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  • 特表-自動運転車のためのガラス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(54)【発明の名称】自動運転車のためのガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 4/10 20060101AFI20220908BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20220908BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20220908BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20220908BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
C03C4/10
C03C27/12 Z
G01S7/481 A
G01S17/931
B60J1/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022501064
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(85)【翻訳文提出日】2022-01-07
(86)【国際出願番号】 EP2020070281
(87)【国際公開番号】W WO2021009347
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】19186910.6
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】リ, メイジエ
(72)【発明者】
【氏名】サルトナエ, ヤニック
【テーマコード(参考)】
4G061
4G062
5J084
【Fターム(参考)】
4G061AA25
4G061BA02
4G061CB03
4G061CD02
4G061CD03
4G061CD18
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4G062DA07
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4G062JJ01
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4G062KK01
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4G062MM01
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4G062NN15
5J084AA05
5J084AC02
5J084BA03
5J084BA20
5J084BA48
5J084CA03
5J084EA22
5J084EA32
(57)【要約】
本発明は、750~1650nmの波長域において5m-1未満の吸収係数を有し、且つ外部面及び内部面を有する少なくとも1つのガラスシートを含む自動車LiDARグレイジングに関する。本発明によると、750~1650nmの波長域、好ましくは750~1050nmの波長域、より好ましくは750~950nmの波長域においてp偏波レーザー信号を放出及び/又は受信する赤外線ベースのリモートセンシングデバイスが、ガラスシートの内部面上に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
750~1650nmの波長域において5m-1未満の吸収係数を有し、且つ外部面及び内部面を有する少なくとも1つのガラスシートを含む自動車グレイジングであって、750~1650nmの波長域においてp偏波レーザー信号を放出及び/又は受信する赤外線ベースのリモートセンシングデバイスが、前記ガラスシートの前記内部面上に配置されている、自動車グレイジング。
【請求項2】
前記少なくとも1つのガラスシートは、1m-1未満の吸収係数を有することを特徴とする、請求項1に記載の自動車グレイジング。
【請求項3】
前記赤外線ベースのリモートセンシングデバイスは、前記グレイジングの前記内部面に光学的に連結されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の自動車グレイジング。
【請求項4】
前記自動車グレイジングは、少なくとも1つの熱可塑性中間層を使用して積層された外部及び内部ガラスシートを含む積層グレイジングであり、前記外部及び内部ガラスシートは、5m-1未満の吸収係数を有する高レベルの近赤外線放射透過ガラスシートであり、前記赤外線ベースのリモートセンシングデバイスは、面4上に配置されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【請求項5】
前記自動車グレイジングの光透過の値は、前記自動車グレイジングの近赤外線透過の値よりも低いことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【請求項6】
少なくとも1つのガラスシートは、可視光を吸収及び/又は反射する少なくとも1つの近赤外線透明コーティングで被覆されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【請求項7】
前記少なくとも1つのガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量:
- 全鉄(Feとして表される) 0.002~0.06%
- Cr 0.0001~0.06%
を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【請求項8】
前記少なくとも1つのガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量:
- 全鉄(Feとして表される) 0.002~0.06%
- Cr 0.0015~1%
- Co 0.0001~1%
を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【請求項9】
前記少なくとも1つのガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量:
- 全鉄(Feとして表される) 0.02~1%
- Cr 0.002~0.5%
- Co 0.0001~0.5%
を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【請求項10】
前記少なくとも1つのガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量:
- 全鉄(Feとして表される) 0.002~1%
- Cr 0.001~0.5%
- Co 0.0001~0.5%
- Se 0.0003~0.5%
を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【請求項11】
前記自動車グレイジングは、少なくとも部分的に赤外線フィルターを与えられており、750~1650nmの波長域においてp偏波レーザー信号を放出及び/又は受信する前記赤外線ベースのリモートセンシングデバイス、特にLiDARセンサーは、赤外線フィルターを含まないグレイジングのゾーンに位置することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【請求項12】
赤外線フィルター層の系は、脱コーティングゾーンが与えられているコーティングであり、脱コーティングゾーンの上に赤外線ベースのリモートセンシングデバイスが配置されていることを特徴とする、請求項11に記載の自動車グレイジング。
【請求項13】
前記赤外線ベースのリモートセンシングデバイスは、走査、回転、フラッシュ又は固体状態LiDARをベースとし、且つ車両の周りの周囲環境を3Dマッピングすることを可能にするLIDAR系であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【請求項14】
前記自動車グレイジングは、ウインドシールド或いはA-、B-及びC-ピラーのためのカバー又は自動車のトランクのためのカバー若しくは前記LiDARセンサーの保護ハウジングのためのカバーレンズの一部としてのガラストリム要素であることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線ベースのリモートセンシングデバイス、特にLiDARセンサーを含むガラスに関する。より詳細には、本発明は、自動運転車に統合されるための、p偏波信号を放出及び/又は受信する新世代LiDARセンサーを含むガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、自動運転車を一層多く使用する傾向があり、将来的には完全に使用されるだろう。例えば、ドライバーレスカー、セルフドライビングカー、ロボットカーとも呼ばれる未来的な自動運転車は、その環境を感知することが可能であり、且つ人間の入力なしで操縦することが可能な車両である。
【0003】
自動運転車両は、レーダー、LiDAR(光検出及び測距(Light Detection And Ranging)の頭字語)、GPS、走行距離計(Odometry)及びコンピュータビジョンを使用して周囲を検出する。先進的制御システムは、適切な操縦経路並びに障害物及び適切な標識を識別するためにセンサー情報を翻訳する。自動運転車は、道路上の種々の自動車を区別するために、センサーデータを分析することが可能である制御システムを有し、これは、所望の目的地への経路を計画するために非常に有用である。全ての検出技術の中でも、LiDARは、良好な解像度を有する3D画像を提供する非常に有用な技術である。
【0004】
本発明によれば、赤外線ベースのリモートセンシングデバイスLiDARセンサーは、走査、回転、フラッシュ又は固体状態LiDARをベースとする新世代LIDARであり、且つ車両の周囲環境を3Dマッピングすることが可能である。したがって、IRベースのセンサーは、車両周囲の正確なマッピングを作成することを可能にする。このマッピングは、正確に自動運転車を運転し、且つ障害物によるいかなる衝撃も防ぐために使用される。
【0005】
LiDAR(Lidar、LIDAR又はLADARとも記載される)は、赤外線(IR)レーザー光で標的を照射することによって距離を測定する技術である。それらは、特に走査、回転、フラッシュ又は固体状態LiDARである。走査又は回転LiDARは、移動するレーザービームを使用する。一方、フラッシュ及び固体状態LiDARは、対象物によって反射される光パルスを放出する。
【0006】
LiDARは、特許出願国際公開第20190303106号パンフレットに記載されるように、ガラスから製造されるカバーレンズの少なくとも一部を含む保護ハウジングによって囲まれた独立型デバイスとして車両上に統合されることができる。より詳細には、この独立型デバイスは、例えば、カールーフにおいて自動車本体に追加的に加えられることができるか、又はバンパー、ヘッドライト若しくはバックミラーなどの既存の自動車構成要素に埋め込まれることができる。
【0007】
シームレスな統合のために、LiDARは、特許出願国際公開第2018015312号パンフレットに記載されるように、ウインドシールド、バックライト又はサイドライトなどの既存の自動車グレイジングの背後に統合されることができる。より詳細には、ウインドシールドの上部の背後でのセンサーの統合は、幾何学的な距離評価のための良好な位置、路面上のより良好な視野及び交通状況に関する良好な全体像などの他の利点を伴う。加えて、この位置は、ワイパーによる反復性のアパーチャクリーニング、石擦傷に関する低い危険性、継ぎ目のない美的価値及び一般にセンサーを操作するためのより良好に制御された環境を提供する。
【0008】
さらに、LiDARは、特許出願国際公開第2018015313号パンフレットで記載されるように、ガラストリム要素の背後に統合されることができる。自動車のためのガラストリムは、その魅力を増加させるか、又は自動車のいくつかの美的でない部分を隠すために、自動車の内部又は外部に追加することができる品目を意味する。ガラストリム要素の使用により、プラスチック又は他の従来使用されている材料で容認されない接触機能性としていくつかの機能性を追加する機会が提供される。今日、一層多くのガラストリム要素が自動車分野で考慮されている。例えば、そのようなガラストリム要素は、カートランクカバー、A-、B-、C-、D-ピラー(側面図で前方から後方にそれぞれA、B、C若しくは(より大型車で)D-ピラーとして指定される自動車の窓領域の垂直若しくは近垂直支持体)のためのカバー又はダッシュボード上のインテリアトリム要素、コンソール、ドアトリムなどとして使用される。
【0009】
本発明は、一般に、上記の自動車LiDAR統合のための窓用ガラスなど、自動車に使用されるガラス(ウインドシールド、バックライト、サイドライトなど)並びにアップリケ及びまたカバーとして使用されるトリム要素に関することが理解される。一般に、新世代のLiDARセンサーは、光学特性に関して、自動車LiDARグレイジングに対して非常に要求が多い。より詳細には、それは、グレイジングを通した最大LiDAR信号の伝送を要求する。
【0010】
自動車LiDARグレイジングは、従来、2つの表面を有し、内部表面がセンサーに面し、且つ外部表面が環境に面する。フレネル反射のため、信号は、それぞれのグレイジング表面を通過するときに毎回部分的に失われる。入射角(AOI)が増加すると、信号損失が増加する。したがって、センサーの光学軸に対して大きい傾斜角を有する、大きい視界及び/又はグレイジングを有するセンサーに関して、信号損失が非常に大きくなり、センサーが十分に機能しなくなる。特に、信号がグレイジングを2回以上通過することを必要とするLiDARなどのセンサーに関して、信号損失問題は、重大になるおそれがある。
【0011】
表面反射損失を低下させるための2つの主要な解決案がある。1つの解決案は、材料に適合する屈折率の補充又は光学的結合成分を使用することにより、センサーとグレイジングの内部表面との間に良好な光学的結合を有することである。しかしながら、この解決案は、システムの複雑さ及び費用を増加させ、それは、必ずしも可能でない。さらに、グレイジングの外部表面における光学的信号損失を減少させることができない。
【0012】
他の解決案は、一方又は両方のグレイジング表面上に反射防止(AR)コーティングを適用することである。しかしながら、ほとんどの場合、種々のAOI及び波長を有する全ての信号に対して効率的なARコーティングを設計することは、困難であるか又は不可能であり、且つ費用が劇的に増加する可能性がある。さらに、ARコーティングは、機械抵抗及び化学抵抗を減少させ、グレイジングの外部表面に適用することがときに不可能である。
【0013】
したがって、上記の問題を生じることなく、自動車LiDARグレイジングの両方の表面において効率的である、表面反射損失を低下させるための別の解決案が必要とされている。
【発明の概要】
【0014】
したがって、本発明は、統合設計の変化を最小にしながら、両方の表面での表面反射損失を減少させて、(ガラスカバー、既存の自動車グレイジング及びガラストリムを含む)自動車LiDARグレイジングがLiDAR信号を伝送することができる解決案を提案する。より詳細には、この解決案は、グレイジング表面において大きいAOIを伴うLiDAR信号に関して、したがってセンサーの光学軸に対して大きい傾斜角を有する、大きい視界及び/又はグレイジングを有するセンサーに関して効率的に機能する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】レーザー信号が、2つの異なる屈折率n1及びn2を有する2つの材料間で界面と遭遇する場合、それは、面法線を有する入射平面を形成することを示す。
図2】異なる偏波による信号に関する空気(n1=1)及びガラス(n2=1.5)界面における反射を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
単純さのために、以下の記載におけるガラスシートのナンバリングは、グレイジングに関して慣習的に使用されるナンバリング命名法を参照する。したがって、車両外部の環境と接触するグレイジングの面は、側面1として知られており、内部媒質、すなわち乗客区画と接触する面は、面2と呼ばれる。積層グレイジングに関して、車両の外部環境と接触するガラスシートは、側面1として知られており、内部、すなわち乗客区画と接触する面は、面4と呼ばれる。
【0017】
疑義の回避のために、「外部」及び「内部」という用語は、車両中でのグレイジングとしての設置中のグレイジングの方向を意味する。
【0018】
同様に疑義の回避のために、本発明は、自動車、列車、飛行機など、またドローンなどの他の車両の全ての輸送手段のために適用可能である。
【0019】
したがって、本発明は、750~1650nmの波長域において5m-1未満の吸収係数を有し、且つ外部面及び内部面を有する少なくとも1つのガラスシートを含む自動車LiDARグレイジングに関する。
【0020】
本発明によれば、750~1650nmの波長域においてp偏波信号を放出及び/又は受信する赤外線ベースのリモートセンシングデバイスが、ガラスシートの内部面上に配置されている。
【0021】
本発明によれば、ガラスシートは、750~1650nmの波長域において5m-1未満の吸収係数を有する。赤外線域におけるガラスシートの低い吸収を数量化するために、本記載では、750~1650nmの波長域の吸収係数が使用される。吸収係数は、吸光度と、所与の環境における電磁放射線によって横断された光路長さとの間の比率によって定義される。それは、m-1で表される。したがって、それは、材料の厚さに依存しないが、吸収した放射の波長及び材料の化学的性質の関数である。
【0022】
ガラスの場合、選択された波長λにおける吸収係数(μ)は、材料(thick=厚さ)の透過率(T)及び屈折率nの測定から算出することができる。n、ρ及びTは、選択された波長λの関数である。
式中、ρ=(n-1)/(n+1)である。
【0023】
本発明によるガラスシートは、好ましくは、本発明に関連する光学技術において一般に使用される750~1650nmの波長域において、従来のガラス(そのような係数が30m-1程度である「透明ガラス」と呼ばれるもの)と比較して非常に低い吸収係数を有する。特に、本発明によるガラスシートは、750~1650nmの波長域において5m-1未満の吸収係数を有する。
【0024】
好ましくは、ガラスシートは、3m-1未満又はさらに2m-1未満、なおより好ましくは1m-1未満又はさらに0.8m-1未満の吸収係数を有する。
【0025】
低い吸収は、最終IR透過が材料の光路によってそれほど影響されないという追加的な利点を提供する。それは、高い開口角を有する大視域(FOV)センサーに関して、種々の角度において認知された強度(異なる領域においてイメージである)がより均一であるであろうことを意味する。
【0026】
したがって、自動運転車両が、道路建設又は障害など、自動運転作動のために不適切な予想外の運転環境に遭遇するとき、本発明によるグレイジングを通して車両センサーが車両及び予想外の運転環境についてのデータを取り込むことができる。取り込まれたデータは、遠位のオペレーター又は中央インテリジェンスユニットに送信されることができる。遠位のオペレーター又はユニットは、車両を運転するか、又は種々の車両システムで実行されるべきコマンドを自動運転車両に出すことができる。遠位のオペレーター/ユニットに送信された取り込まれたデータは、取り込まれたデータの限定的な下位グループを送信することによってなど、バンド幅を浪費しないように最適化することができる。
【0027】
本発明によれば、ガラスシートは、特に750~1650nmの波長域において5m-1未満の吸収係数を有する、種々の部類に属することができるガラスから製造される。したがって、ガラスは、ソーダライム-シリカ型ガラス、アルミノ-シリケート、ボロシリケート等であることができる。
【0028】
好ましくは、高レベルの近赤外線放射透過を有するガラスシートは、エクストラクリアガラス(extra-clear glass)である。
【0029】
好ましくは、本発明のベースガラス組成物は、ガラスの重量パーセントで表される全含有量:
SiO 55~85%
Al 0~30%
0~20%
NaO 0~25%
CaO 0~20%
MgO 0~15%
O 0~20%
BaO 0~20%
を含む。
【0030】
より好ましくは、本発明のベースガラス組成物は、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量において:
SiO 55~78%
Al 0~18%
0~18%
NaO 0~20%
CaO 0~15%
MgO 0~10%
O 0~10%
BaO 0~5%
を含む。
【0031】
より低い生産コストの理由のため、より好ましくは、本発明による少なくとも1つのガラスシートは、ソーダライムガラスから製造される。有利には、本実施形態によると、ベースガラス組成物は、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量:
SiO 60~75%
Al 0~6%
0~4%
CaO 0~15%
MgO 0~10%
NaO 5~20%
O 0~10%
BaO 0~5%
を含む。
【0032】
そのベース組成物に加えて、ガラスは、性質及び望ましい効果の量によって適合される他の成分を含むことができる。
【0033】
その美しさ又はその色に弱い影響を及ぼすか又は影響を及ぼさない、高い赤外線(IR)において非常に透明なガラスを得るために本発明において提案される解決策は、ガラス組成物において低い鉄の量及び特定の含有量の範囲のクロムを組み合わせることである。
【0034】
したがって、第1の実施形態によれば、ガラスシートは、好ましくは、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量:
全Fe(Feとして表される) 0.002~0.06%
Cr 0.0001~0.06%
を含む組成を有する。
【0035】
そのような低濃度の鉄及びクロムを組み合わせたガラス組成物は、赤外線反射に関して特に良好な性能を示し、且つ可視において高い透明度を示し、また顕著な色を示さず、「エクストラクリア」と呼ばれるガラスに近い。これらの組成物は、国際出願国際公開第2014128016A1号パンフレット、国際公開第2014180679A1号パンフレット、国際公開第2015011040A1号パンフレット、国際公開第2015011041A1号パンフレット、国際公開第2015011042A1号パンフレット、国際公開第2015011043A1号パンフレット及び国際公開第2015011044A1号パンフレットに記載されており、これらは、参照により本出願に組み込まれる。この第1の特定の実施形態によれば、組成物は、好ましくは、ガラスの全重量に対して0.002重量%~0.06重量%の(Cr2O3として表される)クロム含有量を含む。そのようなクロムの含有量により、赤外線反射をさらに改善することが可能となる。
【0036】
第2の実施形態によれば、ガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量:
全Fe(Feとして表される) 0.002~0.06%
Cr 0.0015~1%
Co 0.0001~1%
を含む組成を有する。
【0037】
そのようなクロム及びコバルトベースのガラス組成物は、美しさ/色(青みがかった中性から強度の着色、さらに不透明まで)に関して興味深い可能性を提供しながら、赤外線伝送に関して特に良好な性能を示した。そのような組成物は、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許出願公開第13198454.4号明細書に記載されている。
【0038】
第3の実施形態によれば、ガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量:
全鉄(Feとして表される) 0.02~1%
Cr 0.002~0.5%
Co 0.0001~0.5%
を含む組成を有する。
【0039】
好ましくは、本実施形態によれば、組成物は、0.06%<全鉄≦1%を含む。
【0040】
クロム及びコバルトをベースとするそのような組成物は、色及び光透過に関して、市場に出ているブルー及びグリーンガラスに匹敵するが、赤外線伝送に関して特に良好な性能を有するブルー-グリーン範囲の着色ガラスシートを得るために使用される。そのような組成物は、参照により本出願に組み込まれる欧州特許出願公開第15172780.7号明細書に記載されている。
【0041】
第4の実施形態によれば、ガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量:
全鉄(Feとして表される) 0.002~1%
Cr 0.001~0.5%
Co 0.0001~0.5%
Se 0.0003~0.5%
を含む組成を有する。
【0042】
そのようなクロム、コバルト及びセレンベースのガラス組成物は、美しさ/色(グレー中性からグレー-ブロンズ範囲のわずかな着色強度まで)に関して興味深い可能性を提供しながら、赤外線反射に関して特に良好な性能を示した。そのような組成物は、欧州特許出願公開第15172779.9号明細書に記載されており、これは、参照により本出願に組み込まれる。
【0043】
第1の代替実施形態によれば、ガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量:
全鉄(Feとして表される) 0.002~0.06%
CeO 0.001~1%
を含む組成を有する。
【0044】
そのような組成物は、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許出願公開第13193345.9号明細書に記載されている。
【0045】
別の代替実施形態によれば、ガラスは、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量:
全鉄(Feとして表される) 0.002~0.06%、及び
以下の成分の1種:
- 0.01~1重量%の範囲の量のマンガン(MnOとして算出される);
- 0.01~1重量%の範囲の量のアンチモン(Sbとして表される);
- 0.01~1重量%の範囲の量のヒ素(Asとして表される)、又は
- 0.0002~0.1重量%の範囲の量の銅(CuOとして表される)
を含む組成を有する。
【0046】
そのような組成物は、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許出願公開第14167942.3号明細書に記載されている。
【0047】
本発明によれば、自動車LiDARグレイジングは、平面シートの形態であることができる。グレイジングは、曲線状でもあることができる。これは、通常、リアウインドウ、サイドウインドウ若しくはルーフ又は特にウインドシールドのための自動車グレイジングの場合である。また、ガラスカバー及びガラストリムに関して、ガラスシートは、車両の特定の設計と正確に適合し、且つ/又はLiDARセンサー性能を強化するために完全に又は部分的に湾曲することができる。
【0048】
本発明の一実施形態によると、ガラスシートは、有利には、抵抗率を強化するために化学的又は熱的に強化されることができる。
【0049】
本発明の一実施形態によると、ガラスシートは、太陽放射線から赤外線を選択的にフィルタリングするための手段を含むことができ、及びLiDARセンサーは、赤外線フィルターを含まないゾーンでガラスシートの内部面上に配置される。
【0050】
本発明の好ましい実施形態によれば、ガラスシートは、少なくとも1つの熱可塑性中間層と一緒に積層された外部及び内部ガラスシートを含む積層ガラス要素であり、外部及び内部ガラスシートは、750~1650nm、好ましくは750~1050nm、より好ましくは750~950nmの波長域において5m-1未満の吸収係数を有する高レベルの近赤外線放射透過ガラスシートである。
【0051】
本発明によるガラスシートは、0.1~5mmの範囲の厚さを有することができる。有利には、本発明によるガラスシートは、0.1~3mmの範囲の厚さを有することができる。好ましくは、重量の理由のため、本発明によるガラスシートの厚さは、0.1~2.2mmである。
【0052】
本発明の別の実施形態によると、少なくとも1つのガラス要素は、熱処理されたガラスシート、例えば焼き鈍し若しくは強化及び/又は曲げガラスシートから製造される。典型的には、これは、ガラス基材を急速に冷却する前に、少なくとも580℃、より好ましくは少なくとも約600℃、さらにより好ましくは少なくとも620℃の温度まで炉中で(コーティングされた又はされていない)ガラスシートを加熱することを伴う。この焼き戻し及び/又は曲げは、種々の状況において少なくとも4分、少なくとも5分又はそれを超える時間で実行することができる。
【0053】
本発明の別の実施形態によれば、ガラスシートは、着色ガラスである。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、ガラスシートは、赤外線透過の値よりも低い光透過の値を有する。特に、本発明の別の実施形態によれば、可視域における光透過の値は、10%未満であり、且つ近赤外線透過の値は、50%より高い。
【0055】
本発明の別の有利な実施形態によれば、ガラスシートは、良好なレベルの作動性能を保証しながら、外側から非美的要素のセンサーを隠すために、少なくとも1つのIR透過吸収(着色)及び/又は反射コーティングで被覆される。このコーティングは、例えば、可視光域において透過を有さない(又は非常に低い)が、用途のために重要な赤外線域において高い透過性を有する少なくとも1層のブラックインクから構成されることができる。そのようなインクは、400~750nm域において<5%及び850~950nm域において>70%の透過率を達成することが可能である、例えば、株式会社セイコーアドバンス又は帝国インキ製造株式会社によって製造される市販品のような有機化合物から製造可能である。コーティングは、単一の自動車グレイジング要素に関して面1若しくは/及び面2上に、又は積層自動車用グレイジングに関して面1若しくは/及び面4上にその耐久性次第で提供されることができる。
【0056】
本発明の別の実施形態によれば、ガラスシートは、高いIR透過を維持しながら、選択的に可視域を反射するように最適化された多層コーティングで被覆されることができる。したがって、Kromatix(登録商標)製品において観察されるものなどのいくつかの特性が求められる。そのような層が適切なガラス組成物に堆積される場合、これらの特性は、完全系の全体の低IR吸光度を保証する。コーティングは、単一の自動車グレイジング要素に関して面1若しくは/及び面2上に、又は積層自動車グレイジングに関して面1若しくは/及び面4上にその耐久性次第で提供されることができる。
【0057】
本発明によれば、LiDAR機器は、少なくとも1つのレーザー発信器と、光捕収剤(望遠鏡又は他の光学素子)を含む少なくとも受信器と、光を電気信号及び求める情報を抽出する電子プロセス鎖信号に変換する少なくとも光検出器とから構成される光電子システムである。
【0058】
本発明によると、LiDARセンサーは、p偏波レーザー信号を放出及び/又は受信する。より一般に、レーザー信号は、可能な限り多く、好ましくは50%より多く、より好ましくは70%より多くp偏波信号を含まなければならない。
【0059】
レーザー信号は、両方とも波の伝播の方向に対して垂直である電界及び磁界を有する固有の電磁波であることがよく知られている。図1に示すように、レーザー信号が、2つの異なる屈折率n1及びn2を有する2つの材料間で界面と遭遇する場合、それは、面法線を有する入射平面を形成する。p偏波信号は、電界が入射平面に対して平行であることを意味し、入射平面に対して垂直な電界を有する他の偏波は、s偏波信号として定義される。
【0060】
フレネル反射方程式に従い、異なる偏波による信号に関する空気(n1=1)及びガラス(n2=1.5)界面における表面反射損失が算出され、図2にプロットされる。これは、異なる偏波による信号に関する空気(n1=1)及びガラス(n2=1.5)界面における反射を表す。それによると、p偏波信号は、s偏波信号又は非偏波信号と比較して大きいAOIにおいて反射損失を最小化したことが明確に示される。ウインドシールド統合を例とすると、ウインドシールドの設置角度は、典型的には、25~40度である。LiDARセンサーは、通常、ウインドシールドの上部部分に配置され、したがって、局所的傾斜角は、さらにより小さく、例えば20~35度であることができる。信号の公称AOIは、局所的傾斜角の補完的角度であり、それは、55~70度であることができる。図2を参照すると、p偏波信号の反射損失は、非偏波信号と比較して7%~最大で13%減少させることができる。検出器の20度の視界(FOV)を考慮に入れて、最大AOIは、最大で80度まで増加することができ、反射減少損失は、最大で15%であることができる。
【0061】
自動車LiDARグレイジングを通過する放出された信号に関して、内部及び外部表面において、2回の表面反射損失があり、これは、p偏波信号による信号損失の減少が2倍になることを意味する。受信したLiDAR信号も同様にp偏波である場合、導入された信号損失減少は、さらに強化される。
【0062】
ARコーティングが適用される必要がある場合、p偏波信号のみに対するARコーティングの設計も、他の偏波を有する信号に関する設計より容易である。
【0063】
LiDARは、1つのガラスシートグレイジングの場合、ガラスシートの内部面(すなわち面2)上に配置される。
【0064】
本発明の別の実施形態によれば、自動車LiDARグレイジングは、LiDARが内部ガラスシートの内部面、すなわち面4に配置される積層グレイジングである。
【0065】
本発明の好ましい実施形態によれば、自動車グレイジングは、ウインドシールドである。したがって、赤外線ベースのリモートセンシングデバイスは、赤外線反射層がないゾーンにおいてウインドシールドの面4上に配置される。実際に、赤外線反射コーティングの場合、コーティングがないゾーンは、例えば、この機能を保証するために、面4(又は1つのガラスシートグレイジングの場合には面2)上で、コーティングがないこの領域においてLiDARが配置される様式で脱コーティング又はマスキングによって提供される。コーティングがない領域は、一般に、赤外線ベースのリモートセンシングデバイスの形状及び寸法を有する。赤外線吸収フィルムの場合、この機能を保証するために、フィルムなしでこの領域に配置されているLiDARの寸法でフィルムを切断する。
【0066】
本発明の一実施形態によれば、自動車グレイジングは、超薄グレイジングである。
【0067】
有利には、IRベースのリモートセンシングデバイスは、グレイジングの内部面に光学的に連結される。例えば、ガラス及びLiDARの外部レンズの屈折率に適合する軟質材料が使用されることができる。
【0068】
本発明の別の有利な実施形態によれば、ガラスシートは、少なくとも1つの反射防止層でコーティングされる。本発明による反射防止層は、例えば、低屈折率を有する多孔性シリカをベースとする層であることができるか、又はいくつかの層(スタック)、特に低屈折率及び高屈折率を有し、且つ低屈折率を有する層を末端とする誘電体材料交代性層の層のスタックから構成されることができる。そのようなコーティングは、単一のグレイジングに関して面1若しくは/及び2上に、又は積層グレイジングに関して面1若しくは/及び4上に提供されることができる。テクスチャガラスシートも使用されることができる。反射を回避するために、エッチング又はコーティング技術も使用されることができる。
図1
図2
【国際調査報告】