(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(54)【発明の名称】多キュービット量子ゲートの並行実行のための系および方法
(51)【国際特許分類】
G06N 10/40 20220101AFI20220908BHJP
G02F 3/00 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
G06N10/40
G02F3/00 501
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500662
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(85)【翻訳文提出日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 US2020041709
(87)【国際公開番号】W WO2021007560
(87)【国際公開日】2021-01-14
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507044516
【氏名又は名称】プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ
(71)【出願人】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】ピヒラー,ハネス
(72)【発明者】
【氏名】レビン,ハリー,ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ルーキン,ミハイル,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】オムラン,アーメド
(72)【発明者】
【氏名】キースリング コントレラス,アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】セメギニ,ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】ヴュレティック,ヴラダン
(72)【発明者】
【氏名】グライナー,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ワン,タウト
(72)【発明者】
【氏名】エバディ,セパー
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA15
2K102BA05
2K102BA31
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC02
2K102BD03
2K102DA14
2K102EB20
2K102EB21
(57)【要約】
デバイスは、Nキュービットの集合、ここでNが2以上に等しい;ならびに少なくとも第1および第2のレーザーパルスのパラメーターのセットについて選択された値が与えられた場合、ここでパラメーターは、相対的位相シフト、レーザー周波数、レーザー強度およびパルス持続時間から選択されるが、少なくとも第1および第2のレーザーパルスをNキュービットの集合内の全てのキュービットに適用し、それにより非相互作用量子状態|1>を相互作用励起状態|r>にカップリングし、その結果、量子状態|1>で始まる各キュービットは、少なくとも第1および第2のレーザーパルスの完了の際に状態|1>に戻り、集合中のキュービットは、相互にブロッケイドされるように構成されるコヒーレント光源を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キュービットの集合に対して量子ゲートを操作する方法であって、該方法は:
少なくとも第1および第2のレーザーパルスのパラメーターのセットについて値を選択する工程、ここで該パラメーターは、相対的位相シフト、レーザー周波数、レーザー強度およびパルス持続時間から選択される;ならびに
少なくとも第1および第2のレーザーパルスをNキュービットの集合内の全てのキュービットに適用する工程、ここでNは2以上に等しく、それにより非相互作用量子状態|1>を相互作用励起状態|r>にカップリングし、その結果、量子状態|1>で開始する各キュービットは、少なくとも第1および第2のレーザーパルスの完了の際に状態|1>に戻り、集合中のキュービットは、相互にブロッケイドされる、
を含む、方法。
【請求項2】
各キュービットが原子キュービットである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
各キュービットがイオンキュービットである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
各キュービットが分子キュービットである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
集合中の相互にブロッケイドされるキュービットが相互に双極子ブロッケイドされる、請求項1~4いずれか記載の方法。
【請求項6】
集合中の相互にブロッケイドされるキュービットが相互にリュードベリブロッケイドされる、請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
集合中の全てのキュービットが相互にブロッケイドされる、請求項1~6いずれか記載の方法。
【請求項8】
集合内の全てのキュービットが量子状態|1>で開始する場合に、集合内の全てのキュービットが少なくとも第1および第2のレーザーパルスのそれぞれの完了の際に量子状態|1>に戻るように、少なくとも第1および第2のパルスの持続時間が選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
それぞれのパルスのレーザー周波数が、離調Δだけ|1>から|r>への間の共鳴遷移から離調され、パルス持続時間tが、
【数1】
(式中、Ωはレーザーパルスのラビ周波数である)
と等しい、請求項8記載の方法。
【請求項10】
レーザー強度、レーザー周波数、パルス持続時間およびレーザー位相の1つ以上が、量子ゲートの所望の忠実度を達成するように選択される、請求項1~7いずれか記載の方法。
【請求項11】
少なくとも第1および第2のパルスがパルスの回文シーケンスを形成する、請求書1~8いずれか記載の方法。
【請求項12】
ゲートが制御性位相ゲートC
N-1Z(θ)であり、θが条件付位相角である、請求項1~10いずれか記載の方法。
【請求項13】
Nが2である、請求項1~10いずれか記載の方法。
【請求項14】
量子ゲートが制御性位相(CZ(θ))ゲートであり、N=2である、請求項12記載の方法。
【請求項15】
レーザー周波数、パルス持続時間および位相シフトが、制御性位相ゲートの条件付位相角θに基づいて選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
レーザー周波数が、離調Δだけ|1>から|r>への間の共鳴遷移から離調され、レーザー強度が、レーザーパルスのラビ周波数がΩであるように選択される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
レーザー周波数、レーザー強度、パルス持続時間および位相シフトが、条件付位相角θ=πであるように選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
Nが3である、請求項1~10いずれか記載の方法。
【請求項19】
量子ゲートが、条件付位相角θを有する制御性-制御性位相(C
2Z(θ))ゲートである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
少なくとも第1および第2のレーザーパルスのそれぞれのレーザー周波数、パルス持続時間および位相シフトが、条件付位相角θに基づいて選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
6パルスのシーケンスを適用することを含む、請求項18記載の方法。
【請求項22】
6パルスのシーケンスが回文である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
4N-6パルスのシーケンスを適用することを含む、請求項1~10いずれか記載の方法。
【請求項24】
パルスのシーケンスが回文である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
キュービットの集合に対して量子ゲートを操作する方法であって、該方法は:
レーザーパルスのパラメーターのセットについて時間依存性値を選択する工程、ここでパラメーターは、レーザー位相、レーザー周波数、レーザー強度およびパルス持続時間から選択される;ならびに
レーザーパルスをNキュービットの集合内の全てのキュービットに適用する工程、ここでNは3以上に等しく、それにより非相互作用量子状態|1>を相互作用励起状態|r>にカップリングし、その結果、量子状態|1>で開始する各キュービットは、レーザーパルスの完了の際に状態|1>に戻り、集合中のキュービットは、相互にブロッケイドされる、
を含む、方法。
【請求項26】
各キュービットが原子キュービットである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
各キュービットがイオンキュービットである、請求項25記載の方法。
【請求項28】
各キュービットが分子キュービットである、請求項25記載の方法。
【請求項29】
集合中の相互にブロッケイドされるキュービットが、相互に双極子ブロッケイドされる、請求項25~28いずれか記載の方法。
【請求項30】
集合中の相互にブロッケイドされるキュービットが、相互にリュードベリブロッケイドされる、請求項25または26記載の方法。
【請求項31】
集合中の全てのキュービットが相互にブロッケイドされる、請求項25~30いずれか記載の方法。
【請求項32】
レーザー強度、レーザー周波数、パルス持続時間およびレーザー位相の時間依存性値が、量子ゲートの所望の忠実度を達成するように選択される、請求項25~31いずれか記載の方法。
【請求項33】
ゲートが制御性位相ゲートC
N-1Z(θ)であり、θが条件付位相角である、請求項25~31いずれか記載の方法。
【請求項34】
Nが3である、請求項25~31いずれか記載の方法。
【請求項35】
量子ゲートが、条件付位相角θを有する制御性-制御性位相(C
2Z(θ))ゲートである、請求項34記載の方法。
【請求項36】
レーザー強度、レーザー周波数、レーザー位相およびパルス持続時間の時間依存性値が、条件付位相角θに基づいて選択される、請求項34記載の方法。
【請求項37】
条件付位相角θ=πである、請求項34記載の方法。
【請求項38】
Nキュービットの集合、ここでNは2以上に等しい;ならびに
少なくとも第1および第2のレーザーパルスのパラメーターのセットについて選択された値が与えられた場合、ここで該パラメーターは、相対的位相シフト、レーザー周波数、レーザー強度およびパルス持続時間から選択されるが:
少なくとも第1および第2のレーザーパルスをNキュービットの集合内の全てのキュービットに適用し、それにより非相互作用量子状態|1>を相互作用励起状態|r>にカップリングし、その結果、量子状態|1>で開始する各キュービットは、少なくとも第1および第2のレーザーパルスの完了の際に状態|1>に戻り、集合中のキュービットは、相互にブロッケイドされるように構成されるコヒーレント光源
を含む、デバイス。
【請求項39】
Nキュービットの集合、ここでNは3以上に等しい;ならびに
レーザーパルスのパラメーターのセットについて選択された時間依存性値が与えられた場合、ここで該パラメーターは、レーザー位相、レーザー周波数、レーザー強度およびパルス持続時間から選択されるが:
レーザーパルスをNキュービットの集合内の全てのキュービットに適用し、それにより非相互作用量子状態|1>を相互作用励起状態|r>にカップリングし、その結果、量子状態|1>で開始する各キュービットは、レーザーパルスの完了の際に状態|1>に戻り、集合中のキュービットは、相互にブロッケイドされるように構成されるコヒーレント光源
を含む、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の他所参照
本願は、2019年7月11日に出願された米国仮出願第62/873,009号の利益を主張し、これは、その全体において参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
任意のユニタリー操作は、ユニバーサルゲートの完全なセットを備えた量子コンピューター上で実施され得る。ゲートの完全なセットは、単一キュービット操作と共に2キュービット制御性-NOT(CNOT)ゲートで構成され得る。CNOTゲートは、捕捉された中性原子、捕捉されたイオン、超伝導回路、および線形光学等のいくつかの異なる物理系において示されてきた。
【0003】
中性原子を用いた量子情報処理は、多くの興味深い機会を提供する。中性原子は、光学捕捉技術を使用して、柔軟な幾何構造に多数捕捉され得る。各個々の原子は、2つの超微細基底状態レベル|0>および|1>に量子ビットの情報を記憶し得る。かかる記憶は、環境からの優れた単離により可能になる高いコヒーレンス回数(coherence times)、光学的ポンピングを介した完璧に近いキュービット初期化、各キュービットの個々の光学的読み出し、および単一のキュービットの直接の操作の利点を有する。最終的に、原子間の強く長距離の相互作用が、高度に励起されたリュードベリ状態にカップリングすることによりオンになり得、多キュービットもつれゲートを機能させ、ユニバーサル量子コンピューター計算が可能になる。
【0004】
リュードベリ相互作用を使用して原子をもつれさせるためのプロトコルは、この10年間に理論的および実験的に調査されたが、大きな進歩に関わらず、この分野での進歩は、基底-リュードベリ状態コヒーレント制御に伴う比較的低い忠実度により限定的であった。
【0005】
上記されるように、中性原子の超微細状態にエンコードされるキュービットは、リュードベリ状態相互作用により媒介される制御性-位相(CZ)またはCNOTゲートを使用してもつれさせられ得る。標準的なリュードベリブロッケイドCZパルスシーケンスは、制御キュービットに対するπパルス、標的キュービットに対する2πパルス、および制御キュービットに対するπパルスからなり、各パルスは、基底超微細キュービット状態|1>とリュードベリレベル|r>の間と共鳴している。制御キュービットが状態|1>でゲートに入る場合、それは、励起されたリュードベリであり、標的キュービットに対する2πパルスの間にリュードベリレベルを占める(sit in)。標的原子の励起および脱励起は、有効スピン(effective spin)1/2の2π回転に対応し、従って、これは、標的原子の波動関数にπ位相シフトを付与する。制御原子が標的励起をブロックする場合、回転は生じず、標的波動関数の位相シフトは存在しない。結果は、CZ制御性-位相操作であり、ここで、標的原子の位相シフトは制御原子の状態に依存する。任意の単一キュービットゲートと一緒になって、このもつれ操作は、ユニバーサル量子コンピューター計算ゲートセットを形成する。しかしながら、制御および標的原子のそれぞれに対する局所πおよび2πパルスを適用することを必要とするので、多キュービット量子ゲートの単一キュービットアドレシング(addressing)は、実験的には困難なままである。
【0006】
従って、多キュービット量子ゲートの実行のための改善された系および方法の引き続きのニーズがある。
【発明の概要】
【0007】
概要
例示的な態様において、本開示は、キュービットの集合(grouping)に対して量子ゲートを操作する方法を提供し、該方法は、少なくとも第1および第2のレーザーパルスのパラメーターのセットについて値を選択する工程、ここで該パラメーターは、相対的位相シフト、レーザー周波数、レーザー強度およびパルス持続時間から選択される;ならびに少なくとも第1および第2のレーザーパルスをNキュービットの集合内の全てのキュービットに適用する工程、ここでNは2以上に等しく、それにより非相互作用量子状態|1>を相互作用励起状態|r>にカップリングし、その結果、量子状態|1>で開始する各キュービットは、少なくとも第1および第2のレーザーパルスの完了の際に状態|1>に戻り、集合中のキュービットは、相互にブロッケイドされる、を含む。
【0008】
別の例示的な態様において、本開示は、キュービットの集合に対して量子ゲートを操作する方法を提供し、該方法は、レーザーパルスのパラメーターのセットについて時間依存性値を選択する工程、ここでパラメーターは、レーザー位相、レーザー周波数、レーザー強度およびパルス持続時間から選択される;ならびにレーザーパルスをNキュービットの集合内の全てのキュービットに適用する工程、ここでNは3以上に等しく、それにより非相互作用量子状態|1>を相互作用励起状態|r>にカップリングし、その結果、量子状態|1>で開始する各キュービットは、レーザーパルスの完了の際に状態|1>に戻り、集合中のキュービットは、相互にブロッケイドされる、を含む。
【0009】
さらに別の例示的な態様において、本開示は、Nキュービットの集合、ここでNは2以上に等しい;ならびに、少なくとも第1および第2のレーザーパルスのパラメーターのセットについて選択された値が与えられた場合、ここで該パラメーターは、相対的位相シフト、レーザー周波数、レーザー強度およびパルス持続時間から選択されるが、少なくとも第1および第2のレーザーパルスをNキュービットの集合内の全てのキュービットに適用し、それにより非相互作用量子状態|1>を相互作用励起状態|r>にカップリングし、その結果、量子状態|1>で開始する各キュービットは、少なくとも第1および第2のレーザーパルスの完了の際に状態|1>に戻り、集合中のキュービットは、相互にブロッケイドされるように構成されるコヒーレント光源、を含むデバイスを提供する。
【0010】
なお別の例示的な態様において、本開示は、Nキュービットの集合、ここでNは3以上に等しい;ならびに、レーザーパルスのパラメーターのセットについて選択された時間依存性値が与えられた場合、ここで該パラメーターは、レーザー位相、レーザー周波数、レーザー強度およびパルス持続時間から選択されるが、レーザーパルスをNキュービットの集合内の全てのキュービットに適用し、それにより非相互作用量子状態|1>を相互作用励起状態|r>にカップリングし、その結果、量子状態|1>で開始する各キュービットは、レーザーパルスの完了の際に状態|1>に戻り、集合中のキュービットは、相互にブロッケイドされるように構成されるコヒーレント光源、を含むデバイスを提供する。
【0011】
上記の系および方法は、異なる空間的位置の間でレーザーを高速で移すこと(switching)の必要性を回避し、その結果大きなキュービットアレイにおいてもつれゲート操作、および複数に分かれた原子の集合に対する複数のゲートの同時操作を可能にすること等の多くの利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面の簡単な説明
開示された主題の種々の課題、特徴および利点は、以下の図面に関して考慮した場合、開示された主題の以下の詳細な説明を参照してより十分に理解され得、該図面において、同様の参照数字は、同様の要素を識別する。
【
図1A】
図1Aは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される関連する原子レベルを示す概略図である。
【
図1B】
図1Bは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される対に配置される原子を示す概略図である。
【
図1C】
図1Cは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用されるラマンレーザーにより駆動される|0>から|1>へのラビ振動のプロットである。
【
図1D】
図1Dは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用されるリュードベリレーザーにより駆動される|1>から|r>へのラビ振動のプロットである。
【
図1E】
図1Eは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用されるアドレシングされた標的原子およびアドレシングされていない近傍原子についての局所位相シフトのプロットである。
【
図2A】
図2Aは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用されるパルスシーケンスを示す概略図である。
【
図2B】
図2Bは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される基底状態を示す概略図である。
【
図2C】
図2Cは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される2準位系を示す概略図である。
【
図2D】
図2Dは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される
図2Cに示される2準位系に対するパルスシーケンスのブロッホ球表示である。
【
図2E】
図2Eは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される離調(detuning)の関数としての
図2Dに示される蓄積位相(accumulated phase)のプロットである。
【
図2F】
図2Fは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される別の2準位系を示す概略図である。
【
図2G】
図2Gは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される
図2Fに示される2準位系に対するパルスシーケンスのブロッホ球表示である。
【
図2H】
図2Hは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される離調の関数としての
図2Gに示される蓄積位相のプロットである。
【
図2I】
図2Iは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される3キュービットゲートの関連する原子レベルを示す概略図である。
【
図2J】
図2Jは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される
図2Iに示される2準位系に対するパルスシーケンスのブロッホ球表示を含む。
【
図2K】
図2Kは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される
図2Iに示される2準位系に対するパルスシーケンスのブロッホ球表示を含む。
【
図2L】
図2Lは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される
図2Iに示される2準位系に対するパルスシーケンスのブロッホ球表示を含む。
【
図2M】
図2Mは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される
図2Iに示される2準位系に対するパルスシーケンスのブロッホ球表示を含む。
【
図2N】
図2Nは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される
図2Iに示される2準位系に対するパルスシーケンスのブロッホ球表示を含む。
【
図2O】
図2Oは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される
図2Iに示される2準位系に対するパルスシーケンスのブロッホ球表示を含む。
【
図3A】
図3Aは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される量子回路を示す概略図である。
【
図3B】
図3Bは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用されるコンピューター的基底状態の測定された集団のプロットである。
【
図3C】
図3Cは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される蓄積位相の関数としてのパリティ振動のプロットである。
【
図3D】
図3Dは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用されるCNOTゲートのための量子回路を示す概略図である。
【
図3E】
図3Eは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される4つのコンピューター的基底状態の確率のプロットである。
【
図3F】
図3Fは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用されるCNOT真理値表のプロットである。
【
図4A】
図4Aは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される三つ組(triplet)に配置される原子を示す概略図である。
【
図4B】
図4Bは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用されるトフォリゲートのための量子回路を示す概略図である。
【
図4C】
図4Cは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される8つのコンピューター的基底状態の確率のプロットである。
【
図4D】
図4Dは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用されるトフォリ真理値表のプロットである。
【
図5A】
図5Aは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される関連する原子レベルを示す別の概略図である。
【
図5B】
図5Bは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用されるラマン補助光学的ポンピングを示す概略図である。
【
図5C】
図5Cは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される量子回路を示す概略図である。
【
図5D】
図5Dは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される量子回路を示す概略図である。
【
図5E】
図5Eは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される量子回路を示す概略図である。
【
図5F】
図5Fは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される量子回路を示す概略図である。
【
図5G】
図5Gは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される量子回路を示す概略図である。
【
図5H】
図5Hは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される量子回路を示す概略図である。
【
図5I】
図5Iは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される量子回路を示す概略図である。
【
図6】
図6は、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用されるリュードベリラビ周波数および離調の時間変動のプロットである。
【
図7A】
図7Aは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される制御性-位相ゲートのための量子回路を示す概略図である。
【
図7B】
図7Bは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用されるパルスシーケンスを示す概略図である。
【
図8A】
図8Aは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用されるCNOTおよびトフォリ真理値表についての測定統計を示す概略図である。
【
図8B】
図8Bは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用されるCNOTおよびトフォリ真理値表についての測定統計を示す概略図である。
【
図9】
図9は、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用されるトフォリゲートのための量子回路を示す概略図である。
【
図10】
図10は、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用されるトフォリゲートについての標的確率のプロットである。
【
図11A】
図11Aは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される関連する原子レベルの別のセットを示す概略図である。
【
図11B】
図11Bは、本明細書に記載される系の例示的な態様において使用される原子の連続的な鎖中の対に配置される原子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
本明細書で使用する場合、用語「キュービット」とは、量子コンピューターにおける情報の理論的単位、または量子回路の単位の物理的実行のいずれかを言い得る。いずれにせよ、該用語は、通常、|0>および|1>と示される2つの基底状態を有する2準位量子力学系を言う。古典的「ビット」、即ち、従来のコンピューターにおける情報の理論的単位は、「0」または「1」と示される2つの状態のいずれか1つに存在し得るが、「キュービット」は、その2つの基底状態の線形組み合わせ(重ね合わせ)である任意の状態に存在し得る。2つ以上のキュービットに対して操作される量子ゲートの物理的実行の1つの例は、リュードベリ状態(即ち、主量子数nの非常に高い値を有する状態)に励起され得る原子(またはイオン)を含む。
【0014】
いくつかの態様によると、本開示は、Nキュービットの集合に対して量子ゲートを操作するための方法および系を記載し、ここでNは2以上のキュービットに等しい。本明細書に記載される方法および系は、原子キュービット、イオンキュービット、および分子キュービット等の種々のキュービットに適用され得る。1つの例示的な態様において、光ピンセットに捕捉された個々の中性原子の間で多キュービットもつれゲートを実現するための方法が導入される。キュービットは、単一キュービットゲートを実行するために個々にまたは全体的にコヒーレントに操作され得る長持ちする超微細状態|0>および|1>にエンコードされる。制御性-位相ゲートである2キュービットゲートは、リュードベリブロッケイド型(regime)内の近傍の原子を駆動する2つの全体的なレーザーパルスからなるプロトコルを用いて実行される。以下にさらに記載されるように、このゲートは、原子の5つの対にわたって平均して、忠実度
【数1】
≧95.0(2)%を有する2つの原子のベル状態を調製することによりベンチマーク問題でテストされる(benchmarked)。状態調製および測定(SPAM)誤りを計上した(accounting for)後、抽出されたもつれ操作忠実度、即ち、10個以上のキュービットを同時に操作し得る他の主なプラットホーム(platform)と競合する操作忠実度は、
【数2】
≧97.4(3)%である。さらに、3キュービットトフォリゲートの実行は、以下にさらに示され、ここで2つの原子は、リュードベリブロッケイドを介して第3の原子を同時に束縛し、効率的な多キュービット操作のためのリュードベリ相互作用の潜在的な使用を強調する。
【0015】
1つ以上の態様によると、個々の
87Rb原子は、光ピンセットに捕捉され、リアルタイムフィードバック手順により2つまたは3つの群に分類され、例えば一次元アレイに配置される。キュービットは、これらの原子の超微細基底状態にエンコードされ、|0> = |5S
1/2, F=1, m
F=0>および|1> = |5S
1/2, F=2, m
F=0>である。全てのキュービットは、以下にさらに記載されるラマン補助光学的ポンピング手順により|0>に初期化される。単一キュービットコヒーレント制御は、全てのキュービットを一様に駆動する全体的レーザー場と、ACシュタルクシフトを個々のキュービットに適用する局所アドレシングレーザーの組み合わせにより達成される。
図1A~1Bに示されるように、デバイス100中の全体的駆動場110は、795nmラマンレーザーにより生成され、以下にさらに記載されるように、これは、5S
1/2から5P
1/2への遷移の近くに調節されている。このレーザーは、
図1Cに示される有効ラビ周波数Ω01≒2π × 250kHzを用いた2光子ラマン遷移によりキュービットを駆動する側波帯を生成するように強度が調節されている。局所アドレシングビーム130は、音響光学偏向器により生成され、これは、5S
1/2から6P
3/2への遷移の近くに調節された単一の420nmレーザーを、個々の原子131に焦点を合わしたいくつかのビームに分割し、個々のアドレシングのために使用される光シフトδを生じる。これら2つのカップリング5
S1/2から5P
1/2および5S
1/2から6P
3/2は、それぞれ、全体的X(θ)=exp(-iθX/2)キュービット回転および局所Z(θ)=exp(-iθZ/2)回転として本明細書に記載される。以下にさらに記載されるように、各シーケンスの後、個々のキュービット状態は、|1>にある原子を共鳴レーザーパルスを用いてトラップ(trap)から押し出すこと、その後の、残りの原子の位置分解(site-resolved)蛍光画像により測定される。
【0016】
多キュービットゲートは、420nmおよび1013nmの光を含む二色(bichromatic)リュードベリレーザー120により、原子を、キュービット状態|1>からリュードベリ状態|r> = |70S
1/2, m
J = -1/2>へと全体的に励起することにより操作される。全ての原子は、
図1Dに示される離調Δおよび有効ラビ周波数Ω≒2π × 3.5MHzを伴う2光子プロセスを介して非相互作用性量子状態|1>から相互作用性励起状態|r>へと一様にカップリングする。原子131および132の所定のクラスター内で、最近傍体131と132の間のリュードベリ相互作用は、2π × 24MHz ≫ Ωであり;従って、近傍原子131および132は、リュードベリブロッケイドに従って進展し、その結果、集合中のキュービット131および132は、それらがリュードベリ状態に同時に励起され得ない点で相互にブロッケイドされる。本明細書に記載されるプロトコルは、相互に双極子ブロッケイドされる(dipole blockaded)キュービット等の他の相互にブロッケイドされるキュービットに適用され得る。
図1Eに示されるように、
図1Bに示される5つの原子対131および132にわたって平均されるラムジーシーケンスにおいて測定される局所位相シフトは、アドレシングされた標的原子131について高いコントラスト振動(high contrast oscillation)135を示し、近傍のアドレシングされない原子132について限界された(limited)(<2%)クロストーク140を示す。
【0017】
かかるアレイ中の原子をもつれさせるために、あるプロトコルが、リュードベリブロッケイド型内の原子の全体的な励起のみに依存する(rely)2キュービット制御性-位相(CZ)ゲートについて本明細書において導入される。
図2Bに示されるように、所望のユニタリーCZゲートは、コンピューター的基底状態を以下のとおりにマップする:
|00> → |00>、
|01> → |01>e
iφ、
|10> → |10>e
iφ、
|11> → |11>e
i(2φ
-π
) (1)。
【0018】
このマップは、単一キュービット位相φまで、制御性-位相ゲートの正準形式
【数3】
と同等である。
図2Aに示されるように、|1>を|r>にカップリングする同じ長さまたは持続時間τおよび離調Δの2つの全体的リュードベリレーザーパルス210が、このゲートを実現するために使用され、ここで第2のパルス210のレーザー位相220は、ξだけシフトしている。
【0019】
該ゲートは、4つのコンピューター的基底状態の挙動を考察することにより理解され得る。|00>状態は、レーザー場によりアンカップルされ、従って、進展しない。|01>(および|10>)の動力学は、単一の原子を
【数4】
遷移に対してカップリングすることにより与えられ、
図2Cに示されるように、ラビ周波数Ωおよび離調Δを伴う2準位系を形成する。|11>状態は、
図2Fに示されるように、増大したラビ周波数
【数5】
および同じ離調Δを伴う
【数6】
からの集合的カップリングのために、リュードベリブロッケイド型内で2準位系として進展する。選択された離調Δ、およびレーザーパルスのラビ周波数がΩであるように選択されたレーザー強度について、パルス長または持続時間τは、第1のレーザーパルス210が、
図2Gに示されるように、|11>系について離調されたラビ振動の全サイクル230を完了するように任意に選択され、即ち、
【数7】
(式中、(N=K=2) Kは、相互にブロッケイドされるNキュービットの集合中のキュービットの数である)である。
図2Dに示されるように、同じパルス210は、|01>系に対して不完全なラビ振動240を駆動する。続く相対的位相シフト220Ω→Ωe
iξは、駆動場の方向を、Z軸の周りに角度ξだけ回転させ、その結果、長さτの第2のパルス210が、振動250を完成させ、状態を|01>に戻し、第2の完全な離調振動235を|11>構成(configuration)に対して駆動する。第2のレーザーパルス210の終わりまでに、|01>および|11>の両方は、ブロッホ球上でそれらの初期位置に戻るが、蓄積した動的位相φ01およびφ11を有し、該動的位相は、Δ依存性軌道により囲まれるブロッホ球の幾何学的表面積に依存する。
図2Hに示されるように、レーザー離調(Δ≒0.377Ω)の特定の選択である2φ
01 - π =φ
11は、制御性-位相ゲートの条件付位相角θに基づいて選択されたレーザー周波数、パルス持続時間および位相シフトを用いて、CZゲートを実現する。顕著なことに、このゲートプロトコルは、一連の局所パルス(総時間4π/Ω)の従来のアプローチよりも速く(総時間2τ≒2.732π/Ω)、両方のキュービットの全体的なカップリングのみを必要とするというさらなる利点を提供する。
【0020】
CZゲートの並行操作は、CZゲートを使用して、5つの別々の原子の対上に示され、
図3Aに示す量子回路を使用して形式
【数8】
のベル状態を生成する。全ての原子キュービットは、|0>に初期化され、次いで、全体的なX(π/2)ラマンパルスが適用され、各原子を
【数9】
に調製する。次いで、2つのリュードベリレーザーパルスからなるCZゲートプロトコルが、0.4μsの総時間にわたって適用され、この時間の間、光ピンセットは、リュードベリ状態のアンチトラッピング(antitrapping)を避けるためにオフにされる。パルスシーケンスは、超微細キュービット状態に対するリュードベリレーザーの光シフトのための各キュービットに対するさらなる位相回転と共に、上で議論され、
図2Bに示されるマップ(1)を実現する。以下にさらに記載されるように、CZゲート実行は、光シフトの効果を相殺するためのスピンエコーシーケンスに埋め込まれ、単一粒子位相φを排除するためにさらなる短い光シフトが追加される。要するに、これは、
図3Aおよび3Dに示されるように、正準(canonical)
【数10】
ゲートと全体的X(π)ゲートを組み合わせるユニタリーを実現する。最終X(π/4)回転は、
図3Aに示され、以下にさらに記載されるように、ベル状態|Φ
+>を生じる。
【0021】
実験的に生成された状態ρは、標的ベル状態
【数11】
に関するその忠実度を評価することにより特徴付けられる。該忠実度は2つの項の合計であり、その第1のものは、
図3Bに示されるように、|00>または|11>を観察する確率により与えられるベル状態集団である。原子の存在を伴う|0>と原子の非存在を伴う|1>を関連付ける生の測定は、標的状態の97.6(2)%を生じる。キュービットサブ空間からの漏れの別の測定は、これらの確率に対する小さな寄与を示し、この寄与を差し引くと、測定された集団は≧95.8(3)%である。第2の項は、
図3Aに示される全体的Z(θ)回転、その後の全体的X(π/2)回転を適用し、
図3Cに示されるパリティ振動を観察することにより測定される|00>と|11>の間のコヒーレンスである。蓄積位相θに関するパリティ振動は、94.2(4)%の測定された振幅を有する。生の測定の結果は、
【数12】
の忠実度を生じる。忠実度に対する寄与を評価する場合、リュードベリ状態に残る原子集団は、操作後およびバックグラウンド損失の計上後に計上される。これらの損失の両方は、キュービットサブ空間からの漏れに対応し、|1>集団および生の測定におけるベル状態忠実度の過大評価をもたらし得る。両方の超微細キュービット状態における原子の別々の測定を使用して、以下にさらに記載されるようにこれらの漏れ誤りに対する保存的な上界を決定し、差し引く。ベル状態忠実度に対する得られた下界は、
【数13】
である。
【0022】
測定されたベル状態忠実度は、状態調製および測定(SPAM)における誤り、ならびに2キュービットもつれゲートにおける誤りを含む。もつれゲートを具体的に特徴付けるために、以下にさらに記載されるように、SPAMからの誤り寄与を評価し(1原子当たり1.2(1)%)、SPAM訂正忠実度
【数14】
をコンピューター計算する。以下にさらに記載されるように、残りの誤りの大部分は、リュードベリ動力学の間の有限原子温度およびレーザー散乱のためである。
図3Dに示されるように、ネイティブ
【数14-2】
ゲートは、該ゲートを、局所超微細キュービット回転の追加を伴う制御性-NOT(CNOT)ゲートに変換することにより別々に特徴付けられる。
図3Eに示されるように、4つのコンピューター的基底状態は、96.8(2)%の平均忠実度を用いて調製される。それぞれのコンピューター的基底状態に対してCNOTゲートの動作を測定し、
図3Fに示され、以下にさらに記載されるように、SPAMについて訂正された
【数15】
であるその真理値表忠実度を得る。
【0023】
さらに、複数原子キュービットの制御を延長して、3キュービット制御性-制御性位相(controlled-controlled-phase)(CCZ)ゲートを実行する。この論理操作は、5つの2キュービットゲートに分解され得る。代わりに、最近傍ブロッケイド型において3原子を直接調製することにより、この複数制御ゲートが実現されて、両方の外側の原子は中間の原子の挙動を束縛する。複雑化された3原子動力学は、この構成においてCCZゲートを実現する全体的レーザーパルスを分析的に構築することを困難にする。そのため、以下にさらに記載されるように、CCZゲートを近似的に実行する全体的振幅および周波数変調レーザーパルスを構築するために、数的最適化が使用される。レーザーパルスは、遠隔のドレッシングされたチョップドランダム基底(remote dressed chopped random basis)(RedCRAB)最適制御アルゴリズムを介して最適化される。
【0024】
図4Aに示されるように、CCZゲートは、上記の2キュービットゲートと同じレーザーを使用して、原子キュービットの4つの三つ組において並行して実行される。それぞれの三つ組中の3つの原子410、420および430は、2キュービット実行と同様に、最近傍体(410、420および420、430)が強力な2π × 24MHz相互作用によりブロッケイドされるように配置される。端の原子410および430は互いに弱く(2π × 0.4MHz)相互作用する。2キュービットゲートによるものと同様に、CCZゲートは、光シフトを相殺するためにスピンエコーシーケンスに埋め込まれて、該ゲートは、全体的X(π)回転と共にCCZを実行する。この3キュービットゲートの性能は、(
図4Bに示され、以下にさらに記載されるように、端のX(π)パルスと共に実行を単純化するために)CCZゲートの前および後に中間の原子420に対して局所アダマールを適用して、これをトフォリゲートに変換することにより特徴付けられる。8つのコンピューター的基底状態は、
図4Cに示されるように、95.3(3)%の平均忠実度で調製される。
図4Dに示され、以下にさらに記載されるように、トフォリゲートをそれぞれンコンピューター的基底状態に適用して、SPAM誤りについて訂正された真理値表忠実度
【数16】
を測定する。さらに、回転された基底における真理値表測定値からなる「限界されたトモグラフィー」を実施して、完全なプロセストモグラフィーよりも実験的にアクセス可能である様式でトフォリユニタリーの位相を検証した。以下にさらに記載されるように、限界されたトモグラフィー忠実度は
【数17】
である。
【0025】
これらの結果はいくつかの方向に沿って直接的に向上および延長され得る。リュードベリカップリングの忠実度は、主に有限原子温度およびオフ共鳴(off-resonant)レーザー散乱により限界され、これは光ピンセット内の原子の側波帯冷却およびより高い出力レーザーによりアドレッシングされ得る。バックグラウンド原子損失および状態調製は、より高品質の真空系およびより精密化された状態調製技術を使用して向上され得る。最終的に、原子キュービット読出しは、原子集団に対してより強力な束縛(constraint)を与えるために、最近示された非破壊読み出しプロトコルを使用して向上され得る。
【0026】
空間的に分離された原子のクラスターに対する並行ゲート実行を本明細書において実施したが、同じアプローチは、さらなるオフ共鳴レーザー系を用いる局所アドレッシングを使用して、連続原子アレイ内の非局所(nonlocal)カップリングに拡大され得る。具体的に、アレイのサブセットは、同時に照射されて、光シフトを生成し得、これは、以下にさらに記載されるように、それらを、全体的共鳴リュードベリ励起レーザーを用いて共鳴に導いた。さらに、以下にさらに記載されるように、より多くの原子がブロッケイド容量に配置されて、本明細書に示される制御性位相ゲートは、全体的カップリングを伴うより多くの多キュービットゲートに拡大され得る。SおよびPリュードベリ状態の間の双極子相互作用も使用して、キュービットの間の向上されたゲート結合性を達成し得た。最近示されたトラッピングを用いた本結果と2次元(2D)および三次元(3D)アレイにおける個々の中性原子の再配置の組合せは、深い量子回路または数百のキュービットを用いた変動性量子最適化の実行に、十分に適合する。また、かかるプラットフォーム(platform)は、誤り訂正およびフォルトトレラント操作のための効率的な方法を調べて、最終的に大規模化可能な量子プロセッシングを可能にするために使用され得た。
【0027】
ラマンレーザー
キュービット状態の間の遷移は、795nmラマンレーザーを使用して駆動され、これは2π × 100GHzで赤色離調された(red-detuned) 5S1/2から5P1/2までの遷移である。レーザーは、最少伝送の周囲でDCバイアスをかけられた線維系マッハツェンダー強度変調器(Jenoptik AM785)にカップリングされる。該変調器はキュービット周波数の半分で駆動され(ω01 = 2π × 6.83GHz)、±2π × 3.42GHzで側波帯を生じ、一方でキャリアおよびより高次の側波帯は強く抑制される。このアプローチは、位相変調を介して側波帯を生成し、次いでフリースペース工学空洞または干渉計を用いてキャリアモードの抑制を分離する他のアプローチとは対照的に、何らかの能動的なフィードバックなしで、1日の時間尺度で受動的に安定である。
【0028】
ラマンレーザーは、原子のアレイに沿って整列され(8.5Gバイアス磁場との共整列)、σ
+偏向されて、
図5Aに示されるように、2つの側波帯は、Ω=2π × 250kHzのラビ周波数を用いてF = 1とF = 2基底状態多様体の間でπ遷移をコヒーレントに駆動する。ラマン駆動光は、キュービット遷移に対して2π × 20kHzの示差光シフトを誘導し、強度変調器の駆動周波数は、ラマンパルスが適用される場合にこの光シフトを訂正するように調整される。
【0029】
|0>への光学的ポンピング
原子は、8.5G磁場を伴うラマン補助ポンピングスキームを使用して、|0> = |5S
1/2, F=1, m
F = 0>に光学的にポンピングされる。
図5Bに示されるように、|5S
1/2, F=1>多様体内の全てのm
F状態への原子の大ざっぱなポンピング(coarse pumping)は、|5S
1/2, F=2>~|5P
3/2, F=2>遷移に対する共鳴光を光らせることにより開始する。次いで、離調で、集団を|F=1, m
F=-1>から|F=2, m
F = -1>へと駆動するラマンπパルスを適用する。第2のパルスは、集団を、|F=1, m
F = +1>から|F=2, m
F = +1>へと駆動する。次いで該プロセスは、F = 1多様体へと戻るF = 2に移動された任意の集団を再度大ざっぱにポンピングすることにより反復される。1サイクルの正味の効果は、|F=1, m
F = ±1>中の集団の一部を|F=1, m
F=0>に移動させることである。このサイクルは典型的に、99.3(1)%の|0>調製忠実度を達成するために、300μsの持続時間にわたり70回反復される。
【0030】
リュードベリレーザー系
原子は、420nmおよび1013nmの2色レーザー系を介して、|1> = |5S1/2, F=2, mF=0>から|r> = |70S1/2, mJ = -1/2>へとカップリングされる。レーザーは、中間状態|6P3/2>を介して、σ-およびσ+遷移のそれぞれを駆動するように偏向される。基底状態レベルとして|5S1/2, F=2, mF = -2>を使用する以前の実行において、選択規則により、|6P3/2>内の単一の中間サブレベルのみおよび単一のリュードベリ状態のみがカップリングされ得ることが確実にされた。さらに、合わされた2光子遷移は磁気的に非感受性であった。
【0031】
|1> = |5S1/2, F=2, mF=0>からリュードベリ状態へのカップリングは、本明細書で記載されるように、少しの複雑さを追加する。最初に、複数の中間状態がカップリングされ、リュードベリ多様体内の両方の|70S1/2, mJ = ±1/2>サブレベルに到達し得る。これは、mJ = ±1/2リュードベリレベルをスペクトルにより分離するために、より高い磁場で作業することを必要とする。本明細書に記載される態様において、8.5Gの磁場は、2π × 23.8MHzのmJ = ±1/2の間での分離を生じる。|1>から|r>へのカップリングにおいてマトリックス要素も低減され、一方で、レーザー散乱率は同じままであり、さらに遷移はここで、磁気的に感受性になる。それにもかかわらず、このスキームは、ラマンレーザー系と容易にカップリングされ得、光ピンセットにおいてコヒーレンスを保存する基底状態多様体内の高品質キュービット状態|0>および|1>から利益を受ける。電場に対する感受性はこのスキームでは変化しないが、電場を漂流させること(drifting)または変動させることは、リュードベリ共鳴が50kHz未満だけ変化するように、束縛され得ることに注意。
【0032】
この実行における1つのさらなる複雑さは、別のリュードベリ状態
【数18】
へのカップリングである。しかしながら、このカップリングは、離調Δの適切な再標準化により考慮され得るACシュタルクシフトを生じるだけである。
【0033】
ネイティブ単一キュービットゲートからの量子回路の構築
上記の全てのパルスシーケンスは、前もって較正された単一キュービットゲート(および上に示される場合、全体的多キュービットゲート)に分解される。2つの単一キュービットゲートは、同時に全てのキュービットに対して全体的に実行されるX(π/4)、および単一原子に焦点を当てられたレーザーからの光シフトにより実行されるZ(π)である。実際には、局所Z(π)ゲートは、同時にそれぞれのクラスター由来の1つの原子(すなわちそれぞれのクラスターの左の原子またはそれぞれのクラスターの中間の原子)に適用される。
【0034】
コンピューター的基底状態の初期化
2つのキュービットについて、全ての4つのコンピューター的基底状態は、全体的X(π/2)パルス(2つの連続的X(π/4)ゲートからなる)および左の原子のみに対する局所Z(π)ゲート(それぞれの回路内の頂部キュービット))を使用して初期化される。|00>状態は、パルスが調製されないことを必要し、|11>状態は、全体的X(π)ゲートのみを必要とする。状態|01>は、
図5Cに示されるように調製され、状態|10>は、
図5Dに示されるように調製される。
【0035】
3つのキュービットについて、8つのコンピューター的基底状態は、3つの原子のいずれかに適用され得るX(π/2)パルスおよび局所Z(π)パルスを使用して再度初期化される。|000>および|111>はそれぞれ、操作なしまたは全体的X(π)ゲートのいずれかを用いて再度調製され得る。他の状態は、|1>に1つおよび|0>に他の2つの原子を有するかまたはその逆である。両方の構成がどのように調製されるかを、2つの例を示して本明細書に図示する。第1に、|100>は
図5Eに示されるように調製される。第2に、|110>の調製は、代わりに
図5Fに示されるように最も右の原子に対する局所アドレッシングを必要とする。
【0036】
CNOTゲートについての局所X(π/2)
【数19】
ゲートをCNOTゲートに変換するために、
図5Gに示されるように実行されるゲートの前および後に、局所X(π/2)を標的原子に適用する。
図5Gに示される回路は、右の原子に対して局所X(π/2)を適用し、一方で左の原子に対してさらにZ(π)ゲートを適用し、この回路は、左の原子がコンピューター的基底状態|0>または|1>にある情況においてのみ適用されて、いずれの場合でもZ(π)ゲートが全体的位相のみを導入し、役割を果たさない。一般的に、さらなるZ(π)ゲートの適用は、左の原子に対する効果を相殺するために使用され得たが、本明細書に記載される実行にはこれは必要ではなかった。
【0037】
トフォリ実行についての局所アダマール
CCZゲートをトフォリゲートに変換するために、CCZパルスの前および後に標的(中間)キュービットに対して局所回転を適用する。この与えられたネイティブゲートセットを達成するための最も簡単な方法は、
図5Hに示されるように、中間のキュービットに対して全体的X(π/4)、次いで局所Z(π)およびその後全体的X(3π/4)を適用することである。
【0038】
それぞれの端のキュービットに対して、正味の効果は単純にX(π)ゲートである。中間のキュービットに対して、このシーケンスはアダマールゲート(典型的な定義とは異なる軸に沿って画定される)を継続し、ここで
【数20】
である。
【0039】
2キュービットCZゲートの設計
このセクションは、本明細書において実現される2キュービットゲートの詳細な理論的議論を提供する。所望のユニタリー操作は、コンピューター的基底状態を以下のとおりにマップする:
|00> → |00>,
|01> → |01>
|10> → |10>
|11> → |11>eiπ (3)。
【0040】
全体的ゲージ選択(すなわちキュービットの全体的回転)まで、これは以下のゲートと同等である:
【数21】
(式中φ
1は任意である)。
【0041】
かかるゲートを実現するために、両方の原子は、状態|1>をリュードベリ状態|r>にカップリングするレーザーを用いて全体的かつ一様に駆動される。これは、単一レーザー場を介してまたは2光子プロセスにより達成され得る。原子の対の動力学を支配するハミルトニアンは、
【数22】
(式中、Δは状態|1>と|r>の間の遷移周波数からの励起レーザーの離調であり、Ωは対応するラビ周波数である)により与えられる。リュードベリ状態における2つの原子の間の相互作用強度はVにより与えられる。以下の分析において、V ≫ |Ω|, |Δ|であることが最初に仮定され、これは原子を互いに十分に近くにトラップすることにより実現され得る。このいわゆるリュードベリブロッケイド型は、以下の説明を簡易化するが、ゲートの実現には必要ではない。
【0042】
系の動力学はいくつかの単純なセクターにデカップリングされる:
(i)状態|00>は進展しない。
(ii)原子の1つが|0>にある場合、他の系のみが進展する。したがって動力学は、状態|1> = |a
1>および|r> = |b
1>およびハミルトニアン
【数23】
を伴う2準位系(TLS)のものと同等である。
(iii)両方の原子が最初に状態|1>にある場合、動力学は再度、
状態|11> = |a
2>および
【数24】
により形成される有効な単一TLSのものと同等であり、ハミルトニアンは
【数25】
である。これは、V → ∞に同等である完全なリュードベリブロッケイドを仮定する。しかしながらこの仮定は、分析を単純化するが、本明細書に記載されるゲートを実現するためには必要ではないことに注意。
【0043】
制御性位相ゲートは、間にあるξによる位相ジャンプ(すなわち相対的位相シフト)と共に等しい持続時間τおよび離調Δを伴うリュードベリレーザー場の2つの同一のパルスから構築され得る。それぞれのパルスは、ユニタリーU = exp(-iHτ)に従って原子の状態を変化させる。パルスの間のレーザー位相の変化、Ω → Ωeiξは、ブロッホ球上の異なる軸の周りに系を駆動させることに有効に対応する。
【0044】
合わされた両方のレーザーパルスの効果を説明する
【数26】
の動作下で4つのコンピューター的基底状態がどのように進展するかを考察する。第1に、
【数27】
であることに注意。したがって、ユニタリー
【数28】
は、CZゲートについて予想されるように状態|00>をマップする。
【0045】
次に、状態|11>の進展を考察し、ここで集合中の全てのキュービットは量子状態|1>で開始される。任意に、それぞれのパルスの長さまたは持続時間τは、状態|11>において調製された系が完全な離調したラビ振動を経験し、第1のレーザーパルスの後に既に状態|11>に戻る;すなわち
【数29】
であるように選択される。状態|11>への戻りは、
【数30】
であるようなτの選択により確実にされる。第2のレーザーパルスはまた、異なる軸の周りの完全な離調されたラビサイクルをもたらすので、集合中の全てのキュービットは、第1および第2のレーザーパルスのそれぞれの完了の際に量子状態|1>に戻り、第2のレーザーパルスは、同じ蓄積位相を生じる。総合すると、
【数31】
である。このプロセスにより蓄積された動力学的位相は、
【数32】
により与えられる。
【0046】
最後に、状態|01>および|10>の進展を考察する。それぞれの場合において、この進展は、離調されたラビ振動によっても説明される。しかしながら、H
1およびH
2における有効ラビ周波数の間のミスマッチのために、状態|10>(|01>)は、時間τの後にそれ自体に戻らないが、重ね合わせ状態は生成される:U|10> = cos(α)|10> + sin(β)e
iγ |r0>、およびU|01> = cos(α)|01> + sin(β)e
iγ |0r>。実係数α、βおよびγは、Ω、Δおよびτの選択により決定される。第1および第2のレーザーパルスξの間の位相ジャンプ(すなわち相対的位相シフト)の適切な選択により、系が第2のレーザーパルスの後に状態|10>(|01>)に戻ることが常に保証され得る。位相ジャンプは、
【数33】
(式中、y = Δ/Ωおよびs = Ωτ)として計算され得る。位相のこの選択によると、
【数34】
であり、量子状態|1>で開始する各キュービットは、第1および第2のレーザーパルスの完了の際に状態|1>に戻る。取得された動力学的位相は、簡単な(straightforward)代数を使用して計算され得、Δ/Ω、τΩおよびξの関数である。式(5)においてτが固定され、式(6)においてξが固定される場合、φ
1は実際に、単独で無次元の量Δ/Ωにより決定される。φ
2も単なるΔ/Ωの関数であることに注意。しかしながら、
図2Hに示されるように、関数従属性は異なり、Δ/Ωについての選択は、
【数35】
となるように見られ得る。第1および第2のレーザーパルスのパラメーターのセットについてのこれらの選択された値により、パラメーターは相対的位相シフト、レーザー周波数、レーザー強度およびパルス持続時間から選択されるが、マップ(4)において与えられるゲートが正確に得られ、(些細な単一キュービット回転まで)制御性位相ゲートマップ(3)と同等である。関連のあるパラメーターの対応する数値は:
Δ/Ω = 0.377371 (7)
ξ = 3.90242 (8)
Ωτ = 4.29268 (9)
(式中、ξはラジアンの単位を有する)である。
【0047】
以下にさらに記載されるように、この構築は2つより多くの原子を伴う十分にブロッケイドされる系において多キュービット制御性位相ゲートに対して一般化され得ることに注意。
【0048】
不完全ブロッケイドの計上
上述の分析は、完全ブロッケイド機構に基づく。有限ブロッケイド相互作用(および他のリュードベリ状態へのカップリングなどの他の不完全性)が計上され得、式(7~9)に与えられるパラメーターの有効な再標準化のみをもたらし得る。これを参照するために、系が最初に状態|11>にある場合はVの有限値のみが動力学に影響することに注意。2つの状態|a
2> = |11>および|b
2> = (|1r> + |r1>)に限定される代わりに、第3の状態|c
2> = |rr>が考慮される必要があり、H
2は、
【数36】
に置き換えられる。V ≫ |Δ|, |Ω|について、有限ブロッケイドについての効果は、2準位系[|a
2>, |b
2>]まで単純に簡易化され、ここでΔは、量Ω
2/(2V)により再標準化される。さらに、小さいV > 0および所定のΔについて、Ωおよびτは常に、状態|a
2>において初期化された系が第1のパルス後に状態|a
2>に戻るように選択され得る。したがって、有限ブロッケイドは単純に、十分にブロッケイドされる型における完全ラビ振動を、二次元ヒルベルト空間におけるわずかに複雑であるが依然として閉鎖された経路により置き換える。他のコンピューター的基底状態の動力学の分析は、Vの有限値により影響を受けない。したがって、最初に状態|10>にある系がVおよびΔのそれぞれの選択について|10>に戻ることを確実にすることは簡単である。これは、|11>および|10>により取得される相対的動力学的位相についての制御ノブ(knob)としてΔを使用することを可能にし、そのためVの全ての値についてCZゲートを実現する。3つの例示的な解を表1に列挙する。
【表1】
【0049】
CZゲートの実験的較正
CZゲートは、それらの間に相対的位相シフトを有する2つのレーザーパルスを必要とする。2つのパルスの離調Δは、数的計算により実験的に較正されたリュードベリ共鳴に対して決定される。パルス時間およびパルスの間の位相ジャンプは両方、音響光学変調器(AOM)に基づく制御系に関連するタイミングおよび位相における摂動(perturbation)のために実験的較正を必要とする。パルス時間τは、|1>においてキュービット対中の両方の原子を調製することおよび離調Δでリュードベリ状態に駆動することにより最初に較正される。対称に励起した状態
【数37】
に対する離調されたラビ振動が観察され、集団が十分に|11>に戻るパルス時間が抽出される。
【0050】
τを固定した後、単一の単離された原子のみが|1>に調製され、長さτの2つのパルスが、変動性の相対的位相により駆動される。相対的位相ξは、単一の原子がシーケンスの終了までに十分に|1>に戻る位相を同定することにより固定される。
【0051】
最終的に、(単一粒子位相φを伴う)CZゲートを正準形態:
【数38】
に変換するために必要な全体的位相シフトの較正を本明細書に記載する。
【0052】
この位相訂正は、1013nmリュードベリ光の非存在下、固定された時間に全体的420nmレーザーを適用することにより実行され、これは、任意の共鳴リュードベリ励起を回避し、そのかわりに位相シフトを追加するのみである。位相訂正を較正するために、ベル状態シーケンスを適用して、ここでベル状態|Φ+>を調製するための試みがなされ、次いで両方のキュービットにさらなるX(π/2)回転が適用される。位相訂正が最適である場合、集団において測定され得る状態|Ψ+>が調製されるべきである。全体的位相訂正は、このシーケンスの終了時に|Ψ+>中の測定された集団を最大化するように変更される。
【0053】
【数39】
ゲートおよびπ/4パルスを使用したベル状態の調製
本明細書に記載される
【数40】
ゲートの全体的実行は、局所アドレッシングなしでベル状態の調製を可能にする。ベル基底において2キュービット系を記載することによりプロトコルは最も自然に理解される:
【数41】
該系は、|11>で調製され、全体的X(π/2)パルス後、以下の状態が調製される:
【数42】
制御された位相ゲートは、状態
【数43】
を生成する。状態|Φ
+>および|Ψ
+>は両方、2キュービットの三つ組多様体内にあり、全体的駆動場により共鳴的にカップリングされて、2倍の単一粒子ラビ周波数を伴う有効な2準位系を形成する。この有効な2準位系内のπ/2パルスは、単一粒子ラビ周波数でπ/4パルスに対応し、
【数44】
をマップする。
【0054】
CCZゲートの実行
上記の2キュービットゲートは、
【数45】
により与えられるマッピングを用いて3キュービットゲート制御性-制御性位相ゲートに一般化され得、これは(全体的単一キュービット回転まで)制御性-制御性位相ゲートと同等である。
【0055】
含まれる3原子の動力学は、ハミルトニアン
【数46】
により記載される。
【0056】
3つの原子が全てブロッケイド半径内にあるような3つの原子の配置、すなわち集合中の全てのキュービットが相互にブロッケイドされ、その結果2つの原子のいずれもがリュードベリ状態に同時に有効に励起され得ずに、V
i,j ≫ |Ω| ≫ |Δ|を意味するものを考察する。次いで、2キュービット制御性位相ゲートの上述の議論からの違いのみは、ここで考慮される必要があるさらなる2準位系があることであり、状態|111> = |e>であり、
【数47】
であり、ハミルトニアン
【数48】
である。
【0057】
レーザー駆動位相のジャンプ(すなわち相対的位相変化)が散在するパルスのシーケンスを使用して、
【数49】
により記載されるように、二重制御性位相ゲートを実現する。
【0058】
このパルスシーケンスは、上述の2キュービットパルスシーケンスの一般化であり、(等しい長さ、ラビ周波数および離調の)pサイクルを伴い、レーザー位相のp-1相対的変化(一般性(generality)の喪失なしでξp = 0)が散在する。制御性-制御性位相ゲートは、p = 6パルスおよびパルスの回文(palindromic)(例えば対称)シーケンスにより実現され得、ここでξl = ξp-lである。
【0059】
本明細書で使用する場合、用語「回文(palindromic)」は、順序づけられたパルスのシーケンス(ひとつながり)をいう場合、順番が逆にされた場合にシーケンスが同じままであることを意味する。レーザーパルスの回文シーケンスの例は、「対称」シーケンス、すなわち時間t= t0で開始して、時間t = t1で終了するレーザーパルスのシーケンスであり、時間A = A(t)の関数としてのレーザー光の振幅のプロットが、ラインt = 1/2(t1 - t0)の周囲に反射対称性を有することを特徴とする。
【0060】
パルス長さまたは持続時間は再度、任意に
【数50】
であるように選択される(N=K=3)ので、exp(-iHτ)|111> = exp(iφ
3/6)|111>である。τのこの選択は、最も早い有効な2準位系が、6パルスのそれぞれの完了の際に離調されたラビ振動を完了することを確実にする。位相ジャンプ(すなわち相対的位相変化)を定量する3つのパラメーターであるξ
1、ξ
2およびξ
3は、3つの基底状態の1つで初期化される系が6パルス後に(動力学的位相まで)同じ状態に戻るように決定される。すなわち、
【数51】
である。他の状態は対称性により対応する等式を満たし、状態|000>は些細なことであるが進展しない。上述の条件に加えて、これらの動力学において取得される動力学的位相は、exp(i2φ
1) = exp(iφ
2)およびexp(i3φ
1) = exp(φ
3+π)を満足する。4つの独立した自由パラメーターΔ/Ω、ξ
1、ξ
2およびξ
3は、これらの4つの等式から数的に決定される。具体的な解は、
Δ/Ω = -0.229479 (21)
ξ
1 = 0.5869771 = ξ
5 (22)
ξ
2 = 4.5323846 = ξ
4 (23)
ξ
3 = 6.2250881 (24)
により与えられる。
【0061】
A、BおよびCと示される3つの2準位系を
図2Iに示す。第1のパルスは、
図2J~Oにおいて、A10、B10およびC10と示される。
図2J~Oにおいて、表記X##が使用され、文字は2準位系A、BまたはCを示し、最初の数字はパルス番号1~6を示し、2番目の数字は位相シフト番号1~5を示す。ブロッホ球C10に示されるように、第1のパルスC10は、
図2Iの系Cに示される
【数52】
の高められたラビ周波数および離調Δでの完全な離調されたラビサイクルをもたらす。ブロッホ球A10およびB10に示されるように、第1のパルスA10およびB10は、
図2Iの系AおよびBのそれぞれに示されるように、2準位系Aについて同じ離調Δ、ラビ周波数Ωを有し、2準位系Bについて高められたラビ周波数
【数53】
を有する、2準位系AおよびBについての不完全なラビサイクルをもたらす。第1の位相シフト(ξ
1=0.5869771 rad≒33°)はブロッホ球A11およびB11それぞれにおいてA11およびB11と示される。ブロッホ球C11に示されるように、2準位系Cはその基底状態にあり、そのため位相シフトにより変化されず、この位相シフトの間にブロッホ球の南極C11に残る。第2のパルスC21は再度、ブロッホ球C21に示されるような完全な離調されたラビサイクル、ならびにブロッホ球A21およびB21のそれぞれに示されるような不完全なラビサイクルA21およびB21をもたらす。第2の位相シフト(ξ
2=2π-4.5323846 rad≒-100°)は、ブロッホ球A22およびB22のそれぞれにおいてA22およびB22と示される。ブロッホ球C22に示されるように、2準位系Cはその基底状態にあり、そのため、再度位相シフトにより変化されず、この位相シフトの間にブロッホ球の南極C22に残る。第3のパルスC32は再度、ブロッホ球C32に示されるような完全な離調されたラビサイクルならびにブロッホ球A32およびB32のそれぞれに示されるような不完全なラビサイクルA32およびB32をもたらす。第3の位相シフト(ξ
3=2π-6.2250881 rad≒-3.3°)は、ブロッホ球A33およびB33のそれぞれにおいてA33およびB33と示される。ブロッホ球C33に示されるように、2準位系Cはその基底状態にあり、そのため、再度位相シフトにより変化されず、この位相シフトの間にブロッホ球の南極C33に残る。第4のパルスC43は再度、ブロッホ球C43に示されるような完全な離調されたラビサイクルならびにブロッホ球A43およびB43のそれぞれに示されるような不完全なラビサイクルA43およびB43をもたらす。第4の位相シフト(ξ
4=ξ
2=2π-4.5323846 rad≒-100°)は、ブロッホ球A44およびB44のそれぞれにおいてA44およびB44と示される。ブロッホ球C44に示されるように、2準位系Cはその基底状態にあり、そのため、再度位相シフトにより変化されず、この位相シフトの間にブロッホ球の南極C44に残る。第5のパルスC54は再度、ブロッホ球C54に示されるような完全な離調されたラビサイクルならびにブロッホ球A54およびB54のそれぞれに示されるような不完全なラビサイクルA54およびB54をもたらす。第5の位相シフト(ξ
5=ξ
1=0.5869771 rad≒33°)は、ブロッホ球A55およびB55のそれぞれにおいてA55およびB55と示される。ブロッホ球C55に示されるように、2準位系Cはその基底状態にあり、そのため、再度位相シフトにより変化されず、この位相シフトの間にブロッホ球の南極C55に残る。第6のパルスA65およびB65は、ブロッホ球A65およびB65のそれぞれに示されるように、AおよびBの2準位系をそれらの最初の位置に戻し、ブロッホ球C65に示されるように、最終的な離調されたラビサイクルC65を完了する。
【0062】
このゲートの別のバージョンは、V
1,2、V
2,3 ≫ |Ω|、|Δ|およびV
1,3 ≪ |Ω|、|Δ|となるように原子が配置される場合に構築され得る。式(19)により記載される同じ回文(例えば対称)6パルスアンザッツ(ansatz)を使用して、ここでパルス長さまたは持続時間τは任意に、
【数54】
のように選択され(K=2)、パラメーターは
Δ/Ω = 0.0422037 (26)
ξ
1 = -1.20646 = ξ
5 (27)
ξ
2 = 5.18936 = ξ
4 (28)
ξ
3 = 5.30347 (29)
である。パラメーターのこのセットは近似的に、
【数55】
(10
-2)未満である集団中の誤りおよび
【数56】
(10
-5)未満である位相中の誤りを伴う所望の3キュービットゲートを与える。
【0063】
上述のように、この制御性-制御性位相(CCZ)ゲートは、最近傍体がリュードベリブロッケイドにより束縛されるが、次の最近傍体がV1,2、V2,3 ≫ |Ω|、|Δ|およびV1,3 ≪ |Ω|、|Δ|である弱い相互作用のみを有する型で実行される。このことを考慮すると、実行されるCCZゲートは、両端の原子が同時に中間の(標的)原子をブロッケイドし得るという事実により誘導される。特に、以下のスキームは、リュードベリ状態への局所励起を含むCCZを実行すると考えられる:
【0064】
1. 両端の原子にπパルスを適用して、|1>にあるそれらの集団の全てを|r>に移す。
2. 中央の原子に2πパルスを適用して、|1>から|r>に励起して|1>に戻し、いずれの端の原子も中央のこの原子をブロッケイドしておらず、該原子が|1>にある場合のみにπ位相シフトを蓄積する。
3. 端の原子に別のπパルスを適用して、任意の集団を|r>から|1>に戻す。
かかるプロトコルは、以下のユニタリー:
【数57】
を実現する。このユニタリーは、
図5Iに示されるように、局所回転まで
【数58】
と示される正準制御性-制御性位相ゲートと同等である。
【0065】
リュードベリ状態への局所励起の非存在下、全体的リュードベリカップリングは依然として、このユニタリーを近似的に実現し得る。異なるカップリング周波数を伴う数準位の系の動力学により異なる入力構成が進展するため、全ての入力構成を適切に制御するための単一の分析的な全体的パルスを設計することは困難である。例えば、|001>状態は、ラビ周波数Ωを伴う2準位系として|00r>にカップリングする。|011>状態は、
【数59】
にカップリングする。|111>状態は、ラビ周波数Ωを伴う|1r1>にカップリングし、
【数60】
にもカップリングする(次いで|r1r>にカップリングする)。系はさらに、端の原子の間の有限の次の最近傍相互作用により複雑化される。
【0066】
全ての入力構成に対して働く全体的パルスを見出すために、一態様において、RedCRAB最適制御アルゴリズムを使用して、カップリング場についての振幅および周波数プロフィールを最適化し、それによりレーザー強度、レーザー周波数、パルス持続時間およびレーザー位相を選択した。
図6に示される最適化されたパルスは、1.2μsの持続時間を有し、97.6%の所望の数的にシミュレートされたゲート忠実度を達成する。
【0067】
より冷たい原子を用いたさらなる実行は、次の最近傍体の間の望ましくない位相蓄積の効果を意図的に相殺するようにゲートタイミングを設計することにより、より高いゲート忠実度を達成し得た。代替的に、いくつかのキュービットゲートは、原子をより近くに持っていき一緒にすることによりまたはより高いリュードベリ状態まで励起させることにより、十分にブロッケイドされた型において全ての原子を用いて実行され得た。
【0068】
CZおよびCCZについてのスピンエコー手順
図7Aに示される囲まれた領域内の制御性位相ゲートの実行を、等号の右手側により明確に詳細に示す。
【数61】
ゲート(領域I)の直接の実行は、両方のキュービットに対する過剰な位相シフトを含む。これは、超微細キュービットX(π)エコーパルス(II)、次いで適切な位相シフト(IIIおよびIV)により訂正される。CZまたはCCZゲートを実行するリュードベリパルスは、1013nmのレーザー場および420nmのレーザー場の両方を含み、その後者は、約2π × 3MHzのキュービットレベルに示差的な光シフトを追加する。この光シフトのために蓄積される位相を訂正するために、CZゲートの後、キュービットX(π)回転を全ての原子に対して適用し、次いでCZゲートに使用される同じ420nmパルスを適用するが、この時間には1013nmの光は存在しない。CZプロトコルの設計に固有である上述のマップ(1)に示される単一粒子位相φは、420nmレーザーのさらなる短いパルスにより別々に訂正される。十分に詳細なパルスシーケンスを
図7Bに示す。ベル状態を調製するための十分なパルスシーケンスは、|0>中の両方の原子および全体的X(π/2)パルス(2つのπ/4パルスにより生成される)を用いて開始され、両方の原子を
【数62】
に置く。次いで、1013nmのレーザーはオンになり、420nmのレーザーは2つのパルスにおいて(該パルスの間の相対的位相を用いて)適用され、420nmのレーザーの光シフトから生じた全体的位相シフトと共にCZゲートを働かせる(enact)。全体的X(π)パルスはキュービット状態をフリップさせ、その時点で同じ420nmのパルスが適用されるが、ここでは1013nmの光は存在しない。これはCZゲート実行の第1の部分における光シフトの効果を打ち消す。次いで、420nmのレーザーのさらなる短いパルスはさらなる位相訂正を追加して、CZゲートを正準
【数63】
ゲートに変える。その後の全体的X(π/4)パルスは、ベル状態|Φ
+>にある2つの原子を調製する。最後の420nmのレーザーパルスは、このベル状態に動力学的な位相を追加するように使用され得、これは、パリティ振動を測定するためのその後の全体的X(π/2)により検出され得る。最終的に、|1>にある原子は、集団を検出するように押し出される(push out)。
【0069】
原子損失を介した状態読出し
状態読出しのために本明細書において使用される主要な技術は、ピンセットの外側の|1>(より一般的にF = 2)の原子を加熱する共鳴レーザーパルスを適用して、その後|0>の残った原子の蛍光画像を撮ることである。この方法は、|0>の原子を正確に同定するが、バックグラウンド損失プロセスを介してまたは|1>の原子についての残存リュードベリ励起により消失した原子を見落とし得、|1>の集団の過剰評価をもたらす。リュードベリ励起を含む任意の測定について、測定統計は、押し出し(pushout)パルスありおよび無しの両方で回収されて、キュービットサブ空間からどのくらい多くの漏れが生じたのかについての上界が提供され、そのために|1>の真の集団に対する下界も与えられる。
【0070】
この手順は、2キュービット実験に関して図示され、2種類の測定が、A(|1>原子の押し出しが適用される)およびB(押し出しが無力化される)として示される。それぞれの測定手順について、各キュービットについての「消失」または「存在」からなる4つの2キュービット状態を観察することにより統計が得られた。Aベクトルは|0>および|1>としてこれらに関連するので、A
ij(
【数64】
について)は、単純な損失/存在分析による左および右の原子を0、1に同定する確率を示す。しかしながら、原子はキュービット状態0、1にあり得るだけでなく、トラップからまたはリュードベリ状態において消失もし得、両方の場合において「消失」として検出される。Cを|0>および|1>を含むコンピューター的サブ空間として示すこと、ならびに
【数65】
をこのサブ空間の外側の何か(リュードベリ集団または損失を含む)と示すことで、Bベクトルは、原子がC(|0>または|1>のいずれか)にあるかまたはそうでないか
【数66】
を測定するので、これはB
ij(式中、
【数67】
)と示される。
【0071】
A
ijおよびB
ijの両方は、以下のように、基底をなす原子集団pαβに関して明確に表現され得、ここで
【数68】
である:
【数69】
【0072】
A
ijおよびB
ijを測定すると、ここで目的の原子集団:p
00、p
01、p
10およびp
11について解かれ得る。
【数70】
【0073】
全ての確率は、負ではなく(non-negative)、
【数71】
であるので、真の集団について、下界が得られる:
【数72】
【0074】
これは、ベル状態集団、CNOT真理値表およびトフォリ真理値表(3キュービットに拡張される)について行われる分析である。真理値表について、分析は、
図8A~Bの行列の列として別々に示されるそれぞれの測定構成(異なる入力コンピューター的基底状態に対応する)について行われ、上記のように、押し出しパルスありおよび無しの両方での異なる出力構成の確率分布(パーセンテージの点で示される)を示す。
【0075】
状態調製および測定誤りの訂正
状態調製および測定(SPAM)誤りについての測定された忠実度を訂正する問題を以下に考察する。Pは、全てのキュービットを正確に初期化して測定するための確率として示され;一般的に、
【数73】
の単一粒子誤り率について
【数74】
である。測定された忠実度は:
【数75】
に従って「訂正された忠実度」に関する。ここで
【数76】
はSPAM誤りが生じる場合の測定された忠実度信号に対する偽(false)寄与を示す。訂正の実施における主要な巧妙さ(subtlety)は、潜在的な偽寄与
【数77】
を適切に評価することである。
【0076】
実験的に、SPAM誤りは、1キュービット当たり
【数78】
であり、これは2つの効果からなる:第1に、|0>への光学的ポンピングは、状態調製誤りを構成する0.7(1)%の誤り確率を有する。第2に、ベル状態回路が実施される前または後のいずれかのバックグラウンド衝突のために原子が消失し得る小さな機会がある。回路の前の損失は、状態調製誤りとして寄与し、回路の後であるが蛍光画像読出しの前の損失は、測定誤りとして寄与する。総バックグラウンド損失寄与は、1原子当たり0.5(1)%誤りである。
【0077】
ベル状態忠実度
2つのキュービットのいずれに対しても誤りが生じない総確率はP = 97.6(2)%である。等式(47)は、集団測定およびパリティ振動測定の両方を別々に保持する。集団測定は、キュービットサブ空間内の原子の集団に対する下界のみを明確に計数する(セクション:上述の「原子消失を介した状態読出し」参照)。そのため、原子が消失する場合、測定された忠実度に対する偽寄与はない。しかしながら、測定された忠実度は、キュービットサブ空間の外側の磁性サブレベルにポンピングされた原子の間を区別しない。2つの原子の1つが正確でない磁性サブレベルにおいて調製される場合(1.4(2)%確率)、
【数79】
(1つの原子が関与しない
図3Aに示される量子回路を評価することにより計算される)の偽寄与があり得ることが推定される。そのため、測定される確率に対する下界p
00 + p
11 ≧ 95.8(3)%は、訂正される集団に対する下界:
【数80】
を設定する。
【0078】
一方、パリティ振動振幅は、原子が間違ったサブレベルで調製されるかまたは消失する場合からの偽寄与を受けないが、これは、この誤りが蓄積位相に非依存的であり、そのため位相蓄積時間の関数として振動しないためである。そのため偽寄与は
【数81】
である。この場合、(パリティ振動の振幅により与えられる)コヒーレンスCは、C = P×C
cによる訂正されたコヒーレンスに関する。C = 94.2(4)%であるので、C
c = 96.5(4)%の訂正されたコヒーレンスが得られる。次いで、総SPAM訂正ベル状態忠実度は、
【数82】
である。
【0079】
CNOT真理値表
真理値表は、それぞれのコンピューター的基底状態に対してCNOTゲートを実施することにより測定される。測定され、
図3Eに示されるように、基底状態は有限の忠実度を用いて調製される。それぞれの基底状態について、標的状態における有限の出力忠実度が有限の初期化忠実度をどのように比較するかを評価して、ゲートがどのくらい良好にこの入力状態を実施するかを決定することが望ましい。それぞれの測定設定について起こるSPAM誤りなしの確率P
ijが確立される(ここでijはコンピューター的基底状態|ij>が初期化される設定を示す)。さらに、標的状態における出力確立
【数83】
に対して下界が測定される。
【0080】
測定された忠実度に対する偽寄与をここで考察する。原子損失に関与する誤りが起こる場合、忠実度はキュービットサブ空間内の原子集団のみを測定するので、忠実度に対する偽寄与はない。代替的に、間違ったコンピューター的基底状態が調製される場合、
【数84】
は、真理値表の最大の望ましくない要素または<4%により上に束縛される。そのため、総偽寄与は、
【数85】
である。この寄与は、測定分解能未満であり、計上されない。そのため訂正された忠実度は、
【数86】
により与えられる。以下の表2に示されるように、そのため、
【数87】
の平均により与えられる平均訂正真理値表忠実度は、
【数88】
である。
【0081】
トフォリ真理値表
CNOT真理値表についての訂正トフォリ真理値表忠実度を評価するために同じ分析を実施する。以下の表2に示されるように、平均訂正真理値表忠実度は
【数89】
である。
【表2】
【0082】
トフォリゲートの限界されたトモグラフィー
トフォリゲートの真理値表は、論理基底において表されるゲートのマトリックス要素の規模の表示を提供する。しかしながら、測定された集団は、異なるエントリー間の相対的位相についての情報を保有しない。真理値表と同様の手順を実施するが、Z基底の代わりにX基底に作用するようにトフォリゲートを回転させることは、これらの位相についてのいくつかの情報を回復することを可能にする。かかる手順の限定されたバージョンは、トフォリゲートの忠実度を特徴づける方法として以前に使用されており、「限界されたトモグラフィー(limited tomography)」と称されている。該手順は、
図9に示される量子回路において、Z基底において全てのコンピューター的基底状態を初期化して、次いでトフォリゲートの前および後に全てのキュービットに対してX(±π/2)回転を適用することからなる。符号は、標的キュービットが|0>において初期化される場合にX(+π/2)、および標的キュービットが|1>において初期化される場合にX(-π/2)となるように選択される。標的キュービットの状態に対する回転の符号を条件づけることは、トフォリゲート自体の動作の前に、標的キュービットが常に同じ状態|+>
yにあることを強制する。
【0083】
全体的X(π)ゲートとして働くスピンエコーパルス(
図4Bに示される)を含む、本明細書において実行されるトフォリゲートは、ユニタリーマトリックス:
【数90】
により理想的に記載される。
【0084】
このユニタリーに対して限界されたトモグラフィー手順を実施することは、以下の出力真理値表:
【数91】
を生じるはずであり、ここでそれぞれの列は、所定の入力状態についての標的出力確率を示す。しかしながら、
【数92】
に従って任意の位相φ
jによりトフォリゲートが理想的なユニタリーからそれるようになる場合、限界されたトモグラフィー真理値表は、この位相偏向を反映する。特に、限界されたトモグラフィーが単一(unity)を生じるはずであるそれぞれの真理値表マトリックス要素は、代わりに
【数93】
のピーク確率を生じる。そのため、限界されたトモグラフィー真理値表の平均忠実度は、トフォリユニタリー上の位相がそれらの理想的な値にどのくらい近いかを反映し、それぞれの位相が正しい場合にのみ単一に達し得る。測定された限界されたトモグラフィー真理値表を
図10に示し、ここで生の標的確率は88.0(3)%に平均される。測定構成の4つは正確に他の4つの入力状態に適用される全体的X(π)ゲートであるので、これらの出力分布は、セクション「原子損失を介した状態読出し」において上に議論される手順と同様に、残りのリュードベリ集団を正確に計上するために比較され得る。そのため、限界されたトモグラフィー忠実度は、
【数94】
であるように確立される。SPAM誤りについて訂正すると、忠実度は≧86.2(6)%である。
【0085】
標的キュービットが常に|+>に初期化されるという事実から見られるように、限界されたトモグラフィープロトコルが、8つのX基底入力状態の4つを使用するのみであるということは注目に値することである。これは、8つの測定のうちの4つを終了時の全体的X(π)回転まで他の4つと同等にする。これらの2つの組の測定を比較することは、セクション「原子消失を介した状態読出し」において上記のアプローチと同様に、キュービットサブ空間からの漏れの確率に対して束縛を与える。
【0086】
連続アレイにおける並行ゲート実行
上記の態様は、原子の別々の対に対する並行の多キュービットゲートの実行を含み、ここで対の間の相互作用は無視できる。しかしながら、
図11Aおよび11Bに図示されるように、原子の連続鎖1100における並行ゲート実行までこのプロトコルを拡張し得る。例えば音響光学偏向器を使用して、原子の任意のサブセットをアドレッシングし得るさらなる局所アドレッシングレーザー系1130を考察する。具体的に、分与される光シフトが、リュードベリ状態|r>とは異なり|0>および|1>状態に等しく影響するように、このレーザーについて波長を選択し得る。かかる場合において、
図11Aに示されるように、このさらなる局所アドレッシングレーザー1130からの光シフトは、キュービット操作(manipulation)を何ら適用しないが、代わりに単純に、有効リュードベリ共鳴をδだけシフトさせる。任意の基底状態光学遷移から離れて調節される近赤外波長
【数94-2】
がルビジウムに適切である。
図11Bに示されるように、局所アドレッシングレーザーは、それに対して並行多キュービットゲートを実施することを目的とするキュービットのサブセットに焦点を当てられる。全体的リュードベリカップリングレーザー1120は、光シフト共鳴に対して調節されるので、ゲート実行1110のために、局所的にアドレッシングされた原子のみがリュードベリ状態にカップリングされる。
【0087】
かかる系を用いて、それに対して2キュービットゲートを実施することを意図する隣接する原子1131および1132の全ての対を照射し得、次いでリュードベリレーザーを光シフト共鳴に対して調整することにより、全ての対に対して並行に多キュービットゲートを実施する。唯一の束縛は、それらの間の相互作用(クロストーク)がゲート実行の特定の層において無視できるように、アドレッシングされる対1131および1132の間に十分な空間がなければならないということである。
【0088】
Nキュービットの十分にブロッケイドされた集団(ensemble)に対する多キュービットゲート
Nの十分にブロッケイドされるキュービット(N=K)の集団または集合を考察して、ここで多くとも1つのキュービットは同時にリュードベリ状態|r>に励起され得る。原子キュービットは、相互作用リュードベリ状態|r>に加えて、2つの非相互作用キュービット状態|0>および|1>を有する。ラビ周波数Ωおよび離調Δを用いて状態|1>を状態|r>にカップリングするレーザー駆動の動作下、「高められた」ラビ周波数を伴う有効な2準位系として原子集団は進展し、これは、どのくらい多くの原子が(|0>ではなく)キュービット状態|1>で開始するかということに依存する。N+1のかかる可能な構成があり、|1>で開始する原子の数(Mで示される)は0からNの範囲である。それぞれのかかる系は、高められたラビ周波数
【数95】
に従って進展する。
【0089】
本明細書に記載される全体的レーザーパルスプロトコルにより実行され得る最も一般的なNキュービットゲートは、φ
Mの位相蓄積を伴ってそれらの初期状態に戻るこれらのN+1の構成(|M>と標識され、Mについて0からN)のそれぞれを含む。より具体的に、Uがゲートの動作を記載するユニタリーである場合、それぞれの初期構成|M>は、
【数96】
に従って進展する。この表示の2つの局面を強調する:|<M|U|M>|
2 = 1は、ゲート操作の終了までに状態|M>がその初期状態(位相係数まで)に戻るという事実を示す。第2の局面は、この位相係数を特徴づける
【数97】
である。そのためにゲートは、位相
【数98】
により特徴付けられ得る。2つのさらなる注意:第1に、|M = 0>は|1>のキュービットを含まないので、この状態は、レーザー場によりアンカップリングされ、そのためわずかに(trivially)進展する:U|M = 0> = |M = 0>。したがって、φ
0=0である。第2に、2つの異なるゲートは、それらが単一キュービットゲートの動作のみにより関連する場合に「同等」であると考えられる。本明細書において考慮される特定の単一キュービットゲートはZ(θ)であり、これは、全てのキュービットに適用される単一キュービット位相ゲートとして上で定義される。このゲートは、状態|1>の各キュービットについて位相θを追加する。すなわち、状態|M>は、Z(θ)|M> = e
iMθ|M>として進展する。ゲートUが位相
【数99】
により特徴付けられる場合、このゲートは、
【数100】
に特徴付けられるゲートと同等であると考えられる。常にφ
0 = 0であり、θ = -φ
1を選択し得るので、このゲートUは、位相
【数101】
についてゲートVと同等である。したがって、任意のゲートは、φ
0 = φ
1 = 0である別のゲートと同等である。
【0090】
ゲートを設計する場合、特定の位相は:
【数102】
である。選択されるN-1のかかる位相がある。全ての構成は、それらの初期状態に戻るようにさらに特定され、Nのさらなる束縛を課す。したがって、望ましいゲート実行に対して合計で2N-1の束縛がある。
【0091】
レーザーパルスシーケンスアンザッツは、2N-1の束縛により特定される任意の標的ゲートを実行するように画定される。該シーケンスは、それぞれの離調Δでおよび持続時間τの4N-6のレーザーパルスからなり、それぞれのパルスの間のレーザー位相シフトは、相対的位相シフト
【数103】
により特定される。回文位相シフトに対称性が課されて、ξ
i = ξ
(4N-6-i)となり、ちょうど2N-3の選択される独立した位相シフトが生じる。全ての位相シフト、Δおよびτを含む、合計で2N-1の選択される自由度がある。この自由度の数は、標的ゲート操作において満足する束縛の数と適合することに注意。
【0092】
任意に、パルス持続時間τは、構成|M>の1つがそれぞれのレーザーパルス後にその初期状態に戻るように選択される。これは、
【数104】
を設定することにより達成される。実際に、τは、M=Nが最も早いゲート操作を生じるのでM=Nであるように選択される。この選択は、レーザーパルスシーケンスにおいて1の自由度を低減するが、パルスシーケンスの終了までに構成|M>がその初期状態に戻り、そのために標的ゲートにおいて1つの束縛を満足することを確実にする。ここで、満足される2N-2のさらなる自由度および2N-2のさらなる束縛がある。Mathematicaなどの数的束縛ソルバー(solver)を使用してレーザーパルスパラメーターのセットを数的に解き、それにより制御性位相ゲートの条件付位相角θに基づいてレーザー周波数、パルス持続時間および位相シフトを選択し得る。N=5まで試験される全ての標的ゲートについて解が見出されている。
【0093】
ゲート位相
【数105】
は、キュービット系に対するゲートの効果を画定する。いくつかのかかる選択は、C
N-1Z(φ)または多キュービット制御性位相ゲートとして周知である。特に、これは
【数106】
に対応する。N = 2について、これは制御性位相ゲートと称される最大もつれ2キュービットゲート(制御性NOTまたはCNOTなどの任意の他の最大もつれ2キュービットゲートと同等である)に対応する。このゲートは量子アルゴリズムにおいて頻繁に使用される。N ≧ 3について、このゲートはNキュービットトフォリゲートと同等であり、量子アルゴリズムにおいてもしばしば使用される。これらのゲートは、多くの個々の2キュービットゲートに分解され得るが、これを分解して多くの個々のゲートを別々に実行するよりも、量子ハードウェアに対してネイティブになされ得る場合はNキュービットゲートを直接実行することが有利であり得る。例えば、1つの3キュービット制御性-制御性位相(CCZ)ゲートを実行するために5つの2キュービットゲートが必要とされる。多キュービット制御性位相ゲートC
N-1Z(π)についての例示的な解を以下に提供し、全ての位相シフト値ξ
iは、ラジアンの単位で与えられる。全ての位相シフトξ
i+2πはξ
iと同等であることに注意。
【0094】
上で議論されるようにN = 2について、Δ/Ω = 0.377371、ξ
1 = 3.90242である。N = 3について、複数の解が見られ、表3に4つのサンプル解を示す。解3は、ξ
2+2πおよびξ
3+2πである上で議論されるものと同じ解であることに注意。
【表3】
【0095】
N = 4について、複数の解が見られ、表4に4つのサンプル解を示す。
【表4】
【0096】
N = 5について、複数の解が見られ、表5に2つのサンプル解を示す。
【表5】
【0097】
型C
N-1Z(π)のゲート(
【数107】
により特徴付けられる)はしばしば量子アルゴリズムの実行において目的のものであるが、上記の標的位相の柔軟な選択により可能になる別の興味深い選択肢が本明細書において考察される。特に、系における原子のそれぞれの対に対するペアワイズCZ(π)ゲートの実行を考察する。このアルゴリズムは、量子誤り訂正および量子計測学における使用が知られている高度にもつれた状態の種類であるグリーンバーガー-ホーン-ツァイリンガー(GHZ)状態と(局所キュービット操作まで)同等である十分に連結されたクラスター状態(fully connected cluster state)と称される特殊な十分にもつれた状態を生じる。GHZ状態は形態
【数108】
を有する。
【0098】
単一の対上のCZ(π)ゲートは、対における両方のキュービットが|1>で開始する基底状態に対してπ位相シフトを追加すると理解され得るので、系における全ての対に対するCZ(π)の作用は、|1>である基底状態におけるキュービットの全ての対形成に対してπ位相シフトを追加すると理解され得る。|1>で開始するMキュービットの全ての組合せの重ね合わせである基底状態|M>について、π位相シフトを受けるキュービットの正確に
【数109】
の対形成がある。そのため、状態|M>についての総位相シフトは正確に
【数110】
(モジュロ2π)である。N=3について、これは
【数111】
に対応する。N=3についてこの十分に連結されたクラスター状態調製を実行するために適切なパラメーターのセットを表6に列挙する。
【表6】
【0099】
時間依存性強度および離調プロフィールを伴う全体的パルス
記載され得た最も一般的なパルスは、総持続時間T、時間依存性強度プロフィールI(t)および時間依存性離調プロフィールΔ(t)を伴うレーザーパルスであって、それぞれは0≦t≦Tについて画定され、その結果任意に、レーザー強度、レーザー周波数、レーザー位相およびパルス持続時間の時間依存性値は、条件付位相角θに基づいて選択される。原則的にこれらのプロフィールは、時間の任意の関数であり得るが、実際の実験的限界は、関数の値に対して上界および下界を設定する。例えば、I(t)の最大値に対して実際の限界があり(どのくらい多くのレーザーパワーが利用可能であるか)、Δ(t)の範囲に対して実際の限界がある(どのくらい遠くにレーザーが円滑に離調され得るか)。実験的な限界はまた、これらの関数または同等にこれらのプロフィールの周波数スペクトルの連続性および円滑さに対して境界を設定する。(実行選択に依存性の)上述の高周波数成分のいくつかの限界は、実験的に実現することが可能ではない。
【0100】
可能な強度および離調プロフィールのこの限界された(しかしながら依然として拡大性の)空間内で、標的ゲートを実行することをどのように見出したのであろうか?1つのアプローチは、所定のレーザーパルス(I(t)およびΔ(t)により特徴付けられる)に従って原子系の挙動を数的にシミュレートして、次いで系のシミュレートされた応答に従ってレーザーパルスプロフィールを最適化し、それによりレーザー強度、レーザー周波数、パルス持続時間およびレーザー位相の時間依存性値を選択して量子ゲートの所望の忠実度を達成することである。特に、原子系についての固定された初期状態|ψ
0>から開始して、標的ゲートの理想的な出力状態であるものを同定し得る。例えば、標的ゲートはユニタリー演算子Uケ゛ートとして表され得、この場合において、標的出力状態は、|ψ標的> = Uケ゛ート|ψ
0>である。I(t)およびΔ(t)を伴うレーザーパルスにより実行される実際のゲートは、数的にシミュレートされた出力状態|ψ
sim>を生じる。シミュレートされた出力状態が標的出力状態にどのくらい近いかを特徴づける性能指数が画定され得る:忠実度
【数112】
。該忠実度は
【数113】
により束縛され、ここで理想的なゲートについて
【数114】
である。関数I(t)およびΔ(t)は、シミュレートされた忠実度を最大化するように改変され得る。
【0101】
したがって、第1の例示的な態様において、本発明はキュービットの集合に対して量子ゲートを操作する方法である。第1の例示的な態様の第1の局面において、該方法は、少なくとも第1および第2のレーザーパルスのパラメーターのセットについて値を選択する工程、ここで該パラメーターは、相対的位相シフト、レーザー周波数、レーザー強度およびパルス持続時間から選択される;ならびに少なくとも第1および第2のレーザーパルスをNキュービットの集合内の全てのキュービットに適用する工程、ここでNは2以上に等しく、それにより非相互作用量子状態|1>を相互作用励起状態|r>にカップリングし、その結果、量子状態|1>で開始する各キュービットは、少なくとも第1および第2のレーザーパルスの完了の際に状態|1>に戻り、集合中のキュービットは、相互にブロッケイド、例えば双極子ブロッケイドまたはリュードベリブロッケイドされる、を含む。
【0102】
第1の例示的な態様の第2の局面において、各キュービットは、原子キュービット、イオンキュービットまたは分子キュービットであり得る。
【0103】
第1の例示的な態様の第3の局面において、集合内の全てのキュービットは相互にブロッケイドされる。該方法の他の特徴および例示的特徴は、第1の例示的な態様の第1~第2局面に関して上記されるものである。
【0104】
第1の例示的な態様の第4の局面において、少なくとも第1および第2のパルスの持続時間は、集合内の全てのキュービットが量子状態|1>で開始する場合に、少なくとも第1および第2のレーザーパルスのそれぞれの完了の際に集合内の全てのキュービットが量子状態|1>に戻るように選択される。例えば、それぞれのパルスのレーザー周波数は、離調Δだけ|1>から|r>への間の共鳴遷移から離調され、パルス持続時間tは、
【数115】
(式中、Ωはレーザーパルスのラビ周波数である)と等しい。該方法の他の特徴および例示的特徴は、第1の例示的な態様の第1~第3の局面に関して上記されるものである。
【0105】
第1の例示的な態様の第5の局面において、レーザー強度、レーザー周波数、パルス持続時間およびレーザー位相の1つ以上は、量子ゲートの所望の忠実度を達成するように選択される。該方法の他の特徴および例示的特徴は、第1の例示的な態様の第1~第4の局面に関して上記されるものである。
【0106】
第1の例示的な態様の第6の局面において、少なくとも第1および第2のパルスはパルスの回文シーケンスを形成する。該方法の他の特徴および例示的特徴は、第1の例示的な態様の第1~第5の局面に関して上記されるものである。
【0107】
第1の例示的な態様の第7の局面において、ゲートは制御性位相ゲートCN-1Z(θ)であり、θは条件付位相角である。例えば、Nは2である。別の例において、量子ゲートは制御性位相(CZ)ゲートであり、N=2である。さらに他の例において、レーザー周波数、パルス持続時間および位相シフトは、制御性位相ゲートの条件付位相角θに基づいて選択される。なおさらなる例において、レーザー周波数は、離調Δだけ|1>から|r>への間の共鳴遷移から離調され、レーザー強度は、レーザーパルスのラビ周波数がΩであるように選択される。例えば、レーザー周波数、レーザー強度、パルス持続時間および位相シフトは、条件付位相角θ=πであるように選択される。該方法の他の特徴および例示的特徴は、第1の例示的な態様の第1~第6の局面に関し上記されるものである。
【0108】
第1の例示的な態様の第8の局面において、Nは3である。第8の局面において、量子ゲートは、条件付位相角θを有する制御性-制御性位相(C2Z(θ))ゲートであり得る。例えば、少なくとも第1および第2のレーザーパルスのそれぞれのレーザー周波数、パルス持続時間および位相シフトは、条件付位相角θに基づいて選択される。該方法の他の特徴および例示的特徴は、第1の例示的な態様の第1~第7の局面に関して上記されるものである。
【0109】
第1の例示的な態様の第9の局面において、Nは3であり、該方法は、6パルスのシーケンスを適用することを含む。6パルスのシーケンスは回文であり得る。該方法の他の特徴および例示的特徴は、第1の例示的な態様の第1~第8の局面に関して上記されるものである。
【0110】
第1の例示的な態様の第10の局面において、該方法は、4N-6パルスのシーケンスを適用することを含む。例えば、パルスのシーケンスは回文であり得る。該方法の他の特徴および例示的特徴は、第1の例示的な態様の第1~第9の局面に関して上記されるものである。
【0111】
第2の例示的な態様において、本発明は、キュービットの集合に対して量子ゲートを操作する方法である。第2の例示的な態様の第1の局面において、該方法は:レーザーパルスのパラメーターのセットについて時間依存性値を選択する工程、ここでパラメーターは、レーザー位相、レーザー周波数、レーザー強度およびパルス持続時間から選択される;ならびにレーザーパルスをNキュービットの集合内の全てのキュービットに適用する工程、ここでNは3以上に等しく、それにより非相互作用量子状態|1>を相互作用励起状態|r>にカップリングし、その結果、量子状態|1>で開始する各キュービットは、レーザーパルスの完了の際に状態|1>に戻り、集合中のキュービットは、相互にブロッケイド、例えば双極子ブロッケイドまたはリュードベリブロッケイドされる、を含む。
【0112】
第2の例示的な態様の第2の局面において、各キュービットは、原子キュービット、イオンキュービットまたは分子キュービットであり得る。
【0113】
第2の例示的な態様の第3の局面において、集合内の全てのキュービットは相互にブロッケイドされる。該方法の他の特徴および例示的特徴は、第2の例示的な態様の第1~第2の局面に関して上記されるものである。
【0114】
第2の例示的な態様の第4の局面において、レーザー強度、レーザー周波数、パルス持続時間およびレーザー位相の時間依存性値は、量子ゲートの所望の忠実度を達成するように選択される。該方法の他の特徴および例示的特徴は、第2の例示的な態様の第1~第3の局面に関して上記されるものである。
【0115】
第2の例示的な態様の第5の局面において、ゲートは制御性位相ゲートCN-1Z(θ)であり、ここでθは条件付位相角である。該方法の他の特徴および例示的特徴は、第2の例示的な態様の第1~第4の局面に関して上記されるものである。
【0116】
第2の例示的な態様の第6の局面において、Nは3である。該方法の他の特徴および例示的特徴は、第2の例示的な態様の第1~第5の局面に関して上記されるものである。
【0117】
第2の例示的な態様の第7の局面において、Nは3であり、量子ゲートは、条件付位相角θを有する制御性-制御性位相(C2Z(θ))ゲートである。例えば、レーザー強度、レーザー周波数、レーザー位相およびパルス持続時間の時間依存性値は、条件付位相角θに基づいて選択される。別の例において、条件付位相角θ=πである。該方法の他の特徴および例示的特徴は、第2の例示的な態様の第1~第6の局面に関して上記されるものである。
【0118】
第3の例示的な態様において、本発明はデバイスである。第3の例示的な態様の一局面において、該デバイスは:Nキュービットの集合、ここでNは2以上に等しい;ならびに少なくとも第1および第2のレーザーパルスのパラメーターのセットについて選択された値が与えられた場合、ここで該パラメーターは、相対的位相シフト、レーザー周波数、レーザー強度およびパルス持続時間から選択されるが:少なくとも第1および第2のレーザーパルスをNキュービットの集合内の全てのキュービットに適用し、それにより非相互作用量子状態|1>を相互作用励起状態|r>にカップリングし、その結果、量子状態|1>で開始する各キュービットは、少なくとも第1および第2のレーザーパルスの完了の際に状態|1>に戻り、集合中のキュービットは、相互にブロッケイドされるように構成されるコヒーレント光源を含む。
【0119】
第3の例示的な態様の他の特徴および例示的な特徴は、第1の例示的な態様の種々の局面に関して上記されるものである。
【0120】
第4の例示的な態様において、本発明はデバイスである。第4の例示的な態様の一局面において、該デバイスは:Nキュービットの集合、ここでNは3以上に等しい;ならびにレーザーパルスのパラメーターのセットについて選択された時間依存性値が与えられた場合、ここで該パラメーターは、レーザー位相、レーザー周波数、レーザー強度およびパルス持続時間から選択されるが:レーザーパルスをNキュービットの集合内の全てのキュービットに適用し、それにより非相互作用量子状態|1>を相互作用励起状態|r>にカップリングし、その結果、量子状態|1>で開始する各キュービットは、レーザーパルスの完了の際に状態|1>に戻り、集合中のキュービットは、相互にブロッケイドされるように構成されるコヒーレント光源を含む。
【0121】
第4の例示的な態様の他の特徴および例示的な特徴は、第2の例示的な態様の種々の局面に関して上記されるものである。
【0122】
いくつかの例示的な態様はこのように記載されるが、種々の変形、改変および向上は、当業者に容易であることが理解される。かかる変形、改変および向上は、本開示の一部を形成することが意図され、本開示の精神および範囲内にあることが意図される。本明細書に示されるいくつかの例は、機能または構造的要素の特定の組合せを含むが、これらの機能および要素は、同じまたは異なる目的を達成するために、本開示による他の方法において組み合され得ることが理解されるべきである。特に、一態様に関して議論される行為、要素および特徴は、他の態様における同様または他の役割から排除されることは意図されない。さらに、本明細書に記載される要素および構成要素はさらに、さらなる構成要素に分割されるかまたは一緒に合わされて、同じ機能を行うためのより少ない構成要素を形成し得る。従って、前述の記載および添付の図面は、例示のみのためであり、限定を意図しない。
【国際調査報告】