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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-16
(54)【発明の名称】水性コーティング
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20220909BHJP
   C09D 167/08 20060101ALI20220909BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20220909BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220909BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20220909BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D167/08
C09D163/00
C09D7/61
C09D5/02
C09D5/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022501206
(86)(22)【出願日】2020-07-08
(85)【翻訳文提出日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 GB2020051648
(87)【国際公開番号】W WO2021005370
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】1909802.9
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522010901
【氏名又は名称】アプライド グラフィーン マテリアルズ ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウィーバー ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】チコシャ リン
(72)【発明者】
【氏名】ベル エー
(72)【発明者】
【氏名】シャープ エム
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DB001
4J038DD121
4J038GA01
4J038HA026
4J038HA036
4J038HA066
4J038HA476
4J038KA08
4J038MA02
4J038MA03
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA03
4J038PB05
4J038PC02
4J038PC04
4J038PC06
(57)【要約】
少なくとも1種類のバインダーと、水と、2D材料/グラファイトナノプレートレットの分散物と、を含む水性保護コーティングシステムが開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類のバインダーと、水と、2D材料/グラファイトナノプレートレットの分散物と、を含む水性保護コーティングシステム。
【請求項2】
前記2D材料/グラファイトプレートレットは、グラフェンナノプレートレット、グラファイトナノプレートレットおよび2D材料ナノプレートレットの1種類以上で構成され、
前記グラフェンナノプレートレットは、グラフェンナノプレート、ナノプレート、還元グラフェンオキシドナノプレート、二層グラフェンナノプレート、二層還元グラフェンオキシドナノプレート、三層グラフェンナノプレート、三層還元グラフェンオキシドナノプレート、少数層グラフェンナノプレート、少数層グラフェンオキシドナノプレート、少数層還元グラフェンオキシドナノプレートおよび6~10層からなる炭素原子層のグラフェンナノプレートの1種類以上で構成され、前記グラファイトプレートレットは、少なくとも10層の炭素原子層を有するグラファイトフレークで構成され、
前記グラファイトナノプレートレットは、10~20層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレート、10~14層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレート、10~35層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレート、10~40層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレート、25~30層の炭素原子の層を有するグラファイトナノプレート、25~35層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレート、20~35層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレートまたは20~40層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレートの1種類以上で構成され、
前記2D材料プレートレットは、六方晶窒化ホウ素(hBN)、二硫化モリブデン(MoS)、二セレン化タングステン(WSe)、シリセン(Si)、ゲルマネン(Ge)、グラフィン(C)、ボロフェン(B)、ホスホレン(P)、または2種類以上の前述の材料からなる2D面内もしくは垂直ヘテロ構造体のうち1種類以上で構成される、
請求項1に記載の水性保護コーティングシステム。
【請求項3】
前記2D材料/グラファイトプレートレットは、少なくとも1種類の1D材料を含む、請求項1または2に記載の水性保護コーティングシステム。
【請求項4】
前記コーティングシステムは、添加剤をさらに含み、前記添加剤は、無機顔料または有機顔料を水中で研削するための分散添加剤、消泡剤、顔料、レオロジー改質剤、樹脂またはバインダー、レベリング剤、基質湿潤剤、フロー添加剤、スキニング防止剤またはフラッシュ防錆剤のうち1種類か、または2種類以上の混合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の水性保護コーティングシステム。
【請求項5】
2D材料/グラファイトナノプレートレットの前記分散物は、2D材料/グラファイトナノプレートレットと、水と、少なくとも1種類の湿潤剤と、少なくとも1種類の研削媒と、を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の水性保護コーティングシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1種類の研削媒は、水溶性であるかまたは水溶性となるように官能化される、請求項5に記載の水性保護コーティングシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1種類の湿潤剤は、高分子湿潤剤、イオン湿潤剤、高分子非イオン分散および湿潤剤、陽イオン湿潤剤、両性湿潤剤、ジェミニ湿潤剤、高度分子樹脂様湿潤および分散剤または2種類以上のこれらの湿潤剤からなる混合物のうち1種類を含む、請求項5または6のいずれか1項に記載の水性保護コーティングシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1種類のバインダーは、アクリル樹脂、アルキド樹脂、アクリル-アルキドハイブリッド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノプラスト樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂または2種類以上の前述の樹脂からなる混合物のうち1種類を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の水性保護コーティングシステム。
【請求項9】
前記少なくとも1種類のバインダーは、アクリル-アルキドハイブリッド樹脂を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の水性保護コーティングシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1種類のバインダーは、エポキシ樹脂を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の水性保護コーティングシステム。
【請求項11】
(a)水溶液中の2D材料/グラファイトナノプレートレットの液体分散物を得るステップと、
(b)前記液体分散物を少なくとも1種類のバインダーおよび水と混合するステップと、
を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の水性保護コーティングシステムの調合の方法。
【請求項12】
2D材料/グラファイトナノプレートレットの前記液体分散物は、
(i)分散媒を作り出すステップと;
(ii)前記分散媒に2D材料/グラファイトナノプレートレットを混入するステップと;
(iii)前記2D材料/グラファイトナノプレートレットを、前記2D材料/グラファイトナノプレートレットの粒子サイズを小さくするのに十分な剪断力およびまたは圧壊力に付すステップと、
によって得られ、
前記2D材料/グラファイトナノプレートレットおよび分散媒混合物は、前記2D材料/グラファイトナノプレートレットと、少なくとも1種類の研削媒と、水と、少なくとも1種類の湿潤剤と、を含むこと、および前記少なくとも1種類の研削媒は、水溶性であるかまたは水溶性となるように官能化されること、
を特徴とする、
請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記2D材料/グラファイトナノプレートレットを、前記2D材料/グラファイトナノプレートレットの粒子サイズを小さくするのに十分な剪断力およびまたは圧壊力に付すステップは、研削ミル、溶解装置、ビーズミルまたは3本ロールミルを用いて行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1種類の湿潤剤は、高分子湿潤剤、イオン湿潤剤、高分子非イオン分散および湿潤剤、陽イオン湿潤剤、両性湿潤剤、ジェミニ湿潤剤、高度分子樹脂様湿潤および分散剤または2種類以上のこれらの湿潤剤からなる混合物のうち1種類を含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
2D材料/グラファイトナノプレートレットの前記液体分散物は、水性分散物である、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記2D材料/グラファイトナノプレートレットは、グラフェンナノプレートレット、グラファイトナノプレートレットおよび2D材料ナノプレートレットの1種類以上で構成され、
前記グラフェンナノプレートレットは、グラフェンナノプレート、還元グラフェンオキシドナノプレート、二層グラフェンナノプレート、二層還元グラフェンオキシドナノプレート、三層グラフェンナノプレート、三層還元グラフェンオキシドナノプレート、少数層グラフェンナノプレート、少数層グラフェンオキシドナノプレート、少数層還元グラフェンオキシドナノプレート、および6~10層からなる炭素原子層のグラフェンナノプレートの1種類以上で構成され、前記グラファイトプレートレットは、少なくとも10層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレートで構成され、
前記グラファイトプレートレットは、10~20層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレート、10~14層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレート、10~35層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレート、10~40層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレート、25~30層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレート、25~35層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレート、20~35層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレートまたは20~40層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレートのうちの1種類以上で構成され、
前記2D材料ナノプレートレットは、六方晶窒化ホウ素(hBN)、二硫化モリブデン(MoS)、二セレン化タングステン(WSe)、シリセン(Si)、ゲルマネン(Ge)、グラフィン(C)、ボロフェン(B)、ホスホレン(P)または2種類以上の前述の材料からなる2D面内もしくは垂直ヘテロ構造体のうち1種類以上で構成される、
請求項11~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記2D材料/グラファイトナノプレートレットは、少なくとも1種類の1D材料を含む、請求項11~16のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、水性コーティングシステムに関し、特に2D材料/グラファイトナノプレートレットを含む水性コーティングシステムに関する。
[背景技術]
【0002】
本明細書において参照される2D材料は、公知の2D材料および/または少なくとも1つのナノスケール寸法を有するグラファイトフレークのうち1種類以上、あるいはそれらの混合物で構成される。本明細書においてこれらはまとめて「2D材料/グラファイトナノプレートレット」または「2D材料/グラファイトナノプレート」と呼ばれる。
【0003】
2D材料(時には単層材料と呼ばれる)は、単一の原子層または最大でも数層からなる結晶材料である。層状2D材料は、弱く積層または結合した2D層からなり、3次元構造体を形成している。2D材料のナノプレートは、ナノスケール以下の範囲の厚さを有し、他の2つの寸法は、概してナノスケールより大きなスケールにある。
【0004】
公知の2Dナノ材料は、グラフェン(C)、グラフェンオキシド、還元グラフェンオキシド、六方晶窒化ホウ素(hBN)、二硫化モリブデン(MoS)、二セレン化タングステン(WSe)、シリセン(Si)、ゲルマネン(Ge)、グラフィン(C)、ボロフェン(B)、ホスホレン(P)、または2種類の前述の材料からなる2D垂直もしくは面内ヘテロ構造体を含むがこれに限定されるものではない。
【0005】
少なくとも1つのナノスケール寸法を有するグラファイトフレークは、10~40層の炭素原子層から構成され、100nm前後~100μmの範囲の面内寸法を有する。
【0006】
水性コーティングシステムは、大気質、環境および人間の健康への揮発性有機化合物(VOC)の影響に取り組むために採り入れられた新たな規制の導入以来、コーティング技術開発にとって中心的であった。コーティングシステム用溶媒として1種類以上のVOCを含む従来のコーティングシステム(以下「有機溶媒系コーティングシステム」と呼ばれる)のものと同等な性能レベルを実現することを目指してさまざまな範囲の化学物質を利用する水性コーティングシステムが開発された。
【0007】
水性コーティングシステムは、作業者の健康および安全性にとってより良好であり、環境への影響が少ないため、有機溶媒系コーティングシステムに対して有利な点を提供する。水性コーティングシステムは、清浄にしやすく、水で薄めることができ、たとえ少しでも有機溶媒を含むとしても有機溶媒系コーティングシステムにおいて用いられるよりも匂い、毒性および引火性が低い溶媒を用いる。VOCが低下したアクリルコーティングなどの水性コーティングシステムはまた、有機溶媒系コーティングより速く乾燥し、そのことがより迅速な塗り直し時間を可能にする。
【0008】
大気質へのVOCの影響に取り組むために規制が採り入れられたことを考慮すると、ますます重要になるのが、特定の形の水性コーティングシステム、すなわち水性保護コーティングシステムである。
【0009】
保護コーティングシステムは、水性であろうと有機溶媒系であろうと、2つの重要な機能を有する。2つの重要な機能とは、現在広がっている要素/環境に対する保護の提供およびそれらの美的外観である。現在広がっている要素/環境に対する保護とは、少なくとも部分的に、コーティングが塗布される基質の腐食または劣化に対する保護である。コーティングが防ぐ腐食または劣化のメカニズムは、基質に依存する。最も重要なタイプの基質は、金属、コンクリートおよび木材/木材複合材料である。
【0010】
金属の腐食の問題は、文献に十分に記載されており、金属腐食は、グローバルGDPの約3%を費やすと推定され、この数字は、グローバル経済の重要な側面を構成する。新規かつ改善された腐食防止コーティングシステムの開発には相当な関心が寄せられている。金属のための腐食防止コーティングシステムは、一般に、それらが作動するメカニズム、すなわちバリヤー保護、抑制(基質の不動態化)および犠牲保護(ガルバニ効果)によって分類される。各タイプの金属腐食防止コーティングシステムの作動のメカニズムは周知である。バリヤー保護を提供するコーティングシステムの場合、当該メカニズムは、コーティングシステムが塗布され乾燥すると形成されるコーティングまたは膜が、基質表面への水分の浸透を防止するかまたは抑制することである。
【0011】
コンクリートは、基盤構造物(例えば橋、建物および主要道路において)の建設において広く用いられている建設材料であり、要素/環境への曝露の結果として恒常的な劣化を受け、コンクリートの保全が顕著にかつ常に求められる結果となっている。
【0012】
コンクリート構造物は、濡れおよび乾き、凍結および解氷、ならびに極端な温度変化への曝露の結果として種々の形の損傷を包括的に受ける。これらの曝露は、コンクリートに表面スケーリング、剥離および腐食誘起亀裂などの損傷をもたらすことがある。コンクリートの損傷は、水がコンクリートの表面に浸透していなかった場合より水がコンクリートの表面に浸透していた場合に概して大きい。コンクリートの損傷はまた、コンクリートが置かれている環境が塩化物イオンおよび/または硫酸塩イオンを含む場合、そのようなイオンが存在しない場合より概して大きい。塩化物イオンおよび/または硫酸塩イオンは、共通して氷結防止塩または凍結防止塩、海水およびまたは土壌に由来する。
【0013】
この損傷または劣化を防止するために、水および水中に含まれる物質のコンクリート構造物への進入を防止しようと試みるために、コンクリート構造物に顔料配合コーティングが塗布されるべきであると多くの場合に指定される。そのようなコーティングは、スムース仕上げとテクスチャード仕上げとの両方を含み、溶媒性コーティング(エポキシ樹脂、アクリル樹脂およびビニルトルエン樹脂、マイケル付加樹脂に基づくコーティングを含む)から水性コーティング(アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、アルキド樹脂、マイケル付加樹脂およびこれらのハイブリッドを含む)の範囲の技術のことがある。
【0014】
コンクリートの表面層への保護コーティングシステムの塗布は、水および水に含まれる塩化物イオンおよび/または硫酸塩イオンなどの有害な物質および/または凍結防止化学物質のコンクリートへの進入を遅らせることによってコンクリートの表面層を保護することができる。
【0015】
伝統的な建築材料である木材が、再び建築用の重要な材料として見られる傾向が増しつつあり、最初の木造高層建築が既に建設されている。特に北米およびアジアの住宅建設における木材の広範な使用は、もっと広い影響を及ぼす。しかし、要素/環境への曝露から保護されていなければ、木材は容易に水分を吸収し、結果として腐ってしまう。これが起こった場合、構造物を維持するために相当な改善措置が必要とされる。
【0016】
水性コーティングシステム、および特に水性保護コーティングシステムに関わる難問は、塗布されたときの最終コーティングの外観および性能に塗布条件が影響を及ぼし得るということである。例えば、最適な塗布外観および塗膜形成のために低温およびまたは両極端の湿気(高いかまたは低いか)は避けなければならない。
【0017】
バリヤー特性を有する水性保護コーティングシステムでは、所望のバリヤー性能を提供する水性コーティングの能力は、基質に塗布されたコーティングシステムが乾燥して形成されたコーティングまたは膜の品質に少なくとも部分的に依存する。
【0018】
膜の品質に影響を及ぼす第1の因子は、基質への塗布用に準備したコーティングシステム中のバインダーの性質である。さまざまな化学物質が用いられる可能性があり、不飽和乾性油で改質されたポリエステルであるアルキドエマルジョンを含むことがある。塗布されるとこれらは触媒的酸化反応によって架橋することがある。アクリル分散物が用いられることがあり、しばしばアクリル酸とメタクリル酸とのエステルの共重合体である。これらは、熱可塑性プラスチックまたは架橋システムのことがある。高いレベルの性能が必要な場合、2剤架橋システム(コーティングの塗布の直前に硬化剤がコーティングシステムの他の成分と混合されるシステム)がしばしば用いられる。典型的な2剤架橋システムは、イソシアネートとヒドロキシ官能アクリルとを組み合わせることがある。単剤アクリル架橋システム(コーティングが外部硬化剤の添加を必要としないシステム)も開発され、一例に、ケト-ヒドラジド架橋反応を利用するシステムがある。水性エポキシコーティング(タイプ1とタイプ2との両方)は、プライマ中に用いられ、より高い性能が必要とされる場合に金属塗布に直接用いられる周知の水性化学物質である。個々の塗布において最適化された性能を発揮するためにこれらの化学物質のハイブリッド化も用いられる。
【0019】
膜の品質に影響を及ぼす第2の因子は、コーティングシステムが乾くときの膜形成の有効性である。コーティングシステムとして水中に分散されたポリマーをバインダーが含む場合、膜形成のプロセスは、
(i)コーティングシステム中に分散されたバインダー(たとえばポリマー)の粒子の蒸発による濃縮と、
(ii)バインダー(例えばポリマー)の粒子の変形および粒子の間の不可逆的接触と、
(iii)連続かつ機械的に安定な膜の形成に至る、粒子境界を通るバインダー(例えばポリマー鎖)の相互拡散と、
の3つの逐次的な段階を含むメカニズムによって記述される。
【0020】
コーティングシステムが基質に塗布される際、分散されたポリマーの粒子は、界面活性剤の層によって囲まれている。この界面活性剤は、製造プロセスを通じ、ポリマーの粒子の安定性およびその最終的な形態にとって重要である。図1に膜形成に至るさまざまな段階が例示される。以下により詳細に記載される。
【0021】
局面(i)は、時間に伴う一定の水の損失を特徴とする。粒子の濃度は、連続的に増加し、粒子安定化の性質および強さならびに漿液のイオン強度に依存して、分散された粒子は、密に接触し、多かれ少なかれ規則的に充填する。単分散の球体の最密充填は、0.74の有効粒子体積分率を有する。有効粒子体積は、各粒子表面の外包親水性界面活性剤層の厚さに依存する。
【0022】
局面(ii)は、変形していないポリマーの粒子が最初に接触し合うとき始まる。この時点で、乾燥が、ポリマーの最小膜形成温度(MFT:minimum film forming temperature)を十分上回る温度かつそのガラス転移点(Tg)の近くまたはTgより高温において行われる場合だけ顕著な粒子変形が起る。変形した場合のみ、粒子は、ポリマーの応力緩和時間と比較して水分の蒸発が遅い、すなわち粘性流体のように挙動することができる。球状粒子が空間充填構造を形成するためには、菱形十二面体の構造をとらなければならない。
【0023】
最小膜形成温度の近くで乾燥が起る場合、粒子変形が部分的にだけ起り、不完全な膜形成が生じる結果となり得る。この段階において、粒子境界は依然として存在し、多くの場合に粒子を囲む界面活性剤の層が依然としてあるだろう。そのような最終的な膜は、透明で光学的に無色であるが、不満足な品質の多孔質構造体のことがある。
【0024】
多数の著者によると、変形したポリマー粒子を分離する界面活性剤層の破壊がさらなるポリマー相互拡散と機械的強度の十分な発達との前提条件である局面(ii)(b)が存在する。
【0025】
局面(iii)において、膜から水がなくなったはるか後に所望の膜特性が実現される。ここで、ポリマー鎖移動度は、膜が乾燥する温度とポリマーのガラス転移点(Tg)との間の差に依存すると理解される。柔らかな格子または膜では、十分なポリマー相互拡散に必要な時間は固い格子または膜の場合より短い。
【0026】
水性保護コーティングシステム用調合物の他の成分の寄与も膜の品質に影響を及ぼし得る。いくつかの成分は、コーティングの親水性に寄与し、これらの成分は、概して湿潤剤または界面活性剤である。
【0027】
湿潤剤または界面活性剤の使用は、水性コーティングシステムの合成、貯蔵、塗布および膜形成時におけるコロイド安定性の制御に必須である。水性コーティングシステムにおいては、いくつかの理由で湿潤剤または界面活性剤が用いられ、それらは、顔料を分散する助けとなり、コーティングシステムの発泡またはコーティングシステム中にある分散物からの他の成分の沈降を減少させることがある。湿潤剤または界面活性剤の典型的な濃度は、コーティング調合物中に用いられる樹脂母材の0.5~5重量%の範囲にあり、それらの界面活性剤の最大25%は、連続(水)相中にある。
【0028】
膜形成時に湿潤剤または界面活性剤の相分離が起こり、湿潤剤または界面活性剤は、移動可能となり、それらの化学的性質に応じて粒子の間の界面に蓄積される可能性が生じることがある。膜/空気境界における湿潤剤または界面活性剤の蓄積は、膜の熟成時に湿潤剤または界面活性剤が奪われる結果となる可能性があり、このことは、膜中にミクロ細孔を作り出す。膜の中のミクロ細孔の存在は好ましくない水吸収をもたらす。
【0029】
水性コーティングシステムに由来する膜中の高いレベルの湿潤剤または界面活性剤は、従って、水に敏感でありバリヤー特性が低下した膜を生じる結果となることがある。膜の他の特性、例えばスクラブ耐性もこれらのレベルの湿潤剤または界面活性剤によって低下することがある。
[発明の概要]
[課題を解決するための手段]
【0030】
本発明の第1の側面によれば、少なくとも1種類のバインダーと、水と、2D材料/グラファイトナノプレートレットの分散物と、を含む水性保護コーティングシステムが提供される。
【0031】
本発明の第1の側面のいくつかの実施形態において、2D材料/グラファイトナノプレートレットは、1種類以上のグラフェンナノプレートレットまたはグラファイトナノプレートレットで構成され、グラフェンナノプレートレットは、グラフェンナノプレート、還元グラフェンオキシドナノプレート、二層グラフェンナノプレート、二層還元グラフェンオキシドナノプレート、三層グラフェンナノプレート、三層還元グラフェンオキシドナノプレート、少数層グラフェンナノプレート、少数層グラフェンオキシドナノプレート、少数層還元グラフェンオキシドナノプレート、および6~10層からなる炭素原子層のグラフェンナノプレートのうち1種類以上で構成され、グラファイトナノプレートレットは、少なくとも10層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレートで構成される。
【0032】
いくつかの実施形態本発明において、グラフェンナノプレートレットおよびグラファイトナノプレートレットの一方または両方は、100nm前後~100μmの範囲の面内寸法を有する。
【0033】
本発明の第1の側面のいくつかの実施形態において、2D材料/グラファイトナノプレートレットは、1種類以上のグラファイトナノプレートレットで構成され、グラファイトナノプレートレットは、10~20層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレート、10~14層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレート、10~35層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレート、10~40層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレート、25~30層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレート、25~35層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレート、20~35層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレートまたは20~40層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレートである。
【0034】
本発明の第1の側面のいくつかの実施形態において、2D材料/グラファイトナノプレートレットは、1種類以上の2D材料ナノプレートレットで構成され、2D材料ナノプレートレットは、六方晶窒化ホウ素(hBN)、二硫化モリブデン(MoS)、二セレン化タングステン(WSe)、シリセン(Si)、ゲルマネン(Ge)、グラフィン(C)、ボロフェン(B)、ホスホレン(P)、または2種類以上の前述の材料からなる2D面内もしくは垂直ヘテロ構造体のうち1種類以上を含む。
【0035】
少数層グラフェン/還元グラフェンオキシドナノプレートは、4~10層の炭素原子層を有し、単原子層は、0.035nmの厚さと0.14nmの典型的な層間距離とを有する。
【0036】
本発明の第1の側面のいくつかの実施形態において、2D材料/グラファイトナノプレートレットは、グラフェン/グラファイトナノプレートレットと少なくとも1種類の1D材料とで構成される。いくつかの実施形態において、1D材料は、カーボンナノチューブを含む。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態において、2D材料/グラファイトナノプレートレットの分散物は、市販製品ジェナブル(Genable)(商標)1050もしくはジェナブル(商標)1250またはそれらの混合物である。
【0038】
ジェナブル1050は、水中で安定化された10.0重量%A-GNP10グラファイトナノプレートレットの分散物である(A-GNP10は、英国のアプライドグラフェンマテリアルズUK公開株式会社(Applied Graphene Materials UK,Plc)から市販され、25~35層の原子層の厚さの還元されたグラファイト酸化物ナノプレートレットを含む)。ジェナブル1250は、水中で安定化された0.5重量%A-GNP35グラフェンナノプレートレットの分散物である(A-GNP35は、英国のアプライドグラフェンマテリアルズUK公開株式会社から市販され、5~15層の原子層の厚さのグラフェンナノプレートレットを含む)。ジェナブル1050とジェナブル1250との両方が英国のアプライドグラフェンマテリアルズ公開株式会社から市販されている。
【0039】
本発明の第1の側面のいくつかの実施形態において、水性保護コーティングシステムは、1種類以上の添加剤をさらに含み、添加剤は、無機顔料および有機顔料を水中で研削するための分散添加剤、消泡剤、顔料、レオロジー改質剤、樹脂またはバインダー、乾燥剤、レベリング剤、基質湿潤剤、フロー添加剤、スキニング防止剤、フラッシュ防錆剤、または2種類以上の前述の添加剤からなる混合物である。
【0040】
樹脂またはバインダーは、1剤樹脂またはバインダーのことがあり、あるいは2剤樹脂またはバインダーのことがあり、あるいは3剤以上を含むことがある。
【0041】
いくつかの実施形態において、樹脂またはバインダーは、アクリル樹脂である。
【0042】
いくつかの実施形態において、樹脂またはバインダーは、エポキシ樹脂である。エポキシ樹脂は、1剤エポキシ樹脂または2剤エポキシ樹脂のことがある。エポキシ樹脂は、紫外線硬化性樹脂、熱硬化膜を形成するように空気乾燥される酸化的硬化性樹脂、または熱硬化膜を形成するように周囲温度または高温で硬化されることがある2剤エポキシ樹脂の1種類のことがある。
【0043】
本発明の第1の側面のいくつかの実施形態において、少なくとも1種類のバインダーは、アクリル樹脂、アルキド樹脂、アクリル-アルキドハイブリッド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノプラスト樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、または2種類以上の前述の樹脂からなる混合物のうち1種類を含む。
【0044】
本発明の第1の側面のいくつかの実施形態において、少なくとも1種類のバインダーは、アクリル-アルキドハイブリッド樹脂を含む。
【0045】
本発明の第1の側面の1つの実施形態は、下記の実施例1の通りである。
【0046】
本発明の第1の側面のいくつかの実施形態において、2D材料/グラファイトナノプレートレットの分散物は、周囲貯蔵条件下で少なくとも2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月または6ヶ月の安定な貯蔵寿命を有する。このことには、水性保護コーティングシステムの調合において2D材料/グラファイトプレートレットの分散物が撹拌されるため、水性保護コーティングシステムは、少なくとも2D材料/グラファイトナノプレートレットの分散物の貯蔵寿命と同じ貯蔵寿命を有するという効果がある。
【0047】
本発明の第1の側面のいくつかの実施形態において、2D材料/グラファイトナノプレートレットの分散物は、2D材料/グラファイトナノプレートレットと、水と、少なくとも1種類の湿潤剤と、少なくとも1種類の研削媒と、を含む。
【0048】
本発明の第1の側面のいくつかの実施形態において、2D材料/グラファイトプレートレットの分散物の少なくとも1種類の研削媒は、水溶性であるかまたは水溶性となるように官能化されている研削媒である。
【0049】
いくつかの実施形態において、研削媒は、強い固定用の基で修飾されたポリマーである。いくつかの実施形態において、研削媒は、少なくとも1つのアミン基を有する修飾アルデヒド樹脂の水溶液である。いくつかの実施形態において、研削媒は、低分子量スチレン/無水マレイン酸共重合体である。
【0050】
いくつかの好ましい実施形態において、2D材料/グラファイトプレートレットの分散物の研削媒は、BASF北米ディスパージョンズアンドレジンズ事業部から市販されている水溶性修飾アルデヒド樹脂であるラロパール(Laropal)(商標)LR9008、修飾アルキドポリマーであるアディトール(ADDITOL)(商標)XL6515、ポリエステル修飾アクリルポリマーであるアディトールXW6528、高分子自己乳化顔料研削媒であるアディトールXW6535、高分子自己乳化顔料研削媒であるアディトールXW6565、ポリエステル修飾アクリルポリマーであるアディトールXW6591である。アディトール製品は、オルネクス(Allnex)グループの会社から市販されている。
【0051】
本発明の第1の側面のいくつかの実施形態において、2D材料/グラファイトナノプレートレットの湿潤剤または分散剤は、高分子湿潤剤、イオン湿潤剤、高分子非イオン分散および湿潤剤、陽イオン湿潤剤、両性湿潤剤、ジェミニ湿潤剤、高度分子樹脂様湿潤および分散剤、または2種類以上のこれらの湿潤剤からなる混合物のうち1種類のことがある。ジェミニ湿潤剤は、スペーサセグメントによって結合されている、ポリエーテルセグメント中の2つの極性中心または頭基を有する。
【0052】
2D材料/グラファイトナノプレートレットの分散物中の好ましい湿潤剤は、オルネクスベルギー株式会社(Allnex Belgium SA/NV)から市販されている高分子非イオン分散および湿潤添加剤である修飾アクリル共重合体であるアディトール(商標)VXW6208/60と;BYK-ヘミー有限会社(BYK-Chemie GmbH)から市販されている塩基性の顔料親和基を有するブロック共重合体であるディスパーBYK(DISPERBYK)-2150(商標)と、エボニクニュートリションアンドケア有限会社(Evonik Nutrition & Care GmbH)から市販されているジェミニ湿潤剤および分子消泡剤であるサーフィノール(Surfynol)(商標)104と、を含むがこれに限定されるものではない。
【0053】
本発明の第1の側面による水性保護コーティングシステムは、基質へのコーティングシステムの層の塗布が、コーティング中の2D材料/グラファイトナノプレートレットの濃度および塗布された乾燥膜厚に応じて、膜中の2D材料/グラファイトナノプレートレットの多重層を生じる結果となるから有利である。2D材料/グラファイトナノプレートレットの各層は、潜在的に数原子層の厚さである。2D材料/グラファイトナノプレートレットの多重層の存在は、水および水が運ぶあらゆる溶存酸素、塩化物および/または硫酸塩イオンあるいは類似イオンの進入にとっての複雑かつ蛇行するかまたは迷路のような通路を提供する。このことは、2D材料/グラファイトナノプレートレットを組み込んでいない同等な膜と対比して膜を通る水蒸気透過速度を大いに低下させる。
【0054】
本発明の第1の側面による水性保護コーティングシステムはまた、コーティングシステムがこれまで可能であると証明されていたよりも小量の湿潤剤を組み込むから有利である。このことには、コーティングシステムから形成された膜中の湿潤剤がこれまでよりも少なく、従って、湿潤剤の除去の結果としての膜中の欠陥、例えばミクロ細孔の可能性が低いという恩恵がある。
【0055】
これは、水性システムへのグラフェンの導入が、伝統的に、撹拌しながらグラフェン粉体またはその水分散物をバインダー分散物に入れることによって行われてきたことが知られているからである。このプロセスの間、グラフェンは、効果的に連続相中に分散される。そのような分散物は、典型的に、バインダーまたは樹脂粒子の凝固および分散物の圧壊を生じる結果となる。すなわち、バインダー粒子が分散物から分離し、凝集し、混合が行われている容器中で沈降物を形成する。このことは、バインダーまたは樹脂上に存在する界面活性剤を求めて競合するグラフェンの高い表面積によって引き起こされ、バインダーまたは樹脂上の界面活性剤の正味の減少がバインダーまたは樹脂の不安定化を引き起こす。高分子自己架橋界面活性剤が用いられる場合、これらは、グラフェンにとって利用し難くなり、グラフェン自体が不安定になり、凝集し、沈降する。
【0056】
グラフェン分散物中に追加の界面活性剤が含まれると、コーティングシステム中にいくぶんかの安定化を提供する一方で、コーティングシステムから形成された最終的な膜の中の界面活性剤の顕著な保持を生じる結果となる。このことは、界面活性剤が膜/空気界面または膜/基質界面のいずれかに移動する結果となる。膜/空気界面において、界面活性剤は、環境の影響に曝露されると除去されやすく、膜の中にミクロ細孔の形成を引き起こす。膜/基質界面において、界面活性剤は、膜と基質との間の接着力の低下の原因となり得る。
【0057】
これは、溶媒としての水が高いレベルの極性を有する一方で、これと対照的に、高い炭素/酸素比を有するグラフェン/グラファイトナノプレートレットは、低い極性および高い疎水性の度合いを有し、そのことが両者を互いに反発させるからであると考えられる。このことが、グラフェン/グラファイトナノプレートレットが凝集し、凝析し、分散しない原因となる。2D材料/グラファイトプレートレットがグラフェン/グラファイトナノプレートレットである本発明のいくつかの実施形態において、グラフェン/グラファイトナノプレートレットの炭素/酸素比は、15以上である。
【0058】
本発明の第2の側面によれば、
(a)水溶液中の2D材料/グラファイトナノプレートレットの液体分散物を得るステップと、
(b)液体分散物を少なくとも1種類のバインダーおよび水と混合するステップと、
を含む、本発明の第1の側面の水性保護コーティングシステムの調合の方法が提供される。
【0059】
本発明の第2の側面のいくつかの実施形態において、ステップ(a)の方法は、以下のステップ
(i)分散媒を作り出すステップ;
(ii)2D材料/グラファイトナノプレートレットを分散媒に混入するステップ;
(iii)2D材料/グラファイトナノプレートレットを、2D材料/グラファイトナノプレートレットの粒子サイズを小さくするのに十分な剪断力およびまたは圧壊力に付すステップと、
を含み、
2D材料/グラファイトナノプレートレットと分散媒混合物は、2D材料/グラファイトナノプレートレットと、少なくとも1種類の研削媒と、水と、少なくとも1種類の湿潤剤を含むことと、少なくとも1種類の研削媒は、水溶性であるかまたは水溶性となるように官能化されていることと、を特徴とする。
【0060】
本発明の第2の側面のいくつかの実施形態において、2D材料/グラファイトナノプレートレットを、2D材料/グラファイトナノプレートレットの粒子サイズを小さくするのに十分な剪断力およびまたは圧壊力に付すステップは、研削ミル、溶解装置、ビーズミルまたは3本ロールミルを用いて行われる。
【0061】
本発明の第2の側面のいくつかの実施形態において、2D材料/グラファイトナノプレートレットは、1種類以上のグラフェンナノプレートレットまたはグラファイトナノプレートレットで構成され、グラフェンナノプレートレットは、グラフェンナノプレート、還元グラフェンオキシドナノプレート、二層グラフェンナノプレート、二層還元グラフェンオキシドナノプレート、三層グラフェンナノプレート、三層還元グラフェンオキシドナノプレート、少数層グラフェンナノプレート、少数層還元グラフェンオキシドナノプレートおよび6~10層からなる炭素原子層のグラフェンナノプレートの1種類以上で構成され、グラファイトプレートレットは、少なくとも10層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレートで構成される。
【0062】
本発明の第2の側面のいくつかの実施形態において、グラフェンナノプレートレットとグラファイトナノプレートレットとの一方または両方は、100nm前後~100μmの範囲の面内寸法を有する。
【0063】
本発明の第2の側面のいくつかの実施形態において、2D材料/グラファイトナノプレートレットは、1種類以上のグラファイトプレートレットで構成され、グラファイトナノプレートレットは、10~20層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレート、10~14層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレート、10~35層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレート、10~40層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレート、25~30層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレート、25~35層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレート、20~35層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレートまたは20~40層の炭素原子層を有するグラファイトナノプレートである。
【0064】
本発明の第2の側面のいくつかの実施形態において、2D材料/グラファイトナノプレートは、1種類以上の2D材料ナノプレートで構成され、2D材料ナノプレートは、六方晶窒化ホウ素(hBN)、二硫化モリブデン(MoS)、二セレン化タングステン(WSe)、シリセン(Si)、ゲルマネン(Ge)、グラフィン(C)、ボロフェン(B)、ホスホレン(P)、または2種類以上の前述の材料からなる2D面内もしくは垂直ヘテロ構造体のうち1種類以上で構成される。
【0065】
少数層グラフェン/還元グラフェンオキシドナノプレートは、4~10層の炭素原子層を有し、ここで、単原子層は、0.035nmの厚さと0.14nmの典型的層間距離とを有する。
【0066】
本発明の第2の側面のいくつかの実施形態において、2D材料/グラファイトナノプレートは、グラフェン/グラファイトナノプレートと少なくとも1種類の1D材料とで構成される。いくつかの実施形態において、1D材料は、カーボンナノチューブを含む。
【0067】
本発明の第2の側面のいくつかの実施形態において、少なくとも1種類の研削媒は、水溶性であるかまたは水溶性となるように官能化されている。いくつかの実施形態において、研削媒は、強力な固定用の基で修飾されたポリマーである。いくつかの実施形態において、研削媒は、少なくとも1個のアミン基を有する修飾アルデヒド樹脂の水溶液である。アミン基は、ポリマーの主鎖に導入されているか、または塩を形成するようにアミンを樹脂上の官能基と反応させることによる。いくつかの実施形態において、研削媒は、低分子量スチレン/無水マレイン酸共重合体である。
【0068】
いくつかの好ましい実施形態において、2D材料/グラファイトプレートレットの分散物の研削媒は、BASF北米ディスパージョンズアンドレジンズ事業部から市販されている水溶性修飾アルデヒド樹脂であるラロパール(商標)LR9008、修飾アルキドポリマーであるアディトール(商標)XL6515、ポリエステル修飾アクリルポリマーであるアディトールXW6528、高分子自己乳化顔料研削媒であるアディトールXW6535、高分子自己乳化顔料研削媒であるアディトールXW6565、ポリエステル修飾アクリルポリマーであるアディトールXW6591である。アディトール製品は、オルネクスグループの会社から市販されている。
【0069】
本発明の第2の側面のいくつかの実施形態において、分散媒は、少なくとも1種類の研削媒と水との混合物を含み、分散媒を作り出すステップは、
(i)少なくとも1種類の研削媒を実質的に均質になるまで水と混合すること
を含む。
【0070】
本発明の第2の側面のいくつかの実施形態において、少なくとも1種類の研削媒は、液体であり、分散媒は、50重量%~90重量%の間の少なくとも1種類の研削媒および10重量%~50重量%の間の水、60重量%~80重量%の間の少なくとも1種類の研削媒および20重量%~40重量%の間の水;65重量%~75重量%の間の少なくとも1種類の研削媒および25重量%~35重量%の間の水、または70重量%前後の少なくとも1種類の研削媒および30重量%前後の水を含む。
【0071】
本発明の第2の側面のいくつかの実施形態において、分散媒は、少なくとも1つの湿潤剤をさらに含み、湿潤剤は、液体として貯蔵され、分散媒を作り出すステップは、
(i)少なくとも1種類の研削媒、水および湿潤剤を、研削剤、水および湿潤剤混合物が実質的に均質になるまで混合すること、
を含む。
【0072】
本発明の第2の側面のいくつかの実施形態において、分散媒は、少なくとも1種類の湿潤剤をさらに含み、湿潤剤は、固体(この用語は粉体を含む)として貯蔵され、分散媒を作り出すステップは、
(i)少なくとも1種類の研削媒、水および湿潤剤を、研削媒および湿潤剤が溶解し、研削媒、水および湿潤剤混合物が実質的に均質になるまで混合すること、
を含む。
【0073】
本発明の第2の側面のいくつかの実施形態において、少なくとも1種類の湿潤剤は、2D材料/グラファイトナノプレートレットと実質的に同時に分散媒に加えられる。
【0074】
本発明の2D材料/グラファイトナノプレートレットの湿潤剤または分散剤は、高分子湿潤剤、イオン湿潤剤、高分子非イオン分散および湿潤剤、陽イオン湿潤剤、両性湿潤剤、ジェミニ湿潤剤、高度分子樹脂様湿潤および分散剤、または2種類以上のこれらの湿潤剤からなる混合物のうち1種類のことがある。
【0075】
2D材料/グラファイトナノプレートレットの分散物の好ましい湿潤剤は、オルネクスベルギー株式会社から市販されている高分子非イオン分散および湿潤添加剤である、修飾アクリル共重合体アディトール(商標)VXW6208/60;およびBYK-ヘミー有限会社から市販されている塩基性、顔料親和性基を有するブロック共重合体であるディスパーBYK-2150(商標)、およびエボニクニュートリションアンドケア有限会社から市販されているジェミニ湿潤剤および分子消泡剤であるサーフィノール(商標)104を含むがこれに限定されるものではない。
【0076】
乾いた2D材料/グラファイトナノプレートレット、例えばグラフェン/グラファイトナノプレートレットは、典型的には一次粒子またはナノプレートレットの凝塊体または凝集体から作られる。分散プロセスの間にそれらの凝塊体または凝集体は、目的とされる2D材料/グラファイトナノプレートレットの利用に適するサイズの一次粒子またはナノプレートレットにできるだけ分解しなければならない。一次粒子またはナノプレートレットの凝塊体または凝集体の分解は、剥離のプロセスを含むと考えられる。
【0077】
本発明の第2の側面のいくつかの実施形態において、分散手段は、2D材料/グラファイトナノプレートレットに、それら材料が分散媒に混入される間に圧壊作用と機械的剪断との両方を加えるのに適した手段である。これを実現するのに適した装置は、溶解装置、ビーズミルまたは三本ロールミルなどの公知の研削装置または磨砕装置である。
【0078】
本発明の第2の側面のいくつかの実施形態において、凝塊体または凝集体が、さらに分解することができない粒子サイズの粒子またはナノプレートレットに分解されることが好ましい。2D材料/グラファイトナノプレートレットの製造と、使用の前の貯蔵とは、多くの場合、2D材料/グラファイトナノプレートレット分散物にとって望ましいよりも大きな粒子の形で行われるから、このことは有利である。
【0079】
2D材料/グラファイトナノプレートレット凝塊体または凝集体がより小さな粒子またはナノプレートレットに小さくされると、凝塊体または凝集体のサイズの減少の結果として生じる新たに形成された表面の迅速な安定化は、粒子またはナノプレートレットが再凝塊または再凝集することを防止する一助となる。
【0080】
分散媒、例えば水を含む分散媒と2D材料/グラファイトプレートレットとの間の界面張力が高いほど界面面積を小さくしようとする力が強いことが見いだされているから、本発明の第2の側面の方法は、特に有利である。言い換えると、2D材料/グラファイトナノプレートレットを再凝塊または再凝集させようとするかあるいは凝析体を形成させようとする力が強くなる。分散媒中の湿潤剤と2D材料/グラファイトナノプレートレットとの間の界面張力は、水と2D材料/グラファイトプレートレットとの間のものより低く、従って、湿潤剤は、新たに形成された表面を安定させる一助となり、2D材料/グラファイトナノプレートレットが凝塊、凝集または凝析することを妨げる。
【0081】
新たに形成された表面を安定させることおよび2D材料/グラファイトナノプレートレットが凝塊、凝集およびまたは凝析することを妨げることにおける湿潤剤の作用は、有利ではあるが、改善された安定な分散物の形成を可能にするのに十分な恩恵は得られないことが見いだされた。これは、湿潤剤によって2Dナノ材料が水系分散媒中に懸濁することが可能になるが、他の化合物に対して高い表面積を有することが2D材料/グラファイトナノプレートレットの特徴だからである。高い極性を有する水が湿潤剤を追い出すことがある。
【0082】
分散媒中の湿潤剤の割合が増すと最終的にはすべての成分が懸濁されたままの分散物に至ることがある。しかし、分散物を形成することへのこの手法には、分散物から形成されたコーティングが高い度合いの水への溶解度を有するという問題がある。これは、コーティングの迅速な不具合を招くから非常に好ましくない。
【0083】
本発明の第2の側面によれば、研削媒中の2D材料/グラファイトナノプレートレット、水および湿潤剤混合物の混合物を含む分散物への圧壊作用およびまたは機械的剪断力の適用は、改善された分散を生む結果となる。
【0084】
これは、ある割合の2D材料/グラファイトナノプレートレットが、少なくとも部分的に研削媒のコーティング中にカプセル化されるため、湿潤剤に加えて、研削媒も2D材料/グラファイトナノプレートレットの新たに形成された表面を安定させるからであると考えられる。湿潤剤は、次に研削媒/2D材料/グラファイトプレートレットナノ粒子の組み合わせと相互作用することができ、研削樹脂/2D材料/グラファイトナノプレートレット粒子が分散物中に懸濁することが可能になる。研削媒と湿潤剤との組み合わせは、分散物中の懸濁を可能にする、2D材料/グラファイトナノプレートレットを濡らすために必要な湿潤剤が少なくなる結果となり、そのため高いレベルの界面活性剤の結果として生じる問題(水分感受性)が最小になる。
【0085】
本発明の方法のさらなる有利な点は、2D材料/グラファイトナノプレートレットに作用するとき、磨砕されている混合物中の研削媒の存在によって分散手段の磨砕性能がさらに改善されることである。その改善は、磨砕プロセスにおけるより速い磨砕、より低い発熱、分散物中のより均一な粒子サイズ、分散物中のより小さなD50粒子サイズ、より低い分散物粘度、公知の短い貯蔵寿命の分散物と対比してより大きな貯蔵安定性、分散物から沈降した研削媒/2D材料/グラファイトナノプレートレット粒子のあらゆる組み合わせを分散物の単純な撹拌によって再分散させる能力によって示される。
【0086】
研削媒支援物質が水溶性である、2D材料/グラファイトナノプレートレットの研削媒支援分散の開発は、2D材料/グラファイトナノプレートレットが水系実体内で安定化し、安定剤を巡ってあまり研削媒と競合しない連続相中の2D材料/グラファイトナノプレートレットの分散を可能にする。2D材料/グラファイトナノプレートレットを組み込んでいる安定な水系分散物の開発は、2D材料/グラファイトナノプレートレット支援塗料調合物の開発と、腐食改善のために金属、水分吸収の予防のために木材ならびに水分吸収および劣化の予防のためにコンクリートといった複数の基質に塗布される可能性のある水系システムのバリヤー性能の改善を可能にする。
【0087】
本発明の第1の側面による水性保護コーティングシステムのさらなる有利な点は、それが木材への使用に普通に用いられるコーティングバインダーシステムにおいて表面光劣化を受けることである。これは、日光中の紫外放射がダウンポリマーを分解する結果であり、そのような分解は遅く、木材の表面からの膜の浸食を生じる結果となる。すると、木材は、水およびカビによって攻撃されることが可能であり、分解および腐敗の発生がもたらされる結果となり、それに伴って顕著な維持管理および修理が必要になる可能性がある。
【0088】
本発明の第1の側面による水性保護コーティングシステムは、グラフェンナノプレートまたはグラファイトナノプレートを含み、バインダーは、有機ポリマーであるとき、それらのナノプレートは、紫外光を吸収し、従ってコーティングシステムから形成された膜を保護する一助となる。
【0089】
詳細な説明を理解するために有用であるさまざまな実施例のより良好な理解のために、添付の図面がここで単に例として参照される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1】膜形成に至る種々の段階を示す。
図2】480時間ASTM B117中性塩水噴霧験結果について、塩水噴霧試験後にコーティングが取り除かれた試験パネルの画像を示す。
図3】コーティングを有するブラスト処理鋼の腐食平均クリープ測定の結果(480時間)を示す。
図4】コーティングを有するボンデライト鋼の腐食平均クリープ測定の結果(480時間)を示す。
図5】コーティングを有する摩耗鋼の腐食平均クリープ測定の結果(480時間)を示す。
図6】1000時間ASTM B117中性塩水噴霧試験結果について、塩水噴霧試験後にコーティングが取り除かれた試験パネルの画像を示す。
図7】コーティングを有するブラスト処理鋼の腐食平均クリープ測定の結果(1000時間)を示す。
図8】コーティングを有するボンデライト鋼の腐食平均クリープ測定の結果(1000時間)を示す。
図9】コーティングを有する摩耗鋼の腐食平均クリープ測定の結果(1000時間)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0091】
詳細な説明
[実施例]
【0092】
表1に示す処方に従って対照試料(DTM1)と本発明の第1の側面による処方の4つの試料(DTM2~DTM5)とを製造した。
【0093】
【表1】
【0094】
表1に示した材料は、以下の通りである。アディトールVXW6208は無機顔料および有機顔料を水中で研削するためのポリマー非イオン分散添加剤であり、アディトールVXW6393は消泡剤であり、Ti-ピュアR-706は二酸化チタン顔料であり、アクリゾールRM2020Eは疎水性修飾エチレンオキシドウレタン(HEUR:hydrophobically modified ethylene oxide urethane)高剪断レオロジー改質剤であり、レシドロール(Resydrol)AY6150w/45WAは風乾性アクリル改質アルキド樹脂エマルジョン(すなわちアクリル-アルキドハイブリッド樹脂)であり、アディトールVXW6206は乳化されたノニルフェニルエトキシレートを含有しないコバルト、リチウムおよびジルコニウムの複合乾燥剤であり、アディトールVXW6503Nは水性塗装システムのためのポリエーテル修飾ポリシロキサンに基づく均染および基質湿潤剤であり、アディトールVXW4973は消泡剤であり、モダフローAQ-3025は水系コーティングのためのアクリルフロー添加剤であり、アディトールXL297はスキニング防止剤であり、アクリゾールRM-8Wは非イオンウレタンレオロジー改質剤であり、ハロXフラッシュ-X150は、内張付金属容器および内張なし金属容器のフラッシュ錆びおよび缶内錆びの抑制用である。
【0095】
アディトール、レシドロールおよびモダフローは、オールネックスベルギーSAの商標であり、その名称を組み込んでいる製品はその会社から入手可能である。Ti-ピュアはケマーズカンパニー(Chemours Company)の商標であり、その名称を組み込んでいる製品はその会社から入手可能である。アクリゾールはダウケミカルズ社(Dow Chemicals Company)の商標であり、その名称を組み込んでいる製品はその会社から入手可能である。ハロックスはICLスペシャルティプロダクツ社(ICL Specialty Products Inc.)の商標であり、その名称を組み込んでいる製品はその会社から入手可能である。
【0096】
対照試料は、市販ブランドの水性アクリル調合物であった。
【0097】
製造は、以下のステップに従った。
【0098】
メカニカルミキサー中で顔料ペーストを作った。
【0099】
ミキサーに品目1および2を加え、安定した渦を維持するように速度を調整した(ミキサーは中速にする)。品目1および3を5~10分間分散させた。
【0100】
品目3および4を加え、中~高ミキサー速度で10分間分散させる。
【0101】
品目5を加え、7+のヘグマン(Hegman)を得るように高ミキサー速度で20~30分間分散させる。
【0102】
次に、顔料ペーストをメカニカルミキサー中で静置する。
【0103】
品目6~8をメカニカルミキサーに加え、安定した渦を維持するように速度を調整する。ミキサーによって品目6~8に剪断を高速で最低10分間加える。
【0104】
品目9~12および前もって調製した顔料ペーストをミキサーに加え、低~中速で最低10分間剪断を加える。
【0105】
品目13~15を加え、10分間混合する。
【0106】
品目16~17を加え、10分間混合する
【0107】
表2に示す特性を有する試験パネルを製作し、試験用の通常の方法で溝線を引いた。
【0108】
【表2】
【0109】
本発明によるコーティングシステムがISO12944-2に定義されているC3タイプ(中)腐食性環境において典型的に用いられる水性アクリルコーティングと対比して有意な寿命の延長を示すかを評価し決定するために試験パネルを試験した。
【0110】
加速曝露試験を行った。試験形態は、塩水噴霧試験ASTM B117中性塩水噴霧試験:ISO4628-2-2003およびISO04628-3-2003に従う腐食クリープアセスメントであった。
【0111】
480時間ASTM B117中性塩水噴霧試験結果について、塩水噴霧試験後にコーティングを取り除いた試験パネルの画像を図2に示す。
【0112】
腐食平均クリープ測定の結果は、図3~5に示す通りである。
【0113】
なお、コーティングを有するブラスト鋼対照パネルの480時間アセスメントを除いて、480時間と1000時間との両方の試験における他の対照パネルのすべては、溝線から始まる相当なレベルの腐食および/または腐食に関わる完全な不良を有した。これらのパネルは、図3~5および7~9の画像表示を補助するために50mmの平均クリープ腐食を有するとした。
【0114】
1000時間ASTM B117中性塩水噴霧試験結果について、塩水噴霧試験後にコーティングを取り除いた試験パネルの画像を図6に示し。
【0115】
腐食平均クリープ測定の結果は、図7~9に示す通りである。
【0116】
それぞれ480時間および1000時間の試験継続時間における加速暴露試験(ASTM B117中性塩水噴霧試験結果)での図示されるパネルの画像(図2および6)において;アクリル調合物中のグラフェンナノプレートレットは、溝線において観察される腐食を減少させた。試験パネルの溝線における腐食の減少は、試験した調合物中10%および20重量%のジェナブル(商標)1250の添加レベルにおいて最も明白である。この性能改善は、実用上のコーティング寿命の有意な延長となってあらわれるだろう。
図1
図2
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【国際調査報告】