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特表2022-540455O-環状フィトスフィンゴシン-1-フォスフェートを含むパーキンソン病の予防又は治療用組成物
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  • 特表-O-環状フィトスフィンゴシン-1-フォスフェートを含むパーキンソン病の予防又は治療用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(54)【発明の名称】O-環状フィトスフィンゴシン-1-フォスフェートを含むパーキンソン病の予防又は治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/6615 20060101AFI20220908BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
A61K31/6615
A61P25/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500946
(86)(22)【出願日】2020-07-09
(85)【翻訳文提出日】2022-01-07
(86)【国際出願番号】 KR2020009015
(87)【国際公開番号】W WO2021006663
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】10-2019-0083866
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521338732
【氏名又は名称】エクセソ バイオファーマ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ウォン キョ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヨン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ミョン ジュン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA35
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
(57)【要約】
本発明は、O-環状フィトスフィンゴシン-1-フォスフェートを含むパーキンソン病の予防又は治療用組成物を提供する。本発明に係る組成物は、ドーパミン性神経細胞であるSH-SY5Y神経細胞の死滅を防ぎ、且つドーパミン形成に必要な酵素であるチロシンヒドロキシラーゼの発現を増加させることができ、パーキンソン病の予防又は治療に有効に用いられ得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表される化合物又はその薬剤学的に許容される塩を含む、パーキンソン病の予防又は治療用薬剤学的組成物。
【化1】
【請求項2】
前記化学式1で表される化合物又はその薬剤学的に許容される塩がチロシンヒドロキシラーゼの発現を増加させる、請求項1に記載のパーキンソン病の予防又は治療用薬剤学的組成物。
【請求項3】
前記薬剤学的に許容される塩が塩酸塩である、請求項1に記載のパーキンソン病の予防又は治療用薬剤学的組成物。
【請求項4】
下記の化学式1で表される化合物又はその薬剤学的に許容される塩を含む、パーキンソン病の予防又は改善用健康機能食品。
【化2】
【請求項5】
前記化学式1で表される化合物又はその薬剤学的に許容される塩がチロシンヒドロキシラーゼの発現を増加させる、請求項4に記載のパーキンソン病の予防又は改善用健康機能食品。
【請求項6】
前記薬剤学的に許容される塩が塩酸塩である、請求項4に記載のパーキンソン病の予防又は改善用健康機能食品。
【請求項7】
有効量の下記の化学式1で表される化合物又はその薬剤学的に許容される塩を、これを必要とする個体に投与することを含む、パーキンソン病の予防又は治療方法。
【化3】
【請求項8】
パーキンソン病を予防し又は治療するための、下記の化学式1で表される化合物又はその薬剤学的に許容される塩の用途。
【化4】
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、O-環状フィトスフィンゴシン-1-フォスフェートを含むパーキンソン病の予防又は治療用組成物に係り、より詳しくは、O-環状フィトスフィンゴシン-1-フォスフェートを含んでドーパミン性神経細胞の死滅を抑制し、且つチロシンヒドロキシラーゼの発現を増加させることができ、パーキンソン病を予防又は治療することができる組成物に関する。
【0002】
〔背景技術〕
パーキンソン病(Parkinson’s disease、PD)は、中脳の黒質部位のドーパミン性神経細胞が徐々に選択的に消失しここで作られるドーパミンと呼ばれる神経伝達物質が欠乏して発生する疾病である。パーキンソン病は手、足、顔の震えや麻痺、硬直、動作緩慢などによる運動障害及び姿勢不安定などをもたらす。
【0003】
パーキンソン病の発病原因は非常に多様であり、患者全体の5%程度が遺伝的要因によって発現し、炎症と酸化的ストレスのような外部環境的な要因が重要に作用する。パーキンソン病は、ドーパミン性神経細胞にα-シヌクレイン・タンパク質のようなタンパク質の異常凝集によって発病する。このようなタンパク質の凝集は酸化的ストレスによってさらに促進される。今までパーキンソン病の治療はドーパミン神経伝達物質を補充する方法にて行われてきたが、これはパーキンソン病の根源的な治療にはならない。パーキンソン病の根源的な治療のためには、ドーパミンの生成に関与する神経細胞の死滅を抑制し且つドーパミンの生成を促進する必要がある。パーキンソン病の根本的な治療のために疾病修飾遺伝子を直接的に標的にする低分子治療薬物、遺伝子治療、モノクローナル抗体、関連指標を標的化した免疫療法、幹細胞、及び誘導万能幹細胞などの生物学的製剤の研究が活発になっている。最近、幹細胞を用いたPD治療が臨床で試みられたことがある。
【0004】
O-環状フィトスフィンゴシン-1-フォスフェート(O-cyclic phytosphingosine-1-phosphate)は、下記の化学式1で表される化合物であって、大韓民国登録特許第10-1340556号で脱毛防止又は育毛の促進に有用なものと開示されたことがある。
【0005】
【化1】
【0006】
しかし、現在までO-環状フィトスフィンゴシン-1-フォスフェートがパーキンソン病細胞モデルでドーパミン性神経細胞であるSH-SY5Y神経細胞の死滅を抑制し、且つドーパミンの形成に必要な酵素であるチロシンヒドロキシラーゼの発現を増加させ得ることを示す文献は報告されたことがない。
【0007】
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明者らは、パーキンソン病に効果的な治療剤を開発するために鋭意研究を重ねた結果、O-環状フィトスフィンゴシン-1-フォスフェートがドーパミン性神経細胞であるSH-SY5Y神経細胞の死滅を抑制し、且つドーパミンの形成に必要な酵素であるチロシンヒドロキシラーゼの発現を増加させるという事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
したがって、本発明の目的は、O-環状フィトスフィンゴシン-1-フォスフェートを含むパーキンソン病の予防又は治療用組成物を提供することである。
【0009】
〔課題を解決するための手段〕
本発明の一実施形態は、下記の化学式1で表される化合物又はその薬剤学的に許容される塩を含む、パーキンソン病の予防又は治療用薬剤学的組成物に関する。
【0010】
【化2】
【0011】
本明細書において薬剤学的に許容される塩は、非毒性無機酸塩及び有機酸塩の両方を含み、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、二リン酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ピクリン酸塩、トシレート酸塩等を含み、特に塩酸塩であってよい。
【0012】
前記化学式1で表される化合物又はその薬剤学的に許容される塩は、商業的に入手し又は当該技術分野において公知の方法によって容易に製造することができるものである[参考文献:大韓民国登録特許第10-1340556号]。
【0013】
本発明の化学式1で表される化合物又はその薬剤学的に許容される塩は、ドーパミン性神経細胞であるSH-SY5Y神経細胞にロテノンとMPP+をそれぞれ処理して誘発させたパーキンソン病細胞モデルにおいて神経細胞の死滅を抑制し、且つ神経細胞においてドーパミンの形成に必要な酵素であるチロシンヒドロキシラーゼの発現を増加させる結果を示した(実験例2~4、図2~4)。したがって、本発明の化学式1で表される化合物又はその薬剤学的に許容される塩は、パーキンソン病の予防又は治療用薬剤学的組成物に効果的に用いられ得る。
【0014】
本発明に係る薬剤学的組成物は、前記化学式1で表される化合物又はその薬剤学的に許容される塩に加えて、パーキンソン病のための他の治療剤を含み得る。
【0015】
本発明に係る薬剤学的組成物は、経口投与(例えば、接種又は吸入)又は非経口投与(例えば、注射、経皮吸収、直腸投与)されてよく、注射は、例えば、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射又は腹腔内注射であってよい。本発明に係る薬剤学的組成物は、投与経路に応じて、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤(fine subtilae)、粉剤、舌下錠剤、坐剤、軟膏、注射剤、乳濁液剤、懸濁液剤、シロップ剤、噴霧剤などに剤形化されてよい。好ましくは、前記薬剤学的組成物は錠剤の形態であってよい。前記の種々の形態の本発明に係る薬剤学的組成物は、各剤形に一般的に用いられる薬剤学的に許容される担体(carrier)を用いて公知の技術によって調製されてよい。薬剤学的に許容される担体の例は、賦形剤、結合剤、崩壊剤(disintegrating agent)、潤滑剤、防腐剤、抗酸化剤、等張剤(isotonic agent)、緩衝剤、コーティング剤、甘味剤、溶解剤、基剤(base)、分散剤、湿潤剤、懸濁化剤、安定剤、着色剤などを含む。
【0016】
本発明に係る薬剤学的組成物は、薬剤の形態に応じて異なるが、前記化学式1で表される化合物又はその薬剤学的に許容される塩を約0.001~95重量%の量で含む。
本発明の薬剤学的組成物の具体的な投与量は、治療されるヒトを含む哺乳動物の種類、体重、性別、疾患の重症度、医者の判断などに応じて変わり得る。好ましくは、経口投与の場合は一日に体重1kg当たり活性成分0.01~50mgが投与され、非経口投与の場合は一日に体重1kg当たり活性成分0.01~10mgが投与される。前記一日総投与量は、疾患の重症度、医者の判断などに応じて一度に投与しても又は複数回に分けて投与してもよい。
【0017】
本発明の一実施形態は、下記の化学式1で表される化合物又はその薬剤学的に許容される塩を含む、パーキンソン病の予防又は改善用健康機能食品に関する。
【0018】
【化3】
【0019】
本発明に係る健康機能食品の種類は、特に限定されるものではなく、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液剤、エマルジョン、シロップ剤などの経口型製剤の形態であるか、又はキャンデー、お菓子、ガム、アイスクリーム、麺類、パン、飲み物などの一般的な食品に添加されてよい。
【0020】
本発明の健康機能食品は、その形態に応じて通常的な方法で充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、甘味剤、芳香剤、保存剤、界面活性剤、潤滑剤、賦形剤などを適宜用いて製造されてよい。
【0021】
前記健康機能食品の製造において、化学式1で表される化合物又はその薬剤学的に許容される塩の含量は健康機能食品の形態に応じて異なるが、約0.001~10重量%、好ましくは、0.1~5重量%である。
【0022】
本発明の一実施形態は、有効量の下記の化学式1で表される化合物又はその薬剤学的に許容される塩を、これを必要とする個体に投与することを含む、パーキンソン病の予防又は治療方法に関する。
【0023】
【化4】
【0024】
本発明の一実施形態は、パーキンソン病を予防し又は治療するための、下記の化学式1で表される化合物又はその薬剤学的に許容される塩の用途に関する。
【0025】
【化5】
【0026】
〔発明の効果〕
本発明に係るO-環状フィトスフィンゴシン-1-フォスフェート又はその薬剤学的に許容される塩はロテノン又はMPPを用いたパーキンソン病細胞モデルにおいて神経細胞の死滅を抑制し、且つ神経細胞においてドーパミンの形成を促進する酵素であるチロシンヒドロキシラーゼの発現を増加させることができ、パーキンソン病の予防、治療又は改善用組成物に効果的に用いられ得る。
【0027】
〔図面の簡単な説明〕
図1〕cP1P薬物の濃度によるSH-SY5Yヒト神経細胞株の増殖効果を示したグラフである。
【0028】
図2〕ロテノンを処理したパーキンソン病細胞モデルにおいてSH-SY5Y神経細胞の死滅を抑制するcP1P薬物の効能を示したグラフである。
【0029】
図3〕MPPを処理したパーキンソン病細胞モデルにおいてSH-SY5Y神経細胞の死滅を抑制するcP1P薬物の効能を示したグラフである。
【0030】
図4〕SH-SY5Y神経細胞においてチロシンヒドロキシラーゼ(TH)の発現に及ぼすcP1P薬物の効果を免疫組織化学的方法(a)とウエスタンブロット方法(b)で測定した結果を示す。
【0031】
〔発明を実施するための形態〕
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明することにする。これらの実施例は単に本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではないことは当業者にとって自明である。
【0032】
実施例1:ドーパミン性ヒト神経細胞(SH-SY5Y)の増殖に及ぼすcP1P薬物の効果
ドーパミン性ヒト神経細胞の増殖に及ぼすcP1P薬物の効能を評価するために、神経細胞株としてはATCCから購入したSH-SY5Yヒト神経細胞株を用いた。神経細胞を培養する培地はダルベコ改変イーグル培地/高グルコース(Dulbeco’s Modified Eagle’s Media/high glucose)(with 10%FBS、0.5%P/S)を用い、37℃、5%COインキュベーターで培養した。
【0033】
cP1P薬物のドーパミン性ヒト神経細胞の増殖効果を観察するために、SH-SY5Y細胞を各10nM、100nM、及び1000nMの濃度のcP1P薬物で処理し、48時間培養した後、MTTアッセイ(Molecular Probes)をメーカの方法に従って実施して細胞増殖率を測定した。
【0034】
その結果を図1に示した。
【0035】
図1から、10nMの低い濃度のcP1P薬物でもSH-SY5Y細胞の増殖効果が示されることが分かる。神経細胞の増殖効果は、cP1P薬物の濃度が100nMのときに最も高い結果を示した。
【0036】
実施例2:ロテノン処理したパーキンソン病細胞モデルにおけるcP1P薬物の効果
ロテノンは、パーキンソン病を誘発するために細胞モデルにおいて広く用いられている物質である。ロテノンを神経細胞で処理するとミトコンドリア機能を破壊して酸化的ストレスを誘発し神経細胞が死滅することはよく知られている。
【0037】
SH-SY5Y神経細胞培養培地を各100nM及び1000nMの濃度のcP1P薬物で処理し、24時間培養した。次いで、ロテノン(シグマ社)をDMSOに溶解して最終濃度が2μMになるように希釈し、前記SH-SY5Y神経細胞培養培地に添加して24時間さらに培養した。実施例1と同様な方法にてSH-SY5Y神経細胞を得て培養した。
【0038】
前記培養されたSH-SY5Y神経細胞に対して乳酸デヒドロゲナーゼ(lactate dehydrogenase、LDH)検出キット(BioVision)を用いて壊死性細胞死(necrotic cell death)を測定した。
【0039】
比較のために、cP1P薬物とロテノンを含まないDMSOのみで処理された対照群と、cP1P薬物を含まない希釈ロテノン液のみで処理された対照群に対しても壊死性細胞死を測定した。さらに、各100nM及び1000nMの濃度のcP1P薬物で処理して壊死性細胞死を測定した。
【0040】
その結果を図2に示した。
【0041】
図2に示すように、ロテノンのみで処理された対照群では神経細胞の死滅程度が30%を超えるほど高い。しかし、cP1P薬物を先に処理したとき、神経細胞の死滅がロテノンでの処理なしにDMSOのみで処理された場合とほぼ同等なレベルまで抑制されることを確認することができる。
【0042】
さらに、図2に示すように、cP1P薬物で処理されるとDMSOのみで処理された対照群よりも細胞死滅の程度が減少することを確認することができる。このような結果は、cP1P薬物による処理がSH-SY5Y神経細胞の増殖を促進するためであると考えられる。このような結果から、cP1P薬物がパーキンソン病の治療剤として有用であることが分かる。
【0043】
実施例3:MPP処理したパキスン細胞モデルにおけるcP1P薬物の効果
MPP(1-methyl-4-phenylpyridinium iodide、シグマ社)で酸化的ストレスを誘発してパーキンソン病細胞モデルを作るために、MPPをリン酸緩衝溶液に溶解し、最終濃度が3mMになるように希釈して神経細胞培養培地に添加した。MPP環境でのcP1P薬物の効能を確認するために、SH-SY5Y細胞を各10nM、100nM及び1000nMの濃度のcP1Pで1時間前処理した後、3mM MPPで24時間処理して酸化的ストレスに露出させた。酸化的ストレスへの24時間露出後のSH-SY5Y細胞の生存に及ぼすcP1P薬物の効能はMTTアッセイによって確認した。
【0044】
その結果を図3に示した。
【0045】
図3に示すように、SH-SY5Y細胞株をMPP 3mMで処理すると神経細胞が死滅するが、cP1P薬物で前処理した場合は、細胞死滅が顕著に減少することを確認することができる。特に、cP1P薬物を100nMの濃度で処理した場合、細胞死滅が顕著に減少することが分かる。このような結果から、cP1P薬物がパーキンソン病の治療剤として有用であることが分かる。
【0046】
実施例4:神経細胞のドーパミンの形成に必要なチロシンヒドロキシラーゼ(TH)の発現に及ぼすcP1P薬物の効果
チロシンヒドロキシラーゼ(TH)酵素は、アミノ酸であるチロシンをドーパミンの前駆物質であるL-DOPAに転換させる酵素であって、神経細胞のドーパミンの形成に重要な役割を担う酵素である。
【0047】
SH-SY5Y神経細胞を対象にTH発現に及ぼすcP1P薬物の効能を確認するために、SH-SY5Y神経細胞培養物を各10nM及び100nMの濃度のcP1P薬物で処理した後、24時間後に免疫組織化学的(immunohistochemistry)方法とウエスタンブロット(western blot)方法にてTH発現を確認した。
【0048】
その結果を図4に示した。
【0049】
図4に示すように、cP1P薬物を10nM及び100nMの濃度で処理した場合、TH酵素の発現が増加することを確認することができる。このような結果は、cP1P薬物がドーパミン神経細胞の死滅によって惹起されるパーキンソン病の治療剤として用いられ得ることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】cP1P薬物の濃度によるSH-SY5Yヒト神経細胞株の増殖効果を示したグラフである。
図2】ロテノンを処理したパーキンソン病細胞モデルにおいてSH-SY5Y神経細胞の死滅を抑制するcP1P薬物の効能を示したグラフである。
図3】MPPを処理したパーキンソン病細胞モデルにおいてSH-SY5Y神経細胞の死滅を抑制するcP1P薬物の効能を示したグラフである。
図4】SH-SY5Y神経細胞においてチロシンヒドロキシラーゼ(TH)の発現に及ぼすcP1P薬物の効果を免疫組織化学的方法(a)とウエスタンブロット方法(b)で測定した結果を示す。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】