(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(54)【発明の名称】ターボ機械の転がり軸受における潤滑剤の再循環
(51)【国際特許分類】
F16C 33/58 20060101AFI20220908BHJP
F16C 33/66 20060101ALI20220908BHJP
F16C 19/26 20060101ALI20220908BHJP
F16N 7/32 20060101ALI20220908BHJP
F16N 7/40 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
F16C33/58
F16C33/66 Z
F16C19/26
F16N7/32 B
F16N7/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500562
(86)(22)【出願日】2020-07-09
(85)【翻訳文提出日】2022-03-02
(86)【国際出願番号】 FR2020051247
(87)【国際公開番号】W WO2021005315
(87)【国際公開日】2021-01-14
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516284345
【氏名又は名称】サフラン・パワー・ユニッツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コト,セルジュ・マリー・ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】ロペス,ジャン-ポール・サルバドール
(72)【発明者】
【氏名】シュバリエ,ステファーヌ
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA13
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA53
3J701BA54
3J701BA56
3J701BA77
3J701CA08
3J701CA13
3J701CA14
3J701CA15
3J701FA32
3J701GA29
(57)【要約】
第1の軌道(112)を画定する内部リング(3)と、第2の軌道(124)を画定する外部リング(4)とを備える航空機のターボ機械用の転がり軸受であって、軸受が、潤滑剤の強制再循環のための少なくとも1つのループ回路(21、22)を有し、このループ回路が、少なくとも1つの潤滑剤入口(1200)を備える第1の再循環回路(21)を備え、少なくとも1つの潤滑剤入口(1200)は、第2の軌道(124)のレベルに配置され、外部リング(4)内に生成された少なくとも1つのダクト(120、166)によってループ回路(21、22)の第2の再循環回路(22)内に排出する少なくとも1つの潤滑剤出口(1661)に接続され、この第2の再循環回路(22)が、内部リング(3)内に生成された少なくとも1つのダクト(152、1134、1136;1135、1136)を備えることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の直径(D1)を有する第1の軌道(112)を画定する内部リング(3)、
第2の軌道(124)を画定する外部リング(4)、
内部リング(3)と外部リング(4)との間に配置され、第1の軌道(112)および第2の軌道(124)上を転動するように構成された複数の転動体(13)
を備えるターボ機械用、特に航空機用の転がり軸受であって、
軸受が、潤滑剤の強制再循環のための少なくとも1つのループ回路(21、22)を有し、このループ回路が、少なくとも1つの潤滑剤入口(1200)を備える第1の再循環回路(21)を備え、少なくとも1つの潤滑剤入口(1200)は、第2の軌道(124)のレベルに配置され、外部リング(4)内に作成された少なくとも1つのダクト(120、166)によってループ回路(21、22)の第2の再循環回路(22)に開口する少なくとも1つの潤滑剤出口(1661)に接続され、この第2の再循環回路(22)が、内部リング(3)内に作成された少なくとも1つのダクト(152、1134、1136;1135、1136)を備え、
第1の再循環回路(21)の各潤滑剤入口(1200)が、第2の軌道(124)上に開口するオリフィスを形成し、転動体(13)は、このオリフィス上を転動することができることを特徴とする、転がり軸受。
【請求項2】
第1の再循環回路(21)の少なくとも1つの潤滑剤出口が、軸受の軸線(A)から第1の軌道(112)の第1の直径(D1)以下の距離に配置された排出オリフィス(1661)によって形成される、請求項1に記載の軸受。
【請求項3】
リング(3;4)の間に介入され、転動体(13)を離間して保持するケージ(14)をさらに備え、前記ケージ(14)は、内部リング(3)の外面(1111)上を摺動するように構成された少なくとも1つの内面(141)を備え、第2の再循環回路(22)の少なくとも1つの半径方向に配向されたダクト(1136)は、前記内面(141)に面する前記外面(1111)から開口し、前記内面(141)は、半径方向に配向されたダクト(1136)から来る潤滑剤がケージ(14)のハウジングの空洞(20)内に開口することができるように、前記外面(1111)の直径よりもわずかに大きい直径を有する、請求項1または2に記載の軸受。
【請求項4】
転動体(13)ならびに内部リング(3)の外面(1111)およびケージ(14)の内面(141)が円筒形である、請求項3に記載の軸受。
【請求項5】
第1の再循環回路(21)が、軸受の軸線(A)に平行な軸方向に沿って位置合わせされた少なくとも2つの潤滑剤入口(1200)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項6】
第1の再循環回路(21)は、第2の軌道(124)のレベルに配置された一連の対の潤滑剤入口(1200)と、前記潤滑剤入口(1200)に関連する一連の対のダクト(120、166)とを備え、ダクト(120、166)の対は、軸受の軸線(A)の周りに均等に分配され、各対のダクト(120、166)は、この軸線(A)を通過する実質的に同じ平面(P2)内に延在する、請求項1から5のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項7】
第1の再循環回路(21)は、少なくとも2つのダクト(120、166)を備え、少なくとも2つのダクト(120、166)は、外部リング(4)内に作成され、前記軸線(A)に垂直であり、軸受の実質的に中央を通過する、軸受の正中面(P1)の両側に延在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項8】
各対のダクト(120、166)が、正中面(P1)に対して対称であり、正中面(P1)は、前記軸線(A)に垂直であり、軸受の実質的に中央を通過する、請求項6または7に記載の軸受。
【請求項9】
第1の再循環回路(21)の各ダクト(120、166)は、第1の部分(120)を備え、第1の部分(120)は,、潤滑剤入口(1200)から半径方向外側に延在し、主に軸受の軸線(A)に向かって進行する第2の部分(166)によって延在し、この第2の部分(166)は、第2の再循環回路(22)上に開口する潤滑剤出口(1661)に通じる、請求項1から8のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項10】
潤滑剤出口(1661)は、内部リング(3)の環状凹部(157)によって形成された第2の再循環回路(22)の潤滑剤入口マニホールドに係合され、前記環状凹部(157)は、第2の再循環回路(22)の少なくとも1つのダクト(152)内に開口する底部を有する、請求項9に記載の軸受。
【請求項11】
転動体(13)が、ローラ、特に円筒形である、請求項1から10のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項12】
前記転動体(13)の両側の内部リング(3)と外部リング(4)との間にシーリングリングシステム(17)を備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項13】
内部リング(3)または内部リング(3)と回転可能に一体化された少なくとも1つの要素(151)が、前記潤滑剤入口(1200)に向かって遠心分離することによって潤滑剤を案内するための環状リブ(155)を備え、前記環状リブ(155)が、転動体(13)の両側で外部リング(4)に向かって延在する、請求項1から12のいずれか一項に記載の軸受。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの軸受を備える、特に航空機用のターボ機械であって、軸受の内部リング(3)は、ターボ機械の回転シャフトと回転可能に一体であり、一方外部リング(4)は、ターボ機械のステータ部分に取り付けられている、ターボ機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ機械用、特に航空機用の転がり軸受に関し、この軸受は潤滑剤再循環回路を備える。
【背景技術】
【0002】
航空補助動力ユニットに使用されるようなガス発生器、または小型ターボ機械を使用する他のタイプのデバイスは、典型的には、潤滑を受ける転動体が設けられたそれらの回転シャフト用の軸受を有する。この潤滑を確実にするために、ポンプ、分配回路、ならびにバルブおよびソレノイドバルブなどの様々な構成要素を備える外部潤滑システムが提供される。この外部潤滑システムは、エンジンの性能を低下させ(特に比出力および信頼性に関して)、エンジンの全体的なコストのかなりの部分を占める。
【0003】
このタイプの軸受を潤滑化するために使用される潤滑剤(油またはグリース)は、軸受に注入され、限られた期間だけ軸受を潤滑化するのに役立つ。潤滑剤は、デッドエリアと呼ばれる領域で移動し、滞留する傾向がある。これは再利用され得るが、その後潤滑システムに再注入される。
【0004】
転がり軸受に潤滑剤再循環回路を装備することは既に提案されている。しかしながら、実際には、潤滑剤再循環は信頼性がなく、最適ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、自己潤滑式の軸受、すなわち必ずしも外部潤滑システムを必要としない軸受によって、この問題に対する簡単で効果的かつ経済的な解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって本発明は、有利にもターボ機械用、特に航空機用の転がり軸受を提案し、その軸受は、
第1の直径を有する第1の軌道を画定する内部リング、
第2の軌道を画定する外部リング、
内部リングと外部リングとの間に配置され、第1の軌道および第2の軌道上を転動するように構成された複数の転動体
を備え、
軸受が、潤滑剤の強制再循環のための少なくとも1つのループ回路を有し、このループ回路が、少なくとも1つの潤滑剤入口を備える第1の再循環回路を備え、少なくとも1つの潤滑剤入口は、第2の軌道のレベルに配置され、外部リング内に作成された少なくとも1つのダクトによってループ回路の第2の再循環回路に開口する少なくとも1つの潤滑剤出口に接続され、この第2の再循環回路が、内部リング内に作成された少なくとも1つのダクトを備える。
【0007】
本発明による軸受では、第1の再循環回路の各潤滑剤入口は、第2の軌道に開口するオリフィスを形成し、転動体はこのオリフィス上を転動することができる。
【0008】
この構成は、ポンプ効果によって潤滑剤の再循環を生成するという利点を有する。このポンプ効果は、回路が軌道の少なくとも1つに直接開口するという事実によって達成される。転動体は、回路の出口上を転動し、軌道内の潤滑剤を強制的に潤滑剤入口または各潤滑剤入口内に注入する。したがって、潤滑剤の再循環は、油圧ポンプなどの外部ポンピング手段を必要とせずにアクティブ化される。これにより、軸受の潤滑のために実装される構成要素の数を減らすことができ、動作コスト(外部ポンピング手段にエネルギーを供給する必要がない)および製造コスト(組み立ての複雑さの低減)を低減することができる。外部ポンプピングシステムなしで行うことができることは、ターボ機械の質量を制限することも可能にする。
【0009】
遠心力を本発明は有効に利用することができる。従来技術の自己潤滑式の軸受では、遠心力は、回転しない軸受の外部部分のデッドエリアに向けて潤滑剤を吹き付ける傾向があり、潤滑剤は、それが中に滞留するこれらのデッドエリアに閉じ込められたままである。軸受の内部の回転速度が速いほど、遠心力は大きくなる。軸受の外部部分に少なくとも1つの入口を有する潤滑剤の強制再循環のループを形成する回路を作成することによって、潤滑剤が滞留するデッドエリアが回避される。
【0010】
本発明による軸受は、単独で、または互いに組み合わせて、以下の特性のうちの1つ以上を備えることができる。
【0011】
第1の再循環回路の各潤滑剤入口は、第2の軌道上に開口するオリフィスを形成する。
【0012】
第1の再循環回路の少なくとも1つの潤滑剤出口が、軸受の軸線から第1の軌道の第1の直径以下の距離に配置された排出オリフィスによって形成される。
【0013】
軸受は、リングの間に介入され、転動体を離間して保持するケージをさらに備え、前記ケージは、内部リングの外面上を摺動するように構成された少なくとも1つの内面を備え、第2の再循環回路の少なくとも1つの半径方向に配向されたダクトは、前記内面に面する前記外面から開口し、前記内面は、半径方向に配向されたダクトから来る潤滑剤がケージのハウジングの空洞内に開口することができるように、前記外面の直径よりもわずかに大きい直径を有する。
【0014】
転動体ならびに内部リングの外面およびケージの内面が円筒形である。
【0015】
第1の再循環回路が、軸受の軸線に平行な軸方向に沿って位置合わせされた少なくとも2つの潤滑剤入口を備える。
【0016】
第1の再循環回路は、第2の軌道のレベルに配置された一連の対の潤滑剤入口と、前記潤滑剤入口に関連する一連の対のダクトとを備え、ダクトの対は、軸受の軸線の周りに均等に分配され、各対のダクトは、この軸線を通過する実質的に同じ平面内に延在する。
【0017】
第1の再循環回路は、少なくとも2つのダクトを備え、少なくとも2つのダクトは、外部リング内に作成され、前記軸線に垂直であり、軸受の実質的に中央を通過する、軸受の正中面の両側に延在する。
【0018】
各対のダクトが、正中面に対して対称であり、正中面は、前記軸線に垂直であり、軸受の実質的に中央を通過する。
【0019】
第1の再循環回路の各ダクトは、第1の部分を備え、第1の部分は、潤滑剤入口から半径方向外側に延在し、主に軸受の軸線に向かって進行する第2の部分によって延在し、この第2の部分は、第2の再循環回路上に開口する潤滑剤出口に通じる。
【0020】
潤滑剤出口は、内部リングの環状凹部によって形成された第2の再循環回路の潤滑剤入口マニホールドに係合され、前記環状凹部は、第2の再循環回路の少なくとも1つのダクト内に開口する底部を有する。
【0021】
転動体は、ローラ、特に円筒形であり;このタイプの転動体は、高速回転および高温範囲で使用され得るという利点を有する。これらは、航空機のターボ機械における使用に特に適している。
【0022】
軸受は、前記転動体の両側の内部リングと外部リングとの間にシーリングリングシステムを備える。
【0023】
内部リングまたは内部リングと回転可能に一体化された少なくとも1つの要素が、前記潤滑剤入口に向かって遠心分離することによって潤滑剤を案内するための環状リブを備え、これらの環状リブが、転動体の両側で外部リングに向かって延在する。
【0024】
本発明はまた、上述の1つ以上の特徴を備える少なくとも1つの軸受を備える、特に航空機用のターボ機械であって、軸受の内部リングは、ターボ機械の回転シャフトと回転可能に一体であり、一方外部リングは、ターボ機械のステータ部分に取り付けられている、ターボ機械に関する。
【0025】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになり、その理解のために添付の図面に参照がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態による転がり軸受の一部の軸方向断面の概略図であり、前記軸受の回転中の潤滑剤の流れの概略図である。
【
図2A】
図1の軸受に属する内部リングと外部リングとの協働の拡大詳細図である。
【
図2B】
図1の軸受に属するサイドリングの一部の断面図である。
【
図4】実施形態による軸受のいくつかの要素の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、軸受1の回転軸線Aの第1の側に配置された再循環軸受1の一部の概略断面図を示す。軸受1は、例えばシャフト2に取り付けられる。
【0028】
一般に、以下の説明では、「長手方向」および「軸方向」という用語は、回転軸線Aの方向に延びる構造要素の配向を指す。「半径方向」という用語は、回転軸線Aに垂直な方向に延びる構造要素の配向を指す。
【0029】
また、環状要素の断面について説明されるとき、例えば、軸受1の回転軸線Aの一方側の部分のみに参照がなされ、他方の部分は、図面の平面において軸線Aに対して鏡像によって得られる。
【0030】
軸受1は、内部リング3と、外部リング4と、複数の転動体13とを備える。内部リング3および外部リング4は、回転軸線Aを中心として互いに対して枢動するように意図されている(
図1、
図2Aおよび
図3)。
【0031】
ここで、軸受1は、ケージ14と、ここではシーリングリングの形態の2つのシーリングリングシステム17と、2つの取り付け環状部18とをさらに備える(
図1)。
【0032】
内部リング3は、中間リング11および2つのサイドリング15を備える。
【0033】
外部リング4は、中間リング12および2つのサイドリング16を備える。
【0034】
中間リング11および12、ならびにサイドリング15、サイドリング16、シーリングリング17および取り付け環状部18は、概して環状であり、すなわち、回転軸線Aを中心とする回転形状を有する(
図1および
図3)。
【0035】
さらに、軸受1は、対称面P1または正中面に関して対称であり、すなわち平面P1に関して鏡像である。特に、内部リング3、外部リング4、各転動体13、およびケージ14は、ここでは平面P1に関して対称に設けられている(
図1)。
【0036】
ここで、転動体13は、ローラ、特に円筒形のものである。
【0037】
ケージ14は、それぞれの転動体13が収容される複数のハウジング140を画定する(
図1および
図4)。ケージ14の目的は、転動体13を離間した状態に保つことである。
【0038】
中間リング11は、中間セクション110および2つの側部セクション111を有する(
図1)。中間セクション110および側部セクション111はそれぞれ、中間リング11の下位部分として、略環状の形状である。中間セクション110は、側部セクション111よりも外径が小さい。中間セクション110および側部セクション111は、転動体13が転動によって移動するように意図された内部トラックまたは第1の軌道112をそれらの間に画定する。ここで、第1の軌道112は、軸方向に向けられた円筒形環状面1100によって画定される(
図1および
図4)。軸方向に配向された部分1100の両側に配置された、2つの半径方向に配向された平坦面1110は、転動体13の軸方向位置決め(センタリング)ストップとしての役割を果たす。転動体13の側面は、2つの両表面1110のいずれかに摺動可能に当接することができる。
【0039】
ダクト113は、中間リング11に配置されている。より具体的には、ダクト113は、ここでそれぞれ3つのオリフィス1131、1132および1133内に開くように、中間リング11を通過する。簡単にするために、ここでは(第1の)ダクト113のみが言及されており、平面P1に対称な第2のダクト113は同様の構成を有する。さらに、さらに同様のダクト113が、回転軸線Aを中心として互いに角度距離を置いてリング11に設けられている。
【0040】
オリフィス1131は、中間リング11の端面114に設けられている(
図1および
図2A)。第1の軌道112の両側の面にはオリフィス1132が設けられている(
図1、
図2Aおよび
図4)。より具体的には、オリフィス1132は、ここでは、環状面1100の縁部の高さに設けられ、転動体13がその上を転動することができるようにして、その結果、転動体の表面および第1の軌道112上に存在する潤滑剤がオリフィス1132に入るように強制される。したがって、オリフィス1132は潤滑剤入口を形成する。オリフィス1133は、排出オリフィスであり、すなわち潤滑剤出口を形成する。潤滑剤出口1133は、リング11の側部セクション111を外部で境界付ける外部円筒面1111に設けられている(
図1および
図2A)。ダクト113は、副ダクト1134、1135、および1136に細分され得る(
図2A)。副ダクト1134および1135は、軸方向に配向されている。ここで、副ダクト1136は、半径方向に向けられている。副ダクト1134および1135は、互いに整列されている。副ダクト1136は、副ダクト1134および1135に対して横断して延びている。副ダクト1134、1135、および1136は、それぞれオリフィス1131、1132、および1133から互いに流体連通している。
【0041】
中間リング12は、複数のダクト120と、内部環状面121と、外部環状面122とを備える(
図1および
図4)。ここで、ダクト120は半径方向に向けられている。各ダクト120は、内部オリフィス1200を通して内部環状面121に開口し、外部オリフィス1201を通して外部環状面122に開口する。
【0042】
中間リング12は、ここでは、好ましくは平坦な2つの端面123によって軸方向に境界を定められている。
【0043】
内部環状面121の中間部分124は、転動体13が接触し、転動するように意図されている外部トラックまたは第2の軌道を形成する。オリフィス1200は、転動体13がそれらの上を転動することができるように、第2の軌道124に設けられており、その結果、潤滑剤がこれらのオリフィス内に押し込まれる。したがって、オリフィス1200は潤滑剤入口を形成する。転動体13がローラである場合、軌道124は円筒形である。有利には、各ローラは、第2の軌道124上のローラの円筒形接触領域の両側に非常にわずかにドーム状の形状を有することができる。このドーム形状は、その円筒形接触領域の直径として定義されるローラの直径よりも非常にわずかに小さい直径をローラ上に局所的に有することを可能にする。この円筒形接触領域は、平面P1に関して対称であることができ、その長さは、ローラの長さの4分の1と3分の2との間であることができる。
【0044】
好ましくは、オリフィス1200は、第2の軌道124上の円筒形接触領域の両側に設けられ、その結果、ローラは、オリフィス1200が設けられている第2の軌道124の2つの環状部分と接触しないか、またはほとんど接触しない。実際、ローラの非常にわずかにドーム状の形状は、ローラとオリフィス1200の縁部との間に接触がないように、あるいは非常に限られた接触圧力で接触するように設けられている。これは、例えば、オリフィス1200のレベルで腐食の開始を生成することを回避するが、そのような腐食は、オリフィス1200のレベルで発達する高い局所的応力に起因して高い接触圧力の場合に発生する可能性がある。
【0045】
したがって、転動体13がローラである場合、これらの転動体がオリフィス1200上を転動することができるという事実は、必ずしも転動体と、オリフィスが設けられている第2の軌道124の2つの環状部との間の接触を意味するものではない。それにもかかわらず、すべての場合において、オリフィス上のローラの通過が、ローラと軌道124との間の接触または疑似接触を伴ってオリフィスのレベルで行われ、その結果、提供されるオイルポンピング効果は、起こり得る接触の欠如(疑似接触)によって大きく影響されない。
【0046】
要素15から18は、それぞれ対で同一である。要素の対15から18の各要素15から18は、回転軸線Aを横切る平面P1に関して他方の要素15から18に対して対称に配置されている(
図1)。
【0047】
サイドリング15は、回転において一体である内部部分150および外部部分151を有する。内部部分150および外部部分151の両方は、実質的に環状である。ダクト152は、内部部分150と外部部分151との間の接合部を通る通路によって形成される。ここで、ダクト152は、限定ではないが、軸方向に近く、好ましくは軸方向に対してある程度の角度、例えば20°未満の傾斜で配向され、その結果、ダクト152を通過する潤滑剤の遠心分離が、中間リング11を通過する、ダクト113への潤滑剤の流れを強制する。内部部分150および外部部分151は、ここでは互いに一体化されており(
図1および
図2A)、特に、複雑な曲線を有し得るダクト152を形成するために付加製造によって有利に達成され得る。外部部分は、環状リブの形態の2つの環状リブ155および156を備える。断面で見ると、環状リブ155は、ここでは、内部部分150から離れるように斜めに延在し、すなわち、半径方向外側および軸方向の両方において、内部部分150から離れるノーズを形成する。後述するように、環状リブ155は、遠心性の潤滑剤の案内を提供するように意図されている。断面で見ると、他方の環状リブ156は、ここでは、内部部分150に実質的に平行な軸方向に延在するノーズを形成する。環状リブ155および156は、互いに軸方向に実質的に対向して延在する。ダクト152と流体連通する第1の環状凹部157が、環状リブ156と内部部分150との間に画定されている。この第1の環状凹部157は、第2の再循環回路22の潤滑剤入口マニホールドを形成する。ダクト152と流体連通する第2の環状凹部158が、環状リブ155と内部部分150との間に画定されている。第2の環状凹部158は、ここでは環状開口部であるオリフィス154を通って端面153、ここでは平坦な面に開口する。
【0048】
外部リング4のサイドリング16は、軸受1の半径方向最も外側の要素である(
図1)。
【0049】
各サイドリング16は、軸方向セグメント160および半径方向セグメント161を備える(
図1および
図2B)。軸方向セグメント160および半径方向セグメント161は、互いに対して略L字形であり、半径方向セグメント161は、軸方向セグメント160から半径方向内向きに延在する。しかしながら、環状リム162は、半径方向セグメント161から軸方向セグメント160と同じ方向に軸方向に延在する。
【0050】
サイドリング16は、軸方向セグメント160を内側に境界を定める環状面164と、環状面164を横切る半径方向面163とを備える。表面163および164は、中間リング12を収容するように意図された環状空間165を画定する(
図2B)。そして、サイドリング16の表面163および164は、中間リング12(
図1)の表面123および122のためのストップを形成する。
【0051】
各サイドリング16は、複数のダクト166を備える。各ダクト166は、入口オリフィス1660を通って表面164に開口する(
図2B)。ダクト166は、それぞれのサイドリング16を通って入口オリフィス1660から、より具体的には軸方向セグメント160、半径方向セグメント161、次いで環状リム162を通って排出オリフィス1661まで延在する。
【0052】
加えて、サイドリング16はそれぞれ、環状リム162によって半径方向および内部に画定され、半径方向セグメント161によって軸方向に境界を定められた環状空間168を有する。各環状空間168は、対応するサイドリング15の環状リブ156を収容するように意図されている(
図1)。
【0053】
空洞20は、中間リング11、中間リング12、サイドリング15、サイドリング16、およびシーリングリング17間に境界を定められる(
図1)。空洞20は、転動体13およびケージ14によって形成されたアセンブリが潤滑剤槽19内に収容される閉じた流体密封の容積を形成する。
【0054】
軸受1において、シーリングリングは、リング16の肩部169とリング15の内部部分150との間に、かつ少なくとも部分的に半径方向セグメント161に対して半径方向に収容される(
図1および
図3)。シーリングリング17は、空洞20をシールし、潤滑剤19を内部に収容した状態に保つ。したがって、軸受1は閉回路で潤滑化される。
【0055】
サイドリング16上に、のど部167が回転軸線Aの方向に開いて、取り付け環状部18を受けるように意図される(
図1、
図2Bおよび
図3)。そして、取り付け環状部18は、サイドリング16上にシーリングリング17を保持するように機能する。
【0056】
ここで、上記の要素の互いの関係および軸受の動作についてより詳細に説明される。
【0057】
軸受1がシャフト2に取り付けられる図示の実施形態(
図1)では、内部リング3が可動アセンブリを形成する一方で、外部リング4は、非限定的に、例えば航空機の図示しない固定基準部材に取り付けられる固定アセンブリを形成する。
【0058】
転動体13は、内部リング3の中間リング11と外部リング4の中間リング12との間に半径方向に挟まれている(
図1および
図3)。そして、転動体13は、第1の軌道112および第2の軌道124と接触し、それらの上を転動するように構成される。したがって、軌道124は円筒形であり、その結果、ここではローラである転動体13は、少なくとも、第2の軌道124上のローラの円筒形接触領域のレベルで接触を失うことなくその上を転動することができる。
【0059】
軸受1において、中間リング11は、2つのサイドリング15の間に軸方向に挟まれている(
図1および
図3)。
【0060】
そして、環状リブ155は、中間リング12および転動体13に向かって延在する。具体的には、環状リブ155は、傾斜面1550を備える(
図2A)。傾斜面1550は、転動体13に面し、潤滑剤入口1200(
図3)に向かって半径方向外側および軸方向に延在する。傾斜面1550は、軸受1の回転中に潤滑剤19を案内するのを助け、したがって潤滑剤19の遠心分離のための支持体として作用する。さらに、環状リブ155は、空洞20の容積を制限し、したがって潤滑剤19が蓄積するデッドエリアの存在を回避するように構成される。
【0061】
上述したように、中間リング12は、サイドリング16によって画定される空間165に収容されている。
【0062】
加えて、サイドリング15の環状リブ156が、それぞれ環状空間168内にその中で回転移動可能に収容されるように、サイドリング16は配置されている。
【0063】
2つのシーリングリング17は、外部リング4のサイドリング16と可動サイドリング15との間に、軸受1の軸方向端部にそれぞれ配置される(
図3)。
【0064】
そして、取り付け環状部18は、シーリングリングを所定の位置に保持し、したがって、軸受1がシールされることを確実にすることができる。
【0065】
この構成では、上述のダクトは、以下のように一緒に配置される(
図1参照)。
【0066】
- 中間リング12のダクト120は、サイドリング16のダクト166と流体連通している。言い換えれば、オリフィス1201は、オリフィス1660に接合されている。
【0067】
- ダクト166は、内部リング15のダクト152と流体連通している。言い換えれば、ここでは、ダクト166は、環状リム162からオリフィス1661を通って環状凹部157内に開口している。
【0068】
- 第1の環状凹部157、ダクト152および第2の環状凹部158は、上述したように流体連通している。
【0069】
- ダクト152は、中間リング11の副ダクト1134、1135、および1136と流体連通している。言い換えれば、第2の環状凹部158は、オリフィス1131に接合されている(
図2A)。
【0070】
シャフト2が回転されると、それと一体的に取り付けられた中間リング11は、同じ回転運動を採用する、すなわち、シャフト2と同じ角速度で軸線Aを中心として回転する。それで、転動体13は、第1の軌道112上および第2の軌道124上を転動することによって移動する。その際、ケージ14の内部円筒面141は、内部リング3の外部円筒面1111上を摺動する(
図2A)。転動体13はそれぞれ、転動体が円筒形ローラである場合には回転軸線Aに平行なそれら自体の回転軸線(図示せず)を中心として転動し、同時に中間リング11の周りの環状ストロークに追従する。
【0071】
この環状ストロークの間、転動体13はオリフィス1200を通過し、より正確にはこれらのオリフィス1200の周囲を転動する、すなわちそれらは潤滑剤入口を通過する(
図1、
図3および
図4)。そして、転動体13は、潤滑剤19を拘束し、潤滑剤入口1200を介してダクト120内に潤滑剤を押し込む。
【0072】
同様に、転動体13は、中間リング11の潤滑剤入口1132を通過する。次いで、転動体13は、潤滑剤19を拘束し、潤滑剤入口1132を介してダクト113、より具体的には副ダクト1135内に潤滑剤を押し込む。
【0073】
したがって、転動体13が潤滑剤入口1200および1132を通過することは、ポンプ効果を作り出す効果を有する。このポンプ効果は、転動体13の運動学を利用して潤滑剤19を自立循環動力学で駆動し、内部リング3の回転が続く限り、軸受1の構成要素の潤滑を可能にする。この現象は、第1の軌道112の底部に位置付けされた潤滑剤入口1132のおかげで中間リング11上で、および可動アセンブリ3の周囲に穿孔された潤滑剤入口1200のおかげで中間リング12上の両方で発生する。
【0074】
上述のポンプ効果は、潤滑剤流F1およびF2を生成する。
【0075】
第1の潤滑剤流F1は、潤滑剤入口1200を通過する転動体13によって生成される(
図1および
図2A)。流れF1は、ダクト120、166、凹部157、ダクト152、凹部158、および副ダクト1134を通って連続的に流れる(
図1)。
【0076】
第2の潤滑剤流F2は、潤滑剤入口1132を通過する転動体13によって生成される。流れF2は、副ダクト1135を通って流れる。
【0077】
ダクト120、166、凹部157、パイプ152、凹部158、および副ダクト1134は、副ダクト1136と共に、それで、第1の潤滑剤再循環回路21に属する(
図2A)。ここでの第1の再循環回路は、より具体的には、軸受の軸線Aの周りに規則的に分配され、軸線Aを通過する同じ平面P2内に実質的に延在する一連の一対のダクト120、166、152、1134、1136を備える(
図3)。第1のダクト120、166、152、1134、1136は、第2の軌道124上に配置された第1の潤滑剤入口1200から、本明細書に示すように、第1の軌道112に近接して、または別法として図示しないが、この第1の軌道112上に、配置された第1の潤滑剤出口1133まで延在する。平面P1に関して上述した第1のダクトと対称的な第2のダクト120、166、152、1134、1136は、前記第2の軌道124上に配置された第2の潤滑剤入口1200から、本明細書に示すように、第1の軌道112に近接して、または別法として図示しないが、この第1の軌道112に近接して、配置された第2の潤滑剤出口1133まで延在する。
【0078】
副ダクト1135および副ダクト1136は、第2の潤滑剤再循環回路22を形成する(
図2A)。
【0079】
流れF1およびF2は、副ダクト1134および1135の接合部で潤滑剤の共通の流れF3に合流する。流れF3は、内部リング3の中間リング11内を半径方向外側に流れる。次いで、流れF3は、潤滑剤出口1133を通って空洞20内に開き、次いでケージ14を直接潤滑化する。流れF1およびF2の生成は、軌道112および124のレベルで潤滑剤の自立的需要を生成し、潤滑剤再循環サイクルはそれ自体継続する。したがって、再循環回路21および22は、軸受1が回転される場合に自己供給される。
【0080】
再循環回路21および22は、中間リング11および12とサイドリング16および15の両方に設けられている。
【0081】
したがって、再循環回路21および22は、潤滑剤の強制再循環のループ回路を形成する。
【0082】
好ましくは、サイドリング16および/またはサイドリング15および/または中間リング11は、付加製造によって製造される。特に、これにより、再循環回路21および22を製造することが可能になり、再循環回路は、それらの複数の湾曲したダクトに起因して非常に複雑であるが、大きな困難を伴わない。
【0083】
上述の軸受1は、特に、ガスタービン(ターボ機械、スラスタ、補助動力ユニット)などの航空分野における実施のために意図される。
【0084】
潤滑剤19は、温度の影響下で多かれ少なかれ液化し、この粘性の低い状態は、ポンプ効果を開始することを可能にし、したがって軸受1を通る潤滑剤の再循環を活性化する。
【0085】
潤滑剤19は、油であり得るグリースまたは液体潤滑剤である。好ましくは、選択された潤滑剤19は、高耐熱性グリースである。
【0086】
図示されていない代替形態では、転動体13は、円筒形ローラではなく、ボールまたは円錐形ローラであってもよい。ボールの場合、第2の軌道124の表面は、これらの球状要素と接触するように構成される。それで、第2の軌道は円弧状の断面を有する。代替的または累積的に、ボールの場合、第1の軌道112の表面も同様に構成され、円弧状の断面を有することができる。
【国際調査報告】