(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-16
(54)【発明の名称】透明材料を含む三次元物体の付加製造
(51)【国際特許分類】
C08F 2/46 20060101AFI20220909BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20220909BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220909BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20220909BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
C08F2/46
B29C64/112
B33Y10/00
B33Y70/00
C08F290/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577196
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 IL2020050396
(87)【国際公開番号】W WO2021014434
(87)【国際公開日】2021-01-28
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513131464
【氏名又は名称】ストラタシス リミテッド
【住所又は居所原語表記】1 Holtzman Street, Science Park, P.O. Box 2496, 7612401 Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ、アブラハム
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィッチ、ダイアナ
(72)【発明者】
【氏名】シュペイザー、エレナ
(72)【発明者】
【氏名】ポクラス、マリアナ
【テーマコード(参考)】
4F213
4J011
4J127
【Fターム(参考)】
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4J127FA06
(57)【要約】
固化すると透明材料を提供する、3Dインクジェット印刷などの付加製造に使用可能な配合物が提供される。この配合物は、市販の配合物に比較して、透過率及び黄色度指数などの色特性が改善された透明物体又はその部品を提供するように設計される。配合物は、硬化可能材料と混合するように設計された比較的低量の光開始剤を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性配合物であって、
前記配合物の総重量の1重量%以下を総量とする少なくとも1つの光開始剤と、
総量が前記配合物の総重量の40~60重量%の、500グラム/モルより小さい分子量を特徴とする少なくとも1つの単官能(メタ)アクリレート材料であって、前記少なくとも1つの単官能(メタ)アクリレート材料は、非芳香族及び芳香族単官能(メタ)アクリレート材料から選択され、芳香族単官能(メタ)アクリレート材料の量は、前記少なくとも1つの単官能(メタ)アクリレート材料の総量の5重量%以下又は3重量%以下又は1重量%以下である、少なくとも1つの単官能(メタ)アクリレート材料と、
総量が前記配合物の前記総重量の40から60重量%の、少なくとも1つの多官能(メタ)アクリレート材料であって、前記少なくとも1つの多官能(メタ)アクリレート材料の平均Tgは、固化時には少なくとも24℃又は少なくとも25℃であり、前記少なくとも1つの多官能(メタ)アクリレート材料のそれぞれは、固化時に100℃より低い、又は80℃より低いTgであることを特徴とする、少なくとも1つの多官能(メタ)アクリレート材料と、
を含む光硬化性配合物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの単官能(メタ)アクリレート材料は、前記少なくとも1つの単官能(メタ)アクリレート材料の総重量の、少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%、又は100重量%の量の非芳香族単官能(メタ)アクリレート材料を含む、請求項1に記載の光硬化性配合物。
【請求項3】
前記配合物の前記総重量の40~60重量%の量の、少なくとも1つの非芳香族(例えば、脂環)単官能(メタ)アクリレート材料を含む、請求項1又は請求項2に記載の光硬化性配合物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの単官能(メタ)アクリレート材料は、20℃~100℃、又は50℃~100℃のTgを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の光硬化性配合物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの単官能(メタ)アクリレート材料は、85℃~95℃の平均Tgを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の光硬化性配合物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの多官能(メタ)アクリレート材料は、1000グラム/モルを超える分子量を特徴とする少なくとも1つの多官能ウレタンアクリレートを含む、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の光硬化性配合物。
【請求項7】
1000グラム/モルを超える分子量を特徴とする前記少なくとも1つの多官能ウレタンアクリレートは、固化時に20℃より低いTgを特徴とする少なくとも1つの多官能ウレタンアクリレートと、固化時に20℃より高いTgを特徴とする少なくとも1つの多官能ウレタンアクリレートとを含む、請求項6に記載の光硬化性配合物。
【請求項8】
1000グラム/モルを超える分子量を特徴とする前記少なくとも1つの多官能ウレタンアクリレートは、30~60℃、35~60℃又は40~60℃の平均Tgを特徴とする、請求項6又は請求項7に記載の光硬化性配合物。
【請求項9】
1000グラム/モルを超える分子量を特徴とする前記少なくとも1つの多官能ウレタンアクリレートの総量は、前記配合物の総量の、15~40、15~35、又は15~30重量%の範囲である、請求項6~請求項8のいずれか一項に記載の光硬化性配合物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの多官能(メタ)アクリレート材料は、固化時に50~80、又は50~70℃のTgを特徴とする少なくとも1つの多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料を含む、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の光硬化性配合物。
【請求項11】
固化時に50~80、又は50~70℃のTgを特徴とする少なくとも1つの多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料は、少なくとも500センチポアズの粘度を特徴とする少なくとも1つの多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料、及び50センチポアズより低いか20センチポアズより低い粘度を特徴とする少なくとも1つの多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料を含む、請求項10に記載の光硬化性配合物。
【請求項12】
固化時に、50~80、又は50~70℃のTgを特徴とする前記少なくとも1つの多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料の総量は、前記配合物の総量の、15~30、又は20~30重量%の範囲である、請求項10又は請求項11に記載の光硬化性配合物。
【請求項13】
前記少なくとも1つの光開始剤の総量は、前記配合物の前記総重量の0.1~1重量%の範囲である、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項14】
前記少なくとも1つの光開始剤は、α置換ケトン型光開始剤がない、請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項15】
前記少なくとも1つの光開始剤は、ホスフィンオキシド型光開始剤を含む、又はホスフィンオキシド型光開始剤から成る、請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項16】
界面活性剤をさらに含む、請求項1~請求項15のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項17】
前記界面活性剤の量は、前記配合物の前記総重量の0.05重量%未満である、請求項16に記載の配合物。
【請求項18】
青色の染料又は顔料をさらに含む、請求項1~請求項17のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項19】
前記青色の染料又は顔料の量は、前記配合物の前記総重量の1・10-4重量%未満である、請求項18に記載の配合物。
【請求項20】
硫黄含有化合物をさらに含む、請求項1~請求項19のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項21】
硫黄含有化合物を含まない、請求項1~請求項19のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項22】
前記硫黄含有化合物は、ベータメルカプトプロピオネート、メルカプトアセテート、及びアルカンチオールから選択される、請求項20又は請求項21に記載の配合物。
【請求項23】
少なくともその一部に透明材料を含む3次元物体の付加製造に使用可能な、請求項1~請求項22のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項24】
前記付加製造は3次元インクジェット印刷である、請求項23に記載の配合物。
【請求項25】
前記透明材料は、
透過率が少なくとも80%;
黄色度指数が3未満又は2.5未満;
CIE-LAB明度値L
*が少なくと90;
CIE-LABa
*値が少なくと-0.35;及び
CIE-LABb
*値が2未満又は1.5未満、
の少なくとも1つによって特徴づけられる、請求項23又は請求項24に記載の配合物。
【請求項26】
少なくともその一部に透明材料を含む3次元物体を付加製造する方法であって、
物体の形状に対応する構成パターン状に複数の層を逐次形成し、それにより物体を形成することを含み、
前記層の少なくともいくつかのそれぞれの形成は、少なくとも1つの配合物を吐出し、前記吐出された配合物を硬化条件に曝してそれにより硬化した造形材料を形成することを含み、
前記少なくとも1つの配合物は、請求項1~請求項25のいずれか一項によって定義された配合物である、付加製造方法。
【請求項27】
前記層の少なくともいくつかのそれぞれの形成は、少なくとも2つの配合物を吐出し、前記吐出された配合物を硬化条件に曝してそれにより硬化した材料を形成することを含み、
前記配合物の少なくとも1つは、請求項1から請求項25のいずれか一項に定義される配合物である第1の配合物であり、前記配合物の別の少なくとも1つは、固化したときに透明な材料を提供する第2の成形材料配合物であり、これは、前記硬化条件に曝すと、前記第1の配合物の固化度よりも高い固化度を示す、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記層の少なくともいくつかのそれぞれの形成は、少なくとも前記第1の配合物と第2の配合物を吐出し、前記第1の配合物を使用してコア領域を形成し、かつ前記第2の配合物を使用して前記コア領域を少なくとも部分的に囲む少なくとも1つのエンベロープ領域を形成することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記エンベロープ領域の厚さは0.05~2mm、又は0.1~2mmの範囲である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記層の前記形成の前に、物体の形状を記述するスライスデータに座標の回転変換を適用して、前記物体の少なくとも1つの面が前記層に対して垂直でないことを確保することをさらに含む請求項26~請求項29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記硬化条件に曝したのちに、前記物体を光開始剤の残留量の分解を促進する条件に曝すこと(光脱色)をさらに含む、請求項26~請求項30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記条件に曝すことが、前記物体を少なくとも5000Kの色温度を有する光に曝すことを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記光に曝すことが、少なくとも25Wの電力で動作する光源によるものである、請求項31~請求項32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
請求項26~請求項33のいずれか一項の方法によって取得可能な透明材料を、少なくともその一部に含む物体。
【請求項35】
前記透明材料は、
透過率が少なくとも80%;
黄色度指数が3未満又は2.5未満;
X-rite測定で定義される、CIE-LAB明度値L
*が少なくとも90;
X-rite測定で定義される、CIE-LABa
*値が少なくとも-0.35;
X-rite測定で定義される、CIE-LABb
*値が、2未満、又は1.5未満,
のうちの少なくとも1つによって特徴づけられる、請求項34に記載の物体。
【請求項36】
請求項1~請求項25のいずれか一向に記載の配合物である第1の配合物と、
固化すると透明材料を提供する第2の配合物であって、前記第2の配合物は、照射に曝されたときの固化速度が前記第1の配合物の固化速度よりも大きいことを特徴とする、第2の配合物と、
を備える、キット。
【請求項37】
前記第1の配合物と第2の配合物は前記キット内に個別に包装される、請求項36に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年7月19日出願の米国仮特許出願第62/875,977号の米国特許法35USC§119(e)に基づく優先権の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、付加製造に関し、より具体的には、これに限るものではないが、少なくともその一部に透明材料を含む三次元物体の付加製造に使用可能な配合物、そのような配合物を含むキット、及びそのような配合物を使用する三次元物体の付加製造に関する。
【背景技術】
【0003】
付加製造(AM)は、任意形状をした構造物を付加的な形成ステップを介してコンピュータデータから直接的に製造可能とする技術である。任意のAMシステムの基本操作は、三次元コンピュータモデルを薄い断面部分にスライスし、その結果を二次元位置データに変換し、そのデータを、3次元構造を層状に作製する制御装置に供給することから成る。
【0004】
付加製造は、3Dインクジェット印刷などの三次元(3D)印刷、電子ビーム溶融、ステレオリソグラフィ、選択的レーザ焼結、3次元印刷、薄膜積層法、熱溶解積層法などの、製造方法への多くの異なるアプローチを伴う。
【0005】
いくつかの3D印刷プロセス、例えば3Dインクジェット印刷は、構築材料を層ごとにインクジェット堆積することにより行われる。したがって、一組のノズルを有する吐出ヘッドから構築材料が吐出されて、支持構造体上に層状に堆積される。構築材料に応じて、層はその後硬化又は凝固され得る。硬化は、適切な条件へ曝すことにより、及び任意選択で適切な装置を使用することで行うことが可能である。
【0006】
構築材料は未硬化の造形材料(「未硬化造形材料」又は「造形材料配合物」とも称する)を含み、これが選択的に吐出されて所望の物体を作製する。また未硬化の支持材料(「未硬化支持材料」又は「支持材料配合物」とも称する)を含むこともあり、これは構築中の物体の特定の領域を一時的に支持して後続の物体層の適切な垂直配置を確保する。支持構造は物体の完成後、除去されるように構成される。
【0007】
いくつかの既知のインクジェット印刷システムでは、未硬化造形材料は、それが噴射された後に紫外線(UV)光に曝すことにより硬化、固化又は凝固される、光重合性又は光硬化性の材料である。未硬化造形材料は、硬化した後に構築中の三次元物体の構築及びハンドリングを可能とする機械的性質をもつ固体材料を提供する組成の光重合性材料配合物であり得る。この材料配合物には、反応性(硬化可能な)成分及び光開始剤が含まれ得る。光開始剤は、造形材料の形成に適用するものと同一のUV光で硬化させることにより、未硬化支持材料の少なくとも部分的凝固(固化)を可能とし得る。凝固した材料は剛体であり、または弾性を有し得る。
【0008】
支持材料は、その支持体から物体を迅速かつ容易に洗浄可能とする様に配合される。支持材料は、水溶性であり、及び/又は例えば水、アルカリ性又は酸性の水溶液、などの液体溶液にさらすことにより膨潤及び/又は分解可能なポリマーであり得る。支持材料配合物には、造形材料配合物に使用されるものと同じような、反応性(硬化可能)成分と光開始剤もまた含まれ得る。
【0009】
3Dインクジェット印刷システムに利用される大部分の市販の印刷ヘッドとの互換性を有するために、未硬化構築材料は、作業(例えば噴射)温度において比較的低粘度(例えばブルックフィールド粘度が最大50cps又は最大35cps、好ましくは8~25cps)であること;表面張力が約25~約55dyne/cm、好ましくは約25~約40dyne/cmであること;ニュートン液体挙動と、噴出層を硬化条件に曝したときに1分以下の、好ましくは20秒以下の高速凝固を可能とするために選択された硬化条件に対して高い反応性を有すること、という特性で特徴づけられることが知られている。
【0010】
最終的な物体を形成する固化した造形材料は通常、その有用性を保障するために、室温より高い加熱撓み温度(HDT)を示す。望ましくは、固化した造形材料は少なくとも35℃のHDTを示す。可変条件において物体が安定であるために、より高いHDTが望ましいことが知られている。多くの場合、物体が比較的高い、例えば50J/mより高いか60J/mより高い、ノッチ付きアイゾット衝撃値を示すこともまた望ましい。
【0011】
様々な三次元印刷技術が存在し、例えば、すべて同一譲受人の米国特許6,259,962号、6,569,373号、6,658,314号、6,850,334号、6,863,859号、7,183,335号、7,209,797号、7,225,045号、7,300,619号、7,500,846号、7,991,498号、及び9,031,680号、及び米国特許出願第20160339643号に開示されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0012】
三次元インクジェット印刷を含むいくつかの付加製造プロセスは、「マルチ材料」AMプロセスとも呼ばれる、2以上の造形材料を使用して物体の付加製造を可能とする。例えば、本譲受人の公開番号第2010/0191360号の米国特許出願は、複数の印刷ヘッドと、複数の構築材料を製造装置に供給するように構成された構築材料供給装置と、製造装置及び供給装置を制御するように構成された制御ユニットと、を有する固体自由形状作製装置を備えるシステムを開示している。このシステムはいくつかの動作モードを有する。1つのモードでは、作製装置の単一の構築スキャンサイクルの間、すべての印刷ヘッドが動作する。別のモードでは、単一のスキャンサイクル又はその一部の間において、1以上の印刷ヘッドが動作しない。
【0013】
Polyjet(登録商標)(Stratasys(登録商標)Ltd、イスラエル)などの3Dインクジェット印刷プロセスでは、構築材料は、1以上のインクジェット印刷ヘッド及び/又はノズルから選択的に噴射され、ソフトウェアファイルにより定義された所定の構成に従って製作トレイ上に連続する層状に堆積される。
【0014】
本譲受人による米国特許第9,227,365号は、複数の層と、コア領域を構成する層状コアと、エンベロープ領域を構成する層状シェルとから構成される、シェル物体の固体自由形状製作のための方法及びシステムを開示している。これはデジタルABS(登録商標)又はD-ABS(登録商標)とも呼ばれる。
【0015】
Polyjet(登録商標)技術は、各ボクセル(体積ピクセル)の位置と組成を制御を可能とし、それにより膨大な設計の多様性とマルチ材料構造のデジタルプログラミングを提供する。Polyjet(登録商標)技術の他の利点は、非常に高い印刷分解能、最大14μmまでの層高さ、及び1つの物体において複数材料を同時に印刷可能なことである。このマルチ材料の3D印刷プロセスは、異なる剛性、性能、色又は透明度を有する要素で構成される複雑な部品及び構造の製作に役立つことが多い。ボクセルレベルでプログラムされた新しい範囲の材料を、Polyjet(登録商標)印刷技術により僅かな出発材料のみの使用で生成可能である。
【0016】
本譲受人による、国際特許出願公開第2013/128452号明細書が、カチオン重合性システム及び/又はラジカル重合性システムの2つの成分を別々に噴射することを含む、マルチ材料手法を開示している。これらは印刷トレイ上で混合して、噴射前に2成分を事前混合する場合と同様の重合反応をもたらし、その一方でインクジェットのヘッドノズルプレート上での早期の重合を防止する。
【0017】
現在のPolyJet(登録商標)技術は、剛性があって硬い材料(たとえば、Vero(登録商標)ファミリーとして市販されている硬化性配合物)から、軟らかくて可撓性のある材料(例えばTango(登録商標)及びAgilus(登録商標)ファミリーとして市販されている硬化性配合物)に至るまでの範囲の様々な性質を特徴とする高分子材料を提供する、一連の硬化性(例えば重合性)材料を使用する機能を提供する。また、2つの出発材料(たとえば、RGD515(登録商標)及びRGD535/531(登録商標))で作られたマルチ材料を含み、かつエンジニアリングプラスチックの特性を模擬再現するデジタルABSを使用して作られたオブジェクトも含まれる。現在実用されているPolyJet(登録商標)材料の殆どは、大抵がUV放射及び/又は熱である放射に曝すことにより固化又は凝固する、硬化性材料であり、最も実用されている材料はアクリルベースの材料である。
【0018】
3Dインクジェット印刷で使用可能として知られているいくつかの光硬化性(光重合性)造形材料配合物は、固化時に透明材料を提供するように設計されている。
【0019】
米国特許第6,242,149号は、記録用インクに使用される速硬化性感光性組成物、画像記録用の光硬化性マイクロカプセル内にカプセル化された材料、感光性コーティング組成物、などを記載している。組成物は、ラジカル重合可能な不飽和化合物、光重合開始剤、チオール含有化合物を含み、それによって速硬化性感光性組成物が低露光エネルギで適切に硬化可能である。
【0020】
米国特許出願第2010/0140850号明細書が、硬化又は凝固の前は無色であって、固化すると黄色い色調の少ない材料を提供する、AMに使用可能な配合物を教示している。この特許出願は、UV硬化性アクリルベース組成物が通常は特徴的な黄色い色調を有すること、及び黄色い色調の源は完全に理解されていないが光開始剤の種類及び濃度が得られる材料の色に影響することが判明したこと、を教示している。この特許出願は、1以上の(メタ)アクリレート材料と光開始剤に加えて、ベータメルカプトプロピオネート、メルカプトアセテート、及び/又はアルカンチオールなどの硫黄含有添加剤を含む配合物の使用を示唆している。
【0021】
本譲受人による2018年9月28日出願の米国仮特許出願第62/738,041号明細書は、付加製造プロセスを通して部分的に凝固しているか凝固していない状態に維持される少なくとも1つの造形材料を用いて物体を作製するシステム及び方法を記述している。このシステム及び方法では、この物体は2段階固化プロセスで凝固するようになっており、AMプロセス中に部分凝固してグリーン体物体を生成し、その後、AMプロセスの最後に後処理(例えば熱処理)を行って凝固プロセスを完了させることが含まれ得る。この仮特許出願では、外層形成のための配合物と、内部コア形成のための減量した光開始剤を有する同様の配合物とを使用して、このプロセスにより透明材料を提供する実施形態を記述している。
【0022】
更なる背景技術としては、すべて本譲受人による、WO2009/013751;WO2016/063282;WO2016/125170;WO2017/134672;WO2017/134673;WO2017/134674;WO2017/134676;WO2017/068590;WO2017/187434;WO2018/055521;及びWO2018/055522が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明者らは、3Dインクジェット印刷などの付加製造に利用可能であり、かつ固化したときに現在入手可能な透明な配合物に比べて黄色い色調を減少若しくはゼロとして透過率を向上させた、本明細書に定義の透明で色のない造形材料を設計し、かつ成功裡に実行できた。本発明者らは、そのような配合物は、単官能芳香族硬化性材料と、AMプロセスの作業温度より高い、例えば80℃より高いTgを特徴とする多官能材料と、を欠くべきであることを明らかにした。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、硬化性配合物、例えば光硬化性配合物が提供される。この光硬化性配合物は、配合物の総重量の1重量%以下の総量の少なくとも1つの光開始剤と;総量が配合物の総重量の40~60重量%の、500グラム/モルより小さい分子量を特徴とする少なくとも1つの単官能(メタ)アクリレート材料であって、少なくとも1つの単官能(メタ)アクリレート材料は、非芳香族及び芳香族単官能(メタ)アクリレート材料から選択され、芳香族単官能(メタ)アクリレート材料の量は、少なくとも1つの単官能(メタ)アクリレート材料の総量の5重量%以下又は3重量%以下又は1重量%以下である、少なくとも1つの単官能(メタ)アクリレート材料と;総量が配合物の総重量の40~60重量%の、少なくとも1つの多官能(メタ)アクリレート材料であって、この少なくとも1つの多官能(メタ)アクリレート材料のそれぞれは、固化時に100℃より低い又は80℃より低いTgであることを特徴とする、少なくとも1つの多官能(メタ)アクリレート材料と、を含む。
【0025】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによると、少なくとも1つの多官能(メタ)アクリレート材料の平均Tgは、固化時には少なくとも24又は少なくとも25℃である。いくつかの実施形態では、平均Tgは、24~70、25~70、30~70、30~60、又は40~60℃の範囲である。いくつかの実施形態では、平均Tgは25~40、25~30、又は24~30℃の範囲である。
【0026】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、少なくとも1つの単官能(メタ)アクリレート材料は、その少なくとも1つの単官能(メタ)アクリレート材料の総重量の、少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%、又は100重量%の量の非芳香族単官能(メタ)アクリレート材料を含む。
【0027】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、配合物は、配合物の総重量の40~60重量%の量で、少なくとも1つの非芳香族(例えば、脂環)単官能(メタ)アクリレート材料を含む。
【0028】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、少なくとも1つの単官能(メタ)アクリレート材料のそれぞれは、20~100、又は50~100℃のTgを特徴とする。
【0029】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、少なくとも1つの単官能(メタ)アクリレート材料は、75~95℃、好ましくは85℃~95℃の平均Tgを特徴とする。
【0030】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、少なくとも1つの多官能(メタ)アクリレート材料は、1000グラム/モルを超える分子量を特徴とする少なくとも1つの多官能ウレタンアクリレートを含む。
【0031】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、1000グラム/モルを超える分子量を特徴とする少なくとも1つの多官能ウレタンアクリレートは、固化時に20℃より低いTgを特徴とする少なくとも1つの多官能ウレタンアクリレートと、固化時に20℃より高いTg(例えば20~70℃のTg)を特徴とする少なくとも1つの多官能ウレタンアクリレートとを含む。
【0032】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、1000グラム/モルを超える分子量を特徴とする少なくとも1つの多官能ウレタンアクリレートは、30~60、35~60、35~55、又は40~50℃の平均Tgを特徴とする。
【0033】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、1000グラム/モルを超える分子量を特徴とする少なくとも1つの多官能ウレタンアクリレートの総量は、配合物の総重量の、15~40、15~30、又は15~25重量%の範囲である。
【0034】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、少なくとも1つの多官能(メタ)アクリレート材料は、固化時に50~80、又は50~70℃のTgを特徴とする少なくとも1つの多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料を含む。
【0035】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、固化時に50~80、又は50~70℃のTgを特徴とする少なくとも1つの多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料は、少なくとも500センチポアズの粘度を特徴とする少なくとも1つの多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料、及び50センチポアズより低いか20センチポアズより低い粘度を特徴とする少なくとも1つの多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料を含む。
【0036】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、固化時に、50~80、又は50~70℃のTgを特徴とする少なくとも1つの多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料の総量は、配合物の総量の、15~30、又は20~30%の範囲である。
【0037】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、少なくとも1つの多官能(メタ)アクリレート材料の平均Tgは、固化時に24~30、又は25~30℃の範囲である。
【0038】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、少なくとも1つの多官能(メタ)アクリレート材料の平均Tgは、固化時に30~60、又は40~60℃の範囲である。
【0039】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、少なくとも1つの光開始剤の総量は、配合物の総量の0.5~1重量%の範囲である。
【0040】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、少なくとも1つの光開始剤は、α置換ケトン型光開始剤を欠いている。
【0041】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、少なくとも1つの光開始剤は、ホスフィンオキシド型(例えばモノアシル化ホスフィンオキシド型)光開始剤を含むか、又はそれで構成される。
【0042】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、配合物はさらに界面活性剤を含む。
【0043】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、界面活性剤の量は、配合物総重量の0.05重量%未満である。
【0044】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、配合物は青色の染料又は顔料をさらに含む。
【0045】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、青色の染料又は顔料の量は、配合物の総重量の1・10-4重量%未満である。
【0046】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、配合物は硫黄含有化合物をさらに含む。
【0047】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、配合物は硫黄含有化合物を含まない。
【0048】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、硫黄含有化合物は、ベータメルカプトプロピオネート、メルカプトアセテート、及びアルカンチオールから選択される。
【0049】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、配合物は、少なくともその一部に透明材料を含む3次元物体の付加製造に使用可能である。
【0050】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、付加製造は三次元インクジェット印刷である。
【0051】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、透明材料は、後の実施例のセクションに記載のように測定される場合、透過率が少なくとも80%、黄色度指数が3未満又は2.5未満、CIE-LAB明度値L*が少なくとも90、CIE-LABa*値が少なくとも-0.35、また、CIE-LABb*値が、2未満、又は1.5未満、のうちの少なくとも1つによって特徴づけられる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、少なくともその一部に透明材料を含む三次元物体を付加製造する方法が提供される。この方法は、物体の形状に対応する構成パターン状に複数の層を逐次形成して物体を形成することを含み、複数層の少なくともいくつかのそれぞれの形成は、少なくとも1つの配合物を吐出し、吐出された配合物を硬化条件に曝してそれにより硬化した造形材料を形成することを含み、少なくとも1つの配合物は、それぞれの実施形態の任意の1つ及びその任意の組み合わせにおいて定義される硬化性の透明配合物である。
【0053】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、複数層の少なくともいくつかのそれぞれの形成は、少なくとも2つの配合物を吐出し、吐出された配合物を硬化条件に曝してそれにより硬化した造形材料を形成することを含み、ここで、配合物の少なくとも1つは、それぞれの実施形態の任意の1つ及びそれらの任意の組み合わせにおいて定義される配合物である第1の配合物であり、かつ少なくとも1つの別の配合物別は、固化時に透明な材料を提供する第2の造形材料配合物であり、これは、硬化条件にさらすと、第1の配合物の固化度よりも高い固化度を示す。
【0054】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、複数層の少なくともいくつかのそれぞれの形成は、少なくとも第1と第2の配合物を吐出し、第1の配合物を使用してコア領域を形成し、かつコア領域を少なくとも部分的に囲む少なくとも1つのエンベロープ領域を第2の配合物を使用して形成することを含む。
【0055】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、エンベロープ領域の厚さは0.05~2mm、又は0.1~2mmの範囲である。
【0056】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、この方法は層の形成の前に、物体の形状を記述するスライスデータに座標の回転変換を適用して、物体の少なくとも1つの面が層に対して垂直でないことを確保することをさらに含む。
【0057】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、この方法は硬化条件に曝したのちに、物体を光開始剤の残留量の分解(光脱色)を促進する条件に曝すことをさらに含む。
【0058】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、その条件に曝すことが、物体を少なくとも5000K、又は少なくとも6500Kの色温度を有する光に曝すことを含む。
【0059】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、光に曝すことは、少なくとも25Wの電力で動作する光源によってである。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、本明細書のそれぞれの実施形態のいずれか又はその任意の組み合わせに記載の方法により得られる透明物体を、その少なくとも一部に含む物体が提供される。
【0061】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、透明材料は、後の実施例のセクションに記載のように測定される場合、透過率が少なくとも80%、黄色度指数が3未満又は2.5未満、X-rite測定で定義されるCIE-LAB明度値L*が少なくとも90、X-rite測定で定義されるCIE-LABa*値が少なくとも-0.35、また、X-rite測定で定義されるCIE-LABb*値が、2未満、又は1.5未満、のうちの少なくとも1つによって特徴づけられる。
【0062】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、透明材料は、引張強度が30MPaより大、曲げ強度が30MPaより大、曲げ弾性率が1500MPaより大、アイゾット衝撃強度が15J/molより大、HDTが40℃より高い、破断伸びが少なくとも7%(例えば7~30%)、の少なくとも1つによって特徴づけられる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、本明細書のそれぞれの実施形態のいずれか、及びそれらの任意の組み合わせに記載の配合物である第1の配合物と、固化すると透明材料を提供する第2の配合物であって、照射に曝されるときの固化速度が第1の配合物の固化速度よりも大きいことを特徴とする第2の配合物と、を備える、キットが提供される。
【0064】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、第1の配合物と第2の配合物はキット内に個別に包装される。
【0065】
別段の定義がない限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似又は同等の方法及び材料が、本発明の実施形態の実行又は試行に使用可能であるが、例示的な方法及び/又は材料を以下に記述する。矛盾する場合には、定義を含む本発明の明細書が優先される。さらに、材料、方法及び実施例は例示にすぎず、必ずしも制限的であることを意図するものではない。
【0066】
本発明の実施形態の方法及び/又はシステムの実施は、選択されたタスクを手動、自動又はそれらの組み合わせで実行又は完了させることを含み得る。さらに、本発明の方法及び/又はシステムの実施形態の実際の計装機器及び設備によれば、いくつかの選択されたタスクは、ハードウェアによって、あるいはオペレーティングシステムを用いたソフトウェア又はファームウェア及び/又はそれらの組合せによって実施可能である。
【0067】
例えば、本発明の実施形態による、選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップ又は回路として実装可能である。ソフトウェアに関しては、本発明の実施形態による選択されたタスクは、任意の適切なオペレーティングシステムを用いるコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実装可能である。本発明の例示的実施形態では、本明細書に記載の方法及び/又はシステムの例示的実施形態による1以上のタスクは、複数の命令を実行するコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサにより実行される。任意選択により、データプロセッサには、命令及び/又はデータを格納する揮発性メモリ、及び/又は命令及び/又はデータを格納する不揮発性記憶装置、例えば磁気ハードディスク及び/又はリムーバブル媒体が含まれる。任意選択により、ネットワーク接続も提供される。ディスプレイ及び/又はキーボードやマウスなどのユーザ入力装置もまた任意選択で提供される。
【0068】
本明細書において本発明のいくつかの実施形態を添付図面を参照して例示としてのみ説明する。ここで、図面を詳細に具体的に参照すると、示される詳細事項は一例であって、本発明の実施形態の例示的議論を目的とするものであることが強調される。これに関し、図面と共に行われる説明により、本発明の実施形態がどのように実行され得るかが当業者には明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1A】本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
【
図1B】本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
【
図1C】本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
【
図1D】本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
【
図2A】本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
【
図2B】本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
【
図2C】本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
【
図3A】本発明のいくつかの実施形態による座標変換を示す概略図である。
【
図3B】本発明のいくつかの実施形態による座標変換を示す概略図である。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態による、物体の3Dインクジェット印刷の例示的方法を示す簡略フロー図である。
【
図5A】本発明のいくつかの例示的実施形態により、本発明の実施形態による第1配合物で充填されたコアを本発明のいくつかの実施形態による第2の配合物で形成したシェルによって包囲して作製した物体の断面図の簡略模式図である。
【
図5B】本発明のいくつかの例示的実施形態により、本発明の実施形態による第1配合物で充填されたコアを本発明のいくつかの実施形態による第2の配合物で形成したシェルによって包囲して作製した物体の、1つの層の平面図である。
【
図6】J-750システムを使用し、支持材料配合物としてSUP705を、そして造形材料配合物として例示的参照配合物I(左の物体)と同II(右の物体)とを使用した、3Dインクジェット印刷で形成した物体を示す図である。
【
図7A】本実施形態による例示的な部分反応性配合物である配合物例Iそれ自体で作製された立方体物体の写真を示す。
【
図7B】本実施形態による例示的な部分反応性配合物である配合物例Iで作製されたコアを、例えば参照配合物Iなどの、完全なPI含有量の反応性透明配合物でできた0.5mm厚の外層で包囲した立方体物体の写真を示す。
【
図7C】
図7Bに示す立方体物体の形成に使用される印刷モードの模式的表示である。
【
図8】内部コアを0.5mm厚の参照配合物1の外層で包囲して作製した立方体物体の写真を示す。ここで、内部コアは、例示的反応性配合物である参照配合物IIを使用(左の物体)、青い色合いを与える着色料を添加した同じ参照配合物IIを使用(中央の物体)、及び本発明の実施形態のいくつかによる配合物例IIを使用(右の物体)、によって作製された。
【
図9】本明細書の表2Aに提示した例示的配合物、参照配合物Iで作製した立方体物体(左の物体)、青い色合いを与える着色料なしの同じ配合物で作製した立方体物体(中央の物体)、及び内部コアを本実施形態のいくつかによる配合物例Iで作製し、それを参照配合物Iで包囲した立方体物体(右の物体)、の写真である。
【
図10】各面がx-y平面、x-z平面及びy-z平面に平行となるようにして作製した物体(上段)と、各面がx-y平面、x-z平面及びy-z平面のそれぞれに対し約45°の角度となるようにして作製した物体(下段)について、製造後の光脱色と研磨処理の後でX-rite社のCi7860を用いて測定した、それぞれの面を通る透過率を示す。
【
図11A】本実施形態のいくつかによる例示的透明配合物である配合物例Iを使用して作製した例示的物体の、実施例5で説明する24時間の光脱色に曝した前後での写真を示す。
【
図11B】本実施形態のいくつかによる例示的透明配合物である配合物例Iを使用して作製した例示的物体の、実施例5で説明する24時間の光脱色に曝した前後での写真を示す。
【
図12A】内部コアとして本実施形態のいくつかによる配合物例Iを使用し、参照配合物Iで包囲して作製した様々な厚さの立方体物体の光脱色(PB)前の画像を示す。
【
図12B】内部コアとして本実施形態のいくつかによる配合物例Iを使用し、参照配合物Iで包囲して作製した様々な厚さの立方体物体の光脱色2時間後の画像を示す。
【
図12C】内部コアとして本実施形態のいくつかによる配合物例Iを使用し、参照配合物Iで包囲して作製した様々な厚さの立方体物体の光脱色10時間後の画像を示す。
【
図12D】内部コアとして本実施形態のいくつかによる配合物例Iを使用し、参照配合物Iで包囲して作製した様々な厚さの立方体物体の光脱色24時間後の画像を示す。
【
図13】(背景技術)X-Riteカラー定量測定に使用可能なスケールを示す。
【
図14】参照配合物Iを使用して作製した例示物体(上側の物体)と本実施形態のいくつかによる配合物例Iを使用して作製した同じ例示物体(下側の物体)の写真を示す。
【
図15】参照配合物Iを使用して作製した物体(下段)と本実施形態のいくつかによる配合物例Iを使用して作製した同じ物体(上段)の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、付加製造に関し、より具体的には、これに限るものではないが、少なくともその一部に透明材料を含む三次元物体の付加製造に使用可能な配合物、そのような配合物を含むキット、及びそのような配合物を使用する三次元物体の付加製造に関する。
【0071】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に提示され、及び/又は図面及び/又は実施例に示される構成要素の構造と配置及び/又は方法の詳細にその適用が必ずしも限定されるものではないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、又は様々な方法での実行、実施が可能である。
【0072】
本発明者らは、以下でより詳細を述べるように、様々な造形材料に関する制約を克服しつつ、改善された特性を特徴とする物体を提供する、三次元物体の付加製造方法を考案し、成功裡に実施した。より具体的には、本発明者らは、現在得られる配合物に通常関連する、透明材料の黄色い色調を低減又はゼロにし、及び/又は透明材料の透過率を向上させながら、その少なくとも一部に透明材料を有する物体の製造に使用可能である、造形材料配合物及びそれを使用する付加製造法を考案し、その実施に成功した。
【0073】
したがって本発明の実施形態は、新規の配合物とそれを使用する付加製造法に関し、その少なくとも一部に本明細書で定義する透明材料を有する三次元物体の製造に使用可能である。
【0074】
本明細書を通して、「物体」という用語は付加製造の最終製品のことを言う。この用語は、本明細書に記載の方法により、未硬化の構築材料の一部として支持材料が使用された場合にはその支持材料を除去した後、かつ後処理(例えば本明細書に記載のように第2硬化条件への暴露)の後に得られる製品を指す。したがって「物体」は通常本質的に(少なくとも95重量パーセントの)硬化した(固化した、凝固した)1つの造形材料又は2以上の造形材料の組み合わせから成る。いくつかの用途では、最終物体には、少なくともその一部において、部分硬化した、及び/又は未硬化の造形材料が含まれる。
【0075】
本明細書を通して使用の「物体」をという用語は、物体の全体又はその一部を指す。
【0076】
本明細書を通して、「硬化造形材料」という用語は、これは本明細書では「固化」又は「凝固」造形材料とも称するが、吐出した構築材料を硬化条件(及び任意選択で後処理)に曝し、また任意選択により支持材料が吐出されている場合には、本明細書で定義のように硬化した支持材料を除去することで、本明細書で定義の物体を形成する構築材料部分のことを指す。固化した造形材料は、本明細書に記載されるように、本方法において使用される造形材料配合物に応じて、単一の固化材料又は2以上の固化材料の混合物であり得る。
【0077】
「硬化造形材料」、「固化造形材料」「凝固造形材料」、又は「硬化/固化/凝固造形材料配合物」は、硬化構築材料とみなすことができる。そこでは構築材料が造形材料配合物からのみ構成される(支持材料配合物は含まれない)。すなわち、この用語は構築材料の部分を指し、それが最終物体の提供に使用される。
【0078】
本明細書を通して「造形材料配合物」とは、これは本明細書では互換的に「造形配合物」、「造形材料」「造形材」又は単に「配合物」とも称するが、本明細書に記載のように物体を形成するために吐出される未硬化構築材料の一部又は全部を表す。造形材料配合物は(特に明記されない限り)未硬化造形配合物であり、硬化作用をする条件に暴露されると物体又はその一部を形成し得る。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態において、造形材料配合物は三次元インクジェット印刷での使用のために調合され、それ自体で、すなわち他のいかなる物質との混合も組合せも必要とせずに、3次元物体を形成可能である。
【0080】
未硬化構築材料は1以上の造形材料配合物を含むことができ、吐出して固化すると物体の異なる部分が異なる硬化造形材料で作製されるようにすることができる。したがって物体の異なる部分を、異なる固化(例えば硬化)造形材料、又は固化(例えば硬化)造形材料の異なる混合物で作製することが可能となる。
【0081】
最終的な三次元物体は、造形材料、あるいは複数の造形材料の組み合わせ、あるいは1以上の造形材料と1以上の支持材料、又はそれらの変形物(例えば硬化後)で作られる。これらのすべての操作は、固体自由成形分野の当業者には周知である。
【0082】
本発明の例示的実施形態のいくつかにおいて、物体が、2以上の異なる造形材料配合物を含む構築材料の吐出により製造される。ここで各造形材料配合物はインクジェット印刷装置の異なる吐出ヘッド及び/又はノズルから吐出される。造形材料配合物は任意選択によりかつ好ましくは、印刷ヘッドの同じパス中に複数の層に堆積される。層内の造形材料配合物及び/又は配合物の組み合わせは、物体の所望特性により、また本明細書に記載の方法のパラメータにより選択される。
【0083】
未硬化構築材料は1以上の造形配合物を含むことができ、吐出して、造形物体の異なる部分を異なる造形配合物の硬化で作製し、したがって、造形物体を異なる硬化した造形材料又は硬化した造形材料の異なる混合物で作製するようにできる。
【0084】
本明細書を通して、「固化した支持材料」という用語は本明細書では、「硬化支持材料」又は単に「支持材料」と互換的に使用され、製造される最終物体を製造プロセス中に支持するための構築材料部分のことを言う。これはプロセスが完了すると除去されて、固化した造形材料が得られる。
【0085】
本明細書を通して「支持材料配合物」とは、これは本明細書では互換的に「支持配合物」又は単に「配合物」とも称するが、本明細書に記載のように支持材料を形成するために吐出される未硬化構築材料の一部を表す。支持材料配合物は未硬化の配合物である。支持材料配合物が硬化可能な配合物である場合、これは硬化条件に曝されると固化した支持材料を形成する。
【0086】
液体材料でも、固化した典型的にはゲル材料のいずれでもあり得る支持材料は、本明細書では犠牲材料とも称し、層が吐出されて硬化エネルギに曝された後に除去可能であり、それによって最終物体の形状が現れる。
【0087】
本明細書及び当技術分野では、「ゲル」という用語は、しばしば半固体材料と呼ばれる材料のことを言い、典型的にはその間が化学的又は物理的に結合された繊維状構造の3次元の固体ネットワークと、このネットワーク内に閉じ込められた液相とから成る。ゲルは通常固体の粘稠度を特徴とし(例えば非流動性である)、比較的低い引張強度、比較的低い剛性率、例えば100kP未満であり、損失剛性率対貯蔵剛性率(tanδ、G’’/G’)の値は1より小さい。ゲルは、少なくとも0.5bar、望ましくは少なくとも1bar、又はそれを超える陽圧の下で流動性であり、あるいは、1bar未満、又は0.5bar未満又は0.3bar以下の圧力の下で非流動性であることを特徴とする。
【0088】
今日実用される支持材料は通常、硬化性材料と非硬化性材料の混合物を含み、本明細書ではゲル支持材料とも称する。
【0089】
今日実用される支持材料は通常、水混和性、又は水分散性若しくは水溶性である。
【0090】
本明細書を通して「水混和性」という用語は水中に少なくとも部分的に溶解可能又は分散可能である、すなわち、例えば室温で等容積又は等重量の水と混合される場合、室温混合で少なくとも50%の分子が水の中に入る材料のことを言う。この用語は、「水溶性」及び「水分散性」という用語を包含する。
【0091】
本明細書を通して「水溶性」という用語は、室温で水に等量又は等重量を混合すると、均一な溶液を生成する材料を指す。
【0092】
本明細書を通して「水分散性」という用語は、室温で水に等量又は等重量を混合すると均一な分散が生成される材料を指す。
【0093】
本明細書を通して「溶解速度」という用語は、物質が液体媒体に溶解する速度を指す。溶解速度は、本実施形態の内容においては、特定量の支持材料が溶解するのに要する時間で決定できる。測定された時間は本明細書では「溶解時間」と呼ぶ。特に明記しない限り「溶解時間」は室温における値である。
【0094】
本実施形態の方法及びシステムは、コンピュータ物体データに基づいて、その物体の形状に対応する構成パターンで複数の層を形成することにより、三次元物体を層ごとに製造する。コンピュータ物体データは、これに限るものではないが、標準テッセレーション言語(STL)又はステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(VRML)、付加製造ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴンファイルフォーマット(PLY)、またはコンピュータ支援設計(CAD)に適する他の任意のフォーマットを含む任意の既知のフォーマットであってよい。
【0095】
各層が、2次元表面を走査してそれパターン化する付加製造装置によって形成される。走査中に装置は2次元の層すなわち表面上の複数の標的位置に行き、各標的位置又は一群の標的位置に対して、その各標的位置又は一群の標的位置を構築材料配合物で覆うべきか否か、またそこにどの種類の構築材料配合物を送達するべきか、を決定する。決定は、表面のコンピュータ画像に従って行われる。
【0096】
本発明の好ましい実施形態では、AMには3次元印刷、より好ましくは3次元インクジェット印刷が含まれる。これらの実施形態では、構築材料配合物が一組のノズルを有する吐出ヘッドから吐出されて、構築材料配合物を支持構造体上に層状に堆積する。AM装置はこうして構築材料配合物をそれで覆うべき標的位置に吐出し、他の標的位置を空のままにする。この装置は通常複数の吐出ヘッドを含み、そのそれぞれが異なる構築材料配合物を吐出するように構成可能である。したがって、異なる標的位置を異なる構築材料配合物で占有することが可能である。構築材料配合物の種類は、造形材料配合物と支持材料配合物の大きく2つに分類される。支持材料配合物は、製造プロセス中に及び/又は他の目的で、物体又は物体の一部を支持するため、例えば中空又は多孔性の物体を提供するための、支持母体又は構造体として作用する。支持構造体は、例えば支持強度を上げるために造形材料配合物要素を追加的に含むこともあり得る。
【0097】
最終的な3次元物体は、造形材料、あるいは造形材料の組み合わせ、あるいは造形材料と支持材料、又はそれらの変形物(例えば硬化後)で作られる。これらのすべての操作は、固体自由成形分野の当業者には周知である。
【0098】
本発明のいくつかの例示的実施形態において、1以上の異なる造形材料配合物の吐出により物体が製造される。2以上の造形材料配合物が使用される場合、各造形材料配合物は任意選択によりかつ好ましくは、AM装置の(同一又は別々の吐出ヘッドに属する)異なるノズルのアレイから吐出される。
【0099】
いくつかの実施形態において、AM装置の吐出ヘッドは複数チャネルの吐出ヘッドであり、その場合には、同一の複数チャネル吐出ヘッドに位置する2以上のノズルアレイから、異なる造形材料配合物を吐出可能である。いくつかの実施形態では、異なる造形材料配合物を吐出するノズルアレイは、別々の吐出ヘッドに配置される。例えば第1の造形材料配合物を吐出する第1のノズルアレイが第1吐出ヘッドに配置され、第2の造形材料配合物を吐出する第2のノズルアレイが第2吐出ヘッドに配置される。
【0100】
いくつかの実施形態では、造形材料配合物を吐出するノズルアレイと、支持材料配合物を吐出するノズルアレイの両方が、同じ複数チャネル吐出ヘッドに配置される。いくつかの実施形態では、造形材料配合物を吐出するノズルアレイと、支持材料配合物を吐出するノズルアレイが、別々の吐出ヘッドに配置される。
【0101】
複数の材料配合物が、任意選択によりかつ好ましくは、印刷ヘッドの同じパス中に複数の層に堆積される。層内の複数の材料配合物及び材料配合物の組み合わせは、物体の所望特性によって選択される。
(システム)
【0102】
本発明のいくつかの実施形態による、物体112のAMに適したシステム110の代表的かつ非限定的な例を
図1Aに示す。システム110は、複数の吐出ヘッドを備えた吐出ユニット16を有する付加製造装置114を備える。各ヘッドは好ましくは、以下で説明する
図2A~
図2Cに示すような1以上のノズル122のアレイを備え、それを介して液体の構築材料配合物124が吐出される。
【0103】
好ましくは、ただし必須ではないが、装置114は3次元印刷装置であり、その場合吐出ヘッドは印刷ヘッドであり、構築材料配合物はインクジェット技術を介して吐出される。これは必ずしもそうである必要はない。なぜなら、いくつかの用途では、付加製造装置が3次元印刷技術を使う必要がないこともあるからである。本発明の様々な例示的実施形態によって企図される付加製造装置の代表的な例には、熱溶解積層造形装置及び熱溶解材料配合物積層装置が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0104】
各吐出ヘッドは、任意選択によりかつ好ましくは、構築材料配合物貯蔵器を介して供給され、そこには温度制御ユニット(例えば温度センサ及び/又は加熱装置)と、材料配合物レベルセンサが任意選択で含まれ得る。任意選択により2以上の吐出ヘッドに、同一の材料配合物タンクから供給され、例えば2つの吐出ヘッドが同じ材料配合物貯蔵器を共有して同一材料を吐出することが可能であり、あるいは2つの異なる材料を同一であるが内部で分離された貯蔵器を介して吐出することが可能である。構築材料配合物を吐出するために、例えば圧電式インクジェット印刷技術と同じように、吐出ヘッドに電圧信号が印加され、吐出ヘッドノズルを介して材料配合物の液滴を選択的に吐出する。各ヘッドの吐出速度は、ノズルの数、ノズルの種類、及び印加電圧信号レート(周波数)に依存する。そのような吐出ヘッドは、固体自由成形分野の当業者には知られている。別の例としてはサーマルインクジェット印刷ヘッドがある。これらのタイプのヘッドでは、構築材料に熱接触するヒータ素子があり、電圧信号によってヒータ素子を作動させて、構築材料を加熱してそこにガス気泡を形成する。ガス気泡が構築材料に圧力を生成し、構築材料の液滴を、ノズルを介して噴出させる。圧電式及びサーマル式印刷ヘッドは、固体自由成形分野の当業者には知られている。
【0105】
好ましくは、ただし必須ではないが、吐出ノズル又はノズルアレイの総数は、吐出ノズルの半分が支持材料配合物の吐出用であり、吐出ノズルの半分が造形材料配合物の吐出用となるように選択される。すなわち、造形材料配合物を噴射するノズルの数が、支持材料配合物を噴射するノズルの数と同じである。
図1Aの代表的例では、4つの吐出ヘッド16a、16b、16c、16dが示されている。各ヘッド16a、16b、16c、16dはノズルアレイを有する。この例では、ヘッド16a、16bは造形材料配合物用であり、ヘッド16c、16dは支持材料配合物用であってよい。したがって、ヘッド16aが第1造形材料配合物を吐出し、ヘッド16bが第2造形材料配合物を吐出し、ヘッド16c、16dの2つが支持材料配合物を吐出することができる。代替実施形態では、例えばヘッド16c、16dは組み合わせて、支持材料配合物を堆積するための、2つのノズルアレイを有する単一ヘッドとすることも可能である。さらなる代替実施形態において、任意の1以上の吐出ヘッドが、2以上の材料配合物を吐出するために2以上のノズルアレイを有してもよい。例えば2つの異なる造形材料配合物、又は1つの造形材料配合物と1つの支持材料配合物のための2つのノズルアレイであり、各配合物が異なるアレイ又は異なる数のノズルを介して吐出される。
【0106】
ただし、これは本発明の範囲を限定することを意図するものではないこと、及び造形材料配合物の堆積ヘッド(造形ヘッド)の数と、支持材料配合物の堆積ヘッド(支持ヘッド)の数が異なり得ることを理解されたい。一般的に、造形ヘッドの数、支持ヘッドの数、及びそれぞれのヘッド又はヘッドアレイのノズルの数は、支持材料配合物の最大吐出速度と造形材料配合物の最大吐出速度との間の所定の比aを与えるように選択される。所定の比aの値は好ましくは、形成された各層において造形材料配合物の高さと支持材料配合物の高さが等しくなることを確保する様に選択される。aの典型的な値は、約0.6から約1.5である。
【0107】
例えば、a=1では、造形ヘッドと支持ヘッドのすべてが動作する場合、支持材料配合物の全体の堆積速度は造形材料配合物の全体の堆積速度とほぼ等しい。
【0108】
好適な実施形態では、それぞれがp個のノズルのm個のアレイを有するM個の造形ヘッドと、それぞれがq個のノズルのs個のアレイを有するS個の支持ヘッドがあって、M×m×p=S×s×qである。M×m個の造形アレイとS×s個の支持アレイのそれぞれは、個別の物理的ユニットとして製造可能であり、複数のアレイの群からの組み立て及び分解が可能である。この実施形態において、そのようなアレイのそれぞれは、任意選択によりかつ好ましくは、各自の温度制御ユニットと材料配合物レベルセンサを備え、その操作のために個別に制御された電圧を受け取る。
【0109】
装置114はさらに、凝固装置324を備える。これは、堆積された材料配合物を固化させる光、熱等を放出するように構成された任意の装置を含むことができる。例えば、凝固装置324は1以上の放射線源を含むことができる。これは、使用される造形材料配合物に応じて、例えば紫外線、可視光、又は赤外線のランプ、あるいは他の電磁放射線源、あるいは電子線源であってよい。本発明のいくつかの実施形態では凝固装置324は造形材料配合物の硬化又は凝固の作用をする。
【0110】
吐出ヘッド及び放射線源は、好ましくはフレーム又はブロック128に取り付けられ、それが好ましくは作業面として働くトレイ360上を往復運動する。本発明のいくつかの実施形態では、放射線源はブロックに取り付けられ、吐出ヘッドの軌跡を追従して吐出ヘッドによって吐出されたばかりの材料配合物を少なくとも部分的に硬化又は凝固させるようになっている。トレイ360は水平に配置される。一般的な取決めに従って、X-Y-Zデカルト座標系は、X-Y面がトレイ360と平行になるように選択される。トレイ360は、垂直方向に(Z方向に沿って)、通常は下方に移動するように構成されることが好ましい。本発明の様々な例示的実施形態では、装置114は、1つ以上のレベリング装置132、例えばローラ326をさらに含む。レベリング装置326は、新たに形成された層の厚さを、その上に次の層が形成される前に矯正し、平坦化し、かつ/または確立するように働く。レベリング装置326は好ましくは、平坦化中に発生する余分な材料配合物を回収するための廃棄物回収装置136を備える。廃棄物回収装置136は、材料配合物を廃棄物タンクまたは廃棄物カートリッジに送達する任意の機構を含み得る。
【0111】
使用時に、ユニット16の吐出ヘッドは、走査方向、本明細書ではX方向と称する、に移動し、それらがトレイ360上を通過する過程で構築材料配合物を所定の構成で選択的に吐出する。構築材料配合物は通常、1種類以上の支持体材料配合物及び1種類以上の造形材料配合物を含む。ユニット16の吐出ヘッドの通過に続いて、放射線源126による造形材料配合物の硬化が行われる。堆積し終えた層の出発点に戻るヘッドの逆方向への通過中に、所定の構成に従って構築材料配合物を追加吐出することもあり得る。吐出ヘッドの順方向または逆方向の通過中に、こうして形成された層は、レベリング装置の順方向及び/又は逆方向の移動中に好ましくは吐出ヘッドの経路に従うレベリング装置326によって矯正される。吐出ヘッドがX方向に沿ってそれらの出発点に戻ると、吐出ヘッドは、本明細書でY方向と呼ぶ割出し方向に沿って別の位置に移動し、X方向に沿った往復運動によって同じ層の構築を続けることが可能である。代替として、吐出ヘッドは、順方向及び逆方向の移動の間に、または2回以上の順方向-逆方向移動の後に、Y方向に移動してもよい。単一の層を完成させるために吐出ヘッドによって実行される一連の走査は、本明細書では単一走査サイクルと称する。
【0112】
層が完成すると、次に印刷される層の所望の厚さに応じて、トレイ360は、Z方向に所定のZレベルまで下降される。この手順は、三次元物体112が層毎に形成されるように繰り返される。
【0113】
別の実施形態では、トレイ360は、ユニット16の吐出ヘッドの順方向及び逆方向の通過の間に、層内でZ方向に変位されてもよい。そのようなZ変位は、レベリング装置と表面を一方向で接触させ、かつ反対方向で接触させないようにするために実行される。
【0114】
システム110は、任意選択によりかつ好ましくは、構築材料配合物容器またはカートリッジを含みかつ製造装置114に複数の構築材料配合物を供給する、構築材料配合物供給システム330を備える。
【0115】
コントローラ152は、製造装置114及び任意選択によりかつ好ましくは供給システム330をも制御する。コントローラ152は電子回路とその回路で読み込み可能な不揮発性メモリ媒体とを有するコンピュータ化されたコントローラである。メモリ媒体がプログラム命令を格納し、回路がそれを読み込むと、以下で詳細を説明するように回路に制御動作を実行させる。本発明のいくつかの実施形態では、コントローラ152の電子回路は、データ処理操作も実行するように構成される。コントローラ152は好ましくは、例えば標準テッセレーション言語(STL)フォーマット等の形式でコンピュータ可読媒体上に表されたCAD構成などの、コンピュータ物体データに基づいて、製作指示に関するデジタルデータを送信するデータプロセッサ154と通信する。通常、コントローラ152は、各吐出ヘッドまたはノズルアレイに印加される電圧、及びそれぞれの印刷ヘッド内の構築材料配合物の温度を制御する。
【0116】
製造データがコントローラ152にロードされると、コントローラは、ユーザの介入なしに動作可能である。いくつかの実施形態では、コントローラ152は、例えばデータプロセッサ154を用いて、あるいはユニット152と通信するユーザインタフェース116を用いて、オペレータから追加の入力を受信する。ユーザインタフェース116は、例えばキーボード、タッチスクリーンなどの、ただしそれらに限らないが、当分野で公知の任意の種類であってよい。例えばコントローラ152は、追加の入力として、1つ以上の構築材料配合物の種類及び/又は、例えば、これに限らないが、色、特性歪み及び/又は転移温度、粘度、電気特性、磁気特性などの属性を受信することができる。他の属性及び属性群もまた考慮される。
【0117】
本発明のいくつかの実施形態による物体のAMに適したシステム10の別の代表的かつ非限定的実施例を
図1B~
図1Dに示す。
図1B~
図1Dは、システム10の上面図(
図1B)、側面図(
図1C)、及び等角図(
図1D)を示す。
【0118】
本実施形態において、システム10はトレイ12と、それぞれが複数の分離されたノズルを有しかつ供給システム330から構築材料配合物を受け取るように構成された複数のインクジェット印刷ヘッド16とを備える。トレイ12は、円板の形状を有することができ、あるいは環状とすることができる。垂直軸を中心に回転可能であれば、非円形の形状も考えられる。
【0119】
トレイ12とヘッド16は、任意選択によりかつ好ましくは、トレイ12とヘッド16との間の相対的回転運動ができるように取り付けられる。これは、(i)トレイ12が垂直軸14を中心にヘッド16に対して回転するように構成することによって、(ii)ヘッド16がト垂直軸14を中心にレイ12に対して回転するように構成することによって、または(iii)トレイ12及びヘッド16の両方が垂直軸14を中心に、しかし異なる回転速度で回転(例えば逆方向に回転)するように構成することによって、達成することができる。以下の実施形態は、トレイが、垂直軸14を中心にヘッド16に対して回転するように構成された回転トレイである構成(i)を特に重点的に記載するが、本願は構成(ii)及び(iii)をも企図していることを理解されたい。本書に記載の実施形態はいずれも、構成(ii)及び構成(iii)のいずれにも適用できるように調整することができ、本明細書に記載の詳細が与えられれば、当業者にはそのような調整の仕方がわかるであろう。
【0120】
以下の説明では、トレイ12に平行で軸14から外向きの方向を半径方向rと呼び、トレイ12に平行で半径方向rに垂直な方向をここでは方位角方向φと呼び、トレイ12に直角な方向をここでは垂直方向zと呼ぶ。
【0121】
本明細書で使用する用語「半径方向位置」とは、軸14から特定の距離にあるトレイ12上またはトレイ12の上方の位置を指す。この用語が印刷ヘッドに関連して使用される場合、この用語は、軸14から特定の距離にあるヘッドの位置を指す。この用語がトレイ12上の点に関連して使用される場合、この用語は、半径が軸14から特定の距離にあってその中心が軸14にある円を描く点の軌跡に属する任意の点に対応する。
【0122】
本明細書で使用する用語「方位角位置」は、所定の基準点に対して特定の方位角にあるトレイ12上またはトレイ12の上方の位置を指す。従って、半径方向位置は、基準点に対して特定の方位角を形成する直線を描く点の軌跡に属する任意の点を指す。
【0123】
本明細書で使用する用語「垂直位置」は、特定の点で垂直軸14と交差する面の上方の位置を指す。
【0124】
トレイ12は、三次元印刷のための支持構造として作用する。1つ以上の物体が印刷される作業領域は通常、トレイ12の総面積より小さいが、必ずしもそうである必要はない。本発明のいくつかの実施形態では、作業領域は環状である。作業領域は符号26で示される。本発明のいくつかの実施形態では、トレイ12は、物体の形成中ずっと、同一方向に連続的に回転し、本発明のいくつかの実施形態では、トレイは、物体の形成中に少なくとも1回(例えば振動するように)回転方向を逆転する。トレイ12は、任意選択によりかつ好ましくは、取外し可能である。トレイ12の取外しは、システム10の保守のために、あるいは希望する場合には、新しい物体を印刷する前にトレイを交換するために、行うことができる。本発明のいくつかの実施形態では、システム10には1つ以上の異なる交換トレイ(例えば交換トレイのキット)が提供され、2つ以上のトレイが異なる種類の物体(例えば異なる重量)、異なる動作モード(例えば異なる回転速度)等のために設計される。トレイ12の交換は、希望に応じて手動または自動ですることができる。自動交換が採用される場合、システム10は、トレイ12をヘッド16の下にあるその位置から取り外して、それを交換トレイ(図示せず)と交換するように構成されたトレイ交換装置36を含む。
図1Bの代表図では、トレイ交換装置36は、トレイ12を引っ張るように構成された可動アーム40を持つドライブ38として示されているが、他の種類のトレイ交換装置も考えられる。
【0125】
印刷ヘッド16の例示的実施形態を
図2A~
図2Cに示す。これらの実施形態は、システム110及びシステム10を含め、それらに限らず、上述したAMシステムのいずれかに採用することができる。
【0126】
図2A~
図2Bは、ノズルアレイ22を1つ(
図2A)及び2つ(
図2B)の持つ印刷ヘッド16を示す。アレイにおけるノズルは好ましくは、直線に沿って線状に配列される。特定の印刷ヘッドが2つ以上の線形ノズルアレイを有する実施形態において、ノズルアレイは、任意選択によりかつ好ましくは、相互に平行であってよい。
【0127】
システム110と同様のシステムが使用される場合、全ての印刷ヘッド16は、任意選択によりかつ好ましくは、割出し方向に沿って配向され、それらの走査方向に沿う位置は相互にずれて配置される。
【0128】
システム10に類似のシステムが使用される場合、全ての印刷ヘッド16は、任意選択によりかつ好ましくは、半径方向に(半径方向に平行に)配向され、それらの方位角位置が互いにずれて配置される。従って、これらの実施形態では、異なる印刷ヘッドのノズルアレイは、互いに平行ではなく、むしろ互いにある角度を成す。その角度はそれぞれのヘッド間の方位角のずれにほぼ等しい。例えば、1つのヘッドは、放射状に向きかつ方位角位置φ1に配置することができ、別のヘッドは、放射状に向きかつ方位角位置φ2に配置することができる。この実施例では、2つのヘッド間の方位角のずれはφ1-φ2であり、2つのヘッドの線形ノズルアレイ間の角度もまたφ1-φ2である。
【0129】
いくつかの実施形態では、2つ以上の印刷ヘッドを組み合わせて1ブロックの印刷ヘッドにすることが可能である。その場合、そのブロックの印刷ヘッドは通常互いに平行である。いくつかのインクジェット印刷ヘッド16a、16b、16cを含むブロックを
図2Cに示す。
【0130】
いくつかの実施形態では、システム10はヘッド16の下に位置する支持構造30を含み、トレイ12がトレイ支持構造30とヘッド16との間にくる。支持構造30は、インクジェット印刷ヘッド16が作動している間に発生し得るトレイ12の振動を防止または低減に役立つことができる。印刷ヘッド16が軸14を中心に回転する構成では、好ましくは支持構造30もまた回転して、支持構造30が常にヘッド16の直下にくるようになる(トレイ12がヘッド16とトレイ12の間にある)。
【0131】
トレイ12及び/又は印刷ヘッド16は、任意選択によりかつ好ましくは、垂直方向zに沿って垂直軸14に平行に移動するように構成されて、トレイ12と印刷ヘッド16との間の垂直距離を変動可能とする。トレイ12を垂直方向に沿って移動させることによって垂直距離が変動する構成では、支持構造30も好ましくはトレイ12と共に垂直方向に移動する。トレイ12の垂直位置を固定したままで、垂直距離が垂直方向に沿うヘッド16によって変動する構成では、支持構造30もまた固定された垂直位置に維持される。
【0132】
垂直移動は、垂直ドライブ28によって確立することができる。ある層が完成すると、次に印刷される層の所望の厚さに応じて所定の垂直間隔だけ、トレイ12とヘッド16との間の垂直距離を増大させることができる(例えばヘッド16に対してトレイ12を下降させる)。この手順を繰り返して、三次元物体を層毎に形成する。
【0133】
インクジェット印刷ヘッド16の動作、及び任意選択によりかつ好ましくはシステム10の1つ以上の他の構成部品の動作、例えばトレイ12の移動は、コントローラ20によって制御される。コントローラは、電子回路及び電子回路によって読出し可能な不揮発性記憶媒体を有することができ、記憶媒体は回路によって読み出されたときに、以下でさらに詳述するように制御動作を回路に実行させるプログラム命令を格納する。本発明のいくつかの実施形態では、コントローラ20の電子回路はデータ処理操作も実行するように構成される。
【0134】
コントローラ20はまた、コンピュータ物体データに基づいて製作命令に関するデジタルデータを送信するホストコンピュータ24と通信することもできる。デジタルデータは例えば、標準テッセレーション言語(STL)若しくはステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(VRML)、付加製造ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴンファイルフォーマット(PLY)、又はコンピュータ支援設計(CAD)に適した任意の他のフォーマットである。物体データフォーマットは通常デカルト座標系に従って構成される。このような場合、コンピュータ24は、コンピュータ物体データにおける各スライスの座標をデカルト座標系から極座標系に変換するための手順を実行することが好ましい。コンピュータ24は、任意選択によりかつ好ましくは、変換された座標系で製作命令を送信する。代替的に、コンピュータ24は、コンピュータ物体データによって提供された元の座標系で、製作命令を送信することができ、その場合、座標の変換はコントローラ20の回路によって実行される。
【0135】
座標変換により、回転トレイ上での三次元印刷が可能となる。従来の三次元印刷では印刷ヘッドは、静止したトレイ上を直線に沿って往復運動する。そのような従来システムでは、ヘッドの吐出速度が均一であるとすれば、印刷解像度はトレイ上のどの点でも同じである。従来の三次元印刷とは異なり、ヘッド点の全てのノズルが同時にトレイ12全体で同一距離をカバーするわけではない。座標変換は、任意選択によりかつ好ましくは、異なる半径方向位置において余剰な材料配合物が等量となるように実行される。本発明のいくつかの実施形態による座標変換の代表例を
図3A~
図3Bに示す。これは物体のスライス(各スライスが物体の異なる層の製作命令に対応する)を表し、
図3Aは、デカルト座標系でのスライスを示し、
図3Bは、それぞれのスライスに座標変換手順を適用した後の同じスライスを示す。
【0136】
通常、コントローラ20は、製作命令に基づき、かつ以下で説明する格納されたプログラム命令に基づいて、システム10のそれぞれの構成部品に印加される電圧を制御する。
【0137】
一般的に、コントローラ20はトレイ12の回転中に印刷ヘッド16を制御して構築材料配合物の液滴を層状に吐出させ、トレイ12上に三次元物体を印刷させる。
【0138】
システム10は、任意選択によりかつ好ましくは、1以上の放射線源18を備える。これは、使用される造形材料配合物に応じて、例えば紫外線、可視光若しくは赤外線のランプ、あるいは他の電磁放射線源、あるいは電子線源であってよい。放射線源は、これに限らないが発光ダイオード(LED)、デジタル光処理(DLP)システム、抵抗ランプ等を含む任意の種類の放射線放出装置を含むことができる。放射線源18は造形材料配合物を硬化又は凝固させる役割をする。本発明の様々な例示的実施形態では、放射線源18の動作はコントローラ20によって制御され、それは、放射線源18の起動及び停止を行い、かつ任意選択により放射線源18によって発生する放射線量の制御を可能とする。
【0139】
本発明のいくつかの実施形態では、システム10はローラまたはブレードとして製造され得る1つ以上のレベリング装置32をさらに含む。レベリング装置32は、新たに形成された層をその上に次の層が形成される前に矯正する役を果たす。一部の実施形態では、レベリング装置32は円錐ローラの形状を有し、その対称軸線34がトレイ12の表面に対して傾斜しかつその表面がトレイの表面と平行になるようにされる。この実施形態をシステム10の側面図で示す(
図1C)。
【0140】
円錐ローラは、円錐または円錐台の形状であってよい。
【0141】
円錐ローラの開き角は好ましくは、その軸34に沿った任意の位置における円錐の半径と、その位置と軸14との間の距離との間の比が一定となるように選択される。ローラが回転する間、ローラの表面上の任意の点pは、点pの鉛直直下に位置する点のトレイの線速度に比例する(例えば同一の)線速度を有するので、この実施形態は、ローラ32が層を効率的に平坦化することを可能にする。一部の実施形態では、ローラは高さh、軸14から最も近い距離位置における半径R1、及び軸14から最も遠い距離位置における半径R2を有する円錐台の形状を有する。ここでパラメータh、R1、及びR2は、R1/R2=(R-h)/hの関係を満たし、ここでRは軸14からのローラの最遠距離である(例えばRは、トレイ12の半径とすることができる)。
【0142】
レベリング装置32の動作は、任意選択によりかつ好ましくは、コントローラ20によって制御される。コントローラは、レベリング装置32の起動、停止を行うことができ、かつ任意選択により、垂直方向(軸14と平行)に沿ったその位置、及び/又は放射方向(トレイ12と平行に、軸14に近づくかまたはそれから離れる方向)に沿ったその位置をも制御することができる。
【0143】
本発明のいくつかの実施形態では、印刷ヘッド16は、トレイに対して半径方向rに往復運動するように構成される。これらの実施形態は、ヘッド16のノズルアレイ22の長さがトレイ12上の作業領域26の半径方向に沿った幅より短いときに有用である。半径方向に沿ったヘッド16の運動は、任意選択によりかつ好ましくはコントローラ20によって制御される。
【0144】
いくつかの実施形態では、異なる吐出ヘッドからの異なる材料配合物の吐出によって物体を製作することが企図される。これらの実施形態は、とりわけ、与えられた数の材料配合物から材料配合物を選択し、選択した材料配合物とそれらの特性の所望の組合せを規定する機能を提供する。本実施形態によれば、各材料配合物を層状に堆積する空間位置は、異なる三次元空間位置に異なる材料配合物を占有させるか、2つ以上の異なる材料配合物を実質的に同一の三次元位置又は隣接する三次元位置に占有させ、その層内に材料配合物を後から堆積する空間的な組合せを可能として、それによってそれぞれの位置に複合材料配合物を形成するか、のいずれかによって規定される。
【0145】
後から堆積させる造形用材料配合物の任意の組合せまたは混合が考えられる。例えば、特定の材料が吐出されると、それはその元の特性を維持し得る。しかしながら、別の造形材料配合物と同時に、又は同一又は近傍の位置に吐出される他の吐出材料配合物と同時に吐出される場合には、吐出された材料配合物とは異なる特性を有する複合材料配合物が形成される。
【0146】
こうして本実施形態は、広範囲の材料配合物の組合せの堆積を可能にし、かつ物体の各部分の特徴に要求される特性に応じて、物体の異なる部分が複数の異なる材料配合物の組合せから構成され得る物体の製作を可能にする。
【0147】
本実施形態に適したAMシステムの原理及び動作のさらなる詳細は、米国公開特許出願第9031680号明細書に示されており、参照によりその内容を本明細書に援用する。
(方法)
【0148】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本明細書に記載のような三次元物体の付加製造方法が提供される。本実施形態の方法は、その少なくとも一部に本明細書で定義するような透明材料を有する物体の製造に使用可能である。
【0149】
この方法は一般に、物体の形状に対応する構成パターン状に複数の層を逐次形成することによって行われ、その複数の層の少なくともいくつかのそれぞれ、あるいはその複数の層のそれぞれの形成が、1以上の造形材料配合物を含む構築材料(未硬化)を吐出し、その吐出した造形材料を硬化条件、好ましくは硬化エネルギ(照射など)に曝して、それによって硬化した造形材料を形成するようにして行われる。以下にこの詳細を述べる。
【0150】
本発明のいくつかの例示的実施形態において、物体は、例えば以下で説明するような、2以上の異なる造形材料を含む構築材料(未硬化)を吐出することにより製造される。これらの実施形態のいくつかにおいて、各造形材料配合物が、本明細書で説明するように、インクジェット印刷装置の、同一又は異なる吐出ヘッドに属する異なるノズルアレイから吐出される。
【0151】
いくつかの実施形態では、異なる造形材料配合物を吐出する、2つ以上のそのようなノズルアレイが、いずれもAM装置の同一印刷ヘッド(すなわちマルチチャネル印刷ヘッド)に配置される。いくつかの実施形態では、異なる造形材料配合物を吐出するノズルアレイは、別々の印刷ヘッドに配置される。例えば第1の造形材料配合物を吐出する第1のノズルアレイが第1印刷ヘッドに配置され、第2の造形材料配合物を吐出する第2のノズルアレイが第2印刷ヘッドに配置される。
【0152】
いくつかの実施形態では、造形材料配合物を吐出するノズルアレイと、支持材料配合物を吐出するノズルアレイの両方が、同じ印刷ヘッドに配置される。いくつかの実施形態では、造形材料配合物を吐出するノズルアレイと、支持材料配合物を吐出するノズルアレイが、別々の印刷ヘッドに配置される。
【0153】
複数の造形材料配合物が、任意選択によりかつ好ましくは、印刷ヘッドの同じパス中に複数の層に堆積される。層内の造形材料配合物及び/又は配合物の組み合わせは、物体の所望特性により、また以下でさらに詳細を説明するように選択される。そのような動作モードは、本明細書では「マルチ材料」とも称する。
【0154】
本明細書及び当分野で使用される「デジタル材料」という用語は、特定の材料の印刷された領域が数ボクセルのレベル又は1個のボクセルブロックのレベルであるような、微視的なスケール又はボクセルレベルでの2以上の材料の組み合わせを言う。そのようなデジタル材料は、材料の種類及び/又は2以上の材料の比率及び相対的な空間分布の選択によって影響される新しい特性を示すことができる。
【0155】
例示的なデジタル材料では、硬化して得られる各ボクセル又はボクセルブロックの造形材料は、硬化して得られる隣接ボクセル又はボクセルブロックの造形材料からは独立している。その結果各ボクセル又はボクセルブロックは、異なる造形材料となる可能性があり、複数の異なる造形材料のボクセルレベルでの空間的組合せの結果によってその部分全体の新しい特性が得られる。
【0156】
本明細書及び当分野で使用される「デジタル材料配合物」という用語は、ピクセルレベル又はボクセルレベルでの2以上の材料配合物の組み合わせを言う。その結果、異なる材料配合物のピクセル又はボクセルがある領域にわたり相互に交錯するようになる。このようなデジタル材料は、材料配合物の種類及び/又は2種以上の材料配合物の比率及び相対的な空間分布の選択によって影響される新しい特性を示す可能性がある。
【0157】
本明細書で使用するように、層の「ボクセル」は、層内の物理的な3次元の要素体積のことを指し、層を記述するビットマップの単一ピクセルに対応する。ボクセルの寸法は、構築材料がそれぞれのピクセルに対応する位置に吐出され、平坦化され、凝固された後に、構築材料により形成される領域の寸法にほぼ等しい。
【0158】
本明細書全体を通して、「ボクセルレベルで」という表現が、異なる材料及び/又は特性の文脈で使われる場合は常に、ボクセルブロック間の差異、並びにボクセル間あるいは数ボクセルの群の間の違いを含むことが意味される。好適な実施形態において、全体部分の特性は、複数の異なる造形材料の、ボクセルブロックレベルでの空間的組合せの結果である。
【0159】
図4は、本発明の様々な例示的実施形態による、三次元物体のAMに適する方法のフロー図である。別段の定義がない限り、以下で説明する操作は、実行の多くの組合せ又は順序において同時又は逐次のいずれかで実行可能であることを理解されたい。特に、フロー図の順序は限定的とみなされるべきではない。例えば、以下の説明又はフロー図で特定の順序で現れる2以上の操作は、異なる順序(例えば逆の順序)で、あるいは実質的に同時に実行されてもよい。さらに、以下で説明するいくつかの操作は、任意選択的であって、実行されない場合もある。
【0160】
方法は、コントローラ(例えばコントローラ152又は20)で操作されるAMシステム(例えばシステム110又はシステム10)、好ましくは3Dインクジェット印刷システムで実行可能である。方法は、200で開始され、任意選択によりかつ好ましくは201に進み、そこで物体の三次元形状に集合的に関係するコンピュータ物体データが受信される。データは、AMシステムに機能的に関連付けられたデータプロセッサ(例えばプロセッサ154又は24)によって受信可能である。例えば、データプロセッサは、コンピュータ可読媒体(図示せず)にアクセスして、媒体からデータを読み出すことができる。データプロセッサは、記憶媒体からデータを読み出す代わり、あるいはそれに加えて、コンピュータ支援設計(CAD)又はコンピュータ支援製造(CAM)ソフトウェアによって、データ又はその一部を生成することもできる。コンピュータ物体データは通常、それぞれが製造する物体の層を定義する、複数のスライスデータを含む。データプロセッサは、データ又はその一部をAMシステムのコントローラへ転送することができる。必ずしもそうとは限らないが、通常コントローラはデータをスライスごとに受信する。
【0161】
データは、前述のコンピュータ物体データフォーマットのいずれかを含む、当分野で既知の任意のデータフォーマットであってよい。
【0162】
方法は202に進んで、1以上の造形材料配合物の液滴が吐出されて、その物体のスライスの形状に対応する構成パターンで層が形成される。造形材料配合物及びその吐出は、本明細書のそれぞれの実施形態のいずれか、及びそれらの任意の組み合わせに記載の通りである。
【0163】
吐出202は、任意選択によりかつ好ましくは、吐出ヘッド、製作チャンバ、及び吐出する配合物を加熱しながら実行される。本発明の様々な例示的実施形態において、吐出202は、約50~約90℃、又は約50~約80℃、又は約70~約80℃、又は約65~約75℃の範囲の温度で実行される。吐出ヘッドは加熱装置を含むことができる。あるいは、加熱装置を含む構築材料貯蔵器を経由して供給される。
【0164】
203において、新たに形成された層に対して、好ましくは放射線源(例えば装置324又は18)を使用して、硬化照射が行われる。
【0165】
この方法は、操作203から、任意選択によりかつ好ましくは、201にループして戻り、別のスライスのデータを受信する。次のスライスのデータが既にコントローラに格納されているときは、この方法は次の層の形成のために202にループして戻ることができる。複数層で形成される物体が作製されると、この方法は204で終了する。
【0166】
後の実施例のセクション(実施例3参照)で示されるように、本発明者らは、最終物体の透過率特性は作製された層の配向に顕著に依存することを予期しないで発見した。具体的には、物体のある平坦面を通る光の透過率は、作製された層が与えられた面に垂直でないときに増加することが分かった。例えば、物体のある平坦面を通る光の透過率は、作製された層が与えられた面に平行であるか、その面に対して傾斜(例えば45℃)しているかのいずれかの場合に増加することが分かった。
【0167】
したがって、物体の特定面の透過率を改善したい場合には、製造する物体の層を定義するスライスデータに、特定の面に対してスライスが垂直にならないように選択された座標の回転変換が施される。
【0168】
x軸を中心として角度αだけ座標を回転させることは、回転行列Rx(α)を用いて実行可能であり、それは次のように表記される。
【数1】
【0169】
y軸を中心として角度βだけ座標を回転させることは、回転行列Ry(β)を用いて実行可能であり、それは次のように表記される。
【数2】
【0170】
z軸を中心として角度γだけ座標を回転させることは、回転行列Rz(γ)を用いて実行可能であり、それは次のように表記される。
【数3】
【0171】
複数の軸を中心にする回転は、上記の2以上の行列を掛けた行列を使用して実行できる。例えば、x軸を中心にα、かつy軸を中心にβだけの回転は、Rx(α)にRy(β)を掛けた行列を使用して実行可能である。軸を中心とする回転角は互いに異なっていることも、2以上の角度が同一であることもある。例えば、x軸とy軸とz軸に関して同じ角度θだけ座標を回転することは、行列Rx(θ)Ry(θ)Rz(θ)を使用して実行可能である。
【0172】
代表的な例として、透過率を改善したい平坦面が物体にあるとする。この場合、物体のスライスデータを上記の手順に従って、軸x、y、zの内の1、2、又は3を中心にして変換し、スライスとその平坦面との間の角度が約20°~約70°、より好ましくは約30°~約60°、例えば約45°となるようにする。本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、吐出は本明細書に記載のような2以上の造形材料に関して行われる。
【0173】
これらの任意の実施形態のいくつかにおいて、本発明の実施形態による部分的反応性を有する透明配合物(第1配合物)が内部コア領域を形成し、固化すると透明材料を提供する反応性配合物(第2配合物)がコア領域を少なくとも部分的に取り囲む外側領域を形成するように、吐出が行われる。
【0174】
固化するとき、好ましくは第2の造形配合物は第1配合物とは、本明細書に記述するように、適用される硬化条件(例えば照射)に曝されたときのその反応性(例えば固化の速度及び/又は程度)において、及び/又はその中に含まれる光開始剤の量において異なっている。これについては以下でさらに詳細を述べる。
【0175】
いくつかの実施形態では、第2の配合物が物体の外側部分、例えば物体の層の外周を形成し、第1の配合物が物体の内部部分、例えば外周の層で囲まれた物体の層の内側部分を形成するように吐出される。任意選択により、外側部分は印刷中の物体のシェルを形成し、内側部分は印刷中の物体のコアを形成する。いくつかの実施形態では、シェルがコアを包囲する。いくつかの実施形態では、コアは少なくとも部分的にシェルによって包囲される。任意選択により、シェルは印刷された1ボクセルの薄い被膜であるか、又は0.05mm~約2mmの厚さ、約0.1~約2mm、約0.1~約1.5mm又は約0.1~1mmであり、例えば0.2、0.3、0.4、0.5、又は0.6mmの被膜であってよい。この厚さは、印刷される物体の寸法及び形状に基づいて変化し得るし、時には2mmより厚いこともある。
【0176】
ここで
図5Aと
図5Bを参照する。これは、本発明のいくつかの実施形態による第1の部分反応性配合物で形成されたコアを、本明細書で説明する第2の反応性配合物で形成したシェルで取り囲んだ物体の断面図と、その物体の単一層の平面図のそれぞれの簡略模式図であり、いずれもいくつかの例示的実施形態によるものである。いくつかの実施形態によると、物体112は、本明細書に記載の第1構築(例えば造形)材料配合物で形成されるコア210と、本明細書に記載の第2の反応性の構築(例えば造形)材料配合物で形成されるシェル220とを含み得る。任意選択により、1以上の支持構造115が物体112を支持するために形成されてもよい。支持構造はAMプロセス中で硬化によって凝固した1以上の支持材料であってよい。
【0177】
ここで
図5Bを参照する。いくつかの実施形態によると、AMプロセス中に、層113の外周を画定することのできる第2の反応性構築(例えば造形)材料配合物で形成される外側領域221と、その外側領域221で少なくとも部分的に取り囲まれる第1の部分反応性構築(例えば造形)材料配合物で形成される内側領域211とを有する、層113が印刷され得る。いくつかの実施形態によると、物体112を形成する複数の層は、外側領域221と内側領域211の両方を含む層113と同様にして形成される。複数の層は任意選択によりシェル220とコア210とを形成し得る。シェル220はコア210を封入するように画定され得る。他の実施形態では、物体112はシェル220で完全には封入されなくてもよい。外側領域221の厚さは1印刷ボクセルの厚さ、又は0.05~2mmの厚さ、例えば0.3~1mmあるいは0.3mmであってよい。
【0178】
本発明の任意の実施形態のいくつかにおいて、本明細書に述べたようにして層が吐出されると、本明細書で説明するような硬化条件(例えば硬化エネルギ)への曝露が行われる。いくつかの実施形態では、硬化性材料は光硬化性材料、好ましくはUV硬化性材料であり、硬化条件は放射線源がUV放射を放出するものである。
【0179】
構築材料が支持材料配合物も含むいくつかの実施形態では、本方法は固化した支持材料の除去に進む(例えばそれによって隣接する固化した造形材料を露出させる)。これは、当業者には認識されるように、機械的及び/又は化学的手段で行うことができる。支持材料の一部は除去しても、例えば、本明細書で説明するように、固化した混合層内に任意選択的に残る場合がある。
【0180】
いくつかの実施形態では、固化した支持材料の除去は、支持材料と造形材料配合物の固化した混合物から成る、固化した混合層を露出させる。物体表面におけるそのような固化した混合物は、任意選択により相対的に非反射性の外観を有し得るものであり、本明細書では「マット」とも呼ばれる。他方で、そのような固化混合層を欠く(例えば支持材料配合物が塗布されなかった)表面は、対比して「光沢性」と表される。
【0181】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて本方法は、硬化した造形材料を、構築材料に支持材料が含まれていた場合にはそれらの除去の前か後で(好ましくは後で)、後処理条件に曝すことを含む。
【0182】
後処理条件は、固化した造形材料の更なる固化を促進するためのものであってよい。いくつかの実施形態では、後処理が部分硬化した材料を固化して、それによって完全に硬化した材料を得る。
【0183】
いくつかの実施形態では、後処理は、本明細書の各実施形態のいずれかに記載するように、熱及び/又は照射に曝すことにより実行される。いくつかの実施形態では、その条件が熱(熱的な後処理)であるか又はそれを含む場合には、後処理は、数分(例えば10分)から数時間(例えば1~24時間)の範囲の時間にわたって実行され得る。
【0184】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、後処理は、(例えば熱及び/又は照射に加えて)光開始剤の残留分の分解を促進する条件に物体を曝すこと(本明細書及び当分野においては光脱色とも称する)であるか、又はそれを含む。
【0185】
これらの実施形態のいくつかにおいて、光脱色は、物体を少なくとも5000K、又は少なくとも6000K、又は少なくとも6500Kの色温度を有する光に曝すことを含む。
【0186】
これらのいくつかの実施形態では、光脱色は、少なくとも25W、例えば25~200W、25~150W、50W~200W、又は50W~150Wの、任意の中間の値及びそれらの間の部分範囲を含む、電力で動作する光源によって行われる。
【0187】
光脱色は所定の時間の間適用すること(物体を光脱色条件に曝すこと)が可能であり、それは、1時間、2時間、及び最大48時間又は最大24時間であり得る。
【0188】
光脱色は、光脱色中の物体の光学特性(例えば色)をモニタしながら実行可能であり、この方法が光脱色中の物体の色を測定をさらに含むようにすることができる。そのような測定に基づいて、所望の光学特性が測定されるときに(例えば色が所定のレベルに到達したときに)光脱色を終了させることができる。
【0189】
いくつかの実施形態では、所望の光学特性(例えば所定の色レベル)は、本明細書において物体内の透明材料のそれぞれの実施形態のいずれかに記載した通りである。
【0190】
いくつかの実施形態では、光脱色後処理は、光脱色に関して後で述べるように、物体をLEDランプによる照射に、少なくとも2時間曝すことを含む。
【0191】
いくつかの実施形態では、光脱色は後で実施例5で説明する通りである。
【0192】
(配合物)
【0193】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、本明細書に記載の造形材料のそれぞれは、1以上の硬化性材料を含み、本明細書では硬化性配合物とも称される。硬化性配合物は、本明細書に記載の硬化条件に曝すと、その粘度(例えば室温における)が少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍、さらに好ましくは少なくとも1桁増加することを特徴とする。
【0194】
本明細書を通して、本明細書で「凝固可能材料」とも称する「硬化性材料」は、本明細書に記載のような硬化条件(例えば硬化エネルギ)に曝すと、凝固又は固化して、本明細書で定義する硬化した造形材料を形成する化合物(例えば、モノマーまたはオリゴマーまたはポリマー化合物)である。硬化性材料は典型的には重合性材料であり、適切な硬化条件、通常は適切なエネルギ源に曝されると、重合及び/又は架橋を受ける。硬化性又は凝固可能な材料は、典型的には、硬化条件に曝されるとその粘度が少なくとも1桁増加するようなものである。
【0195】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、硬化性材料は、モノマー、オリゴマー又は短鎖ポリマーであってよく、それぞれが本明細書に記述するように重合可能及び/又は架橋可能である。
【0196】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、硬化性材料が硬化条件(例えば放射などの硬化エネルギ)に曝されると、この硬化性材料は鎖伸長及び架橋のいずれか、又はその組み合わせによって重合する。
【0197】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、硬化性材料は、重合反応を生じる硬化エネルギーに曝露されたときに重合反応によりポリマー造形材料を形成可能な、モノマー又はモノマーの混合物である。そのような硬化性材料は、本明細書において、モノマー硬化性材料とも称される。
【0198】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、硬化性材料は、重合反応を生じる硬化エネルギーに曝露されたときに、重合反応によりポリマー造形材料を形成可能な、オリゴマー又はオリゴマーの混合物である。そのような硬化性材料は、本明細書において、オリゴマー硬化性材料とも称される。
【0199】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、硬化性材料は、モノマーであるかオリゴマーであるかを問わず、単官能硬化性材料又は多官能硬化性材料であり得る。
【0200】
本明細書において、単官能硬化性材料は、硬化条件(硬化エネルギなど)に曝されたときに重合することができる1つの官能基を含む。
【0201】
多官能硬化性材料は、硬化条件に曝されたときに重合することができる2以上の、例えば2、3、4又はそれ以上の官能基を含む。多官能硬化性材料は例えば、二官能、三官能、又は四官能硬化性材料であり得て、それぞれが重合可能な2、3又は4の基を含む。多官能硬化性材料の2以上の官能基は、通常本明細書で定義するように、連結部によって相互に結合される。連結部がオリゴマー部である場合、多官能基はオリゴマー多官能硬化性材料である。
【0202】
付加製造及び本実施形態のいくつかにおいて一般的に使用される例示的硬化性材料は、アクリル材料である。
【0203】
本明細書を通して、「アクリル材料」という用語は、1以上の、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、及び/又はメタクリルアミド基を有する材料を集合的に包含する。
【0204】
「(メタ)アクリレート」という用語、及びその文法上の変形体は、1以上のアクリレート基及び/又はメタアクリレート基を有する材料を包含する。
【0205】
本明細書に記載の配合物に含まれる硬化性材料は、それが適切である場合には、固化前のその材料の特性によって定義され得る。そのような特性には、例えば分子量(MW)、官能性(単官能又は多官能など)、及び粘度が含まれる。
【0206】
本明細書に記載の配合物に含まれる硬化性材料は他に、固化したときの各材料によって提供される特性によって定義される。すなわち、材料は、それが適切である場合には、硬化条件に曝された後、例えば重合した後に形成される材料の特性によって定義され得る。これらの特性(Tg、HDTなど)は、記載した任意の硬化性材料を単独で硬化して形成されるポリマー材料に関するものである。
【0207】
本明細書で使用するように、用語「硬化」又は「固化」は、配合物が固化する過程を記述する。この用語は、モノマー及び/又はオリゴマーの重合、及び/又はポリマー鎖(硬化前に存在するポリマー、あるいはモノマー又はオリゴマーの重合で形成されるポリマー材料、のいずれか)の架橋を包含する。硬化反応又は固化の生成物はしたがって、典型的にはポリマー材料であり、いくつかの場合には架橋したポリマー材料である。
【0208】
本明細書で使用される部分的な硬化又は固化は、完了に至らない硬化又は固化のプロセスを包含する。すなわち、例えば、後で定義する固化度が100%未満、90%未満、又は80%未満かそれ以下までしか実行されないプロセスである。本明細書で使用する完全な硬化又は固化は、少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は約100%の程度までの硬化又は固化であり、例えば、凝固した材料をもたらす硬化又は固化プロセスである。
【0209】
本明細書で使用する「固化度」は、硬化が実行される程度、すなわち、硬化性材料が重合及び/又は架橋を受けた程度を表す。硬化性材料が重合性材料である場合、この用語は、硬化条件に曝すことで重合及び/又は架橋を受ける配合物内の硬化性材料のモル%、及び/又は重合及び/又は架橋が実行された程度、例えば鎖伸長及び/又は架橋の程度、の両方を含む。重合度の判定は、当業者に既知の方法によって実行可能である。
【0210】
本明細書で使用する「固化速度」は、硬化が実行される速度、すなわち、硬化性材料が与えられた時間(例えば1分)で/時間内で、重合及び/又は架橋を受けた程度を表す。硬化性材料が重合性材料である場合、この用語は、硬化条件に曝すことで与えられた時間内で重合及び/又は架橋を受ける配合物内の硬化性材料のモル%、及び/又は与えられた時間内で重合及び/又は架橋が実行された程度、例えば鎖伸長及び/又は架橋の程度、の両方を含む。重合速度の判定は、当業者に既知の方法によって実行可能である。
【0211】
「固化速度」は、配合物の粘度が与えられた時間内で変化する程度、すなわち硬化条件に曝すことにより配合物の粘度が増加する速度、によって代替的に表すことができる。
【0212】
本明細書で使用する「グリーン体物体」は、少なくとも一部が部分的にしか固化又は凝固されていなくて、完全に凝固した物体を得るためには追加の固化を必要とする、AMプロセスで形成された物体である。
【0213】
ここで、「硬化に影響する条件」または「硬化を誘発するための条件」という表現は、これは本明細書では「硬化条件」又は「硬化誘発条件」としても互換的に称されるが、硬化性材料を含有する配合物に適用すると、ポリマー及び/又はオリゴマーの少なくとも部分的な重合及び/又はポリマー鎖の架橋を誘発する条件を表す。そのような条件には、例えば、本明細書で記述するような、硬化性材料への硬化エネルギの適用、及び/又は硬化性材料を、触媒、助触媒及び活性剤などの化学反応成分に接触させることが含まれ得る。
【0214】
硬化を誘発する条件が硬化エネルギの適用を含む場合、「硬化条件に曝す」という表現は、吐出層、好ましくは吐出された各層を硬化エネルギに曝し、かつ通常はその曝露がその吐出層(の例えばそれぞれ)に対して硬化エネルギを印加することにより行われることを意味する。
【0215】
「硬化エネルギ」は通常、放射の印加又は加熱を含む。
【0216】
放射は、硬化する材料に応じて、電磁放射(紫外線又は可視光など)、又は電子線放射、又は超音波放射、又はマイクロ波放射であり得る。放射(又は照射)の適用は、適切な放射線源によって行われる。例えば、本明細書で記載のように、紫外線、可視光、赤外線、又はキセノンのランプが使用され得る。
【0217】
放射に曝すことにより硬化を受ける、硬化性材料、配合物又はシステムは、本明細書では互換的に「光重合性」又は「光励起性」又は「光硬化性」と称される。
【0218】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、硬化性材料は光重合性材料であって、これは本明細書に記載のように放射に曝されると重合又は架橋を受ける。また、いくつかの実施形態においては、硬化性材料はUV硬化性材料であって、これは本明細書に記載のように、UV-可視光照射に曝すと重合又は架橋を受ける。
【0219】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の硬化性材料は、光誘起ラジカル重合を介して重合する重合性材料を含む。
【0220】
硬化エネルギが熱を含む場合、その硬化は、本明細書及び当分野においては「熱硬化」とも呼ばれ、熱エネルギの印加を含む。熱エネルギの印加は、例えば、本明細書に記載のような、その上に層が吐出される受容媒体、又はその受容媒体を収納するチャンバを加熱することにより行うことができる。いくつかの実施形態では加熱は抵抗ヒータを用いて行われる。
【0221】
いくつかの実施形態では、加熱は吐出層を加熱誘導放射によって照射することにより実行される。そのような照射は、例えば堆積された層に放射を放出するように操作されるIRランプ又はキセノンランプによって実行可能である。
【0222】
熱に曝すことによって硬化を受ける硬化性材料又はシステムは、本明細書では「熱硬化性」又は「熱活性化性」又は「熱重合性」と称する。
【0223】
いくつかの硬化性材料は、熱硬化及び/又は光誘起硬化を介して固化可能である。
【0224】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、透明な硬化性配合物が提供される。これは本明細書では第1造形材料配合物、あるいは第1透明配合物あるいは単に第1配合物とも呼ばれる。
【0225】
「透明硬化性配合物」は、本明細書で定義するように、固化すると透明材料を提供する硬化性配合物を意味する。
【0226】
「透明」という用語は、貫通する光の透過率を反映する材料特性を表す。
透明材料は典型的には通過する光の少なくとも70%を透過可能、すなわち透過率が少なくとも70%、として特徴づけられる。材料の透過率は当分野で周知の方法を使って決定可能である。例示的な方法を、後の実施例のセクションで述べる。
【0227】
本明細書に記載の透明な硬化性配合物は、固化する前もまた透明であり得る。
【0228】
本明細書に記載の透明な硬化性配合物は、無色として特徴づけることができる。及び/又はこの後固化材料に関して記載されるようなL*a*b*スケールにより決定される色特性によって特徴づけることができる。
【0229】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の硬化性配合物は、本明細書で定義するような光硬化性配合物である。
【0230】
本発明のいくつかの実施形態によれば、透明配合物は、硬化性材料と1以上の光開始剤(PI)との混合物を含む。
【0231】
本発明のいくつかの実施形態によれば、配合物内の1以上のPIの総量は、配合物の総重量の2重量%以下、又は1.5重量%以下、好ましくは1重量%以下であり、例えば、0.1~1、0.2~1、0.3~1、0.4~1、0.5~1、0.1~0.5、0.1~0.8、0.2~0.8、0.2~0.7、0.2~0.6、0.3~0.8、0.3~0.7、0.3~0.6、0.4~0.6、0.4~0.7、0.4~0.8、0.6~1、0.6~0.9、0.6~0.8、0.1~0.9、0.1~0.8、0.5~0.9、0.5~0.8及び上記の任意の範囲の中間値及び部分範囲を含む。
【0232】
比較的低量のPIを含むことにより、これらの実施形態の透明配合物は本明細書では、この後さらに詳細を議論するように、低PI含有配合物又は部分反応性配合物とも称する。
【0233】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、光開始剤はフリーラジカル光開始剤である。
【0234】
フリーラジカル光開始剤は、紫外線又は可視光放射などの放射に曝すとフリーラジカルを生成し、それにより本明細書に記載のような硬化性材料の重合反応を開始する任意の化合物であってよい。
【0235】
例示的な光開始剤としては、ベンゾフェノン、芳香族α-ヒドロキシケトン、ベンジルケタール、芳香族α-アミノケトン、フェニルグリオキサール酸エステル、モノアシルホスフィノキシド、ビス-アシルホスフィノキシド、トリス-アシルホスフィノキシド、及び/又は芳香族ケトンから誘導されるオキシメスターが含まれる。
【0236】
例示的光開始剤としては、これに限らないが以下のものが含まれる。カンファーキノン;2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2-メトキシカルボニルベンゾフェノン4,4’-ビス(クロロメチル)-ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシ-ベンゾフェノン、[4-(4-メチルフェニルチオ)フェニル]-フェニルメタノン、メチル-2-ベンゾイル-ベンゾエート、3-メチル-4’-フェニルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチル-4’-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体;チオキサントン、チオキサントン誘導体、例えばOMNIPOL TXとして市販されている高分子チオキサントン;例えば、ベンジルジメチルケタール(例えば、IRGACURE(登録商標)651として市販)などのケタール化合物;例えばα-ヒドロキシ-シクロアルキルフェニルケトン又はα-ヒドロキシアルキルフェニルケトンなどのアセトフェノン、アセトフェノン誘導体、例えば、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパノン(DAROCUR(登録商標)1173として市販)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(IRGACURE(登録商標)184として市販)、1-(4-ドデシルベンゾイル)-1-ヒドロキシ-1-メチル-エタン、1-(4-イソプロピルベンゾイル)-1-ヒドロキシ-1-メチル-エタン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標)2959として市販)など;2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標)127として市販);2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオン-イル)-フェノキシ]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン;ジアルコキシアセトフェノン、α-ヒドロキシ-またはα-アミノアセトフェノン、例えば、(4-メチルチオベンゾイル)-1-メチル-1-モルホリノエタン(IRGACURE(登録商標)907として市販)、(4-モルホリノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン(IRGACURE(登録商標)369として市販)、(4-モルホリノベンゾイル)-1-(4-メチルベンジル)-1-ジメチルアミノプロパン(IRGACURE(登録商標)379として市販)、(4-(2-ヒドロキシエチル)アミノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン)、(3,4-ジメトキシベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン;4-アロイル-1,3-ジオキソラン、ベンゾインアルキルエーテル及びベンジルケタール、例えばジメチルベンジルケタール、フェニルグリオキサリックエステル及びその誘導体、例えば、メチルα-オキソベンゼンアセテート、オキソ-フェニル-酢酸2-(2-ヒドロキシ-エトキシ)-エチルエステル、二量体フェニルグリオキサリックエステル、例えば、オキソ-フェニル-酢酸1-メチル-2-[2-(2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ)-プロポキシ]-エチルエステル(IRGACURE(登録商標)754として市販);ケトスルホン、例えばESACUREKIP1001M(登録商標)として市販;オキシム-エステル、例えば、1,2-オクタンジオン1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)(IRGACURE(登録商標)OXE01として市販)、エタノン1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)(IRGACURE(登録商標)OXE02として市販)、9H-チオキサンテン-2-カルボキサルデヒド9-オキソ-2-(O-アセチルオキシム)、パーエステル、ベンゾフェノンテトラカルボン酸ペレスター、モノアシルホスフィンオキシド、例えば(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(DAROCUR(登録商標)TPOとして市販)、エチル(2,4,6トリメチルベンゾイルフェニル)ホスフィン酸エステル;ビスアシル-ホスフィンオキシド、例えば、ビス(2,6-ジメトキシ-ベンゾイル)-(2,4,4-トリメチル-ペンチル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE(登録商標)819として市販))、ビス(2,4,6-トリメチル-ベンゾイル)-2,4-ジペントキシフェニルホスフィンオキシド、トリサシルホスフィンオキシド、ハロメチルトリアジン、例えば、2-[2-(4-メトキシ-フェニル)-ビニル]-4,6-ビス-トリクロロメチル-[1,3,5]トリアジン、2-(4-メトキシ-フェニル)-4,6-ビス-トリクロロメチル-[1,3,5]トリアジン、2-(3,4-ジメトキシ-フェニル)-4,6-ビス-トリクロロメチル-[1,3,5]トリアジン、2-メチル-4,6-ビス-トリクロロメチル-[1,3,5]トリアジン、ヘキサアリールビスイミダゾール/コイニシエーターシステム、例えば、オルト-クロロヘキサフェニル-ビスイミダゾールと2-メルカプト-ベンゾチアゾール、フェロセニウム化合物、またはチタノセン、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-ピリル-フェニル)チタン(IRGACURE(登録商標)784として市販)。
【0237】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、少なくとも1つの光開始剤は、本明細書で定義するように、アルファ置換ケトン型光開始剤、例えば、アルファアミンケトン型及び/又はアルファヒドロキシケトン型の光開始剤を欠いている。
【0238】
例示的実施形態において、アルファ置換ケトン型光開始剤は、芳香族アルファ置換ケトン、例えば芳香族アルファアミンケトン及び/又は芳香族アルファヒドロキシケトンである。UV硬化可能な配合物のPIとして一般的に使用されるそのような光開始剤の任意のものがこれらの実施形態に含まれる。
【0239】
例示的なアルファ-ヒドロキシケトンPIには、これに限定するものではないが、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(IRGACURE(登録商標)184、I-184として市販),2-ヒドロキシ-1-{1-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-フェニル]-1,3,3-トリメチル-インダン-5-イル}-2-メチル-プロパン-1-オン,(ESACURE ONE(登録商標)として市販)、及び1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニルl]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標)2959、I-2959として市販)が含まれる。
【0240】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、光開始剤は、ホスフィンオキシド型(例えば、モノアシル化(MAPO)又はビスアシル化ホスフィンオキシド型(BAPO)光開始剤)を含むか、または本質的にそれからなる。
【0241】
例示的なモノアシル及びビスアシルホスフィンオキシドには、これに限定するものではないが、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ジベンゾイルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、トリス(2,4-ジメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、トリス(2-メトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイル-ビス(2,6-ジメチルフェニル)ホスホネート、及び2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシドが含まれる。約380nmを超え約450nmまでの波長範囲で照射された場合にフリーラジカル開始が可能な市販のホスフィンオキシド光開始剤には、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE(登録商標)819として市販)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド(CGI403として市販)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとの重量で25:75の混合物(IRGACURE(登録商標)1700として市販)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンの重量で1:1の混合物(DAROCUR(登録商標)4265として市販)、及びエチル2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィネート(LUCIRINLR8893X)が含まれる。
【0242】
本実施形態のいくつかによれば、透明硬化性配合物は、分子量が500グラム/モル未満であることを特徴とする単官能(メタ)アクリレート材料、これは本明細書ではモノマー単官能(メタ)アクリレート材料とも称する、及び1以上の多官能(メタ)アクリレート材料、これは本明細書で定義するようにモノマー及び/又はオリゴマーであり得る、を含む。
【0243】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、1以上の多官能(メタ)アクリレート材料は、本明細書で定義する平均Tgが、少なくとも24又は少なくとも25であって、例えば24~40、又は25~40、又は24~35、又は23~30、又は24~30、又は25~30℃であり、あるいは30~70、又は30~60、又は40~60℃であることを特徴とし、これらの間の任意の中間値及び部分範囲も含まれる。
【0244】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、1以上のモノマー単官能(メタ)アクリレート材料は、1以上の非芳香族(脂肪族及び/又は脂環)及び/又は芳香族単官能(メタ)アクリレート材料を含むことができる。ただし、芳香族単官能(メタ)アクリレート材料が存在する場合にはその量は、モノマー単官能(メタ)アクリレート材料の総量の5重量%以下、又は3重量%以下、又は1重量%以下である。
【0245】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、1以上のモノマー単官能(メタ)アクリレート材料は、本明細書で定義するように、芳香族単官能(メタ)アクリレート材料を欠いている。
【0246】
本明細書において、脂肪族硬化性材料とは、本明細書で定義するような単数または複数の官能部分(例えば重合性及び/又は架橋性の)が脂肪族部分に共有結合している硬化性材料のことである。
【0247】
本明細書において、脂環硬化性材料とは、本明細書で定義するような単数または複数の官能部分(例えば重合性及び/又は架橋性の)が脂環(シクロアルキルまたはヘテロ脂環r)部分に共有結合している硬化性材料のことである。
【0248】
本明細書において、芳香族硬化性材料とは、本明細書で定義するような単数または複数の官能部分(例えば重合性及び/又は架橋性の)が芳香族部分に共有結合している硬化性材料のことである。
【0249】
「~を欠く」という表現は、本明細書においては、それぞれの材料又は配合物の総量に対して重量で1%未満、好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.1%未満、又は0.05%未満、又は0.01%未満、又はゼロであることを意味する。
【0250】
本実施形態によるモノマー単官能(メタ)アクリレート材料は、分子式Aで集合的に表示される。
【化1】
分子式A
ここで、R
1はカルボキシレート-C(=O)-O-Ra、R
2は水素(アクリレートの場合)又はメチル(メタセイル酸塩)、Raは脂肪族、脂環、または芳香族部分であり、化合物のMWは500グラム/モル以下である。
【0251】
材料が脂環モノマー単官能(メタ)アクリレート材料である場合、Raは、例えばイソボルニルまたは本明細書に記載の他の任意の置換または非置換シクロアルキルなどの脂環部分、またはモルホリン、テトラヒドロフラン、オキサリジン、あるいは本明細書に記載のその他の任意の置換または非置換ヘテロ脂環などの本明細書に記載のヘテロ脂環部分である。ここでシクロアルキルまたはヘテロ脂環が存在する場合は、置換基は本明細書に定義するように、アリールまたはヘテロアリールを含まない。例示的な脂環モノマー単官能アクリレートには、これに限るものではないが、イソボルニルアクリレート(IBOA)、アクリロイルモルホリン(ACMO)、及びSR218として市販されている材料が含まれる。
【0252】
材料が脂肪族モノマー単官能(メタ)アクリレート材料である場合、Raは、例えば、置換または非置換のアルキルまたはアルキレン、または本明細書で定義される他の任意の短い炭化水素であり得る。ここで置換基は、それが存在する場合には、本明細書で定義するように、アリールまたはヘテロアリールを含まない。
【0253】
材料が芳香族モノマー単官能(メタ)アクリレート材料である場合、Raは、本明細書で定義するように、例えば、アリールまたはヘテロアリールであり得るか、またはそれらを含むことができ、例えば、置換または非置換フェニル、置換または非置換ナフタレニル等である。ここで、置換される場合、それぞれが同じか又は異なる1、2、3又はそれ以上の置換基であるか、又は本明細書に記載のように、1つ以上の置換若しくは非置換アリールで置換された、又は置換若しくは非置換ヘテロアリールによって置換されたアルキル又はシクロアルキル、例えば置換若しくは非置換のベンジルなどが存在し得る。例示的な芳香族モノマー単官能(メタ)アクリレートには、例えば、CN131Bとして市販されている材料が含まれる。
【0254】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、1以上のモノマー単官能(メタ)アクリレート材料は、1以上の非芳香族単官能(メタ)アクリレート材料から成る。
【0255】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、1以上のモノマー単官能(メタ)アクリレート材料は、1つ以上の脂肪族及び/又は脂環単官能(メタ)アクリレート材料から成る。
【0256】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、1以上のモノマー単官能(メタ)アクリレート材料は、その少なくとも1つの単官能(メタ)アクリレート材料の総重量に対して、少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%、又は100重量%の1つまたは複数の脂環単官能(メタ)アクリレート材料を含む。
【0257】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、1以上のモノマー単官能(メタ)アクリレート材料は、本質的に1つまたは複数の脂環単官能性(メタ)アクリレート材料から成る。
【0258】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、1つまたは複数のモノマー単官能(メタ)アクリレート材料の総量は、配合物の総重量の40~60重量%、又は45~60%、又は45~55重量%の範囲である。これらの実施形態のいくつかによれば、1つまたは複数のモノマー単官能性(メタ)アクリレート材料は、本質的に、1つまたは複数の非芳香族(例えば、脂肪族及び/又は脂環、好ましくは脂環)単官能性(メタ)アクリレート材料から成る。
【0259】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、配合物は、1以上のモノマー脂環単官能(メタ)アクリレート材料を、配合物の総重量の40~60重量%の量だけ含む。
【0260】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、1以上のモノマー単官能(メタ)アクリレート材料の少なくとも1つ、好ましくはそれぞれが、固化したときに20~100、又は50~100、又は70~100、又は80~100℃であって、任意中間値及びその間の部分範囲も含むTgであることを特徴とするようになっている。例示的実施形態において、1以上のモノマー単官能(メタ)アクリレート材料の少なくとも1つ、好ましくはそれぞれが、固化したときに75~95、又は85~95℃のTgであることを特徴とするようになっている。
【0261】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、配合物は、Tgが本明細書で述べたように20~100又は50~100℃であり、配合物の総重量の40~60重量%の総量であり、かつモノマー芳香族単官能(メタ)アクリレート材料を欠く、1以上のモノマー脂環単官能(メタ)アクリレート材料を含む。
【0262】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、1以上のモノマー単官能(メタ)アクリレート材料の少なくとも1つ又はすべては、脂環単官能アクリレート材料である。
【0263】
例示的なモノマー脂肪族単官能性(メタ)アクリレート材料は、以下の実施例のセクションに成分A1として示されている。
【0264】
例示的なモノマー芳香族単官能性(メタ)アクリレート材料は、以下の実施例のセクションに成分A2として示されている。
【0265】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、配合物は本明細書において任意のそれぞれの実施形態に記載されるような1つ以上の単官能性モノマー(メタ)アクリレート材料に加えて、1つ以上の多官能性(メタ)アクリレート材料をさらに含む。
【0266】
これらの実施形態のいくつかによれば、1つ以上の多官能(メタ)アクリレート材料の総量は、配合物の総重量の、それらの間の任意の中間値及び部分範囲を含めて、40~60重量%の範囲である。
【0267】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、1以上の多官能(メタ)アクリレート材料は、本明細書で定義する平均Tgが、少なくとも24又は少なくとも25であって、24~40、又は25~40、又は24~30、又は25~30、又は30~40℃で、これらの間の任意の中間値及び部分範囲も含まれることを特徴とする。
【0268】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、1以上の多官能(メタ)アクリレート材料は、本明細書で定義する平均Tgが、少なくとも24又は少なくとも25であるか、あるいは、その間の任意の中間値及び部分範囲も含んで、30~40、又は30~70、又は30~60、又は40~60、又は50~60の範囲であることを特徴とするようなものである。
【0269】
いくつかの実施形態において、配合物は、種類(例えばTg)と、各多官能(メタ)アクリレート材料の相対的な量とを調節して、配合物が本明細書に記載のような平均Tgを特徴とするようになっている。
【0270】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、1以上の多官能(メタ)アクリレート材料のそれぞれは、固化したとき、100℃未満、又は80℃未満、又は70℃未満のTgを特徴とする。
【0271】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、1以上の多官能(メタ)アクリレート材料は、本明細書で定義する平均Tgを特徴とし、かつ1以上の多官能(メタ)アクリレート材料のそれぞれは固化したとき、100℃未満、又は80℃未満、又は70℃未満のTgを特徴とするようなものである。
【0272】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、配合物は、固化したときに本明細書の別のところで記述するAMプロセスの作業温度より高いTg、例えば100℃超、又は90℃超、又は80℃超、又は70℃超のTgを特徴とする多官能(メタ)アクリレート材料を欠いている。固化したときの本明細書に記述するような70℃あるいはそれより高い温度以上のTgを特徴とする例示的な多官能(メタ)アクリレート材料には、これに限らないが、SartomerによりSR834、SR833、SR833S、SR369として市販の材料、及びそれらの化学的等価物が含まれる。そのような材料は以下の実施例のセクションで成分Bとも呼ばれる。
【0273】
1以上の多官能(メタ)アクリレート材料は、本明細書で定義するようなモノマー及び/又はオリゴマー材料を含むことができる。
【0274】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、1以上の多官能(メタ)アクリレート材料は、少なくとも1つのオリゴマー材料を含み、これらの実施形態のいくつかにおいては、この1以上の多官能(メタ)アクリレート材料は、MWが500グラム/モルより高い、又は800グラム/モルより高い、又は1000グラム/モルより高いMWを特徴とする少なくとも1つの材料を含む。
【0275】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、1以上の多官能(メタ)アクリレート材料は1以上の多官能ウレタン(メタ)アクリレート、例えばウレタンジ(メタ)アクリレート及び/又はウレタントリ(メタ)アクリレートを含む。本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、1以上の多官能アクリレート材料は1以上の多官能ウレタンアクリレート、例えばウレタンジアクリレート及び/又はウレタントリアクリレートを含む。これらの実施形態の任意のもののいくつかによれば、多官能ウレタン(メタ)アクリレートのそれぞれは1000グラム/モルより高い分子量を特徴とする。そのような材料は本明細書の以下の実施例のセクションで成分Cとも呼ばれる。
【0276】
多官能ウレタン(メタ)アクリレートの実施形態のいくつかによれば、多官能ウレタン(メタ)アクリレートの総量は、配合物の総重量の15~40、又は15~30、又は15~25重量%の範囲である。
【0277】
多官能ウレタン(メタ)アクリレートに関する、本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、本明細書に記載の平均Tgが、任意の中間値及びその間の部分範囲も含めて、30~50又は35~50又は40~50℃であることを特徴とする。いくつかの実施形態によれば、各多官能ウレタン(メタ)アクリレートの種類(そのTgに関する)及び相対量は、平均Tgが本明細書に記載のようであるように調節される。
【0278】
多官能ウレタン(メタ)アクリレートに関して本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、固化したときにTgが20℃未満であって、例えば-20~20℃、0~20℃、5~20℃、10~20℃、又は15~20℃であることを特徴とする、1以上のオリゴマー多官能ウレタン(メタ)アクリレート(例えば以下の実施例セクションにおける成分C1)と、固化したときにTgが20超であって、例えば20~70℃、20~60℃、30~60℃、又は40~60℃であることを特徴とする、1以上の多官能ウレタン(メタ)アクリレート(例えば以下の実施例セクションにおける成分C2)と、を含む。
【0279】
これらの任意の実施形態のいくつかによれば、固化したときに20℃以下のTgを特徴とする、1以上のオリゴマー多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、1以上の二官能ウレタン(メタ)アクリレートを含む。例示的なそのような材料には、これに限らないが商品名CN991、CN9200、CN996、CN9002、及びCN996H90として市販されている材料、及び同様の材料などの、脂肪族ポリエステルウレタンジアクリレートオリゴマーが含まれる。
【0280】
これらの任意の実施形態のいくつかによれば、固化したときに20℃超のTgを特徴とする、1以上のオリゴマー多官能ウレタン(メタ)アクリレートは、1以上の三官能ウレタン(メタ)アクリレート、又はそうでなければ示されたTgを与える多官能ウレタン(メタ)アクリレート若しくはそれらの混合物、を含む。例示的なそのような材料には、これに限らないが、Photomer 6010、Photomer 6019、Photomer 6210、Photomer 6891、Photomer 6893-20R、Photomer 6008、Photomer 6184として市販されているもの及び同様の材料などの、脂肪族ウレタンジアクリレート及びトリアクリレートオリゴマーが含まれる。
【0281】
これらの任意の実施形態のいくつかによれば、固化したときにTgが20℃以下であることを特徴とする、1以上のオリゴマー多官能ウレタン(メタ)アクリレートの量は、配合物の総重量の、3~10、4~10、4~8、5~10、4~7重量%の範囲であり、それらの間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0282】
これらの任意の実施形態のいくつかによれば、固化したときにTgが20℃超であることを特徴とする、1以上のオリゴマー多官能ウレタン(メタ)アクリレートの量は、配合物の総重量の、10~30、15~30、15~25、20~25重量%の範囲であり、それらの間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0283】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、配合物は、その配合物の総重量の15~40、15~30、15~25重量%で、材料の平均Tgが30~50、35~50、40~50℃である、1以上のオリゴマー多官能ウレタン(メタ)アクリレートを含む。そしてこれらの材料は、固化したときのTgが20℃以下で、この配合物の総重量の3~10、4~10、4~8、5~10、4~7重量%の量であることを特徴とする、1以上のオリゴマー(MWに関して本明細書で定義するような)多官能ウレタン(メタ)アクリレートと、固化したときのTgが20℃超で、この配合物の総重量の10~30、15~30、15~25、20~25重量%の量であることを特徴とする、1以上のオリゴマー(MWに関して本明細書で定義するような)多官能ウレタン(メタ)アクリレートと、を含む。
【0284】
1以上のオリゴマー多官能ウレタン(メタ)アクリレートに関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、オリゴマー多官能ウレタン(メタ)アクリレートのそれぞれは、オリゴマー(MWに関して本明細書で定義するような)多官能ウレタンアクリレートである。
【0285】
本明細書に記載の実施形態のいくつかによれば、配合物内の1以上のオリゴマー多官能ウレタン(メタ)アクリレート材料は、1以上の多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料を含み、これは本明細書では成分Dとも呼ばれる。
【0286】
本明細書に記載のいくつかの実施形態によれば、配合物内の1以上の多官能(メタ)アクリレート材料は、本明細書の任意のそれぞれの実施形態で記述したような1以上のオリゴマー多官能ウレタン(メタ)アクリレートと、1以上の多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料とを含む。
【0287】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、1以上の多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料は、固化したときに、50~80、又は50~70℃のTgを特徴とする。
【0288】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、配合物が2以上の多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料を含むとき、これらの材料の平均Tgは、50~80又は50~70℃の範囲である。
【0289】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、本明細書に記載の1以上の多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料は、500センチポアズより大きい(例えば500~2500、500~2000、800~2000、800~1600センチポアズ)の粘度を特徴とする、1以上の多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料を含む。そのような材料は、本明細書において以下の実施例セクションでは成分D1とも呼ばれる。
【0290】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、本明細書に記載の1以上の多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料は、1以上の多官能性芳香族エトキシル化(メタ)アクリレート材料を含み、これは、本明細書に記載の1以上のアリールまたはヘテロアリールを含む、本明細書に記載の分岐ユニットを含む。そのような材料な例示的な成分D1材料である。そのような例示的材料には、これに限らないが、多官能(例えばジ及び/又はトリ)ビスフェノールエトキシル化(メタ)アクリレートが含まれる。
【0291】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、粘度が500センチポアズより高いことを特徴とする多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料は、400グラム/モルより高い、又は500グラム/モルより高い、例えば、400~1000、400~800、400~700、400~600、500~1000、500~800、500~600グラム/モルの分子量を有する。
【0292】
いくつかの実施形態によれば、粘度が500センチポアズより高いことを特徴とする1以上の多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料の量は、配合物の総重量の約15~約25重量%の範囲である。
【0293】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、本明細書に記載の1以上の多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料は、50センチポアズ以下又は20センチポアズ以下、例えば5~20、10~20センチポアズの、粘度を特徴とする、1以上の多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料を含む。そのような材料は、本明細書において以下の実施例セクションでは成分D2とも呼ばれる。
【0294】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、粘度が50センチポアズ以下であることを特徴とする多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料は、500グラム/モルより低い、又は400グラム/モルより低い、又はそれ以下の分子量を有する。
【0295】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、本明細書に記載の1以上の多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料は、1以上の多官能非芳香族(例えば脂肪族又は脂環)エトキシル化(メタ)アクリレート材料を含み、これは、非芳香族の、すなわちアリールまたはヘテロアリールを含まない脂肪族又は脂環の分岐ユニットである、本明細書に記載の分岐ユニットを含む。そのような材料な例示的な成分D2材料である。
【0296】
いくつかの実施形態によれば、粘度が50センチポアズより低いことを特徴とする1以上の多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料の量は、配合物の総重量の約3~約10、又は約3~約8重量%の範囲である。
【0297】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、本明細書に記載の1以上の多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料は、本明細書に記載のように500センチポアズより大きい粘度を特徴とする1以上の多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料と、本明細書に記載のように50センチポアズより小さい粘度を特徴とする1以上の多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料と、を含む。
【0298】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、本明細書に記載の1以上の多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料は、本明細書に記載の1以上の多官能芳香族エトキシル化(メタ)アクリレート材料と、本明細書に記載の1以上の多官能非芳香族エトキシル化(メタ)アクリレート材料を含む。
【0299】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、1つまたは複数の多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料は、本明細書に記載のように、500センチポアズより高い粘度、及び/又は400グラム/モルを超える又は500グラム/モルを超えるMWを特徴とする本明細書に記載の1以上の多官能芳香族エトキシル化(メタ)アクリレート材料と、本明細書に記載のように、500センチポアズ以下の粘度、及び/又は500グラム/モルより小さい又は400グラム/モルより小さいMWを特徴とする本明細書に記載の1以上の多官能非芳香族エトキシル化(メタ)アクリレート材料とを含む。
【0300】
多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料に関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、これらの材料の少なくとも1つ又はそれぞれは、多官能エトキシル化アクリレート材料である。
【0301】
多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料に関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、これらの材料の少なくとも1つ又はそれぞれは、二多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料である。
【0302】
多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料に関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、これらの材料の少なくとも1つ、又はそれぞれは、二官能エトキシル化アクリレート材料である。
【0303】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、本明細書において任意の個別の実施形態に記載のように、固化時に50~80、又は50~70℃のTgを特徴とする1以上の多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料の総量は、配合物総量の、15~30重量%、又は20~30重量%の範囲である。
【0304】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、配合物は、多官能(例えば二官能)エポキシ(メタ)アクリレート材料、好ましくはビスフェノールエポキシ(メタ)アクリレート材料などの芳香族エポキシ(メタ)アクリレート材料を、5重量%以下しか含まないか全く含まない。そのような材料は、本明細書において以下の実施例セクションでは成分Eとも呼ばれる。
【0305】
本明細書に記載のような配合物は、1以上の非硬化性材料を含んでもよく、これらは本明細書では添加剤とも呼ばれる。
【0306】
そのような材料には、例えば界面活性剤(界面活性物質)、抑止剤、酸化防止剤、充填剤、顔料、染料及び/又は分散剤が含まれる。
【0307】
界面活性剤を使用して、配合物の表面張力を、噴射又は印刷プロセスに要求される値、典型的には30dyne/cm程度にまで低減し得る。そのような薬剤にはシリコーン材料、例えばBYKタイプの界面活性物質として市販されているような、PDMS及びその誘導体などの有機ポリシロキサンが含まれる。
【0308】
本発明の任意の実施形態のいくつかによれば、本明細書に記載の配合物には、例えば本明細書に記載のような、1以上の界面活性剤が含まれる。
【0309】
いくつかの実施形態によれば、界面活性剤の量は、配合物総重量の0.05重量%未満であり、例えば0.001~0.045重量%の範囲であり得る。
【0310】
適切な安定剤(安定化剤)には、例えば、高温で配合物を安定化させる、熱安定剤が含まれる。
【0311】
「充填剤」という用語は、ポリマー材料の特性を変更し、及び/又は最終製品の品質を調整する不活性材料を表す。充填剤は、無機粒子、例えば炭酸カルシウム、シリカ、及び粘度であり得る。
【0312】
充填剤は、重合中又は冷却中の収縮を低減するために、例えば熱膨張係数を下げ、強度を上げ、熱安定性を増し、コストを下げ、及び/又は流動特性を取り込むために、造形配合物に添加することが可能である。ナノ粒子充填剤が、通常、インクジェット用途などの低粘度を必要とするアプリケーションに有用である。
【0313】
いくつかの実施形態において、分散剤及び/又は安定剤及び/又は充填剤は、それらが存在する場合、そのそれぞれの濃度は、それぞれの配合物の総重量の0.01~2重量%、又は0.01~1重量%の範囲である。分散剤は通常、それぞれの配合物の総重量の0.01~0.1重量%、又は0.01~0.05重量%の範囲の濃度で使用される。
【0314】
いくつかの実施形態において、配合物はさらに抑止剤を含む。抑止剤は、硬化条件に曝す前に硬化することを防止又は低減するために含まれる。適切な抑止剤には、例えばGenoradタイプ、又はMEHQとして市販されているものなどが含まれる。他の任意の適切な抑止剤も考えられる。
【0315】
顔料は有機及び/又は無機及び/又は金属の顔料であってよく、いくつかの実施形態では、顔料は、ナノ粒子を含むナノスケールの顔料である。
【0316】
例示的な無機顔料には、チタン酸化物及び/又は亜鉛酸化物及び/又はシリカのナノ粒子が含まれる。例示的な有機顔料には、ナノサイズのカーボンブラックが含まれる。
【0317】
いくつかの実施形態において、白色顔料と染料の組み合わせが、着色された硬化材料の調製に使用される。
【0318】
染料は、広範な種類の溶媒可溶性染料の任意のものであってよい。いくつかの非限定的な例は、黄色、オレンジ、茶色、及び赤色のアゾ染料、緑と青のアントラキノンとトリアリールメタン染料、及び黒のアジン染料である。
【0319】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、配合物はさらに青色の染料又は顔料を含み、これは得られる固化材料に現れ得る黄色をマスキングすることを目的としている。
【0320】
これらの実施形態のいくつかによれば、青色の染料又は顔料の量は、配合物の総重量の5・10-4重量%より低い、又は2・10-4重量%より低い、又は1・10-4重量%より低く、例えば、1・10-6重量%~1・10-4重量%、又は1・10-5重量%~1・10-4重量%、又は1・10-5重量%~8・10-5重量%の範囲であってよい。
【0321】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、配合物はさらに、非硬化性添加剤として硫黄含有化合物を含む。
【0322】
他の実施形態によれば、配合物は硫黄含有材料を含まない。
【0323】
上記の実施形態のいずれかにおいて使用される「硫黄含有材料」という用語は、本明細書で定義される1以上の-S-結合基又は-SH(チオール)末端基を含むか、またはそれで終端する化合物を包含する。この用語は、例えば本明細書で定義するように、1つ以上のチオール、チオアルコキシ、及び/又はチオアリールオキシ基を含む化合物を包含する。
【0324】
例示的な硫黄含有化合物には、ベータメルカプトプロピオネート、メルカプトアセテート、及び/又はアルカンチオールが含まれる。
【0325】
ベータメルカプトプロピオネートのいくつかの例としては、これに限らないが、グリコールジ-(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ-(3-メルカプトプロピオネート)、及びトリメチロールプロパントリ-(3-メルカプトプロピオネート)がある。
【0326】
本開示のいくつかの実施形態によれば、硫黄含有化合物は、グリコールジ-(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ-(3-メルカプトプロピオネート)、及び/又はトリメチロールプロパントリ-(3-メルカプトプロピオネート)である。
【0327】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の透明配合物(第1配合物)は、以下のものを含む。
【0328】
本明細書のそれぞれの実施形態のいずれかに記載の、量が40~60重量%の、1以上のモノマー(本明細書で定義)単官能非芳香族(例えば、脂環)(メタ)アクリレート材料、好ましくは、1以上の単官能非芳香族(例えば、脂環)アクリレート材料(例えば成分A1);
本明細書のそれぞれの実施形態のいずれかに記載の、30~50℃の平均Tgを特徴とし、総量が15~30重量%の、1以上の多官能オリゴマーウレタン(メタ)アクリレート材料、好ましくは1以上の二官能及び/又は三官能オリゴマーウレタンアクリレート材料(例えば成分C1及び/又はC2);及び
本明細書のそれぞれの実施形態のいずれかに記載の、50~80℃の平均Tgを特徴とし、総量が15~35重量%の、1以上の多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料(例えば成分D1及び/又はD2)。
【0329】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の透明配合物(第1配合物)は、以下のものを含む。
【0330】
本明細書のそれぞれの実施形態のいずれかに記載の、量が40~60重量%の、1以上のモノマー(本明細書で定義)単官能非芳香族(例えば、脂環式)(メタ)アクリレート材料、好ましくは、1以上の単官能非芳香族(例えば、脂環式)アクリレート材料(例えば成分A1);
本明細書のそれぞれの実施形態のいずれかに記載の、20℃以下の平均Tgを特徴とし、量が3~10又は3~8重量%の、1以上の多官能オリゴマーウレタン(メタ)アクリレート材料、好ましくは1以上の二官能オリゴマーウレタンアクリレート材料(例えば成分C1);
本明細書のそれぞれの実施形態のいずれかに記載の、30~60、又は40~60℃の平均Tgを特徴とし、量が12~25、又は12~22重量%の、1以上の多官能オリゴマーウレタン(メタ)アクリレート材料、好ましくは1以上の二官能及び/又は三官能オリゴマーウレタンアクリレート材料、より好ましくは1以上の三官能オリゴマーウレタンアクリレート材料(例えば成分C2);
本明細書のそれぞれの実施形態のいずれかに記載の、50~80℃の平均Tg及び500センチポアズより高い粘度を特徴とし、量が15~25重量%の、1以上の多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料、好ましくは1以上の二官能エトキシル化アクリレート材料(例えば成分D1);及び
本明細書のそれぞれの実施形態のいずれかに記載の、50~80℃の平均Tgと500センチポアズより低い、又は200センチポアズより低い粘度を特徴とし、量が5~10重量%の、1以上の多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料、好ましくは1以上の二官能エトキシル化アクリレート材料(例えば成分D2)。そのような配合物は、本明細書では例示的配合物Iとも呼ばれる。
【0331】
例示的配合物I(配合物例I)に関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、配合物は本明細書に記載の硫黄含有化合物を含まない。
【0332】
配合物例Iに関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、配合物は、本明細書に記載の界面活性剤、抑止剤及び青色染料の1以上をさらに含む。
【0333】
配合物例Iに関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、1以上の多官能(メタ)アクリレート材料の平均Tgは、固化時に30~70、又は30~60、又は40~60℃の範囲である。
【0334】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の透明配合物(第1配合物)は、以下のものを含む。
【0335】
本明細書のそれぞれの実施形態のいずれかに記載の、量が40~60重量%の、1以上のモノマー(本明細書で定義)単官能非芳香族(例えば、脂環式)(メタ)アクリレート材料、好ましくは、1以上の単官能非芳香族(例えば、脂環式)アクリレート材料(例えば成分A1);
本明細書のそれぞれの実施形態のいずれかに記載の、20℃以下の平均Tgを特徴とし、量が又は20~30重量%の、1以上の多官能オリゴマーウレタン(メタ)アクリレート材料、好ましくは1以上の二官能オリゴマーウレタンアクリレート材料(例えば成分C1);及び
本明細書のそれぞれの実施形態のいずれかに記載の、50~80℃の平均Tg及び500センチポアズより高い粘度を特徴とし、量が15~25重量%の、1以上の多官能エトキシル化(メタ)アクリレート材料、好ましくは1以上の二官能エトキシル化アクリレート材料(例えば成分D1)。
【0336】
そのような配合物は、本明細書では例示的配合物IIとも呼ばれる。
【0337】
配合物例IIに関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかにおいて、配合物は、例えば配合物の総重量の、0.1~5、又は0.1~2、又は0.2~2、又は0.5~2、又は0.5~1.5、例えば約1~1.1重量%の量の、本明細書に記載の硫黄含有化合物をさらに含む。
【0338】
配合物例II関する本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、配合物は、本明細書に記載の界面活性剤と、任意で抑止剤及び/又は青色染料をさらに含む。
【0339】
本明細書のそれぞれの実施形態のいずれかに記載の透明配合物は、少なくともその一部に透明材料を含む三次元物体の付加製造において使用可能である。
【0340】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、透明配合物は、粘度、表面張力、及び/又は噴射性などの特性を特徴とし、それが配合物を三次元インクジェット印刷などの付加製造に使用可能とする。
【0341】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、透明配合物は、固化すると透明材料を提供する。
【0342】
いくつかの実施形態によれば、透明材料は、本明細書に記載したようにX-rite社の装置を使用して測定する場合、透過率が80%超であることで特徴づけられる。
【0343】
いくつかの実施形態によれば、透明材料は、ASTM D-1925で決定されるように、3未満又は2.5未満の黄色度指数によって特徴づけられる。
【0344】
いくつかの実施形態によれば、透明材料は、2未満又は1.5未満のCIE-LABb*値(例えば本明細書に記載のX-rite色測定によって決定されるような)によって特徴づけられる。
【0345】
いくつかの実施形態によれば、透明材料は、少なくとも90のCIE-LABb*明度値(例えば本明細書に記載のX-rite色測定によって決定されるような)によって特徴づけられる。
【0346】
いくつかの実施形態によれば、透明材料は、少なくとも-0.35、又は少なくとも-0.2のCIE-LABa*値(例えば本明細書に記載のX-rite色測定によって決定されるような)によって特徴づけられる。
【0347】
本明細書に記載のように、本発明のいくつかの実施形態は、2以上の造形材料配合物を含む、複数パート配合物システムを使用する物体の付加製造に関する。
【0348】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、2以上の造形材料配合物を含む複数パート配合物が提供される。その配合物の少なくとも1つが、本明細書のそれぞれの実施形態のいずれかに記載の透明配合物であって第1配合物あるいは(相対的に低含有量のPIにより)部分反応性配合物と呼ばれる。
【0349】
本発明のこの態様のいくつかの実施形態によれば、複数パート配合物は、硬化条件(例えば同一硬化条件)に曝したとき、その反応性が互いに異なる2以上の造形材料配合物を含む。
【0350】
いくつかの実施形態によれば、複数パート配合物システムは、2以上の造形材料配合物を含み、造形材料配合物の少なくとも2つが、同一の硬化条件に曝された場合に固化の度合い及び/又は速度が相互に異なる。
【0351】
これらの任意の実施形態のいくつかにおいて、複数パート配合物システムは、1以上の硬化性材料(本明細書では第1硬化性材料とも呼ばれる)を含む第1造形材料配合物と、1以上の硬化性材料(本明細書では第2硬化性材料とも呼ばれる)を含む第2造形材料配合物と、を含み、第1と第2の硬化性材料は同じ、又は異なっていてもよく、また第1と第2の配合物は同一の硬化条件に曝されたときに固化の度合い及び/又は速度が互いに異なる。
【0352】
例えば、第1の配合物は、硬化条件に曝されたときの固化速度Xを特徴とし、第2の配合物は、同一の硬化条件に曝されたときの固化速度Yを特徴とし、ここでYがXより大きい。いくつかの実施形態では、YはXよりも少なくとも10%だけ、又は少なくとも20%だけ、少なくとも30%だけ、少なくとも40%、50%だけ、又はそれ以上、例えば2倍、3倍、若しくはそれ以上だけ、大きい。これらの実施形態のいくつかでは、複数パート配合物システムは、1以上の硬化性材料(本明細書では第1硬化性材料とも呼ばれる)を含む第1造形材料配合物と、1以上の硬化性材料(本明細書では第2硬化性材料とも呼ばれる)を含む第2造形材料配合物とを含み、第1と第2の硬化性材料は同じ、又は異なっていてもよく、また第1と第2の配合物は、その中のPIの量及び/又は種類が互いに異なる。
【0353】
例えば、第1の配合物は、本明細書に記載のように1重量%以下の量のPIを含み、第2の配合物は、第2配合物の総重量の1~3重量%の量のPIを含む。
【0354】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、第1の配合物は本明細書に記載のように、固化すると第1の透明の材料を提供する、透明配合物を提供するためのものであり、第2の配合物も透明の硬化性配合物であって、固化すると第2の透明材料を提供する。第1と第2の透明材料は、同一又は異なる光学特性(例えば透過率)及び/又は色特性(例えばYI)を示し得る。
【0355】
任意の市販品又は特注調製の透明配合物を第2配合物として使用可能である。
【0356】
いくつかの例示的実施形態によれば、AM方法には、第1構築(例えば造形)材料配合物で物体のコアを形成し、第2構築(例えば造形)材料配合物で物体のシェル又は表面を形成することが含まれる。
【0357】
本明細書に記載の任意の実施形態のいくつかによれば、本明細書のそれぞれの実施形態のいずれか、又はそれらの任意の組み合わせに記載されるような、複数パート配合物システムを構成する1以上の造形材料配合物を含むキットが提供される。
【0358】
いくつかの実施形態において、そのキットは、本明細書のそれぞれの実施形態のいずれか又はそれらの組み合わせに記載されるような2以上の配合物を含み、またこれらの実施形態のいくつかにおいては各配合物はキット内に独立してパッケージ化される。
【0359】
いくつかの実施形態において、キットにはさらに、第3の配合物、例えば本明細書に記載のような支持材料配合物、又は第3の配合物との組み合わせで配合物システムを使用するための使用説明書が含まれる。
【0360】
いくつかの実施形態において、キットには、第1の配合物と、それを第2の配合物と共に使用するための使用説明書が含まれる。
【0361】
例示的な実施形態において、配合物はキット内で適切な包装材料、好ましくは不浸透性の材料(例えば水及びガスに対する不浸透性材料)、かつさらに好ましくは不透明の材料の中に包装される。
【0362】
いくつかの実施形態において、キットにはさらに、配合物を付加製造プロセス、好ましくは本明細書に記載のように3Dインクジェット印刷プロセスで使用するための使用説明書が含まれる。キットにはさらに、本明細書で記載するような方法に従って配合物をプロセス内で使用するための使用説明書が含まれる。
【0363】
(物体)
【0364】
本実施形態の方法は、本明細書に記載のように、その物体の形状に対応する構成パターンで複数の層を形成することにより、三次元物体を層ごとに製造する。
【0365】
本明細書に記載の方法によって得ることが可能な、最終的な三次元物体は、造形材料、あるいは複数の造形材料の組み合わせ、あるいは造形材料と支持材料の組み合わせ、又はそれらの変形物(例えば硬化後の)で作られる。これらのすべての操作は、固体自由成形分野の当業者には周知である。
【0366】
いくつかの実施形態において、物体はその1以上の部分に透明材料を含む。
【0367】
いくつかの実施形態において、物体は、次の実施例のセクションで記述されるように決定されると、その少なくとも一部において、以下の特性の1以上を特徴とする。
透過率が少なくとも80%;
黄色度指数が3未満又は2.5未満;
X-rite測定で定義されるCIE-LAB明度値L*が少なくとも90;
X-rite測定で定義されるCIE-LABa*値が少なくとも-0.35;
X-rite測定で定義されるCIE-LABb*値が、2未満、又は1.5未満。
【0368】
いくつかの実施形態において、物体は、少なくともその一部において、さらに以下の特性の1以上を特徴とする。
引張強度が30MPaより大、又は35MPaより大、又は50MPaより大;
曲げ強度が30MPaより大;
曲げ弾性率が1500MPaより大、又は1800MPaより大、又は2000MPaより大;
アイゾット衝撃、すなわち衝撃抵抗が15J/molより大;
HDTが40℃より高い;
破断伸びが少なくとも7%(例えば7~30%でこれらの間の任意の中間値及び部分範囲を含む)。
【0369】
いくつかの実施形態において、物体は少なくともその一部において、表6に示される特性の1以上を特徴とする。
【0370】
本明細書に記載の物体に関する任意の実施形態のいくつかによれば、物体は、透明な材料を含むその少なくとも一部において、本明細書に記載の第1の透明な配合物で作られた内部コアと、本明細書の任意の実施形態及びそれらの任意の組み合わせに記載の第2の透明な配合物で作られた、その内部コアを少なくとも部分的に包む外部シェルと、を含む。
【0371】
本明細書で使用されるように、「衝撃抵抗」という用語は、これは本明細書及び当分野において「衝撃強度」又は単に「衝撃」と互換的に呼ばれるが、機械的衝撃による破壊に対する材料の抵抗を表し、完全な破壊に至るまでに材料が吸収するエネルギ量で表現される。衝撃抵抗は、例えばASTM D256-06標準アイゾット衝撃試験(「アイゾットノッチ衝撃」又は「アイゾット衝撃」としても知られる)を使用して、及び/又は以下に述べるようにして測定可能であり、J/mで表される。
【0372】
本明細書で使用するように、HDTは、それぞれの配合物又は配合物の組み合わせが、所定の荷重の下でいくつかの特定の温度で変形する温度のことである。配合物又は配合物の組み合わせのHDTを決定する適切な試験手順は、ASTM D-648シリーズ、特にASTM D-648-06及びASTM D-648-07の方法である。本発明の様々な例示的実施形態において、構造のコアとシェルでは、ASTM D-648-06法で測定するHDT、並びにASTM D-648-07法で測定するHDTとではそのHDTに違いがある。本発明のいくつかの実施形態において、構造のコア及びシェルでは、ASTM D-648シリーズの任意の方法で測定したHDTに違いがある。本明細書における例の大半は、0.45Mpaの圧力でのHDTを使用した。
【0373】
ここで、材料の「Tg」は、E’’曲線の極大値の位置として定義されるガラス転移温度を指し、E’’曲線とは温度の関数としての材料の損失弾性率である。
【0374】
大雑把に言えば、Tg温度を含むある温度範囲内で温度を上昇させるにつれて、材料、特にポリマー材料の状態はガラス状の状態からゴムのような状態へ次第に変化する。
【0375】
ここで、「Tg範囲」は、E’’値が、上で定義するTg温度における値の少なくとも半分まで(例えば最大でその値まで)の温度範囲である。
【0376】
いずれの特定の理論にも拘束されることなしに、ポリマー材料の状態は、上記で定義するTg範囲内でガラス状の状態からゴム状の状態へ次第に変化するものと考えられる。Tg範囲の最低温度は、本明細書ではTg(低)と称し、Tg範囲の最高温度は、本明細書ではTg(高)と称す。
【0377】
本明細書を通して、硬化性材料がそれから得られる固化した材料の特性によって定義される場合には常に、この特性はこの硬化性材料そのものから得られる固化材料に関するものであることを理解すべきである。
【0378】
「引張強度」は、材料が伸ばされてすなわち引っ張られて破断するまでに耐え得る最大応力を意味する。引張強度は、例えばASTM D-638-03に従って決定される。
【0379】
「引張弾性率」は、一軸変形の線形弾性領域での材料の応力(単位面積当たりの力)と歪(比例変形)の間の関係として定義される材料の剛性を意味する。引張弾性率は、例えばASTM D-638-04に従って決定される。
【0380】
「曲げ強度」は、曲げ試験で降伏する直前の材料内の応力を意味する。曲げ強度は、例えばASTM D-790-03に従って決定される。
【0381】
「曲げ弾性率」は、曲げ変形における歪に対する応力の比を意味し、ASTM D790などの曲げ試験により得られる応力―歪曲線の勾配から決定される。
曲げ弾性率は、例えばASTM D-790-04に従って決定される。
【0382】
本明細書を通して、特に断らない限り、粘度の値は、Brookfield粘度計により25℃で測定された、材料又は配合物の粘度の値で与えられる。
【0383】
この出願から成熟する特許の存続期間の間に、多くの関連する硬化性材料及び/又は硬化性材料の重合を促進するそれぞれの薬剤が開発されることが予想されるが、第1硬化性材料、第2硬化性材料及びそれらの重合促進剤という用語の範囲はそのような新技術すべてを先験的に含むことを意図している。
【0384】
本明細書で使用の用語「約」は、±10%又は±5%を指す。
【0385】
用語「備える」、「備えた」、「含む」、「含んだ」、「有する」、及びそれらの活用形は、「含むがそれに限らない」ことを意味する。
【0386】
「から成る」という用語は、「を含み、かつ限定される」ということを意味する。
【0387】
「本質的に~から成る」という用語は、組成、方法又は構造が追加的な成分、ステップ及び/又は部品を含み得るが、その追加的な成分、ステップ及び/又は部品が特許請求の組成、方法又は構造の基本的かつ新規の特性を実質的に変更しない場合に限ることを意味する。
【0388】
本明細書で使用の、単数形の「1つの(a、an)」、「その(the)」は文脈が明確にそうでないことを規定しない限り、複数の言及も含む。例えば、「1つの化合物」又は「少なくとも1つの化合物」という用語は、複数の化合物を、それらの混合物も含めて包含し得る。
【0389】
本出願を通じて、本発明の様々な実施形態が範囲形式で提示され得る。範囲形式の記述は、単に便宜的かつ簡潔化のためのものであって、本発明の範囲の一定不動の限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。従って、範囲の記述は、その範囲内の個別の数値と共にすべての可能な部分範囲を具体的に開示しているものと見なされるべきである。例えば、1~6というような範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示された部分範囲、並びにその範囲内の個別の数値、例えば1、2、3、4、5、6を有すると見なされるべきである。このことは、範囲の広さに拘わらず適用される。
【0390】
本明細書で数値範囲が示されるときはいつでも、示された範囲内の任意の引用された数値(分数又は整数)を含むことが意味される。第1の指定数と第2の指定数「の間の範囲の/範囲にある」という句、及び、第1の指定数「から」第2の指定数「まで」の「範囲の/範囲にある」という句は、本明細書では互換的に使用されて、第1の指定数と第2の指定数、並びにその間のすべての分数及び整数を含むことを意味する。
【0391】
本明細書で使用の「方法」という用語は、与えられたタスクを達成するための、やり方、手段、技術及び手順を指し、これに限らないが、物理、機械、化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の専門家に既知であるか又はそれらの専門家により、既知のやり方、手段、技術及び手順から容易に開発される、そのようなやり方、手段、技術及び手順を含む。
【0392】
本明細書を通して、「重量パーセント」、「重量%」、「%wt」という表現が配合物(例えば造形配合物)の実施形態の文脈で示されるときは常に、それぞれの未硬化の配合物の総重量に対する重量パーセントを意味する。
【0393】
本明細書を通して、アクリル材料は、1以上の、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、及び/又はメタクリルアミド基を特徴とする材料を集合的に記述するために使用される。
【0394】
同様に、アクリル基は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミド基、好ましくはアクリレート基またはメタクリレート基(本明細書では(メタ)アクリレート基とも呼ばれる)である硬化性基を集合的に記述するために使用される。
【0395】
本明細書を通して、「(メタ)アクリル」という語は、アクリル材料及びメタクリ材料を包含する。
【0396】
本明細書を通して、「連結部分」または「連結基」という句は、化合物中の2つ以上の部分または基を接続する基を表す。連結部分は、通常、二官能性化合物または三官能性化合物に由来し、それぞれがその2つまたは3つの原子を介して2つまたは3つの他の部分に接続される二ラジカル部分または三ラジカル部分と見なすことができる。
【0397】
例示的な連結部分には、本明細書で定義するように1以上のヘテロ原子によって任意に中断される炭化水素部分又は鎖、及び/又は連結基として定義される場合は以下に列挙する任意の化学基が含まれる。
【0398】
化学基が本明細書において「末端基」と称される場合は、その1つの原子を介して別の基に接続される置換基として解釈されるべきである。
【0399】
本明細書を通して、「炭化水素」という用語は、主として炭素原子と水素原子で構成される化学基を集合的に指す。炭化水素は、アルキル、アルケン、アルキン、アリール、及び/又はシクロアルキルから構成することができ、それぞれを置換または非置換にし、また1以上のヘテロ原子によって中断することが可能である。カーボン原子の数は、2~30の範囲であり得るが、好ましくはより少ない、例えば1~10又は1~6、又は1~4である。炭化水素は、連結基又は末端基であり得る。
【0400】
ビスフェノールAは、2つのアリール基と1つのアルキル基から成る炭化水素の例である。ジメチレンシクロヘキサンは、2つのアルキリ基と1つのシクロアルキル基から成る炭化水素の例である。
【0401】
本明細書で使用するように、用語「アミン」は-NR’R’’基と-NR’-基の両方を表す。ここでR’とR’’は、それぞれ独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリールであり、これらの用語は以下で定義する通りである。
【0402】
アミン基は、したがって、R’とR’’の両方が水素である一級アミン、R’が水素でR’’がアルキル、シクロアルキル若しくはアリールである二級アミン、又はR’とR’’のそれぞれが独立してアルキル、シクロアルキル若しくはアリールである三級アミンであり得る。
【0403】
あるいは、R’とR’’それぞれ独立して、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン及びヒドラジンであり得る。
【0404】
用語「アミン」は、本明細書の以下で定義されるようにアミンが末端基である場合には-NR’R’’基を表すように使用され、アミンが連結基又は連結部分の一部である場合には-NR’-基を表すように本明細書では使用される。
【0405】
用語「アルキル」は、直鎖基及び分岐鎖基を含む、飽和脂肪族炭化水素を表す。好ましくは、アルキル基は1~30又は1~20の炭素原子を有する。本明細書において数値範囲、例えば「1~20」が提示されるときは常に、その基、この場合にはアルキル基が、1炭素原子、2炭素原子、3炭素原子など、最大かつこれを含む20炭素原子までを含み得ることを示す。アルキル基は置換されていても、非置換であってもよい。置換されたアルキルは、1以上の置換基を有し得る。それにより各置換基が独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン及びヒドラジンであり得る。
【0406】
アルキル基は、この用語が上で定義されるように、末端基であり得る。これは単一の隣接原子、又はこの用語が上で定義されているような連結基に接続され、2以上の部分をその鎖の中の少なくとも2つの炭素を介して接続する。アルキルが連結基である場合は、本明細書では、「アルキレン」又は「アルキレン鎖」とも呼ばれる。
【0407】
本明細書で使用されるアルケン及びアルキンは、本明細書で定義するアルキルであり、それぞれが1以上の二重結合又は三重結合を含む。
【0408】
用語「シクロアルキル」は、全炭素単環式環または縮合環(すなわち、隣接する炭素原子の対を共有する環)基を表す。ここで1以上の環は完全な共役π電子系を持たない。例としては、これに限定しないが、シクロヘキサン、アダマンチン、ノルボルニル、イソボルニルなどがある。シクロアルキル基は置換されていても、非置換であってもよい。置換されたシクロアルキルは、1以上の置換基を有し得る。それにより各置換基が独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン及びヒドラジンであり得る。シクロアルキル基は、この用語が上で定義されているように、末端基であり得る。これは単一の隣接原子、又はこの用語が上で定義されているような連結基に接続され、2以上の部分をその2以上の位置で接続する。
【0409】
「ヘテロ脂環」という用語は、環の中に窒素、酸素、硫黄などの1以上の原子を有する、単環式基又は縮合環基を表す。環はまた1以上の二重結合を有し得る。ただし、環には完全に共役なπ電子系はない。代表的な例は、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルフォリノ、オキサリジンなどである。
【0410】
ヘテロ脂環は置換型又は非置換型であり得る。置換ヘテロ脂環は、1つまたは複数の置換基を有し得る。それにより各置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環、アミン、ハロゲン化物、スルホン酸塩、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O-カルバメート、N-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン及びヒドラジンとなる。ヘテロ脂環基は、単一の隣接原子に結合する、上で定義するような末端基であってよく、あるいは、2以上の部分をその2以上の位置で接続する、上で定義するような連結基であり得る。
【0411】
用語「アリール」は、完全な共役π電子系を有する、全炭素単環式基または縮合環多環基(すなわち、隣接する炭素原子の対を共有する環)を表す。アリール基は置換されていても、非置換であってもよい。置換されたアリールは、1以上の置換基を有し得る。それにより各置換基が独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン及びヒドラジンであり得る。アリール基は、この用語が上で定義されるように、末端基であり得る。これは単一の隣接原子、又はこの用語が上で定義するような連結基に接続され、2以上の部分をその2以上の位置で接続する。
【0412】
「ヘテロアリール」という用語は、環内に例えば、窒素、酸素、硫黄などの1つまたは複数の原子を有し、さらに完全に共役のπ電子系を有する、単環式基又は縮合環(すなわち、隣接する原子対を共有する環)基を表す。ヘテロアリール基の、限定的でない例としては、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、及びプリンが含まれる。ヘテロアリール基は置換されていても、非置換であってもよい。置換ヘテロアリールは、1つまたは複数の置換基を有し得る。それにより各置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環、アミン、ハロゲン化物、スルホン酸塩、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O-カルバメート、N-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン及びヒドラジンとなる。ヘテロアリール基は、単一の隣接原子に結合する、上で定義するような末端基であってよく、あるいは、2以上の部分をその2以上の位置で接続する、上で定義するような連結基であってよい。代表的な例は、ピリジン、ピロール、オキサゾール、インドール、プリンなどである。
【0413】
「ハロゲン化物」及び「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を表す。
【0414】
「ハロアルキル」という用語は、上で定義するようなアルキル基が、さらに1以上のハロゲン化物で置換されたものを表す。
【0415】
「硫酸塩」という用語は、上で定義する通りの-O-S(=O)2-OR’末端基、又はこれらも上で定義する通りの-O-S(=O)2-O-連結基を表す。R’は上で定義する通りである。
【0416】
「チオ硫酸塩」という用語は、上でていぎされたとおりの-O-S(=S)(=O)-OR’末端基、又は-O-S(=S)(=O)-O-連結基を表す。ここで、R’は上で定義する通りである。
【0417】
「亜硫酸塩」という用語は、上で定義する通りの、-O-S(=O)-O-R’末端基、又はO-S(=O)-O-連結基を表す。ここでR’は上で定義する通りである。
【0418】
「チオ亜硫酸塩」という用語は、上で定義する通りの、-O-S(=S)-O-R’末端基、又はO-S(=S)-O-連結基を表す。ここでR’は上で定義する通りである。
【0419】
「スルフィン酸塩」という用語は、上で定義する通りの、-S(=O)-OR’末端基、又は-S(=O)-O-連結基を表す。ここでR’は上で定義する通りである。
【0420】
「スルホキシド」または「スルフィニル」という用語は、上で定義する通りの、-S(=O)R’末端基、又は-S(=O)-連結基を表す。ここでR’は上で定義する通りである。
【0421】
「スルホン酸塩」という用語は、上で定義する通りの-S(=O)2-R’末端基、又は-S(=O)2-連結基を表す。ここで、R’は本明細書で定義の通りである。
【0422】
「S-スルホンアミド」という用語は、上で定義する通りの-S(=O)2-NR’R’’末端基、又は-S(=O)2-NR’-連結基を表し、R’及びR’’は本明細書で定義の通りである。
【0423】
「N-スルホンアミド」という用語は、上で定義する通りのR’S(=O)2-NR’’-末端基、又は-S(=O)2NR’-連結基を表す。ここで、R’及びR’’は本明細書で定義の通りである。
【0424】
「ジサルファイド」という用語は、上で定義する通りの-S-SR’末端基、又は-S-S-連結基を表す。ここで、R’は本明細書で定義の通りである。
【0425】
「ホスホネート」という用語は、上で定義する通りの-P(=O)(OR’)(OR’’)末端基、又はP(=O)(OR’)(O)-連結基を表し、R’及びR’’は本明細書で定義の通りである。
【0426】
「チオホスホネート」という用語は、上で定義する通りの-P(=S)(OR’)(OR’’)末端基、又は-P(=S)(OR’)(O)-連結基を表し、R’及びR’’は本明細書で定義の通りである。
【0427】
「ホスフィニル」という用語は、上で定義する通りの-PR’R’’末端基、又は-PR’-連結基を表し、R’及びR’’は上で定義する通りである。
【0428】
「ホスフィンオキシド」という用語は、上で定義する通りの-P(=O)(R’)(R’’)末端基、又は-P(=O)(R’)-連結基を表し、R’及びR’’は本明細書で定義の通りである。
【0429】
「硫化ホスフィン」という用語は、上で定義する通りの-P(=S)(R’)(R’’)末端基、又は-P(=S)(R’)-連結基を表し、R’及びR’’は本明細書で定義の通りである。
【0430】
「ホスファイト」という用語は、上で定義する通りの-O-PR’(=O)(OR’’)末端基、又は-O-PH(=O)(O)-連結基を表し、R’及びR’’は上で定義する通りである。
【0431】
本明細書で使用の「カルボニル」または「カルボネート」という用語は、上で定義する通りの、-C(=O)-R’末端基、又は-C(=O)-連結基を表す。ここでR’は本明細書で定義の通りである。
【0432】
本明細書で使用の「チオカルボニル」という用語は、上で定義する通りの、-C(=S)-R’末端基、又は-C(=S)-連結基を表す。ここでR’は本明細書で定義の通りである。
【0433】
本明細書で使用の「オキソ」という用語は、酸素原子が、示された位置で原子(例えば、炭素原子)に二重結合によって連結された、(=O)基を表す。
【0434】
本明細書で使用の「チオオキソ」という用語は、硫黄原子が、示された位置で原子(例えば、炭素原子)に二重結合によって連結された、(=S)基を表す。
【0435】
「オキシム」という用語は、上で定義する通りの=N-OH末端基、又は=N-O-連結基を表す。
【0436】
「ヒドロキシル」という用語は、-OH基を表す。
【0437】
「アルコキシ」という用語は、本明細書で定義するように、-O-アルキル基及び-O-シクロアルキル基の両方を表す。アルコキシドという用語は-R’O-基を表し、R’は本明細書で定義の通りである。
【0438】
「アリールオキシ」という用語は、本明細書で定義するように、-O-アリール基及び-O-ヘテロアリール基の両方を表す。
【0439】
「チオヒドロキシ」又は「チオール」という用語は、-SH基を表す。「チオレート」という用語は、-S-基を表す。
【0440】
「チオアルコキシ」という用語は、本明細書で定義される-S-アルキル基及び-S-シクロアルキル基の両方を表す。
【0441】
「チオアリールオキシ」という用語は、本明細書で定義するように、-S-アリール基及び-S-ヘテロアリール基の両方を表す。
【0442】
「ヒドロキシアルキル」という用語は「アルコール」とも呼ばれ、ヒドロキシ基で置換された本明細書で定義されるようなアルキルを表す。
【0443】
「シアノ」という用語は、-C≡N基を表す。
【0444】
「イソシアネート」という用語は-N=C=O基を表す。
【0445】
「イソチオシアネート」という用語は-N=C=S基を表す。
【0446】
「ニトロ」という用語は、-NO2基を表す。
【0447】
「ハロゲン化アシル」という用語は、上で定義する通り、R’’’’がハロゲン化物である、-(C=O)R’’’’基を表す。
【0448】
「アゾ」または「ジアゾ」という用語は、上で定義する通りの、-N=NR’末端基、又は-N=N-連結基を表す。ここでR’は上で定義する通りである。
【0449】
「ペルオキソ」という用語は、上で定義する通りの-O-OR’末端基、又は-O-O-連結基を表す。ここでR’は上で定義する通りである。
【0450】
本明細書で使用される「カルボキシレート」という用語は、C-カルボキシレートおよびO-カルボキシレートを含む。
【0451】
「C-カルボキシレート」という用語は、上で定義する通りの-C(=O)-OR’末端基、又は-C(=O)-O-連結基を表す。ここで、R’は本明細書で定義の通りである。
【0452】
「O-カルボキシレート」という用語は、上で定義する通りの-OC(=O)R’末端基、又は-OC(=O)-連結基を表す。ここで、R’は本明細書で定義の通りである。
【0453】
カルボキシレートは直鎖又は環状であり得る。環状の場合、R’と炭素原子は結合してC-カルボキシレートの環を形成する。この基はラクトンとも呼ばれる。あるいは、R’とOが結合してO-カルボキシレートの環を形成する。環状カルボキシレートは、例えば形成された環内の原子が別の基に結合するときに、連結基として作用可能である。
【0454】
本明細書で使用される「チオカルボキシレート」という用語は、C-チオカルボキシレートおよびO-チオカルボキシレートを含む。
【0455】
「C-チオカルボキシレート」という用語は、上で定義する通りの-C(=S)-OR’末端基、又は-C(=S)-O-連結基を表す。ここで、R’は本明細書で定義の通りである。
【0456】
「O-チオカルボキシレート」という用語は、上で定義する通りの-OC(=S)R’末端基、又は-OC(=S)-連結基を表す。ここで、R’は本明細書で定義の通りである。
【0457】
チオカルボキシレートは直鎖又は環状であり得る。環状の場合、R’と炭素原子は結合してC-チオカルボキシレートの環を形成する。この基はチオラクトンとも呼ばれる。あるいは、R’とOが結合してO-チオカルボキシレートの環を形成する。環状チオカルボキシレートは、例えば形成された環内の原子が別の基に結合するときに、連結基として作用可能である。
【0458】
本明細書で使用される「カルバメート」という用語は、N-カルバメートおよびO-カルバメートを含む。
【0459】
「N-カルバメート」という用語は、上で定義する通りのR’’OC(=O)-NR’-末端基又は-OC(=O)-NR’-連結基を表す。ここで、R’及びR’’は本明細書で定義の通りである。
【0460】
「O-カルバメート」という用語は、上で定義する通りの-OC(=O)-NR’R’’末端基又は-OC(=O)-NR’連結基を表す。ここで、R’及びR’’は本明細書で定義の通りである。
【0461】
カルバメートは直鎖又は環状であり得る。環状の場合、R’と炭素原子が結合してO-カルバメートの環を形成する。あるいは、R’とOが結合してN-カルバメートの環を形成する。環状カルバメートは、例えば形成された環内の原子が別の基に結合するときに、連結基として作用可能である。
【0462】
本明細書で使用される「カルバメート」という用語は、N-カルバメートおよびO-カルバメートを含む。
【0463】
本明細書で使用される「チオカルバメート」という用語は、N-チオカルバメートおよびO-チオカルバメートを含む。
【0464】
「O-チオカルバメート」という用語は、上で定義する通りのOC(=S)-NR’R’’末端基、又はOC(=S)-NR’-連結基を表す。ここで、R’及びR’’は本明細書に定義の通りである。
【0465】
「N-チオカルバメート」という用語は、上で定義する通りのR’’OC(=S)NR’-末端基、又はOC(=S)NR’-連結基を表す。ここで、R’及びR’’は本明細書に定義の通りである。
【0466】
チオカルバメートは、本明細書でカルバメートに関して説明したように、直鎖又は環状であり得る。
【0467】
本明細書で使用される「ジチオカルバメート」という用語は、S-ジチオカルバメートおよびN-ジチオカルバメートを含む。
【0468】
「S-ジチオカルバメート」という用語は、上で定義する通りの-SC(=S)NR’R’’末端基、又は-SC(=S)NR’-連結基を表す。ここで、R’及びR’’は本明細書に定義の通りである。
【0469】
「N-チオカルバメート」という用語は、上で定義する通りのR’’SC(=S)NR’-末端基、又はSC(=S)NR’-連結基を表す。ここで、R’及びR’’は本明細書に定義の通りである。
【0470】
「尿素」という用語は、本明細書で「ウレイド」とも呼ばれ、上で定義する通りの、NR’C(=O)-NR’’R’’’末端基又は-NR’C(=O)-NR’’-連結基を表す。ここでR’及びR’’は本明細書に定義の通りであり、R’’’はR’とR’’に対する定義と同様である。
【0471】
「チオ尿素」という用語は、本明細書で「チオウレイド」とも呼ばれ、上で定義する通りの、-NR’-C(=S)-NR’’R’’’末端基又は-NR’-C(=S)-NR’’-連結基を表す。ここでR’、R’’及びR’’’は本明細書に定義の通りである。
【0472】
本明細書で使用される「アミド」という用語は、C-アミドおよびN-アミドを含む。
【0473】
「C-アミド」という用語は、上で定義する通りの-C(=O)-NR’R’’末端基又は-C(=O)-NR’ -連結基を表す。ここで、R’及びR’’は本明細書に定義の通りである。
【0474】
「N-アミド」という用語は、R’C(=O)-NR’’-末端基又はR’C(=O)-N-連結基を表す。ここで、R’及びR’’は本明細書で定義の通りである。
【0475】
アミドは直鎖又は環状であり得る。環状の場合、R’と炭素原子は結合してC-アミドの環を形成する。この基はラクタムとも呼ばれる。環状アミドは、例えば形成された環内の原子が別の基に結合するときに、連結基として作用可能である。
【0476】
「グアニル」という用語は、上で定義する通りのR’R’’NC(=N)-末端基、又は-R’NC(=N)-連結基を表す。ここで、R’及びR’’は本明細書に定義の通りである。
【0477】
「グアニジン」という用語は、上で定義する通りの-R’NC(=N)-NR’’R’’’末端基、又は-R’NC(=N)-NR’’-連結基を表す。ここで、R’、R’’及びR’’’は本明細書に定義の通りである。
【0478】
「ヒドラジン」という用語は、上で定義する通りの-NR’-NR’’R’’’末端基又は-NR’-NR’’-連結基を表す。ここで、R’、R’’及びR’’’は本明細書に定義の通りである。
【0479】
本明細書で使用されるように、「ヒドラジド」という用語は、上で定義する通りの-C(=O)-NR’-NR’’R’’’末端基又は-C(=O)-NR’-NR’’-連結基を表す。ここで、R’、R’’及びR’’’は本明細書に定義の通りである。
【0480】
本明細書で使用されるように、「チオヒドラジド」という用語は、上で定義する通りの-C(=S)-NR’-NR’’R’’’末端基又は-C(=S)-NR’-NR’’-連結基を表す。ここで、R’、R’’及びR’’’は本明細書に定義の通りである。
【0481】
本明細書で使用されるように、「アルキレングリコール」という用語は、-O-[(CR’R’’)z-O]y-R’’’末端基、又は-O-[(CR’R’’)z-O]y-連結基を表し、R’、R’’及びR’’’は本明細書に定義の通りである。ここでzは1~10、好ましくは2~6、より好ましくは2又は3の整数であり、yは1以上の整数である。好ましくはR’とR’’はいずれも水素である。zが2でyが1の場合、この基はエチレングリコールである。zが3でyが1の場合、この基はプロピレングリコールである。yが2~4の場合、アルキレングリコールは本明細書ではオリゴ(アルキレングリコール)と呼ばれる。
【0482】
本明細書において、「エトキシル化」材料は、1以上のアルキレングリコール基、又は好ましくは、本明細書で定義する、1以上のアルキレングリコール鎖を含む、アクリルまたはメタクリル化合物を表す。エトキシル化(メタ)アクリレート材料は、単官能性、あるいは好ましくは多官能性、すなわち二官能性、三官能性、四官能性などであり得る。
【0483】
多官能材料においては、通常、各(メタ)アクリレート基はアルキレングリコール基又は鎖に連結され、そのアルキレングリコール基又は鎖は、例えば分岐アルキル、シクロアルキル、アリール(例えばビスフェノールA)などの分岐ユニットを通して互いに連結される。
【0484】
いくつかの実施形態では、エトキシル化材料は、少なくとも1つ、又は少なくとも2つのエトキシル化基、すなわち、少なくとも1つ又は少なくとも2つのアルキレングリコール部分又は基を含む。アルキレングリコール基のいくつか又はすべては相互に連結して、アルキレングリコール鎖を形成可能である。例えば、30個のエトキシル化基を含むエトキシル化材料は、30個のアルキレングリコール基が互いに連結された鎖、又は例えばそれぞれが互いに連結された15個のアルキレングリコール部分である2つの鎖であって、その2つの鎖が分岐部分を介して相互に連結された2つの鎖、又はそれぞれが例えば10個のアルキレングリコール基が相互に連結された3つの鎖であって、その3つの鎖が分岐部分を介して相互に連結された3つの鎖、を含むことができる。これより短い鎖又は長い鎖もまた考えられる。
【0485】
エトキシル化材料は、任意の長さのアルキレングリコール鎖を、1,2又はそれ以上含むことができる。
【0486】
本明細書で使用する「分岐ユニット」という用語は、マルチラジカルの、好ましくは脂肪族または脂環基を表す。「マルチラジカル」により、ユニットに2以上の結合点があり、2以上の原子、及び/又は基若しくは部分の間で連結することを意味する。
【0487】
いくつかの実施形態において、分岐ユニットは、2、3、又はそれ以上の官能基を有する化学部分から派生する。いくつかの実施形態において、分岐ユニットは、本明細書で定義の、分岐アルキル、又はシクロアルキル(脂環)、アリール(例えばフェニル)である。
【0488】
本発明の特定の特徴は、明確にするために別々の実施形態の文脈で記述されていても、組み合わせて1つの実施形態で提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈中に記述される本発明の様々な特徴は、別々または任意の適切な部分的組合せで提供されることも、又は本発明の任意の他の説明される実施形態に適切であるように提供されることも可能である。様々な実施形態に関して記述される特定の特徴は、それらの要素なしではその実施形態が機能不能とならない限りは、それらの実施形態の必須の特徴と見なされるべきではない。
【0489】
これまでに説明し、また下記の特許請求の範囲において特許請求される、本発明の様々な実施形態及び態様の実験的裏付けを以下の実施例で述べる。
実施例
【0490】
次に以下の実施例を参照する。これは上記の記述と相俟って本発明のいくつかの実施形態を非限定的な形で例示するものである。
実施例1
透明造形材料配合物の化学組成
【0491】
固化したときに透明材料(本明細書では「透明造形材料配合物」又は「透明造形配合物」又は「透明配合物」とも総称する)を提供する、本発明のいくつかの実施形態による、参照配合物I及びII、並びに例示的配合物を構成する例示的化学組成を下の表1に示す。
【表1】
【0492】
実施例2
現在実用化されている例示的透明造形材料配合物
【0493】
下の表2Aは、固化したとき透明材料を提供する、参照配合物Iなどの、参照配合物の化学組成を表す。
【表2A】
【0494】
例示的参照配合物Iの平均Tgは60~70℃の範囲である。
【0495】
下の表2Bは、固化したとき透明材料を提供する、参照(Ref)配合物IIなどの、他の例示的参照配合物の化学組成を表す。
【表2B】
【0496】
例示的参照配合物IIの平均Tgは60~70℃の範囲である。
【0497】
参照配合物I及びIIで形成された固化材料は、通常以下の特性で特徴づけられる。
引張強度(本明細書の定義による)が30MPaより大;
曲げ強度(本明細書の定義による)が50MPaより大;
曲げ弾性率(本明細書の定義による)が1800MPaより大;
アイゾット衝撃強度(本明細書の定義による)が15J/molより大、典型的には20J/molより大;
HDTが40℃より高い;
破断点伸びが少なくとも7%(例えば7~30%)。
【0498】
図6は、J-750システムと、支持材料配合物としてSUP705を使用して3Dインクジェット印刷で形成した物体を示す。造形材料配合物として、表2Aに示した例示的参照配合物I(左の物体)と表2Bに示した例示的参照配合物II(右の物体)をそれぞれ使用した。
【0499】
見てわかるとおり、参照配合物II(表2B参照)などの配合物を使用する場合、固化した材料は黄色い色調を特徴とする。参照配合物I(表2A参照)などの配合物を使用するとき、黄色い色調を隠すために青い色合いを与える着色料を付加する。その結果固化した材料は灰青色の色調を特徴とする。
【0500】
実施例3
新設計の透明造形材料配合物
【0501】
本発明者らは、固化したときに、黄色い色調が少ないか又はなく、及び/又は本明細書で定義するような透過率が改善された透明材料を提供する新規の配合物を探索した。
【0502】
本発明者らは、光開始剤の総量及び種類をうまく操作することで、黄色い色調が大幅に減少することを明らかにした。本発明者らはさらに、光開始剤の総量及び種類を操作するときに、青い色合いを与える着色料の添加によるマスキングが回避可能であるか、青い色合いを与える着色料の量が少なくとも少量しか必要としないことを明らかにした。
【0503】
より具体的には、本発明者らは、配合物総量の1重量%以下の総重量の光開始剤の使用がこの点で有益であり、またPIは、配合物内のPIの総重量の10重量%以下の、α-アミン又はα-ヒドロキシケトン型のPIを含むべきであることを明らかにした。
【0504】
本発明者らは、例えば本明細書に記載のように、モノアシル化ホスフィンオキシド(MAPO)系のPIを最大1重量%含む配合物をうまく実用化した。
【0505】
本発明者らはさらに、硬化性材料の化学組成を操作することで、黄色い色調をさらに減らすかなくせることを明らかにした。
【0506】
上の表2A、2Bに示すように、現在実用されている透明配合物は、単官能及び多官能の硬化性材料を含む。より具体的には、45~60重量%の、低分子量/低粘度の単官能(メタ)アクリレート(A1及びA2)であって、芳香族及び/又は脂肪族、疎水性及び/又は親水性、低分子量/低粘度の単官能性(メタ)アクリレートが含まれ、Tgが50℃未満若しくは20℃未満(A2に対する規定)、又は50~100℃(A1に対する規定)である、単官能(メタ)アクリレート(A1及びA2)と;Tgが100℃より高いことを特徴とする、0~20重量%の低分子量/低粘度の多官能(メタ)アクリレート(B)と;20℃より低いTgを特徴とするもの(C1に対する規定)及び/又は、20℃より高いTgを特徴とするもの(C2に対する規定)を含む、20~30重量%の、中~高分子量/中~高粘度の多官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと;50~100℃のTgを特徴とする(D1に対する規定)、15~25重量%の多官能エトキシル化(メタ)アクリレートと、を含む。
【0507】
本発明者らは芳香族の低分子量/低粘度の単官能(メタ)アクリレートの量が減少するかゼロである時、黄色い色調の大幅な低減が得られることを明らかにした。
【0508】
本発明者らはさらに、インクジェット印刷プロセス中の作業温度より高い(例えば70、80又は100℃より高い)Tgを特徴とする多官能(メタ)アクリレートの量を低減ないしはゼロにすることで黄色い色調が大幅に低減することを明らかにした。
【0509】
本発明者らはしたがって、A2及びBとして定義されるそれぞれの成分を5重量%以下しか含まない、好ましくはそれを含まない配合物を考案した。本発明者らは、配合物の粘度及び平均Tgを参照配合物と同じように維持するために、必要な場合には、配合物内のその他の成分(例えばC1、C2、D1及びD2)の種類と量を調節した。
【0510】
例えば、本発明者らは、配合物の反応性の改善及び平均Tgを調整するために配合物内に成分Cの一部として成分C2を含ませ、平均Tgと粘度の調整のために成分D2を添加した。
【0511】
現在実用されている透明配合物は、さらに非硬化性の材料、例えば0~2重量%の硫黄含有化合物(H)、0.05~0.2若しくは0.05~0.15重量%の界面活性剤及び/又は他の添加剤(I)、0.1~0.2重量%の重合抑止剤(G)、及び任意で約1~5・10-4重量%の量の青い色合いを提供する薬剤(青の染料又は顔料)(J)を含み得る。
【0512】
本発明者らはさらに、少量の界面活性剤が(例えばプロセス要件に適う表面張力を提供するために)使用可能であることを明らかにした。さらに、黄色い色調の低減の結果として、本発明者らは、黄色い色調がある場合にそのマスキングに必要とされる青い色合いを提供する薬剤の量を、約1桁ほどの大幅な低減が可能であることを明らかにした。
【0513】
本発明者らは新規の透明造形材料配合物を設計した。それは、総量が約40重量%又は約45重量%から約60重量%までの、1以上の低分子量/低粘度の脂肪族単官能(メタ)アクリレート材料と、総量が約35重量%から約60重量%までの、1以上の中及び/又は高分子量/中及び/又は高粘度の多官能(メタ)アクリレート材料であって、平均Tgが24℃より高く、又は25℃より高く、かつ例えば30~70、又は30~60、又は40~60℃の範囲である多官能(メタ)アクリレート材料と、を含む。ここで、単官能(メタ)アクリレート(A)の少なくとも95%、好ましくは100%は、例えばA1に定義されるような、非芳香族単官能(メタ)アクリレートを含み、及び/又は、単官能(メタ)アクリレート(A)の、5%以下、好ましくは3%以下、好ましくは1%以下、より好ましくはゼロが、例えばA2に定義されるような芳香族単官能(メタ)アクリレートであり、及び/又は、多官能(メタ)アクリレートの、5%以下、好ましくは3%以下、好ましくは1%以下、より好ましくはゼロが、100℃より高い又は最高のプロセス温度(作業温度、すなわちインクジェット印刷ヘッド及び/又はノズルの温度、又は受容媒体の温度、又は1つの吐出層、若しくは複数の吐出層に発生する温度)より高い、例えばBに対して定義されるような、例えば80℃より高い、又は70℃より高いTgを特徴とする。
【0514】
1以上の多官能(メタ)アクリレートは好ましくは、例えばC(好ましくはC2又はC1とC2の混合物)に対して定義されるような、例えば、高MW/高粘度の多官能ウレタン(メタ)アクリレートなどの、平均Tgが50℃以下、好ましくは20~50℃であることを特徴とし、総量が約15重量%から約25重量%の、1以上の多官能(メタ)アクリレートと、例えばD1とD2に対して定義されるような、Tgが50℃より高い、例えば50~100又は50~80、又は50~70℃であることを特徴とし、総量が約20重量%から約30重量%の、1以上の多官能(メタ)アクリレートと、を含む。
【0515】
本明細書を通して、「低粘度」という用語は、硬化前に25℃における粘度が500センチポアズ以下であることを特徴とする材料を表す。
【0516】
本明細書を通して、「中粘度」という用語は、硬化前に25℃における粘度が500~2000センチポアズであることを特徴とする材料を表す。
【0517】
本明細書を通して、「高粘度」という用語は、硬化前に25℃で測定したときに粘度が2000センチポアズより高い、好ましくは2000~10000センチポアズの範囲にあることを特徴とする材料を表す。
【0518】
本明細書を通して、「低MW」という用語は、硬化前に500グラム/モル以下、さらには400グラム/モル以下の分子量を特徴とする材料を表す。
【0519】
本明細書を通して、「中MW」という用語は、硬化前に500グラム/モルから約1000グラム/モルの分子量を特徴とする材料を表す。
【0520】
本明細書を通して、「高MW」という用語は、硬化前に1000グラム/モルより高い分子量を特徴とする材料を表す。
【0521】
中MW及び高MW材料は、本明細書ではオリゴマー材料又はオリゴマーとも呼ばれる。
【0522】
本明細書において、低(あるいは高又は中)MW/低(あるいは高又は中)粘度が示されるときはいつでも、それは示されたMWの特徴及び/又は示された粘度の特徴を意味する。
【0523】
本明細書を通して、平均Tgは、各成分のTgにその相対重量部を掛けた合計をそれぞれの重量部の合計で割ったものを意味する。
【0524】
例えば、材料AがX重量パーセントの量だけ含まれてTg1であるとし、材料BがY重量パーセントの量だけ含まれてTg2であるとすると、材料AとBの平均Tgは本明細書では次のように計算される。
平均Tg=(X×Tg1+Y×Tg2)/(X+Y)
【0525】
本明細書で記載するように、特定の材料のグループに対して1つの材料しか存在しない場合には、この材料の平均Tgはその材料のTgである。
【0526】
新しく設計された透明配合物は、総量が1重量%以下の、1以上の光開始剤を含む。これらの配合物は、本明細書で定義するように、部分反応性又は部分硬化性の配合物とみなされる。
【0527】
新しく設計された透明配合物は、例えば1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満の抑止剤、表面活性剤、及び/又は5・10-4未満、好ましくは0~1・10-4の範囲の量の、青い色合いを提供する着色料などの、本明細書に記載の1以上の非反応性(非硬化性)材料(例えば本明細書に成分G及びIとして記載されている添加剤)を、さらに含み得る。
【0528】
下の表3Aは、本実施形態のいくつかによる、例示的透明配合物の化学組成を示す。これは本明細書では例示的配合物(配合物例)Iとも称す。
【表3A】
【0529】
下の表3Bは、本実施形態のいくつかによる、例示的透明配合物の化学組成を示す。これは本明細書では例示的配合物(配合物例)IIとも称す。
【表3B】
【0530】
ここに示す配合物は、75℃での粘度が10~20センチポアズの範囲、表面張力が20~40dynes/cmであり、噴射可能であり、したがって3Dインクジェット印刷のプロセス要件を満たす。
【0531】
ここに記載の配合物は許容可能な貯蔵安定性も示し(85℃で14日間貯蔵して粘度と表面張力の変化を試験)、これは配合物例I及びIIなどの対応する反応性配合物と実質的に同等である。
【0532】
本発明者らは、ここで述べた低PI含有で部分反応性の配合物を、例えばStratsys J-750システムを使用した3Dインクジェット印刷に利用した。印刷された物体に縁曲は見られなかった。
【0533】
本発明者らは、本明細書で説明した透明造形配合物(例えば配合物例I又はII)を使用して3Dインクジェット印刷により物体を製造可能であるが、低PI含有で部分反応性の透明配合物(例えば配合物例I又はII)を、例えば参照配合物Iなどの完全なPI含有量の反応性透明配合物との組み合わせで、例えば
図5A、5B、及び
図7Cにも例示するようなマルチ材料(例えばデジタル材料DM)方式で使用するとき、改善された物体が得られることを明らかにした。
【0534】
図7A及び
図7Bは、本実施形態による例示的配合物で作られた立方体物体の写真であり、配合物例Iそのもので作られた立方体物体(
図7A)と、
図7Cに示す印刷方式により、本実施形態による例示的な部分反応性配合物である配合物例Iで作られたコアを、例えば参照配合物Iなどの完全なPI含有量の反応性透明配合物で作られた0.5mm厚の外側層で包んだ立方体物体(
図7B)、である。
【0535】
図8は、内部コアを、参照配合物Iでできた0.5mm厚の被覆で包んだ立方体物体の写真であり、ここで内部コアを、上の表2Bに示す例示的反応性配合物である参照配合物IIを用いて作製したもの(左の物体)と、内部コアを同じ配合物に青い色合いを与える着色料を添加して作製したもの(中央の物体)と、上の表3Bに示す例示的配合物IIを用いて作製したもの(右の物体)と、を示す。内部コアとして本実施形態のいくつかによる配合物を使用するときに、黄色い色調がほぼ消えた有利な透明性が示されている。
【0536】
図9は、上の表2Aに示す例示的反応性配合物、参照配合物Iで作製した立方体物体(左の物体)と、同じ配合物に青い色合いを与える着色料を添加しないで作製した立方体物体(中央の物体)と、上の表3Aに示す例示的配合物Iを内部コアとし、それを参照配合物Iで作られた0.5mm厚の外側層で包んで作製した立方体物体(右の物体)とを示し、本実施形態のいくつかによる配合物によって、黄色い色調がほぼ消えた有利な透明性が示されている。
【0537】
支持材料配合物を必要とする物体もまた、本明細書に記載の配合物を使用して印刷した。この時、例えば、SUP705およびSUP706として市販されているような市販の支持配合物を使用した。
【0538】
実施例4
インクジェット印刷プロセスパラメータ
【0539】
前述したように、最終物体の透過率特性が作製された層の配向に顕著に依存することを予期せずに見出した。立方体形状の物体の面を通る透過率に対する、作製した層の再配向の影響を調べるために実験を行った。第1の物体は、そのそれぞれの面が、x-y、x-z及びy-z面の1つに平行であるように作製した。作製の後、以下で説明するように、後工程である光脱色処理を24時間行い、それぞれの面を以下で述べるように研磨した(実施例5参照)。第1の物体作製のために使用したスライスデータに、その後、これらの3つの軸x、y及びzのすべてに関して45°の回転変換を施し、同一寸法及び材料の第2の物体を、その第2物体の各面が、x-y、x-z及びy-z面のそれぞれと45°をなすようにして作製した。作製の後、後工程である光脱色処理を24時間行い、それぞれの面を以下の実施例5で述べるように研磨した。
【0540】
第1及び第2の物体の各面を介する透過率をエックスライト社のCi7860を用いて測定した。結果を、
図10に示す。
図10において、物体の面はX、Y及びZとして表記した。図に示すように、座標の回転変換のない場合にはX、Y及びZ面を介した透過率の値は、それぞれ58.33±7.53、65.52±10.07、及び80.46±0.51であった。座標の回転変換の後にはX、Y及びZ面を介した透過率の値は、それぞれ79.62±1.92、81.45±1.28、及び81.77±1.77であった。
【0541】
この実施例は、スライスデータに座標の回転変換を適用することにより、光学透過率の改善が達成可能であることを示している。
【0542】
実施例5
印刷後処理
【0543】
本明細書に記載の透明配合物を使用して作製した物体を、印刷物体を100ワット、6500KのLEDランプを使用してLED照射に曝し、かつ任意選択で例えば35~55℃の熱に曝すことにより光脱色にかけた。照射と加熱は、例えば1時間、2時間、又はそれ以上、例えば1~24時間、又は2~24時間の間実行可能である。
【0544】
図11Aと
図11Bは、例示的透明配合物Iである配合物例Iを使用して作製した例示的物体の、本明細書に記載の24時間光脱色に曝す前後の写真を示す。
【0545】
最終物体に所望の光学特性を達成するための、印刷物体を光脱色に曝す所要時間は、物体又はその透明部分の寸法、形状及び特に幅又は深さと、所望の光学特性とに依存する。
【0546】
特定の物体に対する光脱色の時間を決定するために、光脱色処理の間、L*a*b*、透過率及び黄色指数などのパラメータを監視することが可能である。
【0547】
下の表4は、40×40×10mm(10mm厚さ)の物体の光脱色への曝露時間に対するそのような測定で得られたデータを示す。
【表4】
【0548】
【0549】
光脱色は、印刷処理後直ちに、又は物体の印刷後の任意の時刻において実行可能である。
【0550】
いずれの特定の理論に拘束されることなく、光脱色に曝すことでPIの残留量の分解を加速し、印刷された物体内の部分硬化した材料の更なる固化(例えば、硬化、重合)も促進し得ると考えられる。すなわち印刷された物体内の硬化性材料の全体的な固化の度合いを増加させる。
【0551】
本明細書に記載の透明材料を使用して作製した物体は、任意選択によりさらに研磨をかけることもできる。
【0552】
例示的な実施形態において、研磨はサンドペーパを用いて行われる。いくつかの実施形態では、粗い等級から1段以上細かい等級までの異なる等級の2以上のサンドペーパを用いて研磨が行われる。例示的な実施形態では、研磨はまずP240等級のサンドペーパを用い、次にP1000等級のサンドペーパ、次にP2000等級のサンドペーパを用いて行われる。任意選択により、更なる研磨が平滑用サンダー及び研磨機を用いて行われる。さらに任意で、最終物体にスクラッチ防止ペーストが塗布される。
【0553】
実施例6
印刷物体の機械的、物理的及び光学的特性
光学的特性:
【0554】
本明細書に記載の透明配合物で作製した物体の透過率、黄色度指数(YI)及びL*a*b*値を測定した。
【0555】
本明細書に記載の通り、立方体物体40×40×6mmを、配合物例I及び配合物例IIを使用して(本明細書に記載のDM方式で)印刷し、参照配合物I及びパースペックス(登録商標)(PMMA)と比較した。
【0556】
その物体を通過する光のパーセンテージである透過率をX-rite社のCi7860装置を用いて測定した。
【0557】
黄色度指数をASTM D1925に従って決定した。
【0558】
定量的な色測定に関しては、
図13に示す、CIE色システムを使用するX-Rite測定手法(CIEL
*a
*b
*色スケールに基づく;ここでL
*は明度を定義し、a
*は赤/緑の値を示し、b
*は黄/青の値を表す)を使用した。色測定に適用する標準光源は昼光とした。
【0559】
上の実施例5で述べた後処理後の40×40×6mmの立方体物体に対する、これらの測定で得られたデータを、表5に示す。値は6mm面に対するものである。
【表5】
【0560】
これからわかるように、本実施形態の透明配合物で作られた物体は、パースペックス(登録商標)(PMMA)に近い光学的特徴を示し、特に、大幅に低いYI、並びに大幅に高い透過率及び明度値を示す。
【0561】
図14は、参照配合物Iを使用して作製した例示物体(上側の物体)と本明細書に記載の配合物例Iを使用して作製した同じ例示物体の写真を示し、本実施形態による透明配合物の使用で得られる、有利な透明性と消された色合いをさらに実証する。
表面特性:
【0562】
図15に示すように、例示的配合物である配合物例Iで作製された物体は、改善された色特性に加えて、反応性参照配合物Iのみで作製したものと実質的に同じ表面特性を示す。
【0563】
物理的及び機械的特性:
【0564】
表6は、表3A及び表3Bに示す例示的配合物で作製した物体の特性を、参照配合物Iに比較して示す。これらはいずれも印刷物体に本明細書に記載の光脱色を施した後のものである。
【0565】
下の表6に示すように、本明細書に記載の透明配合物を用いて作製した物体は、参照配合物と比較して特性における大きな変化はなく、最大の変化は20%未満(引張強度に関して)である。
【表6】
【0566】
これらのデータは全体として、本実施形態の透明配合物を使用して光学特性に大幅な変化が達成されたが、他の特性では大きな変化は見られない(20%以下の変化、典型的には10%以下の変化のみ)ことを示す。
【0567】
本発明を、その特定の実施形態に関連して説明してきたが、当業者には多くの代替、修正、変形が明らかなことは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神及び広い範囲内にあるそのような代替、修正及び変形のすべてを包含することが意図されている。
【0568】
本明細書で言及したすべての刊行物、特許及び特許出願は、各個別の刊行物、特許及び特許出願が具体的かつ個別的に参照により本明細書に組み込まれるように表示された場合と同じ程度に、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、本出願内のいかなる参照の引用または特定も、そのような参照が本発明に対する先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈されるべきではない。セクション見出しに使用される限りでは、それらは必ずしも制限的であると解釈されるべきではない。さらに、本出願の任意の優先権文書は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】