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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(54)【発明の名称】二次電池及びそれを備える装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/133 20100101AFI20220908BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20220908BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220908BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/587
H01M4/36 C
H01M4/36 E
H01M4/36 D
H01M4/38 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520068
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(85)【翻訳文提出日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 CN2019123729
(87)【国際公開番号】W WO2021109133
(87)【国際公開日】2021-06-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100086807
【弁理士】
【氏名又は名称】柿本 恭成
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】康 蒙
(72)【発明者】
【氏名】董 ▲暁▼斌
(72)【発明者】
【氏名】王 家政
(72)【発明者】
【氏名】何 立兵
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA03
5H050FA02
5H050FA18
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA13
(57)【要約】
【課題】二次電池及びそれを備える装置に関する。
【解決手段】二次電池(5)は負極シートを含み、前記負極シートは負極集電体及び負極膜層を含み、前記負極膜層は第1の負極膜層及び第2の負極膜層を含み、前記第1の負極膜層は、負極集電体の少なくとも一つの表面に配置され、且つ、第1の負極活性材料を含有し、前記第2の負極膜層は、第1の負極膜層に配置され、且つ、第2の負極活性材料を含有し、前記第1の負極活性材料は天然黒鉛を含有し、前記第2の負極活性材料は人造黒鉛を含有し、前記第1の負極活性材料は、4.0≦COI≦7.0を満たし、前記第2の負極活性材料は、2.2≦COI≦4.2を満たす。当二次電池(5)は、高いエネルギー密度を有する前提で、良好な急速充電性能とサイクル性能を両立できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極シートを含み、前記負極シートは、負極集電体及び負極膜層を含み、前記負極膜層は、第1の負極膜層及び第2の負極膜層を含み、前記第1の負極膜層は、負極集電体の少なくとも一つの表面に配置され、且つ、第1の負極活性材料を含有し、前記第2の負極膜層は、第1の負極膜層に配置され、且つ、第2の負極活性材料を含有し、
前記第1の負極活性材料は、天然黒鉛を含有し、前記第2の負極活性材料は、人造黒鉛を含有し、
前記第1の負極活性材料の粉体OI値のCOIは、4.0≦COI≦7.0を満たし、
前記第2の負極活性材料の粉体OI値のCOIは、2.2≦COI≦4.2を満たし、
COIは、第1の負極活性材料のX線回折スペクトルにおける004特性回折ピークのピーク面積と110特性回折ピークのピーク面積との比の値であり、
COIは、第2の負極活性材料のX線回折スペクトルにおける004特性回折ピークのピーク面積と110特性回折ピークのピーク面積との比の値である、
ことを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記第1の負極活性材料は、4.3≦COI1≦5.5を満たす、
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第2の負極活性材料は、2.5≦COI2≦3.6を満たす、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記第1の負極活性材料及び第2の負極活性材料は、さらに、1.1≦COI1/COI2≦2.5を満たし、好ましくは、1.3≦COI1/COI2≦1.6を満たす、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記天然黒鉛の形態は、球形又は略球状であり、及び/又は、
前記人造黒鉛の形態は、シート状又はブロック状である、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
第1の負極活性材料における前記天然黒鉛の質量占有率は、≧60%であり、好ましくは、80%~100%であり、及び/又は、
第2の負極活性材料における前記人造黒鉛の質量占有率は、≧70%であり、好ましくは、90%~100%である、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記第1の負極活性材料は、
(1)平均粒径D50が、9μm~16μmであり、好ましくは、11μm~14μmであること、
(2)粒径分布が、0.8≦(D90-D10)/D50≦1.5を満たし、好ましくは、0.9<(D90-D10)/D50≦1.3を満たすこと、
(3)黒鉛化度が、95%~99%であり、好ましくは、96%~98%であること、
(4)比表面積(BET)が、1.6m/g~4.0m/gであり、好ましくは、2.1m/g~2.7m/gであること、
(5)タップ密度が、0.8g/cm~1.3g/cmであり、好ましくは、0.9g/cm~1.2g/cmであること、
(6)30000Nの作用力下での粉体の圧密度が、1.7g/cm~2.0g/cmであり、好ましくは、1.8g/cm~1.9g/cmであること
のうちの1種類又は複数種類を満たす、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記第2の負極活性材料は、
(1)平均粒径D50が、11μm~19μmであり、好ましくは、13μm~17μmであること、
(2)粒径分布が、0.9≦(D90-D10)/D50≦2であり、好ましくは、1.1≦(D90-D10)/D50≦1.6であること、
(3)黒鉛化度が、90%~95%であり、より好ましくは、92%~94%であること、
(4)比表面積(BET)が、0.6m/g~2.2m/gであり、好ましくは、0.7m/g~1.3m/gであること、
(5)タップ密度が、0.7g/cm~1.4g/cmであり、より好ましくは、0.8g/cm~1.2g/cmであること、
(6)30000Nの作用力下での粉体の圧密度が、1.65g/cm~1.85g/cmであり、好ましくは、1.71g/cm~1.80g/cmであること
のうちの1種類又は複数種類を満たす、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記第1の負極活性材料及び/又は前記第2の負極活性材料の表面は、被覆層を有し、好ましくは、前記第1の負極活性材料及び前記第2の負極活性材料の表面はいずれも被覆層を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項10】
前記第1の負極膜層と前記第2の負極膜層との質量比は、1:3~9:5であり、好ましくは、1:2~3:2である、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項11】
前記第1の負極活性材料は、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ケイ素系材料、スズ系材料のうちの1種類又は複数種類をさらに含み、及び/又は、前記第2の負極活性材料は、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ケイ素系材料、スズ系材料のうちの1種類又は複数種類をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の二次電池を備える、
ことを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は電気化学的技術分野に属し、より具体的には、本願は二次電池及びそれを備える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新エネルギー自動車は、世界での自動車産業の発展の方向を代表している。リチウムイオン二次電池は、新規の高電圧、高エネルギー密度の動力電池として、重量が軽く、エネルギー密度が高く、汚染がなく、記憶効果がなく、耐用年数が長い等の特徴を有するため、新エネルギー自動車に広く応用される。
【0003】
動力電池市場の需要が徐々に拡大するにつれて、動力電池のエネルギー密度に対する需要もますます高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術に用いられる電池エネルギー密度を改善する技術手段は、一般的に電池の他の性能の劣化をもたらす。したがって、電池のエネルギー密度を改善すると同時に電池の他の電気的性能を低下させないか、ひいては改善できる新たな技術を必要とする。
【0005】
本願の一つの目的は、高いエネルギー密度を有する前提で、良好な急速充電性能とサイクル性能を両立させる二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記発明の目的を達成するために、本願の第1の態様は、二次電池を提供し、前記二次電池は、負極シートを含み、前記負極シートは、負極集電体及び負極膜層を含み、前記負極膜層は、第1の負極膜層及び第2の負極膜層を含み、前記第1の負極膜層は、負極集電体の少なくとも一つの表面に配置され、且つ、第1の負極活性材料を含有し、前記第2の負極膜層は、第1の負極膜層に配置され、且つ、第2の負極活性材料を含有し、
前記第1の負極活性材料は、天然黒鉛を含有し、前記第2の負極活性材料は、人造黒鉛を含有し、
前記第1の負極活性材料は、4.0≦COI≦7.0を満たし、好ましくは、4.3≦COI≦5.5を満たし、
前記第2の負極活性材料は、2.2≦COI≦4.2を満たし、好ましくは、2.5≦COI≦3.6を満たし、
COIは、第1の負極活性材料のX線回折スペクトルにおける004特性回折ピークのピーク面積と110特性回折ピークのピーク面積との比の値であり、
COIは、第2の負極活性材料のX線回折スペクトルにおける004特性回折ピークのピーク面積と110特性回折ピークのピーク面積との比の値である。
【0007】
本願の第2の態様は、本願の第1の態様に係る二次電池を備える装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本願は、少なくとも以下の有益な効果を含む。
本願の二次電池の負極シートは多層構造を有し、且つ各層は特定の負極活性材料及び特定のCOI範囲を有し、その相乗作用により、電池は、高いエネルギー密度を有する前提で、良好な急速充電性能とサイクル性能を両立できる。本願の装置は、前述の二次電池を備えるため、少なくとも前記二次電池と同様の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本願の二次電池の一実施形態の模式図である。
図2】電池モジュールの一実施形態の模式図である。
図3】電池パックの一実施形態の模式図である。
図4図3の分解図である。
図5】本願の二次電池が電源として用いられる装置の一実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、具体的な実施形態と組み合わせて、本願をさらに説明する。理解すべきことは、本明細書に記載の実施形態は、単に本願を解釈するためのものであり、本願を限定するためのものではない。
【0011】
簡略化のために、本明細書にはいくつかの数値範囲のみが明確に開示されている。しかしながら、任意の下限は任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、任意の下限は他の下限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、同様に任意の上限は任意の他の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。また、明確に記載されていないが、範囲の端点間の各点又は単一数値はいずれも当該範囲内に含まれる。そのため、各点又は単一数値自体を下限又は上限として任意の他の点又は単一数値と組み合わせて、又は他の下限又は上限と組み合わせて明確に記載されない範囲を形成することができる。
【0012】
本明細書の記載において、特に説明しない限り、「以上」及び「以下」は、対象となる数字を含み、「1種類又は複数種類」のうち「複数種類」は、2種類又は2種類以上を意味することに留意すべきである。
【0013】
特に説明しない限り、本願に使用される用語は、当業者が一般的に理解する周知の意味を有する。特に説明しない限り、本願において言及された各パラメータの数値は、本分野で常用の様々な測定方法で測定することができる(例えば、本願の実施例に記載の方法に従って測定することができる)。
【0014】
二次電池において、電池のエネルギー密度を増加させるために、一般的に電極シート膜層の厚さを増加させるが、厚さの増加は、電池のサイクル性能及び急速充電性能のいずれにも影響を与える。これは、負極活性材料が循環過程で膨張し、活物質と基材との間の結着力が低下され、さらに膜脱離が発生されるからであり、厚さが増加する時に、このような現象がより深刻である。同時に、厚さの増加は、活性イオンの拡散経路の増加を引き起こし、電池の急速充電性能も影響を受ける。したがって、どのようにして電池に高いエネルギー密度を有する前提で、良好なサイクル性能と急速充電性能を両立させるかは、技術的に大きな挑戦である。
【0015】
本発明者らは、大量の実験により、負極シートの組成及び構造を調整することにより本願の技術的目的を実現することができることを見出した。具体的に、本願の負極シートは、負極集電体及び負極膜層を含み、前記負極膜層は、第1の負極膜層及び第2の負極膜層を含み、前記第1の負極膜層は、負極集電体の少なくとも一つの表面に配置され、且つ、第1の負極活性材料を含有し、前記第2の負極膜層は、第1の負極膜層に配置され、且つ、第2の負極活性材料を含有し、前記第1の負極活性材料は、天然黒鉛を含有し、前記第2の負極活性材料は、人造黒鉛を含有し、前記第1の負極活性材料の粉体OI値のCOIは、4.0≦COI≦7.0を満たし、前記第2の負極活性材料の粉体OI値のCOIは、2.2≦COI≦4.2を満たし、ここで、COIは、第1の負極活性材料のX線回折スペクトルにおける004特性回折ピークのピーク面積と110特性回折ピークのピーク面積との比の値であり、COIは、第2の負極活性材料のX線回折スペクトルにおける004特性回折ピークのピーク面積と110特性回折ピークのピーク面積との比の値である。電池は、高いエネルギー密度を有する前提で、良好なサイクル性能と急速充電性能を両立できる。
【0016】
本発明者らは、研究により、負極シートが上記設計要件(4.0≦COI≦7.0、且つ2.2≦COI≦4.2)を満たす場合、一方で、負極膜層と集電体との間の結着力を効果的に向上させ、電極シートの膜脱離現象を改善させるため、電池のサイクル性能を改善させ、他方で、上下膜層における活性材料のOI値を所定の範囲内に制御することで、第2の負極膜層の負極活性材料がロールプレスされる際に豊かな細孔チャネル構造を維持し、活性イオンが負極膜層中に迅速に移動するよう保証でき、第1の負極膜層がロールプレスされる際に圧力が第2の負極膜層から第1の負極膜層へ伝導されるのに役立ち、第1の負極膜層が高い充填密度を有するよう保証し、上下層の細孔チャネル構造の割り当てがより合理的であり、電池の動力学的性能を効果的に向上させ、塗布厚さが増加する場合でも、活性イオンの液相拡散速度を確保し、電池の急速充電性能を効果的に改善することができることを見出した。本発明者らは、上下層の活性材料の粉体OI値が所定の範囲内にある場合、第2の負極膜層中の負極活性材料がより多くのリチウム挿入入口を供給し、活性イオンが負極活物質の内部へ迅速に挿入されるよう保証することができ、第1の負極膜層中の負極活性材料がより多くのリチウム挿入位置を供給し、より多くの活性イオンの挿入を受け入れるよう保証し、上下層のリチウム挿入入口とリチウム挿入位置の割り当てがより合理的であり、高エネルギー密度設計を確保すると同時に、活性イオンの電荷交換インピーダンスと固相拡散速度を両立させ、電池の急速充電性能を効果的に改善することを見出した。いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料は、4.3≦COI≦5.5を満たす。いくつかの好ましい実施形態において、前記第2の負極活性材料は、2.5≦COI≦3.6を満たす。
【0017】
当業者に理解されるように、負極活性材料の粉体OI値は、活性材料の配向指数、即ち負極膜層における結晶粒配列の異方性程度を示すために用いられる。
【0018】
本願において、COIは、材料のX線回折スペクトルにおける(004)特性回折ピークと(110)特性回折ピークの面積比として定義される。即ち、COI=C004/C110であり、ここで、C004は、004特性回折ピークのピーク面積であり、C110は、110特性回折ピークのピーク面積である。より具体的に、COIは、第1の負極活性材料のX線回折スペクトルにおける004特性回折ピークのピーク面積と110特性回折ピークのピーク面積との比の値であり、COIは、第2の負極活性材料のX線回折スペクトルにおける004特性回折ピークのピーク面積と110特性回折ピークのピーク面積との比の値である。
【0019】
天然黒鉛の粉体OI値は、X線回折スペクトルにおける(003)特性回折ピークのピーク面積と(110)特性回折ピークのピーク面積との比で表すこともできる。即ち、天然黒鉛の粉体OI値=C003/C110であり、ここで、C003は、003特性回折ピークのピーク面積であり、C110は、110特性回折ピークのピーク面積である。この時に、本願の天然黒鉛のC003/C110は、4.0≦C003/C110≦7.0を満たす必要がある。
【0020】
負極活性材料の粉体OI値は、本分野で周知の方法で測定し、例えば本願の実施例の一部の前記方法で測定することができる。
【0021】
いくつかの実施例において、前記第1の負極膜層における活性材料の粉体OI値のCOIと前記第2の負極膜層における活性材料の粉体OI値のCOIとの比の値が、1.1≦COI/COI≦2.5を満たし、好ましくは、1.3≦COI/COI≦1.6を満たす場合、その急速充電性能及び容量をさらに向上させることができる。これは、第1の負極膜層における活性材料の粉体OI値と前記第2の負極膜層における活性材料の粉体OI値が所定の範囲内にある場合、上下膜層の細孔チャネル分布と充電時の活性イオンの分布がより一致し、電池セルの高容量及び急速充電設計に役立つからである。
【0022】
本願に係る負極シートは、集電体と前記集電体の少なくとも一つの表面に配置される二層又は多層の膜層を含む。負極シートは、両面塗布(即ち、膜層が集電体の二つの表面に配置される)であってもよく、片面塗布(即ち、膜層が集電体の一つの表面のみに配置される)であってもよい。本願の負極シートは、本分野で常用の様々な方法を用いて調製することができる。一般的に、まず、負極集電体を準備し、次に負極活性材料スラリーを調製し、負極活性材料スラリーを負極集電体の一つ又は二つの表面に塗布し、最後に乾燥、導電部材(タブ)の溶接、切断等の後処理工程を経て、必要な負極シートを得る。
【0023】
本願に係る負極膜層は、第1の活性材料スラリー及び第2の活性材料スラリーを一回で同時に負極集電体に塗布してもよく、二回に分けて塗布してもよい。好ましくは、一回で同時に第1の活性材料スラリー及び第2の活性材料スラリーを負極集電体に塗布する。
【0024】
前記負極膜層は、一般的に、負極活性材料及び選択可能な結着剤、選択可能な導電剤及び他の選択可能な助剤を含む。膜層スラリーは、一般的に、負極活性材料と選択可能な導電剤及び結着剤等を溶媒に分散させ、均一に撹拌して形成され、溶媒は、例えばN-メチルピロリドン(NMP)又は脱イオン水であってもよい。他の選択可能な助剤は、例えば、増粘及び分散剤(例えば、カルボキシメチルセルロース CMC)、PTCサーミスタ材料等であってもよい。
【0025】
例示的に、導電剤は、黒鉛、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの1種類又は複数種類であってもよい。
【0026】
例示的に、結着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂(water-based acrylic resin)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルブチラール(PVB)のうちの1種類又は複数種類であってもよい。
【0027】
本願に係る負極シートにおいて、負極活性材料は、ソフトカーボン、ハードカーボン、ケイ素系材料、スズ系材料のうちの1種類又は複数種類をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記第1の負極活性材料は、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ケイ素系材料、スズ系材料のうちの1種類又は複数種類をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記第2の負極活性材料は、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ケイ素系材料、スズ系材料のうちの1種類又は複数種類をさらに含んでもよい。
【0028】
電池の性能をさらに最適化するために、さらに、負極活性材料及び電極シートの他のパラメータを調整することができる。例えば、第1の負極活性材料及び第2の負極活性材料の黒鉛化度及び材料の粒径を一定の範囲内に制御し、及び/又は、電極シートCW、PD、電極シートの厚さ及び活性比表面積を一定の範囲内に制御することにより、電池セルのエネルギー密度、低温電力及び急速充電性能をさらに最適化することができる。
【0029】
好ましくは、前記第1の負極活性材料における天然黒鉛の形態は、球形又は略球状である。
【0030】
好ましくは、前記第2の負極活性材料における人造黒鉛の形態は、シート状又はブロック状である。
【0031】
好ましくは、前記第1の活性材料の平均粒径D50は、9μm~16μmであり、より好ましくは、11μm~14μmである。
【0032】
好ましくは、前記第2の活性材料の平均粒径D50は、11μm~19μmであり、より好ましくは、13μm~17μmである。
【0033】
好ましくは、前記第1の活性材料の粒径分布は、0.8≦(D90-D10)/D50≦1.5であり、より好ましくは、0.9<(D90-D10)/D50≦1.3である。
【0034】
好ましくは、前記第2の活性材料の粒径分布は、0.9≦(D90-D10)/D50≦2であり、より好ましくは、1.1≦(D90-D10)/D50≦1.6である。
【0035】
本願において、D10は、材料の粒子又は粉末の累積体積パーセントが10%に達する際に対応する粒径を指し、D90は、材料の粒子又は粉末の累積体積パーセントが90%に達する際に対応する粒径を指し、D50は、材料の粒子又は粉末の累積体積パーセントが50%に達する際に対応する粒径、即ち、体積分布のメジアン粒径を指し、D10、D90、D50の単位は、いずれもμmである。
【0036】
好ましくは、前記第1の活性材料の黒鉛化度は、95%~99%であり、より好ましくは、96%~98%である。
【0037】
好ましくは、前記第2の活性材料の黒鉛化度は、90%~95%であり、より好ましくは、92%~94%である。
【0038】
好ましくは、前記第1の活性材料の比表面積(BET)は、1.6m/g~4.0m/gであり、好ましくは、2.1m/g~2.7m/gである。
【0039】
好ましくは、前記第2の活性材料の比表面積(BET)は、0.6m/g~2.2m/gであり、好ましくは、0.7m/g~1.3m/gである。
【0040】
好ましくは、前記第1の活性材料のタップ密度は、0.8g/cm~1.3g/cmであり、より好ましくは、0.9g/cm~1.2g/cmである。
【0041】
好ましくは、前記第2の活性材料のタップ密度は、0.7g/cm~1.4g/cmであり、より好ましくは、0.8g/cm~1.2g/cmである。
【0042】
好ましくは、前記第1の活性材料は、30000Nの作用力下での粉体の圧密度が、1.7g/cm~2.0g/cmであり、より好ましくは、1.8g/cm~1.9g/cmである。
【0043】
好ましくは、前記第2の活性材料は、30000Nの作用力下での粉体の圧密度が、1.65g/cm~1.85g/cmであり、より好ましくは、1.71g/cm~1.80g/cmである。
【0044】
好ましくは、前記第1の活性材料及び/又は第2の負極活性材料の表面は、被覆層を有する。より好ましくは、前記第1の負極活性材料及び前記第2の負極活性材料の表面は、いずれも被覆層を有する。
【0045】
さらに、前記負極膜層と集電体との間の結着力は、6N/m≦F≦30N/mを満たし、より好ましくは、10N/m≦F≦20N/mを満たす。
【0046】
いくつかの好ましい実施形態において、第1の負極活性材料における前記天然黒鉛の質量占有率は、≧60%であり、より好ましくは、≧80%である。
【0047】
いくつかの好ましい実施形態において、第2の負極活性材料における前記人造黒鉛の質量占有率は、≧70%であり、より好ましくは、≧90%である。
【0048】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極膜層と前記第2の負極膜層との質量比は、1:3~9:5であり、より好ましくは、1:2~3:2である。
【0049】
本願の二次電池において、前記負極膜層は、負極集電体の一つの表面に配置されてもよく、負極集電体の二つの表面に同時に配置されてもよい。なお、本願に係る各負極膜層パラメータは、いずれも片面膜層のパラメータ範囲を指す。負極膜層が負極集電体の二つの表面に配置される場合、そのうちの任意の一つの表面上の膜層パラメータが本願を満たすと、本願の保護範囲内に属すると考えられる。また、本願に係る膜層の厚さ、圧密度、面密度等の範囲は、いずれも冷間プレスにより圧密された後に電池を組み立てるための電極シート/膜層のパラメータである。
【0050】
本願に係る負極シートにおいて、負極集電体は、常用の金属箔又は複合集電体を用いることができる。金属箔の材料は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金のうちの1種類又は複数種類であってもよい。例えば、厚さが5~30μmの銅箔を使用することができる。複合集電体は、一般的に、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金等)を高分子基材に形成することにより形成される。
【0051】
また、本願に係る負極シートは、膜層以外の他の付加の機能層を排除するものではない。例えば、いくつかの好ましい実施形態において、本願に係る負極シートは、集電体と第1の膜層との間に挟まれ且つ集電体の表面に配置される導電性下塗り層(例えば、導電剤及び結着剤で構成される)をさらに含む。別のいくつかの実施形態において、本願に係る負極シートは、さらに第2の膜層の表面に被覆される被覆保護層を含む。
【0052】
本願の負極シートを使用する以外に、本願の二次電池の構造及び製造方法自体は、周知である。例えば、二次電池は、一般的に、主に負極シート(即ち本願の負極シート)、正極シート、セパレータ及び電解液で構成され、活性イオンは、電解液を媒体として正極と負極の間で移動して、電池の充放電を実現する。正極と負極が電解液により短絡されることを回避するために、セパレータによって正極と負極を隔離する必要がある。
【0053】
本願の二次電池において、正極シートは、正極集電体と正極集電体の表面に配置され且つ正極活性材料を有する正極活性材料層とを含む。正極活性材料は、遷移金属複合酸化物であってもよく、リチウム鉄リン化物、リチウム鉄マンガンリン化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、これらのリチウム遷移金属酸化物に他の遷移金属又は非遷移金属を添加して得られた化合物、又は上記物質の2種類又は複数種類の混合物を含むが、本願は、これらの材料に限定されず、さらに他の二次電池の正極活性材料として用いられる従来の周知の材料を用いることができる。これらの正極活性材料は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
本願の二次電池において、セパレータ及び電解液の具体的な種類及び組成はいずれも特に限定されず、実際の需要に応じて選択することができる。
【0055】
具体的に、前記セパレータは、例えば、ポリエチレン膜、ポリプロピレン膜、ポリフッ化ビニリデン膜、不織布及びそれらの多層複合膜から選択することができる。
【0056】
具体的に、電解液は、一般的に、有機溶媒及び電解質塩を含む。有機溶媒は、鎖状カーボネート(例えば炭酸ジメチル DMC、ジエチルカーボネート DEC、エチルメチルカーボネート EMC、メチルプロピルカーボネート MPC、ジプロピルカーボネート DPC等)、環状カーボネート(例えばエチレンカーボネート EC、プロピレンカーボネート PC、ビニレンカーボネートVC等)、他の鎖状カルボン酸(例えばプロピオン酸メチル等)、他の環状エステル(例えばγ-ブチロラクトン等)、鎖状エーテル(例えばジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等)、環状エーテル(例えばテトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等)、ニトリル系(アセトニトリル、プロピオニトリル等)又はそれらからなる混合溶媒から選択することができる。電解質塩は、例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF等の無機リチウム塩、又は、LiCFSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(n≧2)等の有機リチウム塩である。
【0057】
以下、本願の二次電池の構造及び製造方法を簡単に説明する。
まず、本分野の常用の方法に従って電池の正極シートを製造する。本願は、正極シートに用いられる正極活性材料を限定しない。一般的に、上記正極活性材料において、導電剤(例えば、カーボンブラック等の炭素材料)、結着剤(例えば、PVDF)等を添加する必要がある。必要に応じて、他の添加剤、例えばPTCサーミスタ材料等を添加してもよい。一般的に、これらの材料を混合して溶媒(例えばNMP)で分散させ、均一に撹拌した後に正極集電体に均一に塗布し、乾燥後に正極シートを得る。正極集電体として、アルミニウム箔等の金属箔や多孔質金属板等の材料を用いることができる。常用のものは厚さが8~30μmのアルミニウム箔である。一般的に、正極シートを作製する時に、集電体の一部に正極塗布層を形成せず、集電体の一部を残して正極リード部とする。当然のことながら、リード部は後付けであってもよい。
次に、上記のようにして本願の負極シートを準備する(負極シートとする)。
最後に、セパレータが正極シートと負極シートの間で隔離の役割を果たすように、正極シート、セパレータ、負極シートを順次に積層した後、巻回(又は積層)してベア電池セルを得る。ベア電池セルを外装に置き、乾燥後に電解液を注入し、真空封止、静置、化成、整形等の工程を経て、二次電池を得る。
【0058】
一例として、前記二次電池は、外装と、外装内に封入された電池セル及び電解液とを含むことができる。前記二次電池における電池セルの数は、一つ又は複数であってもよく、需要に応じて調整することができる。
【0059】
いくつかの実施例において、前記二次電池の外装は、ソフトパック(例えば、袋状であってもよく、その材質は、プラスチックであってもよく、例えば、ポリプロピレン PP、ポリブチレンテレフタレート PBT、ポリブチレンサクシネート PBS等のうちの1種類又は複数種類である)であってもよく、硬質ケース(例えばアルミニウムケース等)であってもよい。
【0060】
本願は、二次電池の形状を特に限定せず、円筒形、角形又は他の任意の形状であってもよい。図1は、一例としての角形構造の二次電池5を示す。
【0061】
いくつかの実施例において、二次電池は、電池モジュールとして組み立てることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の個数は、複数であってもよく、具体的な数は、電池モジュールの応用及び容量に応じて調整することができる。
【0062】
図2は、一例としての電池モジュール4である。図2を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長さ方向に沿って順次に配列されてもよい。当然のことながら、他の任意の方式で配列することができる。この複数の二次電池5は、さらに締結具によって固定されていてもよい。
【0063】
選択的に、電池モジュール4はさらに収容空間を有するハウジングを含んでもよく、複数の二次電池5は当該収容空間に収容される。
【0064】
いくつかの実施例において、上記電池モジュールはさらに組み立てられて電池パックを形成することができ、電池パックに含まれる電池モジュールの個数は、電池パックの用途及び容量に応じて調整することができる。
【0065】
図3及び図4は、一例としての電池パック1である。図3及び図4を参照すると、電池パック1には、電池ボックスと、電池ボックス内に配置された複数の電池モジュール4とが含まれてもよい。電池ボックスは、上部筐体2及び下部筐体3を備え、上部筐体2は、下部筐体3を覆うように配置され、電池モジュール4を収容する密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方式により電池ボックス内に配置されてもよい。
【0066】
本願の第2の発明は、装置を提供する。前記装置は、本願の第1の態様に係る二次電池を含み、前記二次電池は、前記装置に電源を提供する。前記装置は、モバイル機器(例えば、携帯電話、ノートパソコン等)、電気自動車(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラック等)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
前記装置は、その使用需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0068】
図5は、一例としての装置である。該装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等である。二次電池の高電力及び高エネルギー密度に対する当該装置の要求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを使用してもよい。
【0069】
他の例としての装置は、携帯電話、タブレット、ノートパソコン等であってもよい。当該装置は、一般的に軽量化及び薄型化を必要とし、電源として二次電池を用いることができる。
【0070】
以下、実施例を参照して本願の有益な効果をさらに説明する。
【実施例
【0071】
以下、本願発明の目的、技術的解決手段及び有益な技術効果をより明確にするために、以下、実施例と組み合わせて本願をさらに詳細に説明する。しかしながら、理解すべきこととして、本願の実施例は、単に本願を説明するためのものであり、本願を限定するものではなく、また、本願の実施例は、明細書に記載された実施例に限定されるものではない。実施例において具体的な実験条件又は操作条件を明記しない場合、通常の条件で作製し、又は材料の供給者により推奨される条件で作製する。
【0072】
一.電池の調製
実施例1
1)正極シートの製造
リチウムニッケルコバルトマンガン三元活物質 LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523)と導電性カーボンブラック Super-P、結着剤 ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を、重量比 94:3:3で、N-メチルピロリドン溶媒で十分に撹拌して均一に混合した後、スラリーをアルミニウム箔基材に塗布し、乾燥、冷間プレス、ストリップ、切断を経て、正極シートを得る。
【0073】
2)負極シートの製造
第1段階において、負極スラリー1を調製する。第1の負極活性材料 天然黒鉛、結着剤 SBR、増粘剤 CMC及び導電性カーボンブラックを秤量して、96.2:1.8:1.2:0.8の重量比で、脱イオン水とともに、一定の順序で撹拌タンクに加えて混合して第1の負極スラリーを調製する。ここで、前記天然黒鉛の粉体OI値のCOIは4.5であり、D50は12.5であり、黒鉛化度は96.5%であり、(D90-D10)/D50は、0.95である。
第2段階において、負極スラリー2を調製する。第2の負極活性材料 人造黒鉛、結着剤 SBR、増粘剤 CMC-Na及び導電性カーボンブラックを秤量して、96.2:1.8:1.2:0.8の重量比で、脱イオン水とともに、一定の順序で撹拌タンクに加えて混合して第2の負極スラリーを調製する。ここで、前記人造黒鉛の粉体OI値のCOIは2.9であり、D50は15.0であり、黒鉛化度は91.8%であり、(D90-D10)/D50は、1.22である。
第3段階において、ダブルキャビティ塗布装置により、負極スラリー1と負極スラリー2を同時に押し出す。負極スラリー1は、集電体の二つの表面に塗布されて第1の負極膜層を形成し、負極スラリー2は、第1の負極膜層に塗布されて第2の負極膜層を形成する。第1負極膜層と第2負極膜層との質量比は、1:1である。
第4段階において、塗布されたウェット膜をオーブンによって異なる温度範囲内で乾燥させて乾燥の電極シートを取得し、さらに冷間プレスを経て必要な負極膜層を取得し、さらにストリップ、切断を経て、負極シートを得る。
【0074】
3)セパレータ
PEフィルムをセパレータとして選択する。
【0075】
4)電解液の調製
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を体積比 1:1:1で混合し、次に十分に乾燥されたリチウム塩 LiPFを1mol/Lの割合で混合有機溶媒で溶解させて、電解液を調製する。
【0076】
5)電池の調製
上記正極シート、セパレータ、負極シートを順次に積層し、巻回後に電池セルを取得し、電池セルを外装に入れ、上記電解液を添加し、封止、静置、化成、エージング等の工程を経た後、二次電池を得る。
【0077】
実施例2~18及び比較例1~4は、実施例1の製造方法と類似し、その相違とは、負極シートの組成及び製品のパラメータを調整することであり、異なる製品のパラメータは、表1~表3に示す通りである。
【0078】
二.性能パラメータ測定方法
1.負極活性材料及び負極膜層の各パラメータ測定
(1)OI値測定
負極活性材料の粉体OI値は、X線粉末回折装置(X’pert PRO)により得られ、X線回折分析法通則及び黒鉛の格子パラメータ測定方法JIS K 0131-1996、JB/T4220-2011に準拠して、X線回折スペクトルを得ることができ、COI=C004/C110であり、ここで、C004は、004特性回折ピークのピーク面積であり、C110は、110特性回折ピークのピーク面積である。
具体的に、負極活性材料の粉体OI値の測定方法は、以下の通りである。一定の質量の負極活性材料粉末をX線粉末回折装置に入れ、X線回折分析法により004結晶面回折ピークのピーク面積及び110結晶面回折ピークのピーク面積を得て、さらに負極活性材料のCOI値を得る。
【0079】
(2)負極活性材料の粒径
負極活性材料の粒径D50は、レーザ回折粒度分布測定器(Mastersizer3000)を使用し、粒度分布レーザ回折法(具体的にGB/T19077-2016を参照)に準拠して、粒径分布を測定することができ、体積分布のメディアンD50を用いて平均粒径を示す。
【0080】
(3)負極膜層の面密度
負極膜層の面密度=m/sであり、ここで、mは、膜層の重量を示し、sは、膜層の面積を示し、mは、精度が0.01g以上の電子天秤を用いて秤量して得ることができる。
【0081】
(4)負極膜層の圧密度
負極膜層の圧密度=m/Vであり、ここで、mは、膜層の重量を示し、Vは、膜層の体積を示し、mは、精度が0.01g以上の電子天秤を用いて秤量して得ることができ、膜層の表面積と膜層の厚さの積が膜層の体積Vであり、膜層の厚さは、精度が0.5μmのスパイラルマイクロメータを用いて測定することができる。
【0082】
2.電池性能測定
(1)急速充電性能測定
常温で、製造されたリチウムイオン電池(三電極を含む)は、1C(即ち1h内で理論容量の電流値を完全に放電する)の電流で1回目の充電及び放電を行い、充電は定電流定電圧充電であり、終了電圧は4.2Vであり、カットオフ電流は0.05Cであり、放電終了電圧は2.8Vであり、その理論容量をC0で記録する。次に、電池は、順に0.5C0、1C0、1.5C0、2C0、2.5C0、3C0、3.5C0、4C0、4.5C0で4.2Vのフルカットオフ電圧又は0Vの負極カットオフ電位まで定電流充電し、毎回の充電が完了した後に、1C0で2.8Vまで放電し、異なる充電倍率で10%、20%、30%…80%SOC状態まで充電したときに対応するアノード電位を記録し、異なるSOC状態での倍率-アノード電位曲線を描き、線形フィッティングした後に、異なるSOC状態でのアノード電位が0Vである時に対応する充電倍率を取得し、該充電倍率が該SOC状態での充電ウィンドウであり、それぞれ、C10%SOC、C20%SOC、C30%SOC、C40%SOC、C50%SOC、C60%SOC、C70%SOC、C80%SOCと記し、式(60/C20%SOC+60/C30%SOC+60/C40%SOC+60/C50%SOC+60/C60%SOC+60/C70%SOC+60/C80%SOC)*10%に応じて、該電池の10%~80%SOCからの充電時間Tを算出し、該時間が短いほど、電池の急速充電性能が優れることを示す。
【0083】
(2)サイクル性能測定
常温で、製造されたリチウムイオン電池の電池セルは、1C(即ち、1h内で理論容量の電流値を完全に放電する)の電流で1回目の充電及び放電を行い、充電は定電流定電圧充電であり、終了電圧は4.2Vであり、カットオフ電流は0.05Cであり、放電終了電圧は2.8Vであり、電池セルの初回サイクル時の放電容量Cbを記録する。その後に、サイクル寿命検出を行い、測定条件は、常温条件で1C/1Cサイクルを行うことであり、電池セルの放電容量Ceを随時記録し、CeとCbとの比がサイクル過容量維持率であり、容量維持率が80%以下である際に測定を停止し、サイクル数を記録する。
【0084】
(3)結着力の測定
塗布、冷間プレス後の負極シートを取って、長さ100mm、幅10mmの測定サンプルに切断する。幅25mmのステンレス鋼板を取って、両面テープ(幅11mm)を貼り付け、測定サンプルをステンレス鋼板上の両面テープに貼り付け、2000gのプレスローラでその表面で3回(300mm/min)往復圧延する。測定サンプルを180度折り曲げ、手動で測定サンプルの負極フィルムと集電体を25mm剥離し、該測定サンプルを試験機に固定し、剥離面と試験機の力線を一致させ、試験機を300mm/minで連続的に剥離して、剥離力の曲線を取得し、安定した部分の平均値を剥離力F0とすると、測定サンプルにおける負極フィルムと集電体との間の結着力 F=F0/測定サンプルの幅(Fの計測単位:N/m)である。
【0085】
四.各実施例、比較例の測定結果
上記方法に応じて、実施例及び比較例の電池をそれぞれ製造し、各性能パラメータを測定し、結果は、以下の表に示す通りである。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
実施例1~5及び比較例1~2のデータから分かるように、第1の負極膜層において天然黒鉛を第1の負極活性材料として使用し、第2の負極膜層において人造黒鉛を第2の負極活性材料として使用する場合、2種類の負極活性材料の粉体OI値は、良好な急速充電性能とサイクル性能を両立させるために、同時に本願の範囲内に入って互いにマッチングする必要がある。比較例1におけるCOI値が小さすぎる場合及び比較例2におけるCOI値が大きすぎる場合の2種類の場合にいずれも電池サイクル性能を顕著に悪化させ、同時に急速充電性能も相対的に悪い。各比較例及び実施例の膜層の粘着力のデータから分かるように、COI値が大きいほど、膜層の粘着力が大きくなる。良好な急速充電性能及びサイクル性能を確保するために、COIは、4.0乃至7.0の範囲内にあり、好ましくは、4.3乃至5.5の範囲内にある。
【0090】
実施例6~10及び比較例3~4のデータから分かるように、第1の負極膜層において天然黒鉛を第1の負極活性材料として使用し、第2の負極膜層において人造黒鉛を第2の負極活性材料として使用する場合、2種類の負極活性材料の粉体OI値は、良好な急速充電性能とサイクル性能を両立させるために、同時に本願の範囲内に入って互いにマッチングする必要がある。比較例3におけるCOI値が小さすぎる場合及び比較例2におけるCOI値が大きすぎる場合の2種類の場合にいずれも電池サイクル性能を顕著に悪化させ、同時に急速充電性能も相対的に悪い。良好な急速充電性能及びサイクル性能を確保するために、COIは、2.2乃至4.2の範囲内にあり、好ましくは、2.5乃至3.6の範囲内にある。
【0091】
実施例13と実施例3との比較、及び実施例2と実施例14との比較から分かるように、一定の範囲内で、COI/COI値が大きいほど、急速充電及びサイクル性能に役立つ。しかしながら、各実施例及び比較例から分かるように、COI/COI値が1.1乃至2.5の範囲内にある場合に、特に、1.3≦COI/COI≦1.6である場合に、総合性能が良好である。
【0092】
なお、明細書の上記記載及びガイダンスによれば、当業者は、上記実施形態に対し適切な変更及び修正を行うことができる。したがって、本願は、上記記載及び説明された具体的な実施形態に限定されるものではなく、本願のいくつかの修正及び変更は、本願の特許請求の範囲内に含まれる。また、本明細書ではいくつかの特定の用語が使用されるが、これらの用語は、単に説明を容易にするためのものであり、本願を限定するものではない。
【符号の説明】
【0093】
ここで、符号の説明は、以下の通りである。
1 電池パック、
2 上部筐体、
3 下部筐体、
4 電池モジュール、
5 二次電池。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】