(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(54)【発明の名称】生体液分析およびパーソナライズされた水分補給評価システム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20220908BHJP
G16H 50/00 20180101ALI20220908BHJP
【FI】
G01N33/50 X
G16H50/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021578105
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(85)【翻訳文提出日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 US2020040523
(87)【国際公開番号】W WO2021003286
(87)【国際公開日】2021-01-07
(32)【優先日】2020-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521151599
【氏名又は名称】エムエックススリー・ダイアグノスティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デュク・ハウ・フィン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・エーリックスター
(72)【発明者】
【氏名】タン・コン・グエン
(72)【発明者】
【氏名】デュク・フォン・グエン
(72)【発明者】
【氏名】エフストラティオス・スカフィダス
(72)【発明者】
【氏名】シェン・ミン
(72)【発明者】
【氏名】グルシャラン・チャナ
(72)【発明者】
【氏名】ティン・ティン・リー
(72)【発明者】
【氏名】チャトゥリカ・ダルシャニ・アベイラトネ
(72)【発明者】
【氏名】ユ・リアン
(72)【発明者】
【氏名】トレヴァー・ジョン・キルパトリック
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ルーサー
(72)【発明者】
【氏名】アラン・デイボー・ルーサー
【テーマコード(参考)】
2G045
5L099
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045CB07
2G045CB12
2G045DB09
2G045DB10
2G045FB17
2G045FB19
2G045JA01
2G045JA04
5L099AA03
(57)【要約】
体液試料における検体を測定し、複数のユーザからの測定データを組み合わせる方法は、ハンドヘルド分析器と、検体分析アプリケーションがダウンロードされたスマートコンピューティングデバイスとの間のワイヤレス接続を開始すること、および、ハンドヘルド分析器に検査ストリップを挿入することを伴い得る。方法は、検査ストリップ上に体液の試料を収集すること、ハンドヘルド分析器を用いて、試料における少なくとも1つの検体の濃度を測定すること、ハンドヘルド分析器からスマートコンピューティングデバイスに、測定された濃度をワイヤレス通信すること、および、スマートコンピューティングデバイス上で、測定された濃度を表示することをさらに伴い得る。最後に、方法は、データベースに測定された濃度を送信すること、および、測定された濃度と、データベース上の少なくとも1人の追加のユーザからの少なくとも1つの追加の測定された検体濃度とを含む、データを編成することを伴い得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液試料における検体を測定し、複数のユーザからの測定データを組み合わせる方法であって、
ハンドヘルド分析器と、検体分析アプリケーションがダウンロードされたスマートコンピューティングデバイスとの間のワイヤレス接続を開始するステップと、
前記ハンドヘルド分析器に検査ストリップを挿入するステップと、
前記検査ストリップ上に体液の試料を収集するステップと、
前記ハンドヘルド分析器を用いて、前記試料における少なくとも1つの検体の濃度を測定するステップと、
前記ハンドヘルド分析器から前記スマートコンピューティングデバイスに、前記測定された濃度をワイヤレス通信するステップと、
前記スマートコンピューティングデバイス上で前記測定された濃度を表示するステップと、
データベースに前記測定された濃度を送信するステップと、
前記測定された濃度と、前記データベース上の少なくとも1人の追加のユーザからの少なくとも1つの追加の測定された検体濃度とを含む、データを編成するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記方法は、前記スマートコンピューティングデバイスとインターネットとの間のワイヤレス接続を開始するステップをさらに含み、前記データベースは、クラウドストレージロケーション上に位置し、前記データベースに前記測定された濃度を送信するステップは、前記インターネットを介して、前記スマートコンピューティングデバイスから前記クラウドストレージロケーションに、前記測定された濃度をワイヤレス送信するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記データは、複数の組織に属する複数人ずつのユーザのグループに基づいて編成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記スマートコンピューティングデバイスを介して、前記測定するステップを開始するステップをさらに含み、前記測定するステップを開始するステップは、
前記検体分析アプリケーション上のオペレータアカウントにログインするステップと、
それから前記試料が取られることになる特定のソースを選択するステップと、
前記ハンドヘルド分析器と前記スマートコンピューティングデバイスとの間の前記ワイヤレス接続を確認するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ハンドヘルド分析器上で、検査ストリップタイプおよびバッチデータを自動的にダウンロードおよび記憶するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記検査ストリップタイプおよびバッチデータを自動的にダウンロードおよび記憶するステップは、
前記検査ストリップ上の抵抗符号化検査ストリップ識別情報を測定するステップと、
前記検査ストリップタイプおよびバッチデータを決定するために、前記検査ストリップ識別情報を前記ハンドヘルド分析器のメモリ中のデータと比較するステップと
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記スマートコンピューティングデバイスに、前記検査ストリップタイプおよびバッチデータを通信するステップと、
前記検査ストリップタイプが不明の検査ストリップタイプである場合、前記ハンドヘルド分析器およびスマートコンピューティングデバイス上のエラーメッセージを通して、ユーザにアラートするステップと
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
使用済みまたは故障した検査ストリップの使用を、
前記検査ストリップがすでに使用されたか、または故障していると決定するステップと、
前記ハンドヘルド分析器または前記スマートコンピューティングデバイスのうちの少なくとも1つにおいて、前記検査ストリップを破棄するように、前記ユーザにプロンプトするステップと
によって防止するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アプリケーションおよび前記ハンドヘルド分析器のうちの少なくとも1つを使用して、どのように前記試料を収集するかに関して、ユーザに指示を提供するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ハンドヘルド分析器を使用して、
周囲温度を決定するステップと、
前記周囲温度に基づいて、検出技法を適用するステップと、
バッチ固有の較正係数および前記周囲温度を使用して、前記少なくとも1つの検体の前記濃度を決定するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ハンドヘルド分析器を用いて、
信号不整合を測定するステップと、
前記検査ストリップに対して、異常に高い信号または異常に低い信号を検出するステップと
によって、測定が不正確であると決定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記スマートコンピューティングデバイスを使用して、ユーザ解釈を支援するために、前記測定された濃度を分析するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記スマートコンピューティングデバイスは、生の測定された濃度を、前に確立された個人固有の基準値に関連付ける、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
被験者からの体液試料における少なくとも1つの検体を測定する方法であって、
ハンドヘルド分析器に検査ストリップを挿入するステップと、
前記検査ストリップを、体液が存在する前記被験者の身体部分と接触させることによって、前記検査ストリップ上に前記体液試料を収集するステップと、
前記ハンドヘルド分析器が、十分な量の前記体液試料が収集されたことを示した後、前記検査ストリップを前記身体部分との接触から取り外すステップと、
前記検査ストリップに電気信号を印加するステップと、
前記ハンドヘルド分析器を用いて、前記印加された電気信号に対する、前記検査ストリップおよび前記体液試料の組合せの反応を測定するステップと、
前記ハンドヘルド分析器を用いて、前記反応を分析して、前記体液試料が有効な試料であると決定するステップと、
前記体液試料における前記少なくとも1つの検体の濃度を測定するステップと、
前記測定された濃度を前記ハンドヘルド分析器上で表示すること、または前記測定された濃度を別のデバイスに転送することのうちの少なくとも1つを行って、前記測定された濃度を表示すること、さらなる計算を生成すること、または前記測定された濃度を記憶することのうちの少なくとも1つを行うステップと
を含む方法。
【請求項15】
体液における1つまたは複数の検体の濃度を決定するためのハンドヘルド分析器であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内の検査ストリップポートと、
前記ハウジング上のディスプレイ画面と、
前記ハウジング内の温度センサーと、
前記ハウジング内の複数の電子構成要素とを備え、前記複数の電子構成要素は、
直接デジタル合成(DDS)チップまたはデジタルアナログ変換器(DAC)チップのうちの少なくとも1つと、
アナログデジタル変換器(ADC)チップと、
ワイヤレス通信チップと、
処理回路と、
コンピュータメモリと
を備える、ハンドヘルド分析器。
【請求項16】
前記検査ストリップポートは、検体固有の検査ストリップと、複数の検体を測定することが可能な検査ストリップとからなるグループから選択された、検査ストリップを受け入れるように構成される、請求項15に記載のハンドヘルド分析器。
【請求項17】
前記複数の電子構成要素は、前記ハンドヘルド分析器が、モバイルアプリケーションを介して、データベースに接続されるとき、前記コンピュータメモリに検査ストリップ構成設定を自動的に転送するように構成される、請求項15に記載のハンドヘルド分析器。
【請求項18】
前記ハンドヘルド分析器は、検査ストリップ上の抵抗符号化識別情報と、前記コンピュータメモリ中に記憶されたデータとを使用して、検査ストリップタイプおよびバッチデータを決定するように構成される、請求項15に記載のハンドヘルド分析器。
【請求項19】
前記複数の電子構成要素は、複数のタイプの検査ストリップのための検出方法、励起波形、および利得設定を自動的に調整するように構成される、請求項15に記載のハンドヘルド分析器。
【請求項20】
前記温度センサーは、周囲温度を測定するように構成され、前記処理回路は、温度検出アルゴリズムを使用して、前記測定された周囲温度を処理するように構成される、請求項15に記載のハンドヘルド分析器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年7月1日にPCT国際特許出願として出願されており、2019年7月1日に出願された「Biological Fluid Analysis System」なる名称の米国仮特許出願第62/869,210号、2020年7月19日に出願された「Personalized Hydration Assessment and Fluid Replenishment」なる名称の米国仮特許出願第62/876,263号、および、2020年1月6日に出願された「Personalized Hydration Assessment and Fluid Replenishment」なる名称の米国仮特許出願第62/957,527号に基づく優先権を主張する。すべての上記で参照した仮特許出願の全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、生物医学システムおよび方法について記載する。より詳細には、本出願は、唾液および汗などの生体液を分析し、1つまたは複数のバイオマーカーを使用して、人間である被験者における水および電解質の喪失を評価し、水分補充プロトコルを推奨するためのシステムおよび方法について説明する。
【背景技術】
【0003】
汗をかくこと(または「発汗」)は、人体がその体温を調節するために用いる技法である。身体運動および/または環境熱ストレスの期間の間、汗が皮膚によって排出され、それによって、皮膚表面上の蒸発を介して、冷却が生じる。汗は、約99%の水からなるものであるが、汗はまた、典型的には、代謝産物およびイオンなど、他の化合物も含有している。汗の排出率および組成は、個人に固有のものであり、生物学的変動を受ける。排出率および汗組成はまた、年齢、食事、活動、現在のフィットネスレベル、および環境条件に基づいて、大幅に異なり得る。
【0004】
人体における適切な水分補給は、健康および身体器官の適正な機能のために不可欠である。水は、呼吸、発汗、および排尿の間に、身体から喪失される。わずか数パーセントの水分喪失に関係するボディマスの減少が、心臓血管機能、熱放散、およびエクササイズのパフォーマンスに悪影響を及ぼし得る。脱水症は、頭痛、頭のふらつき、めまい、失神、ならびに極端な場合、せん妄、意識不明、および死亡さえも引き起こし得る。ボディマスの大幅な(たとえば、5%よりも多い)喪失は、熱性疲労、熱中症、意識喪失、臓器障害、および死亡という結果にさえなり得る。さらに、発汗を通したイオン、主にナトリウムの喪失は、摂取された水分を通して有効に補給されない場合、疲労および筋肉のけいれんを生じ得る。汗喪失の量および組成について個人の間および個人の内で大きな量の変動性があるので、補液戦略は、健康およびパフォーマンスに対する身体運動および/または熱ストレスの有害な影響を最小限に抑えるべく、水とナトリウムの両方の喪失が補充されることを保証するために、理想的には個々に調整されるべきである。低ナトリウム血症(「水分過剰」)もまた、特にエクササイズ中に、身体の機能に悪影響を及ぼすことがあり、極端な場合、死亡にさえつながり得る。
【0005】
脱水症は、体液の過剰な喪失である。生理学的に言えば、脱水症は、生物内の水分の不足を伴い得る。脱水症は、多過ぎる水分を喪失すること、十分な水分を飲まないこと、または両方によって引き起こされ得る。十分な液体摂取なしの嘔吐、下痢、および過剰な発汗が、脱水症の他の原因であり、運動選手、および高温で乾燥した条件下で働く人々にとって、特に気がかりなことであり得る。脱水症には、3つの主なタイプがあり、すなわち、低張性(主に、電解質、特にナトリウムの喪失)、高張性(主に、水の喪失)、および等張性(水および電解質の等しい喪失)である。等張性脱水症が最も一般的であるが、3つのタイプの脱水症の間の区別が、適正な補液戦略を管理するために重要であり得る。
【0006】
水分摂取のための要求を引き起こすためのフィードバック機構として、のどの渇きに依拠することは、最適な水分補給レベルを維持するために適切ではないことがあり、その理由は、被験者に飲み物を飲ませるために十分なのどの渇きの感覚が、被験者がすでに脱水状態になるまで引き起こされないことが多いからである。残念ながら、現在、人の水分補給レベルを測定するための実用的で手ごろな非侵襲性のデバイスはない。血液または尿を使用して、水分補給を測定する測定デバイスは、非実用的、侵襲性、および/または極めて高価である。
【0007】
人間または動物の体内の様々な物質の多くの他の生理学的パラメータおよびレベルが、頻繁に検査されるか、または検査することが望ましくなる。残念ながら、所望のパラメータを測定するために、血液、尿、または脳脊髄液などの他の身体物質をサンプリングすることが必要であることが多い。いくつかの生理学的パラメータは、なお一層侵襲性の、またはコストがかかる測定技法を伴う。
【0008】
したがって、人の水分補給状況を測定し、脱水症の後に補充される必要がある水分および電解質の量を定量化するための、実用的で手ごろな非侵襲性のシステムおよび方法を有することが極めて有益になる。また、身体内の他のパラメータを検査するための、実用的で手ごろな非侵襲性のシステムおよび方法を有することも極めて望ましくなる。
【0009】
ポイントオブケア検査システムは、診療所または個人の住居内など、実験室の外部で生体試料におけるバイオマーカー(たとえば、代謝産物、ホルモン、電解質)の測定を可能にする。労力および輸送コストを低減することによって、ポイントオブケア検査は、特に頻繁な、および/または日常の検査にとって、実験室における検査の魅力的な代替手段である。
【0010】
ポイントオブケア検査システムは、典型的には、ハンドヘルドメーターからなり、ハンドヘルドメーターは、検体(たとえば、グルコース)に化学的に反応する、1回のみ使用できる検査ストリップとインターフェースする。典型的には、ハンドヘルドメーターは、試料分析のために必要なすべてのステップ(信号生成、信号測定、データ処理)を実行し、一体型の画面上に結果を表示するようになる。いくつかのより高度な検査システムは、同じ検出方法(たとえば、グルコースおよびベータヒドロキシ酪酸のアンペロメトリック検出)に基づいて、異なる検査ストリップを使用して、複数の検体を測定すること、および/またはデータロギングのために、電話もしくはタブレットに検査結果をワイヤレス通信することが可能である。
【0011】
現在利用可能なポイントオブケア検査システムは、自分自身のバイオマーカーのうちの1つまたは2つのみを監視する個人ユーザ(たとえば、血糖を毎日測定する、糖尿病の患者)にとって適切である。しかしながら、そのようなシステムは、多数の異なるバイオマーカーが、数十または数百もの異なる被験者について、複数のオペレータによって分析される大組織(たとえば、数百人の患者が毎日、複数の保健専門家によって、1つまたは複数のバイオマーカーについて検査される病院)にとって、それほど理想的ではない。これらの組織では、検査管理者は、各々が異なる検出方法を用いて、異なるバイオマーカーを測定する、多数の異なるデバイスからの結果を収集し、取りまとめなければならない。
【0012】
したがって、単一の検査システムを使用して、広範囲にわたるバイオマーカーについて検査するために十分な汎用性のある、分析システムを有することが望ましくなる。理想的には、そのような検査システムは、複数のユーザが、ユーザエラーを最小限に抑えながら、検査結果を便利に管理および分析することを可能にするようになる。
【0013】
汗の量および組成を決定するための汗検査は、個人用の補水戦略を生成する、ますます普及しつつある方法である。このサービスは、主に運動選手によって、自分の補液ニーズを決定し、競争力を得るために使用される。典型的には、これらのサービスは、皮膚に付着されたパッチを通して、活動により誘発されたか、または化学的に誘発された汗の1回限りの収集を伴う。次いで、収集された汗が、(ミリモルまたは100万分の1における)汗ナトリウム濃度を決定するために、化学分析システムによって評価される。これらの測定値が、エクササイズプロトコルに従うときにエクササイズにより引き起こされたボディマス変化と対にされて、発汗速度および水分喪失(たとえば、リットル/時)が決定される。この情報を用いて、パーソナライズされた補水プロトコルが、エクササイズの間および/または後の補液を支援するために開発される。
【0014】
この方法の重要な欠陥は、汗電解質含有量と発汗速度の両方が、すべての条件下で個人について一定であるという仮定である。実際には、汗組成と発汗速度の両方は、取りかかっている活動、運動の程度、環境条件、および個人がこれらの条件にどのくらい慣れているかを含む、多数の要因に基づいて、劇的に異なり得る。個人についてのこの情報を確かめるために、複数の測定が、いくつかの条件にわたって必要とされる。汗組成および発汗速度の推定のための従来の手法では、これは極めて時間のかかることである。
【0015】
したがって、人の水分補給状況を測定し、脱水症を防止または治療するために補充される必要がある水分および電解質の量を定量化するための、実用的で手ごろな非侵襲性のシステムおよび方法を有することが極めて有益になる。また、身体内の他のパラメータを検査するための、実用的で手ごろな非侵襲性のシステムおよび方法を有することも極めて望ましくなる。また、個々の水分量および組成要件をケースバイケースで決定する、正確で高速な方法を開発することも望ましくなる。理想的には、そのような方法は、多数のユーザにとって利用しやすくなるように、比較的採用しやすく、コスト効果的になる。本出願は、これらの目的のうちの少なくともいくつかに取り組む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願第16/197,530号(米国公開第2019/0150836号)
【特許文献2】米国特許出願第16/598,000号(米国公開第2019/0150836号)
【特許文献3】米国仮特許出願第62/872,339号
【特許文献4】米国仮特許出願第62/961,438号
【特許文献5】米国仮特許出願第62/967,694号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
唾液は、水分補給および脱水症を測定する際に使用するための理想的な身体物質であり得る。唾液は、最小の侵襲性で容易に取得されるが、複雑な流体である。唾液の約99%は水であり、残りの1%は、大きい有機分子(タンパク質など)、小さい有機分子(尿素など)、および電解質(ナトリウムおよびカリウムなど)を備える。唾液全体は、口の全流体内容物として考えると、血清成分、血球、細菌、細菌産物、上皮細胞、細胞産物、食べかす、および気管支分泌物を含む、多数の他の成分を含有している。したがって、唾液を処理して、個人の水分補給レベルを測定することは、困難であるが、有効に行われるならば、極めて有益である可能性がある。
【0018】
本出願の譲受人は、被験者の水分補給レベルを測定するために、唾液を検査、測定、および分析するため、ならびに人間または動物の被験者における他の物質および/または生理学的パラメータを測定するための、システム、方法、およびデバイスについて説明する、先行特許出願を出願している。これらの先行特許出願は、2018年11月21日に出願された「Saliva Testing System」なる名称の米国特許出願第16/197,530号(米国公開第2019/0150836号)、および2019年10月10日に出願された「Ion Selective Sensor」なる名称の米国特許出願第16/598,000号(米国公開第2019/0150836号)を含む。これらの出願はまた、2019年7月10日に出願された「Saliva Test Strip and Method」なる名称の米国仮特許出願第62/872,339号、2020年1月15日に出願された「Assessment of Biomarker Concentration in a Fluid」なる名称の米国仮特許出願第62/961,438号、および2020年1月30日に出願された「Biological Fluid Sample Assessment」なる名称の米国仮特許出願第62/967,694号を含む。上記で参照した特許出願のすべては、本明細書によって参照により本出願に組み込まれ、本明細書では「組み込まれた出願」と総称される。本出願は、背景技術セクションにおいて上記で説明した目的のうちの少なくともいくつかに取り組む、生体液分析システムおよび方法について説明することによって、組み込まれた出願における技術を高める。
【0019】
本出願はまた、水分補給レベルおよび電解質不足を評価し、身体運動前、その間、およびその後の水分補給プロトコルを推奨するためのシステムおよび方法について説明することによって、組み込まれた出願における技術を高める。具体的には、本出願は、様々な条件下の唾液浸透圧(salivary osmolarity)、ボディマス喪失、運動により生じる水分量の発汗速度、および塩分(電解質)喪失の測定に基づいて、パーソナライズされた基準データセットを決定するシステムおよび方法について説明する。この基準データセットは、環境条件に固有の、個人の水分およびナトリウム補給要件を予測することができるアルゴリズムを確立するために使用され、活動および/または標準の自覚的運動強度(RPE)スケールに基づく、生体測定値(たとえば、唾液浸透圧)、および運動の程度を含み得る。次いで、運動中の水分およびナトリウム喪失を埋め合わせるために、いつおよび何を摂取するべきかの詳細なガイダンスを提供するため、ならびにケースバイケースで、運動または熱ストレスの後で水分およびナトリウム喪失を補充および回復するために、これらの要件が個人に通信される。
【0020】
本開示の一態様では、分析システムは、ポータブルなハンドヘルド分析器と、人間または動物の体液からの複数の検体を監視するために使用される、1つまたは複数の検体固有の検査ストリップとを含む。ハンドヘルド分析器は、インペディメトリック(impedimetric)、電位差測定および/またはアンペロメトリック分析を実行することができ、また、検体固有の検査ストリップを使用して、複数の検体の濃度を決定することができる。使いやすさを改善するために、ハンドヘルド分析器は、検査ストリップタイプおよびバッチを自動的に検出し、周囲条件に適応するために、温度補償を自動的に適用し得る。一実施形態では、ハンドヘルド分析器は、スタンドアロンモードで独立して使用され得る。別の実施形態では、ハンドヘルド分析器は、クラウドデータベースに測定データをアップロードするために、電話、タブレットなどにワイヤレス接続され得る。クラウドデータベースは、複数のユーザおよびデバイスから、データを閲覧および分析するために、電話またはタブレットを使用してアクセスされ得る。妥当性および正確度を改善するために、システムは、個人ユーザ向けにパーソナライズされる測定解釈のための方法、異常な読取りの検出のための方法、エラー検出アルゴリズム、および/または測定値に対する温度の影響を補償するための方法を統合し得る。
【0021】
本開示の別の態様では、体液試料における検体を測定し、複数のユーザからの測定データを組み合わせる方法は、最初に、ハンドヘルド分析器と、検体分析アプリケーションがダウンロードされたスマートコンピューティングデバイスとの間のワイヤレス接続を開始するステップと、ハンドヘルド分析器に検査ストリップを挿入するステップとを伴い得る。方法はまた、検査ストリップ上に体液の試料を収集するステップと、ハンドヘルド分析器を用いて、試料における少なくとも1つの検体の濃度を測定するステップと、ハンドヘルド分析器からスマートコンピューティングデバイスに、測定された濃度をワイヤレス通信するステップと、スマートコンピューティングデバイス上で、測定された濃度を表示するステップとを伴い得る。最後に、方法は、データベースに測定された濃度を送信するステップと、測定された濃度と、データベース上の少なくとも1人の追加のユーザからの少なくとも1つの追加の測定された検体濃度とを含む、データを編成するステップとを伴い得る。これらの方法ステップの順序は、様々な代替実施形態において変更され得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、方法は、スマートコンピューティングデバイスとインターネットとの間のワイヤレス接続を開始するステップをさらに伴ってもよく、ここで、データベースは、クラウドストレージロケーション上に位置し、ここで、データベースに測定された濃度を送信するステップは、インターネットを介して、スマートコンピューティングデバイスからクラウドストレージロケーションに、測定された濃度をワイヤレス送信するステップを伴う。いくつかの実施形態では、データは、複数の組織に属する複数人ずつのユーザのグループに基づいて編成される。いくつかの実施形態では、方法はまた、スマートコンピューティングデバイスを介して、測定するステップを開始するステップを伴ってもよく、測定するステップを開始するステップは、検体分析アプリケーション上のオペレータアカウントにログインするステップと、それから試料が取られることになる特定のソースを選択するステップと、ハンドヘルド分析器とスマートコンピューティングデバイスとの間のワイヤレス接続を確認するステップとを伴い得る。
【0023】
方法は、場合によっては、ハンドヘルド分析器上で、検査ストリップタイプおよびバッチデータを自動的にダウンロードおよび記憶するステップをさらに含み得る。たとえば、いくつかの実施形態では、検査ストリップタイプおよびバッチデータを自動的にダウンロードおよび記憶するステップは、検査ストリップ上の抵抗符号化(resistance-encoded)検査ストリップ識別情報を測定するステップと、検査ストリップタイプおよびバッチデータを決定するために、検査ストリップ識別情報をハンドヘルド分析器のメモリ中のデータと比較するステップとを伴い得る。場合によっては、そのような方法は、スマートコンピューティングデバイスに、検査ストリップタイプおよびバッチデータを通信するステップと、検査ストリップタイプが不明の検査ストリップタイプである場合、ハンドヘルド分析器およびスマートコンピューティングデバイス上のエラーメッセージを通して、ユーザにアラートするステップとをさらに伴い得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、方法はまた、使用済みまたは故障した検査ストリップの使用を、検査ストリップがすでに使用されたか、または故障していると決定するステップと、ハンドヘルド分析器またはスマートコンピューティングデバイスのうちの少なくとも1つにおいて、検査ストリップを破棄するように、ユーザにプロンプトするステップとによって、防止するステップを伴い得る。方法はまた、場合によっては、アプリケーションおよび/またはハンドヘルド分析器を使用して、どのように試料を収集するかに関して、ユーザに指示を提供するステップを伴い得る。また、場合によっては、方法は、周囲温度を決定するステップと、周囲温度に基づいて、検出技法を適用するステップと、バッチ固有の較正係数および周囲温度を使用して、検体の濃度を決定するステップとを行うために、ハンドヘルド分析器を使用するステップを伴い得る。方法はまた、ハンドヘルド分析器を用いて、信号不整合を測定するステップと、検査ストリップに対して、異常に高い信号または異常に低い信号を検出するステップとによって、測定が不正確であると決定するステップを伴い得る。いくつかの実施形態では、方法は、スマートコンピューティングデバイスを使用して、ユーザ解釈を支援するために、測定された濃度を分析するステップをさらに伴い得る。いくつかの実施形態では、スマートコンピューティングデバイスは、生の測定された濃度を、前に確立された個人固有の基準値に関連付ける。
【0025】
本開示の別の態様では、被験者からの体液試料における少なくとも1つの検体を測定する方法は、ハンドヘルド分析器に検査ストリップを挿入するステップと、検査ストリップを、体液が存在する被験者の身体部分と接触させることによって、検査ストリップ上に体液試料を収集するステップと、ハンドヘルド分析器が、十分な量の体液試料が収集されたことを示した後、検査ストリップを身体部分との接触から取り外すステップと、検査ストリップに電気信号を印加するステップと、ハンドヘルド分析器を用いて、印加された電気信号に対する、検査ストリップおよび体液試料の組合せの反応を測定するステップと、ハンドヘルド分析器を用いて、反応を分析して、体液試料が有効な試料であると決定するステップと、体液試料における少なくとも1つの検体の濃度を測定するステップと、測定された濃度をハンドヘルド分析器上で表示すること、および/または測定された濃度を別のデバイスに転送することを行って、測定された濃度を表示すること、さらなる計算を生成すること、および/または測定された濃度を記憶することを行うステップとを伴い得る。ここでも、これらのステップの順序は、本発明の範囲から逸脱することなく変更され得る。
【0026】
本開示の別の態様では、体液における1つまたは複数の検体の濃度を決定するためのハンドヘルド分析器は、ハウジングと、ハウジング内の検査ストリップポートと、ハウジング上のディスプレイ画面と、ハウジング内の温度センサーと、ハウジング内の複数の電子構成要素とを含み得る。複数の電子構成要素は、直接デジタル合成(DDS)チップまたはデジタルアナログ変換器(DAC)チップのうちの少なくとも1つと、アナログデジタル変換器(ADC)チップと、ワイヤレス通信チップと、処理回路と、コンピュータメモリとを含み得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、検査ストリップポートは、検体固有の検査ストリップと、複数の検体を測定することが可能な検査ストリップとからなるグループから選択された、検査ストリップを受け入れるように構成される。いくつかの実施形態では、複数の電子構成要素は、ハンドヘルド分析器が、モバイルアプリケーションを介して、データベースに接続されるとき、コンピュータメモリに検査ストリップ構成設定を自動的に転送するように構成される。いくつかの実施形態では、ハンドヘルド分析器は、検査ストリップ上の抵抗符号化識別情報と、コンピュータメモリ中に記憶されたデータとを使用して、検査ストリップタイプおよびバッチデータを決定するように構成される。いくつかの実施形態では、複数の電子構成要素は、複数のタイプの検査ストリップのための検出方法、励起波形、および利得設定を自動的に調整するように構成される。いくつかの実施形態では、温度センサーは、周囲温度を測定するように構成され、処理回路は、温度検出アルゴリズムを使用して、測定された周囲温度を処理するように構成される。いくつかの実施形態では、複数の電子構成要素は、水分検出アルゴリズムを使用して、検査ストリップへの体液試料の適用を自動的に検出および解釈し、測定を開始すること、または試料整合性を保証することのうちの少なくとも1つを行うように構成される。
【0028】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、検体濃度を決定するために、測定された濃度および測定された温度を、検査ストリップタイプおよびバッチに固有の基準データと比較するように構成される。いくつかの実施形態では、プロセッサは、試料の整合性、および測定の完全性を保証するために、エラー検出アルゴリズムによって、生の測定値を分析するように構成される。いくつかの実施形態では、ハンドヘルド分析器は、ハンドヘルド分析器が充電されている間に、検査ストリップが挿入される場合、ディスプレイ画面上にエラーメッセージを表示するように構成される。いくつかの実施形態では、プロセッサは、ハンドヘルド分析器を用いて実施された測定の数をカウントし、デバイス上で日常保守手順を実行するためのアラートを提供するように構成される。いくつかの実施形態では、ハンドヘルド分析器は、製造ばらつきを考慮するために、自動較正および自己検査を実行するように構成される。
【0029】
本開示の別の態様では、被験者のための検体濃度を解釈するための方法は、被験者から少なくとも一度、制御された条件下で、検体の少なくとも1つの測定値を取るステップと、アルゴリズムを使用して、制御された条件下で、被験者に固有の検体のためのパーソナライズされた基準範囲を決定するステップと、パーソナライズされた基準範囲を使用して、被験者のためにカスタマイズされた特定の測定解釈を提供するステップとを伴い得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、方法は、プロトコルを使用して、制御された測定値がユーザによって必要に応じて収集され得る生理学的状態を確立するステップをさらに伴い得る。いくつかの実施形態では、方法は、プロトコルを使用して、測定値がプロトコルの一部として特別に略述される生理学的状態を確立するステップをさらに伴い得る。いくつかの実施形態では、方法は、制御された測定が実施され得る特定の条件を略述するステップをさらに伴い得る。いくつかの実施形態では、方法は、複数のプロトコルを使用して、単一の検体のための複数のパーソナライズされた基準範囲を確立するステップをさらに伴い得る。いくつかの実施形態では、方法は、単一の検体からの少なくとも1つのパーソナライズされた基準範囲を使用して、後続の測定の個人固有の解釈を提供するステップをさらに伴い得る。いくつかの実施形態では、方法は、複数の検体のためのパーソナライズされた基準範囲を使用して、後続の測定の個人固有の解釈を提供するステップをさらに伴い得る。
【0031】
本開示の別の態様では、測定の完全性を評価するための方法は、ハンドヘルド分析器によって、検査ストリップに少なくとも1つの信号を印加するステップと、ハンドヘルド分析器を使用して、不整合について少なくとも1つの信号を監視するステップと、信号の不整合があるか否かに基づいて、測定値を正常または異常として分類するステップとを伴い得る。いくつかの実施形態では、信号は、複数の信号を含む。信号は、測定信号の部分を備える。いくつかの実施形態では、信号は、測定信号とは無関係である。いくつかの実施形態では、測定の不整合は、測定値を低信頼として類別するために使用され、オペレータは、その測定値を破棄するように指示される。いくつかの実施形態では、測定の不整合は、測定値を低信頼として類別するために使用され、その測定値は、オペレータに報告されない。いくつかの実施形態は、測定の不整合を使用して、測定値を低信頼として類別するステップと、ユーザに低信頼測定値を報告するステップとをさらに伴い得る。いくつかの実施形態は、測定の不整合を使用して、測定値を低信頼として類別するステップと、別の測定を実行するように、ユーザに自動的にプロンプトするステップとをさらに伴う。場合によっては、方法は、測定の不整合を使用して、ハンドヘルド分析器によって適用される検出の方法または測定解釈アルゴリズムのうちの少なくとも1つを変更するステップをさらに伴い得る。
【0032】
本開示の別の態様では、検体を測定するとき、温度を補償する方法は、温度センサーを用いて、温度を監視するステップと、ハンドヘルド分析器中に格納されたアルゴリズムを使用して、周囲温度を決定するステップと、決定された周囲温度を使用して、検体を測定するための信号生成パラメータ、信号検出パラメータ、または信号解釈のうちの少なくとも1つを変更するステップとを伴い得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、温度は、一体型の温度センサーをもつハンドヘルド分析器によって監視される。いくつかの実施形態では、温度は、外部温度センサーをもつハンドヘルド分析器によって監視される。いくつかの実施形態では、温度における変化率は、周囲温度を決定するために使用される。いくつかの実施形態では、方法は、周囲温度、または温度における変化率のうちの少なくとも1つを使用して、検出方法が適用される前に、試料を目標温度と平衡させるために必要とされる時間を決定するステップをさらに伴い得る。
【0034】
本開示の別の態様では、人間の被験者のための水分喪失のパーソナライズされた基準データセットを生成する方法は、プロトコルもしくはプロトコルのセットに従うか、または一連のエクササイズセッションを実施するステップと、人間の被験者から収集された汗における塩分の量を反映する汗塩分含有量バイオマーカーに関係する、第1のデータを収集するステップと、水分喪失を通した人間の被験者のボディマスにおける変化を反映するボディマス変化バイオマーカーに関係する、第2のデータを収集するステップと、アルゴリズムを用いて、第1のデータおよび第2のデータを処理して、基準データセットを生成するステップとを伴い得る。
【0035】
様々な実施形態では、汗塩分含有量バイオマーカーは、限定はしないが、汗浸透圧(sweat osmolarity)、汗伝導率、および/または汗電解質濃度を含み得る。様々な実施形態では、ボディマス変化バイオマーカーは、限定はしないが、唾液浸透圧、唾液伝導率、唾液電解質濃度、尿浸透圧(urine osmolarity)、尿比重、尿色、および/またはボディマスの直接測定を含み得る。いくつかの実施形態では、方法は、唾液バイオマーカー、および人間の被験者の体重における変化によって決定されるような水分喪失における、変化の対にされた測定値のセットを使用して、水分喪失のための唾液バイオマーカーを較正するステップをさらに伴い得る。いくつかの実施形態では、水分喪失のための唾液バイオマーカーは、プロトコルまたはエクササイズセッションの前および/または後に測定され、汗バイオマーカーは、プロトコルまたはエクササイズセッションの間および/または後に測定される。
【0036】
いくつかの実施形態では、プロトコルは、少なくとも1つの定義された環境条件下で、自覚された運動スケールまたは運動の心拍数ベースのメトリックによって決定されるような、運動の特定のレベルにおいて、設定された持続時間の間に活動に従事することを伴う。いくつかの実施形態では、プロトコルは、一連の活動セッションに従事し、その後、人間の被験者が、運動のレベル、および少なくとも1つの環境条件を報告することを伴う。いくつかの実施形態では、プロトコルは、人間の被験者によって定義されたパラメータを使用して決定される。いくつかの実施形態では、運動レベルは、パーソナル活動モニタを用いて自動的にロギングされる。いくつかの実施形態では、血液バイオマーカー、汗バイオマーカー、および/または唾液バイオマーカーは、運動の程度を評価するために使用され得る。いくつかの実施形態では、方法は、人間の被験者からの手動入力を介して、少なくとも1つの環境条件を収集するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、気象監視サービスまたはデバイスからの自動入力を介して、少なくとも1つの環境条件を収集するステップをさらに含み得る。
【0037】
本開示の別の態様では、人間の被験者が活動に従事した後、人間の被験者のための補液ガイドラインをパーソナライズする方法は、それにおいて水分喪失量および塩分含有量の基準値のセットが人間の被験者のために前に確立されており、水分喪失のボディマス変化バイオマーカーを使用して、運動の程度および少なくとも1つの環境条件に関係する水分喪失を通した、人間の被験者のボディマスにおける変化を確立するステップと、アルゴリズムを使用して、人間の被験者から喪失された水分の量および化学組成を予測するステップと、補給および回復のために必要とされる水分の量および組成、ならびにそれにわたって水分が摂取されるべきである時間期間について、人間の被験者にアドバイスを提供するステップとを伴い得る。
【0038】
様々な実施形態では、ボディマス変化バイオマーカーは、限定はしないが、唾液浸透圧、唾液伝導率、唾液電解質濃度、尿浸透圧、尿比重、尿色、および/またはボディマスの直接測定を含み得る。いくつかの実施形態では、運動の程度は、人間の被験者によって自己報告される。いくつかの実施形態では、運動の程度は、パーソナル活動モニタまたは心拍数モニタを使用して確立される。いくつかの実施形態では、方法は、限定はしないが、血液バイオマーカー、汗バイオマーカー、および/または唾液バイオマーカーなどのバイオマーカーを使用して、運動の程度を決定するステップをさらに伴い得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、環境条件は、人間の被験者によって自己報告される。いくつかの実施形態では、環境条件は、気象監視サービスまたはデバイスを使用して決定される。いくつかの実施形態では、アドバイスは、スマートフォンまたはタブレットコンピューティングデバイスのうちの少なくとも1つのための、コンピュータアプリケーションを介して提供される。いくつかの実施形態では、アドバイスを提供するステップは、いつ水分を消費するべきか、および飲むべき水分の少なくとも1つのタイプに関して、コンピュータアプリケーションを介して、人間の被験者にプロンプトを提供するステップを伴う。
【0040】
本開示の別の態様では、活動に従事している人間の被験者のための補液ガイドラインをパーソナライズする方法は、それにおいて水分喪失量および塩分含有量の基準値のセットが人間の被験者のために前に確立されており、活動に従事している人間の被験者のための運動の程度を確立するステップと、少なくとも1つの環境条件を確立するステップと、確立された運動の程度および少なくとも1つの環境条件とともにアルゴリズムを使用して、活動中に人間の被験者によって喪失された水分の量および化学組成を予測するステップと、回復のために必要とされる水分の量および組成、ならびにそれにわたって水分が摂取されるべきである時間期間に関して、人間の被験者にアドバイスを提供するステップとを伴い得る。
【0041】
本開示の別の態様では、活動に従事する前の人間の被験者のための補液ガイドラインをパーソナライズする方法は、それにおいて水分喪失量および/または塩分含有量の基準値のセットが人間の被験者のために前に確立されており、少なくとも1つの環境条件を確立するステップと、人間の被験者によって予測されるように、運動の程度を確立するステップと、少なくとも1つの環境条件および運動の程度とともにアルゴリズムを使用して、活動中に人間の被験者によって喪失される水分の量および化学組成を予測するステップと、人間の被験者のためのエクササイズ中に水分補給を維持するため、およびエクササイズの後の回復のための、水分の量および組成に関して、ユーザにアドバイスを提供するステップとを伴い得る。いくつかの実施形態では、方法は、水分補給バイオマーカーを使用して、活動に従事する前の人間の被験者の水分補給状態を確立するステップと、水分補給バイオマーカーを使用して、アドバイスをカスタマイズするステップとをさらに伴い得る。
【0042】
本開示の別の態様では、活動に従事した後の人間の被験者のための補液ガイドラインをパーソナライズする方法は、それにおいて水分喪失量および/または塩分含有量のための基準値のセットが人間の被験者のために前に確立されており、エクササイズイベントの後、唾液浸透圧を測定するステップと、人間の被験者のためのエクササイズの後の回復のための水分の量および組成に関して、ユーザにアドバイスを提供するステップとを伴い得る。
【0043】
場合によっては、方法は、唾液浸透圧などの水分補給バイオマーカーを使用して、活動に従事した後の人間の被験者の水分補給状態を確立するステップと、水分補給バイオマーカーを使用して、補水アドバイスをカスタマイズするステップとをさらに伴い得る。他の実施形態では、方法は、水分補給バイオマーカーを使用して、活動に従事した後の人間の被験者の水分補給状態を確立するステップと、長期的(時間的)水分補給バイオマーカーのマーカーを使用して、どのくらい迅速に人間の被験者の水分補給が望ましいレベルに戻りつつあるかに基づいて、アドバイスをカスタマイズし、適合させるステップとを伴い得る。水分補給バイオマーカー測定の間の時間は、所望の水分補給状況と現在の水分補給状況との間の差によって決定される。
【0044】
本開示の別の態様では、人間の被験者からの汗試料のナトリウム含有量を決定するための方法は、人間の被験者から汗試料を収集するステップと、ポータブルなハンドヘルド検査システムを使用して、汗試料において電気化学的検査を実行して、汗試料の伝導率、インピーダンス、または浸透圧のうちの少なくとも1つの測定値を取るステップと、較正曲線を使用して、測定値をナトリウム含有量に変換するステップとを伴い得る。いくつかの実施形態では、汗試料を収集するステップは、ハンドヘルドのポータブル検査システムの1回のみ使用できる検査ストリップを用いて、人間の被験者の皮膚から直接、少量の汗を収集するステップを伴う。いくつかの実施形態では、汗試料を収集するステップは、皮膚に直接適用された接着パッチを介して、人間の被験者の皮膚から汗を収集するステップと、パッチから汗を抽出するステップと、ハンドヘルドのポータブル検査システムの1回のみ使用できる検査ストリップを用いて、抽出された汗から汗試料を収集するステップとを伴う。
【0045】
いくつかの実施形態では、汗試料は、電極およびマイクロフルイディクスのうちの少なくとも1つを含む、接着パッチを使用して収集され、接着パッチは、ハンドヘルドのポータブル検査システムとの物理接続を通して、ナトリウム含有量の皮膚上の分析を提供する。いくつかの実施形態では、汗試料は、電極、マイクロフルイディクス、および/または電子構成要素を含む、接着パッチを使用して収集され、接着パッチは、電気化学的検査を実行し、電気化学的検査からの生のデータをハンドヘルドのポータブル検査システムにワイヤレス通信する。いくつかの実施形態では、ポータブル検査システムは、汗、唾液、または血液の少なくとも1つの追加のバイオマーカーの分析を実行して、人間の被験者のボディマス変化および/または身体運動を確立するようにさらに構成される。
【0046】
これらおよび他の態様および実施形態について、添付の図面に関して、以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】一実施形態による、生体液分析システムの図である。
【
図2】一実施形態による、ハンドヘルド分析器の図である。
【
図3】一実施形態による、生体液ハンドヘルド分析器をポイントオブケアデバイスとして独立して使用するための方法のフローチャートである。
【
図4】一実施形態による、電話またはタブレットとのペアリングを含む、生体液ハンドヘルドシステムを使用するための方法のフローチャートである。
【
図5】一実施形態による、人間の被験者のための水分補給および汗喪失のための基準データセットを作成するためのシステムの図である。
【
図6】一実施形態による、汗喪失を評価し、補水プロトコルを推奨するための方法を示すフローチャートである。
【
図7】代替実施形態による、汗喪失を評価し、補水プロトコルを推奨するための方法を示すフローチャートである。
【
図8】別の代替実施形態による、汗喪失を評価し、補水プロトコルを推奨するための方法を示すフローチャートである。
【
図9】エクササイズの後に補水し、水分補給を監視するためのプロトコルを示すフローチャートである。
【
図10】唾液浸透圧の測定に基づく補液アルゴリズムを示すフローチャートである。
【
図11】汗ナトリウム濃度の測定に基づくナトリウム補給アルゴリズムを示すフローチャートである。
【
図12】別の実施形態による、汗喪失を評価し、補水プロトコルを推奨し、基準データセットにデータをフィードバックするための方法を示す、フロー図である。
【
図13】一実施形態による、汗収集および分析システムを示すシステム図である。
【
図14A】一実施形態による、汗を収集および分析するための方法を示す図である。
【
図14B】一実施形態による、汗を収集および分析するための方法を示す図である。
【
図14C】一実施形態による、汗を収集および分析するための方法を示す図である。
【
図14D】一実施形態による、汗を収集および分析するための方法を示す図である。
【
図15】一実施形態による、汗試料の浸透圧とナトリウム濃度との間の相関を示すチャートである。
【
図16】別の実施形態による、汗喪失を評価し、補水プロトコルを推奨し、基準データセットにデータをフィードバックするための方法を示す、フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本出願は、生体液分析システムおよび方法の様々な実施形態および特徴について説明する。
図1を参照すると、生体液分析システム10の一実施形態は、ハンドヘルド分析器12と、複数の検査ストリップ14a~14eと、電話、タブレット、または他のスマートコンピューティングデバイス上で使用されるためのアプリケーション16とを含む。システム10は、アプリケーション16がアクセスし得る、データを記憶するためのデータベース18(または、複数のデータベース)をさらに含み得る。データベース18は、クラウド、または任意の他の好適なロケーションに位置し得る。
【0049】
検査ストリップ
様々な実施形態では、生体液分析システム10は、任意の好適な数および組合せのタイプの検査ストリップ14a~14eを含み得る。いくつかの実施形態では、たとえば、検査ストリップ14a~14eのパネルが提供されてもよく、各ストリップ14a~14eは、特定の検体(たとえば、電解質、代謝産物、ホルモン)、または検体のパネル(たとえば、複数の電解質)に対して化学的に敏感である。検査ストリップ14a~14eは、1回のみ使用できる、使い捨てのものであり、特定の生体試料タイプ(たとえば、血液、唾液、汗、尿)、または非生体試料タイプ(たとえば、プール用水、廃水)について検査するように構成される。検査ストリップ14a~14eは、いくつかの実施形態では、目で見て区別可能であってもよく、かつ/またはレジスタ符号化(resistor-encoded)識別コードを含んでもよい。検査ストリップ14a~14eは、様々な検出方法のうちの1つまたは複数を使用し得る。
【0050】
検査ストリップ14a~14eは、サイズ、形状、および設計において著しく異なり得るが、単一の分析器12との互換性を可能にする共通設計要素を共有し得る。一実施形態では、検査ストリップ14a~14eは、サンプリングポートと、4つの未処理の炭素電極とを含み、炭素電極のうちの3つは、インペディメトリック測定のために使用され、炭素電極のうちの第4のものは、検査ストリップタイプおよびバッチを表す抵抗符号化識別コードである。別の実施形態では、検査ストリップ14a~14eは、サンプリングポートと、3つの炭素電極とを含み、炭素電極のうちの2つは、検体の電位差測定を可能にするように構成され、炭素電極のうちの第3のものは、検査ストリップタイプおよびバッチを表す抵抗符号化識別コードである。検査ストリップ14a~14eのこれらの実施形態の両方に共通するものは、ハンドヘルド分析器12とインターフェースするための電極構造、および検査ストリップ識別情報である。すべての他の特徴は、所与の検体(または、検体のセット)および試料タイプのために構成される。
【0051】
図1に示された実施形態では、4つのタイプの検査ストリップ14a~14eが、生体液分析システム10の一部として示されている。(各タイプの複数のストリップが提供されてもよく、代替的に、任意の他の好適な数の検査ストリップタイプが提供されてもよい。)この実施形態では、分析システムは、検体#1のための検査ストリップ14aと、検体#2のためのストリップ14bと、検体#3のためのストリップ14cと、検体#1および#2のためのストリップ14dと、検体#1および#3のためのストリップ14eとを含む。もちろん、検体#1、#2、および#3は、様々な実施形態による、任意の好適な検体であり得る。
【0052】
分析器
いくつかの実施形態では、生体液分析システム10の分析器12は、信号生成、測定、および処理が可能な、ハンドヘルドのポイントオブケア分析器12である。ハンドヘルド分析器12は、それに挿入された検査ストリップ14a~14eのタイプを、たとえば、検査ストリップ14a~14e上のレジスタ符号化識別コードを読み取ることによって、自動的に決定し得る。ハンドヘルド分析器12は、検出方法、励起波形、および利得設定を構成するために、ならびに生の測定データを処理するとき、バッチ固有の較正曲線を適用するために、識別の情報を使用し得る。
【0053】
次に
図2を参照すると、ハンドヘルド分析器12の一実施形態が詳細に示されている。この実施形態では、ハンドヘルド分析器12は、ワイヤレス通信のためのオンボードBluetooth低エネルギーチップ22と、アナログ信号の測定のためのアナログデジタル変換器(ADC)チップ24とをもつ、マイクロコントローラ20を含む。分析器は、ワイヤレス通信のためのアンテナ26と、リアルタイムクロック28と、検査ストリップ識別情報およびバッチ較正データの記憶のためのメモリ30と、画面、ボタン、およびLEDを含む、ユーザインターフェース32と、周囲温度の監視のための温度センサー34と、デジタル信号生成のための直接デジタル合成チップ36と、アナログ信号生成のためのデジタルアナログ変換器チップ38と、センサー回路42への信号生成の転送を調節するための低雑音アナログスイッチ40と、利得設定回路44とをさらに含む。
【0054】
ハンドヘルド分析器はまた、3つのマルチプレクサ(「MUX」)46、48、50も含み得る。第1のマルチプレクサ46は、センサー回路42とセンサーポート54との間の接続を調節するように構成される。第2のマルチプレクサ48は、センサー回路42と高分解能ADC52との間の接続を調節するように構成される。第3のマルチプレクサ50は、センサー回路42とマイクロコントローラ20との間の接続を調節するように構成される。
【0055】
ハンドヘルド分析器12のこの実施形態の特徴は、多様な範囲の分析技法が単一の分析器12とともに採用されることを可能にする。具体的には、信号生成の多重化、利得設定、および第2の高分解能ADCは、インペディメトリック、アンペロメトリック、および電位差測定分析を可能にする。
【0056】
図3は、ハンドヘルド分析器12をポイントオブケア分析デバイスとして独立して使用するための1つの例示的な方法100を示す。この実施形態では、方法は、ステップ102において、分析器12を始動させる(たとえば、電源投入する)ことによって開始する。ステップ104において、ユーザは、検査ストリップを挿入するようにプロンプトされる。ユーザは、ステップ106において、分析器12に検査ストリップを挿入し、ハンドヘルド分析器12は、ステップ108および110において、検査ストリップが使用済みでない、または故障していないことを保証するために、検査ストリップタイプおよびバッチを自動的に検出する。たとえば、一実施形態では、検査ストリップのインピーダンスが、検査ストリップが使用済みまたは故障しているか否かを決定するために使用される。別の実施形態では、一方向ヒューズ(one-way fuse)が、検査ストリップが再使用されないことを保証するために使用される。
【0057】
エラー検出アルゴリズムは、疑わしい読取りを識別するために使用され得る。一実施形態では、周期的刺激信号が印加され、測定間の整合性が、結果の正確度を評価するために使用される。別の実施形態では、この周期信号は、複数の別個の周波数において印加され、これらが調査される。値の基準範囲もまた、結果が所与の検体または試料タイプのために適切な範囲のものであるか否かを決定するために使用され得る。
【0058】
ステップ108またはステップ110が、「不良」ストリップが挿入されたことを示す場合、分析器は、ユーザにエラーコードまたは他のプロンプトを提供し(ステップ112および114)、ユーザが分析器12から検査ストリップを取り外し、方法を再度開始することを知るようにする。検査ストリップが分析器12によって受け入れられる場合、ユーザは、ステップ116において、検査ストリップに水分試料を適用するためのプロンプトを受信する。試料収集のための指示、およびエラーメッセージは、一体型ディスプレイ画面上でユーザに中継され得る。ステップ118において、分析器12は、試料が適切であるか否かを決定するために、水分試料に水分検出アルゴリズムを適用する。試料が不十分である場合、ユーザは、検査ストリップにより多くの水分を追加するための別のプロンプトを受信する(ステップ116を繰り返す)。試料が十分である場合、分析器は、水分が検出されたことを示すため、および結果を待つための、別のプロンプトを提供し得る(ステップ120)。ステップ122において、データ処理がハンドヘルド分析器12上で実行され、ステップ124において、エラー検出アルゴリズムが適用される。分析器12がエラーを検出する場合、ユーザは、ステップ126において、それに応じてプロンプトされ、検査ストリップが取り外され、新しいストリップに置き換えられて、方法が再度開始される。エラー検出アルゴリズムが、水分試料の良好な読取りを確認する場合、ステップ128において、測定の結果が、分析器および/または分析器と結合されたスマートデバイス上で、ユーザに表示される。いくつかの実施形態では、ハンドヘルド分析器12は、統合されたセルラーまたはワイヤレス能力を含み得る。そのような実施形態では、ハンドヘルド分析器12は、クラウドサーバまたは他のデータベース中に記憶するために、測定結果をアップロードすることができる。
【0059】
ハンドヘルド分析器12は、その内部メモリ上で実行された測定の回数を記録し得る。この情報を使用して、ユーザは、特定のマイルストーンにおいて、日常保守を実行するようにプロンプトされる。一実施形態では、ユーザは、一定数の測定が実行された後、検査ストリップポートを交換するようにプロンプトされる。いくつかの実施形態では、ハンドヘルド分析器はまた、内部基準負荷(internal reference load)も含み、内部基準負荷は、スタートアップ較正を実行し、製造ばらつきを考慮するために使用され得る。
【0060】
電話/タブレットアプリケーション
再び
図1を参照すると、生体液分析システム10とともに提供されたアプリケーション16は、スマートフォン、タブレット、および/または他のコンピューティングデバイス上で使用するために構成され得る。アプリケーション16は、段階的なオペレータ指示、被験者選択、および測定解釈を容易にする。ハンドヘルド分析器12によって作られた測定値は、アプリケーション16を介して、クラウドデータベース18に自動的にアップロードされ得る。
【0061】
図4を参照すると、ハンドヘルド分析器12を用いた電話/タブレットアプリケーションの動作の方法200が示されている。この方法では、アプリケーションは、202において開始され、ユーザは、204においてログインする。ユーザは、203において検査被験者を選択する。アプリは、206において、分析器をオンにするように、ユーザにプロンプトする。ユーザは、224において分析器を始動させ、分析器は、226において、アプリをオンにするように、ユーザにプロンプトする。明らかに、これらのステップの順序は逆にされてもよく、プロンプトはオプションである。アプリは、208において、分析器とペアリングされるか否かを確かめるためにチェックし、分析器は、228において、データロギングアプリケーションを使用して、アプリとペアリングされるか否かを確かめるためにチェックする。ペアリングすると、任意の新しいタイプ/バッチデータが、ハンドヘルド分析器メモリに転送され得る(ステップ210および230)。次いで、ユーザは、測定を開始するためのプロファイルを選択する。
【0062】
次に、ユーザは、ハンドヘルド分析器に検査ストリップを挿入するようにプロンプトされ(ステップ212および232)、ユーザは、検査ストリップを挿入し、分析器は、
図3に関して説明したものと同様のステップ、または同じもの(ステップ234、236、238、240、242、244、246、248)を通して、ユーザを導く。指示は、ハンドヘルド分析器および/または電話/タブレット上に表示され、どのように試料を収集するかについて、ユーザに指示してもよい。(たとえば、アプリ上の表示に関するステップ216、218、220を参照)。試料分析およびデータ処理は、ハンドヘルド分析器上で実行される。周囲温度は、測定技法を調整するため、またはデータの処理を支援するために使用され得る。結果は、アプリケーションに通信され(ステップ250)、電話/タブレット上に表示され(ステップ220)、ユーザプロファイルにロギングされる。解釈情報は、電話アプリケーション画面上に表示され得る。結果は、インターネット接続が利用可能である場合、クラウドサーバに自動的にアップロードされてもよく(ステップ222)、かつ/または、接続が利用可能であるときにアップロードするために、ローカルに記憶されてもよい。最後に、ユーザは、252において、使用済みの検査ストリップを取り外すようにプロンプトされ得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、ユーザ固有の基準パネルが、プロトコルまたはプロトコルのセットを通して、前もって確立され得る。この情報は、ユーザ固有の解釈情報を提供するために使用され得る。
【0064】
データベース
再び
図1を参照すると、生体液分析システム10はまた、システム10および方法に関連する任意の好適なデータを記憶するための、1つまたは複数のデータベース18も含み得る。いくつかの実施形態では、システム10は、クラウド中に位置するデータベース18を含み得る。データベース18は、分散されてもよく、検査ストリップ特性(タイプ、バッチ、較正係数)、オペレータプロファイル、被験者プロファイル、および検査結果を含む、システム10の動作のための情報を記憶し得る。クラウドデータベース18は、オペレータによって検査結果を検討、分析、およびエクスポートするために、ウェブブラウザを通してアクセスされ得る。必要な許可をもつユーザは、複数の検査のために複数のユーザおよび/または複数の分析器によって収集された検査結果を閲覧してもよい。
【0065】
本出願は、人間の被験者の水分補給のレベルを決定し、水分補給プロトコルを推奨するための、水分補給評価システムおよび方法の様々な実施形態および特徴について説明する。以下の開示は、汗および/または唾液の分析に焦点を合わせているが、以下で説明する実施形態、またはそれらの実施形態の変形形態は、血液、尿など、任意の他の体液の分析のために使用され得る。
【0066】
基準データセット
図5は、人間の被験者の汗喪失および水分補給に関係する情報の基準データセット302を作成するための水分補給測定システム300を示す。基準データセット302は、1つまたは複数の測定デバイスを使用して、複数の測定セッション312にわたって収集された、測定されたパラメータのパネルを含む。パラメータは、限定はしないが、環境条件304(たとえば、温度、湿度、風速、高度)、ボディマス変化および/または唾液浸透圧変化306、汗電解質含有量308、ならびに/あるいは1つまたは複数の身体運動測定値310(たとえば、心拍数、呼吸数など)を含み得る。様々なパラメータ304、306、308、310の各々は、それ自体の別個の測定デバイスを使用して、または場合によっては、複数のパラメータを測定するための1つの測定デバイスを使用して測定され得る。たとえば、
図5に概略的に示されているように、スマートフォンは、環境条件データ304を収集するために使用されてもよく、唾液測定デバイスは、ボディマス変化および/または唾液浸透圧306を測定するために使用されてもよく、汗測定デバイスは、汗浸透圧/汗ナトリウム含有量308を測定するために使用されてもよく、心拍数モニタは、身体運動310を測定するために使用されてもよい。代替実施形態では、たとえば、唾液測定値306および汗測定値308は、同じハンドヘルド測定デバイス、および同じまたは異なる検査ストリップを使用して収集され得る。これらのタイプのデバイスについては、組み込まれた参考文献において、より詳細に説明されている。
【0067】
環境条件データ304は、たとえば、外部機器からのパラメータデータの手動ロギング、専用の検査システムからの自動データロギング、または時間およびロケーションデータに基づく、気象監視サービスからのこれらのパラメータの自動ロギングによって収集され得る。身体運動310の程度は、たとえば、標準の自覚的運動強度(RPE)レーティングスケールにおける自己報告を通して決定されてもよく、かつ/または、身体運動の1つもしくは複数の測定されたバイオマーカー(たとえば、活動、心拍数、V02 max、血液、汗、または唾液における乳酸濃度)から推論されてもよい。これらの測定値は、手動で報告されてもよく、かつ/または、フィットネスウォッチもしくは心拍数胸部ストラップなどのパーソナル監視デバイスを用いて、自動的にロギングされてもよい。パーセンテージボディマス喪失306は、たとえば、摂取された、もしくは排尿を通して喪失されたいかなる水分も考慮する、運動の期間の前および後のボディマスの直接測定を通して確立されるか、または、ボディマスにおける変化のバイオマーカー(たとえば、増加した唾液浸透圧もしくは塩分、尿浸透圧、または尿比重)から推論されてもよい。汗ナトリウム含有量308は、化学分析システムを用いた汗ナトリウム含有量308の直接測定を通して確立されるか、または、汗試料の伝導率もしくは浸透圧から推定されてもよい。
【0068】
したがって、水分補給評価システム300は、たとえば、環境条件304、ボディマス喪失306、汗ナトリウム含有量308、および/または心拍数もしくは運動の他の測度310を集めるために、複数のデータ取込みデバイス(または、デバイス上のプログラムもしくはアプリケーション)を含み得る。各測定デバイスは、様々なタイプのデータ304、306、308、310を収集し、基準データセット302にデータを提供するために、複数の測定セッション312にわたって使用され、基準データセット302は、コンピュータ上またはクラウド中に記憶されたデータベースに位置し得る。基準データセット302は、たとえば、測定値の収集より前に、運動の持続時間および強度を指定する、あらかじめ定義されたエクササイズプロトコルのセットに従うことによって、または通常の活動の間に経時的に測定値を取ることによって生成され得る。図示された例では、データは、4つの試行測定セッション312(試行1~4)にわたって収集される。人間の被験者は、異なる屋外の温度において、および異なるRPEで、各セッション中に60分間、ランニングする。すべての4つの測定セッション312から収集されたデータは、基準データセット302に送り込まれる。次いで、基準データセット302は、アルゴリズムを確立するために使用されてもよく、アルゴリズムは、様々な条件下で、人間の被験者の発汗速度および/または汗ナトリウム組成を推定するために使用され得る。
【0069】
図5の実施形態では、環境条件(涼しい、および暑い)、ならびに強度(RPE3~4(軽度~中程度の活動)およびRPE7~8(激しい活動))を略述する、4つのエクササイズ試行測定セッション312のセットが定義される。環境条件304は、ユーザによって電話アプリケーションに手動でロギングされる。唾液浸透圧306は、ハンドヘルド検査デバイス(組み込まれた出願において説明されたデバイスなど)を用いて、エクササイズの前および後に測定され、ハンドヘルド検査デバイスは、電話アプリケーションに結果をワイヤレス通信する。唾液浸透圧306における変化は、各試行中にボディマスにおける変化を推定するために使用され得る。汗は、各試行中に接着パッチ(または、代替実施形態では、他の収集デバイス)を用いて収集され得る。汗浸透圧308は、ハンドヘルド検査デバイス(組み込まれた出願において説明されたデバイスなど)を用いて測定され、ハンドヘルド検査デバイスは、電話アプリケーションに結果をワイヤレス通信する。汗浸透圧308または伝導率は、汗ナトリウム含有量を推定するために使用され得る。心拍数は、胸部ストラップモニタを用いて監視され、電話アプリケーションにワイヤレス通信され得る。平均心拍数は、運動310の強度を決定するために使用され得る。
【0070】
補液ガイドライン
次に
図6を参照すると、基準データセット302を使用して、人間の被験者のための補液ガイドラインを含む、補水プロトコル324を生成するための方法320が概説されている。これらのガイドラインは、熱ストレスまたは身体運動中の水分およびナトリウム喪失を埋め合わせることにおいて、ならびに、運動または熱ストレスの後で安静レベルに戻るように、水分およびナトリウムを補充および回復するために支援し得る。基準データセット302が確立されると、方法320は、322において、アルゴリズムを使用して、汗ナトリウム喪失を予測すること、および次いで、予測された汗ナトリウム喪失を使用して、補水プロトコル324を生成することを伴い得る。補水プロトコル324における指示は、喪失を補うために必要とされる水分の量、喪失を補うために必要とされる水分のナトリウム組成、および/またはその間にこれらの水分が摂取されるべきである時間を定義し得る。アルゴリズムは、322において実装されてもよく、補水プロトコル324は、コンピュータ中に格納されたプロセッサ、スマートフォンまたはスマートタブレット上に記憶されたアプリケーション、クラウドにおけるプロセッサなどを介して生成され得る。アプリケーションは、このプロトコルに従うことを支援するために、アラートを提供し得る。
【0071】
図6に示された実施形態では、環境条件304は、ポータブル気象監視システム334を用いて監視され、電話アプリケーションにワイヤレス通信される。エクササイズセッション中の運動レベル310は、胸部ストラップ心拍数モニタ340を用いて監視され、電話アプリケーションにワイヤレス通信される。唾液浸透圧306は、ハンドヘルド検査デバイス336を用いて、エクササイズの前および後に測定され、ハンドヘルド検査デバイス336は、電話アプリケーションに結果をワイヤレス通信する。唾液浸透圧306における変化は、エクササイズ中にボディマスにおける変化を推定するために使用される。基準データセット302は、記録された情報に基づいて、322において汗組成を予測するために使用される。電話アプリケーションは、エクササイズの後に補水および回復を支援するために、何をどのくらい飲むべきかを略述する、補水プロトコル324を生成する。
【0072】
図7は、水分補給を評価し、補水プロトコル366を提供するための方法350の別の実施形態を示す。この実施形態では、環境条件354は、オンライン気象監視サービス356およびユーザのロケーションを使用して決定される。エクササイズセッション中の運動レベル360は、心拍数モニタ362、たとえば、スマートウォッチに統合された手首ベースのモニタを用いて監視され、電話アプリケーションにワイヤレス通信される。基準データセット352は、364において、記録および測定された情報に基づいて、ボディマスおよび汗組成における変化を予測するために使用される。電話アプリケーションは、エクササイズの後に回復を支援するために、何を飲むべきかを略述する、補水プロトコル366を生成し、飲む行動を強化するために、モバイル通知を通してユーザに定期的にアラートする。ここでも、汗組成予測ステップ364および補水プロトコルを生成するステップ366は、スマートデバイスのためのアプリケーション、コンピューティングデバイスにおけるプロセッサ、クラウドプロセッサなど、任意の好適なプロセッサによって実行され得る。
【0073】
図8は、水分補給を評価し、補水プロトコル392を提供するための方法370の別の実施形態を示す。この実施形態では、環境条件374は、オンライン気象監視サービス384およびユーザのロケーションを使用して決定される。運動レベル380は、ユーザが、382において、エクササイズの予想される強度(たとえば、レースの日/高強度)を指定することによって、予測される。唾液浸透圧376は、ハンドヘルド検査デバイス386を用いて、エクササイズの前に測定され、ハンドヘルド検査デバイス386は、電話アプリケーションに結果をワイヤレス通信する。唾液浸透圧376は、開始水分補給状況を推定するために使用される。基準データセット372は、390において、記録された情報に基づいて、ボディマスおよび汗組成における変化を予測するために使用される。電話アプリケーションは、エクササイズ中に水分補給を維持することを支援するために、ならびにエクササイズの後に補水および回復を支援するために、何を飲むべきかを略述する、補水プロトコル392を生成する。ユーザは、水分補給された状態を維持することを支援するために、および水分喪失を埋め合わせるために、飲み物を飲むように、エクササイズ中に定期的にアラートされる。
【0074】
別の実施形態では、唾液浸透圧は、エクササイズ後に測定される。基準データセットは、最終的な唾液浸透圧、またはイベントの前および後の唾液浸透圧の変化、または個人の最適な水分補給ゾーンの間の差とともに、ボディマスにおける変化を予測するために使用される。ナトリウムおよび電解質の喪失は、記録された情報に基づいて、汗組成から推定される。電話アプリケーションは、エクササイズの後に水分補給回復を支援するために、何を飲むべきか、どのくらい飲むべきか、およびいつ飲むべきかを略述する、プロトコルを生成する。
【0075】
別の実施形態では、ユーザは、自分の唾液浸透圧を測定するように、エクササイズ後の回復の間に定期的にアラートされ得る。これらの他の唾液測定値は、初期水分補給プロトコルの有効性を推定するために、およびその有効性を高め、個人を望ましい水分補給状況に戻すために、水分補給プロトコルが適合されることを可能にするために使用される。
【0076】
別の実施形態では、ユーザは、自分の唾液浸透圧を測定するように、エクササイズ後の回復の間に定期的にアラートされ得る。プロンプトの間の時間期間は、個人の唾液浸透圧および水分補給状況が、個人の望ましい水分補給状況からどのくらい離れているかに基づく。
【0077】
図9は、補水プロトコル400(または「回復プロトコル」)の一実施形態を示す。この実施形態では、唾液浸透圧は、402においてエクササイズの前、および404においてエクササイズの後に測定され、浸透圧における変化が、406において計算され、その変化が、408において、
図10に示されたアルゴリズム450などの補液アルゴリズム450を使用して、ボディマス喪失を推定するために使用される。汗ナトリウムは、410において直接測定されるか、または環境および/もしくは運動性パラメータ、ならびに、
図11に示されたアルゴリズム470などの汗補給アルゴリズム470を使用して生成された塩分補給のためのプロトコルを使用して、基準パネルから推定されるかのいずれかである。唾液浸透圧は、個人が自分の望ましい水分補給状況を適切に達成するまで、補水を監視するために使用される。
【0078】
図9に示された実施形態では、補水プロトコルは、最初に414において、水分喪失が500ミリリットル未満であったか否かを決定するステップを伴う。500mL未満の場合、プロトコルは、416において、喪失された水分の150%の量における単一のボーラスとして、水分を補給するようにユーザに指示する。水分喪失が500mL以上であった場合、ユーザは、418において、最大800mL/時まで、喪失された水分の最大150%まで、水分を補給するように指示される。プロトコルは、次に420において、補液の後、約10分待機し、塩分浸透圧(salt osmolarity)を測定することを伴う。422において、浸透圧が、エクササイズ前の測定と比較して、さらに上昇する場合、方法はステップ406に戻る。424において、浸透圧がエクササイズ前のレベルに戻った場合、補水プロトコルは、426において停止する。もちろん、これは一例にすぎない。
【0079】
図10は、本明細書で説明する補水プロトコル生成方法の一部として使用され得る、補液アルゴリズム450の一実施形態を示す。この実施形態では、補液アルゴリズム450は、406において、唾液および/または汗浸透圧における変化を計算するか、または代替的に、アルゴリズム450は、浸透圧における変化が計算された後、それを受信し得る。次いで、アルゴリズムは、452において、浸透圧における変化を、変化のサイズに基づいて、4つのカテゴリーのうちの1つに類別する。次いで、変化が、454において乗算器によって乗算され、ボディマス喪失のパーセントが、456において計算される。ボディマス喪失は、458において、ユーザの体重によって乗算されて、水分喪失460が計算され、水分喪失460は、補液プロトコル462を生成するために使用される。
【0080】
図11は、本明細書で説明する補水プロトコル生成方法の一部として使用され得る、塩分補給アルゴリズム470の一実施形態を示す。この実施形態では、塩分補給アルゴリズム470は、環境データおよび/または運動データ472、ならびに基準パネルからの汗データ476を用いて開始し得る。代替的に、塩分補給アルゴリズム470は、測定された汗474を用いて開始し得る。アルゴリズム470は、478において、水分喪失および汗データに基づいて、塩分喪失を計算する。次いで、アルゴリズム470は、480において、補液時間にわたる塩分喪失を除算し、482において、塩分喪失が1200mg/時よりも大きく発生したか、1200mg/時以下で発生したかを決定する。次いで、アルゴリズム470は、484において、塩分喪失の量に基づいて、塩分補給プロトコルを生成する。
【0081】
検査方法
現在、汗の化学分析は、実験室ツールを使用して行われる。これらは、大型および高価であり、分析のために大きい試料を必要とする。上記で説明した基準データセットは、複数の汗測定が複数のトレーニングセッションにわたって実行されることを必要とするので、試料の実験室スタイルの分析は、非実用的であり得る。水分補給評価および水分補給推奨のための、本明細書で説明する方法を容易にするために、本出願はまた、ハンドヘルドポータブル検査システムを使用する、汗伝導率、インピーダンスまたは浸透圧の測定を通した、汗ナトリウム含有量の高速評価の方法についても説明する。
【0082】
次に
図12の概略フローチャートを参照すると、汗試料を測定するための方法500の一実施形態が示されている。この実施形態では、方法500は、ユーザ502が接着性の吸収パッチ503を皮膚に付着させることを伴う。次いで、ユーザは、504においてエクササイズを行い(またはさもなければ、努力し)、パッチ503を用いて、汗を収集する。エクササイズの後、たとえば、パッチ503の中から収集容器507に汗506を絞り出すことによって、汗506がパッチ503から抽出される。次いで、1回のみ使用できる使い捨て検査ストリップ508を使用して、汗506の小さい試料が収集容器507から収集される。次に、検査ストリップ508が、ポータブルなハンドヘルド検査システム510(組み込まれた出願において説明されたシステムなど)に挿入される。次いで、検査システム510は、汗試料506のインピーダンス(または、浸透圧)から、汗ナトリウム濃度を計算する。代替実施形態では、検査ストリップ508は、汗506を検査ストリップ508に適用する前に、ハンドヘルド検査システム510に挿入され得る。検査システム510が、汗506に関係する任意の所望のデータを生成するために使用されると、データの一部または全部が、ユーザのための基準データセット512に(たとえば、ワイヤレスに)送られ得る。
【0083】
図13は、単独で、または上記で説明した方法実施形態のいずれかの一部として使用され得る、汗測定システム520の一実施形態の例示である。この実施形態では、汗測定システム520は、汗収集キット521を含み、汗収集キット521は、小袋、トレイ、または任意の他の好適な包装において提供され得る。キット521は、1つまたは複数の接着性の汗収集パッチ522(たとえば、接着性のガーゼパッド)と、パッチ522を適用する前に皮膚を清潔にするための、1つまたは複数のアルコールワイプ524(または、他の消毒用の皮膚用ウェットティッシュ)と、1つまたは複数の汗収集トレイ526および/または汗収集保管チューブ530と、注射器528と、3つの(または、代替的に任意の他の数の)汗検査ストリップ532とを含む。汗収集トレイ526は、汗が即時にまたは収集の直後に検査されることになる場合、使用され得る。汗収集チューブ530は、汗が後で検査、保管、および/または移動されることになる場合、使用され得る。いくつかの実施形態では、接着パッチ522は、注射器528の筒に入れられてもよく、注射器528のピストンは、接着パッチ522の中から収集トレイ526またはチューブ530に汗を絞り出すために使用されてもよい。次いで、検査ストリップ532の指定された端部が、収集トレイ526またはチューブ530に入れられて、検査ストリップ532のその端部において十分な汗試料が収集され得る。システム520は、任意の数の検査ストリップ532を含んでもよく、そこで、各ストリップ532の一方の端部は、汗試料を収集するために使用され、他方の端部は、システム520の一部でもあるハンドヘルド測定デバイス534に挿入される。最後に、システム520は、スマートフォン538、タブレットなどのためのコンピュータアプリケーション536を含む。組み込まれた参考文献においてさらに説明されている、ハンドヘルド測定デバイス534は、汗試料を分析し、汗試料データをコンピュータアプリケーション536にワイヤレス送信し、コンピュータアプリケーション536は、さらなる分析を実施してもよく、補水プロトコルなど、さらなるデータを生成してもよい。
【0084】
図14A~
図14Dは、汗試料を収集および分析するために、
図13に示されたシステム520を使用するための方法を示す。
図14Aに示されているように、ステップ550は、検査被験者(または「ユーザ」)が、汗収集キット521からのアルコールワイプ524を用いて、自分の内側前腕のいずれかをきれいにふくことを伴う。次いで、
図14Bに示されているように、ステップ552は、ユーザが、清潔にされたエリアにおける前腕に、接着性の汗収集パッチ522を適用することを伴う。次いで、ユーザは、パッチ522において汗を収集するために好適な時間量、たとえば、一実施形態では、約30~60分の間、エクササイズすることになる。(代替的に、より短いまたはより長い時間期間が十分であり得る。)次に、ユーザは、汗収集パッチ522を取り外し、注射器528の筒の中に入れ、
図14C、ステップ554に示されているように、ユーザは、注射器528のピストンを押し下げて、パッチ522の中から収集トレイ526(または代替的に、収集チューブ530)に汗を絞り出す。
図14Dに示されているように、次いで、ユーザは、検査ストリップ532のうちの1つの収集端部(または「自由端」)を、収集トレイ526中に存在する汗試料に入れる。この実施形態では、検査ストリップ532の反対側の端部は、ハンドヘルド測定デバイス534にすでに挿入されているので、ユーザは、検査ストリップ532の自由端を、収集された汗試料に挿入しながら、ハンドヘルドデバイス534を保持するようになる。代替的に、検査ストリップ532は、汗試料に、および次いで、ハンドヘルドデバイス534に挿入され得る。
【0085】
測定デバイス534が、第1の検査ストリップ532から測定値を取った後、ユーザは、第1の検査ストリップ532を取り外し、第2の検査ストリップ532をハンドヘルド測定デバイス534に挿入し、検査ストリップ532の自由端を汗試料に挿入し、第2の測定値を取る。方法のこれらの最後のステップが、第3の検査ストリップ532について繰り返される。代替実施形態では、3つよりも少ない検査ストリップ532、または3つよりも多い検査ストリップ532が、1つの測定セットのために使用され得る。3つの測定値の平均化を可能にし、したがって、1つまたは2つの検査ストリップ532のみの使用と比較して、検査結果の正確度を高めるために、3つのストリップ532を使用することは、有利であり得る。ハンドヘルド測定デバイス534は、汗ナトリウム濃度、汗浸透圧、および/または他の汗特性の測定値を提供し得る。次いで、測定データは、本明細書で説明する方法およびアルゴリズムのいずれかにおいて使用され得る。たとえば、汗浸透圧および/またはナトリウム濃度は、検査被験者が、どのくらいの水分を消費するべきか、およびどのようなタイプの水分か(たとえば、どのような量およびタイプの電解質か)を決定することを助けるために使用され得る。
【0086】
図15は、様々な汗試料の浸透圧とナトリウム濃度との間の相関を示す。ハンドヘルド汗測定デバイス534は、この結果を、基準データセットに統合するために、電話アプリケーションにワイヤレス通信する。
【0087】
次に
図16を参照すると、汗試料収集方法560の別の実施形態が示されている。この実施形態では、ユーザは、最初に、1回のみ使用できるパッチ562を、前腕または皮膚上の他の収集エリアに適用する。パッチ562は、この実施形態では、統合されたマイクロフルイディクスおよび電極を含む。一実施形態では、たとえば、1回のみ使用できるパッチは、
図13に示された検査ストリップ532など、またはそれと同じである、検査ストリップを含み得る。代替実施形態は、異なる構成を含み得る。次いで、ユーザは、564においてエクササイズまたは他の運動に従事し、汗がパッチ562によって収集される。次のステップ566のために、エクササイズの間または後、検査被験者の身体にまだ付着されている間に、パッチ562(たとえば、検査ストリップ532を含む)が、汗浸透圧、伝導率などの測定を実行するために、ハンドヘルド汗測定デバイス534に接続される。次いで、ハンドヘルドデバイス534は、汗データを、基準データセット568に統合するために、電話アプリケーションにワイヤレス通信する。いくつかの実施形態では、ハンドヘルドデバイス534はまた、限定はしないが、唾液浸透圧変化および血中乳酸濃度など、基準データセット568を確立するための他の測定を実行するためにも使用され得る。
【0088】
別の実施形態では、唾液試料は、統合されたマイクロフルイディクスおよび電極を用いて、舌から直接収集される。ハンドヘルドデバイス534は、唾液データを、基準データセットに統合するために、電話アプリケーションにワイヤレス通信する。この同じシステムは、限定はしないが、唾液浸透圧変化および血中乳酸濃度など、基準データセットを確立するための他の測定を実行することが可能であり得る。
【0089】
別の実施形態では、唾液試料は、検査被験者が唾液試料を容器に提供することによって、収集される。次いで、試料は、統合されたマイクロフルイディクスおよび電極を用いて分析される。ハンドヘルドデバイス534は、唾液データを、基準データセットに統合するために、電話アプリケーションにワイヤレス通信する。この同じシステムは、限定はしないが、唾液浸透圧変化および血中乳酸濃度など、基準データセットを確立するための他の測定を実行することが可能であり得る。
【0090】
上記の説明は、完全および正確であると考えられるが、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書で説明する実施形態および特徴のいずれかに対する様々な変更が行われ得る。
【符号の説明】
【0091】
10 生体液分析システム
12 分析器
14a 検体#1のための検査ストリップ
14b 検体#2のためのストリップ
14c 検体#3のためのストリップ
14d 検体#1および#2のためのストリップ
14e 検体#1および#3のためのストリップ
16 アプリケーション
18 データベース
20 マイクロコントローラ
22 オンボードBluetooth低エネルギーチップ
24 アナログデジタル変換器(ADC)チップ
26 アンテナ
28 リアルタイムクロック
30 メモリ
32 ユーザインターフェース
34 温度センサー
36 直接デジタル合成チップ
38 デジタルアナログ変換器チップ
40 低雑音アナログスイッチ
42 センサー回路
44 利得設定回路
46 第1のマルチプレクサ
48 第2のマルチプレクサ
50 第3のマルチプレクサ
52 高分解能ADC
54 センサーポート
300 水分補給測定システム、水分補給評価システム
302、352、372、512、568 基準データセット
304 環境条件
306 ボディマス変化および/または唾液浸透圧変化
308 汗電解質含有量
310 身体運動測定値
312 測定セッション
324、366、392 補水プロトコル
334 ポータブル気象監視システム
336、386 ハンドヘルド検査デバイス
340 胸部ストラップ心拍数モニタ
354、374 環境条件
356、384 オンライン気象監視サービス
360、380 運動レベル
362 心拍数モニタ
376 唾液浸透圧
450 アルゴリズム
460 水分喪失
462 補液プロトコル
470 アルゴリズム
472 環境データおよび/または運動データ
474 測定された汗
476 基準パネルからの汗データ
502 ユーザ
503 接着性の吸収パッチ、パッチ
506 汗、汗試料
507 収集容器
508 検査ストリップ
510 ハンドヘルド検査システム
520 汗測定システム
521 汗収集キット
522 汗収集パッチ
524 アルコールワイプ
526 汗収集トレイ
528 注射器
530 汗収集保管チューブ
532 汗検査ストリップ
534 ハンドヘルド測定デバイス
536 コンピュータアプリケーション
538 スマートフォン
562 1回のみ使用できるパッチ
【国際調査報告】