(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(54)【発明の名称】ブラシレス直流モータの転流制御方法、装置及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
H02P 6/15 20160101AFI20220908BHJP
【FI】
H02P6/15
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021578113
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(85)【翻訳文提出日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 CN2019098114
(87)【国際公開番号】W WO2021016782
(87)【国際公開日】2021-02-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521007481
【氏名又は名称】▲広▼▲東▼美的白色家▲電▼技▲術▼▲創▼新中心有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGDONG MIDEA WHITE HOME APPLIANCE TECHNOLOGY INNOVATION CENTER CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Building #4,Midea Global Innovation Center,Industry Boulevard,Beijiao,Shunde Foshan,Guangdong 528311,CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】512237419
【氏名又は名称】美的集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MIDEA GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】B26-28F, Midea Headquarter Building, No.6 Midea Avenue, Beijiao, Shunde, Foshan, Guangdong 528311 China
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100203297
【氏名又は名称】橋口 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 雷
(72)【発明者】
【氏名】▲諸▼ 自▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】▲賓▼ 宏
【テーマコード(参考)】
5H560
【Fターム(参考)】
5H560AA10
5H560BB04
5H560DA13
5H560EB01
5H560GG04
5H560SS02
5H560TT01
5H560TT11
5H560TT15
5H560UA05
5H560XA03
5H560XA12
(57)【要約】
本願の実施例は、ブラシレス直流モータの転流制御方法、装置及び記憶媒体を提供する。ブラシレス直流モータの方法は、前記ブラシレス直流モータのロータの位置を検出することであって、前記検出は更に、前記ブラシレス直流モータの転流によりトリガされるように構成される、ことと、検出されたロータの位置に対応する前記ブラシレス直流モータの第1駆動方式を決定することであって、前記第1駆動方式は、前記ブラシレス直流モータの3相フルブリッジ回路の作動方式を特徴づける、ことと、パルス幅変調(PWM)駆動信号を更新することであって、前記更新は、前記第1駆動方式を参照する、ことと、更新されたPWM駆動信号を利用して、前記ブラシレス直流モータを転流を行うように制御することと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシレス直流モータの転流制御方法であって、
前記ブラシレス直流モータのロータの位置を検出することであって、前記検出は更に、前記ブラシレス直流モータの転流によりトリガされるように構成される、ことと、
検出されたロータの位置に対応する前記ブラシレス直流モータの第1駆動方式を決定することであって、前記第1駆動方式は、前記ブラシレス直流モータの3相フルブリッジ回路の作動方式を特徴づける、ことと、
パルス幅変調PWM駆動信号を更新することであって、前記更新は、前記第1駆動方式を参照する、ことと、
更新されたPWM駆動信号を利用して、前記ブラシレス直流モータを転流を行うように制御することと、を含む、
ブラシレス直流モータの転流制御方法。
【請求項2】
PWM駆動信号を更新することであって、前記更新は、前記第1駆動方式を参照する、ことは、
前記第1駆動方式に基づいて、前記PWM駆動信号のデューティー比を更新することと、
前記PWM駆動信号の位相を更新することと、を含むことを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1駆動方式に基づいて、前記PWM駆動信号のデューティー比を更新することは、
前記第1駆動方式を利用して、前記3相フルブリッジ回路における各スイッチングデバイスの作動電圧を決定することと、
決定された各スイッチングデバイスの作動電圧を利用して、前記各スイッチングデバイスに対応する各PWM駆動信号のデューティー比を更新することと、を含むことを特徴とする、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記3相フルブリッジ回路における各スイッチングデバイスに対して、相応のPWM駆動信号のデューティー比に対応する第1レジスタの値を更新することによって、前記PWM駆動信号のデューティー比を更新することを特徴とする、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記PWM駆動信号の位相を更新することは、
PWM搬送波信号に対応する第2レジスタの値を更新することによって、前記PWM駆動信号の位相を更新することを含むことを特徴とする、
請求項2に記載の方法。
【請求項6】
PWM搬送波信号に対応する第2レジスタの値を更新することによって、前記PWM駆動信号の位相を更新することは、
前記第2レジスタの値を、転流を行う必要があると決定する時刻で、特定値に設定することで、更新された搬送波信号を得ることと、
更新された搬送波信号を利用して、前記PWM駆動信号の位相を更新することと、を含むことを特徴とする、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、
前記ブラシレス直流モータの逆起電力信号を取得することと、
取得された逆起電力信号に基づいて、前記ブラシレス直流モータの逆起電力のゼロクロスタイミングを決定することと、
前記逆起電力のゼロクロスタイミングの後の第1時間長の時、前記ブラシレス直流モータが転流を行う必要があると決定することと、を更に含むことを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
検出されたロータの位置に対応する前記ブラシレス直流モータの第1駆動方式を決定することは、
第1マッピングテーブルにおいて、前記検出されたロータの位置に対応する駆動方式を検索することと、
検索された駆動方式を前記第1駆動方式とすることと、を含むことを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記PWM駆動信号のPWM変調方式は、H-PWM-L-ON、H-ON-L-PWM、ON-PWM又はPWM-ONであることを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ブラシレス直流モータの転流制御装置であって、
前記ブラシレス直流モータのロータの位置を検出するように構成される第1決定ユニットであって、前記検出は更に、前記ブラシレス直流モータの転流によりトリガされるように構成される、第1決定ユニットと、
検出されたロータの位置に対応する前記ブラシレス直流モータの第1駆動方式を決定するように構成される第2決定ユニットであって、前記第1駆動方式は、前記ブラシレス直流モータの3相フルブリッジ回路の作動方式を特徴づける、第2決定ユニットと、
PWM駆動信号を更新するように構成される更新ユニットであって、前記更新は、前記第1駆動方式を参照する、更新ユニットと、
更新されたPWM駆動信号を利用して、前記ブラシレス直流モータを転流を行うように制御するように構成される制御ユニットと、を備える、
ブラシレス直流モータの転流制御装置。
【請求項11】
ブラシレス直流モータの転流制御装置であって、
プロセッサと、プロセッサで実行できるコンピュータプログラムを記憶するように構成されるメモリと、を備え、
前記プロセッサは、前記コンピュータプログラムを実行する時、請求項1から9のうちのいずれか一項に記載の方法のステップを実行するように構成される、
ブラシレス直流モータの転流制御装置。
【請求項12】
記憶媒体であって、
前記記憶媒体にコンピュータプログラムが記憶され、前記コンピュータプログラムはプロセッサにより実行される時、請求項1から9のうちのいずれか一項に記載の方法のステップを実現させる、
記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、モータ制御技術分野に関し、特にブラシレス直流モータ(BLDCM:Brush Less Direct Current Motor)の転流制御方法、装置及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
高速で小型化したBLDCMは、現在では、ますます多くの分野、特に、手持ち式真空掃除機のような小型電動工具などの分野に広く適用される。
【0003】
図1に示すように、関連技術において、一般的には、3相6状態のパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)駆動信号を3相フルブリッジ回路に印加することで、3相フルブリッジ回路における対応するブリッジアームスイッチングデバイスのオンオフを制御し、更に、BLDCMの転流制御を実現させる。
【0004】
しかしながら、実際に適用する場合、PWM駆動信号がBLDCMを、タイムリーに転流を行うように制御できないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
関連技術的課題を解決するために、本願の実施例は、BLDCMのタイムリーな転流を実現させることができるBLDCMの転流制御方法、装置及び記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の実施例は、BLDCMの転流制御方法を提供する。前記方法は、
前記BLDCMのロータの位置を検出することであって、前記検出は更に、前記BLDCMの転流によりトリガされるように構成される、ことと、
検出されたロータの位置に対応する前記BLDCMの第1駆動方式を決定することであって、前記第1駆動方式は、前記BLDCMの3相フルブリッジ回路の作動方式を特徴づける、ことと、
PWM駆動信号を更新することであって、前記更新は、前記第1駆動方式を参照する、ことと、
更新されたPWM駆動信号を利用して、前記BLDCMを転流を行うように制御することと、を含む。
【0007】
上記技術的解決手段において、PWM駆動信号を更新することであって、前記更新は、前記第1駆動方式を参照する、ことは、
前記第1駆動方式に基づいて、前記PWM駆動信号のデューティー比を更新することと、
前記PWM駆動信号の位相を更新することと、を含む。
【0008】
上記技術的解決手段において、前記第1駆動方式に基づいて、前記PWM駆動信号のデューティー比を更新することは、
前記第1駆動方式を利用して、前記3相フルブリッジ回路における各スイッチングデバイスの作動電圧を決定することと、
決定された各スイッチングデバイスの作動電圧を利用して、前記各スイッチングデバイスに対応する各PWM駆動信号のデューティー比を更新することと、を含む。
【0009】
上記技術的解決手段において、前記3相フルブリッジ回路における各スイッチングデバイスに対して、相応のPWM駆動信号のデューティー比に対応する第1レジスタの値を更新することによって、前記PWM駆動信号のデューティー比を更新する。
【0010】
上記技術的解決手段において、前記PWM駆動信号の位相を更新することは、
PWM搬送波信号に対応する第2レジスタの値を更新することによって、前記PWM駆動信号の位相を更新することを含む。
【0011】
上記技術的解決手段において、PWM搬送波信号に対応する第2レジスタの値を更新することによって、前記PWM駆動信号の位相を更新することは、
前記第2レジスタの値を、転流を行う必要があると決定する時刻で、特定値に設定することで、更新された搬送波信号を得ることと、
更新された搬送波信号を利用して、前記PWM駆動信号の位相を更新することと、を含む。
【0012】
上記技術的解決手段において、前記方法は、
前記BLDCMの逆起電力信号を取得することと、
取得された逆起電力信号に基づいて、前記BLDCMの逆起電力のゼロクロスタイミングを決定することと、
前記逆起電力のゼロクロスタイミングの後の第1時間長の時、前記BLDCMが転流を行う必要があると決定することと、を更に含む。
【0013】
上記技術的解決手段において、検出されたロータの位置に対応する前記BLDCMの第1駆動方式を決定することは、
第1マッピングテーブルにおいて、前記検出されたロータの位置に対応する駆動方式を検索することと、
検索された駆動方式を前記第1駆動方式とすることと、を含む。
【0014】
上記技術的解決手段において、前記PWM駆動信号のPWM変調方式は、H-PWM-L-ON、H-ON-L-PWM、ON-PWM又はPWM-ONである。
【0015】
本願の実施例は、BLDCMの転流制御装置を更に提供する。前記装置は、
前記BLDCMのロータの位置を検出するように構成される第1決定ユニットであって、前記検出は更に、前記BLDCMの転流によりトリガされるように構成される、第1決定ユニットと、
検出されたロータの位置に対応する前記BLDCMの第1駆動方式を決定するように構成される第2決定ユニットであって、前記第1駆動方式は、前記BLDCMの3相フルブリッジ回路の作動方式を特徴づける、第2決定ユニットと、
PWM駆動信号を更新するように構成される更新ユニットであって、前記更新は、前記第1駆動方式を参照する、更新ユニットと、
更新されたPWM駆動信号を利用して、前記BLDCMを転流を行うように制御するように構成される制御ユニットと、を備える。
【0016】
本願の実施例は、BLDCMの転流制御装置を更に提供する。前記装置は、プロセッサと、プロセッサで実行できるコンピュータプログラムを記憶するように構成されるメモリと、を備え、
前記プロセッサは、前記コンピュータプログラムを実行する時、上記いずれか1つに記載の方法のステップを実行するように構成される。
【0017】
本願の実施例は、記憶媒体を更に提供する。前記記憶媒体にコンピュータプログラムが記憶され、前記コンピュータプログラムはプロセッサにより実行される時、上記いずれか1つに記載の方法のステップを実現させる。
【発明の効果】
【0018】
本願の実施例で提供されるBLDCMの転流制御方法、装置及び記憶媒体は、前記BLDCMのロータの位置を検出し、前記検出は更に、前記BLDCMの転流によりトリガされるように構成され、検出されたロータの位置に対応する前記BLDCMの第1駆動方式を決定し、前記第1駆動方式は、前記BLDCMの3相フルブリッジ回路の作動方式を表し、PWM駆動信号を更新し、前記更新は、前記第1駆動方式を参照し、更新されたPWM駆動信号を利用して、前記BLDCMを転流を行うように制御する。本願の実施例で提供される技術的解決手段は、BLDCMが転流を行う必要がある場合、第1駆動方式を利用して、PWM駆動信号が更新して得られることによって、転流動作を直ちに有効にすることができる。このように、BLDCMの転流の適時性及び転流周期の安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】関連技術におけるBLDCMの3相フルブリッジ回路の駆動の概略図である。
【
図2a】関連技術におけるH-PWM-L-ON変調方式の概略図である。
【
図2b】関連技術におけるH-ON-L-PWM変調方式の概略図である。
【
図2c】関連技術におけるON-PWM変調方式の概略図である。
【
図2d】関連技術におけるPWM-ON変調方式の概略図である。
【
図3】関連技術における搬送波信号、理想的な転流信号、実際の転流信号及び各相の駆動信号の概略図である。
【
図4】本願の実施例によるBLDCMの転流制御方法の概略フローチャートである。
【
図5】本願の適用実施例によるBLDCMが電子機器に適用されるハードウエアシステムの構造的概略図である。
【
図6】本願の適用実施例によるBLDCMの転流制御システムの構造的概略図である。
【
図7】本願の適用実施例によるBLDCMの転流制御方法の実現プロセスにおける搬送波転流同期更新、変調波信号、搬送波信号、理想的な転流信号及び各相の駆動信号の概略図である。
【
図8】本願の適用実施例によるBLDCMの転流の実現の概略フローチャートである。
【
図9】本願の実施例によるBLDCMの転流制御装置の構成の構造的概略図である。
【
図10】本願の実施例によるBLDCMの転流制御装置のハードウエアの構成の構造的概略図である。
【
図11a】本願の実施例の技術的解決手段を使用しない条件下での搬送波信号、理想的な転流信号、実際の転流信号、端子電圧及び端子電流の概略図である。
【
図11b】本願の実施例の技術的解決手段を使用した条件下での搬送波信号、理想的な転流信号、実際の転流信号、端子電圧及び端子電流の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本願の実施例の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下、本願の実施例の図面を参照しながら、発明の具体的な技術的解決手段を更に詳しく説明する。下記の実施例は、本願を説明するためのものであるが、本願の範囲を限定するものではない。
【0021】
本願の実施例におけるPWM駆動信号のPWM変調方式は、H-PWM-L-ON、H-ON-L-PWM、ON-PWM又はPWM-ONなどの、高速BLDCMに適する変調方式である。
図2a、2b、2c、2dはそれぞれ、上記H-PWM-L-ON、H-ON-L-PWM、ON-PWM、PWM-ON変調方式を示す。これらはそれぞれ、
図1に示す3相フルブリッジ回路における6個のスイッチングデバイスS1-S6の駆動方式に対応する。下記の記述において、H-PWM-L-ONであるPWM変調方式を例とする。
【0022】
関連技術において、BLDCMの転流技術では、高速の場合に、PWM駆動信号がBLDCMを、タイムリーに転流を行うように制御できないという問題がある。BLDCMがタイムリーに転流を行うことができないと、転流遅延、転流の不均一、逆起電力のゼロクロス点が消失するなどの一連のネガティブな現象を更に引き起こす。
【0023】
ここで、タイムリーに転流を行うことができないことは、
図3に示される。
図3に示すように、理想的な転流信号302は、PWM搬送波信号301の任意の位置に出現する可能性がある。しかしながら、PWM駆動信号は、PWM搬送波信号301が最小値(例えば、ゼロ)又は最大値(例えば、周期値)である場合のみ、PWM状態を更新することができる(即ち、PWM搬送波信号の幅が最小値又は最大値である場合のみ、PWM駆動信号に対応するスイッチングデバイスの状態を更新することができる)。ここで、PWM状態をゼロ点で更新することを例とする。理想的な転流信号302が出現した場合、搬送波信号301にゼロ点が生じるまで、PWM状態をタイムリーに更新できない。従って、実際の転流信号303は、理想的な転流信号302よりも持続的に遅れている。304、305及び306はそれぞれ、A、B及びC相の駆動信号を示す。BLDCMがタイムリーに転流を行うことができないことによる影響は、以下のとおりである。
【0024】
1、転流遅延
BLDCMがタイムリーに転流を行うことができないため、BLDCMの転流操作は、現在の搬送波のゼロ点に遅延する必要がある。この場合、BLDCMの転流に、最大の1つのPWM周期の遅延が出現する。また、BLDCMの回転数の上昇、搬送波比(即ち、搬送波周波数とBLDCM運転周波数との比)の低下に伴い、遅延時間長が占める割合(即ち、遅延時間長と搬送波信号周期との割合)は増加する。この場合、BLDCMの電流は激しく増加し、効率は低下する。
【0025】
2、転流の不均一
BLDCMがタイムリーに転流を行うことができないため、
図3において、実際の転流信号303の周期は、搬送波信号301の周期の整数倍でなければならないが、理想的な転流信号302の周期は、搬送波信号301の周期の2.7倍である。従って、実際の転流信号303の周期に、2個のPWM搬送波周期(309及び312)又は3個のPWM周期(308、310、311及び313)が出現する可能性があり、即ち、転流の不均一を引き起こす。また、BLDCMの回転数が向上すると、各セクタの実際のPWM波の数が少なくなり、転流の不均一の現象が厳しくなる。この場合、BLDCMの電流の振動が大きくなり、雑音が大きくなる。
【0026】
3、ゼロクロス点の消失
BLDCMがタイムリーに転流を行うことができないため、短い転流周期(例えば、
図3における309及び312)時のBLDCMのフリーホィーリング終了時刻の遅延を引き起こす。この場合、ゼロクロス点の消失が出現する可能性があり(ここで、当業者には理解されるように、理想的な場合に、BLDCMは、0°、60°、120°などの位置の時刻で転流を行い、30°、90°、150°などの位置の時刻でゼロクロス点を検出できる。BLDCMの転流フリーホィーリング時間が、BLDCMが20°回転することに対応する時間を占める必要があるとすれば、BLDCMが0°位置の時刻で転流した後、20°位置の時刻でフリーホィーリングを終了する。この場合、30°位置の時刻でゼロクロス点を検出することができる。BLDCMに転流遅延が出現する場合、元々0°位置の時刻で発生すべき転流は、15°位置の時刻に遅延して実行されると、フリーホィーリング終了時間は、35°(15°+20°=35°)位置の時刻になる。この場合、30°位置の時刻でのゼロクロス点が検出されなくなる。これは、ゼロクロス点の消失の現象である)、ひいては、BLDCMの位置センサレスの方策の安定性が失われる。
【0027】
これによれば、本願の様々実施例において、前記BLDCMのロータの位置を検出し、前記検出は更に、前記BLDCMの転流によりトリガされるように構成され、検出されたロータの位置に対応する前記BLDCMの第1駆動方式を決定し、前記第1駆動方式は、前記BLDCMの3相フルブリッジ回路の作動方式を表し、PWM駆動信号を更新し、前記更新は、前記第1駆動方式を参照し、更新されたPWM駆動信号を利用して、前記BLDCMを転流を行うように制御する。それにより、タイムリーな転流を最大限実現させることができる。
【0028】
本願の実施例は、BLDCMの転流制御方法を提供する。
図4に示すように、下記ステップを含む。
【0029】
S401において、前記BLDCMのロータの位置を検出し、前記検出は更に、前記BLDCMの転流によりトリガされるように構成される。
【0030】
実際に適用する場合、BLDCMのロータの位置は、0-360°であり、60度ごとに1つのセクタとし、計6個のセクタがある。そのうち、第0°~60°は、第Iセクタであり、第60°~120°は、第IIセクタであり、第120°~180°は、第IIIセクタであり、第180°~240°は、第IVセクタでり、240°~300°は、第Vセクタであり、第300°~360°(0°)は、第VIセクタである。
【0031】
ここで、前記検出が更に、前記BLDCMの転流によりトリガされるように構成されることは、BLDCMが転流を行う必要があると決定する時、対応する検出動作を実行すると理解されてもよい。前記BLDCMが転流を行う必要がある時は、BLDCMの理想的な転流が必要な時刻であり、即ち、BLDCMのロータの位置が60°である時刻、120°である時刻、180°である時刻、240°である時刻、300°である時刻又は360°(0°)である時刻である。この場合、BLDCMが何番目のセクタから何番目のセクタに転流するかを決定するように、前記BLDCMのロータの具体的な位置を更に検出する必要がある。例えば、60°、120°、180°、240°、300°、360°(0°)である時刻が検出されると、前記BLDCMが転流を行う必要があると決定することができる。この場合、BLDCMのロータの位置が60°であることが更に検出されると、BLDCMが第Iセクタから第IIセクタに転流すると決定することができる。
【0032】
実際に適用する場合、BLDCMのロータの位置は、センサレス技術により取得されてもよく、BLDCMのロータ位置センサ(ホールセンサ、光電コードディスクなど)により直接的に読み取られてもよい。
【0033】
一実施例において、センサレス技術により、BLDCMのロータの位置を取得する具体的な方式は、前記BLDCMの逆起電力信号を取得することと、取得された逆起電力信号に基づいて、前記BLDCMの逆起電力のゼロクロスタイミングを決定することと、前記逆起電力のゼロクロスタイミングの後の第1時間長の時、前記BLDCMが転流を行う必要があると決定することと、を含む。
【0034】
ここで、前記第1時間長は、BLDCMのロータの位置が30°変動するために消費される時間である。センサレス技術によりBLDCMのロータの位置を取得する方式は、ロータ位置センサを読み取る方式に比べて、センサを別途配置する必要がなく、ハードウエアコストを低減させ、信頼性をある程度向上させる。
【0035】
S402において、検出されたロータの位置に対応する前記BLDCMの第1駆動方式を決定し、前記第1駆動方式は、前記BLDCMの3相フルブリッジ回路の作動方式を特徴づける。
【0036】
ここで、実際に適用する時、前記第1駆動方式は、BLDCMの3相フルブリッジ回路の理想的な駆動方式(例えば、
図2aに示すH-PWM-L-ON変調方式に対応する3相フルブリッジ回路における6個のスイッチングデバイスS1-S6の駆動方式)を表すことができ、他のBLDCMの3相フルブリッジ回路の最適化した駆動方式であってもよい。
【0037】
実際に適用する場合、何番目のセクタから何番目のセクタに転流するかを決定した後、プログラムにおいて予め設定されたマッピングテーブルに対して検索を行うことによって、第1駆動方式を取得することができ、他の方式により取得することもでき、ここでは限定しない。
【0038】
ここで、一実施例において、テーブルに対して検索を行うことによって第1駆動方式を取得するための具体的な方式は、第1マッピングテーブルにおいて、前記検出されたロータの位置に対応する駆動方式を検索することと、検索された駆動方式を前記第1駆動方式とすることと、を含む。
【0039】
ここで、前記第1マッピングテーブルは、BLDCMのロータの位置と対応する第1駆動方式とのマッピング関係が確立されており且つ予め記憶されたテーブルである。
【0040】
S403において、PWM駆動信号を更新し、前記更新は、前記第1駆動方式を参照する。
【0041】
ここで、前記PWM駆動信号は、BLDCMの3相フルブリッジ回路に印加されるPWM駆動信号である。実際の適用において、3相フルブリッジ回路における6個のスイッチングデバイスはそれぞれ、異なるPWM駆動信号に対応し、即ち、3相6状態PWM駆動信号に対応する。各スイッチングデバイスのPWM駆動信号は、対応するスイッチングデバイスの作動状態を制御することができる。
【0042】
関連技術におけるPWM駆動信号について、PWM搬送波信号の幅値が最小値又は最大値である場合のみ、PWMの駆動信号の状態を更新することができる。従って、関連技術におけるPWM駆動信号を用いると、転流遅延が発生する。ここで、第1駆動方式を利用して、PWM信号を更新すると、更新されたPWM駆動信号は、転流動作を直ちに有効することができる。
【0043】
本願の実施例において、PWM駆動信号を更新することであって、前記更新は、前記第1駆動方式を参照する、ことは、
前記第1駆動方式に基づいて、前記PWM駆動信号のデューティー比を更新することと、
前記PWM駆動信号の位相を更新することと、を含む。
【0044】
ここで、前記PWM駆動信号の位相を更新することは、前記ブラシレス直流モータが転流を行う必要があると決定する時刻で行われる。
【0045】
一実施例において、前記第1駆動方式に基づいて、前記PWM駆動信号のデューティー比を更新することは、
前記第1駆動方式を利用して、前記3相フルブリッジ回路における各スイッチングデバイスの作動電圧を決定することと、
決定された各スイッチングデバイスの作動電圧を利用して、前記各スイッチングデバイスに対応する各PWM駆動信号のデューティー比を更新することと、を含む。
【0046】
ここで、実際に適用する時、前記BLDCMのPWM駆動信号を更新することは、具体的には、ソフトウェアにおけるレジスタを更新するという方式により実現される。
これによれば、一実施例において、前記3相フルブリッジ回路における各スイッチングデバイスに対して、PWM駆動信号デューティー比に対応する第1レジスタの値を更新することによって、前記PWM駆動信号のデューティー比を更新する。
【0047】
一実施例において、前記PWM駆動信号の位相を更新することは、
PWM搬送波信号に対応する第2レジスタの値を更新することによって、前記PWM駆動信号の位相を更新することを含む。
【0048】
一実施例において、PWM搬送波信号に対応する第2レジスタの値を更新することによって、前記PWM駆動信号の位相を更新することは、
前記第2レジスタの値を、転流を行う必要があると決定する時刻で、特定値に設定することで、更新された搬送波信号を得ることと、
更新された搬送波信号を利用して、前記PWM駆動信号の位相を更新することと、を含む。
【0049】
ここで、前記特定値は、第2レジスタの最大値又は最小値である。
【0050】
S404において、更新されたPWM駆動信号を利用して、前記BLDCMを転流を行うように制御する。
【0051】
ここで、更新されたPWM駆動信号は、対応するスイッチングデバイスの作動状態(例えば、オン又はオフ)を制御することで、前記BLDCMを転流を行うように制御することができる。
【0052】
本願の実施例は、BLDCMの転流制御方法を提供する。前記BLDCMのロータの位置を検出し、前記検出は更に、前記BLDCMの転流によりトリガされるように構成され、検出されたロータの位置に対応する前記BLDCMの第1駆動方式を決定し、前記第1駆動方式は、前記BLDCMの3相フルブリッジ回路の作動方式を特徴づけ、PWM駆動信号を更新し、前記更新は、前記第1駆動方式を参照し、更新されたPWM駆動信号を利用して、前記BLDCMを転流を行うように制御する。本願の実施例で提供される技術的解決手段は、BLDCMが転流を行う必要がある場合、第1駆動方式を利用して、PWM駆動信号が更新して得られることによって、転流動作を直ちに有効にすることができる。
【0053】
このように、BLDCMの転流の適時性及び転流周期の安定性を確保することができる。
【0054】
なお、本願の実施例の解決手段において、ハードウエアの改良を行う必要がなく、ソフトウェア方式のみにより、BLDCMのタイムリーな転流を実現させることで、ハードウエアコストを増加させることなく、実現しやすく、便利である。
【0055】
以下、具体的な適用実施例を参照しながら、本願を詳しく説明する。
【0056】
適用実施例において、BLDCMは、6個のセクタを有し、且つ
図5に示すBLDCMが電子機器に適用されるハードウエアシステムにより実現される。
図5に示すように、該システムは、BLDCM501と、3相フルブリッジ回路502と、直流リンクコンデンサ503と、バッテリ504と、PWM駆動信号505と、マイクロ制御ユニット(MCU:Microcontroller Unit)506と、逆起電力検出回路507と、を含む。
【0057】
実際に適用する場合、前記MCU506は、中央プロセッサ(CPU:Central Processing Unit)であってもよい。ここで、MCU506は、BLDCM逆起電力信号に対してサンプリングを行い、駆動信号により、3相フルブリッジ回路502を制御することで、BLDCM501を駆動することを担う。
【0058】
適用実施例において、
図6に示すBLDCMの転流制御システムにより実現される。
図6に示すように、前記制御システムは、BLDCM501と、3相フルブリッジ回路502と、PWMモジュール603と、転流論理604と、タイマー605と、逆起電力ゼロクロス検出モジュール606と、アナログデジタルコンバータ(ADC:Analog-to-Digital Converter)サンプリングモジュール607と、を含む。
ADCサンプリングモジュール607により、BLDCMの逆起電力信号に対してサンプリングを行い、続いて、ゼロクロス検出モジュール606により、ゼロクロス点の位置を持続的に検出する。ゼロクロス点が検出されると、タイマー605を直ちに起動して、転流信号のトリガを30°遅延させる。転流信号が出現する時(前記BLDCMが転流を行う必要があると決定する時に相当する)、転流論理604(第1マッピングテーブルに相当する)を検索することによって、PWMモジュール603におけるPWM駆動信号のデューティー比を更新し、PWMモジュール603における搬送波信号幅の更新をトリガする。PWMモジュール603は、更新されたPWM駆動信号のデューティー比及び搬送波信号に基づいて、更新されたPWM駆動信号を得る。PWM駆動信号を3相フルブリッジ回路502に印加することによって、BLDCM 501に、タイムリーな転流の目的を最終的に実現させる。
【0059】
適用実施例において、PWM駆動信号がBLDCMを、タイムリーな転流を行うように制御できることを実現させるために、まず、PWM駆動信号で特徴づけられる駆動方式の正確性を確保し、続いて、PWM駆動信号に、正確な時刻でBLDCMを転流を行うように制御することを実行させる。
【0060】
ここで、PWM駆動信号のデューティー比は、PWM駆動信号の幅を直接的に反映するためのものであり、3相フルブリッジ回路におけるスイッチングデバイスの作動方式を制御するように構成される。
【0061】
PWM駆動信号のデューティー比の更新の実現形態について、実際に適用する時、MCU506において、転流論理テーブル(第1マッピングテーブルに相当する)を予め設定して記憶する必要がある。本願の適用実施例において、転流論理テーブルは、表1に示すとおりである。BLDCMのロータの位置は、0°~360°であり、60°ごとに1つのセクタとし、各セクタで、ドライバーは、対応する駆動方式を出力する必要がある。表1における駆動方式のうち、A、B、Cはそれぞれ、BLDCMのA相、B相、C相を表し、+、-はそれぞれ、各相の上スイッチングデバイスと下スイッチングデバイスを表す。
【表1】
【0062】
ここで、
図2aにおけるH-PWM-L-ON変調方式を例として、
図2aにおける各スイッチングデバイスの状態は、PWM状態(
図2aに示すS1、S3、S5における矩形波の部分に対応する)、完全オン状態(
図2aに示すS2、S4、S6における矩形波の部分に対応する)、オフ状態(
図2aに示すS1~S6における矩形波がない部分)という3つの状態がある。ここでの3つの状態は、各スイッチングデバイスに印加される作動電圧を直接的に反映する。
【0063】
ここで、表1、
図1及び
図2を参照しながら、例を挙げて、PWM駆動信号のデューティー比の更新の具体的な実現形態を説明する。
【0064】
例1において、第VIセクタから第Iセクタに転流することを例とする。
【0065】
BLDCMが転流を行う必要があると決定する時、BLDCMのロータの位置が0°であることが検出されると、表1から、BLDCMのロータの位置0°に対応する駆動方式を検索する。検索された駆動方式A+B-を前記第1駆動方式とする。即ち、この場合、
図1におけるA相の上スイッチングデバイスS1とB相の下スイッチングデバイスS4をオンにし、他の4つのチューブS2、S3、S5、S6をオンにしない。
図2aにより、前記3相フルブリッジ回路における各スイッチングデバイスの作動電圧を得る。即ち、A相の上スイッチングデバイスS1は、PWM状態にあり、B相の下スイッチングデバイスS4は、完全オン状態にあり、他のスイッチングデバイスS2、S3、S5、S6は、オフ状態にある。この場合、A相の上スイッチングデバイスS1に対応するレジスタにM(例えば、0から1の間のある値)をパディングし、B相の下スイッチングデバイスS4に対応するレジスタに最大値(例えば、1)をパディングし、他の4個のチューブS2、S3、S5、S6に対応する4個のレジスタにいずれも最小値(例えば、0)をパディングする。
【0066】
例2において、第Iセクタから第IIセクタに転流することを例とする。
【0067】
BLDCMが転流を行う必要があると決定する時、BLDCMのロータの位置が60°であることが検出されると、表1から、BLDCMのロータの位置60°に対応する駆動方式を検索する。検索された駆動方式A+C-を前記第1駆動方式とする。即ち、この場合、
図1におけるA相の上スイッチングデバイスS1とC相の下スイッチングデバイスS6をオンにし、他の4つのチューブS2、S3、S4、S5をオンにしない。
図2aにより、前記3相フルブリッジ回路における各スイッチングデバイスの作動電圧を得る。即ち、A相の上スイッチングデバイスS1は、PWM状態にあり、C相の下スイッチングデバイスS6は、完全オン状態にあり、他のスイッチングデバイスS2、S3、S4、S5は、オフ状態にある。この場合、A相の上スイッチングデバイスS1に対応するレジスタにM(例えば、0から1の間のある値)をパディングし、C相の下スイッチングデバイスS6に対応するレジスタに最大値(例えば、1)をパディングし、他の4個のチューブS2、S3、S4、S5に対応するレジスタにいずれも最小値(例えば、0)をパディングする。
【0068】
デジタル化PWM技術の実現プロセスにおいて、各スイッチングデバイスに対応するPWM駆動信号のデューティー比が、プロセッサにおいて一連の変換演算により、各スイッチングデバイスの作動電圧に対応することに留意されたい。
【0069】
例1及び例2における各スイッチングデバイスに対応するレジスタは、第1レジスタである。ここで、PWM駆動信号のデューティー比の更新を完了した。
【0070】
PWM駆動信号の位相の更新の実現形態について、実際に適用する時、MCU506において、PWMモジュール602の初期化配置を予め設定する必要がある。PWMモジュール602の主な機能は、PWM変調波信号(ここで、PWM変調波信号とPWM駆動信号のデューティー比は同一の概念である)及びPWM搬送波信号に基づいてPWM駆動信号を生成することである。本願の適用実施例において、PWMモジュール602の初期化配置において、以下のような設定を行う。
1、搬送波信号における搬送波として、単調増加波(例えば、のこぎり波)を用いる。
2、搬送波信号のゼロ点で、PWM駆動信号は、ハイレベルを出力し始める。
3、搬送波信号が変調波信号に等しい場合、PWM駆動信号は、ローレベルを出力し始める。
4、搬送波のゼロ点で、各スイッチングデバイスの第1レジスタの値を更新する(即ち、各スイッチングデバイスの状態であるPWM状態、完全オン状態、オフ状態を更新する)。
【0071】
図7は、搬送波転流同期更新を示す概略図である。搬送波転流同期更新信号701と、PWM変調波信号702と、PWM搬送波信号703と、理想的な転流信号704と、A相の駆動信号705と、B相の駆動信号706と、C相の駆動信号707と、を含む。
図7において、上記PWMモジュール602の初期化配置ルールに応じて、702PWM変調波信号及び703PWM搬送波信号により、PWM駆動信号を生成する。
【0072】
ここで、BLDCMが転流を行う必要があると決定する時、即ち、理想的な転流信号704が出現する時、搬送波転流同期信号701を生成し、同期してPWM搬送波信号703の幅を強制的に更新する。ここで、PWM搬送波信号703の幅を強制的に更新することは、具体的には、PWM搬送波信号に対応するレジスタの値を強制的に設定することによって、実現されることができる。具体的に実施する時、前記PWM搬送波信号に対応するレジスタの値を、転流を行う必要があると決定する時刻で、特定値に設定することができる。ここでの特定値は、最大値(例えば、周期値)又は最小値(例えば、ゼロ)である。本適用実施例において、前記PWM搬送波信号に対応するレジスタの値をゼロに設定する。各スイッチングデバイスの状態がPWM搬送波信号703のゼロ点で更新されるため、PWM搬送波信号703の幅を強制的に同期して更新した後、PWM駆動信号の位相は、直ちに変わる。これにより、搬送波信号と転流信号が同期しないという問題を解消する。
【0073】
デジタル化PWM技術の実現プロセスにおいて、PWM搬送波信号に対応するレジスタは、計数器の方式により実現される。即ち、PWM搬送波信号は、予め設定された周期に応じて、0から周期値まで順次計数し、周期値に達した後に、0から周期値まで再計数する。このように繰り返す。本適用実施例において、前記PWM搬送波信号に対応するレジスタの値を、転流を行う必要があると決定する時刻で、直接的に0に設定し、続いて、0から周期値まで計数し、その後、繰り返す。
図7に示すように、PWM搬送波信号703におけるのこぎり波について、2つの大きいのこぎり波の後に、レジスタにおける値が強制的に0に設定される時、1つの小さいのこぎり波が出現する。
【0074】
各スイッチングデバイスに対応するPWM搬送波信号に対応するレジスタは、第2レジスタであり、ここで、PWM駆動信号の位相の更新を完了した。
【0075】
図8は、本願の実施例によるBLDCMの転流の実現のプロセスフローチャートである。
図8に示すように、前記プロセスは以下を含む。
(1)において、転流信号が検出され、中断に入る。
ここで、転流信号が検出され、即ち、BLDCMが転流を行う必要があると決定する。それと同時に、ロータの位置を更に決定する。
(2)において、転流論理テーブルに対して検索を行う。
決定されたロータの位置に基づいて、転流論理テーブルにおいて、対応する第1駆動方式を検索する。
(3)PWM信号のデューティー比レジスタにパディングを行う。
ここで、決定された第1駆動方式に基づいて、3相フルブリッジ回路における各スイッチングデバイスの作動電圧を決定し、各スイッチングデバイスの作動電圧を利用して、各スイッチングデバイスに対応する変調波幅をパディングする(前に述べたように、ここでの変調波幅とPWMデューティー比は同一の概念である)。
(4)PWM搬送波信号レジスタにパディングを行う。
ここで、各スイッチングデバイスに対応するPWM搬送波信号のレジスタの値を、転流を行う必要があると決定する時刻で、0に設定する。ここで、PWM搬送波信号が最小値である場合、PWM駆動信号の位相は、直ちに更新される(即ち、各スイッチングデバイスの状態は直ちに更新される)。それと同時に、更新されたPWM駆動信号を得た。
(5)転流を実行する。
更新されたPWM駆動信号に基づいて、転流操作を実行する。
(6)中断を終了する。
【0076】
上記(1)-(6)を繰り返して実行することによって、BLDCMのタイムリーな転流を実現させることができる。
【0077】
上記の記述から分かるように、本願の実施例において、BLDCMが転流を行う必要がある時、正確な駆動方式を確保する前提で、PWM搬送波信号の幅値を強制的に最小値に設定することによって、BLDCMに、タイムリーな転流を実現させるように、PWMの駆動信号の状態を直ちに更新する。それにより、BLDCMの転流の適時性及び転流周期の安定性を確保することができ、PWMの固有の更新メカニズムによる制限を突破する。
一方では、
図11a及び
図11bに示すように、本願の実施例の技術的解決手段を用いる条件下で、実際の転流信号の波形は均一であり、理想的な転流信号に、更に近い。端子電圧の検出プロセスにおいて、ゼロクロス点の消失が出現することなく、且つ端子電流の振動幅はより小さい。つまり、本願の実施例は、転流周期の安定性を確保し、PWM状態の変動時にフリーホィーリングチューブのフリーホィーリング終了時間を相対的に安定させ、それにより、ゼロクロス検出の可能性を確保すると同時に、BLDCMの電流振動、作動効率の低下、雑音の増加、BLDCMの制御の安定性の喪失などの問題を軽減する。
【0078】
本願の実施例の方法を実現させるために、本願の実施例は、BLDCMの転流制御装置を更に提供する。
図9は、本願の実施例による装置の構成の構造的概略図である。
図9に示すように、前記装置900は、第1決定ユニット901と、第2決定ユニット902と、更新ユニット903と、制御ユニット904と、を備え、そのうち、
第1決定ユニット901は、前記BLDCMのロータの位置を検出するように構成され、前記検出は更に、前記BLDCMの転流によりトリガされるように構成され、
第2決定ユニット902は、検出されたロータの位置に対応する前記BLDCMの第1駆動方式を決定するように構成され、前記第1駆動方式は、前記BLDCMの3相フルブリッジ回路の作動方式を表し、
更新ユニット903は、決定された第1駆動方式に基づいて、PWM駆動信号を更新するように構成され、
制御ユニット904は、更新されたPWM駆動信号を利用して、前記BLDCMを転流を行うように制御するように構成される。
一実施例において、前記更新ユニット903は、第1更新モジュールと、第2更新モジュールと、を備え、
前記第1更新モジュールは、前記第1駆動方式に基づいて、前記PWM駆動信号のデューティー比を更新するように構成され、
前記第2更新モジュールは、前記PWM駆動信号の位相を更新するように構成される。
一実施例において、前記第1更新モジュールは、前記第1駆動方式を利用して、前記3相フルブリッジ回路における各スイッチングデバイスの作動電圧を決定し、
決定された各スイッチングデバイスの作動電圧を利用して、前記各スイッチングデバイスに対応する各PWM駆動信号のデューティー比を更新するように構成される。
一実施例において、前記第1更新モジュールは、前記3相フルブリッジ回路における各スイッチングデバイスに対して、PWM駆動信号のデューティー比に対応する第1レジスタの値を更新することによって、前記PWM駆動信号のデューティー比を更新するように構成される。
【0079】
一実施例において、第2更新モジュールは、PWM搬送波信号に対応する第2レジスタの値を更新することによって、前記PWM駆動信号の位相を更新するように構成される。
【0080】
一実施例において、第2更新モジュールは、前記第2レジスタの値を、転流を行う必要があると決定する時刻で、特定値に設定することで、更新された搬送波信号を得て、
更新された搬送波信号を利用して、前記PWM駆動信号の位相を更新するように構成される。
【0081】
一実施例において、前記第1決定ユニット901は、前記BLDCMの逆起電力信号を取得し、取得された逆起電力信号に基づいて、前記BLDCMの逆起電力のゼロクロスタイミングを決定し、前記逆起電力のゼロクロスタイミングの後の第1時間長の時、前記BLDCMが転流を行う必要があると決定するように構成される。
【0082】
一実施例において、前記第2決定ユニット902は、第1マッピングテーブルにおいて、前記検出されたロータの位置に対応する駆動方式を検索し、
検索された駆動方式を前記第1駆動方式とするように構成される。
【0083】
一実施例において、前記PWM駆動信号のPWM変調方式は、H-PWM-L-ON、H-ON-L-PWM、ON-PWM又はPWM-ONである。
【0084】
実際に適用する時、前記第1決定ユニット901、第2決定ユニット902、更新ユニット903及び制御ユニット904は、BLDCMの転流制御装置におけるプロセッサにより実現されてもよい。
【0085】
上記実施例で提供されるBLDCMの転流制御装置がBLDCMの転流制御を行う場合、上記各プログラムモジュールの分割のみを例として説明するが、実際の適用において、必要に応じて、異なるプログラムモジュールにより上記処理を完成することができ、つまり、装置の内部構造を異なるプログラムモジュールに分割することで、上述説明された全て又は一部の処理を完成することに留意されたい。なお、上記実施例で提供されるBLDCMの転流制御装置とBLDCMの転流制御方法は、同一の構想に属し、その具体的な実現プロセスは、方法の実施例を参照する。ここで、詳細な説明を省略する。
【0086】
上記プログラムモジュールのハードウエアの実現を基に、本願の実施例の方法を実現させるために、本願の実施例は、BLDC逆起電力ゼロクロス閾値の決定装置を提供する。
図10に示すように、前記装置1000は、プロセッサ1001と、プロセッサで実行できるコンピュータプログラムを記憶するように構成されるメモリ1002と、を備え、
前記プロセッサ1001は、前記コンピュータプログラムを実行する時、上記1つ又は複数の技術的解決手段で提供される方法を実行するように構成される。
【0087】
実際に適用する時、
図10に示すように、前記装置1000における各ユニットは、バスシステム1003を介して結合される。バスシステム1003は、これらのユニット間の接続通信の実現に用いられることが理解されるべきである。バスシステム1003は、データバスに加えて、電源バス、制御バス及び状態信号バスを更に含む。明確に説明するために、
図10において、各種のバスをいずれもバスシステム1003と表記する。
【0088】
例示的な実施例において、本願の実施例は、記憶媒体を更に提供する。該記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であり、例えば、コンピュータプログラムを含むメモリ1002である。上記コンピュータプログラムは、前記方法に記載のステップを完了するように、BLDC逆起電力ゼロクロス閾値の決定装置1000のプロセッサ1001により実行され得る。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、磁気ランダムアクセスメモリ(FRAM:ferromagnetic random access memory、登録商標)、読み出し専用メモリ(ROM:Read Only Memory)、プログラマブル読み出し専用メモリ(PROM:Programmable Read-Only Memory)、消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM:Erasable Programmable Read-Only Memory)、電気的消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM:Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)、磁気表面メモリ、光ディスク、又はコンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM:Compact Disc Read-Only Memory)などのメモリであってもよい。
【0089】
「第1」、「第2」などは、類似した対象を区別するためのものであり、特定の順番又は優先順位を説明するためのものではないことを説明すべきである。
【0090】
なお、矛盾しない限り、本願の実施例に記載の技術的解決手段を任意に組み合わせることができる。
【0091】
以上は、本願の好適な実施例だけであり、本願の保護範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0092】
501 BLDCM
502 3相フルブリッジ回路
503 直流リンクコンデンサ
504 バッテリ
505 PWM駆動信号
506 マイクロ制御ユニット
603 PWMモジュール
604 転流論理
605 タイマー
606 逆起電力ゼロクロス検出モジュール
607 ADCサンプリングモジュール
【国際調査報告】