プリフォームにさらに加工する工程であって、さらに加工する工程は、延伸、並びに任意で
(i) コラップス、
(ii) コラップスおよび同時延伸、
(iii) 追加のクラッド材料のコラップス、
(iv) 追加のクラッド材料のコラップスとそれに続く延伸、
(v) 追加のクラッド材料のコラップスおよび同時延伸、
のうち1つ以上の熱成形プロセスが一回または反復して実行されることを含む、工程と、
(e) 二次プリフォームを中空コアファイバに線引きする工程と、
を備える。
さらに本発明は、ファイバの長手方向軸に沿って延びる中空コアと、複数の反共振要素を含む、中空コアを取り囲むクラッド領域とを有する反共振中空コアファイバのプリフォームの製造方法に関し、この製造方法は、
(a) 被覆管内部孔と被覆管長手方向軸とを有し、内側と外側により画定されている被覆管壁が被覆管長手方向軸に沿って延びている被覆管を提供する工程と、
(b) 複数の管状の反共振要素プリフォーム体を提供する工程と、
(c) 反共振要素プリフォーム体を被覆管壁の内側の目標位置に配置して、中空のコア領域と内部クラッド領域とを有する一次プリフォームを形成する工程と、
(d) 一次プリフォームを中空コアファイバのための二次プリフォームにさらに加工する工程であって、さらに加工する工程は、延伸、並びに任意で
(i) コラップス、
(ii) コラップスおよび同時延伸、
(iii) 追加のクラッド材料のコラップス、
(iv) 追加のクラッド材料のコラップスとそれに続く延伸、
(v) 追加のクラッド材料のコラップスおよび同時延伸、
のうち1つ以上の熱成形プロセスが一回または反復して実行されることを含む、工程と、
を備える。
【0002】
中実材料から作製される従来のシングルモード光ファイバは、低屈折率のガラスからなるクラッド領域により取り囲まれたガラス製のコア領域を有している。このとき、光の伝搬は、コア領域とクラッド領域間の全反射に基づいている。しかし、導波光と中実材料の相互作用は、データ伝送時の遅延時間の増大や、エネルギー放射線に対する損傷のしきい値の相対的低下に結びついている。
【0003】
これらの欠点は、コアがガスまたは液体を充填した真空の空洞部からなる「中空コアファイバ」によって回避されるか、もしくは軽減される。中空コアファイバでは、光とガラスの相互作用が中実コアファイバの場合よりも減少する。コアの屈折率はクラッドの屈折率よりも小さいため、全反射による光の伝搬は不可能であり、通常光はコアからクラッドに漏れ出ると考えられる。光の伝搬の物理的メカニズムに応じて、中空コアファイバは、「フォトニックバンドギャップファイバ」と「反共振反射ファイバ」に区別される。
【0004】
「フォトニックバンドギャップファイバ」では、中空コア領域が、小さな中空チャネルを周期的に配置したクラッドによって取り囲まれている。クラッド内の中空チャネルの周期的構造には、半導体技術に依る「フォトニックバンドギャップ」と呼ばれる効果があり、これにより、クラッド構造に散乱する特定の波長領域の光はブラッグ反射に基づいて中心の空洞部で構造的に干渉するため、クラッド内で横方向に広がることはできない。
【0005】
「反共振中空コアファイバ」(「antiresonant hollow-core fibers」;ARHCF)と呼ばれる中空コアファイバの実施形態では、中空のコア領域が内部のクラッド領域によって取り囲まれており、いわゆる「反共振性要素」(または「反共振要素」;略号:「AREs」)の中に配置されている。中空コア周辺に均等に分散された反共振要素の壁は、反共振に作動されるファブリ・ペロー空洞として機能し、この空洞は入射光を反射し、ファイバコアに通すことができる。
【0006】
このファイバ技術により、光減衰を軽減することができ、透過スペクトルが非常に広くなり(紫外線または赤外線の波長帯域でも)、データ伝送時の遅延時間も少なくなる。
【0007】
中空コアファイバの潜在的用途は、データ伝送、材料加工などに用いる高性能ビーム制御、モーダルフィルタリング、特に超紫外線波長帯域から赤外線波長帯域までのスーパーコンティニウムを発生させる非線形光学の分野にある。
【0008】
従来技術
反共振中空コアファイバの欠点は、高次モードが自動的に抑制されないため、長い伝達距離にわたって純粋なシングルモードにならないことが多く、出力光線の品質が悪化することにある。
【0009】
Francesco Poletti「Nested antiresonant nodeless hollow core fiber」;Optics Express,Vol.22,No.20(2014);DOI:10.1364/OE 22.023807の文献では、反共振要素が単純な単一構造要素として形成されているのではなく、互いに入れ子になった(英語:nested)複数の構造要素から構成されたファイバ設計が提案されている。入れ子になった反共振要素は、高次コアモードがクラッドモードに位相整合されて抑制されるが、基本コアモードは抑制されないように設計されている。これにより、基本コアモードの伝搬が常に保証され、限定された波長帯域にわたって中空コアファイバを効率的にシングルモードにすることができる。
【0010】
効率的なモード抑制は、伝搬光の中心波長の他に、中空コアの半径および反共振要素内で入れ子になっているリング構造の直径差といったファイバ設計の構造パラメータにも左右される。
【0011】
EP3136143A1から、コアが基本モード以外に別のモードも伝搬することができる反共振中空コアファイバ(「バンドギャップのない中空コアファイバ」と呼ばれる)が公知である。この目的のため、コアは、反共振モードと高次モードの位相整合を提供する「非共振要素」を有する内部クラッドによって取り囲まれている。中空コアファイバの製造は、いわゆる「スタック&ドロー法」によって行われ、そこでは出発要素を軸平行の集合体になるように並べ、固定することによってプリフォームを形成し、続いてそのプリフォームを延伸する。ここでは、内側断面が六角形の被覆管が使用され、被覆管の内縁部には、いわゆる「AREプリフォーム」(反共振要素プリフォーム)が6個固定される。このプリフォームを2段階に分けて線引きすることによって中空コアファイバを形成する。
【0012】
国際特許出願2018/169487A1から、反共振中空コアファイバのプリフォーム製造方法が公知であり、ここでは第1のクラッド領域が多数のロッドから構成され、第2のクラッド領域は、外側の被覆管によって取り囲まれている多数の管から構成されている。ロッド、管、被覆管は「スタック&ドロー」法によって接合され、プリフォームが形成される。プリフォームを延伸する前に、プリフォーム端部に封止材を塗布して封止が行われる。封止材としては、例えばUV接着剤が使用される。
【0013】
発明が解決しようとする技術的課題
反共振中空コアファイバや、特に入れ子になっている構造要素を持つそのようなファイバは複雑な内部形状を有するため、これを正確かつ再現可能に製造することは困難である。さらに、共振条件または反共振条件を満たすには伝搬させる光の動作波長の大きさに僅かな寸法許容差があっても許されないため、このことは一層困難なものとなる。目標形状からの逸脱は、ファイバプリフォームの構成時にその原因を有することがあるが、ファイバ線引きプロセス時にも縮尺に沿わない不適切な成形によって生じる可能性がある。
【0014】
公知の「スタック&ドロー」法では、多数の要素が正確な位置に接合されなければならない。例えば冒頭に記載された論文から公知の中空コアファイバをNANF設計で製造するために、それぞれ反共振プリフォーム体外管(ARE外管)およびARE外管の内部クラッド面の一側に溶接された反共振プリフォーム体内管(ARE内管)からなる6個の反共振要素プリフォーム体がクラッド管の内面に取付けられる必要がある。
【0015】
小さい減衰値と広範な伝播範囲を実現するためには、反共振要素の壁の均等な壁厚の他に、被覆管内部における反共振要素の方位角位置も重要である。このことは、「スタック&ドロー」法では簡単に実現できない。本発明の目的は、従来の製造方法の制限を回避して、反共振中空コアファイバを低コストで実現する製造方法を提供することである。
【0016】
特に本発明の目的は、反共振中空コアファイバと反共振中空コアファイバのプリフォームの製造方法を提供することであり、本方法によって、再現可能に、構造要素の高い精密性とファイバ内での反共振要素の正確な位置決めを、十分に安定的で再現可能な方法で達成することが可能となる。
【0017】
さらに、必要な構造精度、特に反共振要素の均等な壁厚および規定の方位角位置への正確な位置決めが容易に達成できない従来の「スタック&ドロー」法の欠点をできる限り回避しなければならない。
【0018】
発明の概要
反共振中空コアファイバの製造方法に関して、この課題は冒頭に記載した種類の方法から出発して、本発明に従って延伸の際に20~70mmの外径を有する一次プリフォームが使用されることによって解決される。
【0019】
反共振中空コアファイバ製造の出発点は、ここでは、「一次プリフォーム」と呼ばれるプリフォームである。このプリフォームは被覆管を含み、その中にまたはそれに接して、中空コアファイバ内に反共振要素を形成するための前駆体またはプリフォーム体(ここでは短く「反共振要素」と呼ぶ)が含まれている。一次プリフォームは延伸によって中空コアファイバを形成することができるが、通常は、この一次プリフォームをさらに加工して、ここでは「二次プリフォーム」と呼ばれるプリフォームを作製する。必要に応じて、この二次プリフォームを延伸することにより中空コアファイバが作られる。択一的に、一次プリフォームまたは二次プリフォームを、構成部品の同軸集合体を形成しながら、1つまたは複数の外層シリンダにより取り囲み、この同軸集合体を直接延伸して中空コアファイバを形成する。この場合、一般的な「プリフォーム」という用語は、中空コアファイバが最終的に線引きされる構成部品または構成部品の同軸集合体の名称と理解される。
【0020】
クラッド材料の添加は、例えば、一次プリフォームへの外層シリンダのコラップスによって行われる。一次プリフォームと外層シリンダの同軸の配置体は、外層シリンダのコラップスにおいて延伸されるか、または延伸されない。ここで反共振要素プリフォーム体はその形状および配置において変化するか、またはその形状および配置において変化しない。
【0021】
プリフォームの製造は、中空コアファイバの出発要素が製造され、互いに対して位置決めされる複数の工程と、少なくとも一つの熱成形工程とを含む。出発要素のそれぞれは、その目標形状から若干逸脱し、位置決めおよび変形の各ステップは、完成したプリフォームにおいて絶対的な形状誤差に累積され、形状の逸脱に必然的につながる。特にガラスの熱変形は、加熱ゾーンの通常は円筒対称形の理想的な温度プロファイルから極僅か逸脱した場合でも、不都合で再現不能な変形につながる可能性がある。
【0022】
本発明の方法において延伸の目的で、必要に応じて追加のクラッド材料の同時コラップスを伴って使用される一次プリフォームは、20~70mmの範囲の直径、好ましくは30~70mmの範囲の外径を特徴とする。これは比較的長い外径に当たる。従来技術において、二次プリフォーム(ケーン)の外径は、通常4~6mmである。このため、中空コアファイバの工業的規模での製造がほぼ不可能である。
【0023】
プリフォームの直径が増加するに連れ、ファイバ線引きにおいて発生する絶対的な形状誤差が大幅にスケールダウンされるので、中空コアファイバのより高精度な製造が基本的に可能になる。
【0024】
一次プリフォームの直径を任意に拡張してもそのままより高精度な中空コアファイバにはつながらず、中空コアファイバの壁厚において3.5%の相対的な最大形状誤差を遵守するために、以下の境界条件を遵守する必要があることが分かった。
【0025】
I. 一次プリフォームの直径は最大70mmである。直径が大きくなればなるほど、延伸の際の追従速度が低速になり、プリフォームの各軸方向の部品が加熱ゾーンの高温にさらされる時間が長くなる。しかし延伸の際の追従速度が極度に低速になった場合には、反共振要素プリフォーム体の構造要素が変形する。
II. 一次プリフォームの直径は最小20mmである。これより直径が小さいと、加熱ゾーンにおいて生じうる温度変動を補償するためにはプリフォームの熱慣性が極度に小さくなることが明らかになった。さらにプリフォーム直径が小さくなるにつれて、延伸により既存の絶対的誤差が縮小するという利点が小さくなる。
【0026】
中空コア領域と、二次プリフォームの内部クラッド領域のための材料とは、一次プリフォームによって定められる。これは中空コアと内部クラッド領域とを含む。一次プリフォームの外径の拡張は、中空コアの拡張(より小さい減衰を伴う)によって、および最終製品の中空コアファイバの外径の縮小(より少ない材料の使用を伴う)によって達成することができる。7~50mmの範囲、好ましくは20~50mmの範囲の二次プリフォームの内部クラッド領域の外径は、目的に適した妥協点である。
【0027】
一次プリフォームは、延伸の際に供給速度により連続的に加熱ゾーンに供給され、加熱ゾーンにおいてゾーン毎に軟化され、引取速度により加熱ゾーンから引き取られる。変形プロセスは好ましくは軟質ガスと成形工具との間の接触なしで行われ、特に好ましくは垂直線引き法によって行われる。
【0028】
熱成形プロセスにおける加熱ゾーンの温度は可能な限り一定にする必要がある。したがって、有利には、工程(d)の熱成形プロセスにおいて、その目標温度が±0.1℃の精度で維持される温度制御された加熱素子が使用される。
【0029】
こうして熱成形プロセスにおける温度変動を±0.5℃未満に制限することが可能になる。
【0030】
供給速度が過度に高いと、一次プリフォームにおいて温度勾配が発生する可能性があるので、一次プリフォームの中に異なる半径方向位置に分散された反共振要素プリフォーム体が異なる延伸挙動を示すことがある。供給速度が過度に低いと、反共振要素プリフォーム体の不都合な変形につながる可能性がある。延伸の際に一次プリフォームを加熱ゾーンに供給し、供給速度を、少なくとも0.8g/minの範囲のスループット、好ましくは0.8g/min~85g/minの範囲のスループット、特に好ましくは3.3g/min~85g/minの範囲のスループットが得られ、加熱ゾーンにおける25分未満の平均滞留時間、好ましくは5~25分の範囲の平均滞留時間が得られるように調節すると、目的に適した妥協点と証明された。
【0031】
絶対的な形状誤差を縮小するために、延伸において大きい延伸比が望ましい。他方、大きな延伸比は、これに応じて大規模な変形プロセスおよび材料の移動を伴い、これが容易に反共振要素プリフォーム体の微細な構造要素において不都合な変形につながる可能性がある。
【0032】
延伸における延伸比が1.05~10の範囲の値、好ましくは1.05~5の範囲の値に調節されることが目的に適した妥協点として有利と立証された。
【0033】
好適な方法の変形例では、反共振要素プリフォーム体の配置、および/または一次プリフォームの延伸、および/または中空コアファイバの線引きが、非晶質SiO2粒子含有の封止材または接合材を使用した固定措置および/または封止措置を含んでいる。
【0034】
封止または固定に使用される封止材または接合材には、例えば分散液体に取り込まれた非晶質SiO2粒子が含まれている。この材料は、接合すべき面または封止すべき面の間に塗布され、使用時は通常ペースト状である。低温で乾燥させると、分散液体が部分的または完全に取り除かれ、材料が固化する。封止材または接合材、および特に乾燥後に得られる固化したSiO2含有封止材または接合材は、固定および緻密化の要件を満たしている。乾燥に必要な温度は300℃未満であり、これによりプリフォームの寸法安定性の維持が促進され、熱による悪影響が回避される。例えばプリフォームを中空コアファイバに延伸する際に、800℃周辺の高温まで加熱すると、封止材または接合材のさらなる熱固化が生じるため、不透明ガラスや透明ガラスの形成にも適している。このことは焼結やガラス化によって生じるが、この場合、不透明ガラスへの焼結は、完全に透明になるまでガラス化するよりも比較的低い温度および/または短い加熱時間で済む。したがって、封止材または接合材は加熱によって完全に緻密化することができ、熱成形プロセスでの加熱によってガラス化が可能である。封止材または接合材は、シリカガラスと同様の挙動を示し、粘稠であり成形可能である。
【0035】
熱成形プロセスでは封止材または接合材は分解されず、不純物をほとんど放出しない。したがって、これは熱成形プロセス時の熱安定性と純度によって特徴付けられ、異なる熱膨張係数による変形を回避する。
【0036】
封止材および接合材は、一次プリフォームの延伸時および/または中空コアファイバの線引き時に、反共振要素プリフォーム体の開放端および/または反共振要素プリフォーム体の個々の構造要素および/または管要素の間に生じうる環状の隙間を封鎖するためにも有利に使用することができる。
【0037】
このようにして、一次プリフォームおよび/または二次プリフォームの個々の構成部品は、延伸時またはファイバ線引きプロセス時にさまざまな内圧を受ける可能性がある。
【0038】
それぞれ少なくとも一つのARE外管および/または少なくとも一つのARE内管を含む反共振要素プリフォーム体において、被覆管内側および/または被覆管外側および/またはARE外管内側および/またはARE外管外側が切削加工、特に穴あけ加工、フライス加工、研削加工、ホーニング加工および/または研磨加工によって作製されることで、被覆管の内側クラッド面でのプリフォーム体の位置決めの正確性がさらに改善される。
【0039】
これらの加工技術は、熱や圧力を使用するその他の周知の変形技術と比べ、より正確で極めて微細な構造を提供し、例えばノズル、プレスまたは鋳造型などの成形工具による表面の汚れを回避する。
【0040】
切削機械加工は、好ましくは、被覆管内側に被覆管長手方向軸の方向に延びる長手方向構造を設けることによる、反共振要素プリフォーム体の目標位置の領域において被覆管内側を構造化することも含む。この長手方向構造は、例えば、被覆管内側にある長手方向スリットおよび/または長手方向溝を含み、これらは、被覆管長手方向軸に平行に延び、好ましくは穴あけ加工、鋸加工、フライス加工、切断加工または研削加工によって作製される。
【0041】
被覆管長手方向軸の方向に延びる長手方向構造は反共振要素プリフォーム体の位置決め補助として用いられる。これにより、反共振要素プリフォーム体が被覆管の内側の規定位置に配置されやすくなる。
【0042】
被覆管の内側におけるプリフォーム体の位置決めの正確性は、構造要素の端面側の上端が位置決めテンプレートを用いて目標位置に位置決めされると改善される。
【0043】
位置決めテンプレートは例えば、被覆管内部孔に突き出たシャフトを有し、このシャフトには、半径方向外側に向いた複数の保持アームの形の保持要素が設けられている。
【0044】
保持要素を構造的に所定のように星形に配置することによって、例えば上で説明した封止材または接合材を用いた各目標位置における反共振要素プリフォーム体の正確な位置決めおよびそれらの固定が容易になる。ここで位置決めテンプレートは、好ましくは被覆管端面の領域のみに、好ましくは両方の被覆管端面の領域に使用される。
【0045】
さらに、工程(d)の一次プリフォームの延伸および/または工程(e)の中空コアファイバの線引き時に、シリカガラスからなるプリフォームの複数の成分が共に加熱されて軟化され、プリフォーム成分の少なくとも一部のシリカガラスはシリカガラスの粘度を低下させる少なくとも一つのドーパントを含む方式の実績が認められた。
【0046】
一次プリフォームの成分は、被覆管およびこの中に配置された反共振要素プリフォーム体を含む。二次プリフォームは、例えば一以上の外層シリンダの形で提供され、一次プリフォームにコラップスされる追加のクラッド材料を含む。
【0047】
シリカガラスの粘度を低下させるドーパントとしては、好ましくは、フッ素、塩素および/またはヒドロキシル基が使用される。
【0048】
ドープは、隣接するプリフォーム成分の熱膨張係数の適合によって、応力を回避するまたは緩和することを可能にする。このドープは、ある成分の熱安定性を、隣接する成分の安定性のために、低下させるために使用することもできる。
【0049】
例えば、被覆管のシリカガラスは1250℃の測定温度において、追加で投入されたクラッド材料のシリカガラスより最小0.5dPa・sだけ高くなる粘度、好ましくは最小0.6dPa・sだけ高くなる粘度(粘度を対数値として単位dPa・sで表示した場合)を有すると有利であると立証された。
【0050】
特に、中空コアファイバの低い光減衰と幅広い光学的伝送帯域幅に関しては、反共振要素が中空コアの周りに奇数対称に配置されている場合は特に有利であることが証明されている。
【0051】
好適な方式では、管状の構造要素が提供され、そのうちの少なくとも一部は0.2~2mmの範囲の壁厚を有し、好ましくは0.25~1mmの範囲の壁厚を有することによって、被覆管におけるプリフォーム体の位置決め精度をさらに改善する。このとき、被覆管は外径が90~250mmの範囲のもの、好ましくは外径が120~200mmの範囲のものが提供される。これらの構成部品はそれぞれ少なくとも1mの長さがあり、反共振要素を形成するための比較的容積の大きな構造要素である。これにより、取扱いが容易になる。さらに、被覆管と構造要素との垂直の整列において、構造要素の端面側の上端がそれぞれ目標位置に位置決めおよび固定されている場合には、例えば、かつ好ましくは上述の封止材または接合材を使用して、またこれに加えて、またはこれと択一的に、上述の位置決めテンプレートを用いて位置決めおよび固定されている場合には、構造要素長手方向軸の平行性と垂直方向への整列が重力によってサポートされる。
【0052】
中空コアファイバのためのプリフォームの製造に関して、上述の技術的課題は、本発明に従って冒頭に記載した種類の方法から出発して、延伸時に20~70mmの範囲、好ましくは30~70mmの範囲の外径を有する一次プリフォームが使用され、ここで延伸時に一次プリフォームが供給速度により連続的に加熱ゾーンに供給され、加熱ゾーンにおいてゾーン毎に軟化され、引取速度により加熱ゾーンから引き取られることで解決される。
【0053】
一次プリフォームは、反共振中空コアファイバのための二次プリフォームの形の中間製品の製造のために使用される。これまでの従来技術と比較して大きな直径を有する一次プリフォームが作製されるので、一次プリフォームに存在する絶対的な形状誤差を延伸時に大幅にスケールダウンすることが可能である。
【0054】
この方式は中空コアファイバのより高精度での製造を可能にする。プリフォームを製造するための措置は、中空コアファイバの製造に関連して上記に詳しく説明されており、それらの説明がここに引用される。
【0055】
定義
これまでに述べた説明の個々の工程と用語について、以下に補足的に定義する。これらの定義は本発明の説明の構成要素である。以下の定義のいずれかと他の説明との間で事実上矛盾がある場合、他の説明の中で言及していることが優先される。
【0056】
反共振要素
反共振要素は、中空コアファイバの単純な構造要素または入れ子構造要素であってよい。これは、中空コアの方向から見て負の曲率(凸部)を持つか、曲率を持たない(平面、直線)少なくとも2つの壁を有している。通常、反共振要素は動作光に対して透明な材料、例えばガラス(特にドープしたSiO2またはドープしないSiO2)、プラスチック(特にポリマー)、複合材料または結晶材料からなる。
【0057】
反共振要素プリフォーム体/反共振要素前駆体
反共振要素プリフォーム体とは、実質的にファイバ線引きプロセスにおける単純な線引きによって中空コアファイバ内で反共振要素になるプリフォームの構成部品または成分を呼ぶ。反共振要素前駆体とは、変形によって初めて反共振要素プリフォーム体または直接的に反共振要素になるプリフォームの構成部品または成分を呼ぶ。反共振要素プリフォーム体は、単純な構成部品または入れ子になっている構成部品であってよく、これに追加的に位置決め補助を固定することができる。反共振要素プリフォーム体は、もともと一次プリフォームの中に存在する。
【0058】
入れ子の反共振要素プリフォーム体は、中空コアファイバの中で入れ子になっている反共振要素を形成する。これは、1本の外管と、外管の内部孔内に配置されている少なくとも1つのさらなる構造要素とから構成されている。さらなる構造要素は、外管の内側クラッド面に接しているさらなる管であってよい。外管は「反共振要素外管」または略して「ARE外管」と呼ばれ、さらなる管は「反共振要素内管」または略して「ARE内管」または「入れ子になっているARE内管」とも呼ばれる。
【0059】
入れ子になっているARE内管の内部孔の中には、反共振要素プリフォーム体が何重にも入れ子になっている場合、少なくとも1つのさらなる構造要素、例えば入れ子になっているARE内管の内部クラッド面に接する第3の管を配置してもよい。
【0060】
反共振要素プリフォーム体が何重にも入れ子になっている場合は、ARE外管の中に配置されている複数の管を区別するため、必要に応じて「入れ子になっている外側のARE内管」と「入れ子になっている内側のARE内管」とが区別される。
【0061】
シリンダ形の反共振要素プリフォーム体およびそれらのシリンダ形構造要素に関連する「断面」という用語は、常に、それぞれのシリンダ長手方向軸に対して垂直の断面を示し、特に指定がない限り、管状構成部品における外部輪郭の断面を示すものである(内部輪郭の断面ではない)。
【0062】
一次プリフォームのさらなる加工により、とりわけ熱変形処理により、元の反共振要素プリフォーム体が初期形状に対して変化した形状で存在する中間製品を作ることができる。ここでは、変化した形状も同様に反共振要素プリフォーム体または反共振要素前駆体と呼ぶ。
【0063】
プリフォーム/一次プリフォーム/二次プリフォーム/コアプリフォーム(ケーン)
プリフォームは、反共振中空コアファイバが線引きされる構成部品である。これには、一次プリフォームまたは一次プリフォームのさらなる加工によって作製される二次プリフォームがある。一次プリフォームは、少なくとも1本の被覆管と、その中に緩く収容されたまたは堅固に固定された、反共振要素のためのプリフォーム体または前駆体とからなる集合体であってよい。一次プリフォームを、中空コアファイバが線引きされる二次プリフォームにさらに加工することは、
(i) 延伸、
(ii) コラップス、
(iii) コラップスおよび同時延伸、
(iv) 追加のクラッド材料のコラップス、
(v) 追加のクラッド材料のコラップスとそれに続く延伸、
(vi) 追加のクラッド材料のコラップスおよび同時延伸、
のうち1つ以上の熱成形プロセスが一回または反復して実行されることを含む。
【0064】
文献においてコアプリフォーム(英語:ケーン、Cane)とは、一次プリフォームのコラップスおよび/または延伸によって得られるプリフォームを呼ぶ。通常、コアプリフォームは、中空コアファイバの線引き前または線引き時に追加のクラッド材料により覆われる。
【0065】
延伸/コラップス
延伸では、一次プリフォームが長く伸ばされる。この延伸は、同時コラップスなしで行ってよい。延伸は一定の縮尺に従って行うことができるため、例えば一次プリフォームの構成部品または成分の形状および配置は延伸した最終製品に反映されている。しかし、延伸では、一次プリフォームが寸法どおりに線引きされず、幾何形状が変化する可能性もある。
【0066】
コラップスでは内部孔を狭くしたり、管状構成部品間の環状の隙間を塞いだり、狭くしたりする。このコラップスは、通常、延伸と平行して行われる。
【0067】
中空コア/内部クラッド領域/外部クラッド領域
少なくとも1つの被覆管と、その中に緩く収容されたまたは堅固に固定された反共振要素のプリフォーム体または前駆体とからなる集合体を、ここでは「一次プリフォーム」とも呼ぶ。この一次プリフォームは、中空コアとクラッド領域とを含む。このクラッド領域は、例えば集合体へのコラップスによって形成された「外部クラッド領域」も存在しており、これらのクラッド領域を区別する必要がある場合は、「内部クラッド領域」とも呼ばれる。「内部クラッド領域」と「外部クラッド領域」という名称は、中空コアファイバや一次プリフォームのさらなる加工によって得られる中間製品の該当する領域に対しても使用される。
【0068】
「管内側」という名称は「管の内部クラッド面」の同義語としても用いられ、「管外側」という名称は「管の外部クラッド面」の同義語としても用いられる。管に関連した用語「内部孔」は、内部孔が穴あけ作業によって形成されたことを意味するものではない。
【0069】
切削加工
切削加工は、加工物を分離加工するための分離する機械的製造方式であり、特に旋盤加工、切断加工、穴あけ加工、鋸加工、フライス加工または研削加工を意味する。この加工により、被覆管長手方向軸の方向に延びる長手方向構造が得られ、これは反共振要素プリフォーム体の位置決め補助として用いられる。長手方向構造は被覆管内側から到達できるようになっており、被覆管壁全体を通って外側まで延びていてもよい。
【0070】
粒度および粒度分布
SiO2粒子の粒度および粒度分布は、D50値に基づき特徴付けられる。この値は、SiO2粒子の累積容積を粒度に応じて示す粒度分布曲線から読み取られる。粒度分布は、それぞれのD10値、D50値、D90値に基づき特徴付けられることが多い。このとき、D10値はSiO2粒子の累積容積の10%に達しない粒度を示し、対応して、D50値およびD90はSiO2粒子の累積容積の50%または90%に達しない粒度を示す。粒度分布は、ISO13320に準拠した散乱光およびレーザー回折分光法によって求められる。
【0071】
実施例
以下に、実施例に基づき、図を用いて本発明を詳しく説明する。ここで図に概略的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1】被覆管とこの中に位置決めされ固定された反共振要素プリフォーム体とを備える、中空コアファイバのためのプリフォームを製造するための一次プリフォームの平面断面図を示す。
【0073】
中空コアファイバまたは中空コアファイバのためのプリフォームの製造では、多数の構成部品を相互に接合しなければならない。さらに、熱成形プロセスを実行する場合、プリフォームに存在している隙間やチャネルを封止することは有益である。独国特許出願公開第102004054392A1から公知のように、接合または封止には、SiO2ベースの封止材または接合材が使用される。このとき、シリカガラス粒体の湿式粉砕によって、D50値が約5μmおよびD90値が約23μmによって特徴付けられる粒度分布を有する非晶質SiO2粒子を含む水性スラリーが生成される。このベーススラリーに、約5μmの平均粒度を持つ非晶質SiO2粒体が混合される。接合材として使用されるスラリーは、90%の固形物含有量を有し、少なくとも99.9質量%はSiO2から構成されている。
【0074】
図1は、内側クラッド面に予め定められた方位角位置に均一の間隔で反共振要素プリフォーム体4が固定された被覆管壁2を具備する被覆管1を備える一次プリフォーム3を概略的に示し、実施例では6個のプリフォーム体4が存在し、図示しない別の好ましい実施形態において奇数のプリフォーム体が存在する。
【0075】
内部被覆管1はシリカガラスからなり、1000mmの長さと、27mmの外径と、20mmの内径とを有する。反共振要素プリフォーム体4はARE外管4aとARE内管4bとからなる互いに入れ子になった構造要素の集合体として存在する。ARE外管4aは6.2mmの外径を、ARE内管4bは2.5mmの外径を有する。二つの構造要素(4a;4b)の壁厚は同一であり、0.3mmである。ARE外管4aとARE内管4bの長さは被覆管長さ1に対応する。
【0076】
被覆管1の内壁における反共振要素プリフォーム体4の固定はSiO2ベースの接合材5を用いて行われる。
【0077】
接合材5は被覆管内側クラッド面の端面側の端部領域に局所的に塗布され、反共振要素プリフォーム体はその上に位置決めテンプレートを使用して、個々の反共振要素プリフォーム体4のための保持アームを構造的に所定のように星形に配置することによって戴置される。ここで位置決めテンプレートは、両方の端面側の被覆管端部の周りの領域に制限される。
【0078】
この方法によって被覆管1と反共振要素プリフォーム体4との間に正確で再現可能な接合がもたらされる。固定のためには300℃未満という低温で接合材5を固化させれば十分なので、周囲の領域の急激な加熱および反共振要素プリフォーム体4の変形が回避される。
【0079】
一次プリフォーム3はシリカガラスからなる外層シリンダにより覆われ、外層シリンダは被覆管1にコラップスされ、同時に管集合体は二次プリフォームに延伸される。外層シリンダは63.4mmの外径と、17mmの壁厚とを有する。
【0080】
コラップスおよび延伸プロセス時に、被覆管1と外層シリンダと同軸配置体は、長手方向軸を垂直に配向させて、下から温度制御された加熱ゾーンに向かって供給され、この中で配置体の上端から始まってゾーン毎に軟化される。
【0081】
加熱ゾーンは±0.1℃の制御精度で1600℃の目標温度に維持される。こうして熱成形プロセスにおける温度変動を±0.5℃未満に制限することが可能になる。
【0082】
コラップスおよび延伸プロセスにおいて形成された二次プリフォームは、約50mmの外径と、外部クラッドおよび内部クラッドから構成される16.6mmのクラッド壁厚とを有する。反共振要素プリフォーム体の最大壁厚変動(最大値から最小値を引いた値)は4μmになる。次いで二次プリフォームが線引きされ、反共振中空コアファイバが形成される。
【0083】
以下の表は、変形プロセス(外部クラッドのコラップスおよび延伸)の前(VOR)と後(NACH)で異なる外径における引取パラメータを示す。
【表1】
【0084】
加熱ゾーンは100mmの長さを有する。例えば90mmの外径および10mmの壁厚を有する被覆管では、加熱ゾーンへの5mm/minの供給速度により27.6g/minのスループットが得られ、15mm/minの供給速度ではスループットは83g/minである。供給速度が5mm/minまたは15mm/minでは、25mmの外径および1mmの壁厚を有する管において0.8g/minまたは2.49g/minのスループットが得られる。
【0085】
以下の表には、プリフォームおよびその成分の外径(OD)および内径(ID)が、中空コアファイバのクラッド領域の外径と内径との所望の直径比(OD/ID)に依存してまとめられている。
【表2】
【0086】
表の列2のOD/IDの値は、列4の値(二次プリフォームの外径)を列5の値(二次プリフォーム中の以前の一次プリフォームの内径)で除算して得られる。
【0087】
プリフォーム中の反共振要素プリフォーム体の壁厚の最大偏差は全ての実施例において約4μmである。上の表に示すように、プリフォームから200μmまたは230mmの外径を有する中空コアファイバが線引きされ、反共振要素の壁厚が測定された。表の例番号4は上に詳細に説明した実施例に対応する。例番号5および6は比較例である。線引きプロセス時に比較例のプリフォームを使用すると、最適な形状を有する中空コアファイバが得られなかった。これは延伸プロセス時の過度に大きいまたは過度に小さいプリフォームのためである。
【国際調査報告】