(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-16
(54)【発明の名称】オルガノシランを変換する方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/12 20060101AFI20220909BHJP
【FI】
C07F7/12 B
C07F7/12 H
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021553285
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(85)【翻訳文提出日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2019081260
(87)【国際公開番号】W WO2021004648
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/068576
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベトシンガー,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ボックホルト,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ベック,マンフレート
(72)【発明者】
【氏名】フレイスマン,ゲラルト
(72)【発明者】
【氏名】ケプラー,クラウス
【テーマコード(参考)】
4H049
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ12
4H049VR23
4H049VR31
4H049VS02
4H049VS12
4H049VT07
4H049VT08
4H049VT09
4H049VT34
4H049VT51
4H049VW02
(57)【要約】
以下の一般式の少なくとも1種のシラン(1)を
RaSiCl4-a (I)
以下の一般式の少なくとも1種類のさらなるシラン(2)であって、シラン(1)と同一であるか又は異なっており、好ましくはシラン(1)と異なっているシラン(2)と、
RbSiCl4-b (II)
任意に、Si結合した水素を含有し、以下の式を有するシラン(3)を追加使用して
RdHeSiCl4-d-e (III)
触媒としてアルミニウム塩、好ましくはハロゲン化アルミニウム、好ましくは三塩化アルミニウムの存在下及び共触媒の存在下で反応させることにより、シラン(1)及び(2)と異なる、以下の一般式を有する少なくとも1種のシラン(4)を得るオルガノシランを変換する新規な方法であって、
RcSiCl4-c (IV)
[式中、Rは、いずれの場合も1~4個の炭素原子を有する同一の又は異なるアルキル基又はフェニル基を意味し、aは2、3又は4であり、bは0、1、2又は3であり、cは1、2又は3であり、dは0、1、2又は3であり、及びeは1、2又は3であり、ただし、d+eの合計が最大で4であることとする。]
使用される共触媒は、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸エステル、アルミニウムトリス(トリフルオロメタンスルホナート)、周期表の第3及び第4遷移族の金属塩、ランタニド及びアクチニドの金属塩、及びこれらの共触媒の混合物の群から選択されるものであることを特徴とする、方法が記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルガノシランを変換する方法であって、以下の一般式の少なくとも1種のシラン(1)を
R
aSiCl
4-a (I)
以下の一般式の少なくとも1種類のさらなるシラン(2)であって、シラン(1)と同一であるか又は異なっており、好ましくはシラン(1)と異なっているシラン(2)と、
R
bSiCl
4-b (II)
任意に、Si結合した水素を含有し、以下の式を有するシラン(3)を追加使用して
R
dH
eSiCl
4-d-e (III)
触媒としてアルミニウム塩、好ましくはハロゲン化アルミニウムの存在下及び共触媒の存在下で反応させることにより、シラン(1)及びシラン(2)と異なる、以下の一般式を有する少なくとも1種のシラン(4)を得、
R
cSiCl
4-c (IV)
[式中、Rは、いずれの場合も1~4個の炭素原子を有する同一の又は異なるアルキル基又はフェニル基を意味し、
aは、2、3又は4であり、
bは、0、1、2又は3であり、
cは1、2又は3であり、
dは0、1、2又は3であり、及び
eは1、2又は3であり、
ただし、d+eの合計が最大で4であることとする。]
使用される共触媒は、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸エステル、アルミニウムトリス(トリフルオロメタンスルホナート)、周期表の第3及び第4遷移族の金属塩、ランタニド及びアクチニドの金属塩、及びこれらの共触媒の混合物の群から選択されるものであることを特徴とする、方法。
【請求項2】
使用される触媒が三塩化アルミニウムであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
三塩化アルミニウムがそのまま用いられるか、又はその場で製造されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
三塩化アルミニウムが、エチルアルミニウムセスキクロライド及び塩化水素からその場で製造されることを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
第3及び第4遷移族の金属の金属塩、又はランタニド及びアクチニドの金属塩として、ハロゲン化物、好ましくはフッ化物、塩化物又は臭化物、スルホナート、酸化物又はカルボキシラートを使用することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
使用される第3及び第4遷移族の金属が、イットリウム又はハフニウムであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
使用されるランタニド及びアクチニドの金属が、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム又はルテチウムであり、好ましくはセリウム、ガドリニウム又はテルビウムであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
使用される金属塩が、三塩化イットリウム、三塩化セリウム、三塩化ネオジム、三フッ化ガドリニウム、三塩化ガドリニウム、三臭化ガドリニウム、酢酸ガドリニウム(III)、三塩化テルビウム、三塩化ホルミウム又は三塩化ルテチウムであり、好ましくは三塩化セリウム、三塩化ガドリニウム又は三塩化テルビウムであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
アルミニウム塩、優先的にはハロゲン化アルミニウム、好ましくは三塩化アルミニウムが、いずれの場合も使用されるシラン(1)及び(2)の総重量に基づいて、0.2重量%~10重量%、好ましくは0.8重量%~3.0重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
共触媒が、いずれの場合も使用されるシラン(1)及び(2)の総重量に基づいて、優先的には0.002重量%~2.5重量%、好ましくは0.008重量%~0.3重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
使用されるシラン(1)が、テトラメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン及びフェニルトリクロロシランであり、好ましくはテトラメチルシランであることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
使用されるシラン(2)が、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン及びテトラクロロシランであることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
使用されるシラン(1)がテトラメチルシランであり、使用されるシラン(2)がジメチルジクロロシランであり、トリメチルクロロシランが得られることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
使用されるシラン(1)がテトラメチルシランであり、使用されるシラン(2)がテトラクロロシランであり、トリメチルクロロシランが得られることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノシランを変換する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三塩化アルミニウムのような触媒の存在下で2種以上の異なる置換シランの共均一化(coproportionating)による配位子交換、例えば、ケイ素原子においてメチル基を塩素原子に交換することによるオルガノシランの変換は、W. Noll、Chemistry and Technology of Silicones,1968、57頁~58頁から知られている。三塩化アルミニウムの活性が低いため、これらの配位子交換反応の反応速度は遅く、したがってあまり経済的ではない。
【0003】
US4,158,010A号には、以下の一般式の少なくとも1種のシラン(1)を
RaSiCl4-a (I)
シラン(1)とは異なり、以下の一般式を有する少なくとも1種のシラン(2)と
RbSiCl4-b (II)
[式中、Rは、いずれの場合も1~4個の炭素原子を有する同一の又は異なるアルキル基を意味し、aは2、3又は4であり、bは0、1、2又は3である。]
三塩化アルミニウムのようなアルミニウム触媒及びSi結合した水素を含むシラン及び共触媒としての塩化水素の存在下で反応させてオルガノシランを変換することが記載されている。
【0004】
塩化水素には、特に微量の水が存在する場合に、鋼から作られたプラントにおいて腐食作用を及ぼす可能性があるという欠点がある。
【0005】
US2003/0109735A1号には、三塩化アルミニウム又は三臭化アルミニウム及び水素含有シランを用いることに加えて、共触媒としての金属塩が開示されている。これには、比較的多量の固体物質(この物質は計量が難しく、反応混合物を後処理する際に複雑な方法で再び取り除かなければならない。)が使用されるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,158,010号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0109735号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】W. Noll、Chemistry and Technology of Silicones,1968、57頁~58頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
その目的は、上記のような欠点を回避し、反応時間の短縮により経済性が向上したオルガノシランの変換方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は本発明によって達成される。
【0010】
本発明は、以下の一般式の少なくとも1種のシラン(1)を
RaSiCl4-a (I)
以下の一般式の少なくとも1種類のさらなるシラン(2)であって、シラン(1)と同一であるか又は異なっており、好ましくはシラン(1)と異なるシラン(2)と、
RbSiCl4-b (II)
任意に、Si結合した水素を含有し、以下の式を有するシラン(3)を追加使用して
RdHeSiCl4-d-e (III)
触媒としてアルミニウム塩、好ましくはハロゲン化アルミニウムの存在下及び共触媒の存在下で反応させることにより、シラン(1)及び(2)と異なる、以下の一般式を有する少なくとも1種のシラン(4)を得る、オルガノシランを変換する方法であって、
RcSiCl4-c (IV)
[式中、Rは、いずれの場合も1~4個の炭素原子を有する同一の又は異なるアルキル基又はフェニル基を意味し、
aは、2、3又は4であり、
bは、0、1、2又は3であり、
cは、1、2又は3であり、
dは、0、1、2又は3であり、及び
eは1、2又は3であり、
ただし、d+eの合計が最大で4であることとする。]
使用される共触媒は、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸エステル、アルミニウムトリス(トリフルオロメタンスルホナート)、周期表の第3及び第4遷移族の金属塩、ランタニド及びアクチニドの金属塩、及びこれらの共触媒の混合物の群から選択されるものであることを特徴とする方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
使用される触媒はハロゲン化アルミニウムが好ましい。ハロゲン化アルミニウムの例は、三臭化アルミニウム及び三塩化アルミニウムである。
【0012】
使用される触媒は三塩化アルミニウムが好ましい。
【0013】
トリフルオロメタンスルホン酸エステルの例は、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホナートなどのシリルトリフルオロメタンスルホナートである。
【0014】
本発明による共触媒は、それ自体は触媒として活性な化合物ではない。アルミニウムトリス(トリフルオロメタンスルホナート)も、三塩化アルミニウムとトリフルオロメタンスルホン酸又はトリフルオロメタンスルホン酸との反応生成物も、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホナートも、いずれも単独で触媒活性を示さない。したがって、三塩化アルミニウムへの本発明による共触媒の添加が、三塩化アルミニウムの触媒活性のかなりの改善をもたらし、それが反応時間の大幅な短縮をもたらしたことは驚くべきことであった。トリフルオロメタンスルホン酸とクロロシランが対応するシリルトリフルオロメタンスルホナートを形成し、それがおそらく共触媒として作用すると推測することができる。
【0015】
また驚くべきことに、第3及び第4遷移族の金属塩、又はランタニド及びアクチニドの金属塩も、単独では触媒活性を示さないが、触媒である三塩化アルミニウムとの併用で、共触媒として反応を著しく促進することができることがわかった。
【0016】
使用される金属塩は、ハロゲン化物(好ましくはフッ化物、塩化物又は臭化物、好ましくは塩化物)、スルホナート、酸化物又はカルボキシラートであることができる。
【0017】
第3及び4遷移族の金属の例はイットリウム及びハフニウムである。
【0018】
ランタニド及びアクチニドの金属の例は、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムであり、セリウム、ガドリニウム及びテルビウムが好ましい。
【0019】
第3及び4遷移族の金属塩の例は、三塩化イットリウム及び四塩化ハフニウムである。
【0020】
ランタニド及びアクチニドの金属塩の例は、三塩化ランタン、三塩化セリウム、三塩化プラセオジム、三塩化ネオジム、三塩化サマリウム、三フッ化ガドリニウム、三塩化ガドリニウム、三臭化ガドリニウム、三塩化テルビウム、三塩化ホルミウム、三塩化エルビウム、三塩化ツリウム、三塩化ルテチウム、ジスプロシウムトリス(トリフルオロメタンスルホン酸塩)、酸化ガドリニウム(III)及び酢酸ガドリニウム(III)である。
【0021】
好ましい金属塩は、三塩化イットリウム、三塩化セリウム、三塩化ネオジム、三フッ化ガドリニウム、三塩化ガドリニウム、三臭化ガドリニウム、酢酸ガドリニウム(III)、三塩化テルビウム、三塩化ホルミウム及び三塩化ルテチウムであり、三塩化セリウム、三塩化ガドリニウム及び三塩化テルビウムが特に好ましい。
【0022】
1~4個の炭素原子を有するアルキル基Rの例は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基及びsec-ブチル基であり、メチル基が好ましい。
【0023】
式(I)のシラン(1)の例は、テトラメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン及びフェニルトリクロロシランであり、テトラメチルシランが好ましい例である。
【0024】
式(II)のシラン(2)の例は、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン及びテトラクロロシランである。
【0025】
式(III)のシラン(3)の例は、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、トリクロロシラン及びモノクロロシランである。
【0026】
本発明による方法における配位子交換反応により得られる式(IV)のシラン(4)の例は、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン及びメチルトリクロロシランである。
【0027】
本発明の方法では、式(I)のシラン(1)を、式(II)のシラン(2)1モル当たり0.8~1.2モルの量で用いることが好ましい。
【0028】
Si結合した水素を含むシラン(3)が本発明の方法で追加的に使用される場合は、それらは、いずれの場合もシラン(1)及び(2)の総重量に基づいて、0.01重量%~10重量%の量、好ましくは0.1重量%~3重量%の量で使用される。
【0029】
触媒として使用される三塩化アルミニウムは、例えば、エチルアルミニウムセスキクロライドと塩化水素との反応によってその場で製造することもできる。
【0030】
本発明の方法では、三塩化アルミニウムは、いずれの場合も使用したシラン(1)及び(2)の総重量に基づいて、優先的に0.2重量%~10重量%、好ましくは0.8重量%~3.0重量%の量で使用される。
【0031】
本発明による方法では、共触媒は、三塩化アルミニウムに基づいて、優先的に1重量%~25重量%、好ましくは1重量%~10重量%の量で使用される。
【0032】
したがって、共触媒は、本発明の方法では、使用されるシラン(1)及び(2)の総重量に基づき、優先的に0.002重量%~2.5重量%、好ましくは0.008重量%~0.3重量%の量で使用される。
【0033】
本発明による方法は、優先的には0℃~200℃、好ましくは20℃~100℃、及び優先的には1~100bar、好ましくは1~10barの圧力で、特に好ましくは周囲雰囲気の圧力、すなわち約1barで行われる。
【0034】
本発明による方法は、バッチ式、半連続式又は完全連続式で行うことができる。
【0035】
本発明による方法は、反応時間がかなり短縮されるという利点を有する。反応時間の短縮は、空時収量の増加の結果として、より高いプラント生産能力及び改善された経済性をもたらす。
【0036】
本発明による方法はまた、テトラメチルシランとジメチルジクロロシランとの反応がトリメチルクロロシランを与える反応時間を短縮するだけでなく、例えば、テトラメチルシランとテトラクロロシラン又はメチルトリクロロシランとの反応のようなより遅い配位子交換反応のための反応時間を短縮するという利点を有する。トリメチルクロロシランとメチルトリクロロシランとの反応がジメチルジクロロシランを与える反応時間も同様に短縮することができる。
【0037】
ジメチルジクロロシラン又はフェニルトリクロロシラン(すなわち、シラン(2)はシラン(1)と同一である)の不均化も同様に、本発明による方法でより短い反応時間で行うことができる。
【実施例】
【0038】
[実施例1~14及び比較実験1~5]
テトラメチルシランとジメチルジクロロシランとの反応
【0039】
実施例1~14及び比較実験1~5を、撹拌器、還流冷却器(低温保持装置で操作される)、滴下漏斗及び反応温度測定を備えた3つ首フラスコ内において不活性条件下で実施した。
【0040】
ジメチルジクロロシランを最初に仕込みし、これに触媒及び共触媒を加えた(実施例1~14)。比較実験1及び5では、触媒のみを加え、比較実験2~4では共触媒のみを加えた。
【0041】
工業グレードのテトラメチルシラン(ガスクロマトグラフィー(GC)により測定した約85重量%、約3~5重量%のジメチルクロロシランを含有)を続いて計量した。混合物を還流まで加熱し、一定間隔で試料を採取した。試料を蒸留して固形分を除去し、ガスクロマトグラフィー(GC、カラム:Agilent DB 210、長さ:60m、直径:0.32mm)により蒸留物を分析した。
【0042】
[実施例1]
150gのジメチルジクロロシラン
115gの工業グレードのテトラメチルシラン
8gのAlCl3
1.5gのトリフルオロメタンスルホン酸
【0043】
105分の反応時間後、残留テトラメチルシラン含有率は1重量%未満であり、トリメチルクロロシランの含有率は86重量%であった。
【0044】
[実施例2]
150gのジメチルジクロロシラン
115gの工業グレードのテトラメチルシラン
8gのAlCl3
1.5gのトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホナート
【0045】
120分の反応時間の後、残留テトラメチルシラン含有率は約1重量%であり、トリメチルクロロシランの含有率は86重量%であった。
【0046】
[実施例3]
150gのジメチルジクロロシラン
115gの工業グレードのテトラメチルシラン
8gのAlCl3
1.5gのアルミニウムトリス(トリフルオロメタンスルホナート)
【0047】
120分の反応時間の後、残留テトラメチルシラン含有率は約1重量%であり、トリメチルクロロシランの含有率は86重量%であった。
【0048】
[実施例4]
150gのジメチルジクロロシラン
115gの工業グレードのテトラメチルシラン
8gのAlCl3
1.5gの三塩化セリウム
【0049】
95分の反応時間の後、残留テトラメチルシラン含有率は約1重量%であり、トリメチルクロロシランの含有率は86重量%であった。
【0050】
[実施例5]
150gのジメチルジクロロシラン
115gの工業グレードのテトラメチルシラン
8gのAlCl3
1.5gの三塩化ガドリニウム
【0051】
60分の反応時間の後、残留テトラメチルシラン含有率は約1重量%であり、トリメチルクロロシランの含有率は86重量%であった。
【0052】
[実施例6]
1.45tのジメチルジクロロシラン
1tの工業グレードのテトラメチルシラン
18kgのAlCl3(16.7kgのエチルアルミニウムセスキクロライド及び塩化水素からその場で生成)
2.5kgのトリフルオロメタンスルホン酸
【0053】
還流条件下で4時間の反応時間の後、残留テトラメチルシラン含有率は約2重量%であり、トリメチルクロロシランの含有率は85重量%であった。
【0054】
[実施例7]
実施例6の最終反応混合物を蒸留により後処理し、約0.15tの蒸留底部残留物に1.45tのジメチルジクロロシラン及び1tの工業グレードのテトラメチルシランを加え、混合物を実施例6と同様に反応させた。4時間の反応時間の後、残留テトラメチルシラン含有率は約2重量%であり、トリメチルクロロシランの含有率は85重量%であった。
【0055】
[実施例8]
1.45tのジメチルジクロロシラン
1tの工業グレードのテトラメチルシラン
18kgのAlCl3(16.7kgのエチルアルミニウムセスキクロライド及び塩化水素からその場で生成)
1.0kgの三塩化セリウム
【0056】
1時間の反応時間の後、残留テトラメチルシラン含有率は約1重量%であり、トリメチルクロロシランの含有率は86重量%であった。
【0057】
[実施例9]
実施例8の最終反応混合物を蒸留により後処理し、約0.15tの蒸留底部残留物に1.45tのジメチルジクロロシラン及び1tの工業グレードのテトラメチルシランを加え、混合物を実施例8と同様に反応させた。1時間の反応時間の後、残留テトラメチルシラン含有率は約1重量%であり、トリメチルクロロシランの含有率は86重量%であった。
【0058】
[実施例10]
150gのジメチルジクロロシラン
115gの工業グレードのテトラメチルシラン
6gのAlCl3
1gの三塩化テルビウム
【0059】
40℃で60分の反応時間の後、残留テトラメチルシラン含有率は約1重量%であり、トリメチルクロロシランの含有率は86重量%であった。
【0060】
[実施例11]
150gのジメチルジクロロシラン
115gの工業グレードのテトラメチルシラン
6gのAlCl3
1gの三フッ化ガドリニウム
【0061】
40℃で60分の反応時間の後、残留テトラメチルシラン含有率は約1重量%であり、トリメチルクロロシランの含有率は86重量%であった。
【0062】
[実施例12]
150gのジメチルジクロロシラン
115gの工業グレードのテトラメチルシラン
6gのAlCl3
1gの三臭化ガドリニウム
【0063】
40℃で60分の反応時間の後、残留テトラメチルシラン含有率は約1重量%であり、トリメチルクロロシランの含有率は86重量%であった。
【0064】
[実施例13]
150gのジメチルジクロロシラン
115gの工業グレードのテトラメチルシラン
6gのAlCl3
0.1gの三塩化ガドリニウム
【0065】
40℃で60分の反応時間の後、残留テトラメチルシラン含有率は約1重量%であり、トリメチルクロロシランの含有率は86重量%であった。
【0066】
[実施例14]
150gのジメチルジクロロシラン
115gの工業グレードのテトラメチルシラン
6gのAlBr3
0.3gの三塩化ガドリニウム
【0067】
40℃で60分の反応時間の後、残留テトラメチルシラン含有率は約1重量%であり、トリメチルクロロシランの含有率は86重量%であった。
【0068】
[比較実験1]
150gのジメチルジクロロシラン
115gの工業グレードのテトラメチルシラン
8gのAlCl3
【0069】
120分の反応時間の後、残留テトラメチルシラン含有率は約23重量%であり、トリメチルクロロシランの含有率は34重量%であった。還流条件下で360分の反応時間後にのみ、残留テトラメチルシラン含有率は約1重量%であり、トリメチルクロロシラン含有率は86重量%であった。
【0070】
[比較実験2]
150gのジメチルジクロロシラン
115gの工業グレードのテトラメチルシラン
8gのトリフルオロメタンスルホン酸
【0071】
120分の反応時間後、いかなる変換、すなわちシラン混合物の組成のいかなる変化も検出することができなかった。
【0072】
[比較実験3]
150gのジメチルジクロロシラン
115gの工業グレードのテトラメチルシラン
8gのアルミニウムトリス(トリフルオロメタンスルホナート)
【0073】
120分の反応時間後、いかなる変換、すなわちシラン混合物の組成のいかなる変化も検出することができなかった。
【0074】
[比較実験4]
150gのジメチルジクロロシラン
115gの工業グレードのテトラメチルシラン
9.5gの三塩化アルミニウムとトリフルオロメタンスルホン酸の反応生成物
【0075】
120分の反応時間後、いかなる変換、すなわちシラン混合物の組成のいかなる変化も検出することができなかった。
【0076】
[比較実験5]
トリフルオロメタンスルホン酸を添加しないという変更を加えて、実施例6を繰り返した。還流条件下で12時間の反応時間の後、残留テトラメチルシラン含有率は約2重量%であり、トリメチルクロロシランの含有率は85重量%であった。
【0077】
[実施例15~30及び比較実験6~8]
テトラメチルシランとテトラクロロシランとの反応
【0078】
テトラクロロシラン及び工業グレードのテトラメチルシラン(TMS、ガスクロマトグラフィー(GC)により測定して約85重量%)の混合物であって、テトラメチルシランの含有率が46モル%、テトラクロロシランの含有率が47モル%(残余は特にメチルクロロハイドロジェンシラン及びクロロハイドロジェンシランからなる)のものを、不活性条件下で2モル%(シランに基づくモル%)の三塩化アルミニウム及び表1に記載する0.5モル%(シランに基づくモル%)の共触媒と共に加圧滅菌器中で攪拌しながら4時間100℃に加熱する。冷却後、沈降した触媒を除去し、29Si NMRを用いて反応生成物を分析する。その結果を表1にまとめた。
【0079】
【0080】
[実施例31及び32]
テトラメチルシランとメチルトリクロロシランとの反応
【0081】
テトラクロロシラン及び工業グレードのテトラメチルシラン(TMS、ガスクロマトグラフィー(GC)により測定して約85重量%)との混合物であって、テトラメチルシランの含有率が48モル%、メチルトリクロロシランの含有率が48モル%(残余は特にメチルクロロハイドロジェンシラン及びクロロハイドロジェンシランからなる)のものを、不活性条件下で2モル%(シランに基づくモル%)の三塩化アルミニウム及び表2に記載する0.5モル%(シランに基づくモル%)の共触媒と共に加圧滅菌器中で攪拌しながら4時間80℃に加熱する。冷却後、沈降した触媒を除去し、29Si NMRを用いて反応生成物を分析する。その結果を表2にまとめた。
【0082】
【0083】
[実施例33]
トリメチルクロロシランとメチルトリクロロシランとの反応
【0084】
2.5モル%のジメチルクロロシラン及び2.5モル%のメチルジクロロシランを含む、47.5モル%のトリメチルクロロシラン及び47.5モル%のメチルトリクロロシランとの混合物を、不活性条件下で2モル%(シランに基づくモル%)の三塩化アルミニウム及び表3に記載する0.5モル%(シランに基づくモル%)の共触媒と共に加圧滅菌器中で攪拌しながら4時間80℃に加熱する。冷却後、沈降した触媒を除去し、29Si NMRを用いて反応生成物を分析する。その結果を表3にまとめた。
【0085】
【0086】
[実施例34]
ジメチルジクロロシランの不均化
【0087】
95モル%のジメチルジクロロシラン、2.5モル%のジメチルクロロシラン及び2.5モル%のメチルジクロロシランの混合物を、不活性条件下で2モル%(シランに基づくモル%)の三塩化アルミニウム及び表4に記載する0.5モル%(シランに基づくモル%)の共触媒と共に加圧滅菌器中で攪拌しながら4時間100℃に加熱する。冷却後、沈降した触媒を除去し、29Si NMRを用いて反応生成物を分析する。その結果を表4にまとめた。
【0088】
【0089】
[実施例35]
フェニルトリクロロシランの不均化
【0090】
95モル%のフェニルトリクロロシラン、2.5モル%のジメチルクロロシラン及び2.5モル%のメチルジクロロシランの混合物を、不活性条件下で2モル%(シランに基づくモル%)の三塩化アルミニウム及び表5に記載する0.5モル%(シランに基づくモル%)の共触媒と共に加圧滅菌器中で攪拌しながら2時間100℃に加熱する。冷却後、沈降した触媒を除去し、29Si NMRを用いて反応生成物を分析する。その結果を表5にまとめた。
【0091】
【手続補正書】
【提出日】2020-04-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルガノシランを変換する方法であって、以下の一般式の少なくとも1種のシラン(1)を
R
aSiCl
4-a (I)
以下の一般式の少なくとも1種類のさらなるシラン(2)であって、シラン(1)と同一であるか又は異なっており、好ましくはシラン(1)と異なっているシラン(2)と、
R
bSiCl
4-b (II)
任意に、Si結合した水素を含有し、以下の式を有するシラン(3)を追加使用して
R
dH
eSiCl
4-d-e (III)
触媒としてアルミニウム塩、好ましくはハロゲン化アルミニウムの存在下及び共触媒の存在下で反応させることにより、シラン(1)及びシラン(2)と異なる、以下の一般式を有する少なくとも1種のシラン(4)を得、
R
cSiCl
4-c (IV)
[式中、Rは、いずれの場合も1~4個の炭素原子を有する同一の又は異なるアルキル基又はフェニル基を意味し、
aは、2、3又は4であり、
bは、0、1、2又は3であり、
cは1、2又は3であり、
dは0、1、2又は3であり、及び
eは1、2又は3であり、
ただし、d+eの合計が最大で4であることとする。]
使用される共触媒は、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸エステル、アルミニウムトリス(トリフルオロメタンスルホナート)、
イットリウム及びハフニウムの金属塩、ランタニド及びアクチニドの金属塩、
並びにこれらの共触媒の混合物の群から選択されるものであることを特徴とする、方法。
【請求項2】
使用される触媒が三塩化アルミニウムであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
三塩化アルミニウムがそのまま用いられるか、又はその場で製造されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
三塩化アルミニウムが、エチルアルミニウムセスキクロライド及び塩化水素からその場で製造されることを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
イットリウム若しくはハフニウムの金属塩、又はランタニド及びアクチニドの金属塩として、ハロゲン化物、好ましくはフッ化物、塩化物又は臭化物、スルホナート、酸化物又はカルボキシラートを使用することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
使用されるランタニド及びアクチニドの金属が、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム又はルテチウムであり、好ましくはセリウム、ガドリニウム又はテルビウムであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
使用される金属塩が、三塩化イットリウム、三塩化セリウム、三塩化ネオジム、三フッ化ガドリニウム、三塩化ガドリニウム、三臭化ガドリニウム、酢酸ガドリニウム(III)、三塩化テルビウム、三塩化ホルミウム又は三塩化ルテチウムであり、好ましくは三塩化セリウム、三塩化ガドリニウム又は三塩化テルビウムであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
アルミニウム塩、優先的にはハロゲン化アルミニウム、好ましくは三塩化アルミニウムが、いずれの場合も使用されるシラン(1)及び(2)の総重量に基づいて、0.2重量%~10重量%、好ましくは0.8重量%~3.0重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
共触媒が、いずれの場合も使用されるシラン(1)及び(2)の総重量に基づいて、優先的には0.002重量%~2.5重量%、好ましくは0.008重量%~0.3重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
使用されるシラン(1)が、テトラメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン及びフェニルトリクロロシランであり、好ましくはテトラメチルシランであることを特徴とする、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
使用されるシラン(2)が、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン及びテトラクロロシランであることを特徴とする、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
使用されるシラン(1)がテトラメチルシランであり、使用されるシラン(2)がジメチルジクロロシランであり、トリメチルクロロシランが得られることを特徴とする、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
使用されるシラン(1)がテトラメチルシランであり、使用されるシラン(2)がテトラクロロシランであり、トリメチルクロロシランが得られることを特徴とする、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】