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特表2022-540349絶対好中球機能(ANF)の臨床現場(POC)診断検査臨床現場(POC)測定に適用可能な全血および体液中の食作用性白血球のオキシダーゼベースの化学発光アッセイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(54)【発明の名称】絶対好中球機能(ANF)の臨床現場(POC)診断検査臨床現場(POC)測定に適用可能な全血および体液中の食作用性白血球のオキシダーゼベースの化学発光アッセイ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/04 20060101AFI20220908BHJP
   C12N 9/02 20060101ALN20220908BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12N9/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577302
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(85)【翻訳文提出日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 US2020036998
(87)【国際公開番号】W WO2020263571
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】62/867,348
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521564504
【氏名又は名称】バイナリ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アレン, ロバート シー.
(72)【発明者】
【氏名】アレン, ジョン シー.
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンス, ジャクソン ティー. ジュニア
【テーマコード(参考)】
4B050
4B063
【Fターム(参考)】
4B050CC10
4B050DD11
4B050EE10
4B050HH01
4B050KK10
4B050LL03
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ23
4B063QR58
4B063QS02
4B063QX02
(57)【要約】
動物の体液中の食細胞数を推測するための方法は、食細胞のNADPHオキシダーゼ活性を刺激する工程;および光を測定し得る機器を使用して化学発光生成基質の放出化学発光によって化学発光生成基質の得られる還元的脱酸素化を定量する工程を包含する。食細胞のNADPHオキシダーゼ活性は、好ましくは、食細胞による呼吸バーストを活性化し得る免疫学的物質または化学物質によって、および溶液中の、または食細胞が接触する表面にコーティングされた刺激物質によって刺激される。刺激物質は、好ましくは、ホルボールミリステートアセテート(PMA)である。動物は、好ましくはヒトであり、体液は、好ましくは血液および/または脊髄液である。食細胞は、好ましくは、好中球であり、化学発光生成基質は、好ましくは、ルシゲニン(N,N’-ジメチル-9,9’-ビアクリジニウムジニトレート)である。推測方法に基づく処置の方法もまた、提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の体液中の食細胞の数を推測するための方法であって、前記方法は、
前記食細胞のNADPHオキシダーゼ活性を刺激する工程;および
光を測定し得る機器を使用して、化学発光生成基質の放出された化学発光によって、前記化学発光生成基質の得られる還元的脱酸素化を定量する工程
を包含する方法。
【請求項2】
前記食細胞のNADPHオキシダーゼ活性は、前記食細胞による呼吸バーストを活性化し得る免疫学的物質または化学物質によって刺激される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記食細胞のNADPHオキシダーゼ活性は、溶液中の、または前記食細胞が接触する表面にコーティングされた刺激物質によって刺激される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記刺激物質は、ホルボールミリステートアセテート(PMA)である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記動物は、ヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記体液は、血液である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記体液は、脊髄液である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記食細胞は、好中球である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記化学発光生成基質は、ルシゲニン(N,N’-ジメチル-9,9’-ビアクリジニウムジニトレート)である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ルシゲニンは、溶液中にあるか、または前記食細胞が接触する表面にコーティングされている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記体液を希釈して、化学発光の赤血球吸光度を減少させる工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記血液を最大約1対500に希釈して、化学発光の赤血球吸光度を減少させる工程を包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記血液を最大約1対1000に希釈して、化学発光の赤血球吸光度を減少させる工程を包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記脊髄液を最大1対100に希釈して、化学発光の赤血球吸光度を減少させる工程を包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
レクチンを使用して、前記体液から赤血球を凝集または除去し、化学発光検出を容易にする工程を包含する、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項16】
前記放出された化学発光は、携帯式または手持ち型のルミノメーターによって測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
構成要素が、臨床現場検査を容易にするために事前製造されている、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
食細胞の前記推測した数を使用して、絶対好中球カウント(ANC)を決定する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ANCを使用して、前記動物における骨髄造血抑制を評価する工程をさらに包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記骨髄造血抑制が、化学療法または炎症もしくは感染の尺度と関連付けられる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記骨髄造血抑制の評価に基づいて前記動物を処置する工程をさらに包含する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
骨髄造血刺激を推測するための方法であって、前記方法は、
光を測定し得る機器を使用して、動物の化学的に活性化された血中好中球の非還元的二原子酸素化駆動性のミエロペルオキシダーゼ(ルミノールCL)活性および還元的脱酸素化(ルシゲニンCL)活性を測定する工程;ならびに
前記ルミノールCL活性 対 前記ルシゲニンCL活性の比を計算する工程
を包含する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
方法は、臨床現場診断検査に適用可能な様式で、血液および体液中の食作用性白血球(すなわち、本質的に好中球であるが、単球および好酸球も含む)の存在を定量する。絶対好中球カウント(ANC)は、通常は化学療法との関連においてまたは炎症の尺度として、骨髄造血抑制を評価するために行われ得る。本明細書で開示される方法は、呼吸バースト代謝の活性化および化学発光生成プローブの還元的二原子酸素化(dioxygenation)の測定に基づいて、食細胞を定量し得る。
【背景技術】
【0002】
背景
自動血液分析器は、全血中の白血球、赤血球および血小板の測定のための十分に確立された機器である。血液の白血球構成要素は、赤血球および血小板とは形態学的におよび機能的に異なる。インピーダンス、光散乱ならびに酵素的なおよび抗原的な差異は、自動血液分析によって白血球を計数および区別するための基本として役立つ。これらの機器は、非常に複雑であり、臨床現場(POC)アッセイの開発に適していない。
【0003】
食細胞代謝の活性化、すなわち、「呼吸バースト」は、ヘキソースモノホスフェート側路のデヒドロゲナーゼを介するグルコース代謝(ペントース経路)における大きな増大、および非ミトコンドリアO消費における比例した増大によって特徴づけられる(Sbarra and Karnovsky 1959)。両方の活性は、血中食細胞に共通する酵素であるNADPHオキシダーゼ(NADPH: Oオキシドレダクターゼ)の活性化を反映する(Rossi, Romeoら. 1972)。食細胞NADPHオキシダーゼの活性化は、エネルギー生成物として天然の化学発光を生じる燃焼性の二原子酸素化反応を駆動する(Allenら 1972)。天然の白血球化学発光は、O依存性であり、ヘキソースモノホスフェート側路デヒドロゲナーゼ活性に正比例する。NADPHオキシダーゼ活性化は、HO、O およびHの生成をもたらす。生成されるHは、塩化物イオンから次亜塩素酸イオン(OCl)へのMPO(H:ハライドオキシドレダクターゼ)酸化および一重項分子酸素(*)を生じるHの添加を伴う二次化学反応の基質として働く(Allen, Yevichら. 1974, Allen 1979)。単離されたMPOのハライド依存性ハロペルオキシダーゼ活性はまた、エネルギー生成物として天然の化学発光を生じる(Allen 1975, Allen 1975)。
【0004】
化学発光量子収率、すなわち、酸素化事象につき発せられる光子の比は、生成される酸素化薬剤のタイプおよび量に、ならびに酸素化される基質の性質および量子効率に依存する。天然の基質の酸素化は、比較的低い化学発光量子収率と関連し、この収率は、酸素化される基質の性質に伴って変動する。高い量子収率の化学発光生成基質(CLS)を導入すると、感度および基質変動性の問題が克服される。環式ヒドラジド(例えば、ルミノール)の添加は、食細胞発光の収率を1000倍超増大させる(Allen and Loose 1976)。ルシゲニンのようなアクリジニウム塩はまた、白血球発光収率を大いに増大させる(Allen 1981, Allen 1982)。
【0005】
環式ヒドラジドおよびアクリジニウム化学発光は、アルカリ性条件下でのHへの曝露によって化学的に誘発され得る(Albrecht 1928, Totter 1964)。しかし、これらの基質は、生理学的環境の軽度に酸性から中性のpH条件においてCLを生じない。ルミノール依存性およびルシゲニン依存性の食細胞CL活性は、異なる酸素化経路を測定する(Allen 1982, Allen 1986)。ルミノールCLは、電子的に励起されたアミノフタレートを生成する二原子酸素化、すなわち、ルミノール+O → アミノフタレート+N+光子から生じる。食作用性白血球において、このような活性は、MPOと強く関連する。ルミノールCLは、非還元的で単純な二原子酸素化から生じる。少しのルミノールCLがMPO陰性白血球において観察されるが、MPO陽性白血球は100倍より大きな発光を生じる(Allen 1986, Merrill, Bretthauerら. 1996, Allen 2019)。
【0006】
食細胞NADPHオキシダーゼは、OからHOへの一価の還元を触媒する。中性環境では、HOは解離して、O およびHを生じ、O およびHOは不均衡になり、Hを生じる。酸性から中性条件下では、二価カチオン性ルシゲニン(N,N’-ジメチル-9,9’ ビアクリジニウムおよびビス-N-メチルアクリジニウム)は、1個の電子の還元を受けて、一価のカチオンラジカルを生じ得る(すなわち、ルシゲニン+++e → ルシゲニン)。そしてこのラジカルは、O と反応して、ジオキセタン中間体を、および最終的には、2個のN-メチルアクリドンおよび光子を生じ得る(すなわち、ルシゲニン+O → ルシゲニン-O→ 2 N-メチルアクリドン+光子(Allen 1981, Allen 2019))。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
要旨
本発明者らは驚くべきことに、食作用性白血球のインピーダンスおよびフローサイトメトリー測定に必要とされる複雑な機器類が、希釈した全血および体液(例えば、脊髄液)に存在する刺激された食細胞の機能的活性を直接測定する化学発光アプローチを使用することによって不要にされ得ることを見出した。血液または体液の容積あたりの食細胞は、化学発光生成基質の刺激されたNADPHオキシダーゼ依存性還元的二原子酸素化を測定することによって決定される。食細胞NADPHオキシダーゼの活性化に最適な刺激物質(例えば、PMA)を導入すると、還元的脱酸素化活性の生成が生じる。
【0008】
ルシゲニンの得られる還元的二原子酸素化は、CLを生じ、これは、ルミノメーターを使用して放出された光を測定することによって定量化され得る。この発光は、検査した血液または体液の容積あたりの食細胞/好中球の代謝活性に比例する。この絶対好中球機能(ANF)アッセイは、絶対好中球カウント(ANC)に比例し、炎症/感染に関して患者の臨床状態を、または化学療法関連骨髄抑制を評価するために適用可能である。このような機能ベースの分析は、従来のANCと比較して、代替のおよび議論の余地はあるにしても優れたアッセイを提供する。ANFアプローチの技術的要件は、臨床現場検査に適用可能である。本明細書中の実施例に記載されるように、ANFアッセイは、静脈穿刺後最初の16時間の間隔の間で血液中の好中球カウント(ANC)および機能の定量的評価を可能にする。
【0009】
さらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面に記載され、これらから明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本明細書で開示される実験例における化学発光強度(速度)を示し、分単位で表される時間に対してプロットした相対発光単位/秒(RLU/秒)として表される。血液の0.25μL 相当量を、登録した最初の2名の被験体、被験体001(丸)および002(菱形)に関して検査した。CLの活性化は、0.25μLの血液の相当量と化学発光生成プローブとしてルシゲニン(N,N’-ジメチル-9,9’-ビアクリジニウムジニトレート)を含む平衡化塩類培地中の0.5nmol PMAとを混合した際に生じた。測定を三回反復で行い、平均速度を、標準偏差(小さな点によって示される)とともに大きい方の白抜きのマークによって示す。
【0011】
図2図2は、本明細書で開示される実験例における積分化学発光を示し、分単位で表される時間に対してプロットした、蓄積相対発光単位(RLU)として表される。その積分CL測定値(RLU)は、図1に示される強度測定から計算される。
【0012】
図3A図3A、B、CおよびDは、それぞれ、本明細書で開示される実験例における白血球、食細胞(好中球、単球および好酸球)、好中球、およびリンパ球カウントに対する積分ルシゲニン依存性CL活性のプロットである。横座標は、PMA刺激したルシゲニンCLとして測定されるオキシダーゼ依存性還元的二原子酸素化活性に対してプロットした0.25μL 血液あたりの細胞カウントを記載する。線形回帰分析と決定係数(R)を、各プロットに対して示す。白血球カウントは、検査した血液の0.25μLあたりであった。DBSSは、培地が、N,N’-ジメチル-9,9’-ビアクリジニウムジニトレート(ルシゲニン)平衡化塩類溶液であったことを示す。血液の静脈穿刺後齢は、1~16時間の範囲であった。
図3B】同上。
図3C】同上。
図3D】同上。
【0013】
図4A図4A、B、CおよびDは、それぞれ、本明細書で開示される実験例における白血球、食細胞(好中球、単球および好酸球)、好中球、およびリンパ球カウントに対する積分ルミノール依存性CL活性のプロットである。横座標は、0.25μL 血液あたりの細胞カウントを記載する;縦座標は、PMA刺激したルミノールCLとして測定した、オキシダーゼ駆動性のMPO依存性(非還元的)二原子酸素化活性を記載する。化学発光生成プローブ、すなわち、LBSS(ルミノール平衡化塩類溶液)以外に、条件は、図3A~Dに関して記載されるとおりであった。
図4B】同上。
図4C】同上。
図4D】同上。
【0014】
図5A図5AおよびBは、本明細書で開示される実験例のCL活性プロットである。図5Aは、血液の静脈穿刺後齢(時間単位)に対する、好中球あたりの積分ルミノール依存性CL活性のプロットである。図5Bは、血液の静脈穿刺後齢(時間単位)に対する、好中球あたりの積分ルシゲニン依存性CL活性のプロットである。積分した検査間隔は、28.9分であった。
図5B】同上。
【0015】
図6A図6AおよびBは、本明細書で開示される実験例のCL活性プロットである。図6Aは、被験体036および037に関する血液の静脈穿刺後齢に対する、好中球あたりの積分ルミノール依存性CL活性のプロットである。図6Bは、被験体036および037に関する血液の静脈穿刺後齢に対する、好中球あたりの積分ルシゲニン依存性CL活性のプロットである。積分した検査間隔は、28.9分であった。
図6B】同上。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
一般的実施形態
【0017】
本開示は、動物の体液中の食細胞数を推測するための方法であって、上記方法は、上記食細胞のNADPHオキシダーゼ活性を刺激する工程;および光を測定し得る機器を使用して、化学発光生成基質の放出された化学発光によって上記化学発光生成基質の得られる還元的脱酸素化を定量する工程を包含する方法を提供する。
【0018】
一実施形態において、上記食細胞のNADPHオキシダーゼ活性は、上記食細胞による呼吸バーストを活性化し得る免疫学的物質または化学物質によって刺激される。
【0019】
一実施形態において、上記食細胞のNADPHオキシダーゼ活性は、溶液中の、または上記食細胞が接触する表面にコーティングされた刺激物質によって刺激される。上記刺激物質は、ホルボールミリステートアセテート(PMA)であり得る。
【0020】
一実施形態において、上記動物は、ヒトである。
【0021】
一実施形態において、上記体液は、血液である。
【0022】
一実施形態において、上記体液は、脊髄液である。上記脊髄液は、化学発光の赤血球吸光度を減少させるために、最大1対100に希釈され得る。
【0023】
一実施形態において、上記食細胞は、好中球である。
【0024】
一実施形態において、上記化学発光生成基質は、ルシゲニン(N,N’-ジメチル-9,9’-ビアクリジニウムジニトレート)である。上記ルシゲニンは、溶液中にあってもよいし、または上記食細胞が接触する表面にコーティングされてもよい。
【0025】
一実施形態において、上記方法は、上記体液を希釈して、化学発光の赤血球吸光度を減少させる工程を包含する。
【0026】
一実施形態において、上記方法は、上記血液を最大約1対500に希釈して、化学発光の赤血球吸光度を減少させる工程を包含する。
【0027】
一実施形態において、上記方法は、上記血液を最大約1対1000に希釈して、化学発光の赤血球吸光度を減少させる工程を包含する。
【0028】
一実施形態において、上記方法は、レクチンを使用して、上記体液から赤血球を凝集または除去し、化学発光検出を容易にする工程を包含する。
【0029】
一実施形態において、上記放出された化学発光は、携帯式または手持ち型のルミノメーターによって測定される。一実施形態において、構成要素は、臨床現場検査を容易にするために事前製造されている。
【0030】
一実施形態において、上記方法は、食細胞の上記推測した数を使用して、絶対好中球カウント(ANC)を決定する工程をさらに包含する。上記方法は、上記ANCを使用して、上記動物における骨髄造血抑制を評価する工程をさらに包含し得、例えば、骨髄造血抑制は、化学療法または炎症もしくは感染の尺度と関連付けられる。これに関して、炎症または感染は、代表的には、骨髄造血活性を増大させるが、感染に応じた好中球消費は、好中球カウントを実際に減少させ得る。上記方法は、骨髄造血抑制の評価に基づいて上記動物を処置する工程をさらに包含し得る。
【0031】
別の実施形態において、骨髄造血刺激を推測するための方法が提供される。上記方法は、光を測定し得る機器を使用して、動物の化学的に活性化された血中好中球の非還元的二原子酸素化駆動性のミエロペルオキシダーゼ(ルミノールCL)活性および還元的脱酸素化(ルシゲニンCL)活性を測定する工程;ならびに上記ルミノールCL活性 対 上記ルシゲニンCL活性の比を計算する工程を包含する。
【0032】
好ましい実施形態
【0033】
本明細書で開示される絶対好中球機能(ANF)アッセイは、希釈した全血または体液(例えば、脊髄液)中で、機能的食細胞、すなわち、単球および好酸球からのわずかな寄与とともに好中球の数を決定するための、高感度の化学発光生成プローブ方法を含む。具体的には、食細胞機能は、ルシゲニンを化学発光生成プローブとして導入し、刺激されたNADPHオキシダーゼ還元的二原子酸素化活性の化学発光生成物を測定することによって定量される。
【0034】
上記方法は、一滴未満の全血または体液しか必要としない。小容積の標本が、平衡塩類溶液で希釈される。その希釈した標本は、食細胞NADPHオキシダーゼ依存性呼吸バースト代謝、および還元的二原子酸素化に感受性の化学発光生成プローブ、例えば、ルシゲニン(N,N’-ジメチル-9,9’-ビアクリジニウムジニトレート)を活性化し得る化学的刺激物質(例えば、ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA))を含む環境へと導入される。このような接触は、発光測定法によって検出および定量され得る化学発光を生じるルシゲニンの食細胞NADPHオキシダーゼ依存性還元的二原子酸素化を活性化する。化学発光生成プローブ(例えば、ルミノール)は、食細胞の非還元的(単純)二原子酸素化反応を、特に、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)によって触媒されるものを測定する。
【0035】
通常の骨髄造血条件下では、非還元的二原子酸素化の測定値は、存在する好中球カウントに近い。炎症性の刺激およびg-CSF処置は、骨髄の前骨髄球プールを拡大し、好中球あたりのMPO含有量の数倍の増大を生じる。非還元的二原子酸素化活性は、食細胞あたりのMPO含有量を反映し、食細胞あたりの比MPO含有量を反映する。ルシゲニンのNADPHオキシダーゼ依存性還元的二原子酸素化は、MPOに依存せず、結果として、標本中の機能的食細胞の数に正比例する。ルシゲニンベースのANFシステムは、刺激された食細胞の還元的二原子酸素化を測定することによって、食細胞の存在を定量する。遺伝的な、例えば、慢性肉芽腫症または後天性好中球異常の非存在下では、NADPHオキシダーゼ還元的二原子酸素化活性のルシゲニン依存性の測定は、MPO非依存性であり、標本の好中球カウントに極めて近い。上記ANCは、標本に存在する好中球の数を決定する。上記ANFアッセイは、標本中の好中球の機能的存在の定量に基づいて、より臨床上関連する情報を提供する。上記ANFアッセイは、静脈穿刺後の最初の16時間の間隔の間の全血ANCを定量的に反映することが示されており、臨床現場検査に適用可能である。
【0036】
食細胞あたりのNADPHオキシダーゼ活性は比較的一定であるが、食細胞あたりのミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性は、骨髄造血刺激の状態に伴って変動する。MPOおよびカチオン性プロテアーゼは、発生の前骨髄球相において合成され、好中球のアズール顆粒に貯蔵されるリソソーム酵素である(Bainton 1999)。食細胞あたりのMPOの濃度は、骨髄造血刺激、すなわち、コロニー刺激因子(生理学的または組換えG-CSFまたはGM-CSF)による活性化の程度に、および好中球発生の骨髄球相の間の有糸分裂数に依存する(Allen, Stevensら. 1997)。例えば、骨髄球相における各分裂は、好中球あたりのミエロペルオキシダーゼを半分に希釈する。NADPHオキシダーゼの構成要素は、発生の骨髄球相において合成され、呼吸バースト代謝のために必要とされる。結果として、食細胞あたりのNADPHオキシダーゼ活性は、骨髄造血活性における変動に関して比較的一定である。食細胞あたりの比NADPHオキシダーゼ活性は、炎症および骨髄造血刺激もしくは抑制の種々の状態において比較的一定のままである。
【0037】
よって、刺激されたオキシダーゼ活性は、食細胞カウントに、特に、好中球カウントに極めて近い。このような活性の測定値は、血液または体液の体積あたりの絶対好中球カウントに極めて近い。化学発光生成プローブとしてのルシゲニンの導入は、食細胞NADPHオキシダーゼ還元的二原子酸素化活性の高感度定量を可能にする(Allen 1981, Allen 1982, Allen 1986)。単純なまたは非還元的な二原子酸素化は、Oが基質に組み込まれる反応である(例えば、ルミノール+O → アミノフタレート+N+光子(Allen and Loose 1976))。還元的二原子酸素化は、Oおよび2還元当量(2電子+2プロトン)が組み込まれる反応(例えば、ルシゲニン+2電子+2プロトン → 2 N-メチルアクリドン+光子)である。
【0038】
ルシゲニンのNADPHオキシダーゼ依存性還元的二原子酸素化は、絶対好中球カウント(ANC)に極めて近い絶対好中球機能(ANF)の測定値を提供する。ANCと一致する情報を提供することに加えて、刺激された好中球オキシダーゼ活性のルシゲニン化学発光(CL)測定値は、有用な臨床情報を提供し、手持ち型ルミノメーターを使用する臨床現場(POC)検査に適用され得る。
【0039】
好中球の活性ベースの測定値は、さらなる情報を提供する。上記ANCは、好中球の物理的存在を定量するが、好中球機能は定量しない。よって、食細胞機能の障害、例えば、慢性肉芽腫症または好中球機能に対する処置の任意の毒性効果と関連する状態は、検出されない。還元的二原子酸素化活性を駆動する呼吸バースト活性の機能的測定値は、好中球の殺微生物能力を定量する。類推によって、酵素の抗原的検出は、その機能に関する情報を提供しない。酵素は、抗原的に存在するが、機能的でない場合がある。上記酵素の機能的測定値は、より完全かつ臨床上有用な情報を提供する;すなわち、上記酵素は、存在しかつ機能的である。
【0040】
刺激された好中球が、ルシゲニンの還元的二原子酸素化を測定することによって定量される場合、そのCL応答は、好中球カウントと相関する。刺激された好中球が、ルミノールの非還元的二原子酸素化を測定することによって定量される場合、そのCL応答は、好中球カウントとの相関を余り示さない。化学発光生成プローブ(例えば、ルミノール)は、非還元的二原子酸素化または二原子酸素化活性、特に、MPOによって触媒されるものを測定する(Allen 2019)。通常の骨髄造血条件下で、好中球あたりのMPO含有量は安定であり、ルミノール二原子酸素化活性は、存在する好中球カウントにおおよそ近い。しかし、増大した骨髄造血活性と関連する臨床状態(例えば、g-CSF処置および炎症刺激)では、骨髄の前骨髄球プールは拡大されており、骨髄の骨髄球プールにおける有糸分裂は少ない。MPOは、発生の前骨髄球相の間にのみ合成される。炎症刺激またはG-CSFでの治療的処置は、前骨髄球プールを刺激および拡大し、骨髄球プールにおける分裂数を減少させる。結果として、MPOを含むアズール顆粒は、発生の骨髄球相において有糸分裂によって希釈されない。このように刺激された骨髄球状態下で合成された好中球は、好中球あたりのMPOにおいて数倍の増大を示す(Allenら 1997)。
【0041】
本明細書で開示されるANF方法は、非常に高感度であり、1マイクロリットル未満の希釈した全血に対して行われ得る。以下の実施例が示すように、血液または体液中の食細胞を定量するためのANF化学発光生成技術は、ANCの機能的等価量を提供する。このルシゲニンCL方法は、技術的に融通性があり、測定のために携帯式または手持ち型のルミノメーターを使用する臨床現場検査(POCT)に適用可能である。POCTの容認および需要は、増大し続けている(Asha, Chanら. 2013, Schilling 2014)。ANC(POCT)のために利用可能な手持ち型POCT方法はない。
【実施例
【0042】
実施例
【0043】
以下の非限定的な実施例は、本明細書で開示される概念を裏付ける科学データを提供する。
【0044】
検査したヒト血液標本は、地域の臨床検査室によって提供された。匿名化した血液標本を、被験体の静脈穿刺の時間、年齢(年単位)、性別、および自動血液分析器(Advia 120, Siemens AG)のプリントアウトとともに得た。全血計数を発注した理由および被験体の医学的状態に関する情報は、知らせなかった。
【0045】
その血液標本を、検査するまで周囲温度(22±8℃)において維持した。58の血液標本の各々を、三回反復で検査した。最初の検査時の血液の平均(average)(平均(mean))静脈穿刺後齢と標準偏差(SD)は、4.1±1.1時間であり、メジアン静脈穿刺後齢は、4.1時間であった。
【0046】
その標本を、約6時間後に再び検査した;平均静脈穿刺後齢とSDは、10.8±2.0時間であり、そのメジアンは、10.4時間であった。その血液を、標本の静脈穿刺後齢に関する容認の限界を確立しようとして、静脈穿刺後の、より後の時間にも検査した。
【0047】
容認可能な程度に再現性のある好中球機能活性が、静脈穿刺後の最初の16時間の期間にわたって得られ、よって、合わせた静脈穿刺平均(平均)とSDである7.4時間±3.8、およびメジアン10.4時間を、分析のために使用した。上記被験体は、23名の男性および35名の女性を含んだ。その年齢範囲は、21~99歳であり、平均年齢69.4およびSD17.5であり、メジアン年齢は、70.5歳であった。合計116個の測定値を取得した。
【0048】
使用した培地は、希釈培地(DM)、ルミノール平衡化塩類溶液(LBSS)およびルシゲニン(ジメチルビアクリジニウムジニトレート)平衡化塩類溶液(DBSS)を含んだ。DMは、以下を含んだ: 5mM 3-(N-モルホリノ)プロパノスルホネート(MOPS)緩衝化平衡化塩類溶液(139mEq/L Na、5.0mEq/L K、132mEq/L Cl、0.8mM HPO; pH7.2; 290±5mOsmol/kgおよびエンドトキシン <0.06エンドトキシンユニット(EU)/mL)。LBSSは、以下を含んだ: 139mEq/L Na、5.0mEq/L K、1.3mM Ca2+、0.9mM Mg2+、142mEq/L Cl、0.8mM HPO、および0.15mM ルミノール(5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン)を含む5mM MOPS緩衝化塩類溶液、ならびに5.5mM D-グルコース; pH7.2; 290±5mOsmol/kgおよびエンドトキシン <0.06EU/mL。DBSSは、以下を含んだ: 139mEq/L Na、5.0mEq/L K、1.3mM Ca2+、0.9mM Mg2+、142mEq/L Cl、0.8mM HPO、および0.2mM ルシゲニン(N,N’-ジメチル-9,9’-ビアクリジニウムジニトレート;別名ビス-N-メチルアクリジニウムニトレート)を含む5mM MOPS緩衝化塩類溶液、ならびに5.5mM D-グルコース; pH7.2; 290±5mOsmol/kgおよびエンドトキシン <0.06EU/mL。
【0049】
図1は、化学発光強度(速度)のプロットを示し、検査した最初の2名の被験体に関する検査の時間間隔に対してプロットした29分間間隔にわたって相対発光単位(RLU/秒)として表される。エチレンジアミン四酢酸カリウム(KEDTA)で抗凝固処理した全血標本を、DMで最初に希釈し、1対1200の最終希釈で検査した。検査を、三回反復で行った。血液の0.25μL相当量を、検査あたりに使用した。食細胞呼吸バースト代謝の活性化を、0.5ナノモル(nmol) ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)、すなわち、刺激物質をコーティングし、化学発光生成プローブ、すなわち、ルシゲニンまたはルミノールとともに平衡化塩類溶液を含むマイクロプレートウェルに、希釈した血液を添加することで開始した。1ウェルあたりの最終容積は、300μLであった。
【0050】
測定値を、Orion IIマイクロプレートルミノメーター(Titertek Berthold)を使用して、温度37℃において2分37秒間隔で取得した。例えば、被験体001および002の絶対白血球カウント(白血球カウント;WBC)は、それぞれ、2475/0.25μLおよび350/0.25μLであり、被験体001および002の絶対好中球カウント(ANC)は、それぞれ、1,525/0.25μLおよび178/0.25μLであった。被験体001および002の血液標本の静脈穿刺後齢は、それぞれ、5時間40分および2時間49分であった。
【0051】
各被験体に関して、12の化学発光(CL)強度測定値を、28.9分間隔にわたって取得した。図1に示されるように、CL活性を、強度、すなわち、速度として測定し、1秒あたりの相対発光単位(RLU/秒)として表す。よって、プロットしたデータは、時間に関するCL強度の変化(速度)を図示する。CL測定値が、速度(velosity)(速度(rate))測定値であるのに対して、大部分の技術が、生成物の蓄積または基質の枯渇、すなわち、積分値を測定することを認識することは重要である。
【0052】
いくつかの比較のために、検査の選択した時間間隔にわたる蓄積RLU、すなわち、積分値または合計値としてCLを表すことは、適切であり得る。CL速度(RLU/秒)値は、検査の間隔にわたるRLU/秒プロット下の面積の合計によって、RLU値として表される積分CLに変換され得る。
【0053】
図2は、測定の時間間隔の間に蓄積した合計または積分RLUとして表される図1のCLデータを示す。CLの積分表現は、CLを他の積分値(例えば、検査した血液容積に存在する好中球数)に関連させる場合に好ましいものであり得る。
【0054】
比較のために、積分CL値の回帰分析を、図3A、B、CおよびDに図示されるように、検査した血液標本に関して存在する白血球のタイプに対してプロットした。図3Aに示されるように、ルシゲニン発光と全白血球カウントとのある程度の相関(すなわち、R=0.6782)が存在する。血液中の白血球のうちの大部分は、食細胞であり、これらの食細胞のうちの大部分は、好中球である。ルシゲニンCLと食細胞および好中球カウントとの相関は、良好である(すなわち、それぞれ0.8336および0.8336のR)。ルシゲニンCLは、リンパ球カウントとは相関を示さない(すなわち、R=0.0053)。
【0055】
ルミノールCLは、単純(非還元的)二原子酸素化活性の生成物である。食細胞に関しては、ルミノールは、オキシダーゼ駆動性のMPO活性または好酸球ペルオキシダーゼ活性を測定する。ルシゲニンは、オキシダーゼ依存性食細胞還元的二原子酸素化活性を測定し、そのCL活性は、ハロペルオキシダーゼ非依存性である。ルシゲニンCLとしての食細胞オキシダーゼ活性の測定は、その目的が、血液または体液に存在する食細胞カウントを定量することである場合に、ルミノールCLを超える利点を有する。比食細胞NADPHオキシダーゼ活性、すなわち、食細胞/好中球あたりのオキシダーゼ活性は、比較的一定であり、好中球あたりのMPO濃度における変動とは独立している。上記MPO/好中球は、骨髄造血の骨髄球相における有糸分裂数に関して変動する。顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)における炎症性または治療上の増大は、MPOが合成される前骨髄球プールを拡大し、骨髄球プールの有糸分裂活性を減少させる。各骨髄球分裂は、好中球あたりのMPOを半分削除する。よって、前骨髄球プールの刺激および拡大、ならびに骨髄球プールにおける分裂数の減少は、増大したMPOとともにより大きな好中球を生じる(Allen, Stevensら. 1997)。
【0056】
活性化した食細胞NADPHオキシダーゼ活性は、還元的二原子酸素化活性の原因であり、ルシゲニンCL活性として測定される。この同じオキシダーゼ活性は、ハロペルオキシダーゼ依存性の単純(非還元的)二原子酸素化活性を駆動する。食細胞ルミノール依存性CL活性は、ハロペルオキシダーゼ、特に、MPO活性を反映する。図4A、B、CおよびDのグラフおよび回帰分析は、好中球カウントと相関する好中球比オキシダーゼ活性とは異なり、MPO依存性であるルミノールCLが、より変動性であることを示す。好中球あたりのルミノールCLは、宿主の炎症の状態に伴って、およびG-CSFまたはGM-CSF処置に伴って変動する(Allen, Stevensら. 1997)。単純(非還元的)二原子酸素化活性と還元的二原子酸素化との間の差異は、図4A~Dの積分ルミノールCL回帰分析と、図3A~Dの積分ルシゲニンCL回帰分析とを比較することによって認識され得る。好中球に対してプロットした還元的二原子酸素化(ルシゲニンCL)が、R=0.7282を表す好中球に対してプロットした単純(非還元的)二原子酸素化(ルミノールCL)より、食細胞/好中球とより大きな相関(すなわち、R=0.8336)を示すことが注記される。ルシゲニンCLと同様に、ルミノールCLとリンパ球カウントとの相関は存在しない(すなわち、R=0.0020)。
【0057】
図4BおよびCにおいて、最高の食細胞/好中球カウントを有する2名の被験体(グラフ右上の2つの点)がまた、高い比オキシダーゼ駆動性MPO活性を示すことが注記される。高い好中球カウントおよび高い比MPO活性は、G-CSF刺激された骨髄造血が、通常は、免疫-生理学的刺激または治療介入に応答していることを示唆する(Allen, Stevensら. 1997)。
【0058】
図5AおよびBに図示されるように、血液の静脈穿刺後齢に対する、好中球あたりの積分ルミノールおよびルシゲニンCL(すなわち、比活性/好中球)のプロットは、好中球あたりのCL活性が、化学発光生成プローブとしてルミノールまたはルシゲニンのいずれかを使用して、静脈穿刺後の最初の16時間の間隔の間に比較的一定のままであることを示す。この最初の期間の後に、好中球オキシダーゼおよびオキシダーゼ駆動性MPO活性は、指数関数的に減少する。以前に記載されたように、ルミノールCL活性は、静脈穿刺後年齢にかかわらず、ルシゲニンCL活性より大きな分散を示す。好中球測定値あたりの複合ルミノールおよびルシゲニンCL活性のRは、それぞれ、0.3434および0.6005である。ルミノールCLに関して観察されるより低いRは、好中球あたりのMPOにおける以前に記載された変動と一致する。
【0059】
静脈穿刺後の機能的寿命は、好中球オキシダーゼまたはオキシダーゼ駆動性のミエロペルオキシダーゼ活性が測定されようが、本質的に同じである。個々の被験体036および037に関する図6AおよびBに図示されるように、好中球あたりのオキシダーゼ駆動性のMPO活性(すなわち、ルミノールCL)および好中球あたりのオキシダーゼ活性(すなわち、ルシゲニンCL)はともに、血中好中球の静脈穿刺後齢に対して指数関数的減少を示す。NADPHオキシダーゼ活性およびNADPHオキシダーゼ駆動性のMPO活性の両方を駆動する還元当量を提供するヘキソースモノホスフェート側路酵素の機能は、年齢関連性の機能喪失に感受性である。
【0060】
各個々の被験体の指数関数的関係性を一緒に平均化すると、60時間までの4回の完全な測定値で20名の被験体の静脈穿刺後齢に対するルミノールCLの関係性は、y=59780e-0.026Xであり、R±標準偏差=0.9426±0.0619であった。60時間までの4回の完全な測定値で24名の被験体の静脈穿刺後齢に対するルシゲニンCLの関係性は、y=55404e-0.024Xであり、R±標準偏差=0.9038±0.0938であった。
【0061】
最後に、食細胞および特に好中球NADPHオキシダーゼ活性の化学発光生成によるプローブ化は、血液および体液中の好中球を測定するために適用され得る。好中球あたりのオキシダーゼ機能は、化学発光生成プローブとしてルシゲニン(DBSS: N,N’-ジメチル-9,9’-ビアクリジニウムジニトレート(ルシゲニン)平衡化塩類溶液)を使用して最もよく測定される。このようなルシゲニンCLは、検査される全血または体液のマイクロリットル未満の量で、食細胞/好中球の数と相関する。EDTA抗凝固処理した血液中の食細胞の機能的活性は、静脈穿刺後の最初の16時間の期間の間に比較的十分に維持される。この最初の期間の後、好中球の機能的能力(ルシゲニンCLを使用したオキシダーゼ活性またはルミノールCLを使用したオキシダーゼ駆動性のMPO活性のいずれかとして測定される)は、静脈穿刺後齢に対して指数関数的に減少する。
【0062】
ルミノールCLは、好中球あたりのNADPHオキシダーゼ駆動性のMPO活性を測定する。好中球あたりのMPO含有量は変動性であり、骨髄造血刺激の状態に依存する。細胞サイズ、アズール顆粒含有量および好中球あたりのMPOは、G-CSFの免疫学的生成およびG-CSFでの治療的処置後に増大する(Allen, Stevensら. 1997, Allen, Daleら. 2000)。結果として、オキシダーゼ駆動性のMPO(ルミノールCL)活性 対 オキシダーゼ(ルシゲニンCL)活性の比は、好中球骨髄造血の処置または免疫-生理学的刺激に関する有用な情報を提供する。
【0063】
定義
【0064】
本明細書で使用される場合、「約(about)」、「およそ(approximately)」および「実質的に(substantially)」とは、数値範囲、例えば、参照された数字の-10%~+10%、好ましくは参照された数字の-5%~+5%、より好ましくは参照された数字の-1%~+1%、最も好ましくは参照された数字の-0.1%~+0.1%の範囲の中の数字に言及することが理解される。
【0065】
さらに、本明細書中の全ての数値範囲は、その範囲内の全ての整数、整数または分数を含むことが理解されるべきである。さらに、これらの数値範囲は、その範囲の中の任意の数字または数字の部分集合に関する特許請求の範囲の裏付けを提供するとして解釈されるべきである。例えば、1~10という開示は、1~8、3~7、1~9、3.6~4.6、3.5~9.9などの範囲を裏付けると解釈されるべきである。
【0066】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、文言の単数形は、文脈が明らかに異なって規定しなければ、複数形を含む。従って、「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」、および「前記、その、この(the)」の言及は概して、それぞれの用語の複数形を含む。例えば、「1つの刺激物質(a stimulus)」または「前記刺激物質(the stimulus)」への言及は、複数のこのような刺激物質を含む。「Xおよび/またはY」の文脈において使用される用語「および/または」は、「X」もしくは「Y」、または「XおよびY」として解釈されるべきである。同様に、「XまたはYのうちの少なくとも一方」は、「X」もしくは「Y」、または「XおよびYの両方」として解釈されるべきである。
[0001]
同様に、文言「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」は、排他的ではなくむしろ包括的に解釈されるべきである。同様に、用語「含む(including)」、「含む(including)」および「または」は全て、そのような構成が文脈から明確に禁止されていなければ、包括的であると解釈されるべきである。しかし、本開示によって提供される実施形態は、本明細書で具体的に開示されていない任意の要素を欠いていてもよい。従って、用語「含む(comprising)」を使用して規定される実施形態の開示は、開示される構成要素「から本質的になる」実施形態および開示される構成要素「からなる」実施形態の開示でもある。
[0002]
本明細書で使用される場合、用語「例(example)」とは、特に用語の列挙が続く場合、例示および例証に過ぎず、排他的であるとも網羅的であるとも解釈されるべきではない。本明細書で開示される任意の実施形態は、別段明示的に示されなければ、本明細書で開示される任意の他の実施形態と組み合わされ得る。
[0003]
「動物」としては、哺乳動物が挙げられるが、これらに限定されず、哺乳動物としては、齧歯類、水生哺乳動物、飼い慣らされた動物(例えば、イヌおよびネコ)、家畜(例えば、ヒツジ、ブタ、ウシおよびウマ)、およびヒトが挙げられるが、これらに限定されない。「動物」、「哺乳動物」またはこれらの複数形が使用される場合、これらの用語は、文章の文脈によって示されるかまたは示されることが意図される効果が可能である任意の動物に適用される。本明細書で使用される場合、用語「患者」は、処置(処置は、本明細書で定義されるとおり)を受けているかまたは受けることが意図された動物、例えば、哺乳動物、および好ましくは、ヒトを含むことが理解される。用語「個体」および「患者」はしばしば、ヒトに言及するために本明細書で使用されるが、本開示はそのように限定されない。
参考文献
【表1-1】
【表1-2】
本発明は、下記のとおりに請求項に記載される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
【国際調査報告】