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特表2022-540335耐摩耗性と耐食性のために設計された鉄ベースの合金
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(54)【発明の名称】耐摩耗性と耐食性のために設計された鉄ベースの合金
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/30 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
B23K35/30 340B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021576786
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(85)【翻訳文提出日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 US2020041006
(87)【国際公開番号】W WO2021007209
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】62/872,105
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/952,668
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515195347
【氏名又は名称】エリコン メテコ(ユーエス)インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140501
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 栄一郎
(72)【発明者】
【氏名】ヴェッキオ,ジェームス ナサニエル
(72)【発明者】
【氏名】チーニー,ジャスティン リー
(72)【発明者】
【氏名】アイブル,キャメロン
(57)【要約】
本明細書に開示されるのは、2つの対照的な物理的挙動を有するコーティングを形成するように構成された合金の実施形態である。1)容易に機械加工可能なコーティングの最終結果による硬度の低下、および2)高い耐摩耗性。一般的に硬度が低いと耐摩耗性が低くなる。しかしながら、本明細書に記載の合金の実施形態は、より高い耐摩耗性を示しながら、低い硬度を維持することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Feと、
約10-約26重量%のCrと、
約2-約12重量%のNb+Ti+Vと、
約0.5-約1.5重量%のCと、
を含むことを特徴とするクラッド原料。
【請求項2】
約2-約10重量%のNb+Ti+Vを含む請求項1に記載のクラッド原料。
【請求項3】
前記クラッド原料が、
Feと、
約16-約26重量%のCrと、
約0.4-約2.4重量%のTiと、
0.8-3.6重量%のMoと、
約4-約6重量%のNbと、
約0.6-約1.2重量%のCと、
を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のクラッド原料。
【請求項4】
前記クラッド原料が、
Feと、
約18-約25重量%のCrと、
約0.45-約2.2重量%のTiと、
0.9-3.3重量%のMoと、
約4.5-約5.5重量%のNbと、
約0.7-約1.1重量%のCと、
を含む請求項1-3のいずれか1項に記載のクラッド原料。
【請求項5】
さらに約0.3-約0.5重量%のBを含む請求項1-4のいずれか1項に記載のクラッド原料。
【請求項6】
総フェライト相モル分率が、熱力学的条件下で、固相線より低くかつ500Kより高いすべての温度において、約50モル%以上であることを特徴とする請求項1-5のいずれか1項に記載のクラッド原料。
【請求項7】
前記総フェライト相モル分率が、固相線より低くかつ500Kより高いすべての温度において、約60モル%以上であることを特徴とする請求項6に記載のクラッド原料。
【請求項8】
前記総フェライト相モル分率が、固相線より低くかつ500Kより高いすべての温度において、約70モル%以上であることを特徴とする請求項7に記載のクラッド原料。
【請求項9】
前記クラッド原料が熱力学的条件下で、固相線温度のすぐ下の高められた高温において約90モル%以上の総フェライト相モル分率を有することを特徴とする請求項1-8のいずれか1項に記載のクラッド原料。
【請求項10】
前記クラッド原料が、熱力学的条件下で、約1750Kと約2100Kの間に一次炭化物形成温度を有することを特徴とする請求項1-9のいずれか1項に記載のクラッド原料。
【請求項11】
前記一次炭化物形成温度が約1850Kと約2000Kの間にあることを特徴とする請求項10に記載のクラッド原料。
【請求項12】
前記クラッド原料が、1300Kで、前記総一次炭化物モル分率が約5モル%以上であることを特徴とする請求項1-11のいずれか1項に記載のクラッド原料。
【請求項13】
前記クラッド原料が、1300Kで、前記総一次炭化物モル分率が約7.5モル%以上であることを特徴とする請求項12に記載のクラッド原料。
【請求項14】
前記クラッド原料が、1300Kで、前記総一次炭化物モル分率が約10.5モル%以上であることを特徴とする請求項13に記載のクラッド原料。
【請求項15】
前記クラッド原料がガス自動化工程を通じて形成される請求項1-14のいずれか1項に記載のクラッド原料。
【請求項16】
請求項1-15のいずれか1項に記載のクラッド原料から形成されるコーティング。
【請求項17】
フェライトマトリックスと、
前記フェライトマトリックスの中に埋め込まれている複数の一次炭化物と、
を含む請求項16に記載のコーティング。
【請求項18】
前記複数の一次炭化物が、Nb、TiおよびVの少なくともいずれか1つを含む請求項17に記載のコーティング。
【請求項19】
前記複数の一次炭化物が、孤立した球状の形態を含む請求項17または18に記載のコーティング。
【請求項20】
前記コーティングが、少なくとも約5体積%の総一次炭化物体積分率を有する請求項16-19のいずれか1項に記載のコーティング。
【請求項21】
前記コーティングが、前記総一次炭化物体積分率が少なくとも約7.5体積%である請求項20に記載のコーティング。
【請求項22】
前記コーティングが、前記総一次炭化物体積分率が少なくとも約10.0体積%である請求項21に記載のコーティング。
【請求項23】
前記コーティングが少なくとも約12重量%のCr含有量を有するコーティング。
【請求項24】
前記フェライトマトリックスの前記Cr含有量が少なくとも約15%である請求項23に記載のコーティング。
【請求項25】
前記フェライトマトリックスの前記Cr含有量が少なくとも約19%である請求項24に記載のコーティング。
【請求項26】
前記コーティングが、約450HV0.3以下の硬度を有する請求項16-25のいずれか1項に記載のコーティング。
【請求項27】
前記硬度が、約400HV0.3以下である請求項26に記載のコーティング。
【請求項28】
前記硬度が、約350HV0.3以下である請求項27に記載のコーティング。
【請求項29】
前記コーティングが、ASTM G65手順Aの体積損失が約200mm以下である請求項16-28のいずれか1項に記載のコーティング。
【請求項30】
前記ASTM G65手順Aの体積損失が150mm以下である請求項29に記載のコーティング。
【請求項31】
前記ASTM G65手順Aの体積損失が100mm以下である請求項29に記載のコーティング。
【請求項32】
前記コーティングが、堆積工程を通じて形成されるように構成されている請求項16-31のいずれか1項に記載のコーティング。
【請求項33】
前記コーティングが溶射、プラズマトランスファーアーク溶接、レーザークラッディング、および超高速レーザークラッディングからなる群から選択されるプロセスによって形成されるように構成されている請求項16-32のいずれか1項に記載のコーティング。
【請求項34】
請求項1-15のいずれか1項に記載の前記クラッド原料をコーティングに適用する方法。
【請求項35】
前記クラッド原料が粉末である、請求項1-15のいずれか1項に記載のクラッド原料。
【請求項36】
前記クラッド原料が1本以上のワイヤである請求項1-15のいずれか1項に記載のクラッド原料。
【請求項37】
Feを含み、
熱力学的条件下で、
総フェライト相モル分率が約50%を超え、
フェライトマトリックスが少なくとも約12重量%のCrを含み、
および、液体から析出する硬質相のモル分率が約5%以上であるクラッド原料。
【請求項38】
前記硬質相が炭化物である請求項37に記載のクラッド原料。
【請求項39】
前記炭化物がFCC炭化物である請求項38に記載のクラッド原料。
【請求項40】
前記硬質相がホウ化物である請求項37に記載のクラッド原料。
【請求項41】
前記硬質相が炭化物とホウ化物を含む請求項37に記載のクラッド原料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権出願を参照した組み込み
本出願は、2019年7月9日に出願され「耐摩耗性および耐食性のために設計された鉄ベースの合金」と題された米国出願第62/872105号、2019年12月23日に出願され「耐食性および耐摩耗性フェライト合金」と題された米国出願第62/952668号の利益を主張しており、これらのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、一般に、高い耐摩耗性を有するフェライト系鉄ベースの合金に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車産業では、一般的に使用される標準的なねずみ鋳鉄と比較して耐摩耗性および耐食性が改善されたブレーキディスクにますます関心が高まっている。複合ブレーキディスクなどの代替技術は、コストが高いため、大量生産には魅力がないことがよくある。
【0004】
2つの要因がこの市場動向を推進している。1つ目は、ブレーキディスクの摩耗に起因する微粒子の排出を減らすためのレギュレーターからの圧力の増加である。2つ目は、回生ブレーキが可能な車両での摩擦ブレーキの使用が減少する結果としての、鋳鉄製ブレーキの腐食である。目に見える腐食(錆)は美観の問題であり、かつ、ブレーキの効果を低下させる可能性がある。結果として、本開示に記載される合金およびコーティングは、市場が関心を有する改善されたブレーキディスク性能を提供する可能性が高い。さらに、本開示の合金は鉄ベースであるため、より高価な金属および複合物と比較して競争力のある価格を有している。
【0005】
多くのコーティング用途では、ニッケルおよび/またはコバルトの使用を低減または排除するための強力な規制および安全性への圧力が存在する。これらの材料は両方とも、溶射やその他のコーティングの金属相として一般的に使用されている。本開示の合金は鉄ベースであり、コバルトおよびニッケルを特に制限して、多くの摩耗および腐食用途に対するそれらの魅力を高めている。
【0006】
従前の表面硬化コーティングの反復は、表面硬化コーティングを形成するための鋼の最も硬い形態であるマルテンサイトマトリックスを有する鉄合金に焦点を合わせてきた。Metcoなどが提供する431ステンレス鋼(SS)は、この用途で使用される標準合金である。さらに、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,491,910号、第8,961,869号、および第9,802,387号、ならびに米国特許出願公開公報第2005/013924号は、フェライト含有量の低減、高硬度の材料を製造するためのマルテンサイト含有量の高さを教示している。
【発明の概要】
【0007】
本明細書には、Feと、約10-約26重量%のCrと、約2-約12重量%のNb+Ti+Vと、約0.5-約1.5重量%のCと、を含むクラッド原料の実施形態が開示される。
【0008】
いくつかの実施形態では、当該原料は、Feと、約16-約26重量%のCrと、約0.4-約2.4重量%のTiと、0.8-3.6重量%のMoと、約4-約6重量%のNbと、約0.6-約1.2重量%のCと、を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、当該原料は、Feと、約18-約25重量%のCrと、約0.45-約2.2重量%のTiと、0.9-3.3重量%のMoと、約4.5-約5.5重量%のNbと、約0.7-約1.1重量%のCと、を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、当該原料は、さらに、0.3-0.5重量%のBと、を含む。
【0011】
当明細書には、Feと、約10-約25重量%のCrと、4重量%までのNiと、約2-約10重量%のNb+Ti+Vと、約0.5-約1.5重量%のCと、を含むクラッド原料の実施形態が開示される。
【0012】
いくつかの実施形態は、当該原料は、Feと、約13.6-約20.4重量%のCrと、約1.2-約1.6重量%のNiと、約1.6-約2.4重量%のTiと、約4-約6重量%のNbと、約0.8-約1.2重量%のCと、を含んでもよい。いくつかの実施形態では、当該原料は、Feと、約15.3-約18.7重量%のCrと、約1.35-約1.65重量%のNiと、約1.8-約2.2重量%のTiと、約4.5-約5.5重量%のNbと、約0.9-約1.1重量%のCと、を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、当該原料は、熱力学的条件下で、固相線より低くかつ500Kより高いすべての温度において、約50モル%以上の総フェライト相モル分率を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、当該原料は、総フェライト相モル分率が、固相線より低くかつ500Kより高いすべての温度において、約60モル%以上である。いくつかの実施形態では、当該原料は、総フェライト相モル分率が、固相線より低くかつ500Kより高いすべての温度において、約70モル%以上である。いくつかの実施形態では、当該原料は、熱力学的条件下で、固相線温度のすぐ下の高められた高温において約90モル%以上の総フェライト相モル分率を有することを特徴とする。
【0014】
いくつかの実施形態では、当該原料は、熱力学的条件下で、約1750Kから約2100Kの間の一次炭化物形成温度を有することによって特徴付けることができる。いくつかの実施形態では、一次炭化物形成温度は、約1850Kから約2000Kの間であり得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、当該原料は、熱力学的条件下で、一次炭化物の総モル分率は、1300Kで約7.5モル%であり得る。いくつかの実施形態では、一次炭化物の総モル分率は、1300Kで約10モル%であり得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、当該原料は、ガス噴霧プロセスによって形成することができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、コーティングは、フェライトマトリックス、およびフェライトマトリックスの中に埋め込まれている複数の一次炭化物を含むことができ、一次炭化物は、フェライトマトリックスに埋め込まれている。
【0018】
いくつかの実施形態では、複数の一次炭化物は、Nb、Ti、およびVのうちの少なくとも1つを含むことができる。いくつかの実施形態では、複数の一次炭化物は、孤立した球状形態を含むことができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、コーティングは、少なくとも約5体積%の一次炭化物の総体積分率を有しうる。いくつかの実施形態では、一次炭化物の総体積分率は、少なくとも約7.5体積%である可能性がある。いくつかの実施形態では、一次炭化物の総体積分率は、少なくとも約10体積%である可能性がある。いくつかの実施形態では、コーティングは、フェライトマトリックスのCr含有量が少なくとも約12重量%であり得る。いくつかの実施形態では、フェライトマトリックスのCr含有量は、少なくとも約15重量%であり得る。いくつかの実施形態では、フェライトマトリックスのCr含有量は、少なくとも約19重量%である。
【0020】
いくつかの実施形態では、コーティングは、約450HV 0.3以下の硬度を有することができる。いくつかの実施形態では、硬度は、約400HV 0.3以下であり得る。いくつかの実施形態では、硬度は、約350HV 0.3以下であり得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、コーティングは、約200mm以下のASTM G65手順A体積損失を有することができる。いくつかの実施形態では、ASTM G65手順Aの体積損失は、約150mm以下であり得る。いくつかの実施形態では、ASTM G65手順Aの体積損失は、約100mm以下であり得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、コーティングは、堆積プロセスによって形成されるように構成することができる。いくつかの実施形態では、コーティングは、溶射、プラズマトランスファーアーク溶接、レーザークラッディング、および超高速レーザークラッディングからなる群から選択されるプロセスによって形成されるように構成することができる。
【0023】
コーティングとして本明細書に開示されるような当該原料を適用する実施形態もまた開示される。
【0024】
いくつかの実施形態では、原料は粉末であり得る。いくつかの実施形態では、原料は、1つまたは複数のワイヤであり得る。
【0025】
本明細書には、Feと、約14-35重量%のCrと、約0-16重量%のMo+Wと、約0.2-約2.8重量%のBを含む溶射原料の実施形態が開示されている。
【0026】
いくつかの実施形態では、当該原料はさらに、約20-約34重量%のCr、約0-約6重量%のMo+W、約0.8-約1.8重量%のB、および約1-約4重量%のNb+Tiを含みうる。いくつかの実施形態では、当該原料ははさらに、約15-約34重量%のCr、約1-約16重量%のMo+W、約0.3-約2.7重量%のB、約1-約10重量%のNb+Ti、および約0-約1.2重量%のCを含みうる。いくつかの実施形態では、当該原料ははさらに、約15-約30重量%のCr、約0-約6重量%のMo+W、約0.2-約1.0重量%のB、および約5-約12%のNb+Ti、および約0.4-約1.4重量%のCを含みうる。
【0027】
いくつかの実施形態では、当該原料は、約1重量%未満のCを含む。いくつかの実施形態では、当該原料は、約0.5重量%未満のCを含む。いくつかの実施形態では、当該原料は、約0.25重量%未満のCを含む。いくつかの実施形態では、当該原料は、約0.1重量%未満のCを含む。いくつかの実施形態では、当該原料は、約5重量%未満のNiを含む。いくつかの実施形態では、原料は、約1重量%未満のNiを含む。いくつかの実施形態では、原料は、約0.1重量%未満のNiを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、原料は粉末である。
【0029】
いくつかの実施形態では、当該原料は、マトリックスを形成するように構成され、熱力学的平衡条件下で、式Cr+3.3*(Mo+0.5*W)+16*N以上で定義されるような17より大きい孔食抵抗等価数と、25モル%未満の金属間化合物相、約7-約35モル%の硬質相、約2-約25モル%のホウ化物、約1-約15モル%のMC炭化物、および2000K未満の液相線温度を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、当該原料は、マトリックスを形成するように構成され、熱力学的平衡条件下で、式Cr+3.3*(Mo+0.5*W)+16*N以上で定義されるような25より大きい孔食抵抗等価数と、8モル%未満の金属間化合物相、約10-約22モル%の硬質相、および1900K未満の液相線温度を有することを特徴とする。
【0030】
いくつかの実施形態では、当該原料は、次のような重量での組成を有する。Cr:約20.1重量%、Nb:約5.6重量%、Mo:約2.1重量%、B:約0.44重量%、C:約0.81重量%、Ti:約1.6重量%、Fe:バランス。
【0031】
本明細書に開示される原料から形成されるコーティングの実施形態もまた、本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、コーティングは、約5から約35%の間の硬質相の体積分率、および約3%未満の多孔度を含む。いくつかの実施形態では、コーティングは、約10から約25%の間の硬質相の体積分率、および約1%未満の多孔度を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、コーティングはブレーキディスクに塗布される。
【0033】
基板上に金属コーティングを適用する方法の実施形態も本明細書に開示され、この方法は、本明細書に開示される原料を基板上に熱噴霧することを含む。
【0034】
本明細書には、平衡または平衡に近い凝固条件下において1300Kで20を超えるマトリックスPRENと、平衡または平衡に近い凝固条件下において1300Kで5%から25%の硬質相のモル分率と、平衡または平衡に近い凝固条件下で2000K未満の固相線を含む鉄ベースの合金原料が開示されている。
【0035】
いくつかの実施形態では、合金原料は、重量%で、1.0から10.0の間のニオブとチタンを含む。いくつかの実施形態では、1300Kでのマトリックスは、重量%で、15%を超えるCrを有する。いくつかの実施形態では、800K度での金属間化合物相のモル分率は、平衡または平衡に近い凝固条件下で25%未満である。
【0036】
いくつかの実施形態では、合金は噴霧化されて粉末を形成する。いくつかの実施形態では、合金原料は、耐摩耗性および耐食性コーティングを形成するために基板上に堆積される。いくつかの実施形態では、合金原料のアーク溶融微細構造は、体積で8%から30%の硬質相を含む。いくつかの実施形態では、アーク溶融インゴット微細構造は、20より大きいマトリックスPRENを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、合金原料は、レーザークラッディングまたは超高速レーザークラッディングを介して堆積されるように構成される。いくつかの実施形態では、合金原料は、ブレーキディスクの摩耗面に堆積される。
【0038】
いくつかの実施形態では、合金原料は、平衡凝固条件下で1300Kで、3から26%のモル分率のホウ化物を含む。いくつかの実施形態では、合金原料は、平衡条件下で1300Kで10%未満のFCCオーステナイトを含む。
【0039】
本明細書では、Feと、熱力学的条件下で約50%を超える総フェライトモル分率、少なくとも約12重量%のCRを含むフェライトマトリックス、および約5%を超えるモル分率の液体から沈殿する硬質相を含むクラッド供給原料がさらに開示される。
【0040】
いくつかの実施形態では、硬質相は炭化物である。いくつかの実施形態では、炭化物はFCC炭化物である。いくつかの実施形態では、硬質相はホウ化物である。いくつかの実施形態では、硬質相は、ホウ化物および炭化物の両方を含む。
【0041】
本明細書に開示されるようなコーティングの実施形態もまた開示される。
【0042】
本明細書に開示されるような原料の実施形態もまた開示される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、本開示の合金の熱力学的プロファイルの実施形態を示している。
【0044】
図2図2は、431ステンレス鋼の熱力学的プロファイルを示している。
【0045】
図3図3は、PTA溶接オーバーレイコーティングとしての本開示の合金の微細構造の実施形態を示している。
【0046】
図4図4は、本開示の合金の熱力学的凝固図の実施形態を示している。
【0047】
図5図5は、本開示の合金の熱力学的凝固図の実施形態を示している。
【0048】
図6図6は、本開示の合金のアーク溶融インゴットの微細構造を示している。
【0049】
図7図7は、本開示の合金のアーク溶融インゴットの微細構造を示している。
【0050】
図8図8は、シェフラー図の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本明細書に開示されるのは、マルテンサイトマトリックスではなく、フェライト構造を有し、その結果、典型的な表面硬化製品よりも低い硬度を有する合金の実施形態である。しかしながら、本開示の実施形態は、優れた耐摩耗性を有し、耐摩耗性は、硬質炭化物または硬質ホウ化物、あるいは硬質炭化物と硬質ホウ化物粒子の両者の組合せの形態で提供される。フェライト構造のため、コーティングは、当技術分野で知られているより硬いコーティングよりもはるかに迅速に研削および加工することができ、これは、油圧ロッドでの使用を含む多くの用途に有利である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の合金は、ハードバンディングまたは表面硬化層またはコーティングとして使用することができる。いくつかの実施形態では、合金は、層またはコーティングとして油圧ロッドに塗布することができる。いくつかの実施形態では、合金は、例えば、431ステンレス鋼の耐食性と同様に、高い耐食性を有することができる。これは、例えば、耐食性マトリックスのその場での形成、硬質相の制御された割合、および強靭な微細構造のうちの1つまたは複数によって達成することができる。したがって、本開示の実施形態は、腐食に耐性があり、高い耐摩耗性を有する鉄表面硬化合金であり得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、硬質層はホウ化物でありえる。なぜなら、ホウ素は、レーザークラッディングおよび超高速レーザークラッディングに固有の急速な冷却速度の下でも、ホウ化物相の沈殿を促進する鉄および鉄合金との固溶溶解度が非常に低いため、設計の観点から有益だからである。いくつかの実施形態では、処理中の沈殿およびマトリックス中の最小の保持炭素を確実にするために、強力な炭化物形成剤も存在し得る。これらの有益な相が存在することにより、有害な相を削減または排除できる。これらには、合金の靭性と延性を低下させる可能性のあるシグマ相やラーベス相などの金属間化合物相が含まれる。本開示の合金は、金属間化合物相の割合を具体的に最小化することができる。本開示で扱われる追加の考慮事項は、合金の液相線温度を制御することによる噴霧化による合金の製造可能性に関する。
【0053】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の合金は、2つの対照的な物理的挙動を有するコーティングを形成するように構成することができる。1)容易に機械加工できるコーティングの最終結果(例えば、クラッドコーティングのより速い研削/ホーニング時間)による硬度の低下、および2)高い耐摩耗性/耐摩耗性。一般的に硬度が低いと耐摩耗性が低くなる。しかしながら、本明細書に記載の合金の実施形態は、典型的な鉄ベースの材料よりも高い耐摩耗性を示しながら、低い硬度を維持することができる。本明細書に記載の他の有利な特徴には、耐亀裂性、ガス噴霧プロセスとの適合性、レーザーおよびPTA溶接との適合性、および耐食性が含まれ得る。
【0054】
本明細書に開示される合金は、例えば、ガス噴霧プロセスを使用して粉末形態に製造することができるが、そのプロセスは限定的ではなく、他のプロセスも同様に使用することができる。該粉末は、溶射、高速酸素燃料(「HVOF」)、高速空気燃料(「HVAF」)、プラズマスプレー、プラズマトランスファーアーク溶接(「PTA」)、レーザークラッディング、超高速レーザークラッディング(「EHLA」)など、特定の微細構造の特徴と性能特性を備えたコーティングを形成するためのさまざまな堆積プロセスで使用できる。
【0055】
本明細書に開示されるように、合金という用語は、中に開示される粉末を形成する化学組成、粉末自体、供給原料自体、ワイヤ、粉末を含むワイヤ、加熱によって形成される金属成分の組成、および/または粉末の堆積(たとえば、ハードバンディング層/表面硬化層)、または他の方法論、および金属部品を指しうる。
【0056】
いくつかの実施形態では、溶接用または別のプロセスの原料として使用するために、単線または芯線(粉末を含むシース)に製造された合金は、本明細書の特定の化学的性質によって説明され得る。たとえば、ワイヤは溶射に使用できる。さらに、以下に開示される組成物は、単一のワイヤまたは複数のワイヤの組合せ(2、3、4、または5本のワイヤなど)からのものであり得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、合金は、それらの組成範囲によって完全に特徴付けることができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、合金は、重量%で、以下を含むことができる。
Fe:バランス;
Cr:10-26(または約10-約26);
Nb+Ti+V:2-10(または約2-約10);
Mo:最大3(または最大約3);および
C:0.5-1.5(または約0.5-約1.5)。
【0059】
いくつかの実施形態では、上記の組成物はニッケルを含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、上記の組成物は、4重量%までのニッケルを含み得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、合金は、重量%で、以下を含むことができる。
Fe:バランス;
Cr:10-26(または約10-約26);
Nb+Ti+V:2-12(または約2-約12);
Mo:最大3(または最大約3);および
C:0.5-1.5(または約0.5-約1.5)。
【0061】
いくつかの実施形態では、上記の組成物はニッケルを含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、上記の組成物は、4重量%までのニッケルを含み得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、合金は、重量%で、以下を含むことができる。
Fe:バランス;
Cr:16-26(または約16-約26);
Ti:0.4-2.4(または約0.4-約2.4);
Mo:0.8-3.6(または約0.8-約3.6);
Nb:4-6(または約4-約6);および
C:0.6-1.2(または約0.6-約1.2)。
【0063】
いくつかの実施形態では、上記の組成物はニッケルを含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、上記の組成物は、1.2-1.6(または約1.2-約1.6)重量%のニッケルを含み得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、合金は、重量%で、以下を含むことができる。
Fe:バランス;
Cr:18-25(または約18-約25);
Ti:0.45-2.2(または約0.45-約2.2)
Mo:0.9-3.3(または約0.9-約3.3);
Nb:4.5-5.5(または約4.5-約5.5);および
C:0.7-1.1(または約0.7-約1.1)。
【0065】
いくつかの実施形態では、上記の組成物はニッケルを含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、上記の組成物は、1.35-1.65(または約1.35-約1.65)重量%のニッケルを含み得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、合金は、重量%で、以下を含むことができる。
Fe:バランス;
Cr:16-24(または約13.6-約20.4);
Mo:0.8-1.2(または約0.8-約1.2);
Ti:0.4-2.4(または約0.4-約2.4)
Nb:4-6(または約4-約6);および
C:0.8-1.2(または約0.8-約1.2)。
【0067】
いくつかの実施形態では、合金は、重量%で、以下を含むことができる。
Fe:バランス;
Cr:18-22(または約13.6-約20.4);
Mo:0.9-1.1(または約0.8-約1.2);
Ti:0.45-2.2(または約0.45-約2.4)
Nb:4.5-5.5(または約4-約6);および
C:0.9-1.1(または約0.8-約1.2)。
【0068】
いくつかの実施形態では、合金は、重量%で、以下を含むことができる。
Fe:バランス;
Cr:16-26(または約16-約26);
Mo:2-4(または約2-約4);
Ti:0.4-2.4(または約0.4-約2.4)
Nb:4-6(または約4-約6);
C:0.6-0.9(または約0.6-約0.9);および
B:0.3-0.5(または約0.3-約0.5)。
【0069】
いくつかの実施形態では、合金は、重量%で、以下を含むことができる。
Fe:バランス;
Cr:18-24(または約18-約24);
Mo:2.5-3.5(または約2.5-約3.5);
Ti:0.4-2.2(または約0.4-約2.2)
Nb:4.5-5.5(または約4.5-約5.5);
B:0.35-0.45(または約0.35-約0.45);および
C:0.65-0.85(または約0.65-約0.85)。
【0070】
いくつかの実施形態では、合金は、重量%で、以下を含むことができる。
Fe;
Cr:14-35(または約14-約35);
Mo+W:0-15(または約0-約15);および
B:0.2-2.8(または約0.2-約2.8)。
【0071】
いくつかの実施形態では、合金は、重量%で、以下を含むことができる。
Fe;
Cr:20-34(または約20-約34);
Mo+W:0-6(または約0-約6);
B:0.8-1.8(または約0.8-約1.8);および
Nb+Ti:1-4(または約1-約4)。
【0072】
いくつかの実施形態では、合金は、重量%で、以下を含むことができる。
Fe;
Cr:15-30(または約15-約30);
Mo+W:0-6(または約0-約6);
B:0.2-1.0(または約0.2-約1.0);
Nb+Ti:5-12(または約5-約12);および
C:0.4-1.4(または約0.4-約1.4)。
【0073】
いくつかの実施形態では、合金は、重量%で、以下を含むことができる。
Fe;
Cr:15-34(または約15-約34);
Mo+W:1-16(または約1-約16);
B:0.3-2.7(または約0.3-約2.7);
Nb+Ti:1-10(または約1-約10);および
C:0-1.2(または約0-約1.2)。
【0074】
いくつかの実施形態では、合金は、重量%で、以下を含むことができる。
Fe;
Cr:13.5-35(または約15-約34);
B+C:0.8-2(または約0.8-約2);および
Nb+Ti+V:0.5-8.5(または約0.5-8.5)。
【0075】
いくつかの実施形態では、合金は、重量%で、以下を含むことができる。
Fe;
Cr:13.6-34.8(または約13.6-約34.8);
B+C:0.8-1.92(または約0.8-約1.92);
Mo+W:0-2.4(または約0-約2.4);
Ni:0-1.6(または約0-約1.6);および
Nb+Ti+V:0.8-8.4(または約0.8-約8.4)。
【0076】
いくつかの実施形態では、合金は、重量%で、以下を含むことができる。
Fe;
C:0.8-1.2(または約0.8-約1.2);
B+C:0.8-1.68(または約0.8-約1.68);
Cr:13.6-24(または約13.6-約24);
Mo+W:0-2.4(または約0-約2.4);
Ni:0-1.6(または約0-約1.6);
Nb:4-6(または約4-約6);
Ti:1.6-2.4(または約1.6-約2.4);および
Nb+Ti+V:4-8.4(または約4-約8.4)。
【0077】
本明細書に開示される組成物のいずれにおいても、Mo+Wは1重量%より大きくてもよい(または約1重量%より大きくてもよい)。または3重量%より大きくてもよい(または約3重量%より大きくてもよい)。
【0078】
いくつかの実施形態では、より好ましくは、合金は、1.6から2.4(または約1.6から約2.4)の重量%でMo+Wを含むことができる。いくつかの実施形態では、合金は、1.6から2.4(または約1.6から約2.4)の重量%のMoを含むことができる。いくつかの実施形態では、合金は、0.8から1.2(または約0.8から約1.2)の重量%のCを含むことができる。いくつかの実施形態では、合金は、13.6から24(または約13.6から約24)の重量%のCrを含むことができる。いくつかの実施形態では、合金は、4から6(または約4から約6)の重量%のNbを含むことができる。いくつかの実施形態では、合金は、4から6(または約4から約6)のNb/C比を有する。いくつかの実施形態では、合金は、4.5から5.5(または約4.5から約5.5)のNb/C比を有する。
【0079】
上記実施形態のいずれにおいても、合金は、重量%で0.8から1.2(または約0.8から約1.2)のBを含むことができる。上記の実施形態のいずれにおいても、合金は、重量%で0.3から0.5(または約0.3から約0.5)のBを含むことができる。いくつかの実施形態では、合金は、重量%で1.6から2.4(または約1.6から約2.4)のTiを含むことができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、開示される組成物は、ワイヤ/粉末、コーティングまたは他の金属部品、あるいはその両方であり得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、開示された合金は、堆積後の基板での希釈によって変更された化学的性質を有する。いくつかの実施形態では、基質希釈は、0から50体積%の間であり得る。本開示の実施形態は、灰色の鋳鉄などの高レベルの炭素を有する基材による希釈を処理するように設計され得る。組成物については、基板中の炭素は、マトリックスのCr、Mo、および/またはW含有量を低下させる有害な相を形成し、腐食性能を低下させ、および/または合金の靭性または摩耗性能を低下させる相を形成しようとする。結果として、本開示の実施形態は、すべての場合において良好な特性を維持しながら、希釈せずに、低炭素鋼で希釈し、灰色鋳鉄などの高炭素鉄合金で希釈して機能することができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、合金は、重量%で1%未満の炭素(または約1%未満の炭素)を含むことができる。いくつかの実施形態では、合金は、重量%で、0.5%未満の炭素(または約0.5%未満の炭素)を含むことができる。いくつかの実施形態では、合金は、重量%で、0.25%未満の炭素(または約0.25%未満の炭素)を含むことができる。いくつかの実施形態では、合金は、重量%で、0.1%未満の炭素(または約0.1%未満の炭素)を含むことができる。
【0083】
規制、環境、および安全上の懸念のために、ニッケルはすべての摩耗面で制限され得る。本開示のいくつかの実施形態は、原料粉末のニッケル含有量を具体的に制限する。
【0084】
いくつかの実施形態では、合金は、5重量%未満のニッケル(または約5重量%未満のニッケル)を含むことができる。いくつかの実施形態では、合金は、2重量%未満のニッケル(または約2重量%未満のニッケル)を含むことができる。いくつかの実施形態では、合金は、1重量%未満のニッケル(または約1重量%未満のニッケル)を含むことができる。いくつかの実施形態では、合金は、0.5重量%未満のニッケル(または約0.5重量%未満のニッケル)を含むことができる。いくつかの実施形態では、合金は、0.2重量%未満のニッケル(または約0.2重量%未満のニッケル)を含むことができる。いくつかの実施形態では、合金は、0.15重量%未満のニッケル(または約0.15重量%未満のニッケル)を含むことができる。いくつかの実施形態では、合金は、0.1重量%未満のニッケル(または約0.1重量%未満のニッケル)を含むことができる。
【0085】
表1は、アーク溶融合金の化学的性質のいくつかの実施形態を示している。表2は、レーザークラッディングの化学的性質の実施形態を示している。
【表1】
【表2】
【0086】
いくつかの実施形態では、チタンは、Nbの増加またはVの含有によって還元することができる。例示的な組成は、Nb+Ti+V=11.4(または約11.4)であるFe:バランス、C:1、Cr:20、Mo:2、Nb:5、Ti:1.6、V:4.8(またはFe:バランス、C:約1、Cr:約20、Mo:約2、Nb:約5、Ti:約1.6、V:約4.8)である。
【表3】
【表4】
【0087】
本明細書に開示された合金は、上記の元素成分を合計100重量%まで組み込むことができる。いくつかの実施形態では、合金は、上記の名前の元素を含み得るか、限定され得るか、または本質的にその元素からなり得る。いくつかの実施形態では、合金は、2重量%(または約2重量%)以下、1重量%(または約1重量%)以下、0.5重量%(または約0.5重量%)以下、0.1重量%(または約0.1重量%)以下または0.01重量%(または約0.01重量%)以下、またはこれらの値のいずれかの範囲の不純物を含みうる。不純物は、製造プロセスへの導入を通じて、原料成分に含まれるために合金に含まれる可能性のある元素または組成物として理解することができる。いくつかの実施形態では、不純物は、Co、Mn、Mo、Ta、V、および/またはWであり得る。
【0088】
さらに、上記したすべての組成物において同定されたFe含有量は、上記の組成物のバランスであり得るか、あるいは、Feがバランスとして提供される場合、組成物のバランスは、Feおよび他の元素を含み得る。いくつかの実施形態では、バランスは本質的にFeからなり得、偶発的な不純物を含み得る。
【0089】
熱力学的基準
いくつかの実施形態では、合金は、それらの熱力学的基準によって完全に特徴付けることができる。
【0090】
合金の実施形態の硬度は、安定したフェライト相を設計することによって比較的低いレベルに維持することができる。ほとんどの鉄基合金では、オーステナイトは高温で出現する。十分に速い冷却速度で、オーステナイトはマルテンサイトに変化する。マルテンサイトは最も硬い金属鉄相であるため、ほとんどすべての表面硬化合金に存在する。しかし、十分に低い冷却速度が与えられれば、「マルテンサイト鋼」として分類される合金がフェライトを形成する可能性がある。典型的なレーザークラッディング条件は十分に速いので、マルテンサイトは通常多くの鉄合金で形成され、431ステンレス鋼がそれに関連する例です。フェライト構造は高温で熱力学的に安定しており、その安定性は低温にまで及ぶため、ここで説明する合金技術は、急速な冷却条件下でもマルテンサイトを形成しない。したがって、いくつかの実施形態では、合金は、硬質相を有するフェライトマトリックスのみを形成する。
【0091】
フェライト相の安定性の例を図1に示す。これは、本開示の合金の熱力学的計算を示している。この図は、特定の組成物の温度の関数として相モル分率をプロットしたものである。示されているように、フェライト相は合金の固相線温度のすぐ下の高温において90モル%で存在する。フェライト相は一貫して500Kのより低い温度まで70モル%を超えて存在する。一部のオーステナイト[104]とBCC Cr[105]もこの温度範囲で存在するが、相組成の大部分は温度ウィンドウ全体にわたってフェライトである。図1で、[101]は全温度範囲で安定したフェライト(BCC)マトリックスの形成を示し、[102]は約10%の体積分率でのNb/Ti炭化物硬質相の形成を示している。このような条件下では、鉄基合金でマルテンサイトを形成する傾向がある急速な冷却速度の溶接条件でも、合金はさまざまな溶接条件でフェライトを形成する。急速冷却条件を示すプロセスには、溶射、プラズマトランスファーアーク(PTA)溶接、レーザークラッディング、および超高速レーザークラッディング(EHLA)が含まれる。
【0092】
これと比較するため、油圧ロッド用途に使用される一般的な表面硬化合金である431ステンレス鋼の熱力学的プロファイルが図2に示されている。図1の合金とは対照的に、431ステンレス鋼は高温でデルタフェライト[201]を形成し、低温でオーステナイト[202]に遷移し、さらに冷却するとアルファフェライト[203]に戻る。431ステンレス鋼は、プロセスの冷却速度に応じて、フェライト、オーステナイト、マルテンサイト、またはいくつかの混合物を形成する。431ステンレス鋼は、一般に、表面硬化用途に高い硬度を提供する用途でマルテンサイトを形成することを目的としている。431ステンレス鋼は、制御された徐冷条件下または熱処理によってフェライト構造を形成するように作成できるが、PTA溶接などの関連する高速冷却プロセスでは、フェライト構造を形成しない。本開示の合金は、急速な冷却条件下でさえフェライトが形成されるという点で、フェライト形成挙動が異なる。この挙動は、そのようなプロセスを介して低硬度コーティングを形成することが望まれる場合に有利である。
【0093】
いくつかの実施形態では、固相線より低く500Kを超えるすべての温度で、フェライト相の割合は50(または約50)モル%以上である。いくつかの実施形態では、フェライト相の割合は、60(または約60)モル%以上である。いくつかの実施形態では、フェライト相の割合は、70(または約70)モル%以上である。参考までに、本開示の合金は、所定の温度ウィンドウ内で最低72.9モル%に達する。431ステンレス鋼はフェライトの最小4.47モル%に達する。
【0094】
いくつかの実施形態では、合金マトリックスは、1300Kで100%(または約100%)フェライト系であり得る。いくつかの実施形態では、合金マトリックスは、1300Kで95%を超える(または約95%を超える)フェライト系であり得る。いくつかの実施形態では、合金マトリックスは、1300Kで90%を超える(または約90%を超える)フェライト系であり得る。いくつかの実施形態では、合金マトリックスは、1300Kで80%を超える(または約80%を超える)フェライト系であり得る。このフェライト系マトリックスは、コーティングの微細構造で維持することができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、1000から1400K(または約1000から約1400K)の間に0モル%(または約0モル%)のFCCオーステナイトが存在し得る。いくつかの実施形態では、1000から1400K(または約1000から約1400K)の間に存在するFCCオーステナイトの最大モル分率は、5モル%未満(または約5モル%未満)である。いくつかの実施形態では、1000から1400K(または約1000から約1400K)の間に存在するFCCオーステナイトの最大モル分率は、10モル%未満(または約10モル%未満)である。いくつかの実施形態では、1000から1400K(または約1000から約1400K)の間に存在するFCCオーステナイトの最大モル分率は、15モル%未満(または約15モル%未満)である。
【0096】
本開示のいくつかの実施形態では、1300Kでの合金マトリックスの化学的性質は、図8に示されるシェフラー図のフェライト領域内にある。本開示のいくつかの実施形態では、1300Kでの合金マトリックスの化学的性質は、フェライト領域内にある。フェライトとマルテンサイトはシェフラー図のものである。本開示のいくつかの実施形態では、1300Kでの合金マトリックスの化学的性質は、オーステナイト、オーステナイトとマルテンサイト、またはシェフラー図のマルテンサイト領域にはない。
【0097】
本開示の合金の第2の特徴は、MCタイプの炭化物としても知られる一次FCC炭化物の形成である。このような炭化物は、硬度が低いにもかかわらず、用途に望まれる強化された耐摩耗性を提供することができる。図1に、FCC炭化物の熱力学的挙動を示す。ここでは、FCC炭化物は比較的高温で形成され[103]、最終的には本開示の合金で約10モル%で形成される。いつかの側面において、炭化物形成温度が高いことが有利であり得る。これにより、炭化物の形態が孤立した球状の形態を形成するようになる。かかる形態は耐摩耗性を提供しますが、コーティングの靭性を大幅に低下させることはない。ただし、合金が工業用ガス噴霧プロセスに適合しなくなるため、形成温度を高くし過ぎてはならない。噴霧化の困難を回避するためにそれを最小化しつつ、理想化された構造のために形成温度を最大化することのバランスは、発明の努力の過程を通して決定された。
【0098】
いくつかの実施形態では、一次炭化物形成温度は、1750Kから2100Kの間(または約1750Kから約2100Kの間)であり得る。いくつかの実施形態では、一次炭化物形成温度は、1850Kから2000Kの間(または約1850Kから約2000Kの間)であり得る。
【0099】
いくつかの実施形態では、1300Kでの一次炭化物モル分率の測定値は、5(または約5)モル%以上であり得る。いくつかの実施形態では、1300Kでの一次炭化物モル分率の測定値は、7.5(または約7.5)モル%以上であり得る。いくつかの実施形態では、1300Kでの一次炭化物モル分率の測定値は、10(または約10)モル%以上であり得る。参考までに、本開示の合金は9.6モル%の一次炭化物画分を形成し、形成温度は一次炭化物が2000Kである。431ステンレス鋼は一次炭化物を形成しない。
【0100】
いくつかの実施形態では、平衡または平衡に近い凝固条件下でのMC炭化物のモル分率は、1%から15%の間(または約1%から約15%の間)であり得る。いくつかの実施形態では、平衡または平衡に近い凝固条件下でのMC炭化物のモル分率は、1%から6%の間(または約1%から約6%の間)であり得る。いくつかの実施形態では、平衡または平衡に近い凝固条件下でのMC炭化物のモル分率は、5%から15%の間(または約5%から約15%の間)であり得る。いくつかの実施形態では、平衡または平衡に近い凝固条件下でのMC炭化物のモル分率は、7%から12%(または約7%から約12%)の間であり得る。
【0101】
本開示の合金の一次炭化物は、金属種としてNbおよびTiを含むことができる。Nb、Ti、V、またはそれらの任意の組合せでFCC一次炭化物を形成することが可能である。しかし、そのような金属種の比率は形成温度に影響を与える。したがって、いくつかの実施形態では、非常に高い形成温度を有する炭化ニオブを形成する代わりに、チタンなどの他のFCC炭化物形成剤を添加して、炭化物の形成温度を下げることができる。
【0102】
合金技術の熱力学的性質により、図3に示すように、一次炭化物[302]が埋め込まれたフェライト系マトリックス[301]を備えた有利な微細構造が得られる。図3は、本開示で後述するパラメータを使用した、本開示の合金のPTAコーティングを示している。エネルギー分散型分光法を使用して、特にクロム含有量に関心を持ってフェライトマトリックス自体の組成を測定した。Cr含有量はPTAコーティングで19重量%と測定された。高い耐食性を提供するために、フェライトマトリックス中に高いCr含有量を有することが一般に有利である。
【0103】
いくつかの実施形態では、フェライトマトリックスのCR含有量は、少なくとも12(または約12)重量%であり得る。いくつかの実施形態では、フェライトマトリックスのCR含有量は、少なくとも15(または約15)重量%であり得る。いくつかの実施形態では、フェライトマトリックスのCR含有量は、少なくとも19(または約19)重量%であり得る。フェライトマトリックスの含有量は合金のCr組成とは異なることが多く、Cr炭化物または他の相の形のCrは合金の耐食性を向上させないことに注意すべきである。
【0104】
鉄合金の腐食性能は、耐孔食性等価数(PREN)で予測することができる。この数値は、PREN=Cr+3.3*(Mo+0.5*W)+16*Nとして計算される。ここで、元素値は重量%である。ほとんどのフェライト系ステンレス鋼などの一般的な単相材料では、この数値がバルク合金組成に適用される。本開示の合金は複数の相を含むため、PREN数は、ホウ化物などの形成される他の相の組成を意図的に除外して、マトリックス相の平衡熱力学的条件に基づいて計算することができる。マトリックス相は、FCCまたはBCCの鉄に富む金属相として定義される。これにより、マトリックスのPREN値で、多相材料の相対的な腐食性能を正確に予測できる。本開示のいくつかの実施形態では、マトリックス相はBCCフェライトである。
【0105】
図4に示されるように、本開示の合金は、平衡凝固条件下で存在する唯一のマトリックス相であるBCC相の化学的性質に基づいて、1300Kで34.3として計算される[401]。図5に示される本開示の合金において、マトリックスPRENは、BCC相の化学的性質に基づいて、1300Kで27.0として計算される[501]。アーク溶解によって製造されたすべての合金と、平衡凝固条件下で1300Kで計算されたPRENについては、以下の表5を参照されたい。
【0106】
本開示のいくつかの実施形態では、1300KでのマトリックスPRENは、17より大きい(または約17より大きい)。本開示のいくつかの実施形態では、1300KでのマトリックスPRENは、20より大きい(または約20より大きい)。本開示のいくつかの実施形態では、1300KでのマトリックスPRENは、23より大きい(または約23より大きい)。本開示のいくつかの実施形態では、1300KでのマトリックスPRENは、25より大きい(または約25より大きい)。
【0107】
鉄合金の腐食性能を予測する別の方法は、クロム含有量によるものである。クロム含有量は、平衡凝固条件下でのマトリックス相について計算することができ、さらに表5に示されている。
【0108】
1300Kでのいくつかの実施形態では、マトリックスは、重量%で、13%を超える(または約13%を超える)クロムを含むことができる。1300Kでのいくつかの実施形態では、マトリックスは、重量%で、15%を超える(または約15%を超える)クロムを含むことができる。1300Kでのいくつかの実施形態では、マトリックスは、重量%で、17%を超える(または約17%を超える)クロムを含むことができる。1300Kでのいくつかの実施形態では、マトリックスは、重量%で、18%を超える(または約18%を超える)クロムを含むことができる。1300Kでのいくつかの実施形態では、マトリックスは、重量%で、20%を超える(または約20%を超える)クロムを含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書で論じられるクロムは、最終コーティングに含まれ得る。
【0109】
高Cr、Mo、および/またはWステンレス鋼における金属間化合物相の形成は、靭性および/または延性の低下と相関する金属間化合物相の高い割合をもたらす可能性がある。この合金は、溶射または他のプロセスによる堆積後に亀裂が最小限またはまったくないように構成されているため、脆化相の存在を最小限に抑えることが有利な場合がある。本開示において、金属間化合物相のモル分率は、すべてのカイ、シグマ、およびラーベス相の平衡凝固条件下での合計として定義される。ブレーキディスクなどの一部の適用にあたっては、極端なブレーキイベント中に表面が800Kに達する可能性があり、その結果、金属間化合物相が使用中に沈殿しないことが重要である。
【0110】
図4に示すように、本開示の合金において、800Kに存在する金属間化合物相は、シグマ相[402]およびラーベス相[403]であるため、800Kでの金属間化合物相の割合は、18.5%として計算される。図5は、本開示の合金には、ラーベス相[502]およびシグマ相[503]の両方が存在するため、計算されたモル分率の合計が8.6%であることを示している。
【0111】
800Kでのいくつかの実施形態では、合金は、モル分率で25%未満(または約25%未満)の金属間化合物相を含むことができる。800Kでのいくつかの実施形態では、合金は、モル分率で20%未満(または約20%未満)の金属間化合物相を含むことができる。800Kでのいくつかの実施形態では、合金は、モル分率で15%未満(または約15%未満)の金属間化合物相を含むことができる。800Kでのいくつかの実施形態では、合金は、モル分率で、10%未満(または約10%未満)の金属間化合物相を含むことができる。800Kでのいくつかの実施形態では、合金は、モル分率で8%未満(または約8%未満)の金属間化合物相を含むことができる。
【0112】
ホウ化物、炭化物、炭化ホウ素、酸化物、および窒化物などの硬質相の形成は、合金の耐摩耗性を改善することができる。特に周期的で急速な温度変化にさらされた場合、過度に耐摩耗性の値が高い硬質層の堆積後またはその使用中に合金の亀裂を引き起こす可能性がある硬質相の割合には実際的な制限がある。本開示における硬質相は、平衡凝固条件下でのすべてのホウ化物、炭化物、炭化ホウ素、酸化物、および/または窒化物の合計として計算することができる。
【0113】
本開示の合金において、1300Kには2つの硬質相、M相[405]およびMB相[404]があり、これらの硬質相の合計は、21.7モル%である。本開示の合金では、存在する硬質相はMB[504]およびMC炭化物(FCC_A1#2)[505]であるため、1300Kでの硬質相のモル分率は15.1%である。
【0114】
本開示のいくつかの実施形態では、平衡または平衡に近い凝固条件下での硬質相のモル分率は、7から35%(または約7から約35%)であり得る。本開示のいくつかの実施形態では、硬質相のモル分率は、7から25%(または約7から約25%)であり得る。本開示のいくつかの実施形態では、硬質相のモル分率は、10から22%(または約10から約22%)の間であり得る。本開示のいくつかの実施形態では、硬質相のモル分率は、7から22%(または約7から約22%)の間であり得る。
【0115】
いくつかの実施形態では、ホウ化物は、鉄中のホウ素の低い固溶溶解度のために有利に形成されることができ、これは、レーザークラッディングおよびEHLAプロセスに存在するものなどの急速冷却速度中の特定の相の沈殿を改善する。
【0116】
いくつかの実施形態では、硬質相は、ホウ化物のみ、またはホウ化物と炭化物の組み合わせであり得る。
【0117】
いくつかの実施形態では、平衡または平衡に近い凝固条件下でのホウ化物のモル分率は、2%から25%(または約2%から約25%)の間であり得る。いくつかの実施形態では、平衡または平衡に近い凝固条件下でのホウ化物のモル分率は、2%から10%(または約2%から約10%)の間であり得る。いくつかの実施形態では、平衡または平衡に近い凝固条件下でのホウ化物のモル分率は、2%から6%(または約2%から約6%)の間であり得る。いくつかの実施形態では、平衡または平衡に近い凝固条件下でのホウ化物のモル分率は、8%から24%(または約8%から約24%)であり得る。いくつかの実施形態では、平衡または平衡に近い凝固条件下でのホウ化物のモル分率は、8%から16%(または約8%から約16%)の間であり得る。いくつかの実施形態では、平衡または平衡に近い凝固条件下でのホウ化物のモル分率は、10%から22%(または約10%から約22%)の間であり得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、MがNbおよび/またはTiを含むMCタイプの炭化物は、それらの有利な低アスペクト比および孤立した形態のために有利に形成することができる。この形態は、他の炭化物および他の硬質相に存在する低共晶または共晶形態と比較して、比較的高い耐亀裂性を有する可能性がある。
【0119】
いくつかの実施形態では、平衡または平衡に近い凝固条件下でのMC炭化物のモル分率は、1%から15%の間(または約1%から約15%の間)であり得る。いくつかの実施形態では、平衡または平衡に近い凝固条件下でのMC炭化物のモル分率は、1%から6%の間(または約1%から約6%の間)であり得る。いくつかの実施形態では、平衡または平衡に近い凝固条件下でのMC炭化物のモル分率は、5%から15%の間(または約5%から約15%の間)であり得る。いくつかの実施形態では、平衡または平衡に近い凝固条件下でのMC炭化物のモル分率は、7%から12%(または約7%から約12%)の間であり得る。
【0120】
溶融および噴霧中の高温相の形成は、流動性を制限することによって合金の製造可能性を低下させる可能性がある。流動性が限られていると、溶融するために特別な装置が必要になる場合があり、噴霧の収率が低下する場合があり、および/または工業規模での生産が不可能になる場合がある。高い流動性を確保するために、平衡凝固条件下での液相線温度は、低い液相線温度が噴霧中の改善された流動性と相関するので制御することができる。
【0121】
液相線温度は、合金が100%液体である最低温度として熱力学的に定義される。本開示の合金では、液相線温度は1950K[506]であり、本開示の別の合金では、液相線温度は1650K[406]である。
【0122】
いくつかの実施形態では、合金の液相線温度は、2000K未満(または約2000K未満)であり得る。いくつかの実施形態では、合金の液相線温度は、1975K未満(または約1975K未満)であり得る。いくつかの実施形態では、合金の液相線温度は、1950K未満(または約1950K未満)であり得る。いくつかの実施形態では、合金の液相線温度は、1925K未満(または約1925K未満)であり得る。いくつかの実施形態では、合金の液相線温度は、1900K未満(または約1900K未満)であり得る。
【0123】
本開示のいくつかの実施形態では、フェライト系マトリックスを有することが有利であり得る。本開示の合金では、マトリックスは1300Kで100%フェライト(BCC)であり、組成物はシェフラー図のフェライトゾーン内にある。
【0124】
本開示のいくつかの実施形態では、合金マトリックスは、1300K(または約100%)で100%フェライト系であり得る。本開示のいくつかの実施形態では、合金マトリックスは、1300Kで95%を超えるフェライト系(または約95%を超える)であり得る。本開示のいくつかの実施形態では、合金マトリックスは、1300Kで90%を超える(または約90%を超える)フェライト系であり得る。本開示のいくつかの実施形態では、合金マトリックスは、1300Kで80%を超える(または約80%を超える)フェライト系であり得る。このフェライト系マトリックスは、コーティングの微細構造で維持することができる。
【0125】
いくつかの実施形態では、1000から1400K(または約1000から約1400K)の間に0モル%(または約0モル%)のFCCオーステナイトが存在し得る。いくつかの実施形態では、1000から1400K(または約1000から約1400K)の間に存在するFCCオーステナイトの最大モル分率は、5モル%未満(または約5モル%未満)である。いくつかの実施形態では、1000から1400K(または約1000から約1400K)の間に存在するFCCオーステナイトの最大モル分率は、10モル%未満(または約10モル%未満)である。いくつかの実施形態では、1000から1400K(または約1000から約1400K)の間に存在するFCCオーステナイトの最大モル分率は、15モル%未満(または約15モル%未満)である。
【0126】
本開示のいくつかの実施形態では、1300Kでの合金マトリックスの化学的性質は、図8に示されるシェフラー図のフェライト領域内にある。フェライトとマルテンサイトはシェフラー図のものである。本開示のいくつかの実施形態では、1300Kでの合金マトリックスの化学的性質は、オーステナイト、オーステナイトとマルテンサイト、またはシェフラー図のマルテンサイト領域にはない。
【表5】
【0127】
希釈後の熱力学的性質
本開示の合金が、灰色鋳鉄または球状黒鉛鋳鉄などの高レベルの炭素を含む基板上に堆積できる場合、オーバーレイにおける希釈および対応する炭素含有量の増加後、良好な特性を維持することが有利である可能性がある。フェライト構造は、オーステナイトがかじりを増加させ、および/またはマルテンサイトが亀裂および/または靭性の問題を提示する特定の用途において利点がある。本開示の特定の実施形態はまた、基板で希釈した後にフェライト構造を維持することを記載している。この基板は、軟鋼、HSLA鋼、鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄、白鉄、またはその他の鉄ベースの基板である可能性がある。
【0128】
いくつかの実施形態では、本開示の合金は、基板希釈からの0.15%(または約0.15%)未満または等しい炭素の添加後、1300Kで23(または約23)を超えるマトリックスPREN値、および1300Kで90%(または約90%)を超えるフェライトを有するマトリックスを有する。いくつかの実施形態では、本開示の合金は、基板希釈からの0.15%(または約0.15%)未満または等しい炭素の添加後、1300Kで20(または約20)を超えるマトリックスPREN値、および1300Kで90%(または約90%)を超えるフェライトを有するマトリックスを有する。
【0129】
いくつかの実施形態では、本開示の合金は、基板希釈からの0.20%(または約0.20%)以下の炭素の添加後、1300Kで23(または約23)を超えるマトリックスPREN値、および1300Kで90%(または約90%)を超えるフェライトを有するマトリックスを有する。いくつかの実施形態では、本開示の合金は、基板希釈からの0.20%(または約0.20%)未満または等しい炭素の添加後、1300Kで20(または約20)を超えるマトリックスPREN値、および1300Kで90%(または約90%)を超えるフェライトを有するマトリックスを有する。
【0130】
いくつかの実施形態では、本開示の合金は、基板希釈からの0.25%(または約0.25%)未満または等しい炭素の添加後、1300Kで23(または約23)を超えるマトリックスPREN値、および1300Kで90%(または約90%)を超えるフェライトを有するマトリックスを有する。いくつかの実施形態では、本開示の合金は、基板希釈からの0.25%(または約0.25%)未満または等しい炭素の添加後、1300Kで20(または約20)を超えるマトリックスPREN値、および1300Kで90%(または約90%)を超えるフェライトを有するマトリックスを有する。
【0131】
いくつかの実施形態では、本開示の合金は、基板希釈からの0.30%(または約0.30%)未満または等しい炭素の添加後、1300Kで23(または約23)を超えるマトリックスPREN値、および1300Kで90%(または約90%)を超えるフェライトを有するマトリックスを有する。いくつかの実施形態では、本開示の合金は、基板希釈からの0.30%(または約0.30%)未満または等しい炭素の添加後、1300Kで20(または約20)を超えるマトリックスPREN値、および1300Kで90%(または約90%)を超えるフェライトを有するマトリックスを有する。
【0132】
いくつかの実施形態では、本開示の合金は、基板希釈からの0.35%(または約0.35%)未満または等しい炭素の添加後、1300Kで20(または約20)を超えるマトリックスPREN値、および1300Kで90%(または約90%)を超えるフェライトを有するマトリックスを有する。いくつかの実施形態では、本開示の合金は、基板希釈からの0.35%(または約0.35%)未満または等しい炭素の添加後、1300Kで23(または約23)を超えるマトリックスPREN値、および1300Kで90%(または約90%)を超えるフェライトを有するマトリックスを有する。いくつかの実施形態では、本開示の合金は、基板希釈からの0.35%(または約0.35%)未満または等しい炭素の添加後、1300Kで17(または約17)を超えるマトリックスPREN値、および1300Kで90%(または約90%)を超えるフェライトを有するマトリックスを有する。
【0133】
本開示の合金が、灰色鋳鉄または球状黒鉛鋳鉄などの高レベルの炭素およびシリコンを含む基板上に堆積される場合、希釈後の良好な腐食特性およびオーバーレイにおける対応する炭素含有量の増加を維持することが有利である可能性がある。
【0134】
いくつかの実施形態では、本開示の合金は、基板希釈からの0.15%(または約0.15%)未満または等しい炭素の添加後、1300Kで23(または約23)を超えるマトリックスPREN値、および1300Kで90%(または約90%)を超えるフェライトを有するマトリックスを有する。いくつかの実施形態では、本開示の合金は、基板希釈からの0.15%(または約0.15%)未満または等しい炭素の添加後、1300Kで20(または約20)を超えるマトリックスPREN値、および1300Kで90%(または約90%)を超えるフェライトを有するマトリックスを有する。
【0135】
いくつかの実施形態では、本開示の合金は、基板希釈からの0.20%(または約0.20%)未満または等しい炭素の添加後、1300Kで23(または約23)を超えるマトリックスPREN値、および1300Kで90%(または約90%)を超えるフェライトを有するマトリックスを有する。いくつかの実施形態では、本開示の合金は、基板希釈からの0.20%(または約0.20%)未満または等しい炭素の添加後、1300Kで20(または約20)を超えるマトリックスPREN値、および1300Kで90%(または約90%)を超えるフェライトを有するマトリックスを有する。
【0136】
いくつかの実施形態では、本開示の合金は、基板希釈からの0.25%(または約0.25%未満または等しい炭素の添加後、1300Kで23(または約23)を超えるマトリックスPREN値、および1300Kで90%(または約90%)を超えるフェライトを有するマトリックスを有する。いくつかの実施形態では、本開示の合金は、基板希釈からの0.25%(または約0.25%)未満または等しい炭素の添加後、1300Kで20(または約20)を超えるマトリックスPREN値、および1300Kで90%(または約90%)を超えるフェライトを有するマトリックスを有する。
【0137】
いくつかの実施形態では、本開示の合金は、基板希釈からの0.30%(または約0.30%)未満または等しい炭素の添加後、1300Kで23(または約23)を超えるマトリックスPREN値、および1300Kで90%(または約90%)を超えるフェライトを有するマトリックスを有する。いくつかの実施形態では、本開示の合金は、基板希釈からの0.30%(または約0.30%)未満または等しい炭素の添加後、1300Kで20(または約20)を超えるマトリックスPREN値、および1300Kで90%(または約90%)を超えるフェライトを有するマトリックスを有する。
【0138】
いくつかの実施形態では、本開示の合金は、基板希釈からの0.35%(または約0.35%)未満または等しい炭素の添加後、1300Kで20(または約20)を超えるマトリックスPREN値、および1300Kで90%(または約90%)を超えるフェライトを有するマトリックスを有する。いくつかの実施形態では、本開示の合金は、基板希釈からの0.35%(または約0.35%)未満または等しい炭素の添加後、1300Kで23(または約23)を超えるマトリックスPREN値、および1300Kで90%(または約90%)を超えるフェライトを有するマトリックスを有する。いくつかの実施形態では、本開示の合金は、基板希釈からの0.35%(または約0.35%)未満または等しい炭素の添加後、1300Kで17(または約17)を超えるマトリックスPREN値、および1300Kで90%(または約90%)を超えるフェライトを有するマトリックスを有する。
【0139】
本開示のいくつかの実施形態では、高レベルのNbおよび/またはTiが合金中に存在することができる。本開示の合金がねずみ鋳鉄などの高炭素基板上に被覆されている場合、Nbおよび/またはTiは、基板での希釈を介して添加された炭素の一部に結合することができる。これにより、低炭素基板での同じレベルの希釈と比較して、MがNbおよび/またはTiを含むMC炭化物の割合が増加する可能性がある。このMC相の形成により、マトリックス中の炭素の重量%が減少し、フェライトの安定性が向上し、有益な特性が得られる。また、高炭素基板への堆積後にPRENを低下させるMやM23などのクロムを含む炭化物も抑制される。
【0140】
本開示のいくつかの実施形態では、ねずみ鋳鉄で希釈した後のモル分率MCは、低炭素鋼で希釈した同じ重量分率が与えられた場合に存在するであろうモル分率よりも高くなり得る。
【0141】
いくつかの実施形態では、1300KでのMおよびM23の合計のモル分率は、0%(または約0%)である。いくつかの実施形態では、1300KでのMおよびM23の合計のモル分率は、2%(または約2%)未満である。いくつかの実施形態では、1300KでのMとM23の合計のモル分率は、5%(または約5%)未満である。
【表6】
【0142】
微細構造および性能
本開示のいくつかの実施形態では、合金は、それらの微細構造的特徴によって完全に説明され得る。合金の実施形態の微細構造は、有利な材料特性を提供する。
【0143】
前述のとおり、開示された合金の実施形態の硬度は、比較的低いままであり得る。硬度は、ビッカース硬度、具体的にはHV0.3を使用して測定した。耐摩耗性は、ASTM G65手順Aを使用して測定された。PTA溶接を使用して、以下のパラメータを使用して本開示の合金を431 SSと比較し、厚さ約3mm、幅28mmの溶接ビードを得た。
電圧:28 V
アンペア数:120A
粉末供給:35g/min
トラバース速度:2.1インチ/分
プラズマガス:6 SCFH
キャリアガス:2.5 SCFH
シールドガス:24 SCFH
【0144】
同様の性能特性の同様の微細構造およびコーティングは、レーザークラッディングおよびEHLAを使用して生成することができる。
【表7】
【0145】
表7に示すとおり、本開示の合金の硬度は431 SSの硬度より低い。しかし、耐摩耗性は、本開示の合金の方が高い。
【0146】
いくつかの実施形態では、開示された合金の硬度は450(または約450)ビッカース以下である。いくつかの実施形態では、硬度は400(または約400)ビッカース以下である。いくつかの実施形態では、硬度は350(または約350)ビッカース以下である。これには、PTAコーティングなど、あらゆるタイプのコーティングを含めることができる。前述のように、硬度が低いとコーティングの被削性が向上する。
【0147】
いくつかの実施形態では、合金は、200(または約200)mm以下のASTM G65体積損失を有することができる。いくつかの実施形態では、合金は、150(または約150)mm以下のASTM G65体積損失を有することができる。いくつかの実施形態では、合金は、100(または約100)mm以下のASTM G65体積損失を有することができる。これには、PTAコーティングなど、あらゆるタイプのコーティングを含めることができる。
【0148】
特定のプロセスが開示を制限しないが、合金がPTA、レーザー、およびEHLAプロセスの下で溶接可能な亀裂がないことも有利である。本開示合金の合金は、PTAおよびレーザー条件下で亀裂のないオーバーレイを溶接する能力を実証した。
【0149】
ホウ化物、炭化物、炭化ホウ素、酸化物、および窒化物などの硬質相の形成は、合金の耐摩耗性を改善することができる。特に周期的で急速な温度変化にさらされた場合、過度に高い値が堆積後または使用中に合金の亀裂を引き起こす可能性がある硬質相の割合には実際的な制限がある。本開示における硬質相は、合金のアーク溶融サンプルで定量的金属組織学技術を使用して測定された、すべてのホウ化物、炭化物、炭化水素、酸化物、および窒化物の合計として計算することができる。
【0150】
具体的には、いくつかの実施形態では、合金は、マトリックス中にある量の一次炭化物を含み得る。いくつかの実施形態では、体積分率5(または約5)体積%の一次炭化物が、主にフェライトで構成されるマトリックスに埋め込むことができる。いくつかの実施形態では、体積分率7.5(または約7.5)体積%の一次炭化物が、主にフェライトで構成されるマトリックスに埋め込むことができる。いくつかの実施形態では、体積分率10(または約10)体積%の一次炭化物が、主にフェライトで構成されるマトリックスに埋め込むことができる。
【0151】
他の実施形態では、合金は、微細構造中にホウ化物を含み得る。図6-7に示すように、本開示の合金では、硬質相の体積分率は、すべてのホウ化物[301][302]の合計として23%として測定される。本開示の合金において、硬質相の体積分率は、ホウ化物[401]および炭化物[402]として14%として測定される。
【0152】
本開示のいくつかの実施形態では、すべての硬質相の体積分率は、5から35%(または約5から約35%)の間であり得る。本開示のいくつかの実施形態では、すべての硬質相の体積分率は、5から25%(または約5から約25%)であり得る。本開示のいくつかの実施形態では、すべての硬質相の体積分率は、7から25%(または約7から約25%)であり得る。本開示のいくつかの実施形態では、すべての硬質相の体積分率は、8から15%(または約8から約15%)であり得る。本開示のいくつかの実施形態では、すべての硬質相の体積分率は、10から25%(または約10から約25%)の間であり得る。
【0153】
マトリックス相のPRENは、合金の腐食性能の強力な予測因子である。PRENは、[Cr+3.3*Mo+0.5*W)+16*N]として計算される。ここで、元素値は重量%である。元素重量%は、走査型電子顕微鏡(SEM)でエネルギー分散型X線分光法(EDS)を使用して測定される。
【0154】
本開示の合金において、PRENは、EDSを介して36.3として測定されたマトリックス相[303]から計算される。
【0155】
いくつかの用途では、本開示に記載される合金は、耐食性を提供することを目的としたコーティングとして堆積させることができる。高塩化物含有水などの腐食性媒体が存在する場合、過度のコーティング多孔性により、腐食性媒体が基材に浸透する可能性がある。この浸透が発生した場合、基材の腐食は、表面の変色、オーバーレイ性能の低下、および/または基材からのコーティングの剥離につながる可能性がある。結果として、溶射または他の方法によって堆積されたコーティングの多孔性のパーセンテージを制御することが有利である可能性がある。気孔率は、ASTM E2109-01を介して測定されます。
【0156】
本開示のいくつかの実施形態では、記載された合金から形成されたコーティングは、3%(または約3%)未満の多孔度を有することができる。本開示のいくつかの実施形態では、記載された合金から形成されたコーティングは、2%(約2%)未満の多孔度を有することができる。本開示のいくつかの実施形態では、記載された合金から形成されたコーティングは、1.5%(または約1.5)未満の多孔度を有することができる。本開示のいくつかの実施形態では、記載された合金から形成されたコーティングは、1%(または約1%)未満の多孔度を有することができる。
【0157】
いくつかの実施形態では、0体積%(または約0体積%)のFCCオーステナイトが存在し得る。いくつかの実施形態では、FCCオーステナイトの最大体積分率は、5体積%未満(または約5体積%未満)である。いくつかの実施形態では、FCCオーステナイトの最大体積分率は、10体積%未満(または約10体積%未満)である。いくつかの実施形態では、FCCオーステナイトの最大体積分率は、15体積%未満(または約15体積%未満)である。
【0158】
いくつかの実施形態では、ホウ化物の体積分率は、2%から25%(または約2%から約25%)であり得る。いくつかの実施形態では、ホウ化物の体積分率は、2%から10%(または約2%から約10%)の間であり得る。いくつかの実施形態では、ホウ化物の体積分率は、2%から6%(または約2%から約6%)の間であり得る。いくつかの実施形態では、ホウ化物の体積分率は、8%から24%(または約8%から約24%)であり得る。いくつかの実施形態では、ホウ化物の体積分率は、8%から16%(または約8%から約16%)の間であり得る。いくつかの実施形態では、ホウ化物の体積分率は、10%から22%(または約10%から約22%)の間であり得る。
【0159】
いくつかの実施形態では、MC炭化物の体積分率は、1%から15%の間(または約1%から約15%の間)であり得る。いくつかの実施形態では、MC炭化物の体積分率は、1%から6%の間(または約1%から約6%の間)であり得る。いくつかの実施形態では、MC炭化物の体積分率は、5%から15%の間(または約5%から約15%の間)であり得る。いくつかの実施形態では、MC炭化物の体積分率は、7%から12%(または約7%から約12%)の間であり得る。
【0160】
いくつかの実施形態では、フェライト相分率は50(約50)体積%以上である。いくつかの実施形態では、フェライト相分率は60(約60)体積%以上である。いくつかの実施形態では、フェライト相分率は70(約70)体積%以上である。
【0161】
いくつかの実施形態では、合金マトリックスは100%フェライト系であり得る。本開示のいくつかの実施形態では、合金マトリックスは95%より多く(または約95%より多く)フェライト系であり得る。本開示のいくつかの実施形態では、合金マトリックスは90%より多く(または約90%より多く)フェライト系であり得る。本開示のいくつかの実施形態では、合金マトリックスは80%より多く(または約80%より多く)フェライト系であり得る。
【0162】
いくつかの実施形態では、マトリックスは、重量%で、13%より多く(または約13%より多く)クロムを含み得る。いくつかの実施形態では、マトリックスは、重量%で、15%より多く(または約15%より多く)クロムを含み得る。いくつかの実施形態では、マトリックスは、重量%で、17%より多く(または約17%より多く)クロムを含み得る。いくつかの実施形態では、マトリックスは、重量%で、18%より多く(または約18%より多く)クロムを含み得る。いくつかの実施形態では、マトリックスは、重量%で、20%より多く(または約20%より多く)クロムを含み得る。
【0163】
いくつかの実施形態では、合金は、体積%で、25%より少ない(または約25%より少ない)中間金属相を含み得る。いくつかの実施形態では、合金は、体積%で、20%より少ない(または約20%より少ない)中間金属相を含み得る。いくつかの実施形態では、合金は、体積%で、15%より少ない(または約15%より少ない)中間金属相を含み得る。いくつかの実施形態では、合金は、体積%で、10%より少ない(または約10%より少ない)中間金属相を含み得る。いくつかの実施形態では、合金は、体積%で、8%より少ない(または約8%より少ない)中間金属相を含み得る。
実施例
実施例1:
【0164】
本開示の合金は、表7に示すパラメータを用いて従来のレーザークラッディング工程によって堆積される。
【表8】
【0165】
堆積されたコーティングは、そこから、EDS化学分析用に断面化され、取り付けられ、そして、研磨される。コーティングのマトリックス上でEDSによって行われた5つの測定値を使用して、コーティングのマトリックス中のCrとMoの平均含有量を表9に示す。
【表9】
【0166】
最後に、コーティングの微小硬度は、300gfのビッカース硬度測定を使用して測定された。サンプル全体で平均10回の測定を行った後、合金の硬度は283HV300であった。
実施例2:
【0167】
本開示の合金は、従来のレーザークラッディング工程によって堆積され、約25mm×75mmおよび3mmの厚さのコーティングを生成した。コーティングはASTM G65Aテストにかけられ、92.3mmの体積損失が発生した。さらに、コーティングは、微小硬度試験のために断面化され、取り付けられ、そして、研磨された。コーティングの微小硬度は、300gの力でビッカース硬度を使用して行われた。サンプル全体で10回の測定を利用した後、合金の硬度は270HV300であった。比較すると、420ステンレス鋼のコーティングは従来のレーザークラッディングによって堆積された。コーティングのASTM G65A耐摩耗性は136.9mmであったが、コーティングの微小硬度は、平均10回の測定後に570HV300と測定された。
【表10】
実施例3:
【0168】
本開示の合金は、従来の材料である431ステンレス鋼とともに、従来のレーザークラッディングプロセスによって堆積され、約3mmの厚さのコーティングを生成した。ASTM G65、G77、およびビッカース微小硬度が実施された。
【表11】
用途
【0169】
この特許に記載されている合金は、さまざまな用途や産業に適用できる。使用の用途のいくつかの非限定的な例は以下を含む。
【0170】
露天掘り用途には、以下に列挙する構成要素および以下の構成要素のためのコーティングが含まれる。スラリーパイプライン用の耐摩耗性スリーブおよび/または耐摩耗性表面仕上げ、ポンプハウジングまたはインペラを含む泥ポンプ部品または泥ポンプ部品用の表面仕上げ、または以下を含む鉱石供給シュート部品。シュートブロックまたはシュートブロックの表面硬化、ロータリーブレーカースクリーン、バナナスクリーン、シェーカースクリーンを含むがこれらに限定されない分離スクリーン、自生粉砕機および半自生粉砕機用のライナー、地面係合ツールおよび歯、および地面係合ツール用の表面硬化および歯、シュラウドとアダプター、バケツとダンプトラックライナー用のウェアプレートとロックボックス、マイニングショベルのヒールブロック用のヒールブロックとハードフェーシング、グレーダーブレードとグレーダーブレード用のハードフェーシング、スタッカー再生装置、サイザークラッシャー、ジョークラッシャー、リッパー歯、カッティングエッジ、マイニングコンポーネントおよびその他の粉砕コンポーネント用の一般的な摩耗パッケージ。
【0171】
下流の石油およびガス用途には、以下に列挙する構成要素および以下の構成要素のコーティングが含まれる。ダウンホールケーシングおよびダウンホールケーシング、ドリルパイプおよびハードバンディングを含むドリルパイプのコーティング、泥管理コンポーネント、泥モーター、フラッキングポンプスリーブ、フラッキングインペラー、フラッキングブレンダーポンプ、ストップカラー、ドリルビットおよびドリルビットコンポーネント、方向性掘削装置およびスタビライザーおよびセントラライザーを含む方向性掘削装置用コーティング、噴出防止装置および噴出防止装置および噴出防止装置コンポーネント(せん断ラム、石油国の管状製品を含む)石油国の管状製品、吸盤ロッドとカップリング、リフトプランジャー、ニーフォーローター、人工リフトケーシング、ESPポンプハウジングとインペラ、フローラインと海中フローラインのコーティング。
【0172】
上流の石油およびガス用途には、以下に列挙する構成要素および以下の構成要素のコーティングが含まれる。蒸気発生装置、アミン容器、蒸留塔、サイクロン、接触分解装置、一般精製配管、断熱保護下の腐食を含むプロセス容器およびプロセス容器のコーティング、硫黄回収ユニット、対流フード、サワーストリッパーライン、スクラバー、炭化水素ドラム、およびその他の製油所設備および容器。
【0173】
パルプおよび紙用途には、以下に列挙する構成要素および以下の構成要素のためのコーティングが含まれる。ヤンキー乾燥機を含む抄紙機で使用されるロール、空気乾燥機、および他の乾燥機、カレンダーロール、マシンロール、プレスロール、巻き取りロール、蒸解缶、パルプミキサー、パルパー、ポンプ、ボイラー、シュレッダー、ティッシュマシン、ロールおよびベールハンドリングマシン、デフレクターブレード、ドクターブレード、エバポレーター、パルプミル、ヘッドボックス、ワイヤーパーツ、プレスパーツ、MGなどのファイバーガイダンスシステムシリンダー、法王リール、ワインダー、真空ポンプ、デフレーカー、およびその他の紙パルプ機器。
【0174】
発電用途には、以下に列挙する構成要素および以下の構成要素のためのコーティングが含まれる。ボイラー管、沈殿装置、火室、タービン、発電機、冷却塔、復水器、シュートおよびトラフ、オージェ、バッグハウス、ダクト、IDファン、石炭配管、およびその他の発電コンポーネント。
【0175】
農業用途には、以下に列挙する構成要素および以下の構成要素のためのコーティングが含まれる。シュート、ベースカッターブレード、サトウキビ収穫ナイフ、ハンマー、トラフ、一次ファンブレード、二次ファンブレード、オージェ、鉱業用途に共通の構成要素、および他の農業用途。
【0176】
建設用途には、以下に列挙する構成要素および以下の構成要素のためのコーティングが含まれる。セメントシュート、セメント配管、バッグハウス、混合装置および他の建設用途。
【0177】
機械要素の用途には、以下に列挙する構成要素および以下の構成要素のためのコーティングが含まれる。シャフトジャーナル、油圧シリンダー、紙ロール、ギアボックス、駆動ローラー、インペラ、エンジンデッキ、プロペラシャフトおよび他のシャフトの再構築、一般的な再生および寸法復元。鋳鉄、特に灰色の鋳鉄およびダクタイル鋳鉄部品の修復を含む用途、およびその他の機械要素の用途。
【0178】
鉄鋼用途には、以下の構成要素および以下の構成要素のためのコーティングが含まれる。冷間圧延機、熱間圧延機、線材ミル、亜鉛めっきライン、連続酸洗ライン、連続鋳造ロールおよび他の製鉄所ロール、および他の鉄鋼用途。
【0179】
自動車用途には、以下に列挙する弁および弁座、シリンダーおよび内燃機関の他の構成要素、ブレーキディスクおよびパッドのためのコーティングが含まれる。この特許に記載されている合金は、さまざまな技術で効果的に製造および/または堆積させることができる。プロセスのいくつかの非限定的な例は次のとおりである。
【0180】
溶射工程には、ツインワイヤーアーク溶射、高速アーク溶射、燃焼溶射などのワイヤーを原料とするもの、高速酸素燃料、高速空気溶射、プラズマ溶射、爆縮ガン溶射、コールドスプレーなどの粉体を原料とするものなどがある。ワイヤ原料は、金属コアワイヤ、単線、またはフラックスコアワイヤの形をとることができる。粉末原料は、単一の均質な合金または複数の合金粉末の組み合わせのいずれかであり、一緒に溶融したときに所望の化学的性質をもたらす。
【0181】
溶接工程は、金属不活性ガス(MIG)溶接、タングステン不活性ガス(TIG)溶接、アーク溶接、サブマージアーク溶接、オープンアーク溶接、バルク溶接、レーザークラッディングなどワイヤーを原料とするものなどがあるが、これに限定されるものでなく、レーザークラッディング、超高速レーザークラッディング(EHLA)、プラズマトランスファーアーク溶接など粉体を原料とするものなどがあるが、これに限定されるものでない。ワイヤ原料は、金属コアワイヤ、単線、またはフラックスコアワイヤの形をとることができます。粉末原料は、単一の均質な合金または複数の合金粉末の組み合わせのいずれかであり、一緒に溶融したときに所望の化学的性質をもたらす。
【0182】
鋳鉄製造に代表される鋳造工程は、砂型鋳造、永久鋳造、チル鋳造、インベストメント鋳造、ロストフォーム鋳造、ダイカスト、遠心鋳造、ガラス鋳造、スリップ鋳造などを含むがこれに限定されず、また、連続鋳造工程を含む溶製鋼製品の代表的な製造工程を含む。
【0183】
後処理工程は、圧延、鍛造、浸炭、窒化、浸炭窒化などの表面処理を含むがこれに限定されず、オーステナイト化、焼きならし、焼鈍、応力除去、焼戻し、時効化、焼入れ、低温処理、火炎焼入れ、高周波焼入れ、差動焼入れ、ケース焼入れ、脱炭、機械加工、研削、冷間加工、加工硬化、溶接等の熱処理を含むが、これに限定されない。
【0184】
前述の説明から、本発明のフェライト系合金および使用方法が開示されることが理解されよう。いくつかの構成要素、技術および態様がある程度の特殊性で説明されてきたが、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書で上記に説明した特定の設計、構造および方法論に多くの変更を加えることができることは明らかである。
【0185】
別個の実装の文脈で本開示に記載されている特定の特徴はまた、単一の実装において組み合わせて実装され得る。逆に、単一の実装のコンテキストで説明されているさまざまな特徴は、複数の実装で個別に、または任意の適切なサブコンビネーションで実装することもできる。さらに、特徴は特定の組み合わせで作用するものとして上で説明され得るが、特許請求の範囲としてクレームされた組み合わせからの1つまたは複数の特徴は、場合によっては、組み合わせから切り出され得、組み合わせは、任意のサブコンビネーションまたは任意のサブコンビネーションの変形としてクレームされ得る。
【0186】
さらに、方法は、特定の順序で図面または明細書に記載され得るが、そのような方法は、示される特定の順序または連続した順序で実行される必要はなく、望ましい結果を得るためにすべての方法が実行される必要はない。図示または説明されていない他の方法は、例示的な方法およびプロセスに組み込むことができる。例えば、1つまたは複数の追加の方法は、記載された方法のいずれかの前、後、同時に、またはそれらの間で実行することができる。さらに、方法は、他の実装で再配置または並べ替えることができる。また、上記の実装における様々なシステムコンポーネントの分離は、すべての実装においてそのような分離を必要とするものとして理解されるべきではなく、説明されたコンポーネントおよびシステムは、一般に、単一の製品に一緒に統合されるか、または複数の製品にパッケージ化され得ると理解されるべきである。さらに、他の実装はこの開示の範囲内にある。
【0187】
「できる」、「あり得る」、「可能性がある」、または「てもよい」などの条件付き文言は、特にそれと異なる内容が明示されない限り、または使用される文脈内で他の方法で理解されない限り、一般に、特定の実施形態が含むまたは行うことを伝えるものであり、特定の特徴、要素、および/またはステップを含まないことを意図する。したがって、そのような条件付き文言は、一般に、特徴、要素、および/またはステップが1つまたは複数の実施形態に何らかの形で必要とされることを意味することを意図するものでは、ない。
【0188】
「X、Y、およびZの少なくとも1つ」という句などの接続詞は、特にそれと異なる内容が明示されない限り、項目、用語などがいずれかであり得ることを伝えるために一般的に使用される文脈で別の方法で理解される。したがって、そのような接続詞は、一般に、特定の実施形態が、少なくとも1つのX、少なくとも1つのY、および少なくとも1つのZの存在を必要とすることを意味することを意図するものでは、ない。
【0189】
本明細書で使用される「ほぼ」、「約」、「一般的に」、および「実質的に」という用語などの本明細書で使用される程度の文言は、記載された値、量、または特性に近い値、量、または特性を表し、目的の機能を実行するか、目的の結果を達成するものを表す。たとえば、「ほぼ」、「約」、「一般的に」、および「実質的に」という用語は、記載された数量から10%未満以内、5%未満以内、1%未満以内、0.1%未満以内、0.01%未満以内であり得る。記載された量が0の場合(たとえば、ない、有しない)、上記の範囲は特定の範囲であり、その値の特定の%以内ではない。例えば、記載された数量の10重量/体積%未満以内、5重量/体積%未満以内、1重量/体積%未満以内、0.1重量/体積%未満以内、0.01重量/体積%未満以内でありうる。さらに、本開示内の表のすべての値は、記載された値であるか、あるいは、約記載された値であると理解される。
【0190】
様々な実施形態に関連する任意の特定の特徴、態様、方法、特性、品質、属性、要素などの本明細書の開示は、本明細書に記載の他のすべての実施形態で使用することができる。さらに、本明細書に記載の任意の方法は、列挙されたステップを実行するのに適した任意のデバイスを使用して実施され得ることが認識されるであろう。
【0191】
いくつかの実施形態およびその変形例が詳細に説明されてきたが、それを使用する他の修正および方法は、当業者には明らかであろう。したがって、本明細書の独自の発明の開示または特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な用途、修正、材料、および置換を同等物で行うことができることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2021-10-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Feと、
約10-約26重量%のCrと、
約2-約12重量%のNb+Ti+Vと、
約0.5-約1.5重量%のCと、
を含み、
熱力学的平衡条件下で、固相線より低くかつ500Kより高いすべての温度において、約50モル%以上の総フェライト相モル分率を有することを特徴とするクラッド原料。
【請求項2】
約2-約10重量%のNb+Ti+Vを含む請求項1に記載のクラッド原料。
【請求項3】
前記クラッド原料が、
Feと、
約16-約26重量%のCrと、
約0.4-約2.4重量%のTiと、
0.8-3.6重量%のMoと、
約4-約6重量%のNbと、
約0.6-約1.2重量%のCと、
を含み、
好ましくは、前記クラッド原料が、
Feと、
約18-約25重量%のCrと、
約0.45-約2.2重量%のTiと、
0.9-3.3重量%のMoと、
約4.5-約5.5重量%のNbと、
約0.7-約1.1重量%のCと、
を含む請求項1または2に記載のクラッド原料。
【請求項4】
さらに約0.3-約0.5重量%のBを含む請求項1-のいずれか1項に記載のクラッド原料。
【請求項5】
前記総フェライト相モル分率が、固相線より低くかつ500Kより高いすべての温度において、約60モル%以上であり、好ましくは、前記総フェライト相モル分率が、固相線より低くかつ500Kより高いすべての温度において、約70モル%以上であり、より好ましくは、前記原料が熱力学的平衡条件下で、固相線温度のすぐ下の高温において約90モル%以上の総フェライト相モル分率を有することを特徴とする請求項1-4のいずれか1項に記載のクラッド原料
【請求項6】
前記クラッド原料が、熱力学的平衡条件下で、約1750Kと約2100Kの間に一次炭化物形成温度を有し、好ましくは、前記一次炭化物形成温度が約1850Kと約2000Kの間にあることを特徴とする請求項1-5のいずれか1項に記載のクラッド原料
【請求項7】
前記クラッド原料が、熱力学的平衡条件下で、1300Kにおいて総一次炭化物モル分率が約5モル%以上であり、好ましくは、1300Kにおいて総一次炭化物モル分率が約7.5モル%以上であり、より好ましくは、1300Kにおいて総一次炭化物モル分率が約10モル%以上であることを特徴とする請求項1-6のいずれか1項に記載のクラッド原料。
【請求項8】
請求項1-のいずれか1項に記載のクラッド原料から形成されるコーティング。
【請求項9】
フェライトマトリックスと、
前記フェライトマトリックスの中に埋め込まれている複数の一次炭化物と、
を含む請求項に記載のコーティング。
【請求項10】
前記複数の一次炭化物が、Nb、TiおよびVの少なくともいずれか1つを含む請求項に記載のコーティング。
【請求項11】
前記複数の一次炭化物が、孤立した球状の形態を含む請求項または10に記載のコーティング。
【請求項12】
前記コーティングが、少なくとも約5体積%の総一次炭化物体積分率を有し、好ましくは、前記総一次炭化物体積分率が少なくとも約7.5体積%、より好ましくは、前記総一次炭化物体積分率が少なくとも約10体積%である請求項8-11のいずれか1項に記載のコーティング
【請求項13】
前記コーティングが前記フェライトマトリックスの少なくとも約12重量%のCr含有量を有し、好ましくは、少なくとも前記フェライトマトリックスの約15重量%のCr含有量を有し、より好ましくは、前記フェライトマトリックスの少なくとも約19重量%のCr含有量を有する請求項8-12のいずれか1項に記載のコーティング
【請求項14】
前記コーティングが、約450HV0.3以下の硬度を有し、好ましくは、前記硬度は、約400HV0.3以下であり、より好ましくは、前記硬度は約350HV0.3以下である請求項8-13のいずれか1項に記載のコーティング
【請求項15】
前記コーティングが、ASTM G65手順Aの体積損失が約200mm以下であり、好ましくは、ASTM G65手順Aの体積損失が約150mm 以下であり、より好ましくは、ASTM G65手順Aの体積損失が約100mm 以下である請求項8-14のいずれか1項に記載のコーティング
【請求項16】
前記コーティングが、堆積工程を通じて形成されるように構成されており、好ましくは、前記コーティングが溶射、プラズマトランスファーアーク溶接、レーザークラッディング、および超高速レーザークラッディングからなる群から選択されるプロセスによって形成されるように構成されている請求項8-15のいずれか1項に記載のコーティング
【請求項17】
請求項1-のいずれか1項に記載の前記クラッド原料をコーティングに適用する方法。
【請求項18】
前記クラッド原料が粉末であるか、前記クラッド原料が1本以上のワイヤである請求項1-のいずれか1項に記載の原料。
【請求項19】
熱力学的平衡条件下で、
フェライトマトリックスが少なくとも約12重量%のCrを含み、
および、液体から析出する硬質相のモル分率が約5%以上あるクラッド原料。
【請求項20】
前記硬質相は、炭化物、より好ましくはFCC炭化物、ホウ化物、またはホウ化物及び炭化物の両方を含む請求項19に記載のクラッド原料
【国際調査報告】