(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-16
(54)【発明の名称】集積フォトニクス光ジャイロスコープのためのシステムアーキテクチャ
(51)【国際特許分類】
G01C 19/72 20060101AFI20220909BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20220909BHJP
G02B 6/125 20060101ALI20220909BHJP
G02B 6/126 20060101ALI20220909BHJP
G02F 1/035 20060101ALN20220909BHJP
【FI】
G01C19/72 L
G02B6/12 301
G02B6/125
G02B6/125 301
G02B6/12 371
G02B6/126
G02B6/12 361
G01C19/72 J
G02F1/035
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022501139
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 US2020039915
(87)【国際公開番号】W WO2021055071
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522009972
【氏名又は名称】アネロ フォトニクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】パニシア マリオ
(72)【発明者】
【氏名】タン チン
【テーマコード(参考)】
2F105
2H147
2K102
【Fターム(参考)】
2F105AA02
2F105AA03
2F105AA06
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2H147AA02
2H147AB04
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2H147AC04
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2K102DA04
2K102DD05
2K102EB06
2K102EB22
2K102EB28
(57)【要約】
本開示は、レーザー、電子機器、集積フォトニクスベースの光学構成要素、及びセンシングチップのシステムレベルの集積化に関する。フロントエンドチップとして機能する集積フォトニクスチップ上の新規の導波路設計により、送信チップがフロントエンドチップに結合されている、導波路コイル又はリング共振器を有するファイバーコイル又は検出チップの位相変化を正確に検出することが確保される。ストリップ導波路は、集積フォトニクスチップにレーザー光が結合されると、主にTEモードとTMモードが選択されるように設計されている。多モード干渉(MMI)フィルタ、蛇行構造、又は他のタイプの導波路ベースのモード選択構造に基づいた複数のモード選択フィルタが、システムアーキテクチャに導入される。更に、インプラント領域が導波路及び他の光学構成要素の周囲に導入されて、導波路への不要な光/迷光及び導波路からの光信号の漏洩を阻止する。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ジャイロスコープ構成要素への光又は光ジャイロスコープ構成要素からの光を結合させるためのフォトニクスベースの集積フロントエンドチップであって、
1又は2以上の半導体レーザーを含む、光を生成するレーザー光源と、
前記レーザー光源のための制御電子機器と、
前記レーザー光源からの光を集積フォトニクス導波路構造に結合する入力カプラであって、前記集積フォトニクス導波路構造が、前記結合された光を前記光ジャイロスコープ構成要素に向けて導波光ビームの形で伝搬させる、入力カプラと、
前記集積フォトニクス導波路構造と統合され、前記導波光ビームの優先光モードを選択する第1の光モード選択フィルタと、
前記導波光ビームの第1の分岐及び第2の分岐を生成するために、前記導波光ビームの経路内にある少なくとも1つの光スプリッタと、
前記導波光ビームの第1の分岐及び第2の分岐の光位相を互いに対して変調する位相変調器と、
前記導波光ビームの第1の分岐を、前記光ジャイロスコープ構成要素上のジャイロスコープ導波路構造の第1の端部に結合する第1の出力カプラと、
前記導波光ビームの第2の分岐を、前記光ジャイロスコープ構成要素上の前記ジャイロスコープ導波路構造の第2の端部と結合する第2の出力カプラと、
前記少なくとも1つの光スプリッタと結合された光検出器と、
を備え、
前記光ジャイロスコープ構成要素上の前記ジャイロスコープ導波路構造内を移動した後、及び前記第1の出力カプラ及び前記第2の出力カプラを介して前記集積フォトニクス導波路構造に戻るように結合された後の、前記導波光ビームの前記第1の分岐及び前記第2の分岐の戻り経路における光位相差を表す光信号を、前記光検出器が受信する、
フォトニクスベースの集積フロントエンドチップ。
【請求項2】
前記レーザー光源が、同じ波長を有する2以上の半導体レーザーを組み合わせたものである、請求項1に記載のフロントエンドチップ。
【請求項3】
前記レーザー光源から生成される前記導波光ビームの波長が、赤外領域にある、請求項1に記載のフロントエンドチップ。
【請求項4】
前記レーザー光源のための前記制御電子機器が、前記組み合わせたレーザー光源の線幅を広げる位相変調器を含む、請求項2に記載のフロントエンドチップ。
【請求項5】
前記制御電子機器は、前記1又は2以上の半導体レーザーのための直接周波数変調回路を含む、請求項1に記載のフロントエンドチップ。
【請求項6】
前記集積フォトニクス導波路構造は、シリコン基板上の酸化物層に隣接して上部の隆起部と下部のスラブ部とを有するリブ導波路を含む、請求項1に記載のフロントエンドチップ。
【請求項7】
前記集積フォトニクス導波路構造は、基板上の酸化層までエッチングされた矩形断面を有するストリップ導波路を含む、請求項1に記載のフロントエンドチップ。
【請求項8】
前記集積フォトニクス導波路構造の少なくとも一部は、導波光の漏洩を防ぎ及び外部光を遮断するために、インプラント領域によって囲まれている、請求項1に記載のフロントエンドチップ。
【請求項9】
前記少なくとも1つの光スプリッタと前記光検出器とを結合する方向性結合器を更に備え、前記方向性結合器は、前記集積フォトニクス導波路構造の一部であり、第2の光モード選択フィルタが、前記光検出器につながる前記集積フォトニクス導波路構造の前記方向性結合器の部分と統合されている、請求項8に記載のフロントエンドチップ。
【請求項10】
前記光検出器は、前記インプラント領域によって完全に囲まれている、請求項8に記載のフロントエンドチップ。
【請求項11】
前記光検出器は、p-i-n光検出器又はアバランシェフォトダイオード(APD)を含む、請求項1に記載のフロントエンドチップ。
【請求項12】
前記少なくとも1つの光スプリッタは、第1の2x2光スプリッタとこれに続くYスプリッタとを含み、前記導波光ビームの前記第1の分岐及び前記第2の分岐を生成する、請求項1に記載のフロントエンドチップ。
【請求項13】
前記少なくとも1つの光スプリッタは、第1の2x2光スプリッタとこれに続く第2の2x2光スプリッタとを含み、前記導波光ビームの前記第1の分岐及び前記第2の分岐を生成する、請求項1に記載のフロントエンドチップ。
【請求項14】
前記少なくとも1つの光スプリッタと前記第2の光スプリッタとの間に光モード選択フィルタがある、請求項13に記載のフロントエンドチップ。
【請求項15】
前記光モード選択フィルタの少なくとも1つは、多モード干渉(MMI)フィルタを含む、請求項1に記載のフロントエンドチップ。
【請求項16】
前記光モード選択フィルタの少なくとも1つは、直列接続の複数の個別のMMIフィルタを含む、請求項15に記載のフロントエンドチップ。
【請求項17】
前記光モード選択フィルタの少なくとも1つは、前記優先モードが伝搬する間に非優先モードが実質的に漏洩する1又は2以上の屈曲部を有する蛇行構造を含む、請求項1に記載のフロントエンドチップ。
【請求項18】
前記光モード選択フィルタの少なくとも1つは、前記集積フォトニクス導波路構造を局所的に変更することによって得られた構造を含む、請求項1に記載のフロントエンドチップ。
【請求項19】
前記集積フォトニクス導波路構造に沿って局所的に光信号強度を監視する追加の検出器を更に備える、請求項1に記載のフロントエンドチップ。
【請求項20】
前記位相変調器は、熱的位相変調器又は電気的位相変調器を含む、請求項1に記載のフロントエンドチップ。
【請求項21】
前記位相変調器は、第1段の電気的位相変調とこれに続く第2段の熱的位相変調とを含む、請求項1に記載のフロントエンドチップ。
【請求項22】
前記位相変調器は、前記導波光ビームの前記第1の分岐及び前記第2の分岐のうちの一方のみの分岐の光位相を変調する、請求項1に記載のフロントエンドチップ。
【請求項23】
前記位相変調器は、前記導波光ビームの前記第1の分岐及び前記第2の分岐の両方の分岐の光位相を変調する、請求項1に記載のフロントエンドチップ。
【請求項24】
前記光ジャイロスコープ構成要素は、偏光維持ファイバーループを含む、請求項1に記載のフロントエンドチップ。
【請求項25】
前記光ジャイロスコープ構成要素は、ジャイロスコープ導波路構造を含む、請求項1に記載のフロントエンドチップ。
【請求項26】
前記ジャイロスコープ導波路構造は、窒化ケイ素ストリップ導波路を含む、請求項25に記載のフロントエンドチップ。
【請求項27】
前記第1の出力カプラ及び前記第2の出力カプラにはテーパーが付けられ、前記フロントエンドチップ上の前記集積フォトニクス導波路構造の大きい寸法と、前記光ジャイロスコープモジュール上の前記ジャイロスコープ導波路構造の小さい寸法との間の不整合を補償する、請求項25に記載のフロントエンドチップ。
【請求項28】
前記ジャイロスコープ導波路構造は、導波路コイル又はリング共振器を含む、請求項25に記載のフロントエンドチップ。
【請求項29】
前記集積フォトニクス導波路構造は、シリコンフォトニクス導波路構造、III-Vフォトニクス導波路構造、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のフロントエンドチップ。
【請求項30】
前記1又は2以上の半導体レーザーは、前記フロントエンドチップの基板上に直接取り付けられているか、III-V結合されているか、エピタキシャル成長されているか、又は量子ドット技術を介して成長されている、請求項1に記載のフロントエンドチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、集積フォトニクスベースの光ジャイロスコープのシステムレベルの集積化に関する。
【背景技術】
【0002】
ジャイロスコープ(「ジャイロ」とも呼ばれることがある)は、角速度を感知することができるデバイスである。ジャイロスコープは、機械式又は光学式であり、精度、性能、コスト、及びサイズは様々とすることができる。用途としては、軍事、航空機のナビゲーション、ロボット、自律走行車、仮想現実、拡張現実、ゲーム、その他があげられるが、これらに限定されない。光ジャイロスコープは、典型的には最も高い性能を有し、干渉計測とサニャック効果(回転により引き起こされる干渉で生じる現象)に基づいている。光ジャイロスコープは可動部がないので、可動部を備えた機械式ジャイロに比べて、衝撃、振動、及び温度変化の影響に耐えることができるという、機械式ジャイロよりも優れた利点を有する。最も一般的な光ジャイロスコープは、光ファイバージャイロスコープ(FOG)である。FOGの構成は、典型的には、偏光維持(PM)ファイバーの長いループ(又は複数のループを含むコイル)を含む。レーザー光はPMファイバーの両端に照射され、それぞれ異なる方向に進む。光ファイバーのコイルが移動している場合、光ビームは、互いに対して異なる光路長を生じる。干渉計システムを設置することで、囲まれたループの面積と回転コイルの角速度に比例した、小さな光路長差を測定することができる。
【0003】
光ジャイロスコープの位相信号は、次式:
Δφ=(8πNA/λc)Ω
で示されるように、サニャック効果に回転角速度を乗算したものに比例する。
ここで、
N=ジャイロスコープの巻数、
A=囲まれた面積
Ω=回転角速度
Δφ=光位相差信号
λ=光の波長
c=光の速度
である。
【0004】
これらのFOGは、極めて高い精度を有することができると同時に、寸法が大きく、極めて高価であり、精密な位置合わせが必要な個別の光学構成要素をベースに構築されたデバイスであることに起因して、組み立てが難しい。多くの場合、手動の位置合わせを伴い、大量生産に拡大するのは困難である。
【発明の概要】
【0005】
本明細書では、フットプリントの小さい集積フォトニクス光ジャイロスコープを製造するためのシステム構成要素及び方法が開示される。集積フォトニクス光ジャイロスコープは、SiPhOG(登録商標)(Silicon Photonics Optical Gyroscope)と略記される、シリコンフォトニクスに基づくことができるが、化合物半導体(III-V半導体)ベースの集積フォトニクス光ジャイロスコープもまた、本開示の範囲内である。更に、集積フォトニクス光ジャイロスコープの幾つかの実施形態は、シリコンフォトニクスとIII-V半導体ベースのフォトニクス構成要素の組み合わせを有することができる。本発明者らは、高レベルのシステムアーキテクチャと、限定ではないが、レーザー性能、チューニングパラメータ、検出器パラメータ、及びパッケージングに関する考慮事項を含む、主要な性能パラメータとを念頭に置いて、集積フォトニクスチップを設計している。
【0006】
ファイバーベースの光ジャイロスコープの性能の鍵は、サニャック効果を測定するのに使用される高品質で低損失の光ファイバーの長尺さである。本発明者らは、ウェハスケール処理に適した集積フォトニクスの出現により、性能を犠牲にすることなくFOGをより小さな集積フォトニックチップ解決策に置き換える機会があることを認識している。フォトニクスベースの光ジャイロスコープは、サイズ、重量、電力、及びコストが削減されるだけでなく、大量生産が可能で、振動の影響を受けず、FOGと同等の性能を提供する可能性を有することができる。
【0007】
この集積フォトニクス解決策の重要な要素の1つは、集積フォトニクス構成要素を有する集積フォトニクスチップを、超低損失導波路を含む長尺の偏光維持(PM)光ファイバーコイルを置き換える導波路チップに結合することである。集積フォトニクスチップ並びに導波路チップは、ウェハスケールプロセスを用いて製造することができる。
【0008】
本明細書で開示される解決策は、低損失導波路コイル(螺旋形状にパターニングされているが、円形又は大量生産に適した他の何れかの幾何形状であってもよい)又はリングを含む。これらのWGコイル設計の何れかは、同一平面上にあってもよく、又は複数の垂直面に分散されて、従来技術の設計では導波路が交差することによって生じる損失の増加を避けながら、光路の長さを長くすることができる。導波路の設計及び製造技術は、2019年6月7日に出願された同時係属の米国仮出願第62/858,588号に記載されている。
【0009】
適切な波長(最適な導波路損失を達成するために、光ジャイロスコープ用途では1550nmから逸脱してもよい)のレーザー光源は、集積フォトニクスチップにファイバー結合することができる。フォトニクスチップ上の導波路の受信側は、テーパー付きとすることができる(即ち、シングルモードファイバーのコアサイズ(通常8~10μm)に適合するように外に広がっている)。集積フォトニクスチップ上の導波路は、偏光維持(例えば、TE偏光)しており、導波路の適切な設計により達成することができる。例えば、ストリップ導波路は、レーザー光が集積フォトニクスチップに結合されるときに、TMモードよりもTEモードを主に選択するように設計されている。複数のモード選択フィルタ(多モード干渉(MMI)フィルタ又は蛇行構造であり得る)、或いは他の集積デバイス構造(集積メタルライン、導波路寸法の変更、その他など)がシステムアーキテクチャに導入される。更に、インプラント領域が導波路や他の光学構成要素の周囲に導入されて、導波路への不要光/迷光及び導波路の外への光信号の漏洩を遮断する。
【0010】
集積フォトニクスチップ上のオンチップ検出器は、光を電気信号に変換する、p-i-n光検出器又はアバランシェフォトダイオード(APD)とすることができる。検出器は、サニャック効果の測定、試験、並びに出力監視に使用されている。
【0011】
光ジャイロスコープの性能を試験するために、様々なタイプの集積フォトニクスチップを製造することができる。様々な設計は、例えば、パッケージング実験、試験又は組み立てなどの試験目的で、追加の構成要素を追加又は削除することができる。マルチプロジェクトウェーハ(MPW)には、様々な設計に対応することができる。
【0012】
具体的には、本開示の態様は、光ジャイロスコープ構成要素への光又は光ジャイロスコープ構成要素からの光を結合させるための集積フォトニクスベースフロントエンドチップであって、1又は2以上の半導体レーザーを含む、光を生成するレーザー光源と、レーザー光源のための制御電子機器と、レーザー光源からの光を集積フォトニクス導波路構造に結合する入力カプラであって、集積フォトニクス導波路構造が、結合された光を光ジャイロスコープ構成要素に向けて導波光ビームの形で伝搬させる、入力カプラと、集積フォトニクス導波路構造と集積され、導波光ビームの優先光モードを選択する第1の光モード選択フィルタと、導波光ビームの第1の分岐及び第2の分岐を生成するために、導波光ビームの経路内にある少なくとも1つの光スプリッタと、導波光ビームの第1の分岐及び第2の分岐の光位相を互いに対して変調する位相変調器と、導波光ビームの第1の分岐を、光ジャイロスコープ構成要素上のジャイロスコープ導波路構造の第1の端部に結合する第1の出力カプラと、導波光ビームの第2の分岐を、光ジャイロスコープ構成要素上のジャイロスコープ導波路構造の第2の端部と結合する第2の出力カプラと、少なくとも1つの光スプリッタと結合された光検出器と、を備え、光検出器は、光ジャイロスコープ構成要素上のジャイロスコープ導波路構造内を移動した後、及び第1の出力カプラ及び第2の出力カプラを介して集積フォトニクス導波路構造に戻るように結合された後、導波光ビームの第1の分岐及び第2の分岐の戻り経路における光位相差を表す光信号を受信する、集積フォトニクスベースフロントエンドチップを含む。
【0013】
本開示は、以下に与えられる詳細な説明及び本開示の様々な実施構成の添付図面からより完全に理解されるであろう。図に示されている寸法は、説明のためのものであり、縮尺通りには描かれていない点に留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】サニャック効果に基づく典型的な光ファイバージャイロスコープの高レベルアーキテクチャを示す図である。
【
図2】フロントエンドでの少なくとも一部の構成要素が集積フォトニクスチップで置き換えられた光ファイバージャイロスコープの高レベルアーキテクチャを示す図である。
【
図3A】SiN導波路チップに結合する集積フォトニクスベースのフロントエンドの一実施形態の概略図である。
【
図3B】オンチップの追加電子構成要素を備えた
図3Aに示す実施形態の概略図である。
【
図3C】サニャック効果を測定するのに使用される主要検出器の周囲に深いインプラントを備えた、
図3Aに示した実施形態の概略図である。
【
図4】オプションの偏光子又は光モード選択フィルタを備えた集積フォトニクスチップの別の実施形態の概略図である。
【
図5A】集積フォトニクスチップがパッケージングを容易にするように設計されている、SiN導波路チップと結合する集積フォトニクスチップの更に別の実施形態の概略図である。
【
図5B】屈曲部、曲線部、接合部又は界接部の周りでより顕著である、リブ導波路のスラブ部分への光の漏洩を示す図である。
【
図5C】高線量のインプラントと光の漏洩を防ぐための吸収体を備えたリブ導波路構造の斜視図である。
【
図5D】
図5Cに示すスキームに従って導波路の周りに全てインプラントを有して修正した、
図5Aに示す実施形態の概略上面図である。
【
図5E】
図5Cに示すスキームに従って導波路の周りに全てインプラントを有して修正した、集積フォトニクスチップの別の実施形態の概略上面図である。
【
図6】レーザー、様々な制御集積回路、集積フォトニクスチップ、及びSiN導波路ベースのジャイロチップ(センシングチップ)を収容するパッケージの概略図である。
【
図7】レーザーが集積フォトニクスチップに結合されているが、集積フォトニクスチップの一部ではない構成の概略図である。
【
図8】レーザーが集積フォトニクスチップ上に集積されている代替構成の概略図である。
【
図9】SiN導波路がストリップ導波路である、異なるSiN導波路構成における波長依存の損失を示すプロットである。
【
図10】2つのレーザーからの光信号が組み合わされる集積フォトニクスチップの概略図である。
【
図11】2よりも多いレーザーからの光信号が組み合わされる集積フォトニクスチップと、任意選択的に集積オンチップにて熱センサーの概略図である。
【
図12】集積フォトニクスチップ上の導波路の変更された設計を示す図である。
【
図13】集積フォトニクスチップ上のTMフィルタの幾つかの例示的な位置を示す図である。
【
図14】2つの出力導波路分岐上で位相をシフトする追加手段として、高速電気変調器に加えて熱変調器が追加された、
図13の実施形態に類似した実施形態を示す図である。
【
図15A】TMフィルタとして使用できる蛇行構造を示す図である。
【
図15B】TMフィルタとして使用できる蛇行構造を示す図である。
【
図16】TMフィルタとして使用できるMMIフィルタを示す図である。
【
図17】MMIフィルタの異なる長さに対するTE/TMパワー透過率プロットのシミュレーションである。
【
図18】TMを効果的にフィルタリングするために最適な長さ及び幅のMMIフィルタについてのTE/TM光パワー透過率シミュレーションを比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の態様は、光ジャイロスコープ応用のために、コンパクトな超低損失導波路チップを他のシステムレベルの集積フォトニクス構成要素と統合することに向けられる。システム統合は、集積フォトニクス光ジャイロスコープの大量生産を容易にするために、大規模製造を念頭に置いて行われる。
【0016】
図1は、サニャック効果に基づく典型的なファイバー光ジャイロスコープの高レベルアーキテクチャ100を示している。このアーキテクチャは、中間システム構成要素を介して偏光維持(PM)ファイバーコイル124に光信号を送るレーザー光源110を含む。中間システム構成要素は、光アイソレータ112、偏光子118、位相変調器120、122を含む。偏光子118及び位相変調器120、122は、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)の多機能集積光学チップ(MIOC)116の一部とすることができる。また、分かりやすくするために、ファイバーコイル124が1つだけのループを有するように示されていたとしても、実際のデバイスでは、サニャック効果を利用するために必要なファイバーの長さに応じて、複数のターンが存在することができる。位相変調器120、122は、MIOC116内の50/50スプリッタの2つの分岐に沿って存在することができる。一方向に進む光は、反対方向に進む光とは異なる(短い又は長い)経路長を示し、サグナック効果に起因する測定可能な位相シフトを生じる。位相変調器は、関数発生器126(例えば、正弦波又は方形波発生器)によって電気的に駆動することができる。
【0017】
関数発生器126からの信号は、ロックイン増幅器128に送られ、ロックイン増幅器128はまた、サーキュレータ112から方向性光信号を受け取る光検出器114からの信号を受け取る。出力130は、光路長の差異によって生じるサニャック効果に起因するジャイロスコープの位相シフトを表す。
【0018】
図2は、従来のアーキテクチャ(例えば、
図1に示されているもの)のフロントエンドの少なくとも幾つかの構成要素が集積フォトニクス構成要素に置き換えられている、光ファイバージャイロスコープのための高レベルアーキテクチャ200を示している。構成要素212、214、216、218、220、222、226、及び228は、
図1に記載された対応する構成要素112、114、116、118、120、122、126、及び128と機能的に同等である。しかしながら、変更されたフロントエンド250内の構成要素の多くは、標準的な半導体製造を用いて製造することができる。例えば、MIOC216上の構成要素は、全ての集積フォトニクス構成要素を備えることができる。レーザー光源210及びファイバーコイル224は、後述するように、更なる統合が可能であるが、変更されたフロントエンド250の外側にあってもよい。ファイバーコイル224は、アーキテクチャ200のセンシング部255を構成しているが、後述する実施形態では、ファイバーコイルは、センシング部255として機能する導波路チップに置き換えることができる。出力230は、光路長差に起因する測定位相シフトである。更に、例えば、以下の
図3Bの例示的な実施形態に関して示すように、電子機器は、チップ上に集積することができる。
【0019】
図3Aは、ファイバーコイルに結合する集積フォトニクスチップ350、又は
図1及び
図2のファイバーコイルを置き換えることができる導波路チップ(図示せず)の一実施形態300の概略図である。導波路チップと結合された実施形態300の集積フォトニクスチップは、慣性計測ユニット(IMU)パッケージの一部とすることができるジャイロスコープ(例えば、シリコンフォトニクスを使用する場合はSiPhOG)を構成する。IMUは、集積フォトニクス光ジャイロスコープの他に、加速度計などの他の構成要素を有することができる。従って、集積フォトニクス光ジャイロスコープ部を小型化することで、IMUの全体のサイズ、重量、パワー、及びコストを削減することができる。この重量軽減は、例えば、軽量の無人航空機など、特定の用途では極めて重要とすることができる。IMUは、次世代の自律走行車に使用されることになるLiDAR(光検出及び測距)、レーダー、及びカメラなど、自律走行車用のより確立されたセンシング技術に必要な技術要素とすることができる。
【0020】
導波管チップ(「ジャイロチップ」又は「センシングチップ」とも呼ばれる)において、低損失の導波管コアは、窒化ケイ素(Si3N4)から作ることができ、導波管クラッディングは、溶融シリカ又は酸化物で作ることができる。この導波路構造は単に「SiN導波路」とも呼ばれ、SiN導波路を包含するチップは、図中で「SiN導波路チップ」と呼ばれる。
【0021】
図3Aを再度参照すると、レーザー光源(図示せず)は、シングルモード(SM)ファイバーとすることができるファイバーを介して、集積フォトニクスチップ350に結合される。SMファイバーのコアサイズは、典型的には8~10μmの範囲である。集積フォトニクスチップ350上の入力導波路は、レーザー光源から集積フォトニクスチップへの光信号を伝送するSMファイバーと効率的に結合するために、外広がりの端部を有して設計しなければならない場合がある。ファイバー結合の代わりに、レーザー光を集積フォトニクスチップに突き合わせ結合することができる。要素302は、例示の図ではファイバーカプラと表記されているが、請求項に記載されるように、一般的には入力カプラである。光タップ(例えば、0.5~1%の光パワーを取り出すことができるタップ)は、レーザー光源と集積フォトニクスチップとの間の結合効率を測定するために、光信号の一部を検出器340に送ることができる。任意選択的に、光位相変調器304は、光スプリッタ(例えば、2×2光スプリッタ306及び308)に最終的につながる光路に挿入することができる。一部の実施形態は、2つの2x2スプリッタを有することができ、他の一部の実施形態は、Yスプリッタを有することができ、更に他の実施形態は、2x2スプリッタとYスプリッタを有することができる点に留意されたい。また、レーザー光源は、
図10に示すように、直接取り付けてオンチップとすることができ、或いは、フロントエンドチップ基板上にIII-V接合又はエピタキシャル成長、或いは量子ドット技術を用いて成長させることができる点に留意されたい。光位相変調器304は、以下で更に説明するように、レーザー光源の線幅を広げることができる。
【0022】
スプリッタ及び/又は方向性結合器は、
図3Aに示す実施形態では、位相測定のために検出器338(サニャック検出器と呼ばれる場合があり、これは集積フォトニクスチップ350における主要検出器である)に戻る最適化された光のためのサーキュレータ(
図1及び2のような)をエミュレートするように、オンチップで設計されている。また、電気的(p-n接合ベース)又は他のタイプの位相変調器は、SiN導波路チップとの結合に最適化された出力カプラ332a及び332bにつながる導波路の2つの分岐の一方又は両方に組み込むことができる。例えば、熱位相変調器は、他のタイプの位相シフタに比べてより低い挿入損失を有することができ、導波路との集積が容易である。位相変調器は、サニャック効果を高めるために、プッシュプル構成で動作することができる。プッシュプル動作では、両出力導波路分岐に位相変調器が含まれる。しかしながら、幾つかの実施形態では、出力導波路の一方の分岐のみが位相変調器を有し、すなわち、変調器320又は322の一方が存在しないか、又は使用されない場合がある。例えば、
図5Dは、導波管の1つの枝だけが位相変調器を有することを示している。
図13は、プッシュプルモードで任意選択的に使用するために位相変調器322が含まれている(破線)にもかかわらず、1つの分岐においてのみ光ビームを変調できることを示している。また、用語「出力」は、導波路分岐及び出力カプラ332a、332bを記述するのに使用されるが、ビームがSiNチップ内の送信コイル又は光共振器を通過すると、同じ構造が、戻り光ビームをSiNチップから入力として受け取る点に留意されたい。
【0023】
ジャイロチップ内のSiN導波路の非限定的な例示の寸法は、高さ(すなわち、パターン化された導波路コア層の厚さ)が90nm、横方向幅が2.8μmである。本明細書で述べたこれらの例示的な寸法値は、本開示の範囲を限定するものではないことを、当業者であれば理解するであろう。導波路損失を低減するために、SiNコアの周りに対称的な上下クラッドを有することが有利とすることができる。この構造は、溶融シリカウェーハ又は酸化物などの他の適切な材料のウェーハボンディングによって得ることができる。望ましい(優先)光モードに応じて、導波路SiN層の厚さは60~90nmで変化することができ、幅は2~5μmで変化することができる。出力カプラ332a、332bの設計は、導波路SiNチップ上の導波路寸法に基づいて変化する。フォトニクスチップ上のカプラ332a、332bの出力間隔及び/又は最適配置は、集積フォトニクスチップ350を製造する前に、シミュレーションを用いて決定することができる。溶融シリカプラットフォーム上のSiN導波路は、「Integrated Silicon Photonics Optical Gyroscope on Fused Silica Platform」という名称で2019年6月7日に出願された同時係属の米国仮出願第62/858,599号、及び「Single-layer and Multi-layer Structures for Integrated Silicon Photonics Optical Gyroscopes」という名称で2019年9月5日に出願された同時係属の米国仮出願第62/896,365号に記載されている。
【0024】
サニャック検出器338に加えて、追加の検出器333、334、336及び337を組み込んで、集積フォトニクスチップに沿った様々な場所での伝搬損失及び結合損失を測定(試験及び/又は監視のため)すると共に、集積フォトニクスチップとSiN導波路チップとの間の結合効率を測定することができる。例えば、検出器333及び334は、出力カプラ332a及び332bにおける結合効率を測定する光タップ(例えば、光パワーの0.5~1%がタップされる)に結合することができる。検出器は、光を電気信号に変換するp-i-n光検出器(PINダイオード)とすることができる。検出器は、また、アバランシェフォトダイオード(APD)とすることができる。APDを使用する利点の1つは、検出器で得られる利得により、レーザーの出力を上げる必要が軽減されることである。なお、全ての実施形態において、検出器333、334、336、337の全てを使用するとは限らない点に留意されたい。また、試験チップマスク上の幾つかの検出器は、チップ設計が最適化されてチップ性能が最適化されると、製品マスクから取り出され、監視のために必要な検出器の数が少なくすることができる。
【0025】
図3Bは、集積フォトニクスチップ350上に集積された様々な電子機器を示している。例えば、オンチップ信号発生器305は、位相変調器304に結合することができる。オンチップのトランスインピーダンス増幅器(TIA)及び/又は検出された信号をブーストするための他のタイプの増幅器は、対応する検出器に結合された構成要素341、339、342、343及び335で示されるように、同様にオンチップに統合することができる。更に、2つの出力導波路分岐間に光の位相差を与えるために、位相変調器ドライバ321をオンチップで統合することができる。一部の場合では、電子機器とフォトニクスを統合することで、性能の向上、ノイズ低減、及びフィードバック制御を提供する。
図3Bには示されていないが、レーザーパワー監視検出器及び対応する電子機器は、集積フォトニクスチップの一部とすることができる。
【0026】
図3Cは、サニャック検出器338の周りの深いインプラント(太い長方形で示す)が、検出器338によって測定されているサニャック位相差信号に集積フォトニクスチップから漏洩又は散乱する光信号を避けるための鍵であることを示している。光の漏洩を避けるためのインプラントの使用についての詳細は、
図5B-5Eに関して説明されている。
【0027】
図4は、SiN導波路チップに結合する集積フォトニクスチップの代替の実施形態400の概略図であり、光路は、偏光子404又は光モード選択フィルタを含む。実施形態400の他の構成要素402、406、408、420、422、432a、432b、436、438などは、
図3Aに関して示されて説明された、対応する構成要素302、306、308、320、322、332a、332b、336、338と機能的に同等である。
【0028】
図5Aは、SiN導波路チップに結合する集積フォトニクスチップの更に別の実施形態500の概略図であり、集積フォトニクスチップはパッケージングを容易にするように設計されている。この設計では、2x2スプリッタの代わりに、Yスプリッタ542が組み込まれている。なお、Yスプリッタは、できる限り50-50に近い必要がある点に留意されたい。
図5Aに示す実施形態は、カスタマイズされた試験目的で使用することができる。
【0029】
図5B(I)は、フォトニクスチップ350上のリブ導波路の隆起部(
図5B(II)に示す)内に典型的には閉じ込められている光が、リブ導波路のスラブ部分にどのように漏洩する可能性があるかを示している。この漏洩は、導波路の直線部分でも発生するが、特に屈曲部、曲線部、接合部及び/又は界接部付近で顕著である。
図5Bの(I)及び(II)は両方とも、リブ導波路内の光モードのシミュレーションした輪郭である。漏洩光又は散乱光は、集積フォトニックチップ350全体を伝播して跳ね返ることができ、これは、漏洩光が導波路ジャイロコイルからの光信号と混合した場合、主要なサニャック検出器338を含む検出器の性能に悪影響を及ぼす可能性がある。1つの実施形態において、リブ導波路の隆起部は、0.2-0.5μmの高さを有することができ、リブ導波路のスラブ部は、0.2-0.5μmの高さを有することができ、リブ導波路の合計高さは0.4-1.0μmの範囲になる。他の寸法を用いてもよい。
【0030】
本発明者らは、光を導波路に閉じ込めておくために、
図5Cに示される解決策を使用する。導波路の周りのスラブ全体に高線量のインプラント(例えば、1cm
3当たりに10
19個のドーパントのピーク濃度)が散乱光を吸収し、検出器又は隣接する導波路を含む他の構成要素に漏洩ないようにする。この後の図に示すように、導波管内に特定のモードを閉じ込めるための導波管の代替の設計がまた導入される。1つの代替の設計は、
図12に示すストリップ導波路として知られている。
【0031】
図5Dは、
図5Aに示したチップと極めてよく似たチップのレイアウトの上面図であり、Yスプリッタの2つの分岐間のクロストークを低減し、また、外部ソースからチップのエッジに達する可能性のある散乱光を遮断するために、Yジャンクションを含む導波路の周りにインプラントが(太い線で)示されている。
【0032】
図5Eは、2x2スプリッタ(
図3Aに概略的に示されているスプリッタなど)の導波路の周りとサニャック光検出器(
図3Aに概略的に示されている検出器338など)の周り全てにインプラント(太い線で示されている)を備えた、集積フォトニクス光ジャイロスコープフロントエンドの別のレイアウトの上面図である。
図5Eは、任意選択の構成要素としての偏光子(
図4に示す偏光子など)を示す。偏光子の必要性は、導波管の適切な設計(例えば、TE偏光導波管)又は集積チップ内の適切なモード選択フィルタの使用によって排除することができる。
【0033】
図6は、レーザー、制御用の様々な集積回路、集積フォトニクスチップ、及びSiN導波路チップを収容するパッケージの概略図である。パッケージ600は、集積フォトニクスチップ650(
図3~5に示す実施形態と同様とすることができる)と、SiN導波路チップ624とを含む。SiN導波路チップ624は、
図6に示すように、1つの平面内に導波路スパイラルを有することができ、ここで、光の方向が変化できないので、入力導波路と出力導波路が交差する。代替的に、導波路の交差を避けるために、2019年6月7日に出願された同時係属中の米国仮出願第62/858,588号に記載されているように、導波路コイル又はリングの一部が複数の垂直面の間で分散することができる。レーザー光源610は、集積フォトニクスチップ650の外側にあり、場合によってはチップ650にファイバー結合されるか、又は当接結合される。レーザー610及び/又はチップ650のための離散的な制御部IC660、662、664は、パッケージ600の内部にあってもよいが、同じウェーハプラットフォーム上には集積されていない。また、集積度が高まるにつれて、これらの離散的ICの多くがチップ650にモノリシックに集積されてもよい。
【0034】
図7は、レーザーチップ770が集積フォトニクスチップ750に取り付けられているが、集積フォトニクスチップの一部ではない、すなわちレーザーがオフチップである構成の概略図である。レーザーチップ770上にハイブリッドに集積された、アイソレータ772及びレンズ774(ボールレンズ又は他のタイプの適切なレンズ)などの追加の構成要素が存在することができる。チップ750上の構成要素は、
図3Aに関して示され説明された構成要素に類似しているが、当業者であれば、システム構成要素(例えば、
図4又は5Aに示されているもの)の他の配置も完全に実施可能であることを容易に確認されるであろう。レンズを用いてレーザー710から放出する光を集束することは、チップ750上の光カプラ702(入力導波路端部にて)の設計を決定付ける可能性がある。
【0035】
図8は、より高度なオンチップ集積を示す構成の概略図であり、集積フォトニクスチップ850上に、レーザー810、アイソレータ872及びレンズ874が集積されている。レンズを用いてレーザー810からの光を集束することで、チップ850上の光カプラ802(入力導波路端)の設計を決定付ける可能性がある。
図8のその他の構成要素は、
図7の実施形態と同じである。更に、レーザーは、III-Vハイブリッドボンディングを用いて接合されるか、又はシリコン上にエピタキシャル成長させることができる。
【0036】
図9は、異なる導波路構成における波長依存の損失を示すプロットである。集積フォトニクス光ジャイロスコープの全体設計では、レーザー光源が導波路損失に最適な波長で設計されている点に留意されたい。レーザー光源自体は広帯域とすることができ、追加の構成要素を使用して、所望の波長に調整することができる。導波路の減衰は、導波路内での吸収及び散乱に起因する光信号の損失と、並びにマイクロベンディング及び/又は側壁粗さなどの導波路の幾何学的特徴に起因する放射損失によって引き起こされる。散乱及び吸収は、光の波長に依存する。水酸イオン(OH-)不純物を含有するシリカ系導波路では、振動するケイ素-水酸イオン(Si-OH)結合と光信号の電磁場との間の相互作用により、特定の高調波長での吸収が促進される。長距離光ファイバー通信システムでは、吸収強化ウィンドウから十分に離れており、散乱損失も極めて小さいので、単一モード光ファイバーの最適波長として1550nmが使用されている。しかしながら、集積フォトニクス光ジャイロスコープ用途では、長距離光通信の適用を前提としていないので、1550nmの波長に厳密に準拠する必要はない。むしろ、SiN導波路での最も低い損失に対応する波長を選択することが重要である。
【0037】
図9は、3つの異なる導波路構成について、測定損失(単位:dB/m)が波長に対してプロットされ、狭幅導波路のグラフ902、中間幅導波路のグラフ904、及び広い導波路のグラフ906である、3つのグラフを示している。
図9に示すように、3つの導波路構成全てにおいて、1550nmの波長領域での損失が、1570-1580nmの波長領域での損失(損失が0.35dB/m未満である)と比べて、極めて高くなっている(0.7dB/m近傍にて)。導波路製造プロセスの改善(溶融シリカ又は酸化物からの水分を除去するアニール処理の微調整を含む)及び側壁の平滑化に注力することで、損失を0.1dB/m未満にすることが可能である。適切なレーザー波長を選択することで、信号の最適化、レーザー出力の低減、集積フォトニクス光ジャイロスコープの全体性能の向上を行うことができる。なお、導波路の設計及び寸法を変更した場合には、
図9に示したものよりも更に低い損失が測定されている点に留意されたい。
【0038】
図10は、多くの構成要素が
図3Aに示された設計と類似している実施形態1000を示す。しかしながら、
図3Aとの主な相違点は、パワーを2倍にするため及び/又は1つのレーザーが故障した場合の冗長性のために、2つのレーザー1010a及び1010bを使用することである。一般的に市販されている分布帰還型(DFB)レーザー又はファブリ・ペロー(FP)レーザーは、1つのレーザー当たりに低い出力を有する場合がある(25~50mWの範囲)。そのため、レーザーを組み合わせると、市場で簡単に入手できる低コストで大量生産されたレーザーでより多くの出力を利用するのに役立つ。
【0039】
また、(1つのレーザーを使用するのではなく)2以上のレーザーを使用して、レーザーを直接変調し、線幅を広げ、コヒーレンシーを助けることが可能である。変調器1004は、2以上の多いレーザーからの合成ビームにランダムな位相ノイズを与えてこれらをスミアし、2つのレーザー間のコヒーレンシーに対処して、単一の光源から来る広帯域光と同等の出力ビームを生成することができる。従って、2以上のレーザーを組み合わせることで、大きな出力を有する1つのレーザーよりも全体の出力を大きくすることができる。追加の検出器を使用して、光信号をタップし、レーザー信号とパワーレベルを監視することができる。
【0040】
図11は、2つのレーザーの代わりに一連のレーザー(1、...、N)があることを除いて、
図10と同一である。
図11はまた、熱センサー1100などの追加構成要素を集積フォトニクスチップ上に集積し、レーザーの性能が低下しないように、チップが所望の温度範囲で動作しているかどうかを監視することができる。
【0041】
図12は、集積フォトニクスチップ350上の導波路の変更された設計を示す。ストリップ導波路が横方向磁気(TM)モードよりも横方向電子(TE)モードを閉じ込めるのに適しているので(すなわち、閉じ込められた光モード1208は主にTE成分を有する)、
図5Bに示すリブ導波路の代わりに、ストリップ導波路1204が導入されている。1つの実施形態では、ストリップ導波路は、高さ(h)0.2μm、幅1~2μmを有することができる。リブ導波路とストリップ導波路の間の大きな相違点は、ストリップ導波路にはスラブ部分がなく、導波路は基板1206(例えば、シリコン基板上の埋没酸化膜)までエッチングされることである。インプラント領域1202は、ストリップ導波路を取り囲み、光の漏洩を防止する、及び/又は他の構成要素又はチップ環境からの迷光を遮断することができる。例えば、TMモードやTEモードがストリップ導波路から漏洩した場合、インプラント領域で吸収されて、検出器又は他の光学構成要素に到達しないようにする。設計により導波路を本質的にTEモード選択にすることに加えて、TMフィルタは、集積フォトニクスチップ上の光路に沿った様々な場所に配置することができる。なお、リブ導波路は、TE及び/又はTM共に低損失を有することができるが、ストリップ導波路は、TEが低損失でTMが高損失になるように設計することができる。また、様々な光デバイスのチップにわたってストリップ導波路からリブ導波路へ及びその逆への移行を行うことができる。例えば、位相変調器は、典型的には、リブ導波路ベースのデバイスである。なお、ジャイロチップ上のSiN導波路は、スラブ部がないため、既にストリップ導波路と類似している点に留意されたい。
【0042】
図13は、TMフィルタの幾つかの例示的な位置を示している。ファイバーからの入力光はTEモードとTMモードの両方を有することができるので、入力カプラ302と第1の2x2スプリッタ306との間にTMフィルタが存在することができる。各TMフィルタは、複数の個別フィルタを直列に備えたTMフィルタバンクを構成することができる。例えば、
図13において、TMフィルタの各段1360,1362は、1,2,4,6...個の多モード干渉(MMI)フィルタを有することができる。性能を改善するために必要に応じて、光がキー検出器(すなわち、前の図に示されるサニャック検出器338)に到達する前に、又は集積フォトニクスチップ全体の他の場所に1又は2以上のTMフィルタ1366を配置することもできる。例えば、TMフィルタ1364は、
図4に示す偏光子404又は
図5Eに示す偏光子の機能を提供するために含めることができる。
図13には示されていないが、主要検出器338は、インプラント領域に囲まれていてもよいことに留意されたい。幾つかの実施形態では、導波管の1つの分岐のみが(電気的及び/又は熱的な)位相変調器を有することに留意されたい。例えば、位相変調器322(破線で示す)は、完全に存在しないか、特定の動作モードでは積極的に使用されない場合があるが、位相変調器320は、出力導波路の2つの分岐における光ビーム間に位相差を導入するために積極的に使用することができる。
【0043】
図14は、
図13の実施形態に類似した実施形態を示しているが、2つの出力導波路分岐での位相シフトのため追加手段のために、高速電気変調器(1420、1422)に加えて熱変調器(1421、1423)を追加している。このシステムは、片腕又は両腕に、高速変調器だけ又は熱変調器だけ又は両方の組み合わせを有することができる。
【0044】
上述したように、TMフィルタは、蛇行構造(
図15A-Bに示すS-屈曲部)をベースにするか、又はMMIフィルタをベースにすることができる。
図15A及び
図15Bは、TMフィルタとして使用可能な蛇行構造を示す。
図15Aは、蛇行構造の屈曲部周辺におけるTE光のシミュレーションした漏洩を示し、
図15Bは、蛇行構造の屈曲部周辺におけるTM光のシミュレーションした漏洩を示している。TM漏洩が極めて顕著であるので、蛇行構造の出力は、ほとんどがTE光となり、TM光はフィルタリングされる。
【0045】
図16は、TMフィルタとして使用可能なMMIフィルタを示す。MMI部分の適切な長さ及び幅を設計することで、TMモードをほとんどフィルタリングすることができる。
【0046】
図17は、異なる長さのMMIフィルタのTE/TM光パワー透過率のシミュレーション・プロットを示す。プロット1702は、TEパワー透過率を示し、プロット1704はTMパワー透過率を示す。例えば、設計長43.35μmでは、各MMIフィルタにおいてTEモードの透過率が97.42%、TMモードの透過率が37.53%である。これは、TEモードの損失(LTE)がMMIフィルタ当たりに-0.1132dBに等しく、TMモードの損失(LTM)がMMIフィルタ当たりに-4.2560dBに等しいことに相当する。消光比(ER)は、MMIフィルタ当たりに4.1425dBである。複数のMMIフィルタを直列に使用することで、TMをフィルタリングする効果を達成することができる(例えば、2、4、又はそれ以上のMMIフィルタ)。
【0047】
図18は、TMを効果的にフィルタリングするために最適な長さ及び幅のMMIフィルタ1830に対するTE/TM光パワー透過率シミュレーションを示す。上の
図1810は、TE信号伝送を示し、下の
図1820はTM信号伝送を示す。入力端で結合されたTE光1832の大部分が出力端でのMMIフィルタを通って伝送され、入力端で結合されたTM光1836は、基板に部分的に散乱される。よって、散乱光を吸収するためのインプラントの必要性がある(すなわち、
図5C及び
図12に示すように)。
図18は、出力端における伝送TE光1834が、伝送TM光1838よりも有意に顕著であることを明確に示している。
【0048】
前述の明細書において、本開示の実施構成は、その具体的な例示の実施構成を参照しながら説明してきた。以下の特許請求の範囲に記載されているように、本開示の実施構成のより広い精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正を行うことができることは明らかであろう。従って、本明細書及び図面は、限定的な意味ではなく、例示的な意味で見なされるべきものである。更に、例えば、「上」、「下」、その他の方向性を示す用語は、本開示の範囲を任意の固定された方向に限定するものではなく、様々な方向性の並べ替え及び組み合わせを包含する。
【符号の説明】
【0049】
302 ファイバーカプラ
304 変調器
340 結合用タップ
338 検出器
306、308 2x2スプリッタ
320、322 位相変調器
333、334 結合用タップ
【国際調査報告】