(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-16
(54)【発明の名称】特にエレベータシステムにおいて、データコンテンツを通信するための方法およびデータネットワーク
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20220909BHJP
【FI】
H04L12/28 400
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500879
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(85)【翻訳文提出日】2022-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2020068379
(87)【国際公開番号】W WO2021004835
(87)【国際公開日】2021-01-14
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040729
【氏名又は名称】インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】INVENTIO AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホーゼマン,アクセル
(72)【発明者】
【氏名】クルンメナヒャー,アンドレ
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033DA12
(57)【要約】
本発明は、特にエレベータシステムにおいて、データコンテンツを通信するための方法およびデータネットワーク(1)に関する。データネットワーク(1)は、互いの間で多数のビットからなるデータテレグラム(31)を交換するためにデータ通信経路(7)を介して互いに接続されたマスタユニット(3)と複数のスレーブユニット(5)とを備える。マスタユニット(3)とスレーブユニット(5)とは、データ通信経路(7)を介してチェーンを形成するために互いに直列に接続され、データテレグラム(31)は、外向きデータ経路(39)上でマスタユニット(3)から最後のスレーブユニット(29)に送信される。最後のスレーブユニット(29)は、データテレグラム(31)をマスタユニット(3)に戻すことによってデータ戻り経路(41)を開始する。データテレグラム(31)は、もっぱらデータ戻り経路(41)中にスレーブユニット(5)によって変更され、少なくとも1つのスレーブユニット(5)は、データテレグラム(31)を受信し、評価した直後に、マスタユニット(3)によって要求された情報をコンパイルすることを始める。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データネットワーク(1)が、マスタユニット(3)と複数のスレーブユニット(5)とを備え、マスタユニット(3)とスレーブユニット(5)とが、互いの間で多数のビットからなるデータテレグラム(31)を交換するためにデータ通信経路(7)を介して互いに接続され、
各データテレグラム(31)が、ヘッダ(33)と、データグラム領域(35)と、チェックサム(37)とを含み、データグラム領域(35)が、複数のデータグラム(D
1、...、D
n)の直列格納のために構成され、各データグラム(D
1、...、D
n)が、通信されるべき1つのデータコンテンツを含み、チェックサム(37)が、データテレグラム(31)の残部中のビットに基づいて一意に計算され、
マスタユニット(3)とスレーブユニット(5)とが、データ通信経路(7)を介してチェーンを形成するために互いに直列に接続され、
マスタユニット(3)が、最後のスレーブユニット(29)まで、外向きデータ経路(39)上で第1のスレーブユニット(27)にデータテレグラム(31)を送信し、
最後のスレーブユニット(29)を除いて、スレーブユニット(5)の各々が、第1のデータ接続(23)においてマスタユニット(3)からの方向から受信されたデータテレグラム(31)を、第2のデータ接続(25)を介して最後のスレーブユニット(29)に向かう方向に転送し、第2のデータ接続(25)において最後のスレーブユニット(29)からの方向から受信されたデータテレグラム(31)を、第1のデータ接続(23)を介してマスタユニット(3)に向かう方向に転送し、
最後のスレーブユニット(29)が、第1のデータ接続(23)においてマスタユニット(3)からの方向から受信されたデータグラム(D
1、...、D
n)を、第1のデータ接続(23)を介してマスタユニット(3)に向かう方向に戻すことによって、データ戻り経路(41)を開始し、
データテレグラム(31)が、もっぱらデータ戻り経路(41)中にスレーブユニット(5)によって変更される、特にエレベータシステムにおいて、データネットワーク(1)内でデータコンテンツを通信するための方法であって、
スレーブユニット(5)が、データテレグラム(31)を転送し、変更するためのプロセッサユニット(18)を有し、少なくとも1つのプロセッサユニット(18)は、外向きデータ経路(39)上のデータテレグラム(31)を読み取り、評価し、データテレグラム(31)が、データ戻り経路(41)上でマスタユニット(3)に情報を送信するための特定のスレーブユニット(5)に対する要求を含んでいる場合、対応する命令を受信し、評価した直後に、要求された情報をコンパイルすることを始めるように構成されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
最後のスレーブユニット(29)が、データ戻り経路(41)を開始する前に、調整可能な時間期間待機する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
方法が、
- スレーブユニット(5)が、マスタユニット(3)からまたは隣接するスレーブユニット(5)からデータテレグラム(31)を受信し、それが受信されている間にデータテレグラム(31)の一部を別の隣接するスレーブユニット(5)にまたはマスタユニット(3)に転送すること
を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
方法が、
- データテレグラム(31)のチェックサム(37)を検査することと、
- データグラム領域(35)中の最後のすでに格納されたデータグラム(D
1、...、D
n)の後に補足データグラム(D
1、...、D
n)を付加することであって、補足データグラム(D
1、...、D
n)が、スレーブユニット(5)によって通信されるべき1つのデータコンテンツを含む、ことと、
- 補足データグラム(D
1、...、D
n)によって拡大されたデータテレグラム(31)の残り中のビットに基づいて新しいチェックサム(37)を計算し、新たに計算されたチェックサム(37)をデータテレグラム(31)の終わりに付加することと
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
スレーブユニット(5)の各々が、自発的にマスタユニット(3)とのデータ通信をアクティブにスタートし、この目的でマスタユニット(3)にデータテレグラム(31)を送るように構成され、
スレーブユニット(5)の各々が、データ通信をアクティブにスタートする前に衝突ハンドリングを行い、次いで、スレーブユニット(5)が現在データテレグラム(31)を受信および転送していない場合にのみ、自発的にデータテレグラム(31)を送る、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
データテレグラム(31)が、撚り二重線(9)の形態のデータ通信経路(7)を介して交換される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
データネットワーク(1)が、マスタユニット(3)と複数のスレーブユニット(5)とを備え、マスタユニット(3)とスレーブユニット(5)とが、互いの間で多数のビットからなるデータテレグラム(31)を交換するためにデータ通信経路(7)を介して互いに接続され、
各データテレグラム(31)が、ヘッダ(33)と、データグラム領域(35)と、チェックサム(37)とを含み、データグラム領域(35)が、複数のデータグラム(D
1、...、D
n)の直列格納のために構成され、各データグラム(D
1、...、D
n)が、通信されるべき1つのデータコンテンツを含み、チェックサム(37)が、データテレグラム(31)の残部中のビットに基づいて一意に計算され、
マスタユニット(3)とスレーブユニット(5)とが、データ通信経路(7)を介してチェーンを形成するために互いに直列に接続され、
マスタユニット(3)が、マスタプロセッサユニット(17)と、少なくとも1つのデータ接続(19)とを有し、スレーブユニット(5)の各々が、プロセッサユニット(18)と、第1および第2のデータ接続(23、25)とを有し、
マスタユニット(3)が、最後のスレーブユニット(29)まで、外向きデータ経路(39)上で第1のスレーブユニット(27)にそのデータ接続(19)を介してデータテレグラム(31)を送信するように構成され、
最後のスレーブユニット(29)を除いて、スレーブユニット(5)の各々が、その第1のデータ接続(23)においてマスタユニット(3)からの方向から受信されたデータテレグラム(31)を、その第2のデータ接続(25)を介して最後のスレーブユニット(29)に向かう方向に転送し、第2のデータ接続(25)において最後のスレーブユニット(29)からの方向から受信されたデータテレグラム(31)を、その第1のデータ接続(23)を介してマスタユニット(3)に向かう方向に転送するように構成され、
最後のスレーブユニット(29)が、その第1のデータ接続(23)においてマスタユニット(3)からの方向から受信されたデータテレグラム(31)を、第1のデータ接続(23)を介してマスタユニット(3)に向かう方向に戻すことによって、データ戻り経路(41)を開始するように構成され、
スレーブユニット(3)の各々が、もっぱらデータ戻り経路(41)中にデータテレグラム(31)を変更するように構成される、特にエレベータシステムにおいて、データネットワーク(1)内でデータコンテンツを通信するためのデータネットワークであって、
スレーブユニット(5)の少なくとも1つのプロセッサユニット(18)が、外向きデータ経路(39)上のデータテレグラム(31)を読み取り、評価し、データテレグラム(31)が、データ戻り経路(41)上でマスタユニット(3)に情報を送信するための特定のスレーブユニット(5)に対する要求を含んでいる場合、対応する命令を受信し、評価した直後に、要求された情報をコンパイルすることを始めるように構成されることを特徴とする、データネットワーク。
【請求項8】
最後のスレーブユニット(29)が、データ戻り経路(41)を開始する前に、調整可能な時間期間待機するように構成された、請求項7に記載のデータネットワーク。
【請求項9】
スレーブユニット(5)の各々が、
- マスタユニット(3)からまたは隣接するスレーブユニット(5)からデータテレグラム(31)を受信し、それが受信されている間にデータテレグラム(31)の一部を別の隣接するスレーブユニット(5)にまたはマスタユニット(3)に転送するように構成された、請求項7または8に記載のデータネットワーク。
【請求項10】
スレーブユニット(5)の各々が、
- データテレグラム(31)のチェックサム(37)を検査し、
- データグラム領域(35)中の最後のすでに格納されたデータグラム(D
1、...、D
n)の後に補足データグラム(D
1、...、D
n)を付加し、補足データグラム(D
1、...、D
n)が、スレーブユニット(5)によって通信されるべき1つのデータコンテンツを含んでおり、
- 補足データグラム(D
1、...、D
n)によって拡大されたデータテレグラム(31)の残り中のビットに基づいて新しいチェックサム(37)を計算し、新たに計算されたチェックサム(37)をデータテレグラム(31)の終わりに付加する
ように構成される、請求項9に記載のデータネットワーク。
【請求項11】
スレーブユニット(5)の各々が、自発的にマスタユニット(3)とのデータ通信をアクティブにスタートし、この目的でマスタユニット(3)にデータテレグラム(31)を送るように構成され、
スレーブユニット(5)の各々が、データ通信をアクティブにスタートする前に衝突ハンドリングを行い、次いで、スレーブユニット(5)が現在データテレグラム(31)を受信および転送していない場合にのみ、自発的にデータテレグラム(31)を送るように構成された、請求項7から10のいずれか一項に記載のデータネットワーク。
【請求項12】
データ通信経路(7)が、撚り二重線(9)によって実装される、請求項7から11のいずれか一項に記載のデータネットワーク。
【請求項13】
請求項7から12のいずれか一項に記載のデータネットワーク(1)を有するエレベータシステム(101)。
【請求項14】
エレベータシステム(101)が、コントローラ(113)を有し、コントローラ(113)の制御下で建築物内のいくつかのフロア(111)をサーブし、
データネットワーク(1)が、いくつかのフロア(111)に沿って延び、
セキュリティデバイス(11)が、フロア(111)の各々に配置され、セキュリティデバイスが、データコンテンツを決定し、データコンテンツをデータネットワーク(1)の割り当てられたスレーブユニット(5)に送信するように構成され、
エレベータ制御(113)が、データネットワーク(1)のマスタユニット(3)からデータコンテンツを受信し、それに基づいてエレベータシステム(101)の機能を制御するように構成された、請求項13に記載のエレベータシステム(101)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データネットワーク内でデータコンテンツを通信するための方法に関する。本発明はまた、本発明による方法を実行するように構成されたデータネットワークに関する。本発明はまた、そのようなデータネットワークを装備したエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
データネットワークは、特に、異なるデバイスまたは機械間でデータまたは信号を交換するために使用される。たとえば、分散された様式で配置されたフィールドデバイスは、データネットワークを介して、中央コントローラと、および/または互いに、データを交換することができる。フィールドデバイスの各々は、たとえば、センサーおよび/またはアクチュエータを有することができる。センサーによって記録される測定データまたは他の信号は、その場合、データネットワークを介してコントローラに送信され得る。代替としてまたはさらに、データは、たとえば、制御信号の形態で、コントローラからセンサーまたはアクチュエータに送信され得る。
【0003】
エレベータシステムにおけるデータネットワークの例を使用して、データネットワークの可能な構成、およびデータネットワークによってデータコンテンツを通信するための方法について以下で説明する。しかしながら、本明細書で説明するデータネットワークの実施形態およびそれを用いて実行され得る通信方法の実施形態は、様々な他の用途においても使用され得ることが指摘されるべきである。本明細書で説明する手法は、特に、多数のフィールドデバイスがコントローラと通信し、フィールドデバイスが互いから比較的大きい距離に配置される用途にとって好適である。
【0004】
エレベータシステムでは、エレベータシャフトに沿ったエレベータかごの変位は、一般に、エレベータかごがそれによって変位させられる駆動機械の動作を制御するコントローラによって一元的に引き起こされる。特に、エレベータシステムの動作中の安全を保証することができるように、多くの安全デバイスが、通常、たとえば、センサー、検出器および/または安全スイッチの形態で、エレベータシステムにわたって分散され、それによってエレベータシステム内の局所的状況が識別され得る。
【0005】
たとえば、エレベータかごが多数のフロアに近づくことができるエレベータシステムでは、フロアドアがフロアの各々に設けられ、そのドアは、フロアとエレベータシャフトとの間のアクセスを随意に阻止または許可することができる。エレベータかごは、すべてのフロアのフロアドアが閉じられたときにのみ移動されることが可能であるべきである。この目的で、たとえば、関連するフロアドアが正しく閉じられ、ロックされたときに好適な信号を生成する、いわゆるドアセンサーまたはドアスイッチが各フロアドアに設けられ得る。
【0006】
従来、そのようなドアスイッチは、安全チェーンを形成するために直列に接続された。安全チェーンはエレベータ制御によって監視され得、安全チェーン全体、したがって、その中に統合されたすべてのドアスイッチが閉じられた場合にのみ、エレベータかごの変位が許され得た。
【0007】
しかしながら、説明した安全チェーンの従来の実装では、安全チェーンが中断された場合、その中に統合されたドアスイッチのどれが現在開いており、中断を引き起こしているかが容易にはっきりとしなかった。さらに、以前は、エレベータドアの閉じられたステータスに関する極めて単純で、簡単な情報のみが安全チェーン内で送信されたが、さらなる情報は送信されなかった。
【0008】
また、エレベータシステムでは、それに関係する情報がエレベータコントローラによって使用され得るように、たとえば、エレベータシステムにおける局所的に支配的な状態がそれによって測定され得る、追加のセンサーまたは他の安全関連デバイスを設けることが慣例である。たとえば、センサーが各フロアに設けられ得、それによって、問題のフロアのエレベータかごが停止位置の上または下の許容差範囲内に位置するかどうかが決定され得る。この情報は、たとえば、停止位置に到達する少し前にエレベータドアを開かせるために使用され得る。この場合、しかしながら、エレベータコントローラは、多くのセンサーのうちのどれから対応する信号が発信するかを知っていなければならない。従来、これは、センサーの各々がコントローラに個別に、したがって複雑な様式で有線接続されなければならないことを意味することがある。
【0009】
述べた欠点を克服するために、とりわけ、現代のエレベータシステムではデータネットワークが使用され、その場合、それらを介して多数のセンサーとエレベータコントローラとの間でデータおよび信号が交換され得る。
【0010】
このコンテキストにおいて、データネットワークは、コンピュータ、センサー、アクチュエータ、エージェント、および他の電子構成要素などの、様々な技術的なシステム、主に独立した電子システムの融合を意味すると理解され得、この融合は、個々のシステムが互いに通信することを可能にする。ここでの目的はリソースの共同利用であり得る。通信は、一般に、とりわけ、データコンテンツが構造化され、送信されるべき方法を指定する、事前定義されたプロトコルを使用して行われる。データコンテンツは、通常、プロトコルによって指定された構造をもつ、いわゆるデータテレグラム中にユーザデータとして埋め込まれる。データネットワークでは、共通のリソースへのアクセスに関する階層管理が通常実装され、データネットワーク中の1つのサブスクライバがマスタユニットとして働き、すべての他のサブスクライバがスレーブユニットとして働く。マスタユニットのみが、一緒に使用されるべきデータ送信チャネルなど、共通のリソースへの未承諾アクセスの権利を有する。通例、スレーブユニットは、共通のリソースに自発的にアクセスすることができないが、それらがマスタユニットによって請われるまで待機するか、またはそれらが請われること希望することを、共通のリソースを超えた接続を介してマスタユニットに示さなければならない。
【0011】
従来、セキュリティチェーン内で送信されていたセキュリティ関連情報に加えて、さらなる非セキュリティ関連情報もデータネットワークを介して送信され得る。たとえば、エレベータシステムの複雑な通報システムのための広範な非安全関連情報が、たとえば、タッチパッド上の画像表示とともに、データネットワークを介して送信され得る。
【0012】
従来、このコンテキストでは、たとえば、CANバスアーキテクチャ(CAN-コントローラエリアネットワーク)を使用するデータネットワークが使用されてきた。
【0013】
より一層現代的なエレベータシステムでは、目的は、たとえば、よりコスト効果的であり、設置がより容易であり、エラー解析における利点を与え、および/あるいはより高いまたはよりセキュアなデータ送信を可能にする、代替データネットワークを使用することである。
【0014】
たとえば、イーサネットとして知られているデータネットワークが開発されてきた。特に、短距離にわたる高速でロバストなデータ通信を可能にする、イーサネット規格IEEE802.3bw.100BASE-T1が開発されている。これらのデータネットワークは、しばしば、自動車用途において遭遇する要件などの要件に関して開発された。特に、そのようなデータネットワークのために、物理レイヤまたは略してPHYとも呼ばれる特殊な電子構成要素が開発されている。そのようなPHYは、今や標準構成要素であり、安価に利用可能である。
【0015】
他の用途のための、特に、エレベータシステムおいて使用するためのデータネットワークのために、すでに自動車用途のために十分に開発された、すでに知られているコスト効果的な電子構成要素、特にPHYも使用することが可能であることは有利であると思われる。
【0016】
しかしながら、このことは、自動車とそれらの電子構成要素、特に、それらのPHYとにおいて使用するために開発されたデータネットワークが、一般に、15mよりも短い短距離のみにわたるデータ送信のために開発されたという事実によって複雑にされている。エレベータシステムにおいて使用されるべきデータネットワークの場合、しかしながら、一般に、各フロアに1つ以上のセンサーが設けられ、それらは、データネットワークを介して比較的遠くにあるコントローラと通信することが意図される。データネットワークが、たとえば、直列に接続された多数の電子構成要素から形成される場合、したがって、各フロアのデータネットワークを介して送信されるべき信号を反復または増幅することが必要であるように思われる。従来のイーサネットデータネットワークでは、このことは、たとえば、マイクロコントローラが入来データレコードまたは入来信号シーケンスを読み取り、次いで、送信されたデータの完全性を検査するために送られたチェックサム(たとえばイーサネットCRC32)を検証し、必要な場合、データレコードからデータを読み出すか、またはそれ自体のデータをデータレコードに格納し、次いで、必要な場合、増加した信号強度および/または新しいチェックサムとともに、新しいアドレスをもつ次の電子構成要素にデータレコードを送信する、電子構成要素を必要とするであろう。このために使用されるべきサイクルは、たとえば1500バイトのデータレコードについて、すでに、かなりの時間遅延につながる。直列に接続された多数の電子構成要素上に多数の反復(たとえば100回超の反復)が実装されなければならない、極めて高いエレベータシステムにおいてなどの用途では、たとえば、100Mbpsの高いデータ送信レートにおいてさえ、リモート構成要素から多数の中間構成要素を介した中央コントローラへのデータ送信において、かなりの遅延がこのようにして引き起こされ得る。このことは、ミリ秒範囲、たとえば数十ミリ秒の遅延を引き起こすことがある。このことは、そのような用途におけるデータ送信の高速なおよび/または信頼できる機能を抑制するか、または妨害することさえある。
【0017】
そこにおいて使用され得るデータ伝送プロトコルを含む、さらに発達したデータネットワークが特殊な用途のために開発されてきた。たとえば、超高速データ送信、使用されるべきトポロジーの大いに自由な選定、多用途の利用可能性、簡単な実装、使用されるべき電子構成要素についての比較的低いコスト、高い機能安全性および/または他の利点を与える、特殊なイーサネットフィールドバスが「EtherCAT」という名称で知られている。
【0018】
さらに、DE102010003448A1は、アドレッシング方法と、そのようなアドレッシング方法をもつ通信ネットワークとを記載しており、DE102015117937B3は、通信ネットワークと、そのような通信ネットワークを動作させるための方法と、通信ネットワーク中のサブスクライバとを説明している。
【0019】
米国特許出願公開第2017/0222829(A1)号は、チェーンを形成するためにサブスクライバが互いに直列に接続された、データネットワーク内でデータコンテンツを通信するための方法を説明している。サブスクライバによって送られたデータグラムは、サブスクライバによって前に受信されたデータテレグラムに付加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】独国特許出願公開第102010003448号明細書
【特許文献2】独国特許発明第102015117937号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2017/0222829号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
とりわけ、データネットワーク内でデータコンテンツを通信するための代替方法、およびそのようなデータ通信のために構成されたデータネットワークの必要があり得る。特に、データネットワーク内でデータコンテンツを通信するための方法、および特にまた、数十メートルから数百メートルまでのより長い距離にわたる、データのより高速で、より信頼できる交換が、容易におよび安価に利用可能な電子構成要素を使用して可能にされる、そのようなデータ通信のために構成されたデータネットワークの必要があり得る。さらに、容易に構成され、および/または異なる用途条件にフレキシブルに適応され得る通信方法またはデータネットワークが必要であり得る。さらに、そのようなデータネットワークを装備したエレベータシステムが必要であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この種の必要は、独立クレームのいずれかに記載の主題によって満たされ得る。有利な実施形態は、従属クレームおよび以下の説明において定義される。
【0023】
本発明の第1の態様によれば、特にエレベータシステムにおいて、データネットワーク内でデータコンテンツを通信するための方法が提案される。この場合、データネットワークは、マスタユニットと複数のスレーブユニットとを備える。マスタユニットとスレーブユニットとは、互いの間で多数のビットからなるデータテレグラムを交換するために、データ通信経路を介して互いに接続される。各データテレグラムは、ヘッダと、データグラム領域と、チェックサムとを含む。データグラム領域は、複数のデータグラムの直列格納のために構成される。各データグラムは、通信されるべき1つのデータコンテンツを含む。チェックサムは、データテレグラムの残部中のビットに基づいて明確に計算されなければならない。マスタユニットとスレーブユニットとは、データ通信経路を介してチェーンを形成するために互いに直列に接続される。マスタユニットは、最後のスレーブユニットまで、外向きデータ経路上で第1のスレーブユニットにデータテレグラムを送信する。最後のスレーブユニットを除いて、スレーブユニットの各々は、第1のデータ接続においてマスタユニットからの方向から受信されたデータテレグラムを、第2のデータ接続を介して最後のスレーブユニットに向かう方向に転送する。最後のスレーブユニットは、第1のデータ接続においてマスタユニットからの方向から受信されたデータテレグラムを、第1のデータ接続を介してマスタユニットに向かう方向に戻すことによって、データ戻り経路を開始する。データ戻り経路中に、スレーブユニットの各々は、第2のデータ接続において最後のスレーブユニットからの方向から受信されたデータテレグラムを、第1のデータ接続を介してマスタユニットに向かう方向に転送する。スレーブユニットは、データテレグラムを転送し、変更するためのプロセッサユニットを有する。プロセッサユニットの少なくとも1つ、特にすべては、外向きデータ経路上のデータテレグラムを読み取り、評価し、データテレグラムが、データ戻り経路上でマスタユニットに情報を送信するための特定のスレーブユニットに対する要求を含んでいる場合、対応する命令を受信し、評価した直後に、要求された情報をコンパイルすることを始めるように構成される。
【0024】
本発明の第2の態様によれば、特にエレベータシステムにおいて、データネットワーク内でデータコンテンツを通信するためのデータネットワークが提案される。データネットワークは、本発明の第1の態様の一実施形態による方法を実行するように構成される。
【0025】
特にエレベータシステムにおいて、データネットワーク内でデータコンテンツを通信するためのそのようなデータネットワークは、マスタユニットと複数のスレーブユニットとを備える。マスタユニットとスレーブユニットとは、互いの間で多数のビットからなるデータテレグラムを交換するためにデータ通信経路を介して互いに接続される。上記ですでに述べたように、各データテレグラムは、ヘッダと、データグラム領域と、チェックサムとを含む。マスタユニットとスレーブユニットとは、データ通信経路を介してチェーンを形成するために互いに直列に接続される。マスタユニットは、マスタプロセッサユニットと、少なくとも1つのデータ接続とを有し、スレーブユニットの各々は、プロセッサユニットと、第1および第2のデータ接続とを有する。マスタユニットは、最後のスレーブユニットまで、外向きデータ経路上でそのデータ接続を介して第1のスレーブユニットにデータテレグラムを送信するように構成される。最後のスレーブユニットを除いて、スレーブユニットの各々は、その第1のデータ接続においてマスタユニットからの方向から受信されたデータテレグラムを、その第2のデータ接続を介して最後のスレーブユニットに向かう方向に転送し、第2のデータ接続において最後のスレーブユニットからの方向から受信されたデータテレグラムを、その第1のデータ接続を介してマスタユニットに向かう方向に転送するように構成される。最後のスレーブユニットは、その第1のデータ接続においてマスタユニットからの方向から受信されたデータテレグラムを、第1のデータ接続を介してマスタユニットに向かう方向に戻すことによって、データ戻り経路を開始するように構成される。スレーブユニットの各々は、もっぱらデータ戻り経路中にデータテレグラムを変更するように構成され、スレーブユニットのプロセッサユニットの少なくとも1つ、特にすべては、外向きデータ経路上のデータテレグラムを読み取り、評価し、データテレグラムが、データ戻り経路上でマスタユニットに情報を送信するための特定のスレーブユニットに対する要求を含んでいる場合、対応する命令を受信し、評価した直後に、要求された情報をコンパイルすることを始めるように構成される。
【0026】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第2の態様の一実施形態によるデータネットワークを有するエレベータシステムが提案される。
【0027】
本発明の実施形態の可能な特徴および利点は、とりわけ、本発明を限定することなしに、以下で説明する概念および知見に基づいていると考えられ得る。
【0028】
序論ですでに記載したように、目的は、データが長い距離にわたって送信されるべきであり、多くのサブスクライバが電子構成要素の形態でデータネットワークに統合されるべきである、高いエレベータシステムなどの用途に現代のデータネットワーク構造を使用することである。
【0029】
データネットワーク中のサブスクライバは、データがサブスクライバ間で交換され得るように、データ送信チャネルとも呼ばれることがある、1つ以上のデータ通信経路を介して互いに接続される。データ通信経路は、たとえば、サブスクライバ間を走るケーブルによって、技術的に異なる方法で実装され得る。たいていの場合、隣接するサブスクライバは、2つまたはそれ以上のケーブルを使用して互いに有線接続される。
【0030】
たとえば、イーサネット規格に従って機能する従来のデータネットワークでは、送信されるべきデータコンテンツは、送信機として機能する電子構成要素と、受信機として機能する構成要素との間で交換される。送信機は、階層においてより高いレベルのマスタユニットであり得、受信機は、より低いレベルのスレーブユニットであり得る。マスタユニットからの要求に応答してなど、いくつかのコンスタレーションでは、しかしながら、スレーブユニットはまた、送信機として働き、マスタユニットまたは別のスレーブユニットにデータコンテンツを送ることができる。
【0031】
いくつかのデータコンテンツは、通常、データテレグラム中に埋め込まれる。データテレグラムは、一般に、少なくともヘッダと、データグラム領域と、チェックサムとを含む。ヘッダは、通常、とりわけ、ターゲットアドレス、タイプ仕様など、データ通信の秩序だった実装のために必要な情報を含む。データグラム領域は、一種のペイロードとして、データグラムの形態のデータテレグラムとともに送信されるべきデータコンテンツを受信するために設けられる。データグラム領域中に複数のデータグラムが格納され得る。CRC32(32ビットでの巡回冗長検査)など、チェックサムは、エラーを検出するために使用され、各データテレグラムについて個々に計算され、データテレグラム中に含まれるビット値のすべてを考慮に入れることから明確に導出される。
【0032】
従来のデータネットワークでは、データネットワークに参加している構成要素が、宛先アドレスを指定するそのようなデータテレグラムを、同じくデータネットワークに参加している隣接する構成要素に送る。データテレグラムは、一般に、そこで完全に読み取られる。送信されたデータの完全性は、その場合、送られたチェックサムをデータテレグラム中のビット値と比較すること、したがって、データテレグラムのコンテンツを正確性について検査することによって検査され得る。特定の構成要素から予想されるか、または特定の構成要素にアドレス指定されたデータは、一般に、これらの2つのプロセスステップが完了した後にのみ、送信されたデータテレグラムから抽出される。追加してまたは代替として、構成要素自体のデータはデータテレグラム中に格納され得、特別に割り当てられたメモリ領域が、一般に、データネットワークに参加している各構成要素についてデータテレグラム内に提供され、そのメモリ領域中に、この構成要素がそれのデータを格納するべきである。構成要素が、場合によっては変更されたデータテレグラムを次の構成要素に転送する前に、構成要素は、更新されたチェックサムを計算し、これをデータテレグラムに加える。
【0033】
従来のデータネットワークにおける説明したプロシージャは信頼でき、したがって、普及しているが、それはかなりのデータ処理労力を伴う。特に、多数のサブスクライバがデータネットワークを介してデータを送信することが可能であるべきである用途では、さらに、特に、極めて短いデータレコードのみ、すなわち、リトルデータがこれらのサブスクライバの各々から送信されるべき場合、従来のデータネットワークにおけるデータ送信においてかなりの時間遅延がある。これは、特に、実際のユーザデータは、データネットワークを介して送信され、ネットワークサブスクライバによって処理されるべき総データの少ない割合しか作り出さないという事実によるものであり得る。結果として、データネットワーク中で転送されるべきデータコンテンツの送信のために効果的に使用される帯域幅がかなり低減され得る。
【0034】
本発明によるデータ通信方法では、マスタユニットとスレーブユニットとは、データ通信経路を介してチェーンを形成するために互いに直列に接続される。マスタユニットは、最後のスレーブユニットまで外向きデータ経路上で、第1のスレーブユニットにデータテレグラムを送信する。最後のスレーブユニットを除いて、スレーブユニットの各々は、第1のデータ接続においてマスタユニットからの方向から受信されたデータテレグラムを、第2のデータ接続を介して最後のスレーブユニットに向かう方向に転送する。最後のスレーブユニットは、第1のデータ接続においてマスタユニットからの方向から受信されたデータテレグラムを、第1のデータ接続を介してマスタユニットに向かう方向に戻すことによって、データ戻り経路を開始する。データ戻り経路中に、スレーブユニットの各々は、第2のデータ接続において最後のスレーブユニットからの方向から受信されたデータテレグラムを、第1のデータ接続を介してマスタユニットに向かう方向に転送する。
【0035】
このようにして構成されたデータ通信方法を実行するように構成されたデータネットワークでは、マスタユニットはマスタプロセッサユニットと少なくとも1つのデータ接続とを有し、スレーブユニットの各々はプロセッサユニットと第1および第2のデータ接続とを有する。マスタユニットは、最後のスレーブユニットまで外向きデータ経路上で、第1のスレーブユニットにそれのデータ接続を介してデータテレグラムを送信するように構成される。最後のスレーブユニットを除いて、スレーブユニットの各々は、特に、外向きデータ経路中に、それの第1のデータ接続においてマスタユニットからの方向から受信されたデータテレグラムを、それの第2のデータ接続を介して最後のスレーブユニットに向かう方向に転送し、特に、データ戻り経路中に、第2のデータ接続において最後のスレーブユニットからの方向から受信されたデータテレグラムを、それの第1のデータ接続を介してマスタユニットに向かう方向に転送するように構成される。さらに、最後のスレーブユニットは、それの第1のデータ接続においてマスタユニットからの方向から受信されたデータテレグラムを、第1のデータ接続を介してマスタユニットに向かう方向に戻すことによって、データ戻り経路を開始するように構成される。
【0036】
言い換えれば、本明細書で提示されるデータネットワークのトポロジーは線形であり得る。マスタユニットは、始端または上端とも呼ばれることがある、データネットワークの第1のサイドに位置する。最後のスレーブユニットは、終端または下端とも呼ばれることがある、データネットワークの反対側の第2のサイドに位置する。マスタユニットと最後のスレーブユニットとの間にはいくつかの他のスレーブユニットがある。少なくとも名前付きのさらなるスレーブユニットは、好ましくは、すべて同様に構築される。前述のさらなるスレーブユニットの各々は、好ましくは、少なくとも2つのデータ接続を有する。前述のさらなるスレーブユニットの各々はデータ通信経路を介して2つの隣接するスレーブユニットに接続され、先行するスレーブユニットは第1のデータ接続に接続され、後続のスレーブユニットはこのスレーブユニットの第2のデータ接続に接続される。例外は第1のスレーブユニットおよび最後のスレーブユニットである。第1のスレーブユニットは、それの第1のデータ接続を介してマスタユニットに接続され、それの第2のデータ接続を介して隣接する第2のスレーブユニットに接続される。最後のスレーブユニットは、それの第1のデータ接続を介して、隣接する最後から2番目のスレーブユニットに接続されるが、それの随意に利用可能な第2のデータ接続は、いかなる隣接するスレーブユニットにも接続されない。
【0037】
説明した線形のチェーンライクなトポロジーをもつデータネットワークと、それとともに実装され得る通信方法は、スレーブユニットが長い距離にわたって分散され、および/またはデータコンテンツが多数のスレーブユニットに連続的に伝達されるべきである用途にとって特に好適である。このタイプのチェーンライクなデータネットワークは、したがって、スレーブユニットが、たとえば、各フロアに設けられ、隣接するフロアの隣接するスレーブユニットと直列に接続され得る、エレベータシステムにおける用途にとって特に好適である。マスタユニットは最上階または最下階の第1のスレーブユニットに接続され得、最後のスレーブユニットは、それに応じて、それぞれ反対側の最下階または最上階に位置し得る。
【0038】
そのようなチェーンライクなトポロジーをもつデータネットワークでは、データテレグラムが最初にマスタユニットから第1のスレーブユニットに送信され得る。データテレグラムは、次いで、それが最後に最後のスレーブユニットに到達するまで、第1のスレーブユニットから後続のスレーブユニットに連続的に伝達され得る。カバーされる経路は外向きデータ経路と呼ばれる。最後のスレーブユニットは、たとえば、それに第2のネイバーがない、すなわち、他のスレーブユニットがそれの第2のデータ接続に接続されていないという事実から、それのステータスを最後のスレーブユニットとして認識する。最後のスレーブユニットがデータテレグラムを受信したとき、最後のスレーブユニットはデータテレグラムをそれの第2のデータ接続に転送せず、むしろ、データテレグラムをそれの第1のデータ接続を介して先行するスレーブユニットに送り返す。最後のスレーブユニットは、それによって、データ戻り経路を開始する。データテレグラムは、次いで、それが最後に第1のスレーブユニットからマスタユニットに送信されるまで、スレーブユニットからスレーブユニットに反対方向に再び伝達される。
【0039】
説明したデータネットワークのチェーンライクなトポロジーおよびそれとともに実装されるべきデータ通信方法は、スレーブユニットの各々が、もっぱらデータ戻り経路中にデータテレグラムを変更するように構成されるか、またはデータテレグラムがもっぱらデータ戻り経路中にスレーブユニットによって変更されるときに、特に有利である。
【0040】
言い換えれば、そのスレーブユニットをもつデータネットワークは、データテレグラムが外向きデータ経路上で変更されずに、それらが最後のスレーブユニットに到達するまで、単にスレーブユニットからスレーブユニットに変更されずに伝達されるような方法で構成される。スレーブユニットの各々は、各スレーブユニットがそれの第1のデータ接続においてデータテレグラムを受信していることを認識し、次いで、これを、特に、実質的に遅延なしに、すなわちオンザフライで、それの反対側の隣接するスレーブユニットに伝達する。外向きデータ経路は、したがって、ブロードキャストプロセスとして知られているものにおいて行われる。最後のスレーブユニットがデータ戻り経路を開始した後に、スレーブユニットは、次いで、それらの第2のデータ接続においてデータテレグラムを受信する。データ戻り経路上で、スレーブユニットは、次いで、それによって送信されるべきデータコンテンツをデータテレグラム中にデータグラムの形態で格納する。
【0041】
スレーブユニットがもっぱらデータ戻り経路中にそれらのデータコンテンツをデータテレグラム中に格納することを可能にする、説明したプロシージャは、マスタユニットとスレーブユニットとの間のデータ送信が極めて効率的に迅速に確立されることを可能にする。データが送られている間に、スレーブユニットは、送信されたデータテレグラム中のデータをリッスンすることができる;しかしながら、データは変更されず、できる限り迅速に転送される。データテレグラムは、したがって、極めて短い時間内に最後のスレーブユニットに到達する。スレーブユニットは、データテレグラムが最後のスレーブユニットによって戻されたときにのみ、必要な場合、戻り経路上でデータテレグラム中にそれらのデータコンテンツを格納する。
【0042】
データをリッスンすることはまた、いくつかのアドレス指定されたスレーブユニットが自発的にマスタユニットにデータコンテンツを通信することができるように、ポーリングの形態の要求がいくつかのアドレス指定されたスレーブユニットに送られることを引き起こすことができる。
【0043】
スレーブユニットは、データテレグラムを転送し、変更するためのプロセッサユニットを有する。プロセッサユニットの少なくとも1つ、特にすべては、外向きデータ経路上のデータテレグラムを読み取り、評価し、データテレグラムが、データ戻り経路上でマスタユニットに情報を送信するための特定のスレーブユニットに対する要求を含んでいる場合、対応する命令を受信し、評価した直後に、要求された情報をコンパイルすることを始めるように構成される。このようにして、プロセッサユニットは、有利には、それらがマスタユニットへの送信のために極めて早く利用可能にされ得るように、可能な限り早い時点において、要求された情報をコンパイルすることを始める。情報は極めて迅速に送信され、したがって、マスタユニットへのデータ戻りの時間は極めて短い。
【0044】
要求された情報は、特に、マイクロコントローラが、スレーブユニットの情報、たとえばステータス情報をコンパイルし、それをCPLDに送信するような方法で提供される。データテレグラムが、対応するスレーブユニットからデータ戻り経路上で転送されるとすぐに、CPLDは、要求された情報をほぼ時間の損失なしにデータテレグラム中に統合することができる。
【0045】
要求された情報の説明した提供なしでは、スレーブユニットによるデータテレグラムの送信における遅延があり得、特に、その「オンザフライ」送信は不可能である、なぜなら、情報は、最初にプロセッサユニットによって決定され、複合プログラマブル論理デバイスCPLDに送信されなければならず、それには一定量の時間がかかるであろうことからである。
【0046】
特に、ここで説明した手法は安全関連情報の送信のためのみに使用される。安全関連情報を含んでいるデータテレグラムは、特殊なタイプ仕様(イーサタイプ)をもつヘッダ中で識別される。このようにして識別されたデータテレグラムは、次いで、説明した手法を使用して送信される。セキュリティ関連情報に加えて、非セキュリティ関連情報も、たとえばイーサネット規格に従って、従来のデータネットワークにおけるように同じデータネットワーク中で送信され得る。これらのデータテレグラムはヘッダ中のそれらのタイプ仕様によっても識別され得る。
【0047】
特に最後のスレーブユニットは、データ戻り経路をもたらす前に、たとえば、0.2ミリ秒と0.8ミリ秒との間の範囲内の短い調整可能な時間期間待機する。指定された時間期間は、最後のスレーブユニットがデータテレグラムを完全に受信した時点から計算される。このことは、すべてのスレーブユニットが、データ戻り経路が始まる前に、マスタユニットによって要求された情報をコンパイルしていることを確実にする。
【0048】
本明細書で説明するデータ通信方法の一実施形態によれば、本方法は、少なくとも:
- スレーブユニットが、マスタユニットからまたは隣接するスレーブユニットからデータテレグラムを受信し、それが受信されている間に、データテレグラムの一部を別の隣接するスレーブユニットにまたはマスタユニットに転送する
方法ステップを含むことができる。
【0049】
本方法は、特に:
- データテレグラムのチェックサムを検査するさらなる方法ステップと;
- データグラム領域中の最後のすでに格納されたデータグラムの後に補足データグラムを付加するさらなる方法ステップであって、補足データグラムが、スレーブユニットによって通信されるべき1つのデータコンテンツを含む方法ステップと;
- 補足データグラムによって拡大されたデータテレグラムの残り中のビットに基づいて新しいチェックサムを計算し、新たに計算されたチェックサムをデータテレグラムの終わりに付加するさらなる方法ステップと
を含むことができる。
【0050】
言い換えれば、第1の方策として、データテレグラム全体は、それが、次いで、随意に変更され、最終的にデータネットワーク中の後続のサブスクライバに転送される前に、読み取られる必要がないべきである。代わりに、データテレグラムの一部は、同じデータテレグラムの他の一部が依然として受信されている間に、すでに転送されるべきである。言い換えれば、データテレグラムは、それらが、データネットワークに参加しているスレーブユニットのうちの1つにおいて受信されている間に、このタリフ(tariff)ユニットから後続のスレーブユニットにまたはマスタユニットに、「オンザフライ」で転送されるべきである。
【0051】
データテレグラムの一部、たとえばデータテレグラムからのビットを受信することと、データテレグラムのこの一部をデータネットワーク中の後続のサブスクライバに転送することとの間の時間遅延は、データテレグラム全体を送信するために必要とされる時間よりもかなり短くなり得る。たとえば、スレーブユニットから受信されたデータは、実質的に遅延なしに転送され得る。「実質的に遅延なしに」とは、データを受信することと転送することの間の時間間隔が、スレーブユニットにおいてほんのいくつかの計算サイクルしか必要としないことを意味し得る。必要とされる計算サイクルの数は、特に、データテレグラム全体を転送するために必要とされる計算サイクルの総数よりもかなり小さくなり得る。特に、500よりも小さい、好ましくは100よりも小さい、より好ましくは20よりも小さい、受信することと転送することとの間の計算サイクルの時間オフセットが十分であり得る。たとえば、100Mbps、またはさらに著しく広いデータ送信帯域幅によって、時間オフセットは、したがって、1μsよりも著しく短く、すなわち、数10nsから数100nsの範囲内であり得る。
【0052】
「オンザフライ」でのデータの送信は、たとえば、この目的のために使用されるべきスレーブユニットの好適なハードウェア設計によって実装され得る。この目的で、特にスレーブユニットは、マイクロコントローラに加えて、たとえば、複合プログラマブル論理デバイスCPLDと2つの物理接続、すなわち2つのPHYとを有するプロセッサユニットを有する。CPLDは、特に、2つのPHYの間に配置され、実質的に遅延なしに、すなわち、同じデータテレグラムのデータが依然として受信されている間にデータを転送することが可能であるような方法で選択または構成される。
【0053】
第2の方策として、データテレグラム中に特定の様式で、データテレグラムとともに送信されるべきデータコンテンツを含めることが提案される。スレーブユニットが、それによって決定されるデータコンテンツをデータテレグラム中に格納する方法、および、特に、このデータコンテンツが格納されるべきロケーションまたはメモリロケーションは、従来の手法とは基本的に異なる。
【0054】
データネットワークにおける、たとえばイーサネット規格プロトコルに従った、上記で説明した従来の手法では、一般に、いくつのサブスクライバを、すなわち、特にいくつのスレーブユニットをデータネットワークが含み、あらかじめ知られており、この情報は格納される。各サブスクライバについて、別個のメモリ領域がデータテレグラム中に提供され、そのメモリ領域において、このサブスクライバがそれのデータコンテンツを格納するべきである。スレーブユニットが、現在、格納されるべきデータを有しない場合、対応するメモリ領域は使用されないままである。
【0055】
上記で説明した従来の手法とは対照的に、ここで説明する手法では、データグラムの形態のいくつかのデータコンテンツは、この目的ですでに定義されているメモリロケーションにおいてデータテレグラム中に格納されない。代わりに、各スレーブユニットは、それによって送信されるべきデータコンテンツを、データテレグラムのデータグラム領域中の最後のすでに格納されたデータグラムの後に、連続して補足データグラムの形態で格納するべきである。言い換えれば、スレーブユニットがデータテレグラムを受信したとき、スレーブユニットは、このデータテレグラムとともに送られるべきデータコンテンツを、このデータテレグラムのデータグラム領域中に挿入し、それによって、対応するデータグラムを、他のスレーブユニットがそれらのデータグラムをその中に以前に格納したメモリ領域のすぐ後ろに格納するべきである。さらに言い換えれば、スレーブユニットは、データグラム領域中でそれによって送信されるべきデータグラムを、連続してすでに格納されているデータグラムの後ろに付加するとされている。
【0056】
説明した、データグラム領域中で、すでに格納されたデータプログラムの後ろに補足データグラムを付加することは、データコンテンツの通信をよりフレキシブルで容易に構成可能な様式で実装することを可能にする。特に、スレーブユニットの各々についてデータテレグラムのデータグラム領域中に、特別に割り当てられたメモリロケーションをあらかじめ予約する必要がない。代わりに、データテレグラムは、最初は比較的短く、たとえば、ヘッダと、チェックサムと、随意に極めて短いデータグラム領域のみを含むことができる。データグラム領域は、最初は、データグラムを収容しないか、ただ1つのまたは少数のデータグラムのみを収容することができる。データテレグラムはスレーブユニットからスレーブユニットに連続的に伝達されるので、スレーブユニットの各々はデータグラム領域中のそれのデータグラムを付加し得る。結果として、データグラム領域は連続的に増大する。データグラム領域の長さは、様々なスレーブユニットによって送信されるべきデータコンテンツの量に自動的に適応する。
【0057】
上記で説明した従来の手法とは対照的に、したがって、別個のメモリ領域がその中にあらかじめ各スレーブユニットについてすでに提供されているデータグラム領域中に部分的に使用されていないメモリ領域をもつ不必要に長いデータテレグラムが、データネットワークを介して通信される必要があることが回避され得る。代わりに、データテレグラムおよび、特にそれのデータグラム領域は、送信されるべきデータコンテンツに関する現在の要件にフレキシブルに適応し、したがって、この点についてあらかじめ特別に構成される必要がない。
【0058】
データグラム領域はヘッダ(PT、VERS、LEN)を有することもできる
データグラムは、ヘッダ(SRC、CNT)と、追加してCRCとを有することもできる
【0059】
データグラム領域はイーサネットフレームのペイロードであり得る
データネットワーク内でデータコンテンツを通信するための本明細書で説明する手法は、したがって、特に、データテレグラムがスレーブユニットからスレーブユニットにオンザフライで転送される方法と組み合わせて、データコンテンツがそれに従ってデータテレグラム中に格納されるプロトコルに関して異なることがある。
【0060】
特に、この目的のために使用されるデータネットワークは、そのようなプロトコルとそのようなタイプのデータ転送とを実装するように構成されたハードウェア構成要素に関して、従来のデータネットワークと異なることがある。
【0061】
従来のデータ通信方法または従来のデータネットワークと同様に、受信されたデータテレグラムのチェックサムは検査される。そのような検査は、一般に、データテレグラム全体が受信された後に行われる。データメッセージに含まれているビット値とデータメッセージのチェックサムとの間に不一致が見つかった場合、データメッセージの欠けた完全性が、たとえばエラーメッセージの形態で、転送されたデータメッセージ中に情報として格納され得る。
【0062】
受信されたデータテレグラムが、随意に、それ自体のデータコンテンツまたはそれ自体のデータグラムで補足された後に、補足データグラムによって拡大されたデータテレグラムについて新しいチェックサムも計算される。この新しいチェックサムは、次いで、データテレグラムの終わりに付加され、したがって、データテレグラムと一緒に後続の受信者に送信される。新しいチェックサムは以前のチェックサムを置き換える。
【0063】
データテレグラムをほとんど遅延なしに「オンザフライ」で送信し、データテレグラムのデータグラム領域中に以前に格納されたデータフレームにデータグラムを付加する説明したプロシージャは、それぞれ本発明の第1および第2の態様によるデータ通信方法とデータネットワークの実施形態において特に有利である。一方では、「オンザフライ」での低遅延データ送信の特徴、ならびにデータテレグラムのデータグラム領域中に以前に格納されたファイルダイヤグラムへのデータグラムの付加の特徴の組合せ、他方では、データネットワークのチェーンライクなトポロジーの特徴は、正の効果または相乗効果につながる。たとえば、エレベータシステムにおいて使用されるとき、データテレグラムは、マスタユニットからチェーンに沿って最後のスレーブユニットに極めて迅速にルーティングされ得、次いで、スレーブユニットは、それらのデータコンテンツをデータ戻り経路上のデータテレグラム中に連続的に格納する。
【0064】
本明細書で説明するデータ通信方法の一実施形態によれば、スレーブユニットの各々は、自発的にマスタユニットとのデータ通信をアクティブにスタートし、この目的でマスタユニットにデータテレグラムを送るように構成され得る。スレーブユニットの各々は、データ通信をアクティブにスタートする前に衝突ハンドリングを行い、次いで、スレーブユニットが現在データテレグラムを受信および転送していない場合にのみ、自発的にデータテレグラムを送るべきである。データネットワークにとって、これは、スレーブユニットの各々が、データ通信をアクティブにスタートする前に衝突ハンドリングを行い、次いで、スレーブユニットが現在データテレグラムを受信および転送していない場合にのみ、自発的にデータテレグラムを送るように構成されることを意味する。
【0065】
言い換えれば、スレーブユニットは、それらが、データテレグラムを受信することによってマスタユニットにデータコンテンツを転送するように要求されたときにのみ、そうすることが可能であり得るだけではない。代わりに、スレーブユニットは、自発的に、すなわち自然発生的にデータテレグラムを生成し、それをそれらの間で隣接するスレーブユニットを介してマスタユニットに送ることもできる。これは、スレーブユニットが、状況に応じて、マスタユニットにデータコンテンツをアクティブに送信することを、このことが必要であると考えられる場合、可能にする。
【0066】
しかしながら、さもなければデータネットワークを介して実行されるであろうデータ通信と、スレーブユニットによって自然発生的に実行されるべきデータ通信との間の矛盾を回避するために、スレーブユニットは、スレーブユニットがそれの自然発生的なデータ通信をアクティブにスタートする前に衝突ハンドリングを行うべきである。この衝突ハンドリング中に、スレーブユニットは、データテレグラムが、現在データ通信の範囲内で受信され、転送されるべきか、さもなければ、データネットワークを介して実行されるべきかどうかを検査する。これが適用されない場合のみ、スレーブユニットは、それ自体のデータ通信をスタートし、マスタユニットにデータテレグラムを自然発生的に送る。そのようなスレーブユニットのマイクロコントローラは、実際に、全二重動作のために設計され得るが、実行されるべき衝突ハンドリングのために、それは、少なくとも時々は半二重動作においてのみ働き得る。
【0067】
一実施形態によれば、ここで提示されるデータネットワークでは、データ通信経路は撚り二重線(twisted double line)によって実装され得る。これを介して実行されるべきデータ通信プロセスでは、データテレグラムは、その場合、撚り二重線の形態のデータ通信経路を介して交換され得る。
【0068】
言い換えれば、隣接するスレーブユニット間、および第1のスレーブユニットとマスタユニットとの間のデータ通信経路はハードワイヤード配線によって実装され得る。本明細書で説明する用途のためには、データネットワークの隣接するサブスクライバ間に2本の線のみ、または、言い換えれば、二重線を提供すれば十分であり得る。2本の線は、誘導結合によって引き起こされ得る干渉電圧を最小にするために、時々「撚り対線」とも呼ばれる、撚り二重線として設計され得る。
【0069】
2本の線のみを有する撚り二重線はデータネットワークの隣接するサブスクライバ間に延びるので、データ通信経路のために必要とされる配線の量および/または材料の量は制限され得る。このことは、たとえば、データテレグラムが長い距離にわたって、場合によっては、多数のスレーブユニットを介して送信されなければならない、長いエレベータシステムなどの用途において特に有利であり得る。
【0070】
本発明の第3の態様によるエレベータシステムの一実施形態では、エレベータシステムは、コントローラを有し、コントローラの制御下で建築物内のいくつかのフロアをサーブすることができる。データネットワークはいくつかのフロアに沿って延びることができる。セキュリティデバイスがフロアの各々に配置され、セキュリティデバイスは、データコンテンツを決定し、データコンテンツをデータネットワークの割り当てられたスレーブユニットに送信するように構成され得る。ここで、エレベータコントローラは、データネットワークのマスタユニットからデータコンテンツを受信し、それに基づいてエレベータシステムの機能を制御するように構成され得る。
【0071】
言い換えれば、エレベータシステムにおける本明細書で提案されるデータネットワークの特定の用途では、マスタユニットはエレベータコントローラと通信することができる。スレーブユニットの各々は、エレベータシステムにわたって分散された安全デバイスのうちの1つと通信することができる。この場合、安全デバイスは、たとえば、エレベータシャフトドアおよび/またはかごドアの正しい閉鎖を監視するドアスイッチであり得る。追加してまたは代替として、安全デバイスは、エレベータシステムの安全なおよび/または信頼できる動作のために監視されるべきである、エレベータシステム内の他の特性を監視することもできる。安全デバイスによって監視される特性についての情報の形態のデータコンテンツは、その場合、データネットワークを介してスレーブユニットからマスタユニットに通信され得る。この目的で、スレーブユニットは、対応するデータグラムをデータテレグラム中に挿入することができる。マスタユニットは、データテレグラムを受信すると、次いで、そのデータコンテンツをエレベータ制御に転送することができる。エレベータ制御は、次いで、たとえば、エレベータかごを移動させる駆動機械の動作など、エレベータシステムの機能を制御することができる。データネットワークを用いた本明細書で説明するデータ通信が、特に迅速に、確実に、フレキシブルに、および/または構成しやすい様式で実装され得ることは、有利な効果を有することができる。
【0072】
本発明の可能な特徴および利点のうちのいくつかについては、一方では、通信方法の異なる実施形態に関して、他方では、それのために使用され得るデータネットワークと、そのようなデータネットワークを装備したエレベータシステムとに関して、本明細書で説明することに留意されたい。当業者は、本発明のさらなる実施形態に到達するために、特徴は、適切に移され、組み合わせられ、適応させられ、または交換され得ることを認識する。
【0073】
添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について以下で説明する;図面も説明も、本発明を限定するものとして解釈されるようには意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】本発明の一実施形態によるデータネットワークを示す図である。
【
図2】
図1のデータネットワークのスレーブユニットのプロセッサユニットを示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるエレベータシステムを示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるデータ通信方法を例証する図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるデータ通信方法のためのデータテレグラムの例示的なデータ構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
図面は、単に概略であり、一定の縮尺ではない。様々な図面において、同様の参照符号は、同様のまたは均等な特徴を指す。
【0076】
図1は、データコンテンツがそれによってデータネットワーク1中の異なるサブスクライバ間で通信され得るデータネットワーク1を示す。データネットワーク1はマスタユニット3と複数のスレーブユニット5とを含む。マスタユニットは「M」によって示され、スレーブユニットは「S1」、「S2」、...、「Sn」によって示されている。マスタユニット3とスレーブユニット5とは、撚り二重線9の形態のデータ通信経路7を介して互いに接続される。
【0077】
示されている例では、マスタユニット3とスレーブユニット5の各々の両方は、それぞれ、データコンテンツのセキュアな生成および/または処理のために回路の形態で安全デバイス11に接続されている。この場合、マスタユニット3は安全コントローラ13に接続されているが、スレーブユニット5の各々は安全入出力ユニット(Safe IO)15に接続されている。安全デバイス11は、それらが、安全度水準SIL3などの高められた安全要件を満たすような方法で設計される。
【0078】
示されている例では、マスタユニット3(M)とスレーブユニット5(S1-Sn)とは、データ通信経路9を介してチェーンを形成するために互いに直列に接続される。マスタユニット3はマスタプロセッサユニット17とデータ接続19とを有する。随意に、マスタユニット3はまた、外部接続21の形態のさらなる接続を有することができ、マスタユニット3は、それを介して、たとえば、通常のイーサネットなどの外部ネットワークを介して他の電子デバイスと通信することができる。スレーブユニット5の各々は、プロセッサユニット18と、第1のデータ接続23と、第2のデータ接続25とを有する。第1のスレーブユニット27(S1)と最後のスレーブユニット29(Sn)とを除いて、スレーブユニット5の第1のデータ接続23と、それに隣接するスレーブユニット5の第2のデータ接続25とは、データ通信経路7のうちの1つを介して互いに接続される。第1のスレーブユニット27の第1のデータ接続23はマスタユニット3のデータ接続19に接続される。最後のスレーブユニット29の随意に利用可能な第2のデータ接続25は使用されないままである。
【0079】
図2によれば、スレーブユニット5のプロセッサユニット18は、複合プログラマブル論理デバイス/CPLD22と通信しているマイクロコントローラ20を有する。CPLD22は、2つの物理接続/PHY24、26の間に配置され、2つのPHY24、26と通信する。2つのPHYは、たとえば、NXPのTJA1102によって形成され得る。CPLD22は、それが、実質的に遅延なしに、すなわち、同じデータテレグラムのデータが依然として受信されている間にデータを転送するような方法で構成される。この目的で、第1のPHY24はスレーブユニット5の第1のデータ接続23に接続され、スレーブユニット5の第2のPHY26は第2のデータ接続25に接続される。
【0080】
図3は、データネットワーク1が実装されているエレベータシステム101を示す。エレベータシステム101において、エレベータかご103および釣り合いおもり(counterweight)105は、エレベータシャフト109内で駆動機械107によって垂直方向に変位させられ、プロセス中に、異なるフロア111に移動され得る。駆動機械107の動作はエレベータコントローラ113によって制御される。シャフトドア115がフロア111の各々に設けられ、それによって、それの後ろに位置するエレベータシャフト109またはエレベータかご103へのアクセスが阻止されるかまたは開かれ得る。これらのシャフトドア115の各々の現在の閉状態は、各シャフトドア115に設けられたドアスイッチ117によって監視される。ドアスイッチ117は、シャフトドア115が開いているかまたは閉じているかに応じて、対応する信号またはデータを決定し、出力する安全デバイス11、15を形成する。
【0081】
複数のシャフトドア115の閉状態についての情報を従来の安全チェーンと同様の様式でエレベータコントローラ113に送信することが可能であるように、本明細書で提示されるデータネットワーク1によって、ドアスイッチ117とエレベータ制御113との間にデータ通信が確立される。ドアスイッチ117の各々は、安全デバイス11として、その信号またはデータをデータネットワーク1の割り当てられたスレーブユニット5に送信することができる。データは、次いで、データネットワーク1を介してマスタユニット3に通信され、そこからエレベータコントローラ113に伝えられ得る。
【0082】
データネットワーク1を介して確立されるべきデータ通信の可能な詳細について、
図4も参照しながら、以下で説明する。
【0083】
データ通信のコンテキストでは、データコンテンツは、データテレグラム31中に格納されるか、またはそこから読み出される。データテレグラム31は多数の連続ビットから構成される。各データテレグラム31は、ヘッダ33(H)と、データグラム領域35と、チェックサム37(Cx)とを有する。データグラム領域35は1つ以上のデータグラムD1、D2、...、Dn-1、Dnを含む。
【0084】
データネットワーク1を介してデータ通信を確立することが可能であるように、マスタユニット3は、ヘッダHと、データグラムD0をもつデータグラム領域35と、チェックサムC0とをもつデータテレグラム31を、それのデータ接続19を介して、隣接する第1のスレーブユニット27に伝えるように構成される。データグラムD0は、たとえば、スレーブユニット5の1つ、いくつかまたはすべてへの命令を含むことができる。マスタユニット3は、したがって、データテレグラム31をチェーンライクなデータネットワーク1を介して外向きデータ経路39の方向において最後のスレーブユニット29に送る。
【0085】
最後のスレーブユニット29を除いて、スレーブユニット5の各々は、マスタユニット3からの方向から来た、それの第1のデータ接続23において受信されたデータテレグラム31を、それの第2のデータ接続25を介して最後のスレーブユニット29に向かう方向に転送するように構成される。特定のスレーブユニット5は、先行する隣接するスレーブユニット5から来たデータテレグラム31を後続の隣接するスレーブユニット5に転送する。外向きデータ経路39上で、この転送は実質的に遅延なしに行われる、すなわち、スレーブユニット5は、それが依然として同じデータテレグラム1の他の部分を受信している間に、データテレグラム31の受信された部分を次の隣接するスレーブユニット5にできる限りほとんど遅延なしに、すなわち、好ましくはビットごとに転送する。データテレグラム31のコンテンツは外向きデータ経路39中にスレーブユニット5のいずれによっても変更されない。したがって、データテレグラム31中のチェックサム37は外向きデータ経路39中に変更される必要がない。
【0086】
チェーンの終わりに位置するスレーブユニット5は、それが単一の隣接するスレーブユニット5のみに接続されているという事実により、それのステータスを最後のスレーブユニット29として認識する。したがって、それの随意に利用可能な第2のデータ接続25は使用されない。
【0087】
マスタユニット3によって最初に送られたデータメッセージ31が最後のスレーブユニット29(Sn)に到達するとすぐに、この最後のスレーブユニット29は、データテレグラム31が、次いで、データ戻り経路41中のチェーンに沿って移動するように、受信されたデータメッセージ31を、それの第1のデータ接続23を介してマスタユニット3に向かう方向に転送して戻す、すなわち、最後から2番目のスレーブユニット5(Sn-1)に転送する。最後のスレーブユニット29(Sn)は、特にデータテレグラム31の完全な受信の後に、それがデータテレグラム31を戻す前に、たとえば、0.2ミリ秒と0.8ミリ秒との間の範囲内の短い調整可能な時間期間待機する。データ戻り経路41中に、しかしながら、(最後のスレーブユニット29(Sn)を含む)スレーブユニット5は、単にデータメッセージ31を次の隣接するスレーブユニット5に変更せずに伝達しない。代わりに、スレーブユニット5の各々は、データテレグラム31のデータグラム領域35中の最後の以前に格納されたデータグラムの後にデータグラムD1、D2、...、Dn-1、Dnの形態の1つのデータコンテンツを追加して付加する。マスタ3によって送られたデータグラムD0は、特に上書きされる。それはまた、マスタ3に送り返され得る。
【0088】
データテレグラム31は、それが1つのスレーブユニット5から次のスレーブユニット5に転送されるたびに変更されるので、すべてのスレーブユニット5はまた、送信されたデータの完全性を査定することが可能であるように、データテレグラム31を受信すると、それのチェックサム37を検査する。さらに、各スレーブユニット5がそれのデータコンテンツをデータテレグラム31のデータグラム領域35中に補足データグラムの形態で格納した後に、各スレーブユニット5は、補足されたデータテレグラム31の残り中のビットに基づいて新しいチェックサム37を計算し、この新しいチェックサム37をデータテレグラム31の終わりに付加する。以前のチェックサム37は、したがって、更新または交換される。
【0089】
外向きデータ経路39上で、スレーブユニット5のプロセッサユニット18は、データテレグラム31を読み取り、それを評価する。データテレグラム31が、データ戻り経路41上でマスタユニット3に情報を送信するための、特定のスレーブユニット5に対する要求を含んでいる場合、特定のプロセッサユニット18は、対応する命令を受信し、評価した直後に、要求された情報をコンパイルすることと、可能な場合、それをCPLD22中に提供することとを始める。
【0090】
図5は例としてデータテレグラム31を例証する。データテレグラム31中に記録されたデータの可能なまたは随意の構成、ビット長およびコンテンツは、ヘッダ33、データグラム領域35およびチェックサム37中で指定される。
【0091】
原則として、データテレグラム31は、IEEE802.3によるイーサネットデータブロックフォーマットEthernet-IIに従って構造化される。ヘッダ33は、長さ7バイトのプリアンブルで始まり、それの後に、1バイトの長さをもつ、いわゆるスタートフレームデリミタ(SFD)が続く。これの後に、それぞれ6バイトの長さをもつ、宛先MACアドレスおよびソースMACアドレス(MAC宛先、MACソース)が続く。宛先MACアドレスは、データテレグラム31を受信することになっているネットワークステーションを識別し、ソースMACアドレスは、データテレグラム31を送ったネットワークステーションを識別する。これの後に、随意に、4バイトの長さを有するVLANタグ(802.1Qタグ)として知られているものが続く。これの後に、ヘッダ33を閉じる、2バイトの長さをもつタイプ仕様(イーサタイプ)が続く。異なるタイプのデータテレグラム31はタイプ仕様に基づいて区別され得る。タイプ仕様はまた、データテレグラム31が、従来のイーサネット規格に従って送信されたのか、安全関連データのためのここで説明する方法を用いて送信されたのかを定義する。ヘッダ33の後に、46バイトと1500バイトとの間の長さを有することができる、データテレグラム31のデータグラム領域35(ペイロード)が続く。データテレグラム31は、4バイトの長さをもつチェックサム(CRC32)によって終了される。
【0092】
示されている例では、データグラム領域35は安全フレーム43として構成される。これは、従来のイーサネット規格、たとえば0xEEB0では使用されない特殊なタイプ仕様によって指定され、識別される。セキュリティフレーム43は、1バイトの長さをもつデータ識別子(PDU)で始まる。データ識別子は、セキュリティフレーム内で送信されるデータのタイプを指定する。それは、したがって、データテレグラム31全体のためのタイプ仕様(イーサタイプ)と同等の、セキュリティフレーム43のための機能を有する。データ識別子の後に、5ビットの長さをもつバージョン情報(VERS)が続く。バージョン情報は、セキュリティフレーム43がそれに従って構築されているバージョンを示す。バージョン情報の後に、11ビットをもつ長さ情報(LEN)が続く。長さ情報は、セキュリティフレーム43の後続のユーザデータ45(ペイロード)の長さを指定する。このユーザデータ45は43バイトと1496バイトとの間を含むことができる。
【0093】
セキュリティフレーム43のユーザデータ45は、それぞれ8バイトの長さをもつ、前後に配置された、同等に構造化されたデータグラム46(
図4ではD
1-D
n)から構成される。最大長の1496バイトのユーザデータ45は最大数187個のデータグラム46を生じる。各データグラム46は、データグラム46を送るスレーブユニット5を識別する、長さ1バイトのソース情報(SRC)で始まる。これの後に、データグラム46が送られるたびにスレーブユニット5によって増分される、長さ1バイトのカウンタ(CNT)が続く。したがって、スレーブユニット5が依然として適切に機能しているかどうかが検査され得る。これの後に、次いで、スレーブユニット5がデータグラム46中で送信する4バイトのデータ(DATA)が続く。データグラム46は、データテレグラム31のチェックサム37と類似的に計算され、データグラム46の完全性を検査するために使用される、2バイトのチェックサム(CRC16、16ビットをもつ巡回冗長検査)によって終わる。
【0094】
示されている例では、セキュリティフレーム43の有用なデータ45は、縦に配置された2つのデータグラム46を含む。通常、各スレーブユニット5は、データ戻り経路41上のセキュリティフレーム43のユーザデータ45にデータグラム46を付加する。これは、最後から2番目のスレーブユニットSn-1のデータグラム46が付加された後のユーザデータ45の構造を示す。最後から2番目のスレーブユニットSn-1のデータグラム46(
図4ではデータグラムD
n-1)は、最後のスレーブユニットSnのデータグラム46(
図4ではデータグラムD
n)の後に続く。
【0095】
また、スレーブユニット5が、2つ以上のデータグラム46をセキュリティフレーム43のユーザデータ45に付加することも可能であろう。これは、対応するスレーブユニット5が4バイト超のデータを送信したい場合であり得る。
【0096】
データ通信、または、たとえば、PHYおよびCPLDの形態でデータネットワーク1中で使用されるハードウェア構成要素は、原則として、全二重通信のために設計される。1つ以上のスレーブユニット5への外向きデータ経路39中のマスタユニット3から来る下方への通信は、好ましくは、もっぱらマスタユニット3によって開始され得る。この外向きデータ経路39中に、スレーブユニット5は、データテレグラム31をできる限り迅速にオンザフライでかつ変更せずに伝達するが、それのコンテンツを「リッスン」することができる。後続のデータ戻り経路41中に、スレーブユニット5はまた、データテレグラム31を可能な限り最小の時間遅延でオンザフライで転送するが、そうする際、説明したように、それら自体のデータコンテンツをデータテレグラム31中のデータグラムとして随意に追加して格納し、次いで、チェックサム37をも更新する。
【0097】
データ戻り経路41の方向におけるデータ通信は、したがって、マスタユニット3が最初に外向きデータ経路39に沿ってデータテレグラム31を送り、データテレグラム31が、次いで、データ戻り経路41上の最後のスレーブユニット29から戻されることによって、前記マスタユニットによって開始され得る。
【0098】
代替として、スレーブユニット5自体は、データ戻り経路41の方向においてデータ通信を自然発生的に開始することができる。この目的で、スレーブユニット5は、それの第1のデータ接続23においてデータテレグラム31をアクティブに出力し、したがって、それをマスタユニット3へのデータ戻り経路41上の隣接するスレーブユニット5に送ることができる。しかしながら、スレーブユニット5は、そのようなデータ通信をアクティブにスタートする前に衝突ハンドリングを行い、他のデータテレグラム31が現在スレーブユニット5によって受信され、転送される必要がない場合にのみ、自発的にデータテレグラムを送るべきである。
【0099】
本明細書で説明したデータ通信の手法と、説明した許容できる制限および専用プロトコルとともにこの目的で使用され得るデータネットワーク1とにより、最初に自動車産業のためのイーサネット規格IEEE802.3bw100BASE-T1のために開発され、これまで、車中での短い距離にわたるデータ通信のために、安価に、迅速に、およびロバストに使用されてきた物理接続、すなわちPHYは他の用途のためにも使用され得る。
【0100】
特に、説明した変更は、たとえば、データが比較的長い距離にわたって通信されなければならない、エレベータシステムなどの領域における適用を可能にすることができる。100BASE-T1の物理的ロケーションは、非セーフティクリティカルなデータテレグラムのための標準IPプロトコルを介して、異なる用途を、セーフティクリティカルなデータテレグラムのためにこの文書中で指定されたセーフティクリティカルなプロトコルと組み合わせることが可能である。セキュリティクリティカルなデータテレグラムと非セキュリティクリティカルなデータテレグラムとは、ヘッダ中のそれらのタイプ仕様(イーサタイプ)に基づいて区別される。信号またはデータテレグラムは、同時に外向きデータ経路およびデータ戻り経路の一方向においてノードからノードに、全二重通信が可能である100BASE-T1線に通される。
【0101】
最後に、「備える」、「有する」などの用語は他の要素またはステップを排除せず、「1つの(a)」または「1つの(an)」などの用語は複数を排除しないことに留意されたい。さらに、上記実施形態のうちの1つに関して説明した特徴またはステップはまた、上記で説明した他の実施形態の他の特徴またはステップと組み合わせて使用され得ることに留意されたい。特許請求の範囲における参照符号は限定的であるとして考えられるべきでない。
【国際調査報告】