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特表2022-540421エストロゲン受容体アンタゴニストのレジメン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(54)【発明の名称】エストロゲン受容体アンタゴニストのレジメン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/437 20060101AFI20220908BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220908BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220908BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220908BHJP
   A61K 31/133 20060101ALI20220908BHJP
   A61K 31/565 20060101ALI20220908BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220908BHJP
   A61K 31/427 20060101ALI20220908BHJP
   A61K 31/553 20060101ALI20220908BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220908BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220908BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220908BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220908BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
A61K31/437
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/133
A61K31/565
A61K31/519
A61K31/427
A61K31/553
A61K9/48
A61K9/20
A61K9/08
A61K9/06
A61P15/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022500672
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(85)【翻訳文提出日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 US2020040863
(87)【国際公開番号】W WO2021007146
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】62/871,191
(32)【優先日】2019-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/871,592
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514152004
【氏名又は名称】オレマ ファーマシューティカルズ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ハーモン, サイラス エル.
(72)【発明者】
【氏名】クシュナー, ピーター ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】マイルス, デイビッド シー.
(72)【発明者】
【氏名】ギャラガー, レスリー ホッジズ
(72)【発明者】
【氏名】サン, リチャード
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA22
4C076AA36
4C076AA53
4C076CC27
4C076FF70
4C084AA19
4C084MA17
4C084MA23
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA81
4C084ZB26
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC82
4C086CB05
4C086CB22
4C086DA09
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA10
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA23
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA03
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA37
4C206MA43
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA81
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
がんの治療に使用するためのエストロゲン受容体アンタゴニストの投与方法が本明細書に提供される。一部の実施形態において、本明細書において提供されるエストロゲン受容体アンタゴニストは、テトラヒドロピリド[3,4-b]インドール化合物である。一部の実施形態において、提供されるアンタゴニストは、完全なエストロゲン受容体アンタゴニストである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エストロゲン受容体1(ESR1)の変異を特徴とするがんに罹患している対象の治療方法であって、前記対象に、化合物1:
【化1】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記変異が、活性化変異である、請求項2に記載の方法。
【請求項3】
がんに罹患している対象の治療方法であって、前記エストロゲン受容体の活性化機能1及び活性化機能2の両方の阻害剤である化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項4】
前記化合物が、化合物1:
【化2】
またはその薬学的に許容されるものである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
がんに罹患している対象の治療方法であって、活性化機能2の阻害剤である化合物及び活性化機能1の阻害剤である二次薬剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項6】
前記化合物が、AZD9496、RAD-1901、ARN-810、エンドキシフェン、フルベストラント、及び化合物1、
【化3】
またはその薬学的に許容される塩から選択されるエストロゲン受容体アンタゴニストである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物が、フルベストラント及び化合物1から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が、化合物1である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記二次薬剤が、CDK4/6阻害剤である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記CDK4/6阻害剤が、パルボコシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブ、レロシクリブ、及びトリラシクリブから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記CDK4/6阻害剤が、パルボコシクリブ及びアベマシクリブから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記二次薬剤が、PIK3CA阻害剤である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記PIK3CA阻害剤が、アルペリシブ及びタセリシブから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記二次薬剤が、mTOR阻害剤である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記mTOR阻害剤が、シロリムス、テムシロリムス、及びエベロリムスから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
脳、骨、肺、または肝臓に転移したがんに罹患している対象の治療方法であって、化合物1:
【化4】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項17】
がんに罹患している対象の治療方法であって、化合物1、
【化5】
またはその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含む組成物の経口投与を含む、前記方法。
【請求項18】
前記対象に投与される前記組成物の量が、30mg/kg以下である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記対象に投与される前記組成物の量が、10mg/kg以下である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記対象に投与される前記組成物の量が、1mg/kg以下である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記対象に投与される前記組成物の量が、0.1mg/kg以下である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が、1日1回、前記対象に投与される、請求項17~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が、週に1回、前記対象に投与される、請求項17~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が、毎月1回、前記対象に投与される、請求項17~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が、単位剤形の形態である、請求項17~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物が、カプセル剤の形態である、請求項17~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物が、錠剤の形態である、請求項17~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が、溶液剤の形態である、請求項17~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が、懸濁液剤の形態である、請求項17~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記がんが、乳癌である、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月7日に出願された米国仮出願第62/871,191号及び2019年7月8日に出願された米国仮出願第62/871,592号の優先権を主張し、それらの各々の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
エストロゲン受容体(ER)は、乳癌を含む様々ながんにおいて重要な役割を果たす。エストロゲン受容体及び/またはその活性を標的とするために、様々な治療が開発された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
エストロゲン受容体アルファ(ERα)、エストロゲン受容体1(ESR1)をコードする遺伝子の野生型及び変異型の両方によってコードされるもの(例えば、活性化変異を含むもの)を含む、エストロゲン受容体を完全に阻害することができる抗エストロゲン剤の必要性が依然として存在する。選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)または分解薬(SERD)は、そのような療法のための特に有用または有望なツールである。エストロゲン受容体は、2つの異なる転写活性化機能(AF1及びAF2)を含む三部分タンパク質である。完全な抗エストロゲン活性は、AF1及びAF2の両方の不活性化を必要とする。エストロゲン受容体1をコードする遺伝子における活性化変異は、エストロゲン不在下でもAF1及びAF2の両方の活性化を可能にする。
【0004】
タモキシフェン、AZD9496、及びARN-810などの以前の療法は、活性化機能の両方を無効にすることができない(すなわち、AF1及びAF2の両方を無効にしない)。このように、エストロゲン受容体を完全に阻害するために、AF1及びAF2の両方を無効にする療法が依然として必要であり、さらに、活性化変異にもかかわらず、エストロゲン受容体を阻害する療法が依然として必要である。本開示は、とりわけ、ある特定の化合物が、単独でまたは他の薬剤と組み合わせて、がんに罹患している患者または対象のための治療として使用されることが可能であり、患者または対象が、エストロゲン受容体1(ESR1)の変異を保有することを立証する。例えば、いくつかの実施形態では、がんに罹患している患者または対象の治療に有用な化合物であって、患者または対象がエストロゲン受容体1(ESR1)の変異を保有する、化合物は、化合物1である。
【化1】
【0005】
いくつかの実施形態では、本開示は、エストロゲン受容体アンタゴニスト及びCDK4/6阻害剤の投与を含む、エストロゲン受容体(ER)に関連するがんに罹患している患者または対象の治療方法を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、本開示は、エストロゲン受容体アンタゴニスト及びPIK3CA阻害剤の投与を含む、エストロゲン受容体(ER)に関連するがんに罹患している患者または対象の治療方法を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態では、本開示は、エストロゲン受容体アンタゴニスト及びmTOR阻害剤の投与を含む、エストロゲン受容体(ER)に関連するがんに罹患している患者または対象の治療方法を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態では、本開示は、がんに罹患している患者または対象の治療方法を提供し、がんは、脳、骨、肺、または肝臓に転移し、方法は、患者または対象に化合物1を投与することを含む。
【化2】
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示は、エストロゲン受容体活性化機能1(AF1)及び/または活性化機能2(AF2)の阻害のための化合物または組成物を評価するためのアッセイシステムを提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、本開示は、がんに罹患している患者を治療するための方法を提供し、方法は、化合物1の経口投与を含む。
【化3】
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】エストロゲンが添加されていないある特定のエストロゲン受容体アンタゴニスト化合物についてのLog[M]の関数としてのエストロゲン応答のパーセントを測定する散布図である。
図1B】エストロゲンが添加されているある特定のエストロゲン受容体アンタゴニスト化合物についてのLog[M]の関数としてのエストロゲン応答のパーセントを測定する散布図である。
図2】複数のエストロゲン受容体アンタゴニストの複数の細胞株にわたるエストロゲン受容体タンパク質の分解を測定するチャートである。
図3A】様々なCDK4/6阻害剤と組み合わせた化合物1のエストロゲン応答の減少パーセントを示す散布図である。
図3B】様々なCDK4/6阻害剤と組み合わせた化合物1のエストロゲン応答の減少パーセントを示す散布図である。
図3C】様々なCDK4/6阻害剤と組み合わせた化合物1のエストロゲン応答の減少パーセントを示す散布図である。
図4A】PIK3CA阻害剤と組み合わせて化合物1で処理した場合の、MCF-7細胞に対するエストロゲン増殖の減少パーセントを示す散布図である。
図4B】PIK3CA阻害剤と組み合わせて化合物1で処理した場合の、MCF-7細胞に対するエストロゲン増殖の減少パーセントを示す散布図である。
図5A】最も一般的なESR1変異を有するAF1阻害に対する化合物1の用量応答を示す細胞株の散布図である。
図5B】最も一般的なESR1変異を有するAF1阻害に対する化合物1の用量応答を示す細胞株の散布図である。
図5C】最も一般的なESR1変異を有するAF1阻害に対する化合物1の用量応答を示す細胞株の散布図である。
図5D】最も一般的なESR1変異を有するAF1阻害に対する化合物1の用量応答を示す細胞株の散布図である。
図5E】最も一般的なESR1変異を有するAF1阻害に対する化合物1の用量応答を示す細胞株の散布図である。
図5F】最も一般的なESR1変異を有するAF1阻害に対する化合物1の用量応答を示す細胞株の散布図である。
図6】様々な用量の化合物1の腫瘍体積の変化を示す散布図である。
図7A】マウスについて、経時的な薬物曝露(ng/ml)を測定する散布図である。
図7B】ラットについて、経時的な薬物曝露(ng/ml)を測定する散布図である。
図7C】イヌについて、経時的な薬物曝露(ng/ml)を測定する散布図である。
図7D】サルについて、経時的な薬物曝露(ng/ml)を測定する散布図である。
図8A】異なる細胞株にわたるエストロゲン濃度の減少を示す散布図である。
図8B】異なる細胞株にわたるエストロゲン濃度の減少を示す散布図である。
図8C】異なる細胞株にわたるエストロゲン濃度の減少を示す散布図である。
図8D】異なる細胞株にわたるエストロゲン濃度の減少を示す散布図である。
図9】Ishikawa子宮内膜癌細胞におけるリガンド非依存性アルカリホスファターゼ活性(AP)を増加させる変異ERを示す棒グラフである。
図10】ERの活性化ドメイン1(AF1)がAP活性に必要であることを示す棒グラフである。
図11】哺乳動物は、ERα及びERβとして知られているERの2つの主要なアイソフォームを発現し、それらの各々が核ホルモン受容体ファミリーのメンバーであることを示す、Patel&Bihani Pharm&Therap 186:1,2018の図1Aの再現である。A)活性化機能1(AF1)ドメイン、DNA結合ドメイン(DBD)、ヒンジ領域、及びリガンド結合ドメイン(LBD)/活性化機能2(AF2ドメイン)を含む、エストロゲン受容体を構成するA-Fドメイン。B)エストロゲン受容体経路に対する内分泌療法(アロマターゼ阻害剤、SERM、及びSERD)の効果。アロマターゼ阻害剤はエストラジオールの合成を阻害することによってERシグナル伝達を防止し、SERMはERに結合して不活性複合体を引き起こすことによってERシグナル伝達を防止し、SERDはERの分解を引き起こすことによってERシグナル伝達を防止する。
図12】E2応答の基本的な機序の変動を示す、Hewitt&Korach Endocrine Rev.39:664-674(June 12,2018)の図3の再現である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以前の方法に関連する問題を克服するエストロゲン受容体(ER)陽性癌型の療法の必要性が存在する。本開示は、とりわけ、エストロゲン受容体アンタゴニストを投与することを含む、エストロゲン受容体、エストロゲン受容体の変異に関連するがんに罹患している患者または対象の治療方法を提供する。いくつかの実施形態では、エストロゲン受容体アンタゴニストは、化合物1:
【化4】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0013】
定義
投与:本明細書で使用する場合、「投与」という用語は、例えば、組成物であるか、組成物に含まれるか、そうでなければ組成物によって送達される薬剤の送達を達成するために、典型的には、組成物を対象または系に投与することを指す。
【0014】
薬剤:本明細書で使用する場合、「薬剤」という用語は、実体(例えば、脂質、金属、核酸、ポリペプチド、多糖類、小分子など、またはその複合体、組み合わせ、混合物もしくは系[例えば、細胞、組織、生物体])、または現象(例えば、熱、電流もしくは電界、磁力もしくは電界など)を指す。
【0015】
アンタゴニスト:本明細書で使用する場合、「アンタゴニスト」という用語は、その存在、レベル、程度、種類、または形態が標的のレベルまたは活性の低下に関連付けられている薬剤または状態を指し得る。アンタゴニストは、例えば、小分子、ポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質、金属、及び/または関連する阻害活性を示す任意の他の実体を含む任意の化学クラスの薬剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、アンタゴニストは、その標的に直接結合する点で、「直接アンタゴニスト」であり得、いくつかの実施形態では、アンタゴニストは、その標的に直接結合する以外の手段によって、例えば、標的の調節因子と相互作用することにより、標的のレベルまたは活性が変化する)その影響を及ぼす点で、「間接アンタゴニスト」であり得る。いくつかの実施形態では、「アンタゴニスト」は、「阻害剤」と呼ばれ得る。
【0016】
関連する:2つのイベントまたは実体は、一方の存在、レベル、程度、種類及び/または形態が他方の存在、レベル、程度、種類及び/または形態と相関している場合、その用語が本明細書で使用されるように、互いに「関連している」。例えば、特定の実体(例えば、ポリペプチド、遺伝子シグネチャ、代謝産物、微生物など)は、その存在、レベル及び/または形態が(例えば、関連する集団全体にわたって)疾患、障害、または状態の発生及び/またはその感受性と相関する場合、特定の疾患、障害、または状態に関連していると考えられる。いくつかの実施形態では、2つ以上の実体は、直接的または間接的に相互作用する場合、互いに物理的に「関連している」ため、それらは互いに物理的に近接している及び/または互いに物理的に近接したままである。いくつかの実施形態では、互いに物理的に関連している2つ以上の実体は、互いに共有結合しており、いくつかの実施形態では、互いに物理的に関連している2つ以上の実体は、互いに共有結合していないが、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁気、及びそれらの組み合わせによって非共有結合的に関連している。
【0017】
生物学的サンプル:本明細書で使用する場合、「生物学的サンプル」という用語は、典型的には、本明細書に記載されるような、関心の生物学的供給源(例えば、組織もしくは生物または細胞培養物)から得られた、または由来するサンプルを指す。いくつかの実施形態では、関心の供給源は、動物またはヒトなどの生物を含む。いくつかの実施形態では、生物学的サンプルは、生物学的組織または生体液であるか、またはこれを含む。いくつかの実施形態では、生物学的サンプルは、骨髄、血液、血液細胞、腹水、組織もしくは細針生検サンプル、細胞含有体液、遊離浮遊核酸、痰、唾液、尿、脳脊髄液、腹腔液、胸水、糞便、リンパ液、婦人科学的流体、皮膚スワブ、膣スワブ、口腔スワブ、鼻腔スワブ、洗液もしくは洗浄液、例えば、管洗浄液もしくは気管支肺胞洗浄液、吸引液、スクレイピング、骨髄標本、組織生検標本、外科手術標本、糞便、他の体液、分泌物、及び/または排泄物、及び/またはそれらからの細胞などであってもよく、またはそれらを含んでもよい。いくつかの実施形態では、生物学的サンプルは、個体から得られた細胞であるか、またはこれを含む。いくつかの実施形態では、得られた細胞は、サンプルが得られる個体由来の細胞であるか、またはこれを含む。いくつかの実施形態では、サンプルは、任意の適切な手段によって関心の供給源から直接得られる「一次サンプル」である。例えば、いくつかの実施形態では、一次生物学的サンプルは、生検(例えば、細針吸引または組織生検)、外科手術、体液(例えば、血液、リンパ、糞便など)の採取などからなる群から選択される方法によって得られる。いくつかの実施形態では、文脈から明らかになるように、「サンプル」という用語は、一次サンプルを処理することによって(例えば、1つ以上の成分を除去することによって、及び/または1つ以上の薬剤を添加することによって)得られる調製物を指す。例えば、半透膜を使用した濾過。そのような「処理されたサンプル」は、例えば、サンプルから抽出されるか、または一次サンプルを、mRNAの増幅もしくは逆転写、ある特定の成分の単離及び/または精製などの技術に供することによって得られる核酸またはタンパク質を含んでもよい。
【0018】
併用療法:本明細書で使用する場合、「併用療法」という用語は、対象が2つ以上の治療レジメン(例えば、2つ以上の治療剤)に同時に曝露される状況を指す。いくつかの実施形態では、2つ以上のレジメンは、同時に投与されてもよく、いくつかの実施形態では、そのようなレジメンは、連続して投与されてもよく(例えば、第1のレジメンの全ての「用量」は、第2のレジメンの任意の用量の投与の前に投与される)、いくつかの実施形態では、そのような薬剤は、重複した投与レジメンで投与される。いくつかの実施形態では、併用療法の「投与」は、1つ以上の薬剤(複数可)またはモダリティ(複数可)を、組み合わせて他の薬剤(複数可)またはモダリティ(複数可)を受ける対象に投与することを伴ってもよい。明確にするために、併用療法は、個々の薬剤が単一の組成物中で一緒に投与される(または必ずしも同時に投与される)ことを必要としないが、いくつかの実施形態では、2つ以上の薬剤、またはその活性部分が、併用組成物中で、またはさらに(例えば、単一の化学複合体もしくは共有結合体の一部として)併用化合物中で一緒に投与されてもよい。
【0019】
剤形または単位剤形:「剤形」という用語が、対象に投与するための活性剤(例えば、治療剤または診断剤)の物理的に別個の単位を指すために使用され得ることを当業者は理解するであろう。典型的には、各このような単位は、所定量の活性剤を含有する。いくつかの実施形態では、そのような量は、関連する集団に投与されたときに所望のまたは有益な転帰と相関すると決定されている投与レジメンに従って投与するのに適切な単位投薬量(またはその全体の部分)である(すなわち、治療投与レジメンと相関する)。当業者は、特定の対象に投与される治療組成物または薬剤の総量が1人以上の主治医によって決定され、複数の剤形の投与を伴い得ることを理解する。
【0020】
投与レジメンまたは治療レジメン:「投与レジメン」及び「治療レジメン」という用語が、典型的には期間で分離された、対象に個別に投与される一連の単位用量(典型的には1回を超える)を指すために使用され得ることを当業者は理解するであろう。いくつかの実施形態では、所与の治療剤は、1回以上の用量を伴い得る推奨される投与レジメンを有する。いくつかの実施形態では、投与レジメンは、それぞれが他の用量から時間的に分離される複数の用量を含む。いくつかの実施形態では、個々の用量は、同じ長さの期間によって互いに分離され、いくつかの実施形態では、投与レジメンは、個々の用量を分離する複数の用量及び少なくとも2つの異なる期間を含む。いくつかの実施形態では、投与レジメン内の全ての用量は、同じ単位用量である。いくつかの実施形態では、投与レジメン内の異なる用量は、異なる量である。いくつかの実施形態では、投与レジメンは、第1の投与量において第1の用量、続いて第1の投与量とは異なる第2の投与量において1つ以上の追加用量を含む。いくつかの実施形態では、投与レジメンは、第1の投与量において第1の用量、続いて第1の投与量と同じ第2の投与量において1つ以上の追加用量を含む。いくつかの実施形態では、投与レジメンは、関連する集団全体にわたって投与されるときに、所望のまたは有益な結果と相関する(すなわち、治療投与レジメンである)。
【0021】
賦形剤:本明細書で使用する場合、「賦形剤」という用語は、例えば、所望の一貫性または安定化効果を提供するか、またはそれに寄与するために、薬学的組成物に含まれ得る非治療剤を指す。好適な医薬賦形剤としては、例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。
【0022】
経口:本明細書で使用する場合、「経口投与」及び「経口的に投与される」という語句は、化合物または組成物の経口投与を指す当該技術分野で理解される意味を有する。
【0023】
非経口:本明細書で使用する場合、「非経口投与」及び「非経口的に投与される」という語句は、通常は注射による、経口及び局所投与以外の投与様式を指す当該技術分野で理解される意味を有し、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、髄腔内、及び胸骨内の注射及び注入を含むが、これらに限定されない。
【0024】
患者または対象:本明細書で使用する場合、「患者」または「対象」という用語は、例えば、実験、診断、予防、化粧品、及び/または治療の目的で、提供される組成物が投与されるか、または投与され得る任意の生物を指す。典型的な患者または対象には、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、及び/またはヒトなどの哺乳動物)が含まれる。いくつかの実施形態では、患者は、ヒトである。いくつかの実施形態では、患者または対象は、1つ以上の障害または状態に罹患しているか、または罹患しやすい。いくつかの実施形態では、患者または対象は、障害または状態の1つ以上の症状を呈する。いくつかの実施形態では、患者または対象は、1つ以上の障害または状態と診断されている。いくつかの実施形態では、患者または対象は、疾患、障害、または状態を診断及び/または治療するためのある特定の療法を受けているか、または受けたことがある。
【0025】
薬学的組成物:本明細書で使用する場合、「薬学的組成物」という用語は、1つ以上の薬学的に許容される担体と共に製剤化される活性剤を指す。いくつかの実施形態では、活性剤は、関連する対象への治療レジメンにおいて投与に適切な単位用量で(例えば、投与されたときに所定の治療効果を達成する統計的に有意な可能性を示すことが実証されている量で)、または異なる、同等の対象において(例えば、特定の疾患、障害もしくは目的の状態のうちの1つ以上の指標の存在下で、または状態もしくは薬剤への以前の曝露などで、対象または目的の系と異なる同等の対象または系において)存在する。いくつかの実施形態では、比較用語は、統計的に関連する差異(例えば、統計的関連性を達成するのに十分な普遍性及び/または大きさの差異)を指す。当業者は、所与の文脈において、かかる統計的有意性を達成するために必要であるか、または十分である差異の程度及び/または普遍性を認識するか、または容易に決定することができるであろう。
【0026】
薬学的に許容される担体:本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、対象化合物をある器官、または身体の一部から別の器官、または身体の別の部分に運ぶまたは輸送することに関与する、液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、または溶媒カプセル化材料などの薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と互換性があり、患者に損傷を与えないという意味で、「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として機能し得る材料のいくつかの例としては、ラクトース、グルコース及びスクロースなどの糖類;トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースなどのセルロース及びその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバター及び坐剤用ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;pH緩衝液;ポリエステル、ポリカーボネート及び/またはポリ無水物、ならびに医薬製剤に用いられる他の非毒性適合物質が挙げられる。
【0027】
薬学的に許容される塩:本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的文脈での使用に適切なかかる化合物の塩、すなわち、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などなしにヒト及び下等動物の組織に接触して使用するのに好適であり、合理的な利益対危険比に見合った塩を指す。薬学的に許容される塩は、当技術分野で周知である。例えば、S.M.Bergeらは、J.Pharmaceutical Sciences,66:1-19(1977)に薬学的に許容される塩を詳細に記載している。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される塩としては、非毒性酸添加塩が挙げられるが、これらに限定されない。非毒性酸添加塩は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、及び過塩素酸などの無機酸で、または酢酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、もしくはマロン酸などの有機酸で、またはイオン交換などの当技術分野で使用される他の方法を使用することによって形成されるアミノ基の塩である。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される塩としては、これらに限定されないが、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される塩としては、適切な場合、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、1~6個の炭素原子を有するアルキル、スルホン酸塩、及びアリールスルホン酸塩などの対イオンを使用して形成される非毒性アンモニウム、四級アンモニウム、及びアミンカチオンが挙げられる。
【0028】
治療剤:本明細書で使用する場合、「治療剤」という用語は、一般に、生物に投与されるときに所望の薬理学的効果を誘発する任意の薬剤を指す。いくつかの実施形態では、薬剤は、適切な集団全体にわたって統計的に有意な効果を示す場合、治療剤とみなされる。いくつかの実施形態では、適切な集団は、モデル生物の集団であり得る。いくつかの実施形態では、適切な集団は、ある特定の年齢層、性別、遺伝的背景、既存の臨床状態などの様々な基準によって定義されてもよい。いくつかの実施形態では、治療剤は、疾患、障害、及び/または状態のうちの1つ以上の症状もしくは特徴を軽減、改善、緩和、阻害、予防、発症を遅延、重症度を低減、及び/または発症率を低減するために使用することができる物質である。いくつかの実施形態では、「治療剤」は、ヒトへの投与のために市販され得る前に、政府機関によって承認されているか、または承認される必要がある薬剤である。いくつかの実施形態では、「治療剤」は、ヒトへの投与に医薬処方箋が必要な薬剤である。
【0029】
治療する:本明細書で使用する場合、「治療する」、「治療」、または「治療すること」という用語は、疾患、障害、及び/または状態のうちの1つ以上の症状もしくは特徴を部分的もしくは完全に軽減、改善、緩和、阻害、予防、発症を遅延、重症度を低減、及び/または発症率を低減するために使用される任意の方法を指す。治療は、疾患、障害、及び/または状態の兆候を示さない対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、治療は、例えば、疾患、障害、及び/または状態に関連する病状を発症するリスクを低下させる目的で、疾患、障害、及び/または状態の早期兆候のみを示す対象に投与されてもよい。
【0030】
治療有効量:本明細書で使用する場合、「治療有効量」という用語は、治療レジメンの一部として投与されるときに所望の生物学的応答を誘発する物質(例えば、治療剤、組成物、及び/または製剤)の量を指す。いくつかの実施形態では、物質の治療有効量は、疾患、障害、及び/または状態に罹患している、または罹患しやすい対象に投与したときに、疾患、障害、及び/または状態の発症を治療、診断、予防、及び/または遅延させるのに十分な量である。当業者であれば理解するように、物質の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、送達される物質、標的細胞または組織などの要因に応じて変化し得る。例えば、疾患、障害、及び/または状態を治療するための製剤中の化合物の有効量は、疾患、障害、及び/または状態のうちの1つ以上の症状もしくは特徴を軽減、改善、緩和、阻害、予防、発症を遅延、重症度を低減及び/または発症率を低減する量である。いくつかの実施形態では、治療有効量は、単回用量で投与され、いくつかの実施形態では、治療有効量を送達するために複数の単位用量が必要である。
【0031】
エストロゲン受容体
エストロゲン受容体(「ER」)は、例えば、女性の生殖系の発達、骨量の維持、心血管及び/または中枢神経系成分の保護などに関連する様々な生物学的プロセスに関与している(例えば、Pearce&Jordan Crit.Rev.Onc/Hem 50:3,2004、Heldring Phys Rev.87:905,2007を参照されたい)。
【0032】
哺乳動物は、ERα及びERβとして知られている、ERの2つの主要なアイソフォームを発現し、それらの各々は、核ホルモン受容体ファミリーのメンバーであり、Patel&Bihani Pharm&Therap 186:1,2018の図1Aに示されるような構造組織を有する。これを図11に再現する。図11に示すように、A)活性化機能1(AF1)ドメイン、DNA結合ドメイン(DBD)、ヒンジ領域、及びリガンド結合ドメイン(LBD)/活性化機能2(AF2ドメイン)を含む、エストロゲン受容体を構成するA-Fドメイン。B)エストロゲン受容体経路に対する内分泌療法(アロマターゼ阻害剤、SERM、及びSERD)の効果。アロマターゼ阻害剤は、エストラジオールの合成を阻害することによってERシグナル伝達を防止し、SERMは、ERに結合して不活性複合体を引き起こすことによってERシグナル伝達を防止し、SERDは、ERの分解を引き起こすことによってERシグナル伝達を防止する。
【0033】
図に示すように、A-Fと標識された6つのER「ドメイン」が、ER構造において定義されている。ERタンパク質のアミノ末端に見出されるドメインA/Bは、最大ドメインであり、2つのいわゆる「転写活性化機能」エレメントのうちの1つであるAF1を含み、AF2は、Eドメインに見出され、これは、ER二量体化及び核局在化に関与すると考えられるリガンド結合ドメイン及びエレメント(複数可)も含む(例えば、Hewitt&Korach Endocrine Rev 39:664,2018を参照されたい)。リガンド結合ドメインへのリガンドの結合は、Eドメイン内のアルファ-ヘリックスの構造的再編成を引き起こすと考えられており、この再編成は、AF2の活性(例えば、ある特定のメディエーター成分との相互作用において)に寄与し得る。
【0034】
ERのCドメインは、そのDNA結合ドメインを含み、これは、転写がERによって調節される遺伝子と作用可能に関連しているいわゆる「エストロゲン応答性エレメント(複数可)」(ERE(複数可))との相互作用を媒介する。ERα及びERβは、異なるERE関連遺伝子の発現を調節し、異なる細胞及び組織分布パターンを示す。ERによるDNA結合は、Cドメイン内の2つのジンクフィンガー構造によって媒介されるように思われるが、追加のエレメント(複数可)が寄与し得る(例えば、Hewitt&Korach Endocrine Rev 39:664,2018を参照されたい)。ERのCドメインはまた、ER二量体化に関与し得、そうでなければER二量体化に寄与し得る。
【0035】
ERのDドメインは「ヒンジ領域」とも呼ばれ、ERの二量体化及び/または核局在化に関与し得るアミノ酸エレメント(複数可)を含む。
【0036】
ERのFドメインは、ERタンパク質の安定性において役割を果たし得る。このドメインは、他の核受容体ファミリーメンバーと比較して、エストロゲン受容体の特徴であるように見え、ある特定の療法(例えば、タモキシフェン)に対する応答性に寄与し得る(例えば、Arao et al,J.Bio.Chem 293:22,8495を参照されたい)。
【0037】
天然リガンド(例えば、17β-エストラジオール)の存在下で、ERは、立体構造変化を受け、ホモ二量体化し、核に局在し、そこでEREに結合し、その標的遺伝子の転写を調節する(例えば、Pawlak et al.、Kumar&Chambor、Hall&McDonnellを参照されたい)。この一連の事象は、ER遺伝子調節の「ゲノム」機構として記載されている。「テザー」、「非ゲノム」、及び「リガンド非依存性」などの他の機構もまた、Hewitt&Korachの図3に示されるように記載されている。これを図12に再現する。
【0038】
図12に示すように、Hewitt&Korachによって報告されているE2応答の基本的な機能の変化。4つの異なるE2応答機構が記載されている。(1)ゲノム機構は、ERとERE DNAモチーフとの相互作用を含む。(2)テザー機構は、ERと、FOS/JUN二量体を結合するAP1 DNAモチーフなどの、他の転写調節因子との間の間接的な相互作用を含む。したがって、ERは、本実施例では、そのAP1 DNAモチーフへのFOS/JUN結合を介してDNAに「テザーされる」。(3)非ゲノムシグナル伝達は、細胞外E2からシグナルを開始し、これが細胞質内の急速なシグナルカスケードにつながるため、そう呼ばれ、したがって、この応答は、ゲノム特徴との相互作用を伴わない。この応答は、膜関連ER、またはGタンパク質共役受容体であるGPERによって媒介される。(4)リガンド非依存性シグナル伝達は、MAPKなどのシグナル伝達カスケードを開始する細胞膜GF受容体(GFR)の細胞外増殖因子(GF)活性化のトランスダクションを伴う。このシグナルは、ERによって受信され、E2リガンドを欠くにもかかわらず、標的遺伝子のその転写調節を活性化する。
【0039】
ERは様々ながんに関与している。エストロゲン受容体を発現する多くの腫瘍(すなわち、ER腫瘍)において、活性ERαシグナル伝達は、細胞増殖を引き起こすことが実証されている(ただし、ERβシグナル伝達は、腫瘍抑制効果を達成することができることが報告されている;例えば、Nilsson&Gustafson Clin.Pharmacol.Ther.89:44,2011を参照されたい)。典型的には、ERで陽性に染色された細胞のわずか1%の腫瘍(例えば、乳房腫瘍)は、「ER」として分類される。
【0040】
ERを標的とする療法は、ER腫瘍を有する多くの患者の標準的な治療である(例えば、Cardoso et al Annals Onc.https://doi.org/10.1093/announc/mdmx036,2017、Rugo et al.J.Clin.Oncol.34:3069,2016、Senkus et al Annal Onc.26:v8,2015、Sareddy&Vadlamudi Clin.J Nat.Med,13:801,2015を参照されたい)。例えば、早期乳癌患者のために、推奨される療法は、典型的には、腫瘍切除、続いてER標的化療法(例えば、以下で考察される)を伴う。転移性乳癌を含む進行性乳癌については、ER標的化療法が主である。
【0041】
エストロゲン受容体標的化療法
多くのがん、及びある特定の心血管疾患、炎症性疾患、及び神経変性疾患におけるERシグナル伝達の重要性を考慮すると、ERを標的とする治療剤及びモダリティの開発に大きな努力が投じられている。ER標的化薬剤を記述するために使用されている用語にはある程度の流動性/柔軟性があるが、異なる機構を有する様々な薬剤が開発及び/または研究されている。
【0042】
いくつかのER標的化薬剤は、エストロゲン(すなわち、17βエストラジオール)産生のレベルを低減させるように設計及び/または立証されている。
【0043】
いくつかのER標的化薬剤は、ERに直接結合するように設計及び/または立証されており、いくつかの場合では、そのような薬剤は、ERへの結合についてエストロゲンと競合する、及び/またはエストロゲン結合が自然に生成するアロステリック変化を妨げる。多くの場合、「抗エストロゲン」という用語は、ERに結合する薬剤を指すために使用され、場合によっては、ER結合についてエストロゲンと競合する薬剤を示すために具体的に使用される。
【0044】
「選択的エストロゲン受容体モジュレーター」(「SERM」)という用語を使用して、ER活性のいくつかの態様を変化させるように設計及び/または立証される化合物を指している。いくつかの記述では、特定の種類の抗エストロゲンを表すものとして「SERM」を指し、しかしながら、他の記述は、より一般的に、「SERM」という用語を使用して、ER(特にERα)発現及び/または活性のいくつかの特徴に具体的に影響を与える化合物を指している。
【0045】
「選択的エストロゲン受容体分解薬」(「SERD」)という用語を使用して、ERの分解を誘発または増強するように設計及び/または立証された化合物を指している。多くの場合、化合物の存在がERのレベルの低減と相関する場合、化合物は、SERDと呼ばれてよい。いくつかの記述では、化合物をSERMまたはSERDのいずれかとして分類し、他の記述は、SERDを、SERMである化合物の特定の種類または種と呼んでいる。
【0046】
特定の薬剤の作用機序にかかわらず、これまでの臨床経験により、不完全な効果(例えば、個々の患者内及び/または患者集団全体にわたる)及び/または耐性発現が依然として問題のままであることが明らかにされてきた。
【0047】
とりわけ、ある特定のER変異の存在または発現は、様々なER標的化療法の有効性に影響を与えることが報告されている(例えば、Jeselsohn et al Nature Rev.Clin.Onc.12,573,2015、Gelsomino et al.Breast Cancer Res.Treat 157:253,2016、Toy et al.2013を参照されたい)。いくつかの特に問題のある変異は、ER発現及び/または機能のうちの1つ以上の態様を「活性化する」変異であり、いくつかの活性化変異は、ERリガンド非依存性(すなわち、構成的活性型)にし得ることが報告されている。例えば、D538G及びY537Sを含む、ERリガンド結合ドメインにおける特定の変異は、ERを構成的に活性化することが実証されており、リガンド結合ドメインを除去する欠失及び/または融合を含む他の変異は、同様の効果を有し得る(例えば、Li et al.Cell Repts 4:1116,2013、Veeraraghavan et al Breast Cancer Research and Treatment 158,219-232,2016、Veeraraghavan,et al.Nature Comms 5:4577,2014を参照されたい)。いくつかの報告は、転移性乳癌を有する女性の最大50%が、循環腫瘍DNAで検出可能な活性化ER変異を有し得ることを示している。
【0048】
エストロゲン受容体アンタゴニスト
上述したように、ERを標的とする効果的な療法を追求するために、莫大な投資が行われており、現在も継続されている(例えば、Patel&Bihani Pharmacol.&Therap.186:1,2018で概説されている)。
【0049】
臨床開発中の最も進歩した化合物には、以下のものがある。
a.重要な乳癌治療薬であるタモキシフェンは、「世界中の50万人の女性の命を救った」と評価されている(「Bringing the Investigational Breast Cancer Drug Endoxifen From Bench to Bedside with NCI Support」を参照されたい。https://www.cancer.gov/news-events/cancer-currents-blog/2017/endoxifen-breast-cancer-NCI-support(最終アクセス日:2019年7月7日)で入手可能であるが、CYP2D6活性が低い女性にはあまり効果がなく、耐性が発現しやすいことが知られている)。
b.タモキシフェンの活性代謝産物であるエンドキシフェンは、元々、CYP2D6活性の低い女性におけるタモキシフェンの不調に対処するために開発されたもので、タモキシフェンをエンドキシフェンに変換する能力を低減させる(Cancer Currents Blog,National Cancer Institute,August 31,2017を参照されたい)。
c.ARN-810(ブリラネストラント、GDC-810)、「タモキシフェン感受性及び耐性ER+BC異種移植片モデルにおける腫瘍退縮を誘発する、新規で強力な、非ステロイド性、経口的に生体利用可能な、選択的ERアンタゴニスト/ER分解薬」と記載されてきた(Dickler et al.Cancer Res.75(15 Suppl):Abstract nr CT231,2015を参照されたい)、これは、他のホルモン剤に失敗したが、その後さらなる成長が低下した可能性があるER+乳癌患者の治療のための第II相臨床試験に持ち込まれた(例えば、Biospace April 27,2017を参照されたい)。
d.AZD9496は、「エストロゲン受容体アルファ(ERα)の経口非ステロイド性低分子阻害剤、及びERαの強力かつ選択的アンタゴニスト及び分解薬」として記載されている(Hamilton et al Clin Cancer Res 1:3519,2018を参照されたい)。AZD9496は、「内分泌感受性及び内分泌耐性モデルの両方において抗腫瘍活性を有するアンタゴニ[ze]及びディグレイド[e]ER」として報告されており、「ERの拮抗及び内分泌耐性の回避においてフルベストラントに匹敵する」として記載されている(Nardone et al.Br.J.Cancer 120:331,2019を参照されたい)。
e.RAD-1901(エラセストラント)は、「ER+進行性乳癌の重度前処置患者において単剤活性を実証した新規の非ステロイド性経口SERD」として記載されている(de Vries et al,Cancer Res.Abstract P1-10-04,2018を参照されたい。Bardia et al.J.Clin.Onc.35:15_suppl,1014,2017も参照されたい)。また、前臨床研究では、「エラセストラントは、Y537SまたはD538G変異を有するもの、ならびにフルベストラント及びタモキシフェンに非感受性であったモデルを含む、ESR1変異を有する異種移植片モデルの増殖を有意に阻害した」と報告されている(Patel et al.Cancer Res 79:Abstract nr P6-20-08,2019を参照されたい)。
f.フルベストラント(Faslodex(商標))は、FDAの承認を得た最初のSERDであり、パルボシクリブまたはアベマシクリブとの併用を含むある特定のER+がんの治療に承認されている。フルベストラントは、「エストロゲン受容体(ER)に結合し、ブロックし、分解し、ERを介したエストロゲンシグナル伝達の完全な阻害をもたらす選択的エストロゲン受容体分解薬」である(Nathan&Schmid Oncol Ther 5:17,2017を参照されたい)。フルベストラントは、臨床的に著しい成功を収めており、しばしば、ER標的化療法が比較される「ゴールドスタンダード」であると考えられている。しかしながら、フルベストラントは、経口ではなく注射によって投与され、実際には(初回投与後)月に1回の筋肉内注射による500mgの投与を必要とする。また、ある特定のレトロスペクティブ分析は、フルベストラントがER変異体を有する患者の治療においてある程度有用性を有する可能性があるという希望を提供したが、活性の確証を獲得していない(例えば、Fribbens et al.J Clin Oncol.34:2961,2916、Spoerke et al.Nat Commun 7:11579,2016を参照されたい)。
【化5】
【0050】
本開示は、フルベストラントの成功が、(1)AF1及びAF2の両方を阻害し、その結果、構成的に活性なER変異体に存在し続けるAF1活性を阻害することができ、(2)ER分解を促進し、(3)ある特定の他の薬剤で観察される部分的ERアゴニスト活性が欠如している(例えば、とりわけ、図1Aを参照されたい。図1Aは、エストロゲンがそこに存在するときにER活性を低減させながらも、ARN-810、AZD-9496、及びエンドキシフェンの各々が、追加されたエストロゲンの不在下でER活性を増加させることを立証している)。例えば、エストロゲン産生を制限する療法(例えば、アナストロゾール)または部分的アンタゴニスト(例えば、タモキシフェン)と比較して、フルベストラントは、優れた活性を示し、ホルモン受容体陽性局所進行性または転移性乳癌を有する患者にとって好ましい治療選択肢である。Robertson,et al.The Lancet,388(10063):2997-3005(Dec.17,2016)を参照されたい。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、フルベストラントがAF1及びAF2の両方を阻害する能力は、ER複合体へのコリプレッサーのその動員に起因し得ることが提案される。
【0051】
それにもかかわらず、本開示は、例えば、ARN-810、AZD9496、タモキシフェン、及びその他を含む多くの他の化合物が、少なくとも一部は、ERを部分的に拮抗するだけであり、具体的には、AF2の活性化を阻害するが、AF1を阻害しないため、フルベストラントよりも効果が低いことをさらに理解する。
【0052】
本開示は、前述の化合物、(1R,3R)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-3-メチル-1-(4-((1-プロピルアゼチジン-3-イル)オキシ)フェニル)-2,3,4,4a,9,9a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール(「化合物1」、その全体が参照により本明細に組み込まれている、PCT出願公開第2017/059139号を参照されたい)が、
【化6】
フルベストラントのCERAN属性と一致し、さらに、(i)経口的に生物学的に利用可能であり、長い半減期を有すること、及び(ii)良好な血液脳関門の貫通を示すことを含むさらなる貴重な特性を提供する、重要で予想外の洞察を提供する。とりわけ、本開示は、化合物1が、(a)リガンド非依存性/構成的変異を含む、ER変異に関連するがんの治療、(b)CNS(例えば、脳)転移または腫瘍を伴うがんの治療、(c)フルベストラントで有用であることが示されているか、または提案されているある特定の薬剤を含む、ある特定の他の薬剤との併用を含む、ある特定の文脈において一意に有用であることを実証する。
【0053】
例えば、とりわけ、本開示は、化合物1が完全なエストロゲン受容体拮抗作用を示すこと、さらに、そのような拮抗作用が様々なアッセイにおいてフルベストラントに匹敵することの発見を報告する。とりわけ、実施例4に報告されているように、本開示は、化合物1がAF1及びAF2を阻害する能力を特徴とし、したがって、「完全なエストロゲン受容体アンタゴニスト」として適切に記載されていることを実証する。
【0054】
本開示は、化合物1が具体的にはリガンド非依存性ER変異体を含む1つ以上のER変異体の存在に関連する疾患、障害、または状態(例えば、がん)の治療に特に有用であり得るか、または有効であり得ることを教示する。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、化合物1が1つ以上のER、及び特定の1つ以上のリガンド非依存性ERを発現する(例えば、関連する細胞または組織中で)対象に投与される治療方法を提供し、いくつかの実施形態では、そのような対象(複数可)は、投与前にそのような変異ER(複数可)を発現することが実証されている。
【0055】
当業者は、対象からのサンプル中の変異ERの検出を可能にする様々な技術を認識するであろう。いくつかの実施形態では、変異ERタンパク質が検出され、いくつかの実施形態では、変異タンパク質(例えば、変異ESR1遺伝子)をコードする核酸が検出される。
【0056】
AF1及びAF2の両方を阻害する化合物1の能力は、エストロゲン受容体(例えば、ESR1)の活性化変異にもかかわらず、化合物1がCERANとして機能することを可能にする。
【0057】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、がんに罹患している対象(または対象の集団)の治療方法を提供し、対象はESR1変異を保有し(及び/または変異ERタンパク質を発現している)、方法は、対象に化合物1、
【化7】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0058】
ERアンタゴニストの評価
とりわけ、本開示は、有用なERアンタゴニスト剤が、本明細書に記載されるようなCERAN活性を有するものであることを教示する。
【0059】
本開示の一態様は、ERアンタゴニスト(及び/または潜在的なアンタゴニスト)剤を評価または特徴付けるための従来の戦略が、少なくともそれらが典型的にはSERDとCERANとを区別しなかったという点で不十分であったという洞察である。特に、ほとんどのそのような従来の戦略は、AF1に特異的に影響を与える薬剤の能力を評価しなかった。
【0060】
とりわけ、本開示は、特に有用なERアンタゴニスト剤が、リガンド非依存性ER活性を阻害することができるものであることを教示し、いくつかの実施形態では、例えば、AF2欠失もしくは切断、及び/またはLBD変異体(例えば、D538G及びY537S)などの構成的ERバリアント(複数可)で観察される活性を含む。
【0061】
さらに、本開示は、特に有用なERアンタゴニスト剤が、
a.AF1の阻害(例えば、少なくとも1つ、好ましくは全ての既知の構成的ERバリアントの阻害)
b.AF2の阻害(例えば、リガンド依存性ER活性の阻害)
c.ER分解の促進、のそれぞれを特徴とすることを教示する。
【0062】
さらに、いくつかの実施形態では、特に有用なERアンタゴニスト剤は、
a.経口バイオアベイラビリティ及び長い半減期。
b.血液脳関門の貫通、のうちの1つ以上をさらに特徴とする。
【0063】
特定の実施形態では、ERアンタゴニスト剤(複数可)の活性は、ARN-810、AZD9496、エンドキシフェン、フルベストラント、RAD1901、タモキシフェン、及び/または化合物1のうちの1つ以上の活性と比較して評価されてもよく、いくつかのかかる実施形態では、比較は、同時に行われるか、あるいは、いくつかの実施形態では、履歴記録または将来の結果と比較されてもよい。
【0064】
併用療法
本開示はさらに、AF1及びAF2の両方の阻害剤として機能する化合物1の独自の能力により、ある特定の併用療法における使用が特に魅力的になるという洞察を提供する。図3A~3B(CDK4/6阻害剤について)及び図4A~4B(PIK3CA阻害剤について)に示すように、化合物1、エストロゲン受容体アンタゴニスト、及び実際には完全なエストロゲン受容体アンタゴニストは、二次薬剤と組み合わせて、細胞増殖を実質的に排除することができる。本開示は、ある特定の薬剤の組み合わせが、AF1及びAF2の両方を不活性化することによって、エストロゲン受容体を完全に拮抗するために有益に使用され得るという認識を包含する。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、がんに罹患している対象の治療方法であって、活性化機能2の阻害剤である化合物及び活性化機能1の阻害剤である二次薬剤を投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、化合物は、AZD9496、RAD-1901、ARN-810、エンドキシフェン、フルベストラント、及び化合物1から選択されるエストロゲン受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、化合物は、フルベストラント及び化合物1から選択される。
【0065】
いくつかの実施形態では、本開示は、がんに罹患している患者または対象の治療方法を提供し、方法は、化合物1、及びCDK2、CDK4、CDK6、またはCDK7阻害剤から選択される二次薬剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、二次薬剤は、CDK2阻害剤である。いくつかの実施形態では、二次薬剤は、CDK4阻害剤である。いくつかの実施形態では、二次薬剤は、CDK6阻害剤である。いくつかの実施形態では、二次薬剤は、CDK7阻害剤である。いくつかの実施形態では、二次薬剤は、CDK4/6阻害剤(すなわち、CDK4及びCDK6の一方または両方を阻害する)である。いくつかの実施形態では、二次薬剤は、CDK2/4/6阻害剤(すなわち、CDK2、CDK4及びCDK6のうちの1つ以上を阻害する)である。
【0066】
いくつかの実施形態では、二次薬剤は、パルボコシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブ、レロシクリブ、トリラシクリブ、及びSHR6390から選択されるCDK4/6阻害剤である。いくつかの実施形態では、CDK4/6阻害剤は、パルボコシクリブである。いくつかの実施形態では、CDK4/6阻害剤は、リボシクリブである。いくつかの実施形態では、CDK4/6阻害剤は、アベマシクリブである。いくつかの実施形態では、CDK4/6阻害剤は、レロシクリブである。いくつかの実施形態では、CDK4/6阻害剤は、トリラシクリブである。いくつかの実施形態では、CDK4/6阻害剤は、SHR6390である。
【0067】
いくつかの実施形態では、本開示は、がんに罹患している患者または対象の治療方法を提供し、方法は、化合物1及び二次薬剤を投与することを含み、二次薬剤は、PIK3CA阻害剤である。いくつかの実施形態では、PIK3CA阻害剤は、アルペリシブ、タセリシブ、及びLY3023414から選択される。いくつかの実施形態では、PIK3CA阻害剤は、アルペリシブである。いくつかの実施形態では、PIK3CA阻害剤は、タセリシブである。いくつかの実施形態では、PIK3CA阻害剤は、LY3023414である。
【0068】
いくつかの実施形態では、本開示は、がんに罹患している患者または対象の治療方法を提供し、方法は、化合物1及び二次薬剤を投与することを含み、二次薬剤は、mTOR阻害剤である。いくつかの実施形態では、mTOR阻害剤は、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、及びLY3023414から選択される。いくつかの実施形態では、mTOR阻害剤は、シロリムスである。いくつかの実施形態では、mTOR阻害剤は、テムシロリムスである。いくつかの実施形態では、mTOR阻害剤は、エベロリムスである。いくつかの実施形態では、mTOR阻害剤は、LY3023414である。
【0069】
投与
本開示は、ある特定の障害または状態、例えば、がんが、類似の活性の他の化合物よりも少ない量の活性化合物を使用して効果的に治療され得るという認識を包含する。例えば、図6に示すように、化合物1は、他のCERAN、例えば、フルベストラントよりも効率的に腫瘍体積を低減させることが見出された。さらに、化合物1は、非経口投与される必要がある他のCERAN、例えば、フルベストラントよりも有利である経口投与に好適である。
【0070】
したがって、本開示は、がんに罹患している患者または対象の治療方法を提供し、方法は、化合物1を含む組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、化合物1及び薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤を含む。前述の組成物は、治療される状態の重症度に応じて、経口的、非経口的に、吸入または経鼻スプレーによって、局所的(例えば、粉末剤、軟膏、または点滴薬によって)、直腸的、口腔内、膣内、腹腔内、嚢内、または埋め込まれたリザーバを介して投与されてもよい。好ましくは、組成物は、経口、腹腔内、または静脈内投与される。ある特定の実施形態では、提供される化合物は、所望の治療効果を得るために、1日1回以上、1日当たり対象の体重の約0.01mg/kg~約50mg/kg、投与量レベルで経口または非経口投与される。
【0071】
本明細書に記載される薬学的に許容される組成物は、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液剤または溶液剤を含むが、これらに限定されない、任意の経口的に許容される剤形で経口投与され得る。このような固体剤形では、活性化合物は、ショ糖、ラクトースまたはデンプンなどの少なくとも1つの不活性希釈剤と混合されてもよい。そのような剤形はまた、通常の慣行として、不活性希釈剤以外の追加の物質、例えば、ステアリン酸マグネシウム及び微結晶セルロースなどの潤滑剤及び他の錠剤化助剤を含んでもよい。経口使用のために水性懸濁液剤が必要な場合、有効成分を乳化剤及び懸濁剤と組み合わせる。所望される場合、ある特定の甘味剤、香味剤、または着色剤も添加され得る。
【0072】
経口投与のための固体剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末剤、及び顆粒剤が挙げられる。このような固体剤形では、活性化合物は、少なくとも1つの不活性で薬学的に許容される賦形剤または担体、例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、及び/またはa)デンプン、ラクトース、ショ糖、グルコース、マンニトール、及びケイ酸などの充填剤または増量剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、ショ糖、及びアカシアなどの結合剤、c)グリセロールなどの保湿剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、e)パラフィンなどの溶解遅延剤、f)四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、h)カオリン及びベントナイトクレーなどの吸収剤、及び/またはi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びそれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤、及び丸剤の場合、剤形はまた、緩衝剤を含んでもよい。活性化合物はまた、上述のように、1つ以上の賦形剤を用いてマイクロカプセル化形態であってもよい。
【0073】
同様の種類の固体組成物はまた、ラクトースつまり乳糖などの賦形剤、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどを使用して、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセルで充填剤として使用されてもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、及び顆粒剤の固体剤形は、腸溶性コーティング(すなわち、緩衝剤)及び薬学的製剤化技術において周知の他のコーティングなどのコーティング剤及びシェル剤を用いて調製することができる。これらは、任意選択で乳白剤を含有してもよく、また、任意選択で、遅延した様式で、腸管のある特定の部分において、有効成分(複数可)のみを、または優先的に放出する組成物であってもよい。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。
【0074】
経口投与のための液体剤形としては、薬学的に許容されるエマルション剤、マイクロエマルション剤、溶液剤、懸濁液剤、シロップ剤、及びエリキシル剤が挙げられるが、これらに限定されない。活性化合物に加えて、液体剤形は、当技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実粉、落花生、トウモロコシ、胚芽、オリーブ、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含有してもよい。不活性な希釈剤に加えて、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味剤、香味剤、及び芳香剤などのアジュバントも含むことができる。
【0075】
あるいは、本明細書に開示される薬学的に許容される組成物は、直腸または膣投与のための坐剤の形態で投与され得る。これらは、本出願の化合物を、好適な非刺激性賦形剤または担体と混合することによって調製することができ、これらは、室温では固体であるが、体温(例えば、直腸または膣)では液体であり、したがって、直腸または膣腔で溶解して活性化合物を放出する。かかる材料には、カカオバター、坐剤ワックス(例えば、蜜蝋)、及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0076】
いくつかの実施形態では、組成物は、経口投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、患者または対象の体重の30mg/kg以下の量で投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、患者または対象の体重の10mg/kg以下の量で投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、患者または対象の体重の10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1mg/kgの量で投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、患者または対象の体重の3mg/kg以下の量で投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、患者または対象の体重の1mg/kg以下の量で投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、患者または対象の体重の0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、または0.1mg/kgの量で投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、患者の体重の0.1mg/kgである量で投与される。
【0077】
いくつかの実施形態では、化合物1は、単位剤形として投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、カプセル剤の形態で投与される。いくつかの実施形態では、化合物は、錠剤の形態で投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、懸濁液剤として投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、溶液剤として投与される。
【0078】
いくつかの実施形態では、化合物1は、1日用量(QD)として投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、1日2回用量(BID)として投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、隔日(QOD)で投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、週用量(QW)として投与される。いくつかの実施形態では、化合物1は、月間用量(Q4W)として投与される。
【0079】
図7A~7Dに示すように、経時的な薬物曝露(ng/ml)は、マウス(図7A)、ラット(図7B)、イヌ(図7C)、及びサル(図7D)の対象においても高い。
【0080】
障害または状態
本開示はまた、化合物1が、転移したがん、例えば、脳、骨、肺、肝臓、または中枢神経系に広がったがんを治療するために有利に使用され得るという認識も包含する。以下の表に例示されるように、化合物1は、単回経口300mg/kg用量で投与されるとき、血液脳関門を貫通することができる。他のエストロゲン受容体アンタゴニスト、例えば、フルベストラントは、類似の量で血液脳関門を貫通することができない。
【表1】
【0081】
したがって、本開示は、脳、骨、肺、肝臓または中枢神経系に転移したがんに罹患している患者または対象の治療方法であって、化合物1を投与することを含む、方法を提供する。
【化8】
【0082】
いくつかの実施形態では、がんは、1つ以上のCNS腫瘍(例えば、転移)を含み、いくつかの実施形態では、がんは、脳、骨、肺、または肝臓に転移している。いくつかの実施形態では、がんは、中枢神経系に転移している。
【0083】
例証
本明細書に提供される実施例は、本開示のある特定の態様を立証し、支持するが、いかなる特許請求の範囲も限定することを意図しない。過去時制で具体的に提示されない限り、実施例に含めることは、記載された作業が完了したこと、または実行されたことさえ暗示することを意図しない。以下の非限定的な実施例は、本開示によって提供されるある特定の教示をさらに例示するために提供される。当業者は、本出願に照らして、本発明の教示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本実施例に例示される特定の実施形態において様々な変更を行うことができることを理解するであろう。
【0084】
以下の略語を以下の実施例で使用してもよい:aq.(水性)、ACN(アセトニトリル)、CSA(カンファースルホン酸)、d(日または複数日)、DCM(ジクロロメタン)、DEA(ジエチルアミン)、DHP(ジヒドロピラン)、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)、DIPEA(N,N-ジイソプロピルエチルアミン)、DMAP(4-ジメチルアミノピリジン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、EA(酢酸エチル)、ee(エナンチオマー過剰)、equiv.(当量)、エタノール(EtOH)、h(時間または複数時間)、Hex(ヘキサン)、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、IPA(イソプロピルアルコール)、KHMDS(カリウムビス(トリメチルシリル)アミド、LAH(水素化リチウムアルミニウム)、LCMS(液体クロマトグラフィー質量分析計)、LDA(リチウムジイソプロピルアミド)、LiHMDS(リチウムビス(トリメチルシリル)アミド)、MeOH(メタノール)、min(分または複数分)、NMR(核磁気共鳴)、Pd/C(パラジウム炭素)、PPhO(トリフェニルホスフィンオキシド)、Pt/C(炭素担持白金)、rb(丸底)、Rf(保持係数)、rtまたはRT(室温)、SM(出発剤材料)、TEA(トリエチルアミン)、THF(テトラヒドロフラン)、THP(テトラヒドロピラン)、TLC(薄層クロマトグラフィー)、TsOH(p-トルエンスルホン酸またはトシル酸)、及びUV(紫外線)。
【0085】
実施例1:
化合物1の合成
化合物1の完全な合成は、PCT出願公開第2017/059139号に提示されており、これを参照により本明細書に組み込み、以下で繰り返す。
4-((1-プロピルアゼチジン-3-イル)オキシ)ベンズアルデヒドの調製
【化9】
ステップ1:1-プロピオニルアゼチジン-3-オンの調製
【化10】
【0086】
化合物3-アゼチジノン塩酸塩(10.000g、93.0mmol、1.0当量)、無水1,2-ジクロロエタン(200mL)、及びジイソプロピルエチルアミン(38.9mL、223mmol、2.4当量)を丸底フラスコ(500mL)に添加し、淡黄色の懸濁液を得た。懸濁液を1時間超音波処理し、次いで-10℃(ドライアイス/MeOH)に10分間冷却した。この冷却した懸濁液に塩化プロピオニル(9.8mL、112mmol、1.2当量)を滴下添加して、オレンジ色の溶液を得た。反応物を槽から除去し、室温で16時間撹拌した。溶媒を除去して、半固体を得た。半固体をEA(300mL)中に懸濁させ、懸濁液を濾過した。半固体をEA(2x100mL)ですすいだ。TLC分析(10%MeOH/DCM、KMnO染色/加熱)は、3つのスポットがあったことを示した:Rf:0.2、0.5、0.7。TLC(50%EA/Hex、KMnO染色/加熱)は、2つのスポットがあったことを示した:Rf:1、0.3。濾液を濃縮し、シリカゲル(25g)上に吸着させ、DCM(5分間)、次いで0~10%MeOHで15分間にわたって、シリカゲル(100gカートリッジ)を通してクロマトグラフ分析を行った。生成物が、DCM中カラムから早期に分離し、最大10%のMeOHを有するカラムから溶出し続けた。両方の溶媒系中でTLCを行い、初期分画中に任意のプロピオニルクロリドが存在するかどうかを判定した。生成物を含有する画分をプールし、濃縮して、黄色の液体として表題化合物を得た(11.610g、98.2%)。
【0087】
H NMR (300 MHz, CDCl) δ: 4.80 (d, J = 5.6 Hz, 4H), 2.29 (q, J = 7.5 Hz, 2H) ,2.01 (s, 3H), 1.18 (t, J = 7.5 Hz, 3H)。
ステップ2.1-プロピルアゼチジン-3-オールの調製
【化11】
【0088】
水素化アルミニウムリチウム(10.397g、273.9mmol、3.0当量)をTHF(200mL)中に懸濁させ、氷浴中で冷却した。この反応混合物に、THF(100mL)中の1-プロピオニルアゼチジン-3-オン(11.610g、91.3mmol、1.0当量)の溶液を、圧力均衡添加漏斗を介して30分にわたり滴下添加した。添加漏斗を除去した。次いで、フラスコに冷却器を取り付け、反応物を75℃の油浴中で16時間還流加熱した。反応物を氷浴中で20分間冷却し、硫酸ナトリウム十水和物(グラウバー塩、25g)を20分間にわたり少量ずつ添加した。完全に添加した後、混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を、Celite(登録商標)の床(2cm)を通して濾過し、固体をEA(2×250mL)ですすいだ。透明な溶液を淡黄色の液体(9.580g、91.1%)に濃縮した。NMRは、THF及びEAの存在を示した。本材料を、さらに精製することなく、以下の実施例の化合物の調製において使用した。
【0089】
H NMR (300 MHz, CDCl) δ: 4.39 (五重線, J = 6Hz, 1H), 3.62 - 3.56 (m, 2H), 2.90 - 2.85 (m, 2H), 2.41 (t, J = 7.5 Hz,2H), 1.34(六重線, J = 7.2 Hz, 2H), 0.87 (t, J = 7.8 Hz, 3H)。
(R)-1-(1H-インドール-3-イル)-N-((R)-1-フェニルエチル)プロパン-2-アミンの調製:
【化12】
【0090】
下、25℃で、インドール-3-アセトン(25.0g、144mmol、1.0当量)を、(R)-(+)-1-フェニルエチルアミン(23.0mL、181mmol、1.3当量)のジクロロメタン(600mL)溶液に添加し、混合物を1時間撹拌した。反応物を0~5℃に冷却し、この氷冷却溶液に、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(100g、472mmol、3.3当量)を、粉末添加漏斗を介して30分にわたって添加した。オレンジ色の溶液を0℃で1時間撹拌し、次いで室温まで温めた。反応物を室温で19時間撹拌した。この時点で、ESI+は、インドール出発材料が存在しないことを示した。飽和NaHCO溶液(100mL)を、激しく撹拌しながら10℃で15分間にわたり5mLずつ添加した。溶液を15分間撹拌し、飽和NaCO溶液(200mL)を15分間にわたり添加した。固体KCO(9g)を3gずつ添加し、その時点で水層はpH12であり、気泡の形成は停止した。水層を濾過し、分離した。赤色の有機層を、飽和水性NaHCO(2x100mL)で洗浄した。水層を混合し、DCM(2×100mL)で抽出した。混合有機層を、NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、粗生成物(49g)を得た。TLC(90:10 DCM:MeOH)は、4つのスポット(Rf=0.63、0.50、0.16、0.26)を示し、そのうちの2つは、分離したジアステレオマー主要生成物であった(Rf=0.16及び0.26)。粗製物をシリカゲル上に吸着させ、フラッシュクロマトグラフィー(330gカートリッジ、0~100%EA:Hex)を介して精製した。R,Rジアステレオマーを含有する画分をプールし、同じフラッシュクロマトグラフィー条件で2回目の精製を行うことによって、24gの生成物(約82%ee)を得た。以前の成功した分離は、40:1のシリカゲル:粗製物の比により達成されたので、混合物を3つの部分に分けて、3×330gのシリカゲルカートリッジ(0~40%EA/Hex、20分間、均一濃度の40%EA/Hex、40分間)上で分離した。所望の生成物を含有する全ての画分は、>99%ジアステレオマー純度であった。純粋な画分を濃縮し、プールして、(R)-1-(1H-インドール-3-イル)-N-((R)-1-フェニルエチル)-プロパン-2-アミンをオレンジ色の半固体として得た(11.91g、29.6%)。
【0091】
H NMR (CDCl, 300 MHz) R,R ジアステレオマー: δ 0.96 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.30 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 2.68 (q, J = 7.2 Hz, 1H), 2.97 (m, 2H) 4.00 (q, J = 6.3 Hz, 1H), 7.43-6.97 (m, 10H), 7.96 (br s, 1H)。R,Sジアステレオマー: δ 1.11 (d, J = 5.7 Hz, 3H), 1.30 (d, J = 5.4 Hz, 3H) 2.80 (m, 3H), 3.92 (q, J = 6.9 Hz, 1H), 6.93-7.40 (m, 10H), 8.13 (br s, 1H);芳香族領域は、純度の欠如によりR,Rジアステレオマーと区別するのが困難であった。
【0092】
LCMS:ES+[M+H]+279.0。
(2R)-1-(1H-インドール-3-イル)プロパン-2-アミンの調製
【化13】
【0093】
化合物(R)-1-(1H-インドール-3-イル)-N-((R)-1-フェニルエチル)プロパン-2-アミン(11.91g、42.8mmol、1.0当量)をメタノール(250mL)に溶解し、2LのParrボトルに添加し、溶液を、Nで10分間スパージした。水で湿らせた炭素上の20%Pd(OH)(10.71g、76.3mmol、1.8当量)を添加し、ボトルを50psiの水素で加圧し、Parr装置内で22時間振盪させ、LCMS分析は、反応が完了したことを示した。Celite(登録商標)を通して懸濁液を濾過し、濃縮してMeOHを除去した。粗製物をDCMに溶解し、飽和NaCO溶液(50mL)で洗浄し、水層をDCM(2×50mL)で抽出した。有機層を混合し、乾燥させ、濃縮し、(2R)-1-(1H-インドール-3-イル)プロパン-2-アミンを、さらなる精製を必要としない淡褐色の固体として得た(6.68g、89.6%)。
【0094】
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ 1.17 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 2.66 (dd, J = 8.4, 14.7 Hz, 1H), 2.88(dd, J = 5.4, 14.1 Hz, 1H), 3.27 (六重線, J = 1.5 Hz, 1H), 7.05-7.22 (m, 3H), 7.37 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.62 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 8.00 (br s, 1H)。
【0095】
LCMS:ES+[M+H]+174.9。
2-フルオロ-2-メチルプロパノールの調製
【化14】
【0096】
氷浴中で冷却した無水ジエチルエーテル(100mL)中の水素化アルミニウムリチウム(2.50g、65.9mmol、1.6当量)の撹拌懸濁液に、メチル2-フルオロ-2-メチルプロピオネート(5.01g、40.5mmol、1.0当量)を15分間にわたり滴下添加した。2時間後、2.0mLの水、2.0mLの15%w/v NaOH、及び5.0mLの水を順次滴下添加した。15分後、白色の懸濁液をDCMで希釈し、Celite(登録商標)を通して重力濾過し、固体をDCMで洗浄した。濾液を濃縮し(200mbar、25℃)、無色の油状物として2-フルオロ-2-メチルプロパノールを得た(2.09g、56.1%)。
【0097】
H NMR (300 MHz, CDCl) δ 1.34 (d, J = 21.3 Hz, 6H), 1.95 (br t, 1H), 3.56 (dd, J = 6.6, 20.7 Hz, 2H)。
2-フルオロ-2-メチルプロピルトリフルオロメタンスルホネートの調製
【化15】
【0098】
トリフルオロメタンスルホン酸無水物(5.0mL、29.7mmol、1.3当量)を、DCM(25mL)中の2-フルオロ-2-メチルプロパノール(2.090g、22.7mmol、1.0当量)及び2,6ルチジン(3.40mL、29.4mmol、1.3当量)の0℃溶液に30分間にわたり滴下添加した。2時間後、赤い溶液が淡褐色に変わった。TLC(20:80 EA:Hex、KMnO染色)は、出発材料が存在しないことを示した。反応混合物を1MのHCl溶液(2×20mL)及び飽和NaHCO溶液(2×20mL)で洗浄した。水層をDCM(20mL)でそれぞれ逆抽出した。混合有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下(150mbar、25℃)で濃縮し、赤色の油状物として2-フルオロ-2-メチルプロピルトリフルオロメタンスルホネートを得た(4.39g、86.3%)。
【0099】
H NMR (300 MHz, CDCl) δ 1.46 (d, J = 20.4 Hz, 6H), 4.41 (d, J = 18.6 Hz, 2H)。19F NMR (282 MHz, CDCl) δ -147.1, -74.5。
(R)-N-(1-(1H-インドール-3-イル)プロパン-2-イル)-2-フルオロ-2-メチルプロパン-1-アミンの調製:
【化16】
【0100】
化合物2-フルオロ-2-メチルプロピルトリフルオロメタンスルホネート(9.587g、42.8mmol、1.1当量)(DCM中の溶液、16重量%のDCM、11.4384g)を、(2R)-1-(1H-インドール-3-イル)プロパン-2-アミン(6.680g、38.3mmol、1.0当量)、無水1,4-ジオキサン(60.000ml、701.4mmol、18.3当量)、及び新たに蒸留したジイソプロピルエチルアミン(8.500ml、48.8mmol、1.3当量)の溶液に添加した。暗褐色の溶液を90℃で3時間加熱した。3時間後、LCMSは、少量のインドールアミン出発材料が依然として存在することを示した。TLC(10%MeOH/DCM)は、トリフレート(Rf=0.54)を使い果たしたことを示した。未使用のトリフレートSM(286-30)のNMRは、トリフレートが一晩で分解されなかったことを示したので、別の0.1当量(0.9883g、13重量%のDCM、0.8563gトリフレートSM)を添加し、反応物を90℃で2時間加熱した。LCMSは、反応が完了したことを示し、TLC(10%MeOH/DCM)は、1つのスポット(Rf=0.24)(50%EA/Hexを用いたTLC、1筋状スポットRf≦0.12、Rf=0で別のスポット)を示した。EtOAc(50mL)を添加し、溶液をNaHCO(2×50mL)で洗浄し、混合した水層をEtOAc(50mL)で洗浄した。混合した有機抽出物をNaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗製物(褐色の油状物、14.8g)を、フラッシュシリカクロマトグラフィー(240gカートリッジ、0~100%EA/Hex)で精製した。所望の生成物は、長くテーリングしたピークとして溶出した。純粋な画分を濃縮し、濃黄色の油状物として(R)-N-(1-(1H-インドール-3-イル)プロパン-2-イル)-2-フルオロ-2-メチルプロパン-1-アミン(4.211g、17.0mmol)を得た。
【0101】
H NMR (300 MHz, CDCl) δ 1.10 (d, J = 6.3 Hz, 3H), 1.34 (dd, J = 3.0, 21.9 Hz, 6H), 2.68-2.95 (m, 4H), 3.02 (六重線, J = 6.6 Hz, 1H), 7.05 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.26-7.11 (m, 2H), 7.36 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 7.62 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 8.18 (br s, 1H)。19F NMR (282MHz, CDCl) δ -144.2. m/z:ES+[M+H]+ 249.0。
【0102】
化合物1の調製
無水トルエン(1.50mL)及び氷酢酸(0.100mL、1.7mmol、6.2当量)中の(R)-N-(1-(1H-インドール-3-イル)プロパン-2-イル)-2-フルオロ-2-メチルプロパン-1-アミン(0.070g、0.3mmol、1.0当量)の溶液に、4-((1-プロピルアゼチジン-3-イル)オキシ)ベンズアルデヒド(0.096g、0.4mmol、1.3当量)を添加した。分子ふるいを添加し、溶液を暗所、N下で、80℃で8時間撹拌した。反応溶液をDCMで希釈し、濾過し、飽和NaCO溶液で洗浄した。水層をDCMで抽出し、混合した有機層をNaSO上で乾燥させた。溶液を濾過し、濃縮した。残留物をアセトニトリル(2mL)に溶解し、シリンジフィルターを通して濾過した後、分取LCを介して精製した(40~90%ACN:HOで18分間、続いて均一濃度の90%ACNで7分間)。純粋な画分を濃縮し、乾燥させて、白色の粉末として(1R,3R)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-3-メチル-1-(4-((1-プロピルアゼチジン-3-イル)オキシ)フェニル)-2,3,4,4a,9,9a-ヘキサヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドールを得た。
【0103】
実施例2
エストロゲン受容体タンパク質レベルのアッセイ
本実施例は、様々な細胞株におけるERαタンパク質レベルでの様々な化合物(ARN-810、AZD9496、化合物1、エンドキシフェン、及びフルベストラント)の評価を記載する。細胞型に応じて、ウェル当たり90,000~500,000個の細胞を、12ウェル皿の各ウェルにプレーティングし、5%チャコールデキストラン処理済みウシ胎仔血清(処理済みFBS)(HyClone)を含有するフェノールレッド非含有培地中で少なくとも24時間インキュベートした。細胞を、無血清培地中で4時間、300nM抗エストロゲンで処理し、続いて、可溶化液を、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤を補充したRIPA緩衝液(ThermoFisher Scientific)で溶解した。全タンパク質抽出物を10%SDS-PAGE TGXゲル上で分離し、ニトロセルロース膜(BioRad)に移した。ブロットを、D12(#sc-8005、SantaCruz Biotechnology)またはSP1(#MA5-14501、ThermoFisher Scientific)のいずれかのマウスモノクローナル抗ERαでインキュベートした。β-アクチンモノクローナル抗体(#MA5-15739もしくは#MA5-16410(ThermoFisher Scientific)または#sc-47778(SantaCruz Biotechnology))をローディングコントロールとして使用した。ブロットを、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合した適切な二次抗体と共にインキュベートした(ThermoFisher Scientific)。Super Signal Femto化学発光試薬(ThermoFisher Scientific)でシグナルを検出した。結果を図2に示す。図に示すように、エンドキシフェン以外の全ての化合物は、ほとんどの細胞株においてERタンパク質レベルを低減させる著しい能力を示し、化合物1及びフルベストラントは、ERタンパク質レベルを低減させるのに最も効果的であり、この点において同等の活性を示した。
【0104】
実施例3
細胞増殖アッセイ
本実施例は、ヒトER乳癌細胞株であるヒトMCF-7細胞に対する試験化合物の影響を評価するアッセイを記載する。具体的には、ウェル当たり1000個のMCF-7細胞(Cheryl Walker,Baylor College of Medicine)を、5%処理済みFBSを含有するフェノールレッド非含有培地(ThermoFisher Scientific)中の96ウェルプレートにプレーティングした。少なくとも4時間後、細胞を抗エストロゲンで処理し、培地を100pMのE2の存在下で6~8日間、2.5%処理済みFBSに希釈した。増殖を、1:200GR染料及び485nmの励起及び538nmでの蛍光読み取りを使用するCyQuant蛍光DNA結合染料キット(ThermoFisher Scientific)を使用して測定した。
【0105】
実施例4
エストロゲン受容体及びバリアントの一過性トランスフェクション
本実施例では、ヒト子宮内膜癌細胞株であるIshikawa細胞にある特定のエストロゲン受容体構築物をトランスフェクトした研究を記載し、内因性アルカリホスファターゼをアッセイする。ウェル当たり15,000個のIshikawa細胞を、5%処理済みFBSを含有するフェノールレッド培地の96ウェルプレートにプレーティングした。プレーティング時に、各ウェル中の細胞を、Lipofectamine LTX(ThermoFisher Scientific)を使用して、75~100ngのエストロゲン受容体構築物(または空のベクター、pSG5)で一過性にトランスフェクトした。約4時間後、細胞を表示量の抗エストロゲン(E2非存在下)、または500pMのE2で処理し(図9)、培地を2.5%処理済みFBSに希釈した。細胞を3日間インキュベートし、培地を除去し、プレートを-80℃で凍結した。解凍したプレートを、APの発色基質であり、したがってAP活性レベルを明らかにするp-ニトロフェニルリン酸(ThermoFisher Scientific)と共にインキュベートした。40℃で40~80分後、405nmで吸光度を読み取った。
【0106】
化合物1は、ERアンタゴニストを有し、アゴニストは有さず、活性を有する
未トランスフェクトIshikawa細胞における内因性野生型ERのAP活性を上述のようにアッセイした。細胞を、表示化合物(ARN-810、AZD-9496、化合物1、エンドキシフェン、またはフルベストラント)単独で(アゴニストモード)、または500pMの17β-エストラジオール(E2)の存在下で(アンタゴニストモード)処理した。結果を、図1A(アゴニストモード)及び図1B(アンタゴニストモード)に示す。図に示すように、全ての化合物は、有意義なアンタゴニスト活性を示し、化合物1及びフルベストラントが最も強力であった。化合物1及びフルベストラント以外の全ての化合物もまた、著しいアゴニスト活性を示した。
【0107】
ある特定の変異ERは、リガンド非依存性ER活性を増加させる
野生型ER(HEGO)、空のベクター(pSG5)または表示LBD変異ERを、上述のようにIshikawa細胞に一過性にトランスフェクトした。空のベクターのみを、500pMの17β-エストラジオール(E2)で処理した。72時間後、細胞をAP活性についてアッセイした。結果を図9に示す。バーは、三つ組のウェルから405nmでの平均吸光度+標準誤差を表す。図に示すように、様々な試験されたER変異体は、リガンドが存在しない場合に野生型ERよりも多くの活性を示したという点で、「活性化変異体」であることが観察された。
【0108】
活性化ドメイン1(AF1)は、ある特定のER変異体で観察されるリガンド非依存性活性に必要である
AF1野生型ER(HEGO、AA1-595)、空のベクター(pSG5)、または活性化ドメイン2(「AF2」)を欠損している(AA1-282)もしくは活性化ドメイン1(「AF1」)を欠損している(AA178-595、Y537S変異の有無にかかわらず)示されるERを、上述のようにIshikawa細胞に一過性にトランスフェクトした。72時間後、細胞をAP活性についてアッセイした。バーは、4つ組のウェルから405nmでの平均吸光度+標準誤差を表す。図に示すように、活性化Y537S変異(ΔAF1/Y5372)の存在下でも、F1AF1は、ERが切断された(ΔAF2)ときに観察されるリガンド非依存性ER活性に対して必要である。
【0109】
化合物1は、リガンド非依存性ER変異体の活性を阻害する
野生型ERまたは表示されたERバリアントは、上述のようにIshikawa細胞に一過性にトランスフェクトされ、活性を、化合物1またはフルベストラントの存在下でアッセイした。結果を図5A~5Fに示す(図5A~5Fの各々は、各図に示すように、特定の細胞株を報告する。ポイントは、二つ組のウェルからのビヒクルに正規化された平均AP活性+/-標準誤差を表す。化合物1及びフルベストラントの用量反応曲線は、最小二乗適合法を使用して適合させ、pIC50(-Log IC50)は、可変勾配シグモイド用量反応モデルを使用して計算した。線は、内因性受容体の正規化されたAP活性(空のベクター(pSG5)でトランスフェクト)を表す。図に示すように、化合物1は、フルベストラントのそれに匹敵するIC50を有するリガンド非依存性ER変異体の各々の活性を阻害した。
【0110】
ある特定の臨床候補は、リガンド非依存性ER変異体の活性を阻害できない
野生型ERまたは表示されたERバリアントは、上記のようにIshikawa細胞に一過性にトランスフェクトされ、エンドキシフェン、RAD-1901、ARN-810(GDC-0810)またはAZD-9496と比較して、化合物1またはフルベストラントの存在下で活性をアッセイした(結果を図8A~8Bに示すが、ここでは、化合物1及びフルベストラントを、図8A及び8Bではエンドキシフェン及びRAD-1901と比較し、または図8C~8DではARN-810(GDC-0810)及びAZD-9496と比較する。点は、3つ組のウェルから405nmでの平均吸光度+標準誤差を表す。線は、内因性受容体のAP活性(空のベクター(pSG5)でトランスフェクト)を表す。図に示すように、エンドキシフェン、RAD-1901、ARN-810(GDC-0810)、またはAZD-9496のいずれも、化合物1及びフルベストラントが行うように、リガンド非依存性ERバリアントの活性を阻害することができない。

図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2022-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エストロゲン受容体1(ESR1)の変異を特徴とするがんに罹患している対象の治療方法であって、前記対象に、化合物1:
【化1】

またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記変異が、活性化変異である、請求項2に記載の方法。
【請求項3】
がんに罹患している対象の治療方法であって、前記エストロゲン受容体の活性化機能1及び活性化機能2の両方の阻害剤である化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項4】
前記化合物が、化合物1:
【化2】

またはその薬学的に許容されるものである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
がんに罹患している対象の治療方法であって、活性化機能2の阻害剤である化合物及び活性化機能1の阻害剤である二次薬剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項6】
前記化合物が、AZD9496、RAD-1901、ARN-810、エンドキシフェン、フルベストラント、及び化合物1、
【化3】

またはその薬学的に許容される塩から選択されるエストロゲン受容体アンタゴニストである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物が、フルベストラント及び化合物1から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が、化合物1である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記二次薬剤が、CDK4/6阻害剤である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記CDK4/6阻害剤が、パルボコシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブ、レロシクリブ、及びトリラシクリブから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記CDK4/6阻害剤が、パルボコシクリブ及びアベマシクリブから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記二次薬剤が、PIK3CA阻害剤である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記PIK3CA阻害剤が、アルペリシブ及びタセリシブから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記二次薬剤が、mTOR阻害剤である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記mTOR阻害剤が、シロリムス、テムシロリムス、及びエベロリムスから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
脳、骨、肺、または肝臓に転移したがんに罹患している対象の治療方法であって、化合物1:
【化4】

またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項17】
がんに罹患している対象の治療方法であって、化合物1、
【化5】

またはその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含む組成物の経口投与を含む、前記方法。
【請求項18】
前記対象に投与される前記組成物の量が、30mg/kg以下である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記対象に投与される前記組成物の量が、10mg/kg以下である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記対象に投与される前記組成物の量が、1mg/kg以下である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記対象に投与される前記組成物の量が、0.1mg/kg以下である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が、1日1回、前記対象に投与される、請求項17~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が、週に1回、前記対象に投与される、請求項17~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が、毎月1回、前記対象に投与される、請求項17~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が、単位剤形の形態である、請求項17~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物が、カプセル剤の形態である、請求項17~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物が、錠剤の形態である、請求項17~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が、溶液剤の形態である、請求項17~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が、懸濁液剤の形態である、請求項17~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記がんが、乳癌である、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
タモキシフェン、AZD9496、及びARN-810などの以前の療法は、活性化機能の両方を無効にすることができない(すなわち、AF1及びAF2の両方を無効にしない)。このように、エストロゲン受容体を完全に阻害するために、AF1及びAF2の両方を無効にする療法が依然として必要であり、さらに、活性化変異にもかかわらず、エストロゲン受容体を阻害する療法が依然として必要である。本開示は、とりわけ、ある特定の化合物が、単独でまたは他の薬剤と組み合わせて、がんに罹患している患者または対象のための治療として使用されることが可能であり、患者または対象が、エストロゲン受容体1(ESR1)の変異を保有することを立証する。例えば、いくつかの実施形態では、がんに罹患している患者または対象の治療に有用な化合物であって、患者または対象がエストロゲン受容体1(ESR1)の変異を保有する、化合物は、化合物1である。
【化1】

【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
いくつかの実施形態では、本開示は、がんに罹患している患者または対象の治療方法を提供し、がんは、脳、骨、肺、または肝臓に転移し、方法は、患者または対象に化合物1を投与することを含む。
【化2】

【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
いくつかの実施形態では、本開示は、がんに罹患している患者を治療するための方法を提供し、方法は、化合物1の経口投与を含む。
【化3】

【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
以前の方法に関連する問題を克服するエストロゲン受容体(ER)陽性癌型の療法の必要性が存在する。本開示は、とりわけ、エストロゲン受容体アンタゴニストを投与することを含む、エストロゲン受容体、エストロゲン受容体の変異に関連するがんに罹患している患者または対象の治療方法を提供する。いくつかの実施形態では、エストロゲン受容体アンタゴニストは、化合物1:
【化4】

またはその薬学的に許容される塩である。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
エストロゲン受容体1(ESR1)の変異を特徴とするがんに罹患している対象の治療方法であって、前記対象に、化合物1:
【化1】

またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
(項目2)
前記変異が、活性化変異である、項目2に記載の方法。
(項目3)
がんに罹患している対象の治療方法であって、前記エストロゲン受容体の活性化機能1及び活性化機能2の両方の阻害剤である化合物を投与することを含む、前記方法。
(項目4)
前記化合物が、化合物1:
【化2】

またはその薬学的に許容されるものである、項目3に記載の方法。
(項目5)
がんに罹患している対象の治療方法であって、活性化機能2の阻害剤である化合物及び活性化機能1の阻害剤である二次薬剤を投与することを含む、前記方法。
(項目6)
前記化合物が、AZD9496、RAD-1901、ARN-810、エンドキシフェン、フルベストラント、及び化合物1、
【化3】

またはその薬学的に許容される塩から選択されるエストロゲン受容体アンタゴニストである、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記化合物が、フルベストラント及び化合物1から選択される、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記化合物が、化合物1である、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記二次薬剤が、CDK4/6阻害剤である、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記CDK4/6阻害剤が、パルボコシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブ、レロシクリブ、及びトリラシクリブから選択される、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記CDK4/6阻害剤が、パルボコシクリブ及びアベマシクリブから選択される、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記二次薬剤が、PIK3CA阻害剤である、項目9に記載の方法。
(項目13)
前記PIK3CA阻害剤が、アルペリシブ及びタセリシブから選択される、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記二次薬剤が、mTOR阻害剤である、項目9に記載の方法。
(項目15)
前記mTOR阻害剤が、シロリムス、テムシロリムス、及びエベロリムスから選択される、項目14に記載の方法。
(項目16)
脳、骨、肺、または肝臓に転移したがんに罹患している対象の治療方法であって、化合物1:
【化4】

またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
(項目17)
がんに罹患している対象の治療方法であって、化合物1、
【化5】

またはその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含む組成物の経口投与を含む、前記方法。
(項目18)
前記対象に投与される前記組成物の量が、30mg/kg以下である、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記対象に投与される前記組成物の量が、10mg/kg以下である、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記対象に投与される前記組成物の量が、1mg/kg以下である、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記対象に投与される前記組成物の量が、0.1mg/kg以下である、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記組成物が、1日1回、前記対象に投与される、項目17~21のいずれか1項に記載の方法。
(項目23)
前記組成物が、週に1回、前記対象に投与される、項目17~21のいずれか1項に記載の方法。
(項目24)
前記組成物が、毎月1回、前記対象に投与される、項目17~21のいずれか1項に記載の方法。
(項目25)
前記組成物が、単位剤形の形態である、項目17~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目26)
前記組成物が、カプセル剤の形態である、項目17~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目27)
前記組成物が、錠剤の形態である、項目17~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目28)
前記組成物が、溶液剤の形態である、項目17~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目29)
前記組成物が、懸濁液剤の形態である、項目17~24のいずれか1項に記載の方法。
(項目30)
前記がんが、乳癌である、項目1~29のいずれか1項に記載の方法。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
本開示は、前述の化合物、(1R,3R)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-3-メチル-1-(4-((1-プロピルアゼチジン-3-イル)オキシ)フェニル)-2,3,4,4a,9,9a-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドール(「化合物1」、その全体が参照により本明細に組み込まれている、PCT出願公開第2017/059139号を参照されたい)が、
【化6】

フルベストラントのCERAN属性と一致し、さらに、(i)経口的に生物学的に利用可能であり、長い半減期を有すること、及び(ii)良好な血液脳関門の貫通を示すことを含むさらなる貴重な特性を提供する、重要で予想外の洞察を提供する。とりわけ、本開示は、化合物1が、(a)リガンド非依存性/構成的変異を含む、ER変異に関連するがんの治療、(b)CNS(例えば、脳)転移または腫瘍を伴うがんの治療、(c)フルベストラントで有用であることが示されているか、または提案されているある特定の薬剤を含む、ある特定の他の薬剤との併用を含む、ある特定の文脈において一意に有用であることを実証する。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、がんに罹患している対象(または対象の集団)の治療方法を提供し、対象はESR1変異を保有し(及び/または変異ERタンパク質を発現している)、方法は、対象に化合物1、
【化7】

またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0081
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0081】
したがって、本開示は、脳、骨、肺、肝臓または中枢神経系に転移したがんに罹患している患者または対象の治療方法であって、化合物1を投与することを含む、方法を提供する。
【化8】

【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0102
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0102】
化合物1の調製
無水トルエン(1.50mL)及び氷酢酸(0.100mL、1.7mmol、6.2当量)中の(R)-N-(1-(1H-インドール-3-イル)プロパン-2-イル)-2-フルオロ-2-メチルプロパン-1-アミン(0.070g、0.3mmol、1.0当量)の溶液に、4-((1-プロピルアゼチジン-3-イル)オキシ)ベンズアルデヒド(0.096g、0.4mmol、1.3当量)を添加した。分子ふるいを添加し、溶液を暗所、N下で、80℃で8時間撹拌した。反応溶液をDCMで希釈し、濾過し、飽和NaCO溶液で洗浄した。水層をDCMで抽出し、混合した有機層をNaSO上で乾燥させた。溶液を濾過し、濃縮した。残留物をアセトニトリル(2mL)に溶解し、シリンジフィルターを通して濾過した後、分取LCを介して精製した(40~90%ACN:HOで18分間、続いて均一濃度の90%ACNで7分間)。純粋な画分を濃縮し、乾燥させて、白色の粉末として(1R,3R)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-3-メチル-1-(4-((1-プロピルアゼチジン-3-イル)オキシ)フェニル)-2,3,4,4a,9,9a-テトラヒドロ-1H-ピリド[3,4-b]インドールを得た。

【国際調査報告】