(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(54)【発明の名称】多相生体材料に微生物を装填(lording)する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/00 20060101AFI20220908BHJP
C12N 11/02 20060101ALI20220908BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20220908BHJP
A61K 35/741 20150101ALI20220908BHJP
A61K 36/06 20060101ALI20220908BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20220908BHJP
A61K 35/742 20150101ALI20220908BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20220908BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220908BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20220908BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220908BHJP
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A61K 8/99 20170101ALI20220908BHJP
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A61K 47/10 20060101ALI20220908BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20220908BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20220908BHJP
A61K 31/202 20060101ALI20220908BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220908BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220908BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220908BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20220908BHJP
A61K 31/7004 20060101ALI20220908BHJP
A61P 15/02 20060101ALI20220908BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20220908BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220908BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20220908BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
C12N1/00 P
C12N11/02
C12N1/20 A
C12N1/20 C
A61K35/741
A61K36/06 Z
A61K35/747
A61K35/742
A61K35/744
A61K47/38
A61K9/70
A61K8/73
A61K8/60
A61K8/99
A61K47/26
A61K47/10
A61K31/198
A61K31/19
A61K31/202
A61P43/00 121
A61P17/00
A61P27/02
A61K31/352
A61K31/7004
A61P15/02
A61P17/10
A61Q19/00
A61Q11/00
A61K8/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500666
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(85)【翻訳文提出日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2020069536
(87)【国際公開番号】W WO2021009038
(87)【国際公開日】2021-01-21
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハイケ トム ディーク
(72)【発明者】
【氏名】バッサム アル メッスルマニ
(72)【発明者】
【氏名】ダグマー フィッシャー
【テーマコード(参考)】
4B033
4B065
4C076
4C083
4C086
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4B033NA12
4B033NB45
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(57)【要約】
本発明は、
‐微生物またはその一部を、ナノセルロースからなる事前合成多相生体材料上および/または前記多相生体材料内に装填する方法であり、前記微生物を緩衝液または培地に再懸濁した上で、前記多相生体材料上および/または前記多相生体材料上内に装填する工程を含む方法と、
‐栄養、食品、製薬、医療、化粧品、特に口腔、粘膜、皮膚および経皮、眼、皮膚化学、または女性の健康に関する用途における、そのような装填済みの多相生体材料の使用と、
に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物またはその一部を、事前合成されたバクテリア合成ナノセルロース(BNC)不織布生体材料上および/または前記生体材料内に装填する方法であり、
‐BNC不織布生体材料を合成し、
‐前記不織布BNCを、浸透圧的および/または吸湿的に有効な溶液とともに培養し、
‐前記微生物を前記BNC材料内および/または前記BNC材料上に装填し、
‐装填済みの前記BNC不織布生体材料を少なくとも24時間凍結乾燥して、残留水分量を20%以下にする工程
を含む方法。
【請求項2】
下記:
a)300rpm以上、好ましくは500rpm~3.500rpmで1~60分間、好ましくは5~10分間、37℃以下、好ましくは10~37℃の温度で前記多相生体材料と前記微生物を混合する方法、
b)前記微生物を前記多相生体材料に注入し、37℃以下、好ましくは4~37℃の温度で最大72時間、好ましくは最大1時間培養する方法、
c)37℃以下の温度で60分以内、好ましくは10分以内に、再懸濁された前記微生物を含む緩衝液または培地で前記多相生体材料を培養する方法、または
d)37℃以下の温度で60分以内、好ましくは10分以内に、前記微生物を噴霧する方法
のいずれかによって、前記微生物を前記BNC材料内および/または前記BNC材料上に装填する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
以下の工程:
‐前記微生物を装填する前に、前記BNC不織布生体材料を滅菌する工程、
‐装填前に、前記微生物を緩衝液または培地に再懸濁する工程、
‐装填済みの前記BNC不織布生体材料を2つの箔、好ましくは凍結乾燥用のポリエチレンテレフタレート(PET)、アルミニウム(Al)、およびポリエチレン(PE)の1つまたは複数からなる箔の間に配置する工程、
‐装填した後凍結乾燥した前記BNC不織布生体材料を、複合箔、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)、アルミニウム(Al)、およびポリエチレン(PE)の1つまたは複数からなる複合箔で包み、当該複合箔を密封する工程
の1つまたは複数をさらに含む、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記微生物を、細胞として、または休眠状態で、好ましくは細菌胞子または細胞抽出物として装填する、請求項1~請求項3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記微生物は湿性あるいは乾性であり、および/または事前培養されているか、あるいは事前培養されていない、請求項1~請求項4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記多相生体材料は、湿っているか、乾燥しているか、部分的に乾燥しているか、または前記緩衝液中で再膨潤する、請求項1~請求項5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
前記ナノセルロースは、植物、藻類、または微生物、好ましくはコマガタエイバクター(Komagataeibacter)、より好ましくはコマガタエイバクター・キシリナス(Komagataeibacter xylinus)に由来する、請求項1~請求項6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記BNC不織布生体材料の平均厚さが、少なくとも0.5mm、好ましくは1mm~5mm、より好ましくは2mm~3mmである、請求項1~請求項7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記浸透圧的および/または吸湿的に有効な溶液が、
‐単一の糖類、
‐塩、
‐糖類含有または糖類様物質、
‐ポリエチレンオキシド、
‐これらの水分結合物質群のうちのさまざまな代表物の組み合わせ、および/または
‐これらの水分結合物質群のうちの1つおよび/または複数の代表物と、1つまたは複数の界面活性剤および/または1つまたは複数の防腐剤と、の組み合わせ
を含む請求項1~請求項8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記微生物が、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、カルノバクテリウム属(Carnobacterium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、キューティバクテリウム属(Cutibacterium)、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、マイクロバクテリウム属(Microbacterium)、オエノコッカス属(Oenococcus)、パスツリア属(Pasteuria)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、バシラス属(Bacillus)、ゲオバシラス属(Geobacillus)、グルコノバクター属(Gluconobacter)、キサントモナス属(Xanthonomas)、カンジダ属(Candida)、デバリオミセス属(Debaryomyces)、ハンセニアスポラ属(Hanseniaspora)、クリュイベロミセス属(Kluyveromyces)、コマガタエラ属(Komagataella)、リンデネラ属(Lindnera)、オガタエア属(Ogataea)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ウィッカーハモマイセス属(Wickerhamomyces)、キサントフィロミセス属(Xanthophyllomyces)およびヤロウイア属(Yarrowia)、マイクロコッカス属(Micrococcus)、好ましくはキューティバクテリウム・アクネス(Cutibacterium acnes)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ラクトバシラス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバシラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバシラス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバシラス・デルブルエッキイー(Lactobacillus delbruckii)、ラクトバシラス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバシラス・パラカセイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバシラス・フェルメンタム(Lactobacillus fermentum)、表皮ブドウ球菌(Staph. epidermidis)、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、マイクロコッカス・ライレ(Micrococcus lylae)、マイクロコッカス・アンタルクティクス(Micrococcus antarcticus)、マイクロコッカス・エンドフィティクス(Micrococcus endophyticus)、マイクロコッカス・フラバス(Micrococcus flavus)、マイクロコッカス・テレウス(Micrococcus terreus)、マイクロコッカス・ユンナネンシス(Micrococcus yunnanensis)、アルスロバクター・アジリス(Arthrobacter agilis)、ネステレンコニア・ハロビア(Nesterenkonia halobia)、コクリア・クリスティナエ(Kocuria kristinae)、コクリア・ロゼア(Kocuria rosea)、コクリア・バリアンス(Kocuria varians)、キトコッカス・セデンタリウス(Kytococcus sedentarius)、デルマコッカス・ニシノミヤエンシス(Dermacoccus nishinomiyaensis)、またはそれらの混合体から選択されるプロバイオティック細菌株または酵母菌株である、請求項1~請求項9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記プロバイオティック微生物が、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)、ラクトバシラス・フェルメンタム(L. fermentum)、DSM32609株ラクトバシラス・ラムノーサス(DSM32609 L. rhamnosus)、DSM32758株ラクトバシラス・プランタルム(DSM32758 L. plantarum)、DSM32749株ラクトバシラス・デルブルエッキイー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(DSM32749 L. delbrueckii susp. bulgaricus)、DSM33370株ラクトバシラス・プランタルムLN5(DSM33370 L. plantarum LN5)、DSM33377株ラクトバシラス・ブレビスLN32(DSM 33377 L. brevis LN32)、DSM33368株ラクトバシラス・プランタルムS3(DSM 33368 L. plantarum S3)、DSM33369株ラクトバシラス・プランタルムS11(DSM 33369 L. plantarum S11)、DSM33376株ラクトバシラス・パラカセイS20(DSM 33376 L. paracasei S20)、DSM33375株ラクトバシラス・パラカセイS23(DSM 33375 L. paracasei S23)、DSM33374株ラクトバシラス・ロイテリF12(DSM 33374 L. reuteri F12)、DSM33367株ラクトバシラス・プランタルムF8(DSM 33367 L. plantarum F8)、DSM33366株ラクトバシラス・プランタルムS4(DSM 33366 L. plantarum S4)、DSM33364株ラクトバシラス・プランタルムS28(DSM 33364 L. plantarum S28)、DSM33363株ラクトバシラス・プランタルムS27(DSM 33363 L. plantarum S27)、DSM33373株ラクトバシラス・パラカセイS18a(DSM 33373 L. paracasei S18a)、DSM33365株ラクトバシラス・プランタルムS18b(DSM 33365 L. plantarum S18b)、DSM33362株ラクトバシラス・プランタルムS13(DSM 33362 L. plantarum S13)、DSM32767株ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス(DSM 32767 Lactococcus lactis sups. lactis)、ラクトバシラス・フェルメンタムDSM32750株(L. fermentum DSM 32750)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、キューティバクテリウム・アクネス(Cutibacterium acnes)から選択される、請求項1~請求項10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
追加工程が、前記微生物を前記多相生体材料に装填する前、後、または並行して実施され、前記多相生体材料には、アミノ酸、脂肪酸塩、アントシアニン、単糖類、および抽出物、好ましくはDHAおよびEPAのリジン塩、ラムノース、トリプトファンから選択されるさらなる成分および/または栄養素が装填されている、請求項1~請求項11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
請求項1~請求項12のいずれか1項記載の方法により得られる少なくとも1つの生きた微生物を含む少なくとも2つの異なるバクテリアセルロースネットワークからなるBNC不織布生体材料。
【請求項14】
少なくとも1個の前記生きた微生物を、セルロース1グラムあたり少なくとも3.00×10
7の細胞濃度で含む、請求項13記載のBNC不織布生体材料。
【請求項15】
以下:
‐BNC不織布生体材料、
‐少なくとも1つの塩と、少なくとも1つの糖類と、を含む栄養溶液、
‐バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、枯草菌(Bacillus subtilis)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、キューティバクテリウム・アクネス(Cutibacterium acnes)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermis)の1つまたは複数の微生物
を含む化粧品。
【請求項16】
さらに、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アルミニウム(Al)、およびポリエチレン(PE)の1つまたは複数からなる包装箔を少なくとも1つ含む、請求項15記載の化粧品。
【請求項17】
さらに、アミノ酸、脂肪酸塩、アントシアニン、単糖類、および抽出物、好ましくはDHAおよびEPAのリジン塩、ラムノース、トリプトファンから選択される別の成分および/または栄養素を含む、請求項15または請求項16記載の化粧品。
【請求項18】
B.メガテリウムと、DHAおよびEPAのリジン塩と、を含む、請求項17記載の化粧品。
【請求項19】
以下:
‐BNC不織布生体材料、
‐少なくとも1つの塩と、少なくとも1つの糖類と、を含む栄養溶液、
‐DSM33370株L.プランタルムLN5(DSM 33370 L. plantarum LN5)、DSM33377株L.ブレビスLN32(DSM 33377 L. brevis LN32)、DSM33368株L.プランタルムS3(DSM 33368 L. plantarum S3)、DSM33369株L.プランタルムS11(DSM 33369 L. plantarum S11)、DSM33376株L.パラカセイS20(DSM 33376 L. paracasei S20)、DSM33375株L.パラカセイS23(DSM 33375 L. paracasei S23)、DSM33374株L.ロイテリF12(DSM 33374 L. reuteri F12)、DSM33367株L.プランタルムF8(DSM 33367 L. plantarum F8)、DSM33366株L.プランタルムS4(DSM 33366 L. plantarum S4)、DSM33364株L.プランタルムS28(DSM 33364 L. plantarum S28)、DSM33363株L.プランタルムS27(DSM 33363 L. plantarum S27)、DSM33373株L.パラカセイS18a(DSM 33373 L. paracasei S18a)、DSM33365株L.プランタルムS18b(DSM 33365 L. plantarum S18b)、DSM33362株L.プランタルムS13(DSM 33362 L. plantarum S13)、DSM32767株ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス(DSM 32767 Lactococcus lactis sups. lactis)、L. フェルメンタムDSM32750株(L. fermentum DSM 32750)の1つまたは複数の微生物
を含む女性用衛生製品。
【請求項20】
さらに、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アルミニウム(Al)、およびポリエチレン(PE)の1つまたは複数からなる包装箔を少なくとも1つ含む、請求項19記載の女性用衛生製品。
【請求項21】
タンポン、パンティライナー、および生理用ナプキンから選択される、請求項19または請求項20記載の女性用衛生製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
‐微生物またはその一部を、ナノセルロースからなる事前合成多相生体材料上および/または前記多相生体材料内に装填する方法であり、前記微生物を緩衝液または培地に再懸濁した上で、前記多相生体材料上および/または前記多相生体材料内に装填する工程を含む方法と、
‐製薬、医療、化粧品、特に口腔、粘膜、皮膚および経皮、眼、皮膚化学、または女性の健康に関する用途における、そのような装填済みの多相生体材料の使用と、
に関する。
【背景技術】
【0002】
プロバイオティクスとは生きた微生物であり、適切な量で投与されると宿主に健康上の利益をもたらす(非特許文献1)。最も一般的に研究され、且つ市販されているプロバイオティクスは、主にラクトバシラス属(Lactobacillus)とビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)の微生物である。さらに、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、バシラス属(Bacillus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、大腸菌(Escherichia coli)、および酵母菌などの他の微生物も使用されている。プロバイオティクス/シンバイオティクス含有製剤(例:サプリメント/化粧品/生物医学的ケア製品)は、「基本的な栄養機能の域を超えて、生理学的利益をもたらし、且つ/あるいは慢性疾患のリスクを軽減するように設計された」系である。
【0003】
化粧品/局所製品には、不要なバクテリアの繁殖を防ぎ、製品の安定性を高めるために防腐剤が含まれていることが多い。その結果、必要な生きた微生物(例:プロバイオティクス/シンバイオティクス)を含む化粧品/局所製品は、安定性に関する課題に直面している。したがって、「プロバイオティクス」であると主張している多くの化粧品/局所製品は、メチニコフによる「プロバイオティクス」の定義(すなわち、適切な量で投与された場合に、宿主に健康上の利益を与える生きた微生物)に準じる生きたバクテリアを含んでいないが、死んだ微生物、その一部、またはその代謝物を含んでいる。
【0004】
いわゆるプレバイオティクスは、選択的に発酵させた成分として定義されており、腸内細菌の組成および/または活性に特定の変化をもたらし、宿主に健康上の利益をもたらす。プレバイオティクスはしばしば、胃腸管通過時に捕捉マトリックスとして機能し、さらに腸内で微生物を放出し、そして発酵性基質として機能する(非特許文献2)。ほとんどのプレバイオティクスは、植物由来の複雑な炭水化物である。プロバイオティクスの生存および代謝活動をサポートするために、プレバイオティクスとプロバイオティクスを組み合わせることができ、その結果物は、シンバイオティクス群に属する。シンバイオティクスとは、プロバイオティクスとプレバイオティクスを相乗効果を生み出す形で、つまり共生的に組み合わせた食品成分または栄養補助食品を指す(非特許文献3)。本発明によれば、用語「シンバイオティクス」には、プロバイオティクスと、添加微生物による選択的成分代謝により健康上の利益を有する代謝産物を生成する成分(「プレバイオティクス」)と、の相乗的組み合わせも含まれる。
【0005】
この点に関し、プロバイオティックバクテリアは、健康とウェルビーイングをサポートできることが示唆されている栄養補助食品、機能性食品、および局所適用のための有効成分として生じる。これらは(ほとんどの場合)生きた微生物であり、天然の微生物叢(microbiota)を補充したり、(生存競争によって病原体を減らしたり、さまざまな場所(例:腸、皮膚、口腔、膣管)で活性代謝産物を生成したりすることによって)調節的特性を示したりすることで、宿主に健康上の有益な効果を与えると言われている。しかしながら、適用時のプロバイオティックバクテリアは、条件(例:酸性度の高い胃、胆汁酸、または局所的環境要因)によって不活化されることが非常に多く、したがって、プロバイオティックバクテリアの有効性は、作用箇所に到達できる生細胞の数に大きく左右される。したがって、食品用途だけでなく、特に局所適用の基本的観点から、活性物質を捕捉し、保護し、運搬し、且つ適切に届けることができる、化粧品、生物医学、または食品用途用の素早い運搬系の開発が重要である。
【0006】
プロバイオティクス/シンバイオティクスは、哺乳類/人間の多くの箇所(例:胃腸管、皮膚、粘膜)において健康を促進する有益な効果でよく知られている。1つの課題は、有益なプロバイオティクス/シンバイオティクスをそれらの作用箇所に、効果を発揮するために必要な量で、活性状態で、必要な時間にわたって提供することである。後者の態様は、皮膚および粘膜(例:膣または口腔の内外の粘膜)への局所適用にとって特に重要である。多くの場合、十分有益に且つ的を絞って作用させるのみならず、プロバイオティクス/シンバイオティクスを使用するまでの保存期間中も生存させるためには、別の補助因子と、栄養素または出発物質と、環境要件(湿度など)と、が必要である。さらに、特定成分/原材料と組み合わせると、当該適用に関してシンバイオティック効果をもたらす可能性がある。これは、局所適用のためのプロバイオティクス/シンバイオティクス製剤に対し、さらなる課題を与えている。局所適用用クリーム剤の形の製剤では、生物活性物質(bioactives)は一時的にしか利用できず、生存性も限定されていることが多い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】FAO-WHO; Probiotics in food. Health and nutritional properties and guidelines for evaluation; FAO Food and Nutritional Paper 85、2006年
【非特許文献2】コーら、Food Microbiol、2013年10月;36(1):7~13頁
【非特許文献3】パーンデーら、J Food Sci Technol、2015年12月;52(12):7577~87頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、解決すべき課題は、プロバイオティック微生物のシンプルかつ高速な装填技術と、結果として得られる生成物と、を提供することであり、当該生成物は下記の能力を有するものである。
‐(しばしば繊細な)プロバイオティクス/生物活性物質を保護すること、
‐適切な箇所(例:局所、胃腸、膣)において、有益な効果を得るのに十分な数に達すること、
‐生物活性物質が作用箇所に配され、細胞または活性物質/代謝産物の持続的な放出を行うように、生物活性物質を捕捉/装填すること(長期作用)、
‐他の成分と組み合わせた場合に、プロバイオティクスによるその場(in-situ)での有効成分の生成を可能にし、シンバイオティクスをもたらすこと、
‐プロバイオティクス/シンバイオティクスを適用時に至るまで保管中ずっと生存可能な状態に保つこと、
‐環境液(例:タンポン、経口適用)を吸収すること、
‐予想される悪臭のマスキングを提供すること、
‐最終消費者に簡単に利用されること、および
‐使用後、生物学的に分解可能であること。
【0009】
生物医学用途用の運搬系は、捕捉された生物学的製剤の態様、ならびにユーザーに関する態様に取り組む必要がある。最善の状態では、当該運搬系は、毒性が低く、水/液体吸収能力が高いバクテリアナノセルロースなどであり、それ自体がサポート効果を発揮する。本発明は、解決策として、局所適用のためにプロバイオティクスおよび/または別の生物活性成分を保護するバクテリア/微生物(ナノ)セルロースの製剤につながる方法を提供する。
【0010】
ナノセルロースは、ナノ構造のセルロースを指す用語である。これは、セルロースナノクリスタル(CNCまたはNCC)、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)とも呼ばれるセルロースナノファイバ(CNF)、またはバクテリアによって生成されるナノ構造セルロースを指すバクテリアナノセルロース(BNC)のいずれかである。BNCは、セルロース生成において最高効率を発揮する最良のバクテリア種の1つであるコマガタエイバクター・キシリナス(Komagataeibacter xylinus)などの菌株によって生成されるナノフィブリル重合体である。BNCは、以下のような独自の特性を備えた生体材料である:化学的純度、優れた機械的強度、高いフレキシビリティー、高い吸収性、並外れた成形性と柔軟性によるあらゆる形状およびサイズへの成形可能性など。さらに、当該材料は、ベジタリアンかつヴィーガンであり、水分含有量が高い。
【0011】
BNC生成は、その環境に優しい特性のためにますます人気が高まっている。 多くの種類のBNCが、生体組織再生、薬物運搬系、人工血管、ならびにイン・ビトロ(in vitro)および生体内(in-vivo)での生体組織工学の足場など、さまざまな用途向けに開発されてきた(ジザジャら、Biomacromolecules 2007年1月;8(1):1-12頁;デ・アゼレード、Trends Food Sci Technol 2013年30:56~69頁;アルメイダら、Eur J Pharm Biopharm 2014年86:332~336頁;オリヴェイラ バルドら、Carbohydr Polym 2015年128:41~51頁; マルティネス サンスら、J Appl Polym Sci 2016年133)。用途目的に応じて、BNCは、その生体適合性、生体機能性、無毒性、および殺菌し易さにより、生体材料に対し、向上した機械的品質を提供することができる(クレンメら、Angew Chem Int Ed Engl 2011年50:5438~5466頁)。
【0012】
微生物セルロースを用いてプロバイオティクスを運搬するさまざまな製剤があり、追加重合体の使用方法、固定化/捕捉方法、結果として生じるプロバイオティック装填、生存率、バクテリア細胞の有効性/種類、および一般的な利点(例:取り扱い性、人間の腸への忍容性)はさまざまであるが、局所適用には使用できない。プロバイオティックバクテリアの生存期間は、製剤に組み込まれている間だけでなく、特定の制限期間内でなければならない。既知の系は、プロバイオティックバクテリアを保護する点だけでなく、剤形および適用開始時の生存率の点でも相違する。実際の装填技術は、微生物セルロース生成時の時間のかかる吸着または微生物細胞の捕捉によって主に実行されている。長期の培養には、微生物が培養中にさらに増殖してしまい、最終的な装填濃度を正確に決定できないという欠点がある。
【0013】
人工の胃液および胆汁塩溶液中のさまざまな形態のBNCに固定化されたプロバイオティック乳酸菌の生存率が分析されており、微生物の固定化は、合成BNC表面へのバクテリア細胞の吸着と、セルロース合成グルコンアセトバクター・キシリナス(G. xylinus)によるプロバイオティックバクテリアの同時培養と、によって行われた(ジヴィッカら、Food Science and Technology 68、2016年 322~328頁)。
【0014】
プロバイオティック乳酸菌の凍結プロセスでの抗凍結剤およびキャリア補助剤としてのバクテリアセルロース(Nata)の比較評価が、とある研究に記載されている。当該研究では、プロバイオティック乳酸菌に対する抗凍結性およびキャリア補助能力に関して、アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)によって生成されたバクテリアセルロースが、他の確立された抗凍結剤(例:10%スキムミルク、アルギン酸カルシウムのカプセル化、0.85%生理食塩水、蒸留水)と比較された。個々の乳酸菌は、ナタキューブ(nata cubes)、または粉末バクテリアセルロース(PBC)、10%スキムミルク、生理食塩水、または蒸留水のいずれかと混合され、次いで凍結乾燥されたバクテリア懸濁液の存在下で、MRSブロスで培養されており、その結果、すべての乳酸菌において、コロニー形成単位が元の細胞懸濁液と比較して3.0ログサイクル減少した(バワら、Food Science and Technology 43、2010年 1197~1203頁)。
【0015】
ポーランド特許公開公報第415670号は、バクテリアセルロース上および/またはバクテリアセルロース内に微生物を固定化する方法であり、ウェットバクテリアセルロースまたはドライバクテリアセルロースをラクトバシラス属菌(Lactobacillus spp.)の懸濁液にマクファーランド標準濁度1°で投入し、当該懸濁液中で、180rpmで振とうしながら室温25℃で24時間培養することを特徴とする方法を開示している。ラクトバシラス属菌を固定化するために、定常条件下または180rpmの振とう下でそれぞれ6日間培養した結果として得られた膜またはビーズ形態のバクテリアセルロースが使用されてよい。ポーランド特許公開公報第415670号記載の固定化方法では、ウェットセルロース1グラムあたり約400×105細胞のプロバイオティックバクテリアを固定化し、ウェットセルロースに固定化されたバクテリアの生存率が人工胃酸の存在下では50%を超え、人工胆汁塩の存在下では90%を超えること、ならびにドライセルロース1グラムあたり約30×105細胞のプロバイオティックバクテリアを固定化し、ドライセルロースに固定化されたバクテリアの生存率が人工胃酸の存在下では50%を超え、人工胆汁塩の存在下では90%を超えることができる。ただし、ポーランド特許公開公報第415670号記載の方法では、固定化されたバクテリアは長時間事前培養される必要があり、バクテリアセルロース材料は、バクテリア懸濁液中で24時間培養される必要があり、手短に言って時間のかかるやり方である。
【0016】
中国特許公開公報第109528691A1号には、セルロースナノファイバ(CNF)とプロバイオティクスを含むマイクロカプセルの製造が記載されている。ラクトバシラス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)を、ナノファイバを含む溶液と混合することによってナノ粒子を調製する。この文献では、装填プロセス中に運搬系(CNF)を形成する(形成と装填を1つの工程で行う)マイクロカプセル化技術が報告されている。したがって、調製されたCNFは、液体中でプロバイオティクスとブレンドされ、架橋剤であるCaCl2溶液に滴下され、プロバイオティクス-セルロースナノファイバコアを形成する。次に、レイヤー・バイ・レイヤー(layer-by-layer)法を適用して、生成されたコアをアルギン酸塩とキトサンでコーティングした。
【0017】
既知の技術の不利点は、装填手順の長たらしさ(主に吸着時間または共培養時間の長さ)であり、これは、プロバイオティクスの望ましくないかつ無制御な複製にもつながる可能性がある。これらの長々しい培養時間はさらに、別の成分を無制御に減少させ、BNCネットワークにおけるプロバイオティクスの不均一な分布をもたらす。従来技術から知られている技術は、固定化された微生物の種類によっては高速かつフレキシブルではない。
【0018】
従来技術に照らした本発明の利点は、提案の方法が、高速で、シンプルで、フレキシブルで/適応性があり、かつ費用効果の高い、バクテリアセルロース材料への装填方法である点である。当該装填技術は、非常に高速で制御可能である。それは、天然で生体適合性のある準不活性キャリアを使用して、持続可能な資源節約方法を提供する。結果として得られるフリース構造は、高抵抗性だけでなく三次元構造さえも有しており、持続的な放出性および/またはその場(in-situ)での活性成分の生成をもたらすことにより、プロバイオティクスの有効性の短さを改善する。本発明によれば、非常に平らで均一なもしくは透明な構造、あるいは特別に成形された形も可能となる。
【0019】
さらに、皮膚へ適用される時まで(特に皮膚に留まっている間)、プロバイオティクス/シンバイオティクスが保存中ずっと生存可能に保たれるので、本発明は、(経口による)局所または腸への適用に非常に適している。本発明に係る製品は、(例えば、タンポン、パントリースリップ、または経口適用のための、)(環境)流体を吸収する高い液体吸収能力を提供する。半乾燥系も本発明に適している。さらに、予想される悪臭は、本発明に係る製品でマスクすることができる。
【0020】
本発明は、生きた微生物を含む化粧品/局所製品の製造方法を提供し、女性の健康(タンポンまたはパンティライナーなどの衛生用品)、口腔または皮膚の健康(プロバイオティック/シンバイオティックマスク、パッチなど)などの健康用途分野用の天然かつ持続可能な美容または局所プロバイオティック/シンバイオティック製品をもたらす。
【0021】
より具体的には、本発明は、バクテリアを装填するキャリアの成分であるBNCを使用してバクテリアを装填する方法に関するものであり、装填されたバクテリアは、局所適用(例:抗炎症、鎮静、抗しわ/抗老化、病原菌の阻害または調節、酸性化、抗赤み、またはその他の外見改善効果)において有益な効果を提供する。これにより、防腐剤を添加することなく、貴重な/著しい貯蔵寿命を備えた製品を提供することができる。
【0022】
したがって、本発明は、微生物またはその一部を、事前合成されたバクテリア合成ナノセルロース(BNC)不織布生体材料上および/または前記生体材料内に装填する方法であり、
‐BNC不織布生体材料を合成し、
‐前記不織布BNCを、浸透圧的および/または吸湿的に有効な溶液とともに培養し、
‐前記微生物を前記BNC材料内および/または前記BNC材料上に装填し、
‐装填済みの前記BNC不織布生体材料を少なくとも24時間凍結乾燥して、残留水分量を20%以下にする工程
を含む方法に関する。
【0023】
本発明の好ましい構成では、
a)300rpm以上、好ましくは500rpm~3.500rpmで1~60分間、好ましくは5~10分間、37℃以下、好ましくは10~37℃の温度で前記多相生体材料と前記微生物を混合する方法、
b)前記微生物を前記多相生体材料に注入し、37℃以下、好ましくは4~37℃の温度で最大72時間、好ましくは最大1時間培養する方法、
c)37℃以下の温度で60分以下、好ましくは10分以下、再懸濁された前記微生物を含む緩衝液または培地で前記多相生体材料を培養する方法、
d)37℃以下の温度で60分以下、好ましくは10分以下、前記微生物を噴霧する方法
のいずれかによって、前記微生物を前記BNC材料内および/または前記BNC材料上に装填する。
【0024】
工程a)の培養時間は、1~60分、好ましくは5~10分である。工程a)の方法は、本発明では「高速法」とも呼ばれ、ボルテックスを使用して行われる。好ましい構成では、BNC不織布を、室温で10分間、渦強さ10.5(約3300rpm)でバクテリア懸濁液とともにボルテックスする(Vortex Genie 2)。次いで、装填懸濁液を除去し、BNC不織布をボルテックス下で10秒間洗浄する。
【0025】
工程b)では、培養時間は最大72時間まで、好ましくは最大1時間までである。一般に、工程b)による注入方法では、微生物を装填するために長い培養時間は必要ない。したがって、好ましい実施形態では、培養時間は、1秒~1時間、好ましくは1秒~10分、より好ましくは1秒~60秒である。
【0026】
工程d)に関し、好ましい構成では、バクテリア懸濁液またはバクテリア粉末を噴霧する。バクテリア懸濁液をBNC不織布に1分以内で噴霧することが好ましい。
【0027】
好ましい実施形態では、微生物を多相生体材料に噴霧するか、あるいは300rpm以上で多相生体材料を微生物と混合する。これは、ボルテックスによって行われてよい。好ましい混合時間は5分未満、より好ましくは1分未満である。最小厚さが0.5mmのBNC不織布を装填する場合、微生物はBNC不織布の表面上に装填されるので、装填にはこれらの方法のいずれかを使用することが好ましい。
【0028】
バクテリア合成ナノセルロース(BNC)多相生体材料の合成方法が米国特許公開公報第2015/0225486号に開示されている。
【0029】
例えば国際公開公報第2018/215598A1号に記載されているような不織布BNC材料を使用することが好ましい。本発明によれば、不織布BNC材料は、特にBNCの繊維の不織布である。用語「不織布BNW」および「BNCフリース」は、本発明に従って交換可能に使用されてよい。
【0030】
本発明は、プロバイオティクスをBNC材料に効率的に装填する方法を初めて提供しており、当該BNC材料は、使用前により長期間(少なくとも6ヶ月まで)凍結乾燥した状態で保管することができ、使用前に素早く再膨潤させることができる。これは、プロバイオティクスを装填したBNC製品の安定性につながり、装填されたプロバイオティクスとその他の成分の活性を保証する。より具体的には、プロバイオティック微生物とプレバイオティック物質を組み合わせるなど、装填された材料同士を組み合わせることが可能であり、それによりシンバイオティック製品を作製する。
【0031】
本明細書で提案されているのは、噴霧/プレス技術を適用することにより、既存の微生物3Dセルロースフリースにプロバイオティクスを迅速に装填する発明である。本発明は、プロバイオティック製品またはシンバイオティック製品が最終使用に至るまでの保管期間を通して生存可能に保たれるので、局所適用に特に適している。
【0032】
本発明の有利な構成では、浸透圧的および/または吸湿的に有効な溶液は、
‐単一の糖類、
‐塩、
‐糖類含有または糖類様物質、
‐ポリエチレンオキシド、
‐これらの水分結合物質群のうちのさまざまな代表物の組み合わせ、および/または
‐これらの水分結合物質群のうちの1つおよび/または複数の代表物と、1つまたは複数の界面活性剤および/または1つまたは複数の防腐剤と、の組み合わせ
を含む。
【0033】
水分結合剤(浸透圧的および/または吸湿的に有効な溶液)は、乾燥目的と、セルロース構造をほぼ完全に再構成して膨潤性を維持する目的と、で添加されており、当該水分結合剤の吸着効果は粘稠性(コンシステンシー)に影響し、その後、当該吸着剤への暴露物は材料の構造上の変化に関係なく乾燥される。乾燥方法は、国際公開公報第2013/060321A2に記載されている。国際公開公報第2013/060321A2では、水分結合剤への前記暴露によって、任意の乾燥、特に少ない労力での乾燥手順を(それ自体が既知の構造変更があっても)実施することができ、それでもなお、必要に応じてセルロースおよび/またはセルロース含有材料をほぼ完全に再膨潤させることが可能であることが示された。使用する水分結合剤の浸透圧性および/または吸湿性により、BNC構造内およびBNCマット表面上では、使用する薬剤に応じて水分が吸着され、ネットワークの個々のセルロース鎖の間隔が乾燥手順中維持され、したがって柔軟な方式で繊維の凝集が防止される。このようにして、乾燥手順時のいわゆる構造崩壊が防止され、BNCの自然な細孔構造とポロシティ(細孔の量とサイズ)が、組み込まれた水分結合剤によって可能な限り維持される。これにより、BNCポリマー複合材料の繊維の間隔が安定する。
【0034】
さらに、この溶液は、微生物に栄養素を提供し、使用する製品を再膨潤させた後のバクテリアの増殖を確保する。
【0035】
水分結合剤の吸湿性と浸透圧活性は、乾燥マットを再膨潤させた場合に、マット内物質と再膨潤媒体内物質との濃度バランスが達成されるまで、水の流入を増加させるので、組み込まれた物質によって生じる浸透圧が低下する。
【0036】
浸透圧的および/または吸湿的に有効な溶液が、少なくとも1つの塩および少なくとも1つの糖類を含む栄養溶液である場合が特に好ましい。塩が塩化ナトリウム、糖がグルコースである場合が好ましい。
【0037】
水分結合剤として、浸透圧的および/または吸湿的に有効な溶液が使用され、当該水分結合剤は、好ましくは、単一の糖類、塩、糖類含有または糖類様物質、ポリエチレンオキシド、これらの水分結合物質群のうちのさまざまな代表物の組み合わせ、および/またはこれらの水分結合物質群のうちの1つおよび/または複数の代表物と、1つまたは複数の界面活性剤および/または1つまたは複数の防腐剤と、の組み合わせからなる。使用されることが好ましい水分結合剤は、グルコース、塩化マグネシウム、糖類である。好ましい構成では、再膨潤挙動をさらに変更するために、水分結合剤に加えて、界面活性剤および/または防腐剤含有溶液が用いられる。
【0038】
水分結合溶液は、浸透圧活性物質および/または吸湿性物質の濃度が、0.01%~飽和限界まで、好ましくは5~20%であってよい。浸透圧的および/または吸湿的に有効な溶液と併用される界面活性剤および/または防腐剤を、0.01%~飽和限界まで、好ましくは0.01~10%の濃度で使用することが好ましい。
【0039】
水分結合剤で処理されている最中のセルロースまたはセルロース含有材料は、風乾または真空乾燥されてよい。
【0040】
好ましい構成では、水分結合溶液の吸着効果を受ける予定のセルロースまたはセルロース含有材料を、当該水分結合溶液に浸漬する。別の構成では、水分結合溶液は、水分結合溶液の吸着効果を受ける予定のセルロースまたはセルロース含有材料に噴霧、滴下、ブラッシング、またはキャストされる。あるいは、吸着剤への暴露を目的として、セルロース培養工程に加えて、水分結合剤がすでにセルロースに添加されている。
【0041】
本発明の有利な構成では、方法は、以下の工程の1つまたは複数をさらに含む:
‐前記微生物を装填する前に、前記BNC不織布生体材料を滅菌する工程、
‐装填前に、前記微生物を緩衝液または培地に再懸濁する工程、
‐装填済みの前記BNC不織布生体材料を2つの箔、好ましくは凍結乾燥用のポリエチレンテレフタレート(PET)、アルミニウム(Al)、およびポリエチレン(PE)の1つまたは複数からなる箔の間に配置する工程、
‐装填した後凍結乾燥した前記BNC不織布生体材料を、複合箔、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)、アルミニウム(Al)、およびポリエチレン(PE)の1つまたは複数からなる複合箔で包み、当該複合箔を密封する工程。
【0042】
不要なバクテリアや真菌の増殖を抑制するために、プロバイオティック微生物を装填する前にBNC不織布を滅菌してもよい。
【0043】
凍結乾燥のためにBNC不織布を2つの箔の間に配置すると、乾燥後にBNC不織布の平らな形状が実現され、最終使用前の保管の際に簡単に梱包することができる。
【0044】
長期保管のために、装填後凍結乾燥したBNC不織布を、複合箔で梱包してもよい。したがって、複合箔は、水分がBNC不織布に浸透しないように密封される必要がある。
【0045】
本発明は、バクテリアを一時的に固定化するためのキャリア成分であるバクテリアセルロースを使用したバクテリアの装填方法に関するものであり、一時的に固定化されたバクテリアは、局所適用(例:皮膚または粘膜)において有益な効果を提供する。それは、化粧品、生物医学的ケア、またはパーソナルケアにおける局所適用のために、バクテリアセルロースにプロバイオティクス/シンビオティクスを組み込み/捕捉し/一時的に固定化し/装填する製剤を得る方法であり、経皮的効果、抗炎症的効果、鎮静効果、抗しわ/老化防止効果、病原体阻害もしくは調節効果、酸性化効果、抗赤み効果、または他の外観促進効果などを得る方法を提供する。例としては、とりわけプロバイオティック/シンバイオティックマスク、パッチ、生理用品ナプキン、タンポンなどがある。
【0046】
キャリアは、プロバイオティクス/シンバイオティクスの生息場所として機能する。その中に固定化された生物学的製剤は、各局所環境(例:皮膚、口腔、膣)に有益な影響を与えるための、代謝産物、酵素の生合成および放出の誘発、またはバクテリア細胞自体の放出に使用される。
【0047】
バクテリアセルロースは、三次元ネットワークであり、微生物やその他の物質を固定化して捕捉するためのキャリアである。固定化された生物学的製剤(微生物を含む)は、その場(in situ)/生体内(in vivo)での生物活性代謝産物(例:抗菌剤、代謝生物活性物質)の生合成に使用され、微生物および生物活性物質の放出の誘発に使用され、および/または発酵工程時の固定化マイクロファクトリとして使用される。
【0048】
適用分野は、化粧品(酒さやにきびの発赤などの外見の改善)だけでなく、医療用途(膣内細菌叢の乱れ)や女性用衛生用品または他の消費者向け製品であってよい。
【0049】
好ましい実施形態では、微生物は、増殖期細胞(vegetative cells)として、または休眠状態で、好ましくは細菌胞子または細胞抽出物として装填される。本発明の有利な構成では、微生物は乾燥されており、好ましくは噴霧乾燥または凍結乾燥されており、粉末形態で使用される。
【0050】
多くのバクテリアは、内生胞子、外生胞子(微生物嚢胞)、分生胞子によって、あるいは代謝活性が低下して特殊な細胞構造を欠いた状態となることによって、温度や乾燥、抗生物質などの悪条件に耐えることができる。野生のサンプルに含まれるバクテリアの最大80%は、代謝的に不活性であるように見えるが、その多くは蘇生することができる。ほとんどの自然生態系の多様性レベルが高いのは、そのような休眠によるものである。内生胞子は、ファーミキューテス門(phylum Firmicutes)の特定のバクテリアによって生成される、休眠状態の丈夫で非生殖的な構造体である。内生胞子の形成は通常、栄養素の不足によって引き起こされ、通常はグラム陽性細菌内で発生する。内生胞子形成では、バクテリアがその細胞壁内で分裂し、一方の側がもう一方の側を取り込む。内生胞子は、バクテリアを何世紀にもわたる長期の間、休眠状態にすることができる。環境がより良好になると、内生胞子は自らを植物状態に再活性化することができる。ほとんどの種類のバクテリアは、内生胞子の形に変化することはできない。内生胞子を形成し得るバクテリアの例は、バシラス属(Bacillus)とクロストリジウム属(Clostridium)である。内生胞子は、バクテリアのDNAと、リボソームと、大量のジピコリン酸と、内生胞子の休眠状態維持能力を助け、当該胞子の乾燥重量の最大10%を占める胞子固有の化学物質と、からなる。
【0051】
本発明の別の構成では、微生物は、湿性あるいは乾性であり、および/または事前培養されているか、あるいは事前培養されていない。多相生体材料は、湿っているか、乾燥しているか、部分的に乾燥しているか、または緩衝液中で再膨潤する。
【0052】
ナノセルロースが植物、藻類、または微生物、好ましくはコマガタエイバクター(Komagataeibacter)、より好ましくはコマガタエイバクター・キシリナス(Komagataeibacter xylinus)に由来する場合が好ましい。コマガタエイバクター・キシリナスは、セルロースの生成能力で最もよく知られているバクテリアの一種である。それは、他のいくつかの名前、主にアセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)とグルコンアセトバクター・キシリナス(Gluconacetobacter xylinus)で知られている。2012年に新属であるコマガタエイバクター属が確立され、現在の名前が付けられた。
【0053】
本発明では、微生物を装填するために、平均厚さが少なくとも0.5mmであるBNC不織布を使用することが好ましい。BNC不織布の平均厚さが1mm~5mm、より好ましくは2mm~3mmである場合が特に好ましい。BNC不織布の平均厚さが2mm~3mmである場合に、装填済みのBNC不織布のより良好な再膨潤性が達成され得ることが示された。
【0054】
本発明の特定の実施形態では、ナノセルロースは、層状構造を有するバクテリア合成ナノセルロース(BNC)であり、以下から選択されることが好ましい。
‐セルロース繊維またはナノウィスカーのネットワークを含むBNC、
‐セルロースフィブリルのさまざまな層を2つ以上含むBNCであり、各層が異なる微生物、または異なる条件下で培養された微生物に由来するBNCで構成されているもの、
‐少なくとも2つの異なるセルロースネットワークを含むBNC、または
‐重合体をさらに含むBNC複合材料。
【0055】
セルロースナノクリスタルまたはナノ結晶セルロースとしても知られるセルロースナノウィスカー(NW)は、さまざまな用途で大きな期待を抱かれている重要なナノスケール材料を提供する(ランビーら、Acta Chem Scand 3、649~650頁、1949年)。NWは、セルロースの不完全分解の結果物である(プレッツィンガーら、Cellulose 25、1939~1960頁、2018年)。
【0056】
本発明の有利な実施形態では、少なくとも2つの異なるバクテリアセルロースネットワークは、複合均質相系として、または少なくとも1つの複合均質相と少なくとも1つの単相とからなる層状相系として、好ましくはさらなる重合体と組み合わせて作製される。
【0057】
好ましい方法は、欧州特許公開公報第2547372号に記載されている。少なくとも2つの異なるセルロース生成細菌株をまとめてまたは別々に調製し、共通培地で一緒に合成していくつかの異なるバクテリアセルロースネットワークを得る場合が特に好ましく、多相生体材料のBNC構造とBNC特性は、少なくとも2つの異なる細菌株の選択と、それらの調製および接種と、合成条件への影響力と、によって影響を受け、当該バクテリアセルロースネットワークは、複合均質相系として、または少なくとも1つの複合均質相と少なくとも1つの単相とからなる層状相系として、合成される。さらに、少なくとも2つの異なるバクテリアセルロースネットワークが互いに独立して調製され、その後一緒にされ、ともに合成される場合が好ましい。共同合成の有利な構成では、少なくとも2つの異なるバクテリアセルロースネットワークが、接種の前にすでに一緒にされている。
【0058】
本発明の好ましい構成では、BNCのバクテリア合成時に、さらなる物質が添加され、当該物質によって得られる細孔径/メッシュサイズを制御することができ、ポリエチレングリコール(PEG)、β-シクロデキストリン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、およびカチオン性澱粉、好ましくは2-ヒドロキシ-3-トリメチルアンモニウムプロピル澱粉クロリドおよびTMAP澱粉から選択されることが好ましい。
【0059】
この変更により、装填されるべき微生物に合わせてBNCを特異的に調整することができる。バクテリアセルロースの顕著な利点として、セルロース分子の自己組織化によって形成された特性制御繊維ネットワークと細孔系を、生合成中に添加剤を使用してその場(in situ)で変更することができる。これにより、細孔径を、装填されるべき微生物の大きさに合わせることができる。ポリエチレングリコール(PEG)4000を添加すると、細孔径が小さくなる。β-シクロデキストリンまたはPEG400が存在すると、細孔を著しく増やすことができる。驚くべきことだが、これらの共基質は、BCサンプルに組み込まれていない除去可能な助剤として機能する。対照的に、添加剤としてのカルボキシメチルセルロースとメチルセルロースは、構造的に変化した複合材料をもたらす。カチオン性澱粉(2-ヒドロキシ-3-トリメチルアンモニウムプロピル澱粉クロリド、TMAP澱粉)を使用し、BCプレポリマーに澱粉誘導体を組み込むことにより、二重ネットワークBC複合体が得られた(へスラー&クレム、Cellulose 16(5):899~910頁、2009年)。
【0060】
好ましい実施形態では、微生物はビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、カルノバクテリウム属(Carnobacterium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、キューティバクテリウム属(Cutibacterium)、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、マイクロバクテリウム属(Microbacterium)、オエノコッカス属(Oenococcus)、パスツリア属(Pasteuria)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、バシラス属(Bacillus)、ゲオバシラス属(Geobacillus)、グルコノバクター属(Gluconobacter)、キサントモナス属(Xanthonomas)、カンジダ属(Candida)、デバリオミセス属(Debaryomyces)、ハンセニアスポラ属(Hanseniaspora)、クリュイベロミセス属(Kluyveromyces)、コマガタエラ属(Komagataella)、リンデネラ属(Lindnera)、オガタエア属(Ogataea)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ウィッカーハモマイセス属(Wickerhamomyces)、キサントフィロミセス属(Xanthophyllomyces)およびヤロウイア属(Yarrowia)、マイクロコッカス属(Micrococcus)、好ましくはキューティバクテリウム・アクネス(Cutibacterium acnes)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ラクトバシラス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバシラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、枯草菌(Bacillus subtilis)、バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、マイクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、マイクロコッカス・ライレ(Micrococcus lylae)、マイクロコッカス・アンタルクティクス(Micrococcus antarcticus)、マイクロコッカス・エンドフィティクス(Micrococcus endophyticus)、マイクロコッカス・フラバス(Micrococcus flavus)、マイクロコッカス・テレウス(Micrococcus terreus)、マイクロコッカス・ユンナネンシス(Micrococcus yunnanensis)、アルスロバクター・アジリス(Arthrobacter agilis)、ネステレンコニア・ハロビア(Nesterenkonia halobia)、コクリア・クリスティナエ(Kocuria kristinae)、コクリア・ロゼア(Kocuria rosea)、コクリア・バリアンス(Kocuria varians)、キトコッカス・セデンタリウス(Kytococcus sedentarius)、デルマコッカス・ニシノミヤエンシス(Dermacoccus nishinomiyaensis)、またはそれらの混合体から選択されるプロバイオティック細菌株または酵母菌株である。
【0061】
表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)、ラクトバシラス・フェルメンタム(L. fermentum)、DSM32609株ラクトバシラス・ラムノーサス(DSM32609 L. rhamnosus)、DSM32758株ラクトバシラス・プランタルム(DSM32758 L. plantarum)、DSM32749株ラクトバシラス・デルブルエッキイー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(DSM32749 L. delbrueckii susp. bulgaricus)、DSM33370株ラクトバシラス・プランタルムLN5(DSM33370 L. plantarum LN5)、DSM33377株ラクトバシラス・ブレビスLN32(DSM 33377 L. brevis LN32)、DSM33368株ラクトバシラス・プランタルムS3(DSM 33368 L. plantarum S3)、DSM33369株ラクトバシラス・プランタルムS11(DSM 33369 L. plantarum S11)、DSM33376株ラクトバシラス・パラカセイS20(DSM 33376 L. paracasei S20)、DSM33375株ラクトバシラス・パラカセイS23(DSM 33375 L. paracasei S23)、DSM33374株ラクトバシラス・ロイテリF12(DSM 33374 L. reuteri F12)、DSM33367株ラクトバシラス・プランタルムF8(DSM 33367 L. plantarum F8)、DSM33366株ラクトバシラス・プランタルムS4(DSM 33366 L. plantarum S4)、DSM33364株ラクトバシラス・プランタルムS28(DSM 33364 L. plantarum S28)、DSM33363株ラクトバシラス・プランタルムS27(DSM 33363 L. plantarum S27)、DSM33373株ラクトバシラス・パラカセイS18a(DSM 33373 L. paracasei S18a)、DSM33365株ラクトバシラス・プランタルムS18b(DSM 33365 L. plantarum S18b)、DSM33362株ラクトバシラス・プランタルムS13(DSM 33362 L. plantarum S13)、DSM32767株ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス(DSM 32767 Lactococcus lactis sups. lactis)、ラクトバシラス・フェルメンタムDSM32750株(L. fermentum DSM 32750)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、キューティバクテリウム・アクネス(Cutibacterium acnes)を用いることがさらに好ましい。
【0062】
本発明のさらに好ましい実施形態では、追加工程は、微生物を多相生体材料に装填する前、後、または並行して実施され、多相生体材料には、アミノ酸、脂肪酸塩、アントシアニン、単糖類、および抽出物、好ましくはDHAおよびEPAのリジン塩、ラムノース、トリプトファンから選択されるさらなる成分および/または栄養素が装填されている。これらの追加成分は、微生物による代謝から生じる、健康上の利益を有する代謝物を提供することができ、あるいは微生物によって選択的に発酵させることができ、プレバイオティクスとして分類することができる。上で定義したようなプロバイオティック微生物と1つまたは複数の成分/プレバイオティクスとを含むそのような組成物は、シンバイオティクスと名付けることができる。
【0063】
本発明のさらなる態様は、本発明に係る方法によって得られる、少なくとも1個の生きた微生物を含む少なくとも2つの異なるバクテリアセルロースネットワークを含むナノセルロースを含む不織布多相生体材料に関する。
【0064】
有利な構成では、多相生体材料は、少なくとも1個の生きた微生物を、セルロース1グラムあたり少なくとも3.00×107の細胞濃度で含む。
【0065】
本発明はまた、食品、口腔、粘膜、皮膚および経皮、眼、栄養、化粧品、皮膚化学、口腔または女性の健康に関する用途における本発明に係る不織布多相生体材料の使用に関する。
【0066】
本発明の別の態様は、以下:
‐BNC不織布生体材料、
‐少なくとも1つの塩と、少なくとも1つの糖類と、を含む栄養溶液、
‐バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、枯草菌(Bacillus subtilis)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、キューティバクテリウム・アクネス(Cutibacterium acnes)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermis)の1つまたは複数の微生物
を含む化粧品に関する。
【0067】
栄養溶液は、少なくとも1つの塩と、少なくとも1つの糖類と、を含む。それらは、浸透圧的および/または吸湿的に有効な溶液として作用し、それは、
‐単一の糖類、
‐塩、
‐糖類含有または糖類様物質、
‐ポリエチレンオキシド、
‐これらの水分結合物質群のうちのさまざまな代表物の組み合わせ、および/または
‐これらの水分結合物質群のうちの1つおよび/または複数の代表物と、1つまたは複数の界面活性剤および/または1つまたは複数の防腐剤と、の組み合わせ
を含んでいてよい。
【0068】
好ましい構成では、化粧品は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アルミニウム(Al)、およびポリエチレン(PE)の1つまたは複数からなる少なくとも1つの含む包装箔をさらに含む。この包装箔は、バクテリアを装填した不織布の長期安定性を確保するために密封される。
【0069】
化粧品は、アミノ酸、脂肪酸塩、アントシアニン、単糖類、および抽出物、好ましくはDHAおよびEPAのリジン塩、ラムノース、またはトリプトファンから選択されるさらなる成分および/または栄養素をさらに含むことが好ましい。
【0070】
特定の実施形態では、化粧品は抗炎症製品でありB.メガテリウムDSM32963株、B.メガテリウムDSM33300株、B.メガテリウムDSM33336株から選択されることが好ましいB.メガテリウムと、オメガ-3リジン塩、好ましくはEPAおよびDHAのリジン塩と、を含む。
【0071】
別の特定の実施形態では、化粧品は抗菌製品であり、枯草菌、好ましくは以下の菌株:枯草菌DSM33561株、枯草菌DSM33353株、および枯草菌DSM33298株のうちの1つまたは複数を含む。そのような製品は、黄色ブドウ球菌の増殖を阻害する。
【0072】
別の特定の実施形態では、化粧品は、プロピオニバクテリウム・アクネスまたはキューティバクテリウム・アクネスを含む抗ニキビ製品である。
【0073】
別の特定の実施形態では、化粧品は、皮膚のマイクロバイオームにプラスの影響を与える表皮ブドウ球菌を含む皮膚のバランスを保つ製品である。
【0074】
本発明に係る化粧品は、顔マスク、具体的には、顔または顔の一部を治療するためのシートマスクやフリースマスク(例:リップマスクまたは抗にきびパッチなど)であってよい。
【0075】
本発明の別の態様は、
‐BNC不織布生体材料、
‐少なくとも1つの塩と、少なくとも1つの糖類と、を含む栄養溶液、
‐DSM33370株L.プランタルムLN5(DSM 33370 L. plantarum LN5)、DSM33377株L.ブレビスLN32(DSM 33377 L. brevis LN32)、DSM33368株L.プランタルムS3(DSM 33368 L. plantarum S3)、DSM33369株L.プランタルムS11(DSM 33369 L. plantarum S11)、DSM33376株L.パラカセイS20(DSM 33376 L. paracasei S20)、DSM33375株L.パラカセイS23(DSM 33375 L. paracasei S23)、DSM33374株L.ロイテリF12(DSM 33374 L. reuteri F12)、DSM33367株L.プランタルムF8(DSM 33367 L. plantarum F8)、DSM33366株L.プランタルムS4(DSM 33366 L. plantarum S4)、DSM33364株L.プランタルムS28(DSM 33364 L. plantarum S28)、DSM33363株L.プランタルムS27(DSM 33363 L. plantarum S27)、DSM33373株L.パラカセイS18a(DSM 33373 L. paracasei S18a)、DSM33365株L.プランタルムS18b(DSM 33365 L. plantarum S18b)、DSM33362株L.プランタルムS13(DSM 33362 L. plantarum S13)、DSM32767株ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス(DSM 32767 Lactococcus lactis sups. lactis)、L. フェルメンタムDSM32750株(L. fermentum DSM 32750)の1つまたは複数の微生物
を含む女性用衛生製品に関する。
【0076】
栄養溶液は、少なくとも1つの塩と、少なくとも1つの糖類と、を含む。それらは、浸透圧的および/または吸湿的に有効な溶液として作用し、それは、
‐単一の糖類、
‐塩、
‐糖類含有または糖類様物質、
‐ポリエチレンオキシド、
‐これらの水分結合物質群のうちのさまざまな代表物の組み合わせ、および/または
‐これらの水分結合物質群のうちの1つおよび/または複数の代表物と、1つまたは複数の界面活性剤および/または1つまたは複数の防腐剤と、の組み合わせ
を含んでいてよい。
【0077】
好ましい構成では、女性用衛生製品は、以下の微生物:L.デルブルエッキイー・サブスピーシーズ・ブルガリカスDSM32749株、L.プランタルムDSM32758株、L.ラムノーサスDSM32609株、好ましくはL.デルブルエッキイー・サブスピーシーズ・ブルガリカスDSM32609株、L.プランタルムDSM32758株、およびL.ラムノーサスDSM32609株のうちの1つまたは複数を含む。
【0078】
好ましい構成では、女性用衛生製品は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アルミニウム(Al)、およびポリエチレン(PE)の1つまたは複数からなる少なくとも1つの含む包装箔をさらに含む。この包装箔は、バクテリアを装填した不織布の長期安定性を確保するために密封される。
【0079】
女性用衛生製品は、タンポン、パンティライナー、および生理用ナプキンから選択されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1】
図1は、高速法(ボルテックス)とコアシェル法(注入)による装填容量測定の概略図である。
【
図2】
図2は、ボルテックス法で作製した、L.ラクチスを装填したBNCフリース(上、左)のSEM顕微鏡写真である。
【
図3】
図3は、L.ラクチスを装填したBNCフリース(左)と枯草菌を装填したBNCフリース(右)のMRSブロス培地での放出プロファイルである。
【
図4】
図4は、ボルテックス法(上)および注入法(下)で枯草菌を装填した後凍結乾燥したBNCフリースの培養物中の枯草菌の定量分析である。
【
図5】
図5は、ボルテックス法(上)および注入法(下)でB.メガテリウムを装填した後凍結乾燥したBNCフリースの培養物の定量分析である。
【
図6】
図6は、ボルテックス(上)および注入(下)でL.ラクチスを装填した後凍結乾燥したBNCフリースの培養物の定量分析である。
【
図7】
図7は、MRSブロス培地(左)および生理食塩水等張液(右)にL.ラクチス粉末を懸濁した懸濁液を使用してボルテックス法で調製された、L.ラクチスを装填したBNCフリースの培養物の定量分析である。
【
図8】
図8は、セルロースを用いた酵素消化後の、標準フリースと比較した、変性BNCフリースに装填されたプロバイオティクスの定量分析である。
【実施例】
【0081】
実験例1:(事前培養後の)追加ポリマーを使用しないプロバイオティクスの組み込み
A)大きさ(表面、容積、厚さ、重量)に関する装填前のBNCの特性評価と滅菌
すべてのBNCフリーを4℃(または梱包されている場合は室温)で保管し、室温で30分間平衡化した。フリース中の異なる3地点でノギススケール(バーニア・キャリパー・スケール)を使用して直径と高さを測定した。下記の式1を使用して、BNCフリースの直径、高さ、および容積(V)の平均値と標準偏差を計算した。
V=πr2h (1)
(式中、π=3.14、r:半径、h:高さである。)
さらに、式2を適用して、各BNCフリースの表面積(A)を求めた。
A=2πrh+2πr2 (2)
(式中、π=3.14、r:半径、h:高さである。)
データを全測定値の平均±標準偏差として表した。
BNCフリースの大きさに関する特性評価を、現地研究所の標準的手法に従って合成された標準的なBNCフリースに対して行った。BNCフリースは、重量:1.16±0.06g、直径:1.6±0.07 cm、高さ0.5±0.04cmを示した。各BNCフリースの表面積は7.24±0.27cm2で、容積は1.2±0.1cm3であった。
マスクまたはパッチ用途の、あるいは圧延された形で使用するための薄いBNCフリースは、最適な再膨潤性を確保するために、厚さ1~4mm、最善では厚さ2~3mmであることを特徴とする。
【0082】
B)プロバイオティック懸濁液のBNCフリースへの装填
プロバイオティック培養物および懸濁液(L.ラクチス、枯草菌)の調製
滅菌条件下、L.ラクチス用に、2個の滅菌済み100mL容量ガラス三角フラスコ(エルレンマイヤーフラスコ)を、pH6.2±0.2の滅菌済みMRSブロスブイヨン(20mL)で満たした。枯草菌用に、2個の滅菌済み100mL容量ガラス三角フラスコを、pH7~7.2の滅菌済みTSB培地(20mL)で満たした。約2mgのL.ラクチス粉末をMRS培地に添加して混合し、一方のフラスコをプロバイオティクス株で調製し、もう一方をMRSブランクで調製した。続いて、5μLの枯草菌凍結懸濁液をTSB培地に添加して混合した。一方のフラスコをプロバイオティクス株で調製し、もう一方をTSBブランクで調製した。プロバイオティック培養物を滅菌条件下で調製し、100rpmで8時間振とうしながら37℃で培養した。コントロール(対照)のMRS培地を同じ条件下で培養した。8時間後、培養物を培養器からラミナエアフローベンチに移し、混合し、滅菌済みの1mLピペットを使用して、滅菌済みの2mL容量エッペンドルフカップに各培養物(500μL)を回収した。回収したサンプルの光学密度(OD600)を、UVキュベットと光学密度分光光度計(バイオフォトメータ)を使用して、ブランクのMRSまたはTBS培地と比較して、600nmの波長でそれぞれ3回測定した。0.5OD600=108細胞/mL(装填比=1gBNC:10mL装填溶液)の濃度で10mLプロバイオティック懸濁液を調製するための容積を計算し、最後に計算した容積を50mL容量滅菌チューブに投入し、対応する培地(L.ラクチスの場合はMRS、枯草菌の場合はTSB)または生理食塩水NaCl0.9%を用いて総容積を最大で10mLにし、その後混合した。
【0083】
I.高速法(ボルテックス)によるプロバイオティック懸濁液のBNCフリースへの装填
BNCフリースを、50mL容量チューブのプロバイオティック懸濁液(L.ラクチス、枯草菌)に添加した。コントロール(対照)のBNCフリースを滅菌培地または生理食塩水に添加した。室温で10分間、渦強さ10.5(約3300rpm)でチューブをボルテックスした(Vortex Genie 2)。装填懸濁液を除去し、BNCフリースを10mLの生理食塩水でボルテックス下で10秒間洗浄した。
【0084】
II.注入法による、プロバイオティック懸濁のBNCフリースへの装填
上記のようにしてBNCフリースを調製した。プロバイオティック懸濁液を、108細胞/125μLの濃度で調製した。注射針をBNCフリースの中央に挿入し、容量を注入した(5単位)。
【0085】
III.噴霧による、事前培養されたプロバイオティック懸濁液および事前培養されていないプロバイオティック懸濁液のBNCフリースへの装填
上記のようにしてBNCフリースを調製した。
生理食塩水による10mLプロバイオティック懸濁液(事前培養済み)を、それぞれL.ラクチスおよびB.メガテリウムから0.5OD600=108細胞/mLの濃度で調製した。滅菌ガラス試薬スプレー(滅菌ガラス試薬スプレーArtNr:11526914、Fischer Scientific社、ドイツ)を使用して、5mLプロバイオティック懸濁液をBNC(マスクパッチまたは他の形態)に均一に噴霧した。粉末状のプロバイオティクスを装填する手順は、次のとおりである。ラミナエアフローベンチ(Heraeus HS 18/2)での滅菌条件下、100mgのプロバイオティクス(例:L.ラクチス)粉末を、天びん(Sartorius H95 Basic)を使用して、滅菌済みの2mL容量エッペンドルフに量り入れた。L.ラクチス粉末を、圧搾空気を適用してBNCフリースに直接噴霧した。あるいは、L.ラクチス粉末を、50mL容量遠心分離チューブ内でMRS(35mL)に添加し、混合することにより、ラミナエアフローベンチの滅菌条件下、OD600が1マクファーランド単位の濃度でMRSブロス培地および生理食塩水に懸濁した粉末形態プロバイオティック懸濁液(例:L.ラクチス)を調製した。次に、L.ラクチス粉末懸濁液を、滅菌ガラス試薬スプレー(滅菌ガラス試薬スプレーArtNr:11526914、Fischer scientific社、ドイツ)を使用してBNCフリースに噴霧した。
【0086】
さまざまな装填技術の概要を
図1に示す:高速法(ボルテックス)およびコアシェル法(注入)による装填容量決定の概略図。プロバイオティック培養物(P)を遠心分離し、0.5OD
600で生理食塩水NaCl0.9%に再懸濁し(工程1)、高速法(HS)(3300rpm、10分、22℃)または直接注入(I)(125μL、0.5OD
600)のいずれかによって、BNCに装填した(工程2)。装填済みのBNCとコントロール(対照)プロバイオティクスとを37℃かつ100rpmで18時間再培養し(工程3)、続いてOD
600を測定した(工程4)。
【0087】
実験例2:(事前培養された)プロバイオティック懸濁液(L.ラクチス、枯草菌)が装填されたBNCフリースのボルテックスおよび注入装填法による装填容量
A)装填の特性評価:装填容量、位置、分布の均一性
プロバイオティック培養物を100rpmで振とうしながら37℃で8時間培養した。その後、4000rpmで10分間遠心分離し、生理食塩水NaCL0.9%に再懸濁した。OD
600を0.5(=10
8細胞/mL生理食塩水)に調整した。実験例1のBIおよびBIIに記載されているようにして、ボルテックスまたは注入法により、BNCにプロバイオティック培養物を装填した。高速法(ボルテックス)およびコアシェル法(注入)による装填容量決定の概略図を
図1に示す。BNCフリースに、OD
600が0.5マクファーランド単位(約10
8細胞/mLに相当)であるプロバイオティクスを装填し、その後、37℃かつ100rpmで18時間増殖培地において再培養した。標準的プロバイオティクス培養物のOD
600と比較して、再培養後のBNCのOD
600を測定することにより、装填容量を測定した。標準的プロバイオティクス培養物については、OD
600が0.5マクファーランド単位(約10
8細胞/mLに相当)である同量のプロバイオティクスを増殖培地に添加することにより調製した。微生物学では、バクテリア数を所定の範囲内にして微生物検査を標準化するために、バクテリア懸濁液の濁度を調整するための参照値としてマクファーランド標準を使用している。
【0088】
装填されたプロバイオティクスの量は、その発展形態の性能を測り、かつプロバイオティクスの活性を同程度に定義する決定的な要因である。装填されたプロバイオティクスの数を調査して、用いられた手順の装填容量を評価し、かつ装填済みのBNCフリースから放出されたプロバイオティクスの数を測定した。実験中におけるプロバイオティクスの増殖を阻害するために、等張液中で装填工程を実施した。プロバイオティクスを装填したBNCフリースを適切な培地で再培養し、同じ条件と濃度で培養された遊離プロバイオティクスと比較した。
【0089】
高速法(ボルテックス)およびコアシェル法(注入)による枯草菌の装填容量を測定した。BNCフリースに、OD600が0.5マクファーランド単位(約108細胞/mLに相当)であるプロバイオティクスを装填した後、37℃かつ100rpmで8時間TSB増殖培地において再培養した。標準的枯草菌培養物のOD600と比較して、再培養後のBNCのOD600を測定することにより、装填容量を測定した。標準的枯草菌培養物については、OD600が0.5マクファーランド単位(約108細胞/mLに相当)である同量物を増殖培地に添加することにより調製した。プロバイオティクスを装填したBNCフリースが入った瓶の混濁は明らかであり、BNCフリースから培地へのプロバイオティクスの放出および増殖を示している。両方のプロバイオティクスにおいて、高速法と比べ、注入法による装填容量の方が多かった。L.ラクチスは、注入法による装填容量が36.2%±4.7%であったのに対し、ボルテックス法による装填容量は10.1%±2.2%であった。枯草菌は、ボルテックス法による装填容量が22.14%±3.1%、注入法による装填容量が42.85%±5.4%であった。
【0090】
B)微生物の自己蛍光による装填位置の検出
生死判定染色液の調製
ライブ/デッドバックライトバクテリア生存率判定キットL7012(Live/Dead BacLight Bacterial viability kit L7012)を製造元の指示に従って準備した。
L.ラクチスおよび枯草菌用に、0.5OD600で50mLの懸濁液を調製するためのプロバイオティクス培養物の量を計算し、最終量を4000rpmかつ室温で15分間遠心分離した。ペレットを精製水1mLに再懸濁し、最後に調製した生死判定染色液1mLを添加し、混合し、暗所において室温で15分間培養した。15分後、染色されたプロバイオティクスを4000rpmかつ室温で10分間遠心分離した。染色液を除去し、染色されたプロバイオティクスを滅菌生理食塩水30mLに再懸濁し、10秒間ボルテックスし、染色されたプロバイオティクスを洗浄した。再懸濁したプロバイオティクスを4000rpmかつ室温で10分間遠心分離し、滅菌生理食塩水50mLに再懸濁した。
【0091】
BNCフリース中のプロバイオティクス分布の可視化
BNCフリースを50mL容量チューブに移し、5mLのメチレンブルー染色液を1%の濃度で添加し、室温で10分間維持した。メチレンブルー溶液を除去し、BNCフリースを毎回30mLの生理食塩水を用いてボルテックス下で3回洗浄した。その後、ボルテックス法により、生理食塩水中で、生死判定染色されたプロバイオティクスをメチレンブルーで染色されたBNCフリースに装填した。コントロール(対照)として、メチレンブルーで染色されたBNCフリースを10mLの生理食塩水に浸し、同じ条件下で混合した。装填懸濁液を除去し、BNCフリースを10mLの生理食塩水を用いてボルテックス下で洗浄した。フリースに上方から光を当て、モレキュライト(Moleculight)による断面と写真とを撮影した。
【0092】
BNCフリース中のプロバイオティクスの分布を、蛍光染色法を適用することによって検出した。BNCを自己蛍光させないようにメチレンブルーで染色した。次に、生死判定染色されたプロバイオティクスを、ボルテックスおよび注入法によってBNCフリースに組み込み、蛍光検出カメラを使用して検出した。上部および断面の写真は、L.ラクチスが断面全体に均一に分布しており、細孔が大きく緩い構造であることによってより多くの材料を取り込むことができるプレポリマーへの傾向はわずかであることを示している。枯草菌は、プレポリマーに組み込まれる強い傾向を示しており、これは、その大きな胚芽サイズに関係している可能性がある。
【0093】
走査型電子顕微鏡(SEM)による装填の均一性と分布の評価
臨界点乾燥を用いて装填済みのBNCフリースを固定および乾燥した後、スパッタコーティングし、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。後続の手順については、次のように実施した。BNCフリースを、Mカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中で2.5%のグルタルアルデヒドと4%のホルムアルデヒドとからなる3mL/ウェルの固定液に室温で10時間固定した。その後、固定液を除去し、BNCフリースを生理食塩水で3回洗浄した後、濃度を上げながら(30%、50%、70%、80%、90%、100%および100%)エタノール系での脱水工程を毎回15分で完了した。BNCフリースを、自動臨界点乾燥機Leica EM CPD300(ライカ社)で臨界点乾燥することにより乾燥した。次に、BNC片をSEMサンプルホルダーに取り付け、不活性ガス(アルゴン)を使用して真空下、スパッタコーター(スパッタコーターBAL-TEC SCD005)内において金でスパッタコーティングし(層厚30nm)、その後、インレンズ検出器を使用して5kVで動作するSigma-VP-走査型電子顕微鏡(Carl Zeiss社、ドイツ)を用いて、分析および顕微鏡画像化した。
【0094】
ボルテックス法によって装填済みとなったBNCフリース中のプロバイオティクスの分布を、さまざまな位置において、未装填の自然のままのBNCフリースと比較して、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定した。未装填のBNCフリースと、プロバイオティクスを装填したBNCフリースと、をグルタルアルデヒドおよびホルムアルデヒドの混合物に固定し、最終形態を安定させ、乾燥とSEM画像化を完了する前に、装填されたプロバイオティクスの位置を維持した。BNCフリースの顕微鏡分析では、
図2に示すように、装填されたプロバイオティクスがBNCフリースの表面で広範に分布していることが示された。さらに、装填されたプロバイオティクスは、断面領域と垂直領域に均一に局在しており、ボルテックス法を適用したBNCフリース内部の装填の均一性が確認された。
【0095】
図2は、ボルテックス法で調製された、L.ラクチスが装填されたBNCフリース(上部、左部)のSEM顕微鏡写真である。L.ラクチスが装填されたBNCフリースをさまざまな位置で検査した:表面(上部、右部)、横断面(下部、右部)、垂直断面(下部、左部)。顕微鏡写真については、インレンズ検出器を使用して5kVで撮影した。
【0096】
実験例3:前培養されていない(事前培養されていない)純粋なL.ラクチス粉末を用いた、ボルテックス法によるBNCフリースへの装填
L.ラクチス粉末を、50mL容量遠心分離チューブ内で、35mLのMRSまたは生理食塩水に添加して混合することにより、ラミナエアフローベンチの滅菌条件下、OD600が1マクファーランド単位の濃度でMRSブロス培地および生理食塩水に懸濁したL.ラクチス懸濁液を調製した。各懸濁液を事前培養せずに10mlずつ50mL容量の遠心分離チューブ3本に分配した。続いて、滅菌済みのBNCフリースを当該チューブに加え、前述のようにしてボルテックス法により装填した。装填済みのBNCフリースを生理食塩水で洗浄し、30mL容量透明ガラス瓶に入ったMRS(10mL)に移した。コントロール(対照)として、OD600が1マクファーランド単位であるL.ラクチス懸濁液(5μL)を30mL容量透明ガラス瓶中のMRS(10mL)に添加することにより、L.ラクチス培養物を調製した。瓶の写真を撮り(キャノンパワーショットSX620HS)、培養器(Infors HT Multitron Standard)で37℃かつ100rpmで24時間培養した。24時間後、瓶をラミナベンチに移し、写真を撮り(キャノンパワーショットSX620HS)、前述のようにして光学密度(OD600)を測定した。瓶から取った25μLを、滅菌ガラススプレッダーを使用してMRS寒天プレートの表面に広げ、37℃で48時間培養し(Heraeus 6000)、寒天プレート上で増殖したコロニーの写真を撮った(キャノンパワーショットSX620HS)。
【0097】
前の実験では、適用されるプロバイオティクスは、後続実験で使用してBNCへ装填する前に、常に対数増殖期後期までブロス培地で培養されていた。当該実験は、ブロス培地で事前培養せずに、粉末から直接BNCフリースに装填されたプロバイオティクスの生存能力と生存率を調べるために考案されたものである。OD600が1マクファーランド単位となるようにL.ラクチス粉末をMRSブロス培地と等張液である生理食塩水(0.9%NaCl)とのそれぞれに添加して調製したL.ラクチス懸濁液を用いて、ボルテックス法によりBNCフリースに装填した。
【0098】
培養後のL.ラクチスを装填したBNCフリースの視覚的対照は、細胞増殖を表す培養瓶の明らかな濁りを示した。MRSと生理食塩水の両方の懸濁液から装填されたL.ラクチスは、測定されたOD600から確認されるように、24時間の培養後、かなりの生存能力と生存率を維持し、増殖を示した。MRSと生理食塩水の懸濁液から装填されたL.ラクチスは、標準条件下で培養した後、それぞれ、1.71±0.15マクファーランド単位、1.6±0.13マクファーランド単位のOD600を示した。これらのデータは、L.ラクチスコロニーの典型的な増殖を示したMRS寒天プレートの観察結果とよく一致していた。圧搾空気を適用してL.ラクチス粉末をBNCフリースに直接噴霧した場合にも同様の結果が得られた。
【0099】
実験例4:3つの異なる方法(ボルテックス、注入、噴霧)による、枯草菌胞子粉末のBNCフリースへの装填
ラミナエアフローベンチで滅菌条件下、光学密度分光光度計(バイオフォトメータ)を使用して、滅菌0.9%NaCl中で、OD600が0.5マクファーランド単位の濃度である50mL枯草菌胞子懸濁液を調製した。前述のようにしてボルテックス法により枯草菌胞子懸濁液をBNCフリースに装填した。前述のようにして、0.5OD600の濃度で注入法により枯草菌胞子懸濁液を別のBNCフリースに装填した。前述のようにして噴霧法により枯草菌胞子を別のBNCフリースに装填した。
SEM顕微鏡写真でバクテリア細胞の均等な分布が確認されたため、3つの異なる装填技術のすべてが胞子型バシラスに適用可能であった。3つの異なる技術によって装填されたバクテリア胞子の再培養物は、培地と寒天プレートの両方で生存能力を示した。
【0100】
実験例5:ラクトバシラス属菌およびそれらの混合物の装填
次の菌株を使用した:ラクトバシラス・フェルメンタムID51611株(Lactobacillus fermentum、ID 51611)、ラクトバシラス・ラムノーサスDSM32609株(Lactobacillus rhamnosus、DSM 32609)、ラクトバシラス・プランタルムDSM32758株(Lactobacillus plantarum、DSM 32758)。
37℃かつ100rpmの好気性標準条件下、菌株をMRSブロス培地で培養した後、Tris-マグネシウム緩衝液pH7.4+50%グリセリンに懸濁し、凍結保存用チューブに充填し、使用するまで-80℃で保管した。次に、好気培養された菌株と、それらの混合物のいくつかと、をMRS寒天プレート上で同定し、前述のようにして固定し臨界点乾燥機で乾燥した後、SEMによって顕微鏡的に特徴づけた。
ラミナエアフローベンチ(Heraeus HS 18/2)の滅菌条件下、4個の滅菌済み100mL容量ガラス三角フラスコ(エルレンマイヤーフラスコ)を、pH6.2±0.2の滅菌済みMRSブロスブイヨン培地(20mL)で満たした。5μLの各ラクトバシラス属菌株を1個のフラスコに加え、1個のフラスコはMRSブランクとして保持し、それらのフラスコをオービタルシェーカー培養器(Infors HT Multitron Standard)で37℃かつ100rpmで8時間培養した。フラスコをラミナベンチ(Heraeus HS 18/2)に移し、滅菌等張食塩水0.9%NaClと光学密度分光光度計(バイオフォトメータ)を使用して、各菌株の濃度を0.1マクファーランド単位のOD600に調整した。最後に調整されたバクテリア懸濁液15μLを、30ml容量の滅菌透明ガラス瓶に入ったMRSブロス培地(15mL)に添加し、各ラクトバシラス属菌株が入った3本の瓶を準備した。30ml容量の滅菌ガラス瓶に入った別のMRSブロス培地(15ml)において、異なるラクトバシラス属菌株をそれぞれ5μLで混合し、混合物ごとに3本の瓶を次のように準備した。
‐ラクトバシラス・フェルメンタム+ラクトバシラス・ラムノーサス
‐ラクトバシラス・フェルメンタム+ラクトバシラス・プランタルム
‐ラクトバシラス・ラムノーサス+ラクトバシラス・プランタルム
‐ラクトバシラス・フェルメンタム+ラクトバシラス・ラムノーサス+ラクトバシラス・プランタルム
【0101】
調製した単培養物および混合培養物のpH値を培養前に測定し、各瓶の5mLを20mL容量ビーカーガラスに移し、pHメーター(Mettler Toledo 1140)を使用してpH値を検出した。すべての瓶を、オービタルシェーカー培養器(Infors HT Multitron Standard)で、37℃かつ100rpmで8時間同時培養した。8時間の培養後、瓶をラミナベンチ(Heraeus HS 18/2)に移し、上記のようにして各培養物のpH値を再測定した(Mettler Toledo 1140)。
【0102】
ラクトバシラス属菌株(L.フェルメンタム、L.ラムノーサス、L.プランタルム)のさまざまな混合物のBNCフリースへの装填、および培養したBNCのpH変化の評価
各ラクトバシラス属菌株の培養物を調製し、各90mLの濃度を、上記のようにして、生理食塩水を使用し、0.5マクファーランド単位のOD600に調整した。別々の50mL容量チューブで、上記のようにして、異なるラクトバシラス属菌株培養物を互いに混合した。前述のようなボルテックス法(および前述のような噴霧装填)により、各ラクトバシラス属菌株を別々に、およびそれらの混合物を、3つのBNCフリースに装填した。ラミナエアフローベンチ(Heraeus HS 18/2)の滅菌条件下、装填済みの各BNCを、30mL容量滅菌透明ガラス瓶に入ったMRSブロス培地(15mL)に添加し、培養前に上記のようにしてpH値を測定した(pHメーター、Mettler Toledo 1140)。すべての瓶を、オービタルシェーカー培養器(Infors HT Multitron Standard)で、37℃かつ100rpmで8時間培養した。8時間培養した後、瓶をラミナベンチ(Heraeus HS 18/2)に移し、pH値を再測定した(Mettler Toledo 1140)。
【0103】
ボルテックスおよび噴霧法でラクトバシラスが装填されたBNCフリースを、前述のようにして固定し、乾燥させ、SEMで観察した。
ラクトバシラス属菌株の増殖挙動を、選択MRSブロス培地およびMRS寒天プレート上で、典型的な培養条件(37℃、100rpmの振とう)下、好気性環境で調べた。すべてのラクトバシラス属菌株(L.フェルメンタム、L.ラムノーサス、およびL.プランタルム)がブロス培地で増殖し、MRS寒天培地上でさまざまな増殖コンフルエントの球状コロニーを示した。コロニーは白色で、表面は滑らかであった。MRS寒天培地上で増殖したL.フェルメンタムのSEM顕微鏡写真は、単一細胞またはペアで群化した短鎖としての、1.5~3μmのサイズ範囲かつ0.5~0.7μmの細胞幅を有する典型的な伸長バシラス形態を示した。同様に、L.ラムノーサスは、長さ1.0~2.7μm、幅0.4~0.8μmのバシラス状形態を示したが、L.プランタルムは、長さ2.5~5.5μm、幅0.6~0.9μmの先端が丸い長杆体を示した。さらに、ラクトバシラス属菌株のさまざまな混合物をブロス培地で共培養し、増殖したコロニーを寒天-MRS上で光学的に、かつSEMで顕微鏡的に観察した。
標準条件で8時間培養した後、培地のpH値に対するラクトバシラス増殖の影響を調べた。特に、すべての単一菌株と混合物が、表1に示されているように、培地のpH値を本質的に低下させた。
【表1】
【0104】
L.フェルメンタム、L.ラムノーサス、およびL.プランタルムのpH値は、培養前の6.0±0.03から、8時間の培養後、4.57±0.01、4.21±0.09、および4.35±0.15にそれぞれ大幅に低下した(P≦0.002)。さらに、すべてのラクトバシラス属菌株混合物(L.フェルメンタム+L.ラムノーサス、L.フェルメンタム+L.プランタルム、L.ラムノーサス+L.プランタルム、およびL.フェルメンタム+L.ラムノーサス+L.プランタルム)も、それぞれ、4.35±0.07、4.37±0.03、4.1±0.08、および4.4±0.1のpH値の大幅な低下(P≦0.001)を示した。混合培養物のpH値に関して報告された低下は、各単一菌株の培養物と比較して、統計的に有意であった(P<0.05)。L.ラムノーサス+L.プランタルムの混合物のみが、各単一培養物と比較して、pH値に有意差を示さなかった(P>0.05)。
【0105】
さらに、単一のラクトバシラス属菌株と、それらの混合物のいくつかと、をBNCフリースに装填し、SEMで観察した後、装填済みのBNCフリースをMRS培地で培養し、pH値の変化を測定した。それに伴って、pH値の顕著な低下が、すべての装填済みBNC培養物でも検出された(P<0.001、表2)。単一のラクトバシラスが装填されたBNC(L.フェルメンタムが装填されたBNC、L.ラムノーサスが装填されたBNC、およびL.プランタルムが装填されたBNC)の培地のpH値は、培養前の6.0±0.01から、8時間の培養後、4.59±0.02、4.13±0.03、および4.05±0.06にそれぞれ低下した。さらに、ラクトバシラスの混合物が装填されたBNC(L.フェルメンタム+L.ラムノーサスが装填されたBNC、L.フェルメンタム+L.プランタルムが装填されたBNC、L.ラムノーサス+L.プランタルムが装填されたBNC、およびL.フェルメンタム+L.ラムノーサス+L.プランタルムが装填されたBNC)は、それぞれ、4.28±0.05、4.38±0.01、4.09±0.04、および4.33±0.02のpH値の明らかな低下を示した。
【0106】
さらに、単一のラクトバシラス属菌株またはラクトバシラス属菌株の混合物をBNCに装填しても、未装填培養株と比較して、pH値に大きな影響は見られなかった(P>0.05)。装填済みのラクトバシラス属菌株と、未装填のラクトバシラス属菌株と、の両方は、標準的な好気性条件下で8時間培養した後、培地のpH値に同様の低下が見られ、BNCフリースへのプロバイオティクスの装填がそれらの挙動に影響を与えないことが示唆されている。
【0107】
【0108】
ラクトバシラス属菌株を、前述のように噴霧技術により装填した場合にも、同様の結果が得られた(表3を参照)。
【0109】
【0110】
ボルテックスおよび噴霧法によって、DSM32749株L.デルブルエッキイー単独、およびL.デルブルエッキイーとDSM32609株L.ラムノーサスとDSM32758株L.プランタルムとの組み合わせを用いると、pH値への影響、特に病原体阻害に関して、同様の結果が得られた。L.デルブルエッキイーは好気性条件下では増殖力が弱く、嫌気性条件を好むため、事前培養とpH低下培養は嫌気性条件下で行った。
【0111】
実験例6:噴霧およびボルテックス技術による常温保存可能生成物の調製(B.メガテリウム)
BNCの調製と滅菌、プロバイオティクスの装填
ラミナエアフローベンチ(Heraeus HS 18/2)の滅菌条件下における2個の500mL容量ガラス瓶中で、BNC(マスク、パッチ、またはその他の形態)を、MRSとTSBの50mLブロス培地、または0.9%NaCl+5%グルコースの等張混合物のいずれかに浸した。BMCを、培地(Varioklav(登録商標)85T水平台)で121℃、1バールで15分間オートクレーブ処理した。BNC瓶をラミナエアフローベンチ(Heraeus HS 18/2)に移し、BNCを培地から取り出し、アルミニウム複合箔で直接包み込み、箔を溶接シーム(Famos F108)でシールした。次に、培地またはNaCl/グルコースを装填したBNCをE-ビーム滅菌にかけ、滅菌パックした。
【0112】
10mLのプロバイオティクスを装填するために、L.ラクチスとB.メガテリウムの両方について、0.5OD600(=108細胞/mL)の濃度で生理食塩水に懸濁したバクテリア懸濁液を調製した。滅菌ガラス試薬スプレーを使用して、5mLのプロバイオティック懸濁液をBNCに噴霧した。装填も前述のようにボルテックス法で行った。
【0113】
装填済みのBNCを、凍結乾燥機(Epsilon 2-4 LSC、Martin Christ社、ドイツ オステローデ)を使用して、1~6日間、好ましくは3~5日間、残留水分量が3%~14%になるまで(水分分析装置;Ohaus MB45、Ohaus Corporation社、米国)凍結乾燥した。乾燥工程時の平面度を確保するために、BNCフリースを2枚の箔の間に配置した。測定された残留水分量は13.92%±0.85%であった。
【0114】
再膨潤性(および安定性)を保証するための長期保管(室温、または4℃、または30℃超)では、凍結乾燥した装填済みBNCを、水/湿度がほぼ不浸透性である材料で包み(例えば、乾燥した装填済みマスクをマスクパック包装材料(フィルム組成;PET/PE-/ALU/PE=12/15/9/50μm)で包み)、溶接シーム(Famos)または内部包装箔およびマスクパック包装材料を使用して熱的に閉じる。
【0115】
装填済みBNCの再培養
装填済みBNCを、30ml容量滅菌ガラス瓶内のブロス培地(L.ラクチス噴霧マスクスライスの場合はMRS、B.メガテリウム噴霧マスクスライスの場合はTSB)に移し、オービタルシェーカー培養器(Infors HT Multitron Standard)で37℃かつ100rpmで8時間再培養した;MRSとTSBのブランクを同じ条件下で培養した。8時間後、培養物を培養器からラミナエアフローベンチ(Heraeus HS 18/2)に移し、瓶の写真を撮り、混合した後、各培養物500μLを、滅菌済みの1mLピペットを使用して、2mL容量滅菌エッペンドルフカップに回収した。回収サンプルの光学密度OD600(nm)を、UVキュベットと光学密度分光光度計(バイオフォトメータ)を使用して、ブランクMRSまたはTSB培地と比較して、600nmの波長でそれぞれ3回測定した。ループを使用して、スライス培養物を、寒天プレート(L.ラクチス噴霧ボルテックスマスクスライスの懸濁液用MRS-寒天、およびB.メガテリウム噴霧ボルテックスマスクスライスの懸濁液用TSB-寒天)に広げ、37℃で24時間プレートで培養し(培養器Heraeus 6000)、次に寒天プレートの写真を撮った。
【0116】
装填済みBNCの再膨潤
凍結乾燥BNCマスク1個をガラスビーカー内で水(あるいは別の有効成分を含む溶液)に浸し、室温で10分間再膨潤させ、再膨潤したマスクの圧延能力を評価した。別の凍結乾燥BNCマスクを圧延し、その後、圧延したBNCを250mL容量ガラスビーカー内で水に10分間浸した。第3の凍結乾燥BNCを圧延し、50mL容量チューブに移し、次に20mlの水をチューブに加え、室温で10分間保持した。
【0117】
リップマスクにプロバイオティクスを装填する効率を、L.ラクチスとB.メガテリウムの両方に関して調べた。マスクを、対応するブロス培地とともにオートクレーブ処理し、続いて電子線滅菌し、その表面にプロバイオティック懸濁液を噴霧した。次に、プロバイオティクスを噴霧したマスクを凍結乾燥し、プロバイオティクスとBNC材料の安定性を維持した。凍結乾燥したプロバイオティクス装填済みBNCをブロス培地で再培養した。培養瓶の光学的観察により、装填されたプロバイオティクスの増殖による濁りが明らかになった。凍結乾燥したL.ラクチス装填済みBNCは、8時間培養した後、0.66±0.03マクファーランド単位のOD600を示した。報告されたOD600は、1cm2のマスク表面に存在するL.ラクチスの量を表している。さらに、MRS寒天プレート上に広がった懸濁液の写真は、測定されたOD600と相関してコンフルエントに増殖した、L.ラクチスに特徴的な典型的な白い球状コロニーを写し出した。当該結果により、装填されたL.ラクチスの生存能力とマスクからの放出された後の増殖能力とが確認された。
【0118】
凍結乾燥したB.メガテリウム装填済みスライスは、マスク表面1cm2において、OD600が1.65±0.02マクファーランド単位であるより高い濁度を示した。TSB寒天培地で増殖したコロニーは、B.メガテリウムとみなされる乳白色の大きく滑らかな不規則なコロニーを示し、装填されたB.メガテリウムの安定性と生存能力を裏付けた。
【0119】
等張混合物が装填されたBNCマスクの再膨潤能力を、いくつかの方法と形態を適用して、室温の水中で調べた。まず、凍結乾燥した装填済みBNCマスクを、当該マスクが完全に再膨潤するまで、ガラスビーカー内で100mLの水で再膨潤させた。すべての方法において、BNCは、室温で10分以内に正常に再膨潤した。
ボルテックスによる装填についても同様の結果が得られた。
【0120】
実験例7:装填されたプロバイオティクスの放出
BNCキャリアからの装填されたプロバイオティクスの放出は、効果部位での効率的な生物活性に不可欠である。したがって、ボルテックスおよび注入法によって調製されたプロバイオティクス装填済みBNCフリースを、対応するブロス培地で培養し、48時間に至るまでの特定時点における放出および増殖プロファイルを評価した。結果は、
図3に示すように、装填されたプロバイオティクスの放出と増殖によって、培地中のプロバイオティクス数が一定に増加することを示している。
【0121】
図3は、ボルテックス(上)および注入(下)装填法の両方を適用した、MRSブロス培地でのL.ラクチス装填済みBNCフリース(左)とTSBブロス培地でのB.枯草菌装填済みBNCフリース(右)の放出プロファイルを示す。結果は、3つの独立した測定値の平均として示され、視覚化目的で最大8時間表示される。
【0122】
図3(上)に示すように、ボルテックス法で装填されたL.ラクチスと枯草菌の両方が、ブロス培地において1時間後にすでに検出可能になっており、その後は5時間に至るまで急速に増殖し、その後は安定して増殖した。対照的に、注入法は、(
図3の下部に示すように)3時間後に検出されたより遅い装填されたプロバイオティクスの放出とその後の規則的な増殖との可能性を提示した。注目すべきことだが、ボルテックス法および注入法で装填された枯草菌は、8時間後のOD
600がそれぞれ、2.5±0.1マクファーランド単位、2.4±0.2マクファーランド単位であり、ボルテックス法および注入法で装填されたL.ラクチスのOD
600(それぞれ、0.44±0.2マクファーランド単位、0.38±0.2マクファーランド単位)と比較して、報告された量が多かった。当該結果は、プロバイオティクスを運搬する適切な担体としてのBNCの効率性を明確に示している。
【0123】
実験例8:凍結乾燥したBNCからのプロバイオティクスの再培養
凍結乾燥したプロバイオティクス装填済みBNCフリース(ボルテックス法、注入法、および噴霧法により、L.ラクチス、枯草菌、およびB.メガテリウムを装填したもの)の安定性を、さまざまな培養時間(1日、1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月)の後、再培養により評価した。凍結乾燥したコントロール(対照)とプロバイオティクス装填済みBNCフリースとを、ブロス培地(L.ラクチスを装填したBNCの場合はMRS、枯草菌を装填したBNCの場合はTSB)で培養した。培養物をオービタルシェーカー培養器内において、100rpmで振とうしながら37℃で8時間培養し、コントロール(対照)培地と比較して光学密度OD
600を測定した。
図4は、ボルテックス法(上)および注入法(下)によって枯草菌が装填された凍結乾燥BNCフリースを、TSBで8時間培養した後、1日、1週間、および1ヶ月保管して得られる培養物中の枯草菌の定量分析を示す。結果を、各サンプルの3つの独立した測定値の平均値±標準偏差として示す。
【0124】
保管期間が6ヶ月であったB.メガテリウムの結果を
図5にまとめている。
図5は、ボルテックス法(上)および注入法(下)によってB.メガテリウムを装填した後凍結乾燥したBNCフリースの培養物を、室温で6ヶ月にわたって保管した場合の定量分析を示す。結果を、3つの独立した測定値の平均値±標準偏差として示す。
B.メガテリウムの結果を表4にまとめている。
【0125】
【0126】
図6は、ボルテックス法(上)および注入法(下)によってL.ラクチスを装填した後凍結乾燥したBNCフリースの培養物を、室温で6ヶ月にわたって保管した場合の定量分析を示す。結果を、3つの独立した測定値の平均値±標準偏差として示す。
【0127】
図7は、MRSブロス培地および生理食塩水等張液にL.ラクチス粉末を懸濁した懸濁液を事前培養せずに使用してボルテックス法により調製されたL.ラクチス装填済みBNCフリースの培養物の定量分析を示す。結果を、各サンプルの3つの独立した測定値の平均値±標準偏差として示す。結果を表5にまとめている。
【0128】
【0129】
さらに、変性BNCフリースのプロバイオティクス(L.ラクチスおよび枯草菌)装填容量を標準BNCフリースと比較し、評価した。
図8は、セルロースを使用した酵素消化後における、標準フリースと比較した、変性BNCフリースに装填されたプロバイオティクスの定量分析を示す。結果を、各サンプルの3つの独立した測定値の平均値±標準偏差として示す。
噴霧による装填についても同様の結果が得られた。
【0130】
実験例9:製造方法および局所適用用プロバイオティクス/シンバイオティクスを含むバクテリアセルロース系製品
局所適用について可能性のある製品には、薄手のマスク、パッチ、三次元(3D)BNC製品:フェイスマスクおよびリップマスク、および生理用品(例:パンティライナー、タンポン、生理用ナプキン)がある。
(マスク、パッチ、またはタンポナーデなどの他の3D製品として)事前に合成されたBNCを、培地またはNaCl/グルコース溶液を装填することにより、また栄養素および技術的補助剤の装填と組み合わせて、調製した。BNC(例えば、マスク)を、ラミナエアフローベンチの滅菌条件下(Heraeus HS 18/2、MRSやTSBなどの50mL培地中)、ガラス瓶に浸した。あるいは、BNCマスクを0.9%NaCl+5%グルコースの等張混合物に浸し、当該装填済みマスクを実験例6に記載されているようにして凍結乾燥および滅菌した。次に、調製したBNCに、さまざまな技術を使って、プロバイオティクスと有効成分栄養素を装填した。
【0131】
噴霧によるBNCマスクの装填
プロバイオティクス(例えば、L.ラクチスおよびB.メガテリウム)を生理食塩水に懸濁させた、濃度が0.5OD600であるプロバイオティクス懸濁液(10mL)を調製した。滅菌ガラス試薬スプレーを使用して、5mLのプロバイオティクス懸濁液をBNC(例えば、マスク)に均一に噴霧した。
【0132】
ボルテックスによるBNCマスクの装填
BNCフリースを、50mL容量チューブ内でプロバイオティクス懸濁液に添加し、各プロバイオティクス株に対して3本のチューブを準備し、BNCフリースを滅菌培地または生理食塩水に添加した。マルチチューブホルダ(SI-V506垂直50mLチューブホルダ)を使用して、室温で10分間、渦強さ10.5でチューブをボルテックスした(Vortexer Genie 2)。装填懸濁液を除去し、BNCを10mLの生理食塩水でボルテックス下、10秒間洗浄した。
【0133】
装填済みBNCマスクの乾燥
プロバイオティクスを装填したBNCマスクを、凍結乾燥機(Epsilon 2-4 lsc Christ)を使用して乾燥した。一緒に凍結乾燥することで、再膨潤能力のための3D構造が確保される。乾燥後のBNCフリースの最適な平面度を確保するために、凍結乾燥時、マスク/パッチを箔の下部と上部の間に置いた。
凍結乾燥機(Epsilon 2-4 LSC、Martin Christ社、ドイツ オステローデ)を使用して、装填済みBNCを、1~6日間、好ましくは3~5日間、残留水分量が3%~14%になるまで凍結乾燥した(水分分析装置;Ohaus MB45、Ohaus Corporation社、米国)。乾燥時にBNCが規定最大残留水分量である14%に達しない場合、再膨潤能力に悪影響を及ぼし、安定性を低下させる可能性がある。
【0134】
包装
再膨潤性(および安定性)を保証するための長期保管(室温、または4℃、または30℃超)では、凍結乾燥した装填済みBNCを、水/湿度がほぼ不浸透性である材料で包む。包装箔用の包装材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アルミニウム(Al)、およびポリエチレン(PE)からなるアルミニウム複合箔であり、例えば、乾燥した装填済みマスクをマスクパック包装材料(例:PET/PE-ws/ALU/PE=12/15/9/50μm)で包み、溶接シーム(Famos)または内部包装箔(PET、50μL)およびマスクパック包装材料を使用して、熱的に閉じる。包装箔用の包装材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アルミニウム(Al)、およびポリエチレン(PE)からなるアルミニウム複合箔(Tesseraux社、ドイツ ビュルシュタット、またはGruber Folien社、ドイツ シュトラウビング)である。
【0135】
製品の使用
BNCマスクを使用する前に、BNCマスクを包装から取り出して、使用前に例えば水で再膨潤させ、使用のためにBNC材料を柔らかくし、プロバイオティクスを再活性化するか、あるいは(抗炎症マスクの場合は)有効成分を含む液体で再膨潤させ、BNCマスクを柔らかくし、プロバイオティクスを再活性化し、プロバイオティクスを活性化する必要がある。
【0136】
実験例10:抗炎症マスク製品:抗炎症的局所使用用にB.メガテリウムを(噴霧技術およびボルテックスにより)装填したBNC
材料:
抗炎症的局所適用用の菌株として、B.メガテリウム属株、特にDSM32963株、DSM33300株、DSM33336株のB.メガテリウムを使用した。さらに、BNCには、約32重量%のL-リジンと約65重量%の多価不飽和脂肪酸、主にエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含む抗炎症性オメガ-3リジン塩(AvailOm(登録商標))を装填した。
【0137】
0.9%NaClおよび5%グルコースの等張混合物を装填する前に、BNCマスクを合成、洗浄、および滅菌した。ラミナエアフローベンチ(Heraeus HS 18/2)の滅菌条件下、25μLのB.メガテリウム凍結保存懸濁液を、滅菌済み250mL容量ガラス三角フラスコ(エルレンマイヤーフラスコ)内で、150mLのTSBブロス培地に添加し、フラスコをコルク栓で閉じ、オービタルシェーカー培養器(Infors HT Multitron Standard)において37℃かつ100rpmで8時間培養した。8時間後、培養物をラミナエアフローベンチ(Heraeus HS 18/2)に移し、培養物を3本×50mL容量遠心分離チューブに分配し、管状遠心分離機(Eppendorf centrifuge 5804R)を使用して室温かつ4000rpmで20分間遠心分離した。上澄みを除去し、沈殿物を、前もって温めておいた(37℃)滅菌等張食塩水(0.9%NaCl)に再懸濁した。光学密度分光光度計(バイオフォトメータ)を使用して、B.メガテリウム懸濁液の光学密度を生理食塩水中で0.5OD600に調整した。
【0138】
ラミナエアフローベンチ(Heraeus HS 18/2)の滅菌条件下、プラスチック製ピンセットを使用して、各マスクを内部包装箔(PET、50μm)上に移した。滅菌ガラス試薬スプレーを使用して、生理食塩水に懸濁したB.メガテリウム懸濁液5mLを、各マスク表面に均一に噴霧することにより、当該懸濁液をマスクに装填した。装填済みマスクを、第2の内部包装箔(PET、50μm)で被覆し、その後、凍結乾燥機(Sublimator 3×4×5、Zirbus technology GmbH社、ドイツ)で最大残留水分量の14%になるまで5日間凍結乾燥した。凍結乾燥後、マスクをマスクパック包装材料で包み、溶接シーム(Famos)を使用して熱的に閉じ、当該包装済み製品を保管した。保管に関する安定性試験を、4℃、室温、30℃、および40℃で実施した。
【0139】
等張混合物およびB.メガテリウムを装填した後凍結乾燥したリップマスクの再膨潤能力および安定性を分析するために、さまざまな温度で6ヶ月間保管した後、前述のようにして、0.9%NaCl+5%グルコースの等張混合物およびプロバイオティクスであるB.メガテリウムをマスクに装填し、次いで凍結乾燥し、アルミニウム複合箔に包んで4℃で保管した。実験例6に記載したようにして、再膨潤能力とB.メガテリウム安定性を評価した。
【0140】
BNCリップマスクの再膨潤能力と、装填されたB.メガテリウムの生存率とを評価するために、30℃と40℃で2ヶ月間保管した後、マスクを室温で10分間20mLの水で再膨潤させた。ラミナエアフローベンチ(Heraeus HS 18/2)の滅菌条件下、マスクを取り出し、各マスクから取った3つのスライス(1×1cm)を、オービタルシェーカー培養器(Infors HT Multitron Standard)において10mLのTSBブロス培地で37℃かつ100rpmで8時間培養した。続いて、定量分析のために得られた培養物の光学密度を測定し、TSB寒天プレート上に広げて定性的に観察した。
【0141】
凍結乾燥して4℃で6ヶ月間、または室温で5ヶ月間保管した後、等張混合物を装填したBNCマスクと、B.メガテリウムを装填したBNCマスクとの再膨潤能力を調べた。その結果、マスクスライスは高い再膨潤能力を維持し、体積の著しい増加を示した。マスクスライスは、7~10分以内に急速に初期形状に戻り、大幅な重量増加(P=0.001から0.019±0.001g~0.27±0.019g)を示し、調製されたBNCマスクの、0.4℃で考慮時間保管されている間の再膨潤能力を確認した。
【0142】
表6は、等張混合物およびB.メガテリウムを装填した後凍結乾燥したリップマスクを、4℃で6ヶ月にわたって保管した際の再膨潤能力をまとめている。乾燥スライスは、4℃で前述の保管期間まで保管された後、再膨潤能力を維持しており、室温の水中で7~10分以内に顕著な重量増加(P<0.05)を示した。時間間隔の間で検出された体重増加について観察された変動はすべて、統計的に有意でなかった(P>0.05)。BNCマスクに装填されたB.メガテリウムの安定性と生存率も、6ヶ月の保管期間後に評価した。装填済みBNCマスクの培養スライスは、標準的培養条件下で顕著な濁度を示し、著しい増殖を示した。
【0143】
表7は、等張混合物およびB.メガテリウムを装填した後凍結乾燥したリップマスクスライスの培養物を、4℃で6ヶ月にわたって保管した場合の定量分析をまとめている。培養スライスも、装填されたB.メガテリウムの顕著な生存率と活性を示し、OD600が1.48±0.24マクファーランド単位でかなりの増殖量を報告した。測定された増殖量におけるP=0.035での顕著な増加は、3ヶ月の保管期間後に検出されており、この増加は、B.メガテリウムの装填数の増加、またはBNCマスク表面へのプロバイオティクス懸濁液の不均一な噴霧に関係している可能性がある。
【0144】
【0145】
再培養後の生存率を試験することによって再膨潤能力と安定性をした。包装時にマスクが十分に乾燥していなかった場合は、真菌の増殖を検出することができた。これは、凍結乾燥手順後にマスクが最大残留含水量である14%まで完全に乾燥された場合には当てはまらなかった。
【0146】
【0147】
適切な凍結乾燥と包装を行った後、室温、30℃、および40℃で保管した場合に、再膨潤能力および生存率に関して同様の結果が得られた。箔での包装は適切であったが、密封された外部箔に包む前に、(前述のとおり)2つの内部箔を使用するとより良い結果が得られた。
【0148】
特異的炎症収束性メディエーター(SPM:specialized pro-resolving mediators)とその前駆体を測定するために、等張混合物およびB.メガテリウムを装填したBNCリップマスクからのサンプルを調製した。2つのBNCリップマスクに、等張混合物およびB.メガテリウムを装填し、次に凍結乾燥し、再膨潤させ、1つ目の凍結乾燥BNCマスクに0.01%のリポソームAvailOm(登録商標)水性懸濁液(1)を装填し、2つ目のマスクに0.01%の粉末AvailOm(登録商標)水溶液(2)を装填した。次に、再膨潤したマスクからのスライスを、TSBブロス培地およびTSB寒天プレートにおいて標準条件で培養した。あるいは、2つのBNCリップマスクにまず等張混合物を装填した。その後、B.メガテリウムを、0.5マクファーランド単位のOD600の濃度で、それぞれ(すなわち、(1)0.01%のリポソームAvailOm(登録商標)水性懸濁液、および(2)0.01%の粉末AvailOm(登録商標)水溶液)に添加した。その後、B.メガテリウム-AvailOm(登録商標)混合物を、1つのマスクに噴霧し、凍結乾燥し、水中で再膨潤させた。再膨潤したマスクからのスライスを、TSBブロス培地およびTSB寒天プレート上で上記のようにして培養した。
【0149】
未装填のBNCマスクからのスライスを、コントロール(対照)として、ブロスTSBおよびTSB寒天で培養した。次に、ブロスTSB培地で培養したスライスとTSB寒天で培養したスライスとの両方を、SPM測定とその前駆体用に調製した。50mL容量チューブ内で、ブロス培地をメタノールで2:1(V/V)に希釈する。培養スライス(2×2cm)を含む寒天を別の50mL容量チューブに移し、8mLのメタノールを添加し、次いで、ブロス培地サンプルと寒天サンプルとの両方を-20℃で60分間冷却し、4500rpmで10分間遠心分離する。最後に、コントロール(対照)として同じ手順を使用して調製された未装填BNCマスクスライスの培養物と比較した、SPMの定量的かつ定性的な分析のために、上澄みを別々のチューブに回収する。
【0150】
BNCリップマスクに装填されたB.メガテリウム-AvailOm(登録商標)混合物からの特異的炎症収束性メディエーター(SPM)およびその前駆体の生成を、ブロス培地と寒天プレートで調べた。B.メガテリウムとともに、AvailOm(登録商標)の両形態であるリポソーム製剤および粉末を、2つの連続経路を用いて、BNCマスクに装填した。第1の方法(A)では、リポソームAvailOm(登録商標)懸濁液または粉末AvailOm(登録商標)溶液を使用して、凍結乾燥したB.メガテリウム装填済みBNCマスクを再膨潤させた。一方、第2の方法(B)では、AvailOm(登録商標)懸濁液/溶液をB.メガテリウムと混合し、凍結乾燥前にBNCマスクに噴霧し、その後、水で再膨潤させた。続いて、B.メガテリウムおよびAvailOm(登録商標)装填し、再膨潤させたBNCリップマスクのスライスを、TSBブロス培地およびTSB寒天プレートで培養し、コントロール(対照)としてのTSB培地およびTSB寒天で培養した未装填BNCマスクスライスと比較して、SPMの生成を測定した。その結果、リポキシゲナーゼ、細胞質型ホスホリパーゼA2、シクロオキシゲナーゼ1または2によって生成されるいくつかの脂質メディエーターが、超高速液体クロマトグラフィー・質量分析装置(UPLC-MS)によって測定された。
【0151】
SPMは、その自然な炎症収束作用で知られている。したがって、上記の結果物として生じる抗炎症マスク/パッチは、皮膚または粘膜の局所抗炎症治療用である。次のSPMが最も顕著に生成された:
17-HDHA(17-ヒドロキシドコサヘキサエン酸)、14-HDHA(14-ヒドロキシドコサヘキサエン酸)、13-HDHA(13-ヒドロキシドコサヘキサエン酸)、7-HDHA(7-ヒドロキシドコサヘキサエン酸)、4-HDHA(4-ヒドロキシドコサヘキサエン酸)、15-HEPE(15-ヒドロキシエイコサペンタエン酸)、12-HEPE(12-ヒドロキシエイコサペンタエン酸)、11-HEPE(11-ヒドロキシエイコサペンタエン酸)、5-HEPE(5-ヒドロキシエイコサペンタエン酸)、15-HETE(15-ヒドロキシエイコサテトラエン酸)、12-HETE(12-ヒドロキシエイコサテトラエン酸)、11-HETE(11-ヒドロキシエイコサテトラエン酸)、8-HETE(8-ヒドロキシエイコサテトラエン酸)、5-HETE(5-ヒドロキシエイコサテトラエン酸)、AA(アラキドン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサン酸)、PD1(プロテクチンD1)、AT-PD1(アスピリント誘発性プロテクチンD1)、PDX(プロテクチンDX)、RvD5(レゾルビンD5)、MaR1(マレシン1)、MaR2(マレシン2)、t-LTB4(トランス-ロイコトリエンB4)、LTB4(ロイコトリエンB4)、20-OH-LTB4(20-ヒドロキシ-ロイコトリエンB4)、PGE2(プロスタグランジンE2)、PGF2a(プロスタグランジンF2アルファ)、TXB2(トロンボキサンB2)、LXA4(リポキシンA4)、AT-LXA4(アスピリン誘発性リポキシンA4)、LXA5(リポキシンA5)、RvD1(レゾルビンD1)、RvD4(レゾルビンD4)。
【0152】
実験例11:黄色ブドウ球菌阻害のための枯草菌含有BNCパッチ/マスク
前述の3つの異なる方法(ボルテックス、噴霧、および注入)で装填を行った。
上澄みを調製するために、B.メガテリウムDSM32963株および枯草菌DSM33561株の最後に培養された各バクテリア懸濁液35mLを、管状遠心分離機(EEppendorf centrifuge 5804R)を使用して、4500rpm、4℃で30分間、50mL容量遠心分離チューブ内で遠心分離した。上澄みを50mLシリンジに回収し、0.2μmのシリンジフィルターを使用して、別の50mL遠心分離チューブにろ過した。
ラミナエアフローベンチ(Heraeus HS 18/2)の滅菌条件下、黄色ブドウ球菌を、OD600が0.1マクファーランド単位の濃度で、30mL容量滅菌ガラス瓶に入ったB.メガテリウムおよび枯草菌の両方を含まないプロバイオティクスフリーの上澄み10mLに添加した。5mLの黄色ブドウ球菌を、OD600が0.1マクファーランド単位の濃度で、30mL容量滅菌ガラス瓶に入ったB.メガテリウムまたは枯草菌懸濁液5mLに添加した。300μg/mLの濃度のゲンタマイシンをTSB培地に添加し、次いでOD600が0.1マクファーランド単位の濃度である黄色ブドウ球菌を添加することによって、ポジティブコントロール(陽性対照)を調製した。瓶をオービタルシェーカー培養器(Infors HT Multitron Standard)で、37℃、100rpmで18時間培養した。18時間後、瓶をラミナエアフローベンチ(Heraeus HS 18/2)に移し、写真を撮った。ループを使用して各ボトルの5μLをTSB寒天に広げ、寒天プレートを37℃で24時間培養し(培養器Heraeus 6000)、寒天プレートの写真を撮った。
【0153】
寒天拡散試験用に、B.メガテリウムと枯草菌のOD600を、滅菌生理食塩水NaCl0.9%を使用して、0.1マクファーランド単位に調整した。黄色ブドウ球菌のOD600を、滅菌生理食塩水NaCl0.9%を使用して、0.5マクファーランド単位に調整した。20μLの黄色ブドウ球菌を、滅菌ガラススプレッダーによってミューラーヒントン(Mueller-Hinton)寒天培地の表面に広げた。1mLピペットチップの裏面を使用して、寒天プレート上でウェルを溶かした。少量のミューラーヒントン寒天培地を沸騰水浴で溶かし、そのうちの100μLを使用して、作成した各ウェルの底を閉じた。ウェルの底で寒天を固化させた後、ネガティブコントロール(陰性対照)としての滅菌生理食塩水NaCl0.9%、ポジティブコントロール(陽性対照)としてのゲンタマイシン300μg/mL、B.メガテリウムまたは枯草菌を含まない上澄み、B.メガテリウムまたは枯草菌懸濁液でウェルを満たした。寒天プレートを37℃で24時間培養し(培養器Heraeus 6000)、その後写真を撮り、阻害ゾーンを特定した。
【0154】
グラム陽性黄色ブドウ球菌に対する枯草菌およびB.メガテリウム装填済みBNCの抗菌活性評価を、寒天拡散試験によって行った。それに伴い、枯草菌および黄色ブドウ球菌のバクテリア懸濁液を、前述のようにしてTSBブロス培地で調製した。枯草菌を含まない上澄みを調製し、ボルテックス法により枯草菌をBNCフリースに装填した。TSB培地に枯草菌を懸濁した懸濁液を3つのBNCフリースを装填し、さらに、生理食塩水に枯草菌を懸濁した懸濁液を3つのBNCフリースに装填した。さらに、枯草菌を含まない上澄みを3つのBNCフリースに装填し、ポジティブコントロール(陽性対照)としてゲンタマイシンを3つのBNCフリースに装填し、ネガティブコントロール(陰性対照)として等張食塩水を3つのBNCフリースに装填した。黄色ブドウ球菌のOD600を、滅菌生理食塩水NaCl0.9%を使用して0.5マクファーランド単位に調整し、光学密度分光光度計(バイオフォトメータ)で測定した。滅菌ガラススプレッダーにより、20μLの黄色ブドウ球菌をミューラーヒントン寒天培地プレートの表面に広げた。最後のコントロール(対照)と装填済みBNCフリースとを、ミューラーヒントン寒天培地の表面に添加した:1.ネガティブコントロール(陰性対照):生理食塩水を装填したBNC、2.ポジティブコントロール(陽性対照):ゲンタマイシンを装填したBNC、3.TSB培地中で枯草菌を装填したBNC、4.生理食塩水中の枯草菌を装填したBNC、5.枯草菌を含まない上澄みを装填したBNC。寒天プレートを37℃で24時間培養し(培養器Heraeus 6000)、その後写真を撮り、阻害ゾーンを特定した。
【0155】
グラム陽性黄色ブドウ球菌に対する各プロバイオティクス(B.メガテリウムおよび枯草菌)の阻害活性を、BNCに装填する前に試験した。枯草菌のみが黄色ブドウ球菌の阻害に有効であった。黄色ブドウ球菌を、次のそれぞれとともに培養した:24時間以上培養して調製したプロバイオティクス懸濁液およびプロバイオティクスを含まない上澄み。共培養試験から得られた結果は、調製した培養物に濁りがあることを示した。増殖した菌株を分類し、阻害効果を検出するために、濁った懸濁液を、プロバイオティクスおよび黄色ブドウ球菌株の各コントロール(対照)とともに寒天プレート上に広げた。寒天プレートの写真は、B.メガテリウムは黄色ブドウ球菌に対する阻害効果がないことを示した。B.メガテリウム懸濁液もB.メガテリウムを含まない上澄みも、黄色ブドウ球菌に対して阻害効果を示さなかった。一方、黄色ブドウ球菌に対する枯草菌DSM33561株の顕著な阻害が検出された。枯草菌コロニーは、試験プレートの表面でのみ観察され、枯草菌懸濁液のプレートと枯草菌を含まない上澄みのプレートの両方において、黄色ブドウ球菌コロニーの増殖は検出されなかった。これらの結果を、寒天ウェル拡散試験によってさらに強化した。B.メガテリウムのプレートは、ゲンタマイシンウェルで阻害ゾーンを示したが、B.メガテリウム懸濁液またはB.メガテリウムを含まない上澄みでは阻害ゾーンは検出されなかった。枯草菌懸濁液は、ウェルで、枯草菌コロニーの増殖に関係する半径0.5±0.1mmの阻害ゾーンを示した。しかし、共培養試験の結果とは対照的に、枯草菌を含まない上澄みは、阻害ゾーンを十分に示しておらず、これはおそらく上澄みの使用量に占める有効分子の濃度の低さに関係している可能性がある。別の枯草菌株では、共培養試験から得られた結果を、標準的な寒天ウェル拡散試験によりさらに強化した。枯草菌を含まない上澄みと枯草菌細胞含有ウェルとの両方の周囲で、顕著な阻害ゾーンを検出することができ、これはウェル端部周囲での顕著な増殖に関連している。
【0156】
バクテリア培養物をBNCに装填した後、グラム陽性黄色ブドウ球菌に対する枯草菌の抗菌活性を2つの標準テスト(共培養試験および寒天ウェル拡散試験)で示した。装填溶液としてのTSBブロス培地および等張食塩水を使用し、ボルテックス、噴霧、および注入法により、プロバイオティクス(枯草菌、B.メガテリウム)をBNCに装填した。黄色ブドウ球菌に対するBNCフリース中の枯草菌の抗菌活性を、BNCフリース周囲のマークされた阻害ゾーンによって表す。当該BNCフリースは、TSBブロス培地および生理食塩水を使用しており、ボルテックス法では3~4mmの阻害ゾーン、噴霧法では5mmの阻害ゾーンが現れ、注入法では阻害ゾーンが現れず、B.メガテリウムについてはいずれの装填方法でも阻害ゾーンは現れなかった。同時に、枯草菌のコロニーがBNCの付近で増殖した。阻害ゾーンは、枯草菌を含まない上澄みを装填したBNCの周囲でも検出され、ボルテックス法では1~3mmの阻害ゾーン、噴霧法では2mmを超える阻害ゾーンが検出された。驚くべきことに、BNC上での枯草菌による阻害に関し、ボルテックスまたは噴霧により装填が行われた場合は、装填された枯草菌DSM33561株の無細胞抽出物の純粋な状態とは対照的に、当該無細胞抽出物も有効であった。結果を表8にまとめている。
【0157】
【0158】
同様の阻害結果が、別の枯草菌株、すなわち枯草菌DSM33353株およびDSM33298株について検出された。
【0159】
実験例12:ラクトバシラス属菌またはラクトコッカス属菌を用いた、女性/膣の健康製品用のBNCにおけるプロバイオティクス
BNCの再膨潤能力とプロバイオティクスの運搬/装填能力を考慮して、単体のプロバイオティクスまたはプロバイオティクスの混合物を、例えばパンティライナーの層、生理用ナプキンの層、もしくはタンポンとして巻いた層として、あるいはタンポンもしくはタンポナーデとしての3次元構造として、BNC(薄層または3D構造)に装填する。装填されたプロバイオティクスは、pHの低減、H2O2の生成、または泌尿生殖系病原体の阻害によって、膣の環境を維持するのを助ける。これらの用途には、次の菌株を使用した:ラクトバシラス・ラムノーサスDSM32609株(Lactobacillus rhamnosus、DSM 32609)、ラクトバシラス・フェルメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバシラス・プランタルムDSM32758株(Lactobacillus plantarum、DSM 32758)、ラクトバシラス・デルブルエッキイー・ブルガリクスDSM32749株(Lactobacillus delbrueckii susp. bulgaricus DSM32749)。
【0160】
平らなBNCと巻きBNCの水中での再膨潤能力の評価
パンティライナー用のタンポンまたは層の形態の製品の場合、4つのBNCフリース(10×10cm)を、0.9%NaCl+5%グルコースの等張混合物400mLに浸し、次いで、前述のようにオートクレーブ処理し、凍結乾燥した。凍結乾燥したBNCフリースを、250mL容量ガラスビーカー内で100mLの水に浸し、室温で10分間再膨潤させ、次に再膨潤したマスクのローリング能力を評価した。第2の凍結乾燥BNCマスクを巻き、250mL容量ガラスビーカー内で100mLの水に10分間浸した。第3の凍結乾燥BNCフリースを巻き、50mL容量チューブに移し、次に20mLの水をチューブに加え、室温で10分間保持した。第4の凍結乾燥BNCフリースを巻き、50mL容量チューブに移し、チューブをペトリ皿にひっくり返した後、20mLの水をペトリ皿に加え、室温で10分間保持した。
【0161】
いくつかの方法と形態を適用して、等張混合物を装填したBNCフリースの再膨潤能力を、室温の水中で調べた。まず、凍結乾燥した装填済みBNCマスクを、ガラスビーカー内で100mLの水で再膨潤させ、10分後、マスクを完全に再膨潤させ、再膨潤後のフレキシビリティーとローリング能力を見た。
【0162】
次に、凍結乾燥した装填済みマスクを巻いた後、ガラスビーカー内の室温の水で10分間完全に再膨潤させた。再膨潤中、マスクは巻きがとれ、10分後に水中で最初の平らな形に戻った。さらに、第3の凍結乾燥した装填済みBNCフリースを巻き、膣腔に類似したチューブを使用して、水中で再膨潤させた。フリースは完全に再膨潤し、チューブ全体を満たしたが、一方、水で満たしたペトリ皿中でひっくり返したチューブ内にフリースを配置すると、巻きがとれることなく、流体と接触しているフリースの下部からゆっくりと再膨潤した。したがって、利用と容易な再膨潤とを可能にするために、平らなBNCフリースまたは巻かれたBNCフリースであって、短くかつ事前に湿らせてあるものが用途に適している。
【0163】
ラクトバシラス属菌株のBNCへの装填
ラクトバチルス属菌およびそれらの混合物の装填、ならびにpH低下は、実施例5に記載されている。ラクトバシラス属菌株を前述のようにして噴霧技術により装填した場合、BNC不織布上でのバクテリア細胞の分布に関し、同様の結果が得られた。
【0164】
L.デルブルエッキイー亜種ブルガリクスDSM32749株については、特にL.プランタルムDSM32758株と組み合わせて、あるいはL.ラムノーサスDSM32609株を含む3株の組み合わせと組み合わせて、女性の健康のために行うのに適していることも示された。この場合、プロトコールは、その好ましい嫌気性培養を構成するようになされた。嫌気性条件下、MRS培地で培養を行った。すべての菌株は、人工膣液(MSVF)中でも増殖することができた。
【0165】
さらに、特に女性の健康に関する潜在力が示された場合(例えば、pH低減、H2O2生成、または病原体(例:尿路病原性大腸菌)の阻害)は、ラクトバシラス属および/またはラクトコッカス種の追加菌株を、製品に単独でまたは組み合わせて使用することができる。
好ましい実施形態では、菌株は、DSM33370株ラクトバシラス・プランタルムLN5(DSM33370 L. plantarum LN5)、DSM33377株ラクトバシラス・ブレビスLN32(DSM 33377 L. brevis LN32)、DSM33368株ラクトバシラス・プランタルムS3(DSM 33368 L. plantarum S3)、DSM33369株ラクトバシラス・プランタルムS11(DSM 33369 L. plantarum S11)、DSM33376株ラクトバシラス・パラカセイS20(DSM 33376 L. paracasei S20)、DSM33375株ラクトバシラス・パラカセイS23(DSM 33375 L. paracasei S23)、DSM33374株ラクトバシラス・ロイテリF12(DSM 33374 L. reuteri F12)、DSM33367株ラクトバシラス・プランタルムF8(DSM 33367 L. plantarum F8)、DSM33366株ラクトバシラス・プランタルムS4(DSM 33366 L. plantarum S4)、DSM33364株ラクトバシラス・プランタルムS28(DSM 33364 L. plantarum S28)、DSM33363株ラクトバシラス・プランタルムS27(DSM 33363 L. plantarum S27)、DSM33373株ラクトバシラス・パラカセイS18a(DSM 33373 L. paracasei S18a)、DSM33365株ラクトバシラス・プランタルムS18b(DSM 33365 L. plantarum S18b)、DSM33362株ラクトバシラス・プランタルムS13(DSM 33362 L. plantarum S13)、DSM32767株ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス(DSM 32767 Lactococcus lactis sups. lactis)、ラクトバシラス・フェルメンタムDSM32750株(L. fermentum DSM 32750)から選択される。
【0166】
実験例13:抗アクネマスク用の、プロピオニバクテリウム・アクネス/キューティバクテリウム・アクネス含有BNCマスク/パッチ
(パッチまたはマスクとしての)グルコース/NaCl調製不織布に、ボルテックスおよび噴霧装填技術により、キューティバクテリウム・アクネスを装填した後凍結乾燥し、実験例9に記載したようにして保管のために包装した。再膨潤および安定性試験は、記載の方法がこの製品用途にも適することを示した。この製品例では、マスク/パッチ適用後の病原性アクネミクロフローラにおけるキューティバクテリウム・アクネスの有益な影響による局所的な抗アクネ適用に着目している。
【0167】
実験例14:皮膚微生物叢のバランスを取り戻す/皮膚微生物叢に影響を与える表皮ブドウ球菌含有BNCマスク/パッチ
(パッチまたはマスクとしての)グルコース/NaCl調製不織布にボルテックスおよび噴霧装填技術により、表皮ブドウ球菌を装填し、続いて凍結乾燥し、実験例9に記載したようにして保管のために包装した。再膨潤および安定性試験は、記載の方法がこの製品用途にも適することを示した。この製品例では、マスク/パッチ適用後の局所的な微生物叢組成に対する表皮ブドウ球菌の有益な影響による皮膚微生物叢の局所的リバランスに着目している。
【国際調査報告】