(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-16
(54)【発明の名称】二重特異性抗体を使用して患者の造血幹細胞/造血前駆細胞(HSC/HP)を除去する方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20220909BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220909BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220909BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220909BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220909BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/02
C07K16/46
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022501020
(86)(22)【出願日】2020-07-08
(85)【翻訳文提出日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 US2020041095
(87)【国際公開番号】W WO2021007266
(87)【国際公開日】2021-01-14
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518353784
【氏名又は名称】ヘモジェニックス ファーマシューティカルズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】サンドラー ヴラディスラフ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085BB31
4C085CC03
4C085DD62
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
記載した本発明は、ヒトチロシンキナーゼ受容体FLT3/FLK2受容体タンパク質およびT細胞上に発現するCD3受容体タンパク質に結合する二重特異性抗体を含有する組成物、ならびに患者の造血幹細胞/造血前駆細胞(HSC/HP)を除去するための医薬の調製における二重特異性抗体を含有する組成物の使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の軽鎖のアミノ酸配列が、配列番号5、配列番号9、配列番号13、配列番号17、配列番号21、および配列番号25からなる群から選択され、ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の重鎖のアミノ酸配列が配列番号7、配列番号11、配列番号15、配列番号19、配列番号23、および配列番号27からなる群から選択される、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の軽鎖のアミノ酸配列が配列番号5であり、ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の重鎖のアミノ酸配列が配列番号7である、請求項1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
抗体またはその抗原結合断片の有効濃度の最大半量(EC
50)が、1ng/mL(6.25pM)から2,000ng/mL(12.5nM)の間である、請求項2に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
抗体またはその抗原結合断片の有効濃度の最大半量(EC
50)が、10ng/mL(62.5pM)から200ng/mL(1.25nM)の間である、請求項3に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
細胞上のヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合するFLT3抗体が、細胞が結合抗体または抗原結合断片を内部移行させるのに有効である、請求項2に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の軽鎖のアミノ酸配列が配列番号9であり、ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の重鎖のアミノ酸配列が配列番号11である、請求項1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
抗体またはその断片の有効濃度の最大半量(EC
50)が、1ng/mL(6.25pM)と2,000ng/mL(12.5nM)の間である、請求項6に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
抗体またはその抗原結合断片の有効濃度の最大半量(EC
50)が、10ng/mL(62.5pM)と200ng/mL(1.25nM)の間である、請求項7に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
細胞上のヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合するFLT3抗体が、細胞が結合抗体または抗原結合断片を内部移行させるのに有効である、請求項6に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の軽鎖のアミノ酸配列が配列番号13であり、ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の重鎖のアミノ酸配列が配列番号15である、請求項1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
抗体またはその抗原結合断片の有効濃度の最大半量(EC
50)が、1ng/mL(6.25pM)と2,000ng/mL(12.5nM)の間である、請求項10に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
抗体またはその抗原結合断片の有効濃度の最大半量(EC
50)が、10ng/mL(62.5pM)と200ng/mL(1.25nM)の間である、請求項11に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
細胞上のヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合するFLT3抗体が、細胞が結合抗体または抗原結合断片を内部移行させるのに有効である、請求項11に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項14】
ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の軽鎖のアミノ酸配列が配列番号17であり、ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の重鎖のアミノ酸配列が配列番号19である、請求項1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項15】
抗体またはその抗原結合断片の有効濃度の最大半量(EC
50)が、1ng/mL(6.25pM)と2,000ng/mL(12.5nM)の間である、請求項14に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項16】
抗体またはその抗原結合断片の有効濃度の最大半量(EC
50)が、10ng/mL(62.5pM)と200ng/mL(1.25nM)の間である、請求項15に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項17】
細胞上のヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合するFLT3抗体が、細胞が結合抗体または抗原結合断片を内部移行させるのに有効である、請求項14に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項18】
ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の軽鎖のアミノ酸配列が配列番号21であり、ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の重鎖のアミノ酸配列が配列番号23であり、FLT3/FLK2に結合したとき、FLT3リガンド(FLT3L)と競合しない、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項19】
抗体またはその断片の有効濃度の最大半量(EC
50)が、1ng/mL(6.25pM)と2,000ng/mL(12.5nM)の間である、請求項18に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項20】
抗体またはその抗原結合断片の有効濃度の最大半量(EC
50)が、10ng/mL(62.5pM)と200ng/mL(1.25nM)の間である、請求項19に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項21】
細胞上のヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合するFLT3抗体が、細胞が結合抗体または抗原結合断片を内部移行させるのに有効である、請求項18に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項22】
ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の軽鎖のアミノ酸配列が配列番号25であり、ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の重鎖のアミノ酸配列が配列番号27であり、FLT3/FLK2に結合したとき、FLT3リガンド(FLT3L)と競合しないモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項23】
抗体またはその断片の有効濃度の最大半量(EC
50)が、1ng/mL(6.25pM)と2,000ng/mL(12.5nM)の間である、請求項22に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項24】
抗体またはその抗原結合断片の有効濃度の最大半量(EC
50)が、10ng/mL(62.5pM)と200ng/mL(1.25nM)の間である、請求項23に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【請求項25】
細胞上のヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合するFLT3抗体が、細胞が結合抗体または抗原結合断片を内部移行させるのに有効である、請求項22に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「二重特異性抗体を使用して患者の造血幹細胞/造血前駆細胞(HSC/HP)を除去する方法」と題された、2016年4月4日に出願された米国特許仮出願第62/317,906の優先権の利益を主張する、2017年4月4日に出願された国際出願第PCT/US2017/025951号の米国特許法第371条に基づく国内段階出願である、2018年10月4日に出願された米国特許出願番号16/091,139号の一部継続出願である、2019年7月9日に出願された米国特許出願第16/506,764号の優先権を主張する。前述の出願のそれぞれの全内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含有しており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。前記ASCII原稿は、2020年7月7日に作成されたもので、128557-00119_SL.txtと称され、サイズは30,539バイトである。
発明の分野
記載した本発明は一般に、造血細胞移植、治療抗体調製、およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
造血幹細胞
造血幹細胞は、全ての血液細胞の共通の祖先である。多能性細胞として、造血幹細胞は複数の細胞系列に分化できるが、全ての系列が3つの胚葉に由来するわけではない。造血幹細胞分化は、造血の2つの主要な分枝であるリンパ球および骨髄球性細胞系列を生じる(Kondo, M. "Lymphoid and myeloid lineage commitment in multipotent hematopoietic progenitors," Immunol. Rev. 2010 Nov; 238(1): 37-46)。リンパ球系細胞は、T、B、およびナチュラルキラー(NK)細胞を含む。骨髄球系列は、巨核球、および赤血球(MegE)、ならびに骨髄球系列に属する顆粒球(好中球、好酸球、および好塩基球)、単球、マクロファージおよび肥満細胞(GM)の異なるサブセットを含む(Id. citing Kondo M, et al. Biology of hematopoietic stem cells and progenitors: implications for clinical application. Ann. Rev Immunol. 2003;21:759-806、Weissman IL. Translating stem and progenitor cell biology to the clinic: barriers and opportunities. Science (New York, NY. 2000 Feb 25;287(5457):1442-6;Iwaskaki, H. and Akashi, K. "Myeloid lineage commitment from the hematopoietic stem cell," Immunity 26(6) June 2007, 726-40も参照)。
【0004】
HSCは、自己再生能および血液系列への分化能を示し、すなわち幹細胞が分裂する場合、平均して娘細胞の50%が細胞系列に分化決定されるが、残りの50%は分化しない。各分裂幹細胞が、1つの新しい幹細胞と1つの分化細胞を生成するように、このプロセスは、非対称細胞分裂によって同じ数の幹細胞を維持する。対照的に、対称分裂では、幹細胞は同一の幹細胞を100%生成する(Gordon, M. Stem cells and haemopoiesis. In: Hoffbrand, V., Catovsky, D., Tuddenham, E.G., 5th ed. Blackwell Publishing, (2005): Differential niche and Wnt requirements during acute myeloid leukemia, pp. 1-12. New York)。
リンパ球および骨髄球系列は、前駆細胞レベルで分離可能である。リンパ球性共通前駆細胞(CLP)は生理的条件下で目立った骨髄球の可能性なく、リンパ球の全ての型に分化できるが(Kondo M, Scherer DC, Miyamoto T, King AG, Akashi K, Sugamura K, et al. Cell-fate conversion of lymphoid-committed progenitors by instructive actions of cytokines. Nature. 2000 Sep 21;407(6802):383-6)、実験条件によって、いくつかの骨髄球関連遺伝子がCLPで検出されることもある(Delogu A, Schebesta A, Sun Q, Aschenbrenner K, Perlot T, Busslinger M. Gene repression by Pax5 in B cells is essential for blood cell homeostasis and is reversed in plasma cells. Immunity. 2006 Mar;24(3):269-81)。
【0005】
同様に、骨髄球性共通前駆細胞(CMP)は、B細胞の可能性なくまたは非常に低いレベルで骨髄球性細胞の全てのクラスを生じ得る(Akashi K, Traver D, Miyamoto T, Weissman IL. A clonogenic common myeloid progenitor that gives rise to all myeloid lineages. Nature. 2000 Mar 9;404(6774):193-7)。別の細胞型、樹状細胞(DC)は、CLPまたはCMPのいずれからも生じ得るため、リンパ球または骨髄球系列のいずれにも明確にグループ分けされない(Manz MG, Traver D, Miyamoto T, Weissman IL, Akashi K. Dendritic cell potentials of early lymphoid and myeloid progenitors. Blood. 2001 Jun 1;97(11):3333-41、Traver D, Akashi K, Manz M, Merad M, Miyamoto T, Engleman EG, et al. Development of CD8alpha-positive dendritic cells from a common myeloid progenitor. Science (New York, NY. 2000 Dec 15;290(5499):2152-4)。CMPは、巨核球-赤血球(MegE)前駆細胞、および顆粒球-単球(GM)前駆細胞に増殖および分化でき、巨核球、赤血球、顆粒球、単球およびその他をさらに生じる(Iwasaki H, Akashi K. Myeloid lineage commitment from the hematopoietic stem cell. Immunity. 2007;26:726-740)。
【0006】
転写因子の発現レベルの差は、分化する細胞の系列所属を決定するようである。転写因子PU.1およびGATA-1は、それぞれ骨髄および赤血球/巨核球系列分化に関係している(Gordon, M. Stem cells and haemopoiesis. In: Hoffbrand, V., Catovsky, D., Tuddenham, E.G., 5th ed. Blackwell Publishing, (2005): Differential niche and Wnt requirements during acute myeloid leukemia, pp. 1-12. New York.)。
【0007】
HSCの特徴
HSCは、未分化であり、小リンパ球に似ている。HSCの大部分は細胞周期のG0期で静止状態にあり、細胞周期依存的な薬物の作用から保護されている。幹細胞の静止状態は、形質転換増殖因子-β(TGF-β)によって維持される。TGF-βの活性は、細胞増殖を制御し、サイクリン依存性キナーゼ阻害因子p21を標的化する腫瘍抑制遺伝子であるp-53によって媒介される(Gordon, M. Stem cells and haemopoiesis. In: Hoffbrand, V., Catovsky, D., Tuddenham, E.G., 5th ed. Blackwell Publishing, (2005): Differential niche and Wnt requirements during acute myeloid leukemia, pp. 1-12. New York.)。HSCの静止状態は、幹細胞コンパートメントを保護し、長期間に渡り幹細胞プールを持続するだけでなく、複製関連変異の蓄積を最小限にするのにも重要である。HSC静止状態を維持する多くの内因性転写因子は白血病と関連することが見出されている。例えば、FoxOsと骨髄球/リンパ球の融合、または混合系列の白血病をもたらす染色体転座が、急性骨髄性白血病で報告されている(例えば、Sergio Paulo Bydlowski and Felipe de Lara Janz (2012). Hematopoietic Stem Cell in Acute Myeloid Leukemia Development, Advances in Hematopoietic Stem Cell Research, Dr. Rosana Pelayo (Ed.), ISBN: 978-953-307-930-1参照)。
正常なHSCの大半は、CD34+/CD38-/CD90+骨髄細胞画分中に存在し、いくつかのHSCはCD34-/Lin-細胞中でも観察される。CD34+/CD38+細胞画分は、短期再増殖活性を備えているいくつかのHSCを含有する。他の認識されたマーカーは、CD4およびCD8などの最終分化マーカーの欠如を伴うチロシンキナーゼ受容体c-kit(CD117)を含む(Rossi et al., Methods in Molecular Biology (2011) 750(2): 47-59)。
HSCの分類
造血幹細胞プールは3つの主な群に細分化できる:(1)4~6週間のみ、分化細胞のクローンを生成できる短期HSC;(2)消衰する前、6~8カ月間分化細胞の子孫を継続できる中期HSC;および(3)いつまでも造血を維持できる長期HSC。(Testa U. Annals of Hematology (2011) 90(3): 245-271)。
【0008】
造血
造血は、幹細胞および前駆細胞の運命の特定を調節する成分からなり、ならびに必要な因子を供給することによってそれらの発生を維持する特殊な制御性微小環境(「ニッチ」)によって支持される、HSCが成熟血液細胞に分化する高度に協調されたプロセスである。本明細書で使用する場合、用語「骨髄(BM)ニッチ」は、多様な系列の血液細胞の生存、成長、および分化に必須の役割を果たす要素(例えば、骨芽細胞、破骨細胞、骨髄内皮細胞、間質細胞、脂肪細胞、および細胞外マトリックスタンパク質(ECM))から構成される非常に組織化された構造を指す。骨髄ニッチは、HSCが増殖、成熟ならびに骨髄球およびリンパ球前駆細胞を生じるのに重要な生後の微小環境である。
【0009】
骨髄(BM)は、全ての動物の骨の髄腔に存在する。骨髄は、その両方が他の細胞型へと分化できることが分かっている造血細胞(成熟血液細胞の先駆細胞)および間質細胞(広範な結合組織細胞の先駆細胞)を含む様々な先駆細胞および成熟細胞型からなる。骨髄の単核画分は、間質細胞、造血先駆細胞、および内皮先駆細胞を含有する。
赤脾髄および白脾髄を含む明確な全体構造を有する脾臓などの二次リンパ器官とは違い、BMは骨芽細胞を含有する骨内膜以外にはっきりとした構造特性を持たない。骨内膜領域は石灰化した硬い骨と接触し、HSC活性の維持に必要な特別な微小環境を提供する(Kondo M, Immunology Reviews (2010) 238(1): 37-46;Sergio Paulo Bydlowski and Felipe de Lara Janz (2012). Hematopoietic Stem Cell in Acute Myeloid Leukemia Development, Advances in Hematopoietic Stem Cell Research, Dr. Rosana Pelayo (Ed.), ISBN: 978-953-307-930-1)。
【0010】
ニッチ内で、HSCは、線維芽細胞、内皮細胞、および細網細胞、脂肪細胞、骨芽細胞、および間葉系幹細胞(MSC)を含むいくつかの供給源から生じる支持および増殖シグナルを受けると考えられている。ニッチの主な機能は、栄養素、酸素、パラクラインおよびオートクラインシグナルの局所変化を統合し、体循環からのシグナルに応答するHSC静止状態、輸送、および/または増殖を変更することである(Broner, F. & Carson, M C. Topics in bone biology. Springer. 2009; 4: pp. 2-4. New York, USA.)。
本当のMSCの性質は誤解されたままであるが、CXCケモカインリガンド12(CXCL12)発現CD146MSCは、類洞側表面に存在し、類洞壁構造の構成に寄与し、アンジオポエチン-1(Ang-1)を産生し、骨内膜性ニッチを形成する骨芽細胞を生成することができる、自己再生前駆体であることが近年報告された(Konopleva, MY, & Jordan, CT, Biology and Therapeutic Targeting (2011) 9(5): 591-599)。これらのCXCL12細網細胞は、必須であるが異なる維持シグナルが提供される骨芽細胞と血管ニッチの間を往復するHSCの輸送経路として働き得る。
【0011】
骨髄MSCによって産生されるサイトカインおよびケモカインは、局所産生の変動に次いで、およびサイトカイン結合グリコサミノグリカンの効果によって特定のニッチに濃縮する。このうち、CXCL12/間質細胞由来因子-1アルファは、HSCのホーミングを正に制御するが、形質転換増殖因子FMS様チロシンキナーゼ3(Flt3)リガンドおよびAng-1は静止因子として作用する(例えば、Sergio Paulo Bydlowski and Felipe de Lara Janz (2012). Hematopoietic Stem Cell in Acute Myeloid Leukemia Development, Advances in Hematopoietic Stem Cell Research, Dr. Rosana Pelayo (Ed.), ISBN: 978-953-307-930-1参照)。CXCL12-CXCR4シグナル伝達は、個体発生ならびにコロニー形成前駆細胞の生存および増殖中のHSCのBMへのホーミングに関与する。末梢血へのHSCのCXCR4-選択的アンタゴニスト誘導性動員は、造血器官でのHSCの保持におけるCXCL12の役割をさらに示す。
【0012】
BM生着は、BMSC産生複合体細胞外マトリックスによる、続く細胞間相互作用を含む。したがって、血管細胞接着分子-1(VCAM-1)またはフィブロネクチンは、BM由来MSCへの接着に重要である。このように、造血幹細胞増殖動態の調節は、正しい造血細胞産生の制御に決定的に重要である。これらの調節メカニズムは、幹細胞に内因性もしくは外因性、または両方の組合せとして分類され得る(例えば、Sergio Paulo Bydlowski and Felipe de Lara Janz (2012). Hematopoietic Stem Cell in Acute Myeloid Leukemia Development, Advances in Hematopoietic Stem Cell Research, Dr. Rosana Pelayo (Ed.), ISBN: 978-953-307-930-1参照)。
HSC自己再生および分化は、造血微小環境における細胞間相互作用またはSCF(幹細胞因子)とその受容体c-kit、Flt-3リガンド、TGF-β、TNF-α、およびその他などのサイトカインなど、外部因子(外因性調節)によって調節され得る。サイトカインは、複数のシグナル伝達経路の活性化によって様々な造血細胞機能を制御する。細胞増殖および分化に関連する主要な経路は、Janusキナーゼ(Jak)/シグナル伝達兼転写活性因子(STAT)、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ、およびホスファチジルイノシトール(PI)3-キナーゼ経路である(Sergio Paulo Bydlowski and Felipe de Lara Janz (2012). Hematopoietic Stem Cell in Acute Myeloid Leukemia Development, Advances in Hematopoietic Stem Cell Research, Dr. Rosana Pelayo (Ed.), ISBN: 978-953-307-930-1)。
【0013】
さらに、他の転写因子、例えば幹細胞白血病(SCL)造血転写因子;GATA-2などの発現;ならびに細胞周期調節に含まれる遺伝子産物、例えば、サイクリン依存性キナーゼ阻害因子(CKI)p16、p21、およびp27は、最初期からの造血細胞発生に必須であることが示されている(内因性調節)(Sergio Paulo Bydlowski and Felipe de Lara Janz (2012). Hematopoietic Stem Cell in Acute Myeloid Leukemia Development, Advances in Hematopoietic Stem Cell Research, Dr. Rosana Pelayo (Ed.), ISBN: 978-953-307-930-1)。
Notch-l-Jagged経路は、細胞内シグナル伝達および細胞周期調節を伴う細胞外シグナルを組込む働きをし得る。Notch-1は、そのリガンドに結合する造血幹細胞膜の表面受容体である。Jaggedは間質細胞上にある。これは、Notch-1の細胞質部分の切断をもたらし、それは次いで転写因子として作用し得る(Gordon, M. Stem cells and haemopoiesis. In: Hoffbrand, V., Catovsky, D., Tuddenham, E.G., 5th ed. Blackwell Publishing, (2005): Differential niche and Wnt requirements during acute myeloid leukemia, pp. 1-12. New York.)。
【0014】
骨髄(BM)/造血幹細胞(HSC)移植を使用して処置される障害
骨髄(BM)/造血幹細胞(HSC)移植を使用して処置される障害としては、限定はされないが、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、末梢T細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、神経芽細胞腫、非悪性の遺伝性および後天性骨髄障害(例えば、鎌状赤血球貧血、ベータサラセミアメジャー、難治性Diamond-Blackfan貧血、骨髄異形成症候群、特発性重症再生不良性貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、赤芽球癆、ファンコニ貧血、無巨核球性または先天性血小板減少症)、多発性骨髄腫、ならびに重症複合免疫不全症(SCID)が挙げられる。
【0015】
造血器悪性腫瘍
ほとんどの造血器悪性腫瘍は、がん幹細胞として公知の、腫瘍維持を担当するサブセットのみを有する、機能的に異質の細胞を含む。がん幹細胞は、自己再生、生存延長、およびより分化した特徴を有する細胞を生じる能力を含む正常組織幹細胞と似ている質を保持するためそう呼ばれる(Jones RJ and Armstrong SA, Biol Blood Marrow Transplant. 2008 Jan; 14 (Supplement 1): 12-16)。
造血幹細胞の形質転換イベントは、限定はされないが、腫瘍原生のヒットと関連する分化の程度により慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、およびおそらく急性リンパ性白血病さえも含むいくつかの異なる悪性腫瘍を産生し得る(Jones RJ and Armstrong SA, Biol Blood Marrow Transplant. 2008 Jan; 14 (Supplement 1): 12-16)。
がん幹細胞の概念は、特定の組織の腫瘍が、起源の組織で見出される細胞の不均質性を再現しようと「試みる」ように見えることが多く、したがって、多様な細胞型を生じる幹細胞様である細胞が腫瘍中にあるという考えに基づく。この仮説の基本試験は、腫瘍細胞が、腫瘍を再生する能力を有するものと、この能力を持たないものに分けられるかどうかである。この細胞の階層は、ほとんどの細胞が白血病の発生を開始できないが、いくつかのAMLが免疫不全マウスにおいて白血病を発症することができる特有の免疫表現型を有する細胞を保持する急性骨髄性白血病において最もはっきりと実証されている。さらに、白血病を発症する細胞は、腫瘍発症活性を失い、したがって元々の腫瘍で見出された細胞の不均質性を再現する細胞も生じる(Lapidot T et al., Nature. 1994; 367: 645-648; Bonnet D et al., Nat Med. 1997; 3: 730-737)。
【0016】
急性骨髄性白血病
急性骨髄性白血病(AML)は、骨髄における未成熟前駆細胞の蓄積を伴う骨髄球系列における分化の停止を特徴とするクローン性障害であり、造血不全をもたらす(Pollyea DA et al., British Journal of Haematology (2011) 152(5): 523-542)。白血病性芽球の出現には幅広い患者間の不均質性がある。急性骨髄性白血病(AML)における白血病を引き起こす細胞の発見は、大多数のAML芽球が増殖せず、ごく少数のみが新しいコロニーを形成できるという発見から開始された(Testa U, Annals of Hematology (2011) 90(3): 245-271)。AMLの全症例に共通する特性は、骨髄において20%を超える芽球細胞の蓄積をもたらす異常分化の停止である(Gilliland, DG and Tallman MS, Cancer Cell (2002) 1(5): 417-420)。
80%を超える骨髄性白血病が、少なくとも1つの染色体再編と関連し(Pandolfi PP, Oncogene (2001) 20(40): 5726-5735)、100を超える異なる染色体転座がクローニングされている(Gilliland, DG and Tallman MS, Cancer Cell (2002) 1(5): 417-420)。これらの転座は、造血系列の発生に重要な役割を果たすことが示されている転写因子をコードする遺伝子を頻繁に含む。したがって、転写装置の変更は、分化の停止をもたらす共通のメカニズムであるようである(Pandolfi PP, Oncogene (2001) 20(40): 5726-5735; Tenen DG, Nature Reviews of Cancer (2003) 3(2): 89-101)。
【0017】
臨床的検討および実験動物モデルは、少なくとも2つの遺伝的変更が急性白血病の臨床症状に必要であることを示している。Gilliland & Tallman (Cancer Cell (2002) 1(5): 417-420)によって提唱されたモデルによると、分化の終結を誘導するクラスI活性化変異とクラスII変異間の協力はAMLを生じる。受容体チロシンキナーゼ遺伝子FLT3およびKIT、RASファミリーメンバーの変異などのクラスI変異、ならびにニューロフィブロミン1の機能の喪失は、典型的にはシグナル伝達経路の活性化の停止の結果として造血前駆細胞に増殖および/または生存の利点を付与する。クラスII変異は、転写因子または活性化補助因子による干渉によって分化の停止をもたらす(Frankfurt O et al., Current Opinion in Oncology (2007) 19(6): 635-649)。
【0018】
白血病幹細胞(LSC)は、CD34、CD38、HLA-DR、およびCD71などHSCで以前に同定された多くの細胞表面マーカーを共有するようであるが、いくつかのグループは、2つの集団で差次的に発現される表面マーカーを報告した。
例えば、CD90またはThy-1は、LSCコンパートメントに特異的な可能性があるとして記載されている。最も初期の幹細胞が前駆細胞段階へ発達する場合、Thy-1は、正常な造血では下方制御される。(Hope KJ et al., Archives of Medical Research (2003) 34(6): 507-514)。
白血病性前駆細胞上でのCXCL12(間質細胞由来因子-1アルファ)とその受容体CXCR4の間の相互作用は、それらの骨髄微小環境へのホーミングに寄与する。CXCR4レベルは、AMLの患者由来の白血病細胞において著しく上昇し、CXCR4発現は転帰不良と関連する(Konopleva MY and Jordan CT, Biology and Therapeutic Targeting (2011) 29(5): 591-599)。
【0019】
初期のヒトAML幹細胞における核因子カッパβ(NF-kβ)経路の恒常的活性化は、一般にNF-kβがLSCおよびAML細胞型の全体的な生存に重要な役割を果たすという証拠を提供した。(Konopleva MY and Jordan CT, Biology and Therapeutic Targeting (2011) 29(5): 591-599)。
クラスIIIチロシンキナーゼ受容体ファミリーのメンバー、FLT3は、正常な造血前駆細胞および白血病芽細胞で発現し、細胞の増殖、分化、および生存に重要な役割を果たす。FLT3リガンドによるFLT3受容体の活性化は、受容体の二量体化およびリン酸化、ならびにJanusキナーゼ(JAK)2シグナル伝達因子(JAK2)、シグナル伝達兼転写活性因子(STAT)5、およびマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路を含む下流のシグナル伝達経路の活性化をもたらす。AMLの患者のおよそ40%で見出されるFLT3遺伝子の変異は、その自己リン酸化および恒常的な活性化を促進し、リガンド非依存的な増殖をもたらすと考えられている(Frankfurt O et al., Current Opinion in Oncology (2007) 19(6): 635-649)。
【0020】
リンパ性悪性腫瘍
ほとんどの組織における自己再生能は、細胞が分化の正常な段階を発達する際に失われる;例えば、造血幹細胞のレベルを超えた骨髄球系列血液細胞はもはや自己再生能を保持していない。自己再生の分化関連喪失の顕著な例外はリンパ球システムであり、ここでは自己再生能は、生涯免疫記憶を維持するためにメモリーリンパ球段階まで保存される(Fearon DT et al., Science. 2001; 293: 248-250;Luckey CJ et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2006; 103: 3304-3309)。体細胞高頻度変異は、B細胞悪性腫瘍が生じる分化の段階のマーカーとして役立つ。一般に、体細胞高頻度変異の存在は、胚中心または胚中心形成後のB細胞に生じている場合に腫瘍を同定するが、変異がない場合は胚中心形成前のB細胞を同定する。骨髄性悪性腫瘍とは対照的であるが、系列の保存された自己再生能と一致して、免疫グロブリン(Ig)変異パターンは、B細胞悪性腫瘍がB細胞分化の段階を通して細胞から生じ得ることを示している(Lapidot T et al., Nature. 1994; 367: 645-648;Bonnet D and Dick JE, Nat Med. 1997; 3: 730-737;Jones RJ et al., J Natl Cancer Inst. 2004; 96: 583-585)。
【0021】
多発性骨髄腫(MM)は通常、形質細胞バルクから生じる疾患の多くの臨床結果を有する悪性形質細胞の疾患であると考えられている。しかし、正常な形質細胞は最終分化され、自己再生能を欠損し、30年に渡り、マウスおよびヒトMM由来細胞の少数のみがクローン原生であることが明らかである。これらの稀なクローン原生細胞は「腫瘍幹細胞」と呼ばれている(Park CH et al., J Natl Cancer Inst. 1971; 46: 411-422;Hamburger AW and Salmon SE, Science. 1977; 197: 461-463)。MM形質細胞は、メモリーB細胞に似ている自己再生がん幹細胞の小集団から生じる。これらのクローン形質B細胞はほとんどの患者で循環するだけでなく、多くの標準的な抗MM剤に耐性でもあり、したがってほとんどの疾患再発の要因であるようである(Matsui WH et al., Blood. 2004; 103: 2332-2336;Kukreja A et al., J Exp Med. 2006; 203: 1859-1865;Jones RJ and Armstrong SA, Biol Blood Marrow Transplant. 2008 Jan; 14 (Supplement 1): 12-16)。
【0022】
ホジキンリンパ腫(HL)の特徴である、リード・シュテルンベルク(RS)細胞は、形質細胞以外の血液細胞のみであり、場合によりCD138を発現する(Carbone A et al., Blood. 1998; 92: 2220-2228)。HL細胞株は、残りの細胞上には存在するRSマーカーであるCD15およびCD30を欠損する細胞の小集団を含むが、メモリーB細胞の表現型と一致するマーカーを発現することが示されている(Newcom SR et al., Int J Cell Cloning. 1988; 6: 417-431;Jones RJ et al., Blood. 2006; 108: 470)。表現型メモリーB細胞のこの小さい亜集団は、HL細胞株内の全てのクローン原生能を保持した。初期疾患の者を含む、ほとんどのHL患者は、患者のRS細胞として、同じクローンのIg遺伝子再配置を有する循環メモリーB細胞を持つ(Jones RJ et al., Blood. 2006; 108: 470;Jones RJ and Armstrong SA, Biol Blood Marrow Transplant. 2008 Jan; 14 (Supplement 1): 12-16)。これらのデータは、これらのクローン形質のメモリーB細胞はHL幹細胞を表すようであることを示している。
造血幹細胞(HSC)は、血液系悪性腫瘍および非悪性疾患の処置のための骨髄移植に使用される(Warner et al, Oncogene (2004) 23(43): 7164-7177)。骨髄切除患者において、どの細胞成分がドナーの造血および免疫系の生着を担当するか研究者らが発見するまで、骨髄(BM)は何年もの間、未分画の細胞プールとして移植されてきた(例えば、Sergio Paulo Bydlowski and Felipe de Lara Janz (2012). Hematopoietic Stem Cell in Acute Myeloid Leukemia Development, Advances in Hematopoietic Stem Cell Research, Dr. Rosana Pelayo (Ed.), ISBN: 978-953-307-930-1参照)。
【0023】
骨髄/造血幹細胞(BM/HSC)移植のための患者の前処置またはコンディショニングは、手順の重要な要素である。それは2つの主な目的を果たす:(1)移植した細胞をレシピエントに生着させる、患者の十分な免疫抑制を提供するおよび移植したHSCのための骨髄の十分なニッチ空間を明らかにする;ならびに(2)悪性腫瘍の源の根絶を助けることが多い。
患者のコンディショニングは、放射線ありまたはなしで化学療法剤のカクテルの最大投与可能量を投与することによって従来行われてきた。カクテルの成分は、毒性が重複しないように選択されることが多い。現在使用されている全ての前処置レジメンは毒性であり、生命を脅かし得る重度の副作用がある。これらの副作用は、粘膜炎、吐き気、および嘔吐、脱毛、下痢、発疹、末梢神経障害、不妊、肺毒性、および肝毒性である。これらの副作用の多くは、年配および病気の患者で特に危険であり、患者が移植を受けるかどうか決定する決定的な要素となることが多い。
したがって、これらの毒性なく、骨髄/造血幹細胞(BM/HSC)移植に適するように患者を前処置またはコンディショニングする必要がある。記載した本発明は、ヒトチロシンキナーゼ受容体FLT3/FLK2受容体タンパク質およびT細胞上に発現したCD3受容体タンパク質に結合する二重特異性抗体を使用して患者の造血幹細胞/造血前駆細胞(HSC/HP)を除去する組成物および方法を提供する。
【発明の概要】
【0024】
一態様によると、記載した本発明は、造血細胞移植のためにそれを必要とする患者を前処置またはコンディショニング(調整、調節)する方法であって、ヒトFLT3とヒトCD3の両方に結合する組換え単鎖二重特異性抗体を用意するステップ、および二重特異性抗体を含む治療量の医薬組成物を患者に投与するステップを含み、治療量が、CD45、CD3、FLT3、CD19、CD33の1つまたは複数を発現する細胞集団の末梢血レベルを少なくとも90%低減する、および患者を前処置またはコンディショニングするプロトコールの毒性を低減するのに有効である方法を提供する。
一実施形態によると、FLT3を結合する二重特異性抗体の抗原結合部分の重鎖のアミノ酸配列は配列番号1であり、FLT3を結合する二重特異性抗体の抗原結合部分の軽鎖のアミノ酸配列は配列番号2である。別の実施形態によると、二重特異性抗体は、ヒトCD3のサブユニットと反応するモノクローナル抗体を含む。別の実施形態によると、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、免疫グロブリンG(IgG)、IgM、IgE、IgA、およびIgDアイソタイプからなる群から選択されるアイソタイプを含む。
【0025】
一実施形態によると、有効量は、0.01mg/kg~10mg/kg、より良くは0.05mg/kg~2mg/kg、より良くは0.1mg/kg~0.5mg/kg、より良くは0.1mg/kg~0.3mg/kg、より良くは0.1mg/kgを含む。
一実施形態によると、それを必要とする患者は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CLL)、CML、末梢T細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、神経芽細胞腫、非悪性の遺伝性および後天性骨髄障害、多発性骨髄腫、またはSCIDを患っている。別の実施形態によると、非悪性の遺伝性および後天性骨髄障害は、鎌状赤血球貧血、ベータサラセミアメジャー、難治性Diamond-Blackfan貧血、骨髄異形成症候群、特発性重症再生不良性貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、赤芽球癆、ファンコニ貧血、無巨核球性および先天性血小板減少症から選択される。
一実施形態によると、組成物は抗腫瘍剤をさらに含む。
一実施形態によると、二重特異性抗体はヒト化抗体である。
【0026】
別の態様によると、記載した本発明は、ヒトFLT3とヒトCD3の両方に結合する組換え単鎖二重特異性抗体を調製する方法であって、Flt3モノクローナル抗体のFab抗原結合断片のC末端をIgG1のCH2ドメインに接続するステップ、およびヒトCD3のサブユニットと反応するモノクローナル抗体(UCHT1)の単鎖可変断片(ScFv)をIgG1のCH2ドメインに接続するステップを含む方法を提供する。
別の態様によると、記載した本発明は、ヒトFLT3とヒトCD3の両方に結合する組換え単鎖二重特異性抗体であって、IgG1のCH2ドメインに接続されているFlt3モノクローナル抗体のFab抗原結合断片のC末端、およびIgG1のCH2ドメインに接続されているヒトCD3のサブユニットと反応するモノクローナル抗体(UCHT1)の単鎖可変断片(ScFv)を含む、組換え単鎖二重特異性抗体を用意する。
一実施形態によると、Fab抗原結合断片の重鎖結合ドメインのアミノ酸配列は配列番号1(H3113)であり、Fab抗原結合断片の軽鎖結合ドメインのアミノ酸配列は配列番号2(L3133)である。
【0027】
別の態様によると、記載した本発明は、ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の軽鎖のアミノ酸配列が配列番号5であり、ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の重鎖のアミノ酸配列が配列番号7である、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を用意する。
別の態様によると、記載した本発明は、ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の軽鎖のアミノ酸配列が配列番号9であり、ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の重鎖のアミノ酸配列が配列番号11である、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を用意する。
別の態様によると、記載した本発明は、ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の軽鎖のアミノ酸配列が配列番号13であり、ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の重鎖のアミノ酸配列が配列番号15である、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を用意する。
【0028】
別の態様によると、記載した本発明は、ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の軽鎖のアミノ酸配列が配列番号17であり、ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の重鎖のアミノ酸配列が配列番号19である、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を用意する。
別の態様によると、記載した本発明は、ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の軽鎖のアミノ酸配列が配列番号21であり、ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の重鎖のアミノ酸配列が配列番号23である、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を用意する。
【0029】
別の態様によると、記載した本発明は、ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の軽鎖のアミノ酸配列が配列番号25であり、ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する抗体またはその断片の抗原結合部分の重鎖のアミノ酸配列が配列番号27である、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を用意する。
いくつかの実施形態によると、抗体またはその断片の有効濃度の最大半量(EC50)は、1ng/mL(6.25pM)と2,000ng/mL(12.5nM)の間である。いくつかの実施形態によると、抗体またはその抗原結合断片の有効濃度の最大半量(EC50)は、10ng/mL(62.5pM)と200ng/mL(1.25nM)の間である。いくつかの実施形態によると、細胞上のヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合するFLT3抗体は、細胞が結合抗体または抗原結合断片を内部移行させるのに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A-1C】
図1Aおよび
図1Bは、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンなどのアミノ酸の固有蛍光を示す図である。
図1Cは、合成抗体の純度の測定を示す図である。
【
図2A-2D】HSC/HPによって発現されるFLT3/FLK2およびT細胞によって発現されるCD3に結合する二重特異性抗体の投与が、ヒト化免疫力低下マウスの末梢血におけるキメラ化のレベルを低減することを示す図である。
図2Aは、CD3-FLT3二重特異性抗体の適用前(対照;上列)および3週間後のヒト化NOGマウスの末梢血のフローサイトメトリー分析の例を示す図である。左から右へ:ヒトhCD45+細胞(全CD45+細胞の%)、ヒトhCD3+細胞(全hCD45+細胞の%;T細胞)、ヒトhCD19+細胞(全hCD45+細胞の%;B細胞)、ヒトhCD33+細胞(全hCD45+細胞の%;骨髄球性細胞)の量の分析。
図2Bは、ヒト化マウス(n=27)の末梢血におけるキメラ化のレベルへの二重特異性抗体投与の効果を示す図である。
図2Cは、末梢血(n=27)におけるT細胞(全hCD45+細胞中のhCD3+細胞の%)、B細胞(全hCD45+細胞中のhCD19+細胞の%)、および骨髄球系列(全hCD45+細胞中のhCD33+細胞の%)のレベルへの二重特異性抗体投与の効果を示す図である。
図2Dは、ヒトhCD3+細胞(n=3)の量が低減したヒト化免疫力低下マウス(Cにおいてアスタリスクで標識した)における二重特異性抗体適用の効果の低減を示す図である。
【
図3A-3B】クローン的に増殖したハイブリドーマからの培養上澄み液のスクリーニングを示す図である。
図3Aは、9つの陽性ハイブリドーマクローンの上澄み液のフローサイトメトリー分析から得た蛍光強度のヒストグラムである。上澄み液は、REH細胞(初回再発時のALLの15歳の少女の末梢血から確立したヒトB細胞先駆白血病細胞)によって発現されるFLT3/FLK2に対する免疫反応性を示す。
図3Bは、
図3Aのヒストグラムの中央蛍光強度(MFI)を示す表である。9つのクローン全てが、ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質を発現するREH細胞と反応する。
【
図4A-4B】増殖したハイブリドーマから精製したモノクローナル抗体のスクリーニングを示す図である。
図4Aは、9つの陽性ハイブリドーマクローンから精製したモノクローナル抗体のフローサイトメトリー分析から得た蛍光強度ヒストグラムである。上澄み液は、SP2/0細胞によって発現されるヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質への免疫反応性を示す。モノクローナル抗体は、ヒトFLT3/FL2受容体タンパク質を発現しない野生型SP2/0細胞と非反応性であった。
図4Bは、
図4Aのヒストグラムの中央蛍光強度(MFI)を示す表である。9つのクローン全てが、ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質を発現するSP2/0細胞と反応し、野生型SP2/0細胞とは反応しなかった。
【
図5A-5E】フローサイトメトリーを使用する有効濃度(EC)曲線によって決定される抗ヒトFLT3/FLK2抗体の親和性を示す図である。
図5Aは、抗体クローンAb2~81。
図5Bは、抗体クローンAb1~23DA。
図5Cは、抗体クローンAb3~16HA。
図5Dは、抗体クローンAb0~30A。
図5Eは、抗体クローンAb1~18New。
【
図6】抗FLT3/FLK2抗体内部移行の時間経過を示す図である。モノクローナルマウス抗ヒトCD135抗体の平均蛍光強度(MFI)は二次Alexa Fluor 488で検出し、生存Reh細胞集団を時間に対してプロットした。内部移行アッセイは、氷上に4℃で10、30、60、および120分間保たれた対照細胞と並行して、37℃で実施した。各抗体(クローン123D、A281A、330A、および316HA)のMFIの増減率は、10分でのMFIを100%に設定して、4℃および37℃においてトリプリケートで2時間にわたり、時間に対してグラフ化した。
【発明を実施するための形態】
【0031】
用語
用語「活性化」または「リンパ球活性化」は、RNA、タンパク質およびDNAの合成ならびにリンホカインの産生をもたらす特異的抗原、非特異的マイトジェン、または同種異系細胞によるリンパ球の刺激を指し;それは様々なエフェクターおよびメモリー細胞の増殖および分化に続く。例えば、成熟B細胞は、その細胞表面免疫グロブリンIg)によって認識されるエピトープを発現する抗原との遭遇によって活性化され得る。活性化プロセスは、抗原による膜Ig分子の架橋に依存する直接的なもの(架橋依存的B細胞活性化)またはヘルパーT細胞との密接な相互作用によって最も効率的に起こる間接的なもの(「同種のヘルププロセス」)であり得る。T細胞活性化は、TCR/CD3複合体のその同種リガンドとの相互作用に依存し、ペプチドはクラスIまたはクラスII MHC分子の溝に結合される。受容体会合によって開始される分子イベントは複雑である。最も初期のステップは、いくつかのシグナル伝達経路を調節する基質のセットのチロシンリン酸化をもたらすチロシンキナーゼの活性化であるようである。これらは、TCRをras経路に連結するアダプタータンパク質のセット、チロシンリン酸化がその触媒活性を増大し、イノシトールリン脂質代謝経路に会合し、細胞内遊離カルシウム濃度の上昇およびプロテインキナーゼCの活性化をもたらすホスホリパーゼCγ1、ならびに細胞の成長および分化を調節する一連の他の酵素を含む。T細胞の完全な応答性は、受容体会合に加えて、アクセサリー細胞由来共刺激活性、例えば、抗原提示細胞(APC)上のCD80および/またはCD86によるT細胞上のCD28の会合を必要とする。活性化Bリンパ球の可溶性生成物は免疫グロブリン(抗体)である。活性化Tリンパ球の可溶性生成物はリンホカインである。
本明細書で使用する場合、用語「投与する」は、与える、または適用することを意味する。本明細書で使用する場合、用語「投与すること」およびその分法的に様々な形態には、in vivoでの投与、およびex vivoでの組織への直接投与が含まれる。
【0032】
抗体:
抗体は、その分子が、それらの標的上の小さい化学基に相補的なそれらの表面の小さい領域を持つ血清タンパク質である。これらの相補的な領域(抗体結合部位または抗原結合部位と呼ばれる)は、抗体分子あたり少なくとも2つあり、抗体分子のいくつかの型では、10、8、またはいくつかの種では多くても12あり、抗原上のそれらの相当する相補的な領域(抗原決定基またはエピトープ)と反応し、多価抗原のいくつかの分子を共に連結し、格子を形成する。
完全抗体分子の基本構造単位は、4つのポリペプチド鎖、2つの同一の軽(L)鎖(それぞれ約220アミノ酸を含有する)および2つの同一の重(H)鎖(それぞれ通常約440アミノ酸を含有する)からなる。2つの重鎖および2つの軽鎖は非共有および共有(ジスルフィド)結合の組合せによって一緒に維持される。分子は2つの同一の半分から構成され、それぞれ軽鎖のN末端領域および重鎖のN末端領域から構成される同一の抗原結合部位を有する。軽鎖と重鎖の両方は通常協力して抗原結合表面を形成する。
【0033】
ヒト抗体は、2種類の軽鎖、κおよびλを示す;免疫グロブリンの個々の分子は通常1つのみまたはその他である。正常な血清では、60%の分子がκ決定因子を有し、30%がλを有することが見出されてきた。多くの他の種が、2種類の軽鎖を示すことが見出されているが、それらの割合は多様である。例えば、マウスおよびラットでは、λ鎖を含むが全体の数パーセントに過ぎず;イヌおよびネコでは、κ鎖は非常に少なく;ウマはκ鎖を持たないようであり;ウサギは株およびb-遺伝子座アロタイプに依存して5~40%のλを有し;トリの軽鎖は、κよりもλにより相同性である。
哺乳動物では、抗体の5つのクラス、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、それぞれその自身の重鎖のクラス-α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)、およびμ(IgM)を有する。さらに、それぞれγ1、γ2、γ3、およびγ4重鎖を有するIgG免疫グロブリン(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)の4つのサブクラスがある。その分泌形態では、IgMは、全部で10の抗原結合部位を付与する5つの4鎖単位から構成される5量体である。各5量体は、2つの隣接する尾部領域間に共有結合的に挿入される1コピーのJ鎖を含有する。
5つの免疫グロブリンクラスは全て、広範な電気泳動移動度を示し、均一ではないという点で他の血清タンパク質と異なる。この不均一性、例えば互いに正味荷電が異なる個々のIgG分子は、免疫グロブリンの内在特性である。
【0034】
「抗原決定基」または「エピトープ」は、分子の抗原決定部位である。一連の抗原決定基/エピトープは基本的に直鎖である。らせん状ポリマーまたはタンパク質などの規則的な構造では、抗原決定基/エピトープは基本的に互いに近づくことができる分子の異なる部分のアミノ酸側鎖を含む構造の表面内または上の限られた領域またはパッチである。これらは構造決定因子である。
鍵と鍵穴の関係とたとえられることが多い相補性の原理は、2つの反応分子が互いに非常に近く接近でき、実際に1つの分子の突出する構成原子または原子群が、他方の相補的な凹みまたは陥没に適合できるほど近い場合にのみ効果的に作用できる比較的弱い結合力(疎水および水素結合、ファンデルワールス力、ならびにイオン性相互作用)を含む。抗原-抗体相互作用は高い特異性を示し、多くのレベルで明らかである。分子レベルまで下げると、「特異性」は抗体の抗原への結合部位が、無関係の抗原の抗原決定基に全く似ていない相補性を有することを意味する。2つの異なる抗原の抗原決定基が何らかの構造類似性を有する場合でさえも、1つの決定基の他方のいくつかの抗体の結合部位へのある程度の適合が起こり、この現象は交差反応を生じる。交差反応は、抗原-抗体反応の相補性または特異性を理解するうえで非常に重要である。免疫学的特異性または相補性は、抗原中の少量の不純物/夾雑物の検出を可能にする。
【0035】
「モノクローナル抗体」(mAb)は、免疫したドナー由来のマウス脾臓細胞とマウス骨髄腫細胞株との融合によって生成され、選択培地中で成長する確立されたマウスハイブリドーマクローンを産生できる。「ハイブリドーマ細胞」は抗体分泌B細胞と骨髄腫細胞のin vitroでの融合から生じる不死化ハイブリッド細胞である。培養抗原特異的B細胞の最初の活性化を指す「In vitro免疫」は、マウスモノクロ-ナル抗体を産生する別のよく確立された手段である。
末梢血リンパ球由来の免疫グロブリン重鎖(VH)および軽鎖(VκおよびVλ)バリアブル遺伝子の多様なライブラリーもポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によって増幅できる。重鎖および軽鎖可変ドメインがポリペプチドスペーサーによって連結される単一のポリペプチド鎖をコードする遺伝子(単鎖FvまたはscFv)は、PCRを使用して無作為に重鎖および軽鎖V遺伝子を組み合わせることによって作成できる。次いで、コンビナトリアルライブラリーは、ファージのチップにおけるマイナーコートタンパク質への融合によって、糸状バクテリオファージの表面上に提示するためにクローニングできる。
【0036】
ガイド選択の技術は、ヒト免疫グロブリンV遺伝子のげっ歯類免疫グロブリンV遺伝子とのシャッフリングに基づく。本方法は、(i)ヒトλ軽鎖のレパートリーを目的の抗原と反応性のマウスモノクローナル抗体の重鎖可変領域(VH)ドメインとシャッフリングするステップ;(ii)抗原上の半ヒトFabを選択するステップ、(iii)二度目のシャッフルにおいてヒト重鎖のライブラリーのための「ドッキングドメイン」として選択したλ軽鎖遺伝子を使用してヒト軽鎖遺伝子を有するFab断片クローンを単離するステップ;(v)遺伝子を含有する哺乳動物細胞発現ベクターをエレクトロポレーションによってマウス骨髄腫細胞にトランスフェクトするステップ;および(vi)マウス骨髄における完全IgG1、λ抗体分子として抗原と反応性のFabのV遺伝子を発現するステップを必要とする。
本明細書で使用する場合、用語「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)」は、細胞の表面に結合する抗体がナチュラルキラー(NK)細胞上のFc受容体と相互作用する場合に引き起こされる。NK細胞は、IgG1およびIgG3サブクラスを認識する受容体FcγRIII(CD16)を発現する。死滅メカニズムは、パーフォリンおよびグランザイムを含有する細胞質顆粒の放出を含む、細胞傷害性T細胞のものと類似している(以下を参照)。
【0037】
CD3(TCR複合体)は4つの異なる鎖から構成されるタンパク質複合体である。哺乳動物では、複合体は、T細胞受容体(TCR)およびζ鎖と関連してTリンパ球の活性化シグナルを生成するCD3γ鎖、CD3δ鎖、および2つのCD3ε鎖を含有する。TCR、ζ鎖およびCD3分子は共にTCR複合体を構成する。CD3分子の細胞内尾部は、TCRのシグナル伝達能に必須である、免疫受容体活性化チロシンモチーフ(ITAM)として公知の保存モチーフを含有する。ITAMのリン酸化時、CD3鎖は、T細胞のシグナル伝達カスケードに含まれるキナーゼ、ZAP70(ゼータ関連タンパク質)を結合できる。
用語「結合すること」およびその文法的に様々な形態は、化学物質間で持続する引力を意味する。結合特異性には、特定の相手に結合すること、および他の分子に結合しないことの両方が必要である。機能的に重要な結合は、低親和性から高親和性の範囲で生じることがあり、設計要素は望ましくない交差相互作用を抑制することができる。翻訳後修飾はまた、相互作用の化学的性質および構造を変化させることができる。「乱雑な結合」には、構造柔軟性の程度が関与し、これは異なる相手に結合するために重要な残基の異なるサブセットを生じ得る。「相対的な結合特異性」とは、生化学系において分子がその標的または相手と特異的に相互作用し、それによって個々の標的または相手の独自性に応じてそれらに影響を及ぼすという特徴である。
【0038】
本明細書で使用する場合、用語「接触する」およびその文法的に様々な形態は、接触している状態または直接もしくは局所的に近接している状態を意味する。組成物の、限定はしないが、器官、組織、または細胞などの目的とする標的への接触は、当業者に公知の任意の投与手段によって生じ得る。
本明細書で使用する場合、「有効濃度の最大半量」(EC50)という用語は、ベースラインと曝露時間後の最大との間の半分の応答を誘導する抗体濃度を意味する。
本明細書で使用する用語「造血細胞移植」(HCT)は、血液および骨髄移植(BMT)、患者の造血システムを再構築するための細胞(造血幹細胞;また造血前駆細胞とも呼ばれる)の注入を含む手順を指す。
用語「リンパ球」は、体全体に渡りリンパ組織で形成される小さい白血球を指し、正常な成人では循環血液中の全白血球数の約22~28%を占め、疾患に対する体の防御に大きな役割を果たす。個々のリンパ球は特定化され、構造的に関連する抗原の限定されたセットに応答するように分化決定される。この分化決定は、免疫システムの所与の抗原との最初の接触より前に存在し、抗原上の決定基(エピトープ)に特異的な受容体のリンパ球表面膜上の提示によって発現される。各リンパ球は受容体の集団を持ち、その全てが同一の結合部位を有する。リンパ球の1セットまたはクローンは、その受容体の結合領域の構造が別のクローンとは異なり、したがってそれが認識できるエピトープが異なる。リンパ球は、それらの受容体の特異性だけではなく、それらの機能も互いに異なる。
リンパ球の2つの広範なクラスが認識される:抗体分泌細胞の先駆細胞であるBリンパ球(B細胞)、およびTリンパ球(T細胞)。
【0039】
Bリンパ球
Bリンパ球は、骨髄の造血細胞由来である。成熟B細胞は、その細胞表面によって認識されるエピトープを発現する抗原によって活性化され得る。活性化プロセスは、抗原による膜Ig分子の架橋に依存する直接的なもの(架橋依存的B細胞活性化)、または同種の援助と呼ばれるプロセスにおいて、ヘルパーT細胞による相互作用を介する間接的なものであり得る。多くの生理学的状況において、受容体架橋刺激と同種の援助が共同してより活発なB細胞応答を生み出す(Paul, W. E., "Chapter 1: The immune system: an introduction," Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed. Paul, W. E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia (1999))。
架橋依存的B細胞活性化は、各B細胞が同一の可変領域を有するIg分子を発現するため、抗原が細胞表面受容体の結合部位に相補的な複数コピーのエピトープを発現することを必要とする。そのような要求は、微生物の莢膜多糖類またはウイルスエンベロープタンパク質など、反復エピトープを有する他の抗原によって満たされる。架橋依存的B細胞活性化は、これらの微生物に対して開始される主要な防御免疫応答である(Paul, W. E., "Chapter 1: The immune system: an introduction," Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed. Paul, W. E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia (1999))。
【0040】
同種の援助により、B細胞は受容体と架橋できない抗原に対する応答を開始し、同時に、それらが弱い架橋イベントによって刺激される場合、不活性化からB細胞を救出する共刺激シグナルを提供する。同種の援助は、B細胞の膜免疫グロブリン(Ig)、抗原のエンドサイトーシス、および細胞のエンドソーム/リソソームコンパートメント内でのペプチドへのその断片化による抗原の結合に依存する。生じたペプチドのいくつかは、クラスII主要組織適合複合体(MHC)分子として公知の細胞表面タンパク質の特定のセットの溝にロードされる。生じたクラスII/ペプチド複合体は細胞表面に発現され、CD4+T細胞として表されるT細胞のセットの抗原特異的受容体のリガンドとして作用する。CD4+T細胞はそれらの表面上にB細胞のクラスII/ペプチド複合体に特異的な受容体を持つ。B細胞活性化は、そのT細胞受容体(TCR)によるT細胞の結合に依存するだけでなく、この相互作用もT細胞上の活性化リガンド(CD40リガンド)をB細胞上のその受容体(CD40)に結合させ、B細胞活性化のシグナル伝達を可能にする。さらに、ヘルパーT細胞は、B細胞上のサイトカイン受容体への結合によって、刺激したB細胞の成長および分化を制御するいくつかのサイトカインを分泌する(Paul, W. E., "Chapter 1: The immune system: an introduction," Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed. Paul, W. E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia (1999))。
【0041】
抗体産生のための同種の援助の間、CD40リガンドは活性化CD4+ヘルパーT細胞上に一過的に発現され、それは抗原特異的B細胞上のCD40に結合し、それにより二次共刺激シグナルを伝達する。後者のシグナルは、B細胞の成長および分化、ならびに抗原と遭遇した胚中心のB細胞のアポトーシスを防ぐことによるメモリーB細胞の生成に必須である。B細胞とT細胞の両方におけるCD40リガンドの高発現は、ヒトSLE患者における病原性自己抗体産生に関係する。(Desai-Mehta, A. et al., "Hyperexpression of CD40 ligand by B and T cells in human lupus and its role in pathogenic autoantibody production, " J. Clin. Invest., 97(9): 2063-2073 (1996))。
【0042】
Tリンパ球
造血組織の先駆細胞由来のTリンパ球は、胸腺で分化し、次いで末梢リンパ組織およびリンパ球の再循環プールに播種される。Tリンパ球またはT細胞は、広範な免疫機能を媒介する。これらは、B細胞が抗体産生細胞へと発生するのを援助する能力、単球/マクロファージの殺菌作用を増大する能力、特定の型の免疫応答の阻害、標的細胞の死滅、および炎症応答の動員を含む。これらの効果は、特異的細胞表面分子の発現およびサイトカインの分泌に依存する。(Paul, W. E., "Chapter 1: The immune system: an introduction," Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed. Paul, W. E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia (1999))。
【0043】
T細胞は、それらの抗原認識のメカニズムがB細胞とは異なる。B細胞の受容体である免疫グロブリンは、可溶性分子または特定の表面上の個々のエピトープに結合する。B細胞受容体は天然分子の表面上に発現したエピトープを参照する。抗体およびB細胞受容体は、細胞外液中の微生物に結合、および保護するように進化した。対照的に、T細胞は他の細胞表面上の抗原を認識し、相互作用することによってそれらの機能を媒介し、これらの抗原提示細胞(APC)の挙動を変更する。T細胞を活性化できる末梢リンパ器官の抗原提示細胞の3つの主な型がある:樹状細胞、マクロファージ、およびB細胞。これらのうちで最も効力があるのは樹状細胞であり、その唯一の機能はT細胞に外来抗原を提示することである。未成熟な樹状細胞は、皮膚、腸、および呼吸器を含む体中の組織に局在する。未成熟な樹状細胞がこれらの部位で侵入した病原菌に遭遇する場合、病原体およびその産物をエンドサイトーシスし、局所リンパ節または腸関連リンパ器官へとリンパを介してそれらを運ぶ。病原体との遭遇は、抗原捕捉細胞からT細胞を活性化できる抗原提示細胞(APC)へと、樹状細胞の成熟を誘導する。APCは、エフェクター細胞になるようにT細胞を活性化する役割を持つ3つの型のタンパク質分子をそれらの表面上に提示する:(1)外来抗原をT細胞受容体に提示するMHCタンパク質;(2)T細胞表面上の相補的な受容体に結合する共刺激タンパク質;および(3)活性化されるのに十分長い期間、T細胞が抗原提示細胞(APC)に結合するようにする細胞間接着分子。("Chapter 24: The adaptive immune system," Molecular Biology of the Cell, Alberts, B. et al., Garland Science, NY, 2002)。
【0044】
T細胞は、それらが発現する細胞表面受容体に基づき2つの異なるクラスに細分される。大半のT細胞は、αおよびβ鎖からなるT細胞受容体(TCR)を発現する。T細胞の小さい群は、γおよびδ鎖で作成される受容体を発現する。α/β T細胞の中には、2つの重要なサブ系列がある:共受容体分子CD4を発現するもの(CD4+T細胞);およびCD8を発現するもの(CD8+T細胞)。これらの細胞は、それらが抗原を認識する方法ならびにそれらのエフェクターおよび制御機能が異なる。
CD4+T細胞は、免疫系の主要な制御細胞である。それらの制御機能は、T細胞が活性化される時に発現が誘導されるCD40リガンドなど、それらの細胞表面分子の発現、および活性化されるときにそれらが分泌する多様なサイトカインの両方に依存する。
T細胞は重要なエフェクター機能も媒介し、そのいくつかはそれらが分泌するサイトカインのパターンによって決定される。サイトカインは、標的細胞に直接毒性であり、強力な炎症メカニズムを動員し得る。
さらに、T細胞、特にCD8+T細胞は、CTLによって認識される抗原を発現する標的細胞を効率的に溶解可能な細胞障害性Tリンパ球(CTL)に発生できる。(Paul, W. E., "Chapter 1: The immune system: an introduction," Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed. Paul, W. E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia (1999))。
【0045】
T細胞受容体(TCR)は、クラスIIまたはクラスI MHCタンパク質の、特定の溝に結合する抗原のタンパク質分解に由来するペプチドからなる複合体を認識する。CD4+T細胞はペプチド/クラスII複合体のみを認識するが、CD8+T細胞はペプチド/クラスI複合体を認識する。(Paul, W. E., "Chapter 1: The immune system: an introduction," Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed. Paul, W. E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia (1999))。
TCRのリガンド(すなわちペプチド/MHCタンパク質複合体)は、抗原提示細胞(APC)内で創製される。一般に、クラスII MHC分子は、エンドサイトーシスプロセスによってAPCにより取り込まれたタンパク質由来のペプチドに結合する。これらのペプチドをロードしたクラスII分子は、次いで細胞の表面上で発現され、そこでは発現された細胞表面複合体を認識することができるTCRによってCD4+T細胞に結合され得る。したがって、CD4+T細胞は細胞外の原因に由来する抗原と反応するように特定化される。(Paul, W. E., "Chapter 1: The immune system: an introduction," Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed. Paul, W. E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia (1999))。
【0046】
反対に、クラスI MHC分子は、ウイルスタンパク質など内部で合成されたタンパク質由来のペプチドを主にロードする。これらのペプチドは、プロテオソームによるタンパク質分解によって細胞質タンパク質から産生され、粗面小胞体に移動される。一般に9アミノ酸長のそのようなペプチドは、クラスI MHC分子に結合され、細胞表面に運ばれ、ここでそれらは適切な受容体を発現するCD8+T細胞によって認識され得る。これはT細胞系、特にCD8+T細胞に、その完全形態にあるこれらのタンパク質が細胞表面上に発現されないまたは分泌されない場合でさえも、生物の残りの細胞のもの(例えば、ウイルス抗原)または変異抗原(活性がん遺伝子産物など)と異なる、またはそれよりはるかに多くの量が産生されるタンパク質を発現する細胞を検出する能力を付与する。(Paul, W. E., "Chapter 1: The immune system: an introduction," Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed. Paul, W. E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia (1999))。
T細胞は、ヘルパーT細胞;細胞性免疫の誘導に関与するT細胞;サプレッサーT細胞;および細胞障害性T細胞としてのそれらの機能に基づいても分類され得る。
【0047】
ヘルパーT細胞
ヘルパーT細胞は、B細胞を刺激してタンパク質および他のT細胞依存的抗原に応答する抗体を作成するT細胞である。T細胞依存的抗原は、個々のエピトープが1度または限られた回数だけ出現し、B細胞の膜免疫グロブリン(Ig)と架橋できないまたは効率的に架橋できない免疫原である。B細胞はそれらの膜Igによって抗原を結合し、複合体はエンドサイトーシスを受ける。エンドソームおよびリソソームコンパートメント内で、抗原はタンパク質分解酵素によってペプチドに断片化され、生成されたペプチドの1つまたは複数はクラスII MHC分子にロードされ、この小胞コンパートメントによって運搬される。生じたペプチド/クラスII MHC複合体は、次いでB細胞表面膜に輸送される。ペプチド/クラスII分子複合体に特異的な受容体を有するT細胞は、B細胞表面上のこの複合体を認識する。(Paul, W. E., "Chapter 1: The immune system: an introduction," Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed. Paul, W. E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia (1999))。
B細胞活性化は、そのTCRによるT細胞の結合およびT細胞CD40リガンド(CD40L)とB細胞上のCD40との相互作用の両方に依存する。T細胞は、恒常的にCD40Lを発現しない。むしろ、CD40L発現は、T細胞のTCRによって認識される同種の抗原とCD80またはCD86の両方を発現するAPCとの相互作用の結果として誘導される。CD80/CD86は通常活性化されたB細胞によって発現されるが、休止B細胞によっては発現されず、活性化されたB細胞およびT細胞を含むヘルパー相互作用は、効率的な抗体産生をもたらし得る。しかし、多くの場合、T細胞上のCD40Lの最初の誘導は、樹状細胞など、CD80/86を恒常的に発現するAPCの表面上の抗原のそれらの認識に依存する。そのような活性化されたヘルパーT細胞は、次いで効率的にB細胞と相互作用し、B細胞を援助する。B細胞上の膜Igの架橋は、効率的でないにしても、CD40L/CD40相互作用と共同して様々なB細胞活性化をもたらす。増殖、Ig分泌、および(発現されるIgクラスの)クラススイッチを含む、B細胞応答の続くイベントは、T細胞由来サイトカインの作用に依存するまたは増強される。(Paul, W. E., "Chapter 1: The immune system: an introduction," Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed. Paul, W. E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia (1999))。
【0048】
CD4+T細胞は、サイトカインIL-4、IL-5、IL-6、およびIL-10を主に分泌する細胞(TH2細胞)またはIL-2、IFN-γ、およびリンホトキシンを主に産生する細胞(TH1細胞)に分化する傾向がある。TH2細胞は、抗体産生細胞へのB細胞の発生を援助するのに非常に有効であるが、TH1細胞は、単球およびマクロファージの殺菌作用の増強、ならびに結果として増加した細胞内の小胞コンパートメントにおける微生物溶解の効率を含む、細胞免疫応答の有効な誘導因子である。TH2細胞の表現型(すなわちIL-4、IL-5、IL-6、およびIL-10)を有するCD4+T細胞は効率的なヘルパー細胞であるが、TH1細胞もヘルパーの能力を有する。(Paul, W. E., "Chapter 1: The immune system: an introduction," Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed. Paul, W. E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia (1999))。
【0049】
細胞性免疫の誘導に関与するT細胞
T細胞は、細胞内微生物を破壊する単球およびマクロファージの能力を増強するためにも作用し得る。特に、ヘルパーT細胞によって産生されるインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)は、いくつかのメカニズムを増強し、それにより単核貪食細胞は、一酸化窒素の生成および腫瘍壊死因子(TNF)産生の誘導を含む細胞内細菌および寄生体を破壊する。TH1細胞は、IFN-γを産生するため、殺菌作用の増強に有効である。反対に、TH2細胞によって産生される2つの主なサイトカイン、IL-4およびIL-10は、これらの作用を遮断する。(Paul, W. E., "Chapter 1: The immune system: an introduction," Fundamental Immunology, 4th Edition, Ed. Paul, W. E., Lippicott-Raven Publishers, Philadelphia (1999))。
【0050】
サプレッサーまたは制御性T(Treg)細胞
免疫応答の開始と下方制御の間の調節されたバランスは免疫恒常性の維持に重要である。アポトーシスとT細胞アネルギー(抗原遭遇後にT細胞が内因的に機能的に不活性化される耐性機構(Scwartz, R. H., "T cell anergy," Annu. Rev. Immunol., 21: 305-334 (2003))の両方とも、免疫応答の下方制御に寄与する重要なメカニズムである。第三のメカニズムは、サプレッサーまたは制御性CD4+T(Treg)細胞による、活性化されたT細胞の能動抑制によって提供される。(Reviewed in Kronenberg, M. et al., "Regulation of immunity by self-reactive T cells," Nature 435: 598-604 (2005))。IL-2受容体アルファ(IL-2R□)鎖(CD4+CD25+)を恒常的に発現するCD4+Tregは、アネルギー性および抑制性である自然発生のT細胞サブセットである。(Taams, L. S. et l., "Human anergic/suppressive CD4+CD25+ T cells: a highly differentiated and apoptosis-prone population," Eur. J. Immunol., 31: 1122-1131 (2001))。CD4+CD25+Tregの枯渇はマウスの全身性自己免疫疾患をもたらす。さらに、これらのTregの移植は、自己免疫疾患の発生を防ぐ。ヒトCD4+CD25+Tregは、そのマウスの対応物と類似して、胸腺で生成され、細胞間接触依存的なメカニズムによって、レスポンダーT細胞の増殖を抑制する能力、IL-2を産生できないこと、およびin vitroでのアネルギー表現型によって特徴付けられる。ヒトCD4+CD25+T細胞は、CD25発現のレベルによって、抑制性(CD25高)および非抑制性(CD25低)細胞に分けられ得る。転写因子のフォークヘッドファミリーのメンバー、FOXP3は、マウスおよびヒトCD4+CD25+Tregに発現されることが示されており、CD4+CD25+Treg発生を調節するマスター遺伝子のようである。(Battaglia, M. et al., "Rapamycin promotes expansion of functional CD4+CD25+Foxp3+ regulator T cells of both healthy subjects and type 1 diabetic patients," J. Immunol., 177: 8338-8347 (200))。
【0051】
細胞障害性Tリンパ球(CTL)
標的細胞内で産生されたタンパク質由来のペプチドを認識するCD8+T細胞は細胞傷害特性を有し、標的細胞の溶解をもたらす。CTL誘導溶解のメカニズムは、標的細胞の膜に挿入され細胞の溶解を促進し得る分子であるパーフォリンのCTLによる産生を含む。パーフォリン媒介溶解は、グランザイムと呼ばれる活性化CTLによって産生された一連の酵素によって増強される。多くの活性なCTLは、それらの表面に大量のfasリガンドも発現する。CTLの表面上のfasリガンドの、標的細胞の表面上のfasとの相互作用は、標的細胞のアポトーシスを開始し、これらの細胞の死をもたらす。CTL媒介溶解は、ウイルス感染細胞の破壊のための主なメカニズムであるようである。
【0052】
プライミング
本明細書で使用する場合、用語「プライミングされていない細胞」(バージン(virgin)、ナイーブ(naive)、または未経験細胞とも呼ばれる)は、特定の特異性の抗原受容体(T細胞ではTCR、B細胞ではBCR)を生成したが、抗原に遭遇していないT細胞およびB細胞を指す。本明細書で使用する場合、用語「プライミング」は、それによりT細胞およびB細胞先駆細胞が、それらが特異的である抗原に遭遇するプロセスを指す。
例えば、ヘルパーT細胞およびB細胞が相互作用し、特定の抗体を産生する前、抗原特異的T細胞先駆細胞はプライミングされなければならない。プライミングはいくつかのステップを含む:抗原取り込み、プロセシング、および抗原提示細胞によるクラスII MHC分子に結合する細胞表面発現、リンパ組織におけるヘルパーT細胞先駆細胞の再循環および抗原特異的トラップ、ならびにT細胞増殖および分化。Janeway, CA, Jr., "The priming of helper T cells, Semin. Immunol. 1(1): 13-20 (1989)。ヘルパーT細胞はCD4を発現するが、全てのCD4T細胞がヘルパー細胞ではない。同文献。ヘルパーT細胞のクローン増殖のために必要なシグナルは他のCD4T細胞に必要とされるものとは異なる。ヘルパーT細胞のプライミングに重要な抗原提示細胞は、マクロファージのようであり;およびヘルパーT細胞の成長に重要な第二のシグナルはマクロファージ産物インターロイキン1(IL-1)である。同文献。プライミングされたT細胞および/またはB細胞が第二の共刺激シグナルを受ける場合、それらは活性化されたT細胞またはB細胞になる。
【0053】
本明細書で使用する場合、用語「移植」は、個体の一部から別の部分への細胞、組織、または器官の除去および移動を指す。
一態様によると、記載した本発明は、ヒトFlt3およびヒトCD3の両方に結合する組換え二重特異性抗体を用意する。いくつかの実施形態によると、Flt3抗体はFLT3/FLK2受容体タンパク質に結合する。いくつかの実施形態によると、FLT3/FLK2受容体タンパク質は哺乳動物タンパク質である。いくつかの実施形態によると、FLT3/FLK2受容体タンパク質はヒトである。いくつかの実施形態によると、FLT3/FLK2受容体タンパク質は天然である。いくつかの実施形態によると、FLT3/FLK2受容体タンパク質は改変形態である。いくつかの実施形態によると、FLT3/FLK2受容体タンパク質は変性された形態である。いくつかの実施形態によると、FLT3/FLK2受容体タンパク質は非改変形態である。いくつかの実施形態によると、Flt3抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片および合成抗体模倣物からなる群から選択される。いくつかの実施形態によると、Flt3抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態によると、FLt3モノクローナル抗体は、合成抗体および工学的に改変した抗体からなる群から選択される。いくつかの実施形態によると、合成抗体は組換え抗体である。いくつかの実施形態によると、組換え抗体は単鎖可変断片(scFv)抗体である。いくつかの実施形態によると、単鎖抗体はIgG1のCH2ドメインに接続されているFlt3抗体のFab断片のC末端を含む。いくつかの実施形態によると、IgG1のCH2ドメインは、ヒトCD3のサブユニットと反応する抗体の単鎖可変断片(ScFv)に接続されている。いくつかの実施形態によると、単鎖可変断片はモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態によると、ヒトCD3のサブユニットはUCHT1である。いくつかの実施形態によると、工学的に改変した抗体はキメラ抗体である。いくつかの実施形態によると、工学的に改変した抗体はヒト化抗体である。
【0054】
いくつかの実施形態によると、FLT3抗体のFlt3への結合は、FLT3リガンドのFLT3/FLK2受容体タンパク質への結合を遮断するのに有効である。いくつかの実施形態によると、FLT3抗体の細胞上のFlt3への結合は、細胞の結合した抗体を内部移行させるのに有効である。
いくつかの実施形態によると、Flt3抗体は、有効濃度の最大半量(EC50)が、約1ng/mL(6.25pM)と約2,000ng/mL(12.5nM)の間である。いくつかの実施形態によると、Flt3抗体は、有効濃度の最大半量(EC50)が、約10ng/mL(62.5pM)と約200ng/mL(1.25nM)の間である。いくつかの実施形態によると、ヒトFlt3とヒトCD3の両方に結合する二重特異性抗体は、造血幹細胞(HPC)、初期の造血前駆細胞(HP)、およびがん細胞の1つまたは複数を除去するのに有効である。いくつかの実施形態によると、HPC、HP、およびがん細胞の1つまたは複数はFLT3を発現する。いくつかの実施形態によると、それを必要とする対象はBM/HPCPC移植を受けるまたは受けていると認定される患者である。がん細胞の例としては、限定はされないが、急性骨髄性白血病(AML)の芽細胞、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病の急性転化期(BC-CML)、および慢性リンパ性白血病(CLL)が挙げられる。いくつかの実施形態によると、二重特異性抗体は、骨髄(BM)/造血幹細胞(HSC)移植を受ける患者をコンディショニングするのに有効である。いくつかの実施形態によると、HSC/HP移植は血液系悪性腫瘍または過剰増殖性障害、例えば急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、末梢T細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、神経芽細胞腫、非悪性の遺伝性および後天性骨髄障害(例えば、鎌状赤血球貧血、ベータサラセミアメジャー、難治性Diamond-Blackfan貧血、骨髄異形成症候群、特発性重症再生不良性貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、赤芽球癆、ファンコニ貧血、無巨核球性または先天性血小板減少症)、多発性骨髄腫、または重症複合免疫不全症(SCID)を処置するためである。
【0055】
別の態様によると、ヒトFLT3とヒトCD3の両方に結合する組換え単鎖二重特異性抗体を調製する方法は、Flt3モノクローナル抗体のFab断片のC末端をIgG1のCH2ドメインに接続するステップ、およびヒトCD3のサブユニットと反応するモノクローナル抗体(UCHT1)の単鎖可変断片(ScFv)をIgG1のCH2ドメインに接続するステップを含む。
別の態様によると、記載した本発明は、それを必要とする患者の造血幹細胞/造血前駆細胞(HSC/HP)を除去する方法を提供する。いくつかの実施形態によると、本方法は、HSC/HPおよびT細胞に特異的に結合する二重特異性抗体を前記患者に投与するステップを含む。特に、二重特異性抗体は、HSC/HPによって発現されるヒトFLT3およびT細胞によって発現されるヒトCD3に結合する。抗体の同時結合は、T細胞をリダイレクトし、患者のHSC/HPを特異的に除去する。
本方法は、患者への有効量の特定の抗体の投与も提供する。有効量は0.01mg/kg~10mg/kg、より良くは0.05mg/kg~2mg/kg、より良くは0.1mg/kg~0.5mg/kg、より良くは0.1mg/kg~0.3mg/kg、より良くは0.1mg/kgである。
【0056】
いくつかの実施形態によると、霊長類およびヒトCD3に結合する二重特異性抗体はヒト化抗体である。
いくつかの実施形態によると、二重特異性抗体またはその抗原結合部分はFLT3抗体のアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態によると、二重特異性抗体またはその抗原結合部分はCD3抗体のアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態によると、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、免疫グロブリンG(IgG)、IgM、IgE、IgA、またはIgDアイソタイプからなる群から選択されるアイソタイプを含む。
【0057】
別の態様によると、本発明は、それを必要とする患者のHSC/HPを除去する方法も提供し、ここでHSC/HPはFLT3を発現する。本方法は、HSC/HPの除去を必要とする患者を選択するステップならびにHSC/HPによって発現されるヒトFLT3およびT細胞によって発現されるヒトCD3に特異的に結合する二重特異性抗体を含む治療有効量の医薬組成物を患者に投与するステップを含み、ここでは二重特異性抗体がT細胞をリダイレクトし、患者のHSC/HPを死滅させる。
HSC/HPを除去する必要がある患者は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、末梢T細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、神経芽細胞腫、非悪性の遺伝性および後天性骨髄障害(例えば、鎌状赤血球貧血、ベータサラセミアメジャー、難治性Diamond-Blackfan貧血、骨髄異形成症候群、特発性重症再生不良性貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、赤芽球癆、ファンコニ貧血、無巨核球性または先天性血小板減少症)などの非血液系悪性腫瘍、多発性骨髄腫、重症複合免疫不全症(SCID)、ならびに骨髄(BM)/造血幹細胞(HSC)移植を使用して処置される他の障害を患っている患者である。
【0058】
医薬組成物は、抗体および薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む。担体は、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの1つまたは複数、およびそれらの組合せから選択される。薬学的に許容される担体は、結合タンパク質の有効期間または有効性を増強する湿潤剤もしくは乳化剤、保存剤、または緩衝剤などの少量の補助剤をさらに含み得る。医薬組成物は、当技術分野で周知のように、投与後の活性成分の速い、持続した、または遅延した放出を提供するように製剤化され得る(Mishra, M. K. (2016). Handbook of encapsulation and controlled release. Boca Raton, CRC Press, Taylor & Francis Group, CRC Press is an imprint of the Taylor & Francis Group, an Informa business、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
医薬組成物は、T細胞または抗腫瘍剤などの別の成分をさらに含み得る。抗体と併せて投与される抗腫瘍剤は、腫瘍または悪性腫瘍細胞を破壊または損傷する任意の薬剤を含む。
【0059】
抗腫瘍剤は、当業者に公知であり、アントラサイクリン(例えばダウノマイシンおよびドキソルビシン)、オーリスタチン、メトトレキサート(MTX)、ビンデシン、ネオカルチノスタチン、シスプラチン、クロラムブシル、シトシンアラビノシド、5-フルオロウリジン、メルファラン、リシン、およびカリチアマイシンを含む好適な抗悪性腫瘍剤からなる群から選択され、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、およびダカルバジン(ABVD)などとの多剤併用療法、BEACOPPまたは増大したBESCOPP(ブレオマイシン、エトポシド、ドキソルビシン、シクロフォスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジン、およびプレドニゾン)、ならびにStanford V療法(ドキソルビシン、ビンブラスチン、メクロレタミン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、エトポシド、およびプレドニゾン)を含む。抗腫瘍剤はまた、免疫療法(例えば、抗CD20抗体リツキシマブ)、免疫毒素(例えば、ブレンツキシマブベドチン(SGN-35)は、抗チューブリン剤モノメチルオーリスタチンE(MMAE)に連結するCD-30に対する抗体を含む免疫毒素である)、養子免疫治療(細胞障害性Tリンパ球)、プログラム死1(PD-1)遮断(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ)であってよい。
【0060】
別の態様によると、本発明は、T細胞をリダイレクトし、in vivoの動物モデルにおいてHSC/HPを死滅させる二重特異性抗体を試験する方法をさらに提供し、ここで前記動物モデルはキメラマウス-ヒト造血系の免疫無防備状態のヒト化マウスであり、前記ヒト化マウスはヒトHSC/HPの移植またはヒト出生後血管芽細胞の前記骨髄破壊された免疫無防備状態のマウスへの移植によって創製される。
本発明の二重特異性抗体は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるDurben et al. (Molecular Therapy, vol. 23, no. 4 April 2015)に記載の方法に従って合成されている。
使用したFLT3抗体配列は、その全体が参照により本明細書にも組み込まれるGrosse-Hovest et alの米国特許第9,023,996号に記載されている。
【0061】
本発明は、その好ましい実施形態と併せて記載されるが、当業者は他の実施形態も本発明の趣旨から逸脱することなく行われ得ることに気づくと理解される。
値の範囲が提供される場合、文脈が他にはっきりと示さない限り、下限の単位の10分の1まで、その範囲の上下限の間、および任意の他の言及した介在値、または言及した範囲の介在値が本発明に包含されることが理解される。より小さな範囲に独立して含まれ得るこれらのより小さな範囲の上下限も本発明に包含され、言及した範囲の任意の特別に除外した限界を対象とする。言及した範囲が1つまたは両方の限界を含む場合、これらの含まれる限界の両方ともを除外する範囲も本発明に含まれる。
他に定義しない限り、本明細書で使用した全ての技術および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等価の任意の方法および材料も記載した本発明の実施または試験に使用され得るが、例示的な方法および材料を記載している。本明細書に述べた全ての刊行物は参照により本明細書に組み込まれて開示され、刊行物が引用されるものと関連して方法および/または材料を記載する。
本明細書に使用される場合および添付の請求項において、単数形「1つ(a)」、「および(and)」および「その(the)」は、文脈が他にはっきりと示さない限り複数の参照を含む。
【実施例】
【0062】
以下の実施例は、記載した本発明の作成および使用方法の完全な開示および記載を当業者に提供するために記載され、本発明者らが彼らの発明と見なす範囲を限定することを意図せず、彼らは以下の実験が実施した実験全てまたは実施した実験のみを表すことを意図しない。使用した数値(例えば量、温度など)に関する正確性を確実にする努力がなされているが、いくつかの実験エラーおよび逸脱は説明されるべきである。他に示さない限り。部は質量部であり、分子量は質量平均分子量であり、温度はセ氏であり、圧力は大気圧または大気圧付近である。
本発明をより詳しく示すために以下の例をあげる。
【0063】
(実施例1)
抗体合成説明
背景情報
Fabscは組換え二重特異性抗体フォーマットである。FLT3(4G8クローンを使用)およびCD3(UCHT1抗体配列を使用し、huxCD3v1とも呼ばれる)を標的化する二重特異性抗体のためのFabscフォーマットは以下である:Flt3 mAbのFab断片のC末端は、IgG1のCH2ドメイン、続いてUCHT1のScFvに接続される。
4G8クローンおよびUCHT1の配列は、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,023,996B2号および米国特許第6,054,297号から得た。
実験の範囲
背景に記載したフォーマットに基づく4G8およびUCHT1可変重鎖および軽鎖配列の遺伝子合成。
IgG発現ベクターの分子構築。
HEK293細胞における0.1リットルプレミアム一過性産生。
カスタム精製(KappaSelectおよびプロテインLカラムならびにpH2.3での溶出)。
SE-HPLCによるタンパク質凝集分析。
【0064】
輸送可能な標的
0.1リットル産生から精製した全てのタンパク質。
分析証明書、CE-SDS分析、SE-HPLC分析報告書を含む試験報告書。
発現および精製後に得られた収量に依存して、産生した抗体が以下の解析ステップに使用されるかどうか顧客が決定する:
SE-HPLC(0.1mg)による試験純度、モノマー含量、および凝集。
様々な濃度の抗原を使用する結合および解離ならびにForeBio Octet QKe(0.2mg)によるkDの算出。
結果
Fabsc抗体は高発現哺乳動物ベクターシステムにクローニングされ、少量(0.1リットル)プレミアム一過性産生をHEK293細胞で完了した。タンパク質は、プロテインL精製によって精製され、20.17mgのタンパク質が得られた。収量が報告され、顧客はSE-HPLCが行われるべきであることを確認した。抗体はSE-HPLCによって92%非凝集モノマーであることが決定された。
【0065】
ベクター構築および一過性産生
発現ベクターの分子構築
DNA Studio遺伝子を合成し、プログラムされた配列を高発現哺乳動物ベクターの1つへクローニングした。完全構築物はトランスフェクションに進む前に配列を確認した。
【表1】
【0066】
小規模一過性トランスフェクション
HEK293細胞をトランスフェクションの1日前に振盪フラスコに播種し、無血清合成培地を使用して成長させた。DNA発現構築物は、一過性トランスフェクションの標準的な操作手順を使用して0.1リットルの浮遊HEK293細胞に一過的にトランスフェクトした。20時間後、細胞を採取し、生存能力および生存細胞数を得て、力価を測定した(Octet QKe,ForteBio)。5日目に培養物を回収し、さらなる読み取りを行った。
プロテインLアフィニティー精製
Fabsc用馴化培地を回収し、遠心分離および濾過により一過性トランスフェクション産生工程から浄化した。上澄み液をプロテインLカラムに通し、低pH緩衝液によって溶出した。分割する前に、0.2μmの膜フィルターを使用する濾過を行った。精製および濾過後、タンパク質濃度をOD280および吸光係数から算出した。収量および分割量の要約は表1を参照。CE-SDS分析を実施し(LabChip GXII、Perkin Elmer)、電気泳動図をプロットし、
図1Aおよび
図1Bに示す。
【0067】
SE-HPLC分析
5μLの精製抗体を、0.2mL/分の流速で25分間、MAbPac SEC-1、5μm、4×300mmカラムに注入した。タンパク質は、92%その非凝集形態で、期待時間溶出した。SE-HPLCのクロマトグラムおよび仕様を
図1Cに概説する。
凝集レベルの要約については表1を参照。
【表2】
【0068】
企画概要
Fabsc抗体をLakePharmaの高発現哺乳動物ベクターシステムにクローニングし、小規模(0.1リットル)プレミアム一過性産生をHEK293細胞で完了した。タンパク質は、プロテインL精製によって精製し、20.17mgのタンパク質を得て、19.07mgが送達された。抗体は、SE-HPLCによって92%非凝集であることが決定された。収量および分割量の要約は表1を参照。
タンパク質精製結果
プロセス概要および仕様
プロテインLアフィニティークロマトグラフィー
0.2μm滅菌濾過
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
(実施例2)
骨髄/造血幹細胞(BM/HSC)移植のための患者の前処置またはコンディショニング
骨髄/造血幹細胞(BM/HSC)移植のための患者の前処置またはコンディショニングは手順の重要な要素である。それは2つの主な目的を果たす:(1)患者の十分な免疫抑制を提供し、移植したHSCのための骨髄の十分なニッチ空間を明らかにする。これは移植した細胞をレシピエントに生着させる;(2)悪性腫瘍の源の根絶を助けることが多い。
患者のコンディショニングは、放射線ありまたはなしで化学療法剤のカクテルの最大投与可能量を投与することによって従来行われてきた。カクテルの成分は、毒性が重複しないように選択されることが多い。現在使用されている全ての前処置レジメンは毒性であり、生命を脅かし得る重度の副作用がある。これらの副作用は、粘膜炎、吐き気、および嘔吐、脱毛、下痢、発疹、末梢神経障害、不妊、肺毒性、および肝毒性である。これらの副作用の多くは、年配および病気の患者で特に危険であり、患者が移植を受けるかどうか決定する決定的な要素となることが多い。
【0073】
BM/HSC移植を受ける患者のコンディショニングのための化学療法剤の使用を除去するため、本発明者らはリダイレクトT細胞殺傷を使用する造血幹細胞/造血前駆細胞(HSC/HP)の選択的除去の方法を開発した。この方法は、HSC/HPの表面上の標的(FLT3)およびT細胞の表面上の標的(CD3)にも結合し、HSC/HPに対してT細胞を動員する二重特異性抗体の使用に基づく。
開発した本方法が、HSC/HPを除去するために有用である原理の証明として、本発明者らは、急性骨髄性白血病(AML)患者の始原末梢血単球における白血病芽の殺傷のために設計された二重特異性(FLT3×CD3)抗体を試験した(Durben, Schmiedel et al. 2015)。
【0074】
免疫無防備状態のNOG(NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Sug/JicTac)マウスの雌(4~6週齢)を、臍帯血(CB)由来のヒトCD34+HSC/HPの移植に使用した。CBの単核球画分は、Ficoll-Paque(GE Healthcare Life Sciences)を使用して、密度勾配遠心分離によって分離した。簡単にいうと、抗凝集体で処置したCBは、1:1の比でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)と混合し、50mlの円錐遠心分離チューブ内でFicoll-Paque(10ml)の層上に置いた(混合物の35ml)。次いで、チューブを、400×gの速さでスピンした。単球リンパ球層を注意深く取り除き、その層から得た細胞はPBSで2回洗浄した。
CD34+HSC/HPは、血小板減少によるネガティブセレクションによって単離した(Stemcell Technologies)。望まない細胞は、CD2、CD3、CD11b、CD11c、CD14、CD16、CD19、CD24、CD56、CD61、CD66b、グリコフォリンA、およびデキストラン被覆マグネット粒子を認識する四量体抗体複合体による除去の標的となった。標識細胞は、カラムを使用せずにEasySep(登録商標)マグネットを使用して分離された。
【0075】
CD34+HSC/HPは、骨髄機能を廃絶したNOGマウスへの移植のため、200μl当たり10,000~50,000個の細胞でPBSに再懸濁した。
マウスは移植24時間前に腹腔内注射によってブスルファン(10mg/kg)を使用して骨髄機能を廃絶した。CD34
+HSC/HPは、200μlの細胞懸濁液(n=52)の尾静脈注射によって移植した。移植の18週後、移植したマウスの末梢血を、ヒトCD45
+細胞の存在に関して試験した。さらなる実験のため、40%≦キメラ化のレベル(全CD45
+細胞のうちヒトCD45
+細胞≧40%の%)のマウスを選択した(n=27;
図1A、
図1B)。キメラ化のレベルは末梢血で試験し、以下のように算出した。
【数1】
選択したマウスの末梢血は、ヒトB細胞(hCD19
+)、ヒトT細胞(hCD3
+)、および骨髄球系列に属するヒト細胞(hCD33
+)の存在についても試験した。大半のマウスは、3つの系列全ての強い発生を示した(
図1A、
図1B)。何匹かのマウス(n=3)はCD3
+細胞の発生を欠損していた(
図1B星印、
図1D)。これらのT細胞欠損マウスは実験内で内部対照群として使用した。
【0076】
インサートのタンパク質配列
Fabsc HC [H3113](配列番号1):
MEWSWVFLFFLSVTTGVHSQVQLQQPGAELVKPGASLKLSCKSSGYTFTSYWMHWVRQRPGHGLEWIGEIDPSDSYKDYNQKFKDKATLTVDRSSNTAYMHLSSLTSDDSAVYYCARAITTTPFDFWGQGTTLTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTSPPSPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVGVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYQSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKQLPSPIEKTISKAKGGGGAGGGGEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYSFTGYTMNWVRQAPGKGLEWVALINPYKGVTTYADSVKGRFTISVDKSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARSGYYGDSDWYFDVWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDIRNYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSRLESGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCQQGNTLPWTFGQGTKVEIKR*
【0077】
Fabsc LC [L3113](配列番号2):
METDTLLLWVLLLWVPGSTGDIVLTQSPATLSVTPGDSVSLSCRASQSISNNLHWYQQKSHESPRLLIKYASQSISGIPSRFSGSGSGTDFTLSINSVETEDFGVYFCQQSNTWPYTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNR GEC*
シグナルペプチド
可変重
可変軽
【0078】
インサートのDNA配列
Fabsc HC [H3113](配列番号3):
ATGGAATGGAGCTGGGTCTTTCTCTTCTTCCTGTCAGTAACGACTGGTGTCCACTCCCAGGTGCAGCTGCAGCAGCCTGGTGCCGAGCTCGTGAAACCTGGCGCCTCCCTGAAGCTGTCCTGCAAGTCCTCCGGCTACACCTTCACCAGCTACTGGATGCACTGGGTGCGACAGAGGCCTGGCCACGGACTGGAATGGATCGGCGAGATCGACCCCTCCGACTCCTACAAGGACTACAACCAGAAGTTCAAGGACAAGGCCACCCTGACCGTGGACAGATCCTCCAACACCGCCTACATGCACCTGTCCTCCCTGACCTCCGACGACTCCGCCGTGTACTACTGCGCCAGAGCCATCACAACCACCCCCTTCGATTTCTGGGGCCAGGGCACCACACTGACAGTGTCCTCCGCTTCCACCAAGGGCCCCTCCGTGTTTCCTCTGGCCCCTTCCAGCAAGTCCACCTCTGGCGGAACAGCCGCTCTGGGCTGCCTCGTGAAGGACTACTTCCCCGAGCCTGTGACCGTGTCCTGGAACTCTGGCGCTCTGACATCCGGCGTGCACACCTTCCCTGCTGTGCTGCAGTCTAGCGGCCTGTACTCCCTGTCCAGCGTCGTGACCGTGCCTTCCAGCTCTCTGGGCACCCAGACCTACATCTGCAACGTGAACCACAAGCCTTCCAACACCAAGGTGGACAAGAAGGTGGAACCCAAGTCCTGCGACAAGACCCACACCAGCCCTCCAAGCCCTGCTCCTCCTGTGGCTGGCCCTAGCGTGTTCCTGTTCCCTCCAAAGCCCAAGGATACCCTGATGATCTCCCGGACCCCCGAAGTGACCTGCGTGGTCGTGGGAGTGTCTCACGAGGACCCTGAAGTGAAGTTCAATTGGTACGTGGACGGCGTGGAAGTGCACAACGCCAAGACCAAGCCTAGAGAGGAACAGTACCAGTCCACCTACCGGGTGGTGTCCGTGCTGACCGTGCTGCACCAGGATTGGCTGAACGGCAAAGAGTACAAGTGCAAGGTGTCCAACAAGCAGCTGCCCAGCCCCATCGAAAAGACCATCTCCAAGGCTAAGGGCGGAGGCGGAGCTGGTGGTGGCGGAGAAGTGCAGCTGGTGGAATCTGGCGGCGGACTGGTGCAGCCTGGCGGATCTCTGAGACTGTCTTGTGCCGCCAGCGGCTACTCTTTCACCGGCTATACCATGAATTGGGTGCGCCAGGCCCCTGGAAAGGGCCTGGAATGGGTGGCCCTGATCAACCCCTACAAGGGCGTGACCACCTACGCCGACTCCGTGAAGGGCCGGTTCACCATCTCCGTGGACAAGTCCAAGAATACCGCTTACCTGCAGATGAACTCCCTGCGGGCCGAGGACACCGCTGTGTATTACTGTGCTAGATCCGGCTACTACGGCGACAGCGATTGGTACTTCGACGTGTGGGGACAGGGAACCCTCGTGACTGTGTCATCAGGCGGCGGTGGTTCTGGCGGAGGGGGATCTGGGGGCGGTGGATCCGATATCCAGATGACCCAGTCCCCCAGCTCCCTGTCTGCCTCTGTGGGCGACAGAGTGACCATCACCTGTCGGGCCTCTCAGGACATCCGGAACTACCTGAACTGGTATCAGCAGAAGCCCGGCAAGGCCCCCAAGCTGCTGATCTACTACACCTCCCGGCTGGAAAGCGGCGTGCCCTCCAGATTCTCCGGCTCTGGCTCTGGAACCGACTATACCCTGACCATCTCTAGCCTGCAGCCCGAGGACTTCGCCACCTACTACTGCCAGCAGGGCAACACCCTGCCCTGGACCTTTGGCCAGGGAACAAAGGTGGAAATCAAGCGGTGA
【0079】
Fabsc LC [L3113](配列番号4):
ATGGAGACCGACACCCTGCTGCTCTGGGTGCTGCTGCTCTGGGTGCCCGGCTCCACCGGAGACATCGTGCTGACCCAGTCTCCCGCCACCCTGTCTGTGACCCCTGGCGACTCTGTGTCCCTGTCCTGCAGAGCCTCCCAGTCCATCTCCAACAACCTGCACTGGTATCAGCAGAAGTCCCACGAGAGCCCTCGGCTGCTGATTAAGTACGCCAGCCAGTCTATCTCCGGCATCCCCTCCAGATTCTCCGGCTCTGGCTCTGGCACCGACTTCACCCTGTCCATCAACTCCGTGGAAACCGAGGACTTCGGCGTGTACTTCTGCCAGCAGTCCAACACCTGGCCCTACACCTTTGGCGGAGGCACCAAGCTGGAAATCAAGCGGACCGTGGCCGCCCCCAGCGTGTTCATCTTCCCTCCCAGCGACGAGCAGCTGAAGTCTGGCACCGCCAGCGTGGTGTGCCTGCTGAACAACTTCTACCCCCGCGAGGCCAAGGTGCAGTGGAAGGTGGACAACGCCCTGCAGAGCGGCAACAGCCAGGAGAGCGTGACCGAGCAGGACTCCAAGGACAGCACCTACAGCCTGAGCAGCACCCTGACCCTGAGCAAGGCCGACTACGAGAAGCACAAGGTGTACGCCTGCGAGGTGACCCACCAGGGACTGTCTAGCCCCGTGACCAAGAGCTTCAACCGG GGCGAGTGCTAA
【0080】
(実施例3)
Flt3/FLK2ヒト受容体タンパク質に対するモノクローナル抗体の精製および特徴付け
マウス骨髄腫細胞株SP2/0由来の細胞を、ヒトFT3/FLK2受容体タンパク質の完全コード配列およびピューロマイシン耐性の選択マーカーを発現するレンチウイルスによって形質導入した。形質導入細胞は、in vitroでピューロマイシンの存在下で選択した。ヒトFLT3/FLK2タンパク質細胞(SP2/0-Hu-FLT3)の発現を選択および確認した細胞を抗原として使用した。
【0081】
8週齢のBalb/cマウスは、FLT3/FLK2タンパク質に特異的な抗体を精製するため、5日ごとに腹腔内注射によって107 SP2/0-Hu-FLT3細胞で3回免疫した。抗体の発生は、フローサイトメトリーを使用してFLT3/FLK2抗原の結合について、免疫したマウスの血清をスクリーニングすることによって試験した。
最初の免疫からおよそ3週間後、免疫したマウスの脾臓を回収し、脾細胞の単離に使用した。本発明者らは、単離した脾細胞をSP2/0細胞と融合し、ハイブリット表現型(ハイブリドーマ)を選択した。ハイブリドーマはin vitroで培養し、ハイブリドーマの培養液からの上澄み液を、フローサイトメトリーによって抗FLT3/FLK2抗体の存在についてスクリーニングした(
図3Aおよび
図3B)。9つのハイブリドーマクローンが、抗HLT3/FLK2抗体の産生を実証した。これらのハイブリドーマクローンはモノクローナル抗体の単離のために増殖させた。単離したモノクローナル抗FLT3/FLK2抗体を精製し、それらの選択性について試験した(
図4Aおよび
図4B)。
【0082】
(実施例4)
ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に対するモノクローナル抗体の特異性の特徴付け
モノクローナル抗体の特異性は、FLT3/FLK2抗原に対するそれらの親和性を評価することによって決定した。抗ヒトFLT3/FLK2抗体の親和性を明らかにするため、フローサイトメトリーを使用して有効濃度(EC)曲線を構築した。9つのモノクローナル抗体クローンを使用して、ヒトFLT3/FLK2を内因的に発現するヒトREH細胞を染色した。クローンの濃度は1ng/ml(6.25pM)~10,000ng/ml(62.5nM)の範囲であった。約70ng/ml(437.5pM)~1566ng/ml(9.79nM)の範囲のEC
50を有する5つのクローン(
図5A、
図5B、
図5C、
図5D、
図5E)を、シークエンスのために選択した。クローンのシークエンスにより、クローン1~23DAおよび1~18は同じアミノ酸配列を有することが明らかになった。クローンの配列を以下に示す。
【0083】
MHC1692-1~23DA配列:
FASTAフォーマットのアミノ酸配列(MHC1692LC.2\;M13F)-軽鎖(配列番号5)
>MHC1692LC.2\;M13F
DIQMTQSPSSLSASLGERVSLTCRASQEISGYLSWLQQKPDGTIKRLIYAASTLHSGVPKRFSGSRSGSDYSLTISRLESEDVADYYCLQYASYPFTFGSGTKLEIR
FASTAフォーマットのヌクレオチド配列(MHC1692LC.2\;M13F)-軽鎖(配列番号6)
>MHC1692LC.2\;M13F
GACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCTTATCTGCCTCTCTGGGAGAAAGAGTCAGTCTCACTTGTCGGGCAAGTCAGGAAATTAGTGGTTACTTAAGCTGGCTTCAGCAGAAACCAGATGGAACTATTAAACGCCTGATCTACGCCGCATCCACTTTACATTCTGGTGTCCCAAAAAGGTTCAGTGGCAGTAGGTCTGGGTCAGATTACTCTCTCACCATCAGCAGGCTTGAGTCTGAAGATGTTGCAGACTATTACTGTCTACAATATGCTAGTTATCCATTCACGTTCGGCTCGGGGACAAAGTTGGAAATAAGA
FASTAフォーマットのアミノ酸配列(MHC1692HC.1\;M13F)-重鎖(配列番号7)
>MHC1692HC.1\;M13F
QVTLKESGPGILQPSQTLSLTCSFSGFSLSTSTMGVGWIRQPSGKGLEWLLHILWNDSKYYNPALKSRLTISKDTYNKQVFLKIANVDTADTATYYCARIVYYSTYVGYFDVWGAGTTVTVSS
【0084】
FASTAフォーマットのヌクレオチド配列(MHC1692HC.1\;M13F)-重鎖(配列番号8)
>MHC1692HC.1\;M13F
CAGGTTACTCTGAAAGAGTCTGGCCCTGGGATATTGCAGCCCTCCCAGACCCTCAGTCTGACTTGTTCTTTCTCTGGGTTTTCTCTGAGCACTTCTACTATGGGTGTAGGCTGGATTCGTCAGCCTTCAGGGAAGGGTCTGGAGTGGCTGTTACACATTTTGTGGAATGATAGTAAGTATTATAACCCAGCCCTGAAGAGCCGGCTCACAATCTCCAAGGATACCTACAACAAGCAGGTATTCCTCAAGATCGCCAATGTGGACACTGCAGATACTGCCACATACTACTGTGCTCGAATAGTTTACTACTCTACCTACGTCGGGTACTTCGATGTCTGGGGCGCAGGGACCACGGTCACCGTCTCCTCA
【0085】
MHC1693-3-16HA配列:
FASTAフォーマットのアミノ酸配列(MHC1693LC.1\;M13F)-軽鎖(配列番号9)
>MHC1693LC.1\;M13F
DIVLTQSPASLAVSLGQRATISCRASESVDNYGISFMNWFQQKPGQSPKLLIYAVSNQGSGVPARFSGSGSGTDFSLNIHPMEEDDTAMYFCQQSKEVPWTFGGGTKLEIK
FASTAフォーマットのヌクレオチド配列(MHC1693LC.1\;M13F)-軽鎖(配列番号10)
>MHC1693LC.1\;M13F
GACATTGTGCTGACCCAATCTCCAGCTTCTTTGGCTGTGTCTCTAGGGCAGAGGGCCACCATCTCCTGCAGAGCCAGCGAAAGTGTTGATAATTATGGCATTAGTTTTATGAACTGGTTCCAACAGAAACCAGGACAGTCACCCAAACTCCTCATCTATGCTGTATCCAACCAAGGATCCGGGGTCCCTGCCAGGTTTAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCAGCCTCAACATCCATCCTATGGAGGAGGATGATACTGCAATGTATTTCTGTCAGCAAAGTAAGGAGGTTCCGTGGACGTTCGGTGGAGGCACCAAGCTGGAAATCAAA
FASTAフォーマットのアミノ酸配列(MHC1693HC.3\;M13F)-重鎖(配列番号11)
> MHC1693HC.3\;M13F
EVQLQQSGAELVRPGALVKLSCKGSGFNIKDYYIHWVKQRPEQGLEWIGRIDPENDITMYDPKFQGKASITADTSSNTAYLQLSSLTSEDTAVYYCARNGNFFAYWGQGTLVTVSA
【0086】
FASTAフォーマットのヌクレオチド配列(MHC1693HC.3\;M13F)-重鎖(配列番号12)
>MHC1693HC.3\;M13F
GAGGTTCAGCTGCAGCAGTCTGGGGCTGAGCTTGTGAGGCCAGGGGCCTTAGTCAAGTTGTCCTGCAAAGGTTCTGGCTTCAACATTAAAGACTACTATATACACTGGGTGAAGCAGAGGCCTGAACAGGGCCTGGAGTGGATTGGAAGGATTGATCCTGAGAATGATATTACTATGTATGACCCGAAGTTCCAGGGCAAGGCCAGTATAACAGCAGACACATCCTCCAACACAGCCTACCTGCAGCTCAGCAGCCTGACATCTGAGGACACTGCCGTCTATTACTGTGCTAGAAATGGTAATTTCTTTGCTTACTGGGGCCAAGGGACTCTGGTCACTGTCTCTGCA
【0087】
MHC1695-3-3OA配列:
FASTAフォーマットのアミノ酸配列(MHC1695LC.8\;M13F)-軽鎖(配列番号13)
>MHC1695LC.8\;M13F
DIQMTQSPSSLSASLGERVSLTCRASQEISGYLSWLQQKPDGTIKRLIYAASTLNSGVPRRFSGSRSGSDYSLTISSLESEDFADYYCLQYASYPFTFGSGTKLEIK
FASTAフォーマットのヌクレオチド配列(MHC1695LC.8\;M13F)-軽鎖(配列番号14)
>MHC1695LC.8\;M13F
GACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCTTATCTGCCTCTCTGGGAGAAAGAGTCAGTCTCACTTGTCGGGCAAGTCAGGAAATTAGTGGTTACTTAAGCTGGCTTCAGCAGAAACCAGATGGAACTATTAAACGCCTGATCTACGCCGCATCCACTTTAAATTCTGGTGTCCCAAGAAGGTTCAGTGGCAGTAGGTCTGGGTCAGATTATTCTCTCACCATCAGCAGCCTTGAGTCTGAAGATTTTGCAGACTATTACTGTCTACAATATGCTAGTTATCCATTCACGTTCGGCTCGGGGACAAAGTTGGAAATAAAA
FASTAフォーマットのアミノ酸配列(MHC1695HC.3\;M13F)-重鎖(配列番号15)
>MHC1695HC.3\;M13F
QVTLKESGPGILQPSQTLSLTCSFSGFSLSTSHMGVGWIRQPSGKGLEWLLHILWNDSVYYNPALKSRLTISKDTYNKQVFLKIANVDTADTATYYCARIVYYGISYVGYFDVWGAGTTVTVSS
【0088】
FASTAフォーマットのヌクレオチド配列(MHC1695HC.3\;M13F)-重鎖(配列番号16)
>MHC1695HC.3\;M13F
CAGGTTACTCTGAAAGAGTCTGGCCCTGGGATATTGCAGCCCTCCCAGACCCTCAGTCTGACTTGTTCTTTCTCTGGGTTTTCACTGAGCACTTCTCACATGGGTGTAGGCTGGATTCGTCAGCCTTCAGGGAAGGGTCTGGAGTGGCTGTTACACATTTTGTGGAATGATAGTGTGTACTATAACCCAGCCCTGAAGAGCCGGCTCACAATCTCCAAGGATACCTACAACAAGCAGGTATTCCTCAAGATCGCCAATGTGGACACTGCAGATACTGCCACATACTACTGTGCTCGAATAGTTTACTACGGTATTAGTTACGTCGGGTACTTCGATGTCTGGGGCGCAGGGACCACGGTCACCGTCTCCTCA
【0089】
MHC1696-2-8IA配列:
FASTAフォーマットのアミノ酸配列(MHC1696LC.3\;M13F)-軽鎖(配列番号17)
>MHC1696LC.3\;M13F
DTVLTQSPATLSVTPGDSVSLSCRASQSISNNLHWYQQKSHESPRLLIKYGFQSISGIPSRFSGSGSGTDFTLRINSVETEDFGMYFCQQTNSWPLTFGAGTKLELK
FASTAフォーマットのヌクレオチド配列(MHC1696LC.3\;M13F)-軽鎖(配列番号18)
>MHC1696LC.3\;M13F
GATACTGTGCTAACTCAATCTCCAGCCACCCTGTCTGTGACTCCAGGAGATAGCGTCAGTCTTTCCTGCAGGGCCAGCCAAAGTATTAGCAACAACCTACACTGGTATCAACAAAAATCACATGAGTCTCCAAGGCTTCTCATCAAGTATGGTTTCCAGTCCATCTCTGGGATCCCCTCCAGGTTCAGTGGCAGTGGATCAGGGACAGATTTCACTCTCAGAATCAACAGTGTGGAGACTGAAGATTTTGGAATGTATTTCTGTCAACAGACTAACAGCTGGCCGCTCACGTTCGGTGCTGGGACCAAGCTGGAGCTGAAA
FASTAフォーマットのアミノ酸配列(MHC1696HC.2\;M13F)-重鎖(配列番号19)
>MHC1696HC.2\;M13F
EIQLQQSGPELVKPGASVKVSCKASGYSFIDYNMYWVKQSHGKSLEWIGYINPYNGGTSNNQKFKDKATLTVDKSSSTAFMHLNSLTSEDSAVYYCARGTTGDYWGQGTTLTVSS
【0090】
FASTAフォーマットのヌクレオチド配列(MHC1696HC.2\;M13F)-重鎖(配列番号20)
>MHC1696HC.2\;M13F
GAGATCCAGCTGCAGCAGTCTGGACCTGAACTGGTGAAGCCTGGGGCTTCAGTGAAGGTATCCTGCAAGGCTTCTGGTTACTCATTCATTGACTACAACATGTACTGGGTGAAGCAGAGCCATGGAAAGAGCCTTGAGTGGATTGGATATATTAATCCTTACAATGGTGGTACTAGCAACAACCAGAAGTTCAAGGACAAGGCCACATTGACTGTTGACAAGTCCTCCAGCACAGCCTTCATGCATCTCAACAGCCTGACATCTGAGGACTCTGCAGTCTATTACTGTGCAAGAGGTACTACGGGTGACTACTGGGGCCAAGGCACCACTCTCACAGTCTCCTCA
【0091】
MHC2279-1B11.E7配列:
FASTAフォーマットのアミノ酸配列(MHC2279LC.5\;M13F)-軽鎖(配列番号21)
>MHC2279LC.5\;M13F
DIVLTQSPASLAVSLGQRATISCRASESVDNYGISFMNWFQQKPGQPPKLLIYAASNQGSGVPARFSGSGSGTDFSLNIHPMEEDDTAMYFCQQSKEVPWTFGGGTKLEIK
FASTAフォーマットのヌクレオチド配列(MHC2279LC.5\;M13F)-軽鎖(配列番号22)
>MHC2279LC.5\;M13F
GACATTGTGCTGACCCAATCTCCAGCTTCTTTGGCTGTGTCTCTAGGGCAGAGGGCCACCATCTCCTGCAGAGCCAGCGAAAGTGTTGATAATTATGGCATTAGTTTTATGAACTGGTTCCAACAGAAACCAGGACAGCCACCCAAACTCCTCATCTATGCTGCATCCAACCAAGGATCCGGGGTCCCTGCCAGGTTTAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTTCAGCCTCAACATCCATCCTATGGAGGAGGATGATACTGCAATGTATTTCTGTCAGCAAAGTAAGGAGGTTCCGTGGACGTTCGGTGGAGGCACCAAGCTGGAAATCAAA
FASTAフォーマットのアミノ酸配列(MHC2279HC.1\;M13F)-重鎖(配列番号23)
>MHC2279HC.1\;M13F
QVQLQQPGAELVMPGASVKLSCKASGYTFTSYWMHWVKQRPGQGLEWIGEIDPSDSYTNYNQKFKGKATLTVDKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYCARSAYYSKRDDYWGQGTTLTVSS
【0092】
FASTAフォーマットのヌクレオチド配列(MHC2279HC.1\;M13F)-重鎖(配列番号24)
>MHC2279HC.1\;M13F
CAGGTCCAACTGCAGCAGCCTGGGGCTGAGCTTGTGATGCCTGGGGCTTCAGTGAAGCTGTCCTGCAAGGCTTCTGGCTACACCTTCACCAGCTACTGGATGCACTGGGTGAAGCAGAGGCCTGGACAAGGCCTTGAGTGGATCGGAGAGATTGATCCTTCTGATAGTTATACTAACTACAATCAAAAGTTCAAGGGCAAGGCCACATTGACTGTAGACAAATCCTCCAGCACAGCCTACATGCAGCTCAGCAGCCTGACATCTGAGGACTCTGCGGTCTATTACTGTGCAAGATCAGCCTACTATAGTAAAAGGGATGACTACTGGGGCCAAGGCACCACTCTCACAGTCTCCTCA
【0093】
MHC1694-1-18BA配列:
FASTAフォーマットのアミノ酸配列(MHC1694LC.2\;M13F)-軽鎖(配列番号25)
>MHC1694LC.2\;M13F
DIQMTQSPSSLSASLGERVSLTCRASQEISGYLSWLQQKPDGTIKRLIYAASTLHSGVPKRFSGSRSGSDYSLTISRLESEDVADYYCLQYASYPFTFGSGTKLEIR
FASTAフォーマットのヌクレオチド配列(MHC1694LC.2\;M13F)-軽鎖(配列番号26)
>MHC1694LC.2\;M13F
GACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCTTATCTGCCTCTCTGGGAGAAAGAGTCAGTCTCACTTGTCGGGCAAGTCAGGAAATTAGTGGTTACTTAAGCTGGCTTCAGCAGAAACCAGATGGAACTATTAAACGCCTGATCTACGCCGCATCCACTTTACATTCTGGTGTCCCAAAAAGGTTCAGTGGCAGTAGGTCTGGGTCAGATTACTCTCTCACCATCAGCAGGCTTGAGTCTGAAGATGTTGCAGACTATTACTGTCTACAATATGCTAGTTATCCATTCACGTTCGGCTCGGGGACAAAGTTGGAAATAAGA
FASTAフォーマットのアミノ酸配列(MHC1694HC.1\;M13F)-重鎖(配列番号27)
>MHC1694HC.1\;M13F
QVTLKESGPGILQPSQTLSLTCSFSGFSLSTSTMGVGWIRQPSGKGLEWLLHILWNDSKYYNPALKSRLTISKDTYNKQVFLKIANVDTADTATYYCARIVYYSTYVGYFDVWGAGTTVTVSS
【0094】
FASTAフォーマットのヌクレオチド配列(MHC1694HC.1\;M13F)-重鎖(配列番号28)
>MHC1694HC.1\;M13F
CAGGTTACTCTGAAAGAGTCTGGCCCTGGGATATTGCAGCCCTCCCAGACCCTCAGTCTGACTTGTTCTTTCTCTGGGTTTTCTCTGAGCACTTCTACTATGGGTGTAGGCTGGATTCGTCAGCCTTCAGGGAAGGGTCTGGAGTGGCTGTTACACATTTTGTGGAATGATAGTAAGTATTATAACCCAGCCCTGAAGAGCCGGCTCACAATCTCCAAGGATACCTACAACAAGCAGGTATTCCTCAAGATCGCCAATGTGGACACTGCAGATACTGCCACATACTACTGTGCTCGAATAGTTTACTACTCTACCTACGTCGGGTACTTCGATGTCTGGGGCGCAGGGACCACGGTCACCGTCTCCTCA
【0095】
【0096】
(実施例5)
ヒトFLT3/FLK2受容体タンパク質に対するモノクローナル抗体の内部移行の特徴付け
FLT3/FLK2(実施例3)に対するモノクローナル抗体の内部移行は、内部移行アッセイによって定量した。
簡単に言うと、染色緩衝液(2%仔牛血清-BCSを含む1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS))中の抗体281A、330A、316HA、および123DAについて、抗体の2X(4μg/ml)作用ストックを氷上で調製した。抗ヒトCD135(FLT3/FLK2)抗体(BioLegend ♯313302、クローンBV10A4H2)の4μg/mlストックおよび4μg/mlアイソタイプ対照(BioLegend ♯400102、クローンMOPC-21)を、それぞれ陽性および陰性CD135染色対照として調製した。CD135を発現するヒト細胞株、Reh細胞を洗浄し、2×106個の細胞/mlの濃度で染色緩衝液中に再懸濁した。一次抗体は、最終濃度2μg/mlになるように等量の細胞と1:1で添加した。細胞は、洗浄を容易にするため15mLの遠心チューブで染色した。次に、細胞を30分間氷上でインキュベートし、次いで5mlのPBSで3回洗浄し、未結合の一次抗体を除去した。染色した細胞は、完全培地中(グルタミンおよび2%BCSを含有するRPMI1640)に再懸濁し、平行96ウェルプレートにウェルあたり100μlで、各時点につき別々のプレートでトリプリケートのウェルに分けた。プレートの1つ目のセットを37℃、5%CO2のインキュベーターに移し、プレートの2つ目のセットを4℃に保った。インキュベーション時間は10分、30分、1時間、2時間、3時間、および4時間であった。インキュベーション後、プレートを1×PBSで洗浄した。次いで細胞を暗所中氷上で30分間、1:800希釈の抗マウスIgG Alexa 488二次抗体(Jackson Immuno ♯115545164)によって染色した。未染色細胞および二次抗体のみで染色した細胞を含有するトリプリケートの対照ウェルも調製した。二次抗体とのインキュベーション後、細胞は2%BCSを含有する1×PBSで最後に洗浄し、FACSの直前に7AADで染色した。
染色した細胞は、Beckman Coulter Cytoflexのフローサイトメトリーにより、試料流速60μl/分で分析した。各ウェルにつき10,000イベントを捕らえ、FCSファイルはFloJoソフトウェア、バージョン10を使用して評価した。平均蛍光強度(MFI)はAlexa488で生存細胞集団について算出し、各抗体のMFIの変化を4℃および37℃で時間に対してグラフ化した。
【0097】
図6に示すように、全てのクローンは内部移行を示し、クローン330Aおよび123DAは最も速い内部移行を示した(
図6)。理論に制限されることなく、抗FLT3/FLK2抗体(クローン330A、123DA、316HAおよび281A)の内部移行特性は、標的細胞内に薬物/毒素を送達するビヒクル(例えば、抗体-薬物コンジュゲート-ADC)としてそれらを有効にすると仮定される。
本発明はその特定の実施形態を参照して記載されているが、様々な変更を行うことが可能であり、等価物が本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく置き換えられ得ることは当業者に理解される。さらに、多くの改変を行い、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、1つまたは複数のプロセスステップを本発明の目的の趣旨および範囲に採用することができる。全てのそのような改変は本明細書に添付した請求項の範囲内である。
【配列表】
【国際調査報告】