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特表2022-540345有機材料を還元してメタンおよび/または水素を生成するためのプロセス
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  • 特表-有機材料を還元してメタンおよび/または水素を生成するためのプロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(54)【発明の名称】有機材料を還元してメタンおよび/または水素を生成するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C10L 3/08 20060101AFI20220908BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20220908BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20220908BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20220908BHJP
   B09B 101/75 20220101ALN20220908BHJP
   B09B 101/85 20220101ALN20220908BHJP
   B09B 101/80 20220101ALN20220908BHJP
   B09B 101/70 20220101ALN20220908BHJP
   B09B 101/25 20220101ALN20220908BHJP
【FI】
C10L3/08
B09B3/70 ZAB
B09B3/40
C01B3/02 Z
B09B101:75
B09B101:85
B09B101:80
B09B101:70
B09B101:25
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577278
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 CA2020050899
(87)【国際公開番号】W WO2020257946
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】62/867,788
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521564124
【氏名又は名称】ハレット,ダグラス ジョン フレデリック
【氏名又は名称原語表記】HALLETT, Douglas John Frederick
(71)【出願人】
【識別番号】521564135
【氏名又は名称】ウィリス,デイヴィッド ジョナサン
【氏名又は名称原語表記】WILLIS, David Jonathan
(74)【代理人】
【識別番号】100114904
【弁理士】
【氏名又は名称】小磯 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100134636
【弁理士】
【氏名又は名称】金高 寿裕
(72)【発明者】
【氏名】ハレット,ダグラス ジョン フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ウィリス,デイヴィッド ジョナサン
【テーマコード(参考)】
4D004
4G140
【Fターム(参考)】
4D004AA02
4D004AA04
4D004AA07
4D004AA11
4D004AA12
4D004AA14
4D004AA28
4D004AA46
4D004BA03
4D004CA22
4D004CA37
4D004CB04
4D004CC01
4D004CC03
4D004CC09
4D004DA03
4D004DA06
4D004DA07
4G140BA02
(57)【要約】
有機材料を還元して、メタンおよび/または水素を生成するためのプロセスが開示される。このプロセスは、(a)周囲温度で、密閉された還元チャンバ内で有機材料を過剰量の水素ガスと接触させることであって、還元チャンバが、実質的に酸素を含まない、接触させること、ならびに還元チャンバを加熱して、正圧下で、毎分最大約8℃の速度で、有機材料内に、周囲温度から最大425℃までの温度増加をもたらして、メタン、水素、酸、および部分的に還元された揮発性有機分子を含む、第1のガス状混合物を形成することと、(b)過剰量の水素ガスの存在下で、第1のガス状混合物を約675℃~約875℃の温度まで加熱して、メタン、水素、および酸を含む、第2のガス状混合物を形成することと、(c)第2のガス状混合物を塩基で中和することと、を含む。別の態様では、このプロセスは、(a1)周囲温度で、密閉された還元チャンバ内で有機材料を過剰量の水素ガスと接触させることであって、還元チャンバが、実質的に酸素を含まない、接触させること、ならびに還元チャンバを加熱して、正圧下で、毎分最大約8℃の速度で、有機材料内に、周囲温度から最大425℃までの温度増加をもたらして、メタン、水素、酸、および部分的に還元された揮発性有機分子を含む、第1のガス状混合物を形成することと、(b1)第1のガス状混合物を塩基で中和することと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機材料を還元して、メタンおよび/または水素を生成するためのプロセスであって、
(a)周囲温度で、密閉された還元チャンバ内で前記有機材料を過剰量の水素ガスと接触させることであって、前記還元チャンバが、実質的に酸素を含まない、接触させること、ならびに前記還元チャンバを加熱して、正圧下で、毎分最大約8℃の速度で、前記有機材料内に、周囲温度から最大425℃までの温度増加をもたらして、メタン、水素、酸、および部分的に還元された揮発性有機分子を含む、第1のガス状混合物を形成することと、
(b)過剰量の水素ガスの存在下で、前記第1のガス状混合物を約675℃~約875℃の温度まで加熱して、
メタンおよび/または水素、ならびに
酸を含む、第2のガス状混合物を形成することと、
(c)前記第2のガス状混合物を塩基で中和することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
工程(a)が、バッチプロセスとして実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記プロセスが、約1気圧より大きく、かつ約5気圧未満の圧力で実行される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記プロセスが、少なくとも約2気圧、かつ約5気圧未満の圧力で実行される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記プロセスが、約2気圧~約3気圧の圧力で実行される、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
工程(a)において、前記プロセスは、
急激な圧力上昇が発生した場合、および/または前記還元チャンバ内の圧力が約5気圧に近づいた場合、前記還元チャンバの前記加熱を減少させることをさらに含む、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項7】
前記有機材料が、水を含み、工程(a)において、前記プロセスが、
前記還元チャンバを加熱して、前記有機材料内に約100℃~約105℃までの前記温度増加をもたらすこと、および前記有機材料の温度を約100℃~約105℃に保持して、前記有機材料から水分を蒸発させ、かつ蒸気を形成することと、
前記有機材料の前記温度をさらに増加させる前に、前記還元チャンバから前記蒸気を除去することと、をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記プロセスが、前記還元チャンバから除去された前記蒸気を冷却して水を再形成することと、前記水を中和して、存在するいかなる酸も中和することと、前記水を処理して、存在するいかなる有機分子および/または金属も除去することと、をさらに含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記水を処理することが、活性炭フィルタを通して前記水を濾過することを含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
工程(b)が、実質的に酸素を含まない密閉された反応容器内で実行される、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
工程(b)が、連続混合条件下で実行される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
工程(b)が、前記第1のガス状混合物を約750℃~約850℃の温度まで加熱することを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
工程(b)が、前記第1のガス状混合物を約800℃~約850℃の温度まで加熱することを含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記プロセスの工程(b)が、触媒の存在下で実施される、請求項10~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記触媒が、金属触媒であり、前記金属が、ニッケル、銅、鉄、ニッケル合金、スズ(粉末スズなど)、クロム、および貴金属のより多くのうちの1つから選択される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記触媒が、前記密閉された反応容器の1つ以上の壁に埋め込まれている、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記密閉された反応容器が、ニッケルを含有する鋼合金で構成されている、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
工程(b)が、過熱蒸気の存在下で、前記第1のガス状混合物を加熱することをさらに含む、請求項14~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
工程(c)が、約70℃~約100℃、または約85℃の温度において前記第2のガス状混合物を塩基で中和して、中和された第2のガス状混合物を形成することを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記塩基が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、またはアルカリ土類金属炭酸塩から選択される、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記塩基が、水酸化ナトリウムまたは炭酸カルシウムから選択される、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記中和された第2のガス状混合物を冷却することをさらに含む、請求項19~21のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記中和された第2のガス状混合物が、約5℃~約35℃の温度まで冷却される、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記中和された第2のガス状混合物が、過マンガン酸カリウムを含む溶液と接触させられて、前記中和された第2のガス状混合物からリン含有分子を除去する、請求項22または23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記第2のガス状混合物を中和した後、前記メタンから前記過剰の水素を分離することをさらに含む、請求項1~24のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項26】
前記過剰の水素を工程(a)および/または工程(b)にリサイクルすることをさらに含む、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記有機材料が、有機廃棄物、バイオマス、化学兵器剤、病原体、または軍需品である、請求項1~26のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項28】
前記有機廃棄物が、下水汚泥、都市および産業固形廃棄物またはごみ、埋立地ガス、農業廃棄物、カビおよび関連付けられた毒素で汚染されたトウモロコシおよび他の作物、有機溶剤、ハロゲン化有機化合物、有機リン化合物、タイヤ、プラスチック、自動車破砕残渣(ASR)、製油所および化学品製造/処理廃棄物、または化石燃料を含む、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
前記バイオマスが、木材廃棄物、紙廃棄物、段ボール廃棄物、木材チップ、パルプ廃棄物、または農業バイオマスを含む、請求項27に記載のプロセス。
【請求項30】
前記化学兵器剤が、サリンまたはVXなどのハロゲン化または有機リン系化学兵器剤を含む、請求項27に記載のプロセス。
【請求項31】
前記病原体が、ウイルスまたは細菌を含む、請求項27に記載のプロセス。
【請求項32】
前記軍需品が、トリニトロトルエン(TNT)またはシクロトリメチレントリニトラミン(RDX)などの爆発性有機材料および/または推進剤を含有するロケットもしくはシェルを含む、請求項27に記載のプロセス。
【請求項33】
有機材料を還元してメタンを生成するためのプロセスであって、
(a1)周囲温度で、密閉された還元チャンバ内で前記有機材料を過剰量の水素ガスと接触させることであって、前記還元チャンバが、実質的に酸素を含まない、接触させること、ならびに前記還元チャンバを加熱して、正圧下で、毎分最大約8℃の速度で、前記有機材料内に、周囲温度から最大425℃までの温度増加をもたらして、メタン、水素、酸、および部分的に還元された揮発性有機分子を含む、第1のガス状混合物を形成することと、
(b1)前記第1のガス状混合物を塩基で中和することと、を含む、プロセス。
【請求項34】
工程(a1)が、バッチプロセスとして実施される、請求項33に記載のプロセス。
【請求項35】
前記プロセスが、約1気圧より大きく、かつ約5気圧未満の圧力で実行される、請求項33または34に記載のプロセス。
【請求項36】
前記プロセスが、少なくとも約2気圧、かつ約5気圧未満、または約2気圧~約3気圧の圧力で実行される、請求項33~35のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項37】
工程(a1)において、前記プロセスが、
急激な圧力上昇が発生した場合、および/または前記還元チャンバ内の圧力が約5気圧に近づいた場合、前記還元チャンバの前記加熱を減少させることをさらに含む、請求項33または34に記載のプロセス。
【請求項38】
工程(b1)が、約70℃~約100℃、または約85℃の温度において前記第1のガス状混合物を塩基で中和して、中和された第1のガス状混合物を形成することを含む、請求項33~37のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項39】
前記塩基が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、またはアルカリ土類金属炭酸塩から選択される、請求項38に記載のプロセス。
【請求項40】
前記塩基が、水酸化ナトリウムまたは炭酸カルシウムから選択される、請求項39に記載のプロセス。
【請求項41】
前記中和された第1のガス状混合物を冷却することをさらに含む、請求項38~40のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項42】
前記中和された第1のガス状混合物が、約5℃~約35℃の温度まで冷却される、請求項41に記載のプロセス。
【請求項43】
前記中和された第1のガス状混合物が、過マンガン酸カリウムを含む溶液と接触させられて、前記中和された第1のガス状混合物からリン含有分子を除去する、請求項41または42に記載のプロセス。
【請求項44】
前記有機材料内の前記温度増加が、周囲温度から最大約400℃までである、請求項33~43のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項45】
前記有機材料が、瀝青であり、前記第1のガス状混合物が、合成原油のより軽い留分を含み、工程(a1)が、合成原油を含む不揮発性生成物を生成する、請求項44に記載のプロセス。
【請求項46】
前記第1のガス状混合物を中和した後、前記メタンおよび前記合成原油のより軽い留分から前記過剰の水素を分離することをさらに含む、請求項45に記載のプロセス。
【請求項47】
前記過剰の水素を工程(a1)および/または工程(b1)にリサイクルすることをさらに含む、請求項46に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機材料を還元して、メタンおよび/または水素を生成するためのプロセスに関する。より具体的には、本発明は、制御された反応条件下で過剰の水素を使用して、有機材料を還元して、最終生成物としてメタンおよび/または水素を生成するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの国および国際委員会が、代替または再生可能資源からのエネルギーの生産、ならびに地球温暖化に影響を及ぼしている温室効果ガス(GHG)および他の要因を大幅に低減する必要性に関する規制を提案または発行している。
【0003】
2014年に、米国環境保護庁(US EPA)は、発電所からの炭素汚染を削減することを目的とした「クリーンパワープラン」ポリシーを策定した。発電所は、米国で最大の二酸化炭素(CO)排出源であり、国内の温室効果ガス排出量の約3分の1を占める。この計画は、電力部門からの炭素汚染、特にCO排出量を2030年までに30%削減するように設計された。発電所からのGHG排出量に関するUS EPAの新規発生源性能基準(NSPS)は、石炭火力発電所の制限が636kgCO/MWh、天然ガス燃焼タービン発電所の制限が454kgCO/MWhであることを指定している。これらのタイプの基準は、既存の電力およびエネルギー生産効率を改善する、ならびに非化石燃料源からのエネルギー生産のための新しい方法を探索する要求の増加をもたらす。
【0004】
世界的には、GHG排出量および地球温暖化の懸念の高まりに対処するための対策が講じられている。1997年に京都議定書が採択され、2005年に発効した。現在、192の京都議定書締約国がある。京都議定書第一約束期間(2008年~2012年)では、先進国(議定書の付属書B)が、1990年レベルと比較して、少なくとも5%のGHG排出削減を約束した。京都議定書は、最終的に2012年に延長され、附属書B諸国が、それぞれの排出量を2020年までに、1990年レベルと比較して合計18%削減することを約束する第二約束期間(2013年~2020年)が、締約国によって合意された。欧州連合は、20%の削減を約束した。GHG削減への世界的な取り組みは、エネルギー生産、廃棄物削減、および汚染防止のためのよりクリーンでより効率的な方法に対する需要を生み出す。したがって、これらの問題に対処するための技術に対するインセンティブは、現在高い需要がある。
【0005】
天然ガスは、発電に広く使用されている燃料である。コジェネレーション、ガスタービン、および蒸気タービンは、電気を生成する。天然ガスは、高濃度のメタンを含有し、石油、石炭、ガソリン、およびディーゼルなどのすべての他の化石燃料よりもクリーンに燃焼する。このよりクリーンな燃焼は、放出されるエネルギーの単位あたり、より少ない温室効果ガス(GHG)を生成する。したがって、天然ガスを使用する発電は、利用可能な最もクリーンな炭化水素エネルギー源とみなされる。天然ガスは、プラスチック、肥料、布地、不凍液、および他の化学物質などの製品の製造のためのベースとしても広く使用される。天然ガスを圧縮して、ガソリンおよびディーゼルに代わるクリーンな代替燃料として自動車で使用するための圧縮天然ガス(CNG)を形成することができる。さらに、天然ガスの水蒸気改質を使用して、水素を製造することができる。
【0006】
水素は、様々な用途を有する。水素は、温室効果ガスをまったく生成しない、クリーンに燃焼する燃料である。水素は、一酸化炭素(CO)とともに、フィッシャートロプシュ法を使用してクリーンな合成ディーゼル、ナフサ、ジェットA、および潤滑油を製造するための、化学産業向けのクリーンな一次原料である。水素は、電気を生成するために、水素ベースの燃料電池でも使用される。
【0007】
木材、食品廃棄物、下水、またはスイッチグラスからのセルロースなどの持続可能な供給源に由来する天然ガスは、再生可能エネルギーとみなされ、現在、再生可能天然ガス(RNG)として知られている商品である。さらに、化石燃料ではなく、持続可能な有機材料源から作成されるRNGからの発電は、現在、カーボンニュートラル、したがって、利用可能な炭素ベースの燃料の最もクリーンな供給源とみなされている。
【0008】
政府が、化石燃料の需要を減らし、電力部門からの全体的な排出量を減少させたいという願望を表すインセンティブおよび補助金を提供し始めているため、これらのタイプの天然ガス製品の生成は、より魅力的になっている。さらに、これらの有機廃棄物からエネルギーを生成することにより、埋め立て地からの転用が可能になる。燃料およびエネルギーの生成はまた、これらの廃棄物の分解による逸散性のGHG排出を最小限に抑える。
【0009】
ガス化は、有機または化石燃料ベースの炭素質材料の変換に一般的に使用される1つのプロセスである。石炭のガス化は、一般的な用途である。しかしながら、市販の石炭ガス化器は、主に、高濃度の一酸化炭素、水素、および二酸化炭素を含有し、メタン含有量を最小限に抑える「合成ガス」を生成するように設計されている。メタンおよび他の製品は、この合成ガスから生成され得るが、追加の化学プロセを必要とする。ガス化に関する別の問題は、プロセスから大量のGHGが生成され、適切な炭素隔離を必要とすることである。
【0010】
焼却は、有機廃棄物を破壊するために使用され得る、別の廃棄物処理プロセスである。焼却は、材料を熱、灰、および煙道ガスに変換する、高温での有機材料の燃焼を伴う。設備によっては、焼却を使用して電力を生成することができる。焼却に必要な高温の結果として、病原体および毒素を含む特定の有害廃棄物を破壊するために、焼却が使用され得る。焼却は、非常に資本集約的であり、運用に費用がかかり、大規模な施設を必要とする。有毒な金属酸化物、GHG、NOx、SOx、ダイオキシン、およびフランの生成など、焼却による環境への影響も、懸念事項である。
【0011】
嫌気性消化は、下水汚泥などの生分解性廃棄物の処理に使用される一般的なプロセスである。嫌気性消化は、酸素の不在下で材料を分解する微生物を伴う。このプロセスは、廃棄物を管理し、再生可能エネルギー源とみなされる「バイオガス」と呼ばれる揮発性炭化水素から燃料を生成するために使用される。生成されたバイオガスは、主にメタン、CO、および他の微量汚染ガスでからなる。このバイオガスは、燃料として直接使用されるか、または「バイオメタン」にアップグレードされ得る。このプロセスから得られる消化物は、肥料として土地農業に使用され得るが、現在規制上の懸念事項である特定の有毒化学物質が残っている。嫌気性消化装置は、大型のタンクおよび他のプロセス容器を必要とするため、初期資本コストが高い。嫌気性消化はまた、長い滞留時間を必要とし、一般に、より揮発性の高い有機材料を分解するのみで、他の技術と比較して、ガス生成の減少、および残留物の増加をもたらす。さらに、pH、温度、塩分、アルカリ度などの嫌気性消化の運転条件は、適切に運転するために厳密に制御される必要がある。
【0012】
以下は、ガス化、プラズマガス化、および水蒸気改質の商業的試みに関連する一群の特許である:
TSANGARIS,Andreas,and Marc BACON,PCT特許出願第2008/138118号、
TSANGARIS,Andreas,and Marc BACON,PCT特許出願第2008/138117号、
TSANGARIS,Andreas,and Margaret SWAIN,PCT特許出願第/2008/117119号、
TSANGARIS,Andreas,and Marc BACON,PCT特許出願第2008/104088号、
TSANGARIS,Andreas,and Marc BACON,PCT特許出願第2008/104058号、
TSANGARIS,Andreas,Margaret SWAIN,Kenneth Craig CAMPBELL,Douglas Michael FEASBY,Thomas Edward WAGLER,Scott Douglas BASHAM,Mao Pei CUI,Zhiyuan SHEN Ashish CHOTALIYA,Nipun SONI,Alisdair Alan MCLEAN,Geoffrey DOBBS,Pascale Bonnie MARCEAU and Xiaoping ZOU.PCT特許出願第/2008/011213号、
TSANGARIS,Andreas,and Margaret SWAIN,PCT特許出願第2007/143673号、
TSANGARIS,Andreas,Margaret SWAIN,Kenneth Craig CAMPBELL,
Douglas Michael FEASBY,Thomas Edward WAGLER,Scott,Douglas BASHAM,Zhiyuan SHEN,Geoffrey DOBBS,Mao Pei CUI,and Alisdair Alan MCLEAN,PCT特許出願第/2007/131241号、
TSANGARIS,Andreas,Margaret SWAIN,Douglas Michael FEASBY,Scott Douglas BASHAM,Ashish CHOTALIYA,and Pascale Bonnie MARCEAU,PCT特許出願第2007/131240号、
TSANGARIS,Andreas,Margaret SWAIN,Kenneth Craig CAMPBELL,
Douglas Michael FEASBY,Thomas Edward WAGLER,Xiaoping ZOU,Alisdair Alan MCLEAN,and Pascale Bonnie MARCEAU,PCT特許出願第2007/131239号、
TSANGARIS,Andreas,Margaret SWAIN,Douglas Michael FEASBY,Scott Douglas BASHAM,Nipun SONI,and Pascale Bonnie MARCEAU,PCT特許出願第2007/131236号、
TSANGARIS,Andreas,Margaret SWAIN,Kenneth Craig CAMPBELL,Douglas Michael FEASBY,Scott Douglas BASHAM,Alisdair Alan McLEAN,and Pascale Bonnie MARCEAU,PCT特許出願第2007/131235号、
TSANGARIS,Andreas and Margaret SWAIN.PCT特許出願第2007/131234号、
TSANGARIS,Andreas,Kenneth C. CAMPBELL,and Michael D.FEASBY and Ke LI,PCT特許出願第2006/128286号、
TSANGARIS,Andreas,Kenneth C. CAMPBELL,Michael D.FEASBY,and Ke LI,PCT特許出願第2006/128285号、
TSANGARIS,Andreas V.,and Kenneth C.CAMPBELL;PCT特許出願第2006/081661号、
TSANGARIS,Andreas V.,George W.CARTER,Jesse Z.,SHEN,Michael D.FEASBY,and Kenneth C.CAMPBELL,PCT特許出願第2004/072547号、
ZWIERSCHKE,Jayson,and Ernest George DUECK,PCT特許出願第/2006/076801号、
SHETH,Atul C.PCT特許出願第/2007/143376号.
MELNICHUK,Larry Jack,and Karen(Sue)Venita Kelly.米国特許第7,728,182号、
以下は、有害廃棄物の破壊に関連する他の特許である:
Abdullah,Shahid.Method for Degradation of Polychlorinated Biphenyls in Soil.米国特許第5,932,472号、
Almeida,Fernando Carvalho.米国特許第6,767,163号、
Anderson,Perry D.,Bhuvan C.Pant,Zhendi Wang,et al.米国特許第5,118,429号、
Baghel,Sunita S.,and Deborah A.Haitko.米国特許第5,382,736号、
Balko,Edward N.,Jeffrey B.Hoke,and Gary A.Gramiccioni.米国特許第5,177,268号、
Batchelor,Bill,Alison Marie Hapka,Godwin Joseph Igwe,et al.米国特許第5,789,649号、
Bender,Jim.米国特許第6,117,335号、
Boles,Jeffrey L.,Johnny R.Gamble,and Laura Lackey.米国特許第6,599,423号、
Bolsing,Friedrich,and Achim Habekost.Process for the Reductive Dehalogenation of Halogenated Hydrocarbons.米国特許第6,649,044号、
Cutshall,Eule R.,Gregory Felling,Sheila D.Scott,et al.米国特許第5,197,823号、
Dellinger,Harold Barrett,and John L.Graham.米国特許第5,650,549号、
Driemel,Klaus,Joachim Wolf,and Wolfgang Schwarz.Process for Nonpolluting Destruction of Polychlorinated Waste Materials.米国特許第5,191,155号、
Farcasiu,Malvina,and Steven C.Petrosius.米国特許第5,369,214号、
Friedman,Arthur J.,and Yuval Halpern.米国特許第5,290,432号、
Ginosar,Daniel M.,Robert V.Fox,and Stuart K.Janikowski.米国特許第6,984,768号、
Gonzalez,Luciano A.,Henry E.Kowalyk,and Blair F.Sim.米国特許第6,414,212号、
Gonzalez,Luciano A.,Dennis F.Mullins,W.John Janis,et al.米国特許第6,380,454号、
Greenberg,Richard S.,and Thomas Andrews.米国特許第6,319,328号、
Levin,George B.米国特許第5,602,298号、
米国特許第5,100,638号、
Newman,Gerard K.,Jeffrey H.Harwell,and Lance Lobban.米国特許第6,241,856号、
Potter,Raleigh Wayne,and Michael Fitzgerald.米国特許第6,213,029号、
米国特許第6,112,675号、
Quimby,Jay M.米国法定発明登録第H2198H号、
Reagen,William Kevin,and Stuart Kevin Janikowski.米国特許第5,994,604号、
Rickard,Robert S.米国特許第5,103,578号、
Ruddick,John N.R.,and Futong Cui.米国特許第5,698,829号、
Schulz,Helmut W.米国特許第5,245,113号、
Sparks,Kevin A.,and James E.Johnston.米国特許第5,695,732号、
Zachariah,Michael R.,and Douglas P.DuFaux.米国特許第5,936,137号。
【0013】
ポリ塩化ビフェニル(PCB)などの有害廃棄物を処理するための水素の使用は、以前から検討されている。これは、気相還元と呼ばれていた。Chemistry and Industry,vol.102(19),Oct.3,1983,pp.759-760,Letchworth Herts,R.Louw et al.,“Thermal Hydrodechlorination of(Poly)Chlorinated Organic Compounds”。
【0014】
Hallett,D.J.およびCampbell,K.R.による米国特許第5,050,511号は、気相化学還元を使用する、ハロゲン化有機化合物などの有機廃棄物の処理について記載している。この反応は、約600℃を超える、好ましくは875℃を超える高温の還元性雰囲気中で起こる。この特許は、液体廃棄物、廃棄物のスラリー、および粉砕された固形廃棄物を、過剰な水素を含む高温雰囲気中に直接注入することを想定している。次いで、材料が、約1000℃を超える温度で、ガス状酸化剤を用いて化学的酸化を受ける。
【0015】
Hallett,D.J.およびMcEwen,C.S.の米国特許第8,343,241号は、有機材料からメタンリッチガスを生成するための気相還元プロセスの使用に焦点を当てたプロセスを記載している。
【0016】
有機材料を還元してメタンおよび/または水素を生成するための新しいプロセスが求められている。
【0017】
この背景情報は、本出願人が、本発明に関連する可能性があると考える情報を知らせる目的で提供されている。前述の情報のいずれも、本発明に対する先行技術を構成することを必ずしも認めることを意図しておらず、またそのように解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0018】
本明細書に記載されているのは、有機材料を還元してメタンおよび/または水素を生成するためのプロセスである。
【0019】
一態様では、有機材料を還元してメタンおよび/または水素を生成するためのプロセスであって、(a)周囲温度で、密閉された還元チャンバ内で有機材料を過剰量の水素ガスと接触させることであって、還元チャンバが、実質的に酸素を含まない、接触させること、ならびに還元チャンバを加熱して、正圧下で、毎分最大約8℃の速度で、有機材料内に、周囲温度から最大425℃までの温度増加をもたらして、メタン、水素、酸、および部分的に還元された揮発性有機分子を含む、第1のガス状混合物を形成することと、(b)過剰量の水素ガスの存在下で、第1のガス状混合物を約675℃~約875℃の温度まで加熱して、メタンおよび/または水素、ならびに酸を含む、第2のガス状混合物を形成することと、(c)第2のガス状混合物を塩基で中和することと、を含む、プロセスが提供される。
【0020】
別の態様では、有機材料を還元してメタンを生成するためのプロセスであって、(a1)周囲温度で、密閉された還元チャンバ内で有機材料を過剰量の水素ガスと接触させることであって、還元チャンバが、実質的に酸素を含まない、接触させること、ならびに還元チャンバを加熱して、正圧下で、毎分最大約8℃の速度で、有機材料内に、周囲温度から最大425℃までの温度増加をもたらして、メタン、水素、酸、および部分的に還元された揮発性有機分子を含む、第1のガス状混合物を形成することと、(b1)第1のガス状混合物を塩基で中和することと、を含む、プロセスが提供される。
【0021】
本開示の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および特定の実施例は、本開示の好ましい実施形態を示す一方で、説明的な例としてのみ与えられていることを理解されたい。本開示の趣旨および範囲内の様々な変更および修正が、これらの詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明、ならびに本発明の他の態様およびさらなる特徴をよりよく理解するために、添付の図面と併用して使用されるべき以下の説明について言及する。
【0023】
図1】本開示のプロセスの一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示は、再生可能な有機材料および再生不可能な有機材料の両方からのエネルギーの生成に関する。特に、本開示は、好ましい還元剤として、過剰のガス状水素を使用して有機分子が還元されるプロセスに関する。有機分子の還元は、固体、液体、または気体の状態にある材料から起こる。エネルギーは、主に水素、メタン、またはこの2つの組み合わせの形態で生成される。合成天然ガスおよび再生可能な天然ガスが、生成され得る。このプロセスは、金属、元素状炭素、およびシリカのリサイクルおよび回収も提供する。
【0025】
定義
別段に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0026】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数形の参照を含む。
【0027】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、以下のリストが網羅的ではなく、例えば、必要に応じて、1つ以上のさらなる特徴、構成要素、成分、および/または要素などの任意の他の追加の好適なアイテムを含む場合も、含まない場合もあることを意味すると理解される。
【0028】
本明細書で使用される場合、「実質的に」、「約」、および「ほぼ」などの程度の用語は、最終結果が大幅に変更されないように、修飾された用語の合理的な量の偏差を意味する。これらの程度の用語は、この偏差が、用語が修飾する単語の意味を否定しない場合、修飾された用語の少なくとも±5%の偏差を含むと解釈されるべきである。
【0029】
本明細書で使用される場合、「有機材料」という用語は、メタンガスに変換され得る任意の有機化合物、バイオマス、微生物、有毒混合物、あるいは任意の炭素系化合物または混合物を指す。例示的な有機材料としては、有機廃棄物、バイオマス、化学兵器剤、病原体、および軍需品が挙げられ得る。「有機廃棄物」という用語は、廃棄する前に処理が必要な材料を指す。有機廃棄物の処理は、その物質が有毒、感染性、爆発性、または環境汚染物質などであるために必要とされ得る。有機廃棄物の例としては、以下に限定されないが、下水汚泥、都市および産業固形廃棄物またはごみ、埋立地ガス、家禽、牛、豚、または他の家畜の廃棄物(排泄物またはレンダリング廃棄物など)からなどの農業廃棄物、カビおよびボミトキシンなどの関連付けられた毒素で汚染されたトウモロコシおよび他の作物、ハロゲン化有機溶媒などの有機溶媒、ポリ塩化ビフェニル、ヘキサクロロベンゼン、塩素系農薬、臭素系難燃剤、フッ素化推進剤、またはフッ素化冷媒などのハロゲン化有機化合物、農薬などの有機リン化合物、タイヤ、ポリエチレンなどのプラスチック、自動車破砕残渣(ASR)、例えば、スチルボトムなどの製油所および化学品製造/処理廃棄物、汚染された土壌、褐炭、亜瀝青炭、または瀝青炭、瀝青、アスファルテン分子を含む瀝青(硫黄分が多い)、原油、ピート、またはタールサンド、油、原油、およびピートなどからの瀝青処理廃棄物などの化石燃料が挙げられる。有機材料は、木材廃棄物、紙廃棄物、段ボール廃棄物、木材チップ、パルプ廃棄物、または(スイッチグラス、サトウキビの残留物、もしくはトウモロコシ茎葉もしくは残留物などからの)農業バイオマスなどのバイオマスも含む。有機材料は、(マスタードガス、サルファマスタード、サリン、およびVX神経ガスなどの)ハロゲン化または有機リン系化学兵器剤などの化学兵器剤も含む。有機材料は、ウイルスまたは細菌(炭疽菌またはE.coli.バクテリアなど)を含む病原体も含む。有機材料は、2,4,6-トリニトロトルエン(TNT)、シクロトリメチレントリニトラミン(RDX)、およびオクタヒドロ-1,3,5,7-テトラニトロ-1,3,5,7-テトラゾシン(HMX)などの爆発性有機材料を含有するロケットまたはシェルなどの軍需品も含み、さらに推進剤も、爆発的温度(爆発温度)が回避されるように、厳密な温度範囲が守られるという条件で処理され得る。
【0030】
本明細書で使用される場合、「部分的に還元された揮発性有機分子」という用語は、メタンに完全に還元されていない揮発性有機分子を指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「石炭」という用語は、亜炭(または褐炭)、亜瀝青炭、および瀝青炭など、すべての形態の容易に燃焼可能な黒色または茶色がかった堆積岩を含む。
【0032】
本明細書で使用される場合、「実質的に酸素を含まない」という用語は、酸素の不在下での有機化合物の脱ハロゲン化、脱硫、および水素還元のプロセスで使用される条件を指す。酸素の不在下で反応を実施する利点は、望ましくない副産物をもたらす可能性のある、有機化合物および金属の酸化を回避することである。したがって、密閉されたチャンバ内の酸素含有量は、約0.10体積%未満、任意選択的に約0.08体積%未満、好適には約0.04体積%未満である。
【0033】
本明細書で使用される場合、「過剰量」という用語は、化学量論に必要な量を超える、有機材料と混合される水素ガスの量を指す。還元反応の完了後に残っている水素の過剰量は、(モル%で)約5%~約80%、好適には約10%~約55%、より好適には約15%~約30%である。
【0034】
本明細書で使用される場合、「混合する」および「十分に混合される」という用語は、有機材料が、水素ガスによって完全に脱ハロゲン化および還元されるように、有機分子を過剰の水素と均一に混合することを指す。完全な混合は、水素ガスが、有機材料中の有機化合物にあらゆる方向から衝撃を与え、脱ハロゲン化、脱硫、および還元反応をほぼ完了させることを可能にする。揮発した有機材料が、過剰量の水素ガスと十分に混合されていない場合、有機材料中の化合物は、完全に脱ハロゲン化および還元されず、縮合による芳香族および部分芳香族分子の、多環芳香族炭化水素を含むタール状物質への形成をもたらす。混合は、乱流を引き起こす条件を確保することによって達成される。
【0035】
本明細書で使用される場合、「脱ハロゲン化する」という用語は、ヨウ素、フッ素、塩素、または臭素などのハロゲン原子を含有する有機化合物が水素と反応して、有機化合物からのハロゲン原子の喪失、および水素原子との置換をもたらすプロセスを指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「脱硫する」という用語は、硫黄原子を含有する有機化合物が水素と反応して、有機化合物からの硫黄原子の喪失、および水素原子との置換をもたらすプロセスを指す。この反応は、硫化水素(HS)も生成する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「中和する」という用語は、溶液のpHをほぼ中性(pH7)、または環境または生物に有害ではないpHに調整することを意味する。例えば、酸性溶液の約7のpHへの中和は、酸性溶液に塩基を加えることによってなされ得る。
【0038】
本明細書で使用される場合、「気化した」という用語は、熱および水素の適用によって、蒸気または気体の形態に変換されている液体を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「揮発した」という用語は、水素還元による、大きい固体または液体化合物のより小さなより軽い分子への変換であって、これらのより軽い分子が、気相を形成する、変換を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「塩基」という用語は、酸性溶液を中和することができる任意の化合物を指す。塩基の例としては、以下に限定されないが、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなど)、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、またはアルカリ土類金属炭酸塩(炭酸カルシウムなど)が挙げられる。
【0041】
プロセスの説明
本明細書に記載されているのは、有機材料を還元してメタンを生成するためのプロセスである。本プロセスは、当技術分野で知られている、有機材料を還元するための他のプロセスの使用中に遭遇する課題に対処するために、本発明者らによって開発された。
【0042】
有機材料を還元してメタンを生成するための本明細書に記載のプロセス(メタンは、本明細書でさらに詳細に考察されるように、その後、水素に変換され得る)は、農業材料から下水廃棄物、自動車破砕残渣、軍需品に至る、多種多様な供給タイプで実施され得る。
【0043】
本発明者らは、驚くべきことに、有機材料を還元するための、本明細書に記載のプロセスにおける初期還元反応が、正圧下(すなわち、周囲圧力を上回る)で、最大425℃の温度で起こり得ることを見出した。これは、当技術分野で知られている他のプロセスよりも低い温度で、初期還元プロセスを操作することができるという利点を提供し、それにより、本プロセスの全体的な効率を向上させる。
【0044】
さらに、本発明者らは、実際には、有機材料を還元してメタンを生成するためのプロセスを実施する要員は、メタン生成をできるだけ早く達成し始め、かつプロセススループットを増加させるために、そのようなプロセスを実行するために使用されるシステム/機器を動作温度まで迅速に上昇させるように動機付けられ得ることに留意した。本発明者らは、これは、有機材料が450℃以上の温度まで急速に加熱される場合などに、急速な圧力エクスカーションを引き起こすという意図しない影響を有する可能性があることを観察した。このような急速な圧力エクスカーションの影響は、2要素からなり得る。第一に、そのような急速反応は、プロセスで利用可能な水素を迅速に消費し、有機分子の不完全な還元をもたらし得る。第二に、揮発した有機材料の大きいパルスが、還元されていない有機分子を、プロセスを実行するために使用されるシステム/機器を通して急速に移動させて、還元反応の所望の生成物を汚染する可能性がある。これらのシナリオのいずれにおいても、気化した有機物の一貫した生成が妨げられ得、タールの形成が起こり得る(その結果、定期的な洗浄のためにシステム/機器をシャットダウンする必要があり、プロセスの効率損失をもたらす)。しかしながら、本発明者らは、還元プロセスの動作温度への漸進的な温度上昇を含む、温度の注意深い制御により、そして好ましくは、そのようなプロセスが実施される圧力を監視および注意深く制御することにより、そのような急速な圧力エクスカーションが低減または回避され得ることを見出した。
【0045】
本明細書に記載のプロセスは、好ましくは、本発明者らによって開発された注意深い温度制御および温度上昇プロセスを組み込むのに特に好適なバッチプロセスとして実施される。本プロセスを、連続的とは対照的なバッチモードで操作することにより、プロセスを実施するために必要な機器を簡素化することができるだけでなく、(有機材料のプロセスへの連続的な供給を必要とし得る)連続的に動作するプロセスに必要となり得る前処理工程を回避することもできる。
【0046】
したがって、本明細書に記載の還元プロセスをより低い温度で操作する能力は、操作条件まで注意深く制御された温度上昇と組み合わせて、多種多様な出発有機材料にわたって効率的かつクリーンに動作し得るプロセスおよびシステムをもたらす。本明細書に記載のプロセスは、プロセスが、効率的かつ安全な様式で、プロセスの様々なオペレータによって高信頼性で再現され得る点において、還元プロセスを実施し、プロセスの工程を実施するために使用される機器を制御する要員を考慮した一連のオペレータ経験をさらに考慮し得る。最後に、本発明者らは、本明細書に記載のプロセスが、より高い温度で動作し、および/またはプロセスに組み込まれるそのような温度制御/上昇を欠くプロセスと比較して、タール状物質の形成をさらに低減し得ることを見出した。
【0047】
したがって、一実施形態では、有機材料を還元してメタンおよび/または水素を生成するためのプロセスであって、(a)周囲温度で、密閉された還元チャンバ内で有機材料を過剰量の水素ガスと接触させることであって、還元チャンバが、実質的に酸素を含まない、接触させること、ならびに還元チャンバを加熱して、正圧下で、毎分最大約8℃の速度で、有機材料内に、周囲温度から最大約425℃までの温度増加をもたらして、メタン、水素、酸、および部分的に還元された揮発性有機分子を含む、第1のガス状混合物を形成することと、(b)過剰量の水素ガスの存在下で、第1のガス状混合物を約675℃~約875℃の温度まで加熱して、メタン、および/または水素、ならびに酸を含む、第2のガス状混合物を形成することと、(c)第2のガス状混合物を塩基で中和することと、を含む、プロセスが提供される。
【0048】
還元反応が起こるには、過剰の水素が、存在しなければならない。十分な水素が存在しない場合、最も揮発性の高い炭化水素のみが、部分的に還元されて、固相および液相の材料から放出されるであろう。本明細書では還元チャンバとも称される初期還元チャンバ(IRC)を、過剰な水素の流れが常に存在する状態で使用することにより、すべての有機炭化水素が、還元され、クリーンな固体金属または鉱物、元素状炭素、およびシリカを残して、気体状態で固相および液相材料から移動することが見出されている。この還元反応は、温度で制御され得、部分的に還元されたガス状炭化水素の反応器への制御可能な連続的な流れの形態で、ガス状炭化水素生成の最適化を提供し、有機残渣をほとんどまたはまったく残さない。好ましくは、加熱された水素ガスの連続的な流れが、還元チャンバに提供される。一実施形態では、水素の放出および有機材料との反応の前に、還元チャンバに含まれる水素の加熱を可能にするために、水素を供給するための管またはチューブが、還元チャンバ内に延在し得る。
【0049】
工程(a)における固体、液体、および気体状態の様々な供給源からの有機材料の還元は、過剰量の流れる水素ガスの存在下で起こり得ることが見出されている。これは、最大10気圧の圧力を処理し得、標準のローダまたはボブキャットデバイスでチャンバ内に持ち上げられ得るビンを使用してロードされ得る、単純な低圧チャンバ内で遂行され得る。
【0050】
工程(a)では、流れる水素が、攻撃する、または還元を生じせると、水素は、有機材料に浸透して、固体、液体、および気体の状態で分子を直接還元し、結合、特に炭素-炭素結合、炭素-ハロゲン結合、および任意のスルフヒドリル結合の破壊を起こすことを可能にする。好ましくは、新鮮な水素の連続的な入力が、提供される。これは、総称して、水素還元として知られている。有機材料は、水素への即時の曝露を可能にするように、かつ還元されたガス状有機分子が一掃されることを可能にするように、配向されるべきである。揮発したまたはガス状の有機分子は、最終的に、過剰量の水素ガスと反応して、さらなる還元を生じさせる。メタン、水素、酸、および部分的に還元された揮発性有機分子に加えて、第1のガス状混合物は、COおよびCOも含み得る。
【0051】
一実施形態では、工程(a)は、バッチプロセスとして実施される。
【0052】
さらに別の実施形態では、プロセスは、1気圧よりも大きく、かつ約5気圧未満の圧力で実行される。一実施形態では、プロセスは、少なくとも約2気圧、かつ約5気圧未満の圧力で実行される。別の実施形態では、プロセスは、約2気圧~約3気圧の圧力で実行される。
【0053】
最大10気圧の圧力上昇が、プロセスを実行するために使用される還元チャンバおよび他の機器によって耐えられ得るが、一実施形態では、急速な圧力増加が発生する場合、および/または還元チャンバ内の圧力が約5気圧に近づく場合、有機材料内の温度増加の速度が、減少される、すなわち、還元チャンバの加熱が、減少される。還元チャンバ内の圧力が、安定する、および/または約5気圧未満、もしくは約2気圧~約3気圧である場合、還元チャンバの加熱が再開されて、毎分最大約8℃の速度で、有機材料内に、周囲温度から最大425℃までの温度増加をもたらす。一実施形態では、圧力の急速な上昇は、約1気圧/30秒の圧力上昇であり得る。好適な実施形態では、プロセスは、正圧下で(すなわち、周囲圧力よりも高い圧力で)実行される。
【0054】
好ましくは少なくとも約2気圧、かつ約5気圧未満、または約2気圧~約3気圧の圧力で、工程(a)の温度が、425℃の温度まで上昇されている時点で、有機材料内に存在するハロゲン化芳香族および脂肪族炭化水素のほとんどが、還元および水素置換によって、脱ハロゲン化されている。同様に、瀝青内のアスファルテンなどの硫黄原子を含有する有機化合物が、過剰量の水素ガスの存在下で、脱硫される。
【0055】
別の実施形態では、有機材料は、水(例えば、下水汚泥)を含み、工程(a)において、プロセスは、還元チャンバを加熱して、有機材料内に約100℃~約105℃までの温度増加をもたらすこと、および有機材料の温度を約100℃~約105℃に保持して、有機材料から水分を蒸発させ、かつ蒸気を形成することと、有機材料の温度をさらに増加させる前に、還元チャンバから蒸気を除去することと、をさらに含む。一実施形態では、蒸気は、反応器バイパスチューブを介してなどで除去され、有機材料は、工程(a)の温度がさらに増加される前、かつ工程(b)およびさらなる工程が実施される前に、乾燥される。(例えば、クエンチャ/一次スクラバにつながる反応器バイパスチューブを介して)水分を蒸発させて除去することにより、水分を反応器に通す必要をなくし、水を875℃まで加熱し、次いで、水を冷却することによって、より効率的なプロセスが、作成される。これにより、高いメタン含有量、ならびに低いCOおよびCO含有量を有する最終生成ガスが、生成されるであろう。さらなる水素が、経済的に添加され得る場合、メタンの最大収率が得られ得、COおよびCO含有量のいずれかが、最小化または排除され得る。別の実施形態では、プロセスは、還元チャンバから除去された蒸気を(例えば、約70℃の温度まで)冷却して水を再形成することと、水を中和して、存在するいかなる酸も(酸スクラバを介してなどで)中和することと、水を処理して、存在するいかなる有機分子および/または金属も除去することと、をさらに含む。一実施形態では、硫酸または塩酸などの、形成されたいかなる酸も中和するために、塩基性溶液が添加される。別の実施形態では、水を処理することは、活性炭フィルタを通して水を濾過することを含む。
【0056】
別の実施形態では、工程(b)は、実質的に酸素を含まない、密閉された反応容器内で実行される。さらに別の実施形態では、工程(b)は、連続混合条件下で実行される。さらに別の実施形態では、工程(b)は、第1のガス状混合物を約750℃~約850℃の温度まで加熱することを含む。さらに別の実施形態では、工程(b)は、第1のガス状混合物を約800℃~約850℃の温度まで加熱することを含む。
【0057】
第1のガス状混合物は、正圧を介して、密閉された反応容器に移送され、第1のガス状混合物は、このガス状混合物を過剰量の水素ガスと再び完全に混合しながら、約675℃の温度、および必要に応じて、約875℃の高温まで急速に加熱される。有機材料の完全な還元は、工程(b)で行われ、高温でガスの乱流を生成するように設計され、すべての有機材料が、気体状態にあり、還元剤としての過剰な水素と連続的に混合される、密閉された反応容器(本明細書では水素還元反応器、反応容器、または反応器とも呼ばれる)内で実行され得る。密閉された反応容器は、制御された温度および圧力下に維持され、メタンの生成をもたらす。過剰な水素が、残りの有機分子を還元して、より多くのメタンを形成する。得られた生成ガス(すなわち、第2のガス状混合物)は、他の芳香族分子および特により大きい有機分子、例えば、シロキサン、ナフタレン、およびベンゼンを実質的に含まないはずである。得られた生成されたCOおよびCOは、ニッケル触媒の存在下で、約400℃のより低い温度で、過剰の水素と反応させられて、より多くのメタンおよび水を形成し得る。得られた水素およびメタンは、次に、分離されて、商業的に使用され得る。COおよびCOの形成は、形成されたメタンと反応する、存在する水または蒸気の量に依存する。これらのガスの存在が、何らかの理由で問題となる場合は、有機材料中の水分の量、もしくは添加される水または蒸気の量が、制限または排除されるべきである。これにより、COおよびCO形成の供給源が、制限または排除されるであろう。必要に応じて、追加の水素が、外部供給源から添加され得る。
【0058】
任意選択的に、以下でさらに説明されるように、触媒の存在下で、追加の水または蒸気が、反応器に添加されて、蒸気-メタン改質反応を介する水素およびCOの形成を促進し得、それにより、存在するメタンのすべてが、水素、CO、およびCOに改質され得、水素は、次に、市販の膜を使用して分離されて、販売され得る。
【0059】
反応容器は、ガスの流れが、容器全体で乱流であり、連続混合を提供するように設計されるべきである。未反応の炭化水素が蓄積して、タールの形成をもたらす凝縮反応が起こることを可能にする停滞領域は、存在すべきでない。この容器は、より長い管状構造として、またはHallettおよびCampbellによって米国特許第5,050,511号に示されたものと同様の形状で、作製され得る。
【0060】
蒸気は、COとさらに反応して、これらの温度で水性ガスシフト反応を介して、COおよびより多くの水素を形成するであろう。最終的に、これにより、主に水素を含み、低濃度の酸、CO、CO、およびメタンを有する、第2のガス状混合物が、形成されるであろう。これにより、追加の水素の必要性が、低減される。代替的に、追加の水素が、外部供給源から反応に添加されて、メタンの生成を最大化し、温室効果ガス(GHG)であり、望ましくないCOおよびCOの生成を低減し得る。そのような実施形態では、CO形成のいかなる可能性も最小限にするために、蒸気または水は、反応器に添加されないであろう。
【0061】
この第2のガス状混合物は、微量の、水銀、鉛、カドミウム、およびヒ素などのイオン性金属、および塩化物、フッ化物、および臭化物などのハロゲン化物、ならびに硫黄、窒素、およびアンモニウムを含有する可能性がある。
【0062】
この第2のガス状混合物は、過剰の水素と十分に混合され、かつ完全に加熱され、それによって、水素の他の分子との相互作用を加速し、水素還元を促進する。これは、すべての芳香族化合物または部分芳香族化合物を実質的に排除することを意図している。
【0063】
別の実施形態では、プロセスの工程(b)は、上記のように、触媒の存在下で実施される。さらに別の実施形態では、触媒は、金属触媒であり、金属は、ニッケル、銅、鉄、ニッケル合金、スズ(粉末スズなど)、クロム、および貴金属のより多くのうちの1つから選択される。別の実施形態では、貴金属は、白金、銀、パラジウム、金、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、およびイリジウムから選択される。さらに別の実施形態では、触媒は、密閉された反応容器の1つ以上の壁内に埋め込まれている。さらに別の実施形態では、密閉された反応容器は、ニッケルを含有する鋼合金で構成されている。好適な実施形態では、ニッケル触媒は、高濃度のニッケルを含有する鋼合金で高温反応器(容器または管状反応器)を構成することによって、ガス状有機分子に提供される。これらの金属は、一般に、Hastelloyとして知られている。別の実施形態では、工程(b)は、過熱蒸気の存在下で第1のガス状混合物を加熱して、還元反応から生成されているメタンから水素を改質することをさらに含む。
【0064】
別の実施形態では、還元チャンバおよび密閉された反応容器は、最初に、窒素などの不活性ガスでパージされて、実質的に酸素を含まないようにする。別の実施形態では、過剰の水素のレベルは、過剰の水素が、好ましくは10%を超えるように監視される。一実施形態では、10%の過剰の水素は、プロセスにおいて反応器の下流で測定されたガス中に、少なくとも10%の水素が存在することを意味する。水素濃度は、メタン、CO、およびCOと一緒に、連続ガス分析計によって測定され得る。一実施形態では、ガスは、水素がリサイクルのために分離される前に、ガスがスクラバシステムを出るときに連続的に分析され得る。熟練工が理解するように、スクラバシステムを出る全ガス中の水素の相対濃度が10%以上である場合、水素が消費されているプロセス(反応器など)の初期に、少なくともこの濃度の過剰水素が存在するはずである。
【0065】
工程(b)の約675℃~約875℃の温度で、第1の混合物中の脱ハロゲン化および脱硫された芳香族および脂肪族炭化水素化合物が、例えば、水素還元に示されるように、メタンまたは他の小さな脂肪族炭化水素に還元される。有機材料を過剰量の水素ガスと十分に混合すること、および任意選択的に、生成されたメタンを水または蒸気と混合して、内部でより多くの水素を生成し、濃度を増加させることにより、有機化合物が実質的に還元されることが確実になり、したがって、タール状物質の形成が低減または回避される。
【0066】
水素還元
【化1】

【化2】

【化3】
【0067】
上記のように、工程(b)における水または蒸気の存在は、任意選択的である。利用可能な十分な外部水素源が存在する場合、水または蒸気の存在は、必要ない。工程(b)への水または蒸気の添加は、この水または蒸気が、メタンと反応して、最初に、蒸気-メタン改質(水素生成)を介して水素およびCOを形成するので、水素の需要を減少させる。次いで、水または蒸気が、さらに反応して、水性ガスシフト反応(水素発生)を介して、より多くの水素およびCOを生成するであろう。通常、これらの反応は、700℃~1100℃の最適温度で実行される。最終的に、メタンのただ1つの分子が犠牲になりながら、これらの反応から4つの新しい水素分子が生成される。しかしながら、COおよびCOは望ましくない生成物であり得るので、混合物中のこれらの所望のレベルに応じて、外部水素を使用して、COおよびCOの生成を最小限に抑えてもよい。
【0068】
水素生成
CH+HO⇔CO+3H(水蒸気メタン改質)
CO+HO⇔CO+H(水性ガスシフト)
別の実施形態では、工程(c)は、約70℃~約100℃、または約85℃の温度で、第2のガス混合物を塩基で中和して、中和された第2のガス状混合物を形成することを含む。さらに別の実施形態では、塩基は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、またはアルカリ土類金属炭酸塩から選択される。さらに別の実施形態では、塩基は、水酸化ナトリウムまたは炭酸カルシウムから選択される。クエンチャおよび一次スクラバを使用して、第2のガス状混合物を中和することができる。脱ハロゲン化および/または脱硫反応の結果として、水素ガスおよびメタンが分離および精製される前に、酸性副生成物が、中和される。これを達成するために使用される貴金属で作製された膜は、硫黄および他の酸性生成物に敏感であるため、水素ガスおよびメタンが分離される前にこれを達成することが、特に重要である。
【0069】
別の実施形態では、プロセスは、中和された第2のガス状混合物を冷却することをさらに含む。別の実施形態では、中和された第2のガス状混合物は、約5℃~約35℃の温度まで冷却される。さらに別の実施形態では、中和された第2のガス状混合物を、過マンガン酸カリウムを含む溶液と接触させて、中和された第2のガス状混合物からリン含有分子(ならびにホスフィンガスを含むイオン)を除去し、この目的のために、二次スクラバが、使用され得る。過マンガン酸カリウム溶液は、塩として除去されるリン酸カリウムを形成することによって、リン含有分子およびイオンを除去する。
【0070】
一実施形態では、第2のガス状混合物を冷却および/または中和することは、塩化ナトリウムを含むハロゲン化ナトリウムの形成を可能にする水酸化ナトリウムなどの塩基を含む水溶液を有する第3の容器内で実施され得る。硫黄も除去されて、硫化ナトリウムおよび硫酸ナトリウムを形成する。水銀、鉛、ヒ素、およびカドミウムなどの揮発性金属も、塩化第二水銀などのハロゲン化物を形成するであろう。別の実施形態では、第3の容器は、最初に、窒素などの不活性ガスでパージされて、容器が実質的に酸素を含まないようにする。
【0071】
別の実施形態では、上記のプロセスの工程a)、b)、およびc)は、正圧が、システム内で常時維持される状態で、1気圧超~約10気圧、好ましくは1気圧超~約5気圧の圧力で実行される。
【0072】
別の実施形態では、プロセスは、第2のガス状混合物を中和した後、メタンから過剰の水素を分離することをさらに含む。さらに別の実施形態では、プロセスは、過剰の水素を工程(a)および/または工程(b)にリサイクルすることをさらに含む。リサイクルされる水素は、ある量のメタン、CO、およびCOを含み得る。別の実施形態では、水素をメタンから分離するプロセスは、最初に、c)の中和されたガス状混合物を圧縮し、圧縮されたガスを水素分離器に送ることによって達成される。一実施形態では、水素分離器は、パラジウムなどの貴金属で作製された膜であり、水素が最小である、ガスの分子サイズに基づいて、ガスを分離する。別の実施形態では、水素分離器は、圧力スイング吸収装置である。本開示の別の実施形態では、分離された水素ガスは、燃料電池を含むエネルギー生成システムで使用するために移送される。
【0073】
生成されるCOおよびCOの量は、高温反応器に添加される有機材料の水分含有量および/または水により変わる。生成ガス中のCOおよびCOの形成を最小限にするために、有機材料が、予備乾燥され得るか、または存在する、もしくは添加される水の量が、最小限に維持されるべきである。有機材料が水を含まなければ、純粋な水素が、添加され得、COまたはCOの形成は、わずかである。ニッケル触媒の存在下で、より低温で水素を添加することにより、少量のCOおよびCOが、メタンに変換され得るが、より多い量のCOおよびCOをメタンに変換するために、このプロセスのコストは、法外に高くなる。この場合、純粋なメタンまたは水素を得るために、生成ガスからのこれらのガスの除去が必要である。
【0074】
本開示の別の実施形態では、所望の生成物がメタンである場合、水素は、実質的に分離され、残りのガスは、主にメタンを含有する。
【0075】
本開示の別の実施形態では、主にメタンを含有する残りのガスは、エネルギー生成システムで使用するために移送される。
【0076】
本開示の別の実施形態では、主にメタンを含有する残りのガスは、圧縮されて、クリーンに燃焼する燃料として使用され得る。本開示の別の実施形態では、メタンガスは、約0体積%~約30体積%の水素、任意選択的に約5体積%~約25体積%の水素、好適には約10体積%~約20体積%の水素を有する。
【0077】
本開示の別の実施形態では、メタンは、膜または圧力スイング吸収などの市販の技術を使用して、他のガスから分離される。メタンが、残りのガス(水素、CO、およびCO)から分離されて、95%~98%のメタンであるガスを形成し得る。
【0078】
本開示のさらなる実施形態では、プロセスから生成されたメタンガスを使用して、ガス動力タービンおよび蒸気タービンを使用して、電気を生成することができる。本開示のさらなる実施形態では、生成されるメタンガスは、メタンを水素、CO、およびCOから分離することによってアップグレードされて、パイプライングレードの合成天然ガス(SNG)または再生可能天然ガス(RNG)を生成し、分配され得る。これらの代替および再生可能な燃料源は、化石燃料を相殺し、全体的なGHG排出量を低減し得る。
【0079】
本開示のさらなる実施形態では、プロセスは、フィッシャートロプシュ法などの化学合成に使用され得る水素、CO、およびCOを生成するために使用され得る。
【0080】
別の実施形態では、有機材料は、有機廃棄物、バイオマス、化学兵器剤、病原体、または軍需品である。別の実施形態では、有機廃棄物は、下水汚泥、都市および産業固形廃棄物またはごみ、埋立地ガス、農業廃棄物、カビおよび関連付けられた毒素で汚染されたトウモロコシおよび他の作物、有機溶剤、ハロゲン化有機化合物、有機リン化合物、タイヤ、プラスチック、自動車破砕残渣(ASR)、製油所および化学品製造/処理廃棄物、または化石燃料を含む。さらに別の実施形態では、バイオマスは、木材廃棄物、紙廃棄物、段ボール廃棄物、木材チップ、パルプ廃棄物、または農業バイオマスを含む。さらに別の実施形態では、化学兵器剤は、サリンまたはVXなどのハロゲン化または有機リン系化学兵器剤を含む。別の実施形態では、病原体は、ウイルスまたは細菌を含む。さらに別の実施形態では、軍需品は、TNTまたはRDXなどの爆発性有機材料および/または推進剤を含有するロケットまたはシェルを含む(そのような材料は、分子が、爆燃または爆発を引き起こす自発的カスケード(spontaneous cascade)の温度未満で還元されるように、温度に細心の注意を払って処理されるべきであることに留意されたい)。別の実施形態では、有機材料は、上記の定義のセクションで定義された通りである。
【0081】
爆発性有機材料を含有するロケットまたはシェルなどの軍需品の処理を考慮すると、TNTの融点は、80.35℃であり、沸点は、たかが295℃であるため、当業者は、TNT自体および活性化された分子の再配列の生成物の水素還元が、502.22℃(936°F)であるTNTの爆発温度に近接することなく起こり得ることを理解するであろう。しかしながら、TNTが、溶融されて、シェルを充填するために使用された液体状態になると、このTNTは、ガス状水素によって還元されながら、低温で破壊され得る。RDXおよびHMXは、衝撃または摩擦に対する感度がはるかに低いという点で、TNTよりも好ましい爆発物である。RDXの融点は、205℃であり、爆発温度は、260℃である。したがって、当業者は、RDXが、205℃を超える温度で還元するが、爆発を防ぐために、260℃より十分に低く維持されなければならないことを理解するであろう。HMXの融点は、276℃であり、これは、RDXの爆発点を上回る。当業者は、これらの理由のために、高濃度のHMXをRDXとともに流すことは、一般に避けるべきであることを理解するであろう。ただし、HMXの爆発温度は、375℃とはるかに高い。
【0082】
本開示の別の実施形態では、有機材料は、固定炭素、元素状炭素、シリカ、ガラス、および揮発せず、還元された形態もしくは天然の形態のいずれかで保持される、スズ、亜鉛、および鉛などの貴金属ならびに非貴金属などの無機材料も含有する。本開示の一実施形態では、無機材料は、材料を空気に曝す前に材料を冷却した後、粒子として還元チャンバから除去される。本開示の一実施形態では、冷却後のこの無機材料の温度は、存在する金属のすべての発火点よりも低くなければならず、さもなければ、金属が、周囲空気中の酸素に曝されたときに発火する。
【0083】
別の実施形態では、有機材料を還元してメタンを生成するためのプロセスであって、(a1)周囲温度で、密閉された還元チャンバ内で有機材料を過剰量の水素ガスと接触させることであって、還元チャンバが、実質的に酸素を含まない、接触させること、ならびに還元チャンバを加熱して、正圧下で、毎分最大約8℃の速度で、有機材料内に、周囲温度から最大約425℃までの温度増加をもたらして、メタン、水素、酸、および部分的に還元された揮発性有機分子を含む、第1のガス状混合物を形成することと、(b1)第1のガス状混合物を塩基で中和することと、を含む、プロセスが提供される。一実施形態では、有機材料は、瀝青である。さらに別の実施形態では、工程(a1)は、バッチプロセスとして実施される。さらに別の実施形態では、プロセスは、約1気圧より大きく、かつ約5気圧未満の圧力で実行される。一実施形態では、プロセスは、少なくとも約2気圧、かつ約5気圧未満の圧力で実行される。別の実施形態では、プロセスは、約2気圧~約3気圧の圧力で実行される。
【0084】
工程(a)について上述したように、最大10気圧の圧力増加が、プロセスを実行するために使用される還元チャンバおよび他の機器によって耐えられ得るが、工程(a1)の一実施形態では、急速な圧力上昇が発生する場合、および/または還元チャンバ内の圧力が約5気圧に近づく場合、有機材料内の温度増加の速度が、減少される、すなわち、還元チャンバの加熱が、減少される。還元チャンバ内の圧力が、安定する、および/または約5気圧未満、もしくは約2気圧~約3気圧である場合、還元チャンバの加熱が再開されて、毎分最大約8℃の速度で、有機材料内に、周囲温度から最大425℃までの温度増加をもたらす。一実施形態では、圧力の急速な上昇は、約1気圧/30秒の圧力上昇であり得る。一実施形態では、プロセスは、正圧下で(すなわち、大気圧よりも高い圧力で)実行される。工程(a)について上述したように、好ましくは、加熱された水素ガスの連続的な流れが、還元チャンバに提供される。一実施形態では、水素の放出および有機材料との反応の前に、還元チャンバに含まれる水素の加熱を可能にするために、水素を供給するための管またはチューブが、還元チャンバ内に延在し得る。
【0085】
さらに別の実施形態では、工程(b1)は、約70℃~約100℃、または約85℃の温度で、第1のガス状混合物を塩基で中和して、中和された第1のガス状混合物を形成することを含む。別の実施形態では、塩基は、上記で定義された通りである。別の実施形態では、プロセスは、中和された第1のガス状混合物を冷却することをさらに含む。さらに別の実施形態では、中和された第1のガス状混合物は、約5℃~約35℃の温度まで冷却される。さらに別の実施形態では、中和された第1のガス状混合物が、過マンガン酸カリウムを含む溶液と接触させられて、中和された第1のガス状混合物からリン含有分子を除去する。別の実施形態では、有機材料は、瀝青であり、有機材料内の温度増加は、周囲温度から最大約400℃までである。別の実施形態では、有機材料は、瀝青であり、第1のガス状混合物は、合成原油のより軽い留分を含み、工程(a1)は、合成原油を含む不揮発性生成物を生成する。さらに別の実施形態では、プロセスは、第1のガス状混合物を中和した後、メタンおよび合成原油のより軽い留分から過剰の水素を分離することをさらに含む。さらに別の実施形態では、プロセスは、過剰の水素を工程(a1)および/または工程(b1)にリサイクルすることをさらに含む。
【0086】
別の実施形態では、有機材料は、部分的にのみ還元されて、より小さな有機分子を形成する。一例として、有機材料は、アルバータ瀝青であり得、これは、水素還元で処理されて、より粘度の低い合成原油タイプの生成物(すなわち、流動性オイルタイプの生成物)を形成し得る。アルバータ州のオイルサンドで見つかった瀝青は、この材料を粘稠にし、パイプラインでの移動を遅くさせる、大きいアスファルテン硫黄含有分子を分解するために、水素還元で処理され得る。したがって、大きい硫黄含有アスファルテン分子が、低減されて、硫黄の大部分が除去されるであろう。瀝青を従来の原油と識別するのは、存在する低分子量炭化水素の濃度が低いこと、および高分子量の高分子材料が豊富であることである。後者は、低分子量の液体成分中にコロイド形態で溶解して、瀝青に粘稠でシロップ状の稠度を与えるアモルファスな固形物である。高分子量の固形物は、ベンゼンまたはトルエンなどの液体芳香族化合物に可溶であり、低分子量のパラフィンには不溶であるため、瀝青のベンゼン溶液からのn-ペンタン沈殿によって、瀝青から分離され得る。このようにして沈殿した固形物は、アスファルテンと呼ばれる。
【0087】
ほとんどのアスファルテンは、ヘテロ原子、酸素、窒素、および特に硫黄が豊富である。アルバータ州のオイルサンド瀝青(AOSB)のアスファルテン含有量は、16~25%の範囲であり、アスファルテンは、約80%の炭素、8.0%の水素、8~9%の硫黄、2.5%の酸素、および1.0%の窒素を含有する。AOSBの地下回収と関連付けられる主な問題は、アスファルテンが主に関与している、瀝青の非常に高い粘度の結果である。
【0088】
アルバータ瀝青の場合、水素還元は、瀝青から比較的少量のメタンを生成するソフトクラッカーとして使用され得る。このメタンを水素に改質して、より多くのプロセスガスを生成することができる。この水素は、瀝青のアスファルテン中の主に大きい分子と反応するために使用され得る。アスファルテンは、水素還元を受けやすい、硫黄および水素結合、ならびに単純な環状分子と結合している。基本的に、アスファルテンの大きい分子が、小さな芳香族分子にされ、それにより、瀝青の粘度が下がり、自由に流れる液体オイルが生成されるであろう。より大きい分子は、改質し得ない。この段階で、高硫黄も除去され得る。
【0089】
瀝青は、IRC内で、水素の存在下で加熱される。IRCが最大400℃まで加熱されると、発生するガス状炭化水素および酸性ガス、特にHSが、直接クエンチャに移動されて、高温でさらに過剰の水素と反応されない。これは、例えば、反応器バイパスチューブを使用することによって、達成され得る。クエンチャ/一次スクラバは、合成原油のより軽い留分を凝縮し、アスファルテン分子を分解することによって瀝青から除去された大量の硫黄を除去することができる。IRCのビン内に残っている液体は、合成原油として除去され、この生成物の粘度は、原料と比較して減少され、IRC内のピーク温度および圧力によって定義されるであろう。上記のように、スクラバ内で凝縮された液体材料は、C重油またはディーゼルにより似ている、合成原油のより軽い留分になるであろう。この液体は、標準的な油水分離器を使用して、スクラバ水溶液および苛性溶液から分離され得る。パイプラインは、輸送のために現在必要とされている希釈を要することなく、元の瀝青に由来する炭化水素のみを輸送するであろう。これは、かなりの価値を付加し、非常に費用対効果が高いはずである。
【0090】
いくつかの実施形態では、上記のプロセスの工程(a)は、還元チャンバを加熱して、必要に応じて、毎分最大約8℃の速度で、有機材料内に、周囲温度から最大約600℃までの温度増加をもたらすことを含み得るが、上述のように、このプロセスは、より低い温度でより効率的に動作し得るので、そのような高温で操作する必要はないことが、本発明者らによって見出されていることに留意されたい。
【0091】
さらに、本明細書に記載のプロセスは、ガス状有機分子(すなわち、本明細書に記載の第1のガス状混合物)の連続ストリームを単一の反応器に提供して、さらに還元されるように、2つ以上のIRCを使用して首尾よく実行され得ることが見出されている。IRCは、前のロードが完了まで処理されると、IRCからガス状有機分子の新しいロードを導入し始めるような方式で、順序付けされ得る。順序付け時間(sequencing time)は、反応器に入るガス状有機分子の減少の結果としての、反応器内の圧力降下によって示される。複数のIRCを使用するためには、プロセスの工程(a)/(a1)における有機材料の初期還元および揮発中に温度を上昇させることが、依然として必要である。前述のように、これにより、IRCおよび反応容器内の圧力の制御が可能になり、完全な還元が起こって、プロセスでのタール形成を最小限に抑えることが確実になる。IRCの使用により、有機材料をロードするだけでなく、再使用のために残留無機材料をアンロードする簡単な手段が可能になる。水素還元のためのIRCの使用は、実用的であり、水素雰囲気内で可動部品を使用する必要がある、単一の容器に有機材料を連続的に導入する必要性、および/または移動容器内に水素を密封する必要性を排除する。
【0092】
有機材料を還元してメタンガスを生成するための例示的なプロセスおよびシステム
図1を参照すると、プロセス全体のブロックフロー図が、示されている。一実施形態では、処理される前に、および有機材料の性質に応じて、有機材料が、前処理される。図1では、例示的な有機材料は、有機廃棄物であるとして示されている。一実施形態では、有機材料は、前処理(pretreated)(前処理(preprocessed))されて、高表面積を有する均一な供給原料を形成する。この前処理は、有機材料をチッピング、粉砕、または細断すること、もしくは当業者に既知の任意の他の方法を含み得る。さらなる実施形態では、有機材料が水を含む場合、有機材料は、処理される前に、水を除去するために任意選択的に前処理される。
【0093】
別の実施形態では、有機材料は、初期還元チャンバすなわちIRCに挿入された開放容器に入れられる。廃棄物の前処理が望ましくない別の実施形態では、材料の含水量は、最初にIRC内の温度を周囲温度から約105℃まで(毎分最大約8℃の速度で)上昇させることによって、低減され得る。別の実施形態では、有機材料中の水は、蒸気にされて、反応器バイパスチューブを介してスクラバに直接送られ、有機材料の予備乾燥が不要になる。別の実施形態では、有機材料は、IRCに挿入された長いトレイ上に配置され、その結果、トレイ上の廃棄物は、熱および過剰の水素ガスの両方に均一に曝され得る。さらなる実施形態では、例えば、低い固形分含有量を有する下水汚泥など、有機材料が比較的均一で流動性である場合、材料は、計量されて、汚泥ポンプを使用して、IRC内のトレイにポンプ圧送される。
【0094】
一実施形態では、1つ以上のIRC(図1には3つが示されている)が、有機材料をロードされ、次いで、容器が、密封されて、入口を通して窒素またはアルゴンなどの不活性ガスで空気をパージされる。パージにより、プロセスを、実質的に酸素を含まない環境で実施することが可能になる。一実施形態では、正圧下で、温度が、毎分最大8℃の速度で、周囲温度から425℃まで上昇されるときに、過剰の水素がIRCに添加される。当業者は、有機材料を気化させて、材料の性質にある程度依存するであろう、脱ハロゲン化、脱硫、および還元反応を開始するのに必要な温度を判定することができるであろう。過剰量の水素が、容器に添加され、出口において過剰量の水素が容器を出ていくように、維持される。水素は、分子が還元されるにつれて消費されるため、このプロセス中、水素が、継続的に添加される。固体、液体、または気体の状態で存在する有機分子は、直接還元され、分子がより小さくなるにつれて、ガス状有機混合物を生成する。これらのガス状有機分子は、IRCを通過する間に、継続的に還元、脱ハロゲン化、および脱硫される。
【0095】
このプロセスは、さらに還元されるように、ガス状有機分子の連続ストリームを単一の反応器に供給するために、IRCを使用して首尾よく運転され得ることが見出されている。IRCの使用はまた、有機材料の初期還元および揮発中に温度を上昇させることを可能にする。また、これにより、IRCおよび反応容器内の圧力の制御が可能になり、完全な還元が起こって、プロセスでのタール形成を最小限に抑えることが確実になる。IRCの使用により、有機材料をロードする簡単な手段が可能になる。また、IRCの使用により、還元および揮発されない残留無機材料をアンロードする簡単な手段が可能になる。無機材料は、主に、リサイクルに好適な元素状炭素、シリカ、金属、およびガラスである。水素還元のためのIRCの使用は、実用的であり、単一の容器に有機材料を連続的に導入する必要性を排除する。IRCは、温度上昇を監視および制御することにより、圧力スパイクの制御を可能にする。(毎分最大約8℃の速度での)温度上昇は、効率ならびに、反応器およびスクラバ内でタール形成を引き起こす可能性のある圧力スパイクの防止のために不可欠である。
【0096】
さらなる実施形態では、還元され揮発した有機分子は、IRCから、水素還元反応器と呼ばれる第2の容器に搬送される。一実施形態では、組み合わされたプロセスガスおよび水素ガスが、反応器の入口に入り、そこで、それらが、様々なインジェクタおよびノズルを使用して添加される、追加の過剰水素とさらに混合される。一実施形態では、反応器は、ガス流が、流れ場全体にわたって存在する渦(eddies and vortices)によって特徴付けられる乱流であるように設計されている。一実施形態では、乱流ガス流は、有機材料中の有機化合物を過剰量の水素ガスと完全に混合するのに役立つ。説明したように、有機化合物と、過剰量の水素ガスとの完全な混合により、メタンを形成するすべての分子が、還元され、いかなる芳香族分子も、完全に除去される。
【0097】
別の実施形態では、反応容器は、高温、ハロゲン化合物、ハロゲン、硫黄、リン、および重金属などの腐食性化学物質、ならびに水素ガスストリームの結果としての還元環境にも曝される。したがって、本開示のいくつかの実施形態では、反応容器を構成するために使用される材料は、253MA(登録商標)、Hastelloy(登録商標)X、またはHaynes(登録商標)188などの高温および腐食耐性クロムニッケル超合金からなる。
【0098】
さらなる実施形態では、混合物は、反応器の金属容器壁内に存在するニッケルなどの触媒の存在下でさらに加熱され、水または蒸気と混合されて、生成されているメタンを、水蒸気メタン改質を介して水素およびCOガスに変換する。COは、さらに反応し、水性ガスシフト反応を介してより多くの水素およびCOを生成する。これは、最終生成物が水素であるべき場合に、特に望ましい。
【0099】
いくつかの実施形態では、本開示のプロセスは、触媒の存在下で実行される。さらなる実施形態では、触媒は、金属触媒であり、金属は、ニッケル、銅、鉄、ニッケル合金、スズ(粉末スズなど)、クロム、および貴金属のうちの1つ以上から選択される。別の実施形態では、貴金属は、白金、銀、パラジウム、金、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、およびイリジウムのうちの1つ以上から選択される。一実施形態では、反応容器は、上記のように、プロセスを触媒するニッケルなどの金属で構成される。
【0100】
本開示の一実施形態では、反応器は、加熱ゾーンと、還元ゾーンと、を含む。加熱ゾーンは、還元ゾーン内で完全な還元反応が起こるのに有効な温度まで、混合ガスを加熱するために必要な体積として定義される。還元ゾーンは、十分な加熱および過剰な水素との混合の結果として、ガス状有機分子の完全な還元が起こるのに十分な滞留時間が存在する体積として定義される。
【0101】
一実施形態では、還元ゾーン内の滞留時間は、約1~約10秒、任意選択的に約1~約5秒、好適には約2~約4秒である。本開示の別の実施形態では、還元反応から生成されたガス状混合物は、プロセス反応器の中央チューブを上って移動する。
【0102】
別の実施形態では、プロセス反応器は、環状加熱ゾーン内に位置する1つ以上の放射チューブ型ヒータを使用して加熱される。一実施形態では、放射チューブヒータは、ガス燃焼式または電気式である。別の実施形態では、放射ヒータは、窒素、アルゴン、または二酸化炭素などの不活性ガスで充填されたプロセス反応器の上部のゾーン内で、プロセス反応器に接続される。この設計は、放射チューブに漏れが生じた場合に、外気が、プロセス反応器に漏れ込むことができないことを確実にする。
【0103】
本開示の別の実施形態では、プロセス反応器は、例えば、ニッケル合金で作製されたフローティングライナを有する、例えば、炭素鋼で作製された外殻からなる断熱容器を備える。フローティングライナは、プロセス反応器内の高温の結果としての熱膨張による移動を可能にする。さらなる実施形態では、プロセス反応器はまた、プロセス反応器内の高温を維持するのに役立つ、セラミック繊維などの断熱材を有する。別の実施形態では、フローティングライナおよび放射チューブヒータは、塩素およびフッ素を含むハロゲン、ハロゲン化合物、硫黄、リン、および重金属などの化学物質に耐えるだけでなく、プロセス反応器内の高温還元環境に耐え得る材料で構成される。一実施形態では、フローティングライナおよび放射チューブヒータは、Kanthal APM(登録商標)、253MA(登録商標)、Hastelloy(登録商標)X、またはHaynes(登録商標)188などの高温および腐食耐性クロムニッケル超合金で構成される。別の実施形態では、プロセス反応器は、検査、保守、および洗浄のためのシャットダウン中にプロセス反応容器内へのアクセスを可能にするための取り外し可能な底部プラグを含む。
【0104】
本開示の別の実施形態では、プロセス反応器は、内部加熱要素を有する大きい容器ではなく、外部で加熱される、いくつかのチューブからなる管状プロセス反応器の設計を含む。これらのチューブは、Hastelloyなどの上記のクロムニッケル合金から作製され得る。
【0105】
別の実施形態では、ガス状混合物は、次に、クエンチャおよび一次スクラバに入る。一実施形態では、初期クエンチャは、ガス状混合物を875℃から約100℃~約300℃の温度まで急速に冷却する水スプレーを含む。さらなる実施形態では、冷却されたガス状混合物は、管を通してベンチュリスクラバに移動する。ベンチュリスクラバでは、水が、スロート内の乱流によって小さな液滴に霧化されて、ガス状混合物と水との間の接触を大幅に向上させる。クエンチャおよびスクラバは、ハロゲン化合物(特に、塩素化、フッ素化、または臭素化化合物)および硫黄化合物の脱ハロゲン化および還元反応からの副産物として発生するガス状混合物から熱、水、粒子状物質、および酸性ガスを除去する。
【0106】
本開示の一実施形態では、イオンとしての、または水素化物としてのハロゲンおよび硫黄などの酸性ガスが、水酸化ナトリウムまたは水酸化カルシウムなどの塩基を添加することによって、中和される。塩基の添加は、水および、塩化ナトリウムまたは臭化ナトリウムもしくは硫酸カルシウムなどの、ハロゲンおよび硫黄の塩の生成をもたらす。
【0107】
別の実施形態では、ベンチュリスクラバに添加された水は、スクラバの底部に回収され、水ストリームとして出ていく。さらなる実施形態では、クエンチャからの水も、水ストリームに加わる。さらなる実施形態では、スクラバ流出物を含む水ストリームは、活性炭での濾過および回収前の試験のために水処理システムに行く。
【0108】
別の実施形態では、ガスストリームは、スクラバ容器を出て、二次スクラバに入る。本開示の別の実施形態では、ガスストリームは、二次スクラバに入り、そこで処理ガスが、再びスクラブされて、処理ガスの温度をさらに低下させ、処理ガスから可能な限り多くの水を除去する。別の実施形態では、処理ガスは、冷水スプレーによって、約5℃~約35℃の温度まで冷却される。別の実施形態では、二次スクラバは、二次スクラバプロセスガスストリーム中の水滴のキャリーオーバーの可能性を排除するデミスター要素を含む。さらなる実施形態では、二次スクラバプロセスガスストリームは、二次スクラバの上部近くの管を通って出ていく。この実施形態では、二次スクラバ内に回収された水は、二次スクラバの底部に位置する管を通って水ストリームとして吐出し、スクラバ流出物を含む水ストリームは、活性炭での濾過および回収前の試験のために水処理システムに行く。
【0109】
本開示の別の実施形態では、二次スクラバが、望ましくない化合物、例えば、リン含有分子およびホスフィンガスを含むイオンを除去するために、さらに使用される。さらなる実施形態では、過マンガン酸カリウム溶液が、リン含有分子、および塩として除去されるリン酸カリウムを形成するイオンを除去するために、二次スクラバ内で使用される。
【0110】
本開示の一実施形態では、水は、プロセス反応器内で起こる反応の副産物であり、一次スクラバから、および二次スクラバからプロセスを出る。この水は、清澄水源として回収および配布される前に、組み合わされて試験される。この水が排出基準を満たさない場合、この水は、活性炭で処理される。この炭素は、水素還元プロセスで再活性化され得る。
【0111】
さらなる実施形態では、ガス状混合物は、現在、主に水素およびメタンを含み、スクラバシステムを出て、圧縮される。別の実施形態では、圧縮された混合物は、次に、水素分離器などの分離器に入る。一実施形態では、水素分離器は、貴金属で作製された膜型分離器であり、水素が最小である、ガスの分子サイズに基づいて、ガスを分離する。分離機は、水素ガスをガス状混合物から約85%の効率で分離して、2つの別々のガスストリームを形成する。一実施形態では、メタン、CO、およびCOを含み得る、回収された水素ガスストリームは、プロセス内のIRCまたは水素還元反応器のいずれかに戻されてリサイクルされる。別の実施形態では、回収された水素ガスストリームは、燃料として、または燃料電池などのエネルギー生成システムで使用される。別の実施形態では、水素分離器は、圧力スイング吸収装置である。
【0112】
別の実施形態では、残りのガスストリームは、主にメタンからなり、このメタンは、約95%以上のメタンからなるガスを生成するために、さらに分離され得る。残りのガスストリームは、ある量の水素、CO、およびCOを含み得る。一実施形態では、さらなる分離は、膜または圧力スイング吸収を使用して実行される。一実施形態では、主にメタンを含有する生成ガスは、クリーンに燃焼する燃料として使用され得る。別の実施形態では、主にメタンを含有する生成ガスは、供給タイプに応じて、合成天然ガス(SNG)または再生可能天然ガス(RNG)として分配するために、天然ガスパイプラインに注入され得る。別の実施形態では、所望の生成物が水素である場合、水素分離器を出るガスは、主にCOと、いくらかのメタンおよびCOとからなる。
【0113】
一実施形態では、有機材料は、説明したように、水素還元を使用して処理されて、水素燃料電池に動力を供給するために、または水素燃料源として使用され得る水素で主に構成される生成ガスを形成する。別の実施形態では、有機材料は、説明したように、水素還元を使用して処理されて、燃料として使用され得るか、もしくは合成天然ガス(SNG)または再生可能天然ガス(RNG)として流通パイプラインに注入され得るメタンで主に構成される生成ガスを形成する。
【実施例
【0114】
本明細書に記載の本発明をよりよく理解するために、以下の実施例が、記載されている。これらの実施例は、単に例示を目的とするものであることを理解すべきである。したがって、それらは、本発明の範囲を決して限定するべきではない。
【0115】
実施例1-プロセスモデリング
本開示の2つの実施形態が、2つの特定の有機材料の変換からのメタンの生成の例を提供するために以下に記載される。以下の実施例は、これらの材料の既知の化学組成に基づいている。この情報は、標準的な工学計算、ならびに化学反応のプロセスモデリングと組み合わされる。化学反応は、前述されている。計算は、水素が、反応物質として添加されることを前提とする。水素分離に関して、以下の効率、すなわち、水素回収85%、メタン排除92%、CO排除100%、CO排除50%、および水排除100%、が使用される。
【0116】
一実施形態では、自動車破砕残渣(ASR)などのポリエチレン系プラスチック廃棄物が、メタンまたは合成天然ガス(SNG)に変換される。この材料は、初期還元チャンバ(IRC)に直接入れられるビン内に配置される。ASRは、乾燥ベースで以下の化学組成(モル%)、すなわち、窒素2.2%、炭素53.6%、酸素16.4%、水素6.6%、および灰分21.2%を有する。プロセスは、水素還元反応の完了後の10モル%の過剰な水素を使用してモデル化された。モデルで使用された動作条件は、還元チャンバが、基質で測定されたときに、周囲温度から425℃まで、8℃/分の上昇速度で運転されること、および容器が、(正圧を維持した状態で)1気圧~5気圧の圧力範囲内に保持されることであった。このモデルによれば、生成されたガスは、425℃で反応器に移送され、反応器では、水素の連続供給が加えられて、10%の測定された過剰濃度の水素が維持され(この濃度は、上記のように、水素がリサイクルのために分離される前に、少なくとも10%の水素が、スクラバシステムを出るガス中に存在することを確実にすることによって、判定され得る)、反応器は、850℃で運転される。ASRの含水率は、典型的には、5%~25%である。ポリエチレンに加えて、ASRは、DEHP(フタル酸ジエチルヘキシル)および臭素系難燃剤を含有し得る。予想された出力ガスは、以下の化学組成、すなわち、メタン51.7%、CO38.5%、CO8.2%、および水素1.6%を有した。1乾燥トンのASRの変換は、28.7GJのより高い発熱量の出力ガスを生成する。このモデルによると、残っている固形残留物は、元素状炭素、シリカ、ガラスの破片、および亜鉛を含む金属を含有すると予想される。DEHPおよび臭素系難燃剤、ならびにいかなる微量のPCBも、破壊されると予想される。プロセス全体でのタール形成は、実質的に存在しないと予想される。この出力ガス中のメタンを他の成分から分離して、95%以上のメタンであり、かつSNGとして天然ガスパイプラインでの分配に好適である、ガスを生成することができる。
【0117】
別のモデル化されたプロセスでは、消化された下水汚泥が、メタンまたは再生可能な天然ガス(RNG)に変換される。この材料は、初期還元チャンバ(IRC)に直接入れられるトレイ内に配置される。消化された下水汚泥は、乾燥ベースで以下の化学組成(モル%)、すなわち、窒素4.7%、炭素34.0%、酸素20.0%、水素4.9%、硫黄1.3%、塩素0.1%、および灰分35.0%を有する。このプロセスは、水素還元反応の完了後の10モル%の過剰な水素を使用してモデル化された(この濃度は、上記のように、水素がリサイクルのために分離される前に、少なくとも10%の水素が、スクラバシステムを出るガス中に存在することを確実にすることによって、判定され得る)。消化された下水汚泥の含水率は、典型的には、70%~80%である。このモデルによると、この下水汚泥が、最初に、周囲温度から105℃まで、8℃/分で昇温され、反応器バイパスバルブが、開かれて、蒸気の形態の汚泥からの水が、スクラバ内に捕捉され、30℃まで急冷されて、再び水を形成することを可能にする。このモデルによると、汚泥が、実質的に水を含まず、蒸発が、加熱からのエネルギーを消費しなくなると、スラッジ内で最高温度が425℃に到達するまで、温度が、8℃/分で上昇され、この容器は、(正圧が維持された状態で)1気圧~5気圧の圧力に保持された。生成されたガスは、850℃で運転された反応器に、425℃で移送された。上記のように、追加の水素を反応器に添加して、10%の過剰濃度の水素を反応器ガス中に維持することができる。予想された出力ガスは、以下の化学組成、すなわち、メタン45.2%、CO43.3%、CO9.2%、および水素2.4%を有した。1乾燥トンの消化された下水汚泥の変換は、20.4GJのより高い発熱量の出力ガスを生成すると予想される。この出力ガス中のメタンを他の成分から分離して、95%以上のメタンであり、かつRNGとして天然ガスパイプラインでの分配に好適である、ガスを生成することができる。
【0118】
実施例2-比較例-PCB破壊
電気コンデンサのビンが、還元チャンバ内に配置されて、以下のように運転された。
【0119】
チャンバが窒素でパージされて、酸素含有空気を除去し、次いで、水素が、導入された。水素が導入されると、容器の温度ができる限り早く600℃に到達するように、チャンバが、天然ガス焚き加熱チューブで外部から加熱された。容器内の内壁上に配置された熱電対で測定された温度が550℃に到達したとき、チャンバが、ガス状炭化水素で急速に充満し、還元チャンバ、反応器(850℃)、およびスクラバの両方に急速な圧力サージをもたらした。バーナーが即座に弱められて、圧力サージが、1分以内に鎮められた。次いで、反応器に流入し、反応器を通ってスクラバシステムに流入するガスの一定であるが管理可能な生成を維持するために、チャンバが、再び加熱された。これは、スクラバシステム全体を通して可視のタール形成をもたらし、少なくとも28日ごとに徹底的な洗浄を要した。反応器の温度を875℃および900℃まで上げても、このタール形成にはほとんどまたはまったく影響がなかった。
【0120】
実施例3-乾燥木材チップからのメタンの生成
乾燥木材チップの実施例は、8℃/分での、周囲から450℃までの還元チャンバの昇温の後に、実行される。スチールメッシュで作製された容器が、乾燥木材チップで充填され、密封されたチャンバ内に配置された。このチャンバが、窒素で空気をパージされ、電気加熱炉装置に入れられた。水素が、一定速度で添加され、温度が、1気圧の圧力で、8℃/分の一定速度で450℃まで上昇された。温度が80℃に達したときに、スクラバの後でメタンガスが検出され始めた。メタンの濃度は、温度が上昇するにつれて徐々に増加し、水素の濃度は、メタンの生成に対応して減少し、400~420℃で最高濃度に達した。450℃に達したとき、さらなるメタンは生成されていなかったので、昇温速度が、停止された。スクラバまたは反応器システムのどの他の部分にも、タールは形成されなかった。
【0121】
本明細書に記載されているすべての刊行物、特許、および特許出願は、本発明が関係する技術分野の当業者の技術レベルを示しており、各個々の刊行物、特許、または特許出願が、参照により組み込まれるべきことが具体的かつ個別に示された場合と同程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0122】
本発明は、好ましい実施形態を参照して説明されてきたが、当業者が容易に理解するように、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、修正および変形がなされ得ることを理解されたい。そのような修正および変形は、本発明および添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内であるとみなされる。
図1
【国際調査報告】