(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-16
(54)【発明の名称】合成ジェット燃料を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C10G 45/58 20060101AFI20220909BHJP
C10G 2/00 20060101ALI20220909BHJP
C10G 50/00 20060101ALI20220909BHJP
C10G 47/18 20060101ALI20220909BHJP
C10J 3/00 20060101ALI20220909BHJP
B01J 29/40 20060101ALI20220909BHJP
B01J 23/755 20060101ALI20220909BHJP
B01J 23/42 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
C10G45/58
C10G2/00
C10G50/00
C10G47/18
C10J3/00 Z
B01J29/40 M
B01J23/755 M
B01J23/42 M
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021544767
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(85)【翻訳文提出日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 CA2020050111
(87)【国際公開番号】W WO2020154810
(87)【国際公開日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521338673
【氏名又は名称】グリーンフィールド・グローバル・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アルノ・デ・クラーク
(72)【発明者】
【氏名】ランジット・セデブ
(72)【発明者】
【氏名】リシャール・ロメオ・ルウ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
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4G169BA02B
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4H129NA23
(57)【要約】
原料を炭化水素に変換することによって、半合成ジェット燃料、完全合成ジェット燃料、又は両方の組合せを製造する方法を記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成ジェット燃料を製造する方法であって、
原料を合成ガスに変換する工程と、
前記合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換する工程と、
前記液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程と、
前記ケロシン生成物を水素処理して、合成ジェット燃料を形成する工程とを含む、方法。
【請求項2】
原料を合成ガスに変換する工程が、前記原料を水性条件下で熱分解して、バイオクルードを含む混合物を形成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原料が、高含水量のバイオマス、有機材料、廃棄物流、又はこれらの組合せを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
原料を合成ガスに変換する工程が、前記原料を熱分解して、バイオクルードを含む混合物を形成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記原料が、低含水量のバイオマス、有機材料、廃棄物流、又はこれらの組合せを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
原料を合成ガスに変換する工程が、
前記バイオクルードを含む混合物をガス化して、前記合成ガスを形成する工程を更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記バイオクルードを含む混合物をガス化する工程が、
前記バイオクルードを含む混合物を超臨界水ガス化して、CH
4、CO、CO
2、及びH
2を含む混合物を形成する工程と、
前記CH
4、CO、CO
2、及びH
2を含む混合物を改質して、前記合成ガスを形成する工程とを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
改質する工程が、乾式改質及び水蒸気改質を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
原料を合成ガスに変換するとき、
ガス化前に、油原料、糖原料、及び/又はアルコール原料を、前記バイオクルードを含む混合物に添加する工程を更に含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記合成ガスが、2対1未満の、H
2のCOに対する比を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記合成ガスが、2対1未満の、(H
2-CO
2)/(CO+CO
2)化学量論比を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記合成ガスが、1対1未満の、(H
2)/(2CO+3CO
2)リブレット比を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換する工程が、
フィッシャー-トロプシュ合成を実施して、前記合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換する工程を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記フィッシャー-トロプシュ合成が、鉄系触媒を用いて実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記フィッシャー-トロプシュ合成を実施して、前記合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換するとき、
H
2の濃度を増加させる水性ガスシフト反応を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記フィッシャー-トロプシュ合成が、約2MPa、又は約2.5MPa、又は約2.8MPaの圧力で実施される、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記フィッシャー-トロプシュ合成が、約1.5MPa~5MPaの範囲、又は約2MPa~約4MPaの範囲、又は約2MPa~約3MPaの範囲、又は約1.5~約2.5MPaの範囲、又は約2MPa~約2.5MPaの範囲の圧力で実施される、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記フィッシャー-トロプシュ合成が、2MPa超の圧力で実施される、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記液体炭化水素を含む混合物が、1対1超の、アルケンのアルカンに対する比を有する、請求項13から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程が、
前記液体炭化水素を含む混合物に気液平衡分離を実施する工程と、
前記混合物を、前記ケロシン生成物と、水性生成物、ナフサ及びガス生成物、又はガス油及びより重質な生成物のうちの少なくとも1種とに分離する工程とを含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記気液平衡分離が、単段分離及び/又は多段分離として実施される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
水性生成物が分離された場合、前記液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程が、
原料を合成ガスに変換するときに前記バイオクルードを含む混合物をガス化する前の前記バイオクルードを含む混合物に、前記分離された水性生成物を添加する工程を更に含む、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
ナフサ及びガス生成物が分離された場合、前記液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程が、
前記ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化して、第1の追加ケロシン生成物を含む混合物を形成する工程を更に含む、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、約2.5MPa又は約2MPaの圧力で実施される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、約1.5MPa~3MPaの範囲、又は約1.5MPa~約2.5MPaの範囲、又は約2MPa~約2.5MPaの範囲の圧力で実施される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、非硫化触媒を用いて実施される、請求項23から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、酸性ZSM-5ゼオライト触媒を用いて実施される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の追加ケロシン生成物が、アルケン及び芳香族化合物を含む、請求項23から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の追加ケロシン生成物が、約0%~約60%の芳香族化合物、約1%~約60%の芳香族化合物、又は約1%~約50%の芳香族化合物、又は約1%~約40%の芳香族化合物、又は約1%~約30%の芳香族化合物、又は約0%~約1%の芳香族化合物、又は約1%~約7%の芳香族化合物、又は約8%~約25%の芳香族化合物、又は約8%の芳香族化合物を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ガス油及びより重質な生成物が分離された場合、前記液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程が、
前記ガス油及びより重質な生成物を水素化分解して、第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を形成する工程を更に含む、請求項20から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ガス油及びより重質な生成物を水素化分解する工程が、約2.5MPa又は約2MPaの圧力で実施される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ガス油及びより重質な生成物を水素化分解する工程が、約1.5MPa~3MPa、又は約1.5MPa~約2.5MPa、又は約2MPa~約2.5MPaの圧力で実施される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記ガス油及びより重質な生成物を水素化分解する工程が、非硫化触媒を用いて実施される、請求項30から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記水素化分解工程が、非晶質シリカ-アルミナに担持された貴金属触媒を用いて実施される、請求項30から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記触媒が、Pt/SiO
2-Al
2O
3である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ケロシン生成物を水素処理して、合成ジェット燃料を形成する工程が、
前記ケロシン生成物を水素処理して、
且つナフサ及びガス生成物が分離された場合には前記第1の追加ケロシン生成物を水素処理して、
パラフィン系炭化水素を含む混合物を形成する工程と、
前記パラフィン系炭化水素を含む混合物を分画して、
且つガス油及びより重質な生成物が分離された場合には前記第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を分画して、
前記合成ジェット燃料を単離する工程とを含む、請求項1から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記パラフィン系炭化水素を含む混合物を分画する工程及び前記第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を分画する工程を行う場合、
分画前に、前記第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を、前記パラフィン系炭化水素を含む混合物に添加する工程を更に含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ケロシン生成物、前記第1の追加ケロシン生成物、及び前記第2の追加ケロシン生成物の各々が、約140℃~約300℃の標準沸点温度範囲を有する、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
前記水素処理する工程が、約2.5MPa又は約2MPaの圧力で実施される、請求項36から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記水素処理する工程が、約1.5MPa~3MPa、又は約1.5MPa~約2.5MPa、又は約2MPa~約2.5MPaの圧力で実施される、請求項36から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記水素処理する工程が、非硫化触媒を用いて実施される、請求項36から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記水素処理する工程が、アルミナ又はシリカに担持された還元型卑金属触媒を用いて実施される、請求項36から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記触媒が、還元型Ni/Al
2O
3である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記合成ジェット燃料が、半合成ジェット燃料、完全合成ジェット燃料、又はこれらの組合せである、請求項1から43のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により内容全体が本明細書に組み込まれている、2019年1月30日に出願した米国仮特許出願第62/798,636号の優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、一般に、ジェット燃料を製造する方法に関する。より詳細には、本開示は、合成ジェット燃料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
再生可能なバイオマス及び/又は廃棄物原料等の原料から、ジェット燃料とも呼ばれる航空タービン燃料を製造する方法は有用である。ジェット燃料は、輸送用燃料の中で、電気等の非炭化水素系燃料に置き換えられる可能性が最も低い。
【0004】
再生可能な材料及び/又は廃棄物等の原料からジェット燃料を製造する方法を考案するには課題がある。
【0005】
課題は、バイオマスから液体への変換に関連する供給ロジスティクスであり、例えば、文献(Zwart, R. W. R.; Boerrigter, H.; Van der Drift、A. Energy Fuels 2006、20、2192~2197)に概説されている。代表的な原料としてのバイオマスは、主にリグノセルロース系物質で構成されており、広範囲にわたって収集しなければならない原材料である。バイオマスは、物理的密度、即ち、体積あたりの質量が低く、エネルギー密度、即ち、体積あたりの燃焼エネルギーが低い。バイオマスをジェット燃料に変換するための中央集中型処理施設を有することが通常好ましいが、そのような低密度の原材料を長距離にわたって輸送することは、コスト(例えば、経済的にもエネルギー的にも)がかかる可能性があり、輸送前にバイオマスを高密度化することが一般に必要とされる。廃棄物の収集が、下水システム及び都市廃棄物(ごみ)収集システムを通じて地域社会の住人にサービスとして普通に提供されている場合、廃棄物原料を用いても供給ロジスティクスがそれほど問題にはならない可能性がある。
【0006】
供給ロジスティクスに関連する別の課題は、バイオマス及び廃棄物原料等の原料が水分を多く含むことである。乾燥及び他の形態の水分除去の方法は既知であるが(例えば、Allardice, D. J.; Caffee, A. L.; Jackson, W. R.; Marshall, M.、In Advances in the science of Victorian brown coal、Li, C-Z.編、Elsevier、2004、85~133頁)、水分含有量を減らしてエネルギー密度を高めることが、コストの増大を招く可能性がある。
【0007】
別の課題は、供給物の不均一性である。主に本来固体である原料の場合、不均一性は一般に、物理的相違及び化学的相違の両方を指す。方法が供給物のばらつきに敏感である場合、原料を均質化するために労力を費やさなければならず、コストが増える。
【0008】
別の課題は、バイオマス及び廃棄物原料等の原料中の水素、炭素、及び酸素のモル比と関係がある。バイオマス及び廃棄物原料は、全質量の1/3超が酸素であり得る酸素含有化合物を含有する。これは、化石原油原料がほとんど酸素を含有しないことと対照的である。このような酸素含有原料をジェット燃料に変換する場合、酸素は一般に、水としての水素の損失、又は一酸化炭素若しくは二酸化炭素としての炭素の損失を伴って除去される。しかし、ジェット燃料の仕様では、一般に、ほぼ完全な脱酸素が必要である。通常、バイオマス及びバイオ廃棄物の原料は、一般に、水素の炭素に対するモル比が約1.4対1であるが、ジェット燃料は、一般に、煙点及び重量エネルギー密度等のジェット燃料仕様のために、水素の炭素に対するモル比が約2対1とより高い必要がある。
【0009】
別の課題は、例えば、酸素含有化合物(酸素化物)を含むバイオクルード生成物に沸点が350℃未満の分画が存在している場合、その生成物を精製するための技術と関係がある。酸素含有生成物を用いた石油精製技術の操作を評価した実験的調査では、水素処理でさえも、石油精製技術の修正がしばしば必要であることが示唆された;例えば、Leckel, D. O.、Energy Fuels、2007、21、662~667;Cowley, M.、Energy Fuels、2006、20、1771~1776;Smook, D.; De Klerk, A.、Ind. Eng. Chem. Res.、2006、45、467~471。精製のための触媒及び触媒作用に対する酸素化物の影響が調査された(例えば、De Klerk, A.; Furimsky, E.、Catalysis in the refining of Fischer-Tropsch syncrude; Royal Society of Chemistry、2010)。バイオクルードをジェット燃料の原料として利用するためには、従来の製油所を変更しなければならない可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Zwart, R. W. R.; Boerrigter, H.; Van der Drift、A. Energy Fuels 2006、20、2192~2197
【非特許文献2】Allardice, D. J.; Caffee, A. L.; Jackson, W. R.; Marshall, M.、In Advances in the science of Victorian brown coal、Li, C-Z.編、Elsevier、2004、85~133頁
【非特許文献3】Leckel, D. O.、Energy Fuels、2007、21、662~667
【非特許文献4】Cowley, M.、Energy Fuels、2006、20、1771~1776
【非特許文献5】Smook, D.; De Klerk, A.、Ind. Eng. Chem. Res.、2006、45、467~471
【非特許文献6】De Klerk, A.; Furimsky, E.、Catalysis in the refining of Fischer-Tropsch syncrude; Royal Society of Chemistry、2010
【非特許文献7】Scherzer, J.; Gruia, A. J.、Hydrocracking science and technology; CRC Press: Boca Raton、FL、1996
【非特許文献8】Garwood, W. E.、ACS Symp. Ser.、1983、218、383~396
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様では、合成ジェット燃料を製造する方法であって、原料を合成ガスに変換する工程と、合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換する工程と、液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程と、ケロシン生成物を水素処理して、合成ジェット燃料を形成する工程とを含む、方法を提供する。
【0012】
本開示の一実施形態では、原料を合成ガスに変換する工程が、原料を水性条件下で熱分解して、バイオクルードを含む混合物を形成する工程を含む、方法を提供する。
【0013】
別の一実施形態では、原料が、高含水量のバイオマス、有機材料、廃棄物流、又はこれらの組合せを含む、方法を提供する。
【0014】
別の一実施形態では、原料を合成ガスに変換する工程が、原料を熱分解して、バイオクルードを含む混合物を形成する工程を含む、方法を提供する。
【0015】
別の一実施形態では、原料が、低含水量のバイオマス、有機材料、廃棄物流、又はこれらの組合せを含む、方法を提供する。
【0016】
別の一実施形態では、原料を合成ガスに変換する工程が、バイオクルードを含む混合物をガス化して、合成ガスを形成する工程を更に含む、方法を提供する。
【0017】
別の一実施形態では、バイオクルードを含む混合物をガス化する工程が、バイオクルードを含む混合物を超臨界水ガス化して、CH4、CO、CO2、及びH2を含む混合物を形成する工程と、CH4、CO、CO2、及びH2を含む混合物を改質して、合成ガスを形成する工程とを含む、方法を提供する。
【0018】
別の一実施形態では、改質する工程が、乾式改質及び水蒸気改質を含む、方法を提供する。
【0019】
別の一実施形態では、原料を合成ガスに変換するとき、ガス化前に、油原料、糖原料、及び/又はアルコール原料を、バイオクルードを含む混合物に添加する工程を更に含む、方法を提供する。
【0020】
別の一実施形態では、合成ガスが、2対1未満の、H2のCOに対する比を有する、方法を提供する。
【0021】
別の一実施形態では、合成ガスが、2対1未満の、(H2-CO2)/(CO+CO2)化学量論比を有する、方法を提供する。
【0022】
別の一実施形態では、合成ガスが、1対1未満の、(H2)/(2CO+3CO2)リブレット比(Ribblet ratio)を有する、方法を提供する。
【0023】
別の一実施形態では、合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換する工程が、フィッシャー-トロプシュ合成を実施して、合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換する工程を含む、方法を提供する。
【0024】
別の一実施形態では、フィッシャー-トロプシュ合成が、鉄系触媒を用いて実施される、方法を提供する。
【0025】
別の一実施形態では、フィッシャー-トロプシュ合成を実施して、合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換するとき、H2の濃度を増加させる水性ガスシフト反応を更に含む、方法を提供する。
【0026】
別の一実施形態では、フィッシャー-トロプシュ合成が、約2MPaの圧力、又は2MPa超、若しくは約2.5MPa、若しくは約2.8MPaの圧力で実施される、方法を提供する。
【0027】
別の一実施形態では、フィッシャー-トロプシュ合成が、約1.5MPa~5MPaの範囲、又は約2MPa~約4MPaの範囲、又は約2MPa~約3MPaの範囲、又は約1.5~約2.5MPaの範囲、又は約2MPa~約2.5MPaの範囲の圧力で実施される、方法を提供する。
【0028】
別の一実施形態では、フィッシャー-トロプシュ合成が、2MPa超の圧力で実施される、方法を提供する。
【0029】
別の一実施形態では、液体炭化水素を含む混合物が、1対1超の、アルケンのアルカンに対する比を有する、方法を提供する。
【0030】
別の一実施形態では、液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程が、液体炭化水素を含む混合物に気液平衡分離を実施する工程と、混合物を、ケロシン生成物と、水性生成物、ナフサ及びガス生成物、又はガス油及びより重質な生成物のうちの少なくとも1種とに分離する工程とを含む、方法を提供する。
【0031】
別の一実施形態では、気液平衡分離が、単段分離及び/又は多段分離として実施される、方法を提供する。
【0032】
別の一実施形態では、水性生成物が分離された場合、液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程が、原料を合成ガスに変換するときにバイオクルードを含む混合物をガス化する前のバイオクルードを含む混合物に、分離された水性生成物を添加する工程を更に含む、方法を提供する。
【0033】
別の一実施形態では、ナフサ及びガス生成物が分離された場合、液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程が、ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化して、第1の追加ケロシン生成物を含む混合物を形成する工程を更に含む、方法を提供する。
【0034】
別の一実施形態では、ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、約2.5MPa又は約2MPaの圧力で実施される、方法を提供する。
【0035】
別の一実施形態では、ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、約1.5MPa~3MPaの範囲、又は約1.5MPa~約2.5MPaの範囲、又は約2MPa~約2.5MPaの範囲の圧力で実施される、方法を提供する。
【0036】
別の一実施形態では、ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、非硫化触媒を用いて実施される、方法を提供する。
【0037】
別の一実施形態では、ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、酸性ZSM-5ゼオライト触媒を用いて実施される、方法を提供する。
【0038】
別の一実施形態では、第1の追加ケロシン生成物が、アルケン及び芳香族化合物を含む、方法を提供する。
【0039】
別の一実施形態では、第1の追加ケロシン生成物が、約0%~約60%の芳香族化合物、約1%~約60%の芳香族化合物、又は約1%~約50%の芳香族化合物、又は約1%~約40%の芳香族化合物、又は約1%~約30%の芳香族化合物、又は約0%~約1%の芳香族化合物、又は約1%~約7%の芳香族化合物、又は約8%~約25%の芳香族化合物、又は約8%の芳香族化合物を含む、方法を提供する。
【0040】
別の一実施形態では、ガス油及びより重質な生成物が分離された場合、液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程が、ガス油及びより重質な生成物を水素化分解して、第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を形成する工程を更に含む、方法を提供する。
【0041】
別の一実施形態では、ガス油及びより重質な生成物を水素化分解する工程が、約2.5MPa又は約2MPaの圧力で実施される、方法を提供する。
【0042】
別の一実施形態では、ガス油及びより重質な生成物を水素化分解する工程が、約1.5MPa~3MPa、又は約1.5MPa~約2.5MPa、又は約2MPa~約2.5MPaの圧力で実施される、方法を提供する。
【0043】
別の一実施形態では、ガス油及びより重質な生成物を水素化分解する工程が、非硫化触媒を用いて実施される、方法を提供する。
【0044】
別の一実施形態では、水素化分解工程が、非晶質シリカ-アルミナに担持された貴金属触媒を用いて実施される、方法を提供する。別の一実施形態では、触媒はPt/SiO2-Al2O3である。
【0045】
別の一実施形態では、ケロシン生成物を水素処理して、合成ジェット燃料を形成する工程が、ケロシン生成物を水素処理して、且つナフサ及びガス生成物が分離された場合には第1の追加ケロシン生成物を水素処理して、パラフィン系炭化水素を含む混合物を形成する工程と、パラフィン系炭化水素を含む混合物を分画して、且つガス油及びより重質な生成物が分離された場合には第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を分画して、合成ジェット燃料を単離する工程とを含む、方法を提供する。
【0046】
別の一実施形態では、パラフィン系炭化水素を含む混合物を分画する工程及び第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を分画する工程を行う場合、分画前に、第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を、パラフィン系炭化水素を含む混合物に添加する工程を更に含む、方法を提供する。
【0047】
別の一実施形態では、ケロシン生成物、第1の追加ケロシン生成物、及び第2の追加ケロシン生成物の各々が、約140℃~約300℃の標準沸点温度範囲を有する、方法を提供する。
【0048】
別の一実施形態では、水素処理する工程が、約2.5MPa又は約2MPaの圧力で実施される、方法を提供する。
【0049】
別の一実施形態では、水素処理する工程が、約1.5MPa~3MPa、又は約1.5MPa~約2.5MPa、又は約2MPa~約2.5MPaの圧力で実施される、方法を提供する。
【0050】
別の一実施形態では、水素処理する工程が、非硫化触媒を用いて実施される、方法を提供する。
【0051】
別の一実施形態では、水素処理する工程が、アルミナ又はシリカに担持された還元型卑金属触媒を用いて実施される、方法を提供する。別の一実施形態では、触媒は還元型Ni/Al2O3である。
【0052】
別の一実施形態では、合成ジェット燃料が、半合成ジェット燃料、完全合成ジェット燃料、又はこれらの組合せである、方法を提供する。
【0053】
次に、本開示の実施形態を、添付の図面を参照して例としてのみ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本明細書に記載の方法のブロックフロー図を示す図である。工程は、破線のブロックで示し、1~5の番号を付けている。破線ブロックの各々の中には、次位レベルの方法の詳細を示す。各主要ユニットに番号を付けている。明確にするために区別が必要な流れにのみ番号を付けている。
【
図2】
図1の第3工程及び第4工程の詳細なブロックフロー図を特定の主要な流れと共に示す図である。
【
図3】
図1のユニット5.1のオリゴマー化ユニットを特定の主要な流れと共により詳細に示す図である。
【
図4】
図3の拡大図であり、合成ガス化合物を含む、オリゴマー化ユニットからの最軽質生成物分画を更に処理する方法を示す図である
【
図5】
図3の拡大図であり、合成ジェット燃料の収率を向上させることができる方法を示す図である。
【
図6】
図1のユニット5.2の水素化分解ユニットを、水素の供給及び水素の再利用は図示していないが、特定の主要な流れと共により詳細に示す図である。
【
図7】
図1のユニット5.3の水素処理ユニットを、水素の供給及び水素のリサイクルは図示していないが、特定の主要な流れと共により詳細に示す図である。
【
図8】
図7の拡大図であり、水素処理機からの生成物を分離する方法を示す図である。
【
図9】合成ガスを生成するシステムの一例であり、Aは熱水液化ユニットを示し、Bは超臨界水ガス化ユニットを示し、Cは改質ユニットを示し、X-X'はAとBの間の供給流れを示し、Z-Z'はBとCの間の供給流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
一般に、本開示は、合成ジェット燃料を製造する方法であって、原料を合成ガスに変換する工程と、合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換する工程と、液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程と、ケロシン生成物を水素処理して、合成ジェット燃料を形成する工程とを含む、方法を提供する。
【0056】
本開示の一例では、原料を合成ガスに変換する工程が、原料を水性条件下で熱分解して、バイオクルードを含む混合物を形成する工程を含む、方法を提供する。
【0057】
別の一例では、原料が、高含水量のバイオマス、有機材料、廃棄物流、又はこれらの組合せを含む、方法を提供する。
【0058】
別の一例では、原料を合成ガスに変換する工程が、原料を熱分解して、バイオクルードを含む混合物を形成する工程を含む、方法を提供する。
【0059】
別の一例では、原料が、低含水量のバイオマス、有機材料、廃棄物流、又はこれらの組合せを含む、方法を提供する。
【0060】
別の一例では、原料を合成ガスに変換する工程が、バイオクルードを含む混合物をガス化して、合成ガスを形成する工程を更に含む、方法を提供する。
【0061】
別の一例では、バイオクルードを含む混合物をガス化する工程が、バイオクルードを含む混合物を超臨界水ガス化して、CH4、CO、CO2、及びH2を含む混合物を形成する工程と、CH4、CO、CO2、及びH2を含む混合物を改質して、合成ガスを形成する工程とを含む、方法を提供する。
【0062】
別の一例では、改質する工程が、乾式改質及び水蒸気改質を含む、方法を提供する。
【0063】
別の一例では、原料を合成ガスに変換するとき、ガス化前に、油原料、糖原料、及び/又はアルコール原料を、バイオクルードを含む混合物に添加する工程を更に含む、方法を提供する。
【0064】
別の一例では、合成ガスが、2対1未満の、H2のCOに対する比を有する、方法を提供する。
【0065】
別の一例では、合成ガスが、2対1未満の、(H2-CO2)/(CO+CO2)化学量論比を有する、方法を提供する。
【0066】
別の一例では、合成ガスが、1対1未満の、(H2)/(2CO+3CO2)リブレット比を有する、方法を提供する。
【0067】
別の一例では、合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換する工程が、フィッシャー-トロプシュ合成を実施して、合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換する工程を含む、方法を提供する。
【0068】
別の一例では、フィッシャー-トロプシュ合成が、鉄系触媒を用いて実施される、方法を提供する。
【0069】
別の一例では、フィッシャー-トロプシュ合成を実施して、合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換するとき、H2の濃度を増加させる水性ガスシフト反応を更に含む、方法を提供する。
【0070】
別の一例では、フィッシャー-トロプシュ合成が、約2MPaの圧力、又は2MPa超、若しくは約2.5MPa、若しくは約2.8MPaの圧力で実施される、方法を提供する。
【0071】
別の一例では、フィッシャー-トロプシュ合成が、約1.5MPa~5MPaの範囲、又は約2MPa~約4MPaの範囲、又は約2MPa~約3MPaの範囲、又は約1.5~約2.5MPaの範囲、又は約2MPa~約2.5MPaの範囲の圧力で実施される、方法を提供する。
【0072】
別の一例では、フィッシャー-トロプシュ合成が、2MPa超の圧力で実施される、方法を提供する。
【0073】
別の一例では、液体炭化水素を含む混合物が、1対1超の、アルケンのアルカンに対する比を有する、方法を提供する。
【0074】
別の一例では、液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程が、液体炭化水素を含む混合物に気液平衡分離を実施する工程と、混合物を、ケロシン生成物と、水性生成物、ナフサ及びガス生成物、又はガス油及びより重質な生成物のうちの少なくとも1種とに分離する工程とを含む、方法を提供する。
【0075】
別の一例では、気液平衡分離が、単段分離及び/又は多段分離として実施される、方法を提供する。
【0076】
別の一例では、水性生成物が分離された場合、液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程が、原料を合成ガスに変換するときにバイオクルードを含む混合物をガス化する前のバイオクルードを含む混合物に、分離された水性生成物を添加する工程を更に含む、方法を提供する。
【0077】
別の一例では、ナフサ及びガス生成物が分離された場合、液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程が、ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化して、第1の追加ケロシン生成物を含む混合物を形成する工程を更に含む、方法を提供する。
【0078】
別の一例では、ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、約2.5MPa又は約2MPaの圧力で実施される、方法を提供する。
【0079】
別の一例では、ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、約1.5MPa~3MPaの範囲、又は約1.5MPa~約2.5MPaの範囲、又は約2MPa~約2.5MPaの範囲の圧力で実施される、方法を提供する。
【0080】
別の一例では、ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、非硫化触媒を用いて実施される、方法を提供する。
【0081】
別の一例では、ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、酸性ZSM-5ゼオライト触媒を用いて実施される、方法を提供する。
【0082】
別の一例では、第1の追加ケロシン生成物が、アルケン及び芳香族化合物を含む、方法を提供する。
【0083】
別の一例では、第1の追加ケロシン生成物が、約0%~約60%の芳香族化合物、約1%~約60%の芳香族化合物、又は約1%~約50%の芳香族化合物、又は約1%~約40%の芳香族化合物、又は約1%~約30%の芳香族化合物、又は約0%~約1%の芳香族化合物、又は約1%~約7%の芳香族化合物、又は約8%~約25%の芳香族化合物、又は約8%の芳香族化合物を含む、方法を提供する。
【0084】
別の一例では、ガス油及びより重質な生成物が分離された場合、液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程が、ガス油及びより重質な生成物を水素化分解して、第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を形成する工程を更に含む、方法を提供する。
【0085】
別の一例では、ガス油及びより重質な生成物を水素化分解する工程が、約2.5MPa又は約2MPaの圧力で実施される、方法を提供する。
【0086】
別の一例では、ガス油及びより重質な生成物を水素化分解する工程が、約1.5MPa~3MPa、又は約1.5MPa~約2.5MPa、又は約2MPa~約2.5MPaの圧力で実施される、方法を提供する。
【0087】
別の一例では、ガス油及びより重質な生成物を水素化分解する工程が、非硫化触媒を用いて実施される、方法を提供する。
【0088】
別の一例では、水素化分解工程が、非晶質シリカ-アルミナに担持された貴金属触媒を用いて実施される、方法を提供する。別の一実施形態では、触媒はPt/SiO2-Al2O3である。
【0089】
別の一例では、ケロシン生成物を水素処理して、合成ジェット燃料を形成する工程が、ケロシン生成物を水素処理して、且つナフサ及びガス生成物が分離された場合には第1の追加ケロシン生成物を水素処理して、パラフィン系炭化水素を含む混合物を形成する工程と、パラフィン系炭化水素を含む混合物を分画して、且つガス油及びより重質な生成物が分離された場合には第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を分画して、合成ジェット燃料を単離する工程とを含む、方法を提供する。
【0090】
別の一例では、パラフィン系炭化水素を含む混合物を分画する工程及び第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を分画する工程を行う場合、分画前に、第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を、パラフィン系炭化水素を含む混合物に添加する工程を更に含む、方法を提供する。
【0091】
別の一例では、ケロシン生成物、第1の追加ケロシン生成物、及び第2の追加ケロシン生成物の各々が、約140℃~約300℃の標準沸点温度範囲を有する、方法を提供する。
【0092】
別の一例では、水素処理する工程が、約2.5MPa又は約2MPaの圧力で実施される、方法を提供する。
【0093】
別の一例では、水素処理する工程が、約1.5MPa~3MPa、又は約1.5MPa~約2.5MPa、又は約2MPa~約2.5MPaの圧力で実施される、方法を提供する。
【0094】
別の一例では、水素処理する工程が、非硫化触媒を用いて実施される、方法を提供する。
【0095】
別の一例では、水素処理する工程が、アルミナ又はシリカに担持された還元型卑金属触媒を用いて実施される、方法を提供する。別の一例では、触媒は還元型Ni/Al2O3である。
【0096】
別の一例では、合成ジェット燃料が、半合成ジェット燃料、完全合成ジェット燃料、又はこれらの組合せである、方法を提供する。
【0097】
本発明を詳細に説明する前に、本発明が、本出願に含まれる例示的な実施形態に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施又は実行することができる。本明細書で使用する表現及び用語は、説明のためのものであり、限定のためのものではないことを理解されたい。
【0098】
例示を単純化及び明確にするために、適切であると考えられる場合、対応する又は類似する要素又は工程を示唆するために、図面間で参照番号を繰り返すことができることが認識されるであろう。更に、本明細書に記載の例示的な諸実施形態の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳説を示す。しかし、本明細書に記載の諸実施形態は、これらの特定の詳説なしで実施され得ることが当業者なら理解されるであろう。他の事例では、周知の方法、手順、及び構成要素は、本明細書に記載の諸実施形態を不明瞭にしないために詳細には記載していない。更に、本記載は、本明細書に記載の諸実施形態の範囲を何ら限定するものではなく、本明細書に記載の様々な実施形態の例示的な実施を説明するに過ぎないと考えられたい。
【0099】
別段の定義がない限り、本明細書で使用するすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する当業者によって普通に理解されているものと同じ意味を有する。
【0100】
本明細書及び特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1つ(a、an)」及び「その(the)」は、文脈上そうでないとする明白な指示がない限り、複数の言及を包含する。
【0101】
用語「含む(comprising)」は、本明細書で使用する場合、以下の列挙が網羅的ではなく、任意の他の追加の適切な物品、例えば、適切な1つ又は複数のさらなる特徴、構成要素、及び/又は成分を含んでいてもいなくてもよいことを意味すると理解されるであろう。
【0102】
本明細書で使用する場合、用語「約(about及びapproximately)」は、寸法、濃度、温度、又は他の物理的若しくは化学的性質及び特性の範囲と共に使用される。これらの用語の使用は、性質及び特性の値又は範囲の上限及び下限に存在する可能性のあるわずかな変動、例えば、±10%又は±5%を包含することを意味する。
【0103】
本明細書で使用する場合、「航空タービン燃料」又は「ジェット燃料」は、石油由来のケロシンを含むジェット燃料ブレンド成分(即ち、半合成ジェット燃料)、又はいずれの石油由来のケロシンも含まないジェット燃料(即ち、完全合成ジェット燃料)としての合成航空タービン燃料の仕様要件を満たすために必要とされる燃料添加物を添加する前のケロシンを指す。例えば、これらの仕様要件は、英国国防省等の適切な規格文書に記載されている。国防省規格91-91, Issue 7. タービン燃料、ケロシンタイプ、ジェットA-1、NATOコード:F-35, Joint Service Designation: AVTUR;英国国防省:ロンドン、2011年2月18日、及びASTM D 7566-15b、但し、ASTM D 7566-19に改定(例えば、付属文書A1、芳香族化合物を含む合成パラフィン系ケロシン(SPK)を参照)。合成炭化水素を含有する航空タービン燃料の標準仕様;米国材料試験協会:ペンシルベニア州ウェストコンショホッケン、2015年。当業者なら分かるように、添加剤を添加することで満たすことができるのは仕様要件のごく一部であり、仕様要件の多くは精製プロセスにより満たすことができる(例えば、静電気消散剤のみの添加後に要件を満たすことが可能であった、以下の実施例4を参照されたい)。
【0104】
本明細書で使用する場合、「原料」は、バイオマス、有機材料、廃棄物流、又はこれらの組合せを指す。原料の例としては、穀物エタノール製造所からの廃棄物流(バガス、蒸留廃液、廃水、及びグリセリン)、セルロース系バイオマス(木材、エネルギー作物、草)、有機性廃棄物(グリーンごみ箱(green bin)に収集される廃棄物、下水汚泥)、農業廃棄物(農業用植物の廃棄物又は残渣、糞尿)、パルプ及び製紙工場の廃棄物流(木材廃棄物、前加水分解物)、市町村で分別された有機性廃棄物、バイオディーゼル(グリセリン)、並びにこれらの任意の組合せが挙げられるが、これらだけに限らない。バイオマスの例としては、森林収穫、製品製造、建築、及び解体廃材の採取又は管理等の活動からの副産物である材料;並びにリグノセルロース系バイオマス、例えば、森林残渣、都市残渣、及び工場残渣の3カテゴリーに分類される木材系残渣が挙げられるが、これらだけに限らない。有機材料の例としては、セルロース系材料、リグノセルロース系材料、廃棄物、例えば、木材加工廃棄物、農業残渣、市町村のグリーンごみ箱収集物、糞尿、セルロース系材料加工工場からの排出物、製紙工場からの排出物、バイオマス由来エタノール加工からの排出物、低濃度(thin)又は全(whole)蒸留廃液、乾燥蒸留穀物、及び生分解性廃水等;分子構造中に炭素及び水素を含む材料、例えば、アルコール、ケトン、アルデヒド、脂肪酸、エステル、カルボン酸、エーテル、炭水化物、タンパク質、脂質、多糖、単糖、セルロース、核酸等;の任意のものが挙げられるが、これらだけに限らず、例えば、廃棄物(例えば、農業又は産業廃棄物流、下水汚泥)、有機液体流、新鮮バイオマス、前処理バイオマス、部分消化バイオマス等に存在し得る。いくつかの例では、本明細書で定義する「原料」には、高含水量の原料及び/又は低エネルギー密度の原料が含まれる。いくつかの例では、本明細書で定義する「原料」には、低含水量の原料が含まれる。
【0105】
いくつかの例では、高含水量物は、周囲条件で別の相として存在する水を有する材料を指す。一例では、高含水量物は、有機物含有量を超える含水量を有する材料を指す。他の例では、高含水量は、例えば、40質量%超、又は約50質量%~約95質量%の間、又は約60質量%~約90質量%の間、又は約70質量%~約90質量%の間、又は約80質量%~約90質量%の間、又は約50質量%~約70質量%の間の任意の値~約75質量%~約95質量%の間の任意の値の水含量を指す。いくつかの例では、低含水量物は、周囲条件で別の相として存在する水を含まない材料を指す。他の例では、低含水量は、例えば、≦40質量%、又は約5質量%~約40質量%の間で、又は約10質量%~約40質量%の間、又は約20質量%~約40質量%の間、又は約30質量%~約40質量%の間、又は約5質量%~約20質量%の間の任意の値~約25質量%~約40質量%の間の任意の値の水含量を指す。
【0106】
本明細書で使用する場合、「油原料」は、植物性油又は動物性脂肪油を指す。いくつかの例では、「油原料」は、廃棄された植物性油又は動物性脂肪油を指す。「糖原料」は、糖の溶液を指す。いくつかの例では、糖は、廃糖でもよい。「アルコール原料」は、グリセロール等の液体アルコールを指す。いくつかの例では、液体アルコールは、廃アルコールでもよい。
【0107】
本明細書で使用する場合、「水性条件下での原料の熱分解」は、周囲条件で別の相として存在する水の存在下での原料の熱分解又は熱処理を指し、以下に限らないが、熱水液化等がある。本明細書で使用する場合、「原料の熱分解」は、周囲条件で水が別の相として存在しない原料の熱分解又は熱処理を指す。当業者なら分かるように、「水性条件」は、例えば、試薬、触媒、溶媒、又はこれらの組合せとして作用するのに十分な量で存在する水を指す。当業者なら分かるように、「熱分解条件」は、水の不在、又は例えば、試薬、触媒、溶媒、若しくはこれらの組合せとして作用するのに十分ではない量で存在する水を指すことがある。
【0108】
本明細書で使用する場合、「液体炭化水素」は、直鎖状、分岐状、及び/若しくは環状のアルカン及びアルケン(オレフィン)、又は、以下に限らないが、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、ケトン、エーテル等の酸素含有官能基で非置換若しくは置換されていてもよい芳香族化合物を指す。
【0109】
本明細書で使用する場合、「バイオクルード」は、以下に限らないが、芳香族化合物、ポリ芳香族化合物、脂肪酸、アルカン、アルケン、及び/又は酸素含有化合物が含まれる混合物である。
【0110】
本明細書で使用する場合、「パラフィン系炭化水素」は、直鎖状又は分岐状アルカンを指し、シクロアルカンを含んでもよい。
【0111】
本明細書には、バイオマス、廃棄物原料、油原料、糖原料、及び/又はアルコール原料等の原料を、ブレンドに適する、又は半合成若しくは完全合成ジェット燃料としての直接使用に適する合成ジェット燃料に変換する方法を記載する。
【0112】
図1を参照して、方法の一例を、破線のブロックで示した5工程において説明する。5工程は、(1)原料を熱分解、又は水性条件下で原料を熱分解(例えば、熱水液化)して、バイオクルードを含む混合物を生成する工程と、(2)バイオクルードを含む混合物をガス化して、合成ガスを形成する工程と、任意に、ガス化前に、油原料、糖原料、及び/又はアルコール原料を、バイオクルードを含む混合物に添加する工程と、(3)フィッシャー-トロプシュ合成を実施して、合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換する工程と、(4)液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物、及び少なくとも3種の他の分画を単離する工程と、(5)ケロシン生成物を水素処理して、主生成物としてジェット燃料を生成する工程とを含む。いくつかの例では、
図1の工程1は分散した場所で実施され、
図1の工程2~5は中央集中させた一カ所で実施される。
【0113】
図1の工程1は、嵩高い低エネルギー密度の原料等の原料を、取扱い及び輸送が容易にできるより高密度な液体に変換するために行われる。工程1の例では、水性条件下での熱分解は、
図1のブロック1で示すように、熱水液化を含む。示すように、熱水液化ユニットは、バイオマス又は廃棄物材料の供給源等の原料供給源の近くに配置することができる小規模の分散型ユニットである。熱水液化ユニットは、
図1のブロック1.1~ブロック1.nで表され、ここで、nは正の整数値である。直接液化ユニットを分散して配置することによって、未処理原料から中央プラントまでの距離が短縮され、工程1で生成された生成物(即ち、バイオクルードを含む混合物)は、原料よりも含水量が低く、物理的密度及びエネルギー密度が高いため、この変換により、大規模な中央集中型最終生成物工場への輸送が可能になる。液体生成物である、バイオクルードを含む混合物を生成することによって、高密度化した固体生成物よりも均質化が比較的容易になる。任意に、熱水液化ユニットの1つを中央処理施設に配置することができる。工程1の別の例では、この例は図示していないが、分散した原料の各々に関して、乾燥/固体様原料から油を生成するための熱分解等、必要に応じて他の液化技術を選択することができる。前記例では、工程1のブロック1.nは、熱分解ユニットである。単一の局所的な供給源しか利用できない場合、
図1ではn=1であり、単一の熱水液化ユニットのみが使用される。
【0114】
熱水液化は、実質上原料を加水分解し、原料よりも低い平均分子量を有する液化生成物を生成するのに十分な時間、水性条件下で原料を加熱する方法である。熱水液化は、直接液化方法の一例である。熱水液化プロセスは、亜臨界又は超臨界水条件下でのバッチ、セミバッチ、又は連続プロセスとして実施することができる。超臨界又は亜臨界の操作条件も、液化生成物中のチャー形成及び酸素含有量の最小化に影響する。このプロセス中に生成される一部の非凝縮性ガスは、必要なエネルギーを供給するための燃料ガスとして使用することができる。熱水液化は、原料を乾燥させる必要がない。原料を加熱する温度に応じて、圧力が自発的に生じて、水の気化が制限される。熱水液化に続いて、液-液相分離を使用して、水及び液化生成物を分離することができる。熱水液化プロセスは、移動型ユニットでも実施できる程度の小規模で実施することができる。
【0115】
本明細書に記載の方法の一例では、熱水液化(HTL)は、約350℃の温度で40分間行われる。或いは、それは、410℃前後の超臨界水で数分間(例えば、約5分以下)だけ実施される。当業者なら分かるように、熱水液化条件が異なると、わずかに異なるバイオクルードが生じる可能性があり、主な違いはバイオクルード中の酸素の量であり、超臨界水HTLは約8%~約10%の酸素を含有するバイオクルードを生成することがあるが、HTL熱分解は40%台前半の酸素を含有するバイオクルードを生成することがある。本明細書に記載の方法は、すべての様々なタイプのバイオクルード/バイオオイルに応じることができる。
【0116】
一例では、移動型液化ユニット(例えば、熱水液化ユニット又は熱分解ユニット等)を備えたトレーラーを農場に駐車して、農場廃棄物及びバイオマスを液化生成物(例えば、バイオクルードを含む混合物)に処理し、それを断続的に収集するための移動型タンクに収集することができる。このような移動型ユニットは、通常、操作が単純で監視不要に設計されているであろう。別の一例では、より大きな定置型液化ユニットを、バイオマス及び廃棄物原料の収集ネットワークがすでに整っている都市廃棄物処理施設及び製材又は製紙工場等の施設に配置することができる。これらの定置型液化ユニットは、通常、規模がより大きいことから、操作の効率を高めるために、より複雑な熱統合を考慮して設計されるであろう。残りのプロセスは中央施設で行われ、そこで液化生成物(例えば、バイオクルードを含む混合物)が分散型液化ユニットから収集され、処理される。
【0117】
図1の工程2は、工程1(
図1の2aを参照)からの液化生成物(即ち、バイオクルードを含む混合物)(
図1のユニット2.1を参照)、並びに潜在的には工程1とは別の供給源からの油原料、糖原料、及び/又はアルコール原料、例えば、廃棄された植物性又は動物性脂肪油等(
図1の2bを参照)を一緒にし、均質化し、次いで、これらの供給材料をガス化して、未処理合成ガス(
図1のユニット2.2を参照)にするために行われる。
図1に示すように、未処理合成ガス(ユニット2.2内)を生成するための供給材料は、フィッシャー-トロプシュ水性生成物(流れ4a)及び精製からの材料(流れ5b)を更に含むことがある。次いで、未処理合成ガスを洗浄して(
図1のユニット2.3を参照)、クリーンな合成ガスを生成する。
【0118】
未処理合成ガスという用語は、水素(H2)と一酸化炭素(CO)との混合物を他の化合物と共に含むガスを指す。他の化合物には、通常、二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)、及びメタン(CH4)が含まれるが、これらだけに限らない。クリーンな合成ガスという用語は、未処理合成ガス中に存在していた潜在的に有害な化合物を除去した後の未処理合成ガスを指す。除去しなければならない汚染物の中で最も一般的なクラスは、硫化水素(H2S)及び硫化カルボニル(COS)等の硫黄含有化合物である。更に、下流プロセスの効率を向上させるために、洗浄中に他の化合物を除去することもできる。
【0119】
未処理合成ガス生成用の供給物としてのバイオクルードを含む混合物、並びに油原料、糖原料、及び/又はアルコール原料等の他の液体供給物を使用する場合、ガス化前の供給物タンク(
図1のユニット2.1を参照)でブレンドすることによって、供給物の不均一性の影響を低減することができる。供給材料は大部分が液体であるため、様々な供給源からの供給材料を均質化することが容易である。更に、液体供給物は、固形物の取扱いが回避されるので、未処理合成ガスの生成を比較的簡単且つ効率的に行うことができ、液体供給物は、ポンプで加圧することができ、液体供給物は、ガス化のための優れた熱伝達性を有することができ、洗浄すると、合成ガスを汚染する可能性のある鉱物がなくなる。未処理合成ガス生成工程の操作圧力は、下流の操作に影響を及ぼす。高圧で未処理合成ガスの生成を実施することは有益である。一例では、未処理合成ガスは、約2MPa以上、又は約2MPa~5MPaの範囲、又は約2MPa~約4MPaの範囲、又は約2MPa~約3MPaの範囲の圧力で生成される。
【0120】
本明細書に記載の方法の一例では、未処理合成ガスは、超臨界水ガス化(SCWG)によって生成される。SCWG、及び炭素/水素/酸素の含有量に対して適切な量の水を用いることで、起動炉等の外部熱源によってガス化が開始されると、ガス化に必要な熱が、SCWGの発熱反応によって反応器内で生成される。したがって、SCWGは一定の外部熱源を必要としないが、水が過剰にあるといくらかの外部熱を必要とする。更に、SCWG反応器は、より低い温度で作動し、外部から供給する酸化剤を使用する必要がない。SCWG反応器内に水があると、通常、水性ガスシフト反応によってそれの水素がいくらか放出されて、未反応合成ガス中の水素の炭素に対する比が、液体供給物のみのガス化で一般に予想されるよりも高くなる。すべての供給材料は、液相で、一般にフィッシャー-トロプシュ合成の合成ガス供給物に必要な圧力より高い圧力でSCWGプロセスに導入されるが、これは、エネルギー効率が良く、生成後の未処理合成ガスを圧縮するよりも複雑ではない。SCWG反応器から出てくる高温のガスは、入ってくる原料と熱を交換し、ガス中の水蒸気は、他の水溶性有機化合物と共に冷却/凝縮され、加圧型液体/気体分離器で分離される。分離された水分豊富な生成物の一部は、SCWGプロセスにリサイクルされる。この時点では、未処理合成ガスは、水素及び一酸化炭素以外の化合物を依然として含んでいる可能性がある。これらの化合物の一部は凝縮によって除去することができるが、下流プロセスに影響を及ぼす可能性のあるガス状汚染物を除去するために、一部のガスの洗浄(
図1のユニット2.3を参照)が必要になる可能性がある。洗浄された合成ガスは、水蒸気及び二酸化炭素等、水素及び一酸化炭素以外の化合物を依然として含んでいる可能性があるが、硫黄含有化合物は実質上含まれていないであろう。クリーンな合成ガスを得るために未処理合成ガスを洗浄する方法は、当業者に既知である。
【0121】
本明細書に記載の方法の一例では、超臨界水ガス化(SCWG)は、570℃~590℃の範囲の温度で、約30%~約60%の含水量で、約20MPa~約30MPa又は約22.5MPa~約25MPaの範囲の圧力で行われる。別の一例では、超臨界水ガス化(SCWG)は、約550℃超の温度で行われ、圧力は、反応器の設計及び圧力制御の手段に依存する。
【0122】
工程2のいくつかの例では、改質をクリーンな合成ガスの生成と併せて使用して、クリーンな合成ガス中に存在する炭化水素を水素及び一酸化炭素に変換する。未処理合成ガス中に十分なメタンが二酸化炭素と共に存在することにより、水蒸気改質及び乾式改質を使用して、これらのガスを改質することができる。これにより、未処理合成ガスからの追加のCO2をリサイクルして、メタンを一酸化炭素及び水素に最大限に変換することもできる。いくらかの二酸化炭素及び水も形成プロセスで生成される。ガスを冷却することによって水を分離することができ、合成ガス洗浄ユニットで二酸化炭素を減少させることができる。
【0123】
最も単純な形では、工程2中の水性ガスシフト反応及び逆水性ガスシフト反応に加えて、水蒸気改質及び乾式メタン改質の反応は以下のようになる。
1. CH4 + CO2 ←→ 2CO +2H2
2. CH4 +2H2O ←→ CO + 3H2
3. CO2 + H2 ←→ CO + H2O
4. CO + H2O ←→ CO2 + H2
【0124】
任意に、クリーンな合成ガス中の水素の一酸化炭素に対するモル比を変化させるために、水性ガスシフトコンバータの使用を考慮してもよい。工程3で選択される可能性のある技術のうちの少なくともいくつかは、水素の一酸化炭素に対するモル比が2対1に近い方が有利な場合がある。任意に、クリーンな合成ガスを生成した後、クリーンな合成ガスからCO2を除去する。CO2の一部はリサイクルさせることができるであろう。
【0125】
図9は、本明細書に記載の方法で使用することができる合成ガスを生成するシステムの一例を示しており、Aは熱水液化ユニットを示し、Bは超臨界水ガス化ユニットを示し、Cは改質ユニットを示している。
【0126】
より詳細には、
図9Aは、次のものを含む熱水液化(HTL)ユニットの一例を示している:
・ すべてのタイプの有機性廃棄物、糞尿、下水スラッジ、農業残渣、森林残渣、及びすべてのバイオマスタイプ等、すべてのタイプの原料;
・ 20%乾物に適合するように原料比を調整する、水の調整も可能;
・ 原料(20%乾物)を、高圧供給ポンプにより熱回収ユニットにポンプ輸送し、次いで、加熱器ユニットにポンプ輸送する;
・ 次いで、フィッシャー-トロプシュユニットからの有機/水性相を含み得る供給物を、HPポンプにより加熱器ユニットからHTL反応器にポンプ輸送し、その後、加熱器ユニットに戻す;
・ HTL反応器に続く加熱ユニットからの供給物を冷却器、次いで、生成物分離器に移動させる;
・ 生成物分離器は、非凝縮性ガス及びバイオクルード油を排出する(次に、これは
図9Bの超臨界水ガス化ユニットにポンプ輸送される);
・ 生成物分離器はHTL集水部にも排出し、これは塩をパージし、塩分離後にリサイクルされた水が高圧供給ポンプに送られる。
【0127】
図9Bは、次のものを含む超臨界水(SCW)バイオクルードガス化ユニットの一例を示している:
・
図9AのHTLユニットからバイオクルード油を受け入れ、それを熱回収ユニット、次いで、加熱器に移動させる;
・ 加熱器からの供給物をSCWG反応器(エネルギーシンク「E」への排出あり)に移動させる;
・ 反応器から排出された供給物を熱回収ユニットに戻し、次に、減圧タービン(エネルギーシンク「E」への排出もあり)に移動させる;
・ タービンからの供給物を別の熱回収ユニット、次いで、冷却器に移動させる;
・ 冷却器からの供給物を高圧気体/液体分離器(HPフラッシュ)に移動させ、これは水性相及びバイオガスを排出する(その後、
図9Cの改質ユニットに移動);
・ 水性相は、水リサイクルの一部になり、補給水を受け入れ、次いで、第2の熱回収ユニット(加熱器に熱を供給)に戻る。
【0128】
図9Cは、次のものを含む改質ユニットの一例を示している:
・
図9BのSCWGユニットからバイオガスを受け入れ、それを熱回収ユニット、次いで、HRSGに移動させる;
○ 熱回収蒸気発生器(HRSG)の流入物には、補給水(HRSG給水ポンプを介してHRSGにポンプ輸送される)も含まれる;
○ HRSGの排出物には、エネルギーシンク「E」への余剰流が含まれる;
○ 熱回収ユニットとHRSGは両方とも、蒸気メタン/乾式メタン改質ユニット(SMR / DMR)にも供給し、その排出物は熱回収ユニットに戻す;
・ HRSGからの供給物を冷却器、次いで、HPフラッシュに移動させる;
・ 別のHPフラッシュ流入物には、補給水からのリサイクル水が含まれる;
・ HPフラッシュからの供給物をCO
2クリーンアップユニットに移動させ、CO
2クリーンアップユニットは、フィッシャー-トロプシュユニットに送られる可能性のある合成ガス、及びCO
2(熱回収ユニットに戻されるリサイクルCO
2、及び余剰CO
2を含む)を排出する。
【0129】
図1の工程3は、フィッシャー-トロプシュ合成により合成ガスを液体炭化水素を含む混合物に変換するために行われる(
図1のユニット3.1を参照)。メタノール合成はこの工程に使用することができる代替方法であるが、メタノールを炭化水素に変換すると、ジェット燃料を生成するときに非常に望ましくないケロシン範囲生成物の1,2,4,5-テトラメチルベンゼンが生じることが既知である。
【0130】
最も単純な形では、フィッシャー-トロプシュ合成の工程3中の主な反応は、次の式1~6で表すことができ、ここで、式6は、鉄触媒によるフィッシャー-トロプシュ合成にのみ関係する。
アルケン:n CO + 2n H2 → (CH2)n + n H2O (1)
アルカン:n CO + (2n+1) H2 → H(CH2)nH + n H2O (2)
アルコール:n CO + 2n H2 → H(CH2)nOH + (n-1) H2O (3)
カルボニル:n CO + (2n-1) H2 → (CH2)nO + (n-1) H2O (4)
カルボン酸:n CO + (2n-2) H2 → (CH2)nO2 + (n-2) H2O (5)
水性ガスシフト:CO + H2O ←→ CO2 + H2 (6)
【0131】
式1~6のnの値は、連鎖成長の確率に依存する。連鎖成長確率又はアルファ値は、フィッシャー-トロプシュ触媒の性質及び操作に依存する。生成物分布は、アンダーソン-シュルツ-フローリー分布によって合理的にうまく表される。本明細書に記載の方法のフィッシャー-トロプシュ合成では、フィッシャー-トロプシュ合成からの生成物は、通常、n=1~100の範囲の炭素数を有するが、n>100を有するいくつかの生成物が形成されることもある。
【0132】
工程3の一例では、合成ガスを液体炭化水素を含む生成物混合物に変換するために、鉄触媒によるフィッシャー-トロプシュ合成を使用する。鉄系フィッシャー-トロプシュ触媒は水性ガスシフト反応を実行できるため、鉄触媒によるフィッシャー-トロプシュ合成は、水素の一酸化炭素に対する使用比が約2対1を満たすように合成ガス組成を調整する必要がない。一例では、鉄触媒によるフィッシャー-トロプシュ合成は、240℃以上の温度、又は240~280℃の範囲の温度で実施する。フィッシャー-トロプシュ合成をより高い温度で操作することにより、反応の発熱を高圧蒸気生成で除去することが可能になり、通常は4MPa以上の圧力で蒸気を発生させる。
【0133】
工程3の別の一例では、鉄系フィッシャー-トロプシュ合成は、2対1未満の、水素の一酸化炭素に対する比を有する合成ガスを用いて実施する。別の一例では、鉄系フィッシャー-トロプシュ合成は、2対1未満の、(H2-CO2)/(CO+CO2)化学量論比を有する合成ガスを用いて実施する。別の一例では、鉄系フィッシャー-トロプシュ合成は、1対1未満の、(H2)/(2CO+3CO2)リブレット比を有する合成ガスを用いて実施する。別の一例では、フィッシャー-トロプシュ合成の設計は、フィッシャー-トロプシュ合成からの液体炭化水素を含む混合物が、1対1超の、アルケンのアルカンに対する比を有するようになっている。アルケン:アルカン比が減少すると、オリゴマー化が影響を受けて(例えば、オリゴマー化収率が減少する可能性がある)、完全合成ジェットの生成能力を低下させる可能性があることを考えると、本明細書に記載の方法に関する前記のアルケンのアルカンに対する比が1対1超であることは一般に望ましい。
【0134】
別の一例では、フィッシャー-トロプシュ合成の設計は、フィッシャー-トロプシュ合成中の合成ガスの一酸化炭素の一回通過(once-through)変換が、高く、典型的には80%超、より好ましくは90%超になるようになっている。別の一例では、フィッシャー-トロプシュ合成の設計は、過剰に炭素を形成させずに反応を進めるために、必要に応じてフィッシャー-トロプシュ合成に蒸気を供給するようになっている。
【0135】
以下、
図1の工程3の一例をより詳細に説明する(
図2参照)。工程3では、
図2の流れ299で表される合成ガスが、ブロック300で表されるフィッシャー-トロプシュ合成によって、流れ301及び302で表される液体炭化水素を含む混合物に変換される。工程3は、フィッシャー-トロプシュ反応器に気相及び液相が存在し、触媒が固相状態で存在すると考えられる温度及び圧力条件で行う。フィッシャー-トロプシュ合成からの反応生成物(即ち、液体炭化水素を含む混合物)は、反応器自体が反応器及び相分離器の両方としての機能を有して、2つの別々の相として反応器から排出される。
図2では、フィッシャー-トロプシュ反応器のブロック300から排出される流れ301は気相生成物であり、流れ302は液相生成物である。反応器から出る気相生成物及び液相生成物の正確な性質及び位置は、多管式固定床反応器又はスラリー相気泡塔反応器等、選択される特定の反応器技術に依存する。ブロック300に触媒を保持するために必要な任意の装置は、そのブロックにおける技術の一部と考えられる。フィッシャー-トロプシュ合成の操作に応じて、流れ301及び302の生成物の相対的な量が変化する可能性がある。一例では、流れ302としてブロック300から排出される材料はない。
図2のブロック300では、反応が発熱性であるため、水を流れ303として供給し、気化させて、流れ304として蒸気を生成する。流れ303で供給される水はプロセスとは混合せず、流れ303と304の両方は、プロセスとは別のユーティリティ流(utility stream)と考えることができるが、ブロック300からの熱除去には不可欠である。
【0136】
図1の工程4は、フィッシャー-トロプシュ合成からの生成物(即ち、液体炭化水素を含む混合物)を、次の少なくとも4種の生成物分画(
図1のユニット4.1を参照):(4a)水性生成物、(4b)ナフサ及びガス生成物、(4c)ケロシン生成物、並びに(4d)ガス油及びより重質な生成物に分離するために行われる。水性生成物は、生成物の分離中に凝縮される水及び水溶性分子を含む。ナフサ及びガス生成物は、ケロシンよりも低い標準沸点温度を有する、水性生成物中に存在しないすべての材料を含む。ケロシン生成物は、ジェット燃料の蒸留要件に適合する沸点範囲を有する炭化水素を含んでおり、大まかに言えば、ケロシン生成物は、140~300℃の標準沸点温度範囲を有する。ガス油及びより重質な生成物は、ケロシンより高い標準沸点温度を有する材料を含む。いくつかの例では、4種の生成物は、正確な留分として単離されていない。いくつかの例では、気-液平衡により、フィッシャー-トロプシュ合成用の反応器で自然にいくつかの分離が起こるであろう。ガス油及びより重質な生成物の一部又は全部(
図1の流れ4dを参照)は、フィッシャー-トロプシュ合成から別の液体生成物として入手でき(
図1のユニット3.1を参照)、第4工程での分離が必要ない。ジェット燃料に都合よくアップグレードするためにフィッシャー-トロプシュ合成のより重質な生成物とより軽質な生成物を分離するには、異なる圧力及び温度での気-液平衡分離技術の組合せを使用し、それを選択された分離分画の蒸留と組み合わせてもよい。これにより、方法のこの部分に常圧蒸留ユニットが必要なくなり、相対的に工程4のエネルギー効率が高くなり、資本集約度が低くなる可能性がある。
【0137】
以下、
図1の工程4の一例をより詳細に説明する(
図2参照)。
図2の流れ301における気相生成物の温度をブロック400で低下させる。当技術分野で既知の装置によって、この温度変化を実現することが可能である。一例では、流れ301の温度は、ブロック400で表される供給物-生成物熱交換器において流れ299との熱交換によって低下する。ブロック400における温度変化はまた、ユーティリティ流を用いる又は空気での冷却によって等、他のやり方でも実施することができる。別の一例では、流れ401の温度は、流れ301に存在する水が凝縮し、流れ401の水がその泡立ち点にあるか、又はその泡立ち点より下にあるようになっている。流れ401の水の泡立ち点温度と圧力との関係は、気-液平衡によって決定される。別の一例では、401の温度は、プロセス制御によって制御され、一定に保たれる。更に、この温度は、一般に工業的に実施されているように、より多くの材料を凝縮するために使用されるのではなく、工程5への生成物の経路指定を最適化することによって選択される。したがって、この温度は、流れ401の水の泡立ち点又はその付近になるように制御される。流れ401は、
図2のブロック410で表される相分離器に入る。この一例では、相分離器は、三相相分離器である。相分離器の目的は、流れ401に存在する相の分離を可能にして、気相流れ411、有機液相流れ412、及び水性液相流れ413を生成することである。一例では、ブロック400及び410は、同じ装置で温度変化と相分離の両方を可能にする1つの装置に組み合わされる。別の一例では、ブロック400及び410は、装置が複数の平衡段階を有するように組み合わされて、流れ411、412、及び413への分離が行われる。
【0138】
図1及び
図2に示した流れ間の関係を
図2に示す。気相流れ411は、ガス状及びナフサ分画生成物の流れ(4b)を主に含む。有機液相流れ412は、ケロシン生成物の流れ(4c)を主に含む。水性生成物流れ413は、主に酸素含有化合物である溶解有機化合物を含む水の流れ(4a)を主に含む。フィッシャー-トロプシュ反応器からの液体生成物は、流れ302であり、主にガス油及びより重質な有機化合物の流れ(4d)で構成されている。本明細書に記載の分離の設計及び制御により、工程5のユニットのいずれかの前に別の常圧蒸留ユニットを使用する必要がないようなやり方で生成物の経路指定が可能になる。これにより、製油所の操業を妨げることなく、ユニット300からの高温生成物ですでに利用可能なエネルギーを利用することができる。
【0139】
図1の工程5は、フィッシャー-トロプシュ液化生成物(即ち、液体炭化水素を含む混合物)から分離された4種の生成物分画を精製するために行われる。精製には、3種のプロセス、即ち、オリゴマー化(
図1のユニット5.1を参照)、水素化分解(
図1のユニット5.2を参照)、及び水素処理(
図1のユニット5.3を参照)を使用する。水性生成物(
図1の4aを参照)は、合成ガス生成の供給物にリサイクルされる(
図1のユニット2.2を参照)。水性生成物は、熱水液化生成物と同様に、本質的に酸性である。熱水液化生成物及びフィッシャー-トロプシュ水性生成物の組合せは、耐酸性建築材料に対する一般的なニーズを開拓するものである。水性生成物を熱水液化生成物(即ち、バイオクルードを含む混合物)と一緒に供給することにより、化学物質の添加に頼らずに、酸の合成ガスへの実質的な変換が可能になる。これにより、工業用フィッシャー-トロプシュに基づいた石炭液化及びガス液化施設でしばしば必然的にコストがかさむ、水性生成物を化学的酸素要求量の高い酸性廃水として別々に処理する工程が省かれる。
【0140】
直留ガス及びナフサ生成物(
図1の4b)には、フィッシャー-トロプシュ合成後の分離で普通実施されているようなさらなる分離は行わない。ガス及びナフサ生成物は、未反応合成ガスも含有するが、オリゴマー化プロセスの供給材料として直接使用される。オリゴマー化プロセスは、2個以上の不飽和分子の付加反応を伴う変換プロセスを指す。そのような手法は、より軽質なオレフィン(即ち、アルケニル)生成物のより重質なオレフィン生成物への変換を促進し、それによって、凝縮による回収がより容易になる。更に、供給物のより希薄な性質は、発熱を伴うオリゴマー化プロセスにおける熱管理に役立ち、ガス中に水素が存在すると、コークス化反応を抑制することができる。更に、酸素含有有機分子(酸素化物)は、この変換が完了していない場合でも、炭化水素に変換される。一例では、オリゴマー化プロセスは、触媒として酸性ZSM-5ゼオライト(MFIフレームワークタイプ)等の非硫化触媒を使用する。
【0141】
最も単純な形では、オリゴマー化プロセスの操作中の主な反応は、次の式7~9で表すことができる:
オリゴマー化/分解(cracking):CxH2x + CyH2y ←→ C(x+y)H(2x+2y) (7)
芳香族化:アルケン→芳香族化合物+アルカン (8)
芳香族アルキル化/脱アルキル:(C6H5)CxH(2x+1) + CyH2y ←→ (C6H5)C(x+y)H(2x+2y+1) (9)
【0142】
式7~9の反応に加えて、脱水及びケトン化等、酸素含有化合物が関与する様々な反応が起こる可能性がある。記載の反応は、網羅的なためのものではなく、例示目的で提供している。これらの反応の相対的な広がりは、オリゴマー化プロセスの温度及び圧力の条件に依存する。オリゴマー化プロセスにおける操作条件を巧みに操ることにより、本明細書に記載の方法から完全合成ジェット燃料のブレンドを可能にするケロシン材料を生成することが可能である。オリゴマー化触媒の少なくとも一部を、芳香族化(式8)に有利な温度及び圧力で操作することによって、芳香族化合物の総量を巧みに操って、本明細書に記載の方法で生成される半合成ジェット燃料に対する完全合成ジェット燃料の量を増加又は減少させることができる。一例では、未促進ZSM-5触媒等の非硫化触媒が使用される。
【0143】
本明細書に記載のオリゴマー化プロセスの一例では、約200℃~約320℃の範囲の操作温度は、一般に、水素処理後にイソパラフィン系ケロシンになることから、半合成ジェット燃料生成用のブレンド材料として有用な生成物を生成する(例えば、実施例1及び4を参照)。約320℃超(通常は約320℃~約400℃)の操作温度は、通常、より多くの芳香族化合物を含む生成物を生成するために使用され、これは、オレフィンを飽和させるために水素処理を行った後、完全合成ジェット燃料をブレンドするのに適しているであろう(例えば、実施例2及び5を参照)。いくつかの例では、どちらの場合も、圧力は広範囲にわたって変わる可能性があり、例えば、約0.1MPa~約20MPaである。
【0144】
一般に、本明細書に記載の方法は、オレフィンの分圧が高いために一般に高い圧力での操作が容易であるにもかかわらず、本明細書に記載のフィッシャー-トロプシュ合成と同等の、又はそれよりもわずかに低い圧力、例えば約2MPaで操作することができる。本明細書に記載のフィッシャー-トロプシュ合成と同等又はそれより低い圧力で操作することにより、未変換合成ガスを除去するための事前分離を必要とせず、本明細書に記載の方法における分離及び再加圧が回避される。
【0145】
別の一例では、オリゴマー化プロセスは、フィッシャー-トロプシュプロセスからの未変換合成ガスを含むガス状生成物流れ411(
図2)を使用する。未変換合成ガスには、H
2、CO、CO
2、及びH
2Oが含まれるが、これらだけに限らない。H
2、CO、及びCO
2を含む未変換合成ガスから軽質オレフィンを分離することは一般的に行われており、通常存在する分離ステップが省かれる。また、オリゴマー化を使用することによって、エチレンを含むアルケンは、オリゴマー化前よりもオリゴマー化後の方が回収しやすいより重質な生成物に変換される。
【0146】
オリゴマー化プロセスからの生成物(例えば、第1の追加ケロシン生成物を含む混合物)は、未変換材料及び新しい生成物を含む。未変換材料は、水素、一酸化炭素、及びパラフィン系炭化水素を含む。新しい生成物は、ガス、ナフサ、及び留出物にまたがる沸点範囲分布を有し、材料は、通常のガス状化合物から標準沸点温度が最高で360℃の化合物に及ぶ。新しい生成物には、第1の追加ケロシン生成物が含まれる。第1の追加ケロシン生成物は、オレフィン及び芳香族化合物を含む。オレフィン化合物の芳香族化合物に対する比は、オリゴマー化プロセスの操作条件に依存する。オレフィン化合物の芳香族化合物に対する比の調整に柔軟性を持たせると、半合成ジェット燃料の生成及び完全合成ジェット燃料の生成が容易になる。追加ケロシン生成物(
図1の5aを参照)は、水素処理器(
図1のユニット5.3)に送られる。ケロシンの範囲外の液体生成物(
図1の5bを参照)は、以下の1つ又は複数の組合せで処理することができる:(i)最終生成物として回収する(
図1に示す)、(ii)水素処理器に送る(
図1に示さず)、(iii)オリゴマー化プロセスにリサイクルする(
図1に示さず)、及び/又は合成ガス生成にリサイクルする(
図1のユニット2.2を参照)。
【0147】
一例では、ケロシンの沸点範囲外のオレフィン及び芳香族化合物は、生成物として回収される。別の一例では、ケロシンの沸点範囲外のオレフィン及び芳香族化合物の一部又は全部は、オリゴマー化プロセスにリサイクルされる。別の一例では、ケロシンの沸点範囲外のオレフィン及び芳香族生成物の一部又は全部は、水素処理器に送られる。
【0148】
オリゴマー化プロセスからの未変換材料は、少なくとも、水素化分解器及び水素処理器のための水素源として使用することができる。オリゴマー化の下流のガス処理の性質は、二酸化炭素を除去するための熱炭酸塩吸収法(hot carbonate absorption)、及び水素を回収するための圧力スイング吸着法等、ガス処理の当業者に既知の方法を含む。
【0149】
ケロシン生成物(
図1の4cを参照)は、水素処理器に送られる。任意に、この生成物の一部又は全部を水素化分解器ユニットに送ることもできる(
図1に示されていない工順)。この生成物のいくらかを水素化分解器に送るかどうかを決定する要因は、目標のジェット燃料の凝固点の仕様である。例えば、直留フィッシャー-トロプシュケロシンは、通常、直鎖状炭化水素含有量が高い。しかし、ケロシン中の直鎖状炭化水素の濃度が高すぎると、凍結開始温度が高すぎて、航空タービン燃料の仕様を満たすことができない。
【0150】
以下、
図1の工程5におけるオリゴマー化ユニットの一例をより詳細に説明する。工程5のオリゴマー化ユニットを
図3に更に詳細に示す。炭化水素、酸素含有有機化合物、及び未変換合成ガスで構成されている流れ411(即ち、ナフサ及びガス生成物)の変換は、オリゴマー化ユニット510で行われる。510からの生成物は、流れ511(即ち、第1の追加ケロシン生成物を含む混合物)であり、これは、流れ411のものよりも平均してより重質な炭化水素の混合物、実質上より少ない酸素含有有機化合物、及び未変換合成ガスで構成されている。511の炭化水素の組成は、前述したように510の操作条件に依存する。
【0151】
流れ511は、520で分離される。一例では、流れ511は分離されて、ガス状生成物521、有機液体生成物522、及び水が豊富な液体生成物523が生じる。このタイプの分離は、温度を低下させて511の一部を凝縮することによって実現することができ、次に、これを三相気-液-液分離器で分離することができる。このタイプの分離を実現する別の方法は、複数の平衡段階を備えた装置を使用することである。このタイプの分離を実現する別の方法は、液体吸収を採用する装置を使用することである。流れ521は、様々な方法で利用することができる。流れ521の潜在的な使用の1つは、燃料ガスとしてある。流れ521の別の潜在的な使用は、521の一部又は全部をフィッシャー-トロプシュ合成又は合成ガス生成のいずれかにリサイクルすることである。一例では、流れ521は、
図4に示すように処理される。流れ521は、ユニット610で二酸化炭素の一部又はほぼ全部を除去するように処理されて、CO
2が豊富な流れ611及びCO
2が減少した流れ612が生じる。このタイプの分離は、熱炭酸塩吸収法又はアミン吸収法等、当技術分野で既知の処理技術によって実施することができる。CO
2が豊富な流れ611は廃水であるが、そのCO
2濃度の高さから、流れ611は、CO
2の隔離又は直接排出への供給物として適している可能性がある。CO
2が減少した流れ612は、流れ612の一部又は全部が流れ613に行くように分けることができる。流れ613に行かない流れ612の残りは、流れ614に行くことができる。流れ613のCO
2含有量は減少していることから、流れ613は、521と同じ目的で使用することができるが、521を直接使用するよりも効率が上がる。
【0152】
流れ614は、ユニット620で更に分離される。ユニット620は、流れ614に存在する水素の一部を流れ621として回収するために使用され、材料の残りは流れ622中にある。620での分離に一般に使用される技術の1つは、圧力スイング吸着法であり、これにより、H
2が、高純度水素の流れとして流れ621に生成されるであろう。流れ621の水素は、
図1に示すユニット5.2及び5.3での使用のために用いられるであろう。流れ522は、
図1のユニット5.3の水素処理器に送られる。
【0153】
任意に、有機液体生成物522を更に分離することができる。この選択肢を
図5に示すが、これは、ユニット530において522が、流れ531で表されるより軽質な分画、及び流れ532で表されるより重質な分画に分離されていることを示している。531のより軽質な分画は、通常、標準沸点が140℃未満の材料であり、532のより重質な分画は、通常、標準沸点が140℃以上の材料である。流れ532は、
図1のユニット5.3の水素処理器に送られる。より軽質な分画の流れ531は、流れ531の一部又は全部が流れ533に行くように分けることができる。流れ533に行かない流れ531の残りは、流れ534へ行くことができる。流れ534は、オリゴマー化ユニット510にリサイクルされて、より軽質な分画の一部が、変換後に532で表されるより重質な分画の一部を形成する生成物に変換される。したがって、流れ534のリサイクルは、軽質な分画の一部を重質な分画に変換することを可能にし、それによって、531と比較して532の比が増加して、ジェット燃料の生成に適する材料の量が増加する。流れ533は、通常、自動車用ガソリンにブレンドするための許容可能な特性を有するナフサであり、そのまま販売することができる。流れ523は、流れ413と一緒にされ、
図1の流れ4aとして使用される。任意に、流れ523は、廃水流れとみなされ、廃水流れとして処理される。
【0154】
ガス油及びより重質な生成物(
図1の4dを参照)は水素化分解器に送られ、水素化分解器は、ガス油及びより重質な生成物をより軽沸点の生成物(即ち、第2の追加ケロシン生成物を含む混合物)に変換する。生成物中の分子はまた、ガス油及びより重質な生成物中の分子よりも分岐している。水素化分解器からの第2の追加ケロシン生成物は、航空タービン燃料へのブレンドに直接使用することができる。生成物の残りはまた、最終生成物として使用することができる。任意に、より軽質な生成物をオリゴマー化ユニットへの共供給物として使用することができる。一例では、ケロシンより沸点が高い生成物中の材料の一部又は全部がリサイクルされる。別の一例では、還元型貴金属を担持させた非晶質シリカ-アルミナ触媒等の非硫化触媒を使用して、固定床反応器で水素化分解を実施する。還元型貴金属を担持させた非晶質シリカ-アルミナ触媒の一例は、Pt/SiO
2-Al
2O
3である。このような触媒は、金属の酸に対する活性比が高く、水素異性化を促進する。
【0155】
本明細書に記載の方法の別の一例では、水素化分解器は、オリゴマー化プロセス後の未変換生成物から回収した水素の直接使用ができるように、フィッシャー-トロプシュ合成よりも低い圧力で操作される(例えば、実施例3を参照)。一般に、水素化分解は、約350℃~約400℃で3MPa超の圧力で実施される(例えば、典型的な穏やかな水素化分解は約5~8MPaの圧力で、典型的な過酷な水素化分解は約10~20MPaの圧力で行う)。しかし、実施例3(下記参照)で実証するように、本明細書に記載の水素化分解は、約320℃の温度で3MPa未満(例えば、約2MPa)の圧力を使用して実施した。いくつかの例では、本明細書に記載の水素化分解は、約320℃~約400℃、又は約320℃~約380℃、又は約320℃~約350℃の温度で実施することができる。他の例では、本明細書に記載の水素化分解は、約1MPa~約20MPa、又は約1MPa~約15MPa、又は約1MPa~約10MPa、約1MPa~約5MPa、又は約1MPa~約3MPa、又は約1MPa~約2MPaの圧力で実施することができる。
【0156】
以下、
図1の工程5における水素化分解ユニットの一例をより詳細に説明する。工程5の水素化分解ユニットを
図6に更に詳細に示す。水素化分解器ユニット540への主供給物(例えば、ガス油及びより重質な生成物)は、流れ302である。任意に、有機液体流れ412は、流れ412の一部又は全部が流れ414に行くように分けることができる。流れ414に行かない流れ412の残りは、流れ415に行くことができる。流れ415は、水素化分解器ユニット540への供給物でもある。水素化分解器への流れ415の供給は、通常、合成ジェット燃料の凝固開始点が仕様限界の-47℃よりも高い場合にのみ必要とされる。水素化分解器ユニット540では、供給材料は、水素化分解され、水素異性化される。一例では、流れ415は、水素化分解器内の触媒すべてに晒されるわけではないが、床間供給物として途中で導入される。そうすることにより、流れ302よりも軽沸点の供給物である流れ415は、水素化分解されにくくなり、水素異性化されやすくなる。そうすることにより、合成ジェット燃料の収率が、水素化分解器への液体供給点が単一である従来の操作よりも向上する。540での水素化分解及び水素異性化からの生成物は、流れ541である。
【0157】
水素化分解器ユニット540の水素供給及び水素リサイクルシステムは、明示していない。水素化分解技術の水素ループは、当技術分野で既知である(例えば、Scherzer, J.; Gruia, A. J.、Hydrocracking science and technology; CRC Press: Boca Raton、FL、1996)。水素化分解器への水素供給は、
図4の流れ621から、又は本発明の工程2で生成された合成ガスからの分離等当技術分野で説明されている他の方法で得ることができる。
【0158】
生成物の流れ541は、分離器ユニット550において様々な分画に分離される。任意に、
図1のユニット5.3の水素処理器からの生成物を流れ541と共に分離して、分離工程の数を減らすことができる。典型的には蒸留によって行われる分離器ユニット550では、材料は、軽質な炭化水素の流れ551、合成ジェット燃料のブレンドに適しているケロシン範囲の炭化水素の流れ552、ガス油の流れ553、及び常圧残渣油の流れ554に分離される。流れ553がゼロになるように分離を選択することが可能である。ユニット550での分離は、主に、流れ552が合成ジェット燃料に適していることを確実にするために実施される。任意に、最も重質な生成物の流れ554は、流れ554の一部又は全部が流れ555に行くように分けることができる。流れ555に行かない流れ554の残りは、流れ556に行くことができる。流れ556は、水素化分解器ユニット540にリサイクルされる。一例では、流れ556は、水素化分解器内の触媒すべてに晒されるわけではないが、床間供給物として途中で導入される。
【0159】
流れ551を複数の生成物分画に更に分離し、プロパン、ブタン、及びナフサとして販売することができる。この材料はまた、オイルサンド堆積物からビチューメンを地下回収するのに使用することができる。ナフサは、自動車用ガソリンのブレンド材料として、又は精油所供給物若しくは石油化学供給物として使用することができる。ナフサは、オイルサンド由来ビチューメンの希釈剤として、又はビチューメン回収のためのパラフィンフロス処理等のプロセスにおいて使用することができる。流れ552は、半合成ジェット燃料に使用される。流れ553は、ディーゼル燃料ブレンド成分として販売することができ、典型的には、セタン価が51と等しい又はそれを超え、硫黄を含有せず、許容可能なコールドフロー特性を有する。流れ554は、潤滑油基油ブレンド成分、ゼロ硫黄燃料油、又は合成油として販売することができる。
【0160】
水素処理器に送られる供給材料(例えば、ケロシン生成物)は水素化されて、オレフィン及び酸素含有分子がパラフィン分子に実質上変換される。水素処理後の生成物は分画されて、最終生成物が得られる。ケロシン分画は、航空タービン燃料として適するように分画される。一例では、非硫化還元型卑金属を担持させたアルミナ又はシリカ触媒を使用して、固定床反応器で水素処理を実施する。還元型卑金属を担持させたアルミナ触媒の一例は、還元型Ni/Al2O3触媒である。硫化卑金属(例えば、水素処理)触媒の代わりに還元型金属(例えば、水素処理)触媒を使用することにより、供給物への硫黄の添加を回避することが可能になり、硫化卑金属(例えば、水素処理)触媒を用いた場合よりも穏やかな条件で水素処理等の反応を実施することが可能になる。いくつかの例では、水素処理器は、約80℃~約200℃、又は約80℃~約180℃、又は約80℃~約150℃の温度で操作される。他の例では、水素処理器は、約180℃~約420℃、又は約180℃~約380℃、又は約260℃~約380℃の温度で操作される。一例では、水素処理器は、オリゴマー化プロセス後の未変換生成物から回収した水素の直接使用ができるように、フィッシャー-トロプシュ合成よりも低い圧力で操作される。他の例では、水素処理器は、約0.5MPa~約20MPa、又は約1MPa~約15MPa、又は約1MPa~約10MPa、約1MPa~約5MPa、又は約1MPa~約3MPa、又は約1MPa~約2MPaの圧力で操作される。本明細書に記載の水素処理の別の一例では、モデル供給物(10%の1-ヘキセン、5%のトルエン、85%のn-オクタン)を使用して、還元型Ni/Al2O3を用いて約80℃及び約1MPaで、オレフィンのほぼ完全な変換が可能であることが分かった。
【0161】
本明細書に記載の方法からの主生成物は、半合成ジェット燃料ブレンド成分又は完全合成ジェット燃料として、合成航空タービン燃料の仕様要件を満たすケロシン範囲材料である。
【0162】
以下、工程5における水素処理ユニットの一例をより詳細に説明する。工程5の水素処理ユニットを
図7に更に詳細に示す。水素処理器は、2種の有機供給材料を受け取るが、1種はオリゴマー化ユニットからのもの(即ち、第1の追加ケロシン生成物)、もう1種はフィッシャー-トロプシュ合成後の分離からのもの(即ち、ケロシン生成物)である。オリゴマー化ユニットからの材料は、流れ522が更に分離されたかどうかに応じて、流れ522又は流れ532のどちらかである。フィッシャー-トロプシュ合成後の分離からの材料は、この材料の一部又は全部が流れ415で水素化分解ユニットに送られたかどうかに応じて、流れ412又は流れ414のどちらかである。したがって、水素処理器が、オリゴマー化ユニットからの供給物のみを受け取ることが可能である。水素処理器ユニット560の水素供給及び水素リサイクルシステムは、明示していない。水素処理器への水素供給は、
図4の流れ621から、又は本発明の工程2で生成された合成ガスからの分離等当技術分野で既知の他の方法で得ることができる。
【0163】
水素処理からの生成物は、流れ561である。流れ561の生成物は、アルケン及び酸素含有有機化合物を実質上含まない。流れ561の生成物は、主にアルカン、シクロアルカン、及び芳香族化合物からなり、各化合物クラスの相対的存在量は、水素処理器ユニット560の操作と、水素処理器への供給材料の組成との両方に依存する。水素処理器ユニット560への供給材料が流れ532のみで構成されている場合、流れ561のすべてが完全合成ジェット燃料又は半合成ジェット燃料として使用するのに適していると考えられる。流れ561は、流れ561の芳香族化合物含有量が8~25体積%の間である場合、完全合成ジェット燃料に適しており、流れ532の蒸留範囲は、ジェット燃料の仕様に従って適切に選択される。ここに記載の方法は、オリゴマー化ユニット510及び水素処理器ユニット560の2種の変換工程のみを使用する、フィッシャー-トロプシュ生成物(即ち、液体炭化水素を含む混合物)から完全合成ジェット燃料を生成する精製方法を提供する。
【0164】
流れ561は、芳香族化合物含有量がより低い場合、半合成ジェット燃料に適しており、流れ532の蒸留範囲は、ジェット燃料の仕様に従って適切に選択される。本明細書に記載の方法は、オリゴマー化ユニット510及び水素処理器ユニット560の2種の変換工程のみを使用する、フィッシャー-トロプシュ生成物(即ち、液体炭化水素を含む混合物)から半合成ジェット燃料を生成する精製方法を提供する。
【0165】
任意に、水素処理器ユニット560に行く供給材料の組成に関係なく、流れ561は、
図6に示すように、ユニット550で分離することができる。任意に、水素処理器ユニット560に行く供給材料の組成に関係なく、流れ561は、
図8に示すように、ユニット570で更に分離することができる。ユニット570での流れ561の分離は、種々の用途に有用な、蒸留範囲に基づく生成物を生成するのに便利である。ユニット570での流れ561の分離により、ナフサの流れ571、ケロシンの流れ572、及びガス油の流れ573が生成される。流れ571は、ナフサ範囲の生成物である。ナフサは、自動車用ガソリンのブレンド材料として、又は精油所供給物若しくは石油化学供給物として使用することができる。ナフサは、オイルサンド由来ビチューメンの希釈剤として、又はビチューメン回収のためのパラフィンフロス処理等のプロセスにおいて使用することができる。流れ572は、半合成ジェット燃料に使用されるか、又は完全合成ジェット燃料に使用される。流れ573は、ディーゼル燃料ブレンド成分として販売することができ、典型的には、セタン価が51と等しい又はそれを超え、硫黄を含有せず、許容可能なコールドフロー特性を有する。
【0166】
いくつかの例では、芳香族化合物がほとんど又はまったく生成されないようにオリゴマー化プロセスを操作することが可能である。このタイプの操作は、半合成ジェット燃料の生成を増加させる(及び触媒サイクルの寿命を延長する)のに有用である。具体的な一例では、芳香族化合物含有量が8%以上、例えば最大約60%である場合、その流れは、それ自体で、又は芳香族化合物を含有しない他のケロシンの流れの1つとのブレンドとして、完全合成ジェット燃料の生成に有用である可能性がある。好ましくは、完全合成ジェット燃料は、8~25%の芳香族化合物を有するであろう。いくつかの例では、芳香族化合物含有量は、8%未満である。他の例では、芳香族化合物含有量は、約0~1%である。この例では、流れは、1%未満の芳香族化合物を有する事前に承認された合成ジェット燃料クラスの一部(イソパラフィン系ケロシン)である、半合成ジェット燃料のブレンド成分として有用である可能性がある。
【0167】
本明細書に記載の方法の例では、プロセス全体が、プロセス外にある供給源(例えば、メタン改質器/メタン改質等)からのH
2を使用しなくても、(例えば、
図1~
図8のいずれか1つに示すような)反応物/投入物としてH
2を必要とする各プロセス工程を実施するのに十分な量のH
2を生成する。一例では、本明細書に記載の方法は、外部源からのH
2の投入を必要としない。
【0168】
本明細書に記載の方法の他の例では、プロセスの最終排出物である、高い沸点(例えば、140℃~260℃の間)及び低い凝固点(例えば、-60℃未満)を有するジェット燃料が、高収率で生成される。いくつかの例では、本明細書に記載の方法は、他の既存又は標準的な技術よりも、高い沸点(例えば、140℃~260℃の間)及び低い凝固点(例えば、-60℃未満)を有するより多くのジェット燃料を生成する。
【0169】
本明細書に記載の方法の他の例では、精製ユニットが作動する圧力を増加させるために、フィッシャー-トロプシュユニット(例えば、
図1のユニット3.1)と精製ユニット(オリゴマー化(例えば、
図1のユニット5.1)、水素化分解(例えば、
図1のユニット5.2)、及び水素処理(例えば、
図1のユニット5.3))との間で気体圧縮機を使用する必要はない。いくつかの例では、本明細書に記載の方法は、精製ユニットのプロセス(オリゴマー化(例えば、
図1のユニット5.1)、水素化分解(例えば、
図1のユニット5.2)、及び水素処理(例えば、
図1のユニット5.3))の実施にフィッシャー-トロプシュユニット(例えば、
図1のユニット3.1)からの圧力を使用する。いくつかの例では、本明細書に記載の最終精製工程(オリゴマー化(例えば、
図1のユニット5.1)、水素化分解(例えば、
図1のユニット5.2)、及び水素処理(例えば、
図1のユニット5.3))は、本明細書に記載のフィッシャー-トロプシュ合成の圧力に相応する圧力、例えば、約2MPa、又は約2.5MPa、又は約1.5MPa~3MPaの範囲、又は約1.5MPa~約2.5MPaの範囲、又は約2MPa~約2.5MPaの範囲の圧力で実施される。これは、例えば、約8~10MPaの最小圧力を必要とする標準的な水素処理条件とは対照的である。
【0170】
以下、本明細書に記載の方法の最終精製工程の他の例、特に、オリゴマー化(例えば、
図1のユニット5.1)、水素化分解(例えば、
図1のユニット5.2)、及び水素処理(例えば、
図1のユニット5.3)をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0171】
半合成ジェット燃料、50%ブレンド。
固定床連続流反応器を使用して、例えば、
図1のオリゴマー化ユニット5.1に従って、オレフィン系ケロシン範囲生成物を生成した。市販の非硫化H-ZSM-5触媒を使用して、炭素数範囲C
1~C
8の軽質パラフィン、オレフィン、及び酸素化物の混合物を、240~280℃及び2MPaで触媒により変換して、ケロシン範囲材料を含有する生成物を生成した。供給物の炭素数範囲は、現況技術で説明されているものより広かった。圧力は、オリゴマー化に通常使用される圧力よりも低く、フィッシャー-トロプシュ合成後の出口圧力の典型的なものであった(例えば、
図1の工程3及び4)。供給材料は、例えば、
図1の流れ4b及び
図3のユニット510に向かう流れ411を表す。供給物中のオレフィン濃度は、24質量%であった。
【0172】
この例では、反応器は、一回通過方式で操作した。例としてプロピレンを使用した軽質オレフィンの変換率は、95%超であった。ジェット燃料ブレンドに含めるのに適している可能性のある、140℃超の材料に対する質量選択性は29%であった。以前説明されたように(Garwood, W. E.、ACS Symp. Ser.、1983、218、383~396)、H-ZSM-5による炭素数分布は、温度及び圧力の組合せで決定される。140℃超の分画の全体収率を増加させるために採用することができる工学的手法は、オリゴマー化反応器へのナフサ(C5-140℃)の内部リサイクルを有することである。これは、すでに既知であるため、この例では行わなかった。
【0173】
オリゴマー化からのオレフィン生成物を、還元型非硫化Ni/Al
2O
3触媒で、オレフィン含有量が1%未満になるように水素処理した。例えば、水素処理器は、
図1のユニット5.3である。水素処理済み生成物を様々な沸点の分画に蒸留し、各沸点の分画を、密度及び凝固開始点に関して特性評価した(Table 1(表1)参照)。調製した分画の数は、ジェット燃料ブレンドに含める可能性のある様々な留分の適合性を示すためのものであり、提案した分離戦略を示すことを意図したものではない。
【0174】
【0175】
140~260℃の沸点範囲の蒸留留分のすべてが、ジェットA-1の凝固点仕様の最大開始点である-47℃を満たしたことは注目に値する。高い沸点(例えば、140℃~260℃の間)及び低い凝固点(例えば、-60℃未満)を有する生成物を(例えば、既存の又は標準的な技術を使用して)得ることは、通常困難である。これは、本明細書に記載の方法が、ジェット燃料の収率を最大化できることを裏付けている。
【実施例2】
【0176】
完全合成ジェット燃料、100%ブレンド。
この方法は、石油由来の材料を含まない完全合成ジェット燃料の配合を可能にする材料を生成する可能性を有する。完全合成ジェット燃料の要件の1つは、8~25体積%の芳香族化合物を含有しなければならないということである。この例では、固定床連続流反応器を使用して、例えば、
図1のオリゴマー化ユニット5.1に従って、オレフィン系及び芳香族ケロシン範囲の生成物を生成した。反応器、触媒、及び供給材料は、実施例1のものと同じであった。供給物は、炭素数範囲C
1~C
8の軽質パラフィン、オレフィン、及び酸素化物の混合物であり、25質量%のオレフィンを含有していた。この供給物を350~380℃及び2MPaで触媒により変換して、ケロシン範囲材料を含有する生成物を生成した。
【0177】
オリゴマー化反応器からのオレフィン系及び芳香族生成物を、還元型非硫化Ni/Al
2O
3触媒で、オレフィン含有量が1%未満になるように、但し、芳香族化合物をシクロパラフィンに実質上水素化しない条件で水素処理した。例えば、水素処理器は、
図1のユニット5.3である。実施例1で説明したのと同じ理由で、水素処理済み生成物を様々な沸点の分画に蒸留し、各沸点の分画を、密度及び凝固開始点に関して特性評価した(Table 2(表2))。
【0178】
【0179】
140~260℃の沸点範囲の蒸留留分のすべてが、ジェットA-1の凝固点仕様の最大開始点である-47℃を満たした。Table 2(表2)の蒸留留分の密度が高い(Table 1(表1)と比較して)のは、芳香族化合物及びシクロパラフィンが水素処理済み生成物に含まれていることを示唆していた。通常、合成ジェット燃料の芳香族化合物含有量は、化石燃料源に由来する。対照的に、例えば、
図1のユニット5.1をより高い温度で操作すると、合成ジェット燃料ブレンド用のケロシン範囲ブレンド材料には存在しないことが多い化合物クラス(即ち、芳香族化合物)を製造する方法が可能になる。また、様々な操作モードで使用される、例えば
図1のユニット5.1の柔軟性も示している。
【実施例3】
【0180】
この例は、フィッシャー-トロプシュ合成と同様の圧力、即ち、2MPaで操作した場合の水素化分解ユニット、例えば、
図1のユニット5.2の性能を示す。固定床連続流反応器を、Pt/SiO
2-Al
2O
3水素化分解触媒を用いて、320℃、2 MPa、H
2の供給物に対する比600m
3/m
3、及び液空間速度2h
-1で操作した。水素化分解で慣例的に直面するよりも穏やかな条件での操作を実証し、本明細書に記載の方法に適用されるその利点を説明するために、これらの条件を選択した。
【0181】
水素化分解器への供給材料は、例えば
図1の流れ4dで表すワックスであった。沸点に関して説明すると、ワックスは、初期沸点温度が約360℃の常圧残渣油であり、炭素数C
24以上のn-アルカン(パラフィン)を含有していた。反応器は、一回通過方式で操作した。例えば、
図6に、より重質な生成物分画を水素化分解器にリサイクルすることによってワックスを完全に変換するエンジニアリングデザインを示す。合成ジェット燃料の製造で興味深いのは、ケロシンとナフサとの選択比である。本明細書で使用した操作条件では、140~260℃の沸点範囲の炭化水素の、沸点が140℃未満の炭化水素に対する質量比は、1対1であった。
【0182】
水素化分解済み生成物の分離は、本方法のいずれの分離戦略も反映しておらず、実施例1に記載したのと同じ理由で狭い留分を調製した。密度及び凝固開始点は、水素化分解済み生成物の狭い沸騰分画の各々について決定した(Table 3(表3))。
【0183】
【0184】
140~250℃の沸点範囲の狭い蒸留留分は、ジェットA-1の凝固点仕様の最大開始点である-47℃を満たす凝固開始点を有した。
【実施例4】
【0185】
半合成ジェット燃料を、実施例1及び3に記載した生成物と、石油精製所からのケロシン範囲生成物とを使用してブレンドした。石油精製所からのケロシン範囲生成物を再蒸留して、150℃より軽沸点の材料を除去した。残った石油由来のケロシンを特性評価すると、密度は817.5kg/m3、凍結開始点は-51℃であった。
【0186】
半合成ジェット燃料を調製した。ブレンドは、Table 1(表1)に示した水素処理済みオリゴマー化生成物の160~260℃の分画が25体積%、Table 3(表3)に示した水素化分解済み生成物の160~240℃の分画が25体積%、及び石油由来のケロシンが50体積%からなるものであった。先に挙げた特性を考慮すると、より広い沸点範囲を使用することもできたが、目的は、実用的な半合成ジェット燃料が本明細書に記載の方法によって生成され得ることを実証することであった。ブレンドは、ジェット燃料の収率を最大にするように最適化されたものではなかった。
【0187】
このようにして調製した半合成ジェット燃料を特性評価し、ジェットA-1の仕様要件と比較した(Table 4(表4))。燃料研究所が特性評価を行い、特性評価の前に半合成ジェット燃料に1mg/LのStadis 450を添加した。これは、ジェット燃料の使用に規定されている一般的に使用される添加剤で唯一添加したものである。Table 4(表4)に列挙した標準試験方法及び仕様は、ジェットA-1航空タービン燃料の評価のために規定された方法及び仕様であった。
【0188】
Table 4(表4)に列挙した仕様に加えて、半合成ジェット燃料のコールドフロー密度及び粘度を測定した。-20℃では、密度は816kg/m3、粘度は3.75mPa秒(cP)、動粘度は4.58mm2/秒(cSt)であった。-20℃での最大許容動粘度は、8mm2/秒(cSt)である。試験したパラメータはすべて、合成炭化水素を含有する航空タービン燃料用の標準仕様書ASTM D7566-18aに記載されている半合成ジェットA-1の詳細要件に合格した。
【0189】
50.0℃の引火点温度(最低38℃が必要)及び790.7kg/m3の密度(最低775kg/m3が必要)から、半合成ジェット燃料ブレンドにより低い沸点の材料を追加できることが示唆された。-56.3℃の凝固開始点(最大-47℃が必要)、790.7kg/m3の密度(最大840kg/m3が必要)、23.0mmの煙点(最小18mmが必要)、及び261.0℃の最終沸点温度(最大300℃が必要)から、半合成ジェット燃料ブレンドにより低い沸点の材料を追加できることが示唆された。
【0190】
【実施例5】
【0191】
本明細書に記載の方法はまた、完全合成ジェット燃料ブレンドを生成することもできる。半合成ジェット燃料とは異なり、完全合成ジェット燃料は、ジェット燃料ブレンド中に石油由来のブレンド成分を有さない。
【0192】
実施例2及び3に記載の生成物を使用して、完全合成ジェット燃料をブレンドした。そのブレンドは、Table 2(表2)に示した水素処理済みオリゴマー化生成物の160~260℃の分画が40質量%、及びTable 3(表3)に示した水素化分解済み生成物の160~240℃の分画が60wt%からなるものであった。この完全合成ジェット燃料を特性評価し、ジェットA-1の仕様要件と比較した(Table 5(表5))。燃料研究所が特性評価を行い、特性評価の前に半合成ジェット燃料に1mg/LのStadis 450を添加した。
【0193】
Table 5(表5)に列挙した仕様に加えて、完全合成ジェット燃料のコールドフロー密度及び粘度を測定した。-20℃では、密度は812kg/m3、粘度は3.27mPa秒(cP)、動粘度は4.02mm2/秒(cSt)であった。-20℃での最大許容動粘度は、8mm2/秒(cSt)である。実施したこれらの分析では、完全合成ジェット燃料は、合成炭化水素を含有する航空タービン燃料用の標準仕様書ASTM D7566-18aに記載されている合成ジェットA-1の要件に合格した。
【0194】
T50-T10=(197.8-181.7)=16.1℃は、完全合成ジェット燃料に必要な最小差15℃よりも大きい。T90-T10=41.1℃は、完全合成ジェット燃料に必要な最小差40℃よりも大きい。47.0℃の引火点温度(最低38℃が必要)及び786.1kg/m3の密度(最低775kg/m3が必要)から、完全合成ジェット燃料ブレンドにより低い沸点の材料を追加できることが示唆された。-72.2℃の凝固開始点(最大-47℃が必要)、786.1kg/m3の密度(最大840kg/m3が必要)、24.0mmの煙点(最小18mmが必要)、及び242.9℃の最終沸点温度(最大300℃が必要)から、完全合成ジェット燃料ブレンドにより高い沸点の材料を追加できることが示唆された。
【0195】
【0196】
本明細書に記載の実施形態は、単なる例であることを意図している。当業者なら、特定の実施形態に変更、修正、及び変形を加えることができる。請求項の範囲は、本明細書に記載の特定の諸実施形態によって制限されるべきではなく、全体として明細書と一致する仕方で解釈されるべきである。
【0197】
本明細書中で言及しているすべての刊行物、特許、及び特許出願は、本発明が関係する当業者の技能レベルを示唆するものであり、個々の刊行物、特許、又は特許出願の各々が参照により組み込まれていることが具体的且つ個別に示唆されているのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれている。
【0198】
本発明のこうした説明から、同じことを多くの手段で変形できることは明らかであろう。このような変形は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱するものとはみなされず、当業者には明らかであろうすべてのこのような修正は、以下の特許請求の範囲内に含まれることを意図するものである。
【符号の説明】
【0199】
1 工程1
1.1 熱水液化ユニット
1.2 熱水液化ユニット
1.3 熱水液化ユニット
1.n 熱水液化ユニット
2 工程2
2a 工程1からの液化生成物
2b 油原料、糖原料、及び/又はアルコール原料
2.1 ガス化前供給物タンク
2.2 未処理合成ガス生成ユニット
2.3 未処理合成ガス洗浄ユニット
3 工程3
3.1 フィッシャー-トロプシュユニット
4 工程4
4.1 分離ユニット
4a 水性生成物の流れ
4a 溶解有機化合物を含む水の流れ
4a フィッシャー-トロプシュ水性生成物の流れ
4b ナフサ及びガス生成物の流れ
4b ガス状及びナフサ分画生成物の流れ
4b 直留ガス及びナフサ生成物の流れ
4c ケロシン生成物の流れ
4d ガス油及びより重質な生成物の流れ
4d ガス油及びより重質な有機化合物の流れ
5 工程5
5.1 オリゴマー化ユニット
5.2 水素化分解ユニット
5.3 水素処理ユニット
5.3 水素処理器
5a 追加ケロシン生成物の流れ
5b ケロシンの範囲外の液体生成物の流れ
299 合成ガスの流れ
300 フィッシャー-トロプシュ反応器
301 液体炭化水素を含む混合物の気相流れ
302 液体炭化水素を含む混合物の液相流れ
303 水の流れ
304 蒸気の流れ
400 供給物-生成物熱交換器
401 流れ
410 相分離器
411 気相流れ
411 ガス状生成物流れ
412 有機液相流れ
413 水性液相流れ
413 水性生成物流れ
414 有機液相流れ
415 有機液相流れ
510 オリゴマー化ユニット
511 第1の追加ケロシン生成物を含む混合物の流れ
520 分離ユニット
521 ガス状生成物の流れ
522 有機液体生成物の流れ
523 水が豊富な液体生成物の流れ
530 分離ユニット
531 より軽質な分画の流れ
532 より重質な分画な流れ
533 より軽質な分画の流れ
533 ナフサ
534 より軽質な分画の流れ
540 水素化分解器ユニット
541 水素化分解及び水素異性化からの生成物の流れ
550 分離器ユニット
551 軽質な炭化水素の流れ
552 ケロシン範囲の炭化水素の流れ
553 ガス油の流れ
554 常圧残渣油の流れ
554 最も重質な生成物の流れ
555 常圧残渣油の流れ
556 常圧残渣油の流れ
560 水素処理器ユニット
561 水素処理からの生成物の流れ
561 アルカン、シクロアルカン、及び芳香族化合物の流れ
570 分離ユニット
571 ナフサの流れ
571 ナフサ範囲の生成物の流れ
572 ケロシンの流れ
573 ガス油の流れ
610 CO2除去ユニット
611 CO2が豊富な流れ
612 CO2が減少した流れ
613 CO2が減少した流れ
614 CO2が減少した流れ
620 H2分離ユニット
621 水素の流れ
622 流れ614から水素が一部除去された流れ
【手続補正書】
【提出日】2020-08-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成ジェット燃料を製造する方法であって、
原料を合成ガスに変換する工程と、
前記合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換する工程と、
前記液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程と、
前記ケロシン生成物を水素処理して、合成ジェット燃料を形成する工程とを含む、方法。
【請求項2】
原料を合成ガスに変換する工程が、前記原料を水性条件下で熱分解して、バイオクルードを含む混合物を形成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原料が、高含水量のバイオマス、有機材料、廃棄物流、又はこれらの組合せを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
原料を合成ガスに変換する工程が、前記原料を熱分解して、バイオクルードを含む混合物を形成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記原料が、低含水量のバイオマス、有機材料、廃棄物流、又はこれらの組合せを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
原料を合成ガスに変換する工程が、
前記バイオクルードを含む混合物をガス化して、前記合成ガスを形成する工程を更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記バイオクルードを含む混合物をガス化する工程が、
前記バイオクルードを含む混合物を超臨界水ガス化して、CH
4、CO、CO
2、及びH
2を含む混合物を形成する工程と、
前記CH
4、CO、CO
2、及びH
2を含む混合物を改質して、前記合成ガスを形成する工程とを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
改質する工程が、乾式改質及び水蒸気改質を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
原料を合成ガスに変換するとき、
ガス化前に、油原料、糖原料、及び/又はアルコール原料を、前記バイオクルードを含む混合物に添加する工程を更に含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記合成ガスが、2対1未満の、H
2のCOに対する比を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記合成ガスが、2対1未満の、(H
2-CO
2)/(CO+CO
2)化学量論比を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記合成ガスが、1対1未満の、(H
2)/(2CO+3CO
2)リブレット比を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換する工程が、
フィッシャー-トロプシュ合成を実施して、前記合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換する工程を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記フィッシャー-トロプシュ合成が、鉄系触媒を用いて実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記フィッシャー-トロプシュ合成を実施して、前記合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換するとき、
H
2の濃度を増加させる水性ガスシフト反応を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記フィッシャー-トロプシュ合成が、約2MPa、又は約2.5MPa、又は約2.8MPaの圧力で実施される、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記フィッシャー-トロプシュ合成が、約1.5MPa~5MPaの範囲、又は約2MPa~約4MPaの範囲、又は約2MPa~約3MPaの範囲、又は約1.5~約2.5MPaの範囲、又は約2MPa~約2.5MPaの範囲の圧力で実施される、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記フィッシャー-トロプシュ合成が、2MPa超の圧力で実施される、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記液体炭化水素を含む混合物が、1対1超の、アルケンのアルカンに対する比を有する、請求項13から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程が、
前記液体炭化水素を含む混合物に気液平衡分離を実施する工程と、
前記混合物を、前記ケロシン生成物と、水性生成物、ナフサ及びガス生成物、又はガス油及びより重質な生成物のうちの少なくとも1種とに分離する工程とを含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記気液平衡分離が、単段分離及び/又は多段分離として実施される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
水性生成物が分離された場合、前記液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程が、
原料を合成ガスに変換するときに前記バイオクルードを含む混合物をガス化する前の前記バイオクルードを含む混合物に、前記分離された水性生成物を添加する工程を更に含む、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
ナフサ及びガス生成物が分離された場合、前記液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程が、
前記ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化して、第1の追加ケロシン生成物を含む混合物を形成する工程を更に含む、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、約2.5MPa又は約2MPaの圧力で実施される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、約1.5MPa~3MPaの範囲、又は約1.5MPa~約2.5MPaの範囲、又は約2MPa~約2.5MPaの範囲の圧力で実施される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、非硫化触媒を用いて実施される、請求項23から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、酸性ZSM-5ゼオライト触媒を用いて実施される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の追加ケロシン生成物が、アルケン及び芳香族化合物を含む、請求項23から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の追加ケロシン生成物が、約0%~約60%の芳香族化合物、約1%~約60%の芳香族化合物、又は約1%~約50%の芳香族化合物、又は約1%~約40%の芳香族化合物、又は約1%~約30%の芳香族化合物、又は約0%~約1%の芳香族化合物、又は約1%~約7%の芳香族化合物、又は約8%~約25%の芳香族化合物、又は約8%の芳香族化合物を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ガス油及びより重質な生成物が分離された場合、前記液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程が、
前記ガス油及びより重質な生成物を水素化分解して、第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を形成する工程を更に含む、請求項20から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ガス油及びより重質な生成物を水素化分解する工程が、約2.5MPa又は約2MPaの圧力で実施される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ガス油及びより重質な生成物を水素化分解する工程が、約1.5MPa~3MPa、又は約1.5MPa~約2.5MPa、又は約2MPa~約2.5MPaの圧力で実施される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記ガス油及びより重質な生成物を水素化分解する工程が、非硫化触媒を用いて実施される、請求項30から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記水素化分解工程が、非晶質シリカ-アルミナに担持された貴金属触媒を用いて実施される、請求項30から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記触媒が、Pt/SiO
2-Al
2O
3である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ケロシン生成物を水素処理して、合成ジェット燃料を形成する工程が、
前記ケロシン生成物を水素処理して、
且つナフサ及びガス生成物が分離された場合には前記第1の追加ケロシン生成物を水素処理して、
パラフィン系炭化水素を含む混合物を形成する工程と、
前記パラフィン系炭化水素を含む混合物を分画して、
且つガス油及びより重質な生成物が分離された場合には前記第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を分画して、
前記合成ジェット燃料を単離する工程とを含む、請求項1から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記パラフィン系炭化水素を含む混合物を分画する工程及び前記第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を分画する工程を行う場合、
分画前に、前記第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を、前記パラフィン系炭化水素を含む混合物に添加する工程を更に含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ケロシン生成物、前記第1の追加ケロシン生成物、及び前記第2の追加ケロシン生成物の各々が、約140℃~約300℃の標準沸点温度範囲を有する、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
前記水素処理する工程が、約2.5MPa又は約2MPaの圧力で実施される、請求項36から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記水素処理する工程が、約1.5MPa~3MPa、又は約1.5MPa~約2.5MPa、又は約2MPa~約2.5MPaの圧力で実施される、請求項36から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記水素処理する工程が、非硫化触媒を用いて実施される、請求項36から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記水素処理する工程が、アルミナ又はシリカに担持された還元型卑金属触媒を用いて実施される、請求項36から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記触媒が、還元型Ni/Al
2O
3である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記合成ジェット燃料が、半合成ジェット燃料、完全合成ジェット燃料、又はこれらの組合せである、請求項1から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記合成ジェット燃料が、約140℃~約260℃の沸点及び-60℃未満の凝固点を有する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
原料を合成ガスに変換する工程であって、前記原料を熱分解して、バイオクルードを含む混合物を形成する工程、及び前記バイオクルードを含む混合物をガス化して、前記合成ガスを形成する工程を含み、前記原料が、バイオマス、有機材料、廃棄物流、又はこれらの組合せを含む、工程と;
前記合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換する工程と;
前記液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程と;
前記ケロシン生成物を水素処理して、合成ジェット燃料を形成する工程と
を含む、合成ジェット燃料を製造する方法。
【請求項47】
原料を合成ガスに変換する工程が、
高含水量物を含む前記原料を水性条件下で熱分解する工程を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
原料を合成ガスに変換する工程が、
低含水量物を含む前記原料を熱分解する工程を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記バイオクルードを含む混合物をガス化する工程が、
前記バイオクルードを含む混合物を超臨界水ガス化して、CH
4
、CO、CO
2
、及びH
2
を含む混合物を形成する工程と、
前記CH
4
、CO、CO
2
、及びH
2
を含む混合物を改質して、前記合成ガスを形成する工程とを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
改質する工程が、乾式改質及び水蒸気改質を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
原料を合成ガスに変換するとき、
ガス化前に、油原料、糖原料、及び/又はアルコール原料を、前記バイオクルードを含む混合物に添加する工程を更に含む、請求項46から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記合成ガスが、2対1未満の、H
2
のCOに対する比を有する、請求項46から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記合成ガスが、2対1未満の、(H
2
-CO
2
)/(CO+CO
2
)化学量論比を有する、請求項46から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記合成ガスが、1対1未満の、(H
2
)/(2CO+3CO
2
)リブレット比を有する、請求項46から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換する工程が、
フィッシャー-トロプシュ合成を実施して、前記合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換する工程を含む、請求項46から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記フィッシャー-トロプシュ合成が、鉄系触媒を用いて実施される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記フィッシャー-トロプシュ合成を実施して、前記合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換するとき、
H
2
の濃度を増加させる水性ガスシフト反応を更に含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記フィッシャー-トロプシュ合成が、約2MPa、又は約2.5MPa、又は約2.8MPaの圧力で実施される、請求項55から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記フィッシャー-トロプシュ合成が、約1.5MPa~5MPaの範囲、又は約2MPa~約4MPaの範囲、又は約2MPa~約3MPaの範囲、又は約1.5~約2.5MPaの範囲、又は約2MPa~約2.5MPaの範囲の圧力で実施される、請求項55から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記フィッシャー-トロプシュ合成が、2MPa超の圧力で実施される、請求項55から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記液体炭化水素を含む混合物が、1対1超の、アルケンのアルカンに対する比を有する、請求項55から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程が、
前記液体炭化水素を含む混合物に気液平衡分離を実施する工程と、
前記混合物を、前記ケロシン生成物と、水性生成物、ナフサ及びガス生成物、又はガス油及びより重質な生成物のうちの少なくとも1種とに分離する工程とを含む、請求項46から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記気液平衡分離が、単段分離及び/又は多段分離として実施される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
水性生成物が分離された場合、前記液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程が、
原料を合成ガスに変換するときに前記バイオクルードを含む混合物をガス化する前の前記バイオクルードを含む混合物に、前記分離された水性生成物を添加する工程を更に含む、請求項62又は63に記載の方法。
【請求項65】
ナフサ及びガス生成物が分離された場合、前記液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程が、
前記ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化して、第1の追加ケロシン生成物を含む混合物を形成する工程を更に含む、請求項62から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、約2.5MPa又は約2MPaの圧力で実施される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、約1.5MPa~3MPaの範囲、又は約1.5MPa~約2.5MPaの範囲、又は約2MPa~約2.5MPaの範囲の圧力で実施される、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、非硫化触媒を用いて実施される、請求項65から67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、酸性ZSM-5ゼオライト触媒を用いて実施される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記第1の追加ケロシン生成物が、アルケン及び芳香族化合物を含む、請求項65から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記第1の追加ケロシン生成物が、約0%~約60%の芳香族化合物、約1%~約60%の芳香族化合物、又は約1%~約50%の芳香族化合物、又は約1%~約40%の芳香族化合物、又は約1%~約30%の芳香族化合物、又は約0%~約1%の芳香族化合物、又は約1%~約7%の芳香族化合物、又は約8%~約25%の芳香族化合物、又は約8%の芳香族化合物を含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
ガス油及びより重質な生成物が分離された場合、前記液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程が、
前記ガス油及びより重質な生成物を水素化分解して、第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を形成する工程を更に含む、請求項62から71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記ガス油及びより重質な生成物を水素化分解する工程が、約2.5MPa又は約2MPaの圧力で実施される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記ガス油及びより重質な生成物を水素化分解する工程が、約1.5MPa~3MPa、又は約1.5MPa~約2.5MPa、又は約2MPa~約2.5MPaの圧力で実施される、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記ガス油及びより重質な生成物を水素化分解する工程が、非硫化触媒を用いて実施される、請求項72から74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記水素化分解工程が、非晶質シリカ-アルミナに担持された貴金属触媒を用いて実施される、請求項72から75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記触媒が、Pt/SiO
2
-Al
2
O
3
である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記ケロシン生成物を水素処理して、合成ジェット燃料を形成する工程が、
前記ケロシン生成物を水素処理して、
且つナフサ及びガス生成物が分離された場合には前記第1の追加ケロシン生成物を水素処理して、
パラフィン系炭化水素を含む混合物を形成する工程と、
前記パラフィン系炭化水素を含む混合物を分画して、
且つガス油及びより重質な生成物が分離された場合には前記第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を分画して、
前記合成ジェット燃料を単離する工程とを含む、請求項46から77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記パラフィン系炭化水素を含む混合物を分画する工程及び前記第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を分画する工程を行う場合、
分画前に、前記第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を、前記パラフィン系炭化水素を含む混合物に添加する工程を更に含む、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記ケロシン生成物、前記第1の追加ケロシン生成物、及び前記第2の追加ケロシン生成物の各々が、約140℃~約300℃の標準沸点温度範囲を有する、請求項78又は79に記載の方法。
【請求項81】
前記水素処理する工程が、約2.5MPa又は約2MPaの圧力で実施される、請求項78から80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記水素処理する工程が、約1.5MPa~3MPa、又は約1.5MPa~約2.5MPa、又は約2MPa~約2.5MPaの圧力で実施される、請求項78から80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記水素処理する工程が、非硫化触媒を用いて実施される、請求項78から82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記水素処理する工程が、アルミナ又はシリカに担持された還元型卑金属触媒を用いて実施される、請求項78から83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記触媒が、還元型Ni/Al
2
O
3
である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記合成ジェット燃料が、半合成ジェット燃料、完全合成ジェット燃料、又はこれらの組合せである、請求項46から85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記合成ジェット燃料が、約140℃~約260℃の沸点及び-60℃未満の凝固点を有する、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
原料を熱分解して、バイオクルードを含む混合物を形成する工程であって、前記原料が、バイオマス、有機材料、廃棄物流、又はこれらの組合せを含む、工程と;
前記バイオクルードを含む混合物をガス化する工程であって、前記ガス化する工程が、前記バイオクルードを含む混合物を超臨界水ガス化して、CH
4
、CO、CO
2
、及びH
2
を含む混合物を形成する工程、並びに前記CH
4
、CO、CO
2
、及びH
2
を含む混合物を改質して、合成ガスを形成する工程を含む、工程と;
前記合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換する工程であって、フィッシャー-トロプシュ合成を実施して、前記合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換する工程を含む、工程と;
前記液体炭化水素を含む混合物を精製して、ケロシン生成物を単離する工程であって、前記精製する工程が、前記液体炭化水素を含む混合物に気液平衡分離を実施する工程、並びに前記混合物を、前記ケロシン生成物と、水性生成物、ナフサ及びガス生成物、又はガス油及びより重質な生成物のうちの少なくとも1種とに分離する工程を含み、
水性生成物が分離された場合、前記精製する工程が、前記バイオクルードを含む混合物をガス化する前の前記バイオクルードを含む混合物に、前記分離された水性生成物を添加する工程を更に含み、
ナフサ及びガス生成物が分離された場合、前記精製する工程が、前記ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化して、第1の追加ケロシン生成物を含む混合物を形成する工程を更に含み、
ガス油及びより重質な生成物が分離された場合、前記精製する工程が、前記ガス油及びより重質な生成物を水素化分解して、第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を形成する工程を更に含む、工程と;
前記ケロシン生成物を水素処理して、約140℃~約260℃の沸点及び-60℃未満の凝固点を有する合成ジェット燃料を形成し、
ナフサ及びガス生成物が分離された場合、前記水素処理する工程が、前記第1の追加ケロシン生成物を水素処理して、パラフィン系炭化水素を含む混合物を形成する工程、及び前記パラフィン系炭化水素を含む混合物を分画する工程を更に含み、
ガス油及びより重質な生成物が分離された場合、前記水素処理する工程が、前記第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を分画する工程を更に含み、
前記合成ジェット燃料を単離する工程と
を含む、合成ジェット燃料を製造する方法。
【請求項89】
原料を熱分解する工程が、
高含水量物を含む前記原料を水性条件下で熱分解する工程を含む、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
原料を熱分解する工程が、
低含水量物を含む前記原料を熱分解する工程を含む、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
改質する工程が、乾式改質及び水蒸気改質を含む、請求項88に記載の方法。
【請求項92】
原料を熱分解するとき、
ガス化前に、油原料、糖原料、及び/又はアルコール原料を、前記バイオクルードを含む混合物に添加する工程を更に含む、請求項88から91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
前記合成ガスが、2対1未満の、H
2
のCOに対する比を有する、請求項88から92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記合成ガスが、2対1未満の、(H
2
-CO
2
)/(CO+CO
2
)化学量論比を有する、請求項88から93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記合成ガスが、1対1未満の、(H
2
)/(2CO+3CO
2
)リブレット比を有する、請求項88から94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記フィッシャー-トロプシュ合成が、鉄系触媒を用いて実施される、請求項88から95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記フィッシャー-トロプシュ合成を実施して、前記合成ガスを、液体炭化水素を含む混合物に変換するとき、
H
2
の濃度を増加させる水性ガスシフト反応を更に含む、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記フィッシャー-トロプシュ合成が、約2MPa、又は約2.5MPa、又は約2.8MPaの圧力で実施される、請求項88から97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記フィッシャー-トロプシュ合成が、約1.5MPa~5MPaの範囲、又は約2MPa~約4MPaの範囲、又は約2MPa~約3MPaの範囲、又は約1.5~約2.5MPaの範囲、又は約2MPa~約2.5MPaの範囲の圧力で実施される、請求項88から97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記フィッシャー-トロプシュ合成が、2MPa超の圧力で実施される、請求項88から97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記液体炭化水素を含む混合物が、1対1超の、アルケンのアルカンに対する比を有する、請求項88から100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
前記気液平衡分離が、単段分離及び/又は多段分離として実施される、請求項88から101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
前記ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、約2.5MPa又は約2MPaの圧力で実施される、請求項88から102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
前記ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、約1.5MPa~3MPaの範囲、又は約1.5MPa~約2.5MPaの範囲、又は約2MPa~約2.5MPaの範囲の圧力で実施される、請求項88から102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
前記ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、非硫化触媒を用いて実施される、請求項88から104のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
前記ナフサ及びガス生成物をオリゴマー化する工程が、酸性ZSM-5ゼオライト触媒を用いて実施される、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記第1の追加ケロシン生成物が、アルケン及び芳香族化合物を含む、請求項88から106のいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
前記第1の追加ケロシン生成物が、約0%~約60%の芳香族化合物、約1%~約60%の芳香族化合物、又は約1%~約50%の芳香族化合物、又は約1%~約40%の芳香族化合物、又は約1%~約30%の芳香族化合物、又は約0%~約1%の芳香族化合物、又は約1%~約7%の芳香族化合物、又は約8%~約25%の芳香族化合物、又は約8%の芳香族化合物を含む、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
前記ガス油及びより重質な生成物を水素化分解する工程が、約2.5MPa又は約2MPaの圧力で実施される、請求項88から108のいずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
前記ガス油及びより重質な生成物を水素化分解する工程が、約1.5MPa~3MPa、又は約1.5MPa~約2.5MPa、又は約2MPa~約2.5MPaの圧力で実施される、請求項88から108のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
前記ガス油及びより重質な生成物を水素化分解する工程が、非硫化触媒を用いて実施される、請求項88から110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
前記水素化分解工程が、非晶質シリカ-アルミナに担持された貴金属触媒を用いて実施される、請求項88から111のいずれか一項に記載の方法。
【請求項113】
前記触媒が、Pt/SiO
2
-Al
2
O
3
である、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記パラフィン系炭化水素を含む混合物を分画する工程及び前記第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を分画する工程を行う場合、
分画前に、前記第2の追加ケロシン生成物を含む混合物を、前記パラフィン系炭化水素を含む混合物に添加する工程を更に含む、請求項88から113のいずれか一項に記載の方法。
【請求項115】
前記ケロシン生成物、前記第1の追加ケロシン生成物、及び前記第2の追加ケロシン生成物の各々が、約140℃~約300℃の標準沸点温度範囲を有する、請求項88から114のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
前記水素処理する工程が、約2.5MPa又は約2MPaの圧力で実施される、請求項88から115のいずれか一項に記載の方法。
【請求項117】
前記水素処理する工程が、約1.5MPa~3MPa、又は約1.5MPa~約2.5MPa、又は約2MPa~約2.5MPaの圧力で実施される、請求項88から115のいずれか一項に記載の方法。
【請求項118】
前記水素処理する工程が、非硫化触媒を用いて実施される、請求項88から117のいずれか一項に記載の方法。
【請求項119】
前記水素処理する工程が、アルミナ又はシリカに担持された還元型卑金属触媒を用いて実施される、請求項88から118のいずれか一項に記載の方法。
【請求項120】
前記触媒が、還元型Ni/Al
2
O
3
である、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
前記合成ジェット燃料が、半合成ジェット燃料、完全合成ジェット燃料、又はこれらの組合せである、請求項88から120のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】