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特表2022-540368シリコンとグラファイトとを含む複合材料及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(54)【発明の名称】シリコンとグラファイトとを含む複合材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/02 20060101AFI20220908BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220908BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20220908BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20220908BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20220908BHJP
   C01B 32/19 20170101ALN20220908BHJP
   C01B 32/15 20170101ALN20220908BHJP
【FI】
C01B33/02 Z ZNM
H01M4/36 C
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/36 E
B82Y30/00
B82Y40/00
C01B32/19
C01B32/15
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021577961
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 IB2020056050
(87)【国際公開番号】W WO2020261194
(87)【国際公開日】2020-12-30
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521568133
【氏名又は名称】タルガ テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】クラウディオ・カピグリア
(72)【発明者】
【氏名】サイ・シヴァレッディ
(72)【発明者】
【氏名】フェンミン・リウ
【テーマコード(参考)】
4G072
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072BB05
4G072DD05
4G072DD06
4G072GG02
4G072HH01
4G072JJ02
4G072JJ26
4G072MM02
4G072MM26
4G072MM32
4G072MM36
4G072MM40
4G072QQ06
4G072TT01
4G072TT06
4G072UU30
4G146AA01
4G146AB07
4G146AD17
4G146CB11
4G146CB19
4G146CB32
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB29
5H050FA17
5H050FA19
5H050FA20
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA27
5H050GA29
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA14
(57)【要約】
複合材料(42)の製造のための方法(10)であって、シリコン粒子(16)を、溶媒中及び/又はポリマーの存在下にて、グラファイト粒子(20)と共にサイズ縮小工程(18)に付し、コーティングされたシリコンナノ粒子(26)を生成する工程と;工程(i)の生成物をバインダと共に又はバインダなしで処理して、複合体(32)を生成する工程と;工程(ii)の前記複合体(32)を熱処理して、複数のコーティングされたシリコンナノ粒子、グラファイト粒子、及びカーボンマトリクスを含み、前記グラファイト粒子が前記カーボンマトリクス内に保持されている複合材料(12)を生成する工程と;工程(iii)の前記複合体(12)をバインダ(36)でコーティングする工程と;工程(iv)の前記複合体(38)を熱処理して、アモルファスカーボンを含むシェルを生成する工程とを含む方法(10)。シリコンとグラファイトとを含む複合材料も開示される。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシリコンナノ粒子、グラファイト粒子、カーボンマトリクス、及び外部シェルを含み、前記シリコンナノ粒子と前記グラファイト粒子とが前記カーボンマトリクス内に保持されていることを特徴とする、シリコンとグラファイトとを含む複合材料。
【請求項2】
前記カーボンマトリクスが、
(i)アモルファスカーボンマトリクス;
(ii)結晶性カーボンマトリクス;又は
(iii)アモルファスカーボンマトリクスと結晶性カーボンマトリクスとの両方の組合せの形態で提供される、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記シリコンナノ粒子が、前記グラファイト粒子でコーティングされている、請求項1から2のいずれかに記載の複合材料。
【請求項4】
前記グラファイト粒子が、グラフェン様ナノシートの形態である、請求項1から3のいずれかに記載の複合材料。
【請求項5】
前記複合材料が、複数の数層グラフェン粒子を更に含む、請求項1から4のいずれかに記載の複合材料。
【請求項6】
前記複合材料が、ナノ粒子スケールより大きいグラファイト粒子を更に含む、請求項1から5のいずれかに記載の複合材料。
【請求項7】
前記外部シェルが、アモルファスカーボンを含む、請求項1から6のいずれかに記載の複合材料。
【請求項8】
前記アモルファスカーボンの前記外部シェルが、
(i)1以上の酸化物;又は
(ii)Al、TiO、ZrO、BaTiO、MgO、CuO、ZnO、Fe、GeO、LiO、MnO、NiO、若しくはゼオライト、又はそれらの任意の組合せの形態で存在する1以上の酸化物を更に含むことができる、請求項7に記載の複合材料。
【請求項9】
前記酸化物が、約20nm~1ミクロンの粒子サイズを有する、請求項8に記載の複合材料。
【請求項10】
前記複合材料が、前記アモルファスカーボンマトリクス内に設けられる前記グラファイト粒子、グラフェン、数層グラフェン、及びグラファイトナノ粒子のうちの1以上の存在によって与えられる弾性を有する、請求項1から9のいずれかに記載の複合材料。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の複合材料を含むことを特徴とする、アノード複合体。
【請求項12】
複合材料の製造のための方法であって、
(i)シリコン粒子を、溶媒中及び/又はポリマーの存在下にて、グラファイト粒子と共にサイズ縮小工程に付し、コーティングされたシリコンナノ粒子を生成する工程と;
(ii)工程(i)の生成物をバインダと共に又はバインダなしで処理して、複合体を生成する工程と;
(iii)工程(ii)の前記複合体を熱処理して、複数のコーティングされたシリコンナノ粒子、グラファイト粒子、及びカーボンマトリクスを含み、前記グラファイト粒子が前記カーボンマトリクス内に保持されている複合材料を生成する工程と;
(iv)工程(iii)の前記複合体をバインダでコーティングする工程と;
(v)工程(iv)の前記複合体を熱処理して、アモルファスカーボンを含むシェルを生成する工程とを含むことを特徴とする、方法。
【請求項13】
前記シェルが、
(i)1以上の酸化物;又は
(ii)Al、TiO、ZrO、BaTiO、MgO、CuO、ZnO、Fe、GeO、LiO、MnO、NiO、若しくはゼオライト、又はそれらの任意の組合せの形態で存在する1以上の酸化物を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
シリコン材料が溶媒中でサイズ縮小工程に付されて、工程(i)の前記シリコンナノ粒子を生成する最初の工程を更に含む、請求項12から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記最初の工程の前記シリコン材料が、ミクロンスケールのシリコン粒子の形態で提供される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程(i)の前記サイズ縮小工程が、約20~200nmのサイズを有するシリコンナノ粒子を提供する、請求項12から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記最初の工程及び工程(i)の前記サイズ縮小工程が、それぞれ粉砕工程である、請求項14から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記粉砕工程が、1以上のビーズミルで行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記溶媒が、
(i)非水性溶媒;又は
(ii)イソプロピルアルコールの形態で提供される、請求項12から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記ポリマーが、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、及びポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の群から選択される、請求項12から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
工程(ii)の前記処理が、
(i)バインダの存在下での噴霧乾燥;
(ii)混合工程;又は
(iii)生成された二次粒子又は生成物が球状化されるハイブリダイズプロセスを含む混合工程の形態で提供される、請求項12から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
工程(iii)及び工程(v)の前記熱処理が、熱分解の形態で提供される、請求項12から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
工程(iii)及び工程(v)の前記熱処理が、存在するバインダをアモルファスカーボンに変換する、請求項12から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
工程(iii)の前記熱処理の温度が、工程(v)の前記熱処理の温度より低い、請求項12から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
工程(iii)の前記熱処理後、前記複合材料の表面積(BET)が、約70~120m/gである、請求項12から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
工程(v)の前記熱処理後、前記材料の表面積(BET)が、約10~30m/gである、請求項12から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
ミリング工程(i)の前記グラファイト粒子が、予め剥離されたグラファイト粒子の形態で提供される、請求項12から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
工程(i)のミリングプロセスが、前記シリコンナノ粒子に付着するグラフェンを生成する、請求項12から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
工程(iii)の前記熱処理が、約500℃~700℃の温度で行われる、請求項12から28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
工程(v)の前記熱処理が、
(i)約750℃~1100℃;又は
(ii)約850℃~1000℃の温度で行われる、請求項12から29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
複合材料の製造のための方法であって、
(i)シリコン粒子を、溶媒中及び/又はポリマーの存在下にて、グラファイト粒子と共にサイズ縮小工程に付し、コーティングされたシリコンナノ粒子を生成する工程と;
(ii)工程(i)の生成物をバインダと共に又はバインダなしで処理して、複合体を生成する工程と;
(iii)工程(ii)の前記複合体を熱処理して、複数のコーティングされたシリコンナノ粒子、グラファイト粒子、及びカーボンマトリクスを含み、前記グラファイト粒子が前記カーボンマトリクス内に保持されている複合材料を生成する工程と;
(iv)工程(iii)の前記複合体をバインダでコーティングする工程と;
(v)工程(iv)の前記複合体を熱処理して、前記バインダを変換し、アモルファスカーボンを含むシェルを生成する工程とを含むことを特徴とする、方法。
【請求項32】
工程(ii)の前記処理が、噴霧乾燥又はメカノフュージョンによって行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
アノード複合体の製造のための方法であって、
(i)シリコン粒子を、溶媒中及び/又はポリマーの存在下にて、グラファイト粒子と共にサイズ縮小工程に付し、コーティングされたシリコンナノ粒子を生成する工程と;
(ii)工程(i)の生成物をバインダと共に又はバインダなしで処理して、複合体を生成する工程と;
(iii)工程(ii)の前記複合体を熱処理して、複数のコーティングされたシリコンナノ粒子、グラファイト粒子、及びカーボンマトリクスを含み、前記グラファイト粒子が前記カーボンマトリクス内に保持されているアノード複合材料を生成する工程と;
(iv)工程(iii)の前記複合体をバインダでコーティングする工程と;
(v)工程(iv)の前記複合体を熱処理して、前記バインダを変換し、アモルファスカーボンを含むシェルを生成する工程とを含むことを特徴とする、方法。
【請求項34】
シリコン材料が溶媒中でサイズ縮小工程に付されて、工程(i)の前記シリコン粒子を生成する最初の工程を更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記最初の工程の前記シリコン材料が、ミクロンスケールのシリコン粒子の形態で提供される、請求項33から34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記最初の工程及び工程(i)の前記サイズ縮小工程が、
(i)それぞれ粉砕工程である;又は
(ii)それぞれ、1以上のビーズミルで行われる粉砕工程である、請求項33から35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記溶媒が、
(i)非水性溶媒;又は
(ii)イソプロピルアルコールの形態で提供される、請求項33から36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記ポリマーが、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、及びポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の群から選択される、請求項33から37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
工程(ii)の前記処理が、
(i)バインダの存在下での噴霧乾燥;
(ii)混合工程;又は
(iii)生成された二次粒子又は生成物が球状化されるハイブリダイズプロセスを含む混合工程の形態で提供される、請求項33から38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
工程(iii)の前記熱処理が、熱分解の形態で提供される、請求項33から39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
工程(iii)の前記熱処理が、存在するバインダをアモルファスカーボンに変換する、請求項33から40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
ミリング工程(i)の前記グラファイト粒子が、予め剥離されたグラファイト粒子の形態で提供される、請求項33から41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
工程(i)のミリングプロセスが、前記シリコンナノ粒子に付着するグラフェンを生成する、請求項33から42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
工程(iii)の前記熱処理が、約500℃~700℃の温度で行われる、請求項33から43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
工程(v)の前記熱処理が、
(i)約750℃~1100℃;又は
(ii)約850℃~1000℃の温度で行われる、請求項33から44のいずれかに記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンとグラファイトとを含む複合材料に関する。より詳細には、本発明の複合材料は、リチウムイオン電池のアノード材料としての使用が意図される。
【0002】
1つの非常に好ましい形態では、本発明は更に、シリコンとグラファイトとを含む複合材料を含むアノード複合体に関する。
【0003】
本発明は更に、シリコンとグラファイトとを含む複合材料を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
現在、シリコン/グラファイト複合体は、リチウムイオンアノード材料としてある程度の可能性を有することが理解されている。しかし、シリコン/グラファイト複合体に関する多くの欠点がよく知られ、理解されている。これらの欠点としては、最大400%の高レベルの膨張、及び不十分なサイクル寿命が挙げられる。シリコン/グラファイト複合体の商業的用途においては、少なくともこれらの課題に対処する必要がある。
【0005】
現在知られ理解されているシリコン含有アノードの不可逆的な容量損失は、現在、電気活物質としてのナノ構造シリコン粒子を使用することによって対処されている。シリコンナノ粒子及びナノ構造シリコンは、マイクロスケールの粒子と比較したとき、充電及び放電時の体積変化により耐性があることが報告されている(非特許文献1)。しかし、ナノスケールの粒子は、調製及び取り扱いが難しいことが知られているので、商業規模での用途には適さないと考えられている。シリコン粒子のサイズに関する課題に加えて、シリコン表面の性質も、固体電極界面(SEI)の形成及び電子伝導性に重要な役割を果たす。シリコンの表面のSEIは安定しておらず、リチウムを継続的に消費するので、シリコンが電解質に曝露されるのを回避する、又は少なくとも低減するように、表面を改質する必要がある。更に、シリコンは、特に優れた導電材料とは考えられていない。
【0006】
コアシェル構造のグラファイト/シリコン@熱分解炭素(Gr/Si@C)複合体が製造されており、機械粉砕、噴霧乾燥、及びピッチの使用が挙げられる(非特許文献2)。この先行技術のプロセスでは、比較的スケーラブルで費用効果の高い方法であると考えられるものが示されている。存在するシリコン及びグラファイトのカーボンコーティングのために、サイクル性能は、多くの従来技術と比較して遥かに改善されている。しかし、637.7mAh/gの容量で77.9%という低い初回サイクル効率が示されたことは、電池業界で求められるレベルからは遥かに遠いものである。
【0007】
特許文献1は、最初に、溶媒中でのシリコン微粒子のボールミリングによるシリコンナノ粒子の製造について記載する。少なくとも1つの酸素又は窒素原子を含む熱分解性「アモルファス」カーボン前駆体をシリコンナノ粒子と溶媒に添加し、溶媒を除去し、残ったシリコンナノ粒子を熱分解性カーボン前駆体の厚い層でコーティングする。次に、これらのコーティングされたシリコンナノ粒子を熱分解し、導電性熱分解カーボンマトリクスに分散された複数のシリコンナノ粒子を含む複合粒子を形成する。この従来技術のプロセスでは、大量のアモルファスカーボンを使用するので、重大な初回サイクル損失(FCL)及び膨張が、依然として大きな問題である。アモルファスカーボンは、経験される許容し得ないFCLと膨張の大部分に寄与すると考えられている。更に、Si@Cが膨張すると、アモルファスカーボンは弾性がないので、シリコンとカーボンの結合が弱まる。
【0008】
ミクロンサイズのシリコン上にニッケルの厚い層を無電解めっきすることにより、グラフェンケージ(graphene-caged)シリコン構造が形成され、大容量、低膨張、長サイクル寿命、及び低FCLなどの優れた電池性能が達成された(非特許文献3)。
【0009】
数層グラフェンでコーティングされたシリコンナノ粒子はまた、化学蒸着(CVD)によって形成されると記載されている(非特許文献4)。この場合も、これらのコーティングされたシリコンナノ粒子は、大容量、低膨張、長サイクル寿命、及び低FCLなど、優れた電池性能を提供すると言及されている。しかし、これらのグラフェンコーティング材料を形成するプロセスは、高価であることが知られており、特に商業的用途で求められるレベルまでにはスケーラブルではない。
【0010】
シリコン上に数層グラフェンをコーティングする、より費用効果の高い方法は、特許文献2に記載されており、グラファイトとシリコンの混合物のビーズミリングによって、シリコンをグラフェンでコーティングすることである。しかし、この方法の使用は、求められる性能を有する生成物を生成しない。例えば、最初の200サイクルにおいて、大幅に容量が低下する(>45%)。
【0011】
本発明の複合材料及び方法は、その1つの目的として、従来技術のプロセスに関連する前述した問題の実質的に1以上を克服すること、又は少なくとも、その有用な代替物を提供することである。
【0012】
背景技術の前述の議論は、本発明の理解を容易にすることのみが意図されている。この議論は、言及される任意の事項(material)が、本願の優先日における技術常識の一部である、又はその一部であったと認定する又は認めるものではない。
【0013】
本明細書全体を通して、文脈上特段の断りがない限り、用語「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などの変形は、指定された整数(integer)又は整数の群を含み、他の整数又は整数の群を排除しないことを意味すると理解される。
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、文脈上特段の断りがない限り、用語「ボールミル」は、用語「ビーズミル」を含むと理解され、用語「ビーズミル」は、用語「ボールミル」を含むと理解される。同様に、文脈上特段の断りがない限り、文脈に応じて、用語「ボールミル」及び/又は用語「ビーズミル」は、用語「粉砕」を含むと理解され、用語「粉砕」は、用語「ビーズミル」及び/又は用語「ボールミル」を含むと理解される。
【0015】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、文脈上特段の断りがない限り、用語「メカノフュージョン」は、複数の粒子間のメカノケミカル反応を誘発して新たな特性を有する新たな粒子を生成する混合を意味するとみなされる。同様に、用語「混合」は、用語メカノフュージョンを含むと理解される。
【発明の概要】
【0016】
本発明によれば、複数のシリコンナノ粒子、グラファイト粒子、カーボンマトリクス、及び外部シェルを含み、前記シリコンナノ粒子と前記グラファイト粒子とが前記カーボンマトリクス内に保持されている、シリコンとグラファイトとを含む複合材料が提供される。
【0017】
好ましくは、カーボンマトリクスは、アモルファスカーボンマトリクス、結晶性カーボンマトリクス、又はアモルファスカーボンマトリクスと結晶性カーボンマトリクスとの両方の組合せの形態で提供される。
【0018】
シリコンナノ粒子は、好ましくは、グラファイト粒子でコーティングされている。グラファイト粒子は、好ましくは、グラフェン様ナノシートの形態である。更に好ましくは、複合材料は、複数の数層グラフェン粒子を更に含む。複合材料は、ナノ粒子スケールより大きいグラファイト粒子を更に含むことができる。
【0019】
一形態では、アモルファスカーボンの更なる外層が、複数のシリコンナノ粒子、グラファイト粒子、及びカーボンマトリクスの周りであるが、シェル内に設けられる。
【0020】
アモルファスカーボンの外層は、1以上の酸化物を更に含むことができる。前記1以上の酸化物は、好ましくは、Al、TiO、ZrO、BaTiO、MgO、CuO、ZnO、Fe、GeO、LiO、MnO、NiO、若しくはゼオライト、又はそれらの任意の組合せの形態で存在することができる。
【0021】
好ましくは、酸化物は、約20nm~1ミクロンの粒子サイズを有する。
【0022】
好ましくは、複合材料は、アモルファスカーボンマトリクス内に設けられ得るグラファイト粒子、グラフェン、数層グラフェン、及びグラファイトナノ粒子のうちの1以上の存在によって与えられる一定レベルの弾性を有する。
【0023】
本発明によれば、前記の複合材料を含むアノード複合体が更に提供される。
【0024】
本発明によれば、複合材料の製造のための方法が更に提供され、前記方法は、
(i)シリコン粒子を、溶媒中及び/又はポリマーの存在下にて、グラファイト粒子と共にサイズ縮小工程に付し、コーティングされたシリコンナノ粒子を生成する工程と;
(ii)工程(i)の生成物をバインダと共に又はバインダなしで処理して、複合体を生成する工程と;
(iii)工程(ii)の前記複合体を熱処理して、複数のコーティングされたシリコンナノ粒子、グラファイト粒子、及びカーボンマトリクスを含み、前記グラファイト粒子が前記カーボンマトリクス内に保持されている複合材料を生成する工程と;
(iv)工程(iii)の前記複合体をバインダでコーティングする工程と;
(v)工程(iv)の前記複合体を熱処理して、アモルファスカーボンを含むシェルを生成する工程とを含む。
【0025】
好ましくは、前記シェルは、1以上の酸化物を更に含む。更に好ましくは、前記1以上の酸化物は、Al、TiO、ZrO、BaTiO、MgO、CuO、ZnO、Fe、GeO、LiO、MnO、NiO、若しくはゼオライト、又はそれらの任意の組合せの形態で提供される。
【0026】
本発明の一形態では、前記方法は、シリコン材料が溶媒中でサイズ縮小工程に付されて、工程(i)のシリコンナノ粒子を生成する最初の工程を更に含む。
【0027】
好ましくは、最初の工程のシリコン材料は、ミクロンスケールのシリコン粒子の形態で提供される。
【0028】
本発明の一形態では、工程(i)のサイズ縮小工程は、約20~200nmのサイズを有するシリコンナノ粒子を提供する。
【0029】
更に好ましくは、最初の工程及び工程(i)のサイズ縮小工程は、それぞれ粉砕工程である。更に好ましくは、粉砕工程は、1以上のビーズミルで行われる。
【0030】
本発明の一形態では、溶媒は、非水性溶媒の形態で提供される。好ましくは、溶媒は、イソプロピルアルコールの形態で提供される。
【0031】
本発明の一形態では、ポリマーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、及びポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の群から選択される。
【0032】
工程(ii)の処理は、本発明の一形態では、好ましくは、バインダの存在下にて、噴霧乾燥の形態で提供され得る。
【0033】
工程(ii)の処理は、本発明の更なる形態では、混合工程の形態で提供され得る。混合工程は、好ましくは、ハイブリダイズプロセスを含み、これにより、生成された二次粒子又は生成物が球状化される。
【0034】
好ましくは、工程(iii)及び工程(v)の熱処理は、熱分解の形態で提供される。
【0035】
更に好ましくは、工程(iii)及び工程(v)の熱処理は、存在するバインダをアモルファスカーボンに変換する。
【0036】
工程(iii)の熱処理の温度は、好ましくは、工程(v)の温度より低い。
【0037】
工程(iii)の熱処理後、複合材料の表面積(BET)は、好ましくは、約70~120m/gである。工程(v)の熱処理後、材料のBETは、好ましくは、約10~30m/gである。
【0038】
好ましくは、ミリング工程(i)のグラファイト粒子は、予め剥離されたグラファイト粒子の形態で提供される。
【0039】
本発明の一形態では、工程(i)のミリングプロセスは、シリコンナノ粒子に付着するグラフェンを生成する。
【0040】
工程(iii)の熱処理は、好ましくは、約500℃~700℃の温度で行われる。
【0041】
更に好ましくは、工程(v)の熱処理は、約750℃~1100℃の温度で行われる。
【0042】
更に好ましくは、工程(v)の熱処理は、約850℃~1000℃の温度で行われる。
【0043】
本発明によれば、複合材料の製造のための方法が更に提供され、前記方法は、
(i)シリコン粒子を、溶媒中及び/又はポリマーの存在下にて、グラファイト粒子と共にサイズ縮小工程に付し、コーティングされたシリコンナノ粒子を生成する工程と;
(ii)工程(i)の生成物をバインダと共に又はバインダなしで処理して、複合体を生成する工程と;
(iii)工程(ii)の前記複合体を熱処理して、複数のコーティングされたシリコンナノ粒子、グラファイト粒子、及びカーボンマトリクスを含み、前記グラファイト粒子が前記カーボンマトリクス内に保持されている複合材料を生成する工程と;
(iv)工程(iii)の前記複合体をバインダでコーティングする工程と;
(v)工程(iv)の前記複合体を熱処理して、前記バインダを変換し、アモルファスカーボンを含むシェルを生成する工程とを含む。
【0044】
好ましくは、工程(ii)の処理は、噴霧乾燥又はメカノフュージョンによって行われる。
【0045】
本発明によれば、アノード複合体の製造のための方法が更に提供され、前記方法は、
(i)シリコン粒子を、溶媒中及び/又はポリマーの存在下にて、グラファイト粒子と共にサイズ縮小工程に付し、コーティングされたシリコンナノ粒子を生成する工程と;
(ii)工程(i)の生成物をバインダと共に又はバインダなしで処理して、複合体を生成する工程と;
(iii)工程(ii)の前記複合体を熱処理して、複数のコーティングされたシリコンナノ粒子、グラファイト粒子、及びカーボンマトリクスを含み、前記グラファイト粒子が前記カーボンマトリクス内に保持されているアノード複合材料を生成する工程と;
(iv)工程(iii)の前記複合体をバインダでコーティングする工程と;
(v)工程(iv)の前記複合体を熱処理して、前記バインダを変換し、アモルファスカーボンを含むシェルを生成する工程とを含む。
【0046】
本発明の一形態では、前記方法は、シリコン材料が溶媒中でサイズ縮小工程に付されて、工程(i)のシリコン粒子を生成する最初の工程を更に含む。
【0047】
好ましくは、最初の工程のシリコン材料は、ミクロンスケールのシリコン粒子の形態で提供される。
【0048】
更に好ましくは、最初の工程及び工程(i)のサイズ縮小工程は、それぞれ粉砕工程である。更に好ましくは、粉砕工程は、1以上のビーズミルで行われる。
【0049】
本発明の一形態では、溶媒は、非水性溶媒の形態で提供される。好ましくは、溶媒は、イソプロピルアルコールの形態で提供される。
【0050】
本発明の一形態では、ポリマーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、及びポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の群から選択される。
【0051】
工程(ii)の処理は、本発明の一形態では、好ましくは、バインダの存在下にて、噴霧乾燥の形態で提供され得る。
【0052】
工程(ii)の処理は、本発明の更なる形態では、メカノフュージョン又は混合工程の形態で提供され得る。混合工程は、好ましくは、ハイブリダイズプロセスを含み、これにより、生成された二次粒子又は生成物が球状化される。
【0053】
好ましくは、工程(iii)の熱処理は、熱分解の形態で提供される。
【0054】
更に好ましくは、工程(iii)の熱処理は、存在するバインダをアモルファスカーボンに変換する。
【0055】
好ましくは、ミリング工程(i)のグラファイト粒子は、予め剥離されたグラファイト粒子の形態で提供される。
【0056】
本発明の一形態では、工程(i)のミリングプロセスは、シリコンナノ粒子に付着するグラフェンを生成する。
【0057】
工程(iii)の熱処理は、好ましくは、約500℃~700℃の温度で行われる。
【0058】
更に好ましくは、工程(v)の熱処理は、約750℃~1100℃の温度で行われる。
【0059】
更に好ましくは、工程(v)の熱処理は、約850℃~1000℃の温度で行われる。
以下、本発明を、単なる一例として、その2種類の実施形態及び添付図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1図1は、本発明に係る複合材料の製造のためのプロセスの概略図である。
図2図2は、本出願人のグラファイト材料の走査型電子顕微鏡写真(SEM)であり、数層グラフェン(FLG)と混合されたフレーク状のグラファイトを示す。
図3図3は、本出願人のビーズミルされた剥離グラファイト(168分間のビーズミリングを伴うIPA中の10%剥離グラファイト)の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
図4図4は、本発明の複合材料のいくつかの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示し、は、グラファイトの薄いフレークを示し、**は、数層グラフェンを示す。
図5図5は、本発明の複合材料の半電池試験の結果を示し、異なる量の複合材料が、以下の条件でサイクルされる-リチウム化:1回目のサイクル:0.1C~5mV、次いで、0.01Cまで5mVに維持、その他のサイクル:0.2C~5mV、次いで、0.25Cまで5mVに維持;脱リチウム化:1回目のサイクル:0.1C~1.0V、その他のサイクル:0.2C~1.0V、複合体のシリコン含量は、30~50%Wtである。
図6図6は、Si@C及びGr@Si@C1@C2のアノード複合体のカレンダリング効果試験の結果をそれぞれ示す。
図7図7は、本発明の複合材料の全電池試験の結果を示す。
図8a図8aは、複合材料の全電池試験のサイクル及び容量保持の結果を示し、0.5Cで140サイクル後、97%の容量保持である。
図8b図8bは、複合材料の全電池試験のサイクル及び容量保持の結果を示し、0.5Cで140サイクル後、97%の容量保持である。
【0061】
発明を実施するための最良の形態
本発明は、複数のシリコンナノ粒子、グラファイト粒子、カーボンマトリクス、及び外部シェルを含み、前記シリコンナノ粒子と前記グラファイト粒子とが前記カーボンマトリクス内に保持されている、シリコンとグラファイトとを含む複合材料を提供する。カーボンマトリクスは、アモルファスカーボンマトリクス、結晶性カーボンマトリクス、又はアモルファスカーボンマトリクスと結晶性カーボンマトリクスとの両方の組合せの形態で提供される。
【0062】
シリコンナノ粒子は、グラファイト粒子でコーティングすることができる。グラファイト粒子は、グラフェン様ナノシートの形態で提供することができる。複合材料は、複数の数層グラフェン粒子を更に含むことができる。複合材料は、ナノ粒子スケールより大きいグラファイト粒子を更に含むことができる。複合材料は、アモルファスカーボンマトリクス内に設けられるグラファイト粒子、グラフェン、数層グラフェン、及びグラファイトナノ粒子(GNP)のうちの1以上の存在によって与えられる一定レベルの弾性を有する。
【0063】
一形態では、アモルファスカーボンの更なる外層が、複数のシリコンナノ粒子、グラファイト粒子、及びカーボンマトリクスの周りであるが、シェル内に設けられる。
【0064】
アモルファスカーボンの外層は、1以上の酸化物を更に含むことができる。前記1以上の酸化物は、好ましくは、Al、TiO、ZrO、BaTiO、MgO、CuO、ZnO、Fe、GeO、LiO、MnO、NiO、若しくはゼオライト、又はそれらの任意の組合せの形態で存在することができる。酸化物は、約20nm~1ミクロンの粒子サイズを有する。
【0065】
本発明は更に、前記した及び/又は以下に記載される形態のうちの1つにおける複合材料を含むアノード複合体を提供する。
【0066】
本発明は、複合材料の製造のための方法を更に提供し、前記方法は、
(i)シリコン粒子を、溶媒中及び/又はポリマーの存在下にて、グラファイト粒子と共にサイズ縮小工程に付し、コーティングされたシリコンナノ粒子を生成する工程と;
(ii)工程(i)の生成物をバインダと共に又はバインダなしで処理して、複合体を生成する工程と;
(iii)工程(ii)の前記複合体を熱処理して、複数のコーティングされたシリコンナノ粒子、グラファイト粒子、及びカーボンマトリクスを含み、前記グラファイト粒子が前記カーボンマトリクス内に保持されている複合材料を生成する工程と;
(iv)工程(iii)の前記複合体をバインダでコーティングする工程と;
(v)工程(iv)の前記複合体を熱処理して、アモルファスカーボンを含むシェルを生成する工程とを含む。
【0067】
前記シェルは、1以上の酸化物を更に含む。例えば、前記1以上の酸化物は、Al、TiO、ZrO、BaTiO、MgO、CuO、ZnO、Fe、GeO、LiO、MnO、NiO、若しくはゼオライト、又はそれらの任意の組合せの形態で提供される。
【0068】
本発明の一形態では、前記方法は、シリコン材料が溶媒中でサイズ縮小工程に付されて、工程(i)のシリコンナノ粒子を生成する最初の工程を更に含む。
【0069】
最初の工程のシリコン材料は、ミクロンスケールのシリコン粒子の形態で提供される。最初の工程及び工程(i)のサイズ縮小工程は、それぞれ粉砕工程である。更に好ましくは、粉砕工程は、1以上のビーズミルで行われる。
【0070】
溶媒は、非水性溶媒の形態で提供される。1つの好適な非水性溶媒は、イソプロピルアルコール(IPA)である。
【0071】
ポリマーが存在する場合、ポリマーは、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、及びポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の群から選択される。ポリマーは1~40%wt/wtで存在し、シリコン粒子は、1~80%wt/wtで存在する。本発明の1つの好ましい形態では、ポリマーは、5%wt/wtで存在し、シリコン粒子は、10%wt/wtで存在する。
【0072】
工程(ii)の処理は、噴霧乾燥の形態で提供することができ、バインダが存在することが好ましい。或いは、工程(ii)の処理は、混合又はメカノフュージョン工程の形態で提供することができる。混合工程は、ハイブリダイズプロセスを含み、これにより、生成された二次粒子又は生成物が球状化される。
【0073】
工程(iii)の熱処理は、熱分解の形態で提供される。工程(iii)の熱処理により、存在するバインダがアモルファスカーボンに変換される。
【0074】
サイズ縮小工程(i)のグラファイト粒子は、予め剥離されたグラファイト粒子の形態で提供され、サイズ縮小工程が、シリコンナノ粒子に付着するグラフェンを生成する。
【0075】
工程(iii)の熱処理は、好ましくは、約500℃~700℃の温度で行われる。工程(v)の熱処理は、約750℃~1100℃の温度で行われる、又は好ましい一形態では、約850℃~1000℃の温度で行われる。
【0076】
本発明は、複合材料の製造のための方法を更に提供し、前記方法は、
(i)シリコン粒子を、溶媒中及び/又はポリマーの存在下にて、グラファイト粒子と共にサイズ縮小工程に付し、コーティングされたシリコンナノ粒子を生成する工程と;
(ii)工程(i)の生成物をバインダと共に又はバインダなしで処理して、複合体を生成する工程と;
(iii)工程(ii)の前記複合体を熱処理して、複数のコーティングされたシリコンナノ粒子、グラファイト粒子、及びカーボンマトリクスを含み、前記グラファイト粒子が前記カーボンマトリクス内に保持されている複合材料を生成する工程と;
(iv)工程(iii)の前記複合体をバインダでコーティングする工程と;
(v)工程(iv)の前記複合体を熱処理して、前記バインダを変換し、アモルファスカーボンを含むシェルを生成する工程とを含む。
【0077】
本発明は、アノード複合体の製造のための方法を更に提供し、前記方法は、
(i)シリコン粒子を、溶媒中及び/又はポリマーの存在下にて、グラファイト粒子と共にサイズ縮小工程に付し、コーティングされたシリコンナノ粒子を生成する工程と;
(ii)工程(i)の生成物をバインダと共に又はバインダなしで処理して、複合体を生成する工程と;
(iii)工程(ii)の前記複合体を熱処理して、複数のコーティングされたシリコンナノ粒子、グラファイト粒子、及びカーボンマトリクスを含み、前記グラファイト粒子が前記カーボンマトリクス内に保持されているアノード複合材料を生成する工程と;
(iv)工程(iii)の前記複合体をバインダでコーティングする工程と;
(v)工程(iv)の前記複合体を熱処理して、前記バインダを変換し、アモルファスカーボンを含むシェルを生成する工程とを含む。
【0078】
本発明の一形態では、前記方法は、シリコン材料が溶媒中でサイズ縮小工程に付されて、工程(i)のシリコンナノ粒子を生成する最初の工程を更に含む。最初の工程のシリコン材料は、ミクロンスケールのシリコン粒子の形態で提供される。
【0079】
最初の工程及び工程(i)のサイズ縮小工程は、それぞれ粉砕工程である。粉砕工程は、1以上のビーズミルで行われる。
【0080】
本発明の一形態では、溶媒は、非水性溶媒の形態で提供される。溶媒は、イソプロピルアルコールの形態で提供することができる。
【0081】
存在する場合、ポリマーは、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、及びポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の群から選択される。ポリマーは1~40%wt/wtで存在し、シリコン粒子は、1~80%wt/wtで存在する。本発明の1つの好ましい形態では、ポリマーは、5%wt/wtで存在し、シリコン粒子は、10%wt/wtで存在する。
【0082】
工程(ii)の処理は、噴霧乾燥の形態で提供することができ、バインダが存在することが好ましい。或いは、工程(ii)の処理は、混合の形態で提供することができる。混合工程は、ハイブリダイズプロセスを含み、これにより、生成物が球状化される。
【0083】
工程(iii)の熱処理は、熱分解の形態で提供される。工程(iii)の熱処理により、存在するバインダがアモルファスカーボンに変換される。
【0084】
ミリング工程(i)のグラファイト粒子は、予め剥離されたグラファイト粒子の形態で提供される。
【0085】
本発明の一形態では、工程(i)のミリングプロセスは、シリコンナノ粒子に付着するグラフェンを生成する。
【0086】
工程(iii)の熱処理は、好ましくは、約500℃~700℃の温度で行われる。工程(v)の熱処理は、約750℃~1100℃の温度で行われる、又は好ましい一形態では、約850℃~1000℃の温度で行われる。
【0087】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るプロセス10を示し、プロセス10は、最終複合材料42の製造を目的としている。プロセス10は、最初のシリコン材料サイズ縮小工程、例えば、シリコンナノ粒子16を生成するミリング工程14と、別のサイズ縮小工程、例えば、ミリング工程18とを含み、シリコンナノ粒子が、グラファイト粒子20と共に溶媒中でミリングされて、グラファイトナノ粒子22、数層グラフェン24、及びグラフェンコーティングシリコンナノ粒子26のそれぞれが生成される。溶媒は、非水性溶媒、例えば、イソプロピルアルコールである。ミリング工程14及び18は、500ミクロンのサイズのビーズを利用して、1以上のセラミックビーズミルで好都合に行うことができる。
【0088】
シリコンナノ粒子は、例えば、約80nm~150nmで提供される。グラファイト粒子20は、約30ミクロン未満のサイズで提供することができる。本発明の一形態では、グラファイト粒子は、予め剥離されたグラファイトの形態で提供される。
【0089】
プロセス10は、更に、処理工程28、例えば、噴霧乾燥又はメカノフュージョン工程を含み、ミリング工程18の生成物が、バインダ30の添加と共に、噴霧乾燥又はメカノフュージョンされて、二次粒子又は複合体32を生成する。バインダ30は、ピッチの形態で提供することができる。或いは、別の有機炭素源が、バインダ30を構成することができる。処理工程28によって生成される複合体32は、例えば、1~40ミクロンのサイズである。
【0090】
プロセス10は更に、複合体32の熱処理工程、例えば、熱分解34を含み、これによって、バインダ30がアモルファスカーボンに変換されて、第1の中間体複合材料12を形成する。熱分解34は、約500℃~700℃の温度で行われる。
【0091】
バインダ36、例えば、有機源を用いて、第1の中間体複合材料12に更なるコーティングを適用して、第2の中間体複合体38を形成する。一形態では、バインダ36は、ピッチの形態で提供される。バインダ36は、いくつかの形態では、酸化物材料の1つ又はそれらの混合物を含むことができる。酸化物材料は、例えば、Al、TiO、ZrO、BaTiO、MgO、CuO、ZnO、Fe、GeO、LiO、MnO、NiO、若しくはゼオライト、又はそれらの任意の組合せであることができる。
【0092】
プロセス10は、更なる熱処理工程、例えば、熱分解工程40を更に含み、第2の中間体複合体38が熱分解され、バインダ36がアモルファスカーボンに変換されて、複合材料42を形成する。熱分解工程40は、750℃~1100℃、例えば、800℃~1000℃の温度で行われる。
【0093】
グラフェン、FLG、及びGNPが存在するので、本出願人らは、複合材料が弾性特性を有することを理解しており、これらの特性は、膨張(リチウム化)中にミクロンサイズのアノード複合材料が組み込まれ、シリコン表面を電解液に直接曝露するのを防止又は少なくとも低減するのに役立つ。
【0094】
本出願人らは、本発明の複合材料の利点は、20nm~200nmのナノスケールシリコン粒子を生成する低コストのビーズミリングの使用、グラフェンコーティングされたシリコン粒子の形成のための低コストのビーズミリング、及びビーズミリング中でのFLGとGNPの生成のうちの1以上が挙げられると考えている。本発明の複合材料及びアノード複合体におけるFLG及びGNPの使用は、複合体の弾性を増大させるために、本発明によって実現することができる更なる利点である。
【0095】
本発明の別の実施形態によれば、「別の」サイズ縮小工程は、混合/サイズ縮小に付されながら、ポリマーの存在下でグラファイト粒子をシリコンナノ粒子と混合することを含む。ポリマーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、及びポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の群から選択される。ポリマーは、1~40%wt/wtで存在し、シリコン粒子は1~80%wt/wtで存在する。本発明の好ましい一形態では、ポリマーは、5%wt/wtで存在し、シリコン粒子は、10%wt/wtで存在する。
【0096】
生成された混合物は、工程(ii)の処理に送られる。処理工程は、ハイブリダイズプロセスを含む混合工程の形態で提供され、これにより、生成物が球状化される。このハイブリダイゼーション又は球形化プロセスは、「ジャガイモ」形状の粒子を提供する。次に、混合又は球状化された生成物は、本発明の第1の実施形態にしたがって、前記した熱処理工程に送られる。しかし、この第2の実施形態では、ポリマーは、カーボンマトリックスになり、本発明の第1の実施形態で利用される更なるバインダを必要とせずに、グラファイト粒子がシリコンナノ粒子を取り囲むときに、グラファイト粒子が前記カーボンマトリックス内部に保持/配置される。
【0097】
本発明のプロセスは、以下の非限定的な例を参照することにより、よりよく理解され得る。
【実施例
【0098】
Talgaグラファイト
図2は、本出願人の専有ソースから得た典型的な天然グラファイトを示す。グラファイトは、FLGと混合されたフレーク形状であることが分かる。球形材料の場合、接触は通常、点と点と(head to head)で見られる。一方、フレーク状材料の場合、接触は、面と面であり得る。したがって、シリコンとグラファイトの混合物では、フレーク状グラファイトは、シリコンの膨張及び抽出中に物理的接触を維持するのにより適している。更に、混合物中のFLGは、その高い柔軟性のために、良好な接触を維持する上で重要な役割を果たすことも、本出願人によって理解されている。
【0099】
Talga剥離グラファイト
本出願人らは、国際特許出願PCT/GB2018/052095(国際公開第2019/020999号)に詳細に記載されている、複数用途のための独自の剥離グラファイト(Talga HSAと本出願人は称している)を開発しており、前記出願の全内容を参照により本明細書に援用する。
【0100】
本出願人のHSAは、グラファイトのグラフェン層間のギャップを広げている。したがって、典型的な又は「通常の」グラファイトと比較して、グラフェン層は、HSAからより容易に剥離され、ビーズミリング中にFLGを形成する。図3に示されるように、IPA中で10%HSAを約168分間ビーズミリングした後、FLGと薄いフレークを有する物質が大半を占める。
【0101】
シリコン/グラファイト複合体のSEM
本発明に係るシリコン/グラファイト複合体(Gr@Si@C1@C2)を作製するために、ミクロンサイズのシリコン粒子を、まず、非水性溶媒(例えば、IPA)中で、ナノスケール粒子(d50、50~200nm)にビーズミリングした。次に、HSAを、ミリング後のシリコン/IPAの混合物に添加し、更にミリングすることにより、HSAは、FLG、グラフェン、GNP(グラファイトナノ粒子)、及び薄いフレークを生成した。噴霧乾燥を使用して、ナノ混合物をミクロンサイズの二次粒子に変換した。噴霧乾燥又はビーズミリング中に有機バインダを使用したため、熱処理を行ってそれらをアモルファスカーボンに変換した。図4は、熱処理後のシリコン/グラファイト二次粒子のSEM画像を示す。ナノ材料が、GNPとFLGを含む、扱い易いミクロンサイズの粒子に変換されたことが分かる。
【0102】
半電池における電気化学特性評価
半電池試験を、Gr@Si@C1@C2とグラファイトコントロールサンプルに対して行った。図5は、Gr@Si@C1@C2の様々な負荷での脱リチウム化能力を示す。複合体の詳細を、以下の表1に示す。
【0103】
容易に理解できるように、本発明に係るシリコン/グラファイト複合体のそれぞれは、元のグラファイト材料と比較してより高い容量を示し、その容量は、Gr@Si@C1@C2の負荷と共に上昇する。
【0104】
Si/グラファイト複合体の半電池試験の詳細(結果は、図5に示す)は、以下を含む:A~Dのコーティング:活物質(グラファイト+Gr@Si@C1@C2):CMC:SBR:Cmix=94:2:2:2(重量)。Eのコーティング:活物質(Gr@Si@C1@C2):CMC:SBR:Cmix=80:8:8:4。リチウム化:1回目のサイクル:C/10~5mV、その後、C/100まで5mVに維持、その他のサイクル:C/5~5mV、その後、C/40まで5mVに維持。脱リチウム化:1回目のサイクル:C/10~1.0V、その他のサイクル:C/5~1.0V。A:グラファイトサンプル;B~E、それぞれ8%、16.1%、32.2%、及び80%のGr@Si@C1@C2。A~Eの詳細を、以下の表1に示す。
【0105】
前記詳細と以下の表1とにおいてで、CMCは、カルボキシメチルセルロースを示し、SBRは、スチレンブタジエンゴムを示す。
表1図5に示すA~Eの複合体の詳細
【表1】
【0106】
Si@CとGr@Si@C1@C2との比較
ビーズミル粉砕中に、1,5-ジヒドロキシナフレンを使用して、EGを完全に置き換えた。噴霧乾燥と熱分解後、生成物は、Si@Cと称する。以下の表2に、いくつかの比較を示す。Gr@Si@C1@C2中に2.5%のSiを使用した例は、Si@C中に3.4%のSiを使用した例より容量が大きいことが分かる。Si含量が同様である場合、例えば10%の場合、Gr@Si@C1@C2の材料では、Si@Cと比較して容量が約12%高いことが分かる。5%及び10%Si@Cの容量データによると、5%のSi含量の容量は、約460mAh/gであり、これはまた、同様のシリコン含量のGr@Si@C1@C2の容量より約10%低い。更に、Gr@Si@C1@C2がSi@Cと同様の容量を有する場合、より良好なサイクリング寿命が合理的に期待できることも示されている。
表2-Si@CとGr@Si@C1@C2との比較
【表2】
【0107】
続いて、図6は、Si@CとGr@Si@C1@C2それぞれのアノード複合体を使用した場合の半電池容量保持率に対するカレンダリング効果を示す。カレンダリング効果試験の詳細(結果は、図6に示す)は、以下を含む:Si@Cのコーティング:活物質(グラファイト+Si@C):CMC:SBR:Cmix=(84.6:9.4:):2:2:2(重量);Gr@Si@C1@C2のコーティング:活物質(Gr@Si@C1@C2):CMC:SBR:Cmix=(78.8:15.2):2:2:2;Si@C-CとGr@Si@C-C(Gr@Si@C1@C2)は、それぞれ前記と同一であるが、コーティング後に2トンのプレスを施した;リチウム化:1回目のサイクル:C/10~5mV、その後、C/100まで5mVに維持、その他のサイクル:C/5~5mV、その後、C/40まで5mVに維持。脱リチウム化:1回目のサイクル:C/10~1.0V、その他のサイクル:C/5~1.0V。
【0108】
カレンダリング効果について行われる試験に関し、同様の容量(~490mAh/g)の2つのコーティングを使用した。比較のために、コーティング後に2トンのプレスを施した。図6に示すように、Si@Cでは、容量保持率は50サイクル後に96.4%から91.5%に約5%低下した。しかし、Gr@Si@C1@C2を含む複合体では、約0.5%の低下しか観察されなかった。これは、Gr@Si@C1@C2を含む複合材料の構造が、Si@Cを含む複合材料よりも遥かに安定していることを示す。本出願人は、Gr@Si@C1@C2中のFLG、グラフェン、及びGNPの含量が、それらの比較的高い柔軟性によって、構造を維持する上で重要な役割を果たしたことを理解している。
【0109】
Si@Cと、Gr@Si@Cと、Gr@Si@C1@C2との比較
Gr@Si@C1@C2を形成するために、比較的低温、例えば500~700℃を使用して、高表面積を有する炭素にバインダ30を変換し、Gr@Si@Cを形成し、その後、溶媒中での通常の混合によって、ピッチ又はジヒドロキシナフタレンなどのバインダ36で更にコーティングした。次いで、溶媒を蒸発させ、800~1000℃などの比較的高温で更なる熱処理を行って、最終生成物であるGr@Si@C1@C2を形成する。バインダ36は、Al、TiO、及び/又は他のセラミック材料の内容物又は混合物のいずれかを含み得る。
【0110】
図7は、市販のグラファイト、Si@C、Gr@Si@C、及びGr@Si@C1@C2のアノード材料の全電池データを示す。アノードのコーティング:活物質:CMC:SBR:Cmix=94:2:2:2(重量)、活物質は、グラファイト、Si@C、Gr@Si@C、及びGr@Si@C1@C2からそれぞれ選択される。グラファイトコントロールサンプルを除き、活物質中のシリコン含量は、約4%である。コーティング後、アノードコーティングはいずれも、約1.3g/cmにカレンダ加工された。カソードは、NMC111のものである。N/Pの容量比は、約1.05である。充電:1回目のサイクルで、C/10~4.2V、その後、C/100まで4.2Vに維持する。その他のサイクル:C/2~4.2V、その後、C/10まで4.2Vに維持する;放電:1回目のサイクルで、C/10~3.0V。その他のサイクル:C/2~3.0V。
【0111】
図8a及び図8bは、本発明の複合材料の全電池データを示す。グラファイトアノードにおけるGr@Si@C1@C2添加剤(最終アノードにおいて、約3%のSiを意味する)は、0.5Cで140サイクル後に~97%の容量保持率をもたらす。電池は、以下のプロトコルでサイクルする:充電:1回目と2回目のサイクル:C/10から4.2V、その後、C/100まで4.2mVに維持;その他のサイクル:C/2~4.2V、その後、C/10まで4.2Vに維持。放電:1回目と2回目のサイクル:C/10~3.0V;その他のサイクル:C/2~3.0V。N/P~1.05。
【0112】
前記した噴霧乾燥機は、例えば、本発明の範囲から逸脱することなく、噴流流動床システムに有利に置き換えることができることが想定される。
【0113】
サイズ縮小工程(i)は、高い又は大きい「アスペクト比」を有するグラファイト粒子を提供することが更に想定される。かかるグラファイト粒子は、予想されるグラファイトナノ粒子の全部又は一部と、生成される数層グラフェン(FLG)を包含することがある。
【0114】
前記記載を参照して分かるように、本発明の複合材料及びそれを製造する方法は、ナノスケールのシリコン粒子を製造する低コストのボール又はビーズミリング、グラフェンコーティングされたシリコン粒子を形成する低コストのボール又はビーズミリング、同一の低コストのボール又はビーズミリングによる数層グラフェン及びグラファイトナノ粒子の生成、及び比較的高レベルの弾性を有する複合材料を提供できることなど、従来の技術と比較したときに、1以上の利点をもたらす。本発明の一形態、前記第2の実施形態は、グラフェンが存在する必要がなく、グラファイト粒子で十分であると考えられる。
【0115】
本発明の複合材料及びアノード材料は、少なくとも一部、粉砕後にシリコンナノ粒子を覆うグラフェン様材料の複数層の結果として、改善された容量及びより良好なサイクル寿命をもたらし、例えば、「グラフェンスライディング」効果に起因し得る、耐膨張性の改善及び導電性の改善を提供する。更に、ビーズミリング中に作製されたFLG及びGNPは、その高い柔軟性のため、リチウム化/脱リチウム化(膨張/抽出)中、二次粒子の導電性を維持すると理解される。
【0116】
更に、コーティング工程(iv)及び更なる熱処理工程(v)は、シリコングラフェン、グラファイト、及びカーボンマトリクスの複合体を含む、Gr@Si@C又は中間体複合体に更なる保護を提供すると考えられる。この更なる層又はシェルは、安定したSEIを提供し、シリコンと電解質との間の接触を低減し、リチウム化中の外向きの膨張を低減するのに役立つ。
【0117】
当業者に明らかである改変及び変形は、本発明の範囲内にあるとみなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0118】
【特許文献1】国際特許出願PCT/GB2018/051689(国際公開第2018/229515号
【特許文献2】国際公開第2015/073674 A1号
【非特許文献】
【0119】
【非特許文献1】XH Liu et al., “Size-Dependent Fracture of Silicon Nanoparticles During Lithiation”, ACS Nano, 2012, 6 (2), 1522-1531
【非特許文献2】Li et al, “Scalable synthesis of a novel structured graphite/silicon/pyrolysed carbon composite as anode material for high-performance lithium-ion batteries”, Journal of Alloys and Compounds 688 (2016) 1072-1079
【非特許文献3】Li et al., “Growth of conformal graphene cages on micrometre-sized silicon particles as stable battery anodes”, Nature Energy, Vol. 1., Article No. 15029 (2016)
【非特許文献4】Son et al., “Silicon carbide-free graphene growth on silicon for lithium-ion battery with high volumetric energy density”, Nature Communications, Vol. 6., Article No. 7393 (2015)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
【手続補正書】
【提出日】2021-04-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラファイト粒子でコーティングされた複数のシリコンナノ粒子、数層グラフェン粒子、グラファイトナノ粒子、カーボンマトリクス、及びアモルファスカーボン外部シェルを含み、前記グラファイト粒子でコーティングされたシリコンナノ粒子と、前記数層グラフェン粒子と、前記グラファイトナノ粒子とがそれぞれ前記カーボンマトリクス内に保持されていることを特徴とする、シリコンとグラファイトとを含む複合材料。
【請求項2】
前記カーボンマトリクスが、
(i)アモルファスカーボンマトリクス;
(ii)結晶性カーボンマトリクス;又は
(iii)アモルファスカーボンマトリクスと結晶性カーボンマトリクスとの両方の組合せの形態で提供される、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記グラファイト粒子が、グラフェン様ナノシートの形態である、請求項1から2のいずれかに記載の複合材料。
【請求項4】
前記アモルファスカーボンの前記外部シェルが、
(i)1以上の酸化物;又は
(ii)Al 、TiO 、ZrO 、BaTiO 、MgO、CuO、ZnO、Fe 、GeO 、Li O、MnO、NiO、若しくはゼオライト、又はそれらの任意の組合せの形態で存在する1以上の酸化物を更に含むことができる、請求項1から3に記載の複合材料。
【請求項5】
前記酸化物が、約20nm~1ミクロンの粒子サイズを有する、請求項4に記載の複合材料。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の複合材料を含むことを特徴とする、アノード複合体。
【請求項7】
複合材料の製造のための方法であって、
(i)シリコン粒子を、溶媒中、任意にポリマーの存在下にて、グラファイト粒子と共にサイズ縮小工程に付し、グラファイト粒子でコーティングされたコーティングされたシリコンナノ粒子、数層グラフェン粒子、及びグラファイトナノ粒子を生成する工程と;
(ii)工程(i)の生成物をバインダと共に又はバインダなしで処理して、複合体を生成する工程と;
(iii)工程(ii)の前記複合体を熱処理して、グラファイト粒子でコーティングされた複数のシリコンナノ粒子、数層グラフェン粒子、グラファイトナノ粒子、及びカーボンマトリクスを含み、前記粒子のそれぞれが前記カーボンマトリクス内に保持されている複合材料を生成する工程と;
(iv)工程(iii)の前記複合材料をバインダでコーティングする工程と;
(v)工程(iv)の前記複合材料を熱処理して、アモルファスカーボンを含むシェルを生成する工程とを含むことを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記シェルが、
(i)1以上の酸化物;又は
(ii)Al 、TiO 、ZrO 、BaTiO 、MgO、CuO、ZnO、Fe 、GeO 、Li O、MnO、NiO、若しくはゼオライト、又はそれらの任意の組合せの形態で存在する1以上の酸化物を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
シリコン材料が溶媒中でサイズ縮小工程に付されて、工程(i)の前記シリコンナノ粒子を生成する最初の工程を更に含む、請求項7から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記最初の工程の前記シリコン材料が、ミクロンスケールのシリコン粒子の形態で提供される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(i)の前記サイズ縮小工程が、約20~200nmのサイズを有するシリコンナノ粒子を提供する、請求項7から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記最初の工程及び工程(i)の前記サイズ縮小工程が、それぞれ粉砕工程である、請求項9から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記粉砕工程が、1以上のビーズミルで行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記溶媒が、
(i)非水性溶媒;又は
(ii)イソプロピルアルコールの形態で提供される、請求項7から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマーが、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、及びポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の群から選択される、請求項7から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
工程(ii)の前記処理が、
(i)バインダの存在下での噴霧乾燥;
(ii)混合工程;又は
(iii)生成された二次粒子又は生成物が球状化されるハイブリダイズプロセスを含む混合工程の形態で提供される、請求項7から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
工程(iii)及び工程(v)の前記熱処理が、熱分解の形態で提供される、請求項7から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
工程(iii)及び工程(v)の前記熱処理が、存在するバインダをアモルファスカーボンに変換する、請求項7から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
工程(iii)の前記熱処理の温度が、工程(v)の前記熱処理の温度より低い、請求項7から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
工程(iii)の前記熱処理後、前記複合材料の表面積(BET)が、約70~120m /gである、請求項7から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
工程(v)の前記熱処理後、前記材料の表面積(BET)が、約10~30m /gである、請求項7から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
ミリング工程(i)の前記グラファイト粒子が、予め剥離されたグラファイト粒子の形態で提供される、請求項7から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
工程(i)のミリングプロセスが、前記シリコンナノ粒子に付着するグラフェンを生成する、請求項7から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
工程(iii)の前記熱処理が、約500℃~700℃の温度で行われる、請求項7から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
工程(v)の前記熱処理が、
(i)約750℃~1100℃;又は
(ii)約850℃~1000℃の温度で行われる、請求項7から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
工程(ii)の前記処理が、噴霧乾燥又はメカノフュージョンによって行われる、請求項7に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンとグラファイトとを含む複合材料に関する。より詳細には、本発明の複合材料は、リチウムイオン電池のアノード材料としての使用が意図される。
【0002】
1つの非常に好ましい形態では、本発明は更に、シリコンとグラファイトとを含む複合材料を含むアノード複合体に関する。
【0003】
本発明は更に、シリコンとグラファイトとを含む複合材料を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
現在、シリコン/グラファイト複合体は、リチウムイオンアノード材料としてある程度の可能性を有することが理解されている。しかし、シリコン/グラファイト複合体に関する多くの欠点がよく知られ、理解されている。これらの欠点としては、最大400%の高レベルの膨張、及び不十分なサイクル寿命が挙げられる。シリコン/グラファイト複合体の商業的用途においては、少なくともこれらの課題に対処する必要がある。
【0005】
現在知られ理解されているシリコン含有アノードの不可逆的な容量損失は、現在、電気活物質としてのナノ構造シリコン粒子を使用することによって対処されている。シリコンナノ粒子及びナノ構造シリコンは、マイクロスケールの粒子と比較したとき、充電及び放電時の体積変化により耐性があることが報告されている(非特許文献1)。しかし、ナノスケールの粒子は、調製及び取り扱いが難しいことが知られているので、商業規模での用途には適さないと考えられている。シリコン粒子のサイズに関する課題に加えて、シリコン表面の性質も、固体電極界面(SEI)の形成及び電子伝導性に重要な役割を果たす。シリコンの表面のSEIは安定しておらず、リチウムを継続的に消費するので、シリコンが電解質に曝露されるのを回避する、又は少なくとも低減するように、表面を改質する必要がある。更に、シリコンは、特に優れた導電材料とは考えられていない。
【0006】
コアシェル構造のグラファイト/シリコン@熱分解炭素(Gr/Si@C)複合体が製造されており、機械粉砕、噴霧乾燥、及びピッチの使用が挙げられる(非特許文献2)。この先行技術のプロセスでは、比較的スケーラブルで費用効果の高い方法であると考えられるものが示されている。存在するシリコン及びグラファイトのカーボンコーティングのために、サイクル性能は、多くの従来技術と比較して遥かに改善されている。しかし、637.7mAh/gの容量で77.9%という低い初回サイクル効率が示されたことは、電池業界で求められるレベルからは遥かに遠いものである。
【0007】
特許文献1は、最初に、溶媒中でのシリコン微粒子のボールミリングによるシリコンナノ粒子の製造について記載する。少なくとも1つの酸素又は窒素原子を含む熱分解性「アモルファス」カーボン前駆体をシリコンナノ粒子と溶媒に添加し、溶媒を除去し、残ったシリコンナノ粒子を熱分解性カーボン前駆体の厚い層でコーティングする。次に、これらのコーティングされたシリコンナノ粒子を熱分解し、導電性熱分解カーボンマトリクスに分散された複数のシリコンナノ粒子を含む複合粒子を形成する。この従来技術のプロセスでは、大量のアモルファスカーボンを使用するので、重大な初回サイクル損失(FCL)及び膨張が、依然として大きな問題である。アモルファスカーボンは、経験される許容し得ないFCLと膨張の大部分に寄与すると考えられている。更に、Si@Cが膨張すると、アモルファスカーボンは弾性がないので、シリコンとカーボンの結合が弱まる。
【0008】
ミクロンサイズのシリコン上にニッケルの厚い層を無電解めっきすることにより、グラフェンケージ(graphene-caged)シリコン構造が形成され、大容量、低膨張、長サイクル寿命、及び低FCLなどの優れた電池性能が達成された(非特許文献3)。
【0009】
数層グラフェンでコーティングされたシリコンナノ粒子はまた、化学蒸着(CVD)によって形成されると記載されている(非特許文献4)。この場合も、これらのコーティングされたシリコンナノ粒子は、大容量、低膨張、長サイクル寿命、及び低FCLなど、優れた電池性能を提供すると言及されている。しかし、これらのグラフェンコーティング材料を形成するプロセスは、高価であることが知られており、特に商業的用途で求められるレベルまでにはスケーラブルではない。
【0010】
シリコン上に数層グラフェンをコーティングする、より費用効果の高い方法は、特許文献2に記載されており、グラファイトとシリコンの混合物のビーズミリングによって、シリコンをグラフェンでコーティングすることである。しかし、この方法の使用は、求められる性能を有する生成物を生成しない。例えば、最初の200サイクルにおいて、大幅に容量が低下する(>45%)。
【0011】
特許文献3は、シリコン-カーボン-ポリマーマトリクスを調製した後、熱処理して、マトリクスを炭化するカーボン-シリコン複合体の製造を記載している。この炭化されたマトリクスを粉砕し、炭素原料と混合した後、炭化して、その発明のカーボン-シリコン複合体が生成される。このカーボン-シリコン複合体は、二次電池用アノードを提供するためのアノードスラリーとして使用される。
【0012】
特許文献4は、見掛け密度が約2グラム/立方センチメートル以上のシリコン-炭素一次粒子を形成することと、複数の前記一次粒子、第2の炭素質材料、及び発泡剤を熱処理して、多孔質シリコン-カーボン二次粒子を形成することとを含む負の活物質の製造を記載している。この二次粒子に、更なるコーティング層を設けても設けなくてもよい。
【0013】
本発明の複合材料及び方法は、その1つの目的として、従来技術のプロセスに関連する前述した問題の実質的に1以上を克服すること、又は少なくとも、その有用な代替物を提供することである。
【0014】
背景技術の前述の議論は、本発明の理解を容易にすることのみが意図されている。この議論は、言及される任意の事項(material)が、本願の優先日における技術常識の一部である、又はその一部であったと認定する又は認めるものではない。
【0015】
本明細書全体を通して、文脈上特段の断りがない限り、用語「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などの変形は、指定された整数(integer)又は整数の群を含み、他の整数又は整数の群を排除しないことを意味すると理解される。
【0016】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、文脈上特段の断りがない限り、用語「ボールミル」は、用語「ビーズミル」を含むと理解され、用語「ビーズミル」は、用語「ボールミル」を含むと理解される。同様に、文脈上特段の断りがない限り、文脈に応じて、用語「ボールミル」及び/又は用語「ビーズミル」は、用語「粉砕」を含むと理解され、用語「粉砕」は、用語「ビーズミル」及び/又は用語「ボールミル」を含むと理解される。
【0017】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、文脈上特段の断りがない限り、用語「メカノフュージョン」は、複数の粒子間のメカノケミカル反応を誘発して新たな特性を有する新たな粒子を生成する混合を意味するとみなされる。同様に、用語「混合」は、用語メカノフュージョンを含むと理解される。
【発明の概要】
【0018】
本発明によれば、グラファイト粒子でコーティングされた複数のシリコンナノ粒子、数層グラフェン粒子、グラファイトナノ粒子、カーボンマトリクス、及びアモルファスカーボン外部シェルを含み、前記グラファイト粒子でコーティングされたシリコンナノ粒子と、前記数層グラフェン粒子と、前記グラファイトナノ粒子とがそれぞれ前記カーボンマトリクス内に保持されている、シリコンとグラファイトとを含む複合材料が提供される。
【0019】
好ましくは、カーボンマトリクスは、アモルファスカーボンマトリクス、結晶性カーボンマトリクス、又はアモルファスカーボンマトリクスと結晶性カーボンマトリクスとの両方の組合せの形態で提供される。
【0020】
ラファイト粒子は、好ましくは、グラフェン様ナノシートの形態である
【0021】
一形態では、アモルファスカーボンの更なる外層が、複数のシリコンナノ粒子、グラファイト粒子、及びカーボンマトリクスの周りであるが、シェル内に設けられる。
【0022】
アモルファスカーボンの外層は、1以上の酸化物を更に含むことができる。前記1以上の酸化物は、好ましくは、Al、TiO、ZrO、BaTiO、MgO、CuO、ZnO、Fe、GeO、LiO、MnO、NiO、若しくはゼオライト、又はそれらの任意の組合せの形態で存在することができる。
【0023】
好ましくは、酸化物は、約20nm~1ミクロンの粒子サイズを有する。
【0024】
好ましくは、複合材料は、アモルファスカーボンマトリクス内に設けられ得るグラファイト粒子、グラフェン、数層グラフェン、及びグラファイトナノ粒子のうちの1以上の存在によって与えられる一定レベルの弾性を有する。
【0025】
本発明によれば、前記の複合材料を含むアノード複合体が更に提供される。
【0026】
本発明によれば、複合材料の製造のための方法が更に提供され、前記方法は、
(i)シリコン粒子を、溶媒中、任意にポリマーの存在下にて、グラファイト粒子と共にサイズ縮小工程に付し、グラファイト粒子でコーティングされたシリコンナノ粒子、数層グラフェン粒子、及びグラファイトナノ粒子を生成する工程と;
(ii)工程(i)の生成物をバインダと共に又はバインダなしで処理して、複合体を生成する工程と;
(iii)工程(ii)の前記複合体を熱処理して、グラファイト粒子でコーティングされた複数のシリコンナノ粒子、数層グラフェン粒子、グラファイトナノ粒子、及びカーボンマトリクスを含み、前記粒子のそれぞれが前記カーボンマトリクス内に保持されている複合材料を生成する工程と;
(iv)工程(iii)の前記複合材料をバインダでコーティングする工程と;
(v)工程(iv)の前記複合材料を熱処理して、アモルファスカーボンを含むシェルを生成する工程とを含む。
【0027】
好ましくは、前記シェルは、1以上の酸化物を更に含む。更に好ましくは、前記1以上の酸化物は、Al、TiO、ZrO、BaTiO、MgO、CuO、ZnO、Fe、GeO、LiO、MnO、NiO、若しくはゼオライト、又はそれらの任意の組合せの形態で提供される。
【0028】
本発明の一形態では、前記方法は、シリコン材料が溶媒中でサイズ縮小工程に付されて、工程(i)のシリコンナノ粒子を生成する最初の工程を更に含む。
【0029】
好ましくは、最初の工程のシリコン材料は、ミクロンスケールのシリコン粒子の形態で提供される。
【0030】
本発明の一形態では、工程(i)のサイズ縮小工程は、約20~200nmのサイズを有するシリコンナノ粒子を提供する。
【0031】
更に好ましくは、最初の工程及び工程(i)のサイズ縮小工程は、それぞれ粉砕工程である。更に好ましくは、粉砕工程は、1以上のビーズミルで行われる。
【0032】
本発明の一形態では、溶媒は、非水性溶媒の形態で提供される。好ましくは、溶媒は、イソプロピルアルコールの形態で提供される。
【0033】
本発明の一形態では、ポリマーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、及びポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の群から選択される。
【0034】
工程(ii)の処理は、本発明の一形態では、好ましくは、バインダの存在下にて、噴霧乾燥の形態で提供され得る。
【0035】
工程(ii)の処理は、本発明の更なる形態では、混合工程の形態で提供され得る。混合工程は、好ましくは、ハイブリダイズプロセスを含み、これにより、生成された二次粒子又は生成物が球状化される。
【0036】
好ましくは、工程(iii)及び工程(v)の熱処理は、熱分解の形態で提供される。
【0037】
更に好ましくは、工程(iii)及び工程(v)の熱処理は、存在するバインダをアモルファスカーボンに変換する。
【0038】
工程(iii)の熱処理の温度は、好ましくは、工程(v)の温度より低い。
【0039】
工程(iii)の熱処理後、複合材料の表面積(BET)は、好ましくは、約70~120m/gである。工程(v)の熱処理後、材料のBETは、好ましくは、約10~30m/gである。
【0040】
好ましくは、ミリング工程(i)のグラファイト粒子は、予め剥離されたグラファイト粒子の形態で提供される。
【0041】
本発明の一形態では、工程(i)のミリングプロセスは、シリコンナノ粒子に付着するグラフェンを生成する。
【0042】
工程(iii)の熱処理は、好ましくは、約500℃~700℃の温度で行われる。
【0043】
更に好ましくは、工程(v)の熱処理は、約750℃~1100℃の温度で行われる。
【0044】
更に好ましくは、工程(v)の熱処理は、約850℃~1000℃の温度で行われる。
【0045】
本発明によれば、複合材料の製造のための方法が更に提供され、前記方法は、
(i)シリコン粒子を、溶媒中及び/又はポリマーの存在下にて、グラファイト粒子と共にサイズ縮小工程に付し、コーティングされたシリコンナノ粒子を生成する工程と;
(ii)工程(i)の生成物をバインダと共に又はバインダなしで処理して、複合体を生成する工程と;
(iii)工程(ii)の前記複合体を熱処理して、複数のコーティングされたシリコンナノ粒子、グラファイト粒子、及びカーボンマトリクスを含み、前記グラファイト粒子が前記カーボンマトリクス内に保持されている複合材料を生成する工程と;
(iv)工程(iii)の前記複合体をバインダでコーティングする工程と;
(v)工程(iv)の前記複合体を熱処理して、前記バインダを変換し、アモルファスカーボンを含むシェルを生成する工程とを含む。
【0046】
好ましくは、工程(ii)の処理は、噴霧乾燥又はメカノフュージョンによって行われる。
【0047】
本発明によれば、アノード複合体の製造のための方法が更に提供され、前記方法は、
(i)シリコン粒子を、溶媒中及び/又はポリマーの存在下にて、グラファイト粒子と共にサイズ縮小工程に付し、コーティングされたシリコンナノ粒子を生成する工程と;
(ii)工程(i)の生成物をバインダと共に又はバインダなしで処理して、複合体を生成する工程と;
(iii)工程(ii)の前記複合体を熱処理して、複数のコーティングされたシリコンナノ粒子、グラファイト粒子、及びカーボンマトリクスを含み、前記グラファイト粒子が前記カーボンマトリクス内に保持されているアノード複合材料を生成する工程と;
(iv)工程(iii)の前記複合体をバインダでコーティングする工程と;
(v)工程(iv)の前記複合体を熱処理して、前記バインダを変換し、アモルファスカーボンを含むシェルを生成する工程とを含む。
【0048】
本発明の一形態では、前記方法は、シリコン材料が溶媒中でサイズ縮小工程に付されて、工程(i)のシリコン粒子を生成する最初の工程を更に含む。
【0049】
好ましくは、最初の工程のシリコン材料は、ミクロンスケールのシリコン粒子の形態で提供される。
【0050】
更に好ましくは、最初の工程及び工程(i)のサイズ縮小工程は、それぞれ粉砕工程である。更に好ましくは、粉砕工程は、1以上のビーズミルで行われる。
【0051】
本発明の一形態では、溶媒は、非水性溶媒の形態で提供される。好ましくは、溶媒は、イソプロピルアルコールの形態で提供される。
【0052】
本発明の一形態では、ポリマーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、及びポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の群から選択される。
【0053】
工程(ii)の処理は、本発明の一形態では、好ましくは、バインダの存在下にて、噴霧乾燥の形態で提供され得る。
【0054】
工程(ii)の処理は、本発明の更なる形態では、メカノフュージョン又は混合工程の形態で提供され得る。混合工程は、好ましくは、ハイブリダイズプロセスを含み、これにより、生成された二次粒子又は生成物が球状化される。
【0055】
好ましくは、工程(iii)の熱処理は、熱分解の形態で提供される。
【0056】
更に好ましくは、工程(iii)の熱処理は、存在するバインダをアモルファスカーボンに変換する。
【0057】
好ましくは、ミリング工程(i)のグラファイト粒子は、予め剥離されたグラファイト粒子の形態で提供される。
【0058】
本発明の一形態では、工程(i)のミリングプロセスは、シリコンナノ粒子に付着するグラフェンを生成する。
【0059】
工程(iii)の熱処理は、好ましくは、約500℃~700℃の温度で行われる。
【0060】
更に好ましくは、工程(v)の熱処理は、約750℃~1100℃の温度で行われる。
【0061】
更に好ましくは、工程(v)の熱処理は、約850℃~1000℃の温度で行われる。
以下、本発明を、単なる一例として、その2種類の実施形態及び添付図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1図1は、本発明に係る複合材料の製造のためのプロセスの概略図である。
図2図2は、本出願人のグラファイト材料の走査型電子顕微鏡写真(SEM)であり、数層グラフェン(FLG)と混合されたフレーク状のグラファイトを示す。
図3図3は、本出願人のビーズミルされた剥離グラファイト(168分間のビーズミリングを伴うIPA中の10%剥離グラファイト)の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
図4図4は、本発明の複合材料のいくつかの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示し、は、グラファイトの薄いフレークを示し、**は、数層グラフェンを示す。
図5図5は、本発明の複合材料の半電池試験の結果を示し、異なる量の複合材料が、以下の条件でサイクルされる-リチウム化:1回目のサイクル:0.1C~5mV、次いで、0.01Cまで5mVに維持、その他のサイクル:0.2C~5mV、次いで、0.25Cまで5mVに維持;脱リチウム化:1回目のサイクル:0.1C~1.0V、その他のサイクル:0.2C~1.0V、複合体のシリコン含量は、30~50%Wtである。
図6図6は、Si@C及びGr@Si@C1@C2のアノード複合体のカレンダリング効果試験の結果をそれぞれ示す。
図7図7は、本発明の複合材料の全電池試験の結果を示す。
図8a図8aは、複合材料の全電池試験のサイクル及び容量保持の結果を示し、0.5Cで140サイクル後、97%の容量保持である。
図8b図8bは、複合材料の全電池試験のサイクル及び容量保持の結果を示し、0.5Cで140サイクル後、97%の容量保持である。
【0063】
発明を実施するための最良の形態
本発明は、複数のシリコンナノ粒子、グラファイト粒子、カーボンマトリクス、及び外部シェルを含み、前記シリコンナノ粒子と前記グラファイト粒子とが前記カーボンマトリクス内に保持されている、シリコンとグラファイトとを含む複合材料を提供する。カーボンマトリクスは、アモルファスカーボンマトリクス、結晶性カーボンマトリクス、又はアモルファスカーボンマトリクスと結晶性カーボンマトリクスとの両方の組合せの形態で提供される。
【0064】
シリコンナノ粒子は、グラファイト粒子でコーティングすることができる。グラファイト粒子は、グラフェン様ナノシートの形態で提供することができる。複合材料は、複数の数層グラフェン粒子を更に含むことができる。複合材料は、ナノ粒子スケールより大きいグラファイト粒子を更に含むことができる。複合材料は、アモルファスカーボンマトリクス内に設けられるグラファイト粒子、グラフェン、数層グラフェン、及びグラファイトナノ粒子(GNP)のうちの1以上の存在によって与えられる一定レベルの弾性を有する。
【0065】
一形態では、アモルファスカーボンの更なる外層が、複数のシリコンナノ粒子、グラファイト粒子、及びカーボンマトリクスの周りであるが、シェル内に設けられる。
【0066】
アモルファスカーボンの外層は、1以上の酸化物を更に含むことができる。前記1以上の酸化物は、好ましくは、Al、TiO、ZrO、BaTiO、MgO、CuO、ZnO、Fe、GeO、LiO、MnO、NiO、若しくはゼオライト、又はそれらの任意の組合せの形態で存在することができる。酸化物は、約20nm~1ミクロンの粒子サイズを有する。
【0067】
本発明は更に、前記した及び/又は以下に記載される形態のうちの1つにおける複合材料を含むアノード複合体を提供する。
【0068】
本発明は、複合材料の製造のための方法を更に提供し、前記方法は、
(i)シリコン粒子を、溶媒中及び/又はポリマーの存在下にて、グラファイト粒子と共にサイズ縮小工程に付し、コーティングされたシリコンナノ粒子を生成する工程と;
(ii)工程(i)の生成物をバインダと共に又はバインダなしで処理して、複合体を生成する工程と;
(iii)工程(ii)の前記複合体を熱処理して、複数のコーティングされたシリコンナノ粒子、グラファイト粒子、及びカーボンマトリクスを含み、前記グラファイト粒子が前記カーボンマトリクス内に保持されている複合材料を生成する工程と;
(iv)工程(iii)の前記複合体をバインダでコーティングする工程と;
(v)工程(iv)の前記複合体を熱処理して、アモルファスカーボンを含むシェルを生成する工程とを含む。
【0069】
前記シェルは、1以上の酸化物を更に含む。例えば、前記1以上の酸化物は、Al、TiO、ZrO、BaTiO、MgO、CuO、ZnO、Fe、GeO、LiO、MnO、NiO、若しくはゼオライト、又はそれらの任意の組合せの形態で提供される。
【0070】
本発明の一形態では、前記方法は、シリコン材料が溶媒中でサイズ縮小工程に付されて、工程(i)のシリコンナノ粒子を生成する最初の工程を更に含む。
【0071】
最初の工程のシリコン材料は、ミクロンスケールのシリコン粒子の形態で提供される。最初の工程及び工程(i)のサイズ縮小工程は、それぞれ粉砕工程である。更に好ましくは、粉砕工程は、1以上のビーズミルで行われる。
【0072】
溶媒は、非水性溶媒の形態で提供される。1つの好適な非水性溶媒は、イソプロピルアルコール(IPA)である。
【0073】
ポリマーが存在する場合、ポリマーは、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、及びポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の群から選択される。ポリマーは1~40%wt/wtで存在し、シリコン粒子は、1~80%wt/wtで存在する。本発明の1つの好ましい形態では、ポリマーは、5%wt/wtで存在し、シリコン粒子は、10%wt/wtで存在する。
【0074】
工程(ii)の処理は、噴霧乾燥の形態で提供することができ、バインダが存在することが好ましい。或いは、工程(ii)の処理は、混合又はメカノフュージョン工程の形態で提供することができる。混合工程は、ハイブリダイズプロセスを含み、これにより、生成された二次粒子又は生成物が球状化される。
【0075】
工程(iii)の熱処理は、熱分解の形態で提供される。工程(iii)の熱処理により、存在するバインダがアモルファスカーボンに変換される。
【0076】
サイズ縮小工程(i)のグラファイト粒子は、予め剥離されたグラファイト粒子の形態で提供され、サイズ縮小工程が、シリコンナノ粒子に付着するグラフェンを生成する。
【0077】
工程(iii)の熱処理は、好ましくは、約500℃~700℃の温度で行われる。工程(v)の熱処理は、約750℃~1100℃の温度で行われる、又は好ましい一形態では、約850℃~1000℃の温度で行われる。
【0078】
本発明は、複合材料の製造のための方法を更に提供し、前記方法は、
(i)シリコン粒子を、溶媒中及び/又はポリマーの存在下にて、グラファイト粒子と共にサイズ縮小工程に付し、コーティングされたシリコンナノ粒子を生成する工程と;
(ii)工程(i)の生成物をバインダと共に又はバインダなしで処理して、複合体を生成する工程と;
(iii)工程(ii)の前記複合体を熱処理して、複数のコーティングされたシリコンナノ粒子、グラファイト粒子、及びカーボンマトリクスを含み、前記グラファイト粒子が前記カーボンマトリクス内に保持されている複合材料を生成する工程と;
(iv)工程(iii)の前記複合体をバインダでコーティングする工程と;
(v)工程(iv)の前記複合体を熱処理して、前記バインダを変換し、アモルファスカーボンを含むシェルを生成する工程とを含む。
【0079】
本発明は、アノード複合体の製造のための方法を更に提供し、前記方法は、
(i)シリコン粒子を、溶媒中及び/又はポリマーの存在下にて、グラファイト粒子と共にサイズ縮小工程に付し、コーティングされたシリコンナノ粒子を生成する工程と;
(ii)工程(i)の生成物をバインダと共に又はバインダなしで処理して、複合体を生成する工程と;
(iii)工程(ii)の前記複合体を熱処理して、複数のコーティングされたシリコンナノ粒子、グラファイト粒子、及びカーボンマトリクスを含み、前記グラファイト粒子が前記カーボンマトリクス内に保持されているアノード複合材料を生成する工程と;
(iv)工程(iii)の前記複合体をバインダでコーティングする工程と;
(v)工程(iv)の前記複合体を熱処理して、前記バインダを変換し、アモルファスカーボンを含むシェルを生成する工程とを含む。
【0080】
本発明の一形態では、前記方法は、シリコン材料が溶媒中でサイズ縮小工程に付されて、工程(i)のシリコンナノ粒子を生成する最初の工程を更に含む。最初の工程のシリコン材料は、ミクロンスケールのシリコン粒子の形態で提供される。
【0081】
最初の工程及び工程(i)のサイズ縮小工程は、それぞれ粉砕工程である。粉砕工程は、1以上のビーズミルで行われる。
【0082】
本発明の一形態では、溶媒は、非水性溶媒の形態で提供される。溶媒は、イソプロピルアルコールの形態で提供することができる。
【0083】
存在する場合、ポリマーは、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、及びポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の群から選択される。ポリマーは1~40%wt/wtで存在し、シリコン粒子は、1~80%wt/wtで存在する。本発明の1つの好ましい形態では、ポリマーは、5%wt/wtで存在し、シリコン粒子は、10%wt/wtで存在する。
【0084】
工程(ii)の処理は、噴霧乾燥の形態で提供することができ、バインダが存在することが好ましい。或いは、工程(ii)の処理は、混合の形態で提供することができる。混合工程は、ハイブリダイズプロセスを含み、これにより、生成物が球状化される。
【0085】
工程(iii)の熱処理は、熱分解の形態で提供される。工程(iii)の熱処理により、存在するバインダがアモルファスカーボンに変換される。
【0086】
ミリング工程(i)のグラファイト粒子は、予め剥離されたグラファイト粒子の形態で提供される。
【0087】
本発明の一形態では、工程(i)のミリングプロセスは、シリコンナノ粒子に付着するグラフェンを生成する。
【0088】
工程(iii)の熱処理は、好ましくは、約500℃~700℃の温度で行われる。工程(v)の熱処理は、約750℃~1100℃の温度で行われる、又は好ましい一形態では、約850℃~1000℃の温度で行われる。
【0089】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るプロセス10を示し、プロセス10は、最終複合材料42の製造を目的としている。プロセス10は、最初のシリコン材料サイズ縮小工程、例えば、シリコンナノ粒子16を生成するミリング工程14と、別のサイズ縮小工程、例えば、ミリング工程18とを含み、シリコンナノ粒子が、グラファイト粒子20と共に溶媒中でミリングされて、グラファイトナノ粒子22、数層グラフェン24、及びグラフェンコーティングシリコンナノ粒子26のそれぞれが生成される。溶媒は、非水性溶媒、例えば、イソプロピルアルコールである。ミリング工程14及び18は、500ミクロンのサイズのビーズを利用して、1以上のセラミックビーズミルで好都合に行うことができる。
【0090】
シリコンナノ粒子は、例えば、約80nm~150nmで提供される。グラファイト粒子20は、約30ミクロン未満のサイズで提供することができる。本発明の一形態では、グラファイト粒子は、予め剥離されたグラファイトの形態で提供される。
【0091】
プロセス10は、更に、処理工程28、例えば、噴霧乾燥又はメカノフュージョン工程を含み、ミリング工程18の生成物が、バインダ30の添加と共に、噴霧乾燥又はメカノフュージョンされて、二次粒子又は複合体32を生成する。バインダ30は、ピッチの形態で提供することができる。或いは、別の有機炭素源が、バインダ30を構成することができる。処理工程28によって生成される複合体32は、例えば、1~40ミクロンのサイズである。
【0092】
プロセス10は更に、複合体32の熱処理工程、例えば、熱分解34を含み、これによって、バインダ30がアモルファスカーボンに変換されて、第1の中間体複合材料12を形成する。熱分解34は、約500℃~700℃の温度で行われる。
【0093】
バインダ36、例えば、有機源を用いて、第1の中間体複合材料12に更なるコーティングを適用して、第2の中間体複合体38を形成する。一形態では、バインダ36は、ピッチの形態で提供される。バインダ36は、いくつかの形態では、酸化物材料の1つ又はそれらの混合物を含むことができる。酸化物材料は、例えば、Al、TiO、ZrO、BaTiO、MgO、CuO、ZnO、Fe、GeO、LiO、MnO、NiO、若しくはゼオライト、又はそれらの任意の組合せであることができる。
【0094】
プロセス10は、更なる熱処理工程、例えば、熱分解工程40を更に含み、第2の中間体複合体38が熱分解され、バインダ36がアモルファスカーボンに変換されて、複合材料42を形成する。熱分解工程40は、750℃~1100℃、例えば、800℃~1000℃の温度で行われる。
【0095】
グラフェン、FLG、及びGNPが存在するので、本出願人らは、複合材料が弾性特性を有することを理解しており、これらの特性は、膨張(リチウム化)中にミクロンサイズのアノード複合材料が組み込まれ、シリコン表面を電解液に直接曝露するのを防止又は少なくとも低減するのに役立つ。
【0096】
本出願人らは、本発明の複合材料の利点は、20nm~200nmのナノスケールシリコン粒子を生成する低コストのビーズミリングの使用、グラフェンコーティングされたシリコン粒子の形成のための低コストのビーズミリング、及びビーズミリング中でのFLGとGNPの生成のうちの1以上が挙げられると考えている。本発明の複合材料及びアノード複合体におけるFLG及びGNPの使用は、複合体の弾性を増大させるために、本発明によって実現することができる更なる利点である。
【0097】
本発明の別の実施形態によれば、「別の」サイズ縮小工程は、混合/サイズ縮小に付されながら、ポリマーの存在下でグラファイト粒子をシリコンナノ粒子と混合することを含む。ポリマーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、及びポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)の群から選択される。ポリマーは、1~40%wt/wtで存在し、シリコン粒子は1~80%wt/wtで存在する。本発明の好ましい一形態では、ポリマーは、5%wt/wtで存在し、シリコン粒子は、10%wt/wtで存在する。
【0098】
生成された混合物は、工程(ii)の処理に送られる。処理工程は、ハイブリダイズプロセスを含む混合工程の形態で提供され、これにより、生成物が球状化される。このハイブリダイゼーション又は球形化プロセスは、「ジャガイモ」形状の粒子を提供する。次に、混合又は球状化された生成物は、本発明の第1の実施形態にしたがって、前記した熱処理工程に送られる。しかし、この第2の実施形態では、ポリマーは、カーボンマトリックスになり、本発明の第1の実施形態で利用される更なるバインダを必要とせずに、グラファイト粒子がシリコンナノ粒子を取り囲むときに、グラファイト粒子が前記カーボンマトリックス内部に保持/配置される。
【0099】
本発明のプロセスは、以下の非限定的な例を参照することにより、よりよく理解され得る。
【実施例
【0100】
Talgaグラファイト
図2は、本出願人の専有ソースから得た典型的な天然グラファイトを示す。グラファイトは、FLGと混合されたフレーク形状であることが分かる。球形材料の場合、接触は通常、点と点と(head to head)で見られる。一方、フレーク状材料の場合、接触は、面と面であり得る。したがって、シリコンとグラファイトの混合物では、フレーク状グラファイトは、シリコンの膨張及び抽出中に物理的接触を維持するのにより適している。更に、混合物中のFLGは、その高い柔軟性のために、良好な接触を維持する上で重要な役割を果たすことも、本出願人によって理解されている。
【0101】
Talga剥離グラファイト
本出願人らは、国際特許出願PCT/GB2018/052095(国際公開第2019/020999号)に詳細に記載されている、複数用途のための独自の剥離グラファイト(Talga HSAと本出願人は称している)を開発しており、前記出願の全内容を参照により本明細書に援用する。
【0102】
本出願人のHSAは、グラファイトのグラフェン層間のギャップを広げている。したがって、典型的な又は「通常の」グラファイトと比較して、グラフェン層は、HSAからより容易に剥離され、ビーズミリング中にFLGを形成する。図3に示されるように、IPA中で10%HSAを約168分間ビーズミリングした後、FLGと薄いフレークを有する物質が大半を占める。
【0103】
シリコン/グラファイト複合体のSEM
本発明に係るシリコン/グラファイト複合体(Gr@Si@C1@C2)を作製するために、ミクロンサイズのシリコン粒子を、まず、非水性溶媒(例えば、IPA)中で、ナノスケール粒子(d50、50~200nm)にビーズミリングした。次に、HSAを、ミリング後のシリコン/IPAの混合物に添加し、更にミリングすることにより、HSAは、FLG、グラフェン、GNP(グラファイトナノ粒子)、及び薄いフレークを生成した。噴霧乾燥を使用して、ナノ混合物をミクロンサイズの二次粒子に変換した。噴霧乾燥又はビーズミリング中に有機バインダを使用したため、熱処理を行ってそれらをアモルファスカーボンに変換した。図4は、熱処理後のシリコン/グラファイト二次粒子のSEM画像を示す。ナノ材料が、GNPとFLGを含む、扱い易いミクロンサイズの粒子に変換されたことが分かる。
【0104】
半電池における電気化学特性評価
半電池試験を、Gr@Si@C1@C2とグラファイトコントロールサンプルに対して行った。図5は、Gr@Si@C1@C2の様々な負荷での脱リチウム化能力を示す。複合体の詳細を、以下の表1に示す。
【0105】
容易に理解できるように、本発明に係るシリコン/グラファイト複合体のそれぞれは、元のグラファイト材料と比較してより高い容量を示し、その容量は、Gr@Si@C1@C2の負荷と共に上昇する。
【0106】
Si/グラファイト複合体の半電池試験の詳細(結果は、図5に示す)は、以下を含む:A~Dのコーティング:活物質(グラファイト+Gr@Si@C1@C2):CMC:SBR:Cmix=94:2:2:2(重量)。Eのコーティング:活物質(Gr@Si@C1@C2):CMC:SBR:Cmix=80:8:8:4。リチウム化:1回目のサイクル:C/10~5mV、その後、C/100まで5mVに維持、その他のサイクル:C/5~5mV、その後、C/40まで5mVに維持。脱リチウム化:1回目のサイクル:C/10~1.0V、その他のサイクル:C/5~1.0V。A:グラファイトサンプル;B~E、それぞれ8%、16.1%、32.2%、及び80%のGr@Si@C1@C2。A~Eの詳細を、以下の表1に示す。
【0107】
前記詳細と以下の表1とにおいてで、CMCは、カルボキシメチルセルロースを示し、SBRは、スチレンブタジエンゴムを示す。
表1図5に示すA~Eの複合体の詳細
【表1】
【0108】
Si@CとGr@Si@C1@C2との比較
ビーズミル粉砕中に、1,5-ジヒドロキシナフレンを使用して、EGを完全に置き換えた。噴霧乾燥と熱分解後、生成物は、Si@Cと称する。以下の表2に、いくつかの比較を示す。Gr@Si@C1@C2中に2.5%のSiを使用した例は、Si@C中に3.4%のSiを使用した例より容量が大きいことが分かる。Si含量が同様である場合、例えば10%の場合、Gr@Si@C1@C2の材料では、Si@Cと比較して容量が約12%高いことが分かる。5%及び10%Si@Cの容量データによると、5%のSi含量の容量は、約460mAh/gであり、これはまた、同様のシリコン含量のGr@Si@C1@C2の容量より約10%低い。更に、Gr@Si@C1@C2がSi@Cと同様の容量を有する場合、より良好なサイクリング寿命が合理的に期待できることも示されている。
表2-Si@CとGr@Si@C1@C2との比較
【表2】
【0109】
続いて、図6は、Si@CとGr@Si@C1@C2それぞれのアノード複合体を使用した場合の半電池容量保持率に対するカレンダリング効果を示す。カレンダリング効果試験の詳細(結果は、図6に示す)は、以下を含む:Si@Cのコーティング:活物質(グラファイト+Si@C):CMC:SBR:Cmix=(84.6:9.4:):2:2:2(重量);Gr@Si@C1@C2のコーティング:活物質(Gr@Si@C1@C2):CMC:SBR:Cmix=(78.8:15.2):2:2:2;Si@C-CとGr@Si@C-C(Gr@Si@C1@C2)は、それぞれ前記と同一であるが、コーティング後に2トンのプレスを施した;リチウム化:1回目のサイクル:C/10~5mV、その後、C/100まで5mVに維持、その他のサイクル:C/5~5mV、その後、C/40まで5mVに維持。脱リチウム化:1回目のサイクル:C/10~1.0V、その他のサイクル:C/5~1.0V。
【0110】
カレンダリング効果について行われる試験に関し、同様の容量(~490mAh/g)の2つのコーティングを使用した。比較のために、コーティング後に2トンのプレスを施した。図6に示すように、Si@Cでは、容量保持率は50サイクル後に96.4%から91.5%に約5%低下した。しかし、Gr@Si@C1@C2を含む複合体では、約0.5%の低下しか観察されなかった。これは、Gr@Si@C1@C2を含む複合材料の構造が、Si@Cを含む複合材料よりも遥かに安定していることを示す。本出願人は、Gr@Si@C1@C2中のFLG、グラフェン、及びGNPの含量が、それらの比較的高い柔軟性によって、構造を維持する上で重要な役割を果たしたことを理解している。
【0111】
Si@Cと、Gr@Si@Cと、Gr@Si@C1@C2との比較
Gr@Si@C1@C2を形成するために、比較的低温、例えば500~700℃を使用して、高表面積を有する炭素にバインダ30を変換し、Gr@Si@Cを形成し、その後、溶媒中での通常の混合によって、ピッチ又はジヒドロキシナフタレンなどのバインダ36で更にコーティングした。次いで、溶媒を蒸発させ、800~1000℃などの比較的高温で更なる熱処理を行って、最終生成物であるGr@Si@C1@C2を形成する。バインダ36は、Al、TiO、及び/又は他のセラミック材料の内容物又は混合物のいずれかを含み得る。
【0112】
図7は、市販のグラファイト、Si@C、Gr@Si@C、及びGr@Si@C1@C2のアノード材料の全電池データを示す。アノードのコーティング:活物質:CMC:SBR:Cmix=94:2:2:2(重量)、活物質は、グラファイト、Si@C、Gr@Si@C、及びGr@Si@C1@C2からそれぞれ選択される。グラファイトコントロールサンプルを除き、活物質中のシリコン含量は、約4%である。コーティング後、アノードコーティングはいずれも、約1.3g/cmにカレンダ加工された。カソードは、NMC111のものである。N/Pの容量比は、約1.05である。充電:1回目のサイクルで、C/10~4.2V、その後、C/100まで4.2Vに維持する。その他のサイクル:C/2~4.2V、その後、C/10まで4.2Vに維持する;放電:1回目のサイクルで、C/10~3.0V。その他のサイクル:C/2~3.0V。
【0113】
図8a及び図8bは、本発明の複合材料の全電池データを示す。グラファイトアノードにおけるGr@Si@C1@C2添加剤(最終アノードにおいて、約3%のSiを意味する)は、0.5Cで140サイクル後に~97%の容量保持率をもたらす。電池は、以下のプロトコルでサイクルする:充電:1回目と2回目のサイクル:C/10から4.2V、その後、C/100まで4.2mVに維持;その他のサイクル:C/2~4.2V、その後、C/10まで4.2Vに維持。放電:1回目と2回目のサイクル:C/10~3.0V;その他のサイクル:C/2~3.0V。N/P~1.05。
【0114】
前記した噴霧乾燥機は、例えば、本発明の範囲から逸脱することなく、噴流流動床システムに有利に置き換えることができることが想定される。
【0115】
サイズ縮小工程(i)は、高い又は大きい「アスペクト比」を有するグラファイト粒子を提供することが更に想定される。かかるグラファイト粒子は、予想されるグラファイトナノ粒子の全部又は一部と、生成される数層グラフェン(FLG)を包含することがある。
【0116】
前記記載を参照して分かるように、本発明の複合材料及びそれを製造する方法は、ナノスケールのシリコン粒子を製造する低コストのボール又はビーズミリング、グラフェンコーティングされたシリコン粒子を形成する低コストのボール又はビーズミリング、同一の低コストのボール又はビーズミリングによる数層グラフェン及びグラファイトナノ粒子の生成、及び比較的高レベルの弾性を有する複合材料を提供できることなど、従来の技術と比較したときに、1以上の利点をもたらす。本発明の一形態、前記第2の実施形態は、グラフェンが存在する必要がなく、グラファイト粒子で十分であると考えられる。
【0117】
本発明の複合材料及びアノード材料は、少なくとも一部、粉砕後にシリコンナノ粒子を覆うグラフェン様材料の複数層の結果として、改善された容量及びより良好なサイクル寿命をもたらし、例えば、「グラフェンスライディング」効果に起因し得る、耐膨張性の改善及び導電性の改善を提供する。更に、ビーズミリング中に作製されたFLG及びGNPは、その高い柔軟性のため、リチウム化/脱リチウム化(膨張/抽出)中、二次粒子の導電性を維持すると理解される。
【0118】
更に、コーティング工程(iv)及び更なる熱処理工程(v)は、シリコングラフェン、グラファイト、及びカーボンマトリクスの複合体を含む、Gr@Si@C又は中間体複合体に更なる保護を提供すると考えられる。この更なる層又はシェルは、安定したSEIを提供し、シリコンと電解質との間の接触を低減し、リチウム化中の外向きの膨張を低減するのに役立つ。
【0119】
当業者に明らかである改変及び変形は、本発明の範囲内にあるとみなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0120】
【特許文献1】国際特許出願PCT/GB2018/051689(国際公開第2018/229515号
【特許文献2】国際公開第2015/073674 A1号
【特許文献3】US2016/064731(Jung Sung-Hoら)
【特許文献4】US2018/097229(Jo Sungnimら)
【非特許文献】
【0121】
【非特許文献1】XH Liu et al., “Size-Dependent Fracture of Silicon Nanoparticles During Lithiation”, ACS Nano, 2012, 6 (2), 1522-1531
【非特許文献2】Li et al, “Scalable synthesis of a novel structured graphite/silicon/pyrolysed carbon composite as anode material for high-performance lithium-ion batteries”, Journal of Alloys and Compounds 688 (2016) 1072-1079
【非特許文献3】Li et al., “Growth of conformal graphene cages on micrometre-sized silicon particles as stable battery anodes”, Nature Energy, Vol. 1., Article No. 15029 (2016)
【非特許文献4】Son et al., “Silicon carbide-free graphene growth on silicon for lithium-ion battery with high volumetric energy density”, Nature Communications, Vol. 6., Article No. 7393 (2015)
【国際調査報告】