(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-16
(54)【発明の名称】糖原病(GSD)の処置
(51)【国際特許分類】
A61K 38/47 20060101AFI20220909BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220909BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20220909BHJP
A61K 31/445 20060101ALI20220909BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220909BHJP
A61P 3/08 20060101ALI20220909BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220909BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220909BHJP
C12N 15/56 20060101ALI20220909BHJP
C12N 15/83 20060101ALI20220909BHJP
C12N 9/26 20060101ALN20220909BHJP
【FI】
A61K38/47
A61K48/00
A61K31/137
A61K31/445
A61P25/00
A61P3/08
A61P43/00 121
A61K35/76
C12N15/56 ZNA
C12N15/83 Z
C12N9/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022501292
(86)(22)【出願日】2020-07-09
(85)【翻訳文提出日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 EP2020069432
(87)【国際公開番号】W WO2021005176
(87)【国際公開日】2021-01-14
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503197304
【氏名又は名称】ジェネトン
(71)【出願人】
【識別番号】500248467
【氏名又は名称】アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ サントゥ エ ドゥ ラ ルシェルシェ メディカル(イーエヌエスエーエールエム)
(71)【出願人】
【識別番号】519365919
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・デヴリー-ヴァル-デソンヌ
【氏名又は名称原語表記】Universite d’Evry-Val-d’Essonne
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】ミンゴッツィ, フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】ロンジッティ, ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】コロー, ファニー
【テーマコード(参考)】
4B050
4C084
4C086
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4B050LL01
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA01
4C084CA18
4C084DC22
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA03
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA03
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZB21
4C086ZC21
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087CA12
4C087MA02
4C087MA66
4C087NA03
4C087NA05
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZB21
4C087ZC21
4C087ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA31
4C206KA01
4C206KA17
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA86
4C206NA03
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZB21
4C206ZC21
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】糖原病(GSD)の処置の提供。
【解決手段】本発明は、(i)薬理学的シャペロン又はその医薬的に許容される塩と、(ii)治療用酸性アルファグルコシダーゼ(GAA)ポリペプチド又は治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子とを含み、上記薬理学的シャペロンが、1-デオキシノジリマイシン(DNJ)又はその誘導体及びアンブロキソール(ABX)又はその誘導体である、キット・オブ・パーツに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)薬理学的シャペロン又はその医薬的に許容される塩と、(ii)治療用酸性アルファグルコシダーゼ(GAA)ポリペプチド又は治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子とを含み、前記薬理学的シャペロンが、1-デオキシノジリマイシン(DNJ)又はその誘導体及びアンブロキソール(ABX)又はその誘導体である、キット・オブ・パーツ。
【請求項2】
医薬としての使用のための、好ましくは糖原病(GSD)の処置における使用のための、請求項1に記載のキット・オブ・パーツ。
【請求項3】
神経系の組織、好ましくは中枢神経系の組織、より好ましくは脊髄へのGAAの取込みを増加させる方法における使用のための、請求項1又は2に記載のキット・オブ・パーツ。
【請求項4】
GSDにおける中枢神経系(CNS)障害を処置するための方法における使用のための、請求項1に記載のキット・オブ・パーツ。
【請求項5】
(i)ドゥボグルスタット及びアンブロキソール塩酸塩と、(ii)治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子を発現するための核酸構築物が挿入されたウイルスベクターとを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のキット・オブ・パーツ又は使用のためのキット・オブ・パーツ。
【請求項6】
糖原病(GSD)を処置するための治療用酸性アルファグルコシダーゼ(GAA)処置を受ける対象における前記GSDの処置における使用のための、薬理学的シャペロン又はその医薬的に許容される塩を含む組成物であって、前記薬理学的シャペロンが、1-デオキシノジリマイシン(DNJ)又はその誘導体及びアンブロキソール(ABX)又はその誘導体である、組成物。
【請求項7】
GSDを処置するための治療用GAA処置を受ける対象において、神経系の組織、好ましくは脊髄へのGAAの取込みを増加させる方法における使用のための、薬理学的シャペロン又はその医薬的に許容される塩を含む組成物であって、前記薬理学的シャペロンが、DNJ又はその誘導体及びABX又はその誘導体である、組成物。
【請求項8】
GSDを処置するための治療用GAA処置を受ける対象において、GSDにおける中枢神経系(CNS)障害を処置するための方法における使用のための、薬理学的シャペロン又はその医薬的に許容される塩を含む組成物であって、前記薬理学的シャペロンが、DNJ又はその誘導体及びABX又はその誘導体である、組成物。
【請求項9】
前記治療用GAA処置が、治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子である、請求項6~8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記治療用GAA処置が、治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子を発現するための核酸構築物が挿入されたウイルスベクターであり、前記薬理学的シャペロンが、ドゥボグルスタット及びアンブロキソール塩酸塩である、請求項6~9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
- 前記DNJ誘導体が、N-メチル-DNJ、N-ブチル-DNJ、N-シクロプロピルメチル-DNJ、N-(2-(N,N-ジメチルアミド)エチルオキシ-DNJ、N-4-t-ブチルオキシカルボニル-ピペリジニルメチル-DNJ、N-2-R-テトラヒドロフラニルメチル-DNJ、N-2-R-テトラヒドロフラニルメチル-DNJ、N-(2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エチル-DNJ、N-2-メトキシエチル-DNJ、N-2-エトキシエチル-DNJ、N-4-トリフルオロメチルベンジル-DNJ、N-アルファ-シアノ-4-トリフルオロメチルベンジル-DNJ、N-4-トリフルオロメトキシベンジル-DNJ、N-4-n-ペントキシベンジル-DNJ、N-4-n-ブトキシベンジル-DNJ若しくはCl-ノニルDNJから選択される、
- 前記DNJが、ドゥボグルスタット(CAS番号19130-96-2)、ドゥボグルスタット塩酸塩(CAS番号73285-50-4)、ミグルスタット(CAS番号72599-27-0)、若しくはミグルスタット塩酸塩(CAS番号210110-90-0)である、及び/又は、
- 前記ABXが、アンブロキソール塩酸塩(CAS番号23828-92-4)である、請求項1~4及び請求項6~9のいずれか一項に記載のキット・オブ・パーツ、使用のためのキット・オブ・パーツ又は使用のための組成物。
【請求項12】
前記GSDが、GSDI(フォン・ギールケ病)、GSDII(ポンペ病)、GSDIII(コーリー病)、GSDIV、GSDV、GSDVI、GSDVII、GSDVIII又は心臓の致死性の先天性糖原病から選択され、好ましくはGSDI、GSDII又はGSDIII、より好ましくはGSDII又はGSDIII、最も好ましくはGSDIIである、請求項2~11のいずれか一項に記載の使用のためのキット・オブ・パーツ又は使用のための組成物。
【請求項13】
前記薬理学的シャペロンが、治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子の前、同時、及び/又は後に投与される、請求項1~5及び請求項9~12のいずれか一項に記載のキット・オブ・パーツ、使用のためのキット・オブ・パーツ又は使用のための組成物。
【請求項14】
前記核酸分子が、前記核酸分子を発現するための核酸構築物に挿入され、前記核酸構築物は、レトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター、又は、AAVベクター、例えば、一本鎖若しくは二本鎖自己相補的AAVベクターから選択されるウイルスベクターに挿入され、前記ウイルスベクターは、好ましくはAAV8、AAV9、AAVrh74又はAAV2i8カプシド、特にAAV8、AAV9又はAAVrh74カプシド、より特定的にはAAV8カプシドを有するAAVベクターである、請求項1~5及び請求項9~13のいずれか一項に記載のキット・オブ・パーツ、使用のためのキット・オブ・パーツ又は使用のための組成物。
【請求項15】
前記核酸分子によってコードされる治療用GAAポリペプチドが、GAAポリペプチド部分及び該GAAポリペプチド部分のN末端に融合されたシグナルペプチド部分を含み、前記GAAポリペプチド部分のN末端に融合されたシグナルペプチド部分は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6又は配列番号7から選択され、好ましくは配列番号3であり、前記GAAポリペプチド部分は、配列番号27、配列番号28、配列番号34、配列番号35又は配列番号36から選択され、好ましくは配列番号27である、請求項1~5及び請求項9~14のいずれか一項に記載のキット・オブ・パーツ、使用のためのキット・オブ・パーツ又は使用のための組成物。
【請求項16】
前記核酸分子が、配列番号8、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46又は配列番号47から選択され、好ましくは配列番号25である、請求項1~5及び請求項9~15のいずれか一項に記載のキット・オブ・パーツ、使用のためのキット・オブ・パーツ又は使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
糖原病(GSD)は、典型的には筋肉及び/又は肝細胞内において、グリコーゲン合成、グリコーゲン分解又は解糖に影響を与える酵素の欠乏によって引起こされる代謝疾患である。GSDは、GSD型0~GSD型XVまで、様々な型に分類される(表1)。
【0002】
【0003】
GSD II又は酸性マルターゼ欠損症としても知られるポンペ病は、ライソゾーム酵素である酸性αグルコシダーゼ(GAA)の欠損によって引起こされる常染色体劣性代謝性ミオパチーである。GAAは、ライソゾーム内でグリコーゲンをグルコースに加水分解するエキソ-1,4及び1,6-α-グルコシダーゼである。GAAの欠乏は、ライソゾーム内のグリコーゲン蓄積に至り、呼吸筋、心筋、及び骨格筋に進行性の損傷を引起こす。この疾病は、通常1~2歳までに致命的となる急速進行性の乳児型の経過から、小児及び成人に著しい罹患率及び早期死亡率を引起こす緩徐進行性の不均一な経過にまで及ぶ[1]及び[2]。
【0004】
中枢神経系(CNS)障害、特に呼吸神経筋障害は、GSD、特に早期及び後期発症型ポンペ病患者において顕著である。研究により、中枢神経系におけるグリコーゲンの蓄積は、ポンペ病を患っている患者に呼吸障害を引起こし、生後4~6か月で呼吸機能障害に至ることが分かっている[3]及び[4]。したがって、ポンペ病の呼吸障害の是正を改善する治療法、特にGSD患者の神経系の組織におけるグリコーゲンの病原性蓄積の是正を改善する治療法を開発することが重要である。
【0005】
ポンペ病を処置するための現在のヒト治療法は、いわゆる酵素補充療法(ERT)と呼ばれる組換えヒトGAAの投与を伴う。ERTは、重度の乳児型GSD IIに対する有効性を示している。しかしながら、ERTの利点は、頻繁な注入の必要性及び組換えhGAAに対する阻害抗体の発生によって限定される[5]。さらに、ERTは、おそらく末梢静脈送達後のタンパク質の不十分な生体内分布、いくつかの組織からの取込みの欠如、及び高い免疫原性の組合わせに起因して、全身を効率的に改善しない。特に、ERTはCNS障害の処置、特にGSD患者の神経系の組織におけるグリコーゲンの蓄積の是正を改善するのに効果が低いことが示されており、これは組換えGAAが血液脳関門を通過しないためである[6]及び[7]。
【0006】
ポンペ病を処置するための遺伝子治療アプローチも研究されている。例えば、WO2018/046774は、GAAの組織取込みを改善するための、シグナルペプチドと融合された切断型GAAポリペプチドをコードする核酸分子の使用を開示している。しかしながら、グリコーゲン蓄積は中枢神経系において一部しかレスキューされていない。
【0007】
ポンペ病を処置するために開発された別のアプローチは、GAAの折りたたみを容易にし、GAAの安定性を高めるための薬理学的シャペロンの投与である。いくつかの薬理学的シャペロン、例えば、1-デオキシノジリマイシン(DNJ)又はその誘導体(WO2006/125141)、特にNB-DNJと称されるDNJの誘導体(AT2221又はミグルスタット)が試験されている。ミグルスタットはまた、GAA活性を促進し、筋肉機能を改善するために、組換えGAAポリペプチドと組合せて試験されている[8]。しかしながら、DNJ又はその誘導体は、神経系の組織へのGAAの取込みを増加させていない。
【0008】
ABX又はABXとDNJとの組合せもまた、GAAの変異型を発現するポンペ細胞モデルに対して試験されている[9]。しかしながら、ABX又はABX及びDNJは、GAAの特に神経系の組織への組織取込みを増加させていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2018/046774
【特許文献2】WO2006/125141
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Hirschhorn,R.及びReuser,A.J.2001 In The Metabolic and Molecular Basis for Inherited Disease(Scriver,C.R.、Beaudet,A.L.、Sly,W.S.&Valle,D.Eds.)、3389~3419ページ。McGraw-Hill、New York、3403~3405ページを参照。
【非特許文献2】Van der Ploeg及びReuser、2008 Lancet 372:1342~1351
【非特許文献3】Van den Houtら、2003、Pediatrics;112:332~340[PubMed:12897283]
【非特許文献4】DeRuisseauら、2009;Proc Natl Acad Sci USA、106:9419~9424。[PubMed:19474295]
【非特許文献5】Amalfitano,A.ら、2001 Genet.In Med.3:132~138
【非特許文献6】Kikuchiら、1998、Clinical and metabolic correction of Pompe disease by enzyme therapy in acid maltase-deficient quail. The Journal of Clinical Investigation;101:827~833[PubMed:9466978]
【非特許文献7】Rabenら、2003、Molecular Genetics and Metabolism;80:159~169[PubMed:14567965]
【非特許文献8】Xuら、JCI Insight 2019;4(5):e125358
【非特許文献9】Lukasら、The American society of Gene and Cell Therapy 2015、第23巻 第3号、456~464)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、ポンペ病等のGSDを処置するためのよりよい治療法を提供する必要性が未だある。特に、神経系の組織へのGAAの取込みを増加させるため、GSDにおけるCNS障害を処置するため、GSDを有する対象における呼吸神経筋機能を改善するため、及び/又は、呼吸機能障害を減少させるためのよりよい治療法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様において、本発明は、(i)薬理学的シャペロン又はその医薬的に許容される塩と、(ii)治療用酸性アルファグルコシダーゼ(GAA)ポリペプチド又は治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子とを含み、前記薬理学的シャペロンが、1-デオキシノジリマイシン(DNJ)又はその誘導体及びアンブロキソール(ABX)又はその誘導体である、キット・オブ・パーツに関する。本発明に係るキット・オブ・パーツは、
- 医薬として、
- 糖原病(GSD)の処置において、及び/又は、
- GSDの中枢神経系(CNS)障害を処置するための方法において、
使用されてもよい。
【0013】
第2の態様において、本発明は、
- 糖原病(GSD)を処置するための治療用酸性アルファグルコシダーゼ(GAA)処置を受ける対象における前記GSDの治療における、
- GSDを処置するための治療用GAA処置を受ける対象において神経系の組織へのGAAの取込みを増加させる方法における、及び/又は、
- GSDを処置するための治療用GAA処置を受ける対象においてGSDの中枢神経系(CNS)障害を処置するための方法における、
使用のための、薬理学的シャペロン又はその医薬的に許容される塩を含む組成物であって、
前記薬理学的シャペロンが、DNJ又はその誘導体及びABX又はその誘導体である、組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】WTマウスに関する研究の実験計画を示す図である。6~8週齢のC57Bl/6J雄マウスに、PBS又は分泌型GAAを発現するAAV8ベクター(AAV-GAA)を5×10
11vg/kgで静脈内注射した。ベクター注射から2か月後、マウスを未処置のままにした、又は飲料水に溶解した7つのシャペロン分子若しくはそれらの組合せで4週間処置した。処置の各週は、処置中の3日間と休薬中の4日間(ウォッシュアウト)とからなる。遺伝子治療処置から3か月後、マウスから血を抜き屠殺して組織を採取した。
【
図2】シャペロン処置により、野生型マウスにおいて循環GAAレベルの改善が生じることを示す図である。ベクター注射から3か月後、
図1に示すように処置したマウスにおける血中GAAのレベルをウエスタンブロットにより測定した。データは、ヒトGAAバンド強度と標準化に使用される非特異的バンド強度との比率として表された。エラーバーは平均標準偏差を表す。統計分析はANOVAによって実施した(*=p<0.05対3か月目中に通常の水を与えたAAV-GAA注射マウス、DNJ-ABX処置群(n=3)、ボグリボース及びアカルボース処置群(n=4)以外、群当たりn=5、CTRLは、PBSを注射し、AAV-GAAを与えていないマウスを表す)。
【
図3-1】シャペロン処置により、野生型マウスの組織へのGAAの取込みの改善が生じることを示す図である。ベクター注射から3か月後、
図1に示すように処置したマウスの心臓(
図3A)及び三頭筋(
図3B)においてライソゾームGAAのレベルをウエスタンブロットにより測定した。データは、ヒトGAAバンド強度と標準化に使用されるGAPDH強度との比率として表された。エラーバーは平均標準偏差を表す。統計分析はANOVAによって実施した(*=p<0.05対3か月目中に通常の水を与えたAAV-GAA注射マウス、DNJ-ABX処置群(n=3)、ボグリボース及びアカルボース処置群(n=4)以外、群当たりn=5)。
【
図3-2】シャペロン処置により、野生型マウスの組織へのGAAの取込みの改善が生じることを示す図である。ベクター注射から3か月後、
図1に示すように処置したマウスの横隔膜(
図3C)及び四頭筋(
図3D)においてライソゾームGAAのレベルをウエスタンブロットにより測定した。
【
図3-3】シャペロン処置により、野生型マウスの組織へのGAAの取込みの改善が生じることを示す図である。ベクター注射から3か月後、
図1に示すように処置したマウスの脳(
図3E)及び脊髄(
図3F)においてライソゾームGAAのレベルをウエスタンブロットにより測定した。
【
図4】GAA欠損(ノックアウト)マウスに関する研究の実験計画を示す図である。3~4週齢のGAA欠損雄マウスに、PBS又は、飲料水に溶解した薬理学的シャペロン(PC)と組合せて分泌型GAAを発現するAAV8ベクター(AAV-GAA)を1×10
11vg/kgで静脈内注射した。未処置のGAA野生型マウス及びAAV-GAAベクター又はPBSを注射したGAA欠損マウスの2つの群をコントロールとして使用した。PC分子は、連続3日間の処置と、その後の飲料水のみによる連続4日間とからなる「3日オン/4日オフ」レジメンを使用してマウスに経口投与した。薬理学的シャペロンと組合せた遺伝子治療処置から2か月後、マウスから血を抜き屠殺して組織を採取した。
【
図5】シャペロン処置により、GAA KOマウスの循環GAAレベルの改善が生じることを示す図である。ベクター注射から2か月後、
図4に示すように処置したマウスにおいて血中GAAのレベルをウエスタンブロットにより測定した。データは、ヒトGAAバンド強度と標準化に使用される非特異的バンド強度との比率として表された。エラーバーは平均標準偏差を表す。統計分析はANOVAによって実施した(*=p<0.05対2か月目中に通常の水を与えたAAV-GAA注射マウス、ABX処置群(n=7)以外、群当たりn=8、GAA
+/+マウス(WT)及びGAA
-/-マウス(KO)にはPBSを注射し、通常の水を与えた)。
【
図6】シャペロン処置により、GAA KOマウスの循環GAA活性の改善が生じることを示す図である。ベクター注射から2か月後、
図4に示すように処置したマウスの血中における血中GAA活性を測定した。エラーバーは平均標準偏差を表す。統計分析はANOVAによって実施した(*=p<0.05対2か月目中に通常の水を与えたAAV-GAA注射マウス、ABX処置群(n=7)以外、群当たりn=8、GAA
+/+マウス(WT)及びGAA
-/-マウス(KO)にはPBSを注射し、通常の水を与えた)。
【
図7-1】シャペロン処置により、GAA KOマウスの組織へのGAA取込みの改善が生じることを示す図である。ベクター注射から2か月後、
図4に示すように処置したマウスを屠殺して組織を採取した。心臓(
図7A)及び横隔膜(
図7B)で検出されたGAA活性の結果を示す。エラーバーは平均標準偏差を表す。統計分析はANOVAによって実施した(*=p<0.05対3か月目中に通常の水を与えたAAV-GAA注射マウス、ABX処置群(n=7)以外、群当たりn=8)。
【
図7-2】シャペロン処置により、GAA KOマウスの組織へのGAA取込みの改善が生じることを示す図である。ベクター注射から2か月後、
図4に示すように処置したマウスを屠殺して組織を採取した。三頭筋(
図7C)及び四頭筋(
図7D)で検出されたGAA活性の結果を示す。
【
図8-1】シャペロン処置により、GAA KOマウスの組織におけるグリコーゲン蓄積の減少が生じることを示す図である。ベクター注射から2か月後、
図4に示すように処置したマウスを屠殺して組織を採取した。グリコーゲン含有量を心臓(
図8A)及び横隔膜(
図8B)において測定した。エラーバーは平均標準偏差を表す。統計分析はANOVAによって実施した(*=p<0.05対3か月目中に通常の水を与えたAAV-GAA注射マウス、ABX処置群(n=7)以外、群当たりn=8)。
【
図8-2】シャペロン処置により、GAA KOマウスの組織におけるグリコーゲン蓄積の減少が生じることを示す図である。ベクター注射から2か月後、
図4に示すように処置したマウスを屠殺して組織を採取した。グリコーゲン含有量を三頭筋(
図8C)及び四頭筋(
図8D)において測定した。
【
図9】GAA欠損(ノックアウト)マウスに関する研究の実験計画を示す図である。3~4月齢のGAA欠損雄マウスを、飲料水に溶解した薬理学的シャペロン(PC)と組合せてERT(アルグルコシダーゼアルファ、20mg/kg)により静脈内処置した。未処置のGAA野生型マウス、未処置のGAA欠損マウス、及びERTのみで処置したGAA欠損マウスをコントロールとして使用した。ERTの3時間後に採血を実施した。
【
図10】シャペロン処置により、GAA KOマウスにおいて循環GAAレベル及び活性の改善が生じることを示す図である。ERTから3時間後、
図9で示すように処置したマウスにおいて血中GAAレベル(
図10A)及び活性(
図10B)を測定した。GAAレベルの結果は、ヒトGAAバンド強度と標準化に使用される非特異的バンド強度との比率として表された。エラーバーは平均標準偏差を表す。統計分析はANOVAによって実施した(*=p<0.05対プロトコル中に通常の水を与えたERTマウス、群当たりn=8、未処置のGAA
+/+マウス(WT)及びGAA
-/-マウス(KO)には通常の水を与えた)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
「薬理学的シャペロン」という用語は、すでに折りたたまれたタンパク質に結合し、熱変性及びタンパク質分解に対して安定化することによって、該タンパク質を安定化する小分子を指す。本発明によれば、薬理学的シャペロンは、塩、例えば、医薬的に許容される塩の形態であってもよい。
【0016】
本発明に係る「薬理学的シャペロン」という用語は、(i)1-デオキシノジリマイシン(DNJ)又はその誘導体及び(ii)アンブロキソール(ABX)又はその誘導体の両方を意味する。
【0017】
「医薬的に許容される塩」という用語は、治療における使用のための有効成分の調製におけるその使用で知られている酸又は塩基の塩を指す。アニオンの源として好適な医薬的に許容される酸の例としては、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use(P.H.Stahl及びC.G.Wermuth、Weinheim/Zurich:Wiley-VCH/VHCA、200)に開示されるものが挙げられる。連邦若しくは州政府の監督官庁により承認されている、又は米国若しくは欧州薬局方若しくは動物及びヒトでの使用について一般的に認識されている他の薬局方に列挙されている塩。例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、サイクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2-ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ピログルタミン酸塩、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩及びキシナホ酸塩(xinofoate)が挙げられる。好適な塩基塩は、無毒性塩を形成する塩基から形成される。例としては、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン、及び亜鉛塩が挙げられる。酸及び塩基のヘミ塩、例えば、ヘミ硫酸塩及びヘミカルシウム塩も形成され得る。
【0018】
本発明に係る「DNJ」という用語は、1-デオキシノジリマイシン(CAS番号19130-96-2、INNドゥボグルスタット)を意味する。本発明に係る「DNJ誘導体」という用語は、DNJから誘導される化合物を意味する。DNJ誘導体は、N-メチル-DNJ、N-ブチル-DNJ、N-シクロプロピルメチル-DNJ、N-(2-(N,N-ジメチルアミド)エチルオキシ-DNJ、N-4-t-ブチルオキシカルボニル-ピペリジニルメチル-DNJ(N-4-t-butyloxycarbonyl-piperidnylmethyl-DNJ)、N-2-R-テトラヒドロフラニルメチル-DNJ、N-2-R-テトラヒドロフラニルメチル-DNJ、N-(2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エチル-DNJ、N-2-メトキシエチル-DNJ、N-2-エトキシエチル-DNJ、N-4-トリフルオロメチルベンジル-DNJ、N-アルファ-シアノ-4-トリフルオロメチルベンジル-DNJ、N-4-トリフルオロメトキシベンジル-DNJ、N-4-n-ペントキシベンジル-DNJ、及びN-4-n-ブトキシベンジル-DNJ、又はCl-ノニルDNJから選択されてもよく、好ましくはN-ブチル-DNJ(CAS番号72599-27-0、INNミグルスタット)であってもよい。DNJ又はその誘導体は、例えば、WO2006/125141に記載されるように、当該技術分野で既知の方法によって調製できる。DNJ又はその誘導体は、DNJ塩酸塩(CAS番号73285-50-4)又はN-ブチル-DNJ塩酸塩(CAS番号210110-90-0)等の塩の形態であってもよい。いくつかの実施形態では、DNJは、ドゥボグルスタット(CAS番号19130-96-2)、ドゥボグルスタット塩酸塩(CAS番号73285-50-4)、ミグルスタット(CAS番号72599-27-0)、又はミグルスタット塩酸塩(CAS番号210110-90-0)である。
【0019】
本発明に係る「ABX」という用語は、アンブロキソール(CAS番号18683-91-5)を意味する。「ABX誘導体」という用語は、ABXから誘導される化合物を意味する。ABX誘導体はブロムヘキシン(CAS番号3572-43-8)であってもよい。ABX又はその誘導体は、ABX塩酸塩(CAS番号23828-92-4)等の塩の形態であってもよい。ABX又はその誘導体は、例えば、US2004/0242700に記載されるように、当該技術分野で既知の方法によって調製できる。
一実施形態では、薬理学的シャペロンは、ドゥボグルスタット(CAS番号19130-96-2)又はドゥボグルスタット塩酸塩(CAS番号73285-50-4);及びアンブロキソール塩酸塩(CAS番号23828-92-4)である。別の実施形態では、薬理学的シャペロンは、ミグルスタット(CAS番号72599-27-0)又はミグルスタット塩酸塩(CAS番号210110-90-0);及びアンブロキソール塩酸塩(CAS番号23828-92-4)である。
【0020】
本発明に係る「NAC」という用語は、N-アセチルシステイン(CAS番号616-91-1(L))を意味する。「NAC誘導体」という用語は、NACから誘導される化合物を意味する。NAC誘導体は、アミノ酸とNACとの間にエステル、アミド、及び/又は混成結合を形成することによってNACをアミノ酸とカップリングさせることによって得られてもよい。任意のアミノ酸又はアミノ酸類似体が使用できる。
【0021】
「医薬的に許容される」という用語は、連邦若しくは州政府の監督官庁により承認されている、又は米国若しくは欧州薬局方若しくは動物及びヒトでの使用について一般的に認識されている他の薬局方に列挙されていることを意味する。「医薬組成物」とは、医薬的に許容される担体を含む組成物を意味する。例えば、担体は、希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルであってもよく、これらとともに治療薬が投与される。このような医薬担体は、滅菌された液体であり得て、例えば、水及び油、例えば、石油、動物、植物又は合成由来の油等、例えば、落花生油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等が挙げられる。医薬組成物が静脈内投与される場合、水が好ましい担体である。特に注射用溶液の場合、生理食塩水並びにデキストロース及びグリセロール水溶液も液体担体として採用され得る。好適な医薬賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール等が含まれる。医薬組成物が経口投与に適合される場合、錠剤又はカプセルは、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(例えば、乳糖、微結晶性セルロース若しくはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク若しくはシリカ);崩壊剤(例えば、馬鈴薯デンプン若しくはデンプングリコール酸ナトリウム);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)等の医薬的に許容される賦形剤を用いて従来の手段によって調製できる。錠剤は、当該技術分野で周知の方法によってコーティングされ得る。経口投与用の液体調剤は、例えば、溶液、シロップ又は懸濁液の形態をとり得る、又は、使用前に水若しくは別の好適なビヒクルで構成するための乾燥品として提供され得る。このような液体調剤は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は硬化食用油脂);乳化剤(例えば、レシチン又はアカシア);非水系ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール又は分別植物油);及び保存剤(例えば、メチル又はプロピル-p-ヒドロキシ安息香酸又はソルビン酸)等の医薬的に許容される添加剤を用いて従来の手段により調製できる。調剤はまた、必要に応じて、緩衝塩、香味料、着色料及び甘味料を含んでいてもよい。本発明に係る組成物は、好ましくは医薬組成物である。
【0022】
「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸配列、すなわちペプチド結合により連結されたアミノ酸の鎖を指す。治療用GAAポリペプチドのアミノ酸配列又はそのコード配列は、鳥類及び哺乳類種を含む任意の源に由来できる。本明細書で使用する「鳥類」という用語には、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、シチメンショウ及びキジが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用する「哺乳動物」又は「哺乳類」という用語には、ヒト、サル及び他の非ヒト霊長類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ネコ、イヌ、ラゴモルフ等が含まれるが、これらに限定されない。本発明の実施形態では、治療用GAAポリペプチドは、ヒト、マウス、又はウズラ、特にヒトの、治療用GAAポリペプチドである。
【0023】
「酸性αグルコシダーゼ」又は「GAA」という用語は、オリゴ糖のα-1,4及びα-1,6結合の両方を加水分解してグルコースを遊離させるエキソ-1,4-α-D-グルコシダーゼを意味する。GAAが不足すると、ポンペ病(ただし、この用語は正式には乳児発症型の疾病を指す)とも呼ばれる糖原病II型(GSDII)が生じる。GAAは、分岐点で減速しながらグリコーゲンの完全な分解を触媒する。第17番染色体上の28kbのヒト酸性αグルコシダーゼ遺伝子は、3.6kbのmRNAをコードし、951アミノ酸ポリペプチドを生成する[10]及び[11]。この酵素は、小胞体において同時翻訳のN-結合型グリコシル化を受ける。それは110kDaの前駆体型として合成され、広範なグリコシル化修飾、リン酸化、及び約90kDaのエンドソーム中間体を介したタンパク質プロセシングによって最終的なライソゾーム76及び67kDa型へと成熟する[10]、[12];、[13]及び[14]。
【0024】
「糖原病」又は「GSD」という用語は、グリコーゲン合成、グリコーゲン分解又は解糖に影響を与える酵素の欠乏によって引起こされる代謝疾患を指す。特に、糖原病は、表1に開示する1つ又は複数の型のGSDであり得る。本発明によれば、GSDは、好ましくは、GSDI(フォン・ギールケ病)、GSDII(ポンペ病)、GSDIII(コーリー病)、GSDIV、GSDV、GSDVI、GSDVII、GSDVIII又は心臓の致死性の先天性糖原病である。より特定的には、糖原病は、GSDI、GSDII及びGSDIIIからなる群から、さらに特定的には、GSDII及びGSDIIIからなる群から選択される。より特定の実施形態では、糖原病はGSDIIである。
【0025】
「GAAポリペプチド」という用語は、更なる厳密さを伴わずに、シグナルペプチドを有するGAA(すなわち、GAA前駆体)及びシグナルペプチドを有さないGAAを区別なく指す。それは野生型GAAポリペプチドであっても変異型GAAポリペプチドであってもよい。
【0026】
「野生型GAAポリペプチド」という用語は、GAAの天然型、例えば、配列番号2(GenBank受託番号NP_000143.2に対応)を指す、又は配列番号30は、野生型ヒトGAAポリペプチド(GAA受託番号P10253のUniprotのエントリーでも見出される;GenBankCAA68763.1に対応;配列番号30)である。配列番号2及び配列番号30内で、アミノ酸残基1~27は、野生型GAAポリペプチドのシグナルペプチドに対応する。「野生型GAAポリペプチド」という用語は、更なる明確さなしに、シグナルペプチドを有するGAA(すなわち、GAA前駆体)及びシグナルペプチドを有さないGAAを不明瞭に指す。
【0027】
「変異型GAAポリペプチド」という用語は、野生型GAAポリペプチドと比較して、置換、欠失、又は付加等の少なくとも1つのアミノ酸修飾を有するGAAポリペプチドを指す。例示的なバリアントGAAポリペプチドとしては、配列番号29(GenBank AAA52506.1)、配列番号31(GenBank:EAW89583.1)及び配列番号32(GenBank ABI53718.1)が挙げられる。
【0028】
その他の有用な変異型GAAポリペプチドとしては、Hoefslootら[10];Van Hoveら[15]に記載されるもの、及びGenBank受託番号NM_008064(マウス)が挙げられる。その他の変異型GAAポリペプチドとしては、WO2012/145644、WO00/34451及びUS6,858,425に記載されるものが挙げられる。その他の有用な変異型GAAポリペプチドとしては、Kunitaら[16]によって記載されるGAA II等、文献に記載されるものが挙げられ、GAA多型及びSNPは、Hirschhorn,R及びReuser[1]によって記載されている。
【0029】
「治療用GAAポリペプチド」という用語は、GSDの処置において使用できるGAAポリペプチドを指す。特に、本発明に係る治療用GAAポリペプチドは、野生型GAAポリペプチドの機能性を有する。野生型GAAの機能性は、オリゴ糖及び多糖、より特定的にはグリコーゲンのα-1,4結合及びα-1,6結合の両方を加水分解して、グルコースを遊離させることである。治療用GAAポリペプチドは、配列番号2、30、29、31、又は配列番号32の野生型GAAポリペプチドと比較して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、又は少なくとも100%のグリコーゲンに対する加水分解活性を有していてもよい。治療用GAAポリペプチドの活性は、さらに配列番号2、29、30、31又は32の野生型GAAタンパク質の活性の100%超であってもよく、例えば、110%、120%、130%、140%、又はさらには150%超であってもよい。治療用GAAポリペプチドは、組換え細胞発現システム(例えば、哺乳類細胞若しくは昆虫細胞(米国特許第5,580,757号、第6,395,884号、第6458,574号、第6,461,609号、第210,666号、第6,083,725号、第6,451,600号、第5,236,838号、及び第5,879,680号を参照)、ヒト胎盤、又は動物乳(米国特許第6,188,045号を参照)から精製されてもよい。ポンペ病の処置のために現在承認されている治療用GAAポリペプチドは、アルグルコシダーゼアルファ(Genzyme,IncによってLumizyme(登録商標)又はMyozyme(登録商標)の商標名で販売されている)と称される組換えGAAポリペプチドである。
【0030】
本発明に係る治療用GAAポリペプチドは、GAAポリペプチド部分、及び最終的には、該GAAポリペプチド部分のN末端に融合されたシグナルペプチド部分を含む。したがって、治療用GAAポリペプチドは、(i)GAAポリペプチド部分及び該GAAポリペプチド部分のN末端に融合されたシグナルペプチド部分を含んでいてもよい、又は(ii)GAAポリペプチド部分のN末端に融合されたシグナルペプチド部分を有さないGAAポリペプチド部分を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、治療用GAAポリペプチドはまた、前記治療用GAAポリペプチドの生体内分布、安定性、及び/又は組織取込みを改善するための追加の配列を含んでいてもよい。
【0031】
「GAAポリペプチド部分」という用語は、シグナルペプチドを欠くGAAポリペプチドを指す。それは、野生型GAAポリペプチド部分であっても変異型GAAポリペプチド部分であってもよい。
【0032】
「野生型GAAポリペプチド部分」という用語は、シグナルペプチドを欠く天然型GAAを指し、例えば、配列番号1及び配列番号33はいずれも野生型ヒトGAAポリペプチド部分である。
【0033】
「変異型GAAポリペプチド部分」という用語は、野生型GAAポリペプチド部分と比較して、置換、欠失、又は付加等の少なくとも1つのアミノ酸修飾を有するGAAポリペプチド部分を指す。変異型GAAポリペプチド部分を規定するための根拠として、任意の変異型GAAポリペプチドを使用できる。いくつかの実施形態では、変異型GAAポリペプチド部分は、切断型GAAポリペプチドである。
本発明の文脈において、「切断型GAAポリペプチド」とは、シグナルペプチドを欠く親GAAポリペプチドのN末端から切断された1つ又は複数の連続的なアミノ酸を含むGAAポリペプチドを意味する。一実施形態では、シグナルペプチドを欠く親GAAポリペプチドは、シグナルペプチドを欠く野生型GAAポリペプチド、例えば、配列番号1又は配列番号33で表されるシグナルペプチドを欠く野生型ヒトGAAポリペプチドである。別の実施形態では、親GAAポリペプチドは、シグナルペプチドを欠く変異型GAAポリペプチドである。シグナルペプチドを欠く親GAAポリペプチドを定義するための根拠として、当該技術分野で既知の任意の変異型GAAポリペプチドを使用できる。例示的な変異型GAAポリペプチドとしては、配列番号29(GenBank AAA52506.1)、配列番号31(GenBank:EAW89583.1)及び配列番号32(GenBank ABI53718.1)が挙げられる。その他の有用な変異型としては、Hoefslootら[10]、Van Hoveら[15]に記載されるもの及びGenBank受託番号NM_008064(マウス)が挙げられる。その他の変異型GAAポリペプチドとしては、WO2012/145644、WO00/34451及びUS6,858,425に記載されるものが挙げられる。特定の実施形態では、シグナルペプチドを欠く親GAAポリペプチドは、配列番号2又は配列番号30に示されるアミノ酸配列に由来する。より特定的には、シグナルペプチドを欠く親GAAポリペプチドは、配列番号1又は配列番号33であり、好ましくは配列番号1である。
【0034】
特に、本発明に係る切断型GAAポリペプチドは、そのシグナルペプチドを欠く親GAAポリペプチドと比較して、そのN末端において1~75個の連続的なアミノ酸が切断されている。具体的には、切断型GAAポリペプチドは、シグナルペプチドを欠く親GAAポリペプチドと比較して、特に配列番号1又は配列番号33と比較して、そのN末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74又は75個の連続的なアミノ酸が切断されていてもよい。好ましい実施形態では、切断型GAAポリペプチドは、そのシグナルペプチドを欠く親GAAポリペプチドと比較して、そのN末端において6、7、8、9、10、40、41、42、43、44、45、46又は47個の連続的なアミノ酸が切断されており、より特定的には、シグナルペプチドを欠く親GAAポリペプチド、特に配列番号1又は配列番号33と比較して、そのN末端において8、42又は43個の連続的なアミノ酸が切断されている。特定の実施形態では、本発明の切断型GAAポリペプチドは、配列番号27、配列番号28、配列番号34、配列番号35及び配列番号36に示される配列を有する。配列番号27は、配列番号1と比較して、そのN末端から8個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドに対応する。配列番号28は、配列番号1と比較して、そのN末端から42個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドに対応する。配列番号34は、配列番号1と比較して、そのN末端から29個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドに対応する。配列番号35は、配列番号1と比較して、そのN末端から43個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドに対応する。配列番号36は、配列番号1と比較して、そのN末端から47個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドに対応する。
【0035】
本発明に係る「シグナルペプチド部分」という用語は、野生型GAAポリペプチドの内因性(又は天然)シグナルペプチド、例えば、配列番号4(sp1と称される)の核酸配列によってコードされるシグナルペプチド、又は別のタンパク質の外因性シグナルペプチドを意味する。本発明で実施可能な特定の外因性シグナルペプチドとしては、キモトリプシノーゲンB2(配列番号3)sp7とも称される)からのアミノ酸1~20、ヒトアルファ-1-アンチトリプシン(配列番号5、sp2とも称される)のシグナルペプチド、イズロン酸-2-スルファターゼ(配列番号6、sp6とも称される)からのアミノ酸1~25、及びプロテアーゼC1阻害剤(配列番号7、sp8とも称される)からのアミノ酸1~23が挙げられる。配列番号3及び配列番号5~配列番号7のシグナルペプチドは、その天然のシグナルペプチドを含むGAAポリペプチドと比較した場合、インビトロ及びインビボの両方でキメラGAAポリペプチドのより高い分泌を可能にする。特定の実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号3~7に示される配列を有する、又は、得られる配列が機能的シグナルペプチド、すなわちGAAタンパク質の分泌を可能にするシグナルペプチドに相当する限り、シグナルペプチドはその機能的誘導体である、すなわち、配列番号3~7に示される配列と比較して1~5つ、特に1~4つ、特に1~3つ、特に1~2つ、特に1つのアミノ酸の欠失、挿入若しくは置換を含む配列である。特定の実施形態では、シグナルペプチド部分は、配列番号3~7からなる群から選択され、好ましくは配列番号3である。
【0036】
特定の実施形態では、GAAポリペプチド部分のN末端に融合されたシグナルペプチド部分は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6又は配列番号7から選択され、GAAポリペプチド部分は、配列番号27、配列番号28、配列番号34、配列番号35又は配列番号36から選択される。
【0037】
本発明によれば、「核酸分子」という用語は、一本鎖又は二本鎖形態のDNA又はRNA分子、特にDNAを指す。本発明によれば、核酸分子は、前述のように治療用GAAポリペプチドをコードする。例えば、野生型GAAポリペプチドをコードする核酸分子は、配列番号8に対応する。シグナルペプチドを欠く治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子は、配列番号8のヌクレオチド配列82~2859、すなわち配列番号9であってもよい。
【0038】
治療用GAAポリペプチドをコードする本発明の核酸分子は、インビボでの治療用GAAポリペプチドの発現のために最適化できる。配列の最適化には、コドンの最適化、GC含量の増加、CpGアイランドの数の減少、代替オープンリーディングフレーム(ARF)の数の減少、並びにスプライスドナー及びスプライスアクセプター部位の数の減少を含む、核酸配列の多くの変更が含まれ得る。遺伝コードの縮重のために、異なる核酸分子が同じタンパク質をコードし得る。異なる生物の遺伝コードが、他のものよりも同じアミノ酸をコードするいくつかのコドンの一つを使用することに偏っていることが多いことも周知である。コドン最適化によって、所与の細胞状況に存在するコドンバイアスを利用した変化がヌクレオチド配列に導入されることにより、得られるコドン最適化ヌクレオチド配列が、非コドン最適化配列と比較して相対的に高レベルで、このような所与の細胞状況において発現される可能性がより高くなる。本発明の好ましい実施形態では、このような配列最適化ヌクレオチド配列は、例えば、ヒト特異的なコドン使用バイアスを利用することによって、切断型GAAポリペプチドをコードし、コドン最適化されて、同じ切断型GAAポリペプチドをコードする非コドン最適化ヌクレオチド配列と比較してヒト細胞におけるその発現を改善する。特定の実施形態では、治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子は、野生型ヒトGAAポリペプチドコード配列のヌクレオチド82~2859、例えば配列番号8の82~2859と比較して、コドン最適化される、並びに/又は増加したGC含量を有する、並びに/又は減少した代替オープンリーディングフレームの数を有する、並びに/又は減少したスプライスドナー及び/若しくはスプライスアクセプター部位の数を有する。配列番号8は、シグナルペプチドを有する野生型ヒトGAAポリペプチドをコードする非最適化ヌクレオチド配列である。配列番号9は、シグナルペプチドを欠く野生型ヒトGAAポリペプチドをコードする非最適化ヌクレオチド配列である。野生型ヒトGAAポリペプチドをコードする最適化ヌクレオチド配列は、配列番号10(hGAA co1)又は配列番号11(hGAA co2)であってもよい。
特定の実施形態では、本発明に係る核酸分子は、配列番号27に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする配列番号12又は配列番号13に示される配列;配列番号28に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする配列番号48又は配列番号49に示される配列;配列番号35に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする配列番号50又は配列番号51に示される配列;又は、配列番号36に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする配列番号52又は配列番号53に示される配列を含む。好ましい実施形態では、本発明の核酸分子は、配列番号27に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする配列番号12又は配列番号13に示される配列を含む。
【0039】
好ましい実施形態では、本発明に係るGAAポリペプチド部分及び該GAAポリペプチド部分のN末端に融合されたシグナルペプチド部分を含む治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子は、以下のとおりである。
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、そのN末端から8個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする非最適化ヌクレオチド配列と、(ii)配列番号5のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列とを含む、配列番号22;
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、そのN末端から8個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする最適化ヌクレオチド配列(配列番号12の最適化ヌクレオチド配列に由来するヌクレオチド配列)と、(ii)配列番号5のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列とを含む、配列番号23;
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、そのN末端から8個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする最適化ヌクレオチド配列(配列番号13の最適化ヌクレオチド配列に由来するヌクレオチド配列)と、(ii)配列番号5のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列とを含む、配列番号24;
- 配列番号12(配列番号1の親GAAポリペプチド部分と比較して、そのN末端において8個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードするヌクレオチド配列)と配列番号54(sp7をコードするヌクレオチド配列)とを含む、配列番号25;
- 配列番号48(配列番号1の親GAAポリペプチド部分と比較して、そのN末端において42個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードするヌクレオチド配列)と配列番号54(sp7をコードするヌクレオチド配列)とを含む、配列番号26
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、そのN末端から29個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする非最適化ヌクレオチド配列(配列番号9の非最適化ヌクレオチド配列に由来するヌクレオチド配列)と、(ii)配列番号3のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列とを含む、配列番号37;
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、そのN末端から29個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする最適化ヌクレオチド配列(配列番号12の最適化ヌクレオチド配列に由来するヌクレオチド配列)と、配列番号3のシグナルペプチドとを含む、配列番号38;
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、そのN末端から29個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする最適化ヌクレオチド配列(配列番号13の最適化ヌクレオチド配列に由来するヌクレオチド配列)と、(ii)配列番号3のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列とを含む、配列番号39;
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、そのN末端から42個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする非最適化ヌクレオチド配列(配列番号9の非最適化ヌクレオチド配列に由来するヌクレオチド配列)と、(ii)配列番号3のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列とを含む、配列番号40;
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、そのN末端から42個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする最適化ヌクレオチド配列(配列番号13の最適化ヌクレオチド配列に由来するヌクレオチド配列)と、(ii)配列番号3のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列とを含む、配列番号41;
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、そのN末端から43個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする非最適化ヌクレオチド配列(配列番号9の非最適化ヌクレオチド配列に由来するヌクレオチド配列)と、(ii)配列番号3のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列とを含む、配列番号42;
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、そのN末端から43個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする最適化ヌクレオチド配列(配列番号12の最適化ヌクレオチド配列に由来するヌクレオチド配列)と、(ii)配列番号3のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列とを含む、配列番号43;及び
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、そのN末端から43個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする最適化ヌクレオチド配列(配列番号13の最適化ヌクレオチド配列に由来するヌクレオチド配列)と、(ii)配列番号3のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列とを含む、配列番号44;
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、そのN末端から47個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする非最適化ヌクレオチド配列(配列番号9の非最適化ヌクレオチド配列に由来するヌクレオチド配列)と、(ii)配列番号3のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列とを含む、配列番号45;
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、そのN末端から47個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする最適化ヌクレオチド配列(配列番号12の最適化ヌクレオチド配列に由来するヌクレオチド配列)と、(ii)配列番号3のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列とを含む、配列番号46;及び
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、そのN末端から47個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする最適化ヌクレオチド配列(配列番号13の最適化ヌクレオチド配列に由来するヌクレオチド配列)と、(ii)配列番号3のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列とを含む、配列番号47。
【0040】
別の好ましい実施形態では、本発明に係るGAAポリペプチド部分及び該GAAポリペプチド部分のN末端に融合されたシグナルペプチド部分を含む治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子は、以下のとおりである。
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、又は配列番号33の親hGAAと比較して、そのN末端から8個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする非最適化ヌクレオチド配列、及び(ii)配列番号4、5、6又は7のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、又は配列番号33の親hGAAと比較して、そのN末端から29個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする非最適化ヌクレオチド配列、及び(ii)配列番号4、5、6又は7のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、又は配列番号33の親hGAAと比較して、そのN末端から42個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする非最適化ヌクレオチド配列、及び(ii)配列番号4、5、6又は7のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、又は配列番号33の親hGAAと比較して、そのN末端から43個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする非最適化ヌクレオチド配列、及び(ii)配列番号4、5、6又は7のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、又は配列番号33の親hGAAと比較して、そのN末端から47個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする非最適化ヌクレオチド配列、及び(ii)配列番号4、5、6又は7のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、又は配列番号33の親hGAAと比較して、そのN末端から8個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする最適化ヌクレオチド配列(配列番号12の最適化配列に由来するヌクレオチド配列)、及び(ii)配列番号4、5、6又は7のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、又は配列番号33の親hGAAと比較して、そのN末端から8個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする最適化ヌクレオチド配列(配列番号13の最適化配列に由来するヌクレオチド配列)、及び(ii)配列番号4、5、6又は7のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、又は配列番号33の親hGAAと比較して、そのN末端から29個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする最適化ヌクレオチド配列(配列番号12の最適化配列に由来するヌクレオチド配列)、及び(ii)配列番号4、5、6又は7のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、又は配列番号33の親hGAAと比較して、そのN末端から29個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする最適化ヌクレオチド配列(配列番号13の最適化配列に由来するヌクレオチド配列)、及び(ii)配列番号4、5、6又は7のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、又は配列番号33の親hGAAと比較して、そのN末端から42個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする最適化ヌクレオチド配列(配列番号12の最適化配列に由来するヌクレオチド配列)、及び(ii)配列番号4、5、6又は7のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、又は配列番号33の親hGAAと比較して、そのN末端から42個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする最適化ヌクレオチド配列(配列番号13の最適化配列に由来するヌクレオチド配列)、及び(ii)配列番号4、5、6又は7のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、又は配列番号33の親hGAAと比較して、そのN末端から43個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする最適化ヌクレオチド配列(配列番号12の最適化ヌクレオチド配列に由来するヌクレオチド配列)、及び(ii)配列番号4、5、6又は7のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、又は配列番号33の親hGAAと比較して、そのN末端から43個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする最適化ヌクレオチド配列(配列番号13の最適化ヌクレオチド配列に由来するヌクレオチド配列)、及び(ii)配列番号4、5、6又は7のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、又は配列番号33の親hGAAと比較して、そのN末端から47個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする最適化ヌクレオチド配列(配列番号12の最適化ヌクレオチド配列に由来するヌクレオチド配列)、及び(ii)配列番号4、5、6又は7のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;
- (i)配列番号1の親hGAAと比較して、又は配列番号33の親hGAAと比較して、そのN末端から47個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードする最適化ヌクレオチド配列(配列番号13の最適化ヌクレオチド配列に由来するヌクレオチド配列)、及び(ii)配列番号4、5、6又は7のシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列。
【0041】
好ましい実施形態では、核酸分子によってコードされる治療用GAAポリペプチドは、GAAポリペプチド部分及び該GAAポリペプチド部分のN末端に融合されたシグナルペプチド部分を含み、前記GAAポリペプチド部分のN末端に融合されたシグナルペプチド部分は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6又は配列番号7から選択され、好ましくは配列番号3であり、前記GAAポリペプチド部分は、配列番号27、配列番号28、配列番号34、配列番号35又は配列番号36から選択され、好ましくは配列番号27である。
【0042】
最も好ましくは、核酸分子は、配列番号8、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46又は配列番号47から選択され、好ましくは配列番号25である。
【0043】
好ましくは、本発明に係るGAAポリペプチド部分及び該GAAポリペプチド部分のN末端に融合されたシグナルペプチド部分を含む治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子は、以下のとおりである。
- 配列番号12(配列番号1の親GAAポリペプチド部分と比較して、そのN末端において8個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードするヌクレオチド配列)と、配列番号54(sp7をコードするヌクレオチド配列)とを含む、配列番号25、又は
- 配列番号48(配列番号1の親GAAポリペプチド部分と比較して、そのN末端において42個の連続的なアミノ酸が切断された切断型GAAポリペプチドをコードするヌクレオチド配列)と、配列番号54(sp7をコードするヌクレオチド配列)とを含む、配列番号26。
【0044】
本発明に係る治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子は、前記核酸分子(すなわち、導入遺伝子)を発現するための核酸構築物に挿入され得る。核酸構築物は、1つ又は複数の発現制御配列及び/又は核酸分子の発現を改善するその他の配列及び/又は治療用GAAポリペプチドの分泌を増強する配列及び/又は治療用GAAポリペプチドの組織取込みを増強する配列に作動可能に連結されたプロモーターを含んでいてもよい。本明細書で使用する「作動可能に連結された」という用語は、機能的な関係性におけるポリヌクレオチド因子の連結を指す。核酸が「作動可能に連結された」とは、それが別の核酸配列と機能的な関係性に置かれた場合である。例えば、プロモーター又は別の転写調節配列は、それがコード配列の転写に影響する場合、コード配列に作動可能に連結されている。このような発現制御配列は、当該技術分野において既知であり、例えば、プロモーター、エンハンサー(例えば、シス調節モジュール(CRM))、イントロン、ポリAシグナル等が挙げられる。
【0045】
特に、核酸構築物は、核酸分子に作動可能に連結されたプロモーター及び、場合によってはイントロンを含む。プロモーターは、遍在性又は組織特異的プロモーター、特に、GAA欠損患者においてGAA発現が望ましい細胞又は組織等、GAAの発現が望ましい細胞又は組織での発現を促進可能なプロモーターであればよい。特定の実施形態では、プロモーターは、肝臓特異的なプロモーター、例えば、アルファ-1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)(配列番号14)、トランスサイレチンプロモーター、アルブミンプロモーター、チロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、LSPプロモーター(甲状腺ホルモン結合グロブリンプロモーター配列、2コピーのアルファ1-ミクログロブリン/ビクニンエンハンサー配列、及びリーダー配列を含む[17]等である。その他の有用な肝臓特異的なプロモーターが当該技術分野において既知であり、例えば、コールドスプリングハーバー研究所により編集された肝臓特異的な遺伝子プロモーターデータベース(http://rulai.cshl.edu/LSPD/)に列挙されているものが挙げられる。本発明の文脈において好ましいプロモーターは、hAATプロモーターである。別の実施形態では、プロモーターは、1つの目的の組織又は細胞(例えば、筋肉細胞)及び肝細胞における発現を指示するプロモーターである。例えば、ある程度、デスミン、Spc5-12及びMCKプロモーター等の筋肉細胞に特異的なプロモーターは、肝細胞への発現の多少のリークを呈し得るが、これは、本発明の核酸から発現されるGAAポリペプチドに対する対象の免疫寛容を誘導するのに有利となり得る。その他の組織特異的又は非組織特異的プロモーターが、本発明の実施において有用となり得る。例えば、核酸構築物は、肝臓特異的なプロモーターとは異なるプロモーターである組織特異的プロモーターを含んでいてもよい。例えば、プロモーターは、筋肉特異的であってもよく、例えば、デスミンプロモーター(及び天然又は人工的なエンハンサーを含むデスミンプロモーター等のデスミンプロモーターバリアント)、SPc5-12又はMCKプロモーター等であってもよい。別の実施形態では、プロモーターは、赤血球系統の細胞からのGAAポリペプチドの発現のための、エリスロポエチンプロモーター等、他の細胞系統に特異的なプロモーターである。別の実施形態では、プロモーターは遍在性プロモーターである。代表的な偏在性プロモーターとしては、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータアクチン(CAG)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/プロモーター(CMV)、PGKプロモーター、SV40初期プロモーター等が挙げられる。さらに、プロモーターは、アルブミンプロモーター又はGAAプロモーター等の内因性プロモーターであってもよい。特定の実施形態では、プロモーターは、シス調節モジュール(CRM)又は人工的なエンハンサー配列等のエンハンサー配列に関連する。例えば、プロモーターは、ヒトApoE制御領域(又はヒトアポリポタンパク質E/CI遺伝子座、肝制御領域HCR-1 ― Genbank受託番号U32510、配列番号15に示す)等のエンハンサー配列に関連していてもよい。特定の実施形態では、ApoE配列等のエンハンサー配列は、上記に列挙したもの等の肝臓特異的なプロモーター、特にhAATプロモーター等に関連する。本発明の実施において有用なその他のCRMとしては、Rinconら[18]、Chuahら[19]又はNairら[20]に記載されるものが挙げられる。別の実施形態では、プロモーターはハイブリッドプロモーターである。例えば、ハイブリッドプロモーターは、spC5-12プロモーター、CK6プロモーター、CK8プロモーター、Acta1プロモーター等の短いサイズの筋肉選択的なプロモーターに作動可能に連結された肝臓選択的なエンハンサーで構成される。肝臓選択的なエンハンサーは、HS-CRM1、HS-CRM2、HS-CRM3、HS-CRM4、HS-CRM5、HS-CRM6、HS-CRM7、HS-CRM8、HS-CRM9、HS-CRM10、HS-CRM11、HS-CRM12、HS-CRM13、及びHS-CRM14から選択でき、これらは反復できる。ハイブリッドプロモーターの別の例としては、ApoEエンハンサー、hAATプロモーター及びspC5.12プロモーター(配列番号55に示される)の組合せ;又は、ApoEエンハンサー、hAATプロモーター及びSynプロモーターの組合せ;又はApoEエンハンサー及びspC5.12プロモーターの組合せが挙げられる。
【0046】
別の特定の実施形態では、核酸構築物は、イントロン、特にプロモーターとGAAコード配列との間に配置されたイントロンを含む。イントロンは、mRNA安定性及びタンパク質の産生を増加させるために導入され得る。更なる実施形態では、核酸構築物は、ヒトベータグロビンb2(又はHBB2)イントロン、凝固因子IX(FIX)イントロン、SV40イントロン又はニワトリベータグロビンイントロンを含む。別の更なる実施形態では、本発明の核酸構築物は、前記イントロンに見出される代替オープンリーディングフレーム(ARF)の数を減少させる又はさらには完全に除去するように設計された修飾イントロン(特に修飾HBB2又は修飾FIXイントロン)を含有する。好ましくは、長さが50bpにわたり、開始コドンとインフレームである終始コドンを有するARFが除去される。ARFは、イントロンの配列を修飾することによって除去されてもよい。例えば、修飾は、ヌクレオチド置換、挿入又は欠失、好ましくはヌクレオチド置換によって行われてもよい。例示として、目的のイントロンの配列に存在するATG又はGTG開始コドンにおける1つ又は複数のヌクレオチド、特に1つのヌクレオチドが置換えられてもよく、結果として非開始コドンが生じる。例えば、ATG又はGTGは、目的のイントロンの配列内で、開始コドンではないCTGによって置換えられてもよい。
【0047】
核酸構築物で使用される古典的なHBB2イントロンは、配列番号16に示される。例えば、このHBB2イントロンは、前記イントロン内の開始コドン(ATG及びGTGコドン)を排除することによって修飾されてもよい。特定の実施形態では、構築物に含まれる修飾HBB2イントロンは、配列番号17に示される配列を有する。核酸構築物に使用される古典的なFIXイントロンは、ヒトFIXの第一イントロンに由来し、配列番号18に示される。FIXイントロンは、前記イントロン内の開始コドン(ATG及びGTGコドン)を排除することによって修飾されてもよい。特定の実施形態では、本発明の構築物に含まれる修飾FIXイントロンは、配列番号19に示される配列を有する。核酸構築物に使用される古典的なニワトリベータグロビンイントロンは、配列番号20に示される。ニワトリベータグロビンイントロンは、前記イントロン内の開始コドン(ATG及びGTGコドン)を排除することによって修飾されてもよい。特定の実施形態では、本発明の構築物に含まれる修飾ニワトリベータグロビンイントロンは、配列番号21に示される配列を有する。好ましい実施形態では、本発明の核酸構築物に使用されるイントロンは、修飾HBB2イントロン(配列番号17)である。
【0048】
特定の実施形態では、本発明の核酸構築物は、5’から3’の向きに、場合によってはエンハンサーが先行するプロモーター、治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子、及びポリアデニル化シグナル(例えば、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、又は別の天然に存在する若しくは人工的なポリアデニル化シグナル)を含む。特定の実施形態では、本発明の核酸構築物は、5’から3’の向きに、場合によってはエンハンサー(例えば、ApoE制御領域)が先行するプロモーター、イントロン(特に上記に定義するようなイントロン)、治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子、及びポリアデニル化シグナルを含む。更なる特定の実施形態では、本発明の核酸構築物は、5’から3’の向きに、ApoE制御領域等のエンハンサー、プロモーター、イントロン(特に、上記に定義するようなイントロン)、治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子、及びポリアデニル化シグナルを含む。本発明の更なる特定の実施形態では、核酸構築物は、5’から3’の向きに、ApoE制御領域、hAAT肝臓特異的なプロモーター、HBB2イントロン(特に、上記に定義するような修飾HBB2イントロン)、治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子、及びウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを含む。
【0049】
本発明によれば、核酸構築物は、ベクター、好ましくはウイルスベクターに挿入されてもよい。本発明に係る「ベクター」という用語は、タンパク質発現に好適であり、好ましくは遺伝子治療における使用に好適であるベクターを意味する。一実施形態では、ベクターはプラスミドベクターである。別の実施形態では、ベクターは、本発明の核酸分子、特に本発明のGAAポリペプチドをコードするメッセンジャーRNAを含有するナノ粒子である。別の実施形態では、ベクターは、本発明の核酸分子又は構築物の、標的細胞のゲノムへの組込みを可能にする、トランスポゾンに基づくシステムであり、例えば、機能亢進性(hyperactive)Sleeping Beauty(SB100X)トランスポゾンシステム[21]である。別の実施形態では、ベクターは、遺伝子治療に好適なウイルスベクターである。ベクターは、任意の目的の細胞、例えば、肝組織又は細胞、筋肉細胞、CNS細胞(例えば、脳細胞若しくは脊髄細胞)、又は造血幹細胞、例えば、赤血球系統の細胞(例えば、赤血球)を標的化してもよい。この場合、本発明の核酸構築物は、当該技術分野において周知であるように、効率的なウイルスベクターを産生するために好適な配列も含有する。好ましい実施形態では、核酸構築物は、レトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター、又はAAVベクター、例えば、一本鎖若しくは二本鎖自己相補的AAVベクターに挿入される。本発明の非常に好ましい実施形態では、ウイルスベクターは、AAVベクター、例えば、肝組織又は細胞を形質導入するのに好適なAAVベクター等のAAVベクターであり、より特定的には、AAV-1、-2、及びAAV-2バリアント(例えば、Lingら[22]に開示される、Y44+500+730F+T491V変化を有する操作されたカプシドを含む四重変異体カプシド最適化AAV-2)、-3及びAAV-3バリアント(例えば、Vercauterenら[23]に開示される、2つのアミノ酸変化S663V+T492Vを有する操作されたAAV3カプシドを含むAAV3-STバリアント、-3B及びAAV-3Bバリアント、-4、-5、-6及びAAV-6バリアント(例えば、Rosarioら[24]に開示される、三重変異したAAV6カプシドY731F/Y705F/T492V形態を含むAAV6バリアント、-7、-8、-9、-10、例えば、cy10及び-rh10、-rh74、-dj、Anc80、LK03、AAV2i8、ブタAAV血清型、例えば、AAVpo4及びAAVpo6等の、ベクター又はレンチウイルスベクター及びアルファレトロウイルス等のレトロウイルスベクターである。当該技術分野において既知であるように、使用が考えられる特定のウイルスベクターに応じて、機能的なウイルスベクターを得るために、追加の好適な配列が本発明の核酸構築物に導入される。好適な配列としては、AAVベクターについてはAAV ITR、又はレンチウイルスベクターについてはLTRが挙げられる。したがって、本発明はまた、各側にITR又はLTRが隣接する、前述のような核酸構築物に関する。
【0050】
加えて、その他の非天然の操作されたバリアント及びキメラAAVも有用であり得る。従来の分子生物学の技術を使用してAAVウイルスを操作してもよく、それにより、これらの粒子を核酸配列の細胞特異的な送達、免疫原性の最小化、安定性及び粒子の寿命の調整、効率的な分解、核への正確な送達のために最適化することが可能である。ベクターへのアセンブリに望ましいAAVフラグメントとしては、vp1、vp2、vp3及び高度可変領域を含むcapタンパク質、rep78、rep68、rep52、及びrep40を含むrepタンパク質、並びにこれらのタンパク質をコードする配列が挙げられる。これらのフラグメントは、様々なベクターシステム及び宿主細胞で容易に利用され得る。Repタンパク質を欠如するAAVベースの組換えベクターは、低効率で宿主のゲノムに組込まれ、主に安定な環状エピソームとして存在し、標的細胞に何年間も持続し得る。AAV天然血清型を使用する代替として、人工的なAAV血清型が本発明の文脈において使用されてもよく、限定されることなく、天然に存在しないカプシドタンパク質を有するAAVが挙げられる。このような人工的なカプシドは、選択されたAAV配列(例えば、vp1カプシドタンパク質のフラグメント)を、異なる選択されたAAV血清型、同じAAV血清型の非連続部分、非AAVウイルス源、又は非ウイルス源から得られ得る異種配列と組合せて使用して、任意の好適な技術により生成され得る。人工的AAV血清型は、限定されることなく、キメラAAVカプシド、組換えAAVカプシド、又は「ヒト化」AAVカプシドであってもよい。
【0051】
本発明の文脈において、AAVベクターは、目的の標的細胞、特に肝細胞を形質導入可能なAAVカプシドを含む。更なる特定の実施形態では、AAVベクターはシュードタイプ化ベクターであり、すなわち、そのゲノム及びカプシドは、異なる血清型のAAVに由来する。例えば、シュードタイプ化AAVベクターは、そのゲノムが上記のAAV血清型の1つに由来し、そのカプシドが別の血清型に由来するベクターであってもよい。例えば、シュードタイプ化ベクターのゲノムは、AAV8、AAV9、AAVrh74又はAAV2i8血清型に由来するカプシドを有してもよく、そのゲノムは、異なる血清型に由来してもよい。特定の実施形態では、AAVベクターは、AAV8、AAV9又はAAVrh74血清型、特にAAV8又はAAV9血清型、より特定的にはAAV8血清型のカプシドを有する。
【0052】
ベクターが導入遺伝子の筋肉細胞への送達の際の使用のためである、特定の実施形態では、AAVベクターは、とりわけ、AAV8、AAV9及びAAVrh74からなる群から選択されてもよい。
【0053】
ベクターが導入遺伝子の肝細胞への送達の際の使用のためである、別の特定の実施形態では、AAVベクターは、とりわけ、AAV5、AAV8、AAV9、AAV-LK03、AAV-Anc80及びAAV3Bからなる群から選択されてもよい。
【0054】
別の実施形態では、カプシドは修飾カプシドである。本発明の文脈において、「修飾カプシド」とは、1つ又は複数の野生型AAV VPカプシドタンパク質に由来する1つ又は複数のバリアントVPカプシドタンパク質を含むキメラカプシド又はカプシドであってもよい。
特定の実施形態では、AAVベクターはキメラベクターである、すなわち、そのカプシドは、少なくとも2つの異なるAAV血清型に由来するVPカプシドタンパク質を含む、又は、少なくとも2つのAAV血清型に由来するVPタンパク質領域若しくはドメインを組合せた少なくとも1つのキメラVPタンパク質を含む。肝細胞を形質導入するのに有用なこのようなキメラAAVベクターの例は、Shenら[25]及びTenneyら[26]に記載されている。例えば、キメラAAVベクターは、AAV8カプシド配列と、AAV8血清型とは異なるAAV血清型、例えば、具体的に上述されているもののいずれかの配列との組合せに由来し得る。別の実施形態では、AAVベクターのカプシドは、1つ又は複数の変異型VPカプシドタンパク質、例えば、WO2015013313に記載されるもの、特にRHM4-1、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4及びRHM15-6カプシドバリアントを含み、これらは高い肝臓指向性を呈する。
【0055】
別の実施形態では、修飾カプシドはまた、エラープローンPCR及び/又はペプチド挿入により挿入されるカプシド修飾に由来し得る(例えば、Bartelら[27]又はMichelfelderら[28]に記載される。加えて、カプシドバリアントは、単一のアミノ酸変化、例えば、チロシン変異体(例えば、Zhongら[29]に記載される)を含んでいてもよい。別の例としては、AAV VP2カプシドタンパク質のN末端へのアントプロイリン-Bの融合[30]が挙げられる。
【0056】
加えて、AAVベクターのゲノムは、一本鎖又は自己相補的二本鎖ゲノムのいずれであってもよい[31]。自己相補的な二本鎖AAVベクターは、AAV末端反復の1つからの末端解離部位(terminal resolution site;trs)を欠失させることによって生成される。複製ゲノムが野生型AAVゲノムの半分の長さであるこれらの修飾ベクターは、DNA二量体をパッケージングする傾向がある。
特に、AVVベクターは、AAV由来のカプシド、例えば、AAV1、AAV2、バリアントAAV2、AAV3、バリアントAAV3、AAV3B、バリアントAAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、バリアントAAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、例えば、AAVcy10及びAAVrh10、AAVrh74、AAVdj、AAV-Anc80、AAV-LK03、AAV2i8、並びにブタAAV、例えば、AAVpo4及びAAVpo6カプシド、又はキメラカプシドを有する。
【0057】
好ましい実施形態では、本発明の実施において施行されるAAVベクターは、一本鎖ゲノムを有し、さらに好ましくは、AAV8、AAV9、AAVrh74又はAAV2i8カプシド、特にAAV8、AAV9又はAAVrh74カプシド、例えば、AAV8又はAAV9カプシド、より特定的にはAAV8カプシドを含む。特に好ましい実施形態では、本発明は、一本鎖又は二本鎖自己相補的ゲノム(例えば、一本鎖ゲノム)において、本発明の核酸構築物を含むAAVベクターに関する。一実施形態では、AAVベクターは、AAV8、AAV9、AAVrh74又はAAV2i8カプシド、特にAAV8、AAV9又はAAVrh74カプシド、例えば、AAV8又はAAV9カプシド、より特定的にはAAV8カプシドを含む。
【0058】
治療用GAAポリペプチド、治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子、又は核酸分子を発現するための核酸構築物は、当該技術分野において既知の方法によって調製され得る。例えば、WO2018/046774及びWO2018/04675は、治療用GAAポリペプチド、GAAポリペプチドをコードする核酸分子、及び核酸分子を発現するための核酸構築物を調製するための方法を提供する。
【0059】
本発明によれば、「GAAの取込み」又は「治療用GAAポリペプチドの取込み」という用語は、細胞又は組織によるGAAの吸収を指す。一実施形態では、組織は、心臓、三頭筋、四頭筋、及び横隔膜等の筋肉である。別の実施形態では、組織は神経系の組織である。「神経系の組織」という用語は、例えば運動ニューロン、グリア細胞等の神経細胞を含有する組織を指す。換言すれば、神経系は、脳及び脊髄を含む中枢神経系からなり、末梢神経系は、分枝末梢神経を含み、例えば、本発明に係る中枢神経系の組織は、脳及び/又は脊髄である。GAAの取込みは、実施例に記載されるようなウエスタンブロット等、当該技術分野で既知の任意の手段により測定できる。
【0060】
本明細書で使用する「対象」、「患者」又は「個体」という用語は、GSDに罹患している又は罹患する可能性があるヒト又は非ヒト哺乳動物(例えば、げっ歯類(マウス、ラット)、ネコ、イヌ、又は霊長類)を指す。好ましくは、対象はヒトであり、男性又は女性である。
【0061】
「処置する」又は「処置」という用語は、該用語が適用される疾患若しくは状態、又は該疾患若しくは状態の1つ又は複数の症状を逆転させる、緩和する、その進行を阻害する、又は予防することを意味する。特に、疾患の処置は、GSDにおける中枢神経系(CNS)障害を処置すること、好ましくは、対象における呼吸神経筋機能を改善すること、及び/又は呼吸機能障害を減少させることからなってもよい。
【0062】
キット・オブ・パーツ
本発明は、(i)薬理学的シャペロン又はその医薬的に許容される塩と、(ii)治療用酸性アルファグルコシダーゼ(GAA)ポリペプチド又は治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子とを含み、前記薬理学的シャペロンが、1-デオキシノジリマイシン(DNJ)又はその誘導体及びアンブロキソール(ABX)又はその誘導体である、キット・オブ・パーツに関する。
本発明のキットは、
- 医薬として、
- 糖原病(GSD)の処置において、
- 呼吸神経筋機能を改善するため、及び/若しくは、呼吸機能障害を減少させるための方法において、
- GSDにおける中枢神経系(CNS)障害を処置するための方法において、並びに/又は
- 特にGSDにおける神経系、好ましくは中枢神経系の組織、最も好ましくは脊髄へのGAAの取込みを増加させる方法において、使用されてもよい。この実施形態では、方法はさらに、GAAをライソゾームに輸送するために適切なコンフォメーションで前記GAAを安定化させてもよい。
【0063】
キット・オブ・パーツは、治療用GAAポリペプチドの使用(すなわちERT)と治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子の使用(すなわち遺伝子治療)との間で異なる形態で使用されてもよい。
【0064】
治療用GAAポリペプチドを使用するERT
ERTは、注入によって治療用GAAポリペプチド、好ましくはシグナルペプチドを有さない治療用GAAポリペプチドを外因的に導入することによって、GAAポリペプチドの量を増加させる。注入後、外因性の治療用GAAポリペプチドは、非特異的又は受容体特異的なメカニズムを介して組織に取込まれることが予想される。
【0065】
本発明によれば、薬理学的シャペロン及び治療用GAAポリペプチドは、同時に又は別々に投与されてもよい。以下に詳述するように、薬理学的シャペロンは、治療用GAAポリペプチドの前、同時、及び/又は後に投与されてもよい。
【0066】
薬理学的シャペロンは、例えば、GSD患者におけるインビボでの治療用GAAポリペプチドの安定性を増加させることによって、及び/又は、GSD患者においてインビボで、製剤若しくは組成物においてインビトロで、治療用GAAポリペプチドの組織取込みを増加させることによって、治療用GAAポリペプチドの有効性を増加させる。薬理学的シャペロンは、アルグルコシダーゼアルファによる処置等、従来のERTの処置効果を高めるのに有用である。
【0067】
薬理学的シャペロンは、経口投与、鼻腔投与、経皮投与により、又は、非経口注射、例えば、静脈内注入、皮下注射若しくは腹腔内注射、好ましくは経口投与又は静脈内注入により、より好ましくは経口投与により投与されてもよい。
【0068】
治療用GAAポリペプチドは、経口投与、鼻腔投与、経皮投与により、又は、非経口注射、例えば、静脈内注入、皮下注射若しくは腹腔内注射、好ましくは静脈内注入又は皮下注射により投与されてもよい。より好ましくは、治療用GAAポリペプチドは、注射用の滅菌溶液にて静脈内投与される。
【0069】
一実施形態では、治療用GAAポリペプチド及び薬理学的シャペロンは別々に製剤化される。この実施形態では、薬理学的シャペロン及び治療用GAAポリペプチドは、同じ経路、例えば、静脈内注入により投与されてもよい、又は、好ましくは、異なる経路、例えば、治療用GAAポリペプチドについては静脈内注入、薬理学的シャペロンについては経口投与により投与されてもよい。治療用GAAポリペプチドは、任意の経路により投与されるが、好ましくは、投与は非経口的である。
【0070】
別の実施形態では、薬理学的シャペロン及び治療用GAAポリペプチドは、単一の組成物に製剤化される。このような組成物は、貯蔵中及びインビボ投与における治療用GAAポリペプチドの安定性を高めることにより、コストを削減し、治療効果を増加させる。製剤は、好ましくは、静脈内、皮下及び腹腔内を含む非経口投与に好適であるが、経口、鼻腔内、又は経皮等、その他の投与経路に好適な製剤も企図される。
【0071】
薬理学的シャペロンは、同じ組成物に、又は別々に、好ましくは別々に製剤化されてもよい。例えば、薬理学的シャペロンの一方(DNJ又はABX)及び治療用GAAポリペプチドは、一つの組成物に製剤化され、他方のシャペロン(DNJ又はABX)は、別の組成物に製剤化されてもよい。別の例では、シャペロン(ABX及びDNJ)並びに治療用GAAポリペプチドは、3つの別個の組成物に製剤化される。
【0072】
いくつかの実施形態では、DNJは、別個の組成物、例えば、Zavesca(登録商標)(ミグルスタット(CAS番号72599-27-0)に対応する)の名称で市販されている組成物に製剤化される。DNJを含む医薬組成物は、WO2006/125141及びWO2014/110270に記載されている。
【0073】
いくつかの実施形態では、ABXは、別個の組成物、例えば、Ambrobene(登録商標)、Aponova(登録商標)、Mucoangin(登録商標)、Ambroxol Mylan(登録商標)の名称で市販されている組成物に製剤化される。ABXを含む医薬組成物は、EP1543826に記載されている。
【0074】
いくつかの実施形態では、治療用GAAポリペプチドは、別個の組成物、例えば、Lumizyme(登録商標)又はMyozyme(登録商標)の名称で市販されている組成物に製剤化される。
【0075】
投与のタイミングは、限定されることなく、投与経路、処置されるGSD、又は対象の年齢を含むいくつかの要因に基づいて変わる。当業者であれば、当該分野における知識に基づいて、これらの要因等に基づいて必要とされる投与のタイミングを容易に決定できる。
【0076】
治療用GAAポリペプチド及び薬理学的シャペロンを別々に製剤化する場合、投与は同時に行われてもよい、又は、薬理学的シャペロンが治療用GAAポリペプチドの前若しくは後に投与されてもよい。例えば、治療用GAAポリペプチドが静脈内投与される場合、薬理学的シャペロンは、0時間~6時間後の期間中に投与されてもよい。あるいは、薬理学的シャペロンは、治療用GAAポリペプチドの0~6時間前に投与されてもよい。薬理学的シャペロン及び治療用GAAポリペプチドが別々に投与され、薬理学的シャペロンが短い循環半減期{例えば、小分子)を有する、好ましい実施形態では、薬理学的シャペロンは、循環の一定レベルを維持するために、連続的に、例えば、毎日、経口投与されてもよい。このような一定のレベルは、患者に対して無毒であり、非阻害性の治療効果を与えるために投与の時間中の治療用GAAポリペプチドとの相互作用に関して最適であるように決定されたレベルである。別の実施形態では、薬理学的シャペロンは、治療用GAAポリペプチドの代謝回転に必要な期間(これは、薬理学的シャペロンの投与によって延長される)中に投与される。
【0077】
それを必要とする対象に投与される治療用GAAポリペプチドの用量は、限定されることなく、投与経路、処置されるGSD又は対象の年齢を含むいくつかの要因に基づいて変わる。当業者であれば、当該分野における知識に基づいて、これらの要因等に基づいて必要とされる投与量範囲を容易に決定できる。現在の方法によれば、治療用GAAポリペプチドの濃度は、一般的に、体重の約0.05~50.0mg/kgであり、通常、毎週又は隔週で投与される。治療用GAAポリペプチドは、0.1mg/kg~約30mg/kg、好ましくは約0.1mg/kg~約20mg/kgの範囲の投与量で投与できる。このタンパク質の定期的な反復投与は、患者の生涯にわたって必要である。皮下注射は、治療用GAAポリペプチドへの全身曝露をより長期間維持する。皮下投与量は、好ましくは、隔週又は毎週、体重1kg当たり0.1~5.0mgの治療用GAAポリペプチドである。治療用GAAポリペプチドはまた、例えば、静脈内ボーラス注射、スロープッシュ(slow push)静脈内注射、又は連続的な静脈内注射により静脈内投与される。連続的なIV注入(例えば、2~6時間を超える)は、血中における特定のレベルの維持を可能にする。例えば、アルグルコシダーゼアルファ(Genzyme,IncによってLumizyme(登録商標)又はMyozyme(登録商標)として販売されている)と称される、ポンペ病の処置に現在承認されているシグナルペプチドを有さない治療用GAAポリペプチドは、体重1kg当たり20mgの用量で静脈内注入により2週間毎に投与される。
【0078】
それを必要とする対象に投与される薬理学的シャペロンの用量は、限定されることなく、投与経路、処置されるGSD、対象の年齢又は対象に投与される治療用GAAポリペプチドの量を含むいくつかの要因に基づいて変わる。当業者であれば、当該分野における知識に基づいて、これらの要因等に基づいて必要とされる投与量範囲を容易に決定できる。
【0079】
糖原病の処置に有効となる薬理学的シャペロンの用量は、標準的な臨床技術により決定できる。加えて、最適な投与量範囲を予測するのを助けるために、インビボ及び/又はインビトロアッセイが、場合によっては採用されてもよい。製剤に採用される正確な用量は、投与経路及び疾病の重症度にも依存し、医師の判断及び各患者の状況に応じて決定されるべきである。それを必要とする対象に投与される薬理学的シャペロンの投与量は、限定されることなく、投与経路、処置される特定の疾病、対象の年齢を含むいくつかの要因に基づいて変わる。当業者であれば、当該分野における知識に基づいて、これらの要因等に基づいて必要とされる投与量範囲を容易に決定できる。
【0080】
DNJ又はその誘導体、好ましくはDNJを投与することを含む処置の場合、DNJ又はその誘導体の典型的な用量は、例えば、1~10日間、好ましくは3~7日間1グラム(g)、2g、3g、4g、5g、6g以上であり得る。処置は、処置なしの1~10日、好ましくは3~7日により中断できる。中断の日の後に、前述のような以前の典型的な用量及び継続期間に従って処置を投与できる。例えば、典型的な用量は、3日間2.5g及び4日間処置なし、例えば、3日間5g及び4日間処置なし、又は、例えば、7日間5g及び7日間処置なしである(臨床試験識別番号NCT00688597)。
【0081】
ABX又はその誘導体、好ましくはABX塩酸塩の投与を含む処置の場合、ABX又はその誘導体の典型的な用量は、50~500mg、好ましくは60~420mgであり得て、例えば、1日当たり3回反復され得る(臨床試験識別番号NCT02941822)。
【0082】
治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子を使用する遺伝子治療
本発明はまた、GSDにおける遺伝子治療と組合せた薬理学的シャペロンの使用を企図する。このような組合せは、GSD患者におけるインビボでの治療用GAAポリペプチドの発現レベルを増加させることによって、GSD患者においてインビボで発現される治療用GAAポリペプチドの安定性を増加させることによって、及び/又は、GSD患者においてインビボで発現される治療用GAAポリペプチドの組織取込みを増加させることによって、遺伝子治療の有効性を増強する。
【0083】
本発明によれば、薬理学的シャペロン及び治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子は、同時に又は別々に投与されてもよい。以下に詳述するように、薬理学的シャペロンは、治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子の前、同時、及び/又は後に投与されてもよい。
【0084】
好ましい実施形態では、薬理学的シャペロンは、治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子の後に投与される。例えば、薬理学的シャペロンは、治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子の投与から1ヶ月、2ヶ月以上後に投与できる。この実施形態によれば、薬理学的シャペロン及び治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子は、別々に製剤化される。
患者への核酸分子の送達は、直接的であってもよく、この場合、患者は、核酸分子、核酸構築物若しくはベクター、例えば、ウイルスベクターに直接曝露される、又は、間接的であってもよく、この場合、細胞はまず核酸分子、核酸構築物若しくはベクター、例えば、ウイルスベクターによりインビトロで形質転換され、次に患者に移植される。これらの2つのアプローチは、それぞれインビボ及びエクスビボ遺伝子治療として既知である。肝細胞の送達の場合、前記細胞は、対象から予め採取され、治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子又は核酸構築物をその中に導入することによって操作されることにより、前記治療用GAAポリペプチドを産生可能となる細胞であってもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、核酸分子が、前記核酸分子を発現するための核酸構築物に挿入され、前記核酸構築物は、レトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター、又は、AAVベクター、例えば、一本鎖若しくは二本鎖自己相補的AAVベクターから選択されるウイルスベクターに挿入され、前記ウイルスベクターは、好ましくはAAV8、AAV9、AAVrh74又はAAV2i8カプシド、特にAAV8、AAV9又はAAVrh74カプシド、より特定的にはAAV8カプシドを有するAAVベクターである。
【0086】
治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子、核酸構築物又はウイルスベクターの投与は、例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口経路であるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、投与は、静脈内又は筋肉内経路を介する。治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子は、ベクター化されていてもいなくても、任意の簡便な経路により、例えば、注入又はボーラス注射により、上皮又は粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸管粘膜等)を通した吸収により投与されてもよい、及び、他の生物学的活性剤とともに投与されてもよい。投与は、全身性又は局所性であってもよい。具体的な実施形態では、治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子、核酸構築物又はウイルスベクターを、治療を必要とする領域、例えば、肝臓に局所的に投与することが望ましい場合がある。これは、例えば、インプラントの手段により達成され、前記インプラントは、多孔性、非多孔性、又はゼラチン質の材料であり、例えば、膜、例えば、シラスティック(sialastic)膜又は繊維が挙げられる。
【0087】
糖原病の処置に有効となる治療用GAAポリペプチドをコードする核酸構築物、ベクター分子、核酸構築物又はウイルスベクターの量は、標準的な臨床技術により決定できる。加えて、最適な投与量範囲を予測するのを助けるために、インビボ及び/又はインビトロアッセイが、場合によっては採用されてもよい。製剤に採用される正確な用量は、投与経路及び疾病の重症度にも依存し、医師の判断及び各患者の状況に応じて決定されるべきである。それを必要とする対象に投与される治療用GAAポリペプチドをコードする核酸構築物、ベクター分子、核酸構築物、又はウイルスベクターの投与量は、限定されることなく、投与経路、処置される特定の疾病、対象の年齢、又は治療効果を達成するために必要な発現レベルを含むいくつかの要因に基づいて変わる。当業者であれば、当該分野における知識に基づいて、これらの要因等に基づいて必要とされる投与量範囲を容易に決定できる。ウイルスベクター、例えば、AAVベクターを対象に投与することを含む処置の場合、ベクターの典型的な用量は、体重1キログラム当たり少なくとも1×108のベクターゲノム(vg/kg)、例えば、少なくとも1×109vg/kg、少なくとも1×1010vg/kg、少なくとも1×1011vg/kg、少なくとも1×1012vg/kg少なくとも1×1013vg/kg、又は少なくとも1×1014vg/kgである。薬理学的シャペロンのおかげで、典型的な用量と比較して、本発明に係る治療用GAAポリペプチドをコードする核酸構築物、ベクター分子、核酸構築物又はウイルスベクターの用量を減少させ得る。
【0088】
本発明の一態様では、対象は、治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子の反復投与を受ける。この態様では、前記投与は、少なくとも一回以上反復されてもよく、さらには、例えば年一回等の周期的なスケジュールに従って行われることが考慮されてもよい。周期的なスケジュールはまた、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10年毎、又は10年超毎に一回の投与を含み得る。別の特定の実施形態では、本発明のウイルスベクターの各投与の投与は、各連続的な投与に異なるウイルスを使用して行われることにより、有効性の低下が回避され、その理由は、以前に投与されたウイルスベクターに対する免疫応答が可能であるためである。例えば、AAV8カプシドを含むウイルスベクターの第1の投与が行われた後に、AAV9カプシドを含むベクターの投与、又はさらには、AAVとは無関係のウイルス、例えば、レトロウイルス若しくはレンチウイルスベクターの投与が行われてもよい。あるいは、一過性の免疫抑制を使用して、カプシドに対する免疫応答が回避できる。
【0089】
遺伝子治療の方法は当該技術分野で既知であり、いくつかの実施形態も上記の定義部分で詳述されている。
【0090】
薬理学的シャペロンは、経口投与、鼻腔投与、経皮投与により、又は、非経口注射、例えば、静脈内注入、皮下注射、腹腔内注射、好ましくは経口投与又は静脈内注入により、より好ましくは経口投与により投与されてもよい。
【0091】
薬理学的シャペロンは、同じ組成物に、又は別々に、好ましくは別々に、製剤化されてもよい。DNJは、別個の医薬組成物、例えば、Zavesca(登録商標)(ミグルスタット(CAS番号72599-27-0)に対応する)の名称で市販されている組成物に製剤化されてもよい。DNJを含む医薬組成物は、WO2006/125141及びWO2014/110270に記載されている。ABXは、別個の医薬組成物、例えば、Ambrobene(登録商標)、Aponova(登録商標)、Mucoangin(登録商標)、Ambroxol Mylan(登録商標)の名称で市販されている組成物に製剤化されてもよい。ABXを含む医薬組成物は、EP1543826に記載されている。
【0092】
薬理学的シャペロンは、循環の一定レベルを維持するために、連続的に、例えば、毎日、経口投与されてもよい。このような一定のレベルは、患者に対して無毒であり、非阻害性の治療効果を与えるために投与の時間中に発現される治療用GAAポリペプチドとの相互作用に関して最適であるように決定されたレベルである。
【0093】
本発明に係る糖原病の処置において有効となり得る薬理学的シャペロンの用量は、上記の「治療用GAAポリペプチドを使用するERT」に記載される。
【0094】
好ましい実施形態では、キット・オブ・パーツは、(i)ドゥボグルスタット及びアンブロキソール塩酸塩と、(ii)治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子を発現するための核酸構築物が挿入されたウイルスベクターとを含む。
さらにより好ましい実施形態では、キット・オブ・パーツは、(i)ドゥボグルスタット及びアンブロキソール塩酸塩と、(ii)配列番号25又は配列番号26の核酸分子を発現するための核酸構築物が挿入されたウイルスベクターとを含む。
【0095】
組成物
本発明はまた、糖原病(GSD)を処置するための治療用酸性アルファグルコシダーゼ(GAA)処置を受ける対象における前記GSDの処置における使用のための、薬理学的シャペロン又はその医薬的に許容される塩を含む組成物であって、前記薬理学的シャペロンが、1-デオキシノジリマイシン(DNJ)又はその誘導体及びアンブロキソール(ABX)又はその誘導体である、組成物に関する。
【0096】
本発明はまた、GSDを処置するための治療用GAA処置を受ける対象において、神経系の組織へのGAAの取込みを増加させる方法における使用のための、薬理学的シャペロン又はその医薬的に許容される塩を含む組成物であって、前記薬理学的シャペロンが、DNJ又はその誘導体及びABX又はその誘導体である、組成物に関する。いくつかの実施形態では、神経系の組織は、例えば、中枢神経系の組織、好ましくは脊髄である。いくつかの実施形態では、方法はさらに、ライソゾームへの輸送のために適切なコンフォメーションでGAAを安定化させる。
【0097】
本発明はまた、GSDを処置するための治療用GAA処置を受ける対象における呼吸神経筋機能を改善する、及び/又は、呼吸機能障害を減少させる方法における使用のための、薬理学的シャペロン又はその医薬的に許容される塩を含む組成物であって、前記薬理学的シャペロンが、DNJ又はその誘導体及びABX又はその誘導体である、組成物に関する。
【0098】
本発明はまた、GSDを処置するための治療用GAA処置を受ける対象において、GSDにおける中枢神経系(CNS)障害を処置するための方法における使用のための、薬理学的シャペロン又はその医薬的に許容される塩を含む組成物であって、前記薬理学的シャペロンが、DNJ又はその誘導体及びABX又はその誘導体である、組成物に関する。
【0099】
本発明によれば、組成物は、治療用GAA処置を受ける対象に投与される。上に詳述するように、治療用GAA処置は、治療用GAAポリペプチド(ERT)、好ましくはシグナルペプチドを有さない治療用GAAポリペプチド、又は治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子(遺伝子治療)であってもよい。好ましくは、組成物は、治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子を受ける対象に投与される。いくつかの実施形態では、核酸分子が、前記核酸分子を発現するための核酸構築物に挿入され、前記核酸構築物は、レトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター、又は、AAVベクター、例えば、一本鎖若しくは二本鎖自己相補的AAVベクターから選択されるウイルスベクターに挿入され、前記ウイルスベクターは、好ましくはAAV8、AAV9、AAVrh74又はAAV2i8カプシド、特にAAV8、AAV9又はAAVrh74カプシド、より特定的にはAAV8カプシドを有するAAVベクターである。
【0100】
本発明の組成物は、治療用GAA処置の前、同時及び/又は後に、好ましくは治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子の前、同時及び/又は後に投与されてもよい。例えば、治療用GAAポリペプチドが静脈内投与される場合、組成物は、0時間~6時間後の期間中に投与されてもよい。本発明の組成物及び治療用GAAポリペプチドが別々に投与され、薬理学的シャペロンが短い循環半減期{例えば、小分子)を有する、好ましい実施形態では、組成物は、循環の一定レベルを維持するために、連続的に、例えば、毎日、経口投与されてもよい。このような一定のレベルは、患者に対して無毒であり、非阻害性の治療効果を与えるために投与の時間中の治療用GAAポリペプチドとの相互作用に関して最適であるように決定されたレベルである。別の実施形態では、組成物は、治療用GAAポリペプチドの代謝回転に必要な期間(これは、薬理学的シャペロンの投与によって延長される)中に投与される。例えば、治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子が静脈内又は筋肉内経路により投与される場合、本発明の組成物は、処置から2ヶ月後に投与されてもよく、循環の一定レベルを維持するために、連続的に、例えば、毎日、経口投与されてもよい。
本発明の組成物は、経口投与、鼻腔投与、経皮投与により、又は、非経口注射、例えば、静脈内注入、皮下注射、腹腔内注射、好ましくは経口投与又は静脈内注入により、より好ましくは経口投与により投与されてもよい。
組成物の各々の薬理学的シャペロンは、別々に又は同じ組成物に製剤化されてもよい。例えば、薬理学的シャペロンの一方であるDNJは一つの組成物に製剤化され、他方のシャペロンであるABXは別の組成物に製剤化されてもよい。
【0101】
一実施形態では、ABX及びDNJは別々に製剤化される。この実施形態では、別個の組成物は、同じ経路により、又は異なる経路により、好ましくは同じ経路により、より好ましくは経口投与により投与されてもよい。
【0102】
別の実施形態では、ABX及びDNJは同じ組成物に製剤化される。この実施形態では、組成物は、経口、鼻腔内、又は経皮投与、好ましくは経口投与に好適である。
【0103】
DNJは、別個の医薬組成物、例えば、Zavesca(登録商標)(ミグルスタット(CAS番号72599-27-0)に対応する)の名称で市販されている組成物に製剤化されてもよい。DNJを含む医薬組成物は、WO2006/125141及びWO2014/110270に記載されている。
【0104】
ABXは、別個の医薬組成物、例えば、Ambrobene(登録商標)、Aponova(登録商標)、Mucoangin(登録商標)、Ambroxol Mylan(登録商標)の名称で市販されている組成物に製剤化されてもよい。ABXを含む医薬組成物は、EP1543826に記載されている。
【0105】
それを必要とする対象に投与される組成物中の薬理学的シャペロンの用量は、限定されることなく、投与経路、治療されるGSD、対象の年齢、又は治療用GAA処置(例えば、ERT若しくは遺伝子治療)を含むいくつかの要因に基づいて変わる。当業者であれば、当該分野における知識に基づいて、これらの要因等に基づいて必要とされる投与量範囲を容易に決定できる。例えば、本発明の組成物は、1g、2g、3g、5g、6g以上のDNJ又はその誘導体、及び50~500mg、例えば、60~420mgのABX又はその誘導体を含み得る。
【0106】
好ましい実施形態では、組成物は、治療用GAA処置を受ける対象におけるGSDの処置における使用のためのドゥボグルスタット及びアンブロキソール塩酸塩を含み、該治療用GAA処置は、前記GSDを処置するための、治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子が挿入されたウイルスベクターである。
【0107】
さらに好ましい実施形態では、組成物は、GSDIIを処置するための、配列番号25又は配列番号26の核酸分子を発現するための核酸構築物が挿入されたウイルスベクターを受ける対象における前記GSDIIの処置における使用のためのドゥボグルスタット及びアンブロキソール塩酸塩を含む。
【0108】
処置の方法
本発明はまた、糖原病(GSD)を処置するための治療用GAA処置を受ける対象において前記GSDを処置するための方法であって、薬理学的シャペロンを含む組成物を対象に投与することを含み、薬理学的シャペロンが、DNJ又はその誘導体及びABX又はその誘導体である、方法に関する。
【0109】
本発明はまた、GSDを処置するための治療用GAA処置を受ける対象において、神経系の組織へのGAAの取込みを増加させるための方法であって、薬理学的シャペロンを含む組成物を対象に投与することを含み、薬理学的シャペロンが、DNJ又はその誘導体及びABX又はその誘導体である、方法に関する。
【0110】
本発明はまた、GSDを処置するための治療用GAA処置を受ける対象における呼吸神経筋機能を改善するための、及び/又は、呼吸機能障害を減少させるための方法であって、薬理学的シャペロンを含む組成物を対象に投与することを含み、薬理学的シャペロンが、DNJ又はその誘導体及びABX又はその誘導体である、方法に関する。
【0111】
本発明はまた、GSDを処置するための治療用GAA処置を受ける対象において、GSDの中枢神経系(CNS)障害を処置するための方法であって、薬理学的シャペロンを含む組成物を対象に投与することを含み、薬理学的シャペロンが、DNJ又はその誘導体及びABX又はその誘導体である、方法に関する。
【0112】
薬理学的シャペロン及び治療用GAA処置の投与に関する定義及び実施形態は、本明細書の上記、特に「キット・オブ・パーツ」の欄に記載される。
【0113】
その他の目的
本発明者らはまた、薬理学的シャペロンDNJ、ABX又はNACが、特にGSDにおいて、組織へのGAAの取込みを増加させることを証明した。
【0114】
DNJ及び治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子
本発明は、(i)薬理学的シャペロン又はその医薬的に許容される塩と、(ii)治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子とを含み、前記薬理学的シャペロンが、1-デオキシノジリマイシン(DNJ)又はその誘導体である、キット・オブ・パーツに関する。前記キット・オブ・パーツは、
- 医薬として、
- 糖原病(GSD)の処置において、及び/又は
- 特にGSDにおける、神経系の組織へのGAAの取込みを増加させる方法において、
使用されてもよい。
【0115】
本発明はまた、糖原病(GSD)を処置するための治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子を受ける対象における前記GSDの処置における使用のための、薬理学的シャペロン又はその医薬的に許容される塩を含む組成物であって、前記薬理学的シャペロンが、1-デオキシノジリマイシン(DNJ)又はその誘導体である、組成物に関する。
【0116】
本発明はまた、GSDを処置するための治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子を受ける対象において、神経系の組織へのGAAの取込みを増加させる方法における使用のための、薬理学的シャペロン又はその医薬的に許容される塩を含む組成物であって、前記薬理学的シャペロンが、1-デオキシノジリマイシン(DNJ)又はその誘導体である、組成物に関する。
【0117】
本発明はまた、GSDを処置するための治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子を受ける対象において、神経系、好ましくは中枢神経系の組織、より好ましくは脊髄へのGAAの取込みを増加させる方法における使用のための、薬理学的シャペロン又はその医薬的に許容される塩を含む組成物であって、前記薬理学的シャペロンが、1-デオキシノジリマイシン(DNJ)又はその誘導体である、組成物に関する。
【0118】
本発明はまた、GSDを処置するための治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子を受ける対象において、GSDの中枢神経系(CNS)障害を処置するための方法における使用のための、薬理学的シャペロン又はその医薬的に許容される塩を含む組成物であって、前記薬理学的シャペロンが、1-デオキシノジリマイシン(DNJ)又はその誘導体である、組成物に関する。
【0119】
本発明はまた、GSDを処置するための治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子を受ける対象において、呼吸神経筋機能を改善する、及び/又は、呼吸機能障害を減少させる方法における使用のための、薬理学的シャペロン又はその医薬的に許容される塩を含む組成物であって、前記薬理学的シャペロンが、1-デオキシノジリマイシン(DNJ)又はその誘導体である、組成物に関する。
【0120】
本発明はまた、糖原病(GSD)を処置するための治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子を受ける対象において前記GSDを処置するための方法であって、薬理学的シャペロンを含む組成物を対象に投与することを含み、薬理学的シャペロンが、DNJ又はその誘導体である、方法に関する。
【0121】
本発明はまた、GSDを処置するための治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子を受ける対象において、神経系の組織へのGAAの取込みを増加させるための方法であって、薬理学的シャペロンを含む組成物を対象に投与することを含み、薬理学的シャペロンが、DNJ又はその誘導である、方法に関する。
【0122】
本発明はまた、GSDを処置するための治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子を受ける対象において、呼吸神経筋機能を改善するため、及び/又は、呼吸機能障害を減少させるための方法であって、薬理学的シャペロンを含む組成物を対象に投与することを含み、薬理学的シャペロンが、DNJ又はその誘導である、方法に関する。
【0123】
本発明はまた、GSDを処置するための治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子を受ける対象において、GSDの中枢神経系(CNS)障害を処置するための方法であって、薬理学的シャペロンを含む組成物を対象に投与することを含み、薬理学的シャペロンが、DNJ又はその誘導である、方法に関する。
【0124】
NAC及び治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子
本発明はまた、(i)薬理学的シャペロン又はその医薬的に許容される塩と、(ii)治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子とを含み、前記薬理学的シャペロンが、N-アセチルシステイン(NAC)又はその誘導体である、キット・オブ・パーツに関する。前記キット・オブ・パーツは、特に糖原病(GSD)の処置において、医薬として使用されてもよい。
【0125】
本発明はまた、糖原病(GSD)を処置するための治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子を受ける対象における前記GSDの処置における使用のための、薬理学的シャペロン又はその医薬的に許容される塩を含む組成物であって、薬理学的シャペロンが、N-アセチルシステイン(NAC)又はその誘導体である、組成物に関する。
【0126】
本発明はまた、糖原病(GSD)を処置するための治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子を受ける対象において前記GSDを処置するための方法であって、薬理学的シャペロンを含む組成物を対象に投与することを含み、薬理学的シャペロンが、NAC又はその誘導体である、方法に関する。
【0127】
ABX及び治療用GAAポリペプチド又は治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子
本発明はまた、(i)薬理学的シャペロン又はその医薬的に許容される塩と、(ii)治療用GAAポリペプチド又は治療用GAAポリペプチドをコードする核酸分子とを含み、薬理学的シャペロンが、アンブロキソール(ABX)又はその誘導体である、キット・オブ・パーツに関する。前記キット・オブ・パーツは、特に糖原病(GSD)の処置において、医薬として使用されてもよい。
【0128】
本発明はまた、糖原病(GSD)を処置するための治療用酸性アルファグルコシダーゼ(GAA)処置を受ける対象における前記GSDの処置における使用のための、薬理学的シャペロン又はその医薬的に許容される塩を含む組成物であって、前記薬理学的シャペロンが、アンブロキソール(ABX)又はその誘導体である、組成物に関する。
【0129】
本発明はまた、糖原病(GSD)を処置するための治療用GAA処置を受ける対象において前記GSDを処置するための方法であって、薬理学的シャペロンを含む組成物を対象に投与することを含み、薬理学的シャペロンが、ABX又はその誘導体である、方法に関する。
【0130】
以下の図及び実施例により本発明をさらに説明する。しかしながら、これらの実施例及び図は、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【0131】
実施例
実施例1:WTマウスに関する研究
材料及び方法
治療用ヒトGAAポリペプチド(hGAA)を発現するAAV8-sp7-Δ8-coGAAベクターの構築
【0132】
AAVベクター産生
アデノウイルスを含まない一過性トランスフェクション法(Matsushitaら、[32])を使用してAAV8ベクターを産生し、先に記載されるように精製した(Ayusoら、[33])。AAVベクターストックの力価は、定量リアルタイムPCR(qPCR)を使用して決定し、SDS-PAGEの後にSYPRO(登録商標)Rubyタンパク質ゲル染色及びバンドデンシトメトリーを行うことによって確認した。核酸構築物は、AAVベクター、特に2つのITRとbGHポリAとを含む発現カセット配列に挿入されていた。前記核酸構築物は、5’から3’に、ApoE制御領域配列番号15、hAAT肝臓特異的なプロモーター配列番号14、修飾HBB2イントロン配列番号17及び核酸分子配列番号25を含む。得られたAAV8ベクターをAAV8-sp7-Δ8-co1GAAベクターと呼ぶ。
【0133】
インビボ研究
標準的な動物の管理及び飼育は、国のガイドラインに従った。動物実験は、欧州指令2010/63/EUに従って、CERFEの倫理委員会によって承認された(承認番号:2015008D)。
6~8週齢のC57Bl/6雄マウスを、5匹のマウスからなる9つの群に分けた。0日目に、覚醒している拘束された動物に尾静脈注射を介して5×1011vg/kgのAAV8-sp7-Δ8-co1GAAベクターを静脈内投与した。AAV処置から2か月後、7つの薬理学的シャペロン分子又はそれらの組合せを、「3オン/4オフ」レジメン(連続3日間の処置と、その後の飲料水のみによる連続4日間)を4週間使用してマウスに経口投与した。この4週間の期間の終わりに、すべてのマウスを屠殺し、異なる臓器及び筋肉(肝臓、心臓、脳、脊髄、横隔膜、四頭筋、及び三頭筋)を採取した。C57Bl/6マウスに、PBS(CTRL)又は5×1011vg/kgの分泌型治療用hGAAポリペプチドを発現するAAV8ベクター(AAV-GAA)のいずれかを注射した。
【0134】
ベクター注射から2ヶ月後、飲料水に溶解した100mg/kg/日(die)のドゥボグルスタット(DNJ、AX61Q1、Interchim、San Diego、CA)、100mg/kg/日のドゥボグルスタットと25mg/kg/日のアンブロキソールとの組合せ(DNJ-ABX)、25mg/kg/日のアンブロキソール塩酸塩(ABX、A9797、Sigma、Saint Louis、MO)、2mg/kg/日のボグリボース(VOGLIBOSE、S4101、Selleckchem、Houston、TX)、20mg/kg/日のアカルボース(ACARBOSE、S1271、Selleckchem、Houston、TX)、2mg/kg/日のミグリトール(MIGLITOL、S2589、Selleckchem、Houston、TX)又は4200mg/kg/日のN-アセチル-システイン(NAC、A7250、Sigma、Saint Louis、MO)によりマウスを4週間処置した(
図1)。1つの群には通常の飲料水(水)を与えた。
【0135】
ベクター注射から3か月後、マウスを屠殺し、血液及び組織中のヒトGAA(hGAA)のレベルをウエスタンブロットにより分析した。
【0136】
血漿採取
血液サンプルは、ヘパリン処置した毛細管チューブへの後眼窩からの採血の後に血漿分離を行うことによって、ベクター注射から3か月後に採取した。
【0137】
組織採取
研究の最後(注射後3ヶ月)に、CO2吸入により動物を屠殺した。肝臓、心臓、脳、脊髄、横隔膜、四頭筋、及び三頭筋を採取し、生化学的分析のために液体窒素で瞬間凍結した。凍結サンプルは処理まで-80℃で保存した。
【0138】
ウエスタンブロット分析
屠殺時にマウス組織を採取し、PBSでホモジナイズした。BCAタンパク質アッセイ(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を使用してタンパク質濃度を決定した。血漿及び組織サンプルを水で1:20に希釈した(サンプルを1:200に希釈した脳を除く)。SDS-page電気泳動法を4~12%勾配ポリアクリルアミドゲルで行った。転写後、膜をOdyssey緩衝液(Li-Cor Biosciences、Lincoln、NE)でブロッキングし、抗ヒトGAA抗体(ウサギモノクローナル抗体、Abcam、Cambridge、UK)及び抗GAPDH抗体(ウサギポリクローナル抗体、PA1-988、Life Technologies、Carlsbad、CA)とインキュベートした。膜を洗浄し、適切な二次抗体(Li-Cor Biosciences、Lincoln、NE)とインキュベートし、Odysseyイメージングシステム(925-32213、Li-Cor Biosciences、Lincoln、NE)で可視化した。組織へのGAAの取込みを測定するために、抗GAA抗体により可視化した70KDaバンド(成熟型)を定量化し、ローディングコントロールとして使用したGAPDHの発現レベルに対して標準化した。
薬理学的シャペロン処置の開始前に低い血漿中GAAレベルを呈した動物は、分析から除いた。
【0139】
結果
ウエスタンブロットにより測定した、DNJ及びNACで処置したマウスにおける循環hGAAのレベルの有意な増加を観察した(
図2)。組織において、取込み後、肝臓により分泌された未成熟型のhGAAが取込まれ、タンパク質切断により70KDa形態に修飾された。70KDa形態(成熟型)は、ライソゾーム中での前駆体のタンパク質消化後にのみ得られる。したがって、この形態は細胞内にあり、その定量化により、組織への取込みが推定できる。組織中の成熟ライソゾームの形態のhGAAの定量化(ウエスタンブロットのバンド濃度の測定による)により、DNJ及びDNJ-ABXで処置したマウスの横隔膜、三頭筋、及び脊髄における酵素レベルの増加が示されたが、それはDNJ処置群についてのみ三頭筋で有意性に達した(
図3)。
【0140】
心臓、四頭筋、及び脳では差異は認められなかった。
【0141】
興味深いことに、DNJとABXとの組合せは、DNJのみ又は水を飲んだマウスにおいて測定されたレベルと比較して、脊髄中のhGAAレベルの大幅な増加に至った(
図3)。これらのデータは、遺伝子治療の有効性を高めるためのDNJとABXとの併用投与の相乗効果を裏付けている。
【0142】
実施例2:GAA KO(ノックアウト又は欠損)マウスに関する研究
材料及び方法
AAVベクター産生
実施例1に上述したようにAAV8ベクターを産生した。
【0143】
インビボ研究
標準的な動物の管理及び飼育は、国のガイドラインに従った。動物実験は、欧州指令2010/63/EUに従って、CERFEの倫理委員会によって承認された(承認番号:2017-11-B #13643)。
3~4月齢のGAA欠損雄マウスを6つの群に分け、1つのコントロール群を野生型同腹仔で構成した。各群は、飲料水に溶解した薬の投与を容易にするために、最大2つのケージに8匹のマウスで構成した。
0日目から開始して、GAA欠損(KO)マウス(マウス系統B6;129-Gaa
tm1Rabn/J)に、飲料水に溶解した異なる薬理学的シャペロン(PC)と組合せて、尾静脈注射を介して1×10
11vg/kgでAAV-hGAAを注射した。並行して、未処置のGAA野生型マウス及びAAV-hGAAベクター又はPBSを注射したGAA欠損マウスの2つの群をコントロールとして使用した。
図4に示すように、PC分子は、連続3日間の処置と、その後の飲料水のみによる連続4日間とからなる「3日オン/4日オフ」レジメンを使用してマウスに経口投与した。マウスは、飲料水に溶解した100mg/kg/日のドゥボグルスタット(DNJ、AX61Q1、Interchim、San Diego、CA)、100mg/kg/日のドゥボグルスタットと25mg/kg/日のアンブロキソール塩酸塩との組合せ(DNJ-ABX)、25mg/kg/日のアンブロキソール塩酸塩(ABX、A9797、Sigma、Saint Louis、MO)、4200mg/kg/日のN-アセチル-システイン(NAC、A7250、Sigma、Saint Louis、MO)(
図4)又は通常の飲料水を受ける。
循環hGAAの活性及びレベルを2ヶ月の期間にわたってモニターした。マウスを屠殺し、異なる臓器及び筋肉(心臓、横隔膜、四頭筋、及び三頭筋)を採取して、組織へのGAAの取込み及びグリコーゲンクリアランスを測定した。
【0144】
血漿採取
血液サンプルは、ヘパリン処置した毛細管チューブへの後眼窩からの採血の後に血漿分離を行うことによって採取した。
【0145】
組織採取
研究の最後(注射後2ヶ月)に、CO2吸入により動物を屠殺した。心臓、横隔膜、四頭筋、及び三頭筋を採取し、生化学的分析のために液体窒素で瞬間凍結した。凍結サンプルは処理まで-80℃で保存した。
【0146】
GAA活性の測定
pH4.3における4-メチル-ウンベリフェリル-α-d-グルコシド(4-MU、Sigma、St Louis、MO)切断の測定により、血漿及び組織中のGAA活性を評価した。この目的のために、屠殺時に採取したマウス組織をPBSでホモジナイズした。不溶性タンパク質を遠心分離により除去した。得られた溶解物のタンパク質含有量を、BCAタンパク質アッセイ(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)により定量化した。血漿及び組織サンプルを水で希釈し、各サンプル10μLを再構成した基質20μLと37℃で1時間インキュベートした。反応を停止した後、放出された蛍光をEN-SPIRE(登録商標)蛍光光度計(Perkin Elmer、Waltham、MA)により測定した。GAA活性は、総タンパク質含有量又は血漿量に対して標準化した。
【0147】
ウエスタンブロット分析
屠殺時にマウス組織を採取し、PBSでホモジナイズした。実施例1に記載した方法に従ってウエスタンブロット分析を行った。
【0148】
グリコーゲン含有量の分析
グリコーゲン含有量を、Aspergillus Nigerアミログルコシダーゼ(Sigma Aldrich)での完全消化後に放出されるグルコースとして、組織ホモジネートにおいて間接的に測定した。サンプルを95℃で5分間インキュベートし、次に4℃で冷却した。次に、0.1M酢酸カリウムpH5.5で1:50に希釈した25μlのアミログルコシダーゼを各サンプルに添加した。アミログルコシダーゼなしのコントロール反応を各サンプルについて調製した。サンプル反応及びコントロール反応の両方を37℃で90分間インキュベートした。サンプルを95℃で5分間インキュベートすることによって反応を停止させた。放出されたグルコースは、グルコースアッセイキット(Sigma Aldrich)を使用し、得られる吸光度を540nmでEnSpireアルファプレートリーダー(Perkin-Elmer)にて測定することによって決定した。
【0149】
結果
ウエスタンブロットにより測定した、DNJ及びDNJ-ABXの組合せで処置したマウスにおける循環hGAAのレベルの有意な増加を観察した(
図5)。これらの結果は、循環GAA活性の結果と一致している(
図6)。組織において、GAA活性測定により、DNJ及びDNJ-ABXで処置したマウスの心臓、横隔膜、三頭筋、及び四頭筋で酵素活性の増加が示されたが、それは、DNJ及びABXの両方で処置したマウスの群においてのみ有意性に達した(
図7A~
図7D)。ABXのみ又はNACを注射したマウスでは有意差は認められなかった。
【0150】
GAA欠損マウスにおいて得られたこれらのデータは、野生型マウスにおいて以前に得られたデータを確定し、遺伝子治療の有効性を高めるためのDNJとABXとの併用投与の相乗効果を裏付けている。
【0151】
GAA活性により、組織、特に、グリコーゲンレベルが野生型マウスで観察されたのと酷似していた心臓において、グリコーゲン蓄積の減少が生じた(
図8A)。グリコーゲン含有量の部分的な標準化が他の組織において観察された(
図8B-D)。DNJ-ABXで処置したマウスがAAVのみで処置したマウスよりも低いグリコーゲンレベルを呈したとしても、その差は有意に達さなかった。
【0152】
実施例3:アルグルコシダーゼアルファ(ERT)と組合せた薬理学的シャペロンの効果の研究
材料及び方法
【0153】
インビボ研究
標準的な動物の管理及び飼育は、国のガイドラインに従った。動物実験は、欧州指令2010/63/EUに従って、CERFEの倫理委員会によって承認された(承認番号:2017-11-B #13643)。
3~4月齢のGAA欠損雄マウスを3つの群に分け、1つのコントロール群を野生型同腹仔で構成した。
-2日目から開始して、GAA欠損(KO)マウスの1つの群(マウス系統B6;129-Gaa
tm1Rabn/J)は、
図9に示すように、飲料水に溶解した薬理学的シャペロン(PC)処置を受けた。マウスは、100mg/kg/日のドゥボグルスタット(DNJ、AX61Q1、Interchim、San Diego、CA)と25mg/kg/日のアンブロキソール塩酸塩(ABX、A9797、Sigma、Saint Louis、MO)との組合せを受けた。並行して、GAA野生型マウス及びGAA欠損マウスの2つの群を、通常の飲料水を与えるコントロールとして使用した。0日目に、PCで処置したGAA欠損マウス及びGAA欠損マウスの1つのコントロール群に、尾静脈注射を介して20mg/kgでアルグルコシダーゼアルファ(ERT、Myozyme、Genzyme、Cambridge、MA)を注射した。循環GAAの活性及びレベルをERTの3時間後にモニターした。
【0154】
血漿採取
血液サンプルは、ヘパリン処置した毛細管チューブへの後眼窩からの採血の後に血漿分離を行うことによって採取した。
【0155】
GAA活性の測定
pH4.3における4-メチル-ウンベリフェリル-α-d-グルコシド(4-MU、Sigma、St Louis、MO)切断の測定により、血漿及び組織中のGAA活性を評価した。この目的のために、屠殺時に採取したマウス組織をPBSでホモジナイズした。不溶性タンパク質を遠心分離により除去した。得られた溶解物のタンパク質含有量を、BCAタンパク質アッセイ(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)により定量化した。血漿及び組織サンプルを水で希釈し、各サンプル10μLを再構成した基質20μLと37℃で1時間インキュベートした。反応を停止した後、放出された蛍光をEN-SPIRE(登録商標)蛍光光度計(Perkin Elmer、Waltham、MA)により測定した。GAA活性は、総タンパク質含有量又は血漿量に対して標準化した。
【0156】
ウエスタンブロット分析
実施例1に記載した方法に従ってウエスタンブロット分析を行った。
【0157】
結果
組換えhGAA(ERT)の半減期は比較的短い。このため、レベル及び活性の測定は、注入の3時間後に行った。ERTのみで処置したマウスと比較して、DNJ-ABXの組合せで同時処置したマウスでは循環GAAレベル及び活性の増加を観察した(
図10)。
これらのデータは、GAAのバイオアベイラビリティを高めるためのDNJとABXとの併用投与の相乗効果を裏付けている。さらに、本発明のシャペロンが、アルグルコシダーゼアルファによる処置等の従来のERTの処置有効性を高めるのに有用であることを証明している。
【0158】
「[参照番号]」の形式で引用した参考文献:
1.Hirschhorn,R.及びReuser,A.J.2001 In The Metabolic and Molecular Basis for Inherited Disease(Scriver,C.R.、Beaudet,A.L.、Sly,W.S.&Valle,D.Eds.)、3389~3419ページ。McGraw-Hill、New York、3403~3405ページを参照。
2.Van der Ploeg及びReuser、2008 Lancet 372:1342~1351、
3.Van den Houtら、2003、Pediatrics;112:332~340[PubMed:12897283]
4.DeRuisseauら、2009;Proc Natl Acad Sci USA、106:9419~9424。[PubMed:19474295]
5.Amalfitano,A.ら、2001 Genet.In Med.3:132~138
6.Kikuchiら、1998、Clinical and metabolic correction of Pompe disease by enzyme therapy in acid maltase-deficient quail. The Journal of Clinical Investigation;101:827~833[PubMed:9466978]
7.Rabenら、2003、Molecular Genetics and Metabolism;80:159~169[PubMed:14567965]
8.Xuら、JCI Insight 2019;4(5):e125358
9.Lukasら、The American society of Gene and Cell Therapy 2015、第23巻 第3号、456~464)
10.Hoefslootら、1988 EMBO J.7:1697;
11.Martiniukら、1990 DNA and Cell Biology 9:85)
12.Hoefslootら、1990 Biochem.J.272:485;
13.Wisselaarら、1993 J.Biol.Chem.268:2223;
14.Hermansら、1993 Biochem.J.289:681)。
15.Van Hoveら、1996 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:65(ヒト)
16.Kunitaら、1997 Biochemica et Biophysica Acta 1362:269;
17 Ill,C.R.ら(1997)。Optimization of the human factor VIII complementary DNA expression plasmid for gene therapy of hemophilia A.Blood Coag.Fibrinol.8:S23~S30
18.Rinconら、Mol Ther.2015年1月;23(1):43~52、
19.Chuahら、Mol Ther.2014年9月;22(9):1605~13
20.Nairら、Blood.2014年5月15日;123(20):3195~9。
21.Matesら 2009 Nat Genet.2009年6月;41(6):753~61。doi:10.1038/ng.343
22.Lingら、2016年7月18日、Hum Gene Ther Methods。
23.Vercauterenら、2016、Mol.Ther.第24巻(6)、1042ページ
24.Rosarioら、2016、Mol Ther Methods Clin Dev.3、16026ページ
25.Shenら、2007 Molecular Therapy、第15巻、第11号、1955~1962ページ
26.Tenneyら、2014、Virology、第454~455巻、2014年4月、227~236ページ
27.Bartelら、2011、Front. Microbiol.、2011年10月4日 https://doi.org/10.3389/fmicb.2011.00204
28.Michelfelderら(PLoS ONE、2009、4、e5122
29.Zhongら、2008 PNAS 2008年6月3日、2008 105 (22) 7827~7832;https://doi.org/10.1073/pnas.0802866105
30.Finetら、Virology、2018、513、43~51)。
31.McCartyら、2003 Gene Therapy 12月;10(26):2112~8。
32.Matsushitaら、Gene Therapy、1998、5、938~945
33.Ayusoら、Gene Therapy、2010、17、503~510
34.Zhangら、Hum Gen Ther、2012、第23巻、第5号:460~472。
【0159】
【0160】
【配列表】
【国際調査報告】