(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(54)【発明の名称】芳香または香味組成物の最適化
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6897 20180101AFI20220908BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
C12Q1/6897 Z
C12Q1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577275
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(85)【翻訳文提出日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 US2020039352
(87)【国際公開番号】W WO2020263973
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521564168
【氏名又は名称】アロマイクス・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】シルバーマン,ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】モンカーダ,モーガン・ズィー
(72)【発明者】
【氏名】ハリエス,ウィリアム・イー・シー
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ13
4B063QR41
4B063QS28
4B063QX02
(57)【要約】
本出願は、年齢制限製品と共に使用するための匂い物質組成物の濃度を決定するための方法に関する。本方法は、一般に、香味および匂いを最適化して特定の年齢群にアピールするために、または特定の年齢群による使用を思いとどまらせるために使用され得る、匂いまたは香味プロファイルを作成することを含む。場合によっては、匂い物質組成物は、それらが年齢群によって異なって知覚されるかどうかを決定するために、スクリーニングされ得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを含む、製品と共に使用するための匂い物質組成物の濃度を決定するための方法:
匂い物質組成物を結合する1つ以上の嗅覚受容体を同定するステップであって、ここで、該匂い物質組成物は少なくとも2つの年齢群によって異なって知覚され、また、該同定が、
1つ以上の嗅覚受容体を複数の匂い物質濃度で匂い物質組成物に曝露し、1つ以上の嗅覚受容体が、匂い物質組成物が1つ以上の嗅覚受容体に結合すると信号を生成するレポーターに連結されること;および
生成された信号を測定することにより、各匂い物質濃度での匂い物質組成物への1つ以上の嗅覚受容体の結合を検出すること;
によって実行される、上記ステップ;
1つ以上の嗅覚受容体に対して約10%~約90%の最大結合反応をもたらす匂い物質組成物の濃度(約EC
10濃度~約EC
90濃度)を決定することにより、年齢関連性の匂いまたは香味プロファイルを作成するステップ;および
少なくとも2つの年齢群のうちの1つにおいて所望の効果を生じさせる濃度で、製品中に匂い物質組成物を含めるステップ。
【請求項2】
EC
90濃度で匂い物質組成物が、少なくとも2つの年齢群のうちの1つにより製品中に使用するように指定されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも2つの年齢群が、子供または青年を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも2つの年齢群が、成人を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
匂い物質組成物が、1種以上の匂い物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
1種以上の匂い物質が、メントール、ミント、バナナ、タマネギ、またはバラを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
匂い物質組成物が、メントールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
1つ以上の嗅覚受容体が、OR51E1、OR8K3、OR2W1、OR2J2、OR11H7P、OR5P3、またはOR1G1である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
1つ以上の嗅覚受容体が、OR52D1またはOR1G1である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
製品が年齢制限製品である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
年齢制限製品が、アルコール、大麻、ニコチン、またはタバコを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
1つ以上の嗅覚受容体が、生細胞アッセイの一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
1つ以上の嗅覚受容体が、宿主細胞の膜画分中に提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
1つ以上の嗅覚受容体が、リポソーム中に提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
子供または青年による年齢制限製品の使用を妨げるための方法であって、
請求項1に記載の1つ以上の嗅覚受容体による複数の濃度で匂い物質組成物の結合を検出するステップであり、匂い物質組成物がメントールを含むステップと、
子供および青年による年齢制限製品の使用を妨げるために、EC
80濃度~EC
90濃度の範囲の濃度で年齢制限製品に匂い物質組成物を含めるステップと
を含む、上記方法。
【請求項16】
匂い物質組成物が、EC
80濃度で年齢制限製品に含まれる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
匂い物質組成物が、EC
85濃度で年齢制限製品に含まれる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
匂い物質組成物が、EC
90濃度で年齢制限製品に含まれる、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
1つ以上の嗅覚受容体が、OR51E1、OR8K3、OR2W1、OR2J2、OR11H7P、OR5P3、またはOR1G1である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
年齢制限製品が、アルコール、大麻、ニコチン、またはタバコを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
1つ以上の嗅覚受容体が、生細胞アッセイの一部である、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
1つ以上の嗅覚受容体が、宿主細胞の膜画分中に提供される、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
1つ以上の嗅覚受容体が、リポソーム中に提供される、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本願は、少なくとも2つの年齢群によって異なって知覚される匂い物質組成物を結合することができる嗅覚受容体を同定するための方法に関する。同定された嗅覚受容体は、受容体刺激に対する匂い物質組成物の有効濃度範囲を決定する、年齢関連性の匂いまたは香味プロファイルを生成するために使用され得る。次に、匂いまたは香味プロファイルは、香味および匂いを最適化して特定の年齢群にアピールするために、または特定の年齢群による使用を思いとどまらせるために使用され得る。場合によっては、匂い物質組成物は、それらが年齢群によって異なって知覚されるかどうかを決定するために、スクリーニングされ得る。
【背景技術】
【0002】
[0002]匂い分子は、例えばアルコール、アルデヒド、ケトンおよびカルボン酸、硫黄含有化合物、ならびに精油を含む、様々な化学薬品クラスに属する。匂い物質組成物は、一般に、特定の知覚される匂いまたは味に関連する、1つまたは複数の対応する嗅覚受容体に結合する、匂い物質分子を含む。いくつかの科学的研究は、特定の嗅覚は人が年齢を重ねるにつれて減退し、成人が、子供または青年によって知覚される匂い物質分子の強さのレベルと比較して同じレベルの匂い物質分子の強さを知覚するには、より高い匂い物質分子濃度が必要とされ得ることを示してきた。この嗅覚能力の低下は、成人が加齢とともに特定の聴覚周波数に対する感受性を失うという現象に類似する場合がある。知覚の差は、嗅覚受容体の年齢関連性ダウンレギュレーション(downregulation)、または知覚神経経路に沿った他の干渉が原因であり得る。受容体のダウンレギュレーションは、パーキンソン病およびアルツハイマー病などの神経障害、または他の生理学的状態でも現れることがある。
【0003】
[0003]大麻産業は、飲料および食用カンナビノイドの変種を含む、新製品開発の大幅な増加を経験している。同様に、タバコ産業は、従来の先端に火をつけるタバコの健康への影響を未然に防ぐために、新しいベイプ(vape)放出(電子タバコ)製品の開発の増加を経験している。しかし、これらの新製品は、新製品は子供および青年にアピールするように設計されていると主張する批評家からかなりの反発を受けている。これまでのところ、味覚および嗅覚の年齢関連性の要素ならびにこれらの現象の根底をなす科学は十分に理解されていないため、上記の点に対する証明または反証は複雑な主張になっている。ほとんどの研究は、主観的な解釈に基づいているため信頼できない消費者調査またはフォーカスグループに焦点を当ててきた。
【0004】
[0004]したがって、特定の年齢群にアピールするように香味および匂いを設計し最適化すること、または逆に、魅力的ではなく、特定の年齢群による使用を思いとどまらせる香味および匂いを作成することは有用であろう。これらの設計された香味および匂いは、様々な消費者製品、例えば、アルコール、タバコ、または大麻などの年齢制限製品に含まれ得る。設計された匂いは、特定の年齢群に対して興味を引いたり魅力を高めたりするために、特定の環境においても使用され得る。
【発明の概要】
【0005】
[0005]本明細書では、少なくとも2つの年齢群によって異なって知覚される匂い物質組成物を結合することができる嗅覚受容体を同定するための方法が記載される。同定された嗅覚受容体は、受容体の刺激に対する匂い物質組成物の有効濃度範囲を決定する年齢関連性の匂いまたは香味プロファイルを生成するために使用され得る。次に、匂いまたは香味プロファイルは、香味および匂いを最適化して特定の年齢群にアピールするために、または特定の年齢群による使用を思いとどまらせるために使用され得る。場合によっては、匂い物質組成物は、それらが年齢群によって異なって知覚されるかどうかを決定するために、スクリーニングされ得る。
【0006】
[0006]匂い物質組成物は、特定の年齢群において所望の反応を誘発する濃度で、消費者製品または様々な環境に添加され得る。例えば、特定の濃度では、匂い物質組成物は、子供および青年による年齢制限製品の使用を妨げるように作用し得る。高濃度でメントールを含む匂い物質組成物は、この年齢群にとっての有用な抑止力となり得る。
【0007】
[0007]一般に、本明細書に記載の方法は、匂い物質組成物と共に嗅覚受容体をアッセイして、受容体の刺激に対する有効濃度範囲を決定するステップ、匂い物質組成物および/または年齢群の中から1つの年齢群により異なる知覚をもたらす対応する嗅覚受容体を同定するステップ、年齢群の中から1つの年齢群において優先的な反応を引き起こすように、匂い物質組成物を適切な濃度で消費者製品に添加するステップ、最終消費者製品との関係における標的反応に対する同定された受容体の刺激を再測定して、所望の活性レベルを確認するステップ、ならびに消費者製品混合物との干渉または相乗効果に基づいて匂い物質組成物の濃度を調整するステップ、のうちの1つまたは複数を含んでよい。
【0008】
[0008]製品と共に使用するための匂い物質組成物の濃度を決定するための方法は、1)少なくとも2つの年齢群によって異なって知覚される匂い物質組成物を結合する1つまたは複数の嗅覚受容体を同定するステップであり、a)1つまたは複数の嗅覚受容体を複数の匂い物質濃度で匂い物質組成物に曝露するサブステップであり、1つまたは複数の嗅覚受容体が、匂い物質組成物が1つまたは複数の嗅覚受容体に結合すると信号を生成するレポーターに連結される、サブステップ;およびb)生成された信号を測定することにより、各匂い物質濃度で匂い物質組成物への1つまたは複数の嗅覚受容体の結合を検出するサブステップによって実行される、ステップと、2)1つまたは複数の嗅覚受容体に対して約10%~約90%の最大結合反応をもたらす匂い物質組成物の濃度(約EC10濃度~約EC90濃度)を決定することにより、年齢関連性の匂いまたは香味プロファイルを作成するステップと、3)少なくとも2つの年齢群のうちの1つにおいて所望の効果を生じさせる濃度で、製品中に匂い物質組成物を含むステップとを含み得る。
【0009】
[0009]匂い物質組成物は、特定の年齢群において所望の効果を生じさせる濃度で、製品または環境に含まれ得る。例えば、成人向けに設計された匂い物質組成物は、EC10~EC90超の濃度で製品に含まれ、子供および青年において製品の使用を妨げる負の効果をもたらし得る。一般に年齢群によって異なって知覚される例示的な匂い物質組成物としては、メントール、ミント、バナナ、タマネギ、およびバラが挙げられる。
【0010】
[0010]1つまたは複数の嗅覚受容体が、酵母または哺乳動物細胞を使用する生細胞アッセイの一部になり得る。あるいは、嗅覚受容体は、宿主細胞の膜画分を使用するアッセイ中に提供されてよい。場合によっては、1つまたは複数の嗅覚受容体がリポソーム中に提供されてよい。
【0011】
[0011]子供または青年による年齢制限製品の使用を妨げるための方法もまた、本明細書に記載されている。これらの方法は、一般に、上記のように1つまたは複数の嗅覚受容体による複数の濃度で匂い物質組成物の結合を検出するステップ、および具体的には、匂い物質組成物中のメントールを、標的嗅覚受容体についてEC80~EC90超の範囲の濃度で使用するステップを含む。例示的な年齢制限製品として、アルコール、大麻、ニコチン、およびタバコが挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0012]本明細書では、少なくとも2つの年齢群によって異なって知覚される匂い物質組成物を結合することができる嗅覚受容体を同定するための方法が記載される。同定された嗅覚受容体は、特定の年齢関連性の匂いまたは香味プロファイルを生成する受容体刺激に対する匂い物質組成物の有効濃度範囲を決定するために使用され得る。次に、匂いまたは香味プロファイルは、香味および匂いを最適化して特定の年齢群にアピールするために、または特定の年齢群による使用を思いとどまらせるために使用され得る。場合によっては、匂い物質組成物は、それらが年齢群によって異なって知覚されるかどうかを決定するために、スクリーニングされ得る。
【0013】
[0013]年齢群に関して、知覚の差は、一般に、2つの異なる年齢群の人の間、例えば、年長者と若年者の間にあると理解されている。年長者は約30歳であり得、若年者は約10歳であり得る。場合によっては、年長者は約40歳であり得、若年者は約20歳であり得る。他の例では、年長者は約50歳であり得、若年者は約30歳であり得る。年齢群は、成人および子供を指す場合もある。成人とは、一般に、アルコール、タバコ、電子タバコ、および大麻などの年齢制限製品を消費するための法定年齢を超えている人のことである。米国において、成人は、一般に、タバコおよび電子タバコの使用については18歳以上の人、アルコールおよび大麻の使用については21歳以上の人を含む。世界の他の地域では、年齢制限製品の消費に関する法定年齢は、15歳~25歳以上の間で変わり得る。成人年齢群の部分集合は、約65歳以上の人を含む高齢者年齢群である。子供は一般に、年齢制限製品の消費に関する最低年齢(米国では18歳)未満の人であり得る。子供年齢群の部分集合は青年年齢群であり、一般に約10歳~17歳までの人を含む。
【0014】
[0014]異なって知覚される匂い物質組成物は、上記のように、所望の反応を最適化する濃度で年齢制限製品に含まれ得る。この匂い物質組成物は、アルコール、タバコ、電子タバコ、および大麻業界が成人の消費者をより的確にターゲットにし、子供を直接試験することなく年齢を区別する香味プロファイルを評価することを可能にするのに有用であり得る。年齢制限製品は、一般に、特定の年齢群による使用が法的に制限されている製品である。
【0015】
[0015]いくつかの変形形態では、異なって知覚される匂い物質組成物は、特定の年齢群に対して興味を引いたり魅力を高めたりするために、特定の環境において使用され得る。例えば、これらの組成物は、家庭内で使用されて、家庭内の成人または子供のいずれかに所望の反応を与えることができる。
【0016】
[0016]本明細書に記載の匂い物質組成物は、少なくとも1つの嗅覚受容体によって検出され得、知覚される匂いまたは香味に関連づけられている、1種以上の匂い物質分子を含む組成物であってよい。本明細書で使用される場合、「匂い物質分子」および「匂い物質」という用語は、同じ意味で用いられる。
【0017】
[0017]本明細書に記載の嗅覚受容体(「OR」)は、ヒト嗅覚受容体、非ヒト動物に見られる嗅覚受容体、微量アミン関連受容体、ボメロナサル(vomeronasal)受容体、ホルミルペプチド受容体、膜グアニリルシクラーゼ、サブタイプGC-D受容体、およびGタンパク質共役型味覚受容体であり得る。嗅覚受容体はまた、嗅覚受容体、微量アミン関連受容体、ボメロナサル受容体、ホルミルペプチド受容体、膜グアニリルシクラーゼ、サブタイプGC-D受容体、およびGタンパク質共役型味覚受容体から作製されたハイブリッド受容体でもあり得る。さらに、嗅覚受容体は、酵母もしくは哺乳動物細胞型に固有の嗅覚受容体およびシグナル伝達受容体タンパク質から作製されたハイブリッドもしくはキメラ受容体、またはコドン最適化嗅覚受容体もしくは指向性進化により遺伝子操作された嗅覚受容体であり得る。さらに、嗅覚受容体は、異所性嗅覚受容体および鼻腔内の嗅覚受容体を指す場合がある。
【0018】
[0018]いくつかの変形形態では、本明細書に記載の方法は、匂い物質組成物と共に嗅覚受容体をアッセイして、受容体の刺激に対する有効濃度範囲を決定するステップ、匂い物質組成物および/または年齢群の中から1つの年齢群により異なる知覚をもたらす対応する嗅覚受容体を同定するステップ、年齢群の中から1つの年齢群において優先的な反応を引き起こすように、匂い物質組成物を適切な濃度で消費者製品に添加するステップ、最終消費者製品との関係における標的反応に対する同定された受容体の刺激を再測定して、所望の活性レベルを確認するステップ、ならびに消費者製品混合物との干渉または相乗効果に基づいて匂い物質組成物の濃度を調整するステップ、のうちの1つまたは複数を含む。
【0019】
[0019]他の変形形態では、本明細書に記載の方法は、匂い物質組成物の年齢関連性の匂いまたは香味プロファイルを作成するために使用される。匂い物質組成物は、消費者製品、例えば年齢制限製品と共に様々な濃度で使用することができる。本明細書において、本方法は全体として、1)少なくとも2つの年齢群によって異なって知覚される匂い物質組成物を結合する1つまたは複数の嗅覚受容体を同定するステップであり、a)1つまたは複数の嗅覚受容体を複数の匂い物質濃度で匂い物質組成物に曝露するサブステップであり、1つまたは複数の嗅覚受容体が、匂い物質組成物が1つまたは複数の嗅覚受容体に結合すると信号を生成するレポーターに連結される、サブステップ;およびb)生成された信号を測定することにより、各匂い物質濃度で匂い物質組成物への1つまたは複数の嗅覚受容体の結合を検出するサブステップによって実行されるステップと、2)1つまたは複数の嗅覚受容体に対して約10%~約90%の最大結合反応をもたらす匂い物質組成物の濃度(約EC10濃度~約EC90濃度)を決定することにより、年齢関連性の匂いまたは香味プロファイルを作成するステップと、3)少なくとも2つの年齢群のうちの1つにおいて所望の効果を生じさせる濃度で、製品中に匂い物質組成物を含むステップとを含む。
【0020】
[0020]匂い物質組成物は、特定の年齢群において所望の効果を生じさせる濃度で、製品に含まれ得る。匂い物質組成物は、異なる年齢の人(例えば、年長者と若年者)の間で異なる効果を生じさせるために、用途および受容体-匂い物質の反応レベルなどの要因に応じて、約EC10~約EC90の濃度、約EC20~約EC90の濃度、約EC30~約EC90の濃度、約EC40~約EC90の濃度、約EC50~約EC90の濃度、約EC60~約EC90の濃度、約EC70~約EC90の濃度、約EC80~約EC90の濃度、またはEC90超の濃度で製品に含まれ得る。例えば、製品に含まれる匂い物質組成物の濃度は、子供および青年における製品の使用を妨げる負の効果を生じさせ得るが、成人では生じさせない場合がある。1つの年齢群では特異的効果、例えば負の効果を生じるが、別の年齢群ではそのような効果を生じない、製品に含まれ得る匂い物質組成物の濃度は、EC10、EC20、EC30、EC40、EC50、EC60、EC70、EC80、またはEC90の濃度であり得る。EC90超の濃度を使用することは、いくつかの用途において有用であり得る。
匂い物質組成物
[0021]本明細書に記載の匂い物質組成物は、1種以上の匂い物質を含む。匂い物質組成物は、任意の適切な形態を有し得、例えば、組成物は、液体、固体、半固体、または気体の形態であり得る。いくつかの変形形態では、匂い物質組成物は、少なくとも2つの年齢群によって異なって知覚されることが知られているが、それらの対応する嗅覚受容体が同定される必要がある。例えば、メントールを含む組成物は、一般に、子供および成人によって異なって知覚されることが知られているが、それらの対応する嗅覚受容体は、特異的な受容体活性化の有効濃度を決定するために同定を必要とする。特定の年齢群によって異なって知覚されることが知られている他の例示的な匂い物質としては、ミント、バナナ、タマネギ、およびバラが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
[0022]匂い物質組成物が少なくとも2つの年齢群によって異なって知覚されるかどうかを決定するために匂い物質組成物がスクリーニングされる変形形態において、異なって知覚される匂い物質としては、キャラメル、蜂蜜、バタースコッチ、バター、醤油、チョコレート、糖蜜、二酸化硫黄、エタノール、酢酸、酢酸エチル、焦げたマッチ、キャベツ、スカンク、ニンニク、メルカプタン、硫化水素、ディーゼル油、灯油、プラスチック、タール、カビ、コルク、マッシュルーム、ダスト、花の物質(例えば、ゼラニウム、スミレ、オレンジの花、およびラベンダー)、果物の物質(例えば、グレープフルーツ、レモン、ブラックベリー、ラズベリー、イチゴ、クロフサスグリ、サクランボ、アプリコット、モモ、リンゴ、パイナップル、メロン、バナナ、いちごジャム、干しぶどう、プルーン、イチジク、アントラニル酸メチル)、ハーブもしくは野菜(カットされた緑草(cut green grass)、ピーマン、ユーカリ、サヤインゲン、アスパラガス、グリーンオリーブ、ブラックオリーブ、アーティチョーク)、干し草、わら、お茶、タバコ、クルミ、ヘーゼルナッツ、アーモンド、シェリー酒、甘草、アニス、黒胡椒、チョウジ、コーヒー、ベーコン、オーク、杉、ならびにバニラの全体または構成成分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
[0023]嗅覚受容体を活性化(結合)する匂い物質組成物の能力を決定するためのスクリーニングは、試験匂い物質組成物の連続希釈の生成、1つまたは複数の受容体に対する各希釈溶液の試験、およびEC50の濃度の決定を含み得る。この情報から、匂い物質組成物は、希釈されていない混合物の受容体シグナル伝達が、活性化された受容体の少なくとも1つに対して、EC10~EC90超の濃度であるように設計され得る。
嗅覚受容体
[0024]任意の好適な嗅覚受容体が、本明細書に記載の方法で使用され得る。ほとんどの嗅覚受容体は、受容体が匂い物質によって活性化された後、シグナル伝達のためにGタンパク質と会合する、Gタンパク質共役型受容体である。嗅覚受容体の識別力は、嗅覚受容体が一緒になって、数百万の組合せにおいて数千の揮発性化学物質を結合することができ、それぞれが潜在的に異なる知覚を伴うというものである。嗅覚系は、匂い分子を解読するために、コンビナトリアル受容体コーティングスキーム(combinatorial receptor coding scheme)を使用することが知られている。1つの嗅覚受容体は複数の匂い物質を認識することが可能であり、1つの匂い物質は複数の嗅覚受容体によって認識されることが可能である。匂い物質のわずかな構造変化または環境中の匂い物質の濃度の変化も、年齢群による匂い物質の知覚の仕方の変化をもたらし得る。
【0023】
[0025]いくつかの変形形態では、嗅覚受容体は、ヒト嗅覚受容体などの哺乳動物の嗅覚受容体である。他の変形形態において、嗅覚受容体は、他の哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ヤギ、ブタ、およびクマに由来する。さらなる変形形態では、嗅覚受容体は、ハイブリッド嗅覚受容体である。
【0024】
[0026]本明細書に開示される方法において使用され得る、一塩基多型(SNP)変異体を含む、例示的なヒト嗅覚受容体としては、次の18の分類:OR1、OR2、OR3、OR4、OR5、OR6、OR7、OR8、OR9、OR10、OR11、OR12、OR13、OR14、OR51、OR52、OR55およびOR56に分けられたヒトファミリー由来の嗅覚受容体が挙げられ、これらは以下に詳述される。
【0025】
[0027]ヒトファミリーOR1は、以下の21個のメンバー:OR1A、OR1B、OR1C、OR1D、OR1E、OR1F、OR1G、OR1H、OR1I、OR1J、OR1K、OR1L、OR1M、OR1N、OR1P、OR1Q、OR1R、ORIS、ORIX、OR1AA、およびOR1ABを有する。ファミリーOR2は、以下の41個のメンバー:OR2A、OR2B、OR2C、OR2D、OR2E、OR2F、OR2G、OR2H、OR2I、OR2J、OR2K、OR2L、OR2M、OR2N、OR2Q、OR2R、OR2S、OR2T、OR2U、OR2V、OR2W、OR2X、OR2Y、OR2Z、OR2AD、OR2AE、OR2AF、OR2AG、OR2AH、OR2AI、OR2AJ、OR2AK、OR2AL、OR2AM、OR2AO、OR2AP、OR2AS、およびOR2ATを有する。
【0026】
[0028]ヒトファミリーOR3は、以下の3個のメンバー:OR3A、OR3B、OR3Dを有する。
[0029]ヒトファミリーOR4は、以下の21個のメンバー:OR4A、OR4B、OR4C、OR4D、OR4E、OR4F、OR4G、OR4H、OR4K、OR4L、OR4M、OR4N、OR4P、OR4Q、OR4R、OR4S、OR4T、OR4U、OR4V、OR4W、およびOR4Xを有する。
【0027】
[0030]ヒトファミリーOR5は、以下の49個のメンバー:OR5A、OR5B、OR5C、OR5D、OR5E、OR5F、OR5G、OR5H、OR5I、OR5J、OR5K、OR5L、OR5M、OR5P、OR5R、OR5S、OR5T、OR5V、OR5W、OR5AC、OR5AH、OR5AK、OR5AL、OR5AM、OR5AN、OR5AO、OR5AP、OR5AQ、OR5AR、OR5AS、OR5AU、OR5W、OR5X、OR5Y、OR5Z、OR5BA、OR5BB、OR5BC、OR5BD、OR5BE、OR5BH、OR5BJ、OR5BK、OR5BL、OR5BM、OR5BN、OR5BP、OR5BQ、OR5BR、OR5BS、およびOR5BTを有する。
【0028】
[0031]ヒトファミリーOR6は、以下の21個のメンバー:OR6A、OR6B、OR6C、OR6D、OR6E、OR6F、OR6J、OR6K、OR6L、OR6M、OR6N、OR6P、OR6Q、OR6R、OR6S、OR6T、OR6U、OR6V、OR6W、OR6X、およびOR6Yを有する。
【0029】
[0032]ヒトファミリーOR7は、以下の9個のメンバー:OR7A、OR7C、OR7D、OR7E、OR7G、OR7H、OR7K、OR7L、およびOR7Mを有する。
[0033]ヒトファミリーOR8は、以下の18個のメンバー:OR8A、OR8B、OR8C、OR8D、OR8F、OR8G、OR8H、OR8I、OR8J、OR8K、OR8L、OR8Q、OR8R、OR8S、OR8T、OR8U、OR8V、およびOR8Xを有する。
【0030】
[0034]ヒトファミリーOR9は、以下の12個のメンバー:OR9A、OR9G、OR9H、OR9J、OR9K、OR9L、OR9M、OR9N、OR9P、OR9Q、OR9R、およびOR9Sを有する。
【0031】
[0035]ヒトファミリーOR10は、以下の29個のメンバー:OR10A、OR10B、OR10C、OR10D、OR10G、OR10H、OR10J、OR10K、OR10N、OR10P、OR10Q、OR10R、OR10S、OR10T、OR10U、OR10V、OR10W、OR10X、OR10Y、OR10Z、OR10AA、OR10AB、OR10AC、OR10AD、OR10AE、OR10AF、OR10AG、OR10AH、およびOR10AKを有する。
【0032】
[0036]ヒトファミリーOR11は、以下の11個のメンバー:OR11A、OR11G、OR11H、OR11I、OR11J、OR11K、OR11L、OR11M、OR11N、OR11P、OR11Qを有する。
【0033】
[0037]ヒトファミリーOR12は、以下の1個のメンバー:OR12Dを有する。
[0038]ヒトファミリーOR13は、以下の11個のメンバー:OR13A、OR13C、OR13D、OR13E、OR13F、OR13G、OR13H、OR13I、OR13J、OR13K、およびOR13Zを有する。
【0034】
[0039]ヒトファミリーOR14は、以下の6個のメンバー:OR14A、OR14C、OR14I、OR14J、OR14K、およびOR14Lを有する。
[0040]ヒトファミリーOR51は、以下の21個のメンバー:OR51A、OR51B、OR51C、OR51D、OR51E、OR51F、OR51G、OR51H、OR51I、OR51J、OR51K、OR51L、OR51M、OR51N、OR51P、OR51Q、OR51R、OR51S、OR51T、OR51V、およびOR51ABを有する。
【0035】
[0041]ヒトファミリーOR52は、以下の22個のメンバー:OR52A、OR52B、OR52D、OR52E、OR52H、OR52I、OR52J、OR52K、OR52L、OR52M、OR52N、OR52P、OR52Q、OR52R、OR52S、OR52T、OR52U、OR52V、OR52W、OR52X、OR52Y、およびOR52Zを有する。
【0036】
[0042]ヒトファミリーOR55は、以下の1個のメンバー:OR55Bを有する。
[0043]ヒトファミリーOR56は、以下の2個のメンバー:OR56AおよびOR56Bを有する。
【0037】
[0044]異所性嗅覚受容体もまた、本明細書に記載の方法で使用されてよい。これらの受容体は、一般に、鼻腔内の嗅覚受容体と遺伝子配列が同じであるが、嗅覚に関与しない器官、組織、または細胞において発現される。例えば、異所性嗅覚受容体は、皮膚、脳、乳房、結腸、赤血球系細胞、目、心臓、腎臓、肝臓、肺、卵巣、前立腺、脾臓、精巣、白血球、リンパ節、副腎組織、脂肪組織、および神経組織を含む、多くの非嗅覚組織および細胞で発見されている。異所性嗅覚受容体はまた、別の哺乳動物由来の嗅覚受容体でもあり得る。
【0038】
[0045]脂肪に見られる例示的な異所性嗅覚受容体としては、例えば、OR51E2、OR2W3、OR51E1、OR2A1/42、OR2A4/7、OR52N4、OR13A1、047D2、OR10J1OR1L8、OR2B6、OR4D6、TAS1R3、TAS2R10、TAS2R13、TAS2R14、TAS2R19、TAS2R20、TAS2R31、TAS2R40、TAS2R42、TAS2R5、VN1R1、およびVN1R2が挙げられる。
【0039】
[0046]副腎組織に見られる異所性嗅覚受容体としては、例えば、OR51E2、ORW3、OR51E1、OR2A1/42、OR2A4/7、OR52N4、OR13A1、OR5K2、OR3A2、OR2H2、OR7C1、OR2L13、OR1L8、OR2T8、OR10AD1、OR52B6、OR1E1、OR13J1、OR2C1、OR52D1、OR10A2、OR2B6、OR8G5、OR1F12、OR4D6、TAS1R1、TAS1R3、TAS2R10、TAS2R13、TAS2R14、TAS2R19、TAS2R20、TAS2R3、TAS2R30、TAS2R31、TAS2R4、TAS2R42、TAS2R5、TAS2R50、TAS2R9、およびVN1R1が挙げられる。
【0040】
[0047]中枢神経系器官および組織に見られる異所性嗅覚受容体としては、例えば、OR51E2、OR2W3、OR4N4、OR51E1、OR52N4、OR13A1、OR5K2、OR7D2、OR3A2、OR2V1、OR2H2、OR7C1、OR2L13、OR1L8、OR2T8、OR10AD1、OR3A3、OR2K2、OR13J1、OR2C1、OR7A5、OR10A2、OR1F12、TAAR3、TAAR5、TAAR6、TAS1R1、TAS1R3、TAS2R1、TAS2R10、TAS2R13、TAS2R14、TAS2R19、TAS2R20、TAS2R3、TAS2R30、TAS2R31、TAS2R39、TAS2R4、TAS2R40、TAS2R42、TAS2R46、TAS2R5、TAS2R50、TAS2R7、TAS2R8、TAS2R9、VN1R1、VN1R2、およびVN1R5が挙げられる。
【0041】
[0048]ドーパミン作動性ニューロンに見られる異所性嗅覚受容体としては、例えば、OR51E1、OR51E2、およびOR2J3が挙げられる。乳房に見られる異所性嗅覚受容体としては、例えば、OR51E2、OR51E1、OR2A1/42、OR2A4/7、OR52N4、OR5K2、OR3A2、OR2T8、OR10AD1、OR3A3、OR2K2、OR1E1、OR2C1、OR2C3、OR8D1、OR7A5、OR10A2、TAS1R1、TAS1R3、TAS2R10、TAS2R13、TAS2R14、TAS2R19、TAS2R20、TAS2R31、TAS2R4、TAS2R5、およびVN1R1が挙げられる。
【0042】
[0049]結腸に見られる異所性嗅覚受容体としては、例えば、OR51E2、OR2W3、OR51E1、OR2A1/42、OR2A4/7、OR5K2、OR7D2、OR7C1、OR2L13、OR7A5、OR51B5、TAS1R1、TAS1R3、TAS2R14、TAS2R20、TAS2R4、TAS2R43、TAS2R5、およびVN1R1が挙げられる。
【0043】
[0050]心臓組織に見られる異所性嗅覚受容体としては、例えば、OR51E2、OR51E1、OR52N4、OR13A1、OR2H2、OR10AD1、OR3A3、OR52B6、OR2K2、OR8G5、OR4D6、TAS1R1、TAS1R3、TAS2R10、TAS2R13、TAS2R14、TAS2R19、TAS2R20、TAS2R3、TAS2R30、TAS2R31、TAS2R4、TAS2R43、TAS2R46、TAS2R5、TAS2R50、TAS2R7、およびVN1R1が挙げられる。
【0044】
[0051]腎臓に見られる異所性嗅覚受容体としては、例えば、OR51E2、OR51E1、OR2A1/42、OR2A4/7、OR5K2、OR1L8、OR10A2、OR1F12、TAS1R1、TAS1R3、TAS2R1、TAS2R10、TAS2R14、TAS2R19、TAS2R20、TAS2R3、TAS2R30、TAS2R31、TAS2R4、TAS2R42、TAS2R43、TAS2R5、TAS2R50、およびVN1R1が挙げられる。
【0045】
[0052]肝臓に見られる異所性嗅覚受容体としては、例えば、OR2W3、OR51E1、OR2A1/42、OR2A4/7、OR7D2、OR1L8、OR2T8、TAS1R3、TAS2R14、TAS2R14、TAS2R20、TAS2R30、TAS2R30、TAS2R40、TAS2R5、VN1R1、およびVN1R2が挙げられる。
【0046】
[0053]リンパ節組織に見られる異所性嗅覚受容体としては、例えば、OR51E2、OR51E1、OR2A1/42、OR52N4、OR13A1、OR5K2、OR3A2、OR2H2、OR3A3、OR2B6、TAS1R3、TAS2R14、TAS2R19、TAS2R20、TAS2R31、TAS2R4、TAS2R40、TAS2R43、TAS2R5、およびVN1R1が挙げられる。
【0047】
[0054]卵巣組織に見られる異所性嗅覚受容体としては、例えば、OR51E2、OR2W3、OR4N4、OR51E1、OR2A1/42、OR2A4/7、OR52N4、OR5K2、OR3A2、OR2V1、OR2H2、OR2L13、OR1L8、OR10AD1、OR3A3、OR52B6、OR13J1、OR2C1、OR52D1、OR51B5、OR1F12、TAS1R1、TAS1R3、TAS2R1、TAS2R10、TAS2R13、TAS2R14、TAS2R19、TAS2R20、TAS2R3、TAS2R31、TAS2R4、TAS2R42、TAS2R43、TAS2R5、TAS2R50、TAS2R60、TAS2R7、VN1R1、およびVN1R2が挙げられる。
【0048】
[0055]前立腺に見られる異所性嗅覚受容体としては、例えば、OR51E2、OR2W3、OR51E1、OR2A1/42、OR2A4/7、OR52N4、OR13A1、OR5K2、OR2H2、OR7C1、OR1E1、OR13J1、OR51B5、TAS1R3、TAS2R14、TAS2R19、TAS2R20、TAS2R43、TAS2R46、TAS2R5、およびVN1R1が挙げられる。
【0049】
[0056]皮膚に見られる異所性嗅覚受容体としては、例えば、OR2AT4およびOR51E2が挙げられる。
[0057]精巣に見られる異所性嗅覚受容体としては、例えば、OR4N4、OR6F1、OR2H1、OR51E2、OR2W3、OR4N4、OR51E1、OR2A1/42、OR2A4/7、OR52N4、OR7D2、OR3A2、OR2V1、OR2H2、OR7C1、OR10J1、OR1L8、OR1C1、OR2H1、OR10AD1、OR3A3、OR13C3、OR2K2、OR1E1、OR2C1、OR2K2、OR1E1、OR2C1、OR2C3、OR8D1、OR52D1、OR7A5、OR10A2、OR2B6、OR7E24、OR6F1、OR8G5、OR51B5、OR1F12、TAS1R1、TAS1R3、TAS2R1、TAS2R14、TAS2R19、TAS2R20、TAS2R3、TAS2R31、TAS2R4、TAS2R43、TAS2R5、TAS2R50 TAS2R60、VN1R1、VN1R2、VN1R3、およびVN1R4が挙げられる。
【0050】
[0058]白血球に見られる異所性嗅覚受容体としては、例えば、OR2W3、OR2A4/7、OR52N4、OR7D2、OR2L13、OR3A3、OR2C1、OR2C3、OR2B6、TAS1R3、TAS2R14、TAS2R20、TAS2R40、およびTAS2R60が挙げられる。
【0051】
[0059]さらに別の変形形態では、嗅覚受容体は、遺伝子操作された受容体である。例えば、1つの嗅覚受容体のN末端領域由来のアミノ酸は、第2の異なる嗅覚受容体のN末端領域に融合され得る。いくつかの変形形態では、N末端アミノ酸は、ドナー嗅覚受容体のアミノ酸位置1~61に由来する。他の変形形態では、N末端アミノ酸は、ドナー嗅覚受容体のアミノ酸位置1~55に由来する。一変形形態では、N末端アミノ酸は、アミノ酸位置1~20もしくは第1の貫膜ドメインまでのアミノ酸、または第1の膜貫通ドメインの共通配列を含むアミノ酸位置1~40に由来する。別の変形形態では、N末端アミノ酸は、アミノ酸位置1~61のN末端領域においてアクセプター嗅覚受容体に融合されている。ドナーポリペプチドのC末端に由来するアミノ酸はまた、アクセプター嗅覚受容体のC末端にも融合され得る。いくつかの変形形態では、アクセプター嗅覚受容体のC末端に由来する1~50のアミノ酸が、ドナーポリペプチド由来のアミノ酸に置き換えられている。他の変形形態では、アクセプター嗅覚受容体のC末端に由来する1~55のアミノ酸が、ドナーポリペプチド由来のアミノ酸に置き換えられている。ドナーポリペプチドは、別の嗅覚受容体であり得る。様々なタグもまた、遺伝子操作された嗅覚受容体に含まれ得る。例えば、嗅覚受容体は、N末端またはC末端においてFLAG、HIS、RHO、またはLUCYタグと融合されて、特定の精製ステップおよび生化学的特性評価プロセスを手助けすることができる。
【0052】
[0060]いくつかの変形形態では、1つ以上の嗅覚受容体は、OR51E1、OR8K3、OR2W1、OR2J2、OR11H7P、OR5P3、またはOR1G1である。これらの受容体は、メントールまたはミントを含む匂い物質組成物を結合または同定するうえで有用であり得る。嗅覚受容体OR52D1およびOR1G1は、酢酸イソアミルまたはバナナを含む組成物を結合または同定するうえで有用であり得る。
年齢関連性の匂いまたは香味プロファイル
[0061]上記の匂い物質組成物および嗅覚受容体は、匂い物質組成物の年齢関連性の匂いまたは香味プロファイルを作成するために使用され得る。次に、プロファイルは、特定の年齢群において所望の効果を得るために消費者製品に含むための匂い物質組成物の有効濃度範囲を決定するのに役立ち得る。濃度は、匂い物質が一般にある年齢群によって魅力的であると考えられる場合に正の効果を生じるように選択され得、または匂い物質が一般にある年齢群にとって魅力的でないと考えられる場合に負の効果を生じるように選択され得る。一変形形態では、匂い物質組成物は、濃度の違いに基づいて、少なくとも2つの年齢群によって異なって知覚される。
【0053】
[0062]製品と共に使用するための匂い物質組成物の濃度を決定するための方法は、1)少なくとも2つの年齢群によって異なって知覚される匂い物質組成物を結合する1つまたは複数の嗅覚受容体を同定するステップであり、a)1つまたは複数の嗅覚受容体を複数の匂い物質濃度で匂い物質組成物に曝露するサブステップであり、1つまたは複数の嗅覚受容体が、匂い物質組成物が1つまたは複数の嗅覚受容体に結合すると信号を生成するレポーターに連結される、サブステップ;およびb)生成された信号を測定することにより、各匂い物質濃度での匂い物質組成物への1つまたは複数の嗅覚受容体の結合を検出するサブステップによって実行される、ステップと、2)1つまたは複数の嗅覚受容体に対して約10%~約90%の最大結合反応をもたらす匂い物質組成物の濃度(約EC10濃度~約EC90濃度)を決定することにより、年齢関連性の匂いまたは香味プロファイルを作成するステップと、3)少なくとも2つの年齢群のうちの1つにおいて所望の効果を生じさせる濃度で、製品中に匂い物質組成物を含むステップとを含み得る。
【0054】
[0063]匂い物質組成物は、前述のように、特定の年齢群において所望の効果を生じさせる濃度で、製品に含まれ得る。効果は、用いられる濃度に基づいて、少なくとも2つの年齢群の間で異なる場合がある。例えば、匂ふい物質組成物は、子供および青年では製品の使用を妨げる負の効果を生じるが、成人では負の効果を生じないようにするために、低濃度(例えば、EC10濃度)または高濃度(例えば、EC90濃度)で製品に含まれてよい。年齢制限製品としては、アルコール、大麻、ニコチン、またはタバコを挙げることができる。例えば、ニコチンを含有する年齢制限製品としては、電子タバコおよびその他のベイピング(vaping)装置、ならびに先端に火をつけるタバコが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
[0064]一変形形態では、匂い物質組成物は、子供および青年による年齢制限製品の使用を妨げるために、EC80~EC90超の濃度でメントールを含む。メントールは、少なくとも2つの年齢群(成人と子供)の間で異なって知覚されることが一般に知られている1つの匂い物質である。成人は、子供と同じ強度のレベルを知覚するために約2倍高いメントール濃度を必要とする。この効果は、受容体のダウンレギュレーションまたは知覚神経経路に沿った他の干渉が原因であり得る。この嗅覚能力の低下という観察結果は、成人が加齢と共に特定の聴覚周波数に対する感受性を失うという現象に類似する。メントールを含む匂い物質組成物の年齢関連性の匂いまたは香味プロファイルの作成は、実施例1でさらに詳細に説明される。
【0056】
[0065]匂い物質組成物はまた、特定の年齢群によって異なって知覚され得るかどうかを決定するために、メントール感受性受容体(例えば、OR51E1)に対してスクリーニングもされ得る。例えば、特定の濃度範囲内でこれらの受容体をより特異的に標的とする匂い物質を同定するために、一連の匂い物質がOR51E1およびその他のメントール関連ORに対してスクリーニングされ得る。次に、最もよく同定された匂い物質が複数の濃度でターゲットの消費者製品に添加され、受容体刺激に対する匂い物質濃度の活性化曲線を消費者製品がある場合とない場合で比較して、消費者製品の他の成分の、匂い物質への受容体の感受性に対する効果を評価する。次に、若い消費者によって強く(すなわち、否定的に)知覚されるのに十分であるが、標的受容体を介した感覚知覚が低下した成人によってはそれほど強く知覚されない、メントール受容体の高刺激を提供する、匂い物質の最適濃度が選択され得る。
【0057】
[0066]いくつかの変形形態では、異なって知覚される匂い物質組成物は、特定の年齢群に対して興味を引いたり魅力を高めたりするために、特定の環境において使用され得る。例えば、これらの組成物は、家庭内で使用されて、家庭内の成人または子供のいずれかに所望の反応(例えば、弛緩)を与えることができる。
【0058】
[0067]家庭環境で使用される場合、異なって知覚される匂い物質組成物は、匂いが時間経過と共にゆっくりと放出される製品の材料(例えば、プラスチック、皮革、布、木、またはワックス部分など)中に組成物を入れることで、送達され得る。いくつかの変形形態では、材料が異なる一連の条件にさらされると、匂いが材料から放出される。例えば、匂いが材料中に入れられ、材料の加熱時に匂いが放出されるようにすることもできる(例えば、Glad Plug-Insと同様)。例えば、溶媒、またはpHの変化、気流、または光を含む、温度以外の他の条件の変化もまた、匂いを放出するために使用され得る。
【0059】
[0068]年齢関連性の匂いまたは香味プロファイルを作成する場合、1つまたは複数の嗅覚受容体が複数の匂い物質濃度の匂い物質組成物に曝露され、1つまたは複数の受容体に結合したレポーターによって生成される信号を測定することに基づいて、1つまたは複数の嗅覚受容体の結合が検出される。レポーターまたはレポーター分子は、間接的または直接的に検出されることが可能な部分であり得る。レポーターとしては、発色団、蛍光団、蛍光タンパク質、発光タンパク質、受容体、ハプテン、酵素、および放射性同位元素が挙げられるが、これらに限定されない。レポーターによって生成された信号は、例えば、標準的なプレートリーダー、バイナリー比色分析特性評価(binary colorimetric characterization)などを介して、様々な技術を使用して検出または測定され得る。
【0060】
[0069]いくつかの変形形態では、1つ以上のレポーターは、蛍光レポーター、生物発光レポーター、酵素、およびイオンチャネルのうちの1つまたは複数である。蛍光レポーターの例としては、オワンクラゲ(AequoreaVictoria)またはウミシイタケ(Renilla reniformis)由来の緑色蛍光タンパク質、およびこれらの活性変異体(例えば、青色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、シアン色蛍光タンパク質など);ハイドロイド(Hydroid)クラゲ、カイアシ、クシクラゲ(Ctenophora)、花虫綱(Anthrozoas)、およびサンゴイソギンチャク(Entacmaea quadricolor)由来の蛍光タンパク質、およびこれら活性変異体;ならびにフィコビリタンパク質およびその活性変異体が挙げられるが、これらに限定されない。他の蛍光レポーターとしては、例えば、CPSD (ジナトリウム3-(4-メトキシスピロ{1,2-ジオキセタン-3,2’-(5’-クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}-4-イル)フェニルホスフェート、ThermoFisher社カタログ番号T2141)などの小分子が挙げられる。生物発光レポーターとしては、例えば、エクオリン(および他のCa+2調節発光タンパク質)、ルシフェリン基質に基づくルシフェラーゼ、セレンテラジン基質に基づくルシフェラーゼ(例えば、Renilla(Renilla)、ガウシア(Gaussia)、およびメトリジナ(Metridina))、およびキプリジナ(Cypridina)由来のルシフェラーゼ、ならびにこれらの活性変異体が挙げられる。いくつかの変形形態では、生物発光レポーターは、北米ホタルルシフェラーゼ、日本ホタルルシフェラーゼ、イタリアホタルルシフェラーゼ、東ヨーロッパホタルルシフェラーゼ、ペンシルベニアホタルルシフェラーゼ、クリックビートルルシフェラーゼ、レイルロードワームルシフェラーゼ、レニラルシフェラーゼ、ガウシアルシフェラーゼ、キプリジナルシフェラーゼ、メトリダルシフェラーゼ、またはOLuc、および赤色ホタルルシフェラーゼ(red firefly luciferase)が挙げられ、これらはすべてThermoFisher Scientific社および/またはPromega社から市販されている。
【0061】
[0070]使用され得る例示的な酵素レポーターとしては、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アセチルコリンエステラーゼ、およびカタラーゼが挙げられる。使用され得るイオンチャネルレポーターとしては、例えば、cAMP活性化カチオンチャネルが挙げられる。1つまたは複数のレポーターとしては、陽電子放出断層撮影(PET)レポーター、単一光子放射断層撮影(SPECT)レポーター、光音響レポーター、X線レポーター、または超音波レポーターを挙げることができる。
【0062】
[0071]年齢関連性の匂いまたは香味プロファイルは、1つ以上の嗅覚受容体が酵母または哺乳動物細胞を使用する生細胞アッセイの一部であるアッセイを使用して作成され得る。あるいは、嗅覚受容体は、宿主細胞の膜画分を使用するアッセイにおいて提供されてよい。酵母膜画分を作製するための例示的な方法は、実施例2に記載される。場合によっては、1つまたは複数の嗅覚受容体は、リポソーム(プロテオリポソーム)において提供され得、これは、実施例3に記載されるように作製され得る。
【0063】
[0072]宿主細胞は、本発明のベクターが導入、発現、および/または増殖され得る、原核細胞または真核細胞であり得る。微生物宿主細胞は、細菌、酵母、微視的真菌、ならびに真菌および粘菌の生活環における微視的相(microscopic phase)を含む、原核微生物または真核微生物の細胞である。典型的な原核生物の宿主細胞としては、大腸菌の様々な株が挙げられる。典型的な真核生物の宿主細胞は、酵母もしくは糸状菌、または哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター細胞、マウスNIH3T3線維芽細胞、ヒト腎臓細胞、もしくは齧歯類骨髄腫もしくはハイブリドーマ細胞である。
【0064】
[0073]宿主細胞として使用され得る例示的な真核細胞としては、真菌細胞、動物細胞、植物細胞、および藻類細胞が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの変形形態では、真核細胞は、真菌細胞であり、例えば、アスペルギルス属、トリコデルマ属、サッカロマイセス属、クリソスポリウム属、クリウベロマイセス(Klyuveromyces)属、カンジダ属、ピキア属、デバロマイセス(Debaromyces)属、ハンセヌラ属、ヤロウイア属、ジゴサッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、ペニシリウム属、またはクモノスカビ属の真菌が挙げられるが、これらに限定されない。他の変形形態では、真菌細胞は、サッカロマイセス・セレヴィシエ、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、アスペルギルスニガー、アスペルギルスオリゼ、クリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、またはトリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)に由来する。
【0065】
[0074]さらなる変形形態では、宿主細胞は動物細胞である。動物細胞は、哺乳動物細胞、例えば、ウシ、イヌ、ネコ、ハムスター、マウス、ブタ、ウサギ、ラット、またはヒツジ由来の細胞であり得る。いくつかの変形形態では、哺乳動物細胞は、霊長類の細胞であり、例えば、サル、チンパンジー、ゴリラ、およびヒトの細胞が挙げられるが、これらに限定されない。より具体的には、動物細胞としては、線維芽細胞、上皮細胞(例えば、腎、乳房、前立腺、肺)、ケラチノサイト、肝細胞、脂肪細胞、内皮細胞、造血細胞を挙げることができる。いくつかの変形形態では、動物細胞は、成体細胞(例えば、最終分化、分裂もしくは非分裂細胞)または幹細胞である。他の変形形態では、哺乳動物細胞株が宿主細胞として使用される。細胞株は、チャイニーズハムスター細胞、ヒト腎臓細胞、サル腎臓細胞、ヒト子宮頸癌細胞、またはマウス骨髄腫細胞に由来し得る。
【0066】
[0075]真核細胞は植物細胞でもあり得る。いくつかの変形形態では、植物細胞は、単子葉植物または双子葉植物の細胞であり、例えば、アルファルファ、アーモンド、アスパラガス、アボカド、バナナ、大麦、豆、ブラックベリー、アブラナ属、ブロッコリー、キャベツ、カノーラ、ニンジン、カリフラワー、セロリ、サクランボ、チコリ、柑橘類、コーヒー、綿、キュウリ、ユーカリ、大麻、レタス、レンズマメ、トウモロコシ、マンゴー、メロン、オート麦、パパイヤ、エンドウ、ピーナッツ、パイナップル、プラム、ジャガイモ(サツマイモを含む)、カボチャ、ハツカダイコン、菜種、ラズベリー、米、ライ麦、モロコシ、大豆、ホウレンソウ、イチゴ、テンサイ、サトウキビ、ヒマワリ、タバコ、トマト、カブ、小麦、ズッキーニ、その他の果菜類(トマト、コショウ、唐辛子、ナス、キュウリ、スカッシュなど)、他の鱗茎類(例えば、ニンニク、タマネギ、ニラなど)、他の仁果類(例えば、リンゴ、ナシなど)、他の石果(例えば、モモ、ネクタリン、アプリコット、ナシ、プラムなど)、アラビドプシス、針葉樹および落葉樹などの木本植物、観賞植物、多年生草、飼料作物、花、他の野菜、他の果物、他の農作物、ハーブ、草、または多年生植物部位(例えば、球根;塊茎;根部;冠部;茎;芽茎;分げつ枝;苗条;根のない挿し木、根のある挿し木、およびカルス挿し木またはカルス生成少植物を含む挿し木;頂端分裂組織など)の細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
[0076]いくつかの実施形態において、真核細胞は、藻類であり、例えば、クロレラ属、クラミドモナス属、セネデスムス属、イソクリシス属、ドナリエラ属、テトラセルミス属、ナンノクロロプシス属、またはプロトテカ属の藻類が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0068】
[0077]以下の実施例は、説明のみを目的としたものであり、いかなる意味でも限定的なものとして解釈されるべきではない。
実施例1:メントールの年齢関連性の匂いまたは香味プロファイルの作成
[0078]メントールは、香味と匂いの両方で、年齢を重ねるにつれてヒトに強く知覚されなくなることが文献における定説となっている。メントールの匂いおよび香味の知覚は、化合物が(他の匂い物質の存在下または非存在下で)ヒト嗅覚受容体のサブセットに結合することによって制御されるため、若年者に比べて年長者では、脳へのシグナル伝達において1つまたは複数のメントール感受性嗅覚受容体が低下する可能性が高い。この知覚の低下は現在よく理解されておらず、多数の要因が原因となっている可能性がある。例えば、上記の知覚の低下は、受容体遺伝子の発現のダウンレギュレーション、受容体を発現する特定のニューロンの毒性または壊死、または脳への受容体シグナル伝達の減少につながる嗅球シグナル処理の変化を反映している可能性がある。
【0069】
[0079]メントールの年齢関連性の香味プロファイルを作成する場合、メントールに反応する嗅覚受容体の同定は、嗅覚受容体発現の補助因子を共発現するHEK293Tのヒト嗅覚受容体cDNA配列をトランスフェクトすることによって達成され得る(例えば、Saito,H.ら、Cell 119巻、679~691頁(2004)を参照)。次に、トランスフェクトされた細胞を、増殖培地中で1nM~1mMのメントールの段階希釈に曝露し、市販のアッセイを使用して細胞内のcAMP産生によって、受容体シグナル伝達を測定することができる。
【0070】
[0080]次に、トランスフェクトされていない対照細胞と比較して、少なくとも1つのメントール濃度に曝露されたときのシグナル伝達の増加によって、陽性の嗅覚受容体を同定することができる。いずれの場合も、EC50を、受容体対メントールについて定義する。嗅覚受容体OR1G1、8K3、2W1、2J2、11H7Pおよび51E1が、この方法によって、メントール感受性嗅覚受容体として同定されている。
【0071】
[0081]年齢関連性の匂い物質(香味)組成物を開発する場合、匂い物質組成物を、メントール感受性受容体(例えば、OR1G1、8K3、2W1、2J2、11H7P、および51E1)を活性化する能力についてスクリーニングすることができる。いずれの場合も、試験匂い物質組成物の段階希釈を各メントール感受性受容体に対して試験し、EC50を決定することができる。この情報から、希釈されていない混合物の受容体シグナル伝達がメントール感受性受容体の少なくとも1つについてEC80~EC90となるように、匂い物質混合物を設計することができる。これらの混合物はまた、最終製品の所望の香味知覚を表す、より心地よい他の匂い物質も含み得る。
【0072】
[0082]次に、設計された匂い物質組成物を、様々な年齢群を表すヒトの官能パネルに対して試験することにより、設計の成功を評価することができる。メントール受容体などの年齢識別受容体でのEC80~EC90の濃度の匂い物質組成物の場合、若年者は検出に対する感度が最も高く、標的受容体を介して強い信号を知覚し、このことが本来であれば心地よい匂い物質に対して負の反応をもたらし得る。年長者の感度が低下すると、受容体のEC50がより高い濃度にシフトし、設計された混合物からの見かけの信号は高齢者にとってはそれほど強くなく、したがって不快とは感じられない場合がある。
【0073】
実施例2:酵母細胞からの膜画分の調製
[0083]酵母細胞からの膜画分は、以下に概説するように、ブレンダー内でのガラスビーズを用いた溶解によって調製することができる。
【0074】
1.嗅覚受容体を発現するようにガラクトース中で誘導された酵母細胞から操作を始める。
a)OD660および元の培養量を記録する。
【0075】
2.ペレットをスピンダウンし、同じタイプのすべての細胞がその官に入るまで、50mL遠心チューブ内の上清を捨てる。
3.3000rpm(1250rcf)で4分間スピンダウンして、PBS(1LのddH2O中のPBS塩)中で細胞を3回洗浄し、上清を捨てる。
【0076】
4.細胞ペレットを10mLの細胞溶解緩衝液(8.5mLのPBS、250μLプロテアーゼ阻害剤カクテルIV、500μLのPMSF)中に再懸濁させる。
5.ガラスビーズにより細胞を溶解する。
【0077】
a)細胞溶解緩衝液中の細胞をブレンダーウェルに添加する。
b)ガラスビーズでウェルを半分まで満たす。金属ナットの上部まで溶解緩衝液を充填する。
【0078】
c)しっかりと蓋をして、金属製内部チャンバーに氷を入れて、チャンバーの周囲に満たす。
d)ウェルおよび内部チャンバーをプラスチック製外部チャンバーにねじ込み、氷で満たす。
【0079】
e)ブレンダー上に置き、ローで30秒とオフで3分を交互に7回実行する。
6.溶解物をウェルから15mL遠心チューブに移し、ビーズを1mLの細胞溶解緩衝液ですすぎ、ビーズを溶解物に添加する。
【0080】
7.ガラスビーズを洗い流し三角フラスコに入れる。
8.溶解物を4830rpm(3000rcf)で4℃で10分間スピンダウンし、上清を回収する。
【0081】
9.上清を超遠心トップレス3mL管に分注し、秤量する。
10.管を4℃で超遠心分離機において43,000rpmで1時間回転させ、膜画分を含むペレットを得る。
【0082】
[0084]膜画分をさらなる実験に使用する場合は、990μLの水でペレットを再懸濁する。
実施例3:プロテオリポソームの調製
[0085]以下に概説するように、嗅覚受容体を含むリポソームを形成することができる。
【0083】
1.まず、酵母脂質(例えば、Avanti(登録商標)全酵母エキス由来のもの)を、試験管内の酵母溶解緩衝液中に再懸濁する。次に、脂質溶液の入った試験管を、超音波処理器により攪拌されている45mLの水を保持している50mL遠心分離管に入れる。リポソームが形成されると、溶液はより透明になる。
【0084】
2.次に、実施例2に記載のとおり作製した酵母膜画分をリポソームに添加する。
3.嗅覚受容体を含む約25%~約90%の酵母膜を酵母脂質に添加し、懸濁液を形成する。
【0085】
4.5000nm、次に1000nmの孔径の押出機を使用して、脂質懸濁液を押し出す。押出機を55℃~60℃に維持する必要がある。脂質懸濁液の押し出しを少なくとも4回繰り返す。
【0086】
5.脂質懸濁液をきれいなバイアルに入れ、さらなる実験に使用するまで4℃で保存する。
[0086]前述の発明を、明瞭性および理解の目的で、例示および実施例として、ある程度詳細に説明してきたが、特定の変更および修正が実施され得、添付した特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることは明らかである。
【国際調査報告】